(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】テトラヒドロカルバゾール供与体基を有する非線形光学発色団、非線形光学発色団を含むリオトロピック組成物及び、そのような組成物を分極させる方法
(51)【国際特許分類】
C09B 23/01 20060101AFI20241219BHJP
C07F 7/12 20060101ALI20241219BHJP
G02F 1/361 20060101ALI20241219BHJP
G02F 1/03 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C09B23/01
C07F7/12 T
G02F1/361
G02F1/03 501
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534552
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 US2022052367
(87)【国際公開番号】W WO2023107680
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522501007
【氏名又は名称】ライトウェーブ ロジック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリー ペチノフスキー
(72)【発明者】
【氏名】バリー ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ギネル エー.ラマン
【テーマコード(参考)】
2K102
4H049
【Fターム(参考)】
2K102AA03
2K102AA05
2K102AA09
2K102AA21
2K102BA18
2K102BB01
2K102BB02
2K102BC01
2K102BC04
2K102BD01
2K102DD01
2K102EB08
2K102EB22
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ60
4H049VR24
4H049VU29
4H049VW01
(57)【要約】
極性有機溶媒中でリオトロピックネマチック液晶相を示す、非線形光学発色団組成物及び、電場の適用なしに、非中心対称発色団-ポリマーマトリックスを形成させる力学的異方性効果を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)に表される非線形光学発色団を含むリオトロピック組成物であって、
D-Π-A (I)
式中、Dは有機電子供与体基を表し、AはDの電子親和性よりも大きい電子親和性を有する有機電子求引基を表し、Πは、AとDとの間のΠ架橋を表し、
有機電子供与体基Dは、テトラヒドロカルバゾール部分のテトラヒドロ6員炭素環中の炭素原子でΠ架橋と連結されたテトラヒドロカルバゾール部分を備え、カルバゾール部分のテトラヒドロ5員環の窒素に連結された水素が、置換基Rで置換されている、組成物。
【請求項2】
テトラヒドロカルバゾール部分は、一般式(II)で表され、
【化1】
Rは、水素以外の部分を表す、請求項1に記載の非線形光学発色団。
【請求項3】
Rは、芳香族環を含む部分を表す、請求項2に記載の非線形光学発色団。
【請求項4】
Rは、トリアリール置換シリル置換基を有する芳香族環を含む部分を表す、請求項3に記載の非線形光学発色団。
【請求項5】
Rは、一般式(III)の部分を表す、
【化2】
請求項4に記載の非線形光学発色団。
【請求項6】
Aは、一般式(I
a)の電子求引基を表し、
【化3】
式中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、H、置換または非置換されたC
1-C
10のアルキル、置換または非置換されたC
2-C
10のアルケニル、置換または非置換されたC
2-C
10アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、及び(CH
2)
n-O-(CH
2)
n(nは1~10である)からなる群から選択される部分を表す、請求項1に記載の非線形光学発色団。
【請求項7】
一般式(IV)を有する、
【化4】
式中、Rは、水素以外の置換基を表し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、H、置換または非置換されたC
1-C
10のアルキル、置換または非置換されたC
2-C
10のアルケニル、置換または非置換されたC
2-C
10アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、及び(CH
2)
n-O-(CH
2)
n(nは1~10である)からなる群から選択される部分を表し、Yは、それぞれ水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、硫黄もしくは酸素結合されたアルキル基もしくはアリール基、または分枝もしくは非分枝の、任意のヘテロ原子含有C
1~C
4置換基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、zは1~3の整数を表し、アークAは、それぞれ独立に、置換または非置換されたC
2-C
4アルキル基を表し、Y置換基を有する炭素及びその2つの隣接炭素原子と一緒になって環状基を形成する、請求項1に記載の非線形光学発色団。
【請求項8】
一以上の非プロトン性極性溶媒を更に含む、請求項1に記載のリオトロピック組成物。
【請求項9】
一以上の非プロトン性極性溶媒が炭酸プロピレンを含む、請求項8に記載のリオトロピック組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物から調製された薄膜。
【請求項11】
前記非線形光学発色団は高次配列化され且つ、高密度状態でありつつ、前記膜は、前記組成物から一以上の溶媒を蒸発させることにより調製されている、請求項10に記載の薄膜。
【請求項12】
請求項11に記載の薄膜を含む電気光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月10日に出願された米国仮特許出願第63/288,089号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
非線形光学(NLO)発色団は、分極化ポリマー電気光学装置における電気光学(EO)活性を提供する。電気光学ポリマーは、電気光学装置におけるニオブ酸リチウムなどの無機材料に代わるものとして、長年研究されてきた。電気光学装置は、例えば、テレコム、データコム、RFフォトニクス、及び光相互接続などのための外部変調器を含み得る。高分子電気光学材料は、電気光学変調器、光スイッチ、フェーズドアレイレーダー、衛星及び光ファイバー通信、ケーブルテレビ(CATV)、航空及びミサイル誘導用光学ジャイロスコープ、電子対抗手段(ECM)システム、高速計算用バックプレーン相互接続、超高速アナログ-デジタル変換、地雷探知、無線周波数フォトニクス、空間光変調、及び全光(光-スイッチング-光)信号処理を含む、広範囲次世代システム及び装置におけるコアアプリケーションの大きな可能性を示している。
