(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】マントル細胞リンパ腫の治療のためのアベマシクリブ並びにPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤を含む薬剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K45/06
A61K31/5377
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535390
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022052734
(87)【国際公開番号】W WO2023114225
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【氏名又は名称】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ルゥホア
(72)【発明者】
【氏名】チェ,イーシュァン
(72)【発明者】
【氏名】リィ,イージィン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,イシン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,シュー ジン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者においてマントル細胞リンパ腫を治療する方法で使用するための併用療法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者においてマントル細胞リンパ腫を治療する方法であって、前記方法が、有効量のアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、有効量のPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、PI3K/mTOR二重阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、汎PI3K阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、コパンリシブ、サモトリシブ、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ、パヌリシブ、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ、パキサリシブ アピトリシブ、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ、SF-1126、ゲタトリシブ、XH00230381967、SN20229799306、ピクチリシブ、ソノリシブ、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ、ZSTK474、ブパルリシブ、フィメピノスタット、リゴセルチブ、AZD8835、WX-037、AZD8186、KA2237、アカリシブ、ザンデリシブ、AMG319、GSK2636771、パルサクリシブ、セラベリシブ、ウムブラリシブ、テナリシブ、タセリシブ、アルペリシブ、デュベリシブ、及びイデラリシブ、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダホロリムス、OSI-027、ビスツセルチブ、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ、ML-223、及びAZD8055、
並びにそれらのプロドラッグ、代謝産物、及び誘導体、並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、コパンリシブ又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マントル細胞リンパ腫が、1つ以上のBCL-2阻害剤に対する耐性を獲得している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マントル細胞リンパ腫が、ベネトクラクスに対する耐性を獲得している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マントル細胞リンパ腫が、イブルチニブに対する耐性を獲得している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マントル細胞リンパ腫が、節性マントル細胞リンパ腫、及び白血病性非節性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つとして特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記マントル細胞リンパ腫が、難治性マントル細胞リンパ腫及び/又は再発性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらとして特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記マントル細胞リンパ腫が、ATM、TP53、CCND1、KMT2D、CDK2NA、BIRC3、CDKN2B、KHSC1、SMARCA4、SDHD、UBR5、NOTCH1、CARD11、SAMHD1、BCL10、MEF2B、IRS2、FGF19、FGF4、FGF3、FAT1、ROBO1、DIS3、CRLF2、CDKN2C、ARID2、ARID1A、ARID1B、NOTCH2、BCOR、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、MYD88、BKT、PCLG2、BCL2、KMT2D、及びCELSR3における1つ以上の突然変異に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記マントル細胞リンパ腫が、サイクリンD1過剰発現、t(11;14)及び/若しくはt(11;14)(q13;q32)転座、Ki67過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、並びに/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マントル細胞リンパ腫が、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)機能性である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
有効量のBTK阻害剤を前記患者に更に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
フルベストラント又はその薬学的に許容される塩、アロマターゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩、AR阻害剤、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤、CDK4/6阻害剤、AKT阻害剤、サイクリンE/CDK2阻害剤、オートファジー阻害剤、抗EGFR阻害剤、及びPARP阻害剤から選択される1つ以上の追加の薬剤の有効量を前記患者に更に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するための、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせ。
【請求項17】
マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するためのアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩であって、前記使用が、前記アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて前記患者に投与することを含む、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩であって、前記使用が、前記PI3K阻害剤及び/若しくは前記mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて前記患者に投与することを含む、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
前記使用が、前記アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩、並びに前記PI3K阻害剤及び/若しくは前記mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、前記患者に、同時に、個別に、又は逐次的に投与することを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項20】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、PI3K/mTOR二重阻害剤である、請求項16~19のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項21】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、汎PI3K阻害剤である、請求項16~20のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項22】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、コパンリシブ、サモトリシブ、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ、パヌリシブ、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ、パキサリシブ アピトリシブ、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ、SF-1126、ゲタトリシブ、XH00230381967、SN20229799306、ピクチリシブ、ソノリシブ、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ、ZSTK474、ブパルリシブ、フィメピノスタット、リゴセルチブ、AZD8835、WX-037、AZD8186、KA2237、アカリシブ、ザンデリシブ、AMG319、GSK2636771、パルサクリシブ、セラベリシブ、ウムブラリシブ、テナリシブ、タセリシブ、アルペリシブ、デュベリシブ、及びイデラリシブ、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダホロリムス、OSI-027、ビスツセルチブ、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ、ML-223、及びAZD8055、
並びにそれらのプロドラッグ、代謝産物、及び誘導体、並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項16~21のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項23】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、コパンリシブ又はその薬学的に許容される塩である、請求項16~22のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項24】
前記マントル細胞リンパ腫が、1つ以上のBCL-2阻害剤に対する耐性を獲得している、請求項16~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項25】
前記マントル細胞リンパ腫が、ベネトクラクスに対する耐性を獲得している、請求項16~24のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項26】
前記マントル細胞リンパ腫が、イブルチニブに対する耐性を獲得している、請求項16~25のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項27】
前記マントル細胞リンパ腫が、節性マントル細胞リンパ腫、及び白血病性非節性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つとして特徴付けられる、請求項16~26のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項28】
前記マントル細胞リンパ腫が、難治性マントル細胞リンパ腫及び/又は再発性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらとして特徴付けられる、請求項16~27のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項29】
前記マントル細胞リンパ腫が、ATM、TP53、CCND1、KMT2D、CDK2NA、BIRC3、CDKN2B、KHSC1、SMARCA4、SDHD、UBR5、NOTCH1、CARD11、SAMHD1、BCL10、MEF2B、IRS2、FGF19、FGF4、FGF3、FAT1、ROBO1、DIS3、CRLF2、CDKN2C、ARID2、ARID1A、ARID1B、NOTCH2、BCOR、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、MYD88、BKT、PCLG2、BCL2、KMT2D、及びCELSR3における1つ以上の突然変異に関連する、請求項16~28のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項30】
前記マントル細胞リンパ腫が、サイクリンD1過剰発現、t(11;14)及び/若しくはt(11;14)(q13;q32)転座、Ki67過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、並びに/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現に関連する、請求項16~29のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項31】
前記マントル細胞リンパ腫が、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)機能性である、請求項16~30のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項32】
前記使用が、有効量のBTK阻害剤を前記患者に更に投与することを含む、請求項16~31のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項33】
前記使用が、フルベストラント又はその薬学的に許容される塩、アロマターゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩、AR阻害剤、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤、CDK4/6阻害剤、AKT阻害剤、サイクリンE/CDK2阻害剤、オートファジー阻害剤、抗EGFR阻害剤、及びPARP阻害剤から選択される1つ以上の追加の薬剤の有効量を前記患者に更に投与することを含む、請求項16~32のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のためのアベマシクリブ、又は使用のためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤。
【請求項34】
マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせの使用。
【請求項35】
アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、PI3K及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせてマントル細胞リンパ腫の治療を要する患者に投与することによる、前記患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、前記アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項36】
PI3K及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせてマントル細胞リンパ腫の治療を要する患者に投与することによる、前記患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、前記PI3K及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項37】
-前記PI3K阻害剤及び/若しくは前記mTOR阻害剤が、請求項20~23のいずれか一項に定義されるとおりである、
-前記薬剤が、請求項24~31のいずれか一項に定義されるマントル細胞リンパ腫を治療するためのものである、並びに/又は
-前記治療が、請求項19若しくは請求項32~33のいずれか一項に定義されるとおりである、
