(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】LRRC15抗原結合ドメインを含む多重特異性T細胞エンゲージャー
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241219BHJP
C07K 14/52 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 N
C12N15/13
C07K14/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534536
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2022138466
(87)【国際公開番号】W WO2023104214
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111509659.6
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521437839
【氏名又は名称】スーヂョウ ゼルゲン バイオファーマシューティカルズ カンパニー, リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU ZELGEN BIOPHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 209 Chenfeng Road, Yushan Town, Kunshan, Suzhou, Jiangsu 215300, China
(71)【出願人】
【識別番号】522185151
【氏名又は名称】シャンハイ ゼルゲン ファーマ.テック カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ZELGEN PHARMA.TECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 3,999 Cailun Road,China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン,フォン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,トンチョン
(72)【発明者】
【氏名】ション,ジャッキー
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ビンファ
(72)【発明者】
【氏名】ション,ズーリン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、多重特異性T細胞エンゲージャー(T Cells Engagers)及びその応用に関する。具体的には、本発明は、標的腫瘍細胞の表面で高度に発現されたロイシンリッチリピート含有タンパク質15(LRRC15)分子の第1の標的ドメインを含む同時に、結合T細胞表面CD分子の第2の標的ドメイン及び/又は第3の標的ドメインをさらに含む、多重特異性T細胞エンゲージャーを提供する。本発明のLRRC15関連多重特異性T細胞エンゲージャーは、T細胞を効果的に活性化し且つ腫瘍のマトリックス影響を減少させることができ、腫瘍治療として、特にLRRC15高発現腫瘍の効果的な治療剤として使用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重特異性T細胞エンゲージャー(T Cells Engagers)であって、
前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、
CD3、CD28、CD40、又はCD137からなる群から選択される標的タンパク質に結合する第2の標的ドメインと、及び/又は
CD3、CD28、CD40、又はCD137からなる群から選択される標的タンパク質に結合する任意選択の第3の標的ドメインと、を含むことを特徴とする、前記多重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項2】
前記標的ドメインは、単一ドメイン抗体(sdAb)、断片可変(Fv)ヘテロ二量体、単鎖Fv(scFv)、Fab断片、TriFab又はその組み合わせの形態であることを特徴とする
請求項1に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項3】
前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号1、2、3、4又は53に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、及び配列番号5、6、7、8又は54に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含むことを特徴とする
請求項1に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項4】
前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号1に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5に示されるような軽鎖可変領域とを含むことを特徴とする
請求項3に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項5】
前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号54に示されるような軽鎖可変領域とを含むことを特徴とする
請求項3に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項6】
前記第2の標的ドメインは、CD3抗原結合ドメイン、CD28抗原結合ドメイン、CD40抗原結合ドメイン、CD137抗原結合ドメイン、CD40L配列、又はCD137L配列からなる群から選択されることを特徴とする
請求項1に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項7】
前記第3の標的ドメインは、CD3抗原結合ドメイン、CD28抗原結合ドメイン、CD40抗原結合ドメイン、CD137抗原結合ドメイン、CD40L配列、又はCD137L配列からなる群から選択されることを特徴とする
請求項1に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項8】
抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片であって、
前記抗体又はその抗原結合断片は、
配列番号32、35、38、又は41に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR1、
配列番号33、36、39、又は42に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR2、及び
配列番号34、37、40、又は43に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR3のような三つの重鎖可変領域CDRと、
並びに、
配列番号44又は49に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR1、
配列番号45、47、又は50に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR2、及び
配列番号46、48、51、又は52に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR3のような三つの軽鎖可変領域CDRとを含むことを特徴とする、前記抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1に記載の多重特異性T細胞エンゲージャーの用途であって、
癌/腫瘍を治療するための薬物の調製に使用されることを特徴とする、前記用途。
【請求項10】
前記癌/腫瘍は、LRRC15高発現癌/腫瘍であることを特徴とする
請求項9に記載の用途。
【請求項11】
免疫複合体であって、
前記複合体は、
(i)請求項1に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー、又は請求項8に記載の抗体又はその抗原結合断片と、及び
(ii)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、又は酵素からなる群から選択されるカップリング部分とを含むことを特徴とする、前記免疫複合体。
【請求項12】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、(a)請求項1に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー、又は請求項8に記載の抗体又はその抗原結合断片と、及び(b)薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療の分野に関し、より具体的には、癌の治療に使用される、抗LRRC15抗体又はその免疫応答断片を含む多重特異性T細胞エンゲージャー(T Cells Engagers)に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、通常、異常な細胞の成長に関する疾患として定義され、体の他の部分に侵入又は拡散される可能性がある。従来の癌治療は、癌組織を除去し且つその拡散を防ぐことを目指す。このような治療の選択には、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的療法及び緩和治療が含まれる。通常、癌の種類、位置及びレベル並びに患者の健康及び好みに従って治療される。しかし、これらの療法は、無効であり、特に癌が転移した場合があるため、制限されている。さらに、化学療法及び放射線療法は、細胞毒性に関連する一連の副作用がある。
【0003】
現在、抗体を使用した標的療法を含む、癌治療の見通しがある。別の見通しのある分野は、免疫系攻撃及び腫瘍細胞を殺傷する治療方法を開発することである。
【0004】
ロイシンリッチリピート含有タンパク質15(Leucine-rich repeat containing、LRRC15)は、LRR(ロイシンリッチリピート含有タンパク質)のスーパーファミリーのメンバーである。LRRC15は、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、肺がん、黒色腫、高浸潤性肉腫、乳がん骨転移等を含む腫瘍細胞での発現が比較的高いが、正常細胞での発現が比較的低い。さらに、それは、多くの固形腫瘍(例えば、乳房、頭頚部、肺、膵臓)の間質線維芽細胞でも高レベルで発現される。従って、LRRC15は、例えば抗体薬物複合体、T細胞エンゲージャー及びCAR-T細胞等の標的療法の候補となる。
【0005】
CD3、CD28及びCD137は、T細胞上に存在する受容体である。T細胞は、CD3、CD28及びCD137を介して抗原提示細胞によって活性化され、これらの細胞は、それぞれMHCのクラスI及びクラスIIの活性化シグナル、CD80及びCD86並びに4-1BBLを利用する。CD3は、T細胞受容体(TCR)の一部であり、受容体のシグナル成分である。CD3には、イプシロン(epsilon)、デルタ(delta)及びガンマ(gamma)の三つのサブユニットがある。イプシロンは、デルタ及びゼータの両方に関連され、それらは、共同にシグナル伝達を担当する。CD3シグナルは、T細胞の活性化に必要なシグナル1であると見なされる。共受容体CD28及びCD137は、シグナル2であると見なされる。シグナル1及びシグナル2の両方は、T細胞の完全な活性化、増殖及び生存に必要なものである。
【0006】
CD40リガンド(CD40L)は、主に活性化されたT細胞によって発現される。CD40Lは、抗原提示細胞(APC)上のCD40に結合し、それによってAPCの活性化を誘導する。逆に、APCは、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を引き起こす。CD40及びCD40Lは、自然免疫及び獲得免疫をつなぐ共刺激分子である。
【0007】
様々な癌の治療に承認されている治療用モノクローナル抗体の数が増えているが、癌が成長し、及び転移に向けて進行する多くの異なる分子経路を考慮すると、これらの抗体に対する耐性がしばしば観察される。免疫系は、癌を予防する主要なメカニズムであるが、癌細胞は、免疫監視に抵抗する。従って、当技術分野では、改善された治療用結合アンタゴニスト又は抗体、ならびにこれらの試薬を用いて癌を治療する方法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、LRRC15抗原結合ドメインを含む二重/三重特異性T細胞エンゲージャーを提供する。二重/三重特異性T細胞エンゲージャー分子は、LRRC15に結合し且つCD(分化のクラスター)分子(例えば、CD3、CD28、CD137及びCD40)を活性化することができる。本発明の抗体及び抗体複合体、その医薬組成物及び製品を使用して、癌等の疾患を治療する方法をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、多重特異性T細胞エンゲージャー(T Cells Engagers)を提供し、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、
CD3、CD28、CD40、又はCD137からなる群から選択される標的タンパク質に結合する第2の標的ドメインと、及び/又は
CD3、CD28、CD40、又はCD137からなる群から選択される標的タンパク質に結合する任意選択の第3の標的ドメインとを含む。
【0010】
別の好ましい例において、前記標的ドメインは、単一ドメイン抗体(sdAb)、断片可変(Fv)ヘテロ二量体、単鎖Fv(scFv)、Fab断片、TriFab又はその組み合わせの形態である。
【0011】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、
配列番号32、35、38、又は41に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR1、
配列番号33、36、39、又は42に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR2、及び
配列番号34、37、40、又は43に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR3のような三つの重鎖可変領域CDRと、
並びに、
配列番号44又は49に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR1、
配列番号45、47、又は50に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR2、及び
配列番号46、48、51、又は52に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR3のような三つの軽鎖可変領域CDRとを含む。
【0012】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、以下からなる群から選択される三つの重鎖可変領域CDR(HCDR)及び三つの軽鎖可変領域CDR(LCDR)を含む。
