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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置のための電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241219BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241219BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20241219BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/525
H01M4/136
H01M4/131
H01M4/505
H01G11/36
H01G11/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534084
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022051970
(87)【国際公開番号】W WO2023107459
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/286,321
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513295777
【氏名又は名称】ファーストキャップ・システムズ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】FastCAP SYSTEMS Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ブランビッラ,ニコロ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ワンジュン ベン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジィ
(72)【発明者】
【氏名】ユー,トーマス エム
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078BA47
5E078BA52
5E078FA13
5H050AA14
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050DA09
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA16
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
(57)【要約】
エネルギー貯蔵装置用の電極が開示される。電極は、活性層を含む。活性層は、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤、を含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極であって、
活性層であって、
高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、前記ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワークと、
前記ネットワーク内の前記空隙に配置された複数の電極活物質粒子と、
(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤と、を含む、活性層を含む、電極。
【請求項2】
高アスペクト比炭素要素のネットワークが、
複数の第1のカーボンナノチューブ又は第1のカーボンナノチューブの複数の束を含むカーボンナノチューブの第1のセット、及び
カーボンナノチューブの第2のセットであって、
前記カーボンナノチューブの第2のセットが、複数の第2のカーボンナノチューブ又は第2のカーボンナノチューブの複数の束を含み、
前記カーボンナノチューブの第2のセットが、前記カーボンナノチューブの第1のセットとは異なる1つ以上の特性を有する、カーボンナノチューブの第2のセットを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの第1のセットが多層カーボンナノチューブを含む、請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの第2セットが単層カーボンナノチューブを含む、請求項2に記載の電極。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブの第1のセットが多層カーボンナノチューブを含み、
前記カーボンナノチューブの第2のセットが単層カーボンナノチューブを含み、
前記カーボンナノチューブの第1のセットと前記カーボンナノチューブの第2のセットとの重量比が約2:1である、請求項2に記載の電極。+
【請求項6】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、多層カーボンナノチューブのセットを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記活性層が、前記活性層の0.25重量%~1.5重量%の多層カーボンナノチューブを含む、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記活性層が、前記活性層の0.2重量%~2重量%の多層カーボンナノチューブを含む、請求項6に記載の電極。
【請求項9】
前記多層カーボンナノチューブが分岐カーボンナノチューブである、請求項6に記載の電極。
【請求項10】
前記多層カーボンナノチューブが、分岐する、互いにかみ合う、絡み合う、及び/又は共通の壁を共有する、請求項6に記載の電極。
【請求項11】
エネルギー貯蔵装置であって、
電解質と、
請求項5に記載の電極と、を備え、前記電解質で湿潤されると、前記カーボンナノチューブの第1のセットに含まれる前記多層ナノチューブが、前記カーボンナノチューブの第2のセットに含まれる前記単層カーボンナノチューブよりも膨潤する、エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記多層カーボンナノチューブが、
6nm~10nmの平均直径と、
6nm~7nmの平均壁厚と、
約16ミクロンの平均長と、を含む、請求項5に記載の電極。
【請求項13】
前記単層カーボンナノチューブが、
1nm~2nmの平均直径と、
約5ミクロンの平均長と、を含む、請求項5に記載の電極。
【請求項14】
前記単層カーボンナノチューブが、
3nm~5nmの平均直径と、
少なくとも200ミクロンの平均長と、を含む、請求項5に記載の電極。
【請求項15】
前記単層カーボンナノチューブが、
3nm~5nmの平均直径と、
7~8ミクロンの平均長と、を含む、請求項5に記載の電極。
【請求項16】
前記単層カーボンナノチューブが、平均して1層又は2層の壁を含む、請求項5に記載の電極。
【請求項17】
前記単層カーボンナノチューブが、
5nm~6nmの平均直径と、
7~8ミクロンの平均長と、を含む、請求項5に記載の電極。
【請求項18】
前記単層カーボンナノチューブが、
1nm~34nmの長さの範囲と、
7~8ミクロンの平均長と、を含む、請求項5に記載の電極。
【請求項19】
電解質で湿潤された後、前記電極の平均厚さが10%未満増大する、請求項5に記載の電極。
【請求項20】
前記カーボンナノチューブの第1のセットの第1の平均アスペクト比が、前記カーボンナノチューブの第2のセットの第2の平均アスペクト比よりも大きい、請求項5に記載の電極。
【請求項21】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが複数の多層カーボンナノチューブを含み、
前記複数の多層カーボンナノチューブの長さの分布が、多層カーボンナノチューブの公称長さに向かって偏っている、請求項1に記載の電極。
【請求項22】
前記多層カーボンナノチューブの前記公称長さが、少なくとも15ミクロンである、請求項21に記載の電極。
【請求項23】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが複数の多層カーボンナノチューブを含み、
前記複数の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%が、8ミクロンを超える長さを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項24】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが複数の多層カーボンナノチューブを含み、
前記複数の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%が、12ミクロンを超える長さを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項25】
前記カーボンナノチューブの第1のセットの平均アスペクト比が少なくとも100である、請求項5に記載の電極。
【請求項26】
前記カーボンナノチューブの第1のセットの平均アスペクト比が200~1000である、請求項5に記載の電極。
【請求項27】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが複数の多層カーボンナノチューブを含む多層カーボンナノチューブのセットを含み、
前記複数の多層カーボンナノチューブが、5ミクロンを超える平均長を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項28】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが複数の多層カーボンナノチューブを含む多層カーボンナノチューブのセットを含み、
前記複数の多層カーボンナノチューブが、10ミクロンを超える平均長を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項29】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、セットカーボンナノ構造を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項30】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが複数の多層カーボンナノチューブを含む多層カーボンナノチューブのセットを含み、
前記複数の多層カーボンナノチューブが、少なくとも6層の壁を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項31】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが複数の多層カーボンナノチューブを含む多層カーボンナノチューブのセットを含み、
前記複数の多層カーボンナノチューブが、少なくとも7層の壁を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項32】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが複数の多層カーボンナノチューブを含む多層カーボンナノチューブのセットを含み、
前記複数の多層カーボンナノチューブが、6又は7層の壁を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項33】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、カーボンナノ構造、カーボンナノ構造の断片、及び破壊された多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項34】
前記ポリマー添加剤が、ナイロンである、請求項1に記載の電極。
【請求項35】
前記ポリマー添加剤が、水溶性である、請求項1に記載の電極。
【請求項36】
前記ポリマー添加剤が、200g/molを超える分子量を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項37】
前記ポリマー添加剤が、500,000g/molを超える分子量を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項38】
前記ポリマー添加剤が、1,000,000g/molを超える分子量を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項39】
前記ポリマー添加剤が、500,000g/mol~2,000,000g/molの分子量を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項40】
前記ポリマー添加剤が、500,000g/mol~1,500,000g/molの分子量を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項41】
前記活性層が、20ミクロン~30ミクロンの平均厚さを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項42】
前記活性層が、20ミクロン~200ミクロンの平均厚さを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項43】
前記活物質粒子が、リン酸鉄リチウムを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項44】
前記活物質粒子が、リチウム金属酸化物を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項45】
前記活物質粒子が、リチウム金属酸化物、リチウム硫黄、酸化コバルトリチウムのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項46】
前記活物質粒子が、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト-酸化物を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項47】
前記活物質粒子が、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム-酸化物を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項48】
前記活物質粒子が、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム-酸化物を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項49】
前記電極が、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiFePO、LiNiMhCoO、及びLiNi1-x-y-zCoM1M2(式中、M1及びM2は、Al、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群からそれぞれ独立して選択され、x、y、及びzは、前記酸化物の対応する構成元素の原子分率を表し、かつ0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5の関係を満たす)からなる群から選択される少なくとも1つの電極活物質の粒子を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項50】
前記活性層が、前記活性層の重量の少なくとも98.5重量%の前記活物質粒子を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項51】
前記活性層が、前記活性層の重量の96.0重量%~98.5重量%の前記活物質粒子を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項52】
前記活性層が、前記活性層の約0.5重量%の前記ポリマー添加剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項53】
前記活性層が、前記活性層の0.25重量%~1.5重量%の前記ポリマー添加剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項54】
前記活性層が、前記活性層の1.5重量%未満の前記ポリマー添加剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項55】
前記活性層が、前記活性層の約25重量%の分散剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項56】
前記活性層が、前記高アスペクト比炭素要素と、前記活物質粒子との間の接着を促進する、前記高アスペクト比炭素要素の表面上の表面処理を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項57】
前記表面処理が、202℃未満の沸点を有する溶媒に可溶な材料を含む、請求項56に記載の電極。
【請求項58】
前記表面処理が、185℃未満の沸点を有する溶媒に可溶な材料を含む、請求項56に記載の電極。
【請求項59】
前記表面処理が、界面活性剤層を含み、
前記界面活性剤層が、前記高アスペクト比炭素要素に結合され、各々が疎水性末端及び親水性末端を有する複数の界面活性剤要素を含み、前記疎水性末端は前記炭素要素のうちの1つの表面の近位に配置され、前記親水性末端は前記炭素要素の1つの前記表面の遠位に配置されている、請求項56に記載の電極。
【請求項60】
前記表面処理が、前記ポリマー添加剤を含む、請求項56に記載の電極。
【請求項61】
前記ネットワークが、少なくとも99重量%炭素であり、パーコレーション閾値を超える接続性を呈する電気的に相互接続された炭素要素のネットワークを含み、前記ネットワークが、100μmを超える長さを有する1つ以上の高導電性経路を画定する、請求項1に記載の電極。
【請求項62】
前記ポリマー添加剤が、ポリマー結合剤である、請求項1に記載の電極。
【請求項63】
前記ポリマー添加剤が、前記高アスペクト比炭素要素のネットワークによって画定される少なくとも1つの空隙内に少なくとも部分的に配置されている、請求項1に記載の電極。
【請求項64】
前記ポリマー添加剤が、1.135g/cmを超える比重を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項65】
前記ポリマー添加剤が、1.20g/cmを超える比重を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項66】
前記ポリマー添加剤が、23℃において2.0J/g℃を超える比熱を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項67】
前記ポリマー添加剤が、23℃において2.2J/g℃を超える比熱を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項68】
前記ポリマー添加剤が、23℃において約2.4J/g℃の比熱を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項69】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、70MPa未満の引張強度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項70】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、50MPa未満の引張強度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項71】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、25MPa未満の引張強度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項72】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、10MPa未満の引張強度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項73】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、7.5MPa未満の引張強度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項74】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、5~6MPaの引張強度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項75】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、5%を超える降伏点伸びを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項76】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、10%を超える降伏点伸びを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項77】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、20%を超える降伏点伸びを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項78】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、25%を超える降伏点伸びを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項79】
前記ポリマー添加剤が、前記ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、20%~30%の降伏点伸びを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項80】
前記ポリマー添加剤が、0℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項81】
