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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】歯科用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/30 20200101AFI20241219BHJP
   A61K 6/76 20200101ALI20241219BHJP
   A61K 6/15 20200101ALI20241219BHJP
   A61K 6/17 20200101ALI20241219BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K6/30
A61K6/76
A61K6/15
A61K6/17
A61K6/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533900
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 IB2022060513
(87)【国際公開番号】W WO2023105315
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/265,005
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】アメド エス.アブエリャマン
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ ケー.レオン
(72)【発明者】
【氏名】ガイ ディー.ジョリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル ディー.オクスマン
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA10
4C089BA05
4C089BA13
4C089BD01
4C089BD02
4C089BD05
4C089BD07
4C089BD10
4C089BD11
(57)【要約】
歯科用組成物が提供される。歯科用組成物は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む少なくとも1つのモノマーと、α,β-不飽和カルボニルを含む少なくとも1つの環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用組成物であって、
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む少なくとも1つのモノマーと、
α,β-不飽和カルボニルを含む少なくとも1つの環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤と、を含む、歯科用組成物。
【請求項2】
前記環状イミドモノマーは、複素環中にイミド基及び前記α,β-不飽和カルボニルを含み、前記環は、少なくとも6個の共有結合した原子を含む、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
前記環状イミドモノマーは、γ-第四級炭素原子を更に含む、請求項2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
前記環状イミドモノマーは、構造:
【化1】
を有し、
式中、Lは、共有結合又は有機連結基であり、
Yは、アルキル、アリール、ヒドロキシル、カルボン酸、又はエチレン性不飽和重合性基であり、
及びRは、独立して、アルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
及びRは、前記環状イミドモノマーが重合中に開環するような置換基である、請求項4に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
及びRは、独立して、C1~C18アルキル基である、請求項4に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
Lは、(ヘテロ)アルキレン又は(ヘテロ)アリーレンである、請求項3~6のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
Yは、カルボン酸基又は(メタ)アクリレート基である、請求項3~7のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項9】
Lは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項10】
前記環状イミドモノマーは、少なくとも2つの環状イミド基を含む、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項11】
前記環状イミドモノマーは、構造:
【化2】
を有し、
式中、Rは、有機連結基であり、
及びRは、独立してアルキル基である、請求項10に記載の歯科用組成物。
【請求項12】
及びRは、前記環状イミドモノマーが重合中に開環するような置換基である、請求項11に記載の歯科用組成物。
【請求項13】
Rは、(ヘテロ)アルキレン又は(ヘテロ)アリーレンであり、任意選択で少なくとも1つのペンダントエチレン性不飽和重合性基を含む、請求項11又は12に記載の歯科用組成物。
【請求項14】
少なくとも1つのエチレン性不飽和末端基と、α,β-不飽和カルボニルを含む骨格単位と、を含む、第2の付加-開裂剤を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項15】
前記第2の付加-開裂剤は、少なくとも2つのエチレン性不飽和末端基を含む、請求項14に記載の歯科用組成物。
【請求項16】
前記第2の付加-開裂剤の前記エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリレート基である、請求項15に記載の歯科用組成物。
【請求項17】
前記第2の付加-開裂剤は、式:
【化3】
を有し、
式中、R、R、及びRは、各々独立して、Z-Q-、(ヘテロ)アルキル基又は(ヘテロ)アリール基であるが、ただし、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、Z-Q-であり、
Qは、m+1の原子価を有する連結基であり、
Zは、エチレン性不飽和重合性基であり、
mは、1~6であり、
各Xは、独立して、-O-又は-NR-であり、式中、Rは、H又はC~Cアルキルであり、
nは、0又は1である、請求項14に記載の歯科用組成物。
【請求項18】
前記モノマーの前記エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリレート基である、請求項1~17のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項19】
前記モノマーは、少なくとも1.50の屈折率を有する芳香族モノマーである、請求項1~18のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項20】
前記モノマーは、約600~1500g/モルの範囲の分子量(Mw)を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項21】
前記モノマーは、低体積収縮性モノマーである、請求項1~20のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項22】
前記モノマーは、イソシアヌレートモノマー、トリシクロデカンモノマー、又はこれらの混合物である、請求項1~21のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項23】
前記歯科用組成物は、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(ethoxylated bisphenol A dimethacrylate、BisEMA6)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate、HEMA)、ビスフェノールAジグリシジルジメタクリレート(bisphenol A diglycidyl dimethacrylate、bisGMA)、ウレタンジメタクリレート(urethane dimethacrylate、UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethlyene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、グリセロールジメタクリレート(glycerol dimethacrylate、GDMA)、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(neopentylglycol dimethacrylate、NPGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethyleneglycol dimethacrylate、PEGDMMA)、及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項24】
前記歯科用組成物は、酸性官能基を有する少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項25】
前記酸性官能基は、カルボン酸官能基、リン酸官能基、ホスホン酸官能基、又はスルホン酸官能基を含む、請求項24に記載の歯科用組成物。
【請求項26】
未充填の前記歯科用組成物は、未充填の前記歯科用組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の前記環状イミドモノマーを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項27】
未充填の前記歯科用組成物は、未充填の重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の、付加-開裂剤を含む非環状イミドモノマーを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項28】
未充填の前記歯科用組成物は、未充填の前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~60重量%の、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項29】
硬化後に、硬化した前記歯科用組成物は、2.0以下の応力たわみを示す、請求項1~28のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項30】
無機酸化物充填剤を更に含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項31】
前記無機酸化物充填剤は、シリカ、ジルコニア、又はこれらの混合物を含む、請求項30に記載の歯科用組成物。
【請求項32】
前記無機酸化物充填剤は、ナノ粒子を含む、請求項30又は31に記載の歯科用組成物。
【請求項33】
前記無機ナノ粒子は、ナノクラスタの形態である、請求項32に記載の歯科用組成物。
【請求項34】
歯の表面を処置する方法であって、前記方法は、
請求項1~33のいずれか一項に記載の歯科用組成物を提供することと、
前記歯科用組成物を対象の口腔内の歯の表面上に配置することと、
前記歯科用組成物を硬結することと、を含む、方法。
【請求項35】
組成物であって、
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む少なくとも1つのモノマーと、
α,β-不飽和カルボニルを含む少なくとも1つの環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤と、を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
付加-開裂剤を含む重合性歯科用組成物は、例えば、米国特許第9,056,043号及び同第9,907,733号に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0002】
重合に基づく応力は、硬化中に材料が収縮することによって引き起こされる。この体積収縮は、亀裂、耐久性の低下、寿命の短縮、及び残留内部応力を含む多くの問題を引き起こす。したがって、重合収縮及び収縮応力を低減することが、産業界で注目されている。
【0003】
応力を低減するための様々な方法が特定されている(例えば、切断可能な架橋剤、硬化を遅らせて材料の粘性から弾性への移行を遅延させること、及び/又は開裂し、次いで重合中にポリマーネットワークに付加するモノマーを添加すること)。硬化中に開裂付加する特定のモノマーが開発されており、これは、フリーラジカル硬化させる歯科用複合材料及び構造用接着剤における収縮応力を低減する際に顕著な性能を示す。しかしながら、歯科用複合材料の応力の更なる低減に寄与することができる更なるモノマーが望ましい。
【0004】
本明細書で使用される場合、「歯科用組成物」とは、口腔表面に接着又は接合することができる、充填剤を任意に含む材料を指す。硬化性歯科用組成物は、歯科用物品を歯構造に接合させるために使用することができ、歯の表面上にコーティング(例えば、シーラント又はワニス)を形成するために使用することができ、口腔内に直接配置され、その場で硬化される修復材として使用することができるか、又は代替的に、口腔外で補綴物を作製し、その後、口腔内に接着させるために使用することができる。
【0005】
硬化性歯科用組成物としては、例えば、接着剤(例えば、歯科用接着剤及び/又は歯列矯正用接着剤)、セメント(例えば、樹脂変性グラスアイオノマーセメント、及び/又は歯列矯正用セメント)、プライマー(例えば、歯列矯正用プライマー)、ライナー(歯の感受性を低減するために窩洞の基部に適用される)、シーラント(例えば、小窩裂溝)及びワニスなどのコーティング、並びに歯科用充填材などの樹脂修復材(直接複合材料とも呼ばれる)、並びに歯冠、ブリッジ、及び歯科用インプラント用物品が挙げられる。高充填された歯科用組成物は、歯冠を削り出し得るミルブランクにも使用される。歯科用セメントは、複合材料よりもいくらか低充填かつ低粘性材料であり、典型的には、インレー、アンレーなどの追加の材料のための接合剤として作用するか、又は層状に塗布及び硬化される場合には充填材料自体として作用する。また、歯科用セメントは、歯冠又はブリッジなどの歯科用修復物を歯の表面又はインプラントアバットメントに恒久的に接合するためにも使用される。
【0006】
本明細書で使用される場合、「歯科用物品」とは、歯構造又は歯科用インプラントに接着(例えば、接合)することができる物品を指す。歯科用物品としては、例えば、歯冠、ブリッジ、ベニア、インレー、アンレー、充填材、歯科矯正器具及び装置が挙げられ、
「付加-開裂剤」とは、開裂可能なエチレン性不飽和基(すなわち、均等接合切断(開環を含む)によって硬化中に開裂する基)を含み、その構造内に少なくとも1つの追加のフリーラジカル重合性基(例えば、(メタ)アクリレート基)を有し得るモノマーを指し、
「歯列矯正器具」とは、歯構造に接合されることが意図される任意の装置を指し、歯列矯正ブラケット、バッカルチューブ、舌リテーナ、歯列矯正バンド、咬合オープナ、ボタン、及びクリートが挙げられるが、これらに限定されない。器具は、接着剤を受容するための基部を有し、基部は、金属、プラスチック、セラミック、又はこれらの組み合わせから作製されるフランジであり得る。代替的に、基部は、硬化した接着剤層(複数可)(すなわち、単層又は多層接着剤)から形成されるカスタム基部であり得、
「口腔表面」は、口腔環境における軟質又は硬質の表面を指す。硬質表面は、典型的には、例えば、天然及び人工の歯の表面、骨などを含む歯構造を含み、
「硬結可能な」及び「硬化性」は、重合及び/又は架橋を誘導するために加熱し、重合及び/若しくは架橋を誘導するために化学線照射で照射することによって、かつ/又は重合及び/若しくは架橋を誘導するために1つ以上の成分を混合することによって硬化(例えば、重合又は架橋)され得る材料又は組成物を示す。「混合」は、例えば、均質な組成物を形成するために2つ以上の部分を組み合わせることによって実施することができる。代替的に、2つ以上の部分は、重合を開始するために界面で混合する(例えば、自発的に又は剪断応力の適用時に)別個の層として提供され得、
「硬結された」とは、少なくとも部分的に硬化した(例えば、重合又は架橋した)材料又は組成物を指し、
「硬結剤」とは、樹脂を硬結することを開始させるものを指す。硬結剤は、例えば、重合開始剤系、光開始剤系、熱開始剤、及び/又はレドックス開始剤系を含んでいてもよく、
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせに対する省略表現であり、「(メタ)アクリル酸の」は、アクリル酸の、メタクリル酸の、又はこれらの組み合わせに対する省略表現であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はこれらの組み合わせに対する省略表現であり、
「アクリロイル」は、一般的な意味で使用され、アクリル酸の誘導体だけでなく、それぞれアミン及びアルコール誘導体も意味し、
「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を含み、すなわち、エステル及びアミドの両方を含み、
「アルキル」は、直鎖、分岐鎖、及び環状のアルキル基を含み、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を含む。別段の指示がない限り、アルキル基は、典型的には、1~20個の炭素原子を含有する。本明細書で使用される場合、「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、及びノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に明記しない限り、アルキル基は、モノ-又は多価、すなわち、一価のアルキル又は多価のアルキレンであってもよく、
「ヘテロアルキル」は、独立して、S、O、及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する直鎖、分岐鎖、及び環状のアルキル基を含み、非置換及び置換アルキル基の両方を有する。別段の指示がない限り、ヘテロアルキル基は、典型的には、1~20個の炭素原子を含有する。「ヘテロアルキル」は、以下に記載される「1つ以上のS、N、O、P、又はSi原子を含有するヒドロカルビル」の部分集合である。本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、3,6-ジオキサヘプチル、3-(トリメチルシリル)-プロピル、4-ジメチルアミノブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に明記しない限り、ヘテロアルキル基は、モノ-又は多価、すなわち、一価のヘテロアルキル又は多価のヘテロアルキレンであってもよく、
