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特表2024-546797カルボン酸官能基および/または揮発性アルコールを含む揮発性有機化合物の選択的捕捉のための金属有機フレームワーク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】カルボン酸官能基および/または揮発性アルコールを含む揮発性有機化合物の選択的捕捉のための金属有機フレームワーク
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20241219BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20241219BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241219BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241219BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20241219BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20241219BHJP
   C07F 15/02 20060101ALI20241219BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20241219BHJP
   C07F 11/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/26 A
B01J20/28 Z
B01D53/26 200
B01D53/28
B01D53/04
C07F15/02
C07F5/06 D
C07F11/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534695
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2022084264
(87)【国際公開番号】W WO2023104665
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21306747.3
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】514144582
【氏名又は名称】エコール・ノルマル・スペリウール
(71)【出願人】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(71)【出願人】
【識別番号】505150903
【氏名又は名称】インスティテュート スペリオール テクニコ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリア・イネス・セヴェリーノ・ネヴェス
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・セール
(72)【発明者】
【氏名】ファリド・ヌアール
(72)【発明者】
【氏名】モイセス・ピント
(72)【発明者】
【氏名】アビール・アル・モタル
(72)【発明者】
【氏名】カティア・フレイタス
【テーマコード(参考)】
4D012
4D052
4G066
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA01
4D012CA10
4D012CA20
4D012CB03
4D012CB11
4D012CG01
4D012CG02
4D052AA08
4D052CE00
4D052HA49
4G066AB06B
4G066AB07B
4G066AB09B
4G066AB13B
4G066AB21B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA03
4G066BA05
4G066BA07
4G066BA09
4G066BA23
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA02
4G066CA43
4G066CA56
4G066DA01
4G066DA03
4G066DA13
4G066EA05
4H048AA01
4H048AB90
4H048VA20
4H048VA80
4H048VB10
4H050AA01
4H050AB90
(57)【要約】
本発明は、とりわけ、カルボン酸官能基を含む揮発性有機化合物(VOC)および/またはヒドロキシル官能基を含む揮発性有機化合物(VOC)の選択的捕捉のための金属-有機フレームワーク(MOF)で構成された多孔質結晶性固体の使用に関する。本発明のMOF固体は、空気の精製、例えば、外気からのカルボン酸官能基を含むVOCおよび/またはヒドロキシル官能基を含む揮発性有機化合物(VOC)の選択的捕捉のために使用することができる。これは、セルロース誘導体フィルムの保存などの美術品保存のために、HEPAエアフィルタ、吸着剤浄化器、ケトルフィルタ、フェットフィルタ、ハニカムフィルタまたは空調フィルタなどの屋内空気浄化システムのために、ガスマスク、鼻フィルタ、吸着カラムまたは煙突フィルタなどの屋外空気浄化システムのために、および消臭剤、臭気防止シャンプー、衛生保護製品、ワイプまたはおむつなどの化粧品用途において、使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気などの気体環境からの揮発性有機化合物の選択的吸着のための少なくとも1つの多孔質金属-有機フレームワーク(MOF)材料の使用であって、前記揮発性有機化合物が、少なくとも1つのカルボン酸基を含み、および/または前記揮発性有機化合物が、ヒドロキシル基を含み、前記MOF材料が、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリンカーによって相互連結された少なくとも1mmol/gのルイス酸部位を含む、使用。
【請求項2】
前記MOFが、30℃での水吸着等温線に関して、0.4未満のp/p0相対圧力で前記MOF全吸着容量の50%超を吸着する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記MOF材料金属中心が、Fe、Al、Ti、Mn、V、Sc、Mn、Crおよびそれらの混合物、好ましくはFe、Alおよびそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記MOF材料が、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリンカーによって相互連結されたルイス酸部位を、少なくとも1.5mmol/g、好ましくは少なくとも2mmol/gまたは少なくとも2.5mmol/gの濃度で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記MOF材料が、50m2/gを超える、好ましくは100m2/gを超える比表面積を有し、前記比表面積は、前記MOF材料の77KでのN2等温線からのBETモデルで評価される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記MOF材料が、0.5nmを超える平均孔径を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記有機ポリカルボキシレートリンカーが、ジカルボン酸、トリカルボン酸またはテトラカルボン酸から、好ましくは、
・ハロ基、-OH、-NH2および-NO2から選択される1つ以上の置換基を任意に有するC6~C24芳香族ポリカルボキシレートリンカー、ならびに
・ハロ基、-OH、-NH2および-NO2から選択される1つ以上の置換基を任意に有する、C4~C16ポリカルボキシレート脂肪族リンカー