【0003】
高い分子電気光学的特性を有する多くのNLO分子(発色団)が合成されてきた。分子双極子モーメント(μ)及び過分極率(β)の生成物は、双極子の材料加工への関与による分子の電気光学的性能の尺度として用いられることが多い。「Dalton et al., “New Class of High Hyperpolarizability Organic Chromophores and Process for Synthesizing the Same」と題する特許文献1を参照されたい。
【0004】
それにもかかわらず、微視的な分子の過分極率(β)を巨視的な材料の過分極率(χ2)に翻訳するのは非常に困難であった。分子の補助的な成分(発色団)を、(i)高度な巨視的非線形性、及び(ii)十分な一時的、温度的、化学的及び光化学的安定性を示すNLO材料に組み込まなければならないからである。高い電気光学活性と、「経時安定性」とも言われる電気光学活性の安定性は、商業的に使用可能な装置において重要である。ホストポリマー中の非線形光学発色団の濃度を増加させ、発色団の電気光学特性を増加させることにより、電気光学ポリマーの電気光学活性を増加させることができる。しかし、発色団濃度を増加させるいくつかの手法は、経時安定性を低下させる可能性がある。これらの二重の問題を同時に解決することは、多数の装置及びシステムにおいて、EOポリマーを広範に商業化することに最終的な障害と見なされている。
【0005】
NLO発色団は凝集性が乏しいため、高過分極率材料(χ2)の製造は制限される。商業的に使用可能な材料は、単一の材料軸の周囲に統計的に配向した所望の分子モーメントを有する大きな分子密度の発色団を含んでいなければならない。このような機構とするために、NLO発色団の電荷移動(双極子)の性質は、通常、材料加工中に外部電場を印加し、非中心対称性次元に有利な低エネルギー状態の局在化を生じさせることによって開発される。残念ながら、発色団密度が中程度である場合においても、分子は、実際の電場エネルギーを介して除去できない多分子双極性結合(中心対称性)凝集体を形成する。この問題を克服するため、通常は、近傍の分子間の関係性を制限する物理的障壁(例えば、アンチパッキング立体基)を構成することによって、非凝集性の双極性発色団を協同の材料構造に組み込んでいる。
【0006】
したがって、高いガラス転移温度(Tg)を示す材料を含む非線形光学発色団を製造することは、多くは、当該分野においては有益であると考えられている。高いガラス転移温度を有する材料は、熱安定性の向上を示し、そして、低いガラス転移温度を有する材料よりも、高い程度にそれらの巨視的な電気光学特性を維持する。しかし、そのように高められたガラス転移温度を有する材料は、十分な整合(alignment)を達成するために分極化(poling)プロセス中、非常に高い温度に上げることが必要となる。しかし、そのような高温に実現が必要であることは、コストがかかり、時間を浪費させるもので、結果として、非効率的な分極化になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2000/09613号公報
【特許文献2】米国特許出願第63/264,880号公報
【特許文献3】米国公開特許公報第2012/0267583A1号
【特許文献4】米国公開特許公報第2012/0267583A1号
【特許文献5】米国特許第5,670,091号
【特許文献6】米国特許第5,679,763号
【特許文献7】米国特許第6,090,332号
【特許文献8】米国特許第6,716,995号
【特許文献9】米国特許出願第17/358,960号
【特許文献10】米国公開特許公報第2007/0260062号
【特許文献11】米国公開特許公報第2007/0260063号
【特許文献12】米国公開特許公報第2008/0009620号
【特許文献13】米国公開特許公報第2008/0139812号
【特許文献14】米国公開特許公報第2009/0005561号
【特許文献15】米国公開特許公報第2012/0267583A1号
【特許文献16】米国特許第6,584,266号
【特許文献17】米国特許第6,393,190号
【特許文献18】米国特許第6,448,416号
【特許文献19】米国特許第6,44,830号
【特許文献20】米国特許第6,514,434号
【特許文献21】米国特許第5,044,725号
【特許文献22】米国特許第4,795,664号
【特許文献23】米国特許第5,247,042号
【特許文献24】米国特許第5,196,509号
【特許文献25】米国特許第4,810,338号
【特許文献26】米国特許第4,936,645号
【特許文献27】米国特許第4,767,169号
【特許文献28】米国特許第5,326,661号
【特許文献29】米国特許第5,187,234号
【特許文献30】米国特許第5,170,461号
【特許文献31】米国特許第5,133,037号
【特許文献32】米国特許第5,106,211号
【特許文献33】米国特許第5,006,285号
【特許文献34】米国特許出願第17/358,960号
【特許文献35】米国特許第6,584,266号
【特許文献36】米国特許第6,393,190号
【特許文献37】米国特許第6,448,416号
【特許文献38】米国特許第6,44,830号
【特許文献39】米国特許第6,514,434号
【特許文献40】米国特許出願第17/358,960号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chia-Chi Teng, Measuring Electro-Optic Constants of a Poled Film, in Nonlinear Optics of Organic Molecules and Polymers, Chp. 7, 447-49 (Hari Singh Nalwa & Seizo Miyata eds., 1997)
【非特許文献2】C. W. Thiel, "For- wave Mixing and Its Applications,"www.physics.montana.edu.students.thiel.docs/FWMixing.pdf,
【発明の概要】
【0009】
本発明は、概して、溶媒中でリオトロピック混合物を形成し、そして、液晶特性を示す、非線形光学発色団に関する。したがって、本発明の様々な実施形態は、分極化効率の向上を提供することが出来る。
【0010】
本発明の様々な実施形態は液晶特性を示し、そして、溶媒と混合されるとリオトロピック組成物を形成する。例えば、ある実施形態において、発色団は、極性有機溶媒中で、リオトロピックネマチック液晶相を示す。得られた液晶特性は、電場の適用なしに、非中心対称発色団-ポリマーマトリックスを形成させる力学的異方性効果を提供する。本明細書に記載の様々な実施形態にしたがって、十分な電気光学係数(r33)が力学的に誘導され、分極化温度及び電場、典型的には、170℃及び100v/pmを適用することの必要性は低くなり得る。液晶特性及び、リオトロピック組成物は、温和なプロセス条件、したがって、高い分極化効率を可能にさせる。
