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特表2024-546684モジュール式フラットシート膜フィルタを有する腹膜透析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】モジュール式フラットシート膜フィルタを有する腹膜透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61M1/28 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534011
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 US2022080247
(87)【国際公開番号】W WO2023114621
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/291,073
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キューン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フリーグ, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ブリックル, レイナー
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー, ステフェン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB01
4C077CC02
4C077CC08
4C077EE03
4C077EE04
4C077KK25
4C077KK27
(57)【要約】
腹膜透析(「PD」)システム(10)は、PD機械(20)と、PD機械(20)から延びる患者ライン(50)と、患者ライン(50)と流体連通するフィルタセット(100)とを含み、フィルタセット(100)は、第1及び第2のフィルタ膜(112a,112b、滅菌グレード又は細菌減少フィルタ膜など)を収容するフィルタ本体(110,150,190)を含み、フィルタ本体(110,150,190)は、新鮮PD流体が、(i)第1のフィルタ膜(112a)を通じて次に第2のフィルタ膜(112b)を通じて流れ、又は(ii)第1及び第2のフィルタ膜(112a,112b)を通じて並行に分割して流れるように、異なる配列で配置されるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析(「PD」)システム(10)であって、
PD機械(20)と、
前記PD機械(20)から延びる患者ライン(50)と、
前記患者ライン(50)と流体連通するフィルタセット(100)と
を備え、
前記フィルタセット(100)は、第1及び第2のフィルタ膜(112a,112b)を収容するフィルタ本体(110,150,190)を含み、前記フィルタ本体(110,150,190)は、新鮮PD流体が、(i)前記第1のフィルタ膜(112a)を通じて次に前記第2のフィルタ膜(112b)を通じて流れ、又は(ii)前記第1及び第2のフィルタ膜(112a,112b)を通じて並行に分割して流れるように、異なる配列で配置されるように構成される、PDシステム(10)。
【請求項2】
前記フィルタ本体(110)は、前記第1のフィルタ膜(112a)を収容する第1の膜モジュール(120a)と、前記第2のフィルタ膜(112b)を収容する第2の膜モジュール(120b)と、前記第1及び第2の膜モジュール(120a,120b)と流体連通する流体スペーサ(130a,130b)とを含み、前記流体スペーサ(130a,130b)は、(i)又は(ii)を引き起こすように構成される、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項3】
前記第1の膜モジュール(120a)は、前記第2の膜モジュール(120b)と同じように形成される、請求項2に記載のPDシステム(10)。
【請求項4】
(i)に関し、前記流体スペーサ(130a)は、新鮮PD流体が、前記流体スペーサ(130a)から前記第1の膜モジュール(120a)の前記第1のフィルタ膜(112a)を通じて流れ、前記第2の膜モジュール(120b)中へと流れ、前記第2のフィルタ膜(112b)を通じて流れ、そして患者へと流れる前に前記流体スペーサ(130a)中へと流れ戻るように構成される、請求項2又は3に記載のPDシステム(10)。
【請求項5】
(ii)に関し、前記流体スペーサ(130b)は、新鮮PD流体が、前記流体スペーサ(130a)から前記第1及び第2の膜モジュール(120a,120b)中へと分割し、前記第1及び第2のフィルタ膜(112a,112b)を通じて並行に濾過され、そして患者へと流れる前に前記流体スペーサ(130b)中へと流れ戻るように構成される、請求項2又は3に記載のPDシステム(10)。
【請求項6】
前記流体スペーサ(130a,130b)は、濾過された新鮮PD流体が患者へと流れることと、使用済みPD流体が患者から流れることとができるようにする患者ルーメン(134)を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項7】
前記流体スペーサ(130a,130b)は、前記患者ライン(50)から新鮮PD流体を受け入れる、出口のない新鮮PD流体入口(132)を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項8】
前記フィルタ本体(150)は、前記第1のフィルタ膜(112a)を収容する第1の膜モジュール(160a)と、前記第2のフィルタ膜(112b)を収容する第2の膜モジュール(160b)とを含み、前記第1及び第2の膜モジュール(160a,160b)は、(i)及び(ii)を引き起こすように位置決め及び配列される複数の入口、通路又はルーメン(166,168,170,172)を含み、前記入口、通路又はルーメン(166,168,170,172)の一部は、(i)又は(ii)を引き起こすように塞がれている、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項9】
前記第1の膜モジュール(120a)は、前記第2の膜モジュール(120b)と同じように形成される、請求項8に記載のPDシステム(10)。
【請求項10】
前記第1又は第2の膜モジュール(120a,120b)の少なくとも一方は、上側区画室(162)及び下側区画室(164)を含み、前記上側区画室(162)は、前記下側区画室(164)と同じように形成される、請求項8又は9に記載のPDシステム(10)。
【請求項11】
(i)に関して、前記複数の入口、通路又はルーメン(166,168,170,172)は、新鮮PD流体が、前記第1の膜モジュール(120a)の前記第1のフィルタ膜(112a)を通じて流れ、前記第2の膜モジュール(120b)中へと流れ、そして患者へと流れる前に前記第2のフィルタ膜(112b)を通じて流れるように塞がれる、請求項8から10のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項12】
(ii)に関して、前記複数の入口、通路又はルーメン(166,168,170,172)は、新鮮PD流体が、前記第1及び第2の膜モジュール(120a,120b)中へと分割し、患者へと流れる前に前記第1及び第2のフィルタ膜(112a,112b)を通じて並行して濾過されるように塞がれる、請求項8から11のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項13】
前記第1及び第2の膜モジュール(120a,120b)はそれぞれ、患者ルーメン(170)を含み、(ii)に関し、前記患者ルーメン(170)は、前記患者ルーメン(170)の一方から前記患者ルーメン(170)の他方に新鮮PD流体を迂回させるように構成されるブリッジコネクタ(180)を含む、請求項8から12のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項14】
前記フィルタ本体(190)は、前記第1のフィルタ膜(112a)を収容する第1の膜モジュール(210a)と、前記第2のフィルタ膜(112b)を収容する第2の膜モジュール(210b)とを含み、前記第1及び第2の膜モジュール(210a,210b)は、互いに積層され、前記フィルタ本体(190)は、入口カバー(192)及び出口カバー(200)を更に含み、前記第1及び第2の膜モジュール(210a,210b)の少なくとも一方、前記入口カバー(192)及び前記出口カバー(200)は、(i)又は(ii)を引き起こすように構成可能である、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項15】
前記第1の膜モジュール(210a)及び前記第2の膜モジュール(210b)は、全ての流入する新鮮PD流体を関連する第1又は第2のフィルタ膜(112a,112b)を通じて濾過されるように押し進める第1のフレーム(212a)、又は前記流入する新鮮PD流体の一部を前記関連する第1又は第2のフィルタ膜(112a,112b)を通じて濾過するとともに前記流入する新鮮PD流体の他の部分が前記関連する第1又は第2のフィルタ膜(112a,112b)を迂回できるようにする第2のフレーム(212b)のうちの少なくとも一方を用いる、請求項14に記載のPDシステム(10)。
【請求項16】
前記患者ライン(50)は、前記フィルタセット(100)の新鮮PD流体ポート(104f)と流体連通して配置される新鮮PD流体ルーメン(52)を含むデュアルルーメン患者ラインであり、前記デュアルルーメン患者ライン(50)は、前記フィルタセット(100)の使用済みPD流体ポート(104u)と流体連通して配置される使用済みPD流体ルーメン(54)を更に含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項17】
前記フィルタセット(100)は、患者の移送セットに直接接続するように構成され、又は前記フィルタセット(100)は、前記患者の移送セットに接続するように構成される可撓性チューブ(108)を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項18】
前記PD機械(20)は、患者充填中に前記フィルタ膜(112)よりも下流側の新鮮PD流体の圧力を感知するように位置決め及び配列される圧力センサ(28b)を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項19】
前記第1及び第2のフィルタ膜(112a,112b)は、滅菌グレード又は細菌減少フィルタ膜である、先行する請求項のいずれか一項に記載のPDシステム(10)。
【請求項20】
腹膜透析(「PD」)システム(10)であって、
PD機械(20)と、
前記PD機械(20)から延びる患者ライン(50)と、
前記患者ライン(50)と流体連通しているフィルタセット(100)と
を備え、
