(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】二量体造影剤の製造
(51)【国際特許分類】
C07D 257/02 20060101AFI20241219BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20241219BHJP
A61K 49/10 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07D257/02
A61K31/555
A61K49/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535388
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022085615
(87)【国際公開番号】W WO2023110867
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ガッツェット,ソニア
(72)【発明者】
【氏名】ボイ,ヴァレリア
(72)【発明者】
【氏名】バニン,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】バラーレ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085KA09
4C085KA28
4C085KB12
4C085KB56
4C086AA04
4C086BC58
4C086HA05
4C086HA28
4C086MA01
4C086NA12
4C086ZC78
(57)【要約】
本発明は、ガドリニウム二量体造影剤[μ-[1-[ビス[2-(ヒドロキシ-κO)-3-[4,7,10-トリス[(カルボキシ-κO)メチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル-κN1,κN4,κN7,κN10]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトレート(6-)]]ジ-ガドリニウム錯体の製造方法に関する。このようなプロセスには、ワンポットで、得られた中間体を単離することなく行われる調製工程が含まれる。ガドリニウム二量体造影剤は、画像診断、特に磁気共鳴画像法(MRI)において使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
で示される二量体錯体化合物5の製造方法であって、以下の工程:
a)式1B
【化2】
[式中、Xはハロゲンアニオンであり、yは1~3の整数である]
で示される塩に、塩基性水溶液と、該塩基性水溶液に対し非混和性の有機溶媒とを混合し、式1Bの塩を含む不均一混合物を得ること;
b)工程a)の塩を変換して、式1A
【化3】
で示されるDO3Aトリ-tert-ブチルエステルを含む不均一混合物を得ること;
c)工程b)の不均一混合物から有機溶媒を回収し、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル式1Aを含む有機溶液を得ること;
d)式2
【化4】
で示される化合物を有機溶媒中に含む溶液を調製すること;
e)工程c)および工程d)の溶液を混和し、式3
【化5】
で示される化合物を含む溶液を得ること;
f)工程e)の溶液から化合物を単離することなく、式3の化合物からtert-ブチル保護基を除去して、式4
【化6】
で示されるそれぞれフリーのリガンドを含む溶液を得ること;
g)式4のフリーのリガンドを単離することなく、ガドリニウム金属イオンを工程f)の溶液に添加して、式5の二量体錯体を含む溶液を得ること;および
h)該二量体錯体を単離すること
を含み、式3の化合物の調製に続く全ての工程における反応溶媒が水性溶媒である、製造方法。
【請求項2】
工程a)の有機溶媒がエーテル、好ましくは、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程a)における有機溶媒の量が、塩1Bの量に対して、1.0~5.0w/wである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程a)における有機溶媒の量が、塩1Bの量に対して、1.2~3.0w/wである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
工程a)における有機溶媒の量が、塩1Bの量に対して、1.4~1.6w/wである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
工程a)における有機溶媒の量が、塩1Bの量に対して、1.5w/wである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
塩基性水溶液が塩基、好ましくは無機塩基、より好ましくは、KOH、NaOH、Na
2CO
3およびK
2CO
3からなる群から選択される無機塩基を含む、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
塩基が、塩1B1モルに対し1.0~4.0モルのモル比である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
塩基が、塩1B1モルに対し1.2~3.0モルのモル比である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
塩基が、塩1B1モルに対し1.7~2.3モルのモル比である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
塩基が、塩1B1モルに対し2.0モルのモル比である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
工程a)における塩基性水溶液の量が、塩1Bの量に対し2.0~10w/wである、請求項1~11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
工程a)における塩基性水溶液の量が、塩1Bの量に対し2.2~6.0w/wである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
工程a)における塩基性水溶液の量が、塩1Bの量に対し2.8~3.2w/wである、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
工程a)における塩基性水溶液の量が、塩1Bの量に対し3.0w/wである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
上記式の塩1Bのyが1であり、および/または上記式の塩1BのXが臭化物イオンである、請求項1~15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
工程d)が、D-グルカミンとエピクロロヒドリンとを反応させて、有機溶媒中に式2の化合物を含む溶液を得ることを含む、請求項1~16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
d1)D-グルカミンの水溶液を、有機溶媒中にエピクロロヒドリンを含む溶液に添加して、水/有機溶媒混合物中で式2の化合物を得;好ましくはエピクロロヒドリンの量が化学量論量を超えるわずかに過剰量であり;および
d2)前記混合物から水を除去して、有機溶媒中に式2の化合物を含む溶液を得ること
を含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
工程e)が、
e1)工程d)で得た式2の化合物を、塩基の存在下で、工程c)で得たDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aと反応させ、有機粗溶液を得ること;
e2)得られた有機粗溶液を、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈し、水/有機粗製物を得ること;
e3)水/有機粗製物を、好ましくはクロマトグラフィーにより精製し、水/有機溶媒混合物中で式3の化合物を得ること;および
e4)前記混合物から有機溶媒を除去して、式3の化合物を含む水溶液を得ること
を含む、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
有機粗溶液を水/有機溶媒混合物で希釈することで生じる工程e2)の水/有機粗製物に水溶液を添加することを含む、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
工程f)が以下を含む:
f1)工程e)で得た式3の化合物を含む水溶液に酸を添加し、tert-ブチル保護基を除去して、式4のフリーのリガンドを含む酸性溶液を得ること;
f2)前記酸性溶液に塩基を添加し、フリーのリガンドを含む実質的に中性の水溶液を得ること;および
f3)得られた中性溶液を精製した後、場合により濃縮して、式4のフリーのリガンドを含む水溶液を得ること
を含む、請求項1~20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
