(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】飛行体の少なくとも1つのロータを制御するための方法、飛行体のための制御データ提供ユニット、および少なくとも1つのロータを有する飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 27/82 20060101AFI20241219BHJP
B64C 27/06 20060101ALI20241219BHJP
B64U 10/17 20230101ALI20241219BHJP
B64U 30/26 20230101ALI20241219BHJP
B64U 40/10 20230101ALI20241219BHJP
【FI】
B64C27/82
B64C27/06
B64U10/17
B64U30/26
B64U40/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534060
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022078850
(87)【国際公開番号】W WO2023104382
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021214078.5
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522312333
【氏名又は名称】コプター・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】KOPTER GERMANY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタードルマイア,ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】レッドマン,ダニエル
(57)【要約】
飛行体(1)の少なくとも1つのロータ(5)を制御するための方法であって、ロータ(5)は、飛行体(1)に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成されており、ロータ(5)は、シュラウド(15)を設けられており、ロータの回転速度およびロータの少なくとも1つのロータブレード(20)の迎え角は、ロータ(5)向けに調整可能であり、特に、飛行体(1)上に設けられたさらなるロータ(3)から独立して調整可能であり、方法は、ロータ(5)の少なくとも第1の動作パラメータ値対および少なくとも第2の動作パラメータ値対を定義するステップ(51)であって、動作パラメータ値対は、それによって達成される同じ推力値におけるロータの異なる回転速度および迎え角をそれぞれ指定する、定義するステップ(51)と、第1の動作パラメータ値対の第1の音指標および第2の動作パラメータ値対の第2の音指標を決定するステップ(52)であって、決定するステップは、テスト構成においてロータ(5)の音値を測定するステップを含む、決定するステップ(52)と、第1の音指標および第2の音指標を、それぞれの動作パラメータ値対への割り当てとともに記憶するステップ(53)と、ステップc)において記憶された割り当てを参照して、かつ、少なくとも選択的に達成されるべき第1の音指標または第2の音指標の関数として、第1の動作パラメータ値対または第2の動作パラメータ値対に従って飛行体(1)の動作中にロータ(5)を制御するステップ(54)とを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体(1)の少なくとも1つのロータ(5)を制御するための方法であって、
前記ロータ(5)は、前記飛行体(1)に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成されており、
前記ロータ(5)には、シュラウド(15)が設けられており、前記ロータの回転速度および前記ロータの少なくとも1つのロータブレード(20)の迎え角は、前記ロータ(5)向けに調整可能であり、特に、前記飛行体(1)上に設けられたさらなるロータ(3)から独立して調整可能であり、前記方法は、
(a)前記ロータ(5)の少なくとも第1の動作パラメータ値対および少なくとも第2の動作パラメータ値対を定義するステップ(51)であって、前記動作パラメータ値対は、それによって達成される同じ推力値における前記ロータの異なる回転速度および迎え角をそれぞれ指定する、定義するステップ(51)と、
(b)前記第1の動作パラメータ値対の第1の音指標および前記第2の動作パラメータ値対の第2の音指標を決定するステップ(52)であって、前記決定するステップは、テスト構成において前記ロータ(5)の音値を測定するステップを含む、決定するステップ(52)と、
(c)前記第1の音指標および前記第2の音指標を、それぞれの前記動作パラメータ値対への割り当てとともに記憶するステップ(53)と、
(d)ステップc)において記憶された前記割り当てを参照して、かつ、少なくとも選択的に達成されるべき前記第1の音指標または前記第2の音指標の関数として、前記第1の動作パラメータ値対または前記第2の動作パラメータ値対に従って前記飛行体(1)の動作中に前記ロータ(5)を制御するステップ(54)と
を含む、方法。
【請求項2】
ステップa)~c)は、3つ以上の動作パラメータ値対および対応する音指標について行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)~c)は、達成されるべきいくつかの推力値について行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)における前記割り当ては、前記ロータ(5)の前記回転速度および/または前記迎え角および/またはそれによって達成される前記推力値の関数としての前記音指標のグラフおよび/または表形式の表現を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)において記憶される前記割り当ては、数値シミュレーションおよび/または補間によって決定されるさらなる音指標および/または動作パラメータ値対および/または推力値によって補完される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップd)において、前記ロータ(5)の前記制御の基礎となる前記音指標は、前記ロータ(5)の前記放音の低減が達成されるように選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記音指標は、前記ロータ(5)の放音の音調性および/または総レベルを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、そのシュラウド(15)が前記ロータの回転軸(R)に対する周方向中空構造(25)によって形成されるロータ(5)を使用して行われ、前記中空構造は、好ましくは、前記ロータ(5)に面するその周面(23)上に、少なくともその区画においてガス透過性である領域(23a)を有し、前記中空構造はさらに、好ましくは、前記ガス透過性領域を通じて前記中空構造内に侵入する少なくとも1つの周波数の音響波が前記中空構造によって少なくとも部分的に吸収されるように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)における前記ロータ(5)の音値の前記測定は、テストステーション上で行われ、前記音値を検出するための少なくとも1つの測定デバイスは、前記テストステーション内の前記ロータ(5)の位置に対して所定の位置に配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記飛行体はヘリコプタとして設計されており、前記ロータは、ヨー軸を中心としたトルク補償および制御のために構成された二次ロータ、好ましくは前記ヘリコプタのテールロータ(5)である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヘリコプタは、前記二次ロータを所定の回転速度に従って回転させるように構成されている別個の駆動装置(6)、特に電気モータを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ロータは前記飛行体の第1のロータであり、前記飛行体は、前記飛行体に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成されている少なくとも第2のロータを備え、前記第2のロータにはシュラウドが設けられており、前記第2のロータの回転速度および前記第2のロータの少なくとも1つのロータブレードの迎え角、好ましくは前記第2のロータのすべてのロータブレードの均一な迎え角は、前記第1のロータから独立して前記第2のロータ向けに調整可能であり、好ましくは、ステップa)~d)は、前記第1のロータおよび前記少なくとも第2のロータに対して別個に、または少なくとも2つの前記ロータの総音値を測定することによって行われる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのロータ(5)を有する飛行体(1)のための制御データ提供ユニットであって、
前記ロータ(5)は、前記飛行体(1)に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成されており、
前記ロータ(5)には、シュラウド(15)が設けられており、前記ロータ(5)の回転速度および前記ロータ(5)の少なくとも1つのロータブレード(20)の迎え角は、前記ロータ(5)向けに調整可能であり、特に、前記飛行体(1)上に設けられたさらなるロータ(3)から独立して調整可能であり、前記制御データ提供ユニット(100)は、
(a)前記ロータ(5)の少なくとも第1の動作パラメータ値対および少なくとも第2の動作パラメータ値対を定義する(51)ための定義ユニット(101)であって、前記動作パラメータ値対は、それによって達成される同じ推力値における前記ロータの異なる回転速度および迎え角をそれぞれ指定する、定義ユニット(101)と、
(b)前記第1の動作パラメータ値対の第1の音指標および前記第2の動作パラメータ値対の第2の音指標を決定する(52)ための決定ユニット(102)であって、前記決定は、テスト構成において前記ロータ(5)の音値を測定することを含む、決定ユニット(102)と、
(c)前記第1の音指標および前記第2の音指標を、それぞれの前記動作パラメータ値対への割り当てとともに記憶する(53)ためのメモリユニット(103)と、
(d)前記飛行体(1)の動作中に前記ロータ(5)を制御するための制御データを出力する(54)ための出力ユニット(104)であって、前記制御データは、前記メモリユニットに記憶された前記割り当てを参照して、かつ、少なくとも選択的に達成されるべき前記第1の音指標または前記第2の音指標の関数として、前記第1の動作パラメータ値対または前記第2の動作パラメータ値対に従って前記ロータの前記制御を指定する、出力ユニット(104)と
を備える、制御データ提供ユニット。
【請求項14】
飛行体であって、前記飛行体(1)に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成されている少なくとも1つのロータ(5)を備え、前記ロータ(5)にはシュラウド(15)が設けられており、前記ロータ(5)の回転速度および前記ロータの少なくとも1つのロータブレード(20)の迎え角は、特に前記飛行体(1)に設けられたさらなるロータ(3)とは無関係に、前記ロータ(5)向けに調整可能であり、
前記飛行体は、請求項13に記載の制御データ提供ユニットによって提供される制御データを使用して、および/または、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法のステップ(d)に従って、前記飛行体の動作中に前記少なくとも1つのロータ(5)を少なくとも一時的に制御する制御ユニット(8)をさらに備える、飛行体。
【請求項15】
前記少なくとも1つのロータ(5)の前記制御は、前記制御データ提供ユニットによって提供される制御データを使用して、および/または、ステップ(d)に従って、少なくとも前記飛行体のホバー飛行中に行われる、請求項14に記載の飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の少なくとも1つのロータを制御するための方法、少なくとも1つのロータを有する飛行体のための制御データ提供ユニット、およびそのような飛行体に関する。
【0002】
少なくとも1つのロータを有するそのような飛行体の例は、メインロータおよびテールロータを備えるヘリコプタである。ヘリコプタのテールロータは、シュラウドを用いて、すなわち封入されたロータとして設計することができる。この場合、ロータは、ロータの周囲を径方向に囲むシュラウドまたはロータケーシング内に、例えば中空構造の形態で設けられる。この中空構造は、様々な中空チャンバを有することができる。また、シュラウドは、ロータの軸方向に延在する流路を形成する。シュラウドは、特にロータへの半径方向において、全騒音レベルまたは広帯域音に関して放音を低減することができる。
【0003】
シュラウド付きロータの放音は、とりわけ、シュラウドとロータブレードの先端との間に設けられた間隙内を流れる媒体の乱流によって発生する。このようにして生成された音は、主に離散的な好ましい周波数を有し、結果、シュラウド付きロータの放音は、一般に音の成分、すなわち音スペクトルの離散成分によって支配される。これらの個々の音調成分は、通常、人間にとって不快であると知覚される。したがって、放出される全音響エネルギーは、シュラウド付きロータによって、シュラウド付きでないロータと比較して低減することができるが、それは、音の成分に起因して依然として人間の耳にとって不快であると知覚される。これは、シュラウド付きロータを有する他の飛行体、例えば、エアキャブ、eVTOL(電動垂直離着陸航空機(electric Vertical Take-Off and Landing aircraft))またはドローンなどの電動飛行体の放音にも当てはまる。
