(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】シランと疎水化ヒュームドシリカとを含む接着剤配合物
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20241219BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241219BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20241219BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20241219BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241219BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20241219BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09J201/00
C08L101/00
C08L83/06
C08K5/5419
C09J11/06
C09J11/04
C09J163/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533956
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2022084887
(87)【国際公開番号】W WO2023117440
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュルゲン ゲルハルド フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュロッサー
(72)【発明者】
【氏名】マリオ シュオルツ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ ヒューバー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AC031
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB031
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB121
4J002BC031
4J002BC051
4J002BD041
4J002BD121
4J002BE021
4J002BG021
4J002CC031
4J002CC211
4J002CD001
4J002CF001
4J002CH001
4J002CK001
4J002CL001
4J002CM041
4J002CN031
4J002CP032
4J002EX036
4J040EC001
4J040HA306
4J040HD32
4J040JA01
4J040KA25
(57)【要約】
本発明は、ベースポリマーと、アルキルシランと、炭素含有量が低い、すなわち0.4~3.5重量%の範囲の疎水化ヒュームドシリカとを含む液体接着剤配合物に関する。アルキルシランと疎水化ヒュームドシリカの特定の組み合わせにより、接着剤配合物の粘度が大幅に上昇する。本発明はさらに、このような接着剤配合物の製造方法と、液体接着剤配合物のレオロジー特性を改質するための、アルキルシランと炭素含有量が0.4~3.5重量%の範囲の疎水化ヒュームドシリカとの併用と、に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐少なくとも1つのベースポリマー、
‐少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカ、および
‐少なくとも1つのアルキルシラン
を含む液体接着剤組成物であり、
前記ベースポリマーは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ビニルエステル樹脂、アクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素化炭化水素、ポリアミド、飽和ポリエステルおよびコポリエステル、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-/レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリスルホン、またはそれらの混合物から選択され、
前記疎水化ヒュームドシリカは、炭素含有量が0.4~3.5重量%の範囲であり、
前記アルキルシランは、
‐式I:
【化1】
(式中、R
a=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
x=0~2、
R=H
3C-(CH
2)
y(y=0~2)である。)
のモノマーアルキルシラン、または
‐式II:
【化2】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R
1=H
3C-(CH
2)
y(y=0~2)、
X=H
3C-またはH
3C-(CH
2)
yO-(y=0~2)、
n=0~20である。)
の直鎖状オリゴマーアルキルシラン、または
‐式III:
【化3】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R
1=H
3C-(CH
2)
y(y=0~2)、
X=H
3C-またはH
3C-(CH
2)
yO-(y=0~2)、
n=0~20、
m=0~20である。)
の分岐鎖状オリゴマーアルキルシラン、または
‐式IV:
【化4】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R
1=H
3C-(CH
2)
y(y=0~2)、
X=H
3C-またはH
3C-(CH
2)
yO-(y=0~2)、
n=0~20である。)
の環状オリゴマーアルキルシラン、または、
‐式Iのモノマーアルキルシランと、式II、式IIIおよび/もしくは式IVの直鎖状、分岐鎖状および/もしくは環状オリゴマーアルキルシランと、の混合物
から選択される、液体接着剤組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの前記アルキルシランは、
‐式I:
【化5】
(式中、R
a=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
x=0~2、
R=H
3C-(CH
2)
y(y=0~2)である。)
のモノマーアルキルシラン、または
‐式II:
