(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】疾患を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241219BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241219BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241219BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20241219BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20241219BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20241219BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241219BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241219BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241219BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20241219BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241219BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241219BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K47/64
A61K47/68
A61K45/00
A61K51/08 100
A61K51/10 100
A61K38/20
A61K39/395 Y
A61K51/08 200
A61K51/10 200
A61P37/02
A61P43/00 125
A61P43/00 105
A61P37/06
A61P17/00
A61P9/00
A61P29/00
C07K16/00
C07K14/705
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535370
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 US2022081559
(87)【国際公開番号】W WO2023114847
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ラシディアン ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】タヴァコルプール ソヘイル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076CC07
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA12
4C084AA17
4C084BA41
4C084BA44
4C084DA12
4C084DA13
4C084DA14
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA891
4C084ZB071
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB211
4C084ZC541
4C084ZC711
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4C085DD62
4C085EE01
4C085HH03
4C085HH11
4C085KB82
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA57
4H045BA70
4H045BA71
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA02
4H045DA03
4H045DA04
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明の態様は、自己免疫疾患を治療及び予防するための組成物及び方法に向けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスモグレイン3(Dsg3)の細胞外(EC)ドメイン若しくはECドメインの一部分、又はデスモグレイン1(Dsg1)のECドメイン若しくはECドメインの一部分と、単離された免疫グロブリンFc領域又はその断片と、を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質が、配列番号1~4のうちのいずれか1つ又はその断片を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
配列番号1~4又は29~32に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
1つ以上のB細胞を標的とする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記B細胞が、自己反応性抗Dsg3 B細胞又は自己反応性抗Dsg1 B細胞を含む、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記Fc領域が、配列番号1~4又は29~32中のFc領域に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記Fc領域が、IgG Fc領域を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記ECドメインが、
図13に提供される様々な配列識別子(配列番号8~28)のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記ECドメインが、EC1、EC2、EC4、EC5、又はそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
治療用部分、イメージング部分、捕捉部分、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記捕捉部分が、親水性タンパク質、細菌トランスペプチダーゼ酵素、GSTタグ、Hisタグ、ポリエチレングリコール(PEG)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記イメージング部分が、フルオロフォア、放射性同位体、又はそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記治療用部分が、サイトカイン、毒素、放射線治療薬、T細胞結合部分、ナチュラルキラー細胞結合部分、又はそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記治療用部分が、
IL-2、
IL-15、又は
IL-1活性を有する分子
を含む、請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項16】
自己反応性抗Dsg3又は抗Dsg1 B細胞を枯渇させる方法であって、対象に、治療有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
前記有効量が、前記対象において循環する抗Dsg3又は抗Dsg1抗体のレベルと正に相関する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
自己免疫疾患を治療する方法であって、対象に、治療有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質を投与することを含み、前記対象が、前記自己免疫疾患を患っている、前記方法。
【請求項19】
前記疾患が、自己免疫性水疱症、狼瘡、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病、及び免疫介在性血管炎からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記自己免疫性水疱症が、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、又は線状IgA水疱性皮膚症を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
治療有効量の融合タンパク質又は薬学的組成物が、前記対象における自己反応性B細胞を排除するか、又は無能力化する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記融合タンパク質と反応性の自己抗体、又は前記薬学的組成物中の前記融合タンパク質の存在下で有効である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、核酸。
【請求項24】
請求項1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸を含む、ベクター。
【請求項25】
請求項1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするベクターを含む、細胞。
【請求項26】
自己反応性抗原と、
エフェクター細胞に結合する、抗体のFc部分、又は抗体と
を含む、融合タンパク質。
【請求項27】
前記自己反応性抗原が、デスモプラキン、エンボプラキン、ペリプラキン、プレクチン、水疱性類天疱瘡抗原1、コルネオデスモシン、微小管アクチン架橋因子、エピプラキン及びカドヘリンからなる群からの分子又は分子の断片を含む、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
前記自己反応性抗原が、前記分子の細胞外(EC)ドメイン、又はそのB細胞エピトープを含む、請求項27に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
前記ECドメイン、又はそのB細胞エピトープが、デスモグレイン-1(Dsg1)、デスモグレイン-2(Dsg2)、デスモグレイン-3(Dsg3)、デスモグレイン-4(Dsg4)、デスモコリン-1(Dsc1)デスモコリン-2(Dsc2)、及びデスモコリン-3(Dsc3)からなるデスモソームカドヘリンの群から選択される、請求項28に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
前記ECドメイン、又はそのB細胞エピトープが、EC1、EC2、EC3、EC4、EC5、及びそれらの組み合わせの全て又は一部分を含む、請求項28に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
前記自己反応性抗原が、自己反応性B細胞のB細胞受容体(BCR)に結合する、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記自己反応性B細胞が、自己免疫疾患を有する動物由来である、請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
前記自己免疫疾患が、前記動物における自己抗体の産生によって特徴付けられる、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
前記自己免疫疾患が、自己免疫性水疱症、狼瘡、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病、又は免疫介在性血管炎を含む、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
前記自己免疫性水疱症が、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症、落葉状天疱瘡、表皮内好中球性IgA皮膚症、及び腫瘍随伴性天疱瘡からなる群から選択される、請求項34に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
前記自己免疫疾患が、ヒト、イヌ、ネコ又はウマに存在する、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
前記抗体のFc部分が、Fc受容体(FcR)を有する細胞に結合することができる、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
前記FcRが、Fc-ガンマ受容体(FcγR)、Fc-アルファ受容体(FcαR)、又はFc-エプシロン受容体(FcεR)を含む、請求項37に融合タンパク質。
【請求項39】
前記FcγRが、FcγRI、FcγRII、又はFcγRIIIを含む、請求項38に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
前記FcRが、B細胞、濾胞性樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、血小板又は肥満細胞上に存在する、請求項37に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
前記FcRが、ナチュラルキラー細胞又はマクロファージ上に存在する、請求項37に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
前記抗体のFc部分が、配列番号1~4又は29~32のFc部分に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
前記エフェクター細胞に結合する前記抗体が、T細胞に結合する、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
前記T細胞に結合する前記抗体が、抗CD3抗体を含む、請求項43に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
前記抗CD3抗体が、単鎖可変断片(scFv)を含む、請求項44に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
前記エフェクター細胞が、T細胞を含む、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項47】
サイトカインを更に含む、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項48】
前記サイトカインが、
IL-2、
IL-15、又は
IL-1活性を有する分子
を含む、請求項47に記載の融合タンパク質。
【請求項49】
デスモグレイン又はデスモコリンタンパク質の細胞外部分由来の自己反応性B細胞エピトープと、
Fc-ガンマ受容体(FcγR)、Fc-アルファ受容体(FcαR)、又はFc-エプシロン受容体(FcεR)に結合することができる抗体のFc部分と
を含む、融合タンパク質。
【請求項50】
前記自己反応性B細胞エピトープが、前記融合タンパク質のN末端を構成し、前記Fc部分が、前記融合タンパク質のC末端を構成する、請求項49に記載の融合タンパク質。
【請求項51】
前記自己反応性B細胞エピトープと前記Fc部分を接続するアミノ酸スペーサを更に含む、請求項49に記載の融合タンパク質。
【請求項52】
前記融合タンパク質が、デスモグレイン又はデスモコリンタンパク質の細胞外部分由来の少なくとも2つのB細胞エピトープを含む、請求項49に記載の融合タンパク質。
【請求項53】
前記融合タンパク質が、
第1の自己反応性抗原と、抗体重鎖由来の第1のC
H3ドメインとを有する、第1のポリペプチドと、
第2の自己反応性抗原と、抗体重鎖由来の第2のC
H3ドメインとを有する、第2のポリペプチドと
を含み、
ジスルフィド結合が、前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドを接続する、
請求項52に記載の融合タンパク質。
【請求項54】
前記第1及び第2のC
H3ドメインが、優先的にヘテロ二量体化するように構成されている、請求項53に記載の融合タンパク質。
【請求項55】
前記第1及び第2のC
H3ドメイン中のアミノ酸の相補的改変が、優先的な二量体化をもたらす、請求項54に記載の融合タンパク質。
【請求項56】
前記第1及び第2のC
H3ドメインが、ノブ-イントゥ-ホール配置を使用して改変されている、請求項54に記載の融合タンパク質。
【請求項57】
デスモグレイン又はデスモコリンタンパク質の細胞外部分由来の自己反応性B細胞エピトープと、
エフェクター細胞に結合する抗体と
を含む、融合タンパク質。
【請求項58】
前記エフェクター細胞が、T細胞を含む、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項59】
前記抗体が、抗CD3抗体を含む、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項60】
前記抗体が、抗CD8(細胞傷害性T細胞)又は抗CD4(ヘルパーT細胞)抗体を含む、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項61】
前記抗体が、マクロファージ(例えば、CD14、CD40、CD11b、CD64、CD68)又はナチュラルキラー(NK)細胞(CD56)に特異的な抗体を含む、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項62】
前記自己反応性B細胞エピトープが、前記融合タンパク質のN末端を構成し、前記抗体が、前記融合タンパク質のC末端を構成する、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項63】
前記自己反応性B細胞エピトープと前記抗体を接続するアミノ酸スペーサを更に含む、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項64】
前記アミノ酸スペーサが、約2~約40個のアミノ酸を含む、請求項63に記載の融合タンパク質。
【請求項65】
前記アミノ酸スペーサが、可撓性アミノ酸スペーサである、請求項64に記載の融合タンパク質。
【請求項66】
前記可撓性アミノ酸スペーサが、Gly及びSer残基を含む、請求項65に記載の融合タンパク質。
【請求項67】
前記可撓性アミノ酸スペーサが、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)
nを含む、請求項65に記載の融合タンパク質。
【請求項68】
前記可撓性アミノ酸スペーサが、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)
3を含む、請求項65に記載の融合タンパク質。
【請求項69】
前記自己反応性B細胞エピトープ及び前記抗体が、銅媒介性アジドーアルキン環化付加化学(
図8A)を使用して作製されたC-C結合によって接続される、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項70】
前記自己反応性B細胞エピトープ及び前記抗体が、ソルターゼ(
図8B)を使用して作製されたN-C結合によって接続される、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項71】
前記自己反応性B細胞エピトープ及び前記抗体が、アミノ酸配列Leu-Pro-Glu-Thr-Gly-Gly-Glyによって接続される、請求項70に記載の融合タンパク質。
【請求項72】
デスモグレイン又はデスモコリンタンパク質の細胞外部分由来の少なくとも2つのB細胞エピトープを含む、請求項57に記載の融合タンパク質。
【請求項73】
第1のポリペプチドを第2のポリペプチドに接続するための方法であって、
前記第1のポリペプチドのC末端を、アミノ酸配列Leu-Pro-Glu-Thr-Glyを含むように改変することと、
前記第2のポリペプチドのN末端を、アミノ酸配列Leu-Pro-Glu-Thr-Gly-Gly-Glyを含むように改変することと、
前記第1の改変されたポリペプチド及び前記第2の改変されたポリペプチドが、前記アミノ酸配列Leu-Pro-Glu-Thr-Gly-Gly-Glyによって接続されるように、前記改変された第1のポリペプチド及び前記改変された第2のポリペプチドを、トリグリシン(Gly-Gly-Gly)及びソルターゼの存在下で反応させる、
前記方法。
【請求項74】
自己免疫性水疱症を治療するためのFc媒介性治療薬であって、
第1の自己反応性抗原と、第2のC
H3ドメインと優先的にヘテロ二量体化することができる抗体重鎖由来の第1のC
H3ドメインとを含む、第1のポリペプチドと、
第2の自己反応性抗原と、第1のC
H3ドメインと優先的にヘテロ二量体化することができる抗体重鎖由来の第2のC
H3ドメインとを含む、第2のポリペプチドと
を含み、
ジスルフィド結合が、前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドを共有結合する、
前記Fc媒介性治療薬。
【請求項75】
前記第1のC
H3ドメイン及び前記第2のC
H3ドメイン中の相補的アミノ酸が、ノブ-イン-ホール戦略を使用して改変される、請求項74に記載のFc媒介性治療薬。
【請求項76】
前記第1のC
H3ドメイン及び前記第2のC
H3ドメインが、前記第1のC
H3ドメインと前記第1のC
H3ドメインとの二量体化と比較して、かつ、前記第2のC
H3ドメインと前記第2のC
H3ドメインとの二量体化と比較して、優先的に二量体化する、請求項74に記載のFc媒介性治療薬。
【請求項77】
請求項74~76のいずれか一項に記載のFc媒介性治療薬と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項78】
自己反応性B細胞を枯渇させる方法であって、対象に、治療有効量の請求項74~76のいずれか一項に記載のFc媒介性治療薬を投与することを含む、前記方法。
【請求項79】
アレルゲン、前記アレルゲンの一部分、又は前記アレルゲンを模倣する分子と、
エフェクター細胞に結合する、抗体のFc部分、又は抗体と
を含む、融合タンパク質。
【請求項80】
前記アレルゲン、前記アレルゲンの一部分、又は前記アレルゲンを模倣する分子が、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを含む、請求項79に記載の融合タンパク質。
【請求項81】
前記アレルゲン、前記アレルゲンの一部分、又は前記アレルゲンを模倣する分子が、薬物、食品、昆虫、ラテックス、カビ、動物、又は植物に由来する、請求項79に記載の融合タンパク質。
【請求項82】
前記アレルゲン、前記アレルゲンの一部分、又は前記アレルゲンを模倣する分子が、IgEを産生するか、又は産生するであろうB細胞のB細胞受容体(BCR)に結合することができる、請求項79に記載の融合タンパク質。
【請求項83】
前記B細胞が、アレルギーを有する動物由来である、請求項82に記載の融合タンパク質。
【請求項84】
前記アレルギーが、I型過敏症である、請求項83に記載の融合タンパク質。
【請求項85】
前記抗体のFc部分が、Fc受容体(FcR)を有する細胞に結合することができる、請求項79に記載の融合タンパク質。
【請求項86】
前記エフェクター細胞に結合する前記抗体が、T細胞に結合することができる、請求項79に記載の融合タンパク質。
【請求項87】
T細胞に結合することができる前記抗体が、抗CD3抗体を含む、請求項86に記載の融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月14日に出願された米国仮出願第63/289,595号、及び2022年7月11日に出願された米国仮出願第63/368,119号に対する優先権を主張し、その内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載され特許請求される本発明の日付時点での当業者に既知の最新技術をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示は、参照により本出願に組み込まれる。
【0003】
本特許開示は、著作権保護の対象となる、材料を含む。著作権所有者は、米国特許商標局の特許ファイル又は記録に表れているような特許文書又は特許開示をいかなる者がファクシミリ複製することにも異議はないが、それ以外では、あらゆる全ての著作権を留保する。
【0004】
発明の分野
本発明の態様は、疾患を治療し、予防するための組成物及び方法に向けられる。複数の実施形態では、疾患は、自己免疫疾患である。
【0005】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含有し、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。[]に作成されたこのASCIIコピーは、[]という名称であり、[]バイトのサイズである。
【背景技術】
【0006】
発明の背景
ヒトを含む動物には、様々な自己免疫疾患が存在する。自己免疫疾患を治療するための試薬及び方法が関心対象である。
【発明の概要】
【0007】
自己免疫性水疱症を含む、動物における自己免疫疾患を治療するための試薬及び方法が開示される。いくつかの実施形態では、試薬は、疾患動物由来の自己反応性抗原を含むドメインとエフェクター細胞に結合することができるドメインとを有する融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞結合ドメインは、エフェクター細胞上のFc受容体に結合することができる抗体のFc部分であり得る。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞結合ドメインは、エフェクター細胞に結合することができる抗体であり得る。
【0008】
本発明の態様は、デスモグレイン(遺伝子DSG1、2、3若しくは4によってコードされる)又はデスモコリン(遺伝子DSC1、2若しくは3によってコードされる)などのデスモソームカドヘリン又はその断片を含む融合タンパク質に向けられる。いくつかの実施形態では、配列番号5~28(実施例4及び
図13に見出される)は、これらのアミノ酸配列の全て又は一部分を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、デスモグレイン3(Dsg3)、又はデスモグレイン1(Dsg1)の細胞外(EC)ドメインなどの、デスモソームカドヘリンタンパク質のECドメイン、及びそれらの単離された免疫グロブリンFc領域又は断片を含む。複数の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号1~4、29~32、又はそれらの断片のうちのいずれか1つ以上を含む。複数の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号1~4又は29~32に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。複数の実施形態では、融合タンパク質は、そのデスモソームカドヘリン部分を介して、1つ以上のB細胞を標的とする。更なる実施形態では、標的化されたB細胞は、自己反応性抗Dsg3 B細胞又は自己反応性抗DSG1 B細胞を含む。複数の実施形態では、融合タンパク質はまた、そのFc領域を介してエフェクター細胞(例えば、NK細胞、マクロファージ)を標的とする。複数の実施形態では、融合タンパク質のFc領域は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号29、配列番号30、配列番号31又は配列番号32のFc領域に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む。複数の実施形態では、Fc領域は、IgG Fc領域を含む。複数の実施形態では、ECドメインは、
図13に提供される様々な配列IDのうちのいずれか1つ以上を含む。更なる実施形態では、ECドメインは、EC1、EC2、及びEC3を含む。複数の実施形態では、融合タンパク質は、治療用部分、イメージング部分、捕捉部分、又はそれらの組み合わせを更に含む。更なる実施形態では、捕捉部分は、親水性タンパク質、細菌トランスペプチダーゼ酵素、GSTタグ、Hisタグ、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、又はそれらの組み合わせを含む。別の更なる実施形態では、イメージング部分は、フルオロフォア、放射性同位体、又はそれらの組み合わせを含む。別の更なる実施形態では、治療用部分は、サイトカイン、毒素、放射線治療薬、T細胞結合部分、ナチュラルキラー細胞結合部分、又はそれらの組み合わせを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、デスモソームカドヘリン又はその断片、及びエフェクター細胞に結合することができる抗体又は断片を含み得る。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、T細胞であり得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、デスモソームカドヘリン又はその断片、及び放射線同位体を含み得る。
【0012】
本発明の態様は、本明細書に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組み合わせに向けられる。
【0013】
本発明の態様は、自己反応性抗Dsg又は抗Dsc B細胞を枯渇させる方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載の融合タンパク質、又は本明細書に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法に向けられる。ある実施形態では、有効量は、対象と循環する抗Dsg又はDsc抗体のレベルと正に相関する。
【0014】
本発明の態様は、自己免疫疾患を治療する方法であって、本方法が、対象に、治療有効量の本明細書に記載の融合タンパク質、又は本明細書に記載の薬学的組成物を投与することを含み、対象が、自己免疫疾患を患っている、方法に向けられる。ある実施形態では、疾患は、自己免疫性水疱症、狼瘡、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病、及び免疫介在性血管炎からなる群から選択される。複数の実施形態では、自己免疫性水疱症は、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症、筋肉特異的チロシンキナーゼ(muscle-specific tyrosine kinase、MuSK)重症筋無力症(myasthenia gravis、MG)、PLA2R膜性腎症、又はFVIII同種抗体を伴う血友病Aを含む。複数の実施形態では、対象に投与される融合タンパク質又は薬学的組成物の量は、自己免疫疾患に対する免疫応答を誘発する。
【0015】
本発明の態様は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸に向けられる。
【0016】
本発明の態様は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターに向けられる。
【0017】
本発明の態様は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターを含む細胞に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明に対するよりよい理解を可能にするために、特定の図示、チャート、又はフローチャートが提供されている。しかしながら、図面は、本発明の選択された実施形態のみを示しており、したがって、範囲を限定するとみなされるべきではないことに留意されたい。本発明の追加の同等に効果的な実施形態及び用途が存在する。
【
図1】皮膚及び粘膜の痛みを伴う重度の水疱形成を生じ得る、患者における尋常性天疱瘡の画像を示す。
【
図2】ケラチノサイト間のデスモソーム構造の表示を示す(パネルA)。パネルBは、Dsg3タンパク質の構造の概略図を示す。抗Dsg3抗体は、ケラチノサイトの剥離(棘細胞離開)を引き起こす。タンパク質の細胞外部分の5つのドメインは、異なるレベルの免疫原性を示す。各ドメインの隣に示されるパーセンテージは、そのドメインに特異的な抗体を有するPV患者のパーセンテージである。患者は、複数のドメインに対する抗体を有し得る。
【
図3】(パネルA)Fc媒介性融合タンパク質(例えば、Dsgは、B細胞受容体によって結合される、NK細胞/マクロファージは、Fc受容体によって結合される)、(パネルB)抗体媒介性融合タンパク質(例えば、Dsgは、B細胞受容体によって結合される;T細胞は、抗体によって結合される;このアプローチは、「B細胞受容体(B-cell receptor、BCR)-エフェクター細胞エンゲージャ」アプローチと呼ばれてもよいか、又はエフェクター細胞がT細胞である場合、「BCR-T細胞エンゲージャアプローチ」と呼ばれてもよい)、及び(パネルC)放射線療法アプローチの概略図を示す。各々のアプローチは、病原性B細胞の標的化された死滅のために設計される。