「アリール」は、5~18個の環原子を含有する芳香族基であり、飽和、不飽和、又は芳香族であってもよい任意の縮合環を含有することができる。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルが挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素、又は硫黄などの1~3個のヘテロ原子を含有するアリールであり、縮合環を含有することができる。ヘテロアリール基のいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンズチアゾリルである。特に明記しない限り、アリール基及びヘテロアリール基は、モノ-又は多価、すなわち、一価のアリール又は多価のアリーレンであってもよく、
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換的に使用される。
【0007】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、(i)環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤と、(ii)任意選択的に、少なくとも1つのフリーラジカル重合性基を有する開裂可能なエチレン性不飽和基をその構造内に含む付加-開裂剤(環状イミドモノマーを含むものを含まない)と、(iii)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーと、を含む硬化性成分を含み得る重合性歯科用組成物に関する。
【0009】
一般に、本発明の環状イミドモノマーを応力低減添加剤として含有する歯科用複合材料は、既知の応力低減モノマーと比較して、フリーラジカル硬化された歯科用複合材料において、重合に基づく応力を(硬化した組成物の機械的特性を低下させることなく)大幅に低減することが見出されている。更に、本発明の環状イミドモノマー及び硬化中に開裂する特定の既知のモノマー(本明細書では付加-開裂剤と呼ばれることもある)の両方を含む歯科用複合材料は、本発明の環状イミドモノマー又は特定の付加-開裂剤のいずれかを単独で含む複合材料と比較して性能が優れていることが見出されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示の硬化性成分は、α,β-不飽和カルボニルを含む1つ以上の環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、環状イミドモノマーは、重合性組成物(例えば、フリーラジカル重合性組成物)中で付加-開裂剤として作用することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、環状イミドモノマーは、窒素に結合した2つのアシル基からなる少なくとも1つのイミド基を含んでいてもよい。本明細書に記載される環状イミドモノマーは、アルファ、ベータ-不飽和(α,β-不飽和)、すなわち、カルボニル基に隣接するα炭素とβ炭素との間のπ結合を更に含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、環状イミドモノマーは、γ位に第四級炭素原子を更に含んでいてもよい(本明細書ではγ-第四級炭素原子と呼ぶ)(すなわち、α,β-不飽和に隣接するカルボニル基の炭素原子から3つ離れた炭素原子)。いくつかの実施形態では、γ位における第四級炭素原子の存在が、開環ステップ(以下でより詳細に考察される)の主な駆動源であることを理解されたい。
【0012】
環状イミドモノマーは、α,β-不飽和カルボニルを含むジカルボン酸を無水酢酸などの脱水剤と反応させ、無水物基及びα,β-不飽和カルボニルを含む環状化合物を形成し、無水物基を(例えば、第一級)アミン化合物と反応させることによって調製され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、ジカルボン酸は、酸基の間にα,β-不飽和カルボニルを有する少なくとも3個の連続した炭素原子を含む。したがって、イミド基及びペンダントα,β-不飽和は、典型的には、環が少なくとも6個の共有結合した原子を含むヘテロ環分子に存在する。言い換えれば、本明細書に記載される環状イミドモノマーは、1つ以上の複素環を含み、これらの環(複数可)は、複素環中に6個以上の共有結合した原子を含み、複素環は、イミド基及びαβ-不飽和カルボニルの両方を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、α,β-不飽和カルボニルを含む代表的なジカルボン酸は、以下のように表される。
【0015】
【化1】
2,2,-ジメチル-4-メチリデンペンタン二酸(2,4-ビスカルボキシ-4-メチルペント-1-エン又は2,2-ジメチル-4-メチレングルタル酸としても記載される)。
【0016】
いくつかの実施形態では、このようなジカルボン酸は、単環を含む環状イミドモノマーを調製するために使用される。環状イミドモノマーは、以下の構造を有していてもよい。
【0017】
【化2】
式中、Lは、共有結合又は有機連結基であり、Yは、アルキル、アリール、ヒドロキシル、カルボン酸、又はエチレン性不飽和基であり、R及びRは、独立して、アルキル基である。
【0018】
いくつかの実施形態では、R及びRは、独立して、C1~C18アルキル基、C1~C16アルキル基、C1~C10アルキル基、又はC1~C4アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、又はブチル)である。いくつかの実施形態では、R及びRは、環状イミドモノマーが重合中に開環し、それによってラジカルを形成するようなアルキル置換基である。
【0019】
Lは、典型的には、(ヘテロ)アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、アルキレン又はアリーレン連結基(すなわち、L)は、酸素などのヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、Lは、1つ以上のエステル部分、1つ以上のウレタン部分、及び/又は1つ以上のペンダントヒドロキシル基を含んでいてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、2,2-ジメチル-4-メチレングルタル酸無水物は、2つの環を含む環状イミドモノマーか、又は言い換えれば、環状ビス-イミドを調製するために使用される。環状ビス-イミドモノマーは、以下の構造を有していてもよい。
【0021】
【化3】
式中、Rは、有機連結基であり、
及びRは、独立して、前述のような置換基である。
【0022】
Rは、典型的には、(ヘテロ)アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、アルキレン又はアリーレン連結基(すなわち、R)は、酸素又は窒素などのヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、Rは、1つ以上のエステル部分、1つ以上のウレタン部分、及び/又は1つ以上のペンダントヒドロキシル基を含んでいてもよい。Rは、任意選択で、ペンダントエチレン性不飽和基を更に含んでいてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、環状イミドモノマーは、α,β-不飽和と組み合わせて、少なくとも1つの(例えば、フリーラジカル重合性)エチレン性不飽和基を含む。この実施形態では、Yは、(例えば、フリーラジカル重合性)エチレン性不飽和基であるか、又は環状ビス-イミドのRは、ペンダント(例えば、フリーラジカル重合性)エチレン性不飽和基を更に含む。この実施形態では、環状イミドモノマーのエチレン性不飽和重合性基の数は、≧2である。いくつかの実施形態では、環状イミドモノマーのエチレン性不飽和重合性基の数は、3個以下である。
【0025】
1つ以上の追加のエチレン性不飽和基としては、以下の構造が挙げられ得るが、これらに限定されず、例えば、(メタ)アクリル(すなわち、(メタ)アクリロイル及び(メタ)アクリルアミド)、ビニル、スチレン、及びエチニルが挙げられる。
【0026】
【化4】
式中、各Rは、独立して、H又はC~Cアルキルである。
【0027】
いくつかの代表的な環状イミドモノマーは以下のとおりである。
【0028】
【表1-1】
【0029】
【表1-2】
【0030】
これらの示された環状イミドモノマーは、代表的な(例えば、フリーラジカル重合性)エチレン性不飽和基として(メタ)アクリレート基又はカルボン酸基を含むが、このようなモノマーは、代替的には、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、スチレン基、又はエチニル基(例えば、フリーラジカル重合性)エチレン性不飽和基を有することができる。
【0031】
環状イミドモノマーの分子量は、少なくとも150g/モルである。典型的な実施形態では、モノマーの分子量は、1500、1000、750、又は500g/モル以下である。
【0032】
理論に拘束されることを意図するものではないが、付加-開裂モノマーは、以下の代表的な反応スキーム1に示すような付加-開裂経路に従うと考えられ、ここで、窒素原子に結合した-Rは、前述のようにL-Yである。
【0033】
反応スキーム1
【0034】
【化5】
【0035】
スキーム1では、ステップ1において、フリーラジカル重合性エチレン性不飽和モノマー、オリゴマー、又はP・で表されるポリマーを、環状イミドモノマーのα,β-不飽和に付加する。ステップ2では、環状モノマー環が開き、α,β-不飽和を含む以下の線形イミドラジカル:
【0036】
【化6】
に変化する。
【0037】
ステップ3では、α-カルボニル第三級ラジカル(ペンダントジメチル基に隣接する)は、モノマーの重合を開始することができる。
【0038】
ステップ4では、フリーラジカル重合性エチレン性不飽和オリゴマー、又はP・で表されるポリマーを、環状イミドモノマーのα,β-不飽和に付加する。P基のうちの少なくとも2つがポリマー鎖であるとき、この反応は、架橋として特徴付けられてもよい。
【0039】
架橋は、ステップ5に示すように開裂して、安定したα-カルボニル第三級ラジカル(P・Mで表される)及びα,β-不飽和を有する残基を形成することができる。α,β-不飽和は、ステップ4に示すようにラジカル付加を受けることができ、その後、ステップ5に示すように開裂することができる。したがって、ステップ4及び5を繰り返して、重合応力を更に緩和することができる。
【0040】
反応スキーム1に示すように、付加-開裂環状イミドは、α,β-不飽和モノマーを含むが、追加のエチレン性不飽和重合性基を欠くものは、応力緩和のためのいくつかの機構を提供する。更に、応力緩和はまた、環状イミド付加-開裂モノマーの存在下でより遅い硬化速度の結果であり得、ゲル化点を遅延させる。ゲル化後の収縮は、応力発生における主要な要素であり、したがって、ゲル化点をわずかであっても遅延させることにより、硬化プロセス中に材料が流動するための追加の時間を可能にすることで、応力緩和につながり得る。
【0041】
別の実施形態では、イミド環構造は、α,β-不飽和及び少なくとも1つの追加の(例えば、フリーラジカル重合性)エチレン性不飽和基を含む。以下の反応スキーム2に示すように、このような環状イミドモノマーは、反応スキーム1に示すものと全く同じポリマー及びモノマー付加、並びに開環及び鎖切断開裂を提供することができる。この実施形態では、追加のエチレン性不飽和基も重合することができるか、又は言い換えれば、架橋することができる。
【0042】
反応スキーム2
【0043】
【化7】
【0044】
反応スキーム2は、窒素原子に結合した特定の-L-Y基を有する環状イミドモノマーを用いて示されているが、環状イミドモノマーは、本明細書に記載される他の-L-Y基を含んでいてもよい。
【0045】
別の実施形態では、環状イミドモノマーは、α,β-不飽和を含む、少なくとも2つのイミド環構造を含む。以下の反応スキーム3に示されるように、このような環状イミドモノマーは、反応スキーム1に示されるものと全く同じポリマー及びモノマー付加、並びに開環及び鎖切断開裂を提供することができる。以下の反応スキーム3では、両方のイミド環構造は、同時に開環し、続いて同時にモノマー付加するものとして示されている。しかしながら、このような付加反応及び開裂反応はまた、連続的に起こり得るか、又は言い換えれば、各環が独立して反応し得る。更に、R基は、後述するように、追加のペンダント(例えば、フリーラジカル重合性)エチレン性不飽和基-L-Yを含んでいてもよい。この実施形態では、環状イミドはまた、重合することができるか、又は言い換えれば、反応スキーム2に示すように架橋することができる。
【0046】
反応スキーム3
【0047】
【化8】
【0048】
反応スキーム1~3は、特定の6員環状イミドモノマーを用いて示されているが、少なくとも6個の共有結合した原子及びα,β-不飽和を含む他の環状イミドモノマーは、同じ又は同様の付加-開裂経路に従うであろう。
【0049】
一実施形態では、α,β-不飽和カルボニルを含む環状イミドモノマーを調製する方法が記載される。本方法は、α,β-不飽和カルボニルを含むジカルボン酸を脱水剤と反応させ、無水物基及びα,β-不飽和カルボニルを含む環状化合物を形成することと、無水物基を、アミン基、及びアルキル若しくはアリールなどの非反応性基又はカルボン酸若しくはヒドロキシル基などの反応性基を含む化合物と反応させ、α,β-不飽和カルボニル及びイミド基を含む環状化合物を形成することと、を含む。
【0050】
1つの代表的なジカルボン酸は、前述のように、2,2-ジメチル-4-メチリデンペンタン二酸である。前述のように、ジカルボン酸が酸基の間にα,β-不飽和カルボニルを有する少なくとも3個の連続した炭素原子を含む場合、他のジカルボン酸を利用することができる。
【0051】
好適な脱水剤としては、無水酢酸及び無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物、五塩化リン又は五酸化リンなどのリン系脱水剤、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド系脱水剤が挙げられる。
【0052】
(例えば、第一級)アミン基及びアルキル又はアリール末端基を含む代表的な化合物としては、4-アミノスチレン,ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、フェネチルアミン、及びベンジルアミンが挙げられる。
【0053】
代表的な反応スキームは、以下のとおりである。
【0054】
反応スキーム4
【0055】
【化9】
【0056】
アミン基及びカルボン酸基を含む好適な(例えば、脂肪族)化合物は、典型的には、アルキレン連結基によって末端酸基に結合した第一級アミン基を含む。アルキレン連結基は、典型的には、2~12個の炭素原子を含む。代表的な例としては、例えば、3-アミノプロパン酸、4-アミノブタン酸、3-アミノブタン酸、2-アミノブタン酸、5-アミノペンタン酸、2-アミノペンタン酸、3-アミノペンタン酸、4-アミノペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、2-アミノヘキサン酸、3-アミノヘキサン酸、4-アミノヘキサン酸、5-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、6-アミノヘプタン酸、5-アミノヘプタン酸、4-アミノヘプタン酸、3-アミノヘプタン酸、2-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、7-アミノオクタン酸、6-アミノオクタン酸、5-アミノオクタン酸、4-アミノオクタン酸、3-アミノオクタン酸、2-アミノオクタン酸、6-アミノカプロン酸、及び12-アミノドデカン酸が挙げられる。アミン基及びカルボン酸基を含む他の好適な化合物としては、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、セリン(アルコールも有する)、トレオニン(アルコールも同様)、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、及びアスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどの(例えば、天然に存在する)アミノ酸が挙げられる。
【0057】
代表的な反応スキームは、以下のとおりである。
【0058】
反応スキーム5
【0059】
【化10】
【0060】
いくつかの実施形態では、環状イミドモノマーを調製する方法は、窒素原子のカルボン酸基を、酸反応性基及びエチレン性不飽和(例えば、フリーラジカル重合性)基を含む化合物と反応させることを更に含む。
【0061】
酸反応性基は、典型的には、エポキシ基又はアジリジニル基である。
【0062】
代表的なエポキシ化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、チオグリシジル(メタ)アクリレート、3-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル(メタ)アクリレート、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシ-フェニル)プロパン、4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルが挙げられる。
【0063】
代表的なアジリジニル化合物としては、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、2-(1-アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、4-(1-アジリジニル)ブチルアクリレート、2-[2-(1-アジリジニル)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、2-[2-(1-アジリジニル)エトキシカルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート、12-[2-(2,2,3,3-テトラメチル-1-アジリジニル)エトキシカルボニルアミノ]ドデシル(メタ)アクリレート、及び1-(2-プロペニル)アジリジンが挙げられる。
【0064】
代表的な反応スキームは、以下のとおりである。
【0065】
反応スキーム6
【0066】
【化11】
【0067】
カルボン酸とアジリジニル化合物との反応は、国際公開第2012/112304号に記載されている。
【0068】
アミン基及び1つ以上のヒドロキシル基を含む好適な化合物としては、ジオールが挙げられる。代表的な化合物としては、例えば、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオールが挙げられる。
【0069】
