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特表2024-546792冶金炉において鉄合金を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】冶金炉において鉄合金を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 11/00 20060101AFI20241219BHJP
   C21C 5/52 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C21B11/00
C21C5/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534669
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 IB2022062279
(87)【国際公開番号】W WO2023111927
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021000031460
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524219854
【氏名又は名称】パイペックス エナジー ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】PIPEX ENERGY S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ルカ オレフィチ
(72)【発明者】
【氏名】カルロ マペッリ
【テーマコード(参考)】
4K012
4K014
【Fターム(参考)】
4K012CA07
4K012CA09
4K014CB05
(57)【要約】
本発明は、鉄合金の製造方法であって、(a)冶金炉内で鉄金属投入を溶かして溶融金属の塊を得るステップと、(b)ステップ(a)の前、ステップ(a)の間、および/またはステップ(a)の後に、(i)ポリエチレンを含む50重量%~97重量%のポリマー成分と、(ii)3重量%~50重量%の金属アルミニウムと、を含む、少なくとも1つの顆粒状複合材料を、炉に供給するステップと、を含み、重量パーセンテージは、ポリマー成分(i)および金属アルミニウム(ii)の総重量を指す、鉄合金の製造方法に関する。複合材料は、飲料用カートンの使用済み廃棄物および/または飲料用カートン製造プロセスからのスクラップのリサイクルから得られることが好ましい。複合材料には、スラグ化剤、リサイクルされたポリマー材料、炭素源、セルロース系材料、金属、金属酸化物、鉄合金、炭酸塩などの1つ以上の追加材料を投入し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄合金の製造方法であって、
(a)冶金炉内で鉄金属投入を溶かして溶融金属の塊を得るステップと、
(b)ステップ(a)の前、ステップ(a)の間、および/またはステップ(a)の後に、
(i)ポリエチレンを含む50重量%~97重量%のポリマー成分と、
(ii)3重量%~50重量%の金属アルミニウムと、
を含む、少なくとも1つの顆粒状複合材料を、前記炉に供給するステップと、を含み、
前記パーセンテージは、前記ポリマー成分(i)および前記金属アルミニウム(ii)の総重量を指す、
鉄合金の製造方法。
【請求項2】
前記顆粒状複合材料は、ポリエチレンと金属アルミニウムとを含む少なくとも1つの多層材料を含み、前記多層材料は、好ましくは、前記顆粒状複合材料の金属アルミニウムの総重量の少なくとも50重量%が前記多層材料によって提供されるような量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー成分(i)は、前記ポリマー成分(i)と前記金属アルミニウム(ii)との総重量に対して70重量%~95重量%の範囲、好ましくは75重量%~90重量%の範囲で前記顆粒状複合材料中に存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記顆粒状複合材料は、前記ポリマー成分(i)と前記金属アルミニウム(ii)との総重量に対して5重量%~30重量%の範囲、好ましくは10重量%~25重量%の範囲の量の金属アルミニウムを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー成分(i)は、前記ポリマー成分(i)の重量に対して70重量%以上の量、好ましくは85重量%以上の量、さらに好ましくは90重量%以上の量、さらに好ましくは95重量%以上の量のポリエチレンを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記顆粒状複合材料は、前記ポリマー成分(i)および前記金属アルミニウム(ii)の総重量に対して0.5%~20%の範囲の量、好ましくは2%以下の量の、セルロース繊維を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記顆粒状複合材料は、前記ポリマー成分(i)および前記金属アルミニウム(ii)の総重量に対して5重量%以下の量の水を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記顆粒状複合材料は、少なくとも1つの炭素質材料、好ましくは生物起源の炭素質材料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記顆粒状複合材料は、スラグ化剤、リサイクルポリマー材料、炭素源、セルロース系材料のうちの1つ以上との物理的混合物の形で冶金炉に供給される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記顆粒状複合材料は、スラグ化剤、リサイクルポリマー材料、炭素源、セルロース系材料、金属、金属酸化物、鉄合金、および炭酸塩のうちの1つ以上を含む凝集体形状で冶金炉に供給される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記顆粒状複合材料は、化石または生物起源の少なくとも1つの炭素源を含み、好ましくは、チャー、バイオチャー、木質バイオマス、無煙炭、冶金コークス、焼成石油コークス、グラファイト、およびそれらの混合物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記チャーまたはバイオチャーは、ガス化、熱分解、焙焼、水熱炭化または蒸気爆発、好ましくは焙焼または蒸気爆発から選択されるプロセスによって得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リサイクルポリマー材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミドのうちの1つ以上を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
ポリエチレンおよび金属アルミニウムを含む前記リサイクル多層材料は、飲料用カートンの使用済み廃棄物および/または飲料用カートン製造プロセスからのスクラップのリサイクル処理から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記冶金炉は、電気アーク炉、酸素転炉(BOF)、転炉、高炉、好ましくは電気アーク炉から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記冶金炉は、電気アーク炉であり、ステップbは、浮遊スラグ層の近傍の溶融金属塊内および/または浮遊スラグ層内に前記顆粒状複合材料を分散させることを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
顆粒状複合材料の使用であって、
(i)ポリエチレンを含む50重量%~97重量%のポリマー成分と、
(ii)3重量%~50重量%の金属アルミニウムと、
を含み、
前記重量パーセントは、冶金炉における鉄合金製造プロセスにおけるポリマー成分(i)および金属アルミニウム(ii)の総重量を指し、前記複合材料は、燃料、還元剤、発泡スラグ形成剤、脱酸素剤、再炭化剤、または前記機能の組み合わせのうちの1つ以上の機能を果たす、
顆粒状複合材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金炉で鉄合金を製造する方法に関する。特に、本発明は、環境への影響を低減したことによって特徴づけられる、冶金炉で鉄合金を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、例えば鋼鉄または鋳鉄などの鉄合金は、金属鉱石または鉄スクラップなどの鉄系材料から、さまざまなタイプの冶金炉(例えば電気アーク炉、高炉、転炉など)で製造される。冶金炉では、出発鉄系材料を、溶融金属塊を得るまで高温(約1300~2000℃)で処理し、次いで、最終合金の望ましい化学組成を得るために精製して凝固させる。
【0003】