前記ポリマー添加剤が、-10℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項82】
前記ポリマー添加剤が、-25℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項83】
前記ポリマー添加剤が、-30℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項84】
前記ポリマー添加剤が、-40℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項85】
前記ポリマー添加剤が、-45℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項86】
前記ポリマー添加剤が、-50℃~-40℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項87】
前記ポリマー添加剤の5%重量減少温度が375℃~400℃である、請求項1に記載の電極。
【請求項88】
前記ポリマー添加剤の5%重量減少温度が約385℃である、請求項1に記載の電極。
【請求項89】
前記ポリマー添加剤が、水溶性である、請求項1に記載の電極。
【請求項90】
前記ポリマー添加剤が、アルコールに可溶性である、請求項1に記載の電極。
【請求項91】
前記ポリマー添加剤が、水及びアルコールの各々に可溶性である、請求項1に記載の電極。
【請求項92】
前記ポリマー添加剤とエチルセロソルブとの混合物を冷却すると、前記ポリマー添加剤がゲル化を呈する、請求項1に記載の電極。
【請求項93】
前記ポリマー添加剤が、水、エチレングリコール、ベンジルアルコール、酢酸、及びイソブタノールの各々に完全に可溶性である、請求項1に記載の電極。
【請求項94】
前記ポリマー添加剤が、N-メチルピロリドンに完全に可溶性である、請求項1に記載の電極。
【請求項95】
前記ポリマー添加剤と、水及びアルコールのうちの少なくとも1つとの水溶液が、ポリマー添加剤の約50重量%の濃度で少なくとも60Pa・sの粘度を呈する、請求項1に記載の電極。
【請求項96】
前記ポリマー添加剤と水溶性ポリマーとの混合物が、透明な混合物を形成する、請求項1に記載の電極。
【請求項97】
前記活性層が、水又はアルコールに不溶性のポリマー材料を含まない、請求項1に記載の電極。
【請求項98】
前記電極が、水又はアルコールに不溶性のポリマー材料を含まない、請求項1に記載の電極。
【請求項99】
請求項1に記載の電極を備える、ウルトラキャパシタ。
【請求項100】
電池であって、
アノードと、
電解質と、
カソードと、を備え、前記カソードが、
活性層であって、
高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、前記ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワークと、
前記ネットワーク内の前記空隙に配置された複数の電極活物質粒子と、
(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤と、を含む、活性層を含む、電池。
【請求項101】
電極であって、
活性層であって、
高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが前記ネットワーク内に空隙を画定し、
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、多層カーボンナノ構造、多層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノ構造の断片、及び破壊された多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、ネットワークと、
前記ネットワーク内の前記空隙に配置された複数の電極活物質粒子と、
水又はアルコールに可溶性であるポリマー添加剤と、を備える、活性層を備える、電極。
【請求項102】
電極であって、
活性層であって、
高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、前記ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワークと、
前記ネットワーク内の前記空隙に配置された複数の電極活物質粒子と、
水又はアルコールに可溶性であるポリマー添加剤と、を備える、活性層を備え、
ここで、
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、1つ以上の高導電性経路を形成し、
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、多層カーボンナノチューブを含み、
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、複数の電極活物質粒子の少なくとも一部に機械的支持を提供し、
前記ポリマー添加剤が、前記複数の電極活物質粒子の少なくとも一部の支持を提供する、電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月6日に出願された、米国特許出願第63/286,321号の利益を主張し、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、医療機器、電気自動車、航空機、及びラップトップコンピュータ、携帯電話、カメラなどの消費者製品を含む多くの製品に使用されている。リチウムイオン電池は、その高いエネルギー密度、高い動作電圧、及び低い自己放電により、二次電池市場を席巻しており、製品及び発展途上の産業で新たな用途を見出し続けている。
【0003】
一般に、リチウムイオン電池(「LIB」又は「LiB」)は、アノードと、カソードと、リチウム塩を含有する有機溶媒などの電解質材料と、を備える。より具体的には、アノード及びカソード(総称して「電極」という)は、アノード活物質又はカソード活物質のいずれかを結合剤及び溶媒と混合してペースト又はスラリーを形成し、次にアルミニウム又は銅などの集電体上にコーティングして乾燥させ、集電体上にフィルムを形成することによって形成される。次に、アノード及びカソードを層状又はコイル状にした後、電解質材料を含む加圧ケーシング内に収容し、これらは、全体としてリチウムイオン電池を形成する。
【0004】
従来の電極では、結合剤は、集電体上にコーティングされたフィルムが、加圧された電池ケーシングに嵌め込まれるように操作された場合でも、集電体との接触を維持するように、十分な接着剤及び化学的特性を伴って使用される。フィルムは電極活物質を含有するため、フィルムが、集電体と十分な接触を維持していない場合、電池の電気化学的特性への著しい干渉が生じる可能性がある。更に、電池の充電及び放電中の電極活物質(複数可)の膨張及び収縮の程度に耐えることができるように、電極活物質(複数可)と機械的に適合する結合剤を選択することが重要である。
【0005】
したがって、良好な機械的特性を提供するために、セルロース系結合剤又は架橋ポリマー結合剤などの結合剤が使用されてきた。しかしながら、従来の電極では、選択された結合剤は一般に、処理のために環境に優しくないか、又は有毒な溶媒を必要とする。
【0006】
以下は、図面の簡単な説明であり、図面では同様の要素には同様の番号が付けられており、これらは、本明細書に開示される例示的な実施形態を説明することを目的として提示されており、本明細書に開示される例示的な実施形態を限定することを目的とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】様々な実施形態による電極の図である。
図1B】様々な実施形態による電極の図である。
図1C】様々な実施形態による電極の図である。
図2】様々な実施形態による電極の図である。
図3】様々な実施形態による電極の図である。
図4】様々な実施形態による活性層の電子顕微鏡写真の一例である。
図5】エネルギー貯蔵装置の概略図である。
図6】様々な実施形態による電極を作製するための方法のフローチャートである。
図7】パウチセル電池の概略図を示す。
図8】エネルギー貯蔵装置(ESD)の態様を示す概略切欠図である。
図9図8のエネルギー貯蔵装置(ESD)の従来技術の貯蔵セルの態様を示す概略切欠図である。
図10】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図11】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図12】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図13】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図14】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図15】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図16】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図17】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図18】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図19】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図20】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの態様を示す概略図である。
図21】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの態様を示す概略図である。
図22】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能を示すチャートである。
図23】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図24】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図25】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図26】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図27】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図28】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図29】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
図30】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能を示すチャートである。
図31】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能を示すグラフである。
図32】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能を示すチャートである。
図33】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能を示すチャートである。
図34】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能を示すグラフである。
図35】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能を示すグラフである。
図36】様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照することによって本明細書に開示される構成要素、プロセス、及び装置をより完全に理解することができる。これらの図は、便宜及び本開示の実証の容易さに基づく単なる概略図であり、したがって、装置又はその構成要素の相対的なサイズ及び寸法を示すこと、及び/又は例示的な実施形態の範囲を定義若しくは限定することを意図するものではない。以下の説明では明確にするために特定の用語が使用されるが、これらの用語は、図面で説明するために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図しており、本開示の範囲を定義又は限定することを意図するものではない。図面及び以下の説明において、同様の番号指定は同様の機能の構成要素を指すことを理解されたい。
【0009】
様々な実施形態は、強力な電気的性能及び強力な機械的安定性を呈し、安全でクリーンな製造プロセス及びエネルギー貯蔵装置を促進するポリマー添加剤を含む電極を提供する。様々な実施形態は、水又はエタノールなどのアルコールのうちの1つ以上に可溶性ではないポリマー添加剤を含まない(例えば、含有しない)電極を提供する。いくつかの実施形態では、電極は、水又はエタノールなどのアルコールのうちの1つ以上に可溶性ではないポリマー添加剤を実質的に含有しない。いくつかの実施形態では、電極の活性層は、水又はエタノールなどのアルコールのうちの1つ以上に可溶性ではないポリマー添加剤を含有しないか、又は実質的に含有しない。例えば、様々な実施形態による電極への任意のポリマー添加剤は、水及びアルコールのうちの1つ以上に可溶性である。
【0010】
様々な実施形態によれば、電極は、活性層を備える。いくつかの実施形態では、活性層は、(i)高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワーク、(ii)ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(iii)(a)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(b)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤を含む。
【0011】
様々な実施形態によれば、電極は、活性層を備える。いくつかの実施形態では、活性層は、(i)高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワーク、(ii)ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(iii)(a)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(b)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤を含む。いくつかの実施形態では、ネットワーク内に空隙を画定する高アスペクト比炭素要素のネットワークは、カーボンナノチューブの第1のセット及びカーボンナノチューブの第2のセットを含む。カーボンナノチューブの第1のセットは、複数の第1のカーボンナノチューブ又は第1のカーボンナノチューブの複数の束を含む。カーボンナノチューブの第2のセットは、複数の第2のカーボンナノチューブ又は第2のカーボンナノチューブの複数の束を含む。カーボンナノチューブの第2のセットは、カーボンナノチューブの第1のセットとは異なる1つ以上の特性を有する。様々な実施形態によれば、カーボンナノチューブの第1のセットは、多層ナノチューブを含み、カーボンナノチューブの第2のセットは、単層ナノチューブを含む。一例として、カーボンナノチューブの第1のセットとカーボンナノチューブの第2のセットとの重量比は、約2:1である。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、6nm~10nmの平均直径、6nm~7nmの平均壁厚、13~17ミクロンの平均長を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブの平均長は、約13ミクロンである。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブの平均長は、約15ミクロンである。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブの平均長は、約16ミクロンである。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、1nm~2nmの平均直径、及び、約5ミクロンの平均長を含む。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、3nm~5nmの平均直径、及び、7~8ミクロンの平均長を含む。
【0012】
様々な実施形態によれば、電極は、活性層を備える。いくつかの実施形態では、活性層は、(i)高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワーク、(ii)ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(iii)(a)水、及び(b)アルコールのうちの少なくとも1つに可溶性であるポリマー添加剤を含む。ネットワーク内に空隙を画定する高アスペクト比炭素要素のネットワークは、多層カーボンナノチューブのセットを含んでもよい。様々な実施形態によれば、多層カーボンナノチューブのセットの長さの分布は、多層カーボンナノチューブの公称長さに向かって偏っている。例えば、多層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブの破砕又は破壊を低減又は最小限にする方法で加工及び/又は適用される。高アスペクト比炭素要素のネットワークにおける多層カーボンナノチューブの長さは、一般に、多層カーボンナノチューブの公称長さであり、又はそのような多層カーボンナノチューブの長さは、公称長さに対してより大きく偏る傾向がある。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、公称長さの10%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、少なくとも12ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、少なくとも13ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、公称長さの10%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも12ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも13ミクロンの長さを有する。
【0013】
様々な実施形態によれば、電極は、活性層を備える。いくつかの実施形態では、活性層は、(i)高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワーク、(ii)ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(iii)水又はアルコールに可溶性であるポリマー添加剤を含み、活性層は、少なくとも90N/mの電極の箔への接着を呈する。いくつかの実施形態では、活性層は、少なくとも100N/mの電極の箔への接着を呈する。いくつかの実施形態では、活性層は、約100N/mの電極の箔への接着を呈する。高アスペクト比炭素要素のネットワークは、多層カーボンナノチューブを含んでもよい。電極の箔への活性層の接着は、本明細書に記載の剥離試験に従って決定されてもよい。
【0014】
様々な実施形態によれば、電極は、活性層を備える。いくつかの実施形態では、活性層は、(i)高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワーク、(ii)ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(iii)水又はアルコールに可溶性であるポリマー添加剤を含み、電極が少なくとも6mmの直径を有するマンドレルの周りに巻かれているとき、活性層は亀裂を呈しない。高アスペクト比炭素要素のネットワークは、多層カーボンナノチューブを含んでもよい。いくつかの実施形態では、活性層が活性層内の一切の亀裂を呈しないという観察は、活性層の表面などの、活性層の人間の観察に基づいて判定される。いくつかの実施形態では、活性層の人間の観察は、顕微鏡下での電極の分析を使用して実施される。活性層が亀裂を呈するか否かを判定するための試験の例は、マンドレルのセット(例えば、最小直径から最大直径までの)に試料電極を巻き付け、試料電極を開いて正面及び背面の亀裂状態を観察し、亀裂が観察されなくなるまで、マンドレルを厚くしながら繰り返すことを含む。
【0015】
様々な実施形態によれば、電極は、活性層を備える。いくつかの実施形態では、活性層は、(i)高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、ネットワーク内に空隙を画定する、ネットワーク、(ii)ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(iii)水又はアルコールに可溶性であるポリマー添加剤を含み、活性層は、電解質で湿潤されたときに20%未満の膨張を呈する。いくつかの実施形態では、活性層は、電解質で湿潤されたときに10%未満の膨張を呈する。いくつかの実施形態では、活性層は、電解質で湿潤されたときに5%~20%の膨張を呈する。いくつかの実施形態では、活性層は、電解質で湿潤されたときに5%~15%の膨張を呈する。いくつかの実施形態では、活性層は、電解質で湿潤されたときに5%~10%の膨張を呈する。高アスペクト比炭素要素のネットワークは、多層カーボンナノチューブを含んでもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、「剥離試験」とは、90度剥離試験を意味する。2.54cm×10cmのサイズを有する試料(例えば、箔に接着された活性層を有する電極)が使用される。剥離試験の試験手順は、(i)両面カソード電極試料を10cm×2.54cmサイズに切断することと、(ii)片側に両面テープを配置し、テスタの金属板に貼り付け、Scotch透明テープの一端をクランプによって固定し、もう一端を90度の角度を付けて電極表面に平らに貼り付けることと、(iii)システムをゼロに設定すること、すなわち、移動モードを「サイクルモード」に設定することと、(iv)「sw-1x-v3」という名前の試験ファイルを開き、セットアップメニューから「com5」を選択することと、(v)左メニューリストの「全てのデータをクリアする」をクリックし、「サンプリングレートを設定する」を0.2秒に設定し、テスタを始動すると同時に「試料を連続的に」を選択することと、(vi)左メニューリストの「サンプリングを停止する」を選択し、テスタを停止し、ファイルを保存することと、を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「高アスペクト比炭素要素」という用語は、1つ以上の寸法(「主寸法」)において、横断寸法(「小寸法」)における要素のサイズよりも有意に大きいサイズを有する炭素質要素を指す。
