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▶ アイソバイオニクス ベー.フェー.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】サンタレンの組換え製造
(51)【国際特許分類】
   C12P 5/00 20060101AFI20241219BHJP
   A01K 67/033 20060101ALI20241219BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20241219BHJP
   C12P 7/02 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/60 20060101ALN20241219BHJP
   C11B 9/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C12P5/00 ZNA
A01K67/033 501
A01H5/00 A
C12P7/02
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/60
C11B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534705
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022085351
(87)【国際公開番号】W WO2023110729
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21214164.2
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520064986
【氏名又は名称】アイソバイオニクス ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥライラージュ,ジャナニ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ダイク アールト-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヘッセリンク,タマラ
(72)【発明者】
【氏名】ビークウィルダー,マルティヌス ユリウス
(72)【発明者】
【氏名】メリロ,エレナ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AB05
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA03
4B065CA05
4B065CA51
(57)【要約】
本発明は、サンタレン及び関連生成物の組換え製造の分野に関する。特に、本発明は、ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程を含む、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するための方法であって、上記変換が、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドによって行われる、方法に関する。更に、本発明は、本発明の方法により入手可能な過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含む組成物を意図する。本発明はまた、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレン、より好ましくはβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含む組成物を製造するための、サンタレンシンターゼポリペプチド、それをコードする異種ポリヌクレオチド、上記ポリヌクレオチドを含むベクター若しくは遺伝子構築物、上記遺伝子構築物若しくはベクターを含む宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物の使用に関する。更に、本発明は、少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するための方法であって、本発明の上述の方法によって少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を生成することと、少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するために、上記少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンをそれぞれのアルコールに酸化することと、を含む方法に関する。更に、本発明は、上述のポリペプチド、異種ポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物、宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物を含む少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するためのキット、及び上述の異種ポリヌクレオチド、ベクター、又は遺伝子構築物からサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現する非ヒト宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程を含む、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するための方法であって、前記変換が、サンタレンシンターゼ活性を示す少なくとも1つのポリペプチドによって行われ、前記少なくとも1つのポリペプチドが、
a)配列番号1、18、又は21~28のいずれかに示されるようなアミノ酸配列;
b)配列番号1、18、又は21~28のいずれかに示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
c)配列番号2又は3又は19のいずれか1つに示されるような核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
d)配列番号2又は3又は19のいずれか1つに示されるような核酸配列によってコードされるポリペプチドと少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;及び
e)(a)~(d)のいずれか1つのフラグメントであって、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドをコードする前記フラグメントのアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのサンタレンが、β-サンタレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのサンタレンが、過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物であり、好ましくは、セスキツジェンも含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記β-サンタレンが、全サンタレンに対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、好ましくは約50%~約80%、約60%~約75%、約65%~約70%、より好ましくは少なくとも約67%の相対量で前記組成物中に存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する前記工程が、宿主細胞内で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する前記工程が、非脊椎動物トランスジェニック生物、好ましくは植物又は微生物内で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、検出可能な量のセスキツジェンを更に含み、シス-α-ベルガモテン((AS番号18252-46-5)、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)、トランス-β-ベルガモテン(CAS番号15438-94-5)、若しくはβ-ビサボレン(CAS番号495-61-4)のいずれも実質的に含まないか、又はこれらの全てを含まない、好ましくは、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)を実質的に含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
サンタレンシンターゼ活性を示す前記ポリペプチドが、異種ポリヌクレオチド、ベクター、又は遺伝子構築物によってコードされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得られ得る過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含む組成物であって、検出可能な量のセスキツジェンを更に含み、シス-α-ベルガモテン((AS番号18252-46-5)、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)、トランス-β-ベルガモテン(CAS番号15438-94-5)、若しくはβ-ビサボレン(CAS番号495-61-4)のいずれも実質的に含まないか、又はこれらの全てを含まない、好ましくは、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)を実質的に含まない、組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得られ得る過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含む組成物であって、前記β-サンタレンが、全サンタレンに対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、好ましくは約50%~約80%、約60%~約75%、約65%~約70%、より好ましくは少なくとも約67%の相対量で前記組成物中に存在し、前記組成物が、β-ファルネセンを実質的に含まない、及び/又はセスキツジェンを含む、組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレン、より好ましくはβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含み、最も好ましくはセスキツジェンも含む組成物を製造するための、請求項1に記載のポリペプチド、請求項8に記載の異種ポリヌクレオチド、ベクター、若しくは遺伝子構築物、請求項5に記載の宿主細胞、又は請求項6に記載の非脊椎動物トランスジェニック生物の使用。
【請求項12】
少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するための方法であって:
a)請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を生成することか、又は請求項10に記載される若しくは請求項11に記載される組成物を準備することと、
b)少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するために、前記少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンをそれぞれのアルコールに酸化することと、を含む方法。
【請求項13】
請求項1に記載のポリペプチド、請求項8に記載の異種ポリヌクレオチド、ベクター、若しくは遺伝子構築物、請求項5に記載の宿主細胞、又は請求項6に記載の非脊椎動物トランスジェニック生物を含む少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するためのキット。
【請求項14】
請求項8に記載の異種ポリヌクレオチド、ベクター、又は遺伝子構築物からサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現する、非ヒト宿主細胞であって、請求項1に記載のサンタレンシンターゼをコードする核酸についてトランスジェニックである、非ヒト宿主細胞。
【請求項15】
請求項8に記載の異種ポリヌクレオチド、ベクター、又は遺伝子構築物からサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現する、非ヒト又は非脊椎動物トランスジェニック生物であって、請求項1に記載のサンタレンシンターゼをコードする核酸についてトランスジェニックである、非ヒト又は非脊椎動物トランスジェニック生物。
【請求項16】
芳香組成物であって、
i)請求項10に記載の少なくとも1つの組成物、又は請求項11に記載の組成物、又は請求項1~8の方法のいずれか、及び(ii)~(iv):
ii)β-サンタレン、α-サンタレン、トランス-α-ベルガモテン、セスキツジェン、及びエピ-β-サンタレンからなる群から選択される化合物以外の少なくとも1つの芳香化学物質(X)、又は
iii)少なくとも1つの非芳香化学物質担体、又は
iv)(ii)と(iii)の両方を含む組成物
のいずれかによって生成された組成物を含む芳香組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンタレン及び関連生成物の組換え製造の分野に関する。特に、本発明は、ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程を含む、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するための方法であって、上記変換が、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドによって行われる、方法に関する。更に、本発明は、本発明の方法により入手可能な過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含む組成物を意図する。本発明はまた、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレン、より好ましくはβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含む組成物を製造するための、サンタレンシンターゼポリペプチド、それをコードする異種ポリヌクレオチド、上記ポリヌクレオチドを含むベクター若しくは遺伝子構築物、上記遺伝子構築物若しくはベクターを含む宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物の使用に関する。更に、本発明は、少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するための方法であって、本発明の上述の方法によって少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を生成することと、少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するために、上記少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンをそれぞれのアルコールに酸化することと、を含む方法に関する。更に、本発明は、上述のポリペプチド、異種ポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物、宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物を含む少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するためのキット、及び上述の異種ポリヌクレオチド、ベクター、又は遺伝子構築物からサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現する非ヒト宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物に関する。
【背景技術】
【0002】
サンダルウッドオイルは主要な香水成分である。また、多くのアロマセラピー用途にも役立つ。サンダルウッドオイルの主要な成分としては、αサンタロール及びβサンタロールが挙げられる。βサンタロールは、サンダルウッドオイルの主要な芳香剤影響成分である。サンダルウッド植物は栽培が難しいため、サンダルウッドオイルは非常に不足している。βサンタロールはβ-サンタレンから作られる。サンダルウッド植物において、サンタロールの生成は、セスキテルペンシンターゼによって媒介される。
【0003】
セスキテルペンシンターゼは、独特のプロトン移動カスケードによって、遍在する前駆体ファルネシルピロホスフェート(FPP)を環化する。環化反応の結果は、テルペンシンターゼの同一性によって決まる。植物のテルペンシンターゼをコードする遺伝子は、微生物によるテルペンの産生に展開できる。微生物によるα-サンタレン、トランス-αベルガモテン、及びβ-サンタレンを含むサンタレンの産生は、クスノキ(Cinnamomum Camphora)又はサンダルウッド(Santalum album)からのサンタレンシンターゼを使用することによって実証されている(米国特許出願公開第2020/0010822A1号明細書)。しかしながら、このような微生物は、大部分がα-サンタレン(50%)で、少量のβ-サンタレン(20%)のみからなるテルペン混合物を産生する。
