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特表2024-546649病理検体に対する判断結果を提供する人工ニューラルネットワークの学習方法、及びこれを行うコンピューティングシステム
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  • 特表-病理検体に対する判断結果を提供する人工ニューラルネットワークの学習方法、及びこれを行うコンピューティングシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】病理検体に対する判断結果を提供する人工ニューラルネットワークの学習方法、及びこれを行うコンピューティングシステム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241219BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20241219BHJP
   G16H 30/00 20180101ALI20241219BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G06T7/00 350C
G06T7/00 630
G06V10/82
G16H30/00
G01N33/48 P
G01N33/48 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533277
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2022020180
(87)【国際公開番号】W WO2023113414
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0177378
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519208133
【氏名又は名称】ディープ バイオ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100120008
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 くみ子
(72)【発明者】
【氏名】カク テヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヘユン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ジュニョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンウ
【テーマコード(参考)】
2G045
5L096
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045BB24
2G045CB01
2G045CB02
2G045DA36
2G045FA11
2G045FA16
2G045FB03
2G045GC12
2G045JA01
2G045JA03
5L096AA02
5L096BA06
5L096DA02
5L096HA11
5L096KA04
5L099AA04
(57)【要約】
様々な種類の染色剤が混合した混合染色剤で染色された病理スライドから、特定の染色剤で染色された部分のみを抽出して人工ニューラルネットワークを学習させることにより、様々な染色技術によって染色された病理画像に対する判断を行う方法、及びこれを行うコンピューティングシステムが開示される。本発明の一態様によれば、ニューラルネットワーク学習システムがM個の個別学習データ(ここで、Mは2以上の自然数である)を含む学習データセットを生成して学習する発明が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工ニューラルネットワークを学習する方法であって、
ニューラルネットワーク学習システムが、M個の個別学習データ(ここで、Mは2以上の自然数である)を含む学習データセットを生成するステップと、
前記ニューラルネットワーク学習システムが、前記学習データセットに基づいて前記人工ニューラルネットワークを学習するステップと、
を含み、
前記M個の個別学習データを含む学習データセットを生成するステップは、1≦m≦Mである全てのmに対して、前記学習データセットに含まれる第mの学習データを生成するステップを含み、
前記第mの学習データを生成するステップは、
第mの原本病理画像を取得するステップ(ここで、前記第mの原本病理画像は、所定の抽出対象染色剤、及び前記抽出対象染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した病理画像である)と、
前記第mの原本病理画像から前記抽出対象染色剤によって染色された部分を抽出して、前記第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成するステップと、
前記第mの学習用病理画像に基づいて前記第mの学習データを生成するステップと、を含む、人工ニューラルネットワークの学習方法。
【請求項2】
前記抽出対象染色剤は、ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色剤であることを特徴とする、請求項1に記載の人工ニューラルネットワークの学習方法。
【請求項3】
前記第1の原本病理画像から前記第Mの原本病理画像の一部、及び前記第1の原本病理画像から前記第Mの原本病理画像の他の一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であることを特徴とする、請求項1に記載の人工ニューラルネットワークの学習方法。
【請求項4】
前記第mの原本病理画像から前記抽出対象染色剤によって染色された部分を抽出して、前記第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成するステップは、
前記第mの原本病理画像を表現する色空間における各チャネルの信号強度を光学密度に変換するステップと、
前記光学密度を所定の相関式によって染色強度に変換するステップと、を含む、請求項1に記載の人工ニューラルネットワークの学習方法。
【請求項5】
前記第mの原本病理画像には、所定の疾患による病変領域がアノテーションされており、
前記第mの学習用病理画像に基づいて前記第mの学習データを生成するステップは、
前記第mの原本病理画像にアノテーションされている病変領域を前記第mの学習用病理画像にアノテーションして前記第mの学習データを生成するステップを含む、請求項1に記載の人工ニューラルネットワークの学習方法。
【請求項6】
請求項1に記載の人工ニューラルネットワークの学習方法によって学習された人工ニューラルネットワークを介して所定の判断対象病理検体に対する判断結果を提供する方法であって、
