(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】体液を排出及び収集するための負圧を与える変位体を含む排液システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61M1/00 131
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534500
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 US2021062633
(87)【国際公開番号】W WO2023107114
(87)【国際公開日】2023-06-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521442637
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】プリシュカ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シャウス,エリン・エル
(72)【発明者】
【氏名】ドニーク,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,エイミー・エイ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA18
4C077AA20
4C077DD13
4C077DD21
4C077DD23
4C077DD26
4C077EE04
(57)【要約】
排液システムは、入口を含む流体受け入れ容器と、流体受け入れ容器の入口に連通可能に結合される排液導管とを含む。排液導管を通じた流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす第1の一方向弁が排液導管に沿う。変位体が、排液導管と一直線ではなく、排液導管に流体接続される。変位体は、排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される。変位体の作動により、流体受け入れ通路内の空気が変位し、空気は、第2の一方向弁によって流体受け入れ容積内に押し込まれ、第1の一方向弁によって流体受け入れ容積から逃げることを阻止される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を排出するための排液システムであって、
体液を受けるように構成される流体受け入れ容積が内部に位置する流体受け入れ容器であって、入口を備える、流体受け入れ容器と、
前記流体受け入れ容器の前記入口に連通可能に結合され、流体通路を有する排液導管であって、排液カテーテルに接続するためのコネクタに連通可能に結合される排液導管と、
前記流体受け入れ容積から前記排液導管を通じた流体の流れを阻止するための前記排液導管に沿う第1の一方向弁と、
前記排液導管に対して分岐した位置にあるとともに、前記排液導管の前記流体通路に流体接続される変位体であって、前記排液導管を通じて前記流体通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される、変位体と、
前記コネクタの下流側の前記排液導管の前記流体通路にある第2の一方向弁であって、流体が前記コネクタに向かう方向に通過するのを阻止するように配置される、第2の一方向弁と、
を備え、
前記変位体の作動が前記流体通路内の空気を変位させ、前記空気は、前記第2の一方向弁によって前記流体受け入れ容積内に押し込まれるとともに、前記第1の一方向弁によって前記流体受け入れ容積から逃げることを阻止される、
排液システム。
【請求項2】
前記変位体と前記排液導管との間に位置して、液体が前記変位体に入るのを阻止する疎水性又は親水性のフィルタを更に備える、請求項1に記載の排液システム。
【請求項3】
前記排液導管に沿って位置して、前記流体通路の直径を調整する流量制御装置を更に備える、請求項2に記載の排液システム。
【請求項4】
前記変位体は、前記第1の一方向弁と前記第2の一方向弁との間に位置する接続導管によって前記排液導管に流体接続される、請求項1に記載の排液システム。
【請求項5】
前記変位体は、空気が圧縮されるときに前記変位体から出る出口位置と、空気が解放されるときに前記流体通路から前記変位体に入る入口位置とで開放する圧搾バルブを備える、請求項1に記載の排液システム。
【請求項6】
前記流体受け入れ容器がバッグであり、前記バッグは、このバッグの引き裂きを容易にする脆弱線を備える、請求項1に記載の排液システム。
【請求項7】
前記変位体は、前記排液導管に対してのみ開放する圧搾バルブを備える、請求項1に記載の排液システム。
【請求項8】
体腔から体液を排出するための排液システムを形成する方法であって、
排液導管の出口端部を流体受け入れ容器の入口に流体接続するとともに、第1の一方向弁を前記排液導管に流体接続するステップであって、前記一方向弁が、前記排液導管を通じた前記流体受け入れ容器の流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす、ステップと、
