(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】オキソニトリドベリロケイ酸塩蛍光体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20241219BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L33/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534312
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 US2022049598
(87)【国際公開番号】W WO2023107239
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500507009
【氏名又は名称】ルミレッズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ギフトサーラー,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】シュトローベル,フィリップ-ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ピーター ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ベクテル,ハンス-ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】シュニック,ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
2H148
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA11
5F142AA62
5F142BA32
5F142CB18
5F142CB23
5F142CD02
5F142DA14
5F142DA44
5F142DA53
5F142DA54
5F142DA56
5F142DB32
5F142DB38
5F142DB52
5F142DB54
5F142DB58
5F142EA02
5F142GA02
5F142GA21
5F142GA29
(57)【要約】
必要な場合置換されたオキソニトリドベリロケイ酸塩フォトルミネッセント組成物(すなわち蛍光体)は、一般式AE1-x-y-uAy+uBe1-y-z-vBy+z+vSi1-zAlzO1-vN2+v:Eux,Ceuで表され、
ここで、AE=Ba,Sr,Ca,Mg、A=Li,Na,K,Rb、0≦x≦0.1、0≦u≦0.1、0<(x+u)、0≦y≦1、0≦z≦1、(y+z+v)≦1、および(x+y+u)≦1である。これらの蛍光体は、蛍光体変換LEDに使用され、これは、例えば、照明およびディスプレイ用途に有意に使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトルミネセント組成物であって、
AE
1-x-y-uA
y+uBe
1-y-z-vB
y+z+vSi
1-zAl
zO
1-vN
2+v:Eu
x,Ce
u;
ここで、AE=Ba,Sr,Ca,Mg、
A=Li,Na,K,Rb、
0≦x≦0.1、
0≦u≦0.1、
0<(x+u)、
0≦y≦1、
0≦z≦1、
(y+z+v)≦1、および
(x+y+u)≦1
である、フォトルミネセント組成物。
【請求項2】
(y+z+v)>0である、請求項1に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項3】
z>0である、請求項2に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項4】
x>0かつu>0である、請求項1に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項5】
(y+u)>0である、請求項1に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項6】
Ba
0.9Sr
0.05K
0.015Be
0.5B
0.5Si
0.5Al
0.5ON
2:Eu
0.02,Ce
0.015で特徴付けられる、請求項1に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項7】
Ba
0.48Na
0.5Be
0.5B
0.5SiON
2:Eu
0.02で特徴付けられる、請求項1に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項8】
Ba
0.5Sr
0.49Be
0.5B
0.5SiO
0.5N
2.5:Eu
0.01で特徴付けられる、請求項1に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項9】
Sr
0.99BSiN
