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特表2024-546764モータドライバにおける誘導接地バウンス電圧の低減のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】モータドライバにおける誘導接地バウンス電圧の低減のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20241219BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20241219BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/16 M
H03K17/687 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534477
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 US2022052079
(87)【国際公開番号】W WO2023107529
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】17/547,449
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】サチン セトゥマダヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ガナパシ シャンカール クリシュナムルティ
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740AA04
5H740BA12
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM02
5J055AX26
5J055AX55
5J055AX56
5J055AX66
5J055BX16
5J055CX07
5J055CX13
5J055CX20
5J055DX60
5J055EX07
5J055EY12
5J055EY21
5J055EZ03
5J055FX05
5J055FX13
5J055FX20
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX05
(57)【要約】
モータに駆動信号を供給するように動作可能なドライバシステム(100)が、入力電圧に結合されるように適合されるシステム入力(106)と、モータに結合されるように適合されるシステム出力(110)とを含む。ドライバシステム(100)は、システム入力(106)に結合される第1の端子(104)と、システム出力(110)に結合される第2の端子(108)とを有し、制御端子(112)を有する、ハイサイドトランジスタを含む。ドライバシステム(100)は、システム出力(110)に結合される第1の端子(120)と、基準電位端子(124)に結合される第2の端子(122)とを有し、制御端子(126)を有する、ローサイドトランジスタを含む。ドライバシステム(100)は、ローサイドデジタル制御信号がロー状態からハイ状態に遷移することに応答して第1のレベルの電流を提供し、出力電圧が上側基準電圧未満である場合に第2のレベルの電流を提供するローサイドゲート制御回路を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号をモータに供給するように動作可能なドライバシステムであって、前記ドライバシステムが、
入力電圧に結合されるように適合されるシステム入力と、
前記モータに結合されるように適合されるシステム出力と、
前記システム入力に結合される第1の端子と、前記システム出力に結合される第2の端子とを有し、制御端子を有する、ハイサイドトランジスタと、
前記システム出力に結合される第1の端子と、基準電位端子に結合される第2の端子とを有し、制御端子を有する、ローサイドトランジスタと、
ローサイドゲート制御回路と、
を含み、
前記ローサイドゲート制御回路が、
前記システム出力に結合される第1の入力と、
上側基準電圧を受け取るように適合される第2の入力と、
ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第3の入力と、
電圧源に結合されるように適合される第4の入力と、
前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される出力と、
を有し、
前記ローサイドゲート制御回路が、
前記ローサイドゲート制御回路の前記出力において、前記ローサイドデジタル制御信号がロー状態からハイ状態に遷移することに応答して第1のレベルの電流を提供し、
前記駆動信号が前記上側基準電圧よりも小さい場合、前記第1のレベルの電流よりも大きい第2のレベルの電流を提供する、
ように動作可能である、
ドライバシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、前記駆動信号が前記上側基準電圧を下回って下がるまで前記基準電位端子における誘導接地バウンス電圧を低減するために前記第1のレベルの電流を維持するように動作可能である、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、前記駆動信号が前記上側基準電圧を下回って下がるまで前記ローサイドトランジスタを介する電流の変化率を低減することによって、前記基準電位端子における誘導接地バウンス電圧を低減するために、前記第1のレベルの電流を維持するように動作可能である、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、前記駆動信号が前記上側基準電圧を下回って下がるまで、前記ローサイドトランジスタを介する電流の変化率を低減するために、前記第2のレベルの電流よりも低い前記第1のレベルの電流を維持するように動作可能である、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、前記ローサイドトランジスタがミラー(Miller)領域に遷移するときに前記第2のレベルの電流を提供するように動作可能である、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドデジタル制御信号が前記ハイ状態から前記ロー状態に遷移することに応答して、前記ローサイドゲート制御回路が、前記ローサイドトランジスタをオフにするために、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に第3のレベルの電流を提供するように動作可能である、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、
前記システム出力に結合される第1の入力と、前記上側基準電圧を受け取るように適合される第2の入力と、を有する第1の比較回路を含み、
前記第1の比較回路が、前記駆動信号が前記上側基準電圧を下回って下がることに応答して、出力においてスルースタート信号を提供するように動作可能である、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドデジタル制御回路が、
前記電圧源に結合されるように適合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、逆回復電流源と、