【0018】
図1Aは、様々な実施形態による電極の図である。示される例では、電極100が提供される。様々な実施形態によれば、電極100は、集電体102及び活性層106を備える。電極100は、任意選択的に接着層104を含んでもよい。一例として、接着層104は、集電体102と活性層106との間の接着を促進する材料を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、集電体102は、導電層である。例えば、集電体102は、金属、金属合金などであってもよい。別の例として、集電体102は、金属箔である。いくつかの実施形態では、集電体102は、アルミ箔又はアルミ合金箔である。いくつかの実施形態では、集電体102は、銅箔又は銅合金箔である。集電体102は、15μm未満の厚さを有する。集電体102は、10μm未満の厚さを有する。集電体102は、8μm未満の厚さを有する。集電体102は、5μm未満の厚さを有する。集電体102は、15μm未満の厚さを有する。いくつかの好ましい実施形態では、集電体102は、約6μm~約8μmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、集電体102は、アルミ箔又はアルミニウム合金箔であり、集電体102は、約6μmの厚さを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、活性層106は、ネットワーク内に空隙を画定する高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワークを含み得る。複数の活物質粒子110が、ネットワーク内の空隙内に配置されている。したがって、活物質粒子110は、ネットワークと絡み合うか、又はネットワークに絡まり、それによって活性層106の凝集性を向上させる。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワークは、活物質粒子110のための機械的支持を提供する。
【0021】
様々な実施形態によれば、高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワークは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノ構造、単層カーボンナノチューブの断片、多層カーボンナノチューブの断片、カーボンナノ構造の断片、カーボンブラックなどのうちの1つ以上を含む。様々な他の高アスペクト比炭素要素が実装されてもよい。
【0022】
様々な実施形態によれば、活性層106(例えば、高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワーク)は、多層カーボンナノチューブを含む。いくつかの実施形態では、活性層106に含まれる多層カーボンナノチューブの量は、活性層の0.25重量%~2重量%である。
【0023】
活性層106は、20ミクロン~200ミクロンの平均厚さを有する。いくつかの実施形態では、活性層106は、20ミクロン~30ミクロンの平均厚さを有する。いくつかの実施形態では、活性層106は、約100ミクロンの平均厚さを有する。一般に、活性層は、電解質に湿潤されたときに膨潤する。膨潤(例えば、少なくとも厚さ方向への膨張)の量を測定するための一例は、1インチ径丸パンチによって電極の大きいシートから試料を穿孔することなどによって直径1インチの試料電極を取得し、活性層の厚さを測定して記録し、試料電極をコイン電池ケース内に配置し、試料電解質をコイン電池ケースに注入し、試料(例えば、電解質が注入された状態の)を1時間静置させ、1時間後に厚さを測定して記録し、次いで電極(電解質に浸されたもの)を乾燥室に配置し、金属トレイで48時間覆い、48時間静置後に電極の厚さを測定して記録することを含んでもよい。様々な実施形態によれば、活性層106の体積は、電解質で湿潤されたときに10%未満膨張する(例えば、膨潤する)。例えば、電解質で湿潤された後の活性層106の厚さは、電解質がない場合の活性層106の厚さの110%未満である。
【0024】
様々な実施形態によれば、活性層106が多層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノチューブを含む場合、多層カーボンナノチューブは、電極100が含まれているエネルギー貯蔵装置内の電解質で湿潤されると、単層カーボンナノチューブよりも膨潤する。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、電極100が含まれているエネルギー貯蔵装置内の電解質で湿潤されると、単層カーボンナノチューブよりも少なくとも15%膨潤する。例えば、多層カーボンナノチューブの長さは、電解質で湿潤されると、単層カーボンナノチューブの長さよりも少なくとも15%大きく膨張する。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、電極100が含まれているエネルギー貯蔵装置内の電解質で湿潤されると、単層カーボンナノチューブよりも少なくとも25%膨潤する。例えば、多層カーボンナノチューブの長さは、電解質で湿潤されると、単層カーボンナノチューブの長さよりも少なくとも25%大きく膨張する。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、電極100が含まれているエネルギー貯蔵装置内の電解質で湿潤されると、単層カーボンナノチューブよりも少なくとも50%膨潤する。例えば、多層カーボンナノチューブの長さは、電解質で湿潤されると、単層カーボンナノチューブの長さよりも少なくとも50%大きく膨張する。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、濡れると最大50%膨潤する(例えば、多層カーボンナノチューブの長さは、電解質で濡れた後に50%大きくなり、及び/又は多層カーボンナノチューブの直径は濡れた後に50%大きくなるなど)。
【0025】
様々な実施形態によれば、高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワークはカーボンナノチューブを含み、カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノチューブの断片のみである。例えば、高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワークは、単層カーボンナノチューブ又は単層カーボンナノチューブの断片を含まない。様々な実施形態によれば、高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワークのネットワークは、少なくとも99重量%の炭素を含む。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワークは、パーコレーション閾値を超える接続性を呈する電気的に相互接続された炭素要素のネットワークを含み、このネットワークは、100μmを超える長さを有する1つ以上の高導電性経路を画定する。
【0026】
様々な実施形態によれば、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、ネットワーク内の空隙を画定し、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、カーボンナノチューブの第1のセット及びカーボンナノチューブの第2のセットを含む。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブの第1のセットは、複数の第1のカーボンナノチューブ又は第1のカーボンナノチューブの複数の束を含み、カーボンナノチューブの第2のセットは、複数の第2のカーボンナノチューブ又は第2のカーボンナノチューブの複数の束を含む。カーボンナノチューブの第2のセットは、カーボンナノチューブの第1のセットとは異なる1つ以上の特性を有する。例えば、カーボンナノチューブの第2のセットは、カーボンナノチューブの第1のセットの層(例えば、壁)の数とは異なる層(例えば、壁)の数を有する。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブの第1のセットは、多層カーボンナノチューブを含む。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブの第2のセットは、単層カーボンナノチューブを含む。例えば、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、多層カーボンナノチューブのセット及び単層カーボンナノチューブのセットを含む。多層カーボンナノチューブのセットは、多層カーボンナノチューブの断片を有してもよく、及び/又は単層カーボンナノチューブのセットは、多層カーボンナノチューブの断片を有してもよい。様々な実施形態によれば、活性層は、単層カーボンナノチューブよりも多くの重量の多層カーボンナノチューブを含む。いくつかの実施形態では、活性層に含まれるカーボンナノチューブの第1のセットとカーボンナノチューブの第2のセットとの重量比は、約2:1である。
【0027】
関連技術のエネルギー貯蔵装置では、炭素要素のネットワークは、断片化された多層カーボンナノチューブなどの断片化されたカーボンナノチューブを含む。電極を製造するための関連技術プロセスは、である。例えば、関連技術の電極に含まれる断片化された多層カーボンナノチューブは、一般に、多層カーボンナノチューブの公称長さよりも大幅に短い平均長(例えば、活性層を作成するプロセス又は集電体上に活性層を被着させるプロセスなど、電極を製造するためのプロセスに入力される前の多層カーボンナノチューブの長さ)を有する。関連技術分野の電極に含まれる断片化された多層カーボンナノチューブは、一般に、多層カーボンナノチューブの公称長さの半分未満の平均長を有する。関連技術分野の電極に含まれる断片化された多層カーボンナノチューブは、一般に、多層カーボンナノチューブの公称長さの3分の1未満の平均長を有する。多層カーボンナノチューブを調製するためのプロセス、又は関連技術の電極のための活性層を調製/製造/適用するためのプロセスは、多層カーボンナノチューブを穏やかに扱わず、多層カーボンナノチューブを分解又は粉砕させる。より長い多層カーボンナノチューブは、一般に、活性層内の活物質粒子に対してより良好な機械的支持を提供し得る。例えば、活物質粒子が充放電サイクル中に膨張/収縮するにつれて、より長い多層カーボンナノチューブは、活物質粒子に対してより良好な機械的支持を提供する(例えば、活物質粒子は、比較的長い多層カーボンナノチューブの間でより良好に絡まれる)。加えて、より長い多層カーボンナノチューブは、ネットワーク内に形成される高導電性経路のより長い相互接続ネットワークを形成し得、活性層内の、及び活性層を通る電流フローを促進するための長い導電性経路(例えば、図1Aの電極100の活性層106などの活性層の厚さのオーダーの導電性経路)を提供し得る。
【0028】
様々な実施形態によれば、電極は、関連技術の電極に含まれる多層カーボンナノチューブと比較して比較的長い多層カーボンナノチューブを含む。比較的長い多層カーボンナノチューブを電極に使用すると、有益な機械的特性及び/又は電気的特性が得られることが見出されている。例えば、多層カーボンナノチューブは、低密度で比較的優れた出力を提供する。別の例として、より短い多層カーボンナノチューブは、一般に、より長い多層カーボンナノチューブほど膨潤(例えば、膨張)しない。したがって、より短い多層カーボンナノチューブを使用すると、カーボンナノチューブの膨潤に関連する有益な特性の一部が失われる(又は減少する)。極端な例として、カーボンブラックは、多層カーボンナノチューブのセットによって示される絡み合いのような絡み合いを持たない単なる炭素の粒子であるため、膨潤を示さない。一定量の多層カーボンナノチューブの長さが閾値長を超えており、したがって十分な膨潤特性を有することは、カレンダ加工プロセス中の観察によって示され、すなわち、箔への塗布に関連してスラリーをカレンダ加工するための比較的大きな圧力又は労力は、活性層内の多層カーボンナノチューブの集合的な膨潤(例えば、平均膨潤)が特定の性能閾値を満たすことを示す。しかしながら、多層カーボンナノチューブは一般に加工が難しい。活性層及び/又は電極の作製/形成に関連する多層カーボンナノチューブの加工は、関連技術の電極の加工よりも穏やかである。したがって、様々な実施形態によるプロセスは、より長い多層カーボンナノチューブを維持する(例えば、より少ない多層カーボンナノチューブが粉砕され、断片化され、破壊されるなど)。いくつかの実施形態では、電極の活性層は、関連技術の電極における多層カーボンナノチューブの平均長よりも長い平均長を有する多層カーボンナノチューブのセットを含む。様々な実施形態によれば、多層カーボンナノチューブのセットの長さの分布は、多層カーボンナノチューブの公称長さに向かって偏っている。一例として、多層カーボンナノチューブの公称長さは約16ミクロンである。例えば、多層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブの破砕又は破壊を低減又は最小限にする方法で加工及び/又は適用される。高アスペクト比炭素要素のネットワークにおける多層カーボンナノチューブの長さは、一般に、多層カーボンナノチューブの公称長さであり、又はそのような多層カーボンナノチューブの長さは、公称長さに対してより大きく偏る傾向がある。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、公称長さの10%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、少なくとも12ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、少なくとも13ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、公称長さの10%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも12ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも8ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも13ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、公称長さの50%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、公称長さの60%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、公称長さの75%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブの公称長さの半分よりも短い長さを有する多層カーボンナノチューブの量は、活性層の50重量%未満である。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブの公称長さの半分よりも短い長さを有する多層カーボンナノチューブの量は、活性層の30重量%未満である。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブの公称長さの半分よりも短い長さを有する多層カーボンナノチューブの量は、活性層の25重量%未満である。
【0029】
電極に含まれる多層カーボンナノチューブは、関連技術の電極の多層カーボンナノチューブよりも、長さがより長いなど、平均してより高いアスペクト比を呈する。高い粘度を有するスラリーが調製され、処理中に比較的低い剪断力にさらされる。したがって、多層カーボンナノチューブのアスペクト比は維持される。いくつかの実施形態では、活性層に含まれる多層カーボンナノチューブの少なくともサブセットは、分岐カーボンナノチューブである。いくつかの実施形態では、活性層に含まれる多層カーボンナノチューブの少なくともサブセットは、分岐する、互いにかみ合う、絡み合う、及び/又は共通の壁を共有する。多層カーボンナノチューブの特性は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して得ることができる。様々な実施形態によれば、多層カーボンナノチューブは、少なくとも5ミクロンの平均長を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、少なくとも10ミクロンの平均長を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、10ミクロン~15ミクロンの平均長を含む。様々な実施形態によれば、多層カーボンナノチューブは、6nm~15nmの平均直径を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、6nm~10nmの平均直径を含む。様々な実施形態によれば、多層カーボンナノチューブは、平均3層~15層を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、平均3層~15層を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、平均5層~10層を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、平均6層~7層を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、少なくとも平均6層を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、少なくとも100の平均アスペクト比を含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブは、200~1000の平均アスペクト比を含む。
【0030】
様々な実施形態によれば、電極は、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiFePO、LiNiMhCoO、及びLiNi1-x-y-zCoM1M2(式中、M1及びM2は、Al、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群からそれぞれ独立して選択され、x、y、及びzは、酸化物の対応する構成元素の原子分率を表し、かつ0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5の関係を満たす)からなる群から選択される少なくとも1つの電極活物質の粒子を含む。
【0031】
様々な実施形態によれば、複数の活物質粒子110は、リチウム系物質を含む。いくつかの実施形態では、複数の活物質粒子110は、リン酸鉄を含む。いくつかの実施形態では、複数の活物質粒子110は、リチウム金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、複数の活物質粒子110は、リチウム金属酸化物、リチウム硫黄、酸化コバルトリチウムのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、複数の活物質粒子110は、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト-酸化物を含む。いくつかの実施形態では、複数の活物質粒子110は、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム-酸化物を含む。いくつかの実施形態では、複数の活物質粒子110は、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム-酸化物を含む。
【0032】
活性層106は、比較的大量の活物質粒子を含む。いくつかの実施形態では、活性層106は、活性層の重量の少なくとも98.5重量%の活物質粒子を含む。いくつかの実施形態では、活性層106は、活性層の96.0重量%~98.5重量%の活物質粒子を含む。
【0033】
様々な実施形態によれば、活性層106は、ポリマー添加剤を含む。ポリマー添加剤は、複数の活物質粒子110の少なくともサブセット及び/又は高アスペクト比炭素要素108の3次元ネットワークの少なくとも一部に機械的支持を提供し得る。例えば、ポリマー添加剤は、活物質粒子又はカーボンナノチューブ(例えば、多層カーボンナノチューブ及び/又は単層カーボンナノチューブ)などのカーボン要素に結合又は接着し得る。様々な実施形態によれば、電気化学的に安定なポリマーは、活性層106へのポリマー添加剤として有益な特性を有することが見出される。ポリマー添加剤は、電極100の処理に使用される溶媒に完全に溶解可能であるか、又は高度に溶解可能であるポリマーとして選択され得る。例えば、ポリマー添加剤は、水又はエタノールなどのアルコールに溶解可能又は高度に溶解可能である。
【0034】
関連技術の電極は、一般に、有毒又は環境に悪い溶媒中にのみ可溶性であるポリマー結合剤を使用する。ポリマー結合剤は、粒子を分散させ、接着させ、結合させ、過酷な環境で存続させるために使用される。エネルギー貯蔵装置電池は、サイクリング及び数百又は数千回の充電/放電にわたって徐々に容量を失い得る。ポリマー結合剤は、その動作寿命にわたってエネルギー貯蔵装置の容量を維持するのに役立ち得る。
【0035】
様々な実施形態によれば、電極100及び/又は活性層106は、水又はエタノールなどのアルコールのうちの1つ以上に可溶性ではないポリマー添加剤を含まない(例えば、含有しない)。いくつかの実施形態では、電極は、水又はエタノールなどのアルコールのうちの1つ以上に可溶性ではないポリマー添加剤を実質的に含有しない。いくつかの実施形態では、電極100及び/又は電極100の活性層106は、水又はエタノールなどのアルコールのうちの1つ以上に可溶性ではないポリマー添加剤を含有しないか、又は実質的に含有しない。例えば、様々な実施形態による電極100への任意のポリマー添加剤は、水及びアルコールのうちの1つ以上に可溶性である。
