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特表2024-546667核酸、当該核酸を含む組成物及び複合体並びに調製方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】核酸、当該核酸を含む組成物及び複合体並びに調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241219BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20241219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61K48/00
A61K47/54
A61P43/00 105
A61P25/28
A61P21/02
A61P25/14
A61P25/16
A61P1/16
A61P3/06
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533904
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 CN2022139942
(87)【国際公開番号】W WO2023116607
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111575800.2
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517452453
【氏名又は名称】スーチョウ リボ ライフ サイエンス カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU RIBO LIFE SCIENCE CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リャン、ツーツァイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ホンイェン
(72)【発明者】
【氏名】カオ、シャン
(72)【発明者】
【氏名】ティン、シュエフォン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC41
4C076DD63
4C076DD66
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZA02
4C084ZA16
4C084ZA75
4C084ZA94
4C084ZC01
4C084ZC33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA75
4C086ZA94
4C086ZC01
4C086ZC33
(57)【要約】
本開示は、RPTOR遺伝子発現レベルを抑制し、mTORC1活性を調節するsiRNA、当該siRNAを含む医薬組成物及び複合体を提供する。前記siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖とを含み、前記siRNAにおけるヌクレオチドは、それぞれ独立して修飾又は未修飾のヌクレオチドであり、前記センス鎖はヌクレオチド配列Iを含み、前記ヌクレオチド配列Iと配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記アンチセンス鎖はヌクレオチド配列IIを含み、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号2に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下である。本開示により提供されるsiRNA、医薬組成物及び複合体は、mTORC1阻害剤としてmTORC1の活性化による関連疾患を効果的に治療し、オートファジー誘導剤としてオートファジー関連疾患又は症状を治療することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス鎖と、アンチセンス鎖とを含むsiRNAであって、前記siRNAにおけるヌクレオチドは、それぞれ独立して修飾又は未修飾のヌクレオチドであり、前記センス鎖はヌクレオチド配列Iを含み、アンチセンス鎖はヌクレオチド配列IIを含み、前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIは、少なくとも一部で逆相補的に二本鎖領域を形成し、前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIとは、i)~iii)に示される配列から選択される1組であり、
i)前記ヌクレオチド配列Iと配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号2に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-CUGCCAUGGAGUAUCUGAZa1-3’(配列番号1)、
5’-Za2UCAGAUACUCCAUGGCAG-3’(配列番号2)
ただし、Za1はAであり、Za2はUであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZa1に対応するヌクレオチドZa3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZa2に対応するヌクレオチドZa4が含まれ、前記Za4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、或いは、
ii)前記ヌクレオチド配列Iと配列番号123に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号124に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-ACAACAUCAAGUACUACGZb1-3’(配列番号123)、
5’-Zb2CGUAGUACUUGAUGUUGU-3’(配列番号124)
ただし、Zb1はAであり、Zb2はUであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZb1に対応するヌクレオチドZb3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZb2に対応するヌクレオチドZb4が含まれ、前記Zb4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、或いは、
iii)前記ヌクレオチド配列Iと配列番号245に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号246に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-CGACUACUACAUCUCCGUZc1-3’(配列番号245)、
5’-Zc2ACGGAGAUGUAGUAGUCG-3’(配列番号246)
ただし、Zc1はGであり、Zc2はCであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZc1に対応するヌクレオチドZc3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZc2に対応するヌクレオチドZc4が含まれ、前記Zc4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドである、siRNA。
【請求項2】
前記ヌクレオチド配列Iと配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下であり、及び/又は前記ヌクレオチド配列IIと配列番号2に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下であり、
或いは、前記ヌクレオチド配列Iと配列番号123に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下であり、及び/又は前記ヌクレオチド配列IIと配列番号124に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下であり、
或いは、前記ヌクレオチド配列Iと配列番号245に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下であり、及び/又は前記ヌクレオチド配列IIと配列番号246に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下である、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項3】
前記ヌクレオチド配列IIと配列番号2に示されるヌクレオチド配列との間のヌクレオチド差異は、Za4の位置での差異を含み、Za4がA、C又はGから選択され、
或いは、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号124に示されるヌクレオチド配列との間のヌクレオチド差異は、Zb4の位置での差異を含み、Zb4がA、C又はGから選択され、
或いは、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号246に示されるヌクレオチド配列との間のヌクレオチド差異は、Zc4の位置での差異を含み、Zc4がA、U又はGから選択される、請求項1又は2に記載のsiRNA。
【請求項4】
a3は、Za4と相補的なヌクレオチドであり、或いは、Zb3は、Zb4と相補的なヌクレオチドであり、或いは、Zc3は、Zc4と相補的なヌクレオチドである、請求項1~3のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項5】
前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIとは、基本的に逆相補的、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、前記基本的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に3つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、前記実質的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に1つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、完全に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間にミスマッチがないことを指す、請求項1~4のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項6】
前記センス鎖とアンチセンス鎖とは、長さが同じか又は異なり、前記センス鎖の長さが19~23ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖の長さが19~26ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列Iは、配列番号3に示されるヌクレオチド配列であり、前記ヌクレオチド配列IIは、配列番号4に示されるヌクレオチド配列であり、
5’-CUGCCAUGGAGUAUCUGAZa3-3’(配列番号3)、
5’-Za4UCAGAUACUCCAUGGCAG-3’(配列番号4)
ただし、Za3は、A、U、G又はCから選択され、Za4は、Za3と相補的なヌクレオチドであり、
或いは、前記ヌクレオチド配列Iは、配列番号125に示されるヌクレオチド配列であり、前記ヌクレオチド配列IIは、配列番号126に示されるヌクレオチド配列であり、
5’-ACAACAUCAAGUACUACGZb3-3’(配列番号125)、
5’-Zb4CGUAGUACUUGAUGUUGU-3’(配列番号126)
ただし、Zb3は、A、U、G又はCから選択され、Zb4は、Zb3と相補的なヌクレオチドであり、
或いは、前記ヌクレオチド配列Iは、配列番号247に示されるヌクレオチド配列であり、ヌクレオチド配列IIは、配列番号248に示されるヌクレオチド配列であり、
5’-CGACUACUACAUCUCCGUZc3-3’(配列番号247)、
5’-Zc4ACGGAGAUGUAGUAGUCG-3’(配列番号248)
ただし、Zc3は、A、U、G又はCから選択され、Zc4は、Zc3と相補的なヌクレオチドである、請求項1~5のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項7】
a3はAであり、Za4はUであり、或いは、Zb3はAであり、Zb4はUであり、或いは、Zc3はGであり、Zc4はCである、請求項6に記載のsiRNA。
【請求項8】
前記センス鎖は、ヌクレオチド配列IIIを更に含み、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列IVを更に含み、ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、長さがそれぞれ独立して1~4ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列IIIがヌクレオチド配列Iの5’末端に結合され、ヌクレオチド配列IVがヌクレオチド配列IIの3’末端に結合され、前記ヌクレオチド配列IIIと前記ヌクレオチド配列IVとは、長さが等しく、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、前記実質的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に1つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、完全に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間にミスマッチがないことを指す、請求項1~7のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項9】
前記ヌクレオチド配列Iと配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも1ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列IIIの塩基がAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも2ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がCAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも3ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がUCAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも4ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がGUCAであり、
或いは、前記ヌクレオチド配列Iと配列番号123に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも1ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列IIIの塩基がAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも2ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がCAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも3ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がUCAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも4ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がAUCAであり、
或いは、前記ヌクレオチド配列Iと配列番号245に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも1ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列IIIの塩基がAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも2ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がAAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも3ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がCAAであり、又は、前記ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも4ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がGCAAである、請求項8に記載のsiRNA。
【請求項10】
前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列Vを更に含み、ヌクレオチド配列Vは、長さが1~3ヌクレオチドであり、前記アンチセンス鎖の3’末端に結合され、アンチセンス鎖の3’突出端を構成し、及び/又は、前記センス鎖は、ヌクレオチド配列VIを更に含み、ヌクレオチド配列VIは、長さが1~3ヌクレオチドであり、前記センス鎖の3’末端に結合され、センス鎖の3’突出端を構成する、請求項1~9のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項11】
前記ヌクレオチド配列V及び/又はヌクレオチド配列VIは、長さが2ヌクレオチドである、請求項10に記載のsiRNA。
【請求項12】
前記ヌクレオチド配列V及び/又はVIは、連続した2つのチミンデオキシリボヌクレオチド又は連続した2つのウラシルリボヌクレオチドであり、或いは、前記ヌクレオチド配列Vが標的mRNAの対応する位置のヌクレオチドと相補的であり、及び/又は前記ヌクレオチド配列VIが標的mRNAの対応する位置のヌクレオチドと同じである、請求項10又は11に記載のsiRNA。
【請求項13】
前記siRNAのセンス鎖は、配列番号5に示されるヌクレオチドを含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号6に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-CUGCCAUGGAGUAUCUGAZa3-3’(配列番号5)、
5’-Za4UCAGAUACUCCAUGGCAGUG-3’(配列番号6)
ただし、前記Za4は、アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、Za3は、A、U、G又はCから選択され、Za4は、Za3と相補的なヌクレオチドであり、
或いは、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号7に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号8に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-CACUGCCAUGGAGUAUCUGAZa3-3’(配列番号7)、
5’-Za4UCAGAUACUCCAUGGCAGUGAC-3’(配列番号8)
ただし、前記Za4は、アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、Za3は、A、U、G又はCから選択され、Za4は、Za3と相補的なヌクレオチドであり、
或いは、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号127に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号128に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-ACAACAUCAAGUACUACGZb3-3’(配列番号127)、
5’-Zb4CGUAGUACUUGAUGUUGUUG-3’(配列番号128)
或いは、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号129に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号130に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-CAACAACAUCAAGUACUACGZb3-3’(配列番号129)、
5’-Zb4CGUAGUACUUGAUGUUGUUGAU-3’(配列番号130)
ただし、前記Zb4は、アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、Zb3は、A、U、G又はCから選択され、Zb4は、Zb3と相補的なヌクレオチドであり、
或いは、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号249に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号250に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-CGACUACUACAUCUCCGUZc3-3’(配列番号249)、
5’-Zc4ACGGAGAUGUAGUAGUCGUU-3’(配列番号250)
或いは、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号251に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号252に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-AACGACUACUACAUCUCCGUZc3-3’(配列番号251)、
5’-Zc4ACGGAGAUGUAGUAGUCGUUGC-3’(配列番号252)
ただし、前記Zc4は、アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、Zc3は、A、U、G又はCから選択され、Zc4は、Zc3と相補的なヌクレオチドである、請求項1~12のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項14】
