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特表2024-546848固形腫瘍の治療のためのキメラ抗原受容体(CAR)を含むCD5改変された細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】固形腫瘍の治療のためのキメラ抗原受容体(CAR)を含むCD5改変された細胞
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20241219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241219BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20241219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241219BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241219BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K48/00
A61K35/76
A61P35/00
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K14/725
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/705
C12N5/10
C12N15/867 Z
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535399
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 US2022081463
(87)【国際公開番号】W WO2023114777
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/289,364
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/380,012
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ルエラ マルコ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA97Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、固形腫瘍を治療するための組成物および方法を提供した。特定の局面では、本開示は、CD5が破壊またはノックアウトされている改変された免疫細胞(すなわちCAR T細胞)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、
変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、該対象に投与する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合する、
前記方法。
【請求項2】
その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、
変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、該対象に投与する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合し、かつ該腫瘍の成長が、少なくとも10日間、20日間、30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、80日間、90日間、100日間、120日間、150日間、200日間、240日間阻害される、
前記方法。
【請求項3】
その必要がある対象において増強された有効性で固形腫瘍を治療する方法であって、
変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、該対象に投与する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合し、かつ該変異した内因性CD5遺伝子を含む該免疫細胞の集団の有効性が、非変異の内因性CD5遺伝子を含む免疫細胞の集団よりも高い、
前記方法。
【請求項4】
前記薬学的組成物が、約1×106~約1×109、約1×107~約1×109、約1×108~約1×109、約2×108~約1×109、約3×108~約1×109、約3×108~約1×109、約3×108~約1×109、約4×108~約1×109、約5×108~約1×109、約6×108、約7×108~約1×109、約8×108、約9×108~約1×109個の前記免疫細胞を含む、請求項1または3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記免疫細胞の集団の少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が前記変異した内因性CD5遺伝子を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記免疫細胞の集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が前記異種キメラ抗原受容体(CAR)を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記免疫細胞が、内因性完全長CD5タンパク質を発現せず、かつ含まない、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記変異したCD5遺伝子が、エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失が、内因性完全長CD5タンパク質の発現を阻害するかまたは低下させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記内因性CD5遺伝子が、遺伝子編集された変異、挿入、または欠失を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子編集された変異、挿入、または欠失が、ヌクレアーゼによって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ヌクレアーゼによって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失が、前記CD5遺伝子のエクソン1またはエクソン2を標的とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子編集されたまたはヌクレアーゼによって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失が、SEQ ID NO:45のヌクレオチド配列を含むsgRNAを利用する、請求項10~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSからなる群より選択される抗原に結合することができる、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
改変された免疫細胞がT細胞である、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:27~32および39~44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:19、25、および37からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ならびに/またはSEQ ID NO:20、26、および38からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:17、18、23、24、35、または36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むscFvを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記CARが、SEQ ID NO:15、16、21、22、33、および34からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記CARが、SEQ ID NO:1~6からなる群より選択される核酸配列によってコードされる、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記固形腫瘍が、前立腺癌(例えば、膵管腺癌(「PDAC」)、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、ならびに他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫 脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合膠腫など)、膠芽腫(多形膠芽腫としても公知である)星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、および脳転移など)、癌腫、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚癌の一形態)、扁平上皮癌(種々の組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、気管支原性癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、肺の小細胞癌ならびに非小細胞癌を含む肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、非浸潤性乳管癌または胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌、上皮癌、ならびに上咽頭癌、肉腫 線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、または他の軟部組織肉腫である、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、
CD5発現免疫細胞に結合する標的化部分と、遺伝子編集システムおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドとを含むベクターを、該対象に投与する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合し、
該遺伝子編集システムが、内因性CD5の発現を阻害するため、排除するため、または低下させるために該内因性CD5遺伝子を改変するように構成されており、かつ
該ベクターが、内因性CD5の発現を阻害するかまたは低下させるように該内因性CD5遺伝子を変異させるために該対象におけるCD5発現免疫細胞を形質導入し、かつ該変異した内因性CD5遺伝子を有する該免疫細胞において該CARを発現させる、
前記方法。
【請求項23】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記標的化部分が、抗体または他の種類の標的化部分(例えば、scFv、抗原結合ドメイン、DARPIN、VHH、またはFN3ドメイン)である、請求項22~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記固形腫瘍が、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、ならびに他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫 脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合膠腫など)、膠芽腫(多形膠芽腫としても公知である)星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、および脳転移など)、癌腫、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚癌の一形態)、扁平上皮癌(種々の組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、気管支原性癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、肺の小細胞癌ならびに非小細胞癌を含む肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、非浸潤性乳管癌または胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌、上皮癌、ならびに上咽頭癌、肉腫 線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、または他の軟部組織肉腫である、請求項22~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記形質導入された細胞が、内因性完全長CD5タンパク質を発現せず、かつ含まない、請求項22~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記変異したCD5遺伝子が、エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失を有する、請求項22~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失が、内因性完全長CD5タンパク質の発現を阻害するかまたは低下させる、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記内因性CD5遺伝子が、遺伝子編集された(例えば、CRISPRによって媒介された)遺伝子変異、挿入、または欠失を含む、請求項22~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記遺伝子編集された遺伝子変異、挿入、または欠失が、CRISPR/Cas9によって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記遺伝子編集された遺伝子変異、挿入、または欠失が、前記CD5遺伝子のエクソン1またはエクソン2を標的とする、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
前記遺伝子編集された(例えば、CRISPR/Cas9によって媒介された)遺伝子変異、挿入、または欠失が、SEQ ID NO:45のヌクレオチド配列を含むsgRNAを利用する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSからなる群より選択される抗原に結合することができる、請求項22~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
前記改変された免疫細胞がT細胞である、請求項22~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:27~32および39~44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む、請求項22~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:19、25、および37からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ならびに/またはSEQ ID NO:20、26、および38からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項22~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:17、18、23、24、35、または36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むscFvを含む、請求項22~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
前記CARが、SEQ ID NO:15、16、21、22、33、および34からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項22~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
前記CARが、SEQ ID NO:1~6からなる群より選択される核酸配列によってコードされる、請求項22~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞であって、該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、内因性CD5遺伝子が、変異しているか、改変されているか、破壊されているか、またはノックアウトされており、かつ該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合する、前記改変された免疫細胞。
【請求項42】
前記CARの前記抗原結合ドメインが、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSに結合する、請求項36記載の改変された免疫細胞。
【請求項43】
請求項41または42記載の改変された免疫細胞の集団を含む、組成物(例えば、薬学的組成物)。
【請求項44】
前記改変された免疫細胞の集団の少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が前記変異した内因性CD5遺伝子を含む、請求項43記載の組成物。
【請求項45】
前記免疫細胞の集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が前記異種キメラ抗原受容体(CAR)を含む、請求項43または44記載の組成物。
【請求項46】
請求項41または42のいずれか一項記載の改変された免疫細胞を作製する方法であって、
前記CARをコードする核酸、および/または
内因性CD5遺伝子、例えば、前記CD5遺伝子のエクソン1もしくはエクソン2を含むがこれらに限定されない該CD5遺伝子のエクソンを、ノックアウトさせるか、変異させるか、または破壊する少なくとも1つの核酸
で該免疫細胞をトランスフェクトまたは形質導入する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合する、
前記方法。
【請求項47】
前記抗原結合ドメインが、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSに結合する、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記免疫細胞がインビボまたはエクスビボで形質導入される、請求項46または47記載の方法。
【請求項49】
前記免疫細胞がインビボで形質導入される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記免疫細胞がT細胞である、請求項46~49のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月14日に出願された米国仮出願第63/289,364号および2022年10月18日に出願された米国仮出願第63/380,012号の優先権を主張し、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
固形腫瘍を治療するための改善された組成物および方法が必要とされている。本態様は、この必要性および他の必要性に対処する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載されているように、本発明は、固形腫瘍を治療するための組成物および方法に関する。
【0004】
一局面では、本発明は、その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法を提供する。この方法は、変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ前記抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合する。
【0005】
別の局面では、本発明は、その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、前記抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合し、かつ前記腫瘍の成長が、少なくとも10日間、20日間、30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、80日間、90日間、100日間、120日間、150日間、200日間、240日間阻害される、方法を提供する。
【0006】
別の局面では、本発明は、その必要がある対象において増強された有効性で固形腫瘍を治療する方法を提供する。この方法は、変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、前記抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合し、かつ前記変異した内因性CD5遺伝子を含む免疫細胞の前記集団の有効性が、非変異の内因性CD5遺伝子を含む免疫細胞の集団よりも高い。
【0007】
本明細書で示されている本発明の上記局面または任意の他の局面の様々な態様では、前記薬学的組成物は、約1×106~約1×109、約1×107~約1×109、約1×108~約1×109、約2×108~約1×109、約3×108~約1×109、約3×108~約1×109、約3×108~約1×109、約4×108~約1×109、約5×108~約1×109、約6×108、約7×108~約1×109、約8×108、約9×108~約1×109個の免疫細胞を含む。
【0008】
ある態様では、免疫細胞の集団の少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、変異した内因性CD5遺伝子を含む。
【0009】
ある態様では、免疫細胞の集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が異種キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0010】
ある態様では、免疫細胞は、内因性完全長CD5タンパク質を発現せず、かつ含まない。ある態様では、変異したCD5遺伝子は、エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失を有する。ある態様では、エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失は、内因性完全長CD5タンパク質の発現を阻害するかまたは低下させる。
【0011】
ある態様では、内因性CD5遺伝子は、遺伝子編集された変異、挿入、または欠失を含む。ある態様では、遺伝子編集された変異、挿入、または欠失は、ヌクレアーゼによって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失である。ある態様では、ヌクレアーゼによって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失は、CD5遺伝子のエクソン1またはエクソン2を標的とする。ある態様では、遺伝子編集されたまたはヌクレアーゼによって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失は、SEQ ID NO:45のヌクレオチド配列を含むsgRNAを利用する。
【0012】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSからなる群より選択される抗原に結合することができる。
【0013】
ある態様では、改変された免疫細胞はT細胞である。
【0014】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:27~32および39~44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む。
【0015】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:19、25、および37からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ならびに/またはSEQ ID NO:20、26、および38からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0016】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:17、18、23、24、35、または36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0017】
ある態様では、CARは、SEQ ID NO:15、16、21、22、33、および34からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様では、CARは、SEQ ID NO:1~6からなる群より選択される核酸配列によってコードされる。
【0018】
ある態様では、固形腫瘍は、前立腺癌(例えば、膵管腺癌(「PDAC」)、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、ならびに他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫 脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合膠腫など)、膠芽腫(多形膠芽腫としても公知である)星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、および脳転移など)、癌腫、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚癌の一形態)、扁平上皮癌(種々の組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、気管支原性癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、肺の小細胞癌ならびに非小細胞癌を含む肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、非浸潤性乳管癌または胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌、上皮癌、ならびに上咽頭癌、肉腫 線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、または他の軟部組織肉腫である。
【0019】
本発明の別の局面は、その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法を含む。この方法は、CD5発現免疫細胞に結合する標的化部分と、遺伝子編集システムおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドとを含むベクターを対象に投与することを含む。CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合する。遺伝子編集システムは、内因性CD5の発現を阻害するため、排除するため、または低減するために内因性CD5遺伝子を改変するように構成されている。ベクターは、対象におけるCD5発現免疫細胞を形質導入して、内因性CD5遺伝子を変異させて内因性CD5の発現を阻害または低下させ、変異した内因性CD5遺伝子を有する免疫細胞においてCARを発現させる。
【0020】
ある態様では、ベクターはウイルスベクターである。ある態様では、ウイルスベクターはレンチウイルスである。
【0021】
ある態様では、標的化部分は、抗体または他の種類の標的化部分(例えば、scFv、抗原結合ドメイン、DARPIN、VHH、またはFN3ドメイン)である。
【0022】
ある態様では、固形腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、ならびに他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫 脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合膠腫など)、膠芽腫(多形膠芽腫としても公知である)星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、および脳転移など)、癌腫、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚癌の一形態)、扁平上皮癌(種々の組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、気管支原性癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、肺の小細胞癌ならびに非小細胞癌を含む肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、非浸潤性乳管癌または胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌、上皮癌、ならびに上咽頭癌、肉腫 線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、または他の軟部組織肉腫である。
【0023】
ある態様では、形質導入された細胞は、内因性完全長CD5タンパク質を発現せず、かつ含まない。ある態様では、変異したCD5遺伝子は、エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失を有する。ある態様では、エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失は、内因性完全長CD5タンパク質の発現を阻害するかまたは低下させる。
【0024】
ある態様では、内因性CD5遺伝子は、遺伝子編集された(例えば、CRISPRによって媒介された)遺伝子変異、挿入、または欠失を含む。ある態様では、遺伝子編集された遺伝子変異、挿入、または欠失は、CRISPR/Cas9によって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失である。ある態様では、遺伝子編集された遺伝子変異、挿入、または欠失は、CD5遺伝子のエクソン1またはエクソン2を標的とする。ある態様では、遺伝子編集された(例えば、CRISPR/Cas9によって媒介された)遺伝子変異、挿入、または欠失は、SEQ ID NO:45のヌクレオチド配列を含むsgRNAを利用する。
【0025】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSからなる群より選択される抗原に結合することができる。
【0026】
ある態様では、改変された免疫細胞はT細胞である。
【0027】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:27~32および39~44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む。
【0028】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:19、25、および37からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ならびに/またはSEQ ID NO:20、26、および38からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0029】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:17、18、23、24、35、または36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0030】
ある態様では、CARは、SEQ ID NO:15、16、21、22、33、および34からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
ある態様では、CARは、SEQ ID NO:1~6からなる群より選択される核酸配列によってコードされる。
【0032】
本発明の別の局面は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞であって、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、内因性CD5遺伝子は、変異しているか、改変されているか、破壊されているか、またはノックアウトされており、抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合する、改変された免疫細胞を提供する。
【0033】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSに結合する。
【0034】
本発明の別の局面は、本明細書で企図される改変された免疫細胞のいずれかの集団を含む組成物(例えば、薬学的組成物)を含む。
【0035】
ある態様では、改変された免疫細胞の集団の少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、変異した内因性CD5遺伝子を含む。
【0036】
ある態様では、免疫細胞の集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が異種キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0037】
本発明の別の局面は、本明細書で企図される改変された免疫細胞のいずれをも生成する方法を含む。この方法は、CARをコードする核酸、および/または内因性CD5遺伝子、例えば、CD5遺伝子のエクソン1もしくはエクソン2を含むがこれらに限定されないCD5遺伝子のエクソンを、ノックアウトさせるか、変異させるか、または破壊する少なくとも1つの核酸で、免疫細胞をトランスフェクトまたは形質導入する工程を含み、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合する。
【0038】
ある態様では、抗原結合ドメインは、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSに結合する。
【0039】
ある態様では、免疫細胞は、インビボまたはエクスビボで形質導入される。ある態様では、免疫細胞はインビボで形質導入される。
【0040】
ある態様では、免疫細胞はT細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
特定の態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばよりよく理解されよう。態様を例示する目的で、図面には例示的な態様が示されている。しかしながら、態様は、図面に示されたいくつかの態様の正確な配置またはデータに限定されないことを理解されたい。
【0042】
図1A図1A~1D:固形癌に対するCD5ノックアウトCAR T細胞のインビボ抗腫瘍効果。図1A:免疫不全(NSG)マウスにASPC1膵癌細胞(ルシフェラーゼ+、皮下)を移植した。14日目に、対照非形質導入T細胞(UTD)、CD5ノックアウト(KO)UTD、疑似対照抗メソテリンCAR T細胞またはCD5 KO CAR T細胞を受けるために、腫瘍量に基づいてマウスを無作為に割り振った。ノギスおよび発光によって腫瘍量を経時的に測定した。ノギス測定は、両方の群における完全寛解を示したが、CD5 KO CAR Tのみが長期にわたって寛解を維持した一方で、対照CAR Tは約3ヶ月で再発した。
図1B図1A~1D:固形癌に対するCD5ノックアウトCAR T細胞のインビボ抗腫瘍効果。図1B:生物発光による腫瘍量は、疑似対照CAR TまたはUTDと比較して、CD5 KO CAR Tによる早期かつ深い腫瘍クリアランスを示した。
図1C図1A~1D:固形癌に対するCD5ノックアウトCAR T細胞のインビボ抗腫瘍効果。図1C:CD5 CAR T群における経時的な、ノギスによる単一マウス腫瘍量。
図1D図1A~1D:固形癌に対するCD5ノックアウトCAR T細胞のインビボ抗腫瘍効果。図1D:フローサイトメトリーによって、T細胞の末梢血におけるインビボ拡大をすべての群において測定した。CD5 KO CAR Tは、疑似対照CAR Tと比較してより高い拡大を示した。
図2A図2A~2E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図2A:CD5ノックアウトCAR T拡大プロトコル。
図2B図2A~2E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図2B:左、拡大の8日目の操作されたT細胞の群でのCD5およびCAR5の発現を示す代表的なヒストグラムプロット。n=4ドナー。右、同じ細胞上のCD5およびCAR5の平均蛍光強度(MFI)を示す代表的なヒストグラムプロット。n=4ドナー。
図2C図2A~2E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図2C:集団倍加で示されるビーズ刺激されたT細胞の拡大(log2変換された総細胞数の倍率変化)。n=4ドナー。
図2D図2A~2E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図2D:拡大の終了時点でのそれぞれの操作されたT細胞群のT細胞メモリー表現型。Tナイーブ、ナイーブT細胞、CD45RACCR7;TCM、セントラルメモリーT細胞、CD45RA-CCR7;TEM、エフェクターメモリーT細胞、CD45RA-CD27-;TEMRA、CD45RAを再発現するエフェクターメモリーT細胞、CD45RACCR7-。n=4ドナー。
図2E図2A~2E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図2E:CD8+細胞における拡大の終了時点でのそれぞれの操作されたT細胞群上のT細胞疲弊マーカーPD1およびLAG3の発現。n=4ドナー。
図3A図3A~3C:CD5を標的とするsgRNAは、強い効率および特異性を示した。図3A:8つのCD5を標的とするsgRNA配列を試験した。CD5_gRNA_4は、最も強いノックアウト効率を示し、すべての将来の実験に使用された。
図3B図3A~3C:CD5を標的とするsgRNAは、強い効率および特異性を示した。図3B:フローサイトメトリーならびにSDS-PAGEおよび免疫ブロットによって、CD5_gRNA_4によるCD5 KOを確認した。
図3C図3A~3C:CD5を標的とするsgRNAは、強い効率および特異性を示した。図3C:iGUIDE配列決定は、TrueCut Cas9またはSpyFi Cas9の両方を使用して、CD5_gRNA_4の高いオンターゲット効率および低いオフターゲット効率を検証した。n=2ドナー。
図4A図4A~4B:CD5を標的とするCAR T細胞は、CD5に対して強い特異性を示した。図4A:疑似KO UTDおよびCD5 KO CART5を固定された確認スライドに加えた特異性スクリーニングの代表例。
図4B図4A~4B:CD5を標的とするCAR T細胞は、CD5に対して強い特異性を示した。図4B:完全なライブラリーおよび確認スクリーニングの結果は、1つのCAR特異的相互作用、主要標的CD5がCD5 KO CART5細胞に対して特定されたと結論付けた。他のすべての相互作用は、非常に弱いかまたはCAR非依存性であると決定された。
図5A図5A~5B:初代ヒトCART5 T細胞は、CD5細胞を選択的に標的とし、死滅させた。図5A:初代ヒトT細胞を作製した。疑似KO UTD、CD5 KO UTD、疑似KO CART5およびCD5 KO CART5 T細胞において、CD5およびCAR5発現を10日間、毎日、モニターし、記録した。n=2ドナー。
図5B図5A~5B:初代ヒトCART5 T細胞は、CD5細胞を選択的に標的とし、死滅させた。図5B:CD4+細胞における拡大の終了時点でのそれぞれの操作されたT細胞群上のT細胞疲弊マーカーPD1およびLAG3の発現。n=4ドナー。
図6A図6A~6E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図6A:48時間後での、CD5+初代T-ALLまたは初代Sezary細胞に対するUTDまたはCART5細胞のパーセント細胞傷害性。図6A:48時間後での、CD5+初代T-ALLまたは初代Sezary細胞に対するUTDまたはCART5細胞のパーセント細胞傷害性。
図6B図6A~6E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図6B:JurkatT-ALL細胞株を移植した各NSGマウス(n=5マウス)における腫瘍量の生物発光イメージング。異なるドナーT細胞を用いて行われた3つの独立した実験の代表的なデータが示されている。
図6C図6A~6E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図6C:異種移植T-ALLモデルにおける各治療群の生存率がカプラン・マイヤー生存曲線で示されている。
図6D図6A~6E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図6D:左、15日目の100μLのマウス血液中のhuCD3T細胞の絶対細胞数。右、経時的な100μLのマウス血液中のhuCD3T細胞の絶対細胞数。
図6E図6A~6E:CART5 T細胞におけるCD5 KOは、疑似KO CART5と比較して、操作されたT細胞産物を改善した。図6E:初代T-ALL細胞を移植した各NSGマウス(n=6マウス)における腫瘍量の生物発光イメージング。
図7A図7A~7B:CD5の枯渇は、固形腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した。図7A:AsPC1 PDAC細胞株を移植した各NSGマウス(n=7マウス)における腫瘍量の生物発光イメージング。
図7B図7A~7B:CD5の枯渇は、固形腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した。図7B:58日目の100μLのマウス血液中のhuCD45T細胞の絶対細胞数。
図8A図8A~8G:CD5欠失は、リン酸化およびカルシウム流入を介してCARシグナル伝達を増強した。図8A:T細胞活性化におけるCD5の阻害的役割を説明する概略図:活性化時に、CD5は、SHP-1、CBLおよびCBL-Bを含むいくつかのメディエーターを細胞膜に動員した。CBLはPLCγ1をユビキチン化して、PLCγ1の分解を促進し、総タンパク質レベルの低下をもたらす。SHP-1は、PLCγ1の上流の正の調節因子であるLATを脱リン酸化するのに対して、CBL-Bは、LATをユビキチン化し、その分解を促進した。
図8B図8A~8G:CD5欠失は、リン酸化およびカルシウム流入を介してCARシグナル伝達を増強した。図8B:疑似KO T細胞と比較したCD5 KO T細胞上のリン酸化されたタンパク質の定量的測定。
図8C図8A~8G:CD5欠失は、リン酸化およびカルシウム流入を介してCARシグナル伝達を増強した。図8C:45分間のCD3/CD28ビーズ刺激によってTCRを介して活性化された初代疑似KOまたはCD5 KO T細胞における総PLCγ1およびβ-アクチン発現。
