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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ガス稼働内燃機関の稼働方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20241219BHJP
   F02B 43/12 20060101ALI20241219BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20241219BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F02D19/02 D
F02B43/12
F02M21/02 301R
F02P5/15 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535323
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 AT2022060435
(87)【国際公開番号】W WO2023108184
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】A50993/2021
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597083976
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL LIST GMBH
【住所又は居所原語表記】HANS-LIST-PLATZ 1,A-8020 GRAZ,AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ズカンチッチ,アドミル
【テーマコード(参考)】
3G022
3G092
【Fターム(参考)】
3G022CA10
3G022DA00
3G092AB06
3G092BA10
3G092BB10
3G092CB04
3G092EA16
3G092FA13
3G092FB10
3G092HE03Z
3G092HF20Z
(57)【要約】
本発明は、ガス稼働内燃機関の稼働方法に関し、内燃機関がスイッチオンされた稼働状態における流入段階(9)の間、酸素含有ガス、好ましくは空気、が燃焼のため少なくとも一つのシリンダに導入され、燃料が少なくとも一つのインジェクタ(14)に導通され、インジェクタ(14)からシリンダに一次射出の過程において射出され、当該箇所において一次点火(1、1’)の過程において点火される方法であって、内燃機関のスイッチオフ工程の間、インジェクタ(14)への燃料の供給が終了され、インジェクタ(14)の領域において残留燃料が内燃機関の少なくとも一つのシリンダにおいて一次点火(1、1’)の後で後続の流入段階(9)の開始前に二次射出の過程において射出されて二次点火の過程において点火されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス稼働内燃機関の稼働方法であって、前記内燃機関がスイッチオンされた稼働状態における流入段階(9)の間、酸素含有ガス、好ましくは空気、が燃焼のため少なくとも一つのシリンダに導入され、燃料が少なくとも一つのインジェクタ(14)に導通され、前記インジェクタ(14)から前記シリンダに一次射出の過程において射出され、当該箇所において一次点火(1、1’)の過程において点火される方法において、前記内燃機関のスイッチオフ工程の間、前記インジェクタ(14)への燃料の供給が終了され、前記インジェクタ(14)の領域において残留燃料が前記内燃機関の少なくとも一つのシリンダにおいて一次点火(1、1’)の後で後続の流入段階(9)の開始前に二次射出の過程において射出され、二次点火の過程において点火されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記内燃機関のスイッチオンされた稼働状態において排気段階(10)の間、前記シリンダから排気ガスが導出され、前記スイッチオフ工程の間、前記残留燃料が前記排気段階(10)の開始以降、好ましくは前記排気段階(10)の間、特に好ましくは前記排気段階(10)の前半、に射出および点火されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記残留燃料の点火は、前記残留燃料の射出開始後の最大20度のクランク角度、好ましくは前記残留燃料の射出開始後の最大10度のクランク角度、において実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
