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特表2024-546750包括的なタイヤ健全性モデル化並びにその開発及び実装のためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】包括的なタイヤ健全性モデル化並びにその開発及び実装のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20241219BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
B60C19/00 B
G01M17/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534422
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022082219
(87)【国際公開番号】W WO2023133051
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/296,945
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サムズ,トーマス エー.
(72)【発明者】
【氏名】バルゲーシュ,アヌープ ジー.
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB06
3D131LA02
3D131LA06
3D131LA21
3D131LA22
3D131LA34
(57)【要約】
タイヤ健全性推定システム及び方法は、経時的にモデル生成データを集計することと、それに基づいてタイヤ健全性モデルを反復的に生成することとを含む。モデル生成データは、所与のタイプのタイヤに関する第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、様々なタイヤ構成要素の各々に関する様々なタイヤ健全性変数の各々に相関させる。入力値の第2のセットは、実際のタイヤについて測定及び/又は決定され、適切なモデルが、第2のセットに基づいて少なくとも1つのタイヤ健全性変数及び少なくとも1つのタイヤ構成要素について選択される。それぞれのタイヤ健全性変数は、選択されたモデルを介して、かつ入力値の第2のセットに基づいてタイヤ構成要素について推定され、出力信号は、推定されたタイヤ健全性変数の比較に基づいてタイヤの健全性に対応して生成される。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実装タイヤ健全性推定方法(300)であって、
データストレージ内のモデル生成データを経時的に集計することと、前記集計されたモデル生成データに基づいて複数のタイヤ健全性モデルを反復的に生成することであって、前記モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、複数のタイヤ構成要素(310、311、312、314)の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させる、ことと、
前記所与のタイプのタイヤの第1のタイヤに関連付けられた、及び/又は前記第1のタイヤが取り付けられた車両に関連付けられた1つ以上のセンサを介して、前記入力値の第2のセットを測定及び/又は決定すること(330)と、
前記入力値の前記測定された第2のセットに基づいて、前記複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の各々に関する前記1つ以上のタイヤ健全性変数のうちの少なくとも1つの適切なモデルを選択すること(340)と、
前記1つ以上の選択されたモデルを介して、かつ前記入力値の前記測定された第2のセットに基づいて、前記少なくとも1つのタイヤ構成要素の各々についてのそれぞれのタイヤ健全性変数を推定すること(350)と、
前記推定されたタイヤ健全性変数の比較に基づいて、前記第1のタイヤの健全性に対応する出力信号を生成すること(380)と、を含む、コンピュータ実装タイヤ健全性推定方法(300)。
【請求項2】
前記入力値のうちの少なくとも1つは、前記1つ以上のセンサを介して直接測定され、前記入力値のうちの少なくとも1つは、前記少なくとも1つの直接測定された入力値を介して間接的に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の選択可能なタイヤ健全性モデルは、前記複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上についての関連する破壊変数に対応する疲労推定モデル(314c)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疲労推定モデルは、前記タイヤ上の複数の位置の各々における亀裂成長速度を、前記複数の位置の各々における少なくとも推定された歪み及び温度の関数として推定するための亀裂成長速度モデルを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数を経時的に集計すること(360)と、前記集計された変数に少なくとも部分的に基づいて前記タイヤの残存有効寿命を予測すること(370)とを更に含み、前記出力信号は、前記タイヤの前記予測された残存有効寿命に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記入力値の新たに測定されたセットに基づいて、更に、前記集計された推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数の経時的な履歴分析に基づいて、前記方法の後続の反復のための適切なモデルを選択することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の選択可能なタイヤ健全性モデルは、前記第1のタイヤの前記タイプに対する前記複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の関連変数のタイヤ系列変化を考慮する経年劣化推定モデル(314b)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の選択可能なタイヤ健全性モデルは、前記複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上のタイヤ健全性に関連する決定された外部影響を考慮する損傷推定モデル(314d)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、決定された及び/又は予測されたトレッド深さを考慮するタイヤ摩耗推定モデル(314a)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の選択可能なタイヤ健全性モデルは、ベルト縁分離、ベルト離脱ベルト、ベルト離脱カーカス、プライ端分離からなる群から選択される状態の発生前の予測時間に少なくとも部分的に基づいて、前記タイヤの残存有効寿命を予測するための1つ以上のカーカス健全性モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記出力信号は、前記推定されたタイヤ健全性変数の中から最も低い予測残存寿命に対応して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記出力信号は、前記選択されたモデルから識別されるような相互に関連するタイヤ健全性変数の組み合わせに基づいて予測残存寿命に対応して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記出力信号は、決定された受動的介入警告条件に基づいて、ユーザインターフェースに関連付けられた表示ユニット(382)に対して選択的に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記出力信号は、決定された能動介入警告状態に基づいて、1つ以上の車両制御ユニット(384)に対して選択的に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
タイヤ健全性推定システム(100)であって、
経時的に集計されたモデル生成データを記憶したデータストレージ(106、132)と、前記集計されたモデル生成データに基づいて反復的に生成された複数のタイヤ健全性モデル(134)とを含み、前記モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、複数のタイヤ構成要素の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させることと、
非一時的コンピュータ可読媒体上に常駐し、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法(300)におけるステップの実行を指示するためにプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラム製品と、を含む、タイヤ健全性推定システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、車輪付き車両のタイヤ健全性の推定及び予測に関する。より具体的には、本明細書に開示される本発明の一実施形態は、オートバイ、消費者車両(例えば、搭乗者及び軽トラック)、商用及びオフロード(OTR)車両が挙げられるが、これらに限定されない、車輪付き車両のためのタイヤのタイヤ健全性の特性評価及び予測のためのモデルを開発、選択、及び実装するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの健全性は、エンドユーザがフリート管理者であるか個人の車両所有者であるかにかかわらず、エンドユーザにとって貴重な洞察である。健全性は、タイヤの残存有効寿命(RUL)の尺度として特徴付けることができ、本開示の目的のために、少なくともトレッド及びカーカスのカテゴリーに分けることができる。
【0003】
トレッドの健全性は、例えば、均一摩耗及び不規則摩耗の両方を含むトレッド摩耗に類似していてもよく、トレッドが閾値限界(トレッド摩耗インジケータなど)に達するまで、又は不規則摩耗が、発生したノイズ又は振動がタイヤの交換又はリトレッドを必要とする点のいずれかまで進行するまでのマイル数として定量化されてもよい。
【0004】
カーカスの健全性は、通常の経年劣化、深い穴及び縁石などの衝撃による損傷、疲労、並びに膨張不足走行/過負荷走行、速すぎる速度、不適切な適用などの誤用/乱用を考慮する。カーカス除去モードは、ベルト縁分離(BES)又はベルト離脱ベルト(BLB)、ベルト離脱カーカス(BLC)、及びプライ端分離(PES)を含む(が、これらに限定されない)。カーカスの健全性も、タイヤのリトレッド性能に関する主要な決定因子である。
【発明の概要】
【0005】
物理ベース及び/又はデータサイエンスモデルを使用することによって、タイヤがさらされた状態の履歴に基づいて、各タイヤ構成要素の健全性又は残存寿命を推定することができる。この履歴は、例えば、タイヤ圧力監視システムセンサ及び/又はタイヤ監視システムセンサ(TPMS/TMS)などのタイヤセンサ、並びに加速度計、車輪速度センサ、全地球測位システム(GPS)センサなどの車両センサを介して直接的又は間接的のいずれかにて決定されてもよい。タイヤの様々な構成要素に対する異なる除去モードを予測するために、それぞれのモデルが必要とされる場合があり、包括的なタイヤ健全性モデルは、これらのモデルの結果を単一の健全性指標に組み合わせることができる。
【0006】
本開示は、少なくとも部分的に、新規のデジタルタイヤ健全性モデルを導入することによって、従来のシステムに対する強化を提供する。タイヤトレッド/摩耗は、摩耗モデルのデジタルツインによって覆われてもよい。様々な構成要素の疲労は、例えば、破壊力学の構造化学習を介して推定することができる。基礎となる仮定は、例えば、構成要素が変形を受けるにつれてゆっくりと成長し始める微小亀裂又は傷の存在であってもよく、亀裂成長速度は、現在の亀裂長さ、歪み、及び対象の位置の温度の関数である。
