(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】抗GD2投与レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20241219BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241219BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20241219BHJP
A61P 5/24 20060101ALI20241219BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20241219BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241219BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P25/00
A61P17/00
A61P19/08
A61P21/00
A61P11/00
A61P27/02
A61P5/14
A61P5/24
A61P15/00
A61P35/02
A61P43/00 101
A61K49/00
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533848
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 DK2022050270
(87)【国際公開番号】W WO2023104272
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519399626
【氏名又は名称】ワイ-マブス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モラ・グラウペラ,ハウメ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ナイ-コン
(72)【発明者】
【氏名】モダック,シャキール
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ,ビグネシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・メーラー・サン-ペドロ,クラウス
【テーマコード(参考)】
2G045
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA36
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB21
4C085EE01
4C085GG02
4C085HH00
4C085KA04
4C085KA05
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、副作用に関連するGD2結合抗体の投与に関する。特に、本発明は、GD2結合抗体の投与に関連する副作用を低減するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GD2結合抗体の投与量の対象への投与を含む処置及び/又は診断の方法であって、前記方法は、少なくとも:
i.第1時間の第1投与速度で前記抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度で前記抗体を投与するステップであり、前記第2投与速度が前記第1投与速度より速い、ステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記方法が、GD2結合抗体により処置可能な状態のヒト対象を処置するためのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、GD2発現の上昇に関連する状態の診断のためのものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与が注入により行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1投与速度が、全身の神経の少なくとも一部が刺激されることを可能にするために十分に高いが、不要な副作用を実質的に回避するために十分に低い、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1投与速度が、交感神経が刺激されることを可能にするために十分に高いが、不要な副作用を実質的に回避するために十分に低い、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1投与速度が、前記抗体に結合する少なくとも一部の受容体が飽和されることを可能にするために十分に高いが、副作用を実質的に回避するために十分に低い、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が交感神経などの神経と相互作用する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記GD2結合抗体が、2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる完全抗体、二重特異性抗体、SADA構築物若しくは複合体、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどから選択される抗体断片、又はGD2結合部位を含むキメラ及び/若しくは組換え構築物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記GD2結合抗体が、hu14.18-IL2などのイムノサイトカインである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記GD2結合抗体がヒト化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記GD2結合抗体が、配列番号5、6、7、8、9及び10のCDR配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記GD2結合抗体が、配列番号3のVH配列及び配列番号4のVL配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記GD2結合抗体が、配列番号1の重鎖配列及び配列番号2の軽鎖配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記GD2結合抗体がSADA構築物であり、好ましくは配列番号11の配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記GD2結合抗体がジヌツキシマブであり、配列番号12の配列及び配列番号13の配列を含み、並びに/又はジヌツキシマブのCDR配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
がんの処置又は改善のためのものである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、神経芽細胞腫、黒色腫、骨肉腫、肉腫、脳腫瘍、小細胞肺がん、網膜芽細胞腫、甲状腺がん、乳がん又は癌腫のうちから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、骨肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫、紡錘細胞肉腫、脳腫瘍、小細胞肺がん、網膜芽細胞腫、HTLV-1感染T細胞白血病、トリプルネガティブ乳がん及び他のGD2陽性腫瘍のうちから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
グレードG3又はG4の有害反応の数が、前記第1時間+前記第2時間に対応する時間において、GD2結合抗体の完全投与量を定速投与で投与される状況と比較して低減されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
グレードG3又はG4の有害反応の数が、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%低減されている、又はグレードG3及びG4の有害反応の数が、実際上非存在である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記投与速度が、投与の合計時間の間に漸進的、連続的又は段階的に増加される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記投与量の投与の合計時間が4時間以下であり、投与の最初の15分間に投与される抗体の量が、前記抗体の総量の5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、好ましくは2%以下である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記投与量の投与の合計時間が4時間以下であり、投与の最初の30分間に投与される抗体の量が、前記抗体の総量の10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記投与量の投与の合計時間が4時間以下であり、投与の最初の45分間に投与される抗体の量が、前記抗体の総量の30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体の総量の10%以下が、前記投与量の投与の合計時間の最初の15%、より好ましくは最初の20%、好ましくは最初の25%、より好ましくは最初の30%、好ましくは最初の33%に投与される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体の総量の33%以下が、前記投与量の投与の合計時間の最初の50%、より好ましくは最初の55%、好ましくは最初の60%、より好ましくは最初の65%、好ましくは最初の70%に投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体の総量の少なくとも50%が、前記投与量の投与の合計時間の最後の40%、より好ましくは最後の35%、好ましくは最後の30%、より好ましくは最後の25%、好ましくは最後の20%に投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体の総量の少なくとも66%が、前記投与量の投与の合計時間の最後の50%、より好ましくは最後の45%、好ましくは最後の40%、より好ましくは最後の35%、好ましくは最後の33%に投与される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記処置が2つ以上のサイクルで実施され、各サイクルがGD2抗体の2日以上の投与を含み、各サイクルが7日間に及ぶ、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記処置が2つ以上のサイクルで実施され、各サイクルがGD2抗体の2日以上の投与を含み、2つの投与日が、抗体投与を伴わない1日で隔てられており、2つのサイクルが、抗体投与を伴わない少なくとも2日間で隔てられている、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
各サイクルが3日間の抗体投与を含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記投与量の投与の後に、前記抗体投与を伴わない少なくとも2日間が続く、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
総投与量の20%以下が投与の最初の75分間に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
総投与量の少なくとも80%が投与の最後の60分間に投与される、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
抗体が注入により投与され、注入速度が以下の段階:
【表1】
の内で調整される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
