(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】区域内の推定船舶交通の時空間的地図を生成するための方法および演算装置
(51)【国際特許分類】
G06V 20/54 20220101AFI20241219BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20241219BHJP
G08G 3/00 20060101ALI20241219BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G06V20/54
G01V3/12 A
G08G3/00 A
G09B29/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534624
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 IB2021000956
(87)【国際公開番号】W WO2023105260
(87)【国際公開日】2023-06-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ・ビドー
【テーマコード(参考)】
2C032
2G105
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
2C032HB11
2C032HB22
2G105AA01
2G105BB14
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105FF13
2G105GG03
2G105HH08
2G105JJ05
2G105KK02
2G105KK03
2G105KK04
2G105KK06
5H181AA25
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5L096BA08
5L096BA18
5L096CA18
5L096HA13
5L096JA28
(57)【要約】
本発明は、区域(51)内の推定船舶交通についての時空間的地図(50)を生成するための演算装置または方法に関する。当該方法は下記ステップを含む。区域(51)についての複数枚の衛星レーダー画像を取得し、ここで複数枚の衛星レーダー画像は一週間あたり十枚よりも低い中央頻度で十二ヶ月以上の期間に亘って生成されたものである取得ステップ(110)。複数枚の衛星レーダー画像を分析することで、船舶交通履歴を表す船舶データを生成する分析ステップ(120)。複数枚の衛星レーダー画像の頻度に基づいた、生成された船舶データの修正ステップ(130)。修正されたデータから、区域内の推定船舶交通を表す船舶の時空間的分布図を一種以上生成し、当該時空間的分布図は、期間毎の船舶密度値を含む、生成ステップ(180)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
区域(51)内、好ましくは沖合区域内の推定船舶交通についての時空間的地図(50)を生成するための、一個以上のプロセッサ(10)により実施される方法(100)であって、
前記区域(51)についての複数枚の衛星レーダー画像(52)を取得し、ここで前記複数枚の衛星レーダー画像(52)は、一週間あたり十枚よりも低い中央頻度で十二ヶ月以上の期間に亘って生成されたものであり、かつ解像度が五メートルから二十メートルの範囲である取得ステップ(110)と、
前記複数枚の衛星レーダー画像(52)を分析することで、船舶自動識別装置を搭載していない船舶を含んだ船舶交通履歴を表す船舶データを生成する分析ステップ(120)と、
前記複数枚の衛星レーダー画像の頻度に基づいて、生成された船舶データの検証もしくは修正を行うステップ(130)と、
検証もしくは修正された船舶データから、前記区域内の推定船舶交通を表す船舶の時空間的分布図(55)を一種以上生成し、前記時空間的分布図は、期間毎の船舶密度値を含む、生成ステップ(160)と
を含む、方法。
【請求項2】
生成された船舶データが、船舶の位置、船舶の推定全長、および時間情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
船舶交通を表す生成された船舶データが、百メートル未満、好ましくは五十メートル未満の全長を有する船舶を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに
外れ値検出ステップ(135)
を含み、好ましくは前記外れ値検出ステップ(135)は、
或る時点における選択された部分区域についての複数枚の衛星レーダー画像の比較と、
或る時点において同一位置で同一全長の船舶が検出された際の、外れ値検出と
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
一ヶ月あたりに二枚以上好ましくは五枚以上の頻度を以って、同一の区域に関して百枚以上の衛星レーダー画像(52)を取得する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらに
前記区域(51)からの、船舶自動識別装置のデータ、夜間衛星画像、および高解像度衛星画像から選択される一種以上のデータを用いた、データ改善ステップ(140)
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
さらに
前記区域(51)に関連する地理的情報システムにデータを統合するステップ(150)
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
さらに
前記区域のうちの一個以上の部分に関連付けられた複数の層を定義し、ここで前記複数の層は複数の層の版に対応し、かつ前記複数の層の版の各々は、船舶全長および/もしくは時間の異なる値に関連付けられるデータを含んだステップ
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の層が、前記複数の層のそれぞれに含まれる情報の種類に関連付けられた一種以上の属性を含み、
任意に、前記一種以上の属性は信頼度属性を含み、前記信頼度属性の値は、前記層に含まれるデータの正確性の信頼度のレベルに対応し、
さらに任意に、前記信頼度属性は少なくとも部分的に、前記複数の層のうちのその層を生成するために用いられた衛星レーダー画像(52)の枚数、前記衛星レーダー画像の源、または前記衛星レーダー画像を分析するために用いられた方法に基づく
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の層が、地理情報システムプロジェクトにおける、船舶自動検出結果、AIS層、夜間光学衛星画像、高解像度衛星画像、沖合インフラストラクチャ、および地理的区域に応じたその他の付随データのうちの一種以上の層を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の層がローカル座標系層を含み、
船舶が自身のローカル位置を定め、前記船舶のローカル位置を、前記船舶と前記区域内の関心点とのあいだの距離に変換するために用いる座標系に関連付けられる情報を、前記ローカル座標系層が含む
ことを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記時空間的分布図が複数の層を含み、そのうちの一つの層は、経時的船舶密度(56)に特化したものである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
さらに
海洋交通障害の点数を生成するステップ
を含み、海洋交通障害の点数を生成するステップは、
全球測位衛星情報から、調査対象区域の地理的部分を決定するステップと、
前記地理的部分に関して、船舶出現頻度の季節による変化に基づく海洋交通障害の点数、および船舶全長を計算するステップと
を含む
ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に従って生成した時空間的地図を用いるステップ
を含む、適切な航路を定める方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に従って生成した時空間的地図を用いるステップ
を含む、適切な海洋開発域を定める方法。
【請求項16】
掘削域を定めるステップ
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
一個以上のプロセッサ(10)により実行された際に、前記一個以上のプロセッサに請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実施させるように構成されるコンピュータ可読命令を格納する、一個以上の有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
演算装置(1)であって、
一個以上のプロセッサ(10)と、
命令を格納する、一個以上の有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体(20)と
を含み、
前記命令は前記一個以上のプロセッサにより実行された際に、前記一個以上のプロセッサに下記の
区域(51)についての複数枚の衛星レーダー画像(52)を取得し、ここで前記複数枚の衛星レーダー画像(52)は、一週間あたり十枚よりも低い中央頻度で十二ヶ月以上の期間に亘って生成されたものであり、かつ解像度が五メートルから二十メートルの範囲である取得工程と、
