(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】SADA複合体を含む製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/66 20170101AFI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20241219BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20241219BHJP
A61K 33/244 20190101ALI20241219BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20241219BHJP
A61K 33/34 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241219BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61K47/66
A61P35/00
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/20
A61K51/04 100
A61K33/244
A61K33/24
A61K33/34
A61K51/04 200
A61K47/22
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534718
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 DK2022050279
(87)【国際公開番号】W WO2023110044
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519399626
【氏名又は名称】ワイ-マブス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルンド-ハンセン,トーベン
(72)【発明者】
【氏名】リーベンベルグ,ニコ
(72)【発明者】
【氏名】モーテンセン,マティアス・ムンク
(72)【発明者】
【氏名】リスビー,スティーン
(72)【発明者】
【氏名】ピン,リー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076DD38Q
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4C076DD42Z
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4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
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4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045BA50
4H045BA71
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045GA45
(57)【要約】
SADA複合体を含む製剤が、開示される。製剤は、SADA複合体の過剰な分解又は多量体化を有することなく、十分な貯蔵寿命を提供する。がんを治療するための製剤の使用が、更に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成物であって、
a.SADAドメイン、第1の結合部位、第2の結合部位を5~50g/Lの量で含む、SADA複合体;
b.緩衝液系;
c.1つ以上の安定化剤;及び
d.1つ以上の界面活性剤
を含む、組成物。
【請求項2】
pHが5~6の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
イオン強度が5~150mMの範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
イオン強度が、5~150mM、15~135mM、20~120mM及び25~100mMのうちから選択される範囲である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
5~50g/L、6.25~45g/L、7.5~40g/L、9.75~35g/L、10~30g/L、11.25~25g/L、12.5~20g/L、13.75~17.5g/Lのうちから選択される量の、好ましくは15g/Lの量でSADA複合体を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
第1の結合部位が腫瘍抗原に結合することができる、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
第1の結合部位がGD2、B7-H3、CD20、GPA33又はCD38に結合することができる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
第1の結合部位が、GD2に結合することができ、配列番号1~6に示されているCDR配列を含み、配列番号7に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%の又は好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
第1の結合部位が、GD2に結合することができ、
a.配列番号8に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%の又は好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチド、及び
b.配列番号9に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%の又は好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチド
を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
第1の結合部位が、CD38に結合することができ、配列番号29~34に示されているCDR配列を含み、配列番号35に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%の又は好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
第1の結合部位が、CD38に結合することができ、
a.配列番号36に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%の又は好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチド、及び
b.配列番号37に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%の又は好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチド
を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
第2の結合部位が、キレート剤又は金属イオンと錯化するキレート剤に結合することができる、請求項6~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
第2の結合部位が、DOTA、ベンジルDOTA、DOTA環系を含む化合物に結合することができる、又は金属イオン、例えばルテチウムと錯化するDOTAに結合することができる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
第2の結合部位が、配列番号23~28のCDR配列を含む配列を有するポリペプチドを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
第2の結合部位が、
a.配列番号10に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%の又は好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチド、及び