を含む群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記C6~C24芳香族ポリカルボキシレートリンカーが、テレフタレート、1H-ピラゾール-3、5-ジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、ナフタレン-2、6-ジカルボキシレート、ビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート、ベンゼン-1,2,4-トリカルボキシレート、ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、ベンゼン-1,3,5-トリベンゾエート、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボキシレート、3,3’,5,5’-テトラカルボキシレートジフェニルメタン、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボキシレート、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボキシレート、ビフェニル-3,5,3’,5’-テトラカルボキシレート、2-クロロテレフタレート、2-ブロモテレフタレート、アゾベンゼンジカルボキシレート、アゾベンゼンテトラカルボキシレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2-アミノテレフタレート、2-ニトロテレフタレート、2,5-ジヒドロキシテレフタレート、2,5-ピラジンジカルボキシレート、アゾベンゼン-4,4’ジカルボキシレート、3,3’-ジクロロ-アゾベンゼン-4,4’-ジカルボキシレート、3,3’-ジヒドロキシ-アゾベンゼン-4,4’-ジカルボキシレート、3,5,3’,5’-アゾベンゼンテトラカルボキシレートおよびそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記C4~C16ポリカルボキシレート脂肪族リンカーが、好ましくはフマル酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、ムコン酸塩、アジピン酸塩およびそれらの混合物から選択されるC4~C16ポリカルボキシレートアルキルリンカーである、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
MOF材料が、MIL-88A(Fe)、MIL-88B(X)(Fe)から選択され、式中、Xは、Br、NH2、Cl、NO2、2OHおよびCOOH、ならびにそれらの混合物から選択され、より好ましくは、MIL-100(Fe、Al)、MIL-127(Fe)、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
空気品質用途における、好ましくは美術品保存、HEPAエアフィルタ、吸着剤浄化器、ケトルフィルタ、フェットフィルタ、ハニカムフィルタまたは空調フィルタなどの屋内空気浄化システム、ガスマスク、鼻フィルタ、吸着カラムまたは煙突フィルタなどの屋外空気浄化システム、消臭剤、臭気防止シャンプー、衛生保護製品、ワイプまたはおむつなどの化粧品用途のための請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記気体環境が、空気であり、前記気体環境が、好ましくは20%~80%、好ましくは40%~60%の相対湿度を有し、好ましくは10~180℃、好ましくは15~100℃、より好ましくは15~50℃の温度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記揮発性有機化合物が、カルボン酸官能基を含むVOCから選択され、好ましくは酢酸、ギ酸、アクリル酸、プロピオン酸、イソ吉草酸、プロピオール酸、酪酸、イソ酪酸、クロトン酸、メタクリル酸、二酢酸、ブチン二酸、吉草酸、2-メチルブタン酸、ピバル酸、ヘキサン酸、2,3-トリメチルブタン酸、3-メチルヘキサン酸、2-エチル-2-メチルブタン酸、3-エチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2-メチルブタン酸およびそれらの混合物から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記揮発性有機化合物が、ヒドロキシル官能基を含むVOC、好ましくはモノアルコールから選択され、好ましくは直鎖、分枝または環状C1~C10モノアルコールおよびそれらの混合物から選択され、より好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、およびそれらの混合物から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記気体環境中の前記揮発性有機化合物の濃度が、少なくとも40ppb、好ましくは少なくとも400ppb、より好ましくは少なくとも1ppmである、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記少なくとも1つのMOF材料が、粉末、顆粒、ペレット、押出物、モノリス、発泡材料、ポリマーもしくは繊維の形態で埋め込まれたか、またはポリマー材料、紙シート、繊維もしくは金属の表面上にコーティングされた複合材の形態である、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記請求項に記載の形態の少なくとも1つのMOF材料または少なくとも1つのMOFが、空気清浄機、センサ、吸着カラム、フィルタ、呼吸マスク、吸着塔、衛生保護製品、ワイプまたはおむつから選択される装置に含まれる、請求項1から17のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、カルボン酸官能基を含む揮発性有機化合物(VOC)および/またはヒドロキシル官能基を含む揮発性有機化合物(VOC)の選択的捕捉のための金属-有機フレームワーク(MOF)で構成された多孔質結晶性固体の使用に関する。
【0002】
本発明のMOF固体は、空気の精製、例えば、外気からのカルボン酸官能基を含むVOCおよび/またはヒドロキシル官能基を含む揮発性有機化合物(VOC)の選択的捕捉のために使用することができる。これは、セルロース誘導体フィルムの保存などの美術品保存のために、HEPAエアフィルタ、吸着剤浄化器、ケトルフィルタ、フェットフィルタ、ハニカムフィルタまたは空調フィルタなどの屋内空気浄化システムのために、ガスマスク、鼻フィルタ、吸着カラムまたは煙突フィルタなどの屋外空気浄化システムのために、および消臭剤、臭気防止シャンプー、衛生保護製品、ワイプまたはおむつなどの化粧品用途において、使用され得る。
【0003】
角括弧[X]内の参照は、例の最後の参照のリストを指す。
【背景技術】
【0004】
文化的伝統は、モニュメント、建築建造物、彫刻、絵画、フィルム、および古細菌学的場所、ならびに祖先から継承され子孫に伝えられた伝統または生活表現などの有形の物体のセットとして定義することができる[1]。文化的伝統における最近の有形のアーチファクトの1つは、セルロース誘導体フィルムである。過去50年間に、これらの材料の化学的安定性が、三酢酸セルロースの自発的な化学的劣化に起因する主要な懸念事項を表すことが明らかになっており、これは、脱アセチル化およびポリマーの鎖切断をもたらし、アーチファクトから放出されたビネガー様臭気を特徴とする「ビネガーシンドローム」として知られる特定の種類の分解を引き起こす。この臭気は、博物館における主要な汚染物質の1つであるVOC酢酸の排出から生じる。
【0005】
カルボン酸官能基を含む極性VOCは、自動車、博物館、および記録保管所内の重大な汚染物質であることが一般に認められている。例えば、博物館では、これらのVOCは、例えば、N.Blades et al.,Guidelines on Pollution Control in Heritage Building,The Council For Museums,Archives And Libraries,London,2000[2]に報告されているように、制御される必要がある。例えば、D.Thickett et al.in Met.98 Proc.Int.Conf.Met.Conserv.(Eds.:W.Mourey,L.Robbiola),James&James,London,1998,pp.260-264[3]、およびV.Kontozova et al.in Proc.art2002 7th Int.Conf.Nondestruct.Test.Microanal.Diagnostics Conserv.Cult.Environ.Herit.(Eds.:R.Van Grieken,K.Janssens,L.Van’t dack,G.Meersman),University Of Antwerp,Antwerp,2002[4],Schieweck A,et al.,in J Cult Herit.2011[5]、およびAl Mohtar et al.in Sci Rep.2021[6]に報告されているように、博物館および歴史的建造物における文化的伝統の保存は、実際に、屋内空気および屋内ショーケースにおける酢酸汚染の制限に依存する。この揮発性有機汚染物質は、例えばB.Krupinska,et al.,Microchem.J.2013,110,350[7]およびBrokerhof,A.W.et al.,in James&James(Science Publishers),London,1996[8],Tetreault et al.,in Studies in Conservation,2003,48(4)[9]に開示されているように、紙中のセルロースの重合度を低下させ、鉛を含む合金やその他の金属を腐食させ、石灰質物質(石、セラミックス)を劣化させる。これは、L.T.Gibson et al.,Corros.Sci.2010,52,172[10]に報告されているように、木材の劣化から容易に形成され得る。したがって、発生源の完全な除去は、不可能ではないにしても困難であることが多く、例えばT.Prosek et al.Corros.Sci.2014,87,376[11]に報告されているように、空気中の酢酸濃度の定期的な監視が提案されている。博物館、美術館、図書館、および保管資料のコレクションのための、それぞれ1年および100年の保存目標のための400ppbおよび40ppbという非常に低い酢酸の最大平均濃度が、American Society of Heating Refrigeration and Air Conditioning Engineers,in Heating,Vent.Air-Conditioning Appl.,ASHRAE,Atlanta,2003[12]で提案されている。