前記複数枚の衛星レーダー画像(52)を分析することで、船舶自動識別装置を搭載していない船舶を含んだ船舶交通履歴を表す船舶データを生成する分析工程と、
前記複数枚の衛星レーダー画像の頻度に基づいて、生成された船舶データの検証もしくは修正を行う工程と、
検証もしくは修正された船舶データから、前記区域内の推定船舶交通を表す船舶の時空間的分布図を一種以上生成し、前記時空間的分布図は、期間毎の船舶密度値を含む、生成工程と
を含んだ動作を実施するように構成される
ことを特徴とする、演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋交通の分野に関する。本発明は特には、船舶交通分析の分野に関する。本発明は、区域(領域)内の推定船舶交通(船舶交通量の推定)の時空間的地図を生成するための方法および演算装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
海上旅行、漁業、物資の輸送は世界中で増加しており、それに伴って海洋環境の監視、および海洋における人間活動の監視への関心はますます高まっている。これには例えば、違法な船舶活動の追跡および監視、航路指定、船舶の動きや油流出の監視といったものが挙げられる。
【0003】
特に船舶活動の監視への関心は高く、船舶の存在を明らかにして船舶活動を区別するために種々のシステムが開発されてきている。その一例として挙げられるのはAIS(automatic identification system; 船舶自動識別装置)であり、これはそのシステムを搭載する船舶から送信される識別データと情報を巧みに活用する仕組みである。地上AISでは地上局によりデータが受信され、また宇宙的AISでは衛星が船舶からの信号を収集する。MarineTraffic(登録商標)は、AISに基づいた船舶追跡の大手事業者である。この船舶追跡は主に、沿岸のAIS受信局網から集めたデータに基づいており、さらに受信衛星が補助している。MarineTraffic(登録商標)はAIS技術を用いて、厖大な数の船舶の位置を毎日受信し、解析して保存している。しかしながらその生成データには、AIS未搭載船舶の情報は欠落してしまっている。
【0004】
また、宇宙からの画像を海洋監視に用いることも提案されてきている。特に、合成開口レーダー(SAR)によって通常収集されている衛星からのレーダー画像は、天候・昼夜を問わずにデータ取得可能であるため、海洋監視にますます広汎に使われるようになっている。SARのマイクロ波能動型センサーは、集束した指向性エネルギービームで対象を照射するので、検知された対象物の向きに応じて固有の散乱効果を生じさせられる。マイクロ波エネルギーの照射に応じた表面物質の後方散乱応答(「後方散乱信号」とも呼ぶ)は、同じ物質の可視太陽光の分光反射率とは大きく異なる。それゆえ、SARシステムは天候その他の条件にかかわらず、広域範囲に亘る独自の情報を提供できるわけである。
【0005】
地球観測分野においては、SARは安全保障や環境に関連する役務にとって有用な道具となっている。例えば海上交通(海洋交通)、違法漁業、もしくは海上国境活動、または油流出検知や監視等の海洋沿岸管理をリアルタイムまたは準リアルタイムで扱っている役務やシステムにとって、SARデータに基づいた船舶探知・識別は重要な要素である。
【0006】
船舶検出での主な課題のひとつとして、コヒーレント画像に固有な海面反射の存在がある。船舶検出アルゴリズムとしてはCFAR(constant false alarm rate、一定誤警報確率法)、α-stableアルゴリズム、ウェーブレット変換などが実装されている。しかしSAR画像には海面反射とスペックルノイズが含まれているが故に、これらのアルゴリズムには限界がある。そこで近年、海上活動を効果的に監視するために、合成開口レーダー(SAR)画像に、船舶自動識別装置(AIS)から得られるデータを統合する手法が提案されている。特に、SARで検出した船舶の数を、グランドトゥルースデータ(地上由来の対照データ)源としてAISを使用して確認することで、誤警報率と見逃し率を推定する手法がある(Graziano et al. Integration of Automatic Identification System (AIS) Data and Single-Channel Synthetic Aperture Radar (SAR) Images by SAR-Based Ship Velocity Estimation for Maritime Situational Awareness. Remote Sens. 2019, 11(19), 2196)。この提案された手法では、AIS報告とSARによる検出との距離を150メートル未満に制限している。
【0007】
しかしながらAISによる船舶検出には依然として、様々なサイズと種類の船舶が、実際にはAISを持っていなかったりAISを切っていたりするという克服すべき課題がある。
【0008】
さらに言えばこうした手法は、船舶交通のリアルタイム分析や即時分析に一見適しているかのように見えるものの、環境・社会への影響を評価する研究には適していない。海域、特に沿岸地域での活動を計画する場合には、活動計画が最適になるように船舶交通に関する一般的な情報を入手したくなるものである。実際、漁業や観光業を含む海上交通は、地震探査、掘削、沖合インフラストラクチャの設置などといった沖合活動に対して甚大な影響を与えている。特に漁船は、位置情報を有していない(AISを持っていない)ことや、年間を通じて漁場が移動すること、およびその活動の季節性といったことから、問題になる場合が多い。
【0009】
したがって、ある区域における船舶交通の経時的な変化を十分に把握するためには、その区域における推定船舶交通の時空間的地図を生成できるような解法が希求されている。
【発明の概要】
【0010】
以下、本発明の基本的なところを理解しやすくするために、本発明の選りすぐりの態様、実施形態、および実施例を簡略化してまとめていく。しかしながら、この概要は本発明の全ての態様、実施形態、および実施例の全容を成しているというわけではない。あくまでこの概要に沿って、本発明の態様、実施形態、および実施例の詳細な説明への導入を簡潔に行うために、本発明の選りすぐりの態様、実施形態、および実施例を提示しているということに留意されたい。
【0011】
本発明は、従来技術の欠点を克服することを目的とする。特に本発明は、区域内、好ましくは沖合区域内の推定船舶交通についての時空間的地図を生成するための、一個以上のプロセッサにより実施される方法を提供できる。当該方法は、
前記区域についての複数枚の衛星レーダー画像を取得し、ここで前記複数枚の衛星レーダー画像は、一週間あたり十枚よりも低い中央頻度で十二ヶ月以上の期間に亘って生成されたものであり、かつ解像度が五メートルから二十メートルの範囲である取得ステップと、
前記複数枚の衛星レーダー画像を分析することで、船舶自動識別装置を搭載していない船舶を含んだ船舶交通履歴を表す船舶データを生成する分析ステップと、
前記複数枚の衛星レーダー画像の頻度に基づいて、生成された船舶データの検証もしくは修正を行うステップと、
検証もしくは修正された船舶データから、前記区域内の推定船舶交通を表す船舶の時空間的分布図(spatial and temporal distribution map)を一種以上生成し、前記時空間的分布図は、期間毎の船舶密度値を含む、生成ステップと
を含む。
【0012】
この方法論の利点は、所与の区域における海上交通の経時的な変化を示す、完全な統計的画像が得られるということである。衛星の空間解像度内に収まるサイズの全ての船(AISを持っていない船も含む)が検出できる。つまり或る区域内の推定船舶交通を表す時空間的地図が生成できることになる。このような地図を使えば、対象の期間その他のパラメータに依る船舶交通量の予測を立てられる。このようにして交通量を推定することで、或る区域内の交通量が、船舶のサイズや期間といった種々のパラメータに応じて変化することを迅速に識別可能となる。
【0013】
本発明に係る方法のその他の任意付加的な特徴に応じ、当該方法には、下記の特性のうちの一種以上を単独でもしくは組み合わせて含めてもよい。
- 生成された船舶データが、船舶の位置、船舶の推定全長、および時間情報を含む。
- 船舶交通を表す生成された船舶データが、百メートル未満、好ましくは五十メートル未満の全長を有する船舶を含む。AISによる検出では、AISを有効にしておりかつ十分な全長(例えば百メートル以上)を持つ船舶しか対象にできない。一方本発明では、小型船舶(百メートル未満の全長の船など)についても交通量の推定が可能である。
- 外れ値を検出するステップをさらに含み、好ましくは外れ値を検出するステップが、或る時点における選択された部分区域についての複数枚の衛星レーダー画像の比較と、或る時点において同一位置で同一全長の船舶が検出された際の外れ値検出とを含んでよい。
- 一ヶ月あたりに二枚以上好ましくは五枚以上の頻度を以って、同一の区域に関して百枚以上の衛星レーダー画像を取得する。
- 前記区域からの、船舶自動識別装置のデータ、夜間衛星画像、および高解像度衛星画像から選択される一種以上のデータを用いた、データ改善ステップをさらに含む。
- 前記区域に関連する地理的情報システムにデータを統合するステップをさらに含む。
- 前記区域のうちの一個以上の部分に関連付けられた複数の層(レイヤー)を定義し、ここで前記複数の層は複数の層の版(バージョン)に対応し、かつ複数の層の版の各々は、船舶全長および/もしくは時間の異なる値に関連付けられるデータを含むというステップをさらに含む。
