(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリペプチドモジュレーター
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20241219BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241219BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241219BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241219BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241219BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241219BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20241219BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20241219BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241219BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241219BHJP
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A61P 9/10 20060101ALI20241219BHJP
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A61P 1/18 20060101ALI20241219BHJP
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A61P 7/06 20060101ALI20241219BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20241219BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20241219BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241219BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241219BHJP
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A61P 17/06 20060101ALI20241219BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20241219BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20241219BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241219BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
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A61K 47/68 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20241219BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20241219BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20241219BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
A61K45/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P37/06
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A61P17/14
A61P3/00
A61P29/00
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A61P15/00
A61P9/10
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A61P17/04
A61P1/18
A61P25/00
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A61P5/16
A61P7/06
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A61P1/02
A61P21/04
A61P25/02
A61P29/00 101
A61P1/16 101
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/08
A61P25/14
A61P1/04
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K38/17
A61K47/68
A61K47/60
A61K47/64
A61K47/61
A61K9/127
C07K16/00
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533810
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 US2022081186
(87)【国際公開番号】W WO2023108073
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522434554
【氏名又は名称】ジョージアミューン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Georgiamune Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】クレイフ,サミル
(72)【発明者】
【氏名】ムクルティチャン,ミカエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076CC07
4C076CC27
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(57)【要約】
プログラムされた細胞死1リガンド2(「PD-L2」)の変異体であり、プログラム細胞死タンパク質1(「PD-1」)を活性化または抑制することによって、免疫細胞を活性化または抑制することのいずれかができる単離ポリペプチドが記載されている。また、PD-L2の活性化部位または阻害部位を遮断し、それによってPD-1を阻害または活性化する単離ポリペプチドも記載される。さらに、ポリペプチドを含む医薬組成物、およびポリペプチドを使用する方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号21のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項3】
配列番号22のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項4】
アミノ酸が免疫グロブリンに融合している、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
ポリペプチドが配列番号3または配列番号4と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1、2、4、および5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
ポリペプチドが配列番号3または配列番号4であるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
ポリペプチドがTyr 112、Trp 110、Ile 103、Ile 105、Gln 101、およびTyr 114からなる群よりそれぞれ選択される1つ以上のアミノ酸を含む、請求項1、2、および4~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
ポリペプチドがプログラムされた細胞死タンパク質1(「PD-1」)に結合し、PD-1を活性化する、請求項1、2、および4~8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
ポリペプチドが免疫細胞を活性化する、請求項1、2、および4~9のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項11】
ポリペプチドが配列番号5または配列番号6と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1および3~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
ポリペプチドが配列番号5または配列番号6であるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
ポリペプチドがIle 105、Val 108、Gly 107、Ala 109、Trp 110、およびAsp 111からなる群よりそれぞれ選択される1つ以上のアミノ酸を含む、請求項1、3~5、11、および12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチドがPD-1に結合し、PD-1を阻害する、請求項1、3~5、および11~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
ポリペプチドが免疫細胞を抑制する、請求項1、3~5、および11~14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
ポリペプチドがセントラルメモリーT細胞(「Tcm」)を誘導する、請求項1、3~5、および11~14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
ポリペプチドがT細胞疲弊を防ぐ、請求項1、3~5、および11~14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
ポリペプチドが検出可能なマーカーまたはキャリア分子に結合している、前記請求項のいずれか一項に記載のポリペプチドを含むコンジュゲート。
【請求項19】
キャリア分子がグリコサミノグリカン、プロテオグリカン、アルブミン、およびポリアルキレングリコールからなる群より選択される、請求項18に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項22】
ポリペプチドがリポソームに封入されている、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
第2の治療剤をさらに含む、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
第2の治療剤が化学療法剤または免疫抑制剤である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ポリペプチドがTcmを誘導する、請求項20~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
ポリペプチドがT細胞疲弊を防ぐ、請求項20~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
請求項1、2、および4~10のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のコンジュゲート、または請求項21~26のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において免疫応答を誘導、促進、または増強する方法。
【請求項28】
請求項1、2、および4~10のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のコンジュゲート、または請求項21~26のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、がんを処置するまたは腫瘍量を低減する方法。
【請求項29】
がんが、成人T細胞白血病/リンパ腫、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、上咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、子宮がん、卵巣がん、および精巣がんからなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
誘導性T細胞キナーゼ(「ITK」)をアップレギュレートすることをさらに含む、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1、3~5、および11~17のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のコンジュゲート、または請求項21~26のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において免疫応答を低減、抑制、または予防する方法。
【請求項32】
請求項1、3~5、および11~17のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のコンジュゲート、または請求項21~26のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において自己免疫疾患を処置する方法。
【請求項33】