請求項34~36のいずれか一項に定義される組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療に使用するための、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
マントル細胞リンパ腫は、比較的稀な侵攻性のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、全てのNHL診断の約5~10%を占める。
【0003】
非ホジキンリンパ腫は、リンパ系に影響を及ぼす癌型である。マントル細胞リンパ腫は、マントル層として知られるリンパ節濾胞の外縁におけるB細胞リンパ球の悪性形質転換から生じる、稀な形態のNHLである。マントル細胞リンパ腫は、当技術分野において認識されている病理学的状態であり、現在、米国だけでも年間約5,000人の患者が罹患している。
【0004】
マントル細胞リンパ腫は、侵攻性の急成長するクラスのNHLであり、好適な療法選択肢が限定されるために予後不良を伴う。全体として見込みは悪く、全生存中央値は約6~7年であり、これは濾胞性リンパ腫など無痛性サブタイプのNHLの全生存中央値よりも著しく短い。
【0005】
MCLの一次療法は、典型的には、適合する移植適格患者向けの自己幹細胞移植による集中的な化学療法からなる。患者は、典型的には、進行性の臨床経過を伴って最終的に再発する。MCLの標準治療として特定の化学療法は確立されておらず、診療は施設ごとに異なる。比較的適合性の高い患者向けのいくつかの一般的な治療レジメンとしては、リツキシマブ/シクロホスファミド/ドキソルビシン/ビンクリスチン/プレドニゾン(R-CHOP)と交互のリツキシマブ/デキサメタゾン/シタラビン/シスプラチン(R-DHAP)(R-CHOP/R-DHAP)、又は高用量メトトレキサート及びシタラビンと交互のリツキシマブ/多分割シクロホスファミド/ビンクリスチン/ドキソルビシン/デキサメタゾン(R-hyperCVAD)が挙げられる。適合性の低い患者の場合、ベンダムスチン/リツキシマブ(BR)又はR-CHOPなどのレジメンが、維持リツキシマブと共に又は維持リツキシマブなしで投与される。病気の進行に続いて、イブルチニブ、レナリドマイド、ボルテゾミブ、又はベネトクラクスなど標的薬剤が、単剤療法として連続して使用されることが多い。残念ながら、治療は典型的には最終的に成功せず、典型的には再発及び進行が観察される。更に複雑なことに、他の形態のB細胞悪性腫瘍又はNHLに対して成功し得る療法が、MCLに対しては無効であることが多い。
【0006】
更に、MCLを治療する試みで使用される治療レジメンは、多くの場合、著しく有害な副作用を伴う。例えば、MCLに使用される化学療法に伴う一般的な副作用としては、好中球減少症、感染症、白血球減少症、疲労、悪心、脱毛症、口内炎、下痢、貧血、発疹、無力症、血小板減少症、嘔吐、食欲減退、乾燥肌、発熱、及び味覚異常が挙げられる。これら及び他の副作用は、患者コンプライアンスを取り巻く問題、そのような副作用に対処するために更なる薬剤を提供する必要性などの一因となる。
【0007】
したがって、患者の治療選択肢の範囲を拡大し得る、並びに/又は副作用の低減及び/若しくは患者コンプライアンスの増加を伴い得る、並びに/又はそのような副作用を緩和するための追加療法の必要性を低減し得る、MCLのための新しい治療が早急に必要とされている。
【0008】
アベマシクリブ(LY2835219)、すなわち[5-(4-エチル-ピペラジン-1-イルメチル)-ピリジン-2-イル]5-フルオロ-4-(7-フルオロ-3-イソプロピル-2-メチル-3H-ベンゾイミダゾール-5-イル)-ピリミジン-2-イル]-アミンは、CDK4及びCDK6の細胞周期経路を標的とするCDK阻害剤であり、抗腫瘍活性を有している。塩形態を含む、アベマシクリブ、並びにこの化合物を製造し、癌の治療、より好ましくは乳癌の治療用などこの化合物を使用する方法は、国際公開第2010/075074号に開示されている。
【0009】
ホスホイノシチド3(PI3)-キナーゼ(PI3K)は、細胞膜結合脂質キナーゼの群である。PI3Kは、PI3K/AKT/mTorシグナル伝達経路の重要な構成要素として腫瘍形成の役割を果たし、細胞成長、増殖、生存、及び代謝において重要な役割を果たす。MCLは、特にイブルチニブ耐性MCLにおいて、この経路の脱制御に関連する。
【0010】
クラスI PI3Kは、4つのアイソフォーム、すなわちp110α、p110β、p110δ、及びp110γで構成される。p110αをコードする遺伝子であるホスホイノシチド-3-キナーゼ、触媒、アルファポリペプチド(PIK3CA)における突然変異は、多種多様な癌型において一般的であり、そのためにPIK3CAは最も一般的に突然変異した癌遺伝子である。
【0011】
したがって、PI3Kは、癌治療における治療標的と考えられる。様々なPI3K阻害剤が開発されており、様々な癌の治療での使用が提案されている。いくつかの既知のPI3K阻害剤としては、コパンリシブ(BAY80-6946)、ピクチリシブ(GDC-0941)、ソノリシブ(PX-866)、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ(XL147)、ZSTK474、ブパルリシブ(BKM-120)、フィメピノスタット(CUDC-907)、及びリゴセルチブ(ON-01910)が挙げられる。
【0012】
更に、特定のPI3K阻害剤は、PI3Kの1つ以上のアイソフォームに特異的な阻害剤である。これらとしては、AZD8835(PI3Kδ/α)、WX-037(PI3K α)、AZD8186(PI3K β/δ)、KA2237(PI3K β/δ)、アカリシブ(GS-9820/CAL-120)(PI3K β/δ)、ザンデリシブ(ME401/PWT-143)(PI3K δ)、AMG319(PI3K δ)、GSK2636771(PI3K β)、パルサクリシブ(INCB050465)(PI3K δ)、セラベリシブ(INK-1117)(PI3K α)、ウムブラリシブ(TGR-1202)(PI3K δ)、テナリシブ(RP6530)(PI3K δ/γ)、タセリシブ(GDC-0032)(PI3K α/δ/γ)、アルペリシブ(BYL719)(PI3K α)、デュベリシブ(IPI-145)(PI3K δ/γ)、及びイデラリシブ(CAL-101)(PI3K δ)が挙げられる。
【0013】
PI3Kの更なる阻害剤は、以下に詳述するように、mTORの阻害剤でもある。
【0014】
mTORの脱制御活性は、乳癌、前立腺癌、肺癌、肝臓癌、及び腎臓癌など癌、並びにリンパ腫を含む多くの病態生理学的状態に関与する。mTORシグナル伝達の上方制御は、成長因子受容体シグナル伝達の促進、血管新生、解糖代謝、脂質代謝、癌細胞遊走、及びオートファジーの抑制など多様な機構を介して腫瘍増殖及び進行を促進することができる。様々なmTOR阻害剤が開発されており、マントル細胞リンパ腫など様々な癌の治療での使用が提案されている。これらとしては、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、及びリダホロリムスなラパマイシン類自体(ラパログ)、並びにOSI-027などATP競合性mTOR阻害剤、ビスツセルチブ(AZD2014)、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ(PP242)、ML-223、並びにAZD8055が挙げられる。
【0015】
PI3K及びmTORを阻害する化合物は、二重PI3K/mTOR阻害剤と呼ばれる。例としては、サモトリシブ(LY3023414)、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ(GSK2126458/GSK458)、パヌリシブ(P7170)、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ(BEZ235)、パキサリシブ(GDC-0084)、アピトリシブ(GDC-0980)、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ(SAR245409/XL765)、SF-1126、ゲダトリシブ(PF-05212384/PKI-587)、XH00230381967、及びSN20229799306が挙げられる。
【0016】
CDK4/6阻害剤及びPI3K阻害剤の特定の組み合わせは、国際公開第2018/017410号及び同第2018/063873号に開示されており、これらはそれぞれ、進行性又は転移性乳癌及び膵臓癌の治療における、それらの潜在的な使用も開示している。そのような開示にもかかわらず、癌、特にマントル細胞リンパ腫の広範に適用可能な療法は依然としてとらえどころのないままであり、マントル細胞リンパ腫の患者の治療に有効であると考えられるより多くの別の療法が必要とされている。本発明は、アベマシクリブとPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤との組み合わせを用いてマントル細胞リンパ腫を治療する方法であって、患者に新しい治療選択肢を提供することができ、一部の患者において、個々の薬剤の単独での治療効果よりも優れた、及び/又は予想外の有益な治療効果をもたらし得る方法を開示する。
【発明の概要】
【0017】
本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者においてマントル細胞リンパ腫を治療する方法が提供され、当該治療は、有効量のアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、有効量のPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて当該患者に投与することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤はPI3K/mTOR二重阻害剤である。いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は汎PI3K阻害剤である。いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、コパンリシブ(BAY80-6946)、サモトリシブ(LY3023414)、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ(GSK2126458/GSK458)、パヌリシブ(P7170)、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ(BEZ235)、パキサリシブ(GDC-0084)、アピトリシブ(GDC-0980)、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ(SAR245409/XL765)、SF-1126、ゲダトリシブ(PF-05212384/PKI-587)、XH00230381967、SN20229799306、ピクチリシブ(GDC-0941)、ソノリシブ(PX-866)、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ(XL147)、ZSTK474、ブパルリシブ(BKM-120)、フィメピノスタット(CUDC-907)、リゴセルチブ(ON-01910)、AZD8835、WX-037、AZD8186、KA2237、アカリシブ(GS-9820/CAL-120)、ザンデリシブ(ME401/PWT-143)、AMG319、GSK2636771、パルサクリシブ(INCB050465)、セラベリシブ(INK-1117)、ウムブラリシブ(TGR-1202)、テナリシブ(RP6530)、タセリシブ(GDC-0032)、アルペリシブ(BYL719)、デュベリシブ(IPI-145)、及びイデラリシブ(CAL-101)、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダホロリムス、OSI-027、ビスツセルチブ(AZD2014)、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ(PP242)、ML-223、及びAZD8055、並びにそのプロドラッグ、代謝産物、及び誘導体、並びにその薬学的に許容される塩から選択される。いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、コパンリシブ(BAY80-6946)又はその薬学的に許容される塩である。
【0019】
いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、1つ以上のBCL-2阻害剤に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、ベネトクラクスに対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、イブルチニブに対する耐性を獲得している。
【0020】
いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、節性マントル細胞リンパ腫、及び白血病性非節性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、難治性マントル細胞リンパ腫及び/又は再発性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらとして特徴付けられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、当該マントル細胞リンパ腫は、ATM、TP53、CCND1、KMT2D、CDK2NA、BIRC3、CDKN2B、KHSC1、SMARCA4、SDHD、UBR5、NOTCH1、CARD11、SAMHD1、BCL10、MEF2B、IRS2、FGF19、FGF4、FGF3、FAT1、ROBO1、DIS3、CRLF2、CDKN2C、ARID2、ARID1A、ARID1B、NOTCH2、BCOR、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、MYD88、BKT、PCLG2、BCL2、KMT2D、及びCELSR3における1つ以上の突然変異に関連する。
【0022】
いくつかの実施形態では、当該マントル細胞リンパ腫は、サイクリンD1過剰発現、t(11;14)及び/若しくはt(11;14)(q13;q32)転座、Ki67過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、並びに/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現に関連する。
【0023】
いくつかの実施形態では、当該マントル細胞リンパ腫は、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)機能性(proficient)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、当該方法は、有効量のBTK阻害剤を患者に更に投与することを含む。いくつかの実施形態では、当該方法は、フルベストラント又はその薬学的に許容される塩、アロマターゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩、AR阻害剤、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤など免疫チェックポイント阻害剤、CDK4/6阻害剤、AKT阻害剤、サイクリンE/CDK2阻害剤、オートファジー阻害剤、抗EGFR阻害剤、及びPARP阻害剤から選択される1つ以上の追加の薬剤の有効量を患者に更に投与することを含む。
【0025】