【化6】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R
1=H
3C-(CH
2)
y(y=0~2)、
X=H
3C-またはH
3C-(CH
2)
yO-(y=0~2)、
n=0~20である。)
の直鎖状オリゴマーアルキルシラン、または
‐式Iのモノマーアルキルシランと、式IIの直鎖状オリゴマーアルキルシランと、の混合物
から選択される、請求項1記載の液体接着剤組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの前記アルキルシランは、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オリゴマーアルコキシシラン(例えば、Dynasylan(登録商標)SIVO502)、またはそれらの混合物から選択される、請求項1または請求項2記載の液体接着剤組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの前記疎水化ヒュームドシリカの炭素含有量が0.4~3.0重量%の範囲である、請求項1~請求項3のいずれか1項記載の液体接着剤組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの前記疎水化ヒュームドシリカの炭素含有量が0.4~2.0重量%の範囲である、請求項1~請求項3のいずれか1項記載の液体接着剤組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの前記疎水化ヒュームドシリカの総質量が、前記液体接着剤組成物の総質量の1~30重量%の範囲である、請求項1~請求項5のいずれか1項記載の液体接着剤組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの前記疎水化ヒュームドシリカの総質量が、前記液体接着剤組成物の総質量の2~10重量%の範囲である、請求項1~請求項5のいずれか1項記載の液体接着剤組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの前記アルキルシランの総質量が、前記液体接着剤組成物に含まれる少なくとも1つの前記疎水化ヒュームドシリカの総質量の5~60重量%の範囲である、請求項1~請求項7のいずれか1項記載の液体接着剤組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの前記アルキルシランの総質量が、前記液体接着剤組成物に含まれる少なくとも1つの前記疎水化ヒュームドシリカの総質量の20~40重量%の範囲である、請求項1~請求項7のいずれか1項記載の液体接着剤組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの前記ベースポリマーがエポキシ樹脂である、請求項1~請求項9のいずれか1項記載の液体接着剤組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのベースポリマーと、少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカと、少なくとも1つのアルキルシランとを含む請求項1~請求項10のいずれか1項記載の液体接着剤組成物の製造方法であり、
‐少なくとも1つの前記ベースポリマーと、少なくとも1つの前記疎水化ヒュームドシリカと、少なくとも1つの前記アルキルシランと、必要に応じて前記液体接着剤組成物の他の成分とを混合する工程
を含む方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法によって得られる液体接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースポリマーと、アルキルシランと、炭素含有量が低い、すなわち0.4~3.5重量%の範囲の疎水化ヒュームドシリカとを含む液体接着剤配合物に関する。アルキルシランと疎水化ヒュームドシリカの特定の組み合わせにより、接着剤配合物の粘度が大幅に上昇する。本発明はさらに、このような接着剤配合物の製造方法と、液体接着剤配合物のレオロジー特性を改質するための、アルキルシランと炭素含有量が0.4~3.5重量%の範囲の疎水化ヒュームドシリカとの併用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤配合物は、幅広い産業分野において多数の用途に使用されている。ほとんどの場合、このような配合物は、液体の形で適用されるか、または適用中のある時点で液化する。したがって、取り扱い性を改善するには、液体接着剤配合物のレオロジー特性を、特定の適用方法に合わせて調整する必要がある。これを実現するために、このような配合物にレオロジー調整剤が添加される。この目的には、通常、さまざまなグレードのシリカが使用される。具体的には、疎水化シリカグレード、つまりシリカ表面をより疎水性にするために、より疎水性の化合物と反応または処理されたシリカが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シリカの添加によって液体接着剤配合物のレオロジー特性を調整する従来の方法では、炭素含有量の高い疎水化シリカを使用する必要があった。対照的に、炭素含有量の低い疎水化シリカを使用すると、低せん断速度での粘度がわずかに上昇するだけであった。しかし、残念ながら、炭素含有量の高い疎水化シリカは比較的高価で、かなり限られた量しか入手できない。したがって、低炭素含有量の疎水化シリカを添加することにより、粘度の大幅な上昇を促進する接着剤配合物が当技術分野で必要とされている。本発明は、このような配合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
‐少なくとも1つのベースポリマー、
‐少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカ、および
‐少なくとも1つのアルキルシラン
を含む液体接着剤組成物であり、
ベースポリマーは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ビニルエステル樹脂、アクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素化炭化水素、ポリアミド、飽和ポリエステルおよびコポリエステル、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-/レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリスルホン、またはそれらの混合物から選択され、
疎水化ヒュームドシリカは、炭素含有量が0.4~3.5重量%の範囲であり、
