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特表2024-546680エチレン生成のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】エチレン生成のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 3/03 20210101AFI20241219BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 9/13 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20241219BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 11/075 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 9/70 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
C25B3/03
C25B3/26
C25B9/23
C25B9/00 G
C25B1/23
C25B9/13
C25B15/08 302
C25B11/052
C25B11/075
C25B9/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533982
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022081209
(87)【国際公開番号】W WO2023239426
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】63/265,144
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520271481
【氏名又は名称】トゥエルブ ベネフィット コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カシ、アジャイ アール.
(72)【発明者】
【氏名】バックリー、アヤ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】マ、シチャオ
(72)【発明者】
【氏名】クール、ケンドラ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】フネナー、サラ
(72)【発明者】
【氏名】ケイブ、エトーシャ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ステビック、ルカ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA23
4K011AA68
4K011BA12
4K011DA11
4K021AB25
4K021AC02
4K021BC01
4K021BC03
4K021CA08
4K021CA10
4K021DB15
4K021DB36
4K021DB53
(57)【要約】
所望のCO還元反応生成物の濃度を高めるためのシステム及び方法が記載される。いくつかの実施形態において、システム及び方法は、エチレン精製を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のイオン伝導性ポリマー層及び二酸化炭素から一酸化炭素への化学的還元を促進するためのカソード触媒を含む膜電極アセンブリを有する二酸化炭素(CO)還元反応器;
1又は複数のイオン伝導性ポリマー層及び酸化炭素からエチレンへの化学的還元を促進するためのカソード触媒を含むアニオン交換膜(AEM)単独膜電極アセンブリ(MEA)を有する酸化炭素(CO)還元反応器、前記CO還元反応器は、前記CO還元反応器から、一酸化炭素(CO)及び未反応COを含む中間気相生成物ストリームを受け取り、COをエチレンに還元し、前記未反応COの少なくとも一部を重炭酸塩に変換し、前記重炭酸塩を前記AEM単独MEAのアノード側に輸送し、エチレンを含むカソード側気相生成物ストリームを出力するように構成されており、ここで、前記気相生成物ストリーム中のCOの量は、前記中間気相生成物ストリーム中の量よりも少ない;及び
前記CO還元反応器からエチレンを含有する混合物を受け取り、前記混合物よりも高いエチレン濃度を有する精製ストリームを生成するように構成されているエチレン精製システム
を備える、精製エチレン生成物を生成するためのシステム。
【請求項2】
前記CO還元反応器は、バイポーラMEAを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記CO還元反応器は、カチオン交換膜単独MEAを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記CO還元反応器及び前記CO還元反応器は、MEAを各々含む電気化学セルのスタックを各々有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記CO還元反応器は、O及びCOを含むアノード側ストリームを出力するように構成されており、前記システムは、前記アノード側ストリーム中の前記CO及び前記Oを分離するように構成されている分離器;及び、前記CO還元反応器への流入のために、新鮮なCOを分離されたCOと混合するように構成されている混合ユニットをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記CO還元反応器は、COを含むアノード側ストリームを出力するように構成されており、前記システムは、前記COを前記アノード側ストリームから前記CO還元反応器に再循環するように構成されている再循環ループをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記CO還元反応器は、CO及びOを含むアノード側ストリームを出力するように構成されており、前記システムは、前記アノード側ストリーム中の前記CO及び前記Oを分離するように構成されている分離器;及び、前記CO還元反応器への流入のために、新鮮なCOを分離されたCOと混合するように構成されている混合ユニットをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
酸化炭素からエチレンへの化学的還元を促進するための前記カソード触媒は、銅を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記エチレン精製システムは、(a)二酸化炭素を吸収及び分離する、(b)膜ろ過によって1又は複数の他の成分からエチレンを分離する、(c)分別蒸留してエチレン及びメタンを分離する、又は(d)メタンをエチレンに化学的に変換する、又は(e)(a)~(d)の任意の組み合わせを行うための1又は複数のコンポーネント又はサブシステムを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
COからエチレンへの化学的還元を促進するためのカソード触媒を含むアニオン交換膜(AEM)単独膜電極アセンブリ(MEA)を有する二酸化炭素(CO)還元反応器;前記CO還元反応器は、COをエチレンに還元し、少なくとも一部の未反応COを重炭酸塩に変換し、COへの反応のために前記重炭酸塩を前記AEM単独MEAのアノード側に輸送し、エチレンを含むカソード側気相生成物ストリームを出力し、O及びCOを含むアノード側ストリームを出力するように構成されている;及び
前記CO還元反応器から、エチレンを含有する混合物を受け取り、前記混合物よりも高いエチレン濃度を有する精製ストリームを生成するように構成されているエチレン精製システム
を備える、エチレンを生成するためのシステム。
【請求項11】
前記アノード側ストリーム中の前記CO及び前記Oを分離するように構成されている分離器、及び、前記CO還元反応器への流入のために、新鮮なCOを分離されたCOと混合するように構成されている混合ユニットをさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記CO還元反応器は、MEAを各々含む電気化学セルのスタックを有する、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記エチレン精製システムは、(a)二酸化炭素を吸収及び分離する、(b)膜ろ過によって1又は複数の他の成分からエチレンを分離する、(c)分別蒸留してエチレン及びメタンを分離する、又は(d)メタンをエチレンに化学的に変換する、又は(e)(a)~(d)の任意の組み合わせを行うための1又は複数のコンポーネント又はサブシステムを備える、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項14】
1又は複数のイオン伝導性ポリマー層及びCOからエチレンへの化学的還元を促進するためのカソード触媒を含む膜電極アセンブリ(MEA)を有する酸化炭素(CO)還元反応器、前記CO還元反応器は、COを含む供給ストリームを受け取り、エチレンを含む気相生成物ストリームを流出させるように構成されている;及び、前記気相生成物ストリームの一部を、分離することなく、前記供給ストリームが前記気相生成物ストリームの前記一部及び新鮮なCOの混合物を含むように再循環するように構成されている再循環ループ;及び
前記CO還元反応器からエチレンを含有する混合物を受け取り、前記混合物よりも高いエチレン濃度を有する精製ストリームを生成するように構成されているエチレン精製システム
を備える、気相生成物を生成するためのシステム。
【請求項15】
前記再循環ループは、圧縮器を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記COは、二酸化炭素(CO)である、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記MEAは、バイポーラMEAである、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記MEAは、アニオン交換膜(AEM)単独MEAである、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記MEAは、カチオン交換膜単独MEAである、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記MEAは、前記カソード触媒及び前記1又は複数のイオン伝導性ポリマー層の間に配置された液体バッファ層を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記CO還元反応器は、MEAを各々含む電気化学セルのスタックを有する、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記エチレン精製システムは、(a)二酸化炭素を吸収及び分離する、(b)膜ろ過によって1又は複数の他の成分からエチレンを分離する、(c)分別蒸留してエチレン及びメタンを分離する、又は(d)メタンをエチレンに化学的に変換する、又は(e)(a)~(d)の任意の組み合わせを行うための1又は複数のコンポーネント又はサブシステムを備える、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[参照による援用]
PCTリクエストフォームは、本願の一部として本明細書と同時に提出される。同時に提出されたPCTリクエストフォームにおいて特定されているように本願が利益又は優先権を主張する各出願は、参照によりその全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
[政府支援の声明]
【0002】
本発明は、米国国立科学財団によって授与された授与番号1738554の下及び米国エネルギー省科学局によって授与された授与番号DE-SC0018831-01の下での政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般に、電解酸化炭素還元の分野、より具体的には、一酸化炭素、メタン、及び多炭素生成物の生成のための電解酸化炭素反応器の動作のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
酸化炭素(CO)還元のための膜電極アセンブリ(MEA)は、カソード層、アノード層、及びカソード層とアノード層との間のイオン伝達を提供するポリマー電解質膜(PEM)を含むことができる。そのようなMEAを有する酸化炭素(CO)還元反応器(CRR)は、電気化学的にCOを還元し、CO、メタン及びエチレン等の炭化水素、及び/又はメタノール、エタノール、及び酢酸等の、酸素及び水素を含有する有機化合物等の生成物を生成する。気相生成物を高濃度で得ることは困難であり得る。
【0005】
本明細書に含まれる背景及び文脈上の説明は、本開示の文脈を一般的に提示することのみを目的として提供されている。本開示の多くは、発明者の研究を提示し、そのような研究が背景セクションに記載されているという理由、又は本明細書の他の箇所で文脈として提示されているという理由だけで、そのような研究が先行技術として認められることを意味しない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】特定の実施形態による、電気化学セル及び再循環ループを有するシステムの一例を示している。
【0007】
図2】特定の実施形態による、直列の複数の電気化学セルを備えるシステムの一例を示している。
【0008】
図3a】特定の実施形態による、セル間で共有される単一のCO流ストリームとともに並列に積み重ねられた複数の電気化学セルを備えるシステムの一例を示している。
【0009】
図3b】特定の実施形態による、積み重ねられて配置され且つ直列に接続された複数の電気化学セルを備えるシステムの一例を示している。
【0010】
図4】特定の実施形態による、AEM単独MEAを有する単一段階CO還元電解装置を備えるシステムの一例を示している。
【0011】
図5】特定の実施形態による、AEM単独MEAを有する2段階CO還元電解装置を備えるシステムの一例を示している。
【0012】
図6】特定の実施形態による、膜及びカソードの間に設けられたアルカリ性水溶液のバッファ層を含む電解装置を備えるシステムの一例を示している。
【0013】
図7】特定の実施形態による、酸化炭素還元反応器の動作を制御するためのシステムの一例を示している。
【0014】
図8】直接空気CO捕捉サブシステム及びCO還元電解装置サブシステムを備えるシステムの一例を示している。
【0015】
図9】様々な実施形態による、CO還元において使用されるMEAの一例を示している。
【0016】
図10】特定の実施形態による、カソードにおいて水及びCOを反応物として受け取り、COを生成物として排出するように構成されたCO電解装置の一例を示している。
【0017】
図11】特定の実施形態による、COx還元MEAの構成例を示している。
図12A】特定の実施形態による、COx還元MEAの構成例を示している。
【0018】
図12B】エチレン精製システムのコンポーネントの概略的な例を示している。
【0019】
図13A】エチレン精製システムの例を示している。
図13B】エチレン精製システムの例を示している。
図13C】エチレン精製システムの例を示している。
【0020】
図14】アミン処理システムのコンポーネントの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書では、一酸化炭素(CO)、及びメタン(CH)及びエチレン(C)等の多数電子ガス生成物を含む気相生成物を高濃度で生成するための酸化炭素(CO)還元反応器(CRR)を動作させるためのシステム及び方法が提供される。
【0022】
酸化炭素(CO)還元のための膜電極アセンブリ(MEA)は、カソード層、アノード層、及びカソード層とアノード層との間のイオン伝達を提供するポリマー電解質膜(PEM)を含むことができる。そのようなMEAを有するCRRは、電気化学的にCOを還元し、CO、メタン及びエチレン等の炭化水素、及び/又はメタノール、エタノール、及び酢酸等の、酸素及び水素を含有する有機化合物等の生成物を生成する。
【0023】
CO電解は、使用される触媒、MEA設計、及び動作条件に応じて様々な生成物を生成し得る。CO電解の副生成物として水素も生成される。これは、H及びCO電解生成物の混合物が所望されるいくつかの用途に関して有用であり得るが、多くの場合、CO電解生成物のみが所望であり、生成物ストリーム中の水素の量を制限することが有用である。CRRのカソードにおける様々な触媒によって、異なる生成物又は生成物の混合物がCO還元反応から形成される。
【0024】
CO電解生成物を生成するのに必要な電子の数は、生成物に応じて異なる。COのような2電子生成物は、1生成物分子当たりに2個の電子を必要とする。「多数電子生成物」及び「多電子生成物」は、1生成物分子当たりに2個よりも多い電子を利用する反応からの生成物を指す。CO及びCO電解からの、カソードにおける可能な2電子反応及び多数電子反応の例が、以下に与えられる。
