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特表2024-546726抗体-サイトカイン融合タンパク質及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】抗体-サイトカイン融合タンパク質及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241219BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20241219BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/54
C12P21/02 B
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534231
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2022137449
(87)【国際公開番号】W WO2023104134
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/136727
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516310910
【氏名又は名称】ジーンクアンタム ヘルスケア (スーチョウ) シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】GENEQUANTUM HEALTHCARE (SUZHOU)CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ギャン・チン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エイチ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】トン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】カオ・リュウ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG03
4B064AG27
4B064CA19
4B064CB30
4B064CC01
4B064CC24
4B064CE11
4B064CE12
4B064DA01
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA70
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗PD-L1抗体及びインターロイキン21を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質、及びその調製方法、並びに前記融合タンパク質の治療目的での用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は(I’)の構造を有する融合タンパク質であって、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Aは抗PD-L1抗体であり、
Bはインターロイキン21(IL21)であり、
Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーであるか又は存在せず、
Lkは、ソルターゼのアクセプター基質認識配列とドナー基質認識配列のコンジュゲーションによって形成されたリンカーであり、
mは1~4の整数である、前記融合タンパク質。
【請求項2】
前記アクセプター基質認識配列は、グリシン(G)及びアラニン(A)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記アクセプター基質認識配列は、(G)の配列を含み、ただし、nは2~20の整数、特に3である、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記ドナー基質認識配列は、XTXの配列を含み、ただし、Xはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Xはグリシン(G)、セリン(S)又はアスパラギン(N)であるか又は存在せず、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であるか又は存在しない、請求項1から3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
TXはLPXTG、LPXTGG、NPQTN、NPKTG、LAXTG又はLPQTSEQであり、ただし、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸である、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
TXはLPETG又はLPETGGである、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記スペーサーは、グリシン(G)、アラニン(A)及びセリン(S)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含み、
好ましくは、前記スペーサーは、GA、GGG、GAG及び(G)S((G)S)からなる群から選択され、ただし、oは1~5の整数であり、sは1~10の整数、特に4であり、tは0又は1~10の整数である、請求項1から5のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
LkはXT(G)であり、前記融合タンパク質は、(II)又は(II’)の構造を有し、
[B-Sp-XT(G)-Sp-A (II)
A-[Sp-XT(G)-Sp-B] (II’)
式中、Xはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは2~20の整数であり、
mは1又は2であり、
A、B、Sp及びSpは、請求項1で定義された通りである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
T(G)はLPXT(G)、NPXT(G)又はLAXT(G)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは2~20の整数である、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質は(III)又は(III’)の構造を有し、
[B-GALPETGGGGSGGGGS]-A (III)
A-[GALPETGGGGSGGGGS-B] (III’)
式中、A及びBは請求項1で定義された通りである、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体であり、
好ましくは、前記抗PD-L1抗体は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を含み、そのうち、
(1)前記VLは、配列番号22に示すCDRL1配列、配列番号23に示すCDRL2配列及び配列番号24に示すCDRL3配列を含み、前記VHは、配列番号25に示すCDRH1配列、配列番号26に示すCDRH2配列及び配列番号27に示すCDRH3配列を含み、又は
(2)前記VLは、配列番号28に示すCDRL1配列、配列番号29に示すCDRL2配列及び配列番号30に示すCDRL3配列を含み、前記VHは、配列番号31に示すCDRH1配列、配列番号32に示すCDRH2配列及び配列番号33に示すCDRH3配列を含み、
より好ましくは、前記VLは、配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記VHは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、又は前記VLは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、前記VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、
最も好ましくは、前記抗PD-L1抗体は、軽鎖及び重鎖を含み、そのうち、
(1)前記軽鎖は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記重鎖は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、又は
(2)前記軽鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記重鎖は、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記IL21は、野生型IL21又はその変異体であり、
好ましくは、前記IL21は、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記融合タンパク質は、式(III)の構造を有し、
[B-GALPETGGGGSGGGGS]-A (III)
式中、
Aは、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体であり、
Bは、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含むIL21であり、
mは1又は2である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記IL21は、前記抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされ、
好ましくは、前記IL21は、前記抗PD-L1抗体の重鎖のN末端でコンジュゲートされる、請求項11~13のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記融合タンパク質は、
(a)2つの同一の重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)前記重鎖部分の各々が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)前記重鎖部分の各々が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含み、
あるいは、前記融合タンパク質は、
(b)2つの異なる重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)前記重鎖部分の一方が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記重鎖部分の他方が配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)前記重鎖部分の一方が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、前記重鎖部分の他方が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
それを必要とする対象の疾患を治療するための医薬品の製造における請求項1から15のいずれか1項に記載の融合タンパク質の使用であって、
好ましくは、前記疾患は、癌であり、
より好ましくは、前記癌は、黒色腫、卵巣癌、乳癌、メルケル細胞癌、肺癌、腎細胞癌、膀胱癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸癌、頭頸部扁平上皮癌、中皮腫、ウイルス誘発性癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、軟部肉腫、血液悪性腫瘍、胃癌、胃癌又は胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道癌、食道の扁平上皮癌、子宮内膜癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)又はミスマッチ修復欠損(dMMR)の固形腫瘍、肝細胞癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、腎細胞癌腫(RCC)、有棘細胞癌(cSCC)、三種陰性乳癌(TNBC)、非小細胞肺癌及び膀胱癌から選択される、前記使用。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか1項に記載の融合タンパク質を産生するための方法であって、
(a-1)式(I-1)の構造を有する抗体部分及び式(I-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
[Lk-Sp-A (I-1)
B-Sp-Lk (I-2)
(b-1)ソルターゼの存在下で前記抗体部分を前記サイトカイン部分とコンジュゲートして式(I)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
又は
(a-2)式(I’-1)の構造を有する抗体部分及び式(I’-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
A-[Sp-Lk (I’-1)
Lk-Sp-B (I’-2)
(b-2)ソルターゼの存在下で前記抗体部分を前記サイトカイン部分とコンジュゲートして式(I’)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Lkは前記ソルターゼのアクセプター基質認識配列であり、Lkは、前記ソルターゼのドナー基質認識配列であり、
A、B、Sp、Sp、Lk及びmは請求項1から15のいずれか1項で定義された通りである、前記方法。
【請求項18】
ステップ(a-1)は、
(a-1-1)Lk-Spを前記抗PD-L1抗体の重鎖のN末端に付加して式(I-1)の構造を有する前記抗体部分を得るステップと、
[Lk-Sp-A (I-1)
(a-1-2)Sp-LkをIL21のC末端に付加して式(I-2)の構造を有する前記サイトカイン部分を得るステップと、を更に含む、請求項17に記載の方法。
B-Sp-Lk (I-2)
【請求項19】
ステップ(a-2)は、
(a-2-1)Sp-Lkを前記抗PD-L1抗体の重鎖のC末端に付加して式(I’-1)の構造を有する前記抗体部分を得るステップと、
A-[Sp-Lk (I’-1)
(a-2-2)Lk-SpをIL21のN末端に付加して式(I’-2)の構造を有する前記サイトカイン部分を得るステップと、を更に含む、請求項17に記載の方法。
Lk-Sp-B (I’-2)
【請求項20】
前記アクセプター基質認識配列は請求項2又は3で定義された通りである、請求項17から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ドナー基質認識配列は請求項4から6で定義された通りである、請求項17から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記スペーサーは請求項7で定義された通りである、請求項17から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗PD-L1抗体は請求項11で定義された通りである、請求項17から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記IL21は請求項12で定義された通りである、請求項17から23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバイオ医薬品の分野に関する。特に、抗PD-L1抗体及びインターロイキン21を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質、その調製方法及びその用途を提供する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン21(IL21)は、主にCD4 T細胞、B細胞、骨髄細胞及びナチュラルキラー(NK)T細胞によって分泌される4αヘリックスバンドルサイトカインである。IL21は、IL21受容体(IL21R)のヘテロ二量体及び共通サイトカイン受容体ガンマ鎖を介してシグナル伝達することで、広範囲の免疫細胞型に多面的効果を発揮し、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を制御する。組換えIL21の腫瘍内注射は、腫瘍微小環境内の腫瘍関連マクロファージの免疫抑制性M2表現型から腫瘍阻害性M1表現型への転換を促進できることが報告されている。IL21の抗腫瘍活性は、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫及び黒色腫の第1相又は第2相臨床試験で、単独療法又は他の治療薬との併用療法として実証されている。しかし、IL21は半減期が非常に短く、全身投与される場合に重大な副作用を引き起こす。組換えIL21の腫瘍内投与は、より高い有効性及びより低い全身毒性等の利点をもたらす可能性があるが、大部分の患者にとってかなり困難である。
【0003】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、T細胞増殖及び活性を制御する免疫抑制性受容体/リガンドである。PD-1/PD-L1経路は、癌細胞により抗腫瘍免疫の抑制に利用され、一般に臨床転帰不良に関連する。PD-1又はPD-L1に対する抗体を使用するPD-1/PD-L1遮断は、様々な癌種の治療において有望な治療効果を示している。抗PD-1/PD-L1免疫療法は臨床的有効性が期待できるものの、その恩恵を受ける患者は、まだ、ごく少数である。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、式(I)又は(I’)の構造を有する融合タンパク質であって、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Aは抗PD-L1抗体であり、
Bはインターロイキン21(IL21)であり、
Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーであるか又は存在せず、
Lkは、ソルターゼのアクセプター基質認識配列とドナー基質認識配列のコンジュゲーションによって形成されたリンカーであり、
mは1~4の整数である、前記融合タンパク質を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態において、前記アクセプター基質認識配列は、グリシン(G)及びアラニン(A)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。特定の実施形態において、前記アクセプター基質認識配列は、(G)の配列を含み、ただし、nは2~20の整数、特に3である。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記ドナー基質認識配列は、XTXの配列を含み、ただし、Xはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Xはグリシン(G)、セリン(S)又はアスパラギン(N)であるか又は存在せず、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であるか又は存在しない。
【0007】
特定の実施形態において、XTXはLPXTG、LPXTGG、NPQTN、NPKTG、LAXTG又はLPQTSEQであり、ただし、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸である。好ましい実施形態において、XTXはLPETG又はLPETGGである。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、グリシン(G)、アラニン(A)及びセリン(S)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体である。好ましい実施形態において、前記抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記IL21は、野生型IL21又はその変異体である。好ましい実施形態において、前記IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記IL21は、前記抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされる。好ましい実施形態において、前記IL21は、前記抗PD-L1抗体の重鎖のN末端でコンジュゲートされる。
【0012】
いくつかの実施形態において、LkはXT(G)であり、前記融合タンパク質は、(II)又は(II’)の構造を有し、
[B-Sp-XT(G)-Sp-A (II)
A-[Sp- XT(G)-Sp-B] (II’)
式中、Xはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは2~20の整数であり、
mは1又は2であり、
A、B、Sp及びSpは上記で定義された通りである。
【0013】
特定の実施形態において、前記融合タンパク質は、(III)又は(III’)の構造を有し、
[B-GALPETGGGGSGGGGS]-A (III)
A-[GALPETGGGGSGGGGS-B] (III’)
式中、A及びBは上記で定義された通りである。
【0014】
特定の実施形態において、前記融合タンパク質は、式(III)の構造を有し、
[B-GALPETGGGGSGGGGS]-A (III)
式中、
Aは、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体であり、
Bは、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含むIL21であり、
mは1又は2である。
【0015】
特定の実施形態において、前記融合タンパク質は、2つの同一の重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)前記重鎖部分の各々が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)前記重鎖部分の各々が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0016】
別の特定の実施形態において、前記融合タンパク質は、2つの異なる重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)前記重鎖部分の一方が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記重鎖部分の他方が配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)前記重鎖部分の一方が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、前記重鎖部分の他方が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0017】
別の態様において、それを必要とする対象の疾患を治療するための医薬品の製造における、本開示に係る融合タンパク質の使用を提供する。好ましくは、前記疾患は、癌である。より好ましくは、前記癌は、黒色腫、卵巣癌、乳癌、メルケル細胞癌、肺癌、腎細胞癌、膀胱癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸癌、頭頸部扁平上皮癌、中皮腫、ウイルス誘発性癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、軟部肉腫、血液悪性腫瘍、胃癌、胃癌又は胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道癌、食道の扁平上皮癌、子宮内膜癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)又はミスマッチ修復欠損(dMMR)の固形腫瘍、肝細胞癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、腎細胞癌腫(RCC)、有棘細胞癌(cSCC)、三種陰性乳癌(TNBC)、非小細胞肺癌及び膀胱癌から選択される。
【0018】
更なる態様において、本開示に係る融合タンパク質を産生するための方法であって、
(a-1)式(I-1)の構造を有する抗体部分及び式(I-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
[Lk-Sp-A (I-1)
B-Sp-Lk (I-2)
(b-1)ソルターゼの存在下で前記抗体部分を前記サイトカイン部分とコンジュゲートして式(I)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
又は
(a-2)式(I’-1)の構造を有する抗体部分及び式(I’-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
A-[Sp-Lk (I’-1)
Lk-Sp-B (I’-2)
(b-2)ソルターゼの存在下で前記抗体部分を前記サイトカイン部分とコンジュゲートして式(I’)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Lkは上記で定義されたソルターゼのアクセプター基質認識配列であり、Lkは、上記で定義されたソルターゼのドナー基質認識配列であり、
A、B、Sp、Sp、Lk及びmは上記で定義された通りである、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示のいくつかの実施形態に係る融合タンパク質の概略図を示す。
図2A】それぞれ、ELISAによって分析されたAb0030及びAb0033のhPD-L1への結合活性を示す。
図2B】それぞれ、ELISAによって分析されたAb0030及びAb0033のhPD-L1への結合活性を示す。
図3】Ab0030及びAb0033から調製された融合タンパク質を含有する抗体-サイトカインコンジュゲーション混合物のSDS-PAGE分析を示す。
図4】Ab0030及びAb0033から調製された精製融合タンパク質のSDS-PAGE分析を示す。
図5】Ab0030及びAb0033から調製された融合タンパク質のHIC-HPLCプロファイルを示す。
図6】Ab0030及びAb0033から調製された融合タンパク質のHIC-HPLCプロファイルを示す。
図7】ELISAによって分析された抗体単独又は融合タンパク質のhPD-L1への結合活性を示す。
図8】ELISAによって分析された抗体単独又は融合タンパク質のIL21Rへの結合活性を示す。
