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特表2024-546655消化管毒性のないシクロピロクスの効果的な経口投与のための製剤
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  • 特表-消化管毒性のないシクロピロクスの効果的な経口投与のための製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】消化管毒性のないシクロピロクスの効果的な経口投与のための製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4412 20060101AFI20241219BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241219BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241219BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K31/4412
A61P31/10
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533816
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2022085126
(87)【国際公開番号】W WO2023105031
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21383119.1
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524212888
【氏名又は名称】アトラス、モレキュラー、ファルマ、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS MOLECULAR PHARMA, S.L.
(71)【出願人】
【識別番号】518007245
【氏名又は名称】アソシアシオン・セントロ・デ・インベスティガシオン・コオペラティバ・エン・ビオシエンシアス-セイセ ビオグネ
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オスカー、ミレット、アギラル、ガリンド
(72)【発明者】
【氏名】ホアキン、カスティーリャ、カストリジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガネコ、ベルナルド、セイスデドス
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ、モレノ、チャルコ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB01
4C076CC32
4C076DD37
4C076DD37S
4C076DD38
4C076DD38R
4C076DD41
4C076DD41R
4C076DD45
4C076DD45R
4C076DD59
4C076DD59T
4C076DD63
4C076DD69
4C076DD69U
4C076EE23
4C076EE36
4C076FF11
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086GA14
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA07
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、消化管毒性を示さず、治療上有効な量のシクロピロクス、トコフェロールおよびアルギナートまたはそれらの誘導体を含んでなるシクロピロクスまたはその誘導体の経口組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量のシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ;
トコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル;および
アルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル
を含んでなる、経口医薬組成物。
【請求項2】
CPXまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグと、トコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテルと、アルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテルとの重量比が、1:1~4:0.5~2.5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0.1~10%のシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ;
0.1~10%のトコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル;および
0.1~10%のアルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル
を含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
シクロピロクスの塩がシクロピロクスオラミンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
トコフェロールがα-、β-、γ-、もしくはδ-トコフェロール、またはトコフェロールアセタート、トコフェロールプロピオナート、トコフェロールブチラート、トコフェロールアロファナート、トコフェロールエナンタート、トコフェロールミリスタート、トコフェロールパルミタート、トコフェロールステアラート、トコフェロールリノラート、トコフェロールベヘナート、トコフェロールニコチナート、トコフェロールホスファート、トコフェロールスルファート、トコフェロールスクシナート、トコフェロールシトラコナート、トコフェロールα-メチルシトラコナート、トコフェロールイタコナート、トコフェロールマレアート、トコフェロールグルタコナートおよびトコフェロールフタラートならびにトコフェロールの以上のジカルボン酸エステルのポリエチレングリコールエステルからなる群から選択されるそのエステル;好ましくは、トコフェロールがトコフェルソランである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アルギナートがアルギン酸、アルギン酸塩およびそのエステルからなる群から選択され;好ましくは、アルギナートがアルギン酸ナトリウムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
保存剤、香味剤および/または着色剤をさらに含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
保存剤がグリセリン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、保存剤がベンジルアルコールである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
香味剤が植物から抽出された天然香味剤、合成化合物およびそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、香味剤がイチゴアルデヒドである、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
着色剤がエリスロシン、水可溶性FDおよびC色素、アルミナ水和物に懸濁された水不溶性FDおよびC色素、およびレーキ顔料ならびにそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、着色剤がエリスロシンである、請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
約1~40mg/mlのシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、例えば、CPX-O、
約10~90mg/mlのトコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えば、トコフェルソラン、
約10~50mg/mlのアルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えば、アルギン酸ナトリウム、
約1~40mg/mlの保存剤、例えば、ベンジルアルコール、
約0.1~5mg/mlの香味剤、例えば、イチゴアルデヒド、
≦約1mg/mlの着色剤、例えば、エリスロシン、および

を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
≦約25mg/mlのシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、例えば、CPX-O、
≦約50mg/mlのトコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えば、トコフェルソラン、および
≦約35mg/mlのアルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えば、アルギン酸ナトリウム
を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
約20mg/mlのシクロピロクスオラミン、
約50mg/mlのトコフェルソラン、
約30mg/mlのアルギン酸ナトリウム、
約20.92mg/mlのベンジルアルコール、
約1mg/mlのイチゴアルデヒド、
約0.028mg/mlのエリスロシン、および

を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
医薬において使用するための請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
シクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグによって治療可能および/または予防可能であることが知られている疾患の治療および/または予防において使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
消化管毒性を防ぐ、シクロピロクス(CPX)およびシクロピロクス誘導体の経口投与のための方法が提供される。提供される処方により、活性種に起因する消化管毒性を伴わずに、治療上有効な量のCPXおよびそれらの誘導体の経口投与が可能となる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前臨床試験で活性が証明された薬物を用いた臨床試験が失敗する主な原因は、薬理学的特性の欠陥とそれに伴う毒性にある。安全であるためには、薬物は体内から完全に、理想的には活性の時間枠の後に時間がたたずに排出され、生物において毒性作用が報告されていないことが必要である。そのためには、薬物の異化作用(薬物動態学、PK)が薬物の薬理作用(薬力学)と調和していなければならない。薬物毒性とは、ある化合物が生物に引き起こし得る傷害のレベルを指す。薬物の毒性作用は用量依存的であり、最終的には活性種に対して投与可能な最大用量が制限される。適切な製剤で投与すれば、所与の薬物の毒性作用を改善またはさらには抑制することにより、薬物の治療域を拡大することができる場合もある。