ヒドロキシル基を有する環状イミド化合物は、イソシアネート基及び(メタ)アクリレート基を含む化合物と反応させることができる。代表的なイソシアネート化合物としては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトスチレン、2-メチル-2-プロペノイルイソシアネート、4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)フェニルイソシアネート、アリル2-イソシアナトエチルエーテル、及び3-イソシアナト-1-プロペン、3-イソシアナト-1-プロピン、3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。
【0070】
上記の反応スキームは、イミド基及びα,β-不飽和カルボニルを含む単一の複素環を含むモノマーを調製することを示す。
【0071】
他の実施形態では、環状イミドモノマーは、少なくとも2つの環状イミド基を含む。環状ビス-イミドモノマーを調製するための1つの好適な方法は、α,β-不飽和カルボニルを含むジカルボン酸を脱水剤と反応させ、無水物基及びα,β-不飽和カルボニルを含む環状化合物を形成すること(反応スキーム4において前述のように)と、無水物基をジアミンと反応させることと、を含む。代表的な反応スキームは、以下のとおりである。
【0072】
反応スキーム7
【0073】
【化12】
【0074】
いくつかの実施形態では、ジアミンは、アミン基がアルキレン連結基と結合している脂肪族ジアミンである。いくつかの実施形態では、アルキレン連結基は、2~12個の炭素原子を含む。アルキレン連結基は、直鎖、分岐鎖、又は環状部分、並びにこれらの組み合わせを含んでいてもよい。好適な例としては、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,2-ブタンジアミン、1,3-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,2-ペンタンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、1,4-ペンタンジアミン、2,4-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、イソホロンジアミン(シス及びトランス5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン)、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン、シス-1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジフェニル-1,2-エチレンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)が挙げられる。
【0075】
他の実施形態では、ジアミンは、アミン基がアリーレン部分を含む連結基と結合している芳香族ジアミンである。連結基は、典型的には、C6~C12アリーレン基を含む。好適な例としては、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、m--フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジアニリンが挙げられる。
【0076】
別の実施形態では、ジアミンは、1つ以上のペンダント反応性(例えば、ヒドロキシル又はカルボン酸)基を更に含んでいてもよい。ペンダント反応性(例えば、ヒドロキシル基)は、前述のようにイソシアナトアルキル(メタ)アクリレート又は酸反応性(メタ)アクリレートなどの、共反応性基及び(例えば、フリーラジカル重合性)エチレン性不飽和基を含む化合物と反応させることができる。代表的な反応スキームは以下のとおりである。
【0077】
反応スキーム8
【0078】
【化13】
【0079】
反応スキーム9
【0080】
【化14】
【0081】
反応スキーム4~6は、特定の6員環状イミドモノマーを用いて示されているが、少なくとも6個の共有結合した原子及びα,β-不飽和を含む他の環状イミドモノマーは、α,β-不飽和カルボニルを含む他のジカルボン酸を使用して調製することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、少なくとも1つの付加-開裂環状イミドモノマーを含む重合性組成物が記載される。重合性組成物の付加-開裂モノマーは、本明細書に記載されるように、少なくとも1つの環状イミドモノマーを含む。重合性組成物は、国際公開第2012/112304号に記載されているように、単一の環状イミドモノマー、2つ以上の環状イミドモノマーの組み合わせ、又は異なる付加-開裂モノマーと組み合わせた少なくとも1つの環状イミドモノマーを有していてもよい。
【0083】
重合性組成物は、典型的には、重合性モノマー(複数可)、オリゴマー(複数可)、及びポリマー(複数可)の総重量に基づいて、少なくとも0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、又は0.01重量%の量で付加-開裂モノマー(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、付加-開裂モノマー(複数可)の量は、重合性モノマー(複数可)、オリゴマー(複数可)、及びポリマー(複数可)の総重量に基づいて、少なくとも0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、又は1.0重量%である。付加-開裂モノマー(複数可)の量は、典型的には、重合性モノマー(複数可)、オリゴマー(複数可)、及びポリマー(複数可)の総重量に基づいて、10重量%以下である。いくつかの実施形態では、付加-開裂モノマー(複数可)の量は、典型的には、重合性モノマー(複数可)、オリゴマー(複数可)、及びポリマー(複数可)の総重量に基づいて、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0.5重量%以下である。典型的には、重合性組成物は、重合に基づく応力を低減又は排除する最小量の付加-開裂モノマー(複数可)を含む。過剰な付加-開裂環状イミドモノマー(複数可)は、重合した組成物の機械的特性を低下させる可能性がある。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示の硬化性成分は、任意選択で、1つ以上の追加の付加-開裂剤を含んでいてもよい。付加-開裂剤は、少なくとも1つのエチレン性不飽和末端基と、α,β-不飽和カルボニルを含む骨格単位と、を含んでいてもよい。付加-開裂剤は、フリーラジカルにより切断可能であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、付加-開裂剤は、以下の構造式を有し得る。
【0086】
【化15】
式中、
、R、及びRは、各々独立して、Z-Q-、(ヘテロ)アルキル基又は(ヘテロ)アリール基であるが、ただし、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、Z-Q-であり、
Qは、m+1の原子価を有する連結基であり、
Zは、エチレン性不飽和重合性基であり、
mは、1~6、好ましくは1~2であり、
各Xは、独立して、-O-又は-NR-であり、式中、Rは、H又はC~Cアルキルであり、
nは、0又は1である。
【0087】
式Iによる付加-開裂剤は、米国特許第9,403,966号に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
付加-開裂剤が多官能性であり、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む(例えば、式IにおいてZが≧2である)実施形態では、材料は、架橋剤として機能することができ、架橋は不安定である。
【0089】
モノマーのエチレン性不飽和部分Zは、(メタ)アクリロイル、ビニル、スチレン、及びエチニルを含む以下の構造を含んでいてもよいが、これらに限定されず、これらは、以下の化合物の調製に関してより完全に記載される。
【0090】
【化16】
式中、各Rは、独立して、H又はC~Cアルキルである。
【0091】
いくつかの実施形態では、Qは、-O-、-S-、-NR-、-SO-、-PO-、-CO-、-OCO-、-R-、-NR-CO-NR-、NR-CO-O-、NR-CO-NR-、-CO-O-R-、-CO-NR-R-、-R-CO-O-R-、-O-R-、-S-R--、-NR-R-、-SO-R-、-PO-R-、-CO-R-、-OCO-R-、-NR-CO-R-、NR-R-CO-O-、及びNR-CO-NR-から選択され、式中、各Rは、水素、C~Cアルキル基、又はアリール基であり、各Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキレン基、5~10個の炭素原子を有する5若しくは6員シクロアルキレン基、又は6~16個の炭素原子を有する二価のアリーレン基であるが、ただし、Q~Zは、過酸化結合を含有しない。
【0092】
いくつかの実施形態では、Qは、式-C2r-などのアルキレンであり、式中、rは、1~10である。他の実施形態では、Qは、-CH-CH(OH)-CH-などのヒドロキシル置換アルキレンである。いくつかの実施形態では、Qは、アリールオキシ置換アルキレンである。いくつかの実施形態では、Rは、アルコキシ置換アルキレンである。
【0093】
-X-基(及び任意選択でR-X-基)は、典型的には、HC=C(CHC(O)-O-CH-CH(OH)-CH-O-、HC=C(CHC(O)-O-CH-CH(O-(O)C(CH)=CH)-CH-O-、HC=C(CHC(O)-O-CH(CHOPh)-CH-O-、HC=C(CHC(O)-O-CHCH-N(H)-C(O)-O-CH(CHOPh)-CH-O-、HC=C(CHC(O)-O-CH-CH(O-(O)C-N(H)-CHCH-O-(O)C(CHC=CH)-CH-O-、HC=C(H)C(O)-O-(CH-O-CH-CH(OH)-CH-O-、HC=C(CHC(O)-O-CH-CH(O-(O)C-N(H)-CHCH-O-(O)C(CHC=CH)-CH-O-、CH-(CH-CH(O-(O)C-N(H)-CHCH-O-(O)C(CHC=CH)-CH-O-、HC=C(H)C(O)-O-(CH-O-CH-CH(-O-(O)C(H)=CH)-CH-O-、及びHC=C(H)C(O)-O-CH-CH(OH)-CH-O-、HC=C(H)C(O)-O-(CH-O-CH-CH(-O-(O)C(H)=CH)-CH-O-、及びCH-(CH-CH(O-(O)C-N(H)-CHCH-O-(O)C(CHC=CH)-CH-O-から選択される。
【0094】
式Iの化合物は、(メタ)アクリレート二量体及び三量体から、置換、置き換え、又は縮合反応によって調製され得る。出発(メタ)アクリレート二量体及び三量体は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,547,323号の方法を使用して、フリーラジカル開始剤及びコバルト(II)錯体触媒の存在下で、(メタ)アクリロイルモノマーのフリーラジカル付加によって調製され得る。代替的に、(メタ)アクリロイル二量体及び三量体は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,886,861号(Janowicz)又は米国特許第5,324,879号(Hawthorne)のプロセスを使用して、コバルトキレート錯体を使用して調製され得る。いずれのプロセスにおいても、反応混合物は、二量体、三量体、より高次のオリゴマー及びポリマーの複雑な混合物を含有することができ、所望の二量体又は三量体は、蒸留によって混合物から分離することができる。このような合成は、米国特許第9,403,966号に更に記載されている。
【0095】
いくつかの実施形態では、本開示の硬化性成分は、上で考察した付加-開裂剤と組み合わせて、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーを更に含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、単一の(例えば、末端)エチレン性不飽和基を有する単官能性であってもよい。歯科用修復物などの他の実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、多官能性であってもよい。「多官能性エチレン性不飽和」という語句は、モノマーが各々、(メタ)アクリレート基などの少なくとも2つのエチレン性不飽和(例えば、フリーラジカル)重合性基を含むことを意味する。
【0096】
いくつかの実施形態では、このようなエチレン性不飽和基は、(メタ)アクリルアミド(HC=CHCON-及びHC=CH(CH)CON-)並びに(メタ)アクリレート(CHCHCOO-及びCHC(CH)COO-)などの(メタ)アクリルを含む(例えば、末端)フリーラジカル重合性基である。他のエチレン性不飽和重合性基としては、ビニルエーテル(HC=CHOCH-)を含むビニル(HC=C-)が挙げられる。エチレン性不飽和末端重合性基(複数可)は、特に化学線(例えば、UV)照射への曝露によって硬結する組成物の場合、(メタ)アクリレート基であってもよい。更に、硬化性歯科用組成物中には、アクリレート官能性よりもメタクリレート官能性が存在する場合がある。
【0097】
エチレン性不飽和モノマーは、歯科用組成物に使用するための、当該技術分野において既知の様々なエチレン性不飽和モノマーを含んでいてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、(例えば歯科用)硬化性成分は、1つ以上のエチレン性不飽和(例えば(メタ)アクリレート)低体積収縮性モノマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、(例えば、充填された)歯科用組成物として有用な(充填材及び歯冠などの修復物に有用な)硬化性組成物は、組成物が約4%未満又は約2%未満のワット収縮率を示すように、1つ以上の低体積収縮性モノマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ワット収縮率は、1.90%以下、又は1.80%以下、又は1.70%以下、又は1.60%以下である。いくつかの実施形態では、ワット収縮率は、1.50%以下、又は1.40%以下、又は1.30%以下であり、いくつかの実施形態では、1.25%以下、又は1.20%以下、又は1.15%以下、又は1.10%以下である。
【0099】
硬化性成分のエチレン性不飽和モノマーは、典型的には、約25℃で安定した液体であり、これは、少なくとも30、60、又は90日の典型的な貯蔵寿命の間、室温(約25℃)で保管されたときに、モノマーが実質的に重合、結晶化、又は他の方法で固化しないことを意味する。モノマーの粘度は、典型的には、初期粘度の10%を超えて変化(例えば、増加)しない。
【0100】
いくつかの実施形態では、(例えば、充填された)歯科用組成物として有用な(充填材及び歯冠などの修復物に有用な)硬化性組成物は、一般に少なくとも1.50の屈折率を有するエチレン性不飽和モノマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、屈折率は、少なくとも1.51、1.52、1.53、又はそれ以上である。硫黄原子の含有及び/又は1つ以上の芳香族部分の存在は、(このような置換基を欠く同じ分子量のモノマーと比較して)屈折率を上昇させることができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、(未充填の)硬化性成分は、付加-開裂剤(複数可)と組み合わせて、1つ以上の低収縮モノマーのみを含んでいてもよい。他の実施形態では、(未充填の)硬化性成分は、少濃度の他のモノマー(複数可)を含んでいてもよい。「その他」とは、低体積収縮性モノマーではない(メタ)アクリレートモノマーなどのエチレン性不飽和モノマーを意味する。このような他のモノマー(複数可)の濃度は、典型的には、(未充填の)硬化性成分の20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、又は15重量%以下である。このような他のモノマーの濃度は、典型的には、充填された硬化性成分の5重量%、4重量%、3重量%、又は2重量%以下である。
【0102】
いくつかの実施形態では、低体積収縮性モノマーは、米国特許第9237990号に記載されているようなイソシアヌレートモノマー、2010年7月2日に出願された欧州特許出願第10168240.9号に記載されているようなトリシクロデカンモノマー、米国特許出願公開第2008/0194722号に記載されているような、少なくとも1つの環状アリルスルフィド部分を有する重合性化合物、米国特許第6,794,520号に記載されているようなメチレンジチエパンシラン、米国特許第6,284,898号に記載されているようなオキセタンシラン、並びに国際公開第2008/082881号に記載されているようなジ-、トリ-、及び/又はテトラ-(メタ)アクリロイル含有材料を含んでいてもよく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0103】
いくつかの実施形態では、(例えば、未充填の)硬化性成分の大部分は、1つ以上の低体積収縮性モノマーを含む。例えば、(例えば、未充填の)硬化性成分の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上は、低体積収縮性モノマー(複数可)を含んでいてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、硬化性成分は、少なくとも1つのイソシアヌレートモノマーを含んでいてもよい。イソシアヌレートモノマーは、イソシアヌレートコア構造としての三価のイソシアヌル酸環と、(例えば、二価の)連結基を介してイソシアヌレートコア構造の窒素原子の少なくとも2つに結合した少なくとも2つのエチレン性不飽和(例えば、フリーラジカル)重合性基と、を含んでいてもよい。連結基は、イソシアヌレートコア構造の窒素原子と末端エチレン性不飽和基との間の原子の鎖全体である。エチレン性不飽和(例えば、フリーラジカル)重合性基は、一般に、(例えば、二価の)連結基を介してコア又は骨格単位に結合される。
【0105】
三価のイソシアヌレートコア構造は、以下の式を有し得る。
【0106】
【化17】
二価の連結基は、少なくとも1つの窒素、酸素、又は硫黄原子を含んでいてもよい。このような窒素、酸素、又は硫黄原子は、ウレタン結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、又はチオエーテル結合を形成する。エーテル結合及び特にエステル結合は、収縮の低減及び/又は機械的特性の向上、例えば、直径方向引張強度(diametral tensile strength、DTS)を維持しながら、粘度の低減などの特性の改善を提供するために、ウレタン結合を含むイソシアヌレートモノマーよりも有益であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、イソシアヌレートモノマーの二価の連結基は、ウレタン結合を含まない。いくつかの実施形態では、二価の連結基は、脂肪族ジエステル結合又は芳香族ジエステル結合などのエステル結合を含む。
