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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】物質を捕捉するための材料
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20241219BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241219BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20241219BHJP
【FI】
B01J20/22 B
B01J20/28 Z
C02F1/28 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534315
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 US2022052275
(87)【国際公開番号】W WO2023107629
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/288,216
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521529444
【氏名又は名称】メンブリオン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Membrion, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】ニューブルーム,グレゴリー マシュー
(72)【発明者】
【氏名】レンズ,オリビア マリー
(72)【発明者】
【氏名】ケーブ,エマ
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
【Fターム(参考)】
4D624AB11
4D624BA16
4D624BB01
4D624BC04
4D624CA06
4G066AA22C
4G066AA52B
4G066AA72C
4G066AB01B
4G066AB03B
4G066AB05B
4G066AB07B
4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AB13B
4G066AB15B
4G066AB21B
4G066AB24B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA38
4G066CA32
4G066DA07
4G066FA37
(57)【要約】
イオン交換材料などの物質捕捉用の材料および関連する方法とシステムが一般的に記載されている。場合によっては、廃液などの流体混合物から望ましくない種を捕捉できる吸着材が提供される。吸着材は、セラミック粒子(例:樹脂として)を含み、これが効果的におよび/または選択的にペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)および/または金属または半金属含有イオン(重金属を含む)を捕捉するために官能基化され得る。吸着材によって捕捉された種をさらに処理するためのシステムおよび方法も提供される。例えば、いくつかの実施形態は、吸着材に関連する捕捉された種の機械化学的処理を対象とする。PFASなどの捕捉された種を機械化学的変換にかけることで、比較的安価で分配可能な方法で潜在的に有害な汚染物質を破壊することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材であって、前記吸着材はセラミック粒子を含み、
前記セラミック粒子は、前記セラミック粒子の表面に共有結合した官能基を含み、
前記セラミック粒子の平均最大断面寸法は100ナノメートル以上、3000マイクロメートル以下であり、
前記セラミック粒子は、アリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合した金属または半金属原子を含まない、または、アリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に直接結合した金属または半金属原子を、前記セラミック粒子内の金属または半金属原子の50モル%以下の量で含む、吸着材。
【請求項2】
吸着材であって、前記吸着材はセラミック粒子を含み、
前記セラミック粒子は、前記セラミック粒子の表面に共有結合した官能基を含み、
前記セラミック粒子の平均最大断面寸法は100ナノメートル以上、3000マイクロメートル以下であり、
液体に曝露されたとき、前記吸着材が体積膨張を起こさない、または体積膨張が1.5倍未満である、吸着材。
【請求項3】
フッ素を含む分子を含有する流体混合物を処理するためのシステムであって、前記システムは、
容器であって、
前記流体混合物を受け入れるための入口と、
前記容器内に配置された吸着材であって、前記吸着材は前記フッ素を含む分子に対して親和性を有する官能基を含む、容器と、
前記容器から固体材料を受け取るために構成された機械化学装置と、
を含む、システム。
【請求項4】
フッ素を含む分子を含有する標的種を含有する鵜流体混合物を処理するための方法であって、
自由セラミック粒子を含む吸着材を前記流体混合物に曝露させること、ここで前記セラミック粒子は前記標的種に対して親和性を有する前記セラミックに結合した官能基を含む;および
前記官能基を使用して前記セラミック粒子で標的種を捕捉することによって、前記流体混合物から前記標的種の量を少なくとも部分的に除去すること、
を含む方法。
【請求項5】
標的種を含む流体混合物を処理するための方法であって、
自由セラミック粒子を含む吸着材を流体混合物に曝露させること、ここで前記セラミック粒子は前記セラミック粒子の表面に結合した官能基を含み、前記官能基は前記標的種に対して親和性を有し、前記吸着材の体積は0.01 m以上である;および
前記官能基を使用して前記セラミック粒子で前記標的種分子を捕捉することによって、前記流体混合物から前記標的種の量を少なくとも部分的に除去すること、
を含む方法。
【請求項6】
フッ素を含む分子を処理するための方法であって、吸着材に共有結合した官能基によって捕捉されたフッ素を含む分子を含有する標的種を機械化学的変換にかけることを含む方法。
【請求項7】
標的種を処理するための方法であって、吸着材のセラミック粒子の表面に共有結合した官能基によって捕捉された標的種を機械化学的変換にかけることを含み、前記セラミック粒子の平均最大断面寸法は100ナノメートル以上3000マイクロメートル以下である、方法。
【請求項8】
前記吸着材はセラミックを含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項9】
前記吸着材はセラミック粒子を含む、請求項1~8のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項10】
前記セラミックは金属または半金属を含む、請求項1~9のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項11】
前記金属または半金属はSi、Al、TiまたはZnである、請求項1~10のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項12】
前記セラミック粒子の平均最大断面寸法は100ナノメートル以上3000マイクロメートル以下である、請求項1~11のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項13】
前記セラミック粒子の平均最大断面寸法は10ミクロン以上3000ミクロン以下である、請求項1~12のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項14】
前記セラミック粒子の平均最大断面寸法は10ミクロン以上1500ミクロン以下である、請求項1~13のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項15】
前記セラミックは10ナノメートル以下の平均孔径を有する、請求項1~14のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項16】
前記セラミックはシリカベースのセラミックを含む、請求項1~15のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項17】
前記標的種はフッ素を含む分子を含有する、請求項1~16のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項18】
前記標的種は金属または半金属を含むイオンを含有する、請求項1~17のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項19】
前記標的種はオキシアニオンを含む、請求項1~18のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項20】
前記オキシアニオンは硝酸塩である、請求項1~19のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項21】
前記標的種は金属または半金属の酸化物を含む、請求項1~20のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項22】
前記官能基はフッ素を含む分子に対して親和性を有する、請求項1~21のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項23】
前記フッ素を含む分子は親水性の頭部基を含む、請求項1~22のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項24】
前記親水性の頭部基はスルホン酸塩および/またはスルホン酸基、またはカルボン酸塩および/またはカルボン酸基を含む、請求項1~23のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項25】
前記フッ素を含む分子は疎水性の尾部基を含む、請求項1~24のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項26】
前記フッ素を含む分子はペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物を含む、請求項1~25のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項27】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物はペルフルオロアルキルカルボン酸を含む、請求項1~26のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項28】
前記ペルフルオロアルキルカルボン酸は、ペルフルオロブタン酸、ペルフルオロペンタン酸、ペルフルオロヘキサン酸、ペルフルオロヘプタン酸、ペルフルオロオクタン酸、ペルフルオロノナン酸、ペルフルオロデカン酸、ペルフルオロウンデカン酸、ペルフルオロドデカン酸、ペルフルオロトリデカン酸、及び/またはペルフルオロテトラデカン酸を含む、請求項1~27のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項29】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物はペルフルオロアルキルスルホン酸を含む、請求項1~28のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項30】
前記ペルフルオロアルキルスルホン酸は、ペルフルオロブタンスルホン酸、ペルフルオロペンタンスルホン酸、ペルフルオロヘキサンスルホン酸、ペルフルオロヘプタンスルホン酸、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロノナンスルホン酸、ペルフルオロデカンスルホン酸、及び/またはペルフルオロドデカンスルホン酸を含む、請求項1~29のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項31】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物はフルオロテロマースルホン酸を含む、請求項1~30のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項32】
前記フルオロテロマースルホン酸は、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキサンスルホン酸、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクタンスルホン酸、および/または1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンスルホン酸を含む、請求項1~31のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項33】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物はペルフルオロオクタンスルホンアミドを含む、請求項1~32のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項34】
前記ペルフルオロオクタンスルホンアミドは、ペルフルオロオクタンスルホンアミド、N-メチルペルフルオロオクタンスルホンアミド、および/またはN-エチルペルフルオロオクタンスルホンアミドを含む、請求項1~33のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項35】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物はペルフルオロオクタンスルホンアミド酢酸を含む、請求項1~34のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項36】
ペルフルオロオクタンスルホンアミド酢酸は、N-メチルペルフルオロオクタンスルホンアミド酢酸および/またはN-エチルペルフルオロオクタンスルホンアミド酢酸を含む、請求項1~35のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項37】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物はペルフルオロオクタンスルホンアミドエタノールを含む、請求項1~36のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項38】
前記ペルフルオロオクタンスルホンアミドエタノールは、N-メチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエタノールおよび/またはN-エチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエタノールを含む、請求項1~37のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項39】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物は、ペルフルオロエーテルカルボン酸またはポリフルオロエーテルカルボン酸を含む、請求項1~38のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項40】
前記ペルフルオロエーテルカルボン酸またはポリフルオロエーテルカルボン酸は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドジマー酸、4,8-ジオキサ-3H-ペルフルオロノナン酸、ペルフルオロ-3-メトキシプロパン酸、ペルフルオロ-4-メトキシブタン酸、および/またはノナフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン酸を含む、請求項1~39のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項41】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物はエーテルスルホン酸を含む、請求項1~40のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項42】
前記エーテルスルホン酸は、9-クロロヘキサデカフルオロ-3-オキサノナン-1-スルホン酸、11-クロロイコサフルオロ-3-オキサウンデカン-1-スルホン酸、および/またはペルフルオロ(2-エトキシエタン)スルホン酸を含む、請求項1~41のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項43】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物はフルオロテロマーカルボン酸を含む、請求項1~42のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項44】
前記フルオロテロマーカルボン酸は、3-ペルフルオロプロピルプロパン酸、2H,2H,3H,3H-ペルフルオロオクタン酸、および/または3-ペルフルオロヘプチルプロパン酸を含む、請求項1~43のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項45】
前記ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドジマー酸(HFPO-DA)、HFPO-DAの塩、および/またはHFPO-DAまたはその塩を生成するために使用されることが知られているフッ素化合物を含む、請求項1~44のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項46】
前記官能基はイオン交換官能基を含む、請求項1~45のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項47】
前記官能基は、アミンおよび/またはアンモニウム基、またはイミダゾールおよび/またはイミダゾリウム基を含む、請求項1~46のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項48】
前記官能基は第1級アミン基を含む、請求項1~47のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項49】
前記官能基は第2級アミン基を含む、請求項1~48のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項50】
前記官能基は第3級アミン基を含む、請求項1~49のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項51】
前記官能基は第4級アンモニウム基を含む、請求項1~50のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項52】
前記官能基は二つ以上のアミンおよび/またはアンモニウム基を含む、請求項1~51のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項53】
前記官能基は、スルホン酸塩および/またはスルホン酸基、またはカルボン酸塩および/またはカルボン酸基を含む、請求項1~52のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項54】
前記官能基は、任意で、置換されているか又は置換されていない、分岐しているか又は分岐していない、C1-C18アルキル基を含む、請求項1~53のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項55】
前記官能基はフルオロアルキル基を含む、請求項1~54のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項56】
前記官能基は前記セラミックに対して、前記セラミック1グラムあたり0.01ミリモル以上の量で存在する、請求項1~55のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項57】
前記セラミック粒子は、アリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合した金属または半金属原子を含まない、または、アリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に直接結合した金属または半金属原子を、前記セラミック粒子内の金属または半金属原子の50モル%以下の量で含む、請求項1~56のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項58】
前記セラミック粒子は、アルキレン基またはアリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合した金属または半金属原子を含まない、または、アルキレン基またはアリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に直接結合した金属または半金属原子を、前記セラミック粒子内の金属または半金属原子の50モル%以下の量で含む、請求項1~57のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項59】
前記セラミック粒子は、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリレン基、またはヘテロアリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合した金属または半金属原子を含まない、または、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリレン基、またはヘテロアリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に直接結合した金属または半金属原子を、前記セラミック粒子内の金属または半金属原子の50モル%以下の量で含む、請求項1~58のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項60】
液体に曝露されたとき、前記吸着材が体積膨張を起こさない、または体積膨張が1.5倍未満である、請求項1~59のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項61】
液体に曝露されたとき、前記吸着材が体積膨張を起こさない、または体積膨張が1.05倍以下である、請求項1~60のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項62】
前記吸着材は0.01 m3以上の体積を有する、請求項1~61のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項63】
前記吸着材中の前記セラミック粒子の量は、前記吸着材の総重量に対して25重量%以上である、請求項1~62のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項64】
前記吸着材は、
前記セラミックに共有結合した第1の官能基を含む前記セラミック粒子の第1のサブセット、および
前記セラミックに共有結合した第2の異なる官能基を含む前記セラミック粒子の第2のサブセットを含む、請求項1~63のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項65】
前記セラミック粒子の少なくともいくつかは、
前記セラミックに共有結合した第1の官能基、および
前記セラミックに共有結合した第2の異なる官能基を含む、請求項1~64のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項66】
前記第1の官能基はイオン交換基を含み、前記第2の官能基は第2の異なるイオン交換基を含む、請求項1~65のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項67】
前記第1の官能基はイオン交換基を含み、前記第2の官能基はキレート基を含む、請求項1~66のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項68】
前記第1の官能基はスルホン酸塩および/またはスルホン酸基を含み、前記第2の官能基はアミン基を含む、請求項1~67のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項69】
前記吸着材は樹脂および/またはビーズの形態である、請求項1~68のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項70】
前記セラミックはゾル-ゲル由来である、請求項1~69のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項71】
前記セラミックは、前記官能基、または脱離基を含む部分を含んでいる金属または半金属を含有する前駆体の共凝縮由来である、請求項1~70のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項72】
前記セラミックは、下記構造(I)を有する化合物を含む混合物由来である請求項1~71のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法:
【化1】
ここで、R、R、およびRはそれぞれ独立して、任意に置換されるか未置換のC1-18アルコキシおよびハロから選ばれ、Lは任意に置換されるか未置換のC1-18アルキレンおよびアリレンから選ばれ、Mは前記金属および/または半金属であり、Gは前記官能基を含む。
【請求項73】
前記セラミックは、下記構造(II)を有する化合物を含む混合物由来である請求項1~72のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法:
【化2】
ここで、A1は水素、メチル、エチル、プロピル、またはブチルから独立して選ばれ、nは1以上18以下であり、Mは前記金属および/または半金属であり、Gは前記官能基を含む。
【請求項74】
MはSi、Al、Ti、またはZnである、請求項1~73のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項75】
MはSiである、請求項1~74のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項76】
前記機械化学装置はボールミルを含む、請求項1~75のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項77】
前記ボールミルは遊星ボールミルである、請求項1~76のいずれか1つに記載の吸着材、システム、または方法。
【請求項78】
前記流体混合物から除去された前記標的種の量の少なくとも一部を機械化学的変換にかけることをさらに含む、請求項4~77のいずれか1つに記載の方法。
【請求項79】
前記かけることの少なくとも一部の間に、前記機械化学的変換にかけられた前記標的種の少なくともいくつかが前記セラミック粒子によって捕捉される、請求項4~78のいずれか1つに記載の方法。
【請求項80】
前記機械化学的変換は、前記標的種分子の少なくともいくつかをボールミリングを介して少なくとも部分的に実施される、請求項4~79のいずれか1つに記載の方法。
【請求項81】
前記機械化学的変換は、前記吸着材に共有結合した前記官能基によって捕捉された前記標的種を、ボールミリングを介して少なくとも部分的に実施される、請求項4~80のいずれか1つに記載の方法。
【請求項82】
前記ボールミリングはプラネタリー遊星ボールミリングである、請求項4~81のいずれか1つに記載の方法。
【請求項83】
前記ボールミリングは、前記フッ素を含む分子の少なくともいくつかを塩基にさらすことを含む、請求項4~82のいずれか1つに記載の方法。
【請求項84】
前記塩基は水酸化物を含む塩である、請求項4~83のいずれか1つに記載の方法。
【請求項85】
前記水酸化物を含む塩は水酸化カリウムである。、請求項4~84のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2021年12月10日に提出された「物質を捕捉するための材料」という題名の米国仮特許出願番号63/288,216に対して、米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張しており、それは、その全体にわたり、すべての目的のために本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
物質を捕捉(又は捕獲:capturing)するためのイオン交換材料などの材料、および関連する方法とシステムが一般的に記載されている。
【背景技術】
【0003】
環境を汚染し、または健康リスクを引き起こす可能性のあるさまざまな有害物質が存在する。例えば、ペル(又はパー:per)フルオロアルキル化合物(又は物質:substances)およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は、防水生地から消火フォームに至るまで複数の産業から由来し、それらの蓄積は長期的な健康への悪影響を引き起こす可能性がある。別の例として、金属(例えば重金属)および半金属も有害な汚染物質となり得る。本開示の、ある実施形態は、物質の捕捉および処理のための材料の性能および/または特性を改善するための発明的な組成物、材料、システム、および関連する方法に向けられている。
【0004】
(発明の概要)
物質を捕捉するためのイオン交換材料などの材料、および関連する方法とシステムが一般的に記載されている。本発明の主題は、場合によっては、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替解決策、および/または1つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用法を含む。
【0005】
一態様では、吸着材が記載されている。いくつかの実施形態では、吸着材はセラミック粒子を含み、ここで:セラミック粒子は、セラミック粒子の表面に共有結合した官能基(又は機能性基:functional group)を含む;セラミック粒子の平均最大断面寸法は100ナノメートル以上3000ミクロン以下である;およびセラミック粒子は、アリレン基(又はアリーレン基:arylene group)を含む結合(又はリンケージ又は連結:linkage)によって他の金属または半金属原子に結合した金属または半金属原子を含まないか、またはセラミック粒子中の金属または半金属原子の50モル%以下の量でアリレン基を含む結合によって他の金属または半金属原子に直接結合した金属または半金属原子を含む。いくつかの実施形態では、セラミック粒子の平均最大断面寸法は10ミクロン以上3000ミクロン以下である。
【0006】
いくつかの実施形態では、吸着材はセラミック粒子を含み、ここで:セラミック粒子は、セラミック粒子の表面に共有結合した官能基を含む;セラミック粒子の平均最大断面寸法は100ナノメートル以上3000ミクロン以下である;および液体に曝露された際、吸着材は体積膨張を起こさないか、または体積膨張が1.5倍未満である。いくつかの実施形態では、セラミック粒子の平均最大断面寸法は10ミクロン以上3000ミクロン以下である。
【0007】
別の態様では、フッ素含有分子を含む流体混合物を処理するシステムが提供される。いくつかの実施形態では、システムは以下を含む:流体混合物を受け取るための入口を備えた容器、および容器内にある吸着材、吸着材はフッ素含有分子に対する親和性を有する官能基を含む;および容器から固体材料を受け取るように構成された機械化学装置。
【0008】