コンピューティングシステムが、前記抽出対象染色剤、及び前記抽出対象染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した判断対象病理画像を取得するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記判断対象病理画像から前記抽出対象染色剤によって染色された部分を抽出して、前記判断対象病理画像に対応する抽出画像を生成するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記人工ニューラルネットワークが前記抽出画像に基づいて判断した前記判断対象病理検体に対する判断結果を出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記判断対象病理画像、及び前記第1の原本病理画像から前記第Mの原本病理画像のうちの少なくとも一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
データ処理装置に設けられ、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法を行うための媒体に記録された、コンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法を行うためのコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
人工ニューラルネットワーク学習システムであって、
プロセッサと、
コンピュータプログラムを記憶するメモリと、
を含み、
前記コンピュータプログラムは、前記プロセッサによって実行される場合、前記 人工ニューラルネットワーク学習システムに人工ニューラルネットワークを学習する方法を実行させ、
前記人工ニューラルネットワークの学習方法は、
前記ニューラルネットワーク学習システムが、M個の個別学習データ(ここで、Mは2以上の自然数である)を含む学習データセットを生成するステップと、
前記ニューラルネットワーク学習システムが、前記学習データセットに基づいて前記人工ニューラルネットワークを学習するステップと、を含み、
前記M個の個別学習データを含む学習データセットを生成するステップは、1≦m≦Mである全てのmに対して、前記学習データセットに含まれる第mの学習データを生成するステップを含み、
前記第mの学習データを生成するステップは、
第mの原本病理画像を取得するステップ(ここで、前記第mの原本病理画像は、所定の抽出対象染色剤、及び前記抽出対象染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した病理画像である)と、
前記第mの原本病理画像から前記抽出対象染色剤によって染色された部分を抽出して、前記第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成するステップと、
前記第mの学習用病理画像に基づいて前記第mの学習データを生成するステップと、を含む、人工ニューラルネットワーク学習システム。
【請求項11】
前記抽出対象染色剤は、ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色剤であることを特徴とする、請求項10に記載の人工ニューラルネットワーク学習システム。
【請求項12】
前記第1の原本病理画像から前記第Mの原本病理画像の一部、及び前記第1の原本病理画像から前記第Mの原本病理画像の他の一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であることを特徴とする、請求項10に記載の人工ニューラルネットワーク学習システム。
【請求項13】
前記第mの原本病理画像には、所定の疾患による病変領域がアノテーションされており、
前記第mの原本病理画像に基づいて前記第mの学習データを生成するステップは、
前記第mの原本病理画像にアノテーションされている病変領域を前記第mの学習用病理画像にアノテーションして前記第mの学習データを生成するステップを含む、請求項10に記載の人工ニューラルネットワーク学習システム。
【請求項14】
前記第mの原本病理画像から前記抽出対象染色剤によって染色された部分を抽出して、前記第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成するステップは、
前記第mの原本病理画像を表現する色空間における各チャネルの信号強度を光学密度に変換するステップと、
前記光学密度を所定の相関式によって染色強度に変換するステップと、を含む、請求項10に記載の人工ニューラルネットワーク学習システム。
【請求項15】
病理検体に対する判断結果提供システムであって、
プロセッサと、
コンピュータプログラムを記憶するメモリと、
を含み、
前記コンピュータプログラムは、前記プロセッサによって実行される場合、前記判断結果提供システムに請求項1に記載の人工ニューラルネットワークの学習方法によって学習された人工ニューラルネットワークを介して病理検体に対する判断結果を提供する方法を実行させ、
前記判断結果を提供する方法は、
前記判断結果提供システムが、前記抽出対象染色剤、及び前記抽出対象染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した判断対象病理画像を取得するステップと、
前記判断結果提供システムが、前記判断対象病理画像から前記抽出対象染色剤によって染色された部分を抽出して、前記判断対象病理画像に対応する抽出画像を生成するステップと、
前記判断結果提供システムが、前記人工ニューラルネットワークが前記抽出画像に基づいて判断した前記判断対象病理検体に対する判断結果を出力するステップと、を含む、病理検体に対する判断結果提供システム。
【請求項16】
前記判断対象画像、及び前記第1の原本病理画像から前記第Mの原本病理画像の一部のうちの少なくとも一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であることを特徴とする、請求項15に記載の判断結果提供システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理検体に対する判断結果を提供する人工ニューラルネットワークの学習方法、及びこれを行うコンピューティングシステムに関する。より詳しくは、様々な種類の染色剤が混合した混合染色剤で染色された病理スライドから、特定の染色剤で染色された部分のみを抽出して人工ニューラルネットワークを学習させることにより、様々な染色技術によって染色された病理画像に対する判断を行う方法、及びこれを行うコンピューティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代人の平均寿命が増加することによって、癌などの重症疾患の発生率も共に増加する傾向であり、癌と診断された患者の予後予測や治療方法を決定するために特定のバイオマーカーの発現有無を確認したり、腫瘍微小環境(tumor microenvironment;以下、TME)の状態を分析したりするなど病理診断方法が高度化されている。
【0003】
ヘマトキシリン(Hematoxylin)-エオシン(Eosin)染色(以下、H&E染色)方法は、細胞核部分及び細胞質基質stroma)領域をヘマトキシリンとエオシンがそれぞれ紫色及び桃色で染色する方法であって、光学顕微鏡を介して病理専門医が検体の細胞及び組織の形態学的特徴を把握する最も基本的な病理診断に用いられる方法である。
【0004】
免疫組織化学(immunohistochemistry;以下、IHC)染色方法は、組織内の特定のタンパク質など、バイオマーカーの発現レベルを測定する用途に多く用いられる方法であり、抗原-抗体結合に基づいて組織内に存在するバイオマーカーを褐色ジアミノベンジジン(Diaminobenzidine;以下、DAB)染色薬で染色することによりその発現レベルを確認でき、このとき、ヘマトキシリン染色が対比染色(counterstain)として用いられる。