【0107】
イソシアヌレートモノマーは、以下の一般構造を有し得る。
【0108】
【化18】
式中、Rは、任意選択で、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を含む、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキレン、アリーレン、又はアルカリーレンであり、Rは、水素又はメチルであり、Zは、ウレタン、エステル、チオエステル、エーテル、又はチオエーテルから選択される少なくとも1つの部分、及びこのような部分の組み合わせを含む、アルキレン、アリーレン、又はアルカリーレン連結基であり、R又はRの少なくとも一方は、
【0109】
【化19】
である。
【0110】
は、典型的には、任意選択でヘテロ原子を含み、12個以下の炭素原子を有する、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキレンである。いくつかの好ましい実施形態では、Rは、8、6、又は4個以下の炭素原子を有する。いくつかの好ましい実施形態では、Rは、少なくとも1つのヒドロキシル部分を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、Zは、ジエステル結合などの脂肪族又は芳香族エステル結合を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、Zは、1つ以上のエーテル部分を更に含む。したがって、連結基は、エステル部分又はジエステル部分と1つ以上のエーテル部分との組み合わせを含んでいてもよい。
【0113】
イソシアヌレートモノマーがジ(メタ)アクリレートモノマーである実施形態では、R又はRは、水素、アルキル、アリール、又はアルカリールであり、任意選択でヘテロ原子を含む。
【0114】
は、一般に、出発(例えば、ヒドロキシ末端)イソシアヌレート前駆体から誘導される。様々なイソシアヌレート前駆体材料が、オレゴン州ポートランドのTCI America社から市販されている。例示的なイソシアヌレート前駆体材料の構造を以下に示す。
【0115】
【化20】
【0116】
エステル部分の酸素原子を含む連結基を有する、本明細書に開示されるイソシアヌレート(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシ又はエポキシ末端イソシアヌレートと、モノ-(2-メタクリルオキシエチル)フタル酸及びモノ-(2-メタクリルオキシテイル)コハク酸などの(メタ)アクリレート化カルボン酸との反応によって調製され得る。
【0117】
好適な(メタ)アクリレート化カルボン酸としては、例えば、モノ-(2-メタクリルオキシエチル)フタル酸(複数可)、モノ-(2-メタクリルオキシテイル)コハク酸、及びモノ-(2-メタクリルオキシエチル)マレイン酸が挙げられる。代替的に、カルボン酸は、メタクリルアミドグリシン、メタクリルアミドロイシン、メタクリルアミドアラニンなどの天然に存在するアミノ酸のメタクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリルアミド官能基を含んでいてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、単一の(メタ)アクリレート化カルボン酸を単一のヒドロキシル末端イソシアヌレート(例えば、トリス-(2-ヒドロキシルエチル)イソシアヌレート)と反応させる。環の全てのヒドロキシル基が反応するように十分なモル比の(メタ)アクリレートカルボン酸が利用されるとき、このような合成は、三価のイソシアヌル酸環の窒素原子に結合したフリーラジカル末端基の各々が同じである、単一の反応生成物を生成することができる。しかしながら、単一のエポキシ末端イソシアヌレートを単一のカルボン酸と反応させたとき、反応生成物は、一般に、反応生成物中に複数の異性体を含む。
【0119】
2つの異なるヒドロキシ若しくはエポキシ末端イソシアヌレート及び/又は2つの異なる(例えば、(メタ)アクリレート化)カルボン酸が利用されるとき、反応物の相対量に基づいて反応生成物の統計的混合物が得られる。例えば、(メタ)アクリレート化芳香族カルボン酸と(メタ)アクリレート脂肪族カルボン酸との混合物が利用されるとき、三価のイソシアヌル酸環の窒素原子に結合したフリーラジカル末端二価の連結基のいくつかは、芳香族基を含むが、他のものは含まない。更に、(例えば、1当量の)ヒドロキシル末端カルボン酸と(例えば、2当量の)モノカルボン酸(オクタン酸など)との組み合わせを、単一のヒドロキシル末端イソシアヌレート(例えば、トリス-(2-ヒドロキシルエチル)イソシアヌレート)と反応させたとき、モノ(メタ)アクリレートイソシアヌレートは、米国特許第9237990号に更に記載されるように、調製することができる。このようなモノ(メタ)アクリレートイソシアヌレートは、反応性希釈剤として使用するのに好適である。
【0120】
代替的に、エーテル基含有連結基を有するイソシアヌレート(メタ)アクリレートモノマーを合成することができる。例えば、1つの例示的な合成では、無水フタル酸は、モノ-メタクリレート化ジ、トリ、テトラ、又はポリエチレングリコールと、触媒量の4-(ジメチルアミノ)ピリジン(dimethylamino pyridine、DMAP)及びブチル化ヒドロキシトルエン阻害剤(butylated hydroxytoluene inhibitor、BHT)の存在において、95℃で3~6時間反応させて、モノ-メタクリレート化ポリエチレングリコールフタル酸モノエステルを形成することができる。得られたメタクリレート化酸は、アセトン中で、ジシクロヘキシルカルボジイミド(dicyclohexyl carbodiimide、DCC)を使用して0~5℃、次いで室温で、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと反応させることができる。このような反応スキームを以下に示す。
【0121】
【化21】
【0122】
別の例示的な合成では、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートをエチレンオキシドと反応させて、ヒドロキシル基を末端に有するポリエチレングリコールを形成することができる。OH末端をメタ(アクリル)酸でエステル化して、連結基がポリエーテルである生成物を得ることができる。このような反応スキームを以下に示す。
【0123】
【化22】
【0124】
いくつかの実施形態では、イソシアヌレートモノマーは、ジ(メタ)アクリレートイソシアヌレートモノマー又はトリ(メタ)アクリレートイソシアヌレートモノマーなどのマルチ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0125】
ジ(メタ)アクリレートモノマーは、以下の構造を有し得る。
【0126】
【化23】
式中、R、R、R、及びZは、前述の通りであり、Rは、任意選択で、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を含む、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキレン、アリーレン、又はアルカリーレンであり、Yは、ウレタン、エステル、チオエステル、エーテル、又はチオエーテルから選択される少なくとも1つの部分、及びこのような部分の組み合わせを含む、アルキレン、アリーレン、又はアルカリーレン連結基である。
【0127】
例示的なジ(メタ)アクリレートイソシアヌレートモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
【0128】
【化24】
【0129】
いくつかの実施形態では、トリ(メタ)アクリレートモノマーは、以下の構造を有し得る。
【0130】
【化25】
式中、
、R、及びRは、独立して、任意選択でヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を含む、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキレン、アリーレン、又はアルカリーレンであり、Rは、水素又はメチルであり、X、Y、及びZは、独立して、ウレタン、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテルから選択される少なくとも1つの部分、又はこのような部分の組み合わせを含む、アルキレン、アリーレン、又はアルカリーレン連結基であり、Rは、水素又はメチルである。
【0131】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、少なくとも1つのヒドロキシル部分を含む。
【0132】
例示的なトリ(メタ)アクリレートイソシアヌレートモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0133】
【化26】
【0134】
いくつかの実施形態では、硬化性成分は、少なくとも1つのトリシクロデカンモノマーを含んでいてもよい。トリシクロデカンモノマーは、単一のモノマー又は2つ以上のトリシクロデカンモノマーのブレンドを含んでいてもよい。未充填の又は充填された硬化性成分中の多官能性エチレン性不飽和トリシクロデカンモノマーの濃度は、多官能性エチレン性不飽和イソシアヌレートモノマーについて記載したものと同じであり得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、硬化性成分は、多官能性エチレン性不飽和イソシアヌレートモノマー及び多官能性エチレン性不飽和トリシクロデカンモノマーを、約1.5:1~1:1.5の範囲の重量比で含んでいてもよい。
【0136】
トリシクロデカンモノマーは、以下のコア構造(すなわち、骨格単位(U))を有し得る。
【0137】
【化27】
【0138】
いくつかの実施形態では、トリシクロデカンモノマーは、以下のコア構造(すなわち、骨格単位(U))を有し得る。
【0139】
【化28】
【0140】
このようなトリシクロデカンモノマーは、例えば、以下のような出発物質から調製することができる。
【0141】
【化29】
(a+b)=1かつ(c+d)=1、
Mw=312.5
【0142】
【化30】
(a+b)=1かつ(c+d)=1、
Mw=418.6
【0143】
【化31】
(a+b)=1かつ(c+d)=1、
Mw=388.6
【0144】
いくつかの実施形態では、骨格単位(U)は、エーテル結合を介して骨格単位(U)に結合した1つ又は2つのスペーサ単位(S)を含んでいてもよい。少なくとも1つのスペーサ単位(S)は、CH(Q)-OG鎖を含み、各基Gは、(メタ)アクリレート部分を含み、Qは、水素、アルキル、アリール、アルカリール、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基を含む。いくつかの実施形態では、Qは、水素、メチル、フェニル、フェノキシメチル、及びこれらの組み合わせである。Gは、ウレタン部分を介してスペーサ単位(S)に結合していてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、スペーサ単位(複数可)(S)は、典型的には、以下を含み、
【0146】
【化32】
式中、mは、1~3であり、nは、1~3であり、Qは、水素、メチル、フェニル、フェノキシメチルである。
【0147】
他の実施形態では、スペーサ単位(複数可)(S)は、典型的には、以下を含み、
【0148】
【化33】
式中、M=フェニルである。
【0149】
いくつかの実施形態では、トリシクロデカンモノマーは、以下の構造
【0150】
【化34】
(式中、これらのトリシクロデカンモノマー構造の各々について、a、bは、0~3であり、c、d=0~3であり、(a+b)は、1~6であり、(c+d)は、1~6であり、Qは、独立して、水素、メチル、フェニル、又はフェノキシメチルである)によって特徴付けられ得る。
【0151】
このような多官能性エチレン性不飽和トリシクロデカンモノマーのいくつかの例示的な種を、以下の表に記載する。
【0152】
【表2-1】
【0153】
【表2-2】
【0154】
いくつかの実施形態では、イソシアヌレートモノマー及びトリシクロデカンモノマーの連結基は、モノマーが25℃で安定した液体であるように、分子量が十分に低くてもよい。しかしながら、連結基(複数可)は、例えば、(メタ)アクリレート基を芳香環に連結する、歯科用組成物において利用される一般的なモノマーである、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(「BisGMA」)の酸素原子よりも分子量が高くてもよい。記載されるモノマーの連結基(複数可)の分子量は、典型的には、少なくとも50g/モル又は100g/モルである。いくつかの実施形態では、連結基の分子量は、少なくとも150g/モルである。連結基の分子量は、典型的には、約500g/モル以下である。いくつかの実施形態では、連結基の分子量は、400g/モル又は300g/モル以下である。
【0155】
いくつかの実施形態では、低収縮性(例えば、イソシアヌレート及びトリシクロデカン)モノマーの(すなわち、計算された)分子量は、典型的には、2000g/モル以下である。いくつかの実施形態では、モノマーの分子量は、約1500g/モル以下又は1200g/モル以下又は1000g/モル以下である。モノマーの分子量は、典型的には、少なくとも600g/モルである。
【0156】
25℃で固体を形成することなく分子量を増加させることは、上記のように、様々な合成アプローチによって達成することができる。いくつかの実施形態では、連結基は、1つ以上のペンダント置換基を有する。例えば、連結基は、アルコキシセグメントを含む連結基の場合のように、1つ以上のヒドロキシル基置換基を含んでいてもよい。他の実施形態では、連結基は、分枝状であり、かつ/又は少なくとも1つの(すなわち、脂肪族)環状部分を含み、かつ/又は少なくとも1つの芳香族部分を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、約25℃(すなわち、+/-2℃)で固体であり得る副生成物がモノマーの合成中に形成される。このような副生成物は、典型的には、液体モノマーから除去される。したがって、液体モノマーは、このような固体画分を実質的に含まない。しかしながら、液体モノマーは、液体モノマーに可溶性である(例えば、非結晶性の)固体反応副生成物を更に含み得ることが企図される。
【0158】
いくつかの実施形態では、硬化性成分は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル部分を有する少なくとも1つの環状アリルスルフィド部分を有する重合性化合物を含んでいてもよい。
【0159】
このような重合性化合物は、本明細書ではハイブリッドモノマー又はハイブリッド化合物と呼ばれる。環状アリルスルフィド部分は、環内に2つのヘテロ原子を有し、そのうちの1つが硫黄である、少なくとも1つの7員環又は8員環を含んでいてもよい。最も典型的には、ヘテロ原子の両方が硫黄であり、これは、任意選択で、SO、SO、又はS-S部分の一部として存在していてもよい。他の実施形態では、環は、硫黄原子に加えて、酸素又は窒素などの第2の異なるヘテロ原子を環内に含んでいてもよい。加えて、環状アリル部分は、複数の環構造を含んでいてもよく、すなわち、2つ以上の環状アリルスルフィド部分を有していてもよい。(メタ)アクリロイル部分は、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ(すなわち、(メタ)アクリレート部分)又は(メタ)アクリロイルアミノ(すなわち、(メタ)アクリルアミド部分)である。
【0160】
いくつかの実施形態では、低収縮性モノマーは、以下の式によって表されるものを含んでいてもよい。
【0161】
【化35】
【0162】
上記式では、各Xは、独立して、S、O、N、C(例えば、各Rが独立して、H又は有機基であるCH又はCRR)、SO、SO、N-アルキル、N-アシル、NH、N-アリール、カルボキシル、又はカルボニル基から選択され得るが、ただし、少なくとも1つのXがS、又はSを含む基である。好ましくは、各Xは、Sである。
【0163】
Yは、任意選択でヘテロ原子、カルボニル、又はアシルを含むアルキレン(例えば、メチレン、エチレンなど)のいずれかであるか、又は存在せず、それによって、環のサイズ、典型的には7~10員環を示すが、より大きな環も企図される。好ましくは、この環は、7員環又は8員環のいずれかであり、従って、Yは、それぞれ、存在しないか、又はメチレンのいずれかである。いくつかの実施形態では、Yは、存在しないか、又は任意選択でヘテロ原子、カルボニル、アシル、若しくはこれらの組み合わせを含む、C1~C3アルキレンのいずれかである。
【0164】
Zは、O、NH、N-アルキル(直鎖又は分枝鎖)、又はN-アリール(フェニル又は置換フェニル)である。
【0165】
R’基は、アルキレン(典型的には、2個以上の炭素原子を有する、すなわち、メチレンを除く)、任意選択でヘテロ原子を含むアルキレン(例えば、O、N、S、S-S、SO、SO)、アリーレン、脂環式、カルボニル、シロキサン、アミド(-CO-NH-)、アシル(-CO-O-)、ウレタン(-O-CO-NH-)、及び尿素(-NH-CO-NH-)基、並びにこれらの組み合わせから選択されるリンカーを表す。特定の実施形態では、R’は、アルキレン基、典型的には、メチレン又はより長い基を含み、これは、直鎖又は分岐鎖のいずれかであってもよく、非置換であるか、又はアリール、シクロアルキル、ハロゲン、ニトリル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アキルチオ、カルボニル、アシル、アシルオキシ、アミド、ウレタン基、尿素基、環状アリルスルフィド部分、又はこれらの組み合わせで置換され得る。
【0166】
R”は、H及びCHから選択され、「a」及び「b」は、独立して、1~3である。
【0167】
任意選択で、環状アリルスルフィド部分は、直鎖又は分枝鎖アルキル、アリール、シクロアルキル、ハロゲン、ニトリル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アキルチオ、カルボニル、アシル、アシルオキシ、アミド、ウレタン基、及び尿素基から選択される1つ以上の基で環上で更に置換され得る。いくつかの実施形態では、選択された置換基は、硬結反応を妨害しない。
【0168】
典型的な低収縮性モノマーは、環中に2個の硫黄原子を有し、アシル基を有する環の3位に直接結合したリンカー(すなわち、環-OC(O)-)を有する8員環状アリルスルフィド部分を含むことができる。典型的には、ハイブリッドモノマーの重量平均分子量(molecular weight、MW)は、約400~約900の範囲であり、いくつかの実施形態では、少なくとも250、より典型的には少なくとも500、最も典型的には少なくとも800である。
【0169】