鉄合金製造ステップの各段階では、例えば、化学エネルギー源(燃料)、還元剤、発泡スラグ形成剤など、さまざまな機能を持つ、炭素源、つまり炭素を含有する材料が使用される。
【0004】
最も一般的に使用される炭素源は、無煙炭、冶金コークス、焼成石油コークス、チャー、グラファイトなどの化石起源のものである。例えば、電気アーク炉(EAF)製鋼プロセスの場合、炭素源は、溶融される鉄系材料と一緒に燃料として投入されるかもしくは鉄系材料の溶融ステップ中に注入されるか、または溶融金属浴およびスラグに注入されて鉄酸化物を還元しおよび/または発泡スラグの形成を促進し、プロセスのエネルギー効率を高め、電極の消費を制限し、水の強制循環によって冷却される炉の耐火物およびパネルを保護する。
【0005】
しかし、冶金炉において化石由来の材料を使用すると、これらの材料の酸化によって生成される気候変動を引き起こす、主にCOの、排出が多量に発生するため、環境に大きな影響を与える。
【0006】
環境への影響を制限するために、プラスチックおよびゴムなどの廃棄物の回収から得られる炭素含有ポリマー材料を化石炭素源の部分的な代替品として使用することが従来技術で知られている。実際、ポリマー材料は主に炭素原子と水素原子とを含有する長いポリマー鎖からなるため、溶融プロセス中に熱エネルギーを提供し得、または溶融金属浴内で還元剤として機能し得る。これらの材料を使用すると、工業プロセスおよび使用済み製品からの廃棄物またはスクラップを有効活用できるという利点を有する。
【0007】
ポリマー材料は、しばしば、ポリマー材料に加えて、さまざまな量の従来の炭素源、またはスラグ剤(石灰、ドロマイトなど)などの冶金プロセスで概して使用される他の材料を含有する物理的混合物の形で冶金炉に導入される。混合物は、概して、粉末、顆粒、ペレット、またはより大きなサイズの細分化された単位の混合物である。
【0008】
複合材料の形態、すなわち、少なくとも第2の材料が分散されたポリマー材料からなるマトリックスから形成された凝集体の形態で、ポリマー材料を冶金炉に導入することも知られている。
【0009】
例えば、米国特許第5554207号明細書は、酸素転炉またはEAFにおける鉄鋼生産プロセスにおいて、水不溶性熱可塑性ポリマーおよび微細金属粒子の組み合わせについて記載している。熱可塑性ポリマーは、使用済み廃棄物から回収したポリマーが好ましく、一方、金属粒子は、溶融炉からの燃焼煙を濾過して得られる。これら2つの材料は、例えば押出機内で加熱しながら混合され、熱可塑性ポリマーが金属粒子の結合剤として作用する凝集体を形成する。使用済み鉄スクラップの投入物に加えられる凝集製品は、溶融炉で金属価を回収し、熱可塑性材料を燃料として利用するための媒体として使用される。
【0010】
国際公開第2012/019216号は、EA炉プロセスを含む高温プロセスにおける熱可塑性プラスチックと炭素含有材料とを含む複合製品の使用について記載している。炭素含有材料の代わりとしてまたは炭素含有材料に加えて、複合製品には金属含有材料を含有させ得る。国際公開第2012/019216号の例では、複合材料は、約3kg程度の比較的高質量のブロックの形で押し出し成形によって製造される。ブロックは、スクラップ投入物に加えて、鉄鋼生産プロセスで補助燃料として使用され得る。また、複合製品は、建築材料または保護材料としても使用され得る。
【0011】
プラスチック廃棄物またはスクラップのリサイクルからのポリマー材料を冶金プロセスで使用するさらなる例は、国際公開第2020/230177号および国際公開第2020/188615号に記載されている。
【0012】
冶金プロセスで使用されるポリマー材料の1つは、都市廃棄物の分別収集(例えば、食品、飲料、洗剤などのための容器)からのプラスチックの処理および選別プロセスの最後に残る材料の一部である。この画分はPlasmixという名称でも知られている。
【0013】
上記のプラスチック処理および選別プロセスは、主にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)の回収を目的としており、これらは新しいプラスチック製品の製造プロセスでリサイクルされ得る。回収されなかったポリマー材料の残留分画、すなわちPlasmixは、さまざまな量の汚染物質(例えば、紙、金属、ガラス、顔料など)に加えて、例えば、重量において、40~50%のポリエチレン(PE)、20~30%のポリプロピレン(PP)、10~20%のポリスチレン(PS)、5~10%のポリエチレンテレフタレート(PET)、および2~4%のPVCの割合の組成のポリマー材料の混合物からなる。
【0014】
しかし、冶金におけるPlasmixの使用にはいくつかの欠点を有する。まず、Plasmixは、その原料となる廃棄物の種類が多様であるため、化学組成が非常に不均一で一貫性に欠ける材料である。さらに、これは軽量材料であり、使用前に、冶金炉での輸送、保管、および投与を容易にするために、高密度化および/または顆粒化プロセスを経る必要がある。さらに、Plasmixを高密度化または顆粒化のために熱処理するとき、それを構成するポリマー画分の融点が異なるため、比較的高温に加熱しなければならない。
【0015】
したがって、従来技術では、冶金プロセスにおける化石炭素源の使用によって引き起こされる環境への影響を制限するための新しい解決策を見つける必要がある。
【0016】
上記の従来技術を考慮して、出願人は、冶金炉において、当該技術分野で既知である材料の代替材料を供給して化石起源の炭素源を少なくとも部分的に置き換えて鉄合金を製造する方法を提供するという課題を設定した。
【0017】
特に、本発明の目的は、冶金炉において、当該代替材料を還元剤、発泡スラグ形成剤、燃料、再炭化剤、脱酸素剤として使用し得る、またはこれらの効果の1つ以上の組み合わせを達成するために使用し得る、鉄合金を製造する方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、上記の代替材料を、冶金プロセスに必要なまたは有用な従来の材料などの他の材料を冶金炉に導入するための媒体として有利に使用し得る鉄合金の製造方法を提供することである。
【発明の概要】
【0019】
出願人は、上記の目的および下記の開示でより詳しく説明するその他の目的は、冶金炉において少なくともポリエチレンおよび金属アルミニウムを含む顆粒状複合材料を炉に供給して鉄合金を製造する方法によって達成できることを発見した。
【0020】
好ましくは、上記の顆粒状複合材料は、使用済みおよび/または産業廃棄物または廃棄物の回収から得られ、特に、多層カートン包装のリサイクルプロセスからの材料の残留画分を含むか、またはそれらからなる。多層カートン包装は、飲料用カートンとしても知られており、例えばTetra Pak(登録商標)およびElopak(登録商標)など、企業によって販売されている。多層カートン包装のリサイクルプロセスから生じる上記の残留画分は、PE-Alとしても知られる。PE-Alは、主に少なくとも1層のポリエチレンと少なくとも1層のアルミニウムを含む箔からなる多層材料である。PE-Alは、さらに他のポリマー材料の箔層を含み得る。
【0021】
PE-Al複合体のポリマー成分は主にポリエチレン、すなわち炭素および水素をベースとする有機ポリマーからなり、金属成分はアルミニウムからなるため、この複合材料は、鉄酸化物に対する化学的還元作用(すなわち還元剤または発泡スラグ形成剤として使用すること)と熱量(燃料として使用すること)との両方を利用する冶金プロセスでの使用に特に適している。さらに、ポリマー成分のおかげで、複合材料は金属浴に溶融する炭素源として機能し得、再炭化作用(再炭化剤)を発揮する。
【0022】
PE-Al複合体を使用すると、溶融金属浴、ひいては合金の化学組成が大幅に変化しないという利点をも有する。実際、金属アルミニウムは、鉄酸化物に対する還元作用、または溶融金属浴中に存在するガス状酸素に対する脱酸素作用を行った後、浴表面に移動し、浮遊スラグ層に組み込まれる。金属アルミニウムは溶融プロセス中に発熱化学反応も引き起こし、冶金プロセスのエネルギーバランスの改善に貢献する。
【0023】
PE-Al複合体は多層カートン包装の処理プロセスから得られるため、セルロース繊維の残留物を含み得る。このような残留物は、溶融金属浴の化学組成を変えることなく、生物起源のさらなる還元剤として作用し得る。
【0024】
PE-Al複合体のさらなる利点は、そのポリマー成分がほぼ完全にポリエチレンで構成され、他の種類のポリマーが少量含まれていることである。したがって、複合体の化学組成は均質である。さらに、PE-Al複合体の化学組成は、その原料となる多層カートン包装の組成が実質的に均一であるため、ほとんど変化しない。複合材料のポリマー成分は融点が比較的低いため、さらなる成分(例えば、バイオチャー、生石灰、ドロマイトなど)を含有する可能性のある高密度材料または押し出し材料を調製するために使用される場合、加工性が向上する。
【0025】