アルキルシランは、
‐式I:
【0005】
【0006】
(式中、Ra=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
x=0~2、
R=H3C-(CH2)y(y=0~2)である。)
のモノマーアルキルシラン、または
‐式II:
【0007】
【0008】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R1=H3C-(CH2)y(y=0~2)、
X=H3C-またはH3C-(CH2)yO-(y=0~2)、
n=0~20である。)
の直鎖状オリゴマーアルキルシラン、または
‐式III:
【0009】
【0010】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R1=H3C-(CH2)y(y=0~2)、
X=H3C-またはH3C-(CH2)yO-(y=0~2)、
n=0~20、
m=0~20である。)
の分岐鎖状オリゴマーアルキルシラン、または
‐式IV:
【0011】
【0012】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R1=H3C-(CH2)y(y=0~2)、
X=H3C-またはH3C-(CH2)yO-(y=0~2)、
n=0~20である。)
の環状オリゴマーアルキルシラン、または、
‐式Iのモノマーアルキルシランと、式II、式IIIおよび/もしくは式IVの直鎖状、分岐鎖状および/もしくは環状オリゴマーアルキルシランと、の混合物
から選択される、液体接着剤組成物に関する。
【0013】
本明細書の文脈では、接着剤、接着剤組成物、または接着剤配合物(3つの用語は、すべて互換的に使用される)は、表面接着および内部強度によって被着体を接合できる非金属材料として定義される。従来技術には、多数のさまざまな接着剤が挙げられており、その大部分は、有機化合物をベースとしている。
【0014】
物理硬化型接着剤と化学硬化型接着剤は区別される。物理硬化型接着剤は、最終的な接着物質(多くの場合ポリマー)をそのまま使用し、その後、物理的方法によって接着剤が固化する接着剤である。したがって、例えば、ホットメルト接着剤、分散系接着剤、有機溶媒を含む湿式接着剤、および接触接着剤が知られている。これらのタイプの接着剤すべてに共通する特徴は、まず接着剤が加工可能な形で適用され、その後、例えば溶媒の蒸発や冷却の結果として固化が起こることである。化学硬化型接着剤の場合、個々の構成要素が適用され、その後、個々の構成要素の化学反応によって、固化を経て新しい生成物が形成される。反応性接着剤には、2成分系と1成分系がある。2成分系の場合、接着剤は、別々の成分から適用され、化学反応によって固化する。1成分系接着剤の場合、接着剤は、周囲条件の変化、例えば温度上昇、空気流入、蒸発、湿気、または大気中の酸素の結果として、化学反応で硬化する。化学硬化型接着剤の群には、例えば、シアノアクリレート接着剤、メチルメタクリレート接着剤、嫌気性硬化型接着剤、放射線硬化型接着剤、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂接着剤、シリコーン、シラン架橋ポリマー接着剤、ポリイミド接着剤、エポキシ樹脂接着剤、およびポリウレタン接着剤が含まれる。種々の接着剤の概要については、ウルマン工業化学百科事典、第4版、第14巻、第227頁以降(1997年)に記載されている。
【0015】
本明細書の文脈において、液体接着剤配合物とは、液体の形で適用されるか、または適用中のある時点で液化する接着剤配合物であると考えられる。本明細書の文脈において、接着剤とは、それぞれの化学組成および被着体への適用時の物理的状態に応じて、表面の濡れを可能にし、接着接合部において被着体間の力の伝達に必要な接着層を形成する製品である。シーラントと比較すると、接着剤は、引張せん断強度が高く、伸び値が低い。言い換えると、接着剤は硬質から弾性であり、シーラントは弾性から可塑性である。シーラントと同様に、接着剤は、当業者によく知られているベースポリマーに加えて、溶媒(例えばケトン)、水、充填剤(例えばチョーク)、チキソトロピー剤(例えば熱分解シリカ)、接着促進剤(例えばシラン)、着色ペースト(例えば顔料グレードのカーボンブラック)、およびさらなる添加剤(例えば触媒、老化防止剤)などの類似の成分を含む。
【0016】
特に、ヒュームドシリカは、非常に効果的なチキソトロピー剤として作用することが知られている(例えば、Winnacker-Kuchler、Chemische Technologie、第3巻(1983年)、第4版、第77頁、およびウルマン工業化学百科事典、第4版(1982年)、第21巻、第462頁以降を参照)。ヒュームドシリカは、例えばエポキシ樹脂をベースとする接着剤に広く使用されている(Degussa Pigmentsパンフレットシリーズ(2001年)第27号および第54号)。接着剤配合物におけるレオロジー改質剤としてのヒュームドシリカの適用は、シリカの取り扱いが難しい場合には、疎水化ヒュームドシリカ、すなわち、ヒュームドシリカ表面のシラノール基の少なくとも一部を低親水性基で置き換えるために有機化合物(通常は、ジメチルジクロロシラン、トリメトキシオクチルシラン、ポリジメチルシロキサン、またはヘキサメチルジシラザンなどの有機ケイ素化合物)と反応または処理されたヒュームドシリカを使用することにより、容易になる場合がある。
【0017】
本明細書の文脈において、疎水化ヒュームドシリカは、ヒュームドシリカ表面のシラノール基の少なくとも一部を、低親水性基で置き換えるために、有機化合物(通常は、ジメチルジクロロシラン、トリメトキシオクチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、またはオクタメチルシクロテトラシロキサンなどの有機ケイ素化合物)と反応または処理されたヒュームドシリカとして定義される。ヒュームドシリカの組み合わせも、接着剤組成物の調製に使用することができる。疎水性ヒュームドシリカの調製方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許出願公開第2010200803号明細書記載の方法が挙げられる。
【0018】
特定の電荷の疎水化ヒュームドシリカの疎水化度は、その炭素含有量から評価することができる。炭素含有量が高いと疎水化度が高いことを意味し、炭素含有量が低いと疎水化度が低いことを意味する。
【0019】
本明細書の文脈では、疎水化ヒュームドシリカの炭素含有量は、DIN EN ISO 3262-20に準拠して測定される炭素含有量であると理解され、次のように行われる:試料を、必要に応じて適切な触媒で被覆されたるつぼで、酸素流中の誘導炉内で燃やす。硫黄化合物、ハロゲン、および水蒸気を燃焼生成物から除去し、その後、(一酸化炭素を二酸化炭素に転化するために)白金触媒に通し、二酸化炭素濃度を赤外線セル検出器で測定する。