【0011】
本発明の様々な実施形態は、一般式(I)に表される非線形光学発色団を含み、
D-Π-A (I)
式中、Dは有機電子供与体基を表し、AはDの電子親和性よりも大きい電子親和性を有する有機電子求引基を表し、Πは、AとDとの間のΠ架橋を表し、
有機電子供与体基Dは、テトラヒドロカルバゾール部分のテトラヒドロ6員炭素環中の炭素原子でΠ架橋と連結されたテトラヒドロカルバゾール部分を備え、そして、カルバゾール部分のテトラヒドロ5員環の窒素に連結された水素は、置換基Rで置換されている。
【0012】
本発明の様々な実施形態は、一般式(I)に表される非線形光学発色団及び、溶媒を含むリオトロピック組成物を含む。
【0013】
本発明の様々な実施形態は、本明細書に記載のような組成物から形成された薄膜を含む。本発明の様々な実施形態は、本明細書に記載のような薄膜を備えた電気光学装置を含む。
【0014】
他の態様、特徴、及び利点は、詳細な説明、好ましい実施形態、及び添付の特許請求の範囲を含む以下の開示から明らかになるであろう。
【0015】
前述の概要、ならびに本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。本発明を説明する目的で、現在好ましい実施形態を図面に示す。しかし、本発明は、示された正確な構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】図面において、
図1は、リオトロピック相中で、そして、溶媒を除去した後の本発明の実施形態に従った、発色団の光吸収の代表的な図である。
【
図2a】
図2aは、溶媒中でミセルを形成している本発明の実施形態に従った、発色団の偏光顕微鏡イメージである。
【
図2b】
図2bは、剪断整合が赤色シフトを示した後の本発明の実施形態に従った、発色団の偏光顕微鏡イメージである。
【
図2c】
図2cは、溶媒を除去した後の本発明の実施形態に従った、発色団の偏光顕微鏡イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の詳細な説明]
本明細書において、単数形の用語「a」及び「the」は、言葉及び/または文脈で特に示さない限り同義であって、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」と互換的に使用する。従って、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲における「溶媒」または「前記溶媒」という表現は、単一の溶媒または1つを超える溶媒またはそれらの混合物を指す可能性がある。さらなる例として、複数の電子供与体基のみに限定されず、本明細書または添付の特許請求の範囲における「電子供与体基」または「前記電子供与体基」という表現は、単一の電子供与体基または1つを超える電子供与体基(例えば、本明細書の任意の分子式における「D」は、2つ以上の電子供与体基を表し、両方ともΠ架橋に結合し得る)という表現であり得る。さらに、特に明記しない限り、全ての数値は「約」という言葉によって修飾されると理解される。
【0018】
本明細書で使用する「非線形光学発色団」(NLOC)という用語は、光を照射すると非線形光学効果を生じる分子または分子の部分を指す。発色団は、光との相互作用によって非線形光学効果が生じる任意の分子単位である。所望の効果は、共振波長または非共振波長において生じ得る。特定の発色団の非線形光学的材料における活性は、その過分極率として示され、これは発色団の分子双極子モーメントに直接関連する。本発明のNLO発色団の様々な実施形態は、NLO効果を生じさせるのに有用な構造である。
【0019】
本発明の様々な実施形態に従った非線形光学発色団は、液晶特性を示し、そして、溶媒と混合するとリオトロピック組成物を形成する。本発明の様々な実施形態に従った非線形光学発色団は、高いガラス転移温度を示し、そして、溶媒と混合してリオトロピック組成物を形成するとき、従来技術(即ち、H-凝集体)で示されるhead-to-tail整合(alignment)とは対照的に、自己整合(self-alignment)形成のJ-凝集体を示す。本発明の様々な実施形態に従った非線形光学発色団は、無駄なく(即ち、マトリックス材料又は、ホストポリマーの添加なしに)溶媒と組合され、リオトロピック組成物を形成し、追加の剪断を伴って、非線形光学発色団の少なくとも部分的な自己整合をさせ、高次配列化され且つ高充填状態を形成する。本発明の様々な実施形態において、調整器のような、電気光学装置で使用する非線形光学薄膜を提供するために、更なる分極化は必要ではない。本発明の様々な実施形態において、溶媒は、制御された条件下で除去されて、発色団を高次配列化され且つ高充填状態に維持し得る。本発明の様々な実施形態において、発色団薄膜にわたる技術分野における適用を含む従来からの分極化プロセスも実施することができる。本発明の様々な実施形態に従った非線形光学発色団は、マトリックス材料又は、ホストポリマー及び、溶媒と組合せて、リオトロピック組成物を形成することができる。本発明の様々な実施形態において、高沸点溶媒は、2021年12月3日に出願された特許文献2に記載の方法に従って、分極化用に使用することができ、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
一次過分極率(β)は、最も一般的でかつ有用なNLO特性のうちの1つである。高次の過分極率は、あらゆる光学的(光-スイッチング-光)用途のような他の用途において有用である。以下の試験を実施することによって、化合物またはポリマーなどの材料が、一次過分極性の性質及び十分な電気光学係数(r33(β関数である))を有する非線形光学発色団を含むかどうかを決定することができる。最初に、薄膜形態の材料を電場内に置いて、双極子を整列させる。これは、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)基板、金膜、または銀膜などの電極の間に材料の膜を挟むことによって実施し得る。
【0021】
材料をそのガラス転移温度(Tg)付近に加熱しながら、電位を電極に印加し、極性調整電場を発生させる。好適な時間の経過後、極性調整電場を維持しながら、温度を次第に下げる。あるいは、材料をコロナ極性調整法で分極させることもでき、この方法では、材料フィルムから好適な距離だけ離れた電荷を帯びた針によって、極性調整電場が提供される。いずれの例においても、材料中の双極子は電場と整列する傾向にある。
【0022】
分極した材料の非線形光学特性を、以下のように試験する。レーザー由来のものである場合が多い偏光を分極した材料に通し、次いで、偏光フィルター及び光強度検出器に通す。電極に印加された電位が変化した際に検出器で受光した光の強度が変化する場合、材料は非線形光学発色団を含み、かつ電気光学的に変動可能な屈折率を有する。非線形光学発色団を含む分極膜の電気光学定数を測定する技術について、非特許文献1により詳細に議論されており、本明細書中でその全体が参照されるが、ただし、本願と整合しない開示または定義がある場合には、本明細書中の開示または定義が優先されるものとみなす。