別の態様では、フッ素含有分子を含む標的種(a target species)を含む流体混合物を処理する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は以下を含む:標的種に対する親和性を有する官能基を有するセラミック粒子を含む吸着材を流体混合物に曝露し、官能基を使用してセラミック粒子で標的種を捕捉することにより、少なくとも一部の標的種を流体混合物から除去する。
【0009】
別の態様では、標的種を含む流体混合物を処理する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は以下を含む:自由セラミック粒子を含む吸着材を流体混合物に曝露する、ここでセラミック粒子はセラミック粒子の表面に結合した官能基を含み、その官能基は標的種に対する親和性を有し、吸着材の体積は0.01 m以上である;および官能基を使用してセラミック粒子で標的種分子を捕捉することにより、流体混合物から標的種の量を少なくとも一部除去する。
【0010】
別の態様では、フッ素含有分子を処理する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は以下を含む:吸着材に共有結合した官能基によって捕捉されたフッ素含有分子を含む標的種を機械化学変換にかける。
【0011】
別の側面では、標的種を処理する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は以下を含む:吸着材のセラミック粒子の表面に共有結合した官能基によって捕捉された標的種を機械化学変換にかける、ここでセラミック粒子の平均最大断面寸法は100ナノメートル以上3000ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、セラミック粒子の平均最大断面寸法は10ミクロン以上3000ミクロン以下である。
【0012】
本発明のその他の利点および新しい特徴は、添付図面と併せて、本発明のさまざまな非限定的実施形態の詳細な説明を考慮することで明らかになる。本明細書と参照によって組み込まれた文書に矛盾および/または不一致な開示が含まれる場合、本明細書が優先する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の非限定的な実施形態は、添付図面を参照しながら例示的に説明される。図面は概略図であり、スケールに基づいて描かれることは意図されていない。図面では、同一またはほぼ同一の各コンポーネントは通常、単一の番号で表される。明確にするために、すべてのコンポーネントがすべての図にラベル付けされているわけではなく、発明の理解に必要ない場合には各実施形態のすべてのコンポーネントが示されているわけではない。図面では:
図1図1は、いくつかの実施形態に係る、吸着材の概略的断面図を示している。
図2図2は、いくつかの実施形態に係る、粒子を含む吸着材の概略的断面図を示している。
図3図3は、いくつかの実施形態に係る、官能基を含むセラミック粒子の概略的断面図を示している。
図4図4は、いくつかの実施形態に係る、セラミックに共有結合された官能基の概略的断面図を示している。
図5図5は、いくつかの実施形態に係る、標的種を含む流体混合物を処理するためのシステムの概略的断面図を示しており、システムは容器、入口、および容器内の吸着材を含んでいる。
図6図6は、いくつかの実施形態に係る、標的種を含む流体混合物を処理するためのシステムの概略的ブロック図を示しており、システムは容器と機械化学装置を含んでいる。
図7図7Aおよび7Bは、いくつかの実施形態に係る、ベンチマーク樹脂の走査型電子顕微鏡(SEM)画像(図7A)およびセラミック粒子を含む例示的な吸着材のSEM画像(図7B)を示している。
図8図8は、いくつかの実施形態に係る、ベンチマーク樹脂およびセラミック粒子を含むいくつかの例示的な吸着材について測定されたイオン交換容量のプロットを示している。
図9図9は、いくつかの実施形態に係る、セラミック粒子を含む例示的な吸着材に曝露されたさまざまなPFASについて、時間の関数としての吸着密度のプロットを示している。
図10図10は、いくつかの実施形態に係る、セラミック粒子を形成するために使用できるさまざまな官能化シランの化学構造を示している。
図11図11は、いくつかの実施形態に係る、セラミック粒子を含む例示的な吸着材に曝露されたさまざまなPFASについて、時間の関数としての吸着密度のプロットを示している。
図12図12は、いくつかの実施形態に係る、セラミック粒子を含む例示的な吸着材によって捕捉されたさまざまなPFASの破壊率のプロットを示している。
図13図13Aおよび13Bは、水に曝露される前のセラミック粒子の画像(図13A)および水に曝露された後のセラミック粒子の画像(図13B)を示している。
図14図14は、いくつかの実施形態に係る、セラミック粒子を含む例示的な吸着材および市販樹脂によるクロム酸イオンの質量による吸着のプロットを示している。
図15図15は、いくつかの実施形態係る、さまざまな例示的な吸着材および市販樹脂の密度のプロットを示している。
図16図16は、いくつかの実施形態に係る、セラミック粒子を含む例示的な吸着材および市販樹脂によるクロム酸イオンの体積による吸着のプロットを示している。
図17A図17Aは、いくつかの実施形態係る、さまざまな粒子サイズ範囲の吸着材のマンガン(Mn)吸着容量のプロットを示している。
図17B図17Bは、いくつかの実施形態に係る、さまざまな粒子サイズ範囲の吸着材のクロム(Cr)吸着容量のプロットを示している。
図17C図17Cは、いくつかの実施形態に係る、吸着材のクロム酸塩、セレナイト、ヒ素酸塩の最大吸着容量のプロットを示している。
図17D図17Dは、いくつかの実施形態に係る、2種類の異なる吸着材のマンガン(Mn)吸着容量のプロットを示している。
図18A図18Aは、いくつかの実施形態に係る、酸化剤に曝露後の多孔質吸着材による銅除去割合のプロットを示している。
図18B図18Bは、酸化剤に曝露する前の多孔質吸着材によるCu2+除去割合%と、酸化剤に一度も曝露されなかった対応するサンプルによるCu2+除去割合%の比率のプロットを示している。
図19A図19Aは、いくつかの実施形態に係る、スルホン酸基の負荷量に対する多孔質吸着材の銅イオン吸着容量のプロットを示している。
図19B図19Bは、いくつかの実施形態に係る、さまざまな追加の官能基でさらに官能化された多孔質吸着材の銅吸着容量のプロットを示している。
図20A図20Aは、いくつかの実施形態に係る、スルホン酸基の負荷量に対する多孔質吸着材の銅イオン、カルシウムイオン、およびナトリウムイオンの吸着容量のプロットを示している。
図20B図20Bは、いくつかの実施形態に係る、さまざまな多孔質吸着材によって除去されたカルシウムイオンと銅イオンの割合のプロットを示している。
図20C図20Cは、いくつかの実施形態に係る、さまざまな多孔質吸着材によって除去されたナトリウムイオンと銅イオンの割合のプロットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
物質を捕捉するためのイオン交換材料や、それに関連する方法およびシステムが一般的に記載されている。いくつかの例では、廃棄物流などの流体混合物から望ましくない種を捕捉できる吸着材が提供される。吸着材は、セラミック粒子(例:樹脂として)を含み、フッ素含有化合物(PFAS)や金属または半金属含有イオン(重金属を含む)などの種を効果的かつ/または選択的に捕捉するために官能化されている場合がある。また、吸着材によって捕捉された種をさらに処理するためのシステムおよび方法も提供される。例えば、いくつかの実施形態は、吸着材に関連する捕捉された種の機械化学的処理に向けられている。PFASなどの捕捉された種を機械化学変換にかけることで、比較的安価で分配可能(distributable)な方法で潜在的に有害な汚染物質を破壊することができる。
【0015】
工業化はさまざまな環境および健康の脅威をもたらしている。例えば、フッ素含有化合物は、人体と環境の両方に差し迫った脅威をもたらす人工化合物群である。1940年代から、水に強い布地から消火フォームまで、さまざまな産業のために製造されてきたPFASは普遍的に存在する。これらの化合物は時間とともに容易には分解せず、体内および/または環境中に蓄積する可能性がある。この蓄積が、癌や先天性欠損、免疫系の機能不全などの長期的な健康障害を引き起こすという証拠がある。PFASの修復技術の必要性はかつてないほど高く、これらの化合物による損害を軽減するための世界的な努力を促している。PFAS化合物は通常、二つの主要な成分から成る:親水性の頭部基(又はヘッドグループ:head group)(カルボン酸、スルホン酸など)と疎水性の尾部基(又はテールグループ:tail group)(長いまたは短いフルオロアルキル鎖)。PFAS除去の一つのアプローチは、イオン交換(IX)樹脂である。これらの樹脂は、二つのプロセスの混合を使用して化合物を吸着することができる:(1) PFASの親水性頭部基と樹脂の帯電した部位との間の静電相互作用、(2) 樹脂の非極性有機成分とPFAS尾部基との間の疎水性/ファンデルワールス相互作用。これら二つのプロセスの正確な寄与はまだ議論の余地があるが、この開示の文脈では、これらの特性を調整することが適切なPFAS選択性を達成する鍵であると考えられている。例えば、静電相互作用は、これらの化合物の疎水性の低下により、長鎖のPFASよりも短鎖のPFASの吸着においてより影響を与える可能性がある。
【0016】
この開示の文脈で認識されたのは、セラミック材料(例:官能基で官能化されたもの)などの吸着材が、ポリマーベースのイオン交換樹脂に対するコスト効果の高い代替手段を提供できるということである。場合によっては、本明細書に記載されているセラミック粒子のようなセラミックベースの材料を使用することで、市販のイオン交換樹脂で使用される有機ポリマーバックボーンの悪影響(例:共存汚染物質、ファウリング)を回避することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本開示で記載された吸着材は、官能基の種類と負荷、孔径、膨張、または形状因子などの調整可能な特性を提供できる。
【0017】
さらに、汚染物質除去の分野(例:PFASの捕捉)における最も重要な課題の一つは、捕捉後に汚染物質をどのように破壊するかである。焼却や再生による処理は可能であるが、汚染物質(例:PFASや金属)を含む追加の不要な廃棄物流が生成される。他の破壊的なオプションには、電気化学的酸化、プラズマ処理、音響分解が含まれる。この開示の文脈で判断されたのは、別の種類の技術である機械化学的処理を用いて、汚染物質で修正された吸着材(例:PFASで修正された樹脂)を破壊することができるということである。例えば、汚染物質を捕捉するためにセラミック(例:セラミック粒子)を含む吸着材は、比較的もろい場合がある。もろい材料は、現在の市販ポリマーベースの樹脂よりも機械化学的処理(例:ボールミリング)により適している可能性がある。いくつかの実施形態では、捕捉された標的種(例:PFAS)の機械化学的処理を行うためのシステムおよび方法が提供される。
【0018】
一態様では、吸着材(例:標的種の捕捉および/または破壊のためのもの)が提供される。図1は、いくつかの実施形態に従った吸着材100の断面的な模式図を示している。この吸着材は、流体混合物から標的種を捕捉するように構成される場合がある。例えば、吸着材は標的種と吸着材の表面との間に魅力的な相互作用を促進する化学的または物理的特性を有する場合がある。そのような魅力的な相互作用は、特異的である場合や非特異的である場合がある。例えば、吸着材と標的種との間の魅力的な相互作用には、化学吸着、物理吸着、分散力、ファンデルワールス力、静電力、疎水的相互作用、親水的相互作用、フルオロ親和的相互作用、水素結合、および/または化学結合形成(例:共有結合形成、イオン結合形成)が含まれる場合がある。
【0019】
吸着材は、様々な適切な形状を有することができる。吸着材の形状は、用途の種類に基づいて選択される場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、標的種に対して好ましい吸着動力学を促進するために、吸着材が粒子の形状であることが有利である場合がある。図2は、吸着材100が粒子101の形状でいくつかの実施形態を示している。いくつかの実施形態では、粒子は異方性粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子は等方性粒子を含む。場合によっては、吸着材が樹脂の形状であることがある。いくつかの実施形態では、吸着材がビーズ(例:等方性ビーズ)の形状である。場合によっては、粒子は自由粒子である。自由粒子は、互いに固定されていない(例:接着剤、バインダー材料、または分散マトリックスを介して)ことが理解されるべきである。ただし、自由粒子は外部力によって制約されている状態(例:外部力によって制約された状態)であっても自由であると見なされる。なぜなら、外部力が存在しない場合には自由に移動できるからである。しかし、場合によっては、粒子は固定された構造の一部である(例:連続相材料に分散された複合体の一部として)。粒子形状の詳細については、以下でより詳しく記載される。いくつかの実施形態では、吸着材は粒子形状ではない。例えば、吸着材は固体基板上の材料の層(例:コーティングとして)である場合がある。別の例として、いくつかの実施形態では、吸着材は膜を含む。ここに示されている図は説明的であり、吸着材やその他の部品は他の適切な形状、サイズ、構成を有する可能性があることが理解されるべきである。
【0020】
いくつかの実施形態では、吸着材はセラミックを含む。例えば、図1の吸着材100は、いくつかの実施形態に従ってセラミック150を含む。いくつかの実施形態では、吸着材はセラミック粒子を含む。例えば、図2では、粒子101がセラミック150を含むセラミック粒子である場合がある。吸着材には様々なセラミックを使用することができる。セラミックは、一般に知られているように、無機の非金属酸化物、窒化物、および/または炭化物の材料を指し、通常は比較的もろく、比較的高い密度、比較的高い硬度、および/または比較的高い融点を有する。セラミックは金属および/または半金属(又は準金属:metalloid)を含む場合がある。例えば、セラミックは金属および/または半金属の酸化物を含む場合がある。セラミックには様々な金属および/または半金属を使用することができる。例えば、金属および/または半金属としては、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、またはジルコニウム(Zn)が含まれる場合がある。セラミックが複数の異なる金属および/または半金属を含む場合があることが理解されるべきである。例えば、セラミックはSi、Al、Ti、またはZnの2種類以上の組み合わせを含む場合がある。
【0021】
いくつかの実施形態では、セラミックはシリカベースのセラミックを含む。シリカベースのセラミックは、主にシリカ(SiO2)のネットワークを含むセラミックであるが、シリカベースのセラミックにはSiO2の式で説明されていないグループ(例:末端官能基)が含まれる場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、シリカベースのセラミックは末端の水酸基、末端の有機基、および/または末端の官能基(例:イオン交換官能基またはフルオロカーボン官能基)を含むシリカのネットワークを含む。いくつかの実施形態では、シリカベースのセラミックの中で比較的高い割合(例:10 mol%以上、25 mol%以上、50 mol%以上、60 mol%以上、75 mol%以上、80 mol%以上、85 mol%以上、90 mol%以上、92 mol%以上、95 mol%以上、98 mol%以上、99 mol%以上、または100 mol%;および/または100 mol%以下、99 mol%以下、98 mol%以下、95 mol%以下、90 mol%以下、またはそれ以下)のSi原子が四面体環境にあり、下記で説明する酸素、水酸基、または官能基に結合している。いくつかの実施形態では、セラミックはチタニアベースのセラミックを含む。チタニアベースのセラミックは、主にチタニア(TiO2)のネットワークを含むセラミックであるが、チタニアベースのセラミックにはTiO2の式で説明されていないグループ(例:末端官能基)が含まれる場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、チタニアベースのセラミックは末端の水酸基、末端の有機基、および/または末端の官能基(例:イオン交換官能基またはフルオロカーボン官能基)を含むチタニアのネットワークを含む。いくつかの実施形態では、チタニアベースのセラミックの中で比較的高い割合(例:10 mol%以上、25 mol%以上、50 mol%以上、60 mol%以上、75 mol%以上、80 mol%以上、85 mol%以上、90 mol%以上、92 mol%以上、95 mol%以上、98 mol%以上、99 mol%以上、または100 mol%;および/または100 mol%以下、99 mol%以下、98 mol%以下、95 mol%以下、90 mol%以下、またはそれ以下)のTi原子が6配位環境にあり、下記で説明する酸素、水酸基、または官能基に結合している。類似して、いくつかの実施形態では、セラミックはアルミナベースのセラミックを含む。いくつかの実施形態では、セラミックはジルコニアベースのセラミックを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、および/またはZn)がシリカベースのセラミックに比較的高い量で存在する。金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、および/またはZn)がシリカベースのセラミックに比較的高い量で存在する理由は、そのセラミックが主に金属または半金属酸化物ベースであり、ポリマーマトリックスなどの他の成分の割合が比較的高くないためである。いくつかの実施形態では、セラミックには金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、および/またはZn)が6重量パーセント(wt%)以上、10 wt%以上、12 wt%以上、15 wt%以上、17 wt%以上、20 wt%以上、24 wt%以上、30 wt%以上、40 wt%以上、またはそれ以上の量で含まれる。いくつかの実施形態では、セラミックには金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、および/またはZn)が60 wt%以下、50 wt%以下、47 wt%以下、40 wt%以下、30 wt%以下、28 wt%以下、26 wt%以下、24 wt%以下、22 wt%以下、20 wt%以下、17 wt%以下、またはそれ以下の量で含まれる。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、セラミックには金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、および/またはZn)が6 wt%以上60 wt%以下、または11 wt%以上26 wt%以下の量で含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、セラミックには金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、および/またはZn)が1.5モルパーセント(mol%)以上、2.8 mol%以上、3 mol%以上、5 mol%以上、8 mol%以上、10 mol%以上、12 mol%以上、15 mol%以上、18 mol%以上、20 mol%以上、またはそれ以上の量で含まれる。いくつかの実施形態では、セラミックには金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、および/またはZn)が35 mol%以下、33.4 mol%以下、30 mol%以下、28 mol%以下、26 mol%以下、24 mol%以下、22 mol%以下、20 mol%以下、18 mol%以下、またはそれ以下の量で含まれる。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、セラミックには金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、および/またはZn)が1.5 mol%以上35 mol%以下、1.5 mol%以上33.4 mol%以下、8 mol%以上20 mol%以下、2.8 mol%以上18 mol%以下、または12 mol%以上18 mol%以下の量で含まれる。
【0024】
上記で説明したセラミックの重量パーセント、モルパーセント、およびモル比は、X線光電子分光法(XPS)などの技術を使用してセラミックを直接測定することによって決定できる。また、必要に応じてセラミックを他の吸着材から取り除き(例えば、支持膜からコーティングを取り除く、またはポリマーマトリックスから粒子を取り除く)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)や核磁気共鳴(NMR)などの元素分析を行うことによっても決定できる。
【0025】
一部の実施形態では、吸着材のセラミックが官能基を含む粒子を含む。官能基は、標的種の捕捉を促進する可能性がある。図3は、セラミック150と官能基Gを含む粒子の形態の吸着材を示している。図3では、吸着材粒子101が球状の粒子の形態で示されているが、吸着材の可能な形状のいずれも官能基(例:官能基G)を含むことが理解されるべきである。官能基は、セラミックの表面に固定される場合がある。例えば、官能基は、吸着材のセラミックの表面に共有結合で結びつけられる場合がある。例えば、吸着材がセラミック粒子を含む場合、セラミック粒子はセラミック粒子の表面に共有結合で結びつけられた官能基を含む。具体的な例として、官能基がセラミックの拡張セラミック構造の末端部に含まれる場合がある。
【0026】
一部の実施形態では、吸着材が標的種を捕捉するように構成されている場合、官能基は標的種に対する親和性を有する。例えば、標的種がフッ素を含む分子である場合、官能基はフッ素を含む官能性分子に対して親和性を有する場合がある。標的種と官能基との間の親和性により、標的種は官能基およびしたがって吸着材に対して固定化されることがある。官能基との固定化は、吸着材が標的種を捕捉する一つの方法である。この文脈での固定化は、外部の力がない場合でも、二つの物体が互いに自由に動かない、または動きにくい状態を指すが、固定化が起こるために結合(例えば、共有結合を介して)する必要はないことを理解するべきである。例えば、固定化はファン・デル・ワールス力や/または静電気力などの非共有結合的相互作用を介して起こる場合がある。標的種に対して親和性を有する官能基は、標的種に対して比較的高い結合定数を有する場合がある。例えば、標的種に対して親和性を有する官能基は、標的種との結合定数が0.001 M-1、0.01 M-1、0.1 M-1、1 M-1、10 M-1、100 M-1、1 × 103 M-1、1 × 104 M-1、1 × 105 M-1、1 × 106 M-1、1 × 107 M-1、1 × 108 M-1、1 × 109 M-1、またはそれ以上である場合がある。標的種の化学的特性(例えば、静電荷、疎水性、親水性、フルオロフィリック性、可極性、化学反応性)を知ることで、吸着材に適した官能基を選定することができる。例えば、標的種がフッ素を含む材料である場合(以下で詳細に説明する)、吸着材はフルオロカーボンを含む官能基で官能基化されることで、フルオロフィリック相互作用を介して捕捉を促進することができ、または炭化水素を含む官能基で官能基化されることで、疎水性相互作用を介して捕捉を促進することができる。別の例として、標的種が重金属イオンのような金属含有イオンである場合、吸着材は金属含有イオンの補完的な固定電荷を有する(またはプロトン化または脱プロトン化により電荷を有する)官能基で官能基化されることで、静電気的相互作用を介して捕捉を促進することができる。
【0027】
一部の実施形態では、吸着材の官能基の少なくとも一部がイオン交換官能基である。例えば、一部の実施形態では、セラミック粒子はセラミック粒子の表面に共有結合で結びついた交換官能基を含む。イオン交換官能基とは、イオン交換に関与する(participating)能力を有する官能基である。当業者は、この開示の恩恵を受けて、官能基がイオン交換に関与し得るかどうかを理解することができる。
【0028】
一部の実施形態では、イオン交換官能基が陰イオン交換官能基である。陰イオン交換官能基とは、陰イオン交換に関与する能力を有する官能基である。この開示の恩恵を受けた当業者は、官能基が陰イオン交換に関与し得るかどうかを理解することができる。例えば、陰イオン交換官能基は陰イオンを結びつけたり解離させたりする能力を有する官能基である。例えば、一部の実施形態では、セラミックに共有結合された陰イオン交換官能基が正に帯電した官能基である。正の電荷は陰イオン交換官能基と陰イオンとの間に静電引力を可能にする。いくつかの実施形態では、陰イオン交換官能基が中性(正に帯電していないまたは負に帯電していない)が、プロトン化されると正の電荷を有する官能基である(例:中性塩基)。いくつかの実施形態では、セラミックに共有結合された陰イオン交換官能基が第4級アンモニウム基である。いくつかの実施形態では、セラミックに共有結合された陰イオン交換官能基がまたは含むイミダゾールおよび/またはイミダゾリウム基である。イミダゾールおよび/またはイミダゾリウム基はオプションで置換されることがある(例:芳香族炭素に結びついたアルキル基および/またはハロ基)。いくつかのケースでは、陰イオン交換官能基がまたは含むイミダゾールおよび/またはイミダゾリウム基であると有利な場合がある。これは、イミダゾールおよび/またはイミダゾリウム基が、第4級アンモニウム基のような他のいくつかの官能基よりも広いpH範囲(高いpH範囲を含む)で安定しているからである。いくつかの実施形態では、セラミックに共有結合された陰イオン交換官能基がアミン基(例:第1級アミン基、第2級アミン基、第3級アミン基)などの弱塩基群である。いくつかの実施形態では、官能基が二つ以上のアミン基および/またはアンモニウム基を含む。例えば、官能基が複数のアミン基を含むキレート基である場合がある。
【0029】
一部の実施形態では、イオン交換官能基がカチオン交換官能基である。カチオン交換官能基とは、カチオン交換に関与する能力を有する官能基である。この開示の恩恵を受けた通常の技術者は、官能基がカチオン交換に関与し得るかどうかを理解することができる。例えば、カチオン交換官能基はカチオンを結びつけたり解離させたりする能力を有する官能基である。例えば、一部の実施形態では、セラミックに共有結合されたカチオン交換官能基が負に帯電した官能基である。負の電荷はカチオン交換官能基とカチオン(例:金属イオン)との間に静電引力を可能にする。いくつかの実施形態では、カチオン交換官能基が中性(正に帯電していないまたは負に帯電していない)が、脱プロトン化されると負の電荷を有する官能基である(例:中性ブレンステッド・ローリー酸)。いくつかの実施形態では、セラミックに共有結合された官能基が酸-塩基官能基である。例えば、一部の実施形態では、セラミックに共有結合された官能基がスルホン酸塩(-SO3 -)および/またはスルホン酸(-SO3H)基である。いくつかの実施形態では、セラミックに共有結合されたカチオン交換官能基がリン酸塩(-O-PO3Hn n-2; nは0または1)および/またはリン酸(-O-PO3H2)基である。いくつかの実施形態では、セラミックに共有結合されたカチオン交換官能基がカルボン酸塩および/またはカルボン酸基である。いくつかの実施形態では、セラミックに共有結合されたカチオン交換官能基がフォスホネート(-R-PO3Hn n-2; nは0または1; Rは分岐または直鎖の、オプションで置換または非置換のアルキルまたはアリール)基および/またはフォスホン酸(-R-PO3H2; Rは分岐または直鎖の、オプションで置換または非置換のアルキルまたはアリール)基である。
【0030】
一部の実施形態では、吸着材の官能基が疎水性部分を含む。吸着材(例:セラミックの表面)に疎水性部分が存在することで、フルオロ化合物などの疎水性部分を含む標的種の捕捉が促進される(例:疎水性相互作用を介して)。一部の実施形態では、吸着材の官能基が脂肪族基を含む。例えば、官能基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及び/またはカルボシクリル(carbocyclyl)基を含む場合がある。一部の実施形態では、官能基がオプションで置換可能な分岐または非分岐のC1-C18アルキル基を含む。一部の実施形態では、官能基がオプションで置換可能な分岐または非分岐のC1-C8アルキル基を含む。一部の実施形態では、官能基がアリール基(例:フェニル基)を含む。
【0031】
一部の実施形態では、吸着材の官能基がフルオロ含有部分を含む。例えば、官能基はフルオロ含有有機部分を含む場合がある。具体的な例として、官能基がフルオロカーボンを含む場合がある。吸着材(例:セラミックの表面)にフルオロ含有部分が存在することで、フルオロ含有分子(例:フルオロフィリック相互作用を介して)の捕捉が促進される。そのため、一部の実施形態では、PFASのようなフルオロ含有分子の捕捉において、セラミック粒子がフルオロ含有部分で官能基化される場合がある。一部の実施形態では、官能基がフルオロ脂肪族基を含む。例えば、官能基がペル(又はパー:per)フルオロ脂肪族基を含む場合がある。例として、官能基がC1-C18フルオロアルキル基などのフルオロアルキル基を含む場合がある。一部の実施形態では、官能基がC1-C18ペルフルオロアルキル基を含む。一部の実施形態では、官能基がフルオロアリール基(例:ペルフルオロアリール基)を含む。
【0032】
官能基は、セラミックの金属および/または半金属(例:Si、Al、Ti、Zn)に対して、結合基(又はリンカー基:linking group)(例:有機結合基)を介して結合される場合がある。例えば、第4級アンモニウム基の場合、第4級アンモニウム基の窒素は、有機リンカー(例えば、選択的に置換されたまたは置換されていないC1-18アルキレンおよびアリール基、またはC1-8アルキレンおよびアリール基、またはC1-4アルキレンおよびアリール基)を介してセラミックの金属および/または半金属に共有結合される場合がある。本開示において、「選ばれる」リストからの項目についての記述は、その項目が「その項目から成るグループ」から選ばれるとの記述に置き換えられることがあることを理解しておくべきである。例えば、一部の実施形態では、第4級アンモニウム基の窒素やイミダゾールおよび/またはイミダゾリウム基の芳香族炭素が、有機リンカー(例えば、選択的に置換されたまたは置換されていないC1-18アルキレンおよびアリール基から成るグループから選ばれるリンカー)を介してセラミックの金属および/または半金属に共有結合される場合がある。
【0033】
吸着材は、複数の異なる官能基を含む場合がある(例:セラミックに共有結合されている)。複数の異なる官能基を有することにより、標的種の異なる部分や、標的種のグループ内の異なる分子に対して親和性を有する基を利用することが可能となる。例えば、ある標的種(例えば一部のPFAS)は、親水性の頭部基(例:カルボン酸塩またはスルホネート)と親油性の尾部基(例:フルオロカーボン)を含む場合がある。そのような場合には、吸着材の官能基のサブセット(subset)に親水性の官能基(例:電荷を有する基)を含むこと、別のサブセットに親油性の官能基(例:脂肪族基やフルオロ脂肪族基)を含むことが有利であり、これにより標的種と吸着材との間で特定の相互作用が捕捉に繋がる可能性が高まる。吸着材がセラミック粒子を含む場合、同じ粒子の表面に異なる種類の官能基を含む場合がある。そのような実施形態においては、セラミック粒子の一部には、セラミックに共有結合された第一の官能基と、セラミックに共有結合された第二の異なる官能基が含まれる場合がある。複数の異なる官能基を有するセラミック粒子は、さまざまな技術を使用して調製することができる。例えば、異なる官能基を有するシランなどの異なるセラミック前駆体分子の共縮合によってこのような粒子を形成することができる。別の例として、まず第一の官能基を含むセラミック粒子(例:少なくとも部分的または完全に乾燥した官能基化セラミック粒子)を製造し、その後、第一の官能基を含むセラミック粒子を第二の官能基を含む官能基化シリコン前駆体(例:第二の官能基で官能基化されたシラン)にさらし、セラミック粒子と前駆体との反応を促進する条件(例:液体溶液中に官能基化シリコン前駆体を含む溶媒(例:エタノールなどのアルコール)および/または酸(例:酢酸)と混合し、常温または高温(例:40℃以上)で露出させる)で行うことができる。
