(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ヘテロ二量体リラキシン融合物を使用した治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/22 20060101AFI20241219BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20241219BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20241219BHJP
C07K 14/64 20060101ALN20241219BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241219BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61K38/22
A61P9/04
A61P9/12
A61K47/68
A61K47/55
C07K14/64 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535545
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2022086001
(87)【国際公開番号】W WO2023111112
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ジュニア,リチャード トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コノリー,キャスリーン マリー
(72)【発明者】
【氏名】オマル,サミ アリ アブデル ハフィース
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエルセン,アンデシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB16
4C076CC11
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA41
4C084CA18
4C084DB01
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA42
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、特に肺高血圧症合併心不全を治療するための、ヘテロ二量体リラキシン融合ポリペプチドの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法であって、前記方法は、有効量のヘテロ二量体融合物を前記対象に投与することを含み、前記ヘテロ二量体融合物は、
(i)少なくとも1つのリラキシンA鎖ポリペプチド又はその変異体に連結された第1のヘテロ二量体化ドメインと、
(ii)少なくとも1つのリラキシンB鎖ポリペプチド又はその変異体に連結された第2のヘテロ二量体化ドメインと、を含み、
前記第1のヘテロ二量体化ドメインは第2のヘテロ二量体化ドメインとヘテロ二量体化し、前記ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する、方法。
【請求項2】
前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシンA鎖ポリペプチドと前記リラキシンB鎖ポリペプチドとが、少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合によって共有結合で結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシンA鎖と前記リラキシンB鎖とが、アミノ酸リンカーによって互いに共有結合で連結されていない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシンA鎖がリラキシン2A鎖であり、前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシンB鎖がリラキシン2B鎖である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシンA鎖が、コネクターを介して前記第1のヘテロ二量体化ドメインに連結され、前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシンB鎖が、コネクターを介して前記第2のヘテロ二量体化ドメインに連結され、任意選択的に、一方又は好ましくは両方のコネクターはポリペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘテロ二量体融合物の前記コネクターの一方又は好ましくは両方が、6~40アミノ酸の長さを有し、例えば、コネクターの一方又は好ましくは両方が、21アミノ酸の長さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヘテロ二量体融合物の前記第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインが、免疫グロブリンFc領域(それぞれ「第1のFc領域」及び「第2のFc領域」)に由来し、任意選択的に、前記第1及び第2のFc領域は定常ドメインCH2及びCH3を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のFc領域のC末端が、前記リラキシンA鎖のN末端に連結され、前記第2のFc領域のC末端が、前記リラキシンB鎖のN末端に連結されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2のFc領域が、ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異及び/又は修飾を含み、任意選択的に、前記ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異は、「Fcノブ」及び「Fcホール」突然変異、例えば前記CH3ドメインに存在する「Fcノブ」及び「Fcホール」突然変異である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2のFc領域が、ヒトIgG1免疫グロブリンに由来する、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異が、
a.一方のCH3ドメインにおける「Fcホール」突然変異Y349C、T366S、L368A、及びY407V、並びに
b.もう一方のCH3ドメインにおける「Fcノブ」突然変異S354C及びT366Wを含み、
ここで前記アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
a.前記第1のFc領域が、前記「Fcノブ」突然変異を含み、前記第2のFc領域が、前記「Fcホール」突然変異を含むか、或いは
b.前記第2のFc領域が、前記「Fcノブ」突然変異を含み、前記第1のFc領域が、前記「Fcホール」突然変異を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2のFc領域が、アミノ酸突然変異L234F、L235E、及びP331Sを含み、ここで前記アミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従う、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシン2A鎖ポリペプチドが、配列番号1に記載の配列又はその変異体を含み、前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシン2B鎖ポリペプチドが、配列番号2に記載の配列又はその変異体を含む、請求項4~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシン2A鎖ポリペプチドが、アミノ酸突然変異K9H、K17M、又はK17Iを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヘテロ二量体融合物の両方のコネクターが、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)を有する、請求項5~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法であって、前記方法は、有効量のヘテロ二量体融合物を前記対象に投与することを含み、前記ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-con-A融合ポリペプチドと、
(ii)FcY-con-B融合ポリペプチドと、を含み、
式中、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
FcYは、ヒトIgG1免疫グロブリンの定常ドメインCH2及びCH3を含むFc領域であり、「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407Vを含み、
FcXは、好ましくはヒトIgG1免疫グロブリンの定常ドメインCH2及びCH3を含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有するFc領域であり、「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366Wを含み、
conは、好ましくは、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)を有するコネクターポリペプチドであり、
ここで前記アミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、前記ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する、方法。
【請求項18】
前記ヘテロ二量体融合物が、配列番号11のアミノ酸配列を有する融合ポリペプチドと、配列番号20のアミノ酸配列を有する融合ポリペプチドとを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヘテロ二量体融合物が、1つ以上のFabを更に含み、任意選択的に、前記ヘテロ二量体融合物は、前記第1のFc領域のN末端に連結された1つのFabと、前記第2のFc領域のN末端に連結された第2のFabとを含む、請求項8~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ヘテロ二量体融合物が、前記第1のFc領域の前記N末端に連結された第2のリラキシンA鎖ポリペプチド又はその変異体と、前記第2のFc領域の前記N末端に連結された第2のリラキシンB鎖ポリペプチド又はその変異体とを更に含み、任意選択的に、前記第2のリラキシンA鎖は、コネクターポリペプチドを介して前記第1のFc領域に連結され、前記第2のリラキシンB鎖は、コネクターポリペプチドを介して前記第2のFc領域に連結されている、請求項8~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法であって、前記方法は、有効量のヘテロ二量体融合物を前記対象に投与することを含み、前記ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-B-L-A及びFcY、任意選択的にFcY-B-L-A、又は
(ii)FcY-B-L-A及びFcX、任意選択的にFcX-B-L-Aを含み、
式中、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407Vを有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリンFc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366Wを有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリンFc領域であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくはアミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここで前記アミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、前記ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する、方法。
【請求項22】
前記ヘテロ二量体融合物の前記リラキシンB鎖が、コネクター、任意選択的に、6~40アミノ酸の長さ、例えば21アミノ酸の長さを有するコネクターポリペプチドを介して、FcX及び/又はFcYに連結されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
