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特表2024-546835超音波スキャナ及び前記超音波スキャナにおける超音波信号補正方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】超音波スキャナ及び前記超音波スキャナにおける超音波信号補正方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535329
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 KR2021019851
(87)【国際公開番号】W WO2023120785
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0186966
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515163380
【氏名又は名称】エムキューブ テクノロジー シーオー エルティディ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チュン ヘ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601BB09
4C601BB15
4C601BB23
4C601EE09
4C601GA17
4C601GA21
4C601JB34
4C601JB54
(57)【要約】
本発明は、超音波スキャナに関する。前記超音波スキャナは、一方向にはモータを用いた機械的回転を行い、他の方向には運用者の手動回転を用いた膀胱スキャナである。前記超音波スキャナは、膀胱内の尿容積を求めるとき、単一素子からなる超音波トランスデューサの所望しない物理的位置移動によって発生しうる尿容積の測定誤差を減らすことができるように構成される。本発明による超音波スキャナの制御部は、超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、手動操作による超音波プローブの傾き角度を考慮して超音波エコー信号に対する座標を補正し、補正された座標の超音波エコー信号を用いて扇形状の二次元超音波画像を取得することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定オブジェクトに超音波信号を送信し、測定オブジェクトから反響された超音波エコー信号を受信する超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの中心軸に連結された単一のモータと、
前記超音波トランスデューサ及びモータが内部に搭載された超音波プローブと、
前記超音波プローブの中心軸に装着され、第2方向に対する超音波プローブの傾き角度を感知する傾きセンサと、
手動操作による傾き角度の変化に対応して複数の傾き角度で扇形状の二次元超音波画像を取得し、前記二次元超音波画像は前記モータを用いて前記超音波トランスデューサを第2方向に対して垂直な第1方向に沿って回転移動させて取得される制御部と、
を備え、
前記制御部は、超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、手動操作による超音波プローブの傾き角度を考慮して超音波エコー信号に対する座標を補正し、前記補正された座標を有する超音波エコー信号を用いて扇形状の二次元超音波画像を取得することを特徴とする、超音波スキャナ。
【請求項2】
前記制御部は、
超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、手動操作による超音波プローブの傾き角度を考慮して超音波エコー信号に対する座標を補正する座標補正モジュールと、
モータを駆動して、前記超音波トランスデューサを前記第1方向に沿って回転させ、前記回転に応じて超音波エコー信号を取得し、前記座標補正モジュールを用いて前記超音波エコー信号の座標を補正し、前記補正された座標を有する超音波エコー信号を用いて扇形状の二次元超音波画像を取得する二次元超音波画像取得モジュールと、を備えることを特徴とする、請求項1に記載の超音波スキャナ。
【請求項3】
前記座標補正モジュールは、
超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、
超音波トランスデューサの基準位置として予め設定された原点を基準にして超音波エコー信号に対する初期座標(x、y)を求め、
前記傾きセンサから提供される超音波プローブの傾き角度(θ)を用いて、超音波トランスデューサが原点から離脱した程度を示す誤差値(Δx、Δy)を計算し、
前記誤差値を用いて超音波エコー信号に対する初期座標を補正し、