【0004】
ロータシステムの空気力学および音響の数値シミュレーションは、例えば、以下の文献に開示されている。
【0005】
Stadlmair,N、Redmann,D.、Hirsch,F.、Zappek,V.(2021)「Four-step Simulation Toolchain to Assess the Effectiveness of Noise Reduction Measures for Shrouded Tail-Rotors」(Proceedings of the 47th European Rotorcraft Forum(ERF),United Kingdom)、および
You,J.、Thouault,N.、Breitsamter,C.、およびAdams,N.(2012)「Aeroacoustic analysis of a helicopter configuration with ducted tail rotor」(28th Congress of the International Council of the Aeronautical Sciences 2012)。
【0006】
シュラウド付きロータシステムの放音を低減するために、国際公開第2021/156077号は、ライナとしても参照される、ロータに面するその周面上のガスに対して少なくとも部分的に透過性である領域を有するロータケーシングを提案している。ロータケーシングのこの構成は、中空構造と併せて、音スペクトルの少なくとも特定の周波数を低減することができる。
【0007】
中空構造の任意のチャンバおよびライナとのそれらの組み合わせの両方が、特性および周波数依存インピーダンスを有する。これは、一般に、ロータによって生成される(前進する)推力とロータの放音との間の複雑で自明でない関係をもたらす。
【0008】
例えば、ロータブレードの先端とシュラウドとの間の距離を低減すれば、翼端渦として知られる、ロータブレードとシュラウドとの間の間隙を流れる媒体における乱流の発生を低減することができ、これにより、音の発生を低減することができる。例えば、ロータの回転率(回転速度)が低減すると、ロータブレードの半径方向寸法が遠心力の低減によってわずかに低減し、すなわち、ロータブレードの「伸長」がより少なくなるため、ロータブレードのブレード先端とシュラウドとの間の有効距離が増大し、これは、翼端渦の増強に起因して特定の回転速度範囲内でのシュラウド付きロータの音の発生に悪影響を及ぼす可能性がある。回転速度が増大すると、反対の効果が生じる可能性がある。放音のこれらの効果に加えて、特定の好ましい周波数を有する、場合によってはライナと組み合わさった、中空構造のインピーダンスも存在する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、飛行体の少なくとも1つのロータを制御するための代替的なまたは改善された方法、および少なくとも1つのロータを有する飛行体のための代替的または改善された制御データ提供ユニットを提供することであり、これによって、特にシュラウド付きロータの特定の音響特性を考慮して、放音の低減を達成することができる。
【0010】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項13に記載の制御データ提供ユニット、および請求項14に記載の飛行体によって解決される。本発明のさらなる特徴は、従属請求項に与えられる。ここで、本発明による方法は、制御データ提供ユニットおよび/または飛行体の特徴によってさらに発展させることもでき、逆もまた同様であり、制御データ提供ユニットおよび飛行体の特徴はまた、さらに発展させるために互いに共有して使用することもできる。
【0011】
本発明による方法は、飛行体の少なくとも1つのロータを制御する役割を果たし、ロータは、飛行体に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成されており、ロータは、シュラウドを設けられており、ロータの回転速度およびロータの少なくとも1つのロータブレードの迎え角は、そのロータ向けに調整可能であり、特に、飛行体上に設けられたさらなるロータから独立して調整可能である。本方法は、
(a)ロータの少なくとも第1の動作パラメータ値対および少なくとも第2の動作パラメータ値対を定義するステップであって、動作パラメータ値対は、それによって達成される同じ推力値におけるロータの異なる回転速度および迎え角をそれぞれ指定する、定義するステップと、
(b)第1の動作パラメータ値対の第1の音指標および第2の動作パラメータ値対の第2の音指標を決定するステップであって、決定するステップは、テスト構成においてロータの音値を測定するステップを含む、決定するステップと、
(c)第1の音指標および第2の音指標を、それぞれの動作パラメータ値対への割り当てとともに記憶するステップと、
(d)ステップc)において記憶された割り当てを参照して、かつ、少なくとも選択的に達成されるべき第1の音指標または第2の音指標の関数として、第1の動作パラメータ値対または第2の動作パラメータ値対に従って飛行体の動作中にロータを制御するステップと
を含む。
【0012】
好ましくは、ステップa)~c)は、本方法において、3つ以上の動作パラメータ値対および対応する音指標、ならびに/または達成されるべきいくつかの推力値について行われる。
【0013】
飛行体は、例えばヘリコプタとすることができる。代替的に、飛行体は、エアキャブ、eVTOL(電動垂直離着陸航空機)またはドローンなどの別の飛行体であってもよい。
【0014】
ロータは、トルク補償のためだけに使用される必要はない。例えば、ロータは、トルク補償に加えて飛行体の動的な上昇および/または水平運動を生成するように構成することもできる。
【0015】
飛行体に作用するトルクの補償または低減は、特に、飛行体上に設けられた別のロータ、例えば飛行体のメインロータによって特に生成される、そのヨー軸(z軸または垂直方向)を中心とした飛行体の回転を打ち消すことを意味すると理解される。この目的のために、例えば、トルクを打ち消す水平方向推力がロータによって生成される。例えば、トルク補償のためのロータは、例えば飛行体、特にヘリコプタのテールブーム上に設けられる飛行体の二次ロータ、特にテールロータとして設けることができる。
【0016】
ロータの少なくとも1つのロータブレードの迎え角は、例えば、ロータに対して個別に、すなわち同じロータの他のロータブレードから独立して調整可能とすることができる。しかしながら、ロータのすべてのロータブレードの迎え角を調整可能とすることもでき、特に集合的に調整可能とすることができ、すなわち、同じ迎え角がロータのすべてのロータブレードに対して同時に設定される。このような迎え角の調整は、好ましくは、ロータに対して別個に、すなわち飛行体に設けられた1つ以上の他のロータとは無関係に、かつこのまたはこれらの他のロータのロータブレードの迎え角の任意の調整可能性とは無関係に行われる。
