(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】G-C3N4-金属-複合材料からのナノフレークを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/082 20060101AFI20241219BHJP
B01J 27/22 20060101ALI20241219BHJP
C25B 11/049 20210101ALI20241219BHJP
C25B 11/067 20210101ALI20241219BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241219BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241219BHJP
C25B 1/55 20210101ALI20241219BHJP
C01B 3/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C01B21/082 K
B01J27/22 M
C25B11/049
C25B11/067
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B1/55
C01B3/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024534488
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 AT2022060424
(87)【国際公開番号】W WO2023102584
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524217610
【氏名又は名称】ハイドロソリッド・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】スマイライ・メルクル
(72)【発明者】
【氏名】レンツ・ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G140AA42
4G140AA44
4G169AA03
4G169AA08
4G169BB01A
4G169BB01B
4G169BB02A
4G169BB04B
4G169BB11A
4G169BB11B
4G169BB15A
4G169BB15B
4G169BC50B
4G169BC66B
4G169BC66C
4G169BD02C
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD07C
4G169CC33
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169EC22Y
4G169FA01
4G169FB36
4G169FB78
4G169HA01
4G169HB06
4G169HB10
4G169HC29
4G169HD03
4G169HE09
4K011AA29
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、以下のステップを含むg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを製造するための方法:(a)FePO4、尿素およびポリアクリロニトリルを含むか、またはそれらからなる出発材料を提供するステップであって、出発材料が、100nm未満の平均粒径を有する粒子を有する粉末として存在するステップと、(b)出発材料を溶媒中に分散させるステップであって、溶媒が水であるステップと、(c)溶媒を除去して、出発材料を含むプレミックスを形成するステップと、(d)プレミックスを加熱するステップと、(e)溶媒を除去して、出発材料を含むプレミックスを形成するステップと、(f)溶媒を除去して、プレミックスを形成するステップと、(d)プレミックスを加熱し、200℃~700℃の間、好ましくは400℃~600℃の間の熱分解温度で熱分解することによって、バルク-g-C3N4/金属-複合材料を形成するステップ、(e)バルク-g-C3N4/金属-複合材料を超音波で処理し、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを形成するステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含むg-C
3N
4/金属-複合材料-ナノフレークを製造するための方法:
a.鉄化合物、g-C
3N
4-前駆体材料およびポリマーを含む、またはそれらからなる出発材料を提供するステップ、
i.ここで、鉄化合物はFePO
4であり、
ii.ここで、g-C
3N
4-前駆体材料は尿素であり、そして
iii.ここでポリマーはポリアクリロニトリルであり、
ここで、出発材料は、平均粒径100nm未満の粒子を有する粉末として存在し、
b.出発材料を溶媒に分散させるステップ、ここで、溶媒は水であり、
c.溶媒を除去し、出発材料を含むプレミックスを形成するステップ、
d.プレミックスを加熱し、200℃~700℃の間、好ましくは400℃~600℃の間の熱分解温度で熱分解することによって、バルク-g-C
3N
4/金属-複合材料を形成するステップ、
e.バルク-g-C
3N
4/金属-複合材料を超音波で処理し、g-C
3N
4/金属-複合材料-ナノフレークを形成するステップ。
【請求項2】
ステップ(a)における鉄化合物の量が、出発材料の総量に対して1.0質量%~20質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)の分散が、80℃~100℃の間、好ましくは90℃~100℃の間の温度で、任意に超音波処理を伴って行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(d)における熱分解温度への加熱中の加熱速度が5℃/分以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ステップ(d)における熱分解温度が約450℃であるか、またはステップ(d)における熱分解温度が約550℃であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(d)後に、方法が以下のさらなるステップを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法:
-g-C
3N
4/金属-複合材料中の鉄を還元するステップ。
【請求項7】
ステップ(a)において、さらなる金属化合物が添加され、該さらなる金属化合物が、アルミニウム化合物、リチウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、ニッケル化合物、白金化合物、パラジウム化合物、バナジウム化合物、またはこれらの化合物の任意の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)におけるさらなる金属化合物の量が、出発材料の総量に対して0.5質量%~5.0質量%の間、好ましくは約1.0質量%であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)における熱分解が、不活性ガス雰囲気下、特に窒素雰囲気下で行われることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