前記フィルタセット(100)は、フィルタ本体(110,150,190)と、第1の膜(112a)又は第2のフィルタ膜(112b)のうちの少なくとも一方とを含み、前記フィルタ本体(110,150,190)は、新鮮PD流体が、(i)前記第1のフィルタ膜(112a)を通じて次に前記第2のフィルタ膜(112b)を通じて流れ、(ii)第1及び第2のフィルタ膜(112a,112b)を通じて並行に分割して流れ、又は(iii)前記第1のフィルタ膜(112a)のみを通じて流れるように、異なる配列で配置されるように構成される、PDシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年12月17日に出願された米国仮出願第63/291,073号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
背景
本開示は、一般に、医療用流体処置に関し、特に、透析流体処置中の処置流体の濾過に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な原因により、人の腎臓系が機能しなくなる可能性がある。腎不全は、幾つかの生理学的障害を生じる。水とミネラルのバランスをとること、又は毎日の代謝負荷を排出することはもはや不可能である。尿素、クレアチニン、尿酸などの代謝の毒性最終生成物は、患者の血液及び組織に蓄積する可能性がある。
【0004】
腎機能の低下、とりわけ腎不全は、透析によって処置される。透析は、正常に機能する腎臓がそうでなければ除去するであろう排泄物、毒素及び過剰な水を身体から除去する。腎機能の代替のための透析処置は、処置が救命的であるため、多くの人々にとって重要である。
【0005】
腎不全治療の1つのタイプは、一般に拡散を使用して患者の血液から老廃物を除去する血液透析(「HD」)である。拡散勾配が、血液と透析物又は透析流体と呼ばれる電解質溶液との間で半透性透析器を横切って生じ、拡散を引き起こす。
【0006】
血液濾過(「HF」)は、患者の血液からの毒素の対流輸送に依存する代替的な腎代替治療である。HFは、処置中に体外回路に置換流体又は代替流体を加えることによって達成される。処置の間に患者によって蓄積された置換流体及び流体は、HF処置の過程にわたって限外濾過され、中分子及び大分子を除去するのに特に有益な対流輸送機構を提供する。
【0007】
血液透析濾過(「HDF」)は、対流クリアランスと拡散クリアランスとを組み合わせた処置法である。HDFは、標準的な血液透析と同様に透析器を通して流れる透析流体を使用して、拡散クリアランスをもたらす。更に、置換溶液が体外回路に直接供給され、対流クリアランスをもたらす。
【0008】
ほとんどのHD、HF、及びHDF処置は、センターで行われる。家庭血液透析(「HHD」)への傾向が今日存在するのは、HHDが毎日実施されることができ、典型的には週2回又は3回行われる施設内血液透析処置よりも治療上の利益を与えるためである。研究は、より頻繁な処置が、より頻繁ではないがおそらくより長い処置を受けている患者よりも多くの毒素及び老廃物を除去し、透析間流体過負荷を少なくすることを示している。より頻繁な処置を受けている患者は、処置前に2又は3日分の毒素を蓄積している施設内の患者ほど多くのダウンサイクル(流体及び毒素の変動)を経験しない。特定の地域では、最も近い透析センターは、患者の自宅から何マイルも離れている可能性があり、ドアツードアの処置時間が1日の大部分を消費する原因となる。患者の自宅に近い施設での処置はまた、患者の一日の大部分を消費し得る。HHDは、患者がリラックスし、仕事をし、又は他の様態で生産的である間に、一晩又は日中に行うことができる。
【0009】
別のタイプの腎不全治療は腹膜透析(「PD」)であり、PDは透析流体又はPD流体とも呼ばれる透析溶液をカテーテルを介して患者の腹膜腔に注入する。PD流体は、患者の腹膜チャンバ内の腹膜と接触する。廃棄物、毒素及び過剰な水は、患者の血流から腹膜膜の毛細管を通り、拡散及び浸透によりPD流体に入る、すなわち、浸透勾配が膜を横切って生じる。PD流体中の浸透圧剤が浸透圧勾配をもたらす。使用済みPD流体を患者から排出し、患者から老廃物、毒素及び過剰な水を除去する。このサイクルは、例えば複数回繰り返される。
【0010】
腹膜透析療法には、連続携行式腹膜透析(「CAPD」)、自動腹膜透析(「APD」)、潮流量透析及び連続流量腹膜透析(「CFPD」)を含む様々なタイプがある。CAPDは、手動透析処置である。ここで、患者は、埋め込まれたカテーテルをドレンに手動で接続して、使用済みPD流体を患者の腹膜腔から排出できるようにする。次いで、患者は、流体連通を切り替えて、患者カテーテルが新鮮PD流体のバッグと連通して、カテーテルを通して患者に新鮮PD流体を注入する。患者は、カテーテルを新鮮PD流体バッグから切り離し、PD流体が患者の腹膜腔内に留まることを可能にし、排泄物、毒素及び過剰な水の移送が行われる。滞留期間の後、患者は、手動透析手順を、例えば1日4回繰り返す。手動腹膜透析は、患者からのかなりの量の時間及び労力を必要とし、改善の余地を十分に残す。
【0011】
APDは、透析処置がドレン、充填及び滞留サイクルを含むという点でCAPDと同様である。しかしながら、APD機械は、通常、患者の睡眠中にサイクルを自動的に実行する。APD機械は、患者が処置サイクルを手動で実行する必要がなく、日中に補給物質を輸送させる必要がない。APD機械は、埋め込まれたカテーテル、新鮮PD流体の供給源又はバッグ、及び流体ドレンに流体接続する。APD機械は、透析流体源からカテーテルを通って患者の腹膜チャンバに新鮮PD流体を圧送する。APD機械はまた、PD流体がチャンバ内に滞留し、廃棄物、毒素及び過剰な水の移送が行われることを可能にする。供給源は、幾つかの溶液バッグを含む複数リットルの透析流体を含み得る。
【0012】
APD機械は、患者の腹膜腔からカテーテルを介してPD流体を排出するためにポンプを使用した。手動プロセスと同様に、透析中に幾つかのドレン、充填及び滞留サイクルが起こる。「最後の充填」は、APD処置の終了時に起こり得る。最後の充填流体は、次の処置の開始まで患者の腹膜腔内に残っていてもよく、又は日中のある時点で手動で空にされてもよい。
【0013】
PD流体は、患者の腹膜腔に注入され、したがって薬物と見なされるため、無菌又は非常に無菌に近い必要がある。袋詰めされたPD流体は、一般に、処置のために適切に滅菌されるが、オンラインで作製されたPD流体、又は消毒を使用するPD機械又はサイクラーは、追加の滅菌を必要とする場合がある。
【0014】
したがって、患者に送達される前に新鮮PD流体に追加の滅菌を行う効果的で低コストの方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
本開示は、患者ラインを通して患者に新鮮PD流体を圧送し、患者ラインを介して患者から使用済みPD流体を除去するPD機械又はサイクラーを有する腹膜透析(「PD」)システムを提供する。患者ラインは、再使用可能又は使い捨て可能であってもよく、いずれの場合もフィルタセットと共に動作し、フィルタセットと流体連通する。患者ラインが再利用可能である場合、再利用可能な患者ラインは、処置時にフィルタセットに接続される。患者ラインが使い捨てである場合、一実施形態では、フィルタセットは使い捨ての患者ラインに合流される。いずれの構成においても、フィルタセットの遠位端は、患者の留置カテーテルと流体連通する患者の移送セットに接続することができる。
【0016】
PD機械又はサイクラーは、使い捨て構成要素を使用せずにポンプ自体を通してPD流体を圧送する耐久性のあるPD流体ポンプ、又は蠕動ポンプチューブ又は可撓性圧送チャンバなどの使い捨ての流体接触圧送構成要素を作動させるポンプアクチュエータを含む使い捨てタイプのPD流体ポンプを含むことができる。PD機械又はサイクラーはまた、同様に使い捨て構成要素で動作することなくフロースルー及び耐久性があるか、又はチューブセグメント又はカセットベースの弁シートなどの使い捨ての流体接触弁構成要素を作動させる弁アクチュエータを有する使い捨てタイプの弁であり得る複数の弁を含む。
【0017】
ポンプ及び弁は、機械又はサイクラーによってもたらされる制御ユニットの自動制御下にある。一実施形態では、弁は、PD流体ポンプがデュアルルーメン患者ラインの新鮮PD流体ルーメンを通して新鮮PD流体を患者に圧送できるようにするために制御ユニットが開く新鮮PD流体弁を含む。弁は、制御ユニットが開いて、PD流体ポンプがデュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体ルーメンを通して患者から使用済みPD流体を圧送できるようにする使用済みPD流体弁も含む。単一のPD流体ポンプを使用することができるが、専用の新鮮及び使用済みPD流体ポンプを代替的に使用することができることを理解すべきである。また、単一のPD流体ポンプは、より連続的なPD流体の流れのための複数の圧送チャンバを含むことができる。
【0018】
本開示は、モジュール式フィルタセットの複数の実施形態を説明する。モジュール式フィルタセットは、冗長フィルタ、二重膜フィルタ、及び単一膜フィルタをもたらすように構成することができる。1つの主要な実施形態では、モジュール式フィルタセットは、冗長フィルタ、二重膜フィルタ、又は単一膜フィルタが設けられるかどうかにかかわらず同じように構成されたフィルタ膜モジュールを含む。膜モジュールは、新鮮PD流体がどのように流れるかを決定する異なる流体スペーサで動作する。流体スペーサは、例えば、2つの共通の膜モジュールの間に位置し、例えば超音波シールされ、ヒートシールされ、及び/又は、例えば溶媒結合を介して接着シールされてもよい。
【0019】
冗長スペーサは、スペーサに入る新鮮PD流体を、膜モジュールのうちの1つに流し、その膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過し(第1の濾過)、第2の膜モジュールに流し、第2の膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過し(冗長濾過)、第2の膜モジュールから流出させて冗長スペーサに戻し、次いで冗長スペーサの患者ルーメンを介して患者に流す。全体的な冗長モジュール式フィルタセットは、フィルタ膜の1つが損なわれていても必要な滅菌をもたらし、両方のフィルタ膜の二重濾過を無傷で行なうという点で有利である。
【0020】
代わりに、二重膜スペーサは、スペーサに入る新鮮PD流体を、両方の膜モジュールに同時に又は並行して2方向に流し、両方のフィルタ膜を同時に又は並行して分割して濾過し、第1及び第2の膜モジュールの両方から流出させて二重膜スペーサに戻し、次いで冗長スペーサの患者ルーメンを介して患者に流す。二重膜モジュール式フィルタセット全体は、フィルタセットの流量容量を効果的に2倍にするという点で有利である。
【0021】
単一の膜スペーサは、単一の膜モジュールと共に使用される。ここで、スペーサに入る新鮮PD流体は、膜モジュールに流入し、膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過され、膜モジュールから流出して単一の膜スペーサに戻り、次いで単一の膜スペーサの患者ルーメンを介して患者に流れる。全体的な単一膜モジュール式フィルタセットは、サイズ及びコストを低減するという点で有利である。