また、本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するための、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせが提供される。また、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するためのアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩が提供され、当該使用は、当該アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて当該患者に投与することを含む。マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩が更に提供され、当該使用は、当該PI3K阻害剤及び/若しくは当該mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩をアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて当該患者に投与することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、当該使用は、当該アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩、並びに当該PI3K阻害剤及び/若しくは当該mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、当該患者に同時に、個別に、又は逐次的に投与することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤はPI3K/mTOR二重阻害剤である。いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は汎PI3K阻害剤である。いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、コパンリシブ(BAY80-6946)、サモトリシブ(LY3023414)、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ(GSK2126458/GSK458)、パヌリシブ(P7170)、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ(BEZ235)、パキサリシブ(GDC-0084)、アピトリシブ(GDC-0980)、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ(SAR245409/XL765)、SF-1126、ゲダトリシブ(PF-05212384/PKI-587)、XH00230381967、SN20229799306、ピクチリシブ(GDC-0941)、ソノリシブ(PX-866)、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ(XL147)、ZSTK474、ブパルリシブ(BKM-120)、フィメピノスタット(CUDC-907)、リゴセルチブ(ON-01910)、AZD8835、WX-037、AZD8186、KA2237、アカリシブ(GS-9820/CAL-120)、ザンデリシブ(ME401/PWT-143)、AMG319、GSK2636771、パルサクリシブ(INCB050465)、セラベリシブ(INK-1117)、ウムブラリシブ(TGR-1202)、テナリシブ(RP6530)、タセリシブ(GDC-0032)、アルペリシブ(BYL719)、デュベリシブ(IPI-145)、及びイデラリシブ(CAL-101)、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダホロリムス、OSI-027、ビスツセルチブ(AZD2014)、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ(PP242)、ML-223、及びAZD8055、並びにそのプロドラッグ、代謝産物、及び誘導体、並びにその薬学的に許容される塩から選択される。いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、コパンリシブ(BAY80-6946)又はその薬学的に許容される塩である。
【0028】
いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、BCL-2阻害剤に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、ベネトクラクスに対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、イブルチニブに対する耐性を獲得している。
【0029】
いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、節性マントル細胞リンパ腫、及び白血病性非節性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、マントル細胞リンパ腫は、難治性マントル細胞リンパ腫及び/又は再発性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらとして特徴付けられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、当該マントル細胞リンパ腫は、ATM、TP53、CCND1、KMT2D、CDK2NA、BIRC3、CDKN2B、KHSC1、SMARCA4、SDHD、UBR5、NOTCH1、CARD11、SAMHD1、BCL10、MEF2B、IRS2、FGF19、FGF4、FGF3、FAT1、ROBO1、DIS3、CRLF2、CDKN2C、ARID2、ARID1A、ARID1B、NOTCH2、BCOR、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、MYD88、BKT、PCLG2、BCL2、KMT2D、及びCELSR3における1つ以上の突然変異に関連する。
【0031】
いくつかの実施形態では、当該マントル細胞リンパ腫は、サイクリンD1過剰発現、t(11;14)及び/若しくはt(11;14)(q13;q32)転座、Ki67過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、並びに/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現に関連する。いくつかの実施形態では、当該マントル細胞リンパ腫は、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)機能性である。
【0032】
いくつかの実施形態では、当該使用は、有効量のBTK阻害剤を患者に更に投与することを含む。いくつかの実施形態では、当該使用は、フルベストラント又はその薬学的に許容される塩、アロマターゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩、AR阻害剤、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤など免疫チェックポイント阻害剤、CDK4/6阻害剤、AKT阻害剤、サイクリンE/CDK2阻害剤、オートファジー阻害剤、抗EGFR阻害剤、及びPARP阻害剤から選択される1つ以上の追加の薬剤の有効量を患者に更に投与することを含む。
【0033】
本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせの使用が更に提供される。また、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせてマントル細胞リンパ腫の治療を要する患者に投与することによる、当該患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、当該アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩の使用が提供される。また、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせてマントル細胞リンパ腫の治療を要する患者に投与することによる、当該患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、当該PI3K阻害剤及び/若しくは当該mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩が提供される。典型的には、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤、マントル細胞リンパ腫、治療及び/又は当該患者は、本明細書に定義されるとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1-1】アベマシクリブは、細胞傷害性を誘導し、MCL細胞株のG1期における細胞周期停止をもたらす。A.細胞周期調節因子の免疫ブロット評価は、原発性MCL患者及びMCL細胞株において高度に発現する。
【
図1-2】アベマシクリブは、細胞傷害性を誘導し、MCL細胞株のG1期における細胞周期停止をもたらす。B.アベマシクリブは、MCL細胞株における、異なる濃度のアベマシクリブへの72時間(0.2E6/ml)の曝露後に、細胞成長を阻害することができる。IC50値を右の表に示す。
【
図1-3】アベマシクリブは、細胞傷害性を誘導し、MCL細胞株のG1期における細胞周期停止をもたらす。C.アベマシクリブは、MCL細胞株のアベマシクリブへの24時間曝露後に、G1期において細胞サイクル停止を引き起こす。結果は、3回の生物学的反復を示す。
【
図2-1】コパンリシブと組み合わせたアベマシクリブは、MCL細胞を相乗的に阻害することができる。A.アベマシクリブとコパンリシブとの組み合わせは、72時間の治療後に単剤よりも大きな細胞傷害性を誘導することができる。
【
図2-2】コパンリシブと組み合わせたアベマシクリブは、MCL細胞を相乗的に阻害することができる。B.ベネトクラクス耐性MCL細胞株JeKo-1において、この組み合わせは、p-mTOR及びホスホ-p70S6Kを下方制御した。更に、この組み合わせは、Bcl-xLを下方制御することができる。
【
図3-1】アベマシクリブとコパンリシブとの組み合わせは、Mino-ベネトクラクス耐性由来異種移植モデルにおいて強い抗腫瘍効果を示す。A.Mino-ベネトクラクス耐性腫瘍を、ベネトクラクス(5mg/kg、毎日、経口)、アベマシクリブ(25mg/kg、毎日、経口)、コパンリシブ(5mg/kg、IP、週3回)、並びにアベマシクリブとコパンリシブとの組み合わせで治療した。腫瘍量は、腫瘍体積を測定することによって計算した(n=5、p<0.0001)。B.腫瘍重量を計算した。
【
図3-2】アベマシクリブとコパンリシブとの組み合わせは、Mino-ベネトクラクス耐性由来異種移植モデルにおいて強い抗腫瘍効果を示す。C.腫瘍サイズをこの実験の最後に示した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当然のことながら、必ずしも全ての態様又は利点が本発明の任意の特定の実施形態に従って実現され得るわけではないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、本発明が、本明細書で教示又は示唆され得るような他の態様又は利点を必ずしも実現することなく、本明細書で教示されるような1つの利点又は利点の群を実現又は最適化する様式で具現化又は実行され得ることを認識するであろう。
【0036】
加えて、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、文脈が明確に別様に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0037】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記にかかわらず、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
定義
以下の用語又は定義は、本発明の理解を助けるためだけに提供される。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、それらが本発明の技術分野の当業者にとっての意味と同じ意味を有する。開業医の定義及び専門用語については、特にRemington:The Science and Practice of Pharmacy,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012を対象とする。本明細書で提供される定義は、当業者によって理解されるよりも狭い範囲を有すると解釈されるべきではない。
【0039】
本明細書で使用される「約」は、量、期間など測定可能な値を指す場合、特定の値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、更により好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は、開示された方法を実施するのに適切である。
【0040】
本明細書で使用される場合、「PI3K阻害剤」は、1つ以上のクラスのPI3K、例えば、クラスI PI3K、クラスII PI3K、及び/又はクラスIII PI3Kの酵素活性を直接的又は間接的に低下させる化合物である。PI3K阻害剤は、PI3Kの1つ以上のアイソフォーム、例えば、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ及び/又はPI3Kδの酵素活性を直接的又は間接的に低下させることができ得る。「汎PI3K阻害剤」は、典型的には、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ及びPI3Kδの全てを阻害することができる。例えば、市販のPI3K活性アッセイキット(例えば、Promegaから入手可能なPI3K-Glo(商標)クラスIプロファイリングキット)中で化合物の有効性を試験することによって、所与の化合物がPI3K阻害剤であるか否かを判定することは、当業者にとって日常的である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「mTOR阻害剤」は、mTORの酵素活性を直接的又は間接的に低下させる化合物である。例えば、市販のmTOR活性アッセイキット(例えば、Merck Milliporeから入手可能なK-LISA(商標)mTOR活性アッセイキット)中で化合物の有効性を試験することによって、所与の化合物がmTOR阻害剤であるか否かを判定することは、当業者にとって日常的である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「BTK阻害剤」は、mTORの酵素活性を直接的又は間接的に低下させる化合物である。例えば、市販のBTK活性アッセイキット(例えば、BPSBioscienceから入手可能なBTKアッセイキット)中で化合物の有効性を試験することによって、所与の化合物がBTK阻害剤であるか否かを判定することは、当業者にとって日常的である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、少なくとも2つの別個の薬剤を含むパッケージを指す。典型的には、第1の薬剤はアベマシクリブ、又はその薬学的に許容される塩であり、第2の薬剤はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤、その薬学的に許容される塩である。任意選択的に、第3の薬剤がキットに含まれ得る。例えば、第3の薬剤は、BTK阻害剤、又はその薬学的に許容される塩であり得る。キットは、本明細書で定義される任意の更なる活性薬剤を含み得る。「キット」はまた、これらの薬剤の全て又は一部を癌患者、好ましくはマントル細胞リンパ腫患者に投与するための指示書を含み得る。このような文脈で言及されるマントル細胞リンパ腫は、好ましくは、本明細書で定義されるマントル細胞リンパ腫である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療するため」、又は「治療」という用語は、既存の症状、障害、状態又は疾患の進行又は重症度を、抑制、減速、停止、軽減、収縮、安定した病状の維持又は逆転させることを指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒト、より好ましくはヒトの女性を指す。好ましくは、患者は、約18~約90歳(約20~約85歳など)、例えば約30~約80歳(約50~約70歳など)の男性又は女性である。本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、文脈によって別様に要求されない限り、互換的に使用される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には未制御の細胞増殖によって特徴付けられる患者の生理学的状態を指すか、又はこれを説明する。この定義には、良性及び悪性の癌が含まれる。典型的には、本発明において、癌はマントル細胞リンパ腫である。癌は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)TNMシステムなど、当技術分野で通常の分類に従って評価され得る。
【0047】
「マントル細胞リンパ腫」という用語は、小型~中型のBリンパ球(中心細胞)で構成される侵攻性の、通常はびまん性非ホジキンリンパ腫として特徴付けられるリンパ腫を指す。大部分の患者は、リンパ節腫脹、肝脾腫、及び骨髄障害を伴う進行期の病気を呈する。マントル細胞リンパ腫の診断及び判定は、例えば、現在受け入れられているガイドラインに従って、当業者によって容易に判定される。例えば、American Society of Clinical Oncology(ASCO)及びCollege of American Pathologists(CAP)によって示されたガイドラインが広く受け入れられている。マントル細胞リンパ腫のマーカーとしては、B細胞の表面マーカー(例えば、CD20)、サイクリンD1の過剰発現、及び(11;14)転座が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩の量又は投与量、及び診断又は治療下にある患者において有効な応答を提供するPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤の量又は投与量を指す。治療対象への更なる活性薬剤の投与を含む本発明のいくつかの実施形態では、そのような薬剤の「有効量」は、本明細書に記載されるように、有効量のアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩、並びにPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩が組み合わせて投与された場合に、そのような患者において有効な応答を提供する、その量又は用量である。
【0049】