前記排液導管に対して変位体を一直線ではない態様で流体接続するステップと、
前記排液導管の入口端部にコネクタを流体接続するステップであって、前記コネクタが排液カテーテルに接続するように構成される、ステップと、
を含み、
前記変位体は、前記排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく手動で作動されるように構成され、前記一方向弁は、前記負圧に起因して前記流体受け入れ容器の前記流体受け入れ容積から空気が引き出されるのを阻止する、
方法。
【請求項9】
流体が前記コネクタに向かう方向に通過するのを阻止する他の一方向弁を、前記流体受け入れ通路に沿って前記変位体と前記コネクタとの間の位置に配置するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
液体が前記変位体に入るのを阻止する疎水性又は親水性のフィルタを、前記変位体と前記排液導管との間に配置するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記流体受け入れ通路の直径を調整する流量制御装置を前記排液導管に沿って配置するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流量制御装置は、前記他の一方向弁と前記コネクタとの間に位置する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変位体は、前記一方向弁と前記他の一方向弁との間に位置する接続導管によって前記排液導管に流体接続される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記流体受け入れ容器がバッグであり、前記バッグは、このバッグの引き裂きを容易にする脆弱線を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記変位体は、前記排液導管に対してのみ開放する圧搾バルブを備える、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
体液を排出するための排液システムであって、
体液を受けるように構成される流体受け入れ容積が内部に位置する流体受け入れ容器であって、入口を備える、流体受け入れ容器と、
前記流体受け入れ容器の前記入口に連通可能に結合され、排液カテーテルに接続するコネクタに連通可能に結合される排液導管と、
前記排液ラインを通じた前記流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす第1の一方向弁と、
前記排液導管と一直線ではなく、前記排液導管に流体接続される変位体であって、前記排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される、変位体と、
を備え、
前記変位体は、前記第1の一方向弁と第2の一方向弁との間に位置し、
前記変位体を圧縮すると、前記変位体内の空気が変位し、前記第2の一方向弁は、空気が前記変位体に入るのを防ぎ、前記第1の一方向弁は、負圧を前記変位体から前記排液導管を通じて前記コネクタに伝えることができるようにする、
排液システム。
【請求項17】
前記空気は、前記第2の一方向弁によって前記流体受け入れ容積内に押し込まれるとともに、前記第1の一方向弁によって前記流体受け入れ容積から逃げることを阻止される、請求項16に記載の排液システム。
【請求項18】
前記変位体と前記排液導管との間に位置して、液体が前記変位体に入るのを阻止する疎水性又は親水性のフィルタを更に備える、請求項16に記載の排液システム。
【請求項19】
前記排液導管に沿って位置して、前記流体受け入れ通路の直径を調整する流量制御装置を更に備える、請求項17に記載の排液システム。
【請求項20】
前記変位体は、空気が圧縮されるときに前記変位体から出る出口位置と、空気が解放されるときに前記流体受け入れ通路から前記変位体に入る入口位置とで開放する圧搾バルブを備える、請求項16に記載の排液システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本明細書は、一般的に、体液を排出するための排液システム及び方法に関し、より具体的には、体液を排出及び収集するために負圧を導入する変位体を含む排液システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]胸膜腔は、各肺の2つの肺胸膜(臓側胸膜と壁側胸膜として知られる)の間にある、薄い液体で満たされた空間である。胸膜は、折り返されて2層の膜性胸膜嚢を形成する漿液性の膜である。胸膜腔は、通常、約5~20mLの漿液で満たされる。胸腔内の流体の入れ替わりは通常非常に速く、1時間あたり総液体の約35~75%が入れ替わり、それにより、1日あたり5~10Lの液体が胸腔を通過する。胸水は、胸腔内の流体の蓄積である。胸水は、滲出水又は肺水と呼ばれる場合もある。胸水を形成する流体の種類は、漏出液又は滲出液として分類される場合がある。