【0005】
複数のバイオマーカーを同時に染色して発現レベルを測定すると同時に、それらの間の位置関係を分析するカクテル染色又はマルチプレックスIHC染色方法も実用化段階にあり、この場合には、褐色以外に赤色や青色などの様々な色の染色が用いられ、ヘマトキシリン染色も従来通り対比染色に用いられる。
【0006】
ほとんどの場合、このようなバイオマーカーの発現は、癌の病変に限定して測定することが好ましい。例えば、細胞分裂過程で一時的に発現するKi-67タンパク質を用いて癌細胞の増殖の程度を示すKi-67の場合、癌細胞のみを対象として測定することが適切である。正常細胞も細胞分裂過程でKi-67が発現することがあるため、正常細胞領域は、このようなバイオマーカーの発現レベルを測定する際に除外する必要がある。バイオマーカー間の位置関係を分析する場合でも、癌細胞を中心とする位置関係分析は有意であり、したがって、癌病変と正常細胞領域との区分は病理診断において非常に重要である。
【0007】
一方、画像分析ディープラーニング技術が発展することによって、医療領域の様々な業務でディープラーニング技術を適用し、商用化しようとする試みが進んでいる。病理診断分野においても、病理専門医が光学顕微鏡を介して染色された組織スライドを高倍率で検鏡及び読み取って診断を下す従来の方法の代わりに、組織スライドをデジタルスライドスキャナを介して高解像度のデジタル画像に変換した後、コンピュータモニターを介して病理専門医が画像を判読する方式が徐々に実用化されており、さらにディープラーニング技術によって画像を分析した結果を病理専門医が参照し、より迅速かつ正確な診断を下せるようにする製品が登場している。
【0008】
スライド全体をスキャンして生成された画像である全体スライド画像(whole-slide image;以下、WSI)に対して画像分析ディープラーニング技術を適用して癌を診断し、重症度を分析する方法は既に商用レベルに到逹し、前立腺癌などの一部癌腫に対しては国内外で医療機器として認可された製品も存在する。このような製品は全て、H&E染色されたスライドから生成されたWSIを分析して癌病変の有無を判別したり、検出された病変の位置を視覚化したりするなどの機能を果たす。
【0009】
バイオマーカーの発現レベルを自動で測定するなどの高度化された自動病理診断システムでは、H&E染色以外の様々な種類の染色スライドから生成されたWSIを分析してバイオマーカー発現を検出及び計測するなどの機能を果たす必要がある。このとき、画像から癌病変を検出して位置を特定することが重要であるため、このような機能を果たす自動化された方法の開発が必要である。
【0010】
H&E染色のWSIを画像分析ディープラーニング技術により分析して病変を検出する方法を開発する場合、癌病変に対する専門知識を保有した病理専門医がディープラーニングの技術開発に用いられるH&E染色のWSIをレビューし、病変領域に対するアノテーションを行うことになる。このようなデータ構築過程は、他の種類の染色によるWSIを分析して病変を検出する方法を開発する場合にも同様に必要である。すなわち、目標とする-H&E染色でなく-他の種類の染色によるWSIを病理専門医がレビューし、病変領域に対するアノテーションを行うことによって、該当の染色によるWSIから病変を検出する方法を開発することができる。
【0011】
様々なIHC染色又はカクテル染色スライドから生成されたWSIは、染色方式によって色相が異なることがあるため、特定の染色によるWSIから生成された癌病変検出ディープラーニング技術を他の種類の染色によるWSIに適用した際に、検出性能が大きく低下する恐れがある。一方、IHC染色方法によって染色しようとする対象は、疾患に対する研究が進むことによっていくらでも新たに生じることがあり、したがって、現存する全てのIHC染色及びカクテル染色画像を技術開発に利用することは現実的ではない。すなわち、異なる染色によるWSIごとに病理専門医が病変領域に対するアノテーションを行ってデータを構築しなければならない現在のディープラーニングの技術方式では、高度化された自動病理診断システムに必要な病変検出方法を開発しにくいという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする技術的な課題は、様々な方式の染色で染色して製作した病理スライドから生成された病理画像を分析することにより、癌などの疾患による病変を検出できる汎用的な方法及びシステムを提供することである。
【0013】
また、特定の対象をDAB及び他の色で染色し、細胞核をヘマトキシリンで染色して製作した病理スライドから生成された病理画像を対象の種類に関わらず分析することにより、癌による病変を検出する汎用性のある病変検出方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、人工ニューラルネットワークを学習させる方法であって、ニューラルネットワーク学習システムが、M個の個別学習データ(ここで、Mは2以上の自然数である)を含むデータセットを生成するステップと、ニューラルネットワーク学習システムが、データセットに含まれたM個の個別学習データのそれぞれを人工ニューラルネットワークに入力して人工ニューラルネットワークを学習させるステップと、を含み、M個の個別学習データを含むデータセットを生成するステップは、1≦m≦Mである全てのmに対して、データセットに含まれる第mの学習データを生成するステップを含み、第mの学習データを生成するステップは、第mの原本病理画像を取得するステップ(ここで、第mの原本病理画像は、所定の染色剤、及びその染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した病理画像である)と、第mの原本病理画像からその染色剤によって染色された部分を抽出するための色の逆畳み込み(color deconvolution)を行って、第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成するステップと、第mの原本病理画像に基づいて前記第mの学習用病理画像を生成するステップと、を含む、人工ニューラルネットワークの学習方法を提供する。
【0015】
一実施形態において、染色剤は、ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色剤であってもよい。
【0016】
一実施形態において、第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像の一部、及び第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像の他の一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であってもよい。
【0017】
一実施形態において、第mの原本病理画像から染色剤によって染色された部分を抽出して、第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成するステップは、第mの原本病理画像を表現する色空間における各チャネルの信号強度を光学密度に変換するステップと、光学密度を所定の相関式によって染色強度に変換するステップと、を含んでもよい。
【0018】