【表1】
【0013】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、
配列番号32に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR1、
配列番号33に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR2、及び
配列番号34に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR3のような三つの重鎖可変領域CDRと、
並びに、
配列番号44に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR1、
配列番号45に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR2、及び
配列番号46に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR3のような三つの軽鎖可変領域CDRとを含む。
【0014】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、
配列番号35に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR1、
配列番号36に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR2、及び
配列番号37に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR3のような三つの重鎖可変領域CDRと、
並びに、
配列番号44に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR1、
配列番号47に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR2、及び
配列番号48に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR3のような三つの軽鎖可変領域CDRとを含む。
【0015】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号1、2、3、又は4に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、並びに配列番号5、6、7、又は8に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0016】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号1に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0017】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号2に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号6に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0018】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号3に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号7に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0019】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号4に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号8に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0020】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、配列番号53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0021】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、scFv、Fab、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、scFvである。
【0023】
別の好ましい例において、前記LRRC15抗原結合ドメインは、Fabであり、それは、配列番号1、2、3、4又は53に示されるような重鎖可変領域、及び配列番号5、6、7、8又は54に示されるような軽鎖可変領域と、並びに
配列番号26又は28に示されるような重鎖定常領域CH1、及び配列番号30又は31に示されるような軽鎖定常領域CLとを含む。
【0024】
別の好ましい例において、前記第2の標的ドメインは、CD3抗原結合ドメイン、CD28抗原結合ドメイン、CD40抗原結合ドメイン、CD137抗原結合ドメイン、CD40L配列、又はCD137L配列からなる群から選択される。
【0025】
別の好ましい例において、前記第3の標的ドメインは、CD3抗原結合ドメイン、CD28抗原結合ドメイン、CD40抗原結合ドメイン、CD137抗原結合ドメイン、CD40L配列、又はCD137L配列からなる群から選択される。
【0026】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、Fc断片をさらに含む。
【0027】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1又はIgG4に由来する。
【0028】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、配列番号27に示されるようなアミノ酸配列を有するIgG1に由来するFc断片である。
【0029】
別の好ましい例において、前記IgG1に由来するFc断片は、N297A、
L234F/L235E/P331S、
Y349C/K370E/K409D/K439E、
S354C/D356K/E357K/D399K、
S354C/T366W、
Y349C/T366S/L368A/Y407V、
L234F/L235E/P331S/Y349C/K370E/K409D/K439E、
L234F/L235E/P331S/S354C/D356K/E357K/D399K、
L234F/L235E/P331S/S354C/T366W、
L234F/L235E/P331S/Y349C/T366S/L368A/Y407V、
N297A/Y349C/K370E/K409D/K439E、
N297A/S354C/D356K/E357K/D399K、
N297A/S354C/T366W、
N297A/Y349C/T366S/L368A/Y407V、及び/又は
S267E、S267E/G236D、S267E/S239D、S267E/L328Fからなる群から選択される突然変異を有する。
【0030】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、配列番号57~60のいずれかに示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0031】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、配列番号29に示されるようなアミノ酸配列を有するIgG4に由来するFc断片である。
【0032】
別の好ましい例において、前記IgG4に由来するFc断片は、
Y349C/K370E/R409D/K439E、
S354C/E356K/E357K/D399K、
S354C/T366W、
Y349C/T366S/L368A/Y407V、及び/又は
S228P/S267E、
S228P/S267E/G236D、
S228P/S267E/S239D、
S228P/S267E/L328Fからなる群から選択される突然変異を有する。
【0033】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、二重/三重特異性T細胞エンゲージャーである。
【0034】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、二重特異性T細胞エンゲージャーである。
【0035】
別の好ましい例において、前記二重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、及びCD3抗原結合ドメインである第2の標的ドメインとを含む。
【0036】
別の好ましい例において、前記二重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、及びCD40抗原結合ドメインである第2の標的ドメインとを含む。
【0037】
別の好ましい例において、前記二重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、及びCD137抗原結合ドメインである第2の標的ドメインとを含む。
【0038】
別の好ましい例において、前記二重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、及び一つ又は複数のCD40L配列である第2の標的ドメインとを含む。
【0039】
別の好ましい例において、前記二重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、及び一つ又は複数のCD137L配列である第2の標的ドメインとを含む。
【0040】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、三重特異性T細胞エンゲージャーである。
【0041】
別の好ましい例において、前記三重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、
CD3抗原結合ドメインである第2の標的ドメインと、及び
CD28抗原結合ドメインである第3の標的ドメインとを含む。
【0042】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、三重特異性T細胞エンゲージャーである。
【0043】
別の好ましい例において、前記三重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、
CD3抗原結合ドメインである第2の標的ドメインと、及び
CD40抗原結合ドメインである第3の標的ドメインとを含む。
【0044】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、三重特異性T細胞エンゲージャーである。
【0045】
別の好ましい例において、前記三重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、
CD3抗原結合ドメインである第2の標的ドメインと、及び
CD137抗原結合ドメインである第3の標的ドメインとを含む。
【0046】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、三重特異性T細胞エンゲージャーである。
【0047】
別の好ましい例において、前記三重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、
CD3抗原結合ドメインである第2の標的ドメインと、及び
CD40L配列である第3の標的ドメインとを含む。
【0048】
別の好ましい例において、前記三重特異性T細胞エンゲージャーは、
一つ又は複数のLRRC15抗原結合ドメインを含む第1の標的ドメインと、
CD3抗原結合ドメインである第2の標的ドメインと、及び
CD137L配列である第3の標的ドメインとを含む。
【0049】
別の好ましい例において、前記CD3抗原結合ドメインは、配列番号11、9、10、又は12に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、及び配列番号13に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0050】
別の好ましい例において、前記CD3抗原結合ドメインは、scFv、Fab、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
別の好ましい例において、前記CD28抗原結合ドメインは、配列番号14に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、及び配列番号15に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0052】
別の好ましい例において、前記CD28抗原結合ドメインは、scFv、Fab、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0053】
別の好ましい例において、前記CD40抗原結合ドメインは、配列番号16に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、及び配列番号17に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0054】
別の好ましい例において、前記CD40抗原結合ドメインは、配列番号55に示されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、及び配列番号56に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0055】
別の好ましい例において、前記CD40抗原結合ドメインは、scFv、Fab、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0056】
別の好ましい例において、前記CD137抗原結合ドメインは、配列番号18又は20に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、及び配列番号19又は21に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0057】
別の好ましい例において、前記CD137抗原結合ドメインは、scFv、Fab、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0058】
別の好ましい例において、前記CD40L配列は、配列番号23に示されるようなアミノ酸配列を有するCD40LのRBD受容体結合ドメイン配列である。
【0059】
別の好ましい例において、前記CD137L配列は、配列番号25に示されるようなアミノ酸配列を有するCD40LのRBD受容体結合ドメイン配列である。
【0060】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、以下の式Iに示されるような構造を有し、
【化1】
式において、「-」は、それぞれ独立して、ペプチド結合又は連結ペプチドであり、
【化2】
は、ペプチド鎖間の連結結合である。
【0061】
scFv1は、第1の標的ドメインであり、前記scFv1は、抗LRRC15 scFvであり、
scFv2は、第2の標的ドメインであり、前記scFv2は、抗CD3 scFvであり、
Fc1及びFc2は、それぞれ独立して、Fc断片である。