基準リラキシンタンパク質のリラキシン活性に対する前記ヘテロ二量体融合物のリラキシン活性の比が、約0.001~約10である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記心不全が、駆出率が低下した心不全、駆出率が軽度低下した心不全、又は駆出率が保持された心不全である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、約25mmHg以上の平均肺動脈圧、約15mmHgを超える肺動脈楔入圧(PAWP)、及び/又は約40mmHg以上の右心室収縮期圧を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、3.0未満のウッド単位の肺血管抵抗を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、3.0以上のウッド単位の肺血管抵抗を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、血圧監視装置、好ましくは肺動脈圧監視装置を装着している、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記肺動脈圧監視装置がCardioMEMS圧力監視装置である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ヘテロ二量体融合物が、前記ヘテロ二量体融合物と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物として投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヘテロ二量体融合物又は医薬組成物が、皮下注射によって前記対象に投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ヘテロ二量体融合物又は医薬組成物が、自己投与によって投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヘテロ二量体融合物又は医薬組成物を投与した結果、ベースラインレベルの投与前と比較して
a)PVRの減少、
(b)mPAPの減少、
(c)ePADの減少、
(d)心臓の1回拍出量(SV)の増加、
(e)全身血管抵抗(SVR)の低下、及び/若しくは推算糸球体濾過量(eGFR)の増加、
(f)駆出率の増加、並びに/又は
(g)心拍出量の増加のうちの1つ以上がもたらされる、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ二量体リラキシン融合物を使用した治療方法に関する。具体的には、本発明はリラキシン2融合物を使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リラキシンは、インスリンスーパーファミリーに属するペプチドホルモンである。ヒトにおいては、リラキシンペプチドファミリーは、構造類似性が高いが配列類似性の低い7種のペプチド、すなわちリラキシン1、2、及び3、並びにインスリン様ペプチドINSL3、INSL4、INSL5、及びINSL6を含む。天然のリラキシンは、2つの鎖間ジスルフィド結合により共有結合されたA及びBポリペプチド鎖から構成される。A鎖は、更に別の鎖内ジスルフィド結合を有する。リラキシン遺伝子は、構造B-C-A(Cペプチドによって連結されたB及びAポリペプチド鎖)でプロホルモンをコードする。プロホルモンは、PC1及びPC2酵素による細胞内タンパク質分解切断を受けて、Cペプチドを除去した後、成熟リラキシンを分泌する。
【0003】
リラキシンは、妊娠中、全身血液動態の適応変化及び腎臓の適応変化を媒介することが知られている多面的ホルモンである。リラキシンはまた、抗線維化の特性を有し、且つ心不全、例えば、急性非代償性心不全(ADHF)において有益な効果を有することも明らかにされている。心不全は、深刻な罹患率及び死亡率を伴う。心不全は、心筋細胞死の増加及び間質性線維症を伴う複雑な組織リモデリングを特徴とする。リラキシンは、虚血再灌流及び心不全といった状況において有益であることが示された多くのシグナル伝達カスケードを活性化する。これらのシグナル伝達経路は、ホスホイノシチド3-キナーゼ経路の活性化及び一酸化窒素シグナル伝達経路の活性化を含む(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0004】
心不全患者においては、有意な小集団が肺高血圧症も患う(HF+PH患者)。駆出率が保持された心不全患者のうち約50%が更に肺高血圧症を患い、これは、駆出率の低下を伴う心不全患者では60%に増加するものと推定されている(非特許文献5、非特許文献6)。肺高血圧症合併心不全の患者は、肺高血圧症非合併心不全の患者と比較して生存率が低下することが示されている(非特許文献7)。心不全患者においては、推定肺動脈拡張期圧(Estimated Pulmonary Artery Diastolic Pressure、ePAD)の3mmHgの増減(平均肺動脈圧(mPAP)の約4mmHgの増減に相当)は、心血管系死亡率の24%の増加又は19%の減少とそれぞれ関連していた(非特許文献8)。mPAPの4mmHgの減少は、心不全及び肺高血圧症を患う患者における呼吸困難の改善にも関連する(非特許文献9)。
【0005】
非修飾組換えヒトリラキシン2であるセレラキシンを使用して、臨床試験が実施された。入院患者にセレラキシンを連続的に静脈内投与することで、心臓、腎臓、及び肝臓の障害及び鬱血が改善した(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。セレラキシンは、約20時間の連続注輸を受けた患者における肺動脈圧、心拍出量、並びに全身血管抵抗及び肺血管抵抗の改善も実証した(非特許文献13)。しかし、セレラキシンは患者の血液循環から速やかに除去されるため、その治療効果は限定的であり、一旦静脈内注射を中止するとプラスの効果は急速に消滅した。更に、患者の約3分の1が、セレラキシンを静脈内投与した後で有意な血圧低下(>40mm Hg)を経験したため、用量を半分又は更にはそれ以上減少させなければならないという結論が得られた。
【0006】
特許文献1及び特許文献2は、リラキシンA及びリラキシンBがリンカーペプチドにより単鎖に融合されている組換えリラキシンポリペプチドについて説明している。特許文献1は、少なくとも5アミノ酸且つ15アミノ酸未満のリンカーペプチドを含む組換えリラキシンについて説明している。特許文献2は、少なくとも15アミノ酸のリンカーペプチドを含む組換えリラキシンを記載している。
【0007】
これまでに実施された未修飾の組換えリラキシンでの有望な臨床研究を考慮すると、リラキシンの生物学的活性を保持し、半減期の延長、簡便な投薬経路、及び簡便な投薬などの利点を提供する、更なる組換えリラキシンの必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2013/004607号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2018/138170号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Bathgate RA et al.(2013)Physiol.Rev.93(1):405-480
【非特許文献2】Mentz RJ et al.(2013)Am.Heart J.165(2):193-199
【非特許文献3】Tietjens J et al.(2016)Heart 102:95-99
【非特許文献4】Wilson SS et al.(2015)Pharmacology 35:315-327
【非特許文献5】Guazzi,(2014)Circ Heart Fail.,7:367-377
【非特許文献6】Miller et al.,(2013)JACC Heart Fail.,1(4):290-299
【非特許文献7】Barnett and De Marco,(2012)Heart Fail.Clin.8:447-459
【非特許文献8】Zile MR,et al.(2017)Circ Heart Fail.,10:e003594
【非特許文献9】Solomonica A,et al.(2013)Circ Heart Fail.,6:53-60
【非特許文献10】Felker GM et al.(2014)J.Am.Coll.Cardiol.64(15):1591-1598
【非特許文献11】Metra M et al.(2013)J.Am.Coll.Cardiol.61(2):196-206
【非特許文献12】Teerlink JR et al.(2013)Lancet 381(9860):29-39
【非特許文献13】Ponikowski et al.,(2014)European Heart Journal 35:431-441
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、肺高血圧症合併心不全(HF+PH)を患う対象の治療における、リラキシン活性を有するヘテロ二量体融合物の使用に関する。HF+PH対象の治療には、未だに満たされていない大きなニーズが依然として存在する。
【0011】
したがって、1つの態様では、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法を提供し、該方法は、有効量のヘテロ二量体融合物を対象に投与することを含み、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)少なくとも1つのリラキシンA鎖ポリペプチド又はその変異体に連結された第1のヘテロ二量体化ドメインと、
(ii)少なくとも1つのリラキシンB鎖ポリペプチド又はその変異体に連結された第2のヘテロ二量体化ドメインと、を含み、
第1のヘテロ二量体化ドメインは第2のヘテロ二量体化ドメインとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。
【0012】
同様に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象の治療に使用するためのヘテロ二量体融合物を提供し、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)少なくとも1つのリラキシンA鎖ポリペプチド又はその変異体に連結された第1のヘテロ二量体化ドメインと、
(ii)少なくとも1つのリラキシンB鎖ポリペプチド又はその変異体に連結された第2のヘテロ二量体化ドメインと、を含み、
第1のヘテロ二量体化ドメインは第2のヘテロ二量体化ドメインとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。
【0013】
同様に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療するための薬剤の製造におけるヘテロ二量体融合物の使用を提供し、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)少なくとも1つのリラキシンA鎖ポリペプチド又はその変異体に連結された第1のヘテロ二量体化ドメインと、
(ii)少なくとも1つのリラキシンB鎖ポリペプチド又はその変異体に連結された第2のヘテロ二量体化ドメインと、を含み、
第1のヘテロ二量体化ドメインは第2のヘテロ二量体化ドメインとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体融合物のリラキシンA鎖とリラキシンB鎖とは、1つ以上の(例えば2つの)鎖間結合、好ましくは1つ以上の(例えば2つの)鎖間ジスルフィド結合によって共有結合される。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖とリラキシンB鎖とは、アミノ酸リンカーによって互いに共有結合で連結されていない。
【0015】
いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖は、リラキシン2A鎖であり、リラキシンB鎖は、リラキシン2B鎖である。
【0016】
好ましい実施形態では、第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインは、免疫グロブリンのFc領域、例えば免疫グロブリンG(IgG)Fc領域(「第1のFc領域」及び「第2のFc領域」)に由来する。第1及び第2のFc領域は、定常ドメインCH2及び/又はCH3を含み得る。好ましくは、第1及び第2のFc領域は、CH2及びCH3を含む。
【0017】
別の実施形態では、第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインは、免疫グロブリンFab領域に由来する。
【0018】
更に別の実施形態では、第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインは、ヘテロ二量体化して、平行なコイルドコイルを形成する。
【0019】
いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖は、コネクターを介して第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)に連結し、リラキシンB鎖は、コネクターを介して第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)に連結する。好ましい実施形態では、一方又は好ましくは両方のコネクターが、ポリペプチドである。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコネクターは、6~40アミノ酸の長さを有するポリペプチドである。好ましくは、両方のコネクターが、6~40アミノ酸の長さを有するポリペプチドである。好ましい実施形態では、少なくとも1つのコネクターは、21アミノ酸の長さを有するポリペプチドである。特に好ましい実施形態では、両方のコネクターが、21アミノ酸の長さを有するポリペプチドである。特定の実施形態では、両方のコネクターが、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)を有する。