本明細書で使用される場合、薬剤の組み合わせを用いた治療に対する患者の「有効な応答」又は患者の「応答性」という用語は、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩、並びにPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩、並びに存在する場合、任意の更なる活性薬剤の投与の際に患者へ与えられる臨床的利点又は治療的利点を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」という用語は、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩、並びにPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、同時に、又は任意の順序で逐次的に、のいずれかで、例えば、単回サイクル又は1回以上のサイクルの標準的な治療過程の間のように反復間隔で投与し、その結果、ある薬剤を他の薬剤の投与の前、同時に、若しくは後に投与することができ、又はそれらの任意の組み合わせで投与できることを指す。BTK阻害剤又はその薬学的に許容される塩など更なる活性薬剤の投与を含む、本発明のいくつかの実施形態では、更なる薬剤の当該投与は、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩、並びにPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩のいずれか又は両方と共に、同時に又は任意の順序で逐次的に、のいずれかであり得る。
【0051】
本発明の併用治療の主な利点は、重大な毒性又は有害事象を引き起こすことなく、患者において顕著な抗癌効果を生じる能力であり、これにより患者は総合的な併用治療方法の恩恵を受ける。本発明の併用治療の有効性は、癌治療の評価において一般的に使用される様々なエンドポイントによって測定することができ、腫瘍の退縮、腫瘍重量又はサイズの収縮、進行までの時間、全生存、無増悪生存、総合奏効率、応答の期間、及び生活の質を含むが、これらに限定されない。本発明で使用される療法剤は、原発腫瘍の収縮を伴わずに、局所進行性の拡大又は転移拡大の阻害を引き起こし得るか、原発腫瘍の収縮を誘発し得るか、又は単に腫瘍抑制効果を発揮し得る。本発明は、抗腫瘍剤の組み合わせの使用に関するものであるため、例えば、血管新生及び/又は細胞周期活性の血漿又は尿マーカーの測定、血管新生及び/又は細胞周期活性のための組織ベースのバイオマーカーの測定、並びに放射線画像撮影による応答の測定を含む、本発明のいずれかの特定の併用療法の有効性を決定するための新規なアプローチを任意に用いることができる。
【0052】
本明細書において、特定の状態を治療する際に使用するための化合物又は組み合わせへの本明細書における言及は、状態を治療するための方法で使用するための化合物又は組み合わせへの言及と互換的に使用できる。したがって、例えば、本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するための、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせが提供され、したがって、本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者においてマントル細胞リンパ腫を治療する方法で使用するためのアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせが同様に提供される。同様に、本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するためのアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩が提供され、当該使用は、当該アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて当該患者に投与することを含み、したがって、本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者においてマントル細胞リンパ腫を治療する方法で使用するためのアベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩が同様に提供され、当該使用は、当該アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて当該患者に投与することを含む。同様に、本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療に使用するためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩が提供され、当該使用は、当該PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて当該患者に投与することを含み、したがって同様に、本明細書では、マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者においてマントル細胞リンパ腫を治療する方法に使用するためのPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩が提供され、当該使用は、当該PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて当該患者に投与することを含む。
【0053】
複数の選択肢のうちの1つから選択される、それと関連する、又はそれを特徴とするマントル細胞リンパ腫への本明細書における言及は、マントル細胞リンパ腫が、列挙された特徴のうちの2つ以上(例えば、列挙された特徴のうちの2つ又はそれ以上)から選択される、それと関連する、又はそれを特徴とする状況を包含すると理解されるべきである。
【0054】
当業者であれば、本明細書に記載の化合物を遊離塩基として使用できることを理解するであろう。同様に、当該化合物は、多くの無機酸及び有機酸のいずれかと反応して、薬学的に許容される塩を形成することができる。そのような薬学的に許容される塩及びそれらを調製するための一般的な方法は、当該技術分野において周知である。例えば、P.Stahl,et al,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use(VCHA/Wiley-VCH,2002);L.D.Bighley,et al.,Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,453-499(1995);S.M.Berge,et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences,66,1,(1977)を参照されたい。塩酸塩及びメシル酸塩は、アベマシクリブに好ましい塩である。メシル酸塩は、アベマシクリブに特に好ましい塩である。
【0055】
アベマシクリブ
アベマシクリブは、上に記載されている。好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は経口投与用に製剤化される。好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、錠剤又はカプセルに製剤化される。好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、錠剤に製剤化される。また、好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、カプセルに製剤化される。好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、約50mg~約200mgのアベマシクリブを含有する錠剤又はカプセルに製剤化される。好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、約50mg、約100mg、約150mg、又は約200mgのアベマシクリブを含有する錠剤又はカプセルに製剤化される。好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、50mgのアベマシクリブを含有する錠剤又はカプセルに製剤化される。また好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、100mgのアベマシクリブを含有する錠剤又はカプセルに製剤化される。また好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、150mgのアベマシクリブを含有する錠剤又はカプセルに製剤化される。また好ましくは、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩は、200mgのアベマシクリブを含有する錠剤又はカプセルに製剤化される。
【0056】
好ましくは、アベマシクリブは、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化される。好適な賦形剤としては、微結晶性セルロース(例えば、微結晶性セルロース102、微結晶性セルロース101)、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素(例えば、コロイド状水和シリカ)などが挙げられる。
【0057】
PI3K阻害剤及びmTOR阻害剤
任意の好適なPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤が、本開示に従って使用され得る。本明細書に開示されるPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、市販されている(例えば、Selleck Chemicals,US、MedChemExpress US、Sigma Aldrichからなど)、又は他の方法で(例えば、March’s Advanced Organic Chemistry,Wileyに開示されている方法を使用する、通常の有機合成によって)当業者に利用可能である。
【0058】
好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、クラスI PI3K、クラスII PI3K、及びクラスIII PI3Kのうちの1つ以上の阻害剤である。好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、クラスI PI3K、クラスII PI3K、及びクラスIII PI3Kのうちの2つ以上の阻害剤である。好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、クラスI PI3K、クラスII PI3K、及びクラスIII PI3Kの全ての阻害剤である。最も好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、クラスI PI3Kの阻害剤である。
【0059】
好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδのうちの1つ以上の阻害剤である。好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδのうちの2つ以上の阻害剤である。好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδのうちの3つ以上の阻害剤である。好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδの全ての阻害剤である。本明細書で使用される場合、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδの全てを阻害する化合物は、汎PI3K阻害剤とも呼ばれる。
【0060】
好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、競合的mTOR阻害剤である。競合的mTOR阻害剤は、mTOR ATP結合部位に結合してリン酸化を阻止する。競合的mTOR阻害剤としては、OSI-027、ビスツセルチブ(AZD2014)、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ(PP242)、ML-223、及びAZD8055が挙げられる。
【0061】
あるいは、好ましくは、mTOR阻害剤はラパマイシン類似体である。ラパマイシン類似体としては、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、及びリダホロリムスが挙げられる。
【0062】
最も好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、PI3K及びmTOR二重阻害剤である。PI3K及びmTOR二重阻害剤としては、サモトリシブ(LY3023414)、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ(GSK2126458/GSK458)、パヌリシブ(P7170)、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ(BEZ235)、パキサリシブ(GDC-0084)、アピトリシブ(GDC-0980)、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ(SAR245409/XL765)、SF-1126、ゲダトリシブ(PF-05212384/PKI-587)、XH00230381967、及びSN20229799306が挙げられる。
【0063】
好ましくは、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、競合的PI3K阻害剤である。競合的PI3K阻害剤は、PI3K活性部位に結合してリン酸化を阻止する。
【0064】
PI3K及び/又はmTORがPI3K阻害剤であるが、mTOR阻害剤ではない場合、コパンリシブ(BAY80-6946)、ピクチリシブ(GDC-0941)、ソノリシブ(PX-866)、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ(XL147)、ZSTK474、ブパルリシブ(BKM-120)、フィメピノスタット(CUDC-907)、リゴセルチブ(ON-01910)、AZD8835、WX-037、AZD8186、KA2237、アカリシブ(GS-9820/CAL-120)、ザンデリシブ(ME401/PWT-143)、AMG319、GSK2636771、パルサクリシブ(INCB050465)、セラベリシブ(INK-1117)、ウムブラリシブ(TGR-1202)、テナリシブ(RP6530)、タセリシブ(GDC-0032)、アルペリシブ(BYL719)、デュベリシブ(IPI-145)、及びイデラリシブ(CAL-101)から選択されることが好ましい。
【0065】
PI3K阻害剤としては、以下の化合物が挙げられる。
【0066】
ピクチリシブ(GDC-0941)、すなわち4-[2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-[(4-メチルスルホニルピペラジン-1-イル)メチル]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル]モルホリンは、PI3Kの強力な阻害剤であり、無細胞アッセイにおいてPI3Kα/δに対してナノモルIC50を有し、p110β(11倍)及びp110γ(25倍)に対して適度な選択性を有する。
【0067】
ソノリシブ(PX-866)、すなわち[(3aR,6E,9S,9aR,10R,11aS)-6-[[ビス(プロパ-2-エニル)アミノ]メチリデン]-5-ヒドロキシ-9-(メトキシメチル)-9a,11a-ジメチル-1,4,7-トリオキソ-2,3,3a,9,10,11-ヘキサヒドロインデノ[4,5-h]イソクロメン-10-イル]アセタートは、PI3Kの強力な阻害剤であり、PI3Kα/γ/δに対してナノモルIC50を有する。
【0068】
TG100-115、すなわち3-[2,4-ジアミノ-7-(3-ヒドロキシフェニル)プテリジン-6-イル]フェノールは、PI3Kの阻害剤であり、PI3Kγ/δに対してナノモルIC50を有する。TG100-115は、以下の構造である。
【化1】
【0069】
CH5132799、すなわち5-(7-(メチルスルホニル)-2-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピリミジン-2-アミンは、選択的なクラスI PI3K阻害剤であり、クラスI PI3K、特にPI3Kαに対してナノモルIC50を有する。CH5132799は、以下の構造である。
【化2】
【0070】
ピララリシブ(XL147)、すなわち2-アミノ-N-[3-[[3-(2-クロロ-5-メトキシアニリノ)キノキサリン-2-イル]スルファモイル]フェニル]-2-メチルプロパンアミドは、PI3Kの強力かつ高度に選択的な阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δに対してナノモルIC50を有する。
【0071】
ZSTK474、すなわち4,4’-(6-(2-(ジフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ジモルホリンは、ATP競合汎クラスI PI3K阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δに対してナノモルIC50を有する。ZSTK474は、以下の構造である。
【化3】
【0072】
ブパルリシブ(BKM-120)、すなわち5-(2,6-ジモルホリン-4-イルピリミジン-4-イル)-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-アミンは、汎クラスI PI3K阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δに対してナノモルIC50を有する。