さらに、毎年世界中で生産される多層カートン包装廃棄物の量が膨大であることを考慮すると、PE-Al複合体は容易に入手できる材料である。現在、先行技術では、主に埋め立て、焼却によるエネルギー回収、およびバージンLDPEおよびHDPEの部分的な代替品としての複合製品の製造を目的とする。また、PE-Alを熱分解してアルミニウムを回収する(ポリエチレンのエネルギー回収も同時に行う)方法、または、これを選択的溶媒分離プロセスにかけてアルミニウムとポリエチレンを別々にリサイクルする方法も知られている。したがって、鉄合金製造プロセスでPE-Alを使用することは、この廃棄物をリサイクルする貴重で革新的な機会である。
【0026】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、鉄合金の製造方法であって、
(a)冶金炉内で鉄金属投入物を溶かして溶融金属の塊を得るステップと、
(b)ステップ(a)の前、ステップ(a)の間、および/またはステップ(a)の後に、
(i)ポリエチレンを含む50重量%~97重量%のポリマー成分と、
(ii)3重量%~50重量%の金属アルミニウムと、
を含む、少なくとも1つの顆粒状複合材料を、冶金炉に供給するステップと、を含み、
上記の重量パーセンテージは、ポリマー成分(i)および金属アルミニウム(ii)の総重量を指す、
鉄合金の製造方法に関する。
【0027】
第2の態様によれば、本発明は、
(i)ポリエチレンを含む50重量%~97重量%のポリマー成分と、
(ii)3重量%~50重量%の金属アルミニウムと、
を含む、顆粒状複合材料の使用に関し、
上記の重量パーセンテージは、ポリマー成分(i)と金属アルミニウム(ii)との総重量を指し、冶金炉における鉄合金製造プロセスにおいて、上記複合材料は、還元剤、発泡スラグ形成剤、燃料、再炭化剤、脱酸素剤、または当該機能の組み合わせのうちの1つ以上の機能を果たす。
【0028】
本発明のさらなる特徴は、従属請求項2~17の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的に使用可能な顆粒状複合材料は、ポリマー成分と金属成分とを含む。金属成分はポリマー成分内に分散した粒子の形態であることが好ましい。
【0030】
ポリマー成分は、ポリエチレンを含むか、または実質的にポリエチレンからなる。好ましくは、ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。
【0031】
ポリマー成分は、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレンビニルアルコールなどの他のポリマーをも含み得る。好ましくは、ポリエチレン以外のポリマーは、ポリマー成分の30重量%を超えない総量で存在し、より好ましくは15重量%を超えず、さらに好ましくは10重量%を超えず、さらに好ましくは5重量%を超えない。
【0032】
一実施形態では、ポリマー成分は、ポリマー成分の重量に対して70重量%以上の量のポリエチレンを含み、好ましくは85重量%以上の量、より好ましくは90重量%以上の量、さらに好ましくは95重量%以上の量のポリエチレンを含む。
【0033】
好ましくは、ポリマー成分は、ポリマー成分(i)と金属アルミニウム(ii)との総重量に対して60重量%以上の量で、より好ましくは70重量%~95重量%の範囲、さらに好ましくは75重量%~90重量%の範囲で顆粒状複合材料中に存在する。
【0034】
顆粒状複合材料の金属成分は、金属アルミニウムを含むか、または実質的に金属アルミニウムからなる。好ましくは、金属アルミニウムは粒子形状である。
【0035】
金属アルミニウムは、ポリマー成分(i)と金属アルミニウム(ii)との総重量に対して40重量%以下の量で顆粒状複合材料中に存在する。好ましくは、顆粒状複合材料は、ポリマー成分(i)と金属アルミニウム(ii)との総重量に対して5重量%~30重量%の範囲の金属アルミニウムを含み、より好ましくは10重量%~25重量%の範囲の量の金属アルミニウムを含む。
【0036】
顆粒状複合材料は、例えば多層カートン包装のリサイクルプロセス中にプラスチックおよびアルミニウムからセルロース成分が不完全に分離されることから生じるセルロース繊維も含まれ得る。概して、セルロース繊維は、ポリマー成分と金属アルミニウムとの総重量に対して20重量%を超えない量で顆粒状複合材料中に存在し、より好ましくは10重量%を超えない量で存在し、さらに好ましくは0.5重量%~5重量%の範囲の量で存在する。一実施形態では、セルロース繊維は、複合材料の重量に対して2重量%未満の量で顆粒状複合材料中に存在するが、より好ましくは1重量%未満の量で存在する。
【0037】
顆粒状複合材料は、水をも含み得る。好ましくは、顆粒状複合材料は、ポリマー成分(i)および金属アルミニウム(ii)の総重量に対して5重量%以下の量の水を含み、より好ましくは0.5重量%~5重量%の範囲の量の水を含む。
【0038】
好ましくは、顆粒状複合材料中のポリマー成分(i)および金属アルミニウム(ii)の総重量は、複合材料の重量に対して10重量%以上であり、より好ましくは25重量%~100重量%の範囲であり、さらに好ましくは60重量%~100重量%の範囲である。
【0039】
本発明の目的のために、本明細書に記載の顆粒状複合材料は、それが使用される冶金プロセスの特定の要件に応じて、さまざまなサイズ、形状、および重量の細分化されたユニット(顆粒)の形で使用される。
【0040】
「顆粒状」という用語は、複合材料の成分が共に凝集して細分化された単位(顆粒)を形成することを意味する。顆粒の形状およびサイズは大きく異なり得る。顆粒は、例えば、薄片、ペレット、圧縮体、円筒、球、または他の形状の凝集体、さらには不規則な形状であり得る。好ましくは、顆粒は、最大で20mm、より好ましくは最大で10mm、さらに好ましくは最大で5mmの最大サイズを有する。本発明の目的において、これは、顆粒が、それぞれ20mm、好ましくは10mm、より好ましくは5mmの辺を有する四角い網目のふるいを通過し得ることを意味する。
【0041】
本発明において、「最大寸法」という用語は、直径、長さ、幅、厚さなど、他の寸法に対してその範囲が最大である顆粒の特徴的な寸法を意味する。
【0042】
好ましくは、顆粒は250kg/m~900kg/mの範囲、より好ましくは300kg/m~800kg/mの範囲の嵩密度を有する。
【0043】
顆粒状複合材料が少なくとも部分的にバージン材料から得られる可能性は排除されないが、前述のように、廃棄物またはスクラップのリサイクル処理から得られることが好ましい。好ましくは、この材料は、ポリマー画分と少なくとも1つのアルミニウムフィルムとを含むポリラミネート包装から生じる廃棄物から得られる。さらに好ましくは、顆粒状複合材料は、多層カートン包装からのセルロース繊維の分離プロセス(リサイクル)の最後に残った材料の画分を含むか、または実質的にそれから形成される。このような画分は、顆粒状材料を形成するためにそのまま使用され得る。しかし、上記の画分(「PolyAl」とも呼ばれる)は、リサイクルプロセス効果に応じて、依然としてかなりの量の望ましくない残留物質が含まれている場合が多いため、上記の望ましくない残留物質(金属成分、セルロースなど)を除去するかまたは水分含有量を減らすために、さらに予備処理に供することが有利であり得る。
【0044】
一実施形態では、顆粒状複合材料は、ポリエチレンと金属アルミニウムとを含む少なくとも1つの多層材料(以下、「PE-Al複合材料」ともいう)を含む。好ましくは、上記の多層材料は、顆粒状複合材料の金属アルミニウムの総重量の少なくとも50重量%が、より好ましくは、少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、さらに好ましくは50重量%~100重量%が、多層材料によって提供されるような量で、顆粒状複合材料中に存在する。
【0045】
本発明の目的に使用可能なタイプの複合材料を製造するリサイクルプロセスは、当業者に既知である。本発明に従って使用可能なPE-Al複合体が得られる多層カートン包装のリサイクル方法は、例えば欧州特許出願公開0570757号明細書および国際公開第2009/141796号に記載されている。
【0046】
既知のように、多層カートン包装、特に液体食品(例えば、牛乳、フルーツジュース、水、ワインなど)を含有するための包装は、その上に1つ以上のポリマーフィルムが積層されたセルロース繊維のカートン基材と、無菌包装の場合は、光およびガスに対する不浸透性バリアとして機能する少なくとも1つのアルミニウムシートと、を備える。ポリマーフィルムは、概して低密度ポリエチレン(LDPE)とポリ(エチレン-コ-メタクリル酸)フィルムであり、後者はLDPEフィルムをアルミニウムシートに接着する機能を有する。パッケージは、さらに、概して高密度ポリエチレン(HDPE)で作られた閉鎖要素(例えばキャップおよびディスペンサーなど)を含有する。
【0047】
例えば、都市ごみの分別収集で得られた包装材は、リサイクル工程で主にセルロース繊維を回収し、このセルロース繊維は包装材重量の約70%~75%を占める。包装材の残りの部分は、約20重量%~25重量のポリエチレン、および3重量%~5重量%のアルミニウムからなる。
【0048】