【0023】
印加された電位の変化と材料の屈折率の変化との関係は、そのEO係数r33で表され得る。この効果を、一般的に電気光学効果、すなわちEO効果と呼ぶ。印加された電位の変化に応じてその屈折率が変化する材料を含む装置を、電気光学(EO)装置と呼ぶ。
【0024】
二次過分極率(γ)または三次感受率(χ
(3))は、三次NLO活性の典型的な尺度である。これらの性質を測定するいくつかの方法があるが、縮退4波混合(DFWM)が非常に一般的である。非特許文献2を参照されたい。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。特許文献3を参照されたい。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。当技術分野で縮退四波混合(DFWM)として知られている薄膜の3次NLO特性を評価する方法を使用することができる。特許文献4の
図4では、ビーム1及び2がピコ秒のコヒーレントパルスであり、ガラス基板上に堆積されたNLO膜によって吸収される。ビーム3は、ビーム1及び2と同一の波長で、わずかに遅延した弱いビームである。ビーム4は、NLO膜の材料内のビーム1及び2の干渉によって生成された、一時的なホログラフィック格子から回折された波動混合によって生成されたものである。ビーム3は、NLO材料によって吸収されない周波数の「信号」ビームを生成する通信波長の「制御」ビームとすることができる。
【0025】
本発明の様々な実施形態に係る非線形光学発色団は、一般式(I)を有する。
D-Π-A (I)
式中、Dは有機電子供与体基を表し、AはDの電子親和性よりも大きい電子親和性を有する有機電子求引基を表し、Πは、AとDとの間のΠ架橋を表する。電子供与体基(供与体もしくは「D」)、Π架橋(架橋基もしくはΠ)、及び電子求引基(受容体もしくは「A」)という用語、ならびにD-Π-A発色団を形成する一般的な合成方法は、当技術分野で知られており、例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8及び、2021年6月25日に出願された特許文献9に記載され、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
受容体は、低い還元電位を有する原子または原子群であり、当該原子または原子群は、Π架橋を介して供与体から電子を受け取ることができる。受容体(A)は、供与体(D)よりも電子親和性が高く、その結果、少なくとも外部電場がない場合、当該発色団は、一般に、基底状態で、受容体(D)上で比較的高い電子密度で極性化される。典型的には、受容体基は、パイ結合(二重結合または三重結合)の一部である少なくとも1つの電気陰性ヘテロ原子を含有し、その結果、共鳴構造が引き出され得、これにより、パイ結合の電子対をヘテロ原子に移動すると同時に、パイ結合の多重度を低下する(すなわち、二重結合が、形式上、単結合に変換されるか、または三重結合が、形式上、二重結合に変換される)ことで、ヘテロ原子は、形式的な負電荷を獲得する。このヘテロ原子は、複素環の一部であり得る。例示的な受容体基としては、-NO2、-CN、-CHO、COR、CO2R、-PO(OR)3、-SOR、-SO2R、及び-SO3R(Rはアルキル、アリール、またはヘテロアリールである)が含まれるが、これらに限定されない。受容体基中のヘテロ原子及び炭素の総数は約30であり、受容体基はさらにアルキル、アリール、及び/またはヘテロアリールで置換されてもよい。
【0027】
本発明の様々な実施形態に係る非線形光学発色団に好適な電子求引基「A」(文献では電子求引基とも呼ばれる)には、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、及び特許文献15(総称して「先行刊行物」と呼ぶ)に記載されたものが含まれ、それらの全内容は参照により本明細書に組み込まれており、また、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32、及び特許文献33及び、2021年6月25日に出願された特許文献34に記載されたものも含まれ、それらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明の様々な好ましい実施形態による様々な非線形光学発色団において、好適な電子求引基は、一般式(Ia)を含み、
【0029】
【0030】
式中、R2及びR3は、それぞれ独立に、H、置換または非置換されたC1-C10のアルキル、置換または非置換されたC2-C10のアルケニル、置換または非置換されたC2-C10アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、及び(CH2)n-O-(CH2)n(nは1~10である)からなる群から選択される部分を表す。本明細書で使用される場合、
【0031】
【0032】
は、より大きな分子構造の別の部分への結合点を表す。様々な好ましい実施形態において、R2及びR3の一方または両方はハロゲン置換部分を表す。ハロゲン置換は、モノ、ジ、トリ、及びそれ以上の程度の置換を指す場合がある。様々な好ましい実施形態において、R2及びR3の一方は、ハロゲン置換アルキル部分を表し、他方は芳香族部分を表す。様々な好ましい実施形態において、R2及びR3の一方は、ハロゲン置換芳香族部分を表し、他方はアルキル部分を表す。様々な好ましい実施形態において、電子求引基は、以下の式に表され得る。
【0033】
【0034】
様々な好ましい実施形態において、電子求引基は、以下の式に表され得る。
【0035】
【0036】
様々な好ましい実施形態において、電子求引基は、以下の式に表され得る。
【0037】
【0038】
供与体は、低い酸化電位を有する原子または原子群を含み、当該原子または原子群は、Π架橋を介して受容体「A」に電子を供与することができる。供与体(D)は、受容体(A)よりも電子親和性が低く、その結果、少なくとも外部電場がない場合、当該発色団は、一般に、供与体(D)上で比較的低い電子密度で極性化される。
【0039】
本発明の様々な好ましい実施形態による供与体は、一般式(II)で表される、テトラヒドロカルバゾール部分を含み得る。
【0040】
【0041】
式中、R1は、水素以外の部分を表し、R2は、水素、ハロゲン化物、アルコキシ基、アルキル基(分岐又は非分岐)及び、アリール基から選択される部分を表し、R3は、水素及び、アルキル基(分岐又は非分岐)から選択される部分を表し、R4は、水素及び、アルキル基(分岐又は非分岐)から選択される部分を表し、R5は、任意選択に3~5炭素原子を有する縮合脂肪族環又は芳香族環を表し得る。様々な実施形態において、R3とR4、同じ部分を表し得る。様々な実施形態において、R1は、分岐されアルキル基及びアリール基から成る群から選択される部分を表す。様々な実施形態において、R1は、置換又は非置換されたベンジル基から選択される部分を表す。
【0042】
本発明の様々な実施形態による供与体は、一般式(IIa)で表される、テトラヒドロカルバゾール部分を含み得る。
【0043】