【0062】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15 scFvは、配列番号1、2、3、4又は53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5、6、7、8又は54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0063】
別の好ましい例において、前記LRRC15 scFvは、配列番号53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0064】
別の好ましい例において、前記抗CD3 scFvは、配列番号11、9、10、又は12に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号13に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0065】
別の好ましい例において、前記抗CD3 scFvは、配列番号11に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号13に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0066】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1又はIgG4に由来する。
【0067】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1に由来する。
【0068】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、配列番号57又は58に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0069】
別の好ましい例において、前記Fc1は、配列番号57に示されるようなアミノ酸配列を有し、前記Fc2は、配列番号58に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0070】
別の好ましい例において、前記「scFv1-scFv2-Fc1」のアミノ酸配列は、配列番号64に示されたとおりであり、前記「Fc2」のアミノ酸配列は、配列番号58に示されたとおりである。
【0071】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、以下の式IIに示されるような構造(
図1A-c)を有し、
【化3】
式において、「-」は、それぞれ独立して、ペプチド結合又は連結ペプチドであり、
【化4】
は、ペプチド鎖間の連結結合である。
【0072】
scFv1及びFab1は、第1の標的ドメインであり、前記scFv1は、抗LRRC15 scFvであり、前記Fab1は、抗LRRC15 Fabであり、
scFv2は、第2の標的ドメインであり、前記scFv2は、抗CD3 scFvであり、
Fc1及びFc2は、それぞれ独立して、Fc断片である。
【0073】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15 scFvは、配列番号1、2、3、4又は53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5、6、7、8又は54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0074】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15 Fabは、配列番号1、2、3、4又は53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5、6、7、8又は54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0075】
別の好ましい例において、前記LRRC15 scFvは、配列番号53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0076】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15 Fabは、配列番号2に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号6に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0077】
別の好ましい例において、前記抗CD3 scFvは、配列番号11、9、10、又は12に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号13に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0078】
別の好ましい例において、前記抗CD3 scFvは、配列番号11に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号13に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0079】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1又はIgG4に由来する。
【0080】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1に由来する。
【0081】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、配列番号57又は58に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0082】
別の好ましい例において、前記Fc1は、配列番号57に示されるようなアミノ酸配列を有し、前記Fc2は、配列番号58に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0083】
別の好ましい例において、前記「scFv1-scFv2-Fc1」のアミノ酸配列は、配列番号64に示されたとおりである。
【0084】
別の好ましい例において、前記「Fab1-Fc2」における「HC1(重鎖)-Fc2」アミノ酸配列は、配列番号81に示されたとおりであり、「LC1(軽鎖)」のアミノ酸配列は、配列番号84に示されたとおりである。
【0085】
別の好ましい例において、前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、以下の式IIIに示されるような構造(
図2A-c)を有し、
【化5】
式において、「-」は、それぞれ独立して、ペプチド結合又は連結ペプチドであり、
【化6】
は、ペプチド鎖間の連結結合である。
【0086】
Fab1は、第1の標的ドメインであり、前記Fab1は、抗LRRC15 Fabであり、
scFv3は、第2の標的ドメインであり、前記scFv3は、抗CD40 scFvであり、
Fc3は、Fc断片である。
【0087】
別の好ましい例において、前記
【化7】
は、ジスルフィド結合である。
【0088】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15 Fabは、配列番号1、2、3、4又は53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5、6、7、8又は54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0089】
別の好ましい例において、前記LRRC15 Fabは、配列番号1に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0090】
別の好ましい例において、前記抗CD40 scFvは、配列番号16に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号17に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0091】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1又はIgG4に由来する。
【0092】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1に由来する。
【0093】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、配列番号59又は60に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0094】
別の好ましい例において、前記「Fab1-Fc3-scFv3」における「HC1(重鎖)-Fc3-scFv3」のアミノ酸配列は、配列番号70に示されたとおりであり、「LC1(軽鎖)」のアミノ酸配列は、配列番号83に示されたとおりである。
【0095】
別の好ましい例において、前記前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、以下の式IVに示されるような構造(
図3A-c)を有し、
【化8】
式において、「-」は、それぞれ独立して、ペプチド結合又は連結ペプチドであり、
【化9】
は、ペプチド鎖間の連結結合である。
【0096】
Fab1は、第1の標的ドメインであり、前記Fab1は、抗LRRC15 Fabであり、
scFv4は、第2の標的ドメインであり、前記scFv4は、抗CD137 scFvであり、
Fc3は、Fc断片である。
【0097】
別の好ましい例において、前記
【化10】
は、ジスルフィド結合である。
【0098】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15 Fabは、配列番号1、2、3、4又は53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5、6、7、8又は54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0099】
別の好ましい例において、前記LRRC15 Fabは、配列番号1に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0100】
別の好ましい例において、前記抗CD137 scFvは、配列番号18又は20に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号19又は21に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0101】
別の好ましい例において、前記抗CD137 scFvは、配列番号20に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号21に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0102】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1又はIgG4に由来する。
【0103】
別の好ましい例において、前記Fc断片は、IgG1に由来する。
【0104】
別の好ましい例において、前記別の好ましい例において、前記Fc断片は、配列番号59又は60に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0105】
別の好ましい例において、前記「Fab1-Fc3-scFv4」における「HC1(重鎖)-Fc3-scFv4」のアミノ酸配列は、配列番号77に示されたとおりであり、「LC1(軽鎖)」のアミノ酸配列は、配列番号83に示されたとおりである。
【0106】
本発明の第2の態様は、抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体は、
配列番号32、35、38、又は41に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR1、
配列番号33、36、39、又は42に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR2、及び
配列番号34、37、40、又は43に示されるようなアミノ酸配列を有するHCDR3のような三つの重鎖可変領域CDRと、
並びに、
配列番号44又は49に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR1、
配列番号45、47、又は50に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR2、及び
配列番号46、48、51、又は52に示されるようなアミノ酸配列を有するLCDR3のような三つの軽鎖可変領域CDRとを含む。
【0107】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片は、以下からなる群から選択される三つの重鎖可変領域CDR(HCDR)及び三つの軽鎖可変領域CDR(LCDR)を含む。
【表2】
【0108】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1、2、3、又は4に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、及び配列番号5、6、7、又は8に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0109】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号5に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0110】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号6に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0111】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号7に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0112】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片は、配列番号4に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号8に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0113】
別の好ましい例において、前記抗LRRC15抗体又はその抗原結合断片は、配列番号53に示されるような重鎖可変領域と、及び配列番号54に示されるような軽鎖可変領域とを含む。
【0114】
別の好ましい例において、前記抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体、マウス抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0115】
別の好ましい例において、前記抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体である。
【0116】