【0007】
タイヤの負荷、速度、圧力、及び含まれる空気温度を知ることによって、例えば、有限要素解析(FEA)を利用してこれらの異なる入力条件の異なる位置へのマッピングを作成することによって、タイヤにおいての異なる対象位置の歪み及び温度を推定する方法を提供することができる。
【0008】
第1の例示的な実施形態では、本明細書に開示されるコンピュータ実装タイヤ健全性推定方法は、データストレージ内のモデル生成データを経時的に集計することと、集計されたモデル生成データに基づいて複数のタイヤ健全性モデルを反復的に生成することとを含み、当該モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、複数のタイヤ構成要素の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させる。入力値の第2のセットは、所与のタイプのタイヤの第1のタイヤに関連付けられた、及び/又は第1のタイヤが取り付けられた車両に関連付けられた1つ以上のセンサを介して測定及び/又は決定される。適切なモデルが、入力値の測定された第2のセットに基づいて、複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の各々に関する1つ以上のタイヤ健全性変数のうちの少なくとも1つに対して選択される。それぞれのタイヤ健全性変数は、1つ以上の選択されたモデルを介して、かつ入力値の測定された第2のセットに基づいて、少なくとも1つのタイヤ構成要素の各々について推定される。推定されたタイヤ健全性変数の比較に基づいて、第1のタイヤの健全性に対応する出力信号が生成される。
【0009】
第2の実施形態では、上記で参照された第1の実施形態による1つの例示的な態様は、入力値のうちの少なくとも1つが、1つ以上のセンサを介して直接測定され、入力値のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの直接測定された入力値を介して間接的に決定されることを含んでもよい。
【0010】
第3の実施形態では、上記で参照された第1又は第2の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上についての関連する破壊変数に対応する疲労推定モデルを含むことを更に含むことができる。
【0011】
疲労推定モデルは、例えば、タイヤ上の複数の位置の各々における亀裂成長速度を、複数の位置の各々における少なくとも推定された歪み及び温度の関数として推定するための亀裂成長速度モデルを含むことができる。
【0012】
第4の実施形態では、上記で参照された第1~第3の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数を経時的に集計することと、集計された変数に少なくとも部分的に基づいてタイヤの残存有効寿命を予測することとを含むことができ、出力信号は、タイヤの予測された残存有効寿命に対応する。
【0013】
第5の実施形態では、少なくとも上記で参照した第4の実施形態による1つの例示的な態様は、入力値の新たに測定されたセットに基づいて、更に、集計された推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数の経時的な履歴分析に基づいて、本方法の後続の反復のための適切なモデルを選択することを含むことができる。
【0014】
第6の実施形態では、上記で参照された第1~第5の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、第1のタイヤのタイプに対する複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の関連変数のタイヤ系列変化を考慮する経年劣化推定モデルを含むことを含むことができる。
【0015】
第7の実施形態では、上記で参照された第1~第6の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上のタイヤ健全性に関連する決定された外部影響を考慮する損傷推定モデルを含むことを含むことができる。
【0016】
第8の実施形態では、上記で参照された第1~第7の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、決定された及び/又は予測されたトレッド深さを考慮するタイヤ摩耗推定モデルを含むことを含むことができる。
【0017】
第9の実施形態では、上記で参照された第1~第8の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、ベルト縁分離、ベルト離脱ベルト、ベルト離脱カーカス、プライ端分離からなる群から選択される状態の発生前の予測時間に少なくとも部分的に基づいてタイヤの残存有効寿命を予測するための1つ以上のカーカス健全性モデルを含むことを含むことができる。
【0018】
第10の実施形態では、上記で参照された第1~第9の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、出力信号が、推定されたタイヤ健全性変数の中から最も低い予測残存寿命に対応して生成されることを含むことができる。代替的に、出力信号は、選択されたモデルから識別されるような相互に関連するタイヤ健全性変数の組み合わせに基づいて予測残存寿命に対応して生成されてもよい。
【0019】
第11の実施形態では、上記で参照された第1~第10の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、出力信号が、決定された受動的介入警告条件に基づいて、ユーザインターフェースに関連付けられた表示ユニットに対して選択的に生成されることを含むことができる。あるいは、出力信号は、決定された能動介入警告状態に基づいて、1つ以上の車両制御ユニットに対して選択的に生成されてもよい。
【0020】
第12の実施形態では、本明細書に開示されるタイヤ健全性推定システムは、経時的に集計されたモデル生成データを記憶したデータストレージと、集計されたモデル生成データに基づいて反復的に生成された複数のタイヤ健全性モデルとを含み、当該モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、複数のタイヤ構成要素の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させる。コンピュータプログラム製品は、非一時的コンピュータ可読媒体上に常駐し、上記で参照された第1~第11の実施形態のうちの少なくとも1つによる動作の実行を指示するためにプロセッサによって実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態をより詳細に例解する。
図1】本明細書に開示されるシステムの例示的な実施形態を表すブロック図である。
図2】タイヤカーカスの例示的な構成要素を表すグラフ図である。
図3】本明細書に開示される方法の例示的な実施形態を表すフロー図である。
図4】タイヤ健全性モデルフレームワークの疲労部分に関して本明細書に開示される方法の特定の例示的な実施形態を表すグラフ図である。
図5】ベルト縁分離(BES)の除去モードについてのドラム試験からの結果の例示的な概要を表すグラフ図である。
図6A】有限要素解析(FEA)モデル出力を使用した、対応する予測データに対する測定データの例示的なプロットを表すグラフ図である。
図6B】有限要素解析(FEA)モデル出力を使用した、対応する予測データに対する測定データの例示的なプロットを表すグラフ図である。
図7A】有限要素解析(FEA)モデル出力を使用した、対応する予測データに対する測定データの例示的なプロットを表すグラフ図である。
図7B】有限要素解析(FEA)モデル出力を使用した、対応する予測データに対する測定データの例示的なプロットを表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
概して図1図7bを参照して、発明の様々な例示的な実施形態がここで詳細に説明され得る。様々な図が、様々な共通の要素及び特徴を他の実施形態と共有する実施形態を説明することがある場合、同様の要素及び特徴は同じ参照番号を与えられ、その重複する説明は以下で省略されることがある。
【0023】
本明細書に開示されるシステムの様々な実施形態は、本明細書に開示されるモデルを効果的に実装するために、(例えば、個々の車両に関連付けられる)複数の分散データコレクタ及びコンピューティングノードと機能的に通信する中央集中型コンピューティングノード(例えば、クラウドサーバ)を含み得る。最初に図1を参照すると、システム100の例示的な実施形態は、車両に搭載され、少なくともデータを取得し、当該データをリモートサーバ130に送信し及び/又は本明細書に開示されるように関連する計算を実行するように構成されたコンピューティング装置102を含む。コンピューティング装置は、(図示されるように)分散車両データ収集及び制御システムの一部として携帯型若しくは別様にモジュール式であり得るか、又は別様に、中央車両データ収集制御システム(図示せず)に対して一体的に提供され得る。装置は、プロセッサ104と、プログラム論理108が常駐するメモリ106とを含み得る。概して、本明細書に開示されるシステムは、1台以上の車両にわたって分散された多数の構成要素を実装することができるが、例えば必ずしもフリート管理エンティティと関連付けられておらず、更に、通信ネットワークを介して車両の各々と機能的に通信する中央サーバ又はサーバネットワークを実装することができる。車両構成要素は、典型的には、例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスネットワークにリンクされ、それによってローカル処理ユニットに信号を提供する、例えば、車体加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定ユニット(IMU)、全地球測位システム(GPS)トランスポンダ112などの位置センサ、タイヤ空気圧力監視システム(TPMS)センサ送信機118及び関連付けられた搭載受信機などの1つ以上のセンサを含み得る。図示の実施形態は、例示目的のために、本発明の範囲を限定することなく、周囲温度センサ116と、例えば感知された気圧信号を提供するように構成されたエンジンセンサ114と、DC電源110とを含む。
【0024】
以下の考察を考慮すると、速度、加速度、制動特性などに関連する車両データを収集及び送信するための他のセンサは、当業者には十分に明らかとなるであろうし、本明細書では更に考察されない。様々なバスインターフェース、プロトコル、及び関連するネットワークは、それぞれのデータソースとローカルコンピューティング装置との間の車両動力学データなどの通信について当該技術分野において周知であり、当業者は、それを実装するための広範囲のそのようなツール及び実装手段を認識するであろう。
【0025】
任意選択の実施形態では、本明細書で開示されるデータソースは、必ずしも車両固有センサ及び/又はゲートウェイ装置に限定されず、サードパーティエンティティ及び関連ネットワーク、ドライバインターフェースなどのユーザコンピューティング装置140上に常駐するプログラムアプリケーション、フリート管理インターフェース、並びに本明細書に開示されるアルゴリズム及びモデルに適切であると考えられ得るような、任意の企業装置又はログデータの生ストリームの他のプロバイダも含むことができる。
【0026】
システムは、例えば、フリート管理サーバ若しくは他のユーザコンピューティング装置140上に常駐する追加の分散されたプログラム論理、又は(例えば、視覚及び/若しくは音声インジケータを介した)リアルタイム通知のための車両に常駐するか、若しくはそのドライバと関連付けられた装置(図示せず)のユーザインターフェースを含み得、フリート管理装置は、いくつかの実施形態では、通信ネットワークを介して搭載装置に機能的にリンクしている。システムプログラミング情報は、例えば、ドライバによって、又はフリートマネージャによって搭載で提供され得る。
