(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ母材の幾何学的歪みの低減
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20241219BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C03B37/012 A
G02B6/02 461
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534639
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 US2023060382
(87)【国際公開番号】W WO2023137269
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
【住所又は居所原語表記】100 Heraeus Boulevard, Buford, GA 30518, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マ,キューリン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,カイ フイ
【テーマコード(参考)】
2H250
4G021
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB10
2H250AC62
2H250AC64
2H250AC66
2H250AC83
2H250AC93
2H250AC94
2H250AC95
2H250AC96
4G021BA01
4G021BA02
4G021BA03
4G021BA04
(57)【要約】
【解決手段】 コア孔内に配置されたコアロッドと、コアロッドの各々を覆う共通クラッドとを有するMCF母材を製造するためのプロセス。少なくとも約200mmの外径を有するシリンダが提供され、これはクラッドを形成し、中心コア孔を有してもよい。周辺コア孔がシリンダに形成される。複数のコアロッドの各々は、それぞれの周辺コア孔に挿入される。コアロッドが挿入されたシリンダは加熱され、それによってシリンダをコアロッド上に崩壊させ、母材を形成する。周辺コアロッドと周辺孔との間の間隙は、複数の周辺コア孔を形成するステップの間、約0.2mm~4mmの範囲内に維持され、平均半径方向温度勾配は、シリンダを加熱するステップの間、約0.5°K/mm~4°K/mmに維持される、又はその両方である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心縦軸と、それぞれのコア孔内に各々が位置付けられ、前記縦軸に沿って延びる複数のコアロッドと、前記複数のコアロッドの各々を被覆する共通クラッドとを有するマルチコア光ファイバ母材を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
前記母材の前記クラッドを形成するシリンダであって、任意選択的に中心コア孔を有する、シリンダを提供するステップと、
前記縦軸に沿って延びる複数の周辺コア孔を前記シリンダ内に形成するステップと、
複数のコアロッドの各々を前記シリンダのそれぞれの周辺コア孔に挿入するステップと、
前記シリンダ及び前記コアロッドを加熱要素に曝すことによって、前記複数のコアロッドが前記それぞれのコア孔に挿入された前記シリンダを加熱するステップであって、それによって前記シリンダを前記複数のコアロッド上に崩壊させ、前記母材を形成する、ステップと、を含み、
前記周辺コアロッドと前記周辺孔との間の間隙(g)は、前記複数の周辺コア孔を形成するステップの間、約0.2mm~4mmの範囲に維持され、平均半径方向温度勾配は、前記シリンダを加熱するステップの間、前記コアロッドと前記シリンダとの間の崩壊が開始する平面において約0.5°K/mm~4°K/mmに維持される、プロセス。
【請求項2】
前記シリンダが少なくとも約200mmの外径を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記シリンダが約200mm~250mmの範囲の外径を有する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記間隙(g)は、前記複数の周辺コア孔を形成するステップの間、約0.3mm~1mmの範囲に維持される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記平均半径方向温度勾配は、前記コアロッドと前記シリンダとの間の崩壊が開始する前記平面において、前記シリンダを加熱するステップの間、約1°K/mm~2°K/mmに維持される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記複数の周辺コア孔を形成するステップが、前記複数の周辺コア孔を穿孔することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記シリンダを加熱するステップが、前記シリンダを前記コアロッド上に崩壊させながら、前記シリンダ及び前記コアロッドを同時に延伸することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記シリンダを加熱するステップが、前記加熱要素を約2,500°K未満の温度に維持することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記シリンダが中心コア孔、前記中心孔と前記周辺孔との間の厚さ(t1)、及び前記周辺孔と前記クラッドの前記外径との間の厚さ(t2)を有し、前記シリンダが以下の関係:0.7×t2<t1≦t2を満たす、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記シリンダを加熱するステップは、前記シリンダが前記コア孔内の前記コアロッド上に崩壊される上方引き伸ばしプロセスの一部として実施され、前記上方引き伸ばしプロセスは、
前記シリンダ及び前記コアロッドの両方を下から支持し、前記シリンダ及び前記コアロッドの重量が下から完全に支持されかつ、前記シリンダが前記コアロッド上に崩壊するときに前記コアロッドが前記シリンダに対して縦に移動しないようにすることと、
前記シリンダ及び前記コアロッドを前記加熱要素に対して上方に移動させて、前記シリンダ及び前記コアロッドが上方に移動する間に前記シリンダが前記コアロッド上に連続的に崩壊するようにすることと、を含み、
重力による前記縦軸に沿った前記シリンダと前記コアロッドとの流量差が最小化される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記上方引き伸ばしプロセスが、前記シリンダを前記コアロッド上に崩壊させながら、前記シリンダ及び前記コアロッドを同時に延伸することを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1に記載のプロセスに従って製造された母材から作られた、マルチコア光ファイバ。
【請求項13】
請求項10に記載のプロセスに従って製造された母材から作られた、マルチコア光ファイバ。
【請求項14】
中心縦軸と、それぞれのコア孔内に各々が位置付けられ、前記縦軸に沿って延びる複数のコアロッドと、前記複数のコアロッドの各々を被覆する共通クラッドとを有するマルチコア光ファイバ母材を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
前記母材の前記クラッドを形成するシリンダであって、任意選択的に中心コア孔を有する、シリンダを提供するステップと、
前記縦軸に沿って延びる複数の周辺コア孔を前記シリンダ内に形成するステップと、
複数のコアロッドの各々を前記シリンダのそれぞれの周辺コア孔に挿入するステップと、
前記シリンダ及び前記コアロッドを加熱要素に曝すことによって、前記複数のコアロッドが前記それぞれのコア孔に挿入された前記シリンダを加熱するステップであって、それによって前記シリンダを前記複数のコアロッド上に崩壊させ、前記母材を形成する、ステップと、を含み、
前記周辺コアロッドと前記周辺孔との間の間隙(g)は、前記複数の周辺コア孔を形成するステップの間、約0.2mm~4mmの範囲に維持される、プロセス。
【請求項15】
中心縦軸と、それぞれのコア孔内に各々が位置付けられ、前記縦軸に沿って延びる複数のコアロッドと、前記複数のコアロッドの各々を被覆する共通クラッドとを有するマルチコア光ファイバ母材を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
前記母材の前記クラッドを形成するシリンダであって、任意選択的に中心コア孔を有する、シリンダを提供するステップと、
前記縦軸に沿って延びる複数の周辺コア孔を前記シリンダ内に形成するステップと、
複数のコアロッドの各々を前記シリンダのそれぞれの周辺コア孔に挿入するステップと、
前記シリンダ及び前記コアロッドを加熱要素に曝すことによって、前記複数のコアロッドが前記それぞれのコア孔に挿入された前記シリンダを加熱するステップであって、それによって前記シリンダを前記複数のコアロッド上に崩壊させ、前記母材を形成する、ステップと、を含み、平均半径方向温度勾配が、前記コアロッドと前記シリンダとの間の崩壊が開始する平面において約0.5°K/mm~4°K/mmに維持される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して光ファイバ技術の分野に関し、特にマルチコアファイバ(multi-core fiber、MCF)のための母材に関する。これらのファイバは、空間分割多重化による電気通信のための光ケーブルにおけるビットレート容量の増加を可能にする。
【背景技術】
【0002】
本出願の譲受人であるHeraeus Quarzglas GmbH&Co.KGによって出願された「Upward Collapse Process and Apparatus for Making Glass Preforms」と題する米国特許出願公開第2018/0145752号(及び関連する欧州特許第3323791号)及び「Automated Large Outside Diameter Preform Tipping Process and Resulting Glass Preforms」と題する米国特許出願公開第2020/0223737号に開示されているように、光ファイバの設計及び適用に関する応用科学及び工学の分野は、光ファイバとして知られている。光ファイバは、ガラス(シリカ)を人間の毛の直径よりもわずかに太い直径まで引き伸ばすことによって作られた可撓性の透明ファイバである。光ファイバは、ファイバの2つの端の間で光を伝送するために最も頻繁に使用され、光ファイバ通信において広く使用されており、ワイヤケーブルよりも長い距離にわたって高い帯域幅(データレート)での伝送を可能にする。ファイバは、損失が低減された高容量で信号がファイバに沿って伝わるので、金属ワイヤの代わりに使用される。加えて、ファイバはまた、金属ワイヤを悩ます問題である電磁干渉にも影響されない。ファイバは照明のためにも使用され、画像を搬送するために使用され得るように束に包まれ、したがって、ファイバスコープの場合のように、限られた空間内での観察を可能にする。特別に設計されたファイバはまた、光ファイバセンサ及びファイバレーザなどの様々な他の用途にも使用される。
【0003】
光ファイバは、典型的には、より低い屈折率を有する透明なクラッド材料によって囲まれた透明なコアを含む。光は、ファイバを導波路として機能させる全内部反射現象によってコア内に保持される。多くの伝搬経路又は横モードを支持するファイバは、マルチモードファイバと呼ばれる。シングルモードを支持するファイバは、シングルモードファイバと呼ばれる。光ファイバは、一般に、予め製造された母材を炉内で加熱し、母材を引き伸ばして光ファイバにすることによって製造される。1つの母材は、7,000km~8,000km程度の光ファイバを産出する可能性がある。
【0004】
今日、厳しい光ファイバカットオフ波長仕様が満たされなければならず、これらの仕様を達成するための歩留まり損失は許容されない。カットオフ波長は、それを下回るものはシングルモード光ファイバがマルチモードファイバとして機能する波長として定義することができる。あるいは、言い換えれば、カットオフ波長は、シングルモード光ファイバにおいてシングルモード動作が保証される波長を上回る波長として定義することができる。現在、多くのネットワーク計画者は、ケーブルカットオフ波長が、光ファイバケーブル仕様を作成する際に定義すべき最も重要なパラメータの1つであることを認識している。
【0005】
マルチコアファイバ(MCF)伝送技術は、空間多重化(spacial multiplexing、SM)又は空間分割多重化(spacial division multiplexing、SDM)の最も単純な形態として、及び帯域幅に対する増大する需要への答えとして広く研究されてきた。SDMは、光ファイバ通信システムにおいて、チャネルを分離するためにファイバの横方向寸法を使用することを指す。MCF技術は、単一のクラッド内に複数のコアを含む。MCFの各コアは、使用されるSDMの方法に応じて、シングルモード又は複数のモードに対応することができる。典型的には、MCFは4個~8個のコアを有するが、他の数のコアも可能である。コアが比較的離れている場合、それらの個々のモードの重なりは無視できるほどであり、マルチコアファイバはシングルモードファイバの束として挙動する。しかしながら、コアの間隔が狭い場合には、モードの重なりは無視できない。
【0006】
日本の会社は、MCF技術の開発において特に活発である。例えば、古河電気工業株式会社は、「マルチコアファイバ母材の製造方法及びマルチコアファイバの製造方法」と題する特願2016-191693(特許6560178として発行)を出願している。このマルチコアファイバ母材の製造特許方法は、円柱状のガラス母材の長手方向に延びる複数の貫通孔をガラス母材に有するクラッド母材を準備することと、クラッド母材の一方の端部にクラッド母材と同軸に円筒部材を接続することと、クラッド母材の複数の貫通孔のそれぞれにコア母材を挿入することと、を含む。円筒部材の内径は、クラッド母材に形成された複数の貫通孔のうち最も外周側に位置する貫通孔の外接円の直径よりも小さく、準備プロセスにおいて、クラッド母材は、複数の貫通孔のうち、上面視で円筒部材の少なくとも一部と重なる貫通孔と、円筒部材の内部とを連通するよう形成された連通構造を有する。
【0007】