【
図4】模式的なソルターゼ反応を示す。LPETGソルターゼタグを備えたタンパク質は、トリグリシン含有ソルターゼ基質で標識することができる。「R」は、目的の任意の生体分子であり得る。Hisタグ(H6)を使用してタンパク質を精製する。
【
図5】受動導入疾患モデルの画像を示す。成体B6マウスにAK23ハイブリドーマ細胞を注射した。周囲の脱毛パネルA。口の周囲の脱毛パネルB。眼の周囲の脱毛パネルC。背部の周囲の脱毛パネルD。ケラチノサイト細胞接着の喪失のパネルH及びE。能動免疫モデル。免疫付与Dsg3-/-脾細胞をRag-2-/-マウスに導入した。パネルE。Dsg3+/-脾細胞を投与されたマウス(上)とは対照的に、Dsg3-/-脾細胞を投与されたマウス(下)では、脾細胞導入後25~35日目に有意なサイズ差があった。パネルF。Dsg3免疫付与Dsg3-/-脾細胞を投与されたマウスの鼻及び頬の周囲の結痂性びらん。パネルG。Dsg3免疫付与Dsg3-/-脾細胞を投与されたマウスの上部食道における上皮内水疱は、Dsg3免疫付与Dsg3+/-脾細胞を投与されたマウスとは対照的である(パネルH)。Amagai M,Tsunoda K,Suzuki H,Nishifuji K,Koyasu S,Nishikawa T.Use of autoantigen-knockout mice in developing an active autoimmune disease model for pemphigus.J Clin Invest.2000 Mar;105(5):625-631.PMCID:PMC292455から。
【
図6】ソルターゼによってmDsg3-IgG2aをAlexa647で標識したことを示す(パネルA)。(パネルB)mDsg3(EC1-3)-IgG2a(予想MW約80kDa)のSDS-PAGE、ゲル内蛍光及びウェスタンブロットによる特性評価。(パネルC)mDsg3-IgG2a-Alexa647、及び陰性対照としてNalm6を用いた抗Dsg3 F779及びAK23ハイブリドーマ細胞のフローサイトメトリー分析。(パネルD)ELISA分析により、患者由来P3F3及びマウス由来AK23抗Dsg3 Abに対するmDsg3-EC1-3-IgG2aの結合が確認された。(パネルE)mDsg3-IgG2a-Alexa647によるマウスRAW264.7マクロファージ細胞の染色。Nalm6細胞を、Cに示されるように、陰性対照として使用した:紫色のヒストグラム)。
【
図7】mDsg3-mFcキメラタンパク質の評価のためのインビトロFc媒介細胞傷害性アッセイを示す。抗Dsg3 AK23(パネルA)及びF779(パネルB)細胞、並びに無関係のハイブリドーマ又はNalm6対照細胞を、10nMのmDsg3-IgG2a構築物を含むマウスRAW264.7マクロファージ細胞と共培養した。死滅有効性を、示された時点後に標準的な生-死アッセイを介して測定した。結果を0nM実験に対して正規化した。
***p<0.001。
【
図8】Dsg3及び抗CD3 scFvを融合するためにクリック反応を使用する(パネルA)の概略図を示す。(パネルB)Dsg3抗CD3融合タンパク質を直接作製するためにソルターゼを使用する。(パネルC)直接ソルターゼ反応後の抗CD19及び抗CD3 scFv並びに融合タンパク質のSDS-PAGE(クーマシー染色)特性評価(各scFvは約35kDaのサイズである)。矢印は、融合を示す(予想質量約70kDa)。(パネルD)直接ソルターゼアプローチを介して作製された抗CD19-抗CD3融合タンパク質による、CD19発現Nalm6及びヒトCD3発現Jurkat細胞のフローサイトメトリー染色。クリック化学融合は、同様の結果を提供した。結果は代表的なものである(各々n=3~5)。
【
図9】ソルターゼを使用してmDsg3-EC1-3をAlexa647で標識したデータを示す(パネルA)。(パネルB)mDsg3(EC1-3)及びAlexa標識産物(予想MW:約40kDa)のSDS-PAGE、ゲル内蛍光及びウェスタンブロットによる特性評価。(パネルC)mDsg3-Alexa647を有する抗Dsg3発現F779、PVB-28及びAK23ハイブリドーマ細胞のフローサイトメトリー分析。Nalm6細胞を陰性対照として使用した。結果は代表的なものである(各々n=3~5)。
【
図10】ソルターゼを使用してmDsg3-EC1-3をDOTAで部位特定的に標識したことを示す(パネルA)。これは、示されるように225-Ac放射性同位体を使用して放射性標識される。(パネルB)mDsg3(EC1-3)のSDS-PAGE(クーマシー染色)特性評価(下側のバンド、レーン2)及びDOTA標識したmDsg3(EC1-3)(わずかに高いバンド、レーン3)。レーン#1は、マーカーである。(パネルC)予想及び観察された質量を伴う、mDsg3(EC1-3)(上側)及びDOTA標識されたmDsg3(EC1-3)(下側)のLC-MS質量分光光度分析。(パネルD)DOTA標識は、結合親和性に影響を与えない。二次抗FLAG抗体染色を用いた、mDsg3(EC1-3)(陽性対照)及びDOTA標識されたmDsg3(EC1-3)(下側)による抗Dsg3発現F779細胞のフローサイトメトリー染色。
【
図11】(パネルA)Fc媒介性及び(パネルB)BCR-T細胞エンゲージャアプローチの概略図を示す。各々のアプローチは、病原性B細胞の標的化された死滅のために設計される。
【
図12】自己反応性病原性B細胞を標的とし、これを死滅させるためのFc媒介性アプローチの概略図を示す(パネルA)。(パネルB)Dsg3-Fc構築物のインビトロ特性評価。F779(患者由来の抗Dsg3抗体で操作されたNalm6-白血病細胞)を様々な濃度のmDsg3-mFc(IgG2a)(上側)又はhDsg3-hFc(IgG1)(下側)と共にインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析してEC50値を計算した。(パネルC)インビボ実験タイムラインの概略図。(パネルD)カプラン・マイヤー生存曲線。治療マウス及び対照マウスのlogランク生存分析は、治療を受けたマウスの改善された生存を示している。対照対治療(
**p<0.005)。(パネルE)BSC<2になったら、治療又は対照から血液を採取し、治療から逃れたヒト-CD19
+GFP
+F779細胞の表面上の抗Dsg3発現の存在についてフロー分析を行った。治療群は、ほぼ完全な抗原喪失を示した。データは5匹のマウスの代表である。
【
図13】デスモソームカドヘリン外部ドメインの多重配列アラインメントを示す(配列番号8~28)。ヒト、マウス及びウシのDsg1-4(青色)及びDsc1-3(橙色)アミノ酸配列を各ECドメインについてアラインメントした。両方のファミリーにわたって保存されている残基を灰色で強調する。Dsg又はDsc内のみで保存されているものを、それぞれ青色及び橙色で強調する。ヒトDsg2構造及びヒトDsc1構造に対応する二次構造を、アラインメントの上(青色)及び下(橙色)に示す。O結合グリカンは、紫色の六角形として示されている。N結合グリカンは、小麦色の六角形として示されており、保存されていない場合、個々のグリコシル化残基は、更に四角で囲まれている。ジスルフィド結合は、Dgsについてのアラインメントの上及びDscについてのアラインメントの下の黄色の線によって示される。>10%の溶媒アクセス可能表面積が鎖交換ホモ二量体中に埋もれている界面残基は、青色(Dsg2)、橙色(Dsc1)及びサーモン色(Dsc2)のバーによって示される。EC5ドメインを欠くDsg1は、EC5アラインメントから除外される(Harrison et al.,Structural basis of desmosomal cadherin adhesion,Proceedings of the National Academy of Sciences Jun 2016,113(26)7160-7165を参照されたい)。
【
図14】粘膜に痛みを伴う重度のびらんを引き起こす粘膜優位型尋常性天疱瘡の非限定的で例示的な臨床症状を示す。
【
図15】(パネルA)Fc媒介性及び(パネルB)BCR-T細胞エンゲージャアプローチの概略図を示す。各々のアプローチは、病原性B細胞の標的化された死滅のために設計される。
【
図16-1】ソルターゼによるDsg3-(EC1-3)-Fc構築物の部位特異的標識を示す(パネルA)。(パネルB)ゲルの右側に示される、mDsg3-mFcのSDS-PAGE、ゲル内蛍光及びウェスタンブロットによる特性評価。(パネルC)Alexa Fluor 647で標識されたマウス及びヒトDsg3-Fcを有する抗Dsg3+F779、PVB28、及びAK23ハイブリドーマ細胞のフローサイトメトリー分析。Nalm6を対照として使用する。(パネルD&E~G&H)EC
50値を、フローサイトメトリー分析を介して、F779(Dsg3部分について)を使用して、並びにRaw細胞及びヒトPBMC(Fc部分について)を使用して、mDsg3-mFc及びhDsg3-hFc構築物について決定した。hPBMCの約50%のみがFc-R+細胞であり、構築物の特異性を更に示していることに留意されたい。(パネルF)ELISA分析により、構築物の特異性が更に確認された。結果は、複数の実験(各実験について少なくともn=3)の代表である。
【
図16-2】ソルターゼによるDsg3-(EC1-3)-Fc構築物の部位特異的標識を示す(パネルA)。(パネルB)ゲルの右側に示される、mDsg3-mFcのSDS-PAGE、ゲル内蛍光及びウェスタンブロットによる特性評価。(パネルC)Alexa Fluor 647で標識されたマウス及びヒトDsg3-Fcを有する抗Dsg3+F779、PVB28、及びAK23ハイブリドーマ細胞のフローサイトメトリー分析。Nalm6を対照として使用する。(パネルD&E~G&H)EC
50値を、フローサイトメトリー分析を介して、F779(Dsg3部分について)を使用して、並びにRaw細胞及びヒトPBMC(Fc部分について)を使用して、mDsg3-mFc及びhDsg3-hFc構築物について決定した。hPBMCの約50%のみがFc-R+細胞であり、構築物の特異性を更に示していることに留意されたい。(パネルF)ELISA分析により、構築物の特異性が更に確認された。結果は、複数の実験(各実験について少なくともn=3)の代表である。
【
図17】Dsg3-Fc操作されたタンパク質の有効性を評価するためのインビトロ細胞傷害性アッセイを示す。アッセイは、48ウェルプレート中の200,000個のプレコーティングされたエフェクター細胞を用いて開始した。コーティングの約4~6時間後、20,000個の標的細胞、Dsg3-Fc治療(示されるように異なる濃度で)、及び1mMのカルシウムを添加した。生存GFP+細胞を、フローサイトメトリー分析を介して24時間後及び48時間後にカウントした(全ての標的細胞はGFP+である)。各条件について少なくともn=3を使用した。対照細胞と比較して、全ての試験条件で有意な特異的死滅が観察された(
***p<0.001)。
【
図18】抗Dsg3自己抗体の存在が、治療のインビトロ有効性を中和しないことを示す。Fc媒介性細胞傷害性アッセイを、
図17で説明したのと同一の設定であるが、示されるようなAK23抗体の存在下で行った。AK23抗体を混合物に添加したとき、死滅有効性の差は検出されなかった。結果は、各実験について少なくともn=3の代表である。
【
図19】hDsg3抗CD3e scFv構築物が、株F779及びJurkat細胞(ヒトT細胞)を特異的に染色するが、対照Nalm-6細胞は染色しないことを示す。
【
図20】自己抗体の存在が治療の有効性を阻害しないことを示す。マウスに3用量のIVIGを投与し(-3日目、-2日目、-1日目、16mg/kg)、ルシフェラーゼ
+PVB28細胞のより迅速な生着を可能にした(0日目に100万個の細胞を注射した)。mDsg3-EC14-mFcを治療として使用する(週3回を2週間、次いで週1回、4日目から開始)。対照マウスには、アイソタイプIgG2aを与えた。Auto-Abs群は、AK23、AK19及びAK18の混合物(合計で150μg)を、治療開始の1日前から開始して2週間にわたって週2回投与された。(パネルA)BLIイメージングは、自己抗体の存在下であっても、治療レシピエントマウスにおいて、より遅いシグナル増強を示した。(パネルB)生存率は、対照群と比較して両方の治療レシピエント群において有意に高い(P値=0.0023)。また、自己抗体+治療(Auto-Abs+Tx)群の生存期間の中央値は38日であり、これは治療群よりも高かった(生存期間の中央値=35日、P値=0.048))。(パネルC)エンドポイントでのフローサイトメトリー分析は、治療レシピエントマウスの脾臓におけるPVB28細胞の完全な枯渇及び骨髄におけるPVB28細胞上の抗Dsg3
+の有意な喪失を示した(各群についてn=5のデータの代表)。
【
図21】受動導入モデルを示す(パネルA~D)。成体RAG2-/-マウスにAK23ハイブリドーマ細胞を注射した。口(パネルA)、目(パネルB)、及び背中(パネルC)の周囲の脱毛。(パネルD)ケラチノサイト細胞接着の喪失のH&E。(パネルE~H)能動免疫モデル。免疫付与Dsg3-/-脾細胞をRag-2-/-マウスに導入した。(パネルE)Dsg3+/-脾細胞を投与されたマウス(上)とは対照的に、免疫付与Dsg3-/-脾細胞を投与されたRag-2-/-マウス(下)では、脾細胞導入後25~35日目に有意なサイズ差があった。(パネルF)Dsg3免疫付与Dsg3-/-脾細胞を投与されたマウスの鼻及び頬の周囲の結痂性びらん。(パネルG)Dsg3免疫付与Dsg3-/-脾細胞を投与されたマウスの上部食道における上皮内水疱は、Dsg3免疫付与Dsg3+/-脾細胞を投与されたマウスとは対照的である。(パネルH)鼻の周りの皮膚について同じ。
【
図22】自己抗体の存在下であっても、免疫応答性マウスにおいて治療がサイトカインストーム及び毒性を生じさせないことを示す。(パネルA)治療(mDsg3-EC14-mFc)及び/又は自己抗体の混合物(AK23、AK19、AK18)をマウスに注射するスケジュール。(パネルB及びC)自己抗体を伴うか、又は伴わない治療レシピエントマウスは、毒性が観察されることなく正常な体重増加を続けた(各群についてn=6、3匹の雄及び3匹の雌)。(パネルD)ELISA分析は、治療のみ、又は自己抗体のみ、又は自己抗体及び治療の両方(ELISA MAX(商標)Standard Set Mouse(BioLegend)を使用)のいずれかを受けた3つの群のいずれにおいても、サイトカインストームを示さなかった。何も投与されなかった6匹のマウスからの血清を、それぞれの性別において健康な対照のために使用した。2mg/kgのリポ多糖(LPS)を受けた3匹のマウスからの試料を使用して、それぞれの性別におけるサイトカインストームを模倣した。対応のないt検定を使用して、群間の有意差について検定した。(ns、P>0.05;
*、P≦0.05;
**、P≦0.01;
***,、P≦0.001;
****、P≦0.0001。)
【
図23】治療(mDsg3-EC1-4-mFc)がAK23抗体の病原性効果を阻害することを示す。全ての動物は、AK23(12mg/kg、皮下)を投与された。AK23+治療コホートは、1時間後にmDsg3-mFcを受けた(15mg/kg、i.p.)。パネルA及びBは、AK23群が、72時間後に行われたテープストリッピングによって有意な脱毛を示し(パネルA)、5日目に重度のPV表現型を示した(すなわち、脱毛及び粘膜びらん(図示せず))(パネルB)ことを示す。しかしながら、「AK23+治療」群は、対照健常マウスと同様であった(パネルA及びB)。各コホートについてn=3のデータの代表。(パネルC)AK23コホートは、体重減少を示した。しかしながら、体重増加は、AK23及び治療を受けたマウスにおいて正常であった。(パネルD)72時間時点で採取された血清に対するIL6のELISA分析は、AK23コホートにおいて高レベルのサイトカインを示したが、「AK23+治療」群において、健常対照と同様であった。(パネルE)実験の生存分析。全てのAK23マウスは、重度のPVを発症し、7日未満で安楽死させなければならなかった。全ての治療マウスは、正常に行動した。実験は、60日目に終了した(各コホートについてn=3)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
自己反応性B細胞が罹患動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ)において自己抗体を産生する疾患又は状態を治療するための試薬及び方法が本明細書に開示される。試薬及び方法は、自己反応性B細胞を標的とし、枯渇させるように設計されている。いくつかの実施形態では、試薬及び方法は、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症、落葉状天疱瘡、表皮内好中球性IgA皮膚症、腫瘍随伴性天疱瘡などの自己免疫性水疱症を治療するためのものである。いくつかの実施形態では、試薬は、自己反応性B細胞上のB細胞受容体に結合する自己反応性B細胞エピトープを含有し得る。いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープは、デスモグレイン(Dsg)又はデスモコリン(Dsc)分子の細胞外ドメインに由来し得る。様々な実施形態では、自己反応性B細胞エピトープに加えて、試薬はまた、NK細胞、マクロファージ及びT細胞などの様々なエフェクター細胞に結合することができるエフェクター細胞結合領域を含有し得る。試薬の自己反応性エピトープが、自己反応性B細胞に結合する場合、試薬のエフェクター細胞結合領域に結合したエフェクター細胞は、B細胞に近接して位置し、B細胞を枯渇させることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞上のB細胞受容体に結合する自己反応性B細胞エピトープを有する試薬は、抗体のFc部分を含むエフェクター細胞結合領域を有し得る。抗体のFc部分は、マクロファージ、ナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞などのエフェクター細胞を含む、Fc受容体(Fc receptor、FcR)を有する細胞に結合することができる。これらのエフェクター細胞は、自己反応性B細胞を枯渇させることができる。これらの治療薬は、Fc媒介性治療薬と呼ばれ得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞上のB細胞受容体に結合する自己反応性B細胞エピトープを有する試薬は、エフェクター細胞に結合することができる抗体を含むエフェクター細胞結合領域を有し得る。いくつかの実施形態では、抗体は、T細胞に特異的であり得る(抗CD3抗体)。抗体は、細胞傷害性T細胞に特異的であり得る。T細胞は、自己反応性B細胞を枯渇させることができる。これらの治療薬は、B細胞受容対(BCR)エフェクター細胞エンゲージャと呼ばれ得る。T細胞であるエフェクター細胞に結合する治療薬は、BCR-T細胞エンゲージャと呼ばれ得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、上述の試薬分子は、自己反応性B細胞エピトープとエフェクター細胞結合領域との間に、又はそれらを接続するスペーサを有し得る。いくつかの実施形態では、スペーサは、アミノ酸スペーサであり得る。スペーサは、可撓性スペーサであり得る。可撓性スペーサは、グリシン及びセリンアミノ酸残基を含有し得る。いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープとエフェクター細胞結合領域を接続するスペーサは、「クリック」化学を塩宇して作製することができる。いくつかの実施形態では、スペーサは、銅媒介性アジド-アルキン環化付加化学を使用して作製されるC-C結合を含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサは、ソルターゼ酵素を使用して作製されたN-C結合を含み得る。
【0023】
1つ以上の実施形態の詳細な説明が本明細書に提供される。しかしながら、本発明が、様々な形態で具現化され得ることが、理解される。したがって、本明細書に開示される特定の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の根拠として、及び当業者に本発明を任意の適切な方法で用いるように教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0024】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数の参照を含む。特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む」という用語と共に使用されるときの「1つの(a)」又は「1つの(an)」という単語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。
【0025】
「例えば」、「など」、「含む」などの句のいずれかが本明細書で使用される場合は常に、他に明確に記載されない限り、「限定することなく」という句が付随することが理解される。同様に、「一例」、「例示的」などは、非限定的であると理解される。
【0026】
「実質的に」という用語は、意図した目的に悪影響を与えない記述語からの逸脱を可能にする。記述用語は、「実質的に」という語が明確に列挙されていなくても、「実質的に」という用語によって変更されることが理解される。
【0027】
「含む(comprising)」及び「含む(including)」及び「有する(having)」及び「含む(involving)」(並びに同様に「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、及び「含む(involves)」)などの用語は、交換可能に使用され、同じ意味を有する。具体的には、用語の各々は、「含む(comprising)」の一般的な米国特許法の定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下(at least the following)」を意味する非限定用語(open term)であると解釈され、追加の特徴、限定、態様などを除外しないとも解釈される。よって、例えば、「ステップa、b、及びcを含むプロセス」は、プロセスが少なくともステップa、b、及びcを含むことを意味する。「a」又は「an」という用語が使用されている場合は常に、そのような解釈が文脈上無意味でない限り、「1つ以上」と理解される。
【0028】
本明細書で使用される「約」という用語は、おおよそ、大まかに、およそ、又はその領域内を指すことができる。「約」という用語が数値範囲と共に使用される場合、それは、記載された数値の上及び下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、20パーセント上又は下の(より高い又はより低い)分散によって記載された値を上回る、及び下回る数値を変更するために使用される。
【0029】
「対象」又は「患者」という用語は、本発明の態様を、例えば、実験的、診断的、予防的、及び/又は治療的目的で行うことができる任意の生物を指すことができる。本明細書に記載の方法が実施される対象は、霊長類、例えばヒトなどの哺乳動物を含む。獣医学的用途には、多種多様な対象、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、雌ウシ、ブタなどの家畜、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなどの家禽、並びに飼い慣らされた動物、特にイヌ及びネコなどのペットが好適である。診断用途又は研究用途には、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、及び近交系ブタなどのブタなどを含む、多種多様な哺乳動物が適切な対象であろう。「生体対象」という用語は、上記の対象又は生きている別の生物を指すことができる。「生体対象」という用語は、生体対象から切除された部分(例えば、肝臓又は他の臓器)だけではなく、対象又は生物全体を指すことができる。「正常な対象」という用語は、がんに罹患していない対象など、疾患又は状態に罹患していない対象を指すことができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「治療剤」という語句は、対象に投与された場合に所望の薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指すことができる。いくつかの実施形態では、薬剤は、適切な集団にわたって統計的に有意な効果を示す場合、治療剤であると考えられる。いくつかの実施形態では、適切な集団は、モデル生物の集団であり得る。いくつかの実施形態では、適切な集団は、特定の年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床状態などの様々な基準によって定義され得る。いくつかの実施形態では、治療剤は、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状又は特徴を緩和、改善、軽減、阻害し、その発症を遅延させ、その重症度を低下させ、及び/又はその発生率を低下させるために使用することができる任意の物質である。
【0031】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、その投与が、関連集団で見た場合に、特定の治療効果の達成と相関するか、又は相関すると合理的に予測される治療剤の量を指すことができる。治療効果は、客観的(すなわち、いくつかの試験又はマーカーによって測定可能)又は主観的(すなわち、対象が効果の徴候を示すか、若しくは効果を感じる)であり得る。いくつかの実施形態では、物質の治療有効量は、疾患、障害、及び/又は状態に罹患しているか、又は罹患しやすい対象に投与された場合に、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状を治療、診断、予防、及び/又は遅延及び/又は緩和するのに十分な量である。疾患の進行は、当業者に明らかな臨床観察、実験室及び画像化調査によってモニタリングすることができる。治療有効量は、複数の単位用量を含み得る投薬レジメンで投与される。治療剤について、治療有効量(及び/又は有効な投薬レジメン内の適切な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬剤との組み合わせに応じて変化し得る。また、患者に対する具体的な治療有効量(及び/又は単位用量)は、治療される障害及び障害の重症度、用いられる特定の医薬剤の活性、用いられる特定の組成物、患者の年齢、体重、全身健康状態、性別、及び食事、用いられる特定の融合タンパク質の投与時間、投与経路、及び/又は排出若しくは代謝の速度、治療期間、並びに医学分野で周知の同様の因子を含む様々な因子に依存し得る。更に、有効量は、治療レジメン内で単回用量又は複数回用量を介して投与され得る。いくつかの実施形態では、個々の用量又は組成物は、それらが治療レジメンの文脈において用量として有効な量を含有する場合、「治療有効量」を含有するとみなされる。当業者は、用量又は量が、患者の集団に投与されたときに統計的に有意な有効性を示すことが示されているか、又は示されていた場合、有効であるとみなされ得ることを理解するであろう。特定の結果は、本明細書に記載されるように、ある量が治療的に有効であるとみなされるために、特定の個々の患者において達成される必要はない。
【0032】
「治療する」という語は、症状又は状態の予防、治癒、安定化、又は改善がもたらされるという意図での、対象、例えば、ヒトを含む動物の医学的管理を指すことができる。この用語は、積極的治療、すなわち、特に障害の改善に向けられた治療、待期療法、すなわち、障害の治癒ではなく症状の軽減のために設計された治療、予防的治療、すなわち、障害の予防を対象とする治療、及び支持療法、すなわち、障害の改善を対象とする別の特定の療法を補うために用いられる治療を含む。「治療」という用語は、対症療法、すなわち、障害の全身症状に向けられた治療も含む。「治療する」又は「治療」という用語は、療法的治療及び予防的若しくは防御的手段の両方も指すことができ、その目的は、望ましくない生理学的変化又は障害を予防又は減速(軽減)することである。「治療」とは、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも指すことができる。治療を必要とする者には、既に状態若しくは障害を患っている者、及び状態若しくは障害を患いやすい者、又は状態若しくは障害を予防する必要がある者が包含される。
【0033】
本発明の化合物により状態を「治療する」ことは、そのような化合物を、単独で、又は組み合わせて、任意の適切な手段によって患者に投与することを伴う。治療は、疾患、障害、及び/若しくは状態に関連する病状を発症するリスクを低下させる目的で、疾患、障害、及び/若しくは状態の兆候を示さない対象(例えば、特定可能な疾患、障害、及び/若しくは状態の前)、並びに/又は疾患、障害、及び/若しくは状態の初期兆候のみを示す対象に実施することができる。
【0034】
「投与」という用語は、本明細書に記載の組成物又は製剤を対象に導入することを指すことができる。組成物の投与経路の1つは静脈内投与である。しかしながら、経口、局所、皮下、腹膜、動脈内、吸入、膣、直腸、経鼻、脳脊髄液への導入、又は身体区画への点滴注入などの任意の投与経路を使用することができる。
【0035】
本明細書において、「アレルゲン」は、アレルギー反応を引き起こし得る物質を指すことができる。例えば、アレルゲンは、異常に強い又は活発な免疫応答(例えば、免疫系の過敏症)を生じ得る。いくつかの実施形態では、過敏症は、I型過敏症であり得る。いくつかの実施形態では、過敏症は、IgEによって媒介され得る。
【0036】
本明細書では、「抗体」は、抗原に結合する分子(複数可)を指すことができる。本明細書では、「抗体」は、全ての種類の抗体、断片及び/又は誘導体を指すことができる。抗体には、任意の適切なアイソタイプ又はアイソタイプサブクラスのポリクローナル及びモノクローナル抗体が含まれる。本明細書では、抗体は、Fab、F(ab’)2、Fab’単鎖抗体、Fv、単鎖、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多価抗体、キメラ抗体、イヌ-ヒトキメラ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDR移植抗体、サメ抗体、ナノボディ(例えば、単一の単量体可変ドメインからなる抗体)、ラクダ科抗体(例えば、ラクダ科)微小体、イントラボディ(例えば、細胞内抗体)、及び/又は脱フコシル化抗体及び/又はこれらの誘導体を指すことができるが、これらに限定されない。抗体の模倣物も提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、血液脳関門を通過することができる本明細書に開示される化合物の一部である活性薬剤である。
【0037】
「抗体」又は「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識して結合するポリペプチド又はポリペプチド複合体を指すことができる。抗体は、全抗体及び任意の抗原結合断片、又はその一本鎖であることができる。例えば、「抗体」は、抗原に結合する生物学的活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む、任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含むことができる。重鎖若しくは軽鎖又はそのリガンド結合部分の相補性決定領域(CDR)、重鎖又は軽鎖の可変領域、重鎖又は軽鎖の定常領域、フレームワーク(FR)領域、又はそれらの任意の部分、又は結合タンパク質の少なくとも一部である、非限定的な例。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン(Ig)分子、すなわち、抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子の免疫学的に活性な部分を指すことができる。「特異的に結合する」又は「免疫反応する」とは、抗体が所望の抗原の1つ以上の抗原性決定部分と反応して、他のポリペプチドとは反応しないことを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」又は「抗原結合断片」という用語は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの、抗体の一部を指す。抗体断片は、構造に関係なく、完全な抗体によって認識されるのと同じ抗原と結合する。「抗体断片」という用語には、アプタマー(シュピーゲルマーなど)、ミニボディ(minibody)、及びダイアボディ(diabody)を包含させることができる。「抗体断片」という用語にはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のように作用する、任意の合成又は遺伝子操作されたタンパク質を包含させることができる。本明細書に記載の抗体、抗原結合ポリペプチド、バリアント、又は誘導体には、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化若しくはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fvs、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、dAb(ドメイン抗体)、ミニボディ、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VL又はVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって生成された断片、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体などが包含される。
