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<図1>
  • 特表-電気化学デバイスにおける電極再生 図1
  • 特表-電気化学デバイスにおける電極再生 図2A
  • 特表-電気化学デバイスにおける電極再生 図2B
  • 特表-電気化学デバイスにおける電極再生 図2C
  • 特表-電気化学デバイスにおける電極再生 図2D
  • 特表-電気化学デバイスにおける電極再生 図3
  • 特表-電気化学デバイスにおける電極再生 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電気化学デバイスにおける電極再生
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/08 20060101AFI20241219BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20241219BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20241219BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C25C7/08 A
C02F1/461 101B
C25D21/00 J
C23F1/00 103
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533267
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022052341
(87)【国際公開番号】W WO2023107665
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,694
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/375,710
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521011628
【氏名又は名称】パワーテック ウォーター インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】POWERTECH WATER INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラソールカーニ、アラン
(72)【発明者】
【氏名】ランドン、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ナイテンゲール、ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】ラッシング、エリオット
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ、キャシー
(72)【発明者】
【氏名】リッパート、キャメロン
【テーマコード(参考)】
4D061
4K057
4K058
【Fターム(参考)】
4D061DA08
4D061DB18
4D061EA05
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB17
4D061EB18
4D061EB20
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4D061EB34
4D061EB35
4K057WA01
4K057WB01
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4K057WE02
4K057WE03
4K057WE08
4K057WE09
4K057WE25
4K057WG03
4K057WG06
4K057WM20
4K057WN02
4K058AA22
4K058AA30
4K058FA05
4K058FA09
(57)【要約】
炭素質電極から金属を除去するための方法は、酸、酸化剤、又はそれらの組み合わせを含む再生溶液を提供することを含む。本方法は、再生溶液を炭素質電極に適用し、かつ炭素質電極の表面上の金属を酸化することを更に含む。本方法はまた、酸化された金属を再生溶液に収集することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質電極から金属を除去するための方法であって、前記方法が、
酸、酸化剤、又はそれらの組み合わせを含む再生溶液を提供することと、
前記再生溶液を前記炭素質電極に適用することと、
前記炭素質電極の表面上の前記金属を酸化することと、
前記再生溶液に前記酸化された金属を収集することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記再生溶液が、前記酸及び前記酸化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、過酸化物、過硫酸塩、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤が、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸が、1つ以上の強酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸が、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、過塩素酸(HClO)、塩素酸(HClO)、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記再生溶液が、キレート剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素質電極が、炭素フェルト、炭素織布、炭素フィルム、又は不織布である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭素質電極が、層に構成されるか、ロール状電極スタックに構成されるか、又はz折りに構成された電極スタックの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記炭素質電極上に膜がある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記膜が、イオン交換膜であり、前記イオン交換膜が、アニオン交換膜又はカチオン交換膜である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記膜が、バイポーラ膜である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記膜が、フィルム、層、シート、コーティング、又はそれらの組み合わせの形態である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記電極スタックが、金属含有電極を更に備える、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記金属含有電極上に膜がある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記膜が、イオン交換膜であり、前記イオン交換膜が、アニオン交換膜又はカチオン交換膜である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記膜が、フィルム、層、シート、コーティング、又はそれらの組み合わせの形態である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記電極スタックが、前記炭素質電極と接触した集電体を更に備える、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記集電体が、グラファイト、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、又はそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記集電体が、フィルム、層、金属シート、箔シート、メッシュシート、又はそれらの組み合わせの形態である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記電極スタックが、前記金属含有電極と接触した集電体を更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記集電体が、グラファイト、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、又はそれらの組み合わせを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記集電体が、フィルム、層、金属シート、箔シート、メッシュシート、又はそれらの組み合わせの形態である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記電極スタックが、前記炭素質電極と前記金属含有電極との間に配置されたセパレータを更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記セパレータが、誘電体材料を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記誘電体材料が、ポリマー材料、セルロース材料、シリカ含有材料、又はそれらの組み合わせを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
炭素質電極用の再生溶液であって、前記再生溶液が、
酸と、
約0.1~約5体積パーセント、又は約0.1~約5重量パーセントの量の過酸化物と、を含み、