【0003】
[0003]腹膜水又は腹水とは、腹腔内に過剰な流体、例えば25mLを超える流体が溜まった状態を指す。そのような過剰な流体が溜まる最も一般的な原因は肝硬変であり、その他の原因としては癌や膵炎が挙げられる。
【0004】
[0004]自宅で再発性胸水及び腹水を管理するための排液システムは数多くある。そのようなシステムの2つは、Becton,Dickinson and Companyから市販されているPleurX(登録商標)及びPeritX(登録商標)排液システムである。これらのシステムは、カテーテルと、流体を収集する排液ボトルを使用する。カテーテルは、一般に簡単な外来処置として、胸水の排出のために胸部に、又は腹水の排出のために腹部に挿入される。カテーテルの端部は、使用していないときは体外に留置され、包帯の下に隠される。排出する際は、カテーテルの端部が、負圧を与えるために事前に真空引きされるボトルの排出ラインに接続され、ボトル内の負圧が使用されて体液を排出する。
【発明の概要】
【0005】
[0005]第1の実施形態によれば、体液を排出するための排液システムは、体液を受けるように構成される流体受け入れ容積が内部に位置する流体受け入れ容器を含む。流体受け入れ容器は、入口と、流体受け入れ容器の入口に連通可能に結合される排出導管とを含む。排出導管は、排液カテーテルに接続するコネクタに連通可能に結合される。排液導管を通じた流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす第1の一方向弁が排液導管に沿う。変位体が、排液導管と一直線ではなく、排液導管に流体接続される。変位体は、排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される。第1の一方向弁は、負圧に起因して流体受け入れ容器の流体受け入れ容積から空気が引き出されるのを阻止する。流体がコネクタに向かう方向に通過するのを阻止する第2の一方向弁が、流体受け入れ通路に沿って変位体とコネクタの間の位置にある。変位体の作動が流体受け入れ通路内の空気を変位させ、空気は、第2の一方向弁によって流体受け入れ容積内に押し込まれるとともに、第1の一方向弁によって流体受け入れ容積から逃げることを阻止される。
【0006】
[0006]第2の実施形態によれば、体腔から体液を排出するための排液システムを形成する方法が提供される。方法は、排液導管の出口端部を流体受け入れ容器の入口に流体接続するとともに、第1の一方向弁を排液導管に流体接続するステップを含む。一方向弁は、排液導管を通じた流体受け入れ容器の流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす。変位体が、一直線でない態様で排液導管に流体接続される。コネクタが、排液導管の入口端部に流体接続される。コネクタは、排液カテーテルに接続するように構成される。変位体は、排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく手動で作動されるように構成され、一方向弁は、負圧に起因して流体受け入れ容器の流体受け入れ容積から空気が引き出されるのを阻止する。
【0007】
[0007]第3の実施形態によれば、体液を排出するための排液システムは、体液を受けるように構成される流体受け入れ容積が内部に位置する流体受け入れ容器を含み、流体受け入れ容器は入口を備える。排液導管は、流体受け入れ容器の入口に連通可能に結合される。排液導管は、排液カテーテルに接続するコネクタに連通可能に結合される。第1の一方向弁が、排液導管を通じた流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす。変位体が、排液導管と一直線ではなく、排液導管に流体接続される。変位体は、排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される。変位体は、第1の一方向弁と第2の一方向弁の間に位置する。変位体を圧縮すると、変位体内の空気が変位する。第2の一方向弁は、空気が変位体に入るのを防ぐ。第1の一方向弁は、負圧を変位体から排液導管を通じてコネクタに伝えることができるようにする。
【0008】
[0008]本明細書に記載の実施形態によって提供されるこれらの特徴及び更なる特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると、より完全に理解され得る。
【0009】
[0009]図面に記載された実施形態は、本質的に例示的かつ典型的なものであり、請求項によって規定された主題を制限しようとするものではない。例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示される以下の図面と併せて読むと理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010]本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態に係る、変位体を含む排液システムを概略的に示す。
