(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】接着剤組成物の硬化性前駆体
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20241219BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535219
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 IB2022061143
(87)【国際公開番号】W WO2023111722
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】小関 大揮
(72)【発明者】
【氏名】檀上 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】田坂 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ザッカリー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040FA131
4J040GA01
4J040HC01
4J040HD43
4J040KA23
4J040KA25
4J040NA16
4J040NA19
(57)【要約】
本開示は、(a)ラジカル(共)重合性化合物、(b)バナジウム化合物、(c)β-ジカルボニル化合物、及び(d)第四級アンモニウムハライドを含む、接着剤組成物の硬化性前駆体に関する。本開示は更に、前記硬化性前駆体を硬化させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物の硬化性前駆体であって、
(a)ラジカル(共)重合性化合物、
(b)バナジウム化合物、
(c)β-ジカルボニル化合物、及び
(d)第四級アンモニウムハライド
を含む、硬化性前駆体。
【請求項2】
第1の部分と第2の部分とを含み、前記第1の部分が前記ラジカル(共)重合性化合物を含み、
(i)前記第1の部分が前記バナジウム化合物及び前記第四級アンモニウムハライドを含み、かつ前記第2の部分が前記β-ジカルボニル化合物を含むか、又は
(ii)前記第1の部分が前記β-ジカルボニル化合物を含み、かつ前記第2の部分が前記バナジウム化合物及び前記第四級アンモニウムハライドを含むか
のいずれかである、請求項1に記載の硬化性前駆体。
【請求項3】
前記第2の部分が、
(e)前記ラジカル(共)重合性化合物をラジカル(共)重合させるための開始剤
を更に含む、請求項2に記載の硬化性前駆体。
【請求項4】
前記開始剤が有機過酸化物である、請求項3に記載の硬化性前駆体。
【請求項5】
前記ラジカル(共)重合性化合物が(メタ)アクリレートを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項6】
前記ラジカル(共)重合性化合物が、1を超える官能価を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項7】
前記ラジカル(共)重合性化合物が、少なくとも2の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項8】
前記ラジカル(共)重合性化合物が、少なくとも3の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項9】
前記硬化性前駆体の前記ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、少なくとも30重量パーセントの、前記少なくとも3の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項8に記載の硬化性前駆体。
【請求項10】
前記硬化性前駆体の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量パーセントの前記バナジウム化合物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項11】
前記β-ジカルボニル化合物が、式
【化1】
[式中、
X
1及びX
2は、独立して、共有結合、O、S、
【化2】
(式中、各R
4は、独立して、水素、又は1個~18個の炭素原子を有するアルキルを表す)を表し、
R
1及びR
2は、独立して、1個~18個の炭素原子を有する、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、
R
3は、水素、又は1個~18個の炭素原子を有する、ヒドロカルビル基若しくは置換ヒドロカルビル基を表すか、
あるいは、R
1、R
2、又はR
3のうちの任意の2つが一緒になって、5員環又は6員環を形成している]
によって表されるか、又はその塩である、請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項12】
前記β-ジカルボニル化合物が、8個~14個の炭素原子を有するジアルキル2-アセチルスクシネートジエステルを含む、請求項11に記載の硬化性前駆体。
【請求項13】
前記バナジウム化合物がバナジルアセチルアセトネートを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項14】
前記硬化性前駆体の前記第1の部分が、単官能性(メタ)アクリレートを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項15】
疎水性溶媒を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項16】
チキソトロープ剤を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項17】
請求項2~16のいずれか一項に記載の前記接着剤組成物の硬化性前駆体を硬化させる方法であって、
請求項2~16のいずれか一項に記載の、第1の部分及び第2の部分を含む硬化性前駆体を提供すること、
接触面を有する第1の基材と、接触面を有する第2の基材とを準備すること、
前記硬化性前駆体の前記第1の部分を、前記第1の基材の前記接触面の少なくとも一部の上に適用すること、
前記硬化性前駆体の前記第2の部分を、前記第2の基材の前記接触面の少なくとも一部の上に適用すること、並びに
前記第1の基材の前記接触面上の前記硬化性前駆体の前記第1の部分を、前記第2の基材の前記接触面上の前記硬化性前駆体の前記第2の部分と接触させることによって、前記接着剤組成物の前記硬化性前駆体を硬化させること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラジカル(共)重合性化合物、バナジウム化合物、β-ジカルボニル化合物、及び第四級アンモニウムハライドを含む、接着剤組成物の硬化性前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物は、接着剤及びコーティングなどの汎用産業用途、並びに、例えば、電子部品の封止及び結合などの電子産業における高性能用途を含む様々な用途での使用に好適なものとして、長年公知である。長年にわたる硬化性組成物の広範な使用により、性能要件は、特に、硬化プロファイル、接着性能、貯蔵安定性、取り扱い性、及び加工性の特性、並びに環境及び健康要件の遵守に関して、ますます厳しいものになっている。