CO+2H+2e→CO+HO(2電子)
2CO+12H+12e→CHCH+4HO(12電子)
2CO+12H+12e→CHCHOH+3HO(12電子)
CO+8H+8e→CH+2HO(8電子)
2CO+8H+8e→CHCH+2HO(8電子)
2CO+8H+8e→CHCHOH+HO(8電子)
CO+6H+6e→CH+HO(6電子)
水がプロトン源である場合のCO及びCO電解反応:
CO+HO+2e→CO+2OH(2電子)
2CO+8HO+12e→CHCH+12OH(12電子)
2CO+9HO+12e→CHCHOH+12OH(12電子)
CO+6HO+8e→CH+8OH(8電子)
2CO+10HO+8e→CHCH+8OH(8電子)2CO+7HO+8e→CHCHOH+8OH(8電子)
CO+5HO+6e→CH+6OH(6電子)
【0025】
さらに、COのカソード還元のために使用される電位のレベルで、寄生反応において水素イオンが水素ガスに還元される場合がある。
2H+2e→H(2電子)
【0026】
比較的低い電流効率においてさえも、電解装置は、CO及びHのような比較的多量の低電子ガス生成物を生成することになる。一例として、エチレンに関して30%の電流効率及び水素に関して5%の電流効率を有する電解装置は、ガス流出ストリームにおいて、1:1モルのC:Hをもたらす。これは、エチレンが、電子の数を水素の6倍必要とすることに起因する。
【0027】
いくつかの多数電子生成物(例えばエタノール)が通常の動作温度で液体である一方で、メタン、エタン、エチレン、プロパン、及びプロピレンのような多数電子生成物は気相であり、生成物ストリーム中で他の気相生成物及び未反応COと混合される。
【0028】
多数電子ガス生成物に伴う別の課題は水管理である。水は、上記式に従ってCOの電気化学的還元中に生成され、及び/又は、拡散、泳動、及び/又は抗力によってポリマー電解質膜を通してCO還元が生じる電気化学セルのカソード側に移動し得る。水を電気化学セルから除去して、それが蓄積すること及び反応物COが触媒層に到達することを阻むことを防止するべきである。
【0029】
COの入力流量をより高くすると、セルから水を除去することに役立つ。COの流量がより低いと、水を押し出すのに十分でないことがあり、セルフラッディング、MEA触媒層、カソードガス拡散層、又は流場の全て又は一部での水の蓄積をもたらす。フラッディングしたエリアにおいて、COは、高電流密度での高電流効率をサポートするのに必要な速度で触媒に到達することができず、この結果、COが所望の生成物に還元される代わりに不所望な水素ガスが生成される。
【0030】
フラッディングを防止するためにセルを通る必要なガス流は、セル内の流場設計、電流密度、及びガス圧力に依存する。様々な実施形態によれば、100cmのセルは、少なくとも100sccm(100cm/m)、300sccm(300cm/m)、450sccm(450cm/m)、又は750sccm(750cm/m)の流れを有することでフラッディングを防止し得る。
【0031】
水管理のために比較的高い流量が使用され得る一方で、多電子生成物の場合にCO利用を高くするために低流量が必要とされる。CO利用とは、電気化学反応器へのCO入力の、生成物に変換されるパーセントである。単回通過CO利用とは、ガスが反応器を一回通過する場合のCO利用である。電流密度、入力CO流量、電流効率、及びCOを生成物に還元するのに必要な電子数等のパラメータによって、単回通過CO利用は決まる。
【0032】
以下の例は、多電子生成物のためのより高いCO利用がどのようにより低い流量をもたらすかを示している。CO参照例は、600mA/cmで100cmの電気化学セルに450sccm(450cm/m)のCOを入力してCOを生成した参照例であり、実施例1及び2は、CH生成のための単回通過利用及び出力ガスストリーム組成及び流量を示している。実施例1は、CO参照例と同じ入力流量を有し、実施例2は同じ単回通過利用を有する。
表1:CO生成と比較したCH生成のための入力CO流量及び単回通過CO利用
【表1】
【0033】
CO参照例において、450sccm(450cm/m)は84%のCO利用をもたらす。実施例1において、同じ入力流量の使用は、メタン生成の場合は21%の利用をもたらすのみである。84%のCO利用に達するために、112.5sccm(112.5cm/m)のより低い入力流が使用される(実施例2)。これは、メタン(8電子生成物)への84%のCO利用に達するのに必要な流量に対して、入力ストリーム中の84%のCOを流出口においてCO(2電子生成物)に変換するのに必要とされる入力流の4分の1である。
【0034】
複数の炭素原子を含有する生成物は、これらの困難をさらに悪化させる。電解装置を通るガスの流量は、複数の気相CO分子が多炭素生成物の単一の気相分子に変換される場合、さらに減少させられる。以下の表2は、実施例3~5を含み、これらは、エチレン生成の例に関する入力CO流量及び単回通過利用を示している。
表2:CHCH生成のための入力CO流量及び単回通過CO利用
【表2】
【0035】
生成物濃度及び流量は、CO参照例におけるように2電子生成物が作製される場合に可能であるよりも、はるかに低い。加えて、ガスが反応器を通って進むに従って総流量はますます低下し、CO利用がより高い場合、水管理がより困難になる。
【0036】
実施例5において、COのいくらかは反応して液体生成物を形成し、これは33%の電流効率を占めるが、電解装置の気相出力中には存在しない。各生成物を作製するのに必要な電子の数の差に起因して、エチレンと比較して6倍のHが生成される。
【0037】
上記実施例によって強調されるものは、Hに関するさらに低い電流効率が、電気化学セルから生じる多電子CO還元生成物の濃度に与える影響である。CO参照例において、出力ガスストリーム中のH濃度は8.5%である。同じ利用を達成するために、CH出力ガスストリームは27.2%のHを含有し(実施例2)、CHCH出力ガスストリームは21.9%のHを含有する(実施例4)。
【0038】
いくつかの実施形態において、COは出発反応物である。これは、出発反応物としてCOを使用することと比較して、多数電子生成物の各々を作製するためにより少ない電子が使用されるという理由で、上述の問題のいくつかを緩和することができる。以下の表3は、100cmのセルにおいてCO還元から生成されるCHに関する出力ガスストリームの例を示している。
表3:CHのための入力CO流量及び単回通過CO利用
【表3】
【0039】
実施例6及び7はそれぞれ、実施例1及び2と比較することができる。84%のCO利用(実施例7)に達するために、入力流量は、COの場合、CO(実施例2)の場合よりも33%高い。
【0040】
本明細書において提供されるものは、CO電解装置の気相出力ストリームにおける所望の生成物の濃度を高めるためのシステム及び方法である。以下の説明は、主に、メタン、エタン、エチレン、プロパン、及びプロピレン等の気相多数電子生成物に言及しているが、システム及び方法は、CO生成のために構成された電解装置のCOの濃度を高めるために実装されてもよい。
【0041】
以下の例において、バイポーラ膜MEA、及びアニオン交換膜のみ又はカチオン交換膜のみを含むMEAを含むMEAに言及する。MEAのさらなる詳細が以下に含まれる。特定の実施形態において、バイポーラ膜を含むMEA、及びアニオン交換膜(AEM)を含むものが使用されてもよい。メタン及びエチレンのためのMEAの例は、以下で、これら及び以下の他の生成物のためのMEAの追加の説明とともに与えられる。特に、バイポーラ膜MEAは図9及び図10を参照しながら論じられ、AEM単独MEAは図11及び図12Aを参照しながら論じられる。さらなる説明は、MEAのその説明に関して参照により本明細書に組み込まれる、2020年11月24日に出願された米国特許出願第17/247,036号に見出され得る。
【0042】
第1の例において、メタンの生成のためのバイポーラ膜MEAは、以下のような、ガス分配層(GDL)、カソード触媒層、バイポーラ膜、及びアノード触媒層を含むことができる:
●GDL:
○Sigracet 39BC(炭素繊維上の5%PTFE処理された微多孔質層、0.325mm厚)
●触媒層:
○0.16mg/cmの20nm40%Premetek Cu/Vulcan XC-72(360~410nmの粒子サイズ)
○19重量%のアニオン交換ポリマー電解質(FumaTech FAA-3)
○1~2μmの触媒層厚
●膜:
○Nafion(PFSA)212(50.8μm厚)Proanode(Fuel Cell Etc)膜上の10~12μm厚のアニオン交換(AEM)ポリマー電解質
●アノード:
○3mg/cmのIrRuOxアノード
【0043】
別の例において、メタンの生成のためのバイポーラ膜MEAは、以下のような、GDL、カソード触媒層、バイポーラ膜、及びアノード触媒層を含むことができる:
●GDL:
○単一又は複数の、積み重ねられた5~20%PTFE処理された微多孔質層被覆炭素繊維基材(SGL Carbon、Freudenberg Performance Material、AvCarb Material Solutions、又は他のGDL製造業者、0.25~0.5mm厚)
●触媒層:
○炭素、例えば、Premetek Cu/Vulcan XC-72(20%~60%のCu負荷)上に支持された0.1~3.0mg/cm2の20~100nmのCuナノ粒子
○5~50重量%のアニオン交換ポリマー電解質(Fumatech BWT GmbH、Ionomr Innovations Inc、又は他のアニオン交換ポリマー電解質製造業者)
○1~5μmの触媒層厚
●膜:
○Nafion(登録商標)膜(25~254μm厚)等のカチオン交換膜上の5~20μm厚のアニオン交換ポリマー電解質
●アノード:
○0.5~3mg/cm2のIrRuOx又はIrOxアノード触媒層及び多孔質Tiガス拡散層
【0044】
別の例において、エチレンの生成のためのバイポーラMEAは、以下のような、GDL、カソード触媒層、バイポーラ膜、及びアノード触媒層を含むことができる:
●GDL:
○Sigracet 39BC(炭素繊維上の5%のPTFE処理された微多孔質層、0.325mm厚)
●触媒層:
○0.35mg/cm2の100%Sigma Aldrich Cu(80nmの粒子サイズ)
○19重量%のアニオン交換ポリマー電解質(FumaTech FAA-3)
○2~3μm厚
●膜:
○Nafion(PFSA)115(50.8um厚)Proanode(Fuel Cell Etc)膜上の、20~24μm厚のAEMポリマー電解質
●アノード:
○3mg/cm2のIrRuOxアノード
【0045】
別の例において、エチレンの生成のためのバイポーラMEAは、以下のような、ガス分配層(GDL)、カソード触媒層、バイポーラ膜、及びアノード触媒層を含むことができる:
●GDL:
○単一又は複数の、積み重ねられた5~20%PTFE処理された微多孔質層被覆炭素繊維基材(SGL Carbon、Freudenberg Performance Material、AvCarb Material Solution、又は他のGDL製造業者、0.25~0.5mm厚)
●触媒層:
○超音波スプレー成膜、電子ビーム蒸着、マグネトロンスパッタリング、又は他の類似の被覆処理を介して堆積された、0.1~3.0mg/cmの純Cuナノ粒子又はCu系合金ナノ粒子(5~150nmの粒子サイズ)
○5~50重量%アニオン交換ポリマー電解質(Fumatech BWT GmbH、Ionomr Innovations Inc、又は他のアニオン交換ポリマー電解質製造業者)
○1~5μm触媒層厚
膜:
○Nafion(登録商標)膜(25~254μm厚)等のカチオン交換膜上の、5~20μm厚のアニオン交換(AEM)ポリマー電解質(Fumatech BWT GmbH、Ionomr Innovations Inc、又は他のアニオン交換ポリマー電解質製造業者)
●アノード:
○0.5~3mg/cm2のIrRuOx又はIrOxアノード触媒層及び多孔質Tiガス拡散層
【0046】
別の例において、エチレンの生成のためのAEM単独MEAは、以下のような、GDL、カソード触媒層、アニオン交換膜、及びアノード触媒層を含むことができる:
●GDL:
○Sigracet 39BC(炭素繊維上の5%PTFE処理された微多孔質層、0.325mm厚)
●GDL上にスプレーされた触媒層:
○0.35mg/cm2の100%Sigma Aldrich Cu(80nmの粒子サイズ)
○19重量%アニオン交換ポリマー電解質(FumaTech FAA-3)
○2~3μm厚
●膜:
○KOH交換Ionomr AF1-HNN8-50-X AEM
○50μm厚、>80mS/cmの伝導率、33~37%の吸水
●アノード:
○IrOx被覆多孔質Ti(Proton Onsite)
【0047】
別の例において、エチレンの生成のためのAEM単独MEAは、以下のような、GDL、カソード触媒層、アニオン交換膜、及びアノード触媒層を含むことができる:
●GDL:
○単一又は複数の、積み重ねられた5~20%のPTFE処理された微多孔質層被覆炭素繊維基材(SGL Carbon、Freudenberg Performance Material、AvCarb Material Solution、又は他のGDL製造業者、0.25~0.5mm厚)
●GDL上に被覆された触媒層:
○超音波スプレー成膜、電子ビーム蒸着、マグネトロンスパッタリング、又は他の類似の被覆処理を介して堆積された、0.1~3.0mg/cm2の純Cuナノ粒子又はCu系合金(25~100nmの粒子サイズ)
○5~50重量%のアニオン交換又はカチオン交換ポリマー電解質(Fumatech BWT GmbH、Ionomr Innovations Inc、又は他のアニオン/カチオン交換ポリマー電解質製造業者)
○1~5μm厚
●膜:
○KOH交換アニオン交換ポリマー膜(Fumatech BWT GmbH、Ionomr Innovations Inc、又は他のアニオン交換ポリマー膜製造業者)
○15~75μm厚、>60mS/cmの伝導率、20~100%の吸水
●アノード:
○IrOx被覆多孔質Ti
【0048】
MEAのカソード触媒層は、エチレン又は他の所望の生成物の生成のために構成された触媒を含む。エチレンのために構成された触媒は、他の反応に優先して1又は複数のメタン生成反応を触媒作用する傾向を有する。好適な触媒としては、銅(Cu)等の遷移金属が挙げられる。様々な実施形態によれば、触媒は、ドープされた又はドープされていないCu又はそれらの合金であってもよい。銅又は他の遷移金属を含有すると説明されるMEAカソード触媒は、合金、ドープされた金属、及び銅又は他の遷移金属の他の変形例を含むと理解される。一般に、炭化水素及び酸素含有有機生成物のための、本明細書に記載の触媒は、非貴金属触媒である。例えば、金(Au)を使用して、一酸化炭素(CO)生成を触媒作用してもよい。触媒層の形態は、MEAのための、所望のメタン(又は他の所望の生成物)の生成特性を達成するように設計されてもよい。厚さ、触媒負荷及び触媒粗度等の形態特性は、所望の生成物生成率、所望の生成選択性(例えば、水素、エチレン等の他の考えられる生成物に対するメタンの選択性等)、及び/又は二酸化炭素反応器動作の任意の他の好適な特性に影響し得る。
【0049】
エチレン等の多電子生成物のためのカソード触媒層の例は上で与えられている。さらなる例及びCO生成のためのカソード触媒層の例としては、
●CO生成:Vulcan XC72Rカーボン上に支持され、OrionからのTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合された、直径4nmのAuナノ粒子
が挙げられる。層は約15μm厚であり、Au/(Au+C)=30%、0.32のTM1対触媒質量比、1.4~1.6mg/cmの質量負荷、0.47の推定ポロシティである。
●メタン生成:Vulcan XC72Rカーボン上に支持され、FumatechからのFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合された、20~30nmのサイズのCuナノ粒子。0.18のFAA-3対触媒質量比。より広い範囲の1~100μg/cm内の~7.1μg/cmの推定Cuナノ粒子負荷。
●エチレン/エタノール生成:FumatechからのFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合された、25~80nmのサイズのCuナノ粒子。0.10の、FAA-3対触媒質量比。純AEMのためにSigracet 39BC GDE上、又はポリマー電解質膜上のいずれかに堆積される。270μg/cmの推定Cuナノ粒子負荷。
