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特表2024-546659空気戻り患者ラインフィルタを有する腹膜透析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】空気戻り患者ラインフィルタを有する腹膜透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61M1/28 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533843
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 US2022080155
(87)【国際公開番号】W WO2023114611
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/291,036
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー, ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】フリーグ, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】バック, ラインホルド
(72)【発明者】
【氏名】ベック, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ブリックル, レイナー
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ, ベルント
(72)【発明者】
【氏名】クノアー, トルステン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC08
4C077DD22
4C077EE03
4C077EE04
4C077KK25
4C077KK27
(57)【要約】
腹膜透析(「PD」)システム(10)は、PD機(20)と、PD機(20)から延びている患者ライン(50)と、患者ライン(50)と流体連通しているフィルタセット(100)であって、フィルタセット(100)は、フィルタセット(100)を通るPD流体からの空気を進路変更させるように構成された空気進路変更ネット(112)を含む、フィルタセット(100)と、空気を含むPD流体をPD機(20)に戻すために位置決めされた空気戻りライン(58)とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析(「PD」)システム(10)であって、前記PDシステム(10)は、
PD機(20)と、
前記PD機(20)から延びている患者ライン(50)と、
前記患者ライン(50)と流体連通しているフィルタセット(100)であって、前記フィルタセット(100)は、前記フィルタセット(100)を通るPD流体からの空気を進路変更させるように構成された空気進路変更ネット(112)を含む、フィルタセット(100)と、
空気を含むPD流体を前記PD機(20)に戻すために位置決めされた空気戻りライン(58)と
を備えている、PDシステム(10)。
【請求項2】
前記空気進路変更ネット(112)は、新鮮なPD流体が前記空気進路変更ネット(112)を通過することを可能にするようにさらに構成されている、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項3】
前記フィルタセット(100)は、前記空気進路変更ネットを通過した前記PD流体を濾過するように構成された少なくとも1つのフィルタ膜(114)をさらに含む、請求項2に記載のPDシステム(10)。
【請求項4】
前記フィルタセット(100)は、使用済みPD流体が前記少なくとも1つのフィルタ膜(114)に沿って接線方向に流れるように構成されている、請求項3に記載のPDシステム(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフィルタ膜(114)は、滅菌グレードのフィルタ膜または減菌フィルタ膜である、請求項3または4に記載のPDシステム(10)。
【請求項6】
前記PD機(20)は、PD流体ポンプ(24)を含み、前記空気戻りライン(58)は、前記PD機(20)の空気戻りライン(34)まで延び、前記PD機の空気戻りライン(34)は、前記PD流体ポンプ(24)の入口まで延びている、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項7】
前記PD機(20)は、空気トラップ(36)を含み、前記空気戻りライン(58)は、前記PD機(20)の空気戻りライン(34)まで延び、前記PD機の空気戻りライン(34)は、前記空気トラップ(36)と流体連通している、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項8】
前記空気戻りライン(58)は、前記患者ライン(50)と共押し出しされている、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項9】
前記患者ライン(50)は、前記フィルタセット(100)のルーメン側コネクタ(104)に接続するための患者ラインコネクタ(56)を含み、前記空気戻りライン(58)は、前記患者ラインコネクタ(56)から前記PD機(20)まで延びている、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項10】
前記ルーメン側コネクタ(104)は、前記患者ライン(50)から新鮮なPD流体を受け取るための新鮮なPD流体のポート(104a)を含み、前記新鮮なPD流体のポート(104a)は、前記空気進路変更ネット(112)によって進路変更させられた空気が前記空気戻りライン(58)を介して前記PD機(20)に戻されることを可能にするための少なくとも1つの開口(104o)を含む、請求項9に記載のPDシステム(10)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの開口(104o)は、前記ルーメン側コネクタ(104)によって形成されたチャネル(104d)と流体連通し、前記チャネルは、前記空気進路変更ネット(112)によって進路変更させられた空気を前記患者ラインコネクタ(56)の空気戻りポート(56d)に導くために延びている、請求項10に記載のPDシステム(10)。
【請求項12】
前記患者ライン(50)は、前記フィルタセット(100)のルーメン側コネクタ(104)に接続し、前記空気戻りライン(58)は、前記ルーメン側コネクタ(104)から前記PD機(20)まで延びている、請求項1から8のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項13】