以下のステップを含むg-C
3N
4/金属-複合材料-ナノフレークを製造するための方法:
a.g-C
3N
4-前駆体材料とポリマーの混合物を、200℃~700℃の間、好ましくは400℃~600℃の間の熱分解温度で熱分解することによるよって、g-C
3N
4を提供するステップ、
i.ここで、C
3N
4-前駆体材料は尿素であり、そして
ii.ここでポリマーはポリアクリロニトリルであり、
b.g-C
3N
4を鉄化合物と混合し、ここで鉄化合物は酸化鉄、硫化鉄、リン化鉄、窒化鉄またはそれらの任意の混合物から選択され、プレミックスを得るステップ、
c.プレミックスを100nm未満の粒径に粉砕するステップ、
d.粉砕したプレミックスを400℃~600℃の間の温度で処理し、g-C
3N
4/金属-複合材料-ナノフレークを形成するステップ。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1つに記載の方法および/または請求項10に記載の方法によって得られるナノフレークの形態のg-C
3N
4/金属-複合材料。
【請求項12】
100nm未満の平均細孔径を有する細孔を含む、請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
g-C
3N
4-ナノフレークが提供され、その表面上に鉄および/または鉄化合物が担持され、鉄および/または鉄化合物は、100nm未満の粒径を有する粒子形態で存在することを特徴とする、請求項11または12に記載の複合材料。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか1つに記載のg-C
3N
4/金属-複合材料を含む、または、それからなる水素貯蔵材料。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか1つに記載のg-C
3N
4/金属-複合材料を含む、または、それからなる水電解用電極触媒。
【請求項16】
請求項11~13のいずれか1つに記載のg-C
3N
4/金属-複合材料を含む、または、それからなる水電解用光触媒。
【請求項17】
請求項11~13のいずれか1つに記載のg-C
3N
4/金属-複合材料を含む、または、それからなる水電解用光電極触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の特徴による、g-C3N4/金属-複合材料からナノフレークを製造するための方法に関する。また、本発明は、このような方法によって得られるナノフレーク、ならびに水素貯蔵材料、および本発明によるナノフレークを含む光触媒、光電極触媒および電極触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
g-C3N4としても知られるグラファイト状窒化炭素は、ポリマー材料であり、例えば不均一系触媒用途や水素分子の貯蔵材料など、当技術分野では様々な応用分野で使用されている。純粋なg-C3N4は金属を含まない化合物であり、その特性は金属または金属化合物との複合材料を形成することによってカスタマイズされ、改善される。
【0003】
しかしながら、公知のg-C3N4/金属-複合材料の性能特性は、特に、水素の貯蔵および水からの水素と酸素の光触媒生成に対しては不十分である。特に、水素の貯蔵容量および/または達成可能な水素生成速度は、公知のC3N4/金属-複合材料の改善が要求される事項である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、公知のg-C3N4/金属-複合材料の欠点を克服することが本発明の課題である。特に、本発明の課題は、以下の性能特性:水素の貯蔵容量、水素の吸着容量、水素生成速度、光電気触媒および水の電気分解における達成可能な電流密度の少なくとも1つに関して改善されたg-C3N4/金属-複合材料を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の文脈において、驚くべきことに、これらの課題および他の課題は、特に本発明による方法によって製造された複合材料によって達成できることが見出された。
【0006】
したがって、本発明は、いくつかのステップを含むg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの製造方法に関する。
【0007】
任意に、以下の特徴を有するステップ(a)を設けてもよい:鉄化合物、g-C3N4-前駆体材料およびポリマーを含む、またはそれらからなる出発材料を提供する。鉄化合物はリン酸鉄(III)であってもよい。g-C3N4-前駆体材料は尿素(CH4N2O)であってもよい。ポリマーはポリアクリロニトリルであってもよい。特に、出発材料は、粒子が100nm未満の平均粒径を有する粉末である。
【0008】
出発材料にポリアクリロニトリルを使用することで、特に好ましい特性を持つナノフレークが得られることがわかった。この理論に束縛されることなく、ポリアクリロニトリルは、生成されるナノフレークの幾何学的パラメータ、特に長さ、幅、形状、配向に大きく影響するテンプレートを形成すると考えられる。
【0009】
適切な場合、ポリアクリロニトリルのさらに有利な技術的効果は、ポリアクリロニトリルの環化が方法の一部として行われることであり、それによって導体ポリマーが形成され、特に化学的、熱的および機械的特性に関して、g-C3N4材料に特定の安定性を与える。例えば、ポリアクリロニトリルを使用することで、複合材料の難燃性、耐火性、耐熱性を向上させることができ、酸水素ガス混合物が形成される可能性があり、燃焼水素ガスが複合材料を発火させることができないため、水素を使用する用途では特に有利である。
【0010】
任意に、以下の特徴を有するステップ(b)を設けてもよい:出発材料を溶媒中に分散させるステップであって、溶媒は特に水である。ステップ(b)において、水は沸騰温度を有していてもよい。場合によっては、このステップにより、出発材料の溶媒への溶解が不完全になる。
【0011】
特に出発材料の粒径をできるだけ小さくすることによって達成される、より良好な分散は、例えば収率や速度論に関して、g-C3N4へのその後の反応に有利である。
【0012】
任意に、溶媒を除去して出発材料を含むプレミックスを形成する工程(c)を設けてもよい。
【0013】
任意に、以下の特徴を有するステップ(d)を設けてもよい:ステップ(c)で得られたプレミックスを加熱し、200℃~700℃の間、好ましくは400℃~600℃の間の熱分解温度で熱分解して、バルク-g-C3N4/金属-複合材料を形成する。
【0014】
本発明の文脈における「バルクg-C3N4/金属-複合材料」とは、特に、複数の層が重ね合わされ得る、首尾一貫した層状構造を有する材料を指す。
【0015】
任意に、以下の特徴を有するステップ(d)を設けてもよい:バルク-g-C3N4/金属-複合材料を超音波で処理して、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを形成する。