【0004】
より高いβ-サンタレン濃度の調製物が、例えば、香料材料にサンダルウッドの印象を与えるために有用であろう。α-サンタレンとβ-サンタレンは物理化学的性質が非常に近いため、高濃度のβ-サンタレンを含む調製物を得るには分離技術が難しい。β-サンタレンを生成する場合、50%を超えるβ-サンタレンを生成するテルペンシンターゼが必要となる。
【0005】
更に、新規又は改良された嗅覚特性を有する芳香組成物が常に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底にある技術的問題は、上述の必要性に適合する手段及び方法の提供として理解されるものとする。この技術的問題は、特許請求の範囲及び下記の本明細書で特徴付けられる実施形態によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程を含む、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するための方法であって、上記変換が、サンタレンシンターゼ活性を示す少なくとも1つのポリペプチドによって行われ、上記少なくとも1つのポリペプチドが、
(i)
a)配列番号1、18、若しくは21~28のいずれかに示されるようなアミノ酸配列;
b)配列番号1、18、若しくは21~28のいずれかに示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
c)配列番号2若しくは3若しくは19に示されるような核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
d)配列番号2若しくは3若しくは19に示されるような核酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;及び
e)(a)~(d)のいずれか1つのフラグメントであって、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドをコードするフラグメントのアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列か、又は
(ii)
a)配列番号4~17のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列;
b)配列番号4~17に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;及び
c)(a)若しくは(d)のフラグメントであって、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドをコードするフラグメントのアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法に関する。
【0008】
本発明の方法によって製造される組成物は、本明細書に定義される少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレン、又はα-サンタレンとβ-サンタレンの両方の混合物を含む。α-サンタレンとβ-サンタレンの両方が存在する場合、上記組成物は、α-サンタレンより過剰なβ-サンタレンを含むことが好ましい。
【0009】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つのサンタレンを含む上記組成物は、以下のもののうちのいずれか1つ又は全てを実質的に含まない:シス-α-ベルガモテン((AS番号18252-46-5)、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)、トランス-β-ベルガモテン(CAS番号15438-94-5)、及びβ-ビサボレン(CAS番号495-61-4)。実質的に含まないとは、組成物に検出可能な量のシス-α-ベルガモテン((AS番号18252-46-5)、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)、トランス-β-ベルガモテン(CAS番号15438-94-5)、及び/又はβ-ビサボレン(CAS番号495-61-4)が含まれていないことを意味する。
【0010】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのサンタレンを含む上記組成物は、検出可能な量のセスキツジェン(CAS番号58319-06-5)を更に含む。好ましくは、検出可能な量のセスキツジェン(CAS番号58319-06-5)は、0.01%~3%(mol/mol)を意味する。
【0011】
本発明の方法の更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのサンタレンを含む上記組成物は、検出可能な量のセスキツジェン(CAS番号58319-06-5)を更に含み、組成物は、以下のもののうちのいずれか1つ又は全てを実質的に含まない:シス-α-ベルガモテン((AS番号18252-46-5)、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)、トランス-β-ベルガモテン(CAS番号15438-94-5)、及びβ-ビサボレン(CAS番号495-61-4)。
【0012】
本明細書で言及される溶液の濃度の文脈における「%」は、特に示されない限り、パーセント(モル/モル)を意味する。
【0013】
本明細書及び特許請求の範囲において、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、それが使用される文脈に応じて、以下に言及される項目の1つ以上を意味し得ることを理解されたい。したがって、例えば、「1つの」項目に対する言及は、上記項目のうちの少なくとも1つを利用できることを意味し得る。
【0014】
以下に使用されるように、「有する」、「含む」又は「包含する」という用語は、非限定的な意味又は限定的な意味のいずれかを有することが意図される。したがって、限定的な意味のこれらの用語を有することは、記載された実施形態に、これらの用語によって導入された特徴以外の他の特徴が存在しない状況を指す可能性があり、即ち、この用語は、「からなる」又は「から本質的になる」という意味で限定的な意味を有する。非限定的な意味を有する場合、この用語は、記載される実施形態に、これらの用語によって導入される特徴以外に1つ以上の他の特徴が存在する状況を指す。
【0015】
更に、以下で使用されるように、「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「詳細には」、「より詳細には」、「典型的には」及び「より典型的には」という用語は、これらの特徴が好ましい特徴であることを示すため、特徴と共に使用され、即ち、この用語により、本発明に従って代替的な特徴も想定され得ることが示されるものとする。
【0016】
更に、本明細書で使用される「少なくとも1つの」という用語は、その用語に続いて言及される項目の1つ以上が本発明に従って使用され得ることを意味することが理解されるであろう。例えば、この用語が少なくとも1つの項目を使用しなければならないことを示す場合、このことは、1つの項目又は2つ以上の項目、即ち2つ、3つ、4つ、5つ又は任意の他の数の項目であるものと理解され得る。その用語が言及する項目に応じて、当業者は、存在する場合にその用語がどの上限を指す可能性があるのかについて理解している。
【0017】
本発明による方法は、上述の工程からなり得るか、又は追加の工程を含み得るかのいずれかである。このような追加の工程は、前処理の工程であり得るか、又は精製工程などの少なくとも1つのサンタレンを含む組成物の製造に必要とされる工程であり得る。
【0018】
本明細書で使用される「製造」という用語は、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物、特にβ-サンタレンを含む組成物、より好ましくはα-サンタレンとβ-サンタレンの混合物を含む組成物、最も好ましくは過剰なβ-サンタレンを含む組成物の生成を指す。この製造により、組成物中の任意の程度の純度の上記少なくとも1つのサンタレンを得ることができる。想定される純度の程度が高いほど、更に追加の精製が必要となる。本方法は、エキソビボで、例えば1つ以上の反応バイアル中で行われ得る。或いは、方法は、本明細書の他の箇所で言及される宿主細胞を含む植物又は微生物を含む非ヒトトランスジェニック生物、好ましくは非脊椎動物トランスジェニック生物などの生物内で全体的又は部分的に行われ得る。
【0019】
本発明に従って使用される「サンタレン」という用語は、α-サンタレン(CAS番号512-61-8;6,7-ジメチル-7-(4-メチルペンタ-3-エニル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-トリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタン;分子式C1524)、β-サンタレン(CAS番号511-59-1、(1R,3R,4S)-3-メチル-2-メチリデン-3-(4-メチルペンタ-3-エニル)ビサイクル[2.2.1]ヘプタン;分子式C1524)、及びエピ-β-サンタレン(CAS番号25532-78-9;(3S)-3-メチル-2-メチリデン-3-(4-メチルペンタ-3-エニル)ビサイクル[2.2.1]ヘプタン;分子式C15H24)、及びトランス-a-ベルガモテン(CAS番号13474-59-4;本明細書においてこれ以降、トランス-αベルガモテン又は短縮してベルガモテンとも呼ばれる)からなる群から選択される三環式セスキテルペンに関する。好ましくは、上記サンタレンは、β-サンタレン(CAS番号511-59-1、分子式C15H24)である。
【化1】
【0020】
式Iは、(-)-β-サンタレン(CAS番号511-59-1、以下、β-サンタレンと称する)を表す。
【0021】
本発明に従って言及される「少なくとも1つのサンタレン」は、好ましくはβ-サンタレンである。より好ましくは、過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物である。より好ましくは、上記β-サンタレンは、全サンタレンに対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、好ましくは約50%~約80%、約60%~約75%、約65%~約70%、より好ましくは少なくとも約67%の相対量で組成物中に存在する。本明細書で言及される全サンタレンは、組成物中に見出される全てのサンタレンを包含する。好ましくは、これらは、α-サンタレン、β-サンタレン、及びベルガモテンである。他の少量のサンタレンも同様に発生する可能性がある。
【0022】
更に好ましくは、ベルガモテンのβ-サンタレンに対する比は、1.0未満、例えば、0.9以下、0.8以下、又は0.7以下、例えば、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、又は更には0.1以下である。本発明の別の態様では、全サンタレンは、10%以下のみのベルガモテンと、α-サンタレンよりも過剰なβサンタレンと、を含む。本発明の更なる態様では、αサンタレンとベルガモテンを合わせたパーセント(mol/mol)は、サンタレン全体に占めるβ-サンタレンのパーセント(mol/mol)よりも小さい。
【0023】
本発明の更なる態様では、組成物は、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはα-サンタレンより過剰なβ-サンタレンを含み、組成物は、更にa)検出可能な量、好ましくは0.01%~3%(mol/mol)のセスキツジェン(CAS番号58319-06-5)を含み;b)以下のもののうちのいずれか又は全てを実質的に含まない;シス-α-ベルガモテン((AS番号18252-46-5)、(E)-β-ファルネセン(β-ファルネセン、CAS番号18794-84-8)、トランス-β-ベルガモテン(CAS番号15438-94-5)、及びβ-ビサボレン(CAS番号495-61-4)、又はa)とb)の組み合わせ。
【0024】
(E)-β-ファルネセンが存在しない、又は少なくとも大幅に量が減少していることは、例えば、サンタロールを生成するためにサンタレンを含む組成物が使用される場合に有用であり、そのような酸化反応では、(E)-β-ファルネセンの存在があまり望ましくない。
【0025】
本発明に従って使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸の連続配列を指す。本発明によるポリペプチドは、典型的には、アミノ酸鎖が本明細書の他の箇所で言及される酵素活性を発揮するのに必要とされる三次元構造を形成することができるように、少なくとも50、少なくとも100又は少なくとも200アミノ酸長から構成される。「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に用いられ得る。
【0026】
本明細書に使用される「サンタレンシンターゼ活性」という用語は、出発物質としてのファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換することができる酵素の活性を指す。典型的には、サンタレンシンターゼは、α-サンタレン、β-サンタレン、エピ-β-サンタレン、及びトランス-αベルガモテンなどの(2E,6E)-ファルネシルジホスフェートからのセスキテルペノイド、並びに微量のα-ファルネセン及びβ-ファルネセンの混合物を触媒することができる。これらはまた、α-エンド-ベルガモテン、α-サンタレン、(Z)-β-ファルネセン、エピ-β-サンタレン、及びβ-サンタレンへの変換のための(Z,Z)-ファルネシルジホスフェート異性体を使用してもよい(E.C.4.2.3.81)。
【0027】
好ましくは、本発明に従うサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドは:
a)配列番号1、18、又は21~28のいずれかに示されるようなアミノ酸配列;
b)配列番号1、18、又は21~28のいずれかに示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
c)配列番号2又は3又は19に示されるような核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
d)配列番号2又は3又は19に示されるような核酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;及び
e)(a)~(d)のいずれか1つのフラグメントであって、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドをコードするフラグメントのアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
本発明の一態様では、ポリペプチドは、二重機能シンターゼである、即ち、ポリペプチドは、サンタレンシンターゼであり、更にはセスキツジェンシンターゼ(EC 4.2.3.102(2E,6E)-ファルネシル-ジホスフェートジホスフェート-リアーゼ(セスキツジェン-形成))でもある。
【0029】
本発明の更なる態様では、本発明のポリペプチドは、サンタレン及び/又はセスキツジェンが生成されるときに、実質的な量のβ-ファルネセンを生成しない。
【0030】
好ましくは、サンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、オリザ属(Oryza)からのポリペプチド、例えば、O.メリディオナリス(O.Meridionalis)、O.グルミパトゥラ(O.glumipatula)、O.サティバ(O.sativa)、O.ルフィポゴン(O.rufipogon)、O.グラベリマ(O.glaberrima)、O.ニヴァラ(O.nivara)、O.バルチ(O.barthii)、O.プンクタータ(O.punctata)からのポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されないポリペプチドに由来するか、又はそのポリペプチドに基づく。
【0031】
本発明に従うサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、好ましくは、これらのサンタレン生成に好適な条件下で、1以上、好ましくは少なくとも1.1、より好ましくは少なくとも1.2、更により好ましくは1.3である比で、β-サンタレン及びα-サンタレンを生成している。
【0032】
本発明のこれらのサンタレンシンターゼは、好ましくはGC-FIDによって測定される、β-サンタレン対α-サンタレンのモル比が1以上;例えば、比は少なくとも1.05、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は少なくとも2である、β-サンタレン及びα-サンタレンを生成する。β-サンタレン対α-サンタレンの比は、少なくとも3:1、好ましくは少なくとも4:1、より好ましくは少なくとも5:1、更により好ましくは6:1、なお更により好ましくは少なくとも7:1、最も好ましくは少なくとも8:1、更には少なくとも9:1であり得る。本発明の一態様では、比は、100:1以下である。