- 前記複数の層が、前記複数の層のそれぞれに含まれる情報の種類に関連付けられた一種以上の属性を含み、任意に、前記一種以上の属性は信頼度属性を含み、前記信頼度属性の値は、前記層に含まれるデータの正確性の信頼度のレベルに対応し、さらに任意に、前記信頼度属性は少なくとも部分的に、前記複数の層のうちのその層を生成するために用いられた衛星レーダー画像の枚数、前記衛星レーダー画像の源、または前記衛星レーダー画像を分析するために用いられた方法に基づいてよい。
- 前記複数の層が、地理的情報システムプロジェクトにおける、船舶自動検出結果、AIS層、夜間光学衛星画像、高解像度衛星画像、沖合インフラストラクチャ、および地理的区域に応じたその他の付随データのうちの一種以上の層を含む。
- 前記複数の層がローカル座標系層を含み、船舶が自身のローカル位置を定め、前記船舶のローカル位置を、前記船舶と前記区域内の関心点とのあいだの距離に変換するために用いる座標系に関連付けられる情報を、前記ローカル座標系層が含む。
- 前記時空間的分布図が複数の層を含み、そのうちの一つの層は、経時的船舶密度に特化したものである。
- 海洋交通障害の点数を生成するステップをさらに含み、海洋交通障害の点数を生成するステップは、
全球測位衛星(GPS)情報から、調査対象区域の地理的部分を決定するステップと、
前記地理的部分に関して、船舶出現頻度の季節による変化に基づく海洋交通障害の点数、および船舶全長を計算するステップと
を含む。
【0014】
別の態様では本発明は、適切な航路を定める方法に関してもよく、当該方法は本発明に従って生成された時空間的地図を用いるステップを含む。
【0015】
また本発明は、適切な海洋開発域を定める方法に関してもよく、当該方法は本発明に従って生成した時空間的地図を用いるステップを含む。こうした適切な海洋開発域を定める方法は、掘削域を定めるステップを含んでもよい。
【0016】
別の態様では本発明は、一個以上の有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体に関してもよく、当該媒体は、一個以上のプロセッサにより実行された際に、前記一個以上のプロセッサに本発明に係る方法を実施させるように構成されるコンピュータ可読命令を格納する。
【0017】
別の態様では本発明は、演算装置も提供できる。当該演算装置は、一個以上のプロセッサと、命令を格納する一個以上の有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体とを含む。前記命令は前記一個以上のプロセッサにより実行された際に、前記一個以上のプロセッサに下記の工程を含んだ動作を実施するように構成される。
区域についての複数枚の衛星レーダー画像を取得し、ここで前記複数枚の衛星レーダー画像は、一週間あたり十枚よりも低い中央頻度で十二ヶ月以上の期間に亘って生成されたものであり、かつ解像度が五メートルから二十メートルの範囲である取得工程。
前記複数枚の衛星レーダー画像を分析することで、船舶自動識別装置を搭載していない船舶を含んだ船舶交通履歴を表す船舶データを生成する分析工程。
前記複数枚の衛星レーダー画像の頻度に基づいて、生成された船舶データの検証もしくは修正を行う工程。
検証もしくは修正された船舶データから、前記区域内の推定船舶交通を表す船舶の時空間的分布図を一種以上生成し、前記時空間的分布図は、期間毎の船舶密度値を含む、生成工程。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記その他の目的、特徴、および利点は、添付する図面と併せて以下の詳細な説明を読むことでさらに明らかになるであろう。
【
図1】本発明により、区域内の推定船舶交通についての時空間的地図を生成するための方法を示す模式図である。
【
図3】衛星レーダー画像を示す。Aでの白点は、後方散乱応答が大きい船舶に対応している。Bは、Aと同じレーダー画像に、自動船舶抽出結果(黒丸)を重ね合わせたものである。
【
図4】区域の時空間的地図に、衛星レーダー画像から検出した船舶位置を重ねたものを示す。
【
図5】A、B、C、Dともに、出力セル1000m、捜索半径25kmの例での密度地図を図示したものである。
【
図7】2015年4月から2020年4月にかけての五年間に亘り、月毎の検出船舶の空間的分布を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る方法、装置、およびコンピュータプログラム製品を示すフロー図および/またはブロック図を参照しつつ、本発明の態様群を開示する。
【0020】
当該図面では、フロー図および/またはブロック図により、本発明の実施形態群に係るアーキテクチャ、機能、ならびに実施可能な装置もしくはシステムまたは方法およびコンピュータプログラム製品を示している。
【0021】
この目的のためにフロー図またはブロック図中に示されるボックスは、システム、デバイス(装置)、モジュール、もしくは、特定の論理ファンクション(群)を実施するための実行可能な命令を含んだコードを示すものであってよい。
【0022】
或る態様では、ボックスに関連付けられたファンクション群が、図面に示されたのとは別の順序で現われるようにしてもよい。
【0023】
例えば二つのボックスが並んで示されていたとして、これらは実質的に同期して実行してもよい。または、それに伴う機能に応じてボックスを逆順に実行してもよい。
【0024】
フロー図もしくはブロック図中の各ボックス、ならびにフロー図もしくはブロック図中のボックス群の組み合わせは、いずれも特別なシステムにより実施可能である。当該システムは、特有の機能もしくは動作を実施したり、または特別な機器とコンピュータ命令の組み合わせを実施したりできる。
【0025】
本発明の例示的実施形態の説明を以下に示す。
【0026】
本明細書において「船舶」vesselsという語は、浮遊して操舵/移動ができる任意の物を指すと考えてよい。この語は船のみならず、舟、浮島台(プラットフォーム)、艀をも指してよい。
【0027】
本発明の意味するところにおいて、「方法」process、「演算」compute、「決定」determine、「表示」display、「抽出」extract、「比較」compare、またはさらに広義に「実施可能な作業」executable operationとは、別段の文脈で無いかぎりは、演算装置またはプロセッサにより実施できる動作を意味する。こうした作業は、演算システムその他の装置内のメモリにおける物理(電子)的な量で表現されるデータを操作して変形させることで情報を保存、伝送、または表示できるデータ処理システム(演算システムもしくは電子演算装置など)の動作および/または方法に関するものである。特に計算作業は、装置のプロセッサによって実行でき、得られたデータはデータメモリ内の対応するフィールドに入力され、その単数もしくは複数のフィールドを、例えばそのデータをフォーマットするHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)を介して、ユーザーへと返すことができる。これらの作業は、アプリケーションまたはソフトウェアに基づくものであってよい。
【0028】
「アプリケーション」application、「ソフトウェア」software、「プログラムコード」program code、および「実行可能コード」executable codeという語ないし表現は、直接または間接(例えば別のコードへの変換作業の後)に特定の機能を行うためのデータ処理を起こさせることを企図した命令の組の、任意の表現(式)、コード、または記法のことを意味する。プログラムコードの例としては、サブプログラム、関数、実行可能アプリケーション、ソースコード、オブジェクトコード、ライブラリ、および/もしくは演算システム上で実施されるよう設計された命令のその他のシーケンスといったものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0029】
本発明の意味するところにおいて「プロセッサ」processorとは、コード内に格納された命令に応じて作業を行うよう構成された、一個以上のハードウェア回路のことを意味する。このハードウェア回路は、集積回路であってもよい。プロセッサの例としては、中央処理回路(CPU)、グラフィックプロセッサ、特定用途向け集積回路(アングロサクソン用語では「ASIC」)、プログラマブルロジック回路などが挙げられるが、これらに限定はされない。本発明を実装するためには単一のプロセッサを用いてもよいし、または複数の他のユニットを用いてもよい。
【0030】
本発明の意味するところにおいて「結合(された)」coupledとは、一種以上の中間要素と、直接または間接に接続されることを意味する。二つの要素が結合する際には、機械的もしくは電気的に結合されてもよいし、または通信チャネルにより接続されてもよい。
【0031】
本発明の意味するところにおいて「ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)」human-machine interfaceという表現は、人間がコンピュータと通信することを可能とする任意の要素に対応する。具体的には、キーボード、およびキーボードから入力されたコマンドに応答して表示を行い、必要に応じて画面に表示された項目をマウスもしくはタッチパッドにより選択することを可能にする手段が挙げられるが、この列挙に限定はされない。別の実施形態は、指や物によって触れた画面上の要素を直接選択するためのタッチスクリーンであってよく、任意に仮想キーボードを表示可能なものであってもよい。