本発明の第3の態様は、ポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは、本発明の第1の態様に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー又は本発明の第2の態様に記載の抗体をコードする。
【0117】
本発明の第4の態様は、発現ベクターを提供し、前記発現ベクターは、本発明の第3の態様に記載のポリヌクレオチドを含む。
【0118】
別の好ましい例において、前記発現ベクターは、原核発現ベクター及び真核発現ベクターを含む。
【0119】
本発明の第5の態様は、宿主細胞を提供し、前記宿主細胞は、本発明の第4の態様に記載の発現ベクターを含むか、又はゲノムには本発明の第3の態様に記載のポリヌクレオチドが組み込まれる。
【0120】
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞を含む。
【0121】
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、大腸菌、酵母細胞、HEK 293T細胞、CHO細胞からなる群から選択される。
【0122】
本発明の第6の態様は、癌/腫瘍を治療するための薬物の調製に使用される、本発明の第1の態様に記載の多重特異性T細胞エンゲージャーの用途を提供する。
【0123】
別の好ましい例において、前記癌/腫瘍は、LRRC15高発現癌/腫瘍である。
【0124】
別の好ましい例において、前記癌/腫瘍は、固形腫瘍及び血液腫瘍を含む。
【0125】
別の好ましい例において、前記癌/腫瘍は、固形腫瘍である。
【0126】
別の好ましい例において、前記癌/腫瘍は、乳がん、頭頚部腫瘍、肺がん、膵臓がん、卵巣がん、黒色腫、神経膠芽腫、肉腫、骨がん、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0127】
本発明の第7の態様は、免疫複合体を提供し、前記複合体は、
(i)本発明の第1の態様に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー、又は本発明の第2の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片と、及び
(ii)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、又は酵素からなる群から選択されるカップリング部分とを含む。
【0128】
別の好ましい例において、前記複合体は、蛍光又は発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像法)又はCT(コンピューターX線断層撮影法)造影剤、又は検出可能な生成物を生成できる酵素、放射性核種、生物毒素、サイトカイン(例えば、IL-2等)、抗体、抗体Fc断片、抗体scFv断片、金ナノ粒子/ナノロッド、ウイルス粒子、リポソーム、ナノ磁性粒子、プロドラッグ活性化酵素(例えば、DT-ジアホラーゼ(DTD)又はビフェニルヒドロラーゼ-様タンパク質(BPHL))、化学療法剤(例えば、シスプラチン)又は任意形態のナノ粒子等から選択される。
【0129】
本発明の第8の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、(a)本発明の第1の態様に記載の多重特異性T細胞エンゲージャー、又は本発明の第2の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片、及び(b)薬学的に許容される担体とを含む。
【0130】
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、注射剤形である。
【0131】
本発明の第9の態様は、必要とする被験者に本発明の第1の態様に記載の多重特異性T細胞エンゲージャーを投与することを含む、癌/腫瘍を治療する方法を提供する。
【0132】
別の好ましい例において、前記必要とする被験者は、ヒト又は非ヒト哺乳動物である。
【0133】
別の好ましい例において、前記癌/腫瘍は、LRRC15高発現癌/腫瘍である。
【0134】
別の好ましい例において、前記癌/腫瘍は、固形腫瘍及び血液腫瘍を含む。
【0135】
別の好ましい例において、前記癌/腫瘍は、固形腫瘍である。
【0136】
別の好ましい例において、前記癌/腫瘍は、乳がん、頭頚部腫瘍、肺がん、膵臓がん、卵巣がん、黒色腫、神経膠芽腫、肉腫、骨がん、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【発明の効果】
【0137】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【
図1A-1D】
図1Aは、LRRC15抗原結合ドメイン及びCD3抗原結合ドメインから構成される三種の二重抗体構造形態(a-c)、並びにLRRC15抗原結合ドメイン及びCD3抗原結合ドメイン、CD28抗原結合ドメインから構成される二種の三抗構造形態(d-e)を示し、 ここで、aは、抗CD3 scFvと抗LRRC15 Fab(CH1-VH+CK-VL)との組み合わせを示す抗体構造を示し、ここで、IgG1 Fcは、電荷対又はノブアンドホール(knob and hole)突然変異を通じてヘテロ二量体を形成し、bは、抗LRRC15 scFv及び抗CD3 scFvによって形成される抗体構造(scFv-scFv-Fc×Fc)を示し、ここで、IgG1 Fcは、電荷対又はノブアンドホール(knob and hole)突然変異を通じてヘテロ二量体を形成し、cは、抗LRRC15 scFv、抗CD3 scFv及び抗LRRC15 Fabによって形成される分子構造(scFv-scFv-Fc×Fab-Fc)を示し、ここで、IgG1 Fcは、電荷対又はノブアンドホール(knob and hole)突然変異を通じてヘテロ二量体を形成し、dは、抗LRRC15 scFv、抗CD3 scFv及び抗CD28 Fabによって形成される分子構造(scFv-scFv-Fc×Fab-Fc)を示し、ここで、IgG1 Fcは、電荷対又はノブアンドホール(knob and hole)突然変異を通じてヘテロ二量体を形成し、eは、抗CD28 scFv、抗CD3 scFv及び抗LRRC15 Fabによって形成される分子構造(scFv-scFv-Fc×Fab-Fc)を示し、ここで、IgG1 Fcは、電荷対又はノブアンドホール(knob and hole)突然変異を通じてヘテロ二量体を形成する。
図1Bは、153-L06Cと名付けられる、
図1Aにおけるbの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
図1Cは、315-L06C08と名付けられる、
図1Aにおけるcの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
図1Dは、315-L06と名付けられる、
図1Aにおけるaの例示的な二重特異性抗体を示す。
【
図1E】
図1Eは、28315-L06と名付けられる、
図1Aにおけるeの例示的な三重特異性抗体を示す。
【
図2A-2B】
図2Aは、LRRC15抗原結合ドメイン及びCD40抗原結合ドメインから構成される四種の二重抗体構造形態を示し、 ここで、aは、抗LRRC15抗体及びCD40Lによって形成される分子構造(IgG-RBD×IgG-RBD)を示し、bは、抗LRRC15抗体及びCD40Lによって形成される分子構造(IgG-trimeric RBD×Fab-Fc)を示し、cは、抗LRRC15抗体及び抗CD40 scFvによって形成される分子構造(IgG-scFv×IgG-scFv)を示し、dは、抗CD40抗体及び抗LRRC15 scFvによって形成される分子構造(IgG-scFv×IgG-scFv)を示す。
図2Bは、1540-L06と名付けられる、
図2Aにおけるcの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
【
図2C-2E】
図2Cは、1540L-L06と名付けられる、
図2Aにおけるaの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
図2Dは、1540TL-L06と名付けられる、
図2Aにおけるbの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
図2Eは、4015-L06と名付けられる、
図2Aにおけるdの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
【
図3A-1】LRRC15抗原結合ドメイン及びCD137抗原結合ドメインから構成される四種の二重抗体構造形態を示し、 ここで、aは、抗LRRC15抗体及びCD137Lによって形成される分子構造(IgG-RBD×IgG-RBD)を示し、bは、抗LRRC15抗体及びCD137Lによって形成される分子構造(IgG-trimeric RBD×Fab-Fc)を示し、cは、抗LRRC15抗体及び抗CD137 scFvによって形成される分子構造(IgG-scFv×IgG-scFv)を示し、dは、抗CD137抗体及び抗LRRC15 scFvによって形成される分子構造(IgG-scFv×IgG-scFv)を示す。
【
図3A-2】LRRC15抗原結合ドメイン及びCD137抗原結合ドメインから構成される四種の二重抗体構造形態を示し、 ここで、aは、抗LRRC15抗体及びCD137Lによって形成される分子構造(IgG-RBD×IgG-RBD)を示し、bは、抗LRRC15抗体及びCD137Lによって形成される分子構造(IgG-trimeric RBD×Fab-Fc)を示し、cは、抗LRRC15抗体及び抗CD137 scFvによって形成される分子構造(IgG-scFv×IgG-scFv)を示し、dは、抗CD137抗体及び抗LRRC15 scFvによって形成される分子構造(IgG-scFv×IgG-scFv)を示す。
【
図3B-3D】
図3Bは、15BB-L06と名付けられる、
図3Aにおけるcの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
図3Cは、15BBL-L06と名付けられる、
図3Aにおけるaの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
図3Dは、15BBTL-L06と名付けられる、
図3Aにおけるbの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
【
図3E】
図3Eは、BB15-L06と名付けられる、
図3Aにおけるdの例示的な二重特異性抗体構造を示す。
【
図4A-4B】
図4Aは、ヒトLRRC15を発現する細胞株に結合する抗LRRC15抗体のFACS検出を示す。
図4Bは、マウスLRRC15を発現する細胞株に結合する抗LRRC15抗体のFACS検出を示す。
【
図4C-4D】
図4Cは、カニクイザルLRRC15を発現する細胞株に結合する抗LRRC15抗体のFACS検出を示す。
図4Dは、ヒトLRRC15を発現する細胞株に競合的に結合するLRRC15抗体間のFACS検出を示す。
【
図5A】LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体(153-L06C及び315-L06C08)の、ヒトLRRC15を発現する細胞株への結合のFACS検出を示す。
【
図5B】LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体(153-L06C及び315-L06C08)の、カニクイザルLRRC15を発現する細胞株への結合のFACS検出を示す。
【
図6】二重特異性抗体(153-L06C、315-L06C08)によるPBMCの刺激後、異なる抗体濃度に応じたCD25を発現するT細胞の比率の変化曲線を示す。
【
図7】二重特異性抗体(153-L06C、315-L06C08)によるPBMCの刺激後、異なる抗体濃度に応じたPBMCからのIFN-γ放出の変化曲線を示す。
【
図8】二重特異性抗体(153-L06C、315-L06C08)によるT細胞の刺激後、異なる抗体濃度に応じたT細胞を増殖する比率の変化曲線を示す。
【
図9】二重特異性抗体(153-L06C、315-L06C08)によるPBMCの刺激後、異なる抗体濃度に応じた標的細胞の殺傷比率の変化曲線を示す。
【
図10-1】PBMCを刺激してサイトカインを放出させる二重特異性抗体(153-L06C、315-L06C08)の結果を示す。
【
図10-2】PBMCを刺激してサイトカインを放出させる二重特異性抗体(153-L06C、315-L06C08)の結果を示す。
【
図11】LRRC15及びCD137を標的とする二重特異性抗体(15BB-L06)と4-1BBタンパク質との結合曲線、並びにLRRC15及びCD40を標的とする二重特異性抗体(1540-L06)とCD40タンパク質との結合曲線のELISA検出を示す。
【
図12】二重特異性抗体(15BB-L06)によるPBMCからのIL-2放出を刺激した結果を示す。
【
図13】二重特異性抗体(1540-L06)によるDCからのIL-12p40放出を刺激した結果を示す。
【
図14】二重特異性抗体(15BB-L06;1540-L06によるPBMCからのサイトカイン(TNF-α及びIL-6)放出を刺激した結果を示す。
【
図15A】投与期間中のNCI-H1650 PBMCマウスにおける腫瘍体積の変化を示す。
【
図15B】投与終了後のNCI-H1650 PBMCマウスにおける各群間の腫瘍重量の比較を示す。
【
図15C-15D】
図15Cは、153-L06C又は15BB-L06の投与後のMC38モデルマウスにおける抗腫瘍効果を示す。
図15Dは、1540-L06の投与後のMC38モデルマウスにおける抗腫瘍効果を示す。
【
図16】153-L06及び315-L06の殺傷効果の比較を示す。
【
図17】153-L06C、315-L06C08、315-L08C06及び28315-L06の間の殺傷効果の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0139】
本発明者らは、広範囲かつ詳細な研究の結果、LRRC15抗原結合ドメインを含む多重特異性T細胞エンゲージャーを予想外に初めて開発した。前記多重特異性T細胞エンゲージャーは、腫瘍細胞の表面で高発現的ロイシンリッチリピート含有タンパク質15(LRRC15)分子を標的とする第1の標的ドメインを含み、前記第1の標的ドメインは、LRRC15抗体又はその抗原結合断片であり、同時に、T細胞の表面上のCD分子に結合する第2の標的ドメイン及び/又は第3の標的ドメインをさらに含む。本発明の多重特異性T細胞エンゲージャーは、腫瘍細胞及びT細胞に同時に結合することができ、腫瘍治療として、特にLRRC15高発現腫瘍の効果的な治療剤として使用されることができる。
これに基づいて、本発明を完成させた。
【0140】
本明細書で使用されるように、「ロイシンリッチリピート含有タンパク質15」又は「LRRC15」という用語は、ヒトにおいてLRRC15遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。ロイシンリッチリピート含有タンパク質(LRR)のドメインは、自然免疫に関連するタンパク質に進化的に保存される。LRRC15は、多くの固形腫瘍(例えば、乳房、頭頚部、肺、膵臓)のマトリックス間質線維芽細胞上、及び間葉起源の癌細胞のサブセット(例えば、肉腫、黒色腫、神経膠芽腫)上に直接発現されるが、ほとんどの正常組織では、発現が低いか、まったく発現しない。
【0141】