●メタン生成のためのバイポーラMEA:触媒インクは、FAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質(Fumatech)と混合された、Vulcanカーボン(Premetek 40% Cu/Vulcan XC-72)によって支持された20nmのCuナノ粒子から作製されており、FAA-3対触媒質量比は0.18である。カソードは、Nafion(PFSA)212(Fuel Cell Etc)膜上にスプレーコーティングされたFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質を含むバイポーラ膜上に触媒インクを超音波スプレー成膜することによって形成される。アノードは、3mg/cmの負荷でバイポーラ膜の反対側にスプレーコーティングされたIrRuOxで構成されている。多孔質炭素ガス拡散層(Sigracet 39BB)は、Cu触媒被覆バイポーラ膜へと挟まれてMEAを構成する。
●エチレン生成のためのバイポーラMEA:触媒インクは、FAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質(Fumatech)と混合された純な80nmのCuナノ粒子(Sigma Aldrich)から作製されており、FAA-3対触媒質量比は0.09である。カソードは、Nafion(PFSA)115(Fuel Cell Etc)膜上にスプレーコーティングされたFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質を含むバイポーラ膜上に触媒インクを超音波スプレー成膜することによって形成される。アノードは、3mg/cmの負荷でバイポーラ膜の反対側にスプレーコーティングされたIrRuOxで構成されている。多孔質炭素ガス拡散層(Sigracet 39BB)は、Cu触媒被覆バイポーラ膜へと挟まれてMEAを構成する。
●CO生成:Vulcan XC72Rカーボン上に支持され、OrionからのTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合された、直径4nmのAuナノ粒子。層は約14ミクロン厚であり、Au/(Au+C)=20%である。触媒層における、0.32のTM1対触媒質量比、1.4~1.6mg/cmの質量負荷、0.54の推定ポロシティ。
●CO生成:Vulcan XC72Rカーボン上に支持され、OrionからのTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合された、直径45nmのAuナノ粒子。層は約11ミクロン厚であり、Au/(Au+C)=60%である。触媒層における、0.16のTM1対触媒質量比、1.1~1.5mg/cmの質量負荷、0.41の推定ポロシティ。
●CO生成:Vulcan XC72Rカーボン上に支持され、OrionからのTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合された、直径4nmのAuナノ粒子。層は約25ミクロン厚であり、Au/(Au+C)=20%である。触媒層における、0.32のTM1対触媒質量比、1.4~1.6mg/cmの質量負荷、0.54の推定ポロシティ。
【0050】
上記のMEAの例は、以下に説明する、生成物ストリーム中の所望の生成物の濃度を高めるように構成されたCO還元電解装置において実装されてもよい。まず、図1に、電気化学セル及び再循環ループを備えるシステムが示されている。図1の例において、セルはエチレンを生成するように構成されている。セルの入力は、以前の通過からの出力と新鮮なCOとの組み合わせを含む。このシステムは、反応物のうちの少量がシステムを通って再循環されてきたガスであるため、単回通過システムの場合よりも低いCO入力流量を使用する。出力は、エチレン、CO及びH、並びに未反応COの混合物である。CO濃度は、単回通過システムと比較してより低く、生成物:COの比は、再循環されるガスの量に応じて決まる。
【0051】
再循環ブロワー又は他の圧縮器を使用して、システムに入るガスの流量を調節し、反応器にかかる圧力損失を補償するのに役立ててもよい。図1の例において、未反応COは再循環のために出力ストリームから分離されない。上述したように、エチレンの形成には比較的少量の入力COが使用される。特に、エチレン及び他の生成物を未反応COとともに再循環させることは、セルに入るCO入力の量を制限しながら流量を増大させるのに役立ち得る。再循環ストリーム中のエチレン圧は、水、pH、及び他の環境条件を調節するように最小流量を維持することに役立ち得る。
【0052】
100cmのセルの場合、セルを通じて、最大流量を6000sccm(6000cm/m)として、少なくとも300sccm(300cm/m)の、少なくとも450sccm(450cm/m)の、又は少なくとも700sccm(700cm/m)の流量を使用して、エチレンに対する選択性を維持してもよい。新鮮なCO対再循環ガスの比は、ブロワーの速度に依存する。
【0053】
図1(及び以下で論じられる図2及び図3a)の例において、COが出発反応物として示されている。他の実施形態において、CO又はCO及びCOの混合物を出発反応物として使用してもよい。また、他の実施形態において、電解装置は、メタン、エタン、プロパン、又はプロピレン等の別の気相多電子生成物を生成するように構成されてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、図1に関して説明された再循環ループがCO生成のために実装されてもよい。COが出発反応物である実施形態において、MEAは、生成物ストリーム中のCOの再循環を可能にするように、バイポーラ膜又はカチオン交換膜を有してもよい。以下でさらに論じられるように、AEM単独MEAを有する電解装置中のCOは、電解装置のアノード側に輸送される。
【0054】
いくつかの実施形態において、システムは、再循環ループの下流に精製システムを含んで、生成物ストリーム中の残りのCO及びHを除去してもよい。精製システムは、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第17/444,356号に記載されている。エチレン精製システムは、以下でさらに説明される。
【0055】
いくつかの実施形態において、未反応COは、再循環の前に、最初に生成物ストリームから分離されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、図1におけるセルの上流には、セルにCOを供給するように、直接空気捕捉ユニットが設けられる。直接空気捕捉ユニットを含むシステムは、図8を参照して以下でさらに説明される。図2は、複数の電気化学セルが直列で使用されて生成物濃度を高める別の構成を示している。図2の例においては、2つのセルが示されているが、3つ、4つ、又はそれ以上のセルが直列で使用されてもよい。第2、第3...第nのセルへの流入として第1の電気化学セルの出力を供給することによって、COの濃度は減少することになり、生成物の濃度は連続するセルごとに高まる。上記直列の第2のセル後の生成物濃度は、第1のセルの出力からCOを取り出し、電流効率を使用して変換率を決定することによって概算され得る。直列の2つのセルの出力は、第1のセル後の2倍の生成物濃度を有し、直列の追加のセルに関して以降同様である。
【0057】
比較例1は、実施例1におけるようなセル2つを直列にした場合の、総CO利用及び出力ガスストリーム組成を示している。表4では、実施例1のCO利用及び出力ガスストリーム組成と比較例1とが比較されている。
表4:CH生成のための直列の2つのCOセルと比較した単一COセル
【表4】
【0058】
上記実施例1からのセルを直列に配置すると、600mA/cmで100cmの第1のセルは、CO利用が21%、出力ガスストリーム組成が19.2%のメタン、8.5%のH、及び72.3%のCO、総流量が492sccm(492cm/m)となる。次いで、この第1のセルの出力は、メタンに関して90%の電流効率、及びHに関して10%の電流効率を有する同じく100cmの面積の第2のセルに供給され、これにより、第2のセルからの生成物ストリームは、35.4%のメタン、15.7%のH、及び48.9%のCOで構成されている534sccm(534cm/m)の総流量となる。両方のセルを一緒に組み合わせたCO利用は42%である。直列の追加のセルは、メタン及びHの濃度をさらに高めるとともに、CO濃度がゼロを下回らない範囲内でCOの濃度を減少させ、この点では、メタンの電流効率もゼロまで低下し、且つHの電流効率が100%まで上昇することになる。
【0059】
上記実施例3からのセルを直列に配置すると、表5に示されるように同様の効果が得られる。
表5:CHCH生成のための直列のCOセルと比較した単一COセル
【表5】
【0060】
直列の複数のセルを用いると、初期CO流量は高く、水管理に役立ち、複数のセルがCOの多くを変換するのに使用される。上記例は、総ガス流量がセル間でどのように変化(増大又は減少)し得るかを示している。総ガス流量がフラッディングを防止するのに必要なクリティカルレベルを下回るまで減少する場合、セル間のストリームに追加のガスを追加して総量を所望のレベルより多くすることができる。この追加のガスは、システムの出力の再循環からもたらされ得る(図1に関して説明されるように)か、又は別の供給源から導入され得、CO、エチレン、H等で構成され得る。セル間のガス流量が増大する実装に関して、いくつかの実施形態において、ガスストリームの一部は下流セルをバイパスして所望の範囲に流れを維持してもよい。
【0061】
様々な実施形態によれば、100cmのセルを通る流量が300sccm(300cm/m)~6000sccm(6000cm/m)の間であることが、エチレン及び他の多数電子CO還元生成物(例えば、メタン)に対する選択性を維持するのに有用であり得る。いくつかの実施形態において、これは、450sccm(450cm/m)~6000sccm(6000cm/m)又は700sccm(700cm/m)~6000sccm(6000cm/m)であってもよい。他のサイズのセルの場合、3~60sccm/cm(3~60cm/m/cm)、又は4.5~60sccm/cm(4.5~60cm/m/cm)、又は7~60sccm/cm(7~60cm/m/cm)の流量を使用してもよい。
【0062】
流量の調整に加えて、ガスストリームの圧力及び含水量がセル間で変更されてもよい。水は、加湿器を用いてストリームに加えることも、又は、ガスストリームを冷却して相分離器によって、及び/又は吸着剤(adsorbent)によって、除去することもできる。セル間の圧縮器によって、圧力を増大させることができる。いくつかの実施形態において、直列の複数のセルは、図3bに関して以下に説明するように、セルのコンパクトなスタックにして設けられる。
【0063】
他の実施形態において、COが出発反応物として使用されてもよい、及び/又は、電解装置は、メタン、エタン、プロパン、又はプロピレン等の別の気相多電子生成物を生成するように構成されてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、直列の複数のセルを使用して、所望の生成物としてのCOを濃縮してもよい。
【0064】
本明細書に記載のセルはいずれも、スタックのセルのうちの1つであってよい。図3aは、並列に積み重ねられ、セル間で共有される単一のCO流ストリームを有する、複数の電気化学セルを示している。これにより、生成される生成物の量をより効率的に拡大することが可能になる。エチレンの最終濃度は、単回通過セルの場合と同じであるが、各セルの追加によって生成されるエチレンの総体積は増大される。図1に関して説明された再循環ループが、スタック中の個々のセルのために、及び/又はセルのスタック間に、実装され得る。
【0065】
図3bは、図2に関して上述したように、スタックにして配置され且つ直列に接続された複数の電気化学セルを示している。MEAは、アノードが上側、カソードが下側で(図3bにおけるように)、又はアノードが下側、カソードが上側で、又は鉛直な構成で、スタック中に配置されてもよい。
【0066】
図3bにおけるような配置を使用して、高いCO又はCO利用を達成しながら、セルを通して高いガス流量を維持して効率的に水を除去することができる。この設計は、直列に接続された積み重ねられていないセルよりもコンパクトであり、それら各自のコントローラを各々使用する複数の別個のセルの代わりに1つのセルスタックのみを有することによって、例えば、パワーエレクトロニクス流量コントローラ、温度コントローラ、圧力コントローラ等のバランスオブプラント(balance of plant)が簡略化される。図3bの例においては、3セルスタックが示されている。様々な実施形態によれば、スタックは1桁の、数十の、又は数百のセルを有してもよい。いくつかの実施形態において、スタック全体が直列である。他の実施形態において、セルのサブセットが直列であり、他のサブセットに並列に接続されている。例えば、100セルスタックにおいて、入力カソードガス流は10、5、3、又は2個ずつのセルを直列で通り、直列に配されたセルの各ブロックが並列になっている。
【0067】
いくつかの実施形態において、酸化炭素還元電解装置は、アニオン交換膜(AEM)のみを含むMEAを有する。AEM単独MEAを使用して、生成物ガスストリームからCOを除去し、電解装置出力中の所望の生成物のより高い濃度を達成することができる。COが、CO還元反応において生成される水酸化物と反応することで、重炭酸塩が作製される。次いで、重炭酸塩はカソードからアニオン交換膜を通ってアノード側に輸送される。この結果、カソード出力中のCOはより少なくなり、且つメタン及びエチレン等のCO還元生成物はより高い濃度となる。いくつかの実施形態において、カソード出力は、COを実質的に含まなくてもよい。COの量は初期出発COに依存し得る。様々な実施形態によれば、カソード出力は、5モル%より少なくても、1モル%より少なくても、又は0.1モル%より少なくてもよい。図4は、AEM単独MEAを有する単一段階CO還元電解装置の一例を示している。見ることができるように、アノード側で、COはOと混合される。生成物ストリームは、エチレン、H、及びCOを含む。
【0068】
図4の例において、水は電解装置のアノードに供給され、酸化されて酸素になる。Hは、いくつかの実施形態において、アノード側原料であってもよい。いくつかの実施形態において、炭素含有アノード原料が使用される。これらは、AEMベースの電解装置においてCO還元を行う場合に特に有利であり得る。炭素化合物を含有する液体又はガス原料がアノードに供給される。炭素化合物は酸化されてCOとなり、AEM電解装置のアノードから到来する純なCOのストリームをもたらす。様々な実施形態によれば、次いで、COはCO電解装置のカソードへと戻され、他の用途において使用されても、又は隔離されてもよい。アノード原料の例は、バイオガス、天然ガス、微量のメタン及び/又は他の炭化水素を含有するバイオガスから分離されたCO、都市下水、アルコール又はアルコール水溶液、蒸気メタン改質廃棄物ストリーム、一酸化炭素等である。
【0069】
図4に示されているように、水が使用されて電解装置のアノードに供給され、酸化されて酸素ガスになる実施形態において、電解装置のアノード側気相出力ストリームは、酸素及びCOを含有する。いくつかの実施形態において、ガス分離器を使用してCO及びOを分離することができ、COストリームは電解装置の流入口に戻して再循環されて還元される。
【0070】
具体例において、100cmの電気化学セルにおいて、600mA/cmで、エチレンに関して90%の電流効率及びHに関して10%の電流効率で、450sccm(450cm/m)の入力流量で、カソード出力ストリームは、104sccm(104cm/m)の流量を有し、微量のCOのみを伴って約60%のエチレン及び40%の水素を含有し、未反応COの大部分はデバイスのアノード側に移動する。
【0071】
いくつかの実施形態において、カソードガス生成物ストリーム中にCOの顕著な濃縮を生じさせることなく、100cmの電解装置の場合に最大900sccm(900cm/m)の入力流量を使用し得る。入力流量が910sccm(910cm/m)であると、出力ストリームは、56%のエチレン、37.3%のH、及び6.7%のCOを含有し、113sccm(113cm/m)の総流量を有する。
【0072】
図4の例において、出力ストリームは、エチレン精製システムに供給される。エチレン精製システムは、以下でさらに説明される。
【0073】
他の実施形態において、電解装置は、メタン、エタン、プロパン、又はプロピレン等の別の気相多電子生成物を生成するように構成されてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、AEM単独MEAがCO生成のために実装されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、直列の2つの電解装置は、流出ストリーム中の生成物の高濃度を達成するように異なるように構成されている。これにより、単一デバイスに対する、組み合わされたシステムの性能向上ももたらされ得る。図5は、そのような2段階システムにおいてAEM単独膜が実装される別の実施形態を示している。図5の例において、第1のCO電解装置は、バイポーラ又はカチオン伝導膜を含有し、CO生成のために構成されてもよい。カソードへのCOの入力はCOに還元される。次いで、反応器出力は、CO、少量の副生成物H、及び未反応COを含有する。次いで、第1の電解装置のこの出力は、エチレン及び/又は他の多数電子生成物(例えば、メタン、エチレン等)を生成するように構成された、AEM膜を含む第2の電解装置に供給される。第2の電解装置において、CO及び/又はCOは、多数電子生成物に還元され、炭酸塩又は重炭酸塩の形態のCOはAEM膜を通ってアノードへと移動する。アノード出力は、酸化生成物及び元はカソードから到来したCOを含有する。カソード出力は、エチレン及び/又は他の多数電子生成物、水素、及び未反応CO及びCOを含有する。COの全て又は大部分がアノードに輸送されているため、ストリーム中、CO濃度は非常に低いものであり得るか又はCOは残っていない場合がある。