【0021】
好ましい実施形態では、第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)のC末端はリラキシンA鎖のN末端に連結し、第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)のC末端はリラキシンB鎖のN末端に連結する。別の実施形態では、第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)のN末端は、リラキシンA鎖のC末端に連結し、第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)のN末端は、リラキシンB鎖のC末端に連結する。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1及び第2のFc領域)は、ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異及び/又は修飾、好ましくは不斉ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異及び/又は修飾を含む。好ましい実施形態では、ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異は、「Fcノブ(Knob)」及び「Fcホール(Hole)」突然変異である。特に好ましい実施形態では、「Fcノブ」及び「Fcホール」突然変異は、CH3ドメインに存在する。好ましい実施形態では、第1のFc領域は「Fcノブ」突然変異を含み、第2のFc領域は「Fcホール」突然変異を含む。或いは、第1のFc領域は「Fcホール」突然変異を有し、第2のFc領域は「Fcノブ」突然変異を有する。好ましくは、ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異は、一方のCH3ドメインに、「Fcホール」突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407V、又はそれらの保存的置換を含み;他方のCH3ドメインに、「Fcノブ」突然変異S354C及びT366W、又はそれらの保存的置換を含み、ここで、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う。
【0023】
本発明の任意の態様の実施形態では、リラキシン2A鎖ポリペプチドは、配列番号1に記載の配列又はその変異体を含み、リラキシン2B鎖ポリペプチドは、配列番号2に記載の配列又はその変異体を含む。いくつかの実施形態では、リラキシン2A鎖ポリペプチドは、アミノ酸突然変異K9H、K17M、又はK17I、好ましくはK9Hを含む。
【0024】
更に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法を提供し、該方法は、有効量のヘテロ二量体融合物を対象に投与することを含み、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-con-A融合ポリペプチドと、
(ii)FcY-con-B融合ポリペプチドと、を含み、
式中、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
conは、コネクター、例えば、好ましくは、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)を有するコネクターポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。
【0025】
同様に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法に使用するためのヘテロ二量体融合物を提供し、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-con-A融合ポリペプチドと、
(ii)FcY-con-B融合ポリペプチドと、を含み、
式中、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
conは、コネクター、例えば、好ましくは、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)を有するコネクターポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。
【0026】
同様に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療するための薬剤の製造におけるヘテロ二量体融合物の使用を提供し、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-con-A融合ポリペプチドと、
(ii)FcY-con-B融合ポリペプチドと、を含み、
式中、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
conは、コネクター、例えば、好ましくは、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)を有するコネクターポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。
【0027】
特に好ましい実施形態では、ヘテロ二量体融合物は、配列番号11のアミノ酸配列との融合ポリペプチドと、配列番号20のアミノ酸配列との融合ポリペプチドとを含む。
【0028】
本発明の任意の態様のいくつかの実施形態では、ヘテロ二量体融合物は、1つ以上のFabを更に含み、任意選択的に、ヘテロ二量体融合物は、第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)のN末端に連結された1つのFabと、第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)のN末端に連結された第2のFabとを含む。
【0029】
本発明の任意の態様のいくつかの実施形態では、ヘテロ二量体融合物は、第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)のN末端に連結した第2のリラキシンA鎖ポリペプチド又はその変異体と、第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)のN末端に連結した第2のリラキシンB鎖ポリペプチド又はその変異体とを更に含み、任意選択的に、第2のリラキシンA鎖は、コネクターポリペプチドを介して第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)に連結し、第2のリラキシンB鎖は、コネクターポリペプチドを介して第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)に連結する。
【0030】
別の態様では、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法を提供し、該方法は、有効量のヘテロ二量体融合物を対象に投与することを含み、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-B-L-A及びFcY、任意選択的にFcY-B-L-A、又は
(ii)FcY-B-L-A及びFcX、任意選択的にFcX-B-L-Aを含み、
式中、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくはアミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。或いは、FcX及びFcYは、本明細書に記載されるような非Fcヘテロ二量体化ドメインである。いくつかの実施形態では、リラキシンB鎖は、コネクター、任意選択的に、6~40アミノ酸の長さ、例えば21アミノ酸の長さを有するコネクターポリペプチドを介して、FcX及び/又はFcYに連結している。
【0031】
同様に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法に使用するためのヘテロ二量体融合物を提供し、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-B-L-A及びFcY、任意選択的にFcY-B-L-A、又は
(ii)FcY-B-L-A及びFcX、任意選択的にFcX-B-L-Aを含み、
式中、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくはアミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。或いは、FcX及びFcYは、本明細書に記載されるような非Fcヘテロ二量体化ドメインである。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖は、コネクター、任意選択的に、6~40アミノ酸の長さ、例えば21アミノ酸の長さを有するコネクターポリペプチドを介して、FcX及び/又はFcYに連結している。
【0032】
同様に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療するための薬剤の製造におけるヘテロ二量体融合物の使用を提供し、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-B-L-A及びFcY、任意選択的にFcY-B-L-A、又は
(ii)FcY-B-L-A及びFcX、任意選択的にFcX-B-L-Aを含み、
式中、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくはアミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。或いは、FcX及びFcYは、本明細書に記載されるような非Fcヘテロ二量体化ドメインである。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖は、コネクター、任意選択的に、6~40アミノ酸の長さ、例えば21アミノ酸の長さを有するコネクターポリペプチドを介して、FcX及び/又はFcYに連結している。
【0033】
更に別の態様では、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法を提供し、該方法は、有効量のヘテロ二量体融合物を対象に投与することを含み、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-A-L-B及びFcY、任意選択的にFcY-A-L-B、又は
(ii)FcY-A-L-B及びFcX、任意選択的にFcX-A-L-Bを含み、
式中、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくはアミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。或いは、FcX及びFcYは、本明細書に記載されるような非Fcヘテロ二量体化ドメインである。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖は、コネクター、任意選択的に、6~40アミノ酸の長さ、例えば21アミノ酸の長さを有するコネクターポリペプチドを介して、FcX及び/又はFcYに連結している。
【0034】
同様に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法に使用するためのヘテロ二量体融合物を提供し、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-A-L-B及びFcY、任意選択的にFcY-A-L-B、又は
(ii)FcY-A-L-B及びFcX、任意選択的にFcX-A-L-Bを含み、
式中、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり;
Lは、好ましくはアミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。或いは、FcX及びFcYは、本明細書に記載されるような非Fcヘテロ二量体化ドメインである。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖は、コネクター、任意選択的に、6~40アミノ酸の長さ、例えば21アミノ酸の長さを有するコネクターポリペプチドを介して、FcX及び/又はFcYに連結している。
【0035】
同様に、本発明は、肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療するための薬剤の製造におけるヘテロ二量体融合物の使用を提供し、該ヘテロ二量体融合物は、
(i)FcX-A-L-B及びFcY、任意選択的にFcY-A-L-B、又は
(ii)FcY-A-L-B及びFcX、任意選択的にFcX-A-L-Bを含み、