3:Eu
0.01で特徴付けられる、請求項1に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項10】
Ba
1-xBeSiON
2:Eu
x、および
0<x≦0.10
で特徴付けられる、請求項1に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項11】
0<x≦0.04である、請求項10に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項12】
0.005≦x≦0.02である、請求項10に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項13】
x=0.01である、請求項10に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項14】
x=0.005である、請求項10に記載のフォトルミネセント組成物。
【請求項15】
x=0.0075である、請求項10に記載のフォトルミネセント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年12月9日に出願された米国仮特許出願第63/287,797号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本願に組み込まれている。
【0002】
本願は、全般に、pcLED、pcLEDアレイ、pcLEDまたはpcLEDアレイを有する光源、およびpcLEDアレイを有するディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体発光ダイオードおよびレーザダイオード(本願ではまとめて「LED」と称する)は、現在利用できる最も効率的な光源の1つである。LEDの発光スペクトルは、典型的には、装置の構造、およびそれが構築される半導体材料の組成によって定められる波長において、単一の狭小ピークを有する。装置構造および材料系を適切に選択することにより、LEDは、紫外線、可視光、または赤外線波長で作動するように設計され得る。
【0004】
LEDは、該LEDにより放射される光を吸収しこれに応じてより長波長の光を放射する、1つ以上の波長変換材料(本願では全に「蛍光体」と称される)と組み合わされてもよい。そのような蛍光体変換LED(「pcLED」)の場合、LEDにより放射された光のうち蛍光体によって吸収される光の割合は、LEDにより放射される光の光路内の蛍光体材料の量、例えば、LED上またはその近傍に配置された蛍光体層における蛍光体材料の濃度、および層の厚さに依存する。蛍光体変換LEDは、LEDにより放射される全ての光が1つ以上の蛍光体により吸収されるように設計されてもよく、この場合、pcLEDからの放射は、完全に蛍光体からとなる。そのような場合、蛍光体は、例えば、LEDによっては直接効率的に生成されないような狭小スペクトル領域の光を放射するように選択されてもよい。あるいは、pcLEDは、LEDにより放射される光の一部のみが蛍光体により吸収されるように設計されてもよく、その場合、pcLEDからの放射は、LEDにより放射される光と蛍光体により放射される光との混合となる。LED、蛍光体、および蛍光体組成物を適切に選択することにより、そのようなpcLEDは、例えば、所望の色温度および所望の演色特性を有する白色光を放射するように設計され得る。
【0005】
pcLEDの技術的およびビジネス用途には、ディスプレイ、マトリックスおよび光エンジンにおける使用が含まれる。これらには、自動車の適応ヘッドライト、拡張現実(AR)ディスプレイ、仮想現実(VR)ディスプレイ、複合現実(MR)ディスプレイ、スマートグラスおよび携帯電話用のディスプレイ、スマートウォッチ、モニターおよびTV、ならびに携帯電話のカメラ用のフラッシュ照明が含まれる。これらのアーキテクチャにおける個々のLED画素は、マトリックスまたはディスプレイのサイズおよびその画素/インチの要件に応じて、数平方ミリメートルから数平方マイクロメートルまでの面積を有し得る。LEDマトリックス/ディスプレイは、例えば、ドナー基板から制御器バックプレーンまたは電子基板への個々の画素の転写設置によって実現されてもよく、あるいはモノリシックなアプローチによって形成されてもよい。後者では、モノリシックに集積されたLED画素のアレイがドナーエピタキシャルウェハ上のLEDモジュールに加工され、その後、制御器バックプレーンに転写され取り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶ディスプレイ用のバックライトには、通常、緑色蛍光体と赤色蛍光体の組み合わせを有するpcLEDが用いられる。広い色域を実現するためには、できるだけFWHMの小さい緑色蛍光体を含有させることが重要となる。EuドープβSiAlONは、ディスプレイ技術において広く適用されている緑色蛍光体である。ディスプレイ用途に関して議論される別の狭小バンド緑色発光蛍光体は、SrSi2O2N2:Euである。