前記逆回復電流源の前記第2の端子に結合される第1の端子と、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される第2の端子と、前記第1の比較回路の前記出力に結合される第3の端子と、前記ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第4の端子と、を有する、逆回復スイッチと、
を含み、
前記逆回復スイッチが、
前記ローサイドデジタル制御信号が前記ロー状態から前記ハイ状態に遷移することに応答して、前記逆回復電流源を前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合するように、及び、
前記第1の比較回路による前記スルースタート信号のアサートに応答して、前記逆回復電流源を、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子から接続解除するように、
動作可能である、
システム。
【請求項9】
請求項7に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、
前記電圧源に結合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、第1のスルー電流源と、
前記第1のスルー電流源の前記第2の端子に結合される第1の端子と、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される第2の端子と、前記第1の比較回路の前記出力に結合される第3の端子と、前記ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第4の端子と、を有する、第1のスルー電流スイッチと、
を含み、
前記第1のスルー電流スイッチが、前記第1の比較回路による前記スルースタート信号のアサートに応答して、前記第1のスルー電流源を前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合するように動作可能である、
システム。
【請求項10】
請求項7に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、
前記基準電位端子に結合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、第2のスルー電流源と、
前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される第1の端子と、前記第2のスルー電流源の前記第2の端子に結合される第2の端子と、前記ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第3の端子と、を有する、第2のスルー電流スイッチと、
を含み、
前記第2のスルー電流スイッチが、前記デジタル制御信号が前記ハイ状態から前記ロー状態に遷移することに応答して、前記第2のスルー電流源を前記ローサイドトランジスタの制御端子に結合して、前記ローサイドトランジスタをオフにするように動作可能である、
システム。
【請求項11】
請求項1に記載のドライバシステムであって、
前記ハイサイドトランジスタの前記第1の端子に結合されるカソードを有し、前記ハイサイドトランジスタの前記第2の端子に結合されるアノードを有する、ハイサイドボディダイオードと、
前記ローサイドトランジスタの前記第1の端子に結合されるカソードを有し、前記ローサイドトランジスタの前記第2の端子に結合されるアノードを有する、ローサイドボディダイオードと、
をさらに含む、システム。
【請求項12】
モータを駆動するために出力電圧を供給するように動作可能なドライバシステムであって、前記ドライバシステムが、
入力電圧に結合されるように適合されるシステム入力と、
前記モータに結合されるように適合されるシステム出力と、
前記システム入力に結合される第1の端子と、前記システム出力に結合される第2の端子とを有し、制御端子を有する、ハイサイドトランジスタと、
前記システム出力に結合される第1の端子と、基準電位端子に結合される第2の端子とを有し、制御端子を有する、ローサイドトランジスタと、
ローサイドゲート制御回路と、
を含み、
前記ローサイドゲート制御回路が、
前記システム出力に結合される第1の入力と、
前記上側基準電圧に結合されるように適合される第2の入力と、
ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第3の入力と、
電圧源に結合されるように適合される第4の入力と、
前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される出力と、
を有し、
前記ローサイドゲート制御回路が、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に第1のレベルの電流を印加するように、及び、前記出力電圧が前記上側基準電圧を下回って下がるまで前記ローサイドトランジスタの前記制御端子への前記第1のレベルの電流を維持するように動作可能であり、スルースタート信号のアサートに応答して前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に前記第1のレベルの電流より大きい第2のレベルの電流を印加するように動作可能である、
ドライバシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、前記出力電圧が前記上側基準電圧を下回って下がるまで前記ローサイドトランジスタを介する電流の変化率を低減するために、前記第2のレベルの電流よりも小さい前記第1のレベルの電流を維持するように動作可能である、システム。
【請求項14】
請求項12に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドデジタル制御信号が前記ハイ状態から前記ロー状態に遷移することに応答して、前記ローサイドゲート制御回路が、前記ローサイドトランジスタをオフにするための第3のレベルの電流を提供するように動作可能である、システム。
【請求項15】
請求項12に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、
前記システム出力に結合される第1の入力と、前記上側基準電圧に結合されるように適合される第2の入力と、を有する第1の比較回路を含み、
前記第1の比較回路が、前記出力電圧が前記上側基準電圧を下回って下がる場合、前記スルースタート信号を提供するように動作可能である、システム。
【請求項16】
請求項12に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドデジタル制御回路が、
前記電圧源に結合されるように適合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、逆回復電流源と、
前記逆回復電流源の前記第2の端子に結合される第1の端子と、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される第2の端子と、前記第1の比較回路の前記出力に結合される第3の端子と、前記ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第4の端子と、を有する、逆回復スイッチと、
