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特表2024-546837非標準的なスピーカロケーションを有する車両オーディオシステムにおいて標準化されたスタジオでの体験を近似する信号処理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】非標準的なスピーカロケーションを有する車両オーディオシステムにおいて標準化されたスタジオでの体験を近似する信号処理
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20241219BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H04S7/00 300
H04R1/02 102B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535335
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 US2022081582
(87)【国際公開番号】W WO2023114862
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/265,446
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515301041
【氏名又は名称】アティエヴァ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラリス、アントニオス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュース、ピーター ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル、アルヴィンド
【テーマコード(参考)】
5D017
5D162
【Fターム(参考)】
5D017AE11
5D162AA13
5D162CB17
5D162CC04
5D162CC12
5D162CD02
5D162CD03
5D162CD04
5D162CD08
5D162EG02
(57)【要約】
非標準的なスピーカロケーションを有する車両においてサラウンドサウンド信号をレンダリングするときに標準化されたスタジオでの体験を近似する方法は、高さ次元も含むサラウンドサウンド信号を車両のオーディオシステムによって受け取る段階、サラウンドサウンド信号は、標準化されたスピーカロケーションに従って構成された第1のチャンネルを含み、オーディオシステムのスピーカ位置は、標準化されたスピーカロケーションに対応していない;オーディオシステムを使用して、車両の周りのチャンネルの各ペアに和及び差信号処理を実施する段階、和及び差信号処理は、オーディオシステムのスピーカ位置に基づいている;及びサラウンドサウンド信号の和及び差信号処理に基づき、オーディオシステムを使用して車両のスピーカにおいてオーディオをレンダリングする段階を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非標準的なスピーカロケーションを有する車両においてサラウンドサウンド信号をレンダリングするときに標準化されたスタジオでの体験を近似する方法であって、前記方法は、
高さ次元も含むサラウンドサウンド信号を車両のオーディオシステムによって受け取る段階、前記サラウンドサウンド信号は、標準化されたスピーカロケーションに従って構成された第1のチャンネルを含み、前記オーディオシステムのスピーカ位置は、前記標準化されたスピーカロケーションに対応していない;
前記オーディオシステムを使用して、前記車両の周りの前記第1のチャンネルの各ペアに和及び差信号処理を実施する段階、前記和及び差信号処理は、前記オーディオシステムの前記スピーカ位置に基づいている;及び
前記サラウンドサウンド信号の前記和及び差信号処理に基づき、前記オーディオシステムを使用して前記車両のスピーカにおいてオーディオをレンダリングする段階
を備える、方法。
【請求項2】
前記第1のチャンネルは水平方向チャンネル及び上方チャンネルを含み、前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、前記水平方向チャンネルのうちの1つ及び前記上方チャンネルのうちの1つのペアの間でミキシングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、前記車両の前方において音像を幅広くすることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、前記第1のチャンネルのうちの少なくとも1つを前記車両の側方により近づけることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、後方の音を前記車両の前方に動かすことを