【0003】
シクロピロクス(CPX)として知られる6-シクロヘキシル-1-ヒドロキシ-4-メチルピリジン-2-オンまたはシクロピロクスのオラミン塩形態(CPX-O)は、付加的な抗菌および抗炎症活性を有する市販の局所抗真菌剤である。シクロピロクスは、真菌性皮膚感染症の治療向けに1%クリームまたはローション、0.77%ゲルとして、脂漏性皮膚炎の治療向けに1%シャンプーとして、爪真菌症の治療向けに8%ネイルラッカーとしてなど、種々の適応および種々の保有者に対し米国で承認されている。いずれの場合も投与経路は局所である。さらに、CPXの経口投与は現在、先天性赤血球造血性ポルフィリン症(EP3315129A1)、その他の血液悪性腫瘍、黒色腫(CN103191110A)、尿路上皮癌3,4、乳管内癌5,6、膀胱癌(WO2016077346A1)、大腸癌、癲癇(CN105343071A)、および多発性嚢胞腎疾患などの希少疾患における使用を評価するために調査中である。しかし、CPXの経口投与は、その全身バイオアベイラビリティを低下させる重大な初回通過効果のために制限されている。
【0004】
さらに重要なことに、経口投与による送達は、これら全ての潜在的適用にとって有益であるにもかかわらず、CPXの経口投与は消化管(GI)毒性を伴う。具体的には、シクロピロクスオラミンを血液悪性腫瘍患者に経口投与した第I相試験(臨床試験登録ID:NCT00990587)が実施された。Mindenらによって実施された第I相臨床試験では、80mg/m(2.2mg/kg)を1日4回投与されたコホートにおいて、グレード3のGI用量制限毒性(DLT)と腸炎が3/4人の患者に見られた。全体として、40mg/m(1.1mg/kg)以下のシクロピロクスオラミンの1日1回投与は十分に忍容された。しかし、5mg/m(0.13mg/kg)を超える用量を1日1回投与した6名(31.6%)の患者に、試験薬に関連する可能性のあるグレード1および2のGI毒性が見られた。
【0005】
CPXの全身利用性を改善するために、いくつかのプロドラッグ形態が提案されている。具体的には、ホスホリル-オキソ-メチレン基を所定の水酸基に化学的に結合させて安定な実体を得ることができる。このような戦略は、WTマウスおよび先天性赤芽球性ポルフィリン症のマウスモデルにおいて、GI毒性を効果的に抑制した。しかし、活性の点では、CPXのリン酸化はCEP細胞モデルで良好な結果をもたらしたが、CEPマウスモデルに投与した場合には有効性を示さなかった10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
総じて、CPXおよび/またはCPX-Oなどのその誘導体について、経口投与での治療的利用を可能にする適切な製剤を提供する必要性は依然として大きい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、上記の必要性の1以上を、シクロピロクス(CPX)およびシクロピロクス誘導体の経口投与のための新規な組成物を提供することにより解決する。有利には、提供される組成物には、この有効成分に関する従来技術で見られる消化管毒性および全身性バイオアベイラビリティの問題がない。
【0008】
よって、本発明は、
治療上有効な量のシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ;
トコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル;および
アルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル
を含んでなる経口医薬組成物に関する。
【0009】
付加的賦形剤または材料も本発明の医薬組成物に含まれてよい。
【0010】
さらなる態様は、医薬において、より詳しくは、限定されるものではないが、血液悪性腫瘍、癌、真菌および細菌感染症、炎症性疾患、癲癇および多発性嚢胞腎疾患を含む、シクロピロクスおよびその誘導体によって治療可能および/または予防可能であることが知られている疾患の治療および/または予防において使用するための、上記で定義されるような本発明の医薬組成物である。また、対象においてシクロピロクスおよびその誘導体によって治療可能および/または予防可能であることが知られている疾患を治療および/または予防するための方法も開示され、前記方法は、前記対象に上記で定義されたような本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる。好ましい実施形態では、前記対象はヒトである。
【0011】
これらの態様およびそれらの好ましい実施形態を、以下、詳細な説明および特許請求の範囲でさらに定義する。
【0012】
本発明、その目的および利点をより良く理解するために、以下の図面を本明細書に添付する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1:シクロピロクス製剤の消化管効果。25mgのシクロピロクス(強制経口投与)(A)、25mg/kgのシクロピロクスオラミン(B)および100mg/kgのシクロピロクスオラミン(C)を投与した個々のマウスの腹部画像。両剤とも、トコフェルソランおよびアルギン酸ナトリウムおよび表1に示される残りの賦形剤とともに、本発明でATL-001として特定される内用液として調剤した。
図2図2:シクロピロクスおよびシクロピロクス-Glu(シクロピロクスグルクロニド)の平均血清レベル。10mg/kgのシクロピロクスオラミンIV(IV10)、200mg/kgの経口シクロピロクス-オラミン(C200),または100および200mg/kgの経口CPX-オラミンをATL-001(それぞれF100およびF200)として調剤し、マウスに投与した。補正した関数を実線で示す。各誘導体のIC50値を破線で示す。
図3図3:シクロピロクス、シクロピロクス-Gluおよびシクロピロクスの総血清レベル。マウスにCPX(A)、CPXとトコフェルソランの組合せ(B)またはCPXとトコフェルソランおよびアルギナートの組合せ(C)を投与した。
図4図4:異なる割合のCPX、トコフェルソランおよびアルギン酸ナトリウムの72日間安定性試験。本マトリックスは、一定の補助剤としてベンジルアルコール、エリスロシン、およびイチゴアルデヒドの存在を含む。色は、特定の条件の濁度変動を表し、赤はより高い濁度値(混合物の沈殿)、黄色はより低い不透明度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、経口投与後のCPX消化管忍容性を改善する生薬製剤に関する。医薬製剤は、以下の成分:CPXまたはCPX誘導体、トコフェロール化合物、およびアルギナート化合物の組合せに基づく。CPXまたはその誘導体は有効成分として働くが、トコフェロールおよびアルギナート化合物は、薬学上許容される賦形剤と見なされ得る。
【0015】
具体的には、本発明は、CPXのGI毒性に対抗するためのトコフェロール化合物とアルギナート化合物の組合せに関する。他の任意選択の賦形剤を製剤に添加してもよいが、実施例で実証されるように、それらはCPXのGI毒性に寄与しない。さらに、本発明の組成物は、参照製品、すなわち有効成分単独の経口投与と薬物動態学的に生物学的に同等であり得、また適切な安定性も示し得ることが見出されている。
【0016】
化合物シクロピロクスは、1970年代に、それが抗真菌特性を示す11と記載されたUS 3883545で初めて開示された。シクロピロクスの化学名は、6-シクロヘキシル-1~ヒドロキシ-4-メチル-2(1H)-ピリドンであり、分子式はC1217NO、分子量は207.27である。CAS登録番号は[29342-05-0]である。化学構造は、以下のスキーム1に示される。
【化1】
【0017】
本発明はまた、シクロピロクス誘導体、すなわち、シクロピロクスの全ての薬学上許容される塩、溶媒和物およびプロドラッグも企図する。例えば、シクロピロクスは、例えば、6-シクロヘキシル-1-ヒドロキシ-4-メチル-2(1H)-ピリドンと2-アミノエタノールを1:1比で含んでなるシクロピロクスオラミン(CAS登録番号[41621-49-2])であり得る。
【0018】
「塩」という用語は、本発明に従って使用される化合物のあらゆる形態として理解されなければならず、その場合、前記化合物はイオン形態であるか、または帯電して対イオン(カチオンまたはアニオン)と共役している。
【0019】
シクロピロクスの塩は、好ましくは、塩基付加塩または金属塩であり得、それらは親化合物から従来の化学的方法によって合成され得る。アルカリ付加塩の例としては、例えばアンモニウムなどの無機塩、および例えばエチレンジアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、グルタミンおよび塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が挙げられる。金属塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、およびリチウム塩が挙げられる。特定の実施形態によれば、シクロピロクスの塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)の塩;アンモニウム塩;第一級アミン塩(例えば、C-Cアルキルアミン);第二級アミン塩(例えば、C-Cジアルキルアミン);第三級アミン塩(例えば、C-Cトリアルキルアミン);ジアミン塩;アルカノールアミン塩(例えば、C-CアルカノールアミンまたはC-CジアルカノールアミンまたはC-Cトリアルカノールアミン);C-CジアルキルC-Cアルカノールアミン;またはC-CアルキルC-Cジアルカノールアミンである。好ましいシクロピロクス塩は、シクロピロクスオラミンである。
【0020】
本発明による「溶媒和物」という用語は、この化合物が非共有結合を介して別の分子(極性溶媒である可能性が高い)に結合されている本発明による化合物の任意の形態を意味すると理解され、特に水和物およびアルコール酸塩(例えばメタノール酸塩)を含む。溶媒和の方法は、当技術分野で一般に知られている。
【0021】
「プロドラッグ」という用語はその広義で使用され、in vivoでシクロピロクスに変換される誘導体を包含する。このような誘導体は、当業者には容易に想到し、限定されるものではないが、CPXの以下の誘導体:WO2012075396 A2に記載されているようなPOM(ホスホリル-オキソ-メチレン)エーテルなどのエーテル;カルボン酸エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩スルホン酸エステルを含むエステル;カルバミン酸塩;およびアミドが挙げられる。所与の作用化合物のプロドラッグを生成する周知の方法の例は当業者に公知であり、Krogsgaard-Larsen et al. “Textbook of Drug design and Discovery” Taylor & Francis (April 2002)に見出すことができる。シクロピロクス-POMプロドラッグの化学構造は、以下のスキーム2に示される。
【化2】
【0022】
トコフェロールは、ビタミンE活性を示す化合物種であり、α(アルファー)、β(ベータ)、γ(ガンマ)およびδ(デルタ)と称される4つの形態で存在し、その全てならびにその誘導体および組合せが本明細書の文脈に含まれる。1つの特定の実施形態では、トコフェロール化合物の形態は、α-トコフェロールまたはβ-トコフェロール、好ましくは、α-トコフェロールである。トコフェロールにはまた、限定されるものではないが、立体異性体(例えば、α-、β-、γ-,またはδ-トコフェロールの+および-立体異性体およびラセミ混合物(+/-))も含まれる。
【0023】