抗体が注入により投与され、注入速度が、請求項36に記載の速度の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
抗体が注入により投与され、注入速度が請求項36又は37の記載の速度に調整され、注入時間が、請求項36に記載の注入時間の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
抗体が注入により投与され、用量が以下の段階:
【表2】
で投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
抗体が注入により投与され、用量が、請求項39に記載の用量の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる、請求項33~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
抗体が注入により投与され、用量が請求項39又は40に記載の用量に調整され、注入時間が請求項39に記載の注入時間の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる、請求項33~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記投与量の投与が、前記抗体の事前投与の2日以内に行われる、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
総投与量の20%以下が投与の最初の45分間に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
総投与量の少なくとも70%が投与の最後の30分間に投与される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
抗体が注入により投与され、注入速度が以下の段階:
【表3】
の内で調整される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
抗体が注入により投与され、注入速度が、請求項45に記載の速度の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
抗体が注入により投与され、注入速度が請求項45又は46に記載の速度に調整され、注入時間が、請求項45に記載の注入時間の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
抗体が注入により投与され、用量が以下の段階:
【表4】
で投与される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
抗体が注入により投与され、用量が、請求項48に記載の用量の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる、請求項42~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
抗体が注入により投与され、用量が請求項48又は49に記載の用量に調整され、注入時間が請求項48に記載の注入時間の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる、請求項42~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
抗体が注入により投与され、注入速度が請求項36又は45の記載に従って調整される、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
抗体が注入により投与され、用量が請求項39又は48の記載に従って調整される、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
投与の合計時間が7時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは5時間以下、好ましくは4時間以下、より好ましくは3.5時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは2.5時間以下である、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
投与の合計時間が60分超、好ましくは70分超、より好ましくは75分超、好ましくは80分超、より好ましくは85分超である、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
ステップiで投与される抗体の濃度が、ステップiiで投与される抗体の濃度より低い、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記第1時間が、神経刺激の程度が減少されるまで続く、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記第1時間が少なくとも30分、より好ましくは45分、好ましくは60分、より好ましくは75分、好ましくは少なくとも120分である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
ステップiで投与される投与量が総投与量の0.5~50%w/w、1~20%w/w、好ましくは2~15%w/w、より好ましくは3~12%w/w、好ましくは4~10%w/w、より好ましくは5~8%w/w、好ましくは6%w/wである、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
第1投与速度が、ステップiで投与される投与量が総投与量の0.5~50%w/w、1~20%w/w、好ましくは2~15%w/w、より好ましくは3~12%w/w、好ましくは4~10%w/w、より好ましくは5~8%w/w、好ましくは6%w/wであるように選択される、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
第1投与速度が1mg/kg/h未満である、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
第1投与速度が0.05~1mg/kg/h、好ましくは0.1~0.5mg/kg/hの範囲から選択され、好ましくはおよそ0.3mg/kg/hである、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
第1時間が、60分より長い、好ましくは60~120分の範囲、好ましくは60~90分の範囲、最も好ましくはおよそ75分である、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記第2投与速度が、前記投与量の投与が完了するまで持続される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記第2時間が15分以下、より好ましくは30分、好ましくは45分、より好ましくは60分、好ましくは90分である、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
第2投与速度が、ステップiiで投与される投与量が投与される総投与量の少なくとも80%、好ましくは総投与量の少なくとも90%、最も好ましくは総投与量のおよそ94%であるように選択される、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
第2投与速度が1mg/kg/hを超える、好ましくは1~5mg/kg/hの範囲、最も好ましくはおよそ4mg/kg/hである、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
第2時間が15分以上、好ましくは15~30分の範囲である、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
GD2結合抗体の総量がステップi及びiiで投与される、請求項1~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
GD2結合抗体の投与される総投与量が50~150mgの範囲である、請求項1~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
GD2結合抗体がナキシタマブであり、第1時間が75分であり、第1投与速度が、GD2結合抗体の投与される総投与量の6%がステップiで投与され、投与される総投与量の残りがステップiiで注入により投与されるように選択される、請求項1~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
ステップiとステップiiの間に中断を更に含む、請求項1~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記投与の対象がヒト又は動物対象である、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記投与の対象が、成人、若年又は小児である、請求項1~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
請求項1~73のいずれか一項に記載の処置の方法における使用のための、抗体。
【請求項75】
請求項1~74のいずれか一項に記載の処置の方法における使用のための、GD2結合抗体又はその断片。
【請求項76】
請求項1~75のいずれか一項に記載の処置の方法における使用のための抗体を含む、医薬組成物。
【請求項77】
賦形剤、結合剤又は希釈剤を含む、請求項76に記載の医薬組成物。
【請求項78】
請求項76又は77に記載の医薬組成物の製造のための抗体の使用。
【請求項79】
i.第1時間の第1投与速度でGD2結合抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度でGD2結合抗体を投与するステップであり、第2投与速度が第1投与速度より速い、ステップ
を含む方法における使用のための、GD2結合抗体。
【請求項80】
GD2結合抗体の投与量の対象への投与を含む処置の方法又は診断方法における使用のためのGD2結合抗体であって、前記方法は、
i.第1時間の第1投与速度で前記抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度で前記抗体を投与するステップであり、前記第2投与速度が前記第1投与速度より速い、ステップを含み;
第1投与速度が1mg/kg/h未満であり;
第1時間が少なくとも5分間であり;
前記投与量の合計投与時間が、6時間以下、好ましくは4時間以下である
、GD2結合抗体。
【請求項81】
前記方法が対象における状態の処置又は改善のためであり、前記状態が前記抗体の投与によって影響される、請求項79又は80に記載のGD2結合抗体。
【請求項82】
前記第1投与速度が、全身の神経が刺激されることを可能にするために十分に高いが、不要な副作用を実質的に回避するために十分に低い、請求項79~81のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項83】
前記第1投与速度が、受容体が飽和されることを可能にするために十分に高いが、副作用を実質的に回避するために十分に低い、請求項79~82のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項84】
グレードG3又はG4の有害反応の数が、前記第1時間+前記第2時間に対応する時間において、GD2結合抗体の完全投与量を定速投与で投与される状況と比較して低減されている、請求項79~83のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項85】
グレードG3又はG4の有害反応の数が、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%低減されている、又はグレードG3及びG4の有害反応の数が、実際上非存在である、請求項84に記載のGD2結合抗体。
【請求項86】
前記方法が、がんの処置を含む、請求項79~85のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項87】