前記再生溶液が、約0.5~約10のpHを有する、再生溶液。
【請求項28】
前記酸が、1つ以上の強酸である、請求項27に記載の再生溶液。
【請求項29】
前記酸が、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、過塩素酸(HClO)、塩酸(HClO)、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項28に記載の再生溶液。
【請求項30】
前記酸が、硫酸である、請求項27に記載の再生溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府資金提供
本明細書に開示される本発明につながる研究は、「Composite Carbon Anode for Selective Metals Removal from Aqueous Waste Streams」と題する、米国エネルギー省SBIRフェーズIからの助成番号DE-SC0021567によって、部分的に資金提供された。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月9日に出願された米国仮特許出願第63/287,694号、及び2022年9月15日に出願された米国仮特許出願第63/375,710号の利益を主張し、これらの両方の全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本開示は、電気化学デバイスに関し、より具体的には、電気化学デバイスにおける電極再生に関する。
【0004】
廃水及びプロセス水から重金属及び他の標的種を除去するために、種々の方法が使用される。そのような方法としては、例えば、化学沈殿、イオン交換、吸着、膜ろ過、逆浸透、及び電気化学処理が挙げられる。重金属を除去するための電気化学セルは、入力流から標的種の濃度を除去又は低減し、それによって、標的種の含有量を減少させた出力流を提供する、1つ以上の電極の対である、アノード及びカソードを含む。特に、十分な外部電圧(すなわち、電位)が電極に印加されると、水溶液中の標的種(例えば、金属イオン、ハロゲン化物イオン、標的金属又は標的ハロゲン化物の誘導体、又は粒子状金属)の濃度を低減する非自発的な化学反応が生じる。プロセス条件、例えば印加電圧、pH、標的種のタイプ及び濃度、電極間隔、並びにセル設計に応じて、標的種は、電極への物理的吸着、電極への電気的吸引(すなわち、容量的吸着)、並びに/又は電極上に固定化される新しい標的種(すなわち、ファラデー反応)を直接的若しくは間接的に生成する電子移動反応を含む、様々なプロセスによって、水溶液から選択的に除去される。
【発明の概要】
【0005】
1つ以上の実施形態によれば、炭素質電極から金属を除去するための方法は、酸、酸化剤、又はそれらの組み合わせを含む再生溶液を提供することを含む。本方法は、再生溶液を炭素質電極に適用し、かつ炭素質電極の表面上の金属を酸化することを更に含む。本方法は、酸化された金属を再生溶液に収集することを更に含む。
【0006】
他の実施形態によれば、炭素質電極用の再生溶液は、約0.1~約5体積パーセント、又は約0.1~約5重量パーセントの量の酸及び酸化剤を含む。再生溶液は、約0.5~約10のpHを有する。
【0007】
本開示をより完全に理解するために、次に、添付の図面及び詳細な説明に関連して、以下の簡単な説明を参照し、同様の参照番号は、同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】炭素系電極を再生する方法を例示するフローチャートである。
図2A】スタックされた電気化学デバイスの断面側面図である。
図2B】アノード上に膜を有するスタックされた電気化学デバイスの断面側面図である。
図2C】カソード上に膜を有するスタックされた電気化学デバイスの断面側面図である。
図2D】アノード上の膜及びカソード上の膜を有するスタックされた電気化学デバイスの断面側面図である。
図3】銅(Cu)のプールベ図である。
図4】炭素系電極を再生するためのシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
炭素系電極を有する電気化学デバイスは、廃水から標的種(例えば、重金属及び他の標的)の含有量を除去及び低減するための非常に効率的な、かつ環境に優しいプロセスを提供する。水性電気化学系における標的種の可能な安定(平衡)相を図示する標的種のプールベ図(又は電位/pH図)を使用することによって、所望の印加電位(E)を選択して、アノード又はカソード上の標的種を選択的に除去することができる。適切な電圧を印加すると、1つ以上の炭素系電極を有する電気化学デバイスは、炭素系カソード上に電気めっき(すなわち、めっき又は電着)することによって、標的種を除去することができる。経時的に、標的種は、処理後の出力ストリーム中で十億分の一桁(ppb)のレベルまで除去される。しかしながら、そのような効率的なプロセスの課題は、高レベルの還元された金属が炭素系電極の表面上に蓄積し、最終的に電極を交換する必要があることである。繰り返しの電極カートリッジ交換は、費用がかかる。
【0010】
したがって、炭素系(すなわち、炭素質)カソードの表面上に蓄積された還元された金属を酸化する再生溶液、システム、及び方法が本明細書に記載される。再生溶液は、1つ以上の強酸と、過酸化物などの酸化剤と、を含む。再生溶液は、いくつかの実施形態では、電極上の酸化された以前に蓄積された金属を回収して50%よりも大きい効率で電極を再生する条件で、炭素系電極に適用される。したがって、再生溶液、デバイス、システム、及び方法は、水溶液(例えば、排水流)から金属を回収し、かつ炭素系電極が交換を必要とする頻度を低減して、電極並びに電気化学デバイス及びシステムのコストを大幅に低減する、簡易かつ効率的な方法を提供する。
【0011】
再生方法
図1は、炭素系電極を再生する方法を例示するフローチャートである。本方法は、ボックス101に示されるように、表面に還元された金属を有する炭素系電極を提供することを含む。いくつかの実施形態では、炭素系電極は、図2A図2Dに記載され、かつ示される炭素系カソード112である。炭素系電極は、実施形態では単一の電極(例えば、炭素系アノード又は炭素系カソード)、又は別の炭素系電極又は別の非炭素系電極(例えば、以下の図2A図2Dに記載されるような金属系(すなわち、金属含有)電極108)などの別の電極との電極スタックの一部である。いくつかの実施形態では、炭素系電極は、炭素フェルト、炭素織布、又は炭素フィルムであり、それらの全てについて、以下で更に詳細に記載する。いくつかの実施形態では、炭素系電極は、カーボンブラック、活性炭、炭素ナノチューブ、グラフェンシート、又はそれらの任意の組み合わせの複合体と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はそれらの任意の組み合わせなどのポリマー結合剤と、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、電極スタックは、炭素系電極上、及び/又は別の炭素系電極若しくは別の非炭素系電極(例えば、金属系電極)上に膜を更に含む。膜は、膜がどの電極上に配置されているかに応じたカチオン交換膜120又はアニオン交換膜119であり得る。カチオン交換膜は、カチオンに対して選択的に透過性である膜である。アニオン交換膜は、アニオンに対して選択的に透過性である膜である。膜は、いくつかの実施形態では、バイポーラ膜である。膜は、フィルム、層、シート、コーティング、又はそれらの組み合わせの形態であり、膜は、電極の表面上に配置されているか、又は自立している。いくつかの実施形態では、膜は、多孔質シート又はメッシュシートである。膜は、いくつかの実施形態では、電極上にあるか、電極上に直接あるか、又は電極と接触している。他の実施形態では、膜は、電極を取り囲んでいる。
【0013】
炭素系電極の表面上の還元された金属は、いくつかの実施形態では、工業用排水流又は住宅用水流からの水溶液からの標的種である。還元された金属の非限定的な例としては、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、クロムは、炭素系電極上でCr(III)に還元されるCr(VI)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、炭素系電極の表面上の還元された金属は、炭素系カソードに適切な電圧を印加すると電気めっきされることから蓄積される。いくつかの実施形態での電圧は、負電圧である。1つ以上の実施形態では、炭素系電極は、水溶液から蓄積及び電気めっきされた金属を含む。
【0015】
本方法は、ボックス103に示されるように、酸及び酸化剤を含む再生溶液を提供することを含む。いくつかの実施形態では、酸化剤は、過酸化物、過硫酸塩、又はそれらの組み合わせである。酸化剤の非限定的な例としては、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、再生溶液中の酸は、硫酸である。実施形態では、過酸化物は、過酸化水素である。いくつかの実施形態では、再生溶液は、酸を含む。他の実施形態では、再生溶液は、酸化剤を含む。いくつかの実施形態では、酸化剤を有する再生溶液が、炭素系電極に適用され、その後、酸が、炭素系電極に適用される。
【0016】
本方法は、ボックス105に示されるように、再生溶液を炭素系電極に適用することを含む。再生溶液は、炭素系電極を浸漬するか、又は浸すために適用される。いくつかの実施形態では、再生溶液は、水溶液から金属を除去するために使用されるフローに対してフロー方向を逆流又は反転させることによって、システムを通してフラッシュされる。実施形態では、再生中に使用される温度は、約5℃~約50℃である。いくつかの実施形態では、再生中に使用される温度は、約15℃~約25℃である。また、他の実施形態では、再生中に使用される温度は、約5、7、10、12、15、17、20、22、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47、及び50℃であるか、又はおよそこれらの間の任意の範囲にある。