【0022】
第2の主要な実施形態では、モジュール式フィルタセットがスペーサを排除する。ここでも、膜モジュールは、冗長フィルタ、二重膜フィルタ、又は単一膜フィルタが設けられるかどうかにかかわらず、(少なくとも最初は)同じように構成される。ここで、膜モジュールには、冗長フィルタ、二重膜フィルタ及び単一膜フィルタのバージョンのそれぞれに必要な開口(ポート)及びルーメン又は通路が形成される。最後の製造ステップは、モジュール式フィルタセットを通る所望の全体的な流路が形成されるように、未使用の開口(ポート)及び不要なルーメン又は通路を塞ぐことである。
【0023】
第2の主要な実施形態の冗長モジュール式フィルタセットは、膜モジュールの1つに入る新鮮PD流体が、その膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過され(第1の濾過)、第2の膜モジュールに流れ、第2の膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過され(冗長濾過)、患者ルーメンを介して第2の膜モジュールから患者に流出するように塞がれる。第2の主要な実施形態の全体的な冗長モジュール式フィルタセットは、フィルタ膜の1つが損なわれていても必要な滅菌が提供され、両方のフィルタ膜が無傷であれば二重濾過が提供されるため、同様に有利である。
【0024】
代わりに、第2の主要な実施形態の二重膜モジュール式フィルタセットは、膜モジュールの1つに入る新鮮PD流体が、最初に第2の膜モジュールの同様の区画室に流れ、両方のフィルタ膜を同時に又は並行して濾過され、膜モジュールの1つの患者ルーメンに流れ、次いで患者ルーメンを介して患者に流れるように塞がれる。第2の主要な実施形態の二重膜モジュール式フィルタセット全体は、フィルタセットの流量容量を効果的に2倍にすることによって同様に有利である。
【0025】
第2の主要な実施形態の単一の膜モジュール式フィルタセットは、単一の膜モジュールを使用する。ここで、単一の膜モジュールは、膜モジュールに入る新鮮PD流体が、入口区画室に流入し、膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過されて出口区画室に入り、出口区画室内の患者ルーメンを介して出口区画室から患者に流出するように塞がれる。第2の主要な実施形態の全体的な単一膜モジュール式フィルタセットは、サイズ及びコストを低減するという点で同様に有利である。
【0026】
第3の主要な実施形態では、モジュール式フィルタセットはまた、スペーサを排除し、膜モジュールを積層する。入口カバー及び出口カバーも設けられている。入口カバーは、新鮮PD流体入口を含む。出口カバーは、濾過された新鮮PD流体を患者に搬送して使用済みPD流体を患者から除去する患者ルーメンを含む。所望の数の膜モジュールが互いに積層された後(単一のモジュールのみ又は2つ以上のモジュールとすることができる)、入口カバー及び出口カバーは、1つ以上の膜モジュールの露出面に嵌合され、モジュール及びカバーは、第3の主要な実施形態のモジュール式フィルタセットを形成するために、例えば溶媒結合を介して、超音波シールされ、ヒートシールされ、及び/又は接着シールされる。
【0027】
第3の主要な実施形態の冗長モジュール式フィルタセットは、入口カバーを介して積層体の膜モジュールの1つに入る新鮮PD流体が、その膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過され(第1の濾過)、積層体の第2の膜モジュールに流れ、第2の膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過され(冗長濾過)、出口カバーの患者ルーメンを介して第2の膜モジュールから患者に流出するように形成される。第3の主要な実施形態の全体的な冗長モジュール式フィルタセットは、両方のフィルタ膜が無傷であれば、損なわれたフィルタ膜を軽減し、二重濾過をもたらすので、同様に有利である。
【0028】
代わりに、第3の主要な実施形態の二重膜モジュール式フィルタセットは、入口カバーを通じて入る新鮮PD流体が、両方の膜モジュールに平行に流れ、同時に又は平行に両方のフィルタ膜を通じて濾過され、出口カバーの患者ルーメンに流れ、次いで患者ルーメンを介して患者に流れるように形成される。第3の主要な実施形態の二重膜モジュール式フィルタセット全体もまた、好適には、フィルタセットの流量容量を2倍にする。
【0029】
第3の主要な実施形態の単一の膜モジュール式フィルタセットは、入口カバー及び出口カバーと組み合わせて単一の膜モジュールを使用する。ここで、入口カバー及び出口カバーは、入口カバーを介して膜モジュールに入る新鮮PD流体が、膜モジュールの入口区画室に流入し、膜モジュールのフィルタ膜を通じて濾過されて膜モジュールの出口区画室に入り、出口カバーの患者ルーメンを介して出口区画室から患者に流出するように、単一の膜モジュールに対してシールされる。第2の主要な実施形態の全体的な単一膜モジュール式フィルタセットも同様に、サイズ及びコストを削減する。
【0030】
第3の主要な実施形態の膜モジュールは、冗長で二重膜モジュール式フィルタセットを形成するように選択されて互いに積層される異なるフレームを含むことができる。フレームの1つは、全ての流入する新鮮PD流体を、フレームに固定されたフィルタ膜(冗長かつ単一の膜モジュール式フィルタセットに関して使用される)を通じて濾過されるように押し進める。他方のフレームは、流入する新鮮PD流体を、(i)フレームに固定されたフィルタ膜を通じて濾過されることと、(ii)フィルタ膜を迂回し、開口を通じて別の膜モジュール(二重膜モジュール式フィルタセットに使用される)に流れることとの間で分割できるようにする。
【0031】
前述のように、デュアルルーメン患者ラインの新鮮及び使用済みPD流体ルーメンは、再使用可能又は使い捨て可能であり得る。新鮮及び使用済みPD流体ルーメンが再使用可能である場合、ルーメンは、本明細書で説明するモジュールフィルタセットのそれぞれのルーメン側コネクタに接続する患者ラインコネクタで終端する。一実施形態におけるルーメン側コネクタは、デュアルルーメン患者ラインの新鮮PD流体ルーメンと連通するための新鮮PD流体ポートと、デュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体ルーメンと連通するための使用済みPD流体ポートとを含む。ルーメン側コネクタは、患者ラインコネクタの相手側のねじに螺合するためのねじ山を含むこともできる。患者ラインコネクタのルーメン側コネクタへのねじ込みにより、患者ラインコネクタの相手側のポートが、一実施形態では、ルーメン側コネクタの新鮮及び使用済みPD流体のポートに対して、例えば1つ以上のガスケットを介してシールされる。
【0032】
本明細書で説明するモジュール式フィルタセットのそれぞれは、フィルタセットの本体と患者の移送セットとの間に配置された短い可撓性チューブに接続する移送セット側コネクタを含むこともでき、それにより、ほぼ剛性のモジュールフィルタセットが、患者の快適さを助けるために、ほぼ剛性の移送セットから離間される。すなわち、フィルタセット及び移送セットの直接当接された本体は、睡眠中に患者にとって不快である組み合わされた剛性構造をもたらすことができる。移送セット側コネクタは、単に短い可撓性チューブをシールして受け入れるためのチューブポートであってもよく、又は短い可撓性チューブの端部に設けられた相手側のコネクタに螺合するねじ付きコネクタであってもよい。
【0033】
本明細書で説明するモジュール式フィルタセットのいずれについても、患者の移送セットを通じて取り出された使用済みPD流体は、PD流体ポンプを介して負圧下で、短い可撓性チューブ、並びにモジュール式フィルタセットの移送セット側コネクタ、患者ルーメン、及びルーメン側コネクタの使用済みPD流体ポートを通じて流れる。使用済みPD流体は、モジュール式フィルタセットから、デュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体ルーメンを通じてPD機械又はサイクラーに引き戻される。PD機械又はサイクラーによって、使用済みPD流体が正圧下で圧送され、排出される。本明細書で論じるモジュール式フィルタセットのそれぞれの使用済みPD流体は、一般に、フィルタ膜の下側に接触しない。流出物の接触は、本開示のフィルタ膜が、フィルタセットで廃棄される前の処理の複数の充填の過程にわたって実行可能なままであるように、最も最小限である。
【0034】
本明細書で論じるモジュール式フィルタセットのいずれかに使用されるフィルタ膜の親水性は、膜が新鮮PD流体で完全に濡れると空気が膜を横切って移動するのを防ぎ、したがって二次最終段階の空気除去目的に役立つ。しかしながら、必要に応じて、例えばフィルタセットの新鮮PD流体入口に隣接して、(新鮮PD流体の観点から)最も上流のフィルタ膜の上流に1つ以上の疎水性膜を設けることが考えられる。1つ以上の疎水性膜は、新鮮PD流体がフィルタ膜を通じて流れる前に空気を大気に放出できるようにする。
【0035】
本明細書に記載の開示に照らして、決して本開示を限定するものではないが、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第1の態様において、腹膜透析(「PD」)システムは、PD機械と、PD機械から延在する患者ラインと、患者ラインと流体連通するフィルタセットとを含み、フィルタセットは、第1及び第2のフィルタ膜を収容するフィルタ本体を含み、フィルタ本体は、新鮮PD流体が、(i)第1のフィルタ膜を通じて次に第2のフィルタ膜を通じて流れ、又は(ii)第1及び第2のフィルタ膜を通じて並行に分割して流れるように、異なる配列で配置されるように構成される。
【0036】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第2の態様において、フィルタ本体は、第1のフィルタ膜を収容する第1の膜モジュールと、第2のフィルタ膜を収容する第2の膜モジュールと、第1及び第2の膜モジュールと流体連通する流体スペーサとを含み、流体スペーサは、(i)又は(ii)を引き起こすように構成される。
【0037】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第3の態様において、第1の膜モジュールは、第2の膜モジュールと同じように形成される。
【0038】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第4の態様において、(i)に関し、流体スペーサは、新鮮PD流体が、流体スペーサから第1の膜モジュールの第1のフィルタ膜を通じて流れ、第2の膜モジュール中へと流れ、第2のフィルタ膜を通じて流れ、そして患者へと流れる前に流体スペーサへと流れ戻るように構成される。
【0039】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第5の態様において、(ii)に関し、流体スペーサは、新鮮PD流体が、流体スペーサから第1及び第2の膜モジュール中へと分かれ、第1及び第2のフィルタ膜を通じて並行に濾過され、そして患者へと流れる前に流体スペーサ中へと流れ戻すように構成される。