【0007】
ベータSiAlONの既知の問題は、格子によって組み込まれ得る低いEu濃度により制限される、低い青色光吸収、より高いEu濃度による濃度消光、および暗緑色スペクトル範囲における放射の信頼性の問題である。SrSi2O2N2:Euのような他の狭小バンド緑色発光体は、適用条件下において、低い光熱安定性および低い信頼性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願では、任意に置換されたオキソニトリドベリロケイ酸塩フォトルミネセント組成物(すなわち蛍光体)であって、一般式AE1-x-y-uAy+uBe1-y-z-vBy+z+vSi1-zAlzO1-vN2+v:Eux,Ceu;
ここで、AE=Ba,Sr,Ca,Mg、
A=Li,Na,K,Rb、
0≦x≦0.1、
0≦u≦0.1、
0<(x+u)、
0≦y≦1、
0≦z≦1、
(y+z+v)≦1、および
(x+y+u)≦1
である、フォトルミネセント組成物が開示される。
【0009】
この蛍光体ファミリーのメンバー(例えば、Ba1-xBeSiON2:Eux)は、例えば、斜方晶構造で結晶化してもよく、例えば、青色光またはより短波長の光で励起された際に、狭小バンドの緑色光を放射してもよい。ピーク放射は、520nmから530nmの範囲であってもよく、半値全幅は、例えば、50nm以下、または45nm以下である。より一般的には、ピーク放射は、例えば、500nmから560nmの範囲であり、半値全幅は、例えば、55nm以下であってもよい。
【0010】
BeがBで置換されると(すなわち、y+z+v>0)、賦活イオン(Eu、Ce)を取り囲むO配位子の電荷密度が減少するため、吸収および発光のバンドの青色シフトが生じ得る。
【0011】
[Be,Si]に対する[B,Al]の組み合わされたドーピング(すなわち、z>0)は、ホスト格子の化学的安定性を改善し得る。
【0012】
Ceは、青色スペクトル範囲で放射し、共ドーパントとして添加される場合(すなわち、x>0およびu>0)、Eu(II)発光のフォト安定性を改善することを支援し得る。
【0013】
一価のアルカリ原子(すなわち、y+u>0)による共ドーピングは、反応性中間生成物の形成により、粒子成長を改善し得る。
【0014】
本蛍光体のファミリーの例には、
Ba0.9Sr0.05K0.015Be0.5B0.5Si0.5Al0.5ON2:Eu0.02、
Ce0.015,Ba0.48Na0.5Be0.5B0.5SiON2:Eu0.02、Ba0.5Sr0.49Be0.5B0.5SiO0.5N2.5:Eu0.01、
Sr0.99BSiN3:Eu0.01
が含まれる。
【0015】
本蛍光体のファミリーの別の例には、Ba1-xBeSiON2:Eux
が含まれ、ここで、例えば、0<x≦0.10、または0<x≦0.04、または0.005≦x≦0.02、またはx=0.005、またはx=0.0075、またはx=0.01、またはx=0.02である。
【0016】
また、本願では、発光装置が開示され、これは、一次光を放射し、必要な場合、前述のような特徴を有する置換されたオキソニトリドベリロケイ酸塩蛍光体を有する発光ダイオードを有し、前記蛍光体は、例えば、発光ダイオードから出力される光の光路に配置され、一次光を吸収し、それに応じて一次光よりも長い波長を有する二次光を放射する。
【0017】
本願に開示の蛍光体および蛍光体変換LEDは、例えば、背景技術の項で説明した各種装置および用途に使用され得る。
【0018】
最初に簡単に記載される添付図面と併せて、本発明の以下のより詳細な説明を参照することにより、当業者には、本発明のこれらのおよび他の実施形態、特徴および利点がより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】例示的なpcLEDの概略的な断面図である。
【
図2A】pcLEDのアレイの断面図を示した図である。
【
図2B】pcLEDのアレイの概略的な上面図を示した図である。
【
図3A】pcLEDのアレイが取り付けられ得る電子基板の概略的な上面図を示した図である。
【
図3B】
図3Aの電子基板上に取り付けられたpcLEDのアレイを同様に示した図である。
【
図4A】導波路および投影レンズに対して配置されたpcLEDのアレイの概略的な断面図を示した図である。
【
図4B】導波路を有さない、
図4Aの構成と同様の配置を示した図である。
【
図5】適応照明システムを有する例示的なカメラフラッシュシステムを概略的に示した図である。
【
図6】適応照明システムを有する例示的なディスプレイ(例えば、AR/VR/MR)システムを概略的に示した図である。
【
図7】BaBeSiON
2の結晶構造を示した図である。
【
図8】実施例1で調製された材料について測定されたXRD粉末パターン(モリブデン放射線)を示した図である。
【
図9】実施例1で調製された材料の励起スペクトル(破線)および発光スペクトル(実線)を示した図である。
【