前記患者ライン(50)は、新鮮なPD流体のルーメン(52)と使用済みPD流体のルーメン(54)とを含むデュアルルーメン患者ラインであり、前記空気戻りライン(58)は、前記フィルタセット(100)と前記PD機(20)との間に延びている第3のラインである、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項14】
前記フィルタセット(100)のルーメン側コネクタ(104)に接続するための患者ラインコネクタ(56)を含み、前記新鮮なPD流体のルーメンおよび前記使用済みPD流体のルーメン(52,54)は、前記患者ラインコネクタ(56)に接続されている、請求項13に記載のPDシステム(10)。
【請求項15】
前記フィルタセット(100)は、ルーメン側コネクタ(104)を含み、前記新鮮なPD流体のルーメンおよび前記使用済みPD流体のルーメン(52,54)は、前記ルーメン側コネクタ(104)に接続されている、請求項13に記載のPDシステム(10)。
【請求項16】
前記フィルタセット(100)は、患者の移送セットに直接接続するように構成されているか、または、前記フィルタセット(100)は、前記患者の移送セットに接続するように構成された可撓性チューブ(110)を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項17】
フィルタセット(100)であって、前記フィルタセット(100)は、
少なくとも1つのフィルタ膜(114)を保持している本体(106)であって、前記少なくとも1つのフィルタ膜(114)は、新鮮なPD流体が前記本体(106)を出る前に前記少なくとも1つのフィルタ膜(114)のうちの少なくとも1つの多孔質壁を通って流れるように位置決めされ、配置されている、本体(106)と、
前記少なくとも1つのフィルタ膜(114)に到達する前に前記新鮮なPD流体からの空気を進路変更させるように構成された空気進路変更ネット(112)と、
前記新鮮なPD流体を受け取るための新鮮なPD流体のポート(104a)と
を含み、
前記新鮮なPD流体のポート(104a)は、前記空気進路変更ネット(112)によって進路変更させられた空気がPD機に戻されることを可能にするための少なくとも1つの開口(104o)を含む、フィルタセット(100)。
【請求項18】
前記少なくとも1つの開口(104o)と流体連通しているチャネル(104d)を含み、前記チャネル(104d)は、前記PD機への戻りために、前記空気進路変更ネット(112)によって進路変更させられた空気を導くために延びている、請求項17に記載のフィルタセット(100)。
【請求項19】
患者ラインコネクタに接続するためのコネクタ(104)を含み、前記空気進路変更ネット(112)は、前記コネクタ(104)によって提供されている、請求項17または18に記載のフィルタセット(100)。
【請求項20】
患者ラインコネクタに接続するためのコネクタ(104)を含み、前記新鮮なPD流体のポート(104a)は、前記コネクタ(104)によって提供されている、請求項17から19のいずれか1項に記載のフィルタセット(100)。
【請求項21】
前記少なくとも1つのフィルタ膜(114)は、管形状、毛細管形状、または平坦な形状を有する、請求項17から20のいずれか1項に記載のフィルタセット(100)。
【請求項22】
(i)患者の移送セットに接続するように構成された移送セット側コネクタ(108)、または(ii)前記患者の移送セットに接続するように構成された可撓性ライン(110)を含む、請求項17から21のいずれか1項に記載のフィルタセット(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる2021年12月17日に出願された米国仮特許出願第63/291,036号の優先権および利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、医用流体治療に関し、特に、透析流体治療中の治療流体の濾過に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な原因により、人の腎臓系が機能しなくなり得る。腎不全は、幾つかの生理学的障害を生じる。水とミネラルとのバランスをとること、または毎日の代謝負荷を排出することはもはや可能ではない。尿素、クレアチニン、尿酸などの代謝の毒性最終生成物は、患者の血液および組織に蓄積し得る。
【0004】
腎機能の低下、とりわけ腎不全は、透析によって治療される。透析は、正常に機能する腎臓が除去するであろう排泄物、毒素および過剰な水を身体から除去する。腎機能の代替のための透析治療は、治療が救命的であるので、多くの人々にとって重要である。
【0005】
腎不全療法の1つのタイプは、血液透析(「HD」)であり、HDは、一般に、患者の血液から老廃物を除去するために拡散を使用する。拡散勾配が、血液と透析物または透析流体と呼ばれる電解質溶液との間で半透性透析器を横切って生じ、拡散を引き起こす。
【0006】
血液濾過(「HF」)は、患者の血液からの毒素の対流輸送に依存する代替的な腎代替療法である。HFは、治療中に体外回路に置換流体または代替流体を加えることによって達成される。治療間に患者によって蓄積された置換流体および流体は、HF治療の過程にわたって限外濾過され、中分子および大分子を除去することにおいて特に有益な対流輸送機構を提供する。
【0007】
血液透析濾過(「HDF」)は、対流クリアランスと拡散クリアランスとを組み合わせた治療法である。HDFは、標準的な血液透析と同様、拡散クリアランスを提供するために、透析器を通して流れる透析流体を使用する。さらに、置換溶液が、対流クリアランスを提供するために、体外回路に直接供給される。
【0008】
ほとんどのHD、HF、およびHDF治療は、センターで行われる。家庭血液透析(「HHD」)への傾向が、今日、存在する。一つに、HHDが毎日実施されることができ、典型的に週2回または3回行われる施設内血液透析治療より療法上の利益を提供するからである。研究は、より頻繁な治療が、より頻繁ではないがおそらくより長い治療を受けている患者より多くの毒素および老廃物を除去し、透析間の流体の過負荷を少なくすることを示している。より頻繁な治療を受けている患者は、治療前に2または3日分の毒素を蓄積している施設内の患者ほど多くのダウンサイクル(体液および毒素の変動)を経験しない。特定の地域では、最も近い透析センターが、患者の自宅から何マイルも離れていることもあり、それは、ドアツードアの治療時間が1日の大部分を消費することを引き起こす。患者の自宅に近い施設での治療も、患者の一日の大部分を消費し得る。HHDは、一晩中、または、患者がリラックスし、働き、または生産的である間の日中に行われることができる。
【0009】
別のタイプの腎不全療法は、腹膜透析(「PD」)であり、PDは、透析流体またはPD流体とも呼ばれる透析溶液をカテーテルを介して患者の腹膜腔に注入する。PD流体は、患者の腹膜腔内の腹膜と接触する。廃棄物、毒素および過剰な水は、患者の血流から腹膜内の毛細管を通り、拡散および浸透によりPD流体に入る(すなわち、浸透勾配が、膜を横切って生じる)。PD流体中の浸透圧剤は、浸透圧勾配を提供する。使用済みPD流体は、患者から排出され、患者から老廃物、毒素および過剰な水を除去する。このサイクルは、例えば複数回繰り返される。
