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特表2024-546685使用済みタイヤからのブタジエン生成
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  • 特表-使用済みタイヤからのブタジエン生成 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】使用済みタイヤからのブタジエン生成
(51)【国際特許分類】
   C12P 5/02 20060101AFI20241219BHJP
   C08L 17/00 20060101ALI20241219BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C12P5/02
C08L17/00
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534014
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-29
(86)【国際出願番号】 US2022081188
(87)【国際公開番号】W WO2023108075
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,220
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/329,255
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,ロバート,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーツェル,マイケル,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ニアウラ,ウィリアム,エス.
(72)【発明者】
【氏名】スメイル,マーク,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン,テレンス,イー.
(72)【発明者】
【氏名】クヘル,三世,ジェームズ,ジェイ.
【テーマコード(参考)】
3D131
4B064
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA11
3D131BC09
4B064AB04
4B064CA02
4B064CD30
4B064DA16
4J002AC021
4J002AC031
4J002AC131
4J002FD010
4J002FD140
4J002GN01
(57)【要約】
【解決手段】 (a)使用済みタイヤ供給原料を提供することと、(b)使用済みタイヤ供給原料をガス化して、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含むガス流を生成することと、(c)ガス流内の一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素の少なくとも一部を生合成的に変換して、第1の生成物流を生成することと、(d)第1の生成物流の少なくとも一部をアセトアルデヒド及び水素を含む第2の生成物流に変換することと、(e)第2の生成物流内の水素の一部を、ガス流内の一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素の少なくとも一部を生合成的に変換する前述のステップに送ることと、(f)アセトアルデヒドの少なくとも一部をブタジエンモノマーに変換することと、を含む、プロセス。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスであって、
(a)使用済みタイヤ供給原料を提供することと、
(b)前記使用済みタイヤ供給原料をガス化して、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含むガス流を生成することと、
(c)前記ガス流内の前記一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素の少なくとも一部を生合成的に変換して、第1の生成物流を生成することと、
(d)前記第1の生成物流の少なくとも一部をアセトアルデヒド及び水素を含む第2の生成物流に変換することと、
(e)前記第2の生成物流内の前記水素の一部を、前記ガス流内の前記一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素の少なくとも一部を生合成的に変換する前記ステップに送ることと、
(f)アセトアルデヒドの少なくとも一部をブタジエンモノマーに変換することと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記第1の生成物流は、エタノールを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ブタジエンモノマーを重合してポリブタジエン又はポリブタジエンコポリマーにすることを更に含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリブタジエン又はポリブタジエンコポリマーを用いてタイヤ構成要素を製造することを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ガス化する前記ステップは、使用済みタイヤ供給原料と、使用済みタイヤ供給原料以外の炭素質材料を含む共供給物とをガス化することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
プロセスであって、
(a)使用済みタイヤ供給原料を提供することと、
(b)任意で、使用済みタイヤ供給原料以外の炭素質材料を含む共供給物を提供することと、
(c)前記使用済みタイヤ供給原料及び任意の共供給物をガス化して、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含むガス流を生成することと、
(d)前記ガス流を水性媒体に導入することであって、前記一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素が第1の生成物流に変換される、導入することと、
(e)前記第1の生成物流をアセトアルデヒド及び水素を含む第2の生成物流に変換することと、
(f)前記第2の生成物流から前記水素を分離し、それによって水素流を形成することと、
(g)前記アセトアルデヒドをブタジエンを含む最終生成物流に変換することと、
を含むプロセス。
【請求項7】
前記第1の生成物流は、エタノールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記エタノールは、前記第2の生成物流に変換される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の生成物流から前記エタノールを分離することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記最終生成物流から前記ブタジエンを分離することを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
ガス化する前記ステップは、プラズマが誘発する酸化によって行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ガス流は、前記ガス流を前記水性媒体に導入する前に中和される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ガス流は、前記ガス流を前記水性媒体に導入する前に冷却される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ガス流を前記水性媒体に導入する前記ステップは、前記一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を前記第1の生成物流に変換するための1つ以上の微生物を含有するバイオリアクタ内で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第1の生成物流から前記エタノールを分離する前記ステップは、前記第1の生成物流から塔頂流として前記エタノールを蒸留することを含み、蒸留する前記ステップからの塔底流を再循環流に送ることを更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記再循環流を前記バイオリアクタに導入することを更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記再循環流を前記ガス流を冷却する前記ステップに導入することを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記再循環流を前記ガス流を中和する前記ステップに導入することを更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第1の生成物流を前記第2の生成物流に変換して前記第1の生成物流から微生物を除去する前記ステップの前に、前記第1の生成物流を濾過することを更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記水素流は、前記水性媒体に導入される、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