b.配列番号11に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%の又は好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチド
を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
SADAドメインが、配列番号12~19の配列又は配列番号12~19の配列のうちの1つと1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個の置換で異なっている配列を有するポリペプチドを含む、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
SADAドメインが、配列番号12のアミノ酸6~36の配列を有するポリペプチドを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
SADA複合体が、1つ以上のリンカーを更に含む、請求項1~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
SADA複合体が、1~6の整数を掛けた配列番号20、及び配列番号21のうちから選択される配列を有する1つ以上のリンカーを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
SADA複合体が、配列番号22、配列番号38、配列番号39、配列番号40又は配列番号41の配列を含む、請求項1~19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
緩衝液系が、有機酸又はそのアルカリ金属塩を含む、請求項1~20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
有機酸が、酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩-ヒスチジン、酢酸塩-ヒスチジン及びコハク酸塩のうちから選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
緩衝液が酢酸ナトリウムを含む、請求項21又は22に記載の組成物。
【請求項24】
5~100mM、15~50mMのうちから選択される量の、好ましくは20mMの量の緩衝液を含む、請求項1~23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
1つ以上の安定化剤が、ポリオール、糖アルコール及び非還元糖のうちから選択される、請求項1~24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
安定化剤がスクロースである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
200~350mM、250~300mMのうちから選択される量の、好ましくは275mMの量の安定化剤を含む、請求項1~26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
1つ以上の界面活性剤が、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)又はポリエチレングリコールソルビタンモノオレエートなどの非イオン性界面活性剤のうちから選択される、請求項1~27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
界面活性剤が、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
0.1~0.3g/L、0.15~0.25g/Lのうちから選択される量の、好ましくは0.20g/Lの量の界面活性剤を含む、請求項1~29のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
pHが、5~6、5.2~5.8、5.4~5.6のうちから選択され、好ましくは5.5である、請求項1~30のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
酸化防止剤を更に含む、請求項1~31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
酸化防止剤がメチオニンである、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
5~15mM、8~12mMのうちから選択される量の、好ましくは10mMの量の酸化防止剤を含む、請求項32又は33に記載の組成物。
【請求項35】
NaClを含まない又は低濃度のNaClを含む、請求項1~34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
NaClの濃度が50mM未満である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
a.約15g/Lの量の、配列番号22のアミノ酸配列を含む又はアミノ酸配列からなるSADA複合体;
b.約20mMの量の酢酸ナトリウム;
c.約275mMの量のスクロース;
d.約0.2g/Lの量のポリソルベート 20;及び
e.10mMのメチオニン;
を含み、
pHが5.5である、請求項1~36のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
医薬組成物である、請求項1~37のいずれかに記載の組成物。
【請求項39】
がんを治療又は診断するための、請求項1~38のいずれかに記載の組成物の、使用。
【請求項40】
GD2、B7-H3、CD20、GPA33又はCD38を発現するがんを治療又は診断するための、請求項40に記載の使用。
【請求項41】
がんが、神経芽細胞腫、黒色腫、肉腫、脳腫瘍又は癌のうちから選択される、請求項39又は40に記載の使用。
【請求項42】
がんが、骨肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫、紡錘細胞肉腫、脳腫瘍、小細胞肺がん、網膜芽細胞腫、HTLV-1感染T細胞白血病及び他のGD2又はCD38陽性腫瘍のうちから選択される、請求項39~41のいずれかに記載の使用。
【請求項43】
a.治療又は診断の必要な患者に請求項1~38のいずれかに記載の組成物を投与するステップ;及び
b.一定期間後に、放射性核種を含むDOTA化合物を投与するステップ、
を含む方法における、請求項39~42のいずれかに記載の使用。
【請求項44】
方法が、ステップaの後及びステップbの前に除去剤を投与することを更に含む、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
放射性核種が、アルファ、ベータ及び陽電子放出放射性核種のうちから選択される、請求項43又は44に記載の使用。
【請求項46】
放射性核種が、
177Lu、
99mTc、
64Cu、
90Y及び
89Zrからなる群から選択される、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
請求項1~38のいずれかに記載の組成物及びDOTA化合物を含む、キット。
【請求項48】
放射性核種を更に含む、請求項47に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、本出願と一緒に提出されたコンピュータ可読フォーマットの配列表を含む。配列表は本開示の一部を形成し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、SADA複合体を含む組成物に関し、前記SADA複合体は、四量体形態で安定化された状態を保っている。好ましくは、組成物は医薬組成物である。
【0003】
本発明は、本発明の組成物を使用するがんの治療に更に関する。
【背景技術】
【0004】
タンパク質薬は、十分な貯蔵寿命を確保するために、タンパク質を安定化する成分を含む水性製剤として典型的に処方される。
【0005】
自己集合及び分解(self-assembling and disassembling)(SADA)技術は、国際公開第2018/204873号に最初に開示され、濃度に依存する集合及び分解の特性を有するSADAドメインを活用する。SADAドメインを含む複合体は、典型的には少なくとも2つの特有の形態で存在し、高濃度では四量体形態であり、低濃度では単量体形態である。