を含み、
前記逆回復スイッチが、前記ローサイドデジタル制御信号が前記ロー状態から前記ハイ状態に遷移することに応答して、前記逆回復電流源を前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合するように、及び、前記スルースタート信号の前記アサートに応答して、前記逆回復電流源を、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子から接続解除するように、動作可能である、
システム。
【請求項17】
請求項12に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、
前記電圧源に結合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、第1のスルー電流源と、
前記第1のスルー電流源の前記第2の端子に結合される第1の端子と、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される第2の端子と、前記第1の比較回路の前記出力に結合される第3の端子と、前記ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第4の端子と、を有する、第1のスルー電流スイッチと、
を含み、
前記第1のスルー電流スイッチが、前記スルースタート信号の前記アサートに応答して、第1のスルー電流源を、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合するように動作可能である、
システム。
【請求項18】
請求項12に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、
前記基準電位端子に結合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、第2のスルー電流源と、
前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される第1の端子と、前記第2のスルー電流源の前記第2の端子に結合される第2の端子と、前記ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第3の端子と、を有する、第2のスルー電流スイッチと、
を含み、
前記第2のスルー電流スイッチが、前記デジタル制御信号が前記ハイ状態から前記ロー状態に遷移することに応答して、前記第2のスルー電流源を前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合して、前記ローサイドトランジスタをオフにするように動作可能である、
システム。
【請求項19】
モータを駆動するために出力電圧を供給するように動作可能なドライバシステムであって、前記ドライバシステムが、
入力電圧に結合されるように適合されるシステム入力と、
前記モータに結合されるように適合されるシステム出力と、
前記システム入力に結合される第1の端子と、前記システム出力に結合される第2の端子とを有し、制御端子を有する、ハイサイドトランジスタと、
前記システム出力に結合される第1の端子と、基準電位端子に結合される第2の端子とを有し、制御端子を有する、ローサイドトランジスタと、
前記ハイサイドトランジスタの前記第1の端子に結合されるカソードを有し、前記ハイサイドトランジスタの前記第2の端子に結合されるアノードを有する、ハイサイドボディダイオードと、
前記ローサイドトランジスタの前記第1の端子に結合されるカソードを有し、前記ローサイドトランジスタの前記第2の端子に結合されるアノードを有する、ローサイドボディダイオードと、
ローサイドゲート制御回路と、
を含み、
前記ローサイドゲート制御回路が、
前記システム出力に結合される第1の入力と、
上側基準電圧を受け取るように適合される第2の入力と、
ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第3の入力と、
電圧源に結合されるように適合される第4の入力と、
前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に結合される出力と、
を有し、
前記ローサイドゲート制御回路が、前記デジタル制御信号がロー状態からハイ状態に遷移することに応答して、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に第1のレベルの電流を印加するように動作可能であり、前記出力電圧が前記上側基準電圧を下回って下がるまで前記ローサイドトランジスタを介する電流の変化率を低減することによって、前記基準電位端子における接地バウンス電圧を低減するために、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子への前記第1のレベルの電流を維持するように動作可能であり、スルースタート信号のアサートに応答して、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に、前記第1のレベルの電流よりも大きい第2のレベルの電流を印加するように動作可能である、
ドライバシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のドライバシステムであって、前記ローサイドゲート制御回路が、前記ローサイドデジタル制御信号がハイ状態からロー状態に遷移することに応答して、前記ローサイドトランジスタをオフにするために、前記ローサイドトランジスタの前記制御端子に第3のレベルの電流を印加するように動作可能である、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、概してモータドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、自動車、産業用ファン及びポンプ、工作機械、家庭用電化製品、ドローン、ジンブル、及びディスクドライブに見られる。電気モータは概して、ブリッジ構成に配置されるハイサイドトランジスタ及びローサイドトランジスタを含み得るモータドライバ回路によって動作する。いくつかの構成において、モータの各相に一対のハイサイド/ローサイドトランジスタが用いられる。ハイサイドトランジスタは、入力電圧端子と出力電圧端子との間に結合され、ローサイドトランジスタは、出力電圧端子と共通電位(例えば、接地)端子との間に結合される。ハイサイドトランジスタ及びローサイドトランジスタは、それぞれのボディダイオードを有する。モータドライバ回路が集積回路(IC)に実装される場合、入力電圧端子を外部コネクタ(例えば、ICの外部ピン)に接続するボンドワイヤに起因する或るボンドワイヤインダクタンスが存在し、接地端子を外部コネクタに接続するボンドワイヤに起因する別のボンドワイヤインダクタンスが存在する。
【0003】