第2の水素流を前記水性媒体に導入することを更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記エタノールを第2の生成物流に変換する前記ステップは、アセトアルデヒドリアクタ内で行われ、外部供給源から第2のエタノール流を前記アセトアルデヒドリアクタに導入することを更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記エタノールをアセトアルデヒドに変換する前記ステップは、90モルパーセント超の前記エタノールをアセトアルデヒドに変換し、前記アセトアルデヒドをブタジエンに変換する前記ステップの前に、エタノールを前記第2の生成物流に導入することを更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ブタジエンをポリブタジエン又はブタジエンコポリマーに変換することを更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記ポリブタジエン又はブタジエンコポリマーからタイヤ材料を生成することを更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
ガス化する前記ステップは、前記タイヤ供給原料及び共供給物をガス化することを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記共供給物は、バイオマスを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記バイオマスは、残渣を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記残渣は、グアユール植物の残渣である、請求項1~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
ガス化する前記ステップの前に、前記タイヤ供給原料及び共供給物を混合して混合物を形成する、請求項1~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
使用済みタイヤ供給原料と共供給物との前記混合物は、前記混合物の全重量に基づいて25重量%未満の金属を含むことを特徴とする、請求項1~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
使用済みタイヤ供給原料と共供給物との前記混合物が、前記混合物の全重量に基づいて5重量%未満の繊維糸又はコードを含むことを特徴とする、請求項1~31のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
使用済みタイヤ供給原料と共供給物との前記混合物は、前記混合物の全重量に基づいて30重量%未満の無機充填剤を含むことを特徴とする、請求項1~32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記混合物は、ASTMD 698-07による640kg/m超の圧縮密度を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記混合物は、約1~約75重量%の共供給物を含み、残部は使用済みタイヤを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載のプロセスによって調製されたポリブタジエン又はブタジエンコポリマーを含む加硫性組成物。
【請求項37】
充填剤、油、及びゴム用硬化剤を更に含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項38】
前記充填剤は、シリカを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項39】
前記充填剤は、もみ殻灰由来のシリカを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項40】
前記充填剤は、リサイクルカーボンブラックを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項41】
前記油は、バイオ油又は植物系油を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項42】
天然ワックスを更に含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項43】
前記加硫性組成物は、前記加硫性組成物の総重量に基づいて、約30~約65重量%のゴムを含み、前記ゴムのうちの10重量%超は、先行請求項のいずれか一項によって調製されたポリブタジエン又はポリブタジエンコポリマーである、請求項1~42のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項44】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり約30~約150重量部の充填剤を含み、前記充填剤は、前記充填剤の約5~約99重量%の重量比でカーボンブラック及びシリカを含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項45】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり約1~約70重量部の油を含み、前記油のうちの少なくとも1重量%は、バイオ油又は植物油である、請求項1~44のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項46】
ゴム100重量部当たり約1~約20重量部のワックスを含み、前記ワックスのうちの少なくとも1重量%は、天然ワックスである、請求項1~45のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項47】
請求項1~46のいずれか一項に記載の加硫性組成物から調製されたタイヤ構成要素。
【請求項48】
請求項1~47のいずれか一項に記載のタイヤ構成要素を使用することによって製造されるタイヤ。
【請求項49】
40重量%超の持続可能な材料を含む、請求項1~48のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月8日に出願された米国特許仮出願第63/287,220号及び2022年4月8日に出願された米国特許仮出願第63/329,255号に対して利益を主張し、これらが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、使用済みタイヤをブタジエンモノマーに変換するプロセスに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブタジエンモノマーは、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、及びポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)などのポリブタジエン及びブタジエンコポリマーに重合される。これらのポリマーは多くの用途を有するが、タイヤの製造においてかなり使用されている。一方、使用済みタイヤは容易にリサイクルされず、埋め立て、又は燃料価値のために焼却されてきた。タイヤを熱分解して合成ガスにし、次いで合成ガスを有用な材料に変換する方法が提案されてきた。これらの方法は産業上の利用可能性を欠いており、したがって、この一般的な経路に対する改善が望まれている。
【0004】
本発明の1つ以上の実施形態は、(a)使用済みタイヤ供給原料を提供することと、(b)使用済みタイヤ供給原料をガス化して、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含むガス流を生成することと、(c)ガス流内の一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素の少なくとも一部を生合成的に変換して、第1の生成物流を生成することと、(d)第1の生成物流の少なくとも一部をアセトアルデヒド及び水素を含む第2の生成物流に変換することと、(e)第2の生成物流内の水素の一部を、ガス流内の一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素の少なくとも一部を生合成的に変換する前述のステップに送ることと、(f)アセトアルデヒドの少なくとも一部をブタジエンモノマーに変換することと、を含む、プロセスを提供する。
【0005】
本発明の他の実施形態は、(a)使用済みタイヤ供給原料を提供することと、(b)任意で、使用済みタイヤ供給原料以外の炭素質材料を含む共供給物を提供することと、(c)使用済みタイヤ供給原料及び任意の共供給物をガス化して、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含むガス流を生成することと、(d)ガス流を水性媒体に導入することであって、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素が第1の生成物流に変換される、導入することと、(e)第1の生成物流をアセトアルデヒド及び水素を含む第2の生成物流に変換することと、(f)第2の生成物流から水素を分離し、それによって水素流を形成することと、(g)アセトアルデヒドをブタジエンを含む最終生成物流に変換することと、を含む、プロセスを提供する。
【0006】
本発明の更に他の実施形態は、上記プロセスのいずれかによって調製されたポリブタジエン又はブタジエンコポリマーを含む加硫性組成物を提供する。
【0007】