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記和及び差信号処理は、前記第1のチャンネルを等しい数の第2のチャンネルにミキシングすることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のチャンネルは、7つの水平方向チャンネル、4つの上方チャンネル、及び4つのウーファチャンネルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ペアのうちの少なくとも1つは、前記第1のチャンネルのうちの1つ、及び前記第1のチャンネルのうちの、前記車両の後方に向かう次のチャンネルを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、前記スピーカのうちのいずれかの遅延を変更するのではなく、前記スピーカへと向かう信号の遅延を変更することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「SIGNAL PROCESSING APPROXIMATING A STANDARDIZED STUDIO EXPERIENCE IN A VEHICLE AUDIO SYSTEM HAVING NON-STANDARD SPEAKER LOCATIONS」と題する、2021年12月15日出願の米国特許出願第63/265,446号の優先権を主張し、その開示は、参照によって本明細書にその全体として援用される。
【0002】
[技術分野]
本開示は、非標準的なスピーカロケーションを有する車両オーディオシステムにおける信号処理の実施に関する。
【背景技術】
【0003】
車両は数十年にわたってオーディオシステムを備えているが、それらは一般に、映画館などの公的会場、又は急速に発展しているハイエンドな家庭用サラウンドサウンドシステムの分野で使用されている最も洗練されたシステムに近いリスニング体験を提供することができていない。しかしながら、車両技術の進歩及び複素化により、この点における状況は変化してきている。第1に、最近の車両には著しくよりパワフルなコンピュータ処理リソースが提供されており、これにより最新の車両に乗る体験がどのようなものであるべきかについての所有者又は他の搭乗者の期待が高まっている可能性がある。第2に、電気パワートレインの普及及び空気力学的設計の進歩により、運転中の車両は著しくより静かになってきており、これにより乗員が一流のオーディオ性能を楽しむ機会が増えている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、非標準的なスピーカロケーションを有する車両においてサラウンドサウンド信号をレンダリングするときに標準化されたスタジオでの体験を近似する方法は、高さ次元も含むサラウンドサウンド信号を車両のオーディオシステムによって受け取る段階、前記サラウンドサウンド信号は、標準化されたスピーカロケーションに従って構成された第1のチャンネルを含み、前記オーディオシステムのスピーカ位置は、前記標準化されたスピーカロケーションに対応していない;前記オーディオシステムを使用して、前記車両の周りの前記チャンネルの各ペアに和及び差信号処理を実施する段階、前記和及び差信号処理は、前記オーディオシステムの前記スピーカ位置に基づいている;及び前記サラウンドサウンド信号の前記和及び差信号処理に基づき、前記オーディオシステムを使用して前記車両の前記スピーカにおいてオーディオをレンダリングする段階を備える。
【0005】
実装は、以下の特徴のうちのいずれか又はすべてを含むことができる。チャンネルは、水平方向チャンネル及び上方チャンネルを含み、前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、前記水平方向チャンネルのうちの1つ及び前記上方チャンネルのうちの1つのペアの間でミキシングすることを含む。前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、前記車両の前方において音像を幅広くすることを含む。前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、チャンネルを前記車両の側方により近づけることを含む。前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、後方の音を前記車両の前方に動かすことを含む。前記和及び差信号処理は、前記第1のチャンネルを等しい数の第2のチャンネルにミキシングすることを含む。前記第2のチャンネルは、7つの水平方向チャンネル、4つの上方チャンネル、及び4つのウーファチャンネルを含む。前記ペアのうちの少なくとも1つは、あるチャンネル、及び前記車両の後方に向かう次のチャンネルを含む。前記和及び差信号処理は、少なくとも部分的に、前記スピーカのうちのいずれかの遅延を変更するのではなく、前記スピーカへと向かう信号の遅延を変更することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】サラウンドサウンド用の標準化されたスピーカロケーションの一例、及び非標準的なスピーカロケーションを有するオーディオシステムを備えた車両を概略的に示す図である。