ローサイドトランジスタがオンになると、ハイサイドボディダイオードの逆回復時間により、ハイサイドボディダイオードを介して流れる電流は減少し始めるが、ローサイドトランジスタを介して流れる電流は増加し始める。ハイサイドボディダイオードを介して流れる電流を防止するためにハイサイドボディダイオードを完全に逆バイアスするため、ローサイドトランジスタは、ハイサイドボディダイオードに蓄積された逆回復電荷を考慮するために、モータを介する電流(モータ電流Im」)よりも大きな大きさを有し得る電流を引き出す。その結果、ローサイドトランジスタを介する電流は、モータ電流Imよりも高くなり、正のピークに達してからImまで降下する。ローサイドトランジスタは、モータ電流Imよりも大きい電流を引き出すので、ローサイドトランジスタを介する電流の一部が、入力電圧からハイサイドボディダイオードを介してカソードからアノードに(すなわち、逆方向に)引き出される。そのため、ハイサイドボディダイオードを介する電流はゼロを下回って下がり、負のピークに達してからゼロまで上昇する。ローサイドトランジスタを介する立ち上がり電流は、ボンドワイヤインダクタンスの両端に正の電圧を誘導し、ローサイドトランジスタを介する立ち下がり電流は、ボンドワイヤインダクタンスの両端に負の電圧を誘導する。ボンドワイヤの両端の誘導された電圧は、概して接地バウンス電圧VB INTと呼ばれる。
【0004】
接地バウンス電圧VB INTがローサイドトランジスタのソースに存在するので、VB INTは、ローサイドトランジスタをオンにするためにローサイドトランジスタのゲートに印加されなければならない電圧を規定する。また、VB INTは、ローサイドトランジスタのドレインとソースとの間の電圧降下を増大させる。
【0005】
VB INTが+5Vである場合、ドライバ回路は、(Vt+5V)をゲートに印加してローサイドトランジスタをオンにする必要がある(Vtはローサイドトランジスタをオンにするために必要な閾値電圧である)。そのため、Vtが+5Vである場合、ドライバ回路は、ローサイドトランジスタをオンにするために+10Vをゲートに印加しなければならない。VB INTが-4Vである場合、ドライバ回路は、ローサイドトランジスタをオンにするためにゲートに+1Vを印加する必要がある。また、VB_INTが-4Vであり、Voutが15Vである場合、ローサイドトランジスタの両端の電圧は19Vまで上昇する。
【0006】
接地バウンス電圧VB INTの影響を緩和するためのアプローチの1つは、VB INTを追跡し、対応するゲート‐ソース間電圧を印加してローサイドトランジスタをオンにする、付加的な回路要素を用いること、また、ドレインとソースとの間の高電圧降下に耐えることができる一層高い定格のトランジスタを用いることである。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、モータに駆動信号を供給するように動作可能なドライバシステムが、入力電圧に結合されるように適合されるシステム入力と、モータに結合されるように適合されるシステム出力とを含む。ドライバシステムはハイサイドトランジスタを含み、ハイサイドトランジスタは、システム入力に結合される第1の端子と、システム出力に結合される第2の端子と、制御端子とを有する。ドライバシステムはローサイドトランジスタを含み、ローサイドトランジスタは、システム出力に結合される第1の端子と、基準電位端子に結合される第2の端子と、制御端子とを有する。ドライバシステムは、システム出力に結合される第1の入力と、上側基準電圧を受け取るように適合される第2の入力と、ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第3の入力と、電圧源に結合されるように適合される第4の入力と、ローサイドトランジスタの制御端子に結合される出力とを有するローサイドゲート制御回路を含む。ローサイドゲート制御回路は、ローサイドゲート制御回路の出力において、ローサイドデジタル制御信号がロー状態からハイ状態に遷移することに応答して第1のレベルの電流を提供し、駆動信号が上側基準電圧未満である場合、第1のレベルの電流よりも大きい第2のレベルの電流を提供する。
【0008】
別の態様において、ローサイドゲート制御回路は、駆動信号が上側基準電圧を下回って下がるまで第1のレベルの電流を維持して、基準電位端子における誘導接地バウンス電圧を低減する。
【0009】
別の態様において、ローサイドゲート制御回路は、駆動信号が上側基準電圧を下回って下がるまでローサイドトランジスタを介する電流の変化率を低減することによって、基準電位端子における誘導接地バウンス電圧を低減するために、第1のレベルの電流を維持する。
【0010】
別の態様において、ローサイドゲート制御は、駆動信号が上側基準電圧を下回って下がるまでローサイドトランジスタを介する電流の変化率を低減するために、第2のレベルの電流よりも低い第1のレベルの電流を維持する。
【0011】
別の態様において、ローサイドゲート制御回路は、ローサイドトランジスタがミラー(Miller)領域に遷移するときに第2のレベルの電流を提供する。
【0012】
別の態様において、ローサイドゲート制御は、ローサイドデジタル制御信号がハイ状態からロー状態に遷移することに応答してローサイドトランジスタをオフにするために、ローサイドトランジスタの制御端子に第3のレベルの電流を提供する。
【0013】
別の態様において、ローサイドゲート制御回路は、システム出力に結合される第1の入力と、上側基準電圧を受け取るように適合される第2の入力とを有する、第1の比較回路を含む。第1の比較回路は、駆動信号が上側基準電圧を下回って下がることに応答して、出力においてスルースタート信号を供給する。
【0014】
別の態様において、ローサイドデジタル制御回路は、電圧源に結合されるように適合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、逆回復電流源を含む。ローサイドゲート制御回路は、逆回復スイッチを含み、逆回復スイッチは、逆回復電流源の第2の端子に結合される第1の端子と、ローサイドトランジスタの制御端子に結合される第2の端子と、第1の比較回路の出力に結合される第3の端子と、ローサイドデジタル制御信号を受け取るように適合される第4の端子とを有する。逆回復スイッチは、ローサイドデジタル制御信号がロー状態からハイ状態に遷移することに応答して、逆回復電流源をローサイドトランジスタの制御端子に結合し、第1の比較回路によるスルースタート信号のアサートに応答して、逆回復電流源をローサイドトランジスタの制御端子から接続解除する。
【0015】
別の態様において、ローサイドゲート制御回路は、電圧源に結合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、第1のスルー電流源を含む。ローサイドゲート制御回路は、第1のスルー電流スイッチを含み、第1のスルー電流スイッチは、第1のスルー電流源の第2の端子に結合される第1の端子と、ローサイドトランジスタの制御端子に結合される第2の端子と、第1の比較回路の出力に結合される第3の端子と、ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第4の端子とを有する。第1のスルー電流スイッチは、第1の比較回路によるスルースタート信号のアサートに応答して、第1のスルー電流源をローサイドトランジスタの制御端子に結合する。
【0016】
別の態様において、ローサイドゲート制御回路は、基準電位端子に結合される第1の端子を有し、第2の端子を有する、第2のスルー電流源を含む。ローサイドゲート制御回路は第2のスルー電流スイッチを含み、第2のスルー電流スイッチは、ローサイドトランジスタの制御端子に結合される第1の端子と、第2のスルー電流源の第2の端子に結合される第2の端子と、ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第3の端子とを有する。第2のスルー電流スイッチは、デジタル制御信号がハイ状態からロー状態に遷移することに応答してローサイドトランジスタをオフにするために、第2のスルー電流源をローサイドトランジスタの制御端子に結合する。