工程f3)が、
前記中性溶液を蒸留して、生成したt-ブタノールを除去すること;
蒸留残留物を脱塩すること;
脱塩した溶液をクロマトグラフィーで精製して、式4のリガンドを含む水溶液を得ること;および
場合により、前記水溶液を濃縮すること
を含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
工程g)が、
g1)工程f)で得た式4のリガンドを含む溶液にガドリニウム塩を添加して、式5の二量体錯体を含む溶液を得ること;
g2)前記溶液を、好ましくはクロマトグラフィーにより、精製して、前記二量体錯体を含む溶液を得ること;および
g3)前記溶液を濃縮すること
を含む、請求項1~22のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
工程h)が、
工程g)から直接回収された溶液の噴霧乾燥により、式5の二量体錯体を白色固体として単離することを含む、請求項1~23のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像法(MRI)において造影剤として使用することができる[μ-[1-[ビス[2-(ヒドロキシ-κO)-3-[4,7,10-トリス[(カルボキシ-κO)メチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル-κN1,κN4,κN7,κN10]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトレート(6-)]]ジ-ガドリニウム錯体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法(MRI)はよく知られた画像診断技術であり、臨床診断において使用される適応症の数は増加している。
【0003】
ガドリニウム(Gd(III))錯体は、その長い緩和時間により、MRIの造影剤として一般的に使用されている。
【0004】
WO2017/098044(本出願と同一出願人)は、MRI造影剤として有用な二量体常磁性錯体を開示している。多数の特定の化合物のなかで、この出願は、式
【化1】
で示される、1-[ビス[2-ヒドロキシ-3-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトールリガンドのジ-ガドリニウム錯体(以下、「二量体錯体化合物5」または単に「化合物5」と称する)を開示している。化合物5は、特に緩和能および忍容性の点で興味深い特性を示し、市販の造影剤で必要とされる用量よりも低い常磁性錯体の用量でin vivo画像診断を実施するのに適している。
【0005】
WO2017/098044はさらに、化合物5を合成するための以下の製造法(スキーム1)を開示している。
【化2】
【0006】
WO2017/098044において開示された製造法の主な工程は:
a)Org.Synth.2008年,85,10に開示のとおり実質的に実行される、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル(化合物1A)の調製し単離すること;
b)MeOH中50℃で26時間、D-グルカミンを、エピクロロヒドリンでアルキル化する(モル比1:4.95)ことによる中間体2の調製し、粗反応物の溶媒留去により濃縮生成物を単離すること;
c)DMSOおよびEt3N中、DO3Aトリ-tert-ブチルエステルを中間体2でアルキル化し、溶媒留去およびAmberlite XAD(登録商標)1600による粗残留物の精製により、保護されたリガンド3を得ること;
d)ジクロロメタン中、TFA酸およびTIPSを用いてリガンド3を脱保護し、粗反応物の溶媒留去し、Amberlite XE 750により残留物を精製すること;
e)水中で、塩化ガドリニウム六水和物の化学量論的添加により、リガンド4を錯体化し、溶液の濾過および溶媒留去によって得られた粗生成物を、Amberchrome CG161M樹脂で精製すること
を含む。
【0007】
WO2017/098044に開示された製法では、個々の中間体それぞれの合成および単離を必要とし、それは溶媒を蒸発させて残留物とすることによって一般的に実行される。このような単離工程は、大規模製造に適さないうえ、プロセスの全般的な収率および効率の低下が避けられない。
【0008】
さらに、WO2017/098044に開示された製法には、TFA、TIPSおよびDCMのような取り扱いが困難な危険性の高い物質(harsh material)の使用が含まれ、合成装置の腐食とそれによる摩耗をひき起こす恐れ、および/または作業者の健康にとって安全ではない恐れがあるため、特に大規模での実施(例えば産業プロセス)には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、一般に、二量体錯体化合物5の最適化された製造方法に関し、これはワンポットで実行される、得られた中間体の単離することのない調製工程を含み、これにより時間短縮と全体の収率および効率の改善の両方を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
より具体的には、本発明は、次式
【化3】
で示される二量体錯体化合物5の製造方法であって、以下の工程:
a)式1B
【化4】
[式中、Xはハロゲンアニオンであり、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物イオンからなる群から選択され、yは1~3の整数であり、好ましくはyは1である]
で示されるDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの塩に、塩基性水溶液と、該塩基性水溶液に対し非混和性の有機溶媒とを混合し、塩1Bを含む不均一混合物を得;それにより
b)工程a)の塩1Bを変換して、式1A
【化5】
で示されるDO3Aトリ-tert-ブチルエステルを含む不均一混合物を得ること;
c)工程b)の不均一混合物から有機溶媒を回収し、式1AのDO3Aトリ-tert-ブチルエステルを含む有機溶液を得ること;
d)式2
【化6】
で示される化合物を有機溶媒中に含む溶液を調製すること;
e)工程c)およびd)の溶液を混和し、式3
【化7】
で示される化合物を含む溶液を得ること;
f)工程e)の溶液から化合物を単離することなく、式3の化合物からtert-ブチル保護基を除去して、式4
【化8】
で示されるそれぞれフリーのリガンドを含む溶液を得ること;
g)式4のフリーのリガンドを単離することなく、ガドリニウム金属イオンを工程f)の溶液に添加して、式5の二量体錯体を含む溶液を得ること;および
h)該二量体錯体を単離すること
を含む、製造方法に関する。
【0011】
本発明の好ましい態様において、式3の化合物の調製に続くすべての工程における反応溶媒は、水性溶媒または水性溶媒混合物である。水性溶媒または水性溶媒混合物は、有利には、TFA、TIPSおよび/またはDCMのような危険性の高い物質を含まない。
【0012】
本発明のプロセスの工程a)~c)は、一般に、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含む溶液の調製を含む。特に、1Aを含む有機溶液は、以下に詳細に説明するように、2つの非混和性溶媒を使用して、それぞれ保護されたDO3A塩1Bを保護されたDO3A 1Aに変換することによって調製される。
【0013】
本発明のプロセスの工程d)は、式2の化合物の調製を含んでなり、D-グルカミンのエピクロロヒドリンによるアルキル化によって得ることができる。アルキル化は、有機溶媒、例えば双極性有機溶媒またはそれらの水性混合溶媒中で実施される。適切な有機溶媒としては、例えばDMAC、DMF、MeOHなどのアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。より好ましくは、有機溶媒はDMACである。混合物から過剰な水性溶媒および/またはエピクロロヒドリンを蒸留することにより、アルキル化された生成物を単離および/またはさらに精製することなく、次の工程でそのまま使用するのに適した、有機溶媒中に式2の化合物を含む溶液が得られる。
【0014】
本発明のプロセスの工程e)は、式2の中間体化合物とDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aとの縮合(または本明細書において互換的に使用されるカップリング)を含み、式3の保護されたリガンドが形成される。縮合反応は、好ましくは、例えば形成されたHClのアクセプターとして作用する塩基の存在下で実施される。例えば好適な塩基としては、Amberlite GC 400、NMM、tBuOK、Et3N、DIPEAなどの陰イオン交換樹脂が挙げられ、Et3NおよびDIPEAが好ましく、DIPEAが特に好ましい。
【0015】