【0027】
車両及びタイヤセンサは、一実施形態では、一意の識別子が更に提供されてもよく、搭載装置プロセッサ104は、同じ車両上のそれぞれのセンサから提供される信号を識別することができ、更に、特定の実施形態では、中央サーバ130及び/又はフリート保守管理者クライアント装置140は、複数の車両にわたってタイヤ並びに関連する車両及び/又はタイヤセンサから提供される信号を識別する場合がある。換言すれば、センサ出力値は、様々な実施形態では、本明細書に開示される計算のために、搭載又はリモート/下流のデータストレージ及び実装を目的として、特定のタイヤ、特定の車両、及び/又は特定のタイヤ車両システムと関連付けられてもよい。搭載装置プロセッサは、図1に示すように、ホスト型サーバと直接通信することができるか、代替的に、ドライバのモバイル装置又はトラックに装着されたコンピューティング装置は、搭載装置出力データを受信及び処理/ホストされたサーバ及び/又はフリート管理サーバ/装置に送信するように構成されてもよい。
【0028】
特定の車両及び/又はタイヤセンサから受信された信号は、本明細書に開示される方法に従って計算するために必要に応じて選択的に取り出すために、搭載装置メモリに記憶されるか、又は搭載装置プロセッサに機能的にリンクされた等価なデータストレージユニットに記憶されてもよい。いくつかの実施形態では、様々な信号からの生データ信号は、車両からサーバに実質的にリアルタイムで通信されてもよい。代替的に、特に高周波データの連続データ送信における固有の非効率を考慮して、データは、例えば、適切な通信ネットワークを介して、車両からリモートサーバへのより効率的な(例えば、周期的な時間ベース又は代替的に定義されたイベントベースの)送信のために、コンパイル、エンコード、及び/又は要約されてもよい。
【0029】
車両データ及び/又はタイヤデータは、通信ネットワークを介してホスト型サーバ130に送信されると、例えば、それと関連付けられたデータベース132に記憶され得る。サーバは、車両データ及び/又はタイヤデータを適切な入力として選択的に取得及び処理するための、タイヤ健全性モデル134及び任意にタイヤトラクションモデルなどの関連モデルを含むか、又は関連付けることができる。モデルは、少なくとも部分的に、車両データ及び/又はタイヤデータの選択的な取得を可能にするプロセッサの実行を介して、更に、サーバと関連して記憶されているデータベース、ルックアップテーブルなどからの任意の追加のデータ又はアルゴリズムの入力のための電子通信において、実装され得る。
【0030】
例えば図1に表されるように、予測されたタイヤ摩耗状態(例えば、所与の距離、時間などにおける予測されたトレッド深さ)に対応するフィードバック信号は、インターフェース120を介して、車両自体に関連付けられた搭載装置102に、又はユーザに関連付けられたモバイル装置140に提供され得、例えば、タイヤが交換されるべきであるか又は間もなく交換される必要があるという警告又は通知/推奨を提供するように構成されたユーザインターフェースと統合され得る。
【0031】
次に図2を参照すると、代表的な空気入りタイヤ201は、一対のビード部221の間をトロイド状に延びるコードが放射状に配列された1枚以上のカーカスプライからなるカーカス222と、カーカス222のタイヤ径方向外側に設けられたトレッドゴム223と、を少なくとも備える。
【0032】
より詳細には、例示的なタイヤ201は、トレッド部224と、トレッド部224の両側からタイヤ径方向内側に連続して延びる一対のサイドウォール部225と、各サイドウォール部225のタイヤ半径方向内端から連続するビード部221と、一対のビード部221の間をトロイド状に延びて各部を補強する1枚以上のカーカスプライからなるカーカス222と、を備えている。各ビード部221には、ビードコアが埋設されている。各ビード部221の外面には、ビード部221の補強部材として、ゴムチェーファが設けられている。カーカス222のクラウン部には、1層以上のベルト層からなるベルト226が設けられている。トレッドゴム223は、カーカス222のクラウン部のタイヤ径方向外側に位置している。
【0033】
この例のタイヤ201では、トレッドゴム223は、トレッドの最表面に位置するトレッド表面ゴム層223aと、トレッド表面ゴム層223aのタイヤ径方向内側に位置するトレッド内側ゴム層223bと、を含む。トレッド表面ゴム層223aの100%モジュラスは、トレッド内部ゴム層223bの100%モジュラスよりも高い。例えば図1に表されるように、タイヤ201において、トレッドゴム223は、2層以上のゴム層から構成されていてもよい。換言すれば、複数のトレッド内側ゴム層223bが設けられていてもよい。
【0034】
次に図3を参照すると、タイヤの健全性を決定するための本明細書に開示される方法300の例示的な実施形態は、以下のように実装され得る。
【0035】
予備モデル生成段階310が実行されてもよく、例えば、それぞれのタイプのタイヤについて、異なる構成要素(例えば、その位置又はその上の位置を含んでもよい)への入力条件のマッピングを含む(ステップ312)。概して、モデル生成データは、経時的にデータストレージに集計されてもよく、複数のタイヤ健全性モデルは、集計されたモデル生成データに基づいて反復的に生成されてもよく、モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての入力値のセットの様々な組み合わせを、タイヤ構成要素の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させる。場合によっては、このプロセスは、例えば、インナーライナに取り付けられた加速度計を用いてタイヤを走行させ、負荷、速度、圧力、トレッド深さなどを含む既知のパラメータでデータを収集するなど、所与のタイヤ仕様に関するドラム試験を含むことができる。物理的試験は、一般的に、特定の実施形態では、タイヤの有限要素シミュレーション及び材料試験で置き換えるか、又は少なくとも補足することができる(ステップ311)。特定の実施形態では、モデル開発は、例えば機械学習技術を使用して、フィードバックデータを更に組み込んで、入力データセットと所与のモデル314の関連出力との間の初期相関を改善することができる。別途記載のない限り、本明細書に開示されるモデルは、最初に生成され、その後、所与のエンティティによって実装及び/又は修正されてもよく、又はエンティティは、別のエンティティによって生成された実装のための1つ以上のモデルを単に選択的に取り出してもよい。
【0036】
例示的なそのようなモデル及びそれぞれの出力は、決定された及び/又は予測されたトレッド深さを考慮するタイヤ摩耗推定モデル314a、タイヤのタイプに対する特定のタイヤ構成要素の関連変数のタイヤ系列変化を考慮するタイヤ経年劣化推定モデル314b、特定のタイヤ構成要素の関連する破壊変数に対応するタイヤ疲労推定モデル314c、特定のタイヤ構成要素のタイヤ健全性に関連する決定された外部衝撃を考慮する時間損傷推定モデル314dなどを(限定されないが)含むことができる。いくつかの実施形態では、カーカス健全性モデルは、例えばベルト縁分離、ベルト離脱ベルト、ベルト離脱カーカス、プライ端分離などの状態が発生する前の予測時間に少なくとも部分的に基づいてタイヤの残存有効寿命を予測するために開発され、選択可能であってもよい。
【0037】
図4に表されるような例示的なタイヤ疲労推定モデルは、タイヤ上の複数の位置のそれぞれにおける亀裂成長速度を推定するための亀裂成長速度モデルを、対象となる様々な位置のそれぞれにおける少なくとも推定された歪み及び温度の関数として含み得る。例示的な疲労モデルは、ベルト縁分離(BES)の除去モードについて図5に表されるように、様々なドラム試験を使用して検証され、測定された内蔵空気温度(CAT)を使用して予測された結果に対してBridgestone R284 Ecopia(商標)タイヤについての実際の結果を要約している。
【0038】
別の例では、物理ベースのタイヤモデルは、弾性基礎(REF)上の可撓性リングとしてのタイヤの2次元モデル化によって開発され得る。タイヤベルトパッケージは可撓性リングとしてモデル化され、トレッドは連続半径方向ばねとしてモデル化され、カーカスは半径方向ばねの基礎としてモデル化される。このモデルは、タイヤ構造(これらの異なるばねに関連する剛性値など)、並びにタイヤの状態(負荷、圧力、速度、トレッド深さなど)に関連するいくつかの変数を有する。モデルは、例えば、平坦又は湾曲した表面(例えば、道路又はドラム)に対して装填されてもよく、リングの半径方向変形応答は、負荷、圧力、速度、トレッド深さなどのうちの1つ以上に対する変化に従って計算され、更に分析されてもよい。決定された変形から、更なる分析のために必要であれば、定常状態加速度を容易に抽出することができる。
【0039】
図3に戻ると、モデル実装段階320は、例えば、前述のように車両/タイヤセンサ332及び/又は車両制御ユニット334を介して、使用中に実際の車両搭載タイヤに関連付けられた関連入力値を測定又は別様に決定すること(ステップ330)を含んでもよい。例示的なセンサ332は、TPMS/TMSなどのタイヤセンサ、及び/又は加速度計、車輪速度センサ、GPSなどの車両センサを含むことができる。場合によっては、全ての入力値は、それぞれのセンサを介して直接測定され得るが、様々な実施形態では、いくつかの入力値は、他の直接測定された入力値から間接的に決定され得ることが理解され得る。また、いくつかの入力値が実質的に連続的に収集される一方で、他の入力値は、利用可能なときに周期的に収集されてもよく、特に、例えば、それらの入力が経時的に変化するのが非常に遅くてもよく、最も新しい測定がある時間窓内にあった場合に確実に仮定されてもよいことが理解され得る。(例えば、モデル生成のために使用される入力のセットに対応する入力の値を含み得る)実際の入力の適切なセットを収集すると、1つ以上のモデル314が、問題のタイヤ(又は車両-タイヤの組み合わせ)のそれぞれのタイプに関して特定のタイヤ構成要素のために選択的に取り出され得る(ステップ340)。
【0040】
方法300は、ステップ350において、選択されたモデルを使用して、測定された又は他の方法で決定された入力値のセットを介して、関連するタイヤ構成要素ごとにそれぞれのタイヤ健全性変数を推定することによって継続することができる。一実施形態では、推定されたタイヤ健全性変数の一部又は全部を経時的に蓄積し、任意に、例えば傾向分析などの分析をサポートするように集計することができる(ステップ360)。タイヤ固有の集計及び更なる分析は、例えば、将来のタイヤ健全性変数の予測(ステップ370)を更に可能にすることができ、例えば、システムによって生成された出力信号(ステップ380)は、特定の推定されたタイヤ健全性変数の比較及び/又は予測された将来のタイヤ健全性変数に基づいて、それぞれのタイヤの健全性に対応することができる。
【0041】
一実施形態では、上述したような方法300の後続の反復について、適切なモデルの選択は、入力値の新たに測定されたセットに基づいてもよく、更に、集計された推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数の経時的な上記で参照した履歴分析に基づいてもよい。
【0042】
例えば、方法300の実装は、特定の推定されたタイヤ健全性変数を経時的に集計することと、集計された変数に少なくとも部分的に基づいてタイヤの残存有効寿命を予測することとを含むことができ、出力信号は、タイヤの予測された残存有効寿命に対応する。出力信号は、例えば、複数の推定タイヤ健全性変数の中から最も低い予測残存寿命に対応して生成されてもよい。出力信号は、選択されたモデルから識別されるような相互に関連するタイヤ健全性変数の組み合わせに基づいて予測残存寿命に対応して更に又は代替的に生成されてもよい。
【0043】