【0006】
SADA複合体は、四量体形態が腎クリアランス限界をはるかに上回る分子量を有し、単量体形態が腎クリアランス限界を下回る分子量を有するように設計されてもよく、このことは、四量体形態が高い血漿半減期を有し、単量体形態が低い血漿半減期を有することを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SADA複合体は主に四量体形態で投与されるため、製剤がタンパク質に十分な安定性を提供するべきであるのみならず、SADA複合体が単量体への分解又は多量体への凝塊を過剰に有することなく四量体形態のままであることを確保するべきでもあるので、その処方は難題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本開示は、ペイロードを目的の標的部位へ有効に送達することを許容し、同時にオフターゲット(off-target)相互作用のリスクを最小限にするSADAドメインを、SADA複合体の一部として含む組成物を提供する。ペイロードの最適な送達のために、四量体形態のSADA複合体は、組成物/溶液中で高度に安定していることが望ましい。しかし、前記組成物の安定性を確保することは難題である。この難題は、組成物が高次四量体化状態のSADA複合体を優勢的に含むこと、前記SADA複合体が四量体形態のままであること、同時に、その多量体化、凝集及び沈殿、並びに生成物の喪失を回避することを確実にすることである。
【0010】
腎クリアランス限界をはるかに上回るサイズを有する四量体形態が、目的の部位に結合することを可能にするのに十分な時間にわたって血液循環中にとどまり、一方で単量体形態が、そのサイズが腎クリアランスを下回るため循環から迅速に失われるので、SADA複合体は四量体形態で投与されることが望ましい。まとめると、このことは、四量体形態で投与されると目的の部位に結合するために循環中に十分に長くとどまり、標的に結合しない複合体は、漸進的に分解して、腎臓を介して失われる単量体になる、SADA複合体の特に望ましい特性を提供する。本開示は、SADA複合体に必要な安定性を確実にする組成物を提供する。
【0011】
第1の態様において、本発明は、水性組成物であって、
a.SADAドメイン及び少なくとも1つの追加のドメインを5~50g/Lの量で含むSADA複合体;
b.緩衝液系;
c.1つ以上の安定化剤;及び
d.1つ以上の界面活性剤
を含み、
pHが5~6の範囲であり、SADA複合体が優勢的に四量体形態であり、イオン強度が5~150mMの範囲である
組成物に関する。
【0012】
驚くべきことに、製剤は貯蔵の際にSADA複合体を安定化できること、更にSADA複合体を優勢的に四量体形態で維持できることが実現される。
【0013】
SADA複合体は、好ましくはSADAドメイン及び2つの結合部位を含み、一方は腫瘍抗原に結合することができ、もう一方の結合部位は、金属イオンと錯化するキレート剤に結合することができる。キレート剤はDOTA又はDOTA環系を含む化合物であり得る。
【0014】
第2の態様において、本発明は、がんを治療又は診断するための本発明の組成物の使用に関する。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明は、
a.治療又は診断の必要な患者に本発明の組成物を投与するステップ;及び
b.一定期間後に、放射性核種に結合するDOTA化合物を投与するステップ、
を含む方法における、本発明の組成物の使用に関する。
【0016】
第3の態様において、本発明は、本発明の組成物及び好ましくは使用説明書、並びに/又は放射性核種に結合するDOTAを含むキットに関する。
【0017】
追加の態様は特許請求の範囲に提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、参照により本明細書に組み込まれる公開番号が国際公開第2018/204873号の国際特許出願に記載されている自己集合及び分解(SADA)技術に関する。この技術は、濃度に依存する自己集合及び分解の特性を有する小さいポリペプチドであるSADAドメインに基づいている。SADAポリペプチドの例は、p53、p63、p76、hnRNPC、SNAP-23、Stefin B、KCNQ4、CBFA2T1、及び前記国際特許出願に限定されることなく提供されている、そのようなポリペプチドの他のいずれかの例の四量体化ドメインを含むポリペプチドである。
【0019】
本明細書によれば、SADA複合体は、SADAドメイン及び少なくとも1つの追加のドメインを含むポリペプチドを意味することが意図される。
【0020】
SADA複合体は、自己集合性であり、多量体、特に四量体を高い濃度で形成し、低濃度で単量体に分解する。このことは、四量体形態のSADA複合体が、患者に投与されたとき、血漿で希釈され、単量体に漸進的に分解するという結果を有する。SADA複合体が、多量体形態が腎クリアランス限界を上回るサイズを有し、単量体が腎クリアランス限界を下回るサイズを有するように設計される場合、多量体は長い血漿半減期を有し、一方で単量体は、短い血漿半減期を有する。
【0021】
組織抗原に結合する結合部位を含むSADA複合体では、SADA複合体は、抗原標的に迅速に結合し、標的組織に局在され、一方で非結合SADA複合体は、迅速に分解し、腎クリアランスにより血漿から除去される。
【0022】
本発明の一部の実施形態は、特許請求の範囲に提供されている。
【0023】
一実施形態によれば、本発明は、水性組成物であって、
a.SADAドメイン及び少なくとも1つの追加のドメインを5~50g/Lの量で含むSADA複合体;
b.緩衝液系;
c.1つ以上の安定化剤;及び
d.1つ以上の界面活性剤
を含み、
pHが5~6の範囲であり、イオン強度が5~150mMの範囲である
組成物に関する。
【0024】
好ましくは、SADA複合体は、優勢的に多量体/四量体形態である。
【0025】
本発明の製剤は、組成物の安定性を確実にするという利点を有する。本発明者らは、本発明の製剤がSADA複合体の高い安定性を確保すること、及び貯蔵の際にSADA複合体の四量体形態を維持することができ、タンパク質分解からタンパク質を更に保護することを理解している。したがって、本発明の組成物は、四量体形態にとどまっている四量体SADA複合体の溶液であり、貯蔵後及び貯蔵中のタンパク質分解を低減する溶液を提供する。したがって、本発明の製剤は、所望の高い貯蔵寿命を有するSADA分子を提供する。
【0026】
一実施形態によれば、本発明は、イオン強度が5~150mM、10~135mM、20~120mM又は25~100mMの範囲である本発明の組成物に関する。
【0027】
一実施形態によれば、本発明は、5~50g/L、6.25~45g/L、7.5~40g/L、9.75~35g/L、10~20g/Lのうちから選択される量の、好ましくは10~15g/LのSADA複合体を含む、本発明の組成物に関する。
【0028】
一実施形態によれば、SADA複合体は、2つの結合部位及びSADAドメインを含み、第1の結合部位は標的抗原に結合することができ、第2の結合部位は、細胞傷害剤、放射性核種などのペイロードに、又はペイロードに結合することができる化合物に結合することができる。
【0029】
一部の実施形態において、第1及び/又は第2の結合部位は抗体構成成分、例えば、抗体の抗原結合断片、scFv又はナノボディ(nanobody)である又はこれらを含む。好ましくは、第1及び/又は第2の結合部位はscFvである。
【0030】
一部の実施形態において、第1の結合部位は、細胞表面標的、例えば腫瘍抗原に特異的である。
【0031】
一実施形態によれば、腫瘍抗原に特異的な結合部位は、抗GD2、抗CD20、抗CD38、抗Globo H、抗GPA33、抗PSMA、抗ポリシアル酸、抗Lewy、抗LiCAM、抗HER2、抗B7H3、抗CD33、抗ペプチド/MHC、抗グリピカン3又は抗GD3結合ドメインである。
【0032】
したがって、本発明は、第1の結合部位が腫瘍抗原に結合することができる本発明の組成物に関する。
【0033】
一実施形態によれば、本発明は、第1の結合部位がGD2、B7-H3、CD20、GPA33又はCD38に結合することができる、本発明の組成物に関する。
【0034】
GD2はジシアロガングリオシド(disialoganglioside)であり、ジシアロガングリオシドは腫瘍関連抗原と考慮され得る。
