(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リグニン-ケイ素複合体から顆粒状炭素-ケイ素複合体を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20241219BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20241219BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
C01B33/02 Z
H01M4/48
H01M4/36 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534551
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 IB2022061883
(87)【国際公開番号】W WO2023105441
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ウォットラー, マリオ
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072GG02
4G072HH01
4G072HH02
4G072HH13
4G072JJ02
4G072MM02
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4G072MM28
5H050AA07
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5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、凝集リグニン-ケイ素複合材料を製造する方法に関する。本方法は、粉末形態のリグニン、粉末形態の少なくとも1つのケイ素含有活物質、及び任意選択的に少なくとも1つの添加剤を混合する工程と、混合物を圧縮する工程と、圧縮された複合材料を粉砕して凝集したリグニン-ケイ素複合材料を得る工程を含む。本発明はまた、凝集リグニン-ケイ素複合材料を熱処理することによって得られる顆粒状炭素-ケイ素複合材料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集リグニン-ケイ素複合材料を製造するための方法であって、
a)粉末の形態のリグニンを提供する工程と、
b)粉末の形態の少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供する工程と、
c)リグニン-ケイ素粉末混合物を得るために、リグニン粉末、少なくとも1つのケイ素含有活物質粉末、及び任意選択的に少なくとも1つの添加剤を混合する工程と、
d)リグニン-ケイ素複合材料を得るために、工程c)で得られたリグニン-ケイ素粉末混合物を圧縮する工程と、
e)凝集リグニン-ケイ素複合材料を得るために、工程d)で得られたリグニン-ケイ素複合材料を粉砕する工程と、
f)100μm未満の粒径を有する粒子を除去し、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する凝集リグニン-ケイ素複合材料を得るために、工程e)で得られた凝集リグニン-ケイ素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程と
を含む、方法。
【請求項2】
粉末の形態のリグニンの粒度分布が、粒子の少なくとも80重量%が0.2mm未満の直径を有し、水分含有量が45重量%未満であるようなものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)で提供されるリグニンがクラフトリグニンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのケイ素含有活物質がマイクロサイズ又はナノサイズである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
混合する工程が少なくとも1分間行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
混合が少なくとも100rpmの混合速度で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
混合が乾式混合によって行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
得られた凝集リグニン-ケイ素複合材料の嵩密度が、0.5~0.7g/cm
3の範囲にある、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
凝集リグニン-ケイ素複合材料が、凝集リグニン-ケイ素複合材料の乾燥重量に基づいて、0.5~30重量%の範囲の少なくとも1つのケイ素含有材料を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
凝集リグニン-ケイ素複合材料中のケイ素含有活物質が、元素ケイ素、亜酸化ケイ素、ケイ素-金属合金、又はケイ素-金属炭素合金の群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
追加の工程:
g)熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料を得るために、凝集リグニン-ケイ素複合材料を、140~250℃の範囲の温度に少なくとも30分間加熱する工程
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
凝集リグニン-ケイ素複合材料の加熱する工程は、最初に凝集リグニン-ケイ素複合材料を、140~175℃の範囲の温度に少なくとも15分間加熱し、続いて凝集リグニン-ケイ素複合材料を175~250℃の範囲の温度に少なくとも15分間加熱することによって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる凝集リグニン-ケイ素複合材料。
【請求項14】
顆粒状炭素-ケイ素複合材料を製造するための方法であって、
i)請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる凝集リグニン-ケイ素複合材料を提供する工程と、
ii)凝集リグニン-ケイ素複合材料を、300℃~1500℃の範囲の1つ又は複数の温度での熱処理に供する工程であって、顆粒状炭素-ケイ素複合材料を得るために、熱処理は30分~10時間の範囲の合計時間行われる、熱処理に供する工程と
を含む方法。
【請求項15】
工程ii)が、予備加熱工程と、それに続く最終加熱工程とを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
予備加熱工程が、400と800℃との間の温度で少なくとも30分間行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
予備加熱工程が不活性雰囲気中で行われる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
最終加熱工程が、800℃と1500℃との間の温度で少なくとも30分間行われる、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
