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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】安定不整脈における分画信号の検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/349 20210101AFI20241219BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20241219BHJP
   A61B 5/343 20210101ALI20241219BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
A61B5/349
A61B5/367
A61B5/343
A61B5/33 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534727
(86)(22)【出願日】2022-11-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 IB2022061185
(87)【国際公開番号】W WO2023105328
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】17/548,558
(32)【優先日】2021-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ラブナ・エリヤフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤノヴィッチ・ニール
(72)【発明者】
【氏名】エティン・ザイト・ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】ザイデス・レオニード
(72)【発明者】
【氏名】セゲブ・メイタル
(72)【発明者】
【氏名】ナカル・エラド
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127CC01
4C127FF02
4C127GG09
4C127GG16
4C127KK03
4C127KK05
4C127LL08
(57)【要約】
一例では、方法は、心臓内の組織位置で電極によって感知される心臓信号を受信することを含む。心臓信号において分画が識別される。組織位置で識別された分画は、心臓信号の第1の心周期と第2の心周期との間で比較される。比較に基づいて、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性が推定される。推定された可能性に基づいて、組織位置は、安定不整脈を引き起こしている可能性が高いものとしてユーザに示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
心臓信号を記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサであって、
心臓内の組織位置において電極によって感知された心臓信号を受信し、
前記心臓信号内の分画を識別し、
前記心臓信号の第1の心周期と第2の心周期との間で、前記組織位置において識別された前記分画を比較し、
前記比較に基づいて、前記組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性を推定し、
前記推定された可能性に基づいて、前記組織位置を、前記安定不整脈を引き起こしている可能性が高いものとしてユーザに示すように構成されている、プロセッサと、を含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記組織位置が前記安定不整脈を引き起こしている前記可能性のスコアを前記ユーザに示すことによって、前記組織位置を示すように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記組織位置のアブレーションを推奨することによって前記組織位置を示すように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、双極電位図を受信することによって前記心臓信号を受信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記心臓信号のベースラインノイズを推定することによって前記分画を識別するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記EGM信号のベースラインノイズとピークトゥピーク値との間の比に従って非線形エネルギー演算子(NLEO)のための前記閾値を動的に調整することによって前記分画を識別するように構成され、前記ベースラインノイズは、前記信号の絶対値の摺動最大ウィンドウの最小値によって与えられる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記心周期の少なくとも最小の所定部分がいかなる分画も含まない前記心臓信号の期間を比較することによって、前記分画を識別するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、ある時間間隔にわたって、前記心臓信号のピークトゥピーク電圧と前記時間間隔の持続時間との間の比を計算し、前記比を使用して、前記分画をノイズから区別することによって、前記分画を識別するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、ロジスティック回帰ベースの分類器を適用することによって、前記可能性を推定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記分画のうちの少なくとも1つの時間オンセット及び時間オフセットを調整することによって、前記分画を比較するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、拡張された関心ウィンドウ(WOI)を使用して心周期内で開始する全ての分画を捕捉することによって、所与の心周期における前記分画を識別するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、各分画内の前記心臓信号に生じる0交差の数に基づいて前記可能性を推定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、各分画内のローパスフィルタリングされた心臓信号において発生する局所的極値の数に基づいて前記可能性を推定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、分画ウィンドウを三角形として表すことによって前記分画を比較するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記組織位置が前記安定不整脈を引き起こしている前記可能性のスコアが重ねられた電気生理学的(EP)マップを生成して前記ユーザに表示することによって、前記組織位置を示すように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
閾値スコアを調整するために前記ユーザが使用することができる、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)上のスケールを含み、スコアがその閾値を上回る組織位置のみが前記EPマップ上で観察される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
方法であって、
心臓内の組織位置において電極によって感知された心臓信号を受信することと、
前記心臓信号における分画を識別することと、
前記心臓信号の第1の心周期と第2の心周期との間で、前記組織位置において識別された前記分画を比較することと、
前記比較に基づいて、前記組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性を推定することと、
前記推定された可能性に基づいて、前記組織位置を、前記安定不整脈を引き起こしている可能性が高いものとしてユーザに示すことと、を含む、方法。
【請求項18】