図9】対照(白抜きヒストグラム)又はhIL21、Ab0033及びLC0033-1(塗りつぶされたヒストグラム)で刺激されたPBMCにおけるSTAT3リン酸化(pSTAT3)シグナルのフローサイトメトリ分析を示す。
図10】第1有効性試験からの実験動物の指定された時点での体重を示す。
図11】第1有効性試験からの実験動物の指定された時点での腫瘍体積を示す。
図12】第2有効性試験からの実験動物の指定された時点での体重を示す。
図13】第2有効性試験からの実験動物の指定された時点での腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。加えて、生化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学及び免疫学に関する用語及び実験手順は、当分野で広範に使用されるものである。また、本開示をより良く理解するために、以下に関連用語の定義及び説明を提供する。
【0021】
本明細書で使用されるように、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」という表現は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上を意味する。明確に反対の指示がない限り、本明細書で使用される「一(a)」及び「一つ(an)」は、「少なくとも1つ」と理解すべきである。
【0022】
特定の量、濃度、値又はパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限若しくは好ましい下限の形態で記載される場合、前記範囲が明示的に記載されているか否かに関わらず、任意の上限又は好ましい値を任意の下限又は好ましい値と組み合わせて形成された任意の範囲が具体的に示されるのに等しいと理解すべきである。特に断らない限り、本明細書に挙げられる数値範囲は、該範囲の両端及び該範囲内の全ての整数と分数(小数)を含むことを意図する。例えば、「iは1~20の整数である」という表現は、iは1~20の任意の整数であることを意味し、例えば、iは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であってもよい。他の同様の表現、例えばn及びmも同様に理解されるべきである。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」とは、その後に説明される事象が発生し得るが、必ずしも発生とは限らないことを意味し、該説明は、前記事象又は状況が発生するか又は発生しないケースを含む。
【0024】
「含む」、「包含」、「含有」及び「有する」といった表現は、制限のないものであり、追加の列挙されていない要素、ステップ、又は成分を除外するものではない。「…からなる」という表現は、指定されない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。「…から本質的になる(consisting essentially of)」とは、範囲が、指定された要素、ステップ若しくは成分に限定されるか、又は請求される発明主題の本質的で新規な特徴に実質的に影響しない任意に存在する要素、ステップ若しくは成分の群に限定されることを意味する。「含む」という表現は、「…から本質的になる」及び「…からなる」といった表現を包含することを理解すべきである。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、少なくとも1つの抗原結合部位(即ち、パラトープ)を介して抗原のエピトープに特異的に結合する免疫グロブリン(Ig)分子又はその断片である。本明細書で使用されるように、「抗体(Ab)」の定義は、通常の抗体、組換え抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、完全ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、細胞内抗体、ダイアボディ、抗イディオタイプ抗体及び抗原結合断片を包含する。本明細書に記載の抗原結合断片は、全長抗体の酵素処理及び/又は合成方法によって産生でき、例えば、組換え抗体が1つの抗体のCDRを別の抗体のフレームワークに移植することによって産生される。抗原結合断片の例としては、Fv、scFv、dsFv、scdsFv、ダイアボディ、Fab、scFab、Fab’、F(ab’)、及び他の断片を含むが、それらに限定されない。本明細書で提供される抗体は、任意の免疫グロブリンタイプ(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgA及びIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)のメンバーを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、PD-L1の少なくとも一部を認識する抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖を含む通常の抗体である。
【0026】
「通常の」又は「全長」抗体は、典型的に、2つの重鎖(HC)及び2つの軽鎖(LC)といった4つのポリペプチドからなる。各軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へ、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む。各重鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へ、重鎖可変領域(VH)及び1つ又は複数の重鎖定常領域(CH)を含む。
【0027】
各VL及びVHは、典型的に3つの超可変「相補性決定領域(CDR)」及び4つの比較的保存された「フレームワーク領域(FR)」を有し、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4の順でアミノ末端からカルボキシル末端へと配列される。VL又はVHにおける位置に応じて、CDRは、CDRH1、CDRH2及びCDRH3のような重鎖可変領域CDR(CDRH)、又はCDRL1、CDRL2及びCDRL3のような軽鎖可変領域CDR(CDRL)と指定される。
【0028】
当業者であれば、CDRを知り、当分野で周知の方法論、例えば、Kabat(例えば、Kabat, E.A. et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照)、Chothia(例えば、Chothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917を参照)、AbM(例えば、Martin, A.C.R. and Allen, J. (2007). Bioinformatics Tools for Antibody Engineering. In Handbook of Therapeutic Antibodies, S. Dubel (Ed.)を参照)及びIMGT(例えば、Lefranc, M.-P., 2011 (6), IMGT, the International ImMunoGeneTics Information System Cold Spring Harb Protoc.; and Lefranc, M.-P. et al., Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003)を参照)を含む様々な番号付けスキームを使用して、CDRを定義することができる。当業者であれば、所与の抗体のCDR配列が、使用される番号付けスキームに応じて異なる境界を有し得ることを理解するであろう。本明細書に記載の抗PD-L1抗体のCDR配列は、Kabat番号付けスキームを使用して定義されるが、任意の他の番号付けスキームによって定義されるCDR配列が本開示の保護範囲に含まれるものとする。
【0029】
本明細書で使用されるように、用語「結合親和性」は、抗体とその同族抗原(例えば、抗PD-L1抗体とPD-L1)又はリガンドとその受容体(例えば、IL21とIL21R)のような、2つの結合パートナー間の強度の尺度である。典型的に、タンパク質間の親和性は、通常、平衡解離定数Kによって測定され報告される。Kは、下記等式を使用した動態分析から算出できる。
=koff/kon
式中、koff及びkonは、それぞれ、抗原と抗体の間の解離速度定数及び会合速度定数である。Kと親和性は反比例する。典型的に、抗体とその同族抗原の間のKは、約10-6M~約10-9M以下、例えば10-8以下、10-9以下、又は10-10以下である。koff及びkonは、免疫アッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)(Rich and Myszka (2000) Curr. Opin. Biotechnol 11:54; Englebienne (1998) Analyst. 123:1599)、等温滴定熱量測定(ITC)又は当分野で既知の他の動態相互作用アッセイ(例えば、Paul, W. E., Fundamental Immunology, 2nd ed., Raven Press, New York, pages 332-336 (1989)を参照。また、米国特許US7,229,619も参照)に限定されない標準的な動態分析方法を使用して測定できる。結合速度のリアルタイム検出及び監視のための計器及び方法は既知であり、市場から入手できる(例えば、BiaCore2000、BiacoreAB、Upsala、Sweden)。
【0030】
本明細書で使用されるように、用語「ポリペプチド」とは、ペプチド結合によって共有結合した2つ以上のアミノ酸を指す。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で互換的に使用される。ポリペプチドは、例えば、1つ又は複数のスペーサー又は機能的部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG化)及びグリカン(グリコシル化))等を含むように修飾できる。ポリペプチドの修飾方法は、当業者に周知である。
【0031】
本明細書で使用されるように、「天然アミノ酸」とは、生体内のタンパク質合成に使用されるL配置の天然に存在するアミノ酸を指す。天然アミノ酸は、本明細書で、アラニン(A、Ala)、アルギニン(R、Arg)、アスパラギン(N、Asn)、アルギニン酸(D、Asp)、システイン(C、Cys)、グルタミン(Q、Gln)、グルタミン酸(E、Glu)、グリシン(G、Gly)、ヒスチジン(H、His)、イソロイシン(I、Ile)、ロイシン(L、Leu)、リジン(K、Lys)、メチオニン(M、Met)、フェニルアラニン(F、Phe)、プロリン(P、Pro)、セリン(S、Ser)、トレオニン(T、Thr)、トリプトファン(W、Trp)、チロシン(Y、Tyr)、バリン(V、Val)、ピロリシン(O、Pyl)、セレノシステイン(U、Sec)といった、当業者に知られている標準的な1文字又は3文字のコードで表される。非天然アミノ酸の例は、上記の天然アミノ酸のD異性体及び誘導体、並びに異常アミノ酸を含む。非天然アミノ酸は、ホモアミノ酸、β-ホモアミノ酸、N-メチルアミノ酸、α-メチルアミノ酸、シトルリン(Cit)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、ノルロイシン(Nle)、3-ニトロチロシン、ニトロアルギニン、オルニチン(Orn)、ナフチルアラニン(Nal)、アミノ酪酸(Abu)、ジアミノ酪酸(Dab)、メチオニンスルホキシド及びメチオニンスルホンを含むが、それらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用されるように、ポリペプチドにおけるアミノ酸位置の番号付けは、N末端からの最初のアミノ酸の位置を位置1と指定するように定義される。
【0033】
本明細書で使用されるように、「スペーサー」とは、融合タンパク質中の2つの部分間に位置し、該2つの部分を空間的に分離する構造を指す。スペーサーの例としては、アミノ酸、アミノ酸誘導体若しくは類似物及びアミノ酸配列を含むが、それらに限定されない。好ましいスペーサーとしては、GA、GGG、GAG及び(G)S((G)S)のようなグリシン(G)、アラニン(A)及びセリン(S)のポリマーを含むアミノ酸配列を含んでもよいが、それらに限定されず、ここでoは1~5の整数であり、sは1~10の整数、特に4であり、tは0又は1~10の整数である。スペーサーは、化学合成、化学若しくは酵素反応又は組換えDNA技術によってポリペプチド(例えば本明細書に記載の抗体部分又はサイトカイン部分)に組み込まれてもよいが、これに限定されない。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「認識配列」及び「認識モチーフ」は、互換的に使用されて、酵素(例えば、ソルターゼ)によって認識され且つ酵素がその酵素作用を発揮するアミノ酸配列を指す。例えば、それぞれソルターゼのドナー及びアクセプター基質認識配列を含む2つのポリペプチドは、コンジュゲートしてソルターゼの酵素作用によって融合ポリペプチドを形成することができる。
【0035】
本明細書で使用されるように、「配列同一性」は、当分野で認識されている意味を有し、2つの核酸又はポリペプチド間の配列同一性のパーセントは、公開されたアルゴリズム、例えばBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)及びFast Adaptive Shrinkage/Thresholding Algorithm(FASTA)(例えばComputational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988、Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994を参照)を使用して2つの配列をアライメントすることによって算出できる。2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド間の同一性を測定する方法は多数あるが、用語「同一性」は、熟練技術者に周知である(Carrillo, H. & Lipman, D., SIAM J Applied Math 48:1073 (1988))。
【0036】
本明細書で使用されるように、参照ポリペプチド(野生型IL21等)の「変異体」は、該参照ポリペプチドと比較して1つ又は複数のアミノ酸付加、欠失、挿入及び/又は置換を含む。
【0037】
本明細書で使用されるように、疾患又は症状を有する対象を「治療」するとは、該疾患又は症状を治癒するか、又は該疾患又は症状の徴候を阻止、緩和、改善又は除去する試みで、対象に組成物、手順又はレジメンを投与又は適用することを意味する。よって、用語「治療」は、予防、療法及び/又は治癒を包含する。用語「予防」とは、潜在的な疾患の予防及び/又は徴候の悪化又は疾患の進行の予防を指す。本明細書で使用されるように、治療は、本明細書で提供される融合タンパク質又は医薬組成物の任意の医薬的使用も包含する。
【0038】
本明細書で使用されるように、「対象」の定義は、ヒト及び非ヒト対象、例えば実験動物(例えば、マウス、ウサギ、及びラット並びに非ヒト霊長類)を含み、好ましくはヒトを指す。
【0039】
本明細書で使用されるように、「治療効果」は、疾患又は症状の徴候を変化させ、典型的には改善又は除去する、対象の治療から生じる効果を意味する。
【0040】
本明細書で使用されるように、「治療有効量」とは、対象に投与した後に治療効果を生み出すのに少なくとも十分な、1つ又は複数の活性剤を含有する薬剤、化合物、又は組成物の量を指す。よって、それは、疾患又は障害の徴候を予防、治癒、改善、阻止又は部分的に阻止するために必要な量である。
【0041】
融合タンパク質
一態様において、式(I)又は(I’)の構造を有する融合タンパク質を提供し、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Aは抗PD-L1抗体であり、
Bはインターロイキン21(IL21)であり、
Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーであるか又は存在せず、
Lkは、ソルターゼのアクセプター基質認識配列とドナー基質認識配列のコンジュゲーションによって形成されたリンカーであり、
mは1~4の整数である。
【0042】
融合タンパク質は、リンカーを介してコンジュゲートされた抗PD-L1抗体とインターロイキン21(IL21)を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質(免疫サイトカインとも呼ばれる)であり、ここでリンカーは、ソルターゼのドナー基質認識配列とコンジュゲートされたアクセプター基質認識配列を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、ソルターゼによって認識されたアクセプター基質認識配列とドナー基質認識配列のソルターゼ媒介部位特異的コンジュゲーションによって形成され、ここで、認識配列の一方は抗PD-L1抗体に連結されて抗体部分を形成し、認識配列の他方はIL21に連結されてサイトカイン部分を形成する。
【0043】
式(I)中、IL21は、ドナー基質認識配列に連結され、抗PD-L1抗体はアクセプター基質認識配列に連結される。式(I’)中、抗PD-L1抗体はドナー基質認識配列に連結され、IL21はアクセプター基質認識配列に連結される。ソルターゼの酵素作用によって、アクセプター及びドナー基質認識配列は、抗PD-L1抗体とIL21の間のリンカーを形成する。任意に、スペーサーが認識配列と抗PD-L1抗体及び/又はIL21の間に挿入されて空間的分離を提供する。
【0044】
式(I)及び(I’)は、それぞれ、IL21又は抗PD-L1抗体とリンカーの間の連結を定義するが、IL21が抗PD-L1抗体にコンジュゲートされる位置を限定することが意図されない。式(I)及び(I’)のいずれかにおいて、IL21は、抗PD-L1抗体の任意の位置にコンジュゲートすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、軽鎖及び重鎖を含む。1つの実施形態において、IL21は、抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされる。1つの実施形態において、IL21は、抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のC末端でコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、IL21は、抗PD-L1抗体の非末端位置でコンジュゲートされる。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態において、式(I)中、IL21は、抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされる。特定の実施形態において、IL21は、抗PD-L1抗体の重鎖のN末端でコンジュゲートされる。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態において、式(I’)中、IL21は、抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のC末端でコンジュゲートされる。特定の実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の重鎖のC末端でコンジュゲートされる。
【0048】
mは、抗PD-L1抗体にコンジュゲートされたIL21の数を表す。抗PD-L1抗体に連結されるドナー又はアクセプター基質認識配列の数を制御することで、1つ又は複数のIL21を抗PD-L1抗体にコンジュゲートすることができる。いくつかの好ましい実施形態において、mは1、2、3及び4から選択される整数である。特定の実施形態において、mは1である。別の特定の実施形態において、mは2である。
【0049】
抗PD-L1抗体
「B7H1」又は「CD274」とも呼ばれる「プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)」は、免疫抑制性受容体プログラム細胞死1(PD-1)のリガンドである。PD-L1は、任意の種、例えばヒト、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ等からのものであり得る。好ましくは、PD-L1はヒトPD-L1である。ヒトPD-L1(hPD-L1)の全アミノ酸配列は、例えばUniprot及びGenBank等の公共データベースから入手できる。抗PD-L1抗体は、PD-L1(例えば、Uniprot識別名Q9NZQ7-1、Q9NZQ7-2又はQ9NZQ7-3に示すアミノ酸配列を含むPD-L1)又はその断片に対する任意の抗体であり得る。好ましくは、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1の間の結合を遮断し、PD-L1シグナル伝達を阻害する。抗PD-L1抗体の例としては、アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)又は3F2(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれるWO2020169062A1を参照)を含むが、それらに限定されない。抗PD-L1抗体は、更なる修飾を含み得る。修飾は、未修飾抗体と比較した1つ又は複数のアミノ酸付加、欠失、挿入及び/又は置換を含み得る。抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又は3F2から調製された操作された抗体であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。ポリクローナル及びモノクローナル抗体を産生するための方法は当分野で既知である。例えば、抗原としてのPD-L1断片は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ヤギ又はシップを免疫化するために使用され得、そしてポリクローナル抗PD-L1抗体は、免疫化された哺乳動物の血清から精製され得る。抗PD-L1抗体分泌B細胞は、免疫化された哺乳動物から単離され、骨髄腫細胞と融合してモノクローナル抗PD-L1抗体を産生することができる。あるいは、モノクローナル抗PD-L1抗体は、ファージディスプレイ技術及び組換えDNA技術を使用して生成され得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ又はその操作された抗体である。別の特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は抗PD-L1抗体3F2又はその操作された抗体である。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗体は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を含む。1つの実施形態において、VLは、配列番号22に示すCDRL1配列、配列番号23に示すCDRL2配列及び配列番号24に示すCDRL3配列を含み、VHは、配列番号25に示すCDRH1配列、配列番号26に示すCDRH2配列及び配列番号27に示すCDRH3配列を含む。別の実施形態において、VLは、配列番号28に示すCDRL1配列、配列番号29に示すCDRL2配列及び配列番号30に示すCDRL3配列を含み、VHは、配列番号31に示すCDRH1配列、配列番号32に示すCDRH2配列及び配列番号33に示すCDRH3配列を含む。
【0053】
別の実施形態において、VLは配列番号34のアミノ酸配列を含み、VHは配列番号35のアミノ酸配列を含む。更に別の実施形態において、VLは配列番号36のアミノ酸配列を含み、VHは配列番号37のアミノ酸配列を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、抗体は、軽鎖及び重鎖を含む。1つの実施形態において、軽鎖は配列番号1のアミノ酸配列を含み、重鎖は配列番号2のアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、軽鎖は配列番号3のアミノ酸配列を含み、重鎖は配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0055】
抗PD-L1抗体は、ファージディスプレイ技術、ハイブリドーマ技術、組換えDNA技術及び化学合成に限定されない当分野で既知の方法によって得られ得る。抗PD-L1抗体は様々な供給源から、例えば、酵母ディスプレイライブラリ又はファージディスプレイライブラリ(例えば、Winter et al., (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:433-455 and McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-553を参照)又はヒト末梢血から、単離され得る。例えば、抗体は、一般に抗体産生用の宿主細胞(例えば、酵母細胞、細菌、昆虫細胞又は哺乳動物細胞)内で発現され得る。抗体発現に好適な哺乳動物宿主細胞としては、骨髄腫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞及び他の抗体発現に好適な哺乳動物細胞を含むが、それらに限定されない。特定の実施形態において、哺乳動物宿主細胞は抗PD-L1抗体の軽鎖及び重鎖をコードする発現ベクターで形質転換され、発現された抗体は、タンパク質A親和性カラムを使用して精製される。シグナルペプチドは、抗体の発現、正確な折り畳み及び細胞外分泌を助けることで、抗体の品質、収率及び精製を改善するために使用され得る。軽鎖及び重鎖に付加できるシグナルペプチドの例示的な配列は、それぞれ、配列番号16及び配列番号17に示す。
【0056】
インターロイキン21(IL21)
インターロイキン21(IL21)は、およそ14kDaの4αヘリックスバンドルサイトカインである。IL21は、IL21受容体(IL21R)及び共通サイトカインγ鎖(ガンマc)からなる複合受容体への結合によってシグナル伝達する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、IL21シグナル伝達は、マクロファージ、B細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞、細胞毒性T細胞及びナチュラルキラー細胞を含む様々な標的免疫細胞の増殖、分化、又は活性を誘導することで、体液性免疫応答及び細胞媒介免疫応答の両方を強化する。
【0057】