式中、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリン(例えばIgG1)Fc領域であり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくはアミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従うものであり、FcXはFcYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物はリラキシン活性を有する。或いは、FcX及びFcYは、本明細書に記載されるような非Fcヘテロ二量体化ドメインである。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖は、コネクター、任意選択的に、6~40アミノ酸の長さ、例えば21アミノ酸の長さを有するコネクターポリペプチドを介して、FcX及び/又はFcYに連結している。
【0036】
本発明の全ての態様によれば、心不全は、駆出率が低下した心不全、駆出率が軽度低下した心不全、又は駆出率が保持された心不全であり得る。
【0037】
本発明の全ての態様によれば、対象は、約25mmHg以上の平均肺動脈圧、及び/又は約40mmHg以上の右心室収縮期圧を有し得る。典型的には、これは本発明のヘテロ二量体融合物で治療するより前である。
【0038】
本発明の全ての態様によれば、対象は、3.0未満のウッド単位の肺血管抵抗を有し得る。或いは、対象は、3.0以上のウッド単位の肺血管抵抗を有し得る。典型的には、これは本発明のヘテロ二量体融合物で治療するより前である。
【0039】
本発明の全ての態様によれば、対象は、血圧監視装置、好ましくは肺動脈圧監視装置を装着してもよい。好ましくは、肺動脈圧監視装置はCardioMEMS圧力監視装置である。
【0040】
本発明の任意の態様のいくつかの実施形態では、基準リラキシンタンパク質のリラキシン活性に対するヘテロ二量体融合物のリラキシン活性の比は、約0.001~約10である。
【0041】
本発明の全ての態様によれば、ヘテロ二量体融合物は、本発明のヘテロ二量体融合物を含む医薬組成物として投与され得る。
【0042】
本発明のヘテロ二量体融合物をコードする核酸分子(例えばDNA分子)、核酸分子を含むベクター、ベクター又は核酸を含む宿主細胞、及び宿主細胞を培養し、融合タンパク質を収集することによって本発明のヘテロ二量体融合物を製造する方法も本明細書で説明される。
【0043】
本発明の態様及び実施形態は、添付の請求項において述べられる。本発明のこれら及び他の態様及び実施形態はまた、本明細書においても記載される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態によるヘテロ二量体融合物の例示的なフォーマットを示す図である。ヘテロ二量体融合物の各融合ポリペプチドのフォーマットは、FcX、FcY、A、B、con及びLに関して付与され、ここで、FcX(「Fcノブ」)及びFcY(「Fcホール」)は、ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異及び/又は修飾を含む2つのFc領域であり、A(「Rlx A」)及びB(「Rlx B」)は、リラキシンA鎖及びリラキシンB鎖ポリペプチドであり、「con」は、コネクターポリペプチドであり、Lは、リンカーポリペプチドであり、HC X及びHC Yは、抗体の重鎖、LCは、抗体の軽鎖、ヒンジは、抗体のヒンジ領域であり、Fabは、抗体のFabフラグメントである。
【
図2】RELAX0019及びRELAX0023のLC-MS分析を示す図であり、A)RELAX0019及びRELAX0023脱グリコシル化及び非還元分析は、インタクトな分子の質量を示し、B)RELAX0019及びRELAX0023脱グリコシル化及び還元分析は、個々のFc融合鎖(ノブリラキシン鎖A及びホールリラキシン鎖B)の質量を示している。
【
図3】LC-MSを用いた非還元ペプチドマッピングによるRELAX0019及びRELAX0023のC末端ペプチドの分析を示す図である。線で表される予測ジスルフィド結合を有するC末端ペプチドのアミノ酸配列を上部パネルに示す。パネルA及びE-還元剤の非存在下(-DTT)でのC末端ペプチドの抽出イオンクロマトグラム。パネルC及びG-還元剤の非存在下でのC末端ペプチドのデコンボリューションマススペクトル。パネルB及びF-還元剤の存在下(+DTT)での抽出イオンクロマトグラム並びにパネルD及びH-還元剤の存在下でのデコンボリューションマススペクトル。
図3は、配列番号75、77、及び76をそれぞれ出現順に開示している。
【
図4】組換えヒトRXFP1を発現する細胞においてcAMP誘導により測定された本発明のいくつかのヘテロ二量体融合物のインビトロ生物学的活性を示す図である。
【
図5】本発明のヘテロ二量体融合物をマウスに静脈内投与した一連のELISA実験からのインビボ薬物動態(PK)プロファイルを示す図である。データは、5分時点(T1)における%cMaxとして正規化される。
【
図6】RELAX0019及びRELAX0023で処置したマウスにおけるイソプロテレノール誘発性心筋線維化及び肥大の回復を示す図である。(1)ビヒクル(ベースライン)、(2)イソプロテレノール、(3)イソプロテレノール+リラキシン2、(4)イソプロテレノール+RELAX0019、及び(5)イソプロテレノール+RELAX0023についての線維化及び肥大のレベルが示されている。
【
図7】バキュロウイルス(Baculovirus)(BV)ELISAアッセイにおける本発明のヘテロ二量体融合物のインビトロ非特異的結合を示す図である。
【
図8】保存時の溶液中のRELAX0023、RELAX0127、及びRELAX0128の純度減少、凝集及びフラグメント化のパーセンテージを示す。
【
図9】還元LC-MS分析によって評価される溶液中のRELAX0023、RELAX0127、及びRELAX0128の経時的な安定性を示す図である。A)全イオンクロマトグラム、B)還元分子のマススペクトル。
【
図10】静脈内及び皮下注射後のカニクイザルにおけるRELAX0023のPKプロファイルを示す。
【
図11】本発明のポリペプチドの一部をコードする塩基配列(それぞれ配列番号80~140、出現順)を示す。
【
図12】心不全を有し、左心室駆出率(LVEF)が低下したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))におけるRELAX0023の長期的有効性研究の結果を示す。比較的低用量、中用量、又は高用量のRELAX0023又はビヒクル対照で20週間処置し、それに続いて観察期間にある、上記のサルにおけるLVEF、心拍(HR)、及び平均動脈圧(MAP)に対するRELAX0023の効果を、それぞれ(A)、(B)、及び(C)に示す。各データ点は、群の平均値を表す(n=8は処置群、n=14はビヒクル群)。(A)、(B)、及び(C)のそれぞれのx軸は、治療期間を開始してからの週数を表す。
【
図13】[
図13A-13F]RELAX0023投与後のMADコホートにおける心臓機能、全身血管抵抗、及び臓器潅流を示す。
図6Aは、HFpEF対象の駆出率(EF)を示す。
図6Bは、HFrEF対象のEFを示す。
図6Cは、プールされた対象の心拍出量を示す。
図6Dは、プールされた対象の全身血管抵抗(SVR)を示す。
図6Eは、プールされた対象の1回拍出量(SV)を示す。
図6Fは、プールされた対象の推算糸球体濾過量(eGFR)を示す。HFpEF=駆出率が保持された心不全。HFrEF=駆出率が低下した心不全。プラセボと比較して有意(p<0.1)。
【発明を実施するための形態】
【0045】
配列表の簡単な説明
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
詳細な説明
リラキシン
本発明は、少なくとも部分的には、リラキシンA鎖とリラキシンB鎖がアミノ酸リンカーを介して互いに共有結合で連結されていない場合に、本明細書に記載のヘテロ二量体融合物が、リラキシン活性を示し得るという知見に基づいている。これは、リラキシンAとリラキシンBが単鎖に融合されている組換えリラキシンを記載する国際公開第2013/004607号パンフレット及び同第2018/138170号パンフレットの開示によれば、驚くべきことである。本発明者らは更に、ヘテロ二量体化ドメインのヘテロ二量体化が、リラキシンA鎖及びリラキシンB鎖の正しい折り畳み及びヘテロ二量体化を誘導することも見出した(実施例2を参照されたい)。加えて、野生型リラキシンタンパク質とは異なり、本発明の融合ポリペプチドは、生物学的活性のために内部タンパク質分解プロセシングを必要としない。
【0063】
本明細書において使用される場合、用語「ヘテロ二量体融合物」は、融合ポリペプチドのヘテロ二量体を指し、ここで、一方の融合ポリペプチドは、ヘテロ二量体タンパク質の第1のサブユニット(例えばリラキシンA鎖)に連結した第1のヘテロ二量体化ドメインを含み、他方の融合ポリペプチドは、ヘテロ二量体タンパク質の第2のサブユニット(例えばリラキシンB鎖)に連結した第2のヘテロ二量体化ドメインを含む。
【0064】
本発明のヘテロ二量体融合物は、リラキシン1、リラキシン2及びリラキシン3から選択されるリラキシンの群からのリラキシンA鎖及びB鎖ポリペプチドを含み得る。好ましい実施形態では、本発明のリラキシンA鎖ポリペプチドは、リラキシン2A鎖ポリペプチド又はその変異体であり、本発明のリラキシンB鎖ポリペプチドは、リラキシン2B鎖ポリペプチド又はその変異体である。特定の実施形態では、リラキシンA鎖ポリペプチドは、ヒトリラキシン2A鎖ポリペプチド又はその変異体及びヒトリラキシン2B鎖ポリペプチド又はその変異体を含む。
【0065】
「鎖」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して連結された2つ以上のアミノ酸の鎖を指すために本明細書において互換的に使用され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、リラキシン2A鎖ポリペプチドは、配列番号1に記載の配列又はその変異体を有し、リラキシン2B鎖ポリペプチドは、配列番号2に記載の配列又はその変異体を有する。変異体は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を含み得る。いくつかの実施形態では、リラキシン2A鎖ポリペプチドは、K9E、K9H、K9L、K9M、R18E、R18H、R22A、R22I、R22M、R22Q、R22S、R22Y、F23E、F23A及びF23Iから選択される1つ以上のアミノ酸突然変異を含む。好ましい実施形態では、リラキシン2A鎖は、アミノ酸突然変異K9Hを含む。
【0067】
リラキシンA鎖及びB鎖の変異体は、当技術分野において知られている。そのうえ、リラキシンA鎖及びB鎖の変異体の設計の手引きは、当業者に入手可能である。例えば、変異体が、リラキシン機能に必要とされるアミノ酸を保持してもよいことは理解されるであろう。例えばリラキシン2B鎖の変異体は、保存モチーフArg-X-X-X-Arg-X-X-lle(Claasz AA et al.(2002)Eur.J.Biochem.269(24):6287-6293)又はArg-X-X-X-Arg-X-X-Val(Bathgate RA et al.(2013)Physiol Rev.93(1):405-480)を含み得る。変異体は、1つ以上のアミノ酸置換、及び/又は挿入を含んでいてもよい。例えば、リラキシン2B鎖変異体は、配列番号62と比較して、K30及びR31、N-末端V-2、A-1及びM-1等の1つ以上の更なるアミノ酸を有していてもよい。その代わりに又はそのうえ、変異体は、1つ以上のアミノ酸誘導体を含んでいてもよい。例えば、リラキシン2B鎖変異体の第1のアミノ酸は、ピログルタミン酸であってもよい。
【0068】
好ましい実施形態では、リラキシンA鎖及びリラキシンB鎖は、2つの鎖間ジスルフィド結合によって共有結合により結合される(実施例2を参照されたい)。
【0069】
ペプチドのリラキシンファミリーは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化及びそれぞれGs又はGiタンパク質サブユニットによるcAMPシグナル伝達経路の続く刺激又は阻害を通して、少なくとも部分的に、それらの生物学的効果を伝達する。リラキシン2は、GPCR RXFP1(LGR7としても知られている)及び程度はより低いが、GPCR RXFP2(LGR8としても知られている)を活性化して、したがって、Gs-cAMP依存性のシグナル伝達経路を刺激し、セカンドメッセンジャー分子cAMPの増加に至ることが知られている。
【0070】
本明細書において使用されるように、用語「リラキシン活性」は、リラキシン分子が、リラキシン受容体に結合する及び/又は前記リラキシン受容体を活性化する及び/又は細胞の内部でシグナル伝達カスケードを開始する能力を指す。リラキシン活性がリラキシン2活性である実施形態では、リラキシン活性は、受容体RXFP1及び/又はRXFP2に結合する及び/又はそれを活性化する能力を指してもよい。用語「リラキシン活性」は、「生物学的活性」と区別なく使用されてもよい。
【0071】
リラキシン活性は、リラキシン受容体へのリラキシン分子の結合を測定することによって及び/又はリラキシン受容体への結合の下流のイベントを測定することによって決定されてもよい。
【0072】