【0017】
別の態様において、出力電圧をモータに供給するように動作可能なドライバシステムが、入力電圧に結合されるように適合されるシステム入力と、モータに結合されるように適合されるシステム出力とを含む。ドライバシステムはハイサイドトランジスタを含み、ハイサイドトランジスタは、システム入力に結合される第1の端子と、システム出力に結合される第2の端子とを有し、制御端子を有する。ドライバシステムは、ローサイドトランジスタを含み、ローサイドトランジスタは、システム出力に結合される第1の端子と、基準電位端子に結合される第2の端子と、制御端子とを有する。ドライバシステムはローサイドゲート制御回路を含み、ローサイドゲート制御回路は、システム出力に結合される第1の入力と、上側基準電圧を受け取るように適合される第2の入力と、ローサイドデジタル制御信号を受信するように適合される第3の入力と、電圧源に結合されるように適合される第4の入力とを有し、ローサイドトランジスタの制御端子に結合される出力を有する。ローサイドゲート制御回路は、ローサイドトランジスタの制御端子に第1のレベルの電流を提供し、ローサイドトランジスタの制御端子に第1のレベルの電流を維持して、出力電圧が上側基準電圧を下回って下がるまで基準電位端子における接地バウンス電圧を低減し、スルースタート信号のアサートに応答してローサイドトランジスタの制御端子に第2のレベルの電流を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】例示のドライバシステムの概略図である。
【0019】
図2図1のドライバシステムによって生成される例示の波形である。
【0020】
図3】例示の制御回路のブロック図である。
【0021】
図4】比較回路の例示の概略図である。
【0022】
図面において、同じ参照番号又は他の特徴指示子は、(機能的及び/又は構造的に)同じ又は同様の特徴を示すために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、例示のドライバシステム100を図示する。システム100は、入力106に結合される第1の端子104(例えば、ドレイン)を有する、ハイサイドトランジスタMHを含む。ハイサイドトランジスタMHは、出力110に結合される第2の端子108(例えば、ソース)を有する。ハイサイドトランジスタMHは、制御端子112(例えば、ゲート)を有する。ハイサイドトランジスタMHは、ボディダイオードDHBを含み、アノードがソース108に結合され、カソードがドレイン104に結合される。
【0024】
いくつかの実施例において、ドライバシステム100は、集積回路(IC)内に実装することができる。第1の端子104(例えば、ドレイン)を入力106として指定される外部コネクタ(例えば、ICの外部ピン)に接続するボンドワイヤに起因して、ボンドワイヤインダクタンスLBH(例えば、1ナノヘンリー)が存在する。ダイオードD1が、ソース108に結合されるアノードと、ゲート112に結合されるカソードとを有する。ブリッジドライバ回路では、ダイオードD1は、MHのゲート‐ソース間電圧があまりに大きくゼロを下回り過ぎる(すなわち、負になり過ぎる)ことを制限するために、ハイサイドトランジスタMHのゲート112とソース108との間に接続され得、これは、MHがオフにされるときに信頼性の問題を引き起こし得る。
【0025】
システム100は、第2の端子108と出力110とに結合される第1の端子120(例えば、ドレイン)を有する、ローサイドトランジスタMLを含む。ローサイドトランジスタMLは、共通電位端子124(例えば、電気接地)に結合される第2の端子122(例えば、ソース)を有する。ローサイドトランジスタMLは、制御端子126(例えば、ゲート)を有する。ローサイドトランジスタMLはボディダイオードDLBを含み、アノードが第2の端子122(例えば、ソース)に結合され、カソードが第1の端子120(例えば、ドレイン)に結合される。ソース122と、共通電位端子124として指定される外部コネクタとの間に、ボンドワイヤインダクタンスLBL(例えば、1ナノヘンリー)が存在する。
【0026】
入力106は、入力電圧Vm(例えば、12V、25V、40V)に結合され得、基準電位端子124は、電気接地に結合され得る。
【0027】
いくつかの例において、トランジスタはnチャネル電界効果トランジスタ(NFET)であり、別の例において、トランジスタはpチャネル電界効果トランジスタ(PFET)である。いくつかの例において、トランジスタは、バイポーラトランジスタ及び/又は他のタイプのパワートランジスタ(例えば、ドレイン拡張FET)であり得る。いくつかの例において、FETは、シリコン基板内/シリコン基板上に実装される。他の例において、FETは、窒化ガリウム(GaN)及び/又は炭化ケイ素(SiC)を用いて実装される。
【0028】
誘導負荷Lmによって表されるモータの1つの位相は、出力110に結合される第1の端子130と、第2の端子132とを有し、第2の端子132は、第1のスイッチS1を介して入力106に結合され得るか、又は第2のスイッチS2を介して接地に結合され得る。モータを駆動するために用いられる位相数(各相は、モータのステータの一部に巻き付けられる巻線対の数によって決定され得る)に応じて、付加的な特徴(例えば、MH、ML、S1、及びS2)が、モータの各相を駆動するように接続される。一方向にモータLmを駆動するには、ゲート112にゲート信号GATE_Hを印加してハイサイドトランジスタMHをオンにし、ローサイドトランジスタMLをオフにし(言い換えると、ゲート信号GATE_Lがゲート126に印加されない)、スイッチS2をオン(すなわち、閉/導通)にし、スイッチS1をオフ(すなわち、開/非導電性)にする。その結果、電流ImがVmからMHを介して、次いでモータLmを介して、最終的にスイッチS2を介して接地に流れる。モータLmを逆方向に駆動するには、MLのゲート126にゲート信号GATE_Lを印加し、ハイサイドトランジスタMHをオフにし(言い換えると、ゲート信号GATE_Hがゲート112に印加されない)、スイッチS1をオン(すなわち、閉/導通)にし、スイッチS2をオフ(すなわち、開/非導電性)にする。その結果、電流ImがVmからスイッチS1を介して流れ、その後、モータLmを介して、最終的にMLを介して接地に流れる。一例において、ゲート信号GATE_H及びGATE_Lは、パルス幅変調(PWM)信号(これは、可変パルス幅を有する)又はパルス周波数変調(PFM)信号(これは、可変周波数であるが固定振幅を有する)であってもよい。
【0029】