本発明の他の一態様によれば、本発明は、上述した人工ニューラルネットワークの学習方法によって学習した人工ニューラルネットワークを介して所定の病理検体に対する判断結果を提供する方法であって、コンピューティングシステムが、染色剤、及びその染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した病理画像を取得するステップと、コンピューティングシステムが、病理画像から染色剤によって染色された部分を抽出して、病理画像に対応する抽出画像を生成するステップと、コンピューティングシステムが、人工ニューラルネットワークが抽出画像に基づいて判断した病理検体に対する判断結果を出力するステップと、を含む方法を提供する。
【0019】
一実施形態において、病理画像、及記第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像のうちの少なくとも一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であってもよい。
【0020】
一実施形態において、第mの原本病理画像には、所定の疾患による病変領域がアノテーションされており、第mの原本病理画像に基づいて第mの学習用病理画像を生成するステップは、第mの原本病理画像にアノテーションされている病変領域を第mの学習用病理画像にアノテーションして第mの学習データを生成するステップを含んでもよい。
【0021】
本発明の他の一態様によれば、データ処理装置に設けられ、上述した方法を行うための媒体に記録されたコンピュータプログラムが提供される。
【0022】
本発明の他の一態様によれば、上述した方法を行うためのコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0023】
本発明の他の一態様によれば、本システムは、人工ニューラルネットワーク学習システムであって、プロセッサと、コンピュータプログラムを記憶するメモリと、を含み、コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行される場合、コンピューティングシステムに人工ニューラルネットワークを学習する方法を実行させ、人工ニューラルネットワークの学習方法は、ニューラルネットワーク学習システムが、M個の個別学習データ(ここで、Mは2以上の自然数である)を含むデータセットを生成するステップと、ニューラルネットワーク学習システムが、データセットに含まれたM個の個別学習データのそれぞれを人工ニューラルネットワークの入力レイヤに入力して人工ニューラルネットワークを学習するステップと、を含み、M個の個別学習データを含む学習データセットを生成するステップは、1≦m≦Mである全てのmに対して、データセットに含まれる第mの学習データを生成するステップを含み、第mの学習データを生成するステップは、第mの原本病理画像を取得するステップ(ここで、第mの原本病理画像は、所定の染色剤、及びその染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した病理画像であり、第mの原本病理画像には、所定の疾患による病変領域がアノテーションされている)と、第mの原本病理画像から染色剤によって染色された部分を抽出するための色の逆畳み込み(color deconvolution)を行うことで第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成するステップと、第mの原本病理画像にアノテーションされている病変領域を前記第mの学習用病理画像にアノテーションして前記第mの学習データを生成するステップと、を含む人工ニューラルネットワーク学習システムが提供する。
【0024】
一実施形態において、染色剤は、ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色剤であってもよい。
【0025】
一実施形態において、第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像の一部、及び第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像の他の一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であってもよい。
【0026】
一実施形態において、第mの原本病理画像から染色剤によって染色された部分を抽出して、第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成するステップは、第mの原本病理画像を表現する色空間における各チャネルの信号強度を光学密度に変換するステップと、光学密度を所定の相関式によって染色強度に変換するステップと、を含んでもよい。
【0027】
本発明の他の一態様によれば、病理検体に対する判断結果を提供するシステムであって、プロセッサと、コンピュータプログラムを記憶するメモリと、を含み、コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行される場合、判断結果を提供するシステムに、第1項に記載の人工ニューラルネットワークの学習方法によって学習した人工ニューラルネットワークを介して病理検体に対する判断結果を提供する方法を実行させ、判断結果を提供する方法は、判断結果を提供するシステムが、染色剤、及びその染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した病理画像を取得するステップと、判断結果を提供するシステムが、病理画像から染色剤によって染色された部分を抽出して、病理画像に対応する抽出画像を生成するステップと、判断結果を提供するシステムが、人工ニューラルネットワークが抽出画像に基づいて判断した病理検体に対する判断結果を出力するステップと、を含む病理検体に対する判断結果提供システムが提供される。
【0028】
一実施形態において、病理画像、及び第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像のうちの少なくとも一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の技術的思想によると、互いに異なる方法によって染色された画像を用いて病変又は疾患に対する判断が可能な人工ニューラルネットワークに効果的に学習させることができるようになるという効果がある。すなわち、学習データとして用いられる複数の画像が同一の方法によって染色された病理画像でなくても、上述のニューラルネットワーク学習方法によって1つの人工ニューラルネットワークを学習させる学習データとして用いることができるようになるという効果がある。
【0030】
一方、従来の人工ニューラルネットワークを用いた病理画像に対する判断技術の場合には、特定の方法で染色された病理画像を対象として学習及び判断が行われるが、本発明の技術的思想によれば、互いに異なる染色方法で染色された画像を通じて学習及び判断が可能となるという効果がある。例えば、特定の対象をDAB又は他の色で染色し、細胞核をヘマトキシリンで染色して製作されたスライドから生成された病理画像を対象の種類に関わらず分析することにより癌病変を検出できるようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の詳細な説明で引用される図面をより十分に理解するために、各図面の簡単な説明を提供する。
【0032】