前記組織位置を示すことは、前記組織位置が前記安定不整脈を引き起こしている前記可能性のスコアを前記ユーザに示すことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組織位置を示すことは、前記組織位置のアブレーションを推奨することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記心臓信号を受信することが、双極電位図を受信することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記分画を識別することは、前記心臓信号のベースラインノイズを推定することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記分画を識別することは、前記EGM信号のベースラインノイズとピークトゥピーク値との間の比に従って非線形エネルギー演算子(NLEO)のための前記閾値を動的に調整することを含み、前記ベースラインノイズは、前記信号の絶対値の摺動最大ウィンドウの最小値によって与えられる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記分画を識別することは、前記心周期の少なくとも最小の所定部分がいかなる分画も含まない前記心臓信号の期間を比較することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記分画を識別することは、ある時間間隔にわたって、前記心臓信号のピークトゥピーク電圧と前記時間間隔の持続時間との間の比を計算することと、前記比を使用して前記分画をノイズから区別することとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記可能性を推定することは、ロジスティック回帰ベースの分類器を適用することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記分画を比較することが、前記分画のうちの少なくとも1つの時間オンセット及び時間オフセットを調整することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
所与の心周期における前記分画を識別することは、拡張された関心ウィンドウ(WOI)を使用して心周期内で開始する全ての分画を捕捉することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記可能性を推定することは、各分画内の前記心臓信号において生じる0交差の数に基づいて実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記可能性を推定することは、各分画内のローパスフィルタリングされた心臓信号において発生する局所的極値の数に基づいて実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記分画を比較することは、分画ウィンドウを三角形として表すことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記組織位置を示すことは、前記組織位置が前記安定不整脈を引き起こしている前記可能性のスコアが重ねられた電気生理学的(EP)マップを生成して前記ユーザに表示することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項32】
グラフィカルユーザインターフェース(GUI)上のスケールを使用して、閾値スコアを調整することを含み、スコアがその閾値を上回る組織位置のみが前記EPマップ上に表示される、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気生理学的(EP)信号の分析に関し、具体的には、安定不整脈における分画電位図を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不整脈を特徴付けるために複合体分画心房電位図(CFAE)を分離することは、以前に文献において示唆された。例えば、会議論文「A new approach for automated location of active segments in intracardiac electrograms」World Congress on Medical Physics and Biomedical Engineering,September 7-12,2009,Munich,Germany,Nguyen M.P.et al.には、電気生理学的活動に対応する信号複合体を位置特定する方法が記載されている。開示される方法は、非線形エネルギー演算子(NLEO)を適用し、続いてガウス平滑化を時間離散心房EGM信号に適用することによって、CFAEを識別する。本方法は、このようにして、特に心房細動(AFib)の維持に関与する複合体分画心房電位図(CFAE)を用いて心房組織内の領域を識別することができる。これらの領域は、AFibを除去し、正常なリズムを回復するためのアブレーションの理想的な標的部位である。本方法は、AFibアブレーションのための客観的戦略の開発を支援するために、信号処理アルゴリズムを用いたCFAEの自動識別を導入する。このアルゴリズムの背後にある考え方は、パントンプキンスQRS検出アルゴリズムの考え方に基づいている。しかしながら、この手法では、抽出される信号特徴は信号エネルギーであり、したがって、アルゴリズムは周波数の情報だけでなく振幅の情報も考慮に入れる。適応閾値処理により、アルゴリズムは信号ダイナミクスの変化を管理することができる。結果は専門家によって検証され、アルゴリズムはロバストな性能を示す。
【0003】
別の例として、Frontera Aらは、「Electrogram signature of specific activation patterns:Analysis of atrial tachycardias at high-density endocardial mapping」、Heart Rhythm.2018 Jan; 15(1):図28~37は、心房頻拍中に高密度心房マッピングを受けた25人の連続患者からの結果を説明している。双極EGMは、64極バスケットカテーテルで記録した。以下の心房現象が識別された:遅い伝導(SC)領域、ブロック線(LB)、波面衝突(WFC)、ピボット部位(PS)、及びギャップ。これらの所定の領域で収集されたEGMを、振幅、持続時間、及び形態に関して分析した。心房性頻拍症における特定のEGM特性は、電気生理学的機構に再現可能に関連付けられ得ることが見出された。高電圧及び短期間のEGMは、アブレーションのための重要な部位を形成する可能性が低い衝突部位及びPSに関連する。長時間低電圧EGMはSCに関連付けられる。しかしながら、全てのSC領域が臨界回路内にあるわけではなく、EGM特性のみによる識別はアブレーションを誘導することができない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
図1】本開示の一例による、カテーテルベースの電気生理学的(EP)マッピングシステムの概略描画図である。
図2】本開示の一例による、安定不整脈における分画信号の検出のための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
図3】本開示の一例による、図1のシステムを使用して取得された電位図の例示的グラフを示し、電位図は、図2に説明されるステップにおいて、拡張された関心ウィンドウ(WOI)と重畳される。
図4】本開示の一例による、図1のシステムを使用して取得された電位図、及び図2で説明したNLEO及びガウシアンフィルタステップを適用した後の信号の例示的なグラフである。
図5】本開示の一例による、図2に記載されたステップにおいて見出されたそれぞれのウィンドウを有する2つの分画と、ウィンドウの交差領域とを概略的に示すグラフである。
図6】本開示の一例による、図2に記載される分画持続時間の微調整ステップを概略的に示すグラフである。
図7A】本開示の一例による、2つのタイプの信号の図であり、上の線は分画の概略グラフであり、下の線はノイズの概略グラフである。
図7B】本開示の一例による、2つのタイプの信号の図であり、上の線は分画の概略グラフであり、下の線はノイズの概略グラフである。
図8】本開示の一例による、安定不整脈を引き起こす可能性がある組織位置及び分画の大きさを示す心室のEPマップの概略図ボリュームレンダリングである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
概要
心房粗動又は安定心室頻拍(VT)等の安定不整脈は、多くの場合、有意な血行力学的障害に関連しない持続性不整脈として定義される。しかしながら、安定不整脈は、生命を脅かす状態に容易に悪化する可能性があり、したがって、診断されると、安定不整脈を引き起こす不整脈惹起性組織位置をアブレーションする選択肢を含む迅速な治療を必要とする。
【0006】
患者の安定不整脈を特徴付けるために、カテーテルベースの電気生理学的(EP)マッピングシステムが使用されて、心室のEPマップなど、患者の心臓の少なくとも一部のEPマップが生成され得る。典型的なカテーテルベースのEPマッピング処置では、1つ以上の感知電極を備えるカテーテルの遠位端部が心腔に挿入されて、単極及び/又は双極の電位図(electrograms、EGM)などのEP信号を感知する。システムを動作させている医師が遠位端を心室の内部に移動させるときに、EPマッピングシステムは、心室の内側表面上の様々な位置におけるEP信号、並びに遠位端のそれぞれの位置を取得する。これらの取得された信号に基づいて、マッピングシステムのプロセッサは、心室の解剖学的マップ上に重ねられた局所EP組織特性(例えば、活性化間の局所サイクル時間)を含む必要なEPマップを生成する。