【0016】
特に、超音波処理によりg-C3N4/金属-複合材料の剥離を引き起こし、バルク材料からナノフレークが形成される。任意に、バルク材料の層構造が分解され、ナノフレークが形成される。超音波処理のもう一つの利点は、g-C3N4層間の金属の分布が良くなることであり、その後、任意に安定化スペーサーとして機能する。
【0017】
任意に、ステップ(d)の処理に使用される超音波は、20kHz~100kHz の間の周波数を有する。適切な場合、ステップ(d)の超音波によるエネルギー入力は、バルクg-C3N4/金属-複合材料1gあたり少なくとも0.25Wである。
【0018】
本発明の文脈においては、「ナノフレーク」は特に、外形寸法が正確にナノスケールの範囲、すなわち1nm~100nmの間にある粒子を指す。
【0019】
本発明による方法によって製造されたナノフレークまたは本発明によるナノフレークは、特にナノ多孔質であり、すなわち、サブ100nm以下の範囲の寸法の細孔を有する。ナノ多孔性は、特にステップ(b)における分散および任意選択による粉砕および超音波処理によって達成される。
【0020】
適切な場合、ステップ(a)の鉄化合物の量は、出発材料の総量に対して1.0質量%から20質量%の間で提供される。
【0021】
任意に、ステップ(b)の分散は、80℃~100℃の間、好ましくは90℃~100℃の間の温度で行われることができる。これにより、出発材料を部分的に溶解させることができ、g-C3N4への反応の完全性を向上させることができる。
【0022】
任意に、ステップ(b)の分散液を超音波で処理することが意図されている。この処理は、例えば、分散液中に導入される超音波ロッドを用いて実施することができる。適切な場合、ステップ(b)の処理に使用される超音波は、20kHz~100kHzの間の周波数を有する。任意に、ステップ(d)の超音波によるエネルギー入力は、分散液1mLあたり少なくとも0.25Wである。超音波処理によって分散性の向上が達成され、g-C3N4への反応の完全性が向上させることができる。
【0023】
任意に、ステップ(b)の分散には少なくとも1時間、特に約2時間を要する。
【0024】
任意に、ステップ(d)の熱分解温度への加熱中の加熱速度は、5℃/分以上とすることができる。
【0025】
任意に、ステップ(d)の熱分解温度は約450℃であることができる。その結果、リン酸鉄(III)を出発材料に使用した場合に製造されるg-C3N4/金属-複合材料の層中にリン酸鉄(III)を得ることができる。
【0026】
任意に、ステップ(d)の熱分解温度は約550℃であることができる。その結果、出発材料にリン酸鉄(III)を使用した場合に製造されるg-C3N4/金属-複合材料の層中に酸化鉄(III)を得ることができる。
【0027】
任意に、ステップ(d)の熱分解は少なくとも4時間、特に約5時間を要する。
【0028】
任意に、ステップ(d)の後に次のさらなるステップを設ける:g-C3N4/金属-複合材料中の鉄を還元する。任意に、複合材料を水素で処理することにより還元を行う。還元の程度により、鉄は鉄(II)イオンまたは元素の鉄に変換される。
【0029】
任意に、ステップ(a)においてさらなる金属化合物を添加することが提供され、このさらなる金属化合物は、アルミニウム化合物、リチウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、ニッケル化合物、白金化合物、パラジウム化合物、バナジウム化合物、またはこれらの化合物の任意の混合物から選択される。
【0030】
複合材料の特定の特性は、さらに金属化合物を加えることによって調整することができる。
【0031】
適切であれば、ステップ(a)のさらなる金属化合物の量は、出発材料の総量に対して0.5質量%~5.0質量%、好ましくは約1.0質量%であることが提供される。
【0032】
任意に、ステップ(d)の熱分解は不活性ガス雰囲気下、特に窒素雰囲気下で行うことが意図される。これにより、成分の酸化を防ぐことができる。
【0033】
100nm未満の粒径を達成するために、任意に、ボールミルでステップ(a)の出発材料の成分を粉砕する必要がある。
【0034】
g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークは、いくつかの工程を含む別の方法でも得られることが見出された:
【0035】
任意に、以下の特徴を有する段階(a’)を設けることができる:g-C3N4-前駆体材料とポリマーの混合物を、200℃~700℃の間、好ましくは400℃~600℃の間の熱分解温度で熱分解することにより、g-C3N4を提供する。g-C3N4-前駆体材料は特に尿素である。ポリマーは特にポリアクリロニトリルである。好ましくは、混合物は、100nm未満の平均粒径を有する粒子を有する粉末である。
【0036】
任意に、熱分解およびステップ(a’)の間の温度は約500°である。任意に、混合物は、約5℃/分の加熱速度でステップ(a’)の熱分解温度まで加熱される。任意に、ステップ(a’)の熱分解は少なくとも4時間、特に約5時間かかる。
【0037】
任意に、以下の特徴を有するステップ(b’)を設けてもよい:ステップ(a’)で得られたg-C3N4を鉄化合物と混合し、ここで鉄化合物は酸化鉄、硫化鉄、リン化鉄、窒化鉄またはそれらの混合物から選択され、プレミックスを得る。本発明の文脈において、鉄化合物として酸化鉄、硫化鉄、リン化鉄または窒化鉄を使用することにより、リン酸鉄(III)で得られる結果と類似の結果が得られるのは、既に製造されたg-C3N4が提供される場合のみであることが見出された。そうでなければ、鉄化合物の周囲にg-C3N4クラスターが形成されるだけで、その結果、本発明による材料は得られない。
【0038】
任意に、以下の特徴を有するステップ(c’)を設けてもよい:ステップ(b’)で得られたプレミックスを100nm未満の粒径に粉砕する。任意に、これはボールミルによって達成することができる。
【0039】
任意に、以下の特徴を有するステップ(d’)を設けてもよい:粉砕プレミックスを400℃~600℃の間の温度で処理して、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを形成する。
【0040】
特に、ステップ(d’)の温度は約550℃であり、これにより酸化鉄(III)複合材料が得られる。
【0041】
任意に、ステップ(d’)の処理により、ナノフレークがまっすぐになり、欠陥を直すことができる。
【0042】
任意に、ステップ(d’)は不活性ガス雰囲気下、特に窒素雰囲気下で行う。
【0043】
この両方の方法は、どちらも最終生成物としてg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを提供し、同等の特性を持つ。したがって、このプロセスは代替プロセスとみなすことができる。
【0044】
適切な場合、本発明はまた、本発明による方法によって得られるおよび/または得ることができるナノフレークに関する。方法におけるステップは、先行技術で知られているナノフレークとは異なる特別な特性をナノフレークに付与する。特に、本発明による方法を使用することにより、g-C3N4-フレークの表面上の鉄の特に均一な分布を可能にする複合材料構造が作成される。
