(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】正極活物質、これを含む正極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20241219BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241219BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/131
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533890
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 KR2022021182
(87)【国際公開番号】W WO2023121389
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187147
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チ・ホ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】テ・グ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・テ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウク・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジン・チョ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA05
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA02
5H050FA17
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA13
5H050HA15
(57)【要約】
本発明は、1個のノジュールからなる単粒子および/または30個以下のノジュールの凝集体である疑似-単粒子形態であるリチウム複合遷移金属酸化物を含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Ni、Co、MnおよびAlを含み、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するNiのモル比が0.83以上1未満であり、Mnのモル数に対するCoのモル数の比が0.5以上1未満であり、Alのモル数に対するCoのモル数の比が5~15である正極活物質に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個のノジュールからなる単粒子および30個以下のノジュールの複合体である疑似-単粒子のうち少なくとも一つの形態であるリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Ni、Co、MnおよびAlを含み、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するNiのモル比が0.83以上1未満であり、Mnのモル数に対するCoのモル数の比が0.5以上1未満であり、Alのモル数に対するCoのモル数の比が5~15である、正極活物質。
【請求項2】
前記リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の全体の金属元素の総モル数に対するCoのモル数の比が0超0.1以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するAlのモル数の比が0超0.02以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するMnのモル数の比が0超0.17未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム複合遷移金属酸化物のリチウム以外の全体の金属の総モル数に対するCoのモル数とAlのモル数との和の比が0.12未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記[化学式1]で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
Li
1+xNi
aCo
bMn
cAl
dM
1
eO
2
前記化学式1中、M
1は、W、Zr、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上であり、0≦x≦0.5,0.83≦a<1、0<b≦0.1、0<c<0.17、0<d≦0.02、0≦e≦0.05、b<c、0.5≦b/c<1、5≦b/d≦15である。
【請求項7】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、ノジュールの平均粒径が0.5μm~3μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、平均粒径D
50が2μm~6μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、平均結晶子(crystallite)径が150nm~300nmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面に形成されたコーティング層をさらに含み、
前記コーティング層は、Al、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、SiおよびSからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記正極活物質は、BET比表面積が0.1m
2/g~1m
2/gである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記正極活物質の粉体を2000kgfの圧力でプレスした後、測定したプレス密度が2g/cc~4g/ccである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記正極活物質の粉体を9トンの圧力でプレスした後、測定した体積累積粒度分布において粒径が1μm以下である粒子の比率が1体積%以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極活物質層を含む正極。
【請求項15】
請求項14に記載の正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月24日付けの韓国特許出願第10-2021-0187147号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、正極活物質、これを含む正極およびリチウム二次電池に関し、より詳細には、単粒子および疑似-単粒子のうち少なくとも一つの形態の正極活物質と、これを含む正極およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、一般的に、正極、負極、セパレータおよび電解質からなり、前記正極および負極は、リチウムイオンの挿入(intercalation)および脱離(deintercalation)が可能な活物質を含む。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2またはLiMnO4など)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO4)などが使用されてきた。このうち、リチウムコバルト酸化物は、作動電圧が高く、容量特性に優れるという利点があるが、原料になるコバルトの値段が高く、供給が不安定で大容量電池への商業的な適用が困難である。リチウムニッケル酸化物は、構造安定性が劣り十分な寿命特性を実現することが難しい。一方、リチウムマンガン酸化物は、安定性には優れるが、容量特性が劣る問題がある。したがって、Ni、CoまたはMnを単独で含むリチウム遷移金属酸化物の問題点を補完するために、2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物が開発されており、中でも、Ni、Co、およびMnを含むリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物が、電気自動車の電池分野において広く使用されている。
【0005】