【0073】
コパンリシブ(BAY80-6946)、すなわち2-アミノ-N-[7-メトキシ-8-(3-モルホリン-4-イルプロポキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-c]キナゾリン-5-イリデン]ピリミジン-5-カルボキサミドは、強力な、選択的かつATP競合汎クラスI PI3K阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δに対してナノモルIC50を有する。
【0074】
フィメピノスタット(CUDC-907)、すなわちN-ヒドロキシ-2-[[2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリン-4-イルチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル]メチル-メチルアミノ]ピリミジン-5-カルボキサミドは、クラスI PI3Kを強力に阻害し、PI3Kα/β/δに対してナノモルIC50を有する。
【0075】
リゴセルチブ(ON-01910)、すなわち2-[2-メトキシ-5-[[(E)-2-(2,4,6-トリメトキシフェニル)エテニル]スルホニルメチル]アニリノ]酢酸は、PI3K阻害剤である。
【0076】
AZD8835、すなわち1-[4-[5-[5-アミノ-6-(5-tert-ブチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ピラジン-2-イル]-1-エチル-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピペリジン-1-イル]-3-ヒドロキシプロパン-1-オンは、強力かつ選択的なPI3K阻害剤であり、PI3Kα/δに対してナノモルIC50を有する。AZD8835は、以下の構造である。
【化4】
【0077】
AZD8186、すなわち8-[(1R)-1-(3,5-ジフルオロアニリノ)エチル]-N,N-ジメチル-2-モルホリン-4-イル-4-オキソクロメン-6-カルボキサミドは、PI3K阻害剤であり、PI3Kβ/δに対してナノモルIC50を有し、PI3Kα/γよりも選択性を有する。AZD8186は、以下の構造である。
【化5】
【0078】
アカリシブ(GS-9820/CAL-120)、すなわち6-フルオロ-3-フェニル-2-[(1S)-1-(7H-プリン-6-イルアミノ)エチル]キナゾリン-4-オンは、強力かつ選択的なPI3Kδ阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。
【0079】
ザンデリシブ(ME401/PWT-143)、すなわち4-[2-(ジフルオロメチル)ベンズイミダゾール-1-イル]-N-[2-メチル-1-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)フェニル]プロパン-2-イル]-6-モルホリン-4-イル-1,3,5-トリアジン-2-アミンは、強力かつ選択的なPI3Kδ阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。
【0080】
AMG319、すなわちN-[(1S)-1-(7-フルオロ-2-ピリジン-2-イルキノリン-3-イル)エチル]-7H-プリン-6-アミンは、強力かつ選択的なPI3Kδ阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。AMG319は、以下の構造である。
【化6】
【0081】
GSK2636771、すなわち2-メチル-1-[[2-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]-6-モルホリン-4-イルベンズイミダゾール-4-カルボン酸は、強力かつ選択的なPI3Kβ阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。GSK2636771は、以下の構造である。
【化7】
【0082】
パルサクリシブ(INCB050465)、すなわち(4R)-4-[3-[(1S)-1-(4-アミノ-3-メチルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル]-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル]ピロリジン-2-オンは、強力かつ選択的なPI3Kδ阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。
【0083】
セラベリシブ(INK-1117)、すなわち[6-(2-アミノ-1,3-ベンゾオキサゾール-5-イル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル]-モルホリン-4-イルメタノンは、強力かつ選択的なPI3Kα阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。セラベリシブは、以下の構造である。
【化8】
【0084】
ウムブラリシブ(TGR-1202)、すなわち2-[(1S)-1-[4-アミノ-3-(3-フルオロ-4-プロパン-2-イルオキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]エチル]-6-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)クロメン-4-オンは、強力かつ選択的なPI3Kδ阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。ウムブラリシブは、以下の構造である。
【化9】
【0085】
テナリシブ(RP6530)、すなわち3-(3-フルオロフェニル)-2-[(1S)-1-(7H-プリン-6-イルアミノ)プロピル]クロメン-4-オンは、強力かつ選択的なPI3K阻害剤であり、PI3Kγ/δに対してナノモルIC50を有する。テナリシブは、以下の構造である。
【化10】
【0086】
タセリシブ(GDC-0032)、すなわち2-メチル-2-[4-[2-(5-メチル-2-プロパン-2-イル-1,2,4-トリアゾール-3-イル)-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,2-d][1,4]ベンゾオキサゼピン-9-イル]ピラゾール-1-イル]プロパンアミドは、強力なPI3K阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δに対してナノモルIC50を有する。タセリシブは、以下の構造である。
【化11】
【0087】
アルペリシブ(BYL719)、すなわち(2S)-1-N-[4-メチル-5-[2-(1,1,1-トリフルオロ-2-メチルプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル]-1,3-チアゾール-2-イル]ピロリジン-1,2-ジカルボキサミドは、強力かつ選択的なPI3K阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δに対してナノモルIC50を有する。アルペリシブは、以下の構造である。
【化12】
【0088】
デュベリシブ(IPI-145)、すなわち8-クロロ-2-フェニル-3-[(1S)-1-(7H-プリン-6-イルアミノ)エチル]イソキノリン-1-オンは、強力かつ選択的なPI3K阻害剤であり、PI3Kδに対してナノモルIC50を有する。デュベリシブは、以下の構造である。
【化13】
【0089】
イデラリシブ(CAL-101)、すなわち5-フルオル-3-フェニル-2-[(1S)-1-(7H-プリン-6-イルアミノ)プロピル]キナゾリン-4-オンは、強力かつ選択的なPI3K阻害剤であり、PI3Kδに対してナノモルIC50を有する。イデラリシブは、以下の構造である。
【化14】
【0090】
他のPI3K阻害剤としては、WX-037及びKA2237が挙げられる。
【0091】
mTOR阻害剤としては、以下の化合物が挙げられる。
【0092】
シロリムス、ラパマイシン、すなわち(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-12-[(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル]プロパン-2-イル]-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペントンは、強力かつ選択的なmTOR阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。
【0093】
Nab-ラパマイシンは、ナノ粒子アルブミン結合ラパマイシンである。
【0094】
テムシロリムス、すなわち[(1R,2R,4S)-4-[(2R)-2-[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシル]3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパノエートは、mTORの強力な阻害剤であり、マイクロモルIC50を有する。
【0095】
エベロリムス、すなわち(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-12-[(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メトキシシクロヘキシル]プロパン-2-イル]-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペントンは、ラパマイシン誘導体であり、強力な、選択的かつ経口活性mTOR1阻害剤である。
【0096】
リダホロリムス、すなわち(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-12-[(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-ジメチルホスホリルオキシ-3-メトキシシクロヘキシル]プロパン-2-イル]-1,18-ヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペントンは、ラパマイシン誘導体であり、強力な、選択的かつ経口活性mTOR1阻害剤である。
【0097】
OSI-027、すなわち4-[4-アミノ-5-(7-メトキシ-1H-インドール-2-イル)イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル]シクロヘキサン-1-カルボン酸は、強力かつ選択的なmTOR阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。OSI-027は、以下の構造である。
【化15】
【0098】
ビスツセルチブ(AZD2014)、すなわち3-[2,4-ビス[(3S)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル]-N-メチルベンズアミドは、強力かつ選択的なmTOR阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。
【0099】
サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、すなわち5-(4-アミノ-1-プロパン-2-イルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)-1,3-ベンゾオキサゾール-2-アミンは、強力かつ選択的なmTOR阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。サパニセルチブは、以下の構造である。
【化16】
【0100】
トルキニブ(PP242)、すなわち2-(4-アミノ-1-プロパン-2-イルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)-1H-インドール-5-オールは、強力かつ選択的なmTOR阻害剤であり、ナノモルのIC50を有する。
【0101】
AZD8055、すなわち[5-[2,4-ビス[(3S)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル]-2-メトキシフェニル]メタノールは、強力かつ選択的なmTOR阻害剤であり、ナノモルIC50を有する。AZD8055は、以下の構造である。
【化17】
【0102】
他のmTOR阻害剤としては、ML-223が挙げられる。
【0103】
PI3K及びmTOR二重阻害剤としては、以下の化合物が挙げられる。
【0104】
サモトリシブ(LY3023414)、すなわち8-[5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチルイミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンは、クラスI PI3KアイソフォームのDNA-PK及びmTOR1/2を強力かつ選択的に阻害し、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kδ、PI3Kγ、DNA-PK、及びmTORに対してそれぞれ6.07nM、77.6nM、38nM、23.8nM、4.24nM及び165nMのIC50を有する。サモトリシブは、低ナノモル濃度でmTORC1/2を強力に阻害する。
【0105】
BGT-226、すなわち8-(6-メトキシピリジン-3-イル)-3-メチル-1-[4-ピペラジン-1-イル-3-(トリフルオロメチル)フェニル]イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。BGT-226は、以下の構造である。
【化18】
【0106】
PF-04691502、すなわち2-アミノ-8-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。PF-04691502は、以下の構造である。
【化19】
【0107】
PKI-179、すなわち1-[4-[4-モルホリン-4-イル-6-(3-オキサ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニル]-3-ピリジン-4-イル尿素は、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。PKI-179は、以下の構造である。
【化20】
【0108】
オミパリシブ(GSK2126458/GSK458)、すなわち2,4-ジフルオロ-N-[2-メトキシ-5-(4-ピリダジン-4-イルキノリン-6-イル)ピリジン-3-イル]ベンゼンスルホンアミドは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。
【0109】
パヌリシブ(P7170)、すなわち[8-[6-アミノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]-1-[6-(2-シアノプロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-3-メチルイミダゾ[4,5-c]キノリン-2-イリデン]シアナミドは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤である。
【0110】
SB2343/VS-5584、すなわち5-(8-メチル-2-モルホリン-4-イル-9-プロパン-2-イルプリン-6-イル)ピリミジン-2-アミンは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。SB2343は、以下の構造である。
【化21】
【0111】
ダクトリシブ(BEZ235)、すなわち2-メチル-2-[4-(3-メチル-2-オキソ-8-キノリン-3-イルイミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)フェニル]プロパンニトリルは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。
【0112】
パキサリシブ(GDC-0084)、すなわち5-(6,6-ジメチル-4-モルホリン-4-イル-8,9-ジヒドロプリノ[8,9-c][1,4]オキサジン-2-イル)ピリミジン-2-アミンは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。
【0113】
アピトリシブ(GDC-0980)、(2S)-1-[4-[[2-(2-アミノピリミジン-5-イル)-7-メチル-4-モルホリン-4-イルチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル]メチル]ピペラジン-1-イル]-2-ヒドロキシプロパン-1-オンは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。
【0114】
ビミラリシブ(PQR309)、すなわち5-(4,6-ジモルホリン-4-イル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-アミンは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。
【0115】