超音波エコー信号に対する補正座標(x’、y’)を提供することを特徴とする、請求項2に記載の超音波スキャナ。
【請求項4】
前記座標補正モジュールの補正座標(x’、y’)は、次の数式によって求められ、





ここで、(x、y)は、原点を基準とした超音波エコー信号に対する初期座標を示し、(x’,y’)は、超音波プローブの傾きを考慮した超音波エコー信号に対する補正座標を示し、Δdは、超音波プローブの軸方向への移動量を示し、Rは、超音波プローブの下端部カバーリングの半径を示すことを特徴とする、請求項3に記載の超音波スキャナ。
【請求項5】
前記制御部は、
手動操作による傾き角度の変化に対応して、前記二次元超音波画像取得モジュールを繰り返し実行することにより、複数の傾き角度で複数の二次元超音波画像を取得し、複数の二次元超音波画像を用いて、予め設定された三次元情報を抽出する三次元情報抽出モジュールをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の超音波スキャナ。
【請求項6】
前記制御部が抽出する三次元情報は、
膀胱の体積から求められる尿容積であることを特徴とする、請求項5に記載の超音波スキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元走査方式の超音波スキャナを用いて、膀胱を満たしている尿の容積を測定する携帯可能な膀胱スキャナに関する。さらに具体的には、本発明による超音波スキャナは、運用者の手動回転による超音波走査過程で発生する超音波トランスデューサの物理的位置誤差を抽出し、これを用いて超音波エコー信号の座標を補正することにより、膀胱内の尿容積を正確に測定することができるようにする。
【背景技術】
【0002】
健常者は、膀胱に一定量以上の尿が満たされると、膀胱充満状態を感じて自発的に排尿を行うことができる。ところが、様々な病症に起因する排尿障害のある患者は、膀胱充満状態を感じることができないか、或いは膀胱充満状態を感じても自発的に排尿を行うことができない。これにより、あまり多い量の尿が膀胱を満たす場合が発生することがあり、このようなことが発生すると、膀胱関連の合併症が誘発されるおそれがある。このような排尿障害患者をケアするためには、周期的に或いは必要状況が発生するたびに、膀胱内に蓄積された尿の容積を測定しなければならない。このように、患者の尿の容積を測定するために、携帯が簡便な携帯型(Hand-Held)三次元超音波スキャナが用いられる。
【0003】
本明細書では、膀胱内に充填されている尿の容積を測定するための特殊用途の携帯型三次元超音波スキャナを「膀胱スキャナ(bladder scanner)」と呼ぶことにする。膀胱スキャナは、一般医療用超音波スキャナとは異なり、膀胱内部の尿の容積を測定することを主目的とする。よって、膀胱スキャナの主機能は、三次元超音波画像から膀胱領域を自動的に分割(segmentation)し、分割された膀胱領域に対する体積を計算し、計算された膀胱領域の体積を数値で表すことである。そして、膀胱スキャナの副次的な機能は、取得した超音波画像をディスプレイ装置に出力することである。特に、前述した膀胱スキャナは、医療人が携帯できるようにするために、大きさと重さを最小化させたことを特徴とする。これにより、膀胱スキャナは、尿の容積を測定するのに特化しており、その他の副次的な機能は除去されることが一般的である。
【0004】
膀胱スキャナの製作費用を減らすために、膀胱スキャナは、単一素子からなる超音波トランスデューサ、及びこれを駆動させるモータを備える構造で製作されたりもする。このような構造の膀胱スキャナは、扇形走査のために、モータを用いて超音波トランスデューサを回転させながら超音波ビームを走査する方式を多く使用する。膀胱に対する三次元超音波スキャンを行うために、単一面に対する扇形走査を複数の方向に順次行うことにより、膀胱に対する複数の二次元断面の超音波画像を取得することが必要である。このためには、2つの方向にトランスデューサをスキャンすることが必要である。そして、2つの方向へのスキャンのために、互いに異なる方向に駆動される2つのモータを備えることができる。しかし、このような構造の超音波スキャナは、モータ駆動部の大きさと重さが増加するという問題点がある。
【0005】
したがって、携帯可能な膀胱スキャナは、最大限小さく軽くするために、単一のモータを搭載する構造で製作できる。このような構造の膀胱スキャナは、一つの方向にはモータを用いて自動的に回転させ、残りの他の方向には運用者の手の動きを用いて手動で回転させるように構成される。本発明は、運用者による手動回転を用いる超音波走査方式の膀胱スキャナで発生しうる尿容積の測定誤差を減らす方法に関する。
【0006】