前記siRNAは、siRPTORa1、siRPTORa2、siRPTORa3、siRPTORb1、siRPTORb2、siRPTORb3、siRPTORc1、siRPTORc2及びsiRPTORc3のうちの1つである請求項1~13のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項15】
前記センス鎖と前記アンチセンス鎖における少なくとも1つのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであり、及び/又は少なくとも1つのリン酸エステル基が修飾基を有するリン酸エステル基である、請求項1~14のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項16】
前記センス鎖と前記アンチセンス鎖における各ヌクレオチドは、独立してフルオロ修飾ヌクレオチド又は非フルオロ修飾ヌクレオチドである、請求項1~15のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項17】
前記フルオロ修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチド配列Iとヌクレオチド配列IIに位置し、5’末端から3’末端に向かって、前記ヌクレオチド配列Iの少なくとも第7、8、9位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、前記ヌクレオチド配列IIの少なくとも第2、6、14、16位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドである、請求項16に記載のsiRNA。
【請求項18】
前記非フルオロ修飾ヌクレオチドは、2’-O-メトキシ修飾又は2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドである、請求項16又は17に記載のsiRNA。
【請求項19】
5’末端から3’末端に向かって、前記ヌクレオチド配列IIの第3~6位のヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドである、請求項18に記載のsiRNA。
【請求項20】
前記ヌクレオチド配列IIの第3位又は第5位のヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドである、請求項19に記載のsiRNA。
【請求項21】
5’末端から3’末端に向かって、前記ヌクレオチド配列IIの第3~9位のヌクレオチドのうちの2つ以下のヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドである、請求項19に記載のsiRNA。
【請求項22】
前記センス鎖と前記アンチセンス鎖における他のヌクレオチドは、2’-O-メトキシ修飾ヌクレオチドである、請求項17~21のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項23】
前記siRNAは、siRPTORa1-M1、siRPTORa1-M2、siRPTORa1-M3、siRPTORa2-M1、siRPTORa2-M2、siRPTORa2-M3、siRPTORa3-M1、siRPTORa3-M2、siSRPTORa3-M3、siRPTORb1-M1、siRPTORb1-M2、siRPTORb1-M3、siRPTORb2-M1、siRPTORb2-M2、siRPTORb2-M3、siRPTORb3-M1、siRPTORb3-M2、siSRPTORb3-M3、siRPTORc1-M1、siRPTORc1-M2、siRPTORc1-M3、siRPTORc2-M1、siRPTORc2-M2、siRPTORc2-M3、siRPTORc3-M1、siRPTORc3-M2及びsiSRPTORc3-M3のうちの1つである、請求項1~22のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項24】
前記修飾基を有するリン酸エステル基は、リン酸エステル基におけるリン酸ジエステル結合の少なくとも1つの酸素原子が硫黄原子で置換されたチオリン酸エステル基である、請求項15に記載のsiRNA。
【請求項25】
前記siRNAは、siRPTORa1-M1S、siRPTORa1-M1X、siRPTORa1-M2S、siRPTORa1-M2X、siRPTORa1-M3S、siRPTORa1-M3X、siRPTORa2-M1S、siRPTORa2-M1X、siRPTORa2-M2S、siRPTORa2-M2X、siRPTORa2-M3S、siRPTORa2-M3X、siRPTORa3-M1S、siRPTORa3-M1X、siRPTORa3-M2S、siRPTORa3-M2X、siRPTORa3-M3S、siRPTORa3-M3X、siRPTORa1-T1S、siRPTORa1-T2S、siRPTORb1-M1S、siRPTORb1-M1X、siRPTORb1-M2S、siRPTORb1-M2X、siRPTORb1-M3S、siRPTORb1-M3X、siRPTORb2-M1S、siRPTORb2-M1X、siRPTORb2-M2S、siRPTORb2-M2X、siRPTORb2-M3S、siRPTORb2-M3X、siRPTORb3-M1S、siRPTORb3-M1X、siRPTORb3-M2S、siRPTORb3-M2X、siRPTORb3-M3S、siRPTORb3-M3X、siRPTORb1-T1S、siRPTORb1-T2S、siRPTORc1-M1S、siRPTORc1-M1X、siRPTORc1-M2S、siRPTORc1-M2X、siRPTORc1-M3S、siRPTORc1-M3X、siRPTORc2-M1S、siRPTORc2-M1X、siRPTORc2-M2S、siRPTORc2-M2X、siRPTORc2-M3S、siRPTORc2-M3X、siRPTORc3-M1S、siRPTORc3-M1X、siRPTORc3-M2S、siRPTORc3-M2X、siRPTORc3-M3S、siRPTORc3-M3X、siRPTORc1-T1S及びsiRPTORc1-T2Sのうちの1つである、請求項1~22のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項26】
前記アンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチドは、5’-リン酸ヌクレオチド又は5’-リン酸アナログ修飾ヌクレオチドである、請求項15に記載のsiRNA。
【請求項27】
前記siRNAは、siRPTORa1-M1P1、siRPTORa1-M2P1、siRPTORa1-M3P1、siRPTORa2-M1P1、siRPTORa2-M2P1、siRPTORa2-M3P1、siRPTORa3-M1P1、siRPTORa3-M2P1、siRPTORa3-M3P1、siRPTORa1-M1SP1、siRPTORa1-M2SP1、siRPTORa1-M3SP1、siRPTORa2-M1SP1、siRPTORa2-M2SP1、siRPTORa2-M3SP1、siRPTORa3-M1SP1、siRPTORa3-M2SP1、siRPTORa3-M3SP1、siRPTORa1-M1XP1、siRPTORa1-M2XP1、siRPTORa1-M3XP1、siRPTORa2-M1XP1、siRPTORa2-M2XP1、siRPTORa2-M3XP1、siRPTORa3-M1XP1、siRPTORa3-M2XP1、siRPTORa3-M3XP1、siRPTORb1-M1P1、siRPTORb1-M2P1、siRPTORb1-M3P1、siRPTORb2-M1P1、siRPTORb2-M2P1、siRPTORb2-M3P1、siRPTORb3-M1P1、siRPTORb3-M2P1、siRPTORb3-M3P1、siRPTORb1-M1SP1、siRPTORb1-M2SP1、siRPTORb1-M3SP1、siRPTORb2-M1SP1、siRPTORb2-M2SP1、siRPTORb2-M3SP1、siRPTORb3-M1SP1、siRPTORb3-M2SP1、siRPTORb3-M3SP1、siRPTORb1-M1XP1、siRPTORb1-M2XP1、siRPTORb1-M3XP1、siRPTORb2-M1XP1、siRPTORb2-M2XP1、siRPTORb2-M3XP1、siRPTORb3-M1XP1、siRPTORb3-M2XP1、siRPTORb3-M3XP1、siRPTORc1-M1P1、siRPTORc1-M2P1、siRPTORc1-M3P1、siRPTORc2-M1P1、siRPTORc2-M2P1、siRPTORc2-M3P1、siRPTORc3-M1P1、siRPTORc3-M2P1、siRPTORc3-M3P1、siRPTORc1-M1SP1、siRPTORc1-M2SP1、siRPTORc1-M3SP1、siRPTORc2-M1SP1、siRPTORc2-M2SP1、siRPTORc2-M3SP1、siRPTORc3-M1SP1、siRPTORc3-M2SP1、siRPTORc3-M3SP1、siRPTORc1-M1XP1、siRPTORc1-M2XP1、siRPTORc1-M3XP1、siRPTORc2-M1XP1、siRPTORc2-M2XP1、siRPTORc2-M3XP1、siRPTORc3-M1XP1、siRPTORc3-M2XP1及びsiRPTORc3-M3XP1のうちの1つである、請求項26に記載のsiRNA。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載のsiRNA及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項29】
前記siRNAと薬学的に許容可能な担体との重量比は、1:(1~500)である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記siRNAと薬学的に許容可能な担体との重量比は、1:(1~50)である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
siRNA複合体であって、請求項1~27のいずれか一項に記載のsiRNAと、当該siRNAに複合して結合される複合基とを含み、前記複合基は、薬学的に許容可能な少なくとも1つの標的基及び/又は送達補助基を含み、好ましくは、前記複合基は、リンカーを更に含み、前記リンカー及び/又は前記標的基又は前記送達補助基は、順に結合され、好ましくは、各前記標的基は、細胞表面受容体に結合できるリガンドから選択され、及び/又は各送達補助基は、送達目的器官又は組織における前記siRNA複合体の生体適合性を向上させることができる基から選択される、siRNA複合体。
【請求項32】
前記siRNA複合体は、式(301)に示される構造を有し、ただし、Nuは、siRPTORa2-M1S、siRPTORb2-M1S、siRPTORc2-M1S、siRPTORc1-T1S及びsiRPTORc1-T2Sのうちの1つに対応する配列を有し、前記複合基は、前記NuにおけるsiRNAセンス鎖の3’末端のヌクレオチドのリボース基の3’位に結合され、前記siRNA複合体は、ナトリウム塩形態である、請求項31に記載のsiRNA複合体。
【請求項33】
請求項1~27のいずれか一項に記載のsiRNA、及び/又は、請求項28~30のいずれか一項に記載の医薬組成物、及び/又は、請求項31又は32に記載のsiRNA複合体の、細胞におけるRPTOR遺伝子発現を抑制する薬物の調製における使用。
【請求項34】
請求項1~27のいずれか一項に記載のsiRNA、及び/又は、請求項28~30のいずれか一項に記載の医薬組成物、及び/又は、請求項31又は32に記載のsiRNA複合体の、RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状を治療する薬物の調製における使用。
【請求項35】
前記RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状は、mTORC1の活性化による疾患、及び細胞のオートファジー機能異常に関連する疾患である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状は、神経変性疾患又は非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、トゥレット症候群及びパーキンソン病のうちの1つ以上であり、好ましくは、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状の治療及び/又は予防方法であって、請求項1~27のいずれか一項に記載のsiRNA、及び/又は、請求項28~30のいずれか一項に記載の医薬組成物、及び/又は、請求項31又は32に記載のsiRNA複合体を有効量で、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項39】
細胞におけるRPTOR遺伝子発現の抑制方法であって、請求項1~27のいずれか一項に記載のsiRNA、及び/又は、請求項28~30のいずれか一項に記載の医薬組成物、及び/又は、請求項31又は32に記載のsiRNA複合体を有効量で前記細胞と接触させることを含む、方法。
【請求項40】
請求項1~27のいずれか一項に記載のsiRNA、及び/又は、請求項28~30のいずれか一項に記載の医薬組成物、及び/又は、請求項31又は32に記載のsiRNA複合体を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、mTORC1の活性を抑制できる核酸、当該核酸を含む医薬組成物及びsiRNA複合体に関する。本開示は、更に、これらの核酸、医薬組成物及びsiRNA複合体の調製方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患は、神経細胞の死亡及びグリア細胞のバランスを含む神経細胞の構造と機能の進行性の喪失であり、認知症などの認知障害を引き起こす。パーキンソン病(Parkinson’s disease、PD)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease、AD)、前頭側頭型認知症(Frontotemporal dementia)、ハンチントン病(Huntington disease、HD)、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS、通称ALS)、脊髄性筋萎縮症(Spinal muscular atrophy、SMA)などが含まれる。AD及びPDは、主に中高年に発生し、人口の高齢化に伴い、AD及びPDの発症が益々増加し、HD、ALS、SMAなどは、各年齢層で発生する可能性がある。
【0003】
現在、神経変性疾患の薬物治療は主に西洋薬に基づいているが、薬物治療には長期間の投薬が必要であり、明らかな副作用があり、中枢神経系、消化器系、呼吸器系などに影響を与えやすく、内分泌かく乱、気分の変化などを引き起こすこともある。
【0004】
哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin、mTOR)シグナル伝達経路は、タンパク質合成、細胞成長、増殖などを調節するシグナル伝達経路であり、細胞において、mTORC1とmTORC2の2つの異なる複合体が存在する。mTORC1は、RPTOR、Rasタンパク質脳組織相同類似体(Ras homolog enriched in brain、RHEB)、DEPドメイン含有mTOR相互作用タンパク質(DEP domain-containing mTOR-interacting protein、DEPTOR)、哺乳類致死性SEC13タンパク質8(mammalian lethal with SEC13 protein 8、mLST 8)、及び40kDaのプロリンリッチAkT基質(Proline rich AKT substrate of 40kDa、PRAS40)からなる複合体であり、当該複合体は、オートファジー調節の重要な負調節因子である。これまでの研究により、アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease、AD)患者及び動物モデルにおいてmTORC1が活性化され、ミトコンドリアオートファジーが抑制され、これがAD患者の老人斑、神経原線維変化及び認知機能低下の主な原因であることが明らかになっている。文献では、RPTORを抑制することによりmTORC1活性を抑制することができ、それにより細胞オートファジー及びミトコンドリアオートファジーを促進し、神経変性疾患患者の脳内のミスフォールドタンパク質を減少させることが報告されている。
【0005】
本分野では、RPTOR遺伝子発現レベルを調節する新薬を開発することにより、mTORC1活性を調節し、更にmTORC1活性化及び異常なオートファジー機能に関連する疾患又は症状、特に神経変性疾患を調節して治療する必要性が大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の発明者は、本開示により提供される以下のsiRNA及びその修飾配列が細胞におけるRPTOR遺伝子発現を特異的に抑制することができ、本開示のsiRNAを含む医薬組成物及びsiRNA複合体が本開示のsiRNAを標的組織及び/又は細胞に効果的に送達することができ、それにより神経変性疾患、特にアルツハイマー病の治療又は予防において高い薬物形成の可能性を示すことを意外にも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本開示は、RPTOR遺伝子発現を抑制できるsiRNAを提供し、当該siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖とを含み、前記siRNAにおけるヌクレオチドは、それぞれ独立して修飾又は未修飾のヌクレオチドであり、前記センス鎖はヌクレオチド配列Iを含み、前記アンチセンス鎖はヌクレオチド配列IIを含み、前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIとは、少なくとも一部で逆相補的に二本鎖領域を形成し、前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIとは、i)~iii)に示される配列から選択される1組であり、
i)前記ヌクレオチド配列Iと配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号2に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-CUGCCAUGGAGUAUCUGAZa1-3’(配列番号1)、
5’-Za2UCAGAUACUCCAUGGCAG-3’(配列番号2)
ただし、Za1はAであり、Za2はUであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZa1に対応するヌクレオチドZa3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZa2に対応するヌクレオチドZa4が含まれ、前記Za4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、或いは、
ii)前記ヌクレオチド配列Iと配列番号123に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号124に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-ACAACAUCAAGUACUACGZb1-3’(配列番号123)、
5’-Zb2CGUAGUACUUGAUGUUGU-3’(配列番号124)
ただし、Zb1はAであり、Zb2はUであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZb1に対応するヌクレオチドZb3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZb2に対応するヌクレオチドZb4が含まれ、前記Zb4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、或いは、
iii)前記ヌクレオチド配列Iと配列番号245に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号246に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-CGACUACUACAUCUCCGUZc1-3’(配列番号245)、
5’-Zc2ACGGAGAUGUAGUAGUCG-3’(配列番号246)
ただし、Zc1はGであり、Zc2はCであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZc1に対応するヌクレオチドZc3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZc2に対応するヌクレオチドZc4が含まれ、前記Zc4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドである。
【0008】
別の態様において、本開示は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本開示のsiRNA及び薬学的に許容可能な担体を含む。
【0009】
更に別の態様において、本開示は、siRNA複合体を提供し、前記siRNA複合体は、本開示により提供されるsiRNAと、当該siRNAに複合して結合される複合基とを含む。
【0010】
更に別の態様において、本開示は、本開示のsiRNA、及び/又は医薬組成物、及び/又はsiRNA複合体の、RPTOR機能調節に関連する疾患を治療及び/又は予防する薬物の調製における使用を提供する。
【0011】
更に別の態様において、本開示は、RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状、例えば、神経変性疾患又は非アルコール性脂肪性肝炎に関連する疾患又は症状、特にアルツハイマー病の治療方法を提供し、前記方法は、本開示のsiRNA、及び/又は医薬組成物、及び/又はsiRNA複合体を有効量で、それを必要とする被験体に投与することを含む。
【0012】
更に別の態様において、本開示は、細胞におけるRPTOR遺伝子発現の抑制方法を提供し、当該方法は、本開示のsiRNA、及び/又は医薬組成物、及び/又はsiRNA複合体を有効量で前記細胞と接触させることを含む。
【0013】
また、本開示は、キットを更に提供し、前記キットは、本開示のsiRNA、及び/又は医薬組成物、及び/又はsiRNA複合体を含む。