【0033】
更に、本発明の別の態様は、トランス-αベルガモテンよりも過剰であるαサンタレンよりも過剰なβサンタレンを生成する、本明細書に定義されるサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドに関する。典型的には、当該技術分野で公知のサンタレンシンターゼは、かなりの量のベルガモテンが生成されるが、これは用途によっては望ましくないサンタレンとなる。驚くべきことに、本発明のサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、少量のベルガモテン(総サンタレンの10%未満)しか生成せず、αサンタレンよりも過剰なβサンタレンを生成することが示された。
【0034】
上記で本明細書に言及される「配列同一性」は、アミノ酸配列又は核酸配列間の関係を定義し、これらの配列を比較することによって決定することができるものである。通常、配列同一性は、2つの配列を配列の全長にわたって比較することにより決定されるが、互いにアライメントした配列の一部のみでも比較され得る。好ましくは、配列同一性は、本明細書では、配列の全長にわたって比較される。配列同一性は、ポリペプチド配列又は核酸配列間の関連性の程度を指す。配列同一性は、互いに比較された2つの配列内の同一のアミノ酸又はヌクレオチドの割合で表される。したがって、2つの配列をアライメントした際、それらの配列間で一致するアミノ酸又はヌクレオチドの数を一般に決定し、アライメントした配列又は配列の一部におけるアミノ酸又はヌクレオチドの総数と関連付ける。例えば、バリアント配列は、親配列、即ち配列番号1、18、若しくは21~28のいずれか2つに示されるようなアミノ酸配列又は配列番号2若しくは3若しくは19に示されるような核酸配列と比較したときのそれらの配列同一性によって定義され得る。2つの配列間のパーセント同一性を決定するために、最初の工程で、これらの2つの配列間でペアワイズ配列アライメントを生成し、この2つの配列をそれらの完全、全体又は全長にわたってアライメントする(即ちペアワイズグローバルアライメント)。アライメントは、本明細書に記載されるプログラム又はソフトウェアを用いて生成される。本発明の目的に好ましいアライメントは、最大配列同一性を決定することができるアライメントである。
【0035】
配列アライメントは、Needleman及びWunschアルゴリズム-Needleman,Saul B.&Wunsch,Christian D.(1970).“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins”.Journal of Molecular Biology 48(3):443-453などの様々なソフトウェアツールを用いて生成される。このアルゴリズムは、例えば、2つの配列の網羅的なアライメントを行う「NEEDLE」プログラムに組み込まれる。NEEDLEプログラムは、例えばEuropean Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS)内に含有される。EMBOSS - 様々なプログラムの一群:The European Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS),Trends in Genetics 16(6),276(2000)。BLOSUM(BLOcks SUbstitution Matrix) - 例えば、タンパク質ドメインの保存領域のアライメントに基づいて通常生成される(Henikoff S,Henikoff JG:Amino acid substitution matrices from protein blocks.Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA.1992 Nov 15;89(22):10915-9)。多くのBLOSUMのうち1つは、「BLOSUM62」であり、これは、タンパク質配列をアラインする際、しばしば多くのプログラムに対する「デフォルト」設定である。BLAST(Basic Local Alignment Search Tool) - 大規模な配列データベースにおいて類似配列を検索するために主に使用されているいくつかの個々のプログラム(BlastP、BlastN)からなる。BLASTプログラムは、ローカルアライメントも生成する。典型的には、改良バージョン(「BLAST2」)である、NCBI(全米バイオテクノロジー情報センター)により提供される「BLAST」インターフェースが使用される。「元の」BLAST: Altschul,S.F.,Gish,W.,Miller,W.,Myers,E.W.& Lipman,D.J.(1990)“Basic local alignment search tool.”J.Mol.Biol.215:403-410;BLAST2: Altschul,Stephen F.,Thomas L.Madden,Alejandro A.Schaffer,Jinghui Zhang,Zheng Zhang,Webb Miller,and David J.Lipman(1997),“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402。
【0036】
本明細書で使用されるような配列同一性は、好ましくは、EMBOSSペアワイズアライメントアルゴリズム「Needle」により決定されるような値である。特に、「最長同一性」を計算するNOBRIEFオプション(‘Brief identity and similarity’ to NO)を使用して、EMBOSSパッケージからNEEDLEプログラムを使用することができる(バージョン2.8.0以降、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite-Rice,P.,et al.Trends in Genetics(2000)16;276-277;http://emboss.bioinformatics.nl)。このような場合、アライメントされた2つの配列間の同一性は、以下のように計算される:両配列において同一のアミノ酸を示すアライメントにおける対応する位置の数を、アライメントにおけるギャップの総数の減算後のアライメントの全長により除する。アミノ酸配列のアライメントでは、デフォルトパラメータは、マトリクス=Blosum62;オープンギャップペナルティ=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。核酸配列のアライメントでは、デフォルトパラメータは、マトリクス=DNAfull;オープンギャップペナルティ=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。
【0037】
本明細書で言及されるバリアントアミノ酸配列又は核酸配列は、対立遺伝子バリアント又はオーソログ、パラロガス若しくは相同バリアントなどの天然に存在するバリアントであり得る。或いは、このような配列は、例えば、分子進化若しくは合理的設計のような当業者に公知の生物学的技術により、又は当技術分野で公知であり、本明細書の他の箇所に記載される変異誘発技術(ランダム変異誘発、部位特異的変異誘発、定向進化、遺伝子組換えなど)を使用することにより、酵素又は核酸の特性を改善(例えば、酵素の発現の改善又は酵素の酵素活性の増加)するために人為的に生成され得る。典型的には、本発明に従うサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドのバリアントは、配列番号1、18、又は21~28のいずれかのアミノ酸配列、好ましくは、人工アミノ酸配列と比較して、1つ又はいくつかのアミノ酸置換を有するポリペプチドである。
【0038】
配列番号2若しくは3若しくは19に示されるような核酸配列によってコードされるアミノ酸配列又は配列番号2若しくは3若しくは19に示されるような核酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列によってコードされるバリアント核酸配列は、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加及び/又は欠失により、本明細書の他の箇所に記載される理由のために配列番号2若しくは3若しくは19に示される核酸配列と異なり得る。本明細書で言及されるそのようなバリアント核酸配列を含むポリヌクレオチドは、好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で互いにハイブリダイズできることが理解されるであろう。本明細書で言及されるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、好ましくは、約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、続いて50~65℃で0.2×SSC、0.1%SDS中で1回以上の洗浄工程を行うことである。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件が、緩衝液の温度及び濃度に関して、例えば有機溶媒が存在する場合、核酸の種類に応じて異なることを知っている。例えば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」下では、温度は、核酸の種類に応じて異なり、0.1~5×SSC(pH7.2)の濃度の水性緩衝液中で42℃~58℃である。上述した緩衝液中に有機溶媒が存在する、例えば50%ホルムアミドである場合、標準条件下の温度は約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1×SSCで20℃~45℃、好ましくは30℃~45℃である。DNA:RNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1×SSCで30℃~55℃、好ましくは45℃~55℃である。上述したハイブリダイゼーション温度は、例えば、ホルムアミドの非存在下の長さ約100bp(=塩基対)及びG+C含有量50%の核酸に対して決定されたものである。当業者であれば、上記の教本又は以下の教本:Sambrook et al.,“Molecular Cloning”,Cold Spring Harbor Laboratory,1989;Hames and Higgins(Ed.)1985,”Nucleic Acids Hybridization:A Practical Approach”,IRL Press at Oxford University Press,Oxford;Brown(Ed.)1991,“Essential Molecular Biology:A Practical Approach”,IRL Press at Oxford University Press,Oxfordのような教本を参照することにより、必要とされるハイブリダイゼーション条件をどのように決定するかを知っている。したがって、バリアント核酸配列は、配列番号2若しくは3若しくは19に示されるような核酸配列によってコードされるアミノ酸配列又は配列番号2若しくは3若しくは19に示されるような核酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列をコードする核酸配列と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドから誘導することができる。
【0039】
本発明は、更に、サンタレンシンターゼ活性を有するバリアントポリペプチドを調製するための方法であって、
(a)配列番号2又は3又は19のいずれか1つに記載の核酸を選択する工程と、
(b)選択された核酸を改変して、少なくとも1つの変異核酸を得る工程と、
(c)本明細書に定義される宿主細胞又は単細胞生物を変異核酸配列で形質転換して、変異核酸配列によってコードされるポリペプチドを発現させる工程と、
(d)少なくとも1つの改変された特性についてポリペプチドをスクリーニングする工程と、
(e)任意選択により、ポリペプチドに所望のバリアントサンタレンシンターゼ活性がない場合、本明細書に定義される所望のバリアントサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドが得られるまでプロセス工程(a)~(d)を繰り返す工程と、
(f)任意選択により、工程(d)で所望のバリアントサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドが同定された場合、工程(c)で得られた対応する変異核酸を単離する工程とを含む方法に関する。
【0040】
上述のフラグメントは、上記で特定したサンタレンシンターゼ活性を示すのに十分な長さを有する、上述の配列及び配列バリアントの任意のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。したがって、好ましくは、ポリペプチドの上述の生物活性を有するフラグメントが、サンタレンシンターゼの触媒的に活性な領域のアミノ酸配列を含んでいることが想定される。典型的には、フラグメントは、上述の配列又は配列バリアントに由来する少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、又は少なくとも200の連続したアミノ酸長からなる。
【0041】
好ましくは、本明細書で言及されるポリペプチドのフラグメント又は本明細書で言及されるバリアントポリペプチドは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つのPfamドメインを含む。典型的には、本発明に従って言及されるPfamドメインは、テルペンシンターゼのN末端ドメイン(PF01397.21)、テルペンシンターゼの金属結合ドメイン(PF03936.16)、及びトリコジエンシンターゼTRI5のPfamドメイン(PF06330.11)である。本明細書で言及されるPfamドメインは、PFAMのバージョン32.0を使用して分析され、PFAMの詳細については、“The Pfam protein families data-base in 2019:S.El-Gebali,J.Mistry,A.Bateman,S.R.Eddy,A.Luciani,S.C.Potter,M.Qureshi,L.J.Richardson,G.A.Salazar,A.Smart,E.L.L.Sonnhammer,L.Hirsh,L.Paladin,D.Piovesan,S.C.E.Tosatto,R.D.Finn Nucleic Acids Research(2019)及びhttp://pfam.xfam.org/.を参照されたい。
【0042】
好ましくは、本発明に従うサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチド又はフラグメントは、図4に示す保存されたドメインの少なくとも1つ、好ましくは全てを含むものとする。保存されたドメインは、図4に黒い背景に薄い文字で示されている。好ましくは、保存されたドメインは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、又は少なくとも20のアミノ酸からなるものとする。本発明に従って言及される特に好ましい保存されたドメインは、配列番号1の以下のアミノ酸:アミノ酸82~96、133~146、148~156、163~185、195~205、214~225、227~233、235~242、345~352、375~382、400~409、及び411~419を有するものである。
【0043】
別の実施形態では、本発明のサンタレンシンターゼは、アミノ酸グリシンの後にアルギニンが続き、任意のアミノ酸が続き、その後にシステインが続き、その後に任意のタイプの4つのアミノ酸が続き、最後にトリプトファンであることを特徴とする、N末端領域にGRXCX4Wモチーフ(配列番号20)を含む。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明のサンタレンシンターゼ又はそのフラグメントは、配列番号1のアミノ酸ストレッチと比較して、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0個以下の変化を有する配列番号1のアミノ酸位置281~341に対応するアミノ酸ストレッチを有する。本発明の更なる態様では、配列番号1の281位から341位に対応する上記アミノ酸ストレッチの変化は、配列番号1の293位から295位及び/又は317位に対応するアミノ酸のいずれかにある。
【0045】
好ましくは、本発明に従うサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチドは:
a)配列番号4~17のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列;
b)配列番号4~17に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
c)(a)又は(d)のフラグメントであって、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドをコードするフラグメントのアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を更に含み得る。
【0046】