【0035】
CD276としても公知であるB7-H3は、免疫チェックポイント分子及び共刺激/共阻害免疫調節性タンパク質であり、B7-H3は腫瘍関連抗原と考慮され得る。
【0036】
CD20は膜包埋表面分子であり、CD20は腫瘍関連抗原と考慮され得る。
【0037】
GPA33は糖タンパク質及び細胞表面抗原であり、GPA33は腫瘍関連抗原と考慮され得る。
【0038】
サイクリックADPリボースヒドロラーゼ(cyclic ADP ribose hydrolase)としても公知であるCD38は、糖タンパク質であり、CD38は腫瘍関連抗原と考慮され得る。
【0039】
一実施形態によれば、本発明は、第1の結合部位が、
a.配列番号1~6のCDR配列を含む、及び
b.配列番号7に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する
配列を含む、本発明の組成物に関する。
【0040】
1つの好ましい実施形態によれば、第1の結合部位が、GD2に結合することができ、配列番号7の配列を含む。
【0041】
一実施形態によれば、本発明は、第1の結合部位が、
a.配列番号8に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列、及び
b.配列番号9に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明の組成物に関する。
【0042】
サイクリックADPリボースヒドロラーゼとしても公知であるCD38は、糖タンパク質であり、CD38は腫瘍関連抗原と考慮され得る。
【0043】
一実施形態によれば、本発明は、第1の結合部位が、
a.配列番号29~34のCDR配列を含む、及び
b.配列番号35に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、
配列を含む、本発明の組成物に関する。
【0044】
好ましくは、この実施形態の第1の結合部位は、CD38に結合することができる。
【0045】
好ましい実施形態において、第1の結合部位は、CD38に結合することができ、配列番号35の配列を含む。
【0046】
別の実施形態によれば、本発明は、第1の結合部位が、
a.配列番号36に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列、及び
b.配列番号37に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明の組成物に関する。
【0047】
一実施形態によれば、本発明は、第2の結合部位がキレート剤に結合することができる、本発明の組成物に関する。
【0048】
原則として、任意のキレート剤を本発明に使用してよいが、ただし第2の結合部位が前記キレート剤に結合できることが条件である。
【0049】
一実施形態によれば、本発明は、第2の結合部位がDOTAに若しくはDOTA環系を含む化合物に結合することができる、又はDOTAが金属イオン、例えば、175Lu3+若しくは177Lu3+などのルテチウムとキレート化されている場合、DOTAに若しくはDOTA環系を含む化合物に結合することができる、本発明の組成物に関する。
【0050】
DOTA(ドデカン四酢酸)は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸とも称され、C16H28N4O8・xH2Oとしても公知である式(CH2CH2NCH2CO2H)4を有する。
【0051】
DOTA環系を含む化合物は、追加の基又は部分が結合しているDOTAを含む化合物を意味することが本明細書において意図される。そのような化合物の例には、ベンジルDOTA、及び参照により組み込まれる国際公開第2019/010299号に開示されている二重特異性キレート剤が挙げられる。
【0052】
一実施形態によれば、本発明は、第2の結合部位が、
a.配列番号23~28のCDR配列を含み、
b.配列番号35に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドを含む
本発明の組成物に関する。
【0053】
好ましくは、この実施形態における第2の結合部位は、DOTA-金属、すなわち、金属イオン、例えばルテチウム、好ましくはLu3+をキレート化するDOTAを結合することができる。
【0054】
この実施形態によれば、本発明は、第2の結合部位がDOTA-金属に結合することができ、
a.配列番号10に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列、及び
b.配列番号11に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明の組成物に関する。
【0055】
一実施形態によれば、本発明は、SADAドメインが、配列番号12~19に開示されている配列又は配列番号12~19の配列のうちの1つと1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個の置換で異なっている配列を含む、本発明の組成物に関する。
【0056】
配列番号12の配列を含む、より好ましくは配列番号12のアミノ酸6~36を含むp53四量体化ドメインは、好ましいSADAドメインである。
【0057】
SADA複合体は、本発明によれば追加のエレメントを含んでもよく、複合体の異なる部分を隔てるリンカー、結合部位から離れている抗体断片、例えば定常領域、及びエフェクター又は免疫反応に結合し、これらを誘発することができる抗原断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
一実施形態によれば、SADA複合体はリンカーを含む。
【0059】
時にはスペーサーとしても公知であるリンカーは、単一ポリペプチド中で2つのドメインを隔て、2つのドメインが隣接ドメインの立体障害を受けることなくフォールドし、作動することを可能にするように作り出される短いアミノ酸配列である。リンカーは当該技術に公知であり、本発明はリンカーの任意の特定の配列に限定されない。一般に、リンカーの目的は、複合体の異なるエレメントを接続するため及び/又は隔てるためであり、典型的には主に小さい親水性アミノ酸、例えば、グリシン、セリン及びトレオニンから構成される。
【0060】
一実施形態によれば、本発明は、SADA複合体が、1~6の整数を掛けた配列番号20のうちから選択される配列を有するリンカーを含む、本発明の組成物に関する。
【0061】
本発明に使用され得る別の好適なリンカーは、IgG3スペーサードメインであり、例えばIgG3スペーサードメインは、配列番号21に開示されている。
【0062】
一部の実施形態において、SADA複合体は、SADAドメイン及び2つの結合部位、例えばscFvからなる。一部の実施形態において、SADA複合体は、リンカー及び/又はスペーサーにより接続されている抗GD2 scFv-抗DOTA scFv-p53四量体化ドメインを含む。一部の実施形態において、SADA複合体は、以下の構造を有する:リンカー及び/又はスペーサーにより接続されている抗GD2軽鎖Fv-抗GD2重鎖Fv-抗DOTA重鎖Fv-抗DOTA軽鎖Fv-p53四量体化ドメイン。
【0063】
本発明による好適なSADA複合体の例には、配列番号22のアミノ酸配列を含むGD2-SADAコンジュゲート、配列番号38のアミノ酸配列を含むCD38-SADAコンジュゲート、配列番号39のアミノ酸配列を含むB7-H3-SADAコンジュゲート、配列番号40のアミノ酸配列を含むCD20-SADAコンジュゲート、及び配列番号41のアミノ酸配列を含むGPA33-SADAコンジュゲートが挙げられる。
【0064】
本発明によれば、本発明の組成物は、緩衝液系、例えば、有機酸又はそのアルカリ金属塩を含む。
【0065】
好ましくは、緩衝液は、酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩-ヒスチジン、酢酸塩-ヒスチジン及びコハク酸塩のうちから選択される。
【0066】
好ましい例には、酢酸及び酢酸ナトリウムを含む酢酸塩緩衝液が挙げられる。
【0067】
酢酸ナトリウムは、酢酸塩ナトリウム塩としても公知であり、式CH3COONaを有する。
【0068】
一実施形態によれば、本発明は、5~30mM、10~25mMのうちから選択される量、好ましくは20mMの量の緩衝液を含む、本発明の組成物に関する。