本発明の更に他の実施形態は、上記加硫性組成物によって調製されたタイヤ構成要素を提供する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、上記タイヤ構成要素を使用することによって製造されたタイヤを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態を実施するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、少なくとも部分的に、ブタジエン及び任意でアセトアルデヒドの生成において使用済みタイヤを消費するプロセスの発見に基づく。1つ以上の実施形態によれば、使用済みタイヤは、熱分解されてガス流を形成し、次いでこれがエタノールに生合成的に変換される。次いで、エタノールはアセトアルデヒドに変換され、この反応は、エタノールの上流バイオ生産において使用される水素副生成物流を生成する。アセトアルデヒドは、エタノールと反応させることによって精製及び/又はブタジエンモノマーに変換することができる。全体的なプロセス効率及び経済性は、エタノールの生合成中に利用可能な水素の量に依存することが発見された。したがって、炭素副生成物が存在しない水素の下流生成を提供する本発明は、全体的な炭素効率を提供する。これは、使用済みタイヤが主要な供給原料であり、使用済みタイヤは、バイオマスなどの他の供給原料よりも高い炭素対水素のモル比を含むため、本発明において特に有利である。1つ以上の実施形態において、ブタジエンは重合されて、タイヤ構成要素に加工される加硫性組成物の調製において使用されるポリブタジエン又はブタジエンコポリマーを形成する。
【0011】
プロセスシステム及び概要
本発明の実施形態は、使用済みタイヤをブタジエン及び任意でアセトアルデヒドに変換するためのシステム20を示す図を参照して説明することができる。システム20は、熱分解ユニット31と、それと直列に続くバイオリアクタ51とを含む。熱分解ユニット31は、ガス流導管33を介してバイオリアクタ51と直接又は間接的に流体連通している。バイオリアクタ51の下流にあるアセトアルデヒド合成ユニット71(アセトアルデヒド生成ユニット71とも称され得る)は、エタノール生成物導管53を介してバイオリアクタ51と直接又は間接的に流体連通している。ブタジエン生成ユニット91とも呼ばれるブタジエン合成ユニット91は、アセトアルデヒド合成ユニット71の下流にあり、アセトアルデヒド生成物導管73を介してアセトアルデヒド合成ユニット71と直接又は間接的に流体連通している。アセトアルデヒド合成ユニット71はまた、バイオリアクタ51と流体連通している水素副生成物導管75と直接又は間接的に流体連通している。
【0012】
本発明の実施形態によれば、熱分解ユニット31は、タイヤ供給原料、及び任意で共供給物を受け取り、それを熱処理して、一酸化炭素(CO)、水素ガス(H)、及び任意で二酸化炭素(CO)を含むガス流を生成するように適合されている。バイオリアクタ51は、一酸化炭素、水素ガス、及び任意で二酸化炭素をエタノールに変換するように適合された1つ又は複数の微生物培養物を含む。エタノールはアセトアルデヒド合成ユニット71に移送され、そこでエタノールはアセトアルデヒドに変換され、水素が副生する。アセトアルデヒドは、ブタジエン合成ユニット91に移送することができ、ここでアセトアルデヒドはブタジエンに変換される。アセトアルデヒド合成ユニット71からの副生成物水素は、導管75を介して、又はブタジエン合成ユニット91と直接若しくは間接的に流体連通している導管99を介して、バイオリアクタ51に移送することができる。
【0013】
1つ以上の実施形態において、熱分解ユニット31を出るガス流は、バイオリアクタ51に導入される前に処理される。例えば、図に示すように、ガス生成物流を熱交換器41内で冷却することができる。1つ以上の実施形態において、熱交換器は、以下でより詳細に説明される蒸留塔61などの1つ以上の下流のプロセス又はユニットから冷却水を受け取ることができる。また、ガス流は、バイオリアクタ51に導入される前に、1つ以上の成分を除去するために処理され得る。例えば、図に示すように、ガス流をスクラバ45で処理することができる。
【0014】
いずれにしても、一酸化炭素、水素、及び任意で二酸化炭素は、バイオリアクタ51内でエタノールに変換される。図に示すように、バイオリアクタ51は、水素ガス及び水の外部からの入力を含むことができる。1つ以上の実施形態では、バイオリアクタ51内で生成されたエタノールは、導管53を介して粗生成物流内のバイオリアクタ51から移送される(例えば、エタノールは水性媒体に溶解される)。1つ以上の実施形態において、粗エタノール生成物流は、例えば、濾過ユニット55を使用することによって、バイオリアクタ51又はその下流を出る際に濾過され得る。当業者が理解するように、下流プロセスへの微生物の移送を防止するために、バイオリアクタを出る生成物流を濾過することが一般的である。当業者はまた、生成物流から濾過された微生物並びに微生物のための担体が、バイオリアクタに戻され得ることを理解する。図に示すように、微生物及び/又は微生物の担体は、微生物再循環導管57を通してバイオリアクタ51に戻すことができる。当業者はまた、所望の微生物培養物をバイオリアクタ51に導入する(すなわち接種する)ためのサブシステムが存在し得ることを理解する。これらのサブシステムは、例えば、バイオリアクタ51と流体連通し、微生物を培養するように適合されたユニット(図示せず)を含んでもよい。
【0015】
粗エタノール生成物流をアセトアルデヒド合成ユニット71に導入する前に、粗エタノール流を濃縮するか、他の方法で精製することができる。例えば、エタノールは、蒸留ユニット61内で粗エタノール生成物流から分離することができ、ここで、濃縮エタノールを含む塔頂(すなわち、留出物)は、導管65を介してアセトアルデヒド合成ユニット71に、及び/又は導管67を介してブタジエン生成ユニット91に送られ、蒸留からの塔底は、例えば、水性塔底導管63を介してバイオリアクタ51に再循環して戻すことができる。
【0016】
エタノールは、アセトアルデヒド合成ユニット71又はアセトアルデヒドリアクタ71と呼ぶことができるアセトアルデヒド生成ユニット71内でアセトアルデヒドに変換される。アセトアルデヒド合成は、アセトアルデヒド及び水素副生成物を含む粗生成物流を生成する。1つ以上の実施形態において、粗アセトアルデヒド生成物流は、導管73を通してブタジエン合成ユニット91に直接又は間接的に移送することができる。他の実施形態において、粗アセトアルデヒドは、導管79を介して分離ユニット81(例えば、精製ユニット81とも呼ばれ得る蒸留カラム)に直接又は間接的に移送され、そこで副生成物水素がアセトアルデヒドから分離される。副生成物水素は、導管75を介してバイオリアクタ51に直接又は間接的に戻され得る。分離ユニット81からのアセトアルデヒド流は、導管83を介して市場供給源に、又は導管85を介してブタジエンリアクタ91に送ることができる。
【0017】
アセトアルデヒドは、合成ユニット91内でブタジエンに変換されて粗ブタジエン生成物流を生成し、これは、導管93を介して直接又は間接的に合成ユニット91を出ることができる。1つ以上の実施形態において、ブタジエンは、蒸留塔95内で粗ブタジエン流から分離されて、導管97を介してシステムから除去することができる精製ブタジエン流を生成する。水素を含む粗アセトアルデヒド流がブタジエン生成ユニット91に供給される実施形態では、精製ユニット95(例えば、蒸留ユニット95)は、導管99を介してバイオリアクタ51に戻すことができる副生成物水素流を生成する。
【0018】
また図に示すように、アセトアルデヒド合成ユニット71及び/又はブタジエン生成ユニット91は、導管77を介してエタノールの外部供給源で補充することができる。この外部供給源は、例えば、トウモロコシなどの農作物の発酵由来であり得る。別の実施形態において、この外部供給源は、草、木、藻類、又は他の植物から産生されるセルロースエタノール由来であり得る。
【0019】
本発明のシステム及びプロセスは、各ユニットがその上流及び/又は下流の他のユニットと直接又は間接的に流体連通している単一の統合システムとして示されているが、当業者であれば、あまり直接接続されていないが依然として統合されているシステム及び方法を容易に想定することができる。例えば、ガス化ユニット31及びバイオリアクタ51が第1の設備に配置され、アセトアルデヒド生成ユニット71及びブタジエン生成ユニット91が第2の設備に配置されるシステムが存在してもよい。第1の設備(例えば、ガス化31及びバイオリアクタ51)は、例えば、エタノールを第1の設備から第2の設備に輸送することができるパイプラインを介して、第2の設備(例えば、アセトアルデヒドリアクタ71及びブタジエンリアクタ91)に間接的に接続することができる。あるいは、エタノールは、トラック又は鉄道車両を含む他の輸送形態を介して第1の設備から第2の設備に輸送することができる。同様に、アセトアルデヒドリアクタ71で生成された水素は、パイプライン、タンカー、トラックによって、又は局所的な水素源との交換を通して、バイオリアクタ51に(すなわち、第2の設備から第1の設備に)戻すことができる。本明細書では、特に明記しない限り、間接的な流体連通は、様々なユニット間のこれらの接続を包含するものと理解される。
【0020】
タイヤ及び炭素質材料供給原料の特性
