(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ゴム変性ビニル(コ)ポリマーの回収方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20241219BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08J11/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535193
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022085099
(87)【国際公開番号】W WO2023110654
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スルイユス イバン
(72)【発明者】
【氏名】スルイツ エリク
(72)【発明者】
【氏名】ファンデン アインデ ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイレン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ライスマイヤー マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】オベイカ スヴェン
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA07
4F401AA11
4F401AA23
4F401AC01
4F401BA13
4F401CA22
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB01
4F401EA07
4F401EA46
4F401EA59
4F401EA71
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品から、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーを回収する方法であって、ポリカーボネート樹脂が、A)芳香族若しくは脂肪族ジオール又はそれらの混合物をベースとするポリカーボネートと、B)ゴム変性ビニル(コ)ポリマーとを含み、該方法が、i)樹脂又は前記それから作られた任意に破砕された成形部品を、少なくとも1つのエステル交換触媒とともに少なくとも1つのアルコールと接触させて、スラリー(i)を得る工程であって、該スラリー(i)の固形分が、ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品を含み、該スラリー(i)の液体分がアルコールを含む、工程と、ii)スラリー(i)を60℃~90℃、好ましくは65℃~85℃、最も好ましくは75℃~85℃に加熱するとともに、該温度を維持して、スラリー(ii)を得る工程であって、該スラリー(ii)の固形分がゴム変性ビニル(コ)ポリマーを含み、該スラリーの液体分が脂肪族及び/又は芳香族ジオールを含む、工程と、iii)スラリー(ii)の液体分から固形分を分離する工程と、iv)任意に、固形分を洗浄する工程とを含み、スラリー(i)及びスラリー(ii)が両方ともアンモニア及びアンモニウム塩を含まない、方法、並びに成形部品の製造及びポリカーボネート配合物中における配合相手のための、回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーの使用に関する。更に任意の態様は、芳香族及び/又は脂肪族ジオールの回収、及びポリカーボネートの製造のためのこのジオールの使用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品から、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーを回収する方法であって、
前記ポリカーボネート樹脂が、
A)芳香族若しくは脂肪族ジオール又はそれらの混合物をベースとするポリカーボネートと、
B)ゴム変性ビニル(コ)ポリマーと、
を含み、該方法が、
i)前記ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品を、少なくとも1つのエステル交換触媒とともに少なくとも1つのアルコールと接触させて、スラリー(i)を得る工程であって、該スラリー(i)の固形分が、前記ポリカーボネート樹脂又は前記それから作られた任意に破砕された成形部品を含み、該スラリー(i)の液体分が前記アルコールを含む、工程と、
ii)前記スラリー(i)を60℃~90℃、好ましくは65℃~85℃に加熱するとともに、該温度を維持して、スラリー(ii)を得る工程であって、該スラリー(ii)の固形分がゴム変性ビニル(コ)ポリマーを含み、該スラリーの液体分が脂肪族及び/又は芳香族ジオールを含む、工程と、
iii)前記スラリー(ii)の液体分から固形分を分離する工程と、
iv)任意に、前記固形分を洗浄する工程と、
を含み、
スラリー(i)及びスラリー(ii)が両方ともアンモニア及びアンモニウム塩を含まない、方法。
【請求項2】
前記ポリカーボネートが、アルコーリシスによって解重合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラリー(i)が、アルコール対水の重量比10:90~90:10で水を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記固形分又は前記固形分の一部を溶解又は膨潤させる溶媒を添加することなく、工程(iii)を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(iii)を濾過によって行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)における温度が75℃~85℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
更なる工程(v)において、前記芳香族及び/又は脂肪族ジオールを前記液体分から分離する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エステル交換触媒が、チタン化合物、スズ化合物、ホウ素化合物、アンモニウム化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、マンガン化合物、ジルコニウム化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エステル交換触媒が、アルカリ金属水酸化物又はメタノラート、好ましくは水酸化ナトリウムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリカーボネートが、ビスフェノールA由来の構造単位を含む芳香族ポリカーボネートである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ゴム変性ビニル(コ)ポリマーがアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(i)におけるエステル交換触媒対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.1:1~1:1である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(i)におけるアルコール対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.8:1~12:1である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーが、実験パートに開示されるように測定した-80℃未満のゴム相のガラス転移温度を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ポリカーボネート配合物中における配合相手としての、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法において回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート配合物の樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品から、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーを回収する方法に関する。本発明はまた、成形部品の製造及びポリカーボネート配合物中における配合相手のための、回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーの使用に関する。