本明細書で使用されるように、「CD」、「分化のクラスター」又は「分化分子のクラスター」という用語は、CD3、CD28及びCD40等の白血球を同定及び特徴付けるために使用できる細胞表面マーカーを指す。CD3は、T細胞受容体(TCR)複合体のシグナル伝達成分である。T細胞の活性化にはCD3が必要であるため、これを標的とする薬物(通常、モノクローナル抗体である)が、癌治療のための免疫刺激剤として研究されている。
【0142】
CD28は、T細胞媒介免疫応答を生成するために必要な主要な共刺激分子である。そのリガンドCD80及びCD86と相互作用した後、CD28は、活性化シグナルを伝達し、抗アポトーシスタンパク質の発現を引き起こし、且つIL-2を含む様々なサイトカインの合成を増強する。CD28共刺激受容体は、すべてのT細胞に存在する。他のCD28ファミリーメンバーCTLA-4、PD-1又はそのリガンドに対する抗体と比較して、CD28に対するアゴニスト抗体は、臨床的に重篤な有害事象と関連しており、後者は、腫瘍免疫寛容を克服するチェックポイント阻害剤として作用し、癌免疫治療に使用されることができる。
【0143】
CD40は、腫瘍壊死因子-R(TNF-R)ファミリーに属する細胞表面受容体であり、B細胞及び樹状細胞等のAPC上で構成的に発現される。CD40L(CD154)は、誘導性があり、且つ血小板、顆粒球、活性化T/B/NK細胞等の造血系細胞に限定されるII型膜貫通糖タンパク質である。CD40Lは、CD40に結合してAPCを活性化し、その結果、CD80、CD86及び他の共刺激分子の上方制御をもたらし、CD8+抗原特異性T細胞応答を刺激する。
【0144】
「Fc断片」又は「Fc」という用語は、抗原結合活性を有さないが、容易に結晶化することが最初に観察された抗体の部分を指し、従って、Fc断片(断片結晶化可能性を表わす)と名付けられる。このような断片は、対になったCH2及びCH3ドメインに対応し、エフェクター分子及び細胞と相互作用する抗体分子の一部である。本明細書に記載のFc断片は、IgG1、IgG2及びIgG4抗体に由来することができる。特定の用途については、特定のIgGサブクラスが好ましい場合がある。例えば、ADCC及びCDCの媒介において、IgG1は、IgG2及びIgG4よりも効果的である。従って、エフェクター機能が望ましくない場合、IgG2 Fcが好ましい場合がある。しかしながら、IgG2 Fc含有分子は、通常、IgG1 Fc含有分子よりも調製が難しく、安定性が低い場合がある。一方、FcγRIIBへの交差結合は、CD40又はCD137の共刺激シグナルを増強するために重要であるが、IgG4の結合親和性は、IgG1の結合親和性よりも約2倍高く、IgG2の結合親和性よりも10倍高い。S267E及びL328F等の突然変異は、IgG FcとFcγRIIBとの交差結合(coss-binding)をさらに増強する可能性がある。さらに、一つ又は複数の突然変異をFcに導入することによって、抗体のエフェクター機能を増加又は減少させることができる(例えば、Strohl、Curr.Opin.Biotech.、20:685-691、2009を参照する)。
【0145】
本明細書で使用されるように、「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は、二つの同一の軽鎖(L)および二つの同一の重鎖(H)で構成される、同じ構造的特徴を有する約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、一つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合し、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間でのジスルフィド結合の数は、異なる。各重鎖および軽鎖には、規則的な間隔で配置された鎖内ジスルフィド結合もある。各重鎖は、一端に可変領域(VH)があり、その後に複数の定常領域が続く。各軽鎖は、一端に可変領域(VL)を有し、別の端に定常領域を有し、軽鎖の定常領域は、重鎖の第1の定常領域に対向し、軽鎖の可変領域は、重鎖の可変領域に対向する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖との可変領域間で界面を形成する。
【0146】
本明細書で使用されるように、「可変」という用語は、抗体中の可変領域の特定の部分の配列が異なることを表し、それは、特定の抗原に対する様々な特定の抗体の結合および特異性を形成する。しかしながら、可変性は、抗体可変領域全体に均等に分散されていない。これは、軽鎖および重鎖の可変領域の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる三つのフラグメントに集中する。可変領域のより保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれ、四つのFR領域を含み、それらは、接続環を形成する三つのCDRによって接続された大抵β-フォールディング構成にあり、場合によっては部分的なβフォールディング構造を形成することができる。各鎖のCDRは、FR領域によって緊密に近接され、かつ別の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位を形成する(Kabatら、NIH Publ.No.91-3242、巻I、647~669ページ(1991)を参照する)。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関与するが、それらは、抗体の抗体依存性細胞毒性に関与する等、様々なエフェクター機能を示す。
【0147】
本出願の抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多重特異性、二重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類化、キメラ及び単鎖抗体を含むが、これらに限定されない。本明細書に開示される抗体は、鳥類及び哺乳動物を含む任意の動物源に由来することができる。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ又はニワトリの抗体である。
【0148】
「抗体断片」又は「抗原結合断片」という用語は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合したFvs(sdFv)、VL又はVHドメインを含む断片、Fab発現ライブラリーから生成された断片、及び抗イディオタイプ(anti-Id)抗体等の抗体の一部を指すために使用される。構造に関係なく、抗体断片は、すべて完全な抗体によって識別される同じ抗原に結合する。「抗体断片」という用語は、DART及び二重抗体を含む。「抗体断片」という用語は、免疫グロブリン可変領域を含む合成タンパク質又は遺伝子工学変換タンパク質をさらに含み、それは、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより、抗体のように機能する。「単鎖断片可変領域」又は「scFv」とは、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を指す。いくつかの態様において、前記ドメインは、10~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドによって接続される。リンカーは、柔軟性を高めるためにグリシン、及び溶解度を高めるためにセリン又はスレオニンを豊富に含むことができ、VHのN末端又はVLのC末端に接続することができ、逆でも同じである。定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、このようなタンパク質は、依然として元の免疫グロブリンの特異性を保持している。IgGに関しては、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量約23000ダルトンの二つの同一の軽鎖ポリペプチド及び分子量53000~70000の二つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。四つの鎖は、通常、「Y」配置のジスルフィド結合によって接続され、ここで、軽鎖は、「Y」の口から重鎖を囲み(bracket)且つ可変領域を通って伸びる。
【0149】
上記のように、可変領域により、抗体は、抗原上のエピトープを選択的に識別し且つ特異的に結合することができる。即ち、抗体のVLドメイン及びVHドメイン又は抗体の相補性決定領域(CDR)のサブセット(subset)が結合して、三次元抗原結合部位を限定する可変領域を形成する。このような四次元抗体構造は、各Y配置の各アームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、当該抗原結合部位は、VH及びVL鎖におけるそれぞれにある三つのCDR(即ち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3)によって限定される。場合によっては、例えば、特定の免疫グロブリン分子は、ラクダ科動物種に由来するか、又はラクダ科動物の免疫グロブリンに基づいて操作される。又は、免疫グロブリン分子は、軽鎖を含まない重鎖のみ、又は重鎖を含まない軽鎖のみから構成されることができる。
【0150】
天然に存在する抗体において、各抗原結合ドメインに存在する六つのCDRは、当該抗体が水性環境で三次元構造をとる際に「抗原結合ドメイン」を形成するように特異的に位置する、短い非連続アミノ酸である。「フレームワーク」ドメインと呼ばれる抗原結合ドメイン内の他のアミノ酸は、分子間の変動制がより小さい。フレームワーク領域は、主要にβ-フォールディング構造をとり、CDRは、ループを形成し、前記環の接続は、場合によってはβ-フォールディング構造の一部を形成する。従って、フレームワーク領域は、足場を形成する役割を果たし、当該足場は、鎖間の非共有結合性相互作用を通じてCDRを正しい方向に配置される。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫応答性抗原上のエピトープに相補的な表面を限定する。当該相補的な表面により、抗体とその関連エピトープ(cognate epitope)との非共有結合が促進される。正確に限定されるため、当業者は、任意の所与の重鎖又は軽鎖可変領域について、それぞれCDR及びフレームワーク領域を含むアミノ酸を容易に同定することができる。
【0151】
本明細書で使用されるように、「軽鎖定常領域(CL)」という用語は、抗体軽鎖に由来するアミノ酸配列CL(配列番号30又は31)を含む。好ましくは、軽鎖定常領域は、定常κドメイン又は定常λドメインのうちの少なくとも一つを含む。
【0152】
本明細書で使用されるように、「重鎖定常領域(CH)」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン(配列番号26又は28)、ヒンジ領域(例えば、上部、中間及び/又は下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン又はその変異体又は断片のうちの少なくとも一つを含む。重鎖定常領域は、それらのアミノ酸配列が天然に存在する免疫グロブリン分子とは異なるように修飾されることを理解されたい。
【0153】
本明細書で使用されるように、抗体、抗体断片又は抗体ドメインの「変異体」とは、(1)元の抗体、抗体断片又は抗体ドメインと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する、及び(2)元の抗体、抗体断片又は抗体ドメインが特異的に結合する同じ標的に特異的に結合する、抗体、抗体断片又は抗体ドメインを指す。「少なくともx%同一」又は「少なくともx%同一性」の形態で配列同一性を表現する場合、そのような実施形態は、下限以上のあらゆる数値パーセンテージを含むことを理解されたい。さらに、本出願にアミノ酸配列が存在する場合、当該アミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有することを開示又は含むと解釈されるべきであることを理解されたい。
【0154】
本発明の多重特異性分子の範囲内には、様々な組成物及び方法が含まれ、これらの組成物及び方法は、非対称IgG様抗体(例えば、トリオマブ/クアドローマ(triomab/quadroma))、ボタンホール抗体(knobs-into-holes antibodies)、クロスモノクローナル抗体(Cross MAb)、静電一致抗体、LUZ-Y、鎖交換改変ドメイン(SEED)体、Fab交換抗体、対称IgGクラス抗体、ツーインワン抗体、架橋モノクローナル抗体、mAb2、Cov X-body、デュアル可変領域ドメイン(DVD)-Ig融合タンパク質、IgG様二重特異性抗体、Ts2Ab、BsAb、scFv/Fc融合、デュアル(scFv)2-Fabs、F(ab)2融合タンパク質、複動式又はBis-Fab、ドックアンドロック(Dock-and-Lock、DNL)、Fab-Fv、scFv基抗体及び二重抗体基の抗体(例えば、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTEs)、タンデム二重抗体(Tandab)、DARTs、単鎖二重抗体、TCR様抗体、ヒト血清アルブミンscFv融合タンパク質、COMBODIES及びIgG/non-IgG融合タンパク質を含む。
【0155】
本明細書で使用されるように、「多重特異性T細胞エンゲージャー」という語句は、異なる結合特異性を有する少なくとも二つの標的ドメインを含む分子を指し、ここで、少なくとも一つの標的ドメインは、T細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、多重特異性阻害剤は、足場、及び異なる抗原又はエピトープを標的とする二つ又はそれ以上の免疫グロブリン抗原結合ドメインを含むポリペプチドである。特定の実施形態において、多重特異性T細胞エンゲージャーは、二重特異性抗体である。他のいくつかの実施形態において、多重特異性T細胞エンゲージャーは、三重特異性抗体である。
【0156】
本明細書で使用されるように、「二重特異性」という語句は、異なる結合特異性を有する少なくとも二つの標的ドメインを含む分子を指す。各標的ドメインは、標的分子に特異的に結合し、且つ標的分子に結合する際に標的分子の生物学的機能を阻害することができる。いくつかの実施形態において、二重特異性T細胞エンゲージャーは、二つ又はそれ以上のペプチドを有するポリマー分子である。いくつかの実施形態において、標的ドメインは、抗体の抗原結合ドメイン又はCDRを含む。いくつかの実施形態において、標的ドメインは、標的タンパク質に特異的に結合するリガンド又はその断片を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性阻害剤は、二重特異性抗体である。
【0157】
「二重特異性抗体」及び「二重特異性T細胞エンゲージャー」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、二種の異なる抗原(又はエピトープ)に特異的に結合できる抗体を指す。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、二つの結合アーム(一対のHC/LC)の一つで一つの抗原(又はエピトープ)に結合し、またその第2のアーム(別の一対のHC/LC)で異なる抗原(又はエピトープ)に結合する、完全長抗体である。これらの実施形態において、二重特異性抗体は、二つの異なる抗原結合アーム(特異性及びCDR配列の両方において)を有し、それが結合する各抗原は、一価である。