【
図2A】[0011]本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態に係る、動作中の
図1の排液システムを概略的に示す。
【
図2B】[0012]本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態に係る、動作中の
図1の排液システムを概略的に示す。
【
図2C】[0013]本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態に係る、動作中の
図1の排液システムを概略的に示す。
【
図3】[0014]本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態に係る、変位体を含む他の排液システムの一部を概略的に示す。
【
図4】[0015]本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態に係る、変位部材を含む他の排液システムの一部を概略的に示す。
【
図5】[0016]本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態に係る、変位部材を含む他の排液システムの一部を概略的に示す。
【
図6】[0017]本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態に係る、動作中の
図5の排液システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0018]本明細書に記載の実施形態は、一般に、体液を排出するための排液システムに関する。排液システムは、入口を通じて体液を内部に受ける流体受け入れ容積を有する流体受け入れ容器を含む。流体受け入れ容器は、入口で流体受け入れ容器に接続される排液導管と流体連通している。排液導管は、排液カテーテルに接続するコネクタに流体接続される。変位体が、排液導管と一直線でないように接続導管によって排液導管に流体接続される。変位体は、排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される。一方向弁が、接続導管の下流側の排液導管に沿って位置する。一方向弁は、負圧に起因して流体受け入れ容器の流体受け入れ容積から空気が引き出されるのを阻止する。コネクタに向かう方向に流体が通過するのを阻止する他の一方向弁が、排液導管に沿って接続導管とコネクタとの間の位置に位置する。変位体が作動すると、流体受け入れ通路内の空気が変位し、この空気は、他の一方向弁によって流体受け入れ容積に押し込まれるとともに、接続カテーテルの下流側にある一方向弁によって流体受け入れ容積から逃げることを阻止される。
【0012】
[0019]
図1を参照すると、体腔から体液を排出するのに用いる排液システム10は、患者の体内に部分的に埋め込まれてもよい排液カテーテル12と、排液カテーテル12に流体接続され得る流体受け入れ容器14とを含む。流体受け入れ容器14は、流体受け入れ容器14から排液カテーテル12まで延びてこれらの間に流体受け入れ通路17をもたらす排出導管16によって排液カテーテル12に接続されてもよい。幾つかの実施形態において、排液導管16は、弁20に接続するコネクタ18を含んでもよい。一例として、弁20は、通常は閉じているがコネクタ18の挿入に伴って開いて体液が排液導管16を流通できるようにする2ピース弁であってもよい。排液カテーテル12の遠位端部22は、胸膜又は腹膜の排液のために患者の体内に埋め込まれてもよく、又は体液を排出するために他の体の部位に埋め込まれてもよい。幾つかの実施形態において、遠位端部22は、シールカフ24及び穿孔26を含んでもよく、穿孔26を通じて、体液が排液カテーテル12に入ることができ、胸膜、腹膜、又はその他の腔空間から体液を運ぶことができる。
【0013】
[0020]変位体28は、排液導管16及び排液カテーテル12を通して負圧を供給するために使用される圧搾バルブ31を含む。負圧は、排液カテーテル12が挿入される腔から流体受け入れ容器14に向けて体液を自動的に引き出すように吸引力をもたらす。本明細書で使用される「負圧」、「吸引」、「真空」及び「部分真空」という用語は、互換的に使用される場合があり、圧力差によって発生する領域上にわたる力を指す。圧力は、大気圧(すなわち、ゲージ圧)を基準として「負」と称される場合がある。本明細書では、体腔から体液を排出するために変位体を使用することを主に説明しているが、変位体は、傷口などの他の場所から体液を排出するために使用されてもよいことに留意すべきである。
【0014】