【0007】
安定不整脈(例えば、安定した頻脈)をマッピングするとき、医師は、アブレーションするために、異常なEP特性を有する心臓組織の表面上の特定の領域、すなわち、1つ以上の組織峡部を探す。典型的には、峡部は、隣接する瘢痕間又は天然の構造的障壁と瘢痕との間のEP伝導領域であり、それは、そのような領域が安定不整脈を容易にするからである。峡部は、分画活性化を有するEP信号によって特徴付けられる。
【0008】
安定不整脈を識別し特徴付けるための現在のアルゴリズムを使用する現在のシステムは、医師がアブレーションする領域への良好なポインタを提供せず、したがって、医師は、典型的には、アブレーションの前に候補組織位置の時間のかかるチェックを行わなければならない。
【0009】
分画された電位図(例えば、EGMの非常に急速な偏向のバーストなどの不規則なパターンを含む)は、2つの主要なタイプに分類することができる。いくつかの分画電位図は、特徴的なサイクル時間を示さない。他の分画電位図は、信号分画のエピソード間のほぼ特徴的なサイクル時間を示す。
【0010】
本明細書に記載される本開示の例は、左非定型心房粗動などの安定不整脈の特徴であるほぼ周期的なサイクル時間を示す心臓組織位置をマッピングするための改善された方法及びシステムを提供する。開示される技法は、反復可能な分画信号を示す電位図を識別し、これらの電位図を使用して、安定不整脈を引き起こしている可能性が高い心臓組織位置をマッピングする。
【0011】
開示された技術を用いて、医師には、安定不整脈を引き起こす可能性が高い組織位置が重ねられたEPマップが提示される。可能性尺度は、医師によって構成可能であってもよい。開示された提示が与えられると、医師は、どの心臓組織位置が安定不整脈を示すか、及びそこで組織をアブレーションするかどうかを決定するために、マップを容易かつ対話的に評価することができる。
【0012】
したがって、本明細書で説明される本開示のいくつかの例は、再発性分画を示す電位図を識別及び分析することによって、安定不整脈を引き起こす心臓組織領域を自動的に識別及び分析する方法及びシステムを提供する。
【0013】
いくつかの例では、プロセッサは、心内電位図(EGM)及び/又は体表面心電図(ECG)信号を分析して、不整脈周期長を計算し、次いで、EGMにおいて拍動ごとに反復可能な分画活性化を識別することができる。これらの活性化は正確に反復可能ではないが、開示されるアルゴリズムが、現在の心拍(すなわち、心周期)を(同じマッピングセッション中に所与の数の心拍前に発生し得る)いくつかの以前の心拍と比較することによって、そのような反復可能な分画を識別するのに十分に反復可能である。
【0014】
反復可能な分画を識別することに加えて、アルゴリズムは、例えば、(時間における)それらの持続時間ΔT及び心周期におけるそれらの時間的位置Tを見出すことによって、分画を特徴付ける。これらの量は両方とも、峡部の位置特定に関連する。分画が長ければ長いほど、分画が不整脈惹起性組織を示す可能性が高くなる。位置に関して、分画発生のタイミングTが心周期の拡張期中央領域で発生する場合、それはまた、不整脈惹起性組織を高度に示す可能性が高い。
【0015】
いくつかの例では、開示されるアルゴリズムは、非線形エネルギー演算子(NLEO)を入力EP信号に適用することに依存する。NLEOは、分画を増幅し、NLEO結果にガウスフィルタを適用することは、分画信号に平滑化エンベロープ効果を与える。
【0016】
開示されたアルゴリズムは、以下の主なステップを含む。
心臓内の組織位置において電極によって感知された心臓信号を受信することと、
(ii)(例えば、信号の心拍にわたる)心臓信号内の分画を識別することと、
(iii)分画を、以前の心周期にわたって(例えば、第1の心周期と第2の心周期との間で)見出された分画と比較することと、
(iv)比較に基づいて、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性を推定することと(例えば、安定不整脈を示す信号内の分画の可能性を推定することによって)、並びに
(v)推定された可能性に基づいて、組織位置を、安定不整脈を引き起こす可能性が高いものとして(例えば、スコアを用いて)ユーザに示すことと、を含む。最小スコアは、その位置が安定不整脈を引き起こす可能性が低いことを意味し、最大スコアは、その位置が安定不整脈を引き起こす可能性が非常に高いことを意味する。
【0017】
更なるアルゴリズムステップは、以下を含んでもよい。
・EP信号のベースラインノイズを計算し、ベースラインノイズに応じてNLEO計算の閾値を動的に調整すること。
・NLEO計算の結果を改善するためにNLEO計算の適用前にEP信号をキャッピングすること。
・NLEOと共にEP信号振幅を使用することによって分画を見つけること。
・分画のタイミングにおけるシフトの識別を容易にするために、分画ウィンドウを0と1との間の三角形として表す。
・拍動間の類似性の迅速な尺度を得るために、分画ウィンドウを-1と1との間の長方形として表す(CPU計算を高速化する)。
・拍動間の最小類似性を必要とする。
・現在及び以前の拍動のピークトゥピークがサニティテストと同様であることを必要とする。
・「無音率」を、分画なしの持続時間を総サイクル時間で割ったものとして測定すること。この比は、ロジスティック回帰などの機械学習分類器への入力として使用されてもよく、又は反復可能な分画を無関係な不規則な分画から区別するためのサニティテストの一部として使用されてもよい。例えば、分画間にほとんど無音がない非常に長い分画は、ノイズの指標である。
・分類器、例えばロジスティック回帰分類器における特徴として以下のものを使用する:
候補分画の持続時間。
期間当たりの候補分画の数。
持続時間当たりの0交差の数。
波面候補の数の対数(注釈によってカウントされる)。波面注釈候補の計算は、米国特許第9,380,953号及び米国特許第11,071,489号に教示されている。
最大限界によってキャップされる得る無音比。
ピークトゥピーク信号を持続時間で除算したものとして計算される、候補分画の「アスペクト比」。より高いアスペクト比は、真の分画(ノイズではない)である可能性がより高いことを意味する。
・ユーザがスライダを動かしている間に、分類器の閾値を動的に選択し、スライダの状態に従ってマップ上の分画領域をリアルタイムで強調表示するためのユーザインターフェース。
・ユーザが感度と特異性の適切なバランスを直感的に選択できるように、リアルタイムで(ユーザが閾値スコアリングスライダを移動させながら)分画領域を表示する。
【0018】
各所与のEP信号に対して、アルゴリズムは分画スコアを返す。ユーザは、感度と特異性との間のバランスをとるために分画スコアの閾値を設定する。典型的な分画スコアは、時間フレーム内の信号における分画成分の可能性を予測する0~10の数であり得る。0は分画が起こる可能性が低いことを意味し、10は分画が起こる可能性が高いことを意味する。スコアは、峡部組織をどこで探すかについてEPマッピングを行う医師を誘導することができる。
【0019】
0~10の分画スコアを使用する根拠は、統計的確率との混乱を防ぐためである。同様に、0~100の分画スコアを使用することができる。しかし、ユーザは100を分画の100%の確率として理解する可能性がある。したがって、本発明者らは、0~10の分画スコアがより良好な選択であると考える。10の分画スコアは、分画の確率が非常に高いことを意味するが、依然として100%の確率を意味しない。
【0020】
反復可能な分画が関連する安定不整脈を伴う心臓状態としては、非定型粗動、限局性心房性頻拍症(AT)、及び虚血性VTが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、開示された方法を適用することによって、多数の安定不整脈を引き起こす組織位置をより正確に特定することができ、アブレーションによる安定不整脈のより安全かつより効果的な治療につながる。
【0021】
システムの説明
図1は、本開示の一例による、カテーテルベースの電気生理学的(EP)マッピングシステム21の概略的な描画図である。図1は、患者25の心臓23の電気解剖学的マッピングを実行するために電気解剖学的マッピングカテーテル29を使用している医師27を図示している。マッピングカテーテル29は、その遠位端に、1つ以上のアーム20を含み、アーム20のそれぞれは、隣接する電極22a及び22bを含む双極電極22に連結されている。
【0022】
マッピング処置中、電極22の位置は、それらが患者の心臓23内にある間に追跡される。その目的のために、電気信号が、電極22と外部電極24との間を通される。例えば、3つの外部電極24が患者の胸に連結されてもよく、別の3つの外部電極が患者の背中に連結されてもよい。(例示しやすいように、1つの外部電極しか図1に示されていない)。
【0023】