IL21は、任意の種、例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ等からのものであり得る。好ましくは、IL21は、ヒトIL21(hIL21)である。2つのhIL21前駆体、即ちUniProt識別名Q9HBE4-1(配列番号7、アイソフォーム1前駆体)及びUniProt識別名Q9HBE4-2(配列番号8、アイソフォーム2前駆体)が同定されており、最初の24のaaがシグナルペプチドである。野生型IL21は、シグナルペプチドを欠いた成熟タンパク質として分泌される場合が多い。成熟hIL21の例示的なアミノ酸配列は、配列番号9(アイソフォーム1)及び配列番号10(アイソフォーム2)に示す。
【0058】
IL21は、野生型IL21又はその変異体であり得る。野生型IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を有し得る。IL21変異体は、配列番号9又は配列番号10と比較して1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)のアミノ酸置換、付加又は欠失を含み得る。いくつかの実施形態において、IL21変異体は、配列番号9又は配列番号10と少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、IL21変異体は、野生型IL21と比較してより低い親和性でIL21Rに結合する。かかるIL21変異体の例は、関連内容の全てが参照によって本明細書に組み込まれる、Shen et. al., Front. Immunol., (2020) 11:832及びWO2019028316A1に記載のIL21ムテインを含み得る。
【0059】
IL21は、当分野で既知の方法によって得ることができる。例えば、IL21のコード配列は、組換えDNA技術によって生成され、IL21の発現に好適な宿主細胞に導入され得る。例示的な宿主細胞としては、酵母細胞、細菌、真菌、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含み得るが、それらに限定されない。1つの実施形態において、IL21は、大腸菌BL21(DE3)内で発現される。
【0060】
アクセプター及びドナー基質認識配列
アクセプター及びドナー基質認識配列は、使用されるソルターゼのタイプに対応する。ソルターゼは、天然ソルターゼ、非天然ソルターゼ又はそれらの組み合わせであってもよい。天然ソルターゼは、ソルターゼA(SrtA)、ソルターゼB(SrtB)、ソルターゼC(SrtC)、ソルターゼD(SrtD)、ソルターゼE(SrtE)、ソルターゼF(SrtF)等を含み得る(例えば、US20110321183A1及びEP3647419A1を参照)。
【0061】
典型的なアクセプター基質認識配列は、グリシン及びアラニンのN末端アミノ基等のようなN末端アミノ基を求核剤として含む。いくつかの実施形態において、アクセプター基質認識配列は、グリシン(G)及びアラニン(A)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。好ましい実施形態において、アクセプター基質認識配列は、(G)の配列を含み、ここでnは2~20の整数、特に3である。
【0062】
いくつかの実施形態において、ドナー基質認識配列はXTXであり、ここでXはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Xはグリシン(G)、セリン(S)又はアスパラギン(N)であるか又は存在せず、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であるか又は存在しない。好ましい実施形態において、Xはグルタミン酸(E)である。1つの実施形態において、Xは存在しない。別の実施形態において、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸である。
【0063】
いくつかの実施形態において、ソルターゼは、SrtA、例えば黄色ブドウ球菌からのSrtAであり、XTXはLPXTGGであってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、ソルターゼは、SrtBであり、XTXはNPXTGGであってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、ソルターゼは、SrtCであり、XTXはLPXTGGであってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの他の実施形態において、ソルターゼは、SrtDであり、XTXはLPXTAであってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。更に他のいくつかの実施形態において、ソルターゼは、SrtEであり、XTXはLAXTGGであってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの他の実施形態において、ソルターゼは、SrtFであり、XTXはLPXTGであってもよく、ここでXは、A、R、E、N、D、Q、I、L及びKからなる群から選択される。いくつかの他の実施形態において、ソルターゼは、化膿連鎖球菌からのSrtAであり、XTXはLPXTGXであってもよく、ここでXは上記で定義された通りである。いくつかの実施形態において、ソルターゼは、ストレプトマイセス・セリカラーからのSrtEであり、XTXはLAXTGであってもよい。更に別の実施形態において、ソルターゼはラクトバチルス・プランタルムからのSrtAであり、XTXはLPQTSEQであってもよい。1つの実施形態において、ソルターゼは黄色ブドウ球菌からのSrtBであり、XTXはNPQTNであってもよい。別の実施形態において、ソルターゼは炭疽菌からのSrtBであり、XTXはNPKTGであってもよい。
【0064】
いくつかの特定の実施形態において、ソルターゼは、黄色ブドウ球菌からのSrtAである。したがって、XTXは、酵素の典型的なドナー基質認識配列LPXTGGであってもよく、ここでXは、天然又は非天然の任意の単一アミノ酸であってもよい。いくつかの実施形態において、XTXはLPXTGXであり、ここでXは天然又は非天然の任意の単一アミノ酸であり、Xは存在しないか又は1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列である。1つの実施形態において、Xは存在しない。別の実施形態において、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸である。特定の実施形態において、Xは(G)であり、ここでiは1~10の整数である。別の特定の実施形態において、XTXはLPETGである。更に別の特定の実施形態において、XTXはLPETGGである。
【0065】
典型的なソルターゼ触媒コンジュゲーション反応において、ソルターゼはドナー基質認識配列XTXをトレオニン残基で切断する。切断により、トレオニン残基の下流断片(-X)が放出され、上流断片(XT-)は、ソルターゼの活性部位システインとトレオニン-チオエステルを形成してアシル酵素中間体を生成する。続いて、中間体は、ソルターゼに結合したチオエステルをアクセプター基質認識配列のN末端アミノ基に連結することで脱アシル化される。(G)がアクセプター基質認識配列として使用される場合、その形成したリンカーLkはXT(G)の配列を有し、ここでXはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは2~20の整数、特に3である。
【0066】
いくつかの実施形態において、XT(G)はLPXT(G)、NPXT(G)又はLAXT(G)であり、ここでLはロイシンであり、Pはプロリンであり、Nはアスパラギンであり、Aはアラニンであり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Tはトレオニンであり、Gはグリシンであり、nは2~20の整数、特に3である。1つの実施形態において、nは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20から選択される。好ましい実施形態において、nは3である。
【0067】
いくつかの実施形態において、XT(G)はLPXT(G)であり、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは上記で定義された通りである。1つの実施形態において、Xはグルタミン酸(E)である。特定の実施形態において、XT(G)はLPETGGGである。別の実施形態において、Xはグルタミン(Q)である。特定の実施形態において、XT(G)はLPQTGGGである。
【0068】
更に別の実施形態において、XT(G)はLAXT(G)であり、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは上記で定義された通りである。好ましい実施形態において、XはEである。
【0069】
別の実施形態において、XT(G)はNPQT(G)又はNPKT(G)であり、nは上記で定義された通りである。
【0070】
スペーサー
いくつかの実施形態において、Sp及びSpの少なくとも一方はスペーサーである。いくつかの実施形態において、Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーである。
【0071】
いくつかの実施形態において、スペーサーは、グリシン(G)、アラニン(A)及びセリン(S)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。いくつかの実施形態において、スペーサーはGA、GGG、GAG及び(G)S((G)S)からなる群から選択され、ここでoは1~5の整数であり、sは1~10の整数、特に4であり、tは0又は1~10の整数である。特定の実施形態において、Spは、GAの配列を有するスペーサーであり、Spは、GSGGGGSの配列を有するスペーサーである。
【0072】
融合タンパク質の具体的な実施形態
本開示に係る融合タンパク質の例示的な実施形態を以下に提供する。
【0073】
いくつかの実施形態において、LkはXT(G)であり、融合タンパク質は(II)又は(II’)の構造を有し、
[B-Sp-XT(G)-Sp-A (II)
A-[Sp-XT(G)-Sp-B] (II’)
式中、Xはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは2~20の整数であり、
mは1又は2であり、
A、B、Sp及びSpは上記で定義された通りである。
【0074】
いくつかの実施形態において、XT(G)はLPXT(G)である。1つの実施形態において、XはEである。別の実施形態において、XはQである。
【0075】
いくつかの実施形態において、XT(G)はLAXT(G)である。1つの実施形態において、XはE又はQである。
【0076】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体はAb0001(アテゾリズマブ)であり、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。別の実施形態において、抗PD-L1抗体はAb0002(3F2)であり、配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、IL21は、野生型IL21又はその変異体である。1つの実施形態において、IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0078】
1つの実施形態において、式(II)又は(II’)中、nは3である。
【0079】
いくつかの実施形態において、Sp及びSpは存在しない。いくつかの実施形態において、Sp及びSpの少なくとも一方は、本明細書に記載のスペーサーである。いくつかの実施形態において、Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーである。1つの実施形態において、SpはGAであり、SpはGSGGGGSである。
【0080】
1つの実施形態において、SpはGAであり、ドナー基質認識配列はLPETGGであり、アクセプター基質認識配列はGGGであり、SpはGSGGGGSであり、融合タンパク質は(III)又は(III’)の構造を有する。
[B-GALPETGGGGSGGGGS]-A (III)
A-[GALPETGGGGSGGGGS-B] (III’)
【0081】
1つの実施形態において、式(I)、(I’)、(II)、(II’)、(III)及び(III’)のいずれか中、抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含み、IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含み、mは1又は2である。
【0082】
いくつかの実施形態において、式(I)、(II)及び(III)のいずれか中、抗PD-L1抗体は、軽鎖及び重鎖を含む。1つの実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされる。特定の実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の重鎖のN末端でコンジュゲートされる。
【0083】
いくつかの他の実施形態において、式(I’)、(II’)及び(III’)のいずれか中、抗PD-L1抗体は軽鎖及び重鎖を含む。1つの実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のC末端でコンジュゲートされる。特定の実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の重鎖のC末端でコンジュゲートされる。
【0084】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖を含み、そのうち各軽鎖が配列番号1のアミノ酸配列を含み、各重鎖が配列番号2のアミノ酸配列を含み、又は各軽鎖が配列番号3のアミノ酸配列を含み、各重鎖が配列番号4のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の重鎖のうち少なくとも1つのN末端にコンジュゲートされる。1つの実施形態において、本開示に係る融合タンパク質は、2つの同一の軽鎖部分及び2つの同一の重鎖部分を含み、そのうち各重鎖部分が抗PD-L1抗体の重鎖の各々のN末端にコンジュゲートされたIL21を含む。別の実施形態において、本開示に係る融合タンパク質は2つの同一の軽鎖部分及び2つの異なる重鎖部分を含み、そのうち重鎖部分の一方のみが、抗PD-L1抗体の重鎖のうちの1つにコンジュゲートされたIL21を含む。
【0085】
特定の実施形態において、融合タンパク質は2つの同一の重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)重鎖部分の各々が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)重鎖部分の各々が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0086】
別の特定の実施形態において、融合タンパク質は2つの異なる重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)重鎖部分の一方が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、重鎖部分の他方が配列番号14のアミノ酸配列を含み、軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)重鎖部分の一方が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、重鎖部分の他方が配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0087】
融合タンパク質の調製方法
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、ソルターゼの触媒下で、抗PD-L1抗体を含む抗体部分を、IL21を含むサイトカイン部分にコンジュゲートすることで産生され、ここで抗体部分及びサイトカイン部分の一方はソルターゼのドナー基質認識配列を更に含み、他方はソルターゼのアクセプター基質認識配列を更に含み、それによってドナー基質認識配列及びアクセプター基質認識配列はソルターゼの酵素作用によりコンジュゲートされる。好適なソルターゼ、アクセプター及びドナー基質認識配列は上記に記載されている。
【0088】
したがって、別の態様において、本開示に係る融合タンパク質を産生するための方法を提供する。
【0089】
1つの実施形態において、本方法は、
(a-1)式(I-1)の構造を有する抗体部分及び式(I-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
[Lk-Sp-A (I-1)
B-Sp-Lk (I-2)
(b-1)ソルターゼの存在下で抗体部分をサイトカイン部分にコンジュゲートして式(I)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
式中、
Lkはソルターゼのアクセプター基質認識配列であり、Lkは、ソルターゼのドナー基質認識配列であり、
A、B、Sp、Sp、Lk及びmは上記で定義された通りである。
【0090】
別の実施形態において、本方法は、
(a-2)式(I’-1)の構造を有する抗体部分及び式(I’-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
A-[Sp-Lk (I’-1)
Lk-Sp-B (I’-2)
(b-2)ソルターゼの存在下で抗体部分をサイトカイン部分にコンジュゲートして式(I’)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Lkはソルターゼのアクセプター基質認識配列であり、Lkは、ソルターゼのドナー基質認識配列であり、
A、B、Sp、Sp、Lk及びmは上記で定義された通りである。
【0091】
1つの特定の実施形態において、ステップ(a-1)は、
(a-1-1)Lk-Spを抗PD-L1抗体の重鎖のN末端に付加して式(I-1)の構造を有する抗体部分を得るステップと、
[Lk-Sp-A (I-1)
(a-1-2)Sp-LkをIL21のC末端に付加して式(I-2)の構造を有するサイトカイン部分を得るステップと、を更に含む。
B-Sp-Lk (I-2)
【0092】
別の特定の実施形態において、ステップ(a-2)は、
(a-2-1)Sp-Lkを抗PD-L1抗体の重鎖のC末端に付加して式(I’-1)の構造を有する抗体部分を得るステップと、
A-[Sp-Lk (I’-1)
(a-2-2)Lk-SpをIL21のN末端に付加して式(I’-2)の構造を有するサイトカイン部分を得るステップと、を更に含む。
Lk-Sp-B (I’-2)
【0093】
1つの実施形態において、Lkはグリシン(G)及びアラニン(A)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。特定の実施形態において、Lkは(G)の配列を含み、ここでnは2~20の整数、特に3である。
【0094】
1つの実施形態において、LkはXTXの配列を含み、ここで、XはL又はNであり、XはP又はAであり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、XはG、S又はNであるか又は存在せず、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であるか又は存在しない。特定の実施形態において、XTXはLPXTG、LPXTGG、NPQTN、NPKTG、LAXTG又はLPQTSEQであり、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。特定の実施形態において、XTXはLPETG又はLPETGGである。
【0095】
1つの実施形態において、Sp及びSpは存在しない。1つの実施形態において、Sp及びSpの少なくとも一方は、本明細書に記載のスペーサーである。別の実施形態において、Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーである。ある実施形態において、スペーサーはG、A及びSからなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。好ましい実施形態において、スペーサーはGA、GGG、GAG及び(G)S((G)S)からなる群から選択され、ここでoは1~5の整数であり、sは1~10の整数、特に4であり、tは0又は1~10の整数である。特定の実施形態において、Spは、GAの配列を有するスペーサーであり、Spは、GSGGGGSの配列を有するスペーサーである。
【0096】
1つの実施形態において、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体である。1つの実施形態において、抗PD-L1抗体はVL及びVHを含み、ここでVL及びVHは、本明細書に記載のCDR配列を含む。別の実施形態において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載の配列を有するVL及びVHを含む。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0097】
1つの実施形態において、IL21は、野生型IL21又はその変異体である。特定の実施形態において、IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0098】
抗体部分
抗体部分は、上記に記載の抗PD-L1抗体を本明細書に記載のアクセプター基質認識配列又はドナー基質認識配列で修飾することによって生成され得る。修飾は、抗PD-L1抗体の任意の位置で発生してもよい。いくつかの実施形態において、修飾は抗PD-L1抗体のN末端及び/又はC末端、例えば、抗体軽鎖のN末端及び/又は抗体重鎖のN末端で発生する。いくつかの実施形態において、修飾は、抗PD-L1抗体の非末端位置、例えば、抗体軽鎖及び/又は重鎖の側鎖で発生する。
【0099】
いくつかの実施形態において、mは1、2、3及び4から選択される整数である。特定の実施形態において、mは1である。別の特定の実施形態において、mは2である。
【0100】
1つの実施形態において、(G)は抗PD-L1抗体の軽鎖のN末端に導入される。別の実施形態において、(G)は抗PD-L1抗体の重鎖のN末端に導入される。更に別の実施形態において、(G)は抗PD-L1抗体の軽鎖及び重鎖のN末端に導入される。(G)及び抗PD-L1抗体は上記で定義された通りである。
【0101】
1つの実施形態において、XTXは抗PD-L1抗体の軽鎖のC末端に導入される。別の実施形態において、XTXは抗PD-L1抗体の重鎖のC末端に導入される。更に別の実施形態において、XTXは抗PD-L1抗体の軽鎖及び重鎖のC末端に導入される。XTX及び抗PD-L1抗体は、上記で定義された通りである。
【0102】
いくつかの実施形態において、抗体部分は軽鎖を含み、ここで軽鎖は、1)抗PD-L1抗体の軽鎖(LCとする)、2)(G)がN末端に導入された抗PD-L1抗体の軽鎖を含むN末端修飾軽鎖(LCNTとする)、又は3)(G)-SpがN末端に導入された抗PD-L1抗体の軽鎖を含むN末端修飾軽鎖(LCNTとする)であり得る。いくつかの他の実施形態において、抗体部分は重鎖を含み、ここで重鎖は、1)抗PD-L1抗体の重鎖(HCとする)、2)(G)がN末端に導入された抗PD-L1抗体の重鎖を含むN末端修飾重鎖(HCNTとする)、又は3)(G)-SpがN末端に導入された抗PD-L1抗体の重鎖を含むN末端修飾重鎖(HCNTとする)であり得る。抗体部分の軽鎖及び重鎖を組み合わせることで、8タイプの抗体部分を得ることができ、式(I)及び(I’)中のmは1、2、3及び4であってもよい。
【0103】
特定の実施形態において、抗体部分はAb0030であり、抗体Ab0001に由来する。Ab0030は配列番号1の軽鎖及び配列番号14の重鎖を含み、ここで重鎖は、N末端からC末端へ、アクセプター基質認識配列GGG、スペーサーGSGGGGS、及びAb0001の重鎖(配列番号2)を含む。
【0104】
別の特定の実施形態において、抗体部分はAb0033であり、抗体Ab0002に由来する。Ab0033は、配列番号3の軽鎖及び配列番号15の重鎖を含み、ここで重鎖は、N末端からC末端へ、アクセプター基質認識配列GGG、スペーサーGSGGGGS、及びAb0002の重鎖(配列番号4)を含む。
【0105】
サイトカイン部分
サイトカイン部分は、それぞれ、上記に記載のIL21をドナー基質認識配列又はアクセプター基質認識配列で修飾することによって生成され得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、抗体部分は、抗PD-L1抗体及びアクセプター基質認識配列、例えば(G)を含み、サイトカイン部分はIL21及びドナー基質認識配列、例えばXTXを含む。いくつかの実施形態において、ドナー基質認識配列はサイトカイン部分のC末端に位置する。いくつかの実施形態において、ドナー基質認識配列はサイトカイン部分のN末端に位置する。いくつかの実施形態において、ドナー基質認識配列はサイトカイン部分の非末端位置に位置する。
【0107】
いくつかの実施形態において、抗体部分は、抗PD-L1抗体及びドナー基質認識配列、例えばXTXを含み、サイトカイン部分はIL21及びアクセプター基質認識配列、例えば(G)を含む。いくつかの実施形態において、アクセプター基質認識配列はサイトカイン部分のN末端に位置する。いくつかの実施形態において、アクセプター基質認識配列はサイトカイン部分のC末端に位置する。いくつかの実施形態において、アクセプター基質認識配列はサイトカイン部分の非末端位置に位置する。
【0108】
抗体部分及びサイトカイン部分は、化学合成、組換えDNA技術及びそれらの組み合わせに限定されない当分野で既知の様々な方法によって得ることができる。好ましい実施形態において、抗体部分の軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドは、組換えDNA技術によって生成され、好適な宿主細胞に導入され、その後、抗体部分を宿主細胞内で発現し、宿主細胞又は培養培地から精製することができる。宿主細胞は、安定的に又は一時的に形質転換されてもよい。抗体部分及びサイトカイン部分の単離及び精製は、当分野で周知の技法を使用して行うことができる。例えば、抗体部分はタンパク質A親和性カラムで精製することができる。
【0109】
例示的な融合タンパク質