【0002】
更に任意の態様は、芳香族及び/又は脂肪族ジオールの回収、及びポリカーボネートの製造のためのこのジオールの使用である。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性成形コンパウンドを製造するためのポリカーボネート組成物は、長年にわたって知られている。該組成物及びそれから製造される成形コンパウンドは、様々な用途、例えば、自動車分野、建築分野及びエレクトロニクス分野のための成形品を製造するのに使用される。
【0004】
かかる熱可塑性成形コンパウンドから製造される成形品の特性は、組成物の成分及びこれらの成分が組成物中に使用される量の範囲を選択することによって、それぞれの用途の要求に合わせて調整することができる。
【0005】
特に低温での耐ノッチ性を高めるために、エラストマー特性を有する配合相手が、耐衝撃改良剤としてポリカーボネートに添加される。さらに耐衝撃改良剤の弾性成分の化学組成、他にもその形態は種々のものであってもよい。重要な種類の耐衝撃改良剤はゴム変性ビニル(コ)ポリマーである。それらは、コンパウンド化プロセスにおいてポリカーボネートと配合することができ、二相形態が作られる。大抵の場合、これらのポリカーボネート配合物の相形態は、ポリカーボネートがマトリックス相を形成し、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーがマトリックス相内にドメインを形成するようなものである。
【0006】
ゴム変性ビニル(コ)ポリマーの中でも、一般にアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)として知られる、スチレン-アクリロニトリル-コポリマー(SAN)をポリブタジエンベースのゴム粒子と組み合わせたものが最も有望な成分である。
【0007】
ABSは、ポリカーボネート組成物用の耐衝撃改良剤を組み込む配合相手として大規模に使用される。この組合せでは、ゴム粒子がノッチ付き耐衝撃性及び更なる機械特性を改善する一方、SANが、ポリカーボネートとの得られる配合物の溶融流動性を促進させるため、成形品を提供するための加工が容易になる。
【0008】
ポリカーボネートと、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーと、任意に更なる成分とを含むポリカーボネート樹脂が多くの用途で使用されているが、これらの材料は生分解性ではない。したがって、ポリカーボネート樹脂廃棄物を新たな製品の原料として活用することが強く望まれている。
【0009】
特許文献1は、蒸留カラム内でのエステル交換によるポリカーボネートの連続解重合方法を開示している。該方法は、ポリカーボネート廃棄物のリサイクルに適している。
【0010】
特許文献2は、ヒドロキシ化合物とのエステル交換及びその後の溶融重合による、ビスフェノールAベースのポリカーボネートの化学的リサイクル方法を開示している。
【0011】
特許文献3は、ポリカーボネート、難燃剤、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、又は難燃剤とアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンとの組合せを含む、ポリカーボネート含有組成物のアルコーリシス方法を記載している。該方法は、組成物を、ポリカーボネートではなく、成分の溶液又は濾過性懸濁液を形成する溶媒と接触させることと、溶液又は濾過性懸濁液をポリカーボネートから分離することと、次の工程で解重合することとを含む。
【0012】
特許文献4は、ジヒドロキシ芳香族化合物及び炭酸ジアルキルを、ポリカーボネートとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンとを含むポリカーボネート含有組成物から回収する方法を開示している。該方法は、ポリカーボネートを解重合し、ジヒドロキシ芳香族化合物及び炭酸ジアルキルを生成させることと、ジヒドロキシ芳香族化合物及び炭酸ジアルキルを反応器から除去して、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンをコーティングとして反応器の表面上に残すことと、溶媒を反応器に添加することと、溶媒を加熱し、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンを反応器の表面から除去することとを含む。
【0013】
特許文献5は、ポリカーボネートとリン含有難燃剤とを含むポリカーボネート含有組成物から、ジヒドロキシ芳香族化合物及び尿素を回収する方法を開示しており、該方法は、ポリカーボネートを解重合するのに十分な時間、膨潤溶媒の存在下で組成物をアンモニアと接触させて、ジヒドロキシ芳香族化合物及び尿素を生成することを含む。
【0014】
特許文献6は、ポリカーボネートとリン含有難燃剤とを含むポリカーボネート含有組成物から、ジヒドロキシ芳香族化合物及び炭酸ジアルキルを回収する方法を開示している。該方法は、アルコールと、非中和性基を有するエステル交換触媒との存在下、70℃~200℃の温度、50mbar~40barの圧力で、ポリカーボネートが解重合してジヒドロキシ芳香族化合物及び炭酸ジアルキルを生成するのに十分な時間、組成物を加熱することを含む。
【0015】
前述の文献は、ポリカーボネートを解重合して、ポリカーボネート構成要素を得ることを開示している。このポリカーボネート構成要素は、その後の新しいポリカーボネートの製造に適している。ABSが存在する場合、このコポリマーは、ポリカーボネートの解重合前に分離されるか、又は反応装置上にコーティングとして残り、最終工程で除去される必要がある。
【0016】
ABS又はゴム変性ビニル(コ)ポリマーはポリカーボネート樹脂の重要な部分を占めており、有価原料でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0547479号
【特許文献2】独国特許第4326906号
【特許文献3】国際公開第2014/099548号
【特許文献4】国際公開第2014/099594号
【特許文献5】米国特許出願公開第2015/105531号
【特許文献6】欧州特許出願公開第2746249号
【発明の概要】
【0018】
したがって、ポリカーボネート配合物からゴム変性ビニル(コ)ポリマーを回収する方法を提供することが望まれていた。
【0019】
回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーが、ゴム相の低いガラス転移温度等のその基本特性を維持することも望まれていた。このように、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーは、その弾性特性を維持し、この種の材料の標準的な用途に有用であるとされ得る。
【0020】
また、この方法は単純であり、幾つかの方法工程のみで実行することができることも望まれていた。
【0021】
任意に、この方法は、ポリカーボネートの構成成分、特に芳香族及び/又は脂肪族ジオールを回収するのにも適しているものとする。
【0022】
驚くべきことに、技術的目的は、ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品から、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーを回収する方法であって、
ポリカーボネート樹脂が、
A)芳香族若しくは脂肪族ジオール又はそれらの混合物をベースとするポリカーボネートと、
B)ゴム変性ビニル(コ)ポリマーと、
を含み、該方法が、
i)ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品を、少なくとも1つのエステル交換触媒とともに少なくとも1つのアルコールと接触させて、スラリー(i)を得る工程であって、該スラリー(i)の固形分が、ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品を含み、該スラリー(i)の液体分がアルコールを含む、工程と、
ii)スラリー(i)を60℃~90℃、好ましくは65℃~85℃、最も好ましくは75℃~85℃に加熱するとともに、該温度を維持して、スラリー(ii)を得る工程であって、該スラリー(ii)の固形分がゴム変性ビニル(コ)ポリマーを含み、該スラリーの液体分が脂肪族及び/又は芳香族ジオールを含む、工程と、