信号に基づいて、及び患者の身体上の電極24の既知の場所を考慮して、プロセッサ28は、患者の心臓内の各電極22の推定される位置を計算する。双極電位図トレースなどのそれぞれの電気生理学的データは、電極22を使用することによって心臓23の組織から追加的に取得される。こうして、プロセッサは、双極EP信号などの電極22から受信された任意の所与の信号を、信号が取得された位置と関連付け得る。プロセッサ28は、電気インターフェース35を介して結果的に得られた信号を受信し、これらの信号に含有される情報を使用して、電気生理学的マップ31及びEGM又はECGトレース40を構築し、これらをディスプレイ26上に提示する。EGM又はECGトレース40はまた、開示されたアルゴリズムと共に使用するためにメモリ33に記憶される。マップ31を生成することができる一追跡システム及び方法は、Biosense-Webster Inc.によって製造されたCARTO(商標)システムなどの様々胃な医療用途に実装された高度電流位置特定(ACL)システムであり、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号に詳細に記載されている。
【0024】
プロセッサ28は、典型的には、本明細書に記載されている機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアと共に汎用コンピュータを備える。ソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、或いは、代替的又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、又は電子メモリなどの非一時的な有形媒体に提供及び/又は格納されてもよい。特に、プロセッサ28は、図2に含まれている本明細書に開示される専用のアルゴリズムを実行し、これは、以下で更に記載のように、プロセッサ28が本開示のステップを行うことを可能にする。
【0025】
図1に示す例示的な図示は、単に概念を明確にするために選んだものである。Lasso(登録商標)カテーテル(Biosense Webster Inc.,Irvine,Californiaにより製造されている)などの、他のタイプの電気生理学的感知カテーテル幾何形状が採用されてもよい。追加的に、接触センサは、マッピングカテーテル29の遠位端に装着され、組織との電極接触の物理的品質を示すデータを伝送してもよい。一例では、1つ以上の電極22の測定値は、その物理的接触品質が悪いと示される場合に廃棄され得るが、他の電極の測定値は、その接触品質が十分であると示される場合に有効と見なされ得る。
【0026】
安定不整脈における分画信号の検出
図2は、本開示の一例による、安定不整脈における分画信号の検出のための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。アルゴリズムは、提示された例によれば、心臓信号受信ステップ200において、プロセッサ28などのプロセッサが、(i)カテーテル29から双極信号(例えば、波形)、及び(ii)それぞれの単極信号を受信することから始まるプロセスを実行する。図示の例では、プロセッサ28は、双極EGMの単極成分を受信する。電力線干渉除去後、両方の信号が受信され、ミリボルト単位で1 kHzでサンプリングされる。
【0027】
次に、注釈付けステップ201において、プロセッサ28は、双極EGM及びそれぞれの前述の単極EGMの活性化に注釈を付ける。
【0028】
注釈を使用して、プロセッサ28は、サイクル時間推定ステップ202において、現在の基準注釈と以前の基準注釈との間の時間差として、ミリ秒単位で、心周期時間(サイクル長(CL)とも呼ばれる)を計算する。
【0029】
次いで、プロセッサは、WOIの適用ステップ203において、計算されたサイクル長(典型的には、推定されたCLの120%)より大きい持続時間ウィンドウである拡張された関心ウィンドウ(WOI)を双極信号に適用する。ステップ201~203は、以下の図3に見られる双極波形301等の分析のための双極波形の分離を可能にする。特に、拡張されたWOIを使用することは、分析されるべき心周期内で開始する信号の全ての分画を完全に捕捉することを確実にする。拡張WOIを使用する根拠は、臨床的に関連する拡張中期分画が、2つの連続するWOIの中間に存在し得ることである。すなわち、分画は、1つのWOIの終了前に開始し、次の連続するWOIの開始後に継続する。拡張されたWOIは、分画が公称WOIの後に終了することを可能にすることによって、これらの分画を検出するのを助ける。
【0030】
次に、信号フィルタリングステップ204において、プロセッサ28は、ハイパスフィルタ及びローパスフィルタ(HPF及びLPF)を双極信号に適用して、信号を更にクリーンにする。
【0031】
次に、信号キャッピングステップ205において、プロセッサ28は、双極信号にキャッピングを適用する。このステップでは、双極EGMの大きさは、下限キャップ値と上限キャップ値との間でキャップされる。キャッピングプロセスの入力は、HPF及びLPF後の信号であり、出力は、キャップされたEGMである。一例では、上位キャップ値は、拡張WOI中の信号のN番目(例えば、N=10)の最大サンプルとして計算され、下位キャップ値は、拡張WOI中の信号のM番目(例えば、M=10)の最低サンプルとして計算される。N=M=10番目に大きいサンプル及び最も小さいサンプルを使用する根拠は、EGMピークが通常10~20ms幅であることである。したがって、信号内に活性化(例えば、遠距離場活性化効果)が存在する場合、20個のサンプル(10個の最大サンプル及び10個の最小サンプル)を除外することは、さもなければ後続のNLEO分析を歪めるであろう大きな無関係な活性化を大まかに除外する。
【0032】
ベースライン計算ステップ206において、プロセッサ28は、WOIにおけるベースラインノイズを、信号の絶対値の「摺動最大ウィンドウ」の最小値として定義する。摺動最大ウィンドウの幅は、心周期長のある一定の比率(例えば、20%)であるが、ある所与の持続時間(例えば、35ms)よりも決して狭くない。35msの下限は、サイクル長が175msより大きい場合、何の影響も有さず、これは、サイクル長が175msより大きいとき、ウィンドウサイズが35msより大きいので、342心房拍動/分を意味する。最小の最大絶対値を有するベースラインノイズセグメント305を見つけるためのこのスキームの一例が図3に示されている。典型的には、同じプロセスが2つの前の心周期に対して繰り返され、最後の3つの心周期の中で最大のベースラインノイズが信号のベースラインノイズと見なされる。
【0033】
20%のセグメント長の根拠は、最後の3つの拍動のうちの1つにおいて心室遠距離場の干渉が存在すると仮定した場合であっても、また非常に長い分画が存在する場合であっても、(いかなる分画も含まない心周期の少なくとも最小の所定部分に基づいて)WOI内のどこかで心周期時間の少なくとも20%の間、連続的な無音が依然として存在するはずであるということである。したがって、最もサイレントな20%セグメントにおける信号の最大絶対値は、ベースラインノイズと見なされる。しかしながら、サイクル長の80%より大きい分画が存在する可能性があり、これらの場合、ベースラインノイズは過大評価される可能性がある。ベースラインノイズは、分画の数及びNLEO閾値定数のみの計算に使用される。開示されたロジスティック回帰分類器は複数の特徴を使用するので、過大評価されたベースラインノイズは、分画が検出される可能性を低減するが、ベースラインノイズが過大評価された場合であっても、分画は依然として検出され得る。
【0034】
次に、NLEO閾値計算ステップ208において、プロセッサ28は、ベースラインノイズ及びEGMでキャップされた振幅を使用して、NLEO結果に適用されることになる2つの閾値を計算して、更なる分析に有効な分画が行われるウィンドウを見つける。以下でKと呼ばれる第1の閾値は、ガウスフィルタリングされたNLEO結果の結果に適用される摺動標準偏差演算子と共に使用される。この第1の閾値処理ステップにおいて、摺動標準偏差の結果は、閾値を得るために定数Kで乗算される。K値は、分画の偽陽性検出を最小化するために、開示された方法において動的に調整される。開示されたアルゴリズムでは、プロセッサは、EGM信号のベースラインノイズとピークトゥピーク値との間の比に従ってK値を動的に調整する。このようにして、Kは通常、クリーンな信号に対する0.15とノイズの多い信号に対する0.35との間で変化する。
【0035】
第2の閾値は、ガウシアンフィルタリングされたNLEO結果の振幅に適用される。NLEOは、分画の予測子として単なる振幅よりも優れているが、ノイズが分画として検出されるのを防止するために、振幅を依然として考慮に入れる必要がある。この目的のために、サンプルは、その振幅が、典型的には、取得ハードウェアの分解能である数μVよりも大きいか、又はベースラインノイズの2倍よりも大きい(いずれか大きい方)場合にのみ、分画成分の一部であると考えられる。
【0036】