トコフェロール誘導体には、例えば、塩、エステル(例えば、カルボン酸エステル、ホスホエステルおよび硫酸エステル)またはそれらのエーテルが含まれる。特定の実施形態では、トコフェロール化合物は、α-トコフェロールまたはそのエステルである。好適なトコフェロールエステル(トコフェリル酸エステル)には、トコフェロールのモノカルボン酸およびジカルボン酸または他の多塩基酸とのエステルならびにリン酸および硫酸とのエステルの両方が含まれる。
【0024】
特定の実施形態では、トコフェロールのエステルは、C-C22モノまたはジカルボン酸とのエステルである。
【0025】
特定の実施形態では、トコフェロールエステルは、例えば、トコフェロールアセタート、トコフェロールプロピオナート(例えば、n-およびイソ-プロピオナート)、トコフェロールブチラート(例えば、n-およびイソ-ブチラート)、トコフェロールアロファナート、トコフェロールエナンタート、トコフェロールミリスタート、トコフェロールパルミタート、トコフェロールステアラート、トコフェロールリノラート、トコフェロールベヘナート、トコフェロールニコチナート、トコフェロールホスファート、トコフェロールスルファート、トコフェロールスクシナート、トコフェロールシトラコナート、トコフェロールα-メチルシトラコナート、トコフェロールイタコナート、トコフェロールマレアート、トコフェロールグルタコナートおよびトコフェロールフタラートならびに以上のトコフェロールのジカルボン酸エステルのポリエチレングリコールエステルからなる群から選択され得る。
【0026】
特定の実施形態では、トコフェロールは、β-トコフェロール、トコフェロールのソルビタンエステル、d-α-トコフェロール、d,l-α-トコフェロール、d-α-トコフェロールアセタート、d,l-α-トコフェロールアセタート、d-α-トコフェロールスクシナート、d,l-α-トコフェロールスクシナート、d-α-トコフェロールニコチナート、d,l-α-トコフェロールニコチナート、トコフェリルポリエチレングリコールスクシナート、例えば、d-α-トコフェリルポリエチレングリコールスクシナートまたはd,l-α-トコフェリルポリエチレングリコールスクシナートからなる群から選択される。
【0027】
特定の実施形態では、トコフェロールは、トコフェロールのジカルボン酸エステルのポリエチレングリコールエステル(例えば、トコフェロールスクシナート、トコフェロールシトラコナート、トコフェロールαーメチルシトラコナート、トコフェロールイタコナート、トコフェロールマレアート、トコフェロールグルタコナートおよびトコフェロールフタラートのPEGエステル)から選択され、PEG部分は、200~6000、例えば、200~1500の分子量を有する。
【0028】
特定の実施形態では、トコフェロールは、トコフェリルポリエチレングリコールスクシナートであり、好ましくは、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール200スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール200スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール300スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール300スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール400スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール400スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール500スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール500スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール600スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール600スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール700v、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール700スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール800スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール800スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール800スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール800スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール900スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール900スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1100スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1100スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1200スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1200スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1300スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1300スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1400スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1400スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1450スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1450スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1500スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1500スクシナート、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1600スクシナート、d,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1600スクシナート、およびd-α-トコフェリルポリエチレングリコール1700スクシナートおよびd,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1700スクシナートからなる群から選択される。
【0029】
PEGトコフェロールエステルを含むトコフェロール誘導体は、現況技術12において広く知られている。
【0030】
本発明による使用に好適なトコフェロールは、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート(以下に示されるトコフェルソランでは、ビタミンEzTPGSまたは単にTPGS)またはd,l-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナートである。
【0031】
トコフェルソラン(TPGSまたはビタミンE TPGSとしても知られる)は、スクシナートリンカーを介してポリエチレングリコール1000に連結されたd-α-トコフェロールスクシナートの水溶性両親媒性製剤である。この分子の化学名は、1-O-(2-ヒドロキシエチル)4-O-[2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-3,4-ジヒドロクロメン-6-イル]ブタンジオアートであり、分子式はC3558であり、分子量は574.8である。CAS登録番号は、[30999-06-5 | 9002-96-4]である。化学構造は以下のスキーム3に示される。
【化3】
【0032】
TPGSは、ビタミンEの親油性テールと親水性のPEGヘッドから構成される両親媒性構造を有し、0.02%w/wという低い臨界ミセル濃度(CMC)を有する。親水性-親油性バランス値は13.2である。TPGSは、非イオン性界面活性剤であり、細胞浸透促進剤であることが分かっている13。これまでのところ、消化管毒性に対処するためのCPXとこの賦形剤の併用を提示しているのは本研究が初めてである。TPGSは、安全な医薬品アジュバントとしてFDA、EMAの認可を受けている生体適合性かつ生分解性の物質である。ビタミンE TPGSのモノグラフは現在の米国薬局方/国民医薬品集(USP/NF)に収載されている。
【0033】
アルギナート(アルギン酸)は、L-グルクロン酸とD-マンヌロン酸残基が1,4-グリコシドリンカーを介して連結されたものから構成される、FDAによって承認された親水性かつ陰イオン性の多糖である。この分子の化学名は、3-(6-カルボキシ-3,4-ジヒドロキシ-5-ホスファニロキサン-2-イル)オキシ-4,5-ジヒドロキシ-6-ホスファニルオキシオキサン-2-カルボン酸である。そのMWは418.23であり、分子式はC122012をモノマー単位とする。CAS登録番号は、[9005-32-7]である。化学構造は以下のスキーム4に示される。
【化4】
【0034】
アルギナートは、その生体適合性、生分解性、および非免疫原性のために生物医学科学で広く使用されている。アルギナートは、水可溶性であり、ナノ粒子および/またはマイルドなゲルを形成することができる14。アルギナートナノ粒子は、糖尿病15、非びらん性逆流症16、結核17、大腸肝転移18などの多くの疾患において、DNA、ペプチド、抗原およびタンパク質などの分子の薬物送達システムとして応用されている。
【0035】
塩、エステル(カルボン酸エステル、ホスホエステルおよび硫酸エステル)およびそれらのエーテルなど、多数のアルギナート誘導体ならびにそれらの組合せが記載されており19、これらは全て本発明の文脈に含まれる。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、アルギナートは、アルギン酸、アルギン酸塩およびそのエステルから選択される。
【0037】
本発明の範囲内にあるアルギン酸塩の例としては、限定されるものではないが、塩基付加塩(例えば、アンモニウム、および有機アルカリ塩、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、グルタミンおよび塩基性アミノ酸塩)または金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、および リチウム塩)が挙げられる。特定の実施形態では、アルギン酸塩は、アルギン酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム塩)、アルギン酸のアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム、マグネシウム塩)、アルギン酸の亜鉛塩、およびアルギン酸のアンモニウム塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、アルギン酸塩は、アルギン酸のアルカリ金属塩、アルギン酸のアンモニウム塩、およびアルギン酸のマグネシウム塩からなる群から選択される。より好ましくは、アルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。