調圧器(12)は、燃料タンク(16)から分配装置(13)を介して調整された圧力において燃料を複数のインジェクタに対して導通し、前記スイッチオフ工程の間、前記調圧器(12)は、好ましくは前記残留燃料が射出および点火される前に、前記分配装置(13)への燃料供給を終了することを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記内燃機関の前記スイッチオフ工程の間、前記分配装置(13)および/または前記インジェクタの内部に存在する燃料が前記内燃機関の少なくとも一つのシリンダ内に前記一次点火(1、1’)の後、および後続の流入段階(9)の開始前に、射出されて点火されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記内燃機関は、4ストローク稼働において稼働され、前記スイッチオンされた稼働状態において吸入ストローク(2)の間に酸素含有ガス、好ましくは空気、が前記シリンダ内に導入され、燃料が前記シリンダ内に導通され、前記スイッチオフ工程の間に前記残留燃料が前記内燃機関の少なくとも一つのシリンダ内に前記吸入ストローク(2)の開始前に射出および点火されることを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記スイッチオンされた稼働状態において排気ストローク(3)の開始時または途中に排気ガスを前記シリンダから導出し、前記スイッチオフ工程の間に前記残留燃料が前記排気ストローク(3)の終了前に前記内燃機関の少なくとも一つのシリンダ内へ射出および点火されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記スイッチオフ工程の間に前記排気ストローク(3)の開始前の30度のクランク角以降、好ましくは前記排気ストローク(3)の開始前の20度のクランク角以降、において前記残留燃料が射出および点火されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記内燃機関は、2ストローク稼働において稼働されることを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記内燃機関の前記スイッチオンされた稼働状態において排気段階(3)の間に排気ガスが前記シリンダから導出され、前記スイッチオフ工程の間に前記残留燃料の射出が前記排気段階(3)の開始前の15度のクランク角以降、好ましくは最も早くて前記排気段階(3)の開始前の5度のクランク角以降、に開始され、特に好ましくは前記排気段階(3)の開始以降、に開始されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス稼働内燃機関の稼働方法に関し、内燃機関がスイッチオンされた稼働状態における流入段階の間、酸素含有ガス、好ましくは空気、が燃焼のため少なくとも一つのシリンダに導入され、燃料が少なくとも一つのインジェクタに導通され、インジェクタからシリンダに一次射出の過程において射出されて当該箇所において一次点火の過程において点火される。
【背景技術】
【0002】
ガス稼働内燃機関、すなわち、例えば水素、天然ガスなどの通常の大気条件下において気体である燃料によって稼働される内燃機関、においては、スイッチオフ後に燃料の残りがインジェクタおよび/またはインジェクタに供給する管内に残留することが知られている。よって、スイッチオンされた稼働状態の終了後、インジェクタ、および/またはインジェクタの供給管を介してインジェクタに対して高い圧力をかける残留燃料が存在する。当該箇所におけるスイッチオフされた状態の間のこれによって生じる圧力を低下させるために、一次点火の過程における最後の通常燃焼の後、残留ガスを周囲に放出するかあるいは相応する回収容器に移行する。このことは燃料によって環境が汚染されて可燃性ガスが安全上のリスクになるか、または付加的な部品による構造の複雑化という問題につながる。
【0003】
独国特許出願公開第102015210756号明細書、欧州特許出願公開第3486458号明細書、および特表2004076698号公報において、一次射出の過程におけるスイッチオフ工程の間、流入段階および一次点火の間に残留燃料をインジェクタにおいて消費することにより内燃機関を複数回転分、さらに稼働する方法について論じている。インジェクタにおける燃料量の低下とこれに伴うインジェクタ内における圧力の低下とによって、シリンダ内への射出量がますます減少する。このことは、少量である射出された燃料量が流入段階において流入する空気によって希釈されすぎるため、一次点火の失敗につながる可能性がある。これにより、未燃焼の燃料が周囲に達する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015210756号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3486458号明細書