【0069】
一実施形態によれば、安定化剤は、ポリオール、特に糖アルコール及び非還元糖のうちから選択される。
【0070】
好ましい例には、スクロース、トレハロース、ソルビトール、グリセロール及びイノシトールが挙げられる。
【0071】
安定化剤は時間を維持又は延長し、一方で活性医薬成分は、貯蔵中に所望の特性を維持する。
【0072】
一実施形態によれば、本発明は、200~600mM、225~500mM、250~300mMのうちから選択される量の、好ましくは275mMの量の安定化剤、好ましくはスクロースを含む、本発明の組成物に関する。
【0073】
本発明は、界面活性剤が非イオン性界面活性剤である組成物にも関する。
【0074】
非イオン性界面活性剤は、親水性ヘッドグループ及び疎水性テールからなる、解離していない長鎖ポリマーを含み得る/長鎖ポリマーからなり得る。
【0075】
一実施形態によれば、本発明は、界面活性剤が、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)又はポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである組成物に関する。
【0076】
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートとしても公知であるポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートは、当該技術に公知である。好ましいポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートは、ポリソルベート(Polysorbate)(登録商標)20又はTWEEN(登録商標)20として市販されている。
【0077】
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとしても公知であるポリエチレングリコールソルビタンモノオレエートは、当該技術に公知である。好ましいポリエチレングリコールソルビタンモノオレエートは、ポリソルベート(登録商標)80又はTWEEN(登録商標)80として市販されている。
【0078】
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)も当該技術に公知である。好ましいポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)は、Kolliphor(登録商標)P188又はポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)188として市販されている。
【0079】
ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートは、本発明の使用に好ましい界面活性剤である。
【0080】
一実施形態によれば、本発明は、0.1~0.3g/L、0.15~0.25g/L、0.16~0.24g/L、0.17~0.23g/L、0.18~0.22g/L、0.19~0.21g/Lのうちから選択される量の、好ましくは0.20g/Lの量の界面活性剤を含む組成物に関する。
【0081】
本発明の組成物は、5~6、5.1~5.9、5.2~5.8、5.3~5.7、5.4~5.6のうちから選択されるpH、好ましくは5.5のpHを有してよい。
【0082】
本発明の組成物は、酸化防止剤を更に含んでもよい。
【0083】
酸化防止剤を組成物に添加して、酸化ストレスにより引き起こされる損傷から内容物を保護することができる。これは、酸化に感受性があるアミノ酸を含むタンパク質に有益であり、アミノ酸がタンパク質の表面に露出している、酸化に感受性のあるアミノ酸を含むタンパク質にとって特に有益であり得る。酸化に感受性のあるアミノ酸の例には、メチオニン及び(遊離)システインなどの残基が挙げられる。
【0084】
本発明の使用に好ましい酸化防止剤は、メチオニンである。
【0085】
一実施形態によれば、本発明は、5~15mM、6~14mM、7~13mM、8~12mM、9~11mMのうちから選択される量の、好ましくは10mMの量のメチオニンなどの酸化防止剤を含む組成物に関する。
【0086】
本発明は、塩を含まない又は例えば50mM未満の低濃度の塩のみを含む、本発明の組成物に更に関する。
【0087】
本発明者らは、一般に塩がSADA複合体を不安定化し、したがって、NaCl、KClなどの塩又は類似の塩の量を本組成物中で制限することが好ましいことを理解している。
【0088】
本発明の好ましい組成物は、
a.15g/Lの量のSADA複合体、
b.20mMの量の酢酸ナトリウム、
c.275mMの量のスクロース、
d.0.2g/Lの量のポリソルベート 20、
を含み、
pHが5.5であり、SADA複合体が、優勢的に四量体形態である。
【0089】
任意に、本組成物は10mMのメチオニンを更に含む。
【0090】
優勢的に四量体形態という用語は、大多数のSADA複合体が四量体形態である、例えば、少なくとも50%w/w;少なくとも60%w/w;少なくとも70%w/w;少なくとも80%w/w;少なくとも90%w/w;又は少なくとも95%w/wが四量体形態であることを意味することが本明細書及び特許請求の範囲において意図される。
【0091】
一実施形態によれば、本発明の組成物は医薬組成物である。
【0092】
本発明のSADA複合体は、当該技術に公知の方法を使用して調製され得る。
【0093】
好ましい実施形態において、複合体の所望のアミノ酸配列をコードする核酸が準備される。選択された宿主生物中での発現を指向させるのに必要な調節エレメント、例えば、プロモーター、シグナル配列リボソーム認識部位、コザック配列、エンハンサー、ターミネーター、ポリアデニル化部位などを備えた核酸配列を含む構築物が調製され、選択された宿主生物に挿入され、選択された宿主生物を、SADA複合体の発現を導く条件下で成長させる。最後に、SADA複合体は、周知の分離及び回収技術を使用して、成長ブロスから回収される。
【0094】
本発明の製剤は、SADA複合体及び他の成分を、当該技術に公知の方法を使用して滅菌水に溶解することにより調製され得る。
【0095】
本発明は、がんを治療又は診断するための本発明の組成物の使用に更に関する。
【0096】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、SADAコンジュゲートにより認識される腫瘍抗原、例えば、GD2、CD38、B7-H3、CD20又はGPA33を発現するがんを治療又は診断するために使用され得る。
【0097】
がんは、神経芽細胞腫、黒色腫、肉腫、脳腫瘍又は癌のうちから選択され得る。
【0098】
一実施形態によれば、本発明は、前記がんが、骨肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫、紡錘細胞肉腫、脳腫瘍、小細胞肺がん、網膜芽細胞腫、HTLV-1感染T細胞白血病、及びGD2、CD38、B7-H3、CD20又はGPA33が陽性である他の腫瘍のうちから選択される、本発明の組成物の使用に関する。
【0099】
一実施形態によれば、本発明は、
a.治療又は診断の必要な患者に本発明の組成物を投与するステップ;及び
b.一定期間後に、放射性核種を含むDOTA化合物を投与するステップ、
を含む方法における、先行請求項のいずれかに記載の組成物の使用に関する。
【0100】
ステップbの期間は、典型的には48時間~72時間、例えば、50時間~65時間又は55時間~60時間から選択される。好ましくは、期間は、大多数の非結合SADA複合体が分解し、血流から除去されることを可能にするように選択される。
【0101】
本発明の方法は、ステップaの後及びステップbの前に除去剤を投与することを更に含んでもよい。
【0102】
一実施形態によれば、本発明は、放射性核種がアルファ、ベータ及び陽電子放出放射性核種のうちから選択される、本発明の組成物の使用に関する。
【0103】