【0034】
また、異なる官能基が吸着材内の異なる粒子に存在する場合もある。例えば、いくつかの実施形態では、吸着材が、第一の官能基がセラミックに共有結合された第一のサブセットのセラミック粒子と、第二の異なる官能基がセラミックに共有結合された第二のサブセットのセラミック粒子を含む場合がある。具体例として、いくつかの実施形態では、吸着材が、アニオン交換基(例:第4級アンモニウム基)がシリカ系セラミックに共有結合された第一のサブセットのシリカ系セラミック粒子と、フルオロカーボン官能基がシリカ系セラミックに共有結合された第二のサブセットのシリカ系セラミック粒子を含む場合がある。
【0035】
前述のように、多孔質吸着材は、第一の官能基と第二の官能基(例:いずれも同じセラミック粒子に共有結合されている場合や、別々のセラミック粒子に共有結合されている場合)を含むことがある。第一の官能基は、上記および下記で説明されている任意の官能基(例:アニオン交換官能基やカチオン交換官能基)である可能性がある。いくつかの実施形態では、第一の官能基は、イオン交換基(例:スルホン酸塩および/またはスルホン酸などのカチオン交換基)を含む。いくつかの実施形態では、第二の官能基はアミン基(例:第1級アミンなどの単一アミン基や複数のアミン基)を含む。いくつかの実施形態では、第一の官能基はスルホン酸塩基および/またはスルホン酸基であり、第二の官能基はアミン基である。いくつかの実施形態では、第二の官能基はキレート基を含む。ここでのキレート基は、金属に配位するために電子対を供与できる二つ以上の基を含む部位を指す。例えば、キレート基はアミン、カルボニル、チオール、および/またはカルボン酸塩から選ばれる二つ以上の基を含む場合がある。いくつかの実施形態では、第二の官能基はエチレンジアミン三酢酸(例:シリコン原子に結合)を含む。このような官能基は、N-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸のような官能基化シリコン前駆体を使用して導入されることがある。いくつかの実施形態では、第二の官能基はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル(例:シリコン原子に結合)を含む。このような官能基は、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランのような官能基化シリコン前駆体を使用して導入されることがある。いくつかの実施形態では、第一の官能基はスルホン酸塩基および/またはスルホン酸基であり、第二の官能基はキレート基である。いくつかの実施形態では、第二の官能基はイミノジ酢酸基、サリチルアルデヒドシッフ塩基、イミダゾール基、ビスピコリルアミン基、および/またはアミノアルキル(例:アミノメチル)ホスホン酸基を含む。いくつかの実施形態では、第一の官能基と第二の官能基の組み合わせが、金属および/または半金属イオンなどの標的種の捕捉において性能の向上を促進することが観察され、確認されている。
【0036】
図4は、いくつかの実施形態におけるセラミック150に共有結合されている「G」で表される官能基の概略図である。この図に示すように、官能基Gはセラミック材料の内部部分に共有結合されている。いくつかの実施形態では、官能基(例:アニオン交換官能基、カチオン交換官能基、疎水性官能基、フルオロフィリック官能基)はセラミックの外部表面(例:セラミック粒子の外部表面)に露出している。場合によっては、セラミックに共有結合された官能基は、セラミックの孔の表面に露出していることがある。例えば、図4では、セラミック150に共有結合されたカチオン交換官能基Gがセラミックの孔152の表面に露出していることが示されている。セラミックの孔の表面に存在する官能基は、いくつかの実施形態において、フッ素含有分子や金属および/または半金属含有イオンなどの標的種の比較的効率的な捕捉を可能にする場合がある。
【0037】
この技術分野における通常の技術者は、セラミックに共有結合された官能基の共役酸と、任意の時点で存在する官能基の共役塩基との相対量が、吸着材の条件や環境によって変わることを理解するであろう。例えば、官能基がイミダゾールまたはアミン(例:三次アミン)の場合、イミダゾリウムとイミダゾール、またはアンモニウムとアミンの相対数は、少なくとも部分的には、吸着材が接触している溶液のpH、他の官能基のpKa(存在する場合)、および/または吸着材が接触している溶液中の反イオンの濃度に依存する。
【0038】
前述のように、一部の実施形態では、セラミック(例えばセラミック粒子の)が比較的高い官能基の負荷を有する場合がある。例えば、一部の実施形態では、セラミックが比較的高いアニオン交換官能基の負荷、例えば第4級アンモニウム基を有する場合がある。別の例として、一部の実施形態では、セラミックが比較的高いカチオン交換官能基の負荷、例えばスルホン酸塩基やスルホン酸基を有する場合がある。さらに別の例として、一部の実施形態では、セラミックが比較的高いフルオロカーボン含有官能基の負荷、例えばフルオロアルキル基を有する場合がある。比較的高い官能基の負荷は、少なくとも部分的に、吸着材の有益な性能特性をもたらす可能性がある。例えば、高い官能基の負荷は、比較的高いイオン交換容量および/または標的種の吸着密度に寄与する可能性がある。本開示に記載された一部の方法、例えば金属や/または半金属含有前駆体の凝縮および官能基化を含むゾル・ゲル技術などは、既存の特定の技術を使用して達成するのが難しい官能基の負荷を提供する場合がある。
【0039】
一部の実施形態では、官能基(例えば、アニオン交換官能基、カチオン交換官能基、疎水性基、フルオロフィリック基)がセラミック中に、セラミック1グラムあたり0.01 mmol(ミリモル)、0.05 mmol、0.1 mmol、0.3 mmol、0.5 mmol、0.7 mmol、1 mmol、2 mmol、3 mmol以上の量で存在する場合がある。一部の実施形態では、官能基はセラミック中に、セラミック1グラムあたり10 mmol以下、5 mmol以下、またはそれ以下の量で存在する場合がある。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、一部の実施形態では、官能基はセラミック中に、セラミック1グラムあたり0.01 mmol以上、10 mmol以下、または0.1 mmol以上、10 mmol以下の量で存在する場合がある。ここで述べられている負荷量は、プロトン化状態やカウンターイオンとの関連に関係なく、官能基の総和を指すことを理解しておくべきである。例えば、官能基が第4級アンモニウム基である場合、第4級アンモニウム基の負荷量は、第4級アンモニウムカチオン(つまり、帯電した基)と第4級アンモニウム塩(つまり、アニオンと関連する中性基)の合計である。例えば、吸着材のセラミックに0.1 mmolの自由な第4級アンモニウムカチオンと、0.3 mmolのアニオンと関連する(又は結合する:associated)第4級アンモニウム基が含まれている場合、セラミック中の第4級アンモニウム基の量は0.4 mmol/グラムとなる。吸着材のセラミック中のイオン交換官能基の負荷量は、以下で説明するようにセラミックのアニオンまたはカチオン交換容量を測定し、溶液中で測定された塩化物イオンの数(滴定によって決定された)をアニオン交換膜のアニオン交換官能基の数とし、溶液中で測定されたナトリウムイオンの数(滴定によって決定された)をカチオン交換基の数と見なして決定できる。その後、イオン交換官能基の数(mmol単位)を乾燥吸着材のセラミックの重量(g単位)で割ってイオン交換基の負荷量を決定することができる。上記の数量と測定は、溶媒やイオンにアクセスできないイオン交換官能基(例えば、溶媒やアニオンと接触できない閉じ込められた孔に捕捉されたイオン交換官能基)には言及しておらず、アクセス可能なイオン交換官能基の負荷量を指すことを理解しておくべきである。フルオロカーボン官能基などの他のタイプの官能基の負荷量は、例えばフルオロ19 NMRとシリコン29 NMRを組み合わせた核磁気共鳴法、またはフルオロ元素分析(例えば、酸素フラスコ燃焼法や熱水分解法)によって決定することができる。
【0040】
上記のように官能基に共有結合されたセラミック材料は、さまざまな技術を用いて製造することができる。一部の実施形態では、セラミックはゾル・ゲル法により得られる。ゾル・ゲル法により得られた官能基化シリカベースのセラミック(およびその構造と特性)を製造するための、非限定的であるが例示的なプロセスと試薬については、米国特許公開番号2020-0384421(2020年12月10日公開)「セラミックカチオン交換材料」と、米国特許公開番号2020-0388871(2020年12月10日公開)「セラミックアニオン交換材料」に記載されている。これらの公開と本開示を参考にすると、類似の方法でゾル・ゲル法により得られた官能基化チタニアベースのセラミック、アルミナベースのセラミック、またはジルコニアベースのセラミックを製造することができる。
【0041】
一部の実施形態では、ゾル・ゲル技術で使用されるゾルは金属および/または半金属を含む前駆体ゾルである(すなわち、セラミックは金属および/または半金属を含む前駆体ゾルから得られる)。例えば、シリカベースのセラミックの場合、セラミックはシリコンを含む前駆体から得られる可能性がある。シリコンを含む前駆体ゾルは、シリカコロイド粒子、シロキサン、シリケートエステル、シラノール、シラン、アルコキシシラン、テトラアルキルオルトシリケート、ハロシラン、またはそれらの組み合わせなど、さまざまな適切なシリコン含有前駆体成分を含む可能性がある。別の例として、チタニアベースのセラミックの場合、セラミックはチタンを含む前駆体から得られる可能性がある。チタンを含む前駆体ゾルは、チタニアコロイド粒子、チタン(IV)アルコキシド、またはそれらの組み合わせなど、さまざまな適切なチタン含有前駆体成分を含む可能性がある。一部の実施形態では、セラミックは二種類以上の異なる金属および/または半金属を含む前駆体成分を含む前駆体ゾルから得られる。こうした場合には、二種類以上の金属および/または半金属を含む前駆体成分(例えば、二種類以上の異なるシランまたは置換シラン、二種類以上の異なるチタン(IV)アルコキシドまたは置換チタン(IV)アルコキシド)の共凝縮によってセラミックが形成される。
【0042】
いくつかの実施形態において、セラミックが由来する金属および/または半金属を含む前駆体ゾルは、官能基(例えば、上記で説明した任意の官能基G)、または脱離基(leaving group) (例えば、ハロ基)を含む部分(moiety)、を含む金属および/または半金属を含む前駆体を含む。いくつかの実施形態において、セラミックは、官能基(例えば、上記で説明した任意の官能基G)または脱離基を含む部分(例えば、ハロ基)を含む金属および/または半金属を含む前駆体の共縮合から由来する。いくつかの実施形態において、セラミックは構造(I)を有する化合物を含む混合物由来である:
【化1】
ここで、R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、任意に置換されるか未置換のC1-18アルコキシおよびハロから選ばれ、Lは任意に置換されるか未置換のC1-18アルキレンおよびアリレンから選ばれ、Mは金属および/または半金属(例えば、Si、Al、Ti、Zn)であり、Gは官能基(例えば、上記で説明した任意のイオン交換官能基、疎水性官能基、および/またはフルオロフィリック官能基)を含む。いくつかの実施形態において、Lは任意に置換されるか未置換のC1-8アルキレンおよびアリレンから選ばれる。
【0043】
いくつかの実施形態において、セラミックは、構造(II)を有する化合物を含む混合物から由来する:
【化2】
ここで、A1は水素、メチル、エチル、プロピル、またはブチルから独立して選ばれ、nは1以上18以下であり、Mは金属および/または半金属(例えば、Si、Al、Ti、Zn)であり、Gは官能基(例えば、上記で説明した任意のイオン交換官能基、疎水性官能基、および/またはフルオロフィリック官能基)を含む。いくつかの実施形態において、nは1以上8以下である。
【0044】
一例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは3-(トリヒドロキシシリル)-1-アルカンスルホン酸を含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。
【0045】
もう一つの例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックはトリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム(TMAPS)を含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。もう一つの例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックはトリエトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム(TEAPS)を含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。
【0046】
もう一つの例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックはノナフルオロヘキシルトリエトキシシランを含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。もう一つの例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシランを含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。もう一つの例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックはn-オクチルトリエトキシシランを含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。もう一つの例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックはヘキサデシルトリエトキシシランを含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。もう一つの例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルトリエトキシシランを含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。
【0047】
いくつかの実施形態において、金属および/または半金属を含む前駆体成分は、官能基Gの代わりに脱離基を含む。脱離基は、ゾル-ゲル形成後に行われる反応を通じて官能基に置き換えられる場合がある。例として、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは(3-クロロプロピル)トリエトキシシラン(3CPTES)を含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。上記の脱離基を含む化合物から由来するシリカベースのセラミックは、場合によってはアミンと反応して第4級アンモニウム基を形成することができる。詳細は以下で説明する。
【0048】
いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)やテトラエチルオルトシロキサンなどのテトラアルキルオルトシリケートを含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは、テトラアルキルオルトシリケート(例えば、TEOS)と官能基を含むシリコン含有前駆体成分(例えば、上記のいずれか(構造(I)または(II)を有するもの))を含む単相混合物(例えば、単相シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは、2つ以上の前駆体を含む混合物(例えば、シリコン含有前駆体ゾル)から由来する。例えば、いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは、テトラアルキルオルトシリケート(例えば、TEOS)と官能基を含むシリコン含有前駆体成分(例えば、上記のいずれか(構造(I)または(II)を有するもの))を含む混合物から由来し、その質量比はテトラアルキルオルトシリケート:官能基を含むシリコン含有前駆体成分の質量比が99:1以下、95:5以下、90:10以下、85:15以下、80:20以下、75:25以下、70:30以下、65:35以下、60:40以下、またはそれ以下である。いくつかの実施形態において、シリカベースのセラミックは、テトラアルキルオルトシリケート(例えば、TEOS)と官能基を含むシリコン含有前駆体成分(例えば、上記のいずれか(構造(I)または(II)を有するもの))を含む混合物から由来し、その質量比はテトラアルキルオルトシリケート:官能基を含むシリコン含有前駆体成分の質量比が50:50以上、55:45以上、60:40以上、65:35以上、70:30以上、またはそれ以上である。これらの範囲の組み合わせも可能である(例えば、50:50以上かつ99:1以下、60:40以上かつ90:10以下、または70:30以上かつ80:20以下)。テトラアルキルオルトシリケートと官能基を含むシリコン含有前駆体成分の質量比が比較的高いと、場合によってはゾル-ゲル形成中の溶解を減少または防止することができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、セラミックは、所望の化学反応に応じて特定のpHを有する水溶液を含む混合物(例えば、金属および/または半金属を含む前駆体ゾル)から由来する。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは-1以上、0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、またはそれ以下である。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態において、水溶液のpHは-1以上14以下、0以上7以下、または1以上3以下である。場合によっては、比較的酸性のpH(例えば、1から3の間のpH)は、ゾル-ゲルをセラミックに変換する際の特定の縮合および加水分解反応を可能にすることができる。いくつかの実施形態において、セラミックは、上記の混合物(例えば、金属および/または半金属を含む前駆体ゾル)から由来し、HCl、H3PO4、H2SO4、またはHNO3などの酸を一つ以上含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、吸着材は液体(例えば、水および/または有機液体)にさらされるときに比較的少ない体積膨張を受ける。このような液体にさらされた際の体積膨張(例えば、膨潤)に対する耐性は、膨潤が機械的応力を引き起こし、システムの故障や標的種の捕捉選択性の低下を引き起こす可能性があるような用途において有利である。液体に対する体積膨張は、既知の体積の乾燥した吸着材をメスシリンダーなどの容器に詰め、既知の体積の液体を容器に加え、混合を促進するために撹拌し、混合物を5分間放置し、混合物全体の体積を記録し、吸着材と液体を加えた合計体積との差を吸着材の体積膨張量に対応させることによってテストできる。いくつかの実施形態において、液体にさらされると、吸着材は体積膨張をしないか、または体積膨張率が1.5未満、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.05以下、1.01以下、またはそれ以下である。いくつかの実施形態において、水にさらされると、吸着材は体積膨張をしないか、または体積膨張率が1.5未満、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.05以下、1.01以下、またはそれ以下である。いくつかの実施形態において、いかなる有機液体またはその混合物にさらされると、吸着材は体積膨張をしないか、または体積膨張率が1.5未満、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.05以下、1.01以下、またはそれ以下である。
【0051】
いくつかの実施形態において、セラミックはアルキレン基やアリレン基などの有機基を介して架橋された金属または半金属をほとんど含まない。この開示の文脈では、アルキレン基やアリレン基などの架橋有機基の存在が吸着材の望ましくない膨潤に寄与する可能性があることが認識されている。いくつかの実施形態において、セラミック(例えば、セラミック粒子)は、アリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合された金属または半金属原子(例えば、Si、Al、Ti、Zn)を含まないか、アリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合された金属または半金属原子(例えば、Si、Al、Ti、Zn)の量が50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、1モル%以下、0.5モル%以下、0.2モル%以下、0.1モル%以下、0.05モル%以下、0.02モル%以下、0.01モル%以下である。いくつかの実施形態において、セラミック(例えば、セラミック粒子)は、アルキレン基やアリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合された金属または半金属原子(例えば、Si、Al、Ti、Zn)を含まないか、アルキレン基やアリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合された金属または半金属原子(例えば、Si、Al、Ti、Zn)の量が50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、1モル%以下、0.5モル%以下、0.2モル%以下、0.1モル%以下、0.05モル%以下、0.02モル%以下、0.01モル%以下である。いくつかの実施形態において、セラミック(例えば、セラミック粒子)は、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリレン基、またはヘテロアリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合された金属または半金属原子(例えば、Si、Al、Ti、Zn)を含まないか、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリレン基、またはヘテロアリレン基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合された金属または半金属原子(例えば、Si、Al、Ti、Zn)の量が50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、1モル%以下、0.5モル%以下、0.2モル%以下、0.1モル%以下、0.05モル%以下、0.02モル%以下、0.01モル%以下である。いくつかの実施形態において、セラミック(例えば、セラミック粒子)は、有機基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合された金属または半金属原子(例えば、Si、Al、Ti、Zn)を含まないか、有機基を含む結合を介して他の金属または半金属原子に結合された金属または半金属原子(例えば、Si、Al、Ti、Zn)の量が50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、1モル%以下、0.5モル%以下、0.2モル%以下、0.1モル%以下、0.05モル%以下、0.02モル%以下、0.01モル%以下である。これらの範囲の組み合わせも可能である。
【0052】
いくつかの実施形態では、吸着材は複数の粒子を含む。たとえば、前述のように、吸着材はセラミック粒子を含む場合がある(例えば、セラミック粒子の表面に共有結合した官能基を含む)。セラミック粒子を含む吸着材は、樹脂やビーズの形態である場合がある。例えば、吸着材は官能基化されたセラミック粒子を含むイオン交換樹脂を含む場合がある。いくつかの実施形態では、粒子の形態(例えば、粉末)での吸着材は、ここで説明されているセラミックを機械的に破砕することによって形成される(例えば、ミリングなどの技術を用いて)。イオン交換材粒子は、イオン交換カラムなどの容器に充填され、対象種の捕捉(例えば、廃水から)を含むさまざまな用途で使用される場合がある。いくつかの実施形態では、粒子は十分に大きいため、圧力損失などの問題を回避できる(例えば、容器内の充填床などで)。いくつかの実施形態では、吸着材は平均最大断面寸法が100ナノメートル以上、200ナノメートル以上、500ナノメートル以上、1ミクロン以上、2ミクロン以上、5ミクロン以上、またはそれ以上の粒子(例えば、セラミック粒子)を含む。いくつかの実施形態では、吸着材は平均最大断面寸法が10ミクロン以上、20ミクロン以上、30ミクロン以上、50ミクロン以上、75ミクロン以上、100ミクロン以上、150ミクロン以上、200ミクロン以上、300ミクロン以上、400ミクロン以上、500ミクロン以上、750ミクロン以上、1000ミクロン以上、1200ミクロン以上、またはそれ以上の粒子(例えば、セラミック粒子)を含む。いくつかの実施形態では、粒子は対象種との急速な吸着速度を促進するのに十分に小さい。いくつかの実施形態では、吸着材は平均最大断面寸法が3000ミクロン以下、2750ミクロン以下、2500ミクロン以下、2250ミクロン以下、2000ミクロン以下、1750ミクロン以下、1500ミクロン以下、1200ミクロン以下、1000ミクロン以下、750ミクロン以下、500ミクロン以下、400ミクロン以下、300ミクロン以下、200ミクロン以下、150ミクロン以下、100ミクロン以下、またはそれ以下の粒子(例えば、セラミック粒子)を含む。これらの範囲の組み合わせ(例えば、10ミクロン以上で3000ミクロン以下、10ミクロン以上で1500ミクロン以下、または300ミクロン以上で1200ミクロン以下)は可能である。例えば、いくつかの実施形態では、吸着材は平均最大断面寸法が100ナノメートル以上で3000ミクロン以下の粒子(例えば、セラミック粒子)を含む。すべての三次元粒子は形状に関係なく最大断面寸法を有することが理解されるべきであり、球状粒子の場合の最大断面寸法は直径に相当する。この文脈では、平均最大断面寸法は、粒子の統計的に代表的な数を顕微鏡(例えば、共焦点顕微鏡や走査型電子顕微鏡(TEM)など)で調べることによって決定される、各粒子の最大断面寸法の算術平均を指す。
【0053】
いくつかの実施形態では、セラミック粒子(例えば、官能基に共有結合している)は、吸着材の比較的大きな割合を占める。これは、いくつかの実施形態ではバインダーや分散マトリックスが使用されていないことが原因であり、比較的効率的な対象種の捕捉(例えば、比較的高い吸着密度)を提供する場合がある。いくつかの実施形態では、セラミック粒子は吸着材において、吸着材の総重量に対して25重量%以上、50重量%以上、75重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、99.9重量%以上、またはそれ以上(例えば、100重量%)の量で存在する。いくつかの実施形態では、セラミック粒子は吸着材において、吸着材の総重量に対して100重量%以下、99.9重量%以下、98重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、またはそれ以下の量で存在する。
【0054】
いくつかの実施形態では、セラミックは多孔質である。いくつかのそのような実施形態において、セラミックがナノ多孔質である(平均孔径(又は平均細孔直径:average pore diameter)が10ナノメートル以下である)。セラミック内の比較的小さい孔の存在は、電気化学的用途や分離用途などの多くの用途で有利である場合がある。いくつかの実施形態では、シリカベースの膜セラミックに比較的小さい孔が存在することが、吸着材の比較的高い選択性に寄与する(例えば、サイズ排除による)。いくつかの実施形態では、セラミックの平均孔径は1ミクロン以下(例えば、500ナノメートル以下、100ナノメートル以下、または50ナノメートル以下)である。場合によっては、セラミックの平均孔径が10ナノメートル以下、8ナノメートル以下、6ナノメートル以下、5ナノメートル以下、3ナノメートル以下、2ナノメートル以下、またはそれ以下である。いくつかの実施形態では、セラミックの平均孔径は0.25ナノメートル以上、0.4ナノメートル以上、0.6ナノメートル以上、または1ナノメートル以上である。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、セラミックの平均孔径が0.25ナノメートル以上で1ミクロン以下、0.25ナノメートル以上で10ナノメートル以下、0.4ナノメートル以上で10ナノメートル以下、0.6ナノメートル以上で5ナノメートル以下、または0.6ナノメートル以上で2.5ナノメートル以下である。
【0055】
セラミックの平均孔径は、小角X線散乱(SAXS)技術を使用して測定することができる。適切なSAXS技術では、コリメートされたX線ビームがセラミックを含む膜に15分以上焦点を合わせ、散乱角度の関数として散乱強度を画像プレートに収集する。散乱強度は統合されて、散乱強度をqベクトルの関数としてプロットする1次元散乱プロファイルが生成される。膜の散乱は、球体ベースの形状因子(例えば、固体またはコアシェル)でフィットさせることができる。場合によっては、球体ベースの形状因子に構造因子(例えば、フラクタルまたは硬球体相互作用)が含まれることがある。フィッティングは、自由に利用可能なSASViewソフトウェアで実施することができる。孔径の多分散性には対数正規分布が仮定される。モデルとデータセット(Chi2)との残差が10以下、1以下、0.5以下、またはそれ以下であれば、1次元SAXSプロファイルは適切にフィットしていると見なされる。フィッティング中に一定に保たれる特定のパラメータには、SLDsolvent=18.8×10-6-2およびSLDsphere=0Å-2が含まれ、SLDは散乱長密度を示す。SAXSフィッティングは、空隙率の体積分率、孔径(例えば、平均孔径)、および孔径分布の多分散性指数を決定するために使用される。適切なSAXS手法については、例えば、Pedersen, J. S., "Analysis of small-angle scattering data from colloids and polymer solutions: modeling and least-squares fitting," Advances in Colloid and Interface Science 1997, 70, 171-210、および Zemb, T.; Lindner, P., "Neutron, X-Rays and Light. Scattering Methods Applied to Soft Condensed Matter," North Holland: 2002 に詳しく記載されており、これらはすべて参考文献として組み込まれている。平均孔径は、他の小角散乱技術(例えば、小角中性子散乱(SANS))を使用しても決定することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、吸着材は比較的大きな体積的空隙率(又はポロシティ:porosity)を有する。体積的空隙率は、セラミックの空隙率に依存する場合がある。比較的高い体積的空隙率を有することは、吸着材のいくつかの有益な性能特性(例えば、カチオン交換容量や対象種の吸着密度)に寄与する可能性がある。いくつかの実施形態では、吸着材の体積的空隙率は1%以上、3%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、吸着材の体積的空隙率は70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、15%以下、またはそれ以下である。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、吸着材の体積的空隙率が1%以上で70%以下、5%以上で50%以下、10%以上で50%以下、または30%以上で50%以下である。前述のように、これらの吸着材の体積的空隙率は、吸着材のSAXSデータのフィッティングによって決定することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、吸着材(例えば、吸着材100)は比較的高いアニオン交換容量を有する。比較的高いアニオン交換容量を有することは、一般的にアニオン交換材の良好な性能特性と関連している。膜や樹脂などの材料のアニオン交換容量は、以下の手順で測定することができる。吸着材を2.0 Mの塩化ナトリウム水溶液に少なくとも12時間浸し、この12時間の間に塩化ナトリウム水溶液を2回新しい塩化ナトリウム水溶液と交換する。塩化ナトリウム水溶液に浸した後、材料を少なくとも15分間、2回新しい脱イオン水と交換しながら脱イオン水に浸す。脱イオン水に浸した後、材料を1.0 Mの硝酸ナトリウム水溶液に少なくとも3時間浸し、この3時間の間に1.0 M硝酸ナトリウム水溶液を2回新しい1.0 M硝酸ナトリウム水溶液(脱イオン水に1.0 M硝酸ナトリウムを溶解したもの)と交換する。吸着材を硝酸ナトリウム水溶液から取り出し、脱イオン水ですすぐ。すべての硝酸ナトリウム水溶液とすすぎ液を混合し、0.010 Mの硝酸銀水溶液を用いて、指示薬としてクロム酸カリウム(0.25 Mの溶液)を使用して滴定する。滴定は、溶液の色が明るい黄色からわずかに黄色がかった茶色に変わるまで行うことができる。自動滴定装置を使用して、クロム酸カリウムなどの指示薬なしで滴定を行うこともでき、その場合、例えば銀感知プローブを使用する。吸着材に曝露されていない「ブランク」硝酸ナトリウム水溶液のセットを使用し、これらを滴定して水溶液の塩化物イオンの基準値を決定する。材料を脱イオン水ですすぎ、室温(例えば、25℃)で一晩乾燥させる。乾燥後、材料の重量を記録する。アニオン交換容量(AEC)は次の式を用いて測定される:
【数1】
ここで、V滴定剤は滴定中に追加された硝酸銀の体積であり、水溶液の基準塩化物濃度で補正したもの(V滴定剤 = V滴定剤、材料 - V滴定剤、ブランク)、C滴定剤は滴定剤の濃度(この場合は0.010 M)、w乾燥は乾燥した材料の重量(グラム単位)である。本開示では、アニオン交換容量はeq/gの単位で報告され、これは単位重量(g、グラム)あたりの当量(eq)を示す。溶液中の当量の数は、イオン(例えば、塩化物イオン)のモル数にイオンの価数を掛けたものである。上述の手順は、定常的な電荷を有するアニオン交換官能基(例えば、第4級アンモニウム基)のアニオン交換容量を測定するために使用することができる。材料がプロトン化状態(例えば、第1級、第2級、または第3級アミン基)に依存するアニオン交換官能基を含む場合、手順を変更して、吸着材0.5 gを1 M HClの大容積に5時間浸し、その後、ろ過し、脱イオン水で洗浄し、0.5 M水酸化ナトリウムに1日浸して塩化物イオンと水酸化物イオンを交換する。得られた塩化物イオン溶液の10 mLを1 M硝酸と平衡させ、その後、0.1 M硝酸銀水溶液を、クロム酸カリウムを指示薬として滴定して塩化物含量を決定する。アニオン交換容量は、放出された塩化物イオンの定量と乾燥した吸着材の質量に基づいて決定することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ここで説明されている吸着材が、特定の官能基(例えば、第4級アンモニウム基)を比較的高く含む場合、既存のアニオン交換材料と比較して、比較的高いアニオン交換容量に寄与していることが観察されている。さらに、ここで説明されている吸着材および材料のアニオン交換容量は、シリカベースのセラミックが由来するシリコン含有前駆体溶液の組成(例えば、水とシリコンの比率、酸の強度、TEOSやTMAPSなどのシリコン含有前駆体の比率)にも少なからず依存することが観察されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、吸着材のアニオン交換容量は0.01ミリ当量/グラム(meq/g)以上である。いくつかの実施形態では、吸着材のアニオン交換容量は0.1 meq/g以上、0.2 meq/g以上、0.3 meq/g以上、0.5 meq/g以上、0.7 meq/g以上、1 meq/g以上、1.2 meq/g以上、1.5 meq/g以上、1.7 meq/g以上、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、吸着材のアニオン交換容量は2.5 meq/g以下、2.2 meq/g以下、2 meq/g、1.8 meq/g以下、1.5 meq/g以下、1.2 meq/g以下、1 meq/g以下、0.7 meq/g以下、またはそれ以下である。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、吸着材のアニオン交換容量が0.01 meq/g以上で2.5 meq/g以下、0.1 meq/g以上で2.5 meq/g以下、0.5 meq/g以上で2.5 meq/g以下、または1 meq/g以上で2.5 meq/g以下である。いくつかの実施形態では、吸着材が比較的高いアニオン交換容量を持ちながら、吸着材のセラミック中に比較的高い量の金属および/または半金属を含む。例えば、いくつかの実施形態では、吸着材のアニオン交換容量が0.01 meq/g以上、0.1 meq/g以上、0.2 meq/g以上、0.3 meq/g以上、0.5 meq/g以上、0.7 meq/g以上、1 meq/g以上、1.2 meq/gまで、1.5 meq/gまで、1.8 meq/gまで、または2 meq/gまでで、セラミック中の金属および/または半金属(例えば、Si、Al、Ti、Zn)が少なくとも6 wt%、少なくとも10 wt%、少なくとも12 wt%、少なくとも15 wt%、少なくとも17 wt%、少なくとも20 wt%、および/または24 wt%まで、26 wt%まで、28 wt%まで、30 wt%まで、40 wt%まで、47 wt%まで、60 wt%まで、またはそれ以上の量で存在する。
【0060】
いくつかの実施形態では、吸着材(例えば、吸着材100)が比較的高いカチオン交換容量を有する。比較的高いカチオン交換容量は、一般的にこの開示の文脈において、吸着材の優れた性能特性と関連付けられる。樹脂や膜のような材料のカチオン交換容量は、以下の手順で測定できる。材料を硫酸(1.0 M)に少なくとも20分間浸し、この20分間の間に硫酸溶液を新しい硫酸溶液と2回交換する。硫酸溶液に浸した後、材料を少なくとも15分間、脱イオン水に浸し、この15分間の間に脱イオン水を新しい脱イオン水と2回交換する。脱イオン水に浸した後、材料を0.50 M硫酸ナトリウムを含む水溶液に少なくとも20分間浸し、この20分間の間に0.50 M硫酸ナトリウム溶液を新しい0.50 M硫酸ナトリウム溶液(脱イオン水に0.50 M硫酸ナトリウムを含む)と2回交換する。材料を硫酸ナトリウム溶液から取り出し、脱イオン水で洗う。その後、すべての硫酸ナトリウム溶液と洗浄液を合わせて、フェノールフタレインを指示薬として使用し、0.010 M水酸化ナトリウムを含む水溶液で滴定する。滴定は、溶液が紫色に変わると終了する。オートチトレーターを使用して滴定を行うことができる。材料に曝露されていない「ブランク」硫酸ナトリウム溶液のセットを使用し、これを滴定して水溶液の基準pH背景を決定する。材料は脱イオン水で洗浄し、室温(例えば25℃)で一晩乾燥させる。乾燥後に材料の重量を記録する。カチオン交換容量(CEC)は、次の式で測定される:
【数2】
ここで、V滴定剤は滴定中に追加された水酸化ナトリウムの体積で、水溶液の基準pHを補正したもの(V滴定剤 = V滴定剤、材料 - V滴定剤、ブランク)、C滴定剤は滴定薬の濃度(この場合0.010 M)、w乾燥は乾燥後の材料の重量(グラム単位)である。この開示では、カチオン交換容量はeq/gの単位で報告され、これは単位重量(g、グラム)あたりの当量(eq)である。溶液中の当量の数は、溶液中のイオン(例えば、プロトン)のモル数にイオンの価数を掛けたものである。上記の手順は、膜や樹脂に限定されず、あらゆるカチオン交換材料に使用できる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ここで説明されている吸着材が比較的高い特定の官能基(例えば、カチオン交換官能基、スルホン酸基やスルホン酸グループ、リン酸基やリン酸グループ、ホスホン酸基やホスホン酸グループ、カルボン酸塩基やカルボン酸グループなど)を多く含むことが、既存のいくつかのイオン交換材料と比較して、比較的高いカチオン交換容量に寄与していることが観察されている。さらに、ここで説明されている吸着材のカチオン交換容量は、吸着材のセラミックが由来する金属および/または半金属を含む前駆体溶液の組成(例えば、水と金属および/または半金属の比率、および酸の強さ)にも部分的に依存することが観察されている。
【0062】
いくつかの実施形態では、吸着材は、カチオン交換容量が0.01ミリ当量/グラム(meq/g)以上である。いくつかの実施形態では、吸着材は、カチオン交換容量が0.1 meq/g以上、0.2 meq/g以上、0.3 meq/g以上、0.5 meq/g以上、0.7 meq/g以上、1 meq/g以上、1.2 meq/g以上、1.5 meq/g以上、1.7 meq/g以上、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、吸着材は、カチオン交換容量が2.5 meq/g以下、2.2 meq/g以下、2 meq/g以下、1.8 meq/g以下、1.5 meq/g以下、1.2 meq/g以下、1 meq/g以下、0.7 meq/g以下、またはそれ以下である。これらの範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、吸着材は、カチオン交換容量が0.01 meq/g以上であり、かつ2.5 meq/g以下、0.1 meq/g以上であり、かつ2.5 meq/g以下、0.5 meq/g以上であり、かつ2.5 meq/g以下、または1 meq/g以上であり、かつ2.5 meq/g以下である。いくつかの実施形態では、吸着材が比較的高いカチオン交換容量を有し、かつ吸着材のセラミックに比較的多くの金属および/または半金属が存在する。例えば、いくつかの実施形態では、吸着材は、カチオン交換容量が0.01 meq/g以上、0.1 meq/g以上、0.2 meq/g以上、0.3 meq/g以上、0.5 meq/g以上、0.7 meq/g以上、1 meq/g以上、かつ1.2 meq/g以下、1.5 meq/g以下、1.8 meq/g以下、または2 meq/g以下であり、かつセラミックに金属および/または半金属(例えば、Si、Al、Ti、Zn)が少なくとも6 wt%、少なくとも10 wt%、少なくとも12 wt%、少なくとも15 wt%、少なくとも17 wt%、少なくとも20 wt%、かつ24 wt%、26 wt%、28 wt%、30 wt%、40 wt%、47 wt%、60 wt%、70 wt%またはそれ以上の量で存在する。
【0063】
上記に述べたように、いくつかの実施形態は、フッ素を含む分子や金属および/または半金属を含むイオンなどの標的種を、廃水流などの流体混合物から除去することを含む。これらの実施形態のいくつかでは、標的種を含む流体混合物を吸着材と接触させることが関与する。例えば、フッ素を含む分子(例えば、PFASなどの産業廃水)を含む廃水流を、吸着材(例えば、イオン交換群および/またはフルオロカーボン群で官能化されたシリカベースのセラミックなどの、本明細書で説明されたセラミック材料)を含むイオン交換カラムを通過させることが挙げられる。別の例として、金属および/または金属を含むイオン(例えば、クロメート、マンガンイオン)を含む廃水流を、吸着材を含むイオン交換カラムを通過させることが挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態では、標的種はフッ素を含む分子を含む。フッ素を含む分子は、1つ以上のフルオロ置換基を含む有機分子である場合がある。フッ素を含む分子は、静電的に中性である可能性がある。しかし、いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子は、少なくともいくつかの条件下で静電的な電荷を有する(例えば、分子のpKaと周囲の媒体のpHによって依存する)。いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子はフルオロカーボン部分を含む。いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子はフルオロ脂肪族基を含む。例えば、フッ素を含む分子はフルオロアルキル基(例えば、C1-C18フルオロアルキル基)を含む場合がある。いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子はフルオロヘテロ脂肪族基を含む。いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子はポリフルオロ脂肪族基を含む。いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子はペルフルオロ脂肪族基を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子は、頭部基と尾部基を含む。いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子は親水性の頭部基を含む。本開示の恩恵を受ける技術者は、有機分子の親水性頭部基の意味を理解することができる。親水性の頭部基の例としては、カルボン酸塩/カルボン酸、スルホン酸塩/スルホン酸、スルホンアミド、スルホンアミドカルボン酸塩/スルホンアミドカルボン酸、リン酸塩/リン酸、及び/またはリン酸塩/リン酸などが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子は疎水性の尾部基を含む。本開示の恩恵を受ける技術者は、有機分子の疎水性尾部基の意味を理解することができる。疎水性の尾部基の例としては、フルオロ脂肪族基(例えば、ポリフルオロアルキル基やペルフルオロアルキル基などのC4-C18フルオロアルキル基)及びフルオロアリール基(例えば、ポリフルオロアリール基やペルフルオロアリール基)が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態では、フッ素を含む分子はペルフルオロアルキル化合物(PFAS)またはポリフルオロアルキル化合物を含む。PFASは一般的に知られており、有害な汚染物質であることがあり(例:廃水源から)、そのため、PFASの効果的かつ安価な捕捉が望ましい。
【0067】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はペルフルオロアルキルカルボン酸を含む。ペルフルオロアルキルカルボン酸の例としては、ペルフルオロブタン酸、ペルフルオロペンタン酸、ペルフルオロヘキサン酸、ペルフルオロヘプタン酸、ペルフルオロオクタン酸、ペルフルオロノナン酸、ペルフルオロデカン酸、ペルフルオロウンデカン酸、ペルフルオロドデカン酸、ペルフルオロトリデカン酸、及び/またはペルフルオロテトラデカン酸などが含まれる。
【0068】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はペルフルオロアルキルスルホン酸を含む。ペルフルオロアルキルスルホン酸の例としては、ペルフルオロブタンスルホン酸、ペルフルオロペンタンスルホン酸、ペルフルオロヘキサンスルホン酸、ペルフルオロヘプタンスルホン酸、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロノナンスルホン酸、ペルフルオロデカンスルホン酸、および/またはペルフルオロドデカンスルホン酸が含まれる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はフルオロテロマースルホン酸を含む。フルオロテロマースルホン酸の例としては、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキサンスルホン酸、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクタンスルホン酸、および/または1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンスルホン酸が含まれる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はペルフルオロオクタンスルホンアミドを含む。ペルフルオロオクタンスルホンアミドの例としては、ペルフルオロオクタンスルホンアミド、N-メチルペルフルオロオクタンスルホンアミド、および/またはN-エチルペルフルオロオクタンスルホンアミドが含まれる。
【0071】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はペルフルオロオクタンスルホナミド酢酸を含む。ペルフルオロオクタンスルホナミド酢酸の例としては、N-メチルペルフルオロオクタンスルホナミド酢酸および/またはN-エチルペルフルオロオクタンスルホナミド酢酸が含まれる。
【0072】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はペルフルオロオクタンスルホナミドエタノールを含む。ペルフルオロオクタンスルホナミドエタノールの例としては、N-メチルペルフルオロオクタンスルホナミドエタノールおよび/またはN-エチルペルフルオロオクタンスルホナミドエタノールが含まれる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はペルフルオロエーテルカルボン酸またはポリフルオロエーテルカルボン酸を含む。ペルフルオロエーテルカルボン酸またはポリフルオロエーテルカルボン酸の例としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドジマー酸、4,8-ジオキサ-3H-ペルフルオロノナン酸、ペルフルオロ-3-メトキシプロピオン酸、ペルフルオロ-4-メトキシブタン酸、および/またはノナフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン酸が含まれる。
【0074】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はエーテルスルホン酸を含む。エーテルスルホン酸の例としては、9-クロロヘキサデカフルオロ-3-オキサノナン-1-スルホン酸、11-クロロエイコサフルオロ-3-オキサウンデカン-1-スルホン酸、および/またはペルフルオロ(2-エトキシエタン)スルホン酸が含まれる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はフルオロテロマーカルボン酸を含む。フルオロテロマーカルボン酸の例としては、3-ペルフルオロプロピルプロパノ酸、2H,2H,3H,3H-ペルフルオロオクタノ酸、および/または3-ペルフルオロヘプチルプロパノ酸が含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸(HFPO-DA)を含む。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はHFPO-DAの塩を含む(例:HFPO-DAのアンモニウム塩、別名GenXTM)。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル化合物はHFPO-DAおよび/またはHFPO-DAの塩を生成するために使用されることが知られているフッ素化合物(又はフルオロケミカル:fluorochemical)を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、標的種は金属含有イオンを含む。いくつかの例では、金属含有イオンはカチオンである。例えば、カチオンは遷移金属カチオンを含むことがある。制限例としては、V2+、V3+、V4+、V5+、Cr3+、Mn2+、Mn3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+、およびCd2+が含まれる。いくつかの実施形態では、カチオンはアルカリイオン(例:Li、Na、K)を含む。いくつかの実施形態では、カチオンはアルカリ土類金属イオン(例:Mg2+、Ca2+)を含む。いくつかの実施形態では、カチオンはヒ素カチオン(例:As3+、As5+)を含む。いくつかの実施形態では、金属含有イオンはアニオン、例えば多原子アニオンであることがある。例えば、いくつかの実施形態では、金属含有イオンは金属オキシアニオン(oxyanion)である。制限例としては、クロメート(CrO 2-)、水素クロメート(HCrO -)、ジクロメート(CrO 2-)、過マンガン酸(MnO -)、およびバナジウム酸塩(例:VO 3-)が含まれる。いくつかの実施形態では、金属含有イオンは重金属含有イオンである。重金属含有イオンの制限例としては、水銀、亜鉛、鉛、カドミウム、クロム、ニッケルのイオンが含まれる。
【0078】
いくつかの実施形態では、標的種は半金属含有イオンを含む。いくつかの例では、半金属含有イオンは半金属オキシアニオンである。制限例としては、亜ひ素酸塩(AsO 3-)、ひ素酸塩(AsO 3-)、セレニウム酸塩(SeO 2-)、および亜セレニウム酸塩(SeO 2-)が含まれる。
【0079】
上記に金属および/または半金属オキシアニオンの例が示されているが、標的種は他の酸化アニオンを含む場合がある。たとえば、標的種は硝酸イオン(NO -)を含む場合がある。他の酸化アニオンの例としては、SO 2-、CO 2-、PO 3-、HPO 2-、HPO -、BO 3-、NO -、NO -、およびClO -などがある。
【0080】
一部の実施形態では、標的種は金属または半金属酸化物を含む。たとえば、標的種は遷移金属酸化物、アルカリ酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および/または重金属酸化物(例えば、水銀酸化物、鉛酸化物、亜鉛酸化物)を含む場合がある。
【0081】
一部の実施形態では、標的種の量が流体混合物から除去される。流体混合物は液体混合物(例えば、水溶液、有機溶液、またはその組み合わせ)、気体混合物(例えば、工業プロセスからの気体排出流)、またはその組み合わせである場合がある。一部の実施形態では、標的種は流体混合物に少なくとも部分的に(例えば、部分的または完全に)溶解している。標的種は、吸着材(例えば、セラミック粒子を含むセラミック)に曝露されることによって除去される場合がある。たとえば、吸着材が標的種を含む流体混合物に曝露され、標的種が吸着材の少なくとも一部に接触するようにすることができる。そのような接触は、たとえば、吸着材を、流体混合物を受け入れるための入口を備えた容器内に配置することによって行うことができる。容器は、吸着材と流体混合物を受け入れることができる内部容積を有する固体構造を備えている場合がある。たとえば、容器はカラム(例えば、イオン交換カラム)、タンク、リアクター、カートリッジ、チャンネル(例えば、閉じたチャンネル)、溝、チューブ、またはパイプである場合がある。図5は、標的種202(例えば、フルオロ化分子、金属および/または半金属含有イオン、オキサニオン、金属および/または半金属酸化物)を含む流体混合物201を処理するシステム200の概略断面図を示す。容器204の入口203は、流体混合物の供給源と流体的に接続されるように構成される場合がある。一部の実施形態では、容器の入口が流体混合物の供給源と流体的に接続されている。たとえば、容器はイオン交換カラムであり、その入口が廃水源(例えば、配管、チューブなど)に接続されている場合がある。流体混合物201は、図5に示されているように、入口203を通じて容器200に少なくとも部分的に(または完全に)輸送される場合がある。たとえば、流体混合物は正圧(例えば、ポンプからまたは静水圧から)、負圧(例えば、真空を介して)、および/または重力によって容器に流入させることができる。吸着材は、容器内にベッドを形成する場合がある。たとえば、吸着材100は、セラミック150を含むセラミック粒子101を含む場合があり、いくつかの実施形態において、システム200の容器204内に充填ベッドとして配置することができる。
【0082】
一部の実施形態では、標的種を含む流体混合物が容器に入り、吸着材に接触する。この時点で、標的種は吸着材に結合した官能基(例えば、セラミックの表面に)に接触し、捕捉される可能性がある。官能基による標的種の捕捉(例えば、静電引力、ファンデルワールス力、化学結合形成などを通じて)は、流体流から標的種を除去することに寄与する。図5は、いくつかの実施形態に従って、粒子101の1つに結合した官能基Gを介して吸着材100に関連付けられた捕捉された標的種205を示す。捕捉された標的種(例えば、吸着材に対して固定された標的種)は、流体混合物が少なくとも一時的に吸着材を囲んでいても、流体混合物から除去されたと見なされる。
【0083】
流体流は、容器を1回以上通過する場合がある(例えば、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回など)。一部の実施形態では、流体混合物は複数の容器を通過し、各容器には吸着材が含まれており、流体流から標的種を次第に多く除去する場合がある。一部の実施形態では、流体混合物が容器に通過し、連続的な流れの下で吸着材に曝露される。一方で、一部の実施形態では、標的種を含む流体混合物が容器に運ばれ、バッチ条件下で吸着材と接触する(例えば、容器がバッチ反応器の一部である場合がある)。
【0084】
一部の実施形態では、吸着材が流体混合物に曝露され、混合される(例えば、攪拌、吸着材を含む容器の反転などによって)。一部の実施形態では、吸着材(例えば、セラミック粒子を含む)が流体混合物のバッチ(例えば、タンク内)に追加され、混合後に懸濁液を形成させたり、標的種が吸着材によって捕捉される間に沈殿させたりする。
【0085】
吸着材に曝露する前に、流体混合物には標的種がさまざまな量で含まれている場合がある(例えば、工業用廃水と家庭用廃水の違いによる)。一部の実施形態では、特定の標的種が流体混合物において、少なくとも0.05 兆分の1(ppt)、少なくとも0.1 ppt、少なくとも0.2 ppt、少なくとも0.5 ppt、少なくとも1 ppt、少なくとも2 ppt、少なくとも5 ppt、少なくとも10 ppt、少なくとも20 ppt、少なくとも50 ppt、少なくとも100 ppt、少なくとも200 ppt、少なくとも500 ppt、少なくとも1ビリオン分の1(ppb)、少なくとも2 ppb、少なくとも5 ppb、少なくとも10 ppb、少なくとも20 ppb、少なくとも50 ppb、少なくとも100 ppb、少なくとも200 ppb、少なくとも500 ppb、少なくとも1ミリオン分の1(ppm)、少なくとも2 ppm、少なくとも5 ppm、少なくとも10 ppm、少なくとも20 ppm、少なくとも50 ppm、少なくとも100 ppm、またはそれ以上、及び/または500 ppm以下、200 ppm以下、またはそれ以下の質量基準で存在する場合がある。一部の実施形態では、複数の異なる標的種が存在する場合に、すべての標的種の総量が流体混合物において、少なくとも0.05 ppt、少なくとも0.1 ppt、少なくとも0.2 ppt、少なくとも0.5 ppt、少なくとも1 ppt、少なくとも2 ppt、少なくとも5 ppt、少なくとも10 ppt、少なくとも20 ppt、少なくとも50 ppt、少なくとも100 ppt、少なくとも200 ppt、少なくとも500 ppt、少なくとも1 ppb、少なくとも2 ppb、少なくとも5 ppb、少なくとも10 ppb、少なくとも20 ppb、少なくとも50 ppb、少なくとも100 ppb、少なくとも200 ppb、少なくとも500 ppb、少なくとも1 ppm、少なくとも2 ppm、少なくとも5 ppm、少なくとも10 ppm、少なくとも20 ppm、少なくとも50 ppm、少なくとも100 ppm、またはそれ以上、及び/または500 ppm以下、200 ppm以下、またはそれ以下の質量基準で存在する場合がある。これらの範囲の組み合わせも可能である。
【0086】
一部の実施形態では、流体混合物を吸着材に曝露させることで、標的種の少なくとも10 wt%、少なくとも25 wt%、少なくとも40 wt%、少なくとも50 wt%、少なくとも60 wt%、少なくとも75 wt%、少なくとも85 wt%、少なくとも90 wt%、少なくとも95 wt%、少なくとも98 wt%、少なくとも99 wt%、少なくとも99.9 wt%、少なくとも99.99 wt%またはそれ以上が除去される。 一部の実施形態では、流体混合物を吸着材に曝露させることで、標的種の100 wt%以下、99.9 wt%以下、99 wt%以下、98 wt%以下、95 wt%以下、90 wt%以下、85 wt%以下、80 wt%以下、75 wt%以下、60 wt%以下、50 wt%以下、40 wt%以下、またはそれ以下が除去される。標的種の除去の程度は、吸着材の標的種に対する親和性や、曝露の期間、混合の程度、温度、pH、使用する吸着材の量など、他の条件によって異なる場合がある。
【0087】
一部の実施形態では、吸着材は比較的高い吸着密度 (q) を有する。これは次の方程式で定義される。ここで、Co は流体混合物中の標的種の初期濃度 (mg/L)、C は収集時の標的種の濃度 (mg/L)、V はバルク溶液の体積 (L)、m は乾燥状態の吸着剤の質量 (g) である:
【数3】
【0088】
一部の実施形態では、吸着材は比較的高い吸着密度を有する(例えば、標的種を含む流体混合物に曝露された際)。一部の実施形態では、吸着材の標的種に対する吸着密度は、流体混合物に含まれる標的種の量が少なくとも1兆分の1 (ppt)、少なくとも2 ppt、少なくとも5 ppt、少なくとも10 ppt、少なくとも20 ppt、少なくとも50 ppt、少なくとも100 ppt、少なくとも200 ppt、少なくとも500 ppt、少なくとも1億分の1 (ppb)、少なくとも2 ppb、少なくとも5 ppb、少なくとも10 ppb、少なくとも20 ppb、少なくとも50 ppb、少なくとも100 ppb、少なくとも200 ppb、少なくとも500 ppb、少なくとも1百万分の1 (ppm)、少なくとも2 ppm、少なくとも5 ppm、少なくとも10 ppm、少なくとも20 ppm、少なくとも50 ppm、少なくとも100 ppm、またはそれ以上、及び/または500 ppm 以下、200 ppm 以下、またはそれ以下であり、少なくとも24時間の期間にわたって測定される。さらに、一部の実施形態では、吸着材の標的種に対する最大吸着密度は、0.01 mg/g、0.02 mg/g、0.05 mg/g、0.1 mg/g、0.2 mg/g、0.5 mg/g、1 mg/g、2 mg/g、5 mg/g、10 mg/g、20 mg/g、またはそれ以上、及び/または50 mg/g 以下、40 mg/g 以下、30 mg/g 以下、またはそれ以上であり、標的種を含む流体混合物に少なくとも24時間曝露された際に測定される。最大吸着密度は、以下の例に記載された方法論などを用いて吸着等温線を生成することによって決定できる。
【0089】
一部の実施形態では、吸着材(例えば、容器内で流体混合物に曝露された)は比較的大きな体積を有する。ここで記載されている比較的大きな体積の吸着材を使用することで、標的種(例えばPFAS)を効果的に除去できることが判明しており、比較的安価に保つことができる(例えば、製造が安価であるため)。一部の実施形態では、容器内で、及び/または標的種を含む流体混合物に曝露されている吸着材の体積は、0.01立方メートル(m3)以上、0.02 m3以上、0.05 m3以上、0.1 m3以上、0.2 m3以上、0.5 m3以上、1 m3以上、2 m3以上、3 m3以上、5 m3以上、10 m3以上、またはそれ以上、及び/または50 m3以下、20 m3以下、またはそれ以下である。これらの体積は、吸着材の乾燥体積(相当)を指し得る。