【特許文献3】特表2004076698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明の課題は、可能な限り安全で環境にやさしく、さらに簡単な構造のみを必要とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による課題は、内燃機関のスイッチオフ工程の間、インジェクタへの燃料の供給が終了され、インジェクタの領域における残留燃料が内燃機関の少なくとも一つのシリンダにおいて一次点火の後で、後続の流入段階の開始前に二次射出の過程において射出され、二次点火の過程において点火されることにより解決される。
【発明の効果】
【0007】
これにより残留燃料が、周辺に達したり燃料を別途保管したりする必要なく残留燃料を減少させて、インジェクタの負荷を排除することが可能である。当該方法を実施するためにはより大きな技術的適応やより複雑な構造が必要とされないにもかかわらず、未燃焼の燃料が外部に達して環境リスクを引き起こすか、さらには制御不能の点火がないことが保証される。
【0008】
全ての残留燃料が射出されて点火されることは重要ではなく、該当する箇所における当該残留燃料の圧力を、特に雰囲気圧まで、低下させることが重要である。これにより内燃機関がスイッチオフ状態の場合、燃料、特に水素、の漏出による危険が防止される。
【0009】
スイッチオンされた稼働の通常の点火サイクル外におけるさらなる点火、すなわち二次点火によって、内燃機関の惰性稼働を著しく妨げることなく燃料を燃焼させる。当該二次点火によって、ピストンに対して力が全く付与されない、あるいは微細な力のみが付与されることが好ましく、よって、一次点火の場合のように、二次点火によって誘発されたピストンの下方への動作(または上方への動作の阻害)が生じないことが好ましい。これにより内燃機関は、さらなる点火によって負荷を受けない。
【0010】
スイッチオフ工程の間、インジェクタに対する燃料の供給を終了し、その後はじめてインジェクタの領域、特に分配装置内、に残留燃料が射出されて点火されることが好ましい。
【0011】
この際、インジェクタに対する燃料の供給の終了後にまだインジェクタへの供給管およびインジェクタ自身の内部に存在する残留燃料のことを意味する。通例、インジェクタに対して減圧装置、いわゆる調圧器を介して燃料を供給する。インジェクタへの供給のための配管システムが設けられることが好ましく、配管システムは、少なくとも一つの減圧装置を有する。減圧装置は、燃料タンクなどの燃料源からの燃料を減圧して、インジェクタに対してより低い圧力において燃料を供給するために使用される。少なくとも一つの調圧器とインジェクタとの間の残留燃料がスイッチオフ工程の間に本発明にしたがって射出されて点火させることが好ましい。
【0012】
さらに配管システムは、インジェクタ間で燃料を分配するための分配装置をも有し得る。
【0013】
流入段階とは、流入路が燃焼室、すなわちシリンダ内部と流体連通されており、空気または別の酸素含有ガスが燃焼室内に流入する段階である。ガスは予め圧縮されているおよび/または、例えば燃料、窒素もしくはその他のガス、液体または個体などの添加物が添加されていてもよい。当該流体連通は、例えば少なくとも一つの弁の開口および/またはピストンの移動、ひいては少なくとも一つの流路開口部を開放することによって実施され得る。よって、弁を開口する場合には流入段階は、弁開口の開始とともに始まり弁閉止の終了とともに終わる。同じことが動作に起因する流路開口部の開放にも該当する。
【0014】
一次点火は、スイッチオンされた稼働時において、ピストンに力を付与して当該ピストンを下死点に向けて駆動するために使用される。通例、一次点火は、上死点に、または少なくとも当該上死点の近傍、において実施される。
【0015】
前述の方法のための内燃機関は、通常、自動車の稼働、特に当該自動車の駆動、に使用される。
【0016】
スイッチオンされた稼働状態においてエンジンは、例えば車両、特に当該車両の運動、のためにトルクを供給するために通常稼働される。よって、燃料が連続的に燃焼されることによりピストンが周期的に上死点から下死点あるいはその逆に移動される、内燃機関の通常稼働のことである。
【0017】
内燃機関をスイッチオンされた稼働状況から静止状態、すなわち、例えば車両の停止など、スイッチオフされた状態に移行させる場合には、スイッチオンされた稼働状態から離れて、内燃機関が運動のための関連するトルクを提供することを辞めるスイッチオフ工程が実施される。通例、スイッチオフ工程の正確な進行は、例えば相応するユーザー要求を受信した時に、スイッチオフ工程を導入する、エンジン制御プログラムによって定義される。当該工程の間、トルクを生成するための燃料の一次点火の過程における通常の射出と燃焼とがもはや必要とされないため終了される。ピストンは、停止状態になるまでに数回転または部分回転を実施することが可能である。すなわちピストンは、一次射出や一次点火など、全ての能動的に制御される動作が実施されなくなっても、流入段階または放出段階などの個々の段階を少なくとも部分的に移動する。しかしながら通例、流入路および放出路との流体流通は、流入段階および放出段階を移動する際に弁の機械的制御またはスイッチオフ工程の間の流体開口部を開放することにより実施される。