住友電気工業株式会社は「Preform Manufacturing Method」と題する、米国特許第9,604,868号(特願2013-030890の優先権を主張)を取得した。この製造方法は、ガラス体に複数の孔を形成してガラスパイプを作製する孔形成ステップと、各孔にコア部を含むコアロッドを挿入した状態でガラスパイプを加熱してコアロッドとガラスパイプとを一体化する加熱一体化ステップとを有する。孔形成ステップにおいて、ガラス体に形成される孔のうちの周辺孔は、一体化前後のコア部の位置ばらつきを考慮して決定した位置に形成される。より具体的には、多孔ガラスパイプ/シリンダを用いて複数のコアロッドを崩壊するときの、MCF母材の中心に対する周辺コアシフトが推定される。周辺孔の半径Rと周辺コアロッドの半径rとの間の間隙について0.15mmの下限が提案されている。外周孔は、外周コア部の中心位置とガラス体の中心軸とを結ぶ直線上の関係を満たす位置にあることが求められる。
【0008】
住友電気工業株式会社はまた、「マルチコア光ファイバの製造方法及びマルチコア光ファイバ」と題する米国特許第10,520,668号(特願2018-61331の優先権を主張)も取得している。この特許は、断面が非円形のMCFを製造する方法を記載しており、この方法では、クラッド内の孔及び間隙による母材断面積(cross-sectional area、CSA)の変形が使用される。具体的には、当該特許は複数のコアロッド挿入孔とは異なる位置に凹部形成孔を形成して共通のクラッド管を形成することを開示している。したがって、共通クラッド管とコアロッドとを一体化するとともに凹部形成孔を崩壊することにより、複数のコアと共通クラッドとを含む断面形状が非円形のコアクラッド複合体が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
凹形形成孔の崩壊による円形形状からのMCF母材CSA変形は、非円形CSAを有するMCF母材の作製を助けるために使用される。この特許の開示は、母材クラッドの非円形性又はコアの楕円性を防止又は低減することを意図していない。むしろ、目標は、母材CSAの意図的に生成された非円形を使用することである。目標は、非円形断面形状のMCFを作製して、MCF接続中のより容易な回転位置合わせを促進することである。この開示は、母材クラッドの非円形性及びコア楕円性の幾何学的歪みによって引き起こされる偏光モード分散(polarization mode dispersion、PMD)などのMCFファイバ性能に対する有害な影響に対処していない。
【0010】
従来のMCF母材製造プロセスに固有の問題を解決するために、開示されたMCF母材を製造するプロセスの目的は、母材クラッドの非円形性及びコア楕円性の幾何学的歪みを(排除しないとしても)最小限に抑えることである。別の目的は、そのような幾何学的歪みを最小限に抑える母材を製造することである。関連する目的は、改善されたPMD性能を有するMCFをもたらすプロセスを提供することである。また、本発明の目的は、幾何学的歪みが最小限に抑えられたMCF母材の比較的容易かつ効率的な製造を可能にする母材製造プロセスを提供することである。関連する目的は、コア及びクラッドの円形性に関して高精度の母材を製造することである。
【0011】
これら及び他の目的を達成するために、その目的を考慮して、本開示は、中心縦軸と、それぞれのコア孔内に各々が配置され、軸に沿って延びる複数のコアロッドと、複数のコアロッドの各々を被覆する共通クラッドとを有するMCF母材を製造するためのプロセスを提供する。本プロセスは、以下のステップを含む。母材のクラッドを形成する、少なくとも約200mmの外径を有し、中心コア孔を有してもよいシリンダが提供される。縦軸に沿って延びる周辺コア孔がシリンダ内に形成される。複数のコアロッドの各々は、それぞれの周辺コア孔に挿入される。それぞれのコア孔に挿入されたコアロッドを有するシリンダは、シリンダ及びコアロッドを炉の加熱要素に曝すことによって加熱され、それによってシリンダを複数のコアロッド上に崩壊させ、母材を形成する。周辺コアロッドと周辺孔との間の間隙(g)は、複数の周辺コア孔を形成するステップの間、約0.2mm~4mmの範囲に維持され、平均半径方向温度勾配は、シリンダを加熱するステップの間、コアロッドとシリンダとの間の崩壊が開始する平面において約0.5°K/mm~4°K/mmに維持される、又はその両方である。
【0012】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、本開示の例示であり、限定ではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示は、添付の図面に関連して読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は縮尺通りではないことを強調しておく。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小されている。図面には、以下の図が含まれる。
【
図1】
図1は、ガラスの長尺部品を形成する上方への崩壊プロセスにおいて使用される装置の主要構成要素を示す概略図である。
【
図2】
図2は、光学部品を製造するために使用されるガラス体の斜視側面図である。
【
図3】
図3は、2つのコア領域及び共通の外側クラッド領域を有するマルチコアガラスファイバの断面を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、
図4A(7コアMCF)及び
図4B(4コアMCF)は、断層撮影屈折率プロファイル測定で得られたMCF母材断面画像の2つの例を示し、それぞれクラッド非円形性及びコア楕円性の両方を示す。
【
図4B】
図4Bは、
図4A(7コアMCF)及び
図4B(4コアMCF)は、断層撮影屈折率プロファイル測定で得られたMCF母材断面画像の2つの例を示し、それぞれクラッド非円形性及びコア楕円性の両方を示す。
【
図5】
図5は、
図4Aに示される7コアMCF母材の2D崩壊のみの有限要素モデルを示す図である。
【
図6】
図6は、
図4Aに示された7コアMCF母材についての、真空下での有孔シリンダ崩壊中のガラス流の速度の大きさの場を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、有孔シリンダの変形をモデル化するための第1の場合として使用される比較的大きな半径方向温度勾配(平均5.2°K/mm)のグラフである。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aの比較的大きな温度勾配に対してモデル化された有孔シリンダの変形を示しており、
図4Aに示された実際の7コアMCF母材の例に非常に近いクラッドの六角形のような形状だけでなく、厳しい周辺コア楕円性を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、有孔シリンダの変形をモデル化するための第2の場合として使用される比較的大きな半径方向温度勾配(平均6.3°K/mm)のグラフである。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aの比較的大きな温度勾配に対してモデル化された有孔シリンダの変形を示しており、
図4Aに示された実際の7コアMCF母材の例に非常に近いクラッドの六角形のような形状だけでなく、厳しい周辺コア楕円性を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、有孔シリンダの変形をモデル化するための第3の場合として使用される比較的大きな半径方向温度勾配(平均7.9°K/mm)のグラフである。
【
図9B】
図9Bは、
図9Aの比較的大きな温度勾配に対してモデル化された有孔シリンダの変形を示しており、
図4Aに示された実際の7コアMCF母材の例に非常に近いクラッドの六角形のような形状だけでなく、厳しい周辺コア楕円性を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、本開示の製造プロセス中に温度勾配を大幅に低減した後の有孔シリンダの変形をモデル化するための第1の場合として使用される半径方向温度勾配(平均1.1°K/mm)のグラフである。
【
図10B】
図10Bは、
図10Aの著しく低減された温度勾配に対してモデル化された有孔シリンダの変形を示しており、周辺孔及びクラッド全体の両方の円形形状がはるかに良好に保存されることを示す図である。
【
図11A】
図11Aは、本開示の製造プロセス中に温度勾配を大幅に低減した後の有孔シリンダの変形をモデル化するための第2の場合として使用される半径方向温度勾配(平均1.6°K/mm)のグラフである。
【
図11B】
図11Bは、
図11Aの著しく低減された温度勾配に対してモデル化された有孔シリンダの変形を示しており、周辺孔及びクラッド全体の両方の円形形状がはるかに良好に保存されることを示す図である。
【
図12A】
図12Aは、本開示の製造プロセス中に温度勾配を大幅に低減した後の有孔シリンダの変形をモデル化するための第3の場合として使用される半径方向温度勾配(平均2.0°K/mm)のグラフである。
【
図12B】
図12Bは、
図12Aの著しく低減された温度勾配に対してモデル化された有孔シリンダの変形を示しており、周辺孔及びクラッド全体の両方の円形形状がはるかに良好に保存されていることを示す図である。
【
図13】
図13は、比較的低い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図13)、33mm(
図14)、35.92mm(
図15)、42.5mm(;
図16)及び51mm(
図17)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図14】
図14は、比較的低い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図13)、33mm(
図14)、35.92mm(
図15)、42.5mm(;
図16)及び51mm(
図17)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図15】
図15は、比較的低い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図13)、33mm(
図14)、35.92mm(
図15)、42.5mm(;
図16)及び51mm(
図17)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図16】
図16は、比較的低い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図13)、33mm(
図14)、35.92mm(
図15)、42.5mm(;
図16)及び51mm(
図17)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図17】
図17は、比較的低い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図13)、33mm(
図14)、35.92mm(
図15)、42.5mm(;
図16)及び51mm(
図17)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図18】
図18は、比較的高い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図18)、33mm(
図19)、42.5mm(
図20)、45mm(
図21)、48mm(
図22)、及び51mm(
図23)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図19】
図19は、比較的高い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図18)、33mm(
図19)、42.5mm(
図20)、45mm(
図21)、48mm(
図22)、及び51mm(
図23)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図20】
図20は、比較的高い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図18)、33mm(
図19)、42.5mm(
図20)、45mm(
図21)、48mm(
図22)、及び51mm(
図23)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図21】
図21は、比較的高い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図18)、33mm(
図19)、42.5mm(
図20)、45mm(
図21)、48mm(
図22)、及び51mm(
図23)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図22】
図22は、比較的高い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図18)、33mm(
図19)、42.5mm(
図20)、45mm(
図21)、48mm(
図22)、及び51mm(
図23)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図23】
図23は、比較的高い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する24mm(
図18)、33mm(
図19)、42.5mm(
図20)、45mm(
図21)、48mm(
図22)、及び51mm(
図23)の中心孔サイズの影響を示す図である。
【
図24】
図24は、比較的低い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する134mm(
図24)、167mm(
図25)、及び200mm(
図26)のクラッドサイズの影響を示す図である。
【
図25】
図25は、比較的低い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する134mm(
図24)、167mm(
図25)、及び200mm(
図26)のクラッドサイズの影響を示す図である。
【
図26】
図26は、比較的低い半径方向温度勾配についての、FEMシミュレーションによる、開示されたプロセスの性能に対する134mm(