【0017】
いくつかの実施形態では、再生中に使用される再生溶液の流量は、約0.5~約5ガロン毎分である。いくつかの実施形態では、流量は、約1~約4ガロン毎分である。また、他の実施形態では、再生中の流量は、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、3.5、及び5ガロン毎分であるか、又はおよそこれらの間の任意の範囲にある。1つ以上の実施形態では、再生のための流量は、約1~約1.8ガロン毎分である。
【0018】
いくつかの実施形態では、再生中に維持されるシステム圧力は、1平方インチ当たり(psi)約1~約60ポンドの力である。いくつかの実施形態では、システム圧力は、1平方インチ当たり約5~約30ポンドの力である。また、他の実施形態では、再生中のシステム圧力は、1平方インチ当たり約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、及び60ポンドの力であるか、又はおよそこれらの間の任意の範囲にある。
【0019】
再生に必要とされる時間は、多様な条件に依存する。実施形態では、上記の条件下での再生は、約0.25~約8時間実施される。いくつかの実施形態では、上記の条件下での再生は、約0.5~約4時間実施される。また、他の実施形態では、上記の条件下での再生は、約0.25、0.50、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、及び8時間実施される。
【0020】
本方法は、ボックス107に示されるように、任意選択で、炭素系電極をフラッシュしながら電圧を印加することを含む。1つ以上の実施形態では、再生中に電圧が印加されない。いくつかの実施形態では、開回路が適用される。他の実施形態では、短絡電圧が印加される。
【0021】
本方法は、ボックス109に示されるように、炭素系電極の表面上の還元された金属を酸化することを含む。上述される再生中、炭素系電極上の還元された蓄積された金属は、酸化し、バルク溶液(すなわち、再生溶液)中に荷電イオン種を形成する。例えば、電極表面上にめっきされたCu(固体)は、Cu2+になる。
【0022】
本方法は、ボックス111に示されるように、酸化された金属を収集して、炭素系電極を再生することを含む。蓄積された金属が十分に酸化され、かつ電極表面から除去されると、水溶液(すなわち、再生溶液)中の酸化された金属が収集される。上記の再生条件を変化させて、電極表面から再生溶液中に放出される金属イオンの量によって測定され得る任意の所望のエンドポイントを提供する。1つ以上の実施形態では、再生は、金属が再生溶液中に約50,000~約100,000百万分率の量で存在するまで実施される。他の実施形態では、再生は、金属が再生溶液中に約1,000~約100,000百万分率の量で存在するまで実施される。更にまた、再生は、金属が再生溶液中に、約1,000、5,000、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、及び100,000百万分率の量、又はおよそこれらの間の任意の範囲の量で存在するまで実施される。
【0023】
次いで、炭素系電極を再度使用して、還元された金属を収集し、任意の回数再生することができる。炭素系電極、又は炭素系電極を有する電極スタックは、その表面上の金属を還元するのに十分な電流を引き出すことができなくなったときに交換される必要がある。
【0024】
再生溶液
再生溶液は、酸、酸化剤、又はそれらの組み合わせを含む。酸は、1つ以上の酸である。いくつかの実施形態では、酸は、1つ以上の強酸を含む。実施形態では、再生溶液は、第1の酸及び第2の酸を含む。他の実施形態では、第1の酸は、第1の強酸であり、第2の酸は、第2の強酸である。強酸の非限定的な例としては、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、過塩素酸(HClO)、及び塩素酸(HClO)が挙げられる。酸のうちの少なくとも1つは、2つ以上が再生溶液中で使用されるとき、再生溶液のpHを酸性pHに調整するために使用される。1つ以上の実施形態では、再生溶液のpHは、6以下に調整される。いくつかの実施形態では、再生溶液のpHは、2以下に調整される。他の実施形態では、再生溶液のpHは、10以下に調整される。他の実施形態では、再生溶液のpHは、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10、これら未満、又はおよそこれらの間に調整される。
【0025】
いくつかの実施形態では、再生溶液中の酸化剤は、約0.1~約1体積%の量である。実施形態では、再生溶液中の酸化剤は、約0.1~約5体積%の量である。他の実施形態では、再生溶液中の酸化剤は、約0.3~約0.6体積%の量である。また、他の実施形態では、再生溶液中の酸化剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、及び5.0体積%の量、又はおよそこれらの間の任意の範囲の量である。実施形態では、再生溶液中の酸化剤は、約0.1~約1重量%の量である。実施形態では、再生溶液中の酸化剤は、約0.1~約5重量%の量である。他の実施形態では、再生溶液中の酸化剤は、約0.3~約0.6重量%の量である。また、他の実施形態では、再生溶液中の酸化剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、及び5.0重量%の量、又はおよそこれらの間の任意の範囲の量である。
【0026】
いくつかの実施形態では、再生溶液は、キレート剤を含む。キレート剤の非限定的な例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリシン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)、エタノールアミン、L-アラニン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0027】
図4は、炭素系電極を再生するためのシステム400である。システム400は、炭素系電極を有する電極カートリッジ410を含む。電極カートリッジ410は、いくつかの実施形態では、以下で図2A図2Dに記載される電極スタック118である。他の実施形態では、電極カートリッジ410は、以下に記載される炭素系電極である。いくつかの実施形態では、電極カートリッジ410は、炭素系アノードと対をなす炭素系カソードである。電極カートリッジ410中の炭素系電極は、システム400内でポンプ408、電源402、及びコントローラ404を介して電極カートリッジ410を通してポンプ供給された水溶液406から収集された、蓄積された還元された金属を含む。入力ストリーム418に電圧が印加されると、金属は、電極カートリッジ410中の炭素系カソード上で還元され、酸化された標的種の含有量は、出力ストリーム420中で低減され、出力ストリーム420は、出力コレクタ416に収集される。電極カートリッジ410の炭素系電極を再生するために、再生タンク412中の再生溶液は、ポンプ414を使用して、電極カートリッジ410中の炭素系電極を通して定期的に逆流される。炭素系電極の表面上の還元された金属は、酸化され、再生タンク中の再生溶液に収集される。経時的に、金属種を再生タンク412中で濃縮して、再生溶液中に濃縮された酸化された金属を提供する。水溶液406中よりも高い濃度の金属種が存在する、再生タンク412中の濃縮金属溶液は、上述されるようにめっき(電解採取)を介して更なる還元を受けて、固体金属生成物を生成することができる。
【0028】
炭素系電極を有する電気化学デバイス
本明細書に記載されるように再生される炭素系電極は、いくつかの実施形態では、図2A図2Dに記載される電気化学デバイスの一部であり得る。ただし、炭素系電極は、そのようなデバイスに限定されない。図2A図2Dにおいて、電気化学デバイス100は、1つ以上の標的種を有する水溶液(例えば、水)の入力流102を処理する。入力流102は、ハウジング116の入口を通って入り、入力流102の水溶液中の1つ以上の標的種の含有量を少なくとも部分的に除去又は低減するように処理され、出口を通ってハウジング116から出る処理された出力流104を提供する。出力流104は、入力流102よりも低減された標的種の含有量を含み、次いで、所望により更に処理される。
【0029】
電気化学デバイス100は、ハウジング116に配置された炭素系カソード112及び金属系アノード108の1つ以上の電極スタック118を含む。1つの電極スタック118が示されているが、電気化学デバイス100は、1つのスタックに限定されず、他の実施形態では、1つ以上のスタック118、すなわち、炭素系カソード112及び金属系アノード108の複数の電極スタック118を含む。実施形態では、電気化学デバイス100は、電極間の電気接点114(又は電気的接続)及び関連付けられた配線(図示せず)を更に含む。電気接点114及び関連付けられた配線は、電源装置(図示せず)に、必要な電気的接続を提供する。炭素系カソード112及び金属系アノード108は、いくつかの実施形態では、中を通る水性流体フローを可能にする多孔質材料である。他の実施形態では、金属系アノード108は、非多孔質である。いくつかの実施形態では、図2B及び図2Dに示されるように、膜119(すなわち、アニオン交換膜)は、金属系アノード108上に配置されている。他の実施形態では、膜120(すなわち、カチオン交換膜)は、炭素系カソード112上に配置されている。実施形態では、膜119及び/又は膜120は、バイポーラ膜である。電気化学デバイス100は、フローバイ及びフロースルー構成を可能にする。ただし、実施形態では、電気化学デバイスは、フローバイ又はフロースルー構成を介して動作する。フローバイ構成では、入力流102は、電極を通り抜けるのではなく、電極の表面を横断して(矢印122で示される)流れる。フロースルー構成では、入力流102は、(矢印123によって示される)電極を通り抜けて流れる。フローバイ設計は、より低い圧力降下、より高い流量、炭素電極の等しい劣化、各電極対に対して生成される同等pH領域の利点を提供する。フロースルー設計は、より極端なpH領域と、出口pHに対する改善された制御と、を提供する。「スタックされた」電極が、互いに実質的に平行である平坦面と平行な配向で配置されている、図2A図2Dに示されるスタックされた電気化学デバイスでは、入力流102は、電極をフロースルーするか、電極をフローバイするか、又はそれらの組み合わせである。