【0039】
「単鎖可変断片」又は「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を指す。単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチド分子は、共有結合したVH:VLヘテロ二量体であり、これは、ペプチドをコードするリンカーによって連結されたVH及びVLコード遺伝子を含む遺伝子融合体から発現されることができる。(Huston et al.(1988)Proc Nat Acad Sci USA 85(16):5879-5883。)いくつかの態様では、領域は、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで連結される。リンカーは、柔軟性のためにグリシン、並びに溶解性のためにセリン又はスレオニンが豊富であってよく、VHのN末端をVLのC末端と連結するか、又はその逆のいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。抗体V領域からの自然に凝集されるが、化学的に分離された、軽及び重ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造と実質的に類似する三次元構造に折り畳まれるであろう、scFv分子に変換するための化学構造を識別するための多くの方法が記載されている。例えば米国特許第5,091,513号、同第5,892,019号、同第5,132,405号、及び同第4,946,778号を参照されたい(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0040】
ヒトから得られる抗体分子は、分子中に存在する重鎖の性質が互いに異なる、IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDの5つのクラスのイムノグロブリンに分類される。当業者であれば、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、それらの中にもいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4)があることを理解するであろう。特定のクラスは、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4などのサブクラスも有する。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5などは、十分に特徴付けられており、機能的特殊化を付与することが知られている。IgGに関しては、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量が約23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチド、及び分子量が53,000~70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。4つの鎖は、典型的には「Y」字型にジスルフィド結合によって結合され、軽鎖は「Y」の口から始まり、可変領域を通って続く重鎖を囲む。本明細書に記載の免疫グロブリン又は抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。
【0041】
軽鎖は、カッパ又はラムダ(κ、λ)のいずれかに分類される。各重鎖のクラスは、カッパ又はラムダ軽鎖のいずれかと結合することができる。一般に、軽鎖と重鎖は互いに共有結合し、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、又は遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって生成される場合、2つの重鎖の「尾」(tail)部は、共有ジスルフィド結合又は非共有結合によって互いに結合する。重鎖では、アミノ酸配列は、Y字型に分岐した末端のN末端から各鎖の下部のC末端まで伸びている。
【0042】
軽鎖と重鎖のいずれも、構造的及び機能的な相同性領域に分けられる。「定常」及び「可変」という用語が、機能的な意味で使用される。軽鎖部分及び重鎖部分の両方の可変ドメイン(VL及びVH)が、抗原の認識及び特異性を決定する。逆に、軽鎖及び重鎖の定常ドメイン(CL、並びにCH1、CH2若しくはCH3)は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などの重要な生物学的特性を付与する。「抗原結合部位」又は「結合部分」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分を指すことができる。抗原結合部位は、重(「H」)鎖及び軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と呼ばれる、重鎖及び軽鎖のV領域内の3つの高度に異なる区間は、「フレームワーク領域」又は「FR」として知られるより保存された隣接区間の間に挿入される。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンの超可変領域の間、及びそれに隣接して天然に見られるアミノ酸配列を指すことができる。抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域及び重鎖の3つの超可変領域は、三次元空間で互いに対して配置されて、抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、結合した抗原の3次元表面に相補的であり、重鎖及び軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」又は「complementarity-determining region、CDR」と呼ばれる。CDRを含有する、VH及びVL領域。
【0043】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」又は「mAb」又は「Mab」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、特有の軽鎖遺伝子産物及び特有の重鎖遺伝子産物からなる1つの抗体分子の分子種のみを含有する抗体分子の集団を指すことができる。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、集団の全ての分子で同一である。MAbは、それに対する特有の結合親和性を特徴とする抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含有する。
【0044】
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)によって記載されるものなどの、ハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物は、典型的には、免疫剤で免疫化して、免疫剤に特異的に結合するであろう抗体を産生するか、又は産生することができるリンパ球を誘導する。代替として、リンパ球はインビトロで免疫化され得る。
【0045】
本明細書において、「自己抗体」は、動物からの抗原(例えば、「外来」抗原の代わりに自己抗原)と結合又は反応する、動物によって産生される抗体を指すことができる。一般に(例えば、疾患又は状態が存在しない場合)、動物は、自己抗原に対して寛容であり、自己抗体を産生しない。
【0046】
本明細書において、「自己免疫」は、自己抗原に対する免疫応答(例えば、抗体産生)を指すことができる。「自己免疫疾患」は、自己抗原に対する免疫応答から生じる疾患又は状態を指すことができる。
【0047】
本明細書において、「自己反応性」とは、自己免疫応答の成分を指すことができる。例えば、自己抗原に対して反応性の抗体を産生するB細胞は、自己反応性B細胞と呼ぶことができる。抗体は、自己反応性抗体と呼ぶことができる。自己抗体が反応性である自己抗原は、自己反応性抗原と呼ぶことができる。
【0048】
本明細書において、「B細胞」は、動物の体液性免疫応答において機能するリンパ球の一種を指すことができる。B細胞は、B細胞の表面上に提示される抗体を産生する。B細胞のより分化した形態である形質細胞は、抗体を分泌することができる。
【0049】
本明細書において、「B細胞受容体」又は「BCR」は、シグナル伝達部分と共に表面上に提示される、B細胞によって産生される抗体を指すことができる。
【0050】
本明細書において、「枯渇させる」とは、除去又は低下させることを指すことができる。本明細書において、枯渇させるとは、自己反応性B細胞を除去することを指すことができる。枯渇させるとは、自己反応性B細胞を死滅させることを指すことができる。
【0051】
本明細書において、「デスモグレイン」及び「デスモコリン」は、デスモソームの形成に関与するカドヘリンのファミリーを指すことができる。
【0052】
本明細書において、「エフェクター細胞」は、自己反応性B細胞を枯渇させることができる細胞を指すことができる。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、マクロファージ、NK細胞、T細胞などであり得る。
【0053】
本明細書において、「エピトープ」は、抗体(例えば、B細胞受容体)に結合する抗原の部分を指すことができる。このエピトープは、B細胞エピトープと呼ぶことができ、T細胞エピトープと区別することができる。
【0054】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、scFv、又はT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定因子を含み得る。可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識し、特異的に結合することを可能にする。例えば、抗体のVLドメイン及びVHドメイン、又は相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わされて、三次元抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。この四次抗体構造は、Yの各アームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。エピトープ決定基は、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グルーピングからなっていてもよく、通常は、特異的な三次元構造特徴、及び特異的な電荷特徴を有する。例えば、抗体は、ポリペプチドのN末端又はC末端ペプチドに対して産生され得る。より具体的には、抗原結合部位は、VH及びVL鎖の各々の上の3つのCDR(すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3)によって定義される。
【0055】
本明細書において、「細胞外ドメイン」は、細胞の細胞膜の外表面から延びる細胞膜タンパク質の部分を指すことができる。
【0056】
本明細書において、「Fc領域」(断片結晶化可能領域)は、Fc受容体に結合する抗体のテール領域を指すことができる。Fc領域は、抗体をパパインで消化することにより回収することができる。
【0057】
本明細書において、「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合することができる受容体を指すことができる。Fc受容体は、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージを含む特定の細胞の表面上に存在する。
【0058】
本明細書で使用される場合、「免疫学的結合」及び「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異的である抗原との間で生じるタイプの非共有相互作用を指すことができる。いくつかの実施形態では、これらの用語は、FcドメインのFc受容体への結合を説明し得る。免疫学的結合相互作用の強度、又は親和性は、相互作用の解離定数(Kd)に関して表すことができ、Kdが小さいほど、より大きな親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当技術分野で周知の方法を使用して定量化することができる。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成及び解離の速度を測定することを伴い、それらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方向の速度に等しく影響する幾何学的パラメータに依存する。したがって、両方の「オン速度定数」(Kon)及び「オフ速度定数」(Koff)は、濃度並びに会合及び解離の実際の速度の計算によって決定することができる。(Nature 361:186-87(1993)を参照されたい)。Koff/Konの比は、親和性に関連しない全てのパラメータの相殺を可能にし、平衡結合定数KDに等しい。(一般に、Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem 59:439-473を参照のこと)。本発明の抗体は、動的アッセイ、例えば、放射性リガンド結合アッセイ又は当業者に公知の類似のアッセイ、例えば、BIAcore又はOctet(BLI)によって測定して、平衡結合定数(KD)が≦1μM、≦10μM、≦10nM、≦10pM、又は≦100pM~約1pMである場合に、エピトープに特異的に結合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、KDは、約1E-12M~約1E-11Mの間のKDである。いくつかの実施形態では、KDは、約1E-11M~約1E-10Mの間のKDである。いくつかの実施形態では、KDは、約1E-10M~約1E-9Mの間のKDである。いくつかの実施形態では、KDは約1E-9M~約1E-8Mの間のKDである。くつかの実施形態では、KDは、約1E-8M~約1E-7Mの間のKDである。いくつかの実施形態では、KDは、約1E-7M~約1E-6Mの間のKDである。例えば、いくつかの実施形態では、KDは約1E-12Mであり、他の実施形態では、KDは約1E-11Mである。いくつかの実施形態では、KDは約1E-10Mであり、他の実施形態では、KDは約1E-9Mである。いくつかの実施形態では、KDは約1E-8Mであり、他の実施形態では、KDは約1E-7Mである。いくつかの実施形態では、KDは約1E-6Mであり、他の実施形態では、KDは約1E-5Mである。いくつかの実施形態では、例えば、KDは約3E-11Mであり、他の実施形態では、KDは約3E-12Mである。いくつかの実施形態では、KDは約6E-11Mである。「特異的に結合する」又は「特異性を有する」は、抗体の抗原結合ドメインを介してエピトープに結合する抗体を指すことができ、結合は抗原結合ドメインとエピトープとの間のいくつかの相補性を伴う。例えば、抗体は、ランダムな無関係のエピトープに結合するよりも容易に、その抗原結合ドメインを介して、そのエピトープに結合する場合に、エピトープに「特異的に結合する」と言われる。
【0059】
本明細書において、「融合タンパク質」は、元々別々の遺伝子であった遺伝子を接続することによって作製されたタンパク質を指すことができる。
【0060】
本明細書において、「マクロファージ」は、貪食白血球の一種を指すことができる。
【0061】
本明細書において、「ナチュラルキラー細胞」又は「NK細胞」は、細胞傷害性リンパ球の一種を指すことができる。
【0062】
本明細書において、本明細書で使用される「ポリペプチド」は、単一の「ポリペプチド」及び複数の「ポリペプチド」を包含することができ、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直鎖状に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸の任意の1つ以上の鎖を指し、特定の長さの生成物を指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2つ以上のアミノ酸の鎖を指すために使用される任意の他の用語は、本明細書では「ポリペプチド」を指すことができ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語の代わりに、又はこれらの用語のいずれかと交換可能に使用することができる。「ポリペプチド」はまた、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、又は天然に存在しないアミノ酸による改変などの、ポリペプチドの発現後改変産物を指すこともできる。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来することができるか、又は組換え技術によって産生されることができるが、必ずしも特定の核酸配列から翻訳される必要はない。それは、化学合成を含む任意の方法で生成させ得る。ポリペプチド(抗体など)又はポリヌクレオチドに関連する「組換え」とは、天然には存在しないポリペプチド又はポリヌクレオチドの形態を指し、その非限定的な例は、通常では一緒にはならないポリヌクレオチド又はポリペプチドを組み合わせることによって作製することができる。
【0063】
本明細書において、「ソルターゼ」は、一般にペプチド、ポリペプチド又はタンパク質中のカルボキシ末端認識シグナルを認識及び切断する細菌由来の酵素を指すことができる。いくつかの実施形態では、認識シグナルは、アミノ酸モチーフLeu-Pro-X-Thr-Glyを含むことができ、ここで「X」は任意のアミノ酸であり得る。
【0064】
本明細書において、「T細胞」は、動物の細胞性免疫応答において機能する種類のリンパ球を指すことができる。
【0065】
本明細書において、「標的とする」は、動詞として使用される場合、何か他のものを特異的に攻撃する細胞又は分子を指すことができる(例えば、融合タンパク質がB細胞に付着し、B細胞を枯渇させるエフェクター細胞を運ぶ、その融合タンパク質及びそのエフェクター細胞は、B細胞を標的とする)。「標的」は、名詞として使用される場合、例えば、枯渇したB細胞を指し得る。
【0066】
自己免疫疾患
本明細書に開示される試薬及び方法が、治療するように設計される疾患又は状態は、自己免疫状態又は疾患であり得る。治療される疾患又は状態は、自己反応性B細胞が、自己抗原又は自己反応性に特異的な自己反応性抗体を産生するものを伴い得る。疾患としては、例えば、自己免疫性水疱症、狼瘡、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病、免疫介在性血管炎などが挙げられ得る。
【0067】
疾患は、(MuSK)重症筋無力症(MG)を含むことができ、これは、異なる病因及び異常な臨床的特徴を有する、MGの稀な、多くの場合、より重度のサブタイプである。
【0068】
疾患は、PLA2R膜性腎症を含むことができる。PLA2Rは、腎糸球ポドサイトに存在する自己抗原である。膜性腎症(Membranous nephropathy、MN)は、循環抗体が糸球体基底膜を透過し、上皮下腔において、ポドサイト膜上のエピトープと免疫複合体を形成する場合に起こり得る。
【0069】
その疾患は、FVIII同種抗体を伴う血友病Aを含み得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症、落葉状天疱瘡、表皮内好中球性IgA皮膚症、及び腫瘍随伴性天疱瘡などの自己免疫性水疱症を含み得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、ヒト、イヌ、ネコ又はウマを含む動物に存在し得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態を有する動物に存在する自己反応性抗体は、デスモプラキン、エンボプラキン、ペリプラキン、プレクチン、水疱性類天疱瘡抗原1、コルネオデスモシン、微小管アクチン架橋因子、エピプラキン及びカドヘリンなどの分子を含む自己反応性抗原に特異的であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗原は、デスモグレイン-1(Dsg1)、デスモグレイン-2(Dsg2)、デスモグレイン-3(Dsg3)、デスモグレイン-4(Dsg4)、デスモコリン-1(Dsc1)デスモコリン-2(Dsc2)、及びデスモコリン-3(Dsc3)などのデスモソームカドヘリンであり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される試薬及び方法における目的の自己反応性抗原の領域は、
図2B及び
図13に示されるように、細胞外(EC)ドメインである自己反応性抗原の一部分である。少なくともいくつかの実施形態では、上述の疾患及び状態における自己反応性抗体は、自己反応性抗原のECドメインに特異的であり得る。自己反応性抗体が結合する自己反応性抗原内の特異的エピトープは、自己反応性エピトープと呼ばれ得る。概して、ここでの関心は、自己反応性B細胞を標的とすることであるため、関連するエピトープは、B細胞エピトープであり得る。自己反応性抗原のB細胞自己反応性エピトープは、自己反応性B細胞のB細胞受容体(BCR)に結合することができる。いくつかの実施形態では、それを標的とするように本明細書に開示される試薬及び方法が設計されるB細胞は、例えば、Dsg1、Dsg2、Dsg3、Dsg4、Dsc1、Dsc2、及びDsc3などの分子のECドメイン由来のこれらのエピトープに結合することができるBCRを有する、自己反応性B細胞である。
【0075】
一般に、上述の自己反応性抗原は、自己反応性抗体の産生を刺激する。いくつかの実施形態では、産生される自己反応性抗体は、「病原性」であり得る。いくつかの実施形態では、産生される自己反応性抗体は、「非病原性」であり得る。病原性抗体は、一般に、天疱瘡などの自己免疫疾患の症状及び/又は病状を生じる。機構に拘束されることを望まないが、病原性抗体は、それらが結合するタンパク質の機能を阻害することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される療法は、病原性自己反応性抗体を産生するB細胞を標的とすることができる。
【0076】
一般に、天疱瘡などのいくつかの自己免疫性水疱症について、自己反応性抗原の細胞外(EC)ドメイン(例えば、
図2B及び13を参照されたい)は、病原性又は非病原性であり得る。いくつかの実施形態では、デスモグレイン及び/又はデスモコリンのECドメインは、病原性又は非病原性であり得る。いくつかの実施形態では、Dsg1、Dsg2、Dsg3及び/又はDsg4のEC1、EC2及び/又はEC4ドメインは、病原性であり得る。いくつかの実施形態では、Dsg3及びDsg1のEC1、EC2及び/又はEC4ドメインは、病原性であり得る。理論に束縛されることを望まないが、治療薬中に病原性ECドメインと共に非病原性又は低病原性ECドメインを含めることは、本明細書に開示される治療薬の有効性に影響を及ぼすとは考えられない。
【0077】
理論に束縛されることを望まないが、ECドメインの免疫原性のレベル(例えば、
図2BにおけるECドメインに対する自己反応性抗体を有する天疱瘡患者のパーセントを参照されたい)は、病原性と高度に相関し得るか、又は相関し得ない。
【0078】
自己反応性B細胞を枯渇させる
本開示は、自己免疫疾患又は状態を有する、ヒトを含む動物における療法のための複数のアプローチを記載する。本明細書に開示される試薬及び方法は、動物における自己反応性B細胞を標的とし、枯渇させることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞を枯渇させるために使用される試薬は、融合タンパク質であり得る。融合タンパク質は、別々のドメイン又は領域を有し得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、自己反応性エピトープと反応性のB細胞の表面上のB細胞受容体(BCR)に結合する1つ以上の自己反応性エピトープを含有し得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質はまた、エフェクター細胞に結合することができるドメインを含有し得る。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞に結合することができるドメインは、抗体のFcドメインであり得る。これらの治療薬は、Fc媒介性治療薬と呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞に結合することができるドメインは、エフェクター細胞に結合する抗体であり得る。これらの治療薬は、BCRエフェクター細胞エンゲージャと呼ばれ得る。抗体がT細胞に結合することができる実施形態では、治療薬は、BCR-T細胞エンゲージャと呼ばれ得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、1つ以上の自己反応性B細胞エピトープを含むドメインを有し得る。自己反応性B細胞エピトープは、上述の自己反応性抗原のいずれかに由来していてもよく、いくつかの実施形態では、自己反応性抗原のECドメインに由来する。融合タンパク質という文脈の中で、自己反応性B細胞エピトープは、標的自己反応性B細胞のBCRに結合することができるように構成される。いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープは、融合タンパク質の末端に位置し得る。いくつかの例では、B細胞エピトープは、融合タンパク質のN末端に位置し得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、「ノブ-イントゥ-ホール(knob-into-hole)」戦略を使用して、複数の自己反応性B細胞エピトープを含む複数のエピトープを含むFc媒介性治療薬を生成することができる。ノブ-イントゥ-ホールは、例えば、2つのIgG重鎖由来の別個のCH3ドメイン(CH3ドメインはFc領域の一部分を含有する)を、別個のCH3ドメインのヘテロ二量化が好まれるように「ノブ(knob)」又は相補的な「ホール(hole)」を含有するように変化させるアプローチである(Ridgway,John BB,Leonard G.Presta,and Paul Carter.「『Knobs-into-holes』engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization.」Protein Engineering,Design and Selection 9.7(1996):617-621)。いくつかの実施形態では、2つの組換えポリペプチドが設計される。第1のポリペプチドは、第1の自己反応性抗原(例えば、1つ以上のECドメイン)及び「相補的」CH3ドメインのうちの1つを含有し得る。第2のポリペプチドは、第2の自己反応性抗原及び「相補的」CH3ドメインの他方を含有し得る。第1のポリペプチドを第2のポリペプチドと接触させると、2つのCH3ドメインが優先的にヘテロ二量体化し、ポリペプチド間にジスルフィド結合が形成される。ホモ二量体化は好まれない。ヘテロ二量体化した分子は、一般に、機能的Fc領域及び2つの別個の自己反応性抗原を含有する。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化した分子は、2つより多い抗原を含有し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、「ノブ-イントゥ-ホール」分子中の別個の抗原は、異なる自己反応性抗原に由来し得る。いくつかの実施形態では、別個の抗原は、同じ自己反応性抗原由来の異なるエピトープを含有し得る。いくつかの実施形態では、別個の抗原は、Dsg3及び/又はDsg1由来であり得る。いくつかの実施形態では、別個の抗原は、デスモグレインの異なる細胞外(EC)ドメインに由来し得る。いくつかの実施形態では、別個の抗原は、デスモグレイン分子のEC1、EC2、EC3、EC4及びEC5から選択することができる。例えば、別個の抗原は、EC1及びEC2由来であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープは、デスモソームカドヘリンのEC1、EC2及び/又はEC4ドメインに由来し得る(Cho,Alice,et al.「Single-cell analysis suggests that ongoing affinity maturation drives the emergence of pemphigus vulgaris autoimmune disease.「Cell reports」28.4(2019):909-922を参照されたい)。いくつかの実施形態では、EC3が含まれ得る。いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープは、Dsg3のEC1、EC2及び/又はEC4ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープは、Dsg3のEC1及び/又はEC2ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、単一融合タンパク質は、1つ以上のデスモグレインからの複数のECドメイン(例えば、EC1、EC2及びEC3のうちの2つ以上、(例えば、EC1-EC4)を有し得る。いくつかの実施形態では、各々がDsg3のEC1、EC2、EC3又はEC4ドメインの1つを含有する別個の融合タンパク質を組み合わせて組成物とし、患者における療法に使用してもよい。
【0084】
理論に束縛されることを望まないが、治療薬は、患者において自己反応性抗体に結合するものに対応するECドメイン、並びに自己反応性抗体が患者において現在検出されていないものに対応するECドメインの両方を含有するように設計され得る。「エピトープ拡散」として当該分野で公知の現象では、一部の患者は、抗原上の1つのエピトープと反応性であるが、その抗原上の他のエピトープとは反応性でない自己反応性抗体を有する。しかし、時間経過と共に、患者は、最初に自己反応性抗体を刺激しなかったエピトープのうちの1つ以上に対する自己反応性抗体を発生し得る。本明細書に開示される治療薬に、自己反応性抗体が後に出現するエピトープを含めることにより、後に生じる抗体によって引き起こされる疾患の症状を予防又は軽減することができる。いくつかの実施形態では、最初にDsg3又はDsg1のEC5のみに対する自己反応性抗体を有する患者において、EC1、EC2、EC4、及びEC5を含有する治療薬を投与することは、患者にとって有益であり得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープは、プラキン(例えば、エンボプラキン、ペリプラキン、デスモプラキンI、デスモプラキンII、エピプラキン、プレクチン、BP230)、カドヘリン((Dsg3、Dsg1、Dsc1、Dsc2、Dsc3、α2-マクログロブリン様分子)、BP180(例えば、NC16A、LABD97、LAD-1ドメイン又はC末端エピトープ)、ラミニン332、α6β4インテグリン、コラーゲンVII、ラミニンガンマ1(p200)、VII型コラーゲン、表皮トランスグルタミナーゼ、組織トランスグルタミナーゼ、筋内膜又は脱アミド化グリアジンに由来し得る。
【0086】
一般に、自己反応性抗体は、任意のクラスの抗体(IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM)であり得る。いくつかの場合では、自己反応性抗体は、IgA又はIgGであり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープの代わりに、アレルゲン、アレルゲンの一部、又はアレルゲンを模倣することができる分子が、本明細書に開示されるFc媒介性治療薬又はBCR-T細胞エンゲージャの一部であり得る。多くの異なるアレルゲンが存在する。アレルゲンの非限定的な例は、薬物、食品、昆虫(例えば、昆虫刺症、チリダニ)、ラテックス、カビ、ペット/動物(例えば、鱗屑)及び花粉に由来し得る。アレルゲンは、ツタウルシ、イースタンポイズンオーク、ウェスタンポイズンオーク、毒ウルシなどの植物に見られるような、ウルシオールを含み得る。いくつかの実施形態では、アレルゲンは、Bet v 1などのカバノキ花粉アレルゲンであり得る。いくつかの実施形態では、アレルゲン/アレルゲンの一部は、タンパク質、ポリペプチド又はポリペプチドであり得る。
【0088】