【0014】
[引用による組み込み]
本明細書で言及される全ての出版物、特許及び特許出願は、各々の出版物、特許又は特許出願が特別にかつ個別に引用により本明細書に組み込まれるのと同じ程度に、引用により本明細書に組み込まれる。
【発明の効果】
【0015】
本開示により提供されるsiRNA、医薬組成物及びsiRNA複合体は、安定性に優れ、RPTOR mRNA抑制活性が高く、オフターゲット効果が低減され、及び/又はRPTOR機能調節に関連する疾患又は症状を顕著に治療及び軽減することができる。
【0016】
例えば、本開示により提供されるsiRNA、医薬組成物又はsiRNA複合体は、体外細胞実験において優れた標的遺伝子発現抑制活性を示す。例えば、本開示のsiRNAは、体外HepG2ヒト肝癌細胞において、0.5nMの低濃度で、少なくとも40.5%のRPTOR mRNA抑制率を示し、5nMの濃度で、少なくとも68.3%のRPTOR mRNA抑制率を示し、50nMの濃度で、少なくとも71.1%、ひいては86.8%のRPTOR mRNA抑制率を示し、優れたRPTOR遺伝子発現抑制効果を示す。また、異なる長さ及び修飾スキームを有する本開示のsiRNAは、いずれも高い抑制率を有する。
【0017】
また、例えば、本開示により提供されるsiRNA、医薬組成物又はsiRNA複合体は、体内における安定性及び標的mRNA抑制活性がより高い。例えば、3mg/kgの濃度で、本開示の異なる修飾スキームのsiRNA複合体は、C57BL/6jマウスの体内において51.3%又は52.9%のRPTOR mRNA発現抑制率を示し、優れたRPTOR mRNA抑制活性を示す。
【0018】
このように、本開示により提供されるsiRNA、医薬組成物及びsiRNA複合体は、RPTOR遺伝子の発現を抑制し、mTORC1の活性化による疾患及び細胞のオートファジー機能異常に関連する疾患を効果的に治療することができ、応用において明るい見通しを有している。
【0019】
本開示の他の特徴と利点については、後述する発明を実施するための形態部分において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】50nM濃度の本開示のsiRNA及び参照siRNAをトランスフェクションした後の、体外HepG2ヒト肝癌細胞におけるRPTOR mRNAの相対的発現レベルを示すヒストグラムである。
図2】異なる濃度の本開示のsiRNAをトランスフェクションした後の、体外HepG2ヒト肝癌細胞におけるRPTOR mRNAの相対的発現レベルを示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで説明される発明を実施するための形態は、本開示を説明し解釈するためのものに過ぎず、本開示を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0022】
<定義>
本開示において、RPTOR mRNAとは、Genbank登録番号NM_020761.3に示される配列を指す。更に、特に説明がない限り、本開示において用いられる用語「標的遺伝子」とは、上記RPTOR mRNAをコードする遺伝子を指し、用語「標的mRNA」とは、上記RPTOR mRNAを指す。
【0023】
文脈において、特に説明がない限り、大文字C、G、U、Aは、ヌクレオチドの塩基配列を表し、小文字mは、当該文字mの左側に隣接する1つのヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであることを表し、小文字fは、当該文字fの左側に隣接する1つのヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであることを表し、小文字sは、当該文字sの左右に隣接する2つのヌクレオチド間がチオリン酸エステル基により結合されていることを表し、P1は、当該P1の右側に隣接する1つのヌクレオチドが5’-リン酸ヌクレオチド又は5’-リン酸アナログ修飾ヌクレオチドであることを表す。いくつかの実施形態において、P1は、修飾が特定されたVP、Ps又はPを表し、組合せ文字VPは、当該組合せ文字VPの右側に隣接する1つのヌクレオチドがビニルリン酸エステル(5’-(E)-vinylphosphonate、E-VP)修飾ヌクレオチドであることを表し、組合せ文字Psは、当該組合せ文字Psの右側に隣接する1つのヌクレオチドがチオリン酸エステル修飾ヌクレオチドであることを表し、大文字Pは、当該文字Pの右側に隣接する1つのヌクレオチドが5’-リン酸ヌクレオチドであることを表す。
【0024】
文脈において、前記「フルオロ修飾ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのリボース基の2’位のヒドロキシがフッ素で置換されたヌクレオチドを指し、「非フルオロ修飾ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのリボース基の2’位のヒドロキシが非フッ素基で置換されたヌクレオチド又はヌクレオチドアナログを指す。「ヌクレオチドアナログ」とは、核酸においてヌクレオチドの代わりとなることができるが、アデニンリボヌクレオチド、グアニンリボヌクレオチド、シトシンリボヌクレオチド、ウラシルリボヌクレオチド又はチミンデオキシリボヌクレオチドと構造が異なる基を指し、例えば、イソヌクレオチド、架橋ヌクレオチド(bridged nucleic acid、BNAと略称される)又は非環式ヌクレオチドがある。前記「メトキシ修飾ヌクレオチド」とは、リボース基の2’-ヒドロキシがメトキシで置換されたヌクレオチドを指す。
【0025】
本明細書の文脈において、用語「相補的」又は「逆相補的」は、互換的に使用されてもよく、当業者に周知の意味、即ち、二本鎖核酸分子において、一方の鎖の塩基と他方の鎖上の塩基とが相補的に対合するという意味を有する。DNAにおいて、プリン塩基であるアデニン(A)は、常にピリミジン塩基であるチミン(T)(又は、RNAにおいてウラシル(U)である)と対合し、プリン塩基であるグアニン(C)は、常にピリミジン塩基であるシトシン(G)と対合する。各塩基対は、いずれも1つのプリンと1つのピリミジンを含む。一方の鎖上のアデニンが常に他方の鎖上のチミン(又はウラシル)と対合するとともに、グアニンが常にシトシンと対合する場合、両方の鎖同士が相補的である、またその相補的な鎖の配列から当該鎖の配列を推知できると考えられる。これに応じて、「ミスマッチ」は、本分野において、二本鎖核酸において、対応する位置の塩基が相補的に対合して存在しないことを意味する。
【0026】
文脈において、特に説明がない限り、「基本的に逆相補的」とは、関連する2つのヌクレオチド配列間に3つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、「実質的に逆相補的」とは、2つのヌクレオチド配列間に1つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、「完全に逆相補的」とは、2つのヌクレオチド配列間に塩基ミスマッチが存在しないことを指す。
【0027】
文脈において、一方のヌクレオチド配列と他方のヌクレオチド配列に「ヌクレオチド差異」が存在するとは、前者が後者に比べて、同じ位置のヌクレオチドの塩基種類が変化したことを指し、例えば、後者において1つのヌクレオチド塩基がAであるとき、前者の同じ位置での、対応するヌクレオチド塩基がU、C、G又はTである場合に、当該位置で2つのヌクレオチド配列間にヌクレオチド差異が存在すると認められている。いくつかの実施形態において、元の位置のヌクレオチドの代わりに無塩基ヌクレオチド又はその等価物を用いる場合、当該位置でヌクレオチド差異が生じたとも考えられる。無塩基ヌクレオチドとは、ヌクレオチドの核酸塩基が他の基又は水素原子で置換されたモノマー化合物であり、当該他の基は、置換又は非置換の芳香族基又はヘテロアリール基を含むが、これらに限定されない。
【0028】
文脈において、特に本開示のsiRNA、医薬組成物又はsiRNA複合体の調製方法を説明する際に、特に説明がない限り、前記ヌクレオシドモノマー(nucleoside monomer)とは、調製対象のsiRNA又はsiRNA複合体におけるヌクレオチドの種類と順序に応じてホスホルアミダイト固相合成に用いられる修飾又は未修飾のヌクレオシドホスホルアミダイトモノマー(unmodified or modified RNA phosphoramidites。RNA phosphoramiditesをNucleoside phosphoramiditesということもある)を指す。ホスホルアミダイト固相合成は、当業者に公知のRNA合成に用いられる方法である。本開示に用いられるヌクレオシドモノマーは、いずれも市販品として購入可能である。
【0029】
本開示の文脈において、特に説明がない限り、「複合」とは、それぞれ特定の機能を有する2つ以上の化学部分間が共有結合的に互いに結合されることを指し、これに応じて、「複合体」とは、当該各化学部分間が共有結合的に結合されることにより形成された化合物を指す。更に、「siRNA複合体」は、特定の機能を有する1つ又は複数の化学部分がsiRNAに共有結合的に結合されて形成された化合物を表す。siRNA複合体は、文脈により、複数のsiRNA複合体の総称、又はある化学式に示されるsiRNA複合体であると理解されるべきである。本開示の文脈において、「複合分子」は、反応することによりsiRNAに複合され、最終的に本開示のsiRNA複合体を形成することができる特定の化合物であると理解されるべきである。
【0030】
1つ又は複数の置換基を含む任意の基に関して、これらの基が、立体的に非現実的な、合成上実行不可能な及び/又は本質的に不安定な、いかなる置換又は置換パターンも導入することは意図されないと、当業者に理解される。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」とは、特定の数の炭素原子を有する直鎖と分岐鎖を指し、前記数は、通常1~20個の炭素原子、例えば、1~8個又は1~6個などの1~10個の炭素原子である。例えば、C-Cアルキルは、1~6個の炭素原子を含む直鎖と分岐鎖アルキルである。特定の数の炭素を有するアルキル残基に言及する場合、当該数の炭素を有する全ての分岐鎖及び直鎖形態を含むことを意図する。したがって、例えば、「ブチル」は、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル及びtert-ブチルを含むことを意味し、「プロピル」は、n-プロピル及びイソプロピルを含む。アルキレンは、アルキルのサブセットであり、アルキルと同じであるが2つの結合点を有する二価原子団を指す。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和分岐鎖又は直鎖アルキルを指し、前記炭素-炭素二重結合は、親アルキルの隣接する炭素原子から1つの水素分子を除去することにより得られる。当該基は、二重結合のシス又はトランス配置にあってもよい。典型的なアルケニル基としては、ビニルと、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、プロパ-2-エン-2-イルなどのプロペニルと、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチルプロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イルなどのブテニルとを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有するが、他の実施形態において、2~10個、2~8個又は2~6個の炭素原子を有する。アルケニレンは、アルケニルのサブセットであり、アルケニルと同じであるが2つの結合点を有する残基を指す。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「アルコキシ」とは、酸素橋により結合された特定の数の炭素原子を有するアルキルを指し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、2-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、2-ヘキシルオキシ、3-ヘキシルオキシ、3-メチルペンチルオキシなどがある。アルコキシは、通常1~10個、1~8個、1~6個又は1~4個の、酸素橋により結合された炭素原子を有する。
【0034】
本開示において各種のヒドロキシ保護基を用いることができる。一般的には、保護基は、化学官能基を特定の反応条件に不敏感にすることができ、かつ分子の残りの部分を実質的に損傷することなく分子中の当該官能基に付加する、及びそれから除去することができる。代表的なヒドロキシ保護基は、Beaucageら、Tetrahedron 1992,48,2223-2311、及びGreeneand Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,Chapter 2,2d ed,John Wiley & Sons,New York,1991に開示されており、引用により、上記文献は、それぞれ全体として本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、保護基は、塩基性条件で安定しているが、酸性条件で除去することができる。いくつかの実施形態において、本明細書で使用できるヒドロキシ保護基の非排他的な実例としては、ジメトキシトリチル(DMT)、モノメトキシトリチル、9-フェニルキサンテン-9-イル(Pixyl)及び9-(p-メトキシフェニル)キサンテン-9-イル(Mox)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で使用できるヒドロキシ保護基の非排他的な実例としては、Tr(トリチル)、MMTr(4-メトキシトリチル)、DMTr(4,4’-ジメトキシトリチル)及びTMTr(4,4’,4’’-トリメトキシトリチル)を含む。
【0035】
用語「被験体」は、本明細書で用いられる場合、任意の動物、例えば、哺乳動物又は有袋動物を指す。本開示の被験体としては、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル又は他の種類のマカク属のサル)、マウス、ブタ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ラット及び任意の種類の家禽を含むが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「治療」とは、有益な又は所望の結果を得る方法を指し、治療効果を含むが、これに限定されない。「治療効果」は、治療される潜在的障害を根絶又は改善することを意味する。また、治療効果は、被験体が依然として潜在的障害の苦痛を受ける可能性があるにもかかわらず、潜在的障害に関連する1つ又は複数の生理的症状を根絶又は改善することにより、被験体に改善が観察されて得られる。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「予防」とは、有益な又は所望の結果を得る方法を指し、予防効果を含むが、これに限定されない。「予防効果」を得るために、特定の疾患に対する診断が行われていないかもしれないが、siRNA、医薬組成物又はsiRNA複合体を、当該疾患に罹患するリスクのある被験体に投与するか、又は当該疾患の1つ又は複数の生理的症状が報告された被験体に投与することができる。
【0038】
本開示のsiRNA
一態様において、本開示は、RPTOR遺伝子発現を抑制することができるsiRNAを提供する。
【0039】
本開示のsiRNAは、基本的な構造単位としてヌクレオチド基を含み、前記ヌクレオチド基がリン酸基、リボース基及び塩基を含むことは、当業者に公知であるので、ここでは説明を省略する。
【0040】
本開示のsiRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖とを含み、前記センス鎖とアンチセンス鎖とは、長さが同じか又は異なり、前記センス鎖の長さが19~23ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖の長さが19~26ヌクレオチドである。このように、本開示により提供されるsiRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の長さ比は、19/19、19/20、19/21、19/22、19/23、19/24、19/25、19/26、20/20、20/21、20/22、20/23、20/24、20/25、20/26、21/20、21/21、21/22、21/23、21/24、21/25、21/26、22/20、22/21、22/22、22/23、22/24、22/25、22/26、23/20、23/21、23/22、23/23、23/24、23/25又は23/26であってもよい。いくつかの実施形態において、前記siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の長さ比は、19/21、21/21、21/23又は23/25である。
【0041】
本開示によれば、前記siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖とを含み、前記siRNAにおけるヌクレオチドは、それぞれ独立して修飾又は未修飾のヌクレオチドであり、前記センス鎖はヌクレオチド配列Iを含み、アンチセンス鎖はヌクレオチド配列IIを含み、前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIとは、少なくとも一部で逆相補的に二本鎖領域を形成する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、以下の第1種、第2種又は第3種のsiRNAであってもよく、以下、各種のsiRNAをそれぞれ説明する。
【0043】
第1種のsiRNA
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、第1種のsiRNAである。前記ヌクレオチド配列Iと配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号2に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-CUGCCAUGGAGUAUCUGAZa1-3’(配列番号1)、
5’-Za2UCAGAUACUCCAUGGCAG-3’(配列番号2)
ただし、Za1はAであり、Za2はUであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZa1に対応するヌクレオチドZa3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZa2に対応するヌクレオチドZa4が含まれ、前記Za4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドである。
【0044】
文脈において、「位置が対応する」とは、ヌクレオチド配列の同一端から、ヌクレオチド配列において同じ位置にあることを指す。例えば、ヌクレオチド配列Iの3’末端の第1位のヌクレオチドは、位置が配列番号1の3’末端の第1位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドである。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド配列Iのみを含み、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列IIのみを含む。いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Iと配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下であり、及び/又は前記ヌクレオチド配列IIと配列番号2に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド配列差異が1つ以下である。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号2に示されるヌクレオチド配列との間のヌクレオチド差異は、Za4の位置での差異を含み、Za4がA、C又はGから選択される。いくつかの実施形態において、Za3は、Za4と相補的なヌクレオチドである。上記ヌクレオチド差異を有するsiRNAは、標的mRNA抑制能力が高く、これらのヌクレオチド差異を含むsiRNAも、本開示の保護範囲内にある。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIとは、基本的に逆相補的、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、前記基本的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に3つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、前記実質的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に1つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、完全に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に塩基ミスマッチがないことを指す。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖とアンチセンス鎖とは、長さが同じか又は異なり、前記センス鎖の長さが19~23ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖の長さが19~26ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列Iは、配列番号3に示されるヌクレオチド配列であり、前記ヌクレオチド配列IIは、配列番号4に示されるヌクレオチド配列であり、
5’-CUGCCAUGGAGUAUCUGAZa3-3’(配列番号3)、
5’-Za4UCAGAUACUCCAUGGCAG-3’(配列番号4)