NLEOを適用するステップ210において、プロセッサ28は、NLEOを双極EGMに適用し、その後、平滑化ガウスフィルタをNLEOの出力に適用し、結果として得られる波形の一例を図4に示す。図4に見られるように、ステップ210の結果(例えば、波形404)は、双極EGM 402における分画の可視性を増幅する。
【0037】
次に、分画ウィンドウを見つけるステップ212において、プロセッサ28は、図5のウィンドウ501などの分画ウィンドウを見つける。分画ウィンドウは、変調パターンにおいて長方形であってもよく、垂直軸における0は分画がないことを意味し、垂直軸における1はそのときに分画があることを意味する。次のステップにおいて、前の心拍及び現在の心拍における分画ウィンドウの中心を整列させることをより容易にするために、分画ウィンドウは二等辺三角形として表される。アルゴリズムの残りの間、分画ウィンドウは二等辺三角形として表される。そのような場合、垂直軸の変調0は、その時点で分画がないことを意味し、垂直軸の任意の正の値は、その時点で分画があることを意味する。見られるように、垂直軸の最大高さは、分画ウィンドウの中心である。
【0038】
30ms未満のギャップを有する分画ウィンドウを統合する。30msの理論的根拠は以下の通りである:健康な心臓細胞の絶対不応期は約180ms続く。心臓組織におけるリエントリーを維持するために必要とされる2つの条件のうちの1つは、短い不応期である(他方は、遅い伝導を有する)。したがって、峡部では、絶対不応期が短くなることが予想される。しかしながら、30msはこの数の6分の1である。したがって、2つの分画ウィンドウ間のギャップが30ms未満である場合、これは新しい活性化ではあり得ず、ノイズ又は同じ活性化の継続のいずれかであると仮定することが妥当である。両方の場合において、活性化は統合される。第2の分画ウィンドウがノイズである場合、後続のステップで行われる前の拍動との比較は、いずれにしても、分画のこの部分を除去するはずである。
【0039】
心拍間の一貫性は、安定不整脈のマッピング(図8に示されるマップなど)の成功につながる最も重要な開示された分画の予測因子の1つである。その根拠は、安定不整脈において、1:1の房室伝導を有する場合、全ての心拍が同様の形態を示すはずであるということである。1の場合:N房室伝導では、「心室活動の重複」のない全ての拍動も同様であるはずである。したがって、現在の拍動は、前の拍動又は前の拍動のいずれかに類似しているはずである。
【0040】
いくつかの心拍は、心室活性化遠距離場信号によって遮蔽される可能性があり、したがって、最も類似した拍動は、前の拍動又は前の拍動の前の拍動である可能性がある。
【0041】
分画のタイミングはまた、拍動間でいくらかのシフトを示し得る。シフトの問題を解決するために、プロセッサ28は、分画比較ステップ214において、現在の拡張WOI内のウィンドウ内の分画を2つの以前の拡張WOIと比較する。換言すれば、プロセッサは、心臓信号の第1の心周期と第2の心周期との間で、組織位置において識別された分画を比較する。一例では、プロセッサ28は、分画を相関させながら、2msのステップで-20msから20msの間でシフトを変更する。最も高い相関(例えば、ドット積)を与えるシフトは、最良のシフトと考えられる。しかしながら、サイクル長における分画のタイミングは十分に安定しているが、分画の正確な形態は拍動間で変動する傾向があるため、異なる拍動間で分画を比較することは困難である。この問題を解決するために、開示された技術は、分画ウィンドウの開始時間及び終了時間を検出し、図5に示されるようにウィンドウを三角形に変換し、信号自体を相関させる代わりに、三角形に変換された信号に対して相関(例えば、ドット積)を実行する。三角形は、分画複合体の中心が可能な限り整列されることを確実にする。
【0042】
シフトが2つの前の拍動に対して決定されると、矩形としての分画ウィンドウは-1と+1との間のスケールに変換され、ドット積が現在の拍動と前の2つの拍動との間で計算される。このドット積の結果は、2つの拍動間の類似性の尺度を得るために、拡張されたWOIにおけるサンプルの数によって除算される。
【0043】
垂直軸を-1と1の間に変換すると、以下のスキームが得られる。任意の一致するサンプルは、類似性に正に寄与し、一方、任意の一致しないサンプルは、類似性に対してコストを課す。
【0044】
【表1】
【0045】
ドット積を拡張WOI内のサンプル数で除算すると、得られる類似性の尺度は-1と1の間の実数である。
【0046】
2つの以前の拍動のうち、最も高い類似性スコアを有する拍動が、最も類似した拍動と見なされる。
【0047】
次に、ステップ214を検証するために、プロセッサ28は、サニティテスト適用ステップ216で「サニティチェック」を実行する。
【0048】
アルゴリズムを停止し、更なる処理なしに0に等しい分画スコアを返すかどうかを決定するために、サニティテストが実行される。サニティテストが失敗した場合、任意の非0分画スコアを出力するのに十分な情報がないと仮定される。設計原理として、アルゴリズムは感度よりも特異性を優先する。換言すれば、偽陰性は偽陽性よりも好ましい。したがって、サニティテストが失敗した場合、アルゴリズムはここで停止する。
【0049】
サニティテストは、以下の全ての条件が満たされる場合に成功する。以下の項における定数は、典型的な例として与えられる。
【0050】
(1)最も類似した以前の拍動のピークトゥピークは、拡張WOI全体における現在の拍動のピークトゥピークの少なくとも3分の1である。そうでなければ、前の拍動は単なるノイズであると仮定される。
【0051】
(2)現在の拍動のピークトゥピークは、拡張されたWOI全体における最も類似した以前の拍動のピークトゥピークの少なくとも3分の1である。そうでなければ、電流拍動は単なるノイズであると仮定される。
【0052】
(3)前のステップで計算された類似性尺度は、少なくとも所与の分数(例えば、少なくとも0.5)である。
【0053】
(4)-前の3つの拍動のいずれかにおける最大分画ウィンドウは、多くても周期長の最大部分(例えば、80%)である。そうでない場合、アルゴリズムが偽陽性よりも偽陰性を好むので、分画ウィンドウの少なくともいくつかがノイズを表し、拍動が破棄されると仮定される。
【0054】
(5)潜在的な分画のオンセット及びオフセットは、現在の拍動及び最も類似する以前の拍動における持続時間の所与の割合(例えば、半分の分画)を超えて異ならない。オンセット及びオフセットの差の合計は、(最良の類似性を得るためにシフトを考慮した後)多くても、分画持続時間の所与のパーセンテージ(例えば75%)である。
【0055】
(6)-分画成分の持続時間は、少なくとも所与の持続時間(例えば、少なくとも30 ms)である。
【0056】
サニティチェック6(例えば、30msの持続時間を使用する)の原理は、開示されたアルゴリズムが少なくとも30msの分画を見つけるように設計されていることである。より狭い分画が可能であるが、このような分画を正常な活性化から区別することは困難である。したがって、一例では、30msの下限がアルゴリズムの所与の制限である。
【0057】
(7)-分画成分の持続時間は、最大でも、WOIの所与のパーセンテージ(例えば、85%)であるものとする。
【0058】
(8)少なくとも最小数(例えば、4)の有意な極値が存在するものとする。
【0059】
(9)-WOIの少なくとも所与のパーセンテージ(例えば、15%)は、現在の拍動及び最も類似する以前の拍動において、いかなる分画も含まないものとする。
【0060】
(例えば、15%の)サニティチェック9の原理は、アルゴリズムが、一例では、WOIの85%までの分画を見つけるように設計されていることである。より大きな分画が臨床的に可能であるが、そのような分画を単なるノイズから区別することは困難である。したがって、WOIの85%の上限は、アルゴリズムのその例においてとられる制限である。
【0061】
図5に見られるように、ウィンドウ501の持続時間511及び513は異なり、2つの間の交差領域505はより小さい持続時間511に等しい。したがって、サニティチェックに合格した(ステップ216に合格した)分画の(例えば、分類器による)検出を改善するために、プロセッサ28は、次に、微調整ステップ218において、分画のオンセット及びオフセットタイミングを微調整する。
【0062】
比較のために考慮される2つより多くのウィンドウが存在し得るので、現在の拍動及び最も類似した以前の拍動の分画ウィンドウの交差持続時間が計算される。WOIの始めから始まり、拡張されたWOIの終わりで終わる最大の交点は、可能な分画の時間フレームであると仮定される。
【0063】
以前の拍動は、WOIから1回又は2回のサイクル長を減算することによって計算される。サイクル長は2つの基準注釈間の差として計算されるので、前のWOIは正確である。前のWOIの前のWOIは、対応する参照注釈とわずかに異なる場合がある。しかしながら、WOIは、いずれにしても、分画ウィンドウの最良のアライメントを見つけるために左右にシフトされる。