【0040】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第6の態様において、流体スペーサは、濾過された新鮮PD流体が患者へと流れることと、使用済みPD流体が患者から流れることとができるようにする患者ルーメンを含む。
【0041】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第7の態様において、流体スペーサは、患者ラインからの新鮮PD流体を受け入れる、出口のない新鮮PD流体入口を含む。
【0042】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第8の態様において、フィルタ本体は、第1のフィルタ膜を収容する第1の膜モジュールと、第2のフィルタ膜を収容する第2の膜モジュールとを含み、第1及び第2の膜モジュールは、(i)及び(ii)を引き起こすように位置決め及び配列される複数の入口、通路又はルーメンを含み、入口、通路又はルーメンの一部は、(i)又は(ii)を引き起こすように塞がれる。
【0043】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第9の態様において、第1の膜モジュールは、第2の膜モジュールと同じように形成される。
【0044】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第10の態様において、第1又は第2の膜モジュールの少なくとも一方は、上側区画室及び下側区画室を含み、上側区画室は、下側区画室と同じように形成される。
【0045】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第11の態様において、(i)に関し、複数の入口、通路又はルーメンは、新鮮PD流体が、第1の膜モジュールの第1のフィルタ膜を通じて流れ、第2の膜モジュール中へと流れ、そして患者へと流れる前に、第2のフィルタ膜を通じて流れるように塞がれる。
【0046】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第12の態様において、(ii)に関し、複数の入口、通路又はルーメンは、新鮮PD流体が、第1及び第2の膜モジュール中へと分割し、患者へと流れる前に第1及び第2のフィルタ膜を通じて並行に濾過されるように塞がれる。
【0047】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第13の態様において、第1及び第2の膜モジュールはそれぞれ、患者ルーメンを含み、(ii)に関して、患者ルーメンは、新鮮PD流体を患者ルーメンの一方から患者ルーメンの他方に迂回させるように構成されるブリッジコネクタを含む。
【0048】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第14の態様において、フィルタ本体は、第1のフィルタ膜を収容する第1の膜モジュールと、第2のフィルタ膜を収容する第2の膜モジュールとを含み、第1及び第2の膜モジュールは、互いに積層され、フィルタ本体は、入口カバー及び出口カバーを更に含み、第1及び第2の膜モジュールの少なくとも一方、入口カバー及び出口カバーは、(i)又は(ii)を引き起こすように構成可能である。
【0049】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第15の態様において、第1の膜モジュール及び第2の膜モジュールは、全ての流入する新鮮PD流体を関連する第1又は第2のフィルタ膜を通じて濾過されるように押し進める第1のフレーム、又は流入する新鮮PD流体の一部を関連する第1又は第2のフィルタ膜を通じて濾過するとともに流入する新鮮PD流体の他の部分が関連する第1又は第2のフィルタ膜を迂回できるようにする第2のフレームのうちの少なくとも一方を使用する。
【0050】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第16の態様において、患者ラインは、フィルタセットの新鮮PD流体ポートと流体連通して配置される新鮮PD流体ルーメンを含むデュアルルーメン患者ラインであり、デュアルルーメン患者ラインは、フィルタセットの使用済みPD流体ポートと流体連通して配置される使用済みPD流体ルーメンを更に含む。
【0051】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第17の態様において、フィルタセットは、患者の移送セットに直接接続するように構成され、又はフィルタセットは、患者の移送セットに接続するように構成される可撓性チューブを含む。
【0052】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第18の態様において、PD機械は、患者充填中にフィルタ膜よりも下流側の新鮮PD流体の圧力を感知するように位置決め及び配列される圧力センサを含む。
【0053】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第19の態様において、第1及び第2のフィルタ膜は、滅菌グレード又は細菌減少フィルタ膜である。
【0054】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第20の態様において、腹膜透析(「PD」)システムは、PD機械と、PD機械から延在する患者ラインと、患者ラインと流体連通するフィルタセットとを含み、フィルタセットは、フィルタ本体と、第1の膜又は第2のフィルタ膜の少なくとも一方とを含み、フィルタ本体は、新鮮PD流体が、(i)第1のフィルタ膜を通じて次に第2のフィルタ膜を通じて流れ、(ii)第1及び第2のフィルタ膜を通じて並行に分割して流れ、又は(iii)第1のフィルタ膜のみを通じて流れるように、異なる配列で配置されるように構成される。
【0055】
任意の他の態様又はその一部とともに使用され得る本開示の第21の態様では、図1から図17のいずれか1つ以上に関連して説明した特徴、機能、及び代替形態のいずれかは、図1から図17の他のいずれかに関連して説明した特徴、機能、及び代替形態のいずれかと組み合わせられ得る。
【0056】
上記の態様及び本明細書で説明される本開示に照らして、モジュール式のフィルタセットを提供することが本開示の利点である。
【0057】
本開示の他の利点は、異なる滅菌ニーズを満たすように適合可能なフィルタセットを提供することである。
【0058】
本開示の更に他の利点は、重複した消毒を行なうように構成され得るフィルタセットを提供することである。
【0059】
本開示の更なる利点は、新鮮PD流体を濾過し、使用済みPD流体がフィルタ膜を詰まらせることなく通過できるようにするフィルタセットを提供することである。
【0060】
本開示の更なる利点は、異なる病原体負荷ニーズに適合するように容易に調整可能な濾過能力を有するフィルタセットを提供することである。
【0061】
本開示の更に他の利点は、デュアルルーメン患者ラインで動作するフィルタセットを提供することである。
【0062】
更なる特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面に記載され、それらから明らかになる。本明細書に記載の特徴及び利点は、全てを含むものではなく、特に、多くの更なる特徴及び利点が、図面及び説明を考慮すると当業者には明らかである。また、任意の特定の実施形態は、本明細書にリストアップされた利点の全てを有する必要はなく、個々の有利な実施形態を別々に請求することが明確に企図される。更に、本明細書で使用される言語は、主に読みやすさ及び説明目的のために選択されており、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1図1は、本開示のモジュール式フィルタセットで動作するデュアルルーメン患者ラインを含む腹膜透析システムの一実施形態の概略図である。
【0064】
図2図2は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第1の主要な実施形態の斜視図である。
【0065】
図3図3は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第1の主要な実施形態の冗長バージョンの斜視図である。
【0066】
図4図4は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第1の主要な実施形態の二重フィルタ膜バージョンの斜視図である。
【0067】
図5図5は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第1の主要な実施形態の単一フィルタ膜バージョンの斜視図である。
【0068】
図6図6は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第2の主要な実施形態の斜視図である。
【0069】
図7図7は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第2の主要な実施形態の冗長バージョンの斜視図である。
【0070】
図8図8は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第2の主要な実施形態の二重フィルタ膜バージョンの斜視図である。
【0071】
図9図9は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第2の主要な実施形態の二重フィルタ膜バージョンと共に使用されるブリッジコネクタの一実施形態を示す斜視図である。
【0072】
図10図10は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第2の主要な実施形態の単一フィルタ膜バージョンの斜視図である。
【0073】
図11図11は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第3の主要な実施形態の組み立て斜視図である。
【0074】
図12図12は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第3の主要な実施形態の分解斜視図である。
【0075】
図13図13は、全ての流入する新鮮腹膜透析(「PD」)流体を濾過するように構成される第1のフレームを有する膜モジュールの斜視図である。
【0076】
図14図14は、幾らかの流入する新鮮PD流体を濾過し、他の流入する新鮮PD流体が第2のフレームに関連するフィルタ膜を迂回できるようにするように構成される第2のフレームを有する膜モジュールの斜視図である。
【0077】
図15図15は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第3の主要な実施形態の冗長バージョンの断面斜視図である。
【0078】
図16図16は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第3の主要な実施形態の二重フィルタ膜バージョンの断面斜視図である。