1つ以上の実施形態において、熱分解ユニット31に供給される供給原料は、使用済みタイヤからのタイヤ供給原料を含み、これは、使用済みタイヤ供給原料とも称され得る。当業者が理解するように、タイヤ供給原料は、加硫ポリマー、カーボンブラック充填剤、シリカ、樹脂、油、繊維糸、及び金属を含んでもよい。加硫ポリマーは、天然ゴム及び/又はジエンポリマー及びコポリマーを含む1つ以上の合成エラストマーの硫黄架橋残基を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、使用済みタイヤ供給原料は、使用済みタイヤの1つ以上の成分が除去された、細断された、又は他の方法で粉砕されたタイヤを含んでもよい。例えば、タイヤ供給原料は、当該技術分野において既知の方法(例えば、磁気分離)によって金属を除去するように処理されてもよい。これに代えて、又は組み合わせて、使用済みタイヤ供給原料は、繊維糸又はコードなどの繊維強化材を除去するために任意で処理されてもよく、当業者は、多くのタイヤ構成要素内の加硫ゴムと併せて見られることが多いことを理解している。これに代えて、又は組み合わせて、使用済みタイヤ供給原料は、シリカ充填剤などの無機材料を除去するために任意で処理されてもよく、当業者は、使用済みタイヤ構成要素で見られることが多いことを理解している。いずれにしても、タイヤ供給原料は、タイヤ断片、タイヤチップ、又は粉砕若しくはクラムゴムに加工され、熱分解ユニットに供給され得る。
【0021】
1つ以上の実施形態において、タイヤ供給原料は、金属を除去するためのタイヤ供給原料の前処理から生じ得る比較的低量の金属によって特徴付けられる。1つ以上の実施形態において、タイヤ供給原料は、本発明による熱分解に供給される供給原料の全重量に基づいて、25重量%未満、他の実施形態において15重量%未満、他の実施形態において1重量%未満の金属を含む。
【0022】
1つ以上の実施形態では、タイヤ供給原料は、繊維糸又はコードを除去するためのタイヤ供給原料の前処理から生じ得る、比較的少量の繊維糸又はコードによって特徴付けられる。1つ以上の実施形態形態では、タイヤ供給原料は、本発明による熱分解に供給される供給原料の全重量に基づいて、5重量%未満、他の実施形態では4重量%未満、他の実施形態では3重量%未満、他の実施形態では2重量%未満、他の実施形態では3重量%未満の繊維糸又はコードを含む。
【0023】
1つ以上の実施形態において、タイヤ供給原料は、無機充填剤を除去するためのタイヤ供給原料の前処理から生じ得る、比較的少量の無機充填剤(例えば、シリカ)によって特徴付けられる。1つ以上の実施形態において、タイヤ供給原料は、本発明による熱分解に供給される供給原料の全重量に基づいて、30重量%未満、他の実施形態において20重量%未満、他の実施形態において10重量%未満、及び他の実施形態において5重量%未満の無機充填剤を含む。
【0024】
1つ以上の実施形態において、使用済みタイヤ供給原料は、乗用車タイヤからのタイヤ残留物を含む。他の実施形態において、使用済みタイヤ供給原料は、トラック及びバスタイヤ、オフロード車両タイヤ、農業用タイヤ、及びレース用タイヤなどであるがこれらに限定されない非乗用車タイヤからのタイヤ残留物を含む。
【0025】
1つ以上の実施形態において、使用済みタイヤは、640kg/m超、他の実施形態において720kg/m超、他の実施形態において770kg/m超の圧縮密度によって特徴付けられてもよく、ここで密度はASTM D 698-07によって決定される。
【0026】
上述したように、熱分解ユニットへの供給原料は、タイヤ供給原料及び任意で補完的供給原料を含む。1つ以上の実施形態において、共供給物(co-feed)とも称され得る補完的供給原料は、タイヤ供給原料以外の炭素質材料を含む。炭素質材料は、固体、液体、気体、又はプラズマ状態のいずれであっても、任意の炭素材料を指す。炭素質材料の非限定的な例としては、炭素質液体生成物、産業用液体リサイクル、自治体からの固形廃棄物(MSW又はmsw)、都市廃棄物、農業材料、林業材料、木材廃棄物、建築材料、植物性材料、産業廃棄物、発酵廃棄物、石油化学副産物、アルコール生産副産物、石炭、プラスチック、廃プラスチック、コークス炉タール、リグニン、黒液、ポリマー、廃棄ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PETA)、ポリスチレン(PS)、下水汚泥、動物性廃棄物、作物残渣、エネルギー作物、森林処理残渣、木材処理残渣、家畜廃棄物、家禽廃棄物、食物処理残渣、エタノール副産物、使用済み穀物、使用済み微生物、自治体からの廃棄物、建築廃棄物、解体廃棄物、生物医学的廃棄物、有害廃棄物、又はそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の実施形態において、炭素質材料はバイオマスを含む。1つ以上の実施形態において、バイオマスは、サトウキビ、ソルガム、及びグアユール植物の残渣を含むがこれらに限定されない残渣である。
【0027】
更なる実施形態では、グアユール残渣は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2022/0356273(A1)号に記載されているような、グアユール植物からゴム及び樹脂を抽出するプロセスの結果として生成される。グアユール残渣の脱溶媒方法は、米国特許第10,132,563号に記載されており、これも参照により本明細書に組み込まれる。1つ以上の実施形態において、グアユール残渣は、(乾燥残渣の総重量に基づいて)1重量%以下の有機溶媒を含有する。特定の実施形態において、乾燥残渣は、(乾燥残渣の総重量に基づいて)0.5重量%以下の有機溶媒を含有する。1つ以上の実施形態において、乾燥残渣は、ある量の水及びより高沸点のテルペンを含有し得る。特定の実施形態において、乾燥残渣中の水及び高沸点テルペンの総量は、有機溶媒の含有量よりも高くてもよい。特定の実施形態では、乾燥残渣中の樹脂含量(高沸点テルペンを含む)は、一般に許容可能であり、いくつかの例では実際に好ましい。
【0028】
1つ以上の実施形態において、共供給物(例えば、バイオマス又は自治体からの廃棄物)は、600kg/m未満、他の実施形態において580kg/m未満、及び他の実施形態において560kg/m未満の圧縮密度によって特徴付けられてもよく、密度はASTM D 698-07によって決定される。
【0029】
供給原料は、共供給物(例えば、バイオマス又は自治体からの廃棄物)の量によって特徴付けられてもよい。1つ以上の実施形態では、供給原料は、約0~約95重量%、他の実施形態では約1~約75重量%、他の実施形態では約2~約55重量%の共供給物を含み、残部は使用済みタイヤを含む。1つ以上の実施形態では、供給原料は、95重量%未満、他の実施形態では80重量%未満、他の実施形態では70重量%未満の共供給物を含む。これらの実施形態又は他の実施形態では、供給原料は、10重量%超、他の実施形態では20重量%超、他の実施形態では30重量%超、他の実施形態では40重量%超、他の実施形態では50重量%超、他の実施形態では70重量%超の使用済みタイヤを含み、残部は補完的供給原料を含む。
【0030】
タイヤ及び任意でバイオマスの熱分解
本発明の実施形態によれば、供給原料(タイヤ供給原料及び任意で共供給物を含む)は、当技術分野で一般に知られている技術を使用することによって、水素、一酸化炭素、及び任意で二酸化炭素を含むガス流に熱分解される。当業者が理解するように、これらのプロセスはガス化プロセスを含むことができ、これらのプロセスは、結果として生じるガス流の化学的性質を制御するように調整することができることも知られている。例えば、燃焼度は、熱分解中に存在する酸素の量を制御することによって制御することができる。1つ以上の実施形態において、熱分解のステップは、実質的に不活性な環境で行われる。
【0031】
熱分解ステップのために使用され得るプロセスは、米国特許出願公開第20210207037号、同第20190295734号、同第20190249089号、同第20180273415号、同第20170009162号、同第20170002271号、同第20160107913号、同第20160068773号、同第20160024404号、同第20140182205号、同第20140157667号、及び同第20140100294号に開示されるような熱分解反応を含んでもよく、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
供給原料がタイヤ供給原料及び共供給物の両方を含む1つ以上の実施形態において、タイヤ供給原料及び共供給物は、同じ熱分解ユニットに同時に導入することができる。例えば、タイヤ供給原料及び共供給物を所望の比で予備混合して、熱分解ユニットに供給される供給原料を形成することができる。あるいは、タイヤ供給原料及び共供給物の別々の流れを別々にかつ個々に熱分解ユニットに所望の速度で供給することができる。更に他の実施形態において、2つの供給原料(すなわち、タイヤ供給原料及び共供給物)は、同じ熱分解ユニット内で連続的に処理することができる。更に他の実施形態では、2つの供給原料(すなわち、タイヤ供給原料及び共供給物)を、並行して動作する別個の熱分解ユニット内で処理することができ、次いで、それぞれのユニットによって生成されたガス流を組み合わせて、ガス成分の所望の比を達成することができる。
【0033】
ガス生成物流の特性
上述したように、熱分解ユニット31によって生成されたガス生成物流は、一酸化炭素、水素、及び任意に二酸化炭素を含む。1つ以上の実施形態では、ガス生成物流は、約5~約50重量パーセント、他の実施形態では約7~約25重量パーセント、他の実施形態では約8~約15重量パーセントの二酸化炭素を含む。1つ以上の実施形態では、ガス生成物流は、約10~約85重量パーセント、他の実施形態では約20~約65重量パーセント、他の実施形態では約25~約45重量パーセントの水素を含む。1つ以上の実施形態では、ガス生成物流は、約20~約85重量パーセント、他の実施形態では約30~約75重量パーセント、他の実施形態では約40~約60重量パーセントの一酸化炭素を含む。1つ以上の実施形態では、熱分解によって生成されるガス生成物流は、ガス生成物流の総重量に基づいて、約40~約80重量%、他の実施形態では約45~約75重量%、他の実施形態では約50~約70重量%の炭素(すなわち、炭素系化合物内の炭素)を含む。