少なくとも1つの(メタ)アクリロイル部分を有する少なくとも1つの環状アリルスルフィド部分を有する代表的な重合性化合物としては、以下のものが挙げられる。
【0170】
【化36】
【0171】
少なくとも1つの環状アリルスルフィド部分を有する重合性化合物の包含は、高い直径方向引張強度と組み合わせた低い体積収縮の相乗的組み合わせをもたらすことができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、硬化性成分は、以下の一般式:
【0173】
【化37】
(式中、各Xは、独立して、酸素原子(O)又は窒素原子(N)を表し、Y及びAは各々、独立して、有機基を表し、Rは、-C(O)C(CH)=CHを表し、かつ/又は(ii)q=0であり、Rは、-C(O)C(CH)=CHを表し、m=1~5であり、n=0~5であり、p及びqは、独立して、0又は1であり、R及びRは、各々独立して、H、-C(O)CH=CH、又は-C(O)C(CH)=CHを表す)を有する少なくとも1つのジ-、トリ-、及び/又はテトラ-(メタ)アクリロイル含有材料を含む低収縮性モノマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、p=0であるとき、Yは、-NHCHCH-を表さない。この材料は、ビスフェノールAの誘導体であるが、イソシアヌレートモノマー及び/又はトリシクロデカンモノマーなどの他の低体積収縮性モノマーが用いられたとき、歯科用組成物は、ビスフェノールAから誘導される(メタ)アクリレートモノマーを含まない。
【0174】
いくつかの実施形態では、多官能性低収縮モノマー(例えば、イソシアヌレート及びトリシクロデカン)は、約25℃で(例えば、高)粘性液体であってもよいが、流動性である。2010年7月2日に出願された欧州特許出願公開第10168240.9号に記載されているように、Haake RotoVisco RV1装置で測定することができる粘度は、典型的には、少なくとも300、又は400、又は500Pasであり、10,000Pas以下である。いくつかの実施形態では、粘度は、室温で5000又は2500Pas以下である。
【0175】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、(酸性官能基を有する又は有さない)多種多様な「他の」エチレン性不飽和モノマー、エポキシ官能性(メタ)アクリレート樹脂、ビニルエーテルなどを含んでいてもよい。
【0176】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、酸性官能基を有する1つ以上のエチレン性不飽和化合物を更に含んでいてもよい。例えば、このような化合物の包含は、自己接着性を示すことを意図した重合性歯科用組成物、すなわち、歯科用組成物の、歯科用構造物への接合を促進するために酸でエッチングする別のステップを必要としない重合性歯科用組成物に有用であり得る。驚くべきことに、特に自己接着性組成物に関して、本開示の環状イミドモノマーは、既知の付加-開裂剤よりも応力低減剤として効率的であることが見出された。より具体的には、本開示の環状イミドモノマーは、酸性モノマーと組み合わせて、既知の付加-開裂剤と比較して、用いられる重量当たりの応力低減率が著しく大きく、強い自己接着性を示し、適切なレベルの他の所望の特性を維持することが見出された。
【0177】
いくつかの実施形態では、酸性官能基は、炭素、硫黄、リン、又はホウ素の酸素酸(すなわち、酸素含有酸)を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和並びに酸及び/又は酸前駆体官能基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを含むことを意味する。酸前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロリン酸塩が挙げられる。酸性官能基は、カルボン酸官能基、リン酸官能基、ホスホン酸官能基、スルホン酸官能基、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、α,β-不飽和酸性化合物、例えば、グリセロールリン酸モノ(メタ)アクリレート、グリセロールリン酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)リン酸塩、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)リン酸塩、((メタ)アクリルオキシプロピル)リン酸塩、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)リン酸塩、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシリン酸塩、(メタ)アクリルオキシヘキシルリン酸塩、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)リン酸塩、(メタ)アクリルオキシオクチルリン酸塩、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)リン酸塩、(メタ)アクリルオキシデシルリン酸塩、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)リン酸塩、カプロラクトンメタクリレートリン酸塩、クエン酸ジ-又はトリ-メタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリカルボキシル-ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリレート化ポリホウ酸などが挙げられ、これらは成分として使用されてもよい。また、(メタ)アクリル酸、芳香族(メタ)アクリレート化酸(例えば、メタクリレート化トリメリット酸)、及びこれらの無水物などの不飽和カルボン酸のモノマー、オリゴマー、及びポリマーを使用することができる。
【0179】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、少なくとも1つのP-OH部分を有する酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことができる。このような組成物は、自己接着性であり、非水性である。例えば、このような組成物は、少なくとも1つの(メタ)アクリルオキシ基及び少なくとも1つの-O-P(O)(OH)基を含む第1の化合物であって、式中、x=1又は2であり、少なくとも1つの-O-P(O)(OH)基及び少なくとも1つの(メタ)アクリルオキシ基は、C~C炭化水素基によって一緒に連結されている、第1の化合物と、少なくとも1つの(メタ)アクリルオキシ基及び少なくとも1つの-O-P(O)(OH)を含む第2の化合物であって、式中、x=1又は2であり、少なくとも1つの-O-P(O)(OH)基及び少なくとも1つの(メタ)アクリルオキシ基は、C~C12炭化水素基によって一緒に連結されている、第2の化合物と、酸性官能基を有さないエチレン性不飽和化合物と、開始剤系と、充填剤と、を含むことができる。
【0180】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、溶媒(例えば、アルコール(例えば、プロパノール、エタノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、他の非水性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノン))、及び水を含んでいてもよい。
【0181】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、指示薬、染料、顔料、阻害剤、促進剤、粘度調整剤、湿潤剤、緩衝剤、ラジカル及びカチオン性安定剤(例えば、BHT)、並びに当業者に明らかであろう他の同様の原料などの添加剤を含有することができる。薬剤又は他の治療物質を重合性歯科用組成物に添加することができる。例としては、フッ化物源、ホワイトニング剤、虫歯予防剤(例えば、キシリトール)、カルシウム源、リン源、再石灰化剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、口臭清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫応答調整剤、チキソトロープ剤、ポリオール、抗炎症剤、抗菌剤(抗菌脂質成分に加えて)、抗真菌剤、口腔乾燥症を処置するための薬剤、減感剤などが挙げられ、これらは、歯科用組成物において使用されることが多いタイプである。また、上記添加剤のいずれかの組み合わせが使用されてもよい。任意の1つのこのような添加剤の選択及び量は、過度の実験なしに所望の結果を達成するために当業者によって選択され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される重合性/硬結可能な歯科用組成物中の成分の濃度は、歯科用組成物の(すなわち、未充填の)硬化性成分(又は重合性樹脂部分)に対して表すことができる。組成物が充填剤を更に含むいくつかの実施形態では、成分の濃度はまた、全(すなわち、充填された)組成物に対して表すことができる。組成物が充填剤を含まないとき、硬化性成分(又は重合性樹脂部分)は、全組成物と同じである。
【0183】
いくつかの実施形態では、未充填の重合性歯科用組成物は、未充填の重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%、0.1重量%~10重量%、0.1重量%~5重量%、又は0.5重量%~5重量%の、上述の環状イミドモノマーのいずれかを含む付加-開裂剤を含んでいてもよい。
【0184】
環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤に加えて、付加-開裂剤を含む実施形態では、未充填の重合性歯科用組成物は、未充填の重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%、0.1重量%~10重量%、0.1重量%~5重量%、又は0.5重量%~5重量%の、付加-開裂剤を含む非環状イミドモノマーを含んでいてもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、未充填の重合性歯科用組成物は、未充填の重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、10重量%~95重量%、15重量%~45重量%、又は25重量%~40重量%の、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマー(付加-開裂剤以外)を含んでいてもよい。
【0186】
いくつかの実施形態では、未充填の重合性歯科用組成物は、未充填の重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、10重量%~95重量%、10重量%~40重量%、又は15重量%~30重量%のエチレン性不飽和イソシアヌレートモノマー(複数可)を含んでいてもよい。
【0187】
いくつかの実施形態では、未充填の重合性歯科用組成物は、未充填の組成物の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%の、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、未充填の重合性歯科用組成物は、未充填の組成物の総重量に基づいて、最大80重量%、最大70重量%、又は最大60重量%の、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。
【0188】
硬化時に高い重合応力を有する材料は、歯構造に歪みを発生させる。このような応力の1つの臨床的結果は、修復物の寿命の減少であり得る。R.R.Cara et al,Particulate Science and Technology 28;191-206(2010)に記載されているように、複合材料に存在する応力は、接着界面を通って歯構造に伝わり、周囲の象牙質及びエナメル質に咬頭たわみ及び亀裂を生じさせ、手術後の過敏症を引き起こす可能性がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される(充填材及び歯冠などの修復物に有用な)(例えば、充填された)歯科用組成物は、典型的には、2.0、又は1.8、又は1.6、又は1.4、又は1.2、又は1.0、又は0.8、又は0.6マイクロメートル以下の応力たわみを示す。
【0189】
いくつかの実施形態では、付加-開裂剤(複数可)の包含は、応力たわみが2.0マイクロメートルよりも大きい場合であっても、応力の著しい低減がもたらされる。例えば、付加-開裂剤(複数可)の包含は、応力を約7マイクロメートルから約6マイクロメートル、又は約5マイクロメートル、又は約4マイクロメートル、又は約3マイクロメートルに低減し得る。
【0190】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、硬化性成分に加えて、1つ以上の充填剤を含んでいてもよい。充填剤は、歯科用修復組成物などに現在使用されている充填剤など、歯科用途に使用される組成物に組み込むのに好適な多種多様な材料のうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0191】
いくつかの実施形態では、充填剤は、無機材料であり得る。それはまた、重合性樹脂に不溶性であり、任意選択で無機充填剤で充填された架橋有機材料であり得る。充填剤は、一般に非毒性であり、口内での使用に好適である。充填剤は、放射線不透過性、放射線透過性、又は非放射線不透過性であり得る。歯科用途で使用される充填剤は、典型的には、本質的にセラミックである。
【0192】
非酸反応性無機充填剤粒子としては、石英(すなわち、シリカ)、サブミクロンシリカ、ジルコニア、サブミクロンジルコニア、及び米国特許第4,503,169号(Randklev)に記載されているタイプの非ガラス質微小粒子が挙げられる。
【0193】
また、充填剤は、酸反応性充填剤であってもよい。好適な酸反応性充填剤としては、金属酸化物、ガラス、及び金属塩が挙げられる。典型的な金属酸化物としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。典型的なガラスとしては、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、及びフルオロアルミノシリケート(fluoroaluminosilicate、「FAS」)ガラスが挙げられる。FASガラスは、典型的には、ガラスが硬結可能な組成物の成分と混合されたときに硬結した歯科用組成物が形成されるように、十分な溶出性カチオンを含有する。また、ガラスは、典型的には、硬結した組成物が抗う蝕特性を有するように、十分な溶出性フッ化物イオンを含有する。ガラスは、FASガラス製造分野の当業者によく知られている技術を使用して、フッ化物、アルミナ、及び他のガラス形成原料を含有する溶融物から作製することができる。FASガラスは、典型的には、他のセメント成分と都合よく混合することができ、得られた混合物が口内で使用されるときに良好に機能するように、十分に細かく分割された粒子の形態である。
【0194】
一般に、FASガラスの平均粒径(典型的には、直径)は、例えば、沈降粒径分析器を使用して測定した場合、12マイクロメートル以下、典型的には、10マイクロメートル以下、より典型的には5マイクロメートル以下である。好適なFASガラスは、当業者によく知られており、多種多様な商業的供給源から入手可能であり、多くは、VITREMER、VITREBOND、RELY X LUTING CEMENT、RELY X LUTING PLUS CEMENT、PHOTAC-FIL QUICK、KETAC-MOLAR及びKETAC-FIL PLUS(3M ESPE Dental Products社、ミネソタ州セントポール)、FUJI II LC及びFUJI IX(G-C Dental Industrial社、東京、日本)、並びにCHEMFIL Superior(Dentsply International社、ペンシルベニア州ヨーク)の商標名で市販されているものなどの、現在入手可能なグラスアイオノマーセメントに見出される。所望であれば、充填剤の混合物を使用することができる。
【0195】
他の好適な充填剤は、米国特許第6,387,981号(Zhang et al.)及び同第6,572,693号(Wu et al.)、並びにPCT国際公開第01/30305号(Zhang et al.)、米国特許第6,730,156号(Windisch et al.)、国際公開第01/30307号(Zhang et al.)、及び国際公開第03/063804号(Wu et al.)に開示されている。これらの参考文献に記載されている充填剤成分としては、ナノサイズのシリカ粒子、ナノサイズの金属酸化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填剤は、米国特許第7,090,721号(Craig et al.)、同第7,090,722号(Budd et al.)、及び同第7,156,911号、並びに米国特許第7,649,029号(Kolb et al.)にも記載されている。
【0196】
好適な有機充填剤粒子の例としては、充填された、又は未充填の粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシド、ポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。一般的に用いられる歯科用充填剤粒子は、石英、サブミクロンシリカ、及び米国特許第4,503,169号(Randklev)に記載されているタイプの非ガラス質微小粒子である。
【0197】
これらの充填剤の混合物、並びに有機材料及び無機材料から作製された組み合わせ充填剤も使用することができる。
【0198】
充填剤は、本質的に微粒子状又は繊維状のいずれかであり得る。微粒子状充填剤は、一般に、20:1以下、より一般的には10:1以下の長さ対幅の比又はアスペクト比を有するものとして定義されてもよい。繊維は、20:1よりも大きい、又はより一般的には100:1よりも大きいアスペクト比を有するものとして定義することができる。粒子の形状は、球形から楕円形、又はフレーク若しくはディスクなどのより平面的な範囲で変化する可能性がある。巨視的特性は、充填剤粒子の形状、特に形状の均一性に大きく依存する可能性がある。
【0199】
マイクロメートル径の粒子は、硬化後の摩耗特性を改善するのに非常に効果的である。対照的に、ナノスケール充填剤は、粘度及びチキソトロピー調整剤として一般的に使用される。それらの小径で、高い表面積、及び関連する水素結合のために、これらの材料は、凝集ネットワークに集合することが知られている。