【0064】
アルゴリズムは、拡張されたWOIの終わりまで分画を見つけるように設計されている。この例では、拡張されたWOIは、元のWOIの終わりを20%超えている。場合によっては、これは、分画が2つの拍動に分割されることを引き起こし得る。これは、アルゴリズムの一例において知られている制限である。
【0065】
可能な分画の時間フレームの微調整(すなわち、ステップ218)は、以下のように行われる。時間フレームは、2つの拍動間の交差に基づいて計算されるので、図5に示されるように、現在のより長い持続時間の後の拍動において時期尚早にトリミングされているように見える場合がある。
【0066】
したがって、プロセッサ28は、最初に、時間フレームのオンセット及びオフセットを、少なくともベースラインノイズのサイズの電圧ステップ、例えば、潜在的な分画成分のピークトゥピークの3mV又は5%のいずれか最大のもので、最も左及び最も右の極値まで収縮させる。
【0067】
次に、次の3つのサンプルの絶対値の最大値がベースラインノイズの3倍を下回るときに仮定される0に各側が十分に近くなるまで、オンセット及びオフセットが各側で20 msまでプロセッサによって拡張される。この微調整ステップ218は図6に示されている。
【0068】
各候補分画のオンセットとオフセットとの間の結果として得られる時間差は、以後、分画の「持続時間」又は分画の「時間フレーム」とも呼ばれる。
【0069】
ステップ220において、プロセッサ28は、候補分画のオンセット及びオフセット、並びにそれぞれの波形に関する情報を記憶する。可能性のある分画の時間フレームが計算されると、プロセッサ28は、ステップ222~228において可能性のある分画の特徴を抽出することによってアルゴリズムを継続し、これは、後続の分類及びスコアリングステップ230~232の入力である。
【0070】
いくつかの例では、候補分画が識別され、時間的にセグメント化されると、プロセッサは、回帰ベースの分類器によって使用される分画の特徴を抽出して、良性のものと、安定不整脈を引き起こす組織位置を示す可能性が非常に高いものとの間の分画をスコア付けする。
【0071】
信号の分画スコアを計算するために使用されるロジスティック回帰分類器は、次式によって与えられ:
【0072】
【数1】
ここで、kはロジスティック回帰分類器の係数である。以下で計算される全ての特徴Fは正の実数であり、kは負であるので、分画スコアは0~10の間で変化し得る。最小スコアは、安定不整脈を引き起こす可能性が低い位置を意味し、最大スコアは、安定不整脈を引き起こす可能性が非常に高い位置を意味する。
【0073】
回帰分類器に供給される特徴は以下の通りである。
F1←潜在的な分画の時間フレームの持続時間
F2←潜在的な分画の時間枠における分画の数を持続時間で除算したもの。
F3←潜在的な分画成分のピークトゥピーク電圧を持続時間で除算したもの。
F4←3+の自然対数(現在の拍動又は最も類似した拍動のいずれか大きい方における潜在的な分画の時間フレームにおける波面候補の数)
F5←潜在的な分画の時間フレームにおける0交差の数を持続時間で除算したもの。
【0074】
F1は既にステップ220で与えられている。
【0075】
F4抽出ステップ222において、プロセッサ28は、現在の拍動並びに最も類似した以前の拍動に対する各潜在的な(すなわち候補)分画の時間フレーム内に入る波面注釈候補の数をカウントする。現在の拍動と最も類似した以前の拍動との間の注釈候補の最大数は、波面候補の実際の数であると仮定される。
【0076】
F3抽出ステップ224において、プロセッサ28は、分画のピーク振幅を相対持続時間で除算する。この特徴は、分画スコアに負に寄与する。ライン(a)の信号について図7に見られるような高いアスペクト比は、通常の信号又はノイズのいずれかを示す。図7の線(b)に見られるような低いアスペクト比は、臨床的に意味のある分画を示す。理論的根拠は、臨床的に意味のある分画信号が、経験的に、低電圧領域においてより頻繁に現れることである。したがって、ロジスティック回帰分類器において負の係数を有するこの特徴は、システムを低電圧領域における分画に対してより敏感にし、高電圧領域においてより特異的にする。
【0077】
F2抽出ステップ226において、プロセッサ28は、鋭い分画(例えば、連続するサンプル間で3mVより大きい絶対勾配を有する)のみを考慮に入れて、時間枠内の分画(電位の極値)の数を計算する。
【0078】
F5抽出ステップ228において、プロセッサ28は、潜在的な分画の時間フレーム内の0交差の数を計算する。この数は、上向き及び下向きの0交差の合計として定義される。
・上方0交差は、負の左隣を有する0又は正のサンプルである。
・下方0交差は、正の左隣を有する0又は負のサンプルである。
【0079】
訓練
上記のロジスティック回帰分類器モデルは、5つの独立変数(特徴)を有し、したがって、切片係数kを含む6つの係数が必要とされる。
【0080】
良好な分類結果は、少なくとも20の変数当たりの事象(Event Per Variable)(EPV)値を有するものと考えられる。開示されたモデルは、1000を超えるケースでトレーニングされており、したがって、このトレーニングにおけるEPV値は200を超える。この値は、提案された値20よりも1桁大きい。したがって、トレーニングに使用される信号の数は十分以上であると考えることができる。
【0081】
トレーニングセットで使用される各信号は、3人の臨床アカウント専門家及びSWエンジニアによってタグ付けされている。一致してタグ付けされた信号のみがトレーニングに供給されている。根拠は、分類子を曖昧な信号と混同しないことであった(所与の特異性は感度よりも重要である)。
【0082】
推論(ステップ232)
訓練された係数は、アルゴリズムの一部として記憶される。これらの係数は、分画スコアを計算するために使用される。臨床研究の間、医師は、それらの分画スコア及び他の属性によって、信号を選択することができる。属性のいくつかは、電位分画の持続時間及びピークトゥピーク電圧である。REF3は、活性化の持続時間及び電圧が遅い伝導領域の良好な予測因子であることを実証する。医師は、現在の臨床研究に関連する信号を選択するために、臨床判断及び経験を使用して、分画スコアを含む属性のそれぞれ1つに関連する閾値を設定することが予想される。
【0083】
最後に、マップ生成ステップ234において、プロセッサ28は、図8に示されるようなEPマップを生成してユーザに表示し、安定不整脈に対するそれらの推定された影響に従ってスコア付けされた組織位置で重ねられる。GUI上のスコアリングスケールを使用して、ユーザは、閾値スコアを決定することができ、その閾値を上回るとスコア付けされた組織位置のみがマップ上で観察される。
【0084】
図2に示されるフローチャートは、単に概念を明確にする目的で選択されたものである。本実施例はまた、接触力センサからの診断された組織との電極の物理的接触の程度の指標に基づいて入力EGMを事前選択することなど、アルゴリズムの追加工程を含み得る。この工程及び他の可能な工程は、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書における開示内容から意図的に省略されている。
【0085】
図3は、本開示の一例による、図1のシステムを使用して取得された電位図301の例示的なグラフを示し、電位図301は、図2に記載されたステップ(203)において公称の拡張された関心ウィンドウ(WOI)と重ね合わされている。見られるように、開示された拡張WOIは、2つの候補分画303を捕捉するが、これは、公称WOIを使用すると、心周期の臨床的に関連する拡張期中央領域に入ることに起因して、後の(すなわち、右の)分画の切り捨て及び喪失が引き起こされるからである。
【0086】
図3は更に、前述のステップ206において心周期のベースラインノイズを計算する際に使用される心周期時間の所与のセグメント(例えば、20%続くセグメント)の幅を有する「摺動最大ウィンドウ」305を示す。
【0087】
図4は、本開示の一例による、図1のシステムを使用して取得された電気記録図402と、図2に記載されたNLEO及びガウシアンフィルタステップ(前述のステップ210)を適用した後の信号404との例示的なグラフを示す。見られるように、NLEOは、候補分画を強調し、信号404は、EGM 402のものよりわずかに平滑である。
【0088】
図5は、本開示の一例に係る、図2に記載のステップ212において見出されたそれぞれのウィンドウ501を有する2つの分画と、ウィンドウの交差領域505とを概略的に示すグラフである。見られるように、2つの異なるウィンドウは、持続時間511及び513を有し、現在の拍動の持続時間513は、前の拍動の持続時間511より長い。後続のセット内の持続時間を考慮するために、交差領域は、より短い持続時間の長さとして任意の2つのウィンドウ間で定義される。定義を使用して、プロセッサ28は、前述の微調整ステップ218において、分画のオフセットタイミングのオンセットを微調整する。したがって、示された場合において、交差領域505の持続時間は、持続時間511の持続時間に等しい。