システム100は制御回路140を含み、制御回路140は、出力110に結合される第1の入力142と、上側基準電圧VREF_Hを受け取るように結合される第2の入力144と、ローサイドデジタル制御信号CNTR_Lを受信するように結合される第3の入力146と、ハイサイドデジタル制御信号CNTR_Hを受信するように結合される第4の入力148と、電圧源VCC(例えば、5V、7V)に結合される第5の入力150とを有する。いくつかの例において、信号144、146、及び/又は148は、MH及びMLと同じ集積回路(IC)上に含まれてもよく、又は異なるIC上に実装されてもよい、外部入力(例えば、ユーザー定義の入力)によって、又はコントローラ(例えば、プロセッサ、状態機械、デジタル論理、アナログ回路要素、メモリ、及び/又は特定用途向け集積回路を含む)によって、提供される。ローサイドデジタル制御信号CNTR Lは、ローサイドトランジスタMLのためのタイミングを提供し、ハイサイドデジタル制御信号CNTR Hは、ハイサイドトランジスタMHのためのタイミングを提供する。制御回路140は、ローサイドトランジスタMLのゲート126に結合される出力152においてゲート信号GATE Lを提供し、ハイサイドトランジスタMHのゲート112に結合される出力154においてゲート信号GATE Hを提供する。また、制御回路140は、スイッチS1を制御するために出力156において制御信号CNTR S1を提供し、スイッチS2を制御するために出力158において制御信号CNTR S2を提供する。
【0030】
いくつかの例において、制御回路140は、付加的な回路要素及び/又はより高い定格のトランジスタを必要とすることなく、誘導電圧VB INTの影響を軽減する。制御回路140は、逆回復期間中にMLのゲート126に第1のレベルの電流(逆回復電流とも呼ばれる)を印加し、その後、出力電圧Voutが上側基準電圧VREF Hを下回って下がると、MLがミラー領域に遷移したことを示す第2のレベルの電流(スルー電流とも呼ばれる)まで電流を増加させる。
【0031】
図2は、ドライバシステム100において用いられるか又はドライバシステム100によって生成される、波形を図示する。x軸は時間を表し、y軸は、電圧波形に対する電圧と、電流波形に対する電流を表す。時間T1において、ローサイドデジタル制御信号CNTR L204がロー状態からハイ状態に遷移して、ローサイドトランジスタMLをオンにするプロセスが開始される。それに応答して、制御回路140は、MLのゲート126に、第1のレベルの電流I_RR(逆回復電流I_RRとも呼ばれる)に等しい大きさを有するゲート電流I_GL208を印加する。いくつかの例において、I_RRは約500マイクロアンペア(500μA)である。いくつかの例において、I_RRの大きさは、I_RRが、ハイサイドボディダイオードDHBの逆回復期間を制限するのに充分に低いが、有意な伝搬遅延(MLをオンにするのに必要な時間)を防止するのにも充分であるように選択される。前述したように、MLをオンにすると、S1が閉じ(導通)、MHがオフになり、S2が開く(非導通)。
【0032】
I_RRに応答して、MLのゲート‐ソース間電圧V GSL212が上昇し始める。MLは、時間T1においてまだオフにされているので、モータ電流Imは、ハイサイドボディダイオードDHBを介してアノードからカソードへ流れる。そのため、時間T1において、電流I_HB216(ハイサイドボディダイオードDHBを介して流れる)はモータ電流Imに等しく、電流I LS220(ローサイドトランジスタMLを介して流れる)はゼロである。時間T1において、出力電圧Vout224は(Vm+VDH)に等しく、ここでVDHは、ハイサイドボディダイオードDHBの両端間の電圧である。ボディダイオードDHBのサイズに応じて、電圧VDHは変化し得る(例えば、0.7V、0.9V、1.2V)。
【0033】
時間T2において、ゲート‐ソース間電圧VGS L212は、MLをオンにするために必要な閾値電圧Vtを超えて上昇する。そのため、MLを介する電流I LS220が上昇し始める。時間T2において、MLがオンされるが、ハイサイドボディダイオードDHBの逆回復時間のため、電流I_HB216は、DHBを流れ続けるが、電流I LS220がMLを介して上昇し始めるにつれて減少し始める。
【0034】
時間T2において、出力電圧Vout224は低下し始め、時間T3において、Vout224はVmを下回って下がる。これに応じて、時間T3において、制御回路140は、ゲート電流I_GLを第1のレベルの電流(逆回復電流I_RR)から第2のレベルの電流(スルー電流I SLEW)まで増大させる。そのため、制御回路140は、VoutがVmを下回って下がるまで、より低いゲート電流(逆回復電流I_RR)を維持し、その後、より高いゲート電流(スルー電流I SLEW)まで増加する。いくつかの例において、約100V/μs(100ボルト/マイクロ秒)のスルーレートに対して、I SLEWは約5mAである。
【0035】
時間T3において、ハイサイドボディダイオードDHBは逆バイアスされ、その結果、ハイサイドボディダイオードDHBを介する電流I_HB216はゼロまで下がり、モータ電流Imは、VmからS1を介し、その後Lmを介し、最終的にMLを介して流れる。前述のように、MLをオンにすると、MHはオフになり、S1は閉じ(導通)、S2は開く(非導通)。
【0036】
制御回路140は、時間T3においてMLがミラー領域に遷移し、DHBが逆バイアスされるまで、下側ゲート電流(逆回復電流)を維持することによって、MLのゲート126をゆっくりと充電する。その結果、MLを介する電流I LS220の急激な上昇が防止され、これにより、T2とT3との間の接地バウンス電圧VB INT228が大幅に低減される。図2の例において、接地バウンス電圧VB INT228は、MLのソース122(図1に示される)における接地バウンス電圧を指し、いくつかの例において、接地バウンス電圧は約1Vに制限される。
【0037】
時間T3において、ローサイドトランジスタMLがミラー領域に遷移し、これにより、MLのゲート‐ドレイン間静電容量CGD(図示せず)が充電し始める。その結果、時間T3において、ゲート‐ソース間電圧VGS L212は平坦化する(例えば、平坦部)。
【0038】
時間T4において、ゲート‐ドレイン間キャパシタCGDが充電され、このとき、ローサイドトランジスタMLはFETエンハンスメント領域に遷移する。その結果、時間T4において、ゲート‐ソース間電圧VGS L212は、再び上昇し始め、時間T5においてVCC(例えば、約5V)に達する。時間T4においてゲート‐ドレイン間コンデンサCGDが充電されるので、ゲート電流IG_L208は低下し始める。
【0039】
時間T6において、ローサイドデジタル制御信号CNTR Lがハイ状態からロー状態に遷移して、ローサイドトランジスタMLがオフになる。それに応答して、時間T6において、制御回路140は、大きさI SLEWを有するが負極性(例えば、-I SLEW)を有するゲート電流IG_L208を印加し、これは「プルダウン電流」とも呼ばれる。その結果、時間T7において、VGS L212は、ミラー領域内のレベル(すなわち、T3とT4との間)と同じ電圧レベルまで下がる。
【0040】
時間T7において、出力電圧Vout224は上向きにスルー(slew)し、時間T8において、Vout224はVmを上回って上昇し、これにより、電流I HB216(例えば、ハイサイドボディダイオードI HBを介する電流)が上昇し始める。電流I HB216が上昇するにつれて、電流IL S220(例えば、ローサイドトランジスタMLを介する電流)は低下し始める。時間T9において、電流I LS220はゼロまで下がり、その結果、I HB216はImに等しくなる。
【0041】
電流I LS220は、T8とT9との間で減少するので、MLを介する電流の負の変化率は、T8とT9との間の負の接地バウンス電圧VB INT228を誘導する。いくつかの例において、負の接地バウンス電圧の大きさは、接地バウンス電圧VB INT228の大きさがT2とT3との間で制限されるのと同様に、プルダウン電流-I SLEWの大きさを減少させる(すなわち、一層負でなくする)ことによって制限され得る。