いくつかの例では、アレルギーは、I型過敏症であり得る。例えば、アレルギーは、IgEによって媒介され得る。B細胞は、IgEを産生することができる。次いで、IgEは、例えば、肥満細胞、好塩基球などに見出されるIgE特異的受容体に結合してもよく、これらの細胞は、サイトカイン、血管作用性アミン(例えば、ヒスタミン)、プロテアーゼ、プロスタグランジン、ロイコトリエンなどのようなアレルギーのメディエーターを放出し得る。いくつかの実施形態では、Fc媒介性治療薬又はBCR-T細胞エンゲージャの一部であるアレルゲンは、IgEを産生するB細胞に結合してこれを枯渇させることができる。いくつかの例では、アレルギーは、II型、III型又はIV型過敏症であり得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、エフェクター細胞に結合するドメインを有し得る。自己反応性B細胞エピトープ及びエフェクター細胞結合ドメインを有する融合タンパク質では、融合タンパク質は、自己反応性B細胞エピトープのB細胞上のBCRに対する結合が、エフェクター細胞がB細胞に作用してB細胞を枯渇させることができるように、融合タンパク質のエフェクター細胞結合ドメインに結合したエフェクター細胞をB細胞に近接して共局在化させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞に結合するドメインは、抗体のFc部分であり得る。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞に結合するドメインは、エフェクター細胞に特異的な抗体であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、エフェクター細胞結合ドメインは、融合タンパク質の末端に位置し得る。いくつかの例では、エフェクター細胞結合ドメインは、融合タンパク質のC末端に位置し得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のエフェクター細胞結合ドメインが結合することができるエフェクター細胞は、貪食細胞又は食細胞であり得る。食細胞は、いわゆる「プロフェッショナル」及び「非プロフェッショナル」食細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、プロフェッショナル食細胞は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞及び肥満細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、非プロフェッショナル食細胞は、特定のT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含み得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、エフェクター細胞に結合する融合タンパク質のドメインは、抗体のFc部分又はドメインであり得る。一般に、任意のFc部分が、本明細書に開示される試薬及び方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞(例えば、NK細胞、マクロファージなど)に結合することができる任意のFc部分を使用することができる。いくつかの実施形態では、標的病原性B細胞(例えば、自己反応性B細胞)の枯渇を媒介することができる任意のFc部分を使用することができる。Fc部分は、Fc受容体(FcR)を有する細胞に結合することができる。Fc部分は、細胞上のFcRに結合することができる。いくつかの実施形態では、FcRは、Fc-ガンマ受容体(Fc-gamma receptor、FcγR)、Fc-アルファ受容体(Fc-alpha receptor、FcαR)、又はFc-エプシロン受容体(Fc-epsilon receptor、FcεR)であり得る。いくつかの実施形態では、FcγRは、FcγRI、FcγRII又はFcγRIIIであり得る。融合タンパク質の文脈では、抗体のFc部分は、細胞上のFc受容体(FcR)に結合することができるように構成される。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される抗体のFc部分又はドメインは、改変され得る。いくつかの実施形態では、1つの改変又は複数の改変は、様々な細胞上のFc受容体に対するFc領域の結合に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、改変は、Fc領域が結合する細胞の機能に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、Fc部分又はドメインは、Fcドメイン上の保存されたN-グリコシル化部位において不均一に改変され得る。いくつかの実施形態では、複雑な二分岐グリカンを、Fcドメイン上の保存されたN-グリコシル化部位に結合させることができる(Li,Tiezheng,et al.「Modulating IgG effector function by Fc glycan engineering.」Proceedings of the National Academy of Sciences 114.13(2017):3485-3490を参照されたい)。一般に、改変されたFcドメインがエフェクター細胞(例えば、NK細胞、マクロファージなど)に結合することができる限り、任意の種類のFcドメイン改変を使用することができる。一般に、改変されたFcドメインが標的病原性B細胞(例えば、自己反応性B細胞)の枯渇を媒介することができる限り、任意の種類のFcドメイン改変を使用することができる。
【0094】
融合タンパク質内で、Fc部分はまた、Fc部分が結合するエフェクター細胞が、融合タンパク質の自己反応性B細胞エピトープが結合する自己反応性B細胞に近接して共局在化されるように構成され得る。FcRを有し、融合タンパク質のFc部分が結合することができるエフェクター細胞には、例えば、好中球、単球、マクロファージ、肥満細胞及び樹状細胞が含まれ得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、エフェクター細胞に結合する融合タンパク質のドメインは、エフェクター細胞に結合する抗体であり得る。本明細書では、自己反応性抗原及びエフェクター細胞に結合する抗体を含有する融合タンパク質は、BCR-エフェクター細胞エンゲージャと呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、抗体は、T細胞に結合する抗体(例えば、抗CD3抗体)又は特定の種類のT細胞であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞傷害性T細胞に結合する抗体(例えば、抗CD8抗体)又はヘルパーT細胞に結合する抗体(例えば、抗CD4抗体)であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞又は他の食細胞に結合する抗体であり得る。いくつかの例では、NK細胞に結合する抗体又は抗体の組み合わせを使用することができる。いくつかの例では、抗CD56抗体が使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、一本鎖可変断片(scFv)であり得る。
【0096】
融合タンパク質内で、エフェクター細胞に結合する抗体は、特異的なエフェクター細胞に結合することができるように構成される。いくつかの実施形態では、抗体は、1つ以上の所望のエフェクター細胞に結合することができるが、他の細胞には結合しないか、又はより低い効率で結合する。融合タンパク質内で、エフェクター細胞に結合する抗体はまた、抗体が結合するエフェクター細胞が、融合タンパク質の自己反応性B細胞エピトープが結合する自己反応性B細胞に近接して共局在化するように構成される。この共局在化は、エフェクター細胞が自己反応性B細胞と相互作用/作用する能力を促進する。
【0097】
本明細書に開示される融合タンパク質は、スペーサ又はリンカーを更に有し得る。一般に、スペーサは、自己反応性B細胞エピトープドメインとエフェクター細胞に結合するドメインとの間の融合タンパク質内に位置し得る。スペーサは、融合タンパク質内の別個のドメインがそれぞれ所望の機能を果たすことを促進し得る。例えば、自己反応性B細胞エピトープを含む融合タンパク質のドメインとエフェクター細胞に結合するドメインとの間に位置するスペーサは、自己反応性B細胞上のBCRに結合する自己反応性B細胞エピトープを提供することができ、同時に、エフェクター細胞結合ドメインは、自己反応性B細胞に近接したエフェクター細胞に結合し、共局在化することができる。スペーサは、自己反応性B細胞を枯渇させるための共局在化したエフェクター細胞を提供することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、スペーサは、アミノ酸スペーサであり得る。いくつかの実施形態では、スペーサは、約2~50アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、スペーサは、約5~45、6~40、7~35、8~30、9~25、又は10~20アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、スペーサは、融合タンパク質の可撓性を増加させることができる可撓性スペーサであり得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、可撓性ペプチドスペーサは、小さい極性(例えば、Ser、Thr)又は非極性(例えば、Gly)アミノ酸を含み得る。可撓性ペプチドスペーサは、Gly及びSer残基の配列(例えば、「GS」リンカー)を有し得る。例示的なGSリンカーアミノ酸配列は、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nを含み得る。例示的なペプチドスペーサは、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3であり得る。他の種類の可撓性スペーサとしては、KESGSVSSEQLAQFRSLD、EGKSSGSGSESKST、(Gly)8、GSAGSAAGSGEF及び(GGGGS)4を挙げることができる(Chen,Xiaoying,Jennica L.Zaro,and Wei-Chiang Shen.「Fusion protein linkers:property,design and functionality.」Advanced drug delivery reviews 65.10(2013):1357-1369)。他の例示的な種類のスペーサは、剛性スペーサ又は切断可能スペーサであり得る。
【0100】
融合タンパク質のいくつかの実施形態では、自己反応性B細胞エピトープ及びエフェクター細胞結合ドメインを含むドメインは、種々の化学を使用して互いに接続され得る。いくつかの実施形態では、いわゆる「クリック」化学を使用することができる。いくつかの実施形態では、ソルターゼ酵素を使用することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、ドメインは、C-C融合化学を使用して接続され得る。例えば、ソルターゼを用いて、自己反応性C細胞エピトープドメインのC末端及びエフェクター細胞結合ドメインにクリック「ハンドル」を導入することができる。2つの改変されたドメインを、例えばアジド-アルキンクリック化学を用いて一緒に「クリック」して、C-C融合体を生成することができる(
図8A)。
【0102】
いくつかの実施形態では、ドメインは、N-C融合化学を使用して接続され得る。例えば、ソルターゼ酵素の可逆性を使用して、トリグリシン分子(Gly-Gly-Gly)は、2つのドメインのN-C融合体の形成を触媒するために使用され得る。ドメインの1つ(第1のドメイン)は、そのC末端にLeu-Pro-Glu-Thr-Glyを有するように改変することができる。他方のドメイン(第2のドメイン)は、そのN末端にLeu-Pro-Glu-Thr-Gly-Gly-Glyを有するように改変することができる。トリグリシン及びソルターゼの存在下で2つの改変ドメインを反応させることによって、Leu-Pro-Glu-Thrセグメントが第2の改変ドメインから除去され、Gly3に変換される。次いで、Gly3-第2のドメインは、改変された第1のドメインと反応して、融合タンパク質を形成することができる(
図8B)。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される融合タンパク質は、治療用部分、イメージング部分、捕捉部分、及びそれらの組み合わせなどの追加の部分/ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、クリック化学及び/又はソルターゼ酵素を使用して、これらの部分を融合タンパク質に付加することができる。いくつかの実施形態では、治療用部分は、細胞毒素、毒素、放射線療法剤、T細胞結合部分、ナチュラルキラー(NK)細胞結合部分、又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、治療用部分は、IL-2又はIL-1活性を有する分子を含み得る。いくつかの実施形態では、イメージング部分は、フルオロフォア、放射性同位体、又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、捕捉部分は、親水性タンパク質、細菌トランスペプチダーゼ酵素、GSTタグ、Hisタグ、ポリエチレングリコール(PEG)、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0104】
本明細書中に開示される融合タンパク質及びそれらのタンパク質の個々のドメイン(例えば、自己反応性エピトープ、Fc領域、エフェクター細胞に結合する抗体)に関して、当業者は、ペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質配列に対する、又は核酸配列のヌクレオチドに対するアミノ酸の個々の置換、欠失又は付加であって、コードされる配列中の単一のアミノ酸又はわずかな割合のアミノ酸を改変、付加、欠失、又は置換する置換、欠失又は付加が、本明細書中で集合的に「保存的に改変されたバリアント」と呼ばれることを容易に認識するであろう。いくつかの実施形態では、改変は、アミノ酸を、化学的に類似したアミノ酸に置換する。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野において周知である。本明細書に開示されるFcドメイン又は抗体のそのような保存的に改変されたバリアントは、改変されていない配列と比較して、エフェクター細胞結合の増加を示すことができる。
【0105】
例えば、「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野では、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)として定義されている。したがって、免疫グロブリンポリペプチドの非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換される。別の実施形態では、アミノ酸鎖は、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/又は組成が異なる構造的に類似する鎖で置換することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、エフェクター細胞間に結合する自己反応性エピトープ、Fc領域、又は抗体は、本明細書に記載の自己反応性エピトープ、Fc領域、又はエフェクター細胞結合抗体のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に対して、指定されたパーセンテージの同一性又は類似性を有し得る。例えば、「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、各配列の位置を比較することによって決定することができ、比較の目的で整列させ得る。比較される配列の位置が同じ塩基又はアミノ酸で占められている場合、その分子はその位置において相同である。配列間の相同性の程度は、配列によって共有される一致する又は相同な位置の数の関数である。例えば、本明細書に記載の分子は、本明細書に記載の分子のいずれか1つの特定の領域又は全長と比較した場合に、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれより高いアミノ酸配列同一性を有し得る。例えば、本明細書に記載の分子は、本明細書に記載の抗体のいずれか1つの特定の領域又は全長と比較した場合に、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれより高い核酸同一性を有し得る。本発明の核酸及びタンパク質に対する配列同一性又は類似性は、例えば、Ausubel et al.編(2007)Current Protocols in Molecular Biologyに記載されているような、当該技術分野で既知のソフトウェアプログラムを使用する、当該技術分野で既知の方法による配列比較及び/又はアラインメントによって決定することができる。(2007)Current Protocols in Molecular Biologyに記載されているものなどの当技術分野で知られているソフトウェアプログラムを使用する配列比較及び/又はアラインメントにより決定することができる。例えば、配列比較アルゴリズム(すなわち、BLAST又はBLAST2.0)、手動アラインメント、又は目視検査を利用して、本発明の核酸及びタンパク質の配列同一性又は類似性パーセントを決定することができる。
【0107】
治療製剤
本発明の態様は、治療製剤に向けられる。本明細書で使用される場合、「治療製剤」という用語は、治療効果のために使用又は投与することができる任意の化合物又は組成物(例えば、細胞を含む)を指すことができる。本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、症状の改善、例えば、関連する医学的状態を治療、治癒、予防若しくは改善する、又はそのような状態の治療、治癒、予防若しくは改善の速度を増加させるのに十分な効果を指すことができる。
【0108】
本明細書に記載の実施形態は、意図される投与経路のために調製された医薬組成物又は治療製剤の形態で対象に投与することができる。このような組成物及び製剤は、例えば、活性成分(複数可)及び薬学的に許容される担体を含むことができる。このような組成物及び製剤は、経口、皮下、非経口(例えば、静脈内、腹腔内)、筋肉内、直腸、硬膜外、気管内、鼻腔内、皮膚、膣、頬側、眼、又は肺投与に適合した形態、例えば、末梢経路による投与に適合した形態、又は経口投与に適した形態、又は非経口投与に適した形態であることができる。他の投与経路は、皮下、腹腔内及び静脈内であり、そのような組成物は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,17.Ed.Alfonso R.Gennaro(Ed.),Mark Publishing Company,Easton,Pa.,U.S.A.,1985及びより最近の版並びに「Drugs and the Pharmaceutical Sciences」series,Marcel Dekkerのモノグラフに一般的に記載されているように、当業者に周知の方法で調製することができる。組成物及び調製物は、従来の形態、例えば、注射用の溶液及び懸濁液、カプセル剤及び錠剤、例えば、米国特許第5,350,741号に開示されているような腸溶性製剤の形態、及び経口投与用の形態で見られることができる。
【0109】
非経口、皮内、又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液は、以下の、無菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒、ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度を調整するための薬剤の成分を含むことができる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器、又はガラス若しくはプラスチック製の複数用量バイアルに封入することができる。
【0110】
注射可能な使用に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び滅菌注射液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与について、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EM(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合では、組成物は、無菌であってもよく、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性であってもよい。複数の実施形態では、製造及び貯蔵の条件下で安定であり得、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存され得る。担体は、例えば、水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールのような薬学的に許容されるポリオール、及びそれらの適切な混合物を含有する、溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合における必要な粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールによって達成することができる。多くの場合、組成物において等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを含めることが有用であり得る。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物において、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによって達成することができる。
【0111】
滅菌注射液は、必要量の化合物を、必要に応じて、本明細書に列挙した成分の1つ又は組み合わせと共に適切な溶媒に組み込むこと、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。概して、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び本明細書に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、有用な調製方法の例は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これにより、活性成分及び任意の追加の所望の成分の粉末が、以前に滅菌濾過されたその溶液から得られる。
【0112】
経口組成物は、不活性な希釈剤又は可食性の担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入するか、又は錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ、錠剤、トローチ、又はカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、洗口剤としての使用のための流体担体を使用して調製することができ、流体担体中の化合物は、経口的に適用され、口の中で回され、吐き出されるか、又は飲み込まれる。薬物の経口処方物は、例えば、薬物の半減期に応じて、1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回投与することができる。
【0113】
薬学的に適合性の結合剤、及び/又はアジュバント材料を対象に投与される組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の、微結晶セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンなどの結合剤;デンプン又はラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel(登録商標)(デンプングリコール酸ナトリウム)、又はコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味料などの香味剤の成分、又は同様の性質の化合物のいずれかを含有することができる。
【0114】
全身投与はまた、経粘膜的又は経皮的手段によるものであり得る。経粘膜又は経皮投与について、浸透させる障壁に適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野で一般に既知であり、例えば、経粘膜投与について、洗浄剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレー又は坐剤の使用を通して達成することができる。経皮投与について、活性化合物は、当技術分野で一般に既知の軟膏、膏薬、ゲル、又はクリームに製剤化される。
【0115】
実施形態では、投与することは、所望の効果が生じるような、所望の部位での組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路による、対象への医薬組成物の配置を含むことができる。
【0116】
例えば、医薬組成物は、ボーラス注射又は注入によって投与することができる。ボーラス注射は、シリンジがIVアクセスデバイスに接続され、薬物が対象に直接注射される投与経路を指すことができる。「注入」という用語は、血管内注射を指すことができる。
【0117】
本明細書に記載の実施形態は、対象に1回(例えば、単回注射、ボーラス、又は沈着として)投与することができる。あるいは、投与は、対象に1日1回又は2回、ある期間、例えば約2週間~約28日間であることができる。投与は最大1年まで継続することができる。複数の実施形態では、投与は、対象の生涯にわたって継続することができる。実施形態は、対象に年に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12回、又はそれらの組み合わせの期間1日1回又は2回投与することもできる。
【0118】
複数の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、対象に慢性的に投与されることができる。「慢性投与」は、長期間にわたって治療効果(活性)を維持するためなどの、連続的な投与を指すことができる。
【0119】
特定の患者に対する特定の投与量及び治療計画は、使用される具体的な抗体、そのバリアント又は誘導体、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事、及び投与時間、排泄頻度、薬物の併用、及び治療を受けている特定の疾患の重症度など、様々な要因に依存する。医療従事者によるそのような要因の判断は、当業者の技量の範囲内である。その量はまた、治療される個々の患者、投与経路、製剤の種類、使用される化合物の特性、疾患の重症度、及び所望の効果にも依存すると考えられる。使用される量は、当該技術分野で周知の薬学的及び薬物動態学的原理によって決定することができる。
【0120】
本発明の試薬又は治療組成物の治療有効量は、治療目的を達成するために必要な量とすることができる。上に示されるように、これは、特定の場合には標的の機能を妨害する、試薬又は治療組成物とその標的との間の結合相互作用とすることができる。投与する必要のある量は更に、その特異的な標的についての試薬又は治療組成物の結合親和性に依存し、また、投与された試薬又は治療組成物が、それが投与される他の対象の自由体積から枯渇する速度にも依存する。対象(例えば、患者)に投与される本明細書に記載の結合ポリペプチドの投与量は、典型的には、0.1mg/kg~100mg/kg患者体重、0.1mg/kg~20mg/kg患者体重、又は1mg/kg~10mg/kg患者体重である。ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫応答のため、他の種由来の抗体よりもヒト体内での半減期が長い。したがって、少ない投薬量及び少ない頻度でのヒト抗体の投与が可能ことも多い。更に、本開示の試薬又は治療組成物の投薬量及び投与頻度は、例えば、脂質化などの改変によって抗体の取り込み及び組織への(例えば脳への)浸透を増強することによって低減され得る。本発明の抗体又は抗体断片の治療上有効な投与のための一般的な範囲は、非限定的な例として、約0.1mg/kg体重~約50mg/kg体重であり得る。一般的な投与頻度は、例えば、1日2回~1週間に1回の範囲であり得る。
【0121】
断片(例えば、抗体断片)が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害性断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。そのようなペプチドは、化学的に合成することができ、かつ/又は組換えDNA技術によって産生することができる。(例えば、Marasco et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889-7893(1993)を参照されたい)。製剤はまた、治療しようとする具体的な適応症に必要な2つ以上の活性化合物、例えば、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するもの、を含有することができる。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、その機能を増強する薬剤(例えば、細胞傷害性薬剤、サイトカイン(例えば、IL-15)、化学療法剤又は成長阻害剤など)を含み得る。そのような分子は、意図された目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0122】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)における、又はマクロエマルジョンにおける、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入することができる。徐放性製剤を調製することができる。
【0123】
使用される薬学的又は治療的担体又は希釈剤は、従来の固体又は液体担体であることができる。固体担体の非限定的な例は、ラクトース、白土、スクロース、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はセルロースの低級アルキルエーテルである。液体担体の非限定的な例は、シロップ、落花生油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン及び水である。同様に、担体又は希釈剤は、単独で、又はワックスと混合された、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で公知の任意の徐放材料を含むことができる。
【0124】
経口投与用に固体担体を使用する場合、製剤を錠剤化し、粉末若しくはペレット形態の硬質ゼラチンカプセルに入れるか、又はトローチ若しくはロゼンジの形態であることができる。固体担体の量は広く変動するが、通常、約25mg~約1gである。
【0125】
液体担体を使用する場合、製剤は、シロップ、エマルジョン、軟ゼラチンカプセル又は水性若しくは非水性の液体懸濁液若しくは溶液などの滅菌注射液の形態であることができる。
【0126】
組成物及び/又は調製物はまた、局所又は全身注射又は注入に適した形態であることもでき、それ自体、滅菌水又は等張生理食塩水又はグルコース溶液を用いて製剤化することができる。組成物は、中枢投与可能な形態を除いて、末梢投与のみに適合した形態であることができる。組成物及び/又は製剤は、中枢投与に適合した形態であることができる。
【0127】
組成物及び/又は製剤は、当該分野で周知である従来の滅菌技術によって滅菌されることができる。得られた水溶液は、使用のために包装されることができるか、又は無菌条件下で濾過されることができ、そして凍結乾燥されることができ、凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌水溶液と合わせられる。組成物及び/又は製剤は、生理的条件に近づけるために必要とされる薬学的及び/又は治療的に許容される補助物質、例えば、緩衝剤、等張性調整剤など、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含有することができる。
【0128】
天疱瘡などの自己免疫性水疱症を含む自己免疫疾患を有する患者は、血液と共に循環する自己反応性抗体を有する。本明細書に記載される治療薬は、患者における自己反応性抗体がおそらく結合し得る自己反応性エピトープを含有する。潜在的な懸念は、自己反応性抗体が、患者に投与された後に治療薬に結合し、かつ/又はそれを不活性化する可能性があることであり得る。しかしながら、本明細書に提示されるデータ(例えば、実施例7、
