(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリマー樹脂組成物用可塑剤
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20241219BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533217
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022079128
(87)【国際公開番号】W WO2023122381
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202141059280
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】アビサー ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】デバトシュ バイジヤ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002AC071
4J002EH156
4J002FD026
4J002GJ02
4J002GN00
(57)【要約】
可塑化ゴムポリマー組成物であって、(a)少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、(b)少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分及び少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分との可塑化ゴムポリマー組成混合物を形成するための少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分と、の混合物を含み、可塑化ゴムポリマー組成混合物が低温で安定である、可塑化ゴムポリマー組成物;上記組成物を製造するためのプロセス;並びに上記組成物から作製された物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化ゴムポリマー組成物であって、
(a)少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分であって、前記少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分は、以下の構造を有し、
【化1】
式中、R
1及びR
4は、独立して、C
1-C
8アルキル基、フェニル又はベンジルであり、R
2は、独立して、水素、メチル、又はエチルのいずれかであり、nは、独立して、1~4であり、R
3は、0~5個の炭素原子及び任意選択で二重結合を含有する炭素鎖である、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、
(b)少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分と、の混合物を含み、
前記少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、前記少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分と、を含む可塑化ゴムポリマー組成混合物が形成される、可塑化ゴムポリマー組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分が、350℃超~500℃の沸点を有し有し、450gm/mol~550gm/molの分子量を有する、請求項1に記載の可塑化ゴムポリマー組成物。
【請求項3】
前記可塑化ゴムポリマー組成混合物が、
(i)-40℃で測定された低温安定性;及び
(ii)175℃~200℃の断続的な温度下での製品安定性を示す、請求項1に記載の可塑化ゴムポリマー組成物。
【請求項4】
他のポリマー樹脂、活性剤、他の可塑剤、促進剤、硬化剤、乾燥剤、酸化防止剤、ワックス、充填剤、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、安定剤、成核剤、難燃剤、発泡剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の化合物を更に含む、請求項1に記載の可塑化ゴムポリマー組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分がアジペートである、請求項1に記載の可塑化ゴムポリマー組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分がニトリルゴムである、請求項1に記載の可塑化ゴムポリマー組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分の濃度が、前記組成物中の前記化合物の総重量に基づいて、1.4重量パーセント~4.15重量パーセントであり、前記少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分の濃度が、前記組成物中の前記化合物の前記総重量に基づいて、40重量パーセント~60重量パーセントである、請求項1に記載の可塑化ゴムポリマー組成物。
【請求項8】
ゴムポリマー組成物を可塑化するためのプロセスであって、
(I)以下の成分:
(a)少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分であって、前記少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分は、以下の構造を有し、
【化2】
式中、R
1及びR
4は、独立して、C
1-C
8アルキル基、フェニル又はベンジルであり、R
2は、独立して、水素、メチル、又はエチルのいずれかであり、nは、独立して、1~4であり、R
3は、0~5個の炭素原子及び任意選択で二重結合を含有する炭素鎖である、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、
(b)少なくとも1つのポリマー樹脂構成成分と、
(c)任意選択で、1つ以上の所望の任意選択による構成成分と、を提供する工程と、
(II)工程(I)の1つ以上の成分をミキサに断続的に添加して、可塑化ゴムポリマー樹脂組成物を製造する工程と、を含む、プロセス。
【請求項9】