例えば、欧州特許出願公開0570757号明細書に記載されている方法によれば、セルロース繊維の回収は、例えば製紙業界で使用されるタイプのパルプ工場(ハイドロパルパー)でカートン包装を水処理することによって行われ得る。この水中での処理によって、セルロース繊維と、遊離ポリマー材料の画分、ポリマー材料とアルミニウムを含む複合材料の画分、および汚染物質(例えば、ガラス、砂、残留セルロース繊維、金属など)の画分を含む固体残留物とを含有する水性分散液(スラリー)が生じ、固体残留物は水性分散液中に懸濁される。
【0049】
分散液から分離されたセルロース繊維は、紙や段ボールの生産サイクルで再び使用される。遊離ポリマー材料画分(すなわち、アルミニウムと複合体を形成しない)は、固体残渣から分離されると、実質的に純粋な形で得られるため、これは、新しい多層カートン包装を製造するためのポリマーフィルムを含む新しいプラスチック製品の製造プロセスでリサイクルするのに適している。
【0050】
残った固体残渣は、例えば水洗浄および沈殿などのさらなる処理にかけられ、残留汚染物質が分離され、複合材料の最終的な画分が回収される。複合材料は、基本的にポリマー材料(主にLDPEおよびHDPE)と金属アルミニウムとの混合物からなり、概して、例えば10~30mmx10~30mm(PE-Al複合材料)のサイズの薄い層状断片の形で得られる。
【0051】
冶金プロセスでの取り扱いおよび使用を容易にするために、PE-Al複合材料は、有利には、高密度化、押し出し、またはその他の適切なプロセスに供され得、冶金炉に供給するのに適した形態の材料(例えば、塊、ブリケット、ペレット、顆粒、粉末など)を得ることができる。
【0052】
高密度化および押し出しは、当業者に既知の技術および装置に従って、例えば、当業者に既知のタイプの高密度化装置または押し出し機を使用して行い得る。
【0053】
本開示において、「高密度化」という用語は、PE-Al複合材料を単独で、または他の材料と組み合わせて処理するプロセスを指し、これによって、出発複合材料および/または可能な追加材料の嵩密度よりも高い嵩密度を有する集合体材料が得られる。高密度化は、材料を機械的に圧縮することによって実行され得、場合によっては、これを加熱(例えば、120℃~250℃)することによって、プラスチックを少なくとも部分的に溶融し、その後凝集して集合体を形成可能にする。集合体材料は、サイズが縮小され得、概して不規則な形状の顆粒になる。
【0054】
通常、高密度化では、高密度化される材料は回転ブレードによって粉砕および撹拌に供され、機械的摩擦によって発生した熱のために材料の凝集が起こり、場合によっては外部から供給される熱も伴い、熱可塑性成分の部分的溶融が起こる。
【0055】
押し出しによって得られ得る顆粒と比較すると、高密度化によって得られる集合体顆粒は、化学組成の均一性が低く、より不規則な形状を有する。一方、押し出しでは、より均一なサイズ(より均一な粒子サイズ曲線)を有する顆粒の調製が可能になり、特に、例えば、二軸スクリュー押し出し機などの押し出し機による強力な混合および分散作用が存在する場合には、アルミニウム粒子がポリマーマトリックス中により均一に分散された、より均一な化学組成を有する顆粒の製造も可能になる。
【0056】
ポリエチレンと金属アルミニウムとを含む顆粒状複合材料は、化石起源の通常使用される炭素源の少なくとも部分的な代替品として、従来技術による鉄合金を製造するための実質的にあらゆる冶金プロセスで使用され得る。
【0057】
特に、本発明に係る方法は、好ましくは、鋼または鋳鉄などの鉄合金の製造方法である。
【0058】
本発明による鉄合金の製造方法は、冶金炉内で金属投入物を溶融して溶融金属塊を得るステップを含む。金属投入物は、鉄スクラップまたは金属鉱石など、概して冶金プロセスで使用されるタイプの任意の鉄系材料を含み得る。
【0059】
溶融後、溶融金属は、当業者に既知である技術に従って最終的に精製され得、その後凝固される。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、電気アーク炉、塩基性酸素炉(BOF)、転炉、高炉から選択される冶金炉で実行されるプロセスに適用される。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、ポリエチレンとアルミニウムとを含む顆粒状複合材料は、金属投入物の溶融ステップを開始する前に、例えば複合材料を炉内に装填された鉄系材料と混合することによって炉内に供給し得る。
【0062】
別の実施形態では、顆粒状複合材料は、金属投入物の溶融ステップ中に炉内に供給され得る。
【0063】
さらなる実施形態では、顆粒状複合材料は、金属投入物が溶融された後に、例えば溶融金属塊またはスラグに注入することによって炉内に供給され得る。
【0064】
上記の顆粒状複合材料を供給する方法はまた、組み合わせて適用され得る。
【0065】
冶金プロセス、冶金炉、プロセスステップ、および顆粒状複合材料の供給方法の種類に基づいて、後者はさまざまな形状およびサイズで供給され得る。
【0066】
例えば、EAF炉での鉄鋼生産プロセスの場合、複合材料は、好ましくは、圧縮空気ランスによって、浮遊スラグ層に直接および/または浮遊スラグ層の近くの溶融金属浴に、顆粒状の形態(例えば、最大寸法が3~10mmの粒)で炉内に注入される。複合材料が主に燃料としてEAFまたは他のタイプの炉内で使用される場合、複合材料は、10cmx20cmなどのより大きな(顆粒状ではない)断片として調製され得、溶融する鉄系材料と一緒に装填され得る。
【0067】
一実施形態では、顆粒状複合材料は、鉄合金製造プロセスに必要なまたは有用な少なくとも第2の材料との物理的混合物として冶金炉に供給され得る。例えば、顆粒状複合材料は、スラグ化剤(例えば、石灰質、ドロマイト質、またはマグネシアン生石灰、炭酸カルシウムおよび/または炭酸マグネシウム)、タイヤリサイクルからのゴムまたはプラスチック包装廃棄物収集からのリサイクルプラスチック(例えば、PET、PP、PS、ABS、Plasmixなど)などのリサイクルポリマー材料、化石または生物起源の炭素源(例えば、無煙炭、コークス、チャー、グラファイト、木質バイオマスなど)、セルロース系材料(例えば、回収された飲料用カートンからの残留セルロース画分)、金属、金属酸化物、鉄合金、炭酸塩、および上記の二次材料の組み合わせから選択される追加の材料(二次材料)との混合物として供給され得る。
【0068】
これらの混合物では、顆粒状複合材料は、混合物の重量に対して10%~90%の範囲の量で存在し得、100%の重量に対する補完は二次材料によって形成される。
【0069】
別の実施形態では、冶金炉に導入される二次材料と顆粒状複合材料とを有利に凝集させて、充填顆粒状複合材料を形成し得る。この実施形態は、二次材料が粉末などの細かく分割された形態で利用可能であり、顆粒状複合材料のポリマー成分の軟化温度または融点まで加熱されても溶融しない材料である場合に、特に有利である。
【0070】
例えば、顆粒状複合材料中に存在するポリオレフィンポリマー材料の比較的低い融点(例えば、ポリエチレンの融点はおよそ120℃)を利用して、アルミニウムおよび二次材料がポリオレフィンベースのポリマーマトリックス(主にポリエチレン)内に均一に分散された充填複合材料を生成し得る。
【0071】
好ましくは、ポリエチレンおよびアルミニウムを含む顆粒状複合材料は、充填顆粒状複合材料の重量に対して、総量で10%~70%の範囲で充填顆粒状複合材料中に存在する。
【0072】
二次材料を組み込んだ充填顆粒状複合材料は、当業者に既知の技術、例えば、複合材料と1つ以上の二次材料とが供給され、混合され、共に押し出される押出機、好ましくは二軸押出機を使用して製造され得る。充填顆粒状複合材料の製造を促進するために、ポリマー複合材料の製造に概して使用されるタイプの添加剤、例えば可塑剤添加剤を添加し得る。
【0073】
好ましい実施形態では、充填顆粒状複合材料には、少なくとも1つの生物起源の炭素質材料、すなわち、動物生物または植物生物によって生成された炭素含有有機材料が組み込まれる。好ましくは、炭素質材料は植物由来の有機材料である。より好ましくは、炭素質材料は、チャーである。チャーは、例えば熱分解、焙焼、蒸気爆発、ガス化、または水熱炭化プロセスによって酸素欠乏下でバイオマスを熱化学的に変換して得られる生成物である。これらのバイオマスの熱化学変換処理によって、未処理のバイオマスに比べて高い炭素含有量、特に高い固定炭素含有量、および高い発熱量を有する製品を得ることが可能になる。好ましくは、生物起源の炭素質材料は「バイオチャー」、すなわち、適切に管理された森林資源から得られたバイオマス処理スクラップの利用などを含む、環境的に持続可能と考えられるプロセスによって生成されたチャーである。
【0074】
生物起源の炭素質材料は、炭素質材料の重量に対して、好ましくは、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは75重量%以上の炭素含有量を有する。好ましくは、炭素含有量は、炭素質材料の重量に対して、50%~95%、より好ましくは60%~95%、さらに好ましくは75%~90%の範囲である。
【0075】
チャーに含まれる他の元素は、主に水素、酸素、および硫黄である。
【0076】
