(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】複動ピストンとスライドスリーブのための軸方向弾性端部停止ディスクとを備えるクラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 25/08 20060101AFI20241219BHJP
F16D 11/10 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16D25/08 Z
F16D11/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535231
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 DE2022100860
(87)【国際公開番号】W WO2023110007
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021132821.7
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クヌート エアトマン
(72)【発明者】
【氏名】マークス コーラー
【テーマコード(参考)】
3J056
3J057
【Fターム(参考)】
3J056AA04
3J056BA04
3J056CC03
3J056CC43
3J056GA12
3J057AA06
3J057BB01
3J057CB16
3J057HH02
(57)【要約】
本発明は、エンジンを自動車のドライブトレインに結合し、ドライブトレインから結合解除するためのクラッチ(1)に関し、該クラッチは、圧力の結果として2つの圧力チャンバ(6、7)の間で軸方向に変位可能であるようにハウジング(3)内に位置決めされているピストン(2)を備え、ピストン(2)は、スライドスリーブ(9)に接触する/スライドスリーブ(9)を移動させるように構成されている作動ベル(8)に接続され、スライドスリーブ(9)の軸方向の変位可能性を制限するために軸方向に弾性である端部停止ディスク(22)が設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを自動車のドライブトレインに結合し、前記ドライブトレインから結合解除するためのクラッチ(1)であって、圧力によって軸方向に変位可能であるようにハウジング(3)内で2つの圧力チャンバ(6、7)の間に配置されているピストン(2)を有し、前記ピストン(2)は、スライドスリーブ(9)に接触する/前記スライドスリーブ(9)を移動させるように調製されている作動キャップ(8)に接続されており、軸方向に弾性を有するように構成されている端部停止ディスク(22)が、前記スライドスリーブ(9)の軸方向の変位可能性を制限するために設けられていることを特徴とする、クラッチ(1)。
【請求項2】
前記端部停止ディスク(22)が、前記クラッチ(1)の回転軸(37)に沿った縦断面において、S字形状又は二重S字形状を有していることを特徴とする、請求項1に記載のクラッチ(1)。
【請求項3】
前記端部停止ディスク(22)は、予荷重様式で装着されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のクラッチ(1)。
【請求項4】
前記端部停止ディスク(22)が、シャフト(26)上に装着されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のクラッチ(1)。
【請求項5】
前記端部停止ディスク(22)が、前記スライドスリーブ(9)とのトルク接続のために調製されたクラッチ本体(24)と、前記シャフトに固定されたロッキングリング(23)との間に予荷重力を有して装着されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のクラッチ(1)。
【請求項6】
前記端部停止ディスク(22)の径方向部分が、前記クラッチ本体(24)の径方向部分よりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載のクラッチ(1)。
【請求項7】