【0003】
電気モータ、例えば自動車用電気モータでは、モータコアは鋼板を積層することによって作製される。通常、積層は、ダボを使用して束ねることによって行われる。この方法の弱点は、積層したモータコアに電気的短絡に起因する鉄損が発生すること、及びとりわけ鋼板が比較的薄い場合に、積層したコアの強度が不十分となることである。
【0004】
これらの弱点を克服するために、接着剤を使用した積層方法が研究されている。この用途のための接着剤に対する要件は、高い接着強度、モータコアにおける積層鋼板を高い充填率とするための薄い結合線厚さ、モータコアを高い費用対効果で大量生産するための迅速な硬化、及び使用中のモータにおいて発生する熱に耐えるための高温耐久性である。
【0005】
迅速な硬化速度を達成するために、促進剤を含む嫌気性接着剤が使用されてきた。このタイプの接着剤の欠点は、高温での接着強度が低いこと、及び空気の存在によってとりわけ接着剤層の端部で硬化不良が起こる傾向があることである。
【0006】
高い接着強度を達成するために、1成分型熱硬化性エポキシ接着剤が使用されてきた。このタイプの接着剤は加熱プロセスを要し、望ましくない。また、2成分型エポキシ又はアクリル系接着剤が使用されてきた。このタイプの接着剤は、混合工程を要し、更なる取り扱いに必要な強度を達成するのに長時間を要する。
【0007】
国際公開第2016/053877(A1)号は、硬化性組成物を硬化させる方法であって、硬化性組成物が、フリーラジカル重合性化合物、第四級アンモニウムハライド、及び硬化性組成物をフリーラジカル硬化させるための多価金属化合物を含む、方法を開示している。多価金属化合物は、銅(II)化合物、鉄(II若しくはIII)化合物、コバルト(II若しくはIII)化合物、又はマンガン(III若しくはIII)化合物を含む。硬化性組成物の硬化のために、固体プライマー層が上に配置された基材を硬化性組成物と接触させるが、固体プライマー層はバインダー材料及び有機過酸化物を含む。この方法の欠点は、典型的には30分間乾燥させる必要があるプライマー層が必要であることに起因する、長い加工時間、及び30分~24時間という比較的長い硬化時間である。
【0008】
米国特許第6,552,140(B1)号は、フリーラジカル重合性モノマー、フリーラジカル重合性モノマーの重合のための活性化剤系、可溶性イオン性塩、及び弱酸又は潜在性弱酸を含む、空気で活性化可能な重合性組成物であって、この活性化剤系が、βジケトンである自己酸化性化合物を含む、重合性組成物を開示している。空気で活性化可能な組成物は、過酸化物、又は空気の非存在下で過酸化物を生成する過酸化物前駆体、又は空気の非存在下でラジカルの重要な供給源である一切の成分を含有しない。
【0009】
接着剤組成物の最終的な接着強度を犠牲にすることなく、迅速な取り扱い強度を達成する、すなわち、依然として良好な最終性能を有しながら、非常に迅速に接着強度を与えるというバランスを達成する、接着剤組成物の硬化性前駆体が依然として必要とされている。
【0010】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換的に使用される。「含む」という用語は、「から本質的になる」及び「からなる」という用語も含むものとする。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、本開示は、接着剤組成物の硬化性前駆体であって、
(a)ラジカル(共)重合性化合物、
(b)バナジウム化合物、
(c)β-ジカルボニル化合物、及び
(d)第四級アンモニウムハライド
を含む、硬化性前駆体に関する。
【0012】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、第1の部分と第2の部分とを含んでもよく、第1の部分はラジカル(共)重合性化合物を含み、
(i)第1の部分がバナジウム化合物及び第四級アンモニウムハライドを含み、かつ第2の部分がβ-ジカルボニル化合物を含むか、又は
(ii)第1の部分がβ-ジカルボニル化合物を含み、かつ第2の部分がバナジウム化合物及び第四級アンモニウムハライドを含むか
のいずれかである。
【0013】
別の態様では、本開示はまた、本明細書に開示される接着剤組成物の硬化性前駆体を硬化させる方法であって、
本明細書に開示される、第1の部分及び第2の部分を含む硬化性前駆体を提供すること、
接触面を有する第1の基材と、接触面を有する第2の基材とを準備すること、
硬化性前駆体の第1の部分を、第1の基材の接触面の少なくとも一部の上に適用すること、
硬化性前駆体の第2の部分を、第2の基材の接触面の少なくとも一部の上に適用すること、
第1の基材の接触面上の硬化性前駆体の第1の部分を、第2の基材の接触面上の硬化性前駆体の第2の部分と接触させることによって、接着剤組成物の硬化性前駆体を硬化させること
を含む、方法に関する。
【0014】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、迅速な硬化を可能にする。迅速な硬化によって、硬化性前駆体を、費用対効果の高い大量生産における用途、例えば、自動車等の電気モータのモータコア用鋼板の積層に使用することが可能となる。
【0015】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、短い硬化時間の後には既に、良好な取り扱い強度を有する。「良好な取り扱い強度」とは、2つの基材が独立して動くことなく、結合物を移動させることができることを意図する。取り扱い強度は、3kgの錘を吊るして0.1MPaの応力を結合物に生じさせ、結合物が少なくとも10秒間保持されるかどうかを確認することによって試験することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される硬化性前駆体は、わずか30秒の硬化時間後に、室温(23℃)で0.1MPa以上の剪断応力に耐えることができる。
【0016】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、室温で硬化させることができる。硬化させるために、UV光又は熱などの追加の手段を要しない。
【0017】
本明細書に開示される硬化性前駆体を硬化させるために、硬化性前駆体の第1の部分と第2の部分とを、別途混合する工程を要しない。硬化性前駆体の第1の部分は、接合される第1の基材の接触面上に適用され、硬化性前駆体の第2の部分は、接合される第2の基材の接触面上に適用され、硬化は、第1の基材の接触面上の硬化性前駆体の第1の部分を、第2の基材の接触面上の硬化性前駆体の第2の部分と、接触させることによって生じる。硬化は、第1の基材と第2の基材とが合わせられるまで始まらず、接続すると、2つの部分が拡散によって自発的に混合し、硬化して結合強度を提供する。硬化性前駆体は、一切の物理的に混合するプロセスも伴わずに、実質的に一様に硬化させることができる。
【0018】
本明細書に開示される硬化性前駆体によって、モータコアにおける積層鋼板を高い充填率とするためには重要である、薄い結合線厚さが可能となる。
【0019】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、使用中のモータにおいて発生する熱に耐えるために要求される、良好な高温安定性及び耐久性を有する。