【0090】
一部の実施形態では、吸着材は過酷な条件下でも比較的良好な耐久性を有する。例えば、一部の実施形態では、吸着材は酸化剤に曝露された後でも標的種(例えば、金属イオンやメタロイドイオン、またはPFASなどのフッ素を含む分子)を捕える性能を比較的良好に維持する。例えば、室温でのスクリーニング試験として、一部の実施形態では、吸着材が少なくとも35体積%の酸化剤(例えば過酸化水素)を含む水溶液に46時間曝露された後に流体流れから除去された標的種(例えばCu2+)の割合が、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、および/または96%またはそれ以上である。さらに、室温でのスクリーニング試験として、次の比率が計算される。すなわち、(a) 吸着材が少なくとも35体積%の酸化剤(例えば過酸化水素)を含む水溶液に46時間曝露された後に流体流れから除去された標的種(例えばCu2+)の割合を、(b) 酸化剤に曝露されていない場合と同じ条件下で、同じ標的種が流体流れから除去された割合で割った比率が、少なくとも0.88、少なくとも0.90、少なくとも0.92、少なくとも0.94、および/または0.96%またはそれ以上である。一部の実施形態では、酸化剤が過酸化水素で標的種がCu2+の場合、スクリーニング試験は以下のように行われる。0.1 gの吸着材サンプルを10 mLの35体積%過酸化水素水溶液に曝露し、46時間オービタルシェーカーで振とうする。過酸化水素水溶液は十分な曝露を確保するために2回更新される。新鮮な過酸化水素に曝露された吸着材は、脱イオン水で洗浄された後、10 mLのpH 3.2の300 mg/L硫酸銅水溶液で4時間振とうされる。上清は紫外可視(UV-vis)分光法でCu2+濃度が分析され、その値と300 mg/Lの原液との銅濃度の差が、曝露後に除去されたCu2+の割合として計算される。
【0091】
この開示の特定の側面は、標的種を異なる種に変換することに向けられている。このような変換は、種に関連する健康および/または環境への脅威を完全に除去するために望ましい場合がある。例えば、捕捉されたPFASを破壊することが望ましい場合があり、これにより環境への再導入を防ぐことができる。また、このような変換は、標的種の成分を他の用途で使用するために回収するのにも役立つ。前述のように、この開示の文脈では、焼却などの標的種を変換(例えば破壊)する特定の技術が、問題を引き起こす追加の廃棄物流やエネルギー集約的である場合や高価である可能性があることが認識されている。さらに、一部の実施形態では、機械化学処理を用いて標的種を安価に変換できることが認識されており、単純でスケーラブルなワークフローを使用し、有害な廃棄物流を生成する必要がない。物質(例えば、固体物質)を機械化学変換にかけるには、物質に機械的ストレスを加えて、分子スケールでの化学変換を誘発する。機械的ストレスには、圧縮応力、せん断応力、キャビテーション、またはその組み合わせなどが含まれるが、これに限定されない。
【0092】
いくつかの実施形態では、官能基が吸着材(例えばセラミックの表面)に共有結合して捕捉された標的種(例えば、PFASなどのフッ素含有分子)が機械化学変換にかけられる。機械化学変換により、標的種が破壊される場合がある。例えば、標的種は機械的ストレスによって、場合によってはより害の少ない、または無害な異なる物質に変換されることがある。例えば、吸着材の官能基に結合したフッ素含有分子(PFASなど)は、機械化学処理によって脱フッ素化されることがある。捕捉された標的種は、機械化学装置で機械化学変換を受けることができる。機械化学装置とは、十分な大きさの機械的ストレスを固体物質に加えて化学反応を誘発するように構成された構造を指す。例えば、機械化学装置は研削媒体を含むことがある。
【0093】
いくつかの実施形態では、流体流から取り除かれた標的種(例えば、フッ素含有分子)の一部が、前述の吸着材の官能基によって捕捉されたものについて、機械化学変換にかけられることがある。このような場合、機械化学変換にかけられる標的種は、機械化学変換の間も、流体混合物から最初に標的種を取り除いた官能基に捕捉されたままである。この実施形態は、捕捉された標的種が機械化学処理の前に、最初に種を捕捉した材料から取り除かれる技術とは対照的である。吸着材によってまだ捕捉されている標的種を直接機械化学処理することにより、少ない廃棄物ストリームでより単純なワークフローを採用できる。いくつかの実施形態では、流体混合物を処理するシステムには、前述の吸着材を含む容器と、機械化学装置の両方が含まれる。機械化学装置は、容器から固体材料(例えば、標的種を含む改良された吸着材)を受け取るように構成される。図6は、容器304(図5に関連する容器204に対応する場合がある)と、容器304から固体材料を受け取るように構成された機械化学装置306を含むシステム300の概略ブロック図を示している。
【0094】
いくつかの実施形態では、機械化学変換は、捕捉された標的種(例えば、吸着材に共有結合で結びつけられた官能基によって捕捉されたもの)をボールミリングすることによって少なくとも部分的に行われる。ボールミリングは技術的に知られており、一般的には、治療する物質とともにボールが充填された中空のシリンダーを回転させることを含む。回転中にボールが落下する際の衝撃が、機械的応力を加え、機械化学変換を誘導する。いくつかの実施形態では、機械化学装置(例えば、機械化学装置306)はボールミルを含む。いくつかの実施形態では、遊星ボールミルが使用される。
【0095】
いくつかの実施形態では、標的種のボールミリングには共ミリング剤の使用が含まれる。共ミリング剤は、反応の触媒として作用したり、反応の試薬として機能したりすることによって、標的種の変換(例えば、破壊)を促進する場合がある。いくつかの実施形態では、ボールミリングプロセスには標的種(例えば、フルオロ含有分子)を塩基にさらすことが含まれる。さまざまな塩基が使用可能である。例えば、塩基は水酸化物を含む塩である場合がある。水酸化物を含む塩の例には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化アンモニウムが含まれる。
【0096】
いくつかの実施形態では、捕捉された標的種を機械化学的変換にかけることによって、標的種の少なくとも10 wt%、少なくとも25 wt%、少なくとも40 wt%、少なくとも50 wt%、少なくとも60 wt%、少なくとも75 wt%、少なくとも85 wt%、少なくとも90 wt%、少なくとも95 wt%、少なくとも98 wt%、少なくとも99 wt%、少なくとも99.9 wt%、少なくとも99.99 wt%またはそれ以上が別の種に変換される。いくつかの実施形態では、捕捉された標的種を機械化学的変換にかけることによって、標的種の100 wt%以下、99.99 wt%以下、99.9 wt%以下、98 wt%以下、95 wt%以下、90 wt%以下、85 wt%以下、80 wt%以下、75 wt%以下、60 wt%以下、50 wt%以下、またはそれ以下が別の種に変換される。
【0097】
米国仮特許出願番号63/288,216、2021年12月10日に出願され、「物質の捕捉のための材料」と題されたものは、すべての目的のためにその内容全体がここに参照として組み込まれる。
【0098】
特定の官能基や化学用語の定義は、以下で詳細に説明されている。化学元素は、元素の周期表(CAS版)、『化学と物理学のハンドブック』第75版、表紙内、に従って特定され、特定の官能基は一般的にその記述に従って定義されている。さらに、有機化学の一般的原則、および特定の官能基と反応性は、Thomas Sorrell著『有機化学』、University Science Books、Sausalito、1999年; Michael B. Smith著『March’s Advanced Organic Chemistry』第7版、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク、2013年; Richard C. Larock著『Comprehensive Organic Transformations』、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク、2018年; ならびに Carruthers著『Some Modern Methods of Organic Synthesis』第3版、Cambridge University Press、ケンブリッジ、1987年に記載されている。
【0099】
特に別段の規定がない限り、ここに示されている化学式や構造には、同位体が豊富に含まれていない化合物も含まれ、同時に同位体が豊富に含まれている化合物も含まれる。例えば、水素が重水素や三重水素に置き換えられた化合物、19Fが18Fに置き換えられた化合物、または炭素が13Cまたは14Cで豊富に含まれる炭素に置き換えられた化合物は、この開示の範囲に含まれる。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールやプローブとして有用である。
【0100】
範囲(「範囲」)が示される場合、それは範囲内の各値およびサブ範囲を含む。範囲は、特に別段の規定がない限り、範囲の両端の値を含む。例えば、「C1-6 アルキル」は、C、C、C、C、C、C、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-6、C3-5、C3-4、C4-6、C4-5、および C5-6 アルキルを含む。別の例として、「C1-18 アルキル」は、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C1-18、C1-17、C1-16、C1-15、C1-14、C1-13、C1-12、C1-11、C1-10、C1-9、C1-8、C1-7、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-18、C2-17、C2-16、C2-15、C2-14、C2-13、C2-12、C2-11、C2-10、C2-9、C2-8、C2-7、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-18、C3-17 などを含む。
【0101】
「脂肪族(又はアリファティック:aliphatic)」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、及び環状炭素(carbocyclic)基を指す。同様に、「ヘテロアリファティック」という用語は、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、及びヘテロシクリック基を指す。
【0102】
「アルキル」という用語は、1から20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基(「C1-20アルキル」)を指す。一部の実施形態では、アルキル基は1から12個の炭素原子を有する(「C1-12アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から10個の炭素原子を有する(「C1-10アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1から2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は2から6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキル」)。C1-6アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)(例えば、n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(C4)(例えば、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル)、ペンチル(C5)(例えば、n-ペンチル、3-ペンチル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブチル、tert-アミル)、およびヘキシル(C6)(例えば、n-ヘキシル)が含まれる。追加のアルキル基の例には、n-ヘプチル(C7)、n-オクチル(C8)、n-ドデシル(C12)などがある。特に指定がない限り、各アルキル基は独立して非置換(「非置換アルキル」)または一つ以上の置換基(例えば、ハロゲン、Fなど)で置換された(「置換アルキル」)ものである。ある実施形態では、アルキル基は非置換のC1-12アルキル(例えば、非置換のC1-6アルキル、例えば、-CH3(メチル)、非置換のエチル(エチル)、非置換のプロピル(プロピル、例えば、非置換のn-プロピル(n-プロピル)、非置換のイソプロピル(イソプロピル))、非置換のブチル(ブチル、例えば、非置換のn-ブチル(n-ブチル)、非置換のtert-ブチル(tert-ブチルまたはt-ブチル)、非置換のsec-ブチル(sec-ブチルまたはs-ブチル)、非置換のイソブチル(イソブチル))である。ある実施形態では、アルキル基は置換されたC1-12アルキル(例えば、置換されたC1-6アルキル、例えば、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2CH2F、-CH2CHF2、-CH2CF3、またはベンジル(ベンジル))である。
【0103】
「ハロアルキル」という用語は、アルキル基の置換基であり、1つまたは複数の水素原子が独立してハロゲン、例えばフルオロ、ブロモ、クロロ、またはイオドに置換されている。 「ペルハロアルキル」は、ハロアルキルのサブセットであり、全ての水素原子が独立してハロゲン、例えばフルオロ、ブロモ、クロロ、またはイオドに置換されたアルキル基を指す。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から20個の炭素原子を有する(「C1-20ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から10個の炭素原子を有する(「C1-10ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から9個の炭素原子を有する(「C1-11ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から8個の炭素原子を有する(「C1-8ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から7個の炭素原子を有する(「C1-7ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から6個の炭素原子を有する(「C1-6ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から5個の炭素原子を有する(「C1-5ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から4個の炭素原子を有する(「C1-4ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から3個の炭素原子を有する(「C1-3ハロアルキル」)。一部の実施形態では、ハロアルキル部分は1から2個の炭素原子を有する(「C1-2ハロアルキル」)。一部の実施形態では、全てのハロアルキルの水素原子がフルオロに置換されて「ペルフルオロアルキル」基を提供する。ある実施形態では、全てのハロアルキルの水素原子がクロロに置換されて「ペルクロロアルキル」基を提供する。ハロアルキル基の例には、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CH2CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CCl3、-CFCl2、-CF2Clなどがある。
【0104】
「ヘテロアルキル」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、または硫黄の1、2、3、または4個のヘテロ原子)が含まれているアルキル基を指す。これらのヘテロ原子は、親鎖の隣接する炭素原子の間に挿入されている、または親鎖の1つ以上の末端位置に配置されている場合がある。ある実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を持ち、1から20個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-20アルキル」)である。ある実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を持ち、1から12個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-12アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を持ち、1から11個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-11アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を持ち、1から10個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-10アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を持ち、1から9個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-9アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を持ち、1から8個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-8アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を持ち、1から7個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-7アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を持ち、1から6個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-6アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つまたは2つのヘテロ原子を持ち、1から5個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-5アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つまたは2つのヘテロ原子を持ち、1から4個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-4アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つのヘテロ原子を持ち、1から3個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-3アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つのヘテロ原子を持ち、1から2個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC1-2アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、1個の炭素原子と1つのヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1アルキル」)である。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1つまたは2つのヘテロ原子を持ち、2から6個の炭素原子を有する飽和基(「ヘテロC2-6アルキル」)である。特に指定がない限り、各ヘテロアルキル基は、独立して非置換(「非置換ヘテロアルキル」)または置換(「置換ヘテロアルキル」)され、1つまたは複数の置換基を有する。ある実施形態では、ヘテロアルキル基は、非置換ヘテロC1-12アルキルである。ある実施形態では、ヘテロアルキル基は、置換ヘテロC1-12アルキルである。
【0105】
「アルケニル」という用語は、1から20個の炭素原子を有し、1つ以上の炭素-炭素二重結合(例えば、1、2、3、または4つの二重結合)を有する直鎖または分岐した炭化水素基を指す。一部の実施形態では、アルケニル基は1から20個の炭素原子を有する(「C1-20アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から12個の炭素原子を有する(「C1-12アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から11個の炭素原子を有する(「C1-11アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から10個の炭素原子を有する(「C1-10アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から9個の炭素原子を有する(「C1-9アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から8個の炭素原子を有する(「C1-8アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から7個の炭素原子を有する(「C1-7アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から6個の炭素原子を有する(「C1-6アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から5個の炭素原子を有する(「C1-5アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から4個の炭素原子を有する(「C1-4アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から3個の炭素原子を有する(「C1-3アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1から2個の炭素原子を有する(「C1-2アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は1個の炭素原子を有する(「C1アルケニル」)。1つ以上の炭素-炭素二重結合は、内部(例えば、2-ブテニルの場合)または末端(例えば、1-ブテニルの場合)に存在することができる。C1-4アルケニル基の例には、メチルデニル(methylidenyl)(C1)、エテニル(ethenyl)(C2)、1-プロペニル(C3)、2-プロペニル(C3)、1-ブテニル(C4)、2-ブテニル(C4)、ブタジエニル(C4)などが含まれる。C1-6アルケニル基の例には、前述のC2-4アルケニル基に加えて、ペンテニル(C5)、ペンタジエニル(C5)、ヘキセニル(C6)などが含まれる。追加のアルケニルの例には、ヘプテニル(C7)、オクテニル(C8)、オクタトリエニル(C8)などが含まれる。特に指定がない限り、各アルケニル基は、独立して非置換(「非置換アルケニル」)または置換(「置換アルケニル」)され、1つ以上の置換基を有する。ある実施形態では、アルケニル基は非置換C1-20アルケニルである。ある実施形態では、アルケニル基は置換C1-20アルケニルである。アルケニル基において、立体化学が指定されていないC=C二重結合(例えば、-CH=CHCH3、又は
【化3】
など)は、(E)-配置または(Z)-配置である場合がある。
【0106】
「ヘテロアルケニル」という用語は、アルケニル基であり、その基には少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、または硫黄から選ばれる1、2、3、または4つのヘテロ原子)が含まれており、親鎖内(例えば、隣接する炭素原子の間に挿入されている)および/または1つ以上の末端位置に配置されているものを指す。ある実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から20個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-20アルケニル」)を指す。ある実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から12個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-12アルケニル」)を指す。ある実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から11個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-11アルケニル」)を指す。別の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から10個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-10アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から9個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-9アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から8個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-8アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から7個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-7アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から6個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-6アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から5個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1または2つのヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-5アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から4個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1または2つのヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-4アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から3個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つのヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-3アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から2個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つのヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-2アルケニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルケニル基は1から6個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および親鎖内に1つまたは2つのヘテロ原子を含む基(「ヘテロC1-6アルケニル」)を指す。特に指定がない限り、各ヘテロアルケニル基は、独立して非置換(「非置換ヘテロアルケニル」)または置換(「置換ヘテロアルケニル」)され、1つ以上の置換基を有する。ある実施形態では、ヘテロアルケニル基は非置換ヘテロC1-20アルケニルである。ある実施形態では、ヘテロアルケニル基は置換ヘテロC1-20アルケニルである。
【0107】
「アルキニル」という用語は、1から20個の炭素原子を有し、1つ以上の炭素-炭素三重結合(例えば、1、2、3、または4つの三重結合)を有する直鎖または分岐した炭化水素基(「C1-20アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、アルキニル基は1から10個の炭素原子を有する(「C1-10アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1から9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1から8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1から7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1から6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1から5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1から4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1から3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1から2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキニル」)。一部の実施形態において、アルキニル基は1個の炭素原子を有する(「C1アルキニル」)。1つ以上の炭素-炭素三重結合は内部に存在する(例えば、2-ブチニルのように)または末端に存在する(例えば、1-ブチニルのように)ことができる。C1-4アルキニル基の例として、制限なしに、メチリジニル(methylidynyl)(C1)、エチニル(C2)、1-プロピニル(C3)、2-プロピニル(C3)、1-ブチニル(C4)、2-ブチニル(C4)などが含まれる。C1-6アルキニル基の例として、前述のC2-4アルキニル基に加え、ペンチニル(C5)、ヘキシニル(C6)などが含まれる。追加のアルキニルの例として、ヘプチニル(C7)、オクチニル(C8)などが含まれる。特に指定がない限り、各アルキニル基は、独立して非置換(「非置換アルキニル」)または置換(「置換アルキニル」)され、1つ以上の置換基を有する。ある実施形態では、アルキニル基は非置換C1-20アルキニルである。ある実施形態では、アルキニル基は置換C1-20アルキニルである。
【0108】