前記端部停止ディスク(22)と前記クラッチ本体(24)との間に空間(28)が囲まれていることを特徴とする、請求項5又は6に記載のクラッチ(1)。
【請求項8】
前記ロッキングリング(23)が、前記シャフト(26)の外側面(25)上の溝(29)内に、軸方向に位置固定される様式で配置されていることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載のクラッチ(1)。
【請求項9】
前記端部停止ディスク(22)が、軸方向に、前記ロッキングリング(23)及び/又は前記クラッチ本体(24)より少なくとも10倍大きい弾性を有するように構成されていることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載のクラッチ(1)。
【請求項10】
前記スライドスリーブ(9)が、前記作動キャップ(8)に接続されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のクラッチ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを自動車ドライブトレインに結合し、自動車ドライブトレインから結合解除するためのクラッチであって、ハウジング内に配置され、例えば2つの圧力チャンバの間の圧力接続部を有するピストンを有し、2つの圧力チャンバの各々は、例えば、圧力接続部のうちの1つに、圧力によって軸方向に変位可能であるように接続されており、ピストンは、スライドスリーブに接触する/スライドスリーブを移動させるように調製されている例えば、別個の又は組み込まれた作動キャップに、材料接合、形状嵌合、及び/又は圧力嵌合又は一体化様式で接続されている、クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
モータをドライブトレインから分離するための結合解除デバイスは、先行技術から既に知られている。例えば、独国特許出願公開第102021101141号明細書では、クラッチとも称されることがある、そのような結合解除デバイスが開示されている。
【0003】
この旧式の先行技術は、ハウジングの長手方向軸Lに平行にハウジング内に変位可能に装着され、かつクラッチ要素を間接的又は直接的に作動させるためのアームを有するピストンを有し、モータをドライブトレインから分離するための結合解除デバイスであって、ピストンの第1の領域は、第1の圧力空間に圧力が加えられると、ピストンが長手方向軸Lに平行な第1の方向に変位するように、第1の圧力空間に動作可能に接続されており、第2の圧力空間が設けられ、第2の圧力空間は、第2の圧力空間に圧力が加えられると、ピストンが長手方向軸Lに平行な第2の方向に変位し、第2の方向が第1の方向とは反対であるように、ピストンの第2の領域に動作可能に接続されている、結合解除デバイスに関する。本発明はまた、本明細書に含まれるように考慮されるそのような目的に関する。この先行特許出願では、第1の領域がピストンの第1の長手方向端部に位置し、第2の領域がピストンの外側面の凹部によって形成されていることと、凹部が、長手方向軸Lに対して径方向に見て、ピストンの外側面の外側半分に形成されることと、が特に強調されている。圧力空間の各々が、各々1つの圧力接続部を備えることが好都合であることも分かっている。加えて、ピストンは、長手方向軸Lの周りに延在する環状ピストンとして構成されるべきである。
【0004】
更に、以前の特許出願は、これは、機能的及び作動的文脈並びに幾何学的形状に関して本明細書に組み込まれると考えられるべきであるが、ピストンの径方向内側に位置する第1の玉軸受が封じ込められており、その第1の玉軸受上にピストンのアームが装着されている。これにより、第1の玉軸受が径方向内側に載置され、自由端でクラッチ要素を作動させるように構成された噛合部が設けられるべきである。第2の玉軸受を含むことができ、その上でハウジングが径方向外側に支持される。
【0005】
同様のデバイスは、独国特許出願公開第102014213884号明細書及び特開平04-203626号公報からも知られている。
【0006】