図10】実施例1で調製された材料の熱クエンチ挙動を示した図である。
【
図11】実施例2で調製された一連の材料の励起スペクトル(破線)および発光スペクトル(実線)を示した図である。
【
図12】実施例3で調製された材料の励起スペクトル(破線)および発光スペクトル(実線)を示した図である。
【
図13】実施例3の緑色蛍光体および赤色蛍光体で青色LEDをコーティングすることにより調製された、実施例4の白色発光pcLEDの出力スペクトルを示した図である。
【
図14】CIE1931色度図に表示された実施例4の白色発光pcLEDの色域を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読む必要があり、図面において、同一の参照符号は、異なる図面を通して同様の要素を表す。図面は、必ずしもスケールは示されておらず、選択的な実施形態を示し、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。詳細な説明には、本発明の原理を、限定ではなく一例として示す。
【0021】
図1には、個々のpcLED100の一例を示す。これは、基板104上に配置された発光半導体ダイオード(LED)構造102と、LED上に配置された蛍光体層106(本願では波長変換構造とも称される)とを有する。発光半導体ダイオード構造102は、通常、n型層とp型層の間に配置された活性領域を有する。ダイオード構造に適切な順方向バイアスを印加すると、活性領域から光が放射される。放射される光の波長は、活性領域の組成および構造により決定される。
【0022】
LEDは、例えば、紫外線、青色、緑色、または赤色の光を放射するIII族-窒化物LEDであってもよい。任意の他の好適な材料系から形成され、任意の他の好適な波長の光を放射するLEDが使用されてもよい。他の好適な材料系は、例えば、III族-リン化物材料、III族-ヒ素化物材料、およびII-VI族材料を含んでもよい。
【0023】
pcLEDからの所望の光出力および色仕様に応じて、任意の好適な蛍光体材料が使用されてもよい。
【0024】
図2A乃至
図2Bには、それぞれ、基板202上に配置された蛍光体画素106を有するpcLED100のアレイ200の断面図および上面図を示す。そのようなアレイは、任意の好適な方法で配置された任意の好適な数のpcLEDを有してもよい。図示された例では、アレイは、共有基板上にモノリシックに形成されるように示されているが、代わりに、pcLEDのアレイは、別個の個々のpcLEDから形成されてもよい。基板202は、任意選択的に、LEDを駆動するためのCMOS回路を備えてもよく、任意の好適な材料から形成されてもよい。
【0025】
図2A乃至
図2Bでは、3×3アレイの9つのpcLEDが示されているが、そのようなアレイは、例えば、数十、数百、または数千のLEDを有してもよい。個々のLED(画素)は、アレイの平面において、例えば、1ミリメートル(mm)以下、500ミクロン以下、100ミクロン以下、または50ミクロン以下の幅(例えば、側長)を有してもよい。そのようなアレイ内のLEDは、例えば、数百ミクロン、100ミクロン以下、50ミクロン以下、10ミクロン以下、または5ミクロン以下のアレイの平面内の幅を有するストリートまたはレーンにより、相互に離間されてもよい。図示された例では、対称マトリックスに配置された矩形画素が示されているが、画素およびアレイは、任意の好適な形状または配置を有してもよい。
【0026】
アレイの平面内の寸法(例えば側長)が約50ミクロン以下のLEDは、通常、マイクロLEDと称され、そのようなマイクロLEDのアレイは、マイクロLEDアレイと称され得る。
【0027】
LEDのアレイ、またはそのようなアレイの一部は、セグメント化されたモノリシック構造として形成されてもよく、個々のLED画素は、トレンチおよび/または絶縁材料により互いに電気的に絶縁されるが、電気的に絶縁されたセグメントは、半導体構造の一部により、相互に物理的に接続された状態が維持される。
【0028】
LEDアレイ内の個々のLEDは、個別にアドレス指定可能であってもよく、アレイ内の画素のグループまたはサブセットの一部としてアドレス指定可能であってもよく、あるいはアドレス指定可能でなくてもよい。従って、発光画素アレイは、光分布の微細な強度、空間的および時間的制御を必要としまたはその利益を享受する、任意の用途に有用である。これらの用途は、これに限られるものではないが、画素ブロックまたは個々の画素から放射される光の高精細な特別なパターンを含んでもよい。用途に応じて、放射される光は、スペクトル的に異なり、時間にわたって適応的であり、および/または環境的に応答性であってもよい。そのような発光画素アレイでは、各種強度の空間的または時間的なパターンで、予めプログラムされた光分布が提供されてもよい。放射光は、受信されたセンサデータに少なくとも一部が基づいてもよく、光無線通信に使用されてもよい。関連する電子機器および光学機器は、画素、画素ブロック、またはデバイスレベルで別個であってもよい。