【0018】
内燃機関のスイッチオンされた稼働状態において排気段階の間、シリンダから排気ガスが導出され、残留燃料が排気段階の開始以降、好ましくは排気段階の間、特に好ましくは排気段階の前半、に射出および点火されることが好ましい。これにより燃焼されたガスが二次点火の直後に燃焼室から逃れることを可能とし、二次点火の際にピストンの動作に対して所望しない形で影響を与える燃焼室内の圧力増加が防止される。また、残留燃料が排気段階の終了前の遅くとも10度のクランク角度、好ましくは排気段階の終了前の遅くとも20度のクランク角度、において射出されて好ましくは点火もされるようにすることが可能である。
【0019】
排気段階とは、少なくとも一つの放出路が燃焼室、すなわちシリンダ内部、と流体連通されており、燃焼室から排気ガスが流出し得る段階である。当該流体流通は、例えば少なくとも一つの弁の開口および/またはピストンの移動、ひいては少なくとも一つの流路開口部を開放することによって実施され得る。よって、弁を開口する場合に排気段階は、弁開口の開始とともに始まる。
【0020】
排気段階と流入段階とは、重複することも流入段階が排気段階に入り込むことさえ可能である。このことは、特に2ストローク稼働、しかしながら4ストローク稼働においても可能である。
【0021】
前半とは、時間的な前半を意味する。前半に射出を実施することで、ピストンの動作に大きな影響を与えることなく、点火を得るためにシリンダ内に十分なスペースがあることを保証する。
【0022】
好ましい実施形態において、残留燃料の点火は、残留燃料の射出開始後の最大20度のクランク角度、好ましくは残留燃料の射出開始後の最大10度のクランク角度、において実施される。これにより、燃焼室において残留燃料が分配されて、時間をさほどロスすることなく、残留燃料が点火される前に燃焼室内の酸素と混合され得ることが保証される。これにより、ピストンの動作に影響を与えることなく可能な限り完全な燃焼につながる。
【0023】
残留燃料の点火は、射出開始後の最低5度のクランク角度において実施されることが好ましい。
【0024】
調圧器は、燃料タンクから分配装置を介して調整された圧力において燃料を複数のインジェクタに対して導通し、スイッチオフ工程の間、調圧器は、好ましくは残留燃料が射出および点火される前に、分配装置への燃料供給を終了させるようにすることが可能である。これにより射出時における燃料の圧力を正確に調整することが可能となる。分配装置内においてスイッチオンされた稼働状態の間、調圧器によって、シリンダへの所望する射出圧力につながる圧力が設定される。スイッチオフ工程の間、当該圧力は二次射出と二次点火とによって再び減少される。
【0025】
この場合、スイッチオンされた稼働状態の間、燃料の圧力が調圧器によって低減されることが有利である。このことは、調圧器の下流側よりも、調圧器の上流側においてより高い圧力が存在する、すなわち調圧器が燃料の流れ方向に沿って圧力を低減させることを意味する。換言すると調圧器は、稼働の間、燃料の圧力を減少させるため、燃料タンク内の圧力が分配装置内の圧力よりも高い。よって、調圧器を簡単な構造とし、燃料を高圧で貯蔵することが可能である。これにより効率的で省スペースである解決策を実現しながらもインジェクタにおける圧力が最適に調整される。
【0026】
この場合、内燃機関のスイッチオフ工程の間、分配装置および/またはインジェクタの内部に存在する燃料が内燃機関の少なくとも一つのシリンダ内において一次点火の後および後続の流入段階の開始前に射出されて点火されることも有利である。これによりインジェクタまたは分配装置内に存在する燃料の圧力が低下される。
【0027】
特に内燃機関が4ストローク稼働において稼働される場合、スイッチオンされた稼働状態において吸入ストロークの間に酸素含有ガス、好ましくは空気、がシリンダ内に導入されて燃料がシリンダ内に導通され、スイッチオフ工程の間に残留燃料が内燃機関の少なくとも一つのシリンダ内に吸入ストロークの開始前に射出および点火されることが有利である。通常、吸入ストロークの開始は、上死点の領域において実施され、通常、下死点の領域において終了する。よって流入段階は、4ストローク稼働においては吸入ストロークに相当する。
【0028】
内燃機関がスイッチオンされた稼働状態における4ストローク稼働においてガスは、一つの燃焼ストロークにおいて一次点火の過程において点火されることが好ましい。
【0029】
燃焼ストロークとは、シリンダを下死点の方向に駆動する通常の点火が実施されるストロークである。通例、燃焼ストロークは、0度のクランク角、すなわち上死点、において開始されて180度、すなわち下死点、において終了する。