図8D図8A~8G:CD5欠失は、リン酸化およびカルシウム流入を介してCARシグナル伝達を増強した。図8D:フローサイトメトリーによって、疑似KOまたはCD5 KO T細胞におけるカルシウム流動をリアルタイムで測定した。
図8E図8A~8G:CD5欠失は、リン酸化およびカルシウム流入を介してCARシグナル伝達を増強した。図8E:主成分分析は、疑似KOおよびCD5 KO CART5細胞の明確なグループ分けを示した。n=2ドナー。
図8F図8A~8G:CD5欠失は、リン酸化およびカルシウム流入を介してCARシグナル伝達を増強した。図8F:遺伝子セットエンリッチメント解析は、CD5 KO細胞内の濃縮された経路として、カルシウム依存性事象ならびにDAGおよびIP3シグナル伝達を特定した。
図8G図8A~8G:CD5欠失は、リン酸化およびカルシウム流入を介してCARシグナル伝達を増強した。図8G:カルシウム依存性事象ならびにDAGおよびIP3シグナル伝達に関連する遺伝子のZスコアのヒートマップ。
図9A図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9A:AsPC1 PDAC細胞株を移植した各NSGマウス(n=7マウス)における腫瘍体積(mm3)。
図9B図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9B:各NSGマウスにおける腫瘍量の生物発光イメージング。
図9C図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9C:58日目の100μLのマウス血液中のhuCD45T細胞の絶対細胞数。
図9D図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9D:AsPC1 PDAC細胞株を移植した各NSGマウス(n=4~5マウス)における腫瘍体積(mm3)。2つの独立した実験の代表的なデータが示されている。
図9E図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9E:異種移植AsPC1モデルにおける各治療群の生存率がカプラン・マイヤー生存曲線で示されている。
図9F図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9F:経時的な100μLのマウス血液中のhuCD3huCD45T細胞の絶対細胞数。
図9G図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9G:対照NSGマウスまたはCD5 KO CARmesoで処置され、74日目にAsPC1細胞を再度チャレンジされたマウスにおける腫瘍体積(mm3)。
図9H図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9H:TCGA GEPIA2データベース内の高および低CD5発現(75%高い;25%低い)に基づいて、すべての患者を2つの群に分けた。腫瘍浸潤リンパ球T細胞数を考慮するために、CD3εによってCD5発現を正規化した。
図9I図9A~9I:CD5の枯渇は、いくつかの腫瘍モデルにおいてCAR療法を強化した:図9I:高および低CD5発現(75%高い;25%低い)に基づいて、皮膚の皮膚黒色腫患者を2つの群に分けた。腫瘍浸潤リンパ球T細胞数を考慮するために、CD3εによってCD5発現を正規化した。
図10A図10A~10B:先に記載された製造時系列に従って、抗HER2 CAR T細胞(クローン4D5)を作製した。図10A:抗HER2 CAR T細胞に対するBTLA KOの有効性を試験するためのモデルとして、HER2+前立腺腺癌であるPC3を使用した。1000個のHER2+CAR T細胞または対照を添加する24時間前に、96ウェルプレートに4,000個のPC3細胞を蒔いた。Incucyte(登録商標)Live-Cell Analysis Systemを用いて、3時間ごとにGFP+(PC3)強度をモニターした。
図10B図10A~10B:先に記載された製造時系列に従って、抗HER2 CAR T細胞(クローン4D5)を作製した。図10B:48時間の時点で死滅が示されており、野生型抗HER2 CARよりもCD5 KOにおいて有意に高い細胞傷害性を実証している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を使用して固形腫瘍を治療するための組成物および方法であって、T細胞の内因性CD5遺伝子が、例えば内因性CD5タンパク質発現または機能が完全にまたは部分的に阻害または低減されるように変異されている、組成物および方法を提供する。いくつかの態様では、CD5遺伝子は、内因性CD5タンパク質発現が存在せず、かつ機能的CD5タンパク質が発現されないようにノックアウトされていると言われている。
【0044】
本開示に記載される方法は、そのような方法および条件が変化し得るので、本明細書に開示される特定の方法および実験条件に限定されるわけではないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0045】
さらに、本明細書に記載される実験は、特に指示されない限り、当技術分野の技術の範囲内の従来の分子および細胞生物学的および免疫学的技術を使用する。そのような技術は当業者に周知であり、文献で十分に説明されている。例えば、すべての補遺を含む、Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,NY,N.Y.(1987-2008)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Fourth Edition)by MR Green and J.Sambrook and Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Chapter 14,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor(2013,2nd edition)を参照されたい。
【0046】
A. 定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。潜在的な曖昧さがある場合、本明細書で提供される定義が辞書または外部定義に優先する。文脈上特に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。「または」の使用は、特に明記されない限り、「および/または」を意味する。「含む(including)」という用語ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0047】
一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は周知であり、当技術分野で一般的に使用される。本明細書で提供される方法および技術は、一般に、特に指示されない限り、当技術分野で周知の従来の方法に従って、本明細書を通して引用され、論じられる様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されているように実施される。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様に従って行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および創薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその実験手順および技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化および送達、ならびに患者の治療に使用される。
【0048】
本開示がより容易に理解され得ることから、選択用語を以下に定義する。
【0049】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0050】
量、持続時間などの測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約」は、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なお一層好ましくは±0.1%の変動を包含することを意図しており、そのような変動は開示される方法を実施するのに適している。
【0051】
本明細書で使用される「活性化」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されたT細胞の状態を指す。活性化はまた、サイトカイン産生の誘導および検出可能なエフェクター機能に関連し得る。「活性化T細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を受けているT細胞を指す。
【0052】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源または組換え源に由来するインタクトな免疫グロブリンであり得、インタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分であり得る。抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体(scFv)およびヒト化抗体を含む様々な形態で存在し得る(Harlow et al.,1999,In:Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow et al.,1989,In:Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Bird et al.,1988,Science 242:423-426)。
【0053】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の一部を指し、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab、Fab'、F(ab')2およびFv断片、線状抗体、scFv抗体、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される「抗体重鎖」は、天然に存在する立体配置のすべての抗体分子中に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちのより大きい方を指す。
【0055】
本明細書で使用される「抗体軽鎖」は、天然に存在する立体配置のすべての抗体分子中に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちのより小さい方を指す。カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0056】
本明細書で使用される「合成抗体」という用語は、例えば本明細書に記載されているバクテリオファージによって発現される抗体などの、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、このDNA分子は抗体タンパク質、すなわち当該抗体を指定するアミノ酸配列を発現する抗体であって、前記DNAまたはアミノ酸配列は、利用可能で、当技術分野において周知である合成DNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られた、抗体を意味すると解釈されるべきである。
【0057】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、免疫応答を引き起こす分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生、または特定の免疫担当細胞の活性化、またはその両方を含み得る。当業者は、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として機能し得ることを理解するであろう。
【0058】
さらに、抗原は、組換えまたはゲノムDNAに由来し得る。したがって、当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAは、本明細書で使用される用語「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを理解するであろう。本態様は複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むがこれに限定されるわけではないこと、およびこれらのヌクレオチド配列は所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置されることは容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解するであろう。抗原が、合成されて生成され得る、または生物学的試料に由来し得ることは自明である。そのような生物学的試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞または生物学的流体を含み得るが、これらに限定されるわけではない。
【0059】
本明細書で使用される場合、「自家」という用語は、個体に由来する任意の材料であって、後で同じ個体に再導入される、任意の材料を指すことが意図されている。
【0060】
「同種」は、同じ種の異なる動物に由来する任意の材料を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含まれる(comprised)」などの、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの、有する(having)任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの、含む(including)の任意の形態)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの、含有する(containing)の任意の形態)は、包括的または非限定的であり、追加の列挙されていない要素または方法工程を排除しない。「含む(comprise)」または「含む(comprising)」という移行句を使用する任意の工程または組成物は、「からなる(consisting of)」、「からなる(consists)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句を用いてその工程または組成物を記載するとも言うこともできる。
【0062】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって増殖などの、しかしそれに限定されないT細胞による共刺激応答を媒介するT細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0063】
本明細書で使用される「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと組み合わせて、T細胞増殖および/または重要な分子の上方制御もしくは下方制御をもたらすシグナルを指す。
【0064】
「疾患」は、動物が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合、動物の健康が悪化し続ける動物の健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態は障害が存在しない場合よりも好ましくない、健康状態である。未処置のままである場合、障害は必ずしも動物の健康状態のさらなる低下を引き起こさない。
【0065】
本明細書で使用される「下方制御」という用語は、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現の減少または排除を指す。
【0066】
「有効量」または「治療有効量」は、本明細書では互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するために有効な、または治療的もしくは予防的利益を提供する、本明細書に記載の化合物、製剤、材料、または組成物の量を指す。そのような結果には、当該分野で適切な任意の手段によって決定される抗腫瘍活性が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0067】
「コードする」は、ヌクレオチドの定義された配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の定義された配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、ならびにそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると呼ぶことができる。
【0068】
本明細書で使用される場合、特定の遺伝子に関して使用される「内因性」とは、外因性または異種の物質、例えば核酸分子の導入なしに生物、細胞、組織または系に天然に存在する遺伝子を指す。例えば、「内因性CD5遺伝子」は、細胞内に天然に存在する、CD5タンパク質をコードする遺伝子を指す。他の材料に関して「内因性」とは、そのような材料が、外因性材料が生物、細胞、組織または系に導入されることなく、生物、細胞、組織もしくは系から得られること、または生物、細胞、組織もしくは系の内部で産生されることを意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織もしくは系から導入されるか、または生物、細胞、組織もしくは系の外部で産生される任意の材料を指す。例えば、キメラ抗原受容体は、キメラ抗原受容体をコードする外因性核酸分子の導入によって細胞内で産生され得る。細胞に導入される核酸分子は、「異種の」核酸分子とも呼ばれ得る。
【0070】
本明細書で使用される「拡大する」という用語は、T細胞の数の増加のように、数が増加することを指す。一態様では、エクスビボで拡大されるT細胞は、培養物中に最初に存在する数と比較して数が増加する。別の態様では、エクスビボで拡大されるT細胞は、培養物中の他の細胞型と比較して数が増加する。本明細書で使用される「エクスビボ」という用語は、生きている生物(例えば、ヒト)から取り出され、生物の外部で(例えば、培養皿、試験管、またはバイオリアクタにおいて)増殖した細胞を指す。
【0071】
本明細書で使用される「発現」という用語は、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。タンパク質に関してなされる「発現」という用語は、細胞、生物もしくは系内に存在するか、または細胞、生物もしくは系内で作られるタンパク質の量を意味する。
【0072】
「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用性要素を含むことができる。いくつかの態様では、発現のための他の要素は、宿主細胞によってまたはインビトロ発現システムにおいて供給され得る。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えば、裸の、またはリポソームに含まれる)ならびにウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの当技術分野で公知のすべてのものが含まれる。
【0073】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合部分配列など)である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDR由来の残基(ドナー抗体)によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列中にも見られない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改良および最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むであろう。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522-525,1986;Reichmann et al.,Nature,332:323-329,1988;Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596,1992を参照されたい。
【0074】
「完全ヒト」は、分子全体がヒト起源であるか、または抗体のヒト形態と同一のアミノ酸配列からなる、抗体などの免疫グロブリンを指す。
【0075】
本明細書で使用される「同一性」は、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合、例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれの位置がアルギニンによって占められている場合、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列がアライメントの同じ位置に同じ残基を有する同一性または程度は、しばしばパーセンテージとして表される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致するまたは同一の位置の数の直接関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、10アミノ酸長のポリマーにおける5つの位置)が同一である場合、2つの配列は50%同一であり、位置の90%(例えば、10のうちの9)が一致するかまたは同一である場合、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0076】
本明細書で使用される「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、抗体として機能するタンパク質のクラスとして定義される。B細胞によって発現される抗体は、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と呼ばれることがある。このクラスのタンパク質に含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgDおよびIgEである。IgAは、唾液、涙、母乳、胃腸分泌物ならびに気道および泌尿生殖路の粘液分泌物などの身体分泌物中に存在する主要な抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、ほとんどの対象において一次免疫応答で産生される主要な免疫グロブリンである。IgMは、凝集、補体固定、および他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスに対する防御において重要である。IgDは、公知の抗体機能を有さないが、抗原受容体として機能し得る免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンへの曝露に際して、肥満細胞および好塩基球からの媒介物質の放出を引き起こすことによって即時型過敏症を媒介する免疫グロブリンである。
【0077】
本明細書で使用される「免疫応答」という用語は、リンパ球が抗原分子を異物として識別し、抗体の形成を誘導し、および/またはリンパ球を活性化して抗原を除去するときに生じる、抗原に対する細胞応答として定義される。
【0078】
「免疫学的有効量」または「治療量」が示されている場合、投与される組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(対象)の状態の個体差を考慮して医師または研究者によって決定され得る。
【0079】
「免疫抑制性」という用語は、本明細書では、全体的な免疫応答を減少させることを指すために使用される。
【0080】
「挿入/欠失」は、一般に「インデル」と略され、ゲノム中に特定のヌクレオチド配列が存在する(挿入)または存在しない(欠失)遺伝子多型の一種である。
【0081】
「単離された」とは、天然の状態から変化を受けたか、または取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離され」ていないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離され」ている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または、例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0082】
本明細書で使用される「ノックダウン」という用語は、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現の減少を指す。発現の減少は、完全または部分的であり得る。いくつかの態様では、ノックダウンは、同じ細胞、生物または系においてノックダウンされていない遺伝子と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、7%、80%、90%、95%、もしくは99%、または約10%、20%、30%、40%、50%、60%、7%、80%、90%、95%、もしくは99%である。ノックダウンは、遺伝子編集、siRNA、アンチセンス、または他の遺伝子改変方法などの任意の技術によって達成することができる。
【0083】
本明細書で使用される「ノックアウト」という用語は、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現の消失を指す。例えば、「ノックアウト」は、遺伝子によってコードされる産物の完全な阻害をもたらすように、遺伝子全体が除去されたこと、または遺伝子の一部が除去もしくは変異されたことを意味することができる。したがって、ノックアウトは、遺伝子または遺伝子のエクソンの完全な除去であり得る。ノックアウトはまた、遺伝子からの遺伝子産物(例えばタンパク質)の発現を妨げる変異を遺伝子配列に導入することによって達成することができる。
【0084】
本明細書で使用される「レンチウイルス」は、レトロウイルス科(Retroviridae family)の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという点でレトロウイルスの中でも独特であり、レンチウイルスは、かなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達することができるので、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、およびFIVは、すべてレンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボで有意なレベルの遺伝子導入を達成する手段を提供する。
【0085】
本明細書で使用される「改変された」という用語は、分子または細胞の変化した状態または構造を意味する。分子は、化学的、構造的、および機能的方法を含む多くの方法で改変され得る。細胞は、核酸の導入を介して改変され得る。タンパク質または遺伝子に関して、改変されたタンパク質または遺伝子は、挿入、欠失、点変異またはこれらの任意の組み合わせなどの変異を有するタンパク質または遺伝子を指すことができる。
【0086】
本明細書で使用される「調節する」という用語は、治療もしくは化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較して、および/または他の点では同一であるが治療されていない対象における応答のレベルと比較して、対象における応答のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。この用語は、天然のシグナルまたは応答を混乱させ、および/または影響を及ぼし、それによって対象、好ましくはヒトにおいて有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0087】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的にはポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、C、G)によって表される場合、これは、「U」が「T」に取って代わるRNA配列(すなわち、A、U、C、G)も含むことが理解されるであろう。ガイドRNA(gRNA)は、「オリゴヌクレオチド」の非限定的な例である。
【0088】
本態様の文脈において、一般的に存在する核酸塩基の以下の略語を使用する。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0089】
特に明記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、あるバージョンではイントロンを含み得る程度に、イントロンを含み得る。
【0090】
「機能的に連結された」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす、制御配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係で配置されている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結することが必要な場合、同じ読み枠内にある。
【0091】
「過剰発現された」腫瘍抗原または腫瘍抗原の「過剰発現」という用語は、患者の特定の組織または臓器からの正常な細胞における発現のレベルと比較した、その組織または臓器内の固形腫瘍のような疾患領域からの細胞における腫瘍抗原の発現の異常なレベルを示すことを意図している。腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする、固形腫瘍または血液悪性腫瘍を有する患者は、当技術分野で公知の標準的なアッセイによって決定することができる。
【0092】
本明細書で提供される免疫原性組成物または他の組成物(例えば、ウイルスベクター)の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)または胸骨内注射または注入技術が含まれる。
【0093】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」という用語は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸分子は、ヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用される核酸分子およびポリヌクレオチドは交換可能である。当業者は、核酸が、単量体「ヌクレオチド」に加水分解され得るポリヌクレオチドであるという一般的知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドは、限定されることなく、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術およびPCRなどを使用した組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含む、当技術分野で利用可能な任意の手段によって、ならびに合成手段によって得られるすべての核酸配列を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0094】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短い鎖と、多くの種類が存在する、当技術分野で一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0095】
抗体に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、特定の抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識しないまたは結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種からの抗原に特異的に結合する抗体は、1つまたは複数の種からのその抗原にも結合し得る。しかし、そのような種交差反応性は、それ自体が特異的としての抗体の分類を変えることはない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体は、異なる対立遺伝子型の抗原にも結合し得る。しかしながら、そのような交差反応性は、それ自体が特異的としての抗体の分類を変えることはない。場合によっては、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語は、抗体、タンパク質、またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関して、相互作用が化学種の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味するために使用され得る;例えば、抗体は、広くタンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」および抗体を含有する反応において、エピトープA(または遊離の標識されていないA)を含有する分子の存在は、抗体に結合する標識されたAの量を低下させる。
【0096】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)とその同族リガンドとの結合によって誘導され、それによってTCR/CD3複合体を介したシグナル伝達などの、しかしそれに限定されないシグナル伝達事象を媒介する一次応答を意味する。刺激は、TGF-ベータの下方制御および/または細胞骨格構造の再編成などの特定の分子の発現の変化を媒介することができる。
【0097】
「刺激分子」は、この用語が本明細書で使用される場合、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を意味する。
【0098】
本明細書で使用される「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と呼ばれる)と特異的に結合し、それによって、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含むがそれらに限定されない、T細胞による一次応答を媒介することができるリガンドを意味する。刺激リガンドは当技術分野で周知であり、とりわけ、ペプチドを負荷したMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0099】
「対象」という用語は、免疫応答が誘発され得る、生きている生物(例えば、哺乳動物)を含むことが意図されている。本明細書で使用される「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物としては、例えば、家畜およびペット、例えばヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびマウス哺乳動物が挙げられる。好ましくは、対象はヒトである。
【0100】
「標的部位」または「標的配列」は、結合分子が、結合が起こるのに十分な条件下で特異的に結合し得る核酸の一部を定義するゲノム核酸配列を指す。いくつかの態様では、標的配列は、結合分子が、結合が起こるのに十分な条件下で特異的に結合し得る核酸の一部を定義するゲノム核酸配列を指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「標的化部分」という用語は、標的を発現している細胞と結合するかまたは相互作用するように細胞またはウイルスを標的化するために使用することができるタンパク質などの分子を指す。いくつかの態様では、標的化部分は、抗体または他の種類の標的化部分(例えば、scFv、抗原結合ドメイン、DARPIN、VHH、またはFN3ドメイン)である。いくつかの態様では、標的化部分は、標的化部分の結合パートナー(例えば、抗原)を発現する細胞にベクターを標的化するためにベクターの表面に発現される。
【0102】
本明細書で使用される場合、「T細胞受容体」または「TCR」という用語は、抗原の提示に応答してT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体を指す。TCRは、主要組織適合遺伝子複合体分子に結合した抗原の認識を担う。TCRは、アルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖のヘテロ二量体から構成されるが、いくつかの細胞では、TCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRは、構造的に類似しているが、異なる解剖学的位置および機能を有するアルファ/ベータおよびガンマ/デルタ形態で存在し得る。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、可変ドメインおよび定常ドメインから構成される。いくつかの態様では、TCRは、例えばヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびガンマデルタT細胞を含む、TCRを含む任意の細胞上で改変され得る。
【0103】
本明細書で使用される「治療的」という用語は、治療および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解、または根絶によって得られる。
【0104】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換または形質導入された細胞である。細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。例えば、いくつかの態様では、細胞は、核酸分子を含むベクターによってトランスフェクトされ、形質導入される。いくつかの態様では、細胞は、核酸分子を含むプラスミドでトランスフェクトされる。
【0105】
疾患を「治療する」とは、この用語が本明細書で使用される場合、対象が経験する疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症候の頻度または重症度を低下させることを意味する。固形腫瘍に関して使用される場合、「治療する」という用語は、固形腫瘍のサイズの低下または腫瘍がその起源に見出されるかもしくは転移した位置の数の低下を意味することができる。
【0106】
「ベクター」は、核酸を含み、核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる組成物である。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含むがこれらに限定されるわけではない多数のベクターが当技術分野で公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律複製プラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム、脂質ナノ粒子などの、細胞への核酸の移入を促進する非プラスミドおよび非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0107】
範囲:本開示全体を通して、様々な局面を範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に便宜および簡潔さのためのものであり、態様に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0108】
B. 改変された免疫細胞
本開示は、免疫療法において使用するための(例えばCAR T細胞)改変された免疫細胞またはその前駆体(例えば、T細胞)を提供する。ある局面では、本開示は、内因性CD5遺伝子が破壊されているおよび/または細胞からノックアウトされている、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞またはその前駆細胞(例えば、T細胞)を提供する。
【0109】
例えば、いくつかの態様では、CD5遺伝子の発現を阻害するか、または低下させるために、内因性CD5遺伝子を変異させることができる。本明細書で提供されるように、CD5遺伝子産物であるタンパク質の機能または発現を阻害するために挿入、置換、欠失またはこれらの任意の組み合わせを含むようにCD5遺伝子を変異させることができる。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソンである。CD5遺伝子は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるPadilla et al.,Immunogenetics,2000 Oct;51(12):993-1001に記載されている少なくとも11個のエクソンを有すると考えられている。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン1に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン2に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン3に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン4に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン5に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン6に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン7に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン8に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン9に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン10に存在する。いくつかの態様では、変異は、CD5遺伝子のエクソン11に存在する。
【0110】
改変された細胞は、本明細書の他の箇所に詳細に記載されているCARのみならず、当技術分野で公知の任意のCARを含むことができる。CARは、標的細胞上の抗原に対する親和性を含む。したがって、そのような改変された細胞は、その中で発現されるCARによって指示される特異性を有する。いくつかの態様では、改変された細胞は、「CD5 CAR」と呼ぶことができる、CD5に結合する抗原結合ドメインを含むCARを含む。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、CD5 CARを発現する細胞は、標的細胞上のCD5に対する特異性を有する。ある態様では、本開示は、内因性CD5遺伝子が、本明細書中に記載されるように破壊され、変異され、ノックダウンされ、および/またはノックアウトされている、CD5 CARを含む改変された免疫細胞またはその前駆細胞(例えば、T細胞)を提供する。CD5遺伝子が変異されている細胞にCD5 CARを含めることによって、CARは、CD5 CARを発現する他のCAR-T細胞を標的とすることを避けるはずである。次いで、T細胞中の内因性CD5タンパク質がCARとともに発現された場合に起こり得る「フラトリサイド」を回避するために、これを使用することができる。いくつかの態様では、CARは、本明細書で提供されるものなどの、但しそれらに限定されない固形腫瘍抗原に結合する。
【0111】