【0036】
ポリマー添加剤は、電極100を含むエネルギー貯蔵装置に使用される特定の電解質に対するその反応に少なくとも部分的に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、比較的高い(例えば、非常に高い)分子量を有するポリマー添加剤は、そのようなポリマー添加剤が一般に溶媒に耐性であるために選択される。例えば、高分子量を有するポリマー添加剤は、溶媒中に溶解せず、一方で、低分子量を有するポリマーは、軟泥になる。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、電解質と混合したときに軟化しない(例えば、柔軟性閾値よりも軟化する)ポリマーとして選択される。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、エネルギー貯蔵装置で使用される電解質と湿潤/混合されたときに、実質的に膨張しない(例えば、所定の膨潤閾値よりも膨潤又は膨張しない)ポリマーとして選択される。
【0037】
活性層106は、水及び/又はエタノールなどのアルコールに可溶性であるポリマー添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、比較的高い分子量を有する。例えば、ポリマー添加剤は、200g/molを超える分子量を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、500000g/molを超える分子量を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、1000000g/molを超える分子量を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、500000g/mol~1500000g/molの分子量を有する。
【0038】
ポリマー添加剤は、1.0g/cm~2.5g/cmの比重を有してもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、1.135g/cmを超える比重を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、1.20g/cmを超える比重を有する。ポリマー添加剤の比重は、ASTMD792試験方法に従って測定されてもよい。
【0039】
ポリマー添加剤は、23℃で1.5J/g℃~23℃で3.5J/g℃の比熱を有してもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、23℃で2.0J/g℃を超える比熱を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、23℃で2.2J/g℃を超える比熱を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、23℃で約2.4J/g℃の比熱を有する。ポリマー添加剤の比熱は、DSC測定に基づいて測定されてもよい。
【0040】
ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているとき、4MPa~100MPaの引張強度を有してもよい。一例として、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているとき、4MPa~70MPaの引張強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、70MPa未満の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、50MPa未満の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、25MPa未満の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、10MPa未満の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、7.5MPa未満の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤はを有するポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、5MPa~6MPaの引張強度を有する。ポリマー添加剤の引張強度は、ASTMD638試験方法に基づいて測定されてもよい。
【0041】
ポリマー添加剤は、4%を超える降伏点伸びを有する。一例として、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、4%を超え、かつ50%未満の降伏点伸びを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、5%を超える降伏点伸びを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、10%を超える降伏点伸びを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、20%を超える降伏点伸びを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、25%を超える降伏点伸びを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、20%~30%の降伏点伸びを有する。ポリマー添加剤の降伏点伸びは、ASTMD638試験方法に基づいて測定されてもよい。
【0042】
様々な実施形態によれば、活性層106は、ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体から選択されるポリマー添加剤を含む。ポリマー添加剤は、水又はエタノールなどのアルコールに可溶性である。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、比較的高い分子量を有する。ポリマー添加剤は、高アスペクト比炭素要素のネットワークによって画定される少なくとも1つの空隙内に少なくとも部分的に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリマー結合剤としての役割を果たす。ポリマー添加剤とエチルセロソルブの混合物を冷却すると、ポリマー添加剤はゲル化を呈する。一例として、ポリマー添加剤は、水、エチレングリコール、ベンジルアルコール、酢酸、及びイソブタノールの各々に完全に可溶性であってもよい。一例として、ポリマー添加剤は、N-メチルピロリドンに完全に可溶性である。ポリマー添加剤の可溶性は、ポリマー添加剤10gを100mlの特定の溶媒に添加し、混合物を80℃で約3時間攪拌し、攪拌後、混合物を室温まで冷却し、その後、混合物を観察することによって測定されてもよい。
【0043】
ポリマー添加剤は、電極100のための機械的支持を提供する(例えば、活物質粒子及び/又は炭素要素のための機械的支持を提供する)ため、ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が、概してエネルギー貯蔵装置の動作温度の外側にあるガラス転移温度を有するように選択される。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、0℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、-10℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、-25℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、-30℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、-40℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、-45℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、-50℃~-40℃のガラス転移温度を有する。ポリマー添加剤のガラス転移温度は、DSC測定に基づいて測定されてもよい。
【0044】
様々な実施形態によれば、ポリマー添加剤は、375℃~400℃の5%重量減少温度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、約385℃の5%重量減少温度を有する。ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤と、水及びアルコールのうちの少なくとも1つとの水溶液が、ポリマー添加剤の約50重量%の濃度で少なくとも60Pa・sの粘度を呈するように選択されてもよい。
【0045】
活性層106は、活性層の5重量%未満のポリマー添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、活性層106は、活性層の約0.5重量%のポリマー添加剤を含む。いくつかの実施形態では、活性層106は、活性層の約0.25重量%~1.5重量%のポリマー添加剤を含む。いくつかの実施形態では、活性層106は、活性層の1.5重量%未満のポリマー添加剤を含む。
【0046】
ポリマー添加剤の例は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエーテル、ポリ(エチレングリオール)(PEG)の誘導体、フッ素含有ポリマー、特にポリ(ビニリデンジフルオリド)(PVDF)、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アルギン酸塩(Alg)、再生DNA/Alg、Alg-カテコール、PAA-カテコール、カルボキシメチルキトサン、グアーガム、アガロース、コンニャックグルコマンナン、カルボキシメチル化ゲランガム、PDA-PAA-PEO、ペクチン/PAA、部分リチン化PAA及びナフィオン、配列定義されたペプトイド、PMDOPA、分岐PAA、NaPAA-g-CMC、CS-g-PAANa、PVA-g-PAA、GC-g-LiPAA、PVDF-g-PAA、分岐PAA-PEG、CS-g-PANI、超分岐β-シクロデキストリン、二重らせん天然キサンタンガム、Li-ナフィオン、PAA/CMC、架橋PAA/PVA、グリセロール架橋PEDOT:PSS、MAH架橋コーンスターチ、MAH架橋CMC、架橋天然GGポリマー、架橋キトサン、CS-CG+GA、架橋デキストリン、架橋CMC-PEG、架橋超分岐PEI、架橋PAMヒドロゲル、架橋PUエラストマー、架橋PVA-PEI、TMM官能化PVAネットワーク、ポリアミド(例えば、ナイロン)、官能化ポリアミド、PEOのコポリマー及びポリアミドを含むポリマー、自己修復ポリマー、PAA-Upy超分子、自己修復PAU-g-PEG、Ca2+架橋SAヒドロゲル、(Fe3+)架橋(PANa0.8Fe)、Sn4+架橋PEDOT:PSS、PAA-PEG-PBI、架橋CMC-CPAM、金属重合体、Si@Fe3+-PDA-PAA、β-CDp/6AD、スライドリングPR-PAA、導電性PFFOMB、PEGグラフトPFP、PF-COONa、PFPQ-COONa、ピレン系(PPyE)、ピレン系(PPyMAA)、ピレン系(PPyMADMA)、PANI、FAドープPEDOT:PSS、伸縮性導電接着剤、ポリ(フェナントレネキノン)、環化PAN、PAA-P(HEA-co-DMA)、PEDOT:PSS/PEO/PEI、PAA/PVA+弾性ゲルポリマー電解質、PAA+BFPU、PUとポリ(アクリル酸)(PAA)とのハイブリッド、前述の任意のサブセットのコポリマーなどを含む。Zhao,Y-M.,et al.2021,“Various other polymers may be implemented as the polymeric additive,”InfoMat,Vol.3,Issue5,p.460-501(以下「Zhao」)は、ポリマー添加剤として実装され得る様々なポリマーの説明を提供する。Zhaoは、全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、表面処理202(図示せず、図2参照)が、ネットワークの高アスペクト比炭素要素108の表面上に適用されている。表面処理は、高アスペクト比炭素要素と、活物質粒子110との間の接着を促進する。表面処理はまた、高アスペクト比炭素要素、並びに、集電体102(本明細書では「導電層」とも称される)、任意選択的な接着層104、及び/又は活物質粒子110の少なくともサブセットの間の接着を促進し得る。表面処理は、高アスペクト比炭素要素108に結合される界面活性剤層を含んでもよく、それぞれが疎水性末端及び親水性末端を有する複数の界面活性剤要素を含み、ここで、疎水性末端は高アスペクト比炭素要素108の1つの表面の近位に配置され、親水性末端は高アスペクト比炭素要素108の1つの上記表面の遠位に配置される。いくつかの実施形態では、表面処理202は、ポリマー添加剤の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、表面処理は、202℃未満の沸点を有する溶媒に可溶性である材料を含む。いくつかの実施形態では、表面処理は、185℃未満の沸点を有する溶媒に可溶性である材料を含む。
【0048】
様々な実施形態によれば、活性層106は、分散剤を含む。分散剤は、水及び/又はエタノールなどのアルコールとの相溶性に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、分散剤は、水溶性ポリマーである。いくつかの実施形態では、分散剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)に対応するか、又はポリビニルピロリドン(PVP)を含む。分散剤中で使用されるPVPは、比較的高い分子量を有するPVPであってもよい。
【0049】
様々な実施形態によれば、活性層106は、活性層106の約25重量%の分散剤を含む。いくつかの実施形態では、活性層106に含まれる分散剤の量は、活性層106の10重量%~50重量%である。いくつかの実施形態では、活性層106に含まれる分散剤の量は、活性層106の15重量%~40重量%である。いくつかの実施形態では、活性層106に含まれる分散剤の量は、活性層106の20重量%~30重量%である。
【0050】
様々な実施形態によれば、電極100(例えば、活性層106)は、リチウム-鉄-リン酸塩(LFP)を含む活物質粒子110を含む。LFPは、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物を含む電極の場合などのニッケル又はコバルトよりも一般的に安価である。加えて、LFPを含む電極は、概して、比較的低い毒性を有する。しかしながら、LFPのエネルギー密度は、リチウムコバルト酸化物よりも低い。LFPを含む電極100及び/又は活性層106の場合、活性層106は、活性層106の0.5重量%~5重量%の量のポリマー添加剤を含む。例えば、LFPを含む電極とコバルト又はニッケルを含む電極との間でポリマー添加剤の絶対量が等しい場合でも、LFPはコバルト又はニッケルよりも軽いため、LFPの相対的な重量パーセンテージが高い。いくつかの実施形態では、活性層106に含まれるLFPは、ナノ粒子の形態である。したがって、ニッケル又はコバルトを含む電極と比較して、より大きい絶対量のポリマー添加剤が必要とされ得る。様々な実施形態によれば、LFPを含む電極は、活性層106に0.5重量%~5重量%の炭素を含む。いくつかの実施形態では、LFPを含む電極は、活性層106中に0.5重量%~5重量%の量の多層カーボンナノチューブを含む。LFPを含む電極に関連して使用されるポリマー添加剤は、水溶性であってもよい。例えば、LFPの処理は、一般に、水ベースのプロセスである。LFPを含む電極の場合、活性層106は、活性層106の0.1重量%~2重量%の量の分散剤を含む。いくつかの実施形態では、活性層106は、活性層106の0.5重量%~1.5重量%の量の分散剤を含む。
【0051】
図1Bは、様々な実施形態による電極の図である。示される例では、電極125が提供される。様々な実施形態によれば、電極125は、集電体128及び活性層132を備える。電極125は、任意選択的に接着層130を含んでもよい。一例として、接着層130は、集電体128と活性層132との間の接着を促進する材料を含む。いくつかの実施形態では、集電体128は、図1Aの集電体102に対応する(又は類似する)。
【0052】
いくつかの実施形態では、活性層132は、図1Aの電流活性層106に対応する(又は類似する)。様々な実施形態によれば、電極の活性層は、多層カーボンナノチューブ(例えば、134で示され、実線で示される)のセット及び単層カーボンナノチューブ(例えば、136で示され、点線で示される)のセットを含む。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブのセットの平均アスペクト比は、単層カーボンナノチューブのセットの平均アスペクト比よりも大きい。
【0053】
様々な実施形態によれば、活性層132(多層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノチューブを含む。いくつかの実施形態では、活性層132に含まれる多層カーボンナノチューブの量は、活性層の0.25重量%~2重量%である。いくつかの実施形態では、活性層136に含まれる単層カーボンナノチューブの量は、活性層の0.01重量%~0.25重量%である。様々な実施形態によれば、活性層132内の多層カーボンナノチューブの活性層と活性層132内の単層カーボンナノチューブとの重量の比は、約2:1である。
【0054】
いくつかの実施形態では、活性層132に含まれる多層カーボンナノチューブの量は、活性層の0.25重量%~2重量%である。いくつかの実施形態では、活性層132に含まれる単層カーボンナノチューブの量は、活性層の0.01重量%~0.25重量%である。
【0055】
電極に含まれる単層カーボンナノチューブは、平均して、関連技術の電極の単層カーボンナノチューブよりも長い長さを呈する。高い粘度を有するスラリーが調製され、処理中に比較的低い剪断力にさらされる。多層カーボンナノチューブの特性は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して得ることができる。様々な実施形態によれば、単層カーボンナノチューブは、1nm~34nmの長さの範囲を含む。単層カーボンナノチューブの平均長は、7~8ミクロンであってもよい。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、1nm~2nmの平均直径、及び、約5ミクロンの平均長を含む。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、3nm~5nmの平均直径、及び、少なくとも200ミクロンの平均長を含む。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、3nm~5nmの平均直径、及び、7~8ミクロンの平均長を含む。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、5nm~6nmの平均直径、及び、7~8ミクロンの平均長を含む。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、平均して1層又は2層の壁を含む。
【0056】
図1Cは、様々な実施形態による電極の図である。示される例では、電極150の活性層は、官能化炭素要素を含む。一例として、官能化炭素要素は、図1Aに示される電極100の活性層106の高アスペクト比炭素要素108(例えば、多層カーボンナノチューブのセット及び/又は単層カーボンナノチューブのセットなど)を表面処理に供することに少なくとも部分的に基づいて取得されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、官能化炭素要素は、ナノフォーム炭素及び界面活性剤などの官能化材料を含む乾燥(例えば、凍結乾燥)水性分散液から形成される。いくつかのこのような実施形態では、水性分散液は、酸などの炭素要素を損傷する材料を実質的に含まない。
【0058】
いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素の表面処理は、ネットワークへの活物質の接着を促進する炭素要素上に配置された薄いポリマー層を含む。いくつかのこのような実施形態では、薄いポリマー層は、自己組織化及び/又は自己制限ポリマー層を含む。いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、例えば水素結合を介して活物質に結合する。
【0059】
いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、炭素要素の外面に垂直な方向の厚さが、要素の短寸法の3倍、2倍、1倍、0.5倍、0.1倍未満(又はそれ以下)であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、例えばπ-π結合などの非共有結合を介して活物質に結合する官能基(例えば、側官能基)を含む。いくつかのそのような実施形態では、薄いポリマー層は、炭素要素の少なくとも一部の上に安定した被覆層を形成し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、要素のいくつかの上の薄いポリマー層は、エネルギー貯蔵(すなわち、活性)材料を含む活性層の上及び下に配置された集電体又は接着層と結合し得る。例えば、いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、例えばπ-π結合などの非共有結合を介して、集電体又は接着層の表面に結合する側官能基を含む。いくつかのそのような実施形態では、薄いポリマー層は、要素の少なくとも一部の上に安定した被覆層を形成し得る。いくつかの実施形態では、この配置は、電極の優れた機械的安定性を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、上記の例に記載のタイプの溶媒に混和性である。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(IPAと呼ばれることもあるイソプロピルアルコール)又はそれらの組み合わせなどのアルコールを含む溶媒に混和性である。いくつかの実施形態では、溶媒は、溶媒の特性を更に改善するために使用される1つ以上の添加剤、例えば、アセトニトリル(ACN)、脱イオン水、及びテトラヒドロフランなどの低沸点添加剤を含み得る。この例では、混合物は、NMPを含まない溶媒中で形成される。