診断方法又は処置の方法が、がんを診断又は処置するための方法である、請求項1~86のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項88】
前記がんが、神経芽細胞腫、黒色腫、肉腫、脳腫瘍、乳がん又は癌腫のうちから選択される、請求項86又は87に記載のGD2結合抗体。
【請求項89】
前記がんが、骨肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫、紡錘細胞肉腫、脳腫瘍、小細胞肺がん、網膜芽細胞腫、HTLV-1感染T細胞白血病、トリプルネガティブ乳がん及び他のGD2陽性腫瘍のうちから選択される、請求項88に記載のGD2結合抗体。
【請求項90】
2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる完全抗体、二重特異性抗体、SADA構築物、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどから選択される抗体断片、又はGD2結合部位を含むキメラ及び/若しくは組換え構築物である、請求項79~89のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項91】
イムノサイトカインである、請求項79~90のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項92】
ヒト化されている、請求項79~91のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項93】
配列番号5、6、7、8、9及び10のCDR配列を含む、請求項79~92のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項94】
配列番号3のVH配列及び配列番号4のVL配列を含む、請求項79~93のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項95】
配列番号1の重鎖配列及び配列番号2の軽鎖配列を含む、請求項79~94のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項96】
配列番号11の配列を含む、請求項79~95のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項97】
第1時間の投与が注入により実施される、請求項79~96のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項98】
ステップiで投与される投与量が総投与量の0.5~50%w/w、1~20%w/w、好ましくは2~15%w/w、より好ましくは3~12%w/w、好ましくは4~10%w/w、より好ましくは5~8%w/w、好ましくは6%w/wである、請求項1~97のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項99】
第1投与速度が、ステップiで投与される投与量が総投与量の0.5~50%w/w、1~20%w/w、好ましくは2~15%w/w、より好ましくは3~12%w/w、好ましくは4~10%w/w、より好ましくは5~8%w/w、好ましくは6%w/wであるように選択される、請求項79~97のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項100】
第1投与速度が250μg/分未満である、請求項79~99のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項101】
第1投与速度が50~250μg/分、好ましくは75~200μg/分、好ましくは100~150μg/分の範囲から選択され、好ましくはおよそ120μg/分である、請求項79~100のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項102】
第1時間が少なくとも10分、好ましくは少なくとも15分、より好ましくは少なくとも30分、好ましくは少なくとも45分、より好ましくは少なくとも45分、好ましくは少なくとも60分である、請求項79~101のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項103】
第1投与速度が0.05~1mg/kg/h、好ましくは0.1~0.5mg/kg/hの範囲から選択され、好ましくはおよそ0.3mg/kg/hである、請求項1~102のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項104】
第1時間が、60分より長い、好ましくは60~120分の範囲、好ましくは60~90分の範囲、最も好ましくはおよそ75分である、請求項79~101のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項105】
第2時間の投与が注入により実施される、請求項79~103のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項106】
第2投与速度が、ステップiiで投与される投与量が投与される総投与量の少なくとも80%、好ましくは総投与量の少なくとも90%、最も好ましくは総投与量のおよそ94%であるように選択される、請求項79~105のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項107】
第2投与速度が、1mg/分を超える、好ましくは1~25mg/分の範囲、好ましくは5~15mg/分の範囲、最も好ましくはおよそ10mg/分である、請求項1~106のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項108】
第2投与速度が1mg/kg/hを超える、好ましくは1~10mg/kg/hの範囲、最も好ましくはおよそ4~6mg/kg/hである、請求項1~107のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項109】
前記第2時間が15分以下、より好ましくは30分、好ましくは45分、より好ましくは60分、好ましくは90分である、請求項1~108のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項110】
第2時間が15分以上、好ましくは15~30分の範囲である、請求項79~107のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項111】
GD2結合抗体の総量がステップi及びiiで投与される、請求項79~110のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項112】
GD2結合抗体の投与される総投与量が50~150mgの範囲である、請求項111に記載のGD2結合抗体。
【請求項113】
GD2結合抗体がナキシタマブであり、第1時間が75分であり、第1投与速度が、GD2結合抗体の投与される総投与量の6%がステップiで投与され、投与される総投与量の残りがステップiiで注入により投与されるように選択される、請求項79~112のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項114】
ステップiとステップiiの間に中断を更に含む、請求項79~113のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項115】
前記投与量が3mg/kg以下である、請求項1~114のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項116】
抗体が注入により投与され、注入速度が、
A)以下の段階の内:
【表5】
又はB)以下の段階の内:
【表6】
のいずれかで調整される、請求項1~115のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項117】
抗体が注入により投与され、用量が、
A)以下の段階:
【表7】
又はB)以下の段階:
【表8】
のいずれかで投与される、請求項1~116のいずれか一項に記載のGD2結合抗体。
【請求項118】
対象が成人、若年又は小児である、請求項79~117のいずれかに記載のGD2結合抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副作用を伴うGD2結合抗体の投与に関する。特に、本発明は、GD2結合抗体の投与に伴う副作用を低減するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガングリオシドGD2結合抗体は、神経芽細胞腫などのGD2発現腫瘍に対する有望な免疫療法剤であることが見出されている。正常なヒト組織におけるGD2発現は、皮膚メラニン細胞、ニューロン及び末梢神経繊維に限定されており、神経芽細胞腫におけるGD2の高い発現は、GD2を免疫療法に好適な腫瘍関連抗原にする。GD2結合抗体の使用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を介した腫瘍細胞死を媒介する。
【0003】
出版物において、「Pathogenesis of the neurotoxicity caused by anti-GD2 antibody therapy」、Journal of the Neurological Sciences、第149巻、1997年8月1日、127~130頁、Yukiらは、抗GD2 MAb(14G2a)の投与に関連する副作用を報告した。
【0004】
GD2抗体を使用した免疫療法により引き起こされる有望な抗腫瘍効果にもかかわらず、相当な毒性負荷が認識されている。GD2抗体処置を受けている患者は、強度の疼痛、発熱、アレルギー反応、血圧の変動及び神経毒性を含む重度の有害作用を経験している(Blom、Thomasら、「Treatment-Related Toxicities During Anti-GD2 Immunotherapy in High-Risk Neuroblastoma Patients」、Frontiers in oncology 第10 601076巻、2021年2月17日、doi:10.3389/fonc.2020.601076)。Blomらは、高リスク神経芽細胞腫患者における抗GD2抗体免疫療法に関連する毒性に対して非系統的文献レビューを実施した。免疫療法プロトコールは、4日間連続の10時間の定速静脈内投与による1日当たり17.5mg/m2の投与量のジヌツキシマブの投与、又は5日間連続の8時間の定速投与による1日当たり20mg/m2の投与量のジヌツキシマブベータの投与から構成された。観察された最も一般的な有害作用は、疼痛、発熱、咳嗽、浮腫及び肝臓酵素異常であった。
【0005】
出版物において、「Humanized 3F8 Anti-GD2 Monoclonal Antibody Dosing with Granulocyte-Macrophage Colony-Stimulating Factor in Patients with Resistant Neuroblastoma A Phase 1 Clinical Trial、JAMA Oncology 第4巻、2018年9月20日、1729~1735頁、Kushnerらは、hu3F8の投与のために3+3用量漸増設計を使用して第1相臨床試験を行った。各サイクルは、-4~0日目の250μg/m2/dのGM-CSF、続いて1~5日目の500μg/m2/dのGM-CSFの逓増の投与から構成された。hu3F8は、1、3及び5日目に30分間にわたって定速で静脈内投与された。患者にはアヘン剤及び抗ヒスタミン薬を前投薬して、有害作用を制限した。
【0006】