1つの実施形態において、サイトカイン部分は、C末端でスペーサーGA及びドナー基質認識配列LPETGG(配列番号6)によりIL21(配列番号9又は配列番号10)を修飾することで得られ、サイトカイン部分は配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0110】
1つの実施形態において、抗体部分はAb0030であり、配列番号1の軽鎖及び配列番号14の重鎖を含む。Ab0030は、N末端でアクセプター基質認識配列GGG及びスペーサーGSGGGGS(配列番号5)によりAb0001の重鎖(配列番号2)を修飾することで、抗PD-L1抗体Ab0001(アテゾリズマブ)から得られる。別の特定の実施形態において、抗体部分はAb0033であり、配列番号3の軽鎖及び配列番号15の重鎖を含む。Ab0033は、N末端でアクセプター基質認識配列GGG及びスペーサーGSGGGGS(配列番号5)によりAb0002の重鎖(配列番号4)を修飾することで、抗体Ab0002(3F2)から得られる。
【0111】
本開示のいくつかの実施形態によれば、サイトカインIL21及び抗PD-L1抗体の配列、及びそれらから得られたサイトカイン部分及び抗体部分の配列は下記表に記載する。
【0112】
【表1】
【0113】
本開示に係る例示的な融合タンパク質は表2に記載する。
【0114】
医薬組成物
本開示に係る融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0115】
薬学的に許容される担体の例としては、希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース及びデキストロース)、結合剤及び接着剤(例えば、アカシア、ゼラチン、デンプン糊、カルボキシメチルセルロース)、滑沢剤(例えば、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸)、崩壊剤(例えば、デンプン、セルロース及び架橋剤ポリマー)、防腐剤、ビヒクル、流動促進剤(例えば、コーンスターチ)、甘味剤(例えば、マンニトール及びサッカリン)、コーティング材(例えば、ポビドン、エチルセルロース及び合成ポリマー)、及び可塑剤(例えば、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、及びポリエチレングリコール)、構造形成賦形剤(例えば、セトステアリルアルコール及び鉱油)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、プロピルパラベン及び安息香酸ナトリウム)、抗酸化剤(例えば、ブチルヒドロキシルトルエン及びブチルヒドロキシルアニソール)、可溶化剤(例えば、ラノリン及びコレステロール)、ゲル化剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びキサンタンガム)、及び皮膚軟化剤(例えば、グリセリン、鉱油、ワセリン及びイソプロピルパルミテート)、溶媒(例えば、水、アルコール、酢酸及びシロップ)、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液及び酢酸緩衝液)、抗菌防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、フェノール及びチオメルサール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、硫酸水素ナトリウム、チオ尿素及びブチルヒドロキシトルエン)、キレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム、ジヒドロキシエチルグリシン及びクエン酸)、及び乳化剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セトリミド及びクロゴールエステル)を含むが、それらに限定されない。
【0116】
本明細書で提供される医薬組成物は、様々な剤形、例えば、固体、半固体、液体、粉末、水性、又は凍結乾燥形態としてもよい。
【0117】
本明細書で提供される医薬組成物は、当分野で既知の任意の方法よって、例えば、全身投与又は局所投与によって、対象に投与することができる。投与経路としては、非経口(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、又は体腔内)、局所、硬膜外、又は経粘膜(例えば、鼻腔内又は経口)経路を含むが、それらに限定されない。投与される正確な用量は、様々な要因、例えば治療目的、投与経路、及び対象の状況、例えば、患者の健康状態、体重、性別、食事等によって異なる。したがって、最適な治療効果を得るために、治療者は、医薬組成物の用量を決定し、必要に応じて投与経路を修正する必要がある。一般に、本明細書で提供される医薬組成物の投与の用量範囲は、PD-L1陽性疾患細胞が除去される所望の効果を生み出すのに十分に大きな量である。
【0118】
好ましい実施形態において、本開示の医薬組成物は、治療有効量でヒト対象に投与することができる。抗体の治療用量は、例えば、好ましくは1回の治療用量当たり0.1~25mg/kg体重であり、最も好ましくは1回の治療用量当たり0.1~10mg/kg体重である。特定の実施形態において、本開示の任意の融合タンパク質は、任意の好適な経路による投与のための従来例に従って製剤化することができ、一般に、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋肉内経路による投与のための液体形態(例えば、生理学的に許容される滅菌緩衝液中の融合タンパク質の溶液)としてもよい。
【0119】
治療
更に、それを必要とする対象の疾患を治療するための方法であって、対象に治療有効量の本開示に係る融合タンパク質又は医薬組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0120】
本開示は、それを必要とする対象の疾患を治療するために使用される、本開示に係る融合タンパク質又は医薬組成物にも関する。
【0121】
本開示は、それを必要とする対象の疾患を治療するための医薬品の製造のための、本開示に係る融合タンパク質又は医薬組成物の使用にも関する。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記対象は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、チンパンジー、類人猿、ウシ及びヒトである。いくつかの好ましい実施形態において、前記対象は、ヒトである。
【0123】
いくつかの実施形態において、前記疾患は、癌である。好ましくは、前記癌は、PD-L1陽性癌である。いくつかの実施形態において、前記癌は、黒色腫、卵巣癌、乳癌、メルケル細胞癌、肺癌(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌(扁平上皮癌及び非扁平上皮非小細胞肺癌等)を含む)、腎細胞癌、膀胱癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸癌、頭頸部扁平上皮癌、中皮腫、ウイルス誘発性癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、軟部肉腫、血液悪性腫瘍、胃癌、胃癌又は胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道癌、食道の扁平上皮癌、子宮内膜癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)又はミスマッチ修復欠損(dMMR)の固形腫瘍、肝細胞癌、リンパ腫、ホジキン病(ホジキンリンパ腫)、非ホジキン病(非ホジキンリンパ腫)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される。いくつかの実施形態において、癌は、結腸直腸癌、黒色腫、腎細胞癌腫(RCC)、有棘細胞癌(cSCC)、三種陰性乳癌(TNBC)、非小細胞肺癌及び膀胱癌から選択される悪性癌である。いくつかの好ましい実施形態において、癌は胃癌、乳癌、結腸癌、結腸腺癌、尿路上皮癌、肺癌、肝癌、子宮内膜癌、頭頸部癌及び卵巣癌から選択される。
【0124】
特定の実施形態を参照しながら本開示を説明したが、これらの実施形態は本開示の用途及び原理を単に例示するものに過ぎないことが理解される。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく修正が可能である。
【0125】
有益な効果
本開示に係る融合タンパク質は、
(1)PD-L1シグナル伝達の特異的阻害及びIL21シグナル伝達の活性化と、
(2)CD4 T細胞の効果的な活性化と、
(3)より高い抗腫瘍活性及びより低い毒性と、の技術効果の少なくとも1つを達成する。
【0126】
更に、従来の組換えDNA技術は抗体-サイトカイン融合タンパク質(免疫サイトカイン)の生成に使用される場合が多い。しかし、従来の方法を使用して調製された組換え免疫サイトカインの収率は、裸の抗体(サイトカインにコンジュゲートされていない)と比較して極めて低い可能性があり、多数の免疫サイトカインの臨床応用を妨げている。本開示に係る酵素媒介コンジュゲーション方法を使用すると、融合タンパク質を非常に高い収率及び純度で調製することができる。
【0127】
実施例
別段記載がない限り、修飾又は未修飾抗PD-L1抗体及びIL21の調製には、一般に使用される分子生物学、生化学、及び細胞生物学の技法が利用される。別段記載がない限り、実施例で使用される計器及び試薬は市場から入手できる。試薬は更なる精製なく直接使用できる。
【0128】
フローサイトメトリ:CytoFLEX S
HIC-HPLC:ブチルHIC。移動相A:25mMのPB、2Mの(NHSO、pH7.0。移動相B:25mMのPB、pH7.0。流量:0.8mL/min。取得時間:25min。注入量:20μg。カラム温度:25℃。検出波長:280nm。サンプルインジェクター温度:8℃。
SEC-HPLC:カラム:TSK-gel G3000 SWXL、TOSOH 7.8mm ID×300mm、5μm。移動相:0.2MのKHPO、0.25MのKCl、pH6.2。流量:0.5mL/min。取得時間:30min。注入量:50μL。カラム温度:25℃。検出波長:280nm。サンプルトレイ温度:8℃。
CHOはThermo Fisher Scientificから入手され、pcDNA3.3はLife Technologyから入手され、MabSelect Sure ProAはGEから入手された。
黄色ブドウ球菌に由来する最適化組換え酵素ソルターゼAは大腸菌中で調製された。
【0129】
実施例1 抗体部分の構築と発現
1.1 Ab0030及びAb0033の発現プラスミドの構築
2つの抗体部分Ab0030及びAb0033をそれぞれ抗PD-L1抗体Ab0001(アテゾリズマブ)及びAb0002(3F2)に基づいて調製した。Ab0001及びAb0002のアミノ酸配列(配列番号)は表1Aに示す。
【0130】
【表1A】
【0131】
具体的には、Ab0001(配列番号2)の重鎖及びAb0002(配列番号4)の重鎖のN末端を、ペプチド配列GGGGSGGGGS(配列番号5、即ち、スペーサーを有するアクセプター基質認識配列)の付加によって修飾した。
【0132】
抗体部分の発現及び細胞外分泌を促進するために、軽鎖シグナルペプチド(配列番号16)及び重鎖シグナルペプチド(配列番号17)のコード配列をそれぞれ軽鎖及び重鎖のコード配列のN末端に付加した。
【0133】
Ab0030及びAb0033のコード配列を、CHO細胞内での効率的な発現のためにコドン最適化し、各抗体部分のプラスミド対を得るためにpcDNA3.3ベクターにクローニングした。
【0134】
1.2 Ab0030及びAb0033の発現
実施例1.1で得られたAb0030及びAb0033の発現プラスミドを質量比2:1でCHO細胞に一時的にトランスフェクトした。発酵後、抗体を含有する細胞培養上清を収集した。ELISAアッセイによって測定されたAb0030及びAb0033の発現レベルはそれぞれ757.60mg/L及び622.96mg/Lであった。
【0135】
1.3 Ab0030及びAb0033の精製
タンパク質Aカラム(MabSelect Sure ProA、20cm x 5.0cm)を平衡緩衝液(50mMのTris-HCl、150mMのNaCl、pH7.4)で洗浄した。実施例1.2からの細胞培養上清を0.22μmフィルタで濾過し、カラムにロードした。サンプルのロードが完了すると、カラムを5~10カラム容量の平衡緩衝液で洗浄した。抗体をpH3.5の50mMのクエン酸緩衝液中で溶出させ、収集した。抗体溶液のpHを6%(v/v)のpH10.5の1MのTrisを添加することで5.5~6.5に調整した。最後に、抗体溶液の緩衝液を限外濾過によって平衡緩衝液に交換した。UV分光計を使用してAb0030及びAb0033の濃度を測定した。Ab0030及びAb0033を小分けして-80℃で保存した。精製抗体部分Ab0030は配列番号1の軽鎖及び配列番号14の重鎖を含む。精製抗体部分Ab0030は配列番号3の軽鎖及び配列番号15の重鎖を含む(表1Bを参照)。
【0136】
【表1B】
【0137】
1.4 Ab0030及びAb0033の特徴付け
Ab0030及びAb0033をSDS-PAGE電気泳動で分析した。予想通り、SDS-PAGEで測定された重鎖及び軽鎖の分子量はそれぞれ約50kDa及び約25kDaである。SEC-HPLC分析は、Ab0030及びAb0033モノマーの百分率がそれぞれ約97.5%及び96.2%であり、融合タンパク質の調製要件を満たすことを実証する。
【0138】
Ab0030及びAb0033のPD-L1結合活性を酵素免疫測定法(ELISA)で測定した。組換えhPD-L1をコーティング緩衝液(1x PBS)中で0.5μg/mLに希釈し、ELISAプレートに4℃で一晩コーティングした。プレートをコーティング緩衝液中の5%脱脂粉乳で37℃にて1hブロックした。段階希釈したAb0030及びAb0033をプレートに添加し、その後プレートを37℃にて1hインキュベートした。最後に、1:5000に希釈した抗ヒト-IgG(H+L)-HRPを添加した。37℃にて1hインキュベートした後、発色のためにTMB基質を添加した。マイクロプレートリーダーを使用してデータを収集した。
【0139】
結果は図2に示す。Ab0030(図2A)及びAb0033(図2B)は抗原hPD-L1に特異的に結合することができる。
【0140】
実施例2 サイトカイン部分の構築と発現
オーバーラップPCRを使用することで、ペプチド配列GALPETGG(配列番号6、ソルターゼのドナー基質認識配列A(LPETGG)及びスペーサーGAを含む)をコードするポリヌクレオチドを、hIL21(アミノ酸配列が配列番号9又は配列番号10に示される)をコードするポリヌクレオチドの3’に付加して、サイトカイン部分(アミノ酸配列がそれぞれ配列番号11又は配列番号12に示される)をコードするポリヌクレオチドを生成した。サイトカイン部分の発現及び細胞外分泌を促進するために、シグナルペプチドのコード配列(配列番号13)を、配列番号11又は配列番号12をコードするポリヌクレオチドの5’に付加した。精製サイトカイン部分は、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を有する。
【0141】
hIL21を大腸菌BL21(DE3)内で発現させた。発現後、組換えhIL21をNi-NTAカラムで精製した。精製されたhIL21を1x PBS緩衝液で保存した。
【0142】
実施例3 融合タンパク質の調製
実施例1で調製された抗体部分Ab0030及びAb0033を、ソルターゼ媒介部位特異的コンジュゲーションによって、実施例2で調製されたサイトカイン部分とコンジュゲートすることで、融合タンパク質を得た。
【0143】
ステップ1)前処理
好適な孔径を有する限外濾過膜を使用してAb0030及びAb0033並びにサイトカイン部分を前処理し、次に濃縮し、コンジュゲーション緩衝液に緩衝液交換した。
【0144】
ステップ2)酵素媒介コンジュゲーション
Ab0030及びAb0033(1~100mg/mL)並びにサイトカイン部分(配列番号11、1~100mg/mL)を別々に反応緩衝液中で調製した。黄色ブドウ球菌に由来する固定化組換えSrtAを含有するコンジュゲーションカラムを、NaOH及び高塩で前処理し、空気浴又は水浴中で30min以上にわたって10~40℃に前加温した。抗体部分及びサイトカイン部分を含有する反応溶液を一定の比率で混合し、コンジュゲーションカラムに緩徐に通してコンジュゲーション反応を行った。あるいは、反応溶液を固定化組換えSrtA又は精製組換えSrtAと5min~24h混合してコンジュゲーション反応を行ってもよい。
【0145】
更なる精製及びDAR(DAR=抗PD-L1抗体にコンジュゲートされたhIL21の平均数)測定のために、融合タンパク質を含有する抗体-サイトカインコンジュゲーション混合物を収集した。
【0146】
ステップ3)融合タンパク質の精製
融合タンパク質を陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。要するに、クロマトグラフィーカラムにCapto S ImpAct培地を充填し、pH5.0~6.0のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液で平衡化した。ステップ2)からのコンジュゲーション混合物をカラムにロードした。所望のオフセット(ベースライン)に達するまで、カラムをpH5.0~6.0のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液で洗い流した。コンジュゲートされていない抗体部分及びサイトカイン部分を、pH5.0~6.0のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、100~500mMのNaClで溶出させた。クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0~6.0)中のNaCl濃度を0.5Mから1Mに増加させることで融合タンパク質を溶出させた。意外なことに、このステップで、2つの異なる融合タンパク質集団を表す2つの画分が溶出した。その後、2つの画分をSDS-PAGE分析に供した。第1画分は、DAR値が1である主要な集団(DAR1集団と呼ばれ、各融合タンパク質が1つのhIL21を含有する)を表し、第2画分は、DAR値が2である少数集団(DAR2集団と呼ばれ、各融合タンパク質が2つのhIL21を含有する)を表すことが確認された。hIL21(アイソフォーム1)を1つのみ含有する融合タンパク質はそれぞれ、LC0030-1(Ab0030から調製)及びLC0033-1(Ab0033から調製)と命名される。hIL21(アイソフォーム1)を2つ含有する融合タンパク質はそれぞれ、Ab0030から調製されたLC0030-2及びAb0033から調製されたLC0033-2と命名される。図3は、それぞれ、LC0030-1及びLC0030-2を含有する2つの画分のSDS-PAGE分析を示す。図4はLC0033-1を含有する画分のSDS-PAGE分析を示す。
【0147】
pH5.0~6.0のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、1MのNaClを使用してカラムを再生し、1MのNaOHを使用して定置洗浄(CIP)を実施した。
【0148】
ステップ4)融合タンパク質の限外濾過
好適な孔径を有する限外濾過膜を使用して精製融合タンパク質を濃縮し、保存緩衝液に緩衝液交換し、その後2~8℃又は-80℃で保存した。
【0149】
hIL21(アイソフォーム2)(サイトカイン部分が配列番号12のアミノ酸配列を有する)を含有する融合タンパク質を上記と同じ方法で調製した。hIL21(アイソフォーム2)を1つのみ含有する融合タンパク質はそれぞれ、LC0030’-1(Ab0030から調製)及びLC0033’-1(Ab0033から調製)と命名される。hIL21(アイソフォーム2)を2つ含有する融合タンパク質はそれぞれ、LC0030’-2(Ab0030から調製)及びLC0033’-2(Ab0033から調製)と命名される。
【0150】
調製された融合タンパク質は表2に記載する。
【0151】
【表2】
【0152】
実施例4 融合タンパク質のHIC-HPLC分析
実施例3で調製された融合タンパク質をブチルHIC HPLC分析に供してDAR分布を測定した。
【0153】
結果は図5及び図6に示す。LC0030-1のピーク位置はAb0030と比較して前方にシフトし、LC0030-2のピーク位置はLC0030-1と比較して前方にシフトし、これは、融合タンパク質LC0030-1及びLC0030-2の疎水性がAb0030より低いことを示す(図5)。興味深いことに、LC0033-1のピーク位置はAb0033と比較して後方にシフトし、LC0033-2のピーク位置はLC0033-2と比較して後方にシフトし、これは、LC0033-1及びLC0033-2の疎水性がAb0033より強いことを示す(図6)。これらの差異は、Ab0030とAb0033の間のアミノ酸及び構造の差異によるものである可能性がある。
【0154】
実施例5 融合タンパク質のhPD-L1への結合活性の測定
融合タンパク質のヒトPD-L1(hPD-L1)への結合活性をELISAで測定した。組換えhPD-L1タンパク質(Acrobiosystems、PD1-H5253)をコーティング緩衝液(1x PBS)で0.5μg/mLに希釈し、ELISAプレートに4℃で一晩コーティングした。プレートをコーティング緩衝液中の5%脱脂粉乳で37℃にて1hブロックした。段階希釈したAb0030、Ab0033、LC0030-1及びLC0033-1を添加し、その後プレートを37℃にて1hインキュベートした。最後に、1:5000に希釈した抗ヒト-IgG(H+L)-HRPを添加した。37℃で1hインキュベートした後、発色のためにTMB基質を添加した。マイクロプレートリーダーを使用してデータを収集した。
【0155】
結果は図7に示す。LC0030-1及びLC0033-1の両方とも、Ab0030及びAb0033と同様の親和性で抗原PD-L1に特異的に結合することができ、これは、融合タンパク質中の抗PD-L1抗体のPD-L1-結合活性が保持されることを示す。
【0156】
実施例6 融合タンパク質のIL21受容体(IL21R)への結合活性の測定
融合タンパク質のヒトIL21受容体(hIL21R又はHu-IL21R)への結合活性をELISAで測定した。組換えhIL21Rタンパク質をコーティング緩衝液(1x PBS)で0.5μg/mLに希釈し、ELISAプレートに4℃で一晩コーティングした。プレートをコーティング緩衝液中の5%脱脂粉乳で37℃にて1hブロックした。段階希釈したAb0030、Ab0033、LC0030-1及びLC0033-1をプレートに添加し、その後プレートを37℃にて1hインキュベートした。最後に、1:5000に希釈した抗ヒト-IgG(H+L)-HRPを添加した。37℃で1hインキュベートした後、発色のためにTMB基質を添加した。マイクロプレートリーダーを使用してデータを収集した。
【0157】
結果は図8に示す。LC0030-1及びLC0033-1はhIL21Rに特異的に結合することができるが、Ab0030及びAb0033はhIL21Rに結合しない。抗ヒト-IgG(H+L)-HRPが抗体のヒトFc部分に結合するため、結果は、抗PD-L1抗体のhIL21へのコンジュゲーションが成功し、融合タンパク質とhIL21Rが特異的に結合することを示唆する。
【0158】
実施例7 融合タンパク質のhPD-L1及びhIL21Rへの結合親和性の測定
Biacore(Biacore、INC、Piscataway N.J.)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)を行ってLC0033-1及びAb0033のhPD-L1又はhIL21Rへの結合親和性を測定した。Biacore T200バイオセンサーにセンサーチッププロテインAを装備した。所望のタンパク質密度(約300RU)に達するために、試験すべきタンパク質(1μg/mLに希釈)を10μL/minでBiacore T200バイオセンサーに50sec注入した。続いて、Hisタグ付きヒトIL21R(hIL21R-His、200nM)又はヒトPD-L1(hPD-L1-His、100nM)を30μL/minでシステムに180sec注入した。解離を600sec監視した。各サイクル後、pH1.7のグリシン緩衝液(30μL/min、30sec)を使用してチップを再生した。
【0159】
データをBiacore T200評価ソフトウェア3.0で処理した。データを1:1ラングミュア結合モデルに全体的にフィッティングすることによって結合動態を分析して会合速度(kon)及び解離速度(koff)を得る。親和性(K)を式:K=koff/konで算出した。
【0160】
結果は表3に示す。LC0033-1及びAb0033は、同様の親和性でhPD-L1-Hisに結合することができる。LC0033-1は高い親和性でIL21Rに結合することができる。
【0161】
【表3】
【0162】
実施例8 融合タンパク質のCD4 T細胞を活性化する能力の測定
STAT3リン酸化(pSTAT3)アッセイを使用してLC0033-1のインビトロPBMC細胞刺激活性を測定した。STAT3リン酸化はCD4 T細胞刺激の指標である。市販のPBMC細胞(AllCells、カタログ番号FPB003F-C)を37℃で解凍して回復させ、次に前加温した培養バチ(RPMI1640)に懸濁させ、300gで3min遠心分離した。懸濁及び遠心分離プロセスを3回繰り返した。その後、細胞を100μLの培地中の96ウェルプレートに105細胞/ウェルで添加した。続いて、段階希釈したAb0033、LC0033-1又はhIL21を各ウェルに100μL添加し(等量のPBSをブランク対照として対照ウェルに添加)、37℃で30minインキュベートした。PBS中の4%ホルムアルデヒドの作用濃度になるまで等量の固定液を細胞に添加し、細胞を室温で15min固定した。細胞を300gで3min遠心分離して上清を除去し、200μLのPBSで洗浄した。細胞内染色について、細胞を100%氷冷メタノールに再懸濁させ、氷上で30minインキュベートした。300gで3min遠心分離した後、細胞をPBS+0.5%BSAで3回洗浄した。染色のために、5μLの直接標識した抗体(Phospho-STAT3(Tyr705)モノクローナル抗体(LUVNKLA)、APC、eBioscience(商標)、カタログ番号17-9033-42及びCD4モノクローナル抗体(RPA-T4)、FITC、eBioscience(商標)、カタログ番号11-0049-42)を各ウェルに添加した。4℃で30minインキュベートした後、Sartorius-IntelliCyt(登録商標)iQueフローサイトメーターを使用して細胞を分析した。
【0163】