【0038】
特定の実施形態では、本発明で使用されるアルギナートは、アルギナートのC-C-ジオールエステルまたはアルギナートのC-C-トリオールエステルなどのエステル化アルギナートである。本明細書で使用する場合、「エステル化アルギナート」または「アルギン酸エステル」は、アルギン酸のカルボキシル基のいくつかがエステル化されたアルギン酸を意味する。残りのカルボン酸基は、場合により、薬学上許容される塩として(部分的または完全に)中和されていてもよい。例えば、プロピレングリコールアルギナートは、カルボキシル基のいくつかがプロピレングリコールでエステル化され、残りのカルボン酸基が場合により、薬学上許容される塩として(部分的または完全に)中和されていてもよい、アルギン酸のエステルである。アルキレングリコールアルギナートは、最も一般的には、カルボキシル基の30%~90%がプロピレングリコールでエステル化されており、残りの基が遊離状態かまたは塩基で中和されている、アルギン酸のプロピレングリコールエステルとして入手可能である。より好ましくは、アルギン酸エステルは、エチレングリコールアルギナート、トリメチレングリコールアルギナート、プロピレングリコールアルギナート、ブチレングリコールアルギナート、イソブチレングリコールアルギナート、ペンチレングリコールアルギナートまたはグリセロールアルギナートおよびそれらの混合物である。プロピレングリコールアルギナート(PGA)がさらにより好ましい。
【0039】
経口投与のために本明細書で提供される医薬組成物は、固体、半固体、または液体の形態で提供され得る。特定の実施形態では、組成物は、半固体または液体として製剤化される。あるいは、組成物は、最終的な使用のために半固体または液体組成物を得るように液体もしくは溶媒に溶解され得るまたは液体もしくは溶媒と混合され得る固体(例えば、発泡性または非発泡性の粉末または顆粒)として製剤化され得る。あるいは、本組成物は、最終的な使用のために液体組成物を得るように液体もしくは溶媒に溶解され得るまたは液体もしくは溶媒と混合され得る半固形物として製剤化され得る。好適な半固体および液体経口組成物としては、限定されるものではないが、経口ミスト、溶液、エマルション、懸濁液、エリキシル、およびシロップが挙げられる。特定の実施形態では、本発明の組成物は溶液である。
【0040】
「組成物」、「医薬組成物」、「製剤」、「医薬製剤」、「生薬製剤」、「剤形」などは、本明細書では同義的に使用される。
【0041】
トコフェロールおよびアルギナート賦形剤の他、本発明の組成物は、当業者に公知の1種類以上の付加的な薬学上許容される賦形剤をさらに含んでなってもよい。適当な賦形剤および使用量の選択は、一つには、製剤に望まれる物理的品質(粘度、舌触りなど)によって異なる。
【0042】
「薬学上許容される」とは、本明細書では、生物学的にまたはそれ以外の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、その材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こさずに、またはそれが含有される組成物の他のいずれの成分とも有害な相互作用なく、患者に投与される医薬組成物に配合され得る。好ましくは、本明細書で使用する場合、「薬学上許容される」とは、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されていること、または米国薬局方またはその他の一般に認知されている薬局方で動物、より詳しくは、ヒトにおける使用に関して収載されていることを意味する。
【0043】
「賦形剤」という用語は、特定の目的のために製剤中に添加される、活性物質以外の医薬品の構成要素を指す(定義は欧州医薬品庁-EMAから入手)。賦形剤は、好ましくは、「担体、アジュバントおよび/またはビヒクル」を含む。担体とは、薬物の送達と有効性を向上させるために物質が配合される形態のことである。薬物担体は、in vivoでの薬物作用を延長し、薬物代謝を減少させ、薬物毒性を軽減するために、制御放出技術のような薬物送達システムで使用される。担体はまた、薬理作用の標的部位への薬物送達の有効性を高めるための設計にも使用される(U.S. National Library of Medicine, National Institutes of Health)。アジュバントは、予測可能な方法で有効成分の作用に影響を与える、薬物製品製剤に添加される物質である。ビヒクルは、医薬品の投与に嵩を与える媒体として使用され、好ましくは治療作用を持たない賦形剤または物質である(Stedman’s Medical Spellchecker, (コピーライト)2006 Lippincott Williams & Wilkins)。
【0044】
例示的賦形剤としては、限定されるものではないが、結合剤、増量剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤、緩衝剤、着色剤、香味剤、甘味剤、保存剤、乳化剤、懸濁および分散剤、有機酸および二酸化炭素源が挙げられる。いくつかの賦形剤は、複数の目的で機能し得る。
【0045】
結合剤または造粒剤は、錠剤に凝集性を与え、圧縮後も錠剤が完全な状態で留まることを保証する。好適な結合剤または造粒剤としては、限定されるものではないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびアルファー化デンプン(例えば、デンプン1500)などのデンプン;ゼラチン;スクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜、およびラクトースなどの糖類;アラビアガム、アルギン酸、アルギナート、アイリッシュモスの抽出物、パンワールガム、ガッティガム、イサブゴールハスクの粘液質、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム、カラマツ・アラボガラクタン、粉末トラガカントガム、およびグアーガムなどの天然および合成ガム;エチルセルロース、セルロースアセタート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース;AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corp.、Marcus Hook、PA)などの微晶質セルロース;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
好適な増量剤または充填剤としては、限定されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム、微晶質セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファー化デンプン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
好適な希釈剤としては、限定されるものではないが、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、粉末糖、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
好適な崩壊剤としては、限定されるものではないが、寒天;ベントナイト;メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;木製品;天然海綿;陽イオン交換樹脂;アルギン酸;グアーガムおよびビーガムHVなどのガム;シトラスパルプ;クロスカルメロースなどの架橋セルロース;クロスポビドンなどの架橋ポリマー;架橋デンプン;炭酸カルシウム;グリコール酸ナトリウムデンプンなどの微晶質セルロース;ポラクリリンカリウム;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、およびアルファー化デンプンなどのデンプン;粘土;アライン;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0049】
好適な湿潤剤としては、限定されるものではないが、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0050】
好適な滑沢剤としては、限定されるものではないが、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;鉱油;軽油;グリセリン;ソルビトール;マンニトール;ベヘン酸グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG)などのグリコール;ステアリン酸;ラウリル硫酸ナトリウム;タルク;落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油を含む水素化植物油;ステアリン酸亜鉛;オレイン酸エチル;ラウリン酸エチル;寒天;デンプン;リコポディウム;シリカまたはシリカゲル、例えば、AEROSIL(登録商標)200(W.R. Grace Co.、Baltimore、MD)およびCAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co. of Boston、MA);およびそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
好適な流動促進剤としては、限定されるものではないが、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co. of Boston、MA)、あるベストフリータルク、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0052】
好適な緩衝剤としては、限定されるものではないが、クエン酸、リン酸水素二価ナトリウム、グリシン、塩酸、氷酢酸、酢酸ナトリウム三水和物、クエン酸三ナトリウム、塩化カリウム、ヒドロキシメチルアミノメタン、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
好適な着色剤としては、限定されるものではないが、エリスロシン、承認、認証された任意の水可溶性FDおよびC色素、アルミナ水和物に懸濁された水不溶性FDおよびC色素、およびレーキ顔料ならびにそれらの混合物が挙げられる。レーキ顔料は、重金属の含水酸化物への水溶性色素の吸着により不溶性形態の染料とした組合せである。特定の実施形態では、本発明の組成物は少なくとも1つの着色剤を含み、好ましくはエリスロシンである。
【0054】
好適な香味剤としては、限定されるものではないが、フルーツ(オレンジ、モモ、ナシ、ペパーミント、パイナップル、クランベリー、ブドウ、グレープフルーツ、グアバ、ホップ、レモン、ライム、麦芽、糖蜜、ミックスベリー、ラズベリー、バラ、バニラ、ウィンターグリーン、スペアミント、イチゴ)などから抽出された天然香味剤、ならびにイチゴアルデヒド、ペパーミントおよびサリチル酸メチル、およびそれらの混合物など、心地よい味覚をもたらす合成化合物または化合物のブレンドが挙げられる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの香味剤を含んでなり、好ましくは、イチゴアルデヒドである。
【0055】