【0063】
更に別の例示的な実施形態では、表面処理は、高アスペクト比炭素要素上に配置されたポリマー材料の熱分解から生じる炭素質材料の層を形成し得る。この炭素質材料の層(例えば、黒鉛状又は非晶質炭素)は、活物質粒子に付着(例えば、共有結合を介して)するか、そうでなければ活物質粒子との接着を促進し得る。好適な熱分解技術の例が、2020年5月22日に出願された米国特許出願第63/028,982号に記載されており、その全体が、全ての目的のために本明細書に組み込まれている。この技術における使用に好適なポリマー材料の1つは、ポリアクリロニトリル(PAN)である。
【0064】
様々な実施形態によれば、活性層106は、分散剤を含む。分散剤は、水及び/又はエタノールなどのアルコールとの相溶性に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、分散剤は、水溶性ポリマーである。いくつかの実施形態では、分散剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)に対応するか、又はポリビニルピロリドン(PVP)を含む。分散剤中で使用されるPVPは、比較的高い分子量を有するPVPであってもよい。
【0065】
図2は、様々な実施形態による電極の図である。示されている例では、いくつかの活物質粒子300の近くに位置する、(図1A及び図1Bに示されたような)ネットワーク200の高アスペクト比炭素要素201の詳細図が提供される。示された実施形態では、要素201上の表面処理202は、要素201の表面の外層に結合された界面活性剤層である。示されるように、界面活性剤層は、各々が疎水性末端211と、親水性末端212とを有する複数の界面活性剤要素210を備え、疎水性末端は、炭素要素201の表面の近位に配置され、親水性末端212は、表面の遠位に配置される。
【0066】
(典型的にはCNT、CNT束、及びグラフェンフレークなどのナノフォーム炭素要素の場合と同様に)炭素要素201が疎水性であるいくつかの実施形態では、界面活性剤要素210の疎水性末端211が、炭素要素201に引き寄せられるであろう。したがって、いくつかの実施形態では、表面処理202は、自己組織化層であり得る。例えば、以下に詳述されるように、いくつかの実施形態では、炭素要素201が、界面活性剤要素210と溶媒中で混合されてスラリーを形成すると、表面処理202層は、スラリー内の要素201と210との間の静電相互作用によって、表面上で自己組織化する。
【0067】
いくつかの実施形態では、表面処理202は、3次元ネットワークの高アスペクト比炭素要素(例えば、図1Aの電極100の高アスペクト比炭素要素108)の表面上に適用されている。表面処理は、高アスペクト比炭素要素と、活物質粒子300(例えば、図1Aの電極100の活物質粒子110)との間の接着を促進する。表面処理はまた、高アスペクト比炭素要素と、図1Aの電極100の集電体102などの集電体(本明細書では「導電層」とも称される)及び/又は任意選択的な接着層(例えば、図1Aの電極100の接着層104)との間の接着を促進し得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、表面処理202は、自己制限層であり得る。例えば、以下に詳述されるように、いくつかの実施形態では、要素201が、界面活性剤要素210と溶媒中で混合されてスラリーを形成すると、表面処理202層は、スラリー内の要素201と210との間の静電相互作用によって、表面上で自己組織化する。いくつかのそのような実施形態では、要素201の表面の領域が、界面活性剤要素210で覆われると、追加の界面活性剤要素210は、その領域に引き付けられないであろう。いくつかの実施形態では、要素201の表面が界面活性剤要素202で覆われると、更なる要素が層から反発され、自己制限プロセスを生じさせる。例えば、いくつかの実施形態では、表面処理202は、自己制限プロセスで形成され得、それによって、層が薄いこと、例えば、単一分子又は数分子の厚さであることを確実にする。
【0069】
いくつかの実施形態では、界面活性剤要素の少なくとも一部の親水性末端212は、活物質粒子300と結合を形成する。したがって、表面処理202は、ネットワーク200の要素201と、活物質粒子との間の良好な接着を提供し得る。いくつかの実施形態では、結合は、共有結合、又はπ-π結合、水素結合、静電結合、若しくはそれらの組み合わせなどの非共有結合であり得る。
【0070】
例えば、いくつかの実施形態では、界面活性剤要素210の親水性末端212が、第1の極性の極性電荷を有する一方で、活物質粒子300の表面は、第1の極性のものとは反対の第2の極性の極性電荷を有し、したがって互いに引き付けられる。
【0071】
例えば、層100の形成中に、活物質粒子300が、(以下により詳細に説明されるように)表面処理202を担持する炭素要素201と溶媒中で組み合わされるいくつかの実施形態では、活物質粒子300の外面は、表面処理202の外面のゼータ電位の反対の符号を有するゼータ電位によって特徴付けられ得る(当該技術分野で知られているように)。したがって、いくつかのそのような実施形態では、表面処理202を担持する炭素要素201と、活物質生成物300との間の引力は、活物質粒子300がネットワーク200の炭素要素201と絡み合った構造の自己組織化を促進する。
【0072】
いくつかの実施形態では、界面活性剤要素の少なくとも一部の親水性末端212は、活物質層100の下にある集電体層又は接着層と結合を形成する。したがって、表面処理202は、ネットワーク200の要素201と、そのような下位層との間に良好な接着を提供し得る。いくつかの実施形態では、結合は、共有結合、又はπ-π結合、水素結合、静電結合、若しくはそれらの組み合わせなどの非共有結合であり得る。いくつかの実施形態では、この配置が、以下でより詳細に考察されるように、電極10の優れた機械的安定性を提供する。
【0073】
様々な実施形態では、上述の表面処理202を形成するために使用される界面活性剤は、任意の好適な材料を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、界面活性剤は、以下、すなわち、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩(CTAP)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩(CTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム酢酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩、ホカミドプロピルベタイン(hocamidopropyl betaine)、N-(ココアルキル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチル硫酸塩、及びコカミドプロピルベタインのうちの1つ以上を含み得る。追加の好適な材料は下記において説明される。
【0074】
いくつかの実施形態では、界面活性剤層202は、界面活性剤の層が、化合物からのイオンから形成される(例えば、上記のような自己限定プロセスで)ように、化合物を溶媒に溶解することによって形成され得る。いくつかのそのような実施形態では、活性層100は、そうすると、表面処理202を形成する界面活性剤イオンに対する残留対イオン214を含むであろう。
【0075】
いくつかの実施形態では、これらの界面活性剤対イオン214は、電気化学セルでの使用に適合するように選択される。例えば、いくつかの実施形態では、対イオンは、電解質、セパレータ、ハウジングなどの、セル内で使用される材料と非反応性又は温和な反応性であるように選択される。例えば、アルミニウムハウジングが使用される場合、対イオンは、アルミニウムハウジングと非反応性又は温和な反応性であるように選択され得る。
【0076】
例えば、いくつかの実施形態では、残留対イオンは、ハロゲン化物基を含まないか、又は実質的に含まない。例えば、いくつかの実施形態では、残留対イオンは、臭素を含まないか、又は実質的に含まない。
【0077】
いくつかの実施形態では、残留対イオンは、活性層200を含有するエネルギー貯蔵セル内で使用される電解質と適合するように選択され得る。例えば、いくつかの実施形態では、残留対イオンは、電解質自体内で使用される同一の種のイオンであり得る。例えば、電解質が、溶解したLi PF6塩を含む場合、電解質アニオンは、PF6である。そのような場合、界面活性剤は、表面処理202が、CTA PF6からのアニオンの層として形成される一方で、残留界面活性剤対イオンが、CTA PF6からのPF6アニオンである(したがって、電解質のアニオンと一致する)ように、例えば、CTA PF6として選択され得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、使用される界面活性剤材料は、有利な特性を呈する溶媒に可溶性であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒は、水、又はメタノール、エタノール、若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール、IPAと称されることもある)などのアルコール、又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、溶媒の特性を更に改善するために使用される1つ以上の添加剤、例えば、アセトニトリル(ACN)、脱イオン水、及びテトラヒドロフランなどの低沸点添加剤を含み得る。
【0079】
例えば、低沸点溶媒が表面処理202の形成に使用される場合、溶媒は、比較的低い温度で実行される熱乾燥プロセス(例えば、以下により詳細に説明されるタイプの)を使用して、迅速に除去され得る。当業者によって理解されるように、これにより、活性層202の製造の速度及び/又はコストが改善され得る。
【0080】
例えば、いくつかの実施形態では、表面処理202は、250℃未満、225℃、202℃、200℃、185℃、180℃、175℃、150℃、125℃、又はそれ未満、例えば、100℃以下の沸点を有する溶媒に可溶性である材料から形成される。
【0081】
いくつかの実施形態では、溶媒は、他の有利な特性を呈し得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、3.0センチポアズ以下、2.5センチポアズ、2.0センチポアズ、1.5センチポアズ、又はそれ未満の、20℃における粘度のような、低い粘度を有し得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、40mN/m以下、35mN/m、30mN/m、25mN/m以下の、20℃での表面張力のような、低い表面張力を有し得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、低毒性、例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコールと同程度の毒性を有し得る。
【0082】
注目すべきことに、これは、ポリフッ化ビニリデン又はポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)などのバルク結合剤材料を特徴とする従来の電極活性層を形成するために使用されるプロセスとは対照的である。そのようなバルク結合剤は、高沸点によって特徴付けられることが多い、攻撃的な溶媒を必要とする。1つのそのような例が、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。溶媒としてのNMP(又は他のピロリドン系溶媒)の使用は、溶媒を除去するために、高温乾燥プロセスの使用を必要とする。更に、NMPは高価であり、複雑な溶媒回収システムを必要とし、高毒性であり、重大な安全上の問題をもたらす。対照的に、以下に更に詳細に説明されるように、様々な実施形態では、活性層200は、NMP又は類似の化合物そのようなピロリドン化合物を使用することなく形成され得る。
【0083】
1つのクラスの例示的な表面処理202が上述されるが、他の処理が使用され得ることが理解される。例えば、様々な実施形態では、表面処理202は、本明細書に記載される、又は当該技術分野において既知の任意の好適な技術を使用して、高アスペクト比炭素要素201を官能化することによって、形成され得る。要素201に適用される官能基は、活物質粒子300と、ネットワーク200との間の接着を促進するように選択され得る。例えば、様々な実施形態では、官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミン基、シラン基、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0084】
以下により詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では、官能化炭素要素201は、ナノフォームカーボンと、界面活性剤などの官能化材料とを備える乾燥した(例えば、凍結乾燥した)水性分散体から形成される。いくつかのそのような実施形態では、水性分散体は、酸などの、炭素要素201を損傷するであろう材料を実質的に含まない。
【0085】
図3は、様々な実施形態による電極の図である。
【0086】
図3を参照すると、いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素201上の表面処理202は、活物質のネットワークへの接着を促進する、炭素要素上に配置されたポリマー粒子を含む。いくつかのこのような実施形態では、ポリマー粒子は、自己組織化及び/又は自己制限ポリマー層を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー粒子は、例えば水素結合を介して活物質に結合する。
【0087】
いくつかの実施形態では、ポリマー粒子は、例えば、π-π結合のような非共有結合を介して、活物質に結合する官能基(例えば、側官能基)を含む。いくつかのそのような実施形態では、ポリマー粒子は、要素201の少なくとも一部にわたって安定した被覆層を形成し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、要素201のいくつかの上のポリマー粒子は、活性層200の下側にある集電体101又は接着層102と結合し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー粒子は、例えばπ-π結合などの非共有結合を介して、集電体101又は接着層102の表面に結合する側官能基を含む。いくつかのそのような実施形態では、ポリマー粒子は、要素201の少なくとも一部にわたって安定した被覆層を形成し得る。いくつかの実施形態では、この配置が、以下でより詳細に考察されるように、電極10の優れた機械的安定性を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、上記の例に記載のタイプの溶媒に混和性である。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(IPAと呼ばれることもあるイソプロピルアルコール)又はそれらの組み合わせなどのアルコールを含む溶媒に混和性である。いくつかの実施形態では、溶媒は、溶媒の特性を更に改善するために使用される1つ以上の添加剤、例えば、アセトニトリル(ACN)、脱イオン水、及びテトラヒドロフランなどの低沸点添加剤を含み得る。
【0090】
ポリマー粒子に使用され得る材料の好適な例は、ポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマーを含む。追加の例示的な材料が、以下に提供される。
【0091】
図4は、様々な実施形態による活性層の電子顕微鏡写真の一例である。
【0092】
図4を参照すると、本明細書に記載されるタイプの例示的な活物質層の電子顕微鏡写真が、示されている。つるのような高アスペクト比炭素要素201(CNT束から形成されている)が、活物質粒子300と絡み合っているのが明確に示されている。いくつかの実施形態では、活性層には、層内の空間を占めるかさばるポリマー材料がない。
【0093】
図5は、エネルギー貯蔵装置の概略図である。
【0094】
図5を参照すると、第1の電極501と、第2の電極502と、第1の電極501と第2の電極502との間に配置された透過性セパレータ503と、第1及び第2の電極を湿潤する電解質504と、を含むエネルギー貯蔵セル500が示されている。電極501、502の一方又は両方が、本明細書に記載のタイプであり得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、リチウムイオン電池などの電池であり得る。いくつかのそのような実施形態では、電解質は、例えば、その全容が、参照により本明細書に組み込まれる、Qi Li,Juner Chen,Lei Fan,Xueqian Kong,Yingying Lu,Progress in electrolytes for rechargeable Li-based batteries and beyond,Green Energy & Environment,Volume1,Issue1,Pages18-42に記載されているタイプの、溶媒中に溶解されたリチウム塩であり得る。
【0096】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セルは、1.0V~5.0Vの範囲、又はその任意のサブ範囲、例えば、2.3V~4.3Vの動作電圧を有し得る。
【0097】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、-40℃~100℃を含む動作温度範囲、又は-10℃~60℃など、その任意のサブ範囲を有し得る。
【0098】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも100Wh/kg、200Wh/kg、300Wh/kg、400Wh/kg、500Wh/kg、1000Wh/kg以上の重量エネルギー密度を有し得る。
【0099】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも200Wh/L、400Wh/L、600Wh/L、800Wh/L、1,000Wh/L、1,500Wh/L、2,000Wh/L以上の体積エネルギー密度を有し得る。
【0100】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、0.1~50の範囲のCレートを有し得る。
【0101】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも1,000、1500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000以上の充放電サイクルのサイクル寿命を有し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、その全容が、参照により本明細書に組み込まれる、2020年5月8日に出願された米国特許出願第63/021492号に記載されたタイプのリチウムイオンキャパシタであり得る。
【0103】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、-60℃~100℃を含む動作温度範囲、又は-40℃~85℃など、その任意のサブ範囲を有し得る。
【0104】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも10Wh/kg、15Wh/kg、20Wh/kg、30Wh/kg、40Wh/kg、50Wh/kg、又はそれ超の重量エネルギー密度を有し得る。
【0105】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも20Wh/L、30Wh/L、40Wh/L、50Wh/L、60Wh/L、70Wh/L、80Wh/L以上の体積エネルギー密度を有し得る。
【0106】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも5kW/kg、7.5W/kg、10kW/kg、12.5kW/kg、14kW/kg、15kW/kg以上の重量電力密度を有し得る。
【0107】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも10kW/L、15kW/L、20kW/L、22.5kW/L、25kW/L、28kW/L、30kW/L以上の体積電力密度を有し得る。
【0108】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、1.0~100の範囲のCレートを有し得る。
【0109】
いくつかのそのような実施形態では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも100,000、500,000、1,000,000以上の充放電サイクルのサイクル寿命を有し得る。
【0110】
製造方法
本明細書に記載される、図1Aの活性層106を含む電極100及び図1Bの活性層132を含む電極125は、任意の好適な製造プロセスを使用して作製され得る。当業者によって理解されるように、いくつかの実施形態では、電極10は、2018年6月7日に公開された国際特許公開第2018/102652号に記載されるタイプの湿式コーティング技術を使用して、本明細書に記載される教示を更に考慮して作製され得る。
【0111】
図6は、様々な実施形態による電極を作製するための方法のフローチャートである。プロセス600の説明は、図1Aの電極100に関して提供される。プロセス600は、図1Bの電極125を含む、本明細書に開示される様々な実施形態による電極の製造に関連して同様に実装されてもよい。
【0112】
図6を参照すると、いくつかの実施形態では、電極100の活性層106は、プロセス600を使用して形成され得る。610として、高アスペクト比炭素要素201及び表面処理材料(例えば、本明細書に記載の界面活性剤又はポリマー材料)が(本明細書に記載のタイプの)溶媒と組み合わされて、初期スラリーを形成する。
【0113】