【0034】
ガス流の調整
1つ以上の実施形態において、ガス流は、バイオリアクタ21に提供する前に調整(すなわち、処理)される。1つ以上の実施形態において、導管33によって運ばれる熱分解からのガス生成物流は、加圧されてもよい。1つ以上の実施形態において、ガス流の加圧は、バイオリアクタ内の対抗力に打ち勝つのに十分な圧力を達成する。当業者が理解するように、これは、バイオリアクタを通るガスの流れを可能にし、ガス流内の不活性ガス(例えば窒素)がリアクタのヘッドスペースに入ることを可能にする。1つ以上の実施形態において、ガス流は、約5~約20バールの圧力に加圧される。
【0035】
また、ガス流は熱交換器41で冷却することができる。当業者であれば理解するように、熱交換器41は水冷ユニットを含んでもよい。1つ以上の実施形態において、ガス流は、そうでなければバイオリアクタ内の微生物培養物に有害な影響を及ぼすであろう温度よりも低い温度に冷却される。1つ以上の実施形態では、ガス流は、バイオリアクタへの送達前に約25~約45℃の温度に冷却される。
【0036】
更に、ガス流は、バイオリアクタに導入される前にスクラバ45で処理することができる。1つ以上の実施形態において、これは、硫化水素(例えば、酸化鉄)を除去するための触媒の使用を含み得る。このガス流はまた、ハロゲン化物を除去するために処理され得る(例えば、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウムによる処理)。
【0037】
バイオリアクタ
上述したように、バイオリアクタ51は、ガス生成物流の1つ以上の成分を消費してエタノールを生成する1つ以上の微生物を含む。1つ以上の実施形態では、バイオリアクタ51は、単一の反応容器を含んでもよく、又は補完的に動作し得る複数(すなわち、2つ以上)の反応容器を含んでもよい。例えば、2つ以上の反応容器は、所望の反応(すなわち、ガス生成物流のエタノールへの生物変換)を促進するために、並列又は直列で動作してもよい。当業者は、一般に、微生物を持続させ、所望の反応を促進するためにバイオリアクタで維持されるべき適切な条件を理解する。1つ以上の実施形態において、水は、反応物質であり、かつバイオリアクタ内の反応媒体として機能する。
【0038】
1つ以上の実施形態において、バイオリアクタ内のリアクタ培地は、約30~約45℃の温度で維持される。これら又は他の実施形態において、バイオリアクタ内の反応培地は、約4~約7のpHで維持される。
【0039】
1つ以上の実施形態では、バイオリアクタは、ガス流をバイオリアクタに導入するための少なくとも1つの入口と、生成物流をバイオリアクタから除去するための少なくとも1つの出口とを含む。1つ以上の実施形態において、バイオリアクタは、ガス副生成物流のための出口を含む。1つ以上の実施形態では、バイオリアクタは、入口及び出口を除いて閉鎖系である。他の実施形態では、バイオリアクタは、開放系である。1つ以上の実施形態において、バイオリアクタは、連続撹拌タンクリアクタ、ガスリフトリアクタ、ループリアクタ、及び流動床リアクタから選択される。1つ以上の実施形態では、バイオリアクタは、500L超、他の実施形態では1000L超、他の実施形態では1500L超の容量を有する。
【0040】
微生物
ガス生成物流からエタノールを合成することができるか、又は合成するように適合された微生物又は遺伝的に改変された微生物は、当技術分野において一般に公知である。例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)又はラクトコッカス(Lactococcus)株、並びに特定のクロストリジウム(Clostridium)株は、炭素含有ガス状基質からエタノールを生成することが知られている。当該技術分野には、米国特許出願公開第20210284592号、同第20200255362号、同第20200156973号、同第20180264375号、同第20170226538号、同第20170225098号、同第20170183690号、同第20160160223号、同第20160017276号、同第20160010116号、同第20150376654号、同第20150353965号、同第20150337341号、同第20150299737号、同第20150152441号、同第20150087037号、同第20140377826号、同第20130316424号、同第20130252230号、同第20130230894号、及び同第20130224839号に示されるような他の有用な例が豊富であり、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
バイオリアクタからのエタノール含有生成物流
上述したように、エタノールは、エタノール生成物流と称され得る水性生成物流内でバイオリアクタ51を出る。この水性生成物流は、生成物流がバイオリアクタを出るときに濾過することができる。操作中、生成物流がバイオリアクタを出るときの生成物流の濾過は、微生物を固定化するために使用される任意の培地の移送を防止することができ、それによって、バイオリアクタから下流プロセスへの微生物の移送を防止するのに役立つ。エタノール含有生成物流がバイオリアクタを出るときにその生成物流を濾過することに加えて、又はその代わりに、生成物流は、バイオリアクタの下流に配置された1つ以上の中間ユニットで濾過及び/又は滅菌することができる。濾過ユニットに加えて、又は濾過ユニットの代わりに、生成物流は、例えば遠心分離ユニット内で分離を受けてもよい。又は、他の実施形態では、濾過又は遠心分離に加えて、又はその代わりに、清澄化ユニット(例えば、沈降タンク)を使用して、生成物流を更に処理することができる。濾過、遠心分離、及び/又は清澄化の代わりに、又はそれに加えて、生成物流を滅菌してもよい。例えば、滅菌ユニットは、生成物流を処理するために、UV滅菌、熱、又はガンマ線を利用してもよい。
【0042】
エタノール濃縮/分離
上述したように、ユニット55での任意の処理に続いて、エタノール含有生成物流を処理して、エタノールを水性流の他の成分から分離することができる。これは、分離ユニット61内でエタノール含有流を蒸留することを含むことができる。これらの実施形態によれば、エタノールは、80重量%超、他の実施形態では90重量%超、他の実施形態では93重量%超のエタノール濃度によって特徴付けられ得る塔頂流として収集することができる。これら又は他の実施形態では、塔頂流(すなわち、エタノール含有流)は、10重量%未満、他の実施形態では8重量%未満、及び他の実施形態では1重量%未満の水を含んでもよい。
【0043】
1つ以上の実施形態において、塔頂エタノール流は、エタノールをアセトアルデヒド生成ユニット71に導入する前に、エタノール流を精製するために任意で更に処理することができる。例えば、エタノール流は、モレキュラーシーブなどの乾燥材料を含む1つ以上の水吸着床でエタノール流を処理することによって脱水又は乾燥することができる。
【0044】
アセトアルデヒドの生成
上に示したように、エタノールは生成ユニット71内でアセトアルデヒドに変換される。1つ以上の実施形態では、バイオリアクタ51で生成されたエタノールの実質的に全て(すなわち、エタノール含有生成物流内のエタノールの実質的に全て)が、アセトアルデヒド生成ユニット71に導入される。これら又は他の実施形態において、本発明のプロセスの外部から得られたエタノール(例えば、農作物の発酵からのエタノール)もまた、アセトアルデヒドの生成を補うためにアセトアルデヒド生成ユニット71に導入される。1つ以上の実施形態において、バイオリアクタ51からアセトアルデヒド生成ユニット71に供給されるエタノールと、他の供給源からアセトアルデヒド生成ユニット71に供給されるエタノール(例えば、農作物の発酵からのエタノール)との重量比は、約1:0~約1:10、他の実施形態において約1:0.3~約1:7、他の実施形態において約1:1~約1:5である。
【0045】
当業者が理解するように、アセトアルデヒドの合成は、水素副生成物流を得るためのエタノールの部分脱水素化を含む。上述したように、水素はバイオリアクタ51に送ることができ、これはプロセスの水素欠乏を有利に相殺することができる。当業者は、追加のエタノールがアセトアルデヒドに変換される場合、バイオリアクタプロセスの外側(すなわち、バイオリアクタ51の外側)の供給源からのエタノールの導入が、バイオリアクタ51内の水素欠乏を更に軽減し、これが水素のより多くの生成を可能にすることを理解する。
【0046】
1つ以上の実施形態において、アセトアルデヒド生成ユニット71内で、エタノールは、銅系触媒などの適切な触媒上で高温で脱水素化を受ける。例えば、反応は固定床リアクタ内で行うことができる。1つ以上の実施形態において、ユニット71内でのエタノールの脱水素は、約200~約350℃、又は他の実施形態において約250~約300℃の温度で行われる。
【0047】
ブタジエンの生成