様々な実施形態では、出力信号は、決定された受動的介入警告状態に基づいて、ユーザインターフェースに関連付けられた表示ユニットに対して選択的に生成され得る(ステップ382)。他の実施形態では、出力信号は、決定された能動介入警告状態に基づいて、1つ以上の車両制御ユニットに対して選択的に生成され得る(ステップ384)。しかしながら、これらの実施形態は決して排他的なものではなく、出力信号は、所与のシステム構成に対して表示ユニット及び車両制御ユニットのいずれか又は両方に対して生成されてもよく、任意に警告状態のタイプに依存してもよいことが予想され得る。例えば、受動警告は、予測された状態を示すために生成されてもよく、状態が対処されない場合、又はそうでなければ、所定の閾値/範囲が破られる場合、能動警告に変換されてもよい。
【0044】
一実施形態では、推定された又は予測されたタイヤ健全性状態は、モデルから1つ以上の下流のモデル又はアプリケーションへの出力として提供され得る。例えば、予測されたトレッド深さ状態は、車両制御システム、トラクションモデル(同じシステム内のモデル、又はそれに機能的にリンクされた別のシステムの一部としてのモデル)、及び/又は燃料効率、耐久性などに関連する別の予測モデルへのフィードバック信号又はフィードフォワード信号として生成され得る。タイヤ状態情報(例えば、トレッド深さ)は、例えば、特定の車両データとともにトラクションモデルへの入力として提供され得、トラクションモデルは、それぞれのタイヤについての推定トラクション状態又は1つ以上のトラクション特性を提供するように構成され得る。例示的なトラクションモデルは、物理的部分、プロセス、又はシステムの「デジタルツイン」仮想表現を含み得、デジタルデータ及び物理データがペアリングされ、例えば人工ニューラルネットワークなどの学習システムと組み合わされる。特定のタイヤ、車両、又はタイヤ-車両システムからの実車両データ及び/又はタイヤデータを、それぞれの資産のライフサイクル全体にわたって提供して、タイヤトラクションの推定のための車両タイヤの仮想表現を生成し得、推定タイヤトラクションと対応する測定又は決定された実際のタイヤトラクションとのその後の比較は、好ましくは、サーバレベルで実行される機械学習アルゴリズムのフィードバックとして実装し得る。
【0045】
例示的なトラクションモデルは、多数のタイヤ-車両システム及び入力パラメータ(例えば、タイヤトレッド、膨張圧力、路面特性、車両速度及び加速度、スリップ率及び角度、垂直力、制動圧力及び負荷)のタイヤ状態値の関連付けられた組み合わせに関して収集された、例えば、停止距離試験結果、タイヤトラクション試験結果などを含む事前試験からの結果を更に利用し得、タイヤトラクション出力は、現在の車両データ及びタイヤデータ入力の所与の設定について効果的に予測され得る。
【0046】
一実施形態では、このトラクションモデルからの出力は、能動セーフティシステム、自律型フリート管理システムなどに組み込まれ得る。前述したように、トレッド深さを予測するタイヤ摩耗モデルに供給するために、車両上のセンサからデータが収集され得、このデータは更にトラクションモデルに供給され得る。本明細書で使用するとき、「能動セーフティシステム」という用語は、好ましくは、衝突回避システム、高度運転補助システム(ADAS)、アンチロック制動システム(ABS)などの例を含むがこれらに限定されない、当業者に一般的に既知であるようなシステムを包含し得、これらは、最適な性能を達成するために、トラクションモデル出力情報を利用するように構成され得る。例えば、衝突回避システムは、典型的には、標的車両との潜在的な衝突を回避又は軽減するために、自車のブレーキを自動的に係合することなどの回避作用をとるように構成されており、タイヤのトラクション能力、すなわちタイヤ車両システムの制動能力に関する拡張情報が極めて望ましい。
【0047】
前述したように、システムへの様々な入力は、直接測定されてもよいし、あるいは間接的に決定されてもよい。タイヤ上の垂直負荷は、様々なモデル及びアルゴリズムにおける実装のためのシステムへの所望の入力であり得るが、使用中の直接測定には頻繁に利用できないものである。次に図7を参照すると、例示的なプロセス700は、上で参照され、一般的に利用可能なセンサ測定値(例えば、速度、周囲温度、膨張圧力、及びCAT)のうちのいくつかからタイヤにかかる垂直負荷の予測を更に提供する。
【0048】
1つのステップ710では、タイヤの熱特性(例えば、定常状態熱特性)が、様々な動作条件と相関するものとして決定される。様々な実施形態では、この決定は、物理的測定を介して、又は代替的に有限要素解析、他の同等の技術、又はそれらの混合を介して行うことができる。例示的な実施形態では、定常状態含有空気温度は、いくつかの異なる垂直負荷、速度、及び膨張圧力で決定される。次いで、これらの条件の全てが1つのパラメータにコンパイルされ、このパラメータは、垂直負荷に速度(本質的にタイヤへのパワー入力)を掛けて膨張圧力で割ったものである。
【0049】
図8は、データ曲線の2つの例を示し、第1の曲線801は、物理的測定からの屋外試験結果を介して生成され、第2の曲線802は、有限要素解析シミュレーションを介して生成される。本実施形態で表されるデータは、ΔT=A(F v/p)^bの形式をとり、ここで、ΔTは、CAT(又はTrim)と周囲温度(又はTamb)との差であり、Fは垂直負荷であり、vは車両速度であり、pはタイヤの膨張圧力であり、A及びbは決定される係数である。例示的な曲線801については、係数Aは25であると決定され、係数bは0.65であると決定される。例示的な曲線302については、係数Aは35であると決定され、係数bは0.65であると決定される。
【0050】
別のステップ720では、過渡温度を予測するために、タイヤは集中容量モデルとして扱われてもよく、ここで、例えば、必要とされる唯一のパラメータは時定数のτである。この時定数τは、タイヤが加熱中であるか冷却中であるかに応じて異なり得る。一例として、サイズ295/75R22.5 R283のトラック及びバスラジアル(TBR)タイヤから収集された限られたデータに基づいて、冷却時定数τcoolは、2500秒であると決定され、加熱時定数τheatは、1250秒であると決定される。当業者は、これらの時定数がタイヤごとに、特に異なるサイズのタイヤについて変化する可能性が高く、したがって、これらの定数は実験データから決定される必要があることを理解できる。
【0051】
図9は、速度及び垂直負荷の両方における変動を伴う制御された屋内ドラム試験について、測定された含有空気温度902に対する予測された含有空気温度901の比較を表す。試験走行距離910の第1のブロックでは、速度は40マイル毎時(mph)であり、負荷は6173ポンド(lbf)の力である。試験走行距離920の第2のブロックでは、速度は50mphであり、負荷は6173lbfである。試験走行距離930の第3のブロックでは、速度は60mphであり、負荷は6173lbfである。試験走行距離940の第4のブロックでは、速度は40mphであり、負荷は6614lbfである。試験走行距離950の第5のブロックでは、速度は50mphであり、負荷は6614lbfである。試験走行距離960の第6のブロックでは、速度は60mphであり、負荷は6614lbfである。
【0052】
TPMS装置118が前述したように実装されるとき、含有空気温度測定値902は、典型的には、そこから直接取得されてもよい。これは、前述のモデルが未知の変数、すなわち垂直負荷を予測するために使用されることを可能にする。図9に示される実施形態について、この方法が適用される場合、垂直負荷は、実際の値の120N以内で予測される。当業者であれば、このデータは、車両状態に関して瞬間的に見たとき、非常に疎であり、かつ/又はノイズが多い可能性があるが、ノイズは、例えば長距離トラックルートについて24時間にわたるなど、より長い期間にわたる平滑化分析を介してフィルタリングされるか、又は他の方法で最小化され得ることを理解できる。これは、摩耗及び耐久性をより正確に予測する典型的なシステムの能力にかなりの影響を与える可能性がある。
【0053】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈がそうでない旨を指示しない限り、以下の用語は、少なくとも、本明細書に明示的に関連する意味をとる。以下で識別される意味は、必ずしも用語を限定するものではなく、単に用語の例解的な例を提供するものである。「a」、「an」、及び「the」の意味は、複数の参照を含み得、「in」の意味は、「in」及び「on」を含み得る。本明細書で使用されるとき、「一実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではないが、指すこともあり得る。
【0054】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック、モジュール、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はそれらの両方の組み合わせとして実装することができる。ハードウェア及びソフトウェアのこの互換性を明確に例解するために、様々な例解的な構成要素、ブロック、モジュール、及びステップは、概して、それらの機能性に関して上で説明されている。そのような機能性がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、特定の適用例、及びシステム全体に課される設計上の制約に依存する。説明された機能性は、それぞれの特定の適用例ごとに様々な方式で実装することができるが、そのような実装決定は、本開示の範囲からの逸脱を引き起こすものとして解釈されるべきではない。
【0055】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック及びモジュールは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)若しくは他のプログラマブル論理装置、個別ゲート若しくはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、又は本明細書に説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせなど、機械によって実装又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替として、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシン、それらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティング装置の組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のそのような構成の組み合わせとして実装することもできる。
【0056】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される方法、プロセス、又はアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接具現化するか、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで具現化するか、又はこれら2つの組み合わせで具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、CD-ROM、又は当該技術分野において既知の任意の他の形態のコンピュータ可読媒体内に常駐することができる。例示的なコンピュータ可読媒体は、プロセッサがメモリ/記憶媒体から情報を読み取り、メモリ/記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合され得る。代替として、媒体は、プロセッサと一体であり得る。プロセッサ及び媒体は、ASIC内に常駐することができる。ASICは、ユーザ端末内に常駐することができる。代替として、プロセッサ及び媒体は、ユーザ端末内の別個の構成要素として常駐することができる。