【0010】
様々なタイプの腹膜透析療法があり、それらは、連続携行式腹膜透析(「CAPD」)、自動腹膜透析(「APD」)、潮流透析、および連続流腹膜透析(「CFPD」)を含む。CAPDは、手動透析治療である。ここで、患者は、埋め込まれたカテーテルをドレインに手動で接続し、使用済みPD流体を患者の腹膜腔から排出できるようにする。次いで、患者は、流体連通を切り替え、それによって、患者カテーテルは、新鮮なPD流体のバッグと連通し、カテーテルを通して患者に新鮮なPD流体を注入する。患者は、カテーテルを新鮮なPD流体バッグから切り離し、PD流体が患者の腹膜腔内に留まることを可能にし、排泄物、毒素および過剰な水の移送が行われる。滞留期間の後、患者は、例えば1日4回、手動透析手順を繰り返す。手動腹膜透析は、患者からのかなりの量の時間および労力を必要とし、改善の余地を十分に残す。
【0011】
APDは、透析治療が排出、充填および滞留サイクルを含むという点でCAPDと同様である。しかしながら、APD機は、通常、患者の睡眠中にサイクルを自動的に実行する。APD機は、治療サイクルを手動で実行せねばならないこと、および日中に補給物質を輸送せねばならないことから患者を解放する。APD機は、埋め込まれたカテーテル、新鮮なPD流体の供給源またはバッグ、および流体ドレインに流体接続する。APD機は、透析流体源からカテーテルを通って患者の腹膜腔に新鮮なPD流体を圧送する。APD機はまた、PD流体が腹膜腔内に滞留すること、および、廃棄物、毒素および過剰な水の移送が行われることも可能にする。供給源は、幾つかの溶液バッグを含む複数リットルの透析流体を含み得る。
【0012】
APD機は、患者の腹膜腔からカテーテルを介して使用済みPD流体をドレインに圧送する。手動プロセスと同様、透析中に幾つかのドレイン、充填および滞留サイクルが起こる。「最後の充填」は、APD治療の終了時に起こり得る。最後の充填流体は、次の治療の開始まで患者の腹膜腔内に残り得るか、または、日中のある時点で手動で空にされ得る。
【0013】
PD流体は、患者の腹膜腔に注入され、したがって薬物と見なされるので、無菌または非常に無菌に近い必要がある。バッグに入ったPD流体は、典型的に、治療のために適切に滅菌されるが、オンラインで作られたPD流体、または消毒を採用するPD機またはサイクラーは、追加の滅菌を必要とし得る。
【0014】
したがって、患者に送られる前に新鮮なPD流体に追加の滅菌を提供する効果的で低コストの方法が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、患者ラインを通して新鮮なPD流体を患者に圧送し、患者ラインを介して患者から使用済みPD流体を除去するPD機またはサイクラーを有する腹膜透析(「PD」)システムを提供する。患者ラインは、再使用可能または使い捨てであり得、いずれの場合も、フィルタセットと共に動作し、フィルタセットと流体連通する。患者ラインが再使用可能である場合、再使用可能な患者ラインは、治療時にフィルタセットに接続される。患者ラインが使い捨てである場合、一実施形態において、フィルタセットは、使い捨ての患者ラインに統合される。いずれの構成においても、フィルタセットの遠位端は、患者の移送セットに接続され、次いで、移送セットは、患者の留置カテーテルと流体連通する。
【0016】
PD機またはサイクラーは、使い捨ての構成部品を使用することなくそれ自体を通してPD流体を圧送する耐久性のあるPD流体ポンプ、または、蠕動ポンプチューブまたは可撓性ポンプチャンバなどの、使い捨てで流体に接触する圧送構成部品を作動させるポンプアクチュエータを含む使い捨てタイプのPD流体ポンプを含み得る。単一のPD流体ポンプが使用され得るが、専用の新鮮なPD流体ポンプおよび使用済みPD流体ポンプが代替的に使用され得ることを理解されたい。単一のPD流体ポンプは、より連続的なPD流体の流れのための複数のポンプチャンバも含み得る。PD機またはサイクラーも、同様に、使い捨ての構成部品で動作することなくフロースルー式で耐久性があるか、またはチューブセグメントまたはカセットベースのバルブシートなどの使い捨てで流体に接触するバルブ構成部品を作動させるバルブアクチュエータを有する使い捨てタイプのバルブであり得る複数のバルブを含む。
【0017】
ポンプおよびバルブは、機械またはサイクラーによって提供される制御ユニットの自動制御下にある。一実施形態において、バルブは、PD流体ポンプがデュアルルーメン患者ラインの新鮮なPD流体のルーメンを通して新鮮なPD流体を患者に圧送することを可能にするために制御ユニットが開く新鮮なPD流体のバルブを含む。バルブは、PD流体ポンプがデュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体のルーメンを通して患者から使用済みPD流体を圧送することを可能にするために制御ユニットが開く使用済みPD流体のバルブも含む。バルブは、1つ以上の新鮮なPD流体の源からの新鮮なPD流体の流れを可能にする供給バルブと、使用済みPD流体がドレインに送られることを可能にする排出バルブと、空気を含むPD流体が機械またはサイクラーに戻されることを可能にする空気戻りバルブとをさらに含む。
【0018】
新鮮なPD流体のルーメンおよび使用済みPD流体のルーメンは、再び、再使用可能または使い捨てであり得る。新鮮なPD流体のルーメンおよび使用済みPD流体のルーメンが再使用可能である場合、ルーメンは、フィルタセットのルーメン側コネクタに接続するコネクタで終端し、ルーメン側コネクタは、フィルタセットの本体にシール(例えば、超音波によるシール、熱によるシール、または溶媒結合)されるか、またはフィルタセットの本体とともに成形され得る。次に、本体は、移送セット側コネクタにシール(例えば、超音波によるシール、熱によるシール、または溶媒結合)されるか、または成形され、移送セット側コネクタは、患者の移送セットの相手側コネクタに直接接続するか、または本体と患者の移送セットとの間に配置された短いチューブの相手側コネクタに接続する。代替的に、移送セット側コネクタは、短いチューブが延びて溶接される単なるポートであり得る。
【0019】
フィルタセットの本体は、新鮮なPD流体をさらに濾過しかつ滅菌して、患者の腹膜腔への送り出しに適したものにする1つ以上のフィルタ膜を含む。1つ以上のフィルタ膜は、管形状、毛細管形状または平坦な形状などの任意の適切な形状を有し得る。フィルタ膜は、滅菌グレードまたは減菌用の親水性膜であり得、新鮮なPD流体がさらなる濾過のために通過する約0.2ミクロンの孔径を有する多孔質壁で形成され得る。
【0020】