1つ以上の実施形態において、ユニット71で生成されたアセトアルデヒドは、ブタジエン生成ユニット91内でブタジエンモノマーに変換される。1つ以上の実施形態において、ブタジエン生成は、例えば、Zhang、Mechanistic Insight into the Meerwein-Ponndorf-Verley Reaction and Relative Side Reactions over MgO in the Process of Ethanol to 1,3-butadiene:a DFT Study,Ind.Eng.Chem.Res.,2021,60,2871-2880によって記載されているような、当該技術分野において一般的に知られている反応技術を利用することによって、エタノールとアセトアルデヒドを反応させて1,3-ブタジエンを生成することを含む。当業者が理解するように、この反応は、高温で、タンタル促進多孔質シリカ触媒などの適切な触媒上で行うことができる。また、アセトアルデヒド及びエタノールをブタジエンに変換するための他の触媒も当技術分野で公知であり、使用することができる。1つ以上の実施形態において、この反応は、約300~約450℃、又は他の実施形態において約350~約400℃の温度で動作する固定床リアクタ内で行われる。
【0048】
1つ以上の実施形態において、ブタジエン生成ユニット91への反応物供給物は、少なくとも1:1、他の実施形態において少なくとも2:1、他の実施形態において少なくとも2.5:1、他の実施形態において少なくとも4:1、及び他の実施形態において約1:1~約5:1の範囲内のエタノール対アセトアルデヒドモル比(すなわち、エタノールのモル数対アセトアルデヒドのモル数)を含む。
【0049】
ブタジエン生成ユニット91への供給物は、低レベルの不純物(すなわち、アセトアルデヒド及びエタノール以外の成分)によって特徴付けられる。1つ以上の実施形態において、ブタジエン生成ユニット91への供給流は、投入流の総重量に基づいて10重量%未満、他の実施形態において5重量%未満、他の実施形態において2重量%未満の不純物を含む。
【0050】
導管93を介してブタジエンリアクタ91を出る粗ブタジエン流は、一般に、1,3-ブタジエンモノマー、未反応エタノール、未反応アセトアルデヒド、反応の副生成物である水、及び他の副生成物を含む。1つ以上の実施形態では、アセトアルデヒドに基づく1,3-ブタジエンの収率は、20モル%超、他の実施形態では30モル%超、他の実施形態では40モル%超である。これら又は他の実施形態において、アセトアルデヒドに基づく1,3-ブタジエンの収率は、70モル%未満、他の実施形態において60モル%未満、及び他の実施形態において55モル%未満である。
【0051】
1つ以上の実施形態において、粗ブタジエン生成物流は、蒸留を含み得る第1の分離を受ける。1つ以上の実施形態において、ブタジエンは塔頂流として分離され、生成物流の残りの成分は塔底流として分離される。次いで、塔底流を更に分離して、この流の水及び他の成分からエタノール及びアセトアルデヒドを分離することができる。塔頂流として分離することができるエタノール及びアセトアルデヒドは、次いで、ブタジエンへの転化のためにブタジエン生成ユニット91に再循環して戻すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
1つ以上の実施形態において、本発明の方法によって生成される1,3-ブタジエンは、タイヤ構成要素の製造において使用され得るポリブタジエン又はブタジエンコポリマー(ポリブタジエンコポリマーとも称され得る)の生成において使用され得る。本明細書の目的のために、これらのポリマーは、環状合成ゴム、又は環状合成ポリブタジエン-ブタジエンコポリマーと称され得る。結果として、本発明の実施は、使用済みタイヤからの廃棄材料が有用なタイヤに戻される方法を提供する。換言すれば、タイヤリサイクル方法が提供される。
【0053】
ブタジエンモノマーからのポリブタジエン又はポリブタジエンコポリマーの合成は周知であり、いくつかの合成経路(すなわち、重合機構及び技術)を使用することによって達成することができる。例えば、モノマーは、フリーラジカル乳化重合、アニオン重合、又は例えばニッケル若しくはネオジムベースの触媒系を使用する配位触媒によって重合することができる。
【0054】
当業者が理解するように、ブタジエンと共重合してポリブタジエンコポリマーを形成することができるコモノマーとしては、スチレンなどのビニル芳香族モノマー、並びにイソプレンなどの他のジエンモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。そのような他のモノマーは、持続可能なプロセスから誘導することができる。本発明の実施形態によって生成されたブタジエンから合成されたポリマーは、加硫性ポリマー又はエラストマーポリマーと呼ばれてもよく、一般にポリジエン及びポリジエンコポリマーを含む。タイヤの製造において生成及び使用することができる具体的なポリマーとしては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、及びそれらの官能化誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明によって生成されるポリブタジエン及びポリブタジエンコポリマーは、優れた粘弾性特性を示し、タイヤトレッド、サイドウォール、サブトレッド、及びビードフィラーを含むがこれらに限定されない様々なタイヤ構成要素の製造に特に有用である。これらのポリマーは、タイヤストックのエラストマー構成要素の全て又は一部として使用することができる。本発明によって生成されるポリマーを他の加硫性ポリマーと共に使用してタイヤストックのエラストマー成分を形成する場合、これらの他の加硫性ポリマーは、天然ゴム、合成ゴム、及びこれらの混合物であってもよい。合成ゴムの例としては、ポリイソプレン、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、並びに低含量及び/又はシス-1,4-結合含量を有する他のポリブタジエン、ポリ(スチレン-co-ブタジエン-co-イソプレン)、並びにこれらの混合物が挙げられる。本発明のポリマーはまた、ホース、ベルト、靴底、窓シール、他のシール、振動減衰ゴム、及び他の工業製品の製造にも使用することができる。
【0056】
本発明の実施は、タイヤに配合して戻すことができるポリマーを生成するための供給原料として使用済みタイヤを使用することによってタイヤをリサイクルする方法を提供するだけでなく、本発明の実施は、リサイクル材料又は天然由来材料を含む持続可能な成分の含有量が比較的高いタイヤを製造する方法も有利に提供する。更に、これらのタイヤ又はタイヤ構成要素は、高い持続可能な含有量によって特徴付けられながら、閾値量の環状合成ゴムを含む。例えば、本発明のタイヤ又はタイヤ構成要素は、40重量%超、他の実施形態では50重量%超、他の実施形態では60重量%超の持続可能な材料を含むことができる。1つ以上の実施形態では、タイヤ又はタイヤ構成要素は、約40~約90重量%、他の実施形態では約45~約85重量%、他の実施形態では約50~約80重量%のスチレンを含む。これと組み合わせて、本発明のタイヤ又はタイヤ構成要素のゴム成分は、10重量%超、他の実施形態では20重量%超、他の実施形態では30重量%超、他の実施形態では40重量%超、他の実施形態では45重量%超、及び他の実施形態では50重量%超の環状合成ゴムを含み、これは本発明の実施形態に従って生成された合成ゴムを含む。
【0057】
上述のように、本発明の加硫性組成物は、ゴム成分を含む。このゴム成分は、本発明の態様に従って生成された環状合成ゴムを含む。ゴム成分はまた、他の合成ゴム、例えば、石油系原料に由来し、リサイクルされていない合成ゴム、他の持続可能なプロセスに由来する合成ゴム、並びに天然ゴムを含んでもよい。当業者が理解するように、天然ゴムは、植物によって合成され、植物から得られる。例えば、天然ゴムは、パラゴムノキ(Hevea rubber trees)、グアユール低木(guayule shrub)、ゴーファープラント(gopher plant)、マリオラ(mariola)、ラビットブラシ(rabbitbrush)、トウワタ(milkweeds)、アキノキリンソウ(goldenrods)、ペールインディアンプランテーン(pale Indian plantain)、ゴムノキ(rubber vine)、ロシアタンポポ(Russian dandelions)、マウンテンミント(mountain mint)、アメリカンジャーマンダー(American germander)、及びトールベルフラワー(tall bellflower)から得ることができる。
【0058】
使用される場合、他の合成ポリマーとしては、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン-co-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらのエラストマーは、無数の巨大分子構造、例えば、直鎖状、分枝状、及び星形構造を有することができる。
【0059】
一般に、本発明のゴム組成物は、タイヤ構成要素の総重量に基づいて、約30~約65重量%、他の実施形態では約35~約60重量%、他の実施形態では約40~約55重量%のエラストマーを含む。
【0060】
上記で示唆したように、ゴム組成物は、有機及び無機充填剤などの充填剤を含む。有機充填剤の例としては、カーボンブラック及びデンプンが挙げられる。無機充填剤の例としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、及びクレイ(水和アルミニウムシリケート)が挙げられる。ある実施形態では、異なる充填剤の混合物を有利に用いてもよい。
【0061】
ゴム組成物中で用いる全充填剤の量は、ゴム100重量部(phr)当たり最大で約150重量部であってもよく、約30~約125phr、又は約40~約110phrが典型的である。特定の実施形態では、全充填剤含有量は、約100phrを超える。他の実施形態では、全充填剤含有量は約50~約100phrであり、更なる実施形態では約55~約95phrである。