【0029】
図3A乃至
図3Bに示すように、pcLEDアレイ200は、電子基板300上に取り付けられ、電子基板300は、電力および制御モジュール302、センサモジュール304、およびLED取付領域306を有してもよい。電力および制御モジュール302は、外部ソースから電力および制御信号を受信し、センサモジュール304から信号を受信してもよく、それに基づいて、電力および制御モジュール302は、LEDの動作を制御する。センサモジュール304は、任意の好適なセンサから、例えば温度センサまたは光センサから信号を受信してもよい。あるいは、pcLEDアレイ200は、電源および制御モジュールならびにセンサモジュールとは別の基板(図示されていない)に取り付けられてもよい。
【0030】
個々のpcLEDは、必要な場合、蛍光体層に隣接して配置されたまたは蛍光体層上に配置されたレンズもしくは他の光学素子を組み込み、またはそれと組み合わせて配置されてもよい。図には示されていないが、そのような光学素子は、「一次光学素子」と称され得る。また、
図4A乃至
図4Bに示すように、pcLEDアレイ200(例えば、電子基板300に取り付けられる)は、意図される用途で使用するため、導波路、レンズ、またはその両方のような、二次光学要素と組み合わせて配置されてもよい。
図4Aでは、pcLED100により放射される光は、導波路402により収集され、投影レンズ404に誘導される。投影レンズ404は、例えば、フレネルレンズであってもよい。この配置は、例えば自動車のヘッドライトでの使用に適する。
図4Bでは、pcLED100により放射された光は、介在する導波路を使用せずに、投影レンズ404により直接収集される。この配置は、pcLEDが互いに十分に接近して離される場合に特に好適であり、自動車ヘッドライトに加えてカメラフラッシュ用途において使用されてもよい。マイクロLEDディスプレイ用途では、例えば、
図4A乃至
図4Bに示されたものと同様の光学配置が使用されてもよい。一般に、所望の用途に応じて、光学素子の任意の好適な配置を、本願に記載のLEDアレイと組み合わせて使用してもよい。
【0031】
独立して動作可能なLEDのアレイは、レンズ、レンズ系、または(例えば前述のような)他の光学系と組み合わせて使用され、特定の目的に適合可能な照明が提供されてもよい。例えば、作動中、そのような適応照明システムでは、照射シーンまたは対象にわたり色および/または強度により変化し、および/または所望の方向を目的とする、照明が提供されてもよい。制御器は、シーン内の物体または人の配置および色特性を表すデータを受信し、その情報に基づいて、LEDアレイ内のLEDを制御するように構成され、シーンに適合された照明が提供されてもよい。そのようなデータは、例えば、画像センサ、または光学(例えば、レーザ走査)もしくは非光学(例えば、ミリメートルレーダ)センサによって提供されることができる。そのような適応照明は、自動車、モバイルデバイスカメラ、VR、およびAR用途にとって益々重要になっている。
【0032】
図5には、LEDアレイおよびレンズシステム502を備える例示的なカメラフラッシュシステム500を概略的に示す。これは、前述のシステムと同様であっても、同一であってもよい。また、フラッシュシステム500は、LEDドライバ506を有し、これは、マイクロプロセッサのような制御器504によって制御される。また、制御器504は、カメラ507およびセンサ508に結合され、メモリ510に記憶された命令およびプロファイルに従って動作してもよい。カメラ507および適応照明システム502は、制御器504によって制御され、それらの視野が整合されてもよい。
【0033】
センサ508は、例えば、位置センサ(例えば、ジャイロスコープおよび/または加速度計)、および/または他のセンサを有し、後者は、システム500の位置、速度、および配向を決定するために使用されてもよい。センサ508からの信号は、制御器504に供給され、制御器504の好適な動作コース(例えば、どのLEDが現在ターゲットを照射しており、どのLEDが所定の時間後にターゲットを照射するか)を決定するために使用されてもよい。
【0034】
動作の際、502において、LEDアレイの一部または全ての画素からの照射は、調整され、非アクティブ化され、最大強度で作動され、または中間強度で作動されてもよい。502において、LEDアレイにより放射される光のビームフォーカスまたはステアリングは、画素の1つ以上のサブセットをアクティブ化することにより電子的に実施され、照明装置内の光学系を移動させることなく、またはレンズの焦点を変更することなく、ビーム形状の動的な調整が可能となる。
【0035】