出版物において、「A Phase II Trial of Hu14.18K322A in Combination with Induction Chemotherapy in Children with Newly Diagnosed High-Risk Neuroblastoma」、Clinical Cancer Research、第25巻、2019年11月、Furmanらは、GD2抗体のhu14.18K322Aと導入化学療法との組み合わせ、並びに新たに診断された神経芽細胞腫を有する小児における応答及び成果について調査している。hu14.18K322Aは、2~5日目にそれぞれの導入化学療法の最中に4一日用量で投与された。hu14.18K322Aの投与量は、1用量当たり40mg/m2に固定された。hu14.18K322Aの各用量は、4時間かけて投与されるように計画されたが、患者の耐容によって、hu14.18K322Aの投与は、一部の患者では8又は16時間に延長された。患者は、hu14.18K322A投与の前に、標準投与量のモルヒネ、ヒドロモルホン又はフェンタニルなどの麻酔薬の30分間の連続注入も受けていた。それぞれの過程の後には、250mg/m2のGM-CSFの皮下投与が毎日続いた。記録された有害作用には、疼痛、低血圧、咳嗽及び低酸素症が挙げられる。
【0007】
出版物において、「A Pilot Trial of Hu14.18-IL2 (EMD 273063) in Subjects with Completely Resectable Recurrent Stage III or Stage IV Melanoma」、Cancer Immunology Immunotherapy、第67巻、2018年10月、1647~1658頁、Albertiniらは、黒色腫患者においてアジュバントhu14.18-IL2を試験する第I相臨床試験を行った。患者はhu14.18-IL2を1、2及び3日目に受けた。投与された一日用量は6mg/m2/日であり、各用量は、連続定速(continuous rate)で4時間にわたって静脈内投与された。記録されたhu14.18-IL2処置の有害作用は、低血圧、疼痛、並びにビリルビン及びクレアチニンの上昇であった。
【0008】
出版物において、「Phase I trial of murine monoclonal antibody 14G2a administered by prolonged intravenous infusion in patients with neuroectodermal tumors」、Journal of Clinical Oncology、第12巻、1994年1月1日、184~193頁、Murrayらは、黒色腫、神経芽細胞腫又は骨肉腫などの神経外胚葉性腫瘍を有する患者における14G2aの毒性及び最大耐容量について調査した。患者は、50、100又は200mg/m2/日の14G2aを静脈内で24時間にわたって5日間受けた。長期14G2a投与の毒性及び有害作用は、低血圧、疼痛、低ナトリウム血症、発熱及び発疹からなった。Murrayらは、「Mab 14G2aは、有意な毒性という代償を払って軽度の抗腫瘍活性を有する」と結論づけた。
【0009】
疼痛、発熱、発疹及び毛細管漏出症候群などの有害作用は、炎症性ペプチドの産生の増加が原因である可能性が最も高い。重度の有害作用は、投与され得るGD2抗体の用量を制限する。最適な投与スケジュール及びタイミングは、依然として決定されていない(Navid、Faribaら、「Anti-GD2 antibody therapy for GD2-expressing tumors」、Current cancer drug targets 第10巻、2(2010年):200~9頁)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「Pathogenesis of the neurotoxicity caused by anti-GD2 antibody therapy」、Journal of the Neurological Sciences、第149巻、1997年8月1日、127~130頁、Yukiら
【非特許文献2】Blom、Thomasら、「Treatment-Related Toxicities During Anti-GD2 Immunotherapy in High-Risk Neuroblastoma Patients」、Frontiers in oncology 第10 601076巻、2021年2月17日、doi:10.3389/fonc.2020.601076
【非特許文献3】「Humanized 3F8 Anti-GD2 Monoclonal Antibody Dosing with Granulocyte-Macrophage Colony-Stimulating Factor in Patients with Resistant Neuroblastoma A Phase 1 Clinical Trial、JAMA Oncology 第4巻、2018年9月20日、1729~1735頁、Kushnerら
【非特許文献4】「A Phase II Trial of Hu14.18K322A in Combination with Induction Chemotherapy in Children with Newly Diagnosed High-Risk Neuroblastoma」、Clinical Cancer Research、第25巻、2019年11月、Furmanら
【非特許文献5】「A Pilot Trial of Hu14.18-IL2 (EMD 273063) in Subjects with Completely Resectable Recurrent Stage III or Stage IV Melanoma」、Cancer Immunology Immunotherapy、第67巻、2018年10月、1647~1658頁、Albertiniら
【非特許文献6】「Phase I trial of murine monoclonal antibody 14G2a administered by prolonged intravenous infusion in patients with neuroectodermal tumors」、Journal of Clinical Oncology、第12巻、1994年1月1日、184~193頁、Murrayら
【非特許文献7】Navid、Faribaら、「Anti-GD2 antibody therapy for GD2-expressing tumors」、Current cancer drug targets 第10巻、2(2010年):200~9頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(発明の要旨)
GD2抗体の投与は、重度の有害作用、特に、疼痛、低血圧及び/又は低酸素症を生じさせる。具体的には、ヒトへの抗ガングリオシドGD2モノクローナル抗体の静脈内投与は、マウス誘導3F8及び14.G2a、キメラch14.18(ジヌツキシマブ若しくはジヌツキシマブベータ)又はヒト化(ナキシタマブ(naxitamab)若しくはhu14.18K322A)にかかわりなく疼痛を引き起こす。この疼痛は、相変わらず抗GD2療法における主要な欠点及び全ての抗GD2抗体の開発における主要な用量制限毒性のままである。疼痛は、通常は重度のびまん性で大部分が内臓性であり、その機序は依然として不明である。部分的には疼痛の副作用及び患者に与えられる治療薬が原因で、抗GD2抗体注入は、低血圧、頻脈、じんま疹、発熱、気管支けいれん、咳嗽、嘔吐及び悪心を一般に引き起こす。
【0012】
公知の有害事象を表1に要約する。
【0013】
【0014】
有害作用は、疼痛及び炎症を低減するためにアヘン剤及びステロイド、並びにアナフィラキシーのリスクを低減するために抗ヒスタミン薬の前投与により治療され得る。あるいは、GD2抗体の投与は、有害作用を低減するため(しかし、排除するためではない)非常に長い注入時間を使用して延長され、このことは、結果として非常に長い注入時間を耐えなければない患者にとって理想的ではない。K322A突然変異を使用した補体活性化の低減も疼痛の排除に失敗しており、それは、患者が疼痛管理のために相当量の麻酔薬を必要とし続けたからである(「Phase I Trial of a Novel Anti-GD22 Monoclonal Antibody, Hu14.18K322A, Designed to Decrease Toxicity in Children With Refractory or Recurrent Neuroblastoma」、J.Clin.Oncol.32:1445~1452頁、2014年)。
【0015】
したがって、有害反応を低減し、かつ長すぎる注入時間を必要としないGD2抗体のための改善された投与レジメンの必要性が存在する。
【0016】
抗GD2抗体は、疼痛、低血圧及び低酸素症を含む主要な副作用を引き起こし、これらは、とりわけ幼児(young Children)において重大な管理上の難題である。感覚ニューロンが抗体結合を介して活性化する場合、これらの副作用は電気生理学的である。臨床徴候及び症状、並びに電気生理学的研究(下記に記載されている)に基づいて、これらの副作用は、自律神経系(Autonomous Nervous System)を介して媒介される可能性が高い。人体中の大部分の小無髄C繊維は自律神経系に属していることも公知であり、一方、Aα-、Aβ-又はAδ-繊維は、体性神経系の一部であると主に考えられている。
【0017】
本発明者らは、健康な対象からの組織試料に共焦点顕微鏡法を使用して実験を行い、ここでGD2抗原は蛍光標識されていた。GD2抗原は、最も顕著な自律神経系神経である迷走神経を含む末梢神経の神経周膜及び神経内膜において、主に見出されている。
【0018】
ラットモデルにおける抗GD2実験は、無髄C繊維神経が抗GD2抗体により主に活性化されているものであることを示している。人体において、C繊維無髄神経は、大部分が自律神経系に属し、最も顕著には迷走神経に属している。
【0019】
理論に束縛されることを望むものではないが、疼痛部位(内臓)、疼痛発症のタイミング(抗体注入の30分以内)、全身作用(頻脈、低血圧)、まれな臓器損傷(神経を含む)、オピオイド又はα2δカルシウムチャンネルブロッカー(ガバペンチン若しくはニューロンチン(neurontin))の無効性及び免疫性神経炎(immune neuritis)の病理学的証拠の非存在を考慮すると、抗GD2抗体の副作用について可能な説明は、迷走神経を介した自律神経系の活性化である。抗GD2抗体の注入がゆっくりになると、疼痛の副作用は減少し得るが、多くの場合に持続する。抗体注入が30分を超えて1時間まで与えられると、副作用は重度になる。しかし、抗体注入の直ぐ後には、血中に循環している抗GD2抗体が存在し続けているにもかかわらず、副作用は消散する。このことはタキフィラキシーの現象と一致しており、ここでは、ニューロンからの電気発火が、完全に発火を停止するまで活性化によりますます鈍化されてゆく。タキフィラキシーを再現するため、抗GD2抗体は、最も感受性が高いが少数のニューロンを発火させるために十分の少ない用量で開始し、次層にあるが依然として少数のニューロンを発火させるためにより多くの用量がその後に続き、全用量の抗体が与えられる前に大部分のニューロンが鈍化されるまで続けられる、用量逓増様式で与えられる。本発明に記載されている方法により提供される利益は、抗GD2抗体の特定の例に限定されず、類似の結合特性及びニューロン活性化特性を有する任意の抗体、タンパク質又は化学物質、例えば、3F8、hu3F8(ナキシタマブ)、14G2a、ch14.18(ジヌツキシマブ、ジヌツキシマブベータ)、hu14.18-K322A、hu14.18-IL2、hu3F8-BsAb(ニバトロタマブ(nivatrotamab)及びhu3F8-SADAにも同様に適用される。
【0020】
担当医は、実際の状況に応じて好適な用量依存性を決定することができる。典型的には、総一日用量は、患者の体重又は体表面積に基づいて決定される。
【0021】
GD2抗体の投与される総一日用量は、以下の式を使用して計算することができる:
投与用量(mg/日)=用量(mg/kg/日)×体重(kg)、又は
投与用量(mg/日)=用量(mg/m2/日)×体表面積(m2)。
【0022】
ナキシタマブは、DANYELZAの名称でFDAにより近年承認されたGD2抗体であった。FDAにより承認されたパッケージレベルによると、異なる体重を有する24か月齢の幼児へのナキシタマブの投与は、推奨用量が3mg/kg/日であり、各バイアルの用量が4mg/mLであることを考慮して、表2に例証されている用量及び注射量に従って行ってよいことが推奨される。
【0023】
【0024】