ただし、Za3は、A、U、G又はCから選択され、Za4は、Za3と相補的なヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、Za3はAであり、Za4はUである。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド配列IIIを更に含み、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列IVを更に含み、ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、長さがそれぞれ1~4ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列IIIと前記ヌクレオチド配列IVとは、長さが等しく、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、前記ヌクレオチド配列IIIは、前記ヌクレオチド配列Iの5’末端に結合され、前記ヌクレオチド配列IVは、前記ヌクレオチド配列IIの3’末端に結合される。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列IVと第2のヌクレオチド配列は、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、当該第2のヌクレオチド配列とは、標的mRNAにおける、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の5’末端に隣接し、かつ長さが前記ヌクレオチド配列IVと同じであるヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態において、5’から3’に向かって、前記ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、長さがいずれも1ヌクレオチドであり、ヌクレオチド配列IIIの塩基がAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基がUであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が20/20であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも2ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がCAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUGであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が21/21であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも3ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がUCAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUGAであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が22/22であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも4ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がGUCAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUGACであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が23/23である。
【0051】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、完全に逆相補的であるため、ヌクレオチド配列IIIの塩基が与えられると、ヌクレオチド配列IVの塩基も決定される。
【0052】
第2種のsiRNA
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、第2種のsiRNAである。前記ヌクレオチド配列Iと配列番号123に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号124に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-ACAACAUCAAGUACUACGZb1-3’(配列番号123)、
5’-Zb2CGUAGUACUUGAUGUUGU-3’(配列番号124)
ただし、Zb1はAであり、Zb2はUであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZb1に対応するヌクレオチドZb3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZb2に対応するヌクレオチドZb4が含まれ、前記Zb4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドである。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド配列Iのみを含み、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列IIのみを含む。いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Iと配列番号123に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下であり、及び/又は前記ヌクレオチド配列IIと配列番号124に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下である。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号124に示されるヌクレオチド配列との間のヌクレオチド差異は、Zb4の位置での差異を含み、Zb4がA、C又はGから選択される。いくつかの実施形態において、Zb3は、Zb4と相補的なヌクレオチドである。上記ヌクレオチド差異を有するsiRNAは、標的mRNA抑制能力が高く、これらのヌクレオチド差異を含むsiRNAも、本開示の保護範囲内にある。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIとは、基本的に逆相補的、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、前記基本的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に3つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、前記実質的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に1つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、完全に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に塩基ミスマッチがないことを指す。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Iは、配列番号125に示されるヌクレオチド配列であり、前記ヌクレオチド配列IIは、配列番号126に示されるヌクレオチド配列であり、
5’-ACAACAUCAAGUACUACGZb3-3’(配列番号125)、
5’-Zb4CGUAGUACUUGAUGUUGU-3’(配列番号126)
ただし、Zb3は、A、U、G又はCから選択され、Zb4は、Zb3と相補的なヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、Zb3はAであり、Zb4はUである。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド配列IIIを更に含み、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列IVを更に含み、ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、長さがそれぞれ1~4ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列IIIと前記ヌクレオチド配列IVとは、長さが等しく、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、前記ヌクレオチド配列IIIは、前記ヌクレオチド配列Iの5’末端に結合され、前記ヌクレオチド配列IVは、前記ヌクレオチド配列IIの3’末端に結合される。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列IVと第2のヌクレオチド配列は、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、当該第2のヌクレオチド配列とは、標的mRNAにおける、配列番号123に示されるヌクレオチド配列の5’末端に隣接し、かつ長さが前記ヌクレオチド配列IVと同じであるヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態において、5’から3’に向かって、前記ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、長さがいずれも1ヌクレオチドであり、ヌクレオチド配列IIIの塩基がAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基がUであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が20/20であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも2ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がCAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUGであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が21/21であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも3ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がUCAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUGAであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が22/22であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも4ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がAUCAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUGAUであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が23/23である。
【0059】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、完全に逆相補的であるため、ヌクレオチド配列IIIの塩基が与えられると、ヌクレオチド配列IVの塩基も決定される。
【0060】
第3種のsiRNA
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、第3種のsiRNAである。前記ヌクレオチド配列Iと配列番号245に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号246に示されるヌクレオチド配列とは、長さが等しく、ヌクレオチド差異が3つ以下であり、
5’-CGACUACUACAUCUCCGUZc1-3’(配列番号245)、
5’-Zc2ACGGAGAUGUAGUAGUCG-3’(配列番号246)
ただし、Zc1はGであり、Zc2はCであり、前記ヌクレオチド配列Iに、位置がZc1に対応するヌクレオチドZc3が含まれ、前記ヌクレオチド配列IIに、位置がZc2に対応するヌクレオチドZc4が含まれ、前記Zc4は、前記アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドである。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド配列Iのみを含み、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列IIのみを含む。いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Iと配列番号245に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下であり、及び/又は前記ヌクレオチド配列IIと配列番号246に示されるヌクレオチド配列とは、ヌクレオチド差異が1つ以下である。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列IIと配列番号246に示されるヌクレオチド配列との間のヌクレオチド差異は、Zc4の位置での差異を含み、Zc4がA、U又はGから選択される。いくつかの実施形態において、Zc3は、Zc4と相補的なヌクレオチドである。上記ヌクレオチド差異を有するsiRNAは、標的mRNA抑制能力が高く、これらのヌクレオチド差異を含むsiRNAも、本開示の保護範囲内にある。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Iと前記ヌクレオチド配列IIとは、基本的に逆相補的、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、前記基本的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に3つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、前記実質的に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に1つ以下の塩基ミスマッチが存在することを指し、完全に逆相補的とは、2つのヌクレオチド配列間に塩基ミスマッチがないことを指す。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Iは、配列番号247に示されるヌクレオチド配列であり、ヌクレオチド配列IIは、配列番号248に示されるヌクレオチド配列であり、
5’-CGACUACUACAUCUCCGUZc3-3’(配列番号247)、
5’-Zc4ACGGAGAUGUAGUAGUCG-3’(配列番号248)
ただし、Zc3は、A、U、G又はCから選択され、Zc4は、Zc3と相補的なヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、Zc3はGであり、Zc4はCである。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド配列IIIを更に含み、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列IVを更に含み、ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、長さがそれぞれ1~4ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列IIIと前記ヌクレオチド配列IVとは、長さが等しく、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、前記ヌクレオチド配列IIIは、前記ヌクレオチド配列Iの5’末端に結合され、前記ヌクレオチド配列IVは、前記ヌクレオチド配列IIの3’末端に結合される。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列IVと第2のヌクレオチド配列は、実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であり、当該第2のヌクレオチド配列とは、標的mRNAにおける、配列番号245に示されるヌクレオチド配列の5’末端に隣接し、かつ長さが前記ヌクレオチド配列IVと同じであるヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態において、5’から3’に向かって、前記ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、長さがいずれも1ヌクレオチドであり、ヌクレオチド配列IIIの塩基がAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基がUであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が20/20であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも2ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がAAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUUであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が21/21であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも3ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がCAAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUUGであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が22/22であり、或いは、ヌクレオチド配列IIIとIVとは、長さがいずれも4ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、ヌクレオチド配列IIIの塩基配列がGCAAであり、ヌクレオチド配列IVの塩基配列がUUGCであり、このとき、センス鎖とアンチセンス鎖の長さ比が23/23である。
【0067】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列IIIとヌクレオチド配列IVとは、完全に逆相補的であるため、ヌクレオチド配列IIIの塩基が与えられると、ヌクレオチド配列IVの塩基も決定される。
【0068】
以下、ヌクレオチド配列V、ヌクレオチド配列VI、核酸配列、siRNA中のヌクレオチド修飾及び修飾配列の説明は、上記第1種のsiRNA、第2種のsiRNA又は第3種のsiRNAに適用される。即ち、特に明記されていない場合、以下、siRNAの説明は、第1種のsiRNA、第2種のsiRNA及び第3種のsiRNAを1つずつ説明したものとみなされるべきである。例えば、特定のsiRNAが指定されていない場合、「前記siRNAがヌクレオチド配列Vを更に含む」とは、「第1種のsiRNA、第2種のsiRNA又は第3種のsiRNAがヌクレオチド配列Vを更に含む」ことを意味する。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖とアンチセンス鎖とは、長さが異なり、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列Vを更に含み、ヌクレオチド配列Vは、長さが1~3ヌクレオチドであり、前記アンチセンス鎖の3’末端に結合され、アンチセンス鎖の3’突出端を構成する。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド配列VIを更に含み、ヌクレオチド配列VIは、長さが1~3ヌクレオチドであり、前記センス鎖の3’末端に結合され、センス鎖の3’突出端を構成する。
【0071】
いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAは、ヌクレオチド配列Vを含むが、ヌクレオチド配列VIを含まない。これにより、本開示により提供されるsiRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の長さ比は、19/20、19/21、19/22、20/21、20/22、20/23、21/22、21/23、21/24、22/23、22/24、22/25、23/24、23/25又は23/26であってもよい。いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAは、ヌクレオチド配列V及びVIを含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列Vとヌクレオチド配列VIとは、長さが同じか又は異なる。これにより、本開示により提供されるsiRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の長さ比は、(19~26):(19~26)であってもよい。いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列V及び/又はVIは、長さが2ヌクレオチドであり、これにより、本開示により提供されるsiRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の長さ比は、19/21、21/21、21/23、23/23、23/25又は25/25であってもよい。
【0072】
前記ヌクレオチド配列Vにおける各ヌクレオチドは、任意のヌクレオチドであってもよく、合成しやすく合成コストを節約するために、いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列Vは、連続した2つのチミンデオキシリボヌクレオチド(dTdT)又は連続した2つのウラシルリボヌクレオチド(UU)であり、或いは、siRNAのアンチセンス鎖と標的mRNAとの親和力を向上させるために、ヌクレオチド配列Vは、標的mRNAの対応する位置のヌクレオチドと相補的である。したがって、いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の長さ比は、19/21又は21/23であり、このとき、本開示のsiRNAは、より高いmRNAサイレンシング活性を有する。
【0073】