膀胱スキャナは、膀胱の容積を簡便に測定する用途のみで使用されるように製作されるため、一般的な超音波スキャナと比較してその大きさが小さくかつ価格が安いという特徴がある。膀胱スキャナの製作費用を減らすために、一般に単一素子からなる超音波トランスデューサ(transducer)が搭載される。一般的な超音波スキャナでは、複数のトランスデューサを線状或いは面状に配列した位相配列型トランスデューサ(phased array transducer)が搭載されるので、価格が高く、駆動方式が複雑である。よって、一般な超音波スキャナは、携帯可能な膀胱スキャナとして採用し難いという限界がある。このため、膀胱スキャナでは、単一素子からなる超音波トランスデューサを利用することが一般的である。単一素子からなるトランスデューサを利用する膀胱スキャナは、膀胱に対する体積画像を得るためには三次元超音波走査が必要である。膀胱スキャナは、複数の扇形走査を複数の角度で行って取得される複数の二次元断面超音波画像を用いて、三次元超音波画像を生成する。
【0007】
図1は、一般的な膀胱スキャナを示す構造図である。図1を参照すると、一般的な膀胱スキャナ10は、全体動作を制御する制御部、超音波トランスデューサ110、第1モータ120、第2モータ130、モータ駆動部などを備える。前述した膀胱スキャナは、下端部に超音波トランスデューサ110がある、前記トランスデューサの厚さは、超音波の周波数によって決定されるが、膀胱スキャンに使用される周波数は、一般的に2~3MHz程度である。トランスデューサは一般的に円形である。トランスデューサの直径は、超音波で測定すべき膀胱の最大深さを考慮して決定し、一般的に10~15mm程度である。超音波トランスデューサ110は、モータ駆動部140に機械的に連結されている。モータ駆動部は、第1モータ及び第2モータを駆動して超音波トランスデューサを互いに異なる2つの方向に回転させることにより、超音波スキャンを行う。モータ駆動部は、一般的に二次元断面の超音波画像を取得するために扇形走査方式を多く採用する。超音波トランスデューサ110、モータ駆動部、及び超音波駆動回路部などは、膀胱スキャナのカバーリング(covering)140内に配置されて固定される。
【0008】
図2は、一般的な膀胱スキャナにおいて、モータを用いて超音波トランスデューサを回転させて二次元超音波信号を取得するための扇形走査を説明するために示す模式図である。図2に示すように、超音波トランスデューサをφ角度だけ回転させると、トランスデューサから出る超音波ビームは、中心軸yに対してφ角度だけ回転する。このとき、超音波トランスデューサの回転軸は、超音波トランスデューサの下端面に中心点Oを置く。
【0009】
図3A及び図3Bは、一般的な膀胱スキャナにおいて、従来の方法によって超音波トランスデューサの回転軸を回転させる方向を示す図である。モータ駆動部がトランスデューサを一定の角速度で回転させると、図3Aに示すような扇形走査を作り出すことができる。図3Aにおいて、走査線の数はM+1個であり、隣接する走査線間の離隔角度Δφは一定の値を有するようにすることが好ましい。扇形走査の角度は、膀胱全体をスキャンすることができるように設定しなければならず、通常120°程度である。一つの扇形走査は、一つの二次元断面画像を作り出す。従って、三次元画像を得るためには、走査角度を変えながら繰り返し扇形走査を行わなければならない。一般的に使われる方法は、図3Bに示すように、トランスデューサを中心軸y軸に対して一定の角速度で回転させる間、図3Aに示すように、扇形走査を行う。図3Bでは、この回転角をθと表示した。図3Bに示すように、一つの扇形走査を行い、Δθだけ回転させた後、扇形走査を繰り返し行うことにより、三次元走査の軌跡を作り出すことができる。θ方向に沿って180°の回転を順次行うと、三次元体積画像を得ることができる。
【0010】
図4は、互いに異なる方向に駆動される2つのモータを備える膀胱スキャナにおいて、三次元画像を取得するためにモータの駆動によって膀胱スキャナが回転する方向を示す模式図である。図4に示すように、膀胱スキャナを患者の下腹部、すなわち、膀胱のある腹部の表面に位置させた後、上述した三次元走査を行うと、膀胱を含む領域に対する三次元画像を取得することができる。膀胱スキャナの三次元走査は、一般的な超音波スキャナに比べて非常に低速であり、走査速度は、通常、数秒(sec)程度である。トランスデューサは、扇形面(sector plane、Si(i=0、1、2、・・・、N))内で一定の角速度で往復運動をしながら、超音波パルスを送信し、人体内で反射されて出てくる超音波エコー信号を受信する。扇形面の数が大きければ、より精密な三次元走査を行うことができる。しかし、扇形面の数が多ければ、膀胱スキャナの測定時間が長くなるという問題が伴われる。よって、扇形面の数は通常10~20程度である。