【0030】
スイッチオンされた稼働状態における排気ストロークの開始時または途中において排気ガスをシリンダから導出して、スイッチオフ工程の間に残留燃料が排気ストロークの終了前に内燃機関の少なくとも一つのシリンダ内へと射出および点火されるようにしてもよい。これにより二次点火によって生じる排気ガスをも完全に導出することにより、後続の新たな始動時に燃焼室が再び一次点火できる状態にあることを保証する。
【0031】
排気ストロークとは、通例、燃焼ストロークにすぐ続くストロークであり、燃焼室内で燃焼されたガスが導出されるストロークである。排気ストロークは、180度のクランク角、すなわち下死点、において開始して360度、すなわち上死点、において終了することが好ましい。通例、排気ストロークの間に少なくとも一つの放出弁を開口して燃焼室と一つの放出路との間における流体連通を形成し、放出弁を介してガスを逃がし得る。
【0032】
さらにスイッチオフ工程の間に排気ストロークの開始前の30度のクランク角以降、好ましくは排気ストロークの開始前の20度のクランク角以降、において残留燃料が射出および点火されることが有利である。これにより最後の一次点火までの十分な間隔を可能にしながらも可能な限り完全なインジェクタの負荷排除のために十分な時間とスペースとをもたらす。
【0033】
内燃機関は、2ストローク稼働において稼働されることも可能である。
【0034】
この場合、内燃機関のスイッチオンされた稼働状態において排気段階の間に排気ガスがシリンダから導出され、スイッチオフ工程の間に残量燃料の射出が排気段階の開始前の15度のクランク角以降、好ましくは最も早くて排気段階の開始前の5度のクランク角以降、特に好ましくは排気段階の開始以降に開始されるようにすることが可能である。2ストローク稼働においてインジェクタの換気に利用できる時間はより少なくなるが、それでも射出の時点をこのように選択することによりピストンの動作に影響を与えることなく換気が十分に可能となる。
【0035】
スイッチオフ工程の間に残留燃料が射出および点火される内燃機関の稼働中におけるシリンダの最後の点火は、化学量論的な点火混合気、すなわち燃料を完全に燃焼するために必要とされるよりも多くの空気が存在する点火混合気、すなわち希薄な点火混合気、において実施されることが好ましい。
【0036】
複数のシリンダが設けられている場合、スイッチオフ工程の開始時にちょうど残留燃料の射出および点火のための前述の可能な領域に存在する、および/または当該領域の直前に位置する少なくとも一つのシリンダを残留燃料の射出および点火のために選択することが好ましい。これにより、圧力がスイッチオフ信号後、できるだけ早く減少され得ることを可能にする。
【0037】
残量燃料の射出および点火のためにインジェクタへの燃料供給の終了直後にちょうど残留燃料の射出および点火のための前述の可能な領域に存在する、および/または当該領域の直前に位置する少なくとも一つのシリンダを残留燃料の射出および点火のために選択することが特に好ましい。これによりスイッチ工程を可能な限り短く保ち、インジェクタに付与される圧力を最小限に低減することが可能である。
【0038】
以下に図面における本発明による、非限定的である実施形態例を参照しつつ本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第一の実施形態における本発明による方法を実施するための内燃機関の燃料管の概略的構造を示す図。
図2a】4ストローク稼働におけるクランク角に依存する、第二の実施形態における本発明による方法を実施する間の内燃機関のシリンダ内におけるピストン位置の概略図。
図2b】2ストローク稼働におけるクランク角に依存する、第三の実施形態における本発明による方法を実施する間の内燃機関のシリンダ内におけるピストン位置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1において六つのシリンダを有する内燃機関のための燃料供給システムが概略的に図示されている。燃料は、ガスタンク16内において高圧で貯蔵される。管11がガスタンク16と調圧器12とを連結しており、調圧器は、内燃機関のスイッチオンされた稼働の間、調圧器と連結された分配装置13内へと燃料を導通し、調圧器12は、供給された燃料の圧力を抑圧する。調圧器12は、例えば調整可能な弁として構成され得る。
【0041】
分配装置13は、それぞれが一つのシリンダに割り当てられる、六つのインジェクタ14と連結されている。少なくとも一つのシリンダに少なくとも二つのインジェクタ14が割り当てられるようにすることも可能である。スイッチオンされた稼働の間、調圧器12を介して燃料がインジェクタ14に対してかける圧力、よって射出時に燃料がシリンダに進入する圧力を調整することが可能である。
【0042】