従来のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は、数十~数百個の一次粒子が凝集した球状の二次粒子形態であることが一般的であった。しかし、このように多くの一次粒子が凝集した二次粒子形態のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の場合、正極の製造時に、圧延工程で一次粒子が離脱する粒子割れが発生しやすく、充放電過程で粒子の内部にクラックが発生する問題がある。正極活物質の粒子割れやクラックが発生する場合、電解液との接触面積が増加して、電解液との副反応によるガスの発生および活物質の劣化が増加し、そのため、寿命特性が低下する問題がある。
【0006】
また、最近、電気自動車用の電池のように、高出力、高容量の電池に対するニーズが増加しており、これに伴い、正極活物質内のニッケルの含量が次第に高まる傾向にある。正極活物質内のニッケルの含量が増加する場合、初期容量特性は改善するが、充放電が繰り返されるにつれて反応性が高いNi+4イオンが多量発生して正極活物質の構造の崩壊が発生し、そのため、正極活物質の劣化速度が増加して寿命特性が低下し、電池安全性が低下する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、電極の製造および充放電過程での粒子割れおよびクラックの発生を抑制することができ、高いコバルトを少ない含量で含み、且つ優れた寿命特性を実現することができる正極活物質と、これを含む正極およびリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によると、本発明は、1個のノジュールからなる単粒子および30個以下のノジュールの複合体である疑似-単粒子のうち少なくとも一つの形態であるリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質であって、前記リチウム複合遷移金属酸化物がNi、Co、MnおよびAlを含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物内でリチウム以外の金属元素の総モル数に対するNiのモル比が0.83以上1未満であり、Mnのモル数に対するCoのモル数の比(Co/Mn)が0.5以上1未満であり、Alのモル数に対するCoのモル数の比(Co/Al)が5~15、好ましくは5~10である正極活物質を提供する。具体的には、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体の金属のうちCoのモル数の比が0超0.1以下、好ましくは0.01~0.1、より好ましくは0.03~0.1、さらに好ましくは0.03~0.07であることができ、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するNiのモル数の比が0.83以上1未満、好ましくは0.83~0.95以下、より好ましくは0.83~0.90であることができ、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するMnのモル数の比が0超0.17未満、好ましくは0.01以上0.17未満、より好ましくは0.05~0.15であり、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するAlのモル数の比が0超0.02以下、好ましくは、0.001~0.02、より好ましくは0.003~0.01であることができる。
【0009】
また、前記リチウム複合遷移金属酸化物において、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するCoのモル比とAlのモル比との和が0.1未満、好ましくは0.01以上0.1未満、より好ましくは0.03~0.08であることができる。
【0010】
具体的には、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記[化学式1]で表されることができる。
[化学式1]
Li1+xNiaCobMncAldM1
eO2
【0011】
前記化学式1中、M1は、W、Zr、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上であり、0≦x≦0.5,0.83≦a<1、0<b≦0.1、0<c<0.17、0<d≦0.02、0≦e≦0.05、b<c、0.5≦b/c<1、5≦b/d≦15である。
【0012】
一方、本発明によるリチウム複合遷移金属酸化物は、ノジュールの平均粒径が0.5μm~3μmであることができ、平均粒径D50が2μm~6μmであることができ、平均結晶子(crystallite)径が150nm~300nmであることができる。
【0013】
また、本発明による正極活物質は、必要に応じて、前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面に形成されるコーティング層をさらに含むことができ、前記コーティング層は、Al、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、SiおよびSからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むことができる。
【0014】
一方、本発明による正極活物質は、BET比表面積が0.1~1m2/g、好ましくは0.3~1m2/g、より好ましくは0.5~1m2/gであることができる。
【0015】
また、本発明による正極活物質の粉体を2000kgfの圧力でプレスした後、測定したプレス密度が2~4g/cc、好ましくは2.5~3.5g/ccであることができる。
【0016】
また、本発明による正極活物質の粉体を9トンの圧力でプレスした後、測定した体積累積粒度分布で粒径が1μm以下である粒子の比率が1体積%以下、好ましくは0.8体積%以下、より好ましくは0.5体積%以下であることができる。
【0017】
他の実施形態によると、本発明は、前記本発明による正極活物質を含む正極活物質層を含む正極を提供する。
【0018】
さらに他の実施形態によると、本発明は、前記本発明による正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による正極活物質は、粒子の強度に優れた単粒子および疑似-単粒子のうち少なくとも一つの形態からなり、電極の製造時に圧延による粒子割れやクラックの発生が少なく、これにより、電解液との副反応によるガスの発生および正極活物質の劣化が少なくて、優れた寿命特性および高温特性を実現することができる。
【0020】
また、本発明による正極活物質は、Alを必須として含み、且つCo/Alのモル比およびCo/Mnのモル比を特定の範囲を満たすように調節することで、相対的に少ない量でCoを含むにもかかわらず、正極活物質のクラックの発生を最大限に抑制できるようにした。正極活物質においてCoの含量が少なくなると、Liイオンの拡散(diffusion)抵抗が大きくなり、これにより、充放電時に、リチウムの挿入、脱離に不均一が発生して結晶構造の歪み(Strain)がひどくなり、粒子の内部にクラックが発生する。しかし、本発明のように、Alを必須元素として含む場合、Coを少ないモル数、例えば、10モル%未満に含む場合にも、結晶構造の変形を最小化することができ、これにより、クラックの発生による寿命特性の低下を抑制することができる。
【0021】
ただし、本発明者らの鋭意研究によると、Co/Alのモル比およびCo/Mnのモル比が特定の範囲から逸脱する場合、抵抗が増加し、容量特性および寿命特性がかえって減少することが示されている。したがって、本発明では、Alを必須として含み、且つCo/Alのモル比およびCo/Mnのモル比を特定の範囲に制御することで、寿命特性および容量特性をいずれも優秀に実現できるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1の正極活物質粉末を9トンの圧力で加圧した時に、粒度分布変化を示すグラフである。
【
図2】比較例4の正極活物質粉末を9トンの圧力で加圧した時に、粒度分布変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0025】
本発明において、「単粒子」は、1個のノジュールからなる粒子を意味する。前記「ノジュール」は、粒界が存在していない単結晶であるか、または走査電子顕微鏡を用いて、5000倍~20000倍の視野で観察した時に、外観上粒界が存在しない多結晶であることができる。また、本発明において、「疑似-単粒子」は、30個以下のノジュールで形成された複合体を意味する。
【0026】
本発明において、「二次粒子」は、数十~数百個の一次粒子が凝集して形成された粒子を意味する。具体的には、二次粒子は、50個以上の一次粒子の凝集体である。
【0027】
本発明において、「粒子」は、単粒子、疑似-単粒子、一次粒子、ノジュールおよび二次粒子のいずれか一つまたはこれらすべてを含む概念である。
【0028】