ゴム物品を製造するためのプロセスであって、
(A)請求項1に記載の可塑化ポリマー樹脂組成物を提供する工程と、
(B)工程(A)からの前記可塑化ポリマー樹脂組成物を成形して、その物品を形成する工程;又は工程(A)からの前記可塑化ポリマー樹脂組成物を押出して、その物品を形成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスによって作製されたシール、ガスケット、ダイヤフラム及びホースからなる群から選択される物品を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー樹脂組成物用の添加剤として有用な可塑剤に関し、より具体的には、本発明は、ポリマー樹脂組成物を可塑化するのに有用なプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑剤は、得られるポリマー/可塑剤混合組成物において所望の物理的特性を作り出すためにポリマー中で使用される。混合組成物の所望の物理的特性のいくつかは、得られるポリマー/可塑剤混合組成物の可撓性、柔軟性、及び可塑性特性を増加させることを含み得る。フタル酸エステルは、可塑剤添加剤としてゴム配合物に広く使用されてきた。例えば、加工パラメータを改善するために、又はプロセスのコストを低減するために、フタル酸エステルがニトリルブタジエンゴム(nitrile butadiene rubber、NBR)に添加される。
【0003】
これまで、NBR化合物に使用される最も一般的な可塑剤は、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(di-2-ethylhexyl phthalate、DEHP)とフタル酸ジオクチル(dioctyl phthalate、DOP)との組み合わせであった。しかしながら、DEHP/DOPは、材料の毒性のために、ポリマー樹脂用の可塑剤添加剤として使用することが現在推奨されていない。例えば、DEHP/DOPは、世界自動車申告対象物質リスト(Global Automotive Declarable Substance List、GADSL)において「禁止」とラベル付けされている。更に、フタレート/非フタレート可塑剤に基づく既存の製品配合物は、低温での安定性、高温での耐熱性、及び既存の製品配合物から作製された物品における「ブルーミング」の発生に関する問題を有する。当業界は、上述の問題のない可塑剤添加剤を探求してきたが、あまり成功していない。
【0004】
したがって、DOP及び他のフタル酸エステルに関連する毒物学的問題を有さない、NBRなどのポリマー樹脂に使用するための適切な可塑剤を提供することが望ましい。更に、NBRポリマー樹脂に使用するための、かつNBRポリマー樹脂に所望の利点を付与するための、適切な許容可能な可塑剤を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様では、本発明は、
(a)少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分であって、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分は、以下の構造を有し、
【0006】
【化1】
式中、R
1及びR
4は、独立して、C
1-C
8アルキル基、フェニル又はベンジルであり、R
2は、独立して、水素、メチル、又はエチルのいずれかであり、nは、独立して、1~4であり、R
3は、0~5個の炭素原子及び任意選択で二重結合を含有する炭素鎖である、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、
(b)少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分と、の混合物を含み、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分と、を含む可塑化ゴムポリマー組成混合物が形成される、可塑化ゴムポリマー組成物に関する。
【0007】
別の態様において、本発明は、
(a)少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分であって、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分は、以下の構造を有し、
【0008】
【化2】
式中、R
1及びR
4は、独立して、C
1-C
8アルキル基、フェニル又はベンジルであり、R
2は、独立して、水素、メチル、又はエチルのいずれかであり、nは、独立して、1~4であり、R
3は、0~5個の炭素原子及び任意選択で二重結合を含有する炭素鎖である、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、
(b)少なくとも1つのポリマー樹脂構成成分と、を混合することを含み、少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分と、を含む可塑化ゴムポリマー組成混合物が、形成される、ゴムポリマー組成物を可塑化するためのプロセスに関する。
【0009】
別の態様において、本発明は、(a)少なくとも1つのグリコールエーテル系可塑剤構成成分であって、少なくとも1つのグリコールエーテル系可塑剤構成成分が、350℃超の沸点を有する非VOC材料を含む、少なくとも1つのグリコールエーテル系可塑剤構成成分と、(b)ポリマー樹脂構成成分及び可塑剤組成混合物を形成するための少なくとも1つのポリマー樹脂構成成分と、を混合することを含む、ポリマー組成物を可塑化するためのプロセスに関する。いくつかの実施形態では、組成混合物は、例えば、-40℃の温度で測定される組成物に基づく低温安定性と、200℃の温度で1時間測定される組成物に基づく耐熱性と、ブルーミング効果の減少と、を含む複数の有益な特性を示す。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明の可塑化添加剤は、P-シリーズ(プロピレンオキシド系グリコールエーテル)グリコールエーテルアジペートであるアジペート(ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート、ジ-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエチル]アジペートとも呼ばれ、「b-DPGBEA」と略される)を含む。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、ゴム加工用途のための可塑剤としてのb-DPGBEAの使用に関する。いくつかの実施形態では、例えば、本発明は、NBRゴム用の可塑剤としてのb-DPGBEAの使用に関する。