【0007】
図2】標準化されたスタジオでの体験を近似するように和及び差信号処理を実施し得る車両オーディオシステムの一例を示す図である。
【0008】
図3】コンピュータシステムの例示的なアーキテクチャを示す図である。
【0009】
様々な図面における同様の参照符号又は番号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、非標準的なスピーカロケーションを有する車両において標準化されたスタジオでの体験を近似するようにサラウンドサウンド信号を処理するシステム及び技法の例を与える。サラウンドサウンド信号は、より一層没入的なサウンド体験を与えることを意図した高さ次元を有し得る。いくつかの実装では、こうしたサラウンドサウンド信号は、Dolby Laboratoriesによって開発されたコーディングスキームに適合しておりそこからその名前が由来しているいわゆるドルビーアトモス信号を含み得る。例えば、7.1.4という表現によって特徴付けられるドルビーアトモス信号は、従来の8チャンネルサラウンドサウンド信号(7.1の部分)と4つのオーバーヘッド又は上方チャンネル(.4の部分)の組合せを表す。つまり、1つ又は複数の高さ次元を備えたサラウンドサウンド信号は、従来のサラウンドサウンドの水平平面を形成する(例えば5、7、9、11又は別の数の個々のスピーカによってレンダリングされる)より一般的なx及びy次元に加えて、(例えばある高さ又は天井高での)z次元を生み出し得る。車両内に非標準的なスピーカレイアウトを有するということは、そのスピーカのうちの1つ又は複数が、特定のサラウンドサウンドレンダリングに関して推奨されているものとは異なる位置に存在することを意味し得る。車両内でのスピーカの位置付けは、空間的制約又は他のパッケージング課題による制限などの、オーディオ以外の課題に影響され得る。本明細書に記載する車両オーディオシステムは、非標準的なスピーカロケーションを補償するように信号処理を実施して、サラウンドサウンド信号が提供することを意図している没入的オーディオ体験に可能な限り近いオーディオ性能を与えることができる。こうした信号処理は、車両スピーカが存在することを想定されている場所の感覚を復元するように、サラウンドサウンド信号を互いにミキシングすることを含み得る。例には、車両の前方の音像をより幅広くすること、又は車両内の後方の音像を前方に引き寄せることを含むが、これらに限定されない。ミキシングは、スピーカチャンネルの可聴ロケーションを再分散して特定のサラウンドサウンドコーディングスキームの下で推奨されていた可能性のある音像角度のうちのいくつかを取り戻すように、水平方向チャンネル及び上方チャンネルの間などのチャンネル間のペアで実施されてよい。
【0011】
本明細書における例は、車両に言及する。車両は、搭乗者又は積荷、又はその両方を輸送する機械である。車両は、少なくとも1つのタイプの燃料、又は他のエネルギー源(例えば電気)を使用する1つ又は複数のモータを有し得る。車両の例には、車、トラック、及びバスが含まれるが、これらに限定されない。車輪の数は車両のタイプによって異なっていてよく、車輪のうちの1つ又は複数(例えばすべて)は車両の推進のために使用され得る。車両は、1人又は複数人の人を収容する搭乗者コンパートメントを含み得る。少なくとも1人の車両の乗員は運転者であると考えることができ;この場合、様々な道具、器具又は他のデバイスが運転者に提供され得る。本明細書の例では、車両によって運ばれる任意の人は、当該人が車両を運転しているかどうか又はどの程度車両を運転しているか、又は当該人が車両を運転するための制御部のすべてへの又は一部のみへのアクセスを有しているかどうか、又は当該人が車両を運転するための制御部を欠いているかどうかに関わらず、車両の「運転者」又は「搭乗者」と呼ばれる場合がある。
【0012】
図1は、サラウンドサウンドコーディングスキーム用の標準化されたスピーカロケーション100の一例、及び非標準的なスピーカロケーションを有するオーディオシステムを備えた車両102を概略的に示す。標準化されたスピーカロケーション100は、空間104(例えば居室又は映画館)を参照して概略的に示されており、そこでは1人又は複数人の人が、(例えばローカル又はリモート音源に結合されている1つ又は複数のアンプを含む)オーディオシステムによって再生されるオーディオを聴くことができる。空間104の床及び2つの壁が示されており、一方天井及び1つ又は複数の追加の壁は、分かりやすくするためにここでは省略されている。椅子106が、1人又は複数人のリスナの意図されているロケーションを概略的に示している。
【0013】