【0089】
図5は、EGM 504においてその中に分画がない持続時間507を更に示す。プロセッサ28は、全サイクル時間で除算された、その中に分画がない持続時間507として「無音比」を測定する。この比は、反復可能な分画を無関係な不規則な分画から区別するのに役立つ。
【0090】
図6は、本開示の一例による、図2に記載された分画持続時間の微調整ステップ(ステップ218)を概略的に示すグラフである。第1に、時間フレームのオンセット及びオフセットは、少なくともベースラインノイズ3mVのdV又は潜在的な分画成分のピークトゥピークの5%のdV(いずれか最大のもの)を有する左端及び右端の極値まで縮小される。このステップは時間ウィンドウ602をもたらす。
【0091】
次いで、オンセット及びオフセットは、各側が0に十分に近くなるまで、各側で最大20msだけ拡張される。このステップは時間ウィンドウ606をもたらす。次の3つのサンプルの絶対値の最大値がベースラインノイズの3倍を下回るとき、0に十分に近いと仮定される。
【0092】
図7A及び図7Bは、本開示の一例による、分画の概略グラフ(702、704、706)の上の線(図7A)及びノイズの概略グラフ(711、713、715)の下の線(図7B)を有する2つのタイプの信号の図である。
【0093】
信号702~706は、「おそらく分画された」と説明することができる。図からわかるように、信号702~706の3つのウィンドウは全て、比較的高い高さ/幅アスペクト比を有する。医師は、おそらく誤って「分画」と呼ぶことはないであろう。
【0094】
一方、信号711~715の3つのウィンドウは全て、比較的低い高さ/幅アスペクト比を有する。医師は、おそらく誤ってこれらのアーチファクトを真の「分画」と考えるであろう。
【0095】
経験的に、臨床的に意味のある分画は、より低いピークトゥピーク電圧と相関する。したがって、潜在的な分画成分の持続時間によって除算されたピークトゥピーク電圧を供給することは、低電圧領域における分画スコアを自動的に増加させ、逆もまた同様である。
【0096】
そのようなバイアスを克服するために、開示される技法は、持続時間によって除算された潜在的な分画成分のピークトゥピーク電圧の形態で、上記の分類スコアリング関数にF3強調特徴を導入し、すなわち、スコアリングにおけるノイズから実際の分画を区別する。
【0097】
図8本開示の一例による、安定不整脈を引き起こす可能性がある組織位置及び分画の大きさを示す心室のEPマップの概略図ボリュームレンダリングである。
【0098】
示された例では、EPマップ800は、安定不整脈を示す分画を示す心臓組織位置を示すために分画スコアグラフィカル表示802で重ねられた局所興奮到達時間(LAT)マップである。
【0099】
上述したように、医師は、GUIのスケール804を調整して、閾値を上回るスコアを有する(図示された場合では、スコア>7を有する)組織位置のみを示すことができる。
【0100】
EPマップ800に基づいて、医師27などの医師は、患者への危険を最小限に抑えながら安定不整脈を排除するために慎重な選択的アブレーションを計画し実行することができる。
【実施例1】
【0101】
方法は、心臓内の組織位置で電極(22)によって感知される心臓信号を受信することを含む。心臓信号において分画(303)が識別される。組織位置で識別された分画は、心臓信号の第1の心周期と第2の心周期との間で比較される。比較に基づいて、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性が推定される。推定された可能性に基づいて、組織位置は、安定不整脈を引き起こしている可能性が高いものとしてユーザに示される。
【実施例2】
【0102】
組織位置を示すことは、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性のスコアをユーザに示すことを含む、実施例1に記載のシステム。
【実施例3】
【0103】
組織位置を示すことは、組織位置のアブレーションを推奨することを含む、実施例1又は実施例2に記載のシステム。
【実施例4】
【0104】
心臓信号を受信することは、双極電位図を受信することを含む、実施例1に記載のシステム。
【実施例5】
【0105】
分画を識別することは、心臓信号のベースラインノイズを推定することを含む、実施例1に記載の方法。
【実施例6】
【0106】
分画を識別することは、EGM信号のベースラインノイズとピークトゥピーク値との間の比に従って非線形エネルギー演算子(NLEO)の閾値を動的に調整することを含み、ベースラインノイズは、信号の絶対値の摺動最大ウィンドウの最小値によって与えられる、実施例5に記載の方法。
【実施例7】
【0107】
分画を識別することは、心周期の少なくとも最小の所定部分がいかなる分画も含まない心臓信号の期間を比較することを含む、実施例1に記載の方法。
【実施例8】
【0108】
分画を識別することは、ある時間間隔にわたって、心臓信号のピークトゥピーク電圧と時間間隔の持続時間との間の比を計算することと、比を使用して分画をノイズから区別することとを含む、実施例1に記載の方法。
【実施例9】
【0109】
可能性を推定することは、ロジスティック回帰ベースの分類器を適用することを含む、実施例1に記載の方法。
【実施例10】
【0110】
分画を比較することが、分画のうちの少なくとも1つの時間オンセット及び時間オフセットを調整することを含む、例1に記載の方法。
【実施例11】
【0111】
所与の心周期における分画を識別することは、拡張された関心ウィンドウ(WOI)を使用して心周期内で開始する全ての分画を捕捉することを含む、実施例1に記載の方法。
【実施例12】
【0112】
可能性を推定することは、各分画内の心臓信号において発生する0交差の数に基づいて実行される、実施例1に記載の方法。
【実施例13】
【0113】
可能性を推定することは、各分画内のローパスフィルタリングされた心臓信号において発生する局所的極値の数に基づいて実行される、実施例1に記載の方法。
【実施例14】
【0114】
分画を比較することは、分画ウィンドウを三角形として表すことを含む、実施例1に記載の方法。
【実施例15】
【0115】
組織位置を示すことは、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性のスコアが重ねられた電気生理学的(EP)マップ(800)を生成してユーザに表示することを含む、請求項1に記載の方法。
【実施例16】
【0116】
グラフィカルユーザインターフェース(GUI)上のスケール(804)を使用して、閾値スコアを調整することを含み、スコアがその閾値を上回る組織位置のみがEPマップ(800)上に表示される、請求項16に記載の方法。
【実施例17】
【0117】
メモリ(33)及びプロセッサ(28)を含むシステム。メモリ(33)は、心臓信号を記憶するように構成されている。プロセッサ(28)は、(i)心臓(23)内部の組織位置で電極(22)によって感知される心臓信号を受信し、(ii)心臓信号内の分画(303)を識別し、(iii)心臓信号の第1の心周期と第2の心周期との間で、組織位置で識別された分画を比較し、(iv)比較に基づいて、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性を推定し、(v)推定された可能性に基づいて、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性が高いとしてユーザに示すように構成されている。
【実施例18】
【0118】
プロセッサ(28)は、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性のスコアをユーザに示すことによって、組織位置を示すように構成されている、実施例15に記載のシステム。
【実施例19】
【0119】
プロセッサ(28)は、電気生理学的(EP)マップ(800)を生成してユーザに表示することによって組織位置を示すように構成され、組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性のスコアが重ねられる、実施例15に記載のシステム。
【実施例20】
【0120】
グラフィカルユーザインターフェース(GUI)上のスケール(804)を備え、ユーザが閾値スコアを調整するために使用することができ、スコアがその閾値を上回る組織位置のみがEPマップ(800)上に表示される、請求項16に記載のシステム。
【0121】
本明細書に記載の実施例は、主に心臓診断用途に対処するものであるが、本明細書に記載の方法及びシステムは、他の医療用途にも使用することができる。
【0122】