サンタレンシンターゼ活性を示す上述のポリペプチドはまた、融合ポリペプチドに含まれていてもよい。このような融合ポリペプチドは、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドのアミノ酸配列に加えて、1つ以上の追加のアミノ酸配列を含む。上記追加のアミノ酸配列は、本明細書の他の箇所で特定されるファルネシルピロホスフェートシンターゼ若しくはシトクロムP450モノオキシゲナーゼなどの他の酵素活性を有するポリペプチド、又は例えば適切な発現をモニターするため若しくは精製目的のためのマーカー若しくは標識機能を有するポリペプチド若しくはペプチド、例えばタグ(例えば、MYCタグ、FLAGタグ、Hisタグなど)若しくは蛍光タンパク質(例えば、GFP、BFP、YFP若しくはCFP)であり得る。
【0047】
更に、本開示は、サンタレン及びサンタロールを調製するための方法であって、タグペプチドを含む第1セグメントと本発明に従うサンタレンシンターゼを含む第2セグメントとを含む酵素の存在下で、ファルネシルジホスフェート(FPP)サンタレンを変換することを含む方法に関する。上記第1セグメントと上記第2セグメントとを含む酵素は、本明細書では、「タグ付き酵素」と称される。
【0048】
タグペプチドは、好ましくは、窒素利用タンパク質(NusA)、チオレドキシン(Trx)、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、小ユビキチン様修飾因子(SUMO)、又はカルシウム結合ンパク質(Fh8)、及びそれらの機能的相同体の群から選択される。本明細書で使用する場合、タグペプチドの機能的相同体は、タグなし酵素と比較して、タグ付き酵素の溶解度に対して少なくともほぼ同じ効果を有するタグペプチドである。典型的には、相同体は、その相同体のペプチドに1つ以上のアミノ酸残基が挿入、置換、欠失又は延長されている点で異なる。相同体は、特に、親水性アミノ酸の別の親水性アミノ酸への1つ以上の置換又は疎水性アミノ酸の別の疎水性アミノ酸への1つ以上の置換を含み得る。相同体は、特に、NusA、Trx、MBP、GST、SUMO又はFh8の配列と少なくとも40%、より詳細には少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0049】
特に好適なものは、大腸菌(Escherichia coli)由来のマルトース結合タンパク質又はその機能的相同体である。
【0050】
本発明によるタグ付き酵素を使用することは、生成物の増加、具体的にはテルペノイド又はテルペン、例えばサンタレン及び/又はセスキツジェンの細胞生成の増加に寄与し得る点で特に有利である。
【0051】
(タグなしの酵素と比較して)タグ付き酵素の溶解性を向上させるため、酵素の第1セグメントは、そのC末端で第2セグメントのN末端に結合することが好ましい。或いは、タグ付き酵素の第1のセグメントは、そのN末端で第2のセグメントのC末端に結合する。
【0052】
更に、本発明は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関し、ポリペプチドは、タグペプチド、好ましくはMBP、NusA、Trx、GST、SUMO若しくはFh8-タグ又はこれらのいずれかの機能的相同体を含む第1のセグメントと、サンタレンシンターゼを含む第2のセグメントとを含む。第2のセグメントは、例えば、配列番号1、4~17のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列又はその機能的類似体を含み得る。一例は、配列番号18の合成融合タンパク質である。
【0053】
更に、本発明は、上記タグ付きサンタレンシンターゼをコードする上記核酸を含む宿主細胞に関する。
【0054】
タグ付き酵素をコードする本発明による特定の核酸を、配列番号19に示す。宿主細胞は、特に、それらの配列のいずれかを含む遺伝子又はその機能的類似体を含み得る。
【0055】
本発明の方法では、ファルネシルピロホスフェートは、本明細書で特定されるサンタレンシンターゼによって少なくとも1つのサンタレンに酵素的に変換される。
【0056】
上述の変換工程は、インビトロで、即ち上記に記載されるような変換に必要とされる全ての成分を含有する好適な反応バイアル中で実施され得る。当業者は、反応が効率的に行われるように、反応条件をどのように調整するのかを十分に認識している。例えば、好適な緩衝液を使用して、好適なpH及び好適な塩濃度を有する環境で成分を供給することができる。このような設定における好適な温度も同様にそのまま適用することができる。
【0057】
或いは、変換工程は、本明細書の他の箇所で記載されているような宿主細胞中で行われ得る。好ましくは、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻細胞又はシアノバクテリア細胞、非ヒト動物細胞又は非ヒト哺乳動物細胞及び植物細胞からなる群から選択される。宿主細胞がサンタレンを産生できるものとすることを理解すべきである。必要であれば、宿主細胞は、上述のサンタレンシンターゼを含むサンタレン合成に必要な酵素又はタンパク質を発現させるために遺伝子改変される必要がある。宿主細胞は、上述の酵素を発現させ、ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換することが可能となるのに十分な条件下及び時間で培養するものとする。特に好ましい条件は、以下の添付の実施例にも記載されているか、又は当業者に知られている。
【0058】
更に、本発明の方法の変換工程は、生物、典型的には本明細書の他の箇所で言及されるトランスジェニック非ヒト生物などの多細胞生物でも実施することができる。典型的には、上記生物は、ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換するのに必要とされる酵素が発現されるように遺伝子改変される。しかしながら、当業者は、所与の非ヒトトランスジェニック生物の選択に応じて、どのような条件を適用する必要があるのかを十分に認識している。
【0059】
本発明の方法がインビボで、すなわち宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物内で行われる場合、上記宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物は、ファルネシルピロホスフェートの少なくとも1つのサンタレンへの変換が上記宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物内で行われ得るように、上で特定されるようなサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現するものと理解されるであろう。好ましくは、サンタレンシンターゼ活性を示す上記ポリペプチドは、異種ポリヌクレオチド、ベクター、又は遺伝子構築物によってコードされる。
【0060】
本文脈における「異種ポリペプチド」という用語は、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、それが導入される宿主細胞又は生物に天然に存在しないことを意味する。したがって、異種ポリヌクレオチドは、第1の種に由来するか、又は人工的に改変されたポリヌクレオチドであり、一方、宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物は、上記第1の種とは異なる第2の種に由来する。異種ポリヌクレオチドは、本明細書において以下に特定されるようなベクター又は遺伝子構築物に含まれていてもよい。或いは、異種ポリヌクレオチドは、ゲノムへの組み込みにより、上記異種ポリヌクレオチドによってコードされるサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドが発現されるように、宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物のゲノムに導入され得る。典型的には、異種ポリヌクレオチドは、例えば内在性プロモーターの近傍など、異種ポリヌクレオチドの発現を可能にする遺伝子座で宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物のゲノムに組み込まれるものとする。
【0061】
「ベクター」という用語は、好ましくは、ファージ、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター及び細菌又は酵母人工染色体(YAC)などの人工染色体を包含する。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主における増殖及び/又は選択のための選択マーカーを更に含む。ベクターは、当技術分野でよく知られた様々な技術によって宿主細胞に組み込まれ得る。宿主細胞に導入する場合、ベクターは、細胞質に存在し得るか、又はゲノムに組み込まれ得る。後者の場合、ベクターは、相同組換え又は異種挿入を可能にする核酸配列を更に含み得ることを理解されたい。ベクターは、従来の形質転換技術又はトランスフェクション技術によって原核細胞又は真核細胞に導入することができる。これに関連して使用される場合、「形質転換」及び「トランスフェクション」、コンジュゲーション及び形質導入という用語は、リン酸カルシウム、塩化ルビジウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、f因子による接合、天然コンピテンス、炭素系クラスター、化学的媒介導入、エレクトロポレーション又は微粒子銃を含む、外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための複数の先行技術のプロセスを含むことが意図される。植物細胞を含む宿主細胞の形質転換又はトランスフェクションに好適な方法は、Sambrook et al.(loc.cit.)and other laboratory manuals,such as Methods in Molecular Biology,1995,Vol.44,Agrobacterium protocols,Ed.:Gartland and Davey,Humana Press,Totowa,New Jerseyに見出すことができる。或いは、熱ショック又はエレクトロポレーション技術によってプラスミドベクターを導入し得る。ベクターがウイルスである場合、宿主細胞に適用する前に適切なパッケージング細胞株を使用してインビトロでパッケージングし得る。
【0062】
好ましくは、本明細書で言及されるベクターは、クローニングベクター、即ち微生物系で複製可能なクローニングベクターとして好適である。このようなベクターにより、細菌、好ましくは酵母又は真菌における効率的なクローニングが確実となり、植物の安定的な形質転換が可能となる。挙げるべきベクターは、特に、T DNAに媒介される形質転換に好適な様々なバイナリーベクター系及び同時組み込みベクター系である。このようなベクター系は、通例、少なくともvir遺伝子(アグロバクテリウム属(Agrobacterium)に媒介される形質転換に必要とされる)と、T-DNAの境界を定める配列(T-DNAボーダー)とを含むことを特徴とする。これらのベクター系には、好ましくは、プロモーター及びターミネーターなどの更なるシス調節領域並びに/又は好適な形質転換宿主細胞若しくは生物を同定することができる選択マーカーも含まれる。同時組み込みベクター系は、vir遺伝子とT DNA配列とが同じベクター上に配置されている一方、バイナリー系は、少なくとも2つのベクターをベースとしたものであり、その一方は、vir遺伝子を有するが、T-DNAがなく、第2のものは、T DNAを有するが、vir遺伝子がない。結果として、後者で述べたベクターは比較的小さく、操作が容易であり、大腸菌(E.coli)及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)の両方で複製可能である。これらのバイナリーベクターとしては、pBIB-HYG、pPZP、pBecks、pGreenシリーズのベクターが挙げられる。好ましくは、本発明に従って使用されるのは、Bin19、pBI101、pBinAR、pGPTV及びpCAMBIAである。バイナリーベクター及びそれらの使用についての概要は、Hellens et al,Trends in Plant Science(2000)5,446-451に見出すことができる。更に、適切なクローニングベクターを使用することにより、ポリヌクレオチドを宿主細胞又は植物若しくは動物などの生物に導入することが可能となり、これにより、Plant Molecular Biology and Biotechnology(CRC Press,Boca Raton,Florida),chapter 6/7,pp.71-119(1993);F.F.White,Vectors for Gene Transfer in Higher Plants;in;Transgenic Plants,vol.1,Engineering and Utilization,Ed.;Kung and R.Wu,Academic Press,1993,15-38;B.Jenes et al.,Techniques for Gene Transfer,in;Transgenic Plants,vol.1,Engineering and Utilization,Ed.;Kung and R.Wu,Academic Press(1993),128-143;Potrykus 1991,Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Molec.Biol.42,205 225に公開及び引用されているものなどのような植物の形質転換に使用することができる。
【0063】
より好ましくは、本発明のベクターは発現ベクターである。このような発現ベクターでは、即ち、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターは、原核細胞若しくは真核細胞又はその単離分画に発現させることができる、発現制御配列(「発現カセット」とも呼ばれる)に作動可能に連結された核酸配列を有する。好適な発現ベクターは当該技術分野で公知であり、例えば、Okayama-Berg cDNA発現ベクターであるpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)又はpSPORT1(GIBCO BRL)である。更なる典型的な融合発現ベクターの例は、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith 1988,Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、MA)及びpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ)であり、それぞれ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質及びプロテインAが組換え標的タンパク質と融合されている。好適な誘導可能な非融合性大腸菌(E.coli)発現ベクターの例は、特に、pTrc(Amann 1988,Gene 69:301-315)及びpET 11d(Studier 1990,Methods in Enzymology 185,60-89)である。pTrcベクターの標的遺伝子の発現は、宿主のRNAポリメラーゼによるハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの転写に基づいて行われる。pET 11dベクターによる標的遺伝子の発現は、T7-gn10-lac融合プロモーターの転写に基づいて行われ、この転写は、同時発現させたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介される。このウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下にあるT7 gn1遺伝子を保有する常在性ラムダ-プロファージに由来する宿主株BL21(DE3)又はHMS174(DE3)により提供される。当業者は、原核生物に好適な他のベクターに精通しており、これらのベクターは、例えば、大腸菌(E.coli)ではpLG338、pACYC184、pBR322などのpBRシリーズ、pUC18又はpUC19などのpUCシリーズ、M113mpシリーズ、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、lambdagt11又はpBdCl、ストレプトマイセス属(Streptomyces)ではplJ101、plJ364、plJ702又はplJ361、バチルス属(Bacillus)ではpUB110、pC194又はpBD214、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)ではpSA77又はpAJ667である。酵母であるS.セレビシエ(S.cerevisiae)における発現用のベクターの例は、pYep Sec1(Baldari 1987,Embo J.6:229-234)、pMFa(Kurjan 1982,Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultz 1987,Gene 54:113-123)及びpYES2(Invitrogen Corporation、San Diego,CA)を含む。ベクター及び糸状菌などの他の真菌に使用するのに好適なベクターを構築するためのプロセスは、van den Hondel,C.A.M.J.J.,&Punt,P.J.(1991)“Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi,in;Applied Molecular Genetics of fungi,J.F.Peberdy et al.,Ed.,pp.1-28,Cambridge University Press;Cambridge又はMore Gene Manipulations in Fungi(J.W.Bennett&L.L.Lasure,Ed.,pp.396-428;Academic Press;San Diego)に詳細に記載されているプロセスが含まれる。更に好適な酵母ベクターは、例えば、pAG-1、YEp6、YEp13又はpEMBLYe23である。別の方法として、本発明のポリヌクレオチドは、バキュロウイルス発現ベクターを使用して昆虫細胞に発現させることもできる。培養した昆虫細胞(例えばSf9細胞)にタンパク質を発現させるために利用可能なバキュロウイルスベクターは、pAcシリーズ(Smith 1983,Mol.Cell Biol.3:2156-2165)及びpVLシリーズ(Lucklow 1989,Virology 170:31-39)を含む。