本発明において、「平均粒径D50」は、リチウム複合遷移金属酸化物粉末または正極活物質粉末の体積累積粒度分布の50%基準での粒子径を意味し、リチウム複合遷移金属酸化物が二次粒子である場合には、二次粒子の平均粒径を意味し、前記リチウム複合遷移金属酸化物が単粒子および疑似-単粒子の組み合わせである場合には、前記平均粒径は、前記組み合わせにおいて粒子の平均粒径を意味する。前記平均粒径D50は、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定されることができる。例えば、リチウム複合遷移金属酸化物粉末または正極活物質粉末を分散媒の中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、体積累積粒度分布グラフを得た後、体積累積量の50%に該当する粒子径を求めることで測定されることができる。
【0029】
本発明において、「結晶子(crystallite)」は、実質的に同じ結晶方位を有する粒子単位を意味し、EBSD(Electron Backscatter Diffraction)分析により確認することができる。具体的には、イオンミリングにより切断された正極活物質の断面をEBSD分析して得られたIPFマップで同じ色で表される最小粒子単位である。
【0030】
一方、本発明において、「平均結晶子径」は、Cu-Kα X線によるX線回折分析(XRD)を用いて定量的に分析されることができる。具体的には、測定しようとする粒子をホルダに入れて、X線を前記粒子に照射して出力される回折格子を分析することで、結晶粒の平均結晶粒径を定量的に分析することができる。サンプリングは、一般粉末用ホルダの中央の窪んだ溝に測定対象粒子の粉末試料を入れ、スライドガラスを用いて表面を均一にし、試料の高さをホルダの周縁と一致するようにして準備した。その後、LynxEye XE-T位置検出器(position sensitive detector)が装着されたBruker D8 Endeavor(光源:Cu Kα、λ=1.54Å)を用いて、FDS0.5゜、2θ=15゜~90゜の領域に対して、step size 0.02度、total scan timeが約20分である条件で、X線回折分析を実施した。測定されたデータに対して、各サイト(site)でのcharge(遷移金属サイトの金属イオンは+3、LiサイトのNiイオンは+2)およびカチオン混合(cation mixing)を考慮して、Rieveld refinementを行った。結晶粒径の分析時に、instrumental brodadeningは、Bruker TOPASプログラムで実現(implement)されるFundamental Parameter Approach(FPA)を用いて考慮され、fitting時に測定範囲の全体のピーク(peak)が使用された。Peak shapeは、TOPASで使用可能なpeak typeのうちFP(First Principle)としてLorenzian contributionのみ使用されてfittingされ、ここで、strainは考慮しなかった。
【0031】
本発明において、「プレス密度(press density)」は、HPRM-1000を用いて測定した。具体的には、正極活物質粉末5gを円柱状のモールドに投入した後、2000kgfの力で正極活物質が入っているモールドを加圧した。次に、加圧されたモールドの高さをノギス(Vernier Calipers)で測定してプレス密度を求めた
【0032】
本発明において、「比表面積」は、BET法により測定され、具体的には、BEL Japan社製のBELSORP-mino IIを用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出することができる。
【0033】
正極活物質
以下、本発明による正極活物質について説明する。
【0034】
本発明による正極活物質は、1個のノジュールからなる単粒子および30個以下のノジュールの複合体である疑似-単粒子のうち少なくとも一つの形態であるリチウム複合遷移金属酸化物を含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Ni、Co、MnおよびAlを含む。ここで、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体の金属元素の総モル数に対するNiのモル数の比が0.83以上1未満であり、Mnのモル数に対するCoのモル数の比が0.5以上1未満であり、Alのモル数に対するCoのモル数の比が5~15である。
【0035】
本発明による正極活物質は、1個のノジュールからなる単粒子、30個以下、好ましくは2個~20個、より好ましくは2個~10個のノジュールの複合体である疑似-単粒子またはこれらの混合物形態のリチウム複合遷移金属酸化物を含む。
【0036】
このような単粒子および/または疑似-単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物は、一次粒子が数十~数百個凝集している既存の二次粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物に比べて粒子強度が高いことから圧延時の粒子割れが少ない。
【0037】
また、本発明による単粒子および/または疑似-単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物の場合、粒子を構成するノジュールの個数が少ないことから、充放電時にノジュールの体積の膨張、収縮による変化が少なく、これにより、粒子内部のクラックの発生も著しく減少する。
【0038】
一方、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Ni、Co、MnおよびAlを含み、且つリチウム以外の金属元素の総モル数に対するNiのモル数の比が0.83以上1未満、好ましくは0.83~0.95以下、より好ましくは0.83~0.90であり、Mnのモル数に対するCoのモル数の比(Co/Mnのモル比)が0.5以上1未満、好ましくは0.5~0.8であり、Alのモル数に対するCoのモル数の比(Co/Alのモル比)が5~15、好ましくは5~10であることができる。リチウム複合遷移金属酸化物の組成がこのような条件を満たす場合、Coを少ないモル数、例えば、10モル%未満で含む場合にも結晶構造の変形(Strain)およびクラックの発生が効果的に抑制されて、優れた寿命特性を実現することができ、容量特性および抵抗特性に優れる。
【0039】
単粒子および/または疑似-単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物粒子は、従来の二次粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物粒子の一次粒子に比べて相対的にサイズが大きいノジュールを含み、リチウムイオンの拡散経路になるノジュール間の界面が少ないためリチウム移動性が低下し、相対的に高い焼成温度で製造されるため粒子の表面に岩塩相(rocksalt phase)が形成されて表面抵抗が高くなる。そのため、単粒子および/または疑似-単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物粒子は、リチウム拡散抵抗が大きく、充放電時にリチウムイオンの移動が不均一に発生し、結晶構造の変形およびこれによる粒子クラックが発生しやすく、粒子クラックによって寿命特性が急激に低下する問題がある。
【0040】
また、一般的に、マンガン(Mn)は、層状構造の形成に不利であり、高い酸化数によって粒成長を阻害する役割をするが、コバルト(Co)は、層状構造の形成に有利な元素であり、粒成長を促進する役割をする。したがって、マンガン(Mn)の含量が多くなると、リチウム複合遷移金属酸化物の焼成時に結晶粒成長が難しくて単粒子の形成が難しく、リチウムイオンの拡散抵抗が大きくなるのに対し、コバルト(Co)の含量が多くなると、結晶粒成長が促進されて単粒子の形成が容易になり、層状構造がスムーズに形成されてリチウムイオン拡散抵抗が減少し、結晶構造の変形および粒子クラックが抑制されて、寿命特性を改善する効果を得ることができる。
【0041】
このような理由で、従来、単粒子または疑似-単粒子の場合、コバルト(Co)をマンガン(Mn)に比べて高く含有することが一般的であった。しかし、コバルトは、値段が高く、供給が不安定であるため、コバルトの含量が高い正極活物質の場合、製造コストが高くて価格競争力が劣り、そのため、電気自動車用電池のような大容量電池への適用が難しい。
【0042】
そのため、本発明者らは、Coを少なく含み、且つ寿命特性および抵抗特性に優れた単粒子および/または疑似-単粒子形態の正極活物質を開発するために、鋭意研究を重ねた結果、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnとともに少量のAlを必須元素として含み、Co/Mnのモル比およびCo/Alのモル比が特定の範囲を満たす時に、このような目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0043】