【0020】
本発明の液体接着剤組成物の疎水化ヒュームドシリカは、0.4~3.5重量%の範囲の炭素含有量を示す。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明による液体接着剤組成物中の少なくとも1 つの疎水化ヒュームドシリカは、0.4~3.0重量%の範囲の炭素含有量を示す。
【0022】
特に好ましい実施形態では、本発明による液体接着剤組成物中の少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカは、0.4~2.0重量%の範囲の炭素含有量を示す。
【0023】
別の特に好ましい実施形態では、本発明による液体接着剤組成物中の少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカは、1.0~3.0重量%の範囲の炭素含有量を示す。
【0024】
別の特に好ましい実施形態では、本発明による液体接着剤組成物中の少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカは、AEROSIL(登録商標)R974(炭素含有量=0.9~1.5重量%)、AEROSIL(登録商標)R106(炭素含有量=1.4~3.0重量%)、またはそれらの混合物から選択される。
【0025】
疎水化ヒュームドシリカは通常、それぞれの組成物の総質量の1~30重量%の質量分率で、接着剤組成物に添加される。したがって、本発明の好ましい実施形態では、本発明による少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカの総質量は、液体接着剤組成物の総質量の1~30重量%の範囲である。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカの総質量は、液体接着剤組成物の総質量の2~10重量%の範囲である。
【0026】
本発明の接着剤配合物に適した多数のベースポリマーは、当業者によく知られている。
【0027】
本発明の接着剤組成物は、ベースポリマーとして、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ビニルエステル樹脂、アクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素化炭化水素、ポリアミド、飽和ポリエステルおよびコポリエステル、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-/レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリスルホン、またはそれらの混合物のいずれかを含む。
【0028】
本発明の特に好ましい実施形態では、ベースポリマーは、エポキシ樹脂である。
【0029】
本発明の最も好ましい実施形態では、ベースポリマーは、EpikoteTMResin828である。
【0030】
接着剤用ベースポリマーとしてエポキシ樹脂が使用されることが好ましい。エポキシ樹脂は、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンを塩基性媒体中で縮合させることによって調製される。使用される両反応物の当量に応じて、生成物は、異なるモル質量のグリシジルエーテルである。近年、ビスフェノールFからのエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、および脂環式および複素環式エポキシ樹脂も重要性を増している。
【0031】
エポキシ樹脂は、それ自体ではフィルム形成能が低いため、適切な架橋剤による分子拡大が必要である。エポキシ樹脂に使用される架橋剤の例には、ポリアミン、ポリアミノアミド、カルボン酸無水物、およびジシアンジアミドなどがある。アミン硬化剤には、脂肪族、脂環式、芳香族、および芳香脂肪族ポリアミンがある。硬化は、反応生成物の除去なしに行われる。一般的には、エポキシ基に反応性水素原子が付加され、ヒドロキシル基が形成される。
【0032】
不飽和ポリエステル樹脂は、接着剤用ベースポリマーとして好ましく使用される。それらは、不飽和および飽和ジカルボン酸またはポリカルボン酸とアルコールとの重縮合によって得られる。適切な反応条件では、二重結合が酸および/またはアルコールに残り、スチレンなどの不飽和モノマーとの重合反応が可能になる。好ましく使用される不飽和ジカルボン酸は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸である。
【0033】
好ましく使用される飽和ジカルボン酸は、オルトフタル酸およびオルトフタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、テトラブロモフタル酸である。
【0034】
好ましく使用されるグリコールは、プロピレン1,2-グリコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ジシクロペンタジエンである。
【0035】
好ましく使用される架橋用モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、メタ-およびパラ-メチルスチレン、メチルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレートである。
【0036】
このリストは、考えられる出発物質の数を網羅するものではない。当業者であれば、原材料の状況に応じて、他の化合物も使用することができる。さらに、ジシクロペンタジエンの添加は慣例であり、その結果、樹脂の反応性が変化する。製造された「不飽和ポリエステル樹脂」は、そのまま、または反応性モノマーで希釈して使用することができる。反応性モノマーは、スチレン、スチルベン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ジアリルフタレート、および他の不飽和化合物であり、それらは、十分に低い粘度と、不飽和ポリエステル樹脂との十分な混和性とを有することを条件とする。
【0037】