一実施態様において、縮合反応は、塩基および工程c)から直接回収されたDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含んでなる有機溶液を、工程d)から回収された化合物2を含んでなる溶液に添加することによって実施され、有機溶媒混合物中で式3の縮合生成物を含んでなる有機粗溶液が得られる。次いで、有機粗溶液を精製して水/有機溶媒混合物中の精製生成物を得、場合により及び好ましく有機溶媒を最終的に蒸留して、保護されたリガンドそのものを単離および/またはさらに精製することなく、次の工程でそのまま使用できる水性溶媒または水性溶媒混合物中の式3の保護されたリガンドを得ることができる。
【0016】
本発明のプロセスの工程f)は、実質的に、式3の保護されたリガンドからカルボン酸保護基を除去して、式4で示されるそれぞれフリーのリガンドを含む水溶液または水性混合物を得ることを含む。tert-ブチル保護基の加水分解による脱保護は、当業者に公知の反応物および条件を用いて、酸性および塩基性の両方の条件下で実施することができる。一実施形態では、プロセスの工程e)から直接回収された保護リガンドを含む水溶液または水性混合物を酸性化することによって脱保護を行い、式4のフリーのリガンドを含む酸性溶液が得られる。酸性化は、好ましくは、例えばHCl、H2SO4およびH3PO4から選択される酸の添加によって行う。好ましい実施形態では、脱保護はHClを用いて行われる。次いで、酸性溶液の中和、その後の精製および得られた混合物の部分的な濃縮により、リガンド4を含む水溶液または水性混合物が回収され、単離することなく、錯体形成工程でそのまま使用される。
【0017】
本発明のプロセスの工程g)は、リガンドをガドリニウム金属イオンと錯形成させて所望の二量体錯体5を得ることを含む。錯体化反応は、例えば、リガンドを含む溶液に適切なGd(III)誘導体、具体的にはGd2O3などの酸化物またはガドリニウム塩を化学量論的に添加することにより、公知の手順に従って都合よく実施することができる。一実施形態では、錯形成反応は、工程f)から直接回収されたリガンドを含む溶液にGdCl3を添加することによって実施される。得られた混合物を約5から約7のpH値に調整し、撹拌しながら維持して、ガドリニウム錯体5を含む水溶液または水性混合物を得、これを精製し、濃縮して、所望の純度を有する所望の二量体錯体5を含む溶液を得る。
【0018】
本発明のプロセスの工程h)は、所望のガドリニウム錯体5を最終的に単離する工程である。この工程は公知の手順に従って都合よく実施することができる。一実施形態では、工程g)から回収された精製された錯体を含む溶液を噴霧乾燥して、必要な純度仕様を満たす白色固体として所望の生成物を得る。
【0019】
興味深いことに、本発明の製造方法は、先行技術のプロセスで必要とされ、例えば産業プロセスのような大規模で実施する場合に取り扱いが困難な、トリフルオロ酢酸(TFA)などの危険性の高い試薬やジクロロメタンなどの危険性の高い溶媒の使用を、回避するかまたは大きく低減する。
【0020】
さらに、本発明の製造方法は、ワンポットで実行される工程を含み、大規模での実施に好適であり、調製された前駆物質(1Aなど)または中間体のいずれも単離を必要としない。結果として、反応時間の短縮を促し、上述のように大規模で容易に実装されることに加えて、本製造方法は、有利なことに、プロセス全体の収率を、10%(WO2017098044で開示されたプロセスで得られる)から、少なくとも20%、好ましくは25%、典型的には約28%、有利には29%を超える収率まで、大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、別途規定されていない限り、用語「中間体」(例えば、D-グルカミンとエピクロロヒドリンのアルキル化反応から生じる式2の化合物、または式3の保護されたリガンドに関して使用される)は、本製造方法の化学合成または調製工程の過程で生成される、それ自体は最終生成物ではないが、本製造方法の最終生成物、すなわち二量体錯体化合物5を得るために、1つ(またはそれ以上)のさらなる反応、例えばアルキル化/脱保護/錯体化反応を必要とする分子をその意味するところに含む。
【0022】
別途規定されていない限り、用語「前駆物質」(例えば、化合物1Aに関して使用される)は、前記前駆物質を含むかまたはそれに由来する別の分子への転換を促す化学反応に関与する分子をその意味するところに含む。
【0023】
本明細書において、「水性溶媒」という用語は、溶媒として作用する水および水溶液、例えば生理食塩水をその意味するところに含む。水溶液は、水と混和可能な少量の有機溶媒を含む可能性があり、例えば、水と混和可能な有機溶媒の体積割合は10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下である。好ましくは、水性溶媒は水である。
【0024】
本明細書で互換的に使用される「水/有機溶媒混合物」またはより単純に「水性溶媒混合物」という表現は、水性溶媒を含む2種以上の溶媒からなる混合物、例えば、水と1種以上の有機溶媒からなる混合物が互いに混和し、均質な溶媒混合物を与えるものであり、1種以上の有機溶媒の体積百分率は10%より高く、好ましくは15%より高く、より好ましくは20%より高い。好適な例としては、例えば式3の化合物のクロマトグラフィー精製で溶離液として使用される、水とアセトニトリルの混合物(水/MeCN)、または例えば工程e)の縮合反応から生じる粗混合物を水で希釈した後に得られる、水/MeCN/DMACの混合物が挙げられる。本発明の好ましい態様により、水性溶媒混合物(同様に、水性溶媒において、存在する場合)の1つまたは複数の有機溶媒は、危険性の高い溶媒または物質ではなく;実際、水性溶媒混合物は、好ましくは、TFA、TIPSおよび/またはDCMなどの危険性の高い溶媒を含まない。
【0025】
同様に、「水溶液」および「水性混合物」という表現は、それぞれ、水を含有する溶液または混合物をその意味するところに含む。好適な例としては、それぞれ、水中(より一般的には、水性混合物中)の1種以上の化合物、例えば試薬、酸、塩基または反応生成物を含む溶液、および有機溶媒または溶媒混合物中の反応混合物への水または水溶液の添加から得られる水/有機混合物などの混合物が挙げられる。例えば、「塩基性水溶液」という用語は、少なくとも塩基を含む溶液を意味する。
【0026】
本明細書によれば、特に断りのない限り、「不均一混合物」という用語は、二相性の不均一液体混合物、すなわち互いに非混和性の2液を含んでなる混合物を指す。
【0027】
それが結合する基の機能を保持するために適した、保護する基を表す。特に、保護基は、カルボキシル官能基を保持するために使用される。より具体的には、該用語は、tert-ブチルエステルの形成によって、リガンドのカルボキシル基のキレート機能を保持するtert-ブチル基を表す[保護基および脱保護条件に関する一般的参照として、T.W.GreenおよびP. G. M. Wuts;Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley, N.Y. 1999, third editionを参照されたい]。
【0028】
本発明の一実施形態は、本質的に、以下の一般的な合成スキーム2
【化9】
に示される、二量体化合物5の製造方法に関し、
この方法は、主要工程として:
a)-c)二相性の不均一混合物を使用して、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Bの塩をDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aに変換し、次いで有機相を回収して有機溶媒中にDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含む有機溶液を得ること;
d)D-グルタミンを、場合によりDMACなどの有機溶媒の存在下、エピクロロヒドリンと反応させて、式2の化合物を含む溶液を得ること;そして生成物を単離することなく
e)工程d)で得た式2の化合物を、塩基の存在下、工程c)で得たDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aと反応させ、場合により溶液を濃縮して有機粗製物を得、有機粗製物を水、水/有機溶媒混合物および/または場合により水溶液で希釈して水/有機粗製物を得、水/有機粗製物を精製し、場合により有機溶媒を除去して、式3の保護されたリガンドを含む水溶液または水性混合物を得ること;そして生成物を単離することなく
f)工程e)で得た式3の保護されたリガンドを含む溶液を酸性化して、それぞれ脱保護されたリガンド4を含む酸性水溶液または水性混合物を得、酸性溶液を中和し、得られた中性溶液を精製して、脱保護されたリガンド4を含む水溶液または水性混合物を得ること;そして脱保護されたリガンド4を単離することなく
g)リガンド4を含む溶液にガドリニウム金属イオンを添加して、対応する錯体化合物5を含む溶液を得ること;および
h)錯体を単離すること
を含む。
【0029】
工程a)
工程a)では、塩1Bを含む不均一混合物を得ることができる。実際、このような不均一混合物を使用することにより、変換工程b)の反応時間を短縮することが可能であることが見出されている。
特に、工程a)では、塩1Bを、塩基性水溶液および塩基性水溶液と非混和性の有機溶媒と混和し、これにより2つの非混和性液体(塩基性水溶液および塩基性水溶液と非混和性の有機溶媒)が不均一混合物を形成する。即ち、不均一混合物は、塩基性水溶液と有機溶媒の両方と塩1Bを含んでなる。