【0062】
当技術分野で一般に知られている従来のカーボンブラックを使用することができる。1つ以上の実施形態では、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及びランプブラックが挙げられる。カーボンブラックのより具体的な例としては、超摩耗ファーネスブラック、中間超摩耗ファーネスブラック、高摩耗ファーネスブラック、高速押出ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、半強化ファーネスブラック、中級加工チャンネルブラック、ハード加工チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられる。
【0063】
特定の実施形態において、カーボンブラックは、表面積(EMSA)が、少なくとも20m/g、他の実施形態においては、少なくとも35m/gであってもよく、表面積値は、ASTM規格D-1765によって、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(cetyltrimethylammonium bromide、CTAB)技法を使用して決定することができる。カーボンブラックは、ペレット化された形態であっても、ペレット化されていない綿状形態であってもよい。カーボンブラックの好ましい形態は、ゴム化合物を混合するために使用される混合機器の種類に左右され得る。
【0064】
1つ以上の実施形態において、カーボンブラックには、リサイクル材料が利用され得る。そのようなリサイクル材料としては、再生又はリサイクル加硫ゴムが挙げられるが、加硫ゴムは、典型的には、空気タイヤ、工業用コンベアベルト、伝動ベルト、及びゴムホースなどの製造物品から再生される。リサイクルカーボンブラックは、熱分解プロセス又は、リサイクルカーボンブラックを得るための既知の他の方法によって得られる。1つの態様では、リサイクルカーボンブラックは、リサイクルゴム供給原料又はゴム物品の不完全燃焼から形成され得る。別の態様において、リサイクルカーボンブラックは、タイヤ熱分解プロセスから生じる油を含む供給原料の不完全燃焼から形成することができる。加硫性エラストマー組成物の調製に用いられるカーボンブラックは、ペレット化形態又は非ペレット化綿状塊であり得る。
【0065】
ゴム組成物中で用いる全充填剤の量は、ゴム100重量部(phr)当たり最大で約75重量部であってもよく、約5~約60phr、又は約10~約55phrが典型的である。
【0066】
ゴム組成物は、粒子状形態の1種以上の再生ゴムの形態の充填剤を更に含むことができる。再生粒子状ゴムは、典型的には、複数のプロセスのいずれかによって分解及び再生(又はリサイクル)され、このプロセスには、物理的分解、粉砕、化学的分解、脱硫、極低温粉砕、これらの組み合わせなどを含むことができる。再生粒子状ゴムという用語は、加硫ゴム及び脱硫ゴムの両方に関連することができ、脱硫リサイクルゴム又はリサイクルゴム(再生ゴム)は、加硫され、粒子に粉砕され、更に実質的又は部分的な脱硫を受けていてもよいゴムに関する。一例において、ゴム組成物に使用される再生粒子状ゴムは、脱硫から生じる再生ゴムを本質的に含まない。加硫ゴムがワイヤ又は紡織繊維強化材を含有する状況において、そのようなワイヤ又は繊維強化材は、磁気分離、空気吸引及び/又は空気浮上ステップなどの任意好適なプロセスによって取り除かれ得る。特定の実施形態では、「リサイクル粒子状ゴム」は、以下で議論されるような平均粒径を有する粒子状物質に粉砕又は粉末化された、硬化、すなわち、加硫(架橋)ゴムを含む。
【0067】
特定のシリカは、持続可能な材料とみなすことができる。本発明の持続可能な材料として使用され得るいくつかの市販のシリカとしては、Hi-Sil(商標)215、Hi-Sil(商標)233、及びHi-Sil(商標)190(PPG Industries,Inc.;Pittsburgh,Pa.)が挙げられる。市販のシリカの他の供給業者としては、Grace Davison(Baltimore,Md.)、Degussa Corp.(Parsippany,N.J.)、Rhodia Silica Systems(Cranbury,N.J.)、及びJ.M.Huber Corp.(Edison,N.J.)が挙げられる。他の持続可能なシリカとしては、もみ殻灰に由来するものが挙げられる。
【0068】
1つ以上の実施形態において、シリカは、その表面積によって特徴付けることができるが、表面積は、その補強特性の尺度となるものである。Brunauer,Emmet and Teller(Brunauer,Emmet and Teller、「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,1939,vol.60,2 p.309-319に記載されている)は、表面積を求めるための認められている方法である。シリカのBET表面積は、概して450m/g未満である。表面積の有用な範囲としては、約32~約400m/g、約100~約250m/g、及び約130~約240m/g、及び約170~約220m/gが挙げられる。ある特定の実施形態において、シリカは、190~約280m/gのBET表面積を有し得る。シリカのpHは、概して、約5~約7であり、又はわずかに7より高く、又は、他の実施形態では、約5.5~約6.8である。
【0069】
1つ以上の実施形態において、シリカを充填剤として(単独で又は他の充填剤と組み合わせて)用いる場合、混合中にカップリング剤及び/又は遮蔽剤をゴム組成物に加えて、シリカとエラストマーとの相互作用を高めてもよい。有用なカップリング剤及び遮蔽剤は、以下に開示されている:米国特許第3,842,111号、同第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,674,932号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号、同第6,608,145号、同第6,667,362号、同第6,579,949号、同第6,590,017号、同第6,525,118号、同第6,342,552号、及び同第6,683,135号、なお、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
ゴム組成物中に用いるシリカの量は、約1~約150phr、又は他の実施形態では約5~約130phrであり得る。有用な上限範囲は、シリカによって与えられる高粘性によって限定される。特定の実施形態では、ゴム組成物に使用されるシリカは、もみ殻灰のみに由来し、他の実施形態では、ゴム組成物は、非もみ殻灰由来プロセスからのシリカを含まない。シリカをカーボンブラックと共に用いるとき、シリカ又はカーボンブラックそれぞれの量を約1phr程度に低くすることができる。概ね、結合剤及び遮蔽剤の量は、使用するシリカの重量に基づいて、約4重量%~約20重量%の範囲である。カーボンブラック及びシリカが充填剤として組み合わせて使用される1つ以上の実施形態において、シリカ対全充填剤の重量比は、全充填剤の約5重量%~約99重量%、他の実施形態において、全充填剤の約10重量%~約90重量%、又は更に他の実施形態において、全充填剤の約50重量%~約85重量%であってもよい。特定の実施形態では、ゴム組成物に用いられるシリカ及びカーボンブラック充填剤は、持続可能な熱分解カーボンブラック及び/又はもみ殻灰由来シリカからなる群から選択される。
【0071】
硫黄又は過酸化物系硬化系を含む、多数のゴム硬化剤(加硫剤とも呼ばれる)が用いられてもよい。硬化剤は、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.20,pgs.365-468,(3rdEd.1982)、特に、Vulcanization Agents and Auxiliary Materials,pgs.390-402、及びA.Y.Coran,Vulcanization,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,(2nd Ed.1989)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0072】
ゴム配合において典型的に用いられる他の構成成分も、ゴム組成物に加えることができる。これらには、促進剤、促進活性剤、油、可塑剤、蝋、スコーチ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着付与樹脂、強化用樹脂、脂肪酸、例えばステアリン酸、解こう剤、劣化防止剤、例えば抗酸化剤及びオゾン劣化防止剤が含まれる。
【0073】
油に関しては、植物系油及びバイオ系油を含む持続可能な油を使用し得る。植物系油は、植物系トリグリセリドを含んでもよい。例示的な油としては、これらに限定されないが、パーム油、ダイズ油(本明細書ではダイズ油とも呼ばれる)、ナタネ油、ヒマワリ種子、ピーナッツ油、綿実油、パーム核から生成される油、ヤシ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ブドウ種子油、麻油、亜麻仁油、米油、ベニバナ油、ゴマ油、マスタード油、亜麻油が挙げられる。他の例としては、ブナ、カシューナッツ、モンゴノナッツ、マカデミアナッツ、パインナッツ、ヘーゼルナッツ、栗、ドングリ、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、クルミ、又はブラジルナッツから得られる油などのナッツ由来の油が挙げられる。当業者であれば理解するように、これらの油は、機械的抽出(例えば、オイルミルの使用)、化学的抽出(例えば、ヘキサン又は二酸化炭素などの溶媒の使用)、圧力抽出、蒸留、浸出、離解、精製、純化、水素化、スパージングなどの任意好適なプロセスによって生成され得る。