【0045】
任意に、複合材料は細孔を含み、細孔は100nm未満の平均細孔径を有する。
【0046】
任意に、g-C3N4ナノフレークが提供され、その表面に鉄および/または鉄化合物が担持され、鉄および/または鉄化合物は、100nm未満の粒径を有する粒子状で存在する。
【0047】
任意に、本発明はまた、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを含むか、またはそれからなる水素貯蔵材料に関する。任意に、本発明は、水素貯蔵材料としての本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの使用に関する。
【0048】
任意に、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを水素ガスで装填することを含む水素を貯蔵する方法に関する。適切な場合、装填は10バール(bar)以上、好ましくは25バール以下の圧力で実施される。
【0049】
任意に、水素の脱離は、装填された複合材料を例えば60℃~100℃の間の温度に加熱することによって達成することができる。
【0050】
装填は電界の影響によって改善される。任意に、電界の電圧は1000V超である。
【0051】
任意に、本発明はまた、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを含むか、またはそれからなる光触媒に関する。適切な場合、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの光触媒としての使用に関する。
【0052】
任意に、本発明はまた、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを含むか、またはそれからなる光電極触媒に関する。適切な場合、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの光電極触媒としての使用に関する。
【0053】
任意に、本発明はまた、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを含むか、またはそれからなる電極触媒に関する。適切な場合、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの電極触媒としての使用に関する。
【0054】
本発明によるg-C3N4/金属-複合材料は、ドーピングなどの方法によってバンドギャップが変化する半導体であるため、触媒活性も有する。したがって、水素貯蔵のほか、光触媒、電極触媒、光電極触媒としても使用できる。
【0055】
任意に、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを水中に導入することを含む、水の光電気触媒および水素の製造のための方法に関する。任意に、水中に導入されたg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークは、UV/Vis源であってもよい放射線源で照射される。任意に、放射線源は200nm~1000nmの間の波長の電磁放射線を放出する。
【0056】
本発明のさらなる任意の特徴は、特許請求の範囲、図および実施形態の説明から見ることができる。
【0057】
以下、例示的な実施形態を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1は、第1の実施形態例によるg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量である。
図2は、第2の実施形態例によるg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量である。
図3は、電圧アシスト装填を用いた第3の実施形態例によるg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
実施形態例1
第1の実施形態は、リン酸鉄(III)2質量%、尿素95質量%、ポリアクリロニトリル3質量%の混合物を出発材料とするg-C3N4/鉄複合材料の製造を示す。成分を混合し、ボールミルで600rpm、約45分間粉砕し、平均粒径100nm未満の出発材料を形成する。
【0060】
得られた出発材料は、分散棒と超音波バスを用いて、約95℃の温度でできるだけ少ない水に分散させる。
【0061】
分散完了後、水を除去し、残った材料をN2雰囲気中、熱分解温度約550℃で約5時間熱分解する。熱分解温度に達するまでの加熱速度は約5℃/分である。
【0062】
酸化鉄(III)が層間に埋め込まれた、層状のバルクg-C3N4/金属-複合材料が得られた。
【0063】
生成されたバルク-g-C3N4/金属-複合材料は、次に超音波処理によって剥離され、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークが形成された。
【0064】
この化合物は水素貯蔵材料として使用できる。25気圧までの水素貯蔵では、-20℃付近で9.2質量%、25℃付近で6.1質量%の水素貯蔵が可能である。本質的に完全な脱離は約80℃で起こる。
【0065】
図1は、第1の実施形態例に従って製造されたg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量を、圧力の関数として、約-20℃(黒丸)と約25℃(白丸)の間で比較して示している。
【0066】
実施形態例2
第二の実施形態例は、g-C3N4/鉄-チタン複合材料の製造を示し、ここで、1質量%のリン酸鉄(III)、95質量%の尿素および3質量%のポリアクリロニトリルの混合物に、さらに1質量%の二酸化チタンを加えたものを出発材料として使用する。
【0067】
さらなる工程は、第1の実施形態と同様に行われた。
【0068】
水素貯蔵材料として使用可能なTiドープされたg-C3N4/Fe複合材料-ナノフレークが得られた。25気圧までの水素貯蔵では、-20℃付近で9.6質量%、25℃付近で6.3質量%の水素貯蔵容量が得られる。本質的に完全な脱離は約80℃で起こる。
【0069】
図2は、第2実施形態例に従って製造されたg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量を、圧力の関数として、約-20℃(黒丸)と約25℃(白丸)の間で比較したものである。
【0070】
実施形態例3
第3の実施形態例は、g-C3N4/鉄-チタン複合材料の製造を示し、ここで、出発材料として3質量%のリン酸鉄(III)、90質量%の尿素および5質量%のポリアクリロニトリルの混合物を使用し、さらに1質量%の二酸化チタンを添加した。各成分を混合し、ボールミルで600rpm、約45分間粉砕し、平均粒径100nm以下の出発材料を形成する。
【0071】
得られた出発材料は、分散棒と超音波バスを用いて、約95℃の温度で、できるだけ少ない水に分散させる。
【0072】
分散が完了したら、水を除去し、残りの材料をN2雰囲気中において熱分解温度約450℃で約5時間熱分解する。熱分解温度に達するまでの加熱速度は約5℃/分である。