患者の移送セットを通して除去された使用済みPD流体は、移送セット側コネクタを介してフィルタセットの本体に入り、本体、ルーメン側コネクタ、および使用済みPD流体のルーメンを負圧下で流れ、機械またはサイクラーに戻る。機械またはサイクラーは、正圧下で使用済みPD流体をドレインに圧送する。使用済みPD流体は、1つ以上のフィルタ膜の外側に接触し得るが、接線方向または接線的な態様で接触し得るので、患者の流出物内のフィブリン、タンパク質および他の微粒子は、フィルタ膜によって捕捉されにくく、フィルタ膜上に引っかかりにくい。したがって、フィルタ膜は、フィルタセットとともに廃棄される前、治療における複数の充填を通して有効なままである。
【0021】
一実施形態において、新鮮なPD流体のルーメンおよび使用済みPD流体のルーメンは同心円状に形成され、新鮮なPD流体のルーメンは、使用済みPD流体のルーメンの外側に位置する。代替的な実施形態において、新鮮なPD流体のルーメンと使用済みPD流体のルーメンとは、並んで形成される。患者ラインコネクタが、デュアルルーメン患者ラインの同心のまたは並んだルーメンのいずれかの端部に提供され得る。患者ラインコネクタは、フィルタセットのルーメン側コネクタに接続する。ルーメン側コネクタは、一実施形態において、フィルタ膜の上流にあるように新鮮なPD流体入口流路沿いに位置する空気進路変更ネットを提供される。空気進路変更ネットは、濡らされると空気を進路変更させるために十分微細なメッシュ開口を有するが、メッシュ開口は、新鮮なPD流体の流れを著しく妨げないために十分に開いている。
【0022】
ルーメン側コネクタは、患者ラインコネクタの篏合ポートにシールするための複数のポート、例えばテーパ付きルアータイプのポートを含む。ルーメン側コネクタポートは、新鮮なPD流体のポートと使用済みPD流体のポートとを含む。新鮮なPD流体のポートは、円筒形の新鮮なPD流体のポートの周りに均等に分布され得るスロットなどの開口を提供される。開口またはスロットは、ルーメン側コネクタ内の空気進路変更ネットによって進路変更させられた空気を含む少量の新鮮なPD流体が第3のまたは空気戻りラインを介してPD機またはサイクラーに押し戻されることを可能にする。ルーメン側コネクタは、外側ポートも含み得、外側ポートは、外側ポートの内壁と新鮮なPD流体のポートの外壁との間に位置しているチャネルを部分的に画定する。チャネルは、空気を含む少量の新鮮なPD流体を患者ラインコネクタ内の密封された収集領域に導く。空気を含む少量の新鮮なPD流体は、例えばPD流体ポンプからの負圧下で、空気戻りポートおよび可撓性のある空気戻りラインを介して、患者ラインコネクタの密封された領域を出て機械またはサイクラーへ向かう。空気戻りポートおよび可撓性のある空気戻りラインは、戻されるPD流体の体積が小さいので、直径が小さくあり得る。可撓性のある空気戻りラインは、デュアルルーメン患者ラインが再使用可能であるか使い捨てであるかに応じて、再使用可能または使い捨てである。可撓性のある空気戻りラインは、独立し得るか、または、デュアルルーメン患者ラインと共押し出しされ得る。
【0023】
可撓性のある空気戻りラインは、機械またはサイクラー内に位置する内部の耐久性のある空気戻りラインに接続する。内部または耐久性のある空気戻りラインは、1つ以上の供給バルブの上流の位置または下流の位置まで延び得る。位置が1つ以上の供給バルブの上流にある場合、1つ以上の供給バルブは、空気戻りPD流体の流れを開閉するバルブとしても機能し得る。位置が1つ以上の供給バルブの下流にある場合、空気戻りラインは、空気混入PD流体がPD流体ポンプの上流に戻されることを可能にするために、患者の充填中に選択的に開かれる空気戻りバルブを提供され得る。空気戻りPD流体の流れは、患者の充填全体にわたって、または、患者の充填中、断続的に行われ得る。
【0024】
PD機またはサイクラーは、空気戻りラインが一次PD流体ラインに再接続する位置とPD流体ポンプとの間に位置している空気トラップを含む。空気トラップは、空気が浮力を介して流体から逃げることを可能にするある体積の比較的停滞したPD流体を提供する。したがって、空気トラップは、本明細書に記載の空気戻り機構を介してPD機またはサイクラーに方向転換された空気を除去するのに役立つ。
【0025】
本明細書に記載の開示に照らして、かつ、いかなる方法においても本開示を限定することなく、任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第1の態様では、腹膜透析(「PD」)システムは、PD機と、PD機から延びている患者ラインと、患者ラインと流体連通しているフィルタセットであって、フィルタセットは、フィルタセットを通過するPD流体からの空気を進路変更させるように構成された空気進路変更ネットを含む、フィルタセットと、空気を含むPD流体をPD機(20)に戻すように配置された空気戻りラインとを含む。
【0026】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第2の態様では、空気進路変更ネットは、新鮮なPD流体が空気進路変更ネットを通過することを可能にするようにさらに構成される。
【0027】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第3の態様では、フィルタセットは、空気進路変更ネットを通過したPD流体を濾過するように構成された少なくとも1つのフィルタ膜をさらに含む。
【0028】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第4の態様では、フィルタセットは、使用済みPD流体が少なくとも1つのフィルタ膜に沿って接線方向に流れるように構成される。
【0029】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第5の態様では、PD機は、PD流体ポンプを含み、空気戻りラインは、PD機の空気戻りラインまで延び、PD機の空気戻りラインは、PD流体ポンプの入口まで延びている。
【0030】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第6の態様では、PD機は、空気トラップを含み、空気戻りラインは、PD機の空気戻りラインまで延び、PD機の空気戻りラインは、空気トラップと流体連通する。
【0031】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第7の態様では、空気戻りラインは、患者ラインと共押し出しされる。
【0032】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第8の態様では、患者ラインは、フィルタセットのルーメン側コネクタに接続するための患者ラインコネクタを含み、空気戻りラインは、患者ラインコネクタからPD機まで延びている。
【0033】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第9の態様では、ルーメン側コネクタは、患者ラインから新鮮なPD流体を受け取るための新鮮なPD流体のポートを含み、新鮮なPD流体のポートは、空気進路変更ネットによって進路変更させられた空気が空気戻りラインを介してPD機に戻されることを可能にするための少なくとも1つの開口を含む。