【0012】
本発明の様々な実施形態を、以下の詳細な説明でより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、又は当該技術分野で慣習的でない限り、本明細書で使うすべての温度は、摂氏温度(℃)である。
【0014】
本明細書では「室温(room temperature、RT)」及び「周囲温度」は、別途指定しない限り、20℃~26℃の温度を意味する。
【0015】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、又は当該技術分野で慣習的でない限り、すべてのパーセンテージ、部、率などの量は、重量で定義される。例えば、本明細書に記載したすべてのパーセンテージは、別途指示されない限り、重量パーセンテージ(重量%)である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を構成する材料、並びに組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物の混合物を指す。
【0017】
「エラストマー」は、粘弾性(すなわち、粘度及び弾性の両方)を有し、他の材料と比較して弱い分子間力、一般に低いヤング率及び高い破壊歪みを有するポリマーである。IUPAC(国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry))は、「エラストマー」という用語を「ゴム様弾力性を示すポリマー」と定義している。
【0018】
「ポリマー」は、同じ種類又は異なる種類のモノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、及び「インターポリマー」という用語を包含し、これはコポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、及び3つより多くの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを含む。微量の不純物、例えば触媒残留物が、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれる可能性がある。それはまた、コポリマーのすべての形態、例えば、ランダム、ブロックなども包含する。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマー又はモノマーの種類に「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含有する」などと称されるが、本文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残基を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。概して、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものとして言及される。
【0019】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成成分、工程、又は手順が本明細書において具体的に開示されているか否かにかかわらず、それらの存在を排除することを意図したものではない。疑義を避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、特に反対の記載がない限り、ポリマーであるか否かにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる他の構成成分、工程、又は手順をあらゆる後続の説明の範囲から除外する。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の構成成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、及び任意の組み合わせで指す。単数形の使用には複数形の使用が含まれ、その逆もまた同様である。
【0020】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値までのすべての値(下限値及び上限値を含む)を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0021】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略称は、文脈から別途明確に指示されない限り、以下の意味を有する:「=」は、「等しい」又は「と等しい」を意味し、「<」は、「未満」を意味し、「>」は、「よりも大きい」を意味し、「≦」は、「以下」を意味し、「≧」は、「以上」を意味し、「@」は、「において」を意味し、ppm=百万分率、ppb=十億分率、ppt=一兆分率、「BV/時」=床容積/時間、「MT」=メートルトン、g=グラム、mg=ミリグラム、Kg=キログラム、L=リットル、g/L=1リットル当たりのグラム、μL=マイクロリットル、「g/cm3」又は「g/cc」=1立方センチメートル当たりのグラム、g/10分=10分当たりのグラム、mg/mL=ミリリットル当たりのミリグラム、Kg/m3=1立方メートル当たりのキログラム、Kgf/cm2=キログラム重/平方センチメートル、ppm=重量百万分率、pbw=重量部、phr=樹脂100当たりの部、rpm=1分間当たりの回転、m=メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、μm=ミクロン又はマイクロメートル、nm=ナノメートル、min=分、s=秒、ms=ミリ秒、hr=時、Pa=パスカル、MPa=メガパスカル、Pa・s=パスカル秒、mPa・s=ミリパスカル秒、g/mol=1モル当たりのグラム、g/eq=1当量当たりのグラム、Mn=数平均分子量、Mw=重量平均分子量、pts=重量部、1/s又は秒-1=秒の逆数[s-1]、℃=摂氏温度、℃/分=1分当たりの摂氏温度、psi=1平方インチ当たりのポンド、kPa=キロパスカル、%=パーセント、vol%=体積パーセント、mol%=モルパーセント、及びwt%=重量パーセント。