ポリウレタン樹脂は、接着剤用ベースポリマーとして好ましく使用される。ポリウレタンはイソシアン酸に由来する。極めて反応性の高い化合物であるため、活性水素原子を持つ化合物と非常に容易に付加反応を起こす。この反応の過程で、窒素と炭素間の二重結合が切断され、活性水素が窒素に、酸素結合基が炭素に結合して、ウレタン基が形成される。接着層およびシーラント層に必要な種類のより高分子量の架橋ポリウレタンを得るためには、少なくとも2つの官能基を有する出発生成物である反応パートナー、例えばジイソシアネートまたはトリイソシアネート、例えばポリマー画分を有するジフェニルメタン4,4-ジイソシアネート(MDI)、またはトリレンジイソシアネート(TDI)およびポリオールと、多価アルコール(ジオールまたはポリオール、分子内に2つ以上のヒドロキシル官能基を有する化合物)との反応生成物を用意する必要がある。この種のアルコールは、例えば、過剰量のポリアルコールで調製される飽和ポリエステルの形で、存在し得る。
【0038】
2成分反応性接着剤は、低分子量ポリイソシアネートと、同様に比較的低分子量のポリオール、例えばポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール、例えばポリアルキレンポリアジペートから構成される。2つの成分を混合した後、接着剤または接着層にウレタン基が形成される。
【0039】
1成分反応性接着剤は、比較的高分子量ポリウレタンから構成され、大気中の水分と反応して硬化する。原則として、この状況も2つの相互反応する化学成分の1つであるが、接着処理のために供給される物理的成分は、1つだけである。水分と反応すると、単純な低分子量ポリイソシアネートは、強度値が低い比較的硬くて脆い接着層を形成するため、1成分系は、プレポリマーとして知られる予備架橋ポリマーから出発する。これらの化合物は、比較的高分子量のポリオールと、化学量論的に過剰なイソシアネートから調製される。このように、存在する化合物は、ウレタン結合をすでに持っているが、さらに、水分と反応しやすい反応性イソシアネート基も持っている。水との反応は、尿素結合の形成を伴って、進行する。分解反応の過程で形成される第一級アミンは、即座に他のイソシアネート基と反応して、ポリ尿素を形成する。したがって、1成分系の場合、完全に硬化したポリマーには、ウレタン化合物だけでなく尿素化合物も含まれている。
【0040】
溶媒系ポリウレタン接着剤は、物理硬化系および化学反応系として入手可能である。物理硬化系の場合、ポリマーは、高分子量ヒドロキシルポリウレタンの形をとり、使用される溶剤は、例えばメチルエチルケトンである。化学反応系には、さらにヒドロキシルポリウレタンと、架橋剤かつ第2成分として別のポリイソシアネートとが含まれる。
【0041】
分散系接着剤には、水中に分散した高分子量ポリウレタンが含まれる。
【0042】
熱活性化ポリウレタン接着剤の場合、イソシアネート成分は、比較的高温でのみイソシアネート成分を除去する化合物内では、「キャッピングされた」または「ブロックされた」形態である。
【0043】
反応性ポリウレタンホットメルト接着剤は、比較的高分子量の結晶化かつ溶融性ジオールおよびイソシアネート成分を使用して、調製される。これらの成分は、約70℃~120℃の温度で、ホットメルト接着剤として被着体に適用される。冷却後、結合は、十分な初期強度を獲得し、これにより、迅速にさらなる加工を施すことができる。その後、依然として存在する反応性イソシアネート基がさらに湿気にさらされた結果、尿素結合を介して架橋が起こり、接着層ポリマーが形成される。
【0044】
接着剤用ベースポリマーとして、好ましくはビニルエステル樹脂が使用される。化学的側面では、ビニルエステル樹脂は、特に硬化反応、加工技術、および使用分野に関して、UP樹脂と一定の関係がある。これらの樹脂は、液体エポキシ樹脂とアクリル酸の重付加物である。分子鎖中のエステル基が減少した結果、これらの樹脂は、有効な弾性および衝撃靭性とともに、より優れた耐加水分解性を備えている。架橋に使用されるモノマーは、不飽和ポリエステル樹脂の場合と同じであり、特にスチレンである。
【0045】
接着剤用ベースポリマーとして、好ましくはアクリレートが使用される。 「アクリレート系接着剤」という総称には、アクリル基の炭素-炭素二重結合を介して硬化する反応性接着剤がすべて含まれる。
【0046】
接着剤配合物において、メタクリル酸エステルとα-シアノアクリル酸エステルは、特に重要な意味を持っている。アクリレート接着剤の硬化は、付加重合によって行われ、その過程で、開始剤が連鎖反応を引き起こし、接着剤の連続硬化をもたらす。「アクリレート」接着剤の重合は、フリーラジカルによって開始されるか、またはα-シアノアクリル酸の場合は陰イオンによって開始される。硬化に利用される重合メカニズムに応じて、アクリレート接着剤は、下記の群にも細分化される:
【0047】
陰イオン的硬化接着剤:α-シアノアクリル酸1成分接着剤、フリーラジカル硬化接着剤:嫌気性1成分接着剤、フリーラジカル硬化接着剤:2成分接着剤
【0048】
ポリアクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルコポリマーと、ポリメタクリル酸エステルとをベースとするシーラントの場合、溶媒系と水性系が区別される。ポリアクリレートシーラントは、溶媒または分散水の蒸発によって、物理的に硬化する。
【0049】
ポリ酢酸ビニルは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリ酢酸ビニルは、酢酸ビニルの重合生成物である。分子内に存在する強い極性の酢酸基により、ポリ酢酸ビニルは、多くの被着体表面に対し、非常に優れた接着特性を備えている。主に、固形分約50%~60%の分散系接着剤として使用され、場合により、酢酸ビニルコポリマー(塩化ビニルなど)をベースとすることもある。
【0050】
ポリビニルアルコールは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。
【0051】
ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルと他の同様のポリエステルの加水分解生成物として生成される。分子量に応じて、ポリビニルアルコールは、多かれ少なかれ高粘度の液体の形をとる。例えば、紙、ボール紙、木材などのセルロース系材料の接着に使用され、分散系接着剤の安定化と硬化速度向上のための保護コロイドとしても使用される。
【0052】
ポリビニルエーテルは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリビニルエーテルの中で、特に次の3つのポリマーが、接着剤用ベース材料として興味深いものである:ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル。
【0053】
中程度の重合度のポリビニルエーテルは、多孔質で滑らかな表面への接着性が極めて良好な粘着性可塑性樹脂である。ポリビニルメチルエーテルは、その水溶性のために、再び湿らせることができ、そのため、例えば、デキストリンや膠類と混ぜて、ラベル紙のガムとして使用すると、それらの接着性が向上するという点で、特に注目に値する。ポリビニルエーテルは永久粘着性のため、感圧接着剤にも使用される。