【0044】
式中、Rは水素以外の部分を表す。
【0045】
様々な実施形態において、供与体は、一般式(II)で表される、テトラヒドロカルバゾール部分を含み、R1は、アリール含有部分を表し得る。様々な実施形態において、R1は、更にシリル基で置換されたアリール基を表し得る。様々な実施形態において、R1は、更にトリアリール-置換シリル基で置換されたアリール基を表し得る。様々な実施形態において、R1は、4-(トリフェニルシリル)-フェニルメチルを表し得る。
【0046】
様々な実施形態において、供与体は、一般式(IIa)で表される、テトラヒドロカルバゾール部分を含み、Rは、アリール含有部分を表し得る。様々な実施形態において、Rは、更にシリル基で置換されたアリール基を表し得る。様々な実施形態において、Rは、更にトリアリール-置換シリル基で置換されたアリール基を表し得る。様々な実施形態において、Rは、4-(トリフェニルシリル)-フェニルメチルを表し得る。
【0047】
「Π架橋」は、架橋中の原子の軌道を介して電子供与体(上記定義)から電子受容体(上記定義)へと電子を非局在化し得る原子または原子群を含む。そのような基は、当技術分野で非常によく知られている。典型的に、軌道は、アルケン、アルキン、中性もしくは荷電芳香族環、及び中性もしくは荷電ヘテロ芳香族環系に見られるような、二重(sp2)または三重(sp)結合炭素原子上のp軌道となる。さらに、軌道は、ホウ素または窒素などの原子上のp軌道であってもよい。さらに、軌道は、p、dまたはf有機金属軌道または混成有機金属軌道であり得る。電子が非局在化される軌道を含む架橋の原子を、ここでは「臨界原子」と呼ぶ。架橋内の臨界原子の数は、1~約30であり得る。臨界原子は、有機基または無機基で置換されてもよい。置換基は、ポリマーマトリックス中の発色団の溶解度を改善する目的、発色団の安定性を高める目的、または他の目的のために選択され得る。
【0048】
本発明の一般式(I)に係る非線形光学発色団の好適な架橋基(Π)には、特許文献35、特許文献36、特許文献37、特許文献38、特許文献39及び、2021年6月25日に出願された特許文献40に記載されているものを含み、それらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
様々な好ましい実施形態において、本発明の一般式(I)に係る非線形光学発色団の架橋基(Π)は、一般式(IIa)の架橋基を含む。
【0050】
【0051】
式中、Xは、置換または非置換され、分枝または非分枝のC2-C4ジイル部分を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、zは、0~3の整数を表す。様々な実施形態において、一般式(IIa)中のaまたはbが1であることで、式中の炭素-炭素二重結合は、炭素-炭素三重結合で置き換えることができる。あるいは、様々な好ましい実施形態において、本発明の一般式(I)に係る非線形光学発色団の架橋基(Π)は、一般式(IIb)の架橋基を含む。
【0052】
【0053】
Xは、置換または非置換され、分枝または非分枝のC2~C4ジイル部分を表す。本発明の様々な実施形態において、1つ以上のダイヤモンドイド基が一般式IIaまたはIIbに係る架橋基に共有結合することで、1つ以上のダイヤモンドイド基は、例えば、チオフェン基の硫黄原子もしくは酸素原子に結合してもよく、またはエーテル結合もしくはチオエーテル結合を介してXの1つ以上の炭素原子に結合してもよい。
【0054】
様々な好ましい実施形態において、本発明の一般式(I)に係る非線形光学発色団の架橋基(Π)は、一般式(IIc)の架橋基を含む。
【0055】
【0056】
式中、Yは、それぞれ独立に、エーテル結合及びチオエーテル結合を含むがこれに限定されない以下に記載の本明細書の様々な結合のいずれかを介して架橋基に共有結合するダイヤモンドイド含有基を表するか、またはYは、それぞれ水素、アルキル基、アリール基、硫黄もしくは酸素結合されたアルキル基もしくはアリール基、または分枝もしくは非分枝の、任意のヘテロ原子含有C1~C4置換基を表し得、a及びbは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、zは1~3の整数を表し、アークAは、それぞれ独立に、置換または非置換されたC2-C4アルキル基を表し、Y置換基を有する炭素及びその2つの隣接炭素原子と一緒になって環状基を形成する。アークAを構成する、置換または非置換されたC2-C4アルキル基は、1~4つの水素置換基を含み、水素置換基のそれぞれは、置換または非置換されたC1-C10のアルキル、置換または非置換されたC2-C10のアルケニル、置換または非置換されたC2-C10アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、及び(CH2)n-O-(CH2)n(nは1~10である)からなる群から選択される部分を含む。様々な好ましい実施形態において、zは1を表す。本発明に係る様々な実施形態において、電子供与体基または電子求引基は、1つ以上の共有結合するダイヤモンドイド基を含むことができ、一般式IIcのYは、上記置換基のいずれかを表し得る。特定の好ましい実施形態において、発色団は、1つ以上の共有結合するダイヤモンドイド基、好ましくはアダマンチルを含む電子供与体基を含んでもよく、架橋基は、Yがアリールチオエーテル置換基を表す一般式IIcに係るイソホロン基を含んでもよい。
【0057】
様々な好ましい実施形態において、本発明の一般式(I)に係る非線形光学発色団の架橋基(Π)は、一般式(IId)の架橋基を含む。
【0058】
【0059】
式中、Yは、それぞれ独立に、エーテル結合及びチオエーテル結合を含むがこれに限定されない以下に記載の本明細書の様々な結合のいずれかを介して架橋基に共有結合するダイヤモンドイド含有基を表するか、またはYは、それぞれ水素、アルキル基、アリール基、硫黄もしくは酸素結合されたアルキル基もしくはアリール基、炭素-炭素結合(例えば、アダマンチルアニソール)によって直接連結されたアリール基(任意選択にダイヤモンドイド基を有する)、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、または分枝もしくは非分枝の、任意のヘテロ原子含有C1-C4置換基を表し得、a及びbは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、zは1~3の整数を表する。本発明に係る様々な実施形態において、電子供与体基または電子求引基は、1つ以上の共有結合したダイヤモンドイド基を含むことができ、一般式IIdのYは、上記の置換基のいずれかを表し得る。特定の好ましい実施形態において、発色団は、1つ以上の共有結合するダイヤモンドイド基、好ましくはアダマンチルを含む電子供与体基を含んでもよく、架橋基は、Yがアリールチオエーテル置換基を表す一般式IIdに係るイソホロン基を含んでもよい。様々な実施形態において、一般式IIdのイソホロン架橋上のジェミナルメチル基は、それぞれ代わりに独立して、置換または非置換されたC1-C10のアルキル、置換または非置換されたC2-C10のアルケニル、置換または非置換されたC2-C10アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基(例えば、-CF3)、ハロゲン化アリール及びヘテロアリール基(例えば、ペンタフルオロチオフェノール)、及び(CH2)n-O-(CH2)n(nは1~10である)からなる群から選択される部分を表すことができる。