【0075】
具体例において、第1の電解装置は、バイポーラ膜ベースのMEAを使用するCOからCOへの還元のために構成された75cmの単一セルである。入力流量は1500sccm(1500cm/m)であり、COの電流効率は95%より高く、Hの電流効率は5%より低い。総出力流量は約1515sccm(1515cm/m)であり、組成は約15%のCO、1%のH、及び84%のCOである。第1の電解装置からの出力は、AEMベースのMEAを含む、エチレン生成のために構成された第2の電解装置に供給される。第2の電解装置は100cmであり、600mA/cmで、電流効率は90%エチレン及び10%Hで動作している。第2の電解装置からのカソード流出ストリームは、15.6%のエチレン、6.3%のCO、6.9%のH、及び71.2%のCOを含有し、合計で606sccm(606cm/m)の総流量を有する。
【0076】
多くの場合、COの還元は他のCO種の還元より動態学的に容易であるため、CO及びCOを合わせた原料を利用する第2の電解装置は、それがCO、炭酸塩、及び/又は重炭酸塩を供給される場合と比較してより低い電圧で動作し得る。
【0077】
第1の電解装置と第2の電解装置との間で、追加のガスは、加えられるか、又はストリームから除去されてもよく、電解装置の他の部分に出入りする再循環ループの一部であってもよい。水は、加湿、相分離、又は脱湿を介して、除去されても又はガスストリームに加えられてもよい。ガスストリームの圧力は、圧縮器又は逆流レギュレータを使用して、上方又は下方に調整されてもよい。
【0078】
図5において説明される2段階システムはまた、エチレン又は他の多数電子生成物ではなくCO生成のために構成されたAEM単独MEAを用いて、CO生成のために使用されてもよい。そのような実施形態において、第1の(バイポーラ)電解装置 生成物CO、未反応CO、及び副生成物Hの出力。これは全て第2の(AEM)電解装置に供給されてもよく、これによりCO及びHが作製される。様々な実施形態によれば、第2の電解装置の出力は、COよりも多くのHを有しても又はHよりも多くのCOを有してもよい。COは、AEM電解装置におけるストリームから除去されることになるため、生成物出力はCO+Hとなり、COの大部分は除去されている。
【0079】
様々な実施形態によれば、第2の電解装置の出力は、モルで30%より低い、5%より低い、1%より低い、又は0.1%より低いCOであってもよい。図5の例において、出力ストリームは、エチレン精製システムに供給される。エチレン精製システムは、以下でさらに説明される。
【0080】
図6は、膜とカソードとの間に設けられたアルカリ性水溶液のバッファ層を含む電解装置の一例を示している。溶液の例としては、KOH、NaOH、NaHCO、及びKHCO溶液が挙げられる。セシウム含有溶液が使用されてもよい。バッファ層は、生成物ガスストリームからCOを除去し、アルカリ性環境を提供することによってH生成を緩和してプロトン活性を減少する。COは、バッファ層においてOHと反応して重炭酸塩を作製する。次いで、重炭酸塩はカソードからアニオン交換膜を通ってアノード側に輸送されるか、又はバッファ層中に液体を流すことによってカソード側から輸送される。これにより、カソード出力中のCOは、より少なくなる。バッファ層はまた、カソードでの高いpHを維持し、H生成を抑制するのに役立つ。Hは2電子プロセスの生成物であるため、H生成の抑制は、COx還元生成物(例えば、メタン、エチレン)の増大につながることになる。いくつかの実施形態において、AEM単独MEA又はバイポーラ膜MEAが使用される。図6の例において、出力は、以下でさらに説明されるエチレン精製システムに供給される。
【0081】
上述された液体バッファを含むセルは、図1図3bに関して上述された単回通過又は複数回通過を有する単一セル又は複数のセルとして構築することができる。電気化学セルの気体入力は、単回通過のための純なCO、又は、複数回通過のための、以前の通過からの出力と新鮮なCOとの組み合わせを含む。上述したように、複数回通過システムは、反応物のうちの少量がシステムを通って再循環されてきたガスであるため、単回通過システムより低いCO入力流量を使用する。カソード液体入力はアルカリ性溶液を含み、これは、単回通過中にあるか、又はCOを捕捉するのに利用可能なOHが十分にある場合はバッファ層の流出口から循環され得る。気体出力は、CO還元生成物並びにアルカリ性バッファ層を有しないシステムと比較してより低い濃度のCO及びHの混合物を含み、生成物:COの比は、バッファ層中のアルカリ性種の濃度及びガスストリーム中のガス流量に応じて決まる。液体出力は、CO及びOHの反応によって形成されるCO 2-、HCO 、並びに反応していない余剰のOHを含む。
システム
【0082】
図7は、図1図6に関して本明細書に記載のもののうちの任意の1又は複数等のMEAを含むセルを有してよい酸化炭素還元反応器703の動作を制御するためのシステム701を示している。反応器は、スタックにして配置された複数のセル又はMEAを有してもよい。システム701は、還元反応器703のアノードとインタフェースするアノードサブシステムと、還元反応器703のカソードとインタフェースするカソードサブシステムとを備える。
【0083】
図示されているように、カソードサブシステムは、還元反応器703のカソードに酸化炭素の供給ストリームを提供するように構成された酸化炭素源709を備え、これは、動作中、カソードにおける還元反応の生成物を含む出力ストリームを生成してもよい。生成物ストリームは、未反応酸化炭素及び/又は水素を含んでもよい。708を参照されたい。
【0084】
酸化炭素源709は、還元反応器703への酸化炭素の体積又は質量流量を制御するように構成された酸化炭素流量コントローラ713に連結されている。1又は複数の他のコンポーネントが、流動酸化炭素源709から還元反応器703のカソードまでの流路上に配置されてもよい。例えば、任意選択の加湿器704が、経路上に設けられ、酸化炭素供給ストリームを加湿するように構成されてもよい。加湿された酸化炭素は、MEAの1又は複数のポリマー層を湿潤させ、それにより、そのような層の乾燥を回避してもよい。流路上に配置されてもよい別のコンポーネントは、パージガス源717に連結されたパージガス流入口である。特定の実施形態において、パージガス源717は、還元反応器703のセルに対して電流が一時停止されている期間の間パージガスを提供するように構成されている。いくつかの実装において、MEAカソード上にパージガスを流すことにより、触媒活性及び/又は選択性の回復が促進される。これは、少なくとも部分的に、ある特定の反応中間体を触媒活性部位から洗い流すこと及び/又はカソードから水を除去することに起因し得る。パージガスの例としては、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素、及びこれらのうちの任意の2又はそれより多くの混合物が挙げられる。
【0085】
動作中、カソードからの出力ストリームは、セルのカソード側における圧力を定義された範囲(例えば、システム構成に応じて、約10~800psig(68.95~5515.81kPa)又は50~800psig(344.74~5515.80kPa))内に維持するように構成された背圧コントローラ715に接続する導管707を介して流れる。出力ストリームは、反応生成物108を、分離及び/又は濃縮のために1又は複数のコンポーネント(図示せず)に提供してもよい。
【0086】
特定の実施形態において、カソードサブシステムは、流出ストリームからの未反応酸化炭素を還元反応器703のカソードに戻して制御可能に再循環させるように構成されている。いくつかの実装において、出力ストリームは、酸化炭素を再循環する前に、還元生成物及び/又は水素を除去するように処理される。MEA構成及び動作パラメータに応じて、還元生成物は、一酸化炭素、水素、メタン及び/又はエチレン等の炭化水素、ギ酸、酢酸等の酸素含有有機化合物、及びそれらの任意の組み合わせであってもよい。特定の実施形態において、生成物ストリームから水を除去するための1又は複数のコンポーネント(図示せず)はカソード流出口の下流に配置されている。そのようなコンポーネントの例としては、生成物ガスストリームから液体の水を除去するように構成された相分離器、及び/又は、生成物ストリームガスを冷却し、それにより、乾性ガスを、例えば必要な場合に下流プロセスに提供するように構成された凝縮器が挙げられる。いくつかの実装において、再循環される酸化炭素は、カソードの上流の源709からの新鮮な酸化炭素と混合し得る。
【0087】
図7に示されているように、アノードサブシステムは、酸化炭素還元反応器703のアノード側にアノード供給ストリームを提供するように構成されている。特定の実施形態において、アノードサブシステムは、新鮮なアノード水を、アノード水貯蔵器719及びアノード水流量コントローラ711を含む再循環ループに提供するように構成されたアノード水源(図示せず)を備える。アノード水流量コントローラ711は、還元反応器703のアノードへの又はそこからのアノード水の流量を制御するように構成されている。図示の実施形態において、アノード水再循環ループは、アノード水の組成を調整するためのコンポーネントに連結されている。これらには、水貯蔵器721及び/又はアノード水添加物源723が含まれてもよい。水貯蔵器721は、アノード水貯蔵器719内のものとは異なる組成を有する(及びアノード水再循環ループにおいて循環する)水を供給するように構成されている。1つの例において、水貯蔵器721内の水は、循環アノード水中の溶質又は他の成分を希釈することができる純水である。純水は、従来の脱イオン水、さらには、例えば少なくとも約15MOhm-cmであるか又は18.0MOhm-cmを超える抵抗率を有する超純水であってもよい。アノード水添加物源723は、循環アノード水に塩及び/又は他の成分等の溶質を供給するように構成されている。
【0088】
動作中、アノードサブシステムは、水又は他の反応物を反応器703のアノードに提供してもよく、ここで、それは少なくとも部分的に反応して酸素等の酸化生成物を生成する。生成物は、未反応のアノード供給材料とともに、還元反応器の流出ストリーム中に提供される。図7には示していないが、任意選択の分離コンポーネントがアノード流出ストリームの経路上に設けられ、アノード生成物ストリームから酸化生成物を濃縮又は分離するように構成されてもよい。
【0089】
他の制御機能がシステム701に含まれてもよい。例えば、温度コントローラは、酸化炭素還元反応器703をその動作中の適切な点において、加熱及び/又は冷却するように構成されてもよい。図示の実施形態において、温度コントローラ705は、アノード水再循環ループに提供されるアノード水を加熱及び/又は冷却するように構成されている。例えば、温度コントローラ705は、アノード水貯蔵器719内の水及び/又は貯蔵器721内の水を加熱又は冷却し得る加熱器及び/又は冷却器を含むか又はそれに連結されてもよい。いくつかの実施形態において、システム701は、アノード水成分以外の成分を直接加熱及び/又は冷却するように構成されている温度コントローラを備える。セル又はスタック内のそのような他の成分の例、及びカソードに流れる酸化炭素。
【0090】
酸化炭素還元反応器703への電流が一時停止されているか否かを含む、電気化学的動作のフェーズに応じて、システム701のある特定のコンポーネントは、非電気的動作を制御するように動作してもよい。例えば、システム701は、カソードへの酸化炭素の流量及び/又は反応器703のアノードへのアノード供給材料の流量を調整するように構成されてもよい。この目的で制御され得るコンポーネントとしては、酸化炭素流量コントローラ713及びアノード水コントローラ711が挙げられ得る。
【0091】
加えて、電流が一時停止されているか否かを含む、電気化学的動作のフェーズに応じて、システム701のある特定のコンポーネントは、酸化炭素供給ストリーム及び/又はアノード供給ストリームの組成を制御するように動作してもよい。例えば、水貯蔵器721及び/又はアノード水添加物源723は、アノード供給ストリームの組成を調整するように制御されてもよい。いくつかの場合において、添加物源723は、水性アノード供給ストリーム中の1又は複数の塩等の1又は複数の溶質の濃度を調整するように構成されてもよい。
【0092】
いくつかの場合において、コントローラ705等の温度コントローラは、動作のフェーズに基づいて、システム701の1又は複数のコンポーネントの温度を調整するように構成されている。例えば、セル703の温度は、ブレークイン、通常動作中の電流一時停止、及び/又は保管中に、上昇又は低下されてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、酸化炭素電解還元システムは、他のシステムコンポーネントからの還元セルの除去を促進するように構成されている。これは、保管、メンテナンス、改修等のためにセルを除去する必要がある場合に有用であり得る。図示の実施形態において、隔離バルブ725a及び725bはそれぞれ、カソードへの酸化炭素源及び背圧コントローラ715に対する、セル703の流体連通を遮断するように構成されている。さらに、隔離バルブ725c及び725dはそれぞれ、アノード水流入口及び流出口に対するセル703の流体連通を遮断するように構成されている。
【0094】
酸化炭素還元反応器703はまた、1又は複数の電力源及び関連付けられたコントローラの制御下で動作してもよい。ブロック733を参照されたい。電力源及びコントローラ733は、還元反応器703内の電極に供給される電流を制御する、及び/又は印加される電圧を制御するようにプログラム又は別様に構成されてもよい。電流及び/又は電圧は、所望の電流密度で電流が印加されるように制御されてもよい。システムオペレータ又は他の責任者は、還元反応器703に印加される電流のプロファイルを完全に定義するように、電力源及びコントローラ733と連携して行動してもよい。
【0095】
特定の実施形態において、電力源及びコントローラは、1又は複数の他のコントローラ又はシステム701の他のコンポーネントと関連付けられた制御機構と協調して動作する。例えば、電力源及びコントローラ733は、カソードへの酸化炭素の送達、アノードへのアノード水の送達、アノード水への純水又は添加物の添加、及びこれらの機能の任意の組み合わせを制御するためのコントローラと協調して動作してもよい。いくつかの実装において、1又は複数のコントローラは、以下の機能:還元セル703への電流及び/又は電圧の印加、背圧の制御(例えば、背圧コントローラ115を介した)、パージガスの供給(例えば、パージガスコンポーネント717を用いた)、酸化炭素の送達(例えば、酸化炭素流量コントローラ713を介した)、カソード供給ストリーム中の酸化炭素の加湿(例えば、加湿器704を介した)、アノードへの及び/又はそこからのアノード水の流量(例えば、アノード水流量コントローラ711を介した)、及びアノード水組成(例えば、アノード水源105、純水貯蔵器721、及び/又はアノード水添加物コンポーネント723を介した)の任意の組み合わせを制御するように協調して制御又は動作するように構成されている。
【0096】
図示の実施形態において、電圧監視システム734は、MEAセルのアノード及びカソードにかかる又はセルスタックの任意の2つの電極にかかる電圧を決定する、例えば、マルチセルスタック内の全てのセルにかかる電圧を決定するために利用される。
【0097】
図9に示されているもの等の電解酸化炭素還元システムは、1又は複数のコントローラ、及び、ポンプ、センサ、ディスペンサ、バルブ、及び電源等の1又は複数の制御可能なコンポーネントを備える制御システムを利用してもよい。センサの例としては、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、導電率センサ、電圧計、電流計、電気化学機器を含む電解質組成センサ、クロマトグラフィーシステム、吸光度計測ツール等の光学センサ等が挙げられる。そのようなセンサは、アノード水、純水、塩溶液等を保持するための貯蔵器、及び/又は電解酸化炭素還元システムの他のコンポーネントにおいて、MEAセル(例えば、流場における)の流入口及び/又は流出口に連結されてもよい。
【0098】