図17及び18を参照されたい)は、自己反応性抗体がこれらの治療薬の有効性を減少させないことを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療薬の有効性は、治療薬が投与される患者における自己反応性抗体の存在によって減少しないか、又は最小限に減少する。
【0129】
融合タンパク質を発現する核酸、ベクター及び細胞
本明細書に記載される融合タンパク質の全て又は一部をコードする核酸も開示される。核酸を含む種々のベクター(例えば、プラスミド、ウイルスなど)もまた開示される。核酸又はベクターを含有し、融合タンパク質を発現することができる様々な細胞(例えば、原核細胞、真核細胞)も開示される。
【実施例】
【0130】
実施例は、本発明のより完全な理解を促進するために以下に提供される。以下の実施例は、本発明を作製及び実施する例示的な様式を例示する。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例に開示されている特定の実施形態に限定されず、代わりの方法を使用して同様の結果を得ることができるため、例示のみを目的としている。
【0131】
実施例1
自己免疫疾患の標的化治療のための非免疫抑制性の免疫ベースの治療薬の開発
尋常性天疱瘡(PV)は、皮膚及び粘膜の痛みを伴う水疱形成を特徴とし得る、破壊的な自己免疫性水疱症である。PVは、Dsg1に対する抗体の有無にかかわらず、デスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体の産生によって引き起こされ、上皮剥離(棘細胞離開)を引き起こす。PVの治癒法は存在しない。治療戦略は、全身性ステロイド及び免疫抑制剤を含み得る。抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)は、中等度から重度の疾患に対するファーストラインの選択肢となっているが、従来の免疫抑制剤よりも低いとはいえ感染のリスクの増加及び治療後の再発の高いリスクを含む、オフターゲット免疫抑制効果を引き起こし得る。PVの再発は、最初の治療中に枯渇していない同じ自己反応性細胞の拡大に起因し得る。したがって、自己反応性B細胞の完全な枯渇は、治癒法となり得る。現在臨床試験中の新生児Fc受容体及びブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤は、オフターゲット免疫抑制効果を回避することができない。自己ポリクローナル調節性T細胞及びキメラ自己抗原受容体(CAAR)T細胞などの初期段階の細胞ベースの療法は、有効であることが証明されたとしても、全体的に免疫抑制性とはなり得ない。しかしながら、細胞ベースの療法は、個別化されなければならず、製造、貯蔵及び輸送のための特定の要件を有し、これは、資源が乏しい地域では実現不可能である。
【0132】
PVの治癒法は存在しない。本明細書に記載の治療は、既存の適応免疫機構の特異性を利用するため、根治的なものとなる可能性があり、正確なものであり得る。提案された治療は、全体的に免疫抑制性であるとは予想されず、したがって、既存の治療の主要な副作用を回避する。加えて、PVの標的が普遍的なものであるため、個別化の必要がない。重要なことに、現在のプロジェクトは、PVの治療のためのプラットフォームを提供するだけでなく、従来の非特異的な免疫抑制治療で主に治療される既知の抗原を用いた全ての抗体駆動性自己免疫疾患において使用されるように改変することができる。
【0133】
既存の腫瘍学的治療に基づいて、本願発明者らは、自己反応性抗Dsg3 B細胞を正確に枯渇させるための2つのアプローチ、すなわち、(1)Fc媒介性、及び(2)BCR-T細胞結合を設計した(
図11を参照されたい)。
【0134】
Fc媒介性アプローチ:このアプローチは、PVにおけるリツキシマブの使用に類似しており、抗Dsg3 B細胞を標的とするという主な利点を有する。
【0135】
BCR-T細胞エンゲージャアプローチ:Dsg3抗CD3e構築物は、標的抗Dsg3 B細胞とT細胞との間の分子クラスター化及び免疫学的シナプスの形成を確立することができ、その結果、T細胞の増殖及び活性化をもたらして、標的化された抗Dsg3 B細胞を特異的に死滅させ、他のB細胞を無傷なままに残す。腫瘍学的用途とは異なり、サイトカイン放出症候群は、自己反応性B細胞の負荷が悪性クローンよりも低いことを考慮すると、自己免疫疾患の治療においては予想されない。
【0136】
Dsg3-Fcを作製する1つの戦略は、安全なものであり得、リツキシマブの使用に取って代わることができる。他のアプローチは、利用可能な治療に応答しない患者にとって魅力的な代替選択肢を提供する。したがって、このプロジェクトは、PVの治療を変えるだけではなく、他の自己免疫性水疱症(例えば、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症)、狼瘡、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病のサブタイプから免疫介在性血管炎に及ぶ既知の抗原標的に対するいくつかの自己抗体/免疫複合体媒介性疾患の治療を開発するための道を開く可能性を有する。したがって、理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に開示される治療薬は、自己免疫疾患のための治療ツールボックスへの画期的な追加とみなすことができる。
【0137】
本願発明者らの治療薬は、抗Dsg3力価を低下させる他の薬物と同時に使用することができる。更に、確かに、モノクローナル及びポリクローナル抗Dsg3 IgGは、Dsg3自己抗体産生B細胞に特異的なCAAR T細胞の死滅能力に対して有意な効果を有さないことが見出された。
【0138】
実施例2
尋常性天疱瘡(PV)は、皮膚及び粘膜の痛みを伴う水疱形成を特徴とする自己免疫性水疱症である(
図1)。PVは、Dsg1に対する抗体の有無にかかわらず、デスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体の産生によって引き起こされ、上皮剥離(棘細胞離開)を引き起こす(
図2のパネルA~B)。PVの治癒法は存在しない。治療戦略は、全身性ステロイド及び免疫抑制剤を含み得る。B細胞に対する抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)は、中等度から重度の疾患に対するファーストラインの選択肢となっているが、従来の免疫抑制剤よりも低いとはいえ感染のリスクの増加及び治療後の再発の高いリスクを含む、オフターゲット免疫抑制効果と関連がある。現在臨床試験中の新生児Fc受容体及びブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤は、オフターゲット免疫抑制効果を回避することができない。自己ポリクローナル調節性T細胞14及びキメラ自己抗原受容体(CAAR)T細胞16などの初期段階の細胞ベースの療法は、有効であることが証明されたとしても、全体的に免疫抑制性とはなり得ない。しかしながら、細胞ベースの療法は、個別化することができ、製造、貯蔵及び輸送のための特定の要件を有し、これは、資源が乏しい地域では、実行可能な場合もあり、実現不可能な場合もある。PVの再発は、典型的には、最初の治療中に枯渇していない同じ自己反応性細胞の拡大に起因する。自己反応性B細胞の完全な枯渇は、潜在的な治癒法を与える。自己反応性抗Dsg3 B細胞を正確に枯渇させるために、3つのアプローチ、すなわち、(1)Fc媒介性、(2)BCR-T細胞結合、及び(3)放射線療法アプローチを設計した(
図3のパネルA~C)。現在のプロジェクトは、PVだけでなく、既知の抗原による潜在的にいくつかの抗体駆動性自己免疫疾患の治療のためのプラットフォームを提供する。
【0139】
Fc媒介性:このアプローチは、B細胞が標的化されるという意味で、PVにおけるリツキシマブの使用に類似しており、抗Dsg3 B細胞のみを標的化するという主な利点を有する。
【0140】
BCR-T細胞エンゲージャ:Dsg3抗CD3e構築物は、標的抗Dsg3 B細胞とT細胞との間の分子クラスター化及び免疫学的シナプスの形成を確立することができ、その結果、T細胞の増殖及び活性化をもたらして、標的化された抗Dsg3 B細胞を特異的に死滅させ、他のB細胞を無傷なままに残すことができる。腫瘍学的用途とは異なり、サイトカイン放出症候群は、自己反応性B細胞の負荷が悪性クローンよりも低いことを考慮すると、自己免疫疾患の治療においては予想されない。
【0141】
放射線療法:臨床診療では、組織内のアルファ粒子の範囲が短い(<0.1mm)ことで、隣接組織に損傷を与えることなく標的細胞を選択的に死滅させることが可能である。死滅は、酸素化状態、細胞周期、細胞内在化及び以前の治療とは無関係である。したがって、放射線療法は、従来の療法、リツキシマブ、又は本願発明者らのDsg3-Fc及びDsg3抗CD3アプローチに対して耐性である患者にとって魅力的な代替法を提供することができる。
【0142】
アプローチ
タンパク質の部位特異的改変。ソルターゼは、「LPETG」モチーフを認識し、トレオニンとグリシンとの間の結合を切断してチオ-アシル中間体を形成する細菌性トランスペプチダーゼ酵素であり、チオ-アシル中間体は、トリグリシン含有プローブ(GGG-プローブ)で置換される。それにより、ソルターゼは、「タンパク質-LPETG」を「タンパク質-LPET-GGG-プローブ」産物に変換することができ、ここで、プローブは、目的の任意の生体分子であってもよく(
図4)、ほぼ完全な収率で迅速に変換することができる。本願発明者ら及び他の研究者らは、ソルターゼを使用して、フルオロフォア、ポリマー、放射性同位体又は二次タンパク質を生体分子に導入した。本願発明者らは、ソルターゼを使用して、Dsg3タンパク質及び抗体断片上にキレート剤及びフルオロフォアを導入し、他の方法では従来の遺伝的アプローチを使用して生成することが困難又は不可能であるN-C及びC-C融合タンパク質を作製することができる。
【0143】
Dsg3外部ドメインの免疫原性。PV患者に関する試験は、患者の91%、71%、51%、19%及び12%が、それぞれ外部ドメインEC1、EC2、EC3、EC4及びEC5に対する自己抗体を有することを示した(
図2のパネルB、
図13)。Dsg3-EC1-3はPV患者における生理学的抗Dsg3抗体の大部分を網羅し、その産生は完全サイズのEC1-5構築物よりも複雑ではないため、本願発明者らは、Dsg3-EC1-3を使用した。本願発明者らはまた、EC1-4及び1-5構築物を使用し得る。
【0144】
プラスミド及び細胞株。本願発明者らは、以下の3つの細胞株を使用した:(1)マウスにおいてPVを誘導する抗マウスDsg3抗体を産生するAK23ハイブリドーマ細胞。AK23抗体は、EC1ドメインを認識し、ヒトDsg3-EC1と交差反応する。(2及び3)Nalm-6 F779及びNalm-6 PVB-28がん細胞株。Nalm-6は、B細胞前駆体白血病細胞株であり、F779及びPVB-28は、それぞれDsg3-EC1及びDsg3-EC2ドメインを認識する患者由来の抗Dsg3抗体を発現するように操作された細胞である。更に、本願発明者らは、PV患者から特定された抗ヒトDsg3抗体(P3F3)のためのプラスミドを得た。P3F3抗体は、ヒトDsg3-EC1ドメインに特異的に結合するIgG1抗体であり、ヒトケラチノサイトに添加されると強い棘細胞離開を誘導する。
【0145】
動物試験。治療薬の有効性は、下記の2つの検証されたPVマウスモデルにおいて試験することができる。
【0146】
受動導入モデル。このモデルでは、本願発明者らは、確立された天疱瘡誘導性ハイブリドーマ細胞株(AK23、既に所有)を移植することによって、受動モノクローナル天疱瘡マウス疾患モデルを作製した。以前に記載したように、本願発明者らは、天疱瘡表現型を引き起こす抗Dsg3抗体を分泌する約500万~1000万個のAK23ハイブリドーマ細胞、又は対照としての無関係なハイブリドーマ細胞を、2,6,10,14-テトラメチル-ペンタデカン(プリスタン)でプライミングした8週齢のC57BL/6Jマウスに注射した(各群n=10)。動物は、全ての実験において、urn無作為化法に基づいて治療/対照群に割り当てられた。本願発明者らは、血清抗Dsg3力価(3日目及び10日目に標準的なELISAによって)、及び皮膚疱疹(2日目、5日目及び10日目に盲検化された研究者によって評価される)を分析することによって疾患の確立について試験した。ELISAデータに基づいて、棘細胞離開を観察するために(H&E染色によって)組織採取の時点を決定した。ピーク疾患時間は、約7日目であり得;マウスは、脱毛、体重減少を示す場合があり、かつ、生理的抗Dsg3 IgGレベル(300~400RU/ml)で表皮ケラチノサイトに結合するAK23細胞によって産生されるAK23自己抗体を伴って、毛包及び口腔粘膜に水疱形成を有する場合がある(
図5のパネルA~D)。
【0147】
能動導入モデル。AK23モデルは利点を有するが、治療により、急速に増殖するハイブリドーマ細胞に打ち勝つことができる。したがって、第2のモデルとして、本願発明者らは、ヒト疾患の臨床表現型を厳密に模倣し、臨床的に起こるものに類似する自己反応性Dsg3特異的B細胞の頻度が低く、最終的に高い血清ポリクローナル自己抗体レベルを有する、能動PV免疫モデルを使用した。このモデルでは、本願発明者らは、まず、Dsg3-/-マウス(JAX-002911)をマウスDsg3の組換え細胞外ドメインで免疫付与し、続いて脾細胞をRAG2-/-マウスに導入することによって、能動ポリクローナル天疱瘡マウス疾患モデルを開発した。導入された細胞は、概して、Dsg3反応性細胞を含み得るT細胞及びB細胞を含んでいた。文献で行われた観察と同様に、理論に束縛されることを望むものではないが、動物は、抑制された成長を有している可能性があり(
図5のパネルE)、基底上の棘細胞離開及び水疱を伴う皮膚粘膜びらんを発症する場合がある(
図5のパネルF~H)。臨床指標を評価するために、ELISAを使用して、本願発明者らは、自己抗体レベルをPV患者における生理学的レベル(300~400RU/ml)と比較した。Dsg3反応性抗体が、(理論に束縛されることを望むものではないが)3~4週間で起こり得るそのレベルに等しいか又はそれを超えた場合、治療を開始した。Dsg3免疫付与Dsg3+/-動物由来の細胞の養子導入を対照として使用した38(n=10匹のマウス/群)。
【0148】
モニタリング
副作用:動物は、本明細書に記載されるように、適切な対照と共に尾静脈を介して静脈内に治療を受けた。10匹のマウスを、治療後少なくとも6ヶ月間、両方の疾患モデルから各治療のために維持した。抗Dsg3レベルを2~3週間ごとにELISAによって測定して、長期間続く寛解を試験した。マウスは、皮膚病変をチェックして疾患再発がないことを確実にするために、盲検研究者によって試験された。理論に束縛されることを望むものではないが、マウスは、完全寛解を維持することができる。Fc媒介性アプローチは、リツキシマブと同様に、いくらかの再発を示す場合があるか、又は示さない場合があるが、理論に束縛されることを望むものではないが、再治療で応答可能である。臨床的解釈を考慮すると、Dsg3-Fc治療に応答することができない少数の患者は、放射線療法及び/又はBCR-T細胞エンゲージャアプローチの選択肢を有し得る。
【0149】
感染感受性:本願発明者らの療法が免疫系を全体的に抑制するかどうかを試験するために、C57BL/6マウスを活性LCMV-Cl13に感染させることができる。動物にAK23ハイブリドーマを感染21日後に注射し、続いて本明細書に記載の実験計画に従って本願発明者らの治療戦略を行うことができる。感染マウス及び対照マウスについてのウイルス負荷を、注射の30日後に比較することができる。あるいは、本願発明者らのPV療法の7日後に、マウスに、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)40により経口的に、又はLCMV感染により静脈内にチャレンジすることができる。肝臓及び脾臓における微生物負荷を感染10日後にチェックし、感染のみのマウスと比較する。いずれの実験においても、理論に拘束されることを望むものではないが、ウイルス負荷に差はない。
【0150】
抗Dsg3 B細胞の死滅を媒介するDsg3-Fc融合タンパク質の能力を試験する
非限定的で例示的な結果。本願発明者らは、マウス及びヒトの両方のFc融合タンパク質であるmDsg3-EC1-3-IgG2a(mFc)及びhDsg3-EC1-3-IgG1(hFc)を作製した。ヒトIgG1及びマウスIgG2a由来のFc領域を、それらの高いFc媒介性死滅活性について選択した。タンパク質は、C末端にFLAGタグ、ソルターゼ認識モチーフ及びHis6タグを有するように操作された。8アミノ酸配列(DYKDDDDK)であるFLAGは、ウェスタンブロット及びフローサイトメトリー分析のために使用することができ、その後、インビボで使用される場合、構築物の代謝運命の分析のために使用することができる。His6タグを精製に使用し、ソルターゼタグを部位特異的に改変を導入するために使用した。本願発明者らは、哺乳動物Expi293F細胞を使用して両方の構築物を発現させ、Ni-NTAアフィニティーカラムを介して精製し、SDS-PAGE及びウェスタンブロッティング分析を使用して特性評価して、構築物の形成を確認した(
図6のパネルA~B)。Gly3-Alexa647ソルターゼ基質を合成し、これを使用して、融合タンパク質をAlexa Fluor 647で部位特異的に標識した。ソルターゼ反応は、構築物(50μM)、Gly3-Alexa647基質(500μM)、及びソルターゼ(5μM)を4℃で1時間混合することによって行った。Alexa647標識された構築物をサイズ排除カラムクロマトグラフィーによって精製し、構築物のゲル内蛍光スキャンによって標識を更に確認した(
図6のパネルB)。構築物の機能性を特性評価するために、本願発明者らは、Alexa647標識されたmDsg3-EC1-3-mFcを使用して、抗mdSg3 AK23ハイブリドーマ及び抗hDsg3 F779細胞を染色した。細胞を親和性及び特異性(低nM濃度での)により染色し(
図6のパネルC)、これは、F779細胞上の患者由来BCRがマウスDsg3タンパク質と交差反応することを示している。対照として使用したNalm-6細胞は、いかなる結合も示さなかった(
図6のパネルC)。Alexa647標識されたhDsg3-EC1-3-IgG1(hFc)を使用して同様の実験を行い、これは、構築物がF779細胞に結合し、マウスAK23細胞も染色したことを示した(
図6のパネルB~Cと同様)。構築物を更に特性評価するために、本願発明者らは、まず、プレートをAK23 Abでコーティングし、別のプレートをP3F3(抗ヒトDsg3)でコーティングすることによって、ELISAアッセイを行った。その結果は更に、本願発明者らが作製したヒト及びマウス構築物が両方の抗体に特異的に結合することを示した(
図6のパネルD)。P3F3抗体を、製造業者のプロトコルに従って、Expi293F細胞において作製した。AK23抗体をAK23ハイブリドーマ培地から精製した。同様のアプローチに従って、本願発明者らは、ヒト及びマウスFcに融合したマウス及びヒトDsg3-EC1-4及びDsg3-EC1-5を生成し、それらの結合を完全に特性評価する。
【0151】
Fc媒介性インビトロ死滅アッセイの確立:まず、本願発明者らは、Dsg3-Fc融合体が、そのFc(IgG2a)を介して、低いnM親和性でマウスマクロファージのFcγ受容体に結合することを確認した(
図6のパネルE)。対照Nalm6細胞は、染色されないままであった。融合タンパク質がFc媒介性死滅を引き起こし得るかどうかを決定するために、マウスRAW264.7マクロファージ細胞と共培養したF779又はAK23標的細胞を、mDsg3-mFc融合タンパク質で処置した。10nM用量は、24時間後に、F779及びAK23細胞のそれぞれ65%及び60%の死滅を引き起こし、Nalm6又はハイブリドーマ対照細胞のいずれも死滅させなかった。48時間の時点で、本願発明者らは、F779細胞の94%の死滅を観察し、対照Nalm-6細胞には変化はなかった(
図7)。AK23ハイブリドーマ細胞は、抗Dsg3抗体を培地中に放出し、これにより、PV患者における生理学的条件と同様に、構築物を中和することができる。これにもかかわらず、本願発明者らは、10nM用量でAK23細胞とF779細胞との間で同様の有効な死滅を依然として観察し、Dsg3に対する抗体が融合タンパク質の死滅有効性に対して最小限の負の影響を有することを示している。死滅の用量依存性を評価することができるが、これは、これが動物試験及び臨床的解釈に影響を及ぼすためである。同様の実験を、マウス骨髄由来マクロファージ自己抗体を使用して、標準的なELISAによって行うことができる。また、正常なBリンパ球数は、PBMC採取時にCD19及びCD20によって示すことができる。
【0152】
動物試験
治療:Dsg3-Fc治療のインビボ有効性を試験するために、融合タンパク質をAK23注射の0、2又は5日後に静脈内注射することができる(モデル1)。これらの時点は、本願発明者らが、疾患負荷と治療の有効性との間の関係を特定すること、すなわち、治療が予防的であるかどうか、及び/又は重度の疾患表現型をレスキューすることができるかどうかを決定するのを助けることができる。治療タンパク質は、最適条件を見出すために、種々の濃度(尾静脈IV注射を介して100μlの最終体積中5mg/kg~15mg/kg46、47)で使用され得る。範囲は、自己免疫マウスモデルにおけるB細胞枯渇のために使用される抗体濃度に基づいて決定され得る。能動疾患モデル(モデル2)の場合、以前の試験では、循環抗Dsg3 IgGが早くも4日目にレシピエントRag2-/-マウスの血清中に存在し、その後急速に増加し、21日目頃にプラトー状態になったことが報告されているため、治療を、Rag2-/-マウスにおける養子細胞導入の0日後、14日後、又は21日後に行う。抗Dsg 3 ELISA、体重減少、及び皮膚病変/びらんなどの非侵襲的読み出しを、様々な時点(治療後4日目、10日目、17日目、25日目、及び35日目)で行うことができる(治療群及び対照群についてn=10匹のマウス)。これらのデータから得られた傾向を使用して、治療を受けなかった対照マウスにおけるピークを確立することができる。試験により、ピークが10日目と20日目との間にあることを確立した。ピーク後の時点で、粘膜関門の免疫蛍光及び組織学的染色のために皮膚生検を得ることができる。モデル1及び2の両方で、可溶性抗Dsg3抗体は、本願発明者らの構築物の死滅能力を部分的に中和し得る。そうである場合、本願発明者らは、異なる量の構築物を使用して、最適用量(最も低いオフターゲット率で最も高い死滅)を見出す。対照:陰性対照については、Dsg1-Fc及びDsg3変異Fc(Fc機能性を有さない)を、治療タンパク質と同じ濃度で使用する。更に、陽性対照として、本願発明者らは、マウスにおいてB細胞を効果的に枯渇させることが示されているため48(AK23ハイブリドーマ細胞が、抗CD20抗体により完全に枯渇される場合、又はされない場合があるため、モデル2においてより効果的であり得る)、動物当たり250μgの濃度で抗CD20 IgG(クローンSA271G2)を使用して調査する。読み出し:モデル1実験の読み出しは、AK23ハイブリドーマ細胞(ルシフェラーゼ陽性であるため)の生物発光イメージング(IVIS)であり、これにより、AK23細胞の高感度の縦断的測定を可能にする。更に、モデル1及び2の両方について、治療の開始後5日目及び14日目に測定した血清抗Dsg3力価、皮膚びらんの盲検調査、IgG沈着を検出するための粘膜試料の免疫蛍光、及び粘膜関門の組織学的評価を行うことができる。B細胞カウントも同様に実施して、それらが治療の間正常レベル内に維持されることを確実にすることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、治療は、疾患の臨床的解決及び組織学的解決をもたらす。
【0153】
追加の試験
インビトロ試験:ソルターゼペプチドのタンパク質操作及び発現、クローニング、並びに合成は、PIの研究室において日常的であり、理論に束縛されることを望むものではないが、タンパク質発現及びペプチド合成の生成及びスケールアップに困難はない。しかしながら、タンパク質発現収率が特定の構築物について低い場合、本願発明者らは、この問題に対処するために以下の異なる経路を調査することができる:(1)発現に使用されるコドンを再最適化する、(2)異なるシグナルペプチド配列を使用する、(3)Expi293F細胞の代わりにタンパク質発現のための他の系、例えばCHO細胞又は昆虫細胞を使用する。理論に束縛されることを望むものではないが、可溶性ポリクローナル抗Dsg3抗体は、本願発明者らの構築物の効果を完全にではなく部分的に中和する。したがって、本願発明者らは、ポリクローナルPV血清IgGの存在下で、F779、PVB28及びAK23細胞に対する本願発明者らの構築物の死滅能力を評価することができる。更に、これらの構築物の投薬は、オマリズマブ(IgEレベルに基づいて使用されるIgG1k抗ヒトIgE)などの薬物と同様であるが、直接的には類似しておらず、患者依存的であり、循環抗Dsg3力価のレベルに基づき得るので、本願発明者らは、これを臨床診療における制限とは考えない。加えて、現実世界の状況では、本願発明者らの治療薬は、抗Dsg3力価を低下させる他の薬物と同時に使用することができる。更に、モノクローナル及びポリクローナル抗Dsg3 IgGは、Dsg3自己抗体産生B細胞に特異的なCAAR T細胞の死滅能力に対して有意な効果を有さないことが見出された16。この融合タンパク質の有効性を更に増加させるために、本願発明者らは、IL-2と融合したDsg3-Fcを設計し、首尾よく発現させたが、これは(理論に束縛されることを望むものではないが)より多くの細胞に結合し、死滅を増強することができる。他のサイトカイン(例えば、IL-15)も同様に調査することができる。しかし、これらのアプローチは、いくつかの副作用を有する場合があり、又は有さない場合がある。陰性対照実験のために、抗Dsg3抗体の発現を欠く細胞に加えて、代替法として、本願発明者らが同様に発現及び使用することができるDsg1融合体の合成のためのプラスミドを設計し、作製した。インビボ試験:長期モニタリング及び任意の潜在的副作用を、上で説明したように実施することができる。本願発明者らは、治療の用量依存性及びそれが抗Dsg3自己抗体力価の存在とどのように相関するかを(ELISAを介して)注意深く調べることができる。生物製剤の広範な使用により、抗薬物抗体は、抗TNFαからリツキシマブまで及ぶ複数の薬剤について報告されている。免疫複合体沈着などの主要な免疫有害事象が理論化されているが、臨床診療では実現されていない。オマリズマブの場合のように、生物製剤が高循環抗体に直接結合する場合、高いIgEレベルを有する患者への投薬は、免疫有害事象を生じなかった。同様に、理論に束縛されることを望むものではないが、血清中の抗Dsg3 IgGの存在は、いかなる主要な免疫有害事象も生じさせないが、これをモニタリングする。
【0154】
抗Dsg3 B細胞の死滅を媒介するDsg3抗CD3融合体の能力を試験する
抗CD3e scFvに対するDsg3融合体の合成。N-C Dsg3抗CD3e融合発現プラスミドを、hDsg3-EC1-3及びOKT3抗CD3e scFvのcDNAを含有するように設計した。OKT3クローンは、二重特異性T細胞エンゲージャの抗CD3部分として臨床で使用されてきた。CD3eは、全ての成熟Tリンパ球上に見出される。構築物は、他の二重特異性T細胞エンゲージャと同様に、N末端にDsg3及びC末端に抗CD3eを有するように設計された。更に、この構造は、EC1-EC3ドメインがDsg3反応性B細胞による認識に利用可能であることを確実にすることができる。他の二重特異性T細胞エンゲージャと同様に、可撓性(G4S)3スペーサをDsg3タンパク質とscFvタンパク質との間に含めた。Expi293F細胞を使用してタンパク質を発現させた。
【0155】
クリック化学を用いたC-C融合:理論に束縛されることを望むものではないが、ソルターゼを使用することにより、Dsg3及び抗CD3e scFvタンパク質のC末端にクリックハンドルを部位特異的に導入することができ、これにより、アジド-アルキンクリック化学を使用してそれらを一緒に「クリック」することができる。これにより、C-C融合体の産生が起こり、これは、伝統的な遺伝的アプローチを介して作製することが不可能である。そのようなアプローチは部位特異的であり、それによって、産物は、その機能性を保持することができる。このアプローチを確立するために、本願発明者らは、ブリナツモマブに類似した、抗CD19によって抗CD3 scFvをクリックする融合体を合成することができ、本願発明者らはそれを死滅アッセイの陽性対照として使用することができる。本願発明者らは、両方のscFv(抗CD3 OKT3クローンからなる)についてブリナツモマブの同じ配列を使用した。本願発明者らはまず、そのC末端にソルターゼ認識タグ(LPETG)を備えた抗CD3e scFvを細菌により発現させた。抗CD19 scFvを同様に作製した。次に、Gly3-アルキン及びGly3-アジドソルターゼ基質を合成した。抗CD3escFvをアルキン基質と共に導入し、抗CD19 scFvをアジド基質と共に導入し、両方ともソルターゼを介してそれらのC末端に導入した。クリック官能化scFvをFPLCによって精製し、その後、銅媒介性アジド-アルキン環化付加化学によって一緒にクリックした(
図8のパネルA)。生成物をFPLCにより精製し、SDS-PAGE及びフローサイトメトリー分析を用いて特性評価し、クリックされたC-C融合体がNalm6細胞及びヒトT細胞の両方を強い親和性で染色することを確認した。本願発明者らは、同様にDsg3抗CD3eのC-C融合体を作製するためのアプローチを使用する。2.N-Cの融合体のソルターゼ媒介性合成:クリック化学アプローチは、遺伝子的に融合されたヘテロ二量体タンパク質の発現が困難であることが判明した場合、従来の遺伝的融合の代替法である。しかしながら、第2の代替法を提供するために、また、理論に束縛されることを望むものではないが、ソルターゼを介してより「天然の」融合体を作製するために、本願発明者らは、以下のように、いずれのタンパク質にも事前の改変を行うことなく、Dsg3抗CD3eのN-C融合体を作製することができる。ソルターゼ反応可逆性を利用して(理論に束縛されることを望むものではないが)、トリグリシン分子(GGG)を使用して、C-Nタンパク質融合体の形成を触媒することができる。タンパク質Aは、C末端に「LPETG」モチーフを有するように操作され、タンパク質Bは、N末端に「LPETGGG」を有するように操作される。ソルターゼ及びトリグリシン分子の添加により、タンパク質Bから「LPET」部分を除去し、それを「Gly3-B」に変換することができる。次いで、系内で産生されたGly3-Bタンパク質は、タンパク質Aと反応して、クリック化学が関与しない融合産物「A-LPET-GGG-B」を形成し得る(
図8のパネルB)。反応は、過剰のGGG触媒が反応混合物を離れることを可能にする透析カセット中で行うことができ、これは更に反応を融合産物の形成の方へと移動させる。このアプローチを確立するために、本願発明者らは、このような「抗CD19抗CD3 scFv融合体」を作製した。抗CD19 scFvは、そのC末端に「LPETG」ソルターゼタグを有する。本願発明者らは、以下の配列「MHis6-LPETGGG-anti-CD3 scFv」を有するように、抗CD3 scFvタンパク質を操作した(メチオニンコドン(ATG)が開始コドンとして働くので、タンパク質は常にMで開始する、精製を容易にするためにHis6を使用した)。次に、本願発明者らは、抗CD19及び抗CD3 scFv、Gly3、並びにソルターゼを混合し、反応を4℃で一晩進行させた。産物形成をSDS-PAGE分析により確認し、融合タンパク質をFPLCサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した(
図8のパネルC)。融合体を使用して、Nalm6細胞(CD19+)及びJurkat細胞(CD3+)を染色した。フローサイトメトリーの結果は、融合体が高い親和性で細胞を染色することを確認した(
図8のパネルD)。この戦略は、遺伝子融合体として発現させることが困難であるC-Nタンパク質融合体を作製するために、社会において広範な適用を有し得る、未公開のアプローチである。cDNAプラスミドへのソルターゼタグの導入を除いて、いずれのタンパク質に対しても事前の改変が必要とされない。このアプローチにより、Dsg3抗CD3e融合体を作製する。
【0156】
マウス及びヒトDsg3-EC1-3を作製し、同様に特性評価した(
図9のパネルA~B)。次に、ソルターゼを使用して、それらのC末端にAlexa647を導入した(
図9のパネルA)。生成物を特性評価するために、本願発明者らは、抗Dsg3細胞(F779、及びAK23細胞)を染色した。Alexa647標識されたmDsg3-EC1-3は、高い親和性及び特異性で細胞を染色することができた(
図9のパネルC)。対照として使用したNalm6細胞は、いかなる染色も示さなかった。本願発明者らは、クリック及び直接ソートタグ化アプローチの両方に従って、Dsg3抗CD3融合(マウス及びヒト)タンパク質を作製し、これを完全に特性評価する。本願発明者らは、同様に抗マウスCD3e scFvを作製し、特性評価した(クローン2C1)
61。
【0157】