図24)、167mm(
図25)、及び200mm(
図26)のクラッドサイズの影響を示す図である。
【
図27】
図27は、FEMシミュレーションによる、中心孔のない4孔母材例についての開示されたプロセスの性能に対する6°K/mm(
図27)、2°K/mm(
図28)、及び1.2°K/mm(
図29)の温度勾配の影響を示す図である。
【
図28】
図28は、FEMシミュレーションによる、中心孔のない4孔母材例についての開示されたプロセスの性能に対する6°K/mm(
図27)、2°K/mm(
図28)、及び1.2°K/mm(
図29)の温度勾配の影響を示す図である。
【
図29】
図29は、FEMシミュレーションによる、中心孔のない4孔母材例についての開示されたプロセスの性能に対する6°K/mm(
図27)、2°K/mm(
図28)、及び1.2°K/mm(
図29)の温度勾配の影響を示す図である。
【
図30】
図30は、
図30(中心孔なし)及び
図31(中心孔)は、FEMシミュレーションによる、4孔母材例について開示されたプロセスの性能に対する中心孔の影響を示す。
【
図31】
図31は、
図30(中心孔なし)及び
図31(中心孔)は、FEMシミュレーションによる、4孔母材例について開示されたプロセスの性能に対する中心孔の影響を示す。
【
図32】
図32は、FEMシミュレーションによる、中心孔のない4孔母材例のための開示されたプロセスの性能に対する150mm(
図32)及び200mm(
図33)のクラッドサイズの影響を示す図である。
【
図33】
図33は、FEMシミュレーションによる、中心孔のない4孔母材例のための開示されたプロセスの性能に対する150mm(
図32)及び200mm(
図33)のクラッドサイズの影響を示す図である。
【
図34】
図34は、開示されたプロセスの一実施形態のステップを要約したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、いくつかの用語に言及するが、これらの用語は、それらに帰する以下の意味を有すると定義されるものとする。
【0015】
「含む(include)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」などの用語は、包含するが限定されないこと、すなわち包括的であり排他的ではないことを意味する。
【0016】
「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、並びに他の量及び特徴が正確ではなく、正確である必要はないが、所望に応じて、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に公知の他の要因を反映して、近似していても、かつ/又はより大きかったりより小さかったりしていてもよいことを意味する。値が特定の数にほぼ等しいと記載されているか、又はほぼ等しい場合、その値はその数の±10%以内である。例えば、約10である値は、9~11(9と11を含む)の値を指す。「約」という用語が、値又は範囲の終点を説明する際に使用される場合、本開示は、特定の値又は終点を含むと理解されるべきである。本明細書における数値又は範囲の終点が「約」を記載するか否かにかかわらず、範囲の数値又は終点は、2つの実施形態:「約」によって修飾されるものと、「約」によって修飾されないものとを含むことが意図される。範囲のそれぞれの終点は、他の終点に関連して、及び他の終点とは独立しての両方で有意であることが更に理解されるであろう。
【0017】
「約」という用語は、特に明記しない限り、範囲内の全ての用語を更に指す。例えば、約1、2、又は3は、約1、約2、又は約3と等価であり、約1~3、約1~2、及び約2~3を更に含む。組成物、構成要素、成分、添加剤、及び同様の態様、並びにそれらの範囲について開示される特定の値及び好ましい値は、例示のためだけのものである。それらは、他の定義された値又は定義された範囲内の他の値を除外しない。本開示の組成物及びプロセスは、記載される任意の値、又は値、特定の値、より具体的な値、及び好ましい値の任意の組み合わせを有するものを含む。
【0018】
本開示で使用される不定冠詞「a」又は「an」及びその対応する定冠詞「the」は、別段の指定がない限り、少なくとも1つ、又は1つ以上を意味する。
【0019】
本開示で使用される方向を示す用語(例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部)は、描かれた図及びそれらの図に与えられた座標軸に関してのみ用いられ、絶対的な向きを暗示することを意図していない。
【0020】
「接触」とは、直接接触又は間接接触を指す。直接接触とは、介在物質が存在しない場合の接触を指し、間接接触とは、1つ以上の介在物質を介した接触を指す。直接接触している要素は、互いに触れ合っている。間接接触している要素は、互いに触れ合っていないが、介在物質又は一連の介在物質に触れており、介在物質又は一連の介在物質のうちの少なくとも1つが他方に触れている。接触している要素は、堅固に又は非堅固に接合されてもよい。「接触させる」とは、2つの要素を直接又は間接接触させることを指す。直接(間接)接触している要素は、互いに直接(間接)接触していると言うことができる。
【0021】
「光ファイバ」は、被覆によって囲まれたガラス部分を有する導波路を指す。ガラス部分は、コア及びクラッドを含み、本開示では「ガラスファイバ」と呼ばれる。マルチコアファイバは、2つ以上のコアに共通のクラッドによって囲まれた2つ以上のコアを含む、ガラスファイバを有する光ファイバである。ガラスファイバは導波路として機能する。
【0022】
「半径方向位置」、「半径」、又は半径方向座標「r」は、マルチコアファイバのコアの中心線(r=0)に対する半径方向位置を指す。マルチコアファイバの2つ以上のコアの各々は、中心線及び別個の半径方向座標rを有する。「半径方向位置」、「半径」、又は半径方向座標「R」は、マルチコアファイバの中心線(R=0)に対する半径方向位置を指す。マルチコアファイバは単一の中心線を有する。
【0023】
光ファイバは、一般に2つの別個のプロセスで製造される。まず、コアロッドが準備され、次に、ロッドイン管(rod-in-tube、RIT)又はロッドインシリンダ(rod-in-cylinder、RIC)プロセスによって、又は外部蒸着(outside vapor deposition、OVD)プロセスなどの別のオーバークラッドプロセスによって、母材が製造される。第2に、製造された母材は炉内で加熱され、光ファイバに引き伸ばされる。2つのプロセスのうちの第1のプロセスを完了する、光ファイバ母材を製造するための従来のプロセス及び装置は、光ファイバRITオーバークラッド装置の提供を含むことができる。
【0024】
オーバークラッド装置は、縦型旋盤と、縦型旋盤の各端に設置されたチャックと、縦型旋盤の両端間を上下に移動するための縦型旋盤内のキャリッジと、キャリッジに設置された酸素-水素バーナーと、キャリッジに設置された炉と、縦型旋盤の一端に設けられた真空ポンプと、真空ポンプを縦型旋盤の一端に接続するカプラと、キャリッジの上下移動、酸素-水素バーナーの流量及びチャックの回転を制御するための縦型旋盤の外部のコントローラとを含む。炉は、コアロッドをガラス管でオーバークラッドするためにガラス管を予熱又は加熱する。
【0025】
実際には、母材の外径は、従来のRITオーバークラッド装置において90mm以下に制限される。この制限は、酸素-水素バーナーによる非効率的な加熱によって課される。更に、ハンドルは、上端からコアロッド重量のための別個の支持を提供するために、(RITオーバークラッド管と同じ長さの)単一のコアロッドに溶接されなければならない。これは、2つの欠点をもたらす:(1)短いコアロッドを効果的に使用することができないのでコアロッド材料を無駄にすること;及び(2)特に酸素-水素トーチを用いてハンドルをコアロッドに溶接することは、コアロッドの表面上に表面水酸化物(OH)の組み込みをもたらし、これは、エッチング除去されない場合(プロセスのための追加のコスト)、OH吸収に起因して特に1,383nmにおけるファイバ減衰を増加させ得る。
【0026】
より最近では、石英ガラス管、ロッド、又は崩壊オフラインロッドインシリンダ(offline rod-in-cylinder、ORIC)用の母材は、石英ガラス成分(例えば、シリンダ、インゴット、又は崩壊されていないRIC)を、加熱ゾーン(例えば、炉)を含む装置に、下端が軟化し始めてストランドを形成するように垂直配向で導入することによって製造されている。次いで、ストランドは、1組以上の引張りホイールを含む引張りデバイス内に配置される。ストランドの引き伸ばし速度は、ホイールによって支持されるストランドの形成ゾーン温度又は粘度及び重量に応じて下向き又は上向きの力のいずれかを適用することができる引張りホイールの速度によって制御される。成形は、ダイの助けなしに達成される。したがって、ストランド寸法は、石英ガラス成分の供給速度、加熱ゾーンの温度、及び引張りホイールの速度によって制御される。
【0027】
従来のORICプロセスでは、合成高純度ガラスで作られたシリンダ(典型的には長さ3m、外径約200mm)を高純度ガラスコアロッド上に崩壊して、界面間隙において熱及び真空を用いて光ファイバ母材を形成する。母材は、通常、シリンダの元の直径よりも著しく小さい直径で連続的に下方に引き伸ばされる。界面の崩壊を容易にするとともに、軟化したガラスを介してコアロッドの重量を支持するために、シリンダとコアロッドとの間の間隙に十分な真空を適用しなければならない。真空は、シリンダに対するコアロッドの移動を防止するために不可欠である。そうでなければ、得られる母材のクラッド対コア比が歪み、母材から引き伸ばされたファイバは、必要な導波路仕様(カットオフ波長など)を満たすことができない。複雑で高価な母材外径測定及びフィードバック制御も、下方への崩壊、延伸、及び引き伸ばしプロセスにおいて必要とされ、そのような制御を用いても、正確な母材形状(低い母材の反り又は曲率及び径変動を含む)及びクラッド対コア歪みのない導波路特性を達成することは困難である。下方への引き伸ばしプロセスにおけるこの固有の導波路歪みの影響は、大部分が、溶融ガラス及び炉内の取り付けられていないコアロッドに作用する重力及び真空力に起因し、外側クラッドガラスは、より高温であり、内側コアロッドガラスよりも速く下方に流れる。
【0028】
従来の下方引き伸ばしシステム及びプロセスを用いて、元のシリンダ又はクラッドサイズに近い外径を有する最大母材を製造することにはかなりの困難がある。母材の幾何形状及び導波路特性が、幾何形状、クラッド対コア比、コア偏心率、及び反りなどのパラメータに関して要求される仕様からかけ離れている場合、プロセスの開始時及び終了時に、かなりの量の良好な母材ガラスが無駄になる。したがって、従来の母材システム及びプロセスは、明確な欠点を有する。
【0029】
米国特許出願公開第2018/0145752号によれば、存在することが知られている最大外径及び長さ(すなわち、従来の外径では約150mmに制限される、約200mmの外径、及び約3mの長さ、又は元のシリンダ若しくはクラッドとほぼ同じサイズ)を有する母材を、導波路(クラッド対コア)歪みがほとんどなく、廃棄物及びコストが大幅に削減された状態で生成する装置及び上方への崩壊プロセスが提供される。従来の光ファイバ母材は90mm~150mmの外径を有する。流線型上方への崩壊プロセスでは、ORICクラッド内の積み重ねられたコアロッドは、下から支持され(したがって、コアロッドは、崩壊プロセスにおいてクラッドに対して移動しない)、ORICアセンブリ全体は、炉に対して上に移動し、したがって、母材は、
図1に示され、以下で説明されるように、連続的に崩壊され、上向きに引き伸ばされる。装置及び上方への崩壊プロセスは、(1)最大の既知のオーバークラッドシリンダを用いた崩壊のみのプロセスで製造できるので、最大の既知の母材を製造し、(2)ほぼ100%のオーバークラッド及び完成(チップ化)母材歩留まり(ほとんど無駄がない)及び統合オンライン母材チッピングプロセス(処理時間及び加熱ステップの節約)を含む合理化され簡略化された(例えば、オンライン測定又はフィードバック制御の必要がない)プロセスのためにコストを削減し、(3)可変及び任意の長さの、固定され、積み重ねられ、支持されたコアロッドによる本質的に低い導波管(クラッド対コア)歪みのために導波管の質を改善し、かつ(4)改善された界面及びより低いコアロッドD/d比(導波管コアにより近い界面)のために、約1気圧まで(すなわち、真空を必要としない)反応性ガス(SF6など)を界面に適用することを可能にする。
【0030】
コアロッドのD/d比は、導波路コア(光が伝搬する)の直径に対するコアロッドの外径の比であり、ここで「D」はコアロッドの外径であり、「d」は導波路コアの直径である。この比は、RIT又はRIC母材を使用して光ファイバを製造する者にとって、コア容量拡張を規定する際に非常に重要である。コアロッドのD/d比が減少するにつれて、界面は導波路コアに近づき、これは、コアロッドにおいて必要とされるガラスの相対量が減少することを意味する(一方、クラッドにおけるガラスの量は増加する必要がある)。これは、次に、同じコアロッド製造設備を用いて、コアロッドを作製するためのその能力(又は光ファイバコアの等価能力)が、D/dの二乗(例えば、D/dを3.3から2.3に減少させることによるコア能力の2倍)にほぼ比例することを意味する。しかしながら、コアロッドD/dを減少させることは、そこでの指数関数的に増加する光電力伝搬のために、オーバークラッド材料純度及び界面品質に対して重大な課題を提示する。したがって、(例えば、SF6との)界面におけるより積極的なガスエッチング、洗浄、及び乾燥プロセスが、より低いコアロッドD/dにおいて必要とされるであろう。要するに、より低いD/d比(すなわち、界面がコアにより近い)は、母材の製造業者が、(a)高価な投資なしにコア容量を容易に拡張すること、及び(b)コアにより近い屈折率特徴を有するより複雑で高度な光ファイバ設計を実現することを可能にする。
【0031】
図1を参照すると、光ファイバ母材を製造するための装置10が示されている。装置10は、垂直に配置されたフレーム12を含む。下から上に向かって、フレーム12は下側開口端、予熱ゾーン又は下部断熱ゾーン14、加熱ゾーン16、後加熱又は上部断熱ゾーン17、加熱後冷却、アニーリング、及びオーブンガスパージゾーン18、下部開口端と反対側の上部開口端を有する。加熱ゾーン16は、加熱要素(典型的にはオーブン又は炉)によって、好ましくは約500℃~2,300℃、より好ましくは約1,000℃~2,300℃、更に最も好ましくは約1,500℃~2,300℃の温度に加熱することができる。より具体的には、加熱要素は、好ましくは環状の構成である。加熱要素は、好ましくは、フレーム12の加熱ゾーン16を形成するように、フレーム12の内部又は周囲に配置される。不活性ガスは、加熱要素の酸化を防止するために高温で加熱要素に注入される。