620において、スラリー中の固体材料の良好な分散を保証するために、最初のスラリーを処理する。いくつかの実施形態では、この処理は、溶媒及び固体材料の混合物に機械的エネルギーを導入すること(例えば、「ソニファイヤ」とも称されることがあるソニケータを使用すること)又は他の好適な混合デバイス(例えば、高剪断ミキサー)を含む。いくつかの実施形態では、混合物に導入される機械的エネルギーは、少なくとも0.4キロワット時/キログラム(kWh/kg)、0.5kWh/kg、0.6kWh/kg、0.7kWh/kg、0.8kWh/kg、0.9kWh/kg、1.0kWh/kg、又はそれ超である。例えば、混合物1キログラム当たり混合物に導入される機械的エネルギーは、0.4kWh/kg~1.0kWh/kgの範囲、又は0.4kWh/kg~0.6kWh/kgなどのその任意の部分範囲であってもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、超音波バスミキサーが、使用され得る。他の実施形態では、プローブソニケータが、使用され得る。プローブ超音波処理は、ナノ粒子用途の超音波浴と比較して、有意により強力かつ効果的であり得る。超音波キャビテーションによって生成される高い剪断力は、粒子の凝集体を分解する能力を有し、その結果、より小さく、より均一な粒子サイズが得られる。とりわけ、超音波処理により、スラリー中の固体の安定した均質な懸濁液が得られる。一般に、これにより、固体の分散や解凝集、及びその他の分解が生じる。プローブ超音波処理装置の例としては、QSonica LLC of Newtown,Connecticutから入手可能なQシリーズプローブソニケータが挙げられる。別の例としては、Thomas Scientific of Swedesboro,New Jerseyから市販されているBranson Digital SFX-450ソニケータが挙げられる。
【0115】
しかしながら、いくつかの実施形態では、プローブアセンブリ内の各プローブの局在性が、不均一な混合及び懸濁をもたらし得る。例えば、大きな試料の場合にこれが当てはまる場合がある。これは、連続フローセルを備えた装置及び適切な混合を使用することで解決することができる。例えば、そのような装置により、スラリーを混合すると、適度に均一な分散が達成される。
【0116】
いくつかの実施形態では、初期スラリーは、一旦処理されると、5,000cps~25,000cpsの範囲、又はその任意のサブ範囲、例えば、6,000cps~19,000cpsの粘度を有するであろう。
【0117】
630において、表面処理202が、初期スラリー中の高アスペクト比炭素要素201上に完全に又は部分的に形成され得る。いくつかの実施形態では、この段階で、表面処理202は、図2及び図3を参照して上記で詳細に説明されたように、自己組織化し得る。得られた表面処理201は、以下の更なる工程で説明されるように、高アスペクト比炭素要素201と、活物質粒子300との間の接着を促進し得る官能基又は他の特徴を含み得る。
【0118】
640において、活物質粒子300が、初期スラリーと組み合わされて、表面に表面処理202が形成された高アスペクト比炭素要素201とともに活物質粒子300を含有する最終スラリーを形成し得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、活物質300は、初期スラリーに直接添加され得る。他の実施形態では、活物質300は、最初に溶媒中に分散され(例えば、初期溶媒に関して上述した技術を使用して)、活物質スラリーを形成し得る。次いで、この活物質スラリーを最初のスラリーと混合して、最終のスラリーを形成することができる。
【0120】
650において、最終のスラリー中の固体材料の良好な分散を保証するために最終のスラリーを処理する。様々な実施形態では、当該技術分野で既知の任意の好適な混合プロセスが、使用され得る。いくつかの実施形態では、この処理は、620に関して上述された技術を使用し得る。いくつかの実施形態では、多軸(例えば、3つ以上の軸)遊星ミキサーなどの遊星ミキサーが、使用され得る。いくつかのそのような実施形態では、遊星ミキサーは、複数の羽根、例えば、2つ以上の混合羽根と、ディスク分散羽根などの1つ以上(例えば、2つ、3つ、又はそれ超)の分散羽根とを特徴とし得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、650中、活物質300と絡み合ったマトリックス200は、図2及び図3に関して上記で詳細に説明したように、完全に又は部分的に自己組織化し得る。いくつかの実施形態では、表面処理202と、活物質300との間の相互作用が、自己組織化プロセスを促進する。
【0122】
いくつかの実施形態では、最終スラリーは、一旦処理されると、1,000cps~10,000cpsの範囲、又はその任意のサブ範囲、例えば、2,500cps~6,000cpsの範囲の粘度を有するであろう。
【0123】
660において、活性層106が最終のスラリーから形成される。いくつかの実施形態では、最終のスラリーを湿った状態で集電体導電層102(又は任意選択的な接着層104)上に直接流し込み、乾燥させることができる。一例として、流し込みは、実質的に全ての溶媒及び任意の他の液体が除去されるまで熱及び真空のうちの少なくとも1つを適用することによって行うことができ、それによって活性層106が形成される。いくつかのそのような実施形態では、下にある層の様々な部分を保護することが望ましい場合がある。例えば、電極100が両面動作を目的とする場合には、導電層102の下面を保護することが望ましい場合がある。保護には、例えば、ある特定の領域をマスキングすることによる溶媒からの保護、又は溶媒を排出するための排水管を設けることが含まれ得る。
【0124】
他の実施形態では、最終スラリーは、任意の好適な技術(例えばロールツーロールでの層適用)を使用して、他のどこかで少なくとも部分的に乾燥され、次いで接着層104又は導電層102上に移送されて、活性層106を形成し得る。いくつかの実施形態では、湿潤された混合スラリーを、適切な表面を有する中間材料上に配置し、乾燥させて層(例えば、活性層106)を形成することができる。適切な表面を有する任意の材料が、中間材料として使用され得るが、例示的な中間材料としては、表面からのその後の除去が、その特性によって容易になるので、PTFEが挙げられる。いくつかの実施形態では、指定された層は、所望の厚さ、面積、及び密度を示す層を提供するために、プレスで形成される。
【0125】
いくつかの実施形態では、最終スラリーは、シートに形成され、必要に応じて、接着層104又は導電層102上にコーティングされ得る。例えば、いくつかの実施形態では、最終スラリーは、塗布された層の厚さを制御するために、スロットダイを通して塗布され得る。他の実施形態では、スラリーが塗布され、次いで、例えばドクターブレードを使用して所望の厚さに均され得る。スラリーを塗布するために様々な他の技術を使用することができる。例えば、コーティング技術としては、コンマコーティング、コンマリバースコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイコーティン、ダイレクトグラビアコーティング、エアドクターコーティング(エアナイフ)、チャンバードクターコーティング、オフセットグラビアコーティング、ワンロールキスコーティング、小径グラビアロールによるリバースキスコーティング、バーコーティング、3リバースロールコーティング(トップフィード)、3リバースロールコーティング(ファウンテンダイ)、リバースロールコーティングなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0126】
最終のスラリーの粘度は、適用技術に応じて変化し得る。例えば、コンマコーティングの場合、粘度は約1,000cps~約200,000cpsの範囲であり得る。リップダイコーティングは、約500cps~約300,000cpsの粘度を呈するスラリーによるコーティングを提供する。リバースキスコーティングは、約5cps~1,000cpsの粘度を呈するスラリーによるコーティングを提供する。一部の用途では、それぞれの層を複数のパスによって形成することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、最終スラリーから形成された活性層106は、電極100に適用される前又は後に(例えば、カレンダ装置を使用して)圧縮され得る。いくつかの実施形態では、スラリーは、圧縮プロセスの前又は最中に、(例えば、熱、真空、又はそれらの組み合わせを適用することによって)部分的又は完全に乾燥され得る。例えば、いくつかの実施形態では、活性層は、(例えば、集電体層102に垂直な方向)にその圧縮前の厚さの90%、80%、70%、50%、40%、30%、20%、10%又はそれ未満の最終厚さまで圧縮することができる。
【0128】
様々な実施形態では、コーティング又は圧縮プロセス中に部分的に乾燥した層が形成される場合、層は、その後完全に乾燥され得る(例えば、熱、真空又はそれらの組み合わせを適用することによって)。いくつかの実施形態では、実質的に全ての溶媒が活性層106から除去される。
【0129】
いくつかの実施形態では、スラリーの形成に使用される溶媒は回収され、スラリー製造プロセスにリサイクルされる。
【0130】
いくつかの実施形態では、活性層106は、例えば、成分の高アスペクト比炭素要素又は他の炭素質材料の一部を破壊して、それぞれの層の表面積を増加させるために、圧縮され得る。いくつかの実施形態では、この圧縮処理は、層間の接着、層内のイオン輸送速度、及び層の表面積のうちの1つ以上を増加させ得る。様々な実施形態では、圧縮は、それぞれの層が電極100に適用されるか、又は電極100上に形成される前又は後に適用することができる。
【0131】
カレンダリングが、活性層106を圧縮するために使用されるいくつかの実施形態では、カレンダリング装置は、層の圧縮前厚さの90%未満、80%、70%、50%、40%、30%、20%、10%以下に等しいギャップ間隔で設定され得る(例えば、層の圧縮前厚さの約33%に設定される)。カレンダロールは、例えば、ロール長さ1cm当たり1トン超、ロール長さ1cm当たり1.5トン超、ロール長さ1cm当たり2.0トン超、ロール長さ1cm当たり2.5トン超、又はそれ以上の好適な圧力を提供するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、圧縮後の活性層は、1g/cc~10g/ccの範囲、又はその任意のサブ範囲、例えば、2.5g/cc~4.0g/ccの密度を有するであろう。いくつかの実施形態では、カレンダ加工プロセスは、20℃から140℃の範囲又はその任意の部分範囲の温度で実行され得る。いくつかの実施形態では、活性層106は、カレンダ加工の前に、例えば20℃~100℃の範囲又はその任意の部分範囲の温度で予熱することができる。
【0132】
電極100が組み立てられると、電極100を使用してエネルギー貯蔵装置を組み立てることができる。エネルギー貯蔵装置の組み立ては、電極をセパレータと組み立て、キャニスター又はパウチなどのハウジング内に配置するために使用される従来のステップに従うことができ、更に電解質の添加及びハウジングの封止のための追加のステップを含み得る。
【0133】
様々な実施形態では、プロセス600は、以下の特徴のいずれかを(個々に又は任意の好適な組み合わせで)含み得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、初期スラリーは、0.1重量%~20.0重量%の範囲(又はその任意のサブ範囲)の固形物含有量を有する。いくつかの実施形態では、最終スラリーは、10.0重量%~80重量%の範囲(又はその任意のサブ範囲)の固形物含有量を有する。
【0135】
様々な実施形態では、使用される溶媒は、表面処理202の形成に関して本明細書に記載される溶媒のうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、表面処理202を形成するために使用される界面活性剤材料は、有利な特性を呈する溶媒に可溶性であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒は、水、又はメタノール、エタノール、若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール、IPAと称されることもある)などのアルコール、又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、溶媒の特性を更に改善するために使用される1つ以上の添加剤、例えば、アセトニトリル(ACN)、脱イオン水、及びテトラヒドロフランなどの低沸点添加剤を含み得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、低沸点溶媒が使用される場合、溶媒は、比較的低温で実行される熱乾燥プロセスを使用して迅速に除去され得る。当業者によって理解されるように、これにより、電極100の製造の速度及び/又はコストが改善され得る。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒は、250℃未満、225℃、202℃、200℃、185℃、180℃、175℃、150℃、125℃、又はそれ未満、例えば、100℃以下の沸点を有してもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、溶媒は、他の有利な特性を呈し得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、3.0センチポアズ以下、2.5センチポアズ、2.0センチポアズ、1.5センチポアズ、又はそれ未満の、20℃における粘度のような、低い粘度を有し得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、40mN/m以下、35mN/m、30mN/m、25mN/m以下の、20℃での表面張力のような、低い表面張力を有し得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、低毒性、例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコールと同程度の毒性を有し得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、活性層の形成中に、表面処理を形成する材料が、ピロリドン化合物を実質的に含まない溶媒に溶解され得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、n-メチル-2-ピロリドンを実質的に含まない。
【0139】
いくつかの実施形態では、表面処理201は、本明細書に記載されるタイプの界面活性剤を含む材料から形成される。
【0140】
いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素及び表面処理材料を溶媒中に分散させて、初期スラリーを形成することは、凝集した炭素要素に力を加えて、要素の短軸と直交する方向に沿って、要素を互いに離れて摺動させることを含む。いくつかの実施形態では、そのような分散体を形成するための技術は、全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれている、2018年6月7日に公開された国際特許公開第2018/102652号に開示されるものから、本明細書に記載される教示を更に考慮して、適合され得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素201は、電極100を形成するために使用されるスラリーを形成する前に、官能化され得る。例えば、一態様では、高アスペクト比炭素要素201及び表面処理材料を水性溶媒中に分散させて、初期スラリーを形成することであって、この分散工程が、高アスペクト比炭素上の表面処理の形成をもたらす、ことと、初期スラリーを乾燥させて実質的に全ての水分を除去して、表面に表面処理を有する、高アスペクト比炭素の乾燥粉末を生じさせることと、を含む、方法が、開示される。いくつかの実施形態では、乾燥粉末は、例えば、溶媒及び活物質のスラリーと組み合わされて、方法600に関して上記に説明されたタイプの最終溶媒を形成し得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、初期スラリーを乾燥させることは、初期スラリーを凍結乾燥させる(Lyophilizing)こと(凍結乾燥(freeze-drying))を含む。いくつかの実施形態では、水性溶媒及び初期スラリーは、高アスペクト比炭素要素に損傷を与える物質を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、水性溶媒及び初期スラリーは、実質的に酸を含まない。いくつかの実施形態では、初期スラリーは、高アスペクト比炭素要素と、表面処理材料と、水とから本質的になる。
【0143】
いくつかの実施形態は、高アスペクト比炭素の乾燥粉末を表面処理とともに溶媒中に分散させること、並びに添加すること、及び二次スラリーを形成するための活物質と、二次スラリーを基板上にコーティングすることと、二次スラリーを乾燥させて、電極活性層を形成することと、を更に含む。いくつかの実施形態では、前述の工程は、本明細書に記載されている教示を更に考慮して、2018年6月7日に公開された国際特許公開第2018/102652号に開示されているものから適合された技術を使用して、実行され得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、最終スラリーは、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイソプレン(PIpr)、ポリアニリン(PANi)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマー添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、活性層は、表面処理202が、ポリマー添加剤の熱分解から生じる炭素質材料の層を形成し得るように、熱を加えて添加剤を熱分解することによって処理され得る。炭素質材料(例えば、黒鉛又は非晶質炭素)のこの層は、活物質粒子300に(例えば、共有結合を介して)付着し得るか、そうでなければ、活物質粒子300との接着を促進し得る。熱処理は、任意の好適な手段によって、例えば、レーザービームの適用によって適用され得る。好適な熱分解技術の例が、2020年5月22日に出願された米国特許出願第63/028982号に記載されており、その全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれている。
【0145】
界面活性剤
上述の技術は、活物質粒子300との接着を促進するために、高アスペクト比カーボンナノチューブ201上の表面処理202のための対する界面活性剤の使用を含む。いくつかの有利に好適な界面活性剤が記載されているが、以下を含む、他の界面活性剤材料が使用され得ることを理解されたい。
【0146】
界面活性剤は、湿潤剤、分散剤、乳化剤、洗剤、及び発泡剤など、表面活性を有する分子、又は分子の群である。様々な界面活性剤が、本明細書に記載されるような調製表面処理に使用され得る。典型的には、使用される界面活性剤は、親油性非極性炭化水素基及び極性官能性親水基を含有する。極性官能基は、カルボン酸塩、エステル、アミン、アミド、イミド、ヒドロキシル、エーテル、ニトリル、リン酸塩、硫酸塩、又はスルホン酸塩であり得る。界面活性剤は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。したがって、界面活性剤の組み合わせは、界面活性剤分子の母集団の頭部領域に正味の正電荷又は負電荷が存在する限り、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性、両性(amphoteric)、及び両性(ampholytic)界面活性剤を含み得る。場合によっては、単一の負に帯電又は正に帯電した界面活性剤が、本電極組成物の調製に使用される。
【0147】
本電極組成物の調製に使用される界面活性剤は、以下に限定されないが、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、及びアルキルエステルスルホン酸塩などのスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルアルコキシ硫酸塩、及びアルキルアルコキシル化硫酸塩などの硫酸塩、モノアルキルリン酸塩及びジアルキルリン酸塩などのリン酸塩、ホスホン酸塩、脂肪酸、アルキルアルコキシカルボン酸塩、サルコシン酸塩、イセチオン酸塩、及びタウレートなどのカルボン酸塩など、アニオン性であり得る。カルボン酸塩の具体的な例は、オレイン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ナトリウムメチルオレオイルタウレート、ラウレスカルボン酸ナトリウム、トリデセスカルボン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン、及びココイルサルコシネートである。硫酸塩の具体例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、トリデシル硫酸ナトリウム、コシル硫酸ナトリウム(sodium cocyl sulfate)、及びラウリン酸モノグリセリド硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0148】
好適なスルホネート界面活性剤としては、以下に限定されないが、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、モノアルキル及びジアルキルスルホスクシン酸塩、並びにモノアルキル及びジアルキルスルホスクシナミン酸塩が挙げられる。各アルキル基は、独立して、約2~20個の炭素を含有し、また、アルキル基ごとに、最大約8単位、好ましくは最大約6単位、平均で、例えば、2、3、又は4単位のエチレンオキシドでエトキシ化され得る。アルキル及びアリールスルホネートの例示的な例は、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(STBS)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)である。
【0149】