【0060】
例えば、本発明の一般式(I)に係る非線形光学発色団の架橋基(Π)は、以下を含むことができる。
【0061】
【0062】
様々な実施形態による非線形光学発色団の具体例は、以下を含むことができる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
及び
【0068】
【0069】
本発明の様々な実施形態は、本明細書に記載のような非線形光学発色団及び、溶媒を含むリオトロピック組成物を含む。本発明の様々な実施形態による、リオトロピック組成物用の好適な溶媒は、非プロトン性極性溶媒及び、それらの混合物を含み得る。様々な実施形態において、好適な溶媒は炭酸プロピレンを含み得る。
【0070】
好適な溶媒は、任意の量で、非線形光学発色団と組合せることができる。様々な実施形態において、一以上の溶媒は、約25重量%~約75重量%、そして、様々な実施形態において、約35重量%~約65重量%、そして、様々な実施形態において、約40重量%~約60重量%の量で、非線形光学発色団と組合せることができる。様々な実施形態において、一以上の溶媒は、50重量%までの量の非線形光学発色団と組合せることができる。
【0071】
本発明の様々な実施形態による非線形光学発色団及び溶媒のリオトロピック組成物は、少なくとも部分的に自己整合を示す。そのような組成物は、最小限の電圧をかけることで、効率的に分極され得る。様々な実施形態において、印加による分極化が不要であるように、リオトロピック組成物は、剪断により高い程度の自己整合を示す。本発明の様々な実施形態に従ったリオトロピック組成物は、電気光学装置において使用される、密度が高く、高充填で、高次配列化された薄膜を形成し得る。本発明の様々な実施形態に従った薄膜は、外部からの印加なしに又は、印加して形成され得る。様々な実施形態において、薄膜は印加なしに形成され得る。
【0072】
以下の非限定的な実施例を参照し、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0073】
合成例1:
【0074】
ステップ1:トリフェニル(p-トリル)シランの合成:
【0075】
【0076】
乾燥RBフラスコ(1)は、1-ブロモ-4-メチル-ベンゼン(9.93 mL,0.0807 mol)及び、THF(200 mL)を充填し、その後、ドライアイス/アセトンバス中で-78℃に冷却した。n-ブチルリチウム(2.50 mol/L,32.3 mL,0.0807 mol)を、温度が-55℃より上らないような速度(5 mL単位で)で加え、そして、反応物は、窒素下、-78℃で2時間攪拌された。
【0077】
別のRBフラスコ(2)は空にし、その後、窒素で3回満たし、トリフェニルシリルクロリド(26.2 g,0.0888 mol)を充填し、空にし/窒素で3回満たし、そして、1H用に真空下、60℃で、攪拌した。RBフラスコ(2)は、冷却し、窒素を満たし、その後、THF(100 mL)を充填し、そして、-78℃に冷却した。
【0078】
フラスコ(2)の内容物は、安定した滴下により、フラスコ(1)中にカニューレ処理され、温度が5℃上昇した。反応物は、窒素下、攪拌され、そして、ゆっくりと室温に加温された。
【0079】
反応物をDCMで希釈し、水、その後、食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして、蒸発させて白色固体を得た。それを、1H用に、ヘキサン中で攪拌し、ヘキサン(500 mL)でろ過/洗浄した。
【0080】
白色粉末として、トリフェニル(p-トリル)シラン(25.4 g,0.0725 mol,収率:89.8%)を得た。
【0081】
ステップ2:トリフェニル(p-トリル)シランのウォール・チーグラー臭素化反応
【0082】
【0083】
RBフラスコは、トリフェニル(p-トリル)シラン(0 mmol/L,0 mL, 0.0394 mol)、N-ブロモスクシイミド(7.36 g,0.0413 mol)、400 mLのDCM及び、2-[(E)-(1-シアノ-1-メチル-エチル) アゾ]-2-メチル-プロパンニトリル(0.323 g, 0.00197 mol)で充填した。反応物は、一晩、窒素下、還流された。TLCは、臭化物への定量的変換を示した。
【0084】
反応物を水、その後、食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして、蒸発させて黄褐色粉末を得た。これは、ヘキサン中で粉砕され、そして、ろ過され、3343-A、13.8gを得、そして、ろ過物は蒸発させ、3343-H、3.49gを得た。ヘキサン画分はクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチル(3-5%)で溶出した。適切な画分は、組合せて、そして、蒸発させて、3343-画分-A-Bを得た。画分Bは、ヘキサン中で粉砕され、そして、ろ過されて、非常に白い粒状粉末、885mgとして、3343-Bを得た。
【0085】
4-[(ブロモメチル)フェニル]-トリフェニル-シラン(14.7g,0.0342 mol,収率:87.0%)を得た。
【0086】
ステップ3:1,2,3,9-テトラヒドロカルバゾール-4-オンのアルキル化
【0087】
【0088】
RBフラスコは、窒素下で、4-[(ブロモメチル)フェニル]-トリフェニル-シラン(13.8g,0.0321 mol)、1,2,3,9-テトラヒドロカルバゾール-4-オン(5.95 g, 0.0321 mol)及び、200 mLのDMFを充填した。混合物は、0℃に冷却され、その後、水素化ナトリウム(60%, 1.41 g, 0.0353 mol)を加えた。反応物は、窒素下で、攪拌され、ゆっくりと室温(RT)に加温された。2時間の反応で、混合物は加温されており、そして、均一にされ、生成物は15分寝かされた後、そして、攪拌は停止された。反応物は、固体状白色ペーストになった。
【0089】
反応物を、水中で粉砕し、その後、水でろ過/洗浄した。有機物は、クロマトグラフィーにかけられ、ヘキサン/酢酸エチル(5%)で溶出した。適切な画分は組合せて、そして、蒸発させて、オフホワイト固体を得た。それは、DCM中に溶解され、ヘキサンを加え、そして、DCMは蒸発させた。得られた固体はろ過された。
【0090】
9-[(4-トリフェニルシリルフェニル)メチル]-2.3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-4-オン(10.8g, 0.0202 mol,収率:63.0%)を白色固体として得た。
【0091】
ステップ4:9-[(4-トリフェニルシリルフェニル)メチル]-2.3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-4-オンのメチルマグネシウムブロミドによるアルキル化