自己免疫疾患が、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗糸球体基底膜症、抗尿細管基底膜抗体腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫疾患、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、軸索・神経性ニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性肉芽腫症、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、バセドウ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、小児自己免疫性精神神経疾患、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、パリー・ロンバーグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多内分泌腺症候群I型、多内分泌腺症候群II型、多内分泌腺症候群III型、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子および精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群(Susac’s syndrome)、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)、血小板減少性紫斑病、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、フォークト-小柳-原田病、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ITKをダウンレギュレートすることをさらに含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ITKの活性化因子の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において免疫応答を誘導、促進、または増強する方法。
【請求項36】
ITKの活性化因子の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、がんを処置するまたは腫瘍量を低減する方法。
【請求項37】
がんが、成人T細胞白血病/リンパ腫、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、上咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、子宮がん、卵巣がん、および精巣がんからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ITKの活性化因子が、小分子化合物、ポリペプチド、または核酸である、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ITKの阻害剤の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において免疫応答を低減、抑制、および予防する方法。
【請求項40】
ITKの阻害剤の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において自己免疫疾患を処置する方法。
【請求項41】
自己免疫疾患が、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗糸球体基底膜症、抗尿細管基底膜抗体腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫疾患、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、軸索・神経性ニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性肉芽腫症、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、バセドウ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、小児自己免疫性精神神経疾患、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、パリー・ロンバーグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多内分泌腺症候群I型、多内分泌腺症候群II型、多内分泌腺症候群III型、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子および精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群(Susac’s syndrome)、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)、血小板減少性紫斑病、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、フォークト-小柳-原田病、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ITKの阻害剤が、小分子化合物、ポリペプチド、または核酸である、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
配列番号11~13のいずれか1つと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項44】
ポリペプチドが配列番号11~13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項43に記載のポリペプチド。
【請求項45】
ポリペプチドがプログラムされた細胞死1リガンド2(「PD-L2」)に結合する、請求項43または44に記載のポリペプチド。
【請求項46】
ポリペプチドがPD-L2の阻害部位を遮断する、請求項43~45のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項47】
ポリペプチドが免疫細胞を活性化する、請求項43~46のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項48】
配列番号14と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項49】
配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項48のポリペプチド。
【請求項50】
ポリペプチドがPD-L2に結合する、請求項48または49のポリペプチド。
【請求項51】
ポリペプチドがPD-L2の活性化部位を遮断する、請求項48~50のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項52】
ポリペプチドが免疫細胞を阻害する、請求項48~51のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項53】
ポリペプチドが、検出可能なマーカーまたはキャリア分子に結合している、請求項43~52のいずれか一項に記載のポリペプチドを含むコンジュゲート。
【請求項54】
キャリア分子がグリコサミノグリカン、プロテオグリカン、アルブミン、およびポリアルキレングリコールからなる群より選択される、請求項53に記載のコンジュゲート。
【請求項55】
請求項43~52のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項56】
請求項43~52のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項57】
ポリペプチドがリポソームに封入されている、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
第2の治療剤をさらに含む、請求項56または57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
第2の治療剤が化学療法剤または免疫抑制剤である、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
請求項43~47のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項53もしくは54に記載のコンジュゲート、または請求項56~59のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において免疫応答を誘導、促進、または増強する方法。
【請求項61】
請求項43~47のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項53もしくは54に記載のコンジュゲート、または請求項56~59のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、がんを処置するまたは腫瘍量を低減する方法。
【請求項62】
がんが、成人T細胞白血病/リンパ腫、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、上咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、子宮がん、卵巣がん、および精巣がんからなる群より選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
ITKをアップレギュレートすることをさらに含む、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
請求項48~52のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項53もしくは54に記載のコンジュゲート、または請求項56~59のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において免疫応答を低減、抑制、または予防する方法。
【請求項65】
請求項48~52のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項53もしくは54に記載のコンジュゲート、または請求項56~59のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において自己免疫疾患を処置する方法。
【請求項66】
自己免疫疾患が、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗糸球体基底膜症、抗尿細管基底膜抗体腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫疾患、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、軸索・神経性ニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性肉芽腫症、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、バセドウ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、小児自己免疫性精神神経疾患、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、パリー・ロンバーグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多内分泌腺症候群I型、多内分泌腺症候群II型、多内分泌腺症候群III型、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子および精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群(Susac’s syndrome)、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)、血小板減少性紫斑病、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、フォークト-小柳-原田病、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ITKをダウンレギュレートすることを含む、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
PD-1の阻害部位に結合する小分子化合物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、免役応答を低減、抑制、または予防する方法。
【請求項69】
PD-1の阻害部位に結合する小分子化合物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、自己免疫疾患を処置する方法。
【請求項70】
自己免疫疾患が、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗糸球体基底膜症、抗尿細管基底膜抗体腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫疾患、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、軸索・神経性ニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性肉芽腫症、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、バセドウ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、小児自己免疫性精神神経疾患、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、パリー・ロンバーグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多内分泌腺症候群I型、多内分泌腺症候群II型、多内分泌腺症候群III型、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子および精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群(Susac’s syndrome)、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)、血小板減少性紫斑病、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、フォークト-小柳-原田病、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項69に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月10日に出願された米国仮出願第63/288,330号の利益および優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照による援用