【0079】
図17図17は、本開示のモジュール式患者ラインフィルタセットにおける第3の主要な実施形態の単一フィルタ膜バージョンの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
詳細な説明
ここで図面、特に図1を参照すると、腹膜透析(「PD」)システム10が示されている。PDシステム10は、患者ライン50を通して新鮮PD流体を患者Pに圧送し、患者ライン50を介して患者Pから使用済みPD流体を除去するPD機械又はサイクラー20を含む。患者ライン50は、再使用可能又は使い捨て可能であってもよく、いずれの場合も、代わりに細菌減少フィルタセットと呼ばれ得るモジュール式フィルタセット100で動作し、流体連通する。患者ライン50が再使用可能である場合、再使用可能な患者ラインは、治療時にモジュール式フィルタセット100に接続される。患者ライン50が代わりに使い捨てである場合、一実施形態では、モジュール式フィルタセット100は、使い捨ての患者ライン50に併合又は形成される。いずれの構成においても、モジュール式フィルタセット100の遠位端を患者の移送セット58に接続することができ、移送セットは次に患者Pの留置カテーテルと流体連通する。
【0081】
PD機械又はサイクラー20は、使い捨て部品を使用せずにポンプ自体を通してPD流体を圧送する耐久性のあるPD流体ポンプ24を備えるハウジング22を含むことができる。PD流体ポンプ24に使用することができる耐久性のあるポンプの例としては、ピストンポンプ、ギヤポンプ、及び遠心ポンプが挙げられる。ピストンポンプなどの特定の耐久性のあるポンプは本質的に正確であるため、機械又はサイクラー20は追加の体積制御構成要素を必要としない。ギヤポンプ及び遠心ポンプなどの他の耐久性のあるポンプは、機械又はサイクラー20が1つ以上の流量計(図示せず)などの体積制御デバイスをもたらすように、それほど正確ではない場合がある。
【0082】
或いは、ポンプ24は、蠕動ポンプチューブ又は可撓性圧送チャンバなどの使い捨ての流体接触圧送構成要素を作動させるポンプアクチュエータを含む使い捨てタイプのPD流体ポンプであってもよい。PD流体ポンプ24に使用され得る使い捨てPD流体ポンプの例としては、チューブを作動させる回転式又は線形蠕動ポンプアクチュエータ、カセットシートを作動させる空気圧ポンプアクチュエータ、カセットシートを作動させる電気機械式ポンプアクチュエータ、及びチューブを作動させるプラテンポンプアクチュエータが挙げられる。単一のPD流体ポンプ24を使用することができるが、専用の新鮮及び使用済みPD流体ポンプを代替的に使用することができることを理解すべきである。また、単一のPD流体ポンプ24は、より連続的なPD流体の流れのための複数の圧送チャンバを含むことができる。
【0083】
PD機械又はサイクラー20はまた、複数の弁26a、26b、26m、26nを含んでもよく、これらの弁も同様に、フロースルーであり、使い捨て構成要素で動作しない耐久性のあるものであってもよく、又はチューブセグメントやカセットベースの弁シートなどの使い捨ての流体接触弁構成要素を作動させる弁アクチュエータを有する使い捨てタイプの弁であってもよい。弁26a、26b、26m、26nに使用され得る耐久性のある弁の例としては、フロースルーソレノイド弁が挙げられる。そのような弁は、二方弁又は三方弁であってもよい。弁26a、26b、26m、26nに使用され得る使い捨て弁の例としては、閉じた可撓性チューブを挟むソレノイドピンチ弁、カセットシートを作動させる空気圧弁アクチュエータ、及びカセットシートを作動させる電気機械式弁アクチュエータが挙げられる。
【0084】
機械又はサイクラー20は、多くの弁26a~26nを含む可能性が高い。説明を容易にするために、機械又はサイクラー20は、PD流体ポンプ24がデュアルルーメン患者ライン50の新鮮PD流体ルーメン52を通して正圧下で新鮮PD流体を患者Pに圧送できるようにするために開くように制御される新鮮PD流体弁26aを有するものとして示されている。弁は、開に制御されて、PD流体ポンプ24が陰圧下でデュアルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54を通して患者Pから使用済みPD流体を引き出すことができるようにする使用済みPD流体弁26bも含む。弁26mは、1つ以上のPD流体源への選択的アクセスを可能にするために設けられ、一方、弁26nは、ドレンライン60を介して排水容器又はハウスドレンなどのドレンへの選択的アクセスを可能にするために設けられる。
【0085】
図示の実施形態における機械又はサイクラー20は、圧力センサ28a、28bなどの圧力センサも含む。圧力センサ28aは、新鮮PD流体弁26aのすぐ下流に位置し、圧力センサ28bは、使用済みPD流体弁26bのすぐ上流に位置する。したがって、新しいPD液用バルブ26aが閉じている場合でも、圧力センサ28aによって、ダブルルーメン患者ライン50の新しいPD流体ルーメン52内の圧力を検知することができ、一方、使用済みPD液用バルブ26bが閉じている場合でも、圧力センサ28bによって、ダブルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54内の圧力を検知することができる。更に、圧力センサ28aは、患者充填中に本明細書で論じるフィルタ膜の上流の新鮮PD流体の圧力を感知するように位置決めされる。圧力センサ28bは、おそらくより重要なことには、患者の充填中に本明細書で説明するフィルタ膜の下流の新鮮PD流体の圧力を感知するように位置決めされ、したがって、倍数(冗長である場合)による圧力降下を考慮に入れる。
【0086】
図示の実施形態におけるポンプ24及び弁26a、26bは、システム10の装置又はサイクラー20によって提供される、制御ユニット40によって自動制御されており、圧力センサ28a、28b(及び他のセンサ)から、制御ユニット40に出力される。図示の実施形態における制御ユニット40は、1つ以上のプロセッサー42と、1つ以上のメモリ44と、ビデオコントローラ46とを含む。制御ユニット40は、圧力センサ28a、28b、及び機械又はサイクラー20によってもたらされる他のセンサ、例えば、1つ以上の温度センサ30及び1つ以上の導電率センサ(図示せず)からの信号又は出力を受信、記憶及び処理する。制御ユニット40は、圧力センサ28a、28bのうちの1つ以上からの圧力フィードバックを使用して、PD流体ポンプ24を制御し、透析流体を所望の圧力又は安全な圧力限界内(例えば、患者の腹膜腔への陽圧の0.21バール(3psig)以内及び患者の腹膜腔からの負圧の-.10バール(-1.5psig)以内)で圧送することができる。
【0087】
制御ユニット40は、1つ以上の温度センサ30からの温度フィードバックを使用して、新鮮PD流体を所望の温度、例えば体温又は37℃まで加熱するように、インラインヒータなどのヒータ32を制御する。一実施形態では、PD液ポンプ24、バルブ26aから26n、ヒータ32、及び、装置又はサイクラー20内の全ての再利用可能な流体ラインを消毒して、次の処置のために装置又はサイクラーを準備するために、新しいPD液などの消毒流体を加熱することに、ヒータ32は更に使用される。本明細書で論じる追加の濾過は、PD流体が患者Pへの送達にとって安全であることを保証するために、加熱流体消毒に加えて保護層を提供する。
【0088】
制御ユニット40のビデオコントローラ46は、機械又はサイクラー20のユーザインタフェース48と接続し、ユーザインタフェース48は、タッチスクリーン及び/又は膜スイッチなどの1つ以上の電気機械ボタンで動作する表示画面を含むことができる。ユーザインタフェース48は、警報、警告、及び/又は音声ガイダンスコマンドを出力するための1つ以上のスピーカも含み得る。ユーザインタフェース48は、図1に示すように機械又はサイクラー20を備えてもよく、及び/又は制御ユニット40で動作するリモートユーザインタフェースであってもよい。制御ユニット40は、医師又は臨床医のコンピュータとインタフェースする医師又は臨床医のサーバに処置データを送信し、医師又は臨床医のサーバから処方命令を受信するために、トランシーバ(図示せず)及びネットワーク、例えばインターネットへの有線又は無線接続も含み得る。
【0089】
更に図1を参照すると、一実施形態におけるモジュール式フィルタセット100は、ルーメン側コネクタ104と、移送セット側コネクタ106と、必要に応じて短い可撓性チューブ108と、フィルタ本体110,150又は190とを含む。短い可撓性チューブ108は、フィルタ本体110,150又は190と患者の移送セット58との間に位置し、それにより、フィルタセット100のほぼ剛性のフィルタ本体110,150又は190は、患者の快適さを助けるために、ほぼ剛性の移送セット58から離間される。すなわち、直接当接されたフィルタ本体110,150又は190及び移送セット58は、睡眠中に患者にとって不快である組み合わされた剛性構造を生成することができる。
【0090】
ルーメン側コネクタ104、移送セット側コネクタ106、及びフィルタ本体110,150又は190は、超音波で、ヒートシールを介して、及び/又は接着で、例えば溶媒結合を介して、1つ以上の部品から一緒に成形することができる。ルーメン側コネクタ104、移送セット側コネクタ106、任意選択の短い可撓性チューブ108、及びフィルタ本体110,150又は190のいずれかは、ポリスチレン(「PS」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリカーボネートとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンとのブレンド(「PC/ABS」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリプロピレン(「PP」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)のようなポリエステル、又はポリウレタン(「PU」)などの任意の1つ以上のプラスチックで作られてもよい。
【0091】
ルーメン側コネクタ104は、デュアルルーメン患者ライン50の新鮮PD流体ルーメン52と連通するための新鮮PD流体ポート(図示せず)と、デュアルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54と連通するための使用済みPD流体ポート(図示せず)とを含むことができる。新鮮及び使用済みPD流体ポートは、ルーメン側コネクタ104のシュラウド(図示せず)によって取り囲まれてもよく、シュラウドには、患者ラインコネクタ56の嵌合ねじ山に螺合するためのねじ山(図示せず)が形成されてもよい。一実施形態では、例えば、シリコーン又は他の適切なゴムガスケットなどの1つ以上の圧縮性ガスケット(図示せず)を介して、患者ラインコネクタ56のルーメン側コネクタ104へのねじ込みは、患者ラインコネクタ56の相手側のポート(図示せず)をルーメン側コネクタ104の新鮮及び使用済みPD流体ポートに対してシールする。ルーメン側コネクタ104のシュラウドは、キーで構成されていてもよい。患者ラインコネクタ56には、患者ラインコネクタが適切な向きでのみシュラウドに導入され、新鮮PD流体ルーメン52を新鮮PD流体ポートと位置合わせし、使用済みPD流体ルーメン54をルーメン側コネクタ104の使用済みPD流体ポートと位置合わせすることができるように、相手側のキーが形成される。デュアルルーメン患者ライン50が使い捨てである場合、ルーメン側コネクタ104は、代替的に、ポート、例えば、本明細書に記載の任意の方法でポートにシールするために新鮮PD流体ルーメン52及び使用済みPD流体ルーメン54がそれぞれ延在する新鮮PD流体ポート及び使用済みPD流体ポートを単に含むことができる。