本開示は、遺伝子編集された改変された細胞を提供する。いくつかの態様では、本開示の改変された細胞(例えば、CARを含む改変された細胞)は、CD5をコードする内因性遺伝子座の発現を破壊するように遺伝子編集される。いくつかの態様では、遺伝子編集された免疫細胞(例えば、T細胞)は、内因性CD5の発現の下方制御、低下、欠失、排除、ノックダウン、ノックアウトまたは破壊を有する。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン1に遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン2に遺伝子編集を含むいくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン3に遺伝子編集を含むいくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン4に遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン5に遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン6に遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン7に遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン8に遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン9に遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン10に遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD5遺伝子のエクソン11に遺伝子編集を含む。
【0112】
様々な遺伝子編集技術が当業者に公知である。遺伝子編集技術には、ホーミングエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ(TALEN)、およびクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)(例えば、CRISPR/Cas9)が含まれるが、これらに限定されない。ホーミングエンドヌクレアーゼは、一般に、それらのDNA基質を二量体として切断し、明確な結合ドメインおよび切断ドメインを有さない。ZFNは、FokI切断ドメインによって認識される5~7塩基対(bp)スペーサー配列に隣接する2つのジンクフィンガー結合部位からなる標的部位を認識する。TALENは、FokI切断ドメインによって認識される12~20bpのスペーサー配列に隣接する2つのTALE DNA結合部位からなる標的部位を認識する。Cas9ヌクレアーゼは、適合性プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)のすぐ上流に位置するシングルガイドRNA(gRNA)内の標的化配列に相補的なDNA配列を標的とする。したがって、当業者は、改変された細胞を生産するために適切な遺伝子編集技術を利用することができ、または選択することが可能であろう。
【0113】
ある態様では、本態様は、内因性CD5の遺伝子発現を下方制御することができるCD5をコードする内因性遺伝子座におけるCRISPR媒介性改変と、本明細書に記載の外因性CARを含む改変された免疫細胞またはその前駆細胞(例えば、T細胞)を提供する。遺伝子座は、CD5について本明細書に記載されているエクソンの1つまたは複数を含むことができる。
【0114】
ある態様では、CRISPR媒介性改変は、Cas9酵素および少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)を含むCRISPR/Cas9システムを介して導入される。ある態様では、ガイドRNAは、内因性遺伝子座CD5中の標的配列と十分に相補的なガイド配列を含む。ある態様では、ガイドRNAは、内因性CD5遺伝子座のエクソン2中の標的配列と十分に相補的なガイド配列を含む。ある態様では、ガイドRNAは、SEQ ID NO:45に示される核酸配列を含むかまたはSEQ ID NO:45に示される核酸配列からなる。
【0115】
CRISPR媒介性改変の非限定的な種類には、置換、挿入、欠失および挿入/欠失(インデル)が含まれる。改変は、エクソン、スプライスドナー、またはスプライスアクセプターを含むがこれらに限定されない、CD5をコードする内因性遺伝子座の任意の部分に位置することができる。ある態様では、改変は、CD5のエクソン2に存在する。
【0116】
いくつかの局面では、破壊は、破壊されている遺伝子(例えば、CD5)に特異的なCRISPR-Casシステム、例えばCRISPR-Cas9システムなどのRNAガイド型ヌクレアーゼを使用した遺伝子編集によって行われる。いくつかの態様では、Cas9と、遺伝子座の領域を標的とする標的化ドメインを含有するガイドRNA(gRNA)とを含有する作用物質が細胞に導入される。いくつかの態様では、作用物質は、Cas9ポリペプチドとgRNAとのリボ核タンパク質(RNP)複合体(Cas9/gRNA RNP)であるか、またはCas9ポリペプチドとgRNAとのリボ核タンパク質(RNP)複合体(Cas9/gRNA RNP)を含む。いくつかの態様では、導入は、作用物質またはその一部をインビトロで細胞と接触させることを含み、細胞および作用物質を最長24、36もしくは48時間または3、4、5、6、7もしくは8日間培養することまたはインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、導入は、細胞への作用物質の送達をもたらすことをさらに含むことができる。様々な態様では、本開示による方法、組成物および細胞は、例えばエレクトロポレーションによる、細胞へのCas9およびgRNAのリボ核タンパク質(RNP)複合体の直接送達を利用する。いくつかの態様では、RNP複合体は、3'ポリAテールおよび5'Anti-Reverse Cap Analog(ARCA)キャップを含むように改変されているgRNAを含む。
【0117】
CRISPR/Cas9システムは、標的とされる遺伝子変化を誘導するための容易で効率的なシステムである。Cas9タンパク質による標的認識は、ガイドRNA(gRNA)内の「シード」配列と、gRNA結合領域の上流に位置する、保存されたジヌクレオチドを含有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列とを必要とする。それにより、細胞株(293T細胞など)、初代細胞およびTCR T細胞においてgRNAを再設計することによって、実質的に任意のDNA配列を切断するようにCRISPR/Cas9システムを操作することができる。CRISPR/Cas9システムは、単一のCas9タンパク質を2つ以上のgRNAと同時発現させることによって複数のゲノム遺伝子座を同時に標的とすることができ、このシステムを標的遺伝子の多重遺伝子編集または相乗的な活性化に適したものにする。
【0118】
Cas9タンパク質およびガイドRNAは、標的配列を特定および切断する複合体を形成する。Cas9は、6つのドメイン:REC I、REC II、ブリッジヘリックス、PAM相互作用、HNHおよびRuvCから構成される。REC IドメインはガイドRNAを結合し、一方、ブリッジヘリックスは標的DNAに結合する。HNHドメインおよびRuvCドメインはヌクレアーゼドメインである。ガイドRNAは、標的DNA配列に相補的な5'末端を有するように操作される。ガイドRNAがCas9タンパク質に結合すると、立体構造の変化が起こり、タンパク質を活性化する。活性化されると、Cas9は、そのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列と一致する配列に結合することによって標的DNAを検索する。PAMは、ガイドRNAに相補的な領域の1ヌクレオチド下流内の2または3ヌクレオチド塩基配列である。1つの非限定的な例では、PAM配列は5'-NGG-3'である。Cas9タンパク質は、適切なPAMを有するその標的配列を見出すと、PAMの上流の塩基を融解し、それらをガイドRNA上の相補的領域と対にする。次いで、RuvCおよびHNHヌクレアーゼドメインは、PAMの上流に位置する第3のヌクレオチド塩基後で標的DNAを切断する。
【0119】
遺伝子発現を阻害するために使用されるCRISPR/CasシステムであるCRISPRiの1つの非限定的な例は、米国特許出願公開第20140068797号に記載されている。CRISPRiは、エラーを起こしやすい修復経路の引き金を引いてフレームシフト変異をもたらすDNA二本鎖切断を導入するためにRNAガイド型Cas9エンドヌクレアーゼを利用する恒久的遺伝子破壊を誘導する。触媒としての力を失ったCas9はエンドヌクレアーゼ活性を欠く。ガイドRNAとともに同時発現されると、転写伸長、RNAポリメラーゼ結合または転写因子結合を特異的に妨害するDNA認識複合体が生成される。このCRISPRiシステムは、標的とされる遺伝子の発現を効率的に抑制する。
【0120】
CRISPR/Cas遺伝子破壊は、標的遺伝子に対して特異的なガイド核酸配列およびCasエンドヌクレアーゼが細胞中に導入され、Casエンドヌクレアーゼが標的遺伝子に二本鎖切断を導入することを可能にする複合体を形成すると起こる。ある態様では、CRISPR/Casシステムは、pAd5F35-CRISPRベクターなどの、但しこれに限定されない発現ベクターを含む。他の態様では、Cas発現ベクターは、Cas9エンドヌクレアーゼの発現を誘導する。Cas12a(Cpf1)、T7、Cas3、Cas8a、Cas8b、Cas10d、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Cas10、Csm2、Cmr5、Fok1、当技術分野で公知の他のヌクレアーゼおよびこれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない他のエンドヌクレアーゼも使用され得る。
【0121】
ある態様では、Cas発現ベクターを誘導することは、Cas発現ベクター中の誘導性プロモーターを活性化する作用物質に細胞を曝露することを含む。このような態様では、Cas発現ベクターは、抗生物質(例えば、テトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体、例えばドキシサイクリン)への曝露によって誘導可能なプロモーターなどの誘導性プロモーターを含む。当業者に公知の他の誘導性プロモーターも使用することができる。誘導剤は、誘導性プロモーターの誘導をもたらす選択条件(例えば、作用物質、例えば抗生物質への曝露)であり得る。これは、Cas発現ベクターの発現をもたらす。
【0122】
本明細書で使用される場合、「ガイドRNA」または「gRNA」という用語は、細胞内の標的配列(例えば、ゲノム配列またはエピソーム配列)へのCas9などのRNAガイド型ヌクレアーゼの特異的会合(または「標的化」)を促進する任意の核酸を指す。
【0123】
本明細書で使用される場合、「モジュラー」または「二重RNA」ガイドは、通常、例えば二重鎖化によって互いに会合しているCRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化crRNA(tracrRNA)などの複数、典型的には2つの別個のRNA分子を含む。gRNAおよびそれらの構成部分は、文献全体に記載されている(例えば、参照により組み入れられる、Briner et al.Mol.Cell,56(2),333-339(2014)を参照されたい)。
【0124】
本明細書で使用される場合、「単分子gRNA」、「キメラgRNA」または「シングルガイドRNA(sgRNA)」は、単一のRNA分子を含む。sgRNAは、互いに連結されたcrRNAおよびtracrRNAであり得る。例えば、crRNAの3'末端は、tracrRNAの5'末端に連結され得る。crRNAおよびtracrRNAは、例えば、crRNA(その3'末端における)およびtracrRNA(その5'末端における)の相補的領域を架橋する4ヌクレオチド(例えば、GAAA)の「テトラループ」または「リンカー」配列によって、単一の単分子またはキメラgRNAへ連結され得る。
【0125】
CRISPRの例は、使用することができる遺伝子編集技術または方法の非限定的な例である。それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開第2022232638号、国際公開第2022232638号、国際公開第2022198080号、国際公開第2022159758号、国際公開第2022159742号、国際公開第2022066335号、国際公開第2022056324号、国際公開第2022056301号、国際公開第2022046662号、国際公開第2021178933号、国際公開第2021226363号、国際公開第2021226369号、国際公開第2021202568号、国際公開第2021202559号、国際公開第2021178934号、国際公開第2020168234号で提供されているものを含むがこれらに限定されない他のヌクレアーゼおよび遺伝子編集システムも使用することができる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「リピート」配列または領域は、tracrRNAのアンチリピート配列に相補的なcrRNAの3'末端またはその近くのヌクレオチド配列である。
【0127】
本明細書で使用される場合、「アンチリピート」配列または領域は、crRNAのリピート配列に相補的なtracrRNAの5'末端またはその近くのヌクレオチド配列である。
【0128】
ゲノム編集のためのgRNA/Cas9複合体を含むガイドRNAの構造および機能に関するさらなる詳細は、少なくとも、参照により本明細書に組み入れられるMali et al.Science,339(6121),823-826(2013)Jiang et al.Nat.Biotechnol.31(3).233-239(2013);およびJinek et al.Science,337(6096),816-821(2012)に見出され得る。
【0129】
本明細書で使用される場合、「ガイド配列」または「標的化配列」は、編集が所望される細胞のゲノム中のDNA配列内の標的ドメインまたは標的ポリヌクレオチドに完全にまたは部分的に相補的である、単分子かまたはモジュラーかを問わないgRNAのヌクレオチド配列を指す。ガイド配列は、典型的には10~30ヌクレオチド長、好ましくは16~24ヌクレオチド長(例えば、16、17、18、19、20、21、22、23または24ヌクレオチド長)であり、Cas9 gRNAの5'末端またはその近くにある。
【0130】
本明細書で使用される場合、「標的ドメイン」または「標的ポリヌクレオチド配列」または「標的配列」は、gRNAのガイド配列に相補的な細胞のゲノム中のDNA配列である。
【0131】
CRISPR複合体の形成との関連において、「標的配列」とは、それに対してガイド配列がいくらかの相補性を有するように設計されている配列を指し、標的配列とガイド配列の間でのハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性が存在すれば、完全な相補性は必ずしも必要とされない。標的配列は、DNAまたはRNAポリヌクレオチドなどの任意のポリヌクレオチドを含み得る。ある態様では、標的配列は、細胞の核または細胞質に位置する。他の態様では、標的配列は、真核細胞の細胞小器官、例えばミトコンドリアまたは核内に存在し得る。典型的には、CRISPRシステムとの関連において、(標的配列にハイブリダイズし、1つまたは複数のCasタンパク質と複合体化したガイド配列を含む)CRISPR複合体の形成は、標的配列中または標的配列の近く(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50またはそれ以上の塩基対以内)で一方または両方の鎖の切断をもたらす。標的配列と同様に、これが機能的であるのに十分であれば、完全な相補性は必要とされないと考えられる。
【0132】
ある態様では、CRISPRシステムの要素の発現が1つまたは複数の標的部位でのCRISPR複合体の形成を指示するように、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素の発現を駆動する1つまたは複数のベクターが宿主細胞に導入される。例えば、Casヌクレアーゼ、crRNAおよびtracrRNAはそれぞれ、別個のベクター上の別個の調節要素に機能的に連結され得る。あるいは、同一のまたは異なる調節要素から発現される要素の2つ以上を単一のベクターに組み合わせてもよく、1つまたは複数のさらなるベクターが、第1のベクター中に含まれないCRISPRシステムの任意の成分を提供する。単一のベクター中に組み合わされるCRISPRシステム要素は、1つの要素が第2の要素に対して5'(第2の要素の「上流」)または第2の要素に対して3'(第2の要素の「下流」)に位置するなど、任意の適切な配向で配置され得る。1つの要素のコード配列は、第2の要素のコード配列の同一の鎖または反対の鎖上に位置し得、同一のまたは反対の方向に配向され得る。ある態様では、単一のプロモーターが、CRISPR酵素をコードする転写物ならびに1つまたは複数のイントロン配列内に埋め込まれた(例えば、それぞれが異なるイントロン内に存在するか、少なくとも1つのイントロン内に2つ以上が存在するか、またはすべてが単一のイントロン内に存在する)ガイド配列、tracrメイト配列(任意で、ガイド配列に機能的に連結されている)およびtracr配列の1つまたは複数の発現を駆動する。
【0133】
ある態様では、CRISPR酵素は、1つまたは複数の異種タンパク質ドメイン(例えば、CRISPR酵素に加えて、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれ以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上より多いドメイン)を含む融合タンパク質の一部である。CRISPR酵素融合タンパク質は、任意のさらなるタンパク質配列、および任意で任意の2つのドメイン間のリンカー配列を含み得る。CRISPR酵素に融合され得るタンパク質ドメインの例としては、限定されないが、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、ならびに以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性および核酸結合活性のうちの1つまたは複数を有するタンパク質ドメインが挙げられる。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の一部を形成し得るさらなるドメインは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20110059502号に記載されている。ある態様では、タグが付加されたCRISPR酵素が、標的配列の位置を特定するために使用される。
【0134】
哺乳動物および非哺乳動物細胞または標的組織に核酸を導入するために、従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入方法を使用することができる。CRISPRシステムの成分をコードする核酸を培養中または宿主生物中の細胞に投与するために、このような方法を使用することができる。非ウイルスベクター送達システムには、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書中に記載されるベクターの転写物)、裸の核酸、およびリポソームなどの送達ビヒクルと複合体化した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達システムには、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスが含まれる(Anderson,1992,Science 256:808-813;およびYu,et al.,1994,Gene Therapy 1:13-26)。
【0135】
いくつかの態様では、CRISPR/Casは、II型CRISPR/Casシステムに由来する。他の態様では、CRISPR/Casシステムは、Cas9ヌクレアーゼに由来する。使用され得る例示的なCas9ヌクレアーゼとしては、化膿性レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9(SpCas9)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9(SaCas9)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)Cas9(StCas9)、髄膜炎菌(N.meningitidis)Cas9(NmCas9)、カンピロバクター.ジェジュニ(C.jejuni)Cas9(CjCas9)およびゲオバチルス(Geobacillus)Cas9(GeoCas9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
一般に、Casタンパク質は、少なくとも1つのRNA認識ドメインおよび/またはRNA結合ドメインを含む。RNA認識ドメインおよび/またはRNA結合ドメインは、ガイドRNAと相互作用する。Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(すなわち、DNaseまたはRNaseドメイン)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、RNAseドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメインおよび他のドメインを含むことができる。Casタンパク質は、核酸結合親和性および/または特異性を増加させ、酵素活性を変化させ、および/またはタンパク質の別の特性を変化させるように改変され得る。ある態様では、融合タンパク質のCas様タンパク質は、野生型Cas9タンパク質またはその断片に由来し得る。他の態様では、Casは、改変されたCas9タンパク質に由来し得る。例えば、Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、タンパク質の1つまたは複数の特性(例えば、ヌクレアーゼ活性、親和性、安定性など)を変化させるように改変され得る。あるいは、RNAガイド型切断に関与しないCas9タンパク質のドメインは、改変されたCas9タンパク質が野生型Cas9タンパク質よりも小さくなるように、タンパク質から除去することができる。一般に、Cas9タンパク質は、少なくとも2つのヌクレアーゼ(すなわち、DNase)ドメインを含む。例えば、Cas9タンパク質は、RuvC様ヌクレアーゼドメインおよびHNH様ヌクレアーゼドメインを含むことができる。RuvCおよびHNHドメインは協働して一本鎖を切断してDNA中に二本鎖切断を作る(Jinek,et al.,2012,Science,337:816-821)。ある態様では、ただ1つの機能的ヌクレアーゼドメイン(RuvC様またはHNH様ヌクレアーゼドメインのいずれか)を含有するように、Cas9由来タンパク質を改変することができる。例えば、ヌクレアーゼドメインの1つが欠失されるか、または機能的でなくなるように(すなわち、ヌクレアーゼ活性が存在しない)変異されるように、Cas9由来タンパク質を改変することができる。ヌクレアーゼドメインの1つが不活性であるいくつかの態様では、Cas9由来タンパク質は、二本鎖核酸中にニックを導入することができるが(そのようなタンパク質は「ニッカーゼ」と呼ばれる)、二本鎖DNAを切断することはできない。上記の態様のいずれにおいても、部位特異的突然変異誘発、PCR媒介突然変異誘発および全遺伝子合成などの周知の方法、ならびに当技術分野で公知の他の方法を使用して、1つまたは複数の欠失変異、挿入変異および/または置換突然変異によって、ヌクレアーゼドメインのいずれかまたはすべてを不活性化させることができる。
【0137】
1つの非限定的な態様では、ベクターがCRISPRシステムの発現を駆動する。当技術分野には、使用することができる適切なベクターが豊富に存在する。使用されるベクターは、真核細胞における複製および任意で組み込みに適している。典型的なベクターは、転写および翻訳ターミネーター、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現の制御に有用なプロモーターを含有する。ベクターはまた、核酸標準的な遺伝子送達プロトコルのために使用され得る。遺伝子送達のための方法は当技術分野で公知である(参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号および同第5,589,466号)。
【0138】
さらに、ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(4th Edition,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,2012)、ならびに他のウイルス学および分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、シンドビスウイルス、ガンマレトロウイルスおよびレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されるわけではない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択可能なマーカーを含有する(例えば、国際公開公報第01/96584号;国際公開公報第01/29058号;および米国特許第6,326,193号)。
【0139】
いくつかの態様では、リボ核タンパク質(RNP)複合体(例えば、Cas9/RNA-タンパク質複合体)として、ガイドRNAおよびCas9を細胞に送達することができる。RNPは、gRNAと複合体化した精製されたCas9タンパク質から構成され、幹細胞および免疫細胞を含むがこれらに限定されない複数の種類の細胞に効率的に送達されることが当技術分野で周知である(Addgene,Cambridge,MA,Mirus Bio LLC,Madison,WI)。いくつかの態様では、Cas9/RNA-タンパク質複合体はエレクトロポレーションによって細胞内に送達される。
【0140】
いくつかの態様では、本開示の遺伝子編集された改変された細胞は、CD5をコードする内因性遺伝子座を破壊するために、本明細書において提供されるものなどの、CRISPR/Cas9または他のヌクレアーゼを使用して編集される。CD5を破壊する際に使用するための適切なgRNAは当技術分野で公知であり、例えば、SEQ ID NO:28に記載されている。ガイドRNA配列は、チミジン(T)またはウリジン(U)ヌクレオチドによって記載され得ることが当業者に理解されよう。
【0141】
したがって、いくつかの態様では、CD5をコードする内因性遺伝子座におけるヌクレアーゼ媒介性改変であって、内因性CD5の遺伝子発現を下方制御することができるヌクレアーゼ媒介性改変と、標的細胞上の抗原に対する親和性を含むCARとを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞が提供される。しかしながら、他の遺伝子編集技術を使用して遺伝子改変を行うことが可能であり、本明細書で提供されるCRISPR媒介性改変への言及は、単に例示目的のためのものに過ぎず、他の種類の遺伝子編集媒介性改変を代わりに使用することができる。
【0142】
いくつかの態様では、CARをコードする核酸は、CD5をコードする内因性遺伝子座のエクソン(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10またはエクソン11)に挿入される。いくつかの態様では、CARをコードする核酸は、CD5をコードする内因性遺伝子座のスプライスドナーに挿入される。いくつかの態様では、CARをコードする核酸は、CD5をコードする内因性遺伝子座のスプライスアクセプターに挿入される。いくつかの態様では、挿入点はエクソン2である。
【0143】
ある態様では、改変された細胞は、細胞が最終的に投与される対象に関して自家細胞である。ある態様では、改変された細胞は、ヒト対象から単離された細胞である。ある態様では、改変された細胞は、改変された免疫細胞である。ある態様では、改変された細胞は、改変されたT細胞である。本明細書で提供される改変されたT細胞は、CD5改変/変異およびCARを含むことができる。
【0144】
いくつかの局面では、提供される組成物および方法は、免疫細胞の組成物中の免疫細胞の少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または約50%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、もしくは95%超が所望の遺伝子改変を含有するものを含む。例えば、内因性CD5のノックアウトまたは遺伝子破壊のための作用物質(例えば、gRNA/Cas9またはその他のgRNAおよび遺伝子編集ヌクレアーゼ)がその中に導入された細胞の組成物中の免疫細胞の約50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%は、遺伝子破壊を含有し、標的とされた内因性ポリペプチドを発現せず、ならびに/または標的とされた遺伝子の近接したコピーおよび/もしくは機能的コピーを含有しない。いくつかの態様では、本開示による方法、組成物および細胞は、標的とされる遺伝子のノックアウトまたは遺伝子破壊のための作用物質(例えば、gRNA/Cas9またはその他のgRNAおよび遺伝子編集ヌクレアーゼ)がその中に導入された細胞の組成物中の少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または約50%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、もしくは95%超の細胞が、免疫細胞の表面上などに、標的とされるポリペプチドを発現しない、方法、組成物および細胞を含む。いくつかの態様では、標的とされる遺伝子のノックアウトまたは遺伝子破壊のための作用物質(例えば、gRNA/Cas9またはその他のgRNAおよび遺伝子編集ヌクレアーゼ)がその中に導入された細胞の組成物中の細胞の少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または約50%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、もしくは95%超が、そのようなパーセンテージの細胞で両方の対立遺伝子においてノックアウトされている、すなわち二対立遺伝子の欠失を含む。
【0145】
いくつかの態様では、標的とされる遺伝子中またはその近傍の(例えば、切断部位の上流または下流の100塩基対以内もしくは約100塩基対以内、50塩基対以内もしくは約50塩基対以内、または25塩基対以内もしくは約25塩基対以内、または10塩基対以内もしくは約10塩基対以内の)Cas9媒介性切断効率(%インデル)が、標的とされる遺伝子のノックアウトまたは遺伝子破壊のための作用物質(例えば、gRNA/Cas9またはその他のgRNAおよび遺伝子編集ヌクレアーゼ)がその中に導入されている細胞の組成物の細胞において、少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または約50%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、もしくは95%超である組成物および方法が提供される。
【0146】
いくつかの態様では、提供される細胞、組成物および方法は、標的とされる遺伝子のノックアウトまたは遺伝子破壊のための作用物質(例えば、gRNA/Cas9またはその他のgRNAおよび遺伝子編集ヌクレアーゼ)がその中に導入された細胞の組成物中の細胞の少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または約50%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、もしくは95%超において、内因性を介して送達されるシグナルの低下または破壊をもたらす。
【0147】
ある態様では、本開示の改変された細胞は、CD5の発現を破壊するように遺伝子編集される。本明細書の他の箇所に記載されるように、CD5の破壊は、免疫細胞(例えば、CAR T細胞)の機能を増強することが本開示によって示される。
【0148】
いくつかの態様では、本開示の改変された細胞は、さらなる内因性遺伝子の発現を破壊するように遺伝子編集されている。例えば、内因性PDCD1遺伝子産物(例えば、プログラム死1受容体;PD-1)を破壊するために、細胞はさらに編集され得る。内因性PD-1の発現を破壊すると、「チェックポイント」抵抗性の改変された細胞が生じ得、増大した腫瘍制御をもたらす。チェックポイント抵抗性の改変された細胞は、例えば、限定されないが、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、BおよびTリンパ球アテニュエータタンパク質(BTLA/CD272)、CD96、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4/CD152)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、CD200受容体(CD200R)、またはT細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)の発現を破壊することによっても作出され得る。細胞は、T細胞受容体アルファ鎖(TRAC)、T細胞受容体ベータ鎖(TRBC)、プログラム死-1(PD-1)リガンド1(PDL1)およびトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)受容体(TGFβR)を含むが、これらに限定されない他の内因性遺伝子を破壊するようにさらに編集され得る。
【0149】
いくつかの態様では、CARで操作された細胞を含み、内因性CD5遺伝子の発現の低下、欠失、排除、ノックアウトまたは破壊を含む提供される開示による組成物は、同じ条件下で評価された場合、受容体を含むが、遺伝子の遺伝子破壊を含まないかまたはポリペプチドを発現する対応する組成物または参照組成物の操作された細胞において発現される受容体と比べて、受容体の機能的特性または活性を保持する。いくつかの態様では、提供される組成物の操作された細胞は、同じ条件下で評価された場合、CARで操作されているが、遺伝子破壊を含まないかまたは標的とされるポリペプチドを発現する操作された細胞を含む対応する組成物または参照組成物と比較して、機能的特性または活性を保持する。いくつかの態様では、細胞は、そのような対応する組成物または参照組成物と比較して、細胞傷害性、増殖、生存またはサイトカイン分泌を保持する。
【0150】
いくつかの態様では、組成物中の免疫細胞は、同じ条件下で評価された場合、対応する組成物または参照組成物中の細胞の表現型と比較して、1つの免疫細胞または複数の免疫細胞の表現型を保持する。いくつかの態様では、組成物中の細胞は、ナイーブ細胞、エフェクターメモリー細胞、セントラルメモリー細胞、幹セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞および長寿命エフェクターメモリー細胞を含む。いくつかの態様では、一定の割合のT細胞、すなわちCARを発現し、CD5の遺伝子破壊を含むT細胞は、組換え受容体で操作されたが遺伝子破壊を含まない細胞の対応するまたは参照集団または組成物と同じまたは実質的に同じ非活性化長寿命メモリーまたはセントラルメモリー表現型を示す。いくつかの態様では、このような特性、活性または表現型は、CARによって標的とされる抗原、この抗原を発現する細胞および/または抗原-受容体活性化物質の存在下での細胞のインキュベーションなどによって、インビトロアッセイで測定することができる。いくつかの態様では、評価された活性、特性または表現型はいずれも、3、4、5、6、7日後または最長3日、4日、5日、6日、7日など、作用物質のエレクトロポレーションまたはその他の導入後の様々な日に評価することができる。いくつかの態様では、このような活性、特性または表現型は、同じ条件下で評価された場合、組換え受容体で操作されたが標的とされる遺伝子の遺伝子破壊を含まない細胞を含有する対応する組成物の活性と比較して、組成物中の細胞の少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%によって保持される。
【0151】
本明細書で使用される場合、「対応する組成物」または「免疫細胞の対応する集団」(「参照組成物」または「細胞の参照集団」とも呼ばれる)への言及は、免疫細胞または免疫細胞の集団が作用物質を導入されなかったことを除いて、同じまたは実質的に同じ条件下で得られた、単離された、生成された、産生された、および/またはインキュベートされた免疫細胞(例えば、T細胞)を指す。いくつかの局面では、作用物質の導入を含まないことを除いて、このような免疫細胞は、阻害性分子の上方調節または発現を含む、細胞の活性または特性に影響を及ぼし得る任意の1つまたは複数の条件が、作用物質の導入以外に細胞間で変動しないまたは実質的に変動しないように、作用物質が導入された免疫細胞と同一にまたは実質的に同一に処理される。
【0152】
T細胞マーカーの発現および/またはレベルを評価するための方法および技術は、当技術分野で公知である。そのようなマーカーを検出するための抗体および試薬は当技術分野で周知であり、容易に入手可能である。そのようなマーカーを検出するためのアッセイおよび方法には、細胞内フローサイトメトリー、ELISA、ELISPOT、サイトメトリックビーズアレイまたは他の多重法を含むフローサイトメトリー、ウエスタンブロットおよび他の免疫親和性に基づく方法が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、CAR発現細胞は、このような細胞に固有のマーカーの発現に対するフローサイトメトリーまたは他の免疫親和性ベースの方法によって検出することができ、次いで別の1つまたは複数のT細胞表面マーカーについてこのような細胞を共染色することができる。
【0153】
いくつかの態様では、細胞、組成物および方法は、養子移入される免疫細胞(例えば、T細胞)(CARを発現するように操作された細胞など)における標的遺伝子の欠失、ノックアウト、破壊、または発現の低下を提供する。いくつかの態様では、方法は、対象からの初代免疫細胞(例えば、T細胞)などの初代細胞に対してエクスビボで行われる。いくつかの局面では、そのような遺伝子操作されたT細胞を生産または生成する方法は、免疫細胞(例えば、T細胞)を含有する細胞の集団に、CARをコードする1つまたは複数の核酸と、標的とされる内因性受容体をコードする遺伝子を破壊することができる1つの作用物質または複数の作用物質とを導入する工程を含む。本明細書で使用される場合、「導入する」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞にDNAを導入する様々な方法を包含し、このような方法は形質転換、形質導入、トランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション)および感染を含む。ベクターは、分子をコードするDNAを細胞に導入するのに有用である。可能なベクターとしては、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターもしくはアデノ随伴ベクターなどの他のベクターが含まれる。
【0154】
T細胞を含有する細胞の集団は、末梢血単核細胞(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球試料、血液浄化療法産物または白血球浄化療法産物から得られたものなど、対象から得られた細胞であり得る。いくつかの態様では、T細胞は、陽性または陰性選択および濃縮方法を使用して集団中のT細胞を濃縮するために分離または選択され得る。いくつかの態様では、集団は、CD4+、CD8+またはCD4+およびCD8+T細胞を含有する。いくつかの態様では、遺伝子操作された抗原受容体をコードする核酸を導入する工程および作用物質(例えば、Cas9/gRNA RNP)を導入する工程は、同時にまたは任意の順序で順次に行うことができる。いくつかの態様では、外因性受容体および1つまたは複数の遺伝子編集剤(例えば、Cas9/gRNA RNP)の導入に続いて、細胞は、細胞の拡大および/または増殖を刺激する条件下で培養またはインキュベートされる。
【0155】
したがって、移入された細胞への持続性または曝露を長期にわたって維持しながら、投与された遺伝子操作された細胞の活性および効力を増加させることなどによって改善された有効性を提供する細胞、組成物および方法を含む、養子細胞療法におけるT細胞などの免疫細胞機能を増強する細胞、組成物および方法が提供される。いくつかの態様では、遺伝子操作された細胞は、特定の利用可能な方法と比較して、対象にインビボで投与された場合、増加した拡大および/または持続性を示す。いくつかの態様では、提供される免疫細胞は、対象にインビボで投与されたときに、増加した持続性を示す。いくつかの態様では、投与時の対象における遺伝子操作された免疫細胞の持続性は、T細胞が内因性受容体をコードする遺伝子の発現を低下させるかまたは内因性受容体をコードする遺伝子を破壊する作用物質を導入されなかった方法によって遺伝子操作された細胞の投与を含む方法などの代替方法によって達成されるであろう持続性と比較してより大きい。いくつかの態様では、持続性は、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、もしくはそれ以上、または約少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、もしくはそれ以上で増加する。
【0156】
ある態様では、免疫細胞またはその前駆細胞はT細胞である。ある態様では、T細胞はヒトT細胞である。ある態様では、細胞は、自家細胞(例えば、自家T細胞)である。
【0157】
改変された細胞は、本明細書に開示される任意のキメラ抗原受容体(CAR)を含むことができる。
【0158】
したがって、移入された細胞への持続性または曝露を長期にわたって維持しながら、投与された遺伝子操作された細胞の活性および効力を増加させることなどによって改善された有効性を提供する細胞、組成物および方法を含む、養子細胞療法におけるT細胞などの免疫細胞機能を増強する細胞、組成物および方法が提供される。
【0159】
いくつかの態様では、投与された細胞の持続性の度合いまたは程度は、対象への投与後に検出または定量化され得る。例えば、いくつかの局面では、対象の血液または血清または臓器または組織(例えば、疾患部位)におけるCARを発現する細胞の量を評価するために、定量的PCR(qPCR)が使用される。いくつかの局面では、持続性は、1マイクログラムのDNA当たりの外因性受容体をコードするDNAもしくはプラスミドのコピーとして、または1マイクロリットルの試料、例えば血液もしくは血清当たりの受容体発現細胞の数として、または1マイクロリットルの試料当たりの末梢血単核細胞(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞の総数当たりの受容体発現細胞の数として定量される。いくつかの態様では、一般に受容体に対して特異的な抗体を使用して、受容体を発現する細胞を検出するフローサイトメトリーアッセイも実施することができる。機能的細胞、例えば、疾患もしくは状態の細胞に結合し、および/もしくは疾患もしくは状態の細胞を中和し、および/もしくは疾患もしくは状態の細胞に対する応答、例えば細胞傷害性応答を誘導することができるか、または受容体によって認識される抗原を発現することができる細胞の数またはパーセンテージを検出するために、細胞ベースのアッセイも使用され得る。このような態様のいずれにおいても、投与された細胞を対象中の内因性細胞と区別するために、改変された細胞に関連する別のマーカーの発現の程度またはレベルを使用することができる。
【0160】
CD5の破壊、変異または低下は、遺伝子編集、miRNA、siRNA、薬物、抗体、阻害剤などを含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。
【0161】
本明細書で提供される細胞は、ウイルスなどのベクターを投与してインビボでT細胞を形質導入することによって、インビボで生成させることもできる。T細胞は、ベクターを標的化部分で改変することによって標的とされ得る。インビボで細胞を生産するために使用することができる形質導入システムおよびベクターの例は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20210353543号、米国特許第10,064,958号、米国特許第9,486,539号、国際公開公報第2021/202604号、米国特許出願公開第20210228627号、米国特許出願公開第20210198698号および米国特許出願公開第20210283179号に記載されているが、それらに限定されない。