体表面積(BSA)は、Mosteller方程式を使用して、身長(cm)及び体重(kg)に基づいて推定することができる:
【0025】
【0026】
異なる体重及び身長を有する24か月齢の幼児のBSAの例を表3に例証する:
【0027】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、投与速度の、好ましくは段階的な増加、その結果として、有害作用、特に注入反応、例えば、疼痛及び低血圧の低減からなるGD2抗体投与レジメンを提供する。加えて、有害作用を管理する前投薬の要件、並びに投与の最中に看護師及び医師が患者の安全を管理する必要性が低減される。
【0029】
一態様によると、本発明は、GD2結合抗体の投与量の対象への投与を含む処置及び/又は診断の方法であって、少なくとも:
i.第1時間の第1投与速度で抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度で抗体を投与するステップであり、第2投与速度が第1投与速度より速い、ステップ
を含む方法に関する。
【0030】
別の態様によると、本発明は、本発明による処置の方法における使用のための抗体に関する。
【0031】
別の態様によると、本発明は、本発明による処置の方法における使用のためのGD2結合抗体又はその断片に関する。
【0032】
別の態様によると、本発明は、本発明による処置の方法における使用のための抗体を含む医薬組成物に関する。
【0033】
別の態様によると、本発明は、本発明による医薬組成物の製造のための抗体の使用に関する。
【0034】
別の態様によると、本発明は、
i.第1時間の第1投与速度でGD2結合抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度でGD2結合抗体を投与するステップであり、第2投与速度が第1投与速度より速い、ステップ
を含む処置の方法における使用のための、GD2結合抗体に関する。
【0035】
別の態様によると、本発明は、GD2結合抗体の投与量の対象への投与を含む処置の方法又は診断方法における使用のためのGD2結合抗体であって、方法は、
i.第1時間の第1投与速度で抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度で抗体を投与するステップであり、第2投与速度が第1投与速度より速い、ステップを含み;
第1投与速度が1mg/kg/h未満であり;
第1時間が少なくとも5分間であり;
投与量の合計投与時間が、6時間以下、好ましくは4時間以下である
、GD2結合抗体に関する。
【0036】
加えて、本発明の介入の態様は、独立請求項に提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体の投与量の対象への投与を含む処置及び/又は診断の方法であって、少なくとも:
i.第1時間の第1投与速度で抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度で抗体を投与するステップであり、第2投与速度が第1投与速度より速い、ステップ
を含む方法に関する。
【0038】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体により処置可能な状態のヒト対象を処置するためのものである方法に関する。
【0039】
一実施形態によると、本発明は、GD2発現の上昇に関連する状態の診断のためのものである本発明による方法に関する。
【0040】
一実施形態によると、本発明は、投与が注入により行われる本発明による方法に関する。
【0041】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が、全身の神経の少なくとも一部が刺激されることを可能にするために十分に高いが、不要な副作用を実質的に回避するために十分に低い方法に関する。
【0042】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が、交感神経が刺激されることを可能にするために十分に高いが、不要な副作用を実質的に回避するために十分に低い方法に関する。
【0043】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が、抗体に結合する少なくとも一部の受容体が飽和されることを可能にするために十分に高いが、副作用を実質的に回避するために十分に低い方法に関する。
【0044】
一実施形態によると、本発明は、抗体が交感神経などの神経と相互作用する方法に関する。
【0045】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体が、2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる完全抗体、二重特異性抗体、SADA構築物、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどから選択される抗体断片、又はGD2結合部位を含むキメラ及び/若しくは組換え構築物である方法に関する。
【0046】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体が、hu14.18-IL2などのイムノサイトカイン(immunocytokine)である方法に関する。
【0047】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体がヒト化されている方法に関する。
【0048】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体が、配列番号5、6、7、8、9及び10のCDR配列を含む方法に関する。
【0049】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体が、配列番号3のVH配列及び配列番号4のVL配列を含む方法に関する。
【0050】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体が、配列番号1の重鎖配列及び配列番号2の軽鎖配列を含む方法に関する。
【0051】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体がSADA構築物であり、好ましくは配列番号11の配列を含む方法に関する。
【0052】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体がジヌツキシマブであり、配列番号12の配列及び配列番号13の配列を含み、並びに/又はジヌツキシマブのCDR配列を含む方法に関する。
【0053】
一実施形態によると、本発明は、がんの処置又は改善のためのものである方法に関する。
【0054】
一実施形態によると、本発明は、がんが、神経芽細胞腫、黒色腫、骨肉腫、肉腫、脳腫瘍、小細胞肺がん、網膜芽細胞腫、甲状腺がん、乳がん又は癌腫のうちから選択される方法に関する。
【0055】
一実施形態によると、本発明は、がんが、骨肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫、紡錘細胞肉腫、脳腫瘍、小細胞肺がん、網膜芽細胞腫、HTLV-1感染T細胞白血病、トリプルネガティブ乳がん及び他のGD2陽性腫瘍のうちから選択される方法に関する。
【0056】
一実施形態によると、本発明は、グレードG3又はG4の有害反応の数が、第1時間+第2時間に対応する時間においてGD2結合抗体の完全投与量を定速投与で投与される状況と比較して低減されている方法に関する。
【0057】
一実施形態によると、本発明は、グレードG3又はG4の有害反応の数が、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%低減されている、又はグレードG3及びG4の有害反応の数が、実際上非存在である方法に関する。
【0058】
一実施形態によると、本発明は、投与速度が、投与の合計時間の間に漸進的、連続的又は段階的に増加される方法に関する。
【0059】
一実施形態によると、本発明は、投与量の投与の合計時間が4時間以下であり、投与の最初の15分間に投与される抗体の量が、抗体の総量の5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、好ましくは2%以下である方法に関する。
【0060】
一実施形態によると、本発明は、投与量の投与の合計時間が4時間以下であり、投与の最初の30分間に投与される抗体の量が、抗体の総量の10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である方法に関する。
【0061】
一実施形態によると、本発明は、投与量の投与の合計時間が4時間以下であり、投与の最初の45分間に投与される抗体の量が、抗体の総量の30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である方法に関する。
【0062】
一実施形態によると、本発明は、抗体の総量の10%以下が、投与量の投与の合計時間の最初の15%、より好ましくは最初の20%、好ましくは最初の25%、より好ましくは最初の30%、好ましくは最初の33%に投与される方法に関する。
【0063】
一実施形態によると、本発明は、抗体の総量の33%以下が、投与量の投与の合計時間の最初の50%、より好ましくは最初の55%、好ましくは最初の60%、より好ましくは最初の65%、好ましくは最初の70%に投与される方法に関する。
【0064】
一実施形態によると、本発明は、抗体の総量の少なくとも50%が、投与量の投与の合計時間の最後の40%、より好ましくは最後の35%、好ましくは最後の30%、より好ましくは最後の25%、好ましくは最後の20%に投与される方法に関する。
【0065】
一実施形態によると、本発明は、抗体の総量の少なくとも66%が、投与量の投与の合計時間の最後の50%、より好ましくは最後の45%、好ましくは最後の40%、より好ましくは最後の35%、好ましくは最後の33%に投与される方法に関する。
【0066】
一実施形態によると、本発明は、処置が2つ以上のサイクルで実施され、各サイクルがGD2抗体の2日以上の投与を含み、各サイクルが7日間に及ぶ方法に関する。
【0067】
一実施形態によると、本発明は、処置が2つ以上のサイクルで実施され、各サイクルがGD2抗体の2日以上の投与を含み、2つの投与日が、抗体投与を伴わない1日で隔てられており、2つのサイクルが、抗体投与を伴わない少なくとも2日間で隔てられている方法に関する。
【0068】
一実施形態によると、本発明は、各サイクルが3日間の抗体投与を含む方法に関する。
【0069】
一実施形態によると、本発明は、投与量の投与の後に、抗体投与を伴わない少なくとも2日間が続く方法に関する。
【0070】
一実施形態によると、本発明は、総投与量の20%以下が投与の最初の75分間に投与される方法に関する。
【0071】
一実施形態によると、本発明は、総投与量の少なくとも80%が投与の最後の60分間に投与される方法に関する。
【0072】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、注入速度が以下の段階:
【0073】
【0074】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、注入速度が、本発明の速度の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる方法に関する。
【0075】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、注入速度が本発明の速度に調整され、注入時間が、本発明の注入時間の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる方法に関する。
【0076】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、用量が以下の段階:
【0077】
【0078】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、用量が、本発明の用量の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる方法に関する。