本明細書で引用されるすべての特許、特許公開、雑誌掲載、またはその他の文書は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0003】
本発明の技術分野
本発明は一般に、ポリペプチドモジュレーターおよび免疫調節に関する。より具体的には、本発明は、プログラムされた細胞死タンパク質1(「PD-1」)に特異的に結合するまたはそれを調節するリガンド、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
PD-1は、T細胞の炎症活性を抑制することで、免疫系をダウンレギュレートすることおよび自己免疫寛容を促進することによって、人体の細胞に対する免疫系の反応を制御する役割を持つ、T細胞およびB細胞の表面に存在するタンパク質である。この生物学的経路は、自己免疫疾患を防ぐものの、免疫系ががん細胞を殺すのも妨げ得る。
【0005】
プログラムされた細胞死リガンド1(「PD-L1」)は、免役応答を抑制するために、PD-1に結合し、抑制シグナルを伝達する。PD-1/PD-L1経路は、がん免疫療法の標的として、臨床的に有望な成功を収めている。PD-1またはPD-L1のいずれかを標的とする現在の抗体は、この相互作用を阻止し、がん細胞に対する免役応答を高めることができる。PD-1モノクローナル抗体やその他の免疫チェックポイント阻害剤による臨床試験の成功は、がん免疫学に新たな道を開いた。しかし、がん患者の大部分が新しい免疫療法に好ましい反応を示さないことから、併用療法および予測バイオマーカーの研究が活発化している。例えば、Iwai, Y, et al., Journal of Biomedical Science, 24:26 (2017)を参照。
【0006】
PD-L1のほかに、プログラムされた細胞死1リガンド2(「PD-L2」)もPD-1に結合することが知られているタンパク質である。
【0007】
したがって、PD-1シグナル伝達および関連する生物学的経路を調節するための組成物および方法を提供することが、本明細書に開示される1つ以上の発明の目的である。
【発明の概要】
【0008】
ある態様では、PD-1に結合する単離ポリペプチドが記載される。ある実施態様では、ポリペプチドは、インビトロまたはインビボで免疫応答を調節することができ、および/または、単独でもしくは他の薬剤と組み合わせて様々な状態の予防または処置に使用することができる。別の態様では、PD-L2の阻害部位または活性化部位を遮断する単離ポリペプチドが記載される。さらに別の態様では、ポリペプチドを含む医薬組成物、および、これらの組成物を、単独でもしくは他の薬剤または組成物と組み合わせて、様々な状態の予防または処置に使用する方法が記載される。なおさらに別の態様では、誘導性T細胞キナーゼ(「ITK」)活性化因子または阻害剤が記載されており、および/または、単独でもしくは他の薬剤と組み合わせて様々な状態の予防または処置に使用することができる。
【0009】
ある態様では、配列番号1と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドが記載される。
【0010】
別の態様では、配列番号21のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドが記載される。
【0011】
さらに別の態様では、配列番号22のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドが記載される。
【0012】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、アミノ酸は免疫グロブリンと融合している。
【0013】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。
【0014】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、配列番号3または配列番号4と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0015】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0016】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、Tyr 112、Trp 110、Ile 103、Ile 105、Gln 101、およびTyr 114からなる群よりそれぞれ選択される1つ以上のアミノ酸を含む。
【0017】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドはPD-1に結合し、PD-1を活性化する。
【0018】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは免疫細胞を活性化する。
【0019】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、配列番号5または配列番号6と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0020】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0021】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、Ile 105、Val 108、Gly 107、Ala 109、Trp 110、およびAsp 111からなる群よりそれぞれ選択される1つ以上のアミノ酸を含む。
【0022】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、PD-1に結合し、PD-1を阻害する。
【0023】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、免疫細胞を抑制する。
【0024】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、セントラルメモリーT細胞(「Tcm」)を誘導する。
【0025】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、T細胞疲弊を防ぐ。
【0026】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのポリペプチドを含むコンジュゲートが記載され、ここで該ポリペプチドは検出可能なマーカーまたはキャリア分子に結合している。
【0027】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、キャリア分子は、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、アルブミン、およびポリアルキレングリコールからなる群より選択される。
【0028】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのポリペプチドをコードする核酸が記載される。
【0029】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのポリペプチドを含む医薬組成物が含まれる。
【0030】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドはリポソーム内に封入されている。
【0031】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、医薬組成物は第2の治療剤をさらに含む。
【0032】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、第2の治療剤は、化学療法剤または免疫抑制剤である。
【0033】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのポリペプチド、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのコンジュゲート、または本明細書に開示される実施態様のいずれか1つの医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において免疫応答を誘導、促進、または増強する方法が記載される。
【0034】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのポリペプチド、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのコンジュゲート、または本明細書に開示される実施態様のいずれか1つの医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象においてがんを処置する方法または腫瘍量を低減する方法が記載される。
【0035】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、がんは、成人T細胞白血病/リンパ腫、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、上咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、子宮がん、卵巣がん、および精巣がんからなる群より選択される。
【0036】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、方法は、ITKをアップレギュレートすることをさらに含む。
【0037】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのポリペプチド、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのコンジュゲート、または本明細書に開示される実施態様のいずれか1つの医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において免疫応答を低減、抑制、または予防する方法が記載される。
【0038】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのポリペプチド、本明細書に開示される実施態様のいずれか1つのコンジュゲート、または本明細書に開示される実施態様のいずれか1つの医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において自己免疫疾患を処置する方法が記載される。
【0039】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、自己免疫疾患は、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗糸球体基底膜症、抗尿細管基底膜抗体腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫疾患、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、軸索・神経性ニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性肉芽腫症、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、バセドウ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、小児自己免疫性精神神経疾患、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、パリー・ロンバーグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多内分泌腺症候群I型、多内分泌腺症候群II型、多内分泌腺症候群III型、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子および精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群(Susac’s syndrome)、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)、血小板減少性紫斑病、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、フォークト-小柳-原田病、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、方法は、ITKをダウンレギュレートすることをさらに含む。
【0041】
さらに別の態様では、有効量のITK活性化因子を投与することを含む、免役応答を誘導、促進、または増強する方法が記載される。
【0042】
さらに別の態様では、有効量のITK活性化因子を投与することを含む、がんを処置する方法または腫瘍量を低減する方法が記載される。
【0043】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ITK活性化因子は、小分子化合物、ポリペプチドまたは核酸である。
【0044】
さらに別の態様では、有効量のITK阻害剤を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における免疫応答を低減、抑制、または予防する方法が記載される。
【0045】
さらに別の態様では、有効量のITK阻害剤を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における自己免疫疾患を処置する方法が記載される。
【0046】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、IKT阻害剤は、小分子化合物、ポリペプチドまたは核酸である。
【0047】