iii)スラリー(ii)の液体分から固形分を分離する工程と、
iv)任意に、固形分を洗浄する工程と、
を含み、
スラリー(i)及びスラリー(ii)が両方ともアンモニア及びアンモニウム塩を含まない、方法によって達成されることが見出された。
【0023】
スラリー(ii)中、固相にはゴム変性ビニル(コ)ポリマーが含まれる。すなわち、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーは、その軟化温度未満を維持し、軟化していない。それは硬い粒子として存在する。硬い粒子は、濾過によってスラリーの液体分から分離することができる。
【0024】
ポリカーボネート樹脂は、1つ以上のポリマー添加剤、すなわちポリマー成分を成分Cとして任意に含み得る。更に任意の工程(v)において、芳香族及び/又は脂肪族ジオールが液体分から分離される。
【0025】
本発明による方法では、ポリカーボネートがアルコーリシスによって解重合される。
【0026】
本発明による方法は、ポストインダストリアル廃棄物及びポストコンシューマー廃棄物から有価材料を回収するのに使用することができる。ポストインダストリアル廃棄物には例えば、それぞれの製品の仕様を満たさなかったポリカーボネート樹脂が含まれる。理由としては例えば目標の色からの逸脱が考えられる。ポストインダストリアル廃棄物の別の供給源は、例えばポリカーボネート樹脂の射出成形により製造中に生じた不良を有する成形部品である。ポストコンシューマー廃棄物には、最終製品の耐用年数後に収集された成形部品の完成品が含まれる。例えば射出成形によって部品製造時に生じる表面品質の低下等の欠陥を示す成形製品の完成品を収集することも可能である。
【0027】
請求される方法の利点は、比較的低温でゴム変性ビニル(コ)ポリマーの特性プロファイルを維持し得ること、及び反応器及び撹拌機等の装置の面倒な清掃を必要としない単純な手法であることである。さらに、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーは、追加の溶媒を使用することなく得ることができる。
【0028】
好ましくは、回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーは、-80℃未満、更に好ましくは-85℃未満のゴム相のガラス転移温度を有し、これは、DIN EN ISO 6721-7規格に準拠して、周波数1Hz、加熱速度3K/分、-150℃から損失弾性率(G’’)曲線のピーク最大値に関連する温度である材料の軟化までの温度範囲で、非共振ねじりモード(剪断弾性率G*(T))における動的機械分析(DMA)を使用して測定した。
【0029】
ポリカーボネート樹脂
成分A
ポリカーボネートは成分Aとして使用される。ポリカーボネートは、芳香族及び/又は脂肪族ジオール由来の構造単位を含み得る。ジオールは、本発明の文脈内においてジヒドロキシ化合物とも呼ぶことができる。
【0030】
また、上記ポリカーボネートの2つ以上の混合物を使用することも可能である。1つ以上の芳香族ポリカーボネートを成分Aとして使用する場合が特に好ましい。
【0031】
本発明により適した成分Aによるポリカーボネートは、文献から知られているか、又は文献から既知の方法によって製造することができる(芳香族ポリカーボネートの製造について、例としてSchnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Interscience Publishers, 1964、及びまた独国特許出願公開(独国公開明細書)第1495626号、同第2232877号、同第2703376号、同第2714544号、同第3000610号、同第3832396号を参照)。
【0032】
芳香族ポリカーボネートは、例えばジフェノールと、カルボニルハロゲン化物、好ましくはホスゲン及び/又は芳香族ジアシルジハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸のジハロゲン化物とを、界面法により任意に連鎖停止剤、例えばモノフェノールを使用して、任意に三官能性又は三官能性超の分岐剤、例えばトリフェノール又はテトラフェノールを使用して反応させることによって製造される。ジフェノールと、例えば炭酸ジフェニルとの反応による溶融重合法を介した製造も同様に可能である。
【0033】
芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートの製造用のジフェノールは、好ましくは、式(I):
【化1】
(式中、
Aは、単結合、C
1~C
5-アルキレン、C
2~C
5-アルキリデン、C
5~C
6-シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO
2-、任意にヘテロ原子を含む更なる芳香族環が縮合されている場合があるC
6~C
12-アリーレン、又は式(II)若しくは式(III):
【化2】
の部分であり、
Bは、それぞれの場合に、C
1~C
12-アルキル、好ましくは、メチル、ハロゲン、好ましくは、塩素及び/又は臭素であり、
xは、それぞれの場合に独立して、0、1、又は2であり、
pは、1又は0であり、かつ、
R
5及びR
6は、各X
1につき個別に選択可能であり、互いに独立して、水素又はC
1~C
6-アルキル、好ましくは、水素、メチル、又はエチルであり、
X
1は、炭素を表し、かつ、
mは、4~7の整数、好ましくは4又は5を表すが、但し、少なくとも1つの原子X
1上でR
5及びR
6は同時にアルキルである)のジフェノールである。
【0034】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)-C1~C5-アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)-C5~C6-シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、及びα,α-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの環臭素化誘導体及び/又は環塩素化誘導体である。
【0035】
特に好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシビフェニルスルホン、並びにこれらの二臭素化誘導体又は二塩素化誘導体及び四臭素化誘導体又は四塩素化誘導体、例えば、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、又は2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0036】
ジフェノールは、個別に、又はあらゆる所望の混合物の形態で使用され得る。ジフェノールは、文献から知られているか、又は文献から既知の方法によって得ることが可能である。
【0037】
ジフェノールは完全に又は部分的に脂肪族ジオールで置き換えることができる。適切な脂肪族ジオールとしては、2個~12個の炭素原子を有するジオール又は6個~21個の炭素原子を有する脂環式ジオール、例えば、エチレン-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、3-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール及び2-エチルヘキサン-1,6-ジオール、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、1,4-ジ(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(3-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、テトラヒドロ-2,5-フランジメタノール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エタノール、2,2,4,4-テトラメチル-シクロブタン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチル-ペンタン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、シクロブタン-1,1-ジイルジメタノール、1,4:3,6ジアンヒドロ-D-グルシトール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
本発明の文脈内において、ポリカーボネート製造の構成要素として使用され、本発明による方法により回収される脂肪族及び/又は芳香族ジオールは単にジオールとも呼ばれる。