【0079】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、用量が本発明の用量に調整され、注入時間が、本発明の注入時間の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる方法に関する。
【0080】
一実施形態によると、本発明は、投与量の投与が、抗体の事前投与の2日以内に行われる方法に関する。
【0081】
一実施形態によると、本発明は、総投与量の20%以下が投与の最初の45分間に投与される方法に関する。
【0082】
一実施形態によると、本発明は、総投与量の少なくとも70%が投与の最後の30分間に投与される方法に関する。
【0083】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、注入速度が以下の段階:
【0084】
【0085】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、注入速度が、本発明の速度の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる方法に関する。
【0086】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、注入速度が本発明の速度に調整され、注入時間が、本発明の注入時間の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる方法に関する。
【0087】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、用量が以下の段階:
【0088】
【0089】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、用量が、本発明の用量の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる方法に関する。
【0090】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、用量が本発明の用量に調整され、注入時間が、本発明の注入時間の±90%、より好ましくは±80%、好ましくは±70%、より好ましくは±60%、好ましくは±50%、より好ましくは±40%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%、好ましくは±10%に調整され、注入が、投与量の投与が完了するまで続けられる方法に関する。
【0091】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、注入速度が本発明に従って調整される方法に関する。
【0092】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、用量が本発明に従って投与される方法に関する。
【0093】
一実施形態によると、本発明は、投与の合計時間が7時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは5時間以下、好ましくは4時間以下、より好ましくは3.5時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは2.5時間以下である方法に関する。
【0094】
一実施形態によると、本発明は、投与の合計時間が60分超、好ましくは70分超、より好ましくは75分超、好ましくは80分超、より好ましくは85分超である方法に関する。
【0095】
一実施形態によると、本発明は、ステップiで投与される抗体の濃度が、ステップiiで投与される抗体の濃度より低い方法に関する。
【0096】
一実施形態によると、本発明は、第1時間が、神経刺激の程度が減少されるまで続く方法に関する。
【0097】
一実施形態によると、本発明は、第1時間が少なくとも30分、より好ましくは45分、好ましくは60分、より好ましくは75分、好ましくは少なくとも120分である方法に関する。
【0098】
一実施形態によると、本発明は、ステップiで投与される投与量が総投与量の0.5~50%w/w、1~20%w/w、好ましくは2~15%w/w、より好ましくは3~12%w/w、好ましくは4~10%w/w、より好ましくは5~8%w/w、好ましくは6%w/wである方法に関する。
【0099】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が、ステップiで投与される投与量が総投与量の0.5~50%w/w、1~20%w/w、好ましくは2~15%w/w、より好ましくは3~12%w/w、好ましくは4~10%w/w、より好ましくは5~8%w/w、好ましくは6%w/wであるように選択される方法に関する。
【0100】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が1mg/kg/h未満である方法に関する。
【0101】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が0.05~1mg/kg/h、好ましくは0.1~0.5mg/kg/hの範囲から選択され、好ましくはおよそ0.3mg/kg/hである方法に関する。
【0102】
一実施形態によると、本発明は、第1時間が、60分より長い、好ましくは60~120分の範囲、好ましくは60~90分の範囲、最も好ましくはおよそ75分である方法に関する。
【0103】
一実施形態によると、本発明は、第2投与速度が、投与量の投与が完了するまで持続される方法に関する。
【0104】
一実施形態によると、本発明は、第2時間が15分以下、より好ましくは30分、好ましくは45分、より好ましくは60分、好ましくは90分である方法に関する。
【0105】
一実施形態によると、本発明は、第2投与速度が、ステップiiで投与される投与量が投与される総投与量の少なくとも80%、好ましくは総投与量の少なくとも90%、最も好ましくは総投与量のおよそ94%であるように選択される方法に関する。
【0106】
一実施形態によると、本発明は、第2投与速度が1mg/kg/hを超える、好ましくは1~5mg/kg/hの範囲、最も好ましくはおよそ4mg/kg/hである方法に関する。
【0107】
一実施形態によると、本発明は、第2時間が15分以上、好ましくは15~30分の範囲である方法に関する。
【0108】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体の総量がステップi及びiiで投与される方法に関する。
【0109】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体の投与される総投与量が50~150mgの範囲である方法に関する。
【0110】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体がナキシタマブであり、第1時間が75分であり、第1投与速度が、GD2結合抗体の投与される総投与量の6%がステップiで投与され、投与される総投与量の残りがステップiiで注入により投与されるように選択される方法に関する。
【0111】
一実施形態によると、本発明は、ステップiとステップiiの間に中断を更に含む本発明による方法に関する。
【0112】
一実施形態によると、本発明は、投与の対象がヒト又は動物対象である方法に関する。
【0113】
一実施形態によると、本発明は、投与の対象が、成人、若年又は小児である方法に関する。
【0114】
一実施形態によると、本発明は、本発明による処置の方法における使用のための抗体に関する。
【0115】
一実施形態によると、本発明は、本発明による処置の方法における使用のためのGD2結合抗体又はその断片に関する。
【0116】
一実施形態によると、本発明は、本発明による処置の方法における使用のための抗体を含む医薬組成物に関する。
【0117】
一実施形態によると、本発明は、賦形剤、結合剤又は希釈剤を含む本発明による医薬組成物に関する。
【0118】
一実施形態によると、本発明は、本発明による医薬組成物の製造のための抗体の使用に関する。
【0119】
一実施形態によると、本発明は、
i.第1時間の第1投与速度でGD2結合抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度でGD2結合抗体を投与するステップであり、第2投与速度が第1投与速度より速い、ステップ
を含む処置の方法における使用のための、GD2結合抗体に関する。
【0120】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体の投与量の対象への投与を含む処置の方法又は診断方法における使用のためのGD2結合抗体であって、方法は、
i.第1時間の第1投与速度で抗体を投与するステップ、続いて、
ii.第2時間の第2投与速度で抗体を投与するステップであり、第2投与速度が第1投与速度より速い、ステップを含み;
第1投与速度が1mg/kg/h未満であり;
第1時間が少なくとも5分間であり;
投与量の合計投与時間が、6時間以下、好ましくは4時間以下である
、GD2結合抗体に関する。
【0121】
一実施形態によると、本発明は、方法が対象における状態の処置又は改善のためであり、状態が抗体の投与によって影響される、本発明のGD2結合抗体に関する。
【0122】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が、全身の神経が刺激されることを可能にするために十分に高いが、不要な副作用を実質的に回避するために十分に低い、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0123】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が、受容体が飽和されることを可能にするために十分に高いが、副作用を実質的に回避するために十分に低い、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0124】
一実施形態によると、本発明は、グレードG3又はG4の有害反応の数が、第1時間+第2時間に対応する時間においてGD2結合抗体の完全投与量を定速投与で投与される状況と比較して低減されている、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0125】
一実施形態によると、本発明は、グレードG3又はG4の有害反応の数が、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%低減されている、又はグレードG3及びG4の有害反応の数が、実際上非存在である、本発明のGD2結合抗体に関する。
【0126】
一実施形態によると、本発明は、方法が、がんの処置を含む、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0127】
一実施形態によると、本発明は、診断方法又は処置の方法が、がんを診断又は処置するための方法である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0128】
一実施形態によると、本発明は、がんが、神経芽細胞腫、黒色腫、肉腫、脳腫瘍、乳がん又は癌腫のうちから選択される、本発明のGD2結合抗体に関する。
【0129】
一実施形態によると、本発明は、がんが、骨肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫、紡錘細胞肉腫、脳腫瘍、小細胞肺がん、網膜芽細胞腫、HTLV-1感染T細胞白血病、トリプルネガティブ乳がん及び他のGD2陽性腫瘍のうちから選択される、本発明のGD2結合抗体に関する。
【0130】
一実施形態によると、本発明は、2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる完全抗体、二重特異性抗体、SADA構築物、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどから選択される抗体断片、又はGD2結合部位を含むキメラ及び/若しくは組換え構築物である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0131】