【0092】
移送セット側コネクタ106は、(チューブ108が設けられていない場合)患者の移送セット58の相手側のコネクタに直接接続するか、又はフィルタハウジング102と患者の移送セット58との間に配置された短い可撓性チューブ108の相手側のコネクタに直接接続する。移送セット側コネクタ106は、相手側のコネクタへのルアー型接続のためのポート及びねじ付きシュラウド(図示せず)を含むことができる。或いは、移送セット側コネクタ106は、本明細書に記載の任意の方法でポートにシールするために短い可撓性チューブ108が延在するポートであってもよい。
【0093】
ここで図2図5を参照して、本開示の第1の主要な実施形態におけるフィルタ本体110をより詳細に示す。フィルタ本体110は、ほぼ長方形のフォーマットで示されているが、任意の所望の及び/又は最適化された形状を有してもよい。図示の実施形態におけるフィルタ本体110は、一対の膜モジュール120a、120bを含む。膜モジュール120a、120bは、一実施形態では、フィルタセット100及びシステム10のモジュール性を助けるために同じように構成される。
【0094】
図2は、膜モジュール120a、120bがそれぞれ上側区画室122及び下側区画室124を含むことを示す。フィルタ膜112aは、膜モジュール120aの上側区画室122と下側区画室124との間に位置し、上側区画室122内の新鮮PD流体がフィルタ膜112aによって下側区画室124内の新鮮PD流体から分離される。フィルタ膜112bは、膜モジュール120bの上側区画室122と下側区画室124との間に同様に位置し、上側区画室122内の新鮮PD流体がフィルタ膜112bによって下側区画室124内の新鮮PD流体から分離される。
【0095】
図示の実施形態におけるフィルタ膜112a及び112bは、それぞれ膜モジュール120a、120bを二等分することができるフラットシートの形態で提供される。フィルタ膜112a、112bは、滅菌グレード又は細菌減少親水性膜であってもよく、この膜には約0.2ミクロンの孔径を有する多孔質壁が形成されてもよく、多孔質壁を通じて新鮮PD流体が更なる濾過のために流れる。フィルタ膜112a、112bは、例えば、ポリビニルピロリドンとブレンドされたポリスルホン又はポリエーテルスルホンで作製することができる。以下に示すように、フィルタ膜112a、112bは、新鮮PD流体が膜を通じて上下又は下から上のいずれかの方向に濾過され得るように形成される。
【0096】
フィルタ膜112a、112bの親水性は、膜が新鮮PD流体で完全に濡れると空気が膜を横切って移動するのを防ぎ、したがって二次最終段階の空気除去目的に役立つ。しかしながら、必要に応じて、本明細書に記載の任意の実施形態では、(新鮮PD流体の観点から)第1のフィルタ膜112aの上流に1つ以上の疎水性膜(図示せず)を設けることが考えられる。1つ以上の疎水性膜は、新鮮PD流体がフィルタ膜112a、112bのいずれかを通じて流れる前に空気を大気に放出できるようにする。疎水性膜は、例えばポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)から構成することができる。
【0097】
図3及び図4の両方は、流体通路126が膜モジュール120a、120bの上側区画室122から上側区画室の外壁を通じて延在することを示す。流体通路128は、膜モジュール120a、120bの下側区画室124から下側区画室の外壁を通じて延在する。したがって、新鮮PD流体は、それぞれ流体通路126及び128を介して上側区画室122及び下側区画室124に流入又は流出することができる。
【0098】
モジュール式フィルタ本体110を通る異なる新鮮PD流路は、異なるように構成された流体スペーサ130a~130cによって設けられる。流体スペーサ130aが図2及び図3に示され、一方、図4には流体スペーサ130bが示され、図5には流体スペーサ130cが示される。所望の流体スペーサ130a~130cが選択されると、上側及び下側区画室122及び124は、フィルタ膜112a及び112b(図5は、フィルタ膜112bのみを含む)並びにモジュール式フィルタセット100の残りの部分と共に、例えば、溶媒結合を介して、超音波シール、ヒートシール及び/又は接着シールなど、一度に一緒にシールされてもよい。モジュール式フィルタセット100は、代替的に、段階的に形成されてもよく、例えば、膜モジュール120a、120bは、別々に形成され、次いで、例えば溶媒結合を介して、選択された流体スペーサ130a~130cに超音波シール、ヒートシール及び/又は接着シールされる。
【0099】
図3に示す流体スペーサ130aは、新鮮PD流体入口132及び患者ルーメン134を含むか又は画定する。新鮮PD流体入口132は、例えば、ルーメン側コネクタ104の新鮮PD流体ポートから延びるか、又はそれと流体連通してもよく、患者ルーメン134は、例えば、ルーメン側コネクタ104の使用済みPD流体ポートから延びるか、又はそれと流体連通してもよい。図示の実施形態における新鮮PD流体入口132は、流体スペーサ130aの背面を完全には貫通しない出口のないルーメンとして形成される。一方、患者ルーメン134は、例えばセット側コネクタ106を移送するために、流体スペーサ130aの背面を通じて延在する。
【0100】
図3に示す流体スペーサ130aは、モジュール式フィルタ本体110を通る新鮮PD流体の流れの方向を設定する3つの流体チャネルを更に含むか、又は画定する。流体スペーサ130aは、膜モジュール120a、120bの上側区画室122に形成された流体通路126の間に延在し、その間を通る新鮮PD流体を可能にする上側交差チャネル136を含むか又は画定する。流体スペーサ130aは、ルーメンチャネル138a及び138bを含むか又は画定する。ルーメンチャネル138aは、膜モジュール120aの流体通路128と新鮮PD流体入口132との間に延在し、それらの間で新鮮PD流体が流れることができるようにする。ルーメンチャネル138bは、膜モジュール120bの流体通路128と患者ルーメン134との間に延在し、新鮮PD流体がそれらの間で流れることができるようにする。
【0101】
流体スペーサ130aは、新鮮PD流体入口132を通じてスペーサに入る新鮮PD流体を、ルーメンチャネル138a及び流体通路128を通じて膜モジュール120aの下側区画室124に流入させる冗長スペーサである。次いで、新鮮PD流体は、フィルタ膜112aを通して膜モジュール120aの上側区画室122内に濾過される(第1の濾過)。濾過されると、新鮮PD流体は、流体通路126及び交差チャネル136を通じて膜モジュール120bの上側区画室122に流入する。一旦濾過されると、新鮮PD流体は、次に再びフィルタ膜112bを通じて濾過されて膜モジュール120bの下側区画室124に入る(冗長濾過)。次いで、二回濾過された新鮮PD流体は、膜モジュール120bの下側区画室124からルーメンチャネル138bを通じて患者ルーメン134に流れ、PD治療の患者充填のために患者ルーメン134から患者に流れる。全体的な冗長モジュール式フィルタセット100は、フィルタ膜112a、112bの一方が損なわれた場合でも必要な滅菌をもたらし、両方のフィルタ膜112a、112bが無傷である場合に二重濾過をもたらすという点で有利である。
【0102】
図4に示す流体スペーサ130bはまた、新鮮PD流体入口132及び患者ルーメン134を含むか又は画定する。新鮮PD流体入口132は、やはり流体スペーサ130bの背面を完全には貫通しない出口のないルーメンとして形成される。一方、患者ルーメン134は、例えばセット側コネクタ106を移送するために、流体スペーサ130aの背面を通じて延在する。図4に示す流体スペーサ130bは、モジュール式フィルタ本体110を通る新鮮PD流体の流れの方向を設定する2つの流体チャネルを含むか、又は画定する。流体スペーサ130bは、患者ルーメン134と両方の膜モジュール120a、120bの両方の流体通路126との間に延在し、それらの間で新鮮PD流体が流れることができるようにするルーメンチャネル140を含むか又は画定する。流体スペーサ130bはまた、PD流体入口132と両方の膜モジュール120a、120bの両方の流体通路128との間に延在し、それらの間で新鮮PD流体が流れることができるようにするルーメンチャネル142を含むか又は画定する。
【0103】
流体スペーサ130bは、二重膜スペーサであり、代わりに、PD流体入口132を介してスペーサに入る新鮮PD流体を、分割させて、両方の膜モジュール120a、120bの下側区画室124に、下部ルーメンチャネル142及び流体通路128を介して同時に又は並行に、2つの反対方向で流す。次いで、新鮮PD流体は、下側区画室124から両方のフィルタ膜112a、112bを通じて同時に又は並行して濾過されて両方の膜モジュール120a、120bの上側区画室122に入る。次いで、濾過された新鮮PD流体は、PD治療の患者充填のために、ルーメンチャネル140を通じて患者ルーメン134に流れ、患者ルーメン134から患者に流れる。二重膜モジュール式フィルタセット100は、流体スペーサ130aを使用する同じサイズのフィルタセットと比較して、フィルタセットの流量容量を効果的に倍増させるという点で有利である。
【0104】
図5に示す流体スペーサ130cは、単一の膜モジュール120bのみで動作する。流体スペーサ130cはまた、新鮮PD流体入口132及び患者ルーメン134を含むか又は画定する。新鮮PD流体入口132は、やはり流体スペーサ130bの背面を完全には貫通しない出口のないルーメンとして形成される。一方、患者ルーメン134は、例えばセット側コネクタ106を移送するために、流体スペーサ130aの背面を通じて延在する。ルーメンチャネル144は、患者ルーメン134と膜モジュール120bの上側区画室122との間で延在し、それらの間の新鮮PD流体連通を可能にする。第2のルーメンチャネル146は、PD流体入口132と膜モジュール120bの下側区画室124との間で延在し、それらの間の新鮮PD流体連通を可能にする。
【0105】
流体スペーサ130cは、単一の膜モジュール102bで動作する単一の膜スペーサである。ここで、PD流体入口132を介して単一の膜スペーサ130cに入る新鮮PD流体は、ルーメンチャネル146及び流体通路128を介して膜モジュール120bの下側区画室124に流入する。次いで、新鮮PD流体は、フィルタ膜112bを通じて濾過されて上側区画室122に入る。次いで、濾過された新鮮PD流体は、流体通路126及びルーメンチャネル144を介して患者ルーメン134に流れ、PD治療の患者充填のために患者ルーメン134から患者に流れる。単一膜モジュール式フィルタセット100は、サイズ及びコストを低減するという点で有利である。