[0021]変位体28は、空気などのガスで満たされる内部容積を有するバルブ形状を形成する弾性的に可撓性にある外壁30を含む。可撓性のある外壁30は、シリコンなどの任意の適切な柔軟な材料から形成され得る。可撓性のある外壁30は、収縮(例えば、圧搾)可能であり、解放されると、体腔内の圧力に対して負の圧力差を生成して、体腔からの流体排出を開始するべく使用される。変位体28は、排液導管16に流体接続される接続導管32に流体接続される。幾つかの実施形態において、排液導管16及び接続導管32は、同じT字型又はY字型のチューブの一部であってもよい。他の実施形態では、T字型又はY字型のコネクタなどの接続部を使用して、排液導管16と接続導管32とを流体接続してもよい。フィルタ(例えば、疎水性又は親水性)又は一方向弁などの流動阻止部材36が、変位体28と排液導管16との間の接続導管32に位置してもよい。流動阻止部材36は、少なくとも体液によって湿潤されるまではガス(空気)がそこを通過して接続導管32を通過できるようにするとともに、排液動作中に排出流体がそこを通過して変位体28に入るのを阻止することができる。この点に関して、体液は液体受け入れ容器14に向かう途中で変位体28を通過しないため、変位体28は、排液導管16と「一直線でない」又は排液導管16から分岐していると見なされてもよい。変位体28は、排液導管16に直接に流体接続されず、また、流体は、変位体28から遮断され、変位体28を通過しない。
【0015】
[0022]一方向弁40が、変位体28の下流側で排液導管16に沿って位置する。「下流側」及び「上流側」という用語は、排液動作中の排液の流れに関連し、下流方向は流体受け入れ容器14に向かう方向であり、上流方向は流体受け入れ容器から離れる方向である。図示の例において、一方向弁40は、流体受け入れ容器14の流体受け入れ容積44への入口42に位置するフラッタ弁である。排液導管16の端部46が、入口42で一方向弁40に流体接続されてもよい。幾つかの実施形態において、端部46はスタブチューブに接続されてもよい。一方向弁40は入口42に位置するが、一方向弁は、流体受け入れ容積44と接続導管32との間の排液導管16に沿うどこにでも位置させることができる。例えば、以下でより詳細に説明するように、コネクタ18と一方向弁40との間の距離を短縮し、それによって、負圧を付与するときに排液導管16内の空気充填容積を減少させるべく、一方向弁40を接続導管32の近くに設けることが望ましい場合がある。
【0016】
[0023]他の一方向弁50が、接続導管32の上流側で排液導管16に沿って位置する。一方向弁50は、排液導管16に沿って、変位体28とコネクタ18との間のどこにでも位置し得る。排液動作中、一方向弁50は、体腔に向かう上流側への流体(ガス及び液体)の流れを防止する。更に、流量制御装置35を使用して、排液導管16を収縮したり解放したりすることができ、流量制御装置35は、ユーザによって望まれるように流体の流量を減少又は増加させることができる。
【0017】
[0024]
図2A~
図2Cも参照すると、排液システム10の動作が図示される。コネクタ18が弁20を介して排液カテーテル12に流体接続されると、要素Cにより表わされる体腔内に既に埋め込まれた排液カテーテル12を用いて排液動作が開始され得る。排液動作を開始するために、液体受け入れ容器14(例えば、バッグ)をそれが体腔Cよりも低くなるように床の上に配置してもよい。体腔C、排液導管16、及び流体受け入れ容器14の位置及び向き、並びに体腔Cと外気との間の圧力差に応じて、変位体28の作動を伴うことなく排液流れが始まる場合がある。これは重力流と考えられる。
【0018】
[0025]場合によっては、体液の流れを開始又は増大させるために、排液カテーテル12の流体受け入れ通路17内に低圧を導入することが望ましい場合がある。このために、ステップ60(
図2A)において、変位体28を手動で圧搾してその内部容積を減らし、変位体28から流動阻止部材36を通じて流体受け入れ通路17内に空気を押し出してもよい。接続導管32の上流側に一方向弁50が存在することにより上流方向への空気の流れが防止されるため、流体受け入れ通路17内で変位された空気は、通気と呼ばれるプロセスで、入口42にある一方向弁40を通じて流体受け入れ容積44内に押し込まれる。流体受け入れ容器14が僅かに膨張し、一方向弁40は、閉じ込められた空気が流体受け入れ容積44から流出するのを防止する。
【0019】
[0026]ステップ62では、変位体28が手動で解放される(
図2B)。変位体28は弾性を有するため、変位体28は膨張しようとし、それによって吸引力が生じ、この吸引力は、接続導管32を介して流体受け入れ通路17に伝えられる。この場合も、一方向弁40が存在するため、流体受け入れ容積44から空気が引き出されて変位体28に戻るのが防止される。このため、また、流動阻止部材36が液体の通過を防止するとともに一旦濡れるとガスの通過も防止するため、この実施形態では、変位体28が完全に再膨張しない場合がある。他方の一方向弁50は、それを通じて負圧を排液カテーテル12に伝えることができるようにする。
【0020】
[0027]ステップ64では、体液の一部が接続導管32に沿って変位体28に向けて移動し得る(