【0162】
C. 治療の方法
本明細書に記載の改変された細胞(例えば、内因性CD5が破壊され、変異され、および/またはノックアウトされたCAR T細胞)は、固形腫瘍を治療するための免疫療法のための組成物中に含まれ得る。組成物は、薬学的組成物を含み得、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。改変された細胞を含む薬学的組成物の治療有効量を投与し得る。
【0163】
いくつかの態様では、本開示は、その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、CD5の発現が阻害され、低下され、または排除されるように、本明細書に開示される改変された免疫細胞またはその前駆細胞(例えば、内因性CD5が破壊され、変異され、および/またはノックアウトされたCAR T細胞)の集団を前記対象に投与する工程を含む、方法を含む。別の局面では、本明細書で提供される改変された免疫細胞またはその前駆細胞(例えば、内因性CD5が破壊および/またはノックアウトされたCAR T細胞)を、その必要がある対象に投与する工程を含む養子細胞移入療法のための方法を含む態様が提供される。
【0164】
いくつかの態様では、その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ前記抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合する、方法が提供される。
【0165】
いくつかの態様では、その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、前記抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合し、かつ腫瘍の成長が、少なくとも10日間、20日間、30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、80日間、90日間、100日間、120日間、150日間、200日間、240日間阻害される、方法が提供される。
【0166】
いくつかの態様では、その必要がある対象において増強された有効性で固形腫瘍を治療する方法であって、変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、前記抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合し、かつ前記変異した内因性CD5遺伝子を含む免疫細胞の前記集団の有効性が、非変異の内因性CD5遺伝子を含む免疫細胞の集団よりも高い、方法が提供される。いくつかの態様では、増強された有効性は、固形腫瘍細胞に対する細胞傷害性の増加である。いくつかの態様では、固形腫瘍細胞に対する細胞傷害性は、変異したCD5遺伝子を有しない免疫細胞の集団と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、または300%増加する。
【0167】
いくつかの態様では、免疫細胞の集団の少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、変異した内因性CD5遺伝子を含む。いくつかの態様では、免疫細胞の集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が異種キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0168】
養子細胞療法のための免疫細胞の投与方法は公知であり、提供される方法および組成物と関連して使用され得る。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開第2003/0170238号;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg(2011)Nat Rev Clin Oncol.8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al.(2013)Nat Biotechnolを参照されたい。31(10):928-933;Tsukahara et al.(2013)Biochem Biophys Res Commun 438(1):84-9;Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4):e61338。いくつかの態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けることになっている対象から、またはそのような対象に由来する試料から単離されるおよび/またはその他調製される、自家移植によって実施される。したがって、いくつかの局面では、細胞は、治療を必要とする対象、例えば患者に由来し、単離および処理後に細胞は同じ対象に投与される。
【0169】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けることになっている対象または最終的に細胞療法を受ける対象以外の対象、例えば第1の対象から単離されるおよび/またはその他調製される、同種移植によって実施される。そのような態様では、細胞は、次いで、同じ種の異なる対象、例えば第2の対象に投与される。いくつかの態様では、第1の対象と第2の対象は遺伝的に同一である。いくつかの態様では、第1の対象と第2の対象は遺伝的に類似している。いくつかの態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0170】
いくつかの態様では、対象は、細胞または細胞を含有する組成物の投与前に、疾患または状態、例えば腫瘍を標的とする治療薬で治療されている。いくつかの局面では、対象は、他の治療薬に対して難治性または非応答性である。いくつかの態様では、対象は、例えば化学療法、放射線および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば同種HSCTを含む別の治療介入による治療後に、持続性または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の療法に対して抵抗性になったにもかかわらず、対象を有効に治療する。
【0171】
いくつかの態様では、対象は他の治療薬に応答性であり、治療薬による治療は疾患負荷を軽減させる。いくつかの局面では、対象は、治療薬に対して最初は応答性であるが、経時的に疾患または状態の再発を示す。いくつかの態様では、対象は再発していない。いくつかのそのような態様では、対象は再発のリスクがある、例えば再発のリスクが高いと判定され、したがって細胞は、例えば再発の可能性を低減するかまたは再発を防止するために予防的に投与される。いくつかの局面では、対象は、別の治療薬による事前の治療を受けていない。
【0172】
いくつかの態様では、対象は、例えば化学療法、放射線および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば同種HSCTを含む別の治療介入による治療後に、持続性または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の療法に対して抵抗性になったにもかかわらず、対象を有効に治療する。
【0173】
改変された免疫細胞は、癌、例えば固形腫瘍を治療するために、動物、好ましくは哺乳動物、さらにより好ましくはヒトに投与することができる。さらに、の細胞は、疾患を治療するか、または緩和することが望ましい場合に、癌に関連する任意の状態の治療、特に腫瘍細胞に対する細胞媒介性免疫応答のために使用することができる。本明細書で提供される改変された細胞または薬学的組成物で処置される癌の種類には、癌腫、芽細胞腫および肉腫、ならびにある種の白血病またはリンパ性悪性腫瘍、良性および悪性腫瘍、ならびに悪性病変、例えば肉腫、癌腫および黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。他の例示的な癌には、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌、甲状腺癌などが含まれるが、これらに限定されない。成人(adult)腫瘍/癌および小児(pediatric)腫瘍/癌も含まれる。いくつかの態様では、癌は癌腫である。一態様では、癌は肉腫である。いくつかの態様では、癌は白血病である。いくつかの態様では、癌は固形腫瘍である。
【0174】
固形腫瘍は、嚢胞または液体領域を通常含有しない、組織の異常な塊である。固形腫瘍は、良性または悪性であり得る。様々な種類の固形腫瘍が、それらを形成する細胞の種類にちなんで命名されている(肉腫、癌腫およびリンパ腫など)。肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、ならびにその他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫 脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫など(脳幹神経膠腫および混合膠腫など)、膠芽腫(多形性膠芽腫としても公知である)星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、および脳転移)が挙げられる。
【0175】
本明細書に開示されている方法による治療に適し得る癌腫には、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚癌の一形態)、扁平上皮癌(種々の組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、気管支原性癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、肺の小細胞癌および非小細胞癌を含む肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、非浸潤性乳管癌または胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌、上皮癌、および上咽頭癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
本明細書に開示される方法による治療に適し得る肉腫には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、または他の軟部組織肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
ある例示的な態様では、本明細書で提供される改変された免疫細胞は、黒色腫または黒色腫に関連する状態を治療するために使用される。黒色腫またはそれに関連する状態の例としては、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、または皮膚の黒色腫(例えば、皮膚、眼、外陰、膣、直腸黒色腫)が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、本開示の方法は、皮膚黒色腫を治療するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性黒色腫を治療するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性黒色腫を治療するために使用される。
【0178】
さらに別の例示的な態様では、本明細書で提供される改変された免疫細胞は、肉腫または肉腫に関連する状態を治療するために使用される。肉腫またはそれに関連する状態の例としては、限定されないが、血管肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、骨肉腫、多形性肉腫、横紋筋肉腫および滑膜肉腫が挙げられる。一態様では、本開示の方法は、滑膜肉腫を治療するために使用される。一態様では、本開示の方法は、粘液性/円形細胞脂肪肉腫、分化型/脱分化型脂肪肉腫、および多形性脂肪肉腫などの脂肪肉腫を治療するために使用される。一態様では、本開示の方法は、粘液性/円形細胞脂肪肉腫を治療するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性肉腫を治療するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性肉腫を治療するために使用される。
【0179】
投与される細胞は、治療を受けている対象に対して自家由来であり得る。いくつかの態様では、細胞は、治療を受けている対象に対して同種異系である。
【0180】
細胞の投与は、当業者に公知の任意の好都合な方法で実施され得る。細胞は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸血、埋め込みまたは移植によって対象に投与され得る。本明細書に記載の組成物は、経動脈的に、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射によって、または腹腔内経路で患者に投与され得る。他の例では、細胞は、対象の炎症部位、対象の局所疾患部位、リンパ節、臓器、腫瘍などに直接注射される。
【0181】
いくつかの態様では、細胞は所望の投与量で投与され、これはいくつかの局面では、所望の用量もしくは数の細胞もしくは細胞型および/または所望の比の細胞型を含む。したがって、いくつかの態様における細胞の投与量は、細胞の総数(または体重1kg当たりの数)および個々の集団またはサブタイプの所望の比、例えばCD4+対CD8+比に基づく。いくつかの態様では、細胞の投与量は、個々の集団または個々の細胞型における細胞の所望の総数(または体重1kg当たりの数)に基づく。いくつかの態様では、投与量は、そのような特徴、例えば全細胞の所望の数、所望の比、および個々の集団における細胞の所望の総数などの組合せに基づく。
【0182】
いくつかの態様では、CD8およびCD4T細胞などの細胞の集団またはサブタイプは、T細胞の所望の用量などの全細胞の所望の用量の許容差でまたは許容差内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、細胞の所望の数または細胞が投与される対象の単位体重当たりの細胞の所望の数、例えば細胞/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、細胞の最小数もしくは最小数より上、または単位体重当たりの細胞の最小数もしくは最小数より上である。いくつかの局面では、所望の用量で投与される全細胞の中で、個々の集団またはサブタイプは、所望の産生比(CD4対CD8比など)またはそれに近い比で、例えばそのような比の特定の許容差内または許容誤差内で存在する。
【0183】
いくつかの態様では、細胞は、所望の用量のCD4+細胞および/または所望の用量のCD8+細胞などの、細胞の個々の集団またはサブタイプの1つまたは複数の所望の用量の許容差でまたは許容差内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、サブタイプまたは集団の細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の単位体重当たりのそのような細胞の所望の数、例えば細胞/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの細胞の最小数もしくは最小数より上、または単位体重当たりの集団もしくはサブタイプの細胞の最小数もしくは最小数より上である。したがって、いくつかの態様では、投与量は、全細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、ならびに/または個々のサブタイプもしくは亜集団の1つもしくは複数、例えばそれぞれの所望の固定用量に基づく。したがって、いくつかの態様では、投与量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量およびCD4対CD8細胞の所望の比に基づき、ならびに/またはCD4および/もしくはCD8細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
【0184】
特定の態様では、細胞、または細胞のサブタイプの個々の集団は、約100万~約1000億個の細胞の範囲、例えば100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、もしくは前記値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば1000万~約1000億個の細胞(例えば約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、もしくは前記値のいずれか2つによって定義される範囲)、およびいくつかの場合には、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)、またはこれらの範囲の間の任意の値で対象に投与される。
【0185】
いくつかの態様では、全細胞の用量および/または細胞の個々の亜集団の用量は、1×105細胞/kg~約1×1011細胞/kg 104または約1×105細胞/kg~約1×1011細胞/kg 104から、1011または約1011細胞/kg体重であり、例えば、105~106細胞/kg体重の範囲内であり、例えば、1×105細胞/kg、1.5×105細胞/kg、2×105細胞/kgもしくは1×106細胞/kg、または約1×105細胞/kg、約1.5×105細胞/kg、約2×105細胞/kgもしくは約1×106細胞/kgである。例えば、いくつかの態様では、細胞は、104または約104から、109または約109T細胞/キログラム(kg)体重で、例えば105~106T細胞/kg体重で、例えば、1×105T細胞/kg、1.5×105T細胞/kg、2×105T細胞/kgもしくは1×106T細胞/kg体重、または約1×105T細胞/kg、約1.5×105T細胞/kg、約2×105T細胞/kgもしくは約1×106T細胞/kg体重で、あるいはそれらの特定の誤差範囲内で投与される。他の例示的態様では、本開示の方法で使用するための改変された細胞の適切な投与量範囲は、非限定的に、約1×105細胞/kg~約1×106細胞/kg、約1×106細胞/kg~約1×107細胞/kg、約1×107細胞/kg~約1×108細胞/kg、約1×108細胞/kg~約1×109細胞/kg、約1×109細胞/kg~約1×1010細胞/kg、約1×1010細胞/kg~約1×1011細胞/kgを含む。例示的な態様では、本開示の方法で使用するための適切な投与量は、約1×108細胞/kgである。例示的な態様では、本開示の方法で使用するための適切な投与量は、約1×107細胞/kgである。他の態様では、適切な投与量は、約1×107個の全細胞~約5×107個の全細胞である。いくつかの態様では、適切な投与量は、約1×108個の全細胞~約5×108個の全細胞である。いくつかの態様では、適切な投与量は、約1.4×107個の全細胞~約1.1×109個の全細胞である。例示的な態様では、本開示の方法で使用するための適切な投与量は、約7×109個の全細胞である。
【0186】
いくつかの態様では、細胞は、104または約104から、109または約109個のCD4および/またはCD8細胞/キログラム(kg)体重で、例えば105~106個のCD4および/またはCD8細胞/kg体重で、例えば、1×105個のCD4および/もしくはCD8細胞/kg、1.5×105個のCD4および/もしくはCD8細胞/kg、2×105個のCD4および/もしくはCD8細胞/kg、または1×106個のCD4および/もしくはCD8細胞/kg体重、または約1×105個のCD4および/もしくはCD8細胞/kg、約1.5×105個のCD4および/もしくはCD8細胞/kg、約2×105個のCD4および/もしくはCD8細胞/kg体重、または約1×106個のCD4および/もしくはCD8細胞/kg体重で、あるいはそれらの特定の誤差範囲内で、投与される。いくつかの態様では、細胞は、約1×106超、約2.5×106超、約5×106超、約7.5×106超もしくは約9×106超個のCD4細胞、および/または少なくとも約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106もしくは約9×106個のCD4細胞、および/または少なくとも約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106もしくは約9×106個のCD8+細胞、および/または少なくとも約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106もしくは約9×106個のT細胞で、あるいはそれらの特定の誤差範囲内で、投与される。いくつかの態様では、細胞は、約108~1012もしくは約1010~1011個のT細胞、約108~1012もしくは約1010~1011個のCD4細胞、および/または約108~1012もしくは約1010~1011個のCD8細胞で、あるいはそれらの特定の誤差範囲内で、投与される。いくつかの態様では、約1×106~約1×109、約1×107~約1×109、約1×108~約1×109、約2×108~約1×109、約3×108~約1×109、約3×108~約1×109、約3×108~約1×109、約4×108~約1×109、約5×108~約1×109、約6×108、約7×108~約1×109、約8×108、約9×108~約1×109個の免疫細胞が、処置される対象に投与される。
【0187】
いくつかの態様では、細胞は、CD4+およびCD8+細胞またはサブタイプなどの複数の細胞集団またはサブタイプの所望の産生比で、またはその許容範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の比は特定の比であり得るかまたは比の範囲であり得、例えば、いくつかの態様では、所望の比(例えば、CD4対CD8細胞の比)は、5:1もしくは約5:1から、5:1もしくは約5:1(または約1:5より大きく約5:1より小さい)、または1:3もしくは約1:3から、3:1もしくは約3:1(または約1:3より大きく約3:1より小さい)であり、例えば2:1もしくは約2:1から、1:5もしくは約1:5(もしくは約1:5より大きく約2:1より小さい)であり、例えば5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5もしくは1:5、または約5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5もしくは1:5である。いくつかの局面では、許容差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内であり、これらの範囲の間の任意の値を含む。
【0188】
いくつかの態様では、改変された細胞の用量は、単回用量または複数回用量で、その必要がある対象に投与される。いくつかの態様では、改変された細胞の用量は、複数回用量で、例えば、1週間に1回もしくは7日ごとに、2週間に1回もしくは14日ごとに、3週間に1回もしくは21日ごとに、4週間に1回もしくは28日ごとに投与される。例示的な態様では、改変された細胞の単回用量が、その必要がある対象に投与される。例示的な態様では、改変された細胞の単回用量が、その必要がある対象に急速静脈内注入によって投与される。
【0189】
疾患の予防または治療に関して、適切な投与量は、治療される疾患の種類、細胞または組換え受容体の種類、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的または治療目的のいずれで投与されるか、過去の治療、対象の病歴および細胞に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存し得る。組成物および細胞は、いくつかの態様では、一度にまたは一連の治療にわたって対象に適切に投与される。
【0190】
いくつかの態様では、細胞は、併用治療の一部として、例えば別の治療的介入、例えば抗体または操作された細胞または受容体または剤、例えば細胞傷害剤もしくは治療薬と同時にまたは任意の順序で連続的に投与される。いくつかの態様における細胞は、1つもしくは複数のさらなる治療薬と共に、または別の治療的介入と組み合わせて、同時にまたは任意の順序で連続的に同時投与される。いくつかの状況では、細胞は、細胞集団が1つもしくは複数のさらなる治療薬の効果を増強するように、またはその逆になるように、時間的に十分に近い別の療法と同時投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数のさらなる治療薬の前に投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数のさらなる治療薬の後に投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数のさらなる剤は、例えば持続性を高めるために、IL-2などのサイトカインを含む。いくつかの態様では、方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0191】
特定の態様では、改変された細胞(例えば、CARを含む改変された細胞)は、免疫チェックポイント抗体(例えば、抗PD1、抗CTLA-4、または抗PDL1抗体)と組み合わせて対象に投与され得る。例えば、改変された細胞は、例えばPD-1(プログラム死1タンパク質)を標的とする抗体または抗体断片と組み合わせて投与され得る。抗PD-1抗体の例としては、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、以前はラムブロリズマブ、MK-3475としても公知)、およびニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538、OPDIVA(登録商標))またはその抗原結合断片が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。特定の態様では、改変された細胞は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて投与され得る。抗PD-L1抗体の例としては、BMS-936559、MPDL3280A(TECENTRIQ(登録商標)、アテゾリズマブ)、およびMEDI4736(デュルバルマブ、Imfinzi)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。特定の態様では、改変された細胞は、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて投与され得る。抗CTLA-4抗体の例としては、イピリムマブ(商品名Yervoy)が挙げられるが、これに限定されるわけではない。小分子、siRNA、miRNA、およびCRISPRシステムを含むがこれらに限定されるわけではない、他のタイプの免疫チェックポイントモジュレータも使用され得る。免疫チェックポイントモジュレータは、CARを含む改変された細胞の前、改変された細胞の後、または改変された細胞と同時に投与され得る。特定の態様では、免疫チェックポイントモジュレータを含む併用治療は、改変された細胞を含む療法の治療効果を増加させ得る。
【0192】
細胞の投与後、いくつかの態様では操作された細胞集団の生物学的活性が、例えば、いくつかの公知の方法のいずれかによって測定される。評価すべきパラメータには、インビボでは、例えばイメージングによる、またはエクスビボでは、例えばELISAもしくはフローサイトメトリによる、操作されたもしくは天然のT細胞または他の免疫細胞の抗原への特異的結合が含まれる。特定の態様では、操作された細胞が標的細胞を破壊する能力は、例えば、Kochenderfer et al., J.Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)、およびHerman et al.J.Immunological Methods, 285(1):25-40(2004)に記載されている細胞毒性アッセイなどの当技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて測定することができる。特定の態様では、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFなどの1つまたは複数のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面では、生物学的活性は、腫瘍量または腫瘍負荷の減少などの臨床転帰を評価することによって測定される。
【0193】
特定の態様では、対象に二次治療が提供される。二次治療は、化学療法、放射線、手術、および薬物療法を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0194】
いくつかの態様では、対象は、CAR T細胞療法の前にコンディショニング療法を施され得る。いくつかの態様では、コンディショニング療法は、有効量のシクロホスファミドを対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、コンディショニング療法は、有効量のフルダラビンを対象に投与する工程を含む。好ましい態様では、コンディショニング療法は、有効量のシクロホスファミドとフルダラビンとの組合せを対象に投与する工程を含む。CAR T細胞療法の前のコンディショニング療法の投与は、CAR T細胞療法の有効性を高め得る。T細胞療法のために患者をコンディショニングする方法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第9,855,298号に記載されている。
【0195】
いくつかの態様では、本開示の特定の投薬レジメンは、改変T細胞の投与の前にリンパ球枯渇工程を含む。例示的な態様では、リンパ球枯渇工程は、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与を含む。いくつかの態様では、本開示の特定の投薬レジメンは、改変T細胞の投与の前にリンパ球枯渇工程を含まない。
【0196】
いくつかの態様では、リンパ球枯渇工程は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日、または500mg/m2/日)の用量でのシクロホスファミドの投与を含む。例示的態様では、シクロホスファミドの用量は約300mg/m2/日である。いくつかの態様では、リンパ球枯渇工程は、約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日、または60mg/m2/日)の用量でのフルダラビンの投与を含む。例示的な態様では、フルダラビンの用量は約30mg/m2/日である。
【0197】
いくつかの態様では、リンパ球枯渇工程は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日、または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミド、および約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日、または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンの投与を含む。例示的な態様では、リンパ球枯渇工程は、約300mg/m2/日の用量のシクロホスファミドおよび約30mg/m2/日の用量のフルダラビンの投与を含む。
【0198】
例示的な態様では、シクロホスファミドの投与量は、3日間にわたって300mg/m2/日であり、フルダラビンの投与量は、3日間にわたって30mg/m2/日である。
【0199】
リンパ球枯渇化学療法の投与は、0日目のT細胞(例えば、CAR-T、TCR-T、改変T細胞など)の注入に対して、-6日目から-4日目(-1日ウィンドウ、すなわち-7日目から-5日目に投与)にスケジュールされ得る。
【0200】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、改変T細胞の投与の3日前に、静脈内注入による300mg/m2のシクロホスファミドを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、改変T細胞の投与前に3日間、静脈内注入による300mg/m2のシクロホスファミドを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。
【0201】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日、または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、30mg/m2の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を3日間受ける。
【0202】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日、または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミド、および約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日、または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約300mg/m2/日の用量のシクロホスファミドおよび30mg/m2の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を3日間受ける。
【0203】
改変された細胞は、適切な前臨床および臨床実験および治験で決定される投与量および経路および時点で投与され得る。細胞組成物は、これらの範囲内の投与量で複数回投与され得る。細胞の投与は、当業者によって決定される所望の疾患または状態を治療するのに有用な他の方法と組み合わせてもよい。
【0204】
CAR T細胞の注入後の有害作用の1つが、サイトカイン放出症候群(CRS)として知られる免疫活性化の発症であることは、当技術分野で公知である。CRSは、炎症性サイトカインの上昇をもたらす免疫活性化である。CRSは公知のオンターゲット毒性であり、その発現は有効性と相関する可能性が高い。臨床的および実験的尺度は、軽度CRS(全身症状および/またはグレード2の臓器毒性)から重度CRS(sCRS; グレード≧3の臓器毒性、積極的な臨床介入、および/または潜在的に生命を脅かす)に及ぶ。臨床的特徴には、高熱、倦怠感、疲労、筋痛、悪心、食欲不振、頻脈/低血圧、毛細血管漏出、心機能障害、腎障害、肝不全、および播種性血管内凝固が含まれる。インターフェロン-ガンマ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、IL-10およびIL-6を含むサイトカインの劇的な増加が、CAR T細胞注入後に示されている。1つのCRSシグネチャは、IL-6(重度の上昇)、IFN-ガンマ、TNF-アルファ(中等度)、およびIL-2(軽度)を含むサイトカインの上昇である。フェリチンおよびC反応性タンパク質(CRP)を含む臨床的に利用可能な炎症マーカーの上昇もまた、CRS症候群と相関することが観察されている。CRSの存在は、一般に、養子移入された細胞の拡大および進行性免疫活性化と相関する。高い腫瘍負荷量を有する患者はより多くのsCRSを経験するので、CRS重症度の程度は注入の時点の疾患負荷によって決定されることが実証されている。
【0205】
したがって、本態様は、CRSの診断後、操作された細胞(例えば、CAR T細胞)の抗腫瘍効果を弱めることなく、制御されない炎症の生理学的症状を緩和するための、適切なCRS管理戦略を提供する。CRS管理戦略は当技術分野で公知である。例えば、全身コルチコステロイドを投与して、初期抗腫瘍応答を損なうことなくsCRS(例えば、グレード3のCRS)の症状を迅速に回復させ得る。
【0206】
いくつかの態様では、抗IL-6R抗体が投与され得る。抗IL-6R抗体の一例は、アトリズマブ(Actemra、またはRoActemraとして市販されている)としても公知の、食品医薬品局に承認されたモノクローナル抗体トシリズマブである。トシリズマブは、インターロイキン-6受容体(IL-6R)に対するヒト化モノクローナル抗体である。トシリズマブの投与は、CRSのほぼ即時の逆転を実証した。
【0207】
CRSは、一般に、観察された症候群の重症度に基づいて管理され、介入はそれに応じて調整される。CRS管理の決定は、臨床検査値のみに基づくのではなく、臨床徴候および症状ならびに介入に対する応答に基づき得る。
【0208】
軽度から中等度の症例は一般に、十分な症状緩和のための必要に応じて、輸液療法、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および抗ヒスタミン薬による症状管理で治療される。より重篤な症例には、任意の程度の血行動態不安定性を有する患者が含まれ、血行動態不安定がある場合、トシリズマブの投与が推奨される。CRSの第一選択管理は、いくつかの態様では、60分間にわたる8mg/kg IVの表示用量(800mg/用量を超えない)でのトシリズマブであり得る; トシリズマブはQ8時間ごとに繰り返すことができる。トシリズマブの最初の用量に対する最適以下の応答の場合、トシリズマブのさらなる用量が考慮され得る。トシリズマブは、単独で、またはコルチコステロイド療法と組み合わせて投与することができる。継続的または進行性のCRS症状、12~18時間での不十分な臨床的改善、またはトシリズマブに対する不十分な応答を有する患者は、高用量コルチコステロイド療法、一般にヒドロコルチゾン100mg IVまたはメチルプレドニゾロン1~2mg/kgで治療され得る。より重度の血行動態不安定またはより重度の呼吸器症状を有する患者では、患者はCRSの経過の初期に高用量のコルチコステロイド療法を施され得る。CRS管理ガイダンスは、公開された規格(Lee et al.(2019)Biol Blood Marrow Transplant, doi.org/10.1016/j.bbmt.2018.12.758; Neelapu et al.(2018)Nat Rev Clin Oncology, 15:47; Teachey et al.(2016)Cancer Discov, 6(6):664-679)に基づき得る。
【0209】
マクロファージ活性化症候群(MAS)または血球貪食性リンパ組織球症(HLH)と合致する特徴が、CRSの臨床症状と一致して、CAR-T療法で治療された患者において観察されている(Henter, 2007)。MASは、CRSから生じる免疫活性化に対する反応であるようであり、したがって、CRSの症状発現と見なされるべきである。MASはHLHに類似する(同じく免疫刺激に対する反応である)。MASの臨床症候群は、高悪性度の非寛解熱、3つの系統のうち少なくとも2つに影響を及ぼす血球減少症、および肝脾腫を特徴とする。これは、高い血清フェリチン、可溶性インターロイキン2受容体およびトリグリセリド、ならびに循環ナチュラルキラー(NK)活性の低下に関連する。
【0210】
したがって、本明細書に記載されている治療の方法において使用される場合、本明細書で提供される改変された免疫細胞は、その機能を実行する際に、改変された免疫細胞の能力を増強する。したがって、本明細書で提供される態様は、本明細書に記載されている治療の方法において使用するための改変された免疫細胞の機能を増強するための方法を提供する。
【0211】
一局面では、態様は、その必要がある対象において癌を治療する方法であって、本明細書で提供される改変された免疫細胞または前駆細胞の任意の1つを対象に投与する工程を含む、方法を含む。態様のさらに別の局面は、その必要がある対象において癌を治療する方法であって、本明細書に開示される方法の任意の1つによって作製される改変された免疫細胞または前駆細胞を対象に投与する工程を含む、方法を含む。
【0212】
ある態様では、方法は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞を対象に投与する工程を含み、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、内因性CD5遺伝子は、変異され、破壊され、または本明細書で提供される細胞からその他ノックアウトされている。
【0213】
本明細書に開示される方法の様々な態様では、対象は、当技術分野で公知のまたは本明細書に開示される任意のCARを投与され得る。CARは、当業者に公知の任意の腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異的抗原(TSA)に対して特異的であり得る。
【0214】
ある態様では、CARは、CD5 CARである。ある態様では、CARは、SEQ ID NO:27、28、29、30、31、32、39、40、41、42、43または44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む。ある態様では、CARは、SEQ ID NO:19、25、および37からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ならびに/またはSEQ ID NO:20、26、および38からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合ドメインを含む。ある態様では、CARは、SEQ ID NO:17、18、23、24、35、または36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0215】
ある態様では、対象は、CARを投与され、CARは、SEQ ID NO:1~6の任意の1つによってコードされる核酸配列を含む。ある態様では、CARは、SEQ ID NO:15、16、21、22、33または34からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0216】
C. キメラ抗原受容体
本開示は、内因性CD5が変異しているか、改変されているか、破壊されているか、またはノックアウトされている、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞またはその前駆体、例えば改変されたT細胞のための組成物および方法を提供する。したがって、いくつかの態様では、免疫細胞は、CARを発現するように遺伝子改変されている。CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含むことができる。
【0217】
CARの抗原結合ドメインは、細胞における発現のために、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインなどのCARの別のドメインに機能的に連結され得る。いくつかの態様では、抗原結合ドメインをコードする第1の核酸配列は、膜貫通ドメインをコードする第2の核酸に機能的に連結され、細胞内ドメインをコードする第3の核酸配列にさらに機能的に連結される。
【0218】
本明細書に記載の抗原結合ドメインは、本明細書に記載のもしくは公知の膜貫通ドメインのいずれも、本明細書に記載のもしくは公知の細胞内ドメインもしくは細胞質ドメインのいずれも、またはCAR中に含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれもと組み合わされ得る。CARは、ヒンジドメインも含み得る。CARは、スペーサードメインも含み得る。いくつかの態様では抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインの各々は、リンカーによって分離されている。
【0219】
抗原結合ドメイン