一実施形態によると、本発明は、イムノサイトカインである、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0132】
一実施形態によると、本発明は、ヒト化されている、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0133】
一実施形態によると、本発明は、配列番号5、6、7、8、9及び10のCDR配列を含む、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0134】
一実施形態によると、本発明は、配列番号3のVH配列及び配列番号4のVL配列を含む、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0135】
一実施形態によると、本発明は、配列番号1の重鎖配列及び配列番号2の軽鎖配列を含む、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0136】
一実施形態によると、本発明は、配列番号11の配列を含む、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0137】
一実施形態によると、本発明は、第1時間の投与が注入により実施される、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0138】
一実施形態によると、本発明は、ステップiで投与される投与量が総投与量の0.5~50%w/w、1~20%w/w、好ましくは2~15%w/w、より好ましくは3~12%w/w、好ましくは4~10%w/w、より好ましくは5~8%w/w、好ましくは6%w/wである、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0139】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が、ステップiで投与される投与量が総投与量の0.5~50%w/w、1~20%w/w、好ましくは2~15%w/w、より好ましくは3~12%w/w、好ましくは4~10%w/w、より好ましくは5~8%w/w、好ましくは6%w/wであるように選択される、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0140】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が250μg/分未満である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0141】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が50~250μg/分、好ましくは75~200μg/分、好ましくは100~150μg/分の範囲から選択され、好ましくはおよそ120μg/分である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0142】
一実施形態によると、本発明は、第1時間が少なくとも10分、好ましくは少なくとも15分、より好ましくは少なくとも30分、好ましくは少なくとも45分、より好ましくは少なくとも45分、好ましくは少なくとも60分である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0143】
一実施形態によると、本発明は、第1投与速度が0.05~1mg/kg/h、好ましくは0.1~0.5mg/kg/hの範囲から選択され、好ましくはおよそ0.3mg/kg/hである、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0144】
一実施形態によると、本発明は、第1時間が、60分より長い、好ましくは60~120分の範囲、好ましくは60~90分の範囲、最も好ましくはおよそ75分である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0145】
一実施形態によると、本発明は、第2時間の投与が注入により実施される、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0146】
一実施形態によると、本発明は、第2投与速度が、ステップiiで投与される投与量が投与される総投与量の少なくとも80%、好ましくは総投与量の少なくとも90%、最も好ましくは総投与量のおよそ94%であるように選択される、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0147】
一実施形態によると、本発明は、第2投与速度が、1mg/分を超える、好ましくは1~25mg/分の範囲、好ましくは5~15mg/分の範囲、最も好ましくはおよそ10mg/分である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0148】
一実施形態によると、本発明は、第2投与速度が1mg/kg/hを超える、好ましくは1~10mg/kg/hの範囲、最も好ましくはおよそ4~6mg/kg/hである、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0149】
一実施形態によると、本発明は、第2時間が15分以下、より好ましくは30分、好ましくは45分、より好ましくは60分、好ましくは90分である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0150】
一実施形態によると、本発明は、第2時間が15分以上、好ましくは15~30分の範囲である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0151】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体の総量がステップi及びiiで投与される、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0152】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体の投与される総投与量が50~150mgの範囲である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0153】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合抗体がナキシタマブであり、第1時間が75分であり、第1投与速度が、GD2結合抗体の投与される総投与量の6%がステップiで投与され、投与される総投与量の残りがステップiiで注入により投与されるように選択される、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0154】
一実施形態によると、本発明は、ステップiとステップiiの間に中断を更に含む本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0155】
一実施形態によると、本発明は、投与量が3mg/kg以下である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0156】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、注入速度が、
A)以下の段階の内:
【0157】
【0158】
【表9】
のいずれかで調整される、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0159】
一実施形態によると、本発明は、抗体が注入により投与され、用量が、
A)以下の段階:
【0160】
【0161】
【表11】
のいずれかで投与される、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0162】
一実施形態によると、本発明は、対象が成人、若年又は小児である、本発明によるGD2結合抗体に関する。
【0163】
本発明の介入の実施形態は、特許請求の範囲に提供されている。
【0164】
一実施形態によると、本発明は、参照により本明細書に組み込まれる公開番号が国際公開第2018/204873号の国際特許出願に最初に記載された自己集合及び分解(Self-Assembly and Dis-Assembly)(SADA)技術に関連し得る。この技術は、とりわけ濃度に依存する自己集合及び分解の特性を有する小さいポリペプチドであるSADAドメインに基づいている。一部の実施形態において、SADAポリペプチドは、p53、p63、p73、hnRNPC、SNAP-23、Stefin B、KCNQ4、CBFA2T1、又は国際特許出願に限定されることなく提供されている、そのようなポリペプチドの他のいずれかの例の四量体化ドメインである又は四量体化ドメインを含む。
【0165】
一実施形態によると、本発明はSADA複合体に関連し得る。本明細書によると、SADA複合体は、SADAドメイン及び少なくとも1つの追加のドメインを含むポリペプチドを意味することが意図される。
【0166】
一実施形態によると、本発明は、GD2結合部位を含むSADA複合体に関連し得る。
【0167】
定義
有害事象
本開示のGD2抗体の投与に関連する有害事象は、DCTD、NCI、NIH、DHHSにより2006年8月9日に公表された「有害事象共通用語基準(Common terminology Criteria for adverse events)(CTCAE)」に従って評定され得る。
【0168】
グレードは、有害作用の重症度を指す。CTCAEは、一般指針に基づいて各AEの重症度についての独自の臨床記述でグレード1~5を表示する。グレード1:軽度AE;グレード2:中程度AE;グレード3:重度AE;グレード4:生命を脅かす又は身体障害性(disabeling)のAE;グレード5:死亡関連のAE。
【0169】
抗体又は抗体断片
抗体断片は、抗体の一部分、例えば、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどである。構造にかかわらず、抗体断片は、インタクト抗体により認識される同じ抗原に結合する。例えば、3F8モノクローナル抗体断片は、3F8により認識されるエピトープに結合する。用語「抗体断片」は、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体と同様に作用する、任意の合成又は遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体断片には、重及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片などの可変領域からなる単離断片、軽及び重可変領域がペプチドリンカーにより接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、及び超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。
【0170】
抗体
用語「抗体」は、当該技術に認識されている用語であり、公知の抗原に結合する分子又は分子の活性断片を含むことが意図される。公知の抗原に結合する分子の活性断片の例には、Fab及びF(ab’)2断片が挙げられる。これらの活性断片は、いくつかの技術により本発明の抗体から誘導され得る。例えば、精製モノクローナル抗体をペプシンなどの酵素により切断し、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)ゲル濾過に付すことができる。次いで、Fab断片を含有する適切な分画を収集し、膜濾過などにより濃縮することができる。用語「抗体」は、二重特異性抗体及びキメラ抗体、並びに他の利用可能なフォーマットも含む。
【0171】
GD2抗体
GD2抗体という用語は、GD2に結合することができる抗体又は抗体の断片を意味することが意図される。GD2抗体は、また、抗GD2抗体又は抗GD2結合部位と称されることもあり、これらの用語は、本出願及び特許請求の範囲内で交換可能に使用される。
【0172】
抗体断片