結果は図9に示す。ブランク対照(白抜きヒストグラム)と比較して、LC0033-1及びhIL21(塗りつぶされたヒストグラム)のピークは、明らかに右にシフトし、これは、該2つの分子がCD4 T細胞内のリン酸化を誘導するのに有効であり、そのためCD4 T細胞刺激に有効であることを示す。
【0164】
実施例9 融合タンパク質のインビボ有効性の評価
本開示に係る融合タンパク質のインビボ有効性を評価しヒトにおける治療効果を予測するために、ヒト化PD-1/PD-L1マウス(PD-1/PD-L1遺伝子ヒト化マウス。関連内容の全てが参照によって本明細書に組み込まれるWO2018041118A1及びWO2018001241A1を参照)を使用して結腸腺癌のマウスモデルを確立した。
【0165】
上記したヒト化PD-1/PD-L1マウス(6~7週)のホモ接合体(Biocytogen Pharmaceuticals (Beijing) Co., Ltd.、カタログ番号120522)を使用して2つのインビボ有効性試験を行った。要するに、マウスにマウス結腸腺癌細胞MC38-hPD-L1(5×10/100μL PBS)(Biocytogen Pharmaceuticals (Beijing) Co., Ltd.)を皮下接種した。腫瘍が約100~150mmになった時、マウスをそれらの腫瘍体積に基づいて治療群又は対照群に無作為に割り当てた。治療群マウスをAb0033、hIL21、LC0033-1、LC0033-2、又はhIL21及びAb0033(等モル)の組み合わせの投与について無作為化した。対照群マウスに等量の生理食塩水を注射した。マウスに週2回(BIW)、合計6回(静脈内(i.v.)、第1有効性試験。又は腹腔内(i.p.)、第2有効性試験)投与を実施した。マウスの腫瘍体積及び体重を週2回測定した。マウス1匹の腫瘍体積が3000mmに達した時、マウスを安楽死させ、実験を終了した。2つの試験の投与レジメンはそれぞれ表4及び6にまとめる。
【0166】
9.1 第1有効性試験
第1有効性試験の投与レジメンは表4に示す。
【0167】
【表4】
【0168】
群分け日(0日目)及び群分け14日(14日目)又は26日(26日目)後の腫瘍体積は表5にまとめた。腫瘍成長阻害値(TGITV%)を式:TGITV(%)=[1-(T-T)/(V-V)]×100で算出した。Tはi日目の治療群の平均腫瘍体積である。Tは0日目の治療群の平均腫瘍体積である。Vはi日目の対照群の平均腫瘍体積である。Vは0日目の対照群の平均腫瘍体積である。
【0169】
【表5】
【0170】
全体的に、各群内のマウスは実験中に健康状態が良好であった。治療群及び対照群は体重及び体重変化に有意差を示さなかった(図10)。実験の最後に、各群内のマウスの体重が増加し、治療群及び対照群の体重に有意差がなく、これは、薬物の忍容性が高かったことを示す。結果は、LC0033-1、LC0033-2及びAb0033が安全であり、動物に重大な副作用がないことを示す。
【0171】
図11から分かるように、対照マウスにおける腫瘍は実験中に成長が継続したが、治療群からのマウスにおける腫瘍成長は異なる程度に抑制された。特に、LC0033-1及びLC0033-2群(G6、G8及びG10)における腫瘍成長は、他の治療群(G2、G3、G4、G5、G7及びG9)と比較して有意に抑制され、これは、Ab0033又はhIL21による単独療法又はそれらの併用療法と比較して、LC0033-1及びLC0033-2が優れたインビボ腫瘍阻害活性を示したことを示す。
【0172】
表5及び図11から分かるように、実験の終了時点で、LC0033-1(G6及びG8)又はLC0033-2(G10)で治療した全てのマウスの腫瘍体積は対照マウス(G1)より有意に小さくなっており、これは、LC0033-1及びLC0033-2が低用量で腫瘍阻害効果を有することを示す。更に、LC0033-1及びLC0033-2は同じ用量で同様の有効性を示した(TGITV%:58.21%対54.05%)。LC0033-1の用量が1mg/kgから3mg/kgに増加した場合、TGITV%は58.21%から67.26%に増加し、腫瘍阻害効果が僅かに増加した。融合タンパク質(G8及びG10)の顕著な抗腫瘍活性と比較して、Ab0033のみ、hIL21のみ又はAb0033とhIL21の組み合わせで治療した群からのTGITV%は25%未満であり、これは、Ab0033、hIL21及びそれらの組み合わせが顕著な抗腫瘍活性を示さなかったことを示す。
【0173】
9.2 第2有効性試験
第2有効性試験の投与レジメンは表6に示す。
【0174】
【表6】
【0175】
群分け日(0日目)及び群分け14日(14日目)又は24日(24日目)後の腫瘍体積を表7にまとめ、腫瘍成長阻害値(TGITV%)を計算した。
【0176】
【表7】
【0177】
全体的に、各群内のマウスは実験中に健康状態が良好であった。治療群及び対照群は体重及び体重変化に有意差を示さなかった(図12)。実験の最後に、各群内のマウスの体重が増加し、治療群及び対照群の体重に有意差がなく、これは、薬物の忍容性が高かったことを示す。結果は、LC0033-1及びAb0033が安全であり、動物に重大な副作用がないことを示す。
【0178】
表7及び図13から分かるように、対照マウスにおける腫瘍は実験中に成長が継続したが、治療群からのマウスにおける腫瘍成長は異なる程度に抑制された。実験の最後に(24日目)、G2~G7からのマウスの腫瘍体積は、対照マウス(G1)より小さくなっており、これは、LC0033-1及びAb0033が異なる用量で異なる腫瘍阻害効果を有することを示す。また、LC0033-1治療は、用量依存的腫瘍阻害を示し、低用量でかなりの腫瘍阻害効果を示した(G5、TGITV%=80.3%)。高用量のAb0033(G4、TGITV%=84.1%)は中用量のLC0033-1と同等の抗腫瘍活性(G6、TGITV%=85.3%)を示したが、低用量(G2、TGITV%=40.0%)及び中用量(G3、TGITV%=22.9%)で腫瘍成長を阻害できなかった。
【0179】
同じ用量及び投与頻度で、LC0033-1(G5-G7)は、Ab0033(G2~G4)より高い有効性を示し、これは、抗PD-L1抗体のインビボ腫瘍阻害効果がIL21との融合により効果的に向上したことを示す。
【0180】
図13から分かるように、等モルのAb0033(G2)と比較して、3mg/kgでのLC0033-1(G5)は腫瘍成長を効果的に阻害した。
【0181】
各治療群内のマウス1匹からのデータも研究した。3mg/kgのLC0033-1群(G5)では、マウス全体における腫瘍の成長が遅く、腫瘍成長が阻害された。2.73mg/kgのAb0033群(G2)では、腫瘍が有意に阻害されたマウスがただ1匹であった。
【0182】
LC0033-1について、中用量群(G6)における抗腫瘍活性は低用量群(G5)より高く、対応する用量(G3対G2)でのAb0033は顕著な抗腫瘍活性を示さなかった。高用量Ab0033(G4)は腫瘍成長を効果的に阻害し、抗腫瘍活性が低用量LC0033-1(G5)と同等であった。LC0033-1の抗腫瘍活性は高用量(G7)で更に増加したが、低用量群(G5)と比較して腫瘍阻害が有意に増加せず、即ち、顕著な用量依存的効果が観察されず、その原因は、3mg/kgでのLC0033-1が既に顕著な抗腫瘍活性を示したため、MC38腫瘍モデルについて、LC0033-1用量の更なる増加が腫瘍を完全に除去していなかったことであるかもしれない。
【0183】
配列表
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2024546726000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバイオ医薬品の分野に関する。特に、抗PD-L1抗体及びインターロイキン21を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質、その調製方法及びその用途を提供する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン21(IL21)は、主にCD4 T細胞、B細胞、骨髄細胞及びナチュラルキラー(NK)T細胞によって分泌される4αヘリックスバンドルサイトカインである。IL21は、IL21受容体(IL21R)のヘテロ二量体及び共通サイトカイン受容体ガンマ鎖を介してシグナル伝達することで、広範囲の免疫細胞型に多面的効果を発揮し、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を制御する。組換えIL21の腫瘍内注射は、腫瘍微小環境内の腫瘍関連マクロファージの免疫抑制性M2表現型から腫瘍阻害性M1表現型への転換を促進できることが報告されている。IL21の抗腫瘍活性は、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫及び黒色腫の第1相又は第2相臨床試験で、単独療法又は他の治療薬との併用療法として実証されている。しかし、IL21は半減期が非常に短く、全身投与される場合に重大な副作用を引き起こす。組換えIL21の腫瘍内投与は、より高い有効性及びより低い全身毒性等の利点をもたらす可能性があるが、大部分の患者にとってかなり困難である。
【0003】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、T細胞増殖及び活性を制御する免疫抑制性受容体/リガンドである。PD-1/PD-L1経路は、癌細胞により抗腫瘍免疫の抑制に利用され、一般に臨床転帰不良に関連する。PD-1又はPD-L1に対する抗体を使用するPD-1/PD-L1遮断は、様々な癌種の治療において有望な治療効果を示している。抗PD-1/PD-L1免疫療法は臨床的有効性が期待できるものの、その恩恵を受ける患者は、まだ、ごく少数である。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、式(I)又は(I’)の構造を有する融合タンパク質であって、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Aは抗PD-L1抗体であり、
Bはインターロイキン21(IL21)であり、
Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーであるか又は存在せず、
Lkは、ソルターゼのアクセプター基質認識配列とドナー基質認識配列のコンジュゲーションによって形成されたリンカーであり、
mは1~4の整数である、前記融合タンパク質を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態において、前記アクセプター基質認識配列は、グリシン(G)及びアラニン(A)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。特定の実施形態において、前記アクセプター基質認識配列は、(G)の配列を含み、ただし、nは2~20の整数、特に3である。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記ドナー基質認識配列は、XTXの配列を含み、ただし、Xはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Xはグリシン(G)、セリン(S)又はアスパラギン(N)であるか又は存在せず、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であるか又は存在しない。
【0007】
特定の実施形態において、XTXはLPXTG、LPXTGG、NPQTN、NPKTG、LAXTG又はLPQTSEQであり、ただし、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸である。好ましい実施形態において、XTXはLPETG又はLPETGGである。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、グリシン(G)、アラニン(A)及びセリン(S)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体である。好ましい実施形態において、前記抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記IL21は、野生型IL21又はその変異体である。好ましい実施形態において、前記IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記IL21は、前記抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされる。好ましい実施形態において、前記IL21は、前記抗PD-L1抗体の重鎖のN末端でコンジュゲートされる。
【0012】
いくつかの実施形態において、LkはXT(G)であり、前記融合タンパク質は、(II)又は(II’)の構造を有し、
[B-Sp-XT(G)-Sp-A (II)
A-[Sp- XT(G)-Sp-B] (II’)
式中、Xはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは2~20の整数であり、
mは1又は2であり、
A、B、Sp及びSpは上記で定義された通りである。
【0013】
特定の実施形態において、前記融合タンパク質は、(III)又は(III’)の構造を有し、
[B-GALPETGGGGSGGGGS]-A (III)
A-[GALPETGGGGSGGGGS-B] (III’)
式中、A及びBは上記で定義された通りである。
【0014】
特定の実施形態において、前記融合タンパク質は、式(III)の構造を有し、
[B-GALPETGGGGSGGGGS]-A (III)
式中、
Aは、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体であり、
Bは、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含むIL21であり、
mは1又は2である。
【0015】
特定の実施形態において、前記融合タンパク質は、2つの同一の重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)前記重鎖部分の各々が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)前記重鎖部分の各々が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0016】
別の特定の実施形態において、前記融合タンパク質は、2つの異なる重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)前記重鎖部分の一方が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記重鎖部分の他方が配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)前記重鎖部分の一方が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、前記重鎖部分の他方が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0017】
別の態様において、それを必要とする対象の疾患を治療するための医薬品の製造における、本開示に係る融合タンパク質の使用を提供する。好ましくは、前記疾患は、癌である。より好ましくは、前記癌は、黒色腫、卵巣癌、乳癌、メルケル細胞癌、肺癌、腎細胞癌、膀胱癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸癌、頭頸部扁平上皮癌、中皮腫、ウイルス誘発性癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、軟部肉腫、血液悪性腫瘍、胃癌、胃癌又は胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道癌、食道の扁平上皮癌、子宮内膜癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)又はミスマッチ修復欠損(dMMR)の固形腫瘍、肝細胞癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、腎細胞癌腫(RCC)、有棘細胞癌(cSCC)、三種陰性乳癌(TNBC)、非小細胞肺癌及び膀胱癌から選択される。
【0018】
更なる態様において、本開示に係る融合タンパク質を産生するための方法であって、
(a-1)式(I-1)の構造を有する抗体部分及び式(I-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
[Lk-Sp-A (I-1)
B-Sp-Lk (I-2)
(b-1)ソルターゼの存在下で前記抗体部分を前記サイトカイン部分とコンジュゲートして式(I)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
又は
(a-2)式(I’-1)の構造を有する抗体部分及び式(I’-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
A-[Sp-Lk (I’-1)
Lk-Sp-B (I’-2)
(b-2)ソルターゼの存在下で前記抗体部分を前記サイトカイン部分とコンジュゲートして式(I’)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Lkは上記で定義されたソルターゼのアクセプター基質認識配列であり、Lkは、上記で定義されたソルターゼのドナー基質認識配列であり、
A、B、Sp、Sp、Lk及びmは上記で定義された通りである、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示のいくつかの実施形態に係る融合タンパク質の概略図を示す。
図2A】それぞれ、ELISAによって分析されたAb0030及びAb0033のhPD-L1への結合活性を示す。
図2B】それぞれ、ELISAによって分析されたAb0030及びAb0033のhPD-L1への結合活性を示す。
図3】Ab0030及びAb0033から調製された融合タンパク質を含有する抗体-サイトカインコンジュゲーション混合物のSDS-PAGE分析を示す。
図4】Ab0030及びAb0033から調製された精製融合タンパク質のSDS-PAGE分析を示す。
図5】Ab0030及びAb0033から調製された融合タンパク質のHIC-HPLCプロファイルを示す。
図6】Ab0030及びAb0033から調製された融合タンパク質のHIC-HPLCプロファイルを示す。
図7】ELISAによって分析された抗体単独又は融合タンパク質のhPD-L1への結合活性を示す。
図8】ELISAによって分析された抗体単独又は融合タンパク質のIL21Rへの結合活性を示す。
図9】対照(白抜きヒストグラム)又はhIL21、Ab0033及びLC0033-1(塗りつぶされたヒストグラム)で刺激されたPBMCにおけるSTAT3リン酸化(pSTAT3)シグナルのフローサイトメトリ分析を示す。
図10】第1有効性試験からの実験動物の指定された時点での体重を示す。
図11】第1有効性試験からの実験動物の指定された時点での腫瘍体積を示す。
図12】第2有効性試験からの実験動物の指定された時点での体重を示す。
図13】第2有効性試験からの実験動物の指定された時点での腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。加えて、生化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学及び免疫学に関する用語及び実験手順は、当分野で広範に使用されるものである。また、本開示をより良く理解するために、以下に関連用語の定義及び説明を提供する。
【0021】
本明細書で使用されるように、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」という表現は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上を意味する。明確に反対の指示がない限り、本明細書で使用される「一(a)」及び「一つ(an)」は、「少なくとも1つ」と理解すべきである。
【0022】
特定の量、濃度、値又はパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限若しくは好ましい下限の形態で記載される場合、前記範囲が明示的に記載されているか否かに関わらず、任意の上限又は好ましい値を任意の下限又は好ましい値と組み合わせて形成された任意の範囲が具体的に示されるのに等しいと理解すべきである。特に断らない限り、本明細書に挙げられる数値範囲は、該範囲の両端及び該範囲内の全ての整数と分数(小数)を含むことを意図する。例えば、「iは1~20の整数である」という表現は、iは1~20の任意の整数であることを意味し、例えば、iは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であってもよい。他の同様の表現、例えばn及びmも同様に理解されるべきである。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」とは、その後に説明される事象が発生し得るが、必ずしも発生とは限らないことを意味し、該説明は、前記事象又は状況が発生するか又は発生しないケースを含む。
【0024】
「含む」、「包含」、「含有」及び「有する」といった表現は、制限のないものであり、追加の列挙されていない要素、ステップ、又は成分を除外するものではない。「…からなる」という表現は、指定されない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。「…から本質的になる(consisting essentially of)」とは、範囲が、指定された要素、ステップ若しくは成分に限定されるか、又は請求される発明主題の本質的で新規な特徴に実質的に影響しない任意に存在する要素、ステップ若しくは成分の群に限定されることを意味する。「含む」という表現は、「…から本質的になる」及び「…からなる」といった表現を包含することを理解すべきである。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、少なくとも1つの抗原結合部位(即ち、パラトープ)を介して抗原のエピトープに特異的に結合する免疫グロブリン(Ig)分子又はその断片である。本明細書で使用されるように、「抗体(Ab)」の定義は、通常の抗体、組換え抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、完全ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、細胞内抗体、ダイアボディ、抗イディオタイプ抗体及び抗原結合断片を包含する。本明細書に記載の抗原結合断片は、全長抗体の酵素処理及び/又は合成方法によって産生でき、例えば、組換え抗体が1つの抗体のCDRを別の抗体のフレームワークに移植することによって産生される。抗原結合断片の例としては、Fv、scFv、dsFv、scdsFv、ダイアボディ、Fab、scFab、Fab’、F(ab’)、及び他の断片を含むが、それらに限定されない。本明細書で提供される抗体は、任意の免疫グロブリンタイプ(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgA及びIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)のメンバーを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、PD-L1の少なくとも一部を認識する抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖を含む通常の抗体である。
【0026】
「通常の」又は「全長」抗体は、典型的に、2つの重鎖(HC)及び2つの軽鎖(LC)といった4つのポリペプチドからなる。各軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へ、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む。各重鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へ、重鎖可変領域(VH)及び1つ又は複数の重鎖定常領域(CH)を含む。
【0027】
各VL及びVHは、典型的に3つの超可変「相補性決定領域(CDR)」及び4つの比較的保存された「フレームワーク領域(FR)」を有し、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4の順でアミノ末端からカルボキシル末端へと配列される。VL又はVHにおける位置に応じて、CDRは、CDRH1、CDRH2及びCDRH3のような重鎖可変領域CDR(CDRH)、又はCDRL1、CDRL2及びCDRL3のような軽鎖可変領域CDR(CDRL)と指定される。
【0028】
当業者であれば、CDRを知り、当分野で周知の方法論、例えば、Kabat(例えば、Kabat, E.A. et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照)、Chothia(例えば、Chothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917を参照)、AbM(例えば、Martin, A.C.R. and Allen, J. (2007). Bioinformatics Tools for Antibody Engineering. In Handbook of Therapeutic Antibodies, S. Dubel (Ed.)を参照)及びIMGT(例えば、Lefranc, M.-P., 2011 (6), IMGT, the International ImMunoGeneTics Information System Cold Spring Harb Protoc.; and Lefranc, M.-P. et al., Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003)を参照)を含む様々な番号付けスキームを使用して、CDRを定義することができる。当業者であれば、所与の抗体のCDR配列が、使用される番号付けスキームに応じて異なる境界を有し得ることを理解するであろう。本明細書に記載の抗PD-L1抗体のCDR配列は、Kabat番号付けスキームを使用して定義されるが、任意の他の番号付けスキームによって定義されるCDR配列が本開示の保護範囲に含まれるものとする。
【0029】