【0017】
ロータのシュラウドは、好ましくは、ロータを周方向に囲む構造を指す。好ましくは、シュラウドは、ロータの回転軸の軸方向に延在するロータの空気ダクトを画定する。シュラウドは、例えば、円筒形状またはトーラスの形状を有することができ、特に円筒形またはトーラス形状ハウジングとして設計することができる。シュラウドはまた、円筒形状またはトーラス形状から逸脱することができ、例えば、その空気力学的特性に関して最適化することができる。一般に、シュラウドは、任意の適切な形状を有することができる。そのようなシュラウドは、例えば、プロペラの翼端における乱流に起因する推力損失を低減し、安全性を増大することができる。代替的または付加的に、シュラウドによって形成されたダクトまたは空気ダクトを通る流れによって、追加の、特に無視できない推力を生成することができる。そのような追加の推力は、例えば、全推力の50%以上になり得る。
【0018】
ステップ(b)において測定される音値は、特に音圧とすることができる。好ましくは、音値または音圧は、例えば測定デバイス、特に1つまたは複数のマイクロフォンを使用して、時間分解能で測定される。音値は、例えば、ロータの放音の音調性および/または総レベルとすることもできる。音値から決定される音指標は、例えば、測定された音値自体、または例えば、異なる音声センサもしくは測定デバイスからのいくつかの測定値、すなわち音値、および/またはそれらの互いに対する、またはロータに対する相対位置を考慮に入れたインデックスとすることができる。特に、音指標は、適切なデータ処理ルーチンを使用して、測定音値から決定することができる。
【0019】
記載されている方法における音指標の決定は、特に、テスト構成内のロータの音値、特に音圧を測定することによって行われる。テスト構成は、特に、例えば、ロータが任意の他の構成要素(例えば、シュラウド)とともに構成要素として配置される、構成要素テストステーションまたは個別構成要素テストステーションなどのテストステーションを含むことができる。そのような構成要素テストステーションは、特に、例えば音声測定デバイスなどの適切な測定デバイスを使用して音響測定を行うように構成される。代替的または付加的に、テストステーションは風洞を含むことができる。好ましくは、ステップ(b)におけるロータの音値の測定は、テストステーション上で行われ、音値を記録するための少なくとも1つの測定デバイスは、テストステーション内のロータの位置に対して所定の位置に配置される。
【0020】
これは、特に飛行体の放音を低減する役割を果たすことができる方法が、飛行体自体の飛行動作中に行われるのではなく、代わりに、それぞれのデータがロータに関して事前に、すなわち特に地上で記録および評価されることを意味する。したがって、例えば、特性マップが、本方法においてオフラインで、すなわち飛行動作中以外で生成され、したがって飛行体の実際の飛行前に利用可能である。したがって、本方法は、特に、飛行中に記録される測定値に基づく飛行中の制御データの変更に基づく、放音を低減するための調整ベースの方法とは異なる。これは、マイクロフォン、スピーカ、適応コントローラなどの複雑かつ/または高価な機器が飛行体上に必要とされないことを意味する。
【0021】
さらに、飛行体の放音の低減を達成するために、基準測定のための複雑な飛行測定キャンペーンは必要とされない。むしろ、例えば、上記の方法は、構成要素テストステーションなどのテスト環境において、測定、特に実施が容易な掃引測定を使用して行うことができる。これはまた、飛行体の飛行動作中にロータを制御するために提供される、本方法において決定される制御データが、例えばさらなる最適化点を追加するなどのために、必要に応じていつでも再確認または更新され得るという利点を有する。
【0022】
ロータの少なくとも1つのロータブレードの回転速度および迎え角の調整可能性、または個別調整可能性は、例えば、追加の自由度を達成することができる。例えば、ブレードの迎え角を調整することによって、異なる回転速度に対して実質的に一定の推力を達成することができ、またはその逆も可能である。特に、これは、動作パラメータ値対としても参照される、ブレードの迎え角と回転速度との異なる組み合わせによって所定の推力値を達成できることを意味する。本明細書に記載されている方法は、飛行動作中に二次ロータ、特にテールロータなどのロータによる放音の改善、特に最小化が達成され得るように、達成されるべき推力値の動作パラメータ値対を選択するために使用することができる。この方法はまた、シュラウド付きロータの複雑な音響特性を単純な様式で考慮に入れることを可能にする。特に、例えば、シュラウド付きロータの周波数依存音響シグネチャは、シュラウドの周波数依存減衰特性が利用されるようにロータが動作中に制御されるように、本方法によって有利に適用することができる。したがって、好ましくは、ロータは、ステップ(d)において、シュラウドによって好ましくは減衰されないロータの放音の周波数が回避されるように制御される。言い換えれば、ロータは、好ましくはライナが使用されるときに、ロータがシュラウドによって減衰される周波数を有する放音を実質的に生成するように、ステップ(d)において制御される。
【0023】
好ましくは、ステップ(d)による少なくとも1つのロータの制御は、飛行体がホバー飛行しているときに少なくとも一時的に行われる。特に、ホバリングは、それが実質的に変化しない水平および垂直位置に留まる飛行体の状態であると理解される。飛行体がホバリングしているとき、例えば、ロータのブレード負荷の増大が必要とされる場合があり、これは、高い音調成分を伴う可能性があり、同時に、飛行体は、地上の同じ位置の上方に長時間留まる。したがって、ホバリング時の飛行体の放音を最小限に抑えることが特に望ましい場合がある。
【0024】
好ましくは、本方法において、ステップc)における割り当ては、ロータの回転速度および/または迎え角および/またはそれによって達成される推力値の関数としての音指標のグラフおよび/または表形式の表現を含む。グラフ表現は、例えば、1つまたは複数の関数または測定曲線の表現とすることができる。これは、例えば、それぞれの値のより単純な表現を提供し、および/または、測定値の補間を単純化することができる。
【0025】
好ましくは、ステップc)において記憶される割り当ては、数値シミュレーションおよび/または補間によって決定されるさらなる音指標および/または動作パラメータ値対および/または推力値によって補完される。特に、数値シミュレーションは、ロータシステムの空気力学のシミュレーション(計算流体力学、cfd:computational fluid dynamics)および/またはロータシステムの音響特性のシミュレーション(計算空気力学、caa:computational aeroacoustics)を含むことができる。そのようなシミュレーションおよび/または補間は、例えば、測定労力を低減することができる。そのような数値シミュレーションの例は、冒頭で述べた文献に記載されている。
【0026】