一実施形態によれば、本発明は、放射性核種が、211At、51Cr、57Co、58Co、67Cu、152Eu、67Ga、111In、59Fe、212Pb、177Lu、223Ra、224Ra、186Re、188Re、75Se、99mTc、227Th、89Zr、90Y、94mTc、64Cu、68Ga、66Ga、86Y、82Rb、110mIn、209Bi、211Bi、212Bi、213Bi、210Po、211Po、212Po、214Po、215Po、216Po、218Po、211At、215At、217At、218At、221Fr、223Ra、224Ra、226Ra、225Ac、227Ac、227Th、228Th、229Th、230Th、232Th、231Pa、233U、234U、235U、236U、238U、237Np、238Pu、239Pu、240Pu、244Pu、241Am、244Cm、245Cm、248Cm、249Cf及び252Cfからなる群から選択される、本発明の使用に関する。
【0104】
本発明の使用のための放射性核種の好ましい例には、177Lu、99mTc、64Cu、90Y及び89Zrが挙げられる。
【0105】
一実施形態によれば、本発明は、本発明の組成物及びDOTA化合物を含むキットに関する。
【0106】
典型的には、キットは、使用説明書又は少なくとも情報をどこで見出すかについてのユーザーへの情報を更に含む。
【0107】
一実施形態によれば、本発明は、放射性核種を更に含む本発明のキットに関する。
【0108】
[定義]
抗体断片:抗体断片は、抗体の一部分、例えば、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどである。構造にかかわらず、抗体断片は、インタクト抗体により認識される同じ抗原に結合する。例えば、3F8モノクローナル抗体断片は、3F8により認識されるエピトープに結合する。用語「抗体断片」は、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体と同様に作用する、任意の合成又は遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体断片には、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片などの可変領域からなる単離断片、軽及び重可変領域がペプチドリンカーにより接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、及び超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。
【0109】
DOTA:DOTA(ドデカン四酢酸)は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸とも称され、C16H28N4O8・xH2Oとしても公知である式(CH2CH2NCH2CO2H)4を有する。
【0110】
DOTA金属キレート:金属イオンに結合した複合体を有するDOTAを意味する。
【0111】
DOTAの誘導体:DOTA環系を含む化合物を意味することが意図され、金属イオンをキレート化することができる。そのような化合物の例には、ベンジルDOTA及び国際公開第2019/010299号に開示されている二重特異性キレート剤が挙げられる。追加のDOTA誘導体は、国際公開第2010/099536号に開示されている。
【0112】
放射性同位体:診断及び治療に使用するための抗体にコンジュゲートされ得る放射性同位体の例には、211At、14C、51Cr、57Co、58Co、67Cu、152Eu、67Ga、3H、111In、59Fe、177Lu、32P、223Ra、224Ra、186Re、188Re、75Se、35S、99mTc、227Th、89Zr、90Y、123I、124I、125I、131I、94mTc、64Cu、68Ga、66Ga、76Br、86Y、82Rb、110mIn、13N、11C、18F及びアルファ放出粒子が挙げられるが、これらに限定されない。アルファ放出粒子の非限定例には、209Bi、211Bi、212Bi、213Bi、212Pb、210Po、211Po、212Po、214Po、215Po、216Po、218Po、211At、215At、217At、218At、218Rn、219Rn、220Rn、222Rn、226Rn、221Fr、223Ra、224Ra、226Ra、225Ac、227Ac、227Th、228Th、229Th、230Th、232Th、231Pa、233U、234U、235U、236U、238U、237Np、238Pu、239Pu、240Pu、244Pu、241Am、244Cm、245Cm、248Cm、249Cf及び252Cfが挙げられる。
【0113】
治療:本明細書に使用されるとき、用語「治療(treatment)」、「治療する(treat)」、「治療される(treated)」又は「治療している(treating)」は、特に、対象において望ましくない生理学的変化又は障害、例えば、多発性硬化症の進行を防ぐ又は遅くする(和らげる)べきである場合に、予防及び/又は治療法を指す。有益な又は所望の臨床結果には、検出可能又は検出不能にかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定した(すなわち、悪化していない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的にかかわらず)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」は、治療を受けていない場合の予想生存期間と比較して延長された生存期間を意味することもできる。治療を必要とするものには、状態又は障害を既に有しているもの、同様に、状態若しくは障害を有する傾向があるもの、又は状態若しくは障害が防止されるべきものが挙げられる。
【0114】
医薬組成物:本明細書に使用されるとき、用語「医薬組成物」は、薬物又は医薬を、それを必要とする患者に投与するための組成物を意味することが意図される。医薬組成物は、医薬品又は薬剤師野で公知の方法及び技術を使用して、例えば、ヨーロッパ薬局方第10版に記載されているような医薬品グレード成分から調製される。
【0115】
配列同一性:配列同一性という用語は、2つの核酸配列又はアミノ酸配列の関係性の測定を意味することが意図される。配列同一性は、2つの配列を整列させ、最も長いオーバーラップを見出し、オーバーラップにおけるマッチ数を計数し、マッチ数をオーバーラップ中のヌクレオチド残基又はアミノ酸残基の数で割り、配列同一性を算出することによって決定される。配列同一性は、典型的にはパーセント(%)で表される。
【0116】
配列アラインメントを生成する及び配列同一性を算出するために、様々な計算アルゴリズムが当業者に利用可能である。本明細書に使用されるとき、配列アラインメントはペアワイズ(Pairwise)アラインメントを指す。いくつかのアルゴリズムがこれを実行し、配列アラインメントプログラムClustal Omega[doi:10.1038/msb.2011.75]が挙げられる。
【0117】
本明細書に使用されるとき、配列アラインメントは、下記のアルゴリズムを使用して実行される:
アルゴリズム:Clustal Omega(1.2.4)、
(http://www.clustal.org/omega/)。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】100nM及び5nMの濃度のGD2-SADA構築物の2つの質量測光法測定の結果を示す。更なる詳細については、実施例1を参照すること。
【
図2】濃度に依存したGD2-SADA構築物の単量体、二量体及び四量体の分布を示す。更なる詳細については、実施例1を参照すること。
【
図3】GD2-SADAのパートA第I相試験の設計を示す。更なる詳細については、実施例10を参照すること。
【
図4】GD2-SADAコンジュゲートの腫瘍死滅効果に対する四量体化の効果を示す。更なる詳細については、実施例9を参照すること。
【
図5】GD2-SADA(>90%が四量体、10mg/kg、IV)(上段パネル)、GD2単量体(2.4mg/kg、IV)(中段パネル)及びGD2単量体(9.6mg/kg)(下段パネル)が与えられ、その後に
177Lu-DOTAが投与された、腫瘍移植IMR-32無胸腺ヌードマウスのSPECT画像を示す。各パネルでは、最初のマウスを
177Lu-DOTAの投与の2時間後にスキャンし、後続のマウスを