最終加熱工程が不活性雰囲気中で行われる、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
炭素-ケイ素複合材料粉末を得るために、顆粒状炭素-ケイ素複合材料を微粉化する追加の工程を含む、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項14から19のいずれか一項に記載の方法によって得られる顆粒状炭素-ケイ素複合材料。
【請求項22】
請求項20に記載の方法によって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末。
【請求項23】
請求項20に記載の方法によって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末を活物質として含む非水二次電池のための負極。
【請求項24】
請求項20に記載の方法によって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末の、非水二次電池の負極の活物質としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集リグニン-ケイ素複合材料を製造するための方法、及び該方法により得られる凝集リグニン-ケイ素複合材料に関する。本発明はさらに、前記凝集リグニン-ケイ素複合材料から粒状の炭素-ケイ素複合材料を得る方法に関する。本発明はさらに、前記下流状炭素-ケイ素複合材料から得られる炭素-ケイ素複合材料粉末、及び前記炭素-ケイ素複合材料粉末を活物質として含む非水二次電池のための負極に関する。本発明はさらに、前記炭素-ケイ素複合材料粉末の非水二次電池の負極の活物質としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの二次電池は、何度も充電と放電が可能な電気電池、つまり充電式電池である。リチウムイオン電池では、放電時にリチウムイオンが負極から電解質を通って正極に流れ、充電時に正極に戻る。今日、典型的に、リチウム化合物、特にリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)又は代替的に、リチウム鉄リン酸(LFP)などのリチウム金属酸化物が正極の材料として使用され、炭素を豊富に含む材料が負極の材料として使用される。
【0003】
グラファイト(天然又は合成グラファイト)は、エネルギー密度が高く、長期間にわたって安定した充放電性能を発揮するため、現在、ほとんどのリチウムイオン電池の負極材料として使用されている。グラファイトの代替物は、長範囲のグラファイト規則を欠く、ハードカーボン(非グラファイト化アモルファス炭素)及びソフトカーボン(グラファイト化アモルファス炭素)などの非晶質炭素材料である。グラファイトと非晶質炭素に共通するのは、充電時と放電時の体積変化が小さいことである。これにより、電極材料の機械的安定性が高まり、良好なサイクル安定性を維持するのに役立つ。非晶質炭素は、単独の活性電極材料として、又はグラファイトとの混合物として使用できる。ハードカーボンは、急速充電及び高出力システムに求められる良好な充/放電率性能を有する場合が多い。
【0004】
非晶質炭素はリグニンから生成される。リグニンは芳香族ポリマーであり、木材などの主成分であり、地球上で最も豊富な炭素源の1つである。近年、パルプ製造工程から高度に精製された固体で微粒子化されたリグニンを抽出する技術の開発と商業化により、現在石油化学産業から供給されている主に芳香族化学前駆体の再生可能な代替品として大きな注目を集めている。リグニン由来の非晶質炭素は、通常、黒鉛化できない、つまりハードカーボンである。
【0005】
しかし、ハードカーボンは、通常、グラファイトに比べて使用可能なエネルギー密度が低く、それにより、現在、リチウムイオン電池のアノード材料としての幅広い使用は制限されている。
【0006】
ケイ素は、炭素(372mAh/g、LiC6)と比較して、比充電容量が高く(理論容量は、Li15Si4に相当する、3579mAh/gである)、そのため、炭素ベース(グラファイト及び/又は非晶質)アノード材料のエネルギー密度を高めるために使用することができる。したがって、原理的には、ケイ素の添加は、グラファイトと比較した非晶質炭素(ハードカーボンなど)のエネルギー密度の低さを補うために使用し得る。
【0007】
電極材料としてのケイ素の欠点は、ケイ素の充電と放電中に発生する大きな体積膨張である。ケイ素の大きな体積膨張は、高い不可逆容量と不十分なサイクル動作につながる課題を引き起こす。この問題を緩和するために、ケイ素を炭素マトリックス内に封入して体積膨張の影響を軽減し、それによって不可逆的な容量損失を減らし、充電/放電サイクル挙動を改善することが想定されている。
【0008】
ケイ素は、元素ケイ素の形態、亜酸化ケイ素(SiOx)のとして、又はケイ素合金(SiMxCzなど、Mは金属)として使用される場合がある。ケイ素又はケイ素を多く含む化合物は、ここでは、通常、ケイ素含有材料又はSiXと表記される。
【0009】
炭素とSiXの市販の複合材料、例えば、グラファイトとSiXの複合材料は、現在、通常、以下のいずれかの工程を含む方法によって製造されている。
・電極調製前にグラファイトとSiXを、例えば、高エネルギー混合や磨砕技術を用いて混合すること
・例えば、化学気相堆積(CVD)によりケイ素含有材料の薄層でグラファイトをコーティングし、グラファイト/SiXコア/シェル材料を得ること
・SiX粒子を、例えば、湿式化学法により薄い炭素層でコーティングし、SiX/炭素コア/シェル材料を得ること
・電極調製時のグラファイトとSiXのブレンドすること
【0010】
上記の方法におけるSiXの成分は、安定性を高めるために表面を事前に酸化したり、炭素コーティングしたりすることができる。さらに、炭素/SiX複合材料は、その安定性を高めるためにさらに炭素コーティングされ得る。
【0011】
二次電池の電極材料として利用される場合、グラファイトとSiXの複合材料は、通常、粉末の形で提供され、バインダーと混合されて電極を形成する。
【0012】
US20140287315 A1は、ケイ素含有活性材料を提供することと、リグニンを提供することと、活性材料をリグニン含有C前駆体と接触させることと、不活性ガス雰囲気中で少なくとも400℃の温度でリグニンを炭素に変換することにより活物質を炭化することとを含む、Si/C複合材料を製造するための方法について記載している。ケイ素ベースの活物質は、リグニンと一緒に磨砕することも、リグニンと物理的に混合することもできる。
【0013】
しかしながら、上記のような磨砕やコーティングなどの方法で得られたグラファイト/炭素とSiXの複合材料では、個々の構成要素は通常、互いに隣接して存在するか(SiXがグラファイト/炭素の隣に存在する)、又は互いの上に重なって存在します(SiXがグラファイト/炭素の表面の上にあるか、グラファイト/炭素がSiXの表面の上にある)。したがって、Siの良好で均一な分散を維持しながら、SiXの負荷量は制限される。さらに、SiX又はグラファイト/炭素とSiXの複合材料が炭素コーティングされていないと、SiXはバッテリーのバインダー及び電解質と直接接触し、サイクル安定性に問題が生ずる。そのため、特別な結合剤と電解質が必要になる。
【0014】
これらの問題を克服するための戦略の1つは、炭素前駆体にSiXを埋め込み、炭素を豊富に含む材料に変換してC/SiX複合材料を作成することである。
【0015】