本明細書で使用されるように、用語「結合親和性」は、抗体とその同族抗原(例えば、抗PD-L1抗体とPD-L1)又はリガンドとその受容体(例えば、IL21とIL21R)のような、2つの結合パートナー間の強度の尺度である。典型的に、タンパク質間の親和性は、通常、平衡解離定数Kによって測定され報告される。Kは、下記等式を使用した動態分析から算出できる。
=koff/kon
式中、koff及びkonは、それぞれ、抗原と抗体の間の解離速度定数及び会合速度定数である。Kと親和性は反比例する。典型的に、抗体とその同族抗原の間のKは、約10-6M~約10-9M以下、例えば10-8以下、10-9以下、又は10-10以下である。koff及びkonは、免疫アッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)(Rich and Myszka (2000) Curr. Opin. Biotechnol 11:54; Englebienne (1998) Analyst. 123:1599)、等温滴定熱量測定(ITC)又は当分野で既知の他の動態相互作用アッセイ(例えば、Paul, W. E., Fundamental Immunology, 2nd ed., Raven Press, New York, pages 332-336 (1989)を参照。また、米国特許US7,229,619も参照)に限定されない標準的な動態分析方法を使用して測定できる。結合速度のリアルタイム検出及び監視のための計器及び方法は既知であり、市場から入手できる(例えば、BiaCore2000、BiacoreAB、Upsala、Sweden)。
【0030】
本明細書で使用されるように、用語「ポリペプチド」とは、ペプチド結合によって共有結合した2つ以上のアミノ酸を指す。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で互換的に使用される。ポリペプチドは、例えば、1つ又は複数のスペーサー又は機能的部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG化)及びグリカン(グリコシル化))等を含むように修飾できる。ポリペプチドの修飾方法は、当業者に周知である。
【0031】
本明細書で使用されるように、「天然アミノ酸」とは、生体内のタンパク質合成に使用されるL配置の天然に存在するアミノ酸を指す。天然アミノ酸は、本明細書で、アラニン(A、Ala)、アルギニン(R、Arg)、アスパラギン(N、Asn)、アルギニン酸(D、Asp)、システイン(C、Cys)、グルタミン(Q、Gln)、グルタミン酸(E、Glu)、グリシン(G、Gly)、ヒスチジン(H、His)、イソロイシン(I、Ile)、ロイシン(L、Leu)、リジン(K、Lys)、メチオニン(M、Met)、フェニルアラニン(F、Phe)、プロリン(P、Pro)、セリン(S、Ser)、トレオニン(T、Thr)、トリプトファン(W、Trp)、チロシン(Y、Tyr)、バリン(V、Val)、ピロリシン(O、Pyl)、セレノシステイン(U、Sec)といった、当業者に知られている標準的な1文字又は3文字のコードで表される。非天然アミノ酸の例は、上記の天然アミノ酸のD異性体及び誘導体、並びに異常アミノ酸を含む。非天然アミノ酸は、ホモアミノ酸、β-ホモアミノ酸、N-メチルアミノ酸、α-メチルアミノ酸、シトルリン(Cit)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、ノルロイシン(Nle)、3-ニトロチロシン、ニトロアルギニン、オルニチン(Orn)、ナフチルアラニン(Nal)、アミノ酪酸(Abu)、ジアミノ酪酸(Dab)、メチオニンスルホキシド及びメチオニンスルホンを含むが、それらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用されるように、ポリペプチドにおけるアミノ酸位置の番号付けは、N末端からの最初のアミノ酸の位置を位置1と指定するように定義される。
【0033】
本明細書で使用されるように、「スペーサー」とは、融合タンパク質中の2つの部分間に位置し、該2つの部分を空間的に分離する構造を指す。スペーサーの例としては、アミノ酸、アミノ酸誘導体若しくは類似物及びアミノ酸配列を含むが、それらに限定されない。好ましいスペーサーとしては、GA、GGG、GAG及び(G)S((G)S)のようなグリシン(G)、アラニン(A)及びセリン(S)のポリマーを含むアミノ酸配列を含んでもよいが、それらに限定されず、ここでoは1~5の整数であり、sは1~10の整数、特に4であり、tは0又は1~10の整数である。スペーサーは、化学合成、化学若しくは酵素反応又は組換えDNA技術によってポリペプチド(例えば本明細書に記載の抗体部分又はサイトカイン部分)に組み込まれてもよいが、これに限定されない。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「認識配列」及び「認識モチーフ」は、互換的に使用されて、酵素(例えば、ソルターゼ)によって認識され且つ酵素がその酵素作用を発揮するアミノ酸配列を指す。例えば、それぞれソルターゼのドナー及びアクセプター基質認識配列を含む2つのポリペプチドは、コンジュゲートしてソルターゼの酵素作用によって融合ポリペプチドを形成することができる。
【0035】
本明細書で使用されるように、「配列同一性」は、当分野で認識されている意味を有し、2つの核酸又はポリペプチド間の配列同一性のパーセントは、公開されたアルゴリズム、例えばBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)及びFast Adaptive Shrinkage/Thresholding Algorithm(FASTA)(例えばComputational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988、Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994を参照)を使用して2つの配列をアライメントすることによって算出できる。2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド間の同一性を測定する方法は多数あるが、用語「同一性」は、熟練技術者に周知である(Carrillo, H. & Lipman, D., SIAM J Applied Math 48:1073 (1988))。
【0036】
本明細書で使用されるように、参照ポリペプチド(野生型IL21等)の「変異体」は、該参照ポリペプチドと比較して1つ又は複数のアミノ酸付加、欠失、挿入及び/又は置換を含む。
【0037】
本明細書で使用されるように、疾患又は症状を有する対象を「治療」するとは、該疾患又は症状を治癒するか、又は該疾患又は症状の徴候を阻止、緩和、改善又は除去する試みで、対象に組成物、手順又はレジメンを投与又は適用することを意味する。よって、用語「治療」は、予防、療法及び/又は治癒を包含する。用語「予防」とは、潜在的な疾患の予防及び/又は徴候の悪化又は疾患の進行の予防を指す。本明細書で使用されるように、治療は、本明細書で提供される融合タンパク質又は医薬組成物の任意の医薬的使用も包含する。
【0038】
本明細書で使用されるように、「対象」の定義は、ヒト及び非ヒト対象、例えば実験動物(例えば、マウス、ウサギ、及びラット並びに非ヒト霊長類)を含み、好ましくはヒトを指す。
【0039】
本明細書で使用されるように、「治療効果」は、疾患又は症状の徴候を変化させ、典型的には改善又は除去する、対象の治療から生じる効果を意味する。
【0040】
本明細書で使用されるように、「治療有効量」とは、対象に投与した後に治療効果を生み出すのに少なくとも十分な、1つ又は複数の活性剤を含有する薬剤、化合物、又は組成物の量を指す。よって、それは、疾患又は障害の徴候を予防、治癒、改善、阻止又は部分的に阻止するために必要な量である。
【0041】
融合タンパク質
一態様において、式(I)又は(I’)の構造を有する融合タンパク質を提供し、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Aは抗PD-L1抗体であり、
Bはインターロイキン21(IL21)であり、
Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーであるか又は存在せず、
Lkは、ソルターゼのアクセプター基質認識配列とドナー基質認識配列のコンジュゲーションによって形成されたリンカーであり、
mは1~4の整数である。
【0042】
融合タンパク質は、リンカーを介してコンジュゲートされた抗PD-L1抗体とインターロイキン21(IL21)を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質(免疫サイトカインとも呼ばれる)であり、ここでリンカーは、ソルターゼのドナー基質認識配列とコンジュゲートされたアクセプター基質認識配列を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、ソルターゼによって認識されたアクセプター基質認識配列とドナー基質認識配列のソルターゼ媒介部位特異的コンジュゲーションによって形成され、ここで、認識配列の一方は抗PD-L1抗体に連結されて抗体部分を形成し、認識配列の他方はIL21に連結されてサイトカイン部分を形成する。
【0043】
式(I)中、IL21は、ドナー基質認識配列に連結され、抗PD-L1抗体はアクセプター基質認識配列に連結される。式(I’)中、抗PD-L1抗体はドナー基質認識配列に連結され、IL21はアクセプター基質認識配列に連結される。ソルターゼの酵素作用によって、アクセプター及びドナー基質認識配列は、抗PD-L1抗体とIL21の間のリンカーを形成する。任意に、スペーサーが認識配列と抗PD-L1抗体及び/又はIL21の間に挿入されて空間的分離を提供する。
【0044】
式(I)及び(I’)は、それぞれ、IL21又は抗PD-L1抗体とリンカーの間の連結を定義するが、IL21が抗PD-L1抗体にコンジュゲートされる位置を限定することが意図されない。式(I)及び(I’)のいずれかにおいて、IL21は、抗PD-L1抗体の任意の位置にコンジュゲートすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、軽鎖及び重鎖を含む。1つの実施形態において、IL21は、抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされる。1つの実施形態において、IL21は、抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のC末端でコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、IL21は、抗PD-L1抗体の非末端位置でコンジュゲートされる。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態において、式(I)中、IL21は、抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされる。特定の実施形態において、IL21は、抗PD-L1抗体の重鎖のN末端でコンジュゲートされる。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態において、式(I’)中、IL21は、抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のC末端でコンジュゲートされる。特定の実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の重鎖のC末端でコンジュゲートされる。
【0048】
mは、抗PD-L1抗体にコンジュゲートされたIL21の数を表す。抗PD-L1抗体に連結されるドナー又はアクセプター基質認識配列の数を制御することで、1つ又は複数のIL21を抗PD-L1抗体にコンジュゲートすることができる。いくつかの好ましい実施形態において、mは1、2、3及び4から選択される整数である。特定の実施形態において、mは1である。別の特定の実施形態において、mは2である。
【0049】
抗PD-L1抗体
「B7H1」又は「CD274」とも呼ばれる「プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)」は、免疫抑制性受容体プログラム細胞死1(PD-1)のリガンドである。PD-L1は、任意の種、例えばヒト、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ等からのものであり得る。好ましくは、PD-L1はヒトPD-L1である。ヒトPD-L1(hPD-L1)の全アミノ酸配列は、例えばUniprot及びGenBank等の公共データベースから入手できる。抗PD-L1抗体は、PD-L1(例えば、Uniprot識別名Q9NZQ7-1、Q9NZQ7-2又はQ9NZQ7-3に示すアミノ酸配列を含むPD-L1)又はその断片に対する任意の抗体であり得る。好ましくは、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1の間の結合を遮断し、PD-L1シグナル伝達を阻害する。抗PD-L1抗体の例としては、アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)又は3F2(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれるWO2020169062A1を参照)を含むが、それらに限定されない。抗PD-L1抗体は、更なる修飾を含み得る。修飾は、未修飾抗体と比較した1つ又は複数のアミノ酸付加、欠失、挿入及び/又は置換を含み得る。抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又は3F2から調製された操作された抗体であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。ポリクローナル及びモノクローナル抗体を産生するための方法は当分野で既知である。例えば、抗原としてのPD-L1断片は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ヤギ又はヒツジを免疫化するために使用され得、そしてポリクローナル抗PD-L1抗体は、免疫化された哺乳動物の血清から精製され得る。抗PD-L1抗体分泌B細胞は、免疫化された哺乳動物から単離され、骨髄腫細胞と融合してモノクローナル抗PD-L1抗体を産生することができる。あるいは、モノクローナル抗PD-L1抗体は、ファージディスプレイ技術及び組換えDNA技術を使用して生成され得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ又はその操作された抗体である。別の特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は抗PD-L1抗体3F2又はその操作された抗体である。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗体は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を含む。1つの実施形態において、VLは、配列番号22に示すCDRL1配列、配列番号23に示すCDRL2配列及び配列番号24に示すCDRL3配列を含み、VHは、配列番号25に示すCDRH1配列、配列番号26に示すCDRH2配列及び配列番号27に示すCDRH3配列を含む。別の実施形態において、VLは、配列番号28に示すCDRL1配列、配列番号29に示すCDRL2配列及び配列番号30に示すCDRL3配列を含み、VHは、配列番号31に示すCDRH1配列、配列番号32に示すCDRH2配列及び配列番号33に示すCDRH3配列を含む。
【0053】
別の実施形態において、VLは配列番号34のアミノ酸配列を含み、VHは配列番号35のアミノ酸配列を含む。更に別の実施形態において、VLは配列番号36のアミノ酸配列を含み、VHは配列番号37のアミノ酸配列を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、抗体は、軽鎖及び重鎖を含む。1つの実施形態において、軽鎖は配列番号1のアミノ酸配列を含み、重鎖は配列番号2のアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、軽鎖は配列番号3のアミノ酸配列を含み、重鎖は配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0055】
抗PD-L1抗体は、ファージディスプレイ技術、ハイブリドーマ技術、組換えDNA技術及び化学合成に限定されない当分野で既知の方法によって得られ得る。抗PD-L1抗体は様々な供給源から、例えば、酵母ディスプレイライブラリ又はファージディスプレイライブラリ(例えば、Winter et al., (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:433-455 and McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-553を参照)又はヒト末梢血から、単離され得る。例えば、抗体は、一般に抗体産生用の宿主細胞(例えば、酵母細胞、細菌、昆虫細胞又は哺乳動物細胞)内で発現され得る。抗体発現に好適な哺乳動物宿主細胞としては、骨髄腫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞及び他の抗体発現に好適な哺乳動物細胞を含むが、それらに限定されない。特定の実施形態において、哺乳動物宿主細胞は抗PD-L1抗体の軽鎖及び重鎖をコードする発現ベクターで形質転換され、発現された抗体は、タンパク質A親和性カラムを使用して精製される。シグナルペプチドは、抗体の発現、正確な折り畳み及び細胞外分泌を助けることで、抗体の品質、収率及び精製を改善するために使用され得る。軽鎖及び重鎖に付加できるシグナルペプチドの例示的な配列は、それぞれ、配列番号16及び配列番号17に示す。
【0056】
インターロイキン21(IL21)
インターロイキン21(IL21)は、およそ14kDaの4αヘリックスバンドルサイトカインである。IL21は、IL21受容体(IL21R)及び共通サイトカインγ鎖(ガンマc)からなる複合受容体への結合によってシグナル伝達する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、IL21シグナル伝達は、マクロファージ、B細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞、細胞毒性T細胞及びナチュラルキラー細胞を含む様々な標的免疫細胞の増殖、分化、又は活性を誘導することで、体液性免疫応答及び細胞媒介免疫応答の両方を強化する。
【0057】
IL21は、任意の種、例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ等からのものであり得る。好ましくは、IL21は、ヒトIL21(hIL21)である。2つのhIL21前駆体、即ちUniProt識別名Q9HBE4-1(配列番号7、アイソフォーム1前駆体)及びUniProt識別名Q9HBE4-2(配列番号8、アイソフォーム2前駆体)が同定されており、最初の24のaaがシグナルペプチドである。野生型IL21は、シグナルペプチドを欠いた成熟タンパク質として分泌される場合が多い。成熟hIL21の例示的なアミノ酸配列は、配列番号9(アイソフォーム1)及び配列番号10(アイソフォーム2)に示す。
【0058】
IL21は、野生型IL21又はその変異体であり得る。野生型IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を有し得る。IL21変異体は、配列番号9又は配列番号10と比較して1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)のアミノ酸置換、付加又は欠失を含み得る。いくつかの実施形態において、IL21変異体は、配列番号9又は配列番号10と少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、IL21変異体は、野生型IL21と比較してより低い親和性でIL21Rに結合する。かかるIL21変異体の例は、関連内容の全てが参照によって本明細書に組み込まれる、Shen et. al., Front. Immunol., (2020) 11:832及びWO2019028316A1に記載のIL21ムテインを含み得る。
【0059】
IL21は、当分野で既知の方法によって得ることができる。例えば、IL21のコード配列は、組換えDNA技術によって生成され、IL21の発現に好適な宿主細胞に導入され得る。例示的な宿主細胞としては、酵母細胞、細菌、真菌、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含み得るが、それらに限定されない。1つの実施形態において、IL21は、大腸菌BL21(DE3)内で発現される。
【0060】
アクセプター及びドナー基質認識配列
アクセプター及びドナー基質認識配列は、使用されるソルターゼのタイプに対応する。ソルターゼは、天然ソルターゼ、非天然ソルターゼ又はそれらの組み合わせであってもよい。天然ソルターゼは、ソルターゼA(SrtA)、ソルターゼB(SrtB)、ソルターゼC(SrtC)、ソルターゼD(SrtD)、ソルターゼE(SrtE)、ソルターゼF(SrtF)等を含み得る(例えば、US20110321183A1及びEP3647419A1を参照)。
【0061】
典型的なアクセプター基質認識配列は、グリシン及びアラニンのN末端アミノ基等のようなN末端アミノ基を求核剤として含む。いくつかの実施形態において、アクセプター基質認識配列は、グリシン(G)及びアラニン(A)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。好ましい実施形態において、アクセプター基質認識配列は、(G)の配列を含み、ここでnは2~20の整数、特に3である。
【0062】
いくつかの実施形態において、ドナー基質認識配列はXTXであり、ここでXはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Xはグリシン(G)、セリン(S)又はアスパラギン(N)であるか又は存在せず、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であるか又は存在しない。好ましい実施形態において、Xはグルタミン酸(E)である。1つの実施形態において、Xは存在しない。別の実施形態において、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸である。
【0063】
いくつかの実施形態において、ソルターゼは、SrtA、例えば黄色ブドウ球菌からのSrtAであり、XTXはLPXTGG(配列番号39)であってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、ソルターゼは、SrtBであり、XTXはNPXTGG(配列番号46)であってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、ソルターゼは、SrtCであり、XTXはLPXTGGであってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの他の実施形態において、ソルターゼは、SrtDであり、XTXはLPXTA(配列番号47)であってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。更に他のいくつかの実施形態において、ソルターゼは、SrtEであり、XTXはLAXTGG(配列番号48)であってもよく、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの他の実施形態において、ソルターゼは、SrtFであり、XTXはLPXTG(配列番号49)であってもよく、ここでXは、A、R、E、N、D、Q、I、L及びKからなる群から選択される。いくつかの他の実施形態において、ソルターゼは、化膿連鎖球菌からのSrtAであり、XTXはLPXTGX(配列番号50)であってもよく、ここでXは上記で定義された通りである。いくつかの実施形態において、ソルターゼは、ストレプトマイセス・セリカラーからのSrtEであり、XTXはLAXTG(配列番号42)であってもよい。更に別の実施形態において、ソルターゼはラクトバチルス・プランタルムからのSrtAであり、XTXはLPQTSEQ(配列番号43)であってもよい。1つの実施形態において、ソルターゼは黄色ブドウ球菌からのSrtBであり、XTXはNPQTN(配列番号40)であってもよい。別の実施形態において、ソルターゼは炭疽菌からのSrtBであり、XTXはNPKTG(配列番号41)であってもよい。
【0064】
いくつかの特定の実施形態において、ソルターゼは、黄色ブドウ球菌からのSrtAである。したがって、XTXは、酵素の典型的なドナー基質認識配列LPXTGGであってもよく、ここでXは、天然又は非天然の任意の単一アミノ酸であってもよい。いくつかの実施形態において、XTXはLPXTGXであり、ここでXは天然又は非天然の任意の単一アミノ酸であり、Xは存在しないか又は1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列である。1つの実施形態において、Xは存在しない。別の実施形態において、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸である。特定の実施形態において、Xは(G)であり、ここでiは1~10の整数である。別の特定の実施形態において、XTXはLPETG(配列番号44)である。更に別の特定の実施形態において、XTXはLPETGG(配列番号45)である。
【0065】
典型的なソルターゼ触媒コンジュゲーション反応において、ソルターゼはドナー基質認識配列XTXをトレオニン残基で切断する。切断により、トレオニン残基の下流断片(-X)が放出され、上流断片(XT-)は、ソルターゼの活性部位システインとトレオニン-チオエステルを形成してアシル酵素中間体を生成する。続いて、中間体は、ソルターゼに結合したチオエステルをアクセプター基質認識配列のN末端アミノ基に連結することで脱アシル化される。(G)がアクセプター基質認識配列として使用される場合、その形成したリンカーLkはXT(G)の配列を有し、ここでXはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは2~20の整数、特に3である。
【0066】