1又は複数のコントローラによって制御され得る様々な機能には、電流及び/又は電圧を酸化炭素還元セルに印加すること、そのようなセル上でカソードからの流出口にかかる背圧を制御すること、カソード流入口にパージガスを供給すること、カソード流入口に酸化炭素を送達すること、カソード供給ストリーム中の酸化炭素を加湿すること、アノードに及び/又はアノードからアノード水を流すこと、及びアノード供給組成を制御することが挙げられる。これらの機能のうちの任意の1又は複数は、その機能を単独で制御するための専用コントローラを有してもよい。これらの機能のうちの任意の2又はそれより多くは、コントローラを共有してもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのマスタコントローラが2又はそれより多くのコンポーネントコントローラに命令を与える、コントローラのヒエラルキが利用される。例えば、システムは、(i)酸化炭素還元セルへの電源、(ii)カソード供給ストリーム流量コントローラ、及び(iii)アノード供給ストリーム流量コントローラに高水準制御命令を与えるように構成されているマスタコントローラを備えてもよい。例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を使用してシステムの個々のコンポーネントを制御してもよい。
【0099】
特定の実施形態において、制御システムは、本明細書に記載の設定された電流に従って、MEAを備える酸化炭素還元セルに電流を印加するように構成されている。特定の実施形態において、制御システムは、電流スケジュールと協調して、1又は複数の供給ストリーム(例えば、酸化炭素流等のカソード供給ストリーム及びアノード供給ストリーム)の流量を制御するように構成されている。いくつかの実施形態において、電流及び/又は電圧は、参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、2019年12月18日に出願された米国特許出願第16/719,359号に記載のように規則的に一時停止するように調節されてもよい。
【0100】
特定の実施形態において、制御システムは、塩濃度を定義されたレベルに維持してもよい、及び/又はアノード水を回収して再循環させてもよい。特定の実施形態において、塩濃度は、MEAセルへの印加電流一時停止のスケジュールと協調して調整される。制御システムの制御下で、システムは、例えば、(a)アノードから流出するアノード水を再循環させ、(b)アノードへのアノード水の組成及び/又は流量を調整し、(c)カソード流出からの水をアノード水に戻し、及び/又は(d)アノードに戻る前に、カソードストリームから回収された水の組成及び/又は流量を調整してもよい。(d)は、カソードから回収された水中の酸化炭素還元生成物の原因となり得ることに留意されたい。しかしながら、いくつかの実装において、いくらかの還元生成物は後でアノードにおいて酸化して無害な生成物になり得るので、これを考慮する必要はない。
【0101】
コントローラは、任意の数のプロセッサ及び/又はメモリデバイスを含んでもよい。コントローラは、ソフトウェア又はファームウェア等の制御ロジックを含んでもよい、及び/又は別のソースから提供された命令を実行してもよい。酸化炭素を還元する前、途中、及び後の電解セルの動作を制御するために、コントローラを電子機器と統合してもよい。コントローラは、1又は複数の電解酸化炭素還元システムの様々なコンポーネント又はサブパーツを制御してもよい。コントローラは、処理要件及び/又はシステムのタイプに応じて、ガスの送達、温度設定(例えば、加熱及び/又は冷却)、圧力設定、電力設定(例えば、MEAセルの電極に送達される電圧及び/又は電流)、液体流量設定、流体送達設定、及び精製された水及び/又は塩溶液の投与等、本明細書に開示されるプロセスのうちのいずれかを制御するようにプログラムされてもよい。これらの被制御プロセスは、電解酸化炭素還元システムと協調して機能する1又は複数のシステムと接続又はインタフェースしてもよい。
【0102】
様々な実施形態において、コントローラは、命令を受け取り、命令を発行し、本明細書に記載の動作を制御する様々な集積回路、ロジック、メモリ、及び/又はソフトウェアを備える電子機器を含む。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェアの形態のチップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、及び/又は1又は複数のマイクロプロセッサ、又はプログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行するマイクロコントローラを含んでもよい。プログラム命令は、電解酸化炭素還元システムの1又は複数のコンポーネントでプロセスを実行するための動作パラメータを定義する、様々な個別の設定(又はプログラムファイル)の形式でコントローラに通信される命令であってもよい。いくつかの実施形態において、動作パラメータは、一酸化炭素、炭化水素、及び/又は他の有機化合物等の特定の還元生成物の生成中に1又は複数の処理ステップを達成するためにプロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部であってもよい。
【0103】
いくつかの実装において、コントローラは、システムと統合されるか、システムに連結されるか、別様にシステムにネットワーク接続されるか、又はそれらの組み合わせがなされるコンピュータの一部であるか又はそのコンピュータに連結されてもよい。例えば、コントローラは、遠隔で(例えば、「クラウド」に)格納された命令を利用してもよい、及び/又は遠隔で実行してもよい。コンピュータは、システムへの遠隔アクセスを可能にすることで、電解動作の現在の進行状況を監視し、過去の電解動作の履歴を調べ、複数の電解動作からの傾向又は性能測定基準を調べて、現在の処理のパラメータを変更するか、現在の処理に従うように処理ステップを設定するか、又は新しいプロセスを開始してもよい。いくつかの例において、リモートコンピュータ(例えば、サーバ)が、ローカルネットワーク又はインターネットを含み得るネットワークを介してシステムにプロセスレシピを提供することができる。リモートコンピュータは、パラメータ及び/又は設定の入力又はプログラミングを可能にするユーザインタフェースを含んでもよく、これらは次いで、リモートコンピュータからシステムに通信される。いくつかの例において、コントローラは、1又は複数の操作中に実行されることになる処理ステップの各々についてのパラメータを指定する、データの形式の命令を受信する。
【0104】
コントローラは、一緒にネットワーク接続され、MEAセルへの電流の印加及び本明細書に記載の他のプロセス制御等の共通の目的に向けて機能する、1又は複数の別個のコントローラを含むこと等によって、分散され得る。そのような目的で分散された制御システムの一例としては、酸化炭素を電解還元するためのシステム上の1又は複数のプロセッサ、及び、プロセスを制御するために組み合わせられる遠隔に配置される(プラットフォームレベルで又はリモートコンピュータの一部として等)1又は複数のプロセッサが挙げられる。
【0105】
特定の実施形態において、電解酸化炭素還元システムは、MEA内の塩の沈殿を回避するように構成及び制御される。沈殿した塩は、チャネルを遮断する、及び/又はMEAセルの性能を低下させる他の影響を及ぼす可能性がある。いくつかの場合において、例えばカソード側で、セルが過度に乾燥する可能性があり、これは、乾燥した気体反応物が、特にカソード側で、MEAから水を過剰に除去するからである。塩の沈殿を引き起こし得るこの問題には、ガス流入ストリーム内の水分圧を制御することによって(例えば、気体酸化炭素源ガスを加湿することによって)対処されてもよい。いくつかの場合において、アノード水中の塩濃度が十分に高いため、MEAでの塩の沈殿が促進される。この問題は、電流一時停止中に、MEAを純水で洗い流すことによって対処されてもよい。
【0106】
特定の実施形態において、本明細書に記載の電解二酸化炭素還元システムは、空気から直接受け取られる二酸化炭素を使用する。システムは、直接空気CO捕捉サブシステム及び二酸化炭素還元電解装置サブシステムを備える。システムは、捕捉サブシステムからのCOが、電解装置サブシステムのカソード側に直接又は間接的にCOを供給するように構成されている。二酸化炭素還元電解装置サブシステムは、上述の二酸化炭素還元反応器及びシステムのうちの任意のものを備え得る。
【0107】
システムは、指定された条件下で空気又は他のガスがCO捕捉サブシステムに提供されるように設計されてもよい。特定の実施形態において、ファン、真空ポンプ、又は単に風を使用してCO捕捉サブシステムに空気を送達する。
【0108】
特定の実施形態において、CO捕捉サブシステムは、2つの段階:空気からCOを除去する収着剤(sorbent)と空気を接触させる第1の段階(フェーズ1)、及び、熱、電気、圧力、及び/又は収着剤に湿度を加えてCO及び/又は水を放出させる第2の段階(フェーズ2)を有する。いくつかの実装において、CO捕捉サブシステムではフェーズ1において固体又は液体の吸収剤(absorbent)又は吸着剤を用いてCOを捕捉する。様々な実装において、フェーズ1は周囲条件で又は周囲条件付近で実行される。フェーズ2において、温度、電気、圧力、及び/又は水分スイングが加えられ、吸収又は吸着されたCO、及び任意選択で水が放出される。CO捕捉サブシステムのさらなる説明及び例が、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/060,583号に記載されている。
【0109】
CO捕捉サブシステムの構成及びその動作条件に応じて、例えば、約90モル%又はそれより高い高濃度で空気からCOを生成することができる。いくつかの場合において、CO捕捉サブシステムは、CO還元電解装置が動作するのに依然として十分である比較的より低い濃度でCOを生成するように構成されている。
【0110】
示されているように、捕捉され、その後放出されるCOは、CO還元電解装置のカソード側に直接又は間接的に送達される原料である。特定の実施形態において、空気から捕捉された水も、CO電解装置の原料において使用される。
【0111】
特定の実施形態において、空気捕捉CO電解システムは、直接空気捕捉サブシステムから、例えば、約99モル%又はそれより高いCOの実質的に純なストリームでCOを送達する方式で動作するように構成されている。特定の実施形態において、システムは、電解装置へのより低い濃度のCO、例えば、約98モル%又はそれより高いCO、又は約90モル%又はそれより高いCO、又はさらには約50モル%又はそれより高いCOを使用して動作するように構成されている。いくつかの場合において、原料として非常に低いCO濃度が使用される。そのような濃度は依然として、約0.035モル%である二酸化炭素の大気濃度より実質的に高い。特定の実施形態において、システムは、空気又は窒素等の別のガスと混合された、約5~15モル%のCO濃度を使用して動作するように構成されている。
【0112】
特定の実施形態において、CO捕捉サブシステムの出力は、CO、及び、窒素、酸素、水、アルゴン、又は任意の組み合わせ等の空気中の他の成分のみを含有する。全ての場合において、COは空気中でのそれの濃度より高い濃度で存在する。特定の実施形態において、CO捕捉サブシステムの出力は硫黄を含有しない。
【0113】
直接空気捕捉ユニット及びCO電解装置は、空気捕捉技術のタイプに応じていくつかの方法で統合することができる。熱及び質量移動コンポーネントは、空気捕捉CO電解システム全体に統合されてもよい。
【0114】
例えば、いくつかの設計において、CO還元電解装置は、直接空気捕捉サブシステムからCOを受け取り、直接空気捕捉サブシステムに熱及び/又は湿度を提供するように構成されている。提供された熱により、捕捉されたCOは、直接空気捕捉サブシステムのフェーズ2中に温度スイング脱離機構を用いて放出されてもよい。加湿された電解装置生成物ガスを使用して、捕捉されたCOを、直接空気捕捉サブシステムのフェーズ2中に水分スイング脱離機構を用いて放出することができる。
【0115】
特定の実施形態において、CO電解装置は、入力として希釈CO(例えば、約50モル%以下のCO)を受け取るように設計されているか、又は構成されている。
【0116】
直接空気捕捉ユニットは、複数の収着剤槽を伴うように設計することができる。空気捕捉サブシステムからCO(及び任意選択で水)の連続ストリームを受け取るために、少なくとも2つの異なる槽は、空気捕捉CO電解システム全体の動作の間、収着/脱離のうちの異なる段階にあるように動作される。例えば、1つの収着剤槽が空気を取り込んでCOを捕捉する間に、もう一方が加熱されてCOを放出してもよく;各槽が収着/脱離サイクルを継続しながら、COを取り込んでいた収着槽がCOを排出することになり、その逆も同様である。サイクル中の異なる点に多数の槽を追加することにより、CO電解装置に入力の連続ストリームを送達するとともに、CO及び水分を含有する空気、及び/又は熱、及び/又は真空の連続ストリームを受け入れることができる。
【0117】
直接空気捕捉ユニットは、CO電解装置のためのCO流の所望の体積を送達するようなサイズにすることができる。これには複数の収着剤含有槽を用いることを含んでもよい。例えば、直接空気捕捉サブシステムは750slpm(750l/m)のCOを送達するように構成されてもよい。そのようなサブシステムは、300mA/cm2及び3V/セルで動作される1000cm2膜電極アセンブリで構成されている200セル電気化学スタックに連結して、プロセスの90%のCOからCOへの電流効率を所与とすると、378slpm(378l/m)のCO及び42slpm(42l/m)の水素を生成し得る。上述したように、電解装置の流出口での未反応COは流入口へと再循環されて炭素効率を増大し得る。連続的に動作されると、空気捕捉及び電解装置を組み合わせたユニットは約675kg/日のCOを生成し得る。一般に、いくつかの設計において、空気捕捉CO電解装置システムは、少なくとも約100kg/日のCO及び/又は他のCO還元生成物を出力するように構成されている。いくつかの設計において、空気捕捉CO電解装置システムは、少なくとも約500kg/日のCO及び/又は他のCO還元生成物を出力するように構成されている。
【0118】
特定の実施形態において、酸化炭素電解装置及び任意選択で二酸化炭素の直接空気捕捉ユニットを用いるシステムは、空気又は大気からの水を捕捉するように構成されたモジュールも含む。いくつかの実施形態において、空気からの水を捕捉するように構成されたモジュールでは、吸湿性材料とともに、太陽電池及び/又は太陽熱からの太陽エネルギーを利用する。特定の実施形態において、水を捕捉するように構成されたモジュールは、ハイドロパネル(例えば、アリゾナ州ScottsdaleのZero Mass Water,Inc.から入手可能である)等の環境除湿器である。
【0119】
図8は、直接空気CO捕捉サブシステム803及びCO還元電解装置サブシステム805を備える空気捕捉CO電解装置システム801を示している。示されている直接空気CO捕捉サブシステム803は、収着フェーズ1の間に、例えば、大気条件(約0.035モル%のCO)下、任意選択で湿度を有する、COを含有する空気を受け取り、大部分のCOが除去され且つ任意選択で多くの湿度が除去された空気を放出するように構成されている。
【0120】
直接空気CO捕捉サブシステム803は、フェーズ2の間にCO及び任意選択で水を放出するように構成されている。少なくともCO及び任意選択で水は、入力としてCO電解装置805に提供される。フェーズ2の間に直接空気捕捉サブシステム803から放出されるCOは、電解装置805のカソード側に提供される。図示されているように、任意選択のCO精製ユニット807は直接空気CO捕捉サブシステム803及び電解装置805の間に置かれている。直接空気CO捕捉サブシステム803によって任意選択で提供される水は、電解装置805のカソード側(CO原料中の湿気として)又はアノード側(反応物として)に向けられてもよい。
【0121】
図示の実施形態において、電解装置805は、電気(CO還元反応及びアノード酸化反応を駆動するための)を受け取るように構成されている。また、電解装置805は、電解反応からの過剰の熱を直接空気CO捕捉サブシステム803に提供し、フェーズ2(収着剤からのCO放出)を駆動するように構成されている。CO電解装置805は、酸素(水が反応物である場合のアノード反応生成物)、及び図1図7に関して上述したようなCO及び/又は他の炭素系生成物を含み得る1又は複数のCO還元生成物を出力するように構成されている。図示されているように、システム801は、水素、CO、水、及び/又は他の成分からCO及び/又は他の炭素系電解生成物を分離するように構成された分離ユニット809に電解装置出力を提供するように構成されている。図示の実施形態において、システム801は、分離ユニット809からの加湿されたCOを直接空気CO捕捉サブシステム803に送達するように構成されている。図1図7に関して本明細書に記載の二酸化炭素電解装置のうちの任意のものが、図8に示されているように直接空気CO捕捉サブシステムの下流に配置されてもよい。