【0064】
更に、ベクターは、組み込みベクターであり得る。組み込みベクターは、例えば、細菌のゲノムなどの微生物のゲノムに組み込むことができる直鎖状又は環状DNA分子を指し、本発明のサンタレンシンターゼなどの目的のポリペプチドをコードする遺伝子の安定な遺伝的形質をもたらす。組み込みベクターは、一般に、その転写をもたらす更なる核酸セグメントの制御下で(即ち作動可能に連結された)目的のポリペプチドをコードする遺伝子配列を含む1つ以上のセグメントを含む。
【0065】
このような更なるセグメントは、プロモーター及び終結配列並びに通常、相同組換えのプロセスによって標的細胞のゲノムに目的遺伝子の組み込みを誘発する1つ以上のセグメントを含み得る。典型的には、組み込みベクターは、標的細胞に導入することができるベクターであるが、その生物で機能しないレプリコンを有する。目的遺伝子を含むセグメントの組み込みは、そのセグメント内に適切なマーカーが含まれる場合に選択され得る。本発明の宿主細胞で発現させるポリペプチドに天然には関係しない、適切なシグナルペプチドをコードする1つ以上の核酸配列が、(発現)ベクターに組み込まれ得る。例えば、シグナルペプチドリーダーのDNA配列は、本発明のサンタレンシンターゼがシグナルペプチドを含む融合タンパク質として最初に翻訳されるように、本発明の核酸にインフレームで融合され得る。シグナルペプチドの性質に応じて、発現されるポリペプチドは、異なる標的化を受ける。意図される宿主細胞において機能的な分泌シグナルペプチドにより、例えば、発現されたポリペプチドの細胞外分泌が促進される。他のシグナルペプチドにより、発現されたポリペプチドが、葉緑体、ミトコンドリア及びペルオキシソームのような特定のオルガネラに誘導される。シグナルペプチドは、意図されるオルガネラへの輸送時又は細胞からの輸送時にポリペプチドから切断され得る。ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端では、更なるペプチド配列の融合を生じさせることが可能である。
【0066】
本明細書で使用される「遺伝子構築物」という用語は、本発明のポリヌクレオチド及び追加の機能的な核酸配列を含むポリヌクレオチドを指す。本発明による遺伝子構築物は、好ましくは、線状DNA分子である。典型的には、本発明による遺伝子構築物は、標的構築物のゲノムDNAへのランダム又は部位特異的組み込みが可能な標的構築物であり得る。このような標的構築物は、好ましくは、下記に詳細に記載されるように、相同組換え又は異種組換えのいずれかを行うのに十分な長さのDNAを含む。いずれの場合も、構築物は、好ましくは、プロモーター、転写開始部位、ポリアデニル化部位及び転写終結部位などの遺伝子発現を制御するための構造を有する、完璧なものでなければならない。
【0067】
好ましくは、本発明の方法は、上記製造された少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を得る工程を含む。
【0068】
本明細書で使用される「入手する」という用語は、任意の純度の少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を提供することを指す。したがって、組成物は、本質的に純粋な形態の少なくとも1つのサンタレンから本質的に構成されていてもよい、又は少なくとも1つのサンタレン以外の追加成分を含む混合物であってもよい。したがって、本発明の方法は、1つ以上の精製工程を包含し得る。適用する必要のある精製技術は、本発明の方法をどのように実施するのかによる。例えば、方法がインビトロで、即ち単離された成分、例えば単離された酵素、付加物及び補助成分、例えば反応緩衝液を使用して反応バイアル中で実施された場合、より少ない精製が必要となることが理解されるであろう。しかしながら、方法をインビボで、即ち本明細書の他の箇所で定義されるような宿主細胞において実施する場合、更なる精製工程と前処理工程とが必要となる可能性がある。典型的には、宿主細胞は採取される必要があり、採取された細胞は、上記細胞から少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を放出するために溶解される。その後の精製工程では、残存成分から少なくとも1つのサンタレンを精製することを目的として、細胞片も同様に除去しなければならない。更に、工程を動物又は植物においてインビボで実施する場合、より更なる前処理及び/又は精製工程が必要となる可能性がある。当業者は、方法が実施され得る所与の状況に応じた好適な前処理及び/又は精製工程を十分に認識している。想定される精製技術は、抽出技術、LC、GC又はHPLCなどのクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、蒸留、遠心分離、濾過などであり得る。想定される前処理工程は、回収、熱処理、超音波処理、化学物質及び/又は酵素による処理などであり得る。特に好ましい処置は、下記に添付される実施例に記載されている。
【0069】
有利には、本発明の基礎となる研究により、推定上のイネβ-サンタレンシンターゼは細菌内での発現により合成可能であり、α-サンタレンとβ-サンタレンを含むサンタレンの混合物が過剰に合成されることが明らかになった。従来、サンタレンシンターゼは、ほんのわずかな量のβ-サンタレンを含むファルネシルピロホスフェートからα-サンタレンを主に生成することが報告されている。更に、本質的にα-サンタレンを含む組成物からのβ-サンタレンの精製又は濃縮は、煩雑である。本発明及び本発明に従って見出されたサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドの驚くべき特性のおかげで、サンタレン、及び好ましくはβ-サンタレンを含む組成物は、より効率的に、特に組換え製造アプローチにおいて製造することができる。
【0070】
以上の本明細書でなされた用語の定義及び説明は、別途指定される場合を除いて、本発明の以下の実施形態に変更すべき点を変更して適用される。
【0071】
本発明の方法の好ましい実施形態では、ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程は、宿主細胞内で行われる。
【0072】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換することができる原核細胞又は真核細胞であって、上記変換が、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドによって行われる、原核細胞又は真核細胞に関する。したがって、本発明の宿主細胞は、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現することができる。好ましくは、上記サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドは、本発明の異種ポリヌクレオチド又はベクター又は遺伝子構築物によってコードされ得る。宿主細胞は、典型的には、上で特定したサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドが発現できるように、上記異種ポリヌクレオチド、ベクター、又は遺伝子構築物で形質転換される。形質転換されたベクター又は遺伝子構築物は、非組み込み型ベクター、例えばプラスミドとして維持され得るか、又は代替的に、本明細書の他の箇所でより詳細に明記されているように宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。
【0073】
本発明の一態様では、本発明の宿主細胞は、トランスジェニック細胞、すなわち本発明のサンタレンシンターゼをコードする核酸についてトランスジェニックである細胞、好ましくはトランスジェニック微生物細胞などのトランスジェニック非植物細胞である。
【0074】
本発明による宿主細胞は、例えば、Sambrook,J.,and Russell,D.W.“Molecular Cloning;A Laboratory Manual” 3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(2001);及びF.M.Ausubel et al,eds.,“Current protocols in molecular biology”,John Wiley and Sons,Inc.,New York(1987)並びにそれに対する後日の追補に記載されているような、一般に当該技術分野で公知の標準的な遺伝学的及び分子生物学技術に基づいて作製され得る。
【0075】
好ましくは、上記宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻細胞又はシアノバクテリア細胞、非ヒト動物細胞又は非ヒト哺乳動物細胞及び植物細胞からなる群から選択される。より好ましくは、宿主細胞は、以下の生物のいずれか1つから選択することができる。
【0076】
細菌:
細菌宿主細胞は、例えばエシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、パラコッカス属(Paracoccus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、エンシファー属(Ensifer)、又はパントエア属(Pantoea)からなる群から選択され得る。
【0077】
グラム陽性:バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces):有用なグラム陽性細菌宿主細胞としては、バチルス属(Bacillus)細胞、例えば、バチルス・アルカロフィウス(Bacillus alkalophius)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ジャウツス(Bacillus Jautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)が挙げられるが、限定されない。最も好ましい原核生物は、バチルス属(Bacillus)細胞、好ましくは、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・レンツス(Bacillus lentus)のバチルス属(Bacillus)細胞である。
【0078】
いくつかの他の好ましい細菌としては、放線菌目(Actinomycetales)、好ましくはストレプトマイセス属(Streptomyces)、好ましくはストレプトマイセス・スフェロイデス(Streptomyces spheroides)(ATTC23965)、ストレプトマイセス・サーモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)(IFO12382)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトマイセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)又はストレプトベルティシラム・ベルティシリウム種ベルティシリウム(Streptoverticillum verticillium ssp. verticillium)の株が挙げられる。他の好ましい細菌としては、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドモナス・パルストリ(Rhodomonas palustri)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)が挙げられる。更なる好ましい細菌としては、ミクソコッカス属(Myxococcus)に属する株、例えばM.ビレスセンス(M.virescens)が挙げられる。
【0079】
グラム陰性: エシェリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、パラコッカス属(Paracoccus)、エンシファー属(Ensifer)又はパントエア属(Pantoea)の菌種:好ましいグラム陰性細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属(Pseudomonas)sp.、好ましくはシュードモナス・プロシニア(Pseudomonas purrocinia)(ATCC15958)又はシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)(NRRL B-11)又はシュードモナス・デニトリフィカンス(Pseudomonas denitrificans)、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)又はロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、パラコッカス・カロチニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)、パントエア・アナナチス(Pantoea ananatis)、又はエンシファー・メリロチ(Ensifer meliloti)としても知られるシノリゾビウム・メリロチ(Sinorhizobium meliloti)である。
【0080】
真菌:
アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属(Trichoderma):宿主細胞は、真菌細胞であり得る。「真菌」は、本明細書中で使用される場合、子嚢菌門(phyla Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)及び接合菌門(Zygomycota)並びに卵菌門(Oomycota)及び不完全菌亜門(Deuteromycotina)及び全ての栄養胞子形成真菌を含む。子嚢菌門(Ascomycota)の代表的な群としては、例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ユーペニシリウム属(Eupenicillium)(=ペニシリウム属(Penicillium))、エメリセラ属(Emericella)(=アスペルギルス属(Aspergillus))、ユーロチウム属(Eurotium)(=アスペルギルス属(Aspergillus))及び以下で挙げられる真正酵母が挙げられる。担子菌門(Basidiomycota)の例としては、キノコ、さび病及び黒穂病が挙げられる。ツボカビ門(Chytridiomycota)の代表的な群としては、例えば、カワリミズカビ属(Allomyces)、ブラストクラジエラ属(Blastocladiella)、ボウフラキン属(Coelomomyces)及び水生真菌が挙げられる。卵菌門(Oomycota)の代表的な群としては、例えばアクリャ属(Achlya)などのサプロレグニオミセトス(Saprolegniomycetous)水生真菌(ミズカビ)が挙げられる。栄養胞子形成真菌の例としては、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、カンジダ属(Candida)及びアルテルナリア属(Alternaria)が挙げられる。接合菌門(Zygomycota)の代表的な群としては、例えばリゾプス属(Rhizopus)及びムコール属(Mucor)が挙げられる。
【0081】