【0030】
塩1Bは、以下の式を有する
【化10】
(式中、Xはハロゲンアニオンであり、yは1~3の整数である)。好ましい実施形態によれば、yは1であり、および/またはXは臭化物イオン(Br
-)である。より好ましい実施形態によれば、yは1であり、Xは臭化物イオン(Br
-)であり、塩1BはDO3A 3t-Bu-HBrである。
【0031】
塩1Bは公知の方法に従って得ることができる。例えば、WO2021116165に詳細に開示されているように、塩1Bは、以下の工程により有利に得ることができる:
I)シクレン(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)を、式XCH2OOtBuの酢酸エステル(式中、Xは上記で定義した通りである)と、有機溶媒中、補助塩基の存在下で反応させて混合物を得ること;
II)工程I)の混合物に水を、好ましくは工程I)のシクレンの量に対して2.5~10倍w/wの量で添加し、塩1Bの懸濁液を得ること;および
III)塩1Bを回収し、洗浄すること。
【0032】
好ましい実施形態によれば、塩基性水溶液と非混和性の有機溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)などのエーテルである。塩基性水溶液と非混和性であるこれらのエーテルは、変換工程b)における塩1Bの変換に特に有効であることが見出されている。
【0033】
好ましい実施形態によれば、工程a)における有機溶媒の量は、塩1Bの量に対して、1.0~5.0w/w、好ましくは1.2~3.0w/w、より好ましくは1.4~1.6w/w、さらに好ましくは1.5w/wである。
【0034】
塩基性水溶液は塩基を含み、塩基は好ましくは無機塩基、例えばKOH、NaOH、Na2CO3およびK2CO3からなる群から選択される無機塩基である。このような塩基は、好ましくは、塩1Bの1モルに対して、1.0~4.0モル、好ましくは1.2~3.0モル、より好ましくは1.7~2.3モル、さらに好ましくは2.0モルのモル比であり得る。これらのモル比は、特に塩1Bがy=1を有する場合に、変換工程b)における塩1Bの変換に特に有効であることが見出されている。塩1Bがy=2または3である場合、塩基性水溶液の量は、好ましくは上記よりも多く、特に好ましくは、yが1である場合に上に記載した量よりそれぞれ2倍または3倍多い。
【0035】
好ましい実施形態によれば、工程a)における塩基性水溶液の量は、塩1Bの量に対して、2.0~10w/w、好ましくは2.2~6.0w/w、より好ましくは2.8~3.2w/w、さらに好ましくは3.0w/wである。
【0036】
工程a)で得られた不均一混合物は、そのまま(すなわち、不均一混合物から塩1Bを分離することなく)次の変換工程b)で使用される。
【0037】
工程b)
工程b)は、塩1BをDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aに変換する。具体的には、工程b)では、塩1Bが、塩基性水溶液の塩基性条件により、対応するDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aに変換される。DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aは、塩基性水溶液よりも有機溶媒中でより可溶性であるため、変換されたDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aは、有機溶媒中で可溶化していることが見出され得る。
【0038】
工程b)は不均一(二相)媒体中で起こる反応であり、従って、好ましくは工程a)によって得られた不均一混合物を撹拌して二相間の相互作用を増大させることによって、好ましくは5時間未満の時間、より好ましくは1~5時間、さらに好ましくは1.5~3時間、最も好ましくは2時間実施される。
【0039】
一実施形態によれば、工程b)は、例えば、撹拌しながら、上記に開示した時間、15~50℃の範囲、好ましくは20~30℃の範囲、より好ましくは23~27℃の範囲、さらに好ましくは25℃の範囲に温度を調整および/または維持する。
工程b)によって得られた、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含む不均一混合物は、有利には次の工程c)でそのまま使用される。
【0040】
工程c)
工程c)は、前の工程b)の不均一混合物から有機溶媒を回収する。上記のように、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aは、有機溶媒内に可溶化していることが見出され得、それによって、有機溶媒を回収することは、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含む有機溶液を得ることに相当する。
この回収工程c)は、例えば不均一混合物から塩基性の水性溶媒を廃棄するなど、公知の方法に従って実施することができる。
【0041】
工程c)の後および工程e)の前に、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含む有機溶液を溶媒変更工程に付し、溶媒を、より縮合工程e)に好適かつ効率的であることが見出された別の有機溶媒に変更する。具体的には、工程c)の後および工程e)の前に、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含む有機溶液を、好ましく溶媒交換工程に付し、有機溶媒がMeCNまたはC2-C4アルコール、好ましくはイソプロパノールを含む、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの有機溶液を得る。好ましい実施形態によれば、有機溶液がMTBEのようなエーテルである場合、溶媒変更工程は、(i)有機溶液にMeCNまたはC2-C4アルコール、好ましくはイソプロパノールを添加する工程と、(ii)蒸留により有機溶液からエーテルを除去する工程とを含み、これにより、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含む有機溶液の有機溶媒は、MeCNまたはC2-C4アルコール、好ましくはイソプロパノールを含む。溶媒変更工程を、C2-C4アルコール、好ましくはイソプロパノールの添加によって行う場合、そのようなアルコールは、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの量に対して、好ましくは0.4~0.8w/w、より好ましくは0.5~0.7w/wの量で添加する。
【0042】
工程c)の後および工程e)の前、例えば上に開示した溶媒交換工程の後、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを含む有機溶液は、好ましくは40~80%w/w、好ましくは50~70%w/w、より好ましくは56~63%w/wの濃度を有する。このような濃度は、慣用の手段、例えば、有機溶液を濃縮することによって、例えば溶媒を蒸発させることによって、得られる。上記の濃度範囲は、工程e)のコンジュゲーション反応を改善することが見出された。
【0043】
工程d)
本工程は、D-グルカミンとエピクロロヒドリンとを反応させて、式2の中間体化合物の溶液を調製することを含む。一実施形態では、反応は、溶媒の混合物中で、好ましくは水/DMAC中で、化学量論的量を超えるわずかに過剰量のエピクロロヒドリン、例えばD-グルカミン1モルあたり、2~3、より好ましくは約2.2モルのエピクロロヒドリンを使用することによって実施される。好ましくは、工程d)の反応は、化学量論量を超えるわずかに過剰量のエピクロロヒドリン、例えばD-グルカミン1モルあたり、2~3モル、より好ましくは2.05~2.5モル、さらにより好ましくは約2.2モルのエピクロロヒドリンを使用することによって実施される。
【0044】
好ましい実施形態では、本製造方法の工程d)は:
d1)D-グルカミンの水溶液を、DMAC中のエピクロロヒドリンの溶液に添加し、水/DMAC溶媒混合物中の式2の中間体化合物を得ること;および
d2)溶媒混合物から水を除去し、有機溶媒中の式2の化合物の溶液を得ること
を含む。
【0045】
D-グルカミンのエピクロロヒドリンの溶液への添加は、好ましくは室温にて、約2時間で行って混合物を得、これを撹拌下、15~30℃、好ましくは15~25℃、より好ましくは20~25℃の温度にて、16~24時間、好ましくは16~20時間、より好ましくは約17時間維持する。
【0046】
次いで、混合物を蒸留して、水および場合によりエピクロロヒドリン残留物を除去する。蒸留は、好ましくは減圧下、好ましくは40~65℃の温度で行ない、残留水分含量が好ましくは<2%w/wの、DMAC中の式2の所望の中間体化合物の溶液を得る。得られた溶液は、生成物の単離や精製を必要とすることなく、その後の縮合反応にそのまま使用する。
【0047】
工程d)と工程a)~c)は並行して実施することもできるし、任意の順序で実施することもできる(例えば、工程a)~工程c)を最初に実施し、次に工程d)、あるいは工程d)を最初に実施し、次に工程a)~c)を実施)。