さらに別の態様では、単離ポリペプチドは、配列番号11から配列番号13のいずれか一つと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0048】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、配列番号11から配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0049】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドはPD-L2に結合する。
【0050】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、PD-L2の阻害部位を遮断する。
【0051】
さらに別の態様では、単離ポリペプチドは、配列番号14と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0052】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む。
【0053】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、PD-L2の活性化部位を遮断する。
【0054】
本明細書に開示される実施態様のいずれか1つにおいて、ポリペプチドは、免疫細胞を阻害する。
【0055】
さらに別の態様では、PD-1の阻害部位に結合する小分子の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における免疫応答を低減、抑制、または予防する方法が記載される。
【0056】
さらに別の態様では、PD-1の阻害部位に結合する小分子の有効量を対象に投与することを含む、自己免疫疾患を処置する方法が記載される。
【0057】
本明細書に開示されるいずれの実施態様も、本明細書に開示される任意の他の実施態様と適切に組み合わせることができる。本明細書に開示される実施態様のいずれか1つと、本明細書に開示される任意の他の実施態様との組み合わせは、明示的に企図される。具体的には、1つの置換基に対する1つ以上の実施態様の選択は、任意の他の置換基に対する1つ以上の特定の実施態様の選択と適切に組み合わせることができる。このような組み合わせは、本明細書に記載される適用の任意の1つ以上の実施態様または本明細書に記載されるいずれの製剤においても可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、ポリペプチドの存在下または非存在下で処理されたPD-1レポーター細胞群の相対発光単位(「RLU」)を示す。
【0059】
【
図2】
図2A-2Cは、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、PD-L2に結合するポリペプチドの設計根拠を示す。
【0060】
【
図3】
図3A-3Bは、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、PD-L2変異体の設計根拠を示す。
【0061】
【
図4】
図4は、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、PD-1シグナルの種類が、ITKとSrc相同領域2(SH2)含有タンパク質チロシンホスファターゼ2(SHP2)のバランスに依存していることを示す。
【0062】
【
図5】
図5A-5Cは、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、ITKとSHP2のバランスによって決まる免役応答およびITKとSHP2のバランスに影響を与える上流の経路を示す。
【0063】
【
図6】
図6A-6Cは、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、初代T細胞をPD-L1およびPD-L2で処理した後の、PD-1結合ITKおよびSHP2のレベルの違いを示す。
【0064】
【
図7】
図7A-7Cは、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、PD-L2は、Tcmを増加させ、T細胞疲弊を防ぐことを示す。
【0065】
【
図8】
図8A-8Cは、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、PD-L2がTcmの生成および疲弊の防止に必要であることを示す。
【0066】
【
図9】
図9A-9Dは、本明細書に記載される1つ以上の実施態様に従って、PD-L2がCD4およびCD8 T細胞の両方の活性化の開始に必要であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
発明の詳細な説明
定義
本開示は、ここに記載される組成物および方法ならびに記載する実験条件に限定されず、これらは変わり得ることは理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことも理解される。
【0068】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の組成物、方法および材料はすべて、本発明の実施または試験に使用することができる。
【0069】
現在特許請求されている発明を説明する文脈における(特に特許請求の範囲の文脈における)単数表現およびその類似の表現の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方をカバーするものと解釈される。
【0070】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に別段の記載がない限り、単に範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための略記法としての役割を果たすことを意図したものであり、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0071】
「約」という用語の使用は、約±10%の範囲で、記載された値より上または下のいずれかの値を記述することを意図している。いくつかの実施態様において、値は、約±5%の範囲で、記載された値より上または下のいずれかの値であり得る。いくつかの実施態様において、値は、約±2%の範囲で、記載された値より上または下のいずれかの値であり得る。いくつかの実施態様において、値は、約±1%の範囲で、記載された値より上または下のいずれかの値であり得る。前述の範囲は、文脈によって明確にされることが意図されており、それ以上の限定は示唆されない。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供されるあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「例示的な」、「~などの」、「例えば」、「含むが、これらに限定されない」)の使用は、単に本発明をより明確にすることを意図しており、別に示されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
本明細書で使用される「がん」および同等の「腫瘍」という用語は、宿主由来の異常複製細胞が対象中に検出可能な量で存在する状態を指す。がんは、悪性がんまたは非悪性がんであり得る。がんまたは腫瘍は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(「HTLV-1」)に起因するものを含む)、胆道がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、上皮内新生物、白血病、リンパ腫、肝がん、肺がん(例えば、小細胞がんおよび非小細胞がん)、メラノーマ、神経芽腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、肉腫、皮膚がん、精巣がん、甲状腺がん、ならびにその他のがん腫および肉腫を含むが、これらに限定されない。本明細書では、「リンパ腫」という用語は、リンパ系のがん、またはリンパ球から発生する血液がんを指す。がんは原発性または転移性であり得る。がん以外の疾患は、Rasシグナル伝達経路の構成要素の突然変異変更(mutational alternation)に関する可能性があり、本明細書で開示するポリペプチドは、これらの非がん疾患の処置に使用することができ得る。このような非がん疾患は、神経線維腫症、レオパード症候群、ヌーナン症候群、レギウス症候群、コステロ症候群、心臓-顔-皮膚症候群、遺伝性歯肉線維腫症1型、自己免疫性リンパ増殖症候群、および毛細血管奇形-動静脈奇形が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書で使用される「有効量」とは、所望の結果を達成または促進するために必要または十分な任意の量を指す。いくつかの実例において、有効量は治療上有効な量である。治療上有効な量とは、対象において所望の生物学的応答を促進または達成するのに必要または十分な量である。任意の特定の用途に対する有効量は、処置される疾患または状態、投与される特定の薬剤、対象の体格、または疾患もしくは状態の重症度などの因子によって変化し得る。当業者であれば、過度の実験を必要とすることなく、特定の薬剤の有効量を経験的に決定することができる。
【0074】
本明細書で使用される「対象」という用語は脊椎動物を指す。ある実施態様では、対象は哺乳動物または哺乳動物種である。ある実施態様では、対象はヒトである。別の実施態様では、対象は、非ヒト霊長類、実験動物、家畜、競走馬、ペット、および非家畜化動物を含むがこれらに限定されない、非ヒト脊椎動物である。
【0075】
本明細書で使用される「免疫細胞」という用語は、好中球、好酸球、好塩基球、グリア細胞(例えば、アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイト)、単球、マクロファージ、樹状細胞、リンパ球(例えば、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(「NK」)細胞)を含むがこれらに限定されない、自然免疫系および獲得免疫系の細胞を指す。
【0076】
本明細書で使用される「従来型T細胞」とは、αβT細胞受容体(「TCR」)およびCD4またはCD8などの共受容体を発現するTリンパ球のことである。従来型T細胞は末梢血、リンパ節および組織に存在する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるRoberts and Girardi, “Conventional and Unconventional T Cells”, Clinical and Basic Immunodermatology, pp. 85-104, (Gaspari and Tyring (ed.)), Springer London (2008)を参照のこと。本明細書で使用される「非従来型T細胞」とは、γδTCRを発現するリンパ球であり、皮膚、消化管、または泌尿生殖器などの上皮環境に一般的に存在し得る。非従来型T細胞のもう一つのサブセットは、インバリアントナチュラルキラーT(「NKT」)細胞であり、従来型T細胞の表現型および機能的能力ならびにナチュラルキラー細胞の特徴(例えば、細胞溶解活性)を有する。id.を参照のこと。本明細書で使用される、制御性T細胞(「Tregs」)とは、免疫系を調節し、自己抗原に対する免疫寛容を維持し、自己免疫疾患を阻止し、かつ他の細胞の免疫刺激応答または活性化応答を他の方法で抑制するT細胞の亜集団である。Tregには様々な型があるが、最もよく知られているのは、CD4、CD25、およびFoxp3を発現するものである。本明細書で使用される「天然Treg」すなわち「nTreg」は、胸腺で発生するTregまたは細胞を指す。本明細書で使用される「誘導性Treg」すなわち「iTreg」は、胸腺外で成熟CD4+従来型T細胞から発生するTregまたは細胞を指す。
【0077】
本明細書で使用される「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語は、修飾(例えば、リン酸化またはグリコシル化)に関係なく、任意の長さのアミノ酸の鎖を指す。ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、互換的に使用される。この用語には、タンパク質およびその断片が含まれる。ポリペプチドは「外来性」、つまり「異種性」、すなわち利用される宿主細胞にとって異物であることを意味し、例えば細菌細胞によって産生されるヒトポリペプチドなどであり得る。ポリペプチドは、アミノ酸残基配列として本明細書に開示される。これらの配列はアミノ末端からカルボキシ末端に向かって左から右に記載されている。標準的な命名法に従い、アミノ酸残基配列は以下のとおり3文字または1文字のいずれかのコードで称される:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、 I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、バリン(Val、V)。
【0078】
「免疫応答」という用語には、例えば、レシピエント患者において、ポリペプチドに対して誘導される有益な体液性応答(抗体媒介性)および/または細胞性応答(抗原特異的T細胞またはその分泌産物によって媒介される)の発現が含まれる。このような応答は、免疫原の投与によって誘導される能動的な応答、もしくは、抗体またはプライムT細胞の投与によって誘導される受動的な応答であり得る。細胞性免疫応答は、抗原特異的CD4+ Tヘルパー細胞および/またはCD8+ 細胞傷害性T細胞を活性化するために、クラスIまたはクラスII主要組織適合遺伝子複合体(「MHC」)分子と結合したポリペプチドエピトープの提示によって引き起こされる。この応答はまた、単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球、樹状細胞、アストロサイト、ミクログリア細胞、好酸球、好中球の活性化または動員、あるいは自然免疫の他の成分の活性化にも関与し得る。細胞媒介免疫学的反応の存在は、増殖アッセイ(CD4+ T細胞)または細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)アッセイによって決定することができる。免疫原の防御効果または治療効果に対する体液性応答と細胞性応答の相対的な寄与は、免疫した同種動物から抗体およびT細胞を別々に分離し、第2の対象における防御効果または治療効果を測定することによって区別することができる。