【0011】
このように、単一素子からなる超音波トランスデューサを用いて三次元走査を行うためには、超音波トランスデューサを二つの方向に回転させることが必要である。よって、二方向の自由度を有するスキャン構造が必要である。二つの方向の自由度を有するスキャン構造を実現するために、通常、二つのモータが使用されるが、これにより膀胱スキャナが大きくなり重くなるという問題が生じる。
【0012】
膀胱を含む互いに異なる複数の方向に対して扇形走査を行い、互いに異なる位置に対する複数の二次元超音波画像を取得し、取得された複数の二次元超音波画像を用いて尿の容積を推定することができる。複数の二次元超音波画像から尿の容積を測定するアルゴリズムは、公知の技術であって、様々な方法が用いられている。特に、尿容積測定アルゴリズムは、韓国特許第10-0763453号、同第10-1874613号などに具体的に説明されている。
【0013】
トランスデューサから発射された超音波パルスは、人体の内部を直進しながら部分的に反射或いは散乱してその強さが次第に減衰する。超音波パルスが反射或いは散乱する程度は、当該領域の音響インピーダンスと周辺の音響インピーダンスとの差によって決定される。一般な生体組織である筋肉又は内蔵組織は、細胞が集まった組織からなっているため、同じ生体組織内においても反射と散乱が起こる。ところが、膀胱にある尿は、均一な液体成分であるため、生体組織に比べて音響インピーダンスの均一度が高い。よって、尿内では、超音波の反射と散乱が殆ど起こらない。このため、超音波画像において、膀胱内部の尿は低い輝度を有する。膀胱内部の尿と周辺の生体組織との大きいコントラスト(contrast)を利用して、二次元超音波画像において膀胱領域を分割し、分割された膀胱領域を三次元的に整列することにより、膀胱の三次元画像を得ることができる。尿容積は、この三次元膀胱画像から推定できる。図3Aに示すように、超音波走査を行うと、全ての断面の全走査線が一つの点Oから始まる。よって、全ての角度で得た断面画像は同じ倍率を有する。すなわち、それぞれの断面画像に対して点Oを始発点とするコーン状の座標系を適用することができ、その結果、尿容積の計算が単純になる。
【0014】
前述したように、膀胱スキャナを小型化及び軽量化するために、単一のモータのみを備えることができる。単一のモータを備える膀胱スキャナにおいて、第1方向への回転はモータ駆動によって行われ、第2方向への回転は運用者の手動動きによって行われる。図5は、既存の単一のモータを有する膀胱スキャナにおいて、三次元画像を取得するための回転を示す模式図である。図5に示すように、運用者が膀胱スキャナを第1方向に対して直角な第2方向に沿って手動で傾ける間、単一のモータを有する膀胱スキャナがモータを用いてトランスデューサを第1方向に沿って自動的に回転させて扇形走査を行うことができる。モータは、電気的な制御によって等速の角運動を作り出すことができる。しかし、運用者が膀胱スキャナを手動で回転させる場合、等速の角運動を作り出すことは難しい。よって、膀胱スキャナに各センサを取り付けてスキャナの角度を測定することが必要である。
【0015】
人体の腹部の表面に膀胱スキャナを配置した後、運用者の手動回転による超音波走査を行うと、走査線の始発点が一つの点に収斂しないという問題が発生する。図4に示すように、超音波スキャナをモータで駆動すると、膀胱スキャナの外観は、患者の腹部の表面に固定された状態で走査を行うことができる。しかし、図5に示すように、運用者が手動で直接膀胱スキャナを傾ける場合、膀胱スキャナの外観の表面が患者の腹部の表面に沿って動く。特に、膀胱スキャナの外観であるプローブカバーリングの表面と超音波トランスデューサが物理的に離隔しているので、プローブカバーリングの下端が動くにつれて、超音波トランスデューサの位置移動が発生する。その結果、運用者の手動回転による超音波走査を行う間、超音波トランスデューサの位置が固定されずに空間的に移動するという問題が生じる。
【0016】
従って、膀胱スキャナが運用者の手動回転による超音波走査を介して複数の二次元超音波画像を取得し、これらを用いて尿容積を計算する場合、超音波トランスデューサの所望しない位置移動による誤差が発生するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前述した問題点を解決するための本発明は、一方向にはモータによる機械式回転を用い、他の方向には運用者による手動回転を用いる膀胱スキャナにおける尿容積の測定誤差を減らすことができる方法を提供することを目的とする。
【0018】