【0074】
バイオオイルとも呼ばれるバイオ系油は、組み換え細胞によって生成される油を含むことができる。例えば、組み換え細胞によって生成されたバイオオイルは、糖(例えばスクロース)を投与された藻細胞の選抜株を用いて生成され、これを発酵させて、選択されたプロファイルを有するバイオオイルを生成する。十分に成長又は発酵させると、バイオオイルは細胞から分離され回収される。
【0075】
一般に、本発明のゴム組成物は、ゴム100重量部当たり約1~約70重量部、又は他の実施形態では約5~約50重量部の全油を含むことができる。持続可能な油の量は、含まれる油の総重量に対して、約1重量%~約99重量%、又は他の実施形態では約20重量%~約80重量%であり得る。
【0076】
ワックスに関して、ゴム組成物は、天然ワックスを含む1つ以上の持続可能なワックスを含むことができる。天然ワックス、又はその原料として石油を含まないものとしては、カルナウバワックス、キャンデリラワックス(例えば、キャンデリラの花から抽出されたもの)、ライスワックス(例えば、米糠油から分離されたもの)、木ろう(例えば、ハゼから抽出されたもの)が挙げられる。
【0077】
一般に、本発明のゴム組成物は、ゴム100重量部当たり約1~約20重量部、又は他の実施形態では約2~約15重量部の全ワックスを含む。持続可能なワックスの量は、含まれるワックスの総重量に対して、全ワックスの約1重量%~約99重量%、又は他の実施形態では約20重量%~約80重量%であってもよい。特定の実施形態において、ゴム組成物は、持続可能なワックスのみを含む。
【0078】
ゴム組成物の全ての構成成分は、標準的な混合機器、例えばバンバリー又はブラベンダーミキサ、押出機、ニーダー、及び2ロールのミルを用いて混合することができる。1つ以上の実施形態では、構成成分を2段階以上で混合する。第1の段階(多くの場合、マスターバッチ混合段階とも呼ばれる)において、いわゆるマスターバッチ(典型的に、ゴム成分及び充填剤が含まれる)を調製する。早すぎる加硫(別名スコーチ)を防止するために、マスターバッチから加硫剤を除外してもよい。マスターバッチは、約25℃~約125℃の開始温度、約135℃~約180℃の吐出温度で混合され得る。マスターバッチが調製されると、最終混合段階において、加硫剤をマスターバッチ内に導入して混合してもよく、この最終混合段階は、典型的には、比較的低温で実施され、それにより加硫のタイミングが早くなりすぎる可能性を減少させる。任意で、しばしば再ミルと呼ばれる付加的な混合段階を、マスターバッチ混合段階と最終的な混合段階との間で用いることができる。ゴム組成物にシリカが充填剤として含まれる場合、1つ以上の再ミル段階が用いられることが多い。本発明のポリマーを含む種々の構成成分の添加を、これらの再ミル中に行うことができる。
【0079】
シリカ充填タイヤ配合物に特に適用可能な混合手順及び条件は、米国特許第5,227,425号、同5,719,207号、及び同5,717,022号、並びに欧州特許第890,606号に記載されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、最初のマスターバッチの調製は、カップリング剤及び遮蔽剤が実質的にない状態でポリマー及びシリカを含めることによって行う。
【0080】
本発明によって生成されるポリマーを用いてタイヤ構成要素を製造するために、当業者は、ポリマーを様々な他の成分(例えば、充填剤及び硬化剤)と混合してゴム組成物(加硫性組成物とも呼ばれる)を生成し、これを標準的なゴム成形、成形及び硬化技術を含む通常のタイヤ製造技術に従ってタイヤ構成要素に加工することができることを理解する。典型的には、加硫は、本加硫性組成物を成形型内で加熱することによって行われ、例えば、これは、約140℃~約180℃に加熱され得る。硬化又は架橋されたゴム組成物は、加硫物と称されてもよく、この加硫物は、概して、熱硬化性の三次元ポリマー網状組織を含有する。充填剤及び加工助剤などの他の成分は、架橋された網状組織全体にわたって一様に分散してもよい。空気タイヤは、米国特許第5,866,171号、同第5,876,527号、同第5,931,211号、及び同第5,971,046号に記載されているように製造することができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
1つ以上の実施形態において、タイヤは、合成繊維、例えば機械的再生繊維、化学的再生繊維、又はバイオ系繊維の代わりに非石油材料を使用することによって構成することができる。同様に、リサイクル金属を使用してタイヤを構成することができる。
【0082】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない様々な修正及び変更が当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態に正式に限定されるものではない。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスであって、
(a)使用済みタイヤ供給原料を提供することと、
(b)前記使用済みタイヤ供給原料をガス化して、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含むガス流を生成することと、
(c)前記ガス流内の前記一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素の少なくとも一部を生合成的に変換して、第1の生成物流を生成することと、
(d)前記第1の生成物流の少なくとも一部をアセトアルデヒド及び水素を含む第2の生成物流に変換することと、
(e)前記第2の生成物流内の前記水素の一部を、前記ガス流内の前記一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素の少なくとも一部を生合成的に変換する前記ステップに送ることと、
(f)アセトアルデヒドの少なくとも一部をブタジエンモノマーに変換することと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記第1の生成物流は、エタノールを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
プロセスであって、
(a)使用済みタイヤ供給原料を提供することと、
(b)任意で、使用済みタイヤ供給原料以外の炭素質材料を含む共供給物を提供することと、
(c)前記使用済みタイヤ供給原料及び任意の共供給物をガス化して、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含むガス流を生成することと、
(d)前記ガス流を水性媒体に導入することであって、前記一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素が第1の生成物流に変換される、導入することと、
(e)前記第1の生成物流をアセトアルデヒド及び水素を含む第2の生成物流に変換することと、
(f)前記第2の生成物流から前記水素を分離し、それによって水素流を形成することと、
(g)前記アセトアルデヒドをブタジエンを含む最終生成物流に変換することと、
を含むプロセス。
【請求項4】
前記第1の生成物流は、エタノールを含み、前記エタノールは、前記第2の生成物流に変換される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ガス流を前記水性媒体に導入する前記ステップは、前記一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を前記第1の生成物流に変換するための1つ以上の微生物を含有するバイオリアクタ内で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記水素流は、前記水性媒体に導入される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
第2の水素流を前記水性媒体に導入することを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記エタノールを第2の生成物流に変換する前記ステップは、アセトアルデヒドリアクタ内で行われ、外部供給源から第2のエタノール流を前記アセトアルデヒドリアクタに導入することを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ブタジエンをポリブタジエン又はブタジエンコポリマーに変換することと、前記ポリブタジエン又はブタジエンコポリマーからタイヤ材料を生成することと、を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ガス化する前記ステップは、前記タイヤ供給原料及び共供給物をガス化することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記共供給物は、バイオマスを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記バイオマスは、残渣を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスによって調製されたポリブタジエン又はブタジエンコポリマーを含む加硫性組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の加硫性組成物から調製されたタイヤ構成要素。

【国際調査報告】