【0006】
その除去のための1つの選択肢は、博物館における吸着剤材料の使用である。ゼオライトおよび活性炭のような従来の吸着剤は、揮発性有機化合物を捕捉するために多く適用されてきた。しかしながら、酢酸は、文化的アーチファクトの貯蔵の通常の湿度条件下での水の競合的吸着のために、他のより酸性の低い化合物と比較してさらなる課題をもたらす。ゼオライトは、酢酸と強く相互作用するために非常に極性の表面を有することができるが、M.L.Pinto,et al.,Adsorption 2003,9,303[13]に報告されているように、非常に低い湿度レベルで水で容易に飽和する。対照的に、活性炭は通常、ゼオライトよりも疎水性であり、通常の相対湿度条件(<60%)では水で飽和しない[14]が、酢酸に強く結合しない。
【0007】
金属-有機フレームワークは、無機部分とポリ錯体形成有機リンカーとの会合から作製され、孔径、形状、表面積および親水性/疎水性バランスを広範囲の潜在的用途に合わせて調整することができるミクロまたはメソ多孔質材料を形成する、過去数十年に開発された多孔質ハイブリッド結晶構造の汎用クラスである。吸着の分野では、より不活性な種(例えば、アルカン)に対する選択性を高めるために、極性または四重極分子、例えばCO、NOまたはCO2と特異的に相互作用する、有機リンカーからのルイス、ブレンステッドもしくはレドックスまたは官能性極性もしくは無極性基のような活性部位を示すMOFの利点に下線を引くことができる。しかし、疎水性材料の使用によって水をはじく必要なしに、湿潤環境でカルボン酸官能基を含むVOCを非常に効率的かつ選択的捕捉のためのMOFについては、まだ効率的なことは報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、これまでに報告されたすべてのものよりも性能が高く、文化的伝統を保護することを可能にする、自動車、博物館および記録保管所における屋内空気からカルボン酸官能基を含むVOCおよび/またはヒドロキシル官能基を含むVOCを、選択的に捕捉するための安定な手段を、特に湿潤環境において見出すことが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この必要性に対処するために、カルボン酸官能基を含むVOCおよび/またはヒドロキシル官能基を含むVOCを、例えば建物内の部屋に見られ、典型的には相対湿度が約40%~60%である湿潤環境においてさえ、非常に効率的かつ選択的に吸着することができる特定のMOFを見出すために、本発明者らによって広範な研究が行われてきた。
【0010】
本発明の説明自体に取り組む前に、本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句がここで定義される。
・特許請求の範囲以外で本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、および/または「said」という用語は、1つ以上を意味する。請求項において本明細書で使用される場合、「を含む(comprise)」、「を含む(comprises)」、および/または「を含む(comprising)」という単語と共に使用される場合、「a」、「an」、「the」、および/または「said」という単語は、1つ以上を意味し得る。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「を有する(having)」、「を有する(has)」、「である(is)」、「有する(have)」、「を含む(including)」、「を含む(includes)」、および/または「含む(include)」という用語は、「を含む(comprising)」、「を含む(comprises)」、および「含む(comprise)」と同じ意味を有する。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2の、またはそれ以上を意味し得る。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「約」は、任意の固有の測定誤差または値(例えば、測定値、比率などの計算値)の桁の丸めを指し、したがって「約」という用語は、任意の値および/または範囲で使用され得る。
・列挙に続く「それらの組み合わせ」、「これらの混合物」などの語句、列挙の一部としての「および/または」の使用、表の列挙、列挙の一部としての「等」の使用、「例えば、」という語句および/または「例えば、」を有する括弧内の列挙、すなわち、列挙された成分のセットの任意の組み合わせ(例えば、任意のサブセット)、ならびにそのような列挙に直接配置されていないが、本明細書に記載の関連する種および/または実施形態の組み合わせおよび/または混合物も考えられる。本明細書に記載のそのような関連および/もしくは類似の属、亜属、種および/または実施形態は、特許請求され得る個々の成分の形態、ならびに特許請求の範囲に「から選択される少なくとも1つ」、「これらの混合物」および/または「それらの組み合わせ」として記載され得る混合物および/または組み合わせの両方で考えられる。
・一般に、「置換されている」という用語は、「任意に」という用語が先行するか否かにかかわらず、本発明の式に含まれる置換基は、特定の置換基のラジカルによる所与の構造中の水素ラジカルの置換を指す。任意の所与の構造における2つ以上の位置が、特定の群から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、すべての位置において同じであっても異なっていてもよい。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許容可能な置換基を含むと考えられる。
・本明細書で使用される場合、「約」という用語は、指定された値の±5%、±10%、±20%、または±25%の変動を指すことができる。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態では、45~55%の変動を有し得る。整数範囲の場合、「約」という用語は、列挙された整数より大きいおよび/もしくは小さい1つまたは2つの整数を含むことができる。本明細書中で他に示されない限り、用語「約」は、個々の成分の機能性、組成物または実施形態に関して等価である列挙された範囲に近い値、例えば濃度値を含むことが意図される。
・本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、この用語が関連する項目のいずれか1つ、項目の任意の組み合わせ、または項目のすべてを意味する。
・当業者によって理解されるように、成分の量、空洞/孔径およびBET比表面積などの特性、反応条件などを表すものを含むすべての数は近似値であり、すべての場合において「約」という用語によって任意に修飾されると理解される。これらの値は、本明細書の説明の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。そのような値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる変動性を本質的に含むことも理解される。
・当業者によって理解されるように、任意のおよびすべての目的のために、特に書面による説明を提供することに関して、本明細書に列挙されたすべての範囲はまた、任意のおよびすべての可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせ、ならびに範囲を構成する個々の値、特に整数値を包含する。列挙された範囲は、範囲内の各特定の値、整数、小数、または同一性を含む。列挙された範囲はいずれも、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、または10分の1に分割することを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で説明する各範囲は、下3分の1、中央3分の1、および上3分の1などに容易に分解することができる。