【0030】
いくつかの実施形態では、電極スタック118は、炭素系カソード112及び金属系アノード108のうちの一方又は両方に取り付けられるか、又は接触した1つ以上の任意選択の集電体106を含む。集電体106は、例えば、炭素系カソード112の層間、及び金属系アノード108の層間に挟まれている。集電体106は、取り付けられた電極で生成された電流を収集し、かつ電気化学デバイス100内の電気損失を低減する、電気ブリッジ構成要素である。1つ以上の実施形態では、電極スタック118は、圧縮され、集電体106は、電極に接触している。いくつかの実施形態では、電極は、集電体上に鋳造されているフィルム又はシートである。炭素系カソード112及び金属系アノード108に取り付けられるか、又は接触した集電体106は、同じであるか、又は異なっている。集電体106は、固体材料又は多孔質材料である。集電体106は、フィルム、層、金属シート、箔シート、又はメッシュシートである。炭素系カソード112用の集電体106のための材料の非限定的な例としては、グラファイト、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。金属系アノード108用の集電体106の材料の非限定的な例としては、グラファイト、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の実施形態では、集電体106は、炭素系カソード112に取り付けられているか、又は接触しており、集電体106は、金属系アノード107には取り付けられていないか、又は接触していない。
【0031】
いくつかの実施形態では、いずれの電極に取り付けられた集電体106も、約0.1~約500ミリメートルの厚さを有する平面状構造である。いくつかの実施形態では、集電体106は、約0.1~約0.4ミリメートルの厚さを有する。他の実施形態では、集電体106は、約0.01、0.05、0.1、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、及び500ミリメートルの厚さ、又はおよそこれらの間の任意の範囲の厚さを有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、各集電体106は、貫通する環状孔(図示せず)を有していない連続した平面状構造である。他の実施形態では、各集電体106は、例えば図1に示されるように、貫通する環状孔を有する平面状構造である。実施形態では、集電体106は、貫通する環状孔の有無にかかわらず、薄い平面状の円筒形状を有する。ただし、集電体106の形状は、これらの形状に限定されず、上述の厚さを有する任意の形状であり得る。
【0033】
図2A図2Dに示されるいくつかの実施形態では、集電体106は、固体(非多孔質)であり、炭素系カソード112及び金属系アノード108の各々は、多孔質であり、これにより、フローバイ(矢印122)及びフロースルー(矢印123)のフローパス構成の両方が可能になる。他の実施形態では、集電体106、炭素系カソード112、及び金属系アノード108は、全て多孔質材料であり、電気化学デバイス200の電極スタック118をフロースルー(矢印123)することを可能にする。
【0034】
1つ以上の実施形態では、電極スタック118は、炭素系カソード112と金属系アノード108との間に配置されたセパレータ110を更に含む。セパレータ110は、誘電体材料であり、電極間の物理的接触を防止する。セパレータ108用の誘電体材料の非限定的な例としては、ポリマー材料、セルロース系材料、シリカ系材料、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、セパレータ110は、ポリエチレンを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、セパレータ110は、約1~約5000マイクロメートルの厚さを有する平面状構造である。いくつかの実施形態では、セパレータ110は、約50~約250マイクロメートルの厚さを有する。他の実施形態では、セパレータ110は、約1、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1500、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800、1825、1850、1875、1900、1925、1950、1975、2000、2025、2050、2075、2100、2125、2150、2175、2200、2225、2250、2275、2300、2325、2350、2375、2400、2425、2450、2475、2500、2525、2550、2575、2600、2625、2650、2675、2700、2725、2750、2775、2800、2825、2850、2875、2900、2925、2950、2975、3000、3025、3050、3075、3100、3125、3150、3175、3200、3225、3250、3275、3300、3325、3350、3375、3400、3425、3450、3475、3500、3525、3550、3575、3600、3625、3650、3675、3700、3725、3750、3775、3800、3825、3850、3875、3900、3925、3950、3975、4000、4025、4050、4075、4100、4125、4150、4175、4200、4225、4250、4275、4300、4325、4350、4375、4400、4425、4450、4475、4500、4525、4550、4575、4600、4625、4650、4675、4700、4725、4750、4775、4800、4825、4850、4875、4900、4925、4950、4975、及び5000マイクロメートル、これら未満、又はおよそこれらの間の任意の範囲の厚さを有する。
【0036】
炭素系カソード112を金属系アノード108から分離するセパレータ110の厚さは、電極間の分離距離を規定する。スタックされるか、又は平行に配置された炭素系カソード112と金属系アノード108との間の分離距離は、クリティカルである。電極は、実行可能な分離をサポートするのに十分に近くなければならない。電極が遠すぎる機関である場合、分離は、実行可能でない。除去率は、セパレータ距離に正比例し、距離が大きくなると抵抗が大きくなる。セパレータ距離が1000ミクロンよりも大きくなると、除去率が急峻に低下し続け、動作に必要とされる電圧が増加し、水分解が生じてプロセスの効率が損なわれる可能性が高まる。1ミクロン未満の距離では、反応速度は高い場合があるが、しばしば樹枝状結晶と称される、アノードとカソードとの間を接続する金属堆積物に起因するセルの短絡の可能性が、非常に高くなる。したがって、両方の高い除去率を信頼性が高い動作を伴って達成することができる実用的な動作には、1~5000ミクロンの距離がクリティカルである。したがって、炭素系カソード112と金属系アノード108との間の分離距離は、いくつかの実施形態では、上述されるように、約1~約1000マイクロメートルである。他の実施形態では、炭素系カソード112と金属系アノード108との間の分離距離は、約1、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1500、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800、1825、1850、1875、1900、1925、1950、1975、2000、2025、2050、2075、2100、2125、2150、2175、2200、2225、2250、2275、2300、2325、2350、2375、2400、2425、2450、2475、2500、2525、2550、2575、2600、2625、2650、2675、2700、2725、2750、2775、2800、2825、2850、2875、2900、2925、2950、2975、3000、3025、3050、3075、3100、3125、3150、3175、3200、3225、3250、3275、3300、3325、3350、3375、3400、3425、3450、3475、3500、3525、3550、3575、3600、3625、3650、3675、3700、3725、3750、3775、3800、3825、3850、3875、3900、3925、3950、3975、4000、4025、4050、4075、4100、4125、4150、4175、4200、4225、4250、4275、4300、4325、4350、4375、4400、4425、4450、4475、4500、4525、4550、4575、4600、4625、4650、4675、4700、4725、4750、4775、4800、4825、4850、4875、4900、4925、4950、4975、及び5000マイクロメートル、又はおよそこれらの間の任意の範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、各セパレータ110は、貫通する環状孔(図示せず)を有していない連続した平面状構造である。他の実施形態では、各セパレータ110は、例えば図2A図2Dに示されるように、貫通する環状孔を有する平面状構造である。実施形態では、セパレータ110は、貫通する環状孔の有無にかかわらず、薄い平面状の円筒形状を有する。ただし、セパレータ110の形状は、これらの形状に限定されず、上述の厚さを有する任意の形状であり得る。