具体的には、前記リチウム複合遷移金属酸化物においてリチウム以外の全体の金属の総モル数に対するNiのモル数の比は、0.83以上1未満、好ましくは0.83~0.95、より好ましくは0.83~0.90であることができる。リチウム複合遷移金属酸化物内のNiのモル比が前記範囲を満たす時に、高いエネルギー密度を実現することができる。
【0044】
また、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Mnのモル数に対するCoのモル数の比(Co/Mnのモル比)が0.5以上1未満、好ましくは0.5~0.8であることができる。リチウム複合遷移金属酸化物内のCo/Mnのモル比が0.5未満である場合には、粒子成長が不均一に発生し得、Co/Mnのモル比が1以上である場合には、Co含量の増加によってコストダウンの効果がない。
【0045】
また、前記リチウム複合遷移金属酸化物はAlのモル数に対するCoのモル数の比(Co/Alのモル比)が5~15、好ましくは5~10であることができる。Co/Alのモル比が5未満である場合には、抵抗が増加し、容量が減少し、サイクル特性も低下する。また、Co/Alのモル比が15を超える場合には、クラック発生の抑制効果があまりなく、寿命特性の改善効果が低下する。
【0046】
一方、前記リチウム複合遷移金属酸化物において、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するCoのモル比は、0超0.1未満、好ましくは0.01以上0.1未満、より好ましくは0.03~0.09、さらに好ましくは0.03~0.07であることができ、Mnのモル比は、0超0.17未満、0.01以上0.17未満、好ましくは0.05~0.15であることができ、Alのモル比は、0超0.02以下、好ましくは0.001~0.02、より好ましくは0.003~0.01であることができる。リチウム複合遷移金属酸化物内のNi、Co、Mn、Alのモル比が前記範囲を満たす場合、高温寿命特性、レート特性および抵抗特性が特に優れる。
【0047】
一方、前記リチウム複合遷移金属酸化物において、リチウム以外の全体の金属に対するCoのモル比とAlのモル比との和が0.12未満、好ましくは0.01以上0.12未満、より好ましくは0.03~0.08であることができる。Coのモル比とAlのモル比との和が0.12を超える場合、価格競争力が劣り、寿命特性および抵抗特性が低下し得る。
【0048】
さらに具体的には、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記[化学式1]で表されることができる。
【0049】
[化学式1]
Li1+xNiaCobMncAldM1
eO2
【0050】
前記化学式1中、M1は、Zr、W、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上であり、好ましくはZr、Y、Mg、およびTiからなる群から選択される1種以上であることができ、さらに好ましくはZr、Yまたはこれらの組み合わせであることができる。M1元素は、必須として含まれるものではないが、適切な量で含まれる場合、焼成時の粒成長を促進するか、結晶構造安定性を向上させる役割を行うことができる。
【0051】
前記1+xは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウムのモル比を示し、0≦x≦0.5、0≦x≦0.3または0≦x≦0.2であることができる。
【0052】
前記aは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の全体の金属の総モル数に対するニッケルのモル数の比を示し、0.83≦a<1、0.83≦a≦0.95、または0.83≦a≦0.90であることができる。
【0053】
前記bは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の全体の金属の総モル数に対するコバルトのモル数の比を示し、0<b≦0.1、0.01≦b<0.1、または0.03≦b≦0.09であることができる。
【0054】
前記cは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の全体の金属の総モル数に対するマンガンのモル数の比を示し、0<c<0.17、0.01≦c<0.17、または0.05≦c≦0.15であることができる。
【0055】
一方、前記リチウム複合遷移金属酸化物において、マンガンのモル比cは、コバルトのモル比bより大きい。すなわち、b<cである。
【0056】
また、マンガンのモル数に対するコバルトのモル数の比、すなわち、b/cは、0.5≦b/c<1、または0.5≦b/c≦0.8である。
【0057】
前記dは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の全体の金属のうちAlのモル比を示し、0<d≦0.02、0.001≦d≦0.02、または0.003≦d≦0.01であることができる。
【0058】
また、アルミニウムモル数に対するコバルトのモル数の比、すなわち、b/dは、5≦b/d≦15または5≦b/d≦10であることができる。
【0059】
前記eは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の全体の金属のうちM1元素のモル比を示し、0≦e≦0.05、0≦e≦0.02または0≦e≦0.01であることができる。
【0060】
一方、本発明によるリチウム複合遷移金属酸化物は、ノジュールの平均粒径が0.5μm~3μm、好ましくは0.8μm~2.5μm、さらに好ましくは0.8μm~1.5μmであることができる。ノジュールの平均粒径が前記範囲を満たす場合、電気化学的特性に優れた単粒子および/または疑似-単粒子形態の正極活物質を形成することができる。ノジュールの平均粒径が小さすぎると、リチウム複合遷移金属酸化物粒子を形成するノジュールの凝集個数が多くなって圧延時に粒子割れ発生の抑制効果が低下し、ノジュールの平均粒径が大きすぎると、ノジュールの内部でのリチウム拡散経路が長くなって抵抗が増加し、出力特性が低下し得る。
【0061】
また、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、平均粒径D50が2μm~6μm、好ましくは2μm~5μm、さらに好ましくは3μm~5μmであることができる。リチウム複合遷移金属酸化物のD50が小さすぎると、活物質の比表面積が増加し、これによって導電材の増量が求められて電極密度が低下し、電極スラリーの固形分が低くなって電極の製造時に生産性が低下し得、電解液含浸性が低下して電気化学物性が低下し、D50が大きすぎると、抵抗が増加し、出力特性が低下する問題がある。
【0062】
また、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、平均結晶子(crystallite)径が150nm~300nm、200nm~280nm、または230nm~280nmであることができる。平均結晶子径が前記範囲を満たす場合、リチウム複合遷移金属酸化物の製造時に岩塩相(rock salt phase)の生成が減少して、抵抗特性に優れた単粒子および/または疑似-単粒子形態の正極活物質を製造することができる。一般的に、単粒子および/または、疑似-単粒子形態の正極活物質は、焼成温度を高めてノジュールのサイズを増加させる方法により製造されるが、結晶子径が小さい状態でノジュールのサイズだけ増加させる場合、ノジュールの表面に岩塩相が形成されて抵抗が増加する問題がある。しかし、平均結晶子径とノジュールの平均粒径がともに増加すると、岩塩相の形成が最小化して、抵抗の増加が抑制される効果を得ることができる。
【0063】
一方、本発明による正極活物質は、必要に応じて、前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面に、Al、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、SiおよびSからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むコーティング層をさらに含むことができる。
【0064】
リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面にコーティング層が存在する場合、コーティング層によって電解質とリチウム複合遷移金属酸化物の接触が抑制され、これにより、電解質との副反応による遷移金属の溶出やガスの発生を減少させる効果を得ることができる。
【0065】
好ましくは、前記コーティング元素は、Coを含むことができる。リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面にCoを含むコーティング層が形成される場合、電解液との副反応の抑制効果とともに、出力の改善および抵抗の減少効果を得ることができる。