【0092】
【0093】
乾燥RBフラスコは、窒素下で、9-ベンジル-2.3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-4-オン(6.18 g, 0.0224 mol)及び、240mLのTHFを充填した。メチルマグネシウムブロミド(3.00 mol/L, 15.0 mL, 0.0449 mol)を加え、そして、反応物は、窒素下で、攪拌された。週末にわたる攪拌後、反応物は、DCMで希釈後、水(エマルジョンを除去するため、HClにより酸性にした水の添加で明らかなグリニャール反応)、その後、食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、そして、蒸発させた。材料は、クロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチル(5%)で溶出した。適切な画分は組合せて、そして、蒸発させた。
【0094】
9-ベンジル-4-メチル-2、3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-9-イウム;ブロミド(2.19 g, 0.00618 mol,収率:27.5%)を得た。
【0095】
ステップ5:発色団1を形成する、供与体、架橋及び、受容体の反応
RBフラスコは、(3E)-2-クロロ-3-(ヒドロキシメチレン)シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(0.403 g, 0.00233 mol)、2-[3-シアノ-4-メチル-5-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-2-フリルイデン]プロパンジニトリル(0.736 g, 0.00233 mol)及び、12mLのメタノールを充填した。それは、窒素下で、40℃で1時間攪拌された。メタノールを蒸発させて、その後、[4-[(4-メチル-2.3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-9-イウム-9-イル)メチル]フェニル]-トリフェニル-シラン;ブロミド(1.43 g, 0.00233 mol)及び、12mLのDCMを加えた。反応物は、窒素下、室温で、一晩攪拌された。反応物は、シリカゲルカラムにかけ、DCMで溶出した。適切な画分は組合せて、そして、蒸発させ、きれいなカルバゾリウム、3307-C、391mgを回収した。生成物と残渣はクロマトグラフィーにかけられ、DCMで溶出された。適切な画分は組合せて、そして、蒸発させ、3307-P、1.11gを得た。それは、加温メタノール中で粉砕され、冷却され、ろ過され、そして、メタノールで洗浄され、乾燥後、3307-A、0.752gを得た。メタノールは蒸発させて、3307-MeOHを得た。
【0096】
2-[4-[(E)-2-[(3Z)-2-クロロ-3-[(2Z)-2-[9-[(4-トリフェニルシリルフェニル)メチル]-2、3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-4-イリデン]エチリデン]シクロヘキセン-1-イル]ビニル]-3-シアノ-5-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-2-フリルイデン]プロパンジニトリル(1.11 g, 0.00113 mol, 収率:48.4%):発色団1を得た。
【0097】
【0098】
合成例2:
【0099】
合成例1で調製した供与体基、9-ベンジル-4-メチル-2、3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-9-イウム;ブロミドを使用して、発色団2を以下のように調製した。RBフラスコは、(3E)-2-クロロ-3-(ヒドロキシメチレン)-5-(トリフルオロメチル)シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(0.349 g, 0.00145 mol)、2-[3-シアノ-4-メチル-5-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-2-フリルイデン]プロパンジニトリル(0.458 g, 0.00145 mol)及び、12mLのエタノールを充填した。それは、窒素下、40℃で1時間攪拌された。エタノールは蒸発させ、その後、[[4-[(4-メチル-2、3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-9-イウム-9-イル)メチル]フェニル]-トリフェニル-シラン;ブロミド(809 mg, 0.00132 mol)及び、12mLのDCMを加えた。反応物は、窒素下、室温で、一晩攪拌された。反応物は、シリカゲルカラムにかけ、DCMで溶出した。適切な画分は組合せて、そして、蒸発させた。生成物と残渣は、クロマトグラフィーにかけ、DCMで溶出した。適切な画分は組合せて、そして、蒸発させた。これは、加温メタノール中で粉砕され、冷却され、ろ過され、そして、メタノールで洗浄された。
【0100】
2-[4-[(E)-2-[(3Z)-2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-3-[(2Z)-2-[9-[(4-トリフェニルシリルフェニル)メチル]-2、3-ジヒドロ-1H-カルバゾール-4-イリデン]エチリデン]シクロヘキセン-1-イル]ビニル]-3-シアノ-5-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-2-フリルイデン]プロパンジニトリル(0.595 g, 0.000566 mol, 収率42.9%)を得た。
【0101】
【0102】
発色団の実施形態に対する最大吸収波長の具体例
【0103】
発色団1は、50重量%で炭酸プロピレンと組合せて、リオトロピック組成物を形成した。組成物は、2つのガラス基板の間で剪断調整され、そして、可視及び、近赤外スペクトルにわたって光吸収分析が行われた。
図1を参照すると、剪断調整サンプル(1200nm近位の吸収ピークを有するカーブ)は、そのピーク値により示されるように赤色シフトと、近赤外方向への全体のシフトを示した。
図1に示すように、溶媒を除くため短期間150℃にその後加熱した剪断調整サンプルは、そのような赤色シフトは示さなかった。そのような赤色シフトは、少なくとも部分的な自己整合及び、異方性を示すJ凝集体形成の証拠である。
【0104】
発色団1は、50重量%で炭酸プロピレンと組合せて、リオトロピック組成物を形成した。組成物は、2つのガラス基板の間に配置され、そして、偏光顕微鏡にかけられた。
図2a~2cを参照すると、J凝集体形成、少なくとも部分的な自己整合及び、異方性を示す剪断調整サンプル中で、直ぐに赤い色が観察された。
図2cは、剪断調整前の2つのガラス基板の間のサンプルを示す。リオトロピック特性の証拠である、明らかなミセルの形成が示された。