【0039】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に適した連鎖停止剤の例としては、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノール、又は2,4,6-トリブロモフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール、例えば、4-[2-(2,4,4-トリメチルペンチル)]フェノール、独国特許出願公開第2842005号による4-(1,3-テトラメチルブチル)フェノール、又はアルキル置換基中に合計8個~20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノール若しくはジアルキルフェノール、例えば、3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、p-イソオクチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール、並びに2-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール及び4-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノールが挙げられる。用いられる連鎖停止剤の量は一般に、それぞれの場合に使用されるジフェノールのモル合計に対して0.5mol%から10mol%の間である。
【0040】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートを、既知のようにして、好ましくは、使用されるジフェノールの合計に対して0.05mol%~2.0mol%の三官能性又は三官能性超の化合物、例えば、3つ以上のフェノール基を有する化合物を組み込むことによって分岐させることができる。
【0041】
ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートは両方とも適している。成分Aによる本発明のコポリカーボネートの製造では、使用されるジフェノールの総量に対して1重量%~25重量%、好ましくは2.5重量%~25重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンも使用され得る。これらは知られており(米国特許第3419634号)、文献から既知の方法によって製造することができる。ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートの製造は、独国特許出願公開第3334782号に記載されている。
【0042】
好ましい実施形態において、成分Aとして適切な芳香族ポリカーボネートの重量平均モル質量Mw(塩化メチレン中でポリカーボネート標準によるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定)は、10000g/mol~50000g/mol、好ましくは22000g/mol~35000g/mol、特に24000g/mol~32000g/molである。
【0043】
成分B
成分Bは少なくとも1つのゴム変性ビニル(コ)ポリマーである。ゴム変性ビニル(コ)ポリマーは、ゴムベースのグラフトポリマーと、任意にゴム不含のビニル(コ)ポリマーとを含む。ゴム不含のビニル(コ)ポリマーは、本発明の文脈において遊離ビニル(コ)ポリマーとも呼ばれる。
【0044】
本発明による成分Bに使用されるグラフトポリマーは好ましくは、
B.1 グラフトポリマーに対して5重量%~95重量%、好ましくは20重量%~92重量%、特に30重量%~91重量%の少なくとも1つのビニルモノマーを、
B.2 グラフトポリマーに対して95重量%~5重量%、好ましくは80重量%~8重量%、特に70重量%~9重量%の、-10℃未満、より好ましくは-40℃未満、特に好ましくは-70℃未満のガラス転移温度を有する1つ以上のゴム弾性グラフト基材上に含む。
【0045】
本発明において特段の明示的な指定がない限り、ガラス転移温度は、全ての成分について、DIN EN 61006(2004年版)に準じた動的示差走査熱量測定(DSC)によって10K/分の加熱速度で、中点温度としてのTgの決定(正接法)を用いて決定される。
【0046】
グラフト基材B.2は概して、0.05μm~10.00μm、好ましくは0.1μm~5.0μm、特に好ましくは0.1μm~1.5μmの中位粒径(D50)を有する。
【0047】
中位粒径D50は、その粒径を50重量%の粒子が上回り、かつ50重量%が下回る直径である。本発明において特段の明示的な指定がない限り、これは、全ての成分について超遠心分離測定によって決定される(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. und Z. Polymere [Polymers] 250 (1972), 782-l796)。
【0048】
モノマーB.1は、好ましくは、
B.1.1 それぞれの場合にB.1.1及びB.1.2の合計に対して65重量%~85重量%、特に好ましくは70重量%~80重量%、より好ましくは74重量%~78重量%のビニル芳香族化合物及び/又は環置換ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン)及び/又は(C1~C8)-アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートと、
B.1.2 それぞれの場合にB.1.1及びB.1.2の合計に対して15重量%~35重量%、特に好ましくは20重量%~30重量%、より好ましくは22重量%~26重量%のシアン化ビニル(アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル)及び/又は(C1~C8)-アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物及びイミド)、例えば無水マレイン酸と、
の混合物である。
【0049】
好ましいモノマーB.1.1は、スチレン、α-メチルスチレン及びメチルメタクリレートのモノマーの少なくとも1つから選択され、好ましいモノマーB.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸及びメチルメタクリレートのモノマーの少なくとも1つから選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1スチレン及びB.1.2アクリロニトリルである。代替的に好ましいモノマーは、B.1.1メチルメタクリレート及びB.1.2メチルメタクリレートである。
【0050】
グラフトポリマーの適切なグラフト基材B.2としては、例えば、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわち、エチレン/プロピレンベースのもの、並びに、任意にジエン、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレン、エチレン/酢酸ビニル、及びまたアクリレート-シリコーンの複合ゴムが挙げられる。
【0051】
好ましいグラフト基材B.1.2は、ジエンゴム、好ましくはブタジエンを含むジエンゴム、又はジエンのコポリマー、好ましくはブタジエンを含むジエンのコポリマー、及び更に共重合性のビニルモノマー(例えばB.1.1及びB.1.2による)、又は上述の成分の1つ以上の混合物である。
【0052】
特に好ましいグラフト基材B.2は純粋なポリブタジエンゴムである。更に好ましい実施形態において、B.2はスチレン-ブタジエンゴム、特に好ましくはスチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムである。
【0053】
グラフト基材B.2のゲル分率は、それぞれの場合にB.2に対して少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、特に少なくとも60重量%であり、トルエンに不溶性の比率として測定される。
【0054】
グラフト基材B.2/成分B中のグラフトポリマーのゲル含有量は、25℃、適切な溶媒中において、これらの溶媒に不溶性の含有量として決定される(M. Hoffmann, H. Kroemer, R. Kuhn, Polymeranalytik I und II, Georg Thieme-Verlag, Stuttgart 1977)。
【0055】