【0042】
図3は、一例の制御回路140のローサイドゲート駆動回路304を図示する。ローサイドゲート駆動回路304は、ゲート信号GATE Lをゲート126に提供して、ML(図1に示す)を駆動する。制御回路140は又はイサイドゲート駆動回路(図3には図示せず)を含み、ハイサイドゲート駆動回路は、ゲート信号GATE Hを提供してMH(図1に示される)を駆動する。
【0043】
ローサイドゲート駆動回路304は、第1の比較回路310を含み、第1の比較回路310は、システム出力110に結合される第1の入力312(例えば、図1の入力142)と、上側基準電圧VREF H(例えば、図1の入力144)を受け取るように適合される第2の入力314(例えば、図1の入力144)とを有する。第1の比較回路310は、出力電圧Voutが上側基準電圧VREF Hを下回って下がる場合、出力316においてスルースタート信号SLEW STARTを提供する。
【0044】
ローサイドゲート駆動回路304は、電圧源VCCに結合される第1の端子322を有する第1の電流源320(逆回復電流源320とも呼ばれる)を含む。第1の電流源320は、出力324において第1のレベルの電流I_RR(逆回復電流I_RRとも呼ばれる)を提供する。
【0045】
ローサイドゲート駆動回路304は、第1のレベルの電流源320(逆回復電流源320)の第2の端子324に結合される第1の端子328を有する、第1のスイッチ326(逆回復スイッチ326とも呼ばれる)と、ローサイドトランジスタML(図3には図示せず)のゲート126に結合される第2の端子330と、第1の比較回路310の出力316に結合される第3の端子332と、ローサイドデジタル制御信号CNTR Lを受信するように結合される第4の端子334とを含む。第1の電流スイッチ326は、ロー状態からハイ状態に遷移するCNTR Lに応答して、第1の電流源320をMLのゲート126に結合し、第1の比較回路310によるスルースタート信号SLEW STARTのアサートに応答して、第1のレベルの電流源320をMLのゲート126から接続解除する。
【0046】
ローサイドゲート駆動回路304は、電圧源VCCに結合される第1の端子342を有する第2の電流源340(スルー電流源340とも呼ばれる)を含む。第2のレベルの電流源340は、出力344において第2のレベルの電流I SLEW(スルー電流I SLEWとも呼ばれる)を提供する。第2のレベルの電流I SLEWは、第1のレベルの電流I_RRより大きい。
【0047】
ローサイドゲート駆動回路304は、第2のスイッチ346(スルー電流スイッチ346とも呼ばれる)を含み、第2のスイッチ346は、スルー電流源340の出力344に結合される第1の端子348と、MLのゲート126に結合される第2の端子350と、第1の比較回路310の出力316に結合される第3の端子352と、ローサイドデジタル制御信号CNTR Lを受信するように結合される第4の端子354とを有する。スルー電流スイッチ346は、第1の比較回路310によるスルースタート信号SLEW STARTのアサートに応答して、スルー電流源340をMLのゲート126に結合する。
【0048】
ローサイドゲート駆動回路304は、共通電位(例えば、接地)端子に結合される第1の端子362と、第2の端子364とを有する、第3の電流源360を含む。ローサイドゲート駆動回路304は、第3のスイッチ368を含み、第3のスイッチ368は、MLのゲート126に結合される第1の端子370と、第2の電流源360の第2の端子364に結合される第2の端子372と、ローサイドデジタル制御信号CNTR Lを受信するように結合される第3の端子374とを有する。第3のスイッチ368は、ハイ状態からロー状態に遷移するCNTR Lに応答して、第3の電流源360をゲート126に結合する。その結果、ゲート126は、スルー電流源370によって接地に放電され、MLはオフになる。
【0049】
ローサイドゲート駆動回路304は、出力電圧Voutが、ローサイドトランジスタMLがミラー領域に遷移しハイサイドボディダイオードDHBが逆バイアスされたことを示すVREF Hを下回って下がるまで、一層低いレベルのゲート電流(逆回復電流I_RR)を維持する。その後、ローサイドゲート駆動回路304は、ゲート電流を一層高いレベル(スルー電流I SLEW)まで増大させ、これにより、ゲート‐ドレイン間キャパシタCGD(図3には図示せず)がミラー領域において充電され得る。
【0050】
いくつかの例において、ローサイドゲート駆動回路304は、MLがミラー領域に遷移しDHBが逆バイアスされるまで、より低いゲート電流(逆回復電流I_RR)を維持することによって、MLのゲート126をゆっくりと充電する。その結果、MLを介する電流I LS220(図2)の急激な上昇が防止され、これにより、接地バウンス電圧VB INT224が大幅に低減される。また、制御回路140は、ハイサイドボディダイオードDHBが逆バイアスされるまで逆回復電流を維持することによってMLのゲート126をゆっくりと充電することにより、ハイサイドボディダイオードDHBを介する電流I_BH216(図2)がゼロを下回って下がることを防止する。そのため、DHBは、電流がDHBを介して逆方向に流れる必要なしに、比較的ゆっくりと逆バイアスされる。その結果、いくつかの例において、MLを介する電流I LSは、Im(図2)を上回って上昇せず、それゆえImまで下降しない。電流I LSは負の変化率を有さないため、誘導接地バウンス電圧VB INTは負にならない。そのため、誘導電圧VB INTは、正のパルスによって特徴付けられる。この効果は、誘導接地バウンス電圧VB INTにおける広いスイングが防止され、MLのドレイン120とソース122との間の電圧降下が低減されることである。
【0051】
いくつかの例において、I_RRは、LSIがImを上回って上昇することを可能にするが、量I_LSがImを上回って上昇することを制限することを可能にするように、及びVB INTがゼロを下回って下がることを可能にするが、量VB INTがゼロを下回って下がることを制限するように、調節され得る(例えば、増加され得る)。
【0052】
CNTR Lがハイ状態(例えば、より高い電圧レベルなどのバイナリ「1」)からロー状態(例えば、より低い電圧レベルなどのバイナリ「0」)に遷移することに応答して、第3のスイッチ374は、スルー電流源360をゲート126MLに結合する。その結果、ゲート126は、スルー電流源360によって接地に放電される。
【0053】
図4は、一例における比較回路312を図示する。比較回路312は、第1のPMOSトランジスタMP1を含み、第1のPMOSトランジスタMP1は、入力電圧Vmに結合されるソース404を含み、ドレイン406及びゲート408を含む。比較回路312は、第2のPMOSトランジスタMP2を含み、第2のPMOSトランジスタMP2は、MP1のドレイン406に結合されるソース410を含み、ドレイン412及びゲート414を含む。比較回路312は、第3のPMOS MP3を含み、第3のPMOS MP3は、Vmとゲート422とに結合されるソース420を含み、ドレイン424を含む。
【0054】