【0054】
エチレン酢酸ビニルは、エチレンと酢酸ビニルのコポリマーであり、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。分子構造では、酢酸ビニル分子がエチレン鎖にランダムに組み込まれている。酢酸の除去により、ポリ酢酸ビニルは、温度負荷に対して比較的不安定になるが、エチレンとのコポリマーは、酸化および熱劣化に対して大幅に耐性が高くなる。このため、酢酸ビニル画分が約40%のEVAコポリマーは、ホットメルト接着剤のベース材料の重要な群に含まれる。
【0055】
エチレン-アクリル酸コポリマーは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。それらは、エチレンと、アクリル酸および/またはアクリル酸エステルとのコポリマーである。
【0056】
ポリエチレンの耐化学性と酸および/またはエステル部分の優れた特性とを兼ね備えたこれらのコポリマーは、ホットメルト接着剤用の重要なベースポリマーである。使用されるエステル成分は、好ましくはエチルアクリレートである。
【0057】
ポリビニルアセタールは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリビニルアセタールは、アルデヒドとアルコールの反応によって生成される。接着剤の製造に最も重要なアセタールは、ポリビニルホルマールとポリビニルブチラールである。どちらも、フェノール樹脂系接着剤の可塑化成分として機能する。さらに、ポリビニルブチラールは、積層安全ガラスの接着フィルムとして応用される。
【0058】
ポリスチレンは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。このモノマーは、主に次の2つの分野で、接着剤のベース材料の成分として使用されている:
スチレン-ブタジエン分散液の製造のための、可塑化モノマー、特にブタジエンとのコポリマーとして、および不飽和ポリエステルとの共重合のための「重合可能な」溶媒として。
【0059】
ポリ塩化ビニルは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。より具体的には、プラスチゾル接着剤に使用され、また、溶媒系接着剤、分散系接着剤、ヒートシール接着剤に塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーを与える酢酸ビニルとのコポリマーとして、そして高周波溶接助剤として使用される。
【0060】
スチレンブタジエンゴムは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。スチレンブタジエンゴムは、熱可塑性エラストマーの典型例であり、エラストマーの適用特性と熱可塑性プラスチックの適用特性を兼ね備えている。スチレンブタジエンコポリマー(SBS)とスチレンイソプレンコポリマー(SIS)は、いわゆるトリブロックコポリマーであり、個々のブロック内の連続した同一のモノマーユニットから直線的に構成される。末端ブロックは、ポリスチレンセグメントであり、中間ブロックは、ポリブタジエン(スチレンブタジエンスチレンブロックコポリマー、SBS)またはイソプレン(スチレンイソプレンスチレンブロックポリマー、SIS)である。
【0061】
ブタジエン画分に対するスチレン画分の比、またはイソプレン画分に対するスチレン画分の比は、約1:3である。可塑剤の添加により弾性特性を有する接着層ポリマーとは異なり、この方法では、「内部可塑化」が実現される。これらのゴムコポリマーの特別な利点は、優れた接着特性と高い柔軟性を備えた接着層を形成できることである。したがって、ゴム/ゴムやゴム/金属の接着がある履物など、接着結合された被着体が実際の使用時に高い変形応力を受ける状況において、重要な用途がある。
【0062】
クロロプレンゴム(CR)は、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。クロロプレンゴム(ポリクロロプレン)は、クロロプレン(2-クロロブタジエン)の重合生成物および共重合生成物として生成される。優れた接着特性に加えて、線状高分子は、結晶化に対する強い傾向があり、これにより、接着層の強度が比較的高くなる。これらのポリマーとコポリマーは、コンタクト接着剤の重要なベース材料である。ポリクロロプレン分子内に存在する二重結合により、対応する反応性分子群とのさらなる架橋が可能になる。この目的で使用される熱硬化性成分には、イソシアネートとフェノール樹脂が含まれる。
【0063】
ニトリルゴム(NBR)は、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ニトリルゴムは、ブタジエンと、約20%~40%のアクリロニトリルとの共重合体である。アクリロニトリルの割合が多いため、これらのポリマーは、効果的な可塑剤耐性を備え、例えば可塑化プラスチックの接着に非常に適している。
【0064】
ブチルゴムは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ブチルゴムは、イソブチレンとイソプレンを主成分とする共重合体である。この直鎖分子内には、長いポリイソブチレンセグメントの形で、飽和特性の非常に多くの鎖画分が存在し、それ以上の架橋は不可能である。唯一の架橋可能な成分は、イソプレン分子であるため、ブチルゴムの全体的な特性は、イソプレンによって事前に定まる二重結合の数の割合によって決まる。反応性は、塩素または臭素を含むモノマーを組み込むことで、さらに影響を受け得る。
【0065】
ポリスルフィドは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリスルフィドシーラントの原料は、長い間、Thiokol(登録商標)の商品名で知られてきた。ポリスルフィドポリマーは、ジクロロエチルホルマールとポリスルフィドナトリウムとの反応により得られる。液体ポリマーの分子量は、3000~4000である。酸化剤、例えば二酸化マンガンとの反応によって、それらを究極のゴム弾性状態に変えることができる。
【0066】
ポリエチレンは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。メルトインデックスが2~2000g/10分の範囲にある低分子量タイプは、粘着性樹脂およびマイクロワックスと組み合わせて、製紙およびボール紙業界でホットメルト接着剤として使用されている。
【0067】