前述のように、リグニンを原料としてハードカーボンを得ることができる。現在、リグニンの最も商業的に関連のある供給源は、クラフトプロセスを通じて広葉樹又は針葉樹から得られるクラフトリグニンである。リグニンは、例えば、膜濾過や限外濾過などを使用してアルカリ性黒液から分離することができる。一般的な分離プロセスの1つはWO2006031175 A1に記載されている。このプロセスでは、酸を加えることでアルカリ性の黒液からリグニンを沈殿させ、その後濾過する。リグニンフィルタケークは、次の工程で酸性条件下で再スラリー化され、乾燥及び粉砕の前に洗浄される。
【0016】
リグニンを炭素濃縮材料の前駆体として使用する場合の問題の1つは、微粉末の形態でリグニンを直接使用すると、望ましくない熱可塑性挙動を示すために適さないことである。リグニン粉末を炭素を豊富に含む材料に熱変換する過程で、リグニンは塑性変形/溶融、激しい膨張及び発泡を経る。これにより、機器の寸法及びプロセススループット並びに中間処理の必要性の点で、工業的規模でのリグニンの処理可能性が著しく制限される。
【0017】
したがって、炭素マトリックス中にケイ素が良好かつ一様に分散しているだけでなく、ケイ素の含有量が高い炭素-ケイ素複合材料を製造するための方法には、依然として改善の余地がある。本方法は、粉末携帯のリグニンの使用を可能にし、それによって、炭素-ケイ素複合材料を得るための加熱時にリグニンが塑性変形/溶融、激しい膨張及び発泡を起こすことを回避するべきである。さらに、本方法は大規模な製造にも使用できるはずである。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、再生可能な炭素源の使用を可能にし、従来技術の方法の欠点の少なくとも一部を排除又は軽減する、炭素-ケイ素複合材料を製造するための改善された方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、リチウムイオン電池などの二次電池の負極の活物質として使用するのに適した改善された炭素-ケイ素複合材料を製造するための方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、炭素マトリックス中にケイ素が良好かつ一様に分散しているだけでなく、ケイ素の含有量が高い炭素-ケイ素複合材料を製造するための方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、粉末形態のリグニンの使用を、その後の熱処理中にリグニンの形状及び寸法を維持しながら可能にする炭素-ケイ素複合材料を製造するための方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、スケーラブルであり、したがって大規模製造に適した、リグニンから炭素-ケイ素複合材料を製造するための方法を提供することである。
【0023】
上記の目的、並びに本開示に鑑みて当業者によって実現される他の目的は、本開示の様々な態様によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の態様によれば、本発明は、凝集リグニン-ケイ素複合材料を製造するための方法に関し、前記方法は、
a)粉末形態のリグニンを提供することと、
b)粉末形態の少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供する工程と、
c)リグニン-ケイ素粉末混合物を得るために、リグニン粉末、少なくとも1つのケイ素含有活物質粉末、及び任意選択的に少なくとも1つの添加剤を混合する工程と、
d)リグニン-ケイ素複合材料を得るために、工程c)で得られたリグニン-ケイ素粉末混合物を圧縮する工程と、
e)凝集リグニン-ケイ素複合材料を得るために、工程d)で得られたリグニン-ケイ素複合材料を粉砕する工程と、
f)100μm未満の粒径を粒子を除去するために、工程e)で得られた凝集リグニン-ケイ素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程であって、それにより、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する凝集リグニン-ケイ素複合材料が得られる、工程e)で得られた凝集リグニン-ケイ素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程と
を含む。
【0025】
驚くべきことに、ケイ素含有活物質は、混合、続く圧縮及び凝集によってリグニンマトリックス内に直接分散され、その結果、リグニンマトリックス内にケイ素が一様に分散されると共に、ケイ素の含有量が多い凝集リグニン-ケイ素複合材料が得られることが判明した。
【0026】
さらに、驚くべきことに、マクロ粒子に圧縮及び凝集したリグニンは、溶融/膨張及び変形を回避し、形状及び寸法を保持したまま熱処理できることが判明した。したがって、凝集リグニン-ケイ素複合材料は、良好な熱処理性を有し、炭素-ケイ素複合材料の工業規模生産の前駆体として適している。
【0027】
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様による方法によって得られる凝集リグニンーケイ素複合材料に関する。
【0028】
第3の態様によれば、本発明は、顆粒状炭素-ケイ素複合材料を製造するための方法であって、
i)第1の態様による方法によって得られる凝集リグニン-ケイ素複合材料を提供する工程と、
ii)凝集リグニン-ケイ素複合材料を、300℃~1500℃の範囲の1つ又は複数の温度での熱処理に供することであって、顆粒状炭素-ケイ素複合材料が得られるように、熱処理は合計30分~10時間の範囲で行われる、熱処理に供する工程とを含む。
【0029】
驚くべきことに、リグニンを炭素前駆体とする炭素-ケイ素複合材料の製造は、凝集リグニン-ケイ素複合材料は、炭素-ケイ素複合材料を得るためのさらなる熱処理中に寸法の完全性が維持されるため、リグニン-ケイ素複合材料を凝集リグニン-ケイ素複合材料の形で提供することによって容易になることが判明した。
【0030】
さらに、凝集グニン-ケイ素複合材料内のケイ素の一様な分布は、炭素濃縮材料に変換された後も維持される。したがって、得られた顆粒状炭素-ケイ素複合材料は、ケイ素の一様な分布も有し、二次電池の負極の活物質へのさらなる加工に適した材料となる。
【0031】
第4の態様によれば、本発明は、第3の態様による方法によって得られる顆粒状炭素-ケイ素複合材料に関する。
【0032】
第5の態様によれば、本発明は、第3の態様による方法によって得られた顆粒状炭素-ケイ素複合材料を粉砕することによって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末に関する。
【0033】
微粉化後も炭素内のケイ素の一様な分布が維持される。得られた炭素-ケイ素複合材料粉末は、二次電池の負極の活物質として好適に用いられる。
【0034】
第6の態様によれば、本発明は、第5の態様による炭素-ケイ素複合材料粉末を活物質として含む非水二次電池のための負極に関する。
【0035】
第7の態様によれば、本発明は、第5の態様による炭素-ケイ素複合材料粉末の、非水二次電池の負極の活物質としての使用に関する。
【0036】
第1の態様によれば、本発明は、凝集リグニン-ケイ素複合材料の製造方法に関し、本発明の第1の態様による方法の工程a)は、粉末の形態でリグニンを提供することを含む。
【0037】