従って、本発明による膀胱スキャナは、膀胱内の尿の容積を求めるときに発生する超音波トランスデューサの所望しない物理的位置移動を考慮して、超音波エコー信号の座標を補正し、このような座標補正を介して尿容積の測定誤差を減らすことができるように構成される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前述した技術的課題を達成するための本発明の特徴による超音波スキャナは、測定オブジェクトに超音波信号を送信し、測定オブジェクトから反響された超音波エコー信号を受信して提供する超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサの中心軸に連結された単一のモータと、前記超音波トランスデューサ及びモータが内部に搭載された超音波プローブと、前記超音波プローブの中心軸に装着され、第2方向に対する超音波プローブの傾き角度を感知して提供する傾きセンサと、手動操作による傾き角度の変化に対応して複数の傾き角度で扇形状の二次元超音波画像を取得し、前記二次元超音波画像は前記モータを用いて前記超音波トランスデューサを第2方向に対して垂直な第1方向に沿って回転移動させて取得される制御部と、を備え、前記制御部は、超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、手動操作による超音波プローブの傾き角度を考慮して超音波エコー信号に対する座標を補正し、補正された座標の超音波エコー信号を用いて扇形状の二次元超音波画像を取得することを特徴とする。
【0020】
本発明による前述した特徴を有する超音波スキャナにおいて、前記制御部は、超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、手動操作による超音波プローブの傾き角度を考慮して超音波エコー信号に対する座標を補正する座標補正モジュールと、モータを駆動して、前記超音波トランスデューサを第1方向に沿って回転移動させ、回転移動に応じて超音波エコー信号を取得し、前記座標補正モジュールを用いて前記超音波エコー信号の座標を補正し、座標が補正された超音波エコー信号を用いて扇形状の二次元超音波画像を取得する二次元超音波画像取得モジュールと、を備えることが好ましい。
【0021】
前述した特徴による超音波スキャナにおいて、前記制御部は、手動操作による傾き角度の変化に対応して、前記二次元超音波画像取得モジュールを繰り返し駆動して、複数の傾き角度で複数の二次元超音波画像を取得し、複数の二次元超音波画像を用いて、予め設定された三次元情報を抽出する三次元情報抽出モジュールをさらに備えることが好ましい。
【0022】
前述した特徴による超音波スキャナにおいて、前記座標補正モジュールは、超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、超音波トランスデューサの基準位置として予め設定された原点を基準にして超音波エコー信号に対する初期座標(x、y)を求め、前記傾きセンサから提供される超音波プローブの傾き角度(θ)を用いて、超音波トランスデューサが原点から離脱した程度を示す誤差値(Δx、Δy)を計算し、 前記誤差値を用いて超音波エコー信号に対する初期座標を補正し、超音波エコー信号に対する補正座標(x’、y’)を提供することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
既存の超音波スキャナは、一方向にはモータを用いた機械的回転を行い、他の一方向には運用者による手動回転を行うように構成される。これにより、超音波トランスデューサが初期基準点を離脱し、その結果、超音波エコー信号の座標を正確に計算することができなくなる。
【0024】
したがって、本発明による超音波スキャナは、超音波トランスデューサの位置ずれによる誤差値を計算し、これを用いて超音波エコー信号の座標を補正する。その結果、本発明による超音波スキャナは、超音波エコー信号に対する正確な位置座標を取得することができるため、超音波画像の歪みを最小限に抑えることができる。
【0025】
また、本発明による超音波スキャナは、超音波画像の歪みを最小限に抑えることにより、従来の方法に比べて、尿容積の測定誤差を大きく減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来の技術による2つのモータを用いて三次元画像を得るように構成された膀胱スキャナを示す斜視図である。
図2図1の膀胱スキャナにおいて、扇形走査(sector scan)を行うための超音波トランスデューサの回転を説明するために示す図である。
図3A図1の膀胱スキャナにおいて、扇形走査を用いた三次元超音波スキャン軌跡を示す図である。
図3B図1の膀胱スキャナにおいて、扇形走査を用いた三次元超音波スキャン軌跡を示す図である。
図4図1の膀胱スキャナにおいて、三次元画像を得るためにモータが膀胱スキャナを回転させる方向を示す模式図である。