いくつかの実施形態において、XT(G)はLPXT(G)(配列番号51)、NPXT(G)(配列番号52)又はLAXT(G)(配列番号53)であり、ここでLはロイシンであり、Pはプロリンであり、Nはアスパラギンであり、Aはアラニンであり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Tはトレオニンであり、Gはグリシンであり、nは2~20の整数、特に3である。1つの実施形態において、nは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20から選択される。好ましい実施形態において、nは3である。
【0067】
いくつかの実施形態において、XT(G)はLPXT(G)であり、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは上記で定義された通りである。1つの実施形態において、Xはグルタミン酸(E)である。特定の実施形態において、XT(G)はLPETGGG(配列番号54)である。別の実施形態において、Xはグルタミン(Q)である。特定の実施形態において、XT(G)はLPQTGGG(配列番号55)である。
【0068】
更に別の実施形態において、XT(G)はLAXT(G)であり、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは上記で定義された通りである。好ましい実施形態において、XはEである。
【0069】
別の実施形態において、XT(G)はNPQT(G)(配列番号56)又はNPKT(G)(配列番号57)であり、nは上記で定義された通りである。
【0070】
スペーサー
いくつかの実施形態において、Sp及びSpの少なくとも一方はスペーサーである。いくつかの実施形態において、Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーである。
【0071】
いくつかの実施形態において、スペーサーは、グリシン(G)、アラニン(A)及びセリン(S)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。いくつかの実施形態において、スペーサーはGA、GGG、GAG及び(G)S((G)S)(配列番号59)からなる群から選択され、ここでoは1~5の整数であり、sは1~10の整数、特に4であり、tは0又は1~10の整数である。特定の実施形態において、Spは、GAの配列を有するスペーサーであり、Spは、GSGGGGS(配列番号58)の配列を有するスペーサーである。
【0072】
融合タンパク質の具体的な実施形態
本開示に係る融合タンパク質の例示的な実施形態を以下に提供する。
【0073】
いくつかの実施形態において、LkはXT(G)であり、融合タンパク質は(II)又は(II’)の構造を有し、
[B-Sp-XT(G)-Sp-A (II)
A-[Sp-XT(G)-Sp-B] (II’)
式中、Xはロイシン(L)又はアスパラギン(N)であり、Xはプロリン(P)又はアラニン(A)であり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、nは2~20の整数であり、
mは1又は2であり、
A、B、Sp及びSpは上記で定義された通りである。
【0074】
いくつかの実施形態において、XT(G)はLPXT(G)である。1つの実施形態において、XはEである。別の実施形態において、XはQである。
【0075】
いくつかの実施形態において、XT(G)はLAXT(G)である。1つの実施形態において、XはE又はQである。
【0076】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体はAb0001(アテゾリズマブ)であり、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。別の実施形態において、抗PD-L1抗体はAb0002(3F2)であり、配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、IL21は、野生型IL21又はその変異体である。1つの実施形態において、IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0078】
1つの実施形態において、式(II)又は(II’)中、nは3である。
【0079】
いくつかの実施形態において、Sp及びSpは存在しない。いくつかの実施形態において、Sp及びSpの少なくとも一方は、本明細書に記載のスペーサーである。いくつかの実施形態において、Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーである。1つの実施形態において、SpはGAであり、SpはGSGGGGSである。
【0080】
1つの実施形態において、SpはGAであり、ドナー基質認識配列はLPETGGであり、アクセプター基質認識配列はGGGであり、SpはGSGGGGSであり、融合タンパク質は(III)又は(III’)の構造を有する。
[B-GALPETGGGGSGGGGS]-A (III)
A-[GALPETGGGGSGGGGS-B] (III’)
GALPETGGGGSGGGGSは、配列番号60として示される。
【0081】
1つの実施形態において、式(I)、(I’)、(II)、(II’)、(III)及び(III’)のいずれか中、抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含み、IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含み、mは1又は2である。
【0082】
いくつかの実施形態において、式(I)、(II)及び(III)のいずれか中、抗PD-L1抗体は、軽鎖及び重鎖を含む。1つの実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端でコンジュゲートされる。特定の実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の重鎖のN末端でコンジュゲートされる。
【0083】
いくつかの他の実施形態において、式(I’)、(II’)及び(III’)のいずれか中、抗PD-L1抗体は軽鎖及び重鎖を含む。1つの実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の軽鎖及び/又は重鎖のC末端でコンジュゲートされる。特定の実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の重鎖のC末端でコンジュゲートされる。
【0084】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖を含み、そのうち各軽鎖が配列番号1のアミノ酸配列を含み、各重鎖が配列番号2のアミノ酸配列を含み、又は各軽鎖が配列番号3のアミノ酸配列を含み、各重鎖が配列番号4のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態において、IL21は抗PD-L1抗体の重鎖のうち少なくとも1つのN末端にコンジュゲートされる。1つの実施形態において、本開示に係る融合タンパク質は、2つの同一の軽鎖部分及び2つの同一の重鎖部分を含み、そのうち各重鎖部分が抗PD-L1抗体の重鎖の各々のN末端にコンジュゲートされたIL21を含む。別の実施形態において、本開示に係る融合タンパク質は2つの同一の軽鎖部分及び2つの異なる重鎖部分を含み、そのうち重鎖部分の一方のみが、抗PD-L1抗体の重鎖のうちの1つにコンジュゲートされたIL21を含む。
【0085】
特定の実施形態において、融合タンパク質は2つの同一の重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)重鎖部分の各々が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)重鎖部分の各々が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0086】
別の特定の実施形態において、融合タンパク質は2つの異なる重鎖部分及び2つの同一の軽鎖部分を含み、そのうち、
(1)重鎖部分の一方が配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含み、重鎖部分の他方が配列番号14のアミノ酸配列を含み、軽鎖部分の各々が配列番号1のアミノ酸配列を含み、又は
(2)重鎖部分の一方が配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列を含み、重鎖部分の他方が配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖部分の各々が配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0087】
融合タンパク質の調製方法
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、ソルターゼの触媒下で、抗PD-L1抗体を含む抗体部分を、IL21を含むサイトカイン部分にコンジュゲートすることで産生され、ここで抗体部分及びサイトカイン部分の一方はソルターゼのドナー基質認識配列を更に含み、他方はソルターゼのアクセプター基質認識配列を更に含み、それによってドナー基質認識配列及びアクセプター基質認識配列はソルターゼの酵素作用によりコンジュゲートされる。好適なソルターゼ、アクセプター及びドナー基質認識配列は上記に記載されている。
【0088】
したがって、別の態様において、本開示に係る融合タンパク質を産生するための方法を提供する。
【0089】
1つの実施形態において、本方法は、
(a-1)式(I-1)の構造を有する抗体部分及び式(I-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
[Lk-Sp-A (I-1)
B-Sp-Lk (I-2)
(b-1)ソルターゼの存在下で抗体部分をサイトカイン部分にコンジュゲートして式(I)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
[B-Sp-Lk-Sp-A (I)
式中、
Lkはソルターゼのアクセプター基質認識配列であり、Lkは、ソルターゼのドナー基質認識配列であり、
A、B、Sp、Sp、Lk及びmは上記で定義された通りである。
【0090】
別の実施形態において、本方法は、
(a-2)式(I’-1)の構造を有する抗体部分及び式(I’-2)の構造を有するサイトカイン部分を用意するステップと、
A-[Sp-Lk (I’-1)
Lk-Sp-B (I’-2)
(b-2)ソルターゼの存在下で抗体部分をサイトカイン部分にコンジュゲートして式(I’)の構造を有する融合タンパク質を得るステップと、を含み、
A-[Sp-Lk-Sp-B] (I’)
式中、
Lkはソルターゼのアクセプター基質認識配列であり、Lkは、ソルターゼのドナー基質認識配列であり、
A、B、Sp、Sp、Lk及びmは上記で定義された通りである。
【0091】
1つの特定の実施形態において、ステップ(a-1)は、
(a-1-1)Lk-Spを抗PD-L1抗体の重鎖のN末端に付加して式(I-1)の構造を有する抗体部分を得るステップと、
[Lk-Sp-A (I-1)
(a-1-2)Sp-LkをIL21のC末端に付加して式(I-2)の構造を有するサイトカイン部分を得るステップと、を更に含む。
B-Sp-Lk (I-2)
【0092】
別の特定の実施形態において、ステップ(a-2)は、
(a-2-1)Sp-Lkを抗PD-L1抗体の重鎖のC末端に付加して式(I’-1)の構造を有する抗体部分を得るステップと、
A-[Sp-Lk (I’-1)
(a-2-2)Lk-SpをIL21のN末端に付加して式(I’-2)の構造を有するサイトカイン部分を得るステップと、を更に含む。
Lk-Sp-B (I’-2)
【0093】
1つの実施形態において、Lkはグリシン(G)及びアラニン(A)からなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。特定の実施形態において、Lkは(G)の配列を含み、ここでnは2~20の整数、特に3である。
【0094】
1つの実施形態において、LkはXTXの配列を含み、ここで、XはL又はNであり、XはP又はAであり、Xは任意の天然又は非天然アミノ酸であり、XはG、S又はNであるか又は存在せず、Xは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列であるか又は存在しない。特定の実施形態において、XTXはLPXTG(配列番号38)、LPXTGG、NPQTN、NPKTG、LAXTG又はLPQTSEQであり、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。特定の実施形態において、XTXはLPETG又はLPETGGである。
【0095】
1つの実施形態において、Sp及びSpは存在しない。1つの実施形態において、Sp及びSpの少なくとも一方は、本明細書に記載のスペーサーである。別の実施形態において、Sp及びSpはそれぞれ独立してスペーサーである。ある実施形態において、スペーサーはG、A及びSからなる群から選択される1~100個の直列接続構造単位を含む。好ましい実施形態において、スペーサーはGA、GGG、GAG及び(G)S((G)S)からなる群から選択され、ここでoは1~5の整数であり、sは1~10の整数、特に4であり、tは0又は1~10の整数である。特定の実施形態において、Spは、GAの配列を有するスペーサーであり、Spは、GSGGGGSの配列を有するスペーサーである。
【0096】
1つの実施形態において、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、3F2又はそれらの操作された抗体である。1つの実施形態において、抗PD-L1抗体はVL及びVHを含み、ここでVL及びVHは、本明細書に記載のCDR配列を含む。別の実施形態において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載の配列を有するVL及びVHを含む。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖、又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0097】
1つの実施形態において、IL21は、野生型IL21又はその変異体である。特定の実施形態において、IL21は配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0098】
抗体部分
抗体部分は、上記に記載の抗PD-L1抗体を本明細書に記載のアクセプター基質認識配列又はドナー基質認識配列で修飾することによって生成され得る。修飾は、抗PD-L1抗体の任意の位置で発生してもよい。いくつかの実施形態において、修飾は抗PD-L1抗体のN末端及び/又はC末端、例えば、抗体軽鎖のN末端及び/又は抗体重鎖のN末端で発生する。いくつかの実施形態において、修飾は、抗PD-L1抗体の非末端位置、例えば、抗体軽鎖及び/又は重鎖の側鎖で発生する。
【0099】
いくつかの実施形態において、mは1、2、3及び4から選択される整数である。特定の実施形態において、mは1である。別の特定の実施形態において、mは2である。
【0100】
1つの実施形態において、(G)は抗PD-L1抗体の軽鎖のN末端に導入される。別の実施形態において、(G)は抗PD-L1抗体の重鎖のN末端に導入される。更に別の実施形態において、(G)は抗PD-L1抗体の軽鎖及び重鎖のN末端に導入される。(G)及び抗PD-L1抗体は上記で定義された通りである。
【0101】
1つの実施形態において、XTXは抗PD-L1抗体の軽鎖のC末端に導入される。別の実施形態において、XTXは抗PD-L1抗体の重鎖のC末端に導入される。更に別の実施形態において、XTXは抗PD-L1抗体の軽鎖及び重鎖のC末端に導入される。XTX及び抗PD-L1抗体は、上記で定義された通りである。
【0102】
いくつかの実施形態において、抗体部分は軽鎖を含み、ここで軽鎖は、1)抗PD-L1抗体の軽鎖(LCとする)、2)(G)がN末端に導入された抗PD-L1抗体の軽鎖を含むN末端修飾軽鎖(LCNTとする)、又は3)(G)-SpがN末端に導入された抗PD-L1抗体の軽鎖を含むN末端修飾軽鎖(LCNTとする)であり得る。いくつかの他の実施形態において、抗体部分は重鎖を含み、ここで重鎖は、1)抗PD-L1抗体の重鎖(HCとする)、2)(G)がN末端に導入された抗PD-L1抗体の重鎖を含むN末端修飾重鎖(HCNTとする)、又は3)(G)-SpがN末端に導入された抗PD-L1抗体の重鎖を含むN末端修飾重鎖(HCNTとする)であり得る。抗体部分の軽鎖及び重鎖を組み合わせることで、8タイプの抗体部分を得ることができ、式(I)及び(I’)中のmは1、2、3及び4であってもよい。
【0103】
特定の実施形態において、抗体部分はAb0030であり、抗体Ab0001に由来する。Ab0030は配列番号1の軽鎖及び配列番号14の重鎖を含み、ここで重鎖は、N末端からC末端へ、アクセプター基質認識配列GGG、スペーサーGSGGGGS、及びAb0001の重鎖(配列番号2)を含む。
【0104】
別の特定の実施形態において、抗体部分はAb0033であり、抗体Ab0002に由来する。Ab0033は、配列番号3の軽鎖及び配列番号15の重鎖を含み、ここで重鎖は、N末端からC末端へ、アクセプター基質認識配列GGG、スペーサーGSGGGGS、及びAb0002の重鎖(配列番号4)を含む。
【0105】
サイトカイン部分
サイトカイン部分は、それぞれ、上記に記載のIL21をドナー基質認識配列又はアクセプター基質認識配列で修飾することによって生成され得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、抗体部分は、抗PD-L1抗体及びアクセプター基質認識配列、例えば(G)を含み、サイトカイン部分はIL21及びドナー基質認識配列、例えばXTXを含む。いくつかの実施形態において、ドナー基質認識配列はサイトカイン部分のC末端に位置する。いくつかの実施形態において、ドナー基質認識配列はサイトカイン部分のN末端に位置する。いくつかの実施形態において、ドナー基質認識配列はサイトカイン部分の非末端位置に位置する。
【0107】
いくつかの実施形態において、抗体部分は、抗PD-L1抗体及びドナー基質認識配列、例えばXTXを含み、サイトカイン部分はIL21及びアクセプター基質認識配列、例えば(G)を含む。いくつかの実施形態において、アクセプター基質認識配列はサイトカイン部分のN末端に位置する。いくつかの実施形態において、アクセプター基質認識配列はサイトカイン部分のC末端に位置する。いくつかの実施形態において、アクセプター基質認識配列はサイトカイン部分の非末端位置に位置する。
【0108】
抗体部分及びサイトカイン部分は、化学合成、組換えDNA技術及びそれらの組み合わせに限定されない当分野で既知の様々な方法によって得ることができる。好ましい実施形態において、抗体部分の軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドは、組換えDNA技術によって生成され、好適な宿主細胞に導入され、その後、抗体部分を宿主細胞内で発現し、宿主細胞又は培養培地から精製することができる。宿主細胞は、安定的に又は一時的に形質転換されてもよい。抗体部分及びサイトカイン部分の単離及び精製は、当分野で周知の技法を使用して行うことができる。例えば、抗体部分はタンパク質A親和性カラムで精製することができる。
【0109】
例示的な融合タンパク質
1つの実施形態において、サイトカイン部分は、C末端でスペーサーGA及びドナー基質認識配列LPETGG(配列番号6)によりIL21(配列番号9又は配列番号10)を修飾することで得られ、サイトカイン部分は配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0110】
1つの実施形態において、抗体部分はAb0030であり、配列番号1の軽鎖及び配列番号14の重鎖を含む。Ab0030は、N末端でアクセプター基質認識配列GGG及びスペーサーGSGGGGS(配列番号5)によりAb0001の重鎖(配列番号2)を修飾することで、抗PD-L1抗体Ab0001(アテゾリズマブ)から得られる。別の特定の実施形態において、抗体部分はAb0033であり、配列番号3の軽鎖及び配列番号15の重鎖を含む。Ab0033は、N末端でアクセプター基質認識配列GGG及びスペーサーGSGGGGS(配列番号5)によりAb0002の重鎖(配列番号4)を修飾することで、抗体Ab0002(3F2)から得られる。
【0111】
本開示のいくつかの実施形態によれば、サイトカインIL21及び抗PD-L1抗体の配列、及びそれらから得られたサイトカイン部分及び抗体部分の配列は下記表に記載する。
【0112】
【表1】
【0113】
本開示に係る例示的な融合タンパク質は表2に記載する。
【0114】
医薬組成物
本開示に係る融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0115】
学的に許容される担体の例としては、希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース及びデキストロース)、結合剤及び接着剤(例えば、アカシア、ゼラチン、デンプン糊、カルボキシメチルセルロース)、滑沢剤(例えば、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸)、崩壊剤(例えば、デンプン、セルロース及び架橋剤ポリマー)、防腐剤、ビヒクル、流動促進剤(例えば、コーンスターチ)、甘味剤(例えば、マンニトール及びサッカリン)、コーティング材(例えば、ポビドン、エチルセルロース及び合成ポリマー)、及び可塑剤(例えば、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、及びポリエチレングリコール)、構造形成賦形剤(例えば、セトステアリルアルコール及び鉱油)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、プロピルパラベン及び安息香酸ナトリウム)、抗酸化剤(例えば、ブチルヒドロキシルトルエン及びブチルヒドロキシルアニソール)、可溶化剤(例えば、ラノリン及びコレステロール)、ゲル化剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びキサンタンガム)、及び皮膚軟化剤(例えば、グリセリン、鉱油、ワセリン及びイソプロピルパルミテート)、溶媒(例えば、水、アルコール、酢酸及びシロップ)、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液及び酢酸緩衝液)、抗菌防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、フェノール及びチオメルサール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、硫酸水素ナトリウム、チオ尿素及びブチルヒドロキシトルエン)、キレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム、ジヒドロキシエチルグリシン及びクエン酸)、及び乳化剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セトリミド及びクロゴールエステル)を含むが、それらに限定されない。
【0116】
本明細書で提供される医薬組成物は、様々な剤形、例えば、固体、半固体、液体、粉末、水性、又は凍結乾燥形態としてもよい。
【0117】
本明細書で提供される医薬組成物は、当分野で既知の任意の方法よって、例えば、全身投与又は局所投与によって、対象に投与することができる。投与経路としては、非経口(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、又は体腔内)、局所、硬膜外、又は経粘膜(例えば、鼻腔内又は経口)経路を含むが、それらに限定されない。投与される正確な用量は、様々な要因、例えば治療目的、投与経路、及び対象の状況、例えば、患者の健康状態、体重、性別、食事等によって異なる。したがって、最適な治療効果を得るために、治療者は、医薬組成物の用量を決定し、必要に応じて投与経路を修正する必要がある。一般に、本明細書で提供される医薬組成物の投与の用量範囲は、PD-L1陽性疾患細胞が除去される所望の効果を生み出すのに十分に大きな量である。
【0118】
好ましい実施形態において、本開示の医薬組成物は、治療有効量でヒト対象に投与することができる。抗体の治療用量は、例えば、好ましくは1回の治療用量当たり0.1~25mg/kg体重であり、最も好ましくは1回の治療用量当たり0.1~10mg/kg体重である。特定の実施形態において、本開示の任意の融合タンパク質は、任意の好適な経路による投与のための従来例に従って製剤化することができ、一般に、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋肉内経路による投与のための液体形態(例えば、生理学的に許容される滅菌緩衝液中の融合タンパク質の溶液)としてもよい。
【0119】
治療
更に、それを必要とする対象の疾患を治療するための方法であって、対象に治療有効量の本開示に係る融合タンパク質又は医薬組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0120】
本開示は、それを必要とする対象の疾患を治療するために使用される、本開示に係る融合タンパク質又は医薬組成物にも関する。
【0121】
本開示は、それを必要とする対象の疾患を治療するための医薬品の製造のための、本開示に係る融合タンパク質又は医薬組成物の使用にも関する。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記対象は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、チンパンジー、類人猿、ウシ及びヒトである。いくつかの好ましい実施形態において、前記対象は、ヒトである。
【0123】
いくつかの実施形態において、前記疾患は、癌である。好ましくは、前記癌は、PD-L1陽性癌である。いくつかの実施形態において、前記癌は、黒色腫、卵巣癌、乳癌、メルケル細胞癌、肺癌(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌(扁平上皮癌及び非扁平上皮非小細胞肺癌等)を含む)、腎細胞癌、膀胱癌、結腸癌、結腸腺癌、結腸直腸癌、頭頸部扁平上皮癌、中皮腫、ウイルス誘発性癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、軟部肉腫、血液悪性腫瘍、胃癌、胃癌又は胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道癌、食道の扁平上皮癌、子宮内膜癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)又はミスマッチ修復欠損(dMMR)の固形腫瘍、肝細胞癌、リンパ腫、ホジキン病(ホジキンリンパ腫)、非ホジキン病(非ホジキンリンパ腫)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される。いくつかの実施形態において、癌は、結腸直腸癌、黒色腫、腎細胞癌腫(RCC)、有棘細胞癌(cSCC)、三種陰性乳癌(TNBC)、非小細胞肺癌及び膀胱癌から選択される悪性癌である。いくつかの好ましい実施形態において、癌は胃癌、乳癌、結腸癌、結腸腺癌、尿路上皮癌、肺癌、肝癌、子宮内膜癌、頭頸部癌及び卵巣癌から選択される。