【0158】
他のいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、二つの結合アーム(2対のHC/LC)のそれぞれで二種の異なる抗原(又はエピトープ)に結合できる完全長抗体である。これらの実施形態において、二重特異性抗体は、二つの同一の抗原結合アームを有し、同じ特異性及び同じCDR配列を有し、それが結合する各抗原は、すべて二価である。
【0159】
「三重特異性抗体」及び「三重特異性T細胞エンゲージャー」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、三つの異なる結合特異性を有する三つの標的ドメインを含む分子を指す。各標的ドメインは、すべて標的分子に特異的に結合し、且つ標的分子に結合する際に標的分子の生物学的機能を阻害することができる。いくつかの実施形態において、三重特異性アンタゴニストは、二つ又はそれ以上のペプチドを有するポリマー分子である。いくつかの実施形態において、標的ドメインは、抗体の抗原結合ドメイン又はCDRを含む。いくつかの実施形態において、標的ドメインは、標的タンパク質に特異的に結合するリガンド又はその断片を含む。
【0160】
本発明の好ましい実施形態において、
図1Aにおけるa-cに示されるような構造を有する、LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体が構築された。a構造の例示的な分子は、
図1Dに示されたとおりであり、そのうちの抗CD3 scFvは、本発明に記載の任意の抗CD3抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得、抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得る。b構造の例示的な分子は、
図1Bに示されたとおりであり、そのうちの抗LRRC15 scFvは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得、抗CD3 scFvは、本発明に記載の任意の抗CD3抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得る。c構造の例示的な分子は、
図1Cに示されたとおりであり、そのうちの抗LRRC15 scFvは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得、抗CD3 scFvは、本発明に記載の任意の抗CD3抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得、抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得る。
【0161】
本発明の別の好ましい実施形態において、
図1Aにおけるd-eに示されるような構造を有する、LRRC15、CD3及びCD28を標的とする二重特異性抗体が構築された。e構造の例示的な分子は、
図1Eに示されたとおりであり、そのうちの抗CD28 scFvは、本発明に記載の任意の抗CD28抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得、抗CD3 scFvは、本発明に記載の任意の抗CD3抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得、抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得る。
【0162】
本発明の別の好ましい実施形態において、
図2Aにおけるa-dに示されるような構造を有する、LRRC15及びCD40を標的とする二重特異性抗体が構築された。a構造の例示的な分子は、
図2Cに示されたとおりであり、そのうちの抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得、CD40Lは、本発明に記載の任意のCD40Lであり得る。b構造の例示的な分子は、
図2Dに示されたとおりであり、そのうちの抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得、CD40Lは、本発明に記載の任意のCD40Lであり得る。c構造の例示的な分子は、
図2Bに示されたとおりであり、そのうちの抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得、抗CD40 scFvは、本発明に記載の任意の抗CD40抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得る。d構造の例示的な分子は、
図2Eに示されたとおりであり、そのうちの抗CD40 Fabは、本発明に記載の任意の抗CD40抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得、抗LRRC15 scFvは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得る。
【0163】
本発明の別の好ましい実施形態において、
図3Aにおけるa-dに示されるような構造を有する、LRRC15及びCD137を標的とする二重特異性抗体が構築された。a構造の例示的な分子は、
図3Cに示されたとおりであり、そのうちの抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得、CD137Lは、本発明に記載の任意のCD137Lであり得る。b構造の例示的な分子は、
図3Dに示されたとおりであり、そのうちの抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得、CD137Lは、本発明に記載の任意のCD137Lであり得る。c構造の例示的な分子は、
図3Bに示されたとおりであり、そのうちの抗LRRC15 Fabは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得、抗CD137 scFvは、本発明に記載の任意の抗CD137抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得る。d構造の例示的な分子は、
図3Eに示されたとおりであり、そのうちの抗CD137 Fabは、本発明に記載の任意の抗CD137抗体のVH及びVLを使用して構築されたFabであり得、抗LRRC15 scFvは、本発明に記載の任意の抗LRRC15抗体のVH及びVLを使用して構築されたscFvであり得る。
【0164】
本発明は、上記抗体又はその断片をコードするポリヌクレオチド分子をさらに提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNA形態またはRNA形態であり得る。DNA形態は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAを含む。DNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。DNAは、コード鎖または非コード鎖であり得る。成熟ポリペプチドをコードするコード領域配列は、本発明の抗体のコード領域配列と同一であってもよく、又は縮重された変異体であってもよい。本明細書で使用されるように、本発明における「縮重された変異体」とは、本発明のポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するが、コード領域に異なる配列を有する核酸配列をコードする核酸配列を指す。
【0165】
本発明の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、成熟ポリペプチドのみをコードするコード配列、成熟ポリペプチドのコード配列および様々な追加のコード配列、成熟ポリペプチドのコード配列(および任意の追加のコード配列)および非コード配列を含む。
【0166】
「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むか、または追加のコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドをさらに含む。
【0167】
本発明は、前記配列とハイブリダイズし、二つの配列間で少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチドにさらに関する。本発明は、特に、ストリンジェント条件下で本発明の前記ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドに関する。本発明において、「ストリンジェント条件」とは、(1)例えば、0.2×SSC、0.1%SDS、60oC等のより低いイオン強度およびより高い温度でのハイブリダイズおよび溶出、または(2)ハイブリダイズ中に、例えば、50%(v/v)ホルムアミド、0.1%子牛血清/0.1%フィコール(Ficoll)、42oC等の変性剤の添加、または(3)二つの配列間の同一性が少なくとも90%以上、より好ましくは、95%以上である場合にのみおこるハイブリダイズを指す。さらに、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.9に示される成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能及び活性を有する。
【0168】
本発明の抗体の全長ヌクレオチド配列またはそのフラグメントは、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成法によって得ることができる。特にフラグメントの長さが短い場合、実行可能な方法は、人工合成法を使用して関連する配列を合成することである。一般に、最初に複数の小さなフラグメントを合成した後、接続して非常に長い配列のフラグメントを獲得する。さらに、重鎖のコード配列および発現タグ(例えば、6His)を融合させて、融合タンパク質を形成することができる。
【0169】
関連する配列を得られたら、組換え法を使用して、関連する配列を大量に得ることができる。通常、これは、それをベクターにクローニングし、次に細胞に形質転換し、次に従来の方法によって増殖した宿主細胞から関連する配列を単離することによって得られる。本発明に関与する生体分子(核酸、タンパク質等)は、単離された形態で存在する生体分子を含む。
【0170】
現在、完全に化学的合成によって本発明のタンパク質(またはそのフラグメントまたはその誘導体)をコードするDNA配列を得ることができる。次に、当該DNA配列を当技術分野で知られている様々な既存のDNA分子(またはベクター等)および細胞に導入することができる。さらに、化学的合成によって突然変異を本発明のタンパク質配列に導入することができる。
本発明は、前記適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターにさらに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現できるように適切な宿主細胞に形質転換するために使用されることができる。
【0171】
宿主細胞は、例えば、細菌細胞等の原核細胞、または例えば、酵母細胞等の下等真核細胞、または例えば、哺乳動物細胞等の上等真核細胞であり得る。代表的な例としては、大腸菌、ストレプトマイセス、チャイニーズハムスター菌の細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ドロソフィラS2またはSf9の昆虫細胞、CHO、COS7および293細胞の動物細胞等を含む。
【0172】
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技術によって実施することができる。宿主が大腸菌などの原核生物である場合、DNA吸収することができるコンピテント細胞は、指数増殖期の後にCaCl2法で処理されることによって獲得され、使用される段階は、当技術分野でよく知られている。別の方法は、MgCl2を使用することである。必要に応じて、エレクトロポレーションの方法によって、形質転換を行うこともできる。宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈法,マイクロインジェクションおよびエレクトロポレーション等の従来の機械的方法、リポソームパッケージ等のようなDNAトランスフェクション方法を選択することができる。
【0173】
得られた形質転換体を従来の方法で培養して、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現させることができる。使用される宿主細胞に応じて、培養に使用される培地は、様々な従来の培地から選択することができる。宿主細胞の増殖に適した条件下で培養する。宿主細胞が適切な細胞密度まで増殖した後、適切な方法(例えば、温度変換または化学的誘導)を使用して選択されたプロモーターを誘導し、細胞を一定期間さらに培養する。
【0174】
前記方法における組換えポリペプチドは、細胞内、または細胞膜で発現されるか、または細胞外に分泌されることができる。必要に応じて、物理的、化学的およびその他の特性を使用して、様々な単離方法で組換えされたタンパク質を単離および精製することができる。これらの方法は、当業者によく知られている。これらの方法の例は、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧滅菌、超処理、超遠心分離、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)および他の様々な液体クロマトグラフィー技術ならびにこれらの方法の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0175】
本発明の抗体は、単独で使用することができ、検出可能なマーカー(診断目的のために)、治療剤、PK(プロテインキナーゼ)修飾部分または任意のこれらの物質の組み合わせと結合またはカップリングすることができる。
【0176】
診断目的の検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(核磁気共鳴画像法)またはCT(コンピュータ断層撮影技術)造影剤、または検出可能な生成物を生成することができる酵素を含むが、これらに限定されない。
【0177】
カップリングできる治療剤は、インスリン、IL-2、インターフェロン、カルシトニン、GHRHペプチド、腸ペプチド類似体、アルブミン、抗体断片、サイトカイン、およびホルモンを含むが、これらに限定されない。
【0178】
本発明は、組成物をさらに提供する。好ましい例において、前記組成物は、本発明の上記抗体またはその活性フラグメントまたはその融合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。通常、これらの物質を、毒性がなく、不活性で、薬学的に許容される水性ベクター媒体で処方することができ、ここで、pHは、通常、約5~8、好ましくは、約6~8であり、pH値は、処方される物質の性質および治療される病症によって異なる。処方された医薬組成物は、従来の経路で投与されることができ、ここで、経口、呼吸器、腫瘍内、静脈内、または局所投与を含む(これらに限定されない)。
【0179】
本発明の医薬組成物は、癌/腫瘍、特に固形腫瘍、特にLCRR15の高発現を有する固形腫瘍を治療するために使用されることができる。
【0180】