【0048】
工程e)
本工程は、本質的に、Et3N、またはより好ましくはDIPEAなどの塩基の存在下で、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aと中間体2とを縮合させることを含む。縮合は、好ましくは、塩基および工程c)から回収されたMeCNまたはC2-C4アルコール(イソプロパノールなど)中のエステル1Aの溶液と、工程d)から直接回収されたDMAC中の中間体2の溶液とを混和することによって実行され、MeCN/DMACまたはアルコール/DMAC有機溶媒の混合物中の式3の保護されたリガンドを含む原溶液(または粗製物)を得、次いでこれを精製する。
【0049】
一実施形態では、縮合反応から生じる有機粗溶液は、水で希釈するかまたは部分的に濃縮した後、水または水性溶媒混合物、好ましくは水/MeCNで希釈し、水/有機粗製物、または本明細書で互換的に使用される水性粗製物が得られる。
【0050】
好ましい実施形態では、このようにして得られた水/有機粗製物、または好ましくは縮合反応から生じる有機粗製物に、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル塩酸塩を含む反応塩の沈殿を促す水溶液を添加した後、沈殿を濾過によって除去し、水/有機濾過溶液が得られる。水/有機粗製物または水/有機濾過溶液は、次に、好ましくはクロマトグラフィーによって精製される。
【0051】
一実施形態では、塩酸塩の沈殿を促すために使用される水溶液は、アンモニア水である。
【0052】
より具体的には、本製造方法の工程e)は、好ましくは:
e1)工程d)で得た式2の中間体化合物を、塩基、好ましくはDIPEAの存在下で、工程c)で得たDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aと縮合させ、有機溶媒混合物中の式3の縮合生成物および反応塩を含む有機粗溶液を得ること、ならびに任意で有機粗製物を濃縮すること;
e2)工程e1)の有機粗製物を、水または水/有機溶媒混合物、好ましくは水/MeCNで希釈し、水/有機粗製物を得ること;
e3)場合により、水/有機粗製物に、反応塩の沈殿を促す水溶液を添加し、濾過によって沈殿を除去し、水/有機濾過溶液を得ること;または
e4)反応塩の沈殿を促す水溶液で、工程e1)の有機粗製物を希釈し、濾過によって沈殿を除去し、水/有機濾過溶液を得ること;
e5)工程e2)の水/有機粗製物、または工程e3)もしくはe4)の水/有機濾過溶液を精製して、保護された生成物の単離またはさらなる精製を必要とすることなく次の脱保護工程で使用し得る、水/有機溶媒混合物中の式3の保護されたリガンドの溶液を得ること;および
e6)任意で混合物から有機溶媒を除去して、保護された生成物の単離またはさらなる精製を必要とすることなく次の脱保護工程で使用される、水中、またはより一般的に水性溶媒中の式3の保護されたリガンドの溶液を得ること
を含む。
【0053】
縮合反応は、好ましくは、塩基、および本製造方法の工程c)から回収されたMeCNまたはC2-C4アルコール(例えばイソプロパノール)中にエステル1Aを含む溶液を、工程d)から回収されたDMAC中の式2の中間体化合物を含む溶液に添加することによって実行される。
【0054】
塩基およびエステル1Aの好適な量は、反応させるD-グルカミンの量に対して好都合に決定される。一実施形態では、縮合反応は、反応させる出発物質のD-グルカミンの1モル当たり、1.6~2.4モル、好ましくは約1.8モルのエステル1A、および2~4モル、好ましくは約2.3モルのDIPEAを使用することによって実行される。
【0055】
添加は、好ましくは40~50℃の温度で実施される。次に、縮合反応は、50~80℃、好ましくは65~75℃の温度で、例えば60~80時間、好ましくは70~75時間実行され、MeCN/DMACまたはアルコール/DMAC溶媒混合物中の所望の式3の縮合生成物および塩酸塩を含む原溶液を得る。
【0056】
一実施形態では、次に、原溶液は水で希釈され、好ましくは、約25~30%、より好ましくは約25%(w/w)の濃度を有する水/有機粗製物を得る。好ましい一実施形態では、水性粗製物は、重量で、混合物中の有機溶媒、具体的にはMeCNの量と少なくとも等しい量の水を含み;より好ましくは、粗製物は、約60:40の水:MeCN比を有する。
【0057】
水/有機粗製物は、次に、好ましくはクロマトグラフィーによって、より好ましくは樹脂で、さらにより好ましくはAmberlite XAD(登録商標)1600などの吸着性樹脂で精製される。好ましい実施形態では、水性粗製物は、Amberlite XAD(登録商標)1600などの吸着性樹脂で、水/MeCN混合物を溶離液として使用することによって精製され、未反応のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aと純粋な縮合生成物の両方を、水/MeCN溶媒混合物中の別々の画分として得ることを可能とする。
【0058】
別の実施形態では、縮合反応から生じる原溶液は、最初に、少なくともMeCNを、例えば蒸留によって除去することによって濃縮される。濃縮された溶液は、次に、水または水:MeCNの混合物で希釈され、上記の水:MeCN比を有する水/有機粗製物を得ることが可能であり、次に、これは上述したようにクロマトグラフィーによって精製される。
【0059】
縮合反応から得られる原液が溶媒混合物としてアルコール/DMACからなる場合、アルコールを除去し(例えば蒸留により)、次いで得られた溶液を水または水:MeCNの混合物で希釈され、上記の水:MeCN比を有する水/有機粗製物を得ることが可能であり、次に、これは上述したようにクロマトグラフィーによって精製される。
【0060】
場合により、上述したように得られた水/有機粗製物は、アンモニア水などの水溶液を添加されてもよく、これは混合物の冷却によって、塩酸塩としての未反応DO3Aトリ-tert-ブチルエステルの沈殿を促し、これを次に濾過によって除去し、再利用してもよい。大部分の塩化物塩を除いた濾過溶液は、次に、上述したようにクロマトグラフィーによって、Amberlite XAD(登録商標)1600樹脂などの吸着性樹脂で精製され、残留DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aおよび純粋な縮合生成物を、水/MeCNなどの水/有機物の溶媒混合物中の別々の画分として得る。
【0061】
好ましい実施形態では、例えばアンモニア水を含む水溶液が、縮合反応から生じる有機原溶液に直接添加され、混合物の冷却によって、塩酸塩としての未反応DO3Aトリ-tert-ブチルエステルの沈殿を促し、これを次に濾過によって除去し、再利用してもよい。大部分の塩化物塩を除いた濾液は、次に、上述したようにクロマトグラフィーによってAmberlite XAD(登録商標)1600樹脂などの吸着性樹脂で精製され、残留DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aおよび純粋な縮合生成物を、水/MeCNなどの水/有機物の溶媒混合物中の別々の画分として得る。
【0062】
場合により、純粋な画分からの、例えば減圧下での、有機溶媒の最終蒸留により、5~15%(w/w)、好ましくは約10%(w/w)の最終濃度を有する水溶液中の式3の縮合生成物が得られ、これは中間体の単離または追加の精製を必要とすることなく、後続する脱保護工程においてそのまま使用するのに適している。
【0063】
興味深いことに、上記手順の工程は、保護された縮合生成物3を水性溶媒または水性溶媒混合物中で得ることができ、したがって、水、より一般的には水性溶媒または水性溶媒混合物を、唯一のまたは主要な反応溶媒の1つとして使用することにより、その最終錯体5への脱保護および錯体化を実行することが可能になる。水性溶媒中の保護された縮合生成物3は、当業者に公知のさまざまな方法によって得ることができる。例えば、上述のように、例えば、工程d)で得た式2の化合物と工程c)で得たDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを反応させることによって得られる式3の化合物の有機粗溶液は、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈し、水/有機粗製物を得ることができる。有機溶媒を除去する前に、水/有機粗製物を、クロマトグラフィー、好ましくは樹脂、より好ましくはAmberlite XAD(登録商標)1600などの吸着性樹脂を介して精製することができる。次に、有機溶媒を除去して、例えば減圧下での蒸留により、式3の化合物の水溶液を得ることができる。また、水性溶媒混合物中の保護された縮合生成物3は、当業者に公知のさまざまな方法によって得ることもできる。例えば工程d)で得た式2の化合物と工程c)で得たDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを反応させることによって得られる式3の化合物の有機粗溶液は、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈することができ、その結果、生成物3を単離することなく、後続の工程で使用する水/有機溶液を得ることができる。