177Lu-DOTAの投与の24、48及び120時間後にそれぞれスキャンした。更なる詳細については、実施例9を参照すること。[配列] 配列番号1~6:GD2-scFvのCDR配列に等しいGD2結合抗体3F8のCDR配列 配列番号7:抗GD2 scFv 配列番号8:抗GD2 VL 配列番号9:抗GD2 VH 配列番号10:huC825 VL 配列番号11:huC825 VH 配列番号12~19:国際公開第2018/204873号に開示されているSADAドメイン 配列番号20:リンカー配列 配列番号21:IgG3スペーサー配列 配列番号22:GD2-SADA複合体 配列番号23~28:C825のCDR配列 配列番号29~34:CD38結合抗体のCDR配列 配列番号35:抗CD38 scFv 配列番号36:抗CD38 VL 配列番号37:抗CD38 VH 配列番号38:CD38-SADA複合体 配列番号39:B7-H3-SADA複合体 配列番号40:CD20-SADA複合体 配列番号41:GPA33-SADA複合体 全ての引用参考文献は、参照により組み込まれる。
【0119】
添付の図面及び実施例は、本発明を限定するのではなく、説明するために提供される。本発明の態様、実施形態、請求項及び任意の項目を組み合わせてよいことが、当業者に明らかである。
【0120】
特に記述されない限り、全てのパーセンテージは重量/重量に基づいている。特に記述されない限り、全ての測定は、標準状態(周囲温度及び圧力)の下で行われる。特に記述されない限り、試験条件は、ヨーロッパ薬局方10.0に準拠している。
【0121】
[方法及び材料]
GD2-SADA複合体:この複合体は、抗GD2 scFvドメイン、ヒト化C825ドメイン及びP53 SADAドメインを含む。この複合体は、国際公開第2018/204873号に配列番号31として開示されており、本特許出願では配列番号22として開示されている。
【0122】
CD38-SADA複合体:この複合体は、抗CD38 scFvドメイン、ヒト化C825ドメイン及びP53 SADAドメインを含む。この複合体は、(非公開デンマーク特許出願)デンマーク特許第2021/70621号に配列番号41として開示されており、本特許出願では配列番号38として開示されている。
【0123】
B7-H3-SADA複合体:この複合体は、抗B7-H3 scFvドメイン、ヒト化C825ドメイン及びP53 SADAドメインを含む。この複合体は、配列番号39に示されているアミノ酸配列を有する。
【0124】
CD20-SADA複合体:この複合体は、抗CD20 scFvドメイン、ヒト化C825ドメイン及びP53 SADAドメインを含む。この複合体は、(非公開デンマーク特許出願)デンマーク特許第2021/70621号に配列番号42として開示されており、本特許出願では配列番号40として開示されている。
【0125】
GPA33-SADA複合体:この複合体は、抗GPA33 scFvドメイン、ヒト化C825ドメイン及びP53 SADAドメインを含む。この複合体は、(非公開デンマーク特許出願)デンマーク特許第2021/70621号に配列番号61として開示されており、本特許出願では配列番号41として開示されている。
【0126】
[界面活性剤]
・ポリソルベート 20:TWEEN 20(登録商標)、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート。
・ポリソルベート 80:TWEEN 80(登録商標)、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート。ポロキサマー 188:ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)。
・Kollifor:ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)。
【実施例】
【0127】
[実施例1] GD2-SADAで測定されたオリゴマー形態の相対数に対するSADA濃度の影響
この実施例では、Refeyn質量測光器(Refeyn Ltd,Oxford UK)を、以下の設定により、製造会社の説明書に従って使用した:
・測定原理 ラベルフリー/干渉光散乱
・質量範囲 4kDa~5MDa
・測定精度 +/-2%
・単一測定質量誤差 +/-5%
・解像度(FWHM) 25kDa@66kDa、88kDa@660kDa
・濃度範囲 100pM~100nM(粒子濃度)
・感度 タンパク質<1ng
・試料体積 5~20μl
・フレームレート/標準設定) 1kHz(生)、100Hz(統合)
・視野 3×10μm(@1kHz)から10×10μm(@300Hz)まで
・波長 525nm
・画素サイズ 21nm
【0128】
GD2-SADA構築物をPBSで希釈し、サイズ分布を測定する前に、37℃で60分間インキュベートした。以下の希釈:150nM、100nM、50nM、10nM、5nM、1nM及び100pMを行い、Refeyn質量測光器を使用して質量測光に付した。
【0129】
例示的なスペクトログラムを
図1に示しており、上段が100nMのものであり、下段が5nMのものである。このスペクトログラムでは、単量体、二量体及び四量体のGD2-SADAを表す3つのピークを見ることができ、100nM濃度では、500kDaのあたりで更に広いピークを更に見ることができ、GD2-SADAのより多くの多量体を表している。高濃度(100nM)では、高い割合のGD2-SADA構築物が四量体形態で存在し、一方、低濃度では、大多数が単量体形態で存在することが更に参照され得る。
【0130】
図2は、濃度に依存するGD2-SADA構築物の分布を示す。
【0131】
[実施例2] 緩衝液及びpHの効果
GD2-SADAを、20mMの緩衝液により下記の表に示されているpHで調製した。構築物の安定性は、nanoDSFにより決定し、一方、Tmは、50%のタンパク質がアンフォールディングしている温度を示し、このことは、高い温度が高い安定性を示すことを意味する。測定を四連で行った。以下の結果を得た。
【0132】
【0133】
結果は、酢酸塩及びヒスチジンがクエン酸塩緩衝液及びコハク酸塩緩衝液より高い安定性を提供することを示した。pH値>5.5は、最高の安定性を提供することが見出された。
【0134】
[実施例3] 塩及びスクロースの効果
GD2-SADAを、20mMの緩衝液によりpH5.5及び示されたように添加された塩(塩化ナトリウム)又はスクロースで調製した。構築物の安定性は、nanoDSFにより決定し、一方、Tmは、50%のタンパク質がアンフォールディングしている温度を示し、このことは、高い温度が高い安定性を示すことを意味する。測定を四連で行った。以下の結果を得た。
【0135】
【0136】
結果は、スクロースが構築物を安定化し、一方、塩(塩化ナトリウム)が不安定化することを示した。
【0137】
[実施例4] 促進老化研究における界面活性剤の効果
それぞれ20mMの酢酸塩緩衝液及び275mMのスクロース、並びに以下を更に含む、例示的な製剤を調製した。
【0138】
【0139】
溶液を40℃で1又は2週間貯蔵し、その後、サイズ排除HPLCにより純度を分析し、インキュベーション前の回収に基づいて主ピークの純度低下及び主回収率を算出した。結果を下記の表4及び5に示す。
【0140】
【0141】
【0142】
結果は、界面活性剤が平均回収率を改善することを示した。この実施例では、より良好な回収率をポリソルベート 20/80又は高濃度のポロキサマー 188の使用によって得た。
【0143】
[実施例5] GD2-SADA製剤
GD2-SADAの例示的な製剤を、実施例1~4の結論を利用して作製した。更にメチオニンを酸化防止剤として添加して、M199及びポリソルベートを酸化から保護した。
【0144】
【0145】
[実施例6] GD2-SADA製剤の適合性
臨床投与の際の製剤の適合性を実証するため、使用中安定性試験を実施して、投与時間を含む4時間にわたる、室温での実施例6のGD2-SADA製剤の好適な生成物回収率及び安定性を実証した。
【0146】
この試験は、0.05mg/mL~10mg/mLの範囲の濃度を網羅した。GD2-SADAの希釈は、生理食塩水(NaCl 0.9%)で行った。GD2-SADA希釈物を含有する50mLのIVバッグを、注入セット及び注入フィルターに接続した。試料は、GD2-SADA希釈物を50mLのIVバッグから注入セット及びフィルターを通過させて採取した。
【0147】
純度、力価、物理化学及び粒子の結果は、全て予想範囲内であり、T=0時間とT=4時間で同等であった。
【0148】
【0149】
タンパク質回収率は、試験した濃度では99及び106%であった。回収率は、観察された濃度と予想された理論的濃度とのパーセンテージの差として算出した。
【0150】