本発明の医薬組成物は、安全かつ有効な量(例えば、0.001~99wt%、好ましくは、0.01~90wt%、より好ましくは、0.1~80wt%)の本発明の上記モノクローナル抗体(またはその複合体)および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。このようなベクターは、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。薬物製剤は、投与方法と一致する必要がある。本発明の医薬組成物は、例えば、生理食塩水またはグルコースと他のアジュバントとを含む水溶液を使用して、従来の方法によって注射の形態で調製することができる。注射剤および溶液等の医薬組成物は、無菌条件下で調製する必要がある。有効成分の投与量は、治療有效量であり、例えば、毎日の約1μg/kg体重~約10mg/kg体重である。さらに、本発明の医薬組成物は、他の治療剤とともに使用することもできる。
【0181】
医薬組成物を使用する場合、安全かつ有効な量の免疫複合体を哺乳動物に投与し、ここで、当該安全かつ有効な量は、通常、少なくとも約10μg/kg体重であり、ほとんどの場合、約8mg/kg体重を超えなく、好ましくは、当該投与量は、約10μg/kg体重~約1mg/kg体重である。もちろん,具体的な投与量は、投与経路および患者の健康状態等の要因を考慮する必要があり、これらは、すべて熟練した医師のスキル範囲内にある。
【0182】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
(1)癌関連間質線維芽細胞(CAFs)は、ほとんどの固形腫瘍の微小環境の重要な構成要素であり、これらの細胞は、腫瘍細胞の成長をサポートし、腫瘍細胞外マトリックスの再構築に関与し、血管新生を促進し、腫瘍誘発性炎症を調節することにより、癌の進行を促進する。CAFsは、癌マトリックス内でCD40を発現する免疫細胞及び内皮細胞等の他の細胞と共存する。このように、LRRC15は、CAFで特異的に発現するため、即ち、当該標的に対して二重/三重抗体を設計して、免疫活性化シグナルを腫瘍マトリックスに届けることができ、それによりほとんどの固形腫瘍の治療においてコールド腫瘍をホット腫瘍に変換するのに役立つ。
【0183】
(2)一般的な腫瘍関連抗原(TAA)標的と比較して、様々な固形腫瘍及びCAFs上でのLRRC15の発現により、本発明におけるLRRC15抗原結合ドメインを含む二重/三重特異性抗体の応用がより広範的になる。
【0184】
(3)腫瘍マトリックスの遮断効果により、通常のTAA標的二重抗体が免疫調節剤を腫瘍細胞の位置に直接運ぶことは困難である。しかし、一端がCAFs上で標的発現されたLRRC15二重抗体は、もう一端を利用して活性化調節標的(例えば、TNFRSFを標的とする)に結合する方法で、免疫細胞の活性化を誘導して腫瘍マトリックスで役割を果たすことが容易にできる。
【0185】
(4)本発明におけるLRRC15関連二重/三重抗体は、T細胞を効果的に活性化し、且つ腫瘍のマトリックス影響を軽減することができる。
【0186】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてさらに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量パーセンテージおよび重量部数で計算される。
【0187】
本発明の多重特異性T細胞エンゲージャーを調製するために使用される配列
LRRC15抗体配列
【表3】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
CD40リガンド(CD40L)配列
CD40LRBDの変異体は、CD40リガンド配列における112~261セグメント、113~261セグメント、116~261セグメント、117~261セグメント、119~261セグメント及び121~261セグメントのうちの一つを使用することができる。
【表9】
【0194】
CD137リガンド(CD137L)配列
CD137LRBDの変異体は、CD137リガンド配列における52~248セグメント、58~248セグメント、71~248セグメント、80~248セグメント、85~248セグメント、52~254セグメント、58~254セグメント、71~254セグメント、80~254セグメント及び85~254セグメントのうちの一つを使用することができる。
【表10】
【0195】
【0196】
前記Fc領域は、次の突然変異を含むことができる。
【表12】
【0197】
本発明の好ましい実施形態において、前記Fc領域は、以下の配列を有する。
【表13】
【0198】
【0199】
前記Fc領域は、以下の突然変異を含むことができる。
【表15】
【0200】
【0201】
【0202】
実施例1.抗LRRC15抗体の調製及び検証
本発明のLRRC15抗体は、ファージライブラリーからスクリーニングされ、ファージスクリーニング技術は、(例えば、Kay、B.Winter、J. & McCafferty、J.(eds.)(1996)Phage Display of Polypeptides and Proteins:A Laboratory Manual(Academic Press))を参照する。スクリーニングプロセス中に、特異的な結合分子は、ELISA及びFACSの方法によって、LRRC15の細胞外領域に対してスクリーニングされ、その後シーケンシングによって配列を確認する。最終的には、四つの候補抗体:L15-06、L15-08、L15-03及びL15-07が得られる。
【0203】
さらに、本発明のLRRC15抗体とLRRC15を発現するCHO細胞との結合能を試験する。ここで、LRRC15を発現するCHO細胞は、ヒト、マウス、サルのLRRC15の全長配列遺伝子断片を完全遺伝子合成によって得られ、次いでそれぞれこれらの断片を安定的な発現ベクターの骨格に挿入して、発現プラスミドベクターが得られる。これら三種のプラスミドは、CHO細胞をトランスフェクションし、ピューロマイシンの圧力下でモノクローナル細胞株がスクリーニングされ、即ち、本実施例で使用されるフローサイトメトリー検出細胞株である。
【0204】
LRRC15発現CHO細胞をFACS緩衝液(PBS中0.5%BSA)で洗浄し、且つ2E6細胞/ml及び段階希釈したLRRC15抗体で再懸濁する。再懸濁液を氷上で30分間インキュベートし、次いでFACS緩衝液で2回洗浄し、且つ氷上で二次抗体を30分間インキュベートする。再懸濁した細胞をFACS緩衝液で再度洗浄した後にフローサイトメトリーで検出する。測定された平均蛍光強度に基づいて、各種の抗体の最大有効濃度の半分(EC50)を測定する。
【0205】
当該分析の結果は、
図4A-Cに示されたとおりである。ヒトLRRC15を発現する細胞に対する四つの抗体の結合能は類似しているが、マウスLRRC15を発現する細胞に対する結合能は、かなり異なり、ここで、L15-06結合能が最も強く、次いではL15-08であり、L15-03が弱く、L15-07が最も弱い。さらに、四つの抗体は、すべて強力なサル交差結合能を有する。
【0206】
さらに、抗体結合に関する競合実験をさらに実行する。四つのモノクローナル抗体分子をLRRC15発現CHO細胞に結合した後にビオチン(Biotin)標識モノクローナル抗体分子を使用して去競合的に結合し、次いでSA-FITCを使用してシグナル強度を検出し、シグナルが減少するほど、競合が強くなる。結果によると、L15-08は、L15-L06に対してほとんど競合効果を有さないことを示し、これは、L15-06及びL15-08がLRRC15の異なるエピトープに結合することを示す(
図4D)。
【0207】
実施例2.本発明の多重特異性T細胞エンゲージャー分子の調製
実施例1で得られた四つの異なるLRRC15抗体配列、及びL15-06由来の抗体配列(L15-06C)に基づいて、様々な多重特異性抗体分子を設計する。
全遺伝子合成の方法によって、多重特異性抗体の分子配列断片遺伝子が得られ、次いで従来の遺伝子クローニング法によって、標的配列を発現ベクターに挿入する(例えば、Lo. B.K.C methods in Molecular Biology. Volume 248、2004. Antibody Engineeringを参照する)。
【0208】
多重特異性分子携帯するベクターでHEK293E細胞をトランスフェクションする。37℃、5%CO2で7日間培養し、F17培地(1LのF17+10mLの10%PF68+30mlの200mM L-グルタミン)で対応する分子が生成されることができる。発現が完了後、上清を回収し且つ生成して、多重特異性T細胞エンゲージャー分子を取得し、その後様々な実験分析に使用されることができる。
【0209】
上記方法を使用して、以下の多重特異性分子を取得し、
(1)
図1Aにおけるa-cに示されるような構造を有するLRRC15抗原結合ドメイン、CD3抗原結合ドメインから構成される二重特異性抗体であり、d-eに示される構造のLRRC15抗原結合ドメイン、CD3抗原結合ドメイン、CD28抗原結合ドメインから構成される三重特異性抗体である。
【0210】
図1Aにおけるa構造の二重特異性抗体は、315-L06と名づけられ、その構造は、
図1Dに示されたとおりであり、
b構造の二重特異性抗体は、153-L06Cと名付けられ、その構造は、
図1Bに示されたとおりであり、b構造の別の二重特異性抗体命は、153-L07と名付けられ、153-L06Cとの違いは、そのうちの抗LRRC15 scFvがL15-07のVH及びVLを使用することであり、b構造の別の二重特異性抗体は、153-L06と名付けられ、153-L06Cとの違いは、そのうちの抗LRRC15 scFvがL15-06のVH及びVLを使用することであり、
c構造の二重特異性抗体は、315-L06C08と名付けられ、その構造は、
図1Cに示されたとおりであり、c構造の別の二重特異性抗体は、315-L0608と名付けられ、315-L06C08との違いは、そのうちの抗LRRC15 scFvがL15-06のVH及びVLを使用することであり、c構造の別の二重特異性抗体は、315-L0806と名付けられ、315-L06C08との違いは、そのうちの抗LRRC15 scFvがL15-08のVH及びVLを使用し、抗LRRC15 FabがL15-06のVH及びVLを使用することであり、c構造の別の二重特異性抗体は、315-L08C06と名付けられ、315-L06C08との違いは、そのうちの抗LRRC15 scFvがL15-08CのVH及びVLを使用し、抗LRRC15 FabがL15-06のVH及びVLを使用することであり、
e構造の三重特異性抗体は、28315-L06と名付けられ、その構造は、
図1Eに示されたとおりである。
【0211】
(2)
図2Aにおけるa-dに示されるようなLRRC15抗原結合ドメイン及びCD40抗原結合ドメインから構成される二重特異性抗体。
【0212】
図2Aにおけるa構造の二重特異性抗体は、1540L-L06と名付けられ、その構造は、
図2Cに示されたとおりであり、
b構造の二重特異性抗体は、1540TL-L06と名付けられ、構造は、
図2Dに示されたとおりであり、
c構造の二重特異性抗体は、1540-L06と名付けられ、その構造は、
図2Bに示されたとおりであり、
d構造の二重特異性抗体は、4015-L06と名付けられ、その構造は、
図2Eに示されたとおりであり、d構造の別の二重特異性抗体は、40D15-L06Cと名付けられ、4015-L06との違いは、そのうちの抗CD40 IgGがCD40dのVH及びVLを使用し、抗LRRC15 scFvがL15-06CのVH及びVLを使用することであり、d構造の別の二重特異性抗体は、40D15-L06CSと名付けられ、4015-L06との違いは、そのうちの抗CD40 IgGがCD40dのVH及びVLを使用し、Fc断片は、配列番号60に示される断片に置き換え、抗LRRC15 scFvがL15-06CのVH及びVLを使用することである。
【0213】
(3)
図3Aにおけるa-dに示されるようなLRRC15抗原結合ドメイン及びCD137抗原結合ドメインから構成される二重特異性抗体。
図3Aにおけるa構造の二重特異性抗体は、15BBL-L06と名付けられ、その構造は、
図3Cに示されたとおりであり、
b構造の二重特異性抗体は、15BBTL-L06と名付けられ、構造は、
図3Dに示されたとおりであり、
c構造の二重特異性抗体は、15BB-L06と名付けられ、その構造は、
図3Bに示されたとおりであり、c構造の別の二重特異性抗体は、15BBe-L06と名付けられ、15BB-L06との違いは、そのうちの抗CD137 scFvがCD137eのVH及びVLを使用することであり、
d構造の二重特異性抗体は、BB15-L06と名付けられ、構造は、
図3Eに示されたとおりであり、d構造の別の二重特異性抗体は、BBe15-L06と名付けられ、BB15-L06との違いは、そのうちの抗CD137 IgGがCD137eのVH及びVLを使用することである。
【0214】
本実施例で調製された例示的な分子は、次のとおりである。
【表18】
【0215】
実施例3.LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子の標的分子への結合の検証
LRRC15及びCD3二重特異性抗体分子を標的とし(153-L06C、構造は、
図1Bに示されたとおりであり、315-L06C08、構造は、
図1Cに示されたとおりである)、対照サンプルBM二重抗体分子(配列は、WO2021022304A2を参照する)を、ヒトLRRC15を発現するCHO細胞及びカニクイザルLRRC15を発現するCHO細胞への結合について試験し、方法は、実施例1に記載されたとおりである。
【0216】
その結果、ヒトLRRC15を発現するCHO細胞の場合、315-L06C08は、結合EC
50値が最も低く、結合能がより強く、153-L06Cは、結合プラトーが最も高く、飽和用量でより多くの抗体分子に結合することができることを示す(
図5A)。
【0217】
カニクイザルLRRC15を発現するCHO細胞の場合、各分子の結合傾向は、ヒトLRRC15を発現するCHO細胞の結合傾向と類似している(
図5B)。
【0218】
実施例4.LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子の性能検出
4.1.LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子のT細胞活性化実験
LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子(153-L06C及び315-L06C08)がT細胞を活性化する能力を測定し、上記BM分子を対照サンプルとして使用する。具体的な方法は、次のとおりである。
【0219】
PBMC緩衝液(RPMI-1640+10%FBS+1%ペンストレプ)でLRRC15発現CHO細胞(LRRC15を発現しない野生型CHOを対照として使用する)を洗浄し、2E6細胞/ml、及び段階希釈した試験する抗体で再懸濁する。E/T細胞比が10:1になるように、調製したPBMC細胞を再懸濁液に加える。37℃で48時間インキュベートし、次いでFACS緩衝液で2回洗浄し、氷上で抗CD3及び抗CD25の二次抗体を30分間共インキュベートする。再懸濁した細胞をFACS緩衝液で再度洗浄した後、フローサイトメトリーで検出する。測定された平均蛍光強度に基づいて、各抗体の最大有効濃度の半分(EC50)を計算する。
【0220】
CD25は、T細胞活性化の重要な標識である。その結果、三つの二重抗体分子は、いずれも標的細胞の存在下でT細胞に対して活性化効果を有するが、標的タンパク質を発現しない細胞の存在下ではいずれもT細胞の活性化には影響を及ぼさないことを示す。ここで、BMの活性化EC