【0057】
本明細書で使用される、とりわけ、「できる(can)」、「かもしれない(might)」、「場合がある(may)」、「など(e.g.)」など、条件付き文言は、具体的に別途記載のない限り、又はさもなければ使用される文脈内で理解されない限り、特定の実施形態が、特定の特徴、要素、及び/又は状態を含むが、他の実施形態は、それらの特定の特徴、要素、及び/又は状態を含まないことを伝えることを概して意図する。したがって、そのような条件付き文言は、特徴、要素、及び/又は状態が、1つ以上の実施形態のために何らかの方式で必要とされることを示唆することを概して意図せず、また、1つ以上の実施形態が、オーサー入力又はプロンプティングを用いて又は用いないで、これらの特徴、要素、及び/又は状態が、何らかの特定の実施形態に含まれるか又はそれにおいて実行されるべきかどうかを決定するための論理を、必ず含むことを示唆することを概して意図しない。
【0058】
本発明の特定の好ましい実施形態は、典型的には、フリート管理システム、より具体的には自律型車両フリート又は商業用トラック用途のためのタイヤ摩耗推定に対して本明細書に説明されることがあるが、本発明は、それに全くもって明示的に限定されるものではなく、本明細書で使用されるとき「車両」という用語は、別途記載のない限り、自己推進式であるかどうかにかかわらず、1つ以上のタイヤを含み得る、自動車、トラック、又はそれらの任意の等価物を指し、したがってタイヤ摩耗の正確な推定又は予測、並びに、例えば直接車両制御調節の形態での潜在的な無効化、交換、又は介入を必要とし得る。
【0059】
本明細書で使用するとき、別途記載のない限り、「ユーザ」という用語は、例えば、本明細書に開示される特徴及びステップを提供するためのユーザインターフェースを有する装置と関連付けられ得る、ドライバ、搭乗者、メカニック、技術者、フリート管理職員、又は任意の他の人物若しくはエンティティを指し得る。
【0060】
前述の詳細な説明は、例解及び説明の目的のために提供されている。したがって、新規で有用な発明の特定の実施形態を説明してきたが、このような参照が、以下の特許請求の範囲における記載を除いて、本発明の範囲への限定として解釈されることを意図しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、車輪付き車両のタイヤ健全性の推定及び予測に関する。より具体的には、本明細書に開示される本発明の一実施形態は、オートバイ、消費者車両(例えば、搭乗者及び軽トラック)、商用及びオフロード(OTR)車両が挙げられるが、これらに限定されない、車輪付き車両のためのタイヤのタイヤ健全性の特性評価及び予測のためのモデルを開発、選択、及び実装するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの健全性は、エンドユーザがフリート管理者であるか個人の車両所有者であるかにかかわらず、エンドユーザにとって貴重な洞察である。健全性は、タイヤの残存有効寿命(RUL)の尺度として特徴付けることができ、本開示の目的のために、少なくともトレッド及びカーカスのカテゴリーに分けることができる。
【0003】
トレッドの健全性は、例えば、均一摩耗及び不規則摩耗の両方を含むトレッド摩耗に類似していてもよく、トレッドが閾値限界(トレッド摩耗インジケータなど)に達するまで、又は不規則摩耗が、発生したノイズ又は振動がタイヤの交換又はリトレッドを必要とする点のいずれかまで進行するまでのマイル数として定量化されてもよい。
【0004】
カーカスの健全性は、通常の経年劣化、深い穴及び縁石などの衝撃による損傷、疲労、並びに膨張不足走行/過負荷走行、速すぎる速度、不適切な適用などの誤用/乱用を考慮する。カーカス除去モードは、ベルト縁分離(BES)又はベルト離脱ベルト(BLB)、ベルト離脱カーカス(BLC)、及びプライ端分離(PES)を含む(が、これらに限定されない)。カーカスの健全性も、タイヤのリトレッド性能に関する主要な決定因子である。
【発明の概要】
【0005】
物理ベース及び/又はデータサイエンスモデルを使用することによって、タイヤがさらされた状態の履歴に基づいて、各タイヤ構成要素の健全性又は残存寿命を推定することができる。この履歴は、例えば、タイヤ圧力監視システムセンサ及び/又はタイヤ監視システムセンサ(TPMS/TMS)などのタイヤセンサ、並びに加速度計、車輪速度センサ、全地球測位システム(GPS)センサなどの車両センサを介して直接的又は間接的のいずれかにて決定されてもよい。タイヤの様々な構成要素に対する異なる除去モードを予測するために、それぞれのモデルが必要とされる場合があり、包括的なタイヤ健全性モデルは、これらのモデルの結果を単一の健全性指標に組み合わせることができる。
【0006】
本開示は、少なくとも部分的に、新規のデジタルタイヤ健全性モデルを導入することによって、従来のシステムに対する強化を提供する。タイヤトレッド/摩耗は、摩耗モデルのデジタルツインによって覆われてもよい。様々な構成要素の疲労は、例えば、破壊力学の構造化学習を介して推定することができる。基礎となる仮定は、例えば、構成要素が変形を受けるにつれてゆっくりと成長し始める微小亀裂又は傷の存在であってもよく、亀裂成長速度は、現在の亀裂長さ、歪み、及び対象の位置の温度の関数である。
【0007】
タイヤの負荷、速度、圧力、及び含まれる空気温度を知ることによって、例えば、有限要素解析(FEA)を利用してこれらの異なる入力条件の異なる位置へのマッピングを作成することによって、タイヤにおいての異なる対象位置の歪み及び温度を推定する方法を提供することができる。
【0008】
第1の例示的な実施形態では、本明細書に開示されるコンピュータ実装タイヤ健全性推定方法は、データストレージ内のモデル生成データを経時的に集計することと、集計されたモデル生成データに基づいて複数のタイヤ健全性モデルを反復的に生成することとを含み、前記モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、複数のタイヤ構成要素の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させる。入力値の第2のセットは、所与のタイプのタイヤの第1のタイヤに関連付けられた、及び/又は第1のタイヤが取り付けられた車両に関連付けられた1つ以上のセンサを介して測定及び/又は決定される。適切なモデルが、入力値の測定された第2のセットに基づいて、複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の各々に関する1つ以上のタイヤ健全性変数のうちの少なくとも1つに対して選択される。それぞれのタイヤ健全性変数は、1つ以上の選択されたモデルを介して、かつ入力値の測定された第2のセットに基づいて、少なくとも1つのタイヤ構成要素の各々について推定される。推定されたタイヤ健全性変数の比較に基づいて、第1のタイヤの健全性に対応する出力信号が生成される。
【0009】
第2の実施形態では、上記で参照された第1の実施形態による1つの例示的な態様は、入力値のうちの少なくとも1つが、1つ以上のセンサを介して直接測定され、入力値のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの直接測定された入力値を介して間接的に決定されることを含んでもよい。
【0010】
第3の実施形態では、上記で参照された第1又は第2の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上についての関連する破壊変数に対応する疲労推定モデルを含むことを更に含むことができる。
【0011】
疲労推定モデルは、例えば、タイヤ上の複数の位置の各々における亀裂成長速度を、複数の位置の各々における少なくとも推定された歪み及び温度の関数として推定するための亀裂成長速度モデルを含むことができる。
【0012】
第4の実施形態では、上記で参照された第1~第3の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数を経時的に集計することと、集計された変数に少なくとも部分的に基づいてタイヤの残存有効寿命を予測することとを含むことができ、出力信号は、タイヤの予測された残存有効寿命に対応する。
【0013】
第5の実施形態では、少なくとも上記で参照した第4の実施形態による1つの例示的な態様は、入力値の新たに測定されたセットに基づいて、更に、集計された推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数の経時的な履歴分析に基づいて、本方法の後続の反復のための適切なモデルを選択することを含むことができる。
【0014】
第6の実施形態では、上記で参照された第1~第5の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、第1のタイヤのタイプに対する複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の関連変数のタイヤ系列変化を考慮する経年劣化推定モデルを含むことを含むことができる。
【0015】
第7の実施形態では、上記で参照された第1~第6の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上のタイヤ健全性に関連する決定された外部影響を考慮する損傷推定モデルを含むことを含むことができる。
【0016】
第8の実施形態では、上記で参照された第1~第7の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、決定された及び/又は予測されたトレッド深さを考慮するタイヤ摩耗推定モデルを含むことを含むことができる。
【0017】
第9の実施形態では、上記で参照された第1~第8の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、複数の選択可能なタイヤ健全性モデルが、ベルト縁分離、ベルト離脱ベルト、ベルト離脱カーカス、プライ端分離からなる群から選択される状態の発生前の予測時間に少なくとも部分的に基づいてタイヤの残存有効寿命を予測するための1つ以上のカーカス健全性モデルを含むことを含むことができる。
【0018】
第10の実施形態では、上記で参照された第1~第9の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、出力信号が、推定されたタイヤ健全性変数の中から最も低い予測残存寿命に対応して生成されることを含むことができる。代替的に、出力信号は、選択されたモデルから識別されるような相互に関連するタイヤ健全性変数の組み合わせに基づいて予測残存寿命に対応して生成されてもよい。
【0019】
第11の実施形態では、上記で参照された第1~第10の実施形態のいずれか1つによる1つの例示的な態様は、出力信号が、決定された受動的介入警告条件に基づいて、ユーザインターフェースに関連付けられた表示ユニットに対して選択的に生成されることを含むことができる。あるいは、出力信号は、決定された能動介入警告状態に基づいて、1つ以上の車両制御ユニットに対して選択的に生成されてもよい。
【0020】
第12の実施形態では、本明細書に開示されるタイヤ健全性推定システムは、経時的に集計されたモデル生成データを記憶したデータストレージと、集計されたモデル生成データに基づいて反復的に生成された複数のタイヤ健全性モデルとを含み、前記モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、複数のタイヤ構成要素の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させる。コンピュータプログラム製品は、非一時的コンピュータ可読媒体上に常駐し、上記で参照された第1~第11の実施形態のうちの少なくとも1つによる動作の実行を指示するためにプロセッサによって実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態をより詳細に例解する。