スルホコハク酸塩の例示的な例としては、以下に限定されないが、ジメチコンコポリオールスルホスクシネート、ジアミルスルホスクシネート、ジカプリルスルホスクシネート、ジシクロヘキシルスルホスクシネート、ジヘプチルスルホスクシネート、ジヘキシルスルホスクシネート、ジイソブチルスルホスクシネート、ジオクチルスルホスクシネート、C12-15パレススルホスクシネート、セテアリルスルホスクシネート、ココポリグルコーススルホスクシネート、ココイルブチルグルセス-10スルホスクシネート、デセス-5スルホスクシネート、デセス-6スルホスクシネート、ジヒドロキシエチルスルホスクシニルウンデシレネート、水添綿実グリセリドスルホスクシネート、イソデシルスルホスクシネート、イソステアリルスルホスクシネート、ラネス-5スルホスクシネート、ラウレススルホスクシネート、ラウレス-12スルホスクシネート、ラウレス-6スルホスクシネート、ラウレス-9スルホスクシネート、ラウリルスルホスクシネート、ノノキシノール-10スルホスクシネート、オレス-3スルホスクシネート、オレイルスルホスクシネート、PEG-10ラウリルシトレートスルホスクシネート、シトセレス-14スルホスクシネート、ステアリルスルホスクシネート、タロー、トリデシルスルホスクシネート、ジトリデシルスルホスクシネート、ビスグリコールリシノスルホスクシネート、ジ(1,3-ジメチルブチル)スルホスクシネート、及びシリコーンコポリオールスルホスクシネートが挙げられる。
【0150】
スルホコハク酸塩の例示的な例としては、以下に限定されないが、ラウラミド-MEAスルホコハク酸塩、オレアミドPEG-2スルホコハク酸塩、コカミドMIPA-スルホコハク酸塩、コカミドPEG-3スルホコハク酸塩、イソステアラミドMEA-スルホコハク酸塩、イソステアラミドMIPA-スルホコハク酸塩、ラウラミドMEA-スルホコハク酸塩、ラウラミドPEG-2スルホコハク酸塩、ラウラミドPEG-5スルホコハク酸塩、ミリスタミドMEA-スルホコハク酸塩、オレアミドMEA-スルホコハク酸塩、オレアミドPIPA-スルホコハク酸塩、オレアミドPEG-2スルホコハク酸塩、パルミタミドPEG-2スルホコハク酸塩、パルミトレアミドPEG-2スルホコハク酸塩、PEG-4コカミドMIPA-スルホコハク酸塩、リシノレアミドMEA-スルホコハク酸塩、ステアルアミドMEA-スルホコハク酸塩、ステアリルスルホハク酸塩、タラミドMEA-スルホコハク酸塩、タロースルホコハク酸塩、タローアミドMEA-スルホコハク酸塩、ウンデシレンアミドMEA-スルホコハク酸塩、ウンデシレンアミドPEG-2スルホコハク酸塩、小麦胚芽アミドMEA-スルホコハク酸塩、及び小麦胚芽アミドPEG-2スルホコハク酸塩が挙げられる。
【0151】
市販のスルホン酸塩のいくつかの例は、AEROSOL(登録商標)OT-S、AEROSOL(登録商標)OT-MSO、AEROSOL(登録商標)TR70%(Cytec Inc.、West Paterson,N.J.)、NaSul CA-HT3(King Industries、Norwalk,Conn.)、及びC500(Crompton Co.、West Hill,Ontario,Canada)である。AEROSOL(登録商標)OT-Sは、石油留分中のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムである。AEROSOL(登録商標)OT-MSOも、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを含有する。AEROSOL(登録商標)TR70%は、エタノールと水との混合物中のビストリデシルスルホコハク酸ナトリウムである。NaSul CA-HT3は、ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム/カルボキシレート複合体である。C500は、油溶性スルホン酸カルシウムである。
【0152】
アルキル又はアルキル基は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環状アルキル基(又はシクロアルキル若しくは脂環式若しくは炭素環式基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分岐鎖アルキル基(例えば、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなど)、及びアルキル置換アルキル基(例えば、アルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基)を含む、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。
【0153】
アルキルは、非置換アルキル及び置換アルキルの両方を含み得る。置換アルキルは、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の1つ以上の水素を置き換える置換基を有するアルキル基を指す。そのような置換基としては、アルケニル、アルキニル、ハロゲノ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、複素環式、アルキルアリール、又は芳香族(ヘテロ芳香族を含む)基が、挙げられ得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、置換アルキルは、複素環基を含み得る。複素環基は、環内の炭素原子のうちの1つ以上が、炭素以外の元素、例えば、窒素、硫黄、又は酸素である、炭素環式基に類似の閉環構造を含む。複素環基は、飽和又は不飽和であり得る。例示的な複素環基としては、アジリジン、エチレンオキシド(エポキシド、オキシラン)、チイラン(エピスルフィド)、ジオキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ジオキセタン、ジチエタン、ジチエト、アゾリジン、ピロリジン、ピロリン、オキソラン、ジヒドロフラン、及びフランが挙げられる。
【0155】
アニオン性界面活性剤の場合、対イオンは、典型的にはナトリウムであるが、代替的にカリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アミン(一級、二級、三級、又は四級)、若しくは他の有機塩基であり得る。例示的なアミンとしては、イソプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。上記カチオンの混合物も、使用され得る。
【0156】
本材料の調製に使用される界面活性剤は、カチオン性であり得る。そのようなカチオン性界面活性剤としては、以下に限定されないが、ピリジニウム含有化合物、及び一級、二級、三級、又は四級有機アミンが挙げられる。カチオン性界面活性剤の場合、対イオンは、例えば、塩化物、臭化物、メト硫酸塩、エト硫酸塩、乳酸塩、サッカリネート、酢酸塩、及びリン酸塩であり得る。カチオン性アミンの例としては、ポリエトキシル化オレイル/ステアリルアミン、エトキシル化タローアミン、ココアルキルアミン、オレイルアミン、及びタローアルキルアミン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0157】
単一の長鎖アルキル基を有する四級アミンの例は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド(BdhaCl)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、オレイルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムメトスルフェート(ココトリモニウムメトスルフェートとしても知られる)、セチルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムジハイドロジェンホスフェート、バッスアミドプロピルコニウムクロリド(bassuamidopropylkonium chloride)、ココトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、小麦胚芽アミドプロパルコニウムクロリド、ステアリルオクチイジモニウムメトスルフェート(stearyl octyidimonium methosulfate)、イソステアルアミノプロパル-コニウムクロリド、ジヒドロキシプロピルPEG-5リノールアンモニウムクロリド、PEG-2ステアルモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、タロートリモニウムクロリド、及びベヘナミドプロピルエチルジモニウムエトスルフェートである。
【0158】
2つの長鎖アルキル基を有する四級アミンの例は、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、ジステアリルジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、ステアリルオクチルジモニウムメトスルフェート、二水素化パルモイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、ジオレオイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、及びヒドロキシプロピルビスステアリルジモニウムクロリドである。
【0159】
イミダゾリン誘導体の四級アンモニウム化合物としては、例えば、イソステアリルベンジルイミドニウムクロリド、ココイルベンジルヒドロキシエチルイミダゾリニウムクロリド、ココイルヒドロキシエチルイミダゾリニウムPG-クロリドリン酸塩、及びステアリルヒドロキシエチルイミドニウムクロリドが挙げられる。ドデシルピリジニウムクロリド、アンプロリウムヒドロクロリド(AH)、及びベンゼトニウムヒドロクロリド(BH)などの他の複素環式四級アンモニウム化合物も、使用され得る。
【0160】
本材料の調製に使用される界面活性剤は、非イオン性であり得、以下に限定されないが、ポリアルキレンオキシドカルボン酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール、エトキシル化脂肪アルコール、ポロキサマー、アルカノールアミド、アルコキシル化アルカノールアミド、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、及びアルキル多糖類が、挙げられる。ポリアルキレンオキシドカルボン酸エステルは、それぞれ約8~20個の炭素を有する1つ又は2つのカルボン酸エステル部分と、約5~200個のアルキレンオキシド単位を含有するポリアルキレンオキシド部分とを有する。エトキシル化脂肪アルコールは、約5~150個のエチレンオキシド単位を含有するエチレンオキシド部分と、約6~約30個の炭素を有する脂肪アルコール部分とを含有する。脂肪アルコール部分は、環状、直鎖状、又は分岐状であり得、かつ飽和又は不飽和であり得る。エトキシル化脂肪アルコールのいくつかの例としては、オレスアルコール、ステアレスアルコール、ラウリルアルコール、及びイソセチルアルコールのエチレングリコールエーテルが挙げられる。ポロキサマーは、約15~約100モルのエチレンオキシドを有するエチレンオキシド及びプロピレンオキシドブロックコポリマーである。アルキル多糖(「APS」)界面活性剤(例えば、アルキルポリグリコシド)は、約6~約30個の炭素を有する疎水性基と、親水性基としての多糖(例えば、ポリグリコシド)を含有する。市販の非イオン性界面活性剤の一例が、FOA-5(Octel Starreon LLC.、Littleton,Colo.)である。
【0161】
好適な非イオン性界面活性剤の具体例としては、コカミドジエタノールアミド(「DEA」)、コカミドモノエタノールアミド(「MEA」)、コカミドモノイソプロパノールアミド(「MIPA」)、PEG-5コカミドMEA、ラウラミドDEA、及びラウラミドMEAなどのアルカノールアミド、ラウラミンオキシド、コカミンオキシド、コカミドプロピルアミンオキシド、及びラウラミドプロピルアミンオキシドなどのアルキルアミンオキシド、ソルビタンラウレート、ソルビタンジステアレート、ラウリン酸、イソステアリン酸及びPEG-150ジステアレートなどの脂肪酸又は脂肪酸エステル、ラウリルアルコールなどの脂肪アルコール又はエトキシル化脂肪アルコール、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、及びココグルコシドなどのアルキルポリグルコシドが挙げられる。
【0162】
本材料の調製に使用される界面活性剤は、両性イオン性であり得、同じ分子上に形式上の正電荷及び負電荷の両方を有する。正電荷基は、四級アンモニウム、ホスホニウム、又はスルホニウムであり得る一方、負電荷基は、カルボキシレート、スルホネート、硫酸塩、リン酸塩、又はホスホネートであり得る。他のクラスの界面活性剤と同様に、疎水性部分は、約8~18個の炭素原子の1つ以上の長い直鎖、環状鎖、又は分岐した脂肪族鎖を含有し得る。両性イオン性界面活性剤の具体例としては、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルアルファカルボキシメチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルガンマ-カルボキシプロピルベタイン、及びラウリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)アルファカルボキシ-エチルベタイン、アミドプロピルベタインなどのアルキルベタイン、並びにココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリイジメチルスルホプロピルベタイン(stearyidimethyl sulfopropyl betaine)、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタイン、及びアルキルアミドプロピルスルヒドロキシスルタインが挙げられる。
【0163】
本材料の調製に使用される界面活性剤は、両性であり得る。好適な両性界面活性剤の例としては、アルキルアンホカルボキシグリシネート及びアルキルアンホカルボキシプロピオネート、アルキルアンホジプロピオネート、アルキルアンホジアセテート、アルキルアンホグリシネート、及びアルキルアンホプロピオネート、並びにアルキルイミノプロピオネート、アルキルイミノジプロピオネート、及びアルキルアンホプロピルスルホネートのアンモニウム又は置換アンモニウム塩が挙げられる。具体例は、ココアンホアセテート、ココアンホプロピオネート、ココアンホジアセテート、ラウロアンホアセテート、ラウロアンホジアセテート、ラウロアンホジプロピオネート、ラウロアンホジアセテート、ココアンホプロピルスルホネート、カプロアンホジアセテート、カプロアンホアセテート、カプロアンホジプロピオネート、及びステアロアンホアセテートである。
【0164】
本材料の調製に使用される界面活性剤は、N-置換ポリイソブテニルスクシンイミド及びスクシネート、アルキルメタクリレートビニルピロリジノンコポリマー、アルキルメタクリレート-ジアルキルアミノエチルメタクリレートコポリマー、アルキルメタクリレートポリエチレングリコールメタクリレートコポリマー、ポリステアルアミド、並びにポリエチレンイミンなどのポリマーであり得る。
【0165】
本材料の調製に使用される界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Polysorbate 20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(Polysorbate 40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Polysorbate 60)、又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Polysorbate 80)などのポリソルベート型非イオン性界面活性剤であり得る。
【0166】
本材料の調製に使用される界面活性剤は、アルキルスクシンイミド、スクシネートエステル、高分子量アミン、並びにマンニッヒ塩基及びリン酸誘導体を含む、オイルベースの分散剤であり得る。いくつかの具体例が、ポリイソブテニルスクシンイミド-ポリエチレンポリアミン、ポリイソブテニルコハク酸エステル、ポリイソブテニルヒドロキシベンジル-ポリエチレンポリアミン、及びビス-ヒドロキシプロピルホスホレートである。
【0167】
本材料の調製に使用される界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性、両性(amphoteric)及び両性(ampholytic)界面活性剤からなる群から選択される同一又は異なるタイプの2つ以上の界面活性剤の組み合わせであり得る。同一タイプの2つ以上の界面活性剤の組み合わせの好適な例としては、以下に限定されないが、2つのアニオン性界面活性剤の混合物、3つのアニオン性界面活性剤の混合物、4つのアニオン性界面活性剤の混合物、2つのカチオン性界面活性剤の混合物、3つのカチオン性界面活性剤の混合物、4つのカチオン性界面活性剤の混合物、2つの非イオン性界面活性剤の混合物、3つの非イオン性界面活性剤の混合物、4つの非イオン性界面活性剤の混合物、2つの両性イオン性界面活性剤の混合物、3つの両性イオン性界面活性剤の混合物、4つの両性イオン性界面活性剤の混合物、2つの両性(amphoteric)界面活性剤の混合物、3つの両性(amphoteric)界面活性剤の混合物、4つの両性(amphoteric)界面活性剤の混合物、2つの両性(ampholytic)イオン性界面活性剤の混合物、3つの両性(ampholytic)イオン性界面活性剤の混合物、及び4つの両性(ampholytic)イオン性界面活性剤の混合物が挙げられる。
【0168】
ポリマー粒子
上述の技術は、活物質粒子300との接着を促進するために、高アスペクト比カーボンナノチューブ上に表面処理201を形成するためのポリマーの使用を含む。いくつかの有利に好適なポリマーが記載されているが、以下を含む他のポリマー材料が使用され得ることを理解されたい。
【0169】
本材料の調製に使用されるポリマーは、水処理可能ポリマー材料及び/又はアルコール処理可能ポリマー材料などのポリマー材料であり得る。様々な実施形態では、以下のポリマー(及びそれらの組み合わせ)のうちのいずれかが使用され得る、すなわち、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイソプレン(PIpr)、ポリアニリン(PANi)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)。いくつかの実施形態では。別の例示的なポリマー材料は、フッ素アクリルハイブリッドラテックス(TRD202A)であり、JSR Corporationによって供給される。
【0170】
図7は、パウチセル電池の概略図を示す。
【0171】
様々な実施形態によれば、本明細書の教示は、カソード内にPVDF結合剤を、又はアノード内に他の従来の結合剤を有しない電極を提供する。代わりに、上記で詳述したように、3D炭素足場又はマトリックスが、活物質粒子を一緒に保持して、金属集電体にも強く付着する凝集層を形成する。そのような活物質構造が、スラリー調製中、及びその後のロールツーロール(「R2R」)コーティング並びに乾燥プロセス中に作製される。本技術の主な利点の1つは、そのスケーラビリティと「ドロップイン」性であり、これは、様々な実施形態が従来の電極製造プロセスと互換性があるからである。
【0172】
3D炭素マトリックスは、本明細書に記載の技術を使用してスラリー調製中に形成され、高アスペクト比炭素材料は、例えば、2段階のスラリー調製プロセス(図6のプロセス600を参照して上記で説明したタイプなど)を使用して、適切に分散され、化学的に官能化される。化学的官能化は、例えば、カソード内に使用するためのNMC粒子、又はアノードの場合には、ケイ素粒子(「Si」)若しくは酸化ケイ素(「SiOx」)粒子など、活物質粒子の表面を有する、組織的な自己組織化構造を形成するように設計される。このように形成されたスラリーは、カソードについては水及び/又はアルコール溶媒をベースとし、アノードについては水をベースとすることができ、そのような溶媒は、製造プロセス中に非常に蒸発しやすく、取り扱いが容易である。静電相互作用は、スラリー内の自己集合構造を促進し、乾燥プロセス後、そのように形成された活物質粒子を含む炭素マトリックスと集電体の表面との間の結合は、表面処理(例えば、マトリックス上の官能基)及び炭素マトリックス中の活物質の強力な絡み合いによって促進される。
【0173】
当業者によって理解されるように、電極の機械的特性は、用途及び質量負荷要件に応じて、表面機能化対絡み効果を調整することによって、容易に修正され得る。
【0174】
コーティング及び乾燥後、電極は、活物質の密度及び気孔率を制御するために、カレンダリング工程を受ける。NMCカソード電極では、3.5g/cc以上の密度及び20%以上の気孔率が、達成され得る。質量負荷及びLIBセルの要件に応じて、気孔率が、最適化され得る。SiOx/Siアノードに関して、気孔率は、リチウム化プロセス中の活物質膨張に対応するように、特別に制御される。
【0175】
いくつかの典型的な用途では、本明細書の教示は、最大20%の$/kWhの減少をもたらし得る。容易に蒸発する優しい溶媒を使用することにより、電極スループットがより高くなり、より重要なことには、長時間乾燥によるエネルギー消費が大幅に低減される。従来のNMP回収システムも、アルコール又は他の溶媒混合物が使用されると、大幅に単純化される。
【0176】
本明細書の教示は、PVDFなどの従来の結合剤を使用する電極と比較して、電極の導電率を10倍~100倍劇的に向上させる3Dマトリックスを提供し、それにより、電池レベルでの高速充電を可能にする。この技術により、集電体の片面(又はそれ以上)当たり最大150umのカソードの厚い電極コーティングが可能である。強力な3Dカーボンマトリックスと組み合わせてスラリーに使用される溶媒は、乾燥ステップ中に亀裂を生じることなく厚い湿潤コーティングが得られるように設計される。厚いカソードが、高容量のアノードとともに、400Wh/kg以上に達するエネルギー密度の実質的な飛躍を可能にする。
【0177】
高速充電は、合金化プロセス(Si/SiOx)を通じてリチウム化される高容量アノードを組み合わせることによって、及び本明細書に記載のように、アノードと、カソードとを組み合わせるときのセルの全体的なインピーダンスを低減することによって、達成される。本明細書の教示は、高導電性電極、具体的には高導電性カソード電極を有することによって、高速充電を提供する。
【0178】
例示的な一実施形態は、カソードのNiリッチのNMC活物質と、アノードのSiOx及び黒鉛のブレンド活物質とを組み合わせたパウチセル形式のLiイオン電池エネルギー貯蔵デバイスを含み、アノード及びカソードの両方が、本明細書に記載の3D炭素マトリックスプロセスを使用して作製される。