【0106】
ここで図6図10を参照して、本開示の第2の主要な実施形態のフィルタ本体150をより詳細に示す。フィルタ本体150は、ほぼ長方形のフォーマットで示されているが、任意の所望の及び/又は最適化された形状を有してもよい。図示の実施形態におけるフィルタ本体150は、一対の膜モジュール160a、160bを含む。膜モジュール160a、160bは、一実施形態では、フィルタセット100及びシステム10のモジュール性を助けるために、冗長フィルタ、二重膜フィルタ、又は単一膜フィルタが提供されるかどうかにかかわらず、同じように(少なくとも最初に)構築される。フィルタ本体150は、フィルタ本体110に関連するスペーサ130a~130cを除去する。
【0107】
膜モジュール160a、160bには、冗長フィルタ、二重膜フィルタ及び単一膜フィルタのバージョンのそれぞれに必要な開口(ポート)及びルーメン又は通路が形成されている。モジュール160a、160bの最後又は後の製造ステップは、モジュール式フィルタセット100を通る所望の全体的な流路が形成されるように、未使用の開口(ポート)及び不要なルーメン又は通路を塞ぐことである。
【0108】
図6は、膜モジュール160a、160bがそれぞれ上側区画室162及び下側区画室164を含むことを示す。フィルタ膜112aは、膜モジュール160aの上側区画室162と下側区画室164との間に位置し、上側区画室162内の新鮮PD流体がフィルタ膜112aによって下側区画室164内の新鮮PD流体から分離される。フィルタ膜112bは、膜モジュール160bの上側区画室162と下側区画室164との間に同様に位置し、上側区画室162内の新鮮PD流体がフィルタ膜112bによって下側区画室164内の新鮮PD流体から分離される。フィルタ膜112a、112bは、やはり、新鮮PD流体が膜を通じて上から下又は下から上のいずれかの方向に濾過され得るように形成される。
【0109】
図6及び図7の両方は、冗長フィルタ、二重膜フィルタ及び単一膜フィルタのバージョンのそれぞれに必要な開口(ポート)及びルーメン又は通路を示している。特に、図示の実施形態における膜モジュール160a、160bの上側区画室162は、新鮮PD流体入口166を含む。新鮮PD流体入口162は、例えば、ルーメン側コネクタ104の新鮮PD流体ポートから延伸するか、又はそれと流体連通してもよい。図示されている実施形態における新鮮PD流体入口162は、(i)膜モジュールの後方を完全には貫通しない出口のないルーメン(モジュール160a、160bは、左右の対として形成されている)として、又は(ii)ルーメンの裏側端部が塞がれるか塞がれる貫通孔ルーメンとして形成されて、効果的に出口のないルーメンを形成することができる。図示の実施形態における膜モジュール160a、160bの上側区画室162はまた、上側区画室162内の新鮮PD流体が互いに流体連通することを可能にする流体通路168を含む。下側区画室164は流体通路168も含み、該流体通路は常に下側区画室で塞がれるが、モジュール部品が代わりに上側区画室162として使用されるときには塞がれなくてもよく、単一のモジュール部品を製造することができることに留意されたい。
【0110】
図示の実施形態における膜モジュール160a、160bの下側区画室164は、患者ルーメン170を含む。患者ルーメン170は、下側区画室164を貫通して延在し、患者ライン50からの新鮮PD流体入口として、又は患者への新鮮PD流体出口として、例えば移送セット側コネクタ106と流体連通するように動作することができる。患者ルーメン170は、患者から除去された使用済みPD流体を運ぶために更に使用され得る。図示の実施形態における膜モジュール160a、160bの下側区画室164はまた、患者ルーメン170から下側区画室164の流体保持領域まで延在する流体通路172を含み、新鮮PD流体が患者ルーメン170と下側区画室との間でいずれかの方向に流れることを可能にする。流体通路172はまた、新鮮PD流体入口166から上側区画室162の流体保持領域まで延在する上側区画室162にも設けられ、新鮮PD流体がPD流体入口166と上側区画室との間でいずれかの方向に流れることを可能にする。
【0111】
単一の成形部品は、図6及び図7に示すフィルタ本体150の4つの別個の部品のいずれかとして動作することができることを理解すべきである。フィルタ膜112a及び112bが上側区画室と下側区画室162,164との間に挿入され、必要なプラグが挿入される、例えば接着されると、4つの別個の部品は、例えば超音波、ヒートシール及び/又は接着シールで、例えば溶媒結合を介して一度に一緒にシールされ得る。モジュール式フィルタセット100は、代替的に、段階的に形成されてもよく、例えば、膜モジュール160a、160bは、所定の位置にプラグを用いて別々に形成され、次いで、超音波、ヒートシール及び/又は接着シールされ、例えば溶媒結合を介して一緒になる。
【0112】
図6及び図7は、フィルタ本体150の冗長構成を示す。ここで、両方のモジュール160a、160bの上側区画室162内の新鮮PD流体入口166及び下側区画室164内の流体通路168は完全に塞がれている(新鮮PD流体入口166は少なくとも流体通路172を覆うように塞がれている)。膜モジュール160a内の患者ルーメン170の後半部分は、流体通路172を覆わないように塞がれる。膜モジュール160b内の患者ルーメン170及び上側区画室162内の流体通路168は、塞がれずに完全に開いたままである。
【0113】
このような構成により、膜モジュール160aの患者ルーメン170に入る新鮮PD流体は、流体通路172を通じて膜モジュール160aの下側区画室164に流れる。次いで、新鮮PD流体は、フィルタ膜112aを通じて濾過されて膜モジュール160aの上側区画室162に入る(第1の濾過)。濾過されると、新鮮PD流体は、両方の上側区画室の流体通路168を通じて膜モジュール160bの162の流体保持部分に流入する。一旦濾過されると、新鮮PD流体は、次に再びフィルタ膜112bを通じて濾過されて膜モジュール160bの下側区画室164に入る(冗長濾過)。次いで、二回濾過された新鮮PD流体は、膜モジュール160bの下側区画室164から流体通路172を通じて膜モジュール160b内の患者ルーメン170に流れ、PD治療の患者充填のために患者ルーメン170から患者に流れる。膜モジュール160b内の患者ルーメン170内の新鮮PD流体は、理論的には患者ルーメン170の前方から使用済みPD流体ルーメン54内に流出することができるが、使用済みPD流体ルーメン54は、使用済みPD流体弁26bの閉鎖に起因して閉鎖された静止ラインであり、新鮮PD流体を患者に向かって反対方向に流れるように押し進めることを理解すべきである。フィルタ本体150を使用する全体的な冗長モジュール式フィルタセット100は、フィルタ膜112a、112bの一方が損なわれていても必要な滅菌をもたらし、両方のフィルタ膜112a、112bが無傷である場合に二重濾過をもたらすという点で有利である。
【0114】
図8及び図9は、フィルタ本体150の二重膜構成を示す。ここで、膜モジュール160bの上側区画室162内の新鮮PD流体入口166及び両方の膜モジュール160a、160bの下側区画室164内の流体通路168は完全に塞がれている(膜モジュール160bの新鮮PD流体入口166は、少なくとも流体通路172を覆うように塞がれている)。膜モジュール160b内の患者ルーメン170の後半分は、流体通路172を覆わないように塞がれる。両方の膜モジュール160a、160bの上側区画室162内の流体通路168は、塞がれずに完全に開いたままである。
【0115】
膜モジュール160a及び160bの患者ルーメン170の前面には、図9に示すブリッジコネクタ180が取り付けられている。ブリッジコネクタ180は、本明細書に記載の材料のいずれかから形成、例えば成形される。ブリッジコネクタ180は、例えば溶媒結合を介して、患者ルーメン170の内面に超音波シールされ、ヒートシールされ、及び/又は接着シールされた脚部182を含む。ブリッジコネクタ180の共通ポートは、ルーメン側コネクタ104(図1)の使用済みPD流体ポート104uを形成する。ブリッジコネクタ180は、新鮮PD流体が膜モジュール160bの患者ルーメン170から膜モジュール160aの患者ルーメン170に流れることを可能にし、その結果、全ての新鮮PDが膜モジュール160aの患者ルーメン170の後部から患者に流出する。ここでもやはり、新鮮PD流体が使用済みPD流体ポート104uから使用済みPD流体ルーメン54に流出することは理論的に可能であるが、使用済みPD流体ルーメン54は、使用済みPD流体弁26bの閉鎖に起因して閉鎖された静止ラインであり、新鮮PD流体を患者に向かって反対方向に流れるように押し進める。
【0116】
図8及び図9の二重膜構成は、膜モジュール160aの新鮮PD流体入口166を介して入る新鮮PD流体を、膜モジュール160aの上側区画室162及び上部流体通路168を通じて膜モジュール160bの上側区画室162に流入させる。新鮮PD流体は、両方の上側区画室162内で加圧され、次いで両方のフィルタ膜112a、112bを通じて同時に又は並行して濾過されて両方の膜モジュール160a、160bの下側区画室164に入る。次いで、濾過された新鮮PD流体は、流体通路172を通じて患者ルーメン170に流入し、PD治療の患者充填のために患者ルーメン170から患者に前述のようにブリッジコネクタ180を介して流れる。フィルタ本体150を使用する二重膜モジュール式フィルタセット100は、フィルタセットの流量容量を効果的に倍増するので有利である。
【0117】
図10は、フィルタ本体150の単一の膜構成を示す。ここでは、単一の膜モジュール、例えば膜モジュール160bのみが使用される。上側区画室162及び下側区画室164内の流体通路168は塞がれている。上側区画室162内の新鮮PD流体入口166の後部又は後部も塞がれているが、流体通路172を開いたままにする。下側区画室174内の患者ルーメン170は、使用済みPD流体が患者から使用済みPD流体ルーメン54に流れることを可能にするために、下側区画室を完全に開いている。
【0118】
図10の単一膜構成は、上側区画室162の新鮮PD流体入口166に入る新鮮PD流体を、流体通路172を通じて上側区画室162の流体受容部分に流入させる。次いで、新鮮PD流体は、フィルタ膜112bを通じて濾過されて下側区画室に入る。次いで、濾過された新鮮PD流体は、流体通路172を介して患者ルーメン170に流れ、PD治療の患者充填のために患者ルーメン170から患者に流れる。ここでもやはり、新鮮PD流体が患者ルーメン170から使用済みPD流体ルーメン54に流出することは理論的に可能であるが、使用済みPD流体ルーメン54は、使用済みPD流体弁26bの閉鎖に起因して閉鎖された静止ラインであり、新鮮PD流体を患者に向かって反対方向に流れるように押し進める。フィルタ本体150を使用する単一膜モジュール式フィルタセット100は、サイズ及びコストを低減するという点で有利である。
【0119】