・当業者であれば、マーカッシュ群のように、メンバーが共通の様式で一緒にグループ化される場合、本発明は、全体として列挙された群全体だけでなく、群の各メンバーおよび主要な群のすべての可能な部分群を包含することも容易に認識するであろう。さらに、すべての目的のために、本発明は、主要な群だけでなく、群メンバーの1つ以上が存在しない主要な群も包含する。したがって、本発明は、列挙された群のメンバーのいずれか1つ以上の明示的な除外を想定する。したがって、提供は、開示されたカテゴリまたは実施形態のいずれかに適用することができ、それによって、列挙された要素、種、または実施形態のいずれか1つ以上は、例えば、明示的な否定的限定で使用されるように、そのようなカテゴリまたは実施形態から除外することができる。
・本明細書で使用される場合、「三次元構造」という表現は、MOF材料の分野で従来理解されているように、「有機金属ポリマー」としても特徴付けられる単位または部分変異体の三次元配列または繰り返しを意味すると理解される。
・本明細書で使用される場合、「固体」という用語は、任意の種類の結晶性材料を指す。前記固体は、例えば、様々な形態、例えば球形、層状などの形態の結晶、粉末または粒子の形態であり得る。粒子は、ナノ粒子の形態であり得る。
・本明細書で使用される場合、「湿潤環境」は、水蒸気を含む大気環境を意味する。水蒸気を含む空気であってもよい。環境中に存在する水蒸気、例えば空気の量は、温度が上昇するにつれて増加する。空気中の水蒸気の量の差は、非常に大きくなり得る。例えば、飽和に近い空気の塊(例えば、約100%の相対湿度)は、30℃では空気1立方メートル当たり28グラムの水を含み得るが、8℃では空気1立方メートル当たりわずか8グラムの水を含み得る。水蒸気または蒸気または水性蒸気は、水の気相である。これは、水圏内の水の1つの状態である。典型的な大気条件下では、水蒸気は蒸発によって連続的に発生し、凝縮によって除去される。空気の蒸気含有量は、湿度計として知られる装置を用いて測定することができる。本発明では、環境中の水蒸気、例えば空気の量は、例えば室温、すなわち18℃~28℃の温度で、乾燥空気から飽和まで、例えば10~30℃であってもよい。
・MOFは、合成全体を通して無傷のままである「リンカー(linkers)」もしくは「リンカー(linker)」または「スペーサー(spacers)」もしくは「スペーサー(spacer)」とも呼ばれる架橋有機リガンドから構築され、これらのリガンドは、得られたMOF構造のネットワーク中のリンカーとして作用する。本明細書で使用される場合、「リガンド」または「リンカー」または「スペーサー」という用語は、少なくとも2つの金属に配位したリガンドを指し、これらの金属間の距離を提供し、MOF内に「コア」とも呼ばれる空の空間または細孔の形成に関与する。
・本明細書で使用される場合、「脂肪族」は、芳香族化合物(IUPAC)を除く、非環式もしくは環式の飽和または不飽和炭素化合物を指す。直鎖状であろうと分枝状であろうと、いかなる種類の環も含まない開鎖化合物は、常に脂肪族である。環状化合物は、芳香族でない場合、脂肪族であり得る。脂肪族化合物は、飽和であり得るか、単結合(アルカン)によって結合され得るか、または二重結合(アルケン)もしくは三重結合(アルキン)を有する不飽和であり得る。水素の他に、他の元素が炭素鎖に結合することができ、最も一般的には酸素、窒素、硫黄および塩素である。
・本明細書で使用される場合、「芳香族」は、芳香族性を有すると言われる仮想的な局在化構造(例えば、ケクレ構造)の安定性よりも有意に大きい安定性(非局在化による)を有する環状共役分子実体を指す。この用語の使用は、ヒュッケル(4n+2)則の適用、および遷移状態(IUPAC)における軌道の重なりのトポロジーの考慮に基づく。
【0011】
本発明者らは、本発明を通して、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリンカーによって相互連結されたルイス酸部位を含むMOFの特定の選択を使用することにより、例えば建物に通常見られる湿潤環境であっても、カルボン酸官能基を含むVOCおよび/またはヒドロキシル官能基を含むVOCの選択的捕捉を強く増強することが可能であることを示した。
【0012】
特に、本発明は、空気などの気体環境からの揮発性有機化合物の選択的吸着のための少なくとも1つの多孔質金属-有機フレームワーク(MOF)材料の使用に関し、前記揮発性有機化合物は、少なくとも1つのカルボン酸基を含み、および/または前記揮発性有機化合物は、ヒドロキシル官能基を含み、前記MOF材料が、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリンカーによって相互連結された少なくとも1mmol/gのルイス酸部位を含む。好ましい実施形態では、本発明は、空気などの気体環境からの揮発性有機化合物の選択的吸着のための少なくとも1つの多孔質金属-有機フレームワーク(MOF)材料の使用に関し、前記揮発性有機化合物は、少なくとも1つのカルボン酸基を含み、前記MOF材料は、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリンカーによって相互連結された少なくとも1mmol/gのルイス酸部位を含む。
【0013】
本発明はまた、気体環境からの有機揮発性化合物の選択的吸着の方法であって、少なくとも1つの金属-有機フレームワーク(MOF)材料を、有機揮発性化合物を含む気体環境体積部と接触させるステップを含み、前記揮発性有機化合物が、少なくとも1つのカルボン酸基を含み、および/または前記揮発性有機化合物が、ヒドロキシル官能基を含み、前記MOF材料が、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリガンドによって相互連結された少なくとも1mmol/gのルイス酸部位を含む、方法に関する。好ましくは、本発明はまた、気体環境からの有機揮発性化合物の選択的吸着の方法であって、少なくとも1つの金属-有機フレームワーク(MOF)材料を、有機揮発性化合物を含む気体環境体積と接触させるステップを含み、前記揮発性有機化合物が、少なくとも1つのカルボン酸基を含み、前記MOF材料が、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリガンドによって相互連結された少なくとも1mmol/gのルイス酸部位を含む、方法に関する。
【0014】
「金属八面体の三量体から構築されたルイス酸部位」、別の物質から1対の非結合電子を受け取ることができる元素によって意味される。三量体ベースのMOF構造では、3つの配位金属は、構造中のリンカーとして作用する6つのリガンドおよび3つの末端リガンドを有する三量体を形成する1つの中心μ3-オキソを共有し、金属配位球を完成させ、1つのHO-および2つの水分子は、末端水リガンドの除去に効果的であるルイス酸部位を有する。本発明による使用では、VOCからのカルボキシレートは末端水リガンドを置換し、より強いルイス酸部位-VOC相互作用をもたらす、図1を参照されたい(明確にするために水素原子は省略されている)。これらの値に関連する刊行物を参照したルイス酸部位の量は、MIL-100(Fe)についての参考文献[31]、MIL-100(Al)については[32]、MIL-127(Fe)については[33]およびMIL-101(Cr)については[34]に見出すことができる。JACS 2006[44]には、ルイス酸部位の数を決定する方法が記載されている。
【0015】
有利には、本発明によれば、MOFは、30℃での水吸着等温線に関して、0.4未満のp/p0相対圧力で前記MOF全吸着容量の50%超を吸着し得る。30℃での水吸着等温線は、典型的には低圧から約1バールの大気圧までの体積または重量吸着装置(好ましくは重量吸着装置)を用いて、サンプル1グラム当たりのミリモルで測定することができる。
【0016】
有利には、本発明によれば、MOF材料金属中心は、Fe、Al、Ti、Mn、V、Sc、Mn、Crおよびそれらの混合物、好ましくはFe、Alおよびそれらの混合物から選択されてもよい。
【0017】
有利には、本発明によれば、MOF材料は、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリンカーによって相互連結されたルイス酸部位を、少なくとも1mmol/g、好ましくは少なくとも1.5mmol/g、より好ましくは少なくとも2mmol/gまたは少なくとも2.5mmol/gの濃度で、含み得る。好ましくは、金属八面体の三量体から構築され、有機ポリカルボキシレートリンカーによって相互連結されたルイス酸部位は、化学的にアクセス可能である。それは、ルイス酸塩基反応が起こり得る利用可能な部位である「化学的にアクセス可能」を意味する。
【0018】
有利には、本発明によれば、MOF材料は、50m2/gを超える、好ましくは100m2/gを超える比表面積を有することができる。比表面積は、前記MOF材料の77KでのN2等温線からのBETモデルで評価することができる。
【0019】
有利には、本発明によれば、MOF材料は、少なくとも0.5nmの平均孔径を有する。平均孔径は、前記MOFの結晶学的情報ファイル(CIF)を使用して測定することができる。これはまた、例えば、平均孔径分布を決定することができるBJH(Barret-Joyner-Halenda)、DFT(密度汎関数理論)、Horvath-HawazoeまたはDubinin-Astakhov法などの数学的方程式を適用して窒素等温線から計算することができる。