本明細書で使用される用語「リグニン」は、炭化された顆粒状炭素-ケイ素複合材料を製造するための炭素源として使用できるあらゆる種類のリグニンを指す。前記リグニンの例は、木材、例えば、針葉樹リグニン、広葉樹リグニン、一年生植物(annular plants)由来のリグニンなどの植物原料から得られるリグニンであるが、これらに限定されない。また、リグニンは化学的に変性させることもできる。
【0038】
好ましくは、リグニンは、本開示による方法で使用される前に精製又は単離されている。リグニンは、黒液から単離され、任意選択的に、本開示による方法で使用される前にさらに精製されてもよい。精製は、典型的に、リグニンの純度が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%であるように行われる。したがって、本発明の方法に従って使用されるリグニンは、セルロース、灰分、及び/又は水分などの不純物が好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満含む。
【0039】
好ましくは、炭素含有前駆体は、1%未満の灰分を含み、より好ましくは0.5%未満の灰分を含む。
【0040】
リグニンは、オルガノソルブ法やクラフトプロセスなどの様々な分画方法によって得ることができる。例えば、リグニンは、WO2006031175 A1に開示された方法を使用して得ることができる。
【0041】
好ましくは、第1の態様による方法の工程a)で提供されるリグニンは、クラフトリグニン、すなわちクラフトプロセスによって得られるリグニンである。好ましくは、クラフトリグニンは広葉樹又は針葉樹から得られ、最も好ましくは針葉樹から得られる。
【0042】
工程a)で提供される粉末形態のリグニンは、少なくとも1つのケイ素含有活物質と混合する前に乾燥させることが好ましい。リグニン粉末の乾燥は、当該技術分野で既知の方法及び装置によって行われる。一実施形態では、工程a)で使用される粉末形態のリグニンの水分含有量は45重量%未満である。好ましくは、本発明による少なくとも1つのケイ素含有活物質と混合する前のリグニンの水分含有量は、25重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%未満である。一実施形態では、本発明による少なくとも1つのケイ素含有活物質と混合する前のリグニンの水分含有量は、少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%である。乾燥時の温度は、好ましくは80℃~160℃の範囲にあり、より好ましくは100℃~120℃の範囲にある。
【0043】
一実施形態では、粉末の形態のリグニンの粒度分布は、粒子の少なくとも80重量%が、0.2mm未満の直径を有するようなものである。乾燥後に得られるリグニン粉末は、1μm~2mmの範囲の広い粒度分布を有し、これはマイクロメートル範囲に大きく偏っており、粒子のかなりの割合が1~200μmの範囲の直径を有することを意味する。
【0044】
一実施形態では、粉末の形態のリグニンの粒度分布は、粒子の少なくとも80重量%が0.2mm未満の直径を有し、水分含有量が45重量%未満であるようなものである。
【0045】
リグニン粉末は、少なくとも1つのケイ素含有活物質と混合する前は、好ましくは、0.3g/cm3~0.4g/cm3の範囲の嵩密度を有する。
【0046】
第1の態様による方法の工程b)は、粉末の形態で少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供することを含む。
【0047】
本明細書で使用される用語「ケイ素含有活物質」(SiX)は、炭素-ケイ素複合材料中の(電池)容量増強材料として使用することができ、したがって炭化された炭素-ケイ素複合材料の製造に使用することができるケイ素含有材料を指す。
【0048】
本明細書で使用される用語「ケイ素含有活物質」(SiX)は、純粋な元素SiとSiを多く含む化合物の両方を包含する。Siを多く含む化合物には、二酸化ケイ素(SiO2)、Si亜酸化物(SiOx(式中、0≦x≦2)、Si合金(SiFex、SiFexAly、又はSiFexCyなど)、及びケイ酸塩などのSiを多く含むその他の化合物が含まれる。SiOxの構造を説明するために様々なモデルが提案されている。最も一般的には、SiOxは、ナノメートルスケールで相互分散したSiとSiO2の混合物として説明される。上記のケイ素含有活物質(SiX)は、結晶又は非晶質の形で提供され、さらに、安定性を高めるために表面を事前に酸化したり、炭素コーティングしたりすることができる。
【0049】
粒子形態の少なくとも1つの形態含有活物質は、粉末の形態のリグニンと混合される。いくつかの実施形態では、利用される各ケイ素含有活物質は、元素ケイ素、亜酸化ケイ素、ケイ素-金属合金、又はケイ素-金属炭素合金の群から選択される。亜酸化ケイ素は、SiOx[式中、0≦x≦2]であり得る。ケイ素-金属合金は、例えば、SiFex又はSiFexAlyなどの任意の適切なケイ素-金属合金であり得る。ケイ素-金属炭素合金は、例えば、SiFexCyである。
【0050】
いくつかの実施形態では、1つのケイ素含有活物質が利用される、すなわち、少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供する工程は、1つのケイ素含有活物質を提供することを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のケイ素含有活物質が利用される、すなわち、少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供する工程は、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のケイ素含有活物質を提供することを含む。各ケイ素含有活物質は、上述のケイ素含有活物質から選択することができる。
【0052】
ケイ素含有活物質は粉末の形態で提供され、好ましくは、ケイ素含有活物質はマイクロサイズ又はナノサイズである。本明細書において「マイクロサイズ」とは、ケイ素含有活物質が粒子状形態であり、粒子の平均粒度がマイクロメートル範囲、例えば1~50μmであることを意味する。本明細書において「ナノサイズ」とは、ケイ素含有活物質が粒子状形態であり、粒子の平均粒度がナノメートル範囲、例えば1~999nmであることを意味する。
【0053】
典型的には、粉末の形態のケイ素含有活物質の平均粒度は、5nm~5μmの範囲にある。
【0054】
少なくとも1つのケイ素含有活物質は、粉末形態のリグニンと混合する前に乾燥させることが好ましい。ケイ素含有活物質の乾燥は、当該技術分野で既知の方法及び装置によって行われる。一実施形態では、工程b)で使用されるケイ素含有活物質の水分含有量は20重量%未満、例えば10重量%未満である。
【0055】
第1の態様による方法の工程c)リグニン-ケイ素粉末混合物を得るために、リグニン粉末、少なくとも1つのケイ素含有活物質粉末、及び任意選択的に少なくとも1つの添加剤を混合する工程を含む。
【0056】
混合は、当該技術分野で既知の方法及び装置によって行われる。適切な方法の一例は、バッチモード又は連続モードでの、パドル、スクリュー、リボンスクリューミキサーなどの縦型ミキサーである。混合プロセスは、低、中、又は高せん断衝撃モードで行うことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、混合中又は混合前に少なくとも1つの添加剤を添加することができる。その後の圧縮プロセスを容易にし、得られたリグニン-ケイ素複合材料の密度及び機械的特性を向上させるために、結合剤又は潤滑剤などの適切な添加剤を添加することができる。さらに、機能性向上添加剤など、最終材料の特性に影響を及ぼす添加剤を添加することができる。添加剤の全量は、リグニン-ケイ素粉末混合物の全乾燥重量に基づいて、好ましくは5重量%未満、例えば0~5重量%、又は0.1~5重量%、又は2重量%未満、例えば0~2重量%、又は0.1~2重量%である。