ボクスタリシブ(SAR245409/XL765)、すなわち2-アミノ-8-エチル-4-メチル-6-(1H-ピラゾール-5-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/β/γ/δ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。
【0116】
SF-1126、すなわち(2S)-2-[[(2S)-3-カルボキシ-2-[[2-[[(2S)-5-(ジアミノメチリデンアミノ)-2-[[4-オキソ-4-[[4-(4-オキソ-8-フェニルクロメン-2-イル)モルホリン-4-イウム-4-イル]メトキシ]ブタノイル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]アセチル]アミノ]プロパノイル]アミノ]-3-ヒドロキシプロパノエートは、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤である。SF-1126は、以下の構造である。
【化22】
【0117】
ゲタトリシブ(PF-05212384/PKI-587)、すなわち1-[4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-カルボニル]フェニル]-3-[4-(4,6-ジモルホリン-4-イル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]は、強力なPI3K及びmTOR二重阻害剤であり、PI3Kα/γ及びmTORに対してナノモルIC50を有する。
【0118】
他のPI3K及びmTOR二重阻害剤としては、DS-7423、XH00230381967、及びSN20229799306が挙げられる。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、コパンリシブ又はその薬学的に許容される塩である。
【0120】
対象
いくつかの実施形態では、患者は、ヒト対象である。いくつかの実施形態では、患者は、ヒト女性対象である。いくつかの実施形態では、患者は、ヒト男性対象である。
【0121】
いくつかの実施形態では、患者は、約18~約80歳(約20~約75歳など)、例えば、約25~約60歳(約30~約50歳など)である。多くの場合、患者は、60歳未満(55歳未満など)、例えば、50歳未満(45歳未満など)、例えば、40歳未満である。
【0122】
マントル細胞リンパ腫は、Mantle Cell International Prognostic Index(MIPI)に従って特徴付けられ得る。患者は、以下の表に従って割り当てられ得る。
【表1】
ECOG PS、Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status;LDH(ULN)、乳酸デヒドロゲナーゼ(正常範囲の上限);WBC、白血球(leukocyte)数。総得点:0~3、低リスク;4~5、中リスク、6~11、高リスク。
【0123】
いくつかの実施形態では、対象は、ステージ1のマントル細胞リンパ腫を有し得る。ステージ1のマントル細胞リンパ腫は、典型的には、1つのリンパ節領域又は単一器官で検出されるリンパ腫に関連する。いくつかの実施形態では、対象は、ステージ2のマントル細胞リンパ腫を有し得る。ステージ2のマントル細胞リンパ腫は、典型的には、同じ側の横隔膜の2つ以上のリンパ節領域で検出されるリンパ腫に関連する。いくつかの実施形態では、対象は、ステージ3のマントル細胞リンパ腫を有し得る。ステージ3のマントル細胞リンパ腫は、典型的には、横隔膜の上下の2つ以上のリンパ節領域で検出されるリンパ腫に関連する。いくつかの実施形態では、対象は、ステージ4のマントル細胞リンパ腫を有し得る。ステージ4のマントル細胞リンパ腫は、典型的には、リンパ節及び/又は身体の他の部分における広範な疾患に関連する。マントル細胞リンパ腫のステージは、当業者によって容易に評価され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、患者は、肺/胸膜、肝臓、骨、乳房/胸壁、軟組織、遠位リンパ節、局所リンパ節、中枢神経系/脳、骨髄、血流、及び腸から選択される1つ以上の部位に転移した癌を有し得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、患者は、マントル細胞リンパ腫に関連する1つ以上の突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者は、ATM、TP53、CCND1、KMT2D、CDK2NA、BIRC3、CDKN2B、KHSC1、SMARCA4、SDHD、UBR5、NOTCH1、CARD11、SAMHD1、BCL10、MEF2B、IRS2、FGF19、FGF4、FGF3、FAT1、ROBO1、DIS3、CRLF2、CDKN2C、ARID2、ARID1A、ARID1B、NOTCH2、及びBCORのうちの1つ以上において1つ以上の突然変異を有する。患者は、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、MYD88、BKT、PCLG2、BCL2、KMT2D、及びCELSR3のうちの1つ以上において1つ以上の突然変異を有し得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、患者は、ATM、TP53、CCND1、KMT2D、及びCDKN2Aのうちの1つ以上において1つ以上の突然変異を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、患者は、ATMにおいて1つ以上の突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者は、TP53において1つ以上の突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者は、CCND1において1つ以上の突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者は、KMT2Dにおいて1つ以上の突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者は、CDKN2Aにおいて1つ以上の突然変異を有する。このような遺伝子における突然変異は、当業者に利用可能な技術を使用して、例えば、患者由来の生体試料(例えば、血液試料)のDNA配列決定によって、評価されるべき遺伝子をコードするDNAを増幅するための任意選択のPCRを用いて検出され得る。
【0128】
いくつかの態様では、患者は、ベネトクラクス又はナビトクラックスなどBCL-2阻害剤による治療に対して治療に対して耐性を示すマントル細胞リンパ腫を有する。患者は、BCL-2阻害剤に対する耐性を獲得したマントル細胞リンパ腫を有し得る。BCL-2阻害剤に対する耐性は、BCL-2阻害剤によるマントル細胞リンパ腫の治療の失敗によって(例えば、そのような治療の間又は後に進行する患者及びマントル細胞リンパ腫に阻害剤を投与することによって)、又はマントル細胞リンパ腫がBCL-2阻害剤に耐性を示すことが知られている遺伝子プロファイルに関連すると判定することによって、判定することができる。
【0129】
当業者は、BCL-2阻害剤などの阻害剤に対する耐性を獲得したマントル細胞リンパ腫の治療が、当該阻害剤に対する先天性、すなわち一次耐性を有するマントル細胞リンパ腫の治療に対する異なる課題であることを理解するであろう。阻害剤に対する耐性を獲得したマントル細胞リンパ腫の治療は、本明細書中に提供される療法によって提供される。
【0130】
例えば、いくつかの実施形態では、患者は、ベネトクラクスによる治療に耐性を示すマントル細胞リンパ腫を有する。患者は、ベネトクラクスに対する耐性を獲得したマントル細胞リンパ腫を有し得る。ベネトクラクスに対する耐性は、ベネトクラクスによるマントル細胞リンパ腫の治療の失敗(例えば、患者にベネトクラクスを投与し、そのような治療中又は治療後にマントル細胞リンパ腫が進行することによる)、又はベネトクラクスに対する耐性が既知である遺伝子プロファイルに関連するとマントル細胞リンパ腫を判定することによって判定することができる。例えば、ベネトクラクス耐性に関連する突然変異は、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、CARD11、MYD88、CCND1、BKT、及びPCLG2のうちの1つ以上における1つ以上の突然変異を含み得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、患者は、イブルチニブによる治療に対して耐性を示すマントル細胞リンパ腫を有する。患者は、イブルチニブに対する耐性を獲得したマントル細胞リンパ腫を有し得る。イブルチニブに対する耐性は、イブルチニブによるマントル細胞リンパ腫の治療の失敗(例えば、患者にイブルチニブを投与し、そのような治療中又は治療後にマントル細胞リンパ腫が進行することによる)、又はイブルチニブに対する耐性が既知である遺伝子プロファイルに関連するとマントル細胞リンパ腫を判定することによって判定することができる。例えば、イブルチニブ耐性に関連する突然変異は、SMARCA4、BCL2、TP53、CDKN2A、KMT2D、CELSR3、CCND1、NOTCH2、及びATMのうちの1つ以上における1つ以上の突然変異を含み得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、患者は、サイクリンD1過剰発現、t(11;14)及び/若しくはt(11;14)(q13;q32)転座、Ki67過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、並びに/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現のうちの1つ以上によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、患者は、サイクリンD1過剰発現によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有する。患者は、サイクリンD1、D2及び/又はD3過剰発現によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有し得る。サイクリン過剰発現は、当業者によって容易に判定され得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、患者は、t(11);14)転座によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有する。いくつかの実施形態では、患者は、t(11);14)(q13;q32)転座によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有する。t(11;14)では、結果は、免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子座及びサイクリンD1遺伝子(CCND1、PRAD1、BCL1)の並置である。理論に束縛されるものではないが、この転座は、CCND1遺伝子(11q13)の隣のIgH遺伝子座(14q32)からの転写エンハンサの並置によってサイクリンD1を過剰発現させると考えられる。サイクリンD1は、細胞周期のG1期からS期への細胞の進入を促進する核タンパク質である。このような転座の検出は、当業者にとって日常的である。例えば、t(11;14)転座は、細胞遺伝学、サザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析、又は相間蛍光in situハイブリダイゼーションを用いて検出することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、患者は、Ki67の過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、及び/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有する。いくつかの実施形態では、患者は、Ki67過剰発現によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有する。いくつかの実施形態では、患者は、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有する。いくつかの実施形態では、患者は、β-2ミクログロブリン過剰発現によって特徴付けられるか、又はそれに関連するマントル細胞リンパ腫を有する。このような過剰発現の判定は、当業者にとって日常的である。
【0136】
いくつかの実施形態では、患者は、難治性及び/又は再発性マントル細胞リンパ腫を有する。本明細書中で使用される場合、「難治性」という用語は、治療に応答しないか、又は当該応答が短期間であるマントル細胞リンパ腫に関する。「再発性」という用語は、寛解期間後に再発又は再成長するマントル細胞リンパ腫を指す。
【0137】
いくつかの実施形態では、患者は、節性マントル細胞リンパ腫、及び白血病性非節性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つとして特徴付けられるマントル細胞リンパ腫を有する。節性マントル細胞リンパ腫は、リンパ節に影響を及ぼすが、骨髄、血流、腸、及び肝臓など身体の他の部分に転移することが多い。いくつかの実施形態では、節性マントル細胞リンパ腫は、芽球性マントル細胞リンパ腫、及び多形性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つによって特徴付けられる。
【0138】
網膜芽細胞腫(Rb)は、腫瘍抑制機能を発揮するタンパク質である。Rbの脱制御は、様々な癌型に関連する。リンパ腫細胞は、Rb機能性(Rb陽性、Rb+とも称される)又はRb欠損(Rb deficient)(Rb陰性、Rb-とも称される)であり得る。Rb状態は、シスプラチン(CDDP)、5-フルオロウラシル、イダルビシン、エピルビシン、PRIMA-1met、フルダラビン、及びPD-0332991など多くの化学療法剤に対する感受性とは無関係であることが示されている。
【0139】
本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、患者は、Rb陰性マントル細胞リンパ腫を有する。したがって、いくつかの実施形態では、患者は、Rb欠損であるマントル細胞リンパ腫を有する。本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、患者は、Rb陽性マントル細胞リンパ腫を有する。したがって、いくつかの実施形態では、患者は、Rb機能性であるマントル細胞リンパ腫を有する。
【0140】
本明細書で提供される療法は、Rb陽性マントル細胞リンパ腫及びRb陰性マントル細胞リンパ腫の両方を治療するのに有用である。しかしながら、いかなる形でも理論に束縛されるものではないが、本明細書で提供される療法は、Rb機能性であるマントル細胞リンパ腫の治療において特に有益であり得ると考えられる。更に理論に束縛されるものではないが、Rb機能性のマントル細胞リンパ腫において、mTOR(ラパマイシンの機構的標的)調節解除は、細胞の成長及び増殖を促進し得ると考えられる。mTORは、構造的かつ機能的に異なる2つの複合体である、mTORC1及びmTORC2を形成すると考えられている。リン酸化されたRbは、mTORC2複合体と相互作用してAKT活性化を抑制し、その結果、アベマシクリブによるCDK4/6の阻害によりRbリン酸化が低減し、したがってmTORC2活性化に対するRb抑制を弱め、AKTリン酸化及び活性化を押し上げ、アベマシクリブとPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤との組み合わせでRb+マントル細胞リンパ腫を治療するための生物学的原理を提供することができると考えられる。
【0141】
本明細書に記載のように、マントル細胞リンパ腫は、いくつかの実施形態では、アンドロゲン受容体(AR)の発現(例えば、LARマントル細胞リンパ腫における)によって特徴付けられ得る。アンドロゲン受容体(AR)は、異なる、時には反対の細胞プロセスに関与する特定の遺伝子を制御する転写因子を連結するステロイドホルモン受容体であり、活性化された、並行シグナル伝達経路に応じて、細胞増殖及びアポトーシスの両方を刺激又は抑制することができる。ARは、全てではないが一部のマントル細胞リンパ腫において発現する。
【0142】
したがって、いくつかの実施形態では、対象は、AR陽性(AR機能性)であるマントル細胞リンパ腫を有する。しかしながら、他の実施形態では、対象は、AR陰性(AR欠損)であるマントル細胞リンパ腫を有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、例えば対象が、AR陽性であるマントル細胞リンパ腫を有する実施形態では、対象は、抗AR療法を投与され得る。抗AR療法が対象に投与される実施形態では、任意の好適な抗AR療法が使用され得る。好ましい抗AR療法は、様々なパラメータに従って、特にマントル細胞リンパ腫の重症度及び組織構造、治療対象の年齢、体重及び状態、投与経路、並びに必要なレジメンに従って決定され得る。医師は、使用するのに好ましい抗AR療法、並びに任意の特定の対象に必要な投与経路及び投与量を決定することができる。好ましくは、抗AR療法は、ビカルタミド(Casodex)、エンザルタミド(Xtandi)、及び酢酸アビラテロン(Zytiga)などAR阻害剤から選択され得る。例えば、ビカルタミドは、1日当たり約50mgの用量で投与され得る。エンザルタミドは、1日当たり約160mgの用量で投与され得る。酢酸アビラテロンは、約1000mgの用量で1日1回投与され得る。