【0037】
炭素系カソード112は、炭素系材料である。炭素系材料の非限定的な例としては、炭素布、炭素フィルム、活性炭材料、不織布(例えば、炭素フェルト、炭素エアロゲルなど)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0038】
炭素布は、炭素からなるか、又は本質的に炭素からなる、織られた導電性多孔質材料である。織布は、織りによって形成された繊維である。織布は、高い空隙比を有する。空隙率(又は空隙比)は、炭素材料の開放気孔率と、水溶液が炭素材料を通ってどれだけ容易に流れることができるかと、を記述する。空隙率(空隙比とも称される)は、以下の式に従って、既知の寸法及び質量の炭素材料片によって置換された水溶液(又は水)の量の測定値である。
【数1】

式中、V炭素は、炭素の体積であり、置換されたVは、置換された水(又は水溶液)の体積である。V炭素及び置換されたVの単位は同じであり、空隙率(%)をもたらす。いくつかの実施形態では、織布は、約65%~約99.9%の空隙比(空隙率とも称される)を有する。他の実施形態では、織布は、約70%~約99.9%の空隙比を有する。更にまた、実施形態では、織布は、約65%、68%、70%、72%、75%、78%、80%、82%、85%、88%、90%、92%、95%、97%、99%、及び99.9%、又はおよそこれらの間の任意の範囲の空隙比を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、織布は、約700~約2300平方メートル毎グラムの高い表面積を有する。他の実施形態では、織布は、約1200~約2300平方メートル毎グラムの高い表面積を有する。また、他の実施形態では、織布は、約700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、及び2300平方メートル毎グラム、又はおよそこれらの間の任意の範囲の高い表面積を有する。他の実施形態では、織布は、約0.1~約5平方メートル毎グラムの低い表面積を有する。また、実施形態では、織布は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、及び5.0平方メートル毎グラム、又はおよそこれらの間の任意の範囲の低い表面積を有する。
【0040】
炭素系カソード112用の織布の非限定的な例は、高い空隙比(約65%~約99.9%)及び高い表面積(約700~約2300平方メートル毎グラム)の材料である。炭素系カソード用の織布の別の非限定的な例は、KYNOLとして市販されている、高い空隙比(約70%~約99.9%)及び高い表面積(約1200~約2300平方メートル毎グラム)の材料である。
【0041】
炭素フェルトは、炭素からなるか、又は本質的に炭素からなる不織布多孔質材料である。いくつかの実施形態では、炭素フェルトは、活性炭フェルトである。他の実施形態では、炭素フェルトは、熱処理又は表面酸化された炭素フェルトである。1つ以上の実施形態では、炭素フェルトは、約95%以上の空隙比を有する。他の実施形態では、炭素フェルトは、約95%、96%、97%、98%、99%、及び99.9%、例えば、約95%~約99%、約95%~約98%、約95%~約97%、及び約95%~約96%、又はおよそこれらの間の任意の範囲の空隙比を有する。1つ以上の実施形態では、炭素フェルトは、約70%~約99.9%の空隙比を有する。他の実施形態では、炭素フェルトは、約70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、99%、及び99.9%、又はおよそこれらの間の任意の範囲の空隙比を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、炭素フェルトは、5平方メートル毎グラム未満の低い表面積を有する。更にまた、他の実施形態では、炭素フェルトは、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、及び5.0平方メートル毎グラム、又はおよそこれらの間の任意の範囲の低い表面積を有する。いくつかの実施形態では、炭素フェルトは、約1200~約2300平方メートル毎グラムの高い表面積を有する。更にまた、他の実施形態では、炭素フェルトは、約1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、及び2300平方メートル毎グラム、又はおよそこれらの間の任意の範囲の表面積を有する。
【0043】
炭素系カソード112用の炭素フェルトの非限定的な例は、高い空隙比(約95%以上)及び低い表面積(約0.1平方メートル毎グラム~約5平方メートル毎グラム)の材料である。炭素系カソード112用の活性炭フェルトの別の非限定的な例は、高い空隙比(約70%~約99.9%)及び高い表面積(約1200~約2300平方メートル毎グラム)の材料である。
【0044】
炭素フィルムは、炭素粒子及び炭素結合剤からなる、又は本質的に炭素粒子及び炭素結合剤からなる炭素複合材料である。1つ以上の実施形態では、炭素フィルムは、微多孔性であり、かつ結合剤を含む、活性炭フィルムである。活性炭フィルムの結合剤の非限定的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アルギン酸ナトリウム、ナトリウム-カルボキシメチルセルロース、イオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
1つ以上の実施形態では、活性炭フィルムは、約30%~約65%の空隙比を有する。他の実施形態では、活性炭フィルム電極は、約30%~約60%の空隙比を有する。更にまた、他の実施形態では、活性炭フィルムは、約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、及び65%、又はおよそこれらの間の任意の範囲の空隙比を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、活性炭フィルムは、約1200~約1400平方メートル毎グラムの表面積を有する。更にまた、他の実施形態では、活性炭フィルムは、約1200、1220、1240、1260、1280、1300、1320、1320、1340、1360、1380、及び1400平方メートル毎グラム、又はおよそこれらの間の任意の範囲の表面積を有する。
【0047】
炭素系カソード112用の活性炭フィルムの非限定的な例は、低い空隙比(約30%~約65%)及び高い表面積(約1200~約1400平方メートル毎グラム)の材料である。実施形態では、炭素系カソード112は、約0.1~約50ミリメートルの厚さを有する平面状構造である。いくつかの実施形態では、炭素系カソード112は、約2~約5ミリメートルの厚さを有する。他の実施形態では、炭素系カソード112は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、4.7、4.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8、9.0、9.2、9.4、9.6、9.8、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20.0、20.5、21.0、21.5、22.0、22.5、23.0、23.5、24.0、24.5、25.0、25.5、26.0、26.5、27.0、27.5、28.0、28.5、29.0、29.5、30.0、30.5、31.0、31.5、32.0、32.5、33.0、33.5、34.0、34.5、35.0、35.5、36.0、36.5、37.0、37.5、38.0、38.5、39.0、39.5、40.0、40.5、41.0、41.5、42.0、42.5、43.0、43.5、44.0、44.5、45.0、45.5、46.0、46.5、47.0、47.5、48.0、48.5、49.0、49.5、及び50.0ミリメートル、又はおよそこれら間の任意の範囲の厚さを有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、各炭素系カソード112は、例えば、貫通する大きい開口部を有していない連続した平面状構造である。他の実施形態では、各炭素系カソード112は、例えば図2A図2Dに示されるように、貫通する環状孔を有する平面状構造である。実施形態では、炭素系カソード112は、貫通する環状孔の有無にかかわらず、薄い平面状の円筒形状を有する。ただし、炭素系カソード112の形状は、これらの形状に限定されず、上述の厚さを有する任意の形状であり得る。
【0049】
1つ以上の実施形態では、炭素系カソード112は、炭素織布、炭素フェルト、又は炭素フィルムなどの、炭素材料の単一の均質な層である。
【0050】