【0034】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第10の態様では、少なくとも1つの開口は、ルーメン側コネクタによって形成されたチャネルと流体連通し、チャネルは、空気進路変更ネットによって進路変更させられた空気を患者ラインコネクタの空気戻りポートに導くために延びている。
【0035】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第11の態様では、患者ラインは、フィルタセットのルーメン側コネクタに接続し、空気戻りラインは、ルーメン側コネクタからPD機まで延びている。
【0036】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第12の態様では、患者ラインは、新鮮なPD流体のルーメンと使用済みPD流体のルーメンとを含むデュアルルーメン患者ラインであり、空気戻りラインは、フィルタセットとPD機との間に延びている第3のラインである。
【0037】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第13の態様では、PDシステムは、フィルタセットのルーメン側コネクタに接続するための患者ラインコネクタを含み、新鮮なPD流体のルーメンおよび使用済みPD流体のルーメンは、患者ラインコネクタに接続される。
【0038】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第14の態様では、フィルタセットは、ルーメン側コネクタを含み、新鮮なPD流体のルーメンおよび使用済みPD流体のルーメンは、ルーメン側コネクタに接続される。
【0039】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第15の態様では、フィルタセットは、患者の移送セットに直接接続するように構成されているか、または、フィルタセットは、患者の移送セットに接続するように構成された可撓性チューブを含む。
【0040】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第16の態様では、フィルタ膜は、滅菌グレードのフィルタ膜または減菌フィルタ膜である。
【0041】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第17の態様では、フィルタセットは、少なくとも1つのフィルタ膜を保持している本体であって、少なくとも1つのフィルタ膜は、新鮮なPD流体が本体を出る前に少なくとも1つのフィルタ膜のうちの少なくとも1つの多孔質壁を通って流れるように位置決めされ、配置されている、本体と、少なくとも1つのフィルタ膜に到達する前に新鮮なPD流体からの空気を進路変更させるように構成された空気進路変更ネットと、新鮮なPD流体を受け取るための新鮮なPD流体のポートとを含み、新鮮なPD流体のポートは、空気進路変更ネットによって進路変更させられた空気がPD機に戻されることを可能にするための少なくとも1つの開口を含む。
【0042】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第18の態様では、フィルタセットは、少なくとも1つの開口と流体連通しているチャネルを含み、チャネルは、空気進路変更ネットによって進路変更させられた空気をPD機に戻すために導くように延びている。
【0043】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第19の態様では、フィルタセットは、患者ラインコネクタに接続するためのコネクタを含み、空気進路変更ネットは、コネクタによって提供される。
【0044】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第20の態様では、フィルタセットは、患者ラインコネクタに接続するためのコネクタを含み、新鮮なPD流体のポートはコネクタによって提供される。
【0045】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第21の態様では、少なくとも1つのフィルタ膜は、管形状、毛細管形状または平坦な形状を有する。
【0046】
任意の他の態様またはその一部と組み合わせられ得る本開示の第22の態様では、フィルタセットは、(i)患者の移送セットに接続するように構成された移送セット側コネクタ、または(ii)患者の移送セットに接続するように構成された可撓性ラインを含む。
【0047】
任意の他の態様またはその一部とともに使用され得る本開示の第23の態様では、図1から図4のいずれか1つ以上に関連して説明した特徴、機能、および代替形態のいずれかは、図1から図4の他のいずれかに関連して説明した特徴、機能、および代替形態のいずれかと組み合わせられ得る。
【0048】
本明細書の上記の態様および説明に照らして、本開示の利点は、デュアルルーメン患者ラインと共に動作するフィルタセットを提供することである。
【0049】
本開示の別の利点は、新鮮なPD流体を濾過し、使用済みPD流体が目詰まりすることなく通過することを可能にするフィルタセットを提供することである。
【0050】
本開示のさらなる利点は、フィルタ膜に到達する前に空気を除去するフィルタセットを提供することである。
【0051】
本開示のさらに別の利点は、疎水性膜を必要とせずに空気を除去するフィルタセットを提供することである。
【0052】
更なる特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面に記載され、それらから明らかになる。本明細書に記載の特徴および利点は、全てを含むものではなく、特に、多くの更なる特徴および利点が、図面および説明を考慮すると当業者には明らかである。任意の特定の実施形態は、本明細書にリストアップされた利点の全てを有する必要はなく、個々の有利な実施形態を別々に請求することが明確に企図される。さらに、本明細書で使用される言語は、主に読みやすさおよび説明目的のために選択されており、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、本開示の患者ラインフィルタセットを有する腹膜透析システムの一実施形態の概略図である。
【0054】
図2図2は、本開示の患者ラインフィルタセットのルーメン側コネクタの一実施形態の断面斜視図である。
【0055】
図3図3は、本開示の図2のルーメン側コネクタおよび相手側患者ラインコネクタの断面図である。
【0056】
図4図4は、本開示の空気戻り流路を含む様々な流路を示す簡略化された流れの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