CARの抗原結合ドメインは、タンパク質、炭水化物および糖脂質を含む特定の標的抗原に結合するためのCARの細胞外領域である。いくつかの態様では、CARは、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含む。標的抗原は、標的細胞に関連する任意の種類のタンパク質またはそのエピトープを含み得る。例えば、CARは、限定されないが、固形腫瘍細胞などの標的細胞の特定の疾患状態を示す標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含み得る。
【0220】
いくつかの態様態様では、標的細胞抗原は固形腫瘍抗原、例えばメソテリンであるが、これに限定されない。いくつかの態様では、標的細胞抗原は腫瘍関連抗原(TAA)である。腫瘍関連抗原(TAA)の例としては、分化抗原、例えばMART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2および腫瘍特異的多系列抗原、例えばMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15;過剰発現される胎児性抗原、例えばCEA;過剰発現される癌遺伝子および変異した腫瘍抑制遺伝子、例えばp53、Ras、HER-1、HER-2/neu;染色体の転座から生じる固有の腫瘍抗原;例えば、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR;ならびにウイルス抗原、例えばエプスタイン・バーウイルス抗原EBVAおよびヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7が挙げられるが、これらに限定されない。他の大きなタンパク質ベースの抗原としては、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSが挙げられる。いくつかの態様では、CARの抗原結合ドメインは、CD19、CD20、CD22、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、PSMA、PSCA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、MY-ESO-1 TCR、MAGE A3 TCRなどを含むが、これらに限定されない抗原を標的とする。
【0221】
標的とされる所望の抗原に応じて、CARは、所望の抗原標的に特異的である適切な抗原結合ドメインを含むように操作され得る。例えば、CD5が標的とされるべき所望の抗原である場合、CAR中に組み込むための抗原結合部分として、CD5に対する抗体を使用することができる。
【0222】
いくつかの態様では、標的細胞抗原はCD5である。したがって、いくつかの態様では、CARは、標的細胞上のCD5に対する親和性を有する。任意の標的抗原に対する親和性を有するCARが組成物または方法における使用に適しているので、これは決して限定するものと解釈されるべきではない。
【0223】
本明細書に記載されているように、標的細胞上の特異的な標的抗原に対する親和性を有する本開示のCARは、標的特異的結合ドメインを含み得る。いくつかの態様では、標的特異的結合ドメインはマウス標的特異的結合ドメインであり、例えば、標的特異的結合ドメインはマウス起源のものである。いくつかの態様では、標的特異的結合ドメインはヒト標的特異的結合ドメインであり、例えば、標的特異的結合ドメインはヒト起源のものである。いくつかの態様では、標的細胞上のCD5に対する親和性を有するCARは、CD5結合ドメインを含み得る。
【0224】
いくつかの態様では、CARは、1つまたは複数の標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を有し得る。いくつかの態様では、CARは、1つの標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を有し得る。このような態様において、CARは、二重特異性CARまたは多重特異性CARである。いくつかの態様では、CARは、1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、同一の標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。例えば、同一の標的抗原に対する親和性を有する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含むCARは、標的抗原の異なるエピトープを結合することができる。複数の標的特異的結合ドメインがCAR中に存在する場合、結合ドメインは直列に配置され得、リンカーペプチドによって分離され得る。例えば、2つの標的特異的結合ドメインを含むCARでは、結合ドメインは、オリゴもしくはポリペプチドリンカー、Fcヒンジ領域または膜ヒンジ領域を介して、単一のポリペプチド鎖上で互いに共有結合で接続されている。
【0225】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、抗体、抗原結合断片(Fab)および一本鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される。いくつかの態様では、標的抗原結合ドメインは、標的抗原特異的抗体、標的抗原特異的Fabおよび標的抗原特異的scFvからなる群より選択される。いくつかの態様では、標的抗原結合ドメインは標的抗原特異的抗体である。いくつかの態様では、標的抗原結合ドメインは標的抗原特異的Fabである。いくつかの態様では、標的抗原結合ドメインは、標的抗原特異的scFvである。
【0226】
抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含むことができ、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、およびこれらの任意の断片を含み得る。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン部分は哺乳動物抗体またはその断片を含む。抗原結合ドメインの選択は、標的細胞の表面に存在する抗原の種類および数に依存し得る。
【0227】
本明細書で使用される場合、「一本鎖可変断片」または「scFv」という用語は、VH::VLヘテロ二量体を形成するように共有結合した免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)と可変軽鎖(VL)は、直接連結されるか、またはVHのN末端をVLのC末端と、もしくはVHのC末端をVLのN末端と接続する、ペプチドをコードするリンカーによって連結される。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン(例えば、PSCA結合ドメイン)は、N末端からC末端に向かってVH-リンカー-VLの配置を有するscFvを含む。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、N末端からC末端に向かってVL-リンカー-VHの配置を有するscFvを含む。当業者は、適切な配置を選択することができるであろう。
【0228】
リンカーは、柔軟性のためにグリシンに富むことができ、溶解性のためにセリンまたはトレオニンに富むことができる。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結することができる。リンカーの非限定的な例は、Shen et al.,Anal.Chem.80(6):1910-1917(2008)および国際公開公報第2014/087010号に開示されており、これらの内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
などのグリシンセリン(GS)リンカーを含むがこれらに限定されない様々なリンカー配列が当技術分野で公知であり、nは少なくとも1の整数を表す。例示的なリンカー配列は、限定されないが、
などを含むアミノ酸配列を含むことができる。当業者は、適切なリンカー配列を選択することができるであろう。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは、核酸配列
によってコードされ得るアミノ酸配列
を有するリンカー配列によって分離されている。
【0229】
定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は元の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Huston,et al.(Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879-5883,1988)によって記載されているように、VHおよびVLをコードする配列を含む核酸から発現させることができる。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号および同第4,956,778号、ならびに米国特許出願公開第20050196754号および同第20050196754号も参照のこと。阻害活性を有するアンタゴニストのscFvが記載されている(例えば、Zhao et al.,Hybidoma(Larchmt)2008 27(6):455-51;Peter et al.,J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12;Shieh et al.,J Imunol 2009 183(4):2277-85;Giomarelli et al.,Thromb Haemost 2007 97(6):955-63;Fife eta.,J Clin Invst 2006 116(8):2252-61;Brocks et al.,Immunotechnology 1997 3(3):173-84;Moosmayer et al.,Ther Immunol 1995 2(10:31-40)を参照)。刺激活性を有するアゴニストのscFvが記載されている(例えば、Peter et al.,J Bioi Chem 2003 25278(38):36740-7;Xie et al.,Nat Biotech 1997 15(8):768-71;Ledbetter et al.,Crit Rev Immunol 1997 17(5-6):427-55;Ho et al.,BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照)。
【0230】
本明細書で使用される場合、「Fab」は、抗原に結合するが一価であり、Fc部分を有しない抗体構造の断片を指し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのFab断片および1つのFc断片(例えば、重(H)鎖定常領域;抗原に結合しないFc領域)を生成する。
【0231】
本明細書で使用される場合、「F(ab')2」は、IgG抗体全体のペプシン消化によって生成された抗体断片を指し、この断片は、2つの抗原結合(ab')(二価)領域を有し、各(ab')領域は、2つの別個のアミノ酸鎖、抗原に結合するための、S-S結合によって連結されたH鎖の一部および軽(L)鎖を含み、残りのH鎖部分は一緒に連結されている。「F(ab')2」断片は、2つの個々のFab'断片に分割することができる。
【0232】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される同じ種に由来し得る。例えば、ヒトにおける使用のために、CARの抗原結合ドメインは、ヒト抗体またはその断片を含み得る。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される異なる種に由来し得る。例えば、ヒトにおける使用のために、CARの抗原結合ドメインは、マウス抗体またはその断片を含み得る。
【0233】
ある態様では、CARの抗原結合ドメインは、固形腫瘍抗原を標的とする。いくつかの態様では、CAR中の抗原結合ドメインは、抗固形腫瘍抗原scFVである。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、抗固形腫瘍抗原抗体である。
【0234】
ある態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0235】
ある態様では、改変された細胞は、CD5を結合することができる抗原結合ドメインを含むCARを含み、前記抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:27、28、29、30、31、32、39、40、41、42、43または44のいずれか一つのアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む。
【0236】
ある態様では、CARは、CD5を結合することができる抗原結合ドメインを含み、HCDR1はSEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含み、HCDR2はSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含み、HCDR3はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含み、LCDR1はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含み、LCDR2はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含み、LCDR3はSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含む。
【0237】
ある態様では、CARは、CD5を結合することができる抗原結合ドメインを含み、HCDR1はSEQ ID NO:39のアミノ酸配列を含み、HCDR2はSEQ ID NO:40のアミノ酸配列を含み、HCDR3はSEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含み、LCDR1はSEQ ID NO:42のアミノ酸配列を含み、LCDR2はSEQ ID NO:43のアミノ酸配列を含み、LCDR3はSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含む。
【0238】
ある態様では、CARは、CD5を結合することができる抗原結合ドメインを含み、抗原結合ドメインはSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。ある態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含み、および/または軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む。ある態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含み、および/または軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:38のアミノ酸配列を含む。
【0239】
ある態様では、CARは、CD5を結合することができる抗原結合ドメインを含み、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:17、18、23、24、35、または36のいずれか1つに記載されているアミノ酸配列を含むscFvである。
【0240】
抗原結合ドメイン配列の許容できる変動は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:17~20、23~32または35~44に記載されているアミノ酸配列のいずれかと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0241】
膜貫通ドメイン
CARは、CARの抗原結合ドメインをCARの細胞内ドメインに接続する膜貫通ドメインを含み得る。CARの膜貫通ドメインは、細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆体)の原形質膜にまたがることができる領域である。膜貫通ドメインは、細胞膜、例えば真核細胞膜に挿入するためのものである。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CARの抗原結合ドメインと細胞内ドメインとの間に挟まれる。
【0242】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CAR中のドメインの1つまたは複数と天然に会合している。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、同一のまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避するように選択され得るか、または1つもしくは複数のアミノ酸置換によって改変され得る。
【0243】
膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質、例えばI型膜貫通タンパク質に由来し得る。供給源が合成である場合、膜貫通ドメインは、細胞膜へのCARの挿入を容易にする任意の人工配列、例えば人工疎水性配列であり得る。膜貫通ドメインの例としては、限定されるものではないが、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD154(CD40L)、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8およびTLR9に由来する(すなわち、少なくともその膜貫通領域を含む)膜貫通ドメインが挙げられる。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは合成であってもよく、その場合、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。好ましくは、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。
【0244】
本明細書に記載の膜貫通ドメインは、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれも、本明細書に記載の細胞内ドメインのいずれも、または対象のCAR中に含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれもと組み合わせることができる。
【0245】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインはヒンジ領域をさらに含む。CARは、ヒンジ領域も含み得る。CARのヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する親水性領域である。いくつかの態様では、このドメインは、CARの適切なタンパク質の折り畳みを促進する。ヒンジ領域は、CARの任意の構成要素である。ヒンジ領域は、抗体のFc断片、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工ヒンジ配列またはそれらの組み合わせから選択されるドメインを含み得る。ヒンジ領域の例としては、限定されるものではないが、CD8aヒンジ、3つのグリシン(Gly)ほど小さくてもよいポリペプチドで作製される人工ヒンジ、ならびにIgG(ヒトIgG4など)のCH1およびCH3ドメインが挙げられる。
【0246】
いくつかの態様では、CARは、抗原結合ドメインを、次いで細胞内ドメインに接続する膜貫通ドメインと接続するヒンジ領域を含む。ヒンジ領域は、好ましくは、抗原結合ドメインが標的細胞上の標的抗原を認識して結合するのを支持することができる(例えば、Hudecek et al.,Cancer Immunol.Res.(2015)3(2):125-135を参照)。いくつかの態様では、ヒンジ領域は柔軟なドメインであり、したがって、抗原結合ドメインが、腫瘍細胞などの細胞上の標的抗原の特異的構造および密度を最適に認識する構造を有することを可能にする(Hudecek et al.前出)。ヒンジ領域の柔軟性は、ヒンジ領域が多くの異なる立体構造をとることを可能にする。
【0247】
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、受容体に由来するヒンジ領域ポリペプチド(例えば、CD8由来ヒンジ領域)である。
【0248】
ヒンジ領域は、約4アミノ酸~約50アミノ酸、例えば、約4aa~約10aa、約10aa~約15aa、約15aa~約20aa、約20aa~約25aa、約25aa~約30aa、約30aa~約40aa、または約40aa~約50aaの長さを有することができる。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、5aa超、10aa超、15aa超、20aa超、25aa超、30aa超、35aa超、40aa超、45aa超、50aa超、55aa超、またはそれ以上の長さを有することができる。
【0249】
適切なヒンジ領域は、容易に選択することができ、多数の適切な長さのいずれでもあり得る、例えば1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸、例えば4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸であり得、1、2、3、4、5、6または7アミノ酸であり得る。適切なヒンジ領域は、20アミノ酸超(例えば、30、40、50、60またはそれ以上のアミノ酸)の長さを有することができる。
【0250】
例えば、ヒンジ領域は、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、
を含み、nは、少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当技術分野で公知の他の柔軟なリンカーを含む。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーを使用することができる;GlyおよびSerはいずれも比較的構造化されておらず、したがって構成要素間の中立テザーとして機能することができる。グリシンポリマーを使用することができる;グリシンは、アラニンよりも有意に多くのphi-psi空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限されない(例えば、Scheraga,Rev.Computational.Chem.(1992)2:73-142を参照)。例示的なヒンジ領域は、
などを含むがこれらに限定されないアミノ酸配列を含むことができる。
【0251】
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。免疫グロブリンヒンジ領域アミノ酸配列は当技術分野で公知である;例えば、Tan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87(1):162-166;およびHuck et al.,Nucleic Acids Res.(1986)14(4):1779-1789を参照。非限定的な例として、免疫グロブリンヒンジ領域は、以下のアミノ酸配列:
などのうちの1つを含むことができる。
【0252】
ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のヒンジ領域のアミノ酸配列を含むことができる。一態様では、ヒンジ領域は、野生型(天然に存在する)ヒンジ領域と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換および/または挿入および/または欠失を含むことができる。例えば、ヒトIgG1ヒンジのHis229は、ヒンジ領域が配列
を含むように、Tyrで置換することができ、例えば、Yan et al.,J.Biol.Chem.(2012)287:5891-5897を参照されたい。一態様では、ヒンジ領域は、ヒトCD8に由来するアミノ酸配列、またはその変異体を含むことができる。
【0253】
細胞内シグナル伝達ドメイン
CARは、細胞内シグナル伝達ドメインも含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」および「細胞内ドメイン」という用語は、本明細書では互換的に使用される。CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現される細胞(例えば、免疫細胞)のエフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担う。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞(例えば、免疫細胞)にその特殊な機能、例えば標的細胞の傷害および/または破壊を行うように指示する。
【0254】
細胞内ドメインの例としては、表面受容体の細胞質部分、共刺激分子、および協調して作用してT細胞におけるシグナル伝達を開始する任意の分子、ならびにこれらの要素の任意の誘導体または変異体、および同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0255】
細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、限定されないが、T細胞受容体複合体のζ鎖またはそのホモログのいずれか、例えばη鎖、FcsRIγおよびβ鎖、MB 1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖など、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、ならびにCD2、CD5およびCD28などのT細胞形質導入に関与する他の分子が挙げられる。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有する細胞質受容体およびこれらの組み合わせであり得る。
【0256】
いくつかの態様では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数の共刺激分子の任意の部分、例えばCD2、CD3、CD8、CD27、CD28、ICOS、4-1BB、PD-1からの少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン、それらの任意の誘導体または変異体、同じ機能的能力を有するそれらの任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを含む。
【0257】
細胞内ドメインの他の例としては、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、共通FcRガンマ、FcRベータ(FcイプシロンRIb)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD8、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX9、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、KIRファミリータンパク質、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CDlib、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、本明細書に記載される他の共刺激分子、それらの任意の誘導体、変異体または断片、同じ機能的能力を有する共刺激分子の任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の分子または受容体由来の断片またはドメインが挙げられる。
【0258】
細胞内ドメインのさらなる例としては、限定されないが、CD3、B7ファミリー共刺激分子および腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体を含む第1、第2および第3世代T細胞シグナル伝達タンパク質を含むがこれらに限定されるわけではない、いくつかのタイプの様々な他の免疫シグナル伝達受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが挙げられる(例えば、Park and Brentjens,J.Clin.Oncol.(2015)33(6):651-653を参照)。さらに、細胞内シグナル伝達ドメインは、NK細胞およびNKT細胞によって使用されるシグナル伝達ドメイン(例えば、Hermanson and Kaufman,Front.Immunol.(2015)6:195を参照)、例えば、NKp30(B7-H6)(例えば、Zhang et al.,J.Immunol.(2012)189(5):2290-2299を参照)、およびDAP12(例えば、Topfer et al.,J.Immunol.(2015)194(7):3201-3212を参照)、NKG2D、NKp44、NKp46、DAP10およびCD3zのシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0259】
CARにおける使用に適した細胞内シグナル伝達ドメインには、CARの活性化(すなわち、抗原および二量体化剤によって活性化される)に応答して別個の検出可能なシグナル(例えば、細胞による1つまたは複数のサイトカインの産生の増加;標的遺伝子の転写の変化;タンパク質の活性の変化;細胞挙動の変化、例えば細胞死;細胞増殖;細胞分化;細胞生存;細胞シグナル伝達応答の調節など)を提供する任意の所望のシグナル伝達ドメインが含まれる。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6など)の以下に記載されているようなITAMモチーフを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインはDAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、膜に結合したCARに共有結合しておらず、代わりに細胞質内に拡散している。
【0260】
CARにおける使用に適した細胞内シグナル伝達ドメインには、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドが含まれる。いくつかの態様では、ITAMモチーフは、細胞内シグナル伝達ドメインにおいて2回繰り返され、ITAMモチーフの第1および第2の存在は、6~8個のアミノ酸によって互いに分離されている。一態様では、本CARの細胞内シグナル伝達ドメインは3つのITAMモチーフを含む。
【0261】
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、FcガンマRI、FcガンマRIIA、FcガンマRIIC、FcガンマRIIIA、FcRL5などの、但しこれらに限定されない免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含有するヒト免疫グロブリン受容体のシグナル伝達ドメインを含む(例えば、Gillis et al.,Front.Immunol.(2014)5:254を参照)。
【0262】
適切な細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMモチーフを含有するポリペプチドに由来するITAMモチーフ含有部分であり得る。例えば、適切な細胞内シグナル伝達ドメインは、任意のITAMモチーフ含有タンパク質由来のITAMモチーフ含有ドメインであり得る。したがって、適切な細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来するタンパク質全体の配列全体を含む必要はない。適切なITAMモチーフ含有ポリペプチドの例としては、DAP12、FCER1G(Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖)、CD3D(CD3デルタ)、CD3E(CD3イプシロン)、CD3G(CD3ガンマ)、CD3Z(CD3ゼータ)、およびCD79A(抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0263】
一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP12(TYROBP;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;KARAP;PLOSL;DNAX活性化タンパク質12;KAR関連タンパク質;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質(killer activating receptor associated protein);キラー活性化受容体関連タンパク質などとしても公知)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、FCER1G(FCRG;Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖;Fc受容体ガンマ鎖;fcイプシロンRIガンマ;fcRガンマ;fceRlガンマ;高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ;免疫グロブリンE受容体の高親和性ガンマ鎖などとしても公知)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖(CD3D;CD3-DELTA;T3D;CD3抗原、デルタサブユニット;CD3デルタ;CD3d抗原、デルタポリペプチド(TiT3複合体);OKT3、デルタ鎖;T細胞受容体T3デルタ鎖;T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖などとしても公知)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖(CD3e、T細胞表面抗原T3/Leu-4イプシロン鎖、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖、AI504783、CD3、CD3イプシロン、T3eなどとしても公知)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ガンマ鎖(CD3G、T細胞受容体T3ガンマ鎖、CD3-GAMMA、T3G、ガンマポリペプチド(TiT3複合体)などとしても公知)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖(CD3Z、T細胞受容体T3ゼータ鎖、CD247、CD3-ZETA、CD3H、CD3Q、T3Z、TCRZなどとしても公知)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖;CD79a抗原(免疫グロブリン関連アルファ);MB-1膜糖タンパク質;igアルファ;膜結合免疫グロブリン関連タンパク質;表面IgM関連タンパク質などとしても公知)に由来する。一態様では、本開示のCARにおける使用に適した細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。一態様では、本開示のCARにおける使用に適した細胞内シグナル伝達ドメインは、ZAP70ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、またはCD66dの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、CARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
【0264】
通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分が使用される範囲では、そのような切断された部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用され得る。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断された部分を含む。
【0265】
本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれも、本明細書に記載の膜貫通ドメインのいずれも、またはCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれもと組み合わせることができる。
【0266】
いくつかの態様では、抗CD5 CARは、SEQ ID NO:15、16、21、22、33または34のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。一態様では、抗CD5 CARは、SEQ ID NO:1~6からなる群より選択される核酸配列によってコードされる。
【0267】
CAR配列の許容できる変動は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:15、16、21、22、33または34に記載されているアミノ酸配列のいずれかと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:1~6に記載されている核酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくともまたは99%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0268】
複数の態様は、CAR、CARをコードする核酸、CARをコードする核酸を含むベクター、CARを含む細胞、CARをコードする核酸を含む細胞、CARをコードする核酸を含む細胞およびCARをコードする核酸を含むベクターを含む細胞の任意の1つを含むことができる。
【0269】
D. 遺伝子改変された免疫細胞を生産する方法
本開示は、例えば養子免疫療法のための改変された免疫細胞またはその前駆体(例えば、T細胞)を生産または生成するための方法を提供する。細胞は、一般に、CARをコードする1つもしくは複数の核酸および/または内因性CD5をノックアウトし、変異させ、もしくはその他改変する1つもしくは複数の作用因子(例えば、核酸)を細胞に導入することによって操作される。
【0270】
ある態様では、免疫細胞またはその前駆細胞はT細胞である。ある態様では、T細胞はヒトT細胞である。ある態様では、T細胞は自家T細胞である。
【0271】
いくつかの態様では、CARをコードする核酸分子および/内因性CD5をノックアウトするかまたは変異させる1つまたは複数の核酸は、発現ベクターによって細胞に導入される。CARをコードする核酸配列を含む発現ベクターも本明細書に提供される。適切な発現ベクターとしては、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、操作されたハイブリッドウイルス、Sleeping Beauty、Piggybakなどのトランスポゾン媒介性ベクター、およびPhi31などのインテグラーゼを含むがこれらに限定されない裸のDNAが挙げられる。いくつかの他の適切な発現ベクターとしては、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびレトロウイルス発現ベクターが挙げられる。
【0272】
ある態様では、CARをコードする核酸、および/または内因性CD5をノックアウトするかもしくは変異させる1つもしくは複数の核酸分子は、ウイルス形質導入を介して細胞に導入される。いくつかの態様では、ウイルス形質導入はインビボで行われる。異種の核酸分子を導入するためのインビボ形質導入の例は公知であり、任意のそのような方法を利用することができる。CARをコードする核酸分子および/または内因性CD5をノックアウトするかもしくは変異させる1つもしくは複数の核酸分子を導入するためにインビボ形質導入を使用することができる。
【0273】
ある態様では、ウイルス形質導入は、免疫細胞または前駆細胞を、外因性CARをコードする核酸、および/または内因性CD5をノックアウトする1つもしくは複数の核酸分子を含むウイルスベクターと接触させることを含む。ある態様では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。ある態様では、AAVベクターは、AAV6に由来する5'ITRおよび3'ITRを含む。ある態様では、AAVベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)を含む。ある態様では、AAVベクターは、ポリアデニル化(ポリA)配列を含む。ある態様では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリA配列である。
【0274】
アデノウイルス発現ベクターは、ゲノムDNAへの低い組み込み能を有するものの、宿主細胞をトランスフェクトする高い効率を有するアデノウイルスをベースとする。アデノウイルス発現ベクターは、(a)発現ベクターのパッケージングを支え、(b)宿主細胞においてCARを最終的に発現させるのに十分なアデノウイルス配列を含有する。いくつかの態様では、アデノウイルスゲノムは36kbの直鎖二本鎖DNAであり、発現ベクターを作製するためにアデノウイルスDNAの大きな断片を置換するために、外来DNA配列(例えば、外因性CARをコードする核酸)が挿入され得る(例えば、Danthinne and Imperiale,Gene Therapy(2000)7(20):1707-1714を参照)。
【0275】
別の発現ベクターは、アデノウイルス結合システム(adenovirus coupled system)を利用するアデノ随伴ウイルス(AAV)をベースとする。このAAV発現ベクターは、宿主ゲノムへの組み込みの高い頻度を有する。AAV発現ベクターは、非分裂細胞に感染することができ、したがって、例えば組織培養またはインビボでの哺乳動物細胞への遺伝子の送達に有用となる。AAVベクターは、感染性に関して広い宿主範囲を有する。AAVベクターの生成および使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号および第4,797,368号に記載されている。
【0276】
レトロウイルス発現ベクターは、宿主ゲノムに組み込まれ、大量の外来遺伝物質を送達し、広範囲の種および細胞型に感染し、特別な細胞株にパッケージングされることができる。レトロウイルスベクターは、複製欠損であるウイルスを産生するために、ある特定の位置でウイルスゲノム中に核酸(例えば、CARをコードする核酸)を挿入することによって構築される。レトロウイルスベクターは、多種多様な細胞型に感染することができるが、CARの組み込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする。
【0277】
レンチウイルスベクターは、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて、調節機能または構造機能を有する他の遺伝子を含有する複雑なレトロウイルスであるレンチウイルスに由来する(例えば、米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたい)。レンチウイルスのいくつかの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重に減弱させることによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefは欠失され、ベクターは生物学的に安全になる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、例えばCARをコードする核酸のインビボおよびエクスビボの両方での遺伝子導入および発現のために使用することができる(例えば、米国特許第5,994,136号を参照されたい)。
【0278】