金属系アノード108は、いくつかの実施形態では、金属基材を含む。他の実施形態では、金属系アノードは、金属酸化物コーティングを有する金属基材である。金属基材は、任意のコーティング可能な金属又は金属合金である。金属基材は、プレート、ロッド、チューブ、ワイヤ又はニットワイヤ、及び/又は金属若しくは金属合金の拡張メッシュを含むことができる。金属基材用金属の非限定的な例としては、チタン、タンタル、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、又はそれらの任意の組み合わせ若しくは合金が挙げられる。金属基材用の金属合金の非限定的な例としては、チタンニッケル合金、チタンコバルト合金、チタン鉄合金、チタン銅合金、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、金属基材は、チタンメッシュである。1つ以上の実施形態では、金属系アノードは、約5グラム毎平方メートル(g/m)の貴金属を含むが、この量に限定されない。例えば、金属系アノードは、2g/m未満の、又は8g/mよりも大きい貴金属を含む。いくつかの実施形態では、金属系アノードは、約1g/m~約10g/mの貴金属、約2g/m~約8g/mの貴金属、約3g/m~約7g/mの貴金属、又は約4g/m~約6g/mの貴金属を含む。貴金属の非限定的な例としては、白金、金、又はそれらの任意の組み合わせ若しくは合金が挙げられる。
【0051】
金属酸化物コーティングを適用する前に、任意選択で、金属基材を洗浄して、清浄な金属表面を得る。金属基材は、例えば、機械的洗浄、脱脂、化学洗浄若しくは電解洗浄、又はそれらの任意の組み合わせによって洗浄される。任意選択で、金属系をエッチングして、表面粗さ又は表面形態を得る。例えば、酸、例えば塩酸、硫酸、過塩素酸、硝酸、シュウ酸、酒石酸、リン酸、若しくはそれらの組み合わせ、又は苛性化合物、例えば水酸化カリウム/過酸化水素を使用して、金属基材の表面を化学的にエッチングする。プラズマ溶射は、粗面加工された金属表面を提供するために使用されるプロセスの別の例である。
【0052】
調製されると、金属基材は、1つ以上の金属酸化物でコーティングされる。金属酸化物の非限定的な例としては、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ロジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化チタン、それらの混合物、又は他の金属との混合物が挙げられる。金属酸化物の他の非限定的な例としては、二酸化マンガン、二酸化鉛、酸化コバルト、酸化第二鉄、MPtなどのプラチナ化コーティング(Mは、アルカリ金属であり、xは、典型的には、およそ0.5を標的とされる)、酸化ニッケルニッケル、ニッケル+ランタニド酸化物、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0053】
コーティング用の金属酸化物前駆体は、コーティング組成で化合され、金属基材に液体コーティング組成物を適用する任意のプロセスによって金属基材に適用される。そのような方法としては、ディップスピン及びディップドレイン技法、ブラシ塗布、ローラコーティング、並びに静電スプレーなどのスプレー塗布が挙げられる。金属基材に均一なコーティングを適用すると、コーティングされた金属基材に熱を適用して、前駆体の熱分解をもたらし、金属酸化物コーティングを形成する。加熱を、例えば約425~約535℃の温度で約3~約20分間、実施し、空気中又は酸素中などの酸化環境で実施する。
【0054】
1つ以上の実施形態では、金属基材上の金属酸化物コーティングとしては、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化チタン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。塩化ルテニウム(RuCl)、塩化イリジウム(IrCl又はHIrCl)、及びチタンイソプロポキシド(Ti{OCH(CH)は、一般的にチタンテトライソプロポキシド又はTTIPと称され、コーティング組成で前駆体として化合され、前駆体は、金属基材の表面上に堆積されて、金属系アノード108を形成する。
【0055】
1つ以上の実施形態では、金属系アノード108は、約0.1~約3ミリメートルの厚さを有する平面状構造である。いくつかの実施形態では、金属系アノード108は、約0.1~約1.2ミリメートルの厚さを有する。他の実施形態では、炭素系カソードは、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、及び3.0ミリメートル、又はおよそこれらの間の任意の範囲内の厚さを有する。
【0056】
他の実施形態では、各金属系アノード108は、例えば図2A図2Dに示されるように、貫通する環状孔を有する平面状構造である。実施形態では、金属系アノード108は、貫通する環状孔の有無にかかわらず、薄い平面状の円筒形状を有する。ただし、金属系アノード108の形状は、これらの形状に限定されず、上述の厚さを有する任意の形状であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、電極スタックは、炭素系カソード上及び/又は金属系アノード上に膜を更に含む。膜119及び120(図2B図2D)は、実施形態では、イオン交換膜である。アニオン交換膜119は、膜が金属系アノード上にあるときに使用され、カチオン交換膜120は、膜が炭素系カソード上にあるときに使用される。カチオン交換膜は、カチオンに対して選択的に透過性である膜である。アニオン交換膜は、アニオンに対して選択的に透過性である膜である。膜は、フィルム、層、シート、コーティング、又はそれらの組み合わせの形態であり、膜は、電極の表面(したがって、金属系アノード及び/又は炭素系カソード)上に配置されているか、又は自立している。膜は、いくつかの実施形態では、電極上にあるか、電極上に直接あるか、又は電極と接触している。他の実施形態では、膜は、電極を取り囲んでいる。
【0058】
電気化学デバイス100の電極スタックを作製するために、炭素系カソード112、金属系アノード108、集電体106、及びセパレータ110を含む、セルの上述の層は、炭素系カソード112が、セパレータによって金属系アノード108から分離されることを条件に、任意の順序で互いにスタックされている。結果として、金属系アノード108は、セパレータ106に接触しており、セパレータ106はまた、炭素系カソード112に接触している。集電体106は、金属系アノード108及び炭素系カソード112の各々に別個に接触するように積層されている。
【0059】
金属系アノード108及び炭素系カソード112の各々の別の層を、集電体106が金属系アノード108炭素系カソード112の各々の接触層の間に挟まれるように、集電体106上に積層することができる。1つ以上の実施形態では、集電体106は、炭素系カソード112の層の間に挟まれており、集電体106は、金属系アノード108に取り付けられていないか、又は金属系アノード108と接触していない。
【0060】
1つ以上の実施形態では、膜120(図2C及び図2D)(例えば、カチオン交換膜)は、集電体106と接触している炭素系カソード112の第2の表面とは反対側の、炭素系カソード112の第1の表面上にある。したがって、膜120は、炭素系カソード112及びセパレータ106に接触している。他の実施形態では、膜119(図2B及び図2D)(例えば、アニオン交換膜)は、集電体106と接触している金属系アノード108の第2の表面とは反対側の金属系アノード108の第1の表面上にあり得る。したがって、膜は、金属系アノード112及びセパレータ106に接触している。
【0061】
任意選択のフィードチャネル又はスペーサ121が、図2Dに示されるように、電気化学デバイスに存在し得る。フィードチャネル又はスペーサ121は、貫通流のためのより大きいフローチャネルを作製することができる。フィードチャネル又はスペーサ121の形態の非限定的な例は、ネット又はメッシュである。フィードチャネル又はスペーサ121用の材料の非限定的な例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
炭素系カソード112及び金属系アノード108は、互いに離間配置されており、様々な構成で電気化学デバイスの電極スタック118に配置されている。図2A図2Dに示されるような、スタックされた電極フローバイ及びフロースルーデバイス構成に加えて、電気化学デバイスは、他の構成を有する。他の実施形態では、炭素系電極は、ロール状又はz折り構成の電極スタックの一部である。
【0063】
本明細書に記載される再生された電気化学デバイスを使用して、水溶液から標的イオン種を少なくとも部分的に除去又は低減することによって水溶液を精製する。水溶液の入力流は、例えば、産業用排水流又は住宅用水流である。入力流中の標的種の開始濃度は、特定の種に応じて変化する。1つ以上の実施形態では、標的種の開始濃度(百万分率/ppm)は、1~約10,000百万分率である。他の実施形態では、標的種の開始濃度は、約1~約1,000百万分率である。
【0064】
本明細書に記載される再生方法及びシステムは、いくつかの実施形態では100%よりも大きい効率、及び他の実施形態では約100%~約250%の効率で炭素系電極を再生する。再生効率は、以下のように計算される:再生効率=100*(再生によって回収された銅の質量/捕捉された銅の質量)、式中、捕捉された銅の質量=元の水溶液供給中の銅の質量-排水中の銅の質量。同じ再生溶液が、2サイクル以上の処理に使用された。この再生溶液は、経時的にますます濃縮される。
【0065】
炭素系電極上の還元された金属を収集するために、電極セルスタックを有する電気化学デバイスは、電気コネクタ及び配線を介して電源に接続されており、コントローラが、電極に電位(E+又はE-)を印加する。電極の非対称性は、電極全体にわたる電圧分布を提供し、電圧分布は、電極での標的イオン種の種形成を制御する各電極での異なる電圧に等しい。炭素系カソードに負電圧が印加され、金属系アノードに正電圧が印加される。その結果、以下で詳細に説明されるように、標的イオン種の除去は、炭素系カソード上にめっきすることによって、主として生じることを強制することができる。印加電圧は、質量、面積、表面積、抵抗などの、電極の材料特性に従って、炭素系カソードと金属系アノードとの間で分割される。例えば、デバイスに1.6Vが印加される場合、炭素系カソードは、標準水素電極(SHE)に対して-0.9Vの印加電圧を有し得、金属系アノードは、SHEに対して+0.7Vの印加電圧を有し得る。