【0032】
「演算装置」computing deviceとは、処理ユニットまたはプロセッサを含んだ任意の装置であると理解され、例えばデータメモリ(プログラムメモリであってよい)と協働するマイクロコントローラーの形態であってよい。こうしたメモリは分離可能であってよい。処理ユニットは、内部通信バス手段によって上記メモリと協働できる。
【0033】
本明細書において「約(およそ)」aboutという語は、値または範囲における変動を許容し、例えば示された値または範囲の境界値について10%以内、5%以内、または 1%以内といった変動を許容するものであってよい。
【0034】
本明細書において「実質的」substantiallyとは、大部分またはほとんどという意味であって、例えば約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%以上のことであってよい。
【0035】
本発明の意味するところにおいて「部分区域」sub-areaとは、区域のうちの所定の一部のことを指す。特には或る区域を、一個以上の部分区域に分割可能であってよい。
【0036】
「区域内の経路」route within the areaという表現は、或る一点から別の一点への経路(航路)のことを言う。この経路は、異なる点群を通る線として定義されてよく、それらの各点は地理的座標を以って特徴付けてもよい。逆に、
【0037】
「沖合区域」offshore areaという語は、沿岸地域を含まない海域に相当する。それとは逆に沿岸区域coastal areaという語は、沿岸地域を含んだ海域に相当する。
【0038】
上述したように、これまで海上交通に関して開発されてきた方法のほとんどは、船舶交通のリアルタイム分析または即時分析に特化したものであった。しかしこれらの方法は、環境および社会への影響評価研究には不適であったし、またAIS非搭載の船舶を含んだ海上交通の全体像を把握したい場合にも適していなかった。したがって、対象期間その他のパラメータに応じて船舶交通を予測するために使用できるような、区域内の推定船舶交通の時空間的地図が求められている。
【0039】
衛星レーダー画像に基づいた方法を開発した。この分析は、低頻度で得た衛星レーダー画像から実行する。これにより、長期間(一年以上)に亘る分析であっても、許容できる計算時間を以って作業可能となる。本発明の解決手段により、船のサイズ推定を伴う迅速な調査が可能となるため、漁船と大型タンカーの交通を区別できるという実益がある。
【0040】
本発明は、推定交通量の生成に関し、この生成は地図の形式をとってよい。このように交通量を推定することで、船のサイズや期間といった種々のパラメータに応じた区域内の交通量の変化を、迅速に識別可能となる。従来の方法では交通量を正確に推定できていない。本解決手段は、区域および期間毎に、船舶密度データを生成することを含むのが好ましい。
【0041】
本発明の第一の態様は、推定船舶交通についての時空間的地図 50 を生成する方法 100 に関する。特には推定船舶交通の地図 50 を、特定の関心領域 51 に対して仕立てられる。上述したように沿岸区域には困難がある。関心領域 51 は沖合区域または沿岸区域であるのが好ましい。関心領域 51 は、海域 53 および陸域 54 を含んでよい。
【0042】
方法 100 は、一個以上のプロセッサ 10 により実施するのが好ましい。本発明に係る方法を実施するプロセッサ 10 は、複数枚の衛星レーダー画像を受信するように構成された演算装置(コンピュータまたはコンピュータサーバなど)に組込まれたものであってよい。本発明を実施するのに適したまたは本発明に係る方法を実施するように構成された演算装置 1 については、以下でさらに詳述する。
【0043】
本発明に係る方法により、長期間に亘る分析にもかかわらず、許容可能な計算時間を以って作業できる。
【0044】
特に
図1に示すように、本発明に従って推定船舶交通についての時空間的地図 50 を生成するための方法 100 は、下記のステップを含む。すなわち、区域 51 についての複数枚の衛星レーダー画像を取得 110 すること。船舶交通履歴(過去の船舶交通)を表す船舶データを生成するために、複数枚の衛星レーダー画像を分析 120 すること。生成したデータを検証もしくは修正 130 すること。区域内の推定船舶交通を表す船舶の船舶の時空間的分布図を一種以上生成 160 すること。
【0045】
本発明に係る方法はさらに下記のステップを含んでもよい。すなわち外れ値検出ステップ 135 、データ改善ステップ 140 、海洋交通障害の点数を生成するステップ 170 、および/または、地理的情報システムにデータを統合するステップ 150 。
【0046】
図1に示すように、本発明に係る生成方法 100 は、複数枚の衛星レーダー画像、特には区域 51 についての複数枚の衛星レーダー画像を取得するステップ 110 を含む。
【0047】
図2に示すように、区域 51 はいくつかの衛星レーダー画像 52 に対応するものであってよい。こうした画像の連結処理(タイリング)によって、単独の衛星レーダー画像では扱いきれない広大な区域の分析が可能になる。
【0048】
本発明に係る方法は、区域のうちの異なる部分群をカバーするいくつかの衛星レーダー画像の使用を含んでよく、而して対象期間内の異なる時点をカバーするいくつかの衛星レーダー画像の使用を含むことにもなる。好ましくは百枚以上の衛星レーダー画像を、同一の区域 51 における異なる時点にて取得するようにしてよい。より好ましくは二百枚以上の衛星レーダー画像 52 を、同一の区域 51 について異なる時点にて取得するようにしてよい。さらに好ましくは四百枚以上の衛星レーダー画像 52 を、同一の区域 51 について異なる時点にて取得するようにしてよい。好ましくはそうした衛星レーダー画像は、関心領域 51 に関連した履歴データであってよい。例えば複数枚の衛星レーダー画像は十二ヶ月以上の期間に亘って生成されたものであってよく、好ましくは二十四ヶ月以上の期間に亘って、より好ましくは三十六ヶ月以上の期間に亘って、さらに好ましくは四十八ヶ月以上の期間に亘って生成されたものであってよい。このような規模の履歴データによって本発明は、船舶交通の季節分析、ひいては区域 51 における船舶交通の傾向評価をも可能にする。
【0049】
このステップは特に、本発明を実施する上で必要なすべての画像をメモリに読み込むように設計可能である。
【0050】
従来技術に係る方法では、速度とコストを犠牲にして船舶交通分析の精度を最大化するように設計されてきた。したがって本発明では、取得して使用する複数枚の衛星レーダー画像の中央頻度(median frequency)が、一週間あたり十枚よりも低いのが好ましい。また本発明では、取得して使用する複数枚の衛星レーダー画像の中央頻度が、一週間あたり八枚よりも低いのがより好ましく、一週間あたり六枚よりも低いのがさらに好ましい。
【0051】
しかしながら区域内の船舶交通を正確に推定するためには、複数枚の衛星レーダー画像の中央頻度は、一ヶ月あたり二枚以上であるのが望ましく、一ヶ月あたり四枚以上であるのが好ましく、一ヶ月あたり六枚以上であるのがより好ましい。
【0052】
本発明で使用する衛星レーダー画像の解像度は、二十メートル以下であるのが好ましい。本発明で使用する衛星レーダー画像の解像度は、五メートルから二十メートルの範囲であるのがより好ましい。
【0053】
従来技術では高解像度の衛星レーダー画像を高精度かつリアルタイムで解析するように開発されてきている。それに対して本発明の利点は、多数の衛星レーダー画像を演算することで、時間経過に応じた区域 51 内の船舶を堅牢に推定できることにある。
【0054】
すなわち同一の区域 51 について、百枚以上の衛星レーダー画像を取得するのが好ましい。また同一の区域 51 について、二百枚以上の衛星レーダー画像 52 を取得するのがより好ましい。また同一の区域 51 について、四百枚以上の衛星レーダー画像 52 を取得するのがさらに好ましい。
【0055】
図1に示すように、本発明に係る生成方法 100 は、複数枚の衛星レーダー画像を分析するステップ 120 を含む。このステップは特に、船舶に関するデータを生成するように設計されている。本発明の利点はつまり、提案する解決手段では、船舶自動識別装置を搭載していない船舶の分析をも含んでいることにある。
【0056】
このように船舶に関して生成されるデータは、船舶交通の履歴を表すと考えてもらってもよい。しかしながら衛星レーダー画像の取得頻度は連続的ではないため、この生成データは船舶交通履歴の一部にしか対応していない。実際のところ、使用される生データが不足しているため、この分析では現実の船舶交通に関する多くの情報が捕捉されていないことになる。
【0057】
船舶に関して生成されるデータは、船舶の位置に関するデータ、および/または船舶の推定全長に関するデータを含んでよい。これらのデータは時間情報と関連付けられる。時間情報は特に、衛星画像が撮影された時刻であってよい。
【0058】
船舶に関して生成されるデータは、船舶の位置を含んでいることが好ましい。船舶の位置は、全球航法衛星システムに基づいて報告されることになる。そうした全球航法衛星システムとしては例えば、全球測位システム(GPS)、全球航法衛星システム(GLONASS)、北斗衛星導航系統(BDS)、ガリレオシステムといったものが挙げられる。
【0059】