【0079】
「免疫原性剤」または「免疫原」という用語は、任意でアジュバントと併用して、哺乳動物に投与するとそれ自身に対する免疫学的応答を誘導することができる物質を指す。
【0080】
ポリペプチド
PD-L1に加えて、PD-L2もまた、PD-1に結合するもう一つのタンパク質である。出願人らは、驚くべきことに、PD-L2上の2つの主要な相互作用部位を介してPD-L2がPD-1に結合する場合、これらの部位が反対の機能を有すること、すなわち、PD-L2上の一方の部位はPD-1および免疫応答を活性化するのに対し、他方の部位はPD-1および免疫応答を阻害することを発見した。PD-1を活性化する部位を本明細書では「活性化部位」と呼び、PD-1を阻害する部位を本明細書では「阻害部位」と呼ぶ。PD-L2の2つの相互作用部位は、
図2Aに示されている。いくつかの実施態様において、PD-L2上の活性化部位は、Tyr 112、Trp 110、Ile 103、Ile 105、Gln 101、およびTyr 114からなる群よりそれぞれ選択される1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施態様において、PD-L2上の阻害部位は、Ile 105、Val 108、Gly 107、Ala 109、Trp 110、およびAsp 111からなる群よりそれぞれ選択される1つ以上のアミノ酸を含む。
【0081】
いくつかの実施態様では、PD-L2の阻害部位を遮断または無効化するポリペプチドが記載され、このポリペプチドは、PD-1および免疫応答を活性化する。別の実施態様では、PD-L2の活性化部位を遮断または無効化するポリペプチドが記載され、これはPD-1を阻害し、免疫応答を抑制する。例えば、
図3Bに示されるとおり、阻害部位が無効化されたPD-L2の変異体は、PD-1シグナル伝達を介して免疫応答を活性化し得る。さらに、
図3Aに示されるとおり、活性化部位が無効化されたPD-L2の変異体は、PD-1シグナル伝達を介して免疫応答を抑制し得る。
【0082】
配列番号1は、ヒトPD-L2を定義するアミノ酸配列である:
LFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHP。
【0083】
配列番号21は、ヒトPD-L2の活性化部位を定義するアミノ酸配列である:
QXIXIXXXXWXYXY
(ここで、Xは任意のアミノ酸である)。
【0084】
配列番号22は、ヒトPD-L2の阻害部位を定義するアミノ酸配列である:
IXGVAWD
(ここで、Xは任意のアミノ酸である)。
【0085】
配列番号2は、hIgG1と融合したヒトPD-L2を定義するアミノ酸配列である:
LFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPIEGRMDPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
【0086】
いくつかの実施態様では、配列番号1と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である単離ポリペプチドまたはその変異体が記載される。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号1の変異体である。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-L2の活性化部位を遮断または無効化し、PD-1の阻害および免疫応答の抑制をもたらす。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0087】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号1、21、および22のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、免疫グロブリンまたはその断片に融合される。いくつかの実施態様では、免疫グロブリンは、IgG、IgM、またはIgAである。いくつかの実施態様では、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。いくつかの実施態様では、免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を有することが記載される。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号2の変異体である。
【0088】
配列番号3は、PD-L2の第1の変異体を定義するアミノ酸配列である:
LFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYDDDWLYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPIEGRMDPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
【0089】
配列番号4は、PD-L2の第2の変異体を定義するアミノ酸配列である:
LFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIDYDDDDLYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPIEGRMDPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
【0090】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、無効化された阻害部位を有するPD-L2の変異体である。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号3と少なくとも60%、62%、65%、67%、70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも60%、62%、65%、67%、70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号3と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、Tyr 112、Trp 110、Ile 103、Ile 105、Gln 101、およびTyr 114からなる群よりそれぞれ選択される1つ以上のアミノ酸を含む。
【0091】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドはPD-1に結合する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-L2の活性化部位と類似の結合部位を通じてのみPD-1に結合する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-L2の阻害部位に類似する結合部位を有さない。いくつかの実施態様では、ポリペプチドはPD-1を活性化する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-1を活性化することによって免疫細胞を活性化する。免疫細胞の非限定的な例には、T細胞(例えば、Treg)、B細胞、マクロファージ、およびグリア細胞(例えば、アストロサイト、ミクログリア、またはオリゴデンドロサイト)が含まれる。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、免疫応答を誘導、促進、または増強するために使用することができる。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、がんを処置するために使用され得る。
【0092】
配列番号5は、PD-L2の第3の変異体を定義するアミノ酸配列である:
LFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYLCDIIYGVAWDDKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPIEGRMDPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
【0093】
配列番号6は、PD-L2の第4の変異体を定義するアミノ酸配列である:
LFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYLCDIDYGVADDDKDLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPIEGRMDPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
【0094】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、無効化された活性化部位を有するPD-L2の変異体である。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号5と少なくとも60%、62%、65%、67%、70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号6と少なくとも60%、62%、65%、67%、70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号5と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。 いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号6と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、Ile 105、Val 108、Gly 107、Ala 109、Trp 110、およびAsp 111からなる群よりそれぞれ選択される1つ以上のアミノ酸を含む。
【0095】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドはPD-1に結合する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-L2の阻害部位と類似の結合部位を通じてのみPD-1に結合する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-L2の活性化部位に類似する結合部位を有さない。いくつかの実施態様では、ポリペプチドはPD-1を阻害する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-1を阻害することによって免疫細胞を抑制する。免疫細胞の非限定的な例には、T細胞(例えば、Treg)、B細胞、マクロファージ、およびグリア細胞(例えば、アストロサイト、ミクログリア、またはオリゴデンドロサイト)が含まれる。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、免疫応答を低減、抑制、または予防するために使用することができる。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、自己免疫疾患を処置するために使用され得る。
【0096】
配列番号7は、リンカー領域上のPD-L2の第5の変異体を定義するアミノ酸配列である:
IDTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVDWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPIEGRMDPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
【0097】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号7と少なくとも60%、62%、65%、67%、70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0098】
いくつかの実施態様では、PD-L2の阻害部位を遮断または無効化するポリペプチドが記載され、このペプチドは、PD-1および免疫応答を活性化する。例えば、
図2Bに示されるとおり、PD-L2の活性化部位を遮断するポリペプチドは、PD-1からの抑制シグナルを誘導することができる。さらに、
図2Cに示されるとおり、PD-L2の阻害部位を遮断するポリペプチドは、PD-1からの活性化シグナルを誘導することができる。
【0099】
配列番号11は、PD-L2に結合する第1のポリペプチドを定義するアミノ酸配列である:
TSESFVLNWYRMSPS。
【0100】
配列番号12は、PD-L2に結合する第2のポリペプチドを定義するアミノ酸配列である:
FSNTSESFVLNWYRM。
【0101】
配列番号13は、PD-L2に結合する第3のポリペプチドを定義するアミノ酸配列である:
ESFVLNWYRMSP。
【0102】
いくつかの実施態様では、PD-L2の阻害部位を遮断するポリペプチドが記載される。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号11と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号12と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号13と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号13であるアミノ酸配列を含む。
【0103】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドはPD-L2に結合する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-L2の阻害部位を遮断することによってPD-1を活性化する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-1を活性化することによって免疫細胞を活性化する。免疫細胞の非限定的な例には、T細胞(例えば、Treg)、B細胞、マクロファージ、およびグリア細胞(例えば、アストロサイト、ミクログリア、またはオリゴデンドロサイト)が含まれる。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、免疫応答を誘導、促進、または増強するために使用することができる。いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、がんを処置するために使用され得る。