先行技術から知られているクラッチ、具体的には上記で特定されたクラッチは、改善されるべきか又は少なくとも軽減されるべき欠点を有している。具体的には、目的は、より良好に機能し、とりわけ調整可能な解決策を達成することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この目的は、本発明による一般的なクラッチにおいて、軸方向に弾性であるように構成された端部停止ディスクが、スライドスリーブ/シフトスリーブの軸方向変位可能性を制限するために設けられることで達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
油圧作動に起因して、シフトピストンの端部停止部を制御することが容易になる。その結果、スライドスリーブとクラッチ本体との間に許容できないNVHノイズは発生しない。この解決策では、ロッキングリングとクラッチ本体との間の端部停止部としてSディスクが使用される。Sディスクは、特に用途のために弾性であるように構成することができ、これにより、端部停止部におけるノイズを低減することができる。Sディスクは、適切な予荷重力を有してクラッチ本体とロッキングリングとの間に装着することができる。特に電動前車軸及びデュアル駆動E車軸のための、油圧作動を有する改良された切断ユニットがここでは可能である。複数のディスククラッチの概念は市場で知られているが、これらは現在改良されつつある。これまで、ディスクは、シフトピストンが力を受けた状態で常に予荷重が加えられており、複数のディスククラッチの端部停止部はディスク自体であったが、ここでは改良された変形形態が可能である。現在の要件に起因して、複数のディスククラッチの代わりに、ドッグクラッチは形状嵌合で係合される。しかしながら、端部停止部のシフトノイズは回避される。油圧作動に起因して、シフトピストンの端部停止点は、依然として制御することは容易ではないが、許容できないノイズは回避される。クラッチ本体とスライドスリーブとの間のハード端部停止部が回避される。例えばクラッチ本体上の「ハンプ」を使用することによる形状嵌合に依存する、又は例えばスライドスリーブ自体上の3つの端部停止部による形状嵌合に依存する、現在知られている端部停止部は、ここでは不要である。本発明による解決策では、ロッキングリングとクラッチ本体との間の端部停止部としてSディスクが使用される。Sディスクは、特に用途に応じて弾性的に構成することができ、これにより、端部停止部におけるノイズが低減される。Sディスクは、クラッチ本体とロッキングリングとの間に適切な予荷重力を有して装着することができる。
【0009】
本発明はまた、交互様式で作用する複動ピストン/ピストンのために機能するシステムを提供する。この新しい概念は、バッフルプレートを使用する1つのハウジング内の2つの可変圧空間と、圧力空間スリーブを使用する可変圧接続部とを開発することに焦点を当てる。噛合クラッチが係合されるときに係合解除状態に戻るために、バッフルプレートが第2のシールの背後に配置され、圧力空間の構成が変更される。第1の変形形態では、2方向に作動することができるピストンを封じ込めるハウジング構成が提供される。ピストンは、標準的な油圧クラッチスレーブシリンダと同様に、2つのシールとともにハウジングに挿入される。ここで、第1の圧力チャンバ及び圧力接続部は、リングピストンの隣に、例えばリングピストンの右側に位置し、前進ストロークを提供する。この場合、第2の圧力チャンバは、例えば、リングピストンのテーパ部の左側に位置する。この第2の圧力チャンバは、第3のシールをとともにバッフルプレートをハウジングに挿入し、それをサークリップで固定することによって可能になる。これは、圧力が加えられるときにピストンを左に戻るように移動させる第2の圧力接続部を有し、これにより戻りストロークを提供する。しかしながら、いくつかの実施形態では、ピストンは、アセンブリのために論理的に2つの部品で構成しなければならない。
【0010】
これを回避する変形形態は、第2の圧力チャンバが内向きに、ピストンの下側に移転されるという事実によって特徴付けられる。この場合、圧力空間スリーブは、ハウジングの内側の制限された設置空間に圧力接続部を収容するために使用される。これは、環状溝及び2つの外側Oリングを備え、サークリップでハウジングに固定される。この点に関して、環状溝内の2つの穴は、作動媒体の流れを確実にする。
【0011】