「ヘテロアルキニル」という用語は、アルキニル基を指し、さらに酸素、窒素、または硫黄から選ばれる1つ以上のヘテロ原子(例えば、1、2、3、または4つのヘテロ原子)が、親鎖の隣接する炭素原子の間に挿入されている、または1つ以上の末端位置に配置されている。ある実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から20個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-20アルキニル」)を指す。ある実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から10個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-10アルキニル」)を指す。ある実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から9個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-9アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から8個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-8アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から7個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-7アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から6個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つ以上のヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-6アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から5個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つまたは2つのヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-5アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から4個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つまたは2つのヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-4アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から3個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つのヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-3アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から2個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つのヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-2アルキニル」)を指す。一部の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、1から6個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および親鎖内に1つまたは2つのヘテロ原子を有する基(「ヘテロC1-6アルキニル」)を指す。特に指定がない限り、各ヘテロアルキニル基は、独立して非置換(「非置換ヘテロアルキニル」)または置換(「置換ヘテロアルキニル」)され、1つ以上の置換基を有する。ある実施形態では、ヘテロアルキニル基は非置換ヘテロC1-20アルキニルである。ある実施形態では、ヘテロアルキニル基は置換ヘテロC1-20アルキニルである。
【0109】
「カルボシクリル(carbocyclyl)」または「環状炭素(carbocyclic)」という用語は、3から14個の環状炭素原子を持ち、非芳香族環系においてヘテロ原子を含まない炭化水素基のラジカルを指す(「C3-14カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は3から14個の環状炭素原子を有する(「C3-14カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は3から13個の環状炭素原子を有する(「C3-13カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は3から12個の環状炭素原子を有する(「C3-12カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は3から11個の環状炭素原子を有する(「C3-11カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は3から10個の環状炭素原子を有する(「C3-10カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は3から8個の環状炭素原子を有する(「C3-8カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は3から7個の環状炭素原子を有する(「C3-7カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は3から6個の環状炭素原子を有する(「C3-6カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は4から6個の環状炭素原子を有する(「C4-6カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は5から6個の環状炭素原子を有する(「C5-6カルボシクリル」)。一部の実施形態において、カルボシクリル基は5から10個の環状炭素原子を有する(「C5-10カルボシクリル」)。例として、C3-6カルボシクリル基にはシクロプロピル(C3)、シクロプロペニル(C3)、シクロブチル(C4)、シクロブテニル(C4)、シクロペンチル(C5)、シクロペンテニル(C5)、シクロヘキシル(C6)、シクロヘキセニル(C6)、シクロヘキサジエニル(C6)などが含まれる。例として、C3-8カルボシクリル基には、上述のC3-6カルボシクリル基に加え、シクロヘプチル(C7)、シクロヘプテニル(C7)、シクロヘプタジエニル(C7)、シクロヘプタトリエニル(C7)、シクロオクチル(C8)、シクロオクテニル(C8)、バイシクル[2.2.1]ヘプタニル(C7)、バイシクル[2.2.2]オクタニル(C8)などが含まれる。例として、C3-10カルボシクリル基には、上述のC3-8カルボシクリル基に加え、シクロノニル(C9)、シクロノネニル(C9)、シクロデシル(C10)、シクロデセニル(C10)、オクタヒドロ-1H-インデニル(C9)、デカヒドロナフタレニル(C10)、スピロ[4.5]デカニル(C10)などが含まれる。例として、C3-14カルボシクリル基には、上述のC3-10カルボシクリル基に加え、シクロウンデシル(C11)、スピロ[5.5]ウンデカニル(C11)、シクロドデシル(C12)、シクロドデセ二ル(C12)、シクロトリデカン(C13)、シクロテトラデカン(C14)などが含まれる。上記の例が示すように、ある実施形態において、カルボシクリル基は単環状(「単環カルボシクリル」)または多環状(例えば、融合した、架橋された、またはスピロリング系を含むバイシクル(bicyclic)系(「バイシクルカルボシクリル」)またはトリシクル(tricyclic)系(「トリシクルカルボシクリル」)など)であり、飽和しているか、1つ以上の炭素-炭素二重結合または三重結合を含むことができる。「カルボシクリル」は、上記で定義されたカルボシクリル環が1つ以上のアリールまたはヘテロアリール基と融合しており、接続点がカルボシクリル環上にある環系も含まれ、その場合、炭素の数はカルボシクリル環系の炭素の数を示し続ける。特に指定がない限り、各カルボシクリル基は独立して非置換(「非置換カルボシクリル」)または置換(「置換カルボシクリル」)され、1つ以上の置換基を有する。ある実施形態では、カルボシクリル基は非置換C3-14カルボシクリルである。ある実施形態では、カルボシクリル基は置換C3-14カルボシクリルである。
【0110】
いくつかの実施形態において、カルボシクリルは、3から14個の環状炭素原子を有する単環飽和カルボシクリル基(“C3-14 シクロアルキル”)である。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3から10個の環状炭素原子を有する(“C3-10 シクロアルキル”)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3から8個の環状炭素原子を有する(“C3-8 シクロアルキル”)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3から6個の環状炭素原子を有する(“C3-6 シクロアルキル”)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は4から6個の環状炭素原子を有する(“C4-6 シクロアルキル”)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は5から6個の環状炭素原子を有する(“C5-6 シクロアルキル”)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は5から10個の環状炭素原子を有する(“C5-10 シクロアルキル”)。C5-6シクロアルキル基の例には、シクロペンチル(C5)およびシクロヘキシル(C5)が含まれる。C3-6シクロアルキル基の例には、前述のC5-6シクロアルキル基に加えて、シクロプロピル(C3)およびシクロブチル(C4)が含まれる。C3-8シクロアルキル基の例には、前述のC3-6シクロアルキル基に加えて、シクロヘプチル(C7)およびシクロオクチル(C8)が含まれる。特に指定がない限り、各シクロアルキル基は独立して非置換(“非置換 シクロアルキル”)または置換(“置換 シクロアルキル”)されている。ある実施形態において、シクロアルキル基は非置換のC3-14シクロアルキルである。ある実施形態において、シクロアルキル基は置換のC3-14シクロアルキルである。ある実施形態において、価数が許す範囲で、カルボシクリルには、カルボシクリル環系内に0、1、または2のC=C二重結合が含まれる。
【0111】
「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」または「ヘテロシクリック(heterocyclic)」という用語は、3~14員の非芳香族環系のラジカルを指すもので、環の炭素原子と1~4の環内異元素原子を含むものである。各異元素原子は独立して窒素、酸素、硫黄から選ばれるものである(「3~14員のヘテロシクリック」)。窒素原子を含むヘテロシクリック基では、結合点は炭素原子または窒素原子になることがあり、価数が許す範囲で設定されるものである。ヘテロシクリック基は単環(「単環ヘテロシクリック」)または複環(例:融合、橋渡しまたはスピロ環系、例えば二環系(「二環ヘテロシクリック」)や三環系(「三環ヘテロシクリック」)など)であり、飽和しているか、または1つ以上の炭素-炭素二重結合または三重結合を含むものである。ヘテロシクリック複環系は、1つ以上の異元素原子を1つまたは両方の環に含むものである。「ヘテロシクリック」はまた、上述のヘテロシクリック環が1つまたは複数のカルボシクリック群と融合しており、結合点がカルボシクリックまたはヘテロシクリック環のいずれかにある場合、またはヘテロシクリック環が1つまたは複数のアリールまたはヘテロアリール群と融合しており、結合点がヘテロシクリック環にある場合を含むものである。そのような場合、環のメンバー数はヘテロシクリック環系の環メンバー数を示し続けるものである。特に指定されない限り、ヘテロシクリックの各インスタンスは独立して置換されていない(「置換されていないヘテロシクリック」)か、1つ以上の置換基で置換されている(「置換されたヘテロシクリック」)ものである。ある実施形態では、ヘテロシクリック基は置換されていない3~14員のヘテロシクリックである。ある実施形態では、ヘテロシクリック基は置換された3~14員のヘテロシクリックである。ある実施形態では、価数が許す範囲で、ヘテロシクリックは置換または非置換、3~7員の単環ヘテロシクリックであり、その環系の1、2、または3の原子が独立して酸素、窒素、または硫黄であるものである。
【0112】
いくつかの実施形態において、ヘテロシクリック基は、環の炭素原子と1~4の環内異元素原子を含む5~10員の非芳香族環系であり、各異元素原子は独立して窒素、酸素、硫黄から選ばれるものである(「5~10員のヘテロシクリック」)。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリック基は、環の炭素原子と1~4の環内異元素原子を含む5~8員の非芳香族環系であり、各異元素原子は独立して窒素、酸素、硫黄から選ばれるものである(「5~8員のヘテロシクリック」)。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリック基は、環の炭素原子と1~4の環内異元素原子を含む5~6員の非芳香族環系であり、各異元素原子は独立して窒素、酸素、硫黄から選ばれるものである(「5~6員のヘテロシクリック」)。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロシクリックは、窒素、酸素、硫黄から選ばれた1~3の環内異元素原子を含むものである。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロシクリックは、窒素、酸素、硫黄から選ばれた1~2の環内異元素原子を含むものである。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロシクリックは、窒素、酸素、硫黄から選ばれた1の環内異元素原子を含むものである。
【0113】
例示的な3員のヘテロシクリック基で1つの異元素原子を含むものには、アジルジニル、オキシラニル、チイラニルが含まれる。例示的な4員のヘテロシクリック基で1つの異元素原子を含むものには、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニルが含まれる。例示的な5員のヘテロシクリック基で1つの異元素原子を含むものには、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル、ピロリル-2,5-ジオンが含まれる。例示的な5員のヘテロシクリック基で2つの異元素原子を含むものには、ジオキソラニル、オキサチオラニル、ジチオラニルが含まれる。例示的な5員のヘテロシクリック基で3つの異元素原子を含むものには、トリアゾリンニル、オキサジアゾリンニル、チアジアゾリンニルが含まれる。例示的な6員のヘテロシクリック基で1つの異元素原子を含むものには、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピペリジニル、チアニルが含まれる。例示的な6員のヘテロシクリック基で2つの異元素原子を含むものには、ピペラジニル、モルフォリニル、ジチアニル、ジオキサニルが含まれる。例示的な6員のヘテロシクリック基で3つの異元素原子を含むものには、トリアジニルが含まれる。例示的な7員のヘテロシクリック基で1つの異元素原子を含むものには、アゼパニル、オキセパニル、チエパニルが含まれる。例示的な8員のヘテロシクリック基で1つの異元素原子を含むものには、アゾカニル、オクセカニル、チオカニルが含まれる。例示的な二環系ヘテロシクリック基には、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチエニル、テトラヒドロベンゾチエニル、テトラヒドロベンゾフラニル、テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロイソクロメニル、デカヒドロナフチリジニル、デカヒドロ-1,8-ナフチリジニル、オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピロール、インドリニル、フタルイミジル、ナフタリミジル、クロマニル、クロメニル、1H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピニル、1,4,5,7-テトラヒドロ-ピラノ[3,4-b]ピロリル、5,6-ジヒドロ-4H-フロ[3,2-b]ピロリル、6,7-ジヒドロ-5H-フロ[3,2-b]ピラニル、5,7-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピラニル、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジニル、2,3-ジヒドロフロ[2,3-b]ピリジニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-フロ[3,2-c]ピリジニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-チエノ[3,2-b]ピリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,6-ナフチリジニル、などが含まれる。
【0114】
「アリール」という用語は、単環または複環(例:二環または三環)の4n+2芳香族環系(例:6、10、または14のπ電子が環状配列で共有されるもの)で、環の炭素原子が6~14個であり、芳香族環系に異元素原子が存在しないラジカルを指す(「C6-14アリール」)。いくつかの実施形態において、アリール基は6個の環炭素原子を有する(「C6アリール」;例:フェニル)。いくつかの実施形態において、アリール基は10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」;例:ナフチル、例えば1-ナフチルや2-ナフチル)。いくつかの実施形態において、アリール基は14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」;例:アンタラシル)。「アリール」には、上述のアリール環が1つまたは複数のカルボシクリックまたはヘテロシクリック基と融合しており、ラジカルまたは結合点がアリール環にある環系も含まれる。こうした場合、炭素原子の数はアリール環系の炭素原子の数を示し続ける。特に指定されない限り、アリール基の各インスタンスは独立して置換されていない(「置換されていないアリール」)か、1つ以上の置換基で置換されている(「置換されたアリール」)ものである。ある実施形態では、アリール基は置換されていないC6-14アリールである。ある実施形態では、アリール基は置換されたC6-14アリールである。
【0115】
「アラルキル」は「アルキル」のサブセットであり、アリール基で置換されたアルキル基を指し、結合点がアルキル部分にあるものである。
【0116】
「ヘテロアリール」という用語は、5~14員の単環または複環(例:二環または三環)の4n+2芳香族環系(例:6、10、または14のπ電子が環状配列で共有されるもの)で、環の炭素原子と1~4の環内異元素原子を含むラジカルを指し、芳香族環系における各異元素原子は独立して窒素、酸素、硫黄から選ばれる(「5~14員のヘテロアリール」)。ヘテロアリール基が1つ以上の窒素原子を含む場合、結合点は炭素原子または窒素原子になることがあり、価数が許す範囲で設定される。ヘテロアリール複環系は、1つまたは両方の環に1つ以上の異元素原子を含むことができる。「ヘテロアリール」には、上述のヘテロアリール環が1つまたは複数のカルボシクリックまたはヘテロシクリック基と融合しており、結合点がヘテロアリール環にある環系も含まれる。そのような場合、環のメンバー数はヘテロアリール環系の環メンバー数を示し続ける。「ヘテロアリール」にはまた、上述のヘテロアリール環が1つまたは複数のアリール基と融合しており、結合点がアリール環またはヘテロアリール環のいずれかにある環系も含まれる。そのような場合、環のメンバー数は融合した複環(アリール/ヘテロアリール)環系の環メンバー数を示す。1つの環が異元素原子を含まない複環ヘテロアリール基(例:インドリル、キノリニル、カルバゾリルなど)では、結合点はどちらの環にも設定でき、例としては、異元素原子を含む環(例:2-インドリル)または異元素原子を含まない環(例:5-インドリル)である。ある実施形態では、ヘテロアリールは置換または非置換の5員または6員の単環ヘテロアリールであり、その環系の1、2、3、または4の原子が独立して酸素、窒素、または硫黄である。ある実施形態では、ヘテロアリールは置換または非置換の9員または10員の二環ヘテロアリールであり、その環系の1、2、3、または4の原子が独立して酸素、窒素、または硫黄である。
【0117】
いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、環の炭素原子と1~4の環内異元素原子を含む5~10員の芳香族環系であり、芳香族環系における各異元素原子は独立して窒素、酸素、硫黄から選ばれる(「5~10員のヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、環の炭素原子と1~4の環内異元素原子を含む5~8員の芳香族環系であり、芳香族環系における各異元素原子は独立して窒素、酸素、硫黄から選ばれる(「5~8員のヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、環の炭素原子と1~4の環内異元素原子を含む5~6員の芳香族環系であり、芳香族環系における各異元素原子は独立して窒素、酸素、硫黄から選ばれる(「5~6員のヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロアリールは、窒素、酸素、硫黄から選ばれた1~3の環内異元素原子を含む。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロアリールは、窒素、酸素、硫黄から選ばれた1~2の環内異元素原子を含む。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロアリールは、窒素、酸素、硫黄から選ばれた1つの環内異元素原子を含む。特に指定されない限り、ヘテロアリール基の各インスタンスは独立して置換されていない(「置換されていないヘテロアリール」)か、1つ以上の置換基で置換されている(「置換されたヘテロアリール」)ものである。ある実施形態では、ヘテロアリール基は置換されていない5~14員のヘテロアリールである。ある実施形態では、ヘテロアリール基は置換された5~14員のヘテロアリールである。
【0118】
例示的な5員のヘテロアリール基で1つの異元素原子を含むものには、ピロリル、フラニル、チオフェニルが含まれる。例示的な5員のヘテロアリール基で2つの異元素原子を含むものには、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルが含まれる。例示的な5員のヘテロアリール基で3つの異元素原子を含むものには、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリルが含まれる。例示的な5員のヘテロアリール基で4つの異元素原子を含むものには、テトラゾリルが含まれる。例示的な6員のヘテロアリール基で1つの異元素原子を含むものには、ピリジニルが含まれる。例示的な6員のヘテロアリール基で2つの異元素原子を含むものには、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルが含まれる。例示的な6員のヘテロアリール基で3つまたは4つの異元素原子を含むものには、それぞれトリアジニル、テトラジニルが含まれる。例示的な7員のヘテロアリール基で1つの異元素原子を含むものには、アゼピニル、オキセピニル、チエピニルが含まれる。例示的な5,6複環ヘテロアリール基には、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、インドロジニル、プリンニルが含まれる。例示的な6,6複環ヘテロアリール基には、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニルが含まれる。例示的な三環ヘテロアリール基には、フェナントリジニル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニルが含まれる。
【0119】
「ヘテロアラルキル」は「アルキル」のサブセットであり、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指し、結合点がアルキル部分にあるものである。
【0120】
「不飽和結合」という用語は、二重結合または三重結合を指す。
【0121】
「不飽和」または「部分的に不飽和」という用語は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む部分を指す。
【0122】
「飽和」または「完全に飽和」という用語は、二重結合または三重結合を含まない部分を指し、例えば、その部分は単結合のみを含む。
【0123】
接尾辞「-ene」をグループに付けると、そのグループが二価の部分であることを示す。例えば、アルキレンはアルキルの二価部分であり、アルケニレンはアルケニルの二価部分であり、アルキニレンはアルキニルの二価部分である。ヘテロアルキレンはヘテロアルキルの二価部分であり、ヘテロアルケニレンはヘテロアルケニルの二価部分であり、ヘテロアルキニレンはヘテロアルキニルの二価部分である。カルボシクリレンはカルボシクリルの二価部分であり、ヘテロシクリレンはヘテロシクリルの二価部分である。アリレンはアリルの二価部分であり、ヘテロアリレンはヘテロアリールの二価部分である。
【0124】
グループは、特に明示的に別途規定されない限り、任意に置換される。用語「任意に置換された」は、置換されている場合もあれば置換されていない場合もあることを指す。ある実施形態において、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールグループは任意に置換される。「任意に置換された」とは、グループが置換されている場合もあれば置換されていない場合もあることを指す(例:「置換された」または「非置換の」アルキル、「置換された」または「非置換の」アルケニル、「置換された」または「非置換の」アルキニル、「置換された」または「非置換の」ヘテロアルキル、「置換された」または「非置換の」ヘテロアルケニル、「置換された」または「非置換の」ヘテロアルキニル、「置換された」または「非置換の」カルボシクリル、「置換された」または「非置換の」ヘテロシクリル、「置換された」または「非置換の」アリール、または「置換された」または「非置換の」ヘテロアリールグループ)。一般的に、「置換された」という用語は、グループ上の少なくとも一つの水素が許容される置換基で置換されていることを意味する。例としては、置換により安定な化合物が得られる置換基が挙げられ、そのような化合物は再配置、環化、脱離、またはその他の反応によって自然に変化することはない。特に示されていない限り、「置換された」グループは、グループの一つまたは複数の置換可能な位置に置換基が存在し、任意の構造において複数の位置が置換されている場合には、各位置で置換基が同じか異なる。用語「置換された」は、有機化合物のすべての許容される置換基による置換を含むと考えられ、安定な化合物の形成につながる置換基が含まれる。現在の発明は、安定な化合物に到達するためのあらゆる組み合わせを考慮する。発明の目的上、窒素などのヘテロ原子は水素置換基及び/またはここで説明される任意の適切な置換基を有することができ、それによってヘテロ原子の価数を満たし、安定な部分を形成する。発明は、ここに記載された例示的な置換基によっていかなる方法でも制限されない。
【0125】
典型的な炭素原子の置換基には、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、-SO2H、-SO3H、-OH、-ORaa、-ON(Rbb)2、-N(Rbb)2、-N(Rbb)3 +X-、-N(ORcc)Rbb、-SH、-SRaa、-SSRcc、-C(=O)Raa、-CO2H、-CHO、-C(ORcc)2、-CO2Raa、-OC(=O)Raa、-OCO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、-OC(=O)N(Rbb)2、-NRbbC(=O)Raa、-NRbbCO2Raa、-NRbbC(=O)N(Rbb)2、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRbb)ORaa、-OC(=NRbb)Raa、-OC(=NRbb)ORaa、-C(=NRbb)N(Rbb)2、-OC(=NRbb)N(Rbb)2、-NRbbC(=NRbb)N(Rbb)2、-C(=O)NRbbSO2Raa、-NRbbSO2Raa、-SO2N(Rbb)2、-SO2Raa、-SO2ORaa、-OSO2Raa、-S(=O)Raa、-OS(=O)Raa、-Si(Raa)3、-OSi(Raa)3、-C(=S)N(Rbb)2、-C(=O)SRaa、-C(=S)SRaa、-SC(=S)SRaa、-SC(=O)SRaa、-OC(=O)SRaa、-SC(=O)ORaa、-SC(=O)Raa、-P(=O)(Raa)2、-P(=O)(ORcc)2、-OP(=O)(Raa)2、-OP(=O)(ORcc)2、-P(=O)(N(Rbb)2)2、-OP(=O)(N(Rbb)2)2、-NRbbP(=O)(Raa)2、-NRbbP(=O)(ORcc)2、-NRbbP(=O)(N(Rbb)2)2、-P(Rcc)2、-P(ORcc)2、-P(Rcc)3 +X-、-P(ORcc)3 +X-、-P(Rcc)4、-P(ORcc)4、-OP(Rcc)2、-OP(Rcc)3 +X-、-OP(ORcc)2、-OP(ORcc)3 +X-、-OP(Rcc)4、-OP(ORcc)4、-B(Raa)2、-B(ORcc)2、-BRaa(ORcc)、C1-20 アルキル、C1-20 ペルハロアルキル、C1-20 アルケニル、C1-20 アルキニル、ヘテロC1-20 アルキル、ヘテロC1-20 アルケニル、ヘテロC1-20 アルキニル、C3-10 カルボシクリル、3-14 員のヘテロシクリル、C6-14 アリール、および5-14 員のヘテロアリールが含まれ、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは独立して0、1、2、3、4、または5のRdd基で置換される;ここでX-は対イオンである;
または、炭素原子の二つの同位水素がグループ =O、=S、=NN(Rbb)2、=NNRbbC(=O)Raa、=NNRbbC(=O)ORaa、=NNRbbS(=O)2Raa、=NRbb、または =NORccで置換される;
ここで:
各Raaは独立して、C1-20 アルキル、C1-20 ペルハロアルキル、C1-20 アルケニル、C1-20 アルキニル、ヘテロC1-20 アルキル、ヘテロC1-20 アルケニル、ヘテロC1-20 アルキニル、C3-10 カルボシクリル、3-14 員のヘテロシクリル、C6-14 アリール、および5-14 員のヘテロアリールから選ばれ、または二つのRaa基が結合して3-14 員のヘテロシクリルまたは5-14 員のヘテロアリール環を形成し、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは独立して0、1、2、3、4、または5のRdd基で置換される;
各Rbbは独立して、水素、-OH、-ORaa、-N(Rcc)2、-CN、-C(=O)Raa、-C(=O)N(Rcc)2、-CO2Raa、-SO2Raa、-C(=NRcc)ORaa、-C(=NRcc)N(Rcc)2、-SO2N(Rcc)2、-SO2Rcc、-SO2ORcc、-SORaa、-C(=S)N(Rcc)2、-C(=O)SRcc、-C(=S)SRcc、-P(=O)(Raa)2、-P(=O)(ORcc)2、-P(=O)(N(Rcc)2)2、C1-20 アルキル、C1-20 ペルハロアルキル、C1-20 アルケニル、C1-20 アルキニル、ヘテロC1-20 アルキル、ヘテロC1-20 アルケニル、ヘテロC1-20 アルキニル、C3-10 カルボシクリル、3-14 員のヘテロシクリル、C6-14 アリール、および5-14 員のヘテロアリールから選ばれ、または二つのRbb基が結合して3-14 員のヘテロシクリルまたは5-14 員のヘテロアリール環を形成し、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは独立して0、1、2、3、4、または5のRdd基で置換される;