【0022】
本発明の具体的な実施形態が、本明細書の以下に記載される。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に本発明で特許請求された主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0023】
1つの広範な実施形態では、本発明は、可塑化ゴムポリマー組成物に関し、(a)350℃超の沸点及び450g/mol超の分子量を有する少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、(b)少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分;及び(c)所望であれば、1つ以上の任意選択による構成成分との混合物を含み、可塑化ゴムポリマー組成物を形成する。得られる可塑化ゴムポリマー組成物は、上記構成成分(a)、(b)の混合物を含み、任意選択で(c)を含み、いくつかの有利な特性を示す。例えば、本発明で得られる可塑化ゴムポリマー組成物の所望の利点としては、以下が挙げられる:(1)低温での安定性、例えば、-40℃の温度で測定される組成物に基づく低温安定性;2)例えば、200℃の温度で1時間測定される組成物に基づく、高温での耐熱性;及び3)ゴム加工中の、本発明の得られる可塑化ゴムポリマー組成物から作製されたゴム物品における「ブルーミング」効果の減少(低減)又は排除。ブルーミングは、可塑化ゴムポリマー組成物から作製されたゴム物品の表面上に生じる表面現象である。ブルーミングは目視観察によって決定され、可塑化ゴムポリマー組成物から製造されたゴム物品の表面が肉眼で審美的に心地よいものであり、目視観察によって検出される場合、ブルーミング効果は低いか又は全く起こらない。本開示によるゴムポリマー組成物の評価中に観察される所望の利点は、上記の(1)~(3)を含み得るが、異なる配合、プロセス、及び用途において異なる値で同様の傾向を持ち存在し得る。
【0024】
本発明の可塑化ゴムポリマー組成物の構成成分(a)は、1つ以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートであり得る少なくとも1つ(1つ以上)のプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分を含む。
【0025】
1つ以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、以下の一般式(I)に対応し得、
【0026】
【化3】
式中、R
1及びR
4は、独立して、C
1-C
8アルキル基、フェニル又はベンジルであり、R
2は、独立して、水素、メチル、又はエチルのいずれかであり、nが、独立して1~4であり、R
3は炭素原子数0~5の炭素鎖であり、二重結合を含んでもよい。好ましい実施形態では、R
1及びR
4は、独立して、(C
1-C
8)アルキル基である。R
1及びR
4は、直鎖又は分枝鎖アルキル基であり得る。好ましい実施形態では、R
1及びR
4アルキル基は直鎖である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明において有用なプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤、構成成分(a)は、米国特許出願公開第2021/0071053(A1)号及び米国特許第9,908,839(B2)号に記載される1つ以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートを含むことができる。1つ以上のビス(グリコールエーテル)アルキレート(又は上記の式(I)によって記載されるビス-グリコールエーテルエステル)の例は、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート、ビス-ジプロピレングリコールn-プロピルエーテルアジペート、ビス-ジエチレングリコールn-ブチルエーテルマロネート、ビス-ジエチレングリコールn-ブチルエーテルサクシネート、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルマレエート、及びそれらの混合物の1つ以上を含み得る。好ましい実施形態では、1つ以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート(「b-DPGBEA」又は「DPnB」)の1つ以上を含み得る。1つ以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、例えば、米国特許第9,908,839(B2)号に開示されているプロセスを使用して調製され得る。
【0028】
本発明の可塑化ゴムポリマー組成物に使用される構成成分(a)であるプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤の濃度は、組成物中の化合物の総重量に基づいて、例えば、1つの一般的な実施形態では、3phr(1.4重量%)~10phr(4.15重量%)、別の実施形態では3phr(1.4重量%)~8phr(3.4重量%)、更に別の実施形態では4phr(1.9重量%)~6phr(2.5重量%)の範囲であることができる。
【0029】
プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤が、ゴムポリマー樹脂構成成分である構成成分(b)と混合される前の、プロピレンオキシド系のグリコールエーテルエステル可塑剤である構成成分(a)の有利な特性のいくつかには、例えば、構成成分(a)が低VOC(揮発性有機化合物)含有量、高沸点、及び高い分子量を有し、構成成分(a)が、有害な大気汚染物質ではないことが挙げられる。
【0030】