【0066】
一方、本発明による正極活物質はBET比表面積が0.1~1m2/g、好ましくは0.3~1m2/g、より好ましくは0.5~1m2/gであることができる。正極活物質のBET比表面積が小さすぎると、リチウム移動経路が長くなって抵抗が増加し、放電容量が低下し得、BET比表面積が大きすぎると、電極の製造時に求められる導電材の含量が増加して電極密度が低下し、電極スラリーの固形分が低くなって電極の製造時に生産性が低下し得る。
【0067】
また、本発明による正極活物質の粉体を2000kgfの圧力でプレスした後、測定したプレス密度が2~4g/cc、好ましくは2.5~3.5g/ccであることができる。正極活物質粉体のプレス密度が前記範囲を満たす時に、エネルギー密度に優れた電極を製造することができる。
【0068】
また、本発明の正極活物質は、単粒子および疑似-単粒子のうち少なくとも一つの形態であるリチウム複合遷移金属酸化物を含むことから、従来の数十~数百個の一次粒子が凝集した二次粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質に比べて粒子強度が高く、圧延後に粒子の割れによる微粉の発生が少ない。具体的には、本発明による正極活物質の粉体を9トン(ton)の圧力でプレスした後、測定した体積累積粒度分布において粒径が1μm以下である粒子の比率が1体積%以下、好ましくは0.8体積%以下、より好ましくは0.5体積%以下であることができる。このように、本発明の正極活物質は、高い圧力を加えた場合にも、粒子の割れおよび微粉の発生が少ないことから電極密度を増加させることができ、本発明の正極活物質を適用して電極および電池を製造する場合、粒子の割れによるガスの発生および寿命の劣化を最小化することができる。
【0069】
前記のような本発明の正極活物質は、正極活物質前駆体とリチウム原料物質を混合した後、焼成して製造されることができる。
【0070】
ここで、前記正極活物質前駆体は、市販の正極活物質前駆体を購入して使用するか、当該技術分野において周知の前駆体製造方法により製造されることができる。
【0071】
例えば、前記前駆体は遷移金属水溶液とアンモニウムカチオン錯体の形成および塩基性化合物を反応器に投入して撹拌しながら共沈反応を行って製造されることができる。
【0072】
前記遷移金属水溶液は、遷移金属含有原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造することができ、例えば、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、マンガン含有原料物質を水に溶解させて製造することができる。また、必要に応じて、前記遷移金属水溶液は、アルミニウム含有原料物質をさらに含むことができる。
【0073】
一方、前記遷移金属含有原料物質は、遷移金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライト、硫化物または酸化物などであることができる。
【0074】
具体的には、前記ニッケル含有原料物質は、例えば、NiO、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O2・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができる。
【0075】
前記コバルト含有原料物質は、例えば、CoSO4、Co(OCOCH3)2・4H2O、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4・7H2Oまたはこれらの組み合わせであることができる。
【0076】
前記マンガン含有原料物質は、例えば、Mn2O3、MnO2、Mn3O4、MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4・H2O、酢酸マンガン、マンガンハロゲン化物、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0077】
前記アルミニウム含有原料物質は、例えば、Al2O3、Al(OH)3、Al(NO3)3、Al2(SO4)3、(HO)2AlCH3CO2、HOAl(CH3CO2)2、Al(CH3CO2)3アルミニウムハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができる。ただし、Alの場合、遷移金属水溶液に添加せず、後述する焼成ステップでリチウム原料物質とともに投入してもよい。
【0078】
ここで、前記それぞれの遷移金属含有原料物質の投入量は、最終的に生成しようとする正極活物質での遷移金属のモル比を考慮して決定することができ、例えば、本発明では、遷移金属水溶液に含まれた全体の遷移金属の総モル数に対するニッケルのモル数の比が0.83以上、マンガンに対するコバルトのモル数の比が0.5以上1未満、アルミニウムに対するコバルトのモル数の比が5~15になるようにする量で投入されることができる。
【0079】
一方、前記アンモニウムカチオン錯体形成剤は、NH4OH、(NH4)2SO4、NH4NO3、NH4Cl、CH3COONH4、および(NH4)2CO3からなる群から選択される少なくとも一つ以上の化合物を含むことができ、前記化合物を溶媒に溶解させた溶液形態で反応器内に投入されることができる。ここで、前記溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されることができる。
【0080】
前記塩基性化合物は、NaOH、KOH、およびCa(OH)2からなる群から選択される少なくとも一つ以上の化合物であることができ、前記化合物を溶媒に溶解させた溶液形態で反応器内に投入されることができる。ここで、溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されることができる。
【0081】
前記のように、遷移金属水溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を反応器に投入して撹拌すると、遷移金属水溶液中の遷移金属が共沈されて、遷移金属水酸化物形態の前駆体粒子が生成される。
【0082】
ここで、前記遷移金属水溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物は、反応溶液のpHが所望の範囲になるようにする量で投入される。
【0083】
前記のような方法で前駆体粒子が形成されると、反応溶液から正極活物質前駆体を分離して正極活物質前駆体を取得する。例えば、反応溶液をフィルタリングして反応溶液から正極活物質前駆体を分離した後、分離した正極活物質前駆体を水洗および乾燥して正極活物質前駆体を得ることができる。ここで、必要に応じて、粉砕および/または分級などの工程を行うこともできる。
【0084】
次に、前記正極活物質前駆体と、リチウム原料物質を混合した後、焼成して、リチウム複合遷移金属酸化物を製造する。ここで、必要に応じて、アルミニウム含有原料物質および/またはM1金属含有原料物質をともに混合して焼成することができる。
【0085】
前記リチウム原料物質としては、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハライド、水酸化物またはオキシ水酸化物などが使用されることができ、例えば、Li2CO3、LiNO3、LiNO2、LiOH、LiOH・H2O、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CH3COOLi、Li2O、Li2SO4、CH3COOLi、Li3C6H5O7またはこれらの混合物が使用されることができる。
【0086】
一方、前記リチウム原料物質と正極活物質前駆体は、Li:前駆体内の総金属のモル比が1:1~1.2:1、好ましくは1:1~1.1:1、より好ましくは1:1~1.06:1の比率になるように混合されることができる。リチウム原料物質と正極活物質前駆体内の金属の混合比が前記範囲を満たす時に、正極活物質の層状結晶構造がよく発達し、容量特性および構造安定性に優れた正極活物質を製造することができる。
【0087】