図1】本発明の技術的思想による人工ニューラルネットワークの学習方法及び病理検体に対する判断結果提供方法が行われる環境を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るニューラルネットワーク学習方法を説明するためのフローチャートである。
図3a】原本病理画像の一例を示す図である。
図3b図3aの病理画像をアノテーションした病変領域を示す図である。
図3c図3aに示された原本病理画像から、抽出対象染色剤によって染色された部分を抽出した画像を示す例である。
図3d図3bに示されたようなアノテーション情報がタグ付けされている原本病理画像から生成された学習データを示している。
図4】本発明の一実施形態によって原本病理画像に対応する学習用画像を生成する過程を示す例である。
図5】本発明の一実施形態に係る病理検体に対する判断結果を提供する方法の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る人工ニューラルネットワーク学習システムの概略的な構成を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る判断結果を提供するシステムの概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は様々な変換を加えることができ、様々な実施形態を有することができるため、特定の実施形態を図面に例示し、詳しく説明する。しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物及び代替物を含むものとして理解されたい。本発明を説明において、関連する公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にすると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0034】
第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用することができるが、上記構成要素は上記用語によって限定されるべきではない。第1、第2などの用語は特別な順序を示すものではなく、ある構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0035】
本出願で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図するものではない。単数の表現は、文脈上明らかに他に意味がない限り、複数の表現を含む。
【0036】
本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解されたい。
【0037】
また、本明細書においては、ある構成要素が他の構成要素にデータを「伝送」する場合には、構成要素は他の構成要素に直接データを伝送してもよく、少なくとも1つのまた他の構成要素を介してデータを他の構成要素に伝送してもよいことを意味する。逆に、ある構成要素が他の構成要素にデータを「直接伝送」する場合には、構成要素からその他の構成要素を介することなく他の構成要素にデータが伝送されることを意味する。
【0038】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施形態を中心に本発明を詳しく説明する。各図面に提示された同一の参照符号は同一の要素を示す。
【0039】
図1は、本発明の技術的思想による人工ニューラルネットワークの学習方法及び病理検体に対する判断結果提供方法が行われる環境を概略的に示す図である。
【0040】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る人工ニューラルネットワークの学習方法は、ニューラルネットワーク学習システム100によって行われ、本発明の一実施形態に係る病理検体に対する判断結果提供方法は、病理検体に対する判断結果提供システム200(以下、「判断結果提供システム」という)によって行われる。ニューラルネットワーク学習システム100は、病理検体に含まれた病変の検出、病理検体に対する診断情報の出力、又は予後情報及び/又は治療方法に対する反応情報を提供するための人工ニューラルネットワーク300を学習することができ、判断結果提供システム200は、学習された人工ニューラルネットワーク300を用いて対象検体に対する各種の判断(例えば、病変の検出、疾患の発現有無、予後、治療方法に対する判断など)を行うことができる。
【0041】
ニューラルネットワーク学習システム100及び/又は判断結果提供システム200は、本発明の技術的思想を実現するための演算能力を有するデータ処理装置であるコンピューティングシステムであってもよく、一般にネットワークを介してクライアントが接続可能なデータ処理装置であるサーバだけでなく、パーソナルコンピュータや携帯端末などのコンピュータ装置を含んでもよい。
【0042】
ニューラルネットワーク学習システム100及び/又は判断結果提供システム200は、いずれかの物理的装置で実現されてもよいが、必要に応じて複数の物理的装置が有機的に結合されることで、本発明の技術的思想によるニューラルネットワーク学習システム100及び/又は判断結果提供システム200を実現できることを、本発明の技術分野における一般的なな専門家であれば容易に推論することができるであろう。
【0043】
ニューラルネットワーク学習システム100は、複数の病理検体から生成された学習データに基づいてニューラルネットワーク300を学習することができる。病理検体は、人体の様々な臓器から採取した生検、及び手術によって切除された生体組織であってもよい。
【0044】
ニューラルネットワーク学習システム100は、病理検体のデジタル病理画像を用いて個別学習データを生成し、これをニューラルネットワーク300の入力レイヤに入力してニューラルネットワーク300を学習させることができる。
【0045】
病理画像は、病理検体のデジタルスライド画像、又はデジタルスライド画像の一部であってもよい。病理検体のスライドは、病理検体をスライスした一部であってもよい。病理検体のデジタルスライド画像は、病理検体をスライスしてガラススライドを製作した後、これを所定の混合染色剤で染色してデジタル化することで生成することができる。すなわち、病理画像は、病理検体をスライスしてスライドを製作し、所定の混合染色剤(染色試薬)で染色した病理スライド画像、又は染色した病理スライド画像を所定の大きさに分割した画像であってもよい。
【0046】
病理画像は、病理検体のスライドを複数の個別染色剤(染色試薬)が混合した混合染色剤で染色した病理画像であってもよい。病理画像は、全体スライド画像(Whole Slide Image)であってもよく、全体スライド画像の一部(例えば、全体スライド画像を一定の大きさに分割したパッチ画像)であってもよい。
【0047】
混合染色剤は、予め決定された抽出対象染色剤、及びその抽出対象染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した染色剤であってもよい。
【0048】
一実施形態において、抽出対象染色剤は、ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色剤(以下、「H-染色剤」という)であってもよく、以下では、染色剤がH-染色剤である場合を例として説明する。しかしながら、本発明の技術的思想がこれに限定されるものではなく、様々な種類の染色剤を用いてもよいことは言うまでもない。
【0049】