船舶に関して生成されるデータは、船舶の推定全長を含むことが好ましい。船舶の推定全長は、画像処理を介して計算可能である。
【0060】
図3Aおよび
図3Bに示したように、衛星レーダー画像において、船舶は光点と回折点に関連付けられる。
【0061】
衛星レーダー画像から、船舶データを生成するにあたっては種々の方法が使用できる。こうした方法は、船舶を識別して、その全長の推定値を生成するように構成されているのが好ましい。例えば
図3Bに示したように、コンピュータビジョンアルゴリズムを使って、船舶に割り当てた輝点を囲むボックスを用い、船舶の検出と船舶全長の推定値の計算を行うように構成できる。
【0062】
さらに言えば、船舶交通を表している船舶に関して生成されるデータは、百メートル未満の全長の船舶についてのものを含んでよく、五十メートル未満の全長の船舶についてのものを含むのが好ましく、三十メートル未満の全長の船舶についてのものを含むのがより好ましい。特には、船舶交通を表している船舶に関して生成されるデータは、二十メートル以上の全長を有する全ての船舶についてのものを含んでよい。
【0063】
或る実施形態では、コンピュータビジョンアルゴリズムはあらかじめ学習済または構成済のものであってよい。現在、機械学習はコンピュータビジョン分野で広汎に採用されている。学習済のモデルは、教師なし学習法で生成されるモデルと、教師あり学習法で生成されたモデルとに大別できる。教師なし学習法では、事前知識なしに観測群を決定することが可能となる。このため入力データのラベル値を必要とすることなく、そうした群を形成できる。それと対照的に教師あり学習法では、入出力の対の例に基づいて、入力を出力に結びつけている。
【0064】
本発明では機械学習技術を使い、船舶位置を計算するおよび/もしくは船舶全長の推定値を計算するように構成された教師あり予測モデルを作成できる。教師あり学習法のうち、ニューラルネットワーク、分類木または回帰木、最近傍探索、ランダムフォレストは、本発明による最も堅牢かつ効率的な機械学習技術の一例として挙げられる。
【0065】
衛星レーダー画像から船舶を検出するにあたって使用可能な方法はいくつもある。SARデータを用いた船舶検出法は通常、CFAR検出器または画像変換(典型的にはウェーブレット変換)のいずれかに基づく。運用可能な検出システムの評価は、the Detection and Classification of Maritime Traffic from Space project(宇宙からの海上交通の検出・分類プロジェクト)により実施された。Harm Greidanus, Benchmarking operational SAR ship detection, IEEE Int'l. Geosci. Remote Sens. Symp. 2004 6, pp. 4215-4218, 2004を参照。
【0066】
CFARアルゴリズムは、適応閾値の演算のために広汎に使用されている。CFARアルゴリズムの使用には一般に、バックグラウンドの統計的特性を適切に記述可能な確率密度関数(Probability Density Function; PDF)の決定が含まれている。
【0067】
本発明に係る方法ではマルチルックSAR画像を使用可能である。マルチルックSAR画像について一般的に使用されているPDFは、ガウス分布である。
【0068】
また、C帯SARの種々のビームモードを用いた船舶検出モデルも開発されてきている。Touzi et al. Optimization of the Degree of Polarization for Enhanced Ship Detection Using Polarimetric RADARSAT-2. in IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, vol. 53, no. 10, pp. 5403-5424, Oct. 2015を参照。このモデルは、船舶と海洋のレーダー断面積(radar cross-section; RCS)の比較に基づいて、船舶の最小全長を推定するために使われた。ただし船舶のSAR検出が成功するかどうかは、船舶のサイズと種類、優勢な風速条件、使用されるSAR解像度、および視野角に依存する。LinおよびKhooは、距離方向からの既知の進路による方位角シフトの概念を用いて、船舶の速度を推定するための一般的な概念を提示している。またJiang et al.によってガンマ分布やK分布などの分布も提案されてきているが、それらの分布にもやはりガウス分布と同じ制限が存する。一般的にSAR画像中の海面反射(sea clutter)は常に急尖的または「裾の重い」特性を示す。このため多くの実用途では、上記の分布が裾の重い海面反射の記述に失敗してしまうことはよくある。
【0069】
もう一つの方法としては、欧州共同体の共同研究センターが導入した未確認海洋物体探知(the Search for Unidentified Maritime Objects; SUMO)の検出器の改良版に依るものがある。このやりかたでは、検出方法がSAR画像のうちの小さな部分(1500×400画素)に適用される。各タイルごとに平均輝度と標準偏差が計算され、その値が三種の異なる閾値と比較されることで、それをターゲットにするかどうかの判断を行う。
【0070】
図1に示すように、本発明に係る生成方法 100 は、生成したデータを検証もしくは修正するステップ 130 を含む。
【0071】
衛星レーダー画像の頻度は時間的・空間的に変化しうるため、十二ヶ月以上の期間に亘る衛星画像の分析から得られたデータは修正すべきであることを出願人は立証した。
【0072】
生成データの検証もしくは修正するステップ 130 は、第一の副ステップとして、衛星レーダー画像の頻度の変動を識別するステップを含んでよい。変動が無い場合には、生成データを検証できる。頻度に変動があったと確認できた場合には、生成データを修正できる。
【0073】
特にこのステップには、衛星画像の頻度に応じて、生成データを正規化することを含んでよい。例えば衛星レーダー画像の時間的サンプリングレートを使用して、時間経過に伴う区域内の船舶の推定隻数を修正可能である。
【0074】
図1に示すように、本発明に係る生成方法 100 はさらに、外れ値を検出するステップ 135 を含んでもよい。
【0075】
上述の分析ステップによって最適な方法を実施できるが、場合によっては外れ値の検出と外れ値の抑制の必要が生じることもある。
【0076】
外れ値検出ステップ 135 には、いくつかの時点での選択された部分区域についての複数枚の衛星レーダー画像を比較することが含まれるのが好ましい。
【0077】
例えば、いくつかの時点において同じ位置で同一全長の船舶が検出された場合に、外れ値検出を行うことができる。
【0078】
図1に示すように、本発明に係る生成方法 100 はさらに、データ改善ステップ 140 を含んでもよい。その改善は、生成されたデータに対して行ってもよいし、検証されたデータに対して行ってもよいし、または修正されたデータに対して行ってもよい。
【0079】
本発明は主に、衛星レーダー画像に基づいている。しかしながらその解決手段は別のデータ(船舶自動識別装置のデータ、衛星の赤外夜間画像、および/もしくは衛星の高解像度画像など)からの恩恵を受けてもよい。
【0080】
例えば船舶自動識別装置のデータを使って、生成データの補完や正規化を行ってもよい。
【0081】
また衛星の赤外夜間画像を使って、天然発生源と人為的発生源の両方からの低光量放射源を捉え、夜間の海上活動を検出できるようにしてもよい。
【0082】
また高解像度の衛星画像を使って、小型船(8~15メートル)を捕捉し、夜間の海上活動を検出するようにもできる。
【0083】
図1に示したように、本発明に係る生成方法 100 は、地理的情報システムにデータを統合するステップ 150 を含んでもよい。
【0084】
本発明の利点は、時間的な期間および位置(例えば部分区域)に応じて、区域上に推定される船舶交通に関する情報を提供可能なことにある。
【0085】
図4に示すように、複数枚の衛星レーダー画像の分析 120 工程中に船舶が発券される度に、この工程ではその船舶の位置、時間、および推定全長を含んだデータを生成可能である。沿岸部と大陸棚部の近傍に集中して、年間通じて船舶交通が絶えないことがわかる。沖合へ離れるほどに海上交通は控えめになっていくようである。このような情報を、地図に関連させて地理的情報システムに含めることが可能である。
【0086】
また地理的情報システムデータは、区域内の船舶に関連付けられる静的特徴値を含んでいてもよい。こうした静的特徴としては例えば、船舶の幅などが挙げられる。
【0087】
また本発明に係る方法は、区域のうちのひとつ以上の部分と関連付けられた複数の層を定義するステップをさらに含んでもよい。これらの複数の層は、複数の層の版に対応する。例えば複数の層の版が、異なる船舶全長の値および/もしくは異なる時間の値にそれぞれ関連付けられたデータを含むようにできる。
【0088】
図5A、5B、5C、5Dには、時間の関数として船舶 56 の密度を定義したことに基づいた層をそれぞれ示してある(例として、
図5Aは夏季、
図5Bは秋季、
図5Cは冬季、
図5Dは春季を示している)。各図は、特定の季節にあてがった特定層に関連するようにできる。
【0089】
こうした複数の層は、下記に述べる層(好ましくは地理的情報システムにおける層)のうちの一種以上に関連したものであってよい。すなわち、自動船舶検出の結果、AIS層、夜間光学衛星画像、高解像度衛星画像、沖合インフラストラクチャ、および地理的区域に依るその他の副次的データ。