【0058】
いくつかの実施形態では、混合は少なくとも1分間、又は少なくとも10分間、又は少なくとも15分間実行される。いくつかの実施形態では、混合は1~60分、1~30分、又は1~10分の範囲で行われる。混合時間を増大することで、リグニン内の少なくとも1つのケイ素含有活物質の分散が向上する。
【0059】
いくつかの実施形態では、混合は、少なくとも100rpm、例えば少なくとも200rpm又は少なくとも300rpmの混合速度で実行される。いくつかの実施形態では、混合速度は100~3000rpm、又は100~1500rpm、又は100~1000rpmの範囲にある。混合速度を上げることによって、リグニンマトリックス内の少なくとも1つのケイ素ン含有活物質の分散が改善される。
【0060】
混合中、摩擦により混合物の温度が上昇することがある。一実施形態では、混合中の粉末の温度は、20~100℃の範囲に維持される。温度は、混合に使用される装置を加熱又は冷却することによって維持することができる。
【0061】
上述のように、リグニンマトリックス内の少なくとも1つのケイ素含有活物質の分散は、十分な混合時間、適切な混合速度、及び適切な混合温度の両方によって改善され、リグニンマトリックス内の少なくとも1つのケイ素含有活物質の一様な分布が達成される。リグニンとケイ素粉末の混合物の均一な分散により、圧縮後も形成された凝集体において一様な分散が保証される。
【0062】
リグニンマトリックス中の少なくとも1つのケイ素含有活物質の分散度は、リグニン粉末に添加される少なくとも1つのケイ素含有活物質の量、少なくとも1つのケイ素含有活物質の粒子サイズ、及び混合速度、混合時間、混合温度などの混合パラメータを適切に選択することによって制御することができる。例えば、ナノサイズのケイ素含有活物質を使用する場合、ケイ素含有活物質の粒子は強く凝集する可能性がある。したがって、凝集体を破壊し、リグニンマトリックス中にケイ素含有活物質を分散させるためには、高い混合速度が必要である。
【0063】
リグニンとケイ素粉末の混合物の均一な分散により、圧縮後も形成された凝集体において一様な分散が保証される。炭素濃縮材料に変換された後もケイ素含有活物質の分散が維持されるため、炭素マトリックス内にケイ素含有活物質が一様に分散された粒状の炭素-ケイ素複合材料が得られる。この材料は、微粉化後、二次電池の負極の活物質として使用するのに適している。炭素マトリックス内にケイ素含有活物質が一様に分散された炭素-ケイ素複合材料の二次電池の負極の活物質としての使用は、一様に分散されていることにより、ケイ素含有活物質が一様に分散されていない材料を使用する場合と比較して、活物質、ひいては電極のより一様な特性が得られることを意味するため有利である。例えば、炭素マトリックス内のケイ素含有活物質の分散が一様であれば、充電及び放電中の電極の体積変化はより一様になる可能性がある。
【0064】
一実施形態では、粉末粒子の粒度を低減するために、粉末の粉砕と同時に、リグニン粉末と粉末形態の少なくとも1つのケイ素含有活物質との混合が行われる。粉砕は、インパクトミリング、ハンマーミリング、ボールミリング、ジェットミリングなどの方法で実行することができる。
【0065】
リグニン粉末と粉末状の少なくとも1つのケイ素含有活物質との混合は、当該技術分野で既知の任意の適切な装置を使用して行うことができる。例えば、リグニン粒子とケイ素含有活物質の粒子を同時に脱凝集且つ破壊し、ハイブリッド粒子に再形成するために、特に高いレベルの混合が必要な場合は、機械化学処理やハイブリッド化などの高せん断混合に適した高衝撃ドライブレンディングマシンを使用することができる。
【0066】
一実施形態では、混合は乾式混合によって行われる。ここで使用される「乾式混合」という用語は、すべて乾燥状態にある、すなわち分散液やスラリー、又はその他のタイプの溶液中に存在しない成分を混合するプロセスを指す。混合中の成分は、10重量%未満の水分含有量を有し得る。好ましい実施形態では、リグニン及びケイ素含有活物質は両方とも、混合工程中に乾燥粉末の形態である。このようにして得られたリグニン-ケイ素混合物は乾燥粉末の形態にある。
【0067】
乾式混合により混合を行うことにより、リグニン粉末と少なくとも1つのケイ素含有活物質粉末とを混合する簡単な工程が得られる。乾式混合工程は、後続の処理工程と簡単に統合できる。
【0068】
一実施形態では、リグニン-ケイ素粉末混合物の嵩密度は0.3~0.5g/cm3の範囲である。
【0069】
第1の態様による方法の工程d)は、リグニン-ケイ素複合材料を得るために、工程c)で得られたリグニン-ケイ素粉末混合物を圧縮する工程を含む。
【0070】
本明細書において使用される用語「リグニン-ケイ素複合体」は、リグニンと1つ又は複数のケイ素含有活物質を含む複合材料、例えば、リグニンと元素ケイ素を含む複合材料、リグニンと1つ又は複数のケイ素に富む化合物を含む複合材料、又はリグニン、元素ケイ素及び1つ又は複数のケイ素に富む化合物を含む複合材料を指す。「リグニン-ケイ素複合体」という用語はさらに、本質的にリグニンと1つ又は複数のケイ素含有活物質のみを含む材料を指し、リグニン-ケイ素複合材料の乾燥重量に基づいて、リグニン-ケイ素複合材料の少なくとも95重量%、又は少なくとも98重量%がリグニンと1つ又は複数のケイ素含有活物質で構成されている。リグニン-ケイ素複合材料は、任意選択的に、リグニン-ケイ素複合体材料の乾燥重量に基づいて、5重量%未満、又は2重量%未満の少量の少なくとも1つの添加剤を含むこともできる。リグニン-ケイ素複合材料では、1つ又は複数のケイ素含有活物質がリグニンマトリックス内に一様に分散されている。
【0071】
リグニン-ケイ素粉末混合物の圧縮は、好ましくはロール圧縮によって行われる。リグニン-ケイ素粉末混合物のロール圧縮は、ローラ圧縮機によって達成され、リグニン-ケイ素粉末混合物を凝集させる。
【0072】
圧縮工程では、圧縮されたリグニン-ケイ素中間体が生成される。ここでは、通常、微細なリグニンとケイ素の粉末の混合物がホッパーから供給され、水平又は垂直の供給スクリューによって圧縮ゾーンに運ばれ、そこで材料は一定の隙間を持つ圧縮ローラによってフレーク状に圧縮される。供給スクリューの速度、圧縮ゾーンの圧力発生を制御することで、一様な密度のフレークが得られる。圧縮ゾーン内の圧力の発生は、圧縮ロールの回転速度によって好ましく監視及び制御することができる。粉末がローラの間を引っ張られると、ニップ領域と呼ばれる領域に入り、そこで材料の密度が増加し、粉末がフレーク又はリボンに変化する。使用されるロールには空洞がある。ロール圧縮に使用される各空洞の深さは、0.1mm~10mm、好ましくは1mm~8mm、より好ましくは1mm~5mm又は1mm~3mmである。圧縮中に加えられる特定の加圧力は、圧縮に使用される装置に応じて異なる場合があるが、1kN/cm~100kN/cmの範囲にあってよい。圧縮を実行するのに適した装置は当該技術分野で既知である。
【0073】
ロール圧縮の一実施形態では、ロール構成は、第1のロールがそのような構成の環状リムを有するようにされ、その結果、ニップ領域内の粉末は、ローラ表面に沿って軸方向に密封される。