【0064】
したがって、本発明の好ましい態様によれば、本発明は、式3の化合物の溶液を、式3の化合物の水溶液、または式3の化合物の水性混合物に変換するさらなる工程を含む。好ましくは、このさらなる工程は:(i)式3の化合物の溶液を、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈し、水性混合物(または水/有機溶液)を得ること、および(ii)場合により、有機溶媒を、例えば蒸留によって除去して水溶液を得ることによって実行される。
【0065】
工程f)
この工程は、カルボキシル保護基を除去することにより、式3の保護されたリガンドを脱保護し、遊離リガンド4の水溶液または水性混合物を得ることを含む。この反応は、好ましくは、本製造方法の工程e)から直接回収された式3の保護されたリガンドを含む水溶液または混合物を酸性化することによって実施される。
一実施形態では、本製造方法の工程f)は以下を含む:
f1)工程e)から回収された式3の化合物の水溶液または水性混合物に酸を添加し、遊離リガンド4の酸性溶液を得る;
f2)酸性溶液に塩基を添加し、実質的に中和されたリガンド4の溶液を得る;および
f3)中和溶液の精製とその後の任意の濃縮により、リガンドの単離を必要とせずに次の錯形成反応にそのまま使用できる遊離リガンド4を含む水溶液または水性混合物を得る。
【0066】
一実施形態では、式3の保護された化合物を含む溶液は、酸、例えば34%HCl水溶液の添加により酸性化される。酸性化は、大過剰のHCl(例えば、保護された化合物3のモル量の30~100倍、好ましくは30~80倍、より好ましくは40~50倍)を使用して行われる。
【0067】
酸の添加は20~35℃、好ましくは30~35℃の温度で行う。次いで、得られた溶液を、30~40℃で、10~36時間、好ましくは25~30時間撹拌下に維持し、例えばクロマトグラフィーによりリガンドの脱保護を行う。
【0068】
次いで、酸性溶液を例えば25℃に冷却し、塩基、好ましくはNaOHを加えて中和し、最終pHが6.5~7.5の原液を得、これを精製する。
【0069】
好ましくは、精製工程には、i)中和溶液を蒸留して、生成したt-ブタノールを除去する、ii)蒸留残留物を脱塩する、iii)脱塩した溶液をクロマトグラフィーで精製することが含まれる。
【0070】
特に、一実施形態では、塩基の添加により得られた溶液をまず蒸留し、好ましくは40~60℃の温度で、生成したt-ブタノールを除去する。次いで、蒸留残留物を、好ましくはナノ濾過によって脱塩し、回収した溶液を精製する。
【0071】
一実施形態では、ナノ濾過によって得られた溶液は、まず、例えば、40~60℃、好ましくは約50℃にて、減圧下、好ましくは23~27%(w/w)の濃度まで濃縮した後、樹脂、より好ましくはAmberlite XAD(登録商標)1600での溶出によって精製する。溶出液は、任意にカルボプロン4Nなどの活性炭で処理し、約50℃にて減圧下で濃縮し、最終濃度が好ましくは8~25%の式4のリガンドを含む水溶液または水性混合物を得、リガンドを単離することなく、次の錯形成反応にそのまま使用する。
【0072】
有利には、上記手順は、水を単独でまたは主要な反応溶媒の1つとして使用することを含み、その結果、有機溶媒、特に上述の先行技術のプロセスに必要とされるDCMのような危険性の高い溶媒や、TFA、TIPSなどの危険性の高い反応物の使用が回避または低減することができる。これらの危険性の高い物質は取り扱いが難しく大規模製造には適さない。その上、この工程は、水溶液または水性混合物中で所望のリガンドが得られ、単離を必要とすることなく、錯体化反応にそのまま使用できる。
【0073】
工程g)
本工程は、式4の二量体リガンドをガドリニウムイオンと錯形成させ、所望のキレート錯体5を含む水溶液または水性混合物を得ることを含む。
より具体的には、好ましくは、以下の工程を含む:
g1)工程f)から回収したリガンドを含む溶液に、GdCl3などのガドリニウム塩を添加して、二量体キレート錯体5を含む混合物を得る;
g2)塩基を添加して、pH約5~約7の混合物を得る;
g3)混合物を精製し、式5の二量体錯体を含む溶液を得る;および
g4)回収した溶液を濃縮する。
【0074】
この反応は、好ましくは、前工程で回収したリガンドを含む溶液に直接GdCl3を添加することにより行われる。添加は、好ましくは25~45℃の温度で行われる。リガンドの網羅的に錯体化させるのに必要なGdCl3の量は、例えば硫酸銅を滴定剤として用いるなど、公知の手順に従うガンド溶液の滴定によって決定される。
【0075】
一実施形態では、式4のリガンドと添加したGdCl3との比は、1:1.98~1:2.02(mol/mol)であり、より好ましくは、添加したランタニドイオンを確実に消費するために1:2.00である。
【0076】
添加後、得られた混合物のpHを、塩基、好ましくはNaOHの添加によって、約5~約7.5の範囲に調整する。
【0077】
例えば、一実施形態では、GdCl3を、例えば20~25℃の温度でリガンド溶液に添加する。得られた混合物は、NaOHを添加してpH7~7.5、例えばpH約7に調整した後、20~25℃にて約25時間撹拌しながら維持し、リガンドの網羅的錯体形成を達成させる。
【0078】
別の一実施形態では、GdCl3と、pHを所望の中性の値に維持するのに必要な量のNaOHを同時に添加した後、混合物を上記のように約25時間撹拌しながら維持する。
【0079】
好ましい実施形態では、GdCl3を添加して得られた混合物を、pH約5~約6、好ましくは5~5.6、より好ましくは約5.3に調整した後、約40℃にて1~4時間、例えば約2時間撹拌しながら維持する。次いで、フリーのGd3+、リガンドまたは部分的に錯体化したリガンドなど、残留する遊離化学種の存在を、例えば滴定および/またはHPLC法によって評価し、計算した量のリガンドまたはGdCl3を添加することによって補正し、式5の二量体錯体を含む水溶液または水性混合物を得、次いでこれを精製する。
【0080】
精製は、好ましくはクロマトグラフィーによって、好ましくは樹脂で実施される。
【0081】
一実施形態において、精製は、錯形成反応から生じる混合物を、ポリマー樹脂、好ましくはAmberlite XAD(登録商標)1600樹脂で溶出することを含む。
【0082】
別の実施形態では、精製は、例えばHi Trap IMAC FF、Lewatit MonoPlus TP 260、Lewatit TP 208、IRC748I、DIAION CR11、SiliaMets AMPAおよびSiliaMets DOTA、好ましくはDiaion CR11およびAmberlite IRC748から選択されるキレート化樹脂での、錯体化反応から生じる混合物の第1の溶離を含み、遊離ガドリニウム含有量を最小限度に抑え、回収された溶離液の、Amberlite XAD(登録商標)1600樹脂などのポリマー樹脂での追加の精製を可能にする。
【0083】
実際の実施では、ほぼ中性のpH値に調整された混合物は、Amberlite XAD(登録商標)1600樹脂での溶離によって適切に精製される。
【0084】
あるいは、より低い値(例えば5~5.6)への溶液pHの調節から生じる混合物は、好ましくはAmberlite IRC748またはDiaion CR11樹脂などのキレート化樹脂で最初に溶離される。回収された溶離液は、次に、好ましくは、約5.5~6のpH値に再調整され、好ましくは減圧下で50℃にて濃縮されて、好ましくは約25%(w/w)の濃度を有する二量体錯体の水溶液または水性混合物を得て、これは次にAmberlite XAD(登録商標)1600樹脂で精製される。
【0085】
回収された画分は、次に、活性炭で処理し、濾過してもよい。得られた濾過溶液は、次に、好ましくは、例えば減圧下45~55℃にて蒸留によって濃縮し、約25%(w/w)の最終濃度を有する二量体錯体5の溶液を得る。
【0086】
工程h)
次に、工程h)に従って式5の二量体錯体が単離される。錯体は、例えば凍結乾燥によって、または噴霧乾燥によって、工程g)で得た水溶液または水性混合物から単離され得る。好ましい一実施形態では、所望の二量体錯体は、本製造方法の工程g)から直接回収された溶液を噴霧乾燥することによって、白色固体として得られる。
【0087】
遊離塩基DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aとして限定した反応物から決定される本製造方法の全体の収率は、少なくとも20%、好ましくは25%、より好ましくは約28%、あるいはさらに>29%である。
【0088】
興味深いことに、上記方法は、ワンポットで実施される工程を含み、これは大規模での実施に好適であり、調製された前駆物質(式1Aの化合物など)または反応中間体のいずれも単離を必要としない。結果として、本発明の合成手法の目的は、WO2017098044に開示されたプロセスと比較して、最終生成物の全体の収率が少なくとも約18%増大することを可能にする。
【0089】
加えて、中間体の単離がないことから、全体のプロセス時間の低減が可能となる。