標準化されたスピーカロケーション100は、互いにいくらか又は完全に異なる機能を実施することを意図されているスピーカが、空間104の周りに分散され得ることを示している。例えば、スピーカ108は少なくとも1つの前方スピーカロケーション(例えば左前方、中央前方、及び右前方の各ロケーション)を表し得る。別の例として、スピーカ110は少なくとも1つのサラウンドスピーカロケーション(例えば左サラウンド及び右サラウンドの各ロケーション)を表し得る。別の例として、スピーカ112は少なくとも1つの中央サラウンドスピーカロケーション(例えば左中央サラウンド、及び右中央サラウンドの各ロケーション)を表し得る。別の例として、スピーカ114は少なくとも1つの後方サラウンドスピーカロケーション(例えば左後方サラウンド及び右後方サラウンドの各ロケーション)を表し得る。別の例として、スピーカ116は少なくとも1つの後方ウーファスピーカロケーションを表し得る。別の例として、スピーカ118は少なくとも1つの高所スピーカロケーション(例えば左高所及び右高所の各ロケーション)を表し得る。特定のサラウンドサウンドコーディングスキームに応じて、他のスピーカロケーションが標準化されたスピーカロケーション100に含まれ得る。
【0014】
車両102は、ここでは上面図で示されている。実際のスピーカ(例えばツイータ、ミッドレンジスピーカ、又はウーファを含むがこれらに限定されないトランスデューサ)は図に示されていないが、概して車両102の内部の様々な位置に位置付けられている。例えば、車両102のオーディオシステムは、(例えば乗員の周りの肩平面の)7つの水平チャンネル、車両内の複数のロケーションに分散された3つのウーファ、及び車両の(ルーフライナと呼ばれることがある)内部天井の4つのチャンネルを有する7.3.4システムとして特徴付けられていてよい。特徴付ける目的で、このスピーカの配置は、車両102の長く狭いキャビン内での位置付けと呼ばれてよい。対照的に、この図において車両102に関して示されているスピーカは物理的なスピーカではなく、むしろ車両オーディオシステムによって提供されるサラウンドサウンド体験における、知覚される音源のロケーションを表している。
【0015】
非標準的なスピーカロケーションに起因して、車両102によって提供される音像は、本明細書に記載するように信号処理が実施されなければ、没入感が不十分な場合がある。いくつかの実装では、本信号処理がない場合、車両オーディオシステムは知覚されるオーディオ方向120に乗員をさらし得る。例えば、知覚されるオーディオ方向120は、車両102の(ダッシュボードとしても知られている)計器パネルのスピーカを使用してレンダリングされる前方右チャンネルに対応していてよく、一方でドアスピーカを使用してレンダリングされる信号はない。知覚されるオーディオ方向120は、狭すぎる(例えば含まれている角度が小さすぎる、又はサラウンドサウンドコーディングスキームで意図されていた可能性があるほど幅広くない)と考えられる場合がある。
【0016】
本信号処理では対照的に、車両オーディオシステムは、代わりに、知覚されるオーディオ方向120'に乗員をさらし得る。これは、上に言及した前方右チャンネル、及び車両の周りを回ったときに後方にある次のチャンネルであり得る右後方ドアチャンネルである(例えばこの場合、この後者のチャンネルは乗員のほぼ真後ろに存在し得る)、チャンネルのペアの間でのミキシングによって実現され得る。明確にすると、前方チャンネルは乗員の前方に遠すぎる可能性があり、幅(ドア)チャンネルは乗員の後方に遠すぎる可能性があるが、信号処理によってミキシングを実施し、それらの間のいくらかの遅延を用いることにより、オーディオシステムは、音が乗員の肩からより直に出てきている印象を作り出すことができる。例えば、知覚されるオーディオ方向120'は、音像が乗員の前方で幅広くされていることを表し得る。別の例として、知覚されるオーディオ方向120'は、音像を乗員から水平方向に(例えば図では右側へと)離していることを表し得る。
【0017】
いくつかの実装では、本信号処理がない場合、車両オーディオシステムは知覚されるオーディオ方向122に乗員をさらす場合があり、これは後ろに遠すぎる(例えばサラウンドサウンドコーディングスキームで意図されていた可能性があるほど長手方向に乗員に近くない)と考えられる場合がある。本信号処理では対照的に、車両オーディオシステムは、代わりに、知覚されるオーディオ方向122'に乗員をさらし得る。例えば、知覚されるオーディオ方向122'は、音像の後方の音を、乗員に向かってより前方に動かしていることを表し得る。
【0018】
要するに、本信号処理はチャンネルを互いにミキシングして、見かけのロケーションを乗員に対してより外側に、且つ/又は乗員に対して異なる角度に動かし得る。標準化されたスピーカロケーション100及び車両102の間の矢印124は、車両102の非標準的なスピーカロケーションを使用して、標準化されたスタジオでの体験を近似するようにサラウンドサウンド信号に信号処理が実施されることを概念的に示している。
【0019】