抗体断片は、抗体の一部分、例えば、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどである。構造にかかわらず、抗体断片は、インタクト抗体により認識される同じ抗原に結合する。例えば、3F8モノクローナル抗体断片は、3F8により認識されるエピトープに結合する。用語「抗体断片」は、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体と同様に作用する、任意の合成又は遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体断片には、重及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片などの可変領域からなる単離断片、軽及び重可変領域がペプチドリンカーにより接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、及び超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。
【0173】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、異なる構造である2つの標的に同時に結合することができる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)及び二重特異性抗体断片(bsFab)は、抗原、例えばGD2に特異的に結合する少なくとも1つのアーム、及び別の抗原、例えば、治療剤又は診断剤を担持する標的可能なコンジュゲートに特異的に結合する少なくとも1つの他のアームを有する。様々な二重特異性融合タンパク質が、分子操作を使用して産生され得る。1つの形態では、二重特異性融合タンパク質は、例えば、1つの抗原に対する単一結合部位を有するscFv及び第2の抗原に対する単一結合部位を有するFab断片からなる二価である。別の形態では、二重特異性融合タンパク質は、例えば、1つの抗原に対する2つの結合部位を有するIgG及び第2の抗原に対する2つの同一のscFvからなる四価である。
【0174】
CDR
相補性決定領域(CDR)は抗体の可変領域の一部であり、抗体の結合特異性にとってかなり重要なものである。2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる典型的な抗体は、6つのCDR配列を有し、軽鎖に3つ及び重鎖に3つである。
【0175】
キメラ抗体
キメラ抗体は、1つの種から誘導される抗体、例えば齧歯類抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含有し、一方で抗体分子の定常ドメインがヒト抗体から誘導される、組換えタンパク質である。キメラ抗体の定常ドメインは、他の種、例えば、ネコ又はイヌから誘導されてもよい。
【0176】
ヒト化抗体
ヒト化抗体は、1つの種に由来する抗体、例えば齧歯類抗体のCDRが、齧歯類抗体の重及び軽可変鎖からヒト重及び軽可変ドメインに移動されている組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体から誘導される。
【0177】
ヒト抗体は、抗原誘発負荷に応答してヒト抗体を特異的に産生するように「操作」されているトランスジェニックマウスから得た抗体であってよい。この技術では、ヒト重及び軽鎖遺伝子座のエレメントが、内在性重鎖及び軽鎖遺伝子座の標的化破壊を含有する胚性幹細胞系から誘導されたマウスの株に導入される。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、マウスは、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することに使用され得る。
【0178】
イムノサイトカイン
イムノサイトカインは、モノクローナル抗体又は抗体断片に融合しているサイトカイン部分を含む融合タンパク質である。
【0179】
速度
用語「速度」は、物質が対象に投与又は供給される速さを表す尺度として使用される。したがって、速度は、時間単位当たりの供給量として一般に表され、例えば、GD2抗体は、1時間当たりのμgで測定された速度で患者に投与され得る。
【0180】
速度は、処置される患者のサイズの差を補うために、処置される患者の体重単位又は体表面積単位による、時間単位当たりの量で表すこともできる。例には、mg/kg/h又はmg/m2/hが挙げられる。
【0181】
対象
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」とは、診断、予後又は治療が望ましい任意の対象、特に哺乳類対象を意味する。哺乳類対象には、ヒト及び他の霊長類、飼育動物、家畜、並びに動物園、競走用又は愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、雄牛、雌牛などが挙げられる。
【0182】
処置
本明細書に使用されるとき、用語「処置(treatment)」、「処置する(treat)」、「処置される(treated)」又は「処置している(treating)」は、特に、対象において望ましくない生理学的変化又は障害、例えば、多発性硬化症の進行を防ぐ又は遅くする(和らげる)べきである場合に、予防及び/又は治療を指す。有益な又は所望の臨床結果には、検出可能又は検出不能にかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定した(すなわち、悪化していない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的にかかわらず)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」は、処置を受けていない場合の予想生存期間と比較して延長された生存期間を意味することもできる。処置を必要とするものには、状態又は疾患を既に有しているもの、同様に、状態若しくは障害を有する傾向があるもの、又は状態若しくは疾患が防止されるべきものが挙げられる。
【0183】
医薬組成物
本明細書に使用されるとき、用語「医薬組成物」は、薬物又は医薬を、それを必要とする患者に投与するための組成物を意味することが意図される。医薬組成物は、医薬品又は薬剤師野で公知の方法及び技術を使用して、例えば、ヨーロッパ薬局方第10版に記載されているような医薬品グレード成分から調製される。
【0184】
SADA
自己集合及び分解(SADA)技術は、国際公開第2018/204873号に最初に開示され、濃度に依存する集合及び分解の特性を有するSADAドメインを活用する。SADAドメインを含む複合体は、典型的には少なくとも2つの特有の形態で存在し、高濃度では四量体形態であり、低濃度では単量体形態である。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【
図1】迷走神経の組織試料における共焦点顕微鏡法の結果を示す。GD2抗原は、主に無髄C繊維(灰色域)に接続して見出されていることが結論づけられる。
【
図2】1日目のGD2抗体(ナキシタマブ)注入の際の発汗反応の電気生理学的分析の結果を示す。発汗反応は、GD2抗体の連続注入の結果として経時的に減少している。
【
図3】1日目の定速投与と比較した、モデルAのGD2抗体投与速度及び合計注入時間を示す。
【
図4】3及び5日目のそれぞれの定速投与と比較した、モデルBのGD2抗体投与速度及び合計注入時間を示す。
【
図5】モデルAの1日目の各段階で投与されたGD2抗体用量及び注入開始からの合計注入時間を示す。
【
図6】モデルBの3及び5日目のそれぞれの各段階で投与されたGD2抗体用量及び注入開始からの合計注入時間を示す。
【
図7】定速投与と比較した、モデルAの1日目の投与された累積用量及び合計注入時間を示す。モデルAでは、各データポイントは特定の時点のGD2結合抗体の累積用量を示す。総投与量の投与の合計時間は、4時間以下である。
【
図8】定速投与と比較した、モデルBの3及び5日目のそれぞれの投与された累積用量及び合計注入時間を示す。モデルBでは、各データポイントは特定の時点のGD2結合抗体の累積用量を示す。総投与量の投与の合計時間は、4時間以下である。 全ての引用参考文献は、参照により組み込まれる。
【0186】
添付の図面及び実施例は、本発明を限定するのではなく、説明するために提供される。本発明の態様、実施形態及びいずれかの請求項を組み合わせてよいことが、当業者に明らかである。
【0187】
特に記述されない限り、全てのパーセンテージは重量/重量に基づいている。特に記述されない限り、全ての測定は、標準状態(周囲温度及び圧力)で行われる。特に記述されない限り、試験条件は、ヨーロッパ薬局方8.0に準拠している。
【実施例】
【0188】
材料及び方法
GD2抗体:DANYELZA(Y-mAbs Therapeutics Inc,NY;USA)として市販されているナキシタマブ
【0189】
[実施例1] 共焦点顕微鏡法
方法
本発明者らは、一次ヒト組織及び神経芽細胞腫患者に解剖学的(共焦点顕微鏡法)分析を実施して、GD2抗原をこれらの組織に局在させた。
【0190】
抗GD2モノクローナル抗体を緑色蛍光染料で染色し、組織に適用し、その後、試料を共焦点顕微鏡法の使用により視診した。
【0191】
結果
新生児のヒト剖検の自律神経系からの末梢神経の共焦点顕微鏡法は、GD2発現を神経内膜のシュワン細胞に見つけたが、ニューロン軸索には見つけなかった(
図1を参照すること)。発現レベルは、神経芽細胞腫の腫瘍細胞のGD2発現よりおよそ4倍低いと推定された。
【0192】
[実施例2] 電気生理学的分析
自律神経系反応の電気生理学的分析を、神経芽細胞腫患者へのGD2抗体注入時に測定した。患者をいくつかのサイクルのGD2抗体注入により処置し、各サイクルは、1日目(月曜日)、3日目(水曜日)及び5日目(金曜日)の注入からなった。
【0193】
この実施例では、電気生理学的分析をサイクルの1日目に行った注入の際に実施した。
【0194】
方法:
一次ヒト組織及び神経芽細胞腫患者に電気生理学的(交感神経皮膚反応(SSR))分析を実施して、自律神経系の活性化が、GD2抗体投与の際に被る最も有害な事象の基礎原因であることを実証した。
【0195】
SSRを使用して、自律神経系活性化における発汗及び心血管構成成分を測定し、活動電位を交感神経刺激後の潜伏期及び振幅について分析した。
【0196】
SSRを実施して、自律神経系の無髄軸索機能を評価した。
【0197】
表面筋電図法による交感神経刺激後の皮膚電気活性の測定のため、電極を患者の手掌又は足底(sol)に設置し、基準電極を設置した。
【0198】
ベースライン反応を記録し、GD2の注入を開始し、測定した反応を完全注入の際に記録した(
図2を参照すること)。
【0199】
結果:
全ての場合において、反応は、注入開始の直後に短い潜伏期及び低い振幅を示した。
【0200】
処置開始の後しばらくして完全に消滅するまで、反応は進行的に減少する。
【0201】
反応は、処置の45分後には決して回復しなかった。
【0202】
[実施例3] 電気生理学的分析
実施例2に開示された実験をサイクルの5日目に実施された注入で繰り返した。
【0203】
結果は、初めに低い振幅を示し、素早い反応の喪失を示した。
【0204】
[実施例4] 逓増プロトコール
GD2抗体の注入についての新たなプロトコールを開発し、20人の患者で試験した。
【0205】
プロトコールによると、患者を、1日目(月曜日)、3日目(水曜日)及び5日目(金曜日)のGD2抗体の注入を含むサイクルで処置した。
【0206】
1日目には、以下の注入スキームを使用した(
図3、5、7及び表4を参照すること)。
【0207】
【0208】
3及び5日目には、以下の注入スキームを使用した(
図4、6、8及び表5を参照すること)。
【0209】
【0210】
逓増プロトコールを、20人の患者に合計53サイクル、159注入で試験した。3人の患者(15%)は、グレード3又は4の有害事象(高血圧、無呼吸及び疼痛)を表した。このプロトコールは、必要とされるモニタリングのレベルを減らすことを許容し、MDが病床に寄り添う必要がない。
【0211】
これを、通常適用される定速による注入と比較する必要があり(
図7及び8)、グレード3又は4の疼痛が患者の72%で経験された臨床試験Study 201に適用した。
【0212】
配列
ナキシタマブ配列:
【0213】
【配列表】
【国際調査報告】