【0073】
層間にリン酸鉄(III)が埋め込まれた、層状のバルクg-C3N4/金属-複合材料が得られた。
【0074】
次に、生成されたバルク-g-C3N4/金属-複合材料は、次に超音波処理によって剥離され、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークが形成される。
【0075】
この化合物は水素貯蔵材料として使用できる。最大25バールで7.4質量%の水素貯蔵容量が得られた。
【0076】
この複合材料に約1400Vの電界をかけると、11.7質量%の水素貯蔵容量が得られた。
【0077】
図3は、第3の実施形態例に従って製造されたg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量を圧力の関数として示し、電圧アシスト装填なし(黒丸)と電圧アシスト装填あり(白丸)の容量を比較している。
【0078】
実施形態例4
第3の実施形態例に従って製造されたTiおよびFeを有するg-C3N4/金属-複合材料は、本発明による他の複合材料と同様に、水から水素および酸素を製造する際の電気光触媒として使用することができる。
【0079】
g-C3N4/金属-複合材料の分散液をUV/Vis光源を使用して水中で照射すると、約35.3mmol/(g*h)の水素生成速度が達成された。水素の生成中、約96mVの過電圧が測定される。電流密度は約2.67mA/cmであった。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の特徴による、g-C3N4/金属-複合材料からナノフレークを製造するための方法に関する。また、本発明は、このような方法によって得られるナノフレーク、ならびに水素貯蔵材料、および本発明によるナノフレークを含む光触媒、光電極触媒および電極触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
g-C3N4としても知られるグラファイト状窒化炭素は、ポリマー材料であり、例えば不均一系触媒用途や水素分子の貯蔵材料など、当技術分野では様々な応用分野で使用されている。純粋なg-C3N4は金属を含まない化合物であり、その特性は金属または金属化合物との複合材料を形成することによってカスタマイズされ、改善される。
【0003】
g-C
3
N
4
をベースとした材料は、技術的にはすでに知られている。Siyang Jiらによる論文“Facile Production of a Fenton-Like Photocatalyst by Two-Step Calcination with a Broad pH Adaptability”(nanomaterials, 2020)には、g-C
3
N
4
ナノフレークが記載されており、g-C
3
N
4
に鉄が取り込まれている。CN104437643Aには、g-C
3
N
4
に鉄を含浸させる方法が記載されている。CN110479345Aは、鉄酸化物フレークに担持されたg-C
3
N
4
量子ドットを記載している。CN110429277Aには、硫黄ドープg-C
3
N
4
材料が記載されているが、含まれる鉄の正確な特性については詳しく述べられていない。論文 “Facile synthesis of graphitic carbon nitride/chitosam/Au nanocomposite: A catalyst for electrochemical hydrogen evolution” by Atefeh Nasri et al. (International Journal of Biological Macromolecules, 2020)は、g-C
3
N金ナノ複合体について記載している。CN112156662Aはナノファイバーを開示している。
【0004】
しかしながら、公知のg-C3N4/金属-複合材料の性能特性は、特に、水素の貯蔵および水からの水素と酸素の光触媒生成に対しては不十分である。特に、水素の貯蔵容量および/または達成可能な水素生成速度は、公知のC3N4/金属-複合材料の改善が要求される事項である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】CN104437643A
【特許文献2】CN110479345A
【特許文献3】CN110429277A
【特許文献4】CN112156662A
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Facile Production of a Fenton-Like Photocatalyst by Two-Step Calcination with a Broad pH Adaptability”(nanomaterials, 2020)
【非特許文献2】“Facile synthesis of graphitic carbon nitride/chitosam/Au nanocomposite: A catalyst for electrochemical hydrogen evolution” by Atefeh Nasri et al. (International Journal of Biological Macromolecules, 2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、公知のg-C3N4/金属-複合材料の欠点を克服することが本発明の課題である。特に、本発明の課題は、以下の性能特性:水素の貯蔵容量、水素の吸着容量、水素生成速度、光電気触媒および水の電気分解における達成可能な電流密度の少なくとも1つに関して改善されたg-C3N4/金属-複合材料を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の文脈において、驚くべきことに、これらの課題および他の課題は、特に本発明による方法によって製造された複合材料によって達成できることが見出された。
【0009】
したがって、本発明は、いくつかのステップを含むg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの製造方法に関する。
【0010】
任意に、以下の特徴を有するステップ(a)を設けてもよい:鉄化合物、g-C3N4-前駆体材料およびポリマーを含む、またはそれらからなる出発材料を提供する。鉄化合物はリン酸鉄(III)であってもよい。g-C3N4-前駆体材料は尿素(CH4N2O)であってもよい。ポリマーはポリアクリロニトリルであってもよい。特に、出発材料は、粒子が100nm未満の平均粒径を有する粉末である。
【0011】
出発材料にポリアクリロニトリルを使用することで、特に好ましい特性を持つナノフレークが得られることがわかった。この理論に束縛されることなく、ポリアクリロニトリルは、生成されるナノフレークの幾何学的パラメータ、特に長さ、幅、形状、配向に大きく影響するテンプレートを形成すると考えられる。
【0012】