【0179】
電極配置パウチセルデバイスの概略が、図7に示されている。示されるように、アルミニウム箔集電体710の対向する側にカソード層760(例えば、本明細書に開示される様々な実施形態による活性層)を使用する両面カソード700は、銅箔集電体上に配置されたアノード層740及び750(例えば、本明細書に開示されるような炭素要素のネットワークを含む活性層)を各々が有する、2つの片面アノード720及び730の間に配置される。電極は、電解質(図示せず)で湿潤された透過性セパレータ材料(図示せず)によって分離される。この配置は、当該技術分野で周知のタイプのパウチセル内に収容することができる。
【0180】
これらのデバイスは、NiリッチNMCカソード電極の高質量負荷及びその製造方法を特徴とし得る、すなわち、質量負荷=20~30mg/cm2、比容量>210mAh/g。SiOx/黒鉛アノード(SiOx含有量=約20重量%)ベースの電極及びその材料合成及び製造方法:質量負荷8~14mg/cm2、可逆比容量≧550mAh/g。特に、電池のSiOx/黒鉛アノードベースLiイオンベース電解質の長寿命性能:-30~60℃。高エネルギー、高電力密度、及び長サイクル寿命NiリッチNMCカソード/SiOx+黒鉛/炭素+ベースLiイオン電池パウチセル:容量≧5Ah、比エネルギー≧300Wh/kg、エネルギー密度≧800Wh/L、並びに1Cレート充放電下での500サイクルを超えるサイクル寿命、及び超高電力高速充放電Cレート(最大5Cレート)機能。
【0181】
図8は、エネルギー貯蔵装置(ESD)の態様を示す概略切欠図である。
【0182】
一般に、本明細書に開示されるエネルギー貯蔵装置(ESD)の例は例示である。すなわち、エネルギー貯蔵装置(ESD)は、本開示の実施形態に限定されない。
【0183】
エネルギー貯蔵装置(ESD)のより具体的な例は、二重層キャパシタ(静電的に電荷を蓄積する装置)、擬似キャパシタ(電気化学的に電荷を蓄積する装置)、ハイブリッドキャパシタ(静電的及び電気化学的に電荷を蓄積する装置)などのスーパーキャパシタを含む。一般に、静電二重層キャパシタ(EDLC)は、電気化学的な擬似静電容量よりもはるかに大きい静電二重層容量を有する炭素電極又は誘導体を使用し、導電性電極の表面と電解質との間の界面でヘルムホルツ二重層における電荷の分離を達成する。一般に、電気化学擬似キャパシタは、二重層容量に加えて大量の電気化学擬似容量を有する金属酸化物又は導電性ポリマー電極を使用する。擬似容量は、酸化還元反応、インターカレーション又は電気吸着によるファラデー電子電荷移動によって達成される。リチウムイオンキャパシタなどのハイブリッドキャパシタは、以下の異なる特性を有する電極を使用する:一方は主に静電容量を示し、他方は主に電気化学容量を呈する。
【0184】
エネルギー貯蔵装置(ESD)の他の例は、充電、負荷への放電、及び多数回の再充電が可能な電気電池のタイプである充電池、蓄電池、又は二次電池を含む。充電中、正極活物質は酸化されて電子を生成し、負極材料は還元されて電子を消費する。これらの電子は、外部回路からの電流の流れを構成する。一般に、電解質は、電極(例えば、アノード及びカソード)間の内部イオン流のためのバッファとして機能する。電池の充放電速度は、電流の「C」レートを参照することによって論じられることが多い。Cレートは、理論的に1時間で電池を完全に充電又は放電するレートである。「放電深さ」(DOD)は、通常、公称アンペア時容量のパーセンテージとして表される。例えば、ゼロパーセント(0%)DODは、放電がないことを意味する。
【0185】
図8には、エネルギー貯蔵装置(ESD)810の断面が、示されている。エネルギー貯蔵装置(ESD)810は、ハウジング811を含む。ハウジング811は、その外部に配置された2つの端子800を有する。端子800は、ハウジング811内に収容された蓄電セル812への内部電気的接続と、負荷又は充電装置(図示せず)などの外部装置への外部電気的接続とを提供する。
【0186】
図9は、図8のエネルギー貯蔵装置(ESD)の従来技術の貯蔵セルの態様を示す概略切欠図である。
【0187】
貯蔵セル12の切欠部分が、図9に示されている。この図に示すように、貯蔵セル912は、エネルギー貯蔵材料の多層ロールを含む。すなわち、エネルギー貯蔵材料のシート又はストリップは、ロール形式に一緒に巻かれる。エネルギー貯蔵材料のロールは、「アノード930」及び「カソード940」と呼ばれる対向する電極を含む。アノード930とカソード940とは、セパレータ950によって分離されている。図示されていないが、貯蔵セル912の一部として含まれているのは電解質である。一般に、電解質は、カソード940及びアノード930を透過又は湿潤させ、貯蔵セル912内のイオンの移動を促進する。様々な実施形態によれば、カソード940は、図1Aの電極100、又は図1Bの電極125に対応するか、又は同様である。いくつかの実施形態では、カソード940は、本明細書に開示される高アスペクト比炭素要素のネットワーク及び/又は本明細書に開示されるポリマー添加剤を含む電極に対応する。
【0188】
図10図19は、様々な実施形態に従って組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【0189】
図10は、グラフであり、示すことは、本明細書の教示に従って構築された半セルのCレートである。半セルは、22.5mg/cm2であったNCM活物質の面負荷を含んだ。この例では、「最良のプロセス」曲線は、本明細書の教示に従って製造されたバインダーフリー電極を表す。「旧のプロセス」曲線は、本明細書に開示されるこれらの界面活性剤及び分散剤なしで製造されたバインダーフリー電極を表す。「PVDF」曲線は、従来技術で製造された電極を使用したセルの性能を表す。この例では、半セルは、パウチセル構造であった。以下の表に提供されているにおける初期比及びCレート(initial specific and C-Rate)の試験結果。作用電極のサイズは、45×45mm、Li対向電極は、46×46mmであった。電解質は、EC/DMC(1/1容量比)+1%VC中に1MのLiPF6であった。
【表1】
【0190】
図11に、フルパウチセルの試験結果を示す。この実施例では、カソードは、45×45mmのNiリッチNMCであり、アノードは、46×46mmのグラファイト電極であった。電解質は、EC/DMC(1/1容量比)+1%VC中に1MのLiPF6であった。N/P比=約1.1。HPPC抵抗は、従来のPVDFプロセスと比較して、はるかに低いことが分かり得る。図に示されるように、本明細書の教示によるカソードにおけるより低い充電抵抗は、10パーセントの充電状態での改善された性能をもたらす。図13は、本明細書の教示に従って製造されたカソードによって、サイクル安定性が改善されることを示す。
【0191】
別のパウチセルを、試験のために構築した。この実施形態では、カソードは、45×45mm、28~30mg/cm2の質量負荷を有するNiリッチNMCであり、アノードは、46×46mm、8~9mg/cm2の質量負荷を有するグラファイト/SiOx(45%SiOx)電極の組み合わせであった。電解質は、PC:FEC:EMC:DEC=20:10:50:20中の1.1MのLiPF6であった。N/P比=約1.04~1.10。双方NMCカソード及び45%SiOxカソード電極の製造プロセスが、本明細書に記載のプロセスとともに使用され、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX電極)と組み合わせたハイブリッド界面活性剤及び分散剤を使用した。Liイオン電池のフルセル比エネルギーは、90%のパウチセルパッケージ効率で約332Wh/kgであり、パッケージ効率が95%に増加した場合は、351Wh/kgであった。エネルギー密度は、90%のパウチセルパッケージ効率及び10%のパウチセル体積膨張の場合、約808Wh/Lであり、エネルギー密度は、95%のパウチセルパッケージ効率及び10%のパウチセル体積膨張の場合、約853Wh/Lであった。特許請求された電極製造プロセスに基づくカソード及びアノードの初期第1のサイクルの充電比容量は、約228mAh/g及び852mAh/gであり、特許請求された電極製造プロセスに基づくカソード及びアノードの初期第1サイクルの放電比容量は、約210mAh/g及び750mAh/gであった。この例では、LiBフルセル容量は、0.1Cレートの定電流充放電下で、初回充電容量240mAh、及び4.2Vから2.5Vまでの初回放電容量216mAhである。初期クーロン効率は、約90%である。このセルのこのデータ及び電気的性能の態様が、図15図19に記載されている。
【0192】
得られた電極を使用するセルの例示的な特性を以下の表に示す。更に、例示的なセルは、いくつかの物理的試験で一般的に生じ得るような亀裂又は応力を示さなかった。
【表2】
【0193】
図20は、本明細書に開示される電極(例えば、NX電極)の例を使用する例示的なバッテリセルを示す。バッテリセルの寸法は約46.5mm×48.5mm×7.14mmであった。図20に示されるバッテリセルは、1.5~3.5Ahのバッテリセルに対応する。例示されるバッテリセル(例えば、NX NMC811電極を有する)は、210mAh/g以上の第1のサイクル電荷比容量、及び実質的に5.6mAh/cm2の面積容量を示した。
【0194】
図21は、本明細書に開示される電極(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを含む電極などのNX電極)の例を使用する例示的なバッテリセルを示す。バッテリセルは、約62mm×107mm×5.4mmであった。図21に示されるバッテリセルは、9.0~12.0Ahのバッテリセルに対応する。例示されるバッテリセル(例えば、NX NMC811電極を有する)は、1116mAh/g以上の第1のサイクル電荷比容量、及び実質的に6.5mAh/cm2の面積容量を示した。
【0195】
図22は、バッテリセル(例えば、パウチセル)の様々な例の特性のチャートを示す。バッテリセルの寸法は約46mm×46mm×3mmであった。バッテリセルのパッケージ効率は、9層のNMC811カソード及び10層のSiアノード(例えば、1.5Ahセル)について約86%であるが、より多くのスタック層を有する大型パウチセル>5Ahでは、セルパッケージ効率は、95%効率に増加してもよい。結果は、Siアノード(5.5~5.0mg/cm2)が、同じ小型パウチセルフォーマット及び層数を有するグラファイトアノード電極(24mg/cm2 NX NMC811カソードに一致する16mg/cm2)と比較して、少なくとも30%比エネルギー及びエネルギー密度を向上させることができることを示す。
【0196】
図23は、従来のPVDFカソードを有する対照バッテリセルと比較して、様々な実施形態によるカソードを備えるバッテリセルの性能を比較するグラフを示す。図23に示すように、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを使用すると、抵抗が少なくとも20%減少する。
【0197】
図24は、従来のPVDFカソードを有する対照バッテリセルと比較して、様々な実施形態によるカソードを備えるバッテリセルの性能を比較するチャートを示す。図24に示すように、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを使用すると、抵抗が少なくとも20%減少する。
【0198】
図25は、従来のPVDFカソードを有する対照バッテリセルと比較して、様々な実施形態によるカソードを備えるバッテリセルの性能を比較するグラフを示す。図25で比較したバッテリセルは、NX Si-Cアノード電極(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有する電極)を備え、1.5Ahセルであり、4.2~2.8Vの1C1Cサイクルに従って測定される。図25に示すように、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを使用すると、より大きな放電密度を有し、放電密度の差は、サイクル数が増加するにつれて増加する。250サイクル後、様々な実施形態によるバッテリセル(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを含むカソードを有するバッテリセル)は、少なくとも1275mAh、好ましくは少なくとも1375mAhの放電容量を有する。250サイクル後、様々な実施形態によるバッテリセル(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを含むカソードを有するバッテリセル)は、対照バッテリセル(例えば、PVDFを含むカソードを有するバッテリセル)よりも約10%大きい放電容量を有する。
【0199】
図26は、様々な実施形態による電極を備えるバッテリセルの性能を示すグラフを示す。図26で測定されたバッテリセルは、NX Si-Cアノード電極(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有する電極)、様々な実施形態によるカソード(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有するカソード)を備え、1.5Ahセルであり、4.2~2.8Vの1C1Cサイクルに従って測定される。図26に示すように、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを含むバッテリセルは、500サイクル後に約82.7%の放電容量保持を有する。3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、500サイクル後に300mAh未満減少する放電容量を有する。
【0200】
図27は、様々な実施形態による電極を備えるバッテリセルの性能を示すグラフを示す。図27は、高速充電サイクル性能のグラフを提供している。図27で測定されたバッテリセルは、NX Si-Cアノード電極(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有する電極)、様々な実施形態によるカソード(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有するカソード)を備え、1.5Ahセル(例えば、パウチセル)であり、4.2~2.8Vの電圧範囲にわたって4サイクルごとに1C/1C(3サイクル)+3.5C(CCCV15分)/1C(1サイクル)に従って測定される。図27に示すように、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、500サイクル後に少なくとも87%の放電容量保持を有する。いくつかの実施形態では、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、500サイクル後に87%~88%の放電容量保持を有する。3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、270サイクル後に300mAh未満減少する放電容量を有する。
【0201】
図28は、様々な実施形態による電極を備えるバッテリセルの性能を示すグラフを示す。図28は、サイクリングに対する放電エネルギーのグラフを提供している。図28で測定されたバッテリセルは、NX Si-Cアノード電極(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有する電極)、様々な実施形態によるカソード(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有するカソード)を備え、5.6mAh/cm2の負荷、及び3.5g/ccの電極密度を備えるカソードを有し、4.2~3.0Vの電圧範囲にわたる1C/1Cサイクルに従って測定される。図28に示すように、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、600サイクル後に少なくとも70%の放電容量保持、好ましくは600サイクル後に少なくとも80%の放電容量保持を有する。いくつかの実施形態では、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを含むバッテリセルは、1000サイクル後に約70%の放電容量保持を有する。いくつかの実施形態では、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、600サイクル後に80%~90%の放電容量保持を有する。
【0202】
図29は、様々な実施形態による電極を備えるバッテリセルの性能を示すグラフを示す。図29は、貯蔵時間に対する容量のグラフを提供している。例えば、バッテリセルは、摂氏50度のSOC100カレンダ寿命試験に従って測定された。図29で測定されたバッテリセルは、NX Si-Cアノード電極(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有する電極)、様々な実施形態によるカソード(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを有するカソード)を備える1.5Ahパウチバッテリセルである。図29に示すように、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、21日後に少なくとも95%の容量保持を有する。いくつかの実施形態では、3Dナノ炭素マトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、28日後に約95%の容量保持を有する。いくつかの実施形態では、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を含むカソードを備えるバッテリセルは、28日後に約96%の容量保持を有する。いくつかの実施形態では、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を有するカソードを備えるバッテリセルは、PVDFカソードを有する対照1.5Ahパウチバッテリセルよりも少なくとも1%優れた28日後の容量保持を有する。
【0203】
図30及び図31は、本出願の様々な実施形態による電極を備えるバッテリセルの性能を示す。図30及び図31においてその性能が提供されるバッテリセルは、46.5mm×46.5mm×7.14mmの寸法と、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を含むカソードとを備えるパウチセルである。図30は、セル容量設計、比エネルギー、及びエネルギー密度を示すチャートを提供している。図31は、容量に対するセル電圧のグラフを提供している。
【0204】
図32は、様々な実施形態によるバッテリセルの重量分布を示す。その重量分布が図32で測定されるバッテリセルは、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を含むカソードを備える3.4Ahパウチセルである。
【0205】
図33及び図34は、本出願の様々な実施形態による電極を備えるバッテリセルの性能を示す。図33及び図34にその性能が提供されるバッテリセルは、62mm×107mm及び5.4mmの寸法と、3Dナノカーボンマトリックス(例えば、NX NMC811)を含むカソードとを備えるパウチセルである。図33は、セル容量設計、比エネルギー、及びエネルギー密度を示すチャートを提供している。図34は、DSTサイクル数に対する容量のグラフを提供している。様々な実施形態によれば、バッテリセルは、315Wh/kg以上の比エネルギー、820Wh/L以上のエネルギー密度、及び9Ahのセル容量を備える。様々な実施形態によるバッテリセルは、1000サイクルで少なくとも約70%、225サイクルで少なくとも92.5%、及び/又は300サイクルで90%を超えるDSTサイクル安定性を呈する。
【0206】
図35及び図36は、本出願の様々な実施形態による電極を備えるバッテリセルの性能のチャートを示す。図36に示されるように、様々な実施形態によるバッテリセル(例えば、3Dナノカーボンマトリックスを含むカソードを備える9Ahパウチセル)は、0%充電から100%充電までで10%未満の体積膨張を呈する。いくつかの実施形態では、このようなバッテリセルは、0%充電から100%までで9%未満の体積膨張を呈する。いくつかの実施形態では、このようなバッテリセルは、0%充電から100%までで約8.8%の体積膨張を呈する。
【0207】
本明細書の教示の態様を提供するために、様々な他の構成要素が含まれ、必要とされてもよい。例えば、本明細書の教示の範囲内にある追加の実施形態を提供するために、追加の材料、材料の組み合わせ、及び/又は材料の省略が使用されてもよい。本明細書の教示の様々な変更が実現され得る。一般に、変更は、ユーザ、設計者、製造者、又は他の同様の関係者のニーズに従って設計され得る。変更は、その当事者が重要と考える特定の性能基準を満たすことを意図し得る。
【0208】
添付の特許請求の範囲又は請求項の要素は、「のための手段」又は「のためのステップ」という単語が特定の請求項において明示的に使用されない限り、米国特許法第112条(f)を発動すると解釈されるべきではない。
【0209】
本発明又はその実施形態(複数可)の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、1つ又は複数の要素があることを意味することを意図している。同様に、形容詞「別の(another)」は、要素を導入するために使用される場合、1つ又は複数の要素を意味することを意図している。「含む(including)」及び「有する(having)」という用語は、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得るように包括的であることを意図している。本明細書で使用される場合、「例示的」という用語は、上位の例を意味することを意図しない。むしろ、「例示的」は、多くの可能な実施形態のうちの1つである実施形態の例を指す。
【0210】
以下の実施例は、単に本明細書に開示された様々な例示であり、本明細書の範囲を限定することを意図するものではない。特に明記しない限り、全ての実施例は、シミュレーションに基づくものであった。
【0211】
概して、本開示は、代替的に、本明細書に開示される任意の適切な構成要素を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなってもよい。
図1A
図1B
図1C
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【国際調査報告】