【0020】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、高い接着強度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される硬化性前駆体は、180℃で2MPa以上の高い接着強度を有するが、これは48時間の硬化時間後には既に得ることができる。
【0021】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、in situで過酸化物を発生させる、空気活性化開始剤を有する。開始剤は、β-ジカルボニル化合物及びバナジウム化合物を含む。空気活性化開始剤によって、とりわけ接着剤層の端部における、硬化不良の傾向が低減する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
接着剤組成物の硬化性前駆体であって、
(a)ラジカル(共)重合性化合物、
(b)バナジウム化合物、
(c)β-ジカルボニル化合物、及び
(d)第四級アンモニウムハライド
を含む、硬化性前駆体が、本明細書に開示される。
【0023】
「硬化性前駆体」は、開始剤を使用して硬化させることができる組成物を示すことを意図する。
【0024】
「ラジカル(共)重合性化合物」は、フリーラジカルを含有するか又は生成することができる開始剤を使用して硬化させることができる化合物を示すことを意図する。ラジカル(共)重合性化合物は、1つのみ、2つ、又は3つ以上のラジカル重合性基を含有してもよい。ラジカル(共)重合性基の典型的な例としては、不飽和炭素基、例えば(メタ)アクリレート基中に存在するビニル基が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「(共)重合性」は、「重合性」及び/又は「共重合性」を指す短縮語である。
【0026】
バナジウム化合物は、硬化性前駆体中で(溶液又は分散液として)安定であり、すなわち、底部に沈降しない限り、かつ全体によく混ざって、接着剤組成物の均一でむらのない硬化が確保される限り、特に限定されない。本明細書で使用するのに好適なバナジウム化合物は、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、酸化バナジウムアセチルアセトネート、シュウ酸バナジル、塩化バナジウム、酸化バナジウム、及び硫酸バナジウムである。
【0027】
好ましくは、バナジウム化合物は、バナジルアセチルアセトネートを含む。
【0028】
硬化性前駆体に含まれる第四級アンモニウムハライドは、硬化性組成物中に少なくとも部分的に可溶性である。第四級アンモニウムハライドは、硬化性前駆体のむらのない完全な硬化を確保するために、硬化性前駆体全体にわたって良好に分布したまま留まるべきである。第四級アンモニウムハライドは、接着剤組成物の硬化の程度を改善し得る。
【0029】
好適な第四級アンモニウムハライドとしては、4つのヒドロカルビル基(例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、アルカリール、及び/又はアリール)を有するものが挙げられる。好ましくは、ヒドロカルビル基は、独立して、1個~18個の炭素原子、より好ましくは1個~12個の炭素原子、より好ましくは1個~4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。好適なヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシル、ベンジル、フェニル、トリル、シクロヘキシル、並びにメチルシクロヘキシルが挙げられる。例示的な好適な第四級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムハライド、テトラエチルアンモニウムハライド、テトラプロピルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライド、エチルトリメチルアンモニウムハライド、ジエチルジメチルアンモニウムハライド、トリメチルブチルアンモニウムハライド、トリオクチルメチルアンモニウムハライド、及びベンジルトリブチルアンモニウムハライドが挙げられる。任意のハライド(例えば、F、Cl、Br、I)イオンを第四級アンモニウムハライドに使用してよいが、好ましくは、ハライドイオンは、塩化物又は臭化物、より好ましくは塩化物である。
【0030】
いくつかの実施形態では、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドが、第四級アンモニウムハライドとして使用される。
【0031】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、0.01重量パーセント~5重量パーセント、好ましくは0.1重量パーセント~2重量パーセントの第四級アンモニウムハライドを含んでもよい。
【0032】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、典型的には、第1の部分と第2の部分とを含む。第1の部分はラジカル(共)重合性化合物を含む。バナジウム化合物、β-ジカルボニル化合物、及び第四級アンモニウムハライドは、次の2つの選択肢のうちの1つに従って、硬化性前駆体の第1の部分と第2の部分との間で分配される:
(i)第1の部分がバナジウム化合物及び第四級アンモニウムハライドを含み、かつ第2の部分がβ-ジカルボニル化合物を含む、又は
(ii)第1の部分がβ-ジカルボニル化合物を含み、かつ第2の部分がバナジウム化合物及び第四級アンモニウムハライドを含む。
【0033】
これは、バナジウム化合物とβ-ジカルボニル化合物とが、硬化性前駆体の異なる部分に存在し、第四級アンモニウムクロリドとβ-ジカルボニル化合物とも、硬化性前駆体の異なる部分に存在することを意味する。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、バナジウム化合物、β-ジカルボニル化合物、及び第四級アンモニウムハライドは、選択肢(i)に従って、硬化性前駆体の第1の部分と第2の部分との間で分配され、すなわち、第1の部分がバナジウム化合物及び第四級アンモニウムハライドを含み、第2の部分がβ-ジカルボニル化合物を含む。
【0035】
硬化性前駆体の第2の部分は、好ましくは、
(e)ラジカル(共)重合性化合物をラジカル(共)重合させるための開始剤
を更に含む。
【0036】
「開始剤」という用語は、硬化性前駆体の硬化プロセスを始める若しくは開始させるか又はそれに寄与することができる、すなわち、ラジカル(共)重合性化合物のラジカル(共)重合を始める若しくは開始させるか又はそれに寄与することができる物質又は物質群を指すことを意図する。
【0037】
硬化性前駆体に含まれるバナジウム化合物及びβ-ジカルボニル化合物は、過酸化物開始剤をin situで、すなわち、硬化性前駆体の2つの異なる部分に含まれるバナジウム化合物とβ-ジカルボニル化合物とを接触させた後に、形成することができる。バナジウム化合物とβ-ジカルボニル化合物とを接触させた後、ラジカル(共)重合性化合物をラジカル(共)重合させるための開始剤の機能を有する過酸化物のin situ形成によって、空気に活性化された硬化が始まる。硬化性前駆体のいくつかの実施形態では、硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物をラジカル(共)重合させるための追加の開始剤(e)を含む。開始剤(e)は、バナジウム化合物とβ-ジカルボニル化合物との間の反応によってin situで形成される開始剤に加えて、硬化性前駆体に含まれる。追加の開始剤(e)は、硬化性前駆体の第2の部分に含まれる。開始剤(e)を添加することによって、硬化時間が減少し得る。