図1】本明細書に開示されるシステムの例示的な実施形態を表すブロック図である。
図2】タイヤカーカスの例示的な構成要素を表すグラフ図である。
図3】本明細書に開示される方法の例示的な実施形態を表すフロー図である。
図4】タイヤ健全性モデルフレームワークの疲労部分に関して本明細書に開示される方法の特定の例示的な実施形態を表すグラフ図である。
図5】ベルト縁分離(BES)の除去モードについてのドラム試験からの結果の例示的な概要を表すグラフ図である。
図6a】有限要素解析(FEA)モデル出力を使用した、対応する予測データに対する測定データの例示的なプロットを表すグラフ図である。
図6b】有限要素解析(FEA)モデル出力を使用した、対応する予測データに対する測定データの例示的なプロットを表すグラフ図である。
図7】センサ測定値(例えば、速度、周囲温度、膨張圧力、及びCAT)からタイヤにかかる垂直負荷を予測するための例示的なプロセスを表すフローチャートである。
図8】有限要素解析(FEA)モデル出力を使用した、対応する予測データに対する測定データの例示的なプロットを表すグラフ図である。
図9】速度及び垂直負荷の両方における変動を伴う制御された屋内ドラム試験について、測定された含有空気温度に対する予測された含有空気温度の例示的な比較を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
概して図1図9を参照して、発明の様々な例示的な実施形態がここで詳細に説明され得る。様々な図が、様々な共通の要素及び特徴を他の実施形態と共有する実施形態を説明することがある場合、同様の要素及び特徴は同じ参照番号を与えられ、その重複する説明は以下で省略されることがある。
【0023】
本明細書に開示されるシステムの様々な実施形態は、本明細書に開示されるモデルを効果的に実装するために、(例えば、個々の車両に関連付けられる)複数の分散データコレクタ及びコンピューティングノードと機能的に通信する中央集中型コンピューティングノード(例えば、クラウドサーバ)を含み得る。最初に図1を参照すると、システム100の例示的な実施形態は、車両に搭載され、少なくともデータを取得し、当該データをリモートサーバ130に送信し及び/又は本明細書に開示されるように関連する計算を実行するように構成されたコンピューティング装置102を含む。コンピューティング装置は、(図示されるように)分散車両データ収集及び制御システムの一部として携帯型若しくは別様にモジュール式であり得るか、又は別様に、中央車両データ収集制御システム(図示せず)に対して一体的に提供され得る。装置は、プロセッサ104と、プログラム論理108が常駐するメモリ106とを含み得る。概して、本明細書に開示されるシステムは、1台以上の車両にわたって分散された多数の構成要素を実装することができるが、例えば必ずしもフリート管理エンティティと関連付けられておらず、更に、通信ネットワークを介して車両の各々と機能的に通信する中央サーバ又はサーバネットワークを実装することができる。車両構成要素は、典型的には、例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスネットワークにリンクされ、それによってローカル処理ユニットに信号を提供する、例えば、車体加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定ユニット(IMU)、全地球測位システム(GPS)トランスポンダ112などの位置センサ、タイヤ空気圧力監視システム(TPMS)センサ送信機118及び関連付けられた搭載受信機などの1つ以上のセンサを含み得る。図示の実施形態は、例示目的のために、本発明の範囲を限定することなく、周囲温度センサ116と、例えば感知された気圧信号を提供するように構成されたエンジンセンサ114と、DC電源110とを含む。
【0024】
以下の考察を考慮すると、速度、加速度、制動特性などに関連する車両データを収集及び送信するための他のセンサは、当業者には十分に明らかとなるであろうし、本明細書では更に考察されない。様々なバスインターフェース、プロトコル、及び関連するネットワークは、それぞれのデータソースとローカルコンピューティング装置との間の車両動力学データなどの通信について当該技術分野において周知であり、当業者は、それを実装するための広範囲のそのようなツール及び実装手段を認識するであろう。
【0025】
任意選択の実施形態では、本明細書で開示されるデータソースは、必ずしも車両固有センサ及び/又はゲートウェイ装置に限定されず、サードパーティエンティティ及び関連ネットワーク、ドライバインターフェースなどのユーザコンピューティング装置140上に常駐するプログラムアプリケーション、フリート管理インターフェース、並びに本明細書に開示されるアルゴリズム及びモデルに適切であると考えられ得るような、任意の企業装置又はログデータの生ストリームの他のプロバイダも含むことができる。
【0026】
システムは、例えば、フリート管理サーバ若しくは他のユーザコンピューティング装置140上に常駐する追加の分散されたプログラム論理、又は(例えば、視覚及び/若しくは音声インジケータを介した)リアルタイム通知のための車両に常駐するか、若しくはそのドライバと関連付けられた装置(図示せず)のユーザインターフェースを含み得、フリート管理装置は、いくつかの実施形態では、通信ネットワークを介して搭載装置に機能的にリンクしている。システムプログラミング情報は、例えば、ドライバによって、又はフリートマネージャによって搭載で提供され得る。
【0027】
車両及びタイヤセンサは、一実施形態では、一意の識別子が更に提供されてもよく、搭載装置プロセッサ104は、同じ車両上のそれぞれのセンサから提供される信号を識別することができ、更に、特定の実施形態では、中央サーバ130及び/又はフリート保守管理者クライアント装置140は、複数の車両にわたってタイヤ並びに関連する車両及び/又はタイヤセンサから提供される信号を識別する場合がある。換言すれば、センサ出力値は、様々な実施形態では、本明細書に開示される計算のために、搭載又はリモート/下流のデータストレージ及び実装を目的として、特定のタイヤ、特定の車両、及び/又は特定のタイヤ車両システムと関連付けられてもよい。搭載装置プロセッサは、図1に示すように、ホスト型サーバと直接通信することができるか、代替的に、ドライバのモバイル装置又はトラックに装着されたコンピューティング装置は、搭載装置出力データを受信及び処理/ホストされたサーバ及び/又はフリート管理サーバ/装置に送信するように構成されてもよい。
【0028】
特定の車両及び/又はタイヤセンサから受信された信号は、本明細書に開示される方法に従って計算するために必要に応じて選択的に取り出すために、搭載装置メモリに記憶されるか、又は搭載装置プロセッサに機能的にリンクされた等価なデータストレージユニットに記憶されてもよい。いくつかの実施形態では、様々な信号からの生データ信号は、車両からサーバに実質的にリアルタイムで通信されてもよい。代替的に、特に高周波データの連続データ送信における固有の非効率を考慮して、データは、例えば、適切な通信ネットワークを介して、車両からリモートサーバへのより効率的な(例えば、周期的な時間ベース又は代替的に定義されたイベントベースの)送信のために、コンパイル、エンコード、及び/又は要約されてもよい。
【0029】
車両データ及び/又はタイヤデータは、通信ネットワークを介してホスト型サーバ130に送信されると、例えば、それと関連付けられたデータベース132に記憶され得る。サーバは、車両データ及び/又はタイヤデータを適切な入力として選択的に取得及び処理するための、タイヤ健全性モデル134及び任意にタイヤトラクションモデルなどの関連モデルを含むか、又は関連付けることができる。モデルは、少なくとも部分的に、車両データ及び/又はタイヤデータの選択的な取得を可能にするプロセッサの実行を介して、更に、サーバと関連して記憶されているデータベース、ルックアップテーブルなどからの任意の追加のデータ又はアルゴリズムの入力のための電子通信において、実装され得る。
【0030】
例えば図1に表されるように、予測されたタイヤ摩耗状態(例えば、所与の距離、時間などにおける予測されたトレッド深さ)に対応するフィードバック信号は、インターフェース120を介して、車両自体に関連付けられた搭載装置102に、又はユーザに関連付けられたモバイル装置140に提供され得、例えば、タイヤが交換されるべきであるか又は間もなく交換される必要があるという警告又は通知/推奨を提供するように構成されたユーザインターフェースと統合され得る。
【0031】
次に図2を参照すると、代表的な空気入りタイヤ201は、一対のビード部221の間をトロイド状に延びるコードが放射状に配列された1枚以上のカーカスプライからなるカーカス222と、カーカス222のタイヤ径方向外側に設けられたトレッドゴム223と、を少なくとも備える。
【0032】
より詳細には、例示的なタイヤ201は、トレッド部224と、トレッド部224の両側からタイヤ径方向内側に連続して延びる一対のサイドウォール部225と、各サイドウォール部225のタイヤ半径方向内端から連続するビード部221と、一対のビード部221の間をトロイド状に延びて各部を補強する1枚以上のカーカスプライからなるカーカス222と、を備えている。各ビード部221には、ビードコアが埋設されている。各ビード部221の外面には、ビード部221の補強部材として、ゴムチェーファが設けられている。カーカス222のクラウン部には、1層以上のベルト層からなるベルト226が設けられている。トレッドゴム223は、カーカス222のクラウン部のタイヤ径方向外側に位置している。
【0033】
この例のタイヤ201では、トレッドゴム223は、トレッドの最表面に位置するトレッド表面ゴム層223aと、トレッド表面ゴム層223aのタイヤ径方向内側に位置するトレッド内側ゴム層223bと、を含む。トレッド表面ゴム層223aの100%モジュラスは、トレッド内部ゴム層223bの100%モジュラスよりも高い。例えば図1に表されるように、タイヤ201において、トレッドゴム223は、2層以上のゴム層から構成されていてもよい。換言すれば、複数のトレッド内側ゴム層223bが設けられていてもよい。
【0034】
次に図3を参照すると、タイヤの健全性を決定するための本明細書に開示される方法300の例示的な実施形態は、以下のように実装され得る。
【0035】
予備モデル生成段階310が実行されてもよく、例えば、それぞれのタイプのタイヤについて、異なる構成要素(例えば、その位置又はその上の位置を含んでもよい)への入力条件のマッピングを含む(ステップ312)。概して、モデル生成データは、経時的にデータストレージに集計されてもよく、複数のタイヤ健全性モデルは、集計されたモデル生成データに基づいて反復的に生成されてもよく、モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての入力値のセットの様々な組み合わせを、タイヤ構成要素の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させる。場合によっては、このプロセスは、例えば、インナーライナに取り付けられた加速度計を用いてタイヤを走行させ、負荷、速度、圧力、トレッド深さなどを含む既知のパラメータでデータを収集するなど、所与のタイヤ仕様に関するドラム試験を含むことができる。物理的試験は、一般的に、特定の実施形態では、タイヤの有限要素シミュレーション及び材料試験で置き換えるか、又は少なくとも補足することができる(ステップ311)。特定の実施形態では、モデル開発は、例えば機械学習技術を使用して、フィードバックデータを更に組み込んで、入力データセットと所与のモデル314の関連出力との間の初期相関を改善することができる。別途記載のない限り、本明細書に開示されるモデルは、最初に生成され、その後、所与のエンティティによって実装及び/又は修正されてもよく、又はエンティティは、別のエンティティによって生成された実装のための1つ以上のモデルを単に選択的に取り出してもよい。
【0036】