ポリプロピレンは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリプロピレンは、中程度の強度特性を有するホットメルト接着剤用ベース材料として、より具体的にはアタクチックポリプロピレンの形で、使用されている。
【0068】
フッ素化炭化水素は、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリフルオロエチレンプロピレンは、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体であり、ホットメルト接着剤用ベース材料として研究されてきた。これらの製品の利点は、長期にわたる高い耐熱性にある。
【0069】
ポリアミドは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリアミドは、物理硬化ホットメルト接着剤の最も重要なベース材料の一部である。ポリアミドの製造に適した反応は、以下に示す反応であり、通常、窒素雰囲気下、溶融状態で行われる:ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合、ラクタムからの重縮合、ジアミンと二量化脂肪酸の重縮合。
【0070】
飽和ポリエステルおよびコポリエステルは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。飽和ポリエステルおよびコポリエステルは、ジカルボン酸およびジオールからの重縮合によって生成される。これらは、ホットメルト接着剤の重要なベース材料である。
【0071】
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。これらのポリマーは、フェノールとホルムアルデヒドの重縮合反応によって生成され、高度に架橋されたフェノール樹脂を形成し、これは、例えば航空機製造用の接着剤のベース材料として使用される。純粋なフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、一般に脆すぎる。このため、それらは、共重合または共縮合により熱可塑性ポリマーで改質される。例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリアミド、エポキシ樹脂、またはエラストマー、例えばポリクロロプレンおよびニトリルゴムで改質される。
【0072】
クレゾール-/レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂は、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ホルムアルデヒド縮合用の出発モノマーとしてのフェノールのほかに、共反応物として、クレゾールおよびレゾルシノールなどのフェノール誘導体も使用される。
【0073】
尿素-ホルムアルデヒド樹脂は、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。多数の窒素含有有機化合物は、アルデヒドと重縮合することができる。接着剤としての用途では、尿素とメラミンが特に重要になっている。尿素-ホルムアルデヒド樹脂の場合、反応シーケンスは、最初は弱酸性溶液中での付加反応の形で起こる。ポリマー接着層の形成につながる実際の重縮合反応は、エーテルブリッジまたはメチレンブリッジの形成を介して、高度に架橋されたポリマーをもたらす。
【0074】
メラミン-ホルムアルデヒド樹脂は、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。尿素と同様に、メラミンもホルムアルデヒドと反応してメチロール化合物を形成する。尿素反応の場合と同様に、これらの化合物による重縮合も、メチレンまたはメチレンエーテル結合を介して進行し、高分子量の、高度に架橋された、硬く、場合によっては脆い接着層を形成する。
【0075】
ポリイミドは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリイミドの使用に関する実験は、高温の課題に対応できる有機系接着剤を得ることへの関心から実施された。技術的に利用可能なポリイミドの調製は、四塩基酸の無水物、例えばピロメリット酸無水物と芳香族ジアミン、例えばジアミノジフェニルオキシドとの反応によって達成される。接着剤としての使用は、溶液またはフィルムの形態のプレ縮合物から開始して達成される。
【0076】
ポリベンズイミダゾールは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。
【0077】
ポリベンズイミダゾールは同様に、高耐熱性接着剤として分類される。それらは、芳香族テトラアミンとジカルボン酸との重縮合反応によって形成される。
【0078】
ポリスルホンは、好ましくは接着剤用ベースポリマーとして使用される。ポリスルホンは同様に、耐熱性接着剤の群に属する。それらは、例えば、ジヒドロキシジフェニルスルホンとビスフェノールAとの重縮合反応によって得られる。
【0079】
本発明の液体接着剤組成物のアルキルシラン成分は、以下から選択される:
アルキルシランは、
‐式I:
【0080】
【0081】
(式中、Ra=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
x=0~2、
R=H3C-(CH2)y(y=0~2)である。)
のモノマーアルキルシラン、または
‐式II:
【0082】
【0083】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R1=H3C-(CH2)y(y=0~2)、
X=H3C-またはH3C-(CH2)yO-(y=0~2)、
n=0~20である。)
の直鎖状オリゴマーアルキルシラン、または
‐式III:
【0084】
【0085】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R1=H3C-(CH2)y(y=0~2)、
X=H3C-またはH3C-(CH2)yO-(y=0~2)、
n=0~20、
m=0~20である。)
の分岐鎖状オリゴマーアルキルシラン、または
‐式IV:
【0086】
【0087】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R1=H3C-(CH2)y(y=0~2)、
X=H3C-またはH3C-(CH2)yO-(y=0~2)、
n=0~20である。)
の環状オリゴマーアルキルシラン、または、
‐式Iのモノマーアルキルシランと、式II、式IIIおよび/もしくは式IVの直鎖状、分岐鎖状および/もしくは環状オリゴマーアルキルシランと、の混合物
から選択される。
【0088】