図2C)。流動阻止部材36は、変位体28内への液体の流入を防止する。この時点では、変位体28によって流体受け入れ通路17に負圧が導入されることなく、重力の影響下で体液の排出が行われ得る。流量制御装置35は、排液導管16を収縮したり解放したりするために使用されてもよく、ユーザにより望まれるように、流体の流量を減少させたり増加させたりするために使用され得る。流体受け入れ容器14は、流体受け入れ容器14を引き裂いて内容物を注出することを容易にする脆弱線65を含むプラスチックシート材料から形成されてもよい。
【0021】
[0028]
図1~
図2Cは、排液導管16に沿う弁40及び50を示すが、他の弁構成も装置し得る。例えば、
図3を参照すると、他の排液システム70は、排液導管78に流体接続される接続導管76に入口74で流体接続される変位体72を含む。この例において、排液導管78及び接続導管76は、T字型コネクタ80によって流体接続される。接続導管76には、変位体72と排液導管78の間に、フィルタ(例えば、疎水性又は親水性)などの流動阻止部材82が位置する。流動阻止部材82は、空気がそこを通過して接続導管76を通ることができるようにし得る。流動阻止部材82は、排液動作中に排出流体が変位体72に入るのも阻止する(
図4)。
【0022】
[0029]一方向弁84が、変位体72と流動阻止部材82との間の入口74に接続導管76に沿って位置する。他の一方向弁86が、変位体72と環境との間で変位体72の出口88に位置する。動作時、変位体72を手動で収縮させると、変位体72内の容積が減少する。容積が減少するにつれて、一方向弁84は、矢印90で表わされる空気がそこを通過して接続導管76を通るのを防ぐ。一方向弁86は、矢印92で表わされる空気が変位体72の容積から周囲に逃げることができるようにする。
【0023】
[0030]ここで
図4を参照すると、変位体72が解放される際、矢印94で表わされる周囲からの空気は、一方向弁86によって変位体72に入ることが防止される。変位体72は弾性を有するため、変位体72は膨張しようとし、それによって吸引力が生じ、この吸引力は、接続導管76を介して流体受け入れ通路100に伝えられる。一方向弁86の存在により、空気が周囲から引き込まれて変位体72に戻るのが防止される。このため、この実施形態では、変位体72が完全に再膨張しない場合がある。他の一方向弁84は、矢印102で表わされるように、排液が始まるまで、それを通じて負圧を流体受け入れ通路100に伝えることができるようにする。流動阻止部材82は、ハッチングで表わされるように、液体がそこを通過するのを防ぎ、また、濡れるとガスの通過も防止する。
【0024】
[0031]
図5及び
図6は、出口位置114に一方向弁112を含む変位体110の他の実施形態を示す。
図4と同様に、一方向弁112は、変位体110が圧縮されるときに空気が変位体110から逃がることができるようにするとともに、変位体110が解放されるときに空気が入り込むのを防ぐ。他の一方向弁116は、接続導管120の上流側で排液導管118に沿って位置する。一方向弁112は、変位体110とコネクタとの間の排液導管118に沿う任意の場所に位置してもよい(
図1)。
図2で前述したように、一方向弁116は、空気と液体が体腔に向かって上流側に流れるのを防ぐ。変位体110を解放すると、前述のように、排液導管118に負圧が導入される。流動阻止部材124は、排液が変位体110に入るのを防ぐ。
【0025】
[0032]上記の排液システムは、胸膜及び腹膜の排液動作に適しており、体腔から液体受け入れ容器への、例えば、容量目盛りが印刷された透明なプラスチックフィルムで形成されたバッグへの体液の流れを促進するために使用され得る変位体を含んでもよい。排液導管が排液カテーテルに取り付けられると、流体が変位体からの助けを伴うことなく流れ始める場合があり、これが重力排液と見なされる。変位体が手動で圧縮されると、変位体はその容積から空気を押し出す。空気は、システムの構成に応じて、液体受け入れ容器又は周囲に押し込まれ得る。いずれの場合にも、変位体は、排液導管を通過する流体受け入れ通路に吸引力を与える。排液速度を手動で制御できる流量制御装置が設けられてもよく、この流量制御装置は、排液動作中の患者の快適性を高めることができる。
【0026】
[0033]以下の番号付きの項に関連して実施形態を説明することができ、特定の特徴は従属項に記載される。
【0027】
[0034]項1:体液を排出するための排液システムにおいて、体液を受けるように構成される流体受け入れ容積が内部に位置する流体受け入れ容器であって、入口を備える、流体受け入れ容器と、流体受け入れ容器の入口に連通可能に結合され、流体通路を有する排液導管であって、排液カテーテルに接続するためのコネクタに連通可能に結合される排液導管と、流体受け入れ容積から排液導管を通じた流体の流れを阻止するための排液導管に沿う第1の一方向弁と、排液導管に対して分岐した位置にあるとともに、排液導管の流体通路に流体接続される変位体であって、排液導管を通じて流体通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される、変位体と、コネクタの下流側の排液導管の流体通路にある第2の一方向弁であって、流体がコネクタに向かう方向に通過するのを阻止するように配置される、第2の一方向弁とを備え、変位体の作動が流体通路内の空気を変位させ、空気は、第2の一方向弁によって流体受け入れ容積内に押し込まれるとともに、第1の一方向弁によって流体受け入れ容積から逃げることを阻止される、排液システム。