【0090】
さらに、提案された製造方法は、カップリング生成物3の調製に続く全ての工程において、反応溶媒として水、またはより一般に水性溶媒もしくは水性溶媒混合物の使用を含む。具体的には、式3の化合物を工程e)において有機溶媒中で調製する場合、例えば、工程d)で得た式2の化合物と、工程c)で得たDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aとを反応させることによって調製される場合、有機溶媒は、当業者に公知の方法によって、水性溶媒または水性混合物に置換し、例えば最初に、式3の化合物の有機溶液を、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈することによって、次に有機溶媒を任意で除去することによって、式3の化合物の水溶液を得る。
【0091】
カップリングの調製に続く全ての工程において、反応溶媒として水性溶媒または水性溶媒混合物を使用することは、特に費用、環境への影響、工業的規模での実施の容易さの観点から非常に有利である。実際、WO2017/098044に開示されたプロセスは、DCMのような溶媒と、TFAやTIPSのような材料を用いているが、これらは高価であることに加え、特に工業規模でプロセスをスケールアップする場合には取り扱いが難しい。これらの溶剤や材料は、作業員の健康にとって安全ではないかもしれない。これに対し、本発明の製造方法は、式3の化合物の調製に続く全ての工程において、水性溶媒または水性溶媒混合物を使用することによって、有機溶媒の使用を回避するまたは大いに低減するため、大規模で作業するのに、例えば産業プロセスでの実施には好適であり、容易に実施できる。さらに、本発明の製造方法によって、驚いたことに、式3の化合物の調製に続き、水性溶媒または水性溶媒混合物のみを使用することを含む場合でも、単離された二量体錯体の非常に高い収率、特に、先行技術の製造法の収率より高い収率がもたらされる。また、本発明の製造方法は、より多くの水性溶媒または水性溶媒混合物を使用することにより、有害な溶媒やおよび材料の使用を低減し、従って、先行技術の製造法と比較して、コスト、環境および安全性の観点から有利である。
【0092】
エピクロロヒドリン、D-グルカミン、およびDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩などの反応物を含む、全ての溶媒および出発物質は、市販されているか、または公知の手順により得ることができる。
【0093】
好ましい実施形態では、エステル1Aの溶液の調製のための出発物質として使用されるDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩は、特許出願WO2021/116165(本出願と同一出願人)に記載される製造方法および本明細書の実験の項において以下に例示される製造方法を使用することによって調製され、使用まで保存される。
【0094】
本発明の範囲を限定することなく、より詳細を例示することを目的として、本発明の製造方法の好ましい実施形態の非限定的な実施例を以下の項に記載する。
【0095】
実験パート
略語および用語の定義
DO3Aトリ-tert-ブチルエステル(DO3A tBu):1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸トリ-tert-ブチル
DO3Aトリ-tert-ブチルエステル-HBr(DO3A tBu-HBr):1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸トリ-tert-ブチル臭化水素酸塩
TAZA: 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン
tBuOK: カリウムtert-ブトキシド
DMAC: N,N-ジメチルアセトアミド
DMC: ジクロロメタン
DMF: ジメチルホルムアミド
DIPEA: N,N-ジイソプロピルエチルアミン
GdCl3: 塩化ガドリニウム
HCl: 塩酸
KOH: 水酸化カリウム
ACN/MeCN: アセトニトリル
NaOH: 水酸化ナトリウム
Na2CO3: 炭酸ナトリウム
NH3: アンモニア
MRI: 磁気共鳴画像法
MeCN: アセトニトリル
MTBE: メチルt-ブチルエーテル
NMM: N-メチルモルホリン
K2CO3: 炭酸カリウム
TFA: トリフルオロ酢酸
TIPS: トリイソプロピルシラン
FLD: 蛍光検出器
UV/Vis: 紫外/可視
【0096】
得られた化合物のHPLC特徴付け
一般的手順
手順1:DO3A-トリ-tert-ブチルエステルのHPLC特徴付けおよび分析
クロマトグラフィー条件
HPLCシステム 溶媒デリバリー系、オートサンプラー、カラム恒温装置、脱ガス装置およびダイオードアレイ検出器もしくは可変波長検出器(または同等のもの)を装備した液体クロマトグラフ(例えばAgilent 1100)。
固定相:Zorbax Eclipse XDB-C 8、5μm、150×4.6mm
カラム温度 45℃
移動相: A:0.01MのK2HPO4、0.017MのH3PO4
B:アセトニトリル
溶離:勾配 時間(分) %B
0 5
30 80
35 80
38 5
45 5
流速 1mL/分
温度 45℃
検出 UV、210nm、Bw=8nm;参照 360nm、Bw=100nm
注入容量 10μL
停止時間 35分
参照ピーク DO3A 3tBu
保持時間 DO3A 3tBu 約14~15分
【0097】
手順2:中間体2の形成をモニターするためのHPLC法
この方法は、D-グルカミンのアルキル化の終了時および水の蒸留後に、混合物をモニターするために利用される。
クロマトグラフィー条件
HPLCシステム:溶媒デリバリー系、オートサンプラー、カラム恒温装置、脱ガス装置およびダイオードアレイ検出器もしくは可変波長検出器(または同等のもの)を装備した液体クロマトグラフ(例えばAgilent 1100)
固定相: SeQuant ZIC-cHilic 3μm、150×2.1mm(Merck P.N.1.50658.0001)
カラム温度: 40℃
移動相: 勾配溶離
溶離液A=5mMの酢酸アンモニウム
溶離液B=ACN/MeOH、75/25
溶離:勾配 時間(分) %B
0 97
5 97
30 20
40 20
45 97
60 97
流速: 0.25mL/分
検出: UV、210~240nm
注入容量:10μL
実施時間:60分
希釈溶液 ACN/MeOH、75/25
試料調製:200μLの5mMの酢酸アンモニウム溶液を、75μLの混合物に添加し、希釈溶液で5mLまで希釈する。
【0098】
手順3:中間体3の形成および精製をモニターするためのHPLC法
一般手順
この方法は、中間体3の形成および精製の工程をモニターするために使用される。
分析条件
HPLCシステム 液体クロマトグラフ Agilent 1100
固定相:Gemini、5μm、250×4.6mm(Phenomenex、アイテム 00G-4435-EO)
カラム温度 40℃
移動相:A:移動相A
B:MeCN
溶離:勾配 時間(分) %B
0 40
5 40
30 90
35 90
36 40
45 40
流速 0.7mL/分
検出 UV/210nm
注入容量 10μL
停止時間 45分
INT 2 Rt 21分
【0099】
移動相A
溶液の調製
1000mLのメスフラスコに、2.0gの酢酸アンモニウムを正確に量り取り、次に水で定容まで希釈する。1000mLのメスフラスコに、600mLの酢酸アンモニウム溶液および300mLのメタノールを移す。30分間、超音波処理する。
【0100】
手順4:キレートリガンド4の形成および精製をモニターするためのHPLC法
一般手順
二量体リガンド4の形成および精製を、210nmにおけるUV検出を備える逆相HPLCによってモニターした。
分析条件
HPLCシステム 液体クロマトグラフ Agilent 1260 Infinity
固定相:Synergi Polar-RP、4μm、150×4.6mm(Phenomenex、アイテム00F-4336-EO)
カラム温度 40℃
移動相:A:10mMのKH2PO4
B:メタノール
溶離:勾配 時間(分) %B
0 0
5 0
35 60
40 60
41 80
46 80
47 0
60 0
流速 0.8mL/分
検出 UV/210nm
注入容量 10μL
停止時間 60分
化合物4 Rt 2.4分
【実施例】
【0101】
実施例1:DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成