【0074】
一実施形態では、ロール構成は、ニップ領域がローラ表面に沿って軸方向に静的プレートで密封されるようになっている。ニップ領域を確実に密閉することにより、完全に円筒形のニップローラと比較して、ローラの軸方向の端部での粉末の損失が最小限に抑えられる。
【0075】
圧縮の過程で、粉末形態の材料が機械的な圧力によって圧縮され、リグニンとケイ素の複合材料が形成される。各粉末の粒子が互いに接近するように圧縮され、さらに塑性相に入ることによって、リグニンマトリックス内のケイ素の分散が改善される。
【0076】
圧縮は、機械的な力によって引き起こされる一次粒子の再配置と塑性変形により、複合材料中のリグニン粒子とケイ素含有活物質粒子間の相互作用を強化するようにも作用し得る。圧縮は、リグニン-ケイ素複合材料がさらに安定化されるまで、すなわち熱安定化工程によって安定化されるまで、混合工程で達成された一様な分布が維持されることを保証するようにさらに作用する。
【0077】
添加剤を添加することなく、リグニンとケイ素の粉末混合物に対して圧縮を行うことができる。あるいはまた、リグニン-ケイ素粉末混合物の全乾燥重量に基づいて、5重量%未満などの少量の少なくとも1つの添加剤も含むリグニン-ケイ素粉末混合物に対して実行することができる。
【0078】
第1の態様による方法の工程e)は、工程d)で得られたリグニン-ケイ素複合材料を粉砕して、凝集したリグニン-ケイ素複合材料を得ることを含む。
【0079】
粉砕工程では、圧縮工程で得られた圧縮リグニン-ケイ素は、回転式造粒機、ケージミル、ビーターミル、ハンマーミル、クラッシャーミル、及び/又はそれらの組み合わせなどによって粉砕又は磨砕に供される。この工程の間、凝集したリグニン-ケイ素複合材料が生成される。
【0080】
本明細書で使用される用語「凝集リグニン-ケイ素複合材料」は、リグニンのクラスター化されたより小さな粒子と少なくとも1つのケイ素含有活物質を含むマクロ粒子を指す。
【0081】
いくつかの実施形態では、凝集リグニン-ケイ素複合材料は、凝集リグニン-ケイ素複合材料の乾燥重量に基づいて、0.5~30重量%、又は2~20重量%の範囲のケイ素含有活物質を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、凝集リグニン-ケイ素複合材料は、凝集リグニン-ケイ素複合材料の乾燥重量に基づいて、70~99.5重量%の範囲のリグニンを含む。
【0083】
一実施形態では、凝集リグニン-ケイ素複合材料は、凝集リグニン-ケイ素複合材料の乾燥重量に基づいて、70~99.5重量%のリグニン、0.5~30重量%の少なくとも1つのケイ素含有活物質、及び0~5重量%の少なくとも1つの添加剤を含む。
【0084】
凝集リグニン-ケイ素複合材料の製造中にリグニン-ケイ素粉末混合物が圧縮されるため、粉末に圧力が加えられると、リグニン-ケイ素粉末混合物の嵩密度が増加する。これは、凝集リグニン-ケイ素複合材料の嵩密度がリグニン-ケイ素粉末混合物よりも高くなることを意味する。凝集リグニン-ケイ素複合材料は、溶解したり膨張したりすることなく、その形状と寸法を維持することが判明しているため、よりコンパクトな材料は、その後の炭素濃縮材料の処理中に有益である可能性がある。凝集リグニン-ケイ素複合材料は、圧縮後にも比較的高い硬度を有する。硬質粒子は、処理中の物理的衝撃に耐えることができるため、その後の処理に有利である。
【0085】
凝集リグニン-ケイ素複合材料は、好ましくは、嵩密度が0.5g/cm3~0.7g/cm3の範囲にある。凝集のプロセスでは、材料が圧縮されるにつれて、材料の嵩密度が増加する。
【0086】
第1の態様による方法の工程f)は、100μm未満の粒径を粒子を除去するために、工程e)で得られた凝集リグニン-ケイ素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程であって、それにより、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する凝集リグニン-ケイ素複合材料が得られる、工程e)で得られた凝集リグニン-ケイ素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程
を含む。
【0087】
粉砕後、粉砕された材料は、好ましくは、微小な材料を除去するためにふるい分け工程に供される。さらに、直径が5.0mmを超える凝集体などの大きな材料は除去され、及び/又は粉砕工程に再循環され得る。
【0088】
ふるい分け工程では、粉砕工程からの凝集リグニン-ケイ素複合材料を、スクリーニングとも称するふるい分けなどの物理的分別によってふるい分けし、この工程のふるい又はスクリーンの多孔度によって設定された定義された粒度分布を有する凝集リグニン-ケイ素複合材料である製品を得る。ふるい又はスクリーンは、直径が100(又は500)μm未満の粒子のほとんどがスクリーンを通過して排除され、好ましくは圧縮工程に戻されるように選択されるが、直径が100(又は500)μmを超える粒子のほとんどが保持され、本発明によるその後の処理工程に供される。ふるい分けは、複数の工程で行うことができる、すなわち、粉砕工程からの粉砕された材料が、複数のスクリーン又はふるいを順番に通過するようにふるい分けを行うことができる。
【0089】
好ましい実施形態では、ふるい分けする工程の後に、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mm、好ましくは0.5~2.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する凝集リグニン-ケイ素複合材料が得られる。
【0090】
凝集リグニン-ケイ素複合材料は、好ましくは、粒子の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲の直径を有するような粒度分布を有する。好ましくは、粒子の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%が0.2mm~5.0mmの範囲の直径を有するような粒度分布である。より好ましくは、粒子の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%が0.5mm~2mmの範囲の直径を有する。
【0091】
一実施形態では、第1の態様による方法は、熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料を得るために、凝集リグニン-ケイ素複合材料を140~250℃の範囲の温度に少なくとも30分間加熱することを含む追加の工程g)を含む。
【0092】
熱安定化処理を行うことにより、凝集リグニン-ケイ素複合材料の熱処理性がさらに向上する。したがって、凝集体の形成と、形成された凝集体の熱安定化の両方によって、加熱中に溶融/膨張を回避し、形状及び寸法を保持するという点でのリグニン-ケイ素複合材料の加工性が改善される。
【0093】
本明細書において使用される「熱安定化」という用語は、凝集リグニン-ケイ素複合材料を、その材料の炭化に必要な温度よりも低い温度で加熱するプロセスを指す。熱安定化を行うことで、凝集リグニン-ケイ素複合材料は、溶融/膨張及び変形を回避し、形状と寸法を保持したまま熱処理することができる。
【0094】