【0032】
図2を参照すると、ガラス体20は、光ファイバ母材を製造するために使用される。ガラス体20は、シリンダ状又は管状の構成である。ガラス体20は、第1の端又は上端22から反対側の第2の端又は下端24まで延びる長さLを有する。縦軸Xは、反対側の第1の端22と第2の端24との間に延びる。好ましくは、ガラス体20の第1の端22及び第2の端24の両方は、直角に切断された端である。
【0033】
ガラス体20は、好ましくは、導波光ファイバコアを含むガラスコア又はコアロッド30と、コアロッド30を取り囲むガラスクラッド32とから構成される。より具体的には、コアロッド30は、好ましくは、ガラス体20の幾何学的中心に形成され、ガラス体20の長さLに沿って延びる。クラッド32は、ガラス体20の長さLに沿ってコアロッド30を半径方向に取り囲むようにコアロッド30上に形成されることが好ましい。クラッド32は、共通の中心線に沿って位置合わせされた同軸配置でコアロッド30を囲む。間隙31は、コアロッド30とクラッド32との間に最初に存在する。クラッド32は外径「OD」を有する。
【0034】
クラッド32は、純石英ガラス又はドープ石英ガラスであってもよい。しかしながら、クラッド32は、ドープされていないか(例えば、フッ素で)ドープされているかにかかわらず、最高純度の合成シリカであることが好ましい。コアロッド30は、好ましくは、適切な屈折率プロファイルを達成するためにドープされた領域とドープされていない領域で、大部分が最高純度の石英ガラスである。クラッド32及びコアロッド30はそれぞれ、溶融石英又は1つ以上のタイプの化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)(内部蒸着、外部蒸着、及び軸方向蒸着を含む)などの任意の好適なプロセスによって形成されてもよい。コアロッド30の中心のコア材料は、典型的には、母材から引き伸ばされたファイバを通過する光信号の内部反射を可能にするために、周囲のクラッド32の材料の屈折率よりも大きい屈折率を有し、その結果、有効な導波路が得られる。
【0035】
図1に戻ると、第1のカラー又は上部カラー40がクラッド32の上部に固定されている。上部カラー40をクラッド32に取り付けるために他の機構を使用することができるが、上部溶接部42が適している。上部カラー40の外径は、クラッド32の外径とほぼ同じかそれよりも小さい。第2のカラー又は底部カラー44は、クラッド32の底部に固定される。底部カラー44をクラッド32に取り付けるために他の機構を使用することができるが、底部溶接部46が適している。底部カラー44の外径は、クラッド32の外径よりも小さいか、ほぼ同じのいずれかである。上部カラー40及び下部カラー44は、両方とも中空の管状構成要素である。
【0036】
積み重ねられたコアロッド30は、クラッド32の内側に配置され、任意の短いスペーサ48の上に置かれ、次いで、スペーサ48は長いスペーサ50の上に置かれる。長いスペーサ50は、長いスペーサ50の下に配置された底部カラーホルダ及び真空ユニット52によって支持される。底部カラーホルダ及び真空ユニット52はまた、その名前が示すように、底部カラー44を保持し、支持する。ロッドインシリンダ又はRICアセンブリ(クラッド32に固定された上部カラー40及び下部カラー44とともに、ガラス体20の積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32を含む)並びに下部カラーホルダ及び真空ユニット52は、最初に、オーブンガスパージゾーン18の上方に位置する上部カラーホルダ及び真空ユニット54上に装填される。(底部カラーホルダ及び真空ユニット52並びに上部カラーホルダ及び真空ユニット54は、装置10が、装置10のいずれかの端において、装置10からガスを除去する、すなわち真空を生成するか、又は装置10にガスを導入することを可能にする。上部カラーホルダ及び真空ユニット54は、その名前が示すように、上部カラー40を保持し、支持する)。次に、ガラス体20は、加熱ゾーン16に対して、より具体的には加熱ゾーン16の加熱要素に対して位置決めされ、加熱要素を通って上方に移動される。底部カラーホルダ及び真空ユニット52は把持され、加熱ゾーン16の下に支持される。上部カラーホルダ及び真空ユニット54は、加熱ゾーン16の上方で把持され支持される。加熱ステップが開始する前に、上部溶接部42(したがって、クラッド32の上部)は、上部溶接部42への熱衝撃を回避するために、最初に加熱要素の中心の下の所定の距離に配置される。(「所定の」とは、事前に決定されていることを意味し、したがって、所定の特性は、何らかの事象に先立って決定されていなければならない、すなわち、選択されていなければならない、又は少なくとも知られていなければならない)。例えば、この距離は約350mmであってもよい。
【0037】
図1を参照して、装置10を使用して母材を製造する上方への崩壊プロセスを説明する。ガラス体20は、フレーム12を通過し、そこで加熱され、軟化され、伸長されて、光ファイバ母材などの光学部品を形成する。より具体的には、ガラス体20の下端24は、好ましくは、プロセスの開始時にフレーム12内に安定して配置され、次いで、ガラス体20は、フレーム12を通って上向き(すなわち、従来の下向きとは反対の)方向に進む。フレーム12において、ガラス体20は、加熱ゾーン16においてゾーンごとに加熱される。母材は、オーバークラッド間隙31を崩壊させ、コアロッド30をオーバークラッドシリンダ又はクラッド32に融合させる溶融変形によって連続的に生成される(任意選択で、母材は、プロセス中に上部カラーホルダ及び真空ユニット54並びに底部カラーホルダ及び真空ユニット52によって適用される引張力又は圧縮力のいずれかによって延伸/伸長又は短縮/圧縮することができる)。
【0038】
一実施形態において、ガラス体20は、2つの別個のガラス成分、すなわち、積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32の同軸アセンブリである。より詳細には、コアロッド30は、中実のシリンダ形ロッドの形態であり、クラッド32は、積み重ねられたコアロッド30を取り囲む中空のオーバークラッドシリンダの形態である(すなわち、ロッドインシリンダアセンブリ)。同軸アセンブリでは、ガラスアセンブリが加熱ゾーン16に入る前に、積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32は互いに融合されない。
【0039】
ガラス体20のこの実施形態の同軸アセンブリがフレーム12を通って上方に進むにつれて、コアロッド30及びクラッド32は、2つのガラス成分を軟化させ、一緒に融合させて、一体型の固結ガラス体20を形成するのに十分な所定の温度及び時間に加熱される。「一体型」とは、追加の片なしで、それ自体で完全な単一片又は単一部材を意味し、すなわち、部材は、別の部材とともに1つのユニットとして形成された1つのモノリシック片である。より具体的には、ツーピースガラス体20の連続部分が加熱ゾーン16に接近し、加熱ゾーン16内で加熱されるにつれて、クラッド32及びコアロッド30は軟化し、軟化したクラッド32はコアロッド30上で崩壊し、コアロッド30と融合する。次いで、少なくとも1つの、より好ましくは複数の「引き伸ばし準備済み」母材を、得られたモノリシックガラス体20からファイバに直接引き伸ばすことができる。
【0040】
好ましくは、ガラス体20のこの実施形態の同軸配置は、約500℃~2,300℃、より好ましくは約1,000℃~2,300℃、最も好ましくは約1,500℃~2,300℃の温度に加熱される。より好ましくは、コアロッド30上のクラッド32の軟化及び崩壊は、約1,000℃~2,200℃、より好ましくは約1,300℃~2,000℃、最も好ましくは約1,600℃~1,800℃の温度で生じる。軟化し崩壊したクラッド32と軟化したコアロッド30との融合は、好ましくは約1,000℃~2,200℃、より好ましくは約1,300℃~2,200℃、最も好ましくは約1,600℃~2,200℃の温度で行われる。しかしながら、当業者であれば、ガラス材料組成及びスループットなどの他の要因もまた、クラッド32がコアロッド30上で崩壊してコアロッド30と融合する温度に影響を及ぼすことを理解するであろう。
【0041】
コアロッド30とクラッド32との間の融合界面は、装置10のいくつかの構成要素によって確実に清浄にされる。例えば、底部カラーホルダ及び真空ユニット52並びに上部カラーホルダ及び真空ユニット54は、両方ともシールされており、上方への崩壊プロセスが真空内で動作することを可能にする。底部カラーホルダ及び真空ユニット52並びに上部カラーホルダ及び真空ユニット54はまた、加熱要素(例えば、炉)及び外部環境内の潜在的汚染物質から母材アセンブリ(特に、界面)を隔離する。炉及び外部環境は、従来のプロセス、特に界面への汚染物質の侵入を回避することが困難である真空開始プロセスの間の典型的な汚染源である。更に、反応性界面処理ガスを用いて、界面をエッチングし、洗浄し、乾燥させることができる。
【0042】
加熱ゾーン16の加熱要素を加熱するために使用される典型的なレシピは、約50kWで30分間、約100kWで10分間、約150kWで10分間、約200kWで10分間、約220kW(又はいくらか低い最大電力、例えば212kW)でプロセスの定常状態になる。装置10の底部に配置された底部カラーホルダ及び真空ユニット52は速度V1で移動し、装置10の上部に配置された上部カラーホルダ及び真空ユニット54は速度V2で移動する。典型的には、プロセスの開始時に、V1=V2である。典型的なレシピでは、2分間で100kWに達した後、6分間でV1=V2=約13.5mm/分である。次に、アセンブリを約4分間停止する。4分間の休止の後、アセンブリは、上部溶接部42が加熱要素の中心に達するまで、約13.5mm/分で再び上昇する。上部溶接部42が加熱要素の中心に到達すると、アセンブリは約6分間停止される。次いで、アセンブリは、定常状態崩壊のためにV1=V2で再び上昇させられる。
【0043】
上部溶接部42が加熱ゾーン16の中心の約110mm~約135mm上にあるとき、底部カラーホルダ及び真空ユニット52の真空ポンプが作動される(すなわち、オンにされる)。このような作動により、矢印56の方向に真空が引かれ、上部カラー40内の圧力が減少し始める。上部カラー40内の圧力が減少を停止すると、クラッド32の上部が崩壊し、間隙31が閉じ、クラッド32がコアロッド30とシール又は融合される。このとき、真空は、圧力が約1気圧に達するまで、上部カラー40にガス(例えば、窒素ガスN2)を充填し直しながら、底部カラーホルダ及び真空ユニット52においてポンピングを維持する。次に、上部カラー40を空気に接続する。
【0044】
上部カラーホルダ及び真空ユニット54の真空ポンプは、矢印58の方向に真空を引くために作動される(すなわち、オンにされる)ことができる。同様に、加熱ゾーン16の加熱要素で使用されるガス(典型的にはアルゴン、ヘリウム、又は最も典型的には窒素などの不活性ガス)のパージは、ガスを矢印60の方向に加熱要素に導入することによって達成することができる。ガスパージは、ガラス体20の外表面と加熱要素の表面との間で行われ、ガラス体20の外表面での煤の発生及び加熱要素の酸化を防止する。加熱要素の上部におけるガスパージは、典型的には、プロセスの開始からオンである。プロセス中又はプロセス後に母材の表面上に煤又は他の堆積物が形成されないように、適切なパージ速度(例えば、約9m3/h)を特定することが重要である。
【0045】
底部溶接部46が加熱ゾーン16の中心の下の所定の距離(例えば、約500mm)にあるとき、加熱要素の電力は線形に減少し始める。底部溶接部46が加熱ゾーン16の中心に到達するとき、加熱要素の電力は、所定の終了電力値(例えば、約150kW~約160kW)であるべきである。この最終電力を維持しながら、アセンブリは依然として短い距離(例えば、約50mm)にわたって上方に移動し続けるべきである。このプロセスステップは、最終段階の温度上昇を抑制し、底部付近のガラスの過熱及びスランピングを回避する。
【0046】
底部溶接部46が加熱要素の中心の上方の短い距離(例えば、約50mm)にあるとき、プロセスは完了する。この位置で、加熱要素への電力が完全にオフにされ、同時にアセンブリの移動が停止される。ガラス体20の下端24へのクラッド32の完全な崩壊を保証するために、プロセスが停止した後、真空ポンピングを短時間(例えば、約1分~2分)維持することができる。しかしながら、最終段階の加熱レシピが100%正しい場合には、真空を維持する必要はなく、余分な時間にわたって真空を維持することは、底部カラー44を変形させるリスクも伴う可能性がある。
【0047】
ロードセル68は、底部カラー44によって支持されている総重量を測定するために使用される。わずかな一定の振動摂動が上部カラー及び真空ユニット54の速度V2に重畳され、底部カラーホルダ及び真空ユニット52の速度V1が一定に保たれる場合、「リップル」がロードセル読み取り曲線上に現れる。「リップル」の振幅が大きいほど、プロセスは低温になる。これは、より低温のプロセスでは、加熱要素の中心の軟化したガラスがより剛性であり、振動の力をアセンブリの底部に更に伝達することができるからである。一定の加熱要素電力設定では、この情報は、加熱要素の実際の状態に起因して、プロセスがわずかに高温側にあるか、又はわずかに低温側にあるかを示す。この知識に基づいて、プロセスの終了電力を決定することができ、すなわち、プロセスが低温であればあるほど、終了電力を高くする必要がある。この「リップル」振幅は、基本的に、加熱要素の中心におけるガラス体20の真の粘度測定値であり、パイロメータを用いた任意のガラス表面温度測定値よりもはるかに信頼性が高い。
【0048】
したがって、装置10及び関連する上方への崩壊プロセスは、振動運動を課すことによって、加熱要素の中心におけるガラス体20の粘度測定を可能にする。母材アセンブリの上部の位置に小さな振動が加えられる。並行して、母材アセンブリの重量がロードセル68によって測定される。ロードセル68の測定は、加熱要素の中心におけるガラス体20の粘度の間接的な測定を提供する。この情報は、例えばコントローラ88(後述)を使用して加熱ゾーン16の温度/加熱電力を制御するために使用することができる。