各Rccは独立して、水素、C1-20 アルキル、C1-20 ペルハロアルキル、C1-20 アルケニル、C1-20 アルキニル、ヘテロC1-20 アルキル、ヘテロC1-20 アルケニル、ヘテロC1-20 アルキニル、C3-10 カルボシクリル、3-14 員のヘテロシクリル、C6-14 アリール、および5-14 員のヘテロアリールから選ばれ、または二つのRcc基が結合して3-14 員のヘテロシクリルまたは5-14 員のヘテロアリール環を形成し、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは独立して0、1、2、3、4、または5のRdd基で置換される;
各Rddは独立して、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、-SO2H、-SO3H、-OH、-ORee、-ON(Rff)2、-N(Rff)2、-N(Rff)3 +X-、-N(ORee)Rff、-SH、-SRee、-SSRee、-C(=O)Ree、-CO2H、-CO2Ree、-OC(=O)Ree、-OCO2Ree、-C(=O)N(Rff)2、-OC(=O)N(Rff)2、-NRffC(=O)Ree、-NRffCO2Ree、-NRffC(=O)N(Rff)2、-C(=NRff)ORee、-OC(=NRff)Ree、-OC(=NRff)ORee、-C(=NRff)N(Rff)2、-OC(=NRff)N(Rff)2、-NRffC(=NRff)N(Rff)2、-NRffSO2Ree、-SO2N(Rff)2、-SO2Ree、-SO2ORee、-OSO2Ree、-S(=O)Ree、-Si(Ree)3、-OSi(Ree)3、-C(=S)N(Rff)2、-C(=O)SRee、-C(=S)SRee、-SC(=S)SRee、-P(=O)(ORee)2、-P(=O)(Ree)2、-OP(=O)(Ree)2、-OP(=O)(ORee)2、C1-10 アルキル、C1-10 ペルハロアルキル、C1-10 アルケニル、C1-10 アルキニル、ヘテロC1-10 アルキル、ヘテロC1-10 アルケニル、ヘテロC1-10 アルキニル、C3-10 カルボシクリル、3-10 員のヘテロシクリル、C6-10 アリール、及び5-10 員のヘテロアリールから選ばれ、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは独立して0、1、2、3、4、または5のRgg基で置換されるか、二つの同位Rdd置換基が結合して=Oまたは=Sを形成する;ここでX-は対イオンである;
各Reeは独立して、C1-10 アルキル、C1-10 ペルハロアルキル、C1-10 アルケニル、C1-10 アルキニル、ヘテロC1-10 アルキル、ヘテロC1-10 アルケニル、ヘテロC1-10 アルキニル、C3-10 カルボシクリル、C6-10 アリール、3-10 員のヘテロシクリル、または3-10 員のヘテロアリールから選ばれ、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは独立して0、1、2、3、4、または5のRgg基で置換される;
各Rffは独立して、水素、C1-10 アルキル、C1-10 ペルハロアルキル、C1-10 アルケニル、C1-10 アルキニル、ヘテロC1-10 アルキル、ヘテロC1-10 アルケニル、ヘテロC1-10 アルキニル、C3-10 カルボシクリル、3-10 員のヘテロシクリル、C6-10 アリール、および5-10 員のヘテロアリールから選ばれ、または二つのRff基が結合して3-10 員のヘテロシクリルまたは5-10 員のヘテロアリール環を形成し、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは独立して0、1、2、3、4、または5のRgg基で置換される;
各Rggは独立して、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、-SO2H、-SO3H、-OH、-OC1-6 アルキル、-ON(C1-6 アルキル)2、-N(C1-6 アルキル)2、-N(C1-6 アルキル)3 +X-、-NH(C1-6 アルキル)2 +X-、-NH2(C1-6 アルキル)+X-、-NH3 +X-、-N(OC1-6 アルキル)(C1-6 アルキル)、-N(OH)(C1-6 アルキル)、-NH(OH)、-SH、-SC1-6 アルキル、-SS(C1-6 アルキル)、-C(=O)(C1-6 アルキル)、-CO2H、-CO2(C1-6 アルキル)、-OC(=O)(C1-6 アルキル)、-OCO2(C1-6 アルキル)、-C(=O)NH2、-C(=O)N(C1-6 アルキル)2、-OC(=O)NH(C1-6 アルキル)、-NHC(=O)(C1-6 アルキル)、-N(C1-6 アルキル)C(=O)(C1-6 アルキル)、-NHCO2(C1-6 アルキル)、-NHC(=O)N(C1-6 アルキル)2、-NHC(=O)NH(C1-6 アルキル)、-NHC(=O)NH2、-C(=NH)O(C1-6 アルキル)、-OC(=NH)(C1-6 アルキル)、-OC(=NH)OC1-6 アルキル、-C(=NH)N(C1-6 アルキル)2、-C(=NH)NH(C1-6 アルキル)、-C(=NH)NH2、-OC(=NH)N(C1-6 アルキル)2、-OC(NH)NH(C1-6 アルキル)、-OC(NH)NH2、-NHC(NH)N(C1-6 アルキル)2、-NHC(=NH)NH2、-NHSO2(C1-6 アルキル)、-SO2N(C1-6 アルキル)2、-SO2NH(C1-6 アルキル)、-SO2NH2、-SO2C1-6 アルキル、-SO2OC1-6 アルキル、-OSO2C1-6 アルキル、-SOC1-6 アルキル、-Si(C1-6 アルキル)3、-OSi(C1-6 アルキル)3、-C(=S)N(C1-6 アルキル)2、C(=S)NH(C1-6 アルキル)、C(=S)NH2、-C(=O)S(C1-6 アルキル)、-C(=S)SC1-6 アルキル、-SC(=S)SC1-6 アルキル、-P(=O)(OC1-6 アルキル)2、-P(=O)(C1-6 アルキル)2、-OP(=O)(C1-6 アルキル)2、-OP(=O)(OC1-6 アルキル)2、C1-10 アルキル、C1-10 ペルハロアルキル、C1-10 アルケニル、C1-10 アルキニル、ヘテロC1-10 アルキル、ヘテロC1-10 アルケニル、ヘテロC1-10 アルキニル、C3-10 カルボシクリル、C6-10 アリール、3-10 員のヘテロシクリル、または5-10 員のヘテロアリールから選ばれ、または二つの同位Rgg置換基が結合して =O または =Sを形成する;ここでX-は対イオンである。
【0126】
ある実施形態では、各炭素原子置換基は独立して、ハロゲン、置換(例えば、一つまたは複数のハロゲンで置換された)または非置換のC1-6アルキル、-ORaa、-SRaa、-N(Rbb)2、-CN、-SCN、-NO2、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、-OC(=O)Raa、-OCO2Raa、-OC(=O)N(Rbb)2、-NRbbC(=O)Raa、-NRbbCO2Raa、または-NRbbC(=O)N(Rbb)2 である。ある実施形態では、各炭素原子置換基は独立して、ハロゲン、置換(例えば、一つまたは複数のハロゲンで置換された)または非置換のC1-10アルキル、-ORaa、-SRaa、-N(Rbb)2、-CN、-SCN、-NO2、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、-OC(=O)Raa、-OCO2Raa、-OC(=O)N(Rbb)2、-NRbbC(=O)Raa、-NRbbCO2Raa、または-NRbbC(=O)N(Rbb)2 であり、ここでRaaは水素、置換(例えば、一つまたは複数のハロゲンで置換された)または非置換のC1-10アルキル、酸素保護基(例えば、シリル、TBDPS、TBDMS、TIPS、TES、TMS、MOM、THP、t-Bu、Bn、アリール、アセチル、ピバロイル、またはベンゾイル)で酸素原子に付着している場合、または硫黄保護基(例えば、アセタミドメチル、t-Bu、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル、2-ピリジンスルフェニル、またはトリフェニルメチル)で硫黄原子に付着している場合である。そして、各Rbbは独立して、水素、置換(例えば、一つまたは複数のハロゲンで置換された)または非置換のC1-10アルキル、または窒素保護基(例えば、Bn、Boc、Cbz、Fmoc、トリフルオロアセチル、トリフェニルメチル、アセチル、またはTs)である。ある実施形態では、各炭素原子置換基は独立して、ハロゲン、置換(例えば、一つまたは複数のハロゲンで置換された)または非置換のC1-6アルキル、-ORaa、-SRaa、-N(Rbb)2、-CN、-SCN、または-NO2 である。ある実施形態では、各炭素原子置換基は独立して、ハロゲン、置換(例えば、一つまたは複数のハロゲンで置換された)または非置換のC1-10アルキル、-ORaa、-SRaa、-N(Rbb)2、-CN、-SCN、または-NO2 であり、ここでRaaは水素、置換(例えば、一つまたは複数のハロゲンで置換された)または非置換のC1-10アルキル、酸素保護基(例えば、シリル、TBDPS、TBDMS、TIPS、TES、TMS、MOM、THP、t-Bu、Bn、アリール、アセチル、ピバロイル、またはベンゾイル)で酸素原子に付着している場合、または硫黄保護基(例えば、アセタミドメチル、t-Bu、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル、2-ピリジンスルフェニル、またはトリフェニルメチル)で硫黄原子に付着している場合である。そして、各Rbbは独立して、水素、置換(例えば、一つまたは複数のハロゲンで置換された)または非置換のC1-10アルキル、または窒素保護基(例えば、Bn、Boc、Cbz、Fmoc、トリフルオロアセチル、トリフェニルメチル、アセチル、またはTs)である。
【0127】
ある実施形態では、炭素原子置換基の分子量が250 g/mol未満、200 g/mol未満、150 g/mol未満、100 g/mol未満、または50 g/mol未満である。ある実施形態では、炭素原子置換基が炭素、水素、フルオル、塩素、臭素、ヨウ素、酸素、硫黄、窒素、および/またはケイ素原子から構成される。ある実施形態では、炭素原子置換基が炭素、水素、フルオル、塩素、臭素、ヨウ素、酸素、および/または窒素原子から構成される。ある実施形態では、炭素原子置換基が炭素、水素、フルオル、塩素、および/またはヨウ素原子から構成される。ある実施形態では、炭素原子置換基が炭素、水素、フルオル、および/または塩素原子から構成される。
【0128】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)、またはヨウ素(イオド、-I)を指す。
【0129】
「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。「置換ヒドロキシル」または「置換ヒドロキシル」という用語は、拡張して、親分子に直接結合した酸素原子が水素以外の基で置換されているヒドロキシル基を指し、以下の基を含む:-ORaa、-ON(Rbb)2、-OC(=O)SRaa、-OC(=O)Raa、-OCO2Raa、-OC(=O)N(Rbb)2、-OC(=NRbb)Raa、-OC(=NRbb)ORaa、-OC(=NRbb)N(Rbb)2、-OS(=O)Raa、-OSO2Raa、-OSi(Raa)3、-OP(Rcc)2、-OP(Rcc)3 +X-、-OP(ORcc)2、-OP(ORcc)3 +X-、-OP(=O)(Raa)2、-OP(=O)(ORcc)2、及び-OP(=O)(N(Rbb))2、ここでX-、Raa、Rbb、及びRccはここで定義されている。
【0130】
「チオール」または「チオ」という用語は、-SH基を指す。「置換チオール」または「置換チオ」という用語は、拡張して、親分子に直接結合した硫黄原子が水素以外の基で置換されているチオール基を指し、以下の基を含む:-SRaa、-S=SRcc、-SC(=S)SRaa、-SC(=S)ORaa、-SC(=S)N(Rbb)2、-SC(=O)SRaa、-SC(=O)ORaa、-SC(=O)N(Rbb)2、および-SC(=O)Raa、ここでRaaおよびRccはここで定義されている。
【0131】
「アミノ」という用語は、-NH2基を指す。「置換アミノ」という用語は、拡張して、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、またはトリ置換アミノを指す。ある実施形態において、「置換アミノ」はモノ置換アミノまたはジ置換アミノ基である。
【0132】
「モノ置換アミノ」という用語は、アミノ基のうち、親分子に直接結合している窒素原子が水素1つと水素以外の1つの基で置換されているものを指し、以下の基を含む:-NH(Rbb)、-NHC(=O)Raa、-NHCO2Raa、-NHC(=O)N(Rbb)2、-NHC(=NRbb)N(Rbb)2、-NHSO2Raa、-NHP(=O)(ORcc)2、および-NHP(=O)(N(Rbb)2)2。ただし、Raa、Rbb、およびRccは本明細書で定義されたものであり、-NH(Rbb)のRbbは水素でない。
【0133】
「ジ置換アミノ」という用語は、アミノ基のうち、親分子に直接結合している窒素原子が水素以外の2つの基で置換されているものを指し、以下の基を含む:-N(Rbb)2、-NRbbC(=O)Raa、-NRbbCO2Raa、-NRbbC(=O)N(Rbb)2、-NRbbC(=NRbb)N(Rbb)2、-NRbbSO2Raa、-NRbbP(=O)(ORcc)2、および-NRbbP(=O)(N(Rbb)2)2。ただし、Raa、Rbb、およびRccは本明細書で定義されたものであり、親分子に直接結合している窒素原子は水素で置換されていないことが条件である。
【0134】
「トリ置換アミノ」という用語は、アミノ基のうち、親分子に直接結合している窒素原子が3つの基で置換されているものを指し、以下の基を含む:-N(Rbb)3および-N(Rbb)3 +X-。ここで、RbbおよびX-は本明細書で定義されたものである。
【0135】
「スルホニル」という用語は、以下の基から選ばれるものを指す:-SO2N(Rbb)2、-SO2Raa、-SO2ORaa。ここで、RaaおよびRbbは-本明細書で定義されたものである。
【0136】
以下の例は、本発明のある実施形態を示すことを意図しているが、発明の全範囲を示すものではない。
【実施例
【0137】
(実施例1)
この例は、PFAS化合物を捕捉するための吸着材の調製と特性評価、およびPFAS化合物の成功裏な捕捉を報告する実験について説明している。
【0138】
以下の個別のPFAS化合物は、SynQuest Laboratoriesから注文され、略称(括弧内)およびCAS番号(括弧内)が示されている:ペルフルオロヘプタン酸 [PFHpA] (375-85-9)、ペルフルオロオクタン酸 [PFOA] (335-67-1)、ペルフルオロノナン酸 [PFNA] (375-95-1)、ペルフルオロブタンスルホン酸 [PFBS] (375-73-5)、ペルフルオロヘキサンスルホン酸 [PFHxS] (355-46-4)、およびペルフルオロオクタンスルホン酸 [PFOS] (1763-23-1)。以下の標準品はWellington Laboratoriesから注文された:30 Native PFAS Solution (1 μg/mL;製品番号: PFAC30PAR) および [13C]perfluorinated acid/sulfonate Mix (製品番号: MPFAC-MXA)。使用したその他の化学薬品は、以下の通りである:水酸化カリウム (KOH)、メタノール (MeOH)、水酸化アンモニウム (NH4OH)、および塩化アンモニウム (NH4Cl)。
【0139】
実験を実施するための備品には、ポリプロピレンまたは高密度ポリプロピレン (HDPE) のサンプル/標準保存ボトル、9 mmプラスチックねじ式バイアル - 2 mL または 300 μL(Thermo Fisher C4000、ポリプロピレン)、9 mm オートサンプラー バイアルねじ式キャップ(Thermo Fisher C5000、ポリプロピレン膜)、MasterFlex L/S Precision Pump Tubing C-Flex(製品番号: 06424-16)、遠心分離管(ポリプロピレン)- 2 mL、15 mL、および 50 mL、乳鉢と乳棒、エンド・オーバー・エンド ロテーター、ミニ遠心分離機が含まれていた。
【0140】
PFAS化合物を捕捉するための吸着材は、樹脂として調製された。樹脂は、乾燥したシリカベースのセラミックアニオン交換膜(AEM)ゾルから作られた。このゾルは、実験の目的で、新たにラボで調製された(「AEM-lab」)か、他の目的の膜製造に使用された残りのゾルから作られた(「AEM-mfg」)。これらの膜は、2020年12月10日に公開された米国特許公開番号2020-0388871に記載された方法に従って調製されており、全文が参考としてここに組み込まれている。簡単に言えば、ゾルは、TEOSとTEAPSを0.3 M HCl(TEOSのモル比が6:1)と混合し、混合物が透明になるまで攪拌することで調製された。その後、混合物を60℃に加熱し、30-35分間攪拌した。得られた混合物は完全に固化するまで乾燥させ、その後、乳鉢と乳棒で10分間粉末にされた。AEM-labゾルは40℃で1時間老化させ、その後40℃で、開放容器中で30分間老化させた。AEM-mfgゾルも同様に老化させた。得られた粉末は、走査型電子顕微鏡(SEM)およびフーリエ変換赤外線(FTIR)分光法を用いて特徴付けられた。
【0141】
樹脂の純度を確保するため、以下の洗浄手順が実施された。ブフナー漏斗を用いて、樹脂は逆浸透(RO)水で約10分ずつ3回すすぎ、溶液調製過程での未反応のシランの過剰分を取り除いた。その後、樹脂はプラスチック容器に移され、0.25 M NaClの水溶液に24時間浸して樹脂を塩化物形態に変換した。再度ブフナー漏斗を用いて、樹脂は0.25 M NaClで3回すすぎ、前のステップで放出されたOH-を除去した。最後に、樹脂はRO水ですすぎ、余分な湿気を取り除き、より正確な計量ができるように空気中で一晩乾燥させた。乾燥した樹脂の粒子サイズは、1180ミクロン、600ミクロン、300ミクロン、150ミクロンのメッシュサイズのふるいを使用して制御した。イオン交換容量の測定は、1180ミクロンのふるいを通過し600ミクロンのふるいで止まった粒子、および600ミクロンのふるいを通過し300ミクロンのふるいで止まった粒子で行った(図8参照)。図8における「1200 μm」という値は便宜上のもので、実際には1180ミクロンに対応する。以下に説明するバッチスラリー実験は、1180ミクロンのふるいを通過し600ミクロンのふるいで止まった粒子を用いて行った。
【0142】
樹脂のイオン交換容量が測定された。「アニオン交換容量」は、米国特許公開番号2020-0388871に記載された方法に従って測定されたが、異なる形状に対応するために以下の修正が加えられた。浸漬液(2 M NaCl、脱イオン水(DI)、2 M NaNO3)の交換には、使い捨てのピペットが使用された。ピペットの先端はビーカーの底と平行に置かれ、樹脂が除外されるようにした。液体を廃棄物または収集ビーカーに分注する前に、ピペットを検査して樹脂が存在しないことを確認した。もしピペットに樹脂が含まれていた場合は、それを元のビーカーに戻し、液体を再度吸引した。
【0143】
すべてのPFAS溶液、サンプルおよび標準は、高密度ポリプロピレン製のボトルに保存された。正確な濃度測定が必要な標準やサンプル(例:校正標準や代用溶液)は、冷蔵庫で保存され、使用前に室温に戻すようにした。正確な濃度測定が必要ないもの(例:以下に説明するバッチテスト用のPFAS溶液)は、室温で保存された。これらの実験では、初期および最終濃度が液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析(LC/MS/MS)を用いて測定されるため、正確な濃度は要求されなかった。溶解性および安定性の理由から、希釈標準はメタノールで調製された。この希釈標準は、バッチ実験で使用するために脱イオン水にスパイクされた。
【0144】
PFAS吸着実験に使用された方法の一つは、Ateia, M.らによって報告された差分カラムバッチ反応器である("Best Practices for Evaluating New Materials as Adsorbents for Water Treatment." ACS Mater. Lett. 2020, 2 (11), 1532-1544. https://doi.org/10.1021/ACSMATERIALSLETT.0C00414)。0.7 × 30 cmのKimble Flex-Columnが樹脂カラムに使用された。カラムの底部には約10-12 cmのガラスウールが詰められた。次に、約1グラムの樹脂がビーカーに量られた。ビーカーに水が追加されスラリーが作られ、それがガラスウールの上にカラムに注がれた。ワイヤーハンガーが切断されて直線に再形成され、水中に懸濁された樹脂をカラム内で均等に分布させるために渦を巻かせた。これを数時間放置し、水が完全にカラムから排出されるまで待った。その後、ガラスウールがカラムの最上部まで詰められた。水が再度追加され、ガラスウールが所定の位置に留まるようにした。各樹脂実験においては、カラム/ガラスウールからのPFAS吸着がないことを確認するためのブランクカラム(ガラスウールのみ)と、比較のためのベンチマーク樹脂(ResinTech SIR HP110)が使用された。
【0145】
カラムが詰められた後、ペリスタルティックポンプを使用してPFASを含む水をカラムの底からトップに向かって流した。まず、DI水が貯水槽からポンプでカラムの底に送り込まれ、カラムのトップから出て初期の貯水槽に戻された。これを一晩運転させ、カラムに漏れがないことを確認し、樹脂を水和させた。水の処理後、流れの方向が切り替えられ(「底からトップ」から「トップから底」へ)、カラムの底に取り付けられたチューブが空の容器に置かれた。ポンプの速度は5から25に増加させ、システムからすべての水が排出されるようにした。ポンプ処理が完了すると、カラムはPFAS実験の準備が整った。
【0146】
複数のPFASスパイクされた脱イオン水サンプル溶液(約50 ppb)が、小さなHDPEボトルやサンプルバイアルに分注され、分析まで冷蔵庫に保存された。25ミリリットルのPFASサンプル溶液が清潔なHDPEボトルの貯水槽に追加された。各カラムに接続されたチューブを適切な貯水槽に追加し、底部とトップのチューブが同じカラムから来ていることに細心の注意を払った。ポンプをオンにし(設定は5)、底からトップに向かってポンプを動作させ、カラムに漏れがないか数分間観察した。溶液が継続的に流れ始めたら、5ミリリットルのPFAS溶液を追加して、貯水槽の底部に連続的な接触のための十分な溶液があることを確認した。その後、複数日間実行を許可した。最終濃度のアリコートは収集され、LC/MS/MSによる分析まで冷蔵庫に保存された。ポンプのチューブは、各ランの間に交換された。
【0147】
すべてのスラリーバッチ反応器実験には、エンドオーバーエンド遠心チューブ回転器が使用された。現在の回転器に対応する最大の遠心チューブは50ミリリットルで、分析用天秤での最小信頼測定値は約10ミリグラムであった。その結果、すべてのバッチ反応器の測定は、10ミリグラムの吸着剤と50ミリリットルの汚染溶液、すなわち200ミリグラム/リットルの比率で実施された。
【0148】
約10ミリグラムの洗浄済み樹脂が量られ、50ミリリットルの遠心チューブに追加された。次に、52ミリリットルのPFAS溶液(約50 ppb)が追加された。各チューブから2ミリリットルの溶液を、自動ピペットを用いて抽出し、2ミリリットルの遠心チューブに追加しておき(もし一晩置く場合は冷蔵庫に保存)、サンプル前処理までそのままにした。すべてのサンプルランに対して、ベンチマークと2種類のブランクが実行された。一つのブランクには、洗浄済み樹脂を含むチューブにDI水を追加し、ブランクや樹脂に交差汚染がないことを確認した。もう一つのブランクには、樹脂を含まない遠心チューブにPFAS溶液を追加し、チューブ表面への吸着がないことを確認した。すべての遠心チューブが満杯になると、回転器を70 rpmでエンドオーバーエンド回転させた。これを所定の実験時間実行し、その後、2ミリリットルのアリコートを2ミリリットルの遠心チューブに収集した。
【0149】
PFASの損失を避けるために、さまざまな種類のフィルターを通さずにサンプルを準備するために遠心分離機が使用された。実験中に収集された2ミリリットルのアリコートは、ミニ遠心分離機を使って6000 rpmで約20分間遠心分離された。この間に、分析に必要なサンプルの数に応じて、0.5ミリリットルのメタノールが同数の2ミリリットル遠心チューブに追加された。これに80 μLの内部標準が各チューブに追加された。20分経過後、0.5ミリリットルのPFASサンプルが準備された2ミリリットルの遠心バイアルに追加された。サンプル分析に必要な比率は50:50のDIである。これらはキャップをして、約5分間遠心分離して完全に混合された。次に、300 μLのサンプル/メタノール/内部標準混合物がLC/MS/MSサンプルバイアルに追加され、キャップされた。これらは分析するか、分析まで冷蔵庫に保存された。
【0150】
PFAS捕捉実験用に準備された樹脂は、SEMおよびFTIRを用いて特性評価された。SEM測定は、準備方法に基づく樹脂粒子のサイズを、ベンチマーク(ResinTech SIR-110-HP)と比較して調査するために使用された。図7Aおよび7Bは、ベンチマーク(図7A)および乾燥条件下で粉砕されたAEM-lab樹脂(図7B)のSEM画像を示している。AEM-lab樹脂の形状は、ベンチマークと比較してはるかに不均一であることが観察された。ベンチマークの球形と比較して、AEM-lab樹脂の断片はより長方形で、鋭いエッジを有していた。これは、カラム内の樹脂の詰め方やPFAS溶液が孔にアクセスする方法に影響を与えると考えられている。
【0151】
樹脂粒子サイズに対する粉砕条件の影響がSEMを用いて調査された。樹脂は、異なる量の水を追加して10分間粉砕され(表1に示すAEM1、AEM2、AEM3のサンプルが形成された)。乾燥条件で粉砕された樹脂の平均粒子サイズは、湿潤粉砕条件と比較して最も小さかった。より小さい粒子サイズは、ベンチマークのサイズに近づき、吸着のための表面積が増加した。
【0152】
【表1】
【0153】
樹脂に利用可能なイオン交換官能基の量を特性評価するために、イオン交換容量(IEC)が測定された。これは、ベンチマーク、AEM-mfg 洗浄済みおよび未洗浄、AEM-lab 洗浄済み樹脂間の違いを調査するために使用された。結果は図8に示されており、利用可能な交換サイトの最も多い樹脂はAEM-labの洗浄済み樹脂であることが示唆されている。この樹脂のIECはベンチマークよりも大きく、PFAS捕捉における潜在的な競争優位性を示唆している。このデータから導き出されるもう一つの結論は、膜製造からの廃棄物ストリームから作られた樹脂(AEM-mfg)が低いイオン交換容量を有していることである。これにより、実験室で新たに準備された樹脂が電気的観点からPFAS吸着においてより効果的であることが示唆される。
【0154】
PFASカラム差分バッチカラム反応器テストが実施され、有望な結果が得られた。LC/MS/MSを用いて、AEM樹脂のPFAS吸着を高度に汚染されたサイトで見られる濃度(0.5-50 μg/L)で調査した。水溶液中のPFOAの初期濃度は約7 μg/Lで、カラムは24時間運転された。結果は、AEM-lab(未洗浄)樹脂を使用して約75±3%のPFOAが吸着されたことを示しており、これはベンチマーク樹脂の約100%の吸着性能と比較しても尊敬すべきものであった。ブランクコントロールの測定されたPFOA吸着率は約0%であった。
【0155】
より産業的に関連性のある吸着条件に移行するために、反応器の構成が差分カラムバッチ反応器からスラリーバッチ反応器に切り替えられた。これにより、1グラムの樹脂ではなく10ミリグラムの樹脂を使用することが可能となった。この実験でのもう一つの変更点は、混合PFAS溶液(約45 μg/LのPFNA、PFOA、PFHpA、PFOS、PFHxSを含む)を使用することであった。目標は、AEM樹脂(約10ミリグラム、洗浄済み、粒子サイズ600-1200ミクロン)の長鎖および短鎖PFASに対する選択性をよりよく理解することであった。バッチは72時間にわたり実施され、24時間ごとにアリコート(aliquots)が採取された。この実験には洗浄済みのAEM-mfg樹脂が使用された。
【0156】
スラリーバッチ反応器からの結果は図9に示されている。吸着は吸着密度(q)で報告されており、以下の式で定義されている。ここで、CoはPFAS溶液の初期濃度(mg/L)、Cは採取時のPFAS溶液の濃度(mg/L)、Vはバルク溶液の体積(L)、mは吸着剤の乾燥質量(g)である:
【数4】
吸着密度の指標を使用することで、使用された樹脂の質量が吸着測定に考慮されることが確保された。これらのデータからは二つの主要な結論が得られる:(1)カルボン酸(PFNA、PFOA、PFHpA)と比較してスルホン酸系(PFOS、PFHxS)PFASに対する選択性、および(2)短鎖(PFHpA)と比較して長鎖(PFOS、PFNA、PFOA、PFHxS)PFASに対する選択性である。スルホン酸を含むPFASはカルボン酸と比較してより高い吸着密度を示す。このことは、PFAS上のスルホン酸と樹脂上の第4級アンモニウムの間の静電相互作用がカルボン酸塩よりも強いことを示唆している。AEM-mfg樹脂は短鎖PFASよりも長鎖PFASの吸着に対してはるかに効果的であった。短鎖の吸着は樹脂とPFASの間の静電相互作用に大きく依存しており、疎水性の程度には依存していない。このことは、樹脂の官能基の種類や量を調整することで短鎖PFASの選択性に影響を与える可能性があることを示唆している。
【0157】
第4級アンモニウム基以外の官能基を有する追加の樹脂が作成され、テストが行われた。樹脂設計の焦点は、疎水性を高め、PFASの鎖との相互作用を強化するためにフルオロフィリック官能基を導入することにあった。この実験に選ばれたシランは、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン [NFHS]、トライデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン [POTS]、およびノ-オクチルトリエトキシシラン [OTES] である。図10にはこれらのシランの化学構造が示されている。各ゾルはAEMと同じ手順で作成され、適宜乾燥された。樹脂の粉砕中、官能基の異なるシランを使用した「特別」ゾルがAEM-labと3:10の比率(特別ゾル)で乳鉢に追加された。樹脂は粉砕されたが洗浄されず、1180ミクロンの篩を通過させ、600ミクロンの篩で止められた。FTIRが使用され、得られた樹脂に官能基の存在が確認された。FTIR分析から得られたIRスペクトルは、NFHSおよびPOTSでC-F基の出現を、OTESでC-Hストレッチの強化を示した。
【0158】
上記で説明された各特別シラン樹脂は、図9のAEM-mfgで使用されたものと類似のバッチスラリー反応器実験に使用された。各バッチ実験は72時間実施され、その後アリコートが収集された。結果は図11に示されており、AEMmの結果は72時間のAEM-mfgの結果と対応している。混合溶液中のすべてのPFASに対して、吸着性能が向上した。図11のデータにおける重要な考慮点は、特別シランがAEM-labを含む樹脂に粉砕されたのに対し、比較に使用された「AEMm」は製造で作られたことである。これにより、吸着の増加の起源について具体的な結論を導き出すのが難しくなっている。考えられる二つの説明は:(1)AEM-labのイオン交換サイトへのアクセスの増加がAEM-mfgと比較して吸着の増加をもたらし、(2)疎水性/フルオロフィリック官能基の導入による吸着の強化である。性能の向上はこれらの説明の組み合わせから生じていると考えられている。図11のデータから得られるもう一つの結論は、C-F結合を含む特別シラン(NFHS、POTS)がアルカン鎖(OTES)よりも優れた性能を示すことである。これは、フルオロフィリック相互作用が疎水性相互作用よりも強いことを示唆している。