【0104】
配列番号14は、PD-L2に結合する第4のポリペプチドを定義するアミノ酸配列である:
TYLCGAISLAPKAQI。
【0105】
いくつかの実施態様では、PD-L2の活性化部位を遮断するポリペプチドが記載される。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号14と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む。
【0106】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドはPD-L2に結合する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-L2の活性化部位を遮断することによってPD-1を阻害する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、PD-1を阻害することによって免疫細胞を抑制する。免疫細胞の非限定的な例は、T細胞(例えば、Treg)、B細胞、マクロファージ、およびグリア細胞(例えば、アストロサイト、ミクログリア、またはオリゴデンドロサイト)を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、免疫応答を低減、抑制、または予防するために使用することができる。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、自己免疫疾患を処置するために使用され得る。
【0107】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、当業者に公知の方法で修飾され得る。例えば、ポリペプチドは、ペプチド模倣物として使用され得る。ポリペプチドは二量体を形成し得る。
【0108】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドはペグ化され得る。ペグ化は、様々な機構によって、循環からのポリペプチドの排除を遅延させることができる。いくつかの実施態様では、ペグ化は、タンパク質分解酵素による分解を阻害し、見かけの分子サイズを増大させることにより腎濾過の速度を低下させる。したがって、PEGベースの修飾は、ポリペプチドの循環時間を延長するために、およびバイオアベイラビリティを高めるために有用であり得る。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは直鎖PEG分子でペグ化される。別の実施態様では、ポリペプチドは分岐PEG分子でペグ化される。本発明はさらに、アミノ-、カルボキシ-および側鎖-ペグ化ポリペプチドを提供する。PEG部分は、5kDaより大きい分子量を有するPEG分子であり得る。例えば、分子量は、5kDa~100kDaの間(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100kDa)であり得て、より好ましくは、分子量は、10kDa~50kDaの間(例えば、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、または50kDa)である。ペグ化ポリペプチドの合成法は、当技術分野でよく知られている。
【0109】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドは検出可能なマーカーに結合している。ある実施態様では、検出可能なマーカーは、ポリペプチドのC末端に結合する。別の実施態様では、検出可能な標識はN末端に結合する。検出可能なマーカーは、放射性同位体、蛍光基、化学発光標識、比色標識、酵素マーカー、および標識ポリペプチドの検出を容易にする親和性部位(例えば、ビオチン)などの化学標識であり得るが、これらに限定されない。本発明はまた、フルオレセインやローダミンコンジュゲートなどを含むがこれらに限定されない色素標識ポリペプチドを提供する。その他の化学標識およびポリペプチドに化学標識を付ける方法は、当技術分野でよく知られている。
【0110】
ある実施態様では、ポリペプチドは担体分子に結合している。ポリペプチドはまた、担体に結合した少なくとも1つのポリペプチドまたはポリペプチド断片のコンジュゲートとして使用することもできる。担体は、本発明のポリペプチドに対して固相担体を提供し得る。担体は、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、またはアルブミンなどを含むがこれらに限定されない生物学的担体であり得て、または、ポリアルキレングリコールもしくは合成クロマトグラフィー担体などを含むがこれらに限定されない合成ポリマーでもあり得る。他の担体には、オボアルブミン、ヒト血清アルブミン、他のタンパク質、およびポリエチレングリコールなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
ある態様では、ポリペプチドをコードする核酸が記載される。別の実施態様では、ポリペプチドは、発現ベクターが本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、そして核酸配列がプロモーターに使用可能な状態で連結される組換えDNA技術方法を使用して調製され得る。発現ベクターは、形質転換、トランスフェクションなどの方法およびポリペプチドの発現を可能にする適切な宿主細胞などによって送達され得るが、これらに限定されない。発現ベクターを含む宿主細胞を適切な条件下で培養し、ポリペプチドを発現させる。ある実施態様では、宿主細胞は、ヒト細胞を含むがこれに限定されない哺乳動物細胞である。別の実施態様では、宿主細胞は細菌、真菌または昆虫細胞である。ある実施態様では、ポリペプチドは培養物から回収され、ここでの回収はポリペプチドの精製につながる工程を含み得る。組換え技術によるポリペプチドの調製は、ポリペプチドが翻訳後修飾され得る場合に有利である。なおさらに、合成技術と組換えDNA技術を組み合わせる方法は、ポリペプチドのアミド誘導体およびエステル誘導体を製造するためならびに当業者によく知られた方法で後に組み立てられる所望のポリペプチドの断片を製造するために用いることができる。
【0112】
ヒト細胞における核酸配列の送達およびポリペプチドの発現に適した発現ベクターは、当技術分野で知られている。非限定的な例は、プラスミド、ウイルスまたは細菌ベクターである。
【0113】
ポリペプチドは、ポリペプチド合成をサービスとして提供する会社(例えば、BACHEM Bioscience, Inc., King of Prussia, Pennsylvania; AnaSpec, Inc., San Jose, California)によって商業的に調製することもできる。Perkin-Elmer Applied Biosystems社製のものなどの自動ポリペプチド合成機も利用できる。
【0114】
本明細書に記載される方法において有用なポリペプチドは、化学的または組換え技術のいずれかによって単離または合成された後、精製される。C4-、C2-またはC18-シリカなどを含むがこれらに限定されないアルキル化シリカカラムを使用する逆相高圧液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を含む、精製目的のための標準的な方法を使用することができる。この方法では、精製を達成するために、一般に有機含量が増加する勾配移動相が使用される(例えば、通常少量のトリフルオロ酢酸を含む、水性緩衝液中のアセトニトリル)。あるいは、ポリペプチド化合物をそれらの電荷に基づいて分離するために、イオン交換クロマトグラフィーを用いることもできる。ポリペプチド化合物の純度は、HPLCによって同定されたピークの数によって判定することができる。いくつかの実施態様では、有用なレベルのポリペプチド純度は、HPLCクロマトグラム上の単一のピークをもたらし得る。ある実施態様では、目的のポリペプチドは、HPLCカラム上の入力物質の少なくとも94.99%である。別の実施態様では、目的のポリペプチドは、HPLCカラム上の入力物質の少なくとも96.99%である。ある実施態様では、目的のポリペプチドは、HPLCカラム上の入力物質の97%から99.5%の間である。
【0115】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドが免疫応答に効果を示すか否かを決定する方法は、ルシフェラーゼアッセイである。いくつかの実施態様では、Jurkat PD-1細胞がルシフェラーゼアッセイで使用される。
【0116】
医薬組成物
ある態様では、本明細書に開示される1つ以上のポリペプチドを含む医薬組成物が記載される。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、医薬組成物中のリポソームに封入される。
【0117】
いくつかの実施態様では、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、非アルブミン血清タンパク質、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム)、および飽和植物性脂肪酸、水、塩または電解質の部分グリセリド混合物(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーおよび羊毛脂)を含むがこれらに限定されない担体を、医薬組成物に使用することもできる。このような修飾は、見かけの親和性を高めると共に、ポリペプチドの安定性を変化させる可能性がある。各担体に結合するポリペプチド断片の数は変化し得るが、標準的なカップリング条件下では、担体1分子あたり通常約4~8個のポリペプチド断片が結合する。
【0118】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドはまた、塩の形態で調製および保存され得る。ポリペプチドの様々な塩形態はまた、当分野で公知の様々な方法のいずれかによって、例えば、様々なイオン交換クロマトグラフィー法を用いることによって、形成または交換され得る。組成物中で使用され得るカチオン性対イオンには、アミン(例えば、アンモニウムイオン)、金属イオン、特にアルカリ金属の1価、2価、または3価イオン(例えば、 ナトリウム、カリウム、リチウム、およびセシウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、およびバリウム)、遷移金属(例えば、鉄、マンガン、亜鉛、カドミウム、およびモリブデン)、アルミニウムなどの他の金属、およびこれらの可能な組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の組成物中に使用され得るアニオン性対イオンには、塩化物、フッ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ソルビン酸塩、グルタル酸塩、ケトグルタル酸塩、およびこれらの可能な組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載のポリペプチド化合物のトリフルオロ酢酸塩は、典型的には、HPLCを用いてトリフルオロ酢酸緩衝液中で精製する際に形成される。通常、インビボでの使用には適さないが、本明細書に記載のポリペプチドのトリフルオロ酢酸塩形態は、種々のインビトロ細胞培養研究、アッセイ、または目的のポリペプチド化合物の活性もしくは有効性の試験において便利に使用され得る。次いで、ポリペプチドは、イオン交換法によってトリフルオロ酢酸塩から変換されるか、または医薬組成物もしくは栄養補助組成物に許容される塩形態として合成され得る。
【0119】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、さまざまな経路や様式で送達することができる。これには、非経腸、経口、気管内、舌下、肺、局所(外用)、直腸、鼻、頬、舌下、膣、または埋め込み型リザーバー経由が含まれるが、これらに限定されない。埋め込み型リザーバーは、機械的、浸透圧、または他の手段によって機能し得る。本明細書で使用される用語「非経腸」には、静脈内、頭蓋内、腹腔内、傍脊椎、関節周囲、骨膜、皮下、皮内、動脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、および局所内注射または注入技術が含まれるが、これらに限定されない。このような組成物は非経腸投与用に製剤化され、多くは静脈内、頭蓋内、または動脈内投与用に製剤化される。一般に、投与が静脈内または動脈内である場合、医薬組成物は、ボーラスとして、分離された用量として投与され得る。
【0120】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、無菌注射用製剤の形態、例えば、無菌注射用水性懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、適切な分散剤または懸濁剤を用いて、当技術分野で公知の技術に従って処方することができる。無菌注射用製剤はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液など、非毒性の非経腸的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射溶液または懸濁液であり得る。使用可能な溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液(生理食塩水)などが含まれるが、これらに限定されない。さらに、溶媒や懸濁媒として、無菌の固定油が従来使用されている。この目的のためには、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含むがこれらに限定されない、任意の無刺激性の固定油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油などの薬学的に許容される天然油と同様に、注射剤の調製に有用である。