成分Bとして最も好ましいものは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)である。
【0056】
成分B中のグラフトコポリマーは、フリーラジカル重合、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合又は塊状重合によって製造される。種々のプロセスで製造されたグラフトポリマーの混合物を成分Bとして使用してもよい。成分B中のグラフトポリマーは好ましくは乳化重合又は塊状重合によって製造される。
【0057】
乳化重合プロセスにおいて製造された適切なグラフトポリマーは例えば、米国特許第4937285号に従って、有機ヒドロペルオキシド及びアスコルビン酸から構成される開始剤系を用いたレドックス開始によって乳化重合プロセスで製造されたABSポリマーである。
【0058】
乳化重合プロセスで製造された更に適切なグラフトポリマーは、コアシェル構造を有するMBS改良剤である。
【0059】
塊状重合によって調製される成分Bによる適切なポリマーは、例えば、独国特許出願公開第2035390号(=米国特許第3644574号)又は独国特許出願公開第2248242号(=英国特許出願公開第1409275号)、又はUllmanns, Enzyklopaedie der Technischen Chemie, Vol. 19 (1980), p. 280 et seq.に記載されている。
【0060】
成分Bは、遊離型の、すなわち、ゴム基材に化学的に結合しておらず、またゴム粒子に含まれない、B.1によるモノマーから構成されるビニル(コ)ポリマーを含み得る。これは、製造プロセスに起因してグラフトポリマーの重合において成分B中に形成されるか(グラフト基材上のグラフト化は必ずしも完全でなくてよい)、そうでなければ、成分Bとは別に重合して混ぜ合わせてもよい。同様に、成分B中の遊離ビニル(コ)ポリマーの一部が、製造方法に起因してグラフトポリマー自体に由来し、別の部分は、成分Bとは別に重合して混ぜ合わせることも可能である。成分B中の遊離ビニル(コ)ポリマー(起源に依存しない)の割合は、アセトン可溶性の割合として測定され、成分Bに対して好ましくは少なくとも5重量%である。
【0061】
この遊離ビニル(コ)ポリマーは、成分Bによるゴム変性ビニルコポリマーにおいて、30kg/mol~250kg/mol、好ましくは70kg/mol~200kg/mol、特に90kg/mol~180kg/molの重量平均分子量Mwを有する。
【0062】
本発明の文脈においては、成分Bにおける遊離ビニル(コ)ポリマーの重量平均分子量Mwは、テトラヒドロフラン中でポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0063】
成分C
成分Cとして、ポリカーボネート樹脂は任意に、好ましくは、難燃剤、滴下防止剤、難燃助剤、発煙防止剤、潤滑剤及び離型剤、核剤、帯電防止剤、導電性添加剤、安定剤(例えば、加水分解安定剤、熱エージング安定剤及びUV安定剤、並びにまたエステル交換阻害剤)、流動促進剤、相溶化剤、成分A及び成分B以外の更なるポリマー構成成分(例えば機能性の配合相手)、充填剤及び強化剤、並びに染料及び顔料からなる群より選択される1つ以上のポリマー添加剤、すなわちポリマー成分を含んでいてもよい。
【0064】
成形コンパウンド及び成形品の製造
例えば、組成物のそれぞれの構成成分(A、B及び任意にC)を混合し、好ましくは200℃~320℃、より好ましくは240℃~310℃、最も好ましくは260℃~300℃の温度で、内部混錬機、押出機及び二軸スクリューシステム等の慣用の装置において、既知のようにそれらを溶融コンパウンド化し、溶融押出することによって、ポリカーボネート樹脂を製造することができる。本出願の文脈においては、このプロセスを概してコンパウンド化と呼ぶ。
【0065】
したがって、成形コンパウンドという用語は、組成物の構成成分が溶融コンパウンド化され、溶融押出された場合に得られる生成物を意味すると理解される。
【0066】
組成物の個々の構成成分は、約20℃(室温)又はそれより高い温度のいずれかで連続的又は同時に既知のように混合することができる。すなわち、例えば、一部の構成成分を押出機の主要取り入れ口を介して添加することができ、残りの構成成分を後にコンパウンド化プロセスにおいて補助押出機を介して適用することができる。
【0067】
ポリカーボネート樹脂は、あらゆる種類の成形品の製造に使用することができる。これらは、例えば、射出成形、押出及びブロー成形プロセスによって製造することができる。加工の更なる形態は、先に製造されているシート又はフィルムからの熱成形による成形物の製造である。本発明による成形コンパウンドは、押出、ブロー成形及び熱成形法による加工に特に適している。
【0068】
また、組成物の構成成分を射出成形機又は押出ユニットに直接計量して入れて、成形物に加工してもよい。
【0069】
プロセスの詳細
アルコール
本発明による方法の工程(i)では、アルコールを使用する。アルコールは1つ以上のOH基を有し得る。アルコールは第一級、第二級又は第三級アルコールであってもよく、アルコールは脂肪族又は芳香族であってもよい。適切なアルコールの例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール及びtert-ブタノールが挙げられる。種々のアルコールの混合物を使用してもよい。アルコールは好ましくは、メタノール、エタノール、及びそれらの混合物から選択される。ポリカーボネートの解重合は、工程(ii)のアルコーリシスによって達成される。メタノールによるアルコーリシスはメタノーリシスと呼ばれる一方、エタノールによるアルコーリシスはエタノーリシスと呼ばれる。最も好ましいのはメタノールである。メタノールは、ポリカーボネート樹脂との反応性が高いという利点がある。
【0070】
工程(i)におけるアルコール対ポリカーボネート樹脂の重量比は、好ましくは0.8:1~12:1、より好ましくは0.9:1~8:1、最も好ましくは1:1~5:1である。アルコールはポリカーボネートのアルコーリシスにおいて溶媒及び試薬の両方として使用されるため、過剰にあることが好ましい。
【0071】
代替的な実施形態では、アルコールと水との混合物が使用される。この実施形態では、水と完全に混和性のアルコールを選択することが好ましい。好ましくはアルコール対水の重量比は、10:90~90:10、好ましくは25:75~75:25、より好ましくは40:60~60:40である。
【0072】
アルコールと水との混合物を使用する場合、ポリカーボネート樹脂に対するアルコール/水の混合物の重量比は、アルコール対ポリカーボネート樹脂の上述の重量比を満たすように選ばれる。
【0073】
ポリカーボネートの解重合中に水が存在すると、最終的に得られるビスフェノールA結晶の自然色がより明るくなるという利点がある。より明るい自然色は、結晶の黄色が少ないことを意味する。
【0074】
水の非存在下でポリカーボネートの脂肪族アルコールでアルコーリシスを行うと、ジアルキルカーボネート及びジオールが生成する。水の存在下でのアルコーリシスでは、CO2及びジオールが生じるが、最終的に大量のジアルキルカーボネートが得られない。
【0075】
エステル交換触媒
ポリカーボネートのアルコーリシスは、エステル交換触媒の存在下で行われる。また、種々のエステル交換触媒の混合物を使用することも可能である。
【0076】
工程(i)におけるエステル交換触媒対ポリカーボネート樹脂の重量比は、好ましくは0.001:1~3:1、より好ましくは0.01:1~2:1、最も好ましくは0.1:1~1:1である。
【0077】
選択された触媒により、請求される中程度の温度でポリカーボネートの解重合を行うことが可能になる。ゴム変性ビニル(コ)ポリマーの特性がより良好に維持されるため、低温が好ましい。温度が高すぎる場合、特にゴム弾性グラフト基材が損傷し、ガラス転移温度がより高い値に移行する可能性がある。
【0078】
好ましくは、触媒は、チタン化合物、スズ化合物、ホウ素化合物、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、マンガン化合物、ジルコニウム化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0079】
更に好ましくは、触媒は、アンモニウム化合物、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物、並びにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0080】