好適な甘味剤としては、限定されるものではないが、グルコース、フルクトース、スクロース、キシリトール、スクラロース、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリトリトール、トレハロース、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、マルトデキストリン、ポリデキストロース、サッカリンおよびアスパルテーム、およびそれらの混合物などの天然および人工甘味剤が挙げられる。
【0056】
好適な保存剤としては、限定されるものではないが、グリセリン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコールおよびそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの保存剤を含んでなり、好ましくは、ベンジルアルコールなどの抗微生物性または静菌性保存剤である。
【0057】
好適な乳化剤としては、限定されるものではないが、ゼラチン、アラビアガム、トラガカントガム、ベントナイト、および界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(TWEEN(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート80(TWEEN(登録商標)80)、トリエタノールアミンオレアート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
好適な懸濁および分散剤としては、限定されるものではないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカントガム、ビーガム、アラビアガム、ナトリウムカルボメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、半固体または液体剤形に再構成されるように、非発泡性または発泡性、顆粒および粉末などの固体剤形で提供することができる。発泡性顆粒または粉末に使用される薬学上許容される賦形剤としては、有機酸および二酸化炭素源が挙げられる。有機酸としては、例えば、クエン酸および酒石酸が挙げられる。二酸化炭素源としては、例えば、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0060】
経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、口腔ミスト、溶液、乳剤、懸濁剤、エリキシル剤、およびシロップ剤を含む液体および半固体剤形で提供することができる。口腔ミストまたは口腔スプレーは、口中でエアロゾル化する液体である。乳剤は、一方の液体がもう一方の液体中に小球の形で分散している二相系であり、水中油型または油中水型であり得る。乳剤は、薬学上許容される非水性の液体または溶媒、および乳化剤を含み得る。懸濁液は、薬学上許容される懸濁化剤を含み得る。溶液は、水性、アルコール性、またはヒドロアルコール性であり得る。例えば、水性アルコール溶液は、薬学上許容されるアセタール、例えば、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタール;および1以上のヒドロキシル基を有する水混和性溶媒、例えば、プロピレングリコールおよびエタノールを含み得る。エリキシル剤は、透明で甘味のある、ヒドロアルコール溶液である。シロップ剤は、例えばスクロースなどの糖の濃縮水溶液である。
【0061】
本明細書に提供される医薬組成物は一般に、溶媒を含んでなるか、または使用前に、すなわち、経口投与のために、溶媒に溶解させるか、または溶媒と混合する。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、溶媒として、好ましくは、単独溶媒として水を含んでなるが、上記で示したように、非水性溶媒ならびに水と1以上の非水性溶媒の組合せも企図される。非水性溶媒としては、エチルアルコール、ソルビトール、シリコーンオイル、植物油、グリセリン、水素化植物油、レシチン、密蝋、トコフェロール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG200、300、400または600)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、プロピレングリコール、Miglyol(登録商標)812(中性油、中鎖脂肪酸のトリグリセリド)、オメガオイル、ダイズ油、カノーラ油、ヒマワリ油、マカダミア油、落花生油、ブドウ種子油、カボチャ種子油、アマニ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ベニバナ油、ゴマ油、マツ核油、共役リノール酸、アーモンド油、モモ核油、杏仁油、クルミ油、ナタネ油、ラズベリー種子油、ビルベリー種子油、クランベリー種子油、ザクロ種子油およびその他果実の種子油、シーバックソーン油、エゴマ油、ジアグリセロール(DAG)油、オメガ3の植物由来供給源、エイコサペンタエン酸(EPA)の発酵供給源、ドコサヘキサエン酸(DHA)の発酵供給源、魚油およびヒルオイルを含むEPA、DHAおよび他のオメガ3の組合せの発酵供給源、ガンマリノレン酸(GLA)またはステアリドン酸(SA)の供給源、精留ココナッツ油、およびそれらの組合せなどのアルコールおよび油およびその他の液体が挙げられる。DHA、EPAおよびα-リノール酸(ALA)の供給源としては、限定されるものではないが、魚油、酵母またはその他の微生物もしくは単細胞源および植物油、主として、アマニ、ダイズ、およびカノーラが挙げられる。GLAの供給源としては、限定されるものではないが、月見草油、カシス種子油、ボラージ油、およびエキウム油が挙げられる。
【0062】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ベンジルアルコールをさらに含んでなる。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エリスロシンをさらに含んでなる。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、イチゴアルデヒドをさらに含んでなる。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、以下の付加的賦形剤:ベンジルアルコール、エリスロシン、および/またはイチゴアルデヒドのうち1以上または全てをさらに含んでなる。
【0063】
ベンジルアルコール(フェニルメタノール、CAS登録番号[100-51-6])は、静菌性保存剤(スキーム5.a)として製剤中に含まれてよい。エリスロシン(ジナトリウム;2’,4’,5’,7’-テトラヨード-3-オキソスピロ[2-ベンゾフラン-1,9’-キサンテン]-3’,6’-ジオラート、CAS登録番号[16423-68-0])およびイチゴアルデヒド(3-メチル-3-フェニルオキシラン-2-カルボン酸エチル、CAS登録番号[77-83-8])は、それぞれ赤色着色剤および香味剤(スキーム5.b-c)として添加され得る。
【0064】
【化5】
【0065】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、溶媒として、好ましくは、ユニークな溶媒として水を含んでなる。
【0066】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、CPXまたはCPX誘導体、トコフェルソラン(TPGS)、アルギン酸ナトリウム、ベンジルアルコール、エリスロシン、イチゴアルデヒド、および水を含んでなる、またはからなる。
【0067】
本願においてパーセンテージで表されている量は全て、特に断りのない限り、重量パーセンテージ%を指す。
【0068】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、CPXまたはCPX誘導体、例えばCPX-Oを、組成物の総乾重に対して1~30%(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%)、好ましくは5~25%、より好ましくは10~25%または15~20%、さらにより好ましくは約16.5%で含んでなる。より特定の実施形態では、CPXまたはCPX誘導体、例えばCPX-Oの量は、組成物の総乾重に対して約21%以下、好ましくは約20.5%、20%、19.5%、19%、18.5%、18%、17.5%、17%または16.5%以下である。
【0069】
「乾重」という用語は、本明細書で使用する場合、液体媒体または溶媒を含まない医薬組成物の重量を指す。いくつかの実施形態では、「乾重」という用語は、水を含まない医薬組成物の重量を指す。
【0070】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、CPXまたはCPX誘導体、例えばCPX-Oを、組成物の総重量に対して0.1~10%、好ましくは0.1~5%(例えば、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%または5.0%)、より好ましくは1~4%または1~3%、さらにより好ましくは約2.0%を含んでなる。より特定の実施形態では、CPXまたはCPX誘導体、例えばCPX-Oの量は、組成物の総重量に対して約2.5%、好ましくは約2.4%、2.3%、2.2%、2.1%または2.0%以下である。
【0071】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、CPXまたはCPX誘導体、例えばCPX-Oを、総組成物に対して1~40mg/mlまたは5-35mg/ml、好ましくは10~30mg/ml(例えば、約10mg/ml、11mg/ml、12mg/ml、13mg/ml、14mg/ml、15mg/ml、16mg/ml、17mg/ml、18mg/ml、19mg/ml、20mg/ml、21mg/ml、22mg/ml、23mg/ml、24mg/ml、25mg/ml、26mg/ml、27mg/ml、28mg/ml、29mg/mlまたは30mg/ml)、より好ましくは15~25mg/ml、さらにより好ましくは約20mg/mlの濃度で含んでなる。より特定の実施形態では、CPXまたはCPX誘導体、例えばCPX-Oの濃度は、総組成物に対して約25mg/ml以下、好ましくは約24mg/ml、23mg/ml、22mg/ml、21mg/mlまたは20mg/ml以下である。
【0072】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、トコフェロールまたはその誘導体、例えばトコフェルソランを、組成物の総乾重に対して10~80%、好ましくは20~70%(例えば、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%)、より好ましくは30~60%または35~45%(例えば、約35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%または45%)、さらにより好ましくは約40.5%の量で含んでなる。より特定の実施形態では、トコフェロールまたはその誘導体、例えばトコフェルソランの量は、組成物の総乾重に対して約40.5%以下、好ましくは約40%、39.5%、39%、38.5%、38%、37.5%、37%、36.5%、36%、35.5%または35%以下である。
【0073】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、トコフェロールまたはその誘導体、例えばトコフェルソランを、組成物の総重量に対して0.1~10%、好ましくは1~10%(例えば、約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9,5%または10%)、より好ましくは2~8%、3~7%または4.5%~5.5%、さらにより好ましくは約4.9%の量で含んでなる。より特定の実施形態では、トコフェロールまたはその誘導体、例えばトコフェルソランの量は、組成物の総重量に対して約4.9%以下、好ましくは約4.8%、4.7%、4.6%、4.5%、4.4%、4.3%、4.2%、4.1%または4.0%以下である。