例示的なそのようなモデル及びそれぞれの出力は、決定された及び/又は予測されたトレッド深さを考慮するタイヤ摩耗推定モデル314a、タイヤのタイプに対する特定のタイヤ構成要素の関連変数のタイヤ系列変化を考慮するタイヤ経年劣化推定モデル314b、特定のタイヤ構成要素の関連する破壊変数に対応するタイヤ疲労推定モデル314c、特定のタイヤ構成要素のタイヤ健全性に関連する決定された外部衝撃を考慮する時間損傷推定モデル314dなどを(限定されないが)含むことができる。いくつかの実施形態では、カーカス健全性モデルは、例えばベルト縁分離、ベルト離脱ベルト、ベルト離脱カーカス、プライ端分離などの状態が発生する前の予測時間に少なくとも部分的に基づいてタイヤの残存有効寿命を予測するために開発され、選択可能であってもよい。
【0037】
図4に表されるような例示的なタイヤ疲労推定モデルは、タイヤ上の複数の位置のそれぞれにおける亀裂成長速度を推定するための亀裂成長速度モデルを、対象となる様々な位置のそれぞれにおける少なくとも推定された歪み及び温度の関数として含み得る。例示的な疲労モデルは、ベルト縁分離(BES)の除去モードについて図5に表されるように、様々なドラム試験を使用して検証され、測定された内蔵空気温度(CAT)を使用して予測された結果に対してBridgestone R284 Ecopia(商標)タイヤについての実際の結果を要約している。
【0038】
別の例では、物理ベースのタイヤモデルは、弾性基礎(REF)上の可撓性リングとしてのタイヤの2次元モデル化によって開発され得る。タイヤベルトパッケージは可撓性リングとしてモデル化され、トレッドは連続半径方向ばねとしてモデル化され、カーカスは半径方向ばねの基礎としてモデル化される。このモデルは、タイヤ構造(これらの異なるばねに関連する剛性値など)、並びにタイヤの状態(負荷、圧力、速度、トレッド深さなど)に関連するいくつかの変数を有する。モデルは、例えば、平坦又は湾曲した表面(例えば、道路又はドラム)に対して装填されてもよく、リングの半径方向変形応答は、負荷、圧力、速度、トレッド深さなどのうちの1つ以上に対する変化に従って計算され、更に分析されてもよい。決定された変形から、更なる分析のために必要であれば、定常状態加速度を容易に抽出することができる。
【0039】
図3に戻ると、モデル実装段階320は、例えば、前述のように車両/タイヤセンサ332及び/又は車両制御ユニット334を介して、使用中に実際の車両搭載タイヤに関連付けられた関連入力値を測定又は別様に決定すること(ステップ330)を含んでもよい。例示的なセンサ332は、TPMS/TMSなどのタイヤセンサ、及び/又は加速度計、車輪速度センサ、GPSなどの車両センサを含むことができる。場合によっては、全ての入力値は、それぞれのセンサを介して直接測定され得るが、様々な実施形態では、いくつかの入力値は、他の直接測定された入力値から間接的に決定され得ることが理解され得る。また、いくつかの入力値が実質的に連続的に収集される一方で、他の入力値は、利用可能なときに周期的に収集されてもよく、特に、例えば、それらの入力が経時的に変化するのが非常に遅くてもよく、最も新しい測定がある時間窓内にあった場合に確実に仮定されてもよいことが理解され得る。(例えば、モデル生成のために使用される入力のセットに対応する入力の値を含み得る)実際の入力の適切なセットを収集すると、1つ以上のモデル314が、問題のタイヤ(又は車両-タイヤの組み合わせ)のそれぞれのタイプに関して特定のタイヤ構成要素のために選択的に取り出され得る(ステップ340)。
【0040】
方法300は、ステップ350において、選択されたモデルを使用して、測定された又は他の方法で決定された入力値のセットを介して、関連するタイヤ構成要素ごとにそれぞれのタイヤ健全性変数を推定することによって継続することができる。一実施形態では、推定されたタイヤ健全性変数の一部又は全部を経時的に蓄積し、任意に、例えば傾向分析などの分析をサポートするように集計することができる(ステップ360)。タイヤ固有の集計及び更なる分析は、例えば、将来のタイヤ健全性変数の予測(ステップ370)を更に可能にすることができ、例えば、システムによって生成された出力信号(ステップ380)は、特定の推定されたタイヤ健全性変数の比較及び/又は予測された将来のタイヤ健全性変数に基づいて、それぞれのタイヤの健全性に対応することができる。
【0041】
一実施形態では、上述したような方法300の後続の反復について、適切なモデルの選択は、入力値の新たに測定されたセットに基づいてもよく、更に、集計された推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数の経時的な上記で参照した履歴分析に基づいてもよい。
【0042】
例えば、方法300の実装は、特定の推定されたタイヤ健全性変数を経時的に集計することと、集計された変数に少なくとも部分的に基づいてタイヤの残存有効寿命を予測することとを含むことができ、出力信号は、タイヤの予測された残存有効寿命に対応する。出力信号は、例えば、複数の推定タイヤ健全性変数の中から最も低い予測残存寿命に対応して生成されてもよい。出力信号は、選択されたモデルから識別されるような相互に関連するタイヤ健全性変数の組み合わせに基づいて予測残存寿命に対応して更に又は代替的に生成されてもよい。
【0043】
様々な実施形態では、出力信号は、決定された受動的介入警告状態に基づいて、ユーザインターフェースに関連付けられた表示ユニットに対して選択的に生成され得る(ステップ382)。他の実施形態では、出力信号は、決定された能動介入警告状態に基づいて、1つ以上の車両制御ユニットに対して選択的に生成され得る(ステップ384)。しかしながら、これらの実施形態は決して排他的なものではなく、出力信号は、所与のシステム構成に対して表示ユニット及び車両制御ユニットのいずれか又は両方に対して生成されてもよく、任意に警告状態のタイプに依存してもよいことが予想され得る。例えば、受動警告は、予測された状態を示すために生成されてもよく、状態が対処されない場合、又はそうでなければ、所定の閾値/範囲が破られる場合、能動警告に変換されてもよい。
【0044】
一実施形態では、推定された又は予測されたタイヤ健全性状態は、モデルから1つ以上の下流のモデル又はアプリケーションへの出力として提供され得る。例えば、予測されたトレッド深さ状態は、車両制御システム、トラクションモデル(同じシステム内のモデル、又はそれに機能的にリンクされた別のシステムの一部としてのモデル)、及び/又は燃料効率、耐久性などに関連する別の予測モデルへのフィードバック信号又はフィードフォワード信号として生成され得る。タイヤ状態情報(例えば、トレッド深さ)は、例えば、特定の車両データとともにトラクションモデルへの入力として提供され得、トラクションモデルは、それぞれのタイヤについての推定トラクション状態又は1つ以上のトラクション特性を提供するように構成され得る。例示的なトラクションモデルは、物理的部分、プロセス、又はシステムの「デジタルツイン」仮想表現を含み得、デジタルデータ及び物理データがペアリングされ、例えば人工ニューラルネットワークなどの学習システムと組み合わされる。特定のタイヤ、車両、又はタイヤ-車両システムからの実車両データ及び/又はタイヤデータを、それぞれの資産のライフサイクル全体にわたって提供して、タイヤトラクションの推定のための車両タイヤの仮想表現を生成し得、推定タイヤトラクションと対応する測定又は決定された実際のタイヤトラクションとのその後の比較は、好ましくは、サーバレベルで実行される機械学習アルゴリズムのフィードバックとして実装し得る。
【0045】
例示的なトラクションモデルは、多数のタイヤ-車両システム及び入力パラメータ(例えば、タイヤトレッド、膨張圧力、路面特性、車両速度及び加速度、スリップ率及び角度、垂直力、制動圧力及び負荷)のタイヤ状態値の関連付けられた組み合わせに関して収集された、例えば、停止距離試験結果、タイヤトラクション試験結果などを含む事前試験からの結果を更に利用し得、タイヤトラクション出力は、現在の車両データ及びタイヤデータ入力の所与の設定について効果的に予測され得る。
【0046】
一実施形態では、このトラクションモデルからの出力は、能動セーフティシステム、自律型フリート管理システムなどに組み込まれ得る。前述したように、トレッド深さを予測するタイヤ摩耗モデルに供給するために、車両上のセンサからデータが収集され得、このデータは更にトラクションモデルに供給され得る。本明細書で使用するとき、「能動セーフティシステム」という用語は、好ましくは、衝突回避システム、高度運転補助システム(ADAS)、アンチロック制動システム(ABS)などの例を含むがこれらに限定されない、当業者に一般的に既知であるようなシステムを包含し得、これらは、最適な性能を達成するために、トラクションモデル出力情報を利用するように構成され得る。例えば、衝突回避システムは、典型的には、標的車両との潜在的な衝突を回避又は軽減するために、自車のブレーキを自動的に係合することなどの回避作用をとるように構成されており、タイヤのトラクション能力、すなわちタイヤ車両システムの制動能力に関する拡張情報が極めて望ましい。
【0047】
前述したように、システムへの様々な入力は、直接測定されてもよいし、あるいは間接的に決定されてもよい。タイヤ上の垂直負荷は、様々なモデル及びアルゴリズムにおける実装のためのシステムへの所望の入力であり得るが、使用中の直接測定には頻繁に利用できないものである。次に図7を参照すると、例示的なプロセス700は、上で参照され、一般的に利用可能なセンサ測定値(例えば、速度、周囲温度、膨張圧力、及びCAT)のうちのいくつかからタイヤにかかる垂直負荷の予測を更に提供する。
【0048】
1つのステップ710では、タイヤの熱特性(例えば、定常状態熱特性)が、様々な動作条件と相関するものとして決定される。様々な実施形態では、この決定は、物理的測定を介して、又は代替的に有限要素解析、他の同等の技術、又はそれらの混合を介して行うことができる。例示的な実施形態では、定常状態含有空気温度は、いくつかの異なる垂直負荷、速度、及び膨張圧力で決定される。次いで、これらの条件の全てが1つのパラメータにコンパイルされ、このパラメータは、垂直負荷に速度(本質的にタイヤへのパワー入力)を掛けて膨張圧力で割ったものである。
【0049】
図8は、データ曲線の2つの例を示し、第1の曲線801は、物理的測定からの屋外試験結果を介して生成され、第2の曲線802は、有限要素解析シミュレーションを介して生成される。本実施形態で表されるデータは、ΔT=A(F v/p)^bの形式をとり、ここで、ΔTは、CAT(又はTrim)と周囲温度(又はTamb)との差であり、Fは垂直負荷であり、vは車両速度であり、pはタイヤの膨張圧力であり、A及びbは決定される係数である。例示的な曲線801については、係数Aは25であると決定され、係数bは0.65であると決定される。例示的な曲線302については、係数Aは35であると決定され、係数bは0.65であると決定される。
【0050】
別のステップ720では、過渡温度を予測するために、タイヤは集中容量モデルとして扱われてもよく、ここで、例えば、必要とされる唯一のパラメータは時定数のτである。この時定数τは、タイヤが加熱中であるか冷却中であるかに応じて異なり得る。一例として、サイズ295/75R22.5 R283のトラック及びバスラジアル(TBR)タイヤから収集された限られたデータに基づいて、冷却時定数τcoolは、2500秒であると決定され、加熱時定数τheatは、1250秒であると決定される。当業者は、これらの時定数がタイヤごとに、特に異なるサイズのタイヤについて変化する可能性が高く、したがって、これらの定数は実験データから決定される必要があることを理解できる。
【0051】
図9は、速度及び垂直負荷の両方における変動を伴う制御された屋内ドラム試験について、測定された含有空気温度902に対する予測された含有空気温度901の比較を表す。試験走行距離910の第1のブロックでは、速度は40マイル毎時(mph)であり、負荷は6173ポンド(lbf)の力である。試験走行距離920の第2のブロックでは、速度は50mphであり、負荷は6173lbfである。試験走行距離930の第3のブロックでは、速度は60mphであり、負荷は6173lbfである。試験走行距離940の第4のブロックでは、速度は40mphであり、負荷は6614lbfである。試験走行距離950の第5のブロックでは、速度は50mphであり、負荷は6614lbfである。試験走行距離960の第6のブロックでは、速度は60mphであり、負荷は6614lbfである。