トランスフェクション、形質導入およびエレクトロポレーションなどの、但しこれらに限定されない当業者に公知の任意の方法によって、本開示の核酸を含む発現ベクターを宿主細胞に導入することができる。発現ベクターは、所望であれば、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃、トランスフェクション、リポフェクションなどによって発現ベクターを導入し得る。発現ベクターの導入前に宿主細胞を培養で増殖および拡大させ、その後、ベクターの導入および組み込みのための適切な処理を行い得る。次いで、宿主細胞を拡大させ、ベクター中に存在するマーカーによってスクリーニングし得る。使用され得る様々なマーカーは当技術分野で公知であり、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン耐性などを含み得る。本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」および「細胞培養」という用語は互換的に使用され得る。いくつかの態様では、宿主細胞、免疫細胞またはその前駆体、例えばT細胞、NK細胞、またはNKT細胞。
【0279】
本明細書で提供される態様は、本開示のCARを含み、安定に発現する遺伝子操作された細胞(例えば、変異または破壊されたCD5遺伝子を有する細胞)も提供する。いくつかの態様では、遺伝子操作された細胞は、治療上適切な子孫を生じさせることができる、遺伝子操作されたTリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(TN)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)およびマクロファージである。ある態様では、遺伝子操作された細胞は、自家細胞である。
【0280】
改変された細胞(例えば、CARを含み(発現し)、内因性CD5が破壊および/またはノックアウトされている)は、本開示の核酸を含む発現ベクターで宿主細胞を安定にトランスフェクトすることによって生産され得る。これらはまた、インビボでこのような細胞に感染して改変された細胞をインビボで生産することができるウイルス粒子を投与することによってインビボで生産することができる。異種の核酸分子を導入するためのインビボ形質導入の例は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願第に見出すことができる。本開示の改変された細胞を生成するためのさらなる方法としては、限定されないが、(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソームおよび/またはカチオン性ポリマーを使用する)化学的形質転換方法、非化学的形質転換方法(例えば、エレクトロポレーション、光学的形質転換、遺伝子電気泳動転写および/または流体力学的送達)および/または粒子ベースの方法(例えば、遺伝子銃を用いたインペールフェクション(impalefection)および/またはマグネトフェクション)が挙げられる。本開示のCARを発現するトランスフェクトされた細胞は、改変された細胞の拡大を刺激することができる他の治療薬を投与することによって、エクスビボで拡大され得るか、またはインビボで拡大され得る。
【0281】
発現ベクターを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を生産するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrookら(2001),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New Yorkを参照されたい。発現ベクターを宿主細胞中に導入するための化学的方法としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。
【0282】
使用に適した脂質は、商業的供給元から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma,St.Louis,MOから入手することができ、リン酸ジセチル(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview,NY)から入手することができ、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手することができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)およびその他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL)から入手し得る。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質の保存溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するので、唯一の溶媒として使用され得る。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成された様々な単層および多層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部水性媒体とを有する小胞構造を有するものとして特徴付けることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって隔てられた複数の脂質層を有する。多重膜リポソームは、リン脂質が過剰の水溶液中に懸濁されると自然に形成する。脂質成分は、閉じた構造の形成前に自己再構成を経験し、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を捕捉する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質はミセル構造をとり得、または単に脂質分子の不均一な凝集体として存在し得る。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0283】
いくつかの態様では、宿主細胞に導入される核酸はRNAである。いくつかの態様では、RNAは、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含むmRNAである。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で生成された鋳型を使用したインビトロ転写によって産生され得る。適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用して、PCRによって、任意の供給源からの関心対象のDNAをインビトロmRNA合成のための鋳型に直接変換することができる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列または任意の他の適切なDNA供給源であり得る。
【0284】
その後細胞中に導入されるmRNAのインビトロ転写のための鋳型を作製するために、PCRが使用され得る。PCRを行うための方法は、当技術分野で周知である。PCRにおいて使用するためのプライマーは、PCRのための鋳型として使用されるDNAの領域と実質的に相補的な領域を有するように設計されている。「実質的に相補的」は、本明細書で使用される場合、プライマー配列中の塩基の大部分もしくは全部が相補的であるヌクレオチドの配列を指す。実質的に相補的な配列は、PCRに使用されるアニーリング条件下で、意図するDNA標的とアニーリングまたはハイブリダイズすることができる。プライマーは、DNA鋳型の任意の部分に実質的に相補的であるように設計することができる。例えば、プライマーは、5'および3'UTRを含む、細胞内で通常転写される遺伝子の部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計することができる。プライマーは、関心対象の特定のドメインをコードする遺伝子の一部を増幅するようにも設計され得る。一態様では、プライマーは、5'および3'UTRの全部または一部を含むヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当技術分野で周知の合成方法によって生成される。「フォワードプライマー」は、増幅されるべきDNA配列の上流にあるDNA鋳型上のヌクレオチドに実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含有するプライマーである。「上流」は、本明細書では、コード鎖に対して増幅されるべきDNA配列に対する5の位置を指すために使用される。「リバースプライマー」は、増幅されるべきDNA配列の下流にある二本鎖DNA鋳型に実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含有するプライマーである。「下流」は、本明細書では、コード鎖に対して増幅されるべきDNA配列に対する3'の位置を指すために使用される。
【0285】
RNAの安定性および/または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造も使用され得る。RNAは、好ましくは5'および3'UTRを有する。一態様では、5'UTRは、0~3000ヌクレオチド長である。コード領域に付加される5'および3'UTR配列の長さは、UTRの異なる領域にアニーリングするPCR用のプライマーを設計することを含むがこれに限定されない異なる方法によって変更され得る。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するために必要とされる5'および3'UTRの長さを修正することができる。
【0286】
5'および3'UTRは、関心対象の遺伝子のための天然に存在する内因性の5'および3'UTRであり得る。あるいは、UTR配列をフォワードプライマーおよびリバースプライマーに組み込むことによって、または鋳型の任意の他の修正によって、関心対象の遺伝子に対して内因性ではないUTR配列を付加することができる。関心対象の遺伝子に対して内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を修正するために有用であり得る。例えば、3'UTR配列中のAUに富む要素はmRNAの安定性を減少させ得ることが公知である。したがって、当技術分野で周知のUTRの特性に基づいて、転写されたRNAの安定性を増加させるように、3'UTRを選択するか、または設計することができる。
【0287】
一態様では、5'UTRは、内因性遺伝子のコザック配列を含有することができる。あるいは、関心対象の遺伝子に対して内因性ではない5'UTRが上記のようにPCRによって付加されている場合には、5'UTR配列を付加することによって、コンセンサスコザック配列を再設計することができる。コザック配列は、いくつかのRNA転写物の翻訳効率を増大させることができるが、効率的な翻訳を可能にするためにすべてのRNAに必要であるわけではないようである。多くのmRNAに対するコザック配列の必要性は、当技術分野で公知である。他の態様では、5'UTRは、そのRNAゲノムが細胞内で安定であるRNAウイルスに由来し得る。他の態様では、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げるために、3'または5'UTR中に様々なヌクレオチド類似体を使用することができる。
【0288】
遺伝子クローニングを必要とせずにDNA鋳型からのRNAの合成を可能にするために、転写されるべき配列の上流で、転写のプロモーターをDNA鋳型に付着させるべきである。RNAポリメラーゼのためのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5'末端に付加されると、RNAポリメラーゼプロモーターは転写されるべきオープンリーディングフレームの上流でPCR産物中に組み込まれる。一態様では、プロモーターは、本明細書の他の箇所に記載されているように、T7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターには、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。T7、T3およびSP6プロモーターのためのコンセンサスヌクレオチド配列は、当技術分野で公知である。
【0289】
一態様では、mRNAは、リボソーム結合、翻訳の開始および細胞内でのmRNAの安定性を決定する5'末端のキャップおよび3'ポリ(A)テールの両方を有する。環状DNA鋳型、例えばプラスミドDNAでは、RNAポリメラーゼは、真核細胞中での発現に適していない長いコンカテマー産物を産生する。3'UTRの末端において直鎖化されたプラスミドDNAの転写は、たとえ転写後にポリアデニル化されたとしても真核生物のトランスフェクションにおいて有効ではない正常なサイズのmRNAをもたらす。
【0290】
直鎖状DNA鋳型では、ファージT7 RNAポリメラーゼは、鋳型の最後の塩基を超えて転写物の3'末端を伸長させることができる(Schenborn and Mierendorf,Nuc Acids Res.,13:6223-36(1985);Nacheva and Berzal-Herranz,Eur.J.Biochem.,270:1485-65(2003))。
【0291】
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、100Tテール(サイズは50~5000Tであり得る)などのポリTテールを含有するリバースプライマーを使用することによってPCR中に、またはDNAライゲーションもしくはインビトロ組換えを含むがこれらに限定されない任意の他の方法によるPCR後に作製することができる。ポリ(A)テールも、RNAに安定性を提供し、それらの分解を低減する。一般に、ポリ(A)テールの長さは、転写されたRNAの安定性と正に相関する。一態様では、ポリ(A)テールは、100個~5000個のアデノシンである。
【0292】
RNAのポリ(A)テールは、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリ(A)ポリメラーゼを使用して、インビトロ転写後にさらに伸長させることができる。一態様では、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドに増加させると、RNAの翻訳効率が約2倍増加する。さらに、3'末端への異なる化学基の付着は、mRNA安定性を増加させることができる。このような付着は、改変された/人工のヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含有することができる。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを使用して、ポリ(A)テール中にATP類似体を組み込むことができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに増加させることができる。
【0293】
5'キャップも、RNA分子に安定性を提供する。好ましい態様では、本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、5'キャップを含む。5'キャップは、当技術分野で公知であり、本明細書に記載される技術を使用して提供される(Cougot,et al.,Trends in Biochem.Sci.,29:436-444(2001);Stepinski,et al.,RNA,7:1468-95(2001);Elango,et al.,Biochim.Biophys.Res.Commun.,330:958-966(2005))。
【0294】
いくつかの態様では、インビトロ転写されたRNAのように、RNAは、細胞にエレクトロポレーションされる。細胞の透過性および生存性を促進する因子、例えば、糖、ペプチド、脂質、タンパク質、酸化防止剤および界面活性剤を含有することができる、細胞エレクトロポレーションに適した任意の溶質が含まれ得る。
【0295】
いくつかの態様では、本開示のCARをコードする核酸は、RNA、例えばインビトロ合成されたRNAである。RNAのインビトロ合成のための方法は当技術分野において公知であり、CARをコードする配列を含むRNAを合成するために任意の公知の方法を使用することができる。RNAを宿主細胞に導入するための方法は当技術分野で公知である。例えば、Zhao et al.Cancer Res.(2010)15:9053を参照されたい。CARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞に導入することは、インビトロ、エクスビボまたはインビボで実施することができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)に、CARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
【0296】
開示される方法は、遺伝子改変されたT細胞が標的癌細胞を死滅させる能力の評価を含む、癌、幹細胞、急性および慢性感染症ならびに自己免疫疾患の分野において、基礎研究および治療におけるT細胞活性の調節に適用することができる。
【0297】
本方法はまた、例えばプロモーターまたは入力RNAの量を変化させることによって幅広い範囲にわたって発現のレベルを調節する能力を提供し、発現レベルを個別に制御することを可能にする。さらに、PCRに基づくmRNA産生の技術は、異なる構造およびそれらのドメインの組み合わせを有するmRNAの設計を非常に容易にする。
【0298】
RNAトランスフェクション法は、プラスミドまたはウイルスなどのベクターなしで使用することができる。CARをコードするものなどのRNA導入遺伝子は、追加のウイルス配列を必要とせずに最小の発現カセットとして、細胞活性化後にリンパ球に送達され、その中で発現され得る。RNAのトランスフェクションの効率およびリンパ球集団全体を均一に改変するその能力のために、細胞のクローニングは必要でない場合があり得る。
【0299】
インビトロ転写されたRNA(IVT-RNA)によるT細胞の遺伝子改変は、2つの異なる戦略を利用し、そのいずれもが様々な動物モデルでの試験に成功してきた。細胞は、リポフェクションまたはエレクトロポレーションによって、インビトロ転写されたRNAでトランスフェクトされる。導入されたIVT-RNAの長期発現を達成するために、様々な修飾を用いてIVT-RNAを安定化することが望ましい。
【0300】
インビトロ転写のための鋳型として標準化された様式で利用され、安定化されたRNA転写物が産生されるように遺伝子改変されているいくつかのIVTベクターが文献で公知である。現在、当技術分野で使用されているプロトコルは、以下の構造:RNA転写を可能にする5'RNAポリメラーゼプロモーター、続いて非翻訳領域(UTR)が3'および/または5'のいずれかに隣接する関心対象の遺伝子、および50~70のAヌクレオチドを含有する3'ポリアデニルカセットを有するプラスミドベクターに基づいている。インビトロ転写の前に、環状プラスミドは、II型制限酵素によって、ポリアデニルカセットの下流で直鎖化される(認識配列は、切断部位に対応する)。したがって、ポリアデニルカセットは、転写物中の後のポリ(A)配列に対応する。この手順の結果として、いくつかのヌクレオチドは、直鎖化後に酵素切断部位の一部として残存し、3'末端においてポリ(A)配列を伸長させるか、または遮蔽する。この非生理的オーバーハングが、このような構築物から細胞内で産生されるタンパク質の量に影響を及ぼすかどうかは明らかではない。
【0301】
別の局面では、RNA構築物は、エレクトロポレーションによって細胞に送達される。例えば、米国特許出願公開第2004/0014645号、米国特許出願公開第2005/0052630号、米国特許出願公開第2005/0070841号、米国特許出願公開第2004/0059285号、米国特許出願公開第2004/0092907号に教示されているような、哺乳動物細胞への核酸構築物のエレクトロポレーションの設計および方法論を参照されたい。任意の公知の細胞型のエレクトロポレーションのために必要とされる電界強度を含む様々なパラメータが、関連する研究文献ならびに当分野の多数の特許および出願で公知である。例えば、米国特許第6,678,556号、米国特許第7,171,264号および米国特許第第7,173,116号を参照されたい。エレクトロポレーションの治療的適用のための装置、例えば、MedPulser(商標)DNA Electroporation Therapy System(Inovio/Genetronics,San Diego,Calif.)は市販されており、米国特許第6,567,694号;米国特許第6,516,223号、米国特許第5,993,434号、米国特許第6,181,964号、米国特許第6,241,701号および米国特許第6,233,482号などの特許に記載されており;エレクトロポレーションは、例えば米国特許出願公開第20070128708号に記載されているように、インビトロでの細胞のトランスフェクションのためにも使用され得る。エレクトロポレーションはまた、インビトロで細胞に核酸を送達するために利用され得る。したがって、当業者に公知の多くの利用可能な装置およびエレクトロポレーションシステムのいずれかを利用する、発現構築物を含む核酸の細胞内へのエレクトロポレーション媒介性投与は、関心対象のRNAを標的細胞に送達するための刺激的な新しい手段を提示する。
【0302】
いくつかの態様では、免疫細胞(例えば、T細胞)は、外因性受容体(例えば、CAR)をコードする核酸分子の導入前、導入中および/または導入後にインキュベートまたは培養することができる。いくつかの態様では、細胞(例えば、T細胞)は、外因性受容体をコードするウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター)による細胞の形質導入前、形質導入中または形質導入後など、外因性受容体をコードする核酸分子の導入前、導入中または導入後にインキュベートまたは培養することができる。
【0303】
E. 免疫細胞の供給源
いくつかの態様では、免疫細胞の供給源は、(例えば、エクスビボ操作のために)対象から得られる。細胞操作の供給源には、例えば、自家または同種のドナー血液、臍帯血または骨髄も含まれ得る。例えば、免疫細胞の供給源は、改変された免疫細胞で治療される対象、例えば、対象の血液、対象の臍帯血または対象の骨髄に由来し得る。対象の非限定的な例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびこれらのトランスジェニック種が挙げられる。好ましくは、対象はヒトである。
【0304】
細胞は、限定されるものではないが、本明細書に記載されている方法によるなど、インビボで細胞を形質導入することによっても作製され得る。いくつかの態様では、ウイルス形質導入は、標的化部分をウイルス粒子に組み込むことによって特定の免疫細胞に向けられ得る。
【0305】
免疫細胞は、血液、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯、リンパ、またはリンパ器官を含む多くの供給源から得ることができる。免疫細胞は、自然免疫または適応免疫の細胞などの免疫系の細胞、例えば、骨髄細胞またはリンパ球を含むリンパ系細胞、典型的にはT細胞および/またはNK細胞である。他の例示的な細胞としては、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む万能性および多能性幹細胞などの幹細胞が挙げられる。いくつかの局面では、細胞はヒト細胞である。治療される対象に関して、細胞は同種異系および/または自己由来であり得る。細胞は、典型的には、対象から直接単離されたもの、および/または対象から単離されて凍結されたものなどの初代細胞である。
【0306】
特定の態様では、免疫細胞は、T細胞、例えばCD8+T細胞(例えば、CD8+ナイーブT細胞、セントラルメモリT細胞もしくはエフェクターメモリT細胞)、CD4+T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、制御性T細胞(Treg)、幹細胞メモリT細胞、リンパ球前駆細胞、造血幹細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、または樹状細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、および/または好塩基球である。一態様では、細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞またはiPS細胞に由来する細胞、例えば、対象から作製され、1つまたは複数の標的遺伝子の発現を改変する(例えば、変異を誘導する)または操作するように操作され、例えばT細胞、例えばCD8+T細胞(例えば、CD8+ナイーブT細胞、セントラルメモリT細胞もしくはエフェクターメモリT細胞)、CD4+T細胞、幹細胞メモリT細胞、リンパ球前駆細胞、または造血幹細胞に分化したiPS細胞である。
【0307】
いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えば全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、およびそれらの亜集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化能、拡大、再循環、局在化、および/または持続能力、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、および/または分化の程度によって定義されるものを含む。T細胞ならびに/またはCD4+および/もしくはCD8+T細胞のサブタイプおよび亜集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリT細胞およびそのサブタイプ、例えば幹細胞メモリT(TSCM)細胞、セントラルメモリT(TCM)細胞、エフェクターメモリT(TEM)細胞、または最終分化エフェクターメモリT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、内在性および適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、ならびにデルタ/ガンマT細胞がある。特定の態様では、当技術分野で利用可能な任意の数のT細胞株を使用し得る。
【0308】
いくつかの態様では、エクスビボで実施された場合、方法は、免疫細胞を対象から単離する工程、それらを調製する工程、処理する工程、培養する工程、および/または操作する工程/改変する工程を含む。いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製工程を含む。記載されるような操作する工程/改変する工程のための細胞は、試料、例えば生物学的試料、例えば対象から得られるまたは対象に由来する試料から単離され得る。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有するか、または細胞療法を必要とするか、または細胞療法が投与される対象である。いくつかの態様における対象は、特定の治療的介入、例えばそのために細胞が単離され、処理され、および/または操作される養子細胞療法などを必要とする、ヒトである。したがって、いくつかの態様における細胞は初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料は、組織、体液、および対象から直接採取された他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理工程から生じる試料を含む。生物学的試料は、生物源から直接得られた試料または処理された試料であり得る。生物学的試料には、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織および器官試料に由来する処理された試料を含む組織および器官試料が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0309】
いくつかの局面では、細胞が由来するまたは単離される試料は、血液もしくは血液由来の試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシスの産物であるかもしくはそれに由来する。例示的な試料としては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞が挙げられる。試料は、細胞療法、例えば養子細胞療法の状況において、自己由来および同種異系供給源由来の試料を含む。
【0310】
いくつかの態様では、細胞は細胞株、例えばT細胞株に由来する。いくつかの態様における細胞は、異種供給源から、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長動物およびブタから得られる。いくつかの態様では、細胞の単離は、1つまたは複数の調製および/または非親和性ベースの細胞分離工程を含む。いくつかの例では、細胞は、例えば望ましくない成分を除去する、所望の成分を濃縮する、特定の試薬に感受性の細胞を溶解または除去するために、洗浄され、遠心分離され、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされる。いくつかの例では、細胞は、密度、接着特性、サイズ、感受性および/または特定の成分に対する耐性などの1つまたは複数の特性に基づいて分離される。
【0311】
いくつかの例では、対象の循環血液由来の細胞は、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、いくつかの局面では、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含み、いくつかの局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含む。いくつかの態様では、対象から収集された血液細胞は、例えば、血漿画分を除去し、その後の処理工程のために細胞を適切な緩衝液または培地に入れるために洗浄される。いくつかの態様では、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの局面では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って接線流濾過(TFF)によって達成される。いくつかの態様では、細胞は、洗浄後に様々な生体適合性緩衝液に再懸濁される。特定の態様では、血液細胞試料の成分は除去され、細胞は直接培養培地に再懸濁される。いくつかの態様では、方法は、赤血球を溶解することによる末梢血からの白血球の調製およびPercollまたはFicoll勾配による遠心分離などの密度に基づく細胞分離方法を含む。
【0312】
一態様では、個体の循環血液から得られる免疫細胞は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む。アフェレーシスによって収集された細胞は、血漿画分を除去し、細胞を適切な緩衝液または培地、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れるために洗浄されてもよく、またはその後の処理工程のために、洗浄溶液はカルシウムを欠き、マグネシウムを欠くかもしくは全てではないにせよ多くの二価カチオンを欠いてもよい。洗浄後、細胞は、例えばCa不含、Mg不含PBSなどの様々な生体適合性緩衝液に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地に直接再懸濁してもよい。
【0313】
いくつかの態様では、単離方法は、表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸などの1つまたは複数の特定の分子の細胞における発現または存在に基づく異なる細胞型の分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法を使用し得る。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの局面における単離は、例えば、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーションによる、そのようなマーカーの細胞での発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離、続いて一般に、洗浄工程および抗体または結合パートナーに結合した細胞の、抗体または結合パートナーに結合しなかった細胞からの分離を含む。
【0314】
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞がさらなる使用のために保持される陽性選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合しなかった細胞が保持される陰性選択に基づき得る。いくつかの例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの局面では、陰性選択は、不均一な集団において細胞型を特異的に特定する抗体が利用可能でない場合に特に有用であり得、そのため分離は、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて最良に行われる。分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現する細胞の100%の濃縮または除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現する細胞などの特定の種類の細胞の陽性選択または濃縮は、そのような細胞の数または割合を増加させることを指すが、マーカーを発現しない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現する細胞などの特定の種類の細胞の陰性選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数または割合を減少させることを指すが、全てのそのような細胞の完全な除去をもたらす必要はない。
【0315】
いくつかの例では、1回の工程から陽性または陰性選択された画分が、その後の陽性または陰性選択などの別の分離工程に供される、複数回の分離工程が実施される。いくつかの例では、それぞれが陰性選択の標的となるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることなどによって、複数のマーカーを同時に発現する細胞を単一の分離工程で枯渇させることができる。同様に、様々な細胞型上に発現された複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型を同時に陽性選択することができる。
【0316】
いくつかの態様では、T細胞集団の1つまたは複数は、表面マーカーなどの1つもしくは複数の特定のマーカーについて陽性であるか(マーカー+)もしくは高レベルを発現する(マーカーhlgh)細胞、または1つもしくは複数のマーカーについて陰性であるか(マーカー-)もしくは比較的低レベルを発現する(マーカーlow)細胞が、濃縮されているかまたは枯渇している。例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定の亜集団、例えば1つまたは複数の表面マーカーに陽性またはその高レベルを発現する細胞、例えばCD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+T細胞は、陽性または陰性選択技術によって単離される。いくつかの場合、そのようなマーカーは、T細胞の特定の集団(非メモリ細胞など)には存在しないかまたは比較的低レベルで発現されるが、T細胞の特定の他の集団(メモリ細胞など)には存在するかまたは比較的高レベルで発現されるマーカーである。一態様では、細胞(CD8+細胞またはT細胞など、例えば、CD3+細胞)は、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127および/もしくはCD62Lに陽性であるかもしくはそれらの高い表面レベルを発現している細胞が濃縮されており(すなわち、陽性選択される)、ならびに/またはCD45RAに陽性であるかもしくはCD45RAの高い表面レベルを発現する細胞が枯渇している(例えば、陰性選択される)。いくつかの態様では、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27、および/またはIL7-Ra(CD127)に陽性またはそれらの高い表面レベルを発現する細胞が濃縮されているかまたは枯渇している。いくつかの例では、CD8+T細胞は、CD45ROに陽性(またはCD45RAに陰性)かつCD62Lに陽性の細胞が濃縮されている。例えば、CD3+、CD28+T細胞は、CD3/CD28結合磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を使用して陽性選択することができる。
【0317】
いくつかの態様では、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球などの非T細胞上に発現されるマーカー、例えばCD14の陰性選択によってPBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4+またはCD8+選択工程を使用して、CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離する。そのようなCD4+およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブT細胞、メモリT細胞、および/またはエフェクターT細胞亜集団上に発現されるかまたは比較的高い程度に発現されるマーカーについての陽性選択または陰性選択によって、亜集団にさらに分類することができる。いくつかの態様では、CD8+細胞は、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく陽性選択または陰性選択などによって、ナイーブ、セントラルメモリ、エフェクターメモリ、および/またはセントラルメモリ幹細胞がさらに濃縮または枯渇される。いくつかの態様では、セントラルメモリT(TCM)細胞の濃縮は、有効性を高めるため、例えば長期生存、拡大、および/または投与後の生着を改善するために行われ、これは、いくつかの局面では、そのような亜集団において特に堅固である。いくつかの態様では、TCMが濃縮されたCD8+T細胞とCD4+T細胞とを組み合わせることは、有効性をさらに増強する。
【0318】
いくつかの態様では、メモリT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体などを使用して、CD62L-CD8+および/またはCD62L+CD8+画分を濃縮または枯渇させることができる。いくつかの態様では、CD4+T細胞集団およびCD8+T細胞亜集団、例えばセントラルメモリ(TCM)細胞が濃縮された亜集団。いくつかの態様では、セントラルメモリT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127の陽性または高い表面発現に基づく: いくつかの局面では、これは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するかまたは高発現する細胞の陰性選択に基づく。いくつかの局面では、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇、およびCD62Lを発現する細胞の陽性選択または濃縮によって行われる。一局面では、セントラルメモリT(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性画分から出発し、これをCD14およびCD45RAの発現に基づく陰性選択、ならびにCD62Lに基づく陽性選択に供して行われる。いくつかの局面ではそのような選択は同時に行われ、他の局面ではいずれかの順序で連続的に行われる。いくつかの局面では、CD8+細胞集団または亜集団を調製するのに使用されるのと同じCD4発現に基づく選択工程は、CD4+細胞集団または亜集団を生成するためにも使用され、その結果、CD4に基づく分離からの陽性および陰性画分の両方が保持され、任意で1つまたは複数のさらなる陽性または陰性選択工程後に、方法のその後の工程で使用される。
【0319】
CD4+Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリ細胞、およびエフェクター細胞に選別される。CD4+リンパ球は、標準的な方法によって得ることができる。いくつかの態様では、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+T細胞である。いくつかの態様では、セントラルメモリCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様では、エフェクターCD4+細胞はCD62L-およびCD45ROである。一例では、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CDl lb、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、陽性および/または陰性選択のための細胞の分離を可能にするために、磁気ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合される。
【0320】
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作/改変の前にまたは遺伝子操作と組み合わせてインキュベートおよび/または培養される。インキュベーション工程は、培養、刺激、活性化、および/または増殖を含み得る。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激剤の存在下でインキュベートされる。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、拡大、活性化および/もしくは生存を誘導するように、抗原曝露を模倣するように、ならびに/または組換え抗原受容体の導入などの遺伝子操作のために細胞をプライミングするように設計されたものが含まれる。条件は、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオンおよび/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された任意の他の作用物質の1つまたは複数を含み得る。いくつかの態様では、刺激条件または刺激剤は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの局面では、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを作動させるかまたは開始させる。そのような作用物質には、例えばビーズなどの固体支持体に結合した、TCR成分および/もしくは共刺激受容体に特異的なものなどの抗体、例えば抗CD3、抗CD28、ならびに/または1つもしくは複数のサイトカインが含まれ得る。任意で、拡大方法は、抗CD3および/または抗CD28抗体を培地に添加する(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)工程をさらに含み得る。いくつかの態様では、刺激剤は、IL-2および/またはIL-15、例えば少なくとも約10単位/mLのIL-2濃度を含む。特定の態様では、改変された細胞は、いかなる刺激剤もなしで拡大される。特定の態様では、改変された細胞は、インビボで拡大される。
【0321】
別の態様では、T細胞は、例えばPERCOLL(商標)勾配による遠心分離によって、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって末梢血から単離される。あるいは、T細胞は臍帯から単離することができる。いずれにせよ、T細胞の特定の亜集団は、陽性または陰性選択技術によってさらに単離することができる。
【0322】