いくつかの好ましい真菌としては、ジューテロミコチナ亜門(Deuteromycotina)に属する菌種、糸状不完全菌類(Hyphomycetes)のクラス、例えば、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、トリコデルマ属(Tricoderma)、ミロセシウム属(Myrothecium)、ベルティシリウム属(Verticillum)、アルスロマイセス属(Arthromyces)、カルダリオマイセス属(Caldariomyces)、ウロクラジウム属(Ulocladium)、エムべリシア属(Embellisia)、クラドスポリウム属(Cladosporium)又はドレスクレラ属(Dreschlera)、特にフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)(DSM2672)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・レシイ(Trichoderma resii)、ミロテシウム・ベルカナ(Myrothecium verrucana)(IFO6113)、ベルティシリウム・アルボアツルム(Verticillum alboatrum)、ベルティシリウム・ダーリイ(Verticillum dahlie)、アルスロマイセス・ラモサス(Arthromyces ramosus)(FERM P-7754)、カルダリオマイセス・フマゴ(Caldariomyces fumago)、ウロクラジウム・チャルタルム(Ulocladium chartarum)、エムべリシア・アリ(Embellisia alli)又はドレスクレラ・ハロデス(Dreschlera halodes)が挙げられる。他の好ましい真菌としては、バシジオミコチナ亜門(Basidiomycotina)に属する菌種、担子菌(Basidiomycetes)のクラス、例えばコプリナス属(Coprinus)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、コリオルス属(Coriolus)又はトラメテス属(Trametes)、特にコプリヌス・シネレウス f.ミクロスポルス(Coprinus cinereus f.microsporus)(IFO8371)、コプリヌス・マクロリズス(Coprinus macrorhizus)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)(例えばNA-12)又はトラメテス属(Trametes)(ポリポルス属(Polyporus)と以前呼ばれる)、例えばT.ベルシカラー(T.versicolor)(例えばPR4 28-A)が挙げられる。更なる好ましい真菌としては、接合菌亜門(Zygomycotina)に属する菌種、マイコラセア(Mycoraceae)のクラス、例えばリゾプス属(Rhizopus)及びムコール属(Mucor)、特にムコール・ヒエマリス(Mucor hiemalis)が挙げられる。
【0082】
酵母、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)属:真菌宿主細胞は、酵母細胞であり得る。酵母は、本明細書中で使用される場合、有子嚢胞子(ascosporogenous)酵母(エンドミセタレス(Endomycetales))、担子胞子(basidiosporogenous)酵母)及び不完全真菌(ブラストマイセス属(Blastomycetes))に属する酵母を含む。有子嚢胞子(ascosporogenous)酵母は、スペルモフトラ科(Spermophthoraceae)及びサッカロミケス科(Saccharomycetaceae)に分けられる。後者は、4つの亜科、シゾサッカロミコイデア(Schizosaccharomycoideae)(例えばシゾサッカロマイセス属(genus Schizosaccharomyces))、ナドソニオイデア(Nadsonioideae)、リポミコイデア(Lipomycoideae)及びサッカロミコイデア(Saccharomycoideae)(例えばクリベロマイセス属(genera Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)及びサッカロマイセス属(Saccharomyces))から構成される。担子胞子(basidiosporogenous)酵母としては、ロイコスポリジム属(genera Leucosporidim)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、スポリジオボルス属(Sporidiobolus)、フィロバシジウム属(Filobasidium)及びフィロバシジエラ属(Filobasidiella)が挙げられる。不完全真菌に属する酵母は、2つの科、スポロボロミセタセア(Sporobolomycetaceae)(例えばスポロボロマイセス属(Sporobolomyces)及びブレラ属(Bullera))及びクリプトコッカセア(Cryptococcaceae)(例えばカンジダ属(Candida))に分けられる。
【0083】
真核生物:
真核宿主細胞としては、非ヒト動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、鳥類細胞、爬虫類細胞、昆虫細胞又は植物細胞が更に挙げられるが、限定されない。
【0084】
最も好ましくは、宿主細胞は、細菌宿主細胞、特にロドバクター属(Rhodobacter)宿主細胞である。
【0085】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程は、本明細書の以下で定義される非ヒトトランスジェニック生物、又は植物若しくは微生物などの非脊椎動物トランスジェニック生物内で行われる。
【0086】
本明細書で使用される「トランスジェニック非ヒト生物」という用語は、本発明のポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物を含むように遺伝子改変された生物を指す。上記遺伝子改変は、相同組換え事象若しくは異種組換え事象、変異誘発又は遺伝子編集プロセスのいかなる種類の結果であり得る。したがって、トランスジェニック非ヒト生物は、そのゲノムに天然に存在しない(即ち異種)ポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物を含む点でその非トランスジェニック対応物と異なるものとする。本発明によるトランスジェニック非ヒト生物として想定される非ヒト生物は、多細胞生物であることが好ましい。更に、非ヒト生物は、動物又は植物であることが好ましい。好ましい動物は、哺乳動物、特にげっ歯類、例えばマウス、ラット、ウサギなどのような実験動物又はヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマなどのような畜産動物である。好ましい植物は、特に、アラビドプシス属種(Arabidopsis spp.)、ニコチアナ属種(Nicotiana spp)、シコルム・インチブス(Cichorum intybus)、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)、メンタ属種(Mentha spp)、アルテミシア・アニュア(Artemisia annua)、塊茎形成植物、油料作物、例えばブラシカ属種(Brassica spp.)又はブラシカ・ナピュス(Brassica napus)、果実のなる顕花植物(被子植物)及び樹木からなる群から選択される作物又は野菜である。
【0087】
トランスジェニック非ヒト生物を生成する方法は、当該技術分野でよく知られており、例えばLee-Yoon Low et al.,Transgenic Plants;Gene constructs,vector and transformation method.2018.DOI.10.5772/intechopen.79369;Pinkert,C.A.(ed.)1994.Transgenic animal technology;A laboratory handbook.Academic Press,Inc.,San Diedo,Calif.;Monastersky G.M.and Robl,J.M.(ed.)(1995)Strategies in Transgenic Animal Science.ASM Press.Washington D.C);Sambrook,loc.cit,Ausubel,loc.cit)を参照されたい。
【0088】
好ましくは、上記非ヒトトランスジェニック生物は、植物又は犠牲にされる非ヒト動物である。したがって、後者によれば、動物を治療する方法は本発明の方法には含まれない。
【0089】
本発明はまた、本発明の方法により入手可能な過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含む組成物に関する。好ましくは、上記β-サンタレンは、全サンタレンに対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、好ましくは約50%~約80%、約60%~約75%、約65%~約70%、より好ましくは少なくとも約67%の相対量で組成物中に存在する。好ましくは、組成物は、β-ファルネセンを実質的に含まない。本発明の組成物は、好ましくは、親油性組成物である。
【0090】
本発明の別の態様では、上記発明の組成物は、更に、セスキツジェンを、好ましくは少なくとも0.01%の量で含む。
【0091】
驚くべきことに、本発明のサンタレン組成物中にセスキツジェンが存在することにより、本発明のサンタレン組成物の嗅覚特性が改善されることが見出された。典型的なサンタレン組成物と比較して、本発明の組成物は、より強いウッディノートを有する。これまでのところ、セスキツジェンが嗅覚特性に影響を与えることは報告されていない。
【0092】
本発明の更に別の態様では、本発明のサンタレンシンターゼの助けを借りて生成される組成物中のベルガモテン、好ましくはトランス-αベルガモテンとβ-サンタレンの比は、1:2、1:3、1:4、1:5、又は1:10以下である。
【0093】
本発明の別の態様では、生成される組成物は、シス-α-ベルガモテン((AS番号18252-46-5)、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)、トランス-β-ベルガモテン(CAS番号15438-94-5)、若しくはβ-ビサボレン(CAS番号495-61-4)のいずれか1つを実質的に含まないか、又はこれらの全てを実質的に含まない、好ましくは、(E)-β-ファルネセン(CAS番号18794-84-8)を実質的に含まない。
【0094】
一実施形態では、本発明の組成物は、実質的に、β-サンタレン、α-サンタレン、トランス-α-ベルガモテン、セスキツジェン、及びエピ-β-サンタレン、好ましくは、β-サンタレン、α-サンタレン、トランス-α-ベルガモテン、及びセスキツジェンからなる。
【0095】
本発明は、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレン、より好ましくはβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物、更により好ましくはβ-サンタレンとα-サンタレンとセスキツジェンの混合物を含む組成物を製造するための、上述のポリペプチド、異種ポリヌクレオチド、ベクター若しくは遺伝子構築物、宿主細胞、又は非ヒトトランスジェニック生物の使用に関する。本発明の方法によって生成されるβ-サンタレン、αサンタレン、セスキツジェン、若しくはベルガモテン、又は本発明の組成物は、香味料又は香料用途、化粧品用途、医薬品、防虫剤若しくは誘虫剤として、又は作物保護若しくは動物飼育用といった農業などに使用してもよい。
【0096】
更に、本発明は、少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するための方法であって:
a)上述の本発明の方法によって、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を生成することと;
b)少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するために、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンをそれぞれのアルコールに酸化することと
を含む方法に関する。
【0097】
好ましくは、少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するための本発明の方法の工程a)で生成される組成物は、(E)-β-ファルネセンを実質的に含まないか、又はその量が少なくとも大幅に減少している。
【0098】
好ましくは、上記方法は、少なくとも1つのサンタロールを含む上記組成物を得る工程を更に含む。より好ましくは、上記組成物は、過剰なβ-サンタレンを含むα-サンタレンとβ-サンタレンの混合物を含む。
【0099】
本明細書で使用される「サンタロール」という用語は、アルコール性セスキテルペンを指す。この用語は、αサンタロールである(Z)-5-(2,3-ジメチルトリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタ-3-イル)-2-メチルペンタ-2-エン-1-オール;CAS番号:115-71-9;分子式C1524O)及びβサンタロールである(2Z)-2-メチル-5-[(1S,2R,4R)-2-メチル-3-メチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル]ペンタ-2-エン-1-オール;CAS番号:77-42-9;分子式C1524O)を包含する。
【0100】
本発明の上述の方法では、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物は、本明細書の他の箇所で本発明の方法によって記載されているように、第1の工程、工程(a)で生成される。続く工程、工程(b)では、組成物に含まれる上記少なくとも1つのサンタレンは、上で言及した少なくとも1つのサンタロールを含む組成物を製造するために酸化される。本発明の一態様では、少なくとも1つのサンタレンの酸化は、好ましくは酵素的に行われる。サンタレンを酸化してサンタロールに変換できる好適な酵素は、当該技術分野で周知である。好ましくは、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP)が、サンタレンをサンタロールに酸化するために使用される。より好ましくは、CYPは:CYP76F37v1、CYP76F37v2、CYP76F38v1、CYP76F38v2、CYP76F39v1、CYP76F41、CYP76F42、CYP76F39v2、CYP76F40、及びCYP736A167からなる群から選択される。更に、酸化は化学的に行うこともできる。
【0101】
上述の方法の工程(b)はまた、典型的には工程(a)がどのように実施されるかに応じて、インビボ又はエクスビボで実施され得る。したがって、工程(a)がインビボ、例えば、本明細書の他の箇所で特定される宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物内で実施される場合、好ましくは、工程(b)も同様にインビボで、好ましくは、同じ宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物内で実施されることが想定される。典型的には、宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物は、サンタレンをサンタロールに酸化することができるものとする。好ましくは、上記宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物は、したがって、上記で指定したようにCYPを発現し得る。この目的のために、上記CYPをコードする異種ポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター若しくは遺伝子構築物は、宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物中に存在し得る。このような異種ポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物を、上記宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物にどのように導入できるかは当該技術分野で周知であり、本明細書の他の箇所で詳細に記載される。
【0102】
或いは、少なくとも1つのサンタロールを含む組成物を製造するための方法の工程b)は、酵素プロセスではなく化学プロセスによって実施される。好ましくは、サンタロールへの化学的酸化は、国際公開第2021/063831号パンフレットに開示されているように実施される。
【0103】
本発明は、また、本発明の方法によって生成されるβ-サンタレンとαサンタレンの両方を含む前駆体組成物から生成される、β-サンタロール及びα-サンタロールを含む組成物であって、本明細書のβ-サンタロールが、前駆体組成物中の過剰なβサンタレン含量により、αサンタロールよりもw/wベースで多量に存在する、組成物に関する。これらの組成物中のβ-サンタロールのα-サンタロールに対する比は、1超であり、好ましくは、比は、少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は少なくとも2である。β-サンタロールのα-サンタロールに対する比は、少なくとも3:1、好ましくは少なくとも4:1、より好ましくは少なくとも5:1、更により好ましくは6:1、なお更により好ましくは少なくとも7:1、最も好ましくは少なくとも8:1、更には少なくとも9:1であり得る。本発明の一態様では、比は、100:1以下である。
【0104】
したがって、本発明はまた、a)α-サンタロールへの変換前にα-サンタレン含量を減少させること、及び/又はb)蒸留若しくは他の手段により、サンタレンからの変換後にβ-サンタロール含量を増加させることを必要とせずに、α-サンタロールよりも過剰なβ-サンタロールを含む組成物を生成するための方法であって、本発明の方法により、α-サンタレンよりも過剰なβ-サンタレンを含む組成物を生成する工程と、その後の1つ以上の工程において、β-サンタレンをβ-サンタロールに酸化し、α-サンタレンをα-サンタロールに酸化する工程とを含む、方法を意図する。