【0028】
[0035]項2:変位体と排液導管との間に位置して、液体が変位体に入るのを阻止する疎水性又は親水性のフィルタを更に備える、項1の排液システム。
【0029】
[0036]項3:排液導管に沿って位置して、流体通路の直径を調整する流量制御装置を更に備える、項2の排液システム。
【0030】
[0037]項4:変位体は、第1の一方向弁と第2の一方向弁との間に位置する接続導管によって排液導管に流体接続される、項1から3のいずれか一項の排液システム。
【0031】
[0038]項5:変位体は、空気が圧縮されるときに変位体から出る出口位置と、空気が解放されるときに流体受け入れ通路から変位体に入る入口位置とで開放する圧搾バルブを備える、項1から3のいずれか一項の排液システム。
【0032】
[0039]項6:流体受け入れ容器がバッグであり、バッグは、このバッグの引き裂きを容易にする脆弱線を備える、項1から5のいずれか一項の排液システム。
【0033】
[0040]項7:変位体は、排液導管に対してのみ開放する圧搾バルブを備える、項1から4のいずれか一項の排液システム。
【0034】
[0041]項8:体腔から体液を排出するための排液システムを形成する方法において、排液導管の出口端部を流体受け入れ容器の入口に流体接続するとともに、第1の一方向弁を排液導管に流体接続するステップであって、一方向弁が、排液導管を通じた流体受け入れ容器の流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす、ステップと、排液導管に対して変位体を一直線ではない態様で流体接続するステップと、排液導管の入口端部にコネクタを流体接続するステップであって、コネクタが排液カテーテルに接続するように構成される、ステップとを含み、変位体は、排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく手動で作動されるように構成され、一方向弁は、負圧に起因して流体受け入れ容器の流体受け入れ容積から空気が引き出されるのを阻止する、方法。
【0035】
[0042]項9:流体がコネクタに向かう方向に通過するのを阻止する他の一方向弁を、流体受け入れ通路に沿って変位体とコネクタとの間の位置に配置するステップを更に含む、項8の方法。
【0036】
[0043]項10:液体が変位体に入るのを阻止する疎水性又は親水性のフィルタを、変位体と排液導管との間に配置するステップを更に含む、項9の方法。
【0037】
[0044]項11:流体受け入れ通路の直径を調整する流量制御装置を排液導管に沿って配置するステップを更に含む、項10の方法。
【0038】
[0045]項12:流量制御装置は、他の一方向弁とコネクタとの間に位置する、項11の方法。
【0039】
[0046]項13:変位体は、一方向弁と他の一方向弁との間に位置する接続導管によって排液導管に流体接続される、項9から12のいずれか一項の方法。
【0040】
[0047]項14:流体受け入れ容器がバッグであり、バッグは、このバッグの引き裂きを容易にする脆弱線を備える、項8から13のいずれか一項の方法。
【0041】
[0048]項15:変位体は、排液導管に対してのみ開放する圧搾バルブを備える、項8から14のいずれか一項の方法。
【0042】
[0049]項16:体液を排出するための排液システムにおいて、体液を受けるように構成される流体受け入れ容積が内部に位置する流体受け入れ容器であって、入口を備える、流体受け入れ容器と、流体受け入れ容器の入口に連通可能に結合され、排液カテーテルに接続するコネクタに連通可能に結合される排液導管と、排液ラインを通じた流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす第1の一方向弁と、排液導管と一直線ではなく、排液導管に流体接続される変位体であって、排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される、変位体とを備え、変位体は、第1の一方向弁と第2の一方向弁との間に位置し、変位体を圧縮すると、変位体内の空気が変位し、第2の一方向弁は、空気が変位体に入るのを防ぎ、第1の一方向弁は、負圧を変位体から排液導管を通じてコネクタに伝えることができるようにする、排液システム。
【0043】
[0050]項17:空気は、第2の一方向弁によって流体受け入れ容積内に押し込まれるとともに、第1の一方向弁によって流体受け入れ容積から逃げることを阻止される、項16の排液システム。
【0044】