【0038】
追加の開始剤(e)は、有機過酸化物であってもよい。
【0039】
有機過酸化物は、単官能性又は多官能性のカルボン酸ペルオキシエステルであってもよい。市販の有機過酸化物としては、例えば、ペルオキシカルボン酸のt-アルキルエステル、モノペルオキシカルボン酸のt-アルキルエステル、ジペルオキシジカルボン酸のジ(t-アルキル)エステル、ペルオキシカルボン酸のアルキレンジエステル、ジアルキルペルオキシジカーボネート、及びモノペルオキシ炭酸のO,O-t-アルキルO-アルキルジエステルが挙げられる。例示的な(Examplary)有機過酸化物としては、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-アミルペルオキシネオデカノエート、マレイン酸t-ブチルモノペルオキシエステル、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、O-イソプロピルO,O-t-ブチルモノペルオキシカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシカーボネート、ジミリスチルペルオキシカーボネート、ジセチルペルオキシカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシカーボネート、O,O-t-ブチルO-2-エチルヘキシルペルオキシカーボネート、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシカーボネート、クミルペルオキシネオデカノエート、t-アミルペルオキシピバレート、クメンヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、及びt-ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。更に好適な有機過酸化物が、当業者には公知である。
【0040】
好ましい追加の開始剤(e)は、クメンヒドロペルオキシドである。
【0041】
典型的には、追加の開始剤(e)の量は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、0.1重量パーセント~20重量パーセント、好ましくは0.2重量パーセント~10重量パーセント、より好ましくは0.3重量パーセント~5重量パーセントである。
【0042】
硬化性前駆体は、少なくとも1種のラジカル(共)重合性化合物を含む。有用なラジカル(共)重合性化合物は、1つ以上の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の)ラジカル(共)重合性基を有するエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。
【0043】
本明細書に開示される硬化性前駆体のラジカル(共)重合性化合物は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、他のビニル化合物、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0044】
本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を指す短縮語である。例えば、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド」及び/又は「メタクリルアミド」を指す。
【0045】
好ましくは、本明細書に開示される硬化性前駆体のラジカル(共)重合性化合物は、(メタ)アクリレートを含む。(メタ)アクリレートは、モノマーであっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよい。
【0046】
「モノマー」は、重合させてオリゴマー又はポリマーにすることにより分子量を増加させることができる、ラジカル重合性不飽和基((メタ)アクリレート基を含む)を有する化学式によって特徴付けることができる任意の化学物質である。通常、モノマーの分子量は、与えられた化学式に基づいて単純に計算することができる。
【0047】
「ポリマー」又は「ポリマー材料」は、互換的に使用されて、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを指す。
【0048】
いくつかの実施形態では、ラジカル(共)重合性化合物は、1を超える官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、ラジカル(共)重合性化合物は、少なくとも2の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、ラジカル(共)重合性化合物は、少なくとも3の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。
【0051】
「1の官能価」とは、(メタ)アクリレートが単官能性(メタ)アクリレートであることを意図する。「2の官能価」とは、(メタ)アクリレートが二官能性(メタ)アクリレートであることを意図する。「3の官能価」とは、(メタ)アクリレートが三官能性(メタ)アクリレートであることを意図する。「単官能性(メタ)アクリレート」は、1つの(メタ)アクリロイル官能基を有する(構造H2C=CH-C(=O)-を有する、「(メタ)アクリリル」又は単に「(メタ)アクリル」官能基と称されることもある)、(メタ)アクリレート化合物を示すことを意図する。「二官能性(メタ)アクリレート」は、2つの(メタ)アクリロイル官能基を有する(メタ)アクリレート化合物を示すことを意図する。「三官能性(メタ)アクリレート」は、3つの(メタ)アクリロイル官能基を有する(メタ)アクリレート化合物を示すことを意図する。
【0052】
「1を超える官能価」とは、(メタ)アクリレートの官能価が1を超えること、すなわち、官能価が2若しくは3、又は1を超えかつ2未満の非整数、又は2を超えかつ3未満の非整数、又は3を超える非整数であってもよいことを意図する。非整数官能価を有する(メタ)アクリレートの例は、1つのオリゴマー当たり平均2.3個の側鎖で(すなわち、オリゴマー分子のうちのいくつかが2個の側鎖を有し、オリゴマー分子のうちの他のいくつかが3個の側鎖を有し、全オリゴマー分子について平均2.3個の側鎖で)(メタ)アクリレート側鎖を有するオリゴマーである、(メタ)アクリレートである。このオリゴマーは、平均2.3個の(メタ)アクリロイル官能基を有するので、2.3の官能価を有する(メタ)アクリレートである。
【0053】
「少なくとも2の官能価」とは、(メタ)アクリレートの官能価が2以上であること、すなわち、官能価が2若しくは3、又は2を超えかつ3未満の非整数、又は3を超える非整数であってもよいことを意図する。
【0054】
「少なくとも3の官能価」とは、(メタ)アクリレートの官能価が3以上であること、すなわち、官能価が3、又は3を超える非整数であってもよいことを意図する。