前記ヌクレオチド配列VIにおける各ヌクレオチドは、任意のヌクレオチドであってもよく、合成しやすく合成コストを節約するために、いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチド配列VIは、連続した2つのチミンデオキシリボヌクレオチド(dTdT)又は連続した2つのウラシルリボヌクレオチド(UU)であり、或いは、siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との親和力を向上させるために、ヌクレオチド配列VIは、標的mRNAの対応する位置のヌクレオチドと同じである。したがって、いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、ヌクレオチド配列V及びVIを含み、siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の長さ比は、21/21又は23/23であり、このとき、本開示のsiRNAは、より高いmRNAサイレンシング活性を有する。
【0074】
標的mRNAの対応する位置のヌクレオチドとは、5’末端で標的mRNAのヌクレオチド配列に隣接するヌクレオチド又はヌクレオチド配列を指し、当該標的mRNAのヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列IIと実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であるヌクレオチド配列であるか、又はヌクレオチド配列II及びヌクレオチド配列IVから構成されるヌクレオチド配列と実質的に逆相補的又は完全に逆相補的であるヌクレオチド配列である。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号5に示されるヌクレオチドを含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号6に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-CUGCCAUGGAGUAUCUGAZa3-3’(配列番号5)、
5’-Za4UCAGAUACUCCAUGGCAGUG-3’(配列番号6)
ただし、前記Za4は、アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、Za3は、A、U、G又はCから選択され、Za4は、Za3と相補的なヌクレオチドであり、
或いは、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号7に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号8に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-CACUGCCAUGGAGUAUCUGAZa3-3’(配列番号7)、
5’-Za4UCAGAUACUCCAUGGCAGUGAC-3’(配列番号8)
ただし、前記Za4は、アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、Za3は、A、U、G又はCから選択され、Za4は、Za3と相補的なヌクレオチドである。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号127に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号128に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-ACAACAUCAAGUACUACGZb3-3’(配列番号127)、
5’-Zb4CGUAGUACUUGAUGUUGUUG-3’(配列番号128)
或いは、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号129に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号130に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-CAACAACAUCAAGUACUACGZb3-3’(配列番号129)、
5’-Zb4CGUAGUACUUGAUGUUGUUGAU-3’(配列番号130)
ただし、前記Zb4は、アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、Zb3は、A、U、G又はCから選択され、Zb4は、Zb3と相補的なヌクレオチドである。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号249に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号250に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-CGACUACUACAUCUCCGUZc3-3’(配列番号249)、
5’-Zc4ACGGAGAUGUAGUAGUCGUU-3’(配列番号250)
或いは、前記siRNAのセンス鎖は、配列番号251に示されるヌクレオチド配列を含み、前記siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号252に示されるヌクレオチド配列を含み、
5’-AACGACUACUACAUCUCCGUZc3-3’(配列番号251)、
5’-Zc4ACGGAGAUGUAGUAGUCGUUGC-3’(配列番号252)
ただし、前記Zc4は、アンチセンス鎖の5’末端の第1位のヌクレオチドであり、Zc3は、A、U、G又はCから選択され、Zc4は、Zc3と相補的なヌクレオチドである。
【0078】
いくつかの実施形態において、本開示に記載されたsiRNAは、表1に列挙されたsiRPTORa1、siRPTORa2、siRPTORa3、siRPTORb1、siRPTORb2、siRPTORb3、siRPTORc1、siRPTORc2及びsiRPTORc3である。
【0079】
前述したように、本開示のsiRNAにおけるヌクレオチドは、それぞれ独立して修飾又は未修飾のヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAにおけるヌクレオチドは、未修飾ヌクレオチドであり、いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAにおけるヌクレオチドの一部又は全部は、修飾ヌクレオチドであり、ヌクレオチド基上のこれらの修飾により、本開示のsiRNAがRPTOR遺伝子発現を抑制する機能を明らかに弱めるか又は喪失させることがない。
【0080】
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。本開示の文脈において、用いられる用語「修飾ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのリボース基の2’位のヒドロキシ基が他の基で置換されたヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ、或いは、ヌクレオチド上の塩基が修飾された塩基であるヌクレオチドを指す。前記修飾ヌクレオチドにより、siRNAが遺伝子発現を抑制する機能を明らかに弱めるか又は喪失させることがない。例えば、J.K. Watts,G.F. Deleavey,and M.J. Damha,Chemically modified siRNA: tools and applications. Drug Discov Today,2008,13(19-20): 842-55に開示された修飾ヌクレオチドを選択してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAのセンス鎖又は前記アンチセンス鎖は、少なくとも1つのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであり、及び/又は少なくとも1つのリン酸エステル基が修飾基を有するリン酸エステル基である。言い換えれば、前記センス鎖と前記アンチセンス鎖において、少なくとも1本の一本鎖のリン酸-糖骨格中のリン酸エステル基及び/又はリボース基の少なくとも一部は、修飾基を有するリン酸エステル基及び/又は修飾基を有するリボース基である。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記センス鎖及び/又は前記アンチセンス鎖におけるヌクレオチドは、全て修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAのセンス鎖と前記アンチセンス鎖における各ヌクレオチドは、独立してフルオロ修飾ヌクレオチド又は非フルオロ修飾ヌクレオチドである。
【0083】
本開示の発明者は、驚くべきことに、本開示により提供されるsiRNAにより、動物実験において血漿中安定性と遺伝子サイレンシング効率の高度なバランスが取られていることを見出した。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記フルオロ修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチド配列Iとヌクレオチド配列IIに位置し、前記ヌクレオチド配列Iにおけるフルオロ修飾ヌクレオチドが5つ以下であり、5’末端から3’末端に向かって、前記ヌクレオチド配列Iの第7、8、9位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、前記ヌクレオチド配列IIにおけるフルオロ修飾ヌクレオチドが7つ以下であり、前記ヌクレオチド配列IIの第2、6、14、16位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドである。
【0085】
いくつかの実施形態において、5’末端から3’末端に向かって、前記センス鎖において、前記ヌクレオチド配列Iの第7、8、9位又は5、7、8、9位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、残りの位置のヌクレオチドが非フルオロ修飾ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、前記アンチセンス鎖において、前記ヌクレオチド配列IIの第2、6、14、16位又は第2、6、8、9、14、16位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、残りの位置のヌクレオチドが非フルオロ修飾ヌクレオチドである。
【0086】
本開示の文脈において、「フルオロ修飾ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのリボース基の2’位のヒドロキシがフッ素で置換された、以下の式(7)に示される構造を有するヌクレオチドを指す。「非フルオロ修飾ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのリボース基の2’位のヒドロキシが非フッ素基で置換されたヌクレオチド又はヌクレオチドアナログを指す。いくつかの実施形態において、各非フルオロ修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチドのリボース基の2’位のヒドロキシが非フッ素基で置換されたヌクレオチド又はヌクレオチドアナログから独立して選択される1つである。
【0087】
これらのリボース基の2’位のヒドロキシが非フッ素基で置換されたヌクレオチドは、当業者に公知であり、これらのヌクレオチドは、2’-アルコキシ修飾ヌクレオチド、2’-置換アルコキシ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-置換アルキル修飾ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-置換アミノ修飾ヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチドから選択される1つであってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、2’-アルコキシ修飾ヌクレオチドは、式(8)に示されるメトキシ修飾ヌクレオチド(2’-OMe)である。いくつかの実施形態において、2’-置換アルコキシ修飾ヌクレオチドは、例えば、式(9)に示される2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド(2’-MOE)であってもよい。いくつかの実施形態において、2’-アミノ修飾ヌクレオチド(2’-NH)は、式(10)に示される。いくつかの実施形態において、2’-デオキシヌクレオチド(DNA)は、式(11)に示される。
【0089】
【化1】
【0090】
ヌクレオチドアナログとは、核酸においてヌクレオチドの代わりとなることができるが、アデニンリボヌクレオチド、グアニンリボヌクレオチド、シトシンリボヌクレオチド、ウラシルリボヌクレオチド又はチミンデオキシリボヌクレオチドと構造が異なる基を指す。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドアナログは、イソヌクレオチド、架橋ヌクレオチド(bridged nucleic acid、BNAと略称される)又は非環式ヌクレオチドであってもよい。
【0091】
BNAとは、拘束された又は近づけないヌクレオチドを指す。BNAは、五員環、六員環又は七員環の、「固定された」C3’-エンド糖パッカリングを有する架橋構造を含んでもよい。通常、当該橋を当該リボースの2’-、4’-位に導入して2’,4’-BNAヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、BNAは、式(12)に示されるLNA、式(13)に示されるENA、式(14)に示されるcET BNAなどであってもよい。
【0092】
【化2】
【0093】
非環式ヌクレオチドは、ヌクレオチドの糖環が開環されたヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、非環式ヌクレオチドは、式(15)に示されるアンロック核酸(UNA)、又は式(16)に示されるグリセロール核酸(GNA)であってもよい。
【0094】
【化3】
【0095】
上記式(15)及び式(16)において、Rは、H、OH又はアルコキシ(O-アルキル)から選択される。
【0096】
イソヌクレオチドとは、ヌクレオチドにおいて塩基のリボース環における位置が変化した化合物を指す。いくつかの実施形態において、イソヌクレオチドは、式(17)又は(18)に示される、塩基がリボース環の1’-位から2’-位又は3’-位に移行した化合物であってもよい。
【0097】
【化4】
【0098】
上記式(17)及び式(18)の化合物において、Baseは、A、U、G、C又はTなどの核酸塩基を表し、Rは、H、OH、F又は上述した非フッ素基から選択される。
いくつかの実施形態において、ヌクレオチドアナログは、イソヌクレオチド、LNA、ENA、cET、UNA及びGNAから選択される1つである。いくつかの実施形態において、各非フルオロ修飾ヌクレオチドは、いずれもメトキシ修飾ヌクレオチドである。文脈において、前記メトキシ修飾ヌクレオチドとは、リボース基の2’-ヒドロキシがメトキシで置換されたヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、前記非フルオロ修飾ヌクレオチドは、独立して2’-O-メトキシ修飾又は2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドである。
【0099】
文脈において、「フルオロ修飾ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの2’-ヒドロキシがフッ素で置換されて形成された、式(7)に示される構造を有する化合物を指し、「メトキシ修飾ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのリボース基の2’-ヒドロキシがメトキシで置換されて形成された、式(8)に示される構造を有する化合物を指し、「2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのリボース基の2’-ヒドロキシ基がメトキシエチルで置換されて形成された、式(9)に示される構造を有する化合物を指す。
【0100】
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、以下の修飾を有するsiRNAである。すなわち、5’末端から3’末端に向かって、前記センス鎖において、前記ヌクレオチド配列Iの第7、8、9位又は第5、7、8、9位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであり、前記アンチセンス鎖において、前記ヌクレオチド配列IIの第2、6、14、16位又は第2、6、8、9、14、16位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドである。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、以下の修飾を有するsiRNAである。すなわち、5’末端から3’末端に向かって、前記siRNAのセンス鎖におけるヌクレオチド配列Iの第5、7、8及び9位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、siRNAのセンス鎖における残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、前記siRNAのアンチセンス鎖におけるヌクレオチド配列IIの第2、6、14、16位又は第2、6、8、9、14、16位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、siRNAのアンチセンス鎖における残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであり、
或いは、5’末端から3’末端に向かって、前記siRNAのセンス鎖におけるヌクレオチド配列Iの第5、7、8及び9位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、siRNAのセンス鎖における残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、前記siRNAのアンチセンス鎖におけるヌクレオチド配列IIの第2、6、14及び16位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、siRNAのアンチセンス鎖における残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであり、
或いは、5’末端から3’末端に向かって、前記siRNAのセンス鎖におけるヌクレオチド配列Iの第7、8及び9位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、siRNAのセンス鎖における残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、前記siRNAのアンチセンス鎖におけるヌクレオチド配列IIの第2、6、14及び16位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、siRNAのアンチセンス鎖における残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドである。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、以下の修飾を有するsiRNAである。すなわち、5’末端から3’末端に向かって、前記siRNAのセンス鎖におけるヌクレオチド配列Iの第7、8及び9位又は第5、7、8及び9位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、siRNAのセンス鎖における残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、前記siRNAのアンチセンス鎖におけるヌクレオチド配列IIの第2、6、14、16位又は第2、6、8、9、14、16位のヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであり、5’末端から3’末端に向かって、前記ヌクレオチド配列IIの第3~6位のヌクレオチドのうちの少なくとも1つが2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、前記アンチセンス鎖において、第3位又は第5位のヌクレオチドが2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドであり、残りの位置のヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’末端から3’末端に向かって、前記ヌクレオチド配列IIの第3~9位のヌクレオチドのうちの2つ以下のヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドである。
【0103】
いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAは、任意に、
siRPTORa1-M1、siRPTORa1-M2、siRPTORa1-M3、siRPTORa2-M1、siRPTORa2-M2、siRPTORa2-M3、siRPTORa3-M1、siRPTORa3-M2、siSRPTORa3-M3、siRPTORb1-M1、siRPTORb1-M2、siRPTORb1-M3、siRPTORb2-M1、siRPTORb2-M2、siRPTORb2-M3、siRPTORb3-M1、siRPTORb3-M2、siSRPTORb3-M3、siRPTORc1-M1、siRPTORc1-M2、siRPTORc1-M3、siRPTORc2-M1、siRPTORc2-M2、siRPTORc2-M3、siRPTORc3-M1、siRPTORc3-M2及びsiSRPTORc3-M3から選択される1つである。
【0104】
上記修飾を有するsiRNAは、コストが低いだけでなく、血液中のリボヌクレアーゼで核酸を切断しにくくすることができ、これにより、核酸の安定性を向上させ、核酸のヌクレアーゼ加水分解耐性という特性をより高めている。また、上記修飾siRNAは、標的mRNA抑制活性が高い。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖において、少なくとも1本の一本鎖のリン酸-糖骨格中のリン酸エステル基の少なくとも一部は、修飾基を有するリン酸エステル基である。いくつかの実施形態において、修飾基を有するリン酸エステル基は、リン酸エステル基におけるリン酸ジエステル結合中の少なくとも1つの酸素原子が硫黄原子で置換されたチオリン酸エステル基である。いくつかの実施形態において、前記修飾基を有するリン酸エステル基は、式(1)に示される構造を有するチオリン酸エステル基である。
【0106】
【化5】
【0107】