図5】1つのモータを用いて三次元画像を得る従来の膀胱スキャナにおいて、運用者が膀胱スキャナを手動で左右回転させる方向を示す模式図である。
図6A図5による膀胱スキャナにおいて、理想的な三次元超音波スキャン軌跡を示す図である。
図6B図5による膀胱スキャナにおいて、理想的な三次元超音波スキャン軌跡を示す図である。
図7図5による膀胱スキャナにおいて、運用者が手で膀胱スキャナを傾けるときに超音波トランスデューサが動く軌跡を示すものである。
図8図5による膀胱スキャナにおいて、運用者が手で動く膀胱スキャナの実際スキャン軌跡を示す図である。
図9】超音波エコー信号を例示的に示すグラフである。
図10】膀胱スキャナにおいて、モータを用いて超音波トランスデューサを回転させる機械式走査方式における座標を説明するために示すグラフである。
図11図5による膀胱スキャナにおいて、運用者が手動で膀胱スキャナを回転させる走査方式における座標を説明するために示すグラフである。
図12A】本発明の好適な実施形態による超音波スキャナの構造を概略的に示すブロック図である。
図12B】本発明の好適な実施形態による超音波スキャナの構造を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施形態による超音波スキャナ及び前記超音波スキャナにおける位置補正方法についてより具体的に説明する。
【0028】
図12は、本発明の好適な実施形態による超音波スキャナを示すブロック図である。図12を参照すると、本発明による超音波スキャナ90は、超音波プローブ93及び制御部95を備える。前記超音波プローブ93には、単一素子からなる超音波トランスデューサ91、モータ92及び傾きセンサ94が搭載される。前記制御部は、マイクロプロセッサなどで構成され、超音波プローブの内部に搭載されるか或いは別途の装置に搭載されて超音波プローブと物理的に連結できる。
【0029】
単一素子からなる前記超音波トランスデューサ91は、測定対象物へ超音波信号を送信し、測定対象物から反響された超音波エコー信号を受信する。前記モータ92は、前記超音波トランスデューサの中心軸に連結され、前記制御部の制御に応じて前記超音波トランスデューサを第1方向に沿って回転させる。前記超音波プローブ93は、前記超音波トランスデューサ及びモータ、傾きセンサが内部に搭載される。前記傾きセンサ94は、前記超音波プローブの中心軸に装着され、第2方向に対する超音波プローブの傾き角度を感知する。前記第2方向は、第1方向に対して垂直な方向である。
【0030】
前記制御部95は、座標補正モジュール950、二次元超音波画像取得モジュール952、三次元情報抽出モジュール954を備える。前記制御部は、前記モータを用いて前記超音波トランスデューサを第1方向に沿って回転させて扇形状の二次元超音波画像を取得する。前記制御部は、運用者が手動動きによる傾き角度の変化に対応して、複数の傾き角度で複数の二次元超音波画像を取得する。前記制御部は、複数の二次元超音波画像を用いて、予め設定された三次元情報を抽出する。ここで、第1方向と第2方向は互いに垂直である。運用者が手動で超音波プローブを第2方向に沿って回転させる間、前記制御部は、モータを駆動して超音波プローブ内の超音波トランスデューサを第1方向に沿って繰り返し回転させながらスキャンして複数の二次元超音波画像を取得する。特に、前記制御部95は、超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、手動操作による超音波プローブの傾き角度を考慮して前記超音波エコー信号に対する座標を補正し、前記補正された座標を有する超音波エコー信号を用いて扇形状の二次元超音波画像を取得することを特徴とする。
【0031】
前記座標補正モジュール950は、測定地点に当接する超音波プローブのカバーリングの下端部と測定センサとしての超音波トランスデューサが物理的に互いに離隔しているために発生する物理的位置誤差を補正するためのモジュールである。前記座標補正モジュール950は、超音波トランスデューサから超音波エコー信号を受信し、超音波トランスデューサの基準位置として予め設定された原点を基準にして前記超音波エコー信号に対する初期座標(x、y)を求める。次に、前記傾きセンサから提供される超音波プローブの傾き角度θを用いて、超音波トランスデューサが原点から離脱した程度を示す誤差値(Δx、Δy)を計算する。次に、前記誤差値を用いて超音波エコー信号に対する初期座標を補正し、超音波エコー信号に対する補正された座標(x’、y’)を提供する。前述した過程に従って前記座標補正モジュールによって補正された座標(x’、y’)は、次の数式によって求められる。
【0032】
【数1】
【0033】
【数2】