抽出対象染色剤がH-染色剤である場合、混合染色剤は、ヘマトキシリン-エオシン染色剤(H&E染色剤)、ヘマトキシリン染色が対比染色であるIHC染色方法のための混合染色剤、又はヘマトキシリン染色が対比染色であるDAB染色方法のための混合染色剤であってもよく、この他にもヘマトキシリン染色剤を含む各種のカクテル染色剤であってもよい。
【0050】
ニューラルネットワーク300は、所定の疾患に対して、疾患の発現有無、又は病変を含むかどうかに対する確率値を出力するように学習された人工ニューラルネットワークであってもよい。ニューラルネットワーク300は、入力レイヤを介して入力されたデータに基づいて対象検体に対する判断結果(例えば、疾患の発現可能性)を示す数値、すなわち確率値を出力することができる。
【0051】
一実施形態において、人工ニューラルネットワーク300は、パッチレベルのクラッシュフィケーションニューラルネットワークであってもよい。パッチレベルのクラッシュフィケーションニューラルネットワークは、パッチ単位の画像を入力され、該当パッチを分類するための値を出力するニューラルネットワークであってもよい。
【0052】
他の一実施形態において、人工ニューラルネットワーク300は、ピクセルレベルのクラッシュフィケーションニューラルネットワークであってもよい。ピクセルレベルのクラッシュフィケーションニューラルネットワークは、画像をピクセルごとに分類するための値を出力するニューラルネットワークであってもよい。
【0053】
本明細書において、人工ニューラルネットワークは、人間のニューロンの動作原理に基づいて人工的に構築したニューラルネットワークであり、多層パーセプトロンモデルを含み、人工ニューラルネットワークを定義する一連の設計事項を表現する情報の集合を意味し得る。
【0054】
一実施形態において、人工ニューラルネットワーク300は、畳み込みニューラルネットワークであってもよく、又は畳み込みニューラルネットワークを含んでもよい。
【0055】
一方、学習されたニューラルネットワーク300は、判断結果提供システム200に記憶されてもよく、判断結果提供システム200は、学習された人工ニューラルネットワークを用いて所定の診断対象検体に対する判断が可能である。
【0056】
図1に示されたように、ニューラルネットワーク学習システム100及び/又は判断結果提供システム200は、所定の親システム10のサブシステムの形態で実現されてもよい。親システム10はサーバであってもよい。サーバ10は、本発明の技術的思想を実現するための演算能力を有するデータ処理装置を意味し、一般にネットワークを介してクライアントが接続可能なデータ処理装置だけでなく、パーソナルコンピュータ、携帯端末などのように特定のサービスを行うことができるあらゆる装置をサーバとして定義できることを、本発明の技術分野における平均的な専門家であれば容易に推論することができるであろう。
【0057】
或いは、実施形態によって、ニューラルネットワーク学習システム100及び判断結果提供システム200は、互いに分離した形態で実現されてもよい。
【0058】
図2は、本発明の一実施形態に係るニューラルネットワーク学習方法を説明するためのフローチャートである。
【0059】
図2を参照すると、ニューラルネットワーク学習システム100は、M個の個別学習データ(ここで、Mは2以上の自然数である)を含む学習データセットを生成することができる。このために、ニューラルネットワーク学習システム100は、1≦m≦Mである全てのmに対して、データセットに含まれる第mの学習データを生成することができる(S100)。
【0060】
学習データセットに含まれる第mの学習データを生成するために、ニューラルネットワーク学習システム100は、第mの原本病理画像(ここで、Nは2以上の自然数である)を取得することができる(S110)。
【0061】
実施形態によって、ニューラルネットワーク学習システム100は、外部の端末から所定の病理検体に対応する第mの原本病理画像を受信することができ、病理検体に対応する第mの原本病理画像を予め記憶しているメモリ装置から取得することもできる。
【0062】
第mの病理画像は、所定の抽出対象染色剤(例えば、ヘマトキシリン染色剤)及びその抽出対象染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した病理画像であってもよい。
【0063】
第mの病理画像には、所定の情報がラベル付けされていてもよい。ラベル付けされた情報は、人工ニューラルネットワーク300の目的によって異なってもよい。例えば、第mの病理画像にラベル付けされた情報は疾患の有無であってもよい。
【0064】
或いは、第mの原本病理画像には、所定の疾患による病変領域がアノテーションされていてもよい。言い換えれば、第mの原本病理画像には、第mの原本病理画像に含まれた病変の領域のアノテーション情報がタグ付けされていてもよい。
【0065】
図3aは、原本病理画像の一例を示す図であり、図3bは、図3aの病理画像をアノテーションした病変領域を示す図である。図3bの例において、実線で表示された領域がアノテーションされた病変領域を示す。
【0066】
また、図2を参照すると、ニューラルネットワーク学習システム100は、第mの原本病理画像から染色剤(例えば、ヘマトキシリン染色剤)によって染色された部分を抽出して第mの学習用病理画像を生成することができる(S120)。
【0067】
一実施形態において、ニューラルネットワーク学習システム100は、色相の逆畳み込み(color deconvolution)を行うことで、第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成することができる。図4は、本発明の一実施形態によって、第mの原本病理画像に対応する第mの学習用病理画像を生成する過程を示す例である。
【0068】
図4を参照すると、ニューラルネットワーク学習システム100は、第mの原本病理画像を表現する色空間における各チャネルの信号強度を光学密度に変換することができる(S121)。その後、ニューラルネットワーク学習システム100は、光学密度を所定の相関式によって染色強度に変換することができる(S122)。
【0069】
一方、図3cは、図3aに示された原本病理画像から、抽出対象染色剤(例えば、ヘマトキシリン染色剤)によって染色された部分を抽出した画像を示す例である。
【0070】
また、図2を参照すると、ニューラルネットワーク学習システム100は、第mの学習用病理画像に基づいて学習データセットに含まれる第mの学習データを生成することができる(S130)。具体的には、ニューラルネットワーク学習システム100は、第mの原本画像にラベル付けされた情報を第mの学習用病理画像にタグ付けして第mの学習データを生成することができる。
【0071】
例えば、第mの原本画像には、図3bに示されたように、病変領域がアノテーションされていてもよい。このような場合、図3cに示されたように生成された第mの学習用病理画像に第mの原本画像のアノテーション情報がタグ付けされていてもよく、その例が図3dに示されている。すなわち、図3dは、図3bに示されたようなアノテーション情報がタグ付けされている原本病理画像から生成された学習データを示している。
【0072】
一方、第mの学習データに対応する病理検体に対する診断情報、予後情報、及び/又は特定の治療方法に対する反応情報が存在する場合、ニューラルネットワーク学習システム100は、これを第mの学習データのラベルに設定することができる。
【0073】