一方、前記焼成は、単粒子または疑似-単粒子を形成することができる温度で行われる。単粒子または疑似-単粒子を形成するためには、従来、二次粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物の製造時より高い温度で焼成が行われなければならず、例えば、前駆体組成が同一である場合に、従来、二次粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物の製造時より30℃~100℃程度高い温度で焼成されなければならない。単粒子または疑似-単粒子形成のための焼成温度は、前駆体内の金属の組成に応じて変化し得、例えば、ニッケル(Ni)の含量が80モル%以上である高含量ニッケル(High-Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物を単粒子または疑似-単粒子で形成しようとする場合、焼成温度は、700℃~1000℃、好ましくは800℃~950℃程度であることができる。焼成温度が前記範囲を満たす時に、電気化学的特性に優れた単粒子および疑似-単粒子のうち少なくとも一つの形態を有する正極活物質が製造されることができる。焼成温度が790℃未満である場合には、二次粒子形態の正極活物質が製造され、950℃を超える場合には、焼成が過剰に行われて、層状結晶構造が正常に形成されず、電気化学的特性が低下する。
【0088】
また、前記焼成は、酸素雰囲気下で、5~35時間行われることができる。本明細書において、酸素雰囲気とは、大気雰囲気をはじめ、焼成に十分な程度の酸素を含む雰囲気を意味する。特に、酸素分圧が大気雰囲気よりも高い雰囲気で行うことが好ましい。
【0089】
一方、コーティング層が形成された正極活物質を製造しようとする場合には、前記焼成の後に、焼成により製造されたリチウム複合遷移金属酸化物とコーティング原料物質を混合した後、熱処理するステップをさらに行うことができる。ここで、前記混合は、固相混合または液相混合で行われることができ、前記熱処理は、コーティング原料物質に応じて適切な温度で行われることができる。例えば、前記コーティング工程の熱処理は、200℃~700℃、または300℃~600℃の温度で行われることができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
また、本発明の正極活物質の製造時に、前記焼成後に水洗工程を行わないことが好ましい。従来、ニッケル(Ni)の含量が83モル%以上である高含量ニッケル(High-Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の製造時には、リチウム副生成物の含量を減少させるために、焼成後に水洗工程を行うことが一般的であった。しかし、本発明者らの研究によると、単粒子または疑似-単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物の製造時に水洗工程を行う場合、水洗過程でリチウム複合遷移金属酸化物の表面特性が低下して、抵抗が増加することが示されている。したがって、本発明の正極活物質の製造時には、水洗を行わず、コーティング層の形成過程によりリチウム複合遷移金属酸化物の表面の残留リチウムを消費することが好ましい。このようにリチウム複合遷移金属酸化物を水洗せず、正極活物質を製造する場合、表面の欠陥による抵抗の増加を抑制することができる。
【0091】
正極
次に、本発明による正極について説明する。
【0092】
本発明による正極は本発明による単粒子または疑似-単粒子形態の正極活物質を含む正極活物質層を含む。具体的には、前記正極は正極集電体および前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0093】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0094】
また、前記正極活物質層は、上述の正極材とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0095】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、通常、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%、好ましくは1~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%含まれることができる。
【0096】
前記バインダーは、正極活物質粒子の間の付着および正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して、1~30重量%、好ましくは1~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%含まれることができる。
【0097】
前記正極は、通常の正極の製造方法により製造されることができる。例えば、前記正極は、正極活物質、バインダーおよび/または導電材を溶媒の中で混合して正極スラリーを製造し、前記正極スラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造されることができる。ここで、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は、上述のとおりである。
【0098】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有する程度であれば十分である。
【0099】
他の方法として、前記正極は、前記正極スラリーを別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0100】
リチウム二次電池
次に、本発明によるリチウム二次電池について説明する。
【0101】
本発明のリチウム二次電池は、前記本発明による正極を含む。具体的には、前記リチウム二次電池は、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含み、前記正極は、上述のとおりである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0102】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0103】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0104】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的に、バインダーおよび導電材を含む。
【0105】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。
【0106】
また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0107】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、通常、負極活物質層の全重量に対して1~30重量%、好ましくは1~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%含まれることができる。
【0108】
前記バインダーは、負極活物質粒子の間の付着および負極活物質と負極集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、負極活物質層の全重量に対して1~30重量%、好ましくは1~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%含まれることができる。
【0109】
前記負極活物質層は、一例として、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む負極スラリーを塗布して乾燥するか、または前記負極スラリーを別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0110】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液の含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0111】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0112】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0113】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、C2~C20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。
【0114】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAl04、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1~5.0M、好ましくは0.1~3.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0115】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、添加剤をさらに含むことができる。例えば、前記添加剤としては、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエチルアルコールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエチルアルコールまたは三塩化アルミニウムなどを単独または混合して使用することができるが、これに限定されるものではない。前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1~10重量%、好ましくは0.1~5重量%含まれることができる。