例えば、プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤は非VOC化合物であり、又は、プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤は、グリコールエーテル可塑剤中のVOC含有量が低い。一般的な実施形態では、可塑剤中に存在するVOCの濃度は、「非VOC含有量」又は「低VOC含有量」可塑剤として有用であるように、可能な限り0重量%に近い。したがって、可塑剤に関して「非VOC含有量」又は「低VOC含有量」とは、可塑剤がVOC構成成分の1重量%未満のVOC化合物(又は構成成分)の汚染量を有することを意味する。他の実施形態では、可塑剤中のVOC含有量は、1つの一般的な実施形態では0.001重量%~2重量%未満、別の実施形態では0.01重量%~1.0重量%であることができる。場合によっては、可塑剤中に存在するVOC化合物の汚染量は、可塑剤に意図的に添加されないが、代わりに、例えば可塑剤の製造、送達、貯蔵、又は加工中に、別個の供給源から生じ得る。別の実施形態では、1つ以上のビス(グリコールエーテル)アルキレート中の1重量%未満の揮発性有機化合物の量は、EPA方法24によって定義され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤の沸点は、概して、1つの実施形態では>350℃~最大500℃;別の実施形態では430℃~500℃;更に別の実施形態では450℃~500℃、更に別の実施形態では470℃~500℃である。本明細書において別段の記載がない限り、760mmHgで350℃を超える沸点は、2004/42/EC Solvents Directive for Decorative Paintsに記載されている手順を使用して測定される。
【0032】
いくつかの実施形態では、プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤は、ASTM D1209で測定して、25APHA未満の色を示し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤の分子量は、1つの一般的な実施形態では>450g/molであり、別の実施形態では450g/mol~550g/molである。
【0034】
プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤に関して、「無害」とは、可塑剤が非毒性、低VOCであり、環境に優しい化合物であることを意味する。
【0035】
概して、本発明において有用なゴムポリマー樹脂構成成分である構成成分(b)は、1つ以上のゴムポリマー樹脂構成成分を含むことができる。例えば、本発明において有用なゴムポリマー樹脂構成成分は、アクリロニトリル及びブタジエンを乳化重合することによって製造される様々な合成ゴム製品を含んでもよく、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)(「ニトリルゴム」とも呼ばれる)は、ブタジエン(butadiene、BD)及びアクリロニトリル(acrylonitrile、ACN)の不飽和コポリマーのファミリーである。概して、構成成分(b)はアクリロニトリル及びブタジエンゴムの中~高粘度の低温重合ポリマーであり、すなわち、アクリロニトリルブタジエンコポリマーを含有する低温重合された中ACNである。
【0036】
いくつかの実施形態では、ゴムポリマー樹脂である構成成分(b)は、例えば、KNB 35L(Kumho Petrochemicalから入手可能);Perbunan 3445 F及びKrynac 3345 F(両方ともArlanxeoから入手可能);Nipol(登録商標)DN1201L(Zeon Chemicalsから入手可能);Nancar(登録商標)3345(Nantex Industry Co.,LTD.から入手可能);Apcoflex N746 (Apcotex Industries limitedから入手可能);及びこれらの混合物などの様々な市販の製品を含むことができる。
【0037】
1つの好ましい実施形態では、本発明において有用なゴムポリマー樹脂構成成分として、例えば、Kumho KNB 35L、Apcoflex N746、Perbunan 3445、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明で使用されるゴムポリマー樹脂構成成分の濃度は、組成物中の化合物の総重量に基づいて、例えば、1つの一般的な実施形態では30重量%~60重量%、及び別の実施形態では40重量%~55重量%であり得る。
【0039】
概して、ゴムポリマー樹脂構成成分である構成成分(b)は、ゴムポリマー樹脂構成成分(b)がプロピレンオキシド系の可塑剤である構成成分(a)と混合される前に、様々な有益な特性を含み、例えば、構成成分(b)は耐油性であり、構成成分(b)が燃料ホース、オイルシール、ガスケットなどの物品、及び最低の油膨潤特性が必要とされる他の物品又は製品などに使用できるので有利である。
【0040】
いくつかの実施形態では、得られる可塑化ゴムポリマー組成混合物の構成成分(a)及び本発明の構成成分(b)は、所望であれば、1つ以上の任意選択による構成成分、添加剤又は他の薬剤化合物を更に含むことができる。本発明の可塑化ゴムポリマー組成混合物において有用な任意選択の化合物である構成成分(c)としては、例えば、他のポリマー樹脂、活性化剤、他の可塑剤、促進剤、硬化剤、乾燥剤、酸化防止剤、ワックス、充填剤、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、安定剤、成核剤、難燃剤、発泡剤、硬化促進剤、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
本発明において有用な任意選択による添加剤のいくつかの実施形態では、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:5phr(2.47重量%)~10phr(4.15重量%)の酸化亜鉛;1.5phr(0.74重量%)~4phr(1.66重量%)のステアリン酸;2phr(0.99重量%)~3phr(1.25重量%)の(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン);2phr(0.99重量%)~3phr(1.25重量%)の(4,4’-ビス(アルファ,アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン;3phr(1.48重量%)~5phr(2.08重量%)のワックス;5phr(2.47重量%)~10phr(4.15重量%)のシリカ;70phr(34.60重量%)~80phr(33.24重量%)のカーボンブラック;3phr(1.48重量%)~10phr(4.15重量%)の他の可塑剤;1.7phr(0.79重量%~1.9phr(0.84重量%))のDTDM;1.8phr(0.89重量%)~2.2phr(0.91重量%)のTMTM;2phr(0.99重量%)~2.8phr(1.16重量%)のCBS;0.3phr(0.15重量%)~0.8phr(0.33重量%)の硫黄;5phr(2.47重量%)~8phr(3.32重量%)のCaO;及びこれらの混合物。