【0049】
従来の下方への引き伸ばしプロセスとの明確な違いとして、積み重ねられたコアロッド30は、真空によって支持される代わりに、積み重ねられたコアロッド30の底部でスペーサ48によって支持され、オーバークラッド及び引き伸ばしプロセス中にクラッド32に対するコアロッド30の位置を本質的に固定する。換言すれば、上方への崩壊プロセスは、コアロッドの移動を防止するために真空を必要とせず、コアロッドの移動は、クラッド対コア導波路の歪み、したがってファイバカットオフ波長の問題をもたらし得る。更に、従来の下方への引き伸ばしプロセスとは対照的に、加熱ゾーン16内の溶融ガラスの上方及び下方の両方のガラスの重量は、上方引き伸ばしプロセスにおいて上部カラー40及び底部カラー44によって良好に支持され、これは、重力及び真空力によって加熱ゾーン16内で従来引き起こされていたクラッド対コア導波管歪みの影響を本質的に排除する。この差により、加熱要素又は崩壊温度が低温側で動作するときに、上方への崩壊プロセスがはるかに許容度の高いものになる(ガラスが、真空からの圧力差を変換し、コアロッド30を支持するのに十分に軟化されていないため)。
【0050】
コアロッド30の重量を支持するために真空を必要としないので、上方への崩壊プロセスはまた、コアロッド30とクラッド32との間の間隙31内の分圧(大気圧又はそれよりわずかに高い圧力まで、典型的には約1,100mbar)を可能にする。したがって、高温崩壊中に、界面処理ガス矢印62の方向に、六フッ化硫黄(室温で取り扱うのに安全なSF6)などの反応性界面処理ガスを自由に適用して、金属粒子又は表面水酸化物(OH)などの潜在的な界面汚染をエッチング除去することができる。六フッ化硫黄に加えて、他の適切な反応性界面処理ガスは、安全性の懸念が生じるであろうが、酸素(O2)、塩素(Cl2)、フッ素(F2)、三フッ化窒素(NF3)、四フッ化ケイ素(SiF4)、四フッ化炭素(CF4)、及びフルオロホルム(CHF3)を含む。反応性界面処理ガスを使用して母材界面をエッチングし、洗浄し、乾燥させることにより、界面が改善され、光ファイバの質が向上し(ファイバ破断、気泡、損失、又はエアラインが減少する)、コアロッドD/d比を低下させることができる。
【0051】
前の段落で述べたように、積み重ねられたコアロッド30がスペーサ48によって下から支持され、(ガラスが軟化される)加熱ゾーン16の上及び下の両方のガラスの重量も支持されるので、上方への崩壊プロセスは、コア-クラッドガラス流の差又は導波路の歪みの影響をはるかに受けにくい。そのような支持は、制御されないガラス流及び歪みの問題を排除する。したがって、過度の加熱又は重力及び真空力によるクラッド対コア導波路歪みの危険を冒すことなく、低粘度ガラス材料(高濃度Fドープクラッド32など)を処理するという当然の利点がある。これは、Fドープクラッド32材料を有する特定のクラスのファイバ設計に重要な処理上の利点を提供する。
【0052】
図1に戻ると、上部カラー40の内径よりもわずかに小さい(すなわち、典型的には約126mm)外径を有するガラスディスク70が、コアロッド30及びクラッド32の上部に、かつ上部カラー40の内側に配置される。ディスク70は約5cmの厚さであってもよい。プロセスの始動中、加熱要素の中心における上部溶接部42の6分間の滞留時間の後、底部カラーホルダ及び真空ユニット52と上部カラーホルダ及び真空ユニット54の両方から真空が適用される。真空は、上部カラー40をディスク70上に崩壊させる。V2>V1に設定することによって、先端は、V2=V1であるクラッド32の残りの定常状態崩壊の前にクラッド32の上部に引っ張られる。その結果は、低コストかつ高収率のオンライン母材チッピングプロセスであり、これは、その後のファイバ引き伸ばしにとって最も容易かつ最も効率的な母材をもたらす。統合されたオンライン母材チッピングプロセスは、従来のオフラインチッピングプロセスよりもかなりの量の労力及びコストの両方を節約する(例えば、余分な加熱ステップを節約する)。
【0053】
界面崩壊が開始されて継続するときに、V2がV1よりも高く設定されている場合、上方への崩壊プロセスはまた、クラッド32の元の直径よりも著しく小さい直径を有する母材を上方に延伸又は引き伸ばすこともできる。延伸された(又は圧縮されても)母材の直径は、質量保存の法則を通じて直線垂直速度V1及びV2を正確に設定することによって正確に制御することができる。しかしながら、良好な母材ガラスの始動損失は、従来の下方への引き伸ばしプロセスよりも上方への崩壊プロセスの方がはるかに少なく、したがって、延伸母材の大幅なコスト削減をもたらすことができる。
【0054】
加熱ゾーン16(ここでガラスが軟化される)の上方及び下方の両方のガラスの重量が上部カラー40及び底部カラー44によって支持される一方で、母材自体の外側表面は接触されないので、上方への崩壊プロセスはまた、完成した母材にとって完全に非接触のプロセスである。母材の接触を回避し、したがって任意の横方向又は横断方向の力を回避することにより、プロセス全体を通してプラーホイールが母材と常に接触し、母材に力を適用する従来の下方への引き伸ばしプロセスとは異なり、非常に清浄な母材表面及びほとんど反りのない母材の両方がもたらされる。
【0055】
多くの従来の下方への引き伸ばしプロセスでは、プラーホイールと母材外周との間に小さな接触領域が存在する。そのような接触は、母材表面上に不純物又は汚染物質を導入する可能性がある。加えて、プラーホイールは、下方への引き伸ばしプロセスにおいて横方向の力を主張し、母材の反りを引き起こす可能性がある(これは、より長い母材に対して悪化する、すなわち、反りは、単純な湾曲の場合に母材長さの二乗として増加する)。過度の圧力が母材のガラス表面を損傷する可能性があるので、プラーホイールによって母材に適用することができる接触力の量は制限される。したがって、単一組のプラーホイールによって適用することができるよりも大きな引張力を必要とする大型母材の場合、複数組のプラーホイールを異なるレベルで母材に適用して、母材重量を支持するのに必要な全垂直(摩擦)力を達成することができる。しかし、複数組のプラーホイールは、装置の高さ及びコストの両方を増加させる。更に、母材の反りを小さくすることは、複数組のプラーホイールによって、プラーホイールの組が正確に位置合わせされている場合にのみ達成することができ、正確な位置合わせは実際には達成することが困難である。非接触の上方への崩壊プロセスは、母材に適用される横方向の力がないために、母材の反りが非常に小さくなる。
【0056】
再び
図1に戻ると、装置10は、フレーム12に取り付けられたグリッパシステム80を任意選択で含むことができる。好適なグリッパシステム80は、本出願の譲受人であるHeraeus Quarzglas GmbH&Co.KGによって2015年1月22日に出願された「Formation Of Elongated Glass Components With Low Bow Using A Gripper Device」と題する国際特許出願第PCT/US2015/012471号の優先権を主張する米国特許第10,590,022号により完全に記載されている。一実施形態では、グリッパシステム80は、グリッパシステム80をフレーム12に取り付けることによって装置10に含まれる。
【0057】
グリッパシステム80は、クランプ要素82と、クランプ要素82をグリッパシステム80に取り付ける取付要素84とを含む。グリッパシステム80は、フレーム12の長さに平行に垂直に移動することができる(
図1においてZ方向として定義される)。取付要素84は、X方向及びY方向における(すなわち、X-Y平面内の任意の位置への)クランプ要素82の並進運動を可能にする。(必要でもなく好ましくもないが、特に炉ではなくトーチが加熱要素を提供する場合には、回転を可能にするチャックシステムを使用することもできる)。一実施形態では、取付要素84は、直線ベアリング又は直線レールに取り付けられた一対のアームと、アームの動きを制御するためのモータ、例えば手動又はサーボモータドライブとを含むX-Yテーブルである。取付要素84は更に低摩擦デバイスであり、その結果、外部物体によってクランプ要素82に適用される力は、クランプ要素82が外部物体に抵抗力を適用するのではなく、クランプ要素82が取付要素84に沿って撓むことになる。
【0058】
母材が形成されると、グリッパシステム80は、クランプ要素82を底部カラー44又は(
図1に示されるように)底部カラーホルダ及び真空ユニット52と接触するように移動させることによって取り付けられてもよい。クランプ要素82は、好ましくは母材に接触すべきではない。クランプ要素82は、クランプ要素82が底部カラー44に損傷を与えることなく底部カラー44の周りにしっかりと嵌合するように、底部カラー44の反対の形状を有する凸状領域を有するようにサイズ決めされてもよい。クランプ要素82は、底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の外面の全部又は(
図1に示すように)一部のみと接触してもよい。例示的な実施形態では、クランプ要素82は、ケイ酸カルシウム、アスベスト、圧縮ガラス、又はセラミック繊維(例えば、ロックウール)又は高温ゴム(例えば、シリコーン又はフルオロポリマーエラストマー)などの高温圧縮性材料から作製されてもよい。
【0059】
クランプ要素82は、最初に、底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の中心を決定し、次いで、クランプ要素82をX方向における中心と位置合わせされるように移動させることによって底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の中心と位置合わせされる。いくつかの実施形態では、クランプ要素82は、底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の推定中心、例えば、所望の移動経路に基づく予想中心に位置合わせされてもよい。他の実施形態では、クランプ要素82を底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52とより正確に位置合わせするために、装置10は、底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の中心を位置特定することができる感知要素と、感知要素の出力から中心を決定するためのコンピュータとを更に含むことができる。感知要素は、1つ以上のレーザデバイス、カメラ/視覚システム、又は機械的接触(ダイヤルインジケータ)システムを含んでもよい。例示的実施形態では、感知要素は、グリッパシステム80に取り付けられてもよく、又はグリッパシステム80の外部にあってもよく、例えば、フレーム12に取り付けられてもよい。別の実施形態では、感知要素は、グリッパシステム80及びフレーム12の両方の外部にあってもよい(例えば、カメラ)。グリッパシステム80は、位置ずれを防止するための更なる要素を含むので、グリッパシステム80が底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の中心と完全に位置合わせされる必要はない。
【0060】
クランプ要素82が位置合わせされると、クランプ要素82は、取付要素84がX方向に移動することによって、底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52と接触する。取付要素84は、任意の適切な機構、例えばX-Yテーブルの一対のアームを制御するために使用されるモータによって移動させることができる。取付要素84は低摩擦デバイスであるので、クランプ要素82を底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52に取り付ようとして、中心と適切に位置合わせされていない場合、クランプ要素82を押す底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の力は、底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52が移動される代わりに、クランプ要素82を位置合わせされた位置に移動させる。取付要素84は、クランプ要素82が底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52に取り付けられると、クランプ要素82の移動を防止するために係合及び係合解除され得るロック機構を更に含むことができる。クランプ要素82が所定位置に移動されている間、ロック機構はロック解除され、その結果、クランプ要素82は、クランプ要素82に適用される任意の追加の力によって依然として変位されながら、モータによって移動され得る。クランプ要素82が底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52と接触すると、ロック機構が係合して、X-Y平面内でのクランプ要素82の更なる移動を防止する。
【0061】
位置ずれを検出するために、一実施形態では、グリッパシステム80は、クランプ要素82が底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52に取り付けられるプロセス中に発生する反力を感知及び測定するために、ロードセルなどの力感知デバイスを更に含む。ロードセルは、各ロードセルの歪みゲージ(図示せず)に対してクランプ要素82に適用された力を電気信号に変換する変換器である。次に、電気信号を測定し、歪みゲージに適用された力と相関させることができる。例示的なロードセルとしては、油圧ロードセル、空気圧ロードセル、及び歪みゲージロードセルが挙げられる。クランプ要素82が底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の中心と適切に位置合わせされていない場合、反力は、クランプ要素82が適切に位置合わせされている場合よりも大きくなる。力感知デバイスを用いて反力を測定することによって、クランプ要素82が、底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52の移動をもたらすのに十分な力を底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52に適用する前に、位置ずれを検出し、補正することができる。一実施形態では、力感知デバイスは、低摩擦取付要素84と併せて使用されてもよく、クランプ要素82が底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52に取り付けられる速度は、クランプ要素82が取付要素84上で位置合わせ位置に移動することを可能にするために、予想よりも大きい反力に応答して減速される。例示的な実施形態では、クランプ要素82は、力感知デバイスによって位置ずれが検出されない間は約50mm/分~約100mm/分の範囲の速度で底部カラー44又は底部カラーホルダ及び真空ユニット52に向かって移動させることができ、位置ずれが検出された場合は速度を約10mm/分~約25mm/分に低下させることができる。他の用途では、クランプ速度はこれらの範囲を超えてもよい。