【0116】
前記のように本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および容量維持率を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0117】
これにより、本発明の他の一実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0118】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられることができる。
【0119】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0120】
実施例1
共沈反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、50℃の温度を維持して28重量%濃度のアンモニア水溶液100mLを投入した。その後、前記共沈反応器に、NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が87:5:8になるように混合した遷移金属溶液、アンモニア水溶液および水酸化ナトリウム溶液を投入し、共沈反応させて、前駆体を形成した。前記前駆体を分離して洗浄した後、130℃のオーブンで乾燥し、前駆体を製造した。
【0121】
前記のように合成された前駆体とLiOHおよび水酸化アルミニウムをNi+Co+Mn:Al:Liのモル比が99:1:1.05になるように混合し、酸素雰囲気、850℃で、12時間熱処理して、リチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.86Co0.05Mn0.08Al0.01]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が2μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が4.13μm、平均結晶子径が280nmであった。
【0122】
実施例2
NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が87:6:7になるように混合した遷移金属溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法でリチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.86Co0.06Mn0.07Al0.01]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が2μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が4.1μm、平均結晶子径が270nmであった。
【0123】
実施例3
NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が84:6:10になるように混合した遷移金属溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法でリチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.83Co0.06Mn0.10Al0.01]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が2.1μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が4μm、平均結晶子径が280nmであった。
【0124】
実施例4
前駆体とLiOHおよび水酸化アルミニウムをNi+Co+Mn:Al:Liのモル比が99.5:0.5:1.05になるように混合して使用した以外は、実施例1と同じ方法でリチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.865Co0.05Mn0.08Al0.005]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が2μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が4μm、平均結晶子径が270nmであった。
【0125】
比較例1
共沈反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、50℃の温度を維持して28重量%の濃度のアンモニア水溶液100mLを投入した。その後、前記共沈反応器にNiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が87:5:8になるように混合した遷移金属溶液、アンモニア水溶液および水酸化ナトリウム溶液を投入し、共沈反応させて、前駆体を形成した。前記前駆体を分離して洗浄した後、130℃のオーブンで乾燥し、前駆体を製造した。
【0126】
前記のように合成された前駆体とLiOHをNi+Co+Mn:Liのモル比が1:1.05になるように混合し、酸素雰囲気、850℃で、12時間熱処理して、リチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.87Co0.05Mn0.08]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が2μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が4.1μm、平均結晶子径が280nmであった。
【0127】
比較例2
NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が84:10:6になるように混合した遷移金属溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法でリチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.83Co0.10Mn0.6Al0.01]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が2μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が4.2μm、平均結晶子径が270nmであった。
【0128】
比較例3
NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が87:3:10になるように混合した遷移金属溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法でリチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.86Co0.03Mn0.10Al0.01]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が1.8μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が3.9μm、平均結晶子径が260nmであった。
【0129】
比較例4
共沈反応で合成された前駆体とLiOHおよび水酸化アルミニウムをNi+Co+Mn:Al:Liのモル比が99:1:1.05になるように混合し、酸素雰囲気、760℃で、12時間熱処理して、リチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.86Co0.05Mn0.08Al0.01]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、二次粒子形態であり、一次粒子の平均粒径が0.2μm、二次粒子の平均粒径が4μm、平均結晶子径が120nmであった。
【0130】
比較例5
NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が83:8:9になるように混合した遷移金属溶液を使用し、共沈反応で合成された前駆体とLiOHおよび水酸化アルミニウムをNi+Co+Mn:Al:Liのモル比が98:2:1.05になるように混合した以外は、実施例1と同じ方法でリチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.81Co0.08Mn0.09Al0.02]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が2μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が4μm、平均結晶子径が270nmであった。