【0034】
【数3】
【0035】
【数4】
【0036】
【数5】
【0037】
ここで、(x、y)は、原点を基準とした超音波エコー信号に対する初期座標を示し、(x’、y’)は、超音波プローブの傾き角度を考慮した超音波エコー信号に対する補正座標を示し、Δdは、超音波プローブの軸方向への移動量を示し、Rは、超音波プローブの下端部カバーリングの半径を示す。
【0038】
前記二次元超音波画像取得モジュール952は、モータを駆動して、前記超音波トランスデューサを第2方向に対して垂直な第1方向に沿って回転させ、回転に応じて超音波エコー信号を取得し、前記座標補正モジュールを用いて前記超音波エコー信号に対する座標を補正し、補正された座標を有する超音波エコー信号を用いて扇形状の二次元超音波画像を取得する。
【0039】
前記三次元情報抽出モジュール954は、運用者の手動操作による傾き角度の変化に対応して、前記二次元超音波画像取得モジュールを繰り返し駆動することにより、複数の傾き角度での二次元超音波画像を取得する。次に、前記三次元情報抽出モジュール954は、前記取得された複数の二次元超音波画像を用いて、予め設定された三次元情報を抽出する。前記三次元情報は、膀胱の体積から求められる尿容積であることを特徴とする。
【0040】
以下、前述した構成を有する本発明による超音波スキャナである膀胱スキャナの動作についてより具体的に説明する。本発明による膀胱スキャナは、第2方向に運用者の手動操作によって第2方向に回転を行う間、単一のモータを用いて第1方向にモータの駆動による機械的回転を行いながら、超音波スキャンを行う。
【0041】
図5は、本発明による単一のモータを有する膀胱スキャナを運用者が左右方向に手動回転させながらスキャンする過程を示す模式図である。図5を参照すると、運用者は、膀胱スキャナを手で握って膀胱スキャナを左右に傾けながら超音波スキャンを行う。膀胱スキャナに内蔵されたモータ駆動部は、従来の技術のように扇形走査を行うが、扇形走査は、上下方向に行われる。
【0042】
図6A及び図6Bは、本発明による単一のモータを有する膀胱スキャナにおける理想的な三次元超音波スキャン軌跡を示すものである。運用者の手動回転による傾き角度をθとすると、図6Aのような走査面を取得する。図6Aにおいて、それぞれの扇形状の走査面は、モータ駆動による超音波トランスデューサの回転による超音波走査によって取得されたものである。そして、走査面の集合は、運用者の手動回転によって取得できる。図6Bの扇形スキャンの面を線で表示すると、図6Aのような走査面の集合を得ることができる。図6Bにおいて、一つの線は、図6Aにおいて一つの走査面に対応する。隣接する走査面間の離隔角度Δθは、一定であることが好ましい。ところが、超音波スキャナを一定の角速度で手動回転させることは難しいため、離隔角度Δθは各走査面ごとに変わってもよい。しかし、離隔角度Δθの値を用いて超音波画像の体積画像を求めることができる。膀胱スキャナの上端部に角度センサを取り付けることにより、それぞれの扇形走査面を取得するときの走査角θを求めることができ、よって、隣接した走査面間の離隔角度Δθも求めることができる。
【0043】
図6A及び図6Bにおいて、それぞれの走査面をSで表示し、走査面の数はN+1個である。走査面の数が多くなるほど、三次元体積画像の解像度は向上するが、三次元体積画像を求める時間が長くなる。このような点を考慮して、走査面の数は通常10~20とするのがよい。図6Bにおいて、全ての走査線は点Oから出てくると仮定したが、実際の状況ではそうではない。図7を参照すると、膀胱スキャナのプローブの内部に搭載されたモータによって扇形走査を行う間、運用者が手を用いてプローブを扇形走査に対して直角な方向に傾けると、傾けた方向に沿ってもう一つの扇形走査を行う。
【0044】
図7は、本発明による膀胱スキャナを手で傾けるときに超音波トランスデューサが動く軌跡を示すものである。z軸方向に沿ってモータを用いた扇形走査を行い、x軸方向に沿って手を用いて膀胱スキャナを回転させると仮定する。x軸方向に超音波プローブを傾けると、モータによる扇形走査とは異なり、超音波トランスデューサの位置が点Oに固定されず、傾き角度θに応じて変わる。これは、膀胱スキャナを傾けることにより、半球状の膀胱スキャナの下端部が患者の腹部の表面に接触を維持した状態でx軸方向に動くためである。すなわち、膀胱スキャナの下端部(すなわち、超音波プローブのカバーリング下端部)と患者の腹部の表面との間の接点が固定されずに、x軸方向に移動する。超音波プローブの下端部と患者の腹部面との間には空気層が形成されないように接触をよく維持しなければならない。そうでなければ、空気層から超音波が過度に反射されて良質の超音波画像を得ることができなくなる。
【0045】