ここで図面、特に図1を参照すると、腹膜透析(「PD」)システム10が示される。PDシステム10は、患者ライン50を通して新鮮なPD流体を患者Pに圧送し、患者ライン50を介して患者Pから使用済みPD流体を除去するPD機またはサイクラー20を含む。患者ライン50は、再使用可能または使い捨てであり得、いずれの場合も、フィルタセットと共に動作し、フィルタセット100と流体連通する。患者ライン50が再使用可能である場合、再使用可能な患者ラインは、治療時にフィルタセット100に接続される。患者ライン50が使い捨てである場合、一実施形態において、フィルタセット100は、使い捨ての患者ライン50に統合されるか、または、使い捨ての患者ライン50とともに形成される。いずれの構成においても、フィルタセット100の遠位端は、患者の移送セット60に接続され、次いで、移送セット60は、患者Pの留置カテーテルと流体連通する。
【0058】
PD機またはサイクラー20は、耐久性のあるPD流体ポンプ24を提供するハウジング22を含み得、PD流体ポンプ24は、使い捨ての構成部品を使用することなくそれ自体を通してPD流体を圧送する。PD流体ポンプ24のために使用され得る耐久性のあるポンプの例は、ピストンポンプ、ギヤポンプ、および遠心ポンプを含む。ピストンポンプなどの特定の耐久性のあるポンプは、本質的に正確であり、それによって、機械またはサイクラー20は、追加の体積制御構成部品を必要としない。ギヤポンプおよび遠心ポンプなどの他の耐久性のあるポンプは、正確でないこともあり、それによって、機械またはサイクラー20は、1つ以上の流量計(図示せず)などの体積制御デバイスを提供する。
【0059】
代替的に、ポンプ24は、使い捨てタイプのPD流体ポンプであり得、使い捨てタイプのPD流体ポンプは、使い捨ての流体に接触する圧送構成部品(蠕動ポンプチューブまたは可撓性ポンプチャンバなど)を作動させるポンプアクチュエータを含む。PD流体ポンプ24に使用され得る使い捨てPD流体ポンプの例は、チューブを作動させる回転式または直線式の蠕動ポンプアクチュエータ、カセットシートを作動させる空気圧ポンプアクチュエータ、カセットシートを作動させる電気機械式ポンプアクチュエータ、およびチューブを作動させるプラテンポンプアクチュエータを含む。単一のPD流体ポンプ24が使用され得るが、専用の新鮮なPD流体ポンプおよび使用済みPD流体ポンプが代替的に使用され得ることを理解されたい。単一のPD流体ポンプ24は、より連続的なPD流体の流れのための複数のポンプチャンバも含み得る。
【0060】
PD機またはサイクラー20は、複数のバルブ26a~26eも含み、複数のバルブ26a~26eは、同様に、使い捨ての構成部品で動作することなくフロースルー式で耐久性があるか、または、使い捨てで流体に接触するバルブ構成部品(チューブセグメントまたはカセットベースのバルブシートなど)を作動させるバルブアクチュエータを有する使い捨てタイプのバルブであり得る。バルブ26a~26eに使用され得る耐久性のあるバルブの例は、フロースルー式ソレノイドバルブを含む。そのようなバルブは、二方弁または三方弁であり得る。バルブ26a~26eに使用され得る使い捨てバルブの例は、閉じた可撓性チューブを挟む電磁ピンチバルブ、カセットシートを作動させる空気圧バルブアクチュエータ、およびカセットシートを作動させる電気機械式バルブアクチュエータを含む。
【0061】
機械またはサイクラー20は、多くのバルブ26a~26nを含む可能性が高い。説明を容易にするために、機械またはサイクラー20は、新鮮なPD流体のバルブ26aを有するものとして示されており、新鮮なPD流体のバルブ26aは、PD流体ポンプ24がデュアルルーメン患者ライン50のための新鮮なPD流体のルーメン52を通して正圧下で新鮮なPD流体を患者Pに圧送することを可能にするために開くように制御される。バルブは、使用済みPD流体のバルブ26bも含み、使用済みPD流体のバルブ26bは、PD流体ポンプ24がデュアルルーメン患者ライン50のための使用済みPD流体のルーメン54を通して負圧下で患者Pから使用済みPD流体を引き出すことを可能にするために開くように制御される。1つ以上の供給バルブ26cが提供され、それは、1つ以上の新鮮なPD流体の源からの新鮮なPD流体の流れがPD流体ポンプ24を介してサイクラー20に圧送されることを可能にする。排出バルブ26dが提供され、それは、使用済みPD流体がドレインに送られることを可能にする。以下でより詳細に説明する空気戻りバルブ26eは、フィルタセット100内で進路変更させられた空気を含むPD流体がPD機またはサイクラー20に戻されることを可能にする。
【0062】
図示の実施形態における機械またはサイクラー20はまた、圧力センサ28a、28bなどの圧力センサを含む。圧力センサ28aは、新鮮なPD流体のバルブ26aのすぐ下流に配置され、圧力センサ28bは、使用済みPD流体のバルブ26のすぐ上流に位置する。したがって、圧力センサ28aは、新鮮なPD流体のバルブ26aが閉じている場合でも、デュアルルーメン患者ライン50のための新鮮なPD流体のルーメン52内の圧力を感知し、圧力センサ28bは、使用済みPD流体のバルブ26bが閉じている場合でも、デュアルルーメン患者ライン50のための使用済みPD流体のルーメン54内の圧力を感知し得る。さらに、圧力センサ28aは、患者の充填中に本明細書で説明するフィルタ膜の上流の新鮮なPD流体の圧力を感知するように配置される。圧力センサ28bは、おそらくより重要なことに、患者の充填中に本明細書で説明するフィルタ膜の下流で新鮮なPD流体の圧力を感知するように配置される。
【0063】
図示の実施形態におけるポンプ24およびバルブ26a~26eは、システム10の機械またはサイクラー20によって提供される制御ユニット40の自動制御下にあるが、圧力センサ28a、28b(および他のセンサ)は、制御ユニット40に出力する。図示の実施形態における制御ユニット40は、1つ以上のプロセッサ42と、1つ以上のメモリ44と、ビデオコントローラ46とを含む。制御ユニット40は、圧力センサ28a、28b、および機械またはサイクラー20によって供給される他のセンサ(1つ以上の温度センサ30および1つ以上の導電率センサ(図示せず)など)からの信号または出力を受信し、記憶し、処理する。制御ユニット40は、透析流体を所望の圧力で、または安全な圧力限界以内(例えば、患者の腹膜腔への正圧0.21バール(3psig)以内および患者の腹膜腔からの負圧-.10バール(-1.5psig)以内)で圧送するようにPD流体ポンプ24を制御するために、圧力センサ28a、28bのうちの1つ以上からの圧力フィードバックを使用する。
【0064】
制御ユニット40は、例えば、新鮮なPD流体を所望の温度(例えば、体温または37°C)に加熱するためのインラインヒーターなどのヒーター32を制御するために、1つ以上の温度センサ30からの温度フィードバックを使用する。一実施形態において、ヒーター32は、さらに、新鮮なPD流体などの消毒流体を加熱し、PD流体ポンプ24、バルブ26a~26n、ヒーター32、および機械またはサイクラー20内のすべての再使用可能な流体ラインを消毒し、次の治療のために機械またはサイクラーを準備するために使用される。本明細書で説明する追加の濾過は、PD流体が患者Pへの送り出しのために安全であることを確実にするために、加熱流体消毒に加えて保護の層を提供する。
【0065】