構築物の死滅有効性を測定する。陽性抗Dsg3細胞株(AK23、F779及びPVB-28)及び陰性細胞株(Nalm6及び無関係のハイブリドーマ)を、新鮮なヒトCD8+細胞傷害性T細胞と共培養する(E:T比は1:1、5:1、及び10:1)。キメラDsg3抗CD3e融合タンパク質を標準的な細胞インキュベーター内で37℃でインキュベートする。融合タンパク質は、最適条件を見出すために様々な濃度(10μg/mL~1ng/mL)で使用される。第2の対照として、抗Dsg3細胞と対照細胞との間に細胞死の差がないと予想して、細胞を培地単独でインキュベートする。フローサイトメトリー分析を使用して、細胞の標準的な生-死分析を行う。T細胞活性化の指標としてのIFN-γの産生を、ELISpotアッセイを使用して評価する。インビトロアッセイにおける患者PBMCに対するアプローチの有効性を描写する:目的1と同様に、hDsg3抗hCD3e融合タンパク質を、PV患者から得たヒトPBMC培養物に添加することができる。健常PBMCを対照として使用することができる。(理論に束縛されることを望むものではないが)患者自身のT細胞が、標的化された抗Dsg3 B細胞を死滅させるように指向され、活性化されるため、更なるT細胞は混合物に添加されない。様々な濃度の融合体を使用して、最適条件を見出すことができる(10μg/mL~1ng/mL)。融合体の添加の4時間後、12時間後及び24時間後に、死滅有効性を分析することができる(各実験についてn=10)。分析は、Fcアプローチと同様に行うことができる。
【0158】
Dsg3抗CD3eアプローチを用いた動物試験。組換えタンパク質を、AK23細胞注射(モデル1)の0、2又は5日後に、様々な濃度(0.5mg/kg~1mg/kg)で静脈内に注射することができ、これは、最適条件を見出すために最終体積100μlの腫瘍学的治療設定で使用されるものと同様である。能動疾患モデル(モデル2)については、組換えタンパク質を、養子細胞導入後0日目、14日目、又は21日目にRag2-/-マウスに注射した(前述の通り)。陰性対照として、Dsg1抗CD3e複合体を治療タンパク質と同じ濃度で使用することができる。読み出し(目的1に記載される通り)のために、ルシフェラーゼ(モデル1について)、免疫蛍光及び組織学的イメージング、並びに抗Dsg3 ELISA力価と共に、細胞を、治療したマウス及び治療していないマウスの皮膚生検から単離することができる。CD3+細胞の正規化されたカウントを、治療後5日目、14日目及び20日目にフローサイトメトリー分析によって分析する。Dsg3抗CD3e治療を注射されたマウスにおいてT細胞カウントが増加する場合があり、これは、組換えタンパク質がT細胞を動員することができることを確認するものである。長期モニタリング及び任意の潜在的副作用を、本明細書中で説明されるように実施する。
【0159】
追加の試験
インビトロ試験:ソルターゼ反応は、SDS-PAGE及び/又は質量分析を介してモニタリングすることができる。典型的には、ソルターゼ基質で標識されたタンパク質の90%より多くが得られたら、産物をサイズ排除クロマトグラフィーによって精製することができる。アジド-アルキン環化付加は、ほぼ完全な収率で、タンパク質のバイオコンジュゲーションのために広く使用される、十分に特性評価された反応である。最終的な融合構築物は、質量分析、SDS-PAGE、フローサイトメトリー及び免疫ブロット分析によって更に特性評価され得る。様々な改変ペプチドの合成は、実験室において日常的であり、(理論に束縛されることを望むものではないが)改変ペプチドの製造及び合成のスケールアップにおいて、何らかの困難性がある。しかし、一部のタンパク質は、疎水性基質の添加により可溶性が低下する可能性がある。それが問題になる場合、本願発明者らは、非常に親水性である小さなポリエチレングリコール(PEG)スペーサを、Gly3とアルキン官能基との間に含める(例えば、Gly3-PEG 5-プロパルギルアルキン)。更に、アルキン-アジドクリック反応が所与の構築物に対して高い生成物収率をもたらさない場合、本願発明者らは、安定なオキシム生成物を形成する、より親水性のアルデヒド及びアミノオキシクリックハンドルなどの代替的なクリックハンドルを使用することができ、本願発明者らはこれについて広範な経験を有している。本願発明者らは、ソルターゼ基質分子中のGly3とアルキン又はアジド官能基との間に小さなPEG3スペーサを含ませた。理論に束縛されることを望むものではないが、PEGスペーサは、構築物のより高い安定化をもたらすことができる。このPEGスペーサのサイズは、所与の融合体が低い安定性を有するか、又は低い溶解度を有する場合に変化させることができる。更に、本願発明者らは、スペーサのサイズが構築物の死滅能力に影響を及ぼすかどうかを分析することができる。本願発明者らは、本願発明者らのマウス及びヒトDsg3-EC1-3構築物が、細菌により発現され、次いでリフォールディングされて、本願発明者の手持ちの全ての抗Dsg3細胞及び抗体に対して高い親和性(低ナノモル濃度)で結合することを示した。更に、Dsg3のグリコシル化は、患者の抗Dsg3抗体に対するその結合において重要な役割を果たさないことが示された。したがって、本願発明者らは、Dsg3構築物を作製するために本願発明者らの確立されたアプローチを使用し続ける。本願発明者らは、臨床的解釈を考慮する場合により関連がある可能性があるため、目的1において既に議論された代替(コドン最適化、異なるシグナル配列、及び異なる発現系など)を通して遺伝子融合発現の収率を増加させるために、本願発明者らの最適化の試みを続ける。目的1で考察したFc構築物については、グリコシル化がFc機能性に重要であり、Fc構築物について良好な発現収率(Expi293細胞100mL当たり約1mg)が既に得られているので、全てのタンパク質を哺乳動物Expi293F細胞で発現させたか、又は発現させる。インビボ試験:理論に束縛されることを望むものではないが、抗CD3治療の副作用は、CD4 T細胞、例えば、T濾胞性ヘルパー細胞(Tfh)と自己反応性B細胞との結合であり得、これにより、それらの拡大、したがって疾患の増悪を引き起こす場合がある。理論に束縛されることを望むものではないが、臨床で使用される二重特異性T細胞エンゲージャは、CD8細胞傷害性T細胞を動員して標的細胞を死滅させるのに有効であるため、これは起こらない。理論に束縛されることを望むものではないが、CD8 T細胞動員の頻度は、動員されたTfh細胞の頻度よりも高い可能性がある。これは、全てではないがほとんどのCD8 T細胞は、任意のTCRと共に、自己反応性Dsg3細胞を死滅させるために動員され得るが、CD4 T細胞(無関係のTCRを発現する)と自己反応性B細胞との結合は、B細胞の拡大をもたらすとは予想されないためである。おそらく、Dsg3由来ペプチド-MHC複合体に対する反応性を有するほんの数個のCD4 T細胞の結合が、自己反応性B細胞の拡大をもたらし得る。更に、二重特異性T細胞エンゲージャ(例えば、ブリナツモマブ)を投与された患者における自己免疫の発生の報告はなく、異なる種類のB細胞媒介性自己免疫疾患の発生率がわずかではないことを考慮すると、この観察は、そのような事象の発生がありそうもないことを示唆する。それにもかかわらず、本願発明者らは、この問題をモニタリングする。PVの能動免疫モデル(モデル2)は、この問題を研究するための理想的なモデルであり得るが、これは、抗Dsg3力価、Dsg3自己反応性B細胞の数、及びCD4 T細胞、特にTfh細胞の数及び表現型をモニタリングすることによって注意深く評価される。Fc媒介性アプローチと同様に、この治療に対する抗Dsg3抗体の効果は、臨床的有意性を有する可能性が低い。加えて、現実世界の状況では、本願発明者らの治療薬は、抗Dsg3力価を低下させる他の薬物と同時に使用することができる。それにもかかわらず、この問題をモニタリングし、評価することができる。
【0160】
アルファ放射標識Dsg3が抗Dsg3B細胞を死滅させる能力の調査
デスモグレイン-3タンパク質の放射性標識。利用可能な同位体のうち、アクチニウム-225(
225Ac)(t1/2=9.9d)は、臨床で使用されてきた25、71。
225Acによる抗体の標識は、十分に特性評価されたDOTAキレート剤分子を介して行うことができる。本願発明者らは、Gly3-DOTAソルターゼ基質及び基質を用いて部位特異的に改変されたmDsg3-EC1-3タンパク質を合成し、その産物を特性評価し、タンパク質が抗Dsg3細胞に対して高い結合親和性を有して機能的なままであることを確認した(
図10)。次に、DOTA標識されたDsg3を
225Ac放射性同位体と共に導入する。生成物の形成及び放射化学収率は、放射性HPLC分析を使用して決定される。精製された
225Ac-Dsg3構築物の安定性を、PBS中及びヒト血清中、37℃でインキュベートすることによって評価する。放射性標識がデスモグレインタンパク質の機能性に影響を及ぼさないことを確実にするために、陽性抗Dsg3細胞及び陰性細胞を
225Ac-Dsg3と共に30分間インキュベートする。細胞を3回洗浄し、放射活性を測定する。本願発明者らは、抗Dsg3細胞が放射性であるのに対して、陰性細胞は、何らかの放射活性も有し得るか、又は有し得ないと予想する。これにより、放射性標識手順がDsg3タンパク質の結合能力を損なわなかったことを確認することができる。
【0161】
確立された抗Dsg3細胞を使用して、放射性標識された構築物の死滅有効性を測定する。陽性抗Dsg3ハイブリドーマ細胞及び陰性細胞を丸底48ウェルプレート中で培養する。放射性標識した225Ac-Dsg3タンパク質を37℃で細胞に加える。放射性標識組換え構築物は、最適条件を見出すために様々な濃度(10μCi/mL~1nCi/mL)で使用される。対照として、細胞を同量の225Ac-DOTA単独(Dsg3にコンジュゲートしていない)と共にインキュベートし、これは抗Dsg3細胞を死滅させないと予想される。放射性標識されたDsg3又は対照同位体とのインキュベーションを20分間行い、続いて非結合試薬/同位体を洗い流して(3回)、照射による非特異的な細胞死を防ぐ。細胞及び放射性標識されたDsg3のインキュベーションの4時間後、16時間後、24時間後及び48時間後に、フローサイトメトリー及び標準的な生-死分析によって分析を行う。
【0162】
インビトロアッセイにおけるPV患者PBMCに対する225Ac-放射性標識Dsg3構築物の有効性を評価する。目的1及び2と同様に、225Ac放射性標識されたDsg3構築物をヒトPBMC細胞(健常試料及び患者試料の両方)に添加し、混合物を標準的な細胞インキュベーター内で37℃でインキュベートする。様々な濃度の構築物を使用して、最適条件を見出す(10mCi/mL~1nCi/mL)。対照として、細胞を同量の225Ac-DOTA単独と共にインキュベートする。放射性標識されたDsg3又は対照同位体とのインキュベーションを20分間行い、続いて非結合試薬/同位体を洗い流して(3回)、照射による非特異的な細胞死を防ぐ。分析は、放射性標識されたDsg3とのインキュベーションの4、16、24及び48時間後に、抗原特異的IgG B細胞枯渇及び総IgG B細胞枯渇についてのELISpotアッセイによって行う。本願発明者らは、自己反応性抗Dsg3 IgG及び総IgGレベルの減少パーセンテージを測定する。更に、フローサイトメトリー、並びにアッセイの内部標準として作用するB細胞及びT細胞を含む非特異的細胞に対する標準的な生-死分析を介して分析を行う。対照、包含基準及び除外基準は、目的1及び2で言及したものと同じである。予想される結果は、Dsg3自己反応性B細胞の標的化された死滅を確認する。
【0163】
放射線療法アプローチを用いた動物試験。放射性標識された組換えタンパク質を、AK23細胞注射(モデル1)の0、2又は5日後に、225Ac標識されたDsg3構築物と共に静脈内注射する(約30kBqの活性及び動物当たり50μgのDsg3 72)。本願発明者らは、225Ac-DOTA(キレート剤分子)を対照として使用するであろう(同量の活性(約30kBq)、動物当たり約3.0μgのDOTA)。ルシフェラーゼ、免疫蛍光及び組織学的イメージング、並びに抗Dsg3 ELISA力価と共に読み出すために、治療したマウス及び治療していないマウスの皮膚生検から細胞を単離し、ガンマカウンターを使用して活性を測定する。同様の実験を、目的1で説明した実験戦略に従って、能動免疫モデル2について実施する。エクスビボ生体内分布試験を、本願発明者らが記載したように実施する29、30。注射の2、6、24、及び48時間後に動物を安楽死させる。次に、それらの主要な臓器及び組織を単離し、秤量し、それらの放射活性を、注射標準(対照としての225Ac-DOTA)の放射活性と共に測定する。結果を分析し、組織1グラム当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g)として報告する。循環半減期の測定は、複数の時点で血液の液滴を収集し、続いてそれらの活性測定を行うことによって行われる。
【0164】
追加の試験
インビトロ試験:本願発明者らは、タンパク質を放射性標識することにおいて広範な経験を有する。放射性標識は、Dsg3タンパク質に対する自己反応性抗体の結合親和性に影響を及ぼし得る。これは、アクチニウムカチオン(3+)の高い正電荷に起因するものであり得る。放射性標識がDsg3タンパク質の結合能力に影響を及ぼす場合、本願発明者らは、PEGスペーサを有するソルターゼ基質(例えば、Gly3-PEG5-DOTA)を合成する。これは、Acカチオン(3+)とDsg3タンパク質との間の適切な距離を可能にするはずである。ペプチドの合成は、本願発明者らの実験室において日常的である。本願発明者らは、225-Ac同位体を使用することを選択したが、これは、それが臨床で使用されているという理由だけでなく、それが他の既存の同位体に対して特有の利点、例えば、組織における限定された範囲、良好な線形エネルギー移動、比較的短い半減期(約10日)、及び崩壊ごとに放出される複数の(正味4つの)アルファ粒子を有するという理由による。225-アクチニウムの使用が他の予期せぬ問題を有することが明らかになった場合、本願発明者らは、代替として、臨床設定においても使用される213-ビスマスを使用することができる。インビボ試験:放射線療法の問題は、腎毒性である。本願発明者らは、腎毒性についてモニタリングし、腎臓取り込みを減少させるための生物学的に不活性で親水性のポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)の結合などのアプローチを使用する。本願発明者らは、PEG化が前臨床研究において放射性標識抗体断片の腎臓取り込みを減少させる(10倍より多く)ことを示した。更に、いくつかの承認されたPEG化タンパク質治療薬が存在するため、PEG化は臨床において安全であることが示されている。異なるサイズのPEG(5、10及び20kDa)を使用して、腎臓クリアランスに対するPEG化の効果を評価する。あるいは、本願発明者らは、150mg/kgのゲロフシン(これは、腎臓取り込み及び腎臓毒性を減少させることが示されている)をマウスに同時注射し得る。本願発明者らは、PET同位体(それぞれ約12.7時間及び約3.3日のt1/2を有する64Cu及び89Zr)で構築物を標識することによって、構築物の薬物動態及びインビボでの組織生体内分布を試験することができ、これに関して本願発明者らは広範な経験を有している。全身PET画像は、組織の生体分布及び動態を明らかにするだけでなく、構築物のいずれかが任意の臓器において潜在的に捕捉され得るかどうかも明らかにし、構築物は次に臓器損傷をもたらし得る。したがって、PETイメージング実験は、潜在的な副作用がある場合、その潜在的な副作用が何であり得るかを明らかにする。本願発明者らは、PETイメージングに関する広範な経験を有している。エクスビボオートラジオグラフィーも同様に実施して、非常に高感度で組織生体内分布を定量的に測定する。先の2つのアプローチと同様に、この治療薬に対する抗Dsg3自己抗体の効果を注意深く評価する。225Acの半減期は、比較的短い(約10日)。しかしながら、225Ac-Dsg3の循環半減期の増加が、自己抗体との複合体形成及びFcRnを介した再利用に起因して起こり、それによって複合体を取り込み得る細胞に対する副作用が増強される場合、非常に短い半減期(約45分)を有する臨床的に使用される213-Bi同位体を使用することができる。これは、放射性標識されたDsg3と自己抗体との間の複合体形成から生じる副作用の問題に対処するはずである。臨床的解釈を考慮すると、このアプローチは、既存の治療に失敗した患者のための選択肢であり得、潜在的な将来の適用は、他の自己免疫性水疱症、例えば、免疫抑制の使用がより悪い転帰と関連する場合、腫瘍随伴性又は免疫療法誘導性の自己免疫性水疱症に拡大される83。加えて、Fc媒介性及び二重特異性T細胞エンゲージャアプローチと同様に、現実世界の状況では、放射線療法アプローチは、抗Dsg3力価を低下させ、かつ/又はIVIGなどのFcRnを飽和させる他の薬物と同時に使用することができる。
【0165】
追加のインビボ試験:受動導入モデルは、Rag2-/-マウスにおいて確立されている32、34。本願発明者らは、それを免疫応答性WTマウスにおいて確立し、それに必要なハイブリドーマ細胞の数を最適化することができる。あるいは、Rag2-/-におけるAK23受動導入モデルは、免疫応答性宿主に類似し得るWT C57BL/6脾細胞を投与される。更に、提案された治療について、本願発明者らは、初代ヒト細胞及びハイスループット膜プロテオームアレイを使用することによって毒物学スクリーニングを実施して、開発された治療の各々について任意のオフターゲット細胞傷害性相互作用を特定する。理論に束縛されることを望むものではないが、Dsg3含有構築物は、潜在的な長期安定性のために膜貫通ドメインを含む細胞表面上に完全な構造が存在することを必要とするので、それ自体を皮膚内のデスモソームに組み込まない。更に、動物モデルにおけるDsg3-CAAR T細胞についての広範な試験は、動物皮膚におけるDsg3-CAARのいかなる蓄積も示さず、同様に、ヒト皮膚がマウス皮膚に移植された場合、hDsg3-CAAR T細胞は、移植された皮膚において検出されず、これは、Dsg3構築物が、それ自体をデスモソームに組み込むことが予測されないことを示している。これは、組織学的分析を通して試験される。本願発明者らは、既存の抗Dsg3抗体が試薬に結合するかどうか、生体内分布に影響を及ぼすかどうか、又はDsg3自己抗体Fc受容体を発現する細胞との相互作用をもたらすかどうかを決定することができる。これは、両方の動物モデルにおいて、並びに広範な組織学、PET及びフローサイトメトリー分析によって、試験される。理論に束縛されることを望むものではないが、本願発明者らが開発中の生物製剤は循環半減期が短く、CAAR T細胞治療などの養子細胞療法とは異なり、レシピエント(マウス又は最終的には患者)に留まらないので、これは大きな問題ではない。開発された治療薬の半減期は、放射線療法剤及び抗CD3融合体についてはわずか数時間以内であり得、Dsg3-Fc構築物(FcRnを介して再利用することができる)については数時間から潜在的に数日間、又は更に数週間以内であり得る。本願発明者らの治療が、他の免疫細胞区画に対して何らかの有害作用を有したかどうかを試験するために、本願発明者らが提案した療法を受けたマウスからPBMCを収集し、Th1、Th2、Th17、Treg、及びCD8 T細胞のパーセンテージをフローサイトメトリー分析によって分析する。年齢及び性別を一致させた非操作WT B6マウスを対照として使用する。理論に束縛されることを望むものではないが、免疫細胞集団のパーセンテージに差はなく、治療の有害な長期効果がないことを示唆している。
【0166】
自己反応性B細胞を標的とするための本明細書中のアプローチ、並びにこれらの治療薬を開発するための本願発明者らの戦略(放射性同位体の部位特異的導入、C-C融合体の合成及びN-Cソルターゼ媒介性融合体)は、独特である。Dsg3-Fcを作製する本願発明者らの戦略は、安全なものであり、リツキシマブの使用に取って代わることができる。他の2つのアプローチは、利用可能な治療に応答しない患者にとって代替選択肢を提供する。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法は、PVの治療を変えるだけではなく、他の自己免疫性水疱症(例えば、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症)、狼瘡、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病のサブタイプから免疫介在性血管炎に及ぶ既知の抗原標的に対するいくつかの自己抗体/免疫複合体媒介性疾患の治療を開発するための道を開くことができる。したがって、本願発明者らは、提案された治療薬は、自己免疫疾患の治療ツールボックスへの画期的な追加とみなすことができると考える。
【0167】
実施例3
尋常性天疱瘡は、破壊的なB細胞媒介性自己免疫性疾患である。皮膚及び粘膜の細胞間接着に重要なデスモソームタンパク質であるデスモグレイン3(Dsg3)を標的とする自己抗体は、疾患表現型の原因である。標準的な治療には、免疫系を全身的に抑制する免疫抑制剤が含まれる。本願発明者らは、Dsg3を認識する自己反応性B細胞のみを特異的かつ正確に標的化して枯渇させる標的化免疫療法アプローチを開発した。本願発明者らのインビトロ及びインビボ試験は、このアプローチが、自己反応性B細胞の効率的かつ特異的な枯渇をもたらすことを示す。本願発明者らは、疾患の異なる期にあるPV患者から得られた末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)を使用してアプローチの有効性及び特異性を決定し、受動疾患及び能動疾患のマウスモデルを使用して更なるインビボ試験を行うことができる。本願発明者らは、ヒトと同様の病因及び表現型を有する疾患を発症するイヌにおいて試験を行う。理論に束縛されることを望むものではないが、本方法は、臨床設定に変換することができる。本明細書中で開発された技術は、全体的な免疫抑制を引き起こすことなく自己反応性細胞を標的化することによって、全ての自己抗体駆動疾患に対してより広い適用を有し得る。
【0168】
背景
尋常性天疱瘡(PV)は、皮膚及び粘膜の痛みを伴う水疱形成及びびらんを特徴とし得る、致命的な自己免疫性水疱症であり、日常生活の活動(例えば、食べる、飲む)を制限し、人の全体的なウェルビーイングに影響を与え、罹患率及び死亡率が高い1~3。PVは、Dsg1に対する抗体の有無にかかわらず、デスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体の産生によって引き起こされ、上皮剥離(棘細胞離開)を引き起こす2、4~6。天疱瘡治療には治療上の需要が存在する。PVの治癒法は存在しない。治療戦略は、多数の全身性副作用を伴う全身性ステロイド及び免疫抑制剤に大きく依存する7~9。抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)3は、中等度から重度の疾患に対するファーストラインの選択肢となっているが、従来の免疫抑制剤よりも低いとはいえ、現在の現実の人生の意義を有するワクチンに対する液性応答を減らすこと、及び感染のリスクの増加10、11、並びに治療後の再発の高いリスク10~12を含む、オフターゲット免疫抑制効果と関連がある。現在臨床試験中の新生児Fc受容体及びブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤は、オフターゲット免疫抑制効果を回避することができない。自己ポリクローナル調節性T細胞13及びキメラ自己抗原受容体(CAAR)T細胞14などの初期段階の細胞ベースの療法は、有効であることが証明されたとしても、全体的に免疫抑制性とはなり得ない。しかしながら、細胞ベースの療法は、個別化されなければならず、製造、貯蔵及び輸送のための特定の要件を有し、これは、資源が乏しい地域では実現不可能である。PVの再発は、典型的には、最初の治療中に枯渇していない同じ自己反応性細胞の拡大に起因する2。理論に束縛されることを望むものではないが、自己反応性B細胞の完全な枯渇は、治癒を与える。本明細書において、本願発明者らは、自己抗原自体(Dsg3)及び一般的に使用されるFc媒介性死滅を使用することによって、特定の自己反応性B細胞を標的とする治療を記載する。この方法は、全体的な免疫機能に影響を及ぼすことなく、自己反応性の疾患を引き起こす細胞を選択的に標的とする。
【0169】
尋常性天疱瘡は、他の自己免疫性水疱症と比較して、若い健常の患者群(すなわち、若年/中年成人、平均40~60歳)が罹患する。現在の既存の治療戦略は、免疫抑制医薬、例えば、全身性ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、及びリツキシマブに限定されており、感染のリスク、長期的には悪性腫瘍のリスクがより高いこと、及び現在の現実の人生の意義を有する新たなワクチン接種に対する応答を減らすことを伴う。この疾患は、免疫抑制の強い期間で寛解させることができるが、再発のリスクは80%と高い10。試験は、天疱瘡を有する患者が、がん診断後の患者と同様の外傷後ストレスのリスクを有し、両方の状態が、頻繁な再発を伴って生命を脅かすことを示す16。この疾患群を有する患者は、その全体的な健康及び免疫機能に影響を与えることなく自己反応性細胞を除去する標的化治療を必要とする。これらを治療する臨床医は、提供する治療のレパートリーが限られており、これらの全てが、毒性、短期及び長期の健康への悪影響(生命を脅かす感染を含む)の多くを有している。保険支払人の観点では、標的化療法は、即時型感染のリスク、長期的な悪性腫瘍のリスクを低下させることによって、全体的な世界的医療費を低下させ、来院、補助的治療及び入院の数を減らすことができる。この標的化された非免疫抑制治療は、患者、臨床医及び保険支払者にとって同様に魅力的なものであり得る。
【0170】
治療薬の臨床効果は、ヒトの目で見ることができ、再発をモニタリングするための血清試験が市販されている。米国における疾患有病率は、100,000人の成人当たり5.2症例であると推定される15。患者は、生涯を通して再発する可能性があり、反復治療を必要とする。ユダヤ人の祖先のものにおいて、より高い発生率が存在する(平均よりも約4倍~10倍高い)15、17。既存の治療(すなわち、プレドニゾン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、リツキシマブ)及び今後の治療(例えば、新生児Fc受容体アンタゴニスト、Burtonのチロシンキナーゼ阻害剤)は、免疫抑制性であるか、又は世界市場(例えば、CAART)に一般化することが困難である。本明細書中の方法は、個別化の必要なく製造することができる共通の共有自己抗原に基づく。
【0171】
非限定的な例示的な製品/溶液
本明細書に記載される治療は、リツキシマブ(外来注入センターで投与することができる)と類似の様式で外来患者環境において使用することができる。この治療は、治療の初期段階及び再発の両方において使用される。疾患集団は、粘膜優位型尋常性天疱瘡を有する患者であり、次のステップで、落葉状天疱瘡(主な自己抗原がDsg1である)などの将来の他の自己免疫性水疱症に拡張するための明確な目標を有する。この治療は、選択的であり、リツキシマブによるB細胞プールの完全な枯渇からのオフターゲット効果/全体的な免疫抑制を有さないため、現在の標準治療であるリツキシマブ(抗CD20)に取って代わることができる。抗原-Fc(Dsg3-Fc)融合タンパク質は、Dsg3認識細胞を効果的かつ特異的に死滅させる。構築物のDsg3部分は、自己反応性病原性B細胞の抗Dsg3 BCRに結合し、Fcドメインは、貪食細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞の動員によってDsg3認識細胞のFc媒介性死滅を誘導する(
図12のパネルA)。本願発明者らは、最大のFc媒介性細胞傷害性を達成するために、マウスIgG2a及びヒトIgG1 Fcドメインとそれぞれ融合したマウスDsg3及びヒトDsg3構築物を操作し、作製した。本願発明者らは、インビトロ試験及びインビボ試験の両方において、治療が自己反応性B細胞を標的とし、その死滅を媒介することができることを示した。
【0172】
非限定的で例示的なアプローチ
本願発明者らは、マウス及びヒトの両方のFc融合タンパク質であるmDsg3-mIgG2a(mFc)及びhDsg3-hIgG1(hFc)を作製した。本願発明者らは、Dsg3タンパク質の外部ドメイン1-3(EC1-3)が免疫原性及び病原性部分であり得るので、これらを使用した(
図13)
18。ヒトIgG1及びマウスIgG2aを、それらの高いFc媒介性死滅活性について選択した
19~21。タンパク質は、C末端にFLAGタグ、ソルターゼ認識モチーフ22、23及びHis6タグを有するように操作された。8アミノ酸配列(DYKDDDDK)であるFLAGは、ウェスタンブロット及びフローサイトメトリー分析のために使用することができ、その後、インビボで使用される場合、構築物の代謝運命の分析のために使用することができる。His6タグを精製に使用し、ソルターゼタグを部位特異的に改変(例えば、フルオロフォアの結合)を導入するために使用した。構築物の機能性を特性評価するために、本願発明者らは、Alexa647-mDsg3-mFcを使用して、抗mDsg3 AK23ハイブリドーマ
24及び抗hDsg3 F779細胞
14、患者由来の病原性抗Dsg3抗体で操作されたBリンパ腫細胞株(Nalm6)を染色した。細胞を、より多くの親和性及び特異性(低nM濃度での)により染色し(
図12のパネルB)、これは、F779細胞上の患者由来BCRがマウスDsg3タンパク質と交差反応することを示唆している。対照として使用したNalm-6細胞は、いかなる結合も示さなかった。Alexa647標識されたhDsg3-hFcを使用して同様の実験を行い、これにより、構築物がF779細胞に強く結合し(
図12のパネルB)、マウスAK23細胞も染色したことを確認した(
図12のパネルBと同様)。
【0173】
まず、本願発明者らは、Dsg3-Fc融合体が、そのFc(IgG2a)を介して、低いnM親和性でマウスマクロファージ上のFc-g受容体に結合することを確認した。対照Nalm6細胞は、染色されないままであった。融合タンパク質がFc媒介性死滅を引き起こし得るかどうかを決定するために、マウスRAW264.7マクロファージ細胞と共培養したF779又はAK23標的細胞を、mDsg3-mFc融合タンパク質で処置した。10nM用量は、24時間後に、F779及びAK23細胞のそれぞれ65%及び60%の死滅を引き起こし、Nalm6又はハイブリドーマ対照細胞のいずれも死滅させなかった。48時間の時点で、本願発明者らは、F779細胞の印象的な94%の死滅を観察し、対照Nalm-6細胞には変化はなかった。AK23ハイブリドーマ細胞は、抗Dsg3抗体を培地中に放出し、これにより、PV患者における生理学的条件と同様に、構築物を中和することができる。これにもかかわらず、本願発明者らは、10nM用量でAK23細胞とF779細胞との間で同様の有効な死滅を依然として観察し、これは、Dsg3に対する抗体が融合タンパク質の死滅有効性に対して最小限の影響を有することを示している。
【0174】
Dsg3-Fc構築物のインビボ有効性を確立する。ルシフェラーゼ陽性F779細胞(100万個)の尾静脈静脈内(i.v.)注射の2日前に、NSG(NOD-scid-ガンマ)マウスを600mg/kgのIVIGで前治療した(FcγRを介した非特異的死滅をブロックするため)(
図12のパネルC)。F779注射後4日目に、全てのマウスに、機能的マクロファージを有する10×10
6個のRag2-/-脾細胞をi.v.注射し、続いて、治療群に30μgの融合タンパク質及び対照群にPBSを腹腔内(i.p.)注射した(各コホートについてn=5)。mDsg3-mFcを週に5回注射して、試験期間中、循環中で十分な薬物が利用可能であることを確実にした。疾患の進行を、生物発光イメージング及びマウスボディスコアリングによってモニタリングした。BSC<2になったら、PBMCを顎下出血を介して収集し、動物を安楽死させた。その結果は、対照群が26日の平均生存期間を有したのに対して、治療群は57日の生存期間を有したことを示した。(
図12のパネルD。)2つの群からのPBMCのフローサイトメトリー分析は、治療群がほぼ100%の抗原喪失を有したことを明らかにし(
図12のパネルE)、これは、治療が抗原陽性F779細胞の枯渇を媒介するのに有効であったことを示している。注目すべきことに、F779細胞は悪性であり、したがって急速に増殖する。このことは、病原性B細胞が正常な増殖能力を有する診療所の症例には当てはまらない。更に、抗原喪失は患者において問題ではない。自己抗原が病原性B細胞上で失われた場合、それはもはや病原性ではない。本願発明者らは、より低い用量の治療を用いて実験を繰り返して、完全応答に必要な用量の下限を決定することができる。
【0175】
非限定的で例示的な戦略
疾患の異なるマウスモデルにおいて、抗Dsg3 B細胞の死滅を媒介するDsg3-Fc融合タンパク質の能力を更に試験すること。
【0176】