【0074】
一実施形態では、本発明の濃度は、トコフェロールまたはその誘導体、例えばトコフェルソランを、総組成物に対して10~90mg/ml(例えば、約15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、55mg/ml、60mg/ml、65mg/ml、70mg/ml、75mg/ml、80mg/ml、85mg/mlまたは90mg/ml)、より好ましくは40~60mg/ml、さらにより好ましくは約50mg/mlの濃度で含んでなる。より特定の実施形態では、トコフェロールまたはその誘導体、例えばトコフェルソランの濃度は、総組成物に対して約50mg/ml以下、好ましくは約49mg/ml、48.5mg/ml、48mg/ml、47.5mg/ml、47mg/ml、46.5mg/ml、46mg/ml、45.5mg/ml、45mg/ml、44.5mg/ml、44mg/ml、43.5mg/ml、43mg/ml、42.5mg/ml、42mg/ml、41.5mg/ml、41mg/ml、40.5mg/mlまたは40mg/ml以下である。
【0075】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、アルギナートまたはその誘導体、例えばアルギン酸ナトリウムを、組成物の総乾重に対して10~50%、好ましくは20~40%(例えば、約21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%)、より好ましくは20~30%、さらにより好ましくは約25%(例えば、24.8%)の量で含んでなる。より特定の実施形態では、アルギナートまたはその誘導体、例えばアルギン酸ナトリウムの量は、組成物の総乾重に対して約28.9%以下、好ましくは約28.5%、28%、27.5%、27%、26.5%、26%、25.5%、25%または24.8%以下である。
【0076】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、アルギナートまたはその誘導体、例えばアルギン酸ナトリウムを、組成物の総重量に対して0.1~10%、好ましくは1~8%または1~6%(例えば、約1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%または6%)、より好ましくは2~5%または2~4%、さらにより好ましくは約3.0%の量で含んでなる。より特定の実施形態では、アルギナートまたはその誘導体、例えばアルギン酸ナトリウムの量は、組成物の総重量に対して約3.5%以下、好ましくは約3.4%、3.3%、3.2%、3.1%または3.0%以下である。
【0077】
一実施形態では、本発明の組成物は、アルギナートまたはその誘導体、例えばアルギン酸ナトリウムを、総組成物に対して10~50mg/ml(例えば、約10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/mlまたは50mg/ml)、より好ましくは20~40mg/ml、さらにより好ましくは約30mg/mlの濃度で含んでなる。より特定の実施形態では、アルギナートまたはその誘導体、例えばアルギン酸ナトリウムの濃度は、総組成物に対して約35mg/ml以下、好ましくは約34mg/ml、33mg/ml、32mg/ml、31mg/mlまたは30mg/ml以下である。
【0078】
特定の実施形態では、CPXまたはCPX誘導体(例えば、CPX-O)とトコフェロールまたはその誘導体(例えば、トコフェルソラン)との重量比は、約1:1~4、好ましくは約1:1.5~3.5、より好ましくは約1:2~3、なおより好ましくは約1:2.5である。
【0079】
特定の実施形態では、CPXまたはCPX誘導体(例えば、CPX-O)とアルギナートまたはその誘導体(例えば、アルギン酸ナトリウム)との重量比は、約1:0.5~2.5、好ましくは約1:1~2.5、より好ましくは約1:1~2、なおより好ましくは約1:1.5である。
【0080】
特定の実施形態では、CPXまたはCPX誘導体(例えば、CPX-O)と、トコフェロールまたはその誘導体(例えば、トコフェルソラン)と、アルギナートまたはその誘導体(例えば、アルギン酸ナトリウム)との重量比は、約1:1~4:0.5~2.5;好ましくは約1:1.5~3.5:1~2.5、より好ましくは約1:2~3:1~2;なおより好ましくは約1:2.5:1.5である。
【0081】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、ベンジルアルコールなどの保存剤を、組成物の総乾重に対して1~30%(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%)、好ましくは5~25%、より好ましくは10~20%または15~20%、さらにより好ましくは約17.4%の量で含んでなる。
【0082】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、ベンジルアルコールなどの保存剤を、組成物の総重量に対して0.1~10%、好ましくは0.1~5%(例えば、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%または5.0%)、より好ましくは1~4%または1~3%、さらにより好ましくは約2.1%の量で含んでなる。
【0083】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、ベンジルアルコールなどの保存剤を、総組成物に対して1~40mg/mlまたは5~35mg/ml、好ましくは10~30mg/ml(例えば、約10mg/ml、11mg/ml、12mg/ml、13mg/ml、14mg/ml、15mg/ml、16mg/ml、17mg/ml、18mg/ml、19mg/ml、20mg/ml、21mg/ml、22mg/ml、23mg/ml、24mg/ml、25mg/ml、26mg/ml、27mg/ml、28mg/ml、29mg/ml,または30mg/ml)、より好ましくは15~25mg/ml、さらにより好ましくは約20.9mg/mlの濃度で含んでなる。
【0084】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、イチゴアルデヒドなどの香味剤を、組成物の総乾重に対して0.1~10%、好ましくは0.1~3%(例えば、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%または3.0%)、より好ましくは0.5~2%または0.5~1.5%、さらにより好ましくは約0.8%の量で含んでなる。
【0085】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、イチゴアルデヒドなどの香味剤を、組成物の総重量に対して0.01~1%、好ましくは0.05~0.5%(例えば、約0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%)、さらにより好ましくは約0.1%の量で含んでなる。
【0086】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、イチゴアルデヒドなどの香味剤を、総組成物に対して0.1~5mg/mlまたは0.1~3mg/ml、好ましくは0.1~2mg/ml(例えば、約0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、1mg/ml、1.1mg/ml、1.2mg/ml、1.3mg/ml、1.4mg/ml、1.5mg/ml、1.6mg/ml、1.7mg/ml、1.8mg/ml、1.9mg/ml,または2mg/ml)、より好ましくは約1mg/mlの濃度で含んでなる。
【0087】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、エリスロシンなどの着色剤を、組成物の総乾重または総重量に対して1%以下、好ましくは0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%以下の量で含んでなる。
【0088】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、エリスロシンなどの着色剤を、総組成物に対して約1mg/ml以下、好ましくは0.5mg/ml、0.1mg/ml、0.05mg/ml以下、より好ましくは約0.028mg/mlの濃度で含んでなる。
【0089】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、水を、少なくとも50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%)、好ましくは少なくとも60%、70%または80%、より好ましくは85%~95%、さらにより好ましくは約88%の量で含んでなる。
【0090】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、水を、少なくとも約500mg/ml(例えば、555mg/ml、600mg/ml、650mg/ml、700mg/ml、750mg/ml、800mg/ml、850mg/ml、900mg/ml、950mg/ml、1000mg/ml、1050mg/mlまたは1100mg/mlまたはmore)、好ましくは少なくとも700mg/ml、800mg/mlまたは900mg/ml、より好ましくは950~1050mg/ml、さらにより好ましくは約1014mg/mlの濃度で含んでなる。
【0091】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、
0.1~10%のシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ(例えば、CPX-O);
0.1~10%のトコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル(例えば、トコフェルソラン);および
0.1~10%のアルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル(例えば、アルギン酸ナトリウム)
を含んでなる。
【0092】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、
約1~40mg/mlのシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、例えばCPX-O,
約10~90mg/mlのトコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えばトコフェルソラン、
約10~50mg/mlのアルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えばアルギン酸ナトリウム、
約1~40mg/mlの保存剤、例えばベンジルアルコール、
約0.1~5mg/mlの香味剤、例えばイチゴアルデヒド、
≦約1mg/mlの着色剤、例えばエリスロシン、および

を含んでなる。
【0093】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、
≦約25mg/mlのシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、例えばCPX-O、