そのように単離された臍帯血単核細胞は、CD34、CD8、CD14、CD19およびCD56を含むがこれらに限定されるわけではない、特定の抗原を発現する細胞を枯渇させることができる。これらの細胞の枯渇は、単離された抗体、腹水などの抗体を含有する生物学的試料、物理的支持体に結合した抗体、および細胞に結合した抗体を使用して達成することができる。
【0323】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択された細胞に固有の表面マーカーに対する抗体の組合せを使用して達成することができる。好ましい方法は、陰性選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する、陰性磁気免疫接着またはフローサイトメトリによる細胞選別および/または選択である。例えば、陰性選択によってCD4細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。
【0324】
陽性または陰性選択による細胞の所望の集団の単離のために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。特定の態様では、細胞とビーズの最大接触を確実にするために、ビーズと細胞が一緒に混合される体積を有意に減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一態様では、20億個の細胞/mlの濃度が使用される。一態様では、10億個の細胞/mlの濃度が使用される。さらなる態様では、1億個の細胞/ml超が使用される。さらなる態様では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万または5000万個の細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらに別の態様では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万または1億個の細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様では、1億2500万または1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用され得る。高濃度の使用は、細胞収量の増加、細胞活性化、および細胞拡大をもたらすことができる。
【0325】
洗浄工程後にT細胞を凍結することもでき、これは単球除去工程を必要としない。理論に拘束されることを望むものではないが、凍結およびその後の解凍工程は、細胞集団中の顆粒球およびある程度単球を除去することによってより均一な生成物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄工程の後、細胞を凍結溶液に懸濁し得る。多くの凍結溶液およびパラメータが当技術分野で公知であり、これに関連して有用であるが、非限定的な例では、1つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または他の適切な細胞凍結培地を使用することを含む。次いで、細胞を毎分1℃の速度で-80℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相中で保存する。制御された凍結の他の方法、ならびに-20℃または液体窒素中での即時の制御されない凍結を使用してもよい。
【0326】
一態様では、T細胞の集団は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、T細胞の精製集団、およびT細胞株などの細胞内に含まれる。別の態様では、末梢血単核細胞はT細胞の集団を含む。さらに別の態様では、精製T細胞はT細胞の集団を含む。
【0327】
特定の態様では、制御性T細胞(Treg)を試料から単離することができる。試料には、臍帯血または末梢血が含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。特定の態様では、Tregはフローサイトメトリ選別によって単離される。試料は、当技術分野で公知の任意の手段によって、単離の前にTregについて濃縮することができる。単離されたTregは、凍結保存する、および/または使用前に拡大させることができる。Tregを単離するための方法は、米国特許第7,754,482号、同第8,722,400号および同第9,555,105号、ならびに米国特許出願第13/639,927号に記載されており、その内容はその全体が本明細書に組み入れられる。
【0328】
F. T細胞の拡大
特定の態様では、本明細書で提供される改変されたT細胞は、約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍、またはそれ以上、およびそれらの間のありとあらゆる全整数または部分整数に増加させることができる。いくつかの態様態様では、改変されたT細胞は、約20倍~約50倍の範囲で拡大する。
【0329】
培養後、T細胞を、細胞を別の培養装置に送る前の最適な継代のために、一定期間、または細胞がコンフルエントもしくは高細胞密度に達するまで、培養装置内の細胞培地中でインキュベートすることができる。培養装置は、インビトロで細胞を培養するために一般的に使用される任意の培養装置であり得る。好ましくは、細胞を別の培養装置に送る前に、コンフルエンスのレベルは70%またはそれ以上である。より好ましくは、コンフルエンスのレベルは90%またはそれ以上である。期間は、インビトロでの細胞の培養に適した任意の時間であり得る。T細胞培地は、T細胞の培養中にいつでも交換され得る。好ましくは、T細胞培地は、約2~3日ごとに交換される。次いで、T細胞を培養装置から回収し、その後T細胞を直ちに使用するかまたは後で使用するために凍結保存して貯蔵することができる。いくつかの態様では、細胞は凍結保存されているか、または拡大させた細胞は凍結保存されている。凍結保存されたT細胞は、T細胞に核酸を導入する前に解凍される。
【0330】
別の態様では、本方法は、T細胞を単離する工程およびT細胞を拡大させる工程を含む。別の態様では、本方法は、拡大の前にT細胞を凍結保存する工程をさらに含む。さらに別の態様では、凍結保存されたT細胞は、キメラ膜タンパク質をコードするRNAによるエレクトロポレーションのために解凍される。これらの導入は、CD5遺伝子を変異させるか、さもなければ破壊するために細胞を改変する前または後に行われてもよい。
【0331】
エクスビボ拡大細胞のための別の手法は、米国特許第5,199,942号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。米国特許第5,199,942号に記載されているような拡大は、本明細書に記載の他の拡大方法の代替または追加であり得る。簡単に述べると、T細胞のエクスビボ培養および拡大は、米国特許第5,199,942号に記載されているような細胞増殖因子、またはflt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドなどの他の因子への添加を含む。一態様では、T細胞を拡大させることは、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドからなる群より選択される因子と共にT細胞を培養する工程を含む。
【0332】
本明細書に記載の培養工程(本明細書に記載の剤との接触またはエレクトロポレーション後)は非常に短くてよく、例えば24時間未満、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23時間であり得る。本明細書にさらに記載される培養工程(本明細書に記載の剤との接触)はより長くてもよく、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日間またはそれ以上の日数であり得る。
【0333】
培養中の細胞を説明するために様々な用語が使用される。細胞培養物とは、一般に、生きている生物から採取され、制御された条件下で増殖させた細胞を指す。初代細胞培養物は、生物から直接かつ最初の継代培養の前に採取された細胞、組織または器官の培養物である。細胞は、細胞の増殖および/または分裂を促進する条件下で増殖培地に入れたときに培養下で拡大され、細胞のより大きな集団をもたらす。細胞を培養下で拡大させる場合、細胞増殖の速度は、典型的には、別名倍加時間として公知の、細胞が数を2倍にするのに必要な時間の量によって測定される。
【0334】
継代培養の各回は、継代と呼ばれる。細胞が継代培養されるとき、それらは継代されたと称される。特定の細胞集団または細胞株は、それが継代された回数によって呼ばれるかまたは特徴付けられることがある。例えば、10回継代された培養細胞集団は、P10培養物と呼ばれ得る。初代培養物、すなわち組織から細胞を単離した後の最初の培養物はP0と指定される。最初の継代培養の後、細胞は二次培養物(P1または継代1)と表される。2回目の継代培養後、細胞は三次培養物(P2または継代2)になり、以下同様である。継代の期間中に多くの集団倍加が存在し得ることが当業者に理解されるであろう; したがって、培養物の集団倍加の数は継代数より大きい。継代間の期間中の細胞の拡大(すなわち、集団倍加の数)は、播種密度、基質、培地、および継代間の時間を含むがこれらに限定されるわけではない、多くの因子に依存する。
【0335】
一態様では、細胞は、数時間(約3時間)~約14日間またはその間の任意の時間単位の整数値にわたって培養され得る。T細胞培養に適切な条件には、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト胎児血清)、インターロイキン2(IL-2)、インスリン、IFN-ガンマ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGF-ベータおよびTNF-αまたは当業者に公知の細胞増殖のための任意の他の添加剤を含む、増殖および生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX-vivo 15(Lonza))が含まれる。細胞の増殖のための他の添加剤には、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。培地には、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerが含まれ得、これらには、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加されており、無血清であるか、または適切な量の血清(もしくは血漿)もしくはホルモンの定義されたセット、および/もしくはT細胞の増殖および拡大に十分な量のサイトカインが補充されている。抗生物質、例えばペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、増殖を支援するのに必要な条件下で、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO2)で維持される。
【0336】
T細胞を培養するために使用される培地は、T細胞を共刺激することができる作用物質を含み得る。例えば、CD3を刺激することができる作用物質はCD3に対する抗体であり、CD28を刺激することができる作用物質はCD28に対する抗体である。これは、本明細書に開示されるデータで実証されるように、本明細書に開示される方法によって単離された細胞は、約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍、またはそれ以上拡大することができるためである。一態様では、T細胞は、エレクトロポレーションされた集団を培養することにより、約20倍~約50倍、またはそれ以上の範囲で拡大する。
【0337】
一態様では、T細胞を拡大させる方法は、さらなる用途のために拡大させたT細胞を単離する工程をさらに含み得る。別の態様では、拡大させる方法は、拡大させたT細胞のその後のエレクトロポレーションとそれに続く培養とをさらに含み得る。その後のエレクトロポレーションは、拡大したT細胞を形質導入する工程、拡大したT細胞をトランスフェクトする工程、または拡大したT細胞に核酸をエレクトロポレーションする工程などの、T細胞の拡大した集団に作用物質をコードする核酸を導入する工程を含み得、作用物質はT細胞をさらに刺激する。作用物質は、さらなる拡大、エフェクター機能、または別のT細胞機能を刺激することなどによって、T細胞を刺激し得る。
【0338】
G. 薬学的組成物および製剤
免疫細胞(例えば、CD5が破壊されたかつ/またはノックアウトされたCAR T細胞)の集団、およびそのような細胞を含有するかつ/またはそのような細胞が濃縮された組成物も、本明細書で提供される。組成物の中には、養子細胞療法のためなどの、投与のための薬学的組成物および製剤がある。細胞および組成物を対象、例えば患者に投与するための治療方法も提供される。
【0339】
薬学的組成物および製剤を含む、投与のための細胞を含有する組成物、例えば所与の用量またはその画分で投与するための細胞数を含む単位用量形態の組成物も提供される。薬学的組成物および製剤は、一般に、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1つのさらなる治療薬を含む。
【0340】
「薬学的製剤」または「薬学的組成物」という用語は、その中に含有される活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、かつ、製剤が投与される対象に対して許容できないほどに毒性であるさらなる成分を含有しない、調製物を指す。「薬学的に許容される担体」は、対象に対して非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を示す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの局面では、担体の選択は、一部には、特定の細胞によっておよび/または投与方法によって決定される。したがって、様々な適切な製剤が存在する。例えば、薬学的組成物は防腐剤を含み得る。適切な防腐剤には、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが含まれ得る。いくつかの局面では、2つまたはそれ以上の防腐剤の混合物が使用される。防腐剤またはその混合物は、典型的には、全組成物の約0.0001重量%~約2重量%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A.Ed.(1980)によって記載されている。薬学的に許容される担体は、一般に、使用される投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、以下のものを含むが、これらに限定されるわけではない: リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤; アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤; 防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールなど); 低分子量(約10残基未満)ポリペプチド; 血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質; ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー; グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸; 単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物; EDTAなどのキレート剤; スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類; ナトリウムなどの塩形成対イオン; 金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体); ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤。
【0341】
いくつかの局面では、緩衝剤が組成物に含まれる。適切な緩衝剤には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩が含まれる。いくつかの局面では、2つまたはそれ以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は、典型的には、全組成物の約0.001重量%~約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams&Wilkins; 21st ed.(May 1, 2005)により詳細に記載されている。
【0342】
製剤は水溶液を含み得る。製剤または組成物はまた、それぞれの活性が互いに悪影響を及ぼさない場合、細胞で治療される特定の適応症、疾患、または状態に有用な複数の活性成分、好ましくは細胞に相補的な活性を有するものを含有し得る。そのような活性成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な剤または薬物、例えば化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、および/またはビンクリスチンをさらに含む。いくつかの態様における薬学的組成物は、治療有効量または予防有効量などの、疾患または状態を治療または予防するのに有効な量で細胞を含有する。いくつかの態様における治療有効性または予防有効性は、治療対象の定期的な評価によって観測される。所望の投与量は、細胞の単回ボーラス投与によって、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の持続注入投与によって送達することができる。
【0343】
製剤には、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、口腔内投与、舌下投与、または坐剤投与用のものが含まれる。いくつかの態様では、薬学的組成物は非経口投与される。本明細書で使用される「非経口」という用語は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、膣投与、および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、細胞は、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射による末梢全身送達を用いて対象に投与される。いくつかの態様における組成物は、いくつかの局面では選択されたpHに緩衝され得る、滅菌液体調製物、例えば、等張水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液、または粘性組成物として提供される。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射によって投与するのに幾分より便利である。他方で、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供するために適切な粘度範囲内に製剤化することができる。液体または粘性組成物は担体を含むことができ、担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。
【0344】
滅菌注射液は、細胞またはウイルス粒子を溶媒中に、例えば適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどと混合して組み込むことによって調製することができる。組成物は、所望の投与経路および調製物に応じて、湿潤剤、分散剤もしくは乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化もしくは増粘添加剤、防腐剤、香味剤および/または着色剤などの補助物質を含有し得る。いくつかの局面では、標準的なテキストを参考にして適切な調製物を調製し得る。
【0345】
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性および無菌性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって確実にすることができる。注射用薬学的形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0346】
インビボ投与に使用される製剤は、一般に無菌である。無菌性は、例えば滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成され得る。
【0347】
論文、特許、および特許出願、ならびに本明細書で言及または引用される全ての他の文書および電子的に利用可能な情報の内容は、あたかも各個々の刊行物が具体的かつ個別に参照により組み入れられることが示されているのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。出願人は、そのような論文、特許、特許出願、または他の物理的および電子的文書からのありとあらゆる資料および情報を本出願に物理的に組み込む権利を留保する。
【0348】
本明細書は様々な態様を説明するが、本態様の真の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更を行い得、等価物を置き換え得ることが当業者に理解されるべきである。本明細書に開示される態様の範囲から逸脱することなく、適切な等価物を使用して、本明細書に記載される組成物および方法の他の適切な変更および適合を行い得ることは、当業者には容易に明らかであろう。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程または工程を本明細書で提供される態様の目的、精神および範囲に適合させるために、多くの変更を行い得る。そのような変更は全て、本明細書に提供される態様および添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。ここで特定の態様を詳細に説明してきたが、これは、例示のみを目的として含まれ、限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによってより明確に理解されるであろう。
【実施例
【0349】
実験例
ここで、本態様を以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されており、本態様はこれらの実施例に限定されず、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかな全ての変形を包含する。
【0350】
ここで、これらの実験で使用される材料および方法を記載する。
【0351】
CD5を標的とするように低分子ガイドRNA(sgRNA)を設計し、GeneArt Precision sgRNA合成キットを使用して合成した。1つのsgRNAは、配列
を含んだ。Cas9発現プラスミド(pGEM-Cas9)を増幅し、直鎖化した。mMessage mMachine T7 Ultraキットを使用してCas9 RNAを合成した。CRISPR編集をJurkat細胞において行った:エレクトロポレーションによってCD5 sgRNAおよびCas9をJurkat細胞にトランスフェクトした。Jurkat細胞上でのCD5の発現をフローサイトメトリーによって検出し、最も有効なCD5 sgRNAを決定した。次いで、最も効率的なCD5 sgRNAを使用して初代ヒトT細胞においてCRISPR編集を行った:選択されたsgRNAおよびCas9 RNAを初代ヒトT細胞にエレクトロポレーションした。フローサイトメトリーによってCD5発現を初代ヒトT細胞上で検出して、ノックアウト/編集効率を検証した。
【0352】
具体的には、新鮮なCD4/CD8 T細胞を得て、0日目にdynabeadsとともにインキュベートした。4日目に、細胞からビーズを除去し、次いで、Cas9およびsgRNAをエレクトロポレーションした。馴化培地(TCM(X-vivo15、ヒト血清5%、グルタミン)、IL-7 10ng/mlおよびIL-15 10ng/ml)を細胞に添加した。6日目に、細胞にCARレンチウイルスを形質導入した。9日目に、CAR発現を評価した。0.8e6/mlまで細胞に栄養を供給し、容量が300fl未満になったら凍結した。
【0353】
CAR構築物:レンチウイルスpTRPE 4-1BB CD3ゼータ骨格を使用して、すべての構築物を生成した。CD5 CARは、参照によりその内容の全体が本明細書に組み入れられる国際公開公報第2010/022737号に公開されている抗体配列からのscFvを使用して構築された。
【0354】
ここで実験の結果を説明する。
【0355】
実施例1:
固形癌異種移植モデルにおいて、CD5 KO CAR T細胞の有効性を試験した。NOD SCIDガンマ鎖-/-(NSG)マウスに、ルシフェラーゼを予め形質導入された膵臓癌細胞株ASPC1を移植した。Matrigelとともに癌細胞を皮下注射した。ノギスおよび生物発光によって腫瘍を測定した。14日目に、対照非形質導入T細胞(UTD)、CD5ノックアウト(KO)UTD、疑似対照抗メソテリンCAR T細胞またはCD5 KO CAR T細胞を受けるために、腫瘍量に基づいてマウスを無作為に割り振った。ノギスおよび発光によって腫瘍量を経時的に測定した。ノギス測定は、両方の群における完全寛解を示したが、CD5 KO CAR Tのみが長期にわたって寛解を維持した一方で、対照CAR Tは約3ヶ月で再発した(図1A)。生物発光による腫瘍量は、疑似対照CAR TまたはUTDと比較して、CD5 KO CAR Tによる早期かつ深い腫瘍クリアランスを示した(図1B)。フローサイトメトリーを使用して、T細胞の末梢血におけるインビボ拡大をすべての群において測定した(図1C)。興味深いことに、CD5 KO CAR Tは、疑似対照CAR Tと比較してより高い拡大を示した。これらの結果は、CD5ノックアウトが、固形癌(膵臓癌)の前臨床モデルにおいて固形癌を制御するCAR Tの能力を増強することを実証した。CAR T細胞の増強された増殖は、この長期の抗腫瘍効果に関連していた。
【0356】
実施例2:
CD5ノックアウトは、キメラ抗原受容体T細胞の抗腫瘍活性を増強した。
【0357】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR T)は、再発性または難治性のB細胞(r/r)急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫において前例のない臨床応答をもたらしてきた。現在、1つを除くすべてのFDA承認CAR T細胞療法は、B細胞表面タンパク質であるCD19を標的とする。抗CD19 CAR(CAR19)T(CART19)細胞療法は、再発性および難治性B細胞悪性腫瘍を有する患者のための標準的なアプローチとして登場しているが、応答しないかまたは最終的に再発するかなりの割合の患者が依然として存在する。CAR T療法は、T細胞リンパ腫(TCL)、T細胞白血病(T-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)を含む血液悪性腫瘍においては有効であることが未だ証明されておらず、固形癌(T-NHL)では有効であることはさらに証明されていない。さらに、CAR T療法は、圧倒的な免疫抑制性腫瘍微小環境の影響のために、固形癌において未だ満足のいく結果を提供していない。したがって、当技術分野では、現在利用可能なCAR T生成物を増強することが必要とされており、当技術分野では、さらなる新生物を首尾よく治療するための次世代CAR T療法を開発することも必要とされている。
【0358】
この目標のために、本明細書では、システインに富むスカベンジャー受容体CD5を研究した。実際、CD5はほとんどのT細胞で発現されており、悪性細胞および正常T細胞におけるその二重の役割のために、CAR T免疫療法のための魅力的な標的と考えられている。悪性細胞では、CD5は、T-NHL細胞の約90%ならびに実質的にすべての慢性リンパ性およびマントル細胞リンパ腫細胞によって発現されるので、理想的な標的である。他方、CD5は正常T細胞の表面にも高度に発現されており、SHP-1、CBLおよびCBL-Bなどのいくつかの調節因子を介したT細胞受容体(TCR)媒介性活性化に対する阻害分子として機能する。実際、抗CD5 CAR(CAR5)T細胞産物(CART5)の生成は、T細胞の表面上でのCAR5およびCD5の同時発現をもたらし、理論的には、製造中に、形質導入された細胞のシス結合、その後の疲弊および最終的なフラトリサイドによる死滅をもたらすであろう。したがって、仮説は、操作されたT細胞におけるCD5の遺伝子欠失はCAR T細胞エフェクター機能を増強し、フラトリサイド相互作用を回避することができるというものであった。
【0359】
本明細書に記載されているように、(変異(ノックアウト、「KO」)させるために、CRISPR-Cas9を利用することなどによって)変異したCD5遺伝子を有するCAR T細胞が、CAR媒介活性化および増殖の増強によって、固形腫瘍におけるCAR T細胞の抗腫瘍活性を増強することが驚くべきことに見出された。CD5 KO CAR-Tは、メソテリン+膵管腺癌(PDAC)などの固形腫瘍に対するCAR T細胞の抗腫瘍有効性を増強した。
【0360】
結果
CD5の遺伝子欠失は、より機能的に活性なCART5産物を産生した:最初に、CD5のエクソン1を標的とする短いガイドRNAを設計し、最適化した。CD5 KO CART5細胞を作製するために、高度に効率的なCAR T製造プロトコルが開発された(図2A)。CD5を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)は、CRISPR-Cas9を使用して、正常T細胞においてCD5を欠失させた(図3A;表1)。再現性のある効率的な配列が特定された(フローサイトメトリーおよびウエスタンブロットにより>90% KO)(図3B)。iGUIDE配列決定および分析として公知であるimproved Genome-wide,Unbiased Identifications of Double Stranded Breaks Enabled by Sequencing(配列決定によって可能となる、二重鎖切断の、改善されたゲノム全体での、偏りのない特定)により、2人の別個のドナー内のこの配列を使用したときに、高いオンターゲット切断が確認され、懸念されるオフターゲット切断部位は検出されなかった(図3C)。TrueCut Cas9またはSpyFi Cas9による上位5つのオフターゲット遺伝子には、CALCP、C20orf85、INPP4B、XPO7およびSLC10A7が含まれていた。バルクRNA配列決定分析データ(免疫細胞発現、発現定量的形質遺伝子座およびエピゲノミクスのデータベース;DICE;https://dice-database.org)から明らかなように、5つの潜在的な遺伝子はすべて、CD4+またはCD8+ナイーブT細胞における発現がほとんどないしは全くないことを示した。これは、オフターゲット切断部位の位置に関する懸念についての明白な根拠がないことを示した。
【0361】
TCL/T-ALLにおいてCD5を標的とするために、6つの、4-1BBで共刺激されたCAR5レンチウイルス構築物を設計し、CD5に対する高親和性、中親和性および低親和性についてスクリーニングした。Jurkat T-ALL細胞株を移植したNOD-SCID IL2Rgnull(NSG)マウスにおけるインビボでの優れた抗腫瘍機能に基づいて、リードCAR5構築物(高親和性、重鎖から軽鎖の配向)を選択した。CART5の製造中、CD5 KOはCART-CARTフラトリサイドを低下させ、より高い拡大をもたらした。さらに、製造終了時に、CD5 KO CART5は、疑似KO CART5と比較して、増加したナイーブT細胞(CD8+細胞、p=0.0008)および活性化/疲弊マーカー(LAG3、p=0.0016)の低下した発現を有した。次いで、一次試料(Sezary細胞、初代MCL細胞およびCD5+AML細胞)を含むいくつかのT-NHL/T-ALL、MCLおよびAMLモデルを使用して、疑似KO CART5をインビトロでCD5 KO CART5と比較した。疑似およびCD5 KO CART5はいずれも、CD5+悪性細胞を死滅させるのに極めて有効であったが、CD5 KO CART5は、活性化に際して、増強された増殖を示した。T-ALLの2つの異種移植モデル(原発性T-ALLおよびJurkat)において、CD5 KO CART5は、疑似KOと比較して劇的に増加した腫瘍制御を示した(図6B、疑似KO CART5の全生存期間の中央値=62日に対しCD5 KO CART5=到達せず、p=0.006、マンテル・コックス)(図6C)。この増強された抗腫瘍効果は、疑似KO CART5と比較した、末梢血(PB)中のCD5 KO CART5の増加した拡大および持続性に関連していた(図6D)。
【0362】
抗CD5 CARTモデルにおけるCD5欠失の有益な効果がフラトリサイドの排除のみによるものであったことを除外するために、標準的な抗CD19 CART(CART19)モデル(4-1BB)においてCD5 KOを試験した。CART19細胞においてCD5をノックアウトし、それらの機能をCD19+B-ALL異種移植モデル(NALM6)において試験した。注目すべきことに、CD5 KO CART19は、疑似KOと比較して有意に増強された抗白血病活性および血液拡大を示した(図7A図7B)。次いで、このプラットフォームは、現在のCART療法に通例応答しない固形癌に適用することができると推測された。臨床的に適切なCAR構築物(M5クローン、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第10640569号)を使用して、抗メソテリンCART細胞(CARTmeso)においてCD5を欠失させた。
【0363】
興味深いことに、疑似KO非形質導入(UTD)細胞は、疑似KO CART5細胞と比較して同様のCD5発現を示したが、CD5の平均蛍光強度(MFI)の著しい低下が存在した。これは、CD5-CART5結合が、疑似KO CART5細胞の表面上の潜在的なエピトープマスキングをもたらしたことを示唆した(図2B;図5A)。とりわけ、製造中に、疑似KO CART5細胞の成長速度は、CD5 KO CART5と比較して低下した(図2C)。さらに、製造の終わりに、CD5 KO CART5細胞は、疑似KO CART5細胞と比較した場合、ナイーブT細胞が濃縮され(CD4+細胞において8.31%±1.77対1.17%±0.40、ns;CD8+細胞において25.75%±4.00対8.13%±2.79、p=0.0008)、より少ないエフェクターメモリーT細胞を有した(CD4+において53.18%±4.31対83.05%±3.72、p<0.0001;CD8+において33.18%±2.65対49.15%±5.36、p=0.00034)(図2D)。さらに、CD5 KO CART5細胞は、CD8+T細胞において、疑似KO CART5より活性化/疲弊マーカーのより低い発現を示した(PD1:1.62%±0.21対2.60%±0.17、ns;LAG3:6.00%±1.36対16.64%±2.59、p=0.0016)(図2E;図5B)。このデータは、製造中のCD5-CART5結合が、疲弊したT細胞が濃縮された最終産物をもたらすこと、およびCD5の遺伝子欠失がより活性で機能的な産物をもたらすことを示唆した。
【0364】
CD5 KO CART5 T細胞は、インビボで疑似KO CART5細胞より高い有効性を示した:疑似KO CART5およびCD5 KO CART5細胞の有効性を、CD5陽性細胞およびCD5陰性細胞に対してインビトロで評価した。疑似KO CART5およびCD5 KO CART5はいずれも、CD5陽性の初代T-ALL細胞株、初代Sezary細胞株およびJurkat細胞株を死滅させるのに極めて有効であったが、CD5陰性B-ALL細胞株Nalm6に対する細胞傷害性効果をほとんどないしは全く示さなかった(図6A)。CD5 KO CART5 T細胞のインビボ有効性を評価するために、NSGマウスにJurkat細胞を移植し、操作されたT細胞または適切な対照を投与した(図6B)。CD5 KO CART5細胞は、疑似KO CART5と比較した場合、腫瘍量および全生存期間の両方に関して、腫瘍制御を劇的に増加させた(疑似KO CART5の全生存期間の中央値=62日に対しCD5 KO CART5=定められない、p=0.0062、マンテル・コックス)(図6B図6C)。この増強された抗腫瘍効果は、末梢血(PB)中のCD5 KO CART5細胞の増加した拡大と関連している可能性が高い(454.00±118.50細胞/100μL PB対疑似KO CART5での19.54±6.84細胞/100μL PB;p=0.0064)(図6D)。
【0365】
インビトロでの検証時に、NSGマウスにメソテリン+AsPC1膵癌細胞を移植し、続いてCARTmesoまたは非形質導入対照で処置した。CD5 KO CARTmeso細胞は、腫瘍体積および生物発光測定の両方によって検証されたところ、対照と比較して強い抗腫瘍活性を示した(図2G)。CD5 KO CARTmeso細胞は、末梢血中のT細胞数の増加を示した(図2G)。CD5 KO CARTmeso細胞が長期の免疫記憶を確立することができるかどうかを試験するために、長期生存しているマウスを同じ腫瘍で再チャレンジした。CD5 KO CARTmeso細胞は腫瘍生着を示さなかったが、対照マウスは腫瘍生着を示した。
【0366】
CD5はCAR T細胞におけるT細胞活性化の負の調節因子として作用した:インビボでのCD5 KO CART5細胞の高い死滅活性を考慮すると、次の目的は、CD5 KOがCAR T細胞抗腫瘍有効性を増強する機構を明らかにすることであった。TCR活性化の状況において、CD5は、SHP-1、CBLおよびCBL-Bなどのいくつかの阻害性メディエーターを細胞膜に動員した(図8A)。これらの因子は、転写因子AP-1およびNF-κBを活性化することならびに転写因子NFATを活性化するための細胞内カルシウム放出に関与する重要なキナーゼであるPLCγ活性を低下させることによってT細胞活性化を負に調節することが公知である。このことから、仮説は、CD5の欠失がこれらのメディエーターの機能を抑制し、増加したPLCγシグナル伝達および増強されたCAR活性をもたらし得るというものであった。この仮説を試験するために、偏りのないホスホキナーゼアレイを使用して、CART5刺激の15分後に37個のキナーゼリン酸化部位のリン酸化の相対レベルを同時に検出した。注目すべきことに、CD5 KO CART5細胞は、疑似KO CART5と比較した場合、T細胞活性化の重要な調節因子(PLCγ1、AKT)および増殖の重要な調節因子(p70 S6、β-カテニン)を含む、いくつかのシグナル伝達タンパク質のより高い(>2倍)リン酸化を示した(図8A)。総PLCγ発現は、疑似KO T細胞と比較して、CD5 KO細胞においてより高いレベルを有することが観察された(図8C)。CD5 KO細胞は、疑似KO細胞より劇的に高いレベルのカルシウムも示した(図8D)。刺激されていない疑似KOおよびCD5 KO細胞のバルクRNA配列決定分析は、2つの群の間での強い異なる遺伝子発現を実証した(図8E)。興味深いことに、遺伝子セットエンリッチメント解析により、カルシウム依存性事象およびDAG-IP3シグナル伝達(図8F図8G)などのPLCγ経路に関連するいくつかの経路がCD5 KO細胞において濃縮されていることが明らかになった。これらのデータは、CD5がT細胞において阻害性分子として作用することができること、およびそのKOは、刺激に際してCAR T細胞が増加した活性化をより生じやすくさせ得ることをさらに示唆した。
【0367】
CD5の枯渇は、固形腫瘍を標的とするCARTmeso細胞を増強した:CD5の欠失がCD5以外の抗原を標的とするCAR T細胞の抗腫瘍効果を増加させることができるという仮説を試験するために、PDACの固形癌モデルにおいて、CD5をCD5 KO CAR T細胞においてノックアウトした。NSGマウスにメソテリン+AsPC1を移植し、その後、抗メソテリンCAR(CARTmeso)T細胞で処置した。疑似KO CARTmesoと比較すると、CD5 KO CARTmeso細胞は、腫瘍体積(図9A)および生物発光による腫瘍量(図9B)の両方によって検証されたように、強い腫瘍制御を示した。CD5 KO CAR T細胞は、この場合にも、末梢血中のT細胞数の増加を示した(7.71×105±3.02×105細胞/100μL PB対疑似KO CARTmesoでの2.27×105±2.21×105細胞/100μL PB;p=ns)。注目すべきことに、全群についての末梢血中に検出されたT細胞の数は、同じ時点での以前の液性腫瘍モデルと比較して、この固形腫瘍モデルではかなり、より高かった。CD5 KO CARTmeso細胞によって達成された強力な腫瘍制御にもかかわらず、おそらくは移植片対宿主病に寄与し、腫瘍そのものには寄与しないT細胞数の増加のために、この群は、疑似KO CARTmeso群より速いペースで死亡した。チャレンジする低用量のCARTmeso細胞を使用した同じモデルの別の実験では(0日目に0.2×106個のCAR+細胞を注射したのに対して、最初の実験では0.75×106個のCAR+細胞を注射した)、CD5 KO CARTmeso細胞は、増加した生存率とさらに相関する効率的な腫瘍制御を実証した(全生存期間中央値 疑似KO CARTmeso=42日に対しCD5 KO CARTmeso=102日;p=0.14、マンテル・コックス)。この増強された生存は、同様に、74日目に注射されたAsPC1腫瘍細胞の再チャレンジをさらに制御することができた(図9G)、T細胞の増大した拡大および持続性(図9F)に関連する可能性が高い。
【0368】
癌患者の生検における腫瘍浸潤リンパ球上のCD5の発現が全生存期間に影響を及ぼしたかどうかという疑問に答えるために、TCGAデータベースを分析し、治療前の生検における低いCD5発現(CD3εによって正規化された)が、9,000人を超える癌患者における有意に改善された全生存期間と相関することが特定された(図9H)。これらの結果は、高度に免疫原性の皮膚の皮膚黒色腫を有する459名の患者において特に顕著であった(図9I)。
【0369】
結論として、この研究は、CD5が負の調節因子であり、CAR T細胞免疫療法のための新規免疫チェックポイントとなり得ることを初めて実証した。CD5欠失が、液性腫瘍および固形腫瘍のいくつかの臨床的に適切なモデルにおいて、インビボでCAR T機能の増強をもたらすことが示された。これらの知見は、初期相の臨床試験におけるCD5 KO CAR T産物の開発を後押しする。
【0370】
実施例3
以前に記載した製造時系列に従って、抗HER2 CAR T細胞(クローン4D5、J Immunol.2009 Nov 1;183(9):5563-5574、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を作製した。CD5 KO抗HER2 CAR T細胞の有効性を試験するためのモデルとして、HER2+前立腺腺癌であるPC3を使用した。1000個のHER2+CAR T細胞または対照を添加する24時間前に、96ウェルプレートに4,000個のPC3細胞を蒔いた。Incucyte(登録商標)Live-Cell Analysis Systemを用いて、3時間ごとにGFP+(PC3)強度をモニターした(図10A)。野生型抗HER2 CARと比較して、有意により高い細胞傷害性がCD5 KOで実証された(図10B)。
【0371】
考察
CAR T細胞療法は、B細胞白血病およびリンパ腫の治療においてかなり大きな関心を集めている。現在、1つを除くすべてのFDA承認CAR T細胞療法は、B細胞表面タンパク質であるCD19を標的とする。これは、再発性および難治性B細胞疾患を有する患者のための標準的なアプローチとして登場しているが、最終的に再発するかなりの割合の患者が依然として存在する。さらに、T細胞関連癌または固形腫瘍などの他の悪性腫瘍に対してこの療法を転用する場合、多くの課題が生じる。したがって、当技術分野では、これらの問題を克服するための効果的な戦略を開発することが必要とされている。
【0372】