受動導入モデル。このモデルでは、本願発明者らは、確立された天疱瘡誘導性ハイブリドーマ細胞株(AK23、既に所有)を移植することによって、受動モノクローナル天疱瘡マウス疾患モデルを開発することができる。確立されたように24、25、本願発明者らは、天疱瘡表現型を引き起こす抗Dsg3抗体を分泌する約100万個のAK23ハイブリドーマ細胞をNSGマウスに注射する24、25。動物は、全ての実験において、urn無作為化法に基づいて治療/対照群に割り当てられる。本願発明者らは、血清抗Dsg3力価(3日目及び10日目に標準的なELISAによって)、及び皮膚疱疹(2日目、5日目及び10日目に盲検化された研究者によって評価される)を分析することによって疾患の確立について試験する。ELISAデータに基づいて、棘細胞離開を観察するために(H&E染色によって)組織採取の時点を決定する。ピーク疾患時間は、約7日目であると予想される24;本願発明者らは、マウスが、脱毛24、体重減少を示し、かつ、生理的抗Dsg3 IgGレベル(300~400RU/ml)で表皮ケラチノサイトに結合するAK23細胞によって産生されるAK23自己抗体を伴って、毛包及び口腔粘膜に水疱形成を有すると予想する26。
【0177】
能動導入モデル。AK23モデルは、読み出しが容易であるなどの利点を有するが、治療は、急速に増殖するハイブリドーマ細胞に打ち勝つことができる。したがって、第2のモデルとして、本願発明者らは、ヒト疾患の臨床表現型を模倣し、臨床的に起こるものに類似する自己反応性Dsg3特異的B細胞の頻度が低く、最終的に高い血清ポリクローナル自己抗体レベルを有する、能動PV免疫モデルを使用する。このモデルでは、本願発明者らは、まず、Dsg3-/-マウス(JAX-002911)をマウスDsg3の組換え細胞外ドメインで免疫付与し、続いて脾細胞をRAG2-/-マウスに導入することによって、能動ポリクローナル天疱瘡マウス疾患モデルを開発することができる27、28。導入された細胞は、Dsg3反応性細胞を含むT細胞及びB細胞を含有する。文献27~29においてなされた観察と同様に、本願発明者らは、動物が抑制された成長を有し、基底上の棘細胞離開及び水疱を伴う皮膚粘膜びらんを発症すると予想する。臨床指標を評価するために、ELISAを使用して、本願発明者らは、自己抗体レベルをPV患者における生理学的レベル(300~400RU/ml)と比較する26。Dsg3反応性抗体が、3~4週間で起こると予想されるそのレベル以上になったら26、30、治療を開始する。Dsg3免疫付与Dsg3+/-動物由来の細胞の養子導入を対照として使用する29(n=10匹のマウス/群)。
【0178】
イヌにおける自己反応性B細胞の枯渇を媒介する抗原-Fc融合タンパク質の能力を試験すること。イヌ、ネコ及びウマは、ヒトと同様の病因を有する天疱瘡を発症する31~37。天疱瘡は、獣医学において診断される最も一般的な自己免疫皮膚疾患であり、それに対する治癒法は存在せず、予後は不良のままである31~37。イヌ天疱瘡における一般的な自己抗原は、Dsg3(尋常性天疱瘡)及びDsc1(デスモコリン-1、落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceus、PF))である31、38~41。
【0179】
イヌにおける天疱瘡は、デスモソームタンパク質に対する自己反応性のために発生し、ヒトと類似の表現型を有するため、イヌモデルは、前臨床試験とヒト試験との間の橋渡しとして役立ち得る。本願発明者らの標的化治療の能力を更に評価し、臨床的解釈のための段階を設定するために、本願発明者らは、マウスにおいて本願発明者らの予備試験アプローチを使用して、天疱瘡と診断されたイヌを治療する。本願発明者らは、ヒトIgG1と等価であるイヌIgG1と融合したイヌDsg3及びDsg1を使用して、類似の構築物を作製する42。このようなタンパク質の産生は、現在本願発明者らの研究室では簡単であり、大量のこれらのタンパク質を作製する際に障害がないと予想される。治療の最初の3ヶ月間の病変及び循環中の自己抗体力価の改善を注意深く評価する。
【0180】
成功した完了により、アプローチの臨床的解釈のための段階を設定することができる。本明細書に記載の組成物及び方法は、天疱瘡の治療を変えるだけではなく、他の自己免疫性水疱症(例えば、落葉状天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症)、狼瘡、乾癬、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病のサブタイプから免疫介在性血管炎に及ぶ既知の抗原標的に対するいくつかの自己抗体/免疫複合体媒介性疾患の治療を開発するための道を開くことができる。代替として、本願発明者らは、臨床で利用可能な二重特異性T細胞エンゲージャ治療薬と同様に、T細胞を標的化細胞に結合させるために、抗原抗CD3抗体(抗CD3 scFv抗体に融合したDsg3)の融合体を作製した。本願発明者らは、天疱瘡のための標的化療法を開発しているが、本明細書に記載される組成物及び方法は、自己免疫疾患のための治療ツールボックスであり得る。
【0181】
【0182】
実施例4
mDsg3(EC13)-mFc(配列番号1):
hDsg3(EC13)-hFc(配列番号2):
mDsg3(EC14)-mFc(配列番号3)
hDsg3(EC14)-hFc(配列番号4)
hDsg3(EC1-5)-hFc(配列番号29)
mDsg3(EC1-5)-mFc(配列番号30)
hDsg1(EC1-4)-hFc(配列番号31)
mDsg1(EC1-4)-mFc(配列番号32)
【0183】
【0184】
ヒトDsg1アミノ酸配列、アイソフォーム1(配列番号6)
【0185】
ヒトDsg1アミノ酸配列、アイソフォーム2(配列番号7)
【0186】
実施例5
尋常性天疱瘡(PV)
- 破壊的な慢性自己免疫疾患は、皮膚及び粘膜の痛みを伴う水疱形成を特徴とし得る
- 約5~15%の死亡率で生命を脅かす可能性がある治療しなければ、1年以内に10名のうち8名が死亡する
- 米国有病率:30,000~40,000症例、WW発生率1~10症例/100万人
- 通常は遺伝的ではなく、後年に環境因子によって誘発される
- B細胞上に提示される、デスモグレイン3(Dsg3)に対する自己Abの産生によって引き起こされる
- Dsg3は、脊椎動物上皮細胞におけるデスモソームのカルシウム結合膜貫通糖タンパク質成分である
- デスモソームは、上皮、心筋、及び特定の他の細胞型の間の細胞間接合である
- 不治
- 治療戦略
- 全身性ステロイド使用及び/又は免疫抑制薬
- 抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)は、ファーストラインの選択肢である(全てのB細胞を標的とする)
- 感染症のリスクの増加を含むオフターゲット免疫抑制効果
- 治療後の再発のリスクが高い
- B細胞枯渇を示す抗Dsg3:
- Cabaletta Bio:キメラ自己抗体受容体T細胞(Chimeric AutoAntibody Receptor T-Cells、CAAR-T)に基づく潜在的な治療-INDクリア
- 追加の新しい戦略が必要である
【0187】
抗Dsg3-Ab提示B細胞の選択的枯渇-2つの非限定的で例示的なアプローチ
A)「Fc媒介性」
- リツキシマブと同様であるが、ここではDsg3-B細胞に対して選択的である(より安全/より少ない副反応)
- CAAR-T(自己細胞療法)の技術的課題/コストを回避する
B)「BCR-T細胞エンゲージャを含む、BCR-エフェクター細胞エンゲージャ」
- 選択的
- 多目的-既知の抗原性標的に対する自己抗体/免疫複合体媒介性疾患
- 水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症
- 狼瘡、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病のサブタイプ
- マウスマクロファージのマウスFcγ受容体に対するDsg3-Fc融合体のインビトロ結合、及び48時間での標的B細胞の94%の死滅を示す(10nM当たり)
- マウスタンパク質構築物を産生するために作製された細胞株は、インビボモデルで作用している
- Dsg3タンパク質に対する自己反応性B細胞を有するPV患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)に対するインビトロ効果を示すことができる(異なる疾患期)
【0188】
本明細書に記載される主題の非限定的な例
- Fc-Dsg3融合構築物配列
- PVの治療
【0189】
実施例6
治療用部分、イメージング部分、捕捉部分、又はそれらの組み合わせの結合のための非限定的で例示的な方法
特定の実施形態では、ソルターゼ技術を使用して、目的の任意の生体分子をタンパク質のC末端に部位特異的に結合することができる。特定の臨床実施形態では、目的の生体分子は、例えば、遊離システインとのマレイミド反応、又はリジン側鎖の遊離アミンとのNHS活性基を介して、同様に非特異的に結合することができる。
【0190】
特定の実施形態は、単一の融合タンパク質上に複数の抗原を含み得る。ある実施形態は、ノブ-イントゥ-ホールFcを含む。一実施形態では、抗原がホール上に配置され、第2の抗原がノブ上に配置される。このような実施形態は、1つの薬物中に2つの主要な抗原を含めることを可能にする。例として、複数の実施形態は、Dsg3-ノブ及びDsg1-ホールを含むことができ、逆もまた同様である。複数の実施形態は、例えば、これらの治療薬に含まれる抗原として、Dsg1又はDsg3の特異的細胞外(EC)ドメインを含み得る。このような実施形態は、天疱瘡患者の治療に有用であり得る。
【0191】
種々の実施形態は、自己免疫障害の治療に利用され得る
例示的な自己免疫障害は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,332,168号に提供される。自己免疫障害の非限定的な例を(特定の治療用構築物における使用に適した例示的な自己抗原と共に)以下に提供する。
腫瘍随伴性天疱瘡(主にプラキン(エンボプラキン、ペリプラキン、デスモプラキンI、デスモプラキンII、エピプラキン、プレクチン、BP230)、カドヘリン(Dsg3、Dsg1、Dsc1、Dsc2、Dsc3)、α2-マクログロブリン様分子に対するIgG Ab)
IgA天疱瘡:Dsg1、Dsg3、Dsc1、Dsc2、Dsc3に対するIgA
増殖性天疱瘡:Dsg3、Dsg1、Dsc3に対するIgG
紅斑性天疱瘡:IgG Dsg1
天疱瘡ヘルペティフォルミス:IgG Dsg1、Dsg3、Dsc1、Dsc3
薬剤誘発性天疱瘡:IgG Dsg1、Dsg3
水疱性類天疱瘡:BP180(NC16Aドメイン)、BP230に対する抗IgG
扁平苔癬天疱瘡:BP180(NC16A)ドメイン、BP230に対するIgG
産後類天疱瘡:BP180に対する抗IgG(NC16Aドメイン、症例の90%)、BP230(有病率が低い)
線形IgA皮膚病:BP180 NC16A/LABD97/LAD-1ドメイン、及びBP 230に対するIgA
粘膜類天疱瘡:BP180[NC16Aドメイン/C末端エピトープ]、ラミニン332、BP230、α6β4インテグリン、及びコラーゲンVIIに対するIgG/IgA
抗ラミニンガンマ1/p200類天疱瘡:ラミニンガンマ1(p200)に対するIgG
後天性表皮水疱症:VII型コラーゲンに対するIgG
皮膚炎ヘルペティフォルミス:表皮トランスグルタミナーゼ、組織トランスグルタミナーゼ、筋内膜、脱アミド化グリアジンに対するIgA/G
重症筋無力症
グレーブス病
免疫性血小板減少性紫斑病
乾癬
白斑
全身性エリテマトーデス
1型糖尿病
関節リウマチ
多発性硬化症
クローン病
潰瘍性大腸炎
アジソン病
シェーグレン症候群
橋本甲状腺炎
自己免疫性血管炎
悪性貧血
セリアック病
強直性脊椎炎
ベーチェット症候群
先天性副腎過形成
グッドパスチャー症候群
遺伝性ヘモクロマトーシス
突発性膜性糸球体腎炎
ナルコレプシー
サルコイドーシス
自己免疫性腎疾患、例えば、Zhang W,Rho J-h,Roehrl MW,Roehrl MH,Wang JY(2019)A repertoire of 124 potential autoantigens for autoimmune kidney diseases identified by dermatan sulfate affinity enrichment of kidney tissue proteins.PLoS ONE 14(6)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される124の自己抗原を参照されたい。
【0192】
実施例7
背景及び有意性。尋常性天疱瘡(PV)は、皮膚及び粘膜の痛みを伴う水疱形成を特徴とし得る、破壊的な自己免疫疾患である
1~4。カドヘリンファミリーの一部であるデスモグレインは、重層上皮におけるケラチノサイト間の主要な細胞接着剤である。デスモグレイン分子に対する自己抗体は、それらの接着機能を阻害し、棘細胞離開として知られる細胞間接着の喪失を引き起こす
5、6。加えて、細胞間接着における自己抗体の干渉は、病的な自己免疫応答を増大させ、棘細胞離開に寄与する細胞シグナル伝達経路をもたらす
2、3、7。粘膜優位型PVは、デスモグレイン-3(Dsg3)に対する自己抗体の産生によって引き起こされ、痛みを伴う粘膜びらんを引き起こす
8、29(
図14)。口腔粘膜びらんは、特に痛みを伴い、患者にとって厄介であり、飲食を困難にする。粘膜びらんは、鼻粘膜、膣粘膜、肛門周囲粘膜、喉頭/食道粘膜、泌尿生殖器粘膜、及び結膜粘膜を含む他の粘膜サービス(mucosal service)においても起こり得る(
図14)。PVの治癒法は存在しない。治療戦略は、典型的には、全身性ステロイド及び免疫抑制剤を含む
10~22。自己反応性B細胞由来の抗Dsg3抗体は、粘膜優位型PVの主要な駆動因子である
23、24。天疱瘡における病原性自己抗体の直接的な役割が確立されており、一価自己抗体がこの疾患を引き起こすのに十分であることが示されている
8、25、26。抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)は、中等度から重度の疾患に対するファーストラインの選択肢となっているが
11、4、27~30、感染のリスクの増加(従来の免疫抑制剤よりも低いとはいえ)、B細胞の枯渇、ワクチン接種に対する液性応答を減らすこと、又は6ヶ月間以上にわたる新しい感染、及び治療後の再発の高いリスクを含む、オフターゲット免疫抑制効果と関連がある
29、31~34。新生児Fc受容体アンタゴニスト
35、36、B細胞活性化因子受容体に対する遮断抗体(BAFF-R)
37、及びブルトンのチロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)
38、39を含む治療選択肢は、いくつかは現在臨床試験中であるが、特に新生児Fc受容体アンタゴニスト
40の場合、全体的な体液性免疫を弱めるオフターゲット免疫抑制効果を回避せず、重度の低ガンマグロブリン症の高いリスクを有する。加えて、BTKiの初期動物試験は、イヌ落葉状天疱瘡(イヌにおける抗デスモコリン自己抗体及び抗デスモグレイン自己抗体によって駆動される天疱瘡の表在性バリアント)について有効性を示すが、完全な治癒を示さない。BTKiは、全てのイヌにおいて自己抗体の産生を完全に抑制することができなかったが、これは疾患の寛解及び治癒の鍵である
39。PVの再発は、最初の治療中に枯渇していない同じ自己反応性細胞の拡大に起因し得る
41~43。したがって、自己反応性B細胞の完全な枯渇は、治癒法を与え得る。自己ポリクローナル調節性T細胞
44及びキメラ自己抗原受容体(CAAR)T細胞
45などの初期段階の細胞ベースの療法は、有効であることが証明されたとしても、全体的に免疫抑制性とはなり得ない。しかし、細胞ベースの療法は、個々の患者に対して個別化することができ、製造、保管、及び輸送のための特定の要件を有するが、これは、この疾患群を治療する全ての病院及び診療所において実行可能であるとは限らない。抗誘導性共刺激因子(Inducible Co-Stimulator、ICOS)抗体による、T細胞上に発現される共刺激受容体であるICOS分子(抗Dsg3病原性B細胞の発生において重要な役割を果たす濾胞性ヘルパーT細胞の活性に影響を及ぼす)の標的化は、動物モデルにおいてPVの進行を遅延させる結果を示している
46。しかしながら、これは、抗Dsg3 B細胞自体を標的とすることと比較して、抗Dsg3抗体産生を標的とするあまり直接的でない方法であり、理論に束縛されることを望むものではないが、疾患の進行を遅延させることしかできず、他の防御抗体の産生に悪影響を及ぼし得る。防御免疫を保存しながら自己反応性細胞を正確に枯渇させる標的化治療の開発は、満たされていない必要性であり、多くの患者にとって救命的である。
【0193】
Dsg3及びDsg1は、皮膚及び粘膜において異なる発現パターンを有する1。Dsg3は、粘膜を通して、及び成体皮膚のより深い層において発現され得る。Dsg1及びカドヘリンは、粘膜優位型PVの粘膜におけるDsg3機能の喪失を補うことができない。抗デスモグレイン自己抗体は、ケラチノサイト間の接着の喪失並びに水疱及びびらんの形成を誘導する際に病原性の役割を果たす。実験モデルは、Dsg3及びDsg1自己抗体が直接的に病原性であることを示している24、25、47。抗Dsg1自己抗体レベル及び抗Dsg3自己抗体レベルは、疾患重症度と相関し得る48。自己反応性抗体を産生するために一緒に働く病変周囲の自己反応性B及びTリンパ球は、疾患の病因における細胞プレーヤーである49。再発は、共に働いて疾患表現型を引き起こす自己反応性T細胞及びB細胞の戻りと相関し得る。寛解は、デスモグレインを標的とする自己反応性抗体の低下又は枯渇によって誘導される。再発は、自己反応性B細胞の不完全な枯渇を有する患者において、より高い50。したがって、疾患表現型の直接的なエフェクター細胞である、デスモグレインを認識する自己反応性B細胞の完全な標的化枯渇は、自己抗体駆動疾患のこの群を治療する鍵である。自己反応性B細胞を伴わない自己反応性T細胞単独は、自己反応性B細胞の抑制が寛解を維持するのに重要であるため、疾患表現型を誘導することができない可能性がある43、51。
【0194】
本願発明者らは、全体的なB細胞プールに影響を及ぼすことなく、タンパク質操作技術を活用し、病原性B細胞を正確に標的化して枯渇させるための新しいツールを生成することによって、この問題に取り組むことができる。本願発明者らは、抗Dsg3自己反応性B細胞によって駆動される粘膜優位型PVを説明することができる。リツキシマブ
29を含む既存の治療用モノクローナル抗体に類似した機構では、理論に拘束されることを望むものではないが、抗体のFc部分に融合したDsg3タンパク質は、自己反応性Dsg3を認識するB細胞の死滅を効果的かつ特異的に媒介することができる。構築物のDsg3部分は、自己反応性B細胞の抗Dsg3 B細胞受容体(BCR)に結合する。次いで、Fc部分は、貪食細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞の動員によって、Dsg3を認識する病原性B細胞のFc媒介性死滅を誘導する(
図15のパネルA)。本願発明者らは、マウス及びヒトDsg3-Fc融合体を作製し、これらの構築物が特異性及び親和性を有しつつそれらの標的に結合することを示した。加えて、本願発明者らのデータは、操作されたタンパク質が、インビトロ及びインビボでの確立されたDsg3特異的B細胞の死滅を、有効性を伴って媒介することを示す(完全応答は、インビボ動物モデルにおいて観察される)。代替的なアプローチとして、本願発明者らは、抗CD3e scFvに融合したDsg3タンパク質を使用して、腫瘍学的治療における既存の二重特異性T細胞エンゲージャ療法と類似の機構において、Dsg3を認識する病原性B細胞を死滅させるようにT細胞を指向させ、結合させることができる(
図15のパネルB)
52、53。
【0195】
理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載の組成物及び方法は、天疱瘡の他のバリアントである粘膜優位型PVだけでなく、既知の抗原を用いた抗体駆動性自己免疫疾患の治療のためのプラットフォームを提供することができる。
【0196】
天疱瘡に対する治癒法は存在せず、治療は全体的に免疫抑制性である。正常なB細胞に影響を与えることなくDsg3自己反応性病原性B細胞の正確な標的化及び枯渇を可能にする、本明細書に記載のFc媒介性アプローチ(及び本願発明者らの代替的なT細胞媒介性アプローチ)は、固有のものである。本明細書に提示されるデータは、本明細書に記載の組成物及び方法が、粘膜優位型PVの治療を変えるだけではなく、他の自己免疫性水疱症(例えば、粘膜皮膚尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA水疱性皮膚症)、狼瘡、強皮症、グッドパスチャー病、グレーブス病のサブタイプから免疫介在性血管炎に及ぶ既知の抗原標的を用いた自己抗体/免疫複合体媒介性疾患の治療を開発するための道を開くことができることを示す。本願発明者らは、提案された治療薬は、自己免疫疾患の治療ツールボックスへの画期的な追加とみなすことができると考える。
【0197】
生物学的活性は、標準化されたインビトロアッセイを用いて確立することができる。広範なエクスビボ生体内分布及び代謝運命分析を行うことができる。実験の各セットについて、1群当たり少なくとも約10匹のマウスを使用して、統計分析を可能にし、固有の動物間変動性を説明することができる。適用可能な場合、有意レベルα≦0.05で対応のないスチューデント両側t検定を使用して統計分析を行うことができる。生存分析は、logランク(Mantel-Cox)検定を使用して行うことができる。動物は、各実験内で年齢を一致させることができる。実験は、治療薬に対する応答における性差を説明するために、雄マウス及び雌マウスの両方を含み得る。動物における療法試験は、観察者バイアスが確実に回避されるように、二重盲検様式で行うことができる。市販されていない生物製剤及び化学物質を認証することができる。
【0198】
タンパク質の部位特異的改変。細菌トランスペプチダーゼであるソルターゼを使用して、C末端でタンパク質を改変することができる(
図16のパネルA)
54、55。この酵素は、短い認識配列(LPETG)を有し、TとGとの間を切断して中間体チオエステルを形成し、Gly3含有基質との求核反応による分解を可能にする。反応は、ほぼ定量的な収率を提供することができ、迅速、堅牢、かつ再現可能であり得る。本願発明者らは、ソルターゼを使用して、フルオロフォア、ポリマー、及び放射性同位体などの機能性をタンパク質上に導入した
56~61。ソルターゼ媒介性部位特異的標識は、タンパク質の結合能力が標識後に損なわれないことを確実にし、したがって、ここで、本願発明者らは、ソルターゼ技術を使用してタンパク質を改変する。
【0199】
Dsg3外部ドメインの免疫原性。PV患者に関する試験は、患者の91%、71%、51%、19%及び12%が、それぞれ外部ドメインEC1、EC2、EC3、EC4及びEC5に対する自己抗体を有することを示している(
図13)
62。そのアプローチを確立するために、Dsg3-EC1-3はPV患者における生理学的抗Dsg3抗体の大部分を網羅し、その産生は完全サイズのEC1-5構築物よりも複雑ではないため、本願発明者らは、Dsg3-EC1-3を使用することができる。更に、非限定的で例示的な結果(以下)は、標的化された外部ドメインに依存しない自己反応性B細胞の同様の死滅を示す。一旦確立されると、本願発明者らは、EC1-4及び1-5構築物を作製し、これは、臨床的解釈を考慮する場合に、より適切であり得、抗Dsg3反応性病原性B細胞の全スペクトルをカバーする。
【0200】
抗Dsg3細胞株及び抗体。本願発明者らは、以下の3つの細胞株及び4つの抗Dsg3抗体を使用することができる:(1)マウスにおいてPVを誘導する抗マウスDsg3抗体を産生するAK23ハイブリドーマ細胞63。AK23抗体は、EC1ドメインを認識し、ヒトDsg3-EC1と交差反応する;(2及び3)Nalm-6 F779及びNalm-6 PVB28がん細胞株。Nalm-6は、B細胞前駆体白血病細胞株であり、F779及びPVB28は、それぞれDsg3-EC1及びDsg3-EC2ドメインを認識する患者由来の抗Dsg3抗体を発現するように操作されたNalm-6細胞である45。更に、本願発明者らは、PV患者から特定された4つの抗ヒトDsg3抗体(P3F3、P1F5、P5D4及びP5G6)のプラスミドを得た64。P3F3抗体は、ヒトDsg3-EC1ドメインに特異的に結合するIgG1抗体であり、ヒトケラチノサイトに添加されると強い棘細胞離開を誘導する64。P1F5、P5D4、及びP5G6抗体は、それぞれDsg3-EC2、Dsg3-EC4、及びDsg3-EC1ドメインに結合し、一緒になって強い棘細胞離開を誘導する64。組み合わされたモノクローナル抗体は、それらのいずれか1つよりも高いケラチノサイトの解離を引き起こす。
【0201】
インビトロ環境において抗Dsg3自己反応性B細胞を標的とし、その死滅を媒介するDsg3-Fc融合タンパク質を開発すること。
【0202】
mDsg3-mFc及びhDsg3-hFc構築物の開発及び特性評価。本明細書において考察されるように、アプローチを確立するために、本願発明者らは、Dsg3-EC1-3ドメインを開発した。したがって、本願発明者らは、マウス及びヒトの両方のFc融合タンパク質であるmDsg3-EC1-3-IgG2a及びhDsg3-EC1-3-IgG1(ここからは、mDsg3-mFc、及びhDsg3-hFcと呼ぶ)を作製した。ヒトIgG1及びマウスIgG2aを、それらの高いFc媒介性死滅活性について選択した
65~67。タンパク質は、C末端にFLAGタグ、ソルターゼ認識モチーフ及びHis6タグを有するように操作された(
図16のパネルA)。8アミノ酸配列(DYKDDDDK)であるFLAGは、ウェスタンブロット及びフローサイトメトリー分析のために使用することができ、その後、インビボで使用される場合、構築物の代謝運命及び薬物動態の分析のために使用することができる。His6タグを精製に使用し、ソルターゼタグ(LPETG)を部位特異的に改変を導入するために使用した。本願発明者らは、確立されたクローニング技術に従って両方の構築物についてプラスミドを作製し、サンガー配列決定を介して最終配列を確認した。次いで、本願発明者らは、哺乳動物HEK293細胞を使用して両方の構築物を発現させ、Ni-NTAアフィニティーカラムを介して精製し、SDS-PAGE及びウェスタンブロッティング分析を使用して特性評価して、構築物の形成を確認した(
図16のパネルA~B)。Gly3-Alexa647ソルターゼ基質を合成し、これを使用して、融合タンパク質をAlexaFluor647で部位特異的に標識した。ソルターゼ反応は、構築物(50μM)、Gly3-Alexa647基質(500μM)、及びソルターゼ(5μM)を4℃で1時間混合することによって行った。Alexa647標識された構築物をサイズ排除カラムクロマトグラフィーによって精製し、構築物のゲル内蛍光スキャンによって、フルオロフォアの導入を更に確認した(
図16のパネルB)。構築物の機能性を特性評価するために、本願発明者らは、Alexa647標識されたmDsg3-mFcを使用して、抗mdSg3 AK23ハイブリドーマ及び抗hDsg3 F779及びPVB28細胞を染色した。細胞を、より多くの親和性及び特異性(10nM濃度での)により染色し(
図16のパネルC)、これは、F779及びPVB28細胞上の患者由来BCRがマウスDsg3タンパク質と交差反応することを示唆している。対照として使用したNalm-6細胞は、いかなる結合も示さず、構築物の特異性を確認する(
図16のパネルC)。Alexa647標識されたhDsg3-hFc融合タンパク質を使用して同様の実験を行ったところ、F779及びPVB28細胞に強く結合し、マウスAK23細胞も染色することが確認され、これは、AK23抗マウスDsg3抗体がヒトDsg3タンパク質と交差反応することが示唆している(
図16のパネルC)。注目すべきことに、ヒトDsg3は、マウスDsg3に類似しており(86%の配列相同性)
68、マウスDsg3欠損を機能的にレスキューする
69。構築物を更に分析するために、本願発明者らは、異なる濃度のAlexa647標識されたタンパク質を使用することによって、mDsg3-mFc及びhDsg3-hFc構築物の両方についてのEC50値を測定した。結果は、hDsg3-hFc及びmDsg3-mFcが、それぞれ1.8±0.8nM及び2.3±0.9nMのEC50でF779細胞に結合することを示した(
図16のパネルD~E)。構築物を更に特性評価するために、本願発明者らは、まず、プレートをAK23抗体でコーティングし、別のプレートをP3F3(抗ヒトDsg3)でコーティングし
64、次いで、コーティングされたプレートに対する構築物の結合を分析することによって、ELISAアッセイを行った。その結果は更に、本願発明者らが作製したヒト及びマウス構築物が両方の抗Dsg3抗体に特異的に結合するが、対照プレートには特異的に結合しないことを確認した(
図16のパネルF)。P3F3抗体を、製造業者のプロトコルに従って、Expi293F細胞において作製した。AK23抗体を、プロテインGアフィニティーカラムを用いてAK23ハイブリドーマ培地から精製した。同様のアプローチに従って、本願発明者らは、マウスIgG2a及びヒトIgG1 Fcに融合したマウス及びヒトDsg3-EC1-4、及びDsg3-EC1-5を生成することができ、それらを同様に特性評価する。
【0203】
Fc媒介性インビトロ死滅アッセイを確立する。まず、本願発明者らは、mDsg3-mFc構築物が、そのFc部分(IgG2a)を介して、低いnM親和性でマウスマクロファージ上のFcγ受容体に結合することを確認した(
図16のパネルG、EC50値2.3±0.8 nM)。対照Nalm6細胞は、染色されないままであった。融合タンパク質がFc媒介性死滅を引き起こし得るかどうかを決定するために、マウスRAW264.7マクロファージ細胞と共培養したF779標的細胞(エフェクタ:標的の比が10:1)をmDsg3-mFc融合タンパク質で処置した。1nM程度の低濃度の構築物が、F779標的細胞の効率的な死滅を媒介することができた(24時間後及び48時間後にそれぞれ約60%及び約80%の死滅、Nalm6対照細胞の死滅はなかった、
図17)。(EC2に結合する)標的細胞としてPVB28を用いて同様の実験を行った。結果は、標的細胞の同様に有効な死滅を示し、これは、治療が、Dsg3上の標的化エピトープにかかわらず、異なる自己反応性細胞の死滅を媒介し得ることを示している(
図17)。異なる用量のmDsg3-mFc(1、10及び100nM)を用いて実験を繰り返して、治療濃度の効果及びより高い治療濃度で起こり得る任意の潜在的な非特異的死滅を試験した。結果は、10及び100nMで、抗Dsg3陰性Nalm6細胞の非特異的死滅を伴わずに、標的細胞の高死滅率(約90%死滅)を示し、治療が、より高い濃度範囲で非常に有効かつ特異的なままであることを示唆している(
図17)。本願発明者らは、エフェクター細胞としてRAW264.7マクロファージ細胞、並びに標的細胞としてF779及びPVB28を使用して同様の実験を行ったが、今回はhDsg3-hFc構築物を使用した(マウスFcγ受容体(FcγR)はヒトFcを認識することが知られている。しかしながら、ヒトFcRは、マウスFcを認識しない)
65。結果は、上記で考察したmDsg3-mFc実験の結果と同様に、非常に有効かつ特異的な死滅を示した(
図17)。次に、本願発明者らは、同様の設定で実験を繰り返したが、今回は、エフェクター細胞としてTHP1細胞
70(AML患者に由来する広く使用され、確立されたヒト単球細胞株)を使用し、治療としてhDsg3-hFc構築物を使用した。結果は、標的細胞の効果的な死滅を示し、対照の抗Dsg3陰性Nalm-6細胞は死滅しなかった(
図17)。本願発明者らは、治療のためにある範囲の用量(0、1、10、及び100nMのhDsg3-hFc構築物を使用して死滅アッセイを実施し(
図17)、試験した全ての濃度について有効な死滅効力を観察し、これは、治療が、低濃度で有効であり、高濃度で高度に特異的なままであることを示唆している。
【0204】
潜在的な懸念は、抗Dsg3自己抗体(PV患者において生じる)の存在が、治療が標的細胞に結合するのを遮断し、したがって治療有効性を減少させるか、又は中和する可能性があるかどうかである。この問題を試験するために、本願発明者らはまず、抗Dsg3抗体を培地中に放出する十分に確立されたAK23ハイブリドーマ細胞を使用した。AK23抗体は、上述のように、Dsg3上のEC1ドメインを認識し、したがって、治療を潜在的に中和することができる。実験は、上記と同じ設定に従って行った。結果は、本願発明者らがF779及びPVB28細胞について観察したものと同様に(
図17)、AK23細胞の非常に有効な死滅を示した(エフェクター細胞としてRaw細胞又はTHP1細胞のいずれかを用い、治療としてmDsg3-mFc又はhDsg3-hFcを用いた場合)。抗Dsg3自己抗体の存在の影響のより系統的な分析を行うために、本願発明者らは、標的細胞としてAK23細胞及びF779細胞、エフェクター細胞としてRaw細胞、治療として10nMのmDsg3-Fc又はhDsg3-Fcを使用し、上記と同じ設定に従って死滅アッセイを繰り返した(エフェクタ:標的の比10:1)。しかしながら、今回、本願発明者らは、抗Dsg3抗体の存在が死滅有効性に影響を及ぼし得るかどうかを評価するために、ある範囲の既知量のAK23抗体を混合物に添加した。驚くべきことに、本願発明者らは、試験した条件のいずれにおいても死滅有効性の変化を観察しなかった(100pM~500nMの範囲のAK23抗体を試験した。