熱安定化により、凝集リグニン-ケイ素複合材料の外表面が安定化され、硬くなり、その形状と寸法を保持できるようになる。凝集体の内部も加熱され、リグニンが軟化/溶解し、リグニンマトリックス内でのケイ素の分散が促進される。
【0095】
熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料は、好ましくは、嵩密度が0.5g/cm3~0.7g/cm3の範囲にある。熱安定化により、リグニンの嵩密度がわずかに増加又は減少する可能性がある。しかしながら、嵩密度は、熱安定化前と同じ範囲内に維持されることが好ましい。
【0096】
凝集リグニン-ケイ素複合材料を加熱して熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料を製造する工程は、連続的に又はバッチモードで実行することができる。加熱は、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができ、空気の存在下で、又は完全にもしくは部分的に不活性ガス下で行うことができる。好ましくは、加熱は、ロータリーキルン、移動床炉、又は回転炉床炉内で行われる。
【0097】
熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料を製造するための加熱は、凝集リグニン-ケイ素複合材料が140~250℃、好ましくは180~230℃の範囲の温度に加熱されるように行われる。加熱は少なくとも30分間行われる、すなわち、加熱に使用される装置内で凝集リグニン-ケイ素複合材料が滞留する時間は少なくとも30分である。一実施形態では、加熱は少なくとも1時間、又は少なくとも1.5時間行われる。好ましくは、加熱は12時間未満行われる。加熱は、加熱段階全体を通じて同じ温度で実行することも、段階的に温度を上昇させたり、温度勾配を使用したりして、温度を変化させながら実行することもできる。さらに好ましくは、加熱は、凝集したリグニン-ケイ素複合材料を最初に140~175℃の温度に少なくとも15分間加熱され、続いて175~250℃の温度に少なくとも15分間加熱されるように行われる。
【0098】
熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料は、リグニン、少なくとも1つのケイ素含有活物質、及び任意選択的に少なくとも1つの添加剤を含む。加熱して熱的に安定化した材料を得る前の凝集リグニン-ケイ素複合材料と比較すると、加熱中に若干の重量損失があり得る。重量損失は、典型的に、15重量%未満であり、主に加熱中のリグニンの分解による水分の蒸発と揮発性物質の損失が原因である。
【0099】
熱安定化プロセス中の温度や時間などのパラメータを制御及び最適化することで、その後の処理中に融合したり膨張したりすることなく、その形状と寸法を保持する熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料を得ることができる。記載した方法は、凝集リグニン-ケイ素複合材料の機械的安定性と比較的短い滞留時間により、例えば、ロータリーキルンを使用した連続生産の一般的なプロセス要件と優れた適合性を有する。これは、炭素-ケイ素複合材料を生産するための経済的な大規模な産業規模のプロセスを実現するために特に重要である。
【0100】
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様による方法によって得られる凝集リグニンーケイ素複合材料に関する。第2の態様による凝集リグニン-炭素複合材料は、第1の態様を参照して上記に述べたようにさらに定義することができる。
【0101】
本発明の第3の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による方法によって得られる凝集リグニン-ケイ素複合材料を熱処理して顆粒状炭素-ケイ素複合材料を得る、顆粒状炭素-ケイ素複合材料を生産するための方法に関する。
【0102】
第3の態様による方法の工程i)は、第1の態様による方法によって得られる凝集リグニン-ケイ素複合材料を提供することを含む。
【0103】
リグニン-ケイ素複合材料を凝集形態で提供することにより、よりコンパクトで硬い材料が実現される。硬質粒子は、処理中の物理的衝撃に耐えることができるため、その後の処理に有利である。凝集リグニン-ケイ素複合材料は、第1の態様を参照して上記に述べたようにさらに定義される。
【0104】
第3の態様による方法の工程ii)は、凝集リグニン-ケイ素複合材料を、300℃~1500℃の範囲の1つ又は複数の温度での熱処理に供することであって、顆粒状炭素-ケイ素複合材料が得られるように、熱処理は合計30分~10時間行われる、熱処理に供することを含む。
【0105】
本明細書で使用される用語「熱処理」は、熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料を、リグニンが炭素に変換されるのに十分な時間、1つ又は複数の温度で加熱するプロセスを指す。熱処理後、複合材料の非ケイ素部分の炭素含有量は、80重量%以上、又は90重量%以上、又は95重量%以上となる。熱処理時の温度に応じて、リグニン-ケイ素複合材料中のリグニンから木炭やハードカーボンなどの異なるタイプの炭素を得ることができる。
【0106】
熱処理中に、複合材料の成分は完全に架橋され、リグニンの炭化によって炭素が濃縮され、粒状の炭素-ケイ素複合材料が生成される。
【0107】
本明細書において、「顆粒状炭素-ケイ素複合材料」及び「炭素-ケイ素複合材料粉末」などの表現で使用される「炭素-ケイ素複合材料」という用語は、リグニン由来の炭素と、少なくとも1つのケイ素含有活物質とを含む複合体を指す。炭素-ケイ素複合材料は、本明細書に記載の凝集リグニン-ケイ素複合材料を熱処理することによって得られる。炭素-ケイ素複合材料では、少なくとも1つのケイ素含有活物質が炭素マトリックス内に一様に分散されている。
【0108】
好ましくは、熱処理は予備加熱工程を含み、好ましくは最終加熱工程がそれに続く。予備加熱工程は、好ましくは、300と800℃との間、例えば、500と700℃との間の温度で行われる。予備加熱工程は、好ましくは、不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気下で行われる。予備加熱工程の継続時間は少なくとも30分であり、好ましくは10時間未満である。予備加熱工程と最終加熱工程は、個別の工程として行うことも、直接連続した単一の工程として行うこともできる。予備加熱工程後に得られる生成物の表面積は、典型的に、窒素ガスを用いたBET法で測定される、300~700m2/gの範囲内である。
【0109】
最終加熱工程は、好ましくは800℃と1500℃との間の温度で行われ、最終加熱工程は、好ましくは不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気下で行われる。最終加熱工程の継続時間は少なくとも30分であり、好ましくは10時間未満である。
【0110】
好ましくは、熱処理は段階的に行われる。好ましくは、予備加熱は約300℃で開始し、その後約500℃まで上昇させる。最終加熱工程は、好ましくは、900℃と1300℃の間、例えば約1000℃で行われる。1000℃以上で実行される最終加熱工程の後、得られる製品の表面積は、典型的に、10m2/g以下である。
【0111】