【0121】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、カプセル、錠剤、カプレット、丸剤、水性懸濁液、および溶液、またはシロップを介して経口投与され得る。経口用の錠剤の場合、乳糖およびコーンスターチを含むがこれらに限定されない担体を使用することができる。ステアリン酸マグネシウムなどを含むがこれらに限定されない滑沢剤も添加されることがある。カプセルの形態で経口投与する場合、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれるが、これらに限定されない。カプセル、錠剤、丸剤、およびカプレットは、長期発現が必要な場合には、遅延放出または持続放出のために製剤化することができる。あるいは、経口水性懸濁液が投与される場合、ポリペプチドは乳化剤および/または懸濁剤と有利に組み合わされる。所望により、特定の甘味料および/または香料および/または着色料が添加され得る。ある実施態様では、経口投与のための調製物は、消化器系によるポリペプチド化合物の加水分解を防止または阻害し、それによって血流への吸収を可能にする混合物中の、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
【0122】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、粘膜投与(例えば、膣投与または直腸投与)され得る。これらの投与量は、室温では固体であるが体温では液体であり、したがって、関連する体内空間で液体形態に状態変化して活性化合物を放出する、適切な非刺激性賦形剤と本明細書に記載のポリペプチドを混合することによって調製することができる。これらの溶媒の例には、ココアバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールなどが含まれるが、これらに限定されない。また、例えば鼻または肺への送達など他の粘膜部位の場合、鼻の粘膜または肺への吸入を介して吸収され得る。これらの投与様式は、典型的には、組成物を溶液、液体懸濁液、または粉末の形態で提供し、次いで、液滴または粒子のエアロゾルまたは懸濁液を生成するために、空気、酸素、窒素などの気体、またはそれらの組み合わせと混合することを必要とする。これらの調製は、医薬製剤技術における周知の技術に従って行われる。これらの製剤は、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および当技術分野で周知の可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として製造することができる。
【0123】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。
【0124】
例示的な追加の治療剤には、サイトカイン、化学療法剤、放射性核種、その他の免疫療法剤、酵素、抗生物質、抗ウイルス剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤単独、または、HIVもしくはB型肝炎もしくはC型肝炎の処置のためにヌクレオシドと併用するプロテアーゼ阻害剤)、抗寄生虫剤(例えば、蠕虫または原虫)、成長因子、成長阻害剤、ホルモン、ホルモン拮抗剤、抗体およびその生物活性断片(例えばヒト化抗体、一本鎖抗体、およびキメラ抗体)、抗原およびワクチン製剤(アジュバントを含む)、ポリペプチド製剤、抗炎症剤、Toll様受容体に結合して自然免疫系を活性化するリガンド(CpGオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されない)、適応免疫系を動員しかつ最適化する分子、細胞傷害性Tリンパ球、NK細胞、ヘルパーT細胞の作用を活性化またはアップレギュレートする他の分子、サプレッサーまたは制御性T細胞を不活性化またはダウンレギュレートする他の分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
追加の治療剤は、処置すべき状態、障害、または疾患に基づいて選択される。例えば、本明細書に記載のポリペプチドは、免疫応答を増強もしくは促進する機能、または免疫応答を低下もしくは阻害する機能を有する1つ以上の追加の薬剤と共投与することができる。
【0126】
化学療法剤
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のポリペプチドは、1種類以上の化学療法剤またはプロアポトーシス剤と組み合わせることができる。代表的な化学療法剤には、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、リポソーム型ドキソルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テガフール・ウラシル、テモゾロミド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。代表的なプロアポトーシス剤には、フルダラビン、スタウロスポリン、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d-PGJ(2)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0127】
免疫抑制剤
いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるポリペプチドは、他の免疫治療剤、免疫調節剤、共刺激活性化アゴニスト、他のサイトカインおよびケモカインおよび因子、ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、細胞療法、小分子および標的療法、化学療法、ならびに放射線療法と組み合わせて使用される。いくつかの実施態様では、免疫調節剤は、抗PD1、抗CTLA4、抗TIM3、および抗LAG3などのチェックポイント阻害剤を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、共刺激活性化アゴニストには、抗OX40、抗GITRおよびその他同類のものが含まれる。いくつかの実施態様では、細胞療法には、操作されたT細胞、CAR-T、TCR-T細胞、およびその他が含まれる。
【0128】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるポリペプチドは、他の免疫治療剤、免疫調節剤、生物製剤(例えば、抗体)、ワクチン、小分子および標的療法、抗炎症剤、細胞療法(例えば、操作されたTregおよび他の種類の細胞)、化学療法、および放射線療法と組み合わせて使用される。
【0129】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるポリペプチドは、単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用され、静脈内、筋肉内、または他の非経腸的手段によって患者にインビボで投与される。また、経鼻、吸入、直腸、膣、局所、経口によって、またはインプラントとして投与され得る。
【0130】
いくつかの実施態様では、追加の治療剤は免疫抑制剤である。免疫抑制剤には、他のリンパ球表面マーカー(例えば、CD40およびアルファ-4インテグリン)に対する抗体、またはサイトカインに対する抗体、融合タンパク質(例えば、CTLA-4-Ig(オレンシア(登録商標))およびTNFR-Ig(エンブレル(登録商標)))、エンブレル、レミケード、シムジア、およびヒュミラなどのTNF-α遮断薬、シクロホスファミド(「CTX」)(例えば、エンドキサン(登録商標)、サイトキサン(登録商標)、Neosar (登録商標)、Procytox (登録商標)、およびRevimmune (商標))、メトトレキサート(MTX)(例えば、リウマトレックス(登録商標)およびTrexall (登録商標))、ベリムマブ(例えば、ベンリスタ(登録商標))、その他の免疫抑制薬(例えば、シクロスポリンA、FK506様化合物、ラパマイシン化合物、およびステロイド)、抗増殖剤、細胞毒性剤、および免疫抑制を補助し得るその他の化合物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施態様では、追加の治療剤はチェックポイント阻害剤であり得る。いくつかの実施態様では、追加の治療剤は、CTLA-4-Ig(アバタセプト)などのCTLA-4融合タンパク質であり得る。CTLA-4-Ig融合タンパク質は、抗原提示細胞上のCD80/CD86(B7-1/B7-2)への結合について、T細胞上の共刺激受容体であるCD28と競合することができ、したがって、T細胞の活性化を阻害するように機能する。別の実施態様では、追加の治療剤はベラタセプトとして知られるCTLA-4-Ig融合タンパク質である。ベラタセプトは、インビボでのCD86に対する活性を顕著に増加させることができる2つのアミノ酸置換(L104EおよびA29Y)を含む。別の実施態様では、追加の治療剤はMaxy-4である。
【0132】
別の実施態様では、追加の治療剤はCTXである。CTX(エンドキサン(登録商標)、サイトキサン(登録商標)、Neosar (登録商標)、Procytox (登録商標)、およびRevimmune (商標)の一般名)は、サイトホスファン(cytophosphane)としても知られ、オキサゾホリン(oxazophorines)群のナイトロジェンマスタードアルキル化剤である。CTXは、様々な種類のがん、および、いくつかの自己免疫疾患の処置に使用される。CTXは腎性ループス患者のびまん性増殖性糸球体腎炎に使用される主要な薬剤である。
【0133】
いくつかの実施態様では、追加の治療剤は、抗二本鎖DNA(「抗ds DNA」)自己抗体の血中または血清レベルを低下させるために、および/または、それを必要とする患者のタンパク尿を低下させるために、有効量で投与することができる。
【0134】
別の実施態様では、追加の治療剤は、血清中のアデノシンの量を増加させ得る(例えば、WO 08/147482を参照)。例えば、第2の治療剤は、CD73-Ig、組換えCD73、またはCD73の発現を増加させる別の薬剤(例えば、サイトカイン、モノクローナル抗体、または小分子)であり得る(例えば、WO 04/084933を参照)。別の実施態様では、追加の治療剤はインターフェロンβである。
【0135】
いくつかの実施態様では、追加の治療剤は、Th1、Th17、Th22、および/または他の細胞の分化、増殖、活性、サイトカイン産生および/またはサイトカイン分泌を阻害または低減する小分子であり得て、これら細胞はIL-1β、TNF-α、TGF-β、IFN-γ、IL-18、IL-17、IL-6、IL-23、IL-22、IL-21、およびMMPを含むが、これらに限定されない炎症性分子を分泌する、または他の細胞に分泌させるものである。別の実施態様では、追加の治療剤は、Tregと相互作用する、Tregの活性を増強する、TregによるIL-10分泌を促進または増強する、Tregの数を増加させる、Tregの抑制能力を増加させる、またはそれらを組み合わせた小分子である。
【0136】
いくつかの実施態様では、追加の治療剤は抗体であり、例えば、IL-6、IL-23、IL-22、またはIL-21などの炎症誘発性分子に対する機能遮断抗体である。
【0137】
いくつかの実施態様では、追加の治療剤は核酸を含む。いくつかの実施態様では、追加の治療剤はリボ核酸を含む。
【0138】
疾患の処置方法
別の態様では、それを必要とする対象において疾患を処置する方法は、本明細書に記載のポリペプチドの有効量を対象に投与することを含む。
【0139】
ITKは免疫応答において重要な役割を果たしている。PD-1シグナルの種類は、ITKとSHP2のバランスに依存する。いくつかの実施態様では、
図4に示されるとおり、PD-1シグナルの種類は、ITK-SHP2比に依存する。いくつかの実施態様では、
図4に示されるとおり、SHP2がITKよりも多い場合、抑制シグナルが生成される。いくつかの実施態様では、ITKがSHP2より多い場合、刺激シグナルが生成される。いくつかの実施態様では、がんの処置に有用なITKの活性化因子が記載される。別の実施態様では、自己免疫疾患の処置に有用なITKの阻害剤が記載される。いくつかの実施態様では、ITKの活性化因子は、小分子化合物、ポリペプチド、または核酸である。いくつかの実施態様では、ITKの阻害剤は、小分子化合物、ポリペプチド、または核酸である。
【0140】
別の態様では、処置を必要とする対象において疾患を処置する方法は、本明細書に記載のITKの活性化因子または阻害剤の有効量を対象に投与することを含む。
【0141】
いくつかの実施態様では、疾患はがんまたは自己免疫疾患である。
【0142】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、免疫細胞においてPD-1を調節する。免疫細胞の非限定的な例には、T細胞(例えば、Treg)、B細胞、マクロファージ、およびグリア細胞(例えば、アストロサイト、ミクログリア、またはオリゴデンドロサイト)が含まれる。いくつかの実施態様では、免疫細胞はTregである。いくつかの実施態様では、ポリペプチドはPD-1シグナル伝達を活性化する。別の実施態様では、ポリペプチドはPD-1シグナル伝達を阻害する。本発明者らは、驚くべきことに、いくつかの実施態様ではポリペプチドは免疫応答を活性化する一方、別の実施態様ではポリペプチドは免疫応答を抑制することを見出した。
【0143】
いくつかの実施態様では、ITKの活性化因子は、それを必要とする対象において、免疫応答を誘導、促進、または増強することができる。別の実施態様では、ITKの阻害剤は、それを必要とする対象において、免疫応答を低減、抑制、または予防することができる。いくつかの実施態様では、ITKの活性化因子は、小分子化合物、ポリペプチド、または核酸である。いくつかの実施態様では、ITKの阻害剤は、小分子化合物、ポリペプチド、または核酸である。
【0144】
いくつかの実施態様では、PD-1の阻害部位に結合する小分子もまた記載される。いくつかの実施態様では、PD-1の阻害部位に結合する小分子は、それを必要とする対象において、免疫応答を低減、抑制、または予防することができる。いくつかの実施態様では、PD-1の阻害部位に結合する小分子は、自己免疫疾患の処置に有用であり得る。
【0145】
がん
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のポリペプチドの有効量を対象に投与することによってPD-1シグナル伝達を調節することを含む、それを必要とする対象において、がんを処置または予防する方法が提供される。いくつかの実施態様では、ITKの活性化因子の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、がんを処置または予防する方法が提供される。
【0146】