リラキシン活性は、インビトロにおいて及び/又はインビボにおいて決定されてもよい。いくつかの実施形態では、リラキシン活性は、インビトロにおいて決定される。
【0073】
リラキシン活性は、受容体のリラキシンによる活性化の下流の分子の量及び/又は存在を測定することによって決定されてもよい。例えば、リラキシン活性は、受容体のリラキシンによる活性化後のcAMP産生を測定することによって決定されてもよい。リラキシン誘発性のcAMP生成の検出のための方法は、当技術分野において知られている。このような方法としては、cAMP ELISA、HTRF cAMPアッセイ及びHitHunter(登録商標)cAMPアッセイが含まれる。いくつかの実施形態では、リラキシン活性は、例えば、実施例3で実施されるようなHTRF cAMPアッセイによりリラキシン誘導cAMP産生を測定することによって決定される。リラキシン活性はまた、受容体のリラキシンによる活性化後の一酸化窒素(NO)産生を測定することによって決定されてもよい。リラキシン活性はまた、受容体のリラキシンによる活性化の下流の分子の活性化を測定することによって決定されてもよい。例えば、リラキシン活性は、p42/44 MAPKの活性化を測定することによって決定されてもよい。
【0074】
或いは、又は加えて、リラキシン活性は、既知のリラキシン標的遺伝子の活性化を測定することによって決定されてもよい。例えば、リラキシン活性は、THP-1細胞における既知のリラキシン標的遺伝子、VEGFの転写の活性化を測定することによって決定されてもよい。遺伝子の転写の活性化を決定する方法は、当技術分野において知られており、mRNAの定量PCR分析を含む。VEGF mRNAの相対的な発現は、Xiao et al.(2013)Nat Commun.4:1953に記載されるように、リラキシンとのTHP-1細胞のインキュベーション後にVEGF転写物の定量リアルタイムPCR誘導によって測定することができる。
【0075】
或いは、又は加えて、リラキシン活性は、リラキシンの1つ以上の下流の効果を測定することによって決定されてもよい。例えば、心肥大の低下は、心エコー法、標準的な方法による体重及び/又は下腿長に比べた左心室重量によって測定することができる。別の実施例では、リラキシン活性は、マッソン三色染色法によって線維症低下を測定することによって決定されてもよい。別の実施例では、リラキシン活性は、線維化促進性(profibrotic)因子(TGF-ベータなど)の阻害、線維芽細胞増殖及び分化の阻害、並びに/又はMMP媒介性の細胞外マトリックス分解の活性化などのような結合組織代謝の変化を測定することによって決定されてもよい(Bathgate RA et al.(2013)Physiol Rev.93(1):405-480)。
【0076】
いくつかの実施態様では、リラキシン活性は、例えば実施例7で実施されるように、イソプロテレノール誘発性心肥大(脛骨長に対する心臓重量として測定される)及び線維化(心臓重量に対するコラーゲン含有量として測定される)の回復を測定することにより決定される。
【0077】
本発明のヘテロ二量体融合物の活性は、基準リラキシンタンパク質と比較して決定され得る。いくつかの実施形態では、基準リラキシンタンパク質は、組換えタンパク質である。好ましい実施形態では、基準リラキシンタンパク質は、成熟リラキシンタンパク質のリラキシンA鎖及びリラキシンB鎖のアレイを有するリラキシンタンパク質である。成熟リラキシンタンパク質のリラキシンA鎖及びリラキシンB鎖のアレイを有する組換えリラキシンは市販されている。例えば、組換えヒトリラキシン2、マウスリラキシン1及びINSL3は、R&D systemsから入手可能である(それぞれ、カタログ番号6586-RN、6637-RN及び4544-NS)。
【0078】
いくつかの実施形態では、基準リラキシンタンパク質は、本発明のヘテロ二量体融合物と同じリラキシンA鎖及びリラキシンB鎖を有する又は10以下のアミノ酸、例えば1つ若しくは2つのアミノ酸が、本発明のヘテロ二量体融合物のリラキシンA鎖及びリラキシンB鎖と異なる。ある実施形態では、基準となるリラキシン2のB鎖の第1のアミノ酸は、Dであり、このアミノ酸は、本発明のヘテロ二量体融合物のリラキシンB鎖において欠失している。
【0079】
基準リラキシンタンパク質は、
(i)組換えヒトリラキシン2(本明細書では、RELAX0013と呼ばれる)、並びに
(ii)組換えマウスリラキシン1(本明細書では、RELAX0014と呼ばれる)、並びに
(iii)リラキシンA及びリラキシンBが単鎖に融合しており、且つFcが半減期延長Fc領域である、組換えFc融合リラキシン2(本明細書では、RELAX0010と呼ばれ、国際公開第2018/138170号パンフレットに記載されている)、並びに
(iv)リラキシンA及びリラキシンBが単鎖に融合しており、且つFcが半減期延長Fc領域である、組換えFc融合リラキシン2(本明細書では、RELAX0009と呼ばれ、国際公開2018/138170号パンフレットに記載されている)、並びに
(v)リラキシンA及びリラキシンBが単鎖に融合されている、組換えFc融合リラキシン2(本明細書では、RELAX0126と呼ばれ、国際公開第2013/004607号パンフレットに記載されている)、並びに
(vi)リラキシンA及びリラキシンBが単鎖に融合されている、組換えFc融合リラキシン2(本明細書では、RELAX0127と呼ばれ、国際公開第2013/004607号パンフレットに記載されている)、並びに
(vii)リラキシンA及びリラキシンBが単鎖に融合されている、組換えFc融合リラキシン(本明細書では、RELAX0128と呼ばれ、国際公開第2013/004607号パンフレットに記載されている)から選択され得る。
【0080】
特に好ましい実施形態では、基準リラキシンタンパク質は、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号P04090.1に開示されている成熟リラキシン2タンパク質のリラキシン2鎖A及びリラキシン2B鎖のアレイを有するリラキシン2タンパク質である。
【0081】
本発明のヘテロ二量体融合物は、それらが、基準リラキシンタンパク質の活性の少なくとも一部を示す場合、リラキシン活性を有すると考えられてもよい。例えば、融合ポリペプチドは、それが、基準リラキシンタンパク質の活性の少なくとも約半分を有する場合、リラキシン活性を有すると考えられてもよい。本発明のヘテロ二量体融合物は、基準リラキシンタンパク質の活性に対する前記融合ポリペプチドの活性の比が、約10-5及び約1の間、約10-4及び約1の間、約10-3及び約1の間、約10-2及び約1の間、約1/50及び約1の間、約1/20及び約1の間、約1/15及び約1の間、約1/10及び約1の間、約1/5及び約1の間、約1/2及び約1の間である場合、リラキシン活性を有すると考えられてもよい。或いは、本発明のヘテロ二量体融合物は、基準リラキシンタンパク質の活性に対する前記融合ポリペプチドの活性の比が、約1~約105、約1~約104、約1~約103、約1~約100、約1~約50、約1~約20、約1~約15、約1~約10、約1~約5、又は約1~約2であれば、リラキシン活性を有するとみなされ得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、基準リラキシンタンパク質のリラキシン活性に対するヘテロ二量体融合物のリラキシン活性は、約0.001~約10である。
【0083】
リラキシン活性は、EC50値として決定されてもよい。本明細書において使用されるように、用語「EC50」(半有効濃度)は、ベースライン及び特定の暴露時間の後の最大値の間の中間の応答を誘発する治療用化合物の有効な濃度を指す。
【0084】
ヘテロ二量体化ドメイン
本発明のヘテロ二量体融合物は、第1のヘテロ二量体化ドメイン及び第2のヘテロ二量体化ドメインを含む。好ましい実施形態では、第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインは、免疫グロブリンFc領域に由来する。
【0085】
用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義し、これは、インタクトな抗体のパパイン消化によって生成され得る。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、CH2ドメイン及びCH3ドメインの2つの定常ドメインを含み、場合によりCH4ドメインを含む。
【0086】
第1及び第2のFc領域は、免疫グロブリンドメインCH2及び/又はCH3を含み得る。好ましい実施形態では、第1及び第2Fc領域は、免疫グロブリンドメインCH2及びCH3を含む。
【0087】
Fc領域は、任意の種、好ましくはヒト(例えばヒトIgG)からの免疫グロブリン(例えばIgG)に由来するものであってよい。Fc領域がIgGに由来する実施形態では、Fc領域は、任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のIgG、好ましくはIgG1に由来し得る。好ましくは、第1及び第2のFc領域は、ヒトIgG1免疫グロブリンに由来する。他の実施形態では、第1及び第2のFc領域は、ヒトIgG4免疫グロブリンに由来する。
【0088】
好ましい実施形態では、第1及び第2のFc領域は、ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異及び/又は修飾を含む。そのような修飾は、第1及び第2のFc領域の各々への不斉相補的修飾の導入を含んでもよく、その結果、両方の鎖は互いに適合性となり、従って、ヘテロ二量体を形成することができるが、各鎖はそれ自身と二量体化することはできない。そのような修飾は、挿入、欠失、保存的及び非保存的置換並びに再構成を包含し得る。このような修飾の組込みによって、組換え細胞培養により産生されるヘテロ二量体の収率を、ホモ二量体などの他の不要な最終産物に比して増加させる方法を提供する。
【0089】
第1及び第2のFc領域は、当該技術分野において公知の任意のヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異及び/又は修飾を含み得る。修飾の組み合わせを用いて、抗体の安定性への影響を最小限に抑えながら、アセンブリの効率を最大化することができる。
【0090】
「ノブ・イン・ホール」法では、接触する残基の間に立体障害を導入することによりヘテロ二量体化が促進され得る。「突起」は、1つのFc領域(「Fcノブ」)の界面からの1つ以上の小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置換することによって生成される。大きな側鎖と同じか又は類似のサイズの補償「キャビティ」は、大きな側鎖を有するアミノ酸をより小さな側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン又はバリン)で置換することによって、他のFc領域(「Fcホール」)の界面に形成される。「ノブ・イン・ホール(Knob-in-holes)」修飾については、例えば、Ridgway JB et al.(1996)Protein Eng.9(7)617-621、Merchant AM et al.(1998)Nat.Biotechnol.16(7):677-681で詳細に説明されている。
【0091】
ヘテロ二量体を生成するために使用され得る他の修飾としては、限定されないが、2つのFc領域間の好ましい静電相互作用を生成する修飾がある。例えば、1つ以上の正荷電アミノ酸を1つのFc領域に導入してもよく、1つ以上の負荷電アミノ酸を他のFc領域の対応する位置に導入してもよい。これに代わり又は加えて、Fc領域は、ジスルフィド結合を形成することができるシステイン残基を導入する突然変異を含むように修飾してもよい。これに代わり又は加えて、Fc領域は、ヘテロ二量体形成をホモ二量体形成よりもエントロピー的及びエンタルピー的に有利にするために、鎖間の界面における親水性及び疎水性残基に対する1つ以上の修飾を含み得る。
【0092】
従って、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異及び/又は修飾は、接触残基間に立体障害を生じさせ(例えば「ノブ・イン・ホール」により)、2つのFc領域間に好ましい静電相互作用を生成して、ジスルフィド結合を形成することができるシステイン残基を導入し、且つ/又は2つのFc領域間の界面で親水性残基及び疎水性残基を修飾する。
【0093】
好ましい実施形態では、ヘテロ二量体化促進アミノ酸突然変異は、「Fcノブ(Knob)」及び「Fcホール(Hole)」突然変異である。好ましい実施形態では、「Fcノブ」及び「Fcホール」突然変異は、CH3ドメインに存在する。
【0094】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のFc領域は、ヒトIgG1免疫グロブリンに由来し、CH3ドメインに突然変異を有する「Fc X」及び「Fc Y」を含み、ここで、「Fc X」及び「Fc Y」突然変異は、表2に記載される組み合わせ(又はそれらの保存的置換)から選択される。
【0095】
【0096】
好ましい実施形態では、「Fc Y」は、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407V、又はそれらの保存的置換を有する「Fcホール」であり、「Fc X」は、突然変異S354C及びT366W、又はそれらの保存的置換を有する「Fcノブ」であり、ここで、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0097】