熱処理された材料、すなわち、工程ii)の生成物である顆粒状炭素-ケイ素複合材料は、好ましくは、嵩密度が0.2g/cm3~0.7g/cm3の範囲にある。凝集リグニン-ケイ素複合材料中のケイ素含有活物質の量と種類に応じて、顆粒状炭素-ケイ素複合材料に炭化した後、嵩密度は同じ範囲に留まるか、又は(質量損失により)減少する場合がある。
【0112】
凝集リグニン-ケイ素複合材料の形状及び寸法は熱処理中に保持されるため、顆粒状炭素-ケイ素複合材料は、少なくとも80重量%の粒度が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有することが好ましい。
【0113】
熱処理された材料、すなわち、第3の態様による方法の工程ii)の生成物である顆粒状炭素-ケイ素複合材料は、例えば、バイオ炭として、又は活性炭の前駆体として有用である。
【0114】
一実施形態では、第3の態様による方法は、顆粒状炭素-ケイ素複合材料を粉砕して炭素-ケイ素複合材料粉末を得る追加の工程を含む。微粉化は、例えば、カッティングミル、ブレードミキサー、ボールミル、インパクトミル、ハンマーミル、及び/又はジェットミルなどを使用する任意の適切なプロセスによって実行することができる。任意選択的に、微粉化に続いて、分級及び/又はふるい分けによる微粒子/粗粒子の選択を行うことができる。
【0115】
炭素-ケイ素複合材料の微粉か及び任意選択的な微細な/粗の粒子の選択は、例えば、レーザー回折法によって測定される平均粒度(Dv50)が5~25μmの範囲にある粉末粒子を含む炭素-ケイ素複合材料粉末が得られるように行うことができる。
【0116】
一実施形態では、粉砕又は微粉化の工程が複数回実行される。さらに、炭素-ケイ素複合材料粉末は、コーティング又はさらなる熱処理などの処理に供することができる。
【0117】
第4の態様によれば、本発明は、第3の態様による方法によって得られる顆粒状炭素-ケイ素複合材料に関する。第4の態様による顆粒状炭素-ケイ素複合材料は、第3の態様を参照して上記に述べたようにさらに定義することができる。
【0118】
凝集リグニン-ケイ素複合材料は少なくとも1つのケイ素含有活物質の含有量が高く、少なくとも1つのケイ素含有活物質の分散はリグニンマトリックス内で一様であるため、凝集リグニン-ケイ素複合材料の熱処理から得られる粒状炭素-ケイ素複合材料も、炭素マトリックス内での少なくとも1つのケイ素含有活物質の含有量が高く、一様に分散していることから恩恵を受ける。
【0119】
第5の態様によれば、本発明は、第3の態様による方法によって得ることができる顆粒状炭素-ケイ素複合材料を粉砕することによって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末に関する。炭素-ケイ素複合材料粉末は、第3の態様を参照して上記に述べたようにさらに定義することができる。
【0120】
微粉化後も炭素マトリックス内のケイ素の一様な分布が維持される。得られた炭素-ケイ素複合材料粉末は、二次電池の負極、電池-キャパシタハイブリッドシステム、又はその他の材料用途における活物質としての使用に適している。
【0121】
第6の態様によれば、本発明は、第5の態様による炭素-ケイ素複合材料粉末を活物質として含む非水二次電池のための負極に関する。
【0122】
顆粒状炭素-ケイ素複合材料を微粉化して得られる炭素-ケイ素複合材料粉末は、リチウムイオン電池等の非水系二次電池の負極活物質として好適に用いられる。このような負極を製造するために使用される場合、このような負極を形成するための任意の適切な方法が利用され得る。負極の形成において、炭素濃縮材料は、さらなる成分と一緒に処理され得る。このようなさらなる成分は、例えば、炭素濃縮材料を電極に形成するための1つ又は複数のバインダー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属粉末などの導電性材料、及び/又はグラファイトやリチウムなどのさらなるLi貯蔵材料を含み得る。例えば、バインダーは、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、カルボキシメチルセルロース、天然ブタジエンゴム、合成ブタジエンゴム、ポリアクリレート、ポリ(アクリル酸)、アルギン酸塩等、又はそれらの組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。任意選択的に、処理中に、例えば1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、水、又はアセトンなどの溶媒が利用される。
【0123】
第7の態様によれば、本発明は、第5の態様による炭素-ケイ素複合材料粉末の、非水二次電池の負極の活物質としての使用に関する。
【実施例】
【0124】
実施例1
LignoBoostプロセスから得られたリグニン粉末を、Vミキサー(200rpm、15分)を使用して、平均一次粒子サイズが0.5μmの3重量%ナノケイ素粉末と混合した。追加の添加剤は添加されなかった。次に、混合物を50kNのローラ圧縮によって圧縮及び凝集させ、粉砕/ふるい分けして凝集体にし、サイズ分布が0.5~1.5mmで嵩密度が0.55g/cm3の凝集リグニン-ケイ素複合材料を得た。
【0125】
凝集リグニン-ケイ素複合材料は、回転窯内で空気中で235℃に2時間加熱することによりさらに熱的に安定化され、熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料が得られた。このプロセス中、凝集したリグニン-ケイ素複合材料は溶融挙動を示さず、元の形状を完全に保持した。個々の凝集体は融合せず、自由に流動したままであることが分かった。プロセス中に材料は徐々に黒くなり、最終的には完全に黒くなり、臭いもなくなった。熱安定化凝集リグニン-ケイ素複合材料の嵩密度は0.59g/cm3であった。
【0126】
この熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合体は、その後、不活性雰囲気下で500℃で1時間熱処理され、材料が炭化された。これにより、形状/サイズが保持された顆粒状炭素-ケイ素複合材料が得られた。顆粒状炭素-ケイ素複合材料の嵩密度は0.58g/cm3であった。
【0127】
実施例2
リグニン粉末を平均一次粒子径が0.5μmの3重量%の酸化ケイ素粉末と混合したことを除き、実施例1と同じ実験詳細が使用された。追加の添加剤は添加されなかった。得られた凝集リグニン-ケイ素複合材料は、0.5~1.5mmの粒度分布及び0.56g/cm3の嵩密度を有していた。
【0128】
加熱後、0.59g/cm3の嵩密度を有する、熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料が得られた。熱的に安定化した凝集リグニン-ケイ素複合材料はその後炭化され、0.42g/cm3の嵩密度を有する顆粒状炭素-ケイ素複合材料が得られた。
【0129】
実施例3-比較例
この実験では、従来のリグニン粉末の熱変換を行った。リグニン粉末は熱処理前には凝集していなかった。
【0130】
LignoBoostプロセスからのリグニン粉末を200℃で最大12時間加熱した。加熱後、リグニンが溶融/融解して、臭いのない黒い固形物になっていることがわかった。
【0131】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、他の修正及び変更が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、このような他の修正及び変更を実施できることは明らかである。
【国際調査報告】