図2は、標準化されたスタジオでの体験を近似するように和及び差信号処理を実施し得る車両オーディオシステム200の一例を示す。車両オーディオシステム200は、本明細書の他の箇所に記載されている1つ又は複数の他の例と共に使用されてよい。車両オーディオシステム200は、図3を参照して以下に記載されるいくつかの又はすべての例を使用して実装されてよい。
【0020】
車両オーディオシステム200は、少なくとも1つの音源202を備える。音源202は車両に対してローカル(例えばローカルハードドライブ、メモリ、又は他のオーディオストレージデバイス)であってよく、又はリモート(例えば1つ又は複数のコーディングフォーマットでオーディオコンテンツを供給するリモートに位置付けられた1つ又は複数のサーバへのネットワーク接続)であってよい。ここでは、音源202からのオーディオコンテンツ204は、オーディオ情報のチャンネル206を含むものとして概略的に示されている。例えば、サラウンドサウンド信号が7つの水平方向チャンネル、4つの高さチャンネル及び1つのウーファチャンネルを含むとき、12個のチャンネル206が存在し得る。任意の他の数のチャンネルが使用されてよい。
【0021】
車両オーディオシステム200は、チャンネル206を有するオーディオコンテンツ204を音源202から受け取るか又は得ることができるオーディオプロセッサ208を含んでよい。オーディオプロセッサ208は、オーディオコンテンツ204用の少なくとも1つのデコーダ210を含む。デコーダ210は、サラウンドサウンド信号のオーディオコーディングスキームに固有であってよい。例えば、サラウンドサウンド信号がドルビーアトモス信号であるとき、デコーダ210はドルビーアトモスデコーダであってよい。
【0022】
オーディオプロセッサ208は、非標準的なスピーカロケーションを補償するようにサラウンドサウンド信号に信号処理を実施する和/差ミキサ212を含む。いくつかの実装では、和及び差信号処理は、車両の周りを回ったときのチャンネルのペア間で実施される周波数依存ミキシングを含む。和及び差信号処理は、それらを一定のやり方で互いに加算することにより、(2つのステレオチャンネルを含むがこれに限定されない)2つのチャンネルの間で何が同じか(例えば何がモノラルか)に基づくことができ、各信号について何が異なるか(例えば各チャンネルの間で何がステレオか)にも基づくことができる。
【0023】
いくつかの実装では、和信号Mは
【数1】
として得ることができ、ここでC及びCは2つのチャンネルの各信号成分である。同様に、差信号Sは
【数2】
として得ることができる。
【0024】
つまり、和及び差信号処理は多次元ミキシングであり、オーディオシステムが和/差信号にミキシングし直すとき、それらは相対的なレベルにおいてミキシングされ得るだけでなく、相対的な遅延においてもミキシングされ得る。これにより、レベル及び遅延の両方に何がなされるかに応じて、(例えばより幅広い)より大きい空間又は(例えばより狭い)より小さい空間の感覚を作り出すことができる。
【0025】
(例えば上記のM及びSを使用する)和及び差信号処理を用いたミキシングにより、オーディオシステムが比較的小さい物理的キャビネットに閉じ込められているときなどに、空間エフェクトの修正(例えば強調)が容易になり得る。例えば、和及び差信号処理により、オーディオシステムの技術者が、対象となる2つのチャンネルの空間的感覚を効果的に調整し、それをそれぞれのチャンネルに個々にミキシングすることが可能になり得る。
【0026】
いくつかの実装では、本明細書に記載する信号処理は、グラフィカルプログラミング言語を使用して構成されてよい。例えば、車両全体にわたって実施されているチャンネル間のミキシングを定義するダイアグラムが提供されてよい。こうしたダイアグラムは、ある意味において、サラウンドサウンド信号のチャンネルは標準化されたスピーカロケーションに従うとどこに存在することを想定されているか;チャンネルは車両内のどこに存在するか;及びこれら2つの間の差を信号処理がどのように補償するかを示し得る。
【0027】
複数の例において言及してきたように、本明細書に記載のいくつかの信号処理では、遅延が使用されてよい。例えば、(例えばモノラル/ステレオ情報を考慮する)和及び差信号処理では、遅延を使用することによってより幅広いステレオの感覚を作り出すことができ、又は、逆に、例えば、2つのチャンネルをそれらの間の領域に畳み込むような、遅延なしでモノラルにより近づけてミキシングした場合。
【0028】
すぐ上で言及した遅延は、オーディオシステムのキャリブレーション中に導入され得る2つか又はそれより多いチャンネルの間の遅延と同じでない。こうしたキャリブレーションはより早くに(例えば本明細書に記載の信号処理が定義される前に)行うことができ、本開示に従って異なるチャンネル間のペアで特定のミキシングが実施されるのに関わらず、本質的に変化しないままであってよい。いくつかの実装では、様々なスピーカによってレンダリングされる信号が乗員の耳に本質的に同時に届くことを確実にしようとする自動キャリブレーションが実施されてよい。ここでは、和/差ミキサ212による信号処理の後に実施されるものとして、動作214が示されている。例えば、動作214は1つ又は複数の遅延を導入し、且つ/又はクロスオーバー回路又は他のフィルタリングを適用してよい。このことは、本和及び差信号処理が、スピーカのうちのいずれかの遅延を変更するのではなく、スピーカへと向かう信号の遅延を変更することを含み得ることを特徴とし得る。