一般に、ピストンは常にスライドベルトを介して誘導され中心に置かれるべきであることに留意されたい。バッフルプレートは、Oリングを使用してハウジングに対してシールされる。端部停止部は、噛合部が係合解除されるときにバッフルプレート上の追加のウェブを介して実装される。両方の変形形態において、センサ経路測定が提供される。Xシールリングは、圧力が両側(圧力チャンバ1及び2)から(交互様式で)加えられるときに使用することができる。
【0012】
本発明は、具体的には噛合クラッチを使用するときに、前輪E車軸及びクラッチ/結合解除ユニットの油圧作動に特に好適である。
【0013】
最終的に、ロッキング要素を有する、油圧作動を伴うE車軸のためのDCU/切断ユニットが、本発明の中心にある。本発明は、ここで、かなりの改善を達成する。油圧システムからのシフトピストン(接続部P1又はP2)内の残留する望ましくない圧力は、シフトピストンとスライドスリーブとの間の形状嵌合接続に起因して、スライドスリーブの移動に加えて、圧力チャンバP1及びP2内のシフトピストンの異常な移動を引き起こす。このような意図しない移動は、機能及び機能的安全性の両方に関して非常に重大である(例えば、歯の破損、車両の制御不能な運転)。油圧システムでは、追加の労力を伴って実装することができるか、又は圧力弁では、複雑な様式で追加の弁を用いた実装が可能である。これはもはや必要ではない。同時に、複雑な油圧弁に起因して、シフトピストンの制御性及び位置決めも過去において堅牢ではなかった。これに関しても改善が達成される。可動部品内の/可動部品を有するロッキング要素の使用は、DCUの改善につながる。シフトシリンダとシフトピストンとの間のロッキング要素は、1つのロッキング要素として、例えばスロット付きワイヤリング、成形ワイヤリングとして、又は渦巻きばねを有する圧力片として、好都合である。同時に、スライドスリーブとアイドラギアとの間にロッキング要素を使用することも有用である。両方のロッキング要素の役割は、シフトピストンの異常な軸方向移動を回避することであり、これは成功である。軸力は、両方のロッキング要素に分散され、スライドスリーブ及びシフトピストンの端部位置が同時に確保される。摩擦を最小化するために、スライドスリーブとシフトピストンとの間の軸方向の遊びが確保される。
【0014】
ここで、特に前車軸及びデュアル駆動E車軸のための、油圧作動を有する改良された切断ユニットが導入される。現在の知見及び形状適合(摩擦係合ではない)を利用する新しい概念に起因して、このタイプの解決策は依然として知られていない。
【0015】
これにより、本発明は、2つの機能を備えたシフトクラウンを有するE車軸用のDCU/切断ユニットに関する。複数のディスククラッチを有する概念は、市場で知られている。これまで、ディスクには、力を受けたシフトピストンによって常に予荷重が加えられていた。複数のディスククラッチのソフト端部停止部はディスク自体であった。現在の要件に起因して、トルククラッチは、複数のディスククラッチの代わりに形状嵌合で係合される。これは、噛み合い時(噛み合い位置)にシフトノイズをもたらすが、これはここでは回避することができる。油圧作動に起因して、シフトピストン/シフトクラウンの歯と歯の位置は、適切な速度及び力で簡単に制御することができない。これは依然として当てはまるが、以前は許容できなかったNVHノイズは回避される。他の場合では、そのようなノイズは、通常、スライドスリーブ/シフトスリーブとクラッチ本体との間で発生する。現在知られている解決策は、同期と、対応する剛性を有するシフトフォークの使用とに基づいていた。しかしながら、この場合、スライドスリーブを伴うシフトクラウン/シフトピストンの組み立ても考慮しなければならない。これは、ここで全て回避され、軸方向剛性が事前設定される。これにより、アセンブリが単純化される。クラッチ本体とスライドスリーブとの間の噛み合い位置におけるハード端部停止が低減される。スライドスリーブへのスナップ接続の助けを借りて、堅牢なアセンブリが達成される。この解決策は、シフトクラウンの特別な構成を利用しており、この構成は、アセンブリと軸方向の剛性とを同時に考慮に入れている。シフトクラウンは、アセンブリ及び剛性のための特別なアーム構成を有する。径方向剛性のためのレバーを用いて、シフトクラウン/シフトピストンの溝において、スライドスリーブのウェブへのスナップ接続を実装することが可能である。軸方向剛性のためのレバーはまた、軸方向剛性を良好に調整することを可能にする。