「KabatのEUインデックス」という用語は、Kabat EA et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.Public Health Service.National Institutes of Health.Bethesda,MDに記載されるヒトlgG1 EU抗体のナンバリング方式を指す。本出願で参照されるアミノ酸の位置は全てEUインデックスの位置を指す。
【0098】
いくつかの実施形態では、第1のFc領域は「Fcホール」突然変異を有し、第2のFc領域は「Fcノブ」突然変異を有する。別の好ましい実施形態では、第1のFc領域は「Fcノブ」突然変異を有し、第2のFc領域は「Fcホール」突然変異を有する。
【0099】
Fc領域が、野生型Fc領域に対して他のアミノ酸修飾を更に含んでもよいことは理解されよう。Fc領域は、例えば、FcRnに対するIgG分子の親和性を高めるように修飾することができる。国際公開第02/060919号パンフレットは、1つ以上のアミノ酸修飾を有するFc領域を含む修飾免疫グロブリンを開示し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。1つ以上のアミノ酸修飾を有するFc領域を作製する方法は、当該技術分野において公知である。
【0100】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のFc領域は、Fc領域のエフェクター機能を低減又は消失させるための1つ以上のアミノ酸修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸修飾は、細胞傷害、例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を低減又は回避する。
【0101】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のFc領域は、ヘテロ二量体融合物の半減期を増加させるための1つ以上のアミノ酸改変を含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のFc領域は、以下のアミノ酸突然変異の組み合わせ:
(i)M252Y、S254T、及びT256E、若しくはそれらの保存的置換、
(ii)L234F、L235Q、及びK322Q、若しくはそれらの保存的置換、
(iii)L234F、L235E、及びP331S、若しくはそれらの保存的置換、
(iv)M252Y、S254T、T256E、L234F、L235Q、及びK322Q、若しくはそれらの保存的置換、又は
(v)M252Y、S254T、T256E、L234F、L235E、及びP331S、若しくはそれらの保存的置換のうち少なくとも1つを含み、
ここでアミノ酸のナンバリングはKabatのEUインデックスに従う。
【0103】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のFc領域は、アミノ酸突然変異L234F、L235E及びP331S、若しくはそれらの保存的置換を含んでもよく、ここで、アミノ酸ナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0104】
いくつかの実施形態において、「Fcホール」突然変異を含むFc領域は、配列番号3に記載の配列又はその変異体を有し、「Fcノブ」突然変異を含むFc領域は、配列番号4に記載の配列又はその変異体を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、Y349に戻されたアミノ酸突然変異Y349Cを有する配列番号3変異体と、S354に戻されたアミノ酸突然変異S354Cを有する配列番号4変異体とを含み、その結果、Fc領域は、安定化ジスルフィド結合を形成することができない。
【0106】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、配列番号3変異体及び/又は配列番号4変異体を含み、ここで、最初の5残基DKTHTCPPC(配列番号69)が修飾されている。いくつかの実施形態では、この領域は、配列DKTHTACPPC(配列番号70)で置換される。別の実施形態では、この領域は、配列GGAGGACPPC(配列番号71)で置換される。別の実施形態では、この領域は、配列ACPPC(配列番号72)で置換される。
【0107】
別の実施形態では、第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインは、免疫グロブリンFab領域に由来する。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化ドメインは、CH1及びCL領域を含む。L鎖及びFd鎖を含むFab領域は、効率的なヘテロ二量体化を媒介することが判明している(Schoonjans R et al.(2000)J.Immunol.165(12):7050-7057)。従って、別の実施形態では、ヘテロ二量体化ドメインは、L鎖及びFd鎖を含む。いくつかの実施形態では、L鎖及びFd鎖は、ヘテロ二量体化して、ジスルフィド架橋安定化ヘテロ二量体を形成する。
【0108】
更に別の実施形態では、第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインは、ヘテロ二量体化して、平行なコイルドコイルを形成する。ヘテロ二量体コイルドコイルは、例えば、Aronsson et al.(2015)Sci.Rep.5:14063で説明されている。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化ドメインは、折り畳まれた望ましくないアセンブリの形成を防止するため、及び/又は平行コイルドコイルの形成を促進するためのアミノ酸突然変異及び/又は修飾を含む。
【0109】
第1及び第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば、第1及び第2のFc領域)は、半減期延長部分を形成し得る。従って、いくつかの実施形態では、本発明のヘテロ二量体融合物は、基準リラキシンと比較して長い半減期を有する。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「半減期」は、血漿中の融合タンパク質の濃度がその本来のレベルの50%に低下するのにかかる時間を指すために用いられる。血漿中のタンパク質の「半減期」は、タンパク質のサイズ、その安定性、その除去速度、代謝回転率、インビボのタンパク質分解、身体又は特定の組織による吸収速度などの様々な要因に応じて変動し得る。タンパク質の半減期を測定する方法は当該技術分野で既知であり、また下記の実施例で説明されている。
【0111】
本発明者らは、免疫グロブリンFcに由来する第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインを有する本発明のヘテロ二量体融合物が、マウスモデルにおいて少なくとも5時間の半減期を有することを明らかにした(実施例6参照)。比較すると、IV投与後のヒトリラキシン2の半減期は、約0.09+/-0.04時間、すなわちヒトでは5.4+/-2.4分間である(Chen SA et al.(1993)Pharm.Res.10(6):834-838)。
【0112】
半減期の延長は、安全で都合のよい投薬スケジュール、例えばより少ない頻度で投与され得るより少ない用量に従って治療用タンパク質が投与されることを可能にするため、有利であることが認められるであろう。更に、より少ない用量の達成は、改善された安全性プロファイルの提供及び/又はインビボにおける多数の作用メカニズムの活性化などのような、更なる利点をもたらしてもよい。
【0113】
コネクター
リラキシンA鎖及びB鎖の一方又は両方は、コネクターポリペプチドによってそれぞれのヘテロ二量体化ドメインに連結してもよい。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖は、コネクターポリペプチドを介して第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)に連結され、リラキシンB鎖は、コネクターポリペプチドを介して第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)に連結される。
【0114】
コネクターポリペプチドは、任意の適した長さ、例えば、長さが約6~40アミノ酸、好ましくは長さが約6~21アミノ酸であってよい。いくつかの実施形態では、コネクターポリペプチドは、長さが少なくとも6アミノ酸残基、好ましくは少なくとも11アミノ酸長、好ましくは少なくとも16アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、コネクターポリペプチドは、長さが40アミノ酸未満である。異なる又は同じ長さのコネクターポリペプチドを、本発明のヘテロ二量体融合物の各アームに使用することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコネクターポリペプチドは、21アミノ酸の長さを有する。好ましい実施形態では、両方のコネクターポリペプチドは、21アミノ酸の長さを有する。コネクターポリペプチドは、任意のアミノ酸配列を有してよい。異なる又は同一のアミノ酸組成のコネクターポリペプチドを、本発明のヘテロ二量体融合物の各アームに使用することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、一方又は好ましくは両方のコネクターポリペプチドは、プロリン及びアラニンリピート(PA)x(配列番号73)を含み、好ましくは、xは、3~15であり、好ましくは、コネクターポリペプチドは、16アミノ酸を超える長さを有し、好ましくは、コネクターポリペプチドは、21アミノ酸配列PAPAPAPAPAPAPAPAPAPAG(配列番号6)から構成される。
【0116】
いくつかの実施形態では、一方又は好ましくは両方のコネクターポリペプチドは、Chen X et al.(2013)Adv.Drug.Deliv.Rev.65(10):1357-1369に記載されているものなどのグリシン及びセリンリピートを含む。いくつかの実施形態では、一方又は両方のコネクターポリペプチドは、モチーフ(GGGGS)n(配列番号74)を含み、ここで、nは1~8であってよく、例えば、nは4である。いくつかの実施形態では、1つ以上のコネクターポリペプチドが、21アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)から構成される。特定の実施形態では、両方のコネクターポリペプチドが、21アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)から構成される。
【0117】
いくつかの実施形態では、一方のコネクターポリペプチドは、本明細書に記載のプロリン及びアラニンリピートを含み、他方のコネクターポリペプチドは、本明細書に記載のグリシン及びセリンリピートを含む。
【0118】
或いは、リラキシンA鎖及びB鎖の一方又は両方は、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖などの合成コネクターポリペプチドによってそれぞれのヘテロ二量体化ドメインに連結してもよい。従って、リラキシンA鎖は、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖などの合成コネクターを介して第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)に連結してもよく、リラキシンB鎖は、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖などの合成コネクターを介して第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)に連結してもよく、ここで、合成コネクターは、ヘテロ二量体化ドメイン(例えばFc領域)に共有結合又は非共有結合で結合され得る。PEG化、即ち、PEGポリマー鎖を分子に付着させるプロセスは、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。
【0119】
安定性
本発明者らは、本発明のヘテロ二量体融合物が予想外に優れた物理的及び化学的安定性を有することを明らかにした。従って、いくつかの実施形態では、本発明のヘテロ二量体融合物は、基準リラキシンタンパク質と比較して優れた物理的及び/又は化学的安定性を有する。
【0120】
リラキシンの物理的安定性は、実施例9のように例えばHP-SECによって純度及び凝集を測定することによって決定され得る。リラキシンの化学的安定性は、実施例9のように、例えばLC-MSにより、分子のフラグメント化及び修飾を測定することによって決定され得る。
【0121】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明のヘテロ二量体融合物が、(個別の融合ポリペプチドにおけるリラキシンA及びBではなく)リラキシンA及びリラキシンBが単鎖に融合されている組換えFc融合リラキシンと比較して、優れた物理的及び化学的安定性を有することを明らかにした。国際公開第2013/004607号パンフレットは、免疫グロブリンFc領域に融合した組換え単鎖リラキシン融合ポリペプチド、例えば本明細書においてRELAX0127及びRELAX0128と呼ばれる融合ポリペプチドを記載している。従って、いくつかの実施形態では、本発明のヘテロ二量体融合物は、RELAX0127及びRELAX0128と比較して、優れた物理的及び/又は化学的安定性を有する。