≦約50mg/mlのトコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えばトコフェルソラン、および
≦約35mg/mlのアルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えばアルギン酸ナトリウム
を含んでなる。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、
≦約25mg/mlのシクロピロクスまたはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、例えばCPX-O、
≦約50mg/mlのトコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えばトコフェルソラン、
≦約35mg/mlのアルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル、例えばアルギン酸ナトリウム、
約10~30mg/mlの保存剤、例えばベンジルアルコール、
約0.1~2mg/mlの香味剤、例えばイチゴアルデヒド、
≦約0.5mg/mlの着色剤、例えば、エリスロシン、および

を含んでなる。
【0095】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、
約20mg/mlのシクロピロクスオラミン、
約50mg/mlのトコフェルソラン、
約30mg/mlのアルギン酸ナトリウム、
約20.92mg/mlのベンジルアルコール、
約1mg/mlのイチゴアルデヒド、
約0.028mg/mlのエリスロシン、および

を含んでなる。
【0096】
医薬組成物の上述した重量または濃度の実施形態のいずれかまたは全てを互いに組み合わせて、新たな実施形態を達成してもよい。各成分の重量パーセンテージは、合計パーセンテージが医薬組成物の総重量に関して100%を超えないように選択されるものと理解されるべきである。一実施形態において、各成分の重量パーセンテージは、さらなる成分が存在し得るように、合計パーセントが医薬組成物の総重量に対して100%に達しないように選択される。一実施形態において、各成分の重量パーセンテージは、さらなる成分が存在しないように、合計パーセントが医薬組成物の総重量に対して合計100%になるように選択され、この場合、医薬組成物はそのような成分からなる。
【0097】
特定の実施形態では、本発明で提供される経口投与用の組成物は、25℃で少なくとも72日間安定である。本明細書で使用する場合、「安定」という用語は、溶液の形態の組成物に適用される場合、例えば、Thermo Scientific Varioskan LUX装置を使用して測定される濁度散乱によって分析される場合、溶液が均質なままである(すなわち、固体および可視粒子が検出されない)ことを表す。
【0098】
本発明による組成物は、当業者に公知の標準的手順に従って製造することができる。特定の実施形態において、経口溶液は、好ましくは撹拌下で、種々の成分を水に溶解させることによって調製される。例えば、経口溶液を調製するための工程は、以下の工程を含んでなり得る:i)トコフェロールまたは誘導体(例えば、トコフェルソラン)を水に溶解させて第1の溶液を形成する工程、ii)シクロピロクスまたは誘導体を第1の溶液に添加し、それを溶解させて第2の溶液を形成する工程、iii)アルギナートまたは誘導体(例えば、アルギン酸ナトリウム)を第2の溶液に添加して第3の溶液を形成する工程、およびiv)残りの賦形剤(ある場合)を添加して最終的な経口溶液を形成する工程。特定の実施形態では、CPX誘導体はCPX-Oであり、トコフェロール誘導体はトコフェルソランであり、アルギン酸誘導体はアルギン酸ナトリウムであり、残りの賦形剤はベンジルアルコール、イチゴ香味剤およびエリスロシンである。
【0099】
別の態様において、本発明は、薬剤として使用するための、より具体的には、シクロピロクスおよびその誘導体によって治療可能および/または予防可能であることが知られている疾患のいずれかの治療および/または予防において使用するための本発明の医薬組成物を指す。
【0100】
同様に、本発明は、シクロピロクスおよびその誘導体によって治療可能および/または予防可能であることが知られている疾患のいずれかの治療および/または予防のための薬剤の製造における本発明の医薬組成物の使用を指す。
【0101】
同様に、本発明は、シクロピロクスおよびその誘導体によって治療可能および/または予防可能であることが知られている疾患のいずれかを治療および/または予防するための本発明の医薬組成物を指す。
【0102】
同様に、本発明は、シクロピロクスおよびその誘導体によって治療可能および/または予防可能であることが知られている疾患に罹患している、またはそのような疾患に罹患している可能性のある患者、特にヒトの治療方法であって、そのような治療または予防を必要とする患者に本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法を指す。
【0103】
シクロピロクスおよびその誘導体によって治療可能および/または予防可能であることが知られている疾患としては、限定されるものではないが、血液悪性腫瘍、癌、真菌および細菌感染症、炎症性疾患、癲癇および多発性嚢胞腎疾患が挙げられる。
【0104】
本発明における血液悪性腫瘍の例は、例えば、先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)、遺伝性コプロポルフィリン症(HC)、ハーダーポルフィリン症(HP)、異型ポルフィリン症(VP)、鉄芽球性貧血(SA)、赤芽球性プロトポルフィリン症および遺伝性高ビリルビン血症症候群ならびにリグラー・ナジャー症候群、ルーシー・ドリスコール、ジルベール症候群、ローター症候群、デュビン・ジョンソン症候群およびその他の遺伝性高ビリルビン血症がある。
【0105】
本発明における癌の例としては、例えば、黒色腫、尿路上皮癌、乳管内癌、膀胱癌および結腸直腸癌が挙げられる。
【0106】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、一般に、発症後の疾患の根絶、除去、回復、緩和、修正、または制御が含まれる。
【0107】
本明細書で使用する場合、「予防」という用語は、ある物質、組成物または薬剤が、発症前に疾患の発症または進展を回避する、最小化するまたは困難にする能力を指す。
【0108】
薬物または薬理学的に活性な薬剤の「有効」量または「治療上有効な量」とは、非毒性であるが、所望の効果をもたらすのに十分な量の薬物または薬剤を意味する。本発明の療法において、シクロピロクスまたはその薬学上許容される誘導体の「有効量」は、所望の効果をもたらすのに有効な化合物の量である。「有効」な量は、個体の年齢および健康状態、特定の活性剤などに応じて、対象によって異なる。従って、正確な「有効量」を特定することが常にできるわけではない。しかし、任意の個々の症例における適切な「有効」量は、当業者であれば、慣例の実験を用いて決定することができる。
【0109】
一般に、患者に対する本願によるシクロピロクスまたはその薬学上許容される誘導体の用量は、指示された効果のために使用される場合、約0.0001~約100mg/kg体重/日の範囲である。好ましくは、一日用量は、CPXまたはその誘導体50mg/kg体重、さらにより好ましくはCPXまたはその誘導体0.01~20mgまたは0.01~10mg/kg体重の範囲である。しかしながら、より低用量または高用量も使用可能である。いくつかの実施形態では、対象に投与する用量は、年齢、病勢進行、体重、またはその他の要因によって対象の生理状態が変化するに応じて変更することができる。
【0110】
本発明の実施形態によれば、化合物シクロピロクスまたはその誘導体は、ヘム生合成経路を変調することが意図される。
【0111】
本発明の実施形態によれば、化合物シクロピロクスまたはその誘導体は、ヘム基と非共有結合的に会合してヘム基を安定化させることが意図される。
【0112】
本発明の実施形態によれば、化合物シクロピロクスまたはその誘導体は、毒性ポルフィリンレベル、特に、ウロポルフィリノーゲン(UROgenI)、コプロポルフィリノーゲンI(COPROgenI)および/またはそれらの誘導体のレベルを低減することが意図される。
【0113】
本発明の実施形態によれば、化合物シクロピロクスまたはその誘導体は、ヘム基の異化産物の毒性レベル、特に、ビリルビン、ビリベルジンおよび/またはそれらの誘導体のレベルを低減することが意図される。
【0114】
シクロピロクスは、疾患の予防および/または治療において他の付加的な有用薬物とともに使用することができる。前記付加的薬物は同じ医薬組成物の一部とすることもできるし、あるいはシクロピロクスまたはその誘導体を含んでなる医薬組成物の組成物と同時または逐次に投与するための別の組成物の形態で提供することもできる。例えば、シクロピロクスまたはその薬学上許容される誘導体による治療は、ヘム基欠乏症に対抗するためのヘム誘導体または血液製剤の投与を補完することもできるし、あるいは癌を管理するための抗癌剤の投与を補完することもできる。
【0115】
本発明はまた、経口CPX療法に伴う消化管毒性の軽減または回避において使用するための、
トコフェロールまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル;および
アルギナートまたはその薬学上許容される塩、エステルもしくはエーテル
の組合せも指す。経口CPX療法とは、CPXまたはその誘導体の単独での、または本発明の一部を構成しない製剤中での経口投与を指す。
【0116】
特定の実施形態では、GI毒性は、グレード1のGI毒性を指す。特定の実施形態では、GI毒性は、グレード2のGI毒性を指す。特定の実施形態では、GI毒性は、グレード3のGI毒性を指す。
【0117】
同様に、本発明は、経口CPX療法を受けているかまたは受ける可能性のある患者、特にヒトにおいて、その療法を本発明の医薬組成物の投与に置き換えることを含んでなる、消化管毒性を軽減または回避するための方法を指す。
【0118】
本発明による組成物は、吸収の速度および程度に関して、参照製品と生物学的に同等であり得、ここで、参照製品は、経口投与されるCPXまたはその誘導体単独である。生物学的に同等とは、類似の実験条件下で同モル用量の治療成分を投与した場合に、本発明の組成物の吸収の速度および程度、すなわち薬物動態(PK)プロファイルが、参照製品のものと有意に異ならないことを意味する。本明細書で使用する場合、生物学的に同等とは、好ましくは、本発明の組成物のCmax(最大血漿濃度)およびAUC(曲線下面積;薬物曝露)パラメーターが、ヒト対象における血清分析に関して、参照製品の対応するパラメーターの80%~125%以内であることを表す。CmaxおよびAUCパラメーターは、CPX(CPXFREE)に関して、および/またはCPX-グルクロニド(CPXGLU)に関して測定され得る。
【0119】
ATL-001製剤
本発明による組成物の1つの特定の例は、ATL-001と呼ばれる組成物である。
【0120】
シクロピロクス内用液20mg/mLであるATL-001は、シクロピロクス(オラミン塩)の新規な経口用製剤であり、水性ビヒクル中にトコフェルソランおよび賦形剤として特にアルギン酸ナトリウムを含有している。ATL-001の組成を表1に概説する。ATL-001製剤に使用されている全ての賦形剤は、現在FDA Inactive Ingredient List for Approved Drug Productsに収載されている。新規の付加的賦形剤は使用されていない。
【0121】
【表1】
【0122】
ATL-001製剤は、GI毒性を回避する。より高濃度のCPX-Oを含むATL-001製剤の変種がGI毒性について試験され、良好な結果が得られた。例えば、濃度を25mg/mlまで高めても毒性は見られなかった(実施例1参照)。