適切な場合、ポリアクリロニトリルのさらに有利な技術的効果は、ポリアクリロニトリルの環化が方法の一部として行われることであり、それによって導体ポリマーが形成され、特に化学的、熱的および機械的特性に関して、g-C3N4材料に特定の安定性を与える。例えば、ポリアクリロニトリルを使用することで、複合材料の難燃性、耐火性、耐熱性を向上させることができ、酸水素ガス混合物が形成される可能性があり、燃焼水素ガスが複合材料を発火させることができないため、水素を使用する用途では特に有利である。
【0013】
任意に、以下の特徴を有するステップ(b)を設けてもよい:出発材料を溶媒中に分散させるステップであって、溶媒は特に水である。ステップ(b)において、水は沸騰温度を有していてもよい。場合によっては、このステップにより、出発材料の溶媒への溶解が不完全になる。
【0014】
特に出発材料の粒径をできるだけ小さくすることによって達成される、より良好な分散は、例えば収率や速度論に関して、g-C3N4へのその後の反応に有利である。
【0015】
任意に、溶媒を除去して出発材料を含むプレミックスを形成する工程(c)を設けてもよい。
【0016】
任意に、以下の特徴を有するステップ(d)を設けてもよい:ステップ(c)で得られたプレミックスを加熱し、200℃~700℃の間、好ましくは400℃~600℃の間の熱分解温度で熱分解して、バルク-g-C3N4/金属-複合材料を形成する。
【0017】
本発明の文脈における「バルクg-C3N4/金属-複合材料」とは、特に、複数の層が重ね合わされ得る、首尾一貫した層状構造を有する材料を指す。
【0018】
任意に、以下の特徴を有するステップ(d)を設けてもよい:バルク-g-C3N4/金属-複合材料を超音波で処理して、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを形成する。
【0019】
特に、超音波処理によりg-C3N4/金属-複合材料の剥離を引き起こし、バルク材料からナノフレークが形成される。任意に、バルク材料の層構造が分解され、ナノフレークが形成される。超音波処理のもう一つの利点は、g-C3N4層間の金属の分布が良くなることであり、その後、任意に安定化スペーサーとして機能する。
【0020】
任意に、ステップ(d)の処理に使用される超音波は、20kHz~100kHz の間の周波数を有する。適切な場合、ステップ(d)の超音波によるエネルギー入力は、バルクg-C3N4/金属-複合材料1gあたり少なくとも0.25Wである。
【0021】
本発明の文脈においては、「ナノフレーク」は特に、外形寸法が正確にナノスケールの範囲、すなわち1nm~100nmの間にある粒子を指す。
【0022】
本発明による方法によって製造されたナノフレークまたは本発明によるナノフレークは、特にナノ多孔質であり、すなわち、サブ100nm以下の範囲の寸法の細孔を有する。ナノ多孔性は、特にステップ(b)における分散および任意選択による粉砕および超音波処理によって達成される。
【0023】
適切な場合、ステップ(a)の鉄化合物の量は、出発材料の総量に対して1.0質量%から20質量%の間で提供される。
【0024】
任意に、ステップ(b)の分散は、80℃~100℃の間、好ましくは90℃~100℃の間の温度で行われることができる。これにより、出発材料を部分的に溶解させることができ、g-C3N4への反応の完全性を向上させることができる。
【0025】
任意に、ステップ(b)の分散液を超音波で処理することが意図されている。この処理は、例えば、分散液中に導入される超音波ロッドを用いて実施することができる。適切な場合、ステップ(b)の処理に使用される超音波は、20kHz~100kHzの間の周波数を有する。任意に、ステップ(d)の超音波によるエネルギー入力は、分散液1mLあたり少なくとも0.25Wである。超音波処理によって分散性の向上が達成され、g-C3N4への反応の完全性が向上させることができる。
【0026】
任意に、ステップ(b)の分散には少なくとも1時間、特に約2時間を要する。
【0027】
任意に、ステップ(d)の熱分解温度への加熱中の加熱速度は、5℃/分以上とすることができる。
【0028】
任意に、ステップ(d)の熱分解温度は約450℃であることができる。その結果、リン酸鉄(III)を出発材料に使用した場合に製造されるg-C3N4/金属-複合材料の層中にリン酸鉄(III)を得ることができる。
【0029】
任意に、ステップ(d)の熱分解温度は約550℃であることができる。その結果、出発材料にリン酸鉄(III)を使用した場合に製造されるg-C3N4/金属-複合材料の層中に酸化鉄(III)を得ることができる。
【0030】
任意に、ステップ(d)の熱分解は少なくとも4時間、特に約5時間を要する。
【0031】
任意に、ステップ(d)の後に次のさらなるステップを設ける:g-C3N4/金属-複合材料中の鉄を還元する。任意に、複合材料を水素で処理することにより還元を行う。還元の程度により、鉄は鉄(II)イオンまたは元素の鉄に変換される。
【0032】
任意に、ステップ(a)においてさらなる金属化合物を添加することが提供され、このさらなる金属化合物は、アルミニウム化合物、リチウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、ニッケル化合物、白金化合物、パラジウム化合物、バナジウム化合物、またはこれらの化合物の任意の混合物から選択される。
【0033】
複合材料の特定の特性は、さらに金属化合物を加えることによって調整することができる。
【0034】
適切であれば、ステップ(a)のさらなる金属化合物の量は、出発材料の総量に対して0.5質量%~5.0質量%、好ましくは約1.0質量%であることが提供される。
【0035】
任意に、ステップ(d)の熱分解は不活性ガス雰囲気下、特に窒素雰囲気下で行うことが意図される。これにより、成分の酸化を防ぐことができる。
【0036】
100nm未満の粒径を達成するために、任意に、ボールミルでステップ(a)の出発材料の成分を粉砕する必要がある。
【0037】
g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークは、いくつかの工程を含む別の方法でも得られることが見出された:
【0038】
任意に、以下の特徴を有する段階(a’)を設けることができる:g-C3N4-前駆体材料とポリマーの混合物を、200℃~700℃の間、好ましくは400℃~600℃の間の熱分解温度で熱分解することにより、g-C3N4を提供する。g-C3N4-前駆体材料は特に尿素である。ポリマーは特にポリアクリロニトリルである。好ましくは、混合物は、100nm未満の平均粒径を有する粒子を有する粉末である。
【0039】
任意に、熱分解およびステップ(a’)の間の温度は約500°である。任意に、混合物は、約5℃/分の加熱速度でステップ(a’)の熱分解温度まで加熱される。任意に、ステップ(a’)の熱分解は少なくとも4時間、特に約5時間かかる。
【0040】
任意に、以下の特徴を有するステップ(b’)を設けてもよい:ステップ(a’)で得られたg-C3N4を鉄化合物と混合し、ここで鉄化合物は酸化鉄、硫化鉄、リン化鉄、窒化鉄またはそれらの混合物から選択され、プレミックスを得る。本発明の文脈において、鉄化合物として酸化鉄、硫化鉄、リン化鉄または窒化鉄を使用することにより、リン酸鉄(III)で得られる結果と類似の結果が得られるのは、既に製造されたg-C3N4が提供される場合のみであることが見出された。そうでなければ、鉄化合物の周囲にg-C3N4クラスターが形成されるだけで、その結果、本発明による材料は得られない。