それらの免疫特異性をリダイレクトするためにCAR導入遺伝子のレンチウイルス挿入によって改変されたT細胞は、患者の抗腫瘍免疫応答を大幅に増加させた。T細胞をさらに改変するためにこの方法をCRISPR-Cas9と組み合わせることにより、CAR T細胞の機能を改善するための方法が提示された。いくつかのグループが、異なる遺伝子のCRISR-Cas9遺伝子編集によるCAR Tの改善された抗腫瘍活性を報告し、または必要なときに直ちに使用できるCAR T細胞を作製するために、異なる遺伝子のCRISR-Cas9遺伝子編集を使用してTCR遺伝子座の遺伝子を発現停止させた。CRISPR-Cas9技術の使用は、患者にとって安全であることが実証されている。理論的には、CRISPR-Cas9を使用して、CAR T療法を改善し、可能性のある標的を拡大することができる。
【0373】
ここでは、CD5のCRISPR-Cas9 KOが、CAR T細胞のいくつかの異なる抗原および腫瘍モデルの抗腫瘍有効性を増加させることが確立された。T細胞悪性腫瘍におけるCD5を標的とするCAR T細胞という文脈において、CD5の遺伝子欠失は潜在的なフラトリサイドの懸念を排除し、最終的には、所望のメモリー表現型の著しく増加したレベルおよび低下した疲弊マーカーをもたらした。CD5 KO CART5細胞のこれらの特徴は、疑似KO CART5細胞を凌ぎ、インビボでマウスの寿命を大幅に延長させたより機能的な産物を可能にした。この増加した活性は、後の時点で、CAR T細胞の増加した拡大に寄与し得る可能性が高い。この増加したT細胞増殖の背後に存在する潜在的な機構をよりよく理解するために、偏りのないプロテオミクスおよびゲノムアプローチを使用して、重要なメディエーターとしてPLCγ1を特定した。T細胞が活性化されると、CD5は、SHP-1、CBLおよびCBL-Bを含むいくつかのタンパク質をその細胞質尾部に動員することが公知である。これらのタンパク質は、様々な経路によって、特にPLCγ1活性を減弱させることを通じて、T細胞シグナル伝達の負の調節因子として作用することが公知である。このことから、仮説は、CAR T細胞におけるCD5の枯渇は、これらのメディエーターがそれらの阻害機能を果たすことができないようにし、それによって増殖を増加させることができるというものであった。
【0374】
CART5におけるCD5 KOの増強された効果が、専らフラトリサイドの懸念を排除することによるものであるのか、または部分的にはCD5のTCRシグナル伝達阻害効果を妨げることに関連し得るのかどうかをさらによく理解するために、さらなる抗原およびCAR T細胞の腫瘍モデルにおいてCD5を欠失させた。CAR T療法の固形腫瘍モデルの一例である膵管腺癌に対するメソテリンを標的とするCAR T細胞において、CD5 KOを試験した。興味深いことに、CD5の欠失はCAR T細胞の抗腫瘍能力を大幅に高め、T細胞シグナル伝達の負の調節因子としてのその役割が養子T細胞療法に対して有意な効果を有し得ることを示唆した。
【0375】
新生物細胞の表面上に発現される標的とすることが可能な抗原の大部分は、CAR T産生のために使用される正常なT細胞の対応物と共有され、したがってフラトリサイド殺傷および疲弊した産物をもたらすという事実のために、T細胞リンパ腫に対して有効なCAR T生成物の生成は複雑である。異なるCARTがT-ALLおよびT細胞リンパ腫において調査されており、議論の余地がある結果をもたらしている。本明細書に提示されるCD5 KO CART5は、これらの問題を回避する。疲弊がより少ない表現型を示すCD5 KO動物モデルでは、より高い抗新生物死滅活性が実証された。
【0376】
仮説は、CARによって標的とされる抗原のCRISPR-Cas9欠失が、フラトリサイドおよび疲弊させる相互作用を低下させてT細胞新生物において新しい有効な治療をもたらすための最適な戦略であるというものであった。本明細書では、この仮説を試験した。これらの前臨床知見は、CD5 KO CART5が、その有益な役割および抗新生物の役割を確認するために臨床研究において調査する必要がある興味深い産物であることを実証した。
【0377】
方法
細胞株および一次試料:特に明記しない限り、5%CO2を有する37℃のインキュベーター中で、10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco;カタログ番号16140-071)、1%ペニシリンおよび1%ストレプトマイシン(Gibco;カタログ番号15140-163)、1% GlutaMAXサプリメント(Gibco;カタログ番号35050-079)ならびに1% HEPES(Gibco;カタログ番号15630-130)が補充されたRoswell Park Memorial Institute培地1640(RPMI;Gibco;カタログ番号11875-085)中においてすべての細胞株を培養した。すべての細胞株をショートタンデムリピート(STR)分析によって確認し、MycoAlert Plus Mycoplasma Detection Kit(Lonza;カタログ番号LT07-710)を使用してマイコプラズマについて試験した。Nalm6、Jurkat、HEK293TおよびAsPC1細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。
【0378】
CD5 sgRNA最適化:Benchling(https://www.benchling.com)に組み込まれたソフトウェアを使用して、CRISPR sgRNAを設計した。各標的遺伝子について、初期エクソン配列を標的とするように8つのsgRNA配列を設計し、スクリーニングのために、GeneArt Precision gRNA Synthesis Kit(Invitrogen;カタログ番号A29377)を使用してインビトロ転写した。Lonza 4D-Nucleofector Core Unitを用いて細胞をエレクトロポレーションした。P3 Primary Cell 4D-Nucleofector X Kit L(Lonza;カタログ番号V4XP-3024)を使用して、初代T細胞をエレクトロポレーションした。Cas9およびsgRNA送達のために、10μgのTrueCut Cas9 Protein v2(Lonza;カタログ番号A36499)を5μgのsgRNAとともに室温で10分間、インキュベートすることによって、リボ核タンパク質(RNP)複合体を最初に形成させた。10×106個の細胞を300×gで5分間遠心沈殿させ、指定された緩衝液中100μLに再懸濁した。RNP複合体と100μLの再懸濁された細胞を合わせ、パルスコードEO-115を使用してエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、20ng/mLの補充のサイトカインIL-7およびIL-15を含有する標準培地中において、2×106細胞/mLの濃度で細胞を37℃でインキュベートした。その後、示された日のそれぞれに、CD5発現をモニターした。
【0379】
抗CD5 CAR単鎖断片可変設計:モノクローナル抗体9、17および34の抗体可変領域配列に基づいて、CD5を標的とするCARを作製した。3つのグリシン-セリン-セリン-セリンリンカーを用いて両方の配向(可変軽鎖から可変重鎖へ、およびその逆)で単鎖可変領域断片(scFv)を設計し、GenScript Biotechにおいて合成した。最初のCART5スクリーニング後、重鎖から軽鎖の配向のクローン#17(17H2L)を使用してすべての実験を行った。
【0380】
レンチウイルスベクターの作製:HEK293T細胞を使用して、複製欠損の第3世代レンチウイルスベクターを作製した。約8×106個の細胞を標準培養培地中のT150培養容器に蒔き、37℃で一晩インキュベートした。18~24時間後、リポフェクタミン2000(116μL;Invitrogen;カタログ番号11668-019)、pVSV/G(7μg)、pRSV/Rev(18μg)、pGag/Pol(18μg)パッケージングプラスミドおよび15μgの発現プラスミド(CART5、またはCARTmeso)の組み合わせを使用して細胞をトランスフェクトした。4mLのOpti-MEM培地(Gibco;カタログ番号31985-070)でリポフェクタミンおよびプラスミドDNAを希釈した後、レンチウイルス産生フラスコに移した。トランスフェクションの24時間後および48時間後の両方に、培養培地を単離し、高速超遠心分離(25,000×g、2.5時間)を用いて濃縮した。
【0381】
初代ヒトゲノム操作CAR T細胞の製造:University of Pennsylvania Human Immunology Coreを通じて、ヒトT細胞を調達した。CD4+およびCD8+細胞を1:1の比で組み合わせ、エレクトロポレーションに使用した。CD5を標的とするCRISPR-Cas9 sgRNAを化学的に合成し(Integrated DNA Technologies)、5μgのsgRNAを10μgのTrueCut Cas9 Protein v2(Invitrogen;カタログ番号A36499)と室温で10分間予め混合して、エレクトロポレーションの前にリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成させた。P3 Primary Cell 4D-Nucleofector X Kit L(Lonza;カタログ番号V4XP-3024)とともに提供された100μLの緩衝液中の10×106個のT細胞をRNP複合体と混合し、続いて4D-Nucleofector(Lonza;カタログ番号AAF-1002B)中のパルスコードEO-115を使用してエレクトロポレーションした。RNP複合体の存在なしで、記載したのと同じ手順を使用して、疑似KO細胞をエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、T細胞を37℃で24時間インキュベートし、続いて、3ビーズ/細胞の比でCD3/CD28 Dynabeads(Gibco;カタログ番号40203D)を用いて活性化した。翌日、1~3の感染多重度で、CARレンチウイルスベクターを刺激された培養物に添加した。刺激の6~8日目にビーズを取り出し、増殖速度および細胞サイズが、細胞が刺激から離れたことを示すまで、Multisizer 3 Coulter Counter(Beckman)を使用して、細胞を1日おきに計数した。最初にすべてのT細胞を20ng/mLの補充のサイトカインIL-7およびIL-15とともに増殖させ、拡大の終わりまでに補充のサイトカインを0ng/mLに減少させた。すべてのCAR構築物は、特に明記しない限り、scFV(CAR5、17H2L;FMC63;CARmeso、CARM5)、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζ共刺激ドメインから構成された。
【0382】
一般的なフローサイトメトリー:以下の抗体:CD5(UCHT2;BioLegend;カタログ番号300612)、CD4、CD8(RPA-T8;BD Biosciences;カタログ番号563795)、CD45RA(L48;BD Biosciences;カタログ番号347723)、CCR7(G043H7;BioLegend;カタログ番号353214)、PD1(EH12.1;BD Biosciences;カタログ番号562516)、LAG3(3DS223H;Invitrogen;カタログ番号11-2239-42)、CD3(UCHT1;BD Biosciences;カタログ番号565119またはOKT3;BioLegend;カタログ番号317334)、hCD45(2D1;BioLegend;カタログ番号368522)、またはmCD45の1つまたは複数を使用して、細胞をFACS染色緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)+2% FBS)に再懸濁した。C末端においてポリヒスチジン(His)タグにコンジュゲートされた組換えヒトCD5タンパク質(Sino Biologicals;カタログ番号11027-H08H)、続いてアロフィコシアニン(APC)抗6X Hisタグ二次抗体(アッカム;カタログ番号ab72579)とともに細胞をインキュベートすることによってCAR5を検出した。ビオチン-SPヤギ抗ヒトF(ab')2抗体(Jackson ImmunoResearch;カタログ番号109-066-097)、続いてR-フィコエリトリン(PE)ストレプトアビジン二次抗体(Jackson ImmunoResearch;カタログ番号016-110-084)を使用して、CARmesoを検出した。Flow-Count Fluorospheres(Beckman;カタログ番号754053)を使用して、絶対細胞数によって反映される総腫瘍またはT細胞数のすべての変化を決定した。ViaKrome 808 Fixable Viability Dye(Beckman;カタログ番号C36628)を用いて細胞生存性を確立し、LSRII Fortessa Cytometer(BD)またはCytoFlex LX Flow Cytometer(Beckman)でデータを取得した。FlowJo 10.8.0ソフトウェア(FlowJo,LLC)を使用して、すべてのデータ解析を行った。
【0383】
iGenome-wide,Unbiased Identifications of DSB Enabled by Sequencing(iGUIDE-Seq):10μgのTrueCut Cas9 Protein v2(Invitrogen;カタログ番号A36499)またはSpyFi(商標)Cas9 Nuclease(Aldevron;カタログ番号9214-0.25MG)および5μgの、CD5を標的とするsgRNAを用いずにまたは用いて、二本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(dsODN、iGUIDEまたはGUIDE-seqに基づく分析に関連する測定単位)の存在下で10×106個の初代T細胞をエレクトロポレーションし、3ビーズ/細胞の比で刺激し、CART5を形質導入した。3日目または5日目に、細胞からビーズを除去し、細胞を収集し、DNeasy Blood&Tissue Kit(Qiagen;カタログ番号69504)を用いてゲノムDNAを単離した。単離されたDNAに対してiGUIDE-Seqおよび分析を用いて、オンターゲットおよびオフターゲット切断部位ならびに関連する欠失を検出し、定量した。
【0384】
CART5オンターゲティングおよびオフターゲティング特異性分析:ライブラリースクリーニングのために、CD5 KO CART5細胞を蛍光標識し、5828個のヒト細胞膜タンパク質および細胞表面に固定されたヒト分泌タンパク質+398個のヒトヘテロダイマーを発現する固定されたHEK293細胞/スライドに対する結合について、2つ組でスクリーニングした(18のスライドセット、スライドセットあたりn=2スライド、3.2×107細胞/スライド)。ImageQuantで蛍光(Alexa Fluor 647およびZsGreen1)を分析することによって、合計で22個の主要ヒット(重複スポット)を特定した。非常に弱い強度から強い強度まで、広範な強度(シグナルからバックグラウンドまで)が存在した。新たなスライド上で、22個すべてのヒットに対して疑似KO UTDおよびCD5 KO CART5細胞結合を2つ組で試験することによって確認スクリーニングを実施した。ライブラリーおよび確認スクリーニングならびに分析は、Retrogenix,Charles River Laboratoriesにおいて行われた。
【0385】
生物発光に基づく細胞生存アッセイ:クリックビートルグリーン(CBG)を発現するように細胞株(Jurkat、Nalm6、AsPC1、OCI-Ly18、SU-DHL-4およびSU-DHL-2)を操作し、生物発光定量化を使用して細胞生存を測定した。D-ルシフェリンカリウム塩(Gold Biotechnology;カタログ番号115144-35-9)を細胞培養物に添加し(最終濃度15μg/mL)、37℃で10分間インキュベートした。BioTek Synergy H4イメージャーを使用して生物発光シグナルを検出し、BioTek Gen5ソフトウェアを使用してシグナルを分析した。エフェクターなしの標的細胞の対照を使用して、パーセント細胞傷害性を計算した。
【0386】
フローサイトメトリーに基づく細胞生存アッセイ:CAR T細胞または対照非形質導入T細胞を蒔く前に、初代T-ALLまたはSezary細胞をCell Trace Violet(CTV;Invitrogen)で染色した。試薬は、製造業者のプロトコルに従って使用した。48時間後に、ViaKrome 808 Fixable Viability Dye(Beckman;カタログ番号C36628)で細胞を染色し、フローサイトメトリーによって分析して、ViaKrome 808陰性およびCTV陽性細胞の絶対数を決定したFlow-Count Fluorosphere(Beckman;カタログ番号754053)。Flow-Count Fluorospheres(Beckman;カタログ番号754053)を用いて絶対細胞数を決定した。エフェクターなしの標的細胞の対照を使用して、パーセント細胞傷害性を計算した。
【0387】
異種移植マウスモデル:6~10週齢のNOD-SCID-γc-/-(NSG)マウスをJackson Laboratoryから入手し、病原体が存在しない条件で飼育した。クリックビートルグリーン(CBG)を発現するように、すべての標的AsPC1細胞を操作した。固形腫瘍実験のために、0.2mLのMatrigel中で、示されたように、2×106個のAsPC1癌細胞を動物に皮下注射した。腫瘍送達の23~27日後に、0.75×106個(高用量)または0.2×106個(低用量)のT細胞(対照またはCAR+)を0.15mLの無菌PBS中で尾静脈を介して注射した。10%を超える体重の減少、毛皮の減少、下痢、結膜炎および疾患関連の後肢麻痺によって証明されるような、疾患進行および異種移植片対宿主病などの明白な毒性の徴候について動物を観測した。Xenogen IVIS生物発光イメージングシステムまたはLumina S5イメージングシステムを使用して、疾患負荷量を経時的に監視した。
【0388】
キナーゼリン酸化プロファイリング:Human Phospho-Kinase Array Kit(R&D Systems)を使用してリン酸化されたタンパク質を定量した。細胞のCARを介して細胞を活性化するために、組換えCD5タンパク質(Sino Biological;カタログ番号11027-H08H)およびDynabeads M450トシル活性化(Invitrogen;カタログ番号14013)を製造者のプロトコルに従って使用して、CD5で被覆された磁気ビーズを調製した。T細胞あたり4個のビーズの比で、10×106個のT細胞をCD5がコンジュゲートされたビーズと混合し、37℃で30分間インキュベートした。次いで、アレイキットプロトコルに従って細胞を溶解し、ホスホ-ペプチドを検出し、定量的化学発光を用いて分析した。ImageQuant LAS 4010(GE Healthcare)を使用して画像を取り込み、Image Studio Lite Version 5.2(LI-COR Biotechnology)を使用してデンシトメトリー分析を行った。各標的タンパク質分子の量を内部参照値(参照スポットのピクセル密度)で正規化した。CD5 KO CART5における正規化されたシグナル強度を疑似KO CART5と比較することによって、相対的なホスホペプチド量を決定した。
【0389】
免疫ブロット:製造業者のプロトコルに従って、Haltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Fisher;カタログ番号1861281)を含むIP溶解緩衝液(Pierce;カタログ番号87787)中で細胞可溶化物を調製した。Rapid Gold BCA Protein Assay Kit(Pierce;カタログ番号A53226)を使用して、タンパク質濃度を測定した。5%β-メルカプトエタノール(Gibco;カタログ番号21985-023)を含む4×タンパク質試料ローディング緩衝液(LI-COR;カタログ番号928-40004)中でタンパク質試料を還元し、95℃で10分間(または膜タンパク質の場合は70℃で10分間)煮沸した。次いで、4~15%SDSタンパク質ゲル(Bio-Rad;カタログ番号4561083)上に、変性したタンパク質試料をロードした。ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、標準的な免疫ブロッティングのためにタンパク質をPVDF膜に転写した。ブロッキング工程に続いて、Cell Signaling Technologyから購入した以下の一次抗体を用いてタンパク質標的を検出した:全PLCγ1(D9H10;カタログ番号5690S)、β-アクチン(8H10D10;カタログ番号3700S)およびCD5(E8X3S;カタログ番号39300S)。蛍光色素がコンジュゲートされた二次抗体(LI-COR;カタログ番号926-68072および925-32213)を一次抗体の検出のために使用した。Odyssey CLxイメージングシステム(LI-COR)で蛍光シグナルを検出し、Image Studio Liteバージョン5.2(LI-COR Biotechnology)でデンシトメトリー分析を行った。
【0390】
フローサイトメトリーに基づくカルシウム流動アッセイ:製造業者のプロトコルに従って、Calcium Flux Assay Kit(abcam;カタログ番号ab233472)を使用して、T細胞におけるカルシウム流入を測定した。簡潔には、0.5×106個の細胞を520 AM色素ローディング溶液とともに37℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞を300×gで5分間遠心分離し、緩衝液を、20mM HEPESを含むハンクス平衡塩溶液(HHBS)溶液と交換した。活性化のために、細胞を10μg/mLの濃度の抗CD3抗体(OKT3、BioLegend、カタログ番号317302)とともに氷上で15分間インキュベートし、続いて10μg/mLの濃度のヤギ抗マウスIgG二次抗体(Invitrogen;カタログ番号A32728)とともにインキュベートした。データ取得のために、ベースラインシグナルを60秒間記録し、二次抗体溶液を混合した直後に活性化シグナルを5分間記録した。CytoFlex LX Flow Cytometer(Beckman Coulter)を用いて蛍光のシグナルを読み取り、FlowJo 10.8.0ソフトウェア(FlowJo、LLC)を用いて、ガウスぼかしアルゴリズムを用いた蛍光事象中央値の動態をプロットした。
【0391】
RNA配列決定および分析:NovaSeq 6000 Sequencing System(Illumina)上のPerelman School of Medicine Next-Generation Sequencing Core(Philadelphia、PA)によって、100塩基のペアードエンドリード(paired-end read)として、NEBNext Ultra II Directional RNA Library Prep Kit for Illumina(New England BioLabs;カタログ番号E7760L)を使用して、RNA配列決定を行った。hg19参照ゲノムおよびSpliced Transcripts Alignment to a Reference(STAR;バージョン2.6.0c)を使用した注釈付き転写物とのアライメントの前に、Trimmomatic(バージョン0.36)を使用してアダプターおよび低品質塩基に関して試料のリードをトリミングした。STARおよびfeatureCounts(バージョン1.6.1)を使用して、すべての試料に対して遺伝子発現定量分析を行った。試料間の発現差分析は、R Studio(バージョン1.2.5042)内のDESeq2(バージョン1.22.2)24を使用して計算した。Molecular Signatures DatabaseからのHallmark遺伝子セットとともにGene Set Enrichment Analysis(GSEA)Mac App(バージョン4.1.0)を用いて、経路エンリッチメントを行った。
【0392】
TCGAデータセット分析:GEPIA2 TCGAデータベースを使用して、9502人の患者の治療前生検においてCD5発現の役割を調査した。腫瘍浸潤リンパ球T細胞数を考慮するために、CD3εに対してCD5発現を正規化した。高CD5発現および低CD5発現に基づいて、患者を2つの群に分けた(75%高い;25%低い)。
【0393】
統計解析:Prism 9ソフトウェア(GraphPad)を使用してデータを可視化し、解析した。すべての結果は、個々の値として、または平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表される。2つの群間でのすべての比較は、対応のないStudentの両側t検定を用いて行った。2つを超える群間の比較は、多重比較のためのテューキー補正を用いた一元配置分散分析(ANOVA)によって行った。ログランク(マンテル-コックス)検定を用いて、生存データを解析した。以下のようにp値をアスタリスクで表した:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0394】
【表1】
【0395】
その他の態様
本明細書における変数の任意の定義における要素の一覧の記載は、任意の単一の要素または列挙された要素の組み合わせ(またはサブコンビネーション)としてのその変数の定義を含む。本明細書での態様の記載は、その態様を任意の単一の態様として含み、または任意の他の態様もしくはその一部と組み合わせて含む。
【0396】
本明細書で引用されるありとあらゆる特許、特許出願および刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で提供される態様は特定の態様を参照して開示されているが、本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、他の態様およびこれらの変形が当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような態様および等価な変形を含むと解釈されることを意図している。
【0397】
列挙される態様
以下の列挙される態様が提供されるが、その番号付けは、重要性のレベルを指定するものと解釈されるべきではない。
【0398】
態様1は、以下を提供する:その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、
変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、該対象に投与する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合する、
前記方法。
態様2は、以下を提供する:その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、
変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、該対象に投与する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合し、かつ該腫瘍の成長が、少なくとも10日間、20日間、30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、80日間、90日間、100日間、120日間、150日間、200日間、240日間阻害される、
前記方法。
態様3は、以下を提供する:その必要がある対象において増強された有効性で固形腫瘍を治療する方法であって、
変異した内因性CD5遺伝子と異種キメラ抗原受容体(CAR)とを含む免疫細胞の集団を含む薬学的組成物を、該対象に投与する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合し、かつ該変異した内因性CD5遺伝子を含む該免疫細胞の集団の有効性が、非変異の内因性CD5遺伝子を含む免疫細胞の集団よりも高い、
前記方法。
態様4は、以下を含む:前記薬学的組成物が、約1×106~約1×109、約1×107~約1×109、約1×108~約1×109、約2×108~約1×109、約3×108~約1×109、約3×108~約1×109、約3×108~約1×109、約4×108~約1×109、約5×108~約1×109、約6×108、約7×108~約1×109、約8×108、約9×108~約1×109個の前記免疫細胞を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様5は、以下を含む:前記免疫細胞の集団の少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が前記変異した内因性CD5遺伝子を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様6は、以下を含む:前記免疫細胞の集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が前記異種キメラ抗原受容体(CAR)を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様7は、以下を提供する:前記免疫細胞が、内因性完全長CD5タンパク質を発現せず、かつ含まない、先行する態様のいずれかの方法。
態様8は、以下を提供する:前記変異したCD5遺伝子が、エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失を有する、先行する態様のいずれかの方法。
態様9は、以下を提供する:前記エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失が、内因性完全長CD5タンパク質の発現を阻害するかまたは低下させる、態様8の方法。
態様10は、以下を提供する:前記内因性CD5遺伝子が、遺伝子編集された変異、挿入、または欠失を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様11は、以下を提供する:前記遺伝子編集された変異、挿入、または欠失が、CRISPER/Cas9によって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失である、態様10の方法。
態様12は、以下を提供する:前記CRISPER/Cas9によって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失が、前記CD5遺伝子のエクソン1またはエクソン2を標的とする、態様11の方法。
態様13は、以下を提供する:前記遺伝子編集されたまたはCRISPER/Cas9によって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失が、SEQ ID NO:45のヌクレオチド配列を含むsgRNAを利用する、先行する態様のいずれかの方法。
態様14は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSからなる群より選択される抗原に結合することができる、先行する態様のいずれかの方法。
態様15は、以下を提供する:改変された免疫細胞がT細胞である、先行する態様のいずれかの方法。
態様16は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:27~32および39~44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様17は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:19、25、および37からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ならびに/またはSEQ ID NO:20、26、および38からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様18は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:17、18、23、24、35、または36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むscFvを含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様19は、以下を提供する:前記CARが、SEQ ID NO:15、16、21、22、33、および34からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様20は、以下を提供する:前記CARが、SEQ ID NO:1~6からなる群より選択される核酸配列によってコードされる、先行する態様のいずれかの方法。
態様21は、以下を提供する:前記固形腫瘍が、前立腺癌(例えば、膵管腺癌(「PDAC」)、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、ならびに他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫 脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合膠腫など)、膠芽腫(多形膠芽腫としても公知である)星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、および脳転移など)、癌腫、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚癌の一形態)、扁平上皮癌(種々の組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、気管支原性癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、肺の小細胞癌ならびに非小細胞癌を含む肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、非浸潤性乳管癌または胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌、上皮癌、ならびに上咽頭癌、肉腫 線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、または他の軟部組織肉腫である、先行する態様のいずれかの方法。
態様22は、以下を提供する:その必要がある対象において固形腫瘍を治療する方法であって、
CD5発現免疫細胞に結合する標的化部分と、遺伝子編集システムおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドとを含むベクターを、該対象に投与する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合し、
該遺伝子編集システムが、内因性CD5の発現を阻害するため、排除するため、または低下させるために該内因性CD5遺伝子を改変するように構成されており、かつ
該ベクターが、内因性CD5の発現を阻害するかまたは低下させるように該内因性CD5遺伝子を変異させるために該対象におけるCD5発現免疫細胞を形質導入し、かつ該変異した内因性CD5遺伝子を有する該免疫細胞において該CARを発現させる、
前記方法。
態様23は、以下を提供する:前記ベクターがウイルスベクターである、態様22の方法。
態様24は、以下を提供する:前記ウイルスベクターがレンチウイルスである、態様23の方法。
態様25は、以下を提供する:前記標的化部分が、抗体または他の種類の標的化部分(例えば、scFv、抗原結合ドメイン、DARPIN、VHH、またはFN3ドメイン)である、態様22~24のいずれか一つの方法。
態様26は、以下を提供する:前記固形腫瘍が、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、ならびに他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫 脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合膠腫など)、膠芽腫(多形膠芽腫としても公知である)星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、および脳転移など)、癌腫、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚癌の一形態)、扁平上皮癌(種々の組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、気管支原性癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、肺の小細胞癌ならびに非小細胞癌を含む肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、非浸潤性乳管癌または胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌、上皮癌、ならびに上咽頭癌、肉腫 線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、または他の軟部組織肉腫である、態様22~25のいずれか一つの方法。
態様27は、以下を提供する:前記形質導入された細胞が、内因性完全長CD5タンパク質を発現せず、かつ含まない、態様22~26のいずれか一つの方法。
態様28は、以下を提供する:前記変異したCD5遺伝子が、エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失を有する、態様22~27のいずれか一つの方法。
態様29は、以下を提供する:前記エクソン1またはエクソン2の変異、挿入、または欠失が、内因性完全長CD5タンパク質の発現を阻害するかまたは低下させる、項目28の方法。
態様30は、以下を提供する:前記内因性CD5遺伝子が、遺伝子編集された(例えば、CRISPRによって媒介された)遺伝子変異、挿入、または欠失を含む、態様22~29のいずれか一つの方法。
態様31は、以下を提供する:前記遺伝子編集された遺伝子変異、挿入、または欠失が、CRISPR/Cas9によって媒介された遺伝子変異、挿入、または欠失である、態様30の方法。
態様32は、以下を提供する:前記遺伝子編集された遺伝子変異、挿入、または欠失が、前記CD5遺伝子のエクソン1またはエクソン2を標的とする、態様30または31の方法。
態様33は、以下を提供する:前記遺伝子編集された(例えば、CRISPR/Cas9によって媒介された)遺伝子変異、挿入、または欠失が、SEQ ID NO:45のヌクレオチド配列を含むsgRNAを利用する、態様32の方法。
態様34は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSからなる群より選択される抗原に結合することができる、態様22~33のいずれか一つの方法。
態様35は、以下を提供する:前記改変された免疫細胞がT細胞である、先行する態様のいずれかの方法。
態様36は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:27~32および39~44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様37は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:19、25、および37からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ならびに/またはSEQ ID NO:20、26、および38からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様38は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:17、18、23、24、35、または36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むscFvを含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様39は、以下を提供する:前記CARが、SEQ ID NO:15、16、21、22、33、および34からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、先行する態様のいずれかの方法。
態様40は、以下を提供する:前記CARが、SEQ ID NO:1~6からなる群より選択される核酸配列によってコードされる、先行する態様のいずれかの方法。
態様41は、以下を提供する:キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞であって、該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、内因性CD5遺伝子が、変異しているか、改変されているか、破壊されているか、またはノックアウトされており、かつ該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合する、前記改変された免疫細胞。
態様42は、以下を提供する:前記CARの前記抗原結合ドメインが、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSに結合する、項目36の改変された免疫細胞。
態様43は、以下を提供する:態様41または42の改変された免疫細胞の集団を含む、組成物(例えば、薬学的組成物)。
態様44は、以下を提供する:前記改変された免疫細胞の集団の少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が前記変異した内因性CD5遺伝子を含む、態様43の組成物。
態様45は、以下を提供する:前記免疫細胞の集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が前記異種キメラ抗原受容体(CAR)を含む、態様43または44の組成物。
態様46は、以下を提供する:先行する態様のいずれかの改変された免疫細胞を作製する方法であって、
前記CARをコードする核酸、および/または
内因性CD5遺伝子、例えば、前記CD5遺伝子のエクソン1もしくはエクソン2を含むがこれらに限定されない該CD5遺伝子のエクソンを、ノックアウトさせるか、変異させるか、または破壊する少なくとも1つの核酸
で該免疫細胞をトランスフェクトまたは形質導入する工程を含み、
該CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ該抗原結合ドメインが、固形腫瘍抗原に結合する、
前記方法。
態様47は、以下を提供する:前記抗原結合ドメインが、メソテリン、CD5、CD19、CD2、CD7、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連抗原(TAA)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her1、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、MART-1/メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15、Ras、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、EBVA、HPV抗原E6、HPV抗原E7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSに結合する、態様46の方法。
態様48は、以下を提供する:前記免疫細胞がインビボまたはエクスビボで形質導入される、態様46または47の方法。
態様49は、以下を提供する:前記免疫細胞がインビボで形質導入される、項目48の方法。
態様50は、以下を提供する:前記免疫細胞がT細胞である、先行する態様のいずれかの方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図10A
図10B
【配列表】
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【国際調査報告】