このような修飾により、siRNAの二本鎖構造を安定化させ、塩基対合の高い特異性と高い親和力を維持することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAにおいて、チオリン酸エステル基は、センス鎖又はアンチセンス鎖の任意の一端の第1位のヌクレオチドと第2位のヌクレオチドとの間、センス鎖又はアンチセンス鎖の任意の一端の第2位のヌクレオチドと第3位のヌクレオチドとの間、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも一箇所に結合されて存在する。いくつかの実施形態において、チオリン酸エステル基は、センス鎖の5’末端を除く全ての上記位置に結合されて存在する。いくつかの実施形態において、チオリン酸エステル基は、センス鎖の3’末端を除く全ての上記位置に結合されて存在する。いくつかの実施形態において、チオリン酸エステル基は、
前記センス鎖の5’末端から第1位のヌクレオチドと第2位のヌクレオチドとの間、
前記センス鎖の5’末端から第2位のヌクレオチドと第3位のヌクレオチドとの間、
前記センス鎖の3’末端から第1位のヌクレオチドと第2位のヌクレオチドとの間、
前記センス鎖の3’末端から第2位のヌクレオチドと第3位のヌクレオチドとの間、
前記アンチセンス鎖の5’末端から第1位のヌクレオチドと第2位のヌクレオチドとの間、
前記アンチセンス鎖の5’末端から第2位のヌクレオチドと第3位のヌクレオチドとの間、
前記アンチセンス鎖の3’末端から第1位のヌクレオチドと第2位のヌクレオチドとの間、及び
前記アンチセンス鎖の3’末端から第2位のヌクレオチドと第3位のヌクレオチドとの間の少なくとも一箇所に結合されて存在する。
【0109】
いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAは、任意に、siRPTORa1-M1S、siRPTORa1-M1X、siRPTORa1-M2S、siRPTORa1-M2X、siRPTORa1-M3S、siRPTORa1-M3X、siRPTORa2-M1S、siRPTORa2-M1X、siRPTORa2-M2S、siRPTORa2-M2X、siRPTORa2-M3S、siRPTORa2-M3X、siRPTORa3-M1S、siRPTORa3-M1X、siRPTORa3-M2S、siRPTORa3-M2X、siRPTORa3-M3S、siRPTORa3-M3X、siRPTORa1-T1S、siRPTORa1-T2S、siRPTORb1-M1S、siRPTORb1-M1X、siRPTORb1-M2S、siRPTORb1-M2X、siRPTORb1-M3S、siRPTORb1-M3X、siRPTORb2-M1S、siRPTORb2-M1X、siRPTORb2-M2S、siRPTORb2-M2X、siRPTORb2-M3S、siRPTORb2-M3X、siRPTORb3-M1S、siRPTORb3-M1X、siRPTORb3-M2S、siRPTORb3-M2X、siRPTORb3-M3S、siRPTORb3-M3X、siRPTORb1-T1S、siRPTORb1-T2S、siRPTORc1-M1S、siRPTORc1-M1X、siRPTORc1-M2S、siRPTORc1-M2X、siRPTORc1-M3S、siRPTORc1-M3X、siRPTORc2-M1S、siRPTORc2-M1X、siRPTORc2-M2S、siRPTORc2-M2X、siRPTORc2-M3S、siRPTORc2-M3X、siRPTORc3-M1S、siRPTORc3-M1X、siRPTORc3-M2S、siRPTORc3-M2X、siRPTORc3-M3S、siRPTORc3-M3X、siRPTORc1-T1S及びsiRPTORc1-T2Sから選択される1つである。
【0110】
いくつかの実施形態において、前記siRNAのアンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチドは、5’-リン酸ヌクレオチド又は5’-リン酸アナログ修飾ヌクレオチドである。
【0111】
通常用いられる前記5’-リン酸ヌクレオチド又は5’-リン酸アナログ修飾ヌクレオチドは、当業者に公知であり、例えば、5’-リン酸ヌクレオチドは、以下の構造を有してもよい。
【0112】
【化6】
【0113】
また、例えば、Anastasia Khvorova and Jonathan K. Watts,The chemical evolution of oligonucleotide therapies of clinical utility. Nature Biotechnology,2017,35(3): 238-48には、以下の4種類の5’-リン酸アナログ修飾ヌクレオチドが開示されている。
【0114】
【化7】
【0115】
ただし、Rは、H、OH、メトキシ、フッ素から選択され、Baseは、A、U、C、G又はTから選択される核酸塩基を表す。
【0116】
いくつかの実施形態において、5’-リン酸ヌクレオチドは、式(2)に示される、5’-リン酸修飾を含むヌクレオチドであり、5’-リン酸アナログ修飾ヌクレオチドは、式(3)に示される、ビニルリン酸エステル(5’-(E)-vinylphosphonate、E-VP)修飾を含むヌクレオチドであり、又は、式(5)に示されるチオリン酸エステル修飾ヌクレオチドである。
【0117】
いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAは、任意に、siRPTORa1-M1P1、siRPTORa1-M2P1、siRPTORa1-M3P1、siRPTORa2-M1P1、siRPTORa2-M2P1、siRPTORa2-M3P1、siRPTORa3-M1P1、siRPTORa3-M2P1、siRPTORa3-M3P1、siRPTORa1-M1SP1、siRPTORa1-M2SP1、siRPTORa1-M3SP1、siRPTORa2-M1SP1、siRPTORa2-M2SP1、siRPTORa2-M3SP1、siRPTORa3-M1SP1、siRPTORa3-M2SP1、siRPTORa3-M3SP1、siRPTORa1-M1XP1、siRPTORa1-M2XP1、siRPTORa1-M3XP1、siRPTORa2-M1XP1、siRPTORa2-M2XP1、siRPTORa2-M3XP1、siRPTORa3-M1XP1、siRPTORa3-M2XP1、siRPTORa3-M3XP1、siRPTORb1-M1P1、siRPTORb1-M2P1、siRPTORb1-M3P1、siRPTORb2-M1P1、siRPTORb2-M2P1、siRPTORb2-M3P1、siRPTORb3-M1P1、siRPTORb3-M2P1、siRPTORb3-M3P1、siRPTORb1-M1SP1、siRPTORb1-M2SP1、siRPTORb1-M3SP1、siRPTORb2-M1SP1、siRPTORb2-M2SP1、siRPTORb2-M3SP1、siRPTORb3-M1SP1、siRPTORb3-M2SP1、siRPTORb3-M3SP1、siRPTORb1-M1XP1、siRPTORb1-M2XP1、siRPTORb1-M3XP1、siRPTORb2-M1XP1、siRPTORb2-M2XP1、siRPTORb2-M3XP1、siRPTORb3-M1XP1、siRPTORb3-M2XP1、siRPTORb3-M3XP1、siRPTORc1-M1P1、siRPTORc1-M2P1、siRPTORc1-M3P1、siRPTORc2-M1P1、siRPTORc2-M2P1、siRPTORc2-M3P1、siRPTORc3-M1P1、siRPTORc3-M2P1、siRPTORc3-M3P1、siRPTORc1-M1SP1、siRPTORc1-M2SP1、siRPTORc1-M3SP1、siRPTORc2-M1SP1、siRPTORc2-M2SP1、siRPTORc2-M3SP1、siRPTORc3-M1SP1、siRPTORc3-M2SP1、siRPTORc3-M3SP1、siRPTORc1-M1XP1、siRPTORc1-M2XP1、siRPTORc1-M3XP1、siRPTORc2-M1XP1、siRPTORc2-M2XP1、siRPTORc2-M3XP1、siRPTORc3-M1XP1、siRPTORc3-M2XP1及びsiRPTORc3-M3XP1から選択される1つである。
【0118】
本開示の発明者は、本開示により提供されるsiRNAが顕著に向上した血漿とリソソーム安定性を有するだけでなく、非常に高い遺伝子抑制活性を維持することを、意外にも見出した。
【0119】
本開示により提供されるsiRNAは、本分野における通常のsiRNA調製方法(例えば、固相合成方法及び液相合成方法)によって得ることができる。固相合成は、既に商用カスタマイズサービスが行われている。対応する修飾を有するヌクレオシドモノマーを用いることにより修飾ヌクレオチドを本開示に記載されたsiRNAに導入することができ、対応する修飾を有するヌクレオシドモノマーを調製する方法、及び修飾ヌクレオチドをsiRNAに導入する方法も、当業者によく知られている。
【0120】
医薬組成物
一態様において、本開示は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、活性成分としての上述したsiRNAと、薬学的に許容可能な担体とを含む。
【0121】
前記薬学的に許容可能な担体は、siRNA投与分野で通常用いられる担体であってもよく、例えば、磁性ナノ粒子(magnetic nanoparticles、例えば、Fe又はFeに基づくナノ粒子)、カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)、メソポーラスシリコン(mesoporous silicon)、リン酸カルシウムナノ粒子(calcium phosphate nanoparticles)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine、PEI)、ポリアミドアミンデンドリマー(polyamidoamine (PAMAM) dendrimer)、ポリリジン(poly(L-lysine)、PLL)、キトサン(chitosan)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane、DOTAP)、ポリD-又はL-乳酸/グリコール酸共重合体(poly(D&L-lactic/glycolic acid)copolymer、PLGA)、ポリ(アミノエチルエチレンリン酸エステル)(poly(2-aminoethyl ethylene phosphate)、PPEEA)及びポリ(N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート)(poly(2-dimethylaminoethyl methacrylate)、PDMAEMA)並びにこれらの誘導体のうちの1つ又は複数があるが、これらに限定されない。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物において、siRNAと薬学的に許容可能な担体の含有量について特段の要件がなく、いくつかの実施形態において、siRNAと薬学的に許容可能な担体の重量比は、1:(1~500)であってもよく、いくつかの実施形態において、上記重量比は、1:(1~50)である。
【0123】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物には、薬学的に許容可能な他の添加剤が含まれてもよく、当該添加剤は、本分野で通常用いられる各種の製剤又は化合物のうちの1つ又は複数であってもよい。例えば、前記薬学的に許容可能な他の添加剤は、pH緩衝液、保護剤及び浸透圧調節剤のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0124】
前記pH緩衝液は、pH7.5~8.5のトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩緩衝液及び/又はpH5.5~8.5のリン酸塩緩衝液であってもよく、例えば、pH5.5~8.5のリン酸塩緩衝液であってもよい。
【0125】
前記保護剤は、イノシトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース及びグルコースのうちの少なくとも1つであってもよい。前記医薬組成物の全重量を基準とし、前記保護剤の含有量は、0.01~30重量%であってもよい。
【0126】
前記浸透圧調節剤は、例えば、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムであってもよい。前記浸透圧調節剤の含有量は、前記医薬組成物の浸透圧が200~700ミリオスモル/キログラム(mOsm/kg)となるように決定される。所望の浸透圧により、当業者は、前記浸透圧調節剤の含有量を容易に決定することができる。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物から製造された製剤の投与過程における用量は、投与方式によって調整される。
【0127】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、注射液などの液体製剤であってもよく、凍結乾燥粉末注射剤として、投与時に液体添加剤と混合して、液体製剤としてもよい。前記液体製剤は、皮下、筋肉、脳室内又は髄腔内注射投与に用いることができるが、これらに限定されず、鼻腔投与、口腔吸入、噴霧投与などの方式で前記医薬組成物を送達することもできるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、髄腔内注射により送達される。いくつかの実施形態において、脊髄液への前記医薬組成物の髄腔内注射は、ボーラス注射の方式で又はマイクロポンプを介して行うことができ、これらのマイクロポンプを皮下に埋め込むことにより、siRNAを脊髄液に規則的かつ定常的に送達することができる。いくつかの実施形態において、髄腔内投与は、手術によって埋め込まれた浸透圧ポンプを介して行われる。いくつかの実施形態において、髄腔内投与を容易にするために、浸透圧ポンプを脊柱管のくも膜下腔に埋め込む。この髄腔内送達系のより多くの詳細については、2015年1月28日に出願されたPCT/US2015/013253号に記載されており、引用により当該文献の内容が全体として本明細書に組み込まれる。
【0128】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、リポソーム製剤の形態であってもよい。いくつかの実施形態において、前記リポソーム製剤に用いられる薬学的に許容可能な担体は、アミン含有トランスフェクション化合物(以下、有機アミンともいう)、補助脂質及び/又はポリエチレングリコール化脂質を含む。前記有機アミン、補助脂質及びポリエチレングリコール化脂質は、それぞれ中国特許出願公開第103380113号明細書(引用によりその全体を本明細書に組み込む)に記載されたアミン含有トランスフェクション化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくは誘導体、補助脂質及びポリエチレングリコール化脂質から選択される1つ又は複数であってもよい。
【0129】
いくつかの実施形態において、前記有機アミンは、中国特許出願公開第103380113号明細書に記載された、式(201)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩であってもよい。
【0130】
【化8】
【0131】
ただし、X101及びX102は、それぞれ独立してO、S、N-A又はC-Aであり、Aは、水素又はC-C20炭化水素鎖であり、
101及びZ101は、それぞれ独立してC=O、C=S、S=O、CH-OH又はSOであり、
101、R102、R103、R104、R105、R106及びR107は、それぞれ独立して水素、環式又は非環式の、置換又は無置換の、分岐鎖又は直鎖脂肪族基、環式又は非環式の、置換又は無置換の、分岐鎖又は直鎖ヘテロ脂肪族基、置換又は無置換の、分岐鎖又は直鎖アシル、置換又は無置換の、分岐鎖又は直鎖アリール、置換又は無置換の、分岐鎖又は直鎖ヘテロアリールであり、
xは、1~10の整数であり、
nは、1~3の整数であり、mは、0~20の整数であり、pは、0又は1であり、ここで、m=p=0である場合、R102は、水素であり、
n及びmのうちの少なくとも1つが2である場合、R103と式(201)における窒素とは、式(202)又は式(203)に示される構造を形成する。
【0132】
【化9】
【0133】
ただし、g、e及びfは、それぞれ独立して1~6の整数であり、「HCC」は、炭化水素鎖を表し、各Nは、式(201)における窒素原子を表す。
【0134】
いくつかの実施形態において、R103は、ポリアミンである。他の実施形態において、R103は、ケタールである。いくつかの実施形態において、式(201)におけるR101及びR102のそれぞれは、独立して、任意に置換又は無置換の、分岐鎖又は直鎖アルキル又はアルケニルであり、前記アルキル又はアルケニルは、3~約20個の炭素原子、例えば、8~約18個の炭素原子、及び0~4個の二重結合、例えば、0~2個の二重結合を有する。
【0135】
いくつかの実施形態において、nとmのそれぞれは、独立して1又は3である場合、R103は、下記式(204)~式(213)のいずれか1つであってもよい。
【0136】
【化10】
【0137】
式(204)~式(213)中、g、e及びfは、それぞれ独立して、1~6の整数であり、各「HCC」は、炭化水素鎖を表し、各は、R103と式(201)における窒素原子との結合可能点を示し、任意の位置上の各Hは、式(201)における窒素原子との結合を実現するために置換されてもよい。
【0138】
式(201)に示される化合物は、中国特許出願公開第103380113号明細書の記載により調製されてもよい。
【0139】
いくつかの実施形態において、前記有機アミンは、式(214)に示される有機アミン及び/又は式(215)に示される有機アミンである。
【0140】
【化11】
【0141】
前記補助脂質は、コレステロール、コレステロールのアナログ及び/又はコレステロールの誘導体であり、
前記ポリエチレングリコール化脂質は、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)]-2000である。
【0142】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物において、前記有機アミン、前記補助脂質及び前記ポリエチレングリコール化脂質のモル比は、(19.7~80):(19.7~80):(0.3~50)であり、例えば、(50~70):(20~40):(3~20)であってもよい。
【0143】
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAと上記アミン含有トランスフェクション試薬により形成された医薬組成物の粒子は、約30nm~約200nmの平均径を有し、一般的に約40nm~約135nmであり、より一般的には、当該リポソーム粒子の平均径は、約50nm~約120nm、約50nm~約100nm、約60nm~約90nm又は約70nm~約90nmであり、例えば、当該リポソーム粒子の平均径は、約30、40、50、60、70、75、80、85、90、100、110、120、130、140、150又は160nmである。
【0144】
いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAと上記アミン含有トランスフェクション試薬により形成された医薬組成物において、siRNAと全脂質(例えば有機アミン、補助脂質及び/又はポリエチレングリコール化脂質)の重量比(重量/重量比)は、約1:1~約1:50、約1:1~約1:30、約1:3~約1:20、約1:4~約1:18、約1:5~約1:17、約1:5~約1:15、約1:5~約1:12、約1:6~約1:12又は約1:6~約1:10の範囲内にあり、例えば、本開示のsiRNAと全脂質の重量比は、約1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17又は1:18である。
【0145】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、市販時に各成分が独立して存在してもよく、使用時に液体製剤として存在してもよい。いくつかの実施形態において、本開示により提供されるsiRNAと上記薬学的に許容可能な担体により形成された医薬組成物は、既知の各種の方法に従い調製されてもよく、従来のsiRNAの代わりに本開示により提供されるsiRNAを用いればよい。いくつかの実施形態において、以下の方法に従い調製されてもよい。
【0146】
有機アミン、補助脂質及びポリエチレングリコール化脂質を上記モル比でアルコールに懸濁させ均一に混合して脂質溶液を得る。アルコールの用量は、得られた脂質溶液の総質量濃度が2~25mg/mL、例えば、8~18mg/mLとなるように決定される。前記アルコールは、薬学的に許容可能なアルコール、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400などの、室温付近で液体であるアルコールから選択される1つ又は複数であり、例えばエタノールであってもよい。
【0147】
本開示により提供されるsiRNAを緩衝塩溶液に溶解し、siRNA水溶液を得る。緩衝塩溶液の濃度は、0.05~0.5Mであり、例えば、0.1~0.2Mであってもよく、緩衝塩溶液のpHは、4.0~5.5に調節され、例えば、5.0~5.2であってもよく、緩衝塩溶液の用量は、siRNAの濃度が0.6mg/mL以下、例えば、0.2~0.4mg/mLとなるように決定される。前記緩衝塩は、可溶性酢酸塩、可溶性クエン酸塩から選択される1つ又は複数であり、例えば、酢酸ナトリウム及び/又は酢酸カリウムであってもよい。
【0148】
脂質溶液とsiRNA水溶液を混合した後、得られた生成物を40~60℃で少なくとも2分間、例えば、5~30分間インキュベートし、インキュベートしたリポソーム製剤を得る。脂質溶液とsiRNA水溶液の体積比は1:(2~5)であり、例えば、1:4であってもよい。
【0149】
インキュベートしたリポソーム製剤を濃縮又は希釈し、不純物を除去して除菌し、本開示により提供される医薬組成物を得る。その物理化学的パラメータとしては、pHが6.5~8、封入効率が80%以上、粒子径が40~200nm、多分散指数が0.30以下、浸透圧が250~400mOsm/kgである。例えば、物理化学的パラメータは、pHが7.2~7.6、封入効率が90%以上、粒子径が60~100nm、多分散指数が0.20以下、浸透圧が300~400mOsm/kgであってもよい。
【0150】