制御ユニット40のビデオコントローラ46は、機械またはサイクラー20のユーザインターフェース48と相互作用し、ユーザインターフェース48は、タッチスクリーンおよび/または膜スイッチなどの1つ以上の電気機械ボタンで動作する表示画面を含み得る。ユーザインターフェース48は、警報、警告、および/または音声ガイダンスコマンドを出力するための1つ以上のスピーカーも含み得る。ユーザインターフェース48は、図1に示すような機械またはサイクラー20に提供され得、および/または、制御ユニット40で動作するリモートユーザインターフェースであり得る。制御ユニット40は、医師または臨床医のコンピュータと相互作用する医師または臨床医のサーバに治療データを送信し、医師または臨床医のサーバから処方命令を受信するために、トランシーバ(図示せず)およびネットワーク(例えば、インターネット)への有線または無線接続も含み得る。
【0066】
図1および図2を参照して、上述したように、デュアルルーメン患者ライン50のための新鮮なPD流体のルーメン52および使用済みPD流体のルーメン54は、再び、再使用可能または使い捨てであり得る。デュアルルーメン患者ライン50が再使用可能である場合、ルーメンは、フィルタセット100のルーメン側コネクタ104に接続するコネクタ56で終端し、ルーメン側コネクタ104は、フィルタセットの本体106にシール(例えば、超音波によるシール、熱によるシール、または溶媒結合)されるか、またはフィルタセットの本体106とともに成形され得る。以下でより詳細に説明する第3のまたは空気戻りライン58は、空気を含むPD流体をフィルタセット100からPD機またはサイクラー20に戻す。次に、本体106は、移送セット側コネクタ108にシール(例えば、超音波によるシール、熱によるシール、または溶媒結合)されるか、またはコネクタ108とともに成形され、移送セット側コネクタは、患者の移送セット60の篏合コネクタに直接接続するか、または移送セット側コネクタ108と患者の移送セット60との間に配置された短い可撓性チューブ110の篏合コネクタに接続する。本体106、ルーメン側コネクタ104、および移送セット側コネクタ108は、ポリスチレン(「PS」))、ポリカーボネート(「PC」)、ポリカーボネートとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンとの混合物(「PC/ABS」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリプロピレン(「PP」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)のようなポリエステル、またはポリウレタン(「PU」)などの任意の1つ以上のプラスチックで作られ得る。
【0067】
図2は、ルーメン側コネクタ104の一実施形態を詳細に示す。ルーメン側コネクタ104の図示されたバージョンは、デュアルルーメン患者ライン50のためのための同心のルーメン52およびルーメン54の関係のためのものである。しかしながら、図2に関連する教示は、デュアルルーメン患者ライン50のためのためのルーメン52およびルーメン54の並んだ関係にも等しく適用可能であることを理解されたい。ルーメン側コネクタ104は、同心および並列の両方の実施形態において、フィルタ膜114の上流(新鮮なPD流体の観点から)にあるように、新鮮なPD流体入口流路沿いに位置する空気進路変更ネット112を提供されている。空気進路変更ネット112は、濡らされると空気を進路変更させるために十分微細なメッシュ開口を有するが、メッシュ開口は、新鮮なPD流体の流れを著しく妨げないために十分に開いている。空気進路変更ネット112は、例えば、医学的に安全な金属または疎水性ポリマーで作られ得、約0.1mm~約0.3mmの範囲の孔径を有し得る。空気進路変更ネット112は、超音波、熱および/または接着によってルーメン側コネクタ104にシールされ得る。フィルタ膜114は、滅菌グレードまたは減菌用の親水性膜であり得、それは、新鮮なPD流体がさらなる濾過のために通過する約0.2ミクロンの孔径を有する多孔質壁で形成され得る。フィルタ膜114は、例えば、ポリビニルピロリドンと混合されたポリスルホンまたはポリエーテルスルホンから作られ得る。図示の実施形態におけるフィルタ膜114は、毛細管形状を有するが、代替的に、管形状または平坦な形状を有し得る。
【0068】
図2に示すルーメン側コネクタ104は、患者ラインコネクタ56の篏合ポートにシールするための複数のポート、例えばテーパ付きルアータイプのポートを含む。ルーメン側コネクタポートは、各々が互いに同心の円筒形ポートであり得る新鮮なPD流体のポート104aと使用済みPD流体のポート104bとを含む。患者の転送セット60を通って除去された使用済みPD流体は、転送セット側コネクタ108を介してフィルタセットの本体106に入り、本体106、図2に示すようなルーメン側コネクタの使用済みPD流体のポート104b、および使用済みPD流体のルーメン54を負圧下で流れ、PD機またはサイクラー20に戻る。PD機またはサイクラー20は、正圧下で使用済みPD流体を圧送して排出ライン62を介して排出する。使用済みPD流体は、1つ以上のフィルタ膜114の外側に接触し得るが、接線方向または接線的な態様で接触し得、患者の流出物内のフィブリン、タンパク質および他の微粒子は、フィルタ膜によって捕捉されにくく、フィルタ膜上に引っかかりにくい。したがって、フィルタ膜114は、フィルタセット100とともに廃棄される前、治療における複数の充填を通して有効なままである。
【0069】
新鮮なPD流体のポート104aは、スロットなどの開口104oを提供され、スロットは、円筒形の新鮮なPD流体のポートの周りに均等に(例えば、径方向に均等に)分配され得る。図示の例では、互いに均等に90°間隔を置かれた4つのスロット104oがある。代替的に、開口104oは、例えば、一連の穴、一列の穴、長方形の形状であり得る。開口またはスロット104oは、ルーメン側コネクタ104内の空気進路変更ネット112によって進路変更させられた空気(図2の気泡として示される)を含む少量の新鮮なPD流体が、第3のまたは空気戻りライン58を介してPD機またはサイクラー20に押し戻されることを可能にする。
【0070】
図示の実施形態におけるルーメン側コネクタ104は、外側円筒形ポート104cも含み、外側円筒形ポート104cは、円筒形の外側ポート104cの内壁と円筒形の新鮮なPD流体のポート104aの外壁との間に位置している円筒形チャネル104dを部分的に画定する。一実施形態において、ポート104a~104cの各々は、ルーメン側コネクタ104の残りの部分と共に成形される。
【0071】