好ましい実施形態によれば、チャーの化学組成は、次のとおりである(重量パーセントは乾燥基準でのチャーの重量を指す)。
75%~90%の炭素、
0.5%~4%の水素、
2%~8%の灰、
5%~15%の酸素、
0%~3%の硫黄。
【0077】
チャーの利点は、化石起源の石炭およびコークスに比べて灰含有量が比較的低いことである。実際、灰は、液体または固体の界面を形成し、反応物間の接触を妨げるため、酸化物還元メカニズムを妨げ得る。さらに、灰は、スラグの粘度およびスラグがその中に気泡を保持する能力を局所的に変化させ得、安定した発泡を形成する。
【0078】
好ましい実施形態では、チャーは、焙焼法または蒸気爆発法によって得られる。好ましくは、焙焼法は、出発有機材料を酸素欠乏下で200℃~350℃の温度で熱処理することを含む。焙焼および蒸気爆発プロセスでは、有機材料の熱化学変換が熱分解に比べて比較的低い温度で行われるため、このようなプロセスでは熱分解やガス化よりもチャーの生成収率が著しく高くなる(焙焼では、1kgの乾燥出発材料あたり最大0.5~0.9kgのチャーが生成され得る)。焙焼および蒸気爆発のプロセスは、処理すべきガス状副産物の量が少ないため、実装も簡単である。
【0079】
熱分解またはガス化によるチャーと比較して、焙焼および蒸気爆発によるチャーは、概して低い総炭素含有量および固定炭素含有量、高い揮発画分含有量、ならびに低い発熱量を有する。
【0080】
好ましい実施形態では、焙焼および蒸気爆発によるチャーは、
総炭素量(乾燥基準):50~70%、
固定炭素(乾燥基準):18~65%、
揮発画分(乾燥基準):30~80%、
発熱量:18.5~30MJ/kg、
の特徴の1つ以上を有する。
【0081】
焙焼または蒸気爆発によるチャーは、その特徴のため、生物起源の材料であり、その高い可燃性のため安全性にかなりの問題が生じるため、従来技術において鉄鋼業界では実質的に使用されていない。しかしながら、本発明の複合材料に使用したとき、これは、発泡スラグ形成剤として有利に利用され得る。したがって、本発明によって、今日の冶金分野で利用可能な化石炭素源に代わる炭素源の種類の拡大が可能になる。
【0082】
概して、生物起源の炭素質材料は、例えば、出発バイオマスおよび調製プロセス(熱分解、焙焼など)に応じて、フレーク、粉末、またはペレットの形状をとる。生物起源の炭素質材料は、また、例えば乾燥および/または粉砕によって処理され得、その後のポリマーとの凝集に適したサイズおよび水分含有量を得る。
【0083】
通常、顆粒状充填複合材料を調製するために、生物起源の炭素質材料は、最大寸法が最大15mm、より好ましくは最大10mm、さらに好ましくは最大5mmである粉末、フレーク、またはペレットの形態で使用される。好ましくは、粉末またはフレークの最大サイズは、1~10mmの範囲であり、より好ましくは2~5mmの範囲である。
【0084】
焙焼法および蒸気爆砕法で得られる生物起源の炭素質材料は、概してペレットの形で市販されている。本発明の複合材料を調製するために、このペレットをそのまま使用し得る。好ましくは、ペレットの最大サイズは、最大で50mmに等しく、より好ましくは最大で40mmに等しく、さらに好ましくは最大で20mmに等しい。好ましくは、ペレットの最大サイズは、1~50mmの範囲であり、より好ましくは1~40mmの範囲であり、さらに好ましくは2~20mmの範囲である。
【0085】
ポリエチレンとアルミニウムに加えて、生物起源の炭素質材料も含有する充填複合顆粒を作成することによって、後者を冶金炉に容易に注入可能になり、凝集していない形で同じ生体由来の炭素質材料を使用することに伴う既知の欠点を克服する。例えば、バイオチャーは、EAF炉での製鋼工程における化石炭素源の有効な代替品であるが、その細かさおよび低密度のために炉への注入効率が悪く、取り扱いの結果として作業環境に大量の拡散排出物を生成し、空気輸送システムの詰まりを引き起こすため、実際には現在非常に限られた範囲でしか使用されていない。
【0086】
本発明の目的のために使用され得る、リサイクル廃棄物からのポリマー材料と生物起源の炭素質材料とを含む複合材料の製造方法は、特許出願PCT/IB2022/056111に記載されている。
【0087】
別の実施形態では、冶金炉に導入される二次材料および顆粒状複合材料は、高密度化によって凝集して集合体材料を形成することが有利であり得る。
【0088】
この目的のために、ポリエチレンおよびアルミニウムを含有する顆粒状複合材料を二次材料と混合し、得られた混合物を高密度化して、例えば、二次材料が熱可塑性ポリマー材料を含む、集合体材料を形成する。集合体材料は、また、寸法が縮小され得、冶金炉に投入するのに適した形状およびサイズの細分化された単位(顆粒)を形成し得る。
【0089】
好ましくは、ポリエチレンとアルミニウムとを含む顆粒状複合材料は、集合体材料の重量に対して10%~90%の重量範囲で集合体材料中に存在し、100%の重量に対する補完部分は二次材料によって形成される。
【0090】
高密度化は、リサイクルポリマー材料(例えば、リサイクルタイヤからのゴムおよびリサイクルプラスチック、またはPlasmix)などの追加材料(二次材料)とともに複合材料を冶金炉に導入するために有利に使用され得る。高密度化によって、ポリエチレンとアルミニウムとを含む顆粒状複合材料が、広範囲の値にわたって変化する二次材料に対する重量比において存在する、集合体材料を調製することが可能である。例えば、顆粒状複合材料と二次材料との重量比は、1:10~10:1の範囲であり得る。
【0091】
集合体形状のポリエチレンとアルミニウムとを含む顆粒状複合材料をPlasmixからなる追加材料とともに使用することによって、顆粒状複合材料のポリオレフィン画分の寄与により、例えばPlasmixによって生成される塩素、窒素、灰などの望ましくない種を希釈によって削減し得る。
【0092】
集合体形状の複合材料は、特にPlasmixまたは他のポリマー材料と集合されている場合、さらに(非熱可塑性)固体二次材料を充填して、充填顆粒状複合材料を作成し得る。プラスチックの集合とさらなる二次材料の充填とは、例えば押出機で同時に実行され得る。
【0093】
顆粒状複合材料の冶金炉への供給は、当業者に既知の技術および装置に従って実行され得る。
【0094】
例えば、顆粒状複合材料は、1本以上のランスによる注入によって冶金炉に導入され得る。ランスは、通常、炉の側壁または天井の開口を通って炉内に延在する。ランスは、概して気体流(圧縮空気など)を利用して顆粒を搬送する。
【0095】
顆粒状複合材料を、例えば鉄鋼生産用の電気炉においてスラグ形成剤として使用するとき、浮遊スラグ層中および/または浮遊スラグ層の近傍の溶融金属浴中に分散させることが好ましい。概して、この操作は、金属投入物の溶融が進行した段階、および/または溶融が完了したときに実行される。
【0096】
複合材料は炉内に注入されるとスラグと接触し、複数の化学反応を引き起こしてスラグの発泡を招き、同時に酸化鉄を液体金属鉄に還元する。スラグ内の複合材料の反応は2段階で発生する。第1の段階では、複合材料のポリマー画分が分解プロセスを引き起こし、主に炭化水素、固体炭素、一酸化炭素、水素が形成され、鉄酸化物が部分的に還元される。第2の段階では、アルミニウムの酸化が起こる。
【0097】
特定の理論に言及するつもりはないが、顆粒を炉に導入した後、複合材料は非常に急速に変換され、主に下記の反応が生じると考えられる。
【0098】
【数1】
【0099】
【数2】
【0100】
【数3】
【0101】
【数4】
【0102】
【数5】
【0103】
【数6】
【0104】
【数7】
【0105】
【数8】
【0106】
【数9】
【0107】
まず、高分子材料の高分子鎖が破壊され、炭化水素とより短い炭化水素鎖とが形成される(反応1)。次に、これらは反応2に従って分解し、固体の炭素および水素ガスを生成する。また、二酸化炭素(反応3)またはスラグからの酸化鉄(反応5)と反応して一酸化炭素、水素を形成し、スラグとの反応によって金属鉄を形成する。
【0108】
反応2、3、5では、反応生成物として水素が発生し、これが還元剤として作用する。反応4に基づいて、水素は一酸化炭素よりも速い反応速度で酸化鉄を還元することが可能である。これによって、多数の小さな気泡の形成も促進され、結果として発泡スラグに安定化効果をもたらし、スラグ内部の気相の保持が容易になる。反応4では水も生成され、二酸化炭素と同様に、反応6に従って固体炭素をガス化し、水素と一酸化炭素を生成可能である。固体炭素および一酸化炭素は、反応7と8に従って酸化鉄を還元し得る。二酸化炭素の形成によって、反応9に従って固体炭素から一酸化炭素への変換が促進される。
【0109】
顆粒状複合材料のアルミニウム画分は、酸素に対する高い親和性があるため、還元剤としても機能し、次のような反応10を引き起こす。
【0110】
【数10】
【0111】
その後、アルミニウムは、酸化物の形でスラグの一部になるか(発熱反応10により同時に熱が発生する)、または酸化されない場合は合金元素として浴中に残り得る。これによって、顆粒状複合材料のポリマー成分とアルミニウムとの両方が鉄酸化物の還元剤として作用して金属鉄を生成する一方、アルミニウムもスラグの一部となる。スラグは、天然起源の不活性凝集体(例えば、砂、砂利、玄武岩など)に匹敵する物理的および機械的特性を持っているため、土木工事や建設工事に使用され得る。