【0062】
要約すると、グリッパシステム80は、母材アセンブリの重量(約350kg以上であり得る)を支持するのに役立ち、従来の全接触プラーホイールシステムに取って代わる。グリッパシステム80は、母材を作製するために使用されるガラス体20の水平(X-Y)平面における浮動位置決め、並びに母材形状及び母材チッピングプロセスの正確な位置合わせ及び制御のための垂直(Z)方向における精密な直線移動を可能にする。特に、グリッパシステム80が組み込まれている場合、装置10は、母材にかかる横方向又は横断方向の力を回避し、それによって母材の反りを最小限に抑え、おそらくなくし、ロードセルを使用して加熱中のガラス挙動を監視することができ、寸法を正確に制御するために物理学(質量の保存)の使用を可能にする(従来のオンライン測定及びフィードバック制御の費用を排除する)。
【0063】
更に、装置10及び関連する上方への崩壊プロセスは、母材測定デバイスと組み合わせて使用することができる。好適な母材測定デバイスは、本出願の譲受人によって2014年8月8日に出願された「Methods And Apparatus For Determining Geometric Properties Of Optical Fiber Preforms」と題する国際特許出願第PCT/US2014/050368号の優先権を主張する米国特許第10,378,996号により完全に記載されている。
【0064】
コントローラは、2つの構成要素間のデータ流を管理又は指示する(すなわち、通信を容易にする)ハードウェアデバイス又はソフトウェアプログラムである。装置10は、コントローラ88を含む。コントローラ88は、例えば、ロードセル68、グリッパシステム80からデータを取得する能力を提供する。上部及び底部カラーホルダ及び真空ユニット52、54、並びに真空及び処理ガスシステムを含み、そのデータを使用して、装置10の他の構成要素及び関連する上方への崩壊プロセスを制御する。コントローラ88は、当業者に周知の方法で、最適な加熱及び移動プロセスレシピを効率的に保証するためにプリセット制御プログラム又はルーチンをプログラムされている。より具体的には、コントローラ88は、例えば、速度V1及びV2、ガスの流量、並びに真空ポンプの圧力を定義することができる。コントローラ88は、製造のための堅牢で再現可能な「ワンボタン」自動化プロセスを保証するのに役立つ。
【0065】
上方への崩壊プロセスの重要な利点は、導波路(クラッド対コア)歪みの最小化、おそらく排除である。導波路の歪みの原因は、従来のプロセスに固有のコアロッド及び溶融ガラスに対する重力及び真空力であり、上方への崩壊プロセスによって排除される。導波路の歪みは、RIT/RICの分野では、たとえあったとしてもめったに対処されない問題である。問題が認識されていないのは、過去の光ファイバ性能要件があまり厳しくなく、したがって、この分野では、例えば、とりわけ、ファイバカットオフ波長障害を生じ得る実際の導波路(クラッド対コア)歪みの影響について心配することなく、光母材を単純なガラスロッドのように扱う傾向があったためである可能性がある。
【0066】
世界的に接続されたデバイス、クラウドサービス、5G(第5世代モバイルネットワーク又は第5世代ワイヤレスシステム、これはモバイル電気通信規格の主要段階を示す)、及び産業4.0(又は第4の産業革命、サイバー物理システム、モノのインターネット、及びクラウドコンピューティングを含む製造技術における自動化及びデータ交換の現在の傾向)、並びに他の進歩は、帯域幅に対する指数関数的に増加する需要を駆り立てている。したがって、光ファイバ製造業者は、その出力及び生産性を増加させなければならない。次世代光ファイバ製造のために、高速で引き伸ばされる非常に大きな母材が必要とされる。上方への崩壊プロセスの結果は、複数日の中断されない光ファイバ引き伸ばしに耐えることができる「引き伸ばし準備済み」固体母材であり、生産性及び光ファイバ出力を増加させるとともに、コストを削減し、母材のユーザにとって改善されたファイバ収率を実現する。
【0067】
上方への崩壊プロセスは、当然ながら、上方引き伸ばし(及び、任意選択で、延伸又は圧縮)、並びに上部カラー40又は底部カラー44を崩壊することによる、及び上部カラー40の外径をクラッド32の外径に整合させることによる、低コスト上方オンラインチッピングを含む。上方への崩壊プロセスのこれらの追加の特徴は、質量及びガラス流の保存という正確な物理学を介して、従来の下方への引き伸ばしプロセスよりもはるかに正確かつ安価に行うことができる。引き伸ばし/延伸及び先端特徴を含む上方への崩壊プロセスはまた、母材端において最小の導波路歪みを有するほぼ100%の先端付き母材歩留まり(すなわち、より「良好な」ガラス)を達成することができる。また、上方への崩壊プロセスを用いると、従来の下方への引き伸ばしプロセスの開始に使用される無駄な犠牲出発材料なしで、良好な母材ガラス収率がほぼ100%となることは、指摘する価値がある。そして、上部カラー40及び底部カラー44に使用される材料の消費も、上方への崩壊プロセスにおいて最小限である。
【0068】
単一オーバークラッドの上方への崩壊プロセスは、上で説明されている。しかし、このプロセスは、スペーサ48の外径を増大させ、最大加熱電力及び終了電力をわずかに調整するなどの些細な修正を適用して、複数のオーバークラッド「間隙」ジャケット管又はシリンダに適用することができる。更に、積み重ねられたコアロッド30の重量が下から完全に支持されるので、上方への崩壊プロセスはまた、クラッド内径の整合(すなわち、従来の下方への引き伸ばしプロセスの場合のように、上部クラッドの内側でコアロッドを支持するための下部クラッドのより小さい内径)を必要としないという明確な利点を伴って、2倍(又は更には3倍以上)の長さのクラッド32を収容することもできる。単一又は複数のオーバークラッドの上方への崩壊プロセスは、MCFを製造するために適用することもできる。
【0069】
MCFは、電気通信及びファイバセンサに使用される。
図3は、2つのコアを有するマルチコアファイバ100を示す。各コアにおいて、コア領域は、共通の外側クラッド領域に直接隣接している。第1のコアは、コア領域120及び共通の外側クラッド136を含む。コア領域120は、124で示される半径r1を有する。第2のコアは、コア領域130及び共通の外側クラッド136を含む。コア領域130は、134で示される半径r2を有する。共通外側クラッド領域136は、114で示される半径Rを有し、コア領域120及び130の中心線間の間隔は、116で示される。
【0070】
偏光モード分散(PMD)は、MCFにとって問題である。PMDは、通常は同じ速度で進行する導波管内の光の2つの異なる偏光が、ランダムな不完全性及び非対称性及び幾何学的歪みに起因して異なる速度で進行し、光パルスのランダムな拡散を引き起こすモード分散の形態である。困難であるが、防止(又は少なくとも最小化)又は補償されない限り、PMDは、最終的に、データがファイバを介して伝送され得るレートを制限する。
【0071】
理想的な光ファイバでは、コアは完全に円形の断面を有する。理想的な場合、基本モードは、同じ速度で進行する2つの直交偏光(電界の向き)を有する。ファイバを介して伝送される信号は、ランダムに偏光される(すなわち、これら2つの偏光のランダムな重ね合わせ)が、2つの偏光が同一に伝搬する(縮退する)ので、理想的なファイバでは問題にならない。しかしながら、実際のファイバでは、円形対称性を破壊するランダムな不完全性が存在し、2つの偏光を異なる速度で伝搬させる。実際の場合には、信号の2つの偏光成分はゆっくりと分離し、パルスを拡散させて重複させる。不完全性はランダムであるので、パルス拡散効果は、ランダムウォークに対応し、したがって、伝搬距離Lの平方根に比例する平均偏光依存時-微分Δτ(微分群遅延とも呼ばれる)を有する。
【数1】
D
PMDは、ファイバのPMDパラメータであり、典型的には
【数2】
で測定され、欠陥の強度及び周波数の尺度である。
【0072】
PMDを引き起こす対称性破壊ランダム不完全性は、いくつかのカテゴリに分類される。第1に、屈折率自体が偏光に依存する応力誘起材料複屈折がある。第2に、幾何学的歪み又は非対称性、例えば、MCF母材の断面形状に対するクラッド非円形性及び(特に周辺コアに対する)コアの楕円性がある。これらの影響は両方とも、製造における不完全性(決して完全ではないか、又は応力がない)、又は現場でファイバに加えられる熱応力及び機械応力(更に、後者の応力は一般に時間とともに変化する)のいずれかに起因し得る。本開示の製造プロセスは、幾何学的歪みを低減することに焦点を当てている。
【0073】
ファイバクラッドの非円形性に関する問題は、(1)ファイバ接合中の位置合わせ誤差及び接合損失、並びに(2)ファイバコアの楕円性に対するその負の影響である。ファイバコア楕円性、特にMCFにおける周辺コアの楕円性は、ファイバのPMDの増加と強い相関関係を有する。したがって、円形断面形状のMCF母材におけるコア楕円性及びクラッド非円形性を最小化することが非常に重要である。
【0074】
図4A(7コアMCF)及び
図4B(4コアMCF)は、断層撮影屈折率プロファイル測定で得られたMCF母材断面画像の2つの例を示す。
図4Aの7コアMCFの例は、母材外径(すなわち、六角形の形状)のクラッド非円形性と、6つの周辺コアのコア楕円性の両方を明確に示す。クラッド非円形性(non-circularity、NC)は約0.24%である。以下の表Iは、7つのコアの各々についてのコア楕円性(「内部コアNC%」と表示される)を要約する。
【0075】
【0076】
7コアMCFの例では、母材外径プロファイルも六角形に近く、周辺コア楕円性は約20%に達し、これはファイバのPMD性能に非常に有害である。
【0077】
図4Bの4コアMCFの例の幾何学的歪みは、7コアMCFの例よりもはるかに深刻ではない。クラッド非円形性は約0.12%である。以下の表IIは、4つのコアの各々についてのコア楕円性を要約する。
【0078】
【0079】
4コアMCFの例のコア楕円性は、3%~4%の範囲である。この範囲は、Nortel(Ottawa,Canada)から入手可能なコヒーレント40 Gbit/s二重偏光直交位相シフトキーイング(DP-QPSK)トランシーバのようなPMD補償デバイスの助けを借りて許容できる。C.Laperle et al.,「WDM Performance and PMD Tolerance of a Coherent 40-Gbit/s Dual-Polarization QPSK Transceiver」,Journal of Lightwave Technology,Vol.26,No.1(Jan.1,2008).参照。PMD補償デバイスは、ファイバ内のPMDを補償するために偏光コントローラを使用する。本質的に、デバイスは、ファイバの出力を2つの主偏光(通常、周波数による時間遅延の一次変動がない偏光)に分割し、それらを再同期させるために差分遅延を適用する。PMD効果はランダムであり、時間に依存するので、この補償は、時間にわたってフィードバックに応答する能動デバイスを必要とする。このような要求は、補償デバイスを比較的高価かつ複雑にする。PMDが依然として一般的に使用されているより低いデータレートにおける制限要因ではないという事実と組み合わせると、このことは、PMD補償デバイスが大規模通信システムにおいて制限された展開を見てきたことを意味する。したがって、ファイバPMD及び帯域幅性能が最大化されるように、MCF母材における非円形性又は楕円性の幾何学的歪みを最小限に抑えることが非常に望ましい。
【0080】
開示されたプロセスの目標は、2つのタイプの幾何学的歪み、すなわち母材の非円形性及びコアの楕円性を防止するか、又は少なくとも最小限に抑えることである。別の言い方をすれば、目標は、特に周辺コアについて、最小のコア楕円性を有する円形形状のMCF母材を達成することである。所与のMCF設計に対して、非円形性及び楕円性におけるこれらの歪みは、開示された母材製造プロセス中に最小化される。このプロセスは、2つの主な態様を有し、(1)コアロッドと有孔シリンダの孔との間の間隙を適切に設計し、有孔シリンダの直径を最適化することによって、並びに(2)コアロッド及びクラッド崩壊プロセス中の温度勾配及び粘度勾配並びにガラス流の正確な理解及びモデル化に基づいて熱処理条件を最適化することによって、非円形性及び楕円性を最小限に抑える。これら2つの態様の各々の説明は以下の通りである。
【0081】
A.幾何学的パラメータの最適化
MCFを作製するために使用される3つの異なる製造プロセスの間で区別を行うことができる。3つの代替プロセスは、「スタックアンドドロー」プロセス、「グレインイン管」プロセス、及び穿孔プロセスである。以下、3つのプロセスのそれぞれについて順に説明する。
【0082】
「スタックアンドドロー」プロセスでは、個々のコア及びフィラーロッドが六角形に積み重ねられ、真空下でクラッド管内で一緒に溶融され、同時にファイバに延伸又は引き伸ばされる。スタックアンドドロープロセスは、欧州特許出願公開第1002249(A1)号明細書(Corning Inc.)及び欧州特許出願公開第2320256(A1)号明細書(Furukawa Co.Ltd.)の主題である。このプロセスの利点は、このプロセスが速く、追加の機械的処理を必要としないことである。欠点は、設計の多様性が減少すること(六角形パッキング)と、散乱による予想されるより高いクロストーク及び光損失(多数の歪んだ内部界面)である。体積スケーリングも、スタックアンドドロープロセスを用いて実施することが困難である。
【0083】
第2のプロセスは、グレインイン管プロセス(パウダーイン管プロセス又はサンドプロセスとも呼ばれる)である。サンドプロセスは、特開2019-081681A(古河株式会社)及び特許5995298B1(日本電信電話株式会社)の主題である。個々のコアは、設計仕様に従ってジャケット管内に配置され、残りのキャビティは石英ガラス粉末で充填される。一方ではコアの幾何学的位置決め精度を管理し、他方ではサンドプロセスを用いて欠陥のないクラッドの生成を管理することは非常に困難である。