[0051]項18:変位体と排液導管との間に位置して、液体が変位体に入るのを阻止する疎水性又は親水性のフィルタを更に備える、項16又は17の排液システム。
【0045】
[0052]項19:排液導管に沿って位置して、流体受け入れ通路の直径を調整する流量制御装置を更に備える、項17又は18の排液システム。
【0046】
[0053]項20:変位体は、空気が圧縮されるときに変位体から出る出口位置と、空気が解放されるときに流体受け入れ通路から変位体に入る入口位置とで開放する圧搾バルブを備える、項16から19のいずれか一項の排液システム。
【0047】
[0054]当業者であれば分かるように、特許請求の範囲に記載された主題の思想及び範囲から逸脱することなく本明細書に記載の実施形態に様々な修正及び変更を行なうことができる。したがって、本明細書は、そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内にある限り、本明細書に記載の様々な実施形態の修正及び変更をカバーすることを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を排出するための排液システムであって、
体液を受けるように構成される流体受け入れ容積が内部に位置する流体受け入れ容器であって、入口を備える、流体受け入れ容器と、
前記流体受け入れ容器の前記入口に連通可能に結合され、流体通路を有する排液導管であって、排液カテーテルに接続するためのコネクタに連通可能に結合される排液導管と、
前記流体受け入れ容積から前記排液導管を通じた流体の流れを阻止するための前記排液導管に沿う第1の一方向弁と、
前記排液導管に対して分岐した位置にあるとともに、前記排液導管の前記流体通路に流体接続される変位体であって、前記排液導管を通じて前記流体通路に負圧を与えるべく作動されて解放されるように構成される、変位体と、
前記コネクタの下流側の前記排液導管の前記流体通路にある第2の一方向弁であって、流体が前記コネクタに向かう方向に通過するのを阻止するように配置される、第2の一方向弁と、
を備え、
前記変位体の作動が前記流体通路内の空気を変位させ、前記空気は、前記第2の一方向弁によって前記流体受け入れ容積内に押し込まれるとともに、前記第1の一方向弁によって前記流体受け入れ容積から逃げることを阻止される、
排液システム。
【請求項2】
前記変位体と前記排液導管との間に位置して、液体が前記変位体に入るのを阻止する疎水性又は親水性のフィルタを更に備える、請求項1に記載の排液システム。
【請求項3】
前記排液導管に沿って位置して、前記流体通路の直径を調整する流量制御装置を更に備える、請求項2に記載の排液システム。
【請求項4】
前記変位体は、前記第1の一方向弁と前記第2の一方向弁との間に位置する接続導管によって前記排液導管に流体接続される、請求項1~3のいずれか1項に記載の排液システム。
【請求項5】
前記変位体は、空気が圧縮されるときに前記変位体から出る出口位置と、空気が解放されるときに前記流体通路から前記変位体に入る入口位置とで開放する圧搾バルブを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の排液システム。
【請求項6】
前記流体受け入れ容器がバッグであり、前記バッグは、このバッグの引き裂きを容易にする脆弱線を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の排液システム。
【請求項7】
前記変位体は、前記排液導管に対してのみ開放する圧搾バルブを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の排液システム。
【請求項8】
体腔から体液を排出するための排液システムを形成する方法であって、
排液導管の出口端部を流体受け入れ容器の入口に流体接続するとともに、第1の一方向弁を前記排液導管に流体接続するステップであって、前記一方向弁が、前記排液導管を通じた前記流体受け入れ容器の流体受け入れ容積内への一方向の流体の流れ方向をもたらす、ステップと、
前記排液導管に対して変位体を一直線ではない態様で流体接続するステップと、
前記排液導管の入口端部にコネクタを流体接続するステップであって、前記コネクタが排液カテーテルに接続するように構成される、ステップと、
を含み、
前記変位体は、前記排液導管を通じて流体受け入れ通路に負圧を与えるべく手動で作動されるように構成され、前記一方向弁は、前記負圧に起因して前記流体受け入れ容器の前記流体受け入れ容積から空気が引き出されるのを阻止する、
方法。
【請求項9】
流体が前記コネクタに向かう方向に通過するのを阻止する他の一方向弁を、前記流体受け入れ通路に沿って前記変位体と前記コネクタとの間の位置に配置するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
液体が前記変位体に入るのを阻止する疎水性又は親水性のフィルタを、前記変位体と前記排液導管との間に配置するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【国際調査報告】