濃縮又は希釈は、不純物を除去する前、不純物を除去した後、又は不純物を除去すると同時に行われてもよい。不純物を除去する方法としては、従来の各種の方法を用いてもよく、例えば、タンジェンシャルフロー系、中空糸カラムを用い、100KDaの条件で限外濾過し、限外濾過交換溶液をpH7.4のリン酸塩緩衝液(PBS)としてもよい。除菌方法としては、従来の各種の方法を用いてもよく、例えば、0.22μmのフィルターで濾過して除菌してもよい。
【0151】
siRNA複合体
更に別の態様において、本開示は、siRNA複合体を提供し、前記siRNA複合体は、上記siRNAと、当該siRNAに複合して結合される複合基とを含む。
【0152】
一般的には、前記複合基は、薬学的に許容可能な少なくとも1つの標的基及び/又は送達補助基を含む。いくつかの実施形態において、前記複合基は、リンカー(linker)を更に含み、前記リンカー及び/又は前記標的基又は前記送達補助基は、順に結合されている。いくつかの実施形態において、前記標的基は、1~6個である。いくつかの実施形態において、前記標的基は、2~4個である。前記siRNA分子は、前記複合基に非共有結合的又は共有結合的に複合されてもよく、例えば、前記複合基に共有結合的に複合されてもよい。siRNAと複合基との複合部位は、siRNAのセンス鎖の3’末端又は5’末端にあってもよく、アンチセンス鎖の5’末端にあってもよく、siRNAの内部配列にあってもよい。いくつかの実施形態において、前記siRNAと複合基との複合部位は、siRNAのセンス鎖の3’末端にある。いくつかの実施形態において、前記複合基は、ヌクレオチドのリン酸基、2’-位のヒドロキシ又は塩基に結合されてもよい。いくつかの実施形態において、前記複合基は、3’-位のヒドロキシに結合されてもよく、この場合、ヌクレオチド間が2’-5’リン酸ジエステル結合により結合されている。複合基は、siRNA鎖の末端に結合される場合、通常ヌクレオチドのリン酸基に結合され、siRNAの内部配列に結合される場合、通常リボース糖環又は塩基に結合される。各種の結合方法については、Muthiah Manoharan et.al. siRNA conjugates carrying sequentially assembled trivalent N-acetylgalactosamine linked through nucleosides elicit robust gene silencing in vivo in hepatocytes. ACS Chemical biology,2015,10(5): 1181-7を参照することができる。
【0153】
いくつかの実施形態において、前記siRNAと複合基との間が酸不安定又は還元可能な化学結合により結合されてもよく、細胞エンドソームの酸性環境で、これらの化学結合が分解され、siRNAが遊離状態になることができる。分解できない複合方法については、複合基は、siRNAのセンス鎖に結合され、複合によるsiRNA活性への影響をできるだけ低下させることができる。
【0154】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に許容可能な標的基は、siRNA投与分野で通常用いられるリガンドであってもよい。いくつかの実施形態において、前記各リガンドは、細胞表面受容体と結合できるリガンドから独立して選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの標的リガンドは、中枢神経系(CNS)組織への送達を媒介する受容体を標的とする。これらのリガンドの種類は、当業者に公知であり、それらの作用として、一般的に標的細胞表面の特異的受容体と結合し、リガンドに結合されるsiRNAの標的細胞への送達を媒介する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの前記標的基は、RPTOR遺伝子を発現する細胞表面受容体と結合できるリガンドから選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの標的基は、肝の実質細胞表面の受容体を標的とするリガンドである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つ又は各標的基は、肝細胞表面のアシアロ糖タンパク質受容体を標的とするリガンドである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つ又は各標的基は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)である。いくつかの実施形態において、本開示の複合体は、CN110959011Aに開示された各種のsiRNA複合体構造を有し、引用によりその開示内容が全体として本明細書に組み込まれる。
【0155】
いくつかの実施形態において、本開示の複合体は、式(301)に示される構造を有する。
【0156】
【化12】
【0157】
ただし、Nuは、本開示のsiRNAによって形成されるsiRNA基を表す。いくつかの実施形態において、前記siRNA複合体は、式(301)に示される構造を有し、ただし、Nuは、siRPTORa2-M1S、siRPTORb2-M1S、siRPTORc2-M1S、siRPTORc1-T1S及びsiRPTORc1-T2Sのうちの1つに対応する配列を有し、前記複合基は、前記NuにおけるsiRNAセンス鎖の3’末端のヌクレオチドのリボース基の3’位に結合され、前記siRNA複合体は、ナトリウム塩形態である。
【0158】
いくつかの実施形態において、各前記標的基は、RPTOR遺伝子を発現する細胞表面受容体と結合できるリガンドから選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの標的基は、CNSの標的細胞表面の受容体を標的とするリガンドである。いくつかの実施形態において、各標的基は、CNSの標的細胞表面の受容体を標的とするリガンドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、siRNAと複合して、特異的なCNS組織への送達を実現することができ、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの標的基は、ペプチドリガンドである。いくつかの実施形態において、各標的基は、ペプチドリガンドである。いくつかの実施形態において、標的リガンドは、アンギオテンシン2、リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)リガンド、bEnd.3細胞結合リガンド、トランスフェリン受容体(TfR)リガンド、マンノース受容体リガンド、グルコーストランスポーター及びLDL受容体リガンドからなる群から選択される。例えば、中国特許出願公開第112400018号明細書に記載された各種の標的基(例えば、段落[0856]に記載されたリガンド)があり、引用によりその開示内容が全体として本明細書に組み込まれる。
【0159】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に許容可能な送達補助基は、脂肪族化合物又は脂環式化合物を含む親油基であってもよい。いくつかの実施形態において,親油基は、直鎖脂肪族炭化水素、分岐鎖脂肪族炭化水素又はステロイドを含む。いくつかの実施形態において、親油基は、飽和又は不飽和のC4-C30炭化水素鎖を含む。いくつかの実施例において、親油基は、飽和又は不飽和のC-C18炭化水素鎖(例えば、直鎖C-C18アルキル又はアルケニル)を含む。いくつかの実施例において、親油基は、飽和又は不飽和のC16炭化水素鎖(例えば、直鎖C16アルキル又はアルケニル)を含む。いくつかの実施例において、親油基は、C6-C30脂肪族アシルであり、前記C6-C30脂肪族アシルとは、C6-C30脂肪酸からヒドロキシを除去した後の残りの原子団を指す。いくつかの実施形態において、親油基は、siRNAに非共有結合的又は共有結合的に複合される。いくつかの実施形態において、親油基とsiRNAとの複合部位は、siRNAのセンス鎖の3’末端又は5’末端にある。いくつかの実施形態において、親油基とsiRNAとの複合部位は、アンチセンス鎖の5’末端にある。いくつかの実施形態において、親油基とsiRNAとの複合部位は、siRNAの内部配列にあってもよい。いくつかの実施形態において、親油基は、ヌクレオチドのリン酸基、リボース糖環又は塩基に結合される。いくつかの実施形態では、親油基がヌクレオチドの塩基に複合される場合、好ましい位置は、塩基対合に必要な水素結合相互作用を妨げない位置である。いくつかの実施形態において、親油基は、ヌクレオチドのリン酸基、2’-位のヒドロキシ又は塩基に結合される。いくつかの実施形態において、親油基は、2’-位のヒドロキシを介してリボース糖環に複合されてもよい。送達補助基をsiRNAに結合する様々な方法は、当業者に周知であり、例えば、中国特許出願公開第112400018号明細書に記載された各種の調製方法(例えば、段落[1053]~[1065]に記載された調製方法)があり、引用によりその開示内容が全体として本明細書に組み込まれる。
【0160】
いくつかの実施形態において、前記標的基は、1つ又は複数のリンカーを介してsiRNAに複合される。本開示の発明者は、本開示のsiRNA複合体が、顕著に向上した血漿中安定性を有するとともに、高いRPTOR mRNAサイレンシング活性を更に示すことを意外にも見出した。いくつかの実施形態において、本開示のsiRNAは、表1a、1b及び1cに示されるsiRNAのうちの1つであってもよい。これらのsiRNAを用いると、本開示のsiRNA複合体は、より高いRPTOR mRNAサイレンシング活性を示す。
【0161】
表1a 本開示の第1種のsiRNA
【表1】
【0162】
表1b 本開示の第2種のsiRNA
【表2】
【0163】
表1c 本開示の第3種のsiRNA
【表3】
【0164】
ここで、大文字C、G、U、Aは、ヌクレオチドの塩基配列を表し、小文字mは、当該文字mの左側に隣接する1つのヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであることを表し、小文字fは、当該文字fの左側に隣接する1つのヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであることを表し、小文字sは、当該文字の左右2つのヌクレオチド間がチオリン酸エステル基により結合されていることを表し、P1は、当該P1の右側に隣接する1つのヌクレオチドが5’-リン酸ヌクレオチド又は5’-リン酸アナログ修飾ヌクレオチドであることを表す。いくつかの実施形態において、P1は、修飾が特定されたVP、Ps又はPを表し、組合せ文字VPは、当該組合せ文字VPの右側に隣接する1つのヌクレオチドがビニルリン酸エステル(5’-(E)-vinylphosphonate、E-VP)修飾ヌクレオチドであることを表し、組合せ文字Psは、当該組合せ文字Psの右側に隣接する1つのヌクレオチドがチオリン酸エステル修飾ヌクレオチドであることを表し、大文字Pは、当該文字Pの右側に隣接する1つのヌクレオチドが5’-リン酸ヌクレオチドであることを表す。組合せ文字moeは、当該組合せ文字moeの左側に隣接する1つのヌクレオチドが2’-O-メトキシエチル修飾を有するヌクレオチドであることを表す。例えば、組合せ文字Gmoeは、当該組合せ文字moeの左側に隣接するヌクレオチドが、塩基がグアニンであり、2’-O-メトキシエチル修飾を有するヌクレオチドであることを表す。また、組合せ文字Cmoeは、当該組合せ文字moeの左側に隣接するヌクレオチドが、塩基が5-メチルシトシンであり、2’-O-メトキシエチル修飾を有するヌクレオチドであることを表す。また、上記表に示される配列中の各Uは、任意にTで置換されてもよく、siRNAの活性又はオフターゲット効果に明らかな影響を与えない。
【0165】
本開示に記載されたsiRNA、医薬組成物又はsiRNA複合体において、各隣接するヌクレオチド間がリン酸ジエステル結合又はチオリン酸ジエステル結合により結合され、リン酸ジエステル結合又はチオリン酸ジエステル結合における非架橋酸素原子又は硫黄原子は、負電荷を帯び、ヒドロキシ又はスルフヒドリルとして存在してもよく、ヒドロキシ又はスルフヒドリルにおける水素イオンは、一部又は全部がカチオンで置換されてもよい。前記カチオンは、任意のカチオン、例えば、金属カチオン、アンモニウムイオンNH 、有機アンモニウムカチオンのうちの1つであってもよい。溶解性の向上を考慮すると、1つの実施形態において、前記カチオンは、アルカリ金属イオン、第3級アミンにより形成されたアンモニウムカチオン及び4級アンモニウムカチオンから選択される1つ又は複数である。アルカリ金属イオンは、K及び/又はNaであってもよく、第3級アミンにより形成されたカチオンは、トリエチルアミンにより形成されたアンモニウムイオン、及び/又はN,N-ジイソプロピルエチルアミンにより形成されたアンモニウムイオンであってもよい。したがって、本開示に記載されたsiRNA又はsiRNA複合体は、少なくとも一部が塩として存在してもよい。一態様において、リン酸ジエステル結合又はチオリン酸ジエステル結合における非架橋酸素原子又は硫黄原子は、少なくとも一部がナトリウムイオンに結合され、本開示に記載されたsiRNA又はsiRNA複合体は、ナトリウム塩又は部分ナトリウム塩として存在する。
【0166】
当業者であれば明らかに知っているように、対応する修飾を有するヌクレオシドモノマーを用いることにより修飾ヌクレオチド基を本開示に記載されたsiRNAに導入することができる。対応する修飾を有するヌクレオシドモノマーを調製する方法、及び修飾ヌクレオチド基をsiRNAに導入する方法も、当業者によく知られている。全ての修飾ヌクレオシドモノマーは、いずれも市販品として購入されてもよく、既知の方法により調製されてもよい。
【0167】
任意の合理的な合成経路により本開示のsiRNA複合体を調製してもよい。例えば、標的基と、ホスホルアミダイトと反応して共有結合を形成できる活性な反応性基とを含む複合分子の場合、まず、当該複合分子内の活性基を保護剤で保護した後に固体担体に結合し、次に、ホスホルアミダイト固相合成方法を用いて、siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖のヌクレオチドの種類と順序により、3’から5’に向かってヌクレオシドモノマーを1つずつ結合し、各ヌクレオシドモノマーの結合が脱保護、カップリング、キャッピング、酸化又は硫化の4つの反応を含み、siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖を単離し、アニールを行い、それにより本開示のsiRNA複合体を得る。
【0168】
更に、siRNA複合体の調製は、既存の文献の開示内容を参照して行うこともできる。例えば、国際公開第2019010274号には、実施例1に、特定の構造を有する連結基及び標的リガンドを反応させてsiRNAに順に結合する方法が記載されている。引用によりその開示内容が全体として本明細書に組み込まれる。
【0169】
本開示のsiRNA、当該siRNAを含む医薬組成物及びsiRNA複合体の使用
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示のsiRNA、及び/又は医薬組成物、及び/又はsiRNA複合体の、RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状を治療及び予防する薬物の調製における使用を提供する。いくつかの実施形態において、前記RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状は、mTORC1の活性化による疾患、及び細胞のオートファジー機能異常に関連する疾患である。いくつかの実施形態において、前記神経変性疾患に関連する疾患又は症状はアルツハイマー病及び/又はパーキンソン病であり、好ましくは、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態において、前記細胞のオートファジー機能異常に関連する疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎である。
【0170】
いくつかの実施形態において、本開示は、RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状の予防及び/又は治療方法を提供し、当該方法は、本開示のsiRNA及び/又は医薬組成物及び/又はsiRNA複合体を有効量で、それを必要とする被験体に投与することを含む。本開示のsiRNA活性成分を、それを必要とする被験体に投与することにより、RNA干渉機構により疾患を予防及び/又は治療する目的を達成することができる。したがって、本開示のsiRNA及び/又は医薬組成物及び/又はsiRNA複合体は、RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状の予防及び/又は治療に用いられてもよく、RPTOR機能調節に関連する疾患又は症状を予防及び/又は治療する薬物の調製に用いられてもよい。
【0171】
本明細書で用いられる用語「薬物投与/投与」とは、本開示のsiRNA、医薬組成物及び/又はsiRNA複合体を少なくとも一部で所望の部位に局在化して所望の効果を生じさせる方法又は経路により、本開示のsiRNA、医薬組成物及び/又はsiRNA複合体を被験体の体内に入れることを指す。本開示の方法に適した投与経路は、局所投与と全身投与を含む。一般的には、局所投与により、被験体の体循環よりも多くのsiRNA複合体が特定の部位に送達されるが、全身投与により、本開示のsiRNA、医薬組成物及び/又はsiRNA複合体が被験体の基本体循環に送達される。本開示が神経変性疾患の予防及び/又は治療手段を提供することを意図することを考慮すると、いくつかの実施形態において、薬物を中枢神経系組織に送達することができる投与方法が用いられる。いくつかの実施形態において、薬物を髄腔内に送達することができる投与方法が用いられる。いくつかの実施形態において、薬物を脊髄液に注射することができる投与方法が用いられる。
【0172】
本分野で既知の任意の適切な経路で被験体に投与することができ、前記経路としては、経口投与又は胃腸外経路、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、気管内投与(エアロゾル)、脳室内投与、髄腔内投与、鼻部投与、直腸投与及び局所投与(口腔内投与と舌下投与を含む)を含むが、これらに限定されない。投与頻度は、1日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月又は1年に1回又は複数回であってもよい。本開示に記載されたsiRNA、医薬組成物又はsiRNA複合体の用量は、本分野における通常の用量であってもよく、前記用量は、各種のパラメータ、特に被験体の年齢、体重及び性別により決定されてもよい。細胞培養又は実験動物で標準薬学的手順により毒性と治療効果を測定し、例えば、LD50(50%の群体を死亡させる致死用量)及びED50(計量的反応において、50%の最大反応強度を引き起こすことができる用量を指し、計数的反応において、50%の実験対象に陽性反応が発生する場合の用量を指す)を測定してもよい。細胞培養分析及び動物研究により得られたデータに基づいてヒト用量の範囲を得ることができる。いくつかの実施形態において、前記siRNA、医薬組成物又はsiRNA複合体から製造された製剤の投与過程における用量は、投与方式によって調整される。
【0173】
本開示に記載されたsiRNA、医薬組成物、及び/又はsiRNA複合体を投与する場合、例えば、雄性又は雌性、6~12週齢、体重18~25gのC57BL/6J又は30~45gのob/obマウスに対するsiRNAの量は、次のとおりである。(i)siRNA複合体について、そのsiRNA用量は0.001~100mg/kg体重であってもよく、いくつかの実施形態においては0.01~50mg/kg体重であり、更なる実施形態においては0.05~20mg/kg体重であり、より更なる実施形態においては0.1~15mg/kg体重であり、また更なる実施形態においては0.1~10mg/kg体重である。(ii)siRNA及び薬学的に許容可能な担体により形成された医薬組成物について、そのsiRNA用量は0.001~50mg/kg体重であってもよく、いくつかの実施形態においては0.01~10mg/kg体重であり、更なる実施形態においては0.05~5mg/kg体重であり、より更なる実施形態においては0.1~3mg/kg体重である。
【0174】
いくつかの実施形態において、本開示は、細胞におけるRPTOR遺伝子発現の抑制方法を提供し、当該方法は、本開示のsiRNA及び/又は医薬組成物及び/又はsiRNA複合体を有効量で前記細胞と接触させ、本開示のsiRNA及び/又は医薬組成物及び/又はsiRNA複合体を前記細胞に導入し、RNA干渉機構により細胞におけるRPTOR遺伝子発現を抑制する目的を達成することを含む。
【0175】
本開示により提供される方法により細胞におけるRPTOR遺伝子発現を抑制し、提供される修飾siRNA、医薬組成物及び/又はsiRNA複合体におけるsiRNA用量は、一般的に、標的遺伝子の発現を低減でき、標的細胞表面では1pM~1μM、0.01nM~100nM、0.05nM~50nM、又は0.05nM~約5nMの細胞外濃度となる量である。当該局所濃度を達成するのに必要な量は、送達方法、送達部位、送達部位と標的細胞又は組織との間の細胞層の数、送達経路(局所か全身か)等を含む各種の因子により変化する。送達部位での濃度は、標的細胞又は組織の表面での濃度よりも顕著に高くてもよい。
【0176】
キット
一態様において、本開示は、キットを提供し、前記キットは、有効量の本開示のsiRNA、医薬組成物及びsiRNA複合体のうちの少なくとも1種を含む。
【0177】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたキットは、容器でsiRNAを提供することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたキットは、薬学的に許容可能な賦形剤を提供する容器を含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記キットには、他の成分、例えば、安定化剤又は防腐剤などが含まれてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたキットは、本明細書に記載されたsiRNAを提供する容器とは別の容器で少なくとも1種の他の治療剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記キットは、siRNAと薬学的に許容可能な担体及び/又は添加剤又は他の成分(存在する場合)を混合するための説明書を含んでもよい。
【0178】