【0084】
第3のプロセス(穿孔プロセス)は、制限なく所望の設計仕様に従って穿孔され、次いでその孔がコアロッドで充填されるクラッドシリンダを含む。その後のステップでは、シリンダがコアロッド上に崩壊され、次いで(任意選択で)適切なサイズに延伸されるか、又は直接ファイバに引き伸ばされる。崩壊ステップ及び延伸ステップは、1ステップで行うこともできる。表面欠陥及び幾何学的アーチファクトの排除は、穿孔プロセスの直接ファイバ引き伸ばしステップにおける課題である。
【0085】
ファイバ組成の幾何学的態様から、本質的な要因は、コアの絶対半径方向位置及び絶対方位角位置、並びにファイバに沿ったコアの変動である。したがって、コアサイズ、位置、及び形状、並びにクラッド円形性に関して、高精度母材の製造が非常に望ましい。開示されるプロセスは、精密に機械加工されたMCFシリンダを作製し、MCFシリンダとコアロッドとを融合して高い幾何学的精度で母材を形成する堅牢なオーバークラッドプロセスを確立することができる。多孔シリンダを作製するために使用される穿孔プロセスは、現在、体積スケーリングの最大の可能性を有する高精度マルチコアファイバを製造するための最も有望なプロセスである。本開示では、同じ絶対機械加工精度で、MCFコア及びクラッド円形性の最大精度が最終MCF母材又はファイバに対して達成され得るように、最大シリンダ体(約250mmまでの直径を有する)が機械加工される。
【0086】
したがって、本プロセスは、穿孔して、(中心孔を伴う又は伴わない)多孔又は有孔シリンダを生成することを含む。開示されたプロセスは、約150mm~250mm、好ましくは約200mm以上の範囲のODを有するガラスシリンダ(母材のクラッドを形成する)を提供することによって開始する。シリンダのサイズが比較的大きいので、シリンダに孔を正確に穿孔することが容易になる。孔位置の誤差は、より大きいシリンダの外径(OD)サイズのパーセンテージ未満である。ガラスシリンダは、中実であってもよく、又は中心孔を有してもよい(ガラスシリンダを作製するためにマンドレルが使用された場合、中心孔が存在する)。(コアロッドを受け入れる)周辺孔又は側孔は、シリンダ内に注意深くかつ非常に正確に形成される(例えば、穿孔される)。
【0087】
穿孔されたシリンダが得られると、開示されたプロセスにおける次のステップは、穿孔されたMCFシリンダを有する母材を作製することである。ガラスロッドが孔に挿入されて、周辺コア(及び任意選択で中心コア)が作製される。次に、MCF母材は、複数のコアロッド上に多孔シリンダを崩壊し、任意選択で延伸することによって製造される。この崩壊ステップは、従来の下方への引き伸ばしプロセス又は上述の上方への崩壊プロセスのいずれかを使用して完了することができる。母材製造プロセスにおける導波路(クラッド対コア)の歪みを最小限に抑えるために、このプロセスは、重力によるクラッドガラスとコアガラスの軸方向流の差が最小限に抑えられるように、(上述したような)上方引き伸ばしプロセスステップを組み込むことが好ましい。
【0088】
上方引き伸ばしプロセスでは、自由移動コアロッド及び自立コアロッドは、好都合に積み重ねられ、シリンダ底部から支持される。半径方向の崩壊と軸方向の延伸は互いに直交しており、半径方向及び軸方向の両方のガラス流の完全かつ正確な制御を提供する。任意の所望の母材ODは、クラッド対コア導波路比における最小の歪み及び半径/方位角コア位置における最高の精度で達成することができる。
【0089】
母材を作製するために、穿孔された孔の内側のコアロッド上にMCFシリンダを崩壊するステップは、延伸を伴って、又は伴わずに行われることができる。MCFシリンダからの異なる幾何学的特徴(楕円性、反り、サイディング、偏心、及び孔位置など)の精度は、延伸操作なしの完全崩壊を使用して、最終母材において最大限に維持することができる。しかしながら、母材のODは、MCFシリンダのODよりわずかに小さくなるように制限される(延伸がない場合)。
【0090】
したがって、穿孔された孔の内側にコアロッドを有するMCFシリンダは、母材を作製するために加熱されている間に崩壊及び延伸されることが好ましい。この完全崩壊及び延伸操作は、大きな可撓性を提供し、ファイバ製造業者の引き伸ばし能力に適合させることができる範囲の母材ODの製造を可能にする。(典型的には、母材は後で光ファイバに引き伸ばされる。)延伸ステップはシリンダのODを減少させる。MCFシリンダに孔を形成するステップは、コアロッド及びガラスシリンダを加熱するステップの前後におけるコア部の位置ばらつきを考慮して所定の位置に周辺孔を形成するように構成される。その結果、この操作により、複数のコア部が仕様の設計通りの所定の位置に正確に配置されたMCF母材を容易に製造することができる。
【0091】
母材内の周辺コアの楕円性(又は非円形性)は、4つの代替方程式のいずれか1つを使用して計算することができる。具体的には、楕円性=(1)(最大直径-最小直径)÷平均直径、又は(2)長軸の変化+短軸の変化である。楕円性はまた、(3)方位角方向及び半径方向内向きのガラス流の効果のおおよその合計である。この第3の式は、選択された基準軸からの距離、選択された基準方向に対する軸からの方向、及び軸に垂直な選択された基準面からの距離によって点位置を指定する3次元座標系であるシリンダ座標系を呼び出す。後者の距離は、基準面のどちらの側が点に面しているかに応じて、正の数又は負の数として与えられる。軸からの距離は、半径方向距離又は半径と呼ばれることがあり、角度座標は、角度位置又は方位角と呼ばれることがある。
【0092】
最後に、楕円性は、(4)約α(g/d)+β(G/D)であり、ここで、α及びβは、プロセス条件及びMCF幾何学的設計に依存する比例定数であり、シリンダの直径はDであり、中心コアロッドと中心孔との間の間隙はGであり、周辺孔の直径はdであり、周辺コアロッドと周辺孔との間の間隙はgである。したがって、コアロッド及び神聖(holy)シリンダの準備の観点から、幾何学的パラメータに向けられた以下のステップが、周辺コア楕円性を低減するのに役立つはずであることが明らかである。(a)全オーバークラッド間隙G及び周辺孔間隔gを減少させる、(b)有孔シリンダの直径Dを増加させる、(c)主軸に対するコアロッドの「押しつぶし」又は「平坦化」方位ガラス流の影響g/dを低減し、(d)短軸に対するコアロッドガラスの内向き半径流の影響G/Dを低減する。
【0093】
これらのステップでは、プロセスは、パラメータg及びGを約4mm以下に維持するが、孔へのコアロッド挿入がより実際的であるように閾値(0.2mmなど)より大きくする。したがって、パラメータg及びGは、約0.2mm~4mm、より好ましくは約0.2mm~3mm、更により好ましくは約0.2mm~2mm、最も好ましくは約0.2mm~1mmの範囲であってもよい。パラメータg及びGは更に、約0.3mm~4mm、より好ましくは約0.3mm~3mm、更により好ましくは約0.3mm~2mm、最も好ましくは約0.3mm~1mmの範囲であってもよい。パラメータg及びGは更に、約0.5mm~4mm、より好ましくは約0.5mm~3mm、更により好ましくは約0.5mm~2mm、最も好ましくは約0.5mm~1mmの範囲であってもよい。パラメータg及びGは、更に約0.6mm~1mm、より好ましくは約0.6mm~0.8mmの範囲であってもよい。有孔シリンダの直径(D)は、可能な限り大きく、少なくとも約200mm又はそれより大きいものであるべきである。
【0094】
したがって、開示されたプロセスは、幾何学的パラメータを最適化することによって非円形性及び楕円性を最小化する。具体的には、コアロッドと有孔シリンダの孔との間の間隙及び有孔シリンダの直径が最適化される。第2の主な態様では、開示されるプロセスは、コアロッド及びクラッド崩壊プロセス中の温度勾配及び粘度勾配並びにガラス流の正確な理解及びモデル化に基づいて熱処理条件を最適化することによって、非円形性及び楕円性を最小限に抑える。
【0095】
B.熱処理条件の最適化
母材アセンブリ(有孔シリンダ+コアロッド)の所与の設計に対して、クラッドの非円形性及びコアの楕円性を最小限に抑える別の方法は、神聖(holy)シリンダをコアロッド上に崩壊させる間の正確なガラス流を理解し、したがって熱処理レシピ又は条件をそれに応じて最適化することによるものである。複雑なガラス流を理解し、検証するために、有孔シリンダ崩壊及び引き伸ばしプロセスの多物理学FEM(finite element modeling、有限要素モデリング)が使用されてきた。
図4Aの7コアMCF母材を例として使用して、これは厳しい周辺コア楕円性及び六角形のクラッドを有し、
図5に示されるように2D崩壊のみのモデルが作成された。
【0096】
母材の対称性を利用して、幾何学的形状の半分のみがモデル化される。一定のオーブン温度(2,200°K、2,300°Kなど)が想定され、有孔シリンダの外側表面に放射加熱を提供する。スループット効果をシミュレートする方法として、特定の半径方向温度勾配を形成するために、有孔シリンダ全体の特定の初期温度が想定される(より高いスループットは、より高い半径方向温度勾配をもたらす)。半径方向温度は、
図5に示されるように、母材の縁部において100秒の時間tで測定される。シミュレートされた例の全てについて、t=100秒において、真空下での崩壊をシミュレートするために、950mbarの減圧が1秒以内に適用される。
【0097】
図4Aの周辺コア形状に近似する崩壊した周辺孔形状及び六角形に近づく全体的なクラッド形状をもたらすモデルのランダムな場合から、
図6に示されるようなガラス流速度の大きさの場が観察される。最大ガラス流速が周辺孔と有孔シリンダの外側表面との間で生じることは明らかであり、これがまさに周辺孔及びコアが押しつぶされる理由である。この観察は、周辺孔とシリンダの外側表面との間のガラスの粘度が、シリンダの内側部分の粘度、特に中心孔と周辺孔との間の部分の粘度よりもはるかに低いことを示す。これは、崩壊中の有孔シリンダ内の半径方向温度勾配が大きすぎて、大きな半径方向粘度勾配が生じることを示している。実際には、この半径方向温度勾配を減少させるために、ガラスのスループット、すなわち炉を通る質量流量を減少させる必要があり、その結果、プロセスは、熱が半径方向に伝達するための時間をより長くし、したがって、半径方向温度場をより良好に均一化する。この洞察により、上記のモデル設定で説明したように、有孔シリンダの異なる初期温度レベルが使用されるが、真空崩壊プロセスは、崩壊中の異なるレベルの半径方向温度勾配を模倣するために、及び異なるレベルのスループットの効果を近似する方法として、一定時間(t=100秒)で開始される。
【実施例】
【0098】
本開示の全体的な性質をより明確に示すために以下の実施例を記載する。これらの実施例は本開示を例示するものであり、制限するものではない。FEMは、シミュレーションを介して例を開発するために使用される。
【0099】
オーブン温度と有孔シリンダの初期温度との間の大きな差は、比較的大きな半径方向温度勾配を得るために、及びより高いスループット効果をシミュレートするために使用される。
図7~
図9に示される3つの場合について、オーブン温度は、オーブン温度とシリンダの初期温度との間の同じ差(800°K)を維持しながら、2,400°Kから2,300°Kへと、2,200°Kまで変化させられる。
【0100】
図7Aは、半径方向温度勾配のグラフであり、
図7Bは、第1の場合の有孔シリンダの変形を示す。第1の場合の条件は、オーブン温度=2,400°K、シリンダの初期温度=1,600°K、及びt=100秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は5.2°K/mmである。
【0101】
図8Aは、半径方向温度勾配のグラフであり、
図8Bは、第2の場合の有孔シリンダの変形を示す。第2の場合の条件は、オーブン温度=2,300°K、シリンダの初期温度=1,500°K、及びt=100秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は6.3°K/mmである。
【0102】
図9Aは、半径方向温度勾配のグラフであり、
図9Bは、第3の場合の有孔シリンダの変形を示す。第3の場合の条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=1,400°K、及びt=100秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は7.9°K/mmである。
【0103】
したがって、
図7~
図9から、真空が適用されるt=100秒において、平均温度勾配は、それぞれ、5.2°K/mm、6.3°K/mm、及び7.9°K/mmであることが観察される。これらの比較的大きな温度勾配は、異なるオーブン温度レベルの下で、
図4Aに示される実際の7コアMCF母材の例に非常に近いクラッドの六角形のような形状と同様に、厳しい周辺コア楕円性を生じさせる。
【0104】
モデルは、実際の運転における周辺コア及びクラッド全体の変形を再現することができるので、本開示の製造プロセス中に温度勾配を大幅に低減することによって達成される利点を示すためにモデルを使用することができる。
図10~
図12は、これらの利点を示す3つの場合を示す。以下、場合の各々について説明する。
【0105】
図10Aは、半径方向温度勾配のグラフであり、
図10Bは、第1の場合の有孔シリンダの変形を示す。第1の場合の条件は、オーブン温度=2,500°K、シリンダの初期温度=2,200°K、及びt=100秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は1.1°K/mmである。
【0106】
図11Aは、半径方向温度勾配のグラフであり、
図11Bは、第2の場合の有孔シリンダの変形を示す。第2の場合の条件は、オーブン温度=2,300°K、シリンダの初期温度=2,000°K、及びt=100秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は1.6°K/mmである。
【0107】
図12Aは、半径方向温度勾配のグラフであり、
図12Bは、第3の場合の有孔シリンダの変形を示す。第3の場合の条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=1,900°K、及びt=100秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は2.0°K/mmである。