【0144】
マントル細胞リンパ腫は、いくつかの実施形態では、PD-L1の発現によって特徴付けられ得る。PD-L1(プログラム細胞死リガンド1)は、組織内のT細胞エフェクタ機能を制限する免疫チェックポイント受容体であるPD-1(プログラム細胞死タンパク質1)のリガンドである。PD-L1発現は、例えば、突然変異によるPTEN発現又は機能の喪失によって促進され得る。
【0145】
したがって、いくつかの実施形態では、対象は、PD-L1を発現する(PD-L1陽性)マントル細胞リンパ腫を有する。しかしながら、他の実施形態では、対象は、PD-L1を発現しない(PD-L1陰性)マントル細胞リンパ腫を有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、例えば、対象がPD-L1陽性であるマントル細胞リンパ腫を有する実施形態では、対象は、PD-1又はPD-L1の阻害剤を投与され得る。PD-1又はPD-L1の阻害剤が対象に投与される実施形態では、任意の好適なPD-1又はPD-L1の阻害剤が使用され得る。好ましいPD-1又はPD-L1の阻害剤は、様々なパラメータに従って、特にマントル細胞リンパ腫の重症度及び組織構造、治療対象の年齢、体重及び状態、投与経路、並びに必要なレジメンに従って決定され得る。医師は、使用するのに好ましいPD-1又はPD-L1の阻害剤、並びに任意の特定の対象に必要な投与経路及び投与量を決定することができる。好ましくは、PD-1又はPD-L1の阻害剤は、ペムブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、セミプリマブ(Libtayo)、アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、及びデュルバルマブ(Imfinzi)から選択され得る。例えば、ペムブロリズマブは、3週間毎に約200mgの用量で投与され得る。ニボルマブは、2週間毎に約240mg又は4週間毎に480mgの用量で投与され得る。セミプリマブは、3週間に1回、約350mgの用量で投与され得る。アテゾリズマブは、2週間毎に約840mg、又は3週間毎に1200mg、又は4週間毎に1680mgの用量で投与され得る。アベルマブは、2週間毎に約800mgの用量で投与され得る。デュルバルマブは、2週間毎に約10mg/kg、又は3若しくは4週間毎に1500mgの用量で投与され得る。
【0147】
更なる実施形態
本明細書では、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、本明細書に記載のPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤との組み合わせである製品も提供される。本製品は、本明細書に記載の賦形剤、希釈剤、又はアジュバントのいずれか1つなど1つ以上の薬学的に許容される成分を含み得る。本製品は、本明細書に記載の1つ以上の追加の活性剤を含み得る。本製品は、剤形として、例えば、経口剤形として、又は本明細書に記載の注射若しくは注入用の剤形として製剤化され得る。本製品は、本明細書に記載のキットとして提供され得る。
【0148】
更なる態様
以下は、本発明の更に番号が付けられた態様である:
【0149】
1.マントル細胞リンパ腫の治療を要する患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせの使用。
【0150】
2.アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせてマントル細胞リンパ腫の治療を要する患者に投与することによる、当該患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、当該アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩の使用。
【0151】
3.PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせてマントル細胞リンパ腫の治療を要する患者に投与することによる、当該患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、当該PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩の使用。
【0152】
4.当該薬剤は、当該アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩、並びに当該PI3K阻害剤及び/若しくは当該mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を同時に、個別に、又は逐次的に当該患者に投与することによる、当該患者におけるマントル細胞リンパ腫の治療のためのものである、態様1~3のいずれか1つで定義される組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0153】
5.PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、PI3K/mTOR二重阻害剤である、態様1~4のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0154】
6.PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、汎PI3K阻害剤である、態様1~5のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0155】
7.PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、コパンリシブ(BAY80-6946)、サモトリシブ(LY3023414)、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ(GSK2126458/GSK458)、パヌリシブ(P7170)、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ(BEZ235)、パキサリシブ(GDC-0084)、アピトリシブ(GDC-0980)、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ(SAR245409/XL765)、SF-1126、ゲダトリシブ(PF-05212384/PKI-587)、XH00230381967、SN20229799306、ピクチリシブ(GDC-0941)、ソノリシブ(PX-866)、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ(XL147)、ZSTK474、ブパルリシブ(BKM-120)、フィメピノスタット(CUDC-907)、リゴセルチブ(ON-01910)、AZD8835、WX-037、AZD8186、KA2237、アカリシブ(GS-9820/CAL-120)、ザンデリシブ(ME401/PWT-143)、AMG319、GSK2636771、パルサクリシブ(INCB050465)、セラベリシブ(INK-1117)、ウムブラリシブ(TGR-1202)、テナリシブ(RP6530)、タセリシブ(GDC-0032)、アルペリシブ(BYL719)、デュベリシブ(IPI-145)、及びイデラリシブ(CAL-101)、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダホロリムス、OSI-027、ビスツセルチブ(AZD2014)、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ(PP242)、ML-223、及びAZD8055、
並びにそのプロドラッグ、代謝産物、及び誘導体、並びにその薬学的に許容される塩から選択される、態様1~6のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0156】
8.PI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤は、コパンリシブ(BAY80-6946)又はその薬学的に許容される塩である、態様1~7のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0157】
9.マントル細胞リンパ腫は、1つ以上のBCL-2阻害剤に対する耐性を獲得している、態様1~8のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0158】
10.マントル細胞リンパ腫は、ベネトクラクスに対する耐性を獲得している、態様1~9のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0159】
11.マントル細胞リンパ腫は、イブルチニブに対する耐性を獲得している、態様1~10のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0160】
12.マントル細胞リンパ腫は、節性マントル細胞リンパ腫、及び白血病性非節性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つとして特徴付けられる、態様1~11のいずれか1つに記載の組み合わせ剤、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0161】
13.マントル細胞リンパ腫は、難治性マントル細胞リンパ腫及び/又は再発性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらとして特徴付けられる、態様1~12のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0162】
14.マントル細胞リンパ腫は、TP53、CCND1、KMT2D、CDK2NA、BIRC3、CDKN2B、KHSC1、SMARCA4、SDHD、UBR5、NOTCH1、CARD11、SAMHD1、BCL10、MEF2B、IRS2、FGF19、FGF4、FGF3、FAT1、ROBO1、DIS3、CRLF2、CDKN2C、ARID2、ARID1A、ARID1B、NOTCH2、BCOR、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、MYD88、BKT、PCLG2、BCL2、KMT2D、及びCELSR3における1つ以上の突然変異に関連する、態様1~13のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0163】
15.当該マントル細胞リンパ腫は、サイクリンD1過剰発現、t(11;14)及び/若しくはt(11;14)(q13;q32)転座、Ki67過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、並びに/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現に関連する、態様1~14のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0164】
16.当該マントル細胞リンパ腫は、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)機能性である、態様1~15のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0165】
17.当該薬剤は、有効量のBTK阻害剤を患者に更に投与することによるマントル細胞リンパ腫の治療のためのものである、態様1~16のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0166】
18.当該薬剤は、フルベストラント又はその薬学的に許容される塩、アロマターゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩、AR阻害剤、PD-L1又はPD-1阻害剤など免疫チェックポイント阻害剤、CDK4/6阻害剤、AKT阻害剤、サイクリンE/CDK2阻害剤、オートファジー阻害剤、抗EGFR阻害剤、及びPARP阻害剤から選択される1つ以上の追加の薬剤の有効量を患者に更に投与することによるマントル細胞リンパ腫の治療のためのものである、態様1~17のいずれか1つに記載の組み合わせ、アベマシクリブ、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤の使用。
【0167】
以下の実施例は、本発明を説明するためだけに提供されるものであり、非限定的である。特に、薬学的に許容される薬物の組み合わせの抗癌効果及び潜在的な相乗効果を実証するために利用可能な多くのアッセイが存在し、したがって、任意の1つのアッセイにおける否定的な結果は決定的ではない。
【実施例】
【0168】
これらの実施例は、マントル細胞リンパ腫の治療における、特許請求の範囲に記載の療法の有用性を説明する。
【0169】
要旨
BTK阻害剤及びBcl-2阻害剤など新規治療戦略は、MCL患者の予後を飛躍的に改善したが、これらの治療に対する耐性は不可避である。
【0170】
腫瘍抑制遺伝子CDKN2Aは、イブルチニブ耐性腫瘍で一般的に欠失しており、CDK4/6シグナル伝達の上方制御をもたらした。他の特徴の中には、mTOR/PI3K経路、Myc経路、及びOXPHOS経路がある。
【0171】
したがって、本発明者らは、CDK4/6経路及びPI3K経路の結合標的化を利用して、インビトロモデル及びPDXモデルを使用した治療耐性を克服しようと試みる。
【0172】
方法
この前臨床試験では、イブルチニブ又はベネトクラクス感受性細胞株及び耐性MCL細胞株を使用した。
【0173】
1ウェル当たり1×104個の細胞を96ウェルプレートに播種し、アベマシクリブ単剤療法又はコパンリシブ(PI3K阻害剤)との併用で3連で72時間処置し、次いで、CellTiter-Glo Luminescent Cell viability Assay Reagentと混合した。
【0174】
細胞周期アッセイのために、細胞を6ウェルプレートに播種し、ビヒクル又はアベマシクリブで24時間処置した。細胞を70%予冷エタノール中で固定し、ヨウ化プロピジウムで染色した。Novocyte Flow Cytometerによって細胞周期の段階を定量化した。
【0175】
処理後のタンパク質レベルでの分子事象を免疫ブロッティングによって判定した。
【0176】
インビボ実験のために、アベマシクリブ(25mg/kg、経口、毎日)及びコパンリシブ(5mg/kg、IP、週3回)の組み合わせを、Mino-ベネトクラクス耐性異種移植片モデルにおいて評価した。
【0177】
細胞株ごとにGraphPad Prism 8を使用して、IC50値を計算した。スチューデントt検定を実施して、ビヒクル群と処置群との間の差を比較した。二元配置分散分析(ANOVA)を実施して、腫瘍成長インビボ実験を分析した。0.05未満のP値は統計的に有意であるとみなした。
【0178】
結果
本発明者らの以前の研究は、ベネトクラクス(JeKo-1)又はイブルチニブ処置(Maver-1及びZ-138)に耐性を示したMCL細胞のサブセットを同定した。
【0179】
耐性を克服するために、本発明者らは、最初にMCL細胞株をアベマシクリブで処置し、結果は、単剤としてのアベマシクリブが、ベネトクラクス感受性(Mino、Rec-1、Maver-1、及びZ138)及び一時耐性MCL細胞(JeKo-1)を含むMCL細胞株のサブセットにおいて強力な抗MCL活性を示すことを示した(Ic
50=70~952nM)。(
図1)
【0180】
しかしながら、ベネトクラクス耐性を獲得した細胞株Mino-ven-R及びRec-ven-Rは、アベマシクリブ処置に対して高度な耐性を示す(Ic
50=6.0及び4.4μM)。PI3K/ATK経路は、それらの親細胞と比較して、Mino-ven-R及びRec-ven-R細胞において高度に上方制御されることが報告されている。標的療法の効力を更に増大させるために、本発明者らは、耐性MCL細胞をアベマシクリブ及びコパンリシブの組み合わせで処置し、結果は、ベネトクラクス又はイブルチニブ耐性MCL細胞株における相乗的に増強された細胞傷害性を示した。細胞周期進行におけるCDK4/6の機能と一致して、アベマシクリブによるCDK4/6の阻害は、MCL細胞株のG1期における細胞周期の停止をもたらした。(
図2)
【0181】
コパンリシブと組み合わせたアベマシクリブがインビボでベネトクラクス耐性を克服できるか否かを検証するために、本発明者らは、免疫不全NSGマウスでMino-ven-R細胞株由来のベネトクラクス耐性異種移植片モデルを使用して、コパンリシブと組み合わせたアベマシクリブの抗癌効果を評価した(
図3)。結果として、アベマシクリブ(25mg/kg、経口、毎日)は、ビヒクル対照と比較して腫瘍体積を著しく減少させたが(n=5、p<0.0001)、ベネトクラクス(5mg/kg、経口、毎日)又はコパンリシブ(5mg/kg、IP、週3回)は減少させなかった。
【0182】
注目すべきことに、アベマシクリブとコパンリシブの組み合わせも、単剤治療と比較して有意なインビボ相乗効果を示した(p<0.0001)。
【0183】
注目すべきことに、この組み合わせは、体重の大幅な減少を引き起こさなかった。
【0184】
総合すると、これらの結果は、MCLにおけるベネトクラクス耐性の克服には併用療法が有効であることを示唆している。
【0185】
結論
臨床的に、相乗的な薬物の組み合わせにより、各薬物をより低い用量で投与して、同等の治療効果を達成することが可能になる。薬物投与量の減少は、用量制限毒性(患者における治療の停止に関与する主要因子)を緩和し得る。