好ましい実施形態では、本発明による液体接着剤組成物中の少なくとも1つのアルキルシランは、
‐式I:
【0089】
【0090】
(式中、Ra=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
x=0~2、
R=H3C-(CH2)y(y=0~2)である。)
のモノマーアルキルシラン、または
‐式II:
【0091】
【0092】
(式中、R=1~18個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、
R1=H3C-(CH2)y(y=0~2)、
X=H3C-またはH3C-(CH2)yO-(y=0~2)、
n=0~20である。)
の直鎖状オリゴマーアルキルシラン、または
‐式Iのモノマーアルキルシランと、式IIの直鎖状オリゴマーアルキルシランと、の混合物
から選択される。
【0093】
別の好ましい実施形態では、本発明による液体接着剤組成物中の少なくとも1つのアルキルシランは、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オリゴマーアルコキシシラン(例えば、Dynasylan(登録商標)SIVO502(オリゴマーアルキルシラン、エトキシベース))、またはそれらの混合物から選択される。
【0094】
別の好ましい実施形態では、本発明による液体接着剤組成物中の少なくとも1つのアルキルシランは、オリゴマーアルコキシシラン(例えば、Dynasylan(登録商標)SIVO502)、ヘキサデシルトリメトキシシラン、またはそれらの混合物である。
【0095】
特に好ましい実施形態では、本発明による液体接着剤組成物中の少なくとも1つのアルキルシランは、ヘキサデシルトリメトキシシランである。
【0096】
本発明による疎水化ヒュームドシリカとアルキルシランとを組み合わせることで得られるレオロジー効果は、広範囲のシリカ/シラン質量比で得られ得る。本発明の好ましい実施形態では、本発明による少なくとも1つのアルキルシランの総質量は、液体接着剤組成物中に含まれる本発明による疎水化ヒュームドシリカの総質量の5~60重量%の範囲である。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による少なくとも1つのアルキルシランの総質量は、液体接着剤組成物中に含まれる本発明による疎水化ヒュームドシリカの総質量の20~40重量%の範囲である。
【0097】
別の側面では、本発明はさらに、本発明による少なくとも1つのベースポリマーと、少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカと、少なくとも1つのアルキルシランとを含む液体接着剤組成物の製造方法に関し、下記の工程を含む:
‐少なくとも1つのベースポリマーと、少なくとも1つの疎水化ヒュームドシリカと、少なくとも1つのアルキルシランと、必要に応じて本発明による液体接着剤組成物の他の成分とを混合する工程。
【0098】
別の側面では、本発明はさらに、このような方法によって得られる液体接着剤組成物に関する。
【0099】
本発明の接着剤は、典型的には、自動車、建設、風車接着ペースト、化学アンカー、断熱ガラスユニット、構造用木材部品などの用途に使用される。
【0100】
以下の例は、本発明をより詳細に説明することを意図している。
【実施例】
【0101】
表1~表3に列挙した各組成物について、以下の手順を実行した。
【0102】
まず、エポキシ樹脂とシランを、Speed Mixer DAC 150 FVZを用いて、2500upmで2分間混合した(94重量部のエポキシ樹脂Epikote(登録商標)Resin828とシラン(特定の組成物がシランを含んでいない限り、シランの量は表1~表3に示されている通り)。
【0103】
その後、シリカ(6重量部または5重量部、表1~表3を参照)を添加し、得られた組成物をまず3000upmで1分間混合した。容器の上部から掻き落とした材料を加えた後、再び3000upmで2分間混合した。
【0104】
得られた混合物をまず90分以内に22℃まで冷却した。その後、異なるせん断速度での混合物の粘度を、レオメーターを用いて22℃で測定した(Physica MCR 301、Physica MCR 302)。その後、試料を、表1~表3に示されている期間(「時間」)、22℃で保管し、その後、粘度測定を繰り返した。
【0105】
表1~表3のデータに示されているように、オリゴマーアルキルシランを添加すると、低せん断速度での組成物の粘度が上昇する。そのため、アルキルシランを組成物に添加した場合も、疎水化シリカにより、このような組成物のチキソトロピーを非常に効果的に高めることができるという結論に至った。重要なことは、これが従来技術では知られていなかったように、この効果が炭素含有量の低い疎水化シリカによって達成できる点である(AEROSIL(登録商標)R974の炭素含有量は、0.9~1.5重量%の範囲であり、AEROSIL(登録商標)R106の炭素含有量は、1.4~3.0重量%の範囲である)。
【0106】
具体的には、AEROSIL(登録商標)R974とAEROSIL(登録商標)R106の組成に関するデータによって、これが非常に明確に証明されている。アルキルシランを含まないAEROSIL(登録商標)R974とAEROSIL(登録商標)R106を含む組成物は、0.1秒-1のせん断速度 で非常に低い粘度を示すが(表1および表3を参照)、アルキルシランを添加した後では、0.1秒-1のせん断速度での粘度が劇的に上昇する。
【0107】
AEROSIL(登録商標)R202(AEROSIL(登録商標)R202の炭素含有量は、3.51~5.0重量%の範囲である)などの高炭素含有量の疎水化シリカは、接着剤およびシーラントの配合において、(低せん断速度での高粘度によって示される)チキソトロピーレベルと垂れ防止特性を達成するためによく使用される。しかしながら、このような高炭素含有量の疎水化シリカは、比較的高価で、入手できる量も限られている。したがって、AEROSIL(登録商標)R106などの低炭素含有量の疎水化シリカと、Dynasylan(登録商標)SIVO 502(オリゴマーアルキルシラン)などのアルキルシランの混合物と、を組み合わせると、AEROSIL(登録商標)R202などの高炭素含有量の疎水化シリカのエポキシ樹脂組成物と同様の低せん断速度での粘度を有するエポキシ樹脂組成物が得られる点に留意することが重要である(表1を参照)。
【0108】
アルキルシランの添加により、低せん断速度での粘度がわずかに上昇することが、エポキシ混合物中のAEROSIL(登録商標)R202などの高炭素含有量の疎水化シリカでも観察できる(表2を参照)。
【0109】
【0110】
【0111】
【国際調査報告】