いくつかの実施態様では、がんは、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、上咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、子宮がん、卵巣がん、精巣がん、成人T細胞白血病/リンパ腫、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0147】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、白血病を処置するために有用である。いくつかの実施態様では、PD-1を活性化する本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、白血病を処置するために有用である。これらの実施態様では、PD-1を活性化する本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、免疫応答刺激治療としてインビボおよびエクスビボで有用である。PD-1を活性化する能力は、より強固な免疫応答を可能にする。いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、T細胞が関与する免疫刺激応答または免疫活性化応答を刺激または増強するためにも有用である。いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、PD-1を選択的に活性化することによって、白血病を処置するための宿主における免疫応答を刺激または増強するために有用である。これらの実施態様では、本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、対象中のT細胞を刺激するのに有効な量で対象に投与され得る。本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物で処置され得る白血病の種類には、急性骨髄性白血病(「AML」)、慢性骨髄性白血病(「CML」)、急性リンパ性白血病(「ALL」)、慢性リンパ性白血病(「CLL」)、成人T細胞白血病/リンパ腫(「ATLL」)、および慢性骨髄単球性白血病(「CMML」)が含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
いくつかの実施態様では、ATLLはほぼ成人でのみ診断され、年齢の中央値は60歳代半ばである。いくつかの実施態様では、ATLLには(1)急性、(2)慢性、(3)くすぶり、および(4)リンパ腫性の4つの型がある。いくつかの実施態様では、急性ATLLは最も一般的な型であり、高白血球数、高カルシウム血症、内臓肥大、および高乳糖脱水素酵素を特徴とする。いくつかの実施態様では、リンパ腫性ATLLはリンパ節に発現し、循環リンパ球は1%未満である。いくつかの実施態様では、慢性およびくすぶり型ATLLは、侵攻性の低い臨床経過を特徴とし、長期生存が可能である。いくつかの実施態様では、急性およびリンパ腫性ATLLの4年生存率は5%未満である。いくつかの実施態様では、慢性およびくすぶり型ATLLの4年生存率は、それぞれ26.9%および62%である。いくつかの実施態様では、成人T細胞白血病/リンパ腫は、HTLV-1によって引き起こされる。
【0149】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、ATLLの処置に有用である。いくつかの実施態様では、PD-1を活性化する本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、ATLLの処置に有用である。いくつかの実施態様では、ATLL細胞は、活性化ヘルパー/インデューサーT細胞表現型を示すが、強い免疫抑制活性を示す。いくつかの実施態様では、PD-1を活性化する本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、ATLL細胞の免疫抑制応答を低減する。別の実施態様では、PD-1を活性化する本明細書に開示されるポリペプチドおよび組成物は、ATLL細胞の強い免疫抑制活性を克服するために免疫刺激応答を増加させる。
【0150】
自己免疫疾患
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のポリペプチドの有効量を対象に投与することによってPD-1シグナル伝達を調節することを含む、それを必要とする対象における自己免疫疾患を処置または予防する方法が提供される。いくつかの実施態様では、ITKの阻害剤の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における自己免疫疾患を処置または予防する方法が提供される。
【0151】
自己免疫疾患の非限定的な例には、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗糸球体基底膜症、抗尿細管基底膜抗体腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫疾患、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、軸索・神経性ニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性肉芽腫症、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、バセドウ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、小児自己免疫性精神神経疾患、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、パリー・ロンバーグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多内分泌腺症候群I型、多内分泌腺症候群II型、多内分泌腺症候群III型、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子および精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群(Susac’s syndrome)、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)、血小板減少性紫斑病、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、フォークト-小柳-原田病、およびこれらの組み合わせを含む。
【0152】
等価物
以下に続く代表的な実施例は、本発明の説明に役立つことを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、また限定するように解釈されるべきではない。実際、本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の様々な変更およびそれらの多くのさらなる実施態様は、以下に続く実施例および本明細書に引用された科学文献および特許文献への参照を含む本明細書の全内容から、当業者に明らかになる。さらに、これらの引用文献の内容は、当技術分野の現状を説明するために、参照により本明細書に組み込まれることは理解される。以下の実施例には、様々な実施態様およびその等価物における本発明の実施に適合させることができる重要な追加情報、例示、および指針が含まれる。
【実施例】
【0153】
実施例1.生物学的アッセイ
Jurkat-PD-1-NFATレポーター細胞株(BPS Bioscience)(「PD-1レポーター細胞」)を、ベンダーの仕様書に従って培養した。PD-1レポーター細胞を、384ウェルプレートに20,000細胞/ウェルで分注した。グループ1の細胞は処理しなかった。グループ2と3の細胞は、GibcoTM DynabeadsTM Human T-Activator CD3/CD28 for T Cell Expansion and Activation(100:1 V/V 細胞:ビーズ 比)で活性化した。活性化の前に、グループ3の細胞を配列番号14のアミノ酸配列を有するポリペプチドと5倍過剰の量で15分間プレインキュベートした。すべての細胞を5%CO2、37℃で24時間インキュベートした。
【0154】
24時間培養後、ルシフェラーゼ試薬(One-Step, Thermo Fisher Scientific)を1:1 V/V比で添加し、室温で15分間インキュベートした。発光はVarioscan Instrument(Thermo Fisher Scientific)の100 ms設定で測定した。細胞の3つのグループのRLUを
図1に示す。
【0155】
実施例2.ポリペプチドの設計
図2および
図3は、本明細書に記載のポリペプチドの設計を示す。
図2Aは、PD-L2がPD-1に結合する際に2つの相互作用部位を有することを示している(1つは阻害部位であり、もう1つは活性化部位である)。
図2Bは、ポリペプチドがPD-L2の活性化部位を遮断する時、PD-L2はその阻害部位を通してのみPD-1に結合し、それによってPD-1から抑制シグナルが誘導されることを示している。さらに、
図2Cに示されるとおり、PD-L2の阻害部位を遮断するポリペプチドでは、PD-L2はその活性化部位を通してのみPD-1に結合し、それによってPD-1から活性化シグナルが誘導される。
【0156】
図3はPD-L2変異体の設計を示す。
図3Aに示すとおり、活性化部位が無効化されたPD-L2変異体は、その阻害部位を通じてのみPD-1と結合した。このPD-1への結合は、PD-1のシグナル伝達を介して免疫応答を抑制することができた。さらに、
図3Bに示されるとおり、阻害部位が無効化されたPD-L2の変異体は、活性化部位を通じてのみPD-1に結合し、したがって、PD-1シグナル伝達を通じて免疫応答を活性化した。
【0157】
実施例3.ITKの調節
図4および
図5は、ITKの調節およびその免疫応答への影響を示す。
図4に示されるとおり、SHP2がITKより多い場合は、抑制シグナルが発生した。しかし、ITKがSHP2より多い場合は、刺激シグナルが発生した。ITKとSHP2が同量の場合、免疫応答は抑制的または活性化的のいずれかであった。
図5は、SHP2が上流のPD-1経路によって制御され、ITKが上流のT細胞受容体(TCR)経路の影響を受けることを示す。したがって、ITKの活性化因子は免疫応答を増強し、ITKの阻害剤は免疫応答を抑制する効果があり得る。
図6(T細胞、48時間活性化、Ab/リガンドでIP)はさらに、PD-1に結合したSHP2およびITKのレベルを示す。予め活性化した初代マウスCD4 T細胞を、PD-L1-IgG、PD-L2-IgGまたは抗PD-1マウス遮断抗体(クローンRMP1-14)で処理した5分後に、ビーズでPD-1を免疫沈降させた。ウェスタンブロット(「WB」)アッセイを用いて、異なる処理後のPD-1結合ITKおよびSHP2のレベルを測定したところ、Ab対照群と比較して、PD-L2処理後はITK/SHP2比が増加し、PD-L1処理後はITK/SHP2比がわずかに減少した。
【0158】
実施例4.PD-L2はセントラルメモリーT細胞(「Tcm」)を増加させ、T細胞疲弊を防ぐ
図7Aに示すとおり、フローサイトメトリーでソートしたヒトCD4 T細胞(BioIVT)を、(抗CD3抗体および抗CD28抗体でコートした)Dynaビーズ(Gibco)およびIL-2(100 U/mL - R&D Systems)で72時間刺激した。72時間後、細胞は、PD-L2-IgG(濃度25 μg/mL)で処理された。コントロールウェルは未処理のまま放置した。処理から48時間後、細胞を回収し、洗浄後、蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメトリーで解析した。TcmはCD45RO
high/CD62L
high/CD45RA
lowと定義した。疲弊したT細胞またはターミナルエフェクターT細胞(「Tte」)はCD45RO
low/CD62L
low/CD45RA
highと定義した。
図7B-7Cに示すとおり、PD-L2-IgG治療は、Tcmの有意な増加(*p<0.05、
図7B)およびTteの有意な減少(*p<0.05、
図7C)をもたらした。
【0159】
実施例5.PD-L2はTcmの生成および疲弊の防止に必要である
図8Aに示すとおり、フローサイトメトリーでソートしたヒトCD4 T細胞(BioIVT)を、(抗CD3抗体および抗CD28抗体でコートした)Dyna beads(Gibco)とIL-2(100 U/mL - R&D Systems)で24時間刺激した。24時間後、細胞は、抗PD-L2抗体(濃度100 μg/mL)で処理されるか、または未処理のまま放置された。処理から48時間後、細胞を回収し、洗浄後、蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメトリーで解析した。TcmはCD45RO
high/CD62L
high/CD45RA
lowと定義した。TteはCD45RO
low/CD62L
low/CD45RA
highと定義した。
図8B-8Cに示すとおり、PD-L2とPD-2との結合を抗PD-L2抗体で遮断すると、Tcmの発生は阻止され(****p<0.0001、
図8B)、Tteは有意に増加した(
図8C)。
【0160】
実施例6.PD-L2はCD4およびCD8 T細胞の活性化の開始に必要である
フローサイトメトリーでソートしたヒトCD4およびCD8 T細胞(BioIVT)を、(抗CD3および抗CD28抗体でコートした)Dyna beads(Gibco)およびIL-2(100 U/mL - R&D Systems)で24時間刺激した。24時間後、細胞は抗PD-L2抗体(濃度100 μg/mL)で処理されるか、または未処理のまま放置された。処理から48時間後、細胞と上清を回収した。上清はCBA assay(BD Biosciences)を用いてIFNgおよびTNFを分析した。細胞は洗浄後、蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメトリーで解析した。CD4 T細胞上のCD25発現、CD8 T細胞におけるグランザイムBおよびIFNgを、活性化および機能の指標として用いた。抗PD-L2処理は、CD4 T細胞の活性化を低下させたとともに(
図9Bに示す)、
図9Aに示すとおり、CD4 T細胞のサイトカイン産生を阻害した。同様に、PD-L2遮断は、CD8 T細胞上のCD25発現を減少させ(
図9Cに示す)、細胞内グランザイムBおよびIFNgを減少させた(
図9Dに示す)。
【配列表】
【国際調査報告】