図2aにおいてクランクシャフトのクランク角度xに依存する、上死点と下死点との間における内燃機関のシリンダ内におけるピストン位置yが図示されている。0度のクランク角の場合、シリンダは上死点にある。上死点の領域、好ましくは上死点において、一次点火1が実施され、一次点火により先に導入されて圧縮された空気と燃料との混合気を点火することにより、ピストンを下方に駆動する。0度から180度のクランク角まで延伸する燃焼ストローク2に続いて排気ストローク3が実施され、排気ストロークの間にはシリンダの放出弁が開口されて燃焼されたガスが流出可能である。その間、ピストンは、360度の上死点4の方向に向かって再び移動し、上死点においては、一次点火が実施されない。当該箇所においてクランクシャフトおよび排気ストローク3の第一の回転が終了して放出弁が閉止することにより、排気ストローク3が終了する。同時に入口弁が開口することにより、好ましくは圧縮された空気、がシリンダ内に流入可能でありながらピストンが第二の回転の過程において再び下死点5の方向に移動する。当該箇所において入口弁が再び閉止し、入口弁の開口の開始から閉止の終わりまで延伸する吸入ストローク6は終了する。吸入ストローク6の間にもスイッチオンされた稼働においてインジェクタ14による燃料射出も実施される。吸入ストローク6に続いて圧縮ストローク7が実施され、圧縮ストロークは、下死点から上死点まで延伸し、上死点において次の一次点火とひいては次の燃焼ストロークとが開始される。
【0043】
スイッチオフ工程では燃料の一次点火と射出とが終了されることにより、燃焼ストロークにおいてもはやピストンが押し下げられなくなる。終了後まもなく推進力によってピストンが数回動き、これに応じて弁が開閉する。加えて、調圧器12もスイッチオフ工程の間に閉止される。
【0044】
調圧器が閉じられるとすぐに、ちょうど燃焼ストローク内に存在するおよび/またはちょうどウィンドウ8内に存在するシリンダが選択され、ウィンドウ8内に、調圧器12とインジェクタ14との間の残留燃料がシリンダ内に射出される。当該二次射出によって分配装置13内における圧力が減少される。
【0045】
残留燃料を射出するためのウィンドウ8は、当該実施形態においてシリンダの最後の燃焼ストロークの間の排気ストロークの開始前の30度、すなわち150度のクランク角、において開始する。当該燃焼ストロークは、放出弁の閉止、ひいては排気ストローク3の終了とともに終了する。燃料がシリンダ室内で分配され得るようにするため、残留燃料の点火が残留燃料の射出後20度、または好ましくは10度、において実施されることが好ましい。この場合、射出が排気ストローク3の終了前、遅くとも20度のクランク角、好ましくは10度のクランク角、において実施されることが有利である。
【0046】
図2bにおいて、図2aの実施形態に類似する、別の実施形態における、内燃機関のシリンダにおけるピストンのクランク角に依存する、上死点と下死点との間におけるピストンの位置が図示されている。よって、ここでは最も重要な相違点のみ説明して同一の特徴には同一の符号を付与する。
【0047】
図2bにおいて説明される内燃機関は、2ストローク稼働において横流れ掃気で稼働される。一次点火1は、上死点、すなわち0度のクランク角、において実施される。ピストンの(180度における)下死点方向への下降動作の間、ピストンは開口部を開放することでシリンダにおける放出路と当該シリンダの燃焼室との間の流体連通が形成される。このことは点9aで図示されている。当該時点から排気段階8が開始して、当該排気段階の間、燃焼されたガスを燃焼室から逃がすことが可能である。
【0048】
ピストンのさらなる下降動作の過程において、当該ピストンがさらに開口部を開放することで、当該ピストンが流入路と燃焼室との間の流体連通を形成する。当該流体連通により、好ましくはクランク室内で、予備圧縮された空気が燃焼室に達し得る。当該時点は、点10aとして図示されており、新鮮な空気が燃焼室内に進入することが可能な流入段階10の開始を表す。
【0049】
したがってピストンは、下死点を通過した後、まず流入路への流体連通(点10b)を終了することでまずは流入段階10を終了し、その後放出路が閉止されて(点9b)排気段階9が終了される。ピストンが再び上死点に到達した後、スイッチオンされた稼働において次の一次点火1’が開始される。
【0050】
スイッチオフ工程の導入は、図2aで説明したように実施される。調圧器12が閉じられるとすぐにちょうど一次点火1とウィンドウ8との間、および/またはウィンドウ8内に存在するシリンダ内に、調圧器12とインジェクタ14との間の残留燃料が射出される。当該二次射出によって分配装置13内における圧力が減少される。当該実施形態においてウィンドウ8は、排気段階9の開始前(点9a)の15度のクランク角において開始して、流入段階10の開始(点10a)とともに終了する。
図1
図2a
図2b
【国際調査報告】