50は、最も小さいが、活性化細胞の最大割合は、最も小さい。153-L06Cの活性化用量は、最も多いが、活性化細胞の最大割合も最も大きく、315-L06C08は、その中間位置にある(
図6)。
【0221】
4.2. LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子によるPBMCのIFN-γ放出刺激に関する実験
LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子(153-L06C及び315-L06C08)がPBMCからのIFN-γ放出を刺激する能力を測定し、上記BM分子を対照サンプルとして使用する。具体的な方法は、次のとおりである。
【0222】
PBMC緩衝液(RPMI-1640+10%FBS+1%ペンストレプ)でLRRC15発現CHO細胞(LRRC15を発現しない野生型CHOを対照として使用する)を洗浄し、2E6細胞/ml、及び段階希釈した試験する抗体で再懸濁する。E/T細胞比が10:1になるように、調製したPBMC細胞を再懸濁液に加える。37℃で48時間インキュベートする。上清を採取し、IFN-γ検出キットを使用してIFN-γの含有量を試験する。
【0223】
その結果、三つの二重抗体分子は、標的細胞の存在下で、PBMCを刺激してIFN-γを放出させることができるが、標的細胞の非存在下で、IFN-γの放出を刺激しないことを示す。ここで、BMの刺激作用は、最も弱い。153-L06Cの最大IFN-γ放出量は、最も高いが、IFN-γ放出量については315-L06C08のEC
50値と比較すると、大きな差がある(
図7)。
【0224】
4.3.LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子によるT細胞増殖刺激に関する実験
LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子(153-L06C及び315-L06C08)がT細胞増殖を刺激する能力を測定し、上記BM分子を対照サンプルとして使用する。具体的な方法は、次のとおりである。
【0225】
Pan T細胞単離キット(cat# 130-096-535、Miltenyi)を使用して、PBMC中のT細胞を単離し且つCFSEで標識する。96ウェルプレートの各ウェルで、50μlの標識したT細胞(5E4個細胞を含む)と100μlの1E4個のLRRC15発現CHO細胞(LRRC15を発現しない野生型CHOを対照として使用する)とを混合し、且つ50μlの段階希釈した試験する抗体と再懸濁する。37℃で5日間インキュベートする。次いでFACS緩衝液で2回洗浄した後にフローサイトメトリーで検出する。異なる条件下でのT細胞の増殖に基づいて、対応するCFSE染色シグナル値に従って、各種の抗体の最大有効濃度の半分(EC50)を測定する。
【0226】
その結果、153-L06C及び315-L06C08の両方が標的細胞の存在下で細胞増殖を促進できることを示すが、LRRC15を発現しない細胞の存在下で、三つの二重抗体分子のいずれも、増殖促進に有意な効果を示さない。ここで、BMは、T細胞の増殖を促進する効果がほとんどない。153-L06Cは、最大限に増殖するT細胞の割合が最も高いが、増殖を促進する315-L06C08のEC
50値と比較すると、大きな差がある(
図8)。
【0227】
4.4.LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子による標的細胞に対するPBMCの殺傷刺激の実験
LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子(153-L06C及び315-L06C08)がPBMCを刺激して標的細胞を殺傷する能力を測定し、上記BM分子を対照サンプルとして使用する。具体的な方法は、次のとおりである。
【0228】
PBMC緩衝液(RPMI-1640+10%FBS+1%ペンストレプ)を使用してLRRC15を発現するCHO細胞を洗浄し、2E6個細胞/ml、及び段階希釈した試験する抗体で再懸濁する。E/T細胞比が10:1になるように、調製したPBMC細胞を再懸濁液に加える。37℃で48時間インキュベートする。インキュベートした96ウェルプレートにCytoTox-GloTM細胞毒性検出試薬を加える。測定した化学発光強度に基づいて、各種の抗体による標的細胞の殺傷状況を測定する。
【0229】
その結果、三つの二重抗体分子は、標的細胞の存在下でPBMCを刺激して標的細胞を殺傷することができるが、LRRC15を発現する細胞の非存在下で、明らかな殺傷効果を示さないことが示される。ここで、BMは、殺傷効果が最も弱く、且つ明らかフック状エフェクターがある。153-L06Cの最大殺傷比率が最も高いが、315-L06C08が殺傷するEC
50値と比較すると、大きな差がある(
図9)。
【0230】
4.5.LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子によるPBMCからのサイトカイン放出刺激実験
LRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子(153-L06C及び315-L06C08、構造は、
図1B及び1Cに示されたとおりである)がPBMCを刺激してサイトカインを放出する能力を刺激し、上記BM分子を対照サンプルとして使用し、CD3抗体(OKT3)を陽性対照として使用する。具体的な方法は、次のとおりである。
【0231】
解凍し且つ96ウェルプレートでPBMC緩衝液(RPMI-1640+10%FBS+1%ペンストレプ)を使用して、四つの異なるドナー(D1、D2、D3、D4)からのPBMC細胞を10E7細胞/mlに希釈した後、37℃のインキュベーターに入れて48時間培養する。PBMC緩衝液で試験する抗体を10nMに希釈し且つPBMC細胞を含む96ウェルプレートに加え、37℃で24時間インキュベートする。BDTM Cytometric Bead Array(CBA)キットを使用して培養上清中のサイトカイン含有量を捕獲し且つ検出し、各種の抗体が皓となるドナーPBMCからのサイトカイン放出をどのように刺激するかを実証することが可能である。
【0232】
その結果、三つの二重抗体分子は、6種のサイトカインの放出に対して有意な促進効果を示さないが、陽性対照として使用するCD3抗体(OKT3)は、すべてサイトカインを様々な程度で放出することを示す。未処理(Untreated)は、抗体を添加しないグループであり、陰性対照として、すべて明らかなサイトカインの放出がない(
図10)。
【0233】
実施例5.LRRC15及びCD137/CD40を標的とする二重特異性抗体分子と標的分子との結合検証
LRRC15及びCD137を標的とする二重特異性抗体分子(15BB-L06、構造は、
図3Bに示されたとおりである)は、4-1BBタンパク質に結合し、LRRC15及びCD40を標的とする二重特異性抗体分子(1540-L06、構造は、
図2Bに示されたとおりである)とCD40タンパク質との結合は、ELISA法によって検出される。具体的な方法は、次のとおりである。
【0234】
4-1BB又はCD40の抗原タンパク質を4℃で一晩コーティングし、0.05%PBST溶液で3回洗浄し、96ウェルプレートの各ウェルに200μlの1%BSAを加え、室温で1時間ブロックする。0.05%PBSTでプレートを3回洗浄する。1%BSAを使用して段階希釈した抗体分子(15BB-L06又は1540-L06)を再懸濁した後にウェルあたり100μlを96ウェルプレートに二重に加える。0.05%PBSTでプレートを3回洗浄する。抗hIgG-HRP二次抗体を加え、室温で30分間インキュベートする。0.05%PBSTでプレートを3回洗浄する。次いでTMB試薬を加えて発色させ、且つマイクロプレートリーダーで450nmで読み取る。測定した平均OD450値に基づいて、各種の抗体の最大有効濃度の半分(EC50)を測定する。
【0235】
その結果、15BB-L06は、4-1BBに結合することができ、1540-L06は、CD40に結合することができることを示す(
図11)。また、二重特異性抗体分子における4-1BB抗体部分又はCD40抗体部分は、scFv形態であり、そのIgG形態と比較して、抗体が抗原に結合した後に過剰な活性化を引き起こさないため、投与中の二重抗体分子のリスクが軽減される。
【0236】
実施例6.LRRC15及びCD137/CD40を標的とする二重特異性抗体分子の性能検出
LRRC15及びCD137を標的とする二重特異性抗体(15BB-L06)がPBMCを刺激してIL-2を放出する能力、並びにLRRC15及びCD40を標的とする二重特異性抗体(1540-L06)がDCを刺激してIL-12p40を放出する能力を測定する。
【0237】
96ウェルプレートに10μg/mlのCD3抗体(OKT3、eBioscience)をウェルあたり100μlで事前に加え、37℃で2時間インキュベートする。PBMC緩衝液(RPMI-1640+10%FBS+1%ペンストレプ)でLRRC15発現CHO細胞(LRRC15を発現しない野生型CHOを対照として使用する)を洗浄し、2E6個細胞/ml、及び段階希釈した試験する抗体で再懸濁する。E/T細胞比が10:1になるように、調製したPBMC細胞を再懸濁液に加える。37℃で48時間インキュベートする。上清を採取し、IL-2検出キットでIL-2の含有量を試験する。
【0238】
その結果、15BB-L06は、標的細胞の存在下で、ウレルマブ(Urelumab)(4-1BB単一特異性抗体)よりも高いIL-2を放出するが、標的タンパク質を発現しない細胞の存在下で、IL-2の放出は、対照IgGと同様であり、抗体分子の標的特異性の有効性を反映することを示す。対照モノクローナル抗体ウレルマブには、この特異性がない(
図12)。
【0239】
単核細胞単離キット(cat#130-096-537、Miltenyi)を使用してPBMCから単核細胞を単離する。20ng/mlのGM-CSF及びIL-4を加えて単核細胞のDC細胞への分化を誘導し、7日後にDC細胞を収穫する。PBMC緩衝液(RPMI-1640+10%FBS+1%ペンストレプ)でLRRC15発現CHO細胞(LRRC15を発現しない野生型CHOを対照として使用する)を洗浄し、2E6個細胞/ml、及び段階希釈した試験する抗体で再懸濁する。E/T細胞比率が3:1になるように、再懸濁液に調製したDC細胞を加える。37℃で24時間インキュベートする。上清を採取し、IL-12p40検出キットでIL-12p40の含有量を試験する。
【0240】
その結果、1540-L06は、標的細胞の存在下で、セリクレルマブ(Selicrelumab)(CD40単一特異性抗体)よりもわずかに低いIL-12p40を放出するが、標的タンパク質を発現しない細胞の存在下で、IL-12p40の放出が大幅に減少し、抗体の分子標的特異性の有効性を反映することを示す。対照モノクローナル抗体セリクレルマブには、この特異性がない(
図13)。
さらに、上記二重抗体分子がPBMCを刺激してサイトカイン(TNF-α及びIL-6)を放出する能力を測定し、CD3抗体(OKT3)を陽性対照として使用する。具体的な方法は、次のとおりである。
【0241】
解凍し、且つ五つの異なるドナーからのPBMC細胞を、96ウェルプレートでPBMC緩衝液(RPMI-1640+10%FBS+1%ペンストレプ)を使用して、10E7細胞/mlにそれぞれ希釈した後、37℃のインキュベーターに入れて48時間培養する。PBMC緩衝液で試験する抗体を10nMに希釈し且つPBMC細胞を含む96ウェルプレートに加え、37℃で24時間インキュベートする。それぞれTNF-α及びIL-6検出キットを使用して、培養上清中のサイトカインの含有量を捕獲及び検出し、各種の抗体が異なるドナーのPBMCからのサイトカイン放出状況をどのように刺激するかを示すことができる。
【0242】
その結果、二つの二重抗体分子1540-L06及び15BB-L06は、TNF-α及びIL-6の二種のサイトカインに対して明らかな促進効果がないことを示す(
図14)。
【0243】
実施例7.LRRC15を標的とする二重特異性抗体分子のインビボ有効性実験
7.1.NCI-H1650モデル
NOGマウスにNCI-H1650細胞(1×10
7細胞/匹)を接種し、15日後にPBMCを接種し、平均腫瘍体積が約200mm
3に成長した際にグループに分けて投与し始める(対照群にはPBSを投与し、実験群にはそれぞれ153-L06C及び315-L06C08投与する)。生脈内注射し、週に2回、7回連続して投与する。この期間中に腫瘍体積を測定し(
図15A)且つマウスの以上の有無を観察する。
【0244】
その結果、等モル用量下で、153-L06C(0.2mg/kg)及び315-L06C08(0.288mg/kg)は、同様の抗腫瘍効果を示し、TGIは、それぞれ37%及び39%である。投与期間の動物の耐性は、良好である。実験終了後、腫瘍を採取し且つ秤量し、腫瘍重量の結果は、153-L06C及び315-L06C08の抗腫瘍効果をより明確に反映し、腫瘍重量は、それぞれ対照群の55%及57%である(
図15B)。
【0245】
7.2.MC38モデル
ヒト化hCD3e/h4-1BB二重遺伝子ノックインC57BL/6マウスにMC38-huLRRC15細胞(2×106細胞/匹)を接種し、平均腫瘍体積が約120mm3に成長した際にグループに分けて投与し始める(対照群には、生理食塩水を投与し、実験群には、それぞれ153-L06C及び15BB-L06を投与する)。生脈内注射し、週に2回、4回連続して投与する。
【0246】
その結果、153-L06C(1mg/kg)及び15BB-L06(1mg/kg)の両方は、同様の抗腫瘍効果を示すことを示し、TGIは、それぞれ24%及び43%である(
図15C)。
【0247】
ヒト化hCD40遺伝子ノックインC57BL/6マウスにMC38-huLRRC15細胞(2×10
6細胞/匹)を接種し、平均腫瘍体積が約120mm
3に成長した際にグループに分けて投与し始める(対照群には、生理食塩水を投与し、実験群には、1540-L06を投与する)。生脈内注射し、週に2回(最初の2回の投与量は、1mg/kgであり、3回目の投与量は、6mg/kgである)、3回連続して投与し、投与量を6mg/kgに調整した後、1540-L06は、明らかな抗腫瘍効果を示し、TGIは、59%である(
図15D)。
【0248】
比較例1.異なる構造を有する多重特異性T細胞エンゲージャー分子の性能比較
実施例2で調製したLRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子(153-L06及び315-L06)がPBMCを刺激して標的細胞を殺傷する能力を測定する。具体的な方法は、実施例4.4を参照する。
【0249】
その結果、153-L06の殺傷効果は、315-L06の殺傷効果よりも有意に優れていることを示し、これは、153-L06構造を有する分子がより標的細胞の殺傷を刺激する能力に優れていることを示す(
図16)。
【0250】
実施例2で調製したLRRC15及びCD3を標的とする二重特異性抗体分子(153-L06C、315-L06C08、315-L08C06)並びにLRRC15、CD3及びCD28を標的とする三重特異性抗体分子28315-L06がPBMCを刺激して標的細胞を殺傷する能力を測定する。具体的な方法は、実施例4.4を参照する。
【0251】
その結果、315-L06C08の殺傷効果は、他の分子の殺傷効果よりも有意に優れていることを示し、これは、315-L06C08構造を有する分子が標的細胞の殺傷を刺激する能力に優れていることを示す(
図17)。
【0252】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【配列表】
【国際調査報告】