【0029】
概略的に示されているように、少なくとも、オーディオプロセッサ208は車両216に実装され得る。車両216は、非標準的なレイアウトのスピーカを含む。動作214の後(例えばその直後又はさらに下流で)、スピーカのうちのいくつか又はすべてを使用してオーディオがレンダリングされる。
【0030】
ツイータスピーカ、ミッドレンジスピーカ、フルレンジスピーカ、及び/又はウーファを含むがこれらに限定されない1つ又は複数のタイプのスピーカタイプが使用されてよい。それぞれのスピーカ(タイプ)は、電気的入力を音波に変換するための1つ又は複数のトランスデューサ(例えばボイスコイル)を含んでよい。車両216は、車両216内での複数の配置のうちのいずれかを有し得る数nのツイータスピーカ218を含んでよい。いくつかの実装では、7つのツイータスピーカ218が使用される。車両216は、車両216内での複数の配置のうちのいずれかを有し得る数mのミッドレンジスピーカ220を含んでよい。いくつかの実装では、7つのミッドレンジスピーカ220が使用される。車両216は、車両216内での複数の配置のうちのいずれかを有し得る数pの(ツイドラスピーカ(twiddler speaker)と呼ばれることがある)フルレンジスピーカ222を含んでよい。いくつかの実装では、4つのフルレンジスピーカ222が(例えば高所位置において)使用される。車両216は、車両216内での複数の配置のうちのいずれかを有し得る数qのウーファ224(例えばサブウーファ)を含んでよい。いくつかの実装では、3つのウーファ224が使用される(例えば車両のAピラーのそれぞれに1つ、及びトランクに1つ)。
【0031】
図3は、本明細書に記載のシステム、装置及び/又は技法のいずれか、又は様々な可能な実施形態において利用され得る任意の他のシステム、装置及び/又は技法を含む、本開示の態様を実装するために使用され得るコンピューティングデバイス300の例示的なアーキテクチャを示す。
【0032】
図3に示されているコンピューティングデバイスを使用して、本明細書に記載のオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム及び/又は(ソフトウェアエンジンを含む)ソフトウェアモジュールを実行することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス300は、中央処理装置(CPU)などの少なくとも1つの処理デバイス302(例えば、プロセッサ)を含む。様々な製造業者、例えばIntel又はAdvanced Micro Devicesから、様々な処理デバイスが入手可能である。この例では、コンピューティングデバイス300は、システムメモリ304、及びシステムメモリ304を含む様々なシステムコンポーネントを処理デバイス302に結合するシステムバス306も含む。システムバス306は、様々なバスアーキテクチャのうちのいずれかを使用するメモリバス又はメモリコントローラ;ペリフェラルバス;及びローカルバスを含むがこれらに限定されない、使用され得る任意の数のタイプのバス構造のうちの1つである。
【0034】
コンピューティングデバイス300を使用して実装され得るコンピューティングデバイスの例は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、(スマートフォン、タッチパッドモバイルデジタルデバイス又は他のモバイルデバイスなどの)モバイルコンピューティングデバイス、又はデジタル命令を処理するように構成された他のデバイスを含む。
【0035】
システムメモリ304は、リードオンリメモリ308及びランダムアクセスメモリ310を含む。起動中などにコンピューティングデバイス300内で情報を転送するように機能する基本ルーチンを含む基本入力/出力システム312が、リードオンリメモリ308に記憶され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス300は、デジタルデータを記憶するためのハードディスクドライブなどの二次ストレージデバイス314も含む。二次ストレージデバイス314は、二次ストレージインタフェース316によってシステムバス306に接続される。二次ストレージデバイス314、及びその関連付けられたコンピュータ可読媒体は、コンピューティングデバイス300用の(アプリケーションプログラム及びプログラムモジュールを含む)コンピュータ可読命令、データ構造及び他のデータの不揮発性且つ非一時的なストレージを提供する。
【0037】