本開示のキットにおいて、前記siRNA及び薬学的に許容可能な担体及び/又は添加剤、並びに、前記修飾siRNA、医薬組成物及び/又はsiRNA複合体、及び/又は薬学的に許容可能な担体及び/又は添加剤は、任意の形態、例えば、液体形態、乾燥形態又は凍結乾燥形態で提供されてもよい。いくつかの実施形態において、前記siRNA及び薬学的に許容可能な担体及び/又は添加剤、並びに前記医薬組成物及び/又はsiRNA複合体の薬学的に許容可能な担体及び/又は添加剤は、基本的にクリーン及び/又は無菌である。いくつかの実施形態において、本開示のキットで無菌水を提供することができる。
【0179】
以下、実施例により本開示を更に説明するが、本開示は、これによって何ら制限されない。
【実施例
【0180】
特に説明がない限り、以下の実施例で用いられる試薬、培地は、いずれも市販品であり、用いられる核酸電気泳動、real-time PCRなどの操作は、いずれもMolecular Cloning(Cold Spring Harbor LBboratory Press(1989))に記載された方法を参照して行われる。
【0181】
別に説明がない限り、以下で提供される試薬割合は、いずれも体積比(v/v)として計算される。データ分析では、Graphpad prism8.0統計分析ソフトウェアが用いられる。
【0182】
特に説明がない限り、以下の実施例で用いられる試薬、培地は、いずれも市販品であり、用いられる核酸電気泳動、real-time PCRなどの操作は、いずれもMolecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))に記載された方法を参照して行われる。
【0183】
調製例1~5:本開示により提供されるsiRNAの合成
固相合成方法により、それぞれ表2に列挙されたsiRNA配列を合成し、等モルの表2における相補的なセンス鎖及びアンチセンス鎖をDEPC水にそれぞれ溶解し、その後にアニールして、本開示により提供されるsiRPTORa2-M1X、siRPTORb2-M1X、siRPTORc2-M1X、siRPTORc1-T2S及びsiRPTORc1-M1Sを得た。超純水(Milli-Q超純水装置、抵抗率18.2MΩcm(25℃))を用いてsiRNAを濃度0.2g/mL(siRNAとして)に希釈した後、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS、Liquid Chromatography-Mass Spectrometry、Waters社から購入、型番:LCT Premier)を用いて、分子量を検出した。実測値が理論値と一致しており、合成されたsiRNAが目的設計の二本鎖核酸配列であることが示された。
【0184】
比較調製例1:参照siRNAの合成
固相合成方法により、それぞれ表2における、siRNA番号がNCのsiRNAに対応するセンス鎖及びアンチセンス鎖を合成した。等モルのセンス鎖及びアンチセンス鎖をDEPC水に溶解し、その後にアニールして、参照siRNAを得、番号をNCにした。NCは、RPTOR mRNAと配列相同性を有さない陰性対照siRNAである。
【0185】
表2 siRNA配列
【表4】
【0186】
ここで、大文字C、G、U、Aは、ヌクレオチドの塩基配列を表し、小文字mは、当該文字mの左側に隣接する1つのヌクレオチドがメトキシ修飾ヌクレオチドであることを表し、小文字fは、当該文字fの左側に隣接する1つのヌクレオチドがフルオロ修飾ヌクレオチドであることを表し、小文字sは、当該文字sの左右の2つのヌクレオチド間がチオリン酸エステル基により結合されていることを表し、大文字Pは、当該文字Pの右側に隣接する1つのヌクレオチドが5’-リン酸ヌクレオチドであることを表し、組合せ文字moeは、当該組合せ文字moeの左側に隣接する1つのヌクレオチドが2’-O-メトキシエチル修飾を有するヌクレオチドであることを表す。
【0187】
上記本開示のsiRNA又は参照siRNAの調製が完了した後、固体粉末に凍結乾燥して使用に備えた。
【0188】
調製例6及び7:複合体1及び複合体2の合成
国際公開第2019/105437号の調製例1における「複合体1」の調製方法により本開示の複合体1を得たが、センス鎖及びアンチセンス鎖の一本鎖を調製したとき、表2におけるsiRPTORc1-T2Sのセンス鎖とアンチセンス鎖の配列に従って、対応する位置のヌクレオシドモノマーをそれぞれ1つずつ結合した点のみが異なっている。液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分子量を検出した。その結果、センス鎖の理論値が7468.3、センス鎖の実測値が7467.2であり、アンチセンス鎖の理論値が7107.7、アンチセンス鎖の実測値が7106.7であった。実測値が理論値と一致しており、合成された複合体1が、式(301)に示される基を含む、目的設計の二本鎖核酸配列であることが決定された。複合体1の構造を、以下の式(301)により示す。
【0189】
【化13】
【0190】
式(301)中のNuは、本開示の表1におけるsiRPTORc1-T2Sであり、複合基は、siRPTORc1-T2Sのセンス鎖の3’末端のリボース基の3’位に結合され、前記複合体は、ナトリウム塩形態である。
【0191】
上記方法により本開示の複合体2を調製したが、センス鎖及びアンチセンス鎖の一本鎖を調製したとき、表2におけるsiRPTORc1-T2Sのセンス鎖とアンチセンス鎖の配列に従って、対応する位置のヌクレオシドモノマーをそれぞれ1つずつ結合した点のみが異なっている。液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分子量を検出した。その結果、センス鎖の理論値が7468.3、センス鎖の実測値が7467.2であり、アンチセンス鎖の理論値が7063.7、アンチセンス鎖の実測値が7062.7である。実測値が理論値と一致しており、合成された複合体2が、式(301)に示される基を含む、目的設計の二本鎖核酸配列であることが決定された。複合体2の構造を、以下の式(301)により示す。式(301)中のNuは、本開示の表1におけるsiRPTORc1-M1Sであり、複合基は、siRPTORc1-M1Sのセンス鎖の3’末端のリボース基の3’位に結合され、前記複合体は、ナトリウム塩形態である。
【0192】
実験例1:本開示のsiRNAの体外(in vitro)における抑制活性
本実験例では、本開示のsiRPTORa2-M1X、siRPTORb2-M1X及びsiRPTORc2-M1Xの体外HepG2ヒト肝癌細胞における抑制活性を考察した。
【0193】
10%のウシ胎児血清(FBS、RMBIO社)を添加したDMEM培地(Hyclone社)でHepG2ヒト肝癌細胞(南京科佰生物技術有限公司から購入)を37℃で5%CO/95%空気含有インキュベーターにおいて培養した。
【0194】
HepG2細胞を2.0x10個の細胞/ウェルで12ウェルプレートに接種し、1ウェルあたり1mLの細胞液で24h培養した後、培養ウェル中の培地をすべて吸引し、各ウェルに別途500μLのOpti-MEM培地(GIBCO社)を添加した。
【0195】
PBS緩衝液を用いて、調製例1~3で調製したsiRPTORa2-M1X、siRPTORb2-M1X及びsiRPTORc2-M1Xから、それぞれ濃度20μMのsiRNA希釈標準溶液を調製した。
【0196】
各siRNAに対して、1A1溶液を調製し、1部の1A1溶液は、48.5μLのOpti-MEM培地及び1.5μLの20μMのsiRNA希釈標準溶液を含む。
【0197】
1B溶液を調製し、1部の1B溶液は、49μLのOpti-MEM培地及び1μLのLipofectamineTM2000(Invitrogen社)を含む。
【0198】
各siRNAに対して、それぞれ1部の1B溶液と1部の1A1溶液を室温で20minインキュベートして、トランスフェクション複合体1Xa、1Xb又は1Xcを得た。
【0199】
1部の1B溶液を50μLのOpti-MEM培地と混合し、室温で20minインキュベートして、トランスフェクション複合体1Xを得た。
【0200】
2つの培養ウェル(いずれも上記HepG2細胞及び500μLのOpti-MEM培地を含む培養ウェルであり、以下同じ)中に、それぞれトランスフェクション複合体1Xaを100μL/ウェルの添加量で添加し、均一に混合して、最終濃度が50nMのトランスフェクション混合物を得、試験群1と記した。
【0201】
2つの培養ウェル(いずれも上記HepG2細胞及び500μLのOpti-MEM培地を含む培養ウェルであり、以下同じ)中に、それぞれトランスフェクション複合体1Xbを100μL/ウェルの添加量で添加し、均一に混合して、最終濃度が50nMのトランスフェクション混合物を得、試験群2と記した。
【0202】
2つの培養ウェル(いずれも上記HepG2細胞及び500μLのOpti-MEM培地を含む培養ウェルであり、以下同じ)中に、それぞれトランスフェクション複合体1Xcを100μL/ウェルの添加量で添加し、均一に混合して、最終濃度が50nMのトランスフェクション混合物を得、試験群3と記した。
【0203】
別の2つの培養ウェルに、それぞれトランスフェクション複合体1Xを100μL/ウェルの添加量で添加し、均一に混合して、siRNAを含まないトランスフェクション混合物を得、ブランク対照群と記した。
【0204】
上記試験群1~3及びブランク対照群を培養ウェルで4h培養した後、各培養ウェル中の上清を吸引し、各ウェルに1mLのOpti-MEM培地を添加した。12ウェルプレートをCOインキュベーターに置いて、37℃で培養を24h継続した。
【0205】
生工生物社のUNIQ-10カラム式全RNA抽出キット(生工生物社から購入、番号:TC13KA4109)を用いて、説明書に記載された方法に基づいて各ウェルの細胞中の全RNAを抽出した。
【0206】
各ウェルの細胞につき、それぞれ1μgの全RNAを取り、逆転写キットGoldenstarTM RT6 cDNA Synthesis Kit(北京ケイ科新業生物技術有限公司から購入)により提供された試薬を使用し、GoldenstarTM Oligo(dT)17をプライマーとして選択し、キットの説明書における逆転写操作工程に従って逆転写反応系20μLを調製し、各ウェルの細胞の全RNAを逆転写した。逆転写の条件は、以下のとおりである。各逆転写反応系に対して、逆転写反応系を50℃で50minインキュベートし、次に85℃で5minインキュベートし、最後に4℃で30sインキュベートし、反応が終了した後、逆転写反応系にDEPC水80μLを添加して、cDNAを含む溶液を得た。
【0207】
各逆転写反応系に対して、それぞれ上記cDNAを含む溶液5μLをテンプレートとし、NovoStart(登録商標)SYBR qPCR SuperMix Plusキット(近岸蛋白質科技有限公司から購入、番号E096-01B)により提供された試薬を使用してqPCR反応系20μLを調製した。目的遺伝子RPTOR及び内因性参照遺伝子GAPDHを増幅するためのPCRプライマー配列は、表3に示すとおりであり、各プライマーの最終濃度は、0.25μMである。各qPCR反応系をABI StepOnePlus Real-Time PCR装置に置き、3段階法を用いて増幅した。増幅プロセスとしては、95℃で10min予め変性し、次に95℃で30s変性し、60℃で30sアニールし、72℃で30s伸長し、上記変性、アニール、伸長工程を合計40回繰り返して、目的遺伝子RPTOR及び内因性参照遺伝子GAPDHを増幅した生成物W1を得た。生成物W1を直ちに95℃で15s、60℃で1min、95℃で15s順にインキュベートし、定量的リアルタイムPCR装置によりそれぞれ生成物W1中の目的遺伝子及び内因性参照遺伝子GAPDHの溶解曲線を回収し、目的遺伝子RPTOR及び内因性参照遺伝子GAPDHのCt値を得た。
【0208】
表3 プライマー情報
【表5】
【0209】
比較Ct(ΔΔCt)法を用い、各試験群における目的遺伝子RPTORを相対的かつ定量的に算出した。算出方法は以下のとおりである。
【0210】
ΔCt(試験群)=Ct(試験群の目的遺伝子)-Ct(試験群の内因性参照遺伝子)
ΔCt(対照群)=Ct(対照群の目的遺伝子)-Ct(対照群の内因性参照遺伝子)
ΔΔCt(試験群)=ΔCt(試験群)-ΔCt(対照群の平均値)
ΔΔCt(対照群)=ΔCt(対照群)-ΔCt(対照群の平均値)
ΔCt(対照群の平均値)は、対照群の2つの培養ウェルのそれぞれのΔCt(対照群)の算術平均値である。それにより、試験群及び対照群の各培養ウェルは、1つのΔΔCt値に対応する。
【0211】
対照群の平均値を基準として、試験群RPTOR mRNAの発現レベルを正規化し、ブランク対照群RPTOR mRNAの発現レベルの平均値を100%と定義する。
【0212】
試験群RPTOR mRNAの相対的発現レベル=2-ΔΔCt(試験群)×100%
試験群RPTOR mRNAの抑制率=(1-試験群RPTOR mRNAの相対的発現レベル)×100%
【0213】
実験結果を図1に示した。
【0214】
比較実験例1:参照siRNA NCの体外(in vitro)における抑制活性
実験例1の方法により陰性参照siRNA NCの体外HepG2ヒト肝癌細胞における抑制活性を同時に考察したが、siRPTORa2-M1X、siRPTORb2-M1X又はsiRPTORc2-M1Xの代わりに比較調製例で調製した参照siRNA NCを用いて、濃度20μMのsiRNA希釈標準溶液を調製して試験した点のみが異なっている。結果を図1に示した。
【0215】
図1は、50nMの本開示のsiRNA及び参照siRNA NCをトランスフェクションした後の、体外HepG2ヒト肝癌細胞におけるRPTOR mRNAの相対的発現レベルを示すヒストグラムであり、図1において、NCは、参照siRNA NCを表す。図1の結果から分かるように、体外HepG2ヒト肝癌細胞において、50nMの濃度で、siRPTORa2-M1XのRPTOR mRNA抑制率が76.8%であり、50nMの濃度で、siRPTORb2-M1XのRPTOR mRNA抑制率が86.8%であり、50nMの濃度で、siRPTORc2-M1XのRPTOR mRNA抑制率が78.8%であり、優れたRPTOR mRNA抑制活性を示し、優れたRPTOR遺伝子発現抑制効果を示した。
【0216】
実験例2:本開示のsiRNAの体外(in vitro)における標的mRNA抑制活性
本実験例では、異なる濃度の本開示のsiRPTORa2-M1X、siRPTORb2-M1X及びsiRPTORc2-M1Xの体外HepG2ヒト肝癌細胞におけるRPTOR mRNA抑制活性を考察した。
【0217】
10%のウシ胎児血清(FBS、RMBIO社)を添加したDMEM培地(Hyclone社)でHepG2ヒト肝癌細胞(南京科佰生物技術有限公司から購入)を37℃で5%CO/95%空気含有インキュベーターにおいて培養した。
【0218】
HepG2細胞を2.0x10個の細胞/ウェルで12ウェルプレートに接種し、1ウェルあたり1mLの細胞液で24h培養した後、培養ウェル中の培地をすべて吸引し、各ウェルに別途500μLのOpti-MEM培地(GIBCO社)を添加した。
【0219】
各siRNAに対して、PBS緩衝液を用いて、調製例1~3で調製したsiRPTORa2-M1X、siRPTORb2-M1X及びsiRPTORc2-M1Xから、それぞれ濃度20μM、2μM及び0.2μMのsiRNA希釈標準溶液を調製した。
【0220】
各siRNAに対して、2A1溶液を調製し、1部の2A1溶液は、48.5μLのOpti-MEM培地及び1.5μLの濃度20μMのsiRNA希釈標準溶液を含み、それぞれ2A1a、2A1b又は2A1cのsiRNA希釈標準溶液を得た。
【0221】
各siRNAに対して、2A2溶液を調製し、1部の2A2溶液は、48.5μLのOpti-MEM培地及び1.5μLの濃度2μMのsiRNA希釈標準溶液を含み、それぞれ2A2a、2A2b又は2A2cのsiRNA希釈標準溶液を得た。
【0222】
各siRNAに対して、2A3溶液を調製し、1部の2A3溶液は、48.5μLのOpti-MEM培地及び1.5μLの濃度0.2μMのsiRNA希釈標準溶液を含み、それぞれ2A3a、2A3b又は2A3cのsiRNA希釈標準溶液を得た。
【0223】
2B溶液を調製し、1部の2B溶液は、49μLのOpti-MEM培地及び1μLのLipofectamineTM2000(Invitrogen社)を含む。
【0224】
2X0溶液を調製し、1部の2B溶液を50μLのOpti-MEM培地と混合し、室温で20minインキュベートして、ブランクトランスフェクション複合体2X0を得た。
【0225】
2X1溶液を調製し、1部の2B溶液を1部の2A1a溶液、1部の2A2a溶液及び1部の2A3a溶液とそれぞれ混合し、室温で20minインキュベートして、それぞれトランスフェクション複合体2Xa1、2Xa2及び2Xa3を得た。
【0226】
2X2溶液を調製し、1部の2B溶液を1部の2A1b溶液、1部の2A2b溶液及び1部の2A3b溶液とそれぞれ混合し、室温で20minインキュベートして、それぞれトランスフェクション複合体2Xb1、2Xb2及び2Xb3を得た。
【0227】
2X3溶液を調製し、1部の2B溶液を1部の2A1c溶液、1部の2A2c溶液及び1部の2A3c溶液とそれぞれ混合し、室温で20minインキュベートして、それぞれトランスフェクション複合体2Xc1、2Xc2及び2Xc3を得た。
【0228】
各siRNAに対して、2つの培養ウェル(いずれも上記HepG2細胞及び500μLのOpti-MEM培地を含む培養ウェルであり、以下同じ)中に、それぞれトランスフェクション複合体2Xa1、2Xa2又は2Xa3を100μL/ウェルの添加量で添加し、均一に混合して、siRPTORa2-M1Xを含む、最終濃度が50nM、5nM又は0.5nMのトランスフェクション混合物を得、試験群1と記した。
【0229】
各siRNAに対して、2つの培養ウェル(いずれも上記HepG2細胞及び500μLのOpti-MEM培地を含む培養ウェルであり、以下同じ)中に、それぞれトランスフェクション複合体2Xb1、2Xb2又は2Xb3を100μL/ウェルの添加量で添加し、均一に混合して、siRPTORb2-M1Xを含む、最終濃度が50nM、5nM又は0.5nMのトランスフェクション混合物を得、試験群2と記した。
【0230】
各siRNAに対して、2つの培養ウェル(いずれも上記HepG2細胞及び500μLのOpti-MEM培地を含む培養ウェルであり、以下同じ)中に、それぞれトランスフェクション複合体2Xc1、2Xc2又は2Xc3を100μL/ウェルの添加量で添加し、均一に混合して、siRPTORc2-M1Xを含む、最終濃度が50nM、5nM又は0.5nMのトランスフェクション混合物を得、試験群3と記した。
【0231】
別の2つの培養ウェルに、それぞれブランクトランスフェクション複合体2X0を100μL/ウェルの添加量で添加し、均一に混合して、siRNAを含まないトランスフェクション混合物を得、ブランク対照群と記した。
【0232】
上記試験群1~3及びブランク対照群を培養ウェルで4h培養した後、各培養ウェル中の上清を吸引し、各ウェルに1mLのOpti-MEM培地を添加した。12ウェルプレートをCOインキュベーターに置いて、37℃で培養を24h継続した。
【0233】
実験例1と同じ方法を用いて各ウェルの細胞中の全RNAを抽出し、逆転写して、各試験群における標的遺伝子RPTOR mRNAを相対的かつ定量的に算出した。結果を図2に示した。
【0234】
図2は、異なる濃度の本開示のsiRNAをトランスフェクションした後の、体外HepG2ヒト肝癌細胞におけるRPTOR mRNAの相対的発現レベルを示すヒストグラムである。図2の結果から分かるように、体外HepG2ヒト肝癌細胞において、siRPTORc2-M1Xが0.5nMの低濃度で少なくとも40.5%のRPTOR mRNA抑制率を示し、siRPTORa2-M1Xが5nMの濃度では少なくとも68.3%、50nMの濃度では少なくとも71.1%のRPTOR mRNA抑制率を示し、siRPTORb2-M1Xが50nMの濃度で86.4%に達するRPTOR mRNA抑制率を示しており、優れたRPTOR遺伝子発現抑制効果を示した。
【0235】
実験例3:siRNA複合体のマウス体内における抑制活性
調製例6及び7で調製して得た複合体1及び複合体2を、それぞれPBSに溶解し、3mg/mlのsiRNA複合体溶液(siRNAとして)とした。C57BL/6マウス(雌性、体重16~18g、6~8週齢、斯貝福公司から購入)をランダムに3群に分け、1群当たりマウス6匹とし、それぞれ番号を付けた。首後部に皮下注射する方式で、第1群の各マウスにそれぞれ上記siRNA複合体1溶液を投与し、投与前に体重を測定して記録し、投与体積を5mL/kgとして体重に応じて投与し、試験群1と記した。第2群の各マウスにそれぞれ上記siRNA複合体2溶液を投与し、投与前に体重を測定して記録し、投与体積を5mL/kgとして体重に応じて投与し、試験群2と記した。残りの群の各マウスに投与体積を5mL/kgとしてPBSを投与し、ブランク対照群とした。
【0236】
投与時点を1日目として、8日目に試験群及びブランク対照群の各マウスの肝臓組織を取り、RNAlaterで保存した。
【0237】
実験例1と同じ方法を用いて各ウェルの細胞中の全RNAを抽出し、逆転写して、各試験群における標的遺伝子RPTORを相対的かつ定量的に算出し、用いられるプライマー情報を上記表3に示し、ブランク対照群の結果を正規化した。結果を表4に示した。
【0238】
表4 siRNA複合体のマウス体内における抑制活性
【表6】
【0239】
結果から分かるように、ブランク対照群の結果と比較して、3mg/kgの濃度で、本開示の異なる修飾スキームのsiRNA複合体は、投与後1週間以内にC57BL/6jマウスにおいて依然として50%を超える体内RPTOR mRNA抑制率を示し、優れたRPTOR mRNA抑制活性と長時間の体内安定性を示した。
【0240】
上記実験結果から分かるように、本開示のsiRNAは、細胞におけるRPTOR遺伝子発現を効果的に抑制することができるため、mTORC1の異常活性化及び細胞のオートファジーに関連する疾患、例えばNASH又は神経変性疾患、又は関連する症状を治療及び/又は予防する薬物の調製において高い応用の可能性を示す。
【0241】
以上、本開示の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本開示の技術的思想範囲内に、本開示の技術手段に対して複数の簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更は、いずれも本開示の保護範囲に属する。
【0242】
なお、上記発明を実施するための形態に説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない場合に、任意の適切な方式で組み合わせることができる。不要な重複を回避するために、本開示は、可能なあらゆる組み合わせ方式を別途に説明しない。
【0243】
また、本開示の様々な異なる実施形態は、任意に組み合わせることができ、本開示の思想から逸脱しない限り、同様に本開示に開示された内容と見なすべきである。
図1
図2
【配列表】
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【国際調査報告】