上記のような方法によってM個の個別学習データを含む学習データセットが生成されると、ニューラルネットワーク学習システム100は、生成された学習データセットをニューラルネットワーク300の入力レイヤに入力してニューラルネットワーク300を学習させることができる(図2のS140)。正しい情報がタグ付けされている学習データを人工ニューラルネットワーク300に入力し、勾配下降法及び逆伝播法などの方法によって人工ニューラルネットワーク300を学習させるディープラーニング技法は広く知られているので詳細な説明は省略する。
【0074】
一方、実施形態によって、学習データセットを構成するために用いられるM個の病理画像は、2以上の互いに異なる混合染色剤で染色されたものであってもよい。言い換えれば、第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像の一部、及び第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像の他の一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であってもよい。もちろん、M個の病理画像を染色するために用いられた2以上の混合染色剤は、共通の抽出対象染色剤を含んでもよい。例えば、Mが150である場合、第1の病理画像から第50の病理画像は、H&E染色方法によって染色された病理画像であり、第51の病理画像から第100の病理画像は、IHC染色方法(対比染色はH-染色である)によって染色された病理画像であり、第101の病理画像から第150の病理画像は、DAB染色方法(対比染色はH-染色である)によって染色された病理画像であってもよい。もちろん、実施形態によっては、M個の病理画像は、4以上の互いに異なる混合染色剤によって染色された病理画像であってもよい。
【0075】
前述したように、このような本発明の技術的思想によるニューラルネットワーク学習方法は、原本病理画像から、抽出対象染色剤によって染色された部分のみを抽出し、これを人工ニューラルネットワークの学習データとして用いることになる。よって、本発明の技術的思想によるニューラルネットワーク学習方法によって、抽出対象染色剤を用いる様々な染色方法によって製作された病理画像を用いた学習を効果的に行えるという効果がある。言い換えれば、本発明の技術的思想によるニューラルネットワーク学習方法は、互いに異なる方法によって染色された画像を用いて病変又は疾患に対する判断が可能な人工ニューラルネットワークを効果的に学習できるようになるという効果がある。すなわち、学習データとして用いられる複数の画像が同一の方法によって染色された病理画像でなくても、ニューラルネットワーク学習方法によって1つの人工ニューラルネットワーク(例えば、300)を学習できる学習データとして用いることができるようになるという効果がある。
【0076】
図5は、本発明の一実施形態に係る病理検体に対する判断結果の提供方法の一例を示すフローチャートである。図5による病理検体に対する判断結果の提供方法は、判断結果提供システム200によって行われ、判断結果提供システム200は、ニューラルネットワーク学習システム100によって学習された人工ニューラルネットワーク300が記憶されていてもよい。
【0077】
図5を参照すると、判断結果提供システム200は、所定の判断対象病理検体の判断対象病理画像を取得することができる(S210)。このとき、判断対象病理画像は、判断対象病理検体のスライドを抽出対象染色剤(例えば、ヘマトキシリン染色剤)及びその抽出対象染色剤(例えば、ヘマトキシリン染色剤)を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した病理スライド画像であってもよい。
【0078】
判断結果提供システム200は、判断対象病理画像から、抽出対象染色剤によって染色された部分を抽出して、判断対象病理画像に対応する抽出画像を生成することができる(S220)。判断対象検体の病理画像に対応する入力データを生成する過程は、前述した過程と非常に類似するので、別途の説明は省略する。
【0079】
判断結果提供システム200は、人工ニューラルネットワーク300に入力データを入力し、人工ニューラルネットワークが出力した結果に基づいて病理検体に対する判断結果を出力することができる(S230)。
【0080】
一方、学習データを生成するために用いられた原本病理画像の少なくとも一部を染色するために用いられた染色方法と、判断対象病理画像を染色するために用いられた染色方法とは異なってもよい。すなわち、判断対象画像、及び人工ニューラルネットワーク300の学習に用いられた画像(第1の原本病理画像から第Mの原本病理画像)の一部のうちの少なくとも一部は、互いに異なる混合染色剤で染色した病理画像であってもよい。例えば、人工ニューラルネットワーク300の学習に用いられた画像の全部又は少なくとも一部は、H&E染色方法で染色された病理画像であるが、判断対象画像は、IHC方法によって染色された画像であってもよい。
【0081】
或いは、判断対象画像の染色に用いられた染色方法は、人工ニューラルネットワーク300の学習に用いられた画像のうちいずれを染色する方法とも異なってもよい。例えば、判断対象画像の染色に用いられた染色方法はDAB方法であるが、人工ニューラルネットワーク300の学習に用いられた画像は、いずれもH&E染色方法によって染色された画像であってもよい。
【0082】
従来の人工ニューラルネットワークを用いた病理画像に対する判断技術の場合、特定の方法で染色された病理画像を対象として学習及び判断が行われるが、本発明の技術的思想によれば、互いに異なる染色方法で染色された画像を通じて学習及び判断することが可能となるという効果がある。例えば、特定の対象をDAB又は他の色で染色し、細胞核をヘマトキシリンで染色して製作されたスライドから生成された病理画像を対象の種類に関わらず分析することにより癌病変を検出できるようになるという効果がある。
【0083】
図6は、本発明の一実施形態に係る人工ニューラルネットワーク学習システム100の概略的な構成を示す図であり、図7は、発明の一実施形態に係る判断結果提供システム200の概略的な構成を示す図である。
【0084】
人工ニューラルネットワーク学習システム100及び判断結果提供システム200は、本発明の技術的思想を実現するために必要なハードウェアリソース(resource)及び/又はソフトウェアを備えた論理的な構成を意味し、必ずしも1つの物理的な構成要素を意味したり、1つの装置を意味するわけではない。すなわち、人工ニューラルネットワーク学習システム100及び判断結果提供システム200は、本発明の技術的思想を実現するために備えられるハードウェア及び/又はソフトウェアの論理的な結合を意味し、必要に応じては、互いに離隔した装置に設けられ、それぞれの機能を果たすことで、本発明の技術的思想を実現するための論理的な構成の集合で実現されてもよい。また、人工ニューラルネットワーク学習システム100及び判断結果提供システム200は、本発明の技術的思想を実現するためのそれぞれの機能又は役割ごとに実現される構成の集合を意味してもよい。人工ニューラルネットワーク学習システム100及び判断結果提供システム200は、互いに異なる物理的装置に位置してもよく、同一の物理的装置に位置してもよい。また、実現例によっては、人工ニューラルネットワーク学習システム100及び判断結果提供システム200の構成要素それぞれを構成するソフトウェア及び/又はハードウェアも、互いに異なる物理的装置に位置し、互いに異なる物理的装置に位置する構成が互いに有機的に結合されることでそれぞれのモジュールを実現してもよい。