ここで図11から図17図を参照して、本開示の第3の主要な実施形態のフィルタ本体190をより詳細に示す。図11及び図12は、フィルタ本体190を使用する第3の主要な実施形態では、モジュール式フィルタセット100がフィルタ本体110に関連するスペーサ130a~130cを排除し、膜モジュール210a、210b...210nを積層することを示している。入口カバー及び出口カバー192,200も設けられている。入口カバー192は、新鮮PD流体がフィルタ膜を通じて濾過される前にシェルにわたって分配されるための空間を提供するシェル194を含むか又は画定する。新鮮PD流体入口196にはシェル194が形成され、新鮮PD流体入口196はルーメン側コネクタ104(図1)の新鮮PD流体ポート104fまで延在する。図11又は図12では見ることができないが、シェル194は、新鮮PD流体が新鮮PD流体入口196からシェル194によって画定された開放空間に流れることを可能にする開口を画定する。
【0120】
出口カバー200は、同様に、(i)新鮮PD流体として患者ルーメン204及び移送セット側コネクタ106を通じて患者に流れるか、又は(ii)使用済みPD流体として患者ルーメン204及びルーメン側コネクタ104の使用済みPD流体ポート104u(図1)を通じて使用済みPD流体ルーメン54に流れるかのいずれかの前に、濾過された新鮮PD流体又は使用済みPD流体をシェル全体に分配するための空間をもたらすシェル202を含むか又は画定する。一実施形態では、患者ルーメン204はシェル202で形成される。図12に示すように、シェル202は、濾過された新鮮PD流体が、移送セット側コネクタ106を介して患者に向かう途中でシェル202から患者ルーメン204に流れることができるようにする開口206を画定する。使用済みPD流体は、理論的には患者のルーメン204から開口206を通じてシェル202内に流れることができるが、使用済みPD流体を患者から除去するために使用済みPD流体ポート104uに加えられる負圧は、使用済みPD流体がそうするためのインセンティブをほとんど提供しないことを理解すべきである。
【0121】
膜モジュール210a、210b...210nはそれぞれ、開口214を画定するフレーム212a又は212bを含む。図示の実施形態における開口214は、フィルタ膜112a、112bを支持する支持リブ216で部分的に満たされている。リブ216は開口214を完全には閉塞せず、したがって新鮮PD流体が入口カバー192からフィルタ膜112a、112bを横切って濾過されることを可能にする。フィルタ膜112a、112bは、開口214を覆い、リブ216によって支持されるように、例えば溶媒結合を介して、フレーム212a又は212bの内周に超音波シールされ、ヒートシールされ、及び/又は接着シールされる。所望の数の膜モジュール210a、210b...210nが互いに積層された後(単一のモジュールのみ又は2つ以上のモジュールとすることができる)、入口カバー及び出口カバー192,200が、1つ以上の膜モジュール210a、210b...210nの露出面に嵌合され、その後、モジュール及びカバーは、第3の主要な実施形態のモジュール式フィルタセット100を形成するために、例えば溶媒結合を介して、超音波シール、ヒートシール及び/又は接着シールされる。
【0122】
図13は、フレーム212aをより詳細に示し、図14は、フレーム212bをより詳細に示している。フレーム212a及びフレーム212bはそれぞれ、フィルタ膜112a、112bを支持する支持リブ216で部分的に充填された開口214を画定する。フレーム212aのための開口214は、支持リブ216がそこから延在する外周218aによって画定される。フレーム212bのための開口214は、支持リブ216がそこから延在する外周218bによって画定される。
【0123】
フレーム212aにおける外周218aは、左から右に流入する全ての新鮮PD流体がフィルタ膜112a、112bの上を通じて、その後支持リブ216の間に押し込まれるように中実である。フレーム212aは、リブ216の下に開いており、フィルタ膜112a、112bを通じて濾過された新鮮PD流体は、フレーム212aの下に存在する任意の構造、例えば、第2のフレーム212b(図15)又は出口カバー200(図17)まで延在する。
【0124】
代わりに、フレーム212bの外周218bは、入口開口220及び出口開口222を含む。入口開口220は、流入する新鮮PD流体が、(i)フィルタ膜112a、112bの上を通じて、その後支持リブ216の間を通じて押し出されることと、(ii)フィルタ膜を迂回し、入口開口220を通じて、例えば第2の下部フレーム212b(図16)まで下方に流れることとの間で分割されることを可能にする。フレーム212bは、支持リブ216の下では開いておらず、代わりに、濾過された新鮮PD流体を捕捉し、濾過された流体をフレーム212bを横切って流し、1つ以上の開口226を通じて出口開口222に流出させる底部224(図15及び図16)を含む。次いで、濾過された新鮮PD流体は、出口開口222から(i)第2のフレーム212bの1つ以上の他の出口開口222に流れ、次いで出口カバー200(図16)に流れるか、又は(ii)出口カバー200(図15)に直接流れる。
【0125】
図15は、入口カバー192を介して積層体(フレーム212aを有する)の第1の膜モジュール210aに入る新鮮PD流体が、膜モジュール210aのフィルタ膜112aを通じて濾過され(第1の濾過)、積層体の第2の膜モジュール210bに流れ(フレーム212aも有する)、第2の膜モジュール210bのフィルタ膜112bを通じて濾過され(冗長濾過)、第2のフレーム212aの出口開口222及びシェル202の開口206を介して第2の膜モジュール210bから流出して出口カバー200の患者ルーメン204に入り、移送セット側コネクタ106を介して患者に流れるように、本体190を使用する冗長モジュール式フィルタセット100が形成されることを示す。使用済みPD流体は、移送セット側コネクタ106、患者ルーメン204、及び使用済みPD流体ポート104uを介して、患者から使用済みPD流体ルーメン54(図1)に戻る。本体190を使用する全体的な冗長モジュール式フィルタセット100は、損なわれたフィルタ膜を軽減し、両方のフィルタ膜が無傷である場合に二重濾過をもたらすので、同様に有利である。
【0126】
図15の本体190を使用する冗長モジュール式フィルタセット100の代替実施形態では、積層体の第2の膜モジュール210bは、代わりにフレーム212bを含み、2回濾過された新鮮PD流体は、代わりにフレーム212bの底部224の上面に沿ってシェル202の開口206を通じて患者ルーメン204に流れる。
【0127】
図16は、代わりに、入口カバー192を通じて入る新鮮PD流体が両方の膜モジュール210a(フレーム212bを有する)、210b(フレーム212bも有する)の上側に平行に流れ、両方のフィルタ膜112a、112bを通じて同時に又は並行に濾過されるように、本体190を使用する二重膜モジュール式フィルタセット100が形成されることを示す。フレーム212bの底部224、及び開口226を通じて出口開口222に入る関連する流れは、上部膜モジュール210aに入るPD流体が両方のフィルタ膜112a、112bを通じて二度濾過されるのを防ぐことを理解すべきである。濾過されたPD流体は、フレーム212bの出口開口222から出口カバー200の患者ルーメン204に流れ、次いで患者ルーメン204及び移送セット側コネクタ106を介して患者に流れる。使用済みPD流体は、再び患者から、移送セット側コネクタ106、患者ルーメン204、及び使用済みPD流体ポート104uを介して、使用済みPD流体ルーメン54に戻る。本体190を使用する二重膜モジュール式フィルタセット100全体もまた、フィルタセットの流量能力を有利に倍増させる。
【0128】
代替的な実施形態では、膜モジュール210a、210bが同じように製造され、単一のフレームのみを有することを可能にするために、単一のフレームの入口端部に1つ以上のプラガブルホール又は開口(図示せず)を設けて、膜モジュール210a、210bが図15の冗長方式及び図16の二重フィルタ膜方式で動作することを可能にすることが考えられる。1つ以上の穴又は開口は、図15の冗長バージョンの各上部及び下部モジュールで塞がれ、その結果、全ての流入する新鮮PD流体が上部膜モジュール210aの上部に押し付けられる。図16の二重フィルタ膜バージョンでは、1つ以上の穴又は開口が、上部モジュール210aで塞がれず、下部モジュール210bで塞がれるので、流入する新鮮PD流体が上部膜モジュール210aと下部膜モジュール210bとの間で分割される。1つ以上の孔又は開口はまた、図17の単一フィルタバージョンの膜モジュール210aで塞がれる。
【0129】
図17は、本体190を使用する単一の膜モジュール式フィルタセット100が、入口カバー及び出口カバー192,200と組み合わせて単一の膜モジュール210aを使用することを示す。ここで、入口カバー192,200及び出口カバーは、単一の膜モジュール210a(フレーム212aを有する)にシールされ、それにより、入口カバー192を介して膜モジュールに入る新鮮PD流体は、入口カバー192のシェル194の下の入口区画室に流入し、膜モジュール210aのフィルタ膜112aを通じて均一に濾過されて出口カバー200のシェル202によって形成された出口区画室に入り、フレーム212aの出口開口222及びシェル202の開口206を介して出口区画室から流出して出口カバー200の患者ルーメン204に流入する。使用済みPD流体は、再び患者から、移送セット側コネクタ106、患者ルーメン204、及び使用済みPD流体ポート104uを介して、使用済みPD流体ルーメン54(図1)に戻る。本体190を使用する単一膜モジュール式フィルタセット100全体も同様に、サイズ及びコストを削減する。
【0130】
PD流体ポンプ24から負圧下で上記の各フィルタ本体実施形態における患者の移送部58を通して除去された使用済みPD流体は、移送セット側コネクタ106を介してモジュール式フィルタセット100に入る。次いで、使用済みPD流体は、対応する患者ルーメン134,170,204を介して提供された本体110,150又は190を通じて流れ、使用済みPD流体ポート104u及び使用済みPD流体ルーメン54を通じて流れ、PD機械又はサイクラー20に戻る。PD機械又はサイクラー20は、PD流体ポンプ24による正圧下で使用済みPD流体を圧送して、ドレンライン60を介して排出する。使用済みPD流体の大部分は、本体110,150又は190内のフィルタ膜112a、112bの下側に接触しない。したがって、フィルタ膜112a、112bは、モジュール式フィルタセット100で廃棄される前の処理の複数の充填の過程にわたって存続可能なままである。
【0131】
本明細書に記載の現在好ましい実施形態に対する様々な変形及び変更が当業者にとって明らかであることを理解すべきである。したがって、そのような変更及び修正のいずれか又は全てが添付の特許請求の範囲によって網羅され得ることが意図されている。例えば、デュアルルーメン患者ライン50が示されているが、単一ルーメン患者ラインが代わりに設けられてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】