図2bは、剪断調整サンプルは、鮮やかな赤い色の証拠となっている。そのような赤い色は、少なくとも部分的な自己整合及び、異方性を示すJ凝集体形成の証拠である。
図2cで、溶媒を除去するために100℃で加熱されたサンプルは赤い色を示していない。
【0105】
当業者は、その広範な発明概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更を加えることができることは、理解されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内の修正を包含することが意図されることが理解される。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非プロトン性極性溶媒で分散され且つ極性化された非線形光学発色団を含む
電気光学膜であって、前記非線形光学発色団は、一般式(I)に表され、
D-Π-A (I)
式中、Dは有機電子供与体基を表し、AはDの電子親和性よりも大きい電子親和性を有する有機電子求引基を表し、Πは、AとDとの間のΠ架橋を表し、
有機電子供与体基Dは、テトラヒドロカルバゾール部分のテトラヒドロ6員炭素環中の炭素原子でΠ架橋と連結されたテトラヒドロカルバゾール部分を備え、カルバゾール部分のテトラヒドロ5員環の窒素に連結された水素が、置換基Rで
置換されており、Rは、水素以外の部分を表す、電気光学膜。
【請求項2】
テトラヒドロカルバゾール部分は、一般式(II)で表され、
【化1】
Rは、水素以外の部分を表す、請求項1に記載の
電気光学膜。
【請求項3】
Rは、芳香族環を含む部分を表す、請求項2に記載の
電気光学膜。
【請求項4】
Rは、トリアリール置換シリル置換基を有する芳香族環を含む部分を表す、請求項3に記載の
電気光学膜。
【請求項5】
Rは、一般式(III)
により示されるトリアリール置換シリル置換基を有する芳香族環を含む部分を表す、
【化2】
請求項4に記載の
電気光学膜。
【請求項6】
Aは、一般式(I
a)の電子求引基を表し、
【化3】
式中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、H、置換または非置換されたC
1-C
10のアルキル、置換または非置換されたC
2-C
10のアルケニル、置換または非置換されたC
2-C
10アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、及び(CH
2)
n-O-(CH
2)
n(nは1~10である)からなる群から選択される部分を表す、請求項1に記載の
電気光学膜。
【請求項7】
前記非線形光学発色団は、一般式(IV)により表され、
【化4】
式中、Rは、水素以外の置換基を表し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、H、置換または非置換されたC
1-C
10のアルキル、置換または非置換されたC
2-C
10のアルケニル、置換または非置換されたC
2-C
10アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、及び(CH
2)
n-O-(CH
2)
n(nは1~10である)からなる群から選択される部分を表し、Yは、それぞれ水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、硫黄もしくは酸素結合されたアルキル基もしくはアリール基、または分枝もしくは非分枝の、任意のヘテロ原子含有C
1~C
4置換基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、zは1~3の整数を表し、アークAは、それぞれ独立に、置換または非置換されたC
2-C
4アルキル基を表し、Y置換基を有する炭素及びその2つの隣接炭素原子と一緒になって環状基を形成する、請求項1に記載の
電気光学膜。
【請求項8】
一つ以上の電気光学膜を備えた電気光学装置であって、前記一つ以上の電気光学膜のそれぞれは、非プロトン性極性溶媒中で分散され且つ極性化された非線形光学発色団を含み、前記非線形光学発色団は、一般式(I)に表され、
D-Π-A (I)
式中、Dは有機電子供与体基を表し、AはDの電子親和性よりも大きい電子親和性を有する有機電子求引基を表し、Πは、AとDとの間のΠ架橋を表し、
有機電子供与体基Dは、テトラヒドロカルバゾール部分のテトラヒドロ6員炭素環中の炭素原子でΠ架橋と連結されたテトラヒドロカルバゾール部分を備え、カルバゾール部分のテトラヒドロ5員環の窒素に連結された水素が、置換基Rで置換されており、Rは、水素以外の部分を表す、
電気光学装置。
【請求項9】
テトラヒドロカルバゾール部分は、一般式(II)で表され、
【化5】
Rは、水素以外の部分を表す、請求項8に記載の電気光学装置。
【請求項10】
Rは、芳香族環を含む部分を表す、請求項9に記載の電気光学装置。
【請求項11】
Rは、トリアリール置換シリル置換基を有する芳香族環を含む部分を表す、請求項10に記載の電気光学装置。
【請求項12】
Rは、一般式(III)により示されるトリアリール置換シリル置換基を有する芳香族環を含む部分を表す、
【化6】
請求項11に記載の電気光学装置。
【請求項13】
Aは、一般式(I
a
)の電子求引基を表し、
【化7】
式中、R
2
及びR
3
は、それぞれ独立に、H、置換または非置換されたC
1
-C
10
のアルキル、置換または非置換されたC
2
-C
10
のアルケニル、置換または非置換されたC
2
-C
10
アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、及び(CH
2
)
n
-O-(CH
2
)
n
(nは1~10である)からなる群から選択される部分を表す、請求項8に記載の電気光学装置。
【請求項14】
前記非線形光学発色団は、一般式(IV)により表され、
【化8】
式中、Rは、水素以外の置換基を表し、R
2
及びR
3
は、それぞれ独立に、H、置換または非置換されたC
1
-C
10
のアルキル、置換または非置換されたC
2
-C
10
のアルケニル、置換または非置換されたC
2
-C
10
アルキニル、置換または非置換されたアリール、置換または非置換されたアルキルアリール、置換または非置換された炭素環、置換または非置換された複素環、置換または非置換されたシクロヘキシル、及び(CH
2
)
n
-O-(CH
2
)
n
(nは1~10である)からなる群から選択される部分を表し、Yは、それぞれ水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、硫黄もしくは酸素結合されたアルキル基もしくはアリール基、または分枝もしくは非分枝の、任意のヘテロ原子含有C
1
~C
4
置換基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、zは1~3の整数を表し、アークAは、それぞれ独立に、置換または非置換されたC
2
-C
4
アルキル基を表し、Y置換基を有する炭素及びその2つの隣接炭素原子と一緒になって環状基を形成する、請求項8に記載の電気光学装置。
【国際調査報告】