【0020】
有利には、本発明によれば、MOFの有機ポリカルボキシレートリンカーは、ジカルボン酸、トリカルボン酸またはテトラカルボン酸から選択され得る。好ましくは、MOFの有機ポリカルボキシレートリンカーは、
・ハロ基(-Clまたは-Brなど)、-OH、-NH2および-NO2から選択される1つ以上の置換基を有していてもよい、C6~C24芳香族ポリカルボキシレートリンカー、例えば、ベンジルまたはナフチルジ-、トリ-またはテトラカルボキシレート、および
・ハロ基(-Clまたは-Brなど)、-OH、-NH2および-NO2から選択される1つ以上の置換基を任意に有する、C4~C16ポリカルボキシレート脂肪族リンカーから選択され得る。
【0021】
有利には、前述のリンカーのそれぞれは、好ましくは、リンカーに直接グラフトされ、MOFの細孔内を指し示す無極性フッ素化基および/または無極性C1~C20基を有さないものであり得る。
【0022】
有利には、本発明によれば、C6~C24芳香族ポリカルボキシレートリンカーは、テレフタレート、1H-ピラゾール-3、5-ジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、ナフタレン-2、6-ジカルボキシレート、ビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート、ベンゼン-1,2,4-トリカルボキシレート、ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、ベンゼン-1,3,5-トリベンゾエート、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボキシレート、3,3’,5,5’-テトラカルボキシレートジフェニルメタン、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボキシレート、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボキシレート、ビフェニル-3,5,3’,5’-テトラカルボキシレート、2-クロロテレフタレート、2-ブロモテレフタレート、アゾベンゼンジカルボキシレート、アゾベンゼンテトラカルボキシレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2-アミノテレフタレート、2-ニトロテレフタレート、2,5-ジヒドロキシテレフタレート、2,5-ピラジンジカルボキシレート、アゾベンゼン-4,4’ジカルボキシレート、3,3’-ジクロロ-アゾベンゼン-4,4’-ジカルボキシレート、3,3’-ジヒドロキシ-アゾベンゼン-4,4’-ジカルボキシレート、3,5,3’,5’-アゾベンゼンテトラカルボキシレートおよびそれらの混合物から選択され得る。
【0023】
有利には、本発明によれば、C4~C16ポリカルボキシレート脂肪族リンカーは、アルキルリンカーであり得る。C4~C16ポリカルボキシレートアルキルリンカーは、ジ-、トリ-もしくはテトラカルボキシレートまたはカルボン酸リンカー、例えばフマル酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、ムコン酸塩、アジピン酸塩およびそれらの混合物から選択され得る。
【0024】
有利には、本発明によれば、MOF材料は、MIL-88A(Fe)、MIL-88B(X)(Fe)(式中、XはBr、NH2、Cl、NO2、2OHおよびCOOH[14]から選択される)およびそれらの混合物、より好ましくはMIL-100(Fe、Al)[15,16]、MIL-127(Fe)[17]およびそれらの混合物から選択されてもよい。
【0025】
本発明による使用は、空気品質用途および/または化粧品用途であり得る。それは、「空気品質用途」:
・セルロース誘導体フィルムの保存などの美術品保存(その劣化化合物は、セルロースおよびセルロースエーテルの加水分解および酸化を触媒し、酢酸がセルロースベースのアーチファクト分解に対する自己触媒効果を有することを意味する。これらのアーチファクトの積分損失を制御する1つの方法は、博物館の保管品/展示品からのVOCの除去である[18-20])、
・HEPAエアフィルタ、吸着剤浄化器、ケトルフィルタ、フェットフィルタ、ハニカムフィルタまたは空調フィルタなどの屋内空気浄化システム、
・ガスマスク、鼻フィルタ、吸着カラムまたは煙突フィルタなどの屋外空気浄化システム、
・消臭剤、臭気防止シャンプー、衛生保護製品、ワイプまたはおむつなどの化粧品用途を意味する。
【0026】
有利には、本発明によれば、気体環境は、空気であってもよい。気体環境は、例えば建物の内部の部屋に見られ、20%~80%、好ましくは40%~60%の相対湿度を有し得る湿潤環境であり得る。気体環境は、10~180℃、好ましくは15~100℃、より好ましくは15~50℃の温度を有し得る。
【0027】
本発明によれば、カルボン酸官能基を含む揮発性有機化合物は、293.15Kで0.01kPa以上の蒸気圧を有する、または特定の使用条件下で対応する揮発性を有する揮発性有機化合物(VOC)である。本指示の目的のために、293.15Kにおける蒸気圧のこの値を超えるクレオソートの留分は、VOCとみなされるものとする(1999年3月11日の理事会指示1999/13/EC[44])。本発明に従って選択的に吸着され得るカルボン酸官能基を含むVOCは、例えば、酢酸、ギ酸、アクリル酸、プロピオン酸、イソ吉草酸、プロピオール酸、酪酸、イソ酪酸、クロトン酸、メタクリル酸、二酢酸、ブチン二酸、吉草酸、2-メチルブタン酸、ピバル酸、ヘキサン酸、2,3-トリメチルブタン酸、3-メチルヘキサン酸、2-エチル-2-メチルブタン酸、3-エチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2-メチルブタン酸およびそれらの混合物から選択され得る。
【0028】
本発明によれば、ヒドロキシル官能基を含む揮発性有機化合物は、293.15Kにおいて0.01kPa以上の蒸気圧を有する、または特定の使用条件下で対応する揮発性を有する揮発性有機化合物(VOC)である。本指示の目的のために、293.15Kにおける蒸気圧のこの値を超えるクレオソートの留分は、VOCとみなされるものとする(1999年3月11日の理事会指示1999/13/EC[44])。本発明に従って選択的に吸着され得るヒドロキシル官能基を含むVOCは、モノアルコールであり、直鎖、分枝または環状C1~C10モノアルコールおよびそれらの混合物から選択され得る。それらは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、およびそれらの混合物から選択され得る。
【0029】
カルボン酸官能基を含むこれらの揮発性有機化合物は、以下の実施例に示すように、湿気の多い環境であっても、博物館で見られる40%の相対湿度をはるかに超えても、本発明に従って選択的に吸着され得る。ヒドロキシル官能基を含むこれらの揮発性有機化合物は、以下の実施例に示すように、湿気の多い環境であっても、博物館で見られる40%の相対湿度をはるかに超えても、本発明に従って選択的に吸着され得る。
【0030】
本発明によれば、カルボン酸官能基を含む揮発性有機化合物は、気体環境(好ましくは空気)において、少なくとも40ppb、好ましくは少なくとも400ppb、より好ましくは少なくとも1ppmの濃度であり得る。本発明によれば、ヒドロキシル官能基を含む揮発性有機化合物は、気体環境(好ましくは空気)において、少なくとも40ppb、好ましくは少なくとも400ppb、より好ましくは少なくとも1ppmの濃度であり得る。
【0031】
本発明によれば、MOFは、MOFと、極性揮発性有機化合物を吸着によって捕捉しなければならない環境との間の大きな交換面を可能にする形態であることが好ましい。MOFは、例えば、粉末、顆粒、ペレット、押出物、モノリス、発泡材料、ポリマーもしくは繊維の形態で埋め込まれたか、またはポリマー材料、紙シート、繊維もしくは金属の表面上にコーティングされた複合材の形態であり得る。例えば、2009年10月に公開された文献である国際公開第2009/123484号[23]は、本発明を実施するためにMOFを支持するために使用することができる吸着能力を有するポリウレタンフォームフィルタ材料を製造するための有用なプロセスを開示している。他の例は、文献M.Rose et al.Adv.Eng.Mater.2011,13,356-360[24]、R.Ostermann at al.Chem.Commun.2011,47,442-444[25]、J.Ren et al.Int.J.Hydrogen Energy 2015,40,9382-9387[26]およびM.R.Khan et al.J.Mater.Eng.Perform.2016,25,1276-1283[27]に開示されているMOF粒子を含むポリマーのエレクトロピニングであり、これは、揮発性有機化合物の吸着のためのMOFの適用を単純化する、サポートされたMOFを含む最終複合繊維材料を与える。他の例としては、例えば、文献、Valekar et al.,RSC Adv,2017[28]、またはpellets,Q.Ren,et al.," Chem.Eng.J.,,2015[29]に既に開示されているような、またはGkaniatsou et al.,Nano Energy,2020[30]に開示されているように、特定の支持体をコーティングすることによる顆粒の形態など、異なる形状のMOFの使用が含まれ得る。