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、任意選択ではあるが、上記の任意選択による添加剤のいくつかは重要であり、得られる可塑化ゴムポリマー組成混合物に添加することができる。例えば、NBRなどのゴム構成成分の熱老化特性を維持するために酸化防止剤を使用することができるので、得られる可塑化ゴムポリマー組成混合物に酸化防止剤化合物を添加してもよい。NBRは、多くの不飽和を有しており、酸化防止剤構成成分なしでは熱分解しやすくなり得る。本発明で使用される酸化防止剤添加物の濃度は、組成物中の化合物の総重量に基づいて、例えば、1つの一般的な実施形態では1.0重量%~4.5重量%、及び別の実施形態では1.5重量%~2.5重量%であり得る。
【0043】
別の実施形態では、例えば、硬化促進剤化合物を、得られる可塑化ゴムポリマー組成混合物に添加して、組成物を硬化させ、最終ゴム製品を形成することができる。本発明で使用される硬化促進剤添加剤の濃度は、組成物中の化合物の総重量に基づいて、例えば、1つの一般的な実施形態では0.1重量%~0.8重量%、及び別の実施形態では0.1重量%~0.4重量%であり得る。
【0044】
概して、任意の化合物、構成成分(c)のすべての総濃度は、可塑化ゴムポリマー組成混合物中で使用される場合、組成物中の化合物の総重量に基づいて、例えば、1つの実施形態では40重量%~60重量%、別の実施形態では45重量%~55重量%を含む。
【0045】
広範な実施形態では、可塑化ゴムポリマー樹脂組成物を提供するための、プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分(a)及びゴムポリマー樹脂構成成分である構成成分(b)、及び所望の任意選択による成分である構成成分(c)のブレンド又は混合物を調製するためのプロセスは、例えば、(a)少なくとも1つのプロピレンオキシド系のグリコールエーテルエステル可塑剤構成成分と、(b)少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分と、1つ以上の任意選択による構成成分(c)と、を混合することを含んで、本発明において有用な可塑化ポリマー樹脂組成混合物を形成し、可塑化ポリマー樹脂組成混合物が、例えば、-40℃の温度で測定した場合の低温安定性;例えば、200℃の温度で1時間測定した場合の高温耐熱性;及び例えば、検出可能な量の可塑剤粒子が、本発明の可塑化ゴムポリマー組成物から作製されたゴム物品の表面に移動しない場合の、低いブルーミング効果を示す。
【0046】
上記の一般的なプロセスにおける混合工程の温度は、例えば、25℃(すなわち、室温)~最大125℃であり得る。
【0047】
可塑化ポリマー樹脂組成物を調製するための本発明の上記プロセスは、当業者に知られている従来の装置によって行うことができる。例えば、可塑化ゴムポリマー組成物を形成するための混合工程は、インターミックス、Banburyミキサ、ニーダーなどの一般的に知られているミキサによって行うことができる。得られた混合物を加熱する場合、加熱は、機械に取り付けられた熱電対などの当技術分野で概して知られている加熱器によって行うことができる。
【0048】
他の実施形態では、可塑化ゴムポリマー組成物を製造するプロセス、すなわち、ゴム樹脂を可塑化して可塑化ゴムポリマー組成物を形成するためのプロセスは、以下の工程を含む。
工程(I):少なくとも1つのプロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤構成成分、少なくとも1つのゴムポリマー樹脂構成成分、及び1つ以上の所望の任意選択による構成成分を提供する工程;
工程(II):工程(I)の1つ以上の成分をミキサに断続的に添加して、可塑化ポリマー樹脂組成物を生成する工程
【0049】
プロセスは、1つ以上の任意選択による工程及び/又は任意選択による工程のための1つ以上のプロセス条件を含むことができる。例えば、ゴムの予備混合は室温で行うことができ、続いて素練り工程が行われ、素練り工程は50℃の温度で行うことができる。素練り工程中に、他の添加剤を混合物に添加することができ、素練り工程後に形成されたバッチを125℃の温度でダンプすることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、上記プロセスの混合工程(II)の温度は、例えば、1つの一般的な実施形態では、室温(RT;25℃)~130℃;別の実施形態では、室温~125℃;別の実施形態では、25℃~50℃であり得る。可塑化ポリマー樹脂組成物を調製するための上述した本発明のプロセスの実施形態、及び上記のような工程は、当業者に公知の従来の装置によって行うことができる。
【0051】
本発明のプロセスによって製造された可塑化ポリマー樹脂組成物によって示されるいくつかの有利な特性及び/又は利点には、例えば、組成物が-40℃未満などの低温で安定であることが含まれる。可塑化ポリマー樹脂に関して低温での「安定性」とは、-40℃での曲げ試験に合格することを意味する。本発明の可塑化ポリマー樹脂を試験するために使用される曲げ試験は、ASTM D 1329/16 2021に記載されている。いくつかの実施形態では、可塑化ポリマー樹脂は、-40℃で測定される温度で安定である(すなわち、低温安定性を有する)。可塑化ポリマー樹脂の低温安定性は、例えば、ASTM D 1329/16 2021に記載されている手順によって測定される。
【0052】
他の実施形態では、本発明の可塑化ポリマー樹脂は、有利には耐熱性を示す。例えば、可塑化ゴム物品の「耐熱性」は、ASTM D 573/04 2019に記載されている曲げ試験手順によって測定される。概して、曲げ試験では、可塑化ゴム物品試料を200℃の温度に1時間供し、次いで平坦な表面上で室温に冷却する。曲げ試験を受けるとき、物品が目視検査で亀裂の徴候を示さない場合、可塑化ゴム物品は耐熱性であると見なされる。200℃からの温度で1時間後に可塑化ゴム物品試験の試料上に亀裂が観察される場合、物品は耐熱性試験に不合格である。
【0053】