好ましくは、ステップd)において、ロータの制御の基礎となる音指標は、ロータの放音の低減が達成されるように選択される。この目的のために、例えば、ロータは、所定の推力を所望の推力を生成する異なる動作パラメータ値対によって達成するためのテスト環境において制御することができ、対応する音指標を決定することができる。したがって、最小の音指標が決定された動作パラメータ値対が、好ましくは、飛行モードにおけるロータの後続の制御のために選択される。これにより、例えば、単純な様式で放音を低減することが可能になる。
【0027】
好ましくは、音指標は、ロータの放音の音調性および/または総レベルを含む。音調性を低減することにより、動作中に飛行体によって引き起こされる音生成を、例えば、人間の耳にとってあまり不快でないように思われるようにすることができる。総レベルを小さくすることにより、例えば、放音の総音量を小さくすることができる。
【0028】
放音の音調性は、好ましくは、放音のピーク音レベルと広帯域雑音レベルとの差として定義される。好ましくは、ピーク音レベルは、測定周波数スペクトルの規定された周波数において決定される。例えば、ピーク音レベルの規定された周波数は、少なくとも1つのロータブレードまたはロータブレードの特性翼通過周波数とすることができる。これらの特性翼通過周波数は、とりわけ、ロータブレードの数、それらの互いからの角度距離、およびロータの回転速度から生じる。しかしながら、音調性はまた、いくつかの周波数を考慮に入れることもできる。この場合、複数の周波数について、それぞれのピーク音レベルと広帯域雑音レベルとの差の算術平均が計算される。特に、算術平均化は、所定の周波数範囲に制限することができる。
【0029】
好ましくは、この方法は、そのシュラウドがロータの回転軸に対する周方向中空構造によって形成されるロータを使用して行われ、中空構造は、好ましくは、ロータに面するその周面上の少なくともその区画においてガス透過性である領域を有し、中空構造はさらに、好ましくは、ガス透過性領域を通じて中空構造内に侵入する少なくとも1つの周波数の音響波が中空構造によって少なくとも部分的に吸収されるように構成される。ロータおよびそのシュラウドは、ロータシステムとしても参照される。ガス透過性領域、例えばシュラウドの表面の断面微小穿孔は、ライナとしても参照され、例えば、ロータの回転によって生成されるロータ翼端渦がシュラウドの中空構造に導入されるようにすることができる。特に、シュラウドのこの構成は、ロータの放音の周波数依存減衰を達成することができる。本方法は、ロータの動作中のその音生成がシュラウドによって特に良好に減衰され得る動作パラメータ値対を具体的に選択するために使用することができるため、記載されている方法は、そのようなロータシステムにとって特に有利であることが判明している。
【0030】
好ましくは、飛行体はヘリコプタとして設計され、ロータは、ヨー軸を中心としたトルク補償および制御のために構成された二次ロータ、さらに好ましくはヘリコプタのテールロータであり、さらに好ましくは、ヘリコプタは、二次ロータを所定の回転速度に従って回転させるように構成された別個の駆動装置、特に電気モータを備える。二次ロータ、特にテールロータに別個の駆動装置を設けることによって、ロータの回転速度は、例えば、単純な様式で別個に調整することができる。
【0031】
好ましくは、ロータは飛行体の第1のロータであり、飛行体は、飛行体に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成された少なくとも第2のロータを備え、第2のロータはシュラウドを設けられ、第2のロータの回転速度および第2のロータの少なくとも1つのロータブレードの迎え角、好ましくは第2のロータのすべてのロータブレードの均一な迎え角は、第1のロータから独立して第2のロータ向けに調整可能であり、好ましくは、ステップa)~d)は、第1のロータおよび少なくとも第2のロータに対して別個に、または少なくとも2つのロータの総音値を測定することによって行われる。言い換えれば、本発明は、マルチロータシステムとしても参照されるいくつかのシュラウド付きロータを有する飛行体にも適用可能である。いくつかのシュラウド付きロータの使用は、例えば、個別に制御可能なロータを組み合わせるためのいくつかの可能性があるため、例えば、放音を低減するための追加の自由度を提供することができる。
【0032】
本発明によれば、少なくとも1つのロータを有する飛行体のための制御データ提供ユニットが提供され、ロータは、飛行体に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成されており、ロータは、シュラウドを設けられており、ロータの回転速度およびロータの少なくとも1つのロータブレードの迎え角は、そのロータ向けに、特に、飛行体上に設けられたさらなるロータから独立して調整可能である。制御データ提供ユニットは、
(a)ロータの少なくとも第1の動作パラメータ値対および少なくとも第2の動作パラメータ値対を定義するための定義ユニットであって、動作パラメータ値対は、それによって達成される同じ推力値におけるロータの異なる回転速度および迎え角をそれぞれ指定する、定義ユニットと、
(b)第1の動作パラメータ値対の第1の音指標および第2の動作パラメータ値対の第2の音指標を決定するための決定ユニットであって、決定は、テスト構成においてロータの音値を測定することを含む、決定ユニットと、
(c)第1の音指標および第2の音指標を、それぞれの動作パラメータ値対への割り当てとともに記憶するためのメモリユニットと、
(d)飛行体の動作中にロータを制御するための制御データを出力するための出力ユニットであって、制御データは、メモリユニットに記憶された割り当てを参照して、かつ、少なくとも選択的に得られるべき第1の音指標または第2の音指標の関数として、第1の動作パラメータ値対または第2の動作パラメータ値対に従ってロータの制御を指定する、出力ユニットと
を備える。
【0033】
このような制御データ提供ユニットによって、例えば、上述した方法と同じ効果および利点を達成することができる。
【0034】
本発明による飛行体は、飛行体に作用するトルクを補償または少なくとも低減するように構成されているロータを備え、ロータは、シュラウドを設けられており、ロータの回転速度およびロータの少なくとも1つのロータブレードの迎え角は、そのロータ向けに、特に、飛行体上に設けられたさらなるロータから独立して調整可能である。さらに、飛行体は、本発明による制御データ提供ユニットによって提供される制御データを使用して飛行体の動作中に少なくとも一時的に少なくとも1つのロータを制御し、および/または、本発明による方法のステップ(d)に従ってそれを制御する制御ユニットを有する。好ましくは、少なくとも1つのロータは、制御データ提供ユニットによって提供される制御データを使用して、および/またはステップ(d)に従って、少なくとも飛行体のホバー飛行中に制御される。
【0035】
本発明のさらなる特徴および有用性は、図面を参照して例示的な実施形態にも基づいて下記に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明による方法を行い、本発明による制御データ提供ユニットと共に使用するのに適したロータを有する飛行体の概略図である。