【0066】
電気化学デバイスに電圧/電位を印加すると、標的種は、電極への物理的吸着、電極への電気的吸引(容量的吸着)、電極上に固定化される新しい標的種(ファラデー反応)を直接的又は間接的に生成する電子移動反応を含む、様々なプロセスによって、水溶液から除去又は還元される。本明細書に記載される電気化学デバイスで使用される電気めっき(電着又はめっきとも称される)は、還元によって水溶液から標的種を除去して、炭素系カソード112上に固体鉛金属を形成する(すなわち、溶液中のPb2+をPb(固体)として電気めっきする)。印加電圧は、炭素系カソード112上で標的種の電気めっきをもたらすように選択される。
【0067】
標的種のプールベ図を使用して、電圧及びpH条件を選択し、炭素系カソード112上で標的を電気めっきする。プールベ図は、特定の種に特有であり、pH(x軸)の関数として電位/電圧(y軸)を示す。プールベ図は、水性電気化学系における標的種の可能な安定(平衡)相を例示する。所望の印加電位(E)を選択及び印加して、炭素系カソード112(負電位が印加される電極)上の標的種を電気めっき(又は電着)する。水溶液中の各標的種のプールベ図を使用して、還元された固体として電気めっきすることによって、標的種が水溶液から(ファラデー反応によって)除去又は部分的に除去される動作条件(すなわち、電極電圧及びpH)を決定する。様々な標的種のプールベ図は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Pourbaix,Marcel,Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions, Houston,TX,National Association of Corrosion Engineers,1974を含む、様々なソースから入手可能である。
【0068】
銅のプールベ図の例を図3に示す。優性なイオン境界は、線によって表され、したがって、プールベ図は、y軸上に電位(V)、x軸上にpHを有する、軸の異なるセットを有する標準位相図とほぼ同じように読み取られる。バルク水溶液は、Cu2+としての銅イオンを含み、これは、アルカリ性条件下で酸化されたときにCu(OH)(固体)及びCuO(固体)として固定化され、示された動作条件下で、カソード上でCu(固体)として電気めっきされる。特に、水平線によって例示されるように、-0.3Vの電圧を炭素系カソードに印加すると、pH(垂直線によって例示される)は、電位(水平線)との交差がそれらの条件下で存在する金属の種を表すように変調される。約-0.3V~約-0.4Vの印加電圧で、通常の水素電極(NHE)に対して、pH0~14のときに、銅(Cu(固体))がカソード上にめっきされる。
【0069】
他の標的種を、同様の機構の下であるが、異なる電圧領域の下で除去することができる。実施形態では、約0.6~約2.5ボルトのセル電位が電気化学デバイスに印加され、該セル電位は、カソードとアノードとの間で分割される。他の実施形態では、約0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、及び2.5ボルト、又はおよそこれらの間の任意の範囲内のセル電位。
【0070】
カソードに負電位(E-)が印加され、アノードに正電位(E+)が印加される。アノード及びカソードの各々で電位(V)及びpHを測定し、動作条件(すなわち、印加電位)を調整して、近電極電位(すなわち、アノード電位)と、標的種が電気めっきされ、かつ水溶液から除去される条件に対応するpHと、を得る。電気化学セルは、炭素系カソードの水溶液からの標的イオン種の電気めっきをもたらすための好ましい条件下で維持される。以下の表1は、1つ以上の実施形態で使用される総印加セル電圧範囲を含む動作条件を示す。
【表1】
【実施例
【0071】
実施例1
電気化学デバイスは、金属系アノード及び炭素系カソードを含む。アノードは、白金メッシュ上にコーティングされた酸化ルテニウム及び酸化イリジウムの組み合わせから調製された混合金属酸化物アノードであった。カソードは、炭素フェルトであった。電気化学デバイスを使用して、炭素フェルトカソード上にめっきされた銅(Cu)を含む水性入力流から金属を分離及びめっきした。電気化学デバイスを1.9V±0.1V及び0.2ガロン毎分(gpm)で動作して、約1.6のpHと約300百万分率(ppm)の銅の濃度とを有する酸性銅廃水流の入力流を、出力流中の平均約1.5ppmの銅に低減した。50ガロンを処理した。
【0072】
デバイスを再生するために、特に炭素フェルトカソードから還元されためっきされた銅(Cu(固体))を除去するために、デバイスを再生溶液で稼働させた。再生溶液は、水道水と、以下のうちの1つ、2つ、又は全てと、の組み合わせを含んでいた:濃硫酸(溶液が所望のpHになるまで添加した)、0.3~0.6%の過酸化水素、及び0.05モル(M)硝酸(表2)。150リットルの体積を有する再生溶液をタンクに貯蔵し、電気化学デバイスを通してバッチモードで再循環させて、炭素カートリッジから銅を回収した。再生溶液を、電極を通して逆流させた。再生中に電圧を印加しなかった。再生を1時間実施し、その結果、電気化学デバイスによって廃水流から最初に除去された銅の90%超を回収し、pH1.2での硝酸、過酸化水素、及び硫酸の全てを含む再生溶液3について約1000ppmの回収された銅の最終濃度が提供された。
【表2】
【0073】
再生溶液に過酸化水素を添加することにより、銅回収の漸次の改善がもたらされ(表3、溶液1~2を比較する)、溶液1及び2を比較したときの再生効率のわずかな増加によって示されている。しかしながら、硝酸の添加により、顕著な改善があり(表3、溶液2及び3を比較)、200%を超える効率に達した。
【0074】
pHの影響及び過酸化水素の存在を更に検査するために、増加した量の過酸化水素を含み、かつ硝酸を含まない、再生溶液4及び5を試験した。硝酸がなければ、再生効率の改善はなかった。
【表3】
【0075】
実施例2
システムを実施例1と同じ方法でセットアップし、バッチモードで数時間稼働させて、フィードストリームから銅を除去した。入力酸性銅流を低減するために、システムを1.5ボルト及び1ガロン毎分で動作させた。入力流は、約pH1.3に調整され、かつ約400ppmの銅でスパイクされた合成水道水であった。銅含有量は、出力ストリーム中で0.3百万分率未満に低減された。合計30ガロンを処理した。
【0076】
再生溶液は、約1.1のpHまで濃硫酸をスパイクした水道水であった。再生ステップを3時間実行した。廃水流から最初に除去された銅のほぼ100%が、再生の最初の1時間で電極から回収された(表4)。全ての試行で同じデバイスを動作させたため、捕捉及び回収された銅の量は、経時的に累積されたものである。再生効率は、代表的な結果として、試行1~4及び5~15について示されている。
【表4】
【0077】
実施例3
いくつかの再生溶液の有効性を評価するために予備研究を実施した。キレート剤の添加、酸化剤のタイプ、及びpHを試験した。5mLの過酸化水素(H)又は2gの過硫酸ナトリウム(過硫酸塩)のいずれかを250mLの脱イオン水に添加した。pHを、硫酸を用いてpH約2、又は水酸化ナトリウムを用いてpH約10に調整した。2gのL-アラニンを再生溶液5~8に添加した。1gの高純度銅金属(固体)を8つの異なる再生溶液中に配置し、表5に示されるように、2分及び5分の時間ステップで溶解を測定した。銅濃度を、HACH DR 1900ハンドヘルドセンサを使用して測定した。
【0078】
溶液中の銅の濃度が高いほど、再生溶液は、より効果的である。追加的に、効率的な再生溶液は、効果が迅速であるべきであるため、数分以内に収集されたデータが最も関連性が高かった。
【0079】
再生溶液5が最も効果的であった一方、2が最も低く、Hにキレート剤を添加することにより、酸性及び塩基性条件下での性能が大幅に向上したことを示した。この一連の実験は、炭素電極から銅を除去する際に、各溶液が記載されたシステムでどのように機能するかの予測因子としての役割を果たした。
【表5】

【表6】
【0080】
本発明の様々な実施形態が、関連する図面を参照して本明細書に記載される。代替実施形態を、本発明の範囲から逸脱することなく想到することができる。様々な接続及び位置関係(例えば、上方、下方、隣接など)が、以下の説明及び図面の要素間に記載されているが、当業者は、配向が変更されても記載された機能性が維持される場合に、本明細書に記載される位置関係の多くが配向に依存しないことを認識するであろう。これらの接続及び/又は位置関係は、別段の指定がない限り、直接的又は間接的であり得、本発明は、この点で限定することを意図するものではない。したがって、実体の結合は、直接的な結合又は間接的な結合のいずれを指すこともでき、実体間の位置関係は、直接的又は間接的な位置関係であり得る。間接的な位置関係の例として、本説明における層「B」上に層「A」を形成することへの言及は、層「A」及び層「B」の関連する特性及び機能性が中間層(複数可)によって実質的に変更されない限り、1つ以上の中間層(例えば、層「C」)が層「A」と層「B」との間にある状況を含む。
【0081】
特許請求の範囲及び明細書の解釈には、以下の定義及び略語を使用する。本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含む/備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」又は「含有する(containing)」、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的包含に及ぶことを意図するものである。例えば、要素の列挙を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されていないか、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に固有ではない他の要素を含むことができる。