【0055】
好適な単官能性(メタ)アクリレートの例としては、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
好適な二官能性(メタ)アクリレートの例としては、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[1-(2-(メタ)アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-(メタ)アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0057】
好適な三官能性(メタ)アクリレートの例としては、1,2,4-ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(5,5)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
3を超える官能価を有する好適な(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0059】
好適な単官能性(メタ)アクリルアミドの例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。
【0060】
好適な二官能性(メタ)アクリルアミドの例は、メチレンビス(メス)アクリルアミドである。
【0061】
(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドモノマーのオリゴマーを使用してもよい。
【0062】
好適な(メタ)アクリレートの更なる例としては、不飽和カルボン酸のモノマー及びオリゴマー、例えば、(メタ)アクリル酸及び芳香族(メタ)アクリル化酸(例えば、メタクリル化トリメリット酸)が挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸は、単官能性(メタ)アクリレートの例である。
【0063】
いくつかの実施形態では、硬化性前駆体はメタクリル酸を含む。メタクリル酸の量は、硬化性前駆体の総量に基づいて、10重量パーセント~50重量パーセントであってもよい。
【0064】
好適なラジカル(共)重合性ビニル化合物の例としては、スチレン、ジアルキルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、及びジビニルフタレートが挙げられる。他の好適なラジカル(共)重合性化合物としては、例えば、国際公開第00/38619号(Guggenbergerら)、同第01/92271号(Weinmannら)、同第01/07444号(Guggenbergerら)、同第00/42092号(Guggenbergerら)に開示されているシロキサン官能性(メタ)アクリレート、並びに例えば、米国特許第5,076,844号(Fockら)、同第4,356,296号(Griffithら)、欧州特許第0373384号(Wagenknechtら)、同第0201031号(Reinersら)、及び同第0201778号(Reinersら)に開示されているフルオロポリマー官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
好適なラジカル(共)重合性化合物は、ヒドロキシル基とラジカル活性官能基とを、単一分子中に含有していてよい。このような材料の例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ-又はジ-(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ-又はジ-(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ-、ジ-、及びトリ-(メタ)アクリレート、ソルビトールモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、又はペンタ-(メタ)アクリレート、並びに2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メチアクリルオキシプロポキシ(methyacryloxypropoxy))フェニル]プロパン(BisGMA)が挙げられる。
【0066】
好適なラジカル(共)重合性化合物は、例えば、Sartomer Co.(Exton,Pennsylvania)等の広範な商業的供給元から入手可能であるか、又は公知の方法によって作製することができる。
【0067】
典型的には、硬化性前駆体は、所望の固化(hardening)又は硬化(curing)速度、及び硬化/固化後の所望の全体的特性を提供するために、十分な量のラジカル(共)重合性化合物を含む。必要に応じて、ラジカル(共)重合性化合物の混合物を使用してもよい。
【0068】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、少なくとも20重量パーセントのラジカル(共)重合性化合物を含んでもよい。
【0069】
典型的には、ラジカル(共)重合性化合物の量は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、硬化性前駆体の20重量パーセント~99.9重量パーセント、又は25重量パーセント~98重量パーセント、又は25重量パーセント~95重量パーセントである。
【0070】
いくつかの実施形態では、ラジカル(共)重合性化合物の量は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、硬化性前駆体の75重量パーセント~99.9重量パーセント、好ましくは80重量パーセント~98重量パーセント、より好ましくは85重量パーセント~95重量パーセントである。
【0071】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、少なくとも20重量パーセントの(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0072】
(メタ)アクリレートの量は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、硬化性前駆体の20重量パーセント~99.9重量パーセント、又は25重量パーセント~98重量パーセント、又は25重量パーセント~95重量パーセントであってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートの量は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、硬化性前駆体の75重量パーセント~99.9重量パーセント、好ましくは80重量パーセント~98重量パーセント、より好ましくは85重量パーセント~95重量パーセントである。
【0074】
硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、少なくとも30重量パーセント、好ましくは少なくとも35重量パーセントの、1を超える官能価を有する(メタ)アクリレートを含んでもよい。いくつかの実施形態では、硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、少なくとも40重量パーセント、又は少なくとも45重量パーセント、又は少なくとも50重量パーセントの、1を超える官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。