【0122】
特定の実施形態において、エチレンを含有する混合物を受け取り、混合物を改変することで精製エチレンを生成するように構成された方法及びシステムが提供される。入力は、図1図7に関して本明細書において説明された酸化炭素電解装置システムの1つ等の酸化炭素電解装置システムから得られた気体混合物であってよい。
【0123】
図12Bは、エチレン精製システム1200の一例のブロック図を示している。エチレン精製システム1200は、以下のサブシステム又はコンポーネントのうちの1又は複数を備えてよい:アミン処理システム1201、極低温蒸留システム1203、1又は複数の膜ろ過システム1205、1又は複数の吸収器1207、メタンの酸化的カップリング(OCM)反応器1209、及び圧縮器1211。上記コンポーネントがエチレン精製のためにどのように使用され得るかの例が、図13Aから図13Cを参照しながら以下でさらに論じられる。
【0124】
いくつかの実装において、エチレン精製システムは、電解装置によって生成されたいずれの他の成分の比較的純なストリームの生成も必要とすることなく、比較的純なエチレンを生成するように構成されている。いくつかの実装において、エチレン精製システムは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタノール、又はそれらの任意の組み合わせ等の1又は複数の他の成分の比較的純なストリームとともに、比較的純なエチレンを生成するように構成されている。
【0125】
様々な実施形態において、エチレン精製システムは、(a)二酸化炭素を吸収及び分離する、(b)膜ろ過によって1又は複数の他の成分からエチレンを分離する、(c)分別蒸留してエチレン及びメタンを分離する、又は(d)メタンをエチレンに化学的に変換する、又は(e)(a)~(d)の任意の組み合わせを行うための1又は複数のコンポーネント又はサブシステムを備える。いくつかの実施形態において、二酸化炭素を吸収するために、アミン又はイオン液体が使用される。いくつかの実施形態において、膜ろ過コンポーネントは、エチレンから一酸化炭素及び水素を(任意選択でメタンとともに)分離するように構成されている。
【0126】
ここで記載されたように生成されたエチレンは、様々な用途を有し得る。例えば、それは、エチレンオキシド、及び、いくつかの場合において、モノエチレングリコール及びポリエチレングリコール等のエチレンオキシドの反応生成物を生成するために使用することができる。
【0127】
このセクションにおいて記載された特定の実施形態において、入力ガスは、エチレン及び典型的にはいくらかのメタン及び未反応二酸化炭素を含む。存在し得る他の成分は、水素、一酸化炭素、水、エタノール、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0128】
一例として、エチレン精製システムへの流入ストリームは、以下のmol%の組成を有してよい:水素(4.75%)、メタン(23.72%)、一酸化炭素(0%)、二酸化炭素(50.73%)、エチレン(9.49%)、エチルアルコール(4.75%)、及び水(6.57%)。これ等の組成は、図1図7に関して上述された二酸化炭素電解装置システムによって生成され得る。
経路1:エチレン分離のための極低温蒸留
【0129】
いくつかの実施形態において、エチレンは、二酸化炭素の吸収、及び、水素、一酸化炭素、及び/又はメタンを除去して精製エチレンを生成するための続いての分別蒸留を含む経路によって、他の成分から分離される。一例として、プロセスは、以下の操作シーケンスを含んでよい。
操作1:エタノール及び水を除去するための液体生成物の凝縮
操作2:CO除去
操作3:蒸留-水素、CO、及びメタンの除去
操作3(代替又は任意選択):メタンの酸化的カップリングによるメタンのエチレンへの変換
【0130】
例示的なシステムが、図13Aに示されている。入力ストリームから水及びエタノールを除去する分離プロセスは、様々な方法で実現されてよい。いくつかの実施形態において、それは、凝縮の2ステッププロセス、及び、次に水及びエタノールをさらに除去する分子篩吸収プロセスにおいて実現される。いくつかの実施形態において、水及びエチルアルコールの凝縮は、入力ストリームの圧縮を用いて達成される。いくつかの実施形態において、水及びエチルアルコールの凝縮は、吸収カラム、例えば、流れに乗った水を有する向流カラムを使用して達成される。カラムは、任意選択で触媒を含む。いくつかの実装において、カラムにおいて熱平衡に達し、両方の流出ストリームが同じ温度(例えば、約25℃から50℃)を有する。
【0131】
いくつかの場合において、二酸化炭素は、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミン、ピペラジン、2-アミノプロパノール、ジイソプロパノールアミン、アミノエトキシエタノール、及び/又はメチルジエタノールアミン等のアミンを使用して、又は、イオン液体によって、ガスストリームから除去される。いくつかの実装において、選択されたアミンの濃度は、二酸化炭素の濃度よりも少なくとも約10倍高い。いくつかの実施形態において、アミン含有液体は、水溶液中約50~80モルパーセントのアミンを有する。図14は、吸収器及び再生器を備えるアミン処理システムの一例を示している。アミン溶液は、サワーガスからCOを吸収して、生成物としてスイートガスストリーム(すなわち、CO不含有ガス)を生成する。再生器は、COリッチアミンからCOを剥離する。再生器は、COを剥離し、リーンアミンは、吸収器における再使用のために再循環される。
アミンベースの二酸化炭素除去プロセスのための作業条件例:
吸収器:約35℃から50℃及び約5atm(0.51MPa)から205atm(20.77MPa)の絶対圧力;
再生器:塔底部において、約100℃から126℃及び約1.4atm(0.14MPa)から1.7atm(0.17MPa)の絶対圧力。
【0132】
いくつかの実装において、リーンアミン及びサワーガス間の約5℃又はそれよりも大きな温度差が維持される。温度差がより近い場合、炭化水素の凝縮が生じ得る。
【0133】
エチレン及びメタン含有ストリームを脱メタンするために様々なアプローチが利用され得る。いくつかの実施形態において、極低温蒸留プロセスが実行される。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第3,902,329号(King III, et al.)を参照されたい。いくつかの実施形態において、極低温蒸留は、約-90℃又はそれよりも低い温度で行われる。
【0134】
いくつかの実装において、エチレン/メタンガス混合物は、圧縮器において(例えば、約100bar(10MPa)の圧力及び約15℃の流出温度まで)加圧される。ガス混合物は、冷水を用いて冷却される。次に、例えば、絞りバルブを用いて圧縮ガス混合物を絞ることによって、流出ガスは、(例えば、約-100℃の温度まで)実質的に冷却されてよい。
【0135】
極低温蒸留によってエチレンからメタンを分離するためのプロセスの一例が以下に提示される:
20~30又はそれよりも多くのプレート
温度:凝縮物がカラムに戻るプレート上で-90℃から-105℃。
圧力:25bar(2.5MPa)から40bar(4MPa)又はそれよりも高い
98%効率
いくつかの例において、極低温蒸留カラムは、以下の設計パラメータを有する。
直径:0.085m
高さ:6.8m
段階:17
段階効率:80%
還流比:1.129
蒸気線形速度:3m/s
分離効率:98%
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、膜分離を介して、エチレンから水素(及び任意選択で他の成分)を除去する。いくつかの実施形態において、上記プロセスは、エチレンへのメタンの酸化的カップリング(OCM)を利用する。OCMは、メタン及びエチレンの分離後のメタン含有蒸気に対して実行されてよい。このプロセスは、不所望の副生成物として、エタン、CO、H、及びCOを生成する可能性がある。反応の温度に加えて、メタンと反応する酸素の量が、重要なパラメータである。OCMは、以下に提示される反応のいくつか又は全てを含んでよい。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Bhatia, Subhash & Thien, Chua & Mohamed, Abdul. (2009). Oxidative coupling of methane (OCM) in a catalytic membrane reactor and comparison of its performance with other catalytic reactors. Chemical Engineering Journal - CHEM ENG J. 148. 525-532. 10.1016/j.cej.2009.01.008,を参照されたい。
ステップ1:CH+2O→CO+2H
ステップ2:2CH+0.5O→C+H
ステップ3:CH+O→CO+HO+H
ステップ4:CO+0.5O→CO
ステップ5:C+0.5O→C+H
ステップ6:C+2O→2CO+2H
ステップ7:C→C+H
ステップ8:C+2HO→2CO+4H
ステップ9:CO+HO→CO+H
ステップ10:CO+H→CO+H
このプロセスの収率は、反応条件及び酸素の比率に応じて決まる。メタン及び酸素の量は、例えば、ステップ2及び5における反応を促進するために選択されてよい。特定の実施形態において、このプロセスは、皿状の平坦BSCF膜からなる触媒膜反応器において起こる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、X. Tan, K. Li, in Handbook of Membrane Reactors: Reactor Types and Industrial Applications, 2013から取得されたOCM反応器設計の例及び操作が、以下の表に提示されている。
【表6】
様々な実施形態において、OCM温度は、エチレンを生成するエタンのスチームクラッキングのための範囲にある。この分析は、850℃~950℃の温度範囲及び蒸気対炭化水素の比が0.3~0.5で動作することで、副生成物を最小限に抑えながら良好なエチレン収率がもたらされることを示している。いくつかの実施形態において、OCMクラッキング反応は、筒状反応器において、高圧(例えば、約2から2.5bar(0.2から0.25MPa))で行われる。特定の実施形態において、約0.3のメタンがエチレンに変換され(モル)、これは、おおよそ、典型的な流入供給に存在するエチレンの量であってよい。したがって、上記プロセスの利用によって、生成されるエチレンの量はほぼ二倍になる。いくつかの実施形態において、プロセスは、生成されたエチレンから蒸気及び水素を分離する操作を含む。この操作のために、吸収向流カラムが利用されてよい。一例として、プロセス条件は、約5から50bar(0.5から5MPa)(例えば、約10bar(1MPa))の圧力及び約150から500℃(例えば、約300℃)の温度を含んでよい。いくつかの実施形態において、適切な体積流量の水を有する吸収カラムは、ガスからほぼ100%の水及び水素を分離する。
経路2:エチレン分離のための膜の利用
いくつかの実施形態において、エチレンは、エチレンリッチストリームを生成するためのガスストリームの膜分離を含む経路によって他の成分から分離される。一例として、このようなプロセスは、以下の操作シーケンスを含んでよい。
操作1:エタノール及び水を除去するための液体生成物の凝縮
操作2:アミン処理を用いたCO除去
操作3:膜分離を用いたCO+H除去
操作4:膜分離を用いたメタンからのエチレン分離。
例示的なシステムが図13Bに示されている。いくつかの実装において、操作1及び2は、極低温蒸留を利用した上述の経路におけるものと同じ方式で実行される。操作3及び4は、複数の気体成分を互いから分離するように設計又は構成されている膜を使用して実行される。特定の実施形態において、好適な膜は、カリフォルニア州ニューアーク所在のMembrane Technology&Research, Inc.によって提供される。設計は、膜分離の前にエタノール及び水を除去する圧縮段階を含んでよい。
非炭化水素を除去するための膜段階
【0136】
第1の膜は、ほぼ100%のH、CO、エタノール、及び水を分離してよい。それは、CからCHを有意に分離しない場合がある。
【0137】
一例として、50.7 mol% CO、23.7 mol% CH、及び9.5 mol% Cの初期ガス混合物から出発して、結果として得られる生成物ストリームは、64.7mol% CH及び30.5 mol% Cを含有し、残りのガスのほとんどはCO(3.7%)である。透過ストリーム中のCH/C混合物の損失を低減するために、2段階分離設計が利用され得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、膜は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PVDF、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルイミド(PEI)、又はそれらの任意の組み合わせを含む中空糸膜である。いくつかの実施形態において、膜は、約50~70%(例えば、約60%)のポロシティを有する。いくつかの実施形態において、膜は、約2から3μmの平均空孔サイズを有する。条件例は、10barの圧力及び30℃の流入ストリームである。冷却プロセスが膜において生じ得る。
エチレン/メタン分離
【0139】
特定の実施形態において、メタン-エチレン分離膜は、室温で分離するための金属有機膜を含む。特定の実施形態において、メタン-エチレン膜分離は、296Kで12から20の吸着選択性を有する。吸着選択性=20は、95%の分離プロセス効率を表す。
【0140】
膜は、約4.8から6.5Åの小さな空孔を有する微多孔質金属有機フレームワーク(例えば、ZnL(DMA)(UTSA-33、H8L=1,2,4,5-テトラ(5-イソフタル酸)ベンゼン、DMA=N,N'-ジメチルアセトアミド))を含んでよい(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、He, Yabing, et al. "A microporous metal-organic framework for highly selective separation of acetylene, ethylene, and ethane from methane at room temperature." Chemistry-A European Journal 18.2 (2012): 613)。
【0141】
いくつかの実装において、メタン分離後、メタンは、エチレンの収率を高めるためにOCMに供される。
経路3:エチレン分離のためのろ過膜及び極低温蒸留の利用特定の実施形態において、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素等の他の成分からメタン及びエチレンを分離するために、膜フィルタが利用される。いくつかの実施形態において、メタン-エチレン混合物は、続いて、極低温蒸留によってエチレン及びメタンの比較的純なストリームに分離される。いくつかの実装において、一酸化炭素、二酸化炭素、及び任意選択で他の成分から水素を分離するために、分離膜フィルタが利用される。
【0142】
いくつかの実装において、プロセスは、以下の操作を含んでよい。
操作1:エチルアルコール及び水の凝縮を実現させるためのガスストリームの圧縮
操作2:触媒を有する向流吸収カラムにおける水及びエチルアルコールの除去
操作3:二酸化炭素、一酸化炭素、及び水素等の他のガスからメタン及びエチレンを分離するための膜ろ過
操作4(任意選択):一酸化炭素及び二酸化炭素から水素を分離するための膜ろ過。
操作5:メタン及びエタンを分離するための極低温蒸留(任意選択で、冷却ユーティリティとして冷却メタン出力ストリームを使用する)
例示的なシステムが、図13Cに示されている。
MEAの概要
【0143】
上の記載は、バイポーラ及びAEM単独MEAを含むMEAを参照する。カチオン交換膜単独MEAを含む、本明細書に記載されるシステム及び方法の様々な実施形態とともに使用されてもよいMEAのさらなる説明が以下に提供される。
【0144】
様々な実施形態において、MEAは、アノード層、カソード層、電解質、及び任意選択で1又は複数の他の層を含む。層は固体及び/又はゲルであってもよい。層はイオン伝導性ポリマー等のポリマーを含んでもよい。
【0145】
使用時、MEAのカソードは、CO、COと化学的に反応するイオン(例えばプロトン)、及び電子という3つの入力を組み合わせることによってCOの電気化学的還元を促進する。還元反応により、CO、炭化水素、及び/又はメタノール、エタノール、及び酢酸等の酸素及び水素を含有する有機化合物が生成されてもよい。使用時、MEAのアノードは、水の電解等の電気化学酸化反応を促進して元素状酸素及びプロトンを生成する。カソード及びアノードは、それらのそれぞれの反応を促進する触媒を各々含んでもよい。