図3は、ルーメン側コネクタ104と患者ラインコネクタ56との間の1つの可能な嵌合配置を示し、その嵌合配置は、同様に成形され、本明細書で説明する材料の任意のもので作られ得る。図3の嵌合配置は、ルーメン52とルーメン54との間の同心の関係に特有である。ルーメン側コネクタ104と患者ラインコネクタ56との間の嵌合配置は、ルーメン52およびルーメン54のための並んだ関係のために、異なるが、本明細書で説明するような第3のまたは空気戻りライン58を依然として含む。図示の実施形態において、患者ラインコネクタ56は、円筒形の新鮮なPD流体のポート56aを含み、ポート56aは、その外面が円筒形の新鮮なPD流体のポート104aの内面に対して、例えば、シリコーンまたは他の適切なゴムなどのガスケットを介してシールするように、径方向に寸法決めされている。新鮮なPD流体のポート56aの長さは、新鮮なPD流体のポート104aの開口またはスロット104oの少なくとも一部が流れる新鮮なPD流体に対して露出させられることを可能にするために十分に短く寸法決めされ、それによって、空気は、開口またはスロット104oの露出させられた部分を通って運び出される。
【0072】
患者ラインコネクタ56は、円筒形の使用済みPD流体のポート56bも含み、ポート56bは、その内面が円筒形の使用済みPD流体のポート104bの外面に対して、例えばシリコーンまたは他の適切なゴムなどのガスケットを介してシールするように径方向に寸法決めされている。患者ラインコネクタ56は、円筒形の外壁56cをさらに含み、その内面は円筒形の外側円筒形ポート104cの外面に対して、例えばシリコーンまたは他の適切なゴムなどのガスケットを介してシールするように径方向に寸法決めされている。図示の実施形態における円筒形外壁56cは、ルーメン側コネクタ104の外壁104eの内向きのねじ山に篏合して解放可能にねじ式で係合するように構成された外向きのねじ山を含む。ルーメン側コネクタ104を患者ラインコネクタ56にねじ込むことにより、一実施形態において上述した3つのシールの各々を作成する。
【0073】
図3は、デュアルルーメン患者ライン50のための新鮮なPD流体のルーメン52を示し、ルーメン52は、患者ラインコネクタ56の新鮮なPD流体のポート56aにシールされている(例えば、超音波、熱および/または接着によってシールされている)。使用済みPD流体のルーメン54は、使用済みPD流体のポート56bに任意の所望の態様でシールされる。第3のまたは空気戻りライン58は、患者ラインコネクタ56の空気戻りポート56dに任意の所望の態様でシールされる。ルーメン側コネクタ104が患者の充填中に患者ラインコネクタ56に嵌合されると、チャネル104dは、患者ラインコネクタ56内に位置する密封された収集領域56eに空気を含む少量の新鮮なPD流体を導く。空気を含む少量の新鮮なPD流体は、例えばPD流体ポンプ24から負圧下で、空気戻りポート56dおよび可撓性のある空気戻りライン58を介して、密封された領域56eを出てPD機またはサイクラー20へ向かう。空気戻りポート56dおよび可撓性のある空気戻りライン58は、戻されるPD流体の量が小さいので、直径は、小さくあり得る。可撓性のある空気戻りライン58は、デュアルルーメン患者ライン50が再使用可能であるか使い捨てであるかに応じて、再使用可能であるか、または使い捨てである。可撓性のある空気戻りライン58は、独立し得るか、または、デュアルルーメン患者ライン50と共押し出しされ得る。
【0074】
図1は、可撓性のある空気戻りライン58が、PD機またはサイクラー20内に位置する内部の耐久性のある空気戻りライン34に接続することを示している。内部または耐久性のある空気戻りライン34は、1つ以上の供給バルブ26cの上流の位置または下流の位置まで延び得る。その位置が1つ以上の供給バルブ26cの上流にある場合、1つ以上の供給バルブは、ライン58および34を介して空気戻りPD流体の流れを開閉するバルブとしても機能し得る。その位置が1つ以上の供給バルブ26cの下流にある場合、サイクラーの空気戻りライン34は、空気混入PD流体がPD流体ポンプ24の上流に戻されることを可能にするために、患者の充填中に選択的に開かれる空気戻りバルブ26eを提供され得る。ライン58および34を通る空気戻りPD流体の流れは、患者の充填全体にわたって行われ得るか、または、患者の充填中にバルブ26eの開閉を介して断続的に生じ得る。
【0075】
PD機またはサイクラー20は、空気トラップ36を含み、空気トラップ36は、空気戻りラインが一次PD流体ライン38に再接続する位置とPD流体ポンプ24との間に位置している。空気トラップ36は、空気が浮力を介して流体から逃げることを可能にするある体積の比較的停滞したPD流体を提供する。したがって、空気トラップ36は、本明細書に記載の空気戻り機構を介してPD機またはサイクラー20に方向転換された空気を除去するのに役立つ。
【0076】
図4は、本開示のシステム10の空気戻りの流れを要約する簡略化された流れの概略図を示す。PD流体ポンプ24によって圧送された新鮮なPD流体は、一次PD流体ライン38および新鮮なPD流体のルーメン52に沿ってフィルタセット100に流れる。フィルタセット100内の空気進路変更ネット112は、新鮮なPD流体内の空気を進路変更させ、その一方で、1つ以上の滅菌グレードまたは減菌フィルタ膜114は、新鮮なPD流体をさらに濾過し、新鮮なPD流体が、短い可撓性チューブ110(提供されている場合)および患者移送セット60を介して患者Pに送られる。使用済みPD流体は、PD流体ポンプ24を介して患者Pから除去され、患者移送セット60、短い可撓性チューブ110(提供されている場合)、フィルタセット100、使用済みPD流体のルーメン54、および排出ライン62を介してドレインに送られる。空気進路変更ネット112を介して進路変更させられた空気および少量のPD流体は、可撓性のある空気戻りライン58、サイクラー空気戻りライン34および一次PD流体ライン38を介してPD流体ポンプ24に戻される。途中で、空気は、空気トラップ36を介してPD流体から脱気される。
【0077】
本明細書に記載の現在好ましい実施形態に対する様々な変更および修正が当業者には明らかであることを理解されたい。したがって、そのような変更および修正のいずれかまたは全てが添付の特許請求の範囲によって網羅され得ることが意図されている。例えば、デュアルルーメン患者ライン50のための同心の実施形態において、新鮮なPD流体のルーメン52が使用済みPD流体のルーメン54の外側に位置するように示されているが、代わりに、使用済みPD流体のルーメン54は、新鮮なPD流体のルーメン52の外側に位置し得る。別の例では、本開示の空気戻り機構は、単一ルーメンの患者ラインと共に使用され、すなわち、デュアルルーメン患者ラインは、本開示の空気戻り機構に必要とされない。さらなる例では、デュアルルーメン患者ライン50が使い捨てである場合、患者ラインコネクタ56は、排除され得、使用済みPD流体のルーメン54は、代わりにルーメン側コネクタ104の使用済みPD流体のポート104bに溶接され、新鮮なPD流体のルーメン52は、代わりに新鮮なPD流体のポート104aに溶接され、可撓性のある空気戻りライン58は、代わりに円筒形空気/PD流体戻りチャネル104dと流体連通する追加の流体ポートに溶接される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】