【0032】
本発明によれば、前の段落に記載の形態の少なくとも1つのMOF材料または少なくとも1つのMOFは、空気清浄機、センサ、吸着カラム、フィルタ、呼吸マスク、吸着塔、衛生保護製品、ワイプまたはおむつから選択される装置に含まれてもよい。
【0033】
本発明は、好都合なことに、カルボン酸官能基を含むVOCおよび/またはヒドロキシル官能基を含むVOCの低濃度を、大気/環境中の水の存在下であっても、例えば、深刻な保存問題を引き起こす博物館において、屋内空気から容易かつ選択的に除去することを可能にする。本発明は、有利には、カルボン酸官能基を含むVOCおよび/またはヒドロキシル官能基を含むVOCの低濃度を、地理的位置とは無関係に、例えばガスマスク、鼻フィルタ、吸着カラムまたは煙突フィルタなどの屋外空気浄化システムを介して、大気/環境中の水の存在下であっても、外気から容易かつ選択的に除去することを可能にする。本発明は、有利には、大気/環境中の水の存在下であっても、消臭剤、臭気防止シャンプー、衛生保護製品、ワイプまたはおむつを使用して、カルボン酸官能基を含む低濃度の臭気VOCおよび/またはヒドロキシル官能基を含むVOC、例えば臭気分子の容易かつ選択的な除去を可能にする。以下の実験および結果は、従来技術の解決策を上回る本発明の利点を確認する。
【0034】
以下の代表的な実施例および図は、本発明を説明するのを助けることを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、そのように構成されるべきでもない。実際、本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の様々な修正およびその多くのさらなる実施形態は、以下の実施例および本明細書に引用された科学文献および特許文献への参照を含むこの文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。これらの引用された参考文献の内容は、最新技術を例示するのを助けるために参照により本明細書に組み込まれることをさらに理解されたい。
【0035】
以下の実施例は、その様々な実施形態およびその均等物において本発明の実施に適合させることができる重要な追加の情報、例示およびガイダンスを含む。異なる量のルイス酸部位を有するMOFが提示される:MIL-100(Fe)、3.6mmol/gの鉄(III)ルイス酸部位[31]、MIL-100(Al)、2.2mmol/gのアルミニウム(III)ルイス酸部位[32]、MIL-127(Fe)、2.7mmol/gの鉄(III)ルイス酸部位[33]、およびMIL-101(Cr)、1mmol/g未満のクロム(III)ルイス酸部位[34]。MIL-100(Fe)およびMIL-100(Al)は、水に対して親和性を有し、p/p0<0.4でそれらの総保水量の半分に達する(MIL-100(Fe)については0.35 p/p0で約17.5mmol/g、MIL-100(Al)[35]については0.24p/p0で約13mmol/g、すべて25℃)。MIL-101(Cr)は、水に対して最後のものよりも低い親和性を示し、容量の半分がp/p0<0.5で得られる[36]。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】金属三量体を表す。各金属は、八面体環境を形成する6個の酸素原子によって6配位されている(構築リガンドからの4個の酸素原子、1個の中心μ3-オキソおよび末端リガンドからの1個の酸素原子)。3つの配位金属は、3つの末端リガンド、1つのHO-および2つの水分子を有する三量体を形成する1つの中心μ3-オキソを共有する(明確にするために水素原子は省略されている)。ルイス酸部位は、末端水リガンドの除去に有効である。本発明では、VOCからのカルボキシレートが末端水リガンドを置換し、より強いルイス酸部位-VOC相互作用をもたらす。
図2A】MIL-100(Fe)から得られた窒素吸着等温線を表す(一次真空下、150℃で15時間真空引き)。得られた表面積は、約1850m2.g-1(BETモデルを使用して評価)である。
図2B】MIL-100(Al)から得られた窒素吸着等温線を表す(一次真空下、150℃で15時間真空引き)。得られた表面積は、約1000m2.g-1(BETモデルを使用して評価)である。
図2C】MIL-127(Fe)から得られた窒素吸着等温線を表す(一次真空下、200℃で3時間真空引き)。得られた表面積は、約1400m2.g-1(BETモデルを使用して評価)である。
図2D】MIL-101(Cr)から得られた窒素吸着等温線を表す(一次真空下、220℃で15時間真空除去)。得られた表面積は、約2700m2.g-1である(BETモデルを使用して評価)。
図3A】活性化(白丸)および非活性化(完全正方形)MIL-100(Fe)のT=25℃での酢酸吸着等温線を表す。
図3B】活性化MIL-127(Fe)のT=25℃での酢酸吸着等温線を表す。
図4】活性化MIL-100(Fe)のT=25℃におけるプロピオン酸吸着等温線を表す。
図5】活性化(白丸)および非活性化(完全正方形)MIL-100(Fe)の25℃での水吸着等温線を表す。
図6A】吸着剤を含まない40%R.Hの閉鎖チャンバ内の酢酸濃度プロファイルを表す。
図6B】異なるMOFについての40%R.Hでの閉鎖チャンバ内の酢酸濃度プロファイルを表す。
図7】MIL-100(Fe)に対する酢酸および水(50/50体積%)混合物のTPDスペクトルを表す。
図8】MIL-100(Fe)上のプロピオン酸と水(50/50体積%)の混合物のTPDスペクトルを表す。
図9A】文献から計算されたパターンと比較して、1.6~30°の2θ範囲における実験的MIL-100(Fe)のP-XRDパターンを表す。[37]
図9B】文献からの計算されたパターンと比較して、1.6~30°の2θ範囲における実験的MIL-100(Al)のP-XRDパターンを表す。[37]
図9C】文献からの計算されたパターンと比較して、5~30°の2θ範囲における実験的MIL-127(Fe)のP-XRDパターンを表す。[38、39]
図9D】文献からの計算されたパターンと比較して、1.6~30°の2θ範囲における実験的MIL-101(Cr)のP-XRDパターンを表す。[40]
図10A】MIL-100(Fe)の熱重量分析を表す。O2下(昇温速度5℃/分)で行った。熱重量分析(5℃/分でO2下で実施)は、2つの重量損失を示す:25℃~250℃の第1のものは、固体の細孔内の水の損失に対応する。第2の重量損失は、約300℃でのMOFの劣化に起因する。このことから、予想損失は、十分に文献からの予想範囲内であることが分かる。
図10B】MIL-100(Al)の熱重量分析を表す。O2下(昇温速度5℃/分)で行った。熱重量分析(5℃/分でO2下で実行)は、2つの重量損失を示す:200℃までの第1のものは、微細孔に捕捉された水の損失に対応する。第2の重量損失は、約300℃でのMOFの劣化に起因する。このことから、予想損失は、十分に文献からの予想範囲内であることが分かる。
図10C】MIL-127(Fe)の熱重量分析を表す。O2下(昇温速度5℃/分)で行った。熱重量分析(5℃/分でO2下で実行)は、2つの重量損失を示す:200℃までの第1のものは、微細孔に捕捉された水の損失に対応する。第2の重量損失は、約300℃でのMOFの劣化に起因する。このことから、予想損失は、十分に文献からの予想範囲内であることが分かる。
図10D】MIL-101(Cr)の熱重量分析を表す。O2下(昇温速度5℃/分)で行った。熱重量分析(5℃/分でO2下で実行)は、2つの重量損失を示す:200℃までの第1のものは、細孔に捕捉された水の損失に対応する。第2の重量は、約300℃でのMOFの劣化に起因する。このことから、予想損失は、十分に文献からの予想範囲内であることが分かる。
図11】MIL-100(Fe)に対するギ酸と水(50/50体積%)の混合物のTPDスペクトルを表す。
図12】活性化(白丸)および非活性化(完全正方形)MIL-100(Fe)の25℃でのギ酸吸着等温線を表す。
図13】a)相対湿度60%下での粉末MIL-100(Fe)上の酢酸(N2中濃度500ppm)のブレークスルー曲線、および(b)それぞれの等温線を黒色で表し、ブレークスルーから得られた値を赤色で示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
実施例