【0090】
自動船舶検出の結果は、船舶交通の履歴を表すように船舶に関して生成したデータに対応するものであってよい。
【0091】
複数の層は、ローカル座標系層を含むのが有利である。ローカル座標系層が含む情報は、船舶が自身のローカル位置を定め、船舶のローカル位置をその船舶と区域内の関心点とのあいだの距離に変換するために用いる座標系に関連付けられる情報である。
【0092】
時空間的分布図は複数の層を含むのがより好ましく、そのうちのひとつの層は時間経過に伴う船舶 56 の密度に関する専用のものであってよい。
【0093】
本発明に係る複数の層は、その各層に含まれる情報の種類に関連付けられる一種以上の属性を含んでいてもよい。
【0094】
そうした一種以上の属性は例えば、信頼度属性を含んでよい。信頼度属性の値は、層に含まれるデータ精度の信頼度レベルに対応するものであってよい。また信頼度属性を計算するにあたっては、複数の層のうちの当該層を生成するために使用された衛星レーダー画像の枚数、衛星レーダー画像の源、または衛星レーダー画像を分析するために使用された方法に少なくとも部分的に基づいてよい。
【0095】
図1に示すように、本発明に係る生成方法 100 は、区域内の推定船舶交通を表す、船舶 55 に関する一種以上の時空間的分布図を生成するステップ 160 を含む。
【0096】
このステップは特に、長期間に亘って生成された情報を包括的な方法で集約できるように設計可能である。
【0097】
図5A、5B、5C、5Dに示したように、生成された時空間的分布図は、期間生成 160 による船舶密度値を含む。
【0098】
またこうした時空間的分布図は、期間毎および/もしくは区域毎の、船舶全長に関する情報を含んでいるのが好ましい。また時空間的分布図を、選択した期間もしくは選択した区域に従って船舶データをエクスポートできるようにするなどして構成することも可能である。
【0099】
図1に示すように、本発明に係る生成方法 100 は、海洋交通障害の点数(スコア)を生成するステップ 170 を含んでもよい。
【0100】
本発明の利点は、船舶交通に関する履歴データを分析することにより、海洋における環境および人間活動への影響が少ない海洋プロジェクトの条件を以って、有用な処理済データを生成できることにある。
【0101】
特に本発明は、時間の関数として海洋活動の予測レベルを反映する海洋交通障害の点数を生成するステップを含んでよい。海洋交通障害の点数は区域に対して算出可能であり、より好ましくはその区域内の部分区域ごともしくは経路ごとに算出可能であってよい。
【0102】
特に本発明に係る方法は、船舶出現の季節性および船舶全長に基づき、海洋交通障害の点数を地理的部分または部分区域について計算する工程を含んでいてもよい。船舶出現の季節性は、或る期間に亘る船舶隻数の推定値に関連するものであってよい。
【0103】
本発明に係る方法は、月毎の船舶の空間的分布を計算するステップを含むのが好ましい。上述したように船舶隻数は、観察期間中の画像の頻度によって正規化するのが好ましい。
【0104】
本発明に係る方法は、年間変動を計算するステップを含むのが好ましい。より好ましくは本発明に係る方法が、期間に亘る交通船舶の進化に関する傾向を計算するステップを含んでよい。
【0105】
本発明に係る解決手段は、数多の沿岸開発または沖合開発において有用と考えられる。特に当該解決手段は、環境と社会への影響を評価する研究や、任意の沖合作業の場面において有用でありうる。実際のところ、生成された時空間的分布図は、AISを介して得られるものよりもずっと正確に船舶交通を推定できている。
【0106】
このような解決手段の用途は、適切な航路の定義や、適切な海洋開発域の定義にも応用できる。
【0107】
すなわち本発明は別の態様においては適切な航路を定める方法に関し、当該方法は、本発明により生成した時空間的地図を用いるステップを含む。
【0108】
この方法には、道が生成される期間、または「道が静穏である」時間の長さといった上流基準の定義を、時空間的地図に統合するステップを含めてもよい。
【0109】
本発明は別の態様では、適切な海洋開発域を定める方法に関し、当該方法は、本発明により生成した時空間的地図を用いるステップを含む。この方法は、沖合洋上風力発電場、液化ガス採掘プラント、または沖合洋上プラットフォームの配置を定めるに際して使用可能である。
【0110】
すなわち本発明は、掘削域を定めるステップを含む、適切な海洋開発域 300 を定める方法に関してよい。
【0111】
当業者には理解できるように、本発明の態様は装置、システム、方法、またはコンピュータプログラム製品として具現化可能である。したがって本発明の態様は、完全なハードウェアの実施形態、完全なソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、または運転方式の形態をとってよい。加えて本発明の態様を、コンピュータ可読プログラムコードが埋め込まれた一個以上のコンピュータ可読媒体に組み込まれたコンピュータプログラム製品の形態をとるようにしてもよい。
【0112】
したがって別の態様では本発明は、コンピュータ可読命令を格納する一種以上のコンピュータ可読媒体に関する。当該命令は、一個以上のプロセッサ 10 により実行された際に、その一個以上のプロセッサに本発明に係る方法を実施させられるものである。当該コンピュータ可読媒体は、有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体であるのが好ましい。
【0113】
本開示の目的のためにコンピュータ可読媒体には、或る期間中にデータおよび/もしくは命令を保持できる任意の手段または手段の集合が含まれていてよい。コンピュータ可読媒体には例えば、記憶媒体のほかに通信媒体が含まれてよいが、これに限定はされない。そうした記憶媒体としては、直接アクセス記憶装置(ハードディスクドライブやフロッピーディスクドライブなど)、順次アクセス記憶装置(テープディスクドライブなど)、コンパクトディスク、CD-ROM、DVD、RAM、ROM、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)、および/もしくはフラッシュメモリなどが挙げられる。またそうした通信媒体としては、導線、光ファイバー、マイクロ波、電波、その他の電磁気的および/もしくは光学的な搬送手段といったものが挙げられる。コンピュータ可読媒体にはまた、上述したそれらの任意の組み合わせが含まれてもよい。
【0114】
特には、一種以上のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせを使用可能である。本明細書の文脈においては、コンピュータ可読媒体は任意の有形媒体であってよく、命令を実行するシステム、装置、もしくはデバイスによって使用されるプログラム、またはそれらに関連しているプログラムを、含有または格納できるものであってよい。コンピュータ可読媒体は例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、もしくは半導体のシステム、装置、またはデバイス、あるいは上記の任意の適切な組み合わせであってよいが、これらに限定はされない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非網羅的な一覧)としては、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)といったものが挙げられるだろう。
【0115】
本発明の態様に係る動作を行うためのコンピュータプログラムコードは、一種以上のプログラミング言語の任意の組み合わせを以って記述できる。そうしたプログラミング言語としては、オブジェクト指向プログラミング言語(Java(登録商標)、C++など)、プログラミング言語「C」もしくはその類似のプログラミング言語、スクリプト言語(Perlなど)、および/または関数型言語(Meta Languageなど)が挙げられる。プログラムコードは、ユーザーのコンピュータでその全体を実行するようにしてもよいし、その一部をユーザーのコンピュータで実行してかつ一部をリモートコンピュータで実行するようにしてもよいし、あるいは、全体をコンピュータまたはリモートサーバで実行するようにしてもよい。後者の場合、ローカルエリアネットワーク(LAN)もしくはワイドエリアネットワーク(WAN)などの任意の種類のネットワークを介して、リモートコンピュータをユーザーのコンピュータに接続するようにしてもよい。
【0116】
これらのコンピュータプログラム命令を、演算装置(すなわちコンピュータやサーバなど)を制御できるコンピュータ可読媒体に格納できる。すなわちそのコンピュータ可読媒体に格納された命令によって、本発明を実施できるように構成された演算装置が得られるわけである。
【0117】
つまり本発明は別の態様では、区域 51 内、好ましくは沖合区域内の推定船舶交通についての時空間的地図 50 を生成するように構成された演算装置 1 に関する。
【0118】
特には演算装置 1 は、本発明に係る方法を実施できるように構成される。
【0119】
本開示の目的のために本発明に係る演算装置 1 には、任意の形式の情報、機密情報、またはデータを演算し、分類し、処理し、送信し、受信し、取得し、発出し、切り替えし、格納し、表示し、発現し、検出し、記録し、再生し、取り扱いし、または利用するために動作可能なあらゆる手段もしくは手段の集合が含まれてよい。
【0120】