アルカリ土類金属化合物及びアルカリ金属化合物は、水酸化物、水素化物、アルコキシド、アリールオキシド、及び酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、ステアリン酸を含む有機酸の塩、並びにこれらの化合物の混合物からなる群より選択される。
【0081】
アンモニウム化合物及びホスホニウム化合物は、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、酢酸テトラブチルホスホニウム及びテトラブチルホスホニウムフェノラート、並びにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0082】
より好ましいエステル交換触媒は、アルカリ金属化合物、特にアルカリ金属水酸化物及びメタノラートである。更に好ましいものは、水酸化ナトリウム及びナトリウムメタノラートである。
【0083】
最も好ましいエステル交換触媒は水酸化ナトリウムである。この触媒を使用すると、低温から中程度の温度でも十分に高い解重合速度が得られる。
【0084】
プロセス条件
本プロセスは、ポリカーボネート樹脂及びその成形部品に対して使用することができる。例えばポストインダストリアル廃棄物に由来するようなポリカーボネート樹脂は通常、ペレットの形で入手可能である。ポストインダストリアル廃棄物又はポストコンシューマー廃棄物として収集される成形部品は、多くの様々な形状及びサイズを有する場合がある。方法工程(i)に従って成形部品をアルコール及びエステル交換触媒と接触させる前に、破砕又は切断等の当業者に既知のプロセスによって粒径を小さくすることが有利であるとされ得る。
【0085】
部品サイズが小さくなると、表面が増え、解重合速度も増大し得る。本発明の文脈内において、収集した成形部品のサイズを縮小するための手段は全て破砕と呼び、得られた成形部品は破砕された成形部品と呼ぶ。
【0086】
本プロセスは、撹拌機付きフラスコ及び撹拌機付き反応器等の従来の装置において実験室規模及びより大規模で行うことができる。加熱により生じた蒸気を凝縮するために、冷却媒体として冷却水ループを使用して、フラスコ又は反応器の気相に冷却器を接続してもよい。反応は密閉したフラスコ又は反応器内で実施することもできる。フラスコ又は反応器内の温度は、熱油又は熱水を循環させることによって、又は通電加熱することによって調整することができる。これらの手段は全て当業者に知られている。
【0087】
工程(i)において、スラリー(i)が得られる。本発明の文脈内において、スラリーは、液体構成成分と固体構成成分とを含む混合物である。スラリー(i)では、ポリカーボネート樹脂又は任意にそれから作られた成形部品が固体構成成分である一方、アルコールが液体構成成分である。エステル交換触媒は固体であってもよく、又は液体分に溶解していてもよい。
【0088】
工程(ii)において、ポリカーボネートがアルコーリシスによって解重合され、スラリー(ii)が得られる。ポリカーボネートの解重合により芳香族及び/又は脂肪族ジオール及び(水の非存在下では)ジアルキルカーボネートが回収され、これらが両方とも液相の一部を形成するため、スラリー(ii)はスラリー(i)と比較して固形分が少ない。100%のポリカーボネート変換、すなわち、完全な解重合が行われた場合、スラリー(ii)の固相に含まれるものは、ゴム変性ビニル(コ)ポリマー及び任意の成分Cである。
【0089】
ポリカーボネートの解重合は、60℃~90℃、好ましくは65℃~85℃の温度範囲で行う。すなわち、工程(i)においてポリカーボネート樹脂又はその任意に破砕された成形部品をアルコール及びエステル交換触媒と接触させた後、得られたスラリー(i)を工程(ii)において上述の温度範囲に加熱して、この温度に維持して、スラリー(ii)を得る。
【0090】
温度が60℃よりも低い場合、経済的なプロセスとしては解重合速度が低すぎる。温度が90℃よりも高い場合、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーのグラフト基材が損傷し、ガラス転移温度が上昇する場合があるため好ましくない。
【0091】
本プロセスは、周囲圧力、減圧、及び最大50barの加圧で実施することができる。本プロセスは周囲圧力で行うことが好ましい。
【0092】
好ましい実施形態において、方法工程(i)及び/又は方法工程(ii)は、スラリー(i)及び/又はスラリー(ii)を撹拌しながら行う。撹拌すると、ポリカーボネートの解重合速度が増大し、全体のプロセス時間を短縮することができる。適切な撹拌機は当業者に知られている。
【0093】
方法工程(ii)は、0.5時間~20時間、より好ましくは1時間~8時間、最も好ましくは3時間~5時間行うことが好ましい。ポリカーボネートの解重合が、少なくとも98%、更に好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%完了することが更に好ましい。ポリカーボネートの解重合がより完全であれば、回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマー中の不純物として固相に残る可能性のある残留オリゴカーボネートの量が減少する。
【0094】
この回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーは、新たなポリカーボネート樹脂の製造のためのポリマー配合相手として有用であるとされ得る。オリゴカーボネート等のオリゴマー物質の比率が高いと、熱変形温度が低下する等といったこれらのポリカーボネート樹脂の特性が損なわれる可能性がある。本発明による方法においてポリカーボネート変換率が高いことが好ましいのもこの理由による。
【0095】
方法工程(iii)では、スラリー(ii)の固形分及び液体分が分離される。工程(iii)は、固形分又は固形分の一部を溶解又は膨潤させるための溶媒を添加することなく行うことが好ましい。これはプロセスが単純化されるという利点を有する。更なる溶媒の使用を避けることにより、発生する廃棄物が減り、プロセスがより経済的になる。分離は濾過により行うことが好ましい。ゴム変性ビニル(コ)ポリマーは固体として濾紙上に残る。
【0096】
次いでこの固体を任意の方法工程(iv)において洗浄してもよい。洗浄液として、ポリカーボネートの解重合に使用されるアルコール及び/又は水を使用してもよい。また、単純な乾燥プロセスにおいて固形分から容易に除去し得るのであれば、固形分を別の洗浄液及び/又は希釈した酸で洗浄することも可能である。
【0097】
任意の工程(v)における液体分からの芳香族及び/又は脂肪族ジオール及びジアルキルカーボネートの分離は、初めにより低い沸点を有する構成成分、すなわち、メタノール及び/又はエタノール及びジアルキルカーボネート及び/又は水を、好ましくは減圧下での蒸発により除去することによって行うことができる。蒸発前に、液相を中和又は酸性化して、反応に使用した触媒を塩析させてもよい。残った固相は芳香族及び/又は脂肪族ジオールを含み、(任意に中和された)触媒からの塩も含み得る。芳香族及び/又は脂肪族ジオールは、ジオールと残留塩とを分離するのに適した溶媒混合物、例えば水/トルエンに溶解させてもよい。最後に、結晶化によってジオールを得ることができる。
【0098】
本発明の好ましい実施形態は以下の通りである。
【0099】
1.ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品から、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーを回収する方法であって、
ポリカーボネート樹脂が、
A)芳香族若しくは脂肪族ジオール又はそれらの混合物をベースとするポリカーボネートと、
B)ゴム変性ビニル(コ)ポリマーと、
を含み、該方法が、
i)ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品を、少なくとも1つのエステル交換触媒とともに少なくとも1つのアルコールと接触させて、スラリー(i)を得る工程であって、該スラリー(i)の固形分が、ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品を含み、該スラリー(i)の液体分がアルコールを含む、工程と、
ii)スラリー(i)を60℃~90℃、好ましくは65℃~85℃に加熱するとともに、該温度を維持して、スラリー(ii)を得る工程であって、該スラリー(ii)の固形分がゴム変性ビニル(コ)ポリマーを含み、該スラリーの液体分が脂肪族及び/又は芳香族ジオールを含む、工程と、
iii)スラリー(ii)の液体分から固形分を分離する工程と、
iv)任意に、固形分を洗浄する工程と、