【0075】
硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、少なくとも30重量パーセント、好ましくは少なくとも35重量パーセントの、少なくとも2の官能価を有する(メタ)アクリレートを含んでもよい。いくつかの実施形態では、硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、少なくとも40重量パーセント、又は少なくとも45重量パーセント、又は少なくとも50重量パーセントの、少なくとも2の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。
【0076】
硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、少なくとも30重量パーセント、好ましくは少なくとも35重量パーセントの、少なくとも3の官能価を有する(メタ)アクリレートを含んでもよい。いくつかの実施形態では、硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、少なくとも40重量パーセント、又は少なくとも45重量パーセント、又は少なくとも50重量パーセントの、少なくとも3の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、30重量パーセント~100重量パーセントの、少なくとも3の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。好ましくは、硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、30重量パーセント~80重量パーセントの、少なくとも3の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。より好ましくは、硬化性前駆体は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、30重量パーセント~60重量パーセントの、少なくとも3の官能価を有する(メタ)アクリレートを含む。
【0078】
バナジウム化合物は、任意の有効量で硬化性前駆体に添加され得る。典型的には、本明細書に開示される硬化性前駆体は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、0.0005重量パーセント~1.0重量パーセントのバナジウム化合物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される硬化性前駆体は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量パーセント、又は少なくとも0.02重量パーセント、又は少なくとも0.05重量パーセント、又は少なくとも0.1重量パーセントのバナジウム化合物を含む。好ましくは、本明細書に開示される硬化性前駆体は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量パーセントかつ最大0.5重量パーセント、より好ましくは少なくとも0.02重量パーセントかつ最大0.5重量パーセントのバナジウム化合物を含む。
【0079】
本明細書に開示される硬化性前駆体に使用されるβ-ジカルボニル化合物は、式
【化1】
[式中、
X
1及びX
2は、独立して、共有結合、O、S、
【化2】
(式中、各R
4は、独立して、水素、又は1個~18個の炭素原子を有するアルキルを表す)を表し、
R
1及びR
2は、独立して、1個~18個の炭素原子を有する、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、
R
3は、水素、又は1個~18個の炭素原子を有する、ヒドロカルビル基若しくは置換ヒドロカルビル基を表すか、
あるいは、R
1、R
2、又はR
3のうちの任意の2つが一緒になって、5員環又は6員環を形成している]
によって表すことができるか、又はその塩であり得る。
【0080】
好ましくは、R1及びR2は、各々、1個~12個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子、よりいっそう好ましくは1個~4個の炭素原子を有する。例示的なR1及びR2基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシルが挙げられる。一般的に、置換ヒドロカルビル基(一置換であっても多置換であってもよい)における置換基の性質は、ラジカル重合に干渉する置換基をあまり使用しないか、又は完全に除外すべきであることを除いて、特に重要ではない。例示的な置換ヒドロカルビル基としては、ヒドロキシヒドロカルビル基(例えば、ヒドロキシエチル及びヒドロキシプロピル)、アルコキシヒドロカルビル基(例えば、メトキシエチル及びメトキシエトキシ)、アルカノイルヒドロカルビル基(例えば、アセチルエチル及びベンゾイルエチル)、ハロアルキル基(例えば、クロロエチル及びジクロロプロピル)、並びにジアルキルアミノヒドロカルビル基(例えば、ジメチルアミノプロピル及びジエチルアミノエチル)が挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態では、R
1、R
2、及びR
3のうちの任意の2つが一緒になって、5員環又は6員環を形成している。これらの実施形態では、一緒になったR
1、R
2、及びR
3のうちの2つは、例えば、
【化3】
及びこれらの組み合わせ[式中、各R
4は、独立して、H、又は1個~18個の炭素原子を有するアルキル基(好ましくは、1個~12個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子、より好ましくは1個~4個の炭素原子を有するアルキル基)を表し、yは、1、2、又は3である]から選択される二価の基を表し得る。例えば、β-ジカルボニル化合物は、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(メルドラム酸)であってもよい。例示的な(Examplary)R
4基としては、水素、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、及びオクチデシル(octydecyl)が挙げられる。R
1、R
2、及びR
3のうちの2つが一緒になって形成している2価の基の例としては、アルキレン、アルキレンオキシ、オキシカルボニルオキシ、カルボニルアルキレン、アルキレンカルボニルオキシ、アルキレンオキシカルボニル、アルキレン(アルキル)アミノ、及びジアルキレン(アルキル)アミノが挙げられる。R
1及びR
2が一緒になって5員環を形成している場合、X
1又はX
2のうちの少なくとも1つは、共有結合である。
【0082】