本発明によれば、使用可能なMOF材料およびそれらの調製は、これらの材料が調製または使用されるプロセスのいくつかを示す実施例によってさらに理解することができる。しかしながら、これらの実施例は、本発明を限定すると解釈されるべきではないことが理解されよう。現在知られているまたはさらに開発された本発明の変形は、本明細書に記載され、以下に特許請求される本発明の範囲内にあると考えられる。
【0038】
実施例1:材料合成
1.1.Nouar et al.、欧州特許第3357929号明細書、2018[15]で言及されている条件から適合させた、0.96molの1,3,5-ベンゼントリカルボン酸および1.42molの非水和硝酸鉄(III)および18Lの脱イオン水を用いた周囲圧力合成により、3.6mmol/g[31]の鉄(III)ルイス酸部位を有するMIL-100(Fe)MOFを得た。混合物をマグネチックスターラーを用いて60℃からの温度で62時間撹拌する。次いで、褐色混合物を濾過して褐色固体を得、これを絶対水およびエタノールで数回洗浄して、未反応の1,3,5-ベンゼントリカルボン酸を除去する。次いで、粉末を室温で乾燥させる。
【0039】
1.2.2.2mmol/g[32]のアルミニウム(III)ルイス酸部位を有するMOFであるMIL-100(Al)非水和の6mmolの1,3,5-ベンゼントリカルボン酸および4mmolの硝酸アルミニウム(III)を100mLのオートクレーブに導入する。次いで、25mLの脱イオン水を添加し、Marquez et al.Eur J Inorg Chem.,2012,100(32)[16]の文献に開示されているように、マグネチックスターラーを使用して混合物を10分間撹拌する。次いで、懸濁液を電子レンジに入れ、210℃まで加熱する(1分間の傾斜)。温度を1400Wの電力で5分間安定に保つ。次いで、混合物を遠心分離し、絶対水およびエタノールで数回洗浄し、室温で乾燥させる。
【0040】
1.3.2.7mmol/g[33]の鉄(III)ルイス酸部位を有するMOFであるMIl-127(Fe)を、2mmolのNaOHを4mLの水に添加し、次いでこれを撹拌することによって合成した。次いで、この溶液を、Chevreau et al.,CrystEngComm.2016,18(22),4094-4101[17]に開示されているように、1mmolの3,3’,5,5’-アゾベンゼンテトラカルボン酸および22mLの予め撹拌したイソプロパノール溶液に添加する。17mLのイソプロパノールを用いて調製した6水和塩化鉄(III)2mmolの溶液を最後に前の溶液に添加した。混合物を撹拌し、130℃まで徐々に24時間加熱する。次いで、反応混合物を濾過して黄色固体を得、これを無水エタノールで数回洗浄し、室温で乾燥させる。
【0041】
1.4.ベンゼン-1,4-ジカルボン酸12mmolおよび硝酸クロム九水和物2mmolを100mLオートクレーブに添加することにより、クロム(III)ルイス酸部位の1mmol/g未満[34]のMOFであるMIL-101(Cr)(対実施例)を合成した。次いで、25mLの脱イオン水を添加し、混合物をマグネチックスターラーを用いて10分間撹拌する。懸濁液を電子レンジに入れ、200℃まで加熱する(4分間の傾斜)。従うプロトコルは、Jhung et al,Adv.Mater.2007[41]から適応された。温度を1200 Wの出力で30分間安定に保つ。次いで、混合物を遠心分離し、絶対水およびエタノールで数回洗浄し、室温で乾燥させる。
【0042】
実施例2:材料特性評価
上記の実施例1で合成された様々な材料の獲得を確認するために、3つの一連の分析を行った:
・-196℃での窒素吸着;
・合成材料のPXRD;および
・合成された材料の熱重量分析。
【0043】
2.1-196℃での窒素吸着:窒素(空気液、99.999%)吸着-脱着等温線を、体積測定自動装置(マイクロメリティックス、ASAP 2010)において、液体窒素極低温浴を使用して-196℃で測定した。測定の前に、サンプルを一次真空下でアウトガスした。これらの分析のすべての結果は、実施例1で合成された様々な材料の多孔性を確認し、図2A図2Dに提示されている。
【0044】
2.2 合成した材料のPXRDパターン:粉末X線回折パターンは、Cu Kα線(λ=1.5418Å)を用いたBruker D8-Advance回折計で得た。回折パターンは、5~70°の2θ範囲にわたって記録され、0.02°のステップサイズおよびステップあたり0.1秒であった。これらの分析のすべての結果は、実施例1で合成された様々な結晶性材料の獲得を確認し、図9A図9Dに提示されている。
【0045】
2.3 合成された材料の熱重量分析:合成された各材料のTGAプロファイルを得るために、サンプル(約10mg)を5℃/分の一定速度で空気下で重量分析装置(Mettler Toledo TGA/DSC 2、STARシステム)で分析した。これらの分析の結果はすべて、例1で合成された様々な材料の純度を確認し、図10A図10Dに提示されている。
【0046】
実施例3:異なる材料の吸着容量に関する実験
3.1.水吸着測定に使用されるプロトコル
水吸着等温線を、実施例1で合成した約50mgの材料について、1.0p/p0までの相対圧力で重量測定法によって測定した。測定は、圧力センサ(100トール範囲のMKS a-BARATRON静電容量圧力計)を備えたマイクロバランス(CI Electronics)で行った。吸着温度は25℃の水浴(VMR、VWB2シリーズ、温度安定性0.2℃)で維持した。実験の前に、材料を高真空(10-6mbar)下で所望の温度で活性化した。
【0047】
3.2.酸性蒸気吸着測定に使用されるプロトコル
吸着等温線は、実施例1で合成した材料の約50mgの異なるサンプルに対して、0.06p/p0までの低い相対圧力で重量測定法によって測定した。測定は、圧力センサ(100トール範囲のMKS a-BARATRON静電容量圧力計)を備えたマイクロバランス(CI Electronics)で行った。吸着温度は25℃の水浴(VMR、VWB2シリーズ、温度安定性0.2℃)で維持した。測定の前に、材料を高真空(10-6mbar)下で所望の温度で活性化した。
【0048】
3.3.制御された相対湿度環境における酢酸吸着のために使用されるプロトコル
約100mgの材料を10cm3ガラスバイアルの内部に入れ、100℃のオーブン中で一晩保持した。バイアルを取り出し、実験に使用するまでポリエチレンキャップでしっかりと閉じた。50mgの吸着剤材料を時計皿に秤量し(Mettler AE240)、湿度を制御したガラスチャンバ(2.9dm3)の内部に直ちに置いた。湿度は、炭酸カリウムの飽和溶液(BDH Prolabo、99.6%)によって相対湿度約40%に制御した。チャンバに窒素流を1時間流し、ガスが飽和溶液を通過して湿潤環境で平衡化した。この後、シリンジ(Hamilton 7001 KH)を用いてゴム隔壁注入口よりチャンバ内に1μLの酢酸(Riedel-de Haen、99.8%)を注入した。チャンバ内の全揮発性有機化合物(TVOC)濃度、温度および相対湿度を測定し(Graywolf TG-502 TVOC ppb)、コンピュータソフトウェア(Wolfsense LAP)を使用して一定の時間間隔(15秒)で1時間記録した。実験中、温度は22.8±0.8℃であり、相対湿度は43.5±3.5%であった。実験時間枠中のチャンバの気密性を実証し、1μLの注入によって得られたTVOCシグナル応答を確認するために、酢酸の注入なしのブランク実験を行い、MOFなしの酢酸の注入を用いて対照実験を行った。
【0049】
3.4.温度プログラム脱着(TPD)に使用されるプロトコル:
TPDに使用されたプロトコルは、Sayariのグループによって公開された動的吸着システムから適合された[42]。ガスの流れは質量流量計(ステンレス鋼ガス熱質量流量制御器、McMillan 80SD)を使用して制御し、ガスの経路は4方向バルブによって制御した。すべての実験は、大気圧(103kPa)よりわずかに高い圧力で行った。約90mgの活性化サンプル(T=150℃、D=15時間)を内径6.4mmのステンレス鋼カラムの内部に装填した。材料を200℃で2時間、44cm3/分のHe流下で再生した。蒸気の注入は、6方向バルブを介して可能にした。50% V/Vの有機蒸気および水の液体混合物を、6方向バルブに接続された10μL容量のループを用いて系に注入した。注入された溶液を、105℃に保たれた加熱素子を使用して蒸発させ、44cm3/分の流量でHeによって実行/希釈した。吸着は室温で起こった。次いで、カラムを2℃/分の加熱勾配で室温からT=200℃に加熱した。カラム出力の組成を質量分析計で時間の関数として記録した。
【0050】
実施例4:分析の結果
4.1 窒素吸着
図2は、-196℃で、a)MIL-100(Fe)、b)MIL-100(Al)、c)MIL-127(Fe)、d)MIL-101(Cr)に対する得られた窒素吸着等温線を示す。
【0051】
4.2 酢酸吸着
図3は、a)MIL-100(Fe)、b)MIL-127(Fe)の質量当たりの吸着量として表される、25℃での酢酸吸着等温線を示す図である。