【0131】
比較例6
NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が83:8:9になるように混合した遷移金属溶液を使用し、共沈反応で合成された前駆体とLiOHおよび水酸化アルミニウムをNi+Co+Mn:Al:Liのモル比が99.5:0.5:1.05になるように混合した以外は、実施例1と同じ方法でリチウム複合遷移金属酸化物Li[Ni0.825Co0.08Mn0.09Al0.005]O2を製造した。製造されたリチウム複合遷移金属酸化物は、単粒子および/または疑似-単粒子形態であり、ノジュールの平均粒径が2μm、リチウム複合遷移金属酸化物のD50が4μm、平均結晶子径が270nmであった。
【0132】
【0133】
実験例1:粒子割れ評価
実施例1~4および比較例1~6で製造された正極活物質粉末を直径2cmサイズの円柱状の金属モールドに入れ、9トンの圧力でプレスした後、体積累積粒度分布(Particle Size Distribution、PSD)を測定し、1μm未満の微粉発生率を測定した。粒度分布は、Microtrac社製のS-3500を用いて測定し、正極活物質の全重量に対して、粒径1μm以下の微粉発生率を重量%に換算し、測定結果は、下記表2に示した。また、
図1および
図2に、それぞれ、実施例1および比較例4で製造された正極活物質粉末のプレス前後の粒度分布を図示した。
【0134】
【0135】
前記表2により、単粒子形態の正極活物質の圧延後、微粉発生率が二次粒子形態の正極活物質(比較例4)に比べて著しく少ないことを確認することができる。したがって、単粒子形態の正極活物質を使用すると、微粉に比べてガスの発生および電解液副反応を著しく減少させることができる。
【0136】
<二次電池の製造>
実施例1~4および比較例1~6でそれぞれ製造した正極活物質、Super PおよびPVDFバインダーを95:2:3の重量比でN-メチルピロリドンの中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥した後、圧延して、正極を製造した。
【0137】
負極活物質として、グラファイト、導電材としてSuper C、バインダーとしてSBR/CMCを96:1:3の重量比で混合して負極スラリーを作製し、これを銅集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥した後、圧延して、負極を製造した。
【0138】
前記正極と負極との間にセパレータを介在して電極組立体を製造した後、これを電池ケースの内部に位置させてから、前記ケースの内部に電解液を注入して、リチウム二次電池を製造した。前記電解液は、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネートを1:2:1の体積比で混合した混合有機溶媒に1M濃度のLiPF6を溶解させ、2重量%のビニレンカーボネート(VC)を添加して製造した。
【0139】
電解液の注入後、25℃で、CC-CVモードで、0.1Cで4.25Vになるまで充電し、0.1Cの定電流で2.5Vまで放電して活性化工程を行った。
【0140】
実験例2:高温寿命の評価
前記で製造されたそれぞれのリチウム二次電池に対して、45℃で、CC-CVモードで、1Cで4.25Vになるまで充電し、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電することを1サイクルとし、50サイクル充放電を行った後、容量維持率を測定して寿命特性を評価した。測定結果は、下記[表3]に示した。
【0141】
実験例3:容量および抵抗特性の評価
前記で製造されたそれぞれのリチウム二次電池を0.1C/0.1Cの条件で、2.5~4.25Vで1回充放電した後、初期放電容量(単位:mAh)および抵抗(単位:Ω)を測定した。ここで、抵抗は、2.5Cで電流を10秒間印加した時の電圧の変化により測定した。測定結果は、下記表3に示した。
【0142】
【0143】
表3により、本発明の組成を満たす実施例1~4の正極活物質を適用したリチウム二次電池が、比較例1~6の正極活物質を適用したリチウム二次電池に比べて、高温寿命特性、容量特性および抵抗特性に優れていることを確認することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個のノジュールからなる単粒子および30個以下のノジュールの複合体である疑似-単粒子のうち少なくとも一つの形態であるリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Ni、Co、MnおよびAlを含み、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するNiのモル比が0.83以上1未満であり、Mnのモル数に対するCoのモル数の比が0.5以上1未満であり、Alのモル数に対するCoのモル数の比が5~15である、正極活物質。
【請求項2】
前記リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の全体の金属元素の総モル数に対するCoのモル数の比が0超0.1以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するAlのモル数の比が0超0.02以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体の金属の総モル数に対するMnのモル数の比が0超0.17未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム複合遷移金属酸化物のリチウム以外の全体の金属の総モル数に対するCoのモル数とAlのモル数との和の比が0.12未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記[化学式1]で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
Li
1+xNi
aCo
bMn
cAl
dM
1
eO
2
前記化学式1中、M
1は、W、Zr、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上であり、0≦x≦0.5,0.83≦a<1、0<b≦0.1、0<c<0.17、0<d≦0.02、0≦e≦0.05、b<c、0.5≦b/c<1、5≦b/d≦15である。
【請求項7】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、ノジュールの平均粒径が0.5μm~3μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、平均粒径D
50が2μm~6μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、平均結晶子(crystallite)径が150nm~300nmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面に形成されたコーティング層をさらに含み、
前記コーティング層は、Al、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、SiおよびSからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記正極活物質は、BET比表面積が0.1m
2/g~1m
2/gである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記正極活物質の粉体を2000kgfの圧力でプレスした後、測定したプレス密度が2g/cc~4g/ccである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記正極活物質の粉体を9トンの圧力でプレスした後、測定した体積累積粒度分布において粒径が1μm以下である粒子の比率が1体積%以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項14】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、平均結晶子径が230nm~300nmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項15】
請求項1から請求項
14のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極活物質層を含む正極。
【請求項16】
請求項
15に記載の正極を含むリチウム二次電池。
【国際調査報告】