演算装置は例えば、パーソナルコンピュータ、ネットワークストレージデバイス、またはその他の適切な装置であってよく、その大きさ、形状、性能、機能、価格はさまざまであってよい。演算装置には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、中央処理装置(CPU)やハードウェアもしくはソフトウェアの制御ロジックなどの一種以上の処理資源、ROM、および/またはその他の種類の不揮発性メモリが含まれていてよい。演算装置に付加できる部品としては、一種以上のディスクドライブ、外部装置と通信するための一種以上のネットワークポート、および種々の入出力(I/O)デバイス(キーボード、マウス、ビデオディスプレイなど)などが挙げられる。さらに演算装置が、種々のハードウェア部品間の通信を伝送できる一種以上のバスを有していてもよい。
【0121】
図6は、本発明に係る演算装置 1 において利用可能な種々のハードウェア部品を示したブロック模式図である。
【0122】
特に
図6に示したように演算装置 1 は、区域 51 についての複数枚の衛星レーダー画像およびプロセッサ(群)のための命令を格納するように構成された一個以上の記憶部品 20 と、区域 51 についての複数枚の衛星レーダー画像を取得するように構成された一個以上の通信インターフェイス 30 と、複数枚の衛星レーダー画像を処理することで一種以上の時空間的分布図を生成するように構成された一個以上のプロセッサ 10 とを含んでよい。また演算装置 1 がさらに一個以上のユーザーインターフェイス 40 を有していてもよい。
【0123】
区域 51 内の推定船舶交通の時空間的地図 50 を生成するための演算装置 1 は、記憶部品(メモリコンポーネント) 20 を含んでよい。
【0124】
記憶部品 20 は当該技術分野において既知である任意のコンピュータ可読媒体を含んでよく、例えば揮発性メモリ(スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)など)、および/または不揮発性メモリ(読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ、ハードディスク、光学ディスク、磁気テープなど)を含んでよい。記憶部品 20 は、種々の機能を実行するための複数の命令、モジュール、またはアプリケーションを含んでいてもよい。すなわち記憶部品 20 は、ルーチン、プログラム、またはマトリックス型データ構造体を実装していてもよい。好ましくは記憶部品 20 は、ランダムアクセスメモリ(RAM)やキャッシュメモリなどの揮発性メモリの形式で、演算システムにより可読である媒体を含んでよい。記憶部品 20 は他のモジュールと同様に、例えば通信バスおよび一種以上のデータ搬送インターフェイスを介して、演算装置 1 が有する他の部品と接続可能である。
【0125】
記憶部品 20 は、複数枚の衛星レーダー画像を格納できるように構成されているのが好ましい。また記憶部品 20 は、使用したモデルおよび/または生成されたデータを格納できるように構成可能である。
【0126】
さらに記憶部品 20 は、本発明に係る方法を実施可能な命令を格納できるように構成されているのが好ましい。
【0127】
さらに演算装置 1 が、通信インターフェイス 30 を含んでいてもよい。通信インターフェイス 30 は、一種以上の通信ネットワーク上でデータの伝送ができるように構成されたものであるのが好ましく、有線通信か無線通信をできるものであってよい。演算装置 1 は、通信インターフェイス 30 によって他の装置や演算システム、特にはクライアントと通信可能である。例えば通信インターフェイス 30 によって演算装置 1 が、他のコンピュータからの衛星レーダー画像を受信できるようにしてもよい。Wi-Fi、3G、4G、5G、および/もしくはBluetooth(登録商標)といった無線プロトコルを介して通信を行うのが好ましい。こうしたデータ交換は、ファイルの送受信という形態を以って行える。例えば通信インターフェイス 30 が、印刷可能なファイルを伝送するように構成してもよい。特に通信インターフェイスが、クライアントを含む遠隔(リモート)端末との通信を可能とするように構成されていてもよい。クライアントは一般に、演算装置 1 との通信が可能な任意のハードウェアおよび/またはソフトウェアである。
【0128】
本発明に係る通信インターフェイス 30 は特に、サードパーティの装置またはシステムとデータを交換できるように構成される。
【0129】
通信インターフェイス 30 は、複数枚の衛星レーダー画像を取得できるように構成される。
【0130】
推定船舶交通の時空間的地図 50 を生成するための演算装置 1 は、一個以上のプロセッサ 10 を有していてよい。プロセッサ 10 は記憶部品 20 と動作可能に結合し、プログラム中に符号化された命令を実行することで本開示に係る技術を実施し、より具体的には本発明に係る方法を実施できる。
【0131】
符号化された命令は、任意の適切な製造物(記憶部品 20 など)の中に格納できる。そうした製造物には、そうした命令もしくはルーチンを少なくともまとめて格納できるような一種以上の有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体が含まれる。つまり記憶部品 20 には、プロセッサ 10 により実行された際に本発明に係る方法を実施できる命令の組が含まれていてよい。
【0132】
記憶部品 20 は、任意の個数のデータベースもしくは類似する記憶媒体を含んでもよく、本発明に係る方法を行う上で必要に応じてプロセッサ 10 からそれらへクエリを送ることが可能である。特にプロセッサ 10 を、複数枚の衛星レーダー画像を分析することで、船舶自動識別装置を搭載していない船舶を含んだ船舶交通の履歴を表す船舶データを生成するように構成できる。
【0133】
またプロセッサ 10 を、複数枚の衛星レーダー画像の頻度に基づいて、生成データへ修正を適用できるように構成してもよい。
【0134】
またプロセッサ 10 は、修正されたデータから、区域内の推定船舶交通を表す一種以上の船舶の時空間的分布図の生成をするように構成できる。その時空間的分布図には、期間毎の船舶密度値が含まれる。
【0135】
図6ではこれらの種々のモジュールまたは部品(コンポーネント)を個別に描いているが、本発明では種々の配置も提供でき、例えば上述した機能の全てを集約した単独のモジュールも提供可能である。同様に、これらのモジュールまたは部品をいくつかの電子基板群へと分割してもよいし、あるいは単独の電子基板上に集積してもよい。
【0136】
本発明に係る演算装置 1 を演算システムに組み込んで、一種以上の外部装置と通信できるようにしてもよい。そうした外部装置としては、キーボード、ポインターデバイス、ディスプレイ、またはユーザーを装置 1 と対話可能にする任意の装置といったものが挙げられる。
【0137】
また演算装置 1 が、ヒューマンマシンインターフェイスとの通信またはヒューマンマシンインターフェイスを介した通信ができるように構成してもよい。すなわち本発明に係る或る実施形態においては、演算装置 1 がヒューマンマシンインターフェイス(HMI)と結合可能である。HMIを使うことで、デバイスへのパラメータの伝送を可能にしたり、逆にデバイスが測定または計算したデータの値をユーザーが利用できるようにしたりできる。
【0138】
一般にHMIはプロセッサに通信可能に結合するものであり、またユーザー出力インターフェイスとユーザー入力インターフェイスとを含んでよい。ユーザー出力インターフェイスとしては、音響・表示の出力のためのインターフェイスおよび種々の表示器(視覚的表示器、音響的表示器、触覚的表示器など)が含まれてよい。
【0139】
ユーザー入力インターフェイスとしては、キーボード、マウス、またはその他の案内モジュールが含まれてよい。そうしたその他の案内モジュールとしては、タッチスクリーン、タッチパッド、スタイラス入力インターフェイス、ならびにプロセッサにより認識可能なユーザーの発声、データ、およびコマンドなどの音響信号を入力するためのマイクといったものが挙げられる。
【実施例】
【0140】
[取得工程]
本発明の例示的実施形態では、900枚超のSentinel-1レーダー画像を、四十八ヶ月間にわたり非常に広域の海面(170×250km)を取り扱うために用いた。画像の被覆範囲は良好であり、観測点あたりに50~400枚(平均228枚)の画像がある。空間的被覆範囲は非常に不均一になっていて、表示のうち沿岸部と北部でレーダーデータの被覆率が高くなっている。
【0141】
本発明に係る方法では、約35,000km2の区域内に50,000隻超の船舶の検出を可能とする。画像を登録した後に、陸地はマスクしてもよい。より正確に校正されたSARデータを得るためには前処理工程が必要になる場合もある。その次の工程は検出処理であって、定誤警報率(CFAR)を使用する。そして海洋現象または気象現象の目標測定値または特性評価が利用可能な場合には、識別工程を用いて誤警報を却下する。サイズが20メートル超である全ての船を検出し、船舶全長の推定値を生成する。
【0142】
[取得データ]
下記表1には、年毎の解析した画像枚数を示す。
【0143】
【0144】
表1からは、月毎の画像枚数の分布が、調査対象期間中に増えていったことがわかる。すなわち表1の最初の2015年には月当たり7枚以下の画像枚数だったところ、2017年3月から2018年6月までには月当たり12枚以下になり、そして最終的に2018年6月以降には月当たり27枚以下となった。