【0041】
任意に、以下の特徴を有するステップ(c’)を設けてもよい:ステップ(b’)で得られたプレミックスを100nm未満の粒径に粉砕する。任意に、これはボールミルによって達成することができる。
【0042】
任意に、以下の特徴を有するステップ(d’)を設けてもよい:粉砕プレミックスを400℃~600℃の間の温度で処理して、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを形成する。
【0043】
特に、ステップ(d’)の温度は約550℃であり、これにより酸化鉄(III)複合材料が得られる。
【0044】
任意に、ステップ(d’)の処理により、ナノフレークがまっすぐになり、欠陥を直すことができる。
【0045】
任意に、ステップ(d’)は不活性ガス雰囲気下、特に窒素雰囲気下で行う。
【0046】
この両方の方法は、どちらも最終生成物としてg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを提供し、同等の特性を持つ。したがって、このプロセスは代替プロセスとみなすことができる。
【0047】
適切な場合、本発明はまた、本発明による方法によって得られるおよび/または得ることができるナノフレークに関する。方法におけるステップは、先行技術で知られているナノフレークとは異なる特別な特性をナノフレークに付与する。特に、本発明による方法を使用することにより、g-C3N4-フレークの表面上の鉄の特に均一な分布を可能にする複合材料構造が作成される。
【0048】
任意に、複合材料は細孔を含み、細孔は100nm未満の平均細孔径を有する。
【0049】
任意に、g-C3N4ナノフレークが提供され、その表面に鉄および/または鉄化合物が担持され、鉄および/または鉄化合物は、100nm未満の粒径を有する粒子状で存在する。
【0050】
任意に、本発明はまた、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを含むか、またはそれからなる水素貯蔵材料に関する。任意に、本発明は、水素貯蔵材料としての本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの使用に関する。
【0051】
任意に、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを水素ガスで装填することを含む水素を貯蔵する方法に関する。適切な場合、装填は10バール(bar)以上、好ましくは25バール以下の圧力で実施される。
【0052】
任意に、水素の脱離は、装填された複合材料を例えば60℃~100℃の間の温度に加熱することによって達成することができる。
【0053】
装填は電界の影響によって改善される。任意に、電界の電圧は1000V超である。
【0054】
任意に、本発明はまた、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを含むか、またはそれからなる光触媒に関する。適切な場合、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの光触媒としての使用に関する。
【0055】
任意に、本発明はまた、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを含むか、またはそれからなる光電極触媒に関する。適切な場合、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの光電極触媒としての使用に関する。
【0056】
任意に、本発明はまた、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを含むか、またはそれからなる電極触媒に関する。適切な場合、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークの電極触媒としての使用に関する。
【0057】
本発明によるg-C3N4/金属-複合材料は、ドーピングなどの方法によってバンドギャップが変化する半導体であるため、触媒活性も有する。したがって、水素貯蔵のほか、光触媒、電極触媒、光電極触媒としても使用できる。
【0058】
任意に、本発明は、本発明によるg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークを水中に導入することを含む、水の光電気触媒および水素の製造のための方法に関する。任意に、水中に導入されたg-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークは、UV/Vis源であってもよい放射線源で照射される。任意に、放射線源は200nm~1000nmの間の波長の電磁放射線を放出する。
【0059】
本発明のさらなる任意の特徴は、特許請求の範囲、図および実施形態の説明から見ることができる。
【0060】
以下、例示的な実施形態を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1は、第1の実施形態例によるg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量である。
図2は、第2の実施形態例によるg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量である。
図3は、電圧アシスト装填を用いた第3の実施形態例によるg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
実施形態例1
第1の実施形態は、リン酸鉄(III)2質量%、尿素95質量%、ポリアクリロニトリル3質量%の混合物を出発材料とするg-C3N4/鉄複合材料の製造を示す。成分を混合し、ボールミルで600rpm、約45分間粉砕し、平均粒径100nm未満の出発材料を形成する。
【0063】
得られた出発材料は、分散棒と超音波バスを用いて、約95℃の温度でできるだけ少ない水に分散させる。
【0064】
分散完了後、水を除去し、残った材料をN2雰囲気中、熱分解温度約550℃で約5時間熱分解する。熱分解温度に達するまでの加熱速度は約5℃/分である。
【0065】
酸化鉄(III)が層間に埋め込まれた、層状のバルクg-C3N4/金属-複合材料が得られた。
【0066】
生成されたバルク-g-C3N4/金属-複合材料は、次に超音波処理によって剥離され、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークが形成された。
【0067】
この化合物は水素貯蔵材料として使用できる。25気圧までの水素貯蔵では、-20℃付近で9.2質量%、25℃付近で6.1質量%の水素貯蔵が可能である。本質的に完全な脱離は約80℃で起こる。
【0068】
図1は、第1の実施形態例に従って製造されたg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量を、圧力の関数として、約-20℃(黒丸)と約25℃(白丸)の間で比較して示している。