本明細書に記載の例示的な環境では二次ストレージデバイスとしてハードディスクドライブが利用されているが、他の実施形態では他のタイプのコンピュータ可読記憶媒体が使用される。これらの他のタイプのコンピュータ可読記憶媒体の例には、磁気カセット、フラッシュメモリカード、ソリッドステートドライブ(SSD)、デジタルビデオディスク、ベルヌーイカートリッジ、コンパクトディスクリードオンリメモリ、デジタル多用途ディスクリードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ又はリードオンリメモリが含まれる。いくつかの実施形態は非一時的媒体を含む。例えば、コンピュータプログラム製品は、非一時的記憶媒体に有形に具現化され得る。さらに、こうしたコンピュータ可読記憶媒体は、ローカルストレージ又はクラウドベースのストレージを含み得る。
【0038】
二次ストレージデバイス314、及び/又はオペレーティングシステム318、1つ又は複数のアプリケーションプログラム320、(本明細書に記載のソフトウェアエンジンなどの)他のプログラムモジュール322及びプログラムデータ324を含むシステムメモリ304に、複数のプログラムモジュールが記憶され得る。コンピューティングデバイス300は、任意の適切なオペレーティングシステムを利用し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、ユーザは、1つ又は複数の入力デバイス326を通じて、コンピューティングデバイス300に入力を提供する。入力デバイス326の例には、キーボード328、マウス330、(例えば音声及び/又は他のオーディオ入力のための)マイクロフォン332、(タッチパッド又はタッチ感知ディスプレイなどの)タッチセンサ334、及び(例えばジェスチャ入力のための)ジェスチャセンサ335が含まれる。いくつかの実装では、入力デバイス326は、存在、近接及び/又は運動に基づく検出を提供する。他の実施形態は他の入力デバイス326を含む。入力デバイスは、システムバス306に結合された入力/出力インタフェース336を通じて処理デバイス302に接続され得る。これらの入力デバイス326は、パラレルポート、シリアルポート、ゲームポート、又はユニバーサルシリアルバスなどの任意の数の入力/出力インタフェースによって接続され得る。可能ないくつかの実施形態では、入力デバイス326及び入力/出力インタフェース336の間の無線通信も可能であり、ごくわずかな例を挙げると、赤外線、BLUETOOTH(登録商標)無線技術、802.11a/b/g/n、セルラ、超広帯域(UWB)、ZigBee(登録商標)、又は他の無線周波数通信システムが含まれる。
【0040】
この例示的な実施形態では、モニタ、液晶ディスプレイデバイス、発光ダイオードディスプレイデバイス、プロジェクタ、又はタッチ感知ディスプレイデバイスなどのディスプレイデバイス338も、ビデオアダプタ340などのインタフェースを介してシステムバス306に接続される。コンピューティングデバイス300は、ディスプレイデバイス338に加え、スピーカ又はプリンタなどの様々な他のペリフェラルデバイス(図示せず)を含み得る。
【0041】
コンピューティングデバイス300は、ネットワークインタフェース342を通じて1つ又は複数のネットワークに接続され得る。ネットワークインタフェース342は、有線及び/又は無線通信を提供し得る。いくつかの実装では、ネットワークインタフェース342は、無線信号を送信及び/又は受信するための1つ又は複数のアンテナを含み得る。ローカルエリアネットワーキング環境又は(インターネットなどの)ワイドエリアネットワーキング環境で使用されるとき、ネットワークインタフェース342は、イーサネット(登録商標)インタフェースを含み得る。他の可能な実施形態は、他の通信デバイスを使用する。例えば、コンピューティングデバイス300のいくつかの実施形態は、ネットワーク全体にわたって通信するためのモデムを含む。
【0042】
コンピューティングデバイス300は、少なくとも何らかの形態のコンピュータ可読媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体は、コンピューティングデバイス300によってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体を含む。例として、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読記憶媒体及びコンピュータ可読通信媒体を含む。
【0043】
コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータなどの情報を記憶するように構成された任意のデバイスに実装される、揮発性及び不揮発性であり、リムーバブル及び非リムーバブルな媒体を含む。コンピュータ可読記憶媒体は、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ、フラッシュメモリ、又は他のメモリ技術、コンパクトディスクリードオンリメモリ、デジタル多用途ディスク又は他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又は他の磁気ストレージデバイス、又は所望の情報を記憶するために使用され得る、コンピューティングデバイス300によってアクセスされ得る任意の他の媒体を含むが、これらに限定されない。