最悪の条件下で注入材料に表面付着する潜在的な効果を査定するため、最低用量濃度(0.05mg/mL)を精密ピペットの使用により調製して、調製手順による差異を最小限にし、この差異は、全体積が注入される、臨床で投与される用量では通常影響することはない。この実験は、タンパク質回収率の106%を確認し、投与材料へのGD2-SADA表面付着が無視できるものであることを示している。
【0151】
結論として、使用された製剤は、0.05mg/mL~10mg/mLの試験濃度範囲内、並びにGD2-SADAの室温で4時間までの貯蔵及び取扱中安定していると評価された。
【0152】
[実施例7] 貯蔵寿命を支持する安定性
支持的貯蔵寿命試験の安定性結果を、長期安定性試験(5±3℃)について表8及び促進条件(25±2℃)ついて表9に要約する。
【0153】
長期安定性試験は、GD2-SADAが、20mMの酢酸ナトリウム緩衝液、275mMのスクロース及び0.2g/Lのポリソルベート 20を5.5のpHで含有する製剤中において2~8℃で少なくとも9か月間にわたって四量体形態(>94%)で安定していることを示す。加えて、促進安定性データは、GD2-SADAが25℃で少なくとも3か月間にわたって四量体形態(>94%)で安定していることを示す。
【0154】
加えて、安定性データは、GD2-SADAが力価、純度及び不純物に関して本製剤中において安定していることを示す。
【0155】
【0156】
【0157】
[実施例8] 追加のSADAコンジュゲートの熱安定性
試料溶液を卓上遠心分離機により、20,000×g、4℃で1時間遠心分離した。上清を、貯蔵緩衝液(150mMのNaClを伴う及び伴わないヒスチジン及び酢酸塩)に緩衝液交換し、試料を更に希釈して10μMにした。スクロースを、標的スクロース濃度により全ての条件でスパイクした。各試料をnanoDSF(タンパク質アンフォールディングTmには350/330nmの比)により重複して測定した。5個の分子をこの試験に含めた。これらの分子は、同じDOTA結合及びP53配列を有するが、異なる抗原結合部位、例えば、GD2、CD38、B7H3、CD20及びGPA33を有する。
【0158】
表10及び11に示されているように、150mMのNaClは、全ての調査されたSADA分子の熱安定性に負の影響を有し、緩衝液群(pH5.5の酢酸塩及びpH6.0のヒスチジン)と比較して減少したTm値によって示されている。加えて、275mMのスクロースは、全ての調査されたSADA分子の熱安定性に正の影響を有し、緩衝液群(pH5.5の酢酸塩及びpH6.0のヒスチジン)と比較して増加したTm値によって示されている。この塩不安定化及び糖安定化効果は、抗原結合部位が異なっているにもかかわらず、全ての調査されたSADA分子において普遍的である。したがって、本発明者らは、塩不安定化及び糖安定化効果が、DOTA結合及びP53部分により主に導かれると結論づける。
【0159】
【0160】
【0161】
[実施例9] GD2-SADA四量体は、腫瘍死滅効果と同様に、より良いPKプロファイル、したがってより良い腫瘍最新情報を有する。
【0162】
四量体の役割をより良く評価するため、本発明者らは、GD2-SADA薬物候補を、SADAドメイン全体が排除されて、およそ54kDaの最終タンパク質サイズをもたらした、(P53-/-)GD2-SADAと称される真性単量体型と比較した。
【0163】
GD2-SADA及び(P53-/-)GD2-SADAを、血漿薬物動態及び抗腫瘍有効性に関して比較した。要約すると、結果は、GD2-SADA四量体が、単量体形態のGD2-SADA、(P53-/-)GD2-SADAと比較して、血漿曝露プロファイルを変更していること(表12)及びGD2-SADAの治療有効性を改善していること(
図4)を実証している。これは、(P53-/-)GD2-SADA単量体と比較してGD2-SADAの実質的に高い腫瘍結合及び持続性を実証した、SPECT/CT画像化(
図5)によっても支持された。したがって、本発明で主張される組成物によりGD2-SADAを四量体形態に保つことは重要である。
【0164】
【0165】
[実施例10] GD2-SADAの第I相試験:小細胞肺がん、肉腫及び悪性黒色腫を含む、GD2を発現することが公知の再発性又は難治性の転移性固形腫瘍を有する患者における177Lu-DOTA薬物複合体。
【0166】
試験は、3つの別個のパートに分けられる:
A.安全な腫瘍標的化タンパク質構成成分(GD2-SADA)用量を最適化し、GD2-SADAと177Lu-DOTAの投与間の投与間隔を最適化するGD2-SADA用量漸進。
【0167】
B.治療法における最適で安全なペイロード投与を確立するための177Lu-DOTAの用量漸進。
【0168】
C.反復投与後の累積毒性シグナル及び安全性プロファイルの査定のため、並びに推奨第2相用量の決定のための反復投与。
【0169】
患者集団は、小細胞肺がん(SCLC)、肉腫及び悪性黒色腫を含む、GD2を発現することが公知の再発性又は難治性の転移性固形腫瘍を有する成人及び青少年患者からなる。
【0170】
試験の目的は、安全な投与スケジュールを確立することである。
【0171】
パートAの試験設計を
図3及び下記の表13に参照され得る。
【0172】
【0173】
コホート1:患者には、1日目にGD2-SADAの静脈内注入が投与され、続いて6日目に177Lu-DOTA画像化用量の静脈内注入が投与される。15日目に、GD2-SADAの反復用量が投与され、続いて20日目に177Lu-DOTAの治療用量が投与される。
【0174】
コホート2:患者には、1日目にGD2-SADAの静脈内注入が投与され、続いて3日目に177Lu-DOTA画像化用量の静脈内注入が投与される。15日目に、GD2-SADAの反復用量が投与され、続いて17日目に177Lu-DOTAの治療用量が投与される。
【0175】
コホート3~5:患者には、コホート1又はコホート2のいずれかと同じ日に、最初の2つのコホートのデータを分析した後に選択されたGD2-SADAと177Lu-DOTAとの投与間隔に応じて投与される。
【0176】
腫瘍吸収用量及び全身を含むパートA線量測定において、用量を吸収した選択臓器及び血液の線量測定を査定する。
【0177】
パートAは、6週間のDLT観察期間及び第1の治療の24週間後まで続く追跡観察期間からなる。
【0178】
GD2-SADAと177Lu-DOTAとの間の48時間間隔がパートAで選択されることを想定して、患者には、1日目にGD2-SADAの静脈内注入が投与され、続いて3日目に177Lu-DOTAの静脈内注入が投与される。15日目に、GD2-SADAの反復用量が投与され、続いて17日目に177Lu-DOTAの治療用量が投与される。
【0179】
43日目(GD2-SADA)及び45日目(177Lu-DOTA)に、第2の治療サイクルが投与される。
【0180】
パートBの試験設計を下記の表14に参照され得る。
【0181】
【0182】
パートBは、6週間のDLT観察期間及び第1の治療の24週間後まで続く追跡観察期間からなる。
【0183】
パートCの治療スケジュールは、GD2-SADAと177Lu-DOTAとの間の48時間間隔がパートAで選択されることを想定する。患者には、1日目にGD2-SADAの静脈内注入が投与され、続いて3日目に177Lu-DOTA画像化用量の静脈内注入が投与される。
【0184】
15日目に、GD2-SADAの反復用量が投与され、続いて17日目に177Lu-DOTAの治療用量が投与される。
【0185】
第1の治療サイクル(画像化パート、続いて治療パート)は、6週間の持続期間を有することが計画され、後続サイクル(サイクル2~5)は、4週間(又は被った放射線の毒性から回復する場合、最大遅延の8週間がこのプロトコール内で許容される)が計画され、各サイクルで1日目にGD2-SADAが投与され、3日目に177Lu-DOTAが投与される。
【0186】
治療スケジュールについては表15を参照すること。
【0187】
【0188】
パートCは、6週間の治療サイクル(サイクル1)、続いてそれぞれ4週間の持続期間の4つの治療サイクル(サイクル2~5)まで及び第1の治療の52週間後まで続く追跡観察期間からなる。
【0189】
鎮痛薬を含む前投薬は必須であり、抗GD2 IgGに基づいたモノクローナル抗体による経験に基づいて導入される。投与スキームを下記の表16に参照され得る。
【0190】
【0191】
[配列]
【0192】
【配列表】
【国際調査報告】