【
図3】
図1および
図2に示すシュラウドおよびロータブレードの一部分を部分的に断面で示す概略斜視図である。
【
図4】
図1~
図3に示すシュラウドおよびロータブレードの一区画の概略断面図である。
【
図5】
図1~
図4に示すロータを使用する本発明による方法の概略図である。
【
図6】本発明による制御データ提供ユニットの概略図である。
【
図7a】
図5に示す方法によって生成される例示的な概略グラフ図である。
【
図7b】
図5に示す方法によって生成される例示的な概略グラフ図である。
【
図7c】
図5に示す方法によって生成される例示的な概略グラフ図である。
【
図8】
図7a~
図7cに示すグラフに基づいて作成された、
図1~
図4に示す飛行体を制御するために使用することができる例示的な概略表図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、
図1~
図4を参照すると、本発明による方法を行い、本発明による制御データ提供ユニットと共に使用するのに適した飛行体が記載されている。図に示されている飛行体はヘリコプタ1である。
図1に示すヘリコプタ1は、メインロータ3を有する胴体2と、テールロータ5が設けられたテールブーム4とを備える。テールロータ5には、テールロータを周方向に囲むシュラウド15が設けられている。メインロータ3は、実質的に、ヘリコプタ1の動的な上昇および場合によっては水平運動を生成する役割を果たし、テールロータ5は、少なくとも胴体2に作用するトルクを補償し、特に、胴体2をメインロータの回転とは反対方向に回転させる、メインロータ3によって生成される反トルクを補償する役割を果たす。
【0038】
さらに、テールロータ5は、メインロータ3から独立して駆動することができ、すなわち、メインロータに結合されておらず、特にそれに機械的に結合されていない。この目的のために、
図1に示すヘリコプタ1は、テールロータ5を所定の回転速度で回転させるように構成された駆動装置6、特に電気モータを備える。
図1において、駆動装置6は、テールロータ5のロータハブ16の上または中に設けられる。あるいは、駆動装置6は、回転ハブ以外のヘリコプタ1上のロケーションに設けることもでき、その場合、駆動装置6からの駆動力がテールロータ5に伝達される。
図5の実施形態では、ヘリコプタ1はまた、ここではバッテリの形態のエネルギー貯蔵部7を有し、これはエネルギー、特に電気エネルギーを駆動装置6に供給する。
【0039】
ヘリコプタ1はまた、ヘリコプタの個々の構成要素、特にテールロータ5の駆動装置6および図示されていないメインロータ3の駆動装置を、
図1の矢印によって示されるように協調して制御することができる制御ユニット8を有する。特に、制御ユニットは、テールロータ5の回転速度およびテールロータ5のブレードの迎え角を指定することができる(下記参照)。本出願では、「制御ユニット」という用語は、ヘリコプタまたはヘリコプタの1つまたは複数の構成要素の動作を制御するように構成されたコンピュータ制御部を指す。この目的のために、制御ユニット8は、例えば、プロセッサ、メモリ、および出力インターフェースを備えることができる。例えば、制御ユニット8は、コンピュータとすることができる。制御ユニットは、例えば、その動作がコンピュータプログラム(ソフトウェア)によって制御される中央処理装置(CPU:central processor)を含むことができる。コンピュータプログラムは、そこからそれを制御ユニット8にロードすることができる記憶媒体またはサーバ上に制御ユニットとは別個に記憶することができ、および/またはコンピュータプログラムは、ネットワーク、例えばインターネットを介して制御ユニット8にロードすることができる。
【0040】
テールロータ5は、
図2~
図4を参照して下記により詳細に説明される。テールロータ5は、ロータハブ16の周りに配置され、ロータハブ16からシュラウド15の方向に半径方向に延在するいくつかのロータブレード20を備える。ロータブレード20の半径方向延在範囲は、ロータ翼端21としても参照される、シュラウド15に面するロータブレード20の端部がシュラウド15から一定の距離を置いて設けられるように寸法決めされる。したがって、ロータ翼端21とシュラウド15との間に間隙22が設けられ、これは翼端隙間としても参照される。ロータハブ16は、好ましくは、いくつかの支持支柱またはステータ17によって保持され、
図2において図面の平面に垂直に延在する回転軸Rを中心に回転可能である。
【0041】
シュラウド15は、回転軸Rに対して回転方向にテールロータ5を囲み、回転軸Rの軸方向に延在するテールロータ5の空気ダクト18を画定する。
図3および
図4からも分かるように、回転軸Rに垂直なロータブレード20によって形成されるロータ平面RAにおいて、テールロータ5に面するシュラウド15の周面23は、ロータ平面RAと交差し、回転軸Rに対してロータ平面RAの両側に軸方向に延在するガス透過性領域23aを有する。例えば、ガス透過性領域23aは、シュラウド15に挿入されて固定される、微小穿孔を有する有孔プレートによって形成することができる。微小穿孔によって導入される空孔率は、例えば50%であり、好ましくは周方向および回転軸Rに対する軸方向に一定であることが好ましい。ガス透過性領域23aは、ロータブレード20のロータ翼端21の半径方向突出部を覆い、その結果、ロータ翼端21とガス透過性領域23aとの間の間隙22内に生成されるロータ翼端渦を、ガス透過性領域23aを通じてシュラウド15によって形成される中空構造25内に導入することができる。
【0042】
上記のシュラウド15の構成の代替として、ガス透過性領域23aを有しないシュラウドを設計することもできる。シュラウド15は、中空構造を形成しないこともでき、例えば、連続体として形成することができる。
【0043】
図4に概略的に示すように、テールロータ5のロータブレード20の迎え角は、可変または調整可能である。迎え角の調整可能性は、例えば、ブレード(図示せず)の迎え角のための別個に設けられた駆動装置と、制御ユニット8による対応する制御とによって実現することができる。ロータブレード20の迎え角は、テールロータ5の回転軸Rに垂直に延在する半径方向軸Xを中心としてロータブレード20を回転させることによって変更される。
図4は、第1の迎え角におけるロータブレードを実線で概略的に示し、第1の迎え角とは異なる第2の迎え角における同じロータブレード20を破線で示す。
【0044】
ブレードの迎え角の調整可能性とテールロータ5の回転速度とを組み合わせることにより、メインロータの回転にその動作が結合されたテールロータと比較して、追加の自由度を達成することができる。例えば、この組み合わせを使用して、ブレードの迎え角を調整することによって、異なる回転速度に対して実質的に一定の推力を達成することができ、またはその逆も可能である。言い換えれば、下記に動作パラメータ値対としても参照される、ブレードの迎え角と回転速度との異なる組み合わせによって所定の推力値を達成できる。動作パラメータ値対の選択は、下記により詳細に説明するように、テールロータ5による放音の改善、特に最小化が達成されるような推力値が達成されるように行われる。