出発物質のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成を、WO2021116165に記載の手順を使用することによって実施した。具体的には:DMAC(98.07kg;104.33L)中の市販のTAZA(14.39kg;83.53mol)および酢酸ナトリウム(21.58kg;263.12mol)の懸濁液に、DMAC(50.72kg;53.96L)中のブロモ酢酸tert-ブチル(51.32kg;263.12mol)の溶液を、10℃で2.5時間かけて添加した。次に、温度を25℃まで上昇させ、混合物をこの温度で24時間撹拌した。次に、水(57.56kg)を0.5時間で添加し、2時間後に混合物を遠心分離にかけ、水で洗浄した(57kgで2回)。湿潤固体を減圧下で乾燥させ、36.62kg;61.48molのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩(73.6%収率)を得た。生成物のHPLCによって決定した分析結果(標準に対する)は、100%w/wであり;NMRによって決定した分析結果(標準に対する)は、99.86%w/wである。
【0102】
実施例2:二量体化合物5の調製
二量体錯体化合物5を、以下のとおり
【化11】
示され、以下の工程を含む合成手順を用いることによって得る。
a)
塩1BのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aへの変換
DO3A 3t-Bu-HBr(236.68g,0.40mol)をリアクターに入れた。MTBE(350.29g)を加え、混合物を十分に撹拌した。懸濁液に、KOHの水溶液(710.05gの水中、分析値88%、0.80molのKOH 50.67g)を投入し、得られた混合物を撹拌しながら23~27℃にて2時間保持した。その後、攪拌を止め、上層の有機層と下層の水層の2層に分けた。水相を廃棄し、有機相をリアクターに回収した。定量的収率。
a1)イソプロパノールによる溶媒交換工程
実施例2a)の有機溶液にイソプロパノール(160.70g)を加え、蒸留によりMTBEを完全に除去した。DO3A 3tBuの最終溶液の分析値は、56~63%w/wの範囲内であった。溶液中の1AのアッセイはHPLC-UV法で測定した。
【0103】
b)中間体2の合成
水(99.3g)中のD-グルカミン(40.0g;0.221mol)を、DMAC(40.0g;0.043L)中のエピクロロヒドリン(44.9g;0.486mol)溶液に、24℃で2時間かけて滴下した。混合物を17時間攪拌した後、DMACを添加し(80.0g;0.085L)、水を減圧下50℃で蒸留して、DMAC中の中間体2を得た(残留水分含量<2.0%w/w)。
【0104】
c)中間体2による化合物1Aのアルキル化
DIPEA(65.3g;0.505mol)および実施例2のa2)に従って得られた1Aの溶液を、実施例2のb)から回収した中間体2の溶液に50℃で加える。この混合物を、HPLC-UV法で変換率をモニターしながら、70℃で72時間さらに撹拌し、25℃に冷却した後、16%w/wアンモニア水溶液(0.240L)で希釈する。得られた混合物を20℃で15時間撹拌し、塩の沈殿を得、ろ過により除去する。濾液をAmberlite XAD(登録商標) 1600(3L;溶離液:水/MeCNのグラジエント)でクロマトグラフィー精製する。純粋なフラクション(HPLC面積%≧90)を集め、蒸留して有機溶媒を除去する。得られた残留物を減圧下50℃にて濃縮し、最終濃度約10%w/wの保護されたリガンドの水溶液を得、次の工程でそのまま用いる。
【0105】
d)中間体3の脱保護
34%塩酸水溶液(431.5g;4.023mol)を、温度を30~35℃に保ちながら、実施例2のc)で得た中間体3の溶液に加える。添加終了後、混合物を37℃に加熱し、36時間撹拌する。次いで、溶液を25℃に冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和し、副生成物として形成したt-ブタノールを蒸留により除去し、混合物をナノ濾過により脱塩する。次いで、混合物を減圧下50℃で24%w/wの濃度まで部分濃縮し、Amberlite XAD(登録商標)1600(1L;溶離液として水)でクロマトグラフィー精製する。HPLC-UVでの評価により選択されたフラクションをチャコールで処理し、減圧下50℃で濃縮し、目的のリガンド4(0.075mol)の10%w/w水溶液を得た(滴定剤として硫酸銅水溶液を用いた電位差滴定により定量)。
【0106】
e)錯形成
実施例4のd)で得た脱保護されたリガンド4の溶液を37℃に加熱した後、温度を37~43℃の範囲に維持しながら、塩化ガドリニウム水溶液(溶液140.5g;塩化ガドリニウム39.5g;0.150mol)を添加する。添加終了後、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを5.3に調整する。混合物を40℃で2時間維持し、常磁性錯体5を形成させる。遊離化学種の存在は、例えば滴定により評価する。次いで、この溶液を、Diaion CR11キレート樹脂(0.16L)で精製し、フリーのガドリニウム含量を減少させる。ロード後、樹脂を水で洗浄し、pHを5.5に調整し、溶液を50℃にて減圧下で濃縮して25%w/wの水溶液を得る。この溶液をAmberlite XAD(登録商標)1600(3.3L;溶離液:水/MeCNのグラジエント)にpH6でロードする。HPLC-FLDおよびUVでの評価により選択されたフラクションをチャコールで処理し、得られた溶液を減圧下50℃で蒸留する。最終の溶液(25%w/w)を噴霧乾燥して、ガドリニウム錯体を白色粉末として単離する(82.0g、無水生成物として74.6gに相当;滴定アッセイ:99%w/w%、無水塩基)。
DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aからの全体収率:29%。
【0107】
実施例3:二量体化合物5の調製
二量体錯体化合物5は、実施例2で示された合成手順と以下の工程に従って得られる:
b)中間体2の合成
水(100.0g)中のD-グルカミン(40.0g;0.221mol)を、DMAC(40.0g;0.043L)中のエピクロロヒドリン(44.9g;0.486mol)の溶液に、25℃で2時間かけて滴下した。混合物を16時間撹拌した後、DMAC(80.0g;0.085L)を添加し、水を減圧下50℃で蒸留して、DMAC中の中間体2の溶液を得た(残留水分含量<2.0%w/w)。
【0108】
c)中間体2による化合物1Aのアルキル化
DIPEA(65.3g;0.505mol)および実施例2のa2)で得られた1Aの溶液を、実施例3の工程b)から回収した中間体2の溶液に50℃で加える。HPLC-UV法で変換をモニターしながら混合物を75℃にて70時間さらに撹拌した後、減圧下60℃で部分的に濃縮する。23℃まで冷却した後、予め調製した水(80.0g)とMeCN(126.4g;0.160L)の混合物、および25%w/wアンモニア水溶液(144.5g;0.160L)を添加する。得られた混合物を22℃で14時間攪拌する。混合物をろ過し、Amberlite XAD(登録商標)1600(3L;溶離液:水/MeCNのグラジエント)を用いてクロマトグラフィー精製する。溶出後、適切な純度(HPLC Area %≧90)のフラクションを集め、有機溶媒を留去し、得られた溶液を減圧下50℃で濃縮し、保護されたリガンド3の水溶液(濃度:13%w/w)を得、次の工程でそのまま使用する。
【0109】
d)中間体3の脱保護
34%塩酸水溶液(435.0g;4.057mol)を、温度を30℃~35℃に保ちながら、実施例3の工程c)で得た中間体3の溶液に加える。添加終了後、混合物を35℃で32時間攪拌する。次いで、溶液を23℃に冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和し、副生成物として生成したt-ブタノールを蒸留により除去し、混合物をナノろ過により脱塩する。次いで、混合物を減圧下50℃で22%w/wの濃度まで部分濃縮し、Amberlite XAD(登録商標)1600(1L;溶離液:水)でクロマトグラフィー精製する。HPLC-UVによる評価で選択したフラクションをチャコールで処理し、減圧下50℃で濃縮して、目的のリガンド4(0.076mol)の25%w/w水溶液を得た(滴定剤として硫酸銅水溶液を用いた電位差滴定により定量)。
【0110】
e)錯形成
25℃の脱保護されたリガンド4の溶液に、塩化ガドリニウム水溶液(溶液142.4g、塩化ガドリニウム40.1g、0.152mol)を、温度を23~27℃の範囲に保ちながら加え、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.0~7.5に調整する。混合物を25℃で24時間維持し、常磁性錯体5を形成させる。遊離化学種の存在は、例えば滴定により評価する。得られた溶液をAmberlite XAD(登録商標)1600(3.3L、溶離液:水/MeCNのグラジエント)で精製する。HPLC-FLDとUVによる評価で選択されたフラクションをチャコールで処理し、得られた溶液を減圧下50℃で蒸留する。最終溶液(25%w/w)を噴霧乾燥して、ガドリニウム錯体を白色粉末として単離する(73.5g、無水生成物として66.9gに相当;滴定アッセイ:99%w/w%、無水塩基)。
DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aからの全体収率:26%。
【0111】
上記の実施例2および3と同様の結果は、例えば同時出願中のPCT/EP2021/070801に開示されているのと同様の手順を実施することによって得ることができる。
【国際調査報告】