【0105】
このサンタレンの変換は、それぞれのアルコールに生合成的及び/又は化学的に行われ得る。サンタロールへの変換に続いて、他の化合物を除去するための蒸留などの精製工程が含まれる場合があり、必要に応じて、β-サンタロールとα-サンタロールの比率が蒸留によって変更される場合があるが、α-サンタロールよりも多くのβ-サンタロールを含む組成物は、改良されたβサンタレンシンターゼを使用することによって、α-サンタレンよりも過剰なβ-サンタレンを含む組成物を提供した後、β-サンタロール対α-サンタロールの比を更に変更することなく達成することができる。したがって、本発明の一態様は、α-サンタロールよりも過剰なβ-サンタロールを含む組成物を生成するための方法であって、方法は、本発明の方法によりα-サンタレンよりも過剰なβ-サンタレンを含む組成物を生成する工程と、その後の1つ以上の工程において、β-サンタレンをβ-サンタロールに酸化し、α-サンタレンをα-サンタロールに酸化する工程とを含み、サンタロールの精製のために、サンタレンの酸化に続くサンタロールの蒸留が、β-サンタロール含量をα-サンタロール含量よりも実質的に増加させることなく行われる、方法である。
【0106】
本発明はまた、本発明の改良されたβサンタレンシンターゼ又は本発明の宿主細胞を用いて、本発明の方法のいずれかにより生成されるα-サンタロールよりも過剰なβ-サンタロールを含む組成物であって、任意選択的に、組成物中のベルガモトールの合計が10%(w/w)未満、又は更には8%(w/w)未満である組成物に関する。別の態様では、本発明の改良されたβサンタレンシンターゼ又は本発明の宿主細胞を用いて、本発明の方法のいずれかにより生成されるα-サンタロールよりも過剰なβ-サンタロールを含む本発明の組成物は、3%未満のエピ-β-サンタロールを含む。
【0107】
サンタロールの生成においてサンタレン及びセスキツジェンを含む本発明の組成物を使用することには、更なる利点を有する。セスキツジェンを含むサンタロール組成物は改善された嗅覚特性を有するため、得られるサンタロール組成物の嗅覚特性も改善される。
【0108】
本発明の一態様は、β-サンタレンとα-サンタレン及び/又はβ-サンタロールとαサンタロールを含み、β-サンタレン対α-サンタレンの比又はβ-サンタロール対α-サンタロールの比が、それぞれ、少なくとも1.3以上、1.5以上、又は2以上である、α-サンタロールよりも過剰なβ-サンタロールを生成する本発明のサンタレンシンターゼ活性を有するポリペプチド、そのようなものをコードする核酸、そのような核酸を含む発現カセット、そのような発現カセットを含む宿主細胞、本発明の方法、並びに本発明の酵素及び方法により生成される組成物に関する。
【0109】
本発明はまた、セスキツジェン又はセスキツジェンを含む組成物を製造するための方法であって:
a)本発明の方法により、少なくとも1つのサンタレン及びセスキツジェンを含む組成物を生成することと;任意選択的に
b)組成物からセスキツジェンを単離すること
を含む方法に関する。
【0110】
本発明はまた、上述のポリペプチド、異種ポリヌクレオチド、ベクター若しくは遺伝子構築物、宿主細胞、又は非ヒトトランスジェニック生物を含む少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するためのキットであって、組成物が、好ましくは、β-ファルネセンを実質的に含まない、及び/又はセスキツジェンを含む、キットに関する。
【0111】
本明細書で使用される「キット」という用語は、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するための本発明の方法を実施するのに必要とされる構成要素の集合を指す。キットは、上述の構成要素のいずれかを、単一構成要素又はその任意の組み合わせのいずれかとして含むものとする。典型的には、キットの構成要素は、別々の容器において又は単一の容器内に提供される。容器は、典型的には、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するための本発明の方法を実施するための指示書も含む。更に、キットは、好ましくは、インキュベーション試薬、培養培地、洗浄溶液、溶媒及び/又は少なくとも1つのサンタレンを含む組成物の精製に必要となる試薬若しくは手段など、本発明の方法を実施するために必要な更なる構成要素を含み得る。
【0112】
また、本発明は、上述の異種ポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物からサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現する、非ヒト宿主細胞を意図する。好ましくは、上記宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻細胞又はシアノバクテリア細胞、非ヒト動物細胞又は非ヒト哺乳動物細胞及び植物細胞からなる群から選択される。より好ましくは、上記非ヒト宿主細胞は、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンを産生する。
【0113】
本発明は、前に言及したような異種ポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物からサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現する、非ヒトトランスジェニック生物に関する。好ましくは、上記非ヒトトランスジェニック生物は、植物又は非ヒト動物である。より好ましくは、上記非ヒト宿主細胞は、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンを産生する。
【0114】
本発明の非ヒト宿主細胞、非ヒトトランスジェニック生物、及び方法は、本発明のサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチド、及び更に以下の名称:CiCaSSy(QNV69588)若しくはSantalum albumサンタレンシンターゼ(E3W202)、及び/又は出願番号PCT/EP2021/064642号の国際特許出願に含まれるそれらのサンタレンシンターゼで当該技術分野で知られているものを含む、サンタレンシンターゼ活性を示す1つ以上の更なるポリペプチドを含んでもよい。
【0115】
最後に、本発明は、請求項10に記載の少なくとも1つの組成物、又は請求項11に記載の組成物、又は請求項1~8の方法のいずれか、及び(ii)~(iv):
(ii)β-サンタレン、α-サンタレン、トランス-α-ベルガモテン、セスキツジェン、及びエピ-β-サンタレンからなる群から選択される化合物以外の少なくとも1つの芳香化学物質(X)、又は
(iii)少なくとも1つの非芳香化学物質担体、又は
(iv)(ii)と(iii)の両方を含む組成物
のいずれかによって生成された組成物を含む芳香組成物に関する。
【0116】
好ましい実施形態では、請求項10に記載の少なくとも1つの組成物、又は請求項11に定義されるか若しくは請求項1~8のいずれかによって生成される組成物は、芳香組成物の総重量に基づいて、0.01重量%以上~70.0重量%以下の範囲で存在する。
【0117】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの非芳香化学物質担体(iii)は、界面活性剤、オイル成分、酸化防止剤、消臭活性剤、又は溶媒から選択される。
【0118】
なお更なる好ましい実施形態では、組成物は、香水組成物、ボディケア組成物、衛生用品、洗浄組成物、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物、又は作物保護組成物から選択される。
【0119】
以下の実施形態は、本発明に従って想定される特に好ましい実施形態である。上記でなされた用語の定義及び説明の全ては、変更すべき点を変更して適用される。
【0120】
実施形態1.ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程を含む、少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するための方法であって、上記変換が、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドによって行われ、上記ポリペプチドが、
(ii)
a)配列番号1、18、若しくは21~28のいずれかに示されるようなアミノ酸配列;
b)配列番号1、18、若しくは21~28のいずれかに示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
c)配列番号2若しくは3若しくは19のいずれか1つに示されるような核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
d)配列番号2若しくは3若しくは19のいずれか1つに示されるような核酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;及び
e)(a)~(d)のいずれか1つのフラグメントであって、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドをコードするフラグメントのアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は
(ii)
a)配列番号4~17のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列;
b)配列番号4~17に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
c)(a)若しくは(d)のフラグメントであって、サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドをコードするフラグメントのアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
【0121】
実施形態2:上記少なくとも1つのサンタレンが、β-サンタレンである、実施形態1に記載の方法。
【0122】
実施形態3:上記少なくとも1つのサンタレンが、過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物であり、好ましくは、組成物が、セスキツジェンも含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0123】
実施形態4:上記β-サンタレンが、全サンタレンに対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、好ましくは約50%~約80%、約60%~約75%、約65%~約70%、より好ましくは少なくとも約67%の相対量で組成物中に存在する、実施形態3に記載の方法。
【0124】
実施形態5:ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程が、宿主細胞内で行われる、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態6:上記宿主細胞が、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻細胞又はシアノバクテリア細胞、非ヒト動物細胞又は非ヒト哺乳動物細胞及び植物細胞からなる群から選択される、実施形態5に記載の宿主細胞。
【0126】
実施形態7:ファルネシルピロホスフェートを少なくとも1つのサンタレンに変換する工程が、非ヒトトランスジェニック生物内で行われる、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態8:上記非ヒトトランスジェニック生物が、植物又は犠牲にされる非ヒト動物である、実施形態7に記載の方法。
【0128】
実施形態9:上記サンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドが、異種ポリヌクレオチド、ベクター、又は遺伝子構築物によってコードされる、実施形態5~8のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態10:少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を得る工程を更に含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態11:過剰なβ-サンタレンを含むβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物を含む、好ましくは、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法によって得られ得るセスキツジェンも含む、組成物。
【0131】
実施形態12:上記β-サンタレンが、全サンタレンに対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、好ましくは約50%~約80%、約60%~約75%、約65%~約70%、より好ましくは少なくとも約67%の相対量で組成物中に存在する、実施形態11に記載の組成物。
【0132】
実施形態13:少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレン、より好ましくはβ-サンタレンとα-サンタレンの混合物、更により好ましくはβ-サンタレンとα-サンタレンとセスキツジェンの混合物、最も好ましくは実施形態11又は12で定義されるものを含む組成物を製造するための、実施形態1~4のいずれか1つに記載のポリペプチド、実施形態9に記載の異種ポリヌクレオチド、ベクター若しくは遺伝子構築物、実施形態5若しくは6に記載の宿主細胞、又は実施形態7若しくは8に記載の非ヒトトランスジェニック生物の使用。
【0133】
実施形態14:上記サンタレンが、香味料、香料、薬剤、又は化粧品を生成するために使用される、実施形態13に記載の使用。
【0134】
実施形態15:少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するための方法であって:
a)実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法によって少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を生成することと;
b)少なくとも1つのサンタロール、好ましくはβ-サンタロールを含む組成物を製造するために、上記少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンをそれぞれのアルコールに酸化することと、を含む方法。
【0135】
実施形態16:少なくとも1つのサンタロールを含む上記組成物を得る工程を更に含む、実施形態15に記載の方法。
【0136】
実施形態17:上記組成物が、過剰なβ-サンタレンを含むα-サンタレンとβ-サンタレンの混合物を含む、実施形態15又は16に記載の方法。
【0137】
実施形態18:実施形態1に記載のポリペプチド、実施形態9に記載の異種ポリヌクレオチド、ベクター若しくは遺伝子構築物、実施形態5若しくは6に記載の宿主細胞、又は実施形態7若しくは8に記載の非ヒトトランスジェニック生物を含む少なくとも1つのサンタレンを含む組成物を製造するためのキットであって、組成物が、β-ファルネセンを実質的に含まない、好ましくはセスキツジェンを含む、キット。
【0138】
実施形態19:実施形態9に記載の異種ポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物からサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現する、非ヒト宿主細胞。
【0139】
実施形態20:上記宿主細胞が:細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻細胞又はシアノバクテリア細胞、非ヒト動物細胞又は非ヒト哺乳動物細胞及び植物細胞からなる群から選択される、実施形態19に記載の非ヒト宿主細胞。
【0140】
実施形態21:上記非ヒト宿主細胞が、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンを産生する、実施形態19又は20に記載の非ヒト宿主細胞。
【0141】
実施形態22:実施形態9に記載の異種ポリヌクレオチド、ベクター又は遺伝子構築物からサンタレンシンターゼ活性を示すポリペプチドを発現する、非ヒトトランスジェニック生物。
【0142】
実施形態23:上記非ヒトトランスジェニック生物が、植物又は非ヒト動物である、実施形態22に記載の非ヒトトランスジェニック生物。
【0143】
実施形態24:上記非ヒト宿主細胞が、少なくとも1つのサンタレン、好ましくはβ-サンタレンを産生する、実施形態22又は23に記載の非ヒトトランスジェニック生物。
【0144】
本明細書全体を通して引用される全ての参考文献は、その全体又は具体的に言及される開示内容に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