【0044】
コンピュータ可読通信媒体は、典型的には、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータを搬送波又は他の伝送メカニズムなどの変調データ信号に具現化し、任意の情報伝達媒体を含む。用語「変調データ信号」は、その特性のうちの1つ又は複数が、信号内の情報をエンコードするような方式で設定又は変更された信号を指す。例として、コンピュータ可読通信媒体は、有線ネットワーク又は直接有線接続などの有線媒体、及び音響、無線周波数、赤外線、及び他の無線媒体などの無線媒体を含む。上記のもののいずれかの組合せも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれる。
【0045】
図3に示されているコンピューティングデバイスも、1つ又は複数のこうしたコンピューティングデバイスを含み得るプログラマブル電子機器の一例であり、複数のコンピューティングデバイスが含まれるとき、こうしたコンピューティングデバイスは、適切なデータ通信ネットワークに共に結合されて、本明細書に開示する様々な機能、方法又は動作を集合的に実施することができる。
【0046】
いくつかの実装では、コンピューティングデバイス300はADASコンピュータとして特徴付けられ得る。例えば、コンピューティングデバイス300は、人工知能(AI)の分野で生じるタスクを処理するために使用されることがある1つ又は複数のコンポーネントを含み得る。この場合、コンピューティングデバイス300は、一般にADAS又はAIの需要に対して十分な処理能力及び必要なサポートアーキテクチャを含む。例えば、処理デバイス302は、マルチコアアーキテクチャを含み得る。別の例として、コンピューティングデバイス300は、処理デバイス302に加えて、又はその一部として、1つ又は複数のコプロセッサを含み得る。いくつかの実装では、少なくとも1つのハードウェアアクセラレータがシステムバス306に結合され得る。例えば、グラフィックス処理ユニットが使用され得る。いくつかの実装では、コンピューティングデバイス300はニューラルネットワーク固有ハードウェアを実装して、1つ又は複数のADASタスクを処理することができる。
【0047】
本明細書の全体を通して使用される用語「実質的に」及び「約」は、処理時のばらつきに起因するものなどの小さい変動を記載及び説明するために使用される。例えばそれらは、±5%未満であるか又はそれに等しい、例えば±2%未満であるか又はそれに等しい、例えば±1%未満であるか又はそれに等しい、例えば±0.5%未満であるか又はそれに等しい、例えば±0.2%未満であるか又はそれに等しい、例えば±0.1%未満であるか又はそれに等しい、例えば±0.05%未満であるか又はそれに等しいことを指し得る。また、本明細書で使用されるとき、「a」又は「an」などの不定冠詞は「少なくとも1つ」を意味する。
【0048】
前述の概念及び以下でより詳細に議論される追加の概念のすべての組合せは、(こうした概念が相互に矛盾しないことを条件として)本明細書に開示する本発明の主題の一部であることを企図されていることを理解されたい。特に、本開示の最後に現れる特許請求される主題のすべての組合せが、本明細書に開示する本発明の主題の一部であると企図されている。
【0049】
複数の実装について記載してきた。しかし、本明細書の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正が加えられ得ることが理解されよう。
【0050】
さらに、図に示す論理フローは、望ましい結果を得るために、示した特定の順序、又は連続した順序を必要としない。さらに、記載されたフローに他の処理が提供されてよく、又は記載されたフローから処理が削除されてよく、記載されたシステムに他のコンポーネントが追加されてよく、又は記載されたシステムから他のコンポーネントが削除されてよい。したがって、他の実装が以下の特許請求の範囲に記載の範囲内に含まれる。
【0051】
記載した実装の特定の特徴を、本明細書に記載のように示してきたが、今や多くの修正、置換、変更、及び均等物が当業者には思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、実装の範囲に入るすべてのこうした修正及び変更を包含するよう意図されていることを理解されたい。それらは限定ではなく単なる例として提示されており、形態及び詳細の様々な変更が加えられてよいことを理解されたい。相互に排他的な組合せを除き、本明細書に記載された装置及び/又は方法の任意の部分が任意の組合せで組み合わされてよい。本明細書に記載された実装は、記載された異なる実装の機能、コンポーネント、及び/又は特徴の様々な組合せ及び/又は部分的組合せを含み得る。
図1
図2
図3
【国際調査報告】