【0016】
有利な実施形態は、従属請求項において特許請求され、以下により詳細に説明される。
【0017】
このように、端部停止ディスクが、クラッチの回転軸に沿った長手方向断面においてS字形状又は二重S字形状を有する場合に有利である。
【0018】
また、端部停止ディスクが予荷重様式で装着される場合に有利である。
【0019】
端部停止ディスクがシャフト、例えば中間シャフトに装着される場合に更に好都合である。
【0020】
有利な実施形態はまた、端部停止ディスクが、スライドスリーブとのトルク接続のために調製されたクラッチ本体と、シャフトに固定されたロッキングリングとの間に予荷重力を有して装着されることを特徴とする。
【0021】
端部停止ディスクの径方向の延在部が、クラッチ本体の径方向の延在部よりも大きいと有利であることが分かっている。
【0022】
また、端部停止ディスクとクラッチ本体との間に空間が囲まれている場合に有利である。
【0023】
ロッキングリングが、シャフトの外側面に設けられた溝内に、軸方向に位置固定様式で配置される場合に更に有利である。
【0024】
有利な実施形態は、端部停止ディスクが、ロッキングリング及び/又はクラッチ本体よりも軸方向に少なくとも10倍(最大で100倍)弾性であるように構成されていることを更に特徴とする。
【0025】
更に、圧力チャンバ内に、具体的にはハウジング及びピストンとは別個に、停止ディスク/バッフルプレートが配置されており、この停止ディスク/バッフルプレートが、少なくとも軸方向におけるピストンの軸方向変位可能性を制限している場合に有利であり得る。このようにして、交互様式で作用するピストンのための可変の圧力空間/圧力チャンバ及び圧力接続部が実装される。本発明は更に、交互様式で作用するピストンのための可変圧力チャンバを実装するための2つの変形形態に焦点を当てる。
【0026】
停止ディスクは、ピストンの径方向内側又は径方向外側に配置される場合に好都合である。径方向内側の配置は、具体的には、ピストンを作動キャップと一体的に形成することができる利点を有する。径方向外側に配置することで、設置空間のより良好な利用、具体的には設置空間のより少ない使用を達成することができる場合がある。しかしながら、これは、組み立て中に欠点を有する可能性がある。
【0027】
ピストンが複動/交互加圧のために調製される場合、1つの軸方向及び反対の軸方向における作動が、小さい設置空間において可能である。
【0028】
また、停止ディスクが、軸方向ピストンに突き当り、かつ圧力チャンバの1つを貫通するように構成された少なくとも1つの軸方向突出部を有していると好都合であることが分かっている。その結果は、目標とされる構成及び設置空間の使用である。
【0029】
停止ディスクの一方の端面から、円周の周りに分散された複数の軸方向突出部が突出している場合、ハウジング内でのピストン/リングピストンの引っ掛かりを効果的に防止することができる。具体的には、軸方向突出部の均等に分散された配置は、この点に関して特に有利である。
【0030】
有利な実施形態はまた、ハウジング内に固定されたサークリップが、例えばハウジングの段とともに、停止ディスクの少なくとも軸方向位置を決定することを特徴とする。
【0031】
スライドスリーブが作動キャップに接続される場合に有利である。これはまた、アセンブリを単純化することができる。この接続は、永続的又は一時的とすることができる。
【0032】
また、少なくとも1つの機械的ロッキング要素が、動作状態に応じて、スライドスリーブを2つの異なる軸方向位置に係止するか、又は係止することができる方式で、形成され、かつ軸方向に移動可能な構成要素と軸方向に固定された構成要素との間に配置される場合に有利である。
【0033】
したがって、ロッキング要素が、一方では(軸方向に)移動可能な構成要素、すなわちシフトスリーブ又はピストンに配置され、他方では軸方向に固定された構成要素、すなわちアイドラギア又はハウジングに配置される場合に有利である。
【0034】
ロッキング要素は、軸方向に移動可能な(又は軸方向に固定された)構成要素の2つの溝の間に係止様式で選択的に係合するために、軸方向に固定された(又は軸方向に移動可能な)構成要素の座部にばね付勢様式で配置される場合に好都合である。