を含み、
スラリー(i)及びスラリー(ii)が両方ともアンモニア及びアンモニウム塩を含まない、方法。
【0100】
2.ポリカーボネートが、アルコーリシスによって解重合される、実施形態1に記載の方法。
【0101】
3.工程(i)におけるアルコール対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.8:1~12:1である、実施形態1又は2に記載の方法。
【0102】
4.工程(i)におけるアルコール対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.9:1~8:1である、実施形態1又は2に記載の方法。
【0103】
5.工程(i)におけるアルコール対ポリカーボネート樹脂の重量比が1:1~5:1である、実施形態1又は2に記載の方法。
【0104】
6.スラリー(i)が、アルコール対水の重量比10:90~90:10で水を更に含む、更なる実施形態のいずれかに記載の方法。
【0105】
7.アルコール対水の重量比が25:75~75:25である、実施形態6に記載の方法。
【0106】
8.アルコール対水の重量比が40:60~60:40である、実施形態6に記載の方法。
【0107】
9.工程(i)で使用されるアルコールが、メタノール、エタノール、及びそれらの混合物から選択される、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0108】
10.アルコールがメタノールである、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0109】
11.エステル交換触媒が、チタン化合物、スズ化合物、ホウ素化合物、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、マンガン化合物、ジルコニウム化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及びそれらの混合物からなる群より選択される、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0110】
12.エステル交換触媒がアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0111】
13.エステル交換触媒がアルカリ金属水酸化物又はメタノラートである、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0112】
14.エステル交換触媒が水酸化ナトリウムである、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0113】
15.工程(i)におけるエステル交換触媒対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.001:1~3:1である、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0114】
16.工程(i)におけるエステル交換触媒対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.01:1~2:1である、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0115】
17.工程(i)におけるエステル交換触媒対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.1:1~1:1である、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0116】
18.工程(ii)における温度が65℃~85℃である、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0117】
19.工程(ii)における温度が75℃~85℃である、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0118】
20.工程(ii)を0.5時間~20時間行う、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0119】
21.工程(ii)を1時間~8時間行う、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0120】
22.工程(ii)を3時間~5時間行う、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0121】
23.工程(i)及び/又は工程(ii)において、スラリー(i)及び/又はスラリー(ii)を撹拌する、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0122】
24.固形分又は固形分の一部を溶解又は膨潤させる溶媒を添加することなく、工程(iii)を行う、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0123】
25.工程(iii)を濾過によって行う、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0124】
26.工程(iv)を行い、この工程を、メタノール、エタノール、それらの混合物から選択されるアルコール、及び任意に水で実施する、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0125】
27.更なる工程(v)において、芳香族及び/又は脂肪族ジオールを液体分から分離する、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0126】
28.工程(v)において、ジオールを結晶化によって分離する、実施形態27に記載の方法。
【0127】
29.ポリカーボネートが、ビスフェノールA由来の構造単位を含む芳香族ポリカーボネートである、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0128】
30.ゴム変性ビニル(コ)ポリマーBが、
B.1 成分Bに対して5重量%~95重量%の少なくとも1つのビニルモノマーを、
B.2 DIN EN 61006(1994年版)に準拠した動的示差走査熱量測定(DSC)によって加熱速度10K/分で、中点温度としてのTgの決定により決定される、-10℃未満のガラス転移温度を有する、成分Bに対して95重量%~5重量%の1つ以上のゴム弾性グラフト基材上に、
含む、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0129】
31.ゴム変性ビニル(コ)ポリマーがアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンである、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0130】
32.回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーが、実験パートに開示されるように測定した-80℃未満のゴム相のガラス転移温度を有する、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0131】
33.回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーが、実験パートに開示されるように測定した-85℃未満のゴム相のガラス転移温度を有する、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0132】
34.ポリカーボネート樹脂が、成分Cとして、好ましくは、難燃剤、滴下防止剤、難燃助剤、発煙防止剤、潤滑剤及び離型剤、核剤、帯電防止剤、導電性添加剤、流動促進剤、相溶化剤、成分A及び成分B以外の更なるポリマー構成成分、充填剤及び強化剤、並びに染料及び顔料からなる群より選択される1つ以上のポリマー添加剤、すなわちポリマー成分を更に含む、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0133】
35.ポリカーボネートの製造における、実施形態27又は28に記載の方法において回収された芳香族及び/又は脂肪族ジオールの使用。
【0134】
36.ポリカーボネート配合物中における配合相手としての、実施形態1~34のいずれかに記載の方法において回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーの使用。