【0122】
ヘテロ二量体融合物は、第1及び第2のヘテロ二量体化ドメインに加えて、半減期延長部分を含み得る。いくつかの実施形態では、半減期延長部分は、タンパク質性半減期延長部分である。タンパク質性半減期延長部分は、免疫グロブリンのFc領域、アルブミン結合ドメイン及び血清アルブミンからなる群から選択することができる。更なる実施形態では、半減期延長部分は、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖などのタンパク質又はペプチドではない化学物質である。
【0123】
半減期延長部分は、第1又は第2のヘテロ二量体化ドメインのN末端又はC末端に付着させることができる。いくつかの実施形態では、半減期延長部分は、第1又は第2のヘテロ二量体化ドメインのN末端に付着させる。他の実施形態では、半減期延長部分は、第1又は第2のヘテロ二量体化ドメインのC末端に付着させる。半減期延長部分をヘテロ二量体融合物に付着させる方法は、当該技術分野において公知である。例えば、半減期延長部分は、化学的結合又は組換え技術によって付着させることができる。半減期延長部分は、ヘテロ二量体融合物に直接又はコネクター(例えばコネクターポリペプチド)を介して付着させることができる。コネクターポリペプチドの使用は、融合ポリペプチドがFc領域などのタンパク質性半減期延長部分を含む場合に特に適切であり得る。
【0124】
例示的な実施形態
本発明のヘテロ二量体融合物は、様々なフォーマット及び/又は配列を有し得る。
【0125】
用語「本発明の融合ポリペプチド」及び「本発明の融合ポリペプチド」は、リラキシンA鎖に融合した第1のヘテロ二量体化ドメイン、及び/又はリラキシンB鎖に融合した第2のヘテロ二量体化ドメインを指すために使用され得る。本発明の融合ポリペプチドは、組換え融合ポリペプチド、即ち、組換えDNA技術によって作製されたものであってもよい。
【0126】
好ましい実施形態では、第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)のC末端はリラキシンA鎖のN末端に連結し、第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)のC末端はリラキシンB鎖のN末端に連結する。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖ポリペプチド及び/又はリラキシンB鎖ポリペプチドは、遊離C末端を有する。
【0127】
別の実施形態では、第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)のN末端は、リラキシンA鎖のC末端に連結し、第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)のN末端は、リラキシンB鎖のC末端に連結する。いくつかの実施形態では、リラキシンA鎖ポリペプチド及び/又はリラキシンB鎖ポリペプチドは、遊離N末端を有する。
【0128】
本発明のヘテロ二量体融合物は、1つ以上のFabを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体融合物は、第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)のN末端に連結された1つのFabと、第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)のN末端に連結された第2のFabとを含む。
【0129】
本発明のヘテロ二量体融合物は、第2のリラキシンA鎖ポリペプチド又はその変異体と、第2のリラキシンB鎖ポリペプチド又はその変異体を更に含み得る。いくつかの実施形態では、第2のリラキシンA鎖ポリペプチド又はその変異体は、第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)のN末端に連結し、第2のリラキシンB鎖ポリペプチド又はその変異体は、第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)のN末端に連結し、任意選択的に、この場合、第2のリラキシンA鎖は、コネクター(例えばコネクターポリペプチド)を介して第1のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第1のFc領域)に連結し、第2のリラキシンB鎖は、コネクター(例えばコネクターポリペプチド)を介して第2のヘテロ二量体化ドメイン(例えば第2のFc領域)に連結する。
【0130】
従って、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体融合物のフォーマットは、
(i)FcX-con-A/FcY-con-B(例えば、
図1を参照)、
(ii)FcX-con-B/FcY-con-A(例えば、
図1を参照)、
(iii)A-con-FcX/B-con-FcY(例えば、
図1を参照)、
(iv)B-con-FcX/A-con-FcY(例えば、
図1を参照)、
(v)Fab-FcX-con-A/Fab-FcY-con-B(例えば、
図1を参照)、
(vi)Fab-FcX-con-B/Fab-FcY-con-A、
(vii)A-con-FcX-con-A/B-con-FcY-con-B(例えば、
図1を参照)、
(viii)B-con-FcX-con-B/A-con-FcY-con-A、
(ix)FcX-con-B-L-A、及びFcY、任意選択的にFcY-con-B-L-A(例えば、
図1を参照)、
(x)FcY-con-B-L-A、及びFcX、任意選択的にFcX-con-B-L-A、
(xi)FcX-con-A-L-B、及びFcY、任意選択的にFcY-con-A-L-B、並びに
(xii)FcY-con-A-L-B、及びFcX、任意選択的にFcX-con-A-L-Bから選択され、
式中、
FcYは、好ましくは、アミノ酸突然変異Y349C:T366S:L368A:Y407V、又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcホール」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有する免疫グロブリンFc領域であり、
FcXは、好ましくは、アミノ酸突然変異S354C:T366W又はそれらの保存的置換を有するCH3ドメインを含む「Fcノブ」アミノ酸突然変異及び/又は修飾を有するFc領域であり、
「con」は、コネクターポリペプチドであり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体であり、
AはリラキシンA鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくは、アミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドである。
【0131】
別の態様では、本発明は、
(i)X-B-L-A及びY、任意選択でY-B-L-A、又は
(ii)Y-B-L-A及びX、任意選択でX-B-L-Aを含むヘテロ二量体融合物を提供し、
式中、
X及びYは、本明細書に記載のヘテロ二量体化ドメインであり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくはアミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここで、XはYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物は、リラキシン活性を有する。
【0132】
更に別の態様では、本発明は、
(i)X-A-L-B及びY、任意選択でY-A-L-B、又は
(ii)Y-A-L-B及びX、任意選択でX-A-L-Bを含むヘテロ二量体融合物を提供し、
式中、
X及びYは、本明細書に記載のヘテロ二量体化ドメインであり、
Aは、リラキシンA鎖又はその変異体、例えばリラキシン2A鎖又はその変異体であり、
Bは、リラキシンB鎖又はその変異体、例えばリラキシン2B鎖又はその変異体であり、
Lは、好ましくは、アミノ酸配列GGGSGGGSGG(配列番号60)を有するリンカーポリペプチドであり、
ここで、XはYとヘテロ二量体化し、ヘテロ二量体融合物は、リラキシン活性を有する。
【0133】
本発明の全ての態様による特に好ましい実施形態では、ヘテロ二量体融合物は、配列番号11に記載の融合ポリペプチドRlx011DD及び配列番号20に記載のRlx014DDを含む。ヘテロ二量体融合物は、「RELAX0023」又は「AZD3427」とも称され得る。
【0134】
別の好ましい実施形態では、ヘテロ二量体融合物は、配列番号17に記載の融合ポリペプチドRlx013DD及び配列番号14に記載のRlx012DDを含む。
【0135】
本発明の態様では、表3に記載されるFcXとFcYの組み合わせから選択される融合ポリペプチドの組み合わせを含むヘテロ二量体融合物が提供される。
【0136】
【0137】
【0138】
本発明の全ての態様によれば、本明細書に記載の肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法に使用するための、配列番号11及び配列番号20に記載の融合ポリペプチドを含むヘテロ二量体融合物が提供される。
【0139】
或いは、本発明の全ての態様によれば、本明細書に記載の肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法に使用するための、配列番号17及び配列番号14に記載の融合ポリペプチドを含むヘテロ二量体融合物が提供される。
【0140】
本発明の融合ポリペプチドは、当技術分野において知られている任意の方法によって生成されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、宿主細胞における、融合ポリペプチドをコードする核酸分子の組換え発現によって生成される。
【0141】
当業者らに既知の方法は、本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸分子を含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。好適なベクターとしては、例えばプラスミド、ファージミド、ファージ、又はウイルスベクターが挙げられる。
【0142】
本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸分子を含有するベクターは、従来の技術によって宿主細胞に移入され得る。好適な宿主細胞は、当技術分野で既知である。宿主細胞は、HEK293細胞又はCHO細胞などの哺乳動物細胞であり得る。
【0143】
トランスフェクトされた細胞は、本発明の融合ポリペプチドを産生するために、従来の技術によって培養されてもよい。
【0144】
一旦、本発明の融合ポリペプチドが、例えば組換え発現によって産生されたら、それは、当技術分野において知られている任意の方法によって精製されてもよい。例示的なタンパク質精製技術は、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、アフィニティー、及び/又はサイジングカラムクロマトグラフィー(sizing column chromatography))、遠心分離法、並びに溶解度差(differential solubility)を含む。本開示は、任意選択的に少なくとも1つの精製ステップによって、細胞培養物から分離された単離融合ポリペプチドを提供する。
【0145】
治療方法
本発明の融合ポリペプチドは、医薬組成物において提供されてもよい。
【0146】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を含み得る。薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野で既知であり、例えばその全体が本明細書に援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Joseph P.Remington著,18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA)を参照されたい。
【0147】
本発明は、本明細書に記載のヘテロ二量体融合物(又は医薬組成物)を投与することによって肺高血圧症合併心不全を有する対象を治療する方法、並びに、上記のヘテロ二量体融合物(又は上記の医薬組成物)の使用、及び上記の方法で使用するための上記のヘテロ二量体融合物(又は上記の医薬組成物)に関する。具体的には、対象は動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトであり得る。
【0148】
使用又は方法は、野生型リラキシン分子の治療的に有効な投薬スケジュールよりも本発明のヘテロ二量体融合物/融合ポリペプチドの投薬頻度が低い、治療的に有効なスケジュールを施行するステップを含んでいてもよい。
【0149】