【0035】
この点に関して、溝が両側で傾斜している凹部を形成することが有利であることが分かっている。
【0036】
ロッキング要素が2つの溝のうちの一方に係合するとき、係止/止め動作が強制される場合に好都合である。
【0037】
力を特に良好に分散させるために、複数のロッキング要素を利用することが有利であることが分かっている。
【0038】
ロッキング要素のうちの少なくとも1つ/ロッキング要素がボールとして形成されるか、又は球状であることが望ましい。
【0039】
有利な実施形態はまた、各々がロッキング要素を有する2つの戻り止めが、クラッチの回転軸から同じ径方向距離に設けられていることを特徴とする。
【0040】
この点に関して、溝が硬化された挿入部に設けられる場合に好都合である。
【0041】
作動キャップは、カンチレバーとして構成され、スライドスリーブと係合するためのスナップ留めを一方の自由端に有する部分を有することが望ましい。
【0042】
また、作動キャップの基部から突出するカンチレバーが、カンチレバーと基部との間に延在するスロット/凹部を介して離間され、それによって、軸方向及び径方向の弾性/剛性が目標に向けられる様式で調整される場合に有利である。したがって、カンチレバーは、スロットを介して基部から(完全にではないがほとんど)分離される。軸方向及び径方向の両方における弾性/剛性が、延長部を介して目標に向けられる様式で調整される。
【0043】
スロットは、円周方向には作動キャップの材料を部分的にのみ貫通するが、径方向には完全に貫通することが有利であることが分かっている。
【0044】
また、カンチレバーに細長い穴が設けられる場合にも有効である。次いで、剛性/弾性の特に正確な調整を行うことができる。
【0045】
細長い穴がスロットに対して平行に延び、かつ好ましくは同じ軸方向幅を有する場合、製造が簡略化される。
【0046】
カンチレバーがレバーを画定する場合に有利である。これにより、事前調整が簡略化される。
【0047】
スナップ留めが軸方向の遊びを有してスライドスリーブの径方向の突出部を取り囲む場合、アセンブリは簡略化される。
【0048】
細長い穴が矩形の貫通孔として構成される場合に好都合である。
【0049】
有利な実施形態はまた、カンチレバーがL字形状又はZ字形状に構成されることを特徴とする。
【0050】
本発明は、図面を用いて以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明によるクラッチの部分的に例解された長手方向断面図を示しており、2つの圧力空間がピストンの径方向外側に設けられている。
【
図2】「噛合係合」のための
図1のクラッチの動作位置を示す。
【
図3】
図1及び
図2のクラッチの「噛合係合解除」動作位置を示す。
【
図4】本発明によるクラッチを示しており、圧力チャンバがピストンの径方向内側に設けられている。
【
図5】
図4のクラッチの動作位置「噛合係合」動作位置(
図5)及び「噛合係合解除」動作位置(
図6)を示す。
【
図6】
図4のクラッチの動作位置「噛合係合」動作位置(
図5)及び「噛合係合解除」動作位置(
図6)を示す。
【
図7】第1の動作位置にある本発明による更なるクラッチの長手方向断面の詳細を示しており、端部停止ディスクが装着された中間シャフトが特別な特徴として使用されている。
【
図8】シフトスリーブ及び作動キャップが
図7に対して軸方向に変位した位置である第2の動作位置にある、本発明による更なるクラッチの長手方向断面の一部を示す。
【
図9】作動キャップのシフト位置の詳細を示しており、スナップ留めが
図9の長手方向断面に拡大して示され、カンチレバーが
図10の斜視図に拡大して示されている。
【
図10】作動キャップのシフト位置の詳細を示しており、スナップ留めが
図9の長手方向断面に拡大して示され、カンチレバーが
図10の斜視図に拡大して示されている。
【発明を実施するための形態】
【0052】
これらの図は本質的に単なる概略図であり、本発明を理解するためにのみ役立つ。同一の要素には、同一の参照記号が付与されている。個々の実施形態の特徴は交換することができる。
【0053】