可塑化ポリマー樹脂は、目視観察によって決定されるように、低いブルーミング効果を有するか、又はブルーミング効果を有さない。可塑化ポリマー樹脂に関する「ブルーミング」効果又は「ブルーム」又は「ブルーミング」は、当技術分野で周知の現象であり、ブルーミングとは、液体又は固体の配合剤が、配合剤を含有するゴム部品の内部からゴム部品の表面に移動して、ゴム部品又は物品の白化を引き起こす現象を指す。したがって、「ブルーム」は、ゴム部品又は物品の表面上に存在する乾燥粉末の乳状のダスティングである。典型的には、ブルーミングは、未使用の加硫剤がゴム部品の表面に移動することによって引き起こされる。例えば、「ブルーム」は、ゴム部品の内部に存在する可塑剤、添加剤又は他の構成成分がゴム部品の表面に移動する傾向があり、色の変化(通常は白色)する場合に生じ、白色は「ブルーム」と呼ばれる。別の例では、乾燥腐敗は通常UV光によって引き起こされ、ゴムを脆くする傾向があり、安定剤がゴム部品の表面に移動するとブルームが形成されるので、「安定剤」と呼ばれる構成成分は、典型的には、「乾燥腐敗」を防止するためにゴム中に意図的に設計される。
【0054】
いくつかの実施形態では、ブルーミング効果は、以下の条件で決定される:60℃の温度及び50パーセント~95パーセントの範囲の相対湿度。
【0055】
上記のように可塑化ポリマー樹脂を製造した後、別の広範な実施形態では、可塑化ポリマー樹脂は、(A)上記のような可塑化ポリマー樹脂組成物を提供する工程;及び(B)可塑化ポリマー樹脂組成物を成形して物品を形成する工程を含む、ゴム物品を製造するために使用される。工程(B)の別の実施形態は、押出の当業者に公知の押出プロセス及び装置を使用して、可塑化ポリマー樹脂組成物を押出して、物品を形成することを含み得る。
【0056】
上記プロセスによって製造された物品は、例えば、シート、成形物品、ゴムシール、ガスケット、ダイヤフラム、ホースなどであり得る。
【0057】
概して、本プロセスの工程(B)、すなわち射出成形工程又は押出工程のためのプロセス条件は、射出成形/押出の技術分野において公知の従来の装置及びプロセス条件を含むことができる。工程(B)で使用される圧力は、成形が使用される場合、100kg/cm2~200kg/cm2であり得、押出が使用される場合、例えば、1つの一般的な実施形態では、4kg/cm2~8kg/cm2であり得る。
【0058】
上述のプロセスで、本発明の可塑化ポリマー樹脂組成物から作製される物品は、例えば、物品が(1)低温での増加した耐亀裂性、及び(2)改善された機械的特性を有する圧縮永久ひずみを含む高温老化性能を示すことを含む、いくつかの有利な特性及び/又は利点を示す。
【0059】
いくつかの実施形態では、物品は、低温で耐亀裂性を示し、すなわち、物品が-40℃の温度で最大48時間の期間にわたって貯蔵された後に、最終ゴム物品では亀裂が形成されない。物品の低温亀裂抵抗は、目視観察によって決定される。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の可塑化ポリマー樹脂組成物は、ゴムシール、ガスケット、ダイヤフラム及びホース用途における様々な物品又は製品を製造するために使用される。例えば、可塑化ポリマー樹脂組成物は、オイルシール、ラジエーターガスケット、燃料ホース、ダイヤフラムなどの自動車ゴム部品を製造するために使用することができる。
【実施例】
【0061】
以下の本発明の実施例(Inventive Example、Inv.Ex.)及び比較例(Comparative Example、Comp.Ex.)(まとめて「実施例」とする)は、本発明の特徴を更に詳細に説明するために本明細書で提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして、明示的に、又は暗示によるいずれかで解釈されることを意図しない。本発明の実施例はアラビア数字によって特定され、比較例はアルファベット文字によって表される。以下の実験で、本明細書に記載の組成物の実施形態の性能を分析した。特に指示しない限り、すべての部及びパーセンテージは、総重量に基づく重量による。
【0062】
様々な用語及び指定が、本発明の実施例(Inv.Ex.)及び比較例(Comp.Ex.)において使用される様々な原料又は配合成分を、以下のように説明する。
「DOP」はフタル酸ジオクチルを表す。
「DTDM」は、4,4’ジチオジモルホリンを表す。
「TMTM」は、テトラメチルチウラムモノスルフィドを表す。
「CBS」は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドを表す。
「ML」は、記録された最小トルクを表すか、意味する。
「MH」は、記録された最大トルクを表すか、意味する。
「MH-ML」は、トルク差を表すか、意味する。
「ts2」は、スコーチ時間/誘導時間を表すか、意味する。
「tc90」は、最適硬化時間を表すか、意味する。
【0063】
原材料
表Iは、実施例において使用される原料(成分、添加剤又は化合物)のいくつかを記載し、表IIは、表Iからの成分及び表IIに記載される他の成分を使用して作製された配合物を記載する。
【0064】
【0065】
【0066】
試験のために試料を調製する一般的手順
本発明の可塑化ポリマー樹脂組成物及びそれから製造される物品は、混合チャンバー及びラムを有するミキサを使用して調製された。この手順では、充填率が使用され、概して0.70~0.75である。充填率は、ミキサの混合チャンバー内における混合材料体積の比である。充填率が小さすぎる場合、ラムはその最下位置に早すぎて到達し、効率的なせん断及び伸長作用のためにはラム圧力が低すぎることにつながる。概して、ミキサ容量は、最大75%で最適化される。ニトリルゴムは非常に高い弾性率を有するので、ミキサ体積は75%以下に維持され、75%を超えると、材料のより高い弾性率のために、長期にわたってラムに摩耗及び引き裂きを生じる可能性がある。
【0067】
この一般的な手順において、本発明の可塑化ポリマー樹脂組成物が調製され、試験用の物品試料が可塑化ポリマー樹脂組成物から作製された。表IIに記載される化合物を、50℃の初期混合温度でミキサ中で一緒に混合した。ゴム746(ニトリルゴム(NBR))を最初にミキサに添加し、60秒間素練りし、次いで、ステアリン酸、ZnOをオイル+カーボンブラック及び他の充填剤とともに含む添加剤をミキサに添加し、素練りしたゴム中に混合した。添加剤を50RPMで60秒間添加した。次に、ラムを作動させ、ラムの表面に付着する可能性のある充填材を拭き取り、ラムの表面から除去した。その後、ミキサの温度が125℃に達するまで、混合チャンバー内の成分を更に混合した。混合後、得られる混合物(材料又はバッチ)をミキサの混合チャンバーからトレイ上に取り出した(すなわち、排出した)。