図6には、例示的な表示(例えばAR/VR/MR)システム600を概略的に示す。このシステムは、適応発光アレイ610、ディスプレイ620、発光アレイ制御器630、センサシステム640、およびシステム制御器650を有する。制御入力は、センサシステム640に提供され、電力およびユーザデータ入力は、システム制御器650に提供される。いくつかの実施形態では、システム600に含まれるモジュールは、単一の構造にコンパクトに配置されてもよく、あるいは1つ以上の要素が別個に取り付けられ、無線または有線通信を介して接続されてもよい。例えば、発光アレイ610、ディスプレイ620、およびセンサシステム640は、ヘッドセットまたは眼鏡に搭載され、発光制御器および/またはシステム制御器650は、別個に搭載されることができる。
【0036】
発光アレイ610は、前述のような1つ以上の適応発光アレイを有し、例えば、これを用いて、グラフィカルパターンまたはオブジェクトパターンで光が投影され、AR/VR/MRシステムがサポートされてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロLEDのアレイが使用できる。
【0037】
システム600は、適応発光アレイ610および/またはディスプレイ620に広範囲の光学素子を組み込むことができ、例えば、適応発光アレイ610により放射された光は、ディスプレイ620に結合されてもよい。
【0038】
センサシステム640は、例えば、環境をモニターするカメラ、深度センサ、または音声センサのような外部センサと、AR/VR/MRヘッドセット位置をモニターする加速度計または2軸もしくは3軸ジャイロスコープのような内部センサと、を有してもよい。他のセンサは、これに限られるものではないが、空気圧、応力センサ、温度センサ、または、ローカルもしくはリモートでの環境モニターに必要な、任意の他の好適なセンサを有してもよい。いくつかの実施形態では、制御入力は、検出されたタッチもしくはタップ、ジェスチャ入力、またはヘッドセットもしくは表示位置に基づく制御を含んでもよい。
【0039】
センサシステム640からのデータに応答して、システム制御器650は、発光アレイ制御器630に画像または命令を送信することができる。また、画像もしくは命令に対する変更または修正は、必要に応じて、ユーザデータ入力または自動データ入力により実施できる。ユーザデータ入力は、これに限られるものではないが、音声命令、触覚フィードバック、目もしくは瞳の配置、または接続されたキーボード、マウス、もしくはゲームコントローラにより提供されたものを有してもよい。
【0040】
前述のように、本願は、必要に応じて置換されたオキソニトリドベリロケイ酸塩(oxonitridoberyllosilicate)蛍光体を開示し、これは、一般式AE1-x-y-uAy+uBe1-y-z-vBy+z+vSi1-zAlzO1-vN2+v:Eux,Ceu;ここで、AE=Ba,Sr,Ca,Mg;A=Li,Na,K,Rb;0≦x≦0.1;0≦u≦0.1;0<(x+u);0≦y≦1;0≦z≦1;(y+z+v)≦1;および(x+y+u)≦1である、によって特徴付けられる。これらの蛍光体は、例えば、500nm~600nmまたは520nm~530nmからピークフォトルミネッセント放射を示し、FWHAは、例えば、≦55nm、≦50nm、または≦45nmである。これらの蛍光体は、例えば、ディスプレイおよび照明において使用されるpcLED内で使用されてもよい。
【0041】
オキソニトリドベリロケイ酸塩蛍光体BaBeSiON
2は、斜方晶空間群Ama2(no. 40)で結晶化し、格子パラメータは、a=5.6366(3)、b=11.6363(7)およびc=4.9295(3)である。
図7には、その結晶構造を示す。Ba原子は、灰色の球として示され、[BeN3]ユニットは、黒色の三角形として示され、[SiON3]ユニットは、灰色の四面体として示される。
【0042】
結晶構造は、AE[Si2O2N2]型のオキソニトリドケイ酸塩、特にBaSi2O2N2と密接に関連する。BaBeSiON2は、縮合した三角形平面[BeN3]7-ユニットと[SiON3]7-四面体の交互の鎖によって構築された[BeSiON2]2-層を示す。面体鎖は、厳密に交互のUDU…配列を示す。各他のBaSi2O2N2内の[SiON3]7-四面体は、BaBeSiON2における[BeN3]7-ユニットにより置換される。
【0043】
BaBeSiON2中のバリウムイオンは、[BeSiON2]2-層同士の間に認められ、4つのO原子および3つのN原子により7回配位され、歪んだ五角形の双角錐が形成される。
【0044】
以下の表1には、BaBeSiON2の結晶学的データを提供する。
【0045】
【表1】
以下の表2には、BaBeSiON
2の原子座標および等価置換パラメータを提供する。
【0046】
【表2】
以下の表3には、BaBeSiON
2の選択された結合長(Å)を提供する。
【0047】
【表3】
任意に置換された前述のオキソニトリドベリロケイ酸塩蛍光体の一例の合成および特性を以下に示す。
【0048】
実施例1
Ba0.995BeSiON2:Eu0.005