図1は、クラッチ1を示している。クラッチ1は、ピストン2を有する。ピストン2は、複動/交互圧力適用のために構成されている。ピストン2は、ハウジング3内に配置されている。圧力接続部4及び5は、それぞれ、第1の圧力チャンバ6及び第2の圧力チャンバ7に通じている。この点に関して、
図2及び
図3も参照する。圧力接続部4は、第1の圧力チャンバ6に通じている。圧力接続部5は、第2の圧力チャンバ7に通じている。当然のことながら、この解決策は逆に実装することもできる。
【0054】
作動キャップ8はまた、ピストン2に装着されている。
図1~
図3のクラッチ1では、ピストン2及び作動キャップ8は、互いに取り付けられている2つの別個の構成要素である。
図4~6のクラッチ1では、ピストン2及び作動キャップ8は、一体化された単一材料の、つなぎ目のない構成要素を形成している。
【0055】
作動キャップ8は、スライドスリーブ9に係合している。
図1~
図6のクラッチ1では、停止ディスク/バッフルプレート10も設けられている。停止ディスク10は、径方向外側に第1のシート11を有し、径方向内側に第2のシート12を有する。
【0056】
図2及び
図3で見ることができるように、シール13の各々は、2つのシート11及び12の各々に設けられている。これらのシール13は、圧力チャンバ7、すなわち第2の圧力チャンバを封止している。2つの更なるシール14が、第1の圧力チャンバ6を封止している。停止ディスク10は、軸方向突出部15を有する。「噛合係合解除」動作位置では、軸方向突出部15は、第2の圧力チャンバ7を完全に貫通して突出し、
図3に示すように、ピストン2に当接している。ここで、軸方向突出部15は、ピストン2の端面16から突出している。
【0057】
停止ディスク10がその軸方向位置を中心に間接的又は直接的に固定されている、サークリップ17及び段18がある。これは、
図5及び6において特によく見ることができる。
【0058】
図4を参照すると、圧力空間スリーブ19に注目すべきである。この圧力空間スリーブ19は、圧力接続部5を第2の圧力チャンバ7に接続するために必要である。
【0059】
これに関して、圧力空間スリーブ19は、Oリング21の形態のシールの挿置により、圧力空間スリーブサークリップ20を介して所定位置に固定されている。
【0060】
図7は、端部停止ディスク22を有するクラッチ1を示している。この端部停止ディスク22は、軸方向にロッキングリング23とクラッチ本体24との間に配置されている。これらの最後の2つの構成要素は、(中間)シャフト26の外側面上25に位置する。また、アイドラギア27がある。
【0061】
端部停止ディスク22は、S字形状を有し、かつ軸方向に弾性を有する。端部停止ディスク22は、シートメタルで作製されている。端部停止ディスク22とクラッチ本体24との間には、空間28が囲まれている。ロッキングリング23は、外側面25の溝29内に着座している。
【0062】
複数のロッキング要素、すなわちロッキング要素30及びロッキング要素31が設けられている。ロッキング要素30及びロッキング要素31の両方は、ボールとして構成されている。ロッキング要素30は、ハウジング3のロッキング要素受け溝/溝32に着座し、一方、ロッキング要素31は、ロッキング要素受け溝/溝33に着座している。ロッキング要素30は、溝34内への挿入を係止することを目的としおり、一方、ロッキング要素31は、ピストン2内に固定された挿入部36内の同じ溝35内に係合することを目的としている。これらの溝34及び35は、傾斜面を有する。回転軸には、参照符号37が付されている。
【0063】
軸受38もまた、(中間)シャフト26上に設けられる。
【0064】
図7ではクラッチの一方の位置が想定されているが、
図8ではクラッチ1の他方のシフト位置が想定されている。
【0065】
この点に関して、基部38を有する作動キャップ8の構成に再び注目すべきであり、作動キャップ8はカンチレバー39内に遷移し、カンチレバー39は、その自由端にスナップ留め40を形成し、スナップ留め40は、軸方向の遊びを有してスライドスリーブ/シフトスリーブの径方向突出部41を囲んでいる。この点については、
図9も参照されたい。
【0066】
また、
図10に示すように、スナップ留めに類似したカンチレバー39の端部は、クリップ又はグリッパの様式で構成されている。一方では、スロット42が設けられ、他方では、部分44及び45で示される弾性/剛性を目標に向けられる様式で調整するために、細長い穴43が設けられている。