【0123】
さらに、ATL-001製剤は活性種のPKプロファイルを維持し、少なくとも先天性赤血球造血性ポルフィリン症で試験した適応症ではPD特性を維持しており、この製剤が消化管吸収時に活性種を効果的に放出することが証明された(実施例2参照)。対照的に、CPXとトコフェルソラン単独(アルギナートを含まない)の併用は、CPX単独投与時に見られたPKプロファイルを維持するのに適していない(例3参照)。
【0124】
さらに、トコフェルソランとアルギナートの濃度を変化させたATL-001製剤の変種を熱力学的安定性(72日間)について試験した。安定性に関しては、CPX-O、トコフェルソランおよびアルギナートの組合せの以下の範囲が優れた結果をもたらした:35mg/mL以下の任意の濃度のアルギナート;50mg/mL以下の任意の濃度のトコフェルソラン;および25mg/mL以下の任意の濃度のCPX-O(実施例4参照)。
【0125】
最後に、ATL-001はヒトでの使用に関して、規制当局(FDAおよびEMA)が要求している仕様に準拠している。具体的には、臨床用または商業用として提案されている全ての賦形剤は、公定医薬品グレードとして入手可能である。ATL-001製剤に使用される各賦形剤の量は、溶液または他の経口剤形として経口使用が許容されている用量に合わせ、FDA Inactive Ingredient List for Approved Drug Productsからの以下の情報を考慮して、ATL-001の最終投与量にマージンを与えている:現在許容されている単位用量あたりの最大効力は、トコフェルソランの経口溶液として300mg/mL、アルギン酸ナトリウムについては、経口経路での1日最大暴露量は371mg、ベンジルアルコールについては、経口溶液の単位用量あたりの最大効力は50mg/1ml、イチゴ香味剤については、単位用量あたりの最大効力は15mg/5mL、着色料(エリスロシン)については、単位用量あたりの最大効力は0.08mgである。
【0126】
さらに、ATL-001製剤の仕様は、FDAガイドラインのGeneral Chapter: <2> ORAL DRUG PRODUCTS-PRODUCT QUALITY TESTSに準拠している。このような仕様を表2に詳細に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
本発明者の知る限り、CPXまたはその誘導体、例えばCPX-Oの経口治療投与におけるATL-001または関連製剤の有用性についての開示はない。
【0129】
当業者であれば、測定値に関する数値は、その精度に限界をもたらす測定誤差の影響を受けることを知っている。特定の値(例えば「約200℃」または「およそ200℃」)または範囲(例えば「約x~約y」)に対して「約」または「およそ」などの用語が適用される場合、その値または範囲は、その測定に使用された方法と同程度に正確であると解釈される。明示的に別段の記載がない限り、科学技術文献における一般的な慣例が適用され、従って、数値の下一桁が好ましくは測定精度を示す。従って、他の誤差範囲が示されていない限り、最大許容範囲は、好ましくは小数点の最後の位を四捨五入する慣例を適用して確認することが望ましい。例えば、3.5の値は、好ましくは3.45~3.54の誤差範囲を有し、2%~10%の範囲は、好ましくは1.5%~10.4%の範囲を包含する。規定値の前記変動は、当業者には理解され、本発明の文脈の範囲内である。さらに、より簡潔な説明を提供するために、本明細書で与えられる定量的表現のいくつかは、用語「約」で修飾されていない。用語「約」が明示的に使用されているか否かにかかわらず、本明細書で与えられるどの量も実際の所与の値を指すことを意味し、また、そのような所与の値に対する実験および/または測定条件による等価物および近似物を含む、当技術分野の通常の技術に基づいて合理的に推測されるそのような所与の値に対する近似値を指すことも意味すると理解される。
【0130】
本明細書では、濃度、量、およびその他の数値データを範囲形式で表現または提示する場合がある。このような範囲形式は、単に便宜的かつ簡潔にするために使用されるものであり、従って、範囲の限界として明示的に記載された数値を含むだけでなく、あたかも各数値および下位範囲が明示的に記載されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値または下位範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであると理解される。一例として、「約1%~約5%」の数値範囲は、明示的に言及された約1%~約5%の値を含むだけでなく、指示された範囲内の個々の値および下位範囲も含むと解釈されるべきである。従って、この数値範囲に含まれるのは、2、3および4などの個々の値、ならびに1~3、2~4および3~5などの下位範囲である。これと同じ原則が、1つの数値のみを示す範囲にも当てはまる。
【0131】
以下の実施例は、本発明の経口医薬組成物が消化管毒性の点で問題を呈さず、有効成分と同等のPKプロファイルを有し、安定であることを示すので、本発明の裏付けとなる証拠として提供される。以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を単に例示するものであり、何ら制限するものとはみなすことはできない。
【実施例
【0132】
実施例
1.本発明の製剤はマウスにおいてGI毒性を抑制する
25mg/kg/日の用量のシクロピロクスを45日間(8週間、試験TgURO_CPX37dg)マウスにフードペレットで経口投与すると、消化管毒性が認められた。具体的には、腸管全体に影響を及ぼす内容物とガスの蓄積による腸ループの拡張を伴う腸障害が見られた(図1A)。さらに、CPX-Oを10、30、100および300mg/kgの用量で4週間ラットに投与したラット毒性試験では、胃刺激性および慢性胃炎が認められた。この系統では、患者をシクロピロクスオラミンで処置した第I相試験でも消化管毒性が認められた
【0133】
逆に、ATL-001(図1BではCPXを25mg/Kgの用量で投与し、または図1Cでは100mg/KgのCPXを投与)の局所忍容性を評価した試験では、消化管毒性の徴候は認められず、この新しい製剤がより優れた忍容性を有することが示唆された。
【0134】
2.本発明の製剤はCPXのPK特性を保持する
ATL-001のPKプロファイルを評価する試験をWTマウスで行った。ATL-001として製剤化されたシクロピロクスとシクロピロクスオラミン(トコフェルソランとアルギナートを含まない)のPKプロファイルの比較から、トコフェルソランとアルギナートは、ATL-001に使用された濃度では、シクロピロクスの全身曝露を有意に変化させないことが示唆された。
【0135】
具体的には、以下の群を試験した(n=マウス3匹/群、図2):シクロピロクスオラミン10mg/kgのIV投与(IV10)、シクロピロクスオラミン200mg/kgの経口投与(C200)、100mg/kgのシクロピロクスオラミンに相当するATL-001の経口投与(F100)、200mg/kgのシクロピロクスオラミンに相当するATL-001の経口投与(F200)。この試験の結果は、シクロピロクスおよびシクロピロクス-GluのAUCおよびCmaxはともに100mg/kg用量よりも200mg/kg用量で高かったことから、ATL-001の用量増加に関してCmaxおよびAUCに用量依存性があることを示した。具体的には、Cmaxは、シクロピロクスでは1.4から3.3μg/mLに、シクロピロクス-Gluでは119.0~181.6μg/mLに増加し、一方、AUCは、シクロピロクスでは4.7から16.6μgh/mLに、シクロピロクス-Gluでは819.7から1362.4μg*h/mLに増加する。
【0136】
200mg/kgのATL-001と200mg/kgのシクロピロクスオラミンのPKプロファイルを比較すると、トコフェルソランおよびアルギナートは、使用した濃度では、シクロピロクスの全身曝露を有意に変化させないことが示唆される。また、両製剤で、シクロピロクス-GluのPKは同等であると認められる。
【0137】
3.本発明の製剤はCPXのPK特性を保持する
本試験では、25mg/kg CPXの経口投与(20mg/mL、水に溶解)、CPX(水中20mg/mL)とトコフェルソラン(50mg/mL、水に溶解)の組合せ、ならびにCPX(水中20mg/mL)とトコフェルソランおよびアルギナート(それぞれ50mg/mLおよび40mg/mL、水に溶解)の組合せの単回投与の薬物動態(PK)特性を調べた。各ボーラス投与法では、12匹のWTマウスを使用した。投与後、1、2、4、6、12、24時間で血清を採取した。各時点で2匹のマウスを犠死させた。血清サンプルを、各時点で、単一のエッペンドルフにプールした。図3に示される結果は、CPXとトコフェルソランの組合せはマウスのPK特性を変化させるが、アルギナートとの組合せでは、PK特性はCPXの経口投与の場合に見られたものとほぼ同等であることを示す。
【0138】
4.本発明の製剤は安定である
図4は、72日間試験した種々の割合のCPX、トコフェルソランおよびアルギナートの組合せマトリックスを示す。ベンジルアルコール、エリスロシン、およびイチゴアルデヒドの寄与は無視され、一定に維持された。エッペンドルフで、各条件につきシロップの1mlアリコートを調製した。その後、96ウェルプレートに100μlの各混合物を添加した。この試験では内部対照も考慮した(示されていない)。ウェルプレートを適切なテープで密封し、25℃でインキュベートした。濁度測定散乱は、Thermo Scientific Varioskan LUX装置を使用し、25℃で72日間毎日測定した。濁度測定は、非均質溶液中の固体粒子と可視粒子の存在を測定する(CPXの溶解度)。これらの結果に基づき、35mg/mL以下の任意の濃度のアルギナート、50mg/mL以下の任意の濃度のトコフェルソラン、および25mg/mL以下の任意の濃度のCPX-Oを含んでなる製剤は、少なくとも72日間顕著な安定性を示すと結論づけることができる。
【0139】
材料および方法
ATL-001製剤の調製。 ATL-001シクロピロクス内用液の製造は、以下のように異なる成分を水に添加および溶解させるいくつかの簡単な溶解工程からなる。まず、トコフェルソランを秤量し、必要な量の約76%の水に加え、トコフェルソランが完全に溶解するまで適度な速度で振盪する。次に、シクロピロクスオラミンを加え、完全に溶解するまで振盪する。その後、アルギン酸ナトリウムを加え、完全に溶解するまで振盪する。ベンジルアルコール、イチゴ香味剤および着色料を順に加え、少量の水(8%)にあらかじめ溶かした後、成分が完全に溶解するまで振盪する。最後に、一次容器に溶液を充填する。現在、最大4Lのラボラトリーバッチが製造されている。ATL-001の変種も同様に調製できる。
【0140】
マウスにおけるPK試験。 血清を、経口投与では投与後30分、1時間、90分、2時間、4時間、6時間および12時間に、IV投与では15分、30分、1時間、2時間、4時間および12時間に採取した。各時点で、3匹のマウスを犠死させた。血清サンプルを各時点で、単一のエッペンドルフにプールした。シクロピロクスおよびその主要代謝産物であるシクロピロクス-GluをMeOH/H2O中に抽出した。シクロピロクス-Fe3+の相互作用を防ぐためにK2EDTAをサンプルに添加した。HPLC分析には、C18 100×0.4mmカラムを使用し、移動相Aは水中、ギ酸0.1%、メドロン酸10μMとし、移動相Bはアセトニトリル中、ギ酸0.1%とした。ピーク面積を測定し、シクロピロクスおよびシクロピロクス-Gluの濃度を求めた。
【0141】
参照文献

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】