図1】ベクターp-m-SPppa-MBP-OmBSS-mpmii altの概略図。
図2-1】大腸菌(E.coli)におけるβ-サンタレンの産生。BL21-DE3-pMEV-pAC-OmBSS(A)及びBL21-DE3-pMEV-pACYC-DUET-1(B)のドデカン相のGC-MS分析。
図2-2】図2-1の続きである。
図3】大腸菌(E.coli)におけるβ-サンタレンの産生。Rs265-9c/p-m-SPppa-OmBSS-mpmii altのドデカン相のGC分析。全サンタレンのパーセンテージ:α-サンタレン:25.7%;β-サンタレン:67.3%;トランス-αベルガモテン7.0%。
図4-1】配列番号1を有するオリザ属(Oryza)サンタレンシンターゼ及び他のオリザ属(Oryza)種由来のタンパク質のアミノ酸アラインメント。アラインメントは、MUSCLE(Log-Expectationによる複数配列比較)及び標準パラメータを使用して行われた。
図4-2】図4-1の続きである。
図4-3】図4-2の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0146】
以下の配列は、本明細書全体及び添付の配列プロトコルにおいて参照される。
配列番号1:推定上のオリザ・メリディオナリス(Oryza meridionalis)β-サンタレンシンターゼ(OmBSS)タンパク質
配列番号2:大腸菌(E.coli)の合成コード配列OmBSS
配列番号3:ロドバクター(Rhodobacter)の合成コード配列OmBSS
配列番号4:NM49164オリザ・サティバ(Oryza sativa)アミノ酸配列
配列番号5:A0A0D9Z7P2_9ORYZ特性評価されていないオリザ・グルミパトゥラ(Oryza glumipatula)タンパク質
配列番号6:A2XGY8_ORYSI特性評価されていないオリザ・サティバ亜種インディカ(Oryza sativa subsp.indica)タンパク質
配列番号7:A0A0E0NVD9_ORYRU特性評価されていないオリザ・ルフィポゴン(Oryza rufipogon)タンパク質
配列番号8:A0A0N7KHA7|A0A0N7KHA7_ORYSJ Os03g0361700オリザ・サティバ亜種ジャポニカ(Oryza sativa subsp.japonica)タンパク質(フラグメント)
配列番号9:Q10L24_ORYSJテルペンシンターゼファミリー、金属結合ドメイン含有タンパク質、オリザ・サティバ亜種ジャポニカ(Oryza sativa subsp.japonica)を発現した
配列番号10:I1PBH4_ORYGL特性評価されていないオリザ・グラベリマ(Oryza glaberrima)タンパク質
配列番号11:C7J0Q6_ORYSJ Os03g0361700オリザ・サティバ亜種ジャポニカ(Oryza sativa subsp.japonica)タンパク質
配列番号12:A0A0E0GMM5_ORYNI特性評価されていないオリザ・ニヴァラ(Oryza nivara)タンパク質
配列番号13:A0A0D3FIR1_9ORYZ特性評価されていないオリザ・バルチ(Oryza barthii)タンパク質
配列番号14:A3AI64_ORYSJ特性評価されていないオリザ・サティバ亜種ジャポニカ(Oryza sativa subsp.japonica)タンパク質
配列番号15:A0A0E0NVE4_ORYRU特性評価されていないオリザ・ルフィポゴン(Oryza rufipogon)タンパク質
配列番号16:A0A0E0D0X2_9ORYZ特性評価されていないオリザ・メリディオナリス(Oryza meridionalis)タンパク質
配列番号17:A0A0D3FIR4_9ORYZ特性評価されていないオリザ・バルチ(Oryza barthii)タンパク質
配列番号18:マルトース結合タンパク質MBP及びオリザ・メリディオナリス(Oryza meridionalis)β-サンタレンシンターゼ(OmBSS)の合成融合タンパク質
配列番号19:マルトース結合タンパク質及びオリザ・メリディオナリス(Oryza meridionalis)β-サンタレンシンターゼ(OmBSS)の合成融合タンパク質をコードする合成コード配列
配列番号20:GRXCX4Wモチーフ
配列番号21:合成サンタレンシンターゼSynBSS1
配列番号22:合成サンタレンシンターゼSynBSS2
配列番号23:合成サンタレンシンターゼSynBSS3
配列番号24:合成サンタレンシンターゼSynBSS4
配列番号25:合成サンタレンシンターゼSynBSS5
配列番号26:合成サンタレンシンターゼSynBSS6
配列番号27:合成サンタレンシンターゼSynBSS7
配列番号28:合成サンタレンシンターゼSynBSS8
【実施例
【0147】
実施例は、本発明を単に説明するものとする。これらは、決して範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0148】
実施例1:イネサンタレンシンターゼを同定する
UniProtアクセッション番号A0A0E0D0X4(配列番号1)で示されるタンパク質配列は、オリザ・メリディオナリス(Oryza meridionalis)ゲノムから抽出された(https://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?uniprot:A0A0E0D0X4_9ORYZ)。
A0A0E0D0X4:
【化2】
【0149】
BLASTP分析(nrデータベース)において、最も優れたブラストヒット(98.4%同一)は、オリザ・サティバ・ジャポニカ(Oryza sativa japonica)の(+)-ゲルマクレンDシンターゼとして注釈が付けられた配列を有する。+/-7つの他の配列は90%の同一性内でマッピングされ、これらの配列は他のイネのバリアント(オリザ・サティバ・インディカ(Oryza sativa indica)など)で見つかる。配列番号1及び関連配列のMUSCLEアラインメントを図4に示す。最良のヒットは95%が特性評価されていないオリザ・グルミパトゥラ(Oryza glumipatula)タンパク質であった。
【0150】
しかしながら、既知のサンタレンシンターゼタンパク質との配列同一性は非常に限られている:CiCaSSy(QNV69588):30.9%Santalum albumサンタレンシンターゼ(E3W202):27.4%。
【0151】
このタンパク質の使用を試験するために、このタンパク質を大腸菌(Escherichia coli)及びロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)で発現させた。
【0152】
実施例2:大腸菌(E.coli)で発現させるためのクローニング。
以下の配列は、標準配列サービスプロバイダーを使用して合成され、BamHI及びNotI制限部位を使用して発現ベクターpACYC-Duet-1(Novagen)にクローン化された。プラスミドはpAC-OsBSSと標識された。
大腸菌(E coli)発現用のA0A0E0D0X4をコードする合成配列(配列番号2):
【化3】
【0153】
このプラスミドは、Schmidt et al.2017(Scientific Reports|7:862|DOI:10.1038/s41598-017-00893-3)に記載されているpMEVを保有する大腸菌(E.coli)BL21 DE3に導入された。形質転換体をLB寒天プレート+クロラムフェニコール(30μg/mL)+カナマイシン(30μg/mL)+1%グルコース上で選択した。陽性の形質転換体(ミニプレップ及び制限消化によって試験した)を大腸菌(E.coli)BL21-DE3-pMEV-pAC-OmBSSと標識した。同じ方法を使用して、pMEV及びpACYC-DUET-1を含む対照株を作成し、BL21-DE3-pMEV-pACYC-DUET-1と標識した。
【0154】
実施例3:大腸菌(E.coli)におけるβ-サンタレンの産生
株BL21-DE3-pMEV-pAC-OmBSS及びBL21-DE3-pMEV-pACYC-DUET-1を、5mLのLB液体培地+クロラムフェニコール(30μg/mL)+カナマイシン(30μg/mL)+1%グルコースに接種し、37℃及び250rpmで一晩インキュベートした。翌日、培養物を10mLの2xYT培地+クロラムフェニコール(30μg/mL)+カナマイシン(30μg/mL)で1:25に希釈し、A600が0.5になるまで37℃及び250rpmで増殖させた。続いて、誘導剤として1mMのIPTGを添加し、生成物を捕捉するために1mLのn-ドデカンを添加し、培養物を28℃、250rpmで更に24時間インキュベートした。
【0155】
GC-MS分析の場合、ドデカンを遠心分離によって培養物から分離し、酢酸エチルで200倍に希釈した。2μLをCankar et al.(2015)に詳細に記載されているようなガスクロマトグラフを用いるGC/MSによって分析した。
【0156】
驚くべきことに、BL21-DE3-pMEV-pACYC-DUET-1と比較した場合、BL21-DE3-pMEV-pAC-OmBSSは、α-サンタレン、トランス-αベルガモテン、及びβ-サンタレンを生成した。この系におけるOmBSSの主なサンタレン生成物は、β-サンタレンであることが判明した(図2)。
【0157】
実施例4:ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)においてOmBSSを発現させるための構築物。
以下の合成DNAは、Genscriptから注文された。
ロドバクター(Rhodobacter)発現のための合成遺伝子OmBSS(配列番号3):
【化4】
【0158】
このフラグメントを、米国特許出願公開第20200010822A1号明細書からのプラスミドp-m-SPppa-MBP-CiCaSSy-mpmii-altに、HindIII及びBamHI制限部位を使用してクローニングした。ライゲーション混合物を大腸菌(E.coli)S17-1細胞に形質転換した。結合によるS17-1からR.スフェロイデス(R.sphaeroides)Rs265-9cへのp-m-SPppa-MBP-OmBSS-mpmii altの転写(図1)は、標準手順を用いて実施した(米国特許第9,260,709B2号明細書)。発現された融合タンパク質を配列番号18に示す。
【0159】
実施例5:ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)におけるβ-サンタレンの産生
Rs265-9c/p-m-SPppa-MBP-OmBSS-mpmii altの種培養を、バッフルなしの100mL振盪フラスコ中で、100mg/Lネオマイシンを含む20mLのRS102培地及びグリセロールストックのループを用いて実施した。種培養フラスコを、110rpmで軌道50mmの振盪インキュベーター内で30℃で72時間培養した。
【0160】
2つの底面バッフルを備えた300mLの振盪フラスコで振盪フラスコ生成実験を行った。20mLのRS102培地(米国特許出願公開第20200010822A1号明細書に記載されている)と最終濃度を100mg/Lとしたネオマイシンを、2mLの滅菌n-ドデカンと共にフラスコに加えた。20mLの培地中で最終的なOD600値が0.05となるように、接種物の量を調整した。このフラスコを、110rpmで軌道50mmの振盪インキュベーター内で30℃で72時間保持した。振盪フラスコ実験は二重に実施した。
【0161】
GC-MS分析の場合、ドデカンを遠心分離によって培養物から分離し、アセトンで10倍に希釈した。
【0162】
ガスクロマトグラフィーは、Restek RTX-5Sil MSキャピラリーカラム(30m×0.25mm、0.5μm)を備えたShimadzu GC2010 Plusで実施した。インジェクター及びFID検出器の温度は、それぞれ280℃及び300℃に設定された。カラムを通るガス流量は、40mL/分に設定された。オーブンの初期温度は160℃であったが、2℃/分の速度で180℃まで上昇させ、更に50℃/分の速度で300℃まで上昇させ、その温度で3分間保持した。注入したサンプル量は1μL、分割比1:50、窒素補給流量は30mL/分であった。
【0163】
Rs265-9c/p-m-SPppa-MBP-OmBSS-mpmii alt培養物のドデカン層で見つかった化合物は、保持時間に従って同定され、クロマトグラムのピーク面積を積分することで定量された(図3)。ピーク面積の分析により、全サンタレンの26%がα-サンタレン、7%がトランス-α-ベルガモテン、67%がβ-サンタレンであることが明らかになった。
【0164】
第2の実験は、生成されたテルペン物質を更に詳細に分析するために、特に他のサンタレンシンターゼから知られているそのようなテルペンについて分析するために行われた。ドデカン層で見つかった化合物のGC分析の結果を表Iに示す。驚くべきことに、既知のサンタレンシンターゼによって生成されることが知られているテルペンの一部は生成されず、本発明のサンタレンシンターゼはセスキツジェンの生成を含む新規で非常に異なる生成物プロファイルを有することが見出された。
【0165】
【表1】
【0166】
斜体の物質は存在すると予想されたが、OmBSSによって生成されなかった。他の既知のサンタレンシンターゼは、同じ設定で検出可能な量のこれらを生成することが確認された。
【0167】
RT=保持時間 Found RI=実験的なRI、Lit.RI=公表されたものからのRI、NDは検出されず。
【0168】
実施例6:本発明の新規サンタレン組成物と既知のサンタレン組成物の嗅覚比較
サンタレン及びセスキツジェンを含むサンタレン組成物は、前の実施例に記載したように生成した。比較のために、最先端のサンタレン組成物は、国際公開第2018/160066号パンフレットに記載されているように生成された。
【0169】
本発明のサンタレン組成物を既知のサンタレン組成物と比較して嗅いだ場合、本発明の組成物はウッディノートが増加し、改善された嗅覚特性を有していた。
【0170】
サンタレン及びセスキツジェンを含む組成物は、サンタレンを含む既知の組成物が使用されるのと同様に芳香組成物に使用することができ、サンタロールを含む本発明の組成物は、既知のサンタロール組成物が使用されるのと同様に芳香組成物に使用することができる。
【0171】
好適な芳香組成物は、例えば、香水組成物、ボディケア組成物(化粧品組成物並びに口腔及び歯科衛生用製品を含む)、衛生用品、洗浄組成物(食器洗い組成物を含む)、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物及び作物保護組成物であるが、これらに限定されない。
【0172】
香水組成物は、ファインフレグランス、液体形態、ゲル状形態又は固体担体に適用された形態の室内用芳香剤、エアゾールスプレー、香気付けされたクリーナー、香水キャンドル及びランプオイル又はマッサージ用オイルなどのオイルから選択することができる。
【0173】
ファインフレグランスの例は、香水抽出物、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、オードソリド(Eau de Solide)及びエクストラパルファム(Extrait Parfum)である。
【0174】
本発明の組成物はまた、香味付けのために使用することもできる。
【0175】
有利な組成物
サンタレンとセスキツジェンの混合物を含む本発明の組成物は、表II及び表IIIに従って香水組成物中に配合され、化合物Aと表示された。
【0176】
サンタレンとセスキツジェンの本発明の混合物は、表II及び表IIIに従った組成物として配合された。表Iに示された混合物は、表II及び表IIIでは「化合物A」と表示された。
【0177】
【表2】
【0178】
【表3】
【0179】
表II及び表IIIによる組成物、即ち、1A、1B、2A、2Bは、デオポンプスプレー、クリーンヘアコンディショナー、フェイスウォッシュジェル、フォームバス濃縮液、ヘアジェル、セルフフォーミングボディウォッシュ、スプレー式サンケアエマルジョン、スプレー式サンプロテクションエマルジョン、エモリエントフェイシャルジェル、2相オイルフォームバス、シャンプー、シャワーバス、含水アルコールAP/デオポンプスプレー、エアゾール、水性/アルコールAP/デオロールオン、スタイリングジェルタイプ「アウトオブベッド(Out of Bed)」、シェービングフォーム、敏感肌用ベビーシャンプー、敏感肌用ボディウォッシュ、敏感頭皮用グロスエンハンシングシャンプー、デオスティック、乳児用拭き取りシート、アフターシェーブバーム、フェイスジェル、フェイスデイケアクリーム、フェイスクレンザー、ボディローション、サンケアSPF50+、スプレー式ローション、ハンドディッシュクリーナー(レギュラー)、ハンドディッシュクリーナー(濃縮液)、サニタリー用洗剤(濃縮液)、汎用洗浄剤、抗菌柔軟剤、洗剤組成物、粉末洗剤組成物及び液体洗剤組成物からなる群から選択される様々な組成物に含まれ得る。
【0180】
当業者は、上述の製品における様々な一般的な配合に精通しているであろう。
【0181】
組成物1A、1B、2A及び2Bは、例えば、IP.com番号:IPCOM000258614D、表題New Aroma Chemicals、6~46ページ、表1~表D13に開示されているような特定の配合で配合することができ、この場合、「香料組成物1A」は、同一量の組成物1A、1B、2A、又は2Bで置き換えられる。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
【配列表】
2024546800000001.xml
【国際調査報告】