【0124】
特定の実施形態を参照しながら本開示を説明したが、これらの実施形態は本開示の用途及び原理を単に例示するものに過ぎないことが理解される。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく修正が可能である。
【0125】
有益な効果
本開示に係る融合タンパク質は、
(1)PD-L1シグナル伝達の特異的阻害及びIL21シグナル伝達の活性化と、
(2)CD4 T細胞の効果的な活性化と、
(3)より高い抗腫瘍活性及びより低い毒性と、の技術効果の少なくとも1つを達成する。
【0126】
更に、従来の組換えDNA技術は抗体-サイトカイン融合タンパク質(免疫サイトカイン)の生成に使用される場合が多い。しかし、従来の方法を使用して調製された組換え免疫サイトカインの収率は、裸の抗体(サイトカインにコンジュゲートされていない)と比較して極めて低い可能性があり、多数の免疫サイトカインの臨床応用を妨げている。本開示に係る酵素媒介コンジュゲーション方法を使用すると、融合タンパク質を非常に高い収率及び純度で調製することができる。
【0127】
実施例
別段記載がない限り、修飾又は未修飾抗PD-L1抗体及びIL21の調製には、一般に使用される分子生物学、生化学、及び細胞生物学の技法が利用される。別段記載がない限り、実施例で使用される計器及び試薬は市場から入手できる。試薬は更なる精製なく直接使用できる。
【0128】
フローサイトメトリ:CytoFLEX S
HIC-HPLC:ブチルHIC。移動相A:25mMのPB、2Mの(NHSO、pH7.0。移動相B:25mMのPB、pH7.0。流量:0.8mL/min。取得時間:25min。注入量:20μg。カラム温度:25℃。検出波長:280nm。サンプルインジェクター温度:8℃。
SEC-HPLC:カラム:TSK-gel G3000 SWXL、TOSOH 7.8mm ID×300mm、5μm。移動相:0.2MのKHPO、0.25MのKCl、pH6.2。流量:0.5mL/min。取得時間:30min。注入量:50μL。カラム温度:25℃。検出波長:280nm。サンプルトレイ温度:8℃。
CHOはThermo Fisher Scientificから入手され、pcDNA3.3はLife Technologyから入手され、MabSelect Sure ProAはGEから入手された。
黄色ブドウ球菌に由来する最適化組換え酵素ソルターゼAは大腸菌中で調製された。
【0129】
実施例1 抗体部分の構築と発現
1.1 Ab0030及びAb0033の発現プラスミドの構築
2つの抗体部分Ab0030及びAb0033をそれぞれ抗PD-L1抗体Ab0001(アテゾリズマブ)及びAb0002(3F2)に基づいて調製した。Ab0001及びAb0002のアミノ酸配列(配列番号)は表1Aに示す。
【0130】
【表1A】
【0131】
具体的には、Ab0001(配列番号2)の重鎖及びAb0002(配列番号4)の重鎖のN末端を、ペプチド配列GGGGSGGGGS(配列番号5、即ち、スペーサーを有するアクセプター基質認識配列)の付加によって修飾した。
【0132】
抗体部分の発現及び細胞外分泌を促進するために、軽鎖シグナルペプチド(配列番号16)及び重鎖シグナルペプチド(配列番号17)のコード配列をそれぞれ軽鎖及び重鎖のコード配列のN末端に付加した。
【0133】
Ab0030及びAb0033のコード配列を、CHO細胞内での効率的な発現のためにコドン最適化し、各抗体部分のプラスミド対を得るためにpcDNA3.3ベクターにクローニングした。
【0134】
1.2 Ab0030及びAb0033の発現
実施例1.1で得られたAb0030及びAb0033の発現プラスミドを質量比2:1でCHO細胞に一時的にトランスフェクトした。発酵後、抗体を含有する細胞培養上清を収集した。ELISAアッセイによって測定されたAb0030及びAb0033の発現レベルはそれぞれ757.60mg/L及び622.96mg/Lであった。
【0135】
1.3 Ab0030及びAb0033の精製
タンパク質Aカラム(MabSelect Sure ProA、20cm x 5.0cm)を平衡緩衝液(50mMのTris-HCl、150mMのNaCl、pH7.4)で洗浄した。実施例1.2からの細胞培養上清を0.22μmフィルタで濾過し、カラムにロードした。サンプルのロードが完了すると、カラムを5~10カラム容量の平衡緩衝液で洗浄した。抗体をpH3.5の50mMのクエン酸緩衝液中で溶出させ、収集した。抗体溶液のpHを6%(v/v)のpH10.5の1MのTrisを添加することで5.5~6.5に調整した。最後に、抗体溶液の緩衝液を限外濾過によって平衡緩衝液に交換した。UV分光計を使用してAb0030及びAb0033の濃度を測定した。Ab0030及びAb0033を小分けして-80℃で保存した。精製抗体部分Ab0030は配列番号1の軽鎖及び配列番号14の重鎖を含む。精製抗体部分Ab0033は配列番号3の軽鎖及び配列番号15の重鎖を含む(表1Bを参照)。
【0136】
【表1B】
【0137】
1.4 Ab0030及びAb0033の特徴付け
Ab0030及びAb0033をSDS-PAGE電気泳動で分析した。予想通り、SDS-PAGEで測定された重鎖及び軽鎖の分子量はそれぞれ約50kDa及び約25kDaである。SEC-HPLC分析は、Ab0030及びAb0033モノマーの百分率がそれぞれ約97.5%及び96.2%であり、融合タンパク質の調製要件を満たすことを実証する。
【0138】
Ab0030及びAb0033のPD-L1結合活性を酵素免疫測定法(ELISA)で測定した。組換えhPD-L1をコーティング緩衝液(1x PBS)中で0.5μg/mLに希釈し、ELISAプレートに4℃で一晩コーティングした。プレートをコーティング緩衝液中の5%脱脂粉乳で37℃にて1hブロックした。段階希釈したAb0030及びAb0033をプレートに添加し、その後プレートを37℃にて1hインキュベートした。最後に、1:5000に希釈した抗ヒト-IgG(H+L)-HRPを添加した。37℃にて1hインキュベートした後、発色のためにTMB基質を添加した。マイクロプレートリーダーを使用してデータを収集した。
【0139】
結果は図2に示す。Ab0030(図2A)及びAb0033(図2B)は抗原hPD-L1に特異的に結合することができる。
【0140】
実施例2 サイトカイン部分の構築と発現
オーバーラップPCRを使用することで、ペプチド配列GALPETGG(配列番号6、ソルターゼのドナー基質認識配列A(LPETGG)及びスペーサーGAを含む)をコードするポリヌクレオチドを、hIL21(アミノ酸配列が配列番号9又は配列番号10に示される)をコードするポリヌクレオチドの3’に付加して、サイトカイン部分(アミノ酸配列がそれぞれ配列番号11又は配列番号12に示される)をコードするポリヌクレオチドを生成した。サイトカイン部分の発現及び細胞外分泌を促進するために、シグナルペプチドのコード配列(配列番号13)を、配列番号11又は配列番号12をコードするポリヌクレオチドの5’に付加した。精製サイトカイン部分は、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を有する。
【0141】
hIL21を大腸菌BL21(DE3)内で発現させた。発現後、組換えhIL21をNi-NTAカラムで精製した。精製されたhIL21を1x PBS緩衝液で保存した。
【0142】
実施例3 融合タンパク質の調製
実施例1で調製された抗体部分Ab0030及びAb0033を、ソルターゼ媒介部位特異的コンジュゲーションによって、実施例2で調製されたサイトカイン部分とコンジュゲートすることで、融合タンパク質を得た。
【0143】
ステップ1)前処理
好適な孔径を有する限外濾過膜を使用してAb0030及びAb0033並びにサイトカイン部分を前処理し、次に濃縮し、コンジュゲーション緩衝液に緩衝液交換した。
【0144】
ステップ2)酵素媒介コンジュゲーション
Ab0030及びAb0033(1~100mg/mL)並びにサイトカイン部分(配列番号11、1~100mg/mL)を別々に反応緩衝液中で調製した。黄色ブドウ球菌に由来する固定化組換えSrtAを含有するコンジュゲーションカラムを、NaOH及び高塩で前処理し、空気浴又は水浴中で30min以上にわたって10~40℃に前加温した。抗体部分及びサイトカイン部分を含有する反応溶液を一定の比率で混合し、コンジュゲーションカラムに緩徐に通してコンジュゲーション反応を行った。あるいは、反応溶液を固定化組換えSrtA又は精製組換えSrtAと5min~24h混合してコンジュゲーション反応を行ってもよい。
【0145】
更なる精製及びDAR(DAR=抗PD-L1抗体にコンジュゲートされたhIL21の平均数)測定のために、融合タンパク質を含有する抗体-サイトカインコンジュゲーション混合物を収集した。
【0146】
ステップ3)融合タンパク質の精製
融合タンパク質を陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。要するに、クロマトグラフィーカラムにCapto S ImpAct培地を充填し、pH5.0~6.0のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液で平衡化した。ステップ2)からのコンジュゲーション混合物をカラムにロードした。所望のオフセット(ベースライン)に達するまで、カラムをpH5.0~6.0のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液で洗い流した。コンジュゲートされていない抗体部分及びサイトカイン部分を、pH5.0~6.0のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、100~500mMのNaClで溶出させた。クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0~6.0)中のNaCl濃度を0.5Mから1Mに増加させることで融合タンパク質を溶出させた。意外なことに、このステップで、2つの異なる融合タンパク質集団を表す2つの画分が溶出した。その後、2つの画分をSDS-PAGE分析に供した。第1画分は、DAR値が1である主要な集団(DAR1集団と呼ばれ、各融合タンパク質が1つのhIL21を含有する)を表し、第2画分は、DAR値が2である少数集団(DAR2集団と呼ばれ、各融合タンパク質が2つのhIL21を含有する)を表すことが確認された。hIL21(アイソフォーム1)を1つのみ含有する融合タンパク質はそれぞれ、LC0030-1(Ab0030から調製)及びLC0033-1(Ab0033から調製)と命名される。hIL21(アイソフォーム1)を2つ含有する融合タンパク質はそれぞれ、Ab0030から調製されたLC0030-2及びAb0033から調製されたLC0033-2と命名される。図3は、それぞれ、LC0030-1及びLC0030-2を含有する2つの画分のSDS-PAGE分析を示す。図4はLC0033-1を含有する画分のSDS-PAGE分析を示す。
【0147】
pH5.0~6.0のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、1MのNaClを使用してカラムを再生し、1MのNaOHを使用して定置洗浄(CIP)を実施した。
【0148】
ステップ4)融合タンパク質の限外濾過
好適な孔径を有する限外濾過膜を使用して精製融合タンパク質を濃縮し、保存緩衝液に緩衝液交換し、その後2~8℃又は-80℃で保存した。
【0149】
hIL21(アイソフォーム2)(サイトカイン部分が配列番号12のアミノ酸配列を有する)を含有する融合タンパク質を上記と同じ方法で調製した。hIL21(アイソフォーム2)を1つのみ含有する融合タンパク質はそれぞれ、LC0030’-1(Ab0030から調製)及びLC0033’-1(Ab0033から調製)と命名される。hIL21(アイソフォーム2)を2つ含有する融合タンパク質はそれぞれ、LC0030’-2(Ab0030から調製)及びLC0033’-2(Ab0033から調製)と命名される。
【0150】
調製された融合タンパク質は表2に記載する。
【0151】
【表2】
【0152】
実施例4 融合タンパク質のHIC-HPLC分析
実施例3で調製された融合タンパク質をブチルHIC HPLC分析に供してDAR分布を測定した。
【0153】
結果は図5及び図6に示す。LC0030-1のピーク位置はAb0030と比較して前方にシフトし、LC0030-2のピーク位置はLC0030-1と比較して前方にシフトし、これは、融合タンパク質LC0030-1及びLC0030-2の疎水性がAb0030より低いことを示す(図5)。興味深いことに、LC0033-1のピーク位置はAb0033と比較して後方にシフトし、LC0033-2のピーク位置はLC0033-1と比較して後方にシフトし、これは、LC0033-1及びLC0033-2の疎水性がAb0033より強いことを示す(図6)。これらの差異は、Ab0030とAb0033の間のアミノ酸及び構造の差異によるものである可能性がある。
【0154】
実施例5 融合タンパク質のhPD-L1への結合活性の測定
融合タンパク質のヒトPD-L1(hPD-L1)への結合活性をELISAで測定した。組換えhPD-L1タンパク質(Acrobiosystems、PD1-H5253)をコーティング緩衝液(1x PBS)で0.5μg/mLに希釈し、ELISAプレートに4℃で一晩コーティングした。プレートをコーティング緩衝液中の5%脱脂粉乳で37℃にて1hブロックした。段階希釈したAb0030、Ab0033、LC0030-1及びLC0033-1を添加し、その後プレートを37℃にて1hインキュベートした。最後に、1:5000に希釈した抗ヒト-IgG(H+L)-HRPを添加した。37℃で1hインキュベートした後、発色のためにTMB基質を添加した。マイクロプレートリーダーを使用してデータを収集した。
【0155】
結果は図7に示す。LC0030-1及びLC0033-1の両方とも、Ab0030及びAb0033と同様の親和性で抗原PD-L1に特異的に結合することができ、これは、融合タンパク質中の抗PD-L1抗体のPD-L1-結合活性が保持されることを示す。
【0156】
実施例6 融合タンパク質のIL21受容体(IL21R)への結合活性の測定
融合タンパク質のヒトIL21受容体(hIL21R又はHu-IL21R)への結合活性をELISAで測定した。組換えhIL21Rタンパク質をコーティング緩衝液(1x PBS)で0.5μg/mLに希釈し、ELISAプレートに4℃で一晩コーティングした。プレートをコーティング緩衝液中の5%脱脂粉乳で37℃にて1hブロックした。段階希釈したAb0030、Ab0033、LC0030-1及びLC0033-1をプレートに添加し、その後プレートを37℃にて1hインキュベートした。最後に、1:5000に希釈した抗ヒト-IgG(H+L)-HRPを添加した。37℃で1hインキュベートした後、発色のためにTMB基質を添加した。マイクロプレートリーダーを使用してデータを収集した。
【0157】
結果は図8に示す。LC0030-1及びLC0033-1はhIL21Rに特異的に結合することができるが、Ab0030及びAb0033はhIL21Rに結合しない。抗ヒト-IgG(H+L)-HRPが抗体のヒトFc部分に結合するため、結果は、抗PD-L1抗体のhIL21へのコンジュゲーションが成功し、融合タンパク質とhIL21Rが特異的に結合することを示唆する。
【0158】
実施例7 融合タンパク質のhPD-L1及びhIL21Rへの結合親和性の測定
Biacore(Biacore、INC、Piscataway N.J.)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)を行ってLC0033-1及びAb0033のhPD-L1又はhIL21Rへの結合親和性を測定した。Biacore T200バイオセンサーにセンサーチッププロテインAを装備した。所望のタンパク質密度(約300RU)に達するために、試験すべきタンパク質(1μg/mLに希釈)を10μL/minでBiacore T200バイオセンサーに50sec注入した。続いて、Hisタグ付きヒトIL21R(hIL21R-His、200nM)又はヒトPD-L1(hPD-L1-His、100nM)を30μL/minでシステムに180sec注入した。解離を600sec監視した。各サイクル後、pH1.7のグリシン緩衝液(30μL/min、30sec)を使用してチップを再生した。
【0159】
データをBiacore T200評価ソフトウェア3.0で処理した。データを1:1ラングミュア結合モデルに全体的にフィッティングすることによって結合動態を分析して会合速度(kon)及び解離速度(koff)を得る。親和性(K)を式:K=koff/konで算出した。
【0160】
結果は表3に示す。LC0033-1及びAb0033は、同様の親和性でhPD-L1-Hisに結合することができる。LC0033-1は高い親和性でIL21Rに結合することができる。
【0161】
【表3】
【0162】
実施例8 融合タンパク質のCD4 T細胞を活性化する能力の測定
STAT3リン酸化(pSTAT3)アッセイを使用してLC0033-1のインビトロPBMC細胞刺激活性を測定した。STAT3リン酸化はCD4 T細胞刺激の指標である。市販のPBMC細胞(AllCells、カタログ番号FPB003F-C)を37℃で解凍して回復させ、次に前加温した培養バチ(RPMI1640)に懸濁させ、300gで3min遠心分離した。懸濁及び遠心分離プロセスを3回繰り返した。その後、細胞を100μLの培地中の96ウェルプレートに10細胞/ウェルで添加した。続いて、段階希釈したAb0033、LC0033-1又はhIL21を各ウェルに100μL添加し(等量のPBSをブランク対照として対照ウェルに添加)、37℃で30minインキュベートした。PBS中の4%ホルムアルデヒドの作用濃度になるまで等量の固定液を細胞に添加し、細胞を室温で15min固定した。細胞を300gで3min遠心分離して上清を除去し、200μLのPBSで洗浄した。細胞内染色について、細胞を100%氷冷メタノールに再懸濁させ、氷上で30minインキュベートした。300gで3min遠心分離した後、細胞をPBS+0.5%BSAで3回洗浄した。染色のために、5μLの直接標識した抗体(Phospho-STAT3(Tyr705)モノクローナル抗体(LUVNKLA)、APC、eBioscience(商標)、カタログ番号17-9033-42及びCD4モノクローナル抗体(RPA-T4)、FITC、eBioscience(商標)、カタログ番号11-0049-42)を各ウェルに添加した。4℃で30minインキュベートした後、Sartorius-IntelliCyt(登録商標)iQueフローサイトメーターを使用して細胞を分析した。
【0163】
結果は図9に示す。ブランク対照(白抜きヒストグラム)と比較して、LC0033-1及びhIL21(塗りつぶされたヒストグラム)のピークは、明らかに右にシフトし、これは、該2つの分子がCD4 T細胞内のリン酸化を誘導するのに有効であり、そのためCD4 T細胞刺激に有効であることを示す。
【0164】
実施例9 融合タンパク質のインビボ有効性の評価
本開示に係る融合タンパク質のインビボ有効性を評価しヒトにおける治療効果を予測するために、ヒト化PD-1/PD-L1マウス(PD-1/PD-L1遺伝子ヒト化マウス。関連内容の全てが参照によって本明細書に組み込まれるWO2018041118A1及びWO2018001241A1を参照)を使用して結腸腺癌のマウスモデルを確立した。
【0165】
上記したヒト化PD-1/PD-L1マウス(6~7週)のホモ接合体(Biocytogen Pharmaceuticals (Beijing) Co., Ltd.、カタログ番号120522)を使用して2つのインビボ有効性試験を行った。要するに、マウスにマウス結腸腺癌細胞MC38-hPD-L1(5×10/100μL PBS)(Biocytogen Pharmaceuticals (Beijing) Co., Ltd.)を皮下接種した。腫瘍が約100~150mmになった時、マウスをそれらの腫瘍体積に基づいて治療群又は対照群に無作為に割り当てた。治療群マウスをAb0033、hIL21、LC0033-1、LC0033-2、又はhIL21及びAb0033(等モル)の組み合わせの投与について無作為化した。対照群マウスに等量の生理食塩水を注射した。マウスに週2回(BIW)、合計6回(静脈内(i.v.)、第1有効性試験。又は腹腔内(i.p.)、第2有効性試験)投与を実施した。マウスの腫瘍体積及び体重を週2回測定した。マウス1匹の腫瘍体積が3000mmに達した時、マウスを安楽死させ、実験を終了した。2つの試験の投与レジメンはそれぞれ表4及び6にまとめる。
【0166】
9.1 第1有効性試験
第1有効性試験の投与レジメンは表4に示す。
【0167】
【表4】
【0168】
群分け日(0日目)及び群分け14日(14日目)又は26日(26日目)後の腫瘍体積は表5にまとめた。腫瘍成長阻害値(TGITV%)を式:TGITV(%)=[1-(T-T)/(V-V)]×100で算出した。Tはi日目の治療群の平均腫瘍体積である。Tは0日目の治療群の平均腫瘍体積である。Vはi日目の対照群の平均腫瘍体積である。Vは0日目の対照群の平均腫瘍体積である。
【0169】
【表5】
【0170】
全体的に、各群内のマウスは実験中に健康状態が良好であった。治療群及び対照群は体重及び体重変化に有意差を示さなかった(図10)。実験の最後に、各群内のマウスの体重が増加し、治療群及び対照群の体重に有意差がなく、これは、薬物の忍容性が高かったことを示す。結果は、LC0033-1、LC0033-2及びAb0033が安全であり、動物に重大な副作用がないことを示す。
【0171】
図11から分かるように、対照マウスにおける腫瘍は実験中に成長が継続したが、治療群からのマウスにおける腫瘍成長は異なる程度に抑制された。特に、LC0033-1及びLC0033-2群(G6、G8及びG10)における腫瘍成長は、他の治療群(G2、G3、G4、G5、G7及びG9)と比較して有意に抑制され、これは、Ab0033又はhIL21による単独療法又はそれらの併用療法と比較して、LC0033-1及びLC0033-2が優れたインビボ腫瘍阻害活性を示したことを示す。
【0172】
表5及び図11から分かるように、実験の終了時点で、LC0033-1(G6及びG8)又はLC0033-2(G10)で治療した全てのマウスの腫瘍体積は対照マウス(G1)より有意に小さくなっており、これは、LC0033-1及びLC0033-2が低用量で腫瘍阻害効果を有することを示す。更に、LC0033-1及びLC0033-2は同じ用量で同様の有効性を示した(TGITV%:60.5%対56.2%)。LC0033-1の用量が1mg/kgから3mg/kgに増加した場合、TGITV%は60.5%から69.9%に増加し、腫瘍阻害効果が僅かに増加した。融合タンパク質(G8及びG10)の顕著な抗腫瘍活性と比較して、Ab0033のみ、hIL21のみ又はAb0033とhIL21の組み合わせで治療した群からのTGITV%は25%未満であり(G7を除く)、これは、Ab0033、hIL21及びそれらの組み合わせが顕著な抗腫瘍活性を示さなかったことを示す。
【0173】
9.2 第2有効性試験
第2有効性試験の投与レジメンは表6に示す。
【0174】
【表6】
【0175】
群分け日(0日目)及び群分け14日(14日目)又は24日(24日目)後の腫瘍体積を表7にまとめ、腫瘍成長阻害値(TGITV%)を計算した。
【0176】
【表7】
【0177】
全体的に、各群内のマウスは実験中に健康状態が良好であった。治療群及び対照群は体重及び体重変化に有意差を示さなかった(図12)。実験の最後に、各群内のマウスの体重が増加し、治療群及び対照群の体重に有意差がなく、これは、薬物の忍容性が高かったことを示す。結果は、LC0033-1及びAb0033が安全であり、動物に重大な副作用がないことを示す。
【0178】
表7及び図13から分かるように、対照マウスにおける腫瘍は実験中に成長が継続したが、治療群からのマウスにおける腫瘍成長は異なる程度に抑制された。実験の最後に(24日目)、G2~G7からのマウスの腫瘍体積は、対照マウス(G1)より小さくなっており、これは、LC0033-1及びAb0033が異なる用量で異なる腫瘍阻害効果を有することを示す。また、LC0033-1治療は、用量依存的腫瘍阻害を示し、低用量でかなりの腫瘍阻害効果を示した(G5、TGITV%=80.3%)。高用量のAb0033(G4、TGITV%=84.1%)は中用量のLC0033-1と同等の抗腫瘍活性(G6、TGITV%=85.3%)を示したが、低用量(G2、TGITV%=40.0%)及び中用量(G3、TGITV%=22.9%)で腫瘍成長を阻害できなかった。
【0179】
同じ用量及び投与頻度で、LC0033-1(G5-G7)は、Ab0033(G2~G4)より高い有効性を示し、これは、抗PD-L1抗体のインビボ腫瘍阻害効果がIL21との融合により効果的に向上したことを示す。
【0180】
図13から分かるように、等モルのAb0033(G2)と比較して、3mg/kgでのLC0033-1(G5)は腫瘍成長を効果的に阻害した。
【0181】
各治療群内のマウス1匹からのデータも研究した。3mg/kgのLC0033-1群(G5)では、マウス全体における腫瘍の成長が遅く、腫瘍成長が阻害された。2.73mg/kgのAb0033群(G2)では、腫瘍が有意に阻害されたマウスがただ1匹であった。
【0182】
LC0033-1について、中用量群(G6)における抗腫瘍活性は低用量群(G5)より高く、対応する用量(G3対G2)でのAb0033は顕著な抗腫瘍活性を示さなかった。高用量Ab0033(G4)は腫瘍成長を効果的に阻害し、抗腫瘍活性が低用量LC0033-1(G5)と同等であった。LC0033-1の抗腫瘍活性は高用量(G7)で更に増加したが、低用量群(G5)と比較して腫瘍阻害が有意に増加せず、即ち、顕著な用量依存的効果が観察されず、その原因は、3mg/kgでのLC0033-1が既に顕著な抗腫瘍活性を示したため、MC38腫瘍モデルについて、LC0033-1用量の更なる増加が腫瘍を完全に除去していなかったことであるかもしれない。
【0183】
配列表
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【国際調査報告】