【0045】
任意選択的に、シュラウド15によって形成される中空構造25は、図に示されていない補強要素および/または中空構造要素を有することができ、これは、例えば、カバーとして機能することができ、その寸法および位置付けはまた、中空構造内に導入されるかまたはその中を伝播する音響波の減衰に影響を及ぼすことができ、および/または、例えば、各場合に局所的に異なる共振器容積を形成し、それによって周波数の減衰に影響を及ぼすために、中空構造25内にチャンバを形成する。
【0046】
以下では、
図5~
図8を参照して、本発明によるテールロータ5を制御するための本発明による方法および本発明による制御データ提供ユニットの例示的な実施形態について説明する。
【0047】
図6に示す制御データ提供ユニット100は、
図5に示す方法を行うために、ヘリコプタ1の外部に設けられている。ここで、ヘリコプタ1または少なくともそのテールロータ5は、テスト環境、例えばテストステーション上またはテストステーション内に配置される。テスト環境は、テストステーション内のテールロータの位置に対して所定の位置に配置された、例えば時間範囲内の音圧を記録するための1つまたは複数の音センサまたは測定デバイスを備える。音センサまたは測定デバイスは、テスト環境において、例えば1つまたは複数のマイクロフォンとして、テールロータ5によって放出される音圧を測定するように構成される。音圧の時間分解能(サンプリングレート)は、音響信号のすべての関連する周波数を分解することができるように選択されなければならない。下流データ処理ルーチン(後処理)を使用して、続いて測定信号から所望の音指標を決定することができる。音指標は、例えば、テールロータ5の放音の音調性または総レベルとすることができる。
【0048】
制御データ提供ユニット100は、定義ユニット101を備え、定義ユニットは、第1のステップ51において、少なくとも2つの異なる動作パラメータ値対を定義し、これらは各々、テールロータの、それによって生成される同じ値の推力に対するテールロータのブレードの回転速度および迎え角を含む。好ましくは、3つ以上の異なる動作パラメータ値対、ならびに異なる推力値に対するそれぞれの動作パラメータ値対が定義される。
【0049】
続いて、第2のステップ52において、テールロータ5は、それぞれの動作パラメータ値対に従ってテスト環境内で制御され、それぞれの動作状態の音圧が、少なくとも1つまたは複数の音センサまたは測定デバイスによって測定される。次いで、テールロータ5の音指標、例えば、放音の音調性または総レベルが、テスト構成におけるそれぞれの動作パラメータ値対の測定音圧から決定される。次いで、制御データ提供ユニット100の決定ユニット102が、測定放音放音およびそれらから導出される音指標に基づいて、各動作パラメータ値対の音指標を決定する。これは、音指標自体、または例えば、異なる音センサもしくは測定デバイスからのいくつかの測定値、および/もしくはそれらの互いに対する、もしくはテールロータに対する相対位置を考慮した指標とすることができる。
【0050】
この目的のために、例えば、テールロータ5のブレードの推力、回転速度、および迎え角のパラメータは、テスト環境で調べることができ、それぞれの放音を測定することができる。そのような手順は、純粋に一例として、
図7a~
図7cの測定曲線によって示されている。
【0051】
図7aは、回転速度の3つの異なる値に対する迎え角(
図7aの横軸)の関数としての推力(
図7aの縦軸)を示す。言い換えれば、
図7aに示すグラフは、一定の回転速度においてテールロータに対するブレードの迎え角を変更し、ブレードの迎え角の関数として推力を測定することによって得られる。
図7aにおいて、
図7bおよび
図7cと同様に、回転速度の異なる値にN
R,-およびN
R,0およびN
R,+のラベルが付されており、N
R,0はロータの公称回転速度(100%)に対応し、N
R,+はこの公称回転速度の115%に対応し、N
R,-は公称回転速度の90%に対応する。
図7a~
図7cでは、回転速度値N
R,-が破線として示され、回転速度値N
R,0が実線として示され、回転速度値N
R,+が点線として示されている。推力は、
図7aにおいて、ロータの達成可能な最大推力の割合として示されている。
図7a~
図7cでは、ブレードの迎え角は角度(°)単位で与えられる。
【0052】
推力(
図7a参照)は、例えば、ロータまたはそのシュラウドと接触して設けられ、ロータによって生成される機械力を検出する適切な力測定デバイスによって測定することができる。
【0053】
同時に、または後続のステップにおいて、音値(
図7b、
図7cの縦軸)はまた、一定の回転速度におけるブレード(
図7b、
図7cの横軸)の変化する迎え角の関数として測定される。
図7bのグラフは、音指標として、テールロータ5の放音の測定音調性に基づき、一方、
図7cの図においては、音指標として総音レベルを測定した。音調性(
図7b)および総音レベル(
図7c)は各々、本実施例ではdB単位で与えられる。音調性は、特に、ピーク音レベルと広帯域雑音レベルとの間の差であって、ピーク音レベルが、測定周波数スペクトルの所定の周波数において決定される、差、または、所定の周波数におけるいくつかのピーク音レベルと広帯域雑音レベルとの間の差の算術平均として定義することができる。例えば、ピーク音レベルの所定の周波数は、ロータブレードの1つまたは複数の特性翼通過周波数によって定義することができる。これらの特性翼通過周波数は、とりわけ、ロータブレードの数、それらの互いからの角度距離、およびロータ速度から生じる。特に、算術平均は、所定の周波数範囲、例えば300Hz~3000Hzに制限することができる。
【0054】
第1のステップ51において定義された動作値対および第2のステップ52において割り当てられた音指標は、次いで、
図5の第3のステップ53において、例えば制御データ提供ユニット100の記憶媒体またはデータキャリア上のメモリユニット103によって記憶される。
図7a~
図7cの例では、例えば、グラフ自体、またはグラフの基礎となるデータを記憶することができる。
【0055】
続いて、テールロータ5の指定された推力値について、第3のステップ53において記憶された複数のデータから1つの動作パラメータ値対が選択される。この選択は、決定され記憶された音指標に基づいて行われる。例えば、最小の音指標が決定された動作パラメータ値対を、特定の推力値に対して選択することができる。
【0056】
これについては、
図7a~
図7cのグラフの例を使用して下記に再度説明する。
図7aには、4つの異なる推力値S
1、S
2、S
3およびS
4が示されており、設定回転速度の各々の推力値の各々は、ブレードの特定の迎え角によって達成され、
図7aでは、各々が測定曲線上にある点(それぞれの推力値とそれぞれの回転速度値に割り当てられた測定曲線との交点)によって示されている。