【0068】
6インチ(0.15m)の2本ロールミルを使用して混合を完了した。厚さ0.5インチ(0.012m)の化合物をシートに成形し、得られるゴムシートを熟成のために室温で保持した。混合後の化合物の熟成は、ポリマー充填剤の相互作用をより良好に助けることができ、化合物の最終特性を改善する。
【0069】
12時間の化合物熟成を上記のように行った後、ポリマー充填剤相互作用(ネットワーク化)を最適化することができるように、最終バッチ混合を行った。この最終混合工程は、組成物の残りの化学物質及び添加剤(例えば、硬化促進剤を含む)を添加し、次いで、得られる混合物を2本ロールミル中で完全に混合することによって行われた。2本ロールミルを使用して成分のすべてを1時間にわたりバッチ混合した後、得られる熟成化合物を、移動ダイレオメーター(moving die rheometer、MDR)を使うレオロジ試験を含む、以下に記載するすべての関連試験に使用した。
【0070】
試験方法及び測定
ブルーミング試験
ゴム物品又は製品のいくつかの試料を、以下の手順を用いてブルーミングについて試験した。第1のサイクルであるサイクル1は、ゴム物品試料に対して、まず試料を加湿チャンバー内に60℃及び相対湿度(relative humidity、RH)50%で7日間置くことによって実施した。次いで、加湿チャンバーから試料を取り出した。その後、試料を室温で2日間保持した後、各試料の表面を肉眼で目視確認し、試料の表面に白色物質又は白色粒子の層が存在するか否かを目視観察で判定した。サイクル1後のブルーミング試験結果は、試料の表面上に白色物質又は白色粒子の層が観察されなかったこと、すなわちブルーミングが観察されなかったことを示す。
【0071】
第2のサイクルであるサイクル2を、いくつかのゴム物品試料に対して以下のように実施した。試料を加湿チャンバー内に60℃及び95%RHで4日間置いた後、試料を加湿チャンバーから取り出した。その後、試料を室温で2日間保持した後、各試料の表面を肉眼で目視確認し、試料の表面に白色物質又は白色粒子の層が存在するか否かを目視観察で判定した。サイクル2後のブルーミング試験結果は、試料の表面上に白色物質又は白色粒子の層が観察されなかったこと、すなわちブルーミングが観察されなかったことを示す。ブルーミング性能は、すべての評価された試料製品にわたって同様であった。
【0072】
レオロジ試験測定
175℃で3分間硬化させた硬化キネティック化合物のレオロジを、上述のASTM D5289-19の手順を用いて化合物を加工した後、Alpha Moving Die Rheometer(MDR-2000)を用いて0.5oArcで測定した。レオロジ測定の結果を表IIIに記載した。
【0073】
【0074】
表IIIにおいて、「ML(dNm)」は化合物の最小トルクを意味する。トルクは、所与の温度における加硫化合物の剛性及び粘度の尺度である。化合物のMLが低いほど、化合物の流動性が高いことを意味する。いくつかの例では、化合物のオーバーフローは、離型後に構成成分の高いバリ厚を生成する可能性があり、金型への制御された流れが望ましい。高いMLは、射出成形用途に有益であり得る。射出プロセスにおいて、処理される化合物試料は、射出装置のフィーダーゾーン内でアイドリングし続けるので、化合物は、化合物が伸長するのを防止し、更に良好な強度を備えるように、更に良好な剛性のため、高い化合物MLを必要とする。化合物が徐々に伸長すると、金型キャビティ内に充填不足が生じる可能性があり、最終製品の充填不足が生じる。本発明の組成物は、化合物特性のバランスを有利に示す。
【0075】
表IIIにおいて、「MH(dNm)」は、グラフに記録された最大トルクを意味する。増加したMH値は、架橋密度の増加があることを示す。組成物の架橋密度が高いほど、金型内での組成物の硬化速度が良好になる。
【0076】
表IIIにおいて、「MH-ML(dNm)」はトルク差である。トルク差は、生じる架橋の数を示し、化合物のせん断弾性率に関連する。トルク差が大きいほど、架橋数が多く、弾性回復性が高く、製品寿命を長くすることができる。レオロジ特性から、b-DPGBEAが優れた架橋密度(MH-ML)を示すことを観察でき、最終製品の優れた圧縮特性だけでなく、より速い硬化及びより高い生産率に非常に不可欠である。
【0077】
表IIIにおいて、「ts2」は「スコーチ時間」又は硬化が開始する点である。化合物b-DPGBEAは、非常に類似しているか、又はより良好な化合物スコーチ安全(硬化が始まる前にゴム化合物が所与の温度で加工され得る時間)を示し、他の既知の化合物と比較して、b-DPGBEAの処理(したがって、プロセスの安全)に関連する。例えば、スコーチ時間(ts2)が高すぎる場合、得られるゴム生成物は非常に鈍い表面を示す可能性があり、ts2が低すぎる場合、生成化合物はプロセスにおいて安全でなくなる可能性がある。製品は、押出機/射出成形スクリューバレル内で前処理硬化傾向を示し得る。
【0078】
表IIIにおいて、「tc90」は、最適硬化時間、すなわち90%硬化を示す。換言すれば、tc90は、硬化ゴムが最大達成可能トルクの90%を得るのに必要な時間である。したがって、より短い最適硬化時間(tc90)は、特に射出成形プロセスにとって有利である。短い最適硬化時間は、硬化サイクル時間の短縮及び生産性の向上に役立つからである。プロピレンオキシド系グリコールエーテルエステル可塑剤、b-DPGBEAは、最も低いtc90を示す。したがって、b-DPGBEAは、表IVに記載されているように、試験された他の可塑剤と比較して、より良好な硬化速度を有し、より良好な生産率を有する。
【0079】
【表4】
表Vの注記:
(1)Req=「required、必須」、
(2)Act=「actual、実際」及び
(3)Min=「minimum、最小」。
【0080】
表IVから、b-DPGBEAは、DOP及びアジペートポリエステルと比較してb-DPGBEAのスラブ厚がより厚いにもかかわらず、優れた引張及び同様の伸びを提供することが観察できる。3つの試験すべてにおいて、b-DPGBEAの硬度は、DOP及びアジペートポリエステルと比較して高い側にあることが観察された。b-DPGBEAでの別の重要な観察は、より高い弾性率であり、化合物のより大きなグリーン強度及び最終製品のより大きな製品強度を得るために有益であり得る。化合物のより高い弾性率は、最終製品上のブリスター及び化合物のグリーン強度を制御するのに役立つ。
【国際調査報告】