バリウム金属(Alfa Aesar、99.9%)からアモノサーマル法により調製された50.8mgのバリウムアミド、窒素環境下でベリリウム金属(ABCR、99%)を焼成することにより調製された5.5mgの窒化ベリリウム(ABCR、99%)、4.2mgのシリコン(Alfa Aesar、99.9%)、および9.0mgの酸化ケイ素、および0.3mgのフッ化ユーロピウム(Sigma-Aldrich)を、メノウ乳鉢中で混合し、高周波炉において、窒素雰囲気下1400℃の設定温度で5時間焼成する。
【0049】
図8には、実施例1のXRD粉末パターンを示す。これは、BaBeSiON
2の斜方晶構造で結晶化され、格子定数a0=5.6366Å、b0=11.6363Å、およびc0=4.9295Åである。
図9には、実施例1の励起スペクトル(破線、530nmモニタリング)および発光スペクトル(実線、440nm励起)を示す。この材料は、440nmの青色光で励起された場合、522 nmでピーク放射を示し、発光半値幅は45nmである。
図10には、6Kと550Kの間における実施例1の熱クエンチ挙動を示す。
【0050】
BaBeSiON2の元素組成は、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)により確認した。表4には、BaBeSiON2の元素分析結果を原子%で示す。なお、BeはEDSでは検出できないことに留意する必要がある。
【0051】
【表4】
実施例2
Ba
1-xBeSiON
2:Eu
x(0.005<x<0.02)のドーピング濃度系の合成
バリウム金属(Alfa Aesar、99.9%)からのアモノサーマル合成によって調製された50.8mgのバリウムアミド、窒素下でベリリウム金属(ABCR、99%)を焼成することによって調製された5.5mgの窒化ベリリウム、4.2mgのケイ素(Alfa Aesar、99.9%)、9.0mgの酸化ケイ素、および各種量のフッ化ユーロピウム(それぞれ0.3、0.7、1.4mg)をメノウ乳鉢中で混合し、高周波炉において、窒素雰囲気下1400℃の設定温度で5時間焼成する。ユーロピウム濃度は、0.5%、1%、および2%のドーピングレベルの値に対応する。
【0052】
図11には、実施例2において調製された一連の材料についての励起スペクトル(破線、530nmモニタリング)および発光スペクトル(実線、440nmモニタリング)を示す。一連のドーピング濃度の粉末は、440nmの青色光で励起された場合、522から528nmの範囲のピーク放射範囲を示し、FWHMは、45~54nmの範囲である。
【0053】
実施例3
Ba0.9925BeSiON2:Eu0.0075の合成
83.6mgの水素化バリウム(Materion、99.5%)、15.0mgの酸化ベリリウム(Alfa Aesar、99.95%)、28.1mgの窒化ケイ素(Ube Industries、SN-E10)、0.9mgのフッ化ユーロピウム(Sigma-Aldrich)、および1.3mgのフッ化バリウム(abcr、99.999%)をメノウ乳鉢中で混合し、高周波炉において、窒素雰囲気下1400℃の設定温度で5時間焼成する。
【0054】
図12には、実施例3の励起スペクトル(破線、538nmモニタリング)および発光スペクトル(実線、420nm励起)を示す。~0.75%のEuのドーピングレベルでは、狭小バンドの緑色放射が生じ、FWHMは、~522nmの最大放射で46nmである。
【0055】
実施例4
Ba
0.9925BeSiON
2:Eu
0.0075を有するpcLED
実施例3の緑色蛍光体(Ba
0.9925BeSiON
2:Eu
0.0075)および赤色発光KSIF:Mn(K
2SiF
6:Mn
4+)を青色LEDにコーティングして、白色発光pcLEDを製造した。
図13には、その出力スペクトルを示す。
図14には、CIE1931色度図に表示され、DCIP3色域と比較された、この白色pcLEDの色域(実線-FOS)を示す。表示された色域は、NTSC規格と比較して108.3%、DCI P3色域と比較して109.0%を達成する。
【0056】
実施例5
Ba0.9925BeSiON2:Eu0.0075の合成
83.6mgの水素化バリウム(Materion、99.5%)、15.0mgの酸化ベリリウム(Alfa Aesar、99.95%)、28.1mgの窒化ケイ素(Ube Industries、SN-E10)、0.9mgのフッ化ユーロピウム(Sigma-Aldrich)、1.3mgのフッ化バリウム(abcr、99.999%)、および1.4mgのLi3N(Materion、99.5%)をメノウ乳鉢中で混合し、高周波炉において、窒素雰囲気下1375℃の設定温度で3時間焼成する。Li3Nの添加により、焼成時間が短縮され、対象化合物の相形成および結晶化が改善されることが観測されている。
【0057】
本開示は、例示的なものであり、限定するものではない。本開示に照らして当業者には、別の修正が明らかであり、そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
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【国際調査報告】