【0146】
MEA内の層の組成及び配置は、CO還元生成物の高収率を促進し得る。この目的のために、MEAは、以下の条件:(a)カソードでの寄生還元反応(非CO還元反応)が最小であること;(b)MEA内のアノード又は他の箇所におけるCO反応物の損失が少ないこと;(c)反応中のMEAの物理的完全性を維持(例えば、MEA層の剥離を防止)すること;(d)CO還元生成物のクロスオーバを防止すること;(e)酸化生成(例えば、O)のクロスオーバを防止すること;(f)酸化のためのカソードにおける好適な環境を維持すること;(g)不所望のイオンを遮断しながら所望のイオンがカソードとアノードとの間を移動するための経路を提供すること;及び(h)電圧損失を最小限に抑えることのうちの任意の1又は複数を促進してもよい。本明細書で説明するように、MEA中の塩又は塩イオンの存在は、これら全ての条件のうちのいくつかを促進することができる。
COx還元の考慮事項
【0147】
MEA等のポリマー系膜アセンブリは、水電解装置等の様々な電解システムにおいて、及び燃料電池等の様々なガルバニックシステムにおいて使用されてきた。しかしながら、CO還元は、水電解装置及び燃料電池では発生しない、又は発生する程度が低い問題を提示する。
【0148】
例えば、多くの用途では、CO還元のためのMEAが、約50,000時間又はそれより長い程度(約5年間の連続運転)の寿命を必要とし、これは、自動車用途の場合の燃料電池の期待寿命;例えば、5,000時間程度)よりも大幅に長い。また、様々な用途において、CO還元のためのMEAは、自動車用途における燃料電池に使用されるMEAと比較して、比較的大きな表面積を有する電極を用いる。例えば、CO還元のためのMEAは、少なくとも約500cmの表面積(空孔及び他の非平面形状部を考慮しない)を有する電極を用い得る。
【0149】
CO還元反応は、特定の反応物及び生成物種の物質輸送を促進し且つ寄生反応を抑制する動作環境で実装されてもよい。燃料電池及び水電解装置MEAは、多くの場合、そのような動作環境を作り出すことができない。例えば、そのようなMEAは、カソードでの気体水素の発生及び/又はアノードでの気体COの生成等の不所望な寄生反応を促進し得る。
【0150】
いくつかのシステムにおいて、CO還元反応の速度は、カソードでの気体CO反応物の利用可能性によって制限される。対照的に、水電解の速度は、反応物の利用可能性によって大きく制限されない:液体の水はカソード及びアノードに容易に接近可能である傾向があり、電解装置は可能な限り最高の電流密度付近で動作することができる。
MEA構成
【0151】
特定の実施形態において、MEAは、カソード層、アノード層、及びアノード層とカソード層との間のポリマー電解質膜(PEM)を有する。ポリマー電解質膜は、短絡を引き起こすであろう電子伝達を防止しながら、アノード層とカソード層との間のイオン伝達を提供する。カソード層は、還元触媒及び第1のイオン伝導性ポリマーを含む。カソード層はまた、イオン伝導体及び/又は電子伝導体を含んでもよい。アノード層は、酸化触媒及び第2のイオン伝導性ポリマーを含む。アノード層はまた、イオン伝導体及び/又は電子伝導体を含んでもよい。PEMは、第3のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0152】
特定の実施形態において、MEAが、カソード層とポリマー電解質膜との間にカソードバッファ層を有する。カソードバッファは、第4のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0153】
特定の実施形態において、MEAが、アノード層とポリマー電解質膜との間にアノードバッファ層を有する。アノードバッファは、第5のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0154】
ある特定のMEA設計に関連して、イオン伝導性ポリマーには、アニオン伝導体、カチオン伝導体、及びカチオン-アニオン混合伝導体という3つの利用可能なクラスがある。特定の実施形態において、第1、第2、第3、第4、及び第5のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも2つは、異なるクラスのイオン伝導性ポリマーに由来する。
MEA層のイオン伝導性ポリマー
【0155】
「イオン伝導性ポリマー」という用語は、アニオン及び/又はカチオンに対して約1mS/cmを超える比伝導率を有するポリマー電解質を説明するために本明細書において使用される。「アニオン伝導体」という用語は、主にアニオンを伝導し(ただし、依然としていくらか少量のカチオン伝導があるであろう)、約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるアニオンの輸率を有する、イオン伝導性ポリマーを表す。「カチオン伝導体」及び/又は「カチオン伝導性ポリマー」という用語は、主にカチオンを伝導し(例えば、依然として付随的な量のアニオン伝導が存在し得る)、約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるカチオンの輸率を有する、イオン伝導性ポリマーを表す。アニオン及びカチオンの両方を伝導すると説明されているイオン伝導性ポリマー(「カチオン-アニオン伝導体」)の場合は、アニオンもカチオンも、約100ミクロンの厚さで輸率が約0.85を超えることも又は約0.15を下回ることもない。材料がイオン(アニオン及び/又はカチオン)を伝導すると言うことは、その材料がイオン伝導性材料又はアイオノマーであると言うことである。各クラスのイオン伝導性ポリマーの例は、以下の表に与えられている。
【表7】
【0156】
イオン化可能な部分又はイオン部分を含み、本明細書に記載の電解装置のMEA内でイオン伝導性ポリマーとして使用することができるポリマー構造のさらなる例は、参照により本明細書に組み込まれる、2020年11月24日に出願された米国特許出願第17/247,036号に提供されている。材料を通る電荷伝導は、イオン化可能/イオン部分によって提供される電荷のタイプ及び量(例えば、ポリマー構造上のアニオン及び/又はカチオン電荷)によって制御することができる。加えて、組成は、ポリマー、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、ポリマーブレンド、他のポリマー系の形態、又は繰り返しモノマー単位の他の有用な組み合わせを含むことができる。米国特許出願第17/247,036号においてさらに記載されているように、イオン伝導性ポリマー層は、様々な実施形態による、架橋結合、結合部分、及びアリーレン基のうちの1又は複数を含んでもよい。いくつかの実施形態において、2つ又はそれより多くのイオン伝導性ポリマー(例えば、MEAの2つ又はそれより多くのイオン伝導性ポリマー層)は架橋されていてもよい。
COx還元のためのバイポーラMEA
【0157】
特定の実施形態において、MEAは、MEAのカソード側のアニオン伝導性ポリマー、及びMEAのアノード側の界面接続するカチオン伝導性ポリマーとのバイポーラ界面を含む。いくつかの実装において、カソードは、第1の触媒及びアニオン伝導性ポリマーを含有する。特定の実施形態において、アノードは、第2の触媒及びカチオン伝導性ポリマーを含有する。いくつかの実装において、カソードバッファ層は、カソードとポリマー電解質膜(PEM)との間に配置され、アニオン伝導性ポリマーを含有する。いくつかの実施形態において、アノードバッファ層は、アノードとPEMとの間に配置され、カチオン伝導性ポリマーを含有する。
【0158】
動作中に、バイポーラ界面を備えたMEAは、ポリマー電解質を通してイオンを移動させ、カソード層及びアノード層における金属及び/又は炭素を通して電子を移動させ、層内の空孔を通して液体及びガスを移動させる。
【0159】
カソード及び/又はカソードバッファ層においてアニオン伝導性ポリマーを利用する実施形態において、MEAは、不所望な生成物を生成し、セルの全体効率を低下させる不所望な反応を低下又は阻止することができる。アノード及び/又はアノードバッファ層においてカチオン伝導性ポリマーを利用する実施形態において、所望の生成物の生成を低減させ、セルの全体効率を低下させる不所望な反応を低減又は阻止することができる。
【0160】
例えば、COのカソード還元に使用される電位のレベルでは、水素イオンが水素ガスに還元され得る。これは寄生反応であり;COを還元するために使用され得る電流が、代わりに水素イオンを還元するために使用される。水素イオンは、CO還元反応器内のアノードにおいて実行される様々な酸化反応によって生成され得、MEAを横切って移動し、カソードに到達し得、そこで還元されて水素ガスを生成する可能性がある。この寄生反応が進行し得る程度は、カソードに存在する水素イオンの濃度に応じる。したがって、MEAは、カソード層及び/又はカソードバッファ層においてアニオン伝導性材料を利用してもよい。アニオン伝導性材料は、水素イオンがカソード上の触媒部位に到達することを少なくとも部分的に阻止する。結果として、水素ガス発生の寄生生成が減少し、CO又は他の生成物の生成速度及びプロセスの全体効率が高まる。
【0161】
回避され得る別の反応は、COを生成するアノードにおける炭酸又は重炭酸イオンの反応である。水性炭酸又は重炭酸イオンは、カソードにおいてCOから生成され得る。そのようなイオンがアノードに到達した場合、水素イオンと反応して気体COを生成し放出し得る。その結果、COはカソードからアノードへ純移動し、そこで反応せず、酸化生成物とともに失われる。カソードにおいて生成された炭酸及び重炭酸イオンがアノードに到達するのを防止するために、アノード及び/又はアノードバッファ層は、カチオン伝導性ポリマーを含んでもよく、これが、重炭酸イオン等の負イオンのアノードへの輸送を少なくとも部分的に阻止する。
【0162】
したがって、いくつかの設計において、バイポーラ膜構造は、カソードでのpHを上げてCO還元を促進し、プロトン交換層等のカチオン伝導性ポリマーは、相当量のCO及びCO還元生成物(例えば、重炭酸塩)がセルのアノード側へ通過することを防止する。
【0163】
CO還元に使用するためのMEA200の一例が図9に示されている。MEA900は、イオンがカソード層920とアノード層940との間を移動するための経路を提供するイオン伝導性ポリマー層960によって分離された、カソード層920とアノード層940とを有する。特定の実施形態において、カソード層920はアニオン伝導性ポリマーを含む、及び/又はアノード層940はカチオン伝導性ポリマーを含む。特定の実施形態において、MEAのカソード層及び/又はアノード層は多孔質である。空孔は、ガス及び/又は流体の輸送を促進してもよく、反応に利用可能な触媒表面積の量を増大させてもよい。
【0164】
イオン伝導性層960は、2つ又は3つの副層、すなわち、ポリマー電解質膜(PEM)965、任意選択のカソードバッファ層925、及び/又は任意選択のアノードバッファ層945を含んでもよい。イオン伝導性層の1又は複数の層が多孔質であってもよい。特定の実施形態において、少なくとも1つの層が非多孔質であるため、カソードの反応物及び生成物は、ガス及び/又は液体の輸送を介してアノードに通過することができず、その逆も同様である。特定の実施形態において、PEM層965は非多孔質である。アノードバッファ層及びカソードバッファ層の特性の例は、本明細書の他の箇所に提供されている。いくつかの実施形態において、イオン伝導性層960は、PEMのみを含み、アニオン交換膜であっても、又はカチオン交換膜であってもよい。
【0165】
図10は、カソード1005における反応物である水及びCO(例えば、加湿又は乾性気体CO)を受け取り、生成物であるCOを排出するように構成されたCO電解装置1003を示している。電解装置1003はまた、アノード1007で水を反応物として受け取り、気体酸素を排出するように構成されている。電解装置1003は、カソード1005に隣接するアニオン伝導性ポリマー1009と、アノード1007に隣接するカチオン伝導性ポリマー1011(プロトン交換膜として示されている)とを有するバイポーラ層を備える。
【0166】
電解装置1003におけるバイポーラ界面1013の拡大挿入図に示されているように、カソード1005は、炭素支持粒子1017と、当該支持粒子上に支持された金属ナノ粒子1019とを電子的に伝導するアニオン交換ポリマー(この例では、バイポーラ層にあるものと同じアニオン伝導性ポリマー1009である)を含む。CO及び水は、空孔1021等の空孔を介して輸送されて金属ナノ粒子1019に到達し、そこで、この場合は水酸化物イオンと反応して、重炭酸イオン及び還元反応生成物(図示せず)を生成する。COは、アニオン交換ポリマー1009内の輸送によって金属ナノ粒子1019に到達してもよい。
【0167】
水素イオンは、アノード1007から、カチオン伝導性ポリマー1011を通って、バイポーラ界面1013に到達するまで輸送され、そこで、水素イオンのカソードに向かってのさらなる輸送はアニオン交換ポリマー1009によって妨げられる。界面1013では、水素イオンは、重炭酸又は炭酸イオンと反応して炭酸(HCO)を生成してもよく、これが分解してCO及び水を生成してもよい。本明細書で説明するように、結果として得られるCO2は気相で提供されてもよく、それを還元することができるカソード1005に戻るMEA内の経路が提供される必要がある。カチオン伝導性ポリマー1011は、重炭酸イオン等のアニオンがプロトンと反応してCOを放出し得、カソードにおける還元反応に関与するように利用できなくなる場所であるアノードまで輸送されることを妨げる。
【0168】
図示のように、アニオン伝導性ポリマーを有するカソードバッファ層は、カソード及びそのアニオン伝導性ポリマーと協調して機能して、カソードへのプロトンの輸送を阻止してもよい。カソード、アノード、カソードバッファ層、及び存在する場合にはアノードバッファ層において適切な伝導性タイプのイオン伝導性ポリマーを用いるMEAは、カチオンのカソードへの輸送及びアニオンのアノードへの輸送を妨げ得るが、カチオン及びアニオンは依然として、膜層内等のMEAの内部領域で接触する可能性がある。
【0169】
図10に示されているように、重炭酸及び/又は炭酸イオンは、カソード層とアノード層との間で水素イオンと結合して炭酸を形成し、これが分解して気体COを形成し得る。MEAは、おそらくは、容易な流出経路を有しないこの気体COの生成に起因して、剥離する場合があることが観察された。
【0170】
剥離の問題には、空孔を有するカソードバッファ層を用いることによって対処することができる。その有効性についての可能な説明の1つは、気体二酸化炭素が、それが還元され得るカソードに戻るための経路を、空孔が生成することである。いくつかの実施形態において、カソードバッファ層は多孔質であるが、カソード層とアノード層との間の少なくとも1つの層は非多孔質である。これにより、依然として剥離を防止しながら、カソード層とアノード層との間のガス及び/又はバルク液体の通過を防止することができる。例えば、非多孔質層は、アノードからカソードへの水の直接通過を防止することができる。
CO還元のためのアニオン交換膜単独MEA
【0171】
いくつかの実施形態において、MEAはカチオン伝導性ポリマー層を含有しない。そのような実施形態において、電解質はカチオン伝導性ポリマーではなく、アノードは、イオン伝導性ポリマーを含む場合、カチオン伝導性ポリマーを含有しない。例が本明細書において提供される。
【0172】
アニオン交換膜(AEM)単独(AEM単独)MEAでは、アニオンはMEAを横切って伝導することができる。いずれのMEA層もカチオンに対して有意な伝導性を有しない実施形態において、水素イオンは、MEA内で制限された移動性を有する。いくつかの実装において、AEM単独膜は、高pH環境(例えば、少なくとも約pH7)を提供し、カソードでの水素発生寄生反応を抑制することによってCO及び/又はCO還元を促進し得る。他のMEA設計と同様に、AEM単独MEAでは、イオン、特に水酸化物イオン等のアニオンがポリマー電解質を通って移動することができる。いくつかの実施形態において、pHがより低くてもよく;4又はそれより高いpHは、水素発生を抑制するのに十分な高さであり得る。AEM単独MEAでは、電子が触媒層内の金属及び炭素まで及びそれらを通って移動することもできる。実施形態において、AEM単独MEAでは、アノード層及び/又はカソード層に空孔を有するため、液体及びガスが空孔を通って移動することができる。
【0173】
特定の実施形態において、AEM単独MEAは、カソード及びアノードのいずれかの側に電極触媒層を有するアニオン交換ポリマー電解質膜を含む。また、いくつかの実施形態において、電極触媒層の一方又は両方は、アニオン交換ポリマー電解質を含む。
【0174】
特定の実施形態において、AEM単独MEAは、カソード及びアノード電極触媒層をガス拡散層等の多孔質伝導性支持体上に堆積させて、ガス拡散電極(GDE)を形成し、ガス拡散電極間にアニオン交換膜を挟むことによって形成される。