【0200】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、約0.100マイクロメートル(すなわち、マイクロメートル)未満、又は0.075マイクロメートル未満の平均一次粒径を有するナノスケール微粒子状充填剤(すなわち、ナノ粒子を含む充填剤)を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「一次粒径」という用語は、非会合単一粒子のサイズを指す。平均一次粒径は、硬結した歯科用組成物の薄い試料を切断し、300,000倍の透過型電子顕微鏡写真を使用して約50~100個の粒子の粒子直径を測定し、平均を計算することによって決定することができる。充填剤は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)粒径分布を有することができる。ナノスケール微粒子状材料は、典型的には、少なくとも約2ナノメートル(nanometer、nm)、又は少なくとも約7nmの平均一次粒径を有する。いくつかの実施形態では、ナノスケール微粒子状材料は、約50nm以下、又は約20nm以下のサイズの平均一次粒径を有する。このような充填剤の平均表面積は、少なくとも約20平方メートル/グラム(m/g)、少なくとも約50m/g、又は少なくとも約100m/gであってもよい。
【0201】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、シリカナノ粒子を含む。シリカ粒子は、シリカの水性コロイド分散液(すなわち、ゾル又はアクアゾル)から作製され得る。コロイドシリカは、典型的には、シリカゾル中で約1~50重量パーセントの濃度である。使用することができるコロイドシリカゾルは、異なるコロイドサイズを有して市販されており、Surface & Colloid Science,Vol.6,ed.Matijevic,E.,Wiley Interscience,1973を参照のこと。充填剤を作製するのに使用されるいくつかのシリカゾルは、水性媒体中の非晶質シリカの分散液として供給され、ナトリウム濃度が低く、好適な酸と混合することによって酸性化することができるもの(例えば、E.I.Dupont de Nemours & Co.製のLudoxコロイダルシリカ)である。
【0202】
いくつかの実施形態では、ゾル中のシリカ粒子は、約5~100nm、10~50nm、又は12~40nmの平均粒子直径を有する。
【0203】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、ジルコニアナノ粒子を含む。
【0204】
好適なナノサイズのジルコニアナノ粒子は、米国特許第7,241,437号(Davidson et al.)に記載されているように、水熱技術を使用して調製することができる。
【0205】
いくつかの実施形態では、充填剤を重合性樹脂の屈折率に屈折率整合させる(0.02以内の屈折率)ために、より低い屈折率(例えば、シリカ)のナノ粒子が、高屈折率(例えば、ジルコニア)のナノ粒子と組み合わせて用いられる。
【0206】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ナノクラスタ、すなわち、硬結可能な樹脂中に分散されたときであっても、粒子を凝集させる比較的弱い分子間力によって会合された2つ以上の粒子の群の形態である。ナノクラスタは、非重(例えば、シリカ)粒子の実質的に非晶質のクラスタ、及びジルコニアなどの非晶質重金属酸化物(すなわち、28よりも大きい原子番号を有する)粒子を含むことができる。ナノクラスタの粒子は、約100nm未満の平均直径を有していてもよい。好適なナノクラスタ充填剤は、米国特許第6,730,156号(Windisch et al.)に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0207】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、充填剤と樹脂との間の結合を強化するために有機金属カップリング剤で処理されたナノ粒子及び/又はナノクラスタ表面を含んでいてもよい。有機金属カップリング剤は、アクリレート、メタクリレート、ビニル基などの反応性硬化基で官能化されていてもよい。
【0208】
好適な共重合性有機金属化合物は、以下の一般式を有し得る。CH=C(CHSi(OR)又はCH=C(CHC=OOASi(OR)であり、式中、mは、0又は1であり、Rは、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、Aは、二価の有機連結基であり、nは、1~3である。好適なカップリング剤としては、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0209】
いくつかの実施形態では、表面改質剤の組み合わせが有用であり得、表面改質剤のうちの少なくとも1つは、硬結可能な樹脂と共重合可能な官能基を有する。一般に硬結可能な樹脂と反応しない他の表面改質剤を、分散性又はレオロジー特性を高めるために含めることができる。このタイプのシランの例としては、例えば、アリールポリエーテル、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、又はアミノアルキル官能性シランが挙げられる。
【0210】
表面改質は、モノマーと混合する前又は混合した後のいずれかに行うことができる。樹脂に組み込む前に、オルガノシラン表面処理化合物をナノ粒子と組み合わせることが典型的である。表面改質剤の必要量は、粒径、粒子タイプ、改質剤分子量、及び改質剤タイプなどのいくつかの要因に依存する。一般に、ほぼ単層の改質剤を粒子の表面に付着させてもよい。
【0211】
充填剤を有する実施形態では、重合性歯科用組成物は、上述の充填剤(これらの任意の組み合わせを含む)のいずれかを、充填された重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、1重量%~95重量%、5~90重量%、30~90重量%、50~90重量%、又は55~85重量%の量で含んでいてもよい。歯科用修復材として有用ないくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、上述の充填剤(これらの任意の組み合わせを含む)のいずれかを、充填された重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、70重量%~90重量%又は72重量%~85重量%の量で含んでいてもよい。流動性接着剤として有用ないくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、上述の充填剤(これらの任意の組み合わせを含む)のいずれかを、充填された重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、55重量%~70重量%又は58重量%~65重量%の量で含んでいてもよい。
【0212】
いくつかの実施形態では、重合性歯科用組成物は、当該技術分野で知られているように、歯などの口腔表面を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、歯科用組成物を適用した後に硬化させることによって硬結することができる。例えば、硬化性歯科用組成物が歯科用充填材などの修復材として使用されるとき、本方法は一般に、重合性歯科用組成物を口腔表面(例えば、窩洞)に適用することと、組成物を硬化させることと、を含む。いくつかの実施形態では、歯科用接着剤は、本明細書に記載される重合性歯科用修復材料の適用前に適用されてもよい。歯科用接着剤はまた、典型的には、高充填された重合性歯科用修復組成物の硬化と同時に硬化させることによって硬結される。口腔表面を処置する方法は、歯科用物品を提供することと、歯科用物品を口腔(例えば、歯)表面に接着することと、を含んでいてもよい。
【0213】
他の実施形態では、重合性歯科用組成物は、適用前に歯科用物品として硬結することができる。例えば、歯冠などの歯科用物品は、本明細書に記載される硬結可能な歯科用組成物から予備成形されてもよい。歯科用複合物品(例えば、歯冠)は、本明細書に記載される重合性歯科用組成物から、組成物を鋳型と接触させて鋳造し、組成物を硬化させることによって作製することができる。代替的に、歯科用複合物品(例えば、歯冠)は、最初に組成物を硬化させ、ミルブランクを形成し、次いで組成物を所望の物品に機械的に削り出すことによって作製することができる。
【0214】
歯の表面を処置する別の方法は、本明細書に記載される重合性歯科用組成物を提供することであって、組成物は、第1の半完成形状を有する(部分的に硬結された)、硬結可能な自己支持性の可鍛性構造の形態である、提供することと、硬結可能な歯科用組成物を対象の口腔内の歯の表面上に配置することと、硬結可能な歯科用組成物の形状をカスタマイズすることと、硬結可能な歯科用組成物を硬結することと、を含む。カスタマイズは、患者の口腔内で、又は参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,674,850号(Karim et al.)に記載されているような患者の口腔外の模型上で行うことができる。
【0215】
目的及び利点は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらの実施例に列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するように解釈されるべきではない。別段の指示がない限り、全ての部分及びパーセンテージは、重量基準である。
【実施例
【0216】
特に明記しない限り、実施例及び明細書の残りの部分における全ての部分、パーセンテージ、比率などは、重量によるものである。別段の指示がない限り、全ての他の試薬は、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich Companyなどのファインケミカルベンダーから得られたか、又は入手可能であるか、又は既知の方法によって合成されてもよい。表1(以下の)では、実施例で使用した材料及びそれらの供給元を列挙する。
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
試験方法
応力試験方法(咬頭たわみ):硬化プロセス中の応力発生を測定するために、長方形の8×10×15mmアルミニウムブロックに、試験対象の歯科用組成物を収容するための4×4×8mmの溝を機械加工した。線形可変変位変換器(モデルGT1000、E309アナログ増幅器と共に使用し、両方ともRDP Electronics社、英国製)を図示のように位置付けて、歯科用組成物を室温で光硬化させたときの咬頭頂の変位を測定した。試験前に、アルミニウムブロックの溝を、Rocatec Plus Special Surface Coating Blasting Material(3M)を使用してサンドブラストし、RelyX Ceramic Primer(3M)で処理し、最後に歯科用接着剤、Scotchbond Universal(3M)で処理した。この溝は、表に示される実施例の混合物で完全に充填され、これは、およそ100mgの材料に等しかった。材料は、溝内の材料とほぼ接触して(<1mm)位置付けられたElipar S-10歯科用硬化光(3M)で1分間照射された。次いで、硬化光を消してから9分後に、咬頭の変位(咬頭たわみ)をマイクロメートル単位で測定した。咬頭たわみの値が小さいほど、実際の歯科修復手技中に周囲の基質(歯)にかかる重合収縮応力(polymerization shrinkage stress、PSS)が小さいことを示した。
【0220】
硬化深さ試験(Depth of Cure Test、DOC)方法:硬化深さは、10ミリメートルのステンレス鋼製の金型キャビティを複合材料で充填し、金型の上部及び下部をポリエステルフィルムのシートで覆い、シートをプレスして平らな組成物表面を提供し、充填された金型を白色背景表面上に配置し、溝内の材料とほぼ接触して(<1mm)位置付けられた歯科用硬化光(3M Dental Products Curing Light Elipar S-10)を使用して、指示通りに歯科用組成物を10又は20秒間照射し、ポリエステルフィルムを金型の両側から分離し、試料の下部(すなわち、歯科用硬化光で照射されなかった側)から材料を静かに除去し(こすり取ることによって)、金型内に残った材料の厚さを測定することによって決定した。報告された深さは、測定された硬化厚さ(ミリメートル単位)を2で割ったものである。
【0221】
バーコール硬度試験方法:未硬化の複合材料試料を、ポリエステル(polyester、PET)フィルムのシートとガラススライドとの間に挟まれた状態で、2.5mm又は4mm厚のTEFLON(登録商標)型内で、指示通りに10又は20秒間硬化させ、Elipar S-10、3M歯科用硬化光(3M社)で硬化させた。照射後、PETフィルムを除去し、圧子を備えたBarber-Coleman Impressor(ハンドヘルド型ポータブル硬度試験機、モデルGYZJ 934-1、Barber-Coleman社、工業機器部門、インディアナ州ローヴァスパーク)を使用して、金型の上部及び下部の両方における試料の硬度を測定した。上部及び下部のバーコール硬度値を、露光直後に測定した。
【0222】
直径方向引張強度(DTS):DTSを以下の手順で測定した。未硬化の複合材料試料を、長さ約30mm、内径4mmのガラス管に注入した。ガラス管を約1/2充填し、シリコーンゴム栓で蓋をした。ガラス管をおよそ3kg/cmの圧力で5分間軸方向に圧縮した。依然として加圧下にある間に、1000mW/cmを超える放射発散度を有する歯科用硬化光に露光することによって、試料を60秒間光硬化させた。ガラス管を回転させながら硬化させ、均等な露光を確保した。次いで、Buehler Iso Met 4000(Illinois Tool Works社、米国イリノイ州レイクブラフ)の鋸を使用して、ガラス管から約2mm厚のディスクを切断した。得られたディスクを、試験前に蒸留水中に37℃で約24時間保存した。測定は、10キロニュートンのロードセルを備えた適切な材料試験フレーム(例えば、Instron 5966、Instron社、マサチューセッツ州カントン)を使用して、1mm/分のクロスヘッド速度で行った。直径方向引張強度を、Craig’s Restorative Dental Materials,(Ronals L.Sakaguchi and John M.Powers.「Testing of Dental Materials and Biomechanic」、Craig’s Restorative Dental Materials,thirteenth ed.,[0286]Elsevier,2012,p.86)に記載されているように計算した。
【0223】
エナメル質又は象牙質に対する接着剤剪断結合強度の試験方法:実施例のエナメル質又は象牙質に対する接着剤剪断結合強度を以下の手順で評価した。
【0224】
歯の調製:軟組織を含まないウシの切歯を円形アクリルディスクに包埋した。包埋した歯は、使用前に冷蔵庫内の水中に保存した。接着試験の準備では、包埋した歯を研削して、研磨ホイールに装着された120グリットのサンドペーパーを使用して平坦なエナメル質又は象牙質表面を露出させた。歯の表面の更なる研削及び研磨を、研磨ホイール上の320グリットのサンドペーパーを使用して行った。研削プロセスの間、歯を水で連続的にすすいだ。研磨した歯を脱イオン水中に保存し、研磨後2時間以内に試験に使用した。使用前に、歯を36℃のオーブン内で室温(23℃)~36℃に加温した。
【0225】
歯の処置:直径およそ4.7mmの穴を有する厚さ2.5mmのテフロン(登録商標)製の金型を、金型の穴が接着剤で調製された歯の表面(エナメル質又は象牙質)の一部を露出させるように、包埋した歯に固定した。実施例の材料を、穴が完全に充填されるが過剰充填されないように穴に充填し、20秒間光硬化させて「ボタン」を形成し、これを歯に接着剤で取り付けた。
【0226】
接着剤結合強度試験:硬化した試験例の接着剤強度を、研磨した歯の表面を引っ張り方向に平行に向けて、INSTRON試験機(Instron社、マサチューセッツ州カントン)のジョーに固定されたホルダにアセンブリ(上述の)を装着することによって評価した。歯列矯正用ワイヤ(直径0.44mm)のループを、研磨した歯の表面に隣接する実施例のボタンの周りに配置した。歯列矯正用ワイヤの端部をINSTRON装置の引っ張りジョーに固定し、2mm/分のクロスヘッド速度で引っ張り、それによって、接着剤結合を剪断応力下に置いた。結合が破壊されたときの力をキログラム(kg)で記録し、この数値を、ボタンの既知の表面積を使用して単位面積当たりの力(MPaの単位)に変換した。エナメル質への接着力又は象牙質への接着力の各報告値は、4~5回の繰り返しの平均を表す。
【0227】
環状イミド付加-開裂モノマーの合成
一般的手順。全ての反応は、未精製の市販試薬を使用して、丸底フラスコ又はガラスジャー/バイアル中で実施された。
【0228】
計装。プロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトル及び炭素核磁気共鳴(13C NMR)スペクトルを、500MHzの分光計で記録した。
【0229】
メタクリル酸メチルオリゴマー混合物の蒸留
【0230】
【化38】
【0231】
米国特許第4,547,323号(Carlson,G.M.)の実施例1に記載されている手順に従って、メタクリル酸メチルオリゴマー混合物を調製した。混合物を、Moad,C.L.、Moad,G.、Rizzardo,E.、及びThang,S.H.Macromolecules,1996,29,7717-7726に記載されているように蒸留した。詳細は以下のとおりである。
【0232】
磁気撹拌棒を備えた1リットル(L)の丸底フラスコに、500グラム(g)のメタクリル酸メチルオリゴマー混合物を入れた。フラスコには、Vigreuxカラム、冷却器、分配アダプタ、及び4つの収集フラスコが取り付けられた。撹拌しながら、蒸留物を減圧下(0.25mmHg)に置いた。ガス放散(メタクリル酸メチルモノマーの除去)が大幅に低下するまで、オリゴマー混合物を減圧下、室温で撹拌した。次いで、蒸留ポットを油浴中で加熱還流して、オリゴマー混合物を減圧下で蒸留し、所望の二量体を得た。
【0233】
メタクリル酸メチル二量体の加水分解
【0234】
【化39】
【0235】
この二量体を、Hutson,L.、Krstina,J.、Moad,G.、Morrow,G.R.、Postma,A.、Rizzardo,E.、及びThang,S.H.Macromolecules,2004,37,4441-4452に記載されているように加水分解して二酸1を得た。詳細は以下のとおりである。
【0236】
二酸1.磁気撹拌棒を備えた1Lの丸底フラスコに、脱イオン(deionized、DI)水(302ミリリットル(mL))及び水酸化カリウム(90.46g、1612ミリモル(mmol))を入れた。混合物を均質になるまで撹拌した。メタクリル酸メチル二量体(120.0g、599.3mmol)を添加した。反応物に還流冷却器を取り付け、油浴中で90℃まで加熱した。17時間後、反応物を油浴から取り出し、室温まで冷却した。濃HClを使用して反応溶液をpH約0まで酸性化した。酸性化すると白色沈殿物を形成した。不均一混合物を真空濾過し、白色固体をDI水で(50~100mLで2回)迅速に洗浄した。次いで、白色固体をDI水(220mL)から再結晶させた。再結晶化した固体を、ブフナー漏斗を使用する真空濾過を介して収集した。次いで、収集した固体をDI水で(50mLで2回)迅速に洗浄した。固体を高真空下で更に乾燥させて、微細な白色固体として二酸1(86.67g、503.4mmol、84%)を得た。