【0108】
図10~
図12に示されるように、異なるオーブン温度下で、オーブン温度とオーブンの初期温度との間の差は、300°Kとして一定に保たれ、これは、それぞれ、1.1°K/mm、1.6°K/mm、及び2.0°K/mmの温度勾配をもたらした。これらの著しく低い半径方向温度勾配により、周辺孔の半径方向「押しつぶし」効果が著しく低減されることが観察される。したがって、周辺孔及びクラッド全体の両方の円形形状は、はるかに良好に保存される。しかしながら、オーブン温度が高すぎる場合、すなわち2,500°Kである場合、
図10Aに示されるような低い半径方向温度勾配下であっても、周辺孔は、半径方向に押しつぶされる代わりに方位角方向に圧縮され得ることも注目すべきである。
図12A及び
図12Bは、温度勾配が小さい3つの場合のうち、周辺孔形状が最も円形である最良条件に近似した場合を示している。
【0109】
したがって、MCF母材内のクラッドの非円形性並びに孔及びコア(特に、周辺孔及びコア)の楕円性を最小限に抑えるために、本開示のプロセスは、コアロッド上へのシリンダの崩壊中に、有孔シリンダの半径方向温度勾配を低レベルに維持する。ガラススループットを減少させることは、この半径方向温度勾配を減少させるための良好な実用的な方法である。FEM結果によれば、
図4Aの7コアの場合に周辺コア変形を生じさせる半径方向温度勾配は、クラッド及び周辺コアの円形形状を保存するために約70%低減される必要があると推定される。更に、中程度のオーブン温度(約2,200°Kなど)又は最も低い可能なオーブン温度が好ましく、これは、周辺孔が方位角方向に圧縮/押しつぶされるのを防止し、最良の結果を達成するのに役立つ。
【0110】
上述したように、特定の母材設計は中心孔を有する。他の設計はそうではない。開示されたプロセスの性能に対する中心孔サイズの影響を調査するために、7つの孔の例(1つの中心孔及び6つの周辺孔)に対して追加のFEMシミュレーションを完了した。
図13~
図17は、比較的低い半径方向温度勾配についての中心孔サイズの影響を示す。
図13~
図17の条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=1,900°K、及びt=100秒での真空開始である。中心孔の直径は、24mm(
図13)、33mm(
図14)、35.92mm(周辺コアの2つの側で半径方向に等しい厚さ、
図15)、42.5mm(元の値;
図16)、51mm(
図17)がシミュレートされた。シミュレーションの各々についてのクラッド非円形性及び周辺孔楕円性に関する観察結果を表IIIに要約する。
【0111】
【0112】
図18~
図23は、比較的高い半径方向温度勾配についての中心孔サイズの影響を示す。
図18~
図23の条件は、オーブン温度=2,400°K、シリンダの初期温度=1,600°K、及びt=100秒での真空開始である。中心孔の直径は、24mm(
図18)、33mm(
図19)、42.5mm(元の値、
図20)、45mm(
図21)、48mm(
図22)、及び51mm(
図23)がシミュレートされた。シミュレーションの各々についてのクラッド非円形性及び周辺孔楕円性に関する観察結果を表IVに要約する。
【0113】
【0114】
図13~
図23に示されるデータから多くの結論を引き出すことができる。第1に、周辺孔の変形に対する中心孔サイズの影響は大きい。中心孔が比較的小さく、したがって中心孔と周辺孔との間の厚さ(t1)が周辺孔とクラッド外側表面との間の厚さ(t2)よりもはるかに大きい場合、周辺孔は半径方向により押しつぶされる傾向がある。比較的低い半径方向温度勾配の下で、周辺孔の円形形状を最良に維持するシナリオは、中心孔と周辺孔との間の厚さ(t1)が、周辺孔とクラッド外側表面との間の厚さ(t2)と等しいか、又はそれよりわずかに小さいときである。最良のシナリオは、比較的低い温度勾配の下で0.7
*t2<t1≦t2として推定される。t1がt2よりはるかに小さい場合、すなわち、中心孔が周辺孔よりはるかに大きい場合、周辺孔は方位角方向に圧縮される傾向がある。一方、t1がt2よりも非常に大きい場合、周辺コアは半径方向に押しつぶされる傾向がある。最後に、周辺孔/周辺コア間の間隙(直径差)がクラッドODの1.5%(すなわち、2mm/134mm)であるとき、周辺コア楕円性は、低い温度勾配と0.7
*t2<t1≦t2とを組み合わせた最良のレシピを用いて、≦0.2%に維持することができる。
【0115】
開示されたプロセスの性能に対するクラッドサイズの影響を調査するために、7つの孔の例(1つの中心孔及び6つの周辺孔)に対して追加のFEMシミュレーションを完了した。
図24~
図26は、比較的低い半径方向温度勾配についてのクラッドサイズの影響を示す。
図24~
図26の条件及び観察結果を以下に要約する。
【0116】
図24に示されるシミュレーションの条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=1,900°K、及びt=100秒での真空開始である。中心孔の直径は42.5mm(元の値)であり、クラッドODは134mmである。
図24は、周辺コア半径方向押しつぶし効果が著しく低減され、クラッド円形形状が良好に保存されることを示す。
【0117】
図25に示されるシミュレーションの条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=1,900°K、及びt=120秒での真空開始(半径方向温度勾配がほぼ同じ2.0°K/mmを達成する時間を可能にするため)である。134mmのクラッドOD設計は、167mmのOD設計まで比例的に拡大される。
図25は、周辺コア半径方向押しつぶし効果が著しく低減され、クラッド円形形状が良好に保存されることを示す。
【0118】
図26に示されるシミュレーションの条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=1,900°K、及びt=145秒での真空開始(半径方向温度勾配がほぼ同じ2.0°K/mmを達成するための時間を可能にするため)である。134mmのクラッドOD設計は、200mmのOD設計まで比例的に拡大される。
図26は、周辺コア半径方向押しつぶし効果が著しく低減され、クラッド円形形状が良好に保存されることを示す。
【0119】
図24~
図26に示すデータから重要な結論を引き出すことができる。例えば、有孔シリンダ設計が、134mmのODから200mmのODまで比例的に拡大された場合、半径方向温度勾配が同じに保たれる限り、クラッドの円形性又は周辺孔楕円性には本質的に変化がない。
【0120】
開示されたプロセスの性能に対する温度勾配の影響を調査するために、中心孔のない4孔の例に対して追加のFEMシミュレーションを完了した。
図27~
図29は、比較的低い半径方向温度勾配の影響を示す。
図27~
図29の条件及び観察結果を以下に要約する。
【0121】
図27に示されるシミュレーションの条件は、オーブン温度=2,400°K、シリンダの初期温度=1,600°K、及びt=65秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は6.0°K/mmである。周辺孔直径は43mmであり、クラッドの中心までの距離は33.94mmであり、クラッドODは150mmである。
図27は、周辺コア半径方向押しつぶし効果が顕著であり、クラッド円形形状が正方形形状に変形することを示す。
【0122】
図28に示されるシミュレーションの条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=1,900°K、及びt=65秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は2.0°K/mmである。周辺孔直径は43mmであり、クラッドの中心までの距離は33.94mmであり、クラッドODは150mmである。
図28は、周辺コア半径方向押しつぶし効果があまり有意ではなく、平坦化された端が代わりにクラッドの中心付近にあり、クラッド円形形状が良好に保存されることを示す。
【0123】
図29に示されるシミュレーションの条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=2,000°K、及びt=65秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は1.2°K/mmである。周辺孔直径は43mmであり、クラッドの中心までの距離は33.94mmであり、クラッドODは150mmである。
図29は、周辺コア半径方向押しつぶし効果があまり有意ではなく、平坦化された端が代わりにクラッドの中心付近にあり、クラッド円形形状が良好に保存されることを示す。
【0124】
いくつかの結論が、中心孔のない4コア設計のための
図27~
図29に提示されるデータから引き出され得る。第1に、半径方向温度勾配が比較的高い場合、周辺孔は、それらの平坦化された端がクラッドの外側表面に向かって半径方向に押しつぶされる。そして、クラッド円形形状が正方形形状に変形する。第2に、半径方向温度勾配が比較的低い場合、周辺孔は、それらの平坦化された端がクラッドの中心に向かって半径方向に押しつぶされる。そして、クラッドの円形形状は良好に保存される。これは好ましいシナリオであり、実際の運転の場合であった。
【0125】
開示されたプロセスの性能に対する中心孔の影響を調査するために、4孔の例に対して追加のFEMシミュレーションを完了した。
図30及び
図31は、比較的低い半径方向温度勾配についての中心孔の影響を示す。
図30及び
図31の条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=2,000°K、及びt=65秒での真空開始である。平均半径方向温度勾配は1.2°K/mmである。周辺孔直径は43mmであり、クラッドの中心までの距離は33.94mmであり、クラッドODは150mmである。
図30の設計は中心孔を有していない。
図30は、周辺コア半径方向押しつぶし効果があまり有意ではなく、平坦化された端が代わりにクラッドの中心付近にあり、クラッド円形形状が良好に保存されることを示す。
図31の設計は、直径20mmの中心孔を有する。
図31は、この場合に周辺孔よりもはるかに小さい中心孔を追加しても、周辺孔楕円性を低減するのにあまり役立たないことを示す。
【0126】
開示されたプロセスの性能に対するクラッドサイズの影響を調査するために、中心孔のない4孔の例に対して追加のFEMシミュレーションを完了した。
図32及び
図33は、比較的低い半径方向温度勾配についてのクラッドサイズの影響を示す。
図32及び
図33の共通の条件は、オーブン温度=2,200°K、シリンダの初期温度=2,000°K、平均半径方向温度勾配=1.2°K/mm、周辺孔直径=43mm、及びクラッドの中心までの距離=33.94mmである。
図32の設計は、t=65秒で真空開始し、クラッドOD=150mmである。
図33の設計は、t=85秒で真空開始し、クラッドOD=200mmである。
図32及び
図33のいずれも、周辺コア半径方向押しつぶし効果があまり有意ではなく、平坦化された端が代わりにクラッドの中心付近にあり、クラッド円形形状が良好に保存されることを示す。
【0127】
重要な結論を、
図32及び
図33に示されるデータから引き出すことができる。例えば、有孔シリンダ設計が、150mmのODから200mmのODまで比例的に拡大された場合、半径方向温度勾配が同じに保たれる限り、クラッドの円形性又は周辺孔楕円性には本質的に変化がない。
【0128】
図34は、開示されたプロセス500の一実施形態のステップを要約するフロー図である。第1のステップ510において、少なくとも約200mmのODを有するガラスシリンダが提供される。第2のステップ520では、ガラスシリンダに穿孔して有孔シリンダを作製する。孔は、周辺孔と、任意選択で中心孔とを含む。ステップ520は、周辺コアロッドと周辺孔との間の間隙(g)を約0.2mm~4mmの範囲に維持しながら完了する。第3のステップ530では、ガラスロッドが孔に挿入されて、周辺コア(及び任意選択で中心コア)を作製する。第4のステップ540では、多孔(すなわち、有孔)シリンダが、複数のコアロッド上に崩壊される(及び、任意選択で延伸される)。ステップ540は、コアロッドとシリンダとの間の崩壊が始まる平面において、平均半径方向温度勾配を特定の範囲内に維持しながら完了する。
【0129】
半径方向温度勾配は、約0.5°K/mm~4°K/mm、より好ましくは約0.5°K/mm~3°K/mm、更により好ましくは約0.5°K/mm~2°K/mm、最も好ましくは約0.5°K/mm~1°K/mmの範囲であってもよい。半径方向温度勾配は更に、約1°K/mm~4°K/mm、より好ましくは約1°K/mm~3°K/mm、更により好ましくは約1°K/mm~2°K/mmの範囲であってもよい。半径方向温度勾配は更に、約2°K/mm~4°K/mm、より好ましくは約2°K/mm~3°K/mmの範囲であってもよい。半径方向温度勾配はまた、約3°K/mm~4°K/mmの範囲であってもよい。
【0130】
上で開示したこの製造プロセスは、工業規模のマルチコア母材及びファイバに対して、再現性があり、正確であり、コスト及び時間効率が高い。電気通信用途のためのMCF母材及びファイバの製造が意図される。
【0131】
好ましい実施形態の前述の説明は、特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものとしてではなく例示するものとして解釈されるべきである。容易に理解されるように、特許請求の範囲に記載の本発明から逸脱することなく、上述の特徴の多数のバリエーション及び組み合わせを利用することができる。そのようなバリエーションは、本発明の趣旨及び範囲からの逸脱とはみなされず、そのようなバリエーションは全て、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。例えば、本書において記載されている全ての広義の範囲は、広義の範囲に含まれる全ての狭義の範囲もその範囲に含まれることが明示的に意図されている。当業者によって理解されるように、プロセスに含まれる特定のステップが省略されてもよいことも明確に意図される。特定の追加のステップが追加されてもよく、ステップの順序は、記載された特定の順序から変更されてもよい。
【国際調査報告】