【0186】
本明細書に提示される結果は、MCLの治療における、アベマシクリブと、コパンリシブなどPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤との組み合わせの重要性を示す。特に、本明細書に提示されるデータは、アベマシクリブと、コパンリシブなどPI3K阻害剤及び/又はmTOR阻害剤との併用治療が、インビトロモデル及びインビボモデルの両方において着実な抗リンパ種効果を発揮することを裏付ける。そのようなデータは、そのような組み合わせが、MCLにおけるベネトクラクス耐性の克服を通じて臨床的に実施可能な効果を達成することができ、将来的には、難治性/再発性MCL患者向けの有効な治療レジメンになり得ることを示す。
【0187】
参考文献
Wang,M.L.,et al.,Targeting BTK with ibrutinib in relapsed or refractory mantle-cell lymphoma.N Engl J Med,2013.369(6):p.507-16
Tam,C.S.,et al.,Ibrutinib plus Venetoclax for the Treatment of Mantle-Cell Lymphoma.N Engl J Med,2018.378(13):p.1211-1223
Morschhauser,F.,et al.,Clinical activity of abemaciclib in patients with relapsed or refractory mantle cell lymphoma-a phase II study.Haematologica,2021.106(3):p.859-862。
Bea,S.and E.Campo,Secondary genomic alterations in non-Hodgkin’s lymphomas:tumor-specific profiles with impact on clinical behavior.Haematologica,2008.93(5):p.641-5。
Jares,P.,D.Colomer,and E.Campo,Genetic and molecular pathogenesis of mantle cell lymphoma:perspectives for new targeted therapeutics.Nat Rev Cancer,2007.7(10):p.750-62。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を含む、マントル細胞リンパ腫の治療剤であって、前記アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩が、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与されるように用いられることを特徴とする、治療剤。
【請求項2】
前記アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、前記PI3K阻害剤及び/若しくは前記mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせ投与が、同時、個別、又は逐次的である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、PI3K/mTOR二重阻害剤である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項4】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、汎PI3K阻害剤である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項5】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、コパンリシブ、サモトリシブ、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ、パヌリシブ、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ、パキサリシブ アピトリシブ、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ、SF-1126、ゲタトリシブ、XH00230381967、SN20229799306、ピクチリシブ、ソノリシブ、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ、ZSTK474、ブパルリシブ、フィメピノスタット、リゴセルチブ、AZD8835、WX-037、AZD8186、KA2237、アカリシブ、ザンデリシブ、AMG319、GSK2636771、パルサクリシブ、セラベリシブ、ウムブラリシブ、テナリシブ、タセリシブ、アルペリシブ、デュベリシブ、及びイデラリシブ、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダホロリムス、OSI-027、ビスツセルチブ、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ、ML-223、及びAZD8055、
並びにそれらのプロドラッグ、代謝産物、及び誘導体、並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の治療剤。
【請求項6】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、コパンリシブ又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項7】
前記マントル細胞リンパ腫が、1つ以上のBCL-2阻害剤に対する耐性を獲得している、請求項1に記載の治療剤。
【請求項8】
前記マントル細胞リンパ腫が、ベネトクラクスに対する耐性を獲得している、請求項1に記載の治療剤。
【請求項9】
前記マントル細胞リンパ腫が、イブルチニブに対する耐性を獲得している、請求項1に記載の治療剤。
【請求項10】
前記マントル細胞リンパ腫が、節性マントル細胞リンパ腫、及び白血病性非節性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つとして特徴付けられる、請求項1に記載の治療剤。
【請求項11】
前記マントル細胞リンパ腫が、難治性マントル細胞リンパ腫及び/又は再発性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらとして特徴付けられる、請求項1に記載の治療剤。
【請求項12】
前記マントル細胞リンパ腫が、ATM、TP53、CCND1、KMT2D、CDK2NA、BIRC3、CDKN2B、KHSC1、SMARCA4、SDHD、UBR5、NOTCH1、CARD11、SAMHD1、BCL10、MEF2B、IRS2、FGF19、FGF4、FGF3、FAT1、ROBO1、DIS3、CRLF2、CDKN2C、ARID2、ARID1A、ARID1B、NOTCH2、BCOR、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、MYD88、BKT、PCLG2、BCL2、KMT2D、及びCELSR3における1つ以上の突然変異に関連する、請求項1に記載の治療剤。
【請求項13】
前記マントル細胞リンパ腫が、サイクリンD1過剰発現、t(11;14)及び/若しくはt(11;14)(q13;q32)転座、Ki67過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、並びに/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現に関連する、請求項1に記載の治療剤。
【請求項14】
前記マントル細胞リンパ腫が、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)機能性である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項15】
BTK阻害剤と更に組み合わせて投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項16】
フルベストラント又はその薬学的に許容される塩、アロマターゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩、AR阻害剤、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤、CDK4/6阻害剤、AKT阻害剤、サイクリンE/CDK2阻害剤、オートファジー阻害剤、抗EGFR阻害剤、及びPARP阻害剤から選択される1つ以上の追加の薬剤と更に組み合わせて投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項17】
アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせを含む、マントル細胞リンパ腫の治療に使用するための治療剤。
【請求項18】
PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を含む、マントル細胞リンパ腫の治療に使用するための治療剤であって、前記使用が、前記PI3K阻害剤及び/若しくは前記mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む、治療剤。
【請求項19】
前記使用が、前記アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩、並びに前記PI3K阻害剤及び/若しくは前記mTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、同時に、個別に、又は逐次的に投与することを含む、請求項18に記載の治療剤。
【請求項20】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、PI3K/mTOR二重阻害剤である、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項21】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、汎PI3K阻害剤である、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項22】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、コパンリシブ、サモトリシブ、BGT-226、DS-7423、PF-04691502、PKI-179、オミパリシブ、パヌリシブ、SB2343/VS-5584、ダクトリシブ、パキサリシブ アピトリシブ、ビミラリシブ(PQR309)、ボクスタリシブ、SF-1126、ゲタトリシブ、XH00230381967、SN20229799306、ピクチリシブ、ソノリシブ、TG100-115、CH5132799、ピララリシブ、ZSTK474、ブパルリシブ、フィメピノスタット、リゴセルチブ、AZD8835、WX-037、AZD8186、KA2237、アカリシブ、ザンデリシブ、AMG319、GSK2636771、パルサクリシブ、セラベリシブ、ウムブラリシブ、テナリシブ、タセリシブ、アルペリシブ、デュベリシブ、及びイデラリシブ、シロリムス、nab-ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダホロリムス、OSI-027、ビスツセルチブ、サパニセルチブ(MLN0128/INK128/TAK-228)、トルキニブ、ML-223、及びAZD8055、
並びにそれらのプロドラッグ、代謝産物、及び誘導体、並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項23】
前記PI3K阻害剤及び/又は前記mTOR阻害剤が、コパンリシブ又はその薬学的に許容される塩である、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項24】
前記マントル細胞リンパ腫が、1つ以上のBCL-2阻害剤に対する耐性を獲得している、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項25】
前記マントル細胞リンパ腫が、ベネトクラクスに対する耐性を獲得している、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項26】
前記マントル細胞リンパ腫が、イブルチニブに対する耐性を獲得している、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項27】
前記マントル細胞リンパ腫が、節性マントル細胞リンパ腫、及び白血病性非節性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらのうちの1つとして特徴付けられる、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項28】
前記マントル細胞リンパ腫が、難治性マントル細胞リンパ腫及び/又は再発性マントル細胞リンパ腫から選択されるか、又はこれらとして特徴付けられる、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項29】
前記マントル細胞リンパ腫が、ATM、TP53、CCND1、KMT2D、CDK2NA、BIRC3、CDKN2B、KHSC1、SMARCA4、SDHD、UBR5、NOTCH1、CARD11、SAMHD1、BCL10、MEF2B、IRS2、FGF19、FGF4、FGF3、FAT1、ROBO1、DIS3、CRLF2、CDKN2C、ARID2、ARID1A、ARID1B、NOTCH2、BCOR、TRAF2、TRAF3、MAP3K14、MYD88、BKT、PCLG2、BCL2、KMT2D、及びCELSR3における1つ以上の突然変異に関連する、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項30】
前記マントル細胞リンパ腫が、サイクリンD1過剰発現、t(11;14)及び/若しくはt(11;14)(q13;q32)転座、Ki67過剰発現、乳酸デヒドロゲナーゼ過剰発現、並びに/又はβ-2ミクログロブリン過剰発現に関連する、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項31】
前記マントル細胞リンパ腫が、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)機能性である、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項32】
前記使用が、BTK阻害剤を更に投与することを含む、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項33】
前記使用が、フルベストラント又はその薬学的に許容される塩、アロマターゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩、AR阻害剤、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤、CDK4/6阻害剤、AKT阻害剤、サイクリンE/CDK2阻害剤、オートファジー阻害剤、抗EGFR阻害剤、及びPARP阻害剤から選択される1つ以上の追加の薬剤を更に投与することを含む、請求項17又は18に記載の治療剤。
【請求項34】
マントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と、PI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩との組み合わせの使用。
【請求項35】
アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩を、PI3K及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することによる、マントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、前記アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項36】
PI3K及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を、アベマシクリブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することによる、マントル細胞リンパ腫の治療のための薬剤の製造における、前記PI3K及び/若しくはmTOR阻害剤又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項37】
-前記PI3K阻害剤及び/若しくは前記mTOR阻害剤が、請求項3~6のいずれか一項に定義されるとおりである、
-前記薬剤が、請求項7~14のいずれか一項に定義されるマントル細胞リンパ腫を治療するためのものである、並びに/又は
-前記治療が、請求項2若しくは請求項15~16のいずれか一項に定義されるとおりである、
請求項34~36のいずれか一項に定義される組み合わせ、アベマシクリブ若しくはその薬学的に許容される塩、又はPI3K阻害剤及び/若しくはmTOR阻害剤若しくはその薬学的に許容される塩の使用。
【国際調査報告】