図18を参照されたい。各セットの最初の2列は24時間評価であり、次の2列は48時間評価である)。本願発明者らは、全ての4つの異なる細胞(対照としてNalm-6、次いで標的細胞としてAK23、F779及びPVB28)を使用してアッセイを繰り返し、今回は、100nMのAK23抗体の存在下で、エフェクター細胞としてTHP-1細胞を使用し、治療として異なる用量のhDsg3-hFc(0、1、10及び100nM)を使用した。驚くべきことに、かつ、上記と同様に、遮断は観察されず、試験した全ての条件において有効な死滅が得られた(
図18)。これは、Dsg3に対する自己抗体の存在が、Dsg3-Fc融合タンパク質の死滅有効性に対して最小限の負の影響を有し得ることを示している。
【0205】
この潜在的な問題を更に評価し、ポリクローナル抗Dsg3抗体の存在がアプローチの有効性にどのように影響し得るかを詳細に説明するために、本願発明者らは、4名の異なる患者由来の抗Dsg3抗体P3F3及びP5G6(Dsg3-EC1に結合する)、P1F5(Dsg3-EC2に結合する)及びP5D4(Dsg3-EC4に結合する)を作製した。本願発明者らは既にP3F3抗体を作製しており、他の3つの抗体の産生は進行中である。本願発明者らは、AK23、F779、及びPVB28細胞についての死滅アッセイを、本願発明者らが上記で行ったもの(AK23、P3F3、P5D4、P5G6、P1F5)と同様の濃度範囲で、これら5つの抗体の混合物の存在下で繰り返す。加えて、本願発明者らは、生理学的条件を厳密に模倣するために、抗Dsg3抗体の混合物の存在下で標的細胞(AK23、F779、PVB28)の混合物を使用するアッセイを実施する。理論に束縛されることを望むものではないが、治療により、ポリクローナル自己抗体の存在下でポリクローナル病原性B細胞の標的化死滅を継続することができる。
【0206】
全体として、インビトロデータは、Dsg3-Fc構築物が、抗Dsg3自己抗体の存在下であっても、抗Dsg3+標的細胞の死滅を効果的かつ特異的に媒介することができることを示している。
【0207】
患者PBMCを使用したインビトロアッセイにおけるヒト構築物(hDsg3-hFc)の有効性を描写する。理論に束縛されることを望むものではないが、本願発明者らは、患者の血液中に存在するポリクローナル抗Dsg3 IgGの存在下で、正常B細胞に影響を及ぼすことなく病原性B細胞を死滅させる際のアプローチの有効性を描写することができる。本願発明者らは、Dsg3タンパク質に対する自己反応性B細胞が確認されたPV患者(少なくともn=10)からPBMCを得る71。(1)治療未経験、及び(2)疾患の再発を含む異なる疾患期の抗Dsg3陽性患者から得たPBMCを、丸底48ウェルプレート中で培養する(各群についてn=10)。hDsg3-hFc融合タンパク質(1nM及び10nM)を、標準的な細胞インキュベーター内での37℃でのインキュベーション後に細胞に加える。PBMC中に存在する患者自身の貪食細胞及びNK細胞が、標的化された抗Dsg3+病原性B細胞を死滅させることができると予想されるので、更なる貪食細胞は混合物に添加されない。細胞のインキュベーション及び治療(hDsg3-hFc)の1日後及び2日後に、ELISpotアッセイを実施して、抗原特異的及び総IgG B細胞枯渇について評価する。結果は、総IgGレベル(影響を受けていないと予想される、したがって、対照として使用する)と比較した自己反応性抗Dsg3 IgGの減少パーセンテージを明らかにする。分析は、フローサイトメトリー、並びにアッセイの内部標準として作用するB細胞及びT細胞を含む標準的な生-死分析を介して行われる。CD3+、CD4+、CD8+及びCD20+細胞をゲーティングするために抗体を使用することに加えて、本願発明者らは、フルオロフォア標識されたhDsg3構築物(hDsg3-Alexa647)を使用してPBMCを染色する。hDsg3タンパク質(Fcを含まない)は既に手元にある。本願発明者らは、hDsg3タンパク質(EC1-3)を、本願発明者らが記載のタンパク質を作製するために使用したのと同様のプロトコルに従って作製した(標準的なクローニング、その後の発現、精製、及びAlexa647を導入するためのソルターゼによる部位特異的標識)。これは、PV患者のPBMC中に存在する抗Dsg3+B細胞に対するゲーティングを可能にする。Alexa647標識されたDsg3タンパク質での染色を含むアッセイの前後のフローサイトメトリー分析は、抗Dsg3細胞がいかに効果的に標的化され、死滅したかを明らかにする。第2の対照として、健康なPBMCを同じ設定で使用して、観察された結果を更に確認する(ここで、本願発明者らは変化が起こらないと予想する)。PV患者のPBMCは、以下の包含/除外基準を満たす患者から収集される。包含基準:(1)生検によりPVと証明された、(2)標準的なELISAによる、循環抗Dsg3 IgG自己抗体、(3)PBMC収集時にCD19及びCD20によって示された正常Bリンパ球カウント。除外基準:(1)B及びT細胞リンパ腫/白血病を含む既知の血液由来悪性腫瘍を有する患者。PBMCのレベル又は機能に影響を及ぼし得る任意の治療を含む、PBMC収集の12ヶ月前及びPBMC収集時の治療を記録する。理論に束縛されることを望むものではないが、患者のPBMC中の病原性B細胞を、正常なB細胞に影響を及ぼすことなく、効率的かつ特異的に死滅させることができる。
【0208】
本願発明者らは、既に150mgを超えるmDsg3-EC1-3-mFc、150mgを超えるhDsg3-EC1-3-hFc、200mgを超えるmDsg3-EC1-3、及び200mgを超えるhDsg3-EC1-3を作製しており、これらは提案された実験に必要な量を超えており、必要に応じて、これより多く作製することができる。本願発明者らは、マウス及びヒトDsg3-EC1-4-Fc及びDsg3-EC1-5-Fcを含有する構築物を同様に作製する。タンパク質発現収率が特定の構築物について低い場合、本願発明者らは、この問題に対処するために、例えば、限定されないが、以下の異なる経路を調査することができる。(1)発現に使用されるヌクレオチドコドンを再最適化する、(2)異なるシグナルペプチド配列を使用する、及び/又は(3)HEK293細胞の代わりにタンパク質発現のための他の系、例えばCHO、Expi293F又は昆虫細胞を使用する。
【0209】
自己抗体の存在及び中和の懸念に関して、結果は、PV患者における生理学的状態において生じるような自己抗体の存在が、治療を中和しない(又は少なくとも完全には中和しない)ことを示す。理論に束縛されることを望むものではないが、これは、抗原-抗体相互作用の動的かつ可逆的な性質に起因するものであり、エフェクター細胞を介して標的細胞を死滅させる不可逆的プロセスとは対照的である。更に、エフェクター細胞と標的細胞との間で生じるクラスター化は、2つの細胞を架橋するいくつかのDsg3-Fc分子を介して起こり、Dsg3-Fc分子との自己抗体相互作用と比較して、親和性に関して、より強い可能性があり、それによって自己抗体の存在下であっても死滅プロセスを前方に駆動する。重要なことに、抗体は、Dsg3タンパク質上の異なるエピトープに結合することができる。したがって、多くの抗体は、重複しないエピトープを有する。したがって、自己抗体がDsg3-Fc治療構築物に結合している場合であっても、複合体(Dsg3-Fcに結合した抗体)は、非重複エピトープを有する抗Dsg3 BCR(病原性B細胞の表面上)に依然として結合することができ、したがって、エフェクタを標的細胞に架橋し、2つの細胞間でクラスターを形成するのを助け、したがって標的細胞の死滅を媒介する。したがって、Dsg3タンパク質上の多くの潜在的エピトープ及び相互作用の動的性質を考慮すると、Dsg3-Fc構築物が抗Dsg3 BCRの全ての病原性クローンに到達する可能性は、統計的に高いままである。更に、重要なことに、これらの構築物の投薬は、オマリズマブ(IgEレベルに基づいて使用されるIgG1k抗ヒトIgE)などの薬物と同様であるが、直接的には類似しておらず、患者依存的であり、循環抗Dsg3力価のレベルに潜在的に基づき得るので、本願発明者らは、これを臨床診療における制限とは考えない。加えて、現実世界の状況では、治療薬は、IVIGなどの抗Dsg3力価を低下させる他の薬物と同時に使用することができる72~76。循環抗Dsg3自己抗体を低下させるために臨床で使用される別のアプローチは、循環自己抗体の力価を低下させることができ、通常、重度の天疱瘡を有する患者に使用される、血漿交換及び免疫吸着である77~80。したがって、この(潜在的な)問題に対処する複数の方法が存在し、本願発明者らは、実験を進めるにつれて、また、上で論じたように、これを注意深く評価し続ける。更に、確かに、モノクローナル及びポリクローナル抗Dsg3 IgGは、Dsg3自己抗体産生B細胞に特異的なCAAR T細胞のインビボでの死滅能力に対して有意な効果を有さないことが見出された45。したがって、データだけでなく、抗Dsg3 CAAR T細胞の有効性も、循環抗Dsg3抗体が治療の効果を遮断しないことを示唆している。別の例は(現在のプロポーザルに直接的に類似していないが)、多発性骨髄腫患者におけるB細胞成熟抗原(B-cell maturation antigen、BCMA)CAR T細胞の有効性であり、ほとんどの患者は、γ-セクレターゼによって引き起こされる排出に起因して、循環中に高レベルの可溶性BCMA抗原を有する81。しかしながら、循環中に高レベルの可溶性BCMAが存在するにもかかわらず、BCMA CAR T細胞を投与された患者は、顕著な応答を示しており、これは、BCMA CAR T細胞が、可溶性BCMAの存在下であっても、特異性及び有効性を有しつつBCMA+多発性骨髄腫細胞を効率的に死滅させることができることを示唆している。全体として、これらの観察は、可溶性抗原(又は自己抗体)の存在が、標的細胞を死滅させるエフェクター細胞の活性を損なわないことを示す。これは、上で考察したように、相互作用の動的性質、重複しないエピトープ、及びエフェクター細胞と標的細胞との間のクラスター化効果に起因し得る。
【0210】
Fc媒介性アプローチの有効性を更に増加させるために、本願発明者らは、IL-2と融合したDsg3-Fcを設計し、首尾よく発現させたが、これにより、より多くの細胞に結合し、死滅を増強することができる。これが有効性を増加させる場合、本願発明者らは、他のサイトカイン(例えば、IL-15)も同様に調査することができる。陰性対照実験のために、抗Dsg3抗体の発現を欠く細胞に加えて、代替法として、本願発明者らが同様に発現及び使用することができるDsg1-Fc融合体の合成のためのプラスミドを設計し、作製した。
【0211】
本願発明者らは、Dsg1タンパク質について類似の構築物を生成することができる。Dsg1及びDsg3は、粘膜の扁平層全体にわたって発現されるが、Dsg3はDsg1よりも高レベルで発現される1、3、23。皮膚では、Dsg1は表皮全体に発現しているが、表層により多く存在している。Dsg1とは対照的に、Dsg3は、基底層及び傍基底層を含む表皮の下部でより強く発現され、表層ではより少ない程度で発現される。皮膚及び粘膜におけるこれらの異なる発現パターンの結果として、(i)Dsg3は、粘膜優位型の尋常性天疱瘡を有する患者において主要な病原性抗原として挙動し、この患者は、皮膚の関与がないか又は最小限である粘膜において深いびらんを発症する(Dsg1が皮膚においてそれを補うことができるため)。全ての粘膜優位型PV患者が、高レベルの抗Dsg3 IgG自己抗体を有する3、23。(ii)高レベルの抗Dsg3及び抗Dsg1 IgG自己抗体を有する患者は、皮膚粘膜型の尋常性天疱瘡を発症し、粘膜及び皮膚において深いびらんを示す。また、(iii)落葉状天疱瘡(PF)を有する患者は、高レベルの抗Dsg1自己反応性抗体のみを有し、粘膜の関与を伴わない表在性皮膚水疱のみを示し、これは、Dsg1がPFにおける主要な病原性自己抗原であることを示唆している。本願発明者らは、粘膜優位型のPVを治療するために使用することができるDsg3-Fc融合タンパク質を開発し、特性評価することができる。本願発明者らは、Dsg1について類似の構築物を同様に作製することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、粘膜皮膚PVを有する患者は、Dsg3-FcとDsg1-Fcとの混合物で治療することができ、PFを有する患者は、Dsg1-Fcで治療することができる。加えて、本願発明者らは、Fc部分におけるCH3のヘテロ二量体化を可能にし、したがって、Dsg1及びDsg3自己反応性病原性B細胞の両方を標的とすることができる、Dsg3-Dsg1-Fcノブ-イントゥ-ホール構造82(Dsg3-ノブ+Dsg1-ホール)を生成することができる。
【0212】
追加の試験では、本願発明者らは、抗CD3e単鎖Fv(scFv)抗体断片に融合されたDsg3-EC1-3を作製し、これは、病原性自己反応性B細胞を標的とし、死滅させるようにT細胞を指向させ、結合させることができる(
図15のパネルB)。このアプローチは、潜在的なFcR飽和を回避することができ、病原性B細胞がFc媒介性アプローチによる死滅に対して耐性である場合、このT細胞媒介性アプローチは、代替法を提供することができる。例えば、一部の患者は、遺伝子多型に起因してリツキシマブに対する耐性を示し、これは、抗体依存性細胞傷害性の減少をもたらす
83~85。Dsg3-抗CD3e構築物は、理論に拘束されることを望むものではないが、標的抗Dsg3 B細胞とT細胞との間の分子クラスター化及び免疫学的シナプスの形成を確立し、その結果、T細胞の活性化をもたらし
52、53、標的化された抗Dsg3 B細胞を特異的に死滅させ、他のB細胞を無傷なままに残す
52、53、86~88。腫瘍学的用途とは異なり、サイトカイン放出症候群は、自己反応性B細胞の負荷が悪性クローンよりもはるかに低いことを考慮すると、自己免疫疾患の治療においては予想されない。したがって、N-C Dsg3抗CD3e融合プラスミドを、hDsg3-EC1-3及びOKT3抗CD3e scFvのcDNAを含有するように設計した。OKT3クローンは、二重特異性T細胞エンゲージャの抗CD3e部分として臨床で使用されており
89、そのため、本願発明者は、このクローンを選択する。注目すべきことに、CD3eは、全ての成熟Tリンパ球上に見出される。構築物は、他の二重特異性T細胞エンゲージャと同様に、N末端にDsg3及びC末端に抗CD3e scFvを有するように設計された。更に、この構造は、最も病原性であるDsg3-EC1及びEC2ドメインが、Dsg3反応性B細胞による認識に利用可能であることを確実にする。他の二重特異性T細胞エンゲージャと同様に、可撓性(G4S)3スペーサ/リンカーをDsg3タンパク質とscFvタンパク質との間に含めた。タンパク質を、HEK293細胞を使用して発現させ、Ni-NTAビーズ及びサイズ排除クロマトグラフィーを介して精製し、SDS-PAGE、抗FLAGウェスタンブロット及びフローサイトメトリー分析によって更に特性評価した。フローサイトメトリー分析は、融合タンパク質が、確立された抗Dsg3 B細胞及びCD3+Jurkat細胞(ヒトT細胞)に高い特異性及び親和性で結合するが、対照Nalm-6細胞には結合しないことを明らかにした(
図19)。本願発明者らは、既に10mgを超えるタンパク質を作製しており、必要に応じて更に作製する。
【0213】
インビボで抗Dsg3自己反応性B細胞を標的とし、その死滅を媒介するDsg3-Fc融合タンパク質の有効性を試験すること。
【0214】
いくつかの実施形態では、Dsg3-Fc構築物は、循環抗Dsg3+自己反応性B細胞の標的化された枯渇を媒介することができる。いくつかの実施形態では、自己抗体の存在は、標的化された枯渇に影響を及ぼさない。
【0215】
循環抗Dsg3+B細胞の特異的標的化及び枯渇に対するDsg3-Fc融合タンパク質のインビボ有効性を試験するために、抗DSG発現PVB-28悪性細胞を免疫不全NOD-scidガンマ(NOD-scid gamma、NSG)マウスに移植した。NSGマウスは、成熟T細胞、B細胞、及びNK細胞を欠き、樹状細胞機能の低下、及びマクロファージ活性の欠損を示し、したがって、前臨床試験のための広範囲のヒト細胞の生着に広く使用されている。したがって、NSGマウスに、0日目に、ルシフェラーゼ陽性PVB28細胞(1×106個)を尾静脈を介して静脈内(i.v.)注射した。PBV28細胞投与前の-3、-2及び-1日目に、マウスを16mg/kgのIVIG(腹腔内(i.p.)注射)で前治療して、FcγRを介した非特異的死滅を遮断した(すなわち、PVB28細胞の生着を増強した)。mDsg3-mFc治療を治療群に投与し、4日目に開始して、i.p.注射を2週間にわたって週に3回、次いで週に1回行った。対照群にはアイソタイプIgG2aを与えた。自己抗体群には、AK23、AK19及びAK18の混合物(150μg、ハイブリドーマからの抗Dsg抗体)を治療開始の前日(すなわち、3日目)に開始して、全てのマウス(治療及び対照)に対して、週2回を2週間にわたって投与した。疾患の進行を生物発光イメージング(BLI)によってモニタリングした。
【0216】
図20のパネルAは、自己抗体の存在下であっても、治療レシピエントマウスにおいて、より遅いシグナル増強を示すBLIイメージングを示す。
図20のパネルBは、生存率が、対照群と比較して両方の治療レシピエント群において有意に高い(P値=0.0023)ことを示す。また、自己抗体+治療(Auto-Abs+Tx)群の生存期間の中央値は38日であり、これは治療群よりも高かった(生存期間の中央値=35日、P値=0.048)。
図20のパネルCは、エンドポイントでのフローサイトメトリー分析を示し、治療レシピエントマウスの骨髄におけるPBV28細胞の完全な枯渇を示した(各群についてn=5のデータの代表)。
【0217】
PVマウスモデルにおける動物試験。このアプローチの有効性を下記の2つのPVマウスモデルで試験する。
【0218】
受動導入モデル。このモデルにおいて、本願発明者らは、AK23抗体を注射することによって、受動モノクローナル天疱瘡マウス疾患モデルを開発することができ
91、これは、皮膚及び粘膜の両方において水疱の発生を引き起こすことが知られている
26。このマウスモデルは、PV患者において記載された主要な特徴を再現する
26。したがって、動物に200μgのAK23抗体を、治療の開始の2日前から開始して週に3回、治療の持続期間にわたって前注射するという違いのみを除き、上記で説明したものと同一の設定で実験を行うことができる。これにより、マウスが治療期間中、循環中に常に高い量の抗Dsg3自己抗体を有することを確実にすることができる。この実験の目的は、治療の有効性に対する循環中の病原性抗Dsg3自己抗体の存在の影響を描写することである。読み出しは、上記と同じBLI分析及び生存である。一旦確立されたら、同じ実験を繰り返すことができるが、今回は、ポリクローナル病原性B細胞(F779及びPVB28の混合物)及びポリクローナル抗Dsg3自己抗体(AK23、P1F5、P3F3、P5G6、及びP5D4抗体の混合物、注射当たり200μgの総抗体、それぞれ40μg)を注射することができる。これにより、治療がポリクローナル自己抗体及びポリクローナル病原性Dsg3反応性B細胞の存在下でさえ有効なままであることを示すことができる。この設定は、PV患者における生理学的状態に似ている可能性がある。本願発明者らは、病原性抗体の注射後1週間に3回、血清抗Dsg3力価(標準的なELISAによる)及び皮膚疱疹(盲検化された研究者によって評価される)を分析することによって疾患の確立について試験することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、マウスは、脱毛、体重減少を示す場合があり、かつ、表皮ケラチノサイトに結合する自己抗体を伴って、毛包及び口腔粘膜に水疱形成を有する場合がある(
図21のパネルA~D)
91、48。BLIイメージングを使用して、上記と同様に、治療の死滅有効性をモニタリングすることができる。治療を受けないマウス(陰性対照)、及び治療を受けるが自己抗体を投与されないマウス(陽性対照;本願発明者らは、この設定においてほぼ完全な応答の治療結果を既に示している)の2セットの対照を使用することができる。
【0219】
能動導入モデル。受動疾患モデルには利点がある。しかしながら、治療は、急速に増殖する悪性細胞に打ち勝つべきであり、これはPV患者の症例には当てはまらない可能性がある。したがって、第2のモデルとして、本願発明者らは、ヒト疾患の臨床表現型を厳密に模倣し、臨床的に起こるものに類似する自己反応性Dsg3特異的B細胞の頻度が低く、最終的に高い血清ポリクローナル抗Dsg3自己抗体レベルを有する、能動PV免疫モデルを使用することができる。このモデルでは、本願発明者らは、まず、Dsg3-/-マウス(JAX-002911)をマウスDsg3の組換え細胞外ドメインで免疫付与し(既に産生され、手元にある)、続いて脾細胞をRAG2-/-マウスに導入することによって、能動ポリクローナル天疱瘡マウス疾患モデルを開発することができる
95~97。導入された細胞は、病原性Dsg3反応性B細胞を含み得るB細胞(及びT細胞)を含有する。文献で行われた観察と同様に
95、96、98、理論に束縛されることを望むものではないが、動物は、抑制された成長を有している可能性があり(
図21のパネルE)、基底上の棘細胞離開及び水疱を伴う皮膚粘膜びらんを発症する場合がある(
図21のパネルF~H)。臨床指標を評価するために、ELISAを使用して、本願発明者らは、自己抗体レベルをPV患者における生理学的レベル(300~400RU/ml)と比較することができる
48。Dsg3反応性抗体がそのレベルに等しいか、又はそれを超える場合、これは3~4週間で起こり得る
42、48が、上記と同じ設定を使用して治療を開始することができる(マウス1匹当たり200μgのmDsg3-mFc、週3回を2週間)。Dsg3免疫付与Dsg3+/-動物由来の細胞の養子導入を対照として使用することができる98(群当たり少なくともn=10匹のマウス)。
【0220】
治療の開始後5日目及び14日目に測定された血清抗Dsg3力価、皮膚びらんの盲検調査、IgG沈着を検出するための粘膜試料の免疫蛍光、粘膜関門の組織学的評価、及び組織病理学の定量化を行って、アプローチの有効性を更に評価することができる。B細胞カウントも同様に実施して、それらが治療の間正常レベル内に維持されることを確実にすることができる。理論に束縛されることを望むものではないが、治療は、疾患の臨床的解決及び組織学的解決、意図された転帰をもたらすことができる。
【0221】
治療の安全性及びオフターゲット細胞傷害性相互作用がないことを更に確実にするために、本願発明者らは、初代ヒト細胞及びハイスループット膜プロテオームアレイを使用して毒性学スクリーニングを実施することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、BCR結合誘導性エンドサイトーシスは、本願発明者らの治療薬、例えば、他の受容体の共結合なしに抗Dsg3 BCRのみに結合するDsg3-Fcなどの「抗原」を用いて起こり得、したがって、低い速度のエンドサイトーシスを誘導する99。加えて、インビトロ及びインビボでのデータは、Dsg3-Fcと抗Dsg3 BCRとの結合が、Dsg3を認識する自己反応性B細胞の標的化されたほぼ完全な死滅をもたらすことを裏付けている。したがって、現在の証拠に基づくと、抗BCR結合誘導性エンドサイトーシス及び分解が起こる場合、それは臨床的意義を有することができない。加えて、Dsg3を認識する自己反応性B細胞(本願発明者らの治療薬の標的)によって産生される抗体は、定義によれば、本願発明者らの治療薬を本質的に標的とする(Dsg3-Fc)。したがって、本願発明者らは、有効性を減少させるリツキシマブ又は抗TNF-アルファなどの他の治療薬において見られるような、及び上で詳細に議論されるような「中和抗体」の生成について心配していない。特に、非重複エピトープがどのようにして中和問題の克服に積極的に寄与し得るかについての本願発明者らの考察を参照されたい。
【0222】
能動疾患モデルでは、抗Dsg3レベルは、長期寛解を試験するために週1回のELISAによって測定することができる。マウスは、皮膚病変をチェックして疾患再発がないことを確実にするために、盲検研究者によって試験することができる。Fc媒介性アプローチは、リツキシマブと同様に、再発を示す場合があるが、理論に束縛されることを望むものではないが、再治療で応答可能である。興味深いことに、いくつかの試験は、複数サイクルのリツキシマブで数年間にわたって治療された患者の大部分が長期寛解を示すことを示している100。しかしながら、リツキシマブは、患者の全B細胞プールを枯渇させ、反復注入は、B細胞の再増殖の遅延をもたらし得るので、それは感染のリスクを有し、新たな感染又はワクチン接種に対する体液性応答を消失させる。本明細書で開発されたDsg3-Fcアプローチの標的化された性質は、いかなる主要な副作用の恐れもなく、複数サイクルでの連続治療としての使用を可能にする。例えば、最初の一連の治療が終わった後に、患者が寛解したとき、患者は、3ヶ月に1回(又は更に頻繁に)、1年又は更に長い間、再注射され得る。連続及び多サイクルのリツキシマブ治療に類似した機構では、これにより、全てのDsg3病原性B細胞が枯渇することを確実にすることができる。Dsg3-Fcアプローチは、正常なB細胞プールに影響を与えないので、理論に束縛されることを望むものではないが、数ヶ月にわたる患者へのその複数回の使用は、大きな問題に直面しないはずであり、したがって、長期寛解を可能にする。これは、抗CD20生物製剤よりも有利である。したがって、本明細書中で提案されるように、自己反応性B細胞の完全な標的化枯渇は、長期から永続的な寛解をもたらし得る。
【0223】
本願発明者らは、治療の用量依存性及びその有効性が抗Dsg3自己抗体力価の存在とどのように相関するかを(ELISAを介して)調べることができる。生物製剤の広範な使用により、抗薬物抗体は、抗TNFα101からリツキシマブ102、103まで及ぶ複数の薬剤について報告されている。免疫複合体沈着などの主要な免疫有害事象が理論化されているが104、臨床診療では実現されていない。オマリズマブの場合のように、生物製剤が高循環抗体に結合する場合、高いIgEレベルを有する患者への投薬は、免疫有害事象を生じなかった105。同様に、血清中の抗Dsg3抗体の存在は、いかなる主要な免疫有害事象も引き起こさない。これは、本明細書で説明するようにモニタリングすることができる。能動PVモデル実験のために、及び陽性対照として、本願発明者らは、抗CD20 IgG(クローンSA271G2、動物当たり250μg)を使用して調査することができる。これがマウスにおいてB細胞を効果的に枯渇させることが示されてからである106。
【0224】
受動導入PVモデル(モデル1)では、病原性抗体を注射する代替法として、ルシフェラーゼ陽性AK23細胞のみをNSGマウスに注射することができ45、これは、その細胞が疾患を引き起こすことが知られている病原性抗Dsg3抗体を産生するからである45。読み出しは、本明細書で説明したのと同じBLIである。
【0225】
Dsg3-Fc治療が、免疫系を全体的に抑制しないことを確認するために、Dsg3-Fcによる治療後の能動PVを有する動物(モデル2)を活動性LCMV-Cl13(2×106PFU、i.v.)により感染させることができる。C57BL/6を陽性対照として使用した。感染マウスの肝臓及び血液中のウイルス負荷は、プラークアッセイを用いて注射後30日目に比較することができる107~109。あるいは、治療後の急性感染のために、マウスを、リステリア・モノサイトゲネス(104~105 CFU)で経口的に、又はLCMV Armstrong(2×105PFU)により腹腔内にチャレンジすることができる110~112。肝臓及び脾臓における微生物負荷を感染10日後にチェックし、感染のみのマウスと比較することができる。いずれの実験においても、理論に拘束されることを望むものではないが、ウイルス負荷に差はない。
【0226】
BCR-T細胞エンゲージャアプローチ(抗CD3に対するDsg3融合)は、本明細書で考察されるように、代替アプローチであり得る。これを達成するために、本願発明者らは、Dsg3抗CD3e融合タンパク質を作製し、本明細書において考察されるようにそれを特性評価した。この種類の分子に関する臨床的問題は、それらのサイズが小さいことに起因して、それらが最適なインビボ薬物動態特性よりも少ない場合があることである113(短い半減期、t1/2が約0.6時間)。この問題を解決するために、本願発明者らは、一方のアーム上にDsg3外部ドメインを有し、他方のアーム上に抗CD3 scFvを有する二重特異性抗体構築物を開発することができる。本願発明者らは、ノブ-イントゥ-ホールアプローチを使用して、2つの異なる標的化剤を1つの抗体構造に結合させる一方で、LALA変異を使用してマクロファージ動員がないことを確実にすることができる114。この構造は、Fc領域に起因する高い薬物動態学的特性、並びにより良好な発現、安定性、及び臨床適用性を確実にすることができる。
【0227】
本明細書中で議論される実施されたインビボ実験について、本願発明者らは、雄マウス及び雌マウスの両方を使用し、対照群又は治療群のいずれかにおいて性別間に差異は観察されなかった(例えば、合計n=27のNSGマウスが、各実験に無作為に割り当てられた8匹の雄及び19匹の雌で、インビボ試験のために使用された)。性別にかかわらず、対照マウスは、増加したBLIシグナルを示し、約30日目までに安楽死させなければならなかったが、治療マウスは、エンドポイントで約100%の抗原喪失を示したか、又は完全な応答を示し、検出可能なBLIシグナルを伴わずに健康であり続けた(PVB28実験について)(
図20A~
図C)。本願発明者らは、実験において両方の性別を使用し続け、本願発明者らが観察し得る任意の差異を、特に能動PVモデルについてモニタリングする。
【0228】
方法。クローニング、タンパク質産生及び特性決定、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー及びELISA分析、及び動物BLIイメージングを、標準的な実験室アプローチに従って実施した。インビトロ及びインビボでの有効性評価実験を上記で説明したように行った。PV受動モデル及び能動モデルの開発に関する詳細については、脊椎動物のセクションを参照されたい。
【0229】
【0230】
実施例8
マウスにおける天疱瘡疾患の動物モデルは、公知である(本明細書において考察される)。実験において、本明細書に開示される治療薬は、マウスにおける疾患に対するそれらの効果を決定するために、これらのマウスに投与された(例えば、実施例7)。これらの実験からのデータは、治療薬が有効であることを示す。このような更なる試験は、この実施例に記載される。
【0231】
図22のパネルA~Dは、有効性を示し、また、自己抗体の存在下であっても、免疫応答性マウスにおいて治療がサイトカインストームも毒性も生じさせないことも示す。治療(mDsg3-EC14-mFc)及び/又は自己抗体の混合物(AK23、AK19、AK18)をマウスに注射するためのスケジュールをパネルAに示す。パネルB及びCでは、自己抗体を伴うか、又は伴わない治療レシピエントマウスは、毒性が観察されることなく、正常な体重増加を続けることが示される(各群についてn=6、3匹の雄及び3匹の雌)。パネルDは、ELISA分析が、治療単独、又は自己抗体のみ、又は自己抗体及び治療の両方(ELISA MAX(商標)Standard Set Mouse(BioLegend)を使用して)のいずれかを受けた3つの群のいずれかにおいて、サイトカインストームを示さなかった。何も投与されなかった6匹のマウスからの血清を、それぞれの性別において健康な対照のために使用した。2mg/kgのリポ多糖(LPS)を受けた3匹のマウスからの試料を使用して、それぞれの性別におけるサイトカインストームを模倣した。対応のないt検定を使用して、群間の有意差について検定した。(ns、P>0.05;
*、P≦0.05;
**、P≦0.01;
***、P≦0.001;
****、P≦0.0001。)
【0232】
図23のパネルA~Eは、治療(mDsg3-EC1-4-mFc)がAK23抗体の病原性効果を阻害することを示す。全ての動物は、AK23(12mg/kg、皮下)を投与された。AK23+治療コホートは、1時間後にmDsg3-mFcを受けた(15mg/kg、i.p.)。パネルA及びBは、AK23群が、72時間後に行われたテープストリッピングによって有意な脱毛を示し(パネルA)、5日目に重度のPV表現型を示した(すなわち、脱毛及び粘膜びらん(図示せず))(パネルB)ことを示す。しかしながら、「AK23+治療」群は、対照健常マウスと同様であった(パネルA及びB)。各コホートについてn=3のデータの代表。パネルCは、AK23コホートが体重減少を示したことを示す。しかしながら、体重増加は、AK23及び治療を受けたマウスにおいて正常であった。パネルDは、72時間時点で採取された血清に対するIL6のELISA分析が、AK23コホートにおいて高レベルのサイトカインを示したが、「AK23+治療」群において、健常対照と同様であったことを示す。パネルEは、実験の生存分析を示す。全てのAK23マウスは、重度のPVを発症し、7日未満で安楽死させなければならなかった。全ての治療マウスは正常に行動し、生存している(各コホートについてn=3)。
【0233】
同等物
当業者であれば、ルーチンの実験以上のものを使用せずに、本明細書に具体的に記載された特定の物質及び手順に対する多数の同等物を認識するであろう、又は確認できるであろう。このような同等物は、本発明の範囲内であると考えられる。
【国際調査報告】