【0052】
4.3 プロピオン酸吸着
図4は、25℃におけるプロピオン酸吸着等温線を、MIL-100(Fe)の質量当たりの吸着量として表した図である。等温線の急峻さは、プロピオン酸が活性化サンプルおよび非活性化サンプルの両方においてMOFに強く結合することを示している。これは、TPDの結果と一致している。
【0053】
4.4 水吸着
水吸着等温線を図5に示す。この図は、活性化および非活性化MIL-100(Fe)に対する25℃での水吸着等温線を示す。MIL-100(Fe)では、水等温線は、開いた金属部位での水の吸着に起因する0.1p/p0未満の初期段階を示す。第2の変曲が、メソ細孔における毛細管凝縮に起因して0.20~0.50p/p0で観察される(IV型等温線)。相対圧力0.9での総保水量は、約35mmol/gである。MOFの全保水量の半分は、p/p0<0.4で達成される(0.35p/p0の場合、約17.5mmol/gに達する)。これにより、MOFは、0.4未満のp/p0相対圧力で前記MOF全吸着容量の50%超を吸着することが確認される。
【0054】
4.5 40% RHの存在下でのMOFによる酢酸の除去
図6は、a)酢酸の注入なし(ベースライン)および吸着剤の存在なしの酢酸の注入ありのブランク実験.b)50mgのMIL-100(Fe)、MIL-100(Al)、MIL-127(Fe)およびMIL-101(Cr)の存在下、40% RHの1μLの酢酸を注入した後の閉鎖チャンバ内の酢酸濃度プロファイルを示す。2mmol/gより高いルイス酸部位濃度を示す鉄塩基MOFおよびアルミニウム塩基MOFの両方に関して、1時間後のチャンバ内の濃度は同様であるため、酢酸の除去効率は同等であることが分かる。したがって、湿度の存在下であっても、指定されたMOFは著しく大量の酢酸を吸着する。逆に、クロム塩基MOF、MIL-101(Cr)の場合、ルイス酸部位の数は1mmol/g未満であり、その結果、チャンバ環境からの酢酸の除去はより不十分である。
【0055】
4.6 MIL-100(Fe)に対する酢酸と水の混合物の温度プログラム脱着(TPD)スペクトル
図7は、MIL-100(Fe)由来の水および酢酸のTPDを示す。水の最初のピークは66℃付近に現れ、より小さいピークは196℃付近に現れ、肩部は、より強く結合した水に対応する200℃での滞留時に現れる。酢酸ピークが196℃で現れ、これは最初の水ピークの後の130℃であり、最初に対するより高い親和性を示す。したがって、MOFよりも酢酸が優先的に吸着することが明らかである。
【0056】
4.7 MIL-100(Fe)に対するプロピオン酸と水の混合物の温度プログラム脱着(TPD)スペクトル
図8は、MIL-100(Fe)由来の水およびプロピオン酸のTPDを示す。水の最初のピークは約95℃での滞留時に現れ、より小さいピークは約200℃に現れる。プロピオン酸のピークは、200℃での滞留時にのみ現れる。これは、後者に対するより高い親和性を示す。したがって、プロピオン酸は、MOFに優先的に吸着することが明らかである。
【0057】
例5:結果
博物館および記録保管所の屋内空気から低濃度の酢酸を除去することは、現在の吸着剤が水の競合的吸着のために容易に解決することができない深刻な保存問題を引き起こす。これらの実施例では、異なる孔径、トポロジーおよび金属中心を有する三量体ベースのMOFを研究して、三量体ベースのMOFの使用がカルボン酸の吸着において性能の高い選択的吸着剤を提供することができることを実証した。これは、必要に応じて疎水性を示すことなく酸蒸気と強く相互作用することができるこれらの構造中のルイス酸部位の存在の結果である。
【0058】
実施例6:ギ酸吸着
プロピオン酸の代わりにギ酸を用いて繰り返したTPD分析。
【0059】
図11は、MIL-100(Fe)に対する水およびギ酸(50/50体積%)のTPDを示す。水の最初のピークは85℃付近に現れ、より小さいピークは200℃付近に現れる。ギ酸のピークは、200℃での滞留時にのみ現れる。これは、後者に対するより高い親和性を示す。
【0060】
図12は、25℃におけるギ酸吸着等温線を、MIL-100(Fe)の質量当たりの吸着量として表した図である。等温線の急峻さは、ギ酸が活性化サンプルおよび非活性化サンプルの両方においてMOFに強く結合することを示している。これは、TPDの結果と一致している。
【0061】
ギ酸を用いた同じプロトコルは、プロピオン酸を用いた場合と同様の結果をもたらす。吸着等温線は、実際に低圧で急激な増加を示している。TPDは、より低い温度での水に関連する第1のピーク、およびより高い温度でのギ酸に関連する第2のピークを証明し、これはより強いギ酸-MOF親和性を示す。
【0062】
実施例7:酢酸ブレークスルー60%相対湿度
プロトコル:充填床における粉末MIL-100(Fe)の酢酸の動的吸着特性評価を、Sayariのグループによって公開された論文[42]から図S7に示されたものと同様の設定で試験した。ガスの流れは、質量流量計(ステンレス鋼ガス熱質量流量計、McMillan 80SD)を使用して制御し、ガスの経路は4方向バルブによって制御した。内径6.4mmのステンレス製カラム内に約25mgの活性化サンプル(T=150℃、t=15時間)を装填した。サンプルを、40cm3 min-1の窒素流を使用して150℃の温度下で1時間その場で活性化した(Eurothermコントローラを備えた実験室用電気オーブン、PV精度<0.25%、加熱ランプ5℃ min-1)。吸着実験の間、カラムを25℃の温度の水浴に浸漬した(水浴、精度0.1℃)。カラムの圧力およびベント圧力は、MKS製の圧力センサ(AA08A Micro-Baratron(登録商標)、100 PSI)を用いて監視し、大気圧に近い等圧に維持した。次いで、サンプルを放置して、窒素流を16.5℃に保たれたバブラーの水(水浴VWR、精度0.1℃)に通すことによって、約60%に制御された水分で平衡化させた。カラム(下流のカラム)の出力を質量分析計(Prismapro、Pfeiffer)によって記録しながら、ガスの流れを酢酸混合物に切り替えた。
【0063】
結果:図13(a)に示すように、MIL-100(Fe)を用いて動的分離性能を試験した。ブレークスルー系は、大気圧および室温(25℃)であった。酢酸混合物は、N2中498.8ppmに相当する。
【数1】
【0064】
ここで、vM=24000cm3は、T=25℃および大気圧におけるモル体積である。吸着体積(cm3)は、以下によって計算した。
【数2】
【0065】
ここで、vsampleは、最大信号を使用流量(52cm3/分)に設定したときに、質量分析計によって取得された信号の曲線下面積を時間の関数として積分することによって得られる。vbackgroundは、バックグラウンド測定と同じ手順を繰り返したときに得られる(空の列を有する)。図13(a)に示す測定に対応する計算吸着体積は7.02×103cm3である。動的吸着量は、吸着体積に濃度を乗じたものである。使用したサンプルの質量28.5mgを考慮すると:
【数3】
【0066】
清浄なサンプルについて、水分の存在下で動的に吸着される量を平衡状態で吸着される量と比較するために、酢酸の濃度を分圧に変換する必要がある。これは、非理想気体の法則を使用することによって達成することができる。
【数4】
【0067】
圧力pを用いて、
【数5】
Rは気体定数、Tは温度(K)、Zは気体圧縮性係数Zで、p(Pa)の関数として次のように表される。
Z=0.351+0.729p-0.176 (5)
【0068】
理想気体の法則を用いた使用濃度の計算圧力はpideal=51.5Paである。これにより、Z=0.715およびp=Z×pideal=36.83Paが得られる。25℃、大気圧における酢酸の飽和圧力は2118.36Paであるので、p/po=0.0174である。現在の実験では、52cm3/分の流量に到達せず、39cm3/分の流量まで吸着量を計算した。これは、p/po=0.0174*39/52=0.0131が考慮されることを意味する。
【0069】
0.0131の分圧に対応する平衡状態で吸着された量は、約5.13mmol g-1(MIL-100(Fe)の酢酸吸着等温線)であり、ブレークスルー実験によって得られた値と完全に一致している(図13(b))。
【0070】
これは、ガス混合物中の水の存在が酢酸吸着に影響を及ぼさなかったことを意味する。これは、水の存在が酢酸の動的吸着を損なわなかった場合、酢酸が吸着した水分子を置き換えることができるという以前に確立された結論をさらに裏付けている。
【0071】
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図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
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図9C
図9D
図10A
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図13
【国際調査報告】