【0052】
TPMS装置118が前述したように実装されるとき、含有空気温度測定値902は、典型的には、そこから直接取得されてもよい。これは、前述のモデルが未知の変数、すなわち垂直負荷を予測するために使用されることを可能にする。図9に示される実施形態について、この方法が適用される場合、垂直負荷は、実際の値の120N以内で予測される。当業者であれば、このデータは、車両状態に関して瞬間的に見たとき、非常に疎であり、かつ/又はノイズが多い可能性があるが、ノイズは、例えば長距離トラックルートについて24時間にわたるなど、より長い期間にわたる平滑化分析を介してフィルタリングされるか、又は他の方法で最小化され得ることを理解できる。これは、摩耗及び耐久性をより正確に予測する典型的なシステムの能力にかなりの影響を与える可能性がある。
【0053】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈がそうでない旨を指示しない限り、以下の用語は、少なくとも、本明細書に明示的に関連する意味をとる。以下で識別される意味は、必ずしも用語を限定するものではなく、単に用語の例解的な例を提供するものである。「a」、「an」、及び「the」の意味は、複数の参照を含み得、「in」の意味は、「in」及び「on」を含み得る。本明細書で使用されるとき、「一実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではないが、指すこともあり得る。
【0054】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック、モジュール、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はそれらの両方の組み合わせとして実装することができる。ハードウェア及びソフトウェアのこの互換性を明確に例解するために、様々な例解的な構成要素、ブロック、モジュール、及びステップは、概して、それらの機能性に関して上で説明されている。そのような機能性がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、特定の適用例、及びシステム全体に課される設計上の制約に依存する。説明された機能性は、それぞれの特定の適用例ごとに様々な方式で実装することができるが、そのような実装決定は、本開示の範囲からの逸脱を引き起こすものとして解釈されるべきではない。
【0055】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック及びモジュールは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)若しくは他のプログラマブル論理装置、個別ゲート若しくはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、又は本明細書に説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせなど、機械によって実装又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替として、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシン、それらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティング装置の組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のそのような構成の組み合わせとして実装することもできる。
【0056】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される方法、プロセス、又はアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接具現化するか、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで具現化するか、又はこれら2つの組み合わせで具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、CD-ROM、又は当該技術分野において既知の任意の他の形態のコンピュータ可読媒体内に常駐することができる。例示的なコンピュータ可読媒体は、プロセッサがメモリ/記憶媒体から情報を読み取り、メモリ/記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合され得る。代替として、媒体は、プロセッサと一体であり得る。プロセッサ及び媒体は、ASIC内に常駐することができる。ASICは、ユーザ端末内に常駐することができる。代替として、プロセッサ及び媒体は、ユーザ端末内の別個の構成要素として常駐することができる。
【0057】
本明細書で使用される、とりわけ、「できる(can)」、「かもしれない(might)」、「場合がある(may)」、「など(e.g.)」など、条件付き文言は、具体的に別途記載のない限り、又はさもなければ使用される文脈内で理解されない限り、特定の実施形態が、特定の特徴、要素、及び/又は状態を含むが、他の実施形態は、それらの特定の特徴、要素、及び/又は状態を含まないことを伝えることを概して意図する。したがって、そのような条件付き文言は、特徴、要素、及び/又は状態が、1つ以上の実施形態のために何らかの方式で必要とされることを示唆することを概して意図せず、また、1つ以上の実施形態が、オーサー入力又はプロンプティングを用いて又は用いないで、これらの特徴、要素、及び/又は状態が、何らかの特定の実施形態に含まれるか又はそれにおいて実行されるべきかどうかを決定するための論理を、必ず含むことを示唆することを概して意図しない。
【0058】
本発明の特定の好ましい実施形態は、典型的には、フリート管理システム、より具体的には自律型車両フリート又は商業用トラック用途のためのタイヤ摩耗推定に対して本明細書に説明されることがあるが、本発明は、それに全くもって明示的に限定されるものではなく、本明細書で使用されるとき「車両」という用語は、別途記載のない限り、自己推進式であるかどうかにかかわらず、1つ以上のタイヤを含み得る、自動車、トラック、又はそれらの任意の等価物を指し、したがってタイヤ摩耗の正確な推定又は予測、並びに、例えば直接車両制御調節の形態での潜在的な無効化、交換、又は介入を必要とし得る。
【0059】
本明細書で使用するとき、別途記載のない限り、「ユーザ」という用語は、例えば、本明細書に開示される特徴及びステップを提供するためのユーザインターフェースを有する装置と関連付けられ得る、ドライバ、搭乗者、メカニック、技術者、フリート管理職員、又は任意の他の人物若しくはエンティティを指し得る。
【0060】
前述の詳細な説明は、例解及び説明の目的のために提供されている。したがって、新規で有用な発明の特定の実施形態を説明してきたが、このような参照が、以下の特許請求の範囲における記載を除いて、本発明の範囲への限定として解釈されることを意図しない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実装タイヤ健全性推定方法(300)であって、
データストレージ内のモデル生成データを経時的に集計することと、前記集計されたモデル生成データに基づいて複数のタイヤ健全性モデルを反復的に生成することであって、前記モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、複数のタイヤ構成要素(310、311、312、314)の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させる、ことと、
前記所与のタイプのタイヤの第1のタイヤに関連付けられた、及び/又は前記第1のタイヤが取り付けられた車両に関連付けられた1つ以上のセンサを介して、前記入力値の第2のセットを測定及び/又は決定すること(330)と、
前記入力値の前記測定された第2のセットに基づいて、前記複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の各々に関する前記1つ以上のタイヤ健全性変数のうちの少なくとも1つの適切なモデルを選択すること(340)と、
前記1つ以上の選択されたモデルを介して、かつ前記入力値の前記測定された第2のセットに基づいて、前記少なくとも1つのタイヤ構成要素の各々についてのそれぞれのタイヤ健全性変数を推定すること(350)と、
前記推定されたタイヤ健全性変数の比較に基づいて、前記第1のタイヤの健全性に対応する出力信号を生成すること(380)と、を含む、コンピュータ実装タイヤ健全性推定方法(300)。
【請求項2】
前記複数の選択可能なタイヤ健全性モデルは、前記複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の関連する破壊変数に対応する疲労推定モデル(314c)を含み、前記疲労推定モデルは、前記タイヤ上の複数の位置の各々における亀裂成長速度を、前記複数の位置の各々における少なくとも推定された歪み及び温度の関数として推定するための亀裂成長速度モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数を経時的に集計すること(360)と、前記集計された変数に少なくとも部分的に基づいて前記タイヤの残存有効寿命を予測すること(370)とを更に含み、前記出力信号は、前記タイヤの前記予測された残存有効寿命に対応する、ことと、
前記入力値の新たに測定されたセットに基づいて、更に、前記集計された推定されたそれぞれのタイヤ健全性変数の経時的な履歴分析に基づいて、前記方法の後続の反復のための適切なモデルを選択することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の選択可能なタイヤ健全性モデルは、
前記第1のタイヤの前記タイプに対する前記複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上の関連変数のタイヤ系列変化を考慮する経年劣化推定モデル(314b)、
前記複数のタイヤ構成要素のうちの1つ以上についてタイヤ健全性に関連する決定された外部衝撃を考慮する損傷推定モデル(314d)、
決定された及び/又は予測されたトレッド深さを考慮したタイヤ摩耗推定モデル(314a)、及び/又は
ベルト縁分離、ベルト離脱ベルト、ベルト離脱カーカス、プライ端分離からなる群から選択される状態の発生前の予測時間に少なくとも部分的に基づいて、前記タイヤの残存有効寿命を予測するための1つ以上のカーカス健全性モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
タイヤ健全性推定システム(100)であって、
経時的に集計されたモデル生成データを記憶したデータストレージ(106、132)と、前記集計されたモデル生成データに基づいて反復的に生成された複数のタイヤ健全性モデル(134)とを含み、前記モデル生成データは、所与のタイプのタイヤについての第1のセットの入力値の様々な組み合わせを、複数のタイヤ構成要素の各々についての1つ以上のタイヤ健全性変数の各々に相関させることと、
非一時的コンピュータ可読媒体上に常駐し、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(300)におけるステップの実行を指示するためにプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラム製品と、を含む、タイヤ健全性推定システム(100)。

【国際調査報告】