【0145】
本発明により、検出船舶の月毎の分布を画像枚数によって正規化できている。ここからは、海上交通量は季節依存的であって、夏季には船舶交通量が減っていることがわかる(
図7参照)。
【0146】
検出された船のサイズは、推定全長として30メートルから260メートルの範囲である。
図7からは、長さ30メートルから50メートルの範囲の「小型」船と、長さ50メートルから100メートルの範囲の「中型」船とが、船舶交通量の大半を占めていることがわかる。AISを搭載したタンカー(200メートル長など)は、この区域の海上交通ではごく限られた部分にしか登場していないことがわかる。またサイズ100メートルから150メートルの船は、沿岸部と大陸棚の上に存在している。
【0147】
十一月から三月にかけては非常に高い船舶密度が検出され、主に西海岸沿いと、さらに南部において見られる。五月から八月までの期間は、船舶交通が最も少ない。
【0148】
これらの地図を詳細に分析するにあたっては、船舶のサイズごとに層(レイヤー)に分けて行うことが可能である。例えばArcMapのKernel density toolboxを使って、出力セル1000メートル、捜索半径25kmとして密度地図を計算可能である。
【0149】
本発明により生成できるこうしたデータは、沿岸・大陸棚での大規模な船舶交通を検出するために使用可能である。数ヶ月分または数年分のデータ集積として、生成データを統合するのが有益である。
【0150】
このようにして、対象期間に応じて海上交通を識別し、将来の交通を予測することが可能となる。現行の方法では船舶交通評価の高精度なリアルタイムデータを生成することを目指しているのに対し、衛星レーダー画像を使用することによって、MarineTrafficなどの多くの海上交通プロバイダーが使っているAIS(船舶自動識別装置)データと比べてさらなる情報が提供できる。船舶の時空間的分布により、作業を最適化してHSEリスクを低減できる。また使用する画像の頻度が低いので、推定全長と対象期間に応じて船舶密度を予測するための調査を迅速に実行できる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
区域(51)
内の推定船舶交通についての時空間的地図(50)を生成するための、一個以上のプロセッサ(10)により実施される方法(100)であって、
前記区域(51)についての複数枚の衛星レーダー画像(52)を取得し、ここで前記複数枚の衛星レーダー画像(52)は、一週間あたり十枚よりも低い中央頻度で十二ヶ月以上の期間に亘って生成されたものであり、かつ解像度が五メートルから二十メートルの範囲である取得ステップ(110)と、
前記複数枚の衛星レーダー画像(52)を分析することで、船舶自動識別装置を搭載していない船舶を含んだ船舶交通履歴を表す船舶データを生成する分析ステップ(120)と、
前記複数枚の衛星レーダー画像の頻度に基づいて、生成された船舶データの検証もしくは修正を行うステップ(130)と、
検証もしくは修正された船舶データから、前記区域内の推定船舶交通を表す船舶の時空間的分布図(55)を一種以上生成し、前記時空間的分布図は、期間毎の船舶密度値を含む、生成ステップ(160)と
を含む、方法。
【請求項2】
生成された船舶データが、船舶の位置、船舶の推定全長、および時間情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
船舶交通を表す生成された船舶データが、百メートル未
満の全長を有する船舶を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに
外れ値検出ステップ(135)
を
含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記外れ値検出ステップ(135)は、
或る時点における選択された部分区域についての複数枚の衛星レーダー画像の比較と、
或る時点において同一位置で同一全長の船舶が検出された際の、外れ値検出と
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
一ヶ月あたりに二枚以
上の頻度を以って、同一の区域に関して百枚以上の衛星レーダー画像(52)を取得する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
さらに
前記区域(51)からの、船舶自動識別装置のデータ、夜間衛星画像、および高解像度衛星画像から選択される一種以上のデータを用いた、データ改善ステップ(140)
を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
さらに
前記区域(51)に関連する地理的情報システムにデータを統合するステップ(150)
を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
さらに
前記区域のうちの一個以上の部分に関連付けられた複数の層を定義し、ここで前記複数の層は複数の層の版に対応し、かつ前記複数の層の版の各々は、船舶全長および/もしくは時間の異なる値に関連付けられるデータを含んだステップ
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の層が、前記複数の層のそれぞれに含まれる情報の種類に関連付けられた一種以上の属性を含
む
ことを特徴とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記一種以上の属性は信頼度属性を含み、前記信頼度属性の値は、前記層に含まれるデータの正確性の信頼度のレベルに対応する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記信頼度属性は少なくとも部分的に、前記複数の層のうちのその層を生成するために用いられた衛星レーダー画像(52)の枚数、前記衛星レーダー画像の源、または前記衛星レーダー画像を分析するために用いられた方法に基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の層が、地理的情報システムプロジェクトにおける、船舶自動検出結果、AIS層、夜間光学衛星画像、高解像度衛星画像、沖合インフラストラクチャ、および地理的区域に応じたその他の付随データのうちの一種以上の層を含む、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の層がローカル座標系層を含み、
船舶が自身のローカル位置を定め、前記船舶のローカル位置を、前記船舶と前記区域内の関心点とのあいだの距離に変換するために用いる座標系に関連付けられる情報を、前記ローカル座標系層が含む
ことを特徴とする、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項15】
前記時空間的分布図が複数の層を含み、そのうちの一つの層は、経時的船舶密度(56)に特化したものである、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
さらに
海洋交通障害の点数を生成するステップ
を含み、海洋交通障害の点数を生成するステップは、
全球測位衛星情報から、調査対象区域の地理的部分を決定するステップと、
前記地理的部分に関して、船舶出現頻度の季節による変化に基づく海洋交通障害の点数、および船舶全長を計算するステップと
を含む
ことを特徴とする、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
請求項1または2に従って生成した時空間的地図を用いるステップ
を含む、適切な航路を定める方法。
【請求項18】
請求項1または2に従って生成した時空間的地図を用いるステップ
を含む、適切な海洋開発域を定める方法。
【請求項19】
掘削域を定めるステップ
を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
一個以上のプロセッサ(10)により実行された際に、前記一個以上のプロセッサに
請求項1または2に記載の方法を実施させるように構成されるコンピュータ可読命令を格納する、一個以上の有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
演算装置(1)であって、
一個以上のプロセッサ(10)と、
命令を格納する、一個以上の有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体(20)と
を含み、
前記命令は前記一個以上のプロセッサにより実行された際に、前記一個以上のプロセッサに下記の
区域(51)についての複数枚の衛星レーダー画像(52)を取得し、ここで前記複数枚の衛星レーダー画像(52)は、一週間あたり十枚よりも低い中央頻度で十二ヶ月以上の期間に亘って生成されたものであり、かつ解像度が五メートルから二十メートルの範囲である取得工程と、
前記複数枚の衛星レーダー画像(52)を分析することで、船舶自動識別装置を搭載していない船舶を含んだ船舶交通履歴を表す船舶データを生成する分析工程と、
前記複数枚の衛星レーダー画像の頻度に基づいて、生成された船舶データの検証もしくは修正を行う工程と、
検証もしくは修正された船舶データから、前記区域内の推定船舶交通を表す船舶の時空間的分布図を一種以上生成し、前記時空間的分布図は、期間毎の船舶密度値を含む、生成工程と
を含んだ動作を実施するように構成される
ことを特徴とする、演算装置。
【国際調査報告】