【0237】
環状イミドモノマーの調製
【0238】
【化40】
【0239】
無水物2。磁気撹拌棒を備えた1Lの丸底フラスコに、二酸1(50.00g、290.4mmol)、シクロヘキサン(500mL)、及び無水酢酸(73.30mL、79.16g、775.4mmol)を入れた。反応フラスコにDean-Stark trap及び還流冷却器を取り付けた。撹拌しながら、反応物を油浴中で加熱還流した。溶液を2時間還流し、その間におよそ200mLの無色液体をDean-Stark trapから除去した。2時間後、反応物を油浴から取り出し、室温まで冷却した。冷却すると、白色固体が溶液から沈殿した。沈殿物を、ブフナー漏斗を使用する真空濾過を介して収集し、シクロヘキサン(75mL)で迅速に洗浄した。次いで、白色固体をシクロヘキサン(400mL)から再結晶させた。再結晶化した固体を、ブフナー漏斗を使用する真空濾過を介して収集し、シクロヘキサン(2×75mL)で洗浄した。固体を高真空下で更に乾燥させて、無水物2(34.83g、225.9mmol、78%)を白色結晶性固体として得た。
【0240】
メタクリレート官能化付加-開裂環状イミドモノマー(cyclic imide monomer、CIM)CIM-2、CIM-4、及びCIM-6を、対応するカルボン酸官能化環状イミド及びグリシジルメタクリレートから調製した(表A)(反応スキーム6)。酸性官能イミドCIM-1、CIM-3、及びCIM-5(表A)を、対応するアミノ酸と、メタクリレート二量体から調製した環状無水物との縮合を通して調製した(反応スキーム5)。
【0241】
メタクリレート官能化付加-開裂環状イミドモノマー(CIM)CIM-8及びCIM-10並びに酸性官能イミドCIM-7、CIM-9、及びCIM-11も、ヒドロキシル官能性アミン、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオールを利用して、反応スキーム6と同様に調製した。いくつかの化合物については、ヒドロキシル基を2-イソシアナトエチルメタクリレートと反応させた。
【0242】
合成された付加-開裂環状イミドモノマーの構造を表Aに示す。
【0243】
CIM-1。磁気撹拌棒を備えたおよそ40mLの琥珀色のガラス瓶に、無水物2(15.00g、97.30mmol)及びβ-アラニン(8.668g、97.30mmol)を入れた。2つの固体試薬を木製アプリケータを使用してよく混合した。反応物をテフロン(登録商標)加工のプラスチックキャップで密封した。撹拌しながら、混合物を油浴中で125℃まで加熱した。4時間後、反応物を油浴から取り出し、キャップを取り外し、反応混合物を大気に開放して室温まで冷却した。粗生成物混合物を、溶離液としてヘキサンと酢酸エチルの50:50の混合物を使用して、シリカゲルのプラグ(幅約4cm×高さ10cm)を通して2回濾過することによって精製して、CIM-1(13.835g、61.42mmol、63%)を白色固体として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0244】
CIM-2。磁気撹拌棒を備えたおよそ8mLの琥珀色のガラスバイアルに、CIM-1(2.00g、8.879mmol)及びグリシジルメタクリレート(1.262g、8.878mmol)、並びにトリフェニルアンチモン(0.0188g、0.0532mmol)を入れた。反応物をテフロン(登録商標)加工のプラスチックキャップで密封した。撹拌しながら、混合物を油浴中で100℃まで加熱した。18時間後、トリフェニルホスフィン(0.0046g、0.0178mmol)を添加した。反応物を100℃で撹拌し続けた。更に9時間後、反応物をサンプリングし、H NMR分析では、異性体の混合物として所望の生成物と一致した。反応物を室温まで冷却して、CIM-2(3.224g、8.775mmol、99%)を無色透明の粘性油状物として得た。
【0245】
CIM-3。磁気撹拌棒を備えたおよそ80mLの琥珀色のガラス瓶に、無水物2(15.00g、97.30mmol)及び6-アミノカプロン酸(12.764g、97.30mmol)を入れた。2つの固体試薬を木製アプリケータを使用してよく混合した。反応物をテフロン(登録商標)加工のプラスチックキャップで密封した。撹拌しながら、混合物を油浴中で125℃まで加熱した。4時間後、反応物を油浴から取り出し、キャップを取り外し、反応混合物を大気に開放して室温まで冷却した。粗生成物混合物を、第1の濾過のための溶離液としてヘキサンと酢酸エチルの50:50の混合物、及び第2の濾過のための溶離液として75:25のヘキサンと酢酸エチルを使用して、シリカゲルのプラグ(幅約4cm×高さ10cm)を通して2回濾過することによって精製して、CIM-3(14.606g、54.64mmol、56%)を白色固体として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0246】
CIM-4。磁気撹拌棒を備えたおよそ20mLのガラスバイアルに、CIM-3(2.22g、8.305mmol)及びグリシジルメタクリレート(1.180g、8.301mmol)、並びにトリフェニルアンチモン(0.0176g、0.0498mmol)を入れた。反応物をテフロン(登録商標)加工のプラスチックキャップで密封した。撹拌しながら、混合物を油浴中で100℃まで加熱した。18時間後、トリフェニルホスフィン(0.0044g、0.0166mmol)を添加した。反応物を100℃で撹拌し続けた。更に9時間後、反応物を室温まで冷却し、サンプリングした。H NMR分析では、少量の未反応エポキシドが明らかになった。反応物を100℃まで再加熱した。6時間後、反応物を室温まで冷却し、サンプリングした。H NMR分析では、少量の未反応エポキシドが明らかになった。反応物を100℃まで再加熱した。23時間後、反応物を室温まで冷却し、サンプリングした。H NMR分析では、異性体の混合物として所望の生成物と一致した。この反応により、CIM-4(3.359g、8.203mmol、99%)を淡黄色の粘性油状物として得た。
【0247】
CIM-5。磁気撹拌棒を備えたおよそ80mLのガラス瓶に、無水物2(10.00g、64.87mmol)及び12-アミノドデカン酸(13.968g、64.87mmol)を入れた。2つの固体試薬を木製アプリケータを使用してよく混合した。次いで、反応容器にねじ込み式真空アダプタで蓋をし、大気に開放したままにした。撹拌しながら、混合物を油浴中で125℃まで加熱した。50分後、反応物を真空下(約0.3mmHg)に置いた。4時間後、反応物を油浴から取り出し、キャップを取り外し、反応混合物を大気に開放して室温まで冷却した。粗生成物混合物をジクロロメタン(100mL)に溶解し、次いでブフナー漏斗を介して真空濾過して不溶性物質を除去した。濾過したジクロロメタン溶液を真空中で濃縮した。残渣をヘキサンと酢酸エチルの60:40の混合物に再溶解し、ヘキサンと酢酸エチルの60:40の混合物を溶離液として使用して、シリカゲルのプラグ(幅約4cm×高さ10cm)を通して濾過することにより精製した。次いで、濾過した溶液を真空中で濃縮した。シリカゲル濾過を更に2回繰り返して、CIM-5(11.910g、33.89mmol、52%)を無色透明の粘性油状物として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0248】
CIM-6。磁気撹拌棒を備えたおよそ20mLのガラスバイアルに、CIM-5(5.000g、14.23mmol)及びグリシジルメタクリレート(2.02g、14.21mmol)、並びにトリフェニルアンチモン(0.0301g、0.0852mmol)を入れた。反応物をテフロン(登録商標)加工のプラスチックキャップで密封した。撹拌しながら、混合物を油浴中で100℃まで加熱した。24時間後、トリフェニルホスフィン(0.0075g、0.0286mmol)を添加した。反応物を100℃で撹拌し続けた。更に18時間後、反応物をサンプリングし、H NMR分析では、異性体の混合物として所望の生成物と一致した。反応物を室温まで冷却して、CIM-6(7.012g、14.20mmol、100%)を粘性黄色油状物として得た。
【0249】
CIM-7。テフロン(登録商標)で覆われたねじ山を有し、磁気撹拌棒を備えたおよそ240mLの琥珀色のガラス瓶に、無水物2(25.00g、162.2mmol)を入れ、次いで室温の水浴中に置いた。次に、3-アミノ-1-プロパノール(12.3mL、12.18g、162.2mmol)を5分間かけて添加した。次いで、瓶に、真空を適用するように適合させた蓋を取り付けた。瓶を125℃の油浴中に置き、撹拌した。125℃で30分後、反応物を真空下に置いた。更に4時間後、反応物を窒素で再充填し、室温まで冷却して、透明な黄色の粘性液体を得た。反応物を大気に開放し、ジクロロメタンと酢酸エチルの90:10の混合物に溶解した。粗生成物混合物を、ジクロロメタンと酢酸エチルの90:10の混合物を溶離液として使用して、シリカゲルのプラグ(幅約7.5cm×高さ15cm)を通して2回濾過することによって精製した。溶離液を真空中で濃縮して、無色油状物を得た。粗生成物混合物を、第1の濾過のための溶離液としてジクロロメタンと酢酸エチルの90:10の混合物、及び溶離液としてジクロロメタンと酢酸エチルの95:5~90:10の混合物の勾配を使用して、シリカゲルのプラグ(幅約7.5cm×高さ15cm)を通して更に2回濾過することによって更に精製して、CIM-7(11.13g、52.68mmol、32%)を無色油状物として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0250】
CIM-8。磁気撹拌棒を備えたおよそ30mLのガラスバイアルに、CIM-7(3.00g、14.2mmol)及び2-イソシアナトエチルメタクリレート(2.01mL、2.20g、14.2mmol)、並びにピペットチップからの1滴のジラウリン酸ジブチルスズを入れた。反応物をテフロン(登録商標)加工のプラスチックキャップで密封した。撹拌しながら、混合物を油浴中で50℃まで加熱した。48時間後、反応物をサンプリングし、H NMR分析では、所望の生成物と一致した。反応物を室温まで冷却して、CIM-8(4.946g、14.11mmol、99%)を無色透明の粘性油状物として得た。
【0251】
CIM-9。テフロン(登録商標)で覆われたねじ山を有し、磁気撹拌棒を備えたおよそ240mLの琥珀色のガラス瓶に、無水物2(25.00g、162.2mmol)を入れ、次いで室温の水浴中に置いた。次に、5-アミノ-1-ペンタノール(17.5mL、16.7g、162.2mmol)を10分間かけて添加した。瓶を撹拌しながら125℃の油浴中に置き、大気に開放した。30分後、瓶に真空を適用するように適合させた蓋を取り付け、反応物を真空下に置いた。更に3.5時間後、反応物を室温まで冷却し、大気に開放して、透明な黄色の粘着性物質を得た。反応物を大気に開放し、ジクロロメタンと酢酸エチルの90:10の混合物に溶解した。粗生成物混合物を、溶離液としてジクロロメタンと酢酸エチルの90:10の混合物を使用して、シリカゲルのプラグ(幅約2.5cm×高さ12.5cm)を通して4回濾過することによって精製した。最後のシリカゲルプラグ濾過の後、溶離液を真空中濃縮して、無色の粘性油状物を得た。この油状物を、18ゲージ針を使用して材料に空気を吹き込むことによって更に乾燥させて、CIM-9(11.91g、49.78mmol、31%)を無色透明の粘性液体として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0252】
CIM-10。磁気撹拌棒を備えたおよそ30mLのガラスバイアルに、CIM-9(5.00g、20.9mmol)及び2-イソシアナトエチルメタクリレート(2.95mL、3.24g、20.9mmol)、並びにピペットチップからの1滴のジラウリン酸ジブチルスズを入れた。反応物をテフロン(登録商標)加工のプラスチックキャップで密封した。撹拌しながら、混合物を油浴中で50℃まで加熱した。168時間後、反応物をサンプリングし、H NMR分析では、所望の生成物と一致した。反応物を室温まで冷却して、CIM-10(8.199g、20.78mmol、99%)を無色透明の粘性液体として得た。
【0253】
CIM-11。テフロン(登録商標)で覆われたねじ山を有し、磁気撹拌棒を備えたおよそ240mLのガラス瓶に、無水物2(25.00g、162.2mmol)及び(+/-)3-アミノ-1,2-プロパンジオール(14.78g、162.2mmol)を入れた。次いで、瓶に、真空を適用するように適合された蓋を取り付けた。瓶を125℃の油浴中に置き、撹拌した。125℃で15分後、反応物を活性真空下に置いた。活性真空を遮断し、反応物を静的真空下に5分間放置し、次いで活性真空下に短時間戻した。この手順を更に2回繰り返し、次いで、反応物を静的真空下で撹拌しながら125℃で4時間放置した。次いで、反応物を窒素で再充填し、室温まで冷却して、黄色/オレンジ色のガラス状固体を得た。粗反応生成物を、30分間の超音波処理を用いてジクロロメタンに溶解した。次いで、粗生成物混合物を、溶離液としてジクロロメタンとメタノールの97:3の混合物を使用して、シリカゲルのプラグ(幅約12.5cm×高さ7.5cm)を通して濾過した。溶離液を真空中で濃縮して、無色の粘性液体を得た。粗生成物混合物を、溶離液としてジクロロメタンとメタノールの95:05の混合物を使用して、シリカゲルのプラグ(幅約12.5cm×高さ7.5cm)を通してもう一度濾過して、CIM-11(11.87g、mmol、32%)を無色油状物として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0254】
AFM1合成:
【0255】
【化41】
【0256】
AFM1。磁気撹拌棒を備えたおよそ250mLの琥珀色の瓶に、グリシジルメタクリレート(23.0mL、24.8g、174mmol)及びトリフェニルアンチモン(0.369g、1.04mmol)を入れた。反応物をプラスチックキャップで覆い、2本の16ゲージ針をキャップに貫通させて空気を反応物中に入れた。撹拌しながら、混合物を油浴中で100℃まで加熱した。二酸1(15.0g、87.1mmol)を1.5時間かけて少量ずつ反応物に添加した。21時間後、トリフェニルホスフィン(0.091g、0.35mmol)を添加した。反応物を100℃で撹拌し続けた。更に6.5時間後、反応物をサンプリングし、1H NMR分析では、異性体の混合物として所望の生成物と一致し、グリシジルメタクリレートの消費を示した。反応物を室温まで冷却して、AFM1を透明な非常に淡黄色の粘性材料として得た。
【0257】
【化42】
【0258】
無水物2。磁気撹拌棒を備えた1Lの丸底フラスコに、二酸1(50.00g、290.4mmol)、シクロヘキサン(500mL)、及び無水酢酸(73.30mL、79.16g、775.4mmol)を入れた。反応フラスコにDean-Stark trap及び還流冷却器を取り付けた。撹拌しながら、反応物を油浴中で加熱還流した。溶液を2時間還流し、その間におよそ200mLの無色液体をDean-Stark trapから除去した。2時間後、反応物を油浴から取り出し、室温まで冷却した。冷却すると、白色固体が溶液から沈殿した。沈殿物を、ブフナー漏斗を使用する真空濾過を介して収集し、シクロヘキサン(75mL)で迅速に洗浄した。次いで、白色固体をシクロヘキサン(400mL)から再結晶させた。再結晶化した固体を、ブフナー漏斗を使用する真空濾過を介して収集し、シクロヘキサン(2×75mL)で洗浄した。固体を減圧下で乾燥させて、無水物2(34.83g、225.9mmol、78%)を白色結晶性固体として得た。
【0259】
ビス環状イミド付加-開裂モノマーの合成
BCIMモノマーの調製
環状イミド末端間の鎖長が異なるビス-環状イミドモノマー(BCIM)BCIM-1、BCIM-2、及びBCIM-3を調製した(表A)。ビス-イミドモノマーは、無水酢酸を使用して二酸1を無水物2に環化することによって調製した。次いで、環状無水物2を適切なジアミンと縮合させて、ビス-環状イミドモノマーを得た(反応スキーム7)。合成された付加-開裂ビス-環状イミドモノマーの構造を表Aに示す。
【0260】
BCIM-1。磁気撹拌棒を備えたおよそ40mLのガラス瓶に、無水物2(34.52g、223.92mmol)及び1,6-ジアミノヘキサン(13.02g、111.96mmol)を入れた。2つの固体試薬を木製アプリケータを使用してよく混合した。次いで、反応容器にねじ込み式真空アダプタで蓋をし、窒素雰囲気下に置いた。撹拌しながら、混合物を油浴中で125℃まで加熱した。20分後、反応物を真空下(約0.3mmHg)に置いた。更に3時間後、反応物を油浴から取り出し、キャップを取り外し、反応混合物を大気に開放して室温まで冷却した。粗生成物混合物をジクロロメタン(75mL)に溶解し、溶離液としてヘキサンと酢酸エチルの80:20の混合物を使用して、シリカゲルのプラグ(幅約4cm×高さ10cm)を通して濾過した。濾過した溶液を真空中で濃縮した。シリカゲルの濾過を更に5回繰り返した。次いで、生成物を高真空下で乾燥させて、BCIM-1(8.3594g、21.52mmol、19.2%)を白色固体として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0261】
BCIM-2。磁気撹拌棒を備えたおよそ40mLのガラス瓶に、無水物2(10.00g、64.87mmol)及び1,8-ジアミノオクタン(4.679g、32.43mmol)を入れた。2つの固体試薬を木製アプリケータを使用してよく混合した。次いで、反応容器にねじ込み式真空アダプタで蓋をした。フラスコを高真空ラインに接続したが、大気圧で放置した。撹拌しながら、混合物を油浴中で125℃まで加熱した。35分後、反応物を真空下(約0.3mmHg)に置いた。更に4時間後、反応物を油浴から取り出し、キャップを取り外し、反応混合物を大気に開放して室温まで冷却した。粗生成物混合物をジクロロメタン(75mL)に溶解し、次いでブフナー漏斗を介して真空濾過して不溶性物質を除去した。濾過したジクロロメタン溶液を真空中で濃縮した。残渣をジクロロメタンに再溶解し、溶離液としてジクロロメタンを使用して、シリカゲルのプラグ(幅約4cm×高さ10cm)を通して濾過することによって精製した。次いで、濾過した溶液を真空中で濃縮した。シリカゲルの濾過を更に2回繰り返した。次いで、生成物を高真空下で乾燥させ、無色透明の粘性液体に空気を吹き込むことによって更に乾燥させた。生成物を静置すると固化して、BCIM-2(2.6390g、6.335mmol、19.5%)を白色固体として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0262】