【0082】
追加的に、「例示的」という用語は、本明細書で使用されると、「一例、一事例、又は一例示としての役割を果たすこと」を意味する。「例示的」として本明細書に記載される任意の実施形態又は設計は、必ずしも、他の実施形態又は設計よりも好ましいもの又は有利なものと解釈されるものではない。「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という用語は、1以上の任意の整数、すなわち、1、2、3、4などを含むと理解される。「複数の」という用語は、2以上の任意の整数、すなわち、2、3、4、5などを含むと理解される。「接続」という用語は、間接的な「接続」及び直接的な「接続」を含むことができる。
【0083】
本明細書における「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」などへの言及は、記載される実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得るが、あらゆる実施形態が、特定の特徴、構造、又は特性を含んでもよいし、必ずしも含まなくてもよいことを示す。更に、そのような句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性が実施形態に関連して記載されるとき、明示的に記載されるかどうかにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、又は特性に影響を与えることは、当業者の知識の範囲内であることが提示される。
【0084】
以下の説明の目的で、「上側」、「下側」、「右」、「左」、「垂直の」、「水平の」、「最上部」、「最下部」という用語、及びそれらの派生語は、図面で配向されるように、記載される構造及び方法に関するものとする。「上に重なる」、「頂上に」、「の上に」、「上に」、「上に位置付けられた」、又は「頂上に位置付けられた」という用語は、第1の構造などの第1の要素が、第2の構造などの第2の要素上に存在することを意味し、ここで、インターフェース構造などの介在要素が、第1の要素と第2の要素との間に存在し得る。「直接的な接触」という用語は、第1の構造などの第1の要素、及び第2の構造などの第2の要素が、2つの要素の界面で中間伝導層、絶縁層、又は半導体層なしで接続されることを意味する。
【0085】
「約」、「実質的に」、「およそ」、及びそれらの変形は、出願時に利用可能な機器に基づいて、特定の量の測定に関連付けられた誤差の程度を含むことを意図するものである。例えば、「約」は、所与の値の±8%又は5%、又は2%の範囲を含み得る。
【0086】
図中のフローチャート及びブロック図は、本発明の様々な実施形態による製造及び/又は動作方法の可能な実装態様を例示するものである。本方法の様々な機能/動作は、フロー図においてブロックによって表される。いくつかの代替実装態様では、ブロックに記載された機能は、図に記載された順序から外れて発生し得る。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行され得るか、又はブロックは、関与する機能性に応じて、時には逆の順序で実行され得る。
【0087】
以下の特許請求の範囲において、全てのミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクション要素の、対応する構造、材料、動作、及び均等物は、具体的に特許請求された他の特許請求された要素と組み合わせてその機能を行うための、あらゆる構造、材料、又は行為を含むことを意図している。本発明の説明は、例示及び説明の目的で提示されているが、網羅的であること又は開示された形態の発明に限定されることを意図するものではない。多くの修正及び変形が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかになるであろう。本発明の原理及び実際の用途を最良に説明し、想到される特定の使用に適するように様々な修正を加えた様々な実施形態について本発明を他の当業者が理解することを可能にするために、本実施形態を選択し、かつ説明した。
【0088】
本発明の好ましい実施形態が記載されているが、当業者は、現在及び将来の両方で、以下に続く特許請求の範囲内に入る様々な改善及び改良を行ってもよいことが理解されるであろう。この特許請求の範囲は、最初に記載された本発明の適正な保護を維持するように解釈されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質電極から金属を除去するための方法であって、前記方法が、
酸、酸化剤、又はそれらの組み合わせを含む再生溶液を提供することと、
前記再生溶液を前記炭素質電極に適用することと、
前記炭素質電極の表面上の前記金属を酸化することと、
前記再生溶液に前記酸化された金属を収集することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記再生溶液が、前記酸及び前記酸化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、
過酸化物、過硫酸塩、若しくはそれらの任意の組み合わせ、又は
過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、若しくはそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸が、
1つ以上の強酸を含むか、又は
前記酸が、硫酸(H SO )、塩酸(HCl)、硝酸(HNO )、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、過塩素酸(HClO )、塩素酸(HClO )、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記再生溶液が、キレート剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炭素質電極が、炭素フェルト、炭素織布、炭素フィルム、又は不織布である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素質電極が、層に構成されるか、ロール状電極スタックに構成されるか、又はz折りに構成された電極スタックの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素質電極上に膜があり、任意選択で、
前記膜が、イオン交換膜であり、前記イオン交換膜が、アニオン交換膜若しくはカチオン交換膜であるか、
前記膜が、バイポーラ膜であるか、
前記膜が、フィルム、層、シート、コーティング、若しくはそれらの組み合わせの形態であるか、
又はそれらの任意の組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電極スタックが、金属含有電極を更に備え、任意選択で、
前記金属含有電極上に膜があるか、
前記膜が、イオン交換膜であり、前記イオン交換膜が、アニオン交換膜若しくはカチオン交換膜であるか、
前記膜が、フィルム、層、シート、コーティング、若しくはそれらの組み合わせの形態であるか、
又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電極スタックが、前記炭素質電極と接触した集電体を更に備え、任意選択で、
前記集電体が、グラファイト、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、若しくはそれらの組み合わせを含むか、
前記集電体が、フィルム、層、金属シート、箔シート、メッシュシート、若しくはそれらの組み合わせの形態であるか、
又はそれらの任意の組み合わせである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記電極スタックが、前記金属含有電極と接触した集電体を更に備え、任意選択で、
前記集電体が、グラファイト、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、若しくはそれらの組み合わせを含むか、
前記集電体が、フィルム、層、金属シート、箔シート、メッシュシート、若しくはそれらの組み合わせの形態であるか、又は
それらの任意の組み合わせである、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記電極スタックが、前記炭素質電極と前記金属含有電極との間に配置されたセパレータを更に備え、任意選択で、
前記セパレータが、誘電体材料を含むか、
セパレータが、高分子材料、セルロース材料、シリカ含有材料、若しくはそれらの組み合わせを含むか、
又はそれらの任意の組み合わせである、請求項に記載の方法。
【請求項13】
炭素質電極用の再生溶液であって、前記再生溶液が、
酸と、
約0.1~約5体積パーセント、又は約0.1~約5重量パーセントの量の過酸化物と、を含み、
前記再生溶液が、約0.5~約10のpHを有する、再生溶液。
【請求項14】
前記酸が、
1つ以上の強酸であるか、
硫酸(H SO )、塩酸(HCl)、硝酸(HNO )、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、過塩素酸(HClO )、塩素酸(HClO )、若しくはそれらの任意の組み合わせであるか、
又はそれらの任意の組み合わせである、請求項13に記載の再生溶液。
【国際調査報告】