比較回路312は第4のPMOS MP4を含み、第4のPMOS MP4は、MP3のドレイン424に結合されるソース430を含み、MP1のゲート408に結合されるゲート434を含む。MP4は、上側基準電圧VREF Hを受け取るように適合され、また、MP2のゲート414に結合される、ドレイン432を含む。比較回路312は第5のPMOS MP5を含み、第5のPMOS MP5は、MP1のゲート408に結合されるソース450を含み、抵抗器Rlを介して出力電圧Voutに結合されるソース452を含む。MP5は、上側基準電圧VREF Hを受け取るように適合されるゲート454を含む。比較回路312は、NMOSトランジスタMN1を含み、NMOSトランジスタMN1は、MP2のドレイン414に結合されるドレイン460を含み、抵抗器R2を介して接地に結合されるソース464を含む。MN1は、イネーブル信号ENABLEを受信するように適合されるゲート466を含む。いくつかの例において、イネーブル信号ENABLEは、CNTR Lから導出される。例えば、CNTR Lがロー状態からハイ状態に遷移する場合にイネーブル信号ENABLEがアサートされ得、CNTR Lがハイ状態からロー状態に遷移する場合にENABLEがデアサートされ得る。
【0055】
比較回路312はコンパレータ470を含み、、コンパレータ470は、MN1のソース464に結合される第1の入力472と、電圧源VDDに結合される第2の入力474と、接地に結合される第3の入力476とを含む。抵抗器R2は、第1の入力472と接地との間に結合される。
【0056】
一例において、コンパレータ470は、VDDと接地とによって定義されるヒステリシスループを含むシュミットトリガである。コンパレータ470は、出力478においてSLEW STARTを提供する。いくつかの例において、MP2は、低電圧デバイスであるMP1を保護するように、ドレイン拡張MOSFET(DENMOS)を用いて実装され得る。MN1は、シュミットトリガ470を保護するように、DENMOSを用いて実装され得る。
【0057】
いくつかの実施例において、VREF Hは、Vmから5ボルトを引いたもの(Vm-5V)にほぼ等しい。Voutが、Vm+トランジスタの閾値電圧-5ボルト(Vm-5V+Vt)よりも大きいとき、MP5は導通し、そのため、MP1のゲート408をVoutに結合する。その結果、MP1が導通する。VoutがほぼVmまで低下し始めると、MP1は導通せず、抵抗器R2は、シュミットトリガ470の第1の入力472を接地までプルダウンする。これにより、シュミットトリガ470の出力478(SLEW START)がゼロボルト又はその付近になる。これに応じて、制御回路140(図4には図示せず)によってローサイドトランジスタMLのゲート126にI_RRが印加される。
【0058】
Voutが、Vmからトランジスタの閾値電圧を差し引いたもの(Vm-Vt)より小さい(例えば、VoutがVtより大きくVmを下回る)とき、MP1は導通し、MN1のソース464は、ほぼイネーブル信号電圧からMN1のゲート‐ソース電圧を差し引いた値(ENABLE-Vgs)までプルアップされ、これにより、シュミットトリガ470は、SLEW_STARTをアサートし(例えば、SLEW STARTが論理ハイ又は「1」値になり)、スルー電流I SLEWがローサイドトランジスタMLのゲート126に供給される。VoutがVmから約5ボルト差し引いたもの(Vm-5V)より小さいとき、MP4のボディダイオード(図4には図示せず)は、MP5のソース450を、導通させ、Vm-5V未満の1つのダイオード電圧降下に保持し、それによって、MP5 VGSのVgが高くなり過ぎる(例えば、正過ぎる)ことを防止する。
【0059】
本明細書及び特許請求の範囲において、「含む(including及びcomprising)」という用語は、オープンエンド様式で用いられ、そのため、「~を含むが、それに限定されない」ことを意味する。或るタスク又は機能を実施するように「構成される」要素又は特徴は、製造時にその機能を実施するように製造業者によって構成され(例えば、プログラムされるか又は構造的に設計され)得、及び/又は、その機能及び/又は他の付加的又は代替の機能を実施するように製造後にユーザによって構成可能(又は再構成可能)であってもよい。こういった構成は、デバイスのファームウェア及び/又はソフトウェアプログラミングを介してもよく、ハードウェア構成要素の構成及び/又はレイアウトを介してもよく、デバイスの相互接続を介してもよく、又はそれらの組み合わせを介してもよい。また、前述の記載における「接地」又は同様の語句の使用は、シャーシ接地、アース接地、浮動接地、仮想接地、デジタル接地、共通接地、及び/又は本明細書の教示に適用可能であるか、又はそれに適した任意の他の形態の接地接続を含む。
【0060】
別途記載のない限り、或る値に先行する「約」は、その値の+/-10%を意味する。本明細書で用いられる場合、「変調する」という用語は、「変化する」又は「変更する」ことも意味し得る。
【0061】
例えば、「ノード」、「端子」、「ピン」、及び「相互接続」という用語は、交換可能に用いられ、特徴間の任意の接続(又は相互接続)を指す。こういった用語は、或るタイプの物理的構造に関して限定することを意味しない。例えば、或る回路要素の「端子」は、そのような回路要素への各接続を意味する。そのため、統合された抵抗器が、これらの「端子」がその統合された抵抗器へのただ2つの接続である場合でも、2つの端子(端部)を有すると称される。
【0062】
本明細書では特定のトランジスタの使用について説明するが、残りの回路要素にほとんど又は全く変化を加えることなく、他のトランジスタ(又は同等のデバイス)を代わりに用いることもできる。例えば、金属酸化物シリコンFET(「MOSFET」)(例えば、nチャネルMOSFET、nMOSFET、又はpチャネルMOSFET、pMOSFET)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT、例えば、NPN又はPNP)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、及び/又は、接合電界効果トランジスタ(JFET)が、本明細書に記載されるデバイスの代わりに、又はそれと併せて、用いられ得る。トランジスタは、空乏モードデバイス、ドレイン拡張デバイス、エンハンスメントモードデバイス、ナチュラルトランジスタ、又は他のタイプのデバイス構造トランジスタであってもよい。また、デバイスは、シリコン基板(Si)、炭化シリコン基板(SiC)、窒化ガリウム基板(GaN)、又はヒ化ガリウム基板(GaAs)の中/又はその上に実装され得る。
【0063】
いくつかの例が、或る要素が集積回路に含まれ、他の要素が集積回路の外部にあることを示唆するが、他の例において、付加的な又はより少ない特徴が集積回路に組み込まれてもよい。また、集積回路の外部にあるものとして図示された特徴の一部又は全部が集積回路に含まれてもよく、及び/又は、集積回路の内部にあるものとして図示されたいくつかの特徴が集積回路の外部に組み込まれてもよい。本明細書で用いる場合、「集積回路」という用語は、(i)半導体基板の中/その上に組み込まれる、(ii)単一の半導体パッケージに組み込まれる、(iii)同じモジュールに組み込まれる、及び/又は、(iv)同じ印刷回路基板の中/その上に組み込まれる、1つ又は複数の回路を意味する。
【0064】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】