BCIM-3。磁気撹拌棒を備えたおよそ40mLのガラス瓶に、無水物2(10.00g、64.87mmol)及び1,12-ジアミノドデカン(6.4987g、32.44mmol)を入れた。2つの固体試薬を木製アプリケータを使用してよく混合した。次いで、反応容器にねじ込み式真空アダプタで蓋をし、窒素雰囲気下に置いた。撹拌しながら、混合物を油浴中で125℃まで加熱した。50分後、反応物を真空下(約0.3mmHg)に置いた。更に5時間後、反応物を油浴から取り出し、キャップを取り外し、反応混合物を大気に開放して室温まで冷却した。粗生成物混合物をジクロロメタン(75mL)に溶解し、次いでブフナー漏斗を介して真空濾過して不溶性物質を除去した。濾過したジクロロメタン溶液を真空中で濃縮した。残渣をヘキサンと酢酸エチルの80:20の混合物に再溶解し、溶離液としてヘキサンと酢酸エチルの80:20の混合物を使用して、シリカゲルのプラグ(幅約4cm×高さ10cm)を通して濾過することにより精製した。濾過した溶液を真空中で濃縮した。残渣をジクロロメタンに再溶解し、溶離液としてジクロロメタンを使用して、シリカゲルのプラグ(幅約4cm×高さ10cm)を通して濾過することによって精製した。次いで、濾過した溶液を真空中で濃縮した。溶離液としてジクロロメタンを使用して、シリカゲルの濾過をもう一度繰り返した。次いで、生成物を高真空下で乾燥させ、無色透明の粘性液体に空気を吹き込むことによって更に乾燥させた。BCIM-3(3.6170g、7.652mmol、23.6%)を無色透明の粘性液体として得た。H NMR分析では、所望の生成物と一致した。
【0263】
ヒドロキシビス-環状イミド-1(HBCIM-1)の調製-反応スキーム8
磁気撹拌棒を備えた琥珀色のガラス瓶に、3,3-ジメチル-5-メチレン-テトラヒドロピラン-2,6-ジオン(無水物2)及び1,3-ジアミノ-2-プロパノール(無水物2の0.5当量)を入れる。入れた2つの成分を、木製アプリケータを使用してよく混合する。次いで、瓶をテフロン(登録商標)加工のプラスチックキャップで密封する。撹拌しながら、混合物を油浴中で125℃まで加熱する。4時間後、反応物を油浴から取り出し、キャップを取り外し、反応混合物を大気に開放して室温まで冷却する。次いで、粗生成物混合物を、溶離液としてヘキサンと酢酸エチルの50:50の混合物を使用して、シリカゲルのプラグ(幅約4センチメートル×高さ10センチメートル)を通して2回濾過することによって精製して、所望のヒドロキシビス-環状イミド生成物HBCIM-1を得る。
【0264】
メタクリレート化ヒドロキシビス-環状イミド-1(MA-BCIM-1)の調製-反応スキーム9
ガラスジャーに、HBCIM-1及び1当量のIEMを入れる。これらの成分を木製アプリケータを使用して手で混合する。次いで、BHT(ジャーの全内容物に対して400百万分率)及びジラウリン酸ジブチルスズ触媒(dibutyltin dilaurate、DBTDL、0.5重量%)をジャーに添加し、続いて手で混合する。ジャーを室温で30分間放置し、10分毎に手で混合する。次いで、ジャーを60℃のオーブンに1時間置き、10~15分毎に成分を手で混合して、所望の生成物MA-BCIM-1を得る。
【0265】
一般的な歯科用実施例の製剤の調製:
全ての成分を組み合わせ、固体が完全に溶解するまで(約90分)(50℃で)加熱することによって、樹脂試料を作製した。ストック樹脂を使用するその後の歯科用ペーストの実施例は、原材料を40グラムのDACカップに添加し、続いてスピードミキサ(モデルDAC150 FVZ SpeedMixer、FlackTek社、サウスカロライナ州ランドラムによって製造される)において、材料が滑らかで均質な組成物によって示されるように組み合わせられるまで、2500rpmで30秒間隔で混合することによって調製した。AFM1のみを含み、CIM又はBCIMの量を含まない実施例は、比較例である。
【0266】
【表5】
【0267】
【表6】
【0268】
【表7】
【0269】
【表8】
【0270】
【表9】
【0271】
【表10】
n.m.=測定されず
【0272】
【表11】
n.m.=測定されず
【0273】
【表12】
【0274】
【表13】
【0275】
【表14】
【0276】
【表15】
【0277】
【表16】
【0278】
【表17】
【0279】
【表18】
【0280】
【表19】
【0281】
【表20】
【0282】
【表21】
【0283】
【表22】
【0284】
特許証のための上記出願における全ての引用された参考文献、特許、及び特許出願は、一貫した様式で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献の一部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の説明における情報が優先されるものとする。当業者が特許請求された開示を実施することを可能にするために与えられた前述の説明は、特許請求の範囲及びその全ての均等物によって定義される、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0284
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0284】
特許証のための上記出願における全ての引用された参考文献、特許、及び特許出願は、一貫した様式で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献の一部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の説明における情報が優先されるものとする。当業者が特許請求された開示を実施することを可能にするために与えられた前述の説明は、特許請求の範囲及びその全ての均等物によって定義される、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
以下の項目[態様1]~[態様35]に本発明の実施形態の例を列記する。
[態様1]
歯科用組成物であって、
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む少なくとも1つのモノマーと、
α,β-不飽和カルボニルを含む少なくとも1つの環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤と、を含む、歯科用組成物。
[態様2]
前記環状イミドモノマーは、複素環中にイミド基及び前記α,β-不飽和カルボニルを含み、前記環は、少なくとも6個の共有結合した原子を含む、態様1に記載の歯科用組成物。
[態様3]
前記環状イミドモノマーは、γ-第四級炭素原子を更に含む、態様2に記載の歯科用組成物。
[態様4]
前記環状イミドモノマーは、構造:
【化43】
を有し、
式中、Lは、共有結合又は有機連結基であり、
Yは、アルキル、アリール、ヒドロキシル、カルボン酸、又はエチレン性不飽和重合性基であり、
及びR は、独立して、アルキル基である、態様1~3のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様5]
及びR は、前記環状イミドモノマーが重合中に開環するような置換基である、態様4に記載の歯科用組成物。
[態様6]
及びR は、独立して、C1~C18アルキル基である、態様4に記載の歯科用組成物。
[態様7]
Lは、(ヘテロ)アルキレン又は(ヘテロ)アリーレンである、態様3~6のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様8]
Yは、カルボン酸基又は(メタ)アクリレート基である、態様3~7のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様9]
Lは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、態様3~8のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様10]
前記環状イミドモノマーは、少なくとも2つの環状イミド基を含む、態様1又は2に記載の歯科用組成物。
[態様11]
前記環状イミドモノマーは、構造:
【化44】
を有し、
式中、Rは、有機連結基であり、
及びR は、独立してアルキル基である、態様10に記載の歯科用組成物。
[態様12]
及びR は、前記環状イミドモノマーが重合中に開環するような置換基である、態様11に記載の歯科用組成物。
[態様13]
Rは、(ヘテロ)アルキレン又は(ヘテロ)アリーレンであり、任意選択で少なくとも1つのペンダントエチレン性不飽和重合性基を含む、態様11又は12に記載の歯科用組成物。
[態様14]
少なくとも1つのエチレン性不飽和末端基と、α,β-不飽和カルボニルを含む骨格単位と、を含む、第2の付加-開裂剤を更に含む、態様1~13のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様15]
前記第2の付加-開裂剤は、少なくとも2つのエチレン性不飽和末端基を含む、態様14に記載の歯科用組成物。
[態様16]
前記第2の付加-開裂剤の前記エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリレート基である、態様15に記載の歯科用組成物。
[態様17]
前記第2の付加-開裂剤は、式:
【化45】
を有し、
式中、R 、R 、及びR は、各々独立して、Z -Q-、(ヘテロ)アルキル基又は(ヘテロ)アリール基であるが、ただし、R 、R 、及びR のうちの少なくとも1つは、Z -Q-であり、
Qは、m+1の原子価を有する連結基であり、
Zは、エチレン性不飽和重合性基であり、
mは、1~6であり、
各X は、独立して、-O-又は-NR -であり、式中、R は、H又はC ~C アルキルであり、
nは、0又は1である、態様14に記載の歯科用組成物。
[態様18]
前記モノマーの前記エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリレート基である、態様1~17のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様19]
前記モノマーは、少なくとも1.50の屈折率を有する芳香族モノマーである、態様1~18のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様20]
前記モノマーは、約600~1500g/モルの範囲の分子量(Mw)を有する、態様1~19のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様21]
前記モノマーは、低体積収縮性モノマーである、態様1~20のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様22]
前記モノマーは、イソシアヌレートモノマー、トリシクロデカンモノマー、又はこれらの混合物である、態様1~21のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様23]
前記歯科用組成物は、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(ethoxylated bisphenol A dimethacrylate、BisEMA6)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate、HEMA)、ビスフェノールAジグリシジルジメタクリレート(bisphenol A diglycidyl dimethacrylate、bisGMA)、ウレタンジメタクリレート(urethane dimethacrylate、UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethlyene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、グリセロールジメタクリレート(glycerol dimethacrylate、GDMA)、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(neopentylglycol dimethacrylate、NPGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethyleneglycol dimethacrylate、PEGDMMA)、及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含む、態様1~22のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様24]
前記歯科用組成物は、酸性官能基を有する少なくとも1つのモノマーを含む、態様1~23のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様25]
前記酸性官能基は、カルボン酸官能基、リン酸官能基、ホスホン酸官能基、又はスルホン酸官能基を含む、態様24に記載の歯科用組成物。
[態様26]
未充填の前記歯科用組成物は、未充填の前記歯科用組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の前記環状イミドモノマーを含む、態様1~25のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様27]
未充填の前記歯科用組成物は、未充填の重合性歯科用組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の、付加-開裂剤を含む非環状イミドモノマーを含む、態様1~26のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様28]
未充填の前記歯科用組成物は、未充填の前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~60重量%の、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含む、態様1~27のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様29]
硬化後に、硬化した前記歯科用組成物は、2.0以下の応力たわみを示す、態様1~28のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様30]
無機酸化物充填剤を更に含む、態様1~29のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様31]
前記無機酸化物充填剤は、シリカ、ジルコニア、又はこれらの混合物を含む、態様30に記載の歯科用組成物。
[態様32]
前記無機酸化物充填剤は、ナノ粒子を含む、態様30又は31に記載の歯科用組成物。
[態様33]
前記無機ナノ粒子は、ナノクラスタの形態である、態様32に記載の歯科用組成物。
[態様34]
歯の表面を処置する方法であって、前記方法は、
態様1~33のいずれか一態様に記載の歯科用組成物を提供することと、
前記歯科用組成物を対象の口腔内の歯の表面上に配置することと、
前記歯科用組成物を硬結することと、を含む、方法。
[態様35]
組成物であって、
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む少なくとも1つのモノマーと、
α,β-不飽和カルボニルを含む少なくとも1つの環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤と、を含む、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用組成物であって、
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む少なくとも1つのモノマーと、
α,β-不飽和カルボニルを含む少なくとも1つの環状イミドモノマーを含む付加-開裂剤と、を含み、
前記環状イミドモノマーは、構造:
【化1】
を有し、
式中、Lは、共有結合又は有機連結基であり、
Yは、アルキル、アリール、ヒドロキシル、カルボン酸、又はエチレン性不飽和重合性基であり、
及びR は、独立して、アルキル基であるか、又は
前記環状イミドモノマーは、少なくとも2つの環状イミド基を含み、
前記環状イミドモノマーは、構造:
【化2】
を有し、
式中、Rは、有機連結基であり、
及びR は、独立してアルキル基である、歯科用組成物。
【請求項2】
前記環状イミドモノマーは、複素環中にイミド基及び前記α,β-不飽和カルボニルを含み、前記環は、少なくとも6個の共有結合した原子を含む、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
前記環状イミドモノマーは、γ-第四級炭素原子を更に含む、請求項2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
前記第2の付加-開裂剤は、式:
【化3】
を有し、
式中、R、R、及びRは、各々独立して、Z-Q-、(ヘテロ)アルキル基又は(ヘテロ)アリール基であるが、ただし、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、Z-Q-であり、
Qは、m+1の原子価を有する連結基であり、
Zは、エチレン性不飽和重合性基であり、
mは、1~6であり、
各Xは、独立して、-O-又は-NR-であり、式中、Rは、H又はC~Cアルキルであり、
nは、0又は1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
前記歯科用組成物は、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(ethoxylated bisphenol A dimethacrylate、BisEMA6)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate、HEMA)、ビスフェノールAジグリシジルジメタクリレート(bisphenol A diglycidyl dimethacrylate、bisGMA)、ウレタンジメタクリレート(urethane dimethacrylate、UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethlyene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、グリセロールジメタクリレート(glycerol dimethacrylate、GDMA)、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(neopentylglycol dimethacrylate、NPGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethyleneglycol dimethacrylate、PEGDMMA)、及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【国際調査報告】