上に記載される実施例は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で特に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ本開示の範囲は、上記の明細書で説明される様々な特徴の組合せ及びその部分的組合せの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。
【0123】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
心臓信号を記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサであって、
心臓内の組織位置において電極によって感知された心臓信号を受信し、
前記心臓信号内の分画を識別し、
前記心臓信号の第1の心周期と第2の心周期との間で、前記組織位置において識別された前記分画を比較し、
前記比較に基づいて、前記組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性を推定し、
前記推定された可能性に基づいて、前記組織位置を、前記安定不整脈を引き起こしている可能性が高いものとしてユーザに示すように構成されている、プロセッサと、を含む、システム。
(2) 前記プロセッサは、前記組織位置が前記安定不整脈を引き起こしている前記可能性のスコアを前記ユーザに示すことによって、前記組織位置を示すように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記プロセッサは、前記組織位置のアブレーションを推奨することによって前記組織位置を示すように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサが、双極電位図を受信することによって前記心臓信号を受信するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記プロセッサは、前記心臓信号のベースラインノイズを推定することによって前記分画を識別するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0124】
(6) 前記プロセッサは、前記EGM信号のベースラインノイズとピークトゥピーク値との間の比に従って非線形エネルギー演算子(NLEO)のための前記閾値を動的に調整することによって前記分画を識別するように構成され、前記ベースラインノイズは、前記信号の絶対値の摺動最大ウィンドウ(sliding maximum window)の最小値によって与えられる、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサは、前記心周期の少なくとも最小の所定部分がいかなる分画も含まない前記心臓信号の期間を比較することによって、前記分画を識別するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサは、ある時間間隔にわたって、前記心臓信号のピークトゥピーク電圧と前記時間間隔の持続時間との間の比を計算し、前記比を使用して、前記分画をノイズから区別することによって、前記分画を識別するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、ロジスティック回帰ベースの分類器を適用することによって、前記可能性を推定するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサは、前記分画のうちの少なくとも1つの時間オンセット及び時間オフセットを調整することによって、前記分画を比較するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0125】
(11) 前記プロセッサは、拡張された関心ウィンドウ(WOI)を使用して心周期内で開始する全ての分画を捕捉することによって、所与の心周期における前記分画を識別するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記プロセッサは、各分画内の前記心臓信号に生じる0交差の数に基づいて前記可能性を推定するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(13) 前記プロセッサは、各分画内のローパスフィルタリングされた心臓信号において発生する局所的極値の数に基づいて前記可能性を推定するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(14) 前記プロセッサは、分画ウィンドウを三角形として表すことによって前記分画を比較するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(15) 前記プロセッサは、前記組織位置が前記安定不整脈を引き起こしている前記可能性のスコアが重ねられた電気生理学的(EP)マップを生成して前記ユーザに表示することによって、前記組織位置を示すように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0126】
(16) 閾値スコアを調整するために前記ユーザが使用することができる、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)上のスケールを含み、スコアがその閾値を上回る組織位置のみが前記EPマップ上で観察される、実施態様15に記載のシステム。
(17) 方法であって、
心臓内の組織位置において電極によって感知された心臓信号を受信することと、
前記心臓信号における分画を識別することと、
前記心臓信号の第1の心周期と第2の心周期との間で、前記組織位置において識別された前記分画を比較することと、
前記比較に基づいて、前記組織位置が安定不整脈を引き起こしている可能性を推定することと、
前記推定された可能性に基づいて、前記組織位置を、前記安定不整脈を引き起こしている可能性が高いものとしてユーザに示すことと、を含む、方法。
(18) 前記組織位置を示すことは、前記組織位置が前記安定不整脈を引き起こしている前記可能性のスコアを前記ユーザに示すことを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記組織位置を示すことは、前記組織位置のアブレーションを推奨することを含む、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記心臓信号を受信することが、双極電位図を受信することを含む、実施態様17に記載の方法。
【0127】
(21) 前記分画を識別することは、前記心臓信号のベースラインノイズを推定することを含む、実施態様17に記載の方法。
(22) 前記分画を識別することは、前記EGM信号のベースラインノイズとピークトゥピーク値との間の比に従って非線形エネルギー演算子(NLEO)のための前記閾値を動的に調整することを含み、前記ベースラインノイズは、前記信号の絶対値の摺動最大ウィンドウの最小値によって与えられる、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記分画を識別することは、前記心周期の少なくとも最小の所定部分がいかなる分画も含まない前記心臓信号の期間を比較することを含む、実施態様17に記載の方法。
(24) 前記分画を識別することは、ある時間間隔にわたって、前記心臓信号のピークトゥピーク電圧と前記時間間隔の持続時間との間の比を計算することと、前記比を使用して前記分画をノイズから区別することとを含む、実施態様17に記載の方法。
(25) 前記可能性を推定することは、ロジスティック回帰ベースの分類器を適用することを含む、実施態様17に記載の方法。
【0128】
(26) 前記分画を比較することが、前記分画のうちの少なくとも1つの時間オンセット及び時間オフセットを調整することを含む、実施態様17に記載の方法。
(27) 所与の心周期における前記分画を識別することは、拡張された関心ウィンドウ(WOI)を使用して心周期内で開始する全ての分画を捕捉することを含む、実施態様17に記載の方法。
(28) 前記可能性を推定することは、各分画内の前記心臓信号において生じる0交差の数に基づいて実行される、実施態様17に記載の方法。
(29) 前記可能性を推定することは、各分画内のローパスフィルタリングされた心臓信号において発生する局所的極値の数に基づいて実行される、実施態様17に記載の方法。
(30) 前記分画を比較することは、分画ウィンドウを三角形として表すことを含む、実施態様17に記載の方法。
【0129】
(31) 前記組織位置を示すことは、前記組織位置が前記安定不整脈を引き起こしている前記可能性のスコアが重ねられた電気生理学的(EP)マップを生成して前記ユーザに表示することを含む、実施態様17に記載の方法。
(32) グラフィカルユーザインターフェース(GUI)上のスケールを使用して、閾値スコアを調整することを含み、スコアがその閾値を上回る組織位置のみが前記EPマップ上に表示される、実施態様31に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】