【0159】
(実施例2)
この例では、例1で説明された吸着材によって捕捉されたPFAS化合物の破壊について、1種類の機械化学的手法を用いて説明している。具体的には、ボールミル技術を使用して、例1の吸着材によって捕捉されたPFAS化合物を破壊した。
【0160】
ボールミル破壊測定の準備をするためには、樹脂にPFASを添加する必要がある。そのために、約15gの樹脂を125mLのHDPEボトルに追加した。この実験で使用する樹脂は未洗浄のAEM-mfgである。その後、100mLのPFAS溶液(約50 ppb)をDI水で樹脂を含むボトルに加えた。ボトルは手で振って溶液と樹脂の接触を良好にするようにした。その後、PFASが樹脂に吸着することを確実にするために、少なくとも2日間静置させた。この期間の後、樹脂はvを使用してろ過され、乾燥のためにフュームフード内に一晩静置された。
【0161】
ボールミル破壊実験は、Turner, L.らの「Mechanochemical Remediation of Perfluorooctanesulfonic Acid (PFOS) and Perfluorooctanoic Acid (PFOA) Amended Sand and Aqueous Film-Forming Foam (AFFF) Impacted Soil by Planetary Ball Milling」(Sci. Total Environ. 2021, 765, 142722、https://doi.org/10.1016/J.SCITOTENV.2020.142722)で以前に報告された手順に基づいて行われた。この樹脂のバッチから、「プレボールミル」サンプルを三重に秤量し(約0.5g)、15mLの遠心チューブに追加して置いておいた。次に、ボールミル実験用に各PFAS添加樹脂約5グラムを秤量した。水酸化カリウム(KOH)共砕剤は、樹脂とKOHの比率3:2で秤量された。樹脂とKOHは、ステンレス鋼のボールを含む遊星ボールミルのカップに追加された。これらは、実験の所定の時間、約270rpmでボールミル処理された。所定の時間が経過した後、「ポストボールミル」サンプルを秤量し(約0.3g)、15mLの遠心チューブに追加した。
【0162】
ボールミルサンプル(プレおよびポスト)のPFASは、抽出溶液(1% 塩化アンモニウム (NH4Cl) を80% メタノールに溶解したもの)を使用して抽出された。溶液は、遠心チューブに1:10の比率で追加された(例:0.5g : 5mL)。これをエンド・ツー・エンド ロテーターで、70rpmで1時間攪拌した。次に、溶液は小さな遠心チューブに追加され、6,000rpmで20分間遠心した。上述のバッチ実験で説明されたサンプル前処理ステップと同様の手順が踏まれたが、これらのサンプルはメタノールで抽出されたため、メタノールではなく水をチューブに先に追加した(最終比率50:50 メタノール)。
【0163】
遊星ボールミルを用いたPFASの破壊が調査された。図12に示されている結果は、ボールミル実験の結果を示している。PFASを添加したAEM-mfg樹脂は、KOH共砕剤と共に3時間ボールミル処理された。破壊率は、ボールミル前後の樹脂から抽出したPFASの初期および最終濃度に基づいて計算された。結果は、PFASの破壊が実際に発生し、PFOSがPFOAよりも破壊しやすいことを示唆している。破壊率は目標(> 90%)よりもかなり低いが、一定のPFAS破壊は確認された。さらなる最適化と方法の開発が必要であるが、これは有望な初期結果である。ベンチマーク樹脂をボールミル処理し、1% 水酸化アンモニウム(w/w%)をメタノールで抽出溶液として使用した場合、ボールミル後にPFAS濃度が増加するのが観察された。ベンチマーク樹脂の抽出条件のさらなる調査が必要であるが、この結果は、ベンチマーク樹脂を用いたPFAS破壊にボールミルが有効な選択肢ではないことを示唆しており、本開示で説明されている吸着材とは対照的である。
【0164】
(実施例3)
この例では、セラミック粒子を含む代表的な吸着材の粒子の体積膨張の程度をテストする方法について説明する。例1に従って調製された6:1のAEM樹脂のサンプルが、水に曝露する前(図13A)と水に曝露した後(図13B)の画像が示されている。粒子の断面寸法を測定した結果、粒子の寸法の増加は最小限であることが示された。この実験は、例のセラミック粒子を含む吸着材が計測可能な体積膨張を行わないことを示している。
【0165】
(実施例4)
この例では、代表的な吸着材を使用して標的種の捕捉について説明する。具体的には、官能基化されたセラミック粒子による重金属の捕捉がテストされた。
【0166】
吸着材の粒子内での拡散は、吸着質量移動においてしばしば速度制限要因となるため、イオン交換樹脂は通常、マクロポーラスな内部構造で設計される。これにより、孔内拡散抵抗を最小限に抑え、吸着速度を最大化することができる。汚染物質に応じてメソポーラス構造も望ましい場合がある。イオン交換樹脂は通常、吸着カラムや電気脱イオン化システムの充填層で使用されるため、直径約500~1000 μmのビーズとして販売される。小さなビーズは一般的に吸着速度が速くなるが、同時に充填層内の水力圧損も大きくなるため、ビーズのサイズはこの2つの考慮事項のトレードオフとなる。
【0167】
吸着は平衡プロセスであり、樹脂を取り囲む水溶液中の汚染物質の濃度が高いほど、その汚染物質の樹脂への吸着も高くなる。この関係はアイソサーム(等温線)によって説明される。アイソサームは、水相濃度(c, mg汚染物質/L溶液)と固相濃度(q, mg汚染物質/g樹脂)のプロットである。アイソサームは、ラングミュアモデル、フレンドリッヒモデル、または修正ラングミュア-フレンドリッヒ(MLF)モデルに従って適合させることができる。ラングミュアモデルは、吸着剤に等しい吸着エネルギーを有する固定数の活性サイトがあると仮定する。この仮定はイオン交換樹脂にはかなり近いので、ラングミュアモデルはイオン交換樹脂のアイソサームに通常非常に良く適合する。フレンドリッヒモデルは、活性炭への有機物の吸着を含む様々な吸着挙動に対して良好な経験的適合を提供する。最後に、修正ラングミュア-フレンドリッヒ(MLF)モデルは、前述の2つのモデルを組み合わせることでほとんどの吸着剤に対してさらに良い適合を提供し、pH依存性も考慮に入れることができる。したがって、イオン交換樹脂については、MLFモデルがより多くのデータポイントを有するアイソサームの適合やpH依存性の考慮が望まれる場合に推奨され、ラングミュアモデルはデータポイントが少ないアイソサームの適合や数学的に簡単なモデルが望まれる場合に推奨される。
【0168】
イオン交換樹脂の性能に関連する他のパラメータには、吸着キネティクス(反応速度)と樹脂ビーズの水力特性が含まれる。より速い吸着キネティクスは、同じ除去効率を達成するためにより小さなカラムを使用できることを意味する。樹脂ビーズはまた、エネルギー効率の理由からパックドベッド(充填層)内の水力圧力損失を最小限に抑えるために適切にサイズと形状が設計される必要がある。
【0169】
官能基を含むセラミック粒子は、米国特許公開番号2020-0384421および米国特許公開番号2020-0388871で一般的に説明されている方法に従って調製された。プロセスには、TEOSと(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(MPTES)やTEAPSなどの官能基化シランを0.3 M HClと混合し、混合物が透明になるまで攪拌することが含まれる。その後、混合物は60℃に加熱し、30~35分間攪拌された。得られた混合物は完全に固化するまで乾燥させ、その後、乳鉢と杵で10分間粉砕された。粉砕された樹脂は1180ミクロンおよび300ミクロンのふるいでふるい分けられ、最初のふるいを通過したが二番目のふるいには通過しなかった粉末が保持された。得られた粉末は、ブフナー漏斗で、DI水で3回10分間すすがれた。MPTESを用いて調製されたカチオン交換樹脂については、粉砕前に樹脂を20% H2O2溶液に16時間浸し、その後再度DI水で3回10分間すすいだ。浸漬は粉砕の前に行われた。得られたアニオンおよびカチオン交換樹脂は、それぞれ0.25 M NaClまたは1 M H2SO4溶液に少なくとも24時間浸漬し、その後0.25 M NaClまたは1 M H2SO4で3回10分間、DI水で1回10分間すすがれた。得られた樹脂は、一晩フュームフード内で乾燥させた。
【0170】
カチオン交換およびアニオン交換セラミック粒子樹脂について吸着等温線が測定された。汚染物質の吸着等温線は、汚染物質の種類、樹脂の官能基および構造、さらに周囲の水のpH、塩分、競合イオンなど、さまざまな要因に依存することが判明した。しかし、特定の汚染物質をDI水に溶解させた等温線試験を行うことで、材料の相対的な性能を比較することができる。
【0171】
等温線は以下の手順で測定される。10~15種類の異なる初期汚染物質濃度を有するサンプルが使用される。各サンプルは20 mLの溶液として準備され、その後、100 mgの樹脂が適切なバイアルに加えられる。各バイアルの質量が記録される。バイアルはキャップされ、パラフィルムで密封され、加熱されていないホットプレートで少なくとも40時間攪拌される。バイアル内の溶液は新しいバイアルに濾過され、濾過された溶液中の汚染物質濃度は比色法または誘導結合プラズマ光学放射線分析(ICP-OES)を使用して測定される。平衡時の吸着量(q, mg汚染物質/g樹脂)は次のように計算される:
【数5】
ここで、c0は汚染物質の初期濃度、cは最終/平衡濃度、Vはバイアル内の溶液量、mはバイアルに追加された樹脂の質量である。対応する値のcとqを組み合わせて点を形成し、これをプロットして等温線を作成する。その後、等温線はラングミュアモデル、フレンドリッチモデル、または修正ラングミュア-フレンドリッチ(MLF)モデルにフィットさせる。
【0172】
重要な指標の一つは質量あたりの吸着量である。これは、吸着カラムのサイズがその重量よりも関連性が高い場合があるためである。以下の密度が関連する可能性がある:乾燥材料密度(樹脂が乾燥しているときの樹脂材料の密度)、乾燥バルク密度(粒子間の空隙を考慮した樹脂粉末の密度)、湿潤材料密度(樹脂が水に浸され、平衡に達して膨張または収縮したときの樹脂材料の密度)、湿潤バルク密度(浸水し、平衡に達して膨張または収縮したときの樹脂粉末の密度)。水分膨張(通常はパーセントで表される)は、水に浸されたときの樹脂のバルク体積の変化を示す。特に重要なのは、顕著な膨張を避けることである。なぜなら、これが吸着密度の低下につながるからである。したがって、市販の樹脂の組成は、吸着密度を上げるための官能基の追加と、膨張を防ぐためのクロスリンカーの追加のトレードオフであることが多い。これらの指標は、以下の手順で測定することができる:(1) メスシリンダーを天秤に置き、ゼロにする。(2) シリンダーを慎重に天秤から取り外し、樹脂粉末をシリンダーに5 mLのラインまで測定する。(3) シリンダーを慎重に天秤に戻し、シリンダー内の樹脂の質量を測定する。(4) 天秤を再びゼロにする。(5) シリンダーを慎重に天秤から取り外し、スポイトを使って水を10 mLのラインまで加える(最初に約8 mLまで満たし、スポイトで樹脂をかき混ぜて全ての樹脂が水に適切に触れるようにし、その後残りを10 mLまで満たす)。(6) シリンダーを慎重に天秤に戻し、加えた水の量を測定する。(7) シリンダーを天秤から取り外し、シリンダー内の水和粉末のレベルを5分ごとに確認し、変化がなくなるまで記録する。乾燥バルク密度は、ステップ(3)で測定した樹脂の質量を乾燥バルク体積(5 mL)で割ることで計算できる。湿潤バルク密度は、ステップ(3)で測定した樹脂の質量をステップ(7)で測定した湿潤バルク体積で割ることで計算できる。湿潤材料体積は、10 mLから加えた水の体積を引くことで計算できる。加えた水の体積は、ステップ(6)で測定した質量を使用して V = m / ρ で計算できる。湿潤材料密度は、ステップ(3)で測定した樹脂の質量を上記で計算した湿潤材料体積で割ることで計算できる。水和膨張は、ステップ(7)で測定した水和バルク体積と元の乾燥バルク体積(5 mL)との差のパーセント増加である。これは、水和バルク体積と5 mLの差を取り、その差を5 mLで割ることで計算できる。
【0173】
最大吸着データは、未洗浄の6:1 AEMゾルとAmbersep(又はアンバーセップ:Ambersep) 21K XLT市販樹脂について、高濃度のクロム酸カリウムでのアイソサームスタイルのテストを行うことで収集された。それぞれの樹脂について、2つの異なる濃度と2つの異なる時間でテストを行い、最大値で平衡が達成されたことを確認した。この例では、“X:1 AEMゾル”という命名法は、TEOSとTEAPSのモル比がX対1であるゾルから調製された材料を指す。たとえば、6:1 AEMゾルは、TEOSとTEAPSのモル比が6対1であるゾルから形成された材料を指す。これらのデータは、図14のグラフに見られる水平線を生じさせ、“Ambersep”はAmbersep 21K XLT市販樹脂の最大吸着を指すことに注意する。最大吸着試験の解像度は低く、約10~30%の誤差がある可能性がある。実験の準備中に、クロメート溶液が未洗浄のAEMゾルと接触すると、すぐに黄色からオレンジに変わり、これは酸の存在下でクロメートからジクロメートへの変換を示す。したがって、残留汚染物質を除去し、樹脂をより完全にClまたはNa形態に変換するために、例1で示された洗浄手順がすべての今後の(future)樹脂に適用された。アイソサームテストは、6:1および4:1ゾルについて実施され、乾燥前に約30分間攪拌され、上述の手順に従って洗浄された。結果は、図14のグラフの実線として示されている。複数時間攪拌された4:1 AEMゾル(“4:1 AEM延長攪拌”)もテストされた。
【0174】
図14のプロットが示すように、約30分間攪拌された4:1 AEMゾルが、高濃度での条件下で最も優れた性能を示した。これは、多くの廃水にとってより関連性のある範囲である。複数時間攪拌された4:1 AEMゾルは、測定可能なほど性能が劣った。特定の理論に拘束されることなく述べると、性能が悪化したのは、おそらくゾルの粘度の増加によって引き起こされた微細孔構造の変化によると考えられている。これは、樹脂の微細構造と性能に対する攪拌時間の重要性を示している。
【0175】
洗浄された6:1 AEMゾルは、数時間攪拌された4:1 AEMゾルと似た性能を示し、洗浄されていない6:1 AEMゾルよりも大幅に優れていた。洗浄によって6:1ゾルの最大吸着量が66%向上し、約15 mg/gから約25 mg/gになったため、適切な洗浄手順は樹脂の性能にとって重要である可能性がある。全てのAEMゾルは、質量ベースで見た場合、Ambersepの市販樹脂よりも性能が劣ったが、それが主要な指標ではない。吸着カラム内の充填ベッドのサイズは一般にその質量よりも重要であるため、ゾルを市販樹脂と比較する際には、単位体積あたりの吸着量で比較することがより重要である。樹脂の材料密度を用いた比較が最も適切である。各樹脂の材料密度を決定するために、既知の質量の樹脂をメスシリンダーに追加し、シリンダーを満たすのに必要な水の質量を測定した。その後、樹脂粒子が占める体積と材料密度を計算した。結果は図15に示されている。AEMゾルの密度は非常に似ていることが分かり、同様に(カチオン交換材料(CEM)ゾルも互いに似た密度を有していた。このため、CEMやAEMゾルを質量ベースで比較することは適切であり、体積ベースでの比較と同じ結果を導く。しかし、AmbersepとLewatit(又はレバチット:Lewatit)の市販樹脂は大幅に密度が低く、市販樹脂をこの例の吸着材のゾルと適切に比較するには、密度を用いて吸着値を調整する必要があることを示している。密度データを収集する際に測定されたもう一つの関連パラメータは、加水膨張、つまり水を加えたときにメスシリンダー内で樹脂ベッドが膨張する割合である。高い吸着密度を維持するために、この加水膨張は通常、市販樹脂では低く抑えられるか、実質的に排除される。表2の結果は、市販品のLewatitおよびAmbersep樹脂、ならびに4:1 AEMゾルにはほとんど膨張が見られないのに対し、36.8 mol% CEMゾルには測定可能な膨張があり、27.2 mol%および3:1ゾルには大幅な膨張があることを示している。これにより、新しい組成や微細構造のゾルを開発する際には、加水膨張を減少させるか排除するように注意が必要であることが示唆される。
【0176】
【表2】
【0177】
最も優れた性能を示したAEMゾルである4:1(約30分間撹拌)を、Ambersepおよび未洗浄6:1と体積ベースで比較すると、FIG. 16のプロットが得られる。体積ベースで補正すると、4:1 AEMゾルは最大吸着量の点でAmbersep市販樹脂と非常によく似た性能を示し、吸着密度に関して商業的な選択肢と比較可能な性能を有するゾルを作成することが可能であることを示している。
【0178】
吸着の粒子サイズ依存性は、6:1 AEMゾルを3つの粒子サイズ範囲(150 - 300 μm、300 - 600 μm、600 - 1200 μm)にふるい分けることでテストされた。結果はFIG. 17Aおよび17Bで比較されている。データは、弱いが測定可能な粒子サイズ依存性を示した。特定の理論に拘らず説明すると、大きな粒子は表面から切り離されたより多くの孔を有している可能性がある。また、ふるい分けされていないサンプルの等温線がより小さな粒子サイズ範囲に近いことが観察され、これは150 μm未満の粒子を含む下方に偏った粒子サイズ分布による可能性が高い。
【0179】
とはいえ、データからいくつかの定性的な情報は依然として得られる可能性がある。
【0180】
追加の実験を同じ方法で行い、他の標的種を測定した結果、Ambersep 市販樹脂と 4:1 AEM ゾルの両方がクロム酸塩、セレニウム酸塩、アーセニットをある程度吸着することが観察された(FIG. 17C)。さらに、ふるい分けされていない 17.9 mol% CEM ゾルと 27.2 mol% CEM ゾルが、ほぼ同じ量のマンガンを吸着したことが観察された(FIG. 17D)。結論として、この例は、この開示に従って調製されたセラミック粒子を含む吸着材が、金属イオンや酸化物イオンなどの標的種を捕捉できることを示している。
【0181】
(実施例5)
この例では、市販で入手可能なポリマイオン交換樹脂と、例示的な吸着材の耐久性の実験的比較について説明している。具体的には、金属イオン捕捉の性能が酸化剤過酸化水素に曝露する前と後でテストされた。
【0182】
例示的な吸着材のサンプルで、27.2 mol% CEM溶液で調製された樹脂と同じ粒子形状のものを、Lewatit TP 207ポリマイオン交換樹脂のサンプルと比較した。各サンプルは、0.1 gの樹脂を10 mLのpH 3.2の水性過酸化水素溶液に曝露し、46時間オービタルシェーカーで振とうすることでテストされた。過酸化水素溶液は、十分な曝露を確保するために2回刷新された。その後、新鮮な過酸化水素に曝露された樹脂は、脱イオン水で洗浄され、10 mLのpH 3.2水性300 mg/L硫酸銅溶液で4時間振とうされた。上澄み液は紫外可視(UV-vis)分光光度計で銅濃度が分析された。この値と300 mg/Lのストック溶液との間の銅溶液の差は、「% Cu2+除去後の値」として計算された。FIG. 18Aは、過酸化水素の濃度に対する曝露後の値(実線三角形)とポリマイオン交換樹脂(空白の円)のプロットを示している。FIG. 18Bは、曝露前の% Cu2+除去と、H2O2に曝露されなかった対応するサンプルによる% Cu2+除去の比率のプロットを示している。過酸化水素曝露前後の樹脂による% Cu2+除去の比率は、この開示の多孔質吸着材が市販で入手可能なポリマイオン交換樹脂と比較して優れた酸化耐性を示すことを示している。FIGS. 18A-18Bの27.2 mol% CEM溶液のエラーバーは、データポイントのマーカーよりも小さいことに注意する必要がある。
【0183】
(実施例6)
この例では、官能基の充填や、多孔質吸着材に対する第二の官能基の官能基化が金属イオン除去性能に与える影響を評価する実験について説明している。
【0184】
この例の実験によって、金属イオン捕捉性能は、官能基の充填(例えば、スルホン酸塩やスルホン酸官能基の充填)(図19A)や、他の官能基化前駆体によるさらに他の官能基の追加(図19B)によって調節可能であることが判明した。この例の実験では、Cu2+除去に関するデータのみが示されているが、さまざまな金属イオンの除去も、追加の官能基化シリコン含有前駆体(例えば、官能化シラン)の選択によって影響を受けると考えられる。図19Aでは、市販ポリマイオン交換樹脂が1 mol%の位置に比較のための空白の円形マーカーとして示されている。この例でテストされたさらなる官能基化のための官能基化シリコン含有前駆体は、APTES((3-アミノプロピル)トリエトキシシラン)、EDTA(N-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、トリアセト酸)、およびAEAPTMS(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)であった。テストはされていないが、今回の開示の文脈では、イミノジ酢酸基、サリチルアルデヒドシッフ塩基基、イミダゾール基、ビスピコリルアミン基、アミノメチルリン酸基、およびそれらや他の官能基化シリコン含有前駆体の変種での官能基化も、金属イオンの除去を調節する可能性があると考えられている。これらの官能基は、金属イオンに配位できるグループ(例えば、アミン、カルボン酸塩)を含み、場合によっては少なくとも一部の金属イオンに対してキレート作用を有するため、金属イオンの能力を調節することが考えられている。
【0185】
多孔質吸着材が、上記の例4で説明された方法でMPTESを使用してCEMゾルから樹脂の形で製造され、600-1180 μmにふるい分けられた。樹脂が40℃のオーブンで乾燥した後、さらに官能基化シリコン含有前駆体が適用可能なサンプルに追加された。具体的には、5 gの樹脂を15 mLの酸性エタノール溶液に浸すことで、官能基化シリコン含有前駆体が添加された。このエタノール溶液は通常、95 mLのエタノール、5 mLの水、3 mLの酢酸、2 mLの官能基化シリコン含有前駆体で構成されていた。官能基化シリコン含有前駆体の濃度を増加させる(最大10 mLの官能基化シリコン含有前駆体を使用)テストも行われたが、特定の条件下で最良の性能は2 mLの官能基化シリコン含有前駆体溶液から得られた。樹脂/官能基化シリコン含有前駆体溶液は、室温で24時間静置された。溶液は室温(RT)と40℃の両方で保持され、室温での官能基化の方が、成功率が高いと判断された。時間が経過した後、樹脂はエタノールで3回洗浄され、次に40℃のオーブンで72時間以上乾燥された。この例で「チオール」とラベル付けされたサンプルは、スルホン酸群を含まない多孔質吸着樹脂である。 「チオール」樹脂の手順は、スルホン酸群を含む樹脂と同様だが、チオール群からスルホン酸群を形成する酸化ステップは行われない。金属イオン捕捉性能は、0.1 gの樹脂を10 mLのpH 3.2の300 mg/L銅硫酸水溶液に加え、室温で4時間振とうすることで評価された。
【0186】
サンプルの上澄みはUV-vis分光光度計を用いて銅濃度が分析され、% Cu2+除去率は銅硫酸ストック溶液との比較に基づいて計算された。図19Aは、CEM樹脂を製造するために使用されたシリコン含有前駆体ゾルにおけるMPTESの量と% Cu2+除去率の関係を示すプロットである。図19Aの結果は、スルホン酸化官能基の増加に伴って金属の吸着が増加することを示している。スルホン酸含有前駆体MPTESが約30 mol%を超えると、酸化プロセスに耐えられない樹脂が得られる。図19Bは、17.9 mol% MPTESを含むゾルから製造され、さらに追加の官能基化シリコン含有前駆体で修飾された樹脂の銅吸着を比較するプロットを示している。ここでも、「チオール」データポイントは「スルホン酸」樹脂と同じ基盤の樹脂を有するが、前酸化処理が施されている。EDTA、APTES、AEAPTMSで官能基化されたシリコン含有前駆体は、樹脂による銅の吸着量を増加させた。チオールが水溶液から金属を除去するために使用されてきたが、この場合、スルホン酸やスルホン酸群で官能基化された多孔質吸着材は銅を効果的に除去しなかった。
【0187】
官能基の荷重と追加の官能基化が多孔質吸着材の金属イオン捕捉選択性に与える影響も探求された。0.1 gの樹脂(前述のように官能基化されたもの)を、pH 3.2の溶液に含まれる100 mg/LのCu2+、100 mg/LのCa2+、および100 mg/LのNaに4時間、室温で振とうしながら曝露した。上澄みはICP-OESで吸着されていないイオンが分析された。金属イオン捕捉選択性は、各元素のイオンがどれだけ樹脂に吸着されたかを比較することによって計算された。
【0188】
銅/カルシウム/ナトリウム混合イオン溶液に曝露されたとき、この例の多孔質吸着材CEM樹脂の実施例は、最も容易にカルシウムイオンを吸着し、次に銅イオン、そしてナトリウムイオンの順で吸着した(図20A、20B、20C)。MPTESのモル%(図20A)と追加の官能基化シリコン含有前駆体(図20Bおよび20C)が樹脂の金属イオン選択性を調整する。図20Aでは、市販サンプルは比較のために空白のマーカーで示されており、この開示の多孔質吸着材は実線のマーカーで示されている。丸いマーカーは銅イオン、三角形のマーカーはカルシウムイオン、ダイヤモンドのマーカーはナトリウムイオンに対応する。図20Bは各樹脂で除去されたカルシウムイオンと銅イオンの割合を示し、図20Cは各樹脂で除去されたナトリウムイオンと銅イオンの割合を示している。
【0189】
本発明のいくつかの実施例がここで説明および図示されているが、当業者は、記載された機能の実行、結果の取得、または利点の1つ以上を得るための他の手段や構造を容易に考案できるであろう。そして、そのような変形や修正は本発明の範囲内にあると見なされる。一般的に、当業者は、ここに記載されたすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを理解し、実際のパラメータ、寸法、材料、または構成は本発明の教えが使用される特定の応用に依存することを認識するであろう。当業者は、ここで記載された本発明の具体的な実施例に対する多くの同等物を認識するか、または通常の実験によって明らかにすることができるであろう。したがって、前述の実施例は例示として示されており、添付の請求項およびそれに相当するものの範囲内で、本発明は具体的に記載されている方法や請求されている方法以外でも実施される可能性があることを理解する必要がある。本発明は、ここに記載された各個別の特徴、システム、記事、材料、および/または方法に向けられている。さらに、互いに矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、記事、材料、および/または方法の組み合わせも本発明の範囲に含まれる。
【0190】
本明細書および請求項で使用される「少なくとも一部」というフレーズは、「一部またはすべて」を意味する。 「少なくとも一部」とは、ある実施形態に従い、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%、および/または、ある実施形態において、最大で100重量%を意味する。
【0191】
ここで仕様および請求項で使用される不定冠詞「1つの(a)」と「1つの(an)」は、明示的に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0192】
ここで仕様および請求項で使用されるフレーズ「及び/又は(and/or)」は、「いずれかまたは両方(either or both)」を意味するものと理解されるべきである。つまり、いくつかのケースでは要素が結合的に存在し、他のケースでは排他的に存在することを意味する。その他の要素は、明示的に反対の指示がない限り、特に「and/or」句で指定された要素に関連するかどうかに関わらず、任意で存在する場合がある。したがって、非限定的な例として「A及び/又はB(A and/or B)」への言及が「含む(comprising)」などのオープンの言語とともに使用される場合、1つの実施形態ではBなしのA(B以外の要素を含むことがある)を指し、別の実施形態ではAなしのB(A以外の要素を含むことがある)を指し、さらに別の実施形態ではAとBの両方(他の要素を含むことがある)を指すなどの意味が含まれる。
【0193】
ここで仕様および請求項で使用される「又は(or)」は、上記で定義された「及び/又は(and/or)」と同じ意味を有すると理解されるべきである。たとえば、リスト内の項目を区切る場合、「又は(or)」または「及び/又は(and/or)」は包括的に解釈されるべきであり、つまり、少なくとも1つの要素が含まれ、また、複数の要素が含まれる場合があり、さらに任意の追加の未記載の項目が含まれる可能性がある。明示的に反対の指示がある用語、例えば「~の1つのみ(only one of)」や「正確に~の1つ (exactly one of)」、または請求項で使用される場合の「~からなる(consisting of)」は、要素の数またはリストから正確に1つの要素が含まれることを指す。一般に、ここで使用される「又は(or)」という用語は、排他的な選択肢(すなわち「どちらか一方だが両方ではない」)を示す場合には、排他性の用語(例えば「いずれか(either)」、「~の1つ(one of)」、「~の1つのみ(only one of)」、または「正確に~の1つ (exactly one of)」)が前に付けられる場合にのみ解釈されるべきである。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、請求項で使用される場合、特許法の分野で用いられる通常の意味を有する。
【0194】
ここで仕様および請求項で使用される「少なくとも1つの(at least one)」というフレーズは、1つ以上の要素のリストに関して言及する場合、リストの要素のいずれか1つ以上が選ばれていることを意味するが、リスト内のすべての要素から少なくとも1つ含む必要があるわけではなく、リスト内の要素の任意の組み合わせを除外するものではないと理解されるべきである。この定義は、「少なくとも1つの(at least one)」が参照するリスト内の要素に特定されていない他の要素が任意で存在する可能性があることも許容する。したがって、制限的でない例として、「A及びBの少なくとも1つ(at least one of A and B)」(または同等に「A又はBの少なくとも1つ(at least one of A or B)」、または同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ(at least one of A and/or B)」)は、一つの実施形態において、Aが少なくとも1つ(複数含む場合もあり)、Bが存在しない場合(およびB以外の要素を含む場合もあり)を指すことができる。他の実施形態においては、Bが少なくとも1つ(複数含む場合もあり)、Aが存在しない場合(およびA以外の要素を含む場合もあり)を指すことができる。また、さらに別の実施形態においては、Aが少なくとも1つ(複数含む場合もあり)とBが少なくとも1つ(複数含む場合もあり)が含まれる場合(および他の要素を含む場合もあり)を指すことができる。
【0195】
請求項および上記の仕様において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などの遷移句はすべてオープン(open-ended)であると理解されるべきであり、すなわち「含むが、これに限らない」という意味であると理解されるべきである。「~からなる(consisting of)」および「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という遷移句のみが、クローズド(closed)または半クローズド(semi-closed)の遷移句として理解されるべきであり、これはアメリカ合衆国特許商標庁の特許審査手続マニュアルの第2111.03節に記載されている通りである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
【国際調査報告】