R3は、水素、又は1個~18個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し得る。例示的な(Examplary)R3基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピ(propy)、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキシデシル(hexydecyl)、フェニル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、及びオクタデシルが挙げられる。例示的な置換ヒドロカルビル基R3としては、-CH2C(=O)OR4が挙げられ、式中、R4は、先に定義した通りである(例えば、R4は、H、メチル、エチル、ドデシル、又はオクタデシルであり得る)。
【0083】
X
1及びX
2の各々は、独立して、共有結合、O、S、
【化4】
[式中、R
4は、上記の通りである]を表す。
【0084】
いくつかの実施形態では、β-ジカルボニル化合物は、バルビツール酸(すなわち、R
3=Hであり、X
1とX
2との両方=
【化5】
(式中、R
4=Hである)であり、一緒になったR
1及びR
2=カルボニルである)、又はその誘導体(例えば、1,3-ジアルキルバルビツール酸)を含む。好適なバルビツール酸誘導体の例としては、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3,5-トリエチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-エチルバルビツール酸、1,5-ジメチルバルビツール酸、1-メチル-5-エチルバルビツール酸、1-メチル-5-プロピルバルビツール酸、5-エチルバルビツール酸、5-プロピルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、及び1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸が挙げられる。
【0085】
いくつかの実施形態では、β-ジカルボニル化合物は、8個~14個の炭素原子、好ましくは8個~12個の炭素原子、より好ましくは8個~10個の炭素原子を有する、ジアルキル2-アセチルスクシネートジエステルを含む。ジアリクル(dialykl)2-アセチルスクシネートジエステルは、置換されていても、置換されていなくてもよい。例としては、ジメチル2-アセチルスクシネート(ジメチルアセチルスクシネート)、ジエチル2-アセチルスクシネート、及びメチルエチル2-アセチルスクシネートが挙げられる。
【0086】
β-ジカルボニル化合物の有用な塩としては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はセシウム)塩、NH4
+塩、並びに好ましくは1個~24個の炭素原子を有する、1°、2°、3°、及び4°(すなわち、第一級、第二級、第三級、及び第四級)有機アンモニウム塩を挙げることができる。例としては、テトラブチルアンモニウム、ジベンジルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、及びテトラエチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0087】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、0.05重量パーセント~20重量パーセント、好ましくは0.1重量パーセント~10重量パーセントのβ-ジカルボニル化合物を含むことができる。
【0088】
本明細書に開示される硬化性前駆体のいくつかの実施形態では、硬化性前駆体の第1の部分は、単官能性(メタ)アクリレート、すなわち、1の官能価を有する(メタ)アクリレートを更に含む。
【0089】
単官能性(メタ)アクリレートの量は、ラジカル(共)重合性化合物の総重量に基づいて、20重量%~80重量%、好ましくは30重量%~70重量%、より好ましくは40重量%~60重量%であってもよい。
【0090】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、疎水性溶媒を更に含んでもよい。
【0091】
疎水性溶媒については、β-ジカルボニル化合物と反応せず、かつ追加の開始剤(e)と反応しない、任意の疎水性溶媒を使用してもよい。好適な疎水性溶媒は、流動パラフィンなどのパラフィン、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(CAS No.124-17-4)などのエーテルアセテートである。可塑剤、例えば、ジプロピレングリコールジベンゾエート(例えば、Benzoflex 9-88、Eastman Chemical Company(Kingsport,TN,USA)から入手可能)をベースとする可塑剤も、疎水性溶媒として使用してもよい。
【0092】
疎水性溶媒は、硬化性前駆体の成分、例えば、β-ジカルボニル化合物、及び存在する場合、開始剤のための非反応性希釈剤として使用することができる。疎水性溶媒は硬化性前駆体の表面に移動して、硬化性前駆体のラジカル(共)重合性化合物の重合の酸素阻害を防止することができる。
【0093】
疎水性溶媒は、硬化性前駆体の第1の部分又は第2の部分に存在し得る。疎水性溶媒はまた、硬化性前駆体の第1の部分と第2の部分との両方に存在してもよい。
【0094】
硬化性前駆体中に存在する疎水性溶媒の量は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、最大70重量パーセントであってもよい。典型的には、疎水性溶媒の量は、硬化性前駆体の総重量に基づいて、最大で20重量パーセント、又は最大で10重量パーセントである。
【0095】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、チキソトロープ剤を更に含んでもよい。チキソトロープ剤は、硬化性前駆体の第1の部分又は第2の部分に含まれ得る。チキソトロープ剤はまた、硬化性前駆体の第1の部分と第2の部分とに含まれてもよい。チキソトロープ剤は、前駆体のレオロジー特性、例えば、どの程度厚く基材をコーティングするかを制御するのに役立ち得る。有用なチキソトロープ剤の例は、親水性ヒュームドシリカである。
【0096】
本明細書に開示される硬化性組成物は、任意選択で、例えば、1種以上の充填剤、酸化防止剤、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、香料、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)、UV安定剤、阻害剤(例えば、ラジカル重合性化合物に付随し得る)、塗布助剤、カップリング剤、強靱化剤、又はこれらの組み合わせなどの添加剤を含んでもよい。充填剤の例としては、シリカ、粘土、及び表面改質粘土が挙げられる。例示的な強靱化剤としては、様々な合成ゴム(例えば、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(methyl methacrylate-butadiene-styrene、MBS)コポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(acrylonitrile-butadiene-styrene、ABS)コポリマー、直鎖状ポリウレタン、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、及び天然ゴム等のエラストマー材料が挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、典型的に硬化性前駆体に対する溶解性が良好であるので、特に有用である。強靱化剤は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0097】