【0112】
浮遊スラグの発泡ステップの前後の鉄合金製造工程の操作工程は、従来技術に従って実行される従来の操作である。
【0113】
例えば、最初に、溶融される金属投入物は、場合によっては中間溶融ステップを挟んで、1回以上の装入操作によって炉内に導入され得る。あるいは、当該技術分野で知られているように、金属投入物は予熱後に連続的に炉内に供給され得る。
【0114】
溶融金属浴の化学組成と温度が最適化されると、溶融鉄合金が炉から取り出され、スラグから分離される。こうして得られた鉄合金は、最終製品に変換するためのさらなる処理に送られる。
【0115】
下記の実施例は、単に本発明を説明する目的で提供されており、添付の特許請求の範囲によって定義される保護範囲を制限するものとみなされるべきではない。
【0116】
実施例では、添付の図をも参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1】PE-Alを顆粒化して得られた本発明の顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例1)。
図2】PE-Alを顆粒化して得られた本発明の顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例1)。
図3】PE-Alを顆粒化して得られた本発明の顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例1)。
図4】熱分解によって生成されたバイオチャーの熱重量分析の結果を示す図である。
図5】熱分解によって生成されたバイオチャーの熱重量分析の結果を示す図である。
図6】熱分解によって生成されたバイオチャーの熱重量分析の結果を示す図である。
図7】焙焼によって生成されたバイオチャーの熱重量分析の結果を示す図である。
図8】焙焼によって生成されたバイオチャーの熱重量分析の結果を示す図である。
図9】焙焼によって生成されたバイオチャーの熱重量分析の結果を示す図である。
図10】熱分解によって生成されたバイオチャーを充填した顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例3-サンプル1)。
図11】熱分解によって生成されたバイオチャーを充填した顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例3-サンプル1)。
図12】熱分解によって生成されたバイオチャーを充填した顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例3-サンプル1)。
図13】焙焼によって生成されたバイオチャーを充填した顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例3-サンプル2)。
図14】焙焼によって生成されたバイオチャーを充填した顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例3-サンプル2)。
図15】焙焼によって生成されたバイオチャーを充填した顆粒状複合材料の熱重量分析の結果を示す図である(実施例3-サンプル2)。
図16図4の熱分解によるバイオチャーと図10の充填顆粒状複合材料(実施例3-サンプル1)の熱重量(TG)分析の結果の比較を示す図である。
図17図5の熱分解によるバイオチャーと図11の充填顆粒状複合材料(実施例3-サンプル1)との熱重量(HF)分析の結果の比較を示す図である。
図18図7の焙焼バイオチャーと図13の充填顆粒状複合材料(実施例3-サンプル2)との熱重量(TG)分析の結果の比較を示す図である。
図19図8の焙焼バイオチャーと図14の充填顆粒状複合材料(実施例3-サンプル2)との熱重量(HF)分析の結果の比較を示す図である。
【実施例
【0118】
実施例1(PE-Al複合材料の顆粒)
【0119】
油圧パルパーにおける多層カートン包装のリサイクル工程から得られた、ポリエチレン、その他のプラスチックの残留物、アルミニウム、および残留セルロース繊維を含むリサイクル複合材料を、異物、残留セルロース、および水を除去するために、下記の方法で処理した。
複合材料を水浴中で洗浄し、重い異物および複合材料を含む懸濁固形画分を沈降によって分離すること、
複合材料を含む固体画分を遠心分離してその水分含有量を減らすこと、
遠心分離した固形画分を粉砕および乾燥させて、2%未満の水分含有量および2%未満のセルロース含有量を有する箔状の乾燥複合材料を得ること、
回転ブレード式高密度化機で乾燥した複合材料を高密度化し、不規則な形状および大きさの顆粒を形成すること、
高密度化された顆粒を押し出して、均質な組成、形状およびサイズの顆粒を有する顆粒形状の材料を得ること。
【0120】
得られた複合材料は、約15%のアルミニウム含有量および主にポリエチレンである、約85%のポリマー含有量を有する顆粒からなり、上記のパーセンテージは複合材料の重量に対する重量パーセンテージである。分散粒子の形態で金属アルミニウムを含有する顆粒は、例えば、約5mmの最大寸法を有し、約570kg/mの見かけ密度を有する。
【0121】
その後、顆粒は、鉄合金製造工程の冶金炉に供給されるのに適した形状になる。例えば、ランスを使用して、電気アーク炉内の溶融金属浴における浮遊スラグに顆粒を注入し、スラグの発泡を促進し得る。
【0122】
顆粒を熱分析し、それらの挙動を特徴付けた。分析用材料サンプルを、流動空気中で室温から750℃まで、異なる加熱速度(20、25、30℃/min)で加熱した。試験中、質量損失(TG)、質量変化速度(dTG)、熱流束(HF)を測定した。
【0123】
図1は、分析した顆粒の質量損失を示す。損失は400~500℃の温度範囲に集中している。400℃までの温度では、質量減少は重量比で9%未満である。400℃~450℃では、ポリマーの劣化が加速し、加熱速度20、25、および30℃/minでそれぞれ質量損失が-22%、-18%、-13%に達する。500℃では、3つの場合のTG値は、-75重量%、-64重量%、-55重量%である。最大温度750℃では、残留質量は元のサンプルの重量の19%、24%、25%である。
【0124】
図2に示される熱流は、ポリマー成分の溶融および分解による強い吸熱性を示す。20℃/minでテストしたサンプルでのみ、400℃の範囲で熱放出が発生する。550~600℃の範囲で各曲線に発熱反応が見られるが、これはおそらくガス種または炭素質材料の燃焼によるものである。650℃の局所的な吸熱ピークは、金属アルミニウムの溶融に関連し、アルミニウムの一部が試験中に酸化されていないことを示す。したがって、残留画分は、主に金属アルミニウムとアルミナの混合物である。後者の場合、アルミニウムがアルミナに酸化されるため、サンプルの重量が増加し、質量が1.88倍に増加する。図3のグラフは、質量損失が主に狭い温度範囲のみ(曲線dTG)に集中しており、約490℃に集中した最大分解速度を有することをより明確に示す。3つのサンプルは、TGおよびHFに関して非常に類似した挙動を示した。20℃/minでテストしたサンプルにのみわずかな違いが見られ、これはより低いアルミニウム含有量に合理的に関連する。
【0125】
PE-Al複合体顆粒は、冶金および鉄鋼プロセスで還元剤および/または発泡剤として使用されるプラスチック残留物の要件を規定するEN10667-17の要件にも準拠する。特に、顆粒は、混合プラスチックの最小含有量、低発熱量、汚染物質(例えば、Cl、Cd、Pb、Hgなど)の最大含有量に関する要件を満たす。
【0126】
分析によって、ポリマー成分が金属アルミニウムを早期酸化から保護し、その後、金属アルミニウムが冶金炉に効果的に導入され、還元作用を発揮し得ることが示された。特に、電気アーク炉で発泡剤として顆粒を使用するとき、アルミニウムが存在すると、下記のような理由のため、利点がある。酸素に対する親和性が鉄よりも高いため、鉄の回収率が向上する。アルミニウムは、下記の全体的な反応の後、強力な還元剤として機能する。
【数11】

これによれば、スラグに注入された1kgのAl毎に、3.1kgのFeが回収される。
上記の式は、正味エンタルピーが-260kJ/molFe(14MJ/kgAl)発生することを意味するため、発熱反応である。
このような発熱による局所的な温度上昇は、次の反応によってCOの形成を促進する。
【数12】

これによって、発泡スラグが安定化する。
Alの濃度が増加すると、アルミナがFeOの濃度よりも低い濃度で存在するため(1つのAl分子を得るには3つの酸素原子が必要である)、スラグが安定し、塩基度指数BIが向上する。また、炉の耐火物の消費量に関しても、Alは、SiOより酸性度が低い。
【数13】

Alは、スラグのガラス化プロセスを改善し、浸出のリスクを減らし、有害な化学物質が環境に放出されるリスクを減らす。これによって、電気アーク炉スラグを建築資材としてリサイクルすることが促進される。
【0127】