【0135】
37.成形部品の製造における、実施形態1~34のいずれかに記載の方法において回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーの使用。
【0136】
38.実施形態1~34のいずれかに記載の方法において回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーを含む、ポリカーボネート配合物。
【0137】
39.実施形態1~34のいずれかに記載の方法において回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーを含む、成形部品。
【0138】
実験パート
180gのPC-ABS配合物を、以下の成分から二軸スクリュー押出機ZSK-25(Werner & Pfleiderer)によりマス温度260℃で調製した。
A)26000g/molの重量平均分子量(溶媒として塩化メチレン、及びビスフェノールAポリカーボネート標準を使用して室温でゲル浸透クロマトグラフィーにより決定)を有するビスフェノールAベースのポリカーボネート(Makrolon(商標)M.2600、Covestro)70重量部
B)23:10:67のアクリロニトリル:ブタジエン:スチレン比を有するABS(Magnum(商標)3404、Trinseo)30重量部。遊離スチレン-アクリロニトリルコポリマーの重量平均分子量は160.000g/mol(テトラヒドロフラン中でポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定)
C)離型剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート、Cognis Oleochemicals)0.3重量部、及び熱安定剤(Irganox(商標)1076、BASF)0.1重量部
【0139】
180gのPC-ABSを、166.65gの50重量%NaOH水溶液(Acros Organics、分析用)、216.66gのメタノール(Sigma Aldrich、分析用)及び216.66gの脱塩水とともに、水道水によって冷却する凝縮器を備えた1000ml容のフラスコに導入し、スラリー(i)を得た。スラリー(i)を、マグネティックスターラーを使用して、周囲圧力における混合物の沸点である77℃で240分間撹拌した。240分後、溶液中に固体粒子を含有するスラリー(ii)が得られ、孔径4μm~7μmのプリーツ状の濾紙(Whatman 595 1/2タイプ)で濾過すると、濾紙上にABS固体粒子が残った。ABS固体粒子を1200gのメタノールで洗浄し、1600gの脱塩水で5回洗浄した。ABS粒子を70℃の炉内で一晩乾燥させ、以下で説明するように分析した。
【0140】
ビスフェノールAを含有する液体分を37%HCl(供給業者:Sigma Aldrich、37%ACS試薬)でpH 2~3に酸性化し、水とメタノールとを含有する液体を90℃の温度で蒸発させると、周囲圧力から始まり20mbarまで減圧した。NaClとBPAとを含有する残りの固体は、900gの脱塩水と1200gのトルエンとの混合物(供給業者:Merck、分析用)に90℃で溶解させた。水相及びトルエン相を分液漏斗に通して90℃で分離し、トルエン画分を約5℃の温度まで冷却した。これらの条件で、ビスフェノールAが溶媒から結晶化するため、濾過によりビスフェノールA結晶を選択的に分離することが可能である。この濾過にも、孔径4μm~7μmのプリーツ状の濾紙(Whatman 595 1/2タイプ)を使用した。
【0141】
回収されたABS粉末の品質は、ガラス転移温度及び相形態に関して評価し、未使用のABS(Magnum(商標)3404、Trinseo)と比較した。
【0142】
回収されたABS及び未使用のABSのガラス転移温度Tgは、DIN EN ISO 6721-7規格に準拠して、周波数1Hz、加熱速度3K/分、-150℃から損失弾性率(G’’)曲線のピーク最大値に関連する温度である材料の軟化までの温度範囲で、非共振ねじりモード(剪断弾性率G*(T))における動的機械分析(DMA)を使用して測定した。結果を表1にまとめる。
【0143】
【0144】
表1から分かるように、ポリブタジエン及びSANの両方のガラス転移温度は非常に類似している。特にTg(ポリブタジエン)は、回収されたABS中のゴムグラフト基材がそのエラストマー特性を維持していることを示しており、したがって、このABSをこの種の材料の標準的な用途に使用することができることが期待され得る。
【0145】
機械的データに加えて、相形態も調査した。
【0146】
OsO4で造影した後、回収したABS及び未使用のABSの両方の超薄切片のTEM画像を作成した(Hitachi製のHT7800で作成)。回収されたABSは粉末状態で得られるため、超薄切片を作成する前に、80℃で少なくとも4時間乾燥させた後、プレスする必要があった。ABS原料を使用した対照実験では、プレス操作が形態に影響を及ぼさないことが証明された。
【0147】
図1は回収されたABSのTEM画像であるのに対し、
図2は、PC-ABS樹脂の調製に使用される未使用のABS原料のTEM画像である。
【0148】
画像は、両方のABS材料について同じ形態及び同じドメインサイズを示しており、本発明による方法がゴム変性ビニル(コ)ポリマーの特性を維持することを更に裏付けるものとなる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品から、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーを回収する方法であって、
前記ポリカーボネート樹脂が、
A)芳香族若しくは脂肪族ジオール又はそれらの混合物をベースとするポリカーボネートと、
B)ゴム変性ビニル(コ)ポリマーと、
を含み、該方法が、
i)前記ポリカーボネート樹脂又はそれから作られた任意に破砕された成形部品を、少なくとも1つのエステル交換触媒とともに少なくとも1つのアルコールと接触させて、スラリー(i)を得る工程であって、該スラリー(i)の固形分が、前記ポリカーボネート樹脂又は前記それから作られた任意に破砕された成形部品を含み、該スラリー(i)の液体分が前記アルコールを含む、工程と、
ii)前記スラリー(i)を60℃~90℃、好ましくは65℃~85℃に加熱するとともに、該温度を維持して、スラリー(ii)を得る工程であって、該スラリー(ii)の固形分がゴム変性ビニル(コ)ポリマーを含み、該スラリーの液体分が脂肪族及び/又は芳香族ジオールを含む、工程と、
iii)前記スラリー(ii)の液体分から固形分を分離する工程と、
iv)任意に、前記固形分を洗浄する工程と、
を含み、
スラリー(i)及びスラリー(ii)が両方ともアンモニア及びアンモニウム塩を含まない、方法。
【請求項2】
スラリー(i)が、アルコール対水の重量比10:90~90:10で水を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固形分又は前記固形分の一部を溶解又は膨潤させる溶媒を添加することなく、工程(iii)を行う、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)における温度が75℃~85℃である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エステル交換触媒が、アルカリ金属水酸化物又はメタノラート、好ましくは水酸化ナトリウムである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(i)におけるエステル交換触媒対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.1:1~1:1である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)におけるアルコール対ポリカーボネート樹脂の重量比が0.8:1~12:1である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーが、実験パートに開示されるように測定した-80℃未満のゴム相のガラス転移温度を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリカーボネート配合物中における配合相手としての、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法において回収されたゴム変性ビニル(コ)ポリマーの使用。
【国際調査報告】