本開示による接着剤組成物の硬化性前駆体を硬化させる方法であって、
本開示による、第1の部分及び第2の部分を含む硬化性前駆体を提供すること、
接触面を有する第1の基材と、接触面を有する第2の基材とを準備すること、
硬化性前駆体の第1の部分を、第1の基材の接触面の少なくとも一部の上に適用すること、
硬化性前駆体の第2の部分を、第2の基材の接触面の少なくとも一部の上に適用すること、並びに
第1の基材の接触面上の硬化性前駆体の第1の部分を、第2の基材の接触面上の硬化性前駆体の第2の部分と接触させることによって、接着剤組成物の硬化性前駆体を硬化させること
を含む、方法が、本明細書に更に開示される。
【0098】
硬化性前駆体の第1及び第2の部分は、任意の好適な従来のコーティングプロセス技術を使用することによって、それぞれ、第1又は第2の基材の接触面上に適用され得る。
【0099】
第1及び第2の基材の接触面上に適用される第1の部分の量と第2の部分の量との重量比は、20:1~1:1であってもよい。好ましくは、第1部分の量と第2部分の量との重量比は、15:1~5:1、より好ましくは12:1~8:1、最も好ましくは10:1である。
【0100】
硬化性前駆体の第1及び第2の部分を、それぞれ、第1及び第2の基材の接触面の少なくとも一部の上に適用した後、第1の基材の接触面上の硬化性前駆体の第1の部分を、第2の基材の接触面上の硬化性前駆体の第2の部分と接触させる。この接触によって、硬化性前駆体の硬化が起こる。典型的には、硬化性前駆体の第1の部分と第2の部分とを互いに接触させながら加熱する必要はない。
【0101】
硬化性前駆体の2つの異なる部分に含まれるバナジウム化合物とβ-ジカルボニル化合物とを接触させた後、空気の存在下である場合、硬化性前駆体に含まれるバナジウム化合物とβ-ジカルボニル化合物とが、in situで過酸化物開始剤を形成する。過酸化物開始剤は、硬化性前駆体のラジカル(共)重合性化合物のラジカル(共)重合を開始する。
【0102】
硬化は、硬化性前駆体の第1の部分と第2の部分とが合わせられるまで始まらず、接続すると、硬化性前駆体の2つの部分が拡散によって自発的に混合し、硬化する。硬化性前駆体は、一切の物理的に混合するプロセスも伴わずに、実質的に一様に硬化させることができる。
【0103】
硬化は、50℃未満の温度、又は最高で40℃若しくは最高で30℃の温度、又は室温(23℃)で行われてもよい。好ましくは、硬化は室温(23℃)で行われる。
【0104】
典型的には、室温(23℃)で5分の硬化時間後に、少なくとも0.1MPaの接着強度を有する接着剤組成物が得られる。好ましくは、少なくとも0.1MPaの接着強度が、3分、1分、又は0.5分の硬化時間後に得られる。室温(23℃)で少なくとも48時間の硬化時間後の硬化組成物の接着強度(重なり剪断強度、overlap shear strength、OLS)は、実験セクションに記載の試験方法に従って測定した場合、少なくとも2MPa、又は少なくとも3MPa、又は少なくとも4MPa、又は少なくとも5MPaであり得る。硬化時間は、目標用途及び製造要件に応じて、所望に応じて調整することができる。
【0105】
本明細書に開示されるプロセスによって作製される硬化組成物は、実験セクションに記載の試験方法に従って測定した場合、室温(23℃)で2.0MPa~10.0MPa、又は2.0MPa~8.0MPaの範囲内の重なり剪断強度(OLS)を有し得る。
【0106】
本明細書に開示されるプロセスによって作製される硬化組成物は、実験セクションに記載の試験方法に従って測定した場合、180℃で少なくとも1.0MPa、少なくとも1.5MPa、少なくとも2.0MPa、又は少なくとも3.0MPaの重なり剪断強度(OLS)を有し得る。
【0107】
本明細書に開示されるプロセスによって作製される硬化組成物は、実験セクションに記載の試験方法に従って測定した場合、180℃で1.0MPa~5.0MPa、又は2.0MPa~5.0MPaの範囲内の重なり剪断強度(OLS)を有し得る。
【0108】
硬化性前駆体は、バナジウム化合物とβ-ジカルボニル化合物との間の反応によってin situで形成される開始剤に加えて、ラジカル(共)重合性化合物をラジカル(共)重合させるための追加の開始剤(e)を含んでもよい。追加の開始剤は、硬化性前駆体の第2の部分に含まれる。開始剤を添加することによって、硬化時間が減少し得る。
【0109】
本明細書に開示される硬化性前駆体は、例えば自動車等の車両用の電気モータのモータコア用鋼板を積層するために使用することができる。本明細書に開示される硬化性前駆体は、電子装置及びディスプレイアセンブリにも使用され得る。
【実施例】
【0110】
別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例における全ての部、百分率、比などは重量基準である。
【0111】
【0112】
試験方法
重なり剪断強度
実施例及び比較例の重なり剪断強度試験は、1.6mm×25mm×100mmの寸法を有する、Test Piece Co.,Ltd.(神奈川、日本)から入手可能なSPCC-SB鋼板(冷間圧延鋼)を使用して実施した。板をイソプロピルアルコールで拭いて、表面からグリース及び/又は粒子汚染物を除去した。2つの板の間で重なった面積は、25mm×12.5mmであった。表3に示す組み合わせに従って、およそ30mgの接着剤前駆体組成物-A剤(すなわち、接着剤組成物の硬化性前駆体の第1の部分)を、第1の板の表面の重なり面積内に分散させ、綿棒を使用して、およそ3mgの接着剤前駆体組成物-B剤(すなわち、接着剤組成物の硬化性前駆体の第2の部分)の薄層を、第2の板の表面の重なり面積内にコーティングした。次いで、接着剤前駆体を有する板の2つの領域を、A剤組成物がB剤組成物と接触するように互いに接触させた。2つのバインダークリップを使用して、2つの板を一緒に保持した。板同士の間の接着剤前駆体組成物を室温で2日間硬化させて、重なり剪断試料試験片を形成した。重なり剪断強度試験は、従来の引張試験機(テンシロン万能試験機RTC1325A、株式会社エー・アンド・デイ(東京、日本))を使用して、重なり剪断試料試験片の板の両端を引張試験機のクランプに取り付け、次いで、5mm/分のクランプ拡張速度によって試験片に剪断力を適用することによって実施した。結果を表3に示す。
【0113】
接着剤前駆体組成物-A剤(PC-A1)
接着剤前駆体組成物を、表1に示す配合に従って調製した。各組成物を十分に混合して、一様な溶液を得た。
【0114】
【0115】
接着剤前駆体組成物-B剤(PC-B1)
接着剤前駆体組成物を、表2に示す配合に従って調製した。各組成物を十分に混合して、一様な溶液を得た。
【0116】
【0117】
実施例1~5(Ex.1~Ex.5)及び比較例6~9(CE-6~CE-9)
実施例及び比較例を、前述の重なり剪断強度試験に使用するために調製した。表3は、各実施例及び比較例を調製するために使用した、PC-A及びPC-Bの組成を示す。室温(RT)及び高温(180℃)の両方における、重なり剪断強度の結果も表3に示す。
【0118】
【国際調査報告】