【0067】
図1と同様に、
図10では、軸方向が参照符号46で示され、径方向が参照符号47で示されている。
図10において、この周方向が符号48で示されている。
【0068】
これにより、カンチレバー39はレバー49を構成する。
【符号の説明】
【0069】
1 クラッチ
2 ピストン/シフトピストン
3 ハウジング/(シフト)シリンダ
4 圧力接続部
5 圧力接続部
6 第1の圧力チャンバ
7 第2の圧力チャンバ
8 作動キャップ
9 スライドスリーブ/シフトスリーブ
10 停止ディスク/バッフルプレート
11 第1のシート
12 第2のシート
13 シール
14 シール
15 軸方向突出部
16 端面
17 サークリップ
18 段
19 圧力空間スリーブ
20 圧力空間スリーブサークリップ
21 Oリング
22 端部停止ディスク
23 ロッキングリング
24 クラッチ本体
25 外側面
26 (中間)シャフト
27 アイドラギア
28 空間
29 溝
30 ロッキング要素
31 ロッキング要素
32 ロッキング要素受け溝/溝
33 ロッキング要素受け溝/溝
34 チャネル/溝
35 チャネル/溝
36 挿入部
37 回転軸
38 基部
39 カンチレバー
40 スナップ留め
41 径方向突出部
42 スロット/凹部
43 細長い穴
44 弾性/剛性
45 弾性/剛性
46 軸方向
47 径方向
48 周方向
49 レバー
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを自動車のドライブトレインに結合し、前記ドライブトレインから結合解除するためのクラッチ(1)であって、圧力によって軸方向に変位可能であるようにハウジング(3)内で2つの圧力チャンバ(6、7)の間に配置されているピストン(2)を有し、前記ピストン(2)は、スライドスリーブ(9)に接触する/前記スライドスリーブ(9)を移動させるように調製されている作動キャップ(8)に接続されており、軸方向に弾性を有するように構成されている端部停止ディスク(22)が、前記スライドスリーブ(9)の軸方向の変位可能性を制限するために設けられていることを特徴とする、クラッチ(1)。
【請求項2】
前記端部停止ディスク(22)が、前記クラッチ(1)の回転軸(37)に沿った縦断面において、S字形状又は二重S字形状を有していることを特徴とする、請求項1に記載のクラッチ(1)。
【請求項3】
前記端部停止ディスク(22)は、予荷重様式で装着されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のクラッチ(1)。
【請求項4】
前記端部停止ディスク(22)が、シャフト(26)上に装着されていることを特徴とする、請求項
1に記載のクラッチ(1)。
【請求項5】
前記端部停止ディスク(22)が、前記スライドスリーブ(9)とのトルク接続のために調製されたクラッチ本体(24)と、前記シャフトに固定されたロッキングリング(23)との間に予荷重力を有して装着されていることを特徴とする、請求項
1に記載のクラッチ(1)。
【請求項6】
前記端部停止ディスク(22)の径方向部分が、前記クラッチ本体(24)の径方向部分よりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載のクラッチ(1)。
【請求項7】
前記端部停止ディスク(22)と前記クラッチ本体(24)との間に空間(28)が囲まれていることを特徴とする、請求項5又は6に記載のクラッチ(1)。
【請求項8】
前記ロッキングリング(23)が、前記シャフト(26)の外側面(25)上の溝(29)内に、軸方向に位置固定される様式で配置されていることを特徴とする、請求項
5に記載のクラッチ(1)。
【請求項9】
前記端部停止ディスク(22)が、軸方向に、前記ロッキングリング(23)及び/又は前記クラッチ本体(24)より少なくとも10倍大きい弾性を有するように構成されていることを特徴とする、請求項
5に記載のクラッチ(1)。
【請求項10】
前記スライドスリーブ(9)が、前記作動キャップ(8)に接続されていることを特徴とする、請求項
1に記載のクラッチ(1)。
【国際調査報告】