したがって、PE-Al複合体顆粒は、電気アーク炉内で発泡スラグ形成剤として使用され得、満足のいく結果が得られ得る。
【0128】
実施例2(複合材料、石炭、ドロマイト、および追加材料の物理的混合物)
【0129】
実施例1の複合顆粒100kgを、石炭(無煙炭)およびドロマイトと、
100kgの複合材料、
300kgの無煙炭、
250kgのドロマイト(炭酸カルシウムマグネシウム)、
の割合で混合した。
【0130】
この混合物は、ハードコールの部分的な代替として、冶金炉、例えばEAFに供給するのに適する。
【0131】
実施例3(生物起源の炭素質材料を充填した顆粒状複合材料)
【0132】
充填複合材料の2つのサンプルを下記の方法で調整した。
【0133】
サンプル1:PE-Al複合体45%、熱分解によるバイオチャー55%(質量パーセンテージはPE-Alとバイオチャーとの質量の合計を指す)
【0134】
実施例1からの45kgの高密度(押し出されていない)複合材料を、高温熱分解によって得られた粉末状バイオチャー(粒子サイズ0.1~5mm)55kgとともに二軸押出機に供給した。後者は3つのサイドインジェクターによって供給された。材料のポリマー成分を溶融して得られる可塑性流体相では、金属アルミニウムおよびバイオチャー粒子がポリエチレンマトリックス内に均一に分散している。充填複合材料は、最大サイズ約5.5mm、見かけ密度600kg/mの顆粒の形で押し出された。
【0135】
使用したバイオチャーは、下記の組成を有する。
乾燥基準の固定炭素含有量:90%
乾燥基準の灰含有量:90%
水分含有量:2%
発熱量:34MJ/kg
【0136】
サンプル2:PE-Al複合体50%、焙焼由来のバイオチャー50%(質量パーセンテージはPE-Alとバイオチャーとの質量の合計を指す)
【0137】
実施例1からの顆粒中の高密度(押し出されていない)複合材料の質量の50%からなる材料を、焙焼によって得られた粉末状バイオチャー(粒子のサイズが2mm未満)の質量の50%とともに二軸スクリュー押出機に供給した。後者は3つのサイドインジェクターによって供給された。材料のポリマー成分を溶融することによって得られる可塑性流体相では、金属アルミニウムとバイオチャー粒子とがポリエチレンマトリックス内に均一に分散している。充填複合材料は、最大サイズ約7mmの顆粒の形状で押し出され、400kg/mの見かけ密度を有する。
【0138】
焙焼したバイオチャーは、下記の組成(%w/w)を有する。
乾燥基準の固定炭素含有量:35~45%
乾燥基準の灰含有量:4%未満
水分含有量:3%未満
発熱量:22.5MJ/kg
【0139】
2種類のバイオチャーおよび2つのサンプルを、流動空気中で異なる加熱速度(20、25、30℃/min)に供して熱分析によって特性評価した。
【0140】
図4および5は、高温熱分解によるバイオチャーの質量損失および熱流を示す。質量損失曲線は3つの加熱速度で同じ傾向を示し、加熱速度が増加するにつれて右にシフトする。材料はゆっくりと酸化され、熱流束が徐々に増加して、より安定した状態(約10W/g)に達する。最高温度に達した後も、材料の燃焼はまだ完了していない。このようなふるまいは、このタイプのバイオチャーの特徴である固定炭素含有量の高さと一致している。図6は、質量損失(dTG)に関して顕著なピークがないことを示しており、このタイプのバイオチャーが均質で炭素に富む材料としてふるまうことを裏付けている。
【0141】
焙焼によるバイオチャーの挙動は、2つの加熱速度(20℃/minおよび25℃/min)のみで分析され、違いが見られる。材料は、高温熱分解によるバイオチャーと同様に燃焼に供されるが、TG曲線は異なる質量損失を示し、25℃/minでテストしたサンプルでは-48%、20℃/minでテストしたサンプルでは-75%の最終値を有する(図7)。熱流曲線(図8)は、300℃~500℃の間で複雑な傾向を示している。これは、高温熱分解によるバイオチャーに比べて、焙焼された材料の化学組成が均一でないことに起因しているように見える。図9は、2つの質量損失ピークの存在を示しており、最初のピークは350℃付近でより顕著であり、おそらくセルロースの揮発に関連しており、もう一方は450℃付近であり、おそらくリグニンの再配列から生じる生成物によるものである。高温熱分解によるバイオチャーと同様に、熱流は高温で安定し、この場合は約8W/gになり、また、前のタイプのバイオチャーの場合と同様に、最高温度に達したときに材料の酸化はまだ完了していない。
【0142】
サンプル1の挙動は、基本的に高温熱分解によるバイオチャーおよびPE-Al複合体顆粒の曲線の組み合わせである。図10は、ポリマー画分が分解し始める400℃付近で、大幅な質量損失が始まることを示す。その後、500℃を超えるとポリマー材料の変換がほぼ完了し、曲線パターンは純粋なバイオチャーの曲線パターンに似たものとなり、酸化が遅くなる。熱流(図11)は、約500℃まで、ポリマーの吸熱挙動がバイオチャーの燃焼よりも優勢であることを示している。その後、炭素質残留物は、より安定した状態に達するまで、熱放出の段階的な増加がみられる。サンプル1の場合でも、750℃の温度に達したとき、燃焼は完了しないが、純粋なバイオチャーに関しては、最終的な熱流束は、加熱速度に応じて異なるレベルに達する。加熱速度が低いほど、最終的な熱流の値は高くなる。PE-Al複合体顆粒に関しては、それほど明白ではないが、金属アルミニウムの融点に達すると、熱吸収のピークが存在することがわかる。したがって、サンプル1の場合でも、アルミニウムの一部は、融点に達したときも完全に酸化されない。図12の曲線dTGは、上記の質量損失の傾向を裏付けており、490℃で1つのピークのみ(実施例1のPE-Al複合材料顆粒の場合)を有する、550℃以降は局所的に加速する。
【0143】
サンプル1と同様に、サンプル2もまた、焙焼によるバイオチャーおよびPE-Al複合体顆粒の曲線が重なり合うような挙動を示す。ただし、質量損失(図13)および熱流(図14)の曲線はより複雑で、これは焙焼された材料のより不均一な性質によるものと考えられる。第1の質量損失は、350℃付近で発生し、次いで400℃以降で、第2のより顕著な質量損失が発生するようにみえる。第1のものは、バイオチャーに含有されるセルロースに関連していると思われるが、第2のものはサンプル1と同様にポリマー画分に関連する。これは、360℃で質量損失速度ピークおよび490℃で別のピークを示す曲線dTG(図15)でも、裏付けられる。興味深いことに、サンプル1と同様に、750℃で到達する熱流束の値は、3つの加熱速度で異なる。ここでも、加熱速度が速いほど熱流は低くなるが、曲線は安定した状態に達しない。20℃/minおよび25℃/minの場合には、曲線の傾きが変わり始めているように見えるが、30℃/minの場合には熱流束は依然として増加する。後者の加熱速度では、HF曲線から金属アルミニウムの融点をも見ることができる。2つのより低い加熱速度では、融点は存在しないか(20℃/minの場合)、局所的な二重勾配の変化でかろうじて認識できるか(25℃/minの場合)のいずれかである。これは、バイオチャーに元来含有されていた酸素によるアルミニウムの酸化に起因し得る。
【0144】
各タイプのバイオチャーおよびそれに対応する凝集体顆粒の質量損失および熱流をPE-Al複合体と比較することによって、さらに詳しい情報が得られ得る。分析した両方のタイプのバイオチャーでは、ポリマーマトリックスの存在によって、低温での質量損失が防止される(図16および図17)。その後、ポリマーの分解によって、充填材の質量損失が加速し、測定された残留質量は、対応する純粋なバイオチャーの質量を下回る。サンプル1の場合、この点は約465℃であるが、サンプル2の場合は480℃の範囲である。充填材と対応するタイプのバイオチャーとを比較すると、ポリマー材料の存在によって熱流値が減少することがわかり得る(図18および図19)。サンプル1の場合、分析された温度範囲全体にわたって、曲線HF間には常に広い範囲がある。サンプル2の場合、600℃を超えると充填材の熱流束が大幅に増加し始め、700℃付近で充填製品のHF値が焙焼によるバイオチャーのHF値を超えるにもかかわらず、このような範囲が依然として存在する。熱分析から、PE-Al複合材料に充填された材料が、熱酸化の観点からバイオチャーに対する保護作用を発揮することが示唆される。さらに、粒子サイズの制御の可能性によって、表面積と体積との比が制御可能となり、その結果、冶金炉内の各粒子と環境との間の熱伝達を制御可能となる。ポリマーマトリックスは、炉内で失われ得る、または急速な酸化プロセスの開始剤として作用し得る、微細な粉塵画分の放出も制限する。
【0145】
実験データによると、バイオチャー充填複合材料は、例えばEAFなどの冶金炉に投入するのに適していることが示されている。また、この顆粒は、化石起源の炭素の少なくとも部分的な代替品として、冶金炉にバイオチャーを注入するための最適な媒体でもある。
【0146】
実際、サンプル1とサンプル2とは電気アーク炉の発泡スラグ形成剤として使用された。
【0147】