【0085】
また、本明細書におけるモジュールとは、本発明の技術的思想を行うためのハードウェア、及びハードウェアを駆動するためのソフトウェアの機能的、構造的結合を意味し得る。例えば、モジュールは、所定のコード、及び所定のコードが行われるためのハードウェアリソース(resource)の論理的な単位を意味し、必ずしも物理的に連結されたコードを意味したり、一種類のハードウェアを意味するわけではないことは、本発明の技術分野における平均的な専門家であれば容易に推論することができる。
【0086】
図6を参照すると、人工ニューラルネットワーク学習システム100は、記憶モジュール110、取得モジュール120、生成モジュール130、及び学習モジュール140を含んでもよい。本発明の実施形態によっては、上述した構成要素の一部の構成要素は、必ずしも本発明の実現に必須の構成要素に該当しないこともあり、また実施形態によって、人工ニューラルネットワーク学習システム100は、これよりも多くの構成要素を含んでもよいことは言うまでもない。例えば、人工ニューラルネットワーク学習システム100は、外部装置と通信するための通信モジュール(図示せず)、人工ニューラルネットワーク学習システム100の構成要素及びリソースを制御するための制御モジュール(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0087】
記憶モジュール110は、学習した人工ニューラルネットワーク40を記憶することができる。
【0088】
取得モジュール120は、所定の抽出対象染色剤、及び抽出対象染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色したM個の原本病理画像を取得することができる。
【0089】
生成モジュール130は、それぞれの原本病理画像に基づいて個別学習データを生成することができ、複数の個別学習データを含む学習データセットを構成することができる。
【0090】
学習モジュール140は、学習データセットに基づいて人工ニューラルネットワーク300を学習することができる。
【0091】
図7を参照すると、判断結果提供システム200は、記憶モジュール210、取得モジュール220、生成モジュール230、及び判断モジュール240を含んでもよい。本発明の実施形態によっては、上述した構成要素の一部の構成要素は、必ずしも本発明の実現に必須の構成要素に該当しないこともあり、また、実施形態によって、判断結果提供システム200は、これよりも多くの構成要素を含んでもよいことは言うまでもない。例えば、判断結果提供システム200は、3軸振動センサー20と通信するための通信モジュール(図示せず)、判断結果提供システム200の構成要素及びリソースを制御するための制御モジュール(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0092】
記憶モジュール210は、学習した人工ニューラルネットワーク40を記憶することができる。
【0093】
取得モジュール220は、所定の病理検体を抽出対象染色剤を除いた1つ以上の染色剤を混合した混合染色剤で染色した判断対象病理画像を取得することができる。
【0094】
生成モジュール230は、判断対象病理画像に基づいて入力データを生成することができる。
【0095】
判断モジュール240は、入力データを人工ニューラルネットワーク300に入力し、人工ニューラルネットワーク300から出力される予測値に基づいて判断対象検体に対する判断を行うことができる。
【0096】
一方、実現例によって、人工ニューラルネットワーク学習システム100及び判断結果提供システム200は、プロセッサ、及びプロセッサによって実行されるプログラムを記憶するメモリを含んでもよい。プロセッサは、シングルコアCPU又はマルチコアCPUを含んでもよい。メモリは、高速ランダムアクセスメモリを含んでもよく、1つ以上の磁気ディスク記憶装置、フラッシュメモリ装置、又はその他の非揮発性固体状態メモリ装置のような非揮発性メモリを含んでもよい。プロセッサ及びその他の構成要素によるメモリへのアクセスは、メモリコントローラーによって制御することができる。
【0097】
一方、本発明の実施形態に係る方法は、コンピュータが読み取り可能なプログラム命令形態で実現され、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記憶されてもよく、本発明の実施形態に係る制御プログラム及び対象プログラムもコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記憶されてもよい。コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、コンピュータシステムによって読み取り可能なデータが記憶されるあらゆる種類の記録装置を含む。
【0098】
記録媒体に記録されるプログラム命令は、本発明のために特別に設計及び構成されたものなどや、ソフトウェア分野の当業者に公知となって使用可能なものであってもよい。
【0099】
コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープなどの磁気媒体(magnetic media)、CD-ROM、DVDなどの光学記録媒体(optical media)、フロプティカルディスク(floptical disk)などの磁気-光媒体(magneto-optical media)、及びROM、RAM、フラッシュメモリなどのプログラム命令を記憶して行うように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、ネットワークで接続されたコンピュータシステムに分散され、分散方式でコンピュータが読み取り可能なコードが記憶されて実行され得る。
【0100】
プログラム命令の例としては、コンパイラによって作成されるような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを用いて電子的に情報を処理する装置、例えば、コンピュータによって実行され得る高級言語コードを含む。
【0101】
上述したハードウェア装置は、本発明の動作を行うために、1つ以上のソフトウェアモジュールとして作動するように構成することができ、その逆も同様である。
【0102】
上述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができるであろう。したがって、上記で説明した実施形態は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。例えば、単一の形態で説明されている各構成要素は分散して実施することができ、同様に分散されたものと説明されている構成要素も結合された形態で実施することができる。
【0103】
本発明の範囲は、上記詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、その均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、病理検体に対する判断結果を提供する人工ニューラルネットワークの学習方法、及びこれを行うコンピューティングシステムに用いることができる。

図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】