図7bおよび
図7cのグラフと比較することによって、テールロータ5の放音の最小音調性(
図7b)または最小総音量レベル(
図7c)が、ブレードの迎え角またはブレードの迎え角と回転速度との対(動作パラメータ値対)のいずれに対して測定されたかを決定することが可能であり、これは、それぞれの推力値S
1、S
2、S
3およびS
4でラベル付けされた点として
図7bおよび
図7cに示されている。言い換えれば、
図7bおよび
図7cの点S
1、S
2、S
3およびS
4は各々、音調性(
図7b)または総音レベル(
図7c)の最小値を有するブレードの迎え角と回転速度との対(動作パラメータ値対)を示す。
【0057】
続いて、第4のステップ54において、出力ユニット104が、ヘリコプタ1の飛行動作中にテールロータ5を制御するための制御データを出力し、これは、テールロータ5の推力値が達成されるようにテールロータ5を制御するために、ステップ53において選択されたそれぞれの動作パラメータ値対を指定する。
図7a~
図7cの例では、例えば、それぞれの推力値に対してテールロータ5の放音の音調性が最小になる(
図7b)か、または総音レベルが最小になる(
図7cについて)動作パラメータ値対を出力することができる。
【0058】
制御データ出力は、例えば表の形式で記憶することができる。この目的のために、ヘリコプタ1の異なる動作モードを定義するために、異なる音指標および対応する動作パラメータ値対も記憶することができる。
図8は、
図7a~
図7cを参照して説明した測定値に基づく純粋に例示的な表を示す。所定の推力値S
1、S
2、S
3、S
4...について、ブレードの回転速度Nと迎え角Φとのそれぞれの動作パラメータ値対が、上述したステップ51~54において決定され、それによって、放音の音調性の低減が達成され(「低調性」モード)るか、または総音レベルの低減が達成され(「低総音レベル」モード)、必要に応じて、音特性の他の基準が満たされる。これは、
図8における、テールロータ5の異なる動作モード、例えば、放音の音調性を低減するための動作モード、および、総音レベルを低減するための動作モードを規定する。言い換えれば、
図8の表は、
図7bおよび
図7cを参照して、点S
1、S
2、S
3およびS
4によって決定されるブレードの迎え角と回転速度との対(動作パラメータ値対)を列挙する。
【0059】
ヘリコプタ1の飛行動作中、テールロータ5は、
図8の表に格納された値に従って、すなわち、表にそれについて格納された動作パラメータ値対に従って動作モードに応じたテールロータの目標推力値に対して制御することができる。ここで、動作モードは、パイロットによって、または例えば制御ユニット8によって自動的に選択することができる。
【0060】
例えば、ヘリコプタ1がホバリングしているとき、すなわち、ヘリコプタが実質的に変化しない水平および垂直位置に留まる状態では、テールロータ5のブレード負荷の増大が必要であり、これは通常、音調成分の優位性を伴う。加えて、ヘリコプタは、ホバリング時に長い間同じ地上位置の上方に留まり、結果、ここでは放音の低減が特に望ましい。したがって、ホバリングするとき、テールロータ5は、好ましくは、上述の「低音調性」動作モードに従って動作される。
【0061】
図5を参照して上述した方法では、すべての必要な値、すなわち特に推力値、動作パラメータ値対および音指標を測定によって決定する必要はない。むしろ、これらの値の一部のみを測定によって決定し、補間および/または数値シミュレーションによってさらなる値を生成することも可能である。これにより、必要な測定作業の量を低減することができる。
【0062】
例えば、ブレードの連続的に設定される迎え角に基づく上記の測定の代替として、
図7a~
図7cに示す曲線はまた、ブレードの迎え角のいくつかの離散値ならびに対応する推力値および音指標に基づいて決定することもでき、図に示す連続関数は、補間によって離散測定値から生成される。
【0063】
数値シミュレーションを使用して追加の値を生成することもできる。数値シミュレーションは、例えば、動作中のテールロータ5の流れ場のシミュレーション、およびこの流れ場が基礎とする音響源の計算(計算流体力学、cfdとしても知られる空気力学の数値シミュレーション)を含むことができる。数値流れシミュレーションは、シュラウド付きテールロータ5の全体的なシステム、特にシュラウドおよび/またはシュラウド上に設けられたライナの中空構造25の効果、ならびにその周りの流れを数値的に計算する音響効果(計算空気力学、caa)の数値シミュレーションによって補完することができる。そのような数値シミュレーションの例は、冒頭で述べた文献に記載されている。
【0064】
図5を参照して上述した方法では、テールロータ5を制御するためのそれぞれの動作パラメータは、ヘリコプタ1の動作中、すなわち飛行中に放出される放音に関して改善が達成され得るように選択される。ここで、達成されるべきさらなる効果または最適化点を考慮に入れて本方法を補完することができ、すなわち、テールロータ5を制御するためのそれぞれの動作パラメータの選択をそれに応じて変更することができる。例えば、放音の音調性または総音レベルを、ヘリコプタ1の飛行高度、受信機までの距離などの特定の態様の下で最適化することができる。この目的のために、例えば、地面上の音シグネチャの計算を、適切な数値モデルを使用して決定することができる。
【0065】
本発明のさらなる発展によれば、
図5に関して上述した方法および
図6に関して上述した制御データ提供ユニットは、2つ以上のシュラウド付きロータを有するヘリコプタ、またはより一般的には飛行体にも適用することができる。このために、飛行体は、シュラウドが設けられ、そのブレードの回転速度および迎え角を独立して、特に第1のロータから独立して調整することができる少なくとも1つのさらなる(以下、第2の)ロータを備える。第1のロータと同様に、第2のロータは、飛行体に作用するトルクを補償するか、または少なくとも低減するように少なくとも構成されている。動作パラメータ値対および/または推力値および/または音指標を決定する上記のステップは、ロータの各々に対して個別に行うことができ、または、複数のロータによって達成される総推力、例えば総前進推力、および/または総音値を考慮に入れて行うことができる。異なるロータを組み合わせる可能性は、音最適化のためのさらなる自由度を提供することができる。
【0066】
第1のロータおよび/または第2のロータは、テールロータとして構成される必要はなく、飛行体の任意の他の適切な位置に設けることもできる。したがって、一般に、それらは、特にそれらが飛行体のメインロータに加えて設けられている場合は二次ロータとして、または一般にロータとしても参照され得る。トルク補償に加えて、第1のロータおよび/または第2のロータはまた、飛行体の動的な上昇および/または水平運動を生成する役割を果たすこともできる。ヘリコプタとして設計される代わりに、飛行体は、別の飛行体、例えば、エアキャブ、eVTOL(電動垂直離着陸航空機)またはドローンであってもよい。
【国際調査報告】