【0175】
特定の実施形態において、AEM単独MEAはCO2還元に使用される。アニオン交換ポリマー電解質の使用により、CO還元を不利にする低pH環境が回避される。さらに、AEMが使用される場合、水はカソード触媒層から遠くに輸送され、それにより、セルのカソードにおける反応物ガスの輸送を阻止する可能性がある水の蓄積(フラッディング)が防止される。
【0176】
MEAにおける水の輸送は、拡散及び電気浸透抗力を含む、様々な機序を通じて発生する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のCO電解装置の電流密度では、電気浸透抗力が支配的機序である。水は、イオンがポリマー電解質を通って移動するときに、それらとともに引きずられる。Nafion膜等のカチオン交換膜の場合は、水の輸送量は、膜の前処理/水和に依存することを特徴とし、そのように理解されている。プロトンは正から負の電位(アノードからカソード)に移動し、前処理に応じて、各々が2~4個の水分子を運ぶ。アニオン交換ポリマーでは、同じタイプの効果が発生する。ポリマー電解質を通って移動する水酸化、重炭酸、又は炭酸イオンは、水分子を「引きずる」。アニオン交換MEAでは、イオンが負から正の電圧、つまりカソードからアノードに移動し、水分子を運び、そのプロセスで水をカソードからアノードに移動させる。
【0177】
特定の実施形態において、AEM単独MEAがCO還元反応において用いられる。CO還元反応とは異なり、CO還元は、有益な反応物をアノードまで輸送して放出し得る炭酸又は重炭酸アニオンを生成しない。
【0178】
図11は、カソード触媒層1103、アノード触媒層1105、及びアニオン伝導性PEM1107を有するCO還元MEA1101の構成例を示している。特定の実施形態において、カソード触媒層1103は、炭素粒子等の、導電性基材上に支持されていないか又は支持されている金属触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。いくつかの実装において、カソード触媒層1103は、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。金属触媒粒子は、特に、触媒に応じて例えばpH4~7であり得る閾値pHよりも高いpHで、COx還元を触媒作用してもよい。特定の実施形態において、アノード触媒層1105は、炭素粒子等の、導電性基材上に支持されていないか又は支持されている金属酸化物触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。いくつかの実装において、アノード触媒層1103は、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。アノード触媒層1105のための金属酸化物触媒粒子の例としては、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化ニッケル鉄、酸化イリジウムルテニウム、及び酸化白金等が挙げられる。アニオン伝導性PEM1107は、例えば、IonomrによるHNN5/HNN8、FumatechによるFumaSep、OrionによるTM1、W7energyによるPAP-TP、Dioxide MaterialsによるSustainion等の様々なアニオン伝導性ポリマーのうちの任意のものを含んでもよい。これらの、及び1.1~2.6mmol/gの範囲のイオン交換容量(IEC)、0~14の動作pH範囲、いくつかの有機溶媒への耐容溶解性、適度な熱安定性及び機械的安定性、良好なイオン伝導性/ASR、及び許容可能な吸水/膨潤比を有する他のアニオン伝導性ポリマーを使用してもよい。ポリマーは、使用の前に、ハロゲンアニオンの代わりに、特定のアニオンに化学的に交換されてもよい。いくつかの実施形態において、アニオン伝導性ポリマーは、1~3.5mmol/gのIECを有してもよい。
【0179】
図11に示されているように、COガス等のCOが、カソード触媒層1103に提供されてもよい。特定の実施形態において、COは、ガス拡散電極を介して提供されてもよい。カソード触媒層1103では、COが反応して、総称的にCとして示されている還元生成物を生成する。カソード触媒層1103で生成されるアニオンは、水酸化物、炭酸塩、及び/又は重炭酸塩を含んでもよい。これらは、アノード触媒層1105に拡散するか、泳動するか、又は別様に移動してもよい。アノード触媒層1105では、水の酸化等の酸化反応が生じて、二原子酸素及び水素イオンが生成され得る。いくつかの用途において、水素イオンが、水酸化物、炭酸塩、及び/又は重炭酸塩と反応して、水、炭酸、及び/又はCOが生成されてもよい。界面が少ないほど、抵抗は低くなる。いくつかの実施形態において、高度に塩基性の環境が、C及びC炭化水素合成のために維持される。
【0180】
図12Bは、カソード触媒層1203、アノード触媒層1205、及びアニオン伝導性PEM1207を有するCO還元MEA1201の構成例を示している。全体として、MEA1201の構造は、図11のMEA1101のそれと同様であってもよい。しかしながら、カソード触媒は、CO還元反応を促進するように選択されてもよく、つまり、CO及びCO2還元実施形態において異なる還元触媒が使用される。
【0181】
いくつかの実施形態において、AEM単独MEAは、CO還元にとって有利であり得る。AEM材料の吸水数は、触媒界面での水分の調節に役立つように選択でき、それにより触媒に対するCOの利用可能性が向上する。この理由に起因して、AEM単独膜は、CO還元に有利であり得る。バイポーラ膜は、塩基性のアノード液媒体におけるCO2の溶解及びクロスオーバに対する耐性がより良好であることに起因して、CO2還元により有利であり得る。
【0182】
様々な実施形態において、カソード触媒層1203は、炭素粒子等の、導電性基材上に支持されていないか又は支持されている金属触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。いくつかの実装において、カソード触媒層1203は、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。特定の実施形態において、アノード触媒層1205は、炭素粒子等の、導電性基材上に支持されていないか又は支持されている金属酸化物触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。いくつかの実装において、アノード触媒層1205は、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。アノード触媒層1205の金属酸化物触媒粒子の例としては、図11のアノード触媒層1105について特定されたものが挙げられ得る。アニオン伝導性PEM1207は、例えば、図11のPEM1107に関して特定されたもの等の様々なアニオン伝導性ポリマーのうちの任意のものを含んでもよい。
【0183】
図12Aに示されているように、カソード触媒層12にCOガスが提供されてもよい。特定の実施形態において、COは、ガス拡散電極を介して提供されてもよい。カソード触媒層1203において、COが反応して、総称的にCとして示されている還元生成物を生成する。
【0184】
カソード触媒層1203で生成されるアニオンは、水酸化物イオンを含んでもよい。これらは、アノード触媒層1205に拡散するか、泳動するか、又は別様に移動してもよい。アノード触媒層1205では、水の酸化等の酸化反応が生じて、二原子酸素及び水素イオンが生成され得る。いくつかの用途において、水素イオンは、水酸化物イオンと反応して水を生成してもよい。
【0185】
MEA1201の一般的な構成はMEA1101のそれと同様であるが、これらのMEAにはある特定の差異がある。第1に、MEAは、CO還元の場合はより湿潤であってもよく、ポリマー電解質が水和した状態にしておくことに役立つ。また、CO2還元の場合は、相当量のCO2が、図12Aに示されるもの等のAEM単独MEAのアノードに移送され得る。CO還元の場合は、著しいCOガスのクロスオーバが発生する可能性は低くなる。この場合は、反応環境が非常に塩基性であり得る。触媒を含むMEA材料は、高pH環境で良好な安定性を有するように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、CO還元のために、CO還元のためよりも薄い膜を使用してもよい。
【0186】
前述の詳細な説明から及び図及び特許請求の範囲から、以下の特許請求の範囲において定義される本開示の範囲から逸脱することなく本開示の開示された実施形態に対して修正及び変更がなされ得ることが当業者には認識されるであろう。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のイオン伝導性ポリマー層及び二酸化炭素から一酸化炭素への化学的還元を促進するためのカソード触媒を含む膜電極アセンブリを有する二酸化炭素(CO)還元反応器;
1又は複数のイオン伝導性ポリマー層及び酸化炭素からエチレンへの化学的還元を促進するためのカソード触媒を含むアニオン交換膜(AEM)単独膜電極アセンブリ(MEA)を有する酸化炭素(CO)還元反応器、前記CO還元反応器は、前記CO還元反応器から、一酸化炭素(CO)及び未反応COを含む中間気相生成物ストリームを受け取り、COをエチレンに還元し、前記未反応COの少なくとも一部を重炭酸塩に変換し、前記重炭酸塩を前記AEM単独MEAのアノード側に輸送し、エチレンを含むカソード側気相生成物ストリームを出力するように構成されており、ここで、前記気相生成物ストリーム中のCOの量は、前記中間気相生成物ストリーム中の量よりも少ない;及び
前記CO還元反応器からエチレンを含有する混合物を受け取り、前記混合物よりも高いエチレン濃度を有する精製ストリームを生成するように構成されているエチレン精製システム
を備える、精製エチレン生成物を生成するためのシステム。
【請求項2】
前記CO還元反応器は、バイポーラMEAを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記CO還元反応器は、カチオン交換膜単独MEAを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記CO還元反応器及び前記CO還元反応器は、MEAを各々含む電気化学セルのスタックを各々有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記CO還元反応器は、O及びCOを含むアノード側ストリームを出力するように構成されており、前記システムは、前記アノード側ストリーム中の前記CO及び前記Oを分離するように構成されている分離器;及び、前記CO還元反応器への流入のために、新鮮なCOを分離されたCOと混合するように構成されている混合ユニットをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記CO還元反応器は、COを含むアノード側ストリームを出力するように構成されており、前記システムは、前記COを前記アノード側ストリームから前記CO還元反応器に再循環するように構成されている再循環ループをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記CO還元反応器は、CO及びOを含むアノード側ストリームを出力するように構成されており、前記システムは、前記アノード側ストリーム中の前記CO及び前記Oを分離するように構成されている分離器;及び、前記CO還元反応器への流入のために、新鮮なCOを分離されたCOと混合するように構成されている混合ユニットをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
酸化炭素からエチレンへの化学的還元を促進するための前記カソード触媒は、銅を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記エチレン精製システムは、(a)二酸化炭素を吸収及び分離する、(b)膜ろ過によって1又は複数の他の成分からエチレンを分離する、(c)分別蒸留してエチレン及びメタンを分離する、又は(d)メタンをエチレンに化学的に変換する、又は(e)(a)~(d)の任意の組み合わせを行うための1又は複数のコンポーネント又はサブシステムを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
COからエチレンへの化学的還元を促進するためのカソード触媒を含むアニオン交換膜(AEM)単独膜電極アセンブリ(MEA)を有する二酸化炭素(CO)還元反応器;前記CO還元反応器は、COをエチレンに還元し、少なくとも一部の未反応COを重炭酸塩に変換し、COへの反応のために前記重炭酸塩を前記AEM単独MEAのアノード側に輸送し、エチレンを含むカソード側気相生成物ストリームを出力し、O及びCOを含むアノード側ストリームを出力するように構成されている;及び
前記CO還元反応器から、エチレンを含有する混合物を受け取り、前記混合物よりも高いエチレン濃度を有する精製ストリームを生成するように構成されているエチレン精製システム
を備える、エチレンを生成するためのシステム。
【請求項11】
前記アノード側ストリーム中の前記CO及び前記Oを分離するように構成されている分離器、及び、前記CO還元反応器への流入のために、新鮮なCOを分離されたCOと混合するように構成されている混合ユニットをさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記CO還元反応器は、MEAを各々含む電気化学セルのスタックを有する、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記エチレン精製システムは、(a)二酸化炭素を吸収及び分離する、(b)膜ろ過によって1又は複数の他の成分からエチレンを分離する、(c)分別蒸留してエチレン及びメタンを分離する、又は(d)メタンをエチレンに化学的に変換する、又は(e)(a)~(d)の任意の組み合わせを行うための1又は複数のコンポーネント又はサブシステムを備える、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項14】
1又は複数のイオン伝導性ポリマー層及びCOからエチレンへの化学的還元を促進するためのカソード触媒を含む膜電極アセンブリ(MEA)を有する酸化炭素(CO)還元反応器、前記CO還元反応器は、COを含む供給ストリームを受け取り、エチレンを含む気相生成物ストリームを流出させるように構成されている;及び、前記気相生成物ストリームの一部を、分離することなく、前記供給ストリームが前記気相生成物ストリームの前記一部及び新鮮なCOの混合物を含むように再循環するように構成されている再循環ループ;及び
前記CO還元反応器からエチレンを含有する混合物を受け取り、前記混合物よりも高いエチレン濃度を有する精製ストリームを生成するように構成されているエチレン精製システム
を備える、気相生成物を生成するためのシステム。
【請求項15】
前記再循環ループは、圧縮器を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記COは、二酸化炭素(CO)である、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記MEAは、バイポーラMEAである、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記MEAは、アニオン交換膜(AEM)単独MEAである、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記MEAは、カチオン交換膜単独MEAである、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記MEAは、前記カソード触媒及び前記1又は複数のイオン伝導性ポリマー層の間に配置された液体バッファ層を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記CO還元反応器は、MEAを各々含む電気化学セルのスタックを有する、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記エチレン精製システムは、(a)二酸化炭素を吸収及び分離する、(b)膜ろ過によって1又は複数の他の成分からエチレンを分離する、(c)分別蒸留してエチレン及びメタンを分離する、又は(d)メタンをエチレンに化学的に変換する、又は(e)(a)~(d)の任意の組み合わせを行うための1又は複数のコンポーネント又はサブシステムを備える、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
請求項1に記載のシステムを用いて、精製エチレン生成物を生成する方法。
【請求項24】
請求項10に記載のシステムを用いて、エチレンを生成する方法。
【請求項25】
請求項14に記載のシステムを用いて、気相生成物を生成する方法。
【国際調査報告】