運用者が膀胱スキャナを手で傾けると、トランスデューサの位置は、図7に示すように、x軸(左右)方向に移動するだけでなく、y軸(高さ)方向にも変わる。これは、モータによる扇形走査のために超音波トランスデューサとプローブカバーリングとの間にある程度の距離がなければならないためである。このような離隔距離は、通常、数mm程度である。従って、運用者が手動でプローブを傾ける角度に応じてトランスデューサの位置(x、y)が固定されずに変わる。このような状況で超音波エコー信号を収集した後、図6に示す理想的な扇形スキャンを仮定して画像を生成すると、その画像は歪みが発生する。画像の歪み程度が激しくない場合、超音波画像を肉眼で見るときにその歪みを認知することが難しいことがある。しかし、収集した超音波画像から尿容積を推定する場合には、推定誤差が非常に大きくなることができる。例えば、画像の一方向への歪みが2%水準であれば、容積計算における誤差は歪み量の三乗、すなわち8%まで大きくなることができる。よって、尿容積を計算する場合、超音波スキャンの実際軌跡を考慮しなければならない。
【0046】
図7において、超音波プローブをθだけ傾ける場合、超音波プローブのx軸方向への移動量Δxと膀胱スキャナの軸方向、すなわちz’方向への移動量Δdは、次の数式で表現される。
【0047】
【数6】
【0048】
【数7】
【0049】
式中、Rは、超音波プローブの下端部カバーリングの半径を示し、θは、手動動きによる超音波プローブの傾き角度を示す。
【0050】
図8は、本発明による膀胱スキャナにおいて、膀胱スキャナを運用者の手で動かす場合の実際スキャン軌跡を示すものである。ΔxとΔdを考慮した走査面は、図8のとおりである。ここで、超音波走査面は、一つの点Oに収斂せず、傾き角度θに応じて数式6及び数式7によって変わる。それぞれの扇形走査面の収斂点が異なるので、三次元体積画像を求めるときにこれを考慮しなければならない。このような考慮を介して、超音波画像の歪みをなくし、膀胱体積も誤差なしに測定することができる。
【0051】
図9は、本発明による膀胱スキャナにおいて、超音波トランスデューサが受信した超音波エコー信号の波形を示すものである。θのスキャン角度で受信した超音波エコー信号をSθ(t)と表示する。超音波エコー信号が生成される深さrは、数式8を満足する。
【0052】
【数8】
【0053】
ここで、cは、人体内での音速であり、人体軟組織内では約1500m/s程度である。時間tと深さrは線形関係にあるので、超音波エコー信号は時間関数であるとともに深さ関数であって、数式9で表現される。
【0054】
【数9】
【0055】
図3に示すように機械式走査を行う場合、全ての走査線は点Oに収斂する。
【0056】
図10は、機械式走査方式における座標であって、角度θで収集した走査線を示すものである。走査線はxy平面に対して極座標に対応するので、深さrの位置での超音波エコー信号は、直角座標系上の超音波画像I(x、y)に数式10を用いて対応する。
【0057】
【数10】
【0058】
数式10を活用して全ての角度の超音波エコー信号を変換すれば、直角座標系での超音波画像を得ることができる。
【0059】
運用者の手動回転による超音波走査の場合、前述したように、走査線が一点に収斂せずにΔd、Δxの変位を作り出す。図11は、本発明による超音波スキャナにおいて、機械式回転による超音波走査のxy座標系と手動回転による超音波走査のx’y’座標系を示すものである。機械式回転による超音波走査では、点Oを中心に走査線が収斂するので、全ての角度でxy平面が固定される。しかし、運用者の手動回転による超音波走査では、角度に応じてx’y’平面が平行移動をする。(x、y)と(x’、y’)は、数式11~数式13で表現できる。
【0060】
【数11】
【0061】
【数12】
【0062】
【数13】
【0063】
手動回転による超音波走査方式を用いてθ角度で得た超音波エコー信号を
で表現する。この超音波エコー信号を座標変換して得た超音波画像信号は、数式14で表現される。
【0064】
【数14】
【0065】
(x’、y’)座標系は角度に応じて変動するので、これを固定座標系(x、y)に変換して得た最終的な超音波画像信号は、数式15で表現される。
【0066】
【数15】
【0067】
以上、本発明についてその好適な実施形態を中心に説明したが、これは、例示に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性を逸脱することなく、以上に例示されていない種々の変形と応用が可能であることが分かるであろう。そして、それらの変形と応用に関わる相違点は、添付された請求の範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
【国際調査報告】