充填材の顆粒の有効性は、その使用を特徴付けるさまざまな段階で明らかになる。特に、本発明で説明する材料の利点は、スラグ注入に主に使用される無煙炭、より具体的にはハードコールとの比較、および他の2つの理論的に代替可能な解決策である高密度混合プラスチックと純粋な形態のバイオチャーとの比較、から明らかになる。
【0148】
(輸送)
【0149】
充填材の顆粒は、高い嵩密度を有する。サンプル1(密度約600kg/m)とサンプル2(密度約400kg/m)を見ると、密度は無煙炭(約900kg/m)より低いものの、高密度混合使用済みプラスチック(密度約300kg/m)より30%~100%高い。また、これは、粉末状のバイオチャーの密度の最大2~4倍である。
【0150】
これによって、鉄鋼工場まで材料を輸送するトラックの数が減り、汚染物質の排出量および物流コストが削減される。また、鉄鋼工場では、入ってくる材料の取り扱いに関して混雑が緩和される。
【0151】
(製鉄所における保管および取り扱い)
【0152】
高密度混合プラスチックおよび純粋なバイオチャーなどの代替材料と比較すると、同じ質量を含有する場合にはより小さい容積を有するサイロを使用ことが可能であるため、保管が簡素化される。
【0153】
本発明に従って充填された材料は、バイオチャーとは異なり、長期間の保管を複雑にする吸湿性の問題を抱えていない。
【0154】
安全性の観点から見ると、バイオチャーをポリマー材料と凝集させることによって機械的に固体の粒子が生成され、バイオチャーの特徴である、微細であり、可燃性であり、および爆発性の粉塵が大量に発生するという問題が解決される。例えば、炉に注入するために大きな袋からサイロ内部に材料を移す際に、粉末状の相が環境に放出されることはまったくなかった。これも、通常の無煙炭処理方法と比較して改善された点である。
【0155】
同時に、凝集によって、バイオチャーと空気の反応性の問題が解決される。バイオチャーは、反応性があるため、大量に長期間保管すると自然発火するリスクがあり、発火しやすい材料である。バイオチャーをポリマーマトリックス内に分散させて閉じ込めることによって、鉄鋼現場でのリスクを最小限に抑えることができる。
【0156】
(注入ランスへの空気輸送)
【0157】
充填材の顆粒は、その物理的形状のおかげで、加圧タンクから炉の注入ランスまでの空気輸送に特に適している。実際、この材料は優れた流動性を示し、高密度混合プラスチックに比べてはるかに優れているため、正確な流の調整が可能である。このような態様によって、射出プロセスを最適に制御できるようになり、エネルギー消費と排出量の面で大きな効果が得られる。
【0158】
凝集によって、バイオチャーがさまざまな粒子サイズの粉末状画分を形成する傾向の問題も解決される。実際、バイオチャーの粉末は、特に曲がった部分または先細りの部分で堆積する傾向があり、これが流量制御を困難にしている。
【0159】
(注入)
【0160】
無煙炭に比べて見かけの密度が低いことを考慮すると、高密度プラスチックおよび純粋なバイオチャーの場合と同様に、バイオチャー充填材の顆粒にもランスの適合が必要になる。このような変更は、注入角度、またはスラグ内の材料の効果的な浸透を可能にする二次的なエントレインメントフロー(例えば、酸素ジェットなど)の採用に関連し得る。
【0161】
高密度プラスチックまたはバイオチャーに比べ、バイオチャー充填顆粒はより高い密度を有し、スラグへの材料の浸透能力に関連する問題が軽減される。
【0162】
さらに、無煙炭と高密度プラスチックとの両方を特徴づけるが、特にバイオチャーを特徴づける、粉末相がほとんど存在しないため、浴から上昇するガスにこのような微粒子が同伴することによる材料の損失が制限される。このような粒子は、スラグに達する前に酸化または揮発する傾向があるため、廃棄され得る。後者の態様を見ると、本発明による材料の顆粒の押し出しによって、粒子の表面積/体積比を制御することが可能になる。これは、炉への注入中に顆粒が供される熱交換メカニズムと粒子の表面の反応との両方に影響を与える。したがって、サイズを制御することによって、注入に関する材料の有効性を最適化することが可能になる。すなわち、粒子が細かすぎると、スラグへの浸透が困難になる可能性があるだけでなく、揮発画分の急速な放出または急速な酸化により温度が急上昇する傾向がある。一方、粒子が大きすぎると、スラグ上に浮遊する傾向があり、鉄酸化物の還元メカニズムおよび発泡スラグの形成に部分的にしか寄与しない。
【0163】
理論的観点から期待された利点が実際の応用で実現したことは、無煙炭を複合顆粒に置き換えたときに炉内で異常が発生しなかったという事実からわかり得る。特に、炎が通常より多く出ることはなく、冷却パネルおよび排気ガスの温度はいずれも過去最高値の範囲内にとどまった。
【0164】
高温熱分解と焙焼との両方からバイオチャーで生成された顆粒が機能したという事実は、ポリマーがバイオチャーを熱酸化から効果的に保護したことも示している。それによって、焙焼によるバイオチャーもスラグに到達し、その中のかなりの揮発画分と関連する還元力を放出することが可能であった。
【0165】
(スラグに対する反応性)
【0166】
製造される顆粒は、バイオチャー、ポリマー、およびアルミニウムが均一に分散されるように設計されている。これは、すでに完全に物理的に接触しているバイオチャー、ポリマー、アルミニウムとスラグとの相互作用を最大化することを目的としている。注入プロセスで説明したようにバイオチャーに熱酸化保護を提供することに加えて、ポリマーは、生物起源の炭素質材料に関連するスラグとの反応性が低いという問題を解決する。バイオチャーの問題は、ナノメートルおよびマイクロメートルレベルの滑らかな表面によるものとみられる。これは、安定したガス層の形成を促進し、スラグの還元作用を停止させることが可能である。一方、水素の豊富さとポリマー画分とに関連する強力な物質交換は、特にバイオチャーによって提供されるような固体炭素が存在する場合、還元プロセスの速度を加速するはずである。さらに、ポリマー画分による炭化水素種が固体炭素と相互作用し得、熱分解して後者の表面に炭素堆積物を形成する可能性によって、バイオチャーに関連する問題の解決がさらに促進され得る。一方、アルミニウムは、直接的に(AlとFeOの接触)、またはバイオチャーまたはポリマー画分に結合したガス状中間体から酸素を剥ぎ取ることによって(酸素が奪われると、その後スラグが還元される)間接的にスラグに対する強力な還元剤として機能する。このようなメカニズムは発熱性であるため、局所的に放出される熱はバイオチャーおよびポリマー画分による還元反応を促進する。アルミニウムの存在によってスラグの塩基度指数(BI)がさらに向上し、スラグの膨張傾向が高まる。さらに、スラグに豊富に含まれるアルミナはガラス化プロセスに有利に働き、浸出プロセスとそれに続く固化したスラグからの望ましくない化学種の放出を制限する。
【0167】
実施されたテストにおいて複合顆粒が無煙炭を完全に置き換えることが可能であったという事実は、前述のメカニズムの1つ以上が実際に発生したことを示唆している。
【0168】
この複合材料は、発泡スラグの品質(優れたアーク範囲)の点においても無煙炭よりも優れた有効性を示し、注入質量の点でも無煙炭と同等であった。これは、ハードコールに対する異なる化学的および物理的挙動にもかかわらず、充填材が存在する場合でも、安定した発泡スラグを生成可能である気泡が形成されたことを示唆している。
【0169】
(気候変動を引き起こす排出)
【0170】
ハードコール(無煙炭)をバイオチャー充填材に置き換えることで、気候変動を引き起こす排出量が大幅に削減された。
【0171】
製鉄所で採用されている無煙炭は、炭素含有量が約92%と高く、特定の排出量は3.37kgCO/kgに相当する。
【0172】
1:1置換条件下では、サンプル1とサンプル2とで約60%の直接排出量削減が達成された。
【0173】
生物起源の炭素質材料の画分を増やすか、ポリマーマトリックス内の生物起源の画分を特定することによって、排出量の削減を増やし得る。
【0174】
直接的な排出量の削減に加えて、化石材料を再生可能材料(生物起源の炭素質画分)と循環型材料(廃棄物のリサイクルから得られるポリマー画分)に基づく複合材料に置き換えることで、環境への影響が間接的に削減される。
【0175】
実施例4(複合材料とリサイクルプラスチックとを備える集合体材料)
【0176】
集合体材料の形状における凝集体を下記のようにして調製した。
【0177】
実施例1からの200kgの高密度複合材料(押し出し加工されていない)を、分別収集からの廃棄物選別の下流で得られた800kgの混合使用済みプラスチック(Plasmix)と混合した。混合物を二軸押出機において押し出しに供した。集合体材料を最大約5.5mmの顆粒形状に押し出した。
【0178】
この顆粒は、例えばEAF炉のスラグ形成剤など、化石炭素源の代替品として冶金炉で使用するのに適している。この顆粒は、ポリオレフィン画分の増加によって、混合プラスチックの発泡スラグ形成プロセスへの化学物質の投入を改善し、鉄合金製造プロセス中に希釈によってPlasmixに含まれる塩素、窒素、灰などの望ましくない物質の投入を減らす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】