【0069】
実施形態例2
第二の実施形態例は、g-C3N4/鉄-チタン複合材料の製造を示し、ここで、1質量%のリン酸鉄(III)、95質量%の尿素および3質量%のポリアクリロニトリルの混合物に、さらに1質量%の二酸化チタンを加えたものを出発材料として使用する。
【0070】
さらなる工程は、第1の実施形態と同様に行われた。
【0071】
水素貯蔵材料として使用可能なTiドープされたg-C3N4/Fe複合材料-ナノフレークが得られた。25気圧までの水素貯蔵では、-20℃付近で9.6質量%、25℃付近で6.3質量%の水素貯蔵容量が得られる。本質的に完全な脱離は約80℃で起こる。
【0072】
図2は、第2実施形態例に従って製造されたg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量を、圧力の関数として、約-20℃(黒丸)と約25℃(白丸)の間で比較したものである。
【0073】
実施形態例3
第3の実施形態例は、g-C3N4/鉄-チタン複合材料の製造を示し、ここで、出発材料として3質量%のリン酸鉄(III)、90質量%の尿素および5質量%のポリアクリロニトリルの混合物を使用し、さらに1質量%の二酸化チタンを添加した。各成分を混合し、ボールミルで600rpm、約45分間粉砕し、平均粒径100nm以下の出発材料を形成する。
【0074】
得られた出発材料は、分散棒と超音波バスを用いて、約95℃の温度で、できるだけ少ない水に分散させる。
【0075】
分散が完了したら、水を除去し、残りの材料をN2雰囲気中において熱分解温度約450℃で約5時間熱分解する。熱分解温度に達するまでの加熱速度は約5℃/分である。
【0076】
層間にリン酸鉄(III)が埋め込まれた、層状のバルクg-C3N4/金属-複合材料が得られた。
【0077】
次に、生成されたバルク-g-C3N4/金属-複合材料は、次に超音波処理によって剥離され、g-C3N4/金属-複合材料-ナノフレークが形成される。
【0078】
この化合物は水素貯蔵材料として使用できる。最大25バールで7.4質量%の水素貯蔵容量が得られた。
【0079】
この複合材料に約1400Vの電界をかけると、11.7質量%の水素貯蔵容量が得られた。
【0080】
図3は、第3の実施形態例に従って製造されたg-C
3N
4/金属-複合材料の水素貯蔵容量を圧力の関数として示し、電圧アシスト装填なし(黒丸)と電圧アシスト装填あり(白丸)の容量を比較している。
【0081】
実施形態例4
第3の実施形態例に従って製造されたTiおよびFeを有するg-C3N4/金属-複合材料は、本発明による他の複合材料と同様に、水から水素および酸素を製造する際の電気光触媒として使用することができる。
【0082】
g-C3N4/金属-複合材料の分散液をUV/Vis光源を使用して水中で照射すると、約35.3mmol/(g*h)の水素生成速度が達成された。水素の生成中、約96mVの過電圧が測定される。電流密度は約2.67mA/cmであった。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含むg-C
3N
4/金属-複合材料-ナノフレークを製造するための方法:
a.鉄化合物、g-C
3N
4-前駆体材料およびポリマーを含む、またはそれらからなる出発材料を提供するステップ、
i.ここで、鉄化合物はFePO
4であり、
ii.ここで、g-C
3N
4-前駆体材料は尿素であり、そして
iii.ここでポリマーはポリアクリロニトリルであり、
ここで、出発材料は、平均粒径100nm未満の粒子を有する粉末として存在し、
b.出発材料を溶媒に分散させるステップ、ここで、溶媒は水であり、
c.溶媒を除去し、出発材料を含むプレミックスを形成するステップ、
d.プレミックスを加熱し、200℃~700℃の間、好ましくは400℃~600℃の間の熱分解温度で熱分解することによって、バルク-g-C
3N
4/金属-複合材料を形成するステップ、
e.バルク-g-C
3N
4/金属-複合材料を超音波で処理し、g-C
3N
4/金属-複合材料-ナノフレークを形成するステップ。
【請求項2】
ステップ(a)における鉄化合物の量が、出発材料の総量に対して1.0質量%~20質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)の分散が、80℃~100℃の間、好ましくは90℃~100℃の間の温度で、任意に超音波処理を伴って行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(d)における熱分解温度への加熱中の加熱速度が5℃/分以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ステップ(d)における熱分解温度が約450℃であるか、またはステップ(d)における熱分解温度が約550℃であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(d)後に、方法が以下のさらなるステップを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法:
-g-C
3N
4/金属-複合材料中の鉄を還元するステップ。
【請求項7】
ステップ(a)において、さらなる金属化合物が添加され、該さらなる金属化合物が、アルミニウム化合物、リチウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、ニッケル化合物、白金化合物、パラジウム化合物、バナジウム化合物、またはこれらの化合物の任意の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)におけるさらなる金属化合物の量が、出発材料の総量に対して0.5質量%~5.0質量%の間、好ましくは約1.0質量%であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)における熱分解が、不活性ガス雰囲気下、特に窒素雰囲気下で行われることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
g-C
3
N
4
-ナノフレークが提供され、その表面上に鉄および/または鉄化合物が担持され、鉄および/または鉄化合物は、100nm未満の粒径を有する粒子形態で存在することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1つに記載の方
法によって得られるナノフレークの形態のg-C
3N
4/金属-複合材料。
【請求項11】
100nm未満の平均細孔径を有する細孔を含む、請求項
10に記載の複合材料。
【請求項12】
請求項
10または11に記載のg-C
3N
4/金属-複合材料を含む、または、それからなる水素貯蔵材料。
【請求項13】
請求項
10または11に記載のg-C
3N
4/金属-複合材料を含む、または、それからなる水電解用電極触媒。
【請求項14】
請求項
10または11に記載のg-C
3N
4/金属-複合材料を含む、または、それからなる水電解用光触媒。
【請求項15】
請求項
10または11に記載のg-C
3N
4/金属-複合材料を含む、または、それからなる水電解用光電極触媒。
【国際調査報告】