本明細書において使用されるように、用語「心不全」は、急性心不全、慢性心不全(CHF)、及び急性非代償性心不全(ADHF)を含む。用語「心不全」はまた、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率が軽度低下した心不全、又は駆出率が低下した心不全(HFrEF)などの、より詳細な診断を含んでいてもよい。これは、肥大型心筋症又は拡張型心筋症が原因の心不全も含み得る。
【0150】
本明細書で使用する時、用語「肺高血圧症」とは、典型的には安静時に、平均肺動脈圧が約20mmHg以上、好ましくは25mmHg以上の対象として定義され得る。これはまた、典型的には対象が運動中であるか最近運動した時の、約30mmHg以上の平均肺動脈圧としても定義され得る。したがって、対象は、約20mmHg~約30mmHg、好ましくは約25mmHg~約30mmHg、又はこれ以上の範囲の平均肺動脈圧を有し得る。或いは又は更には、対象は、
a.約40mmHg以上の右心室収縮期圧、
b.約15mmHgを超える肺動脈楔入圧(PAWP)、及び/又は
c.以下の肺血管抵抗:
i.3.0未満のウッド単位、若しくは
ii.3.0以上のウッド単位
を有し得る。
【0151】
したがって、場合によっては、肺高血圧症は、世界保健機関(World Health Organisation)による定義でグループ2の肺高血圧症に分類され得る。これはまた、「左心疾患が原因の肺高血圧症合併心不全」と称することもできる。他の場合では、肺高血圧症は、世界保健機関(World Health Organisation)による定義でグループ1の肺動脈高血圧症に分類され得る(Ryan et al.,2012,Pulm.Circ.2(1):107-121を参照されたい)。
【0152】
肺高血圧症及び心不全のパラメータは、当該技術分野で既知の技法を用いて測定又は推定することができる。例えば、これらとしては、心エコー検査法、肺動脈カテーテル法、及び植え込み型監視装置が挙げられる。特定の実施形態では、当該技術分野で知られているように、対象は、血圧監視装置、好ましくは肺動脈圧監視装置を装着してもよい。特定の実施形態では、肺動脈圧監視装置はCardioMEMS圧力監視装置である。典型的には、この装置は、本明細書に記載される本発明のヘテロ二量体融合物による治療の前に装着される。或いは、対象は、治療期間中又は治療期間後にこの装置を装着する。
【0153】
本明細書で使用する時、「肺高血圧症合併心不全」という用語は、肺高血圧症を同時に患う心不全対象の小集団(HF+PH対象)を指す。
【0154】
「治療」とは、標的疾患の1つ以上の症状又は原因の改善及び/又は排除を指す。いくつかの実施形態では、これは、1つ以上の生物学的マーカー又は機能のレベルが(健康なコホートと比較して)健常範囲内になるように変化させることを伴い得る。例えば、本発明のヘテロ二量体融合物は、対象の肺血管抵抗(PVR)を減少させ得る。例えば、治療後のPVRは、ベースラインPVR(本発明のヘテロ二量体融合物を対象に投与する前の)と比較して、少なくとも1%~10%、1%~20%、1%~30%、1%~40%、若しくは1%~50%、又はこれ以上減少され得る。したがって、本発明のヘテロ二量体融合物は、対象のPVRを、ベースラインPVR(本発明のヘテロ二量体融合物を対象に投与する前の)と比較して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、又はそれ以上減少させ得る。更に又は加えて、本発明のヘテロ二量体融合物は、対象の平均肺動脈圧(mPAP)を減少させ得る。例えば、mPAPは、少なくとも1mmHg~15mmHg以上減少され得る。したがって、本発明のヘテロ二量体融合物は、対象の平均肺動脈圧を少なくとも1mmHg、少なくとも2mmHg、少なくとも3mmHg、少なくとも4mmHg、少なくとも5mmHg、少なくとも6mmHg、少なくとも7mmHg、少なくとも8mmHg、少なくとも9mmHg、少なくとも10mmHg、少なくとも11mmHg、少なくとも12mmHg、少なくとも13mmHg、少なくとも14mmHg、若しくは少なくとも15mmHg、又はそれ以上減少させ得る。同様に、本発明のヘテロ二量体融合物は、対象の推定肺動脈拡張期圧(ePAD)を減少させ得る。例えば、ePADは、少なくとも1mmHg~15mmHg以上減少され得る。したがって、本発明のヘテロ二量体融合物は、対象の推定肺動脈拡張期圧を少なくとも1mmHg、少なくとも2mmHg、少なくとも3mmHg、少なくとも4mmHg、少なくとも5mmHg、少なくとも6mmHg、少なくとも7mmHg、少なくとも8mmHg、少なくとも9mmHg、少なくとも10mmHg、少なくとも11mmHg、少なくとも12mmHg、少なくとも13mmHg、少なくとも14mmHg、若しくは少なくとも15mmHg、又はそれ以上減少させ得る。更に又は或いは、本発明のヘテロ二量体融合物は、心拍出量の指標としての対象のパーセント駆出率(EF%)を増加させ得る。例えば、EF%は、少なくとも1%~10%、1%~20%、1%~30%、1%~40%、若しくは1%~50%、又はこれ以上増加し得る。したがって、本発明のヘテロ二量体融合物は、対象のパーセント駆出率(EF%)を、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、又はそれ以上増加させ得る。更に又は或いは、本発明のヘテロ二量体融合物は、ベースラインレベルの投与前と比較して、対象の、
a)心臓の1回拍出量(SV)を増加させ得、
(b)全身血管抵抗(SVR)を低下させ、且つ/若しくは推算糸球体濾過量(eGFR)を増加させ得、
(c)駆出率を増加させ得、並びに/又は
(d)心拍出量を増加させ得る。SVRの低下とeGFRの増加との組み合わせは、臓器潅流の改善を示すものである。
【0155】
したがって、本発明のヘテロ二量体融合物は、ベースラインレベルの投与前と比較して、対象の
a)PVRを減少させ得、
(b)mPAPを減少させ得、
(c)ePADを減少させ得、
(d)心臓の1回拍出量(SV)を増加させ得、
(e)全身血管抵抗(SVR)を低下させ、且つ/若しくは推算糸球体濾過量(eGFR)を増加させ得、
(f)駆出率を増加させ得、並びに/又は
(g)心拍出量を増加させ得る。SVRの低下とeGFRの増加との組み合わせは、臓器潅流の改善を示すものである。これらのパラメータのうち1つ以上又は全ての変化は、それぞれ1~24週間の治療後に生じ得る。いくつかの実施形態では、これらのパラメータのうち1つ以上又は全ての変化は、24週間の治療後に生じる。
【0156】
特定の実施形態では、Solomonica A,et al.(2013)Circ Heart Fail.6:53-60に記載されるように、本明細書に記載されるようなmPAPの減少が呼吸困難の改善を引き起こす場合がある。
【0157】
本発明の融合ポリペプチド(ひいてはヘテロ二量体融合物も含む)及び/又は医薬組成物は、対象又は患者への非経口投与に好適である。いくつかの実施形態において、対象又は患者は、哺乳動物、特にヒトである。
【0158】
野生型ヒトリラキシン2は、インビボにおいて数分間の半減期を有する。結果として、それは、入院患者において連続静脈内注入によって投与されなければならず、血圧低下を含む重度の副作用を引き起こす。対照的に、本発明の融合ポリペプチド(ひいてはヘテロ二量体融合物も含む)及び/又は医薬組成物の実施形態は、対象又は患者に、注射によって、例えば静脈内、皮下、又は筋肉内注射によって投与され得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチド(ひいてはヘテロ二量体融合物も含む)及び/又は医薬組成物は、皮下注射によって投与される。皮下注射によるなどの注射による投与は、対象又は患者にとってより快適であるという利点及び病院の外で対象又は患者に投与する好機を提供する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチド(ひいてはヘテロ二量体融合物も含む)又は医薬組成物は、自己投与によって投与される。
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明の融合ポリペプチド(ひいてはヘテロ二量体融合物も含む)は、野生型リラキシンと比較して、半減期が増加し、これは、モル濃度に基づく全体的な曝露をより低いものとすることができる。例えば、本発明の融合ポリペプチド(ひいてはヘテロ二量体融合物も含む)は、野生型リラキシンよりも低い頻度で投与されるため、より好都合な投薬スケジュールを提供することができる。
【0160】
本発明の医薬組成物を含むキットが提供され得る。キットは、本発明の医薬組成物及び説明書を含有するパッケージを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、単一用量バイアル又は容器施栓系(例えば、あらかじめ充填されたシリンジ)において製剤化される。こうした容器には任意に、医薬品又は生物由来物質の製造、使用又は販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が添付されていてもよく、通知には、ヒト投与のための製造、使用又は販売に関する当該機関による承認が示される。
【0161】
本明細書において使用されるように、冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つの又は1つを超える(例えば少なくとも1つの)、冠詞の文法上の目的語を指してもよい。
【0162】
「約」は、一般に、測定法の性質又は精度を考慮すれば、測定される数量について許容される程度の誤差を意味してもよい。誤差の例示的な程度は、与えられた値又は値の範囲のパーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0163】
1つ以上の特徴を「含む」として本明細書において記載される実施形態は、そのような特徴「からなる」対応する実施形態の開示とも考えられ得る。
【0164】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書において用いられる場合、動物、より特にヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって認可されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に列記されていることを意味する。
【0165】
濃度、量、容積、パーセンテージ及び他の数値は、範囲形式で本明細書において示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に列挙される数値を含むだけでなく、あたかもそれぞれの数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲を全て含むと柔軟に解釈されるべきであることも理解されるべきである。
【0166】
上記の実施形態は、例示的な例として理解されるべきである。更なる実施形態が想定される。任意の1つの実施形態に関して記載されるいかなる特徴も、単独で又は記載される他の特徴と組み合わせて使用されてもよく、また、任意の他の実施形態又は任意の他の実施形態の任意の組み合わせの1つ以上の特徴と組み合わせて使用されてもよいことが理解されるべきである。更に、上記に記載されない等価物及び変更もまた、添付の請求項において定義される本発明の範囲から逸脱することなく用いられてもよい。
【0167】
本開示に関連して、本明細書において記載される融合ポリペプチド及び方法の他の例及び変形は、当業者に明らかになるであろう。
【0168】
他の例及び変形形態は、添付の特許請求の範囲で述べられるように本開示の範囲内である。本明細書において引用される全ての文献は、引用される文献に示される全てのデータ、表、図及び本文を含めて、それぞれ参照により本明細書に完全に援用される。
【実施例】
【0169】
実施例1:組換えヘテロ二量体Fcリラキシン2融合タンパク質の作製
本明細書に記載のFcリラキシン2融合タンパク質は、リラキシン2の鎖A及びBの正しい折り畳み及びヘテロ二量体化を誘導するように、ノブ・イン・ホールFcドメイン(Fcノブ及びFcホール)のヘテロ二量体化特性を使用して設計されている。
【0170】
より正確には、
図1に示すように、リラキシン2鎖A及びBは、コネクターを介して2つの相補的なFc(FcのN末端及び/又はC末端)に遺伝的に融合されている。次に、CHO細胞を、単一のFc-リラキシン鎖(A及び/又はB)の各々を含む2つの発現ベクターで共トランスフェクトした。2つの相補的なFc部分は、CHO細胞内でアセンブリングするため、リラキシン2のアセンブリ及び正しい折り畳みを容易にする。以下の実施例2に示すように、続いて、相補的なFc鎖の間及び鎖Aと鎖Bとの間にジスルフィド結合が形成され、天然のリラキシン2構造を再構築する。
【0171】
ヘテロ二量体Fcリラキシン2融合タンパク質が上清中に分泌されたら、アフィニティークロマトグラフィーによる自動システムを用いて精製し、ここで、タンパク質のFc領域がカラムマトリックスに結合する。
【0172】
実施例2:Fcリラキシン2ノブ・イン・ホールヘテロダイマーのLC-MS分析
LC-MS分析は、非還元及び還元脱グリコシル化Fc-リラキシン2ヘテロ二量体の両方について実施した。脱グリコシル化のために、サンプルを1mg/mlに希釈し、10mM Tris-Clを用いてpH7.80で緩衝した。PNGase F(Roche)を、50μgのFc-リラキシン2あたり酵素1単位の濃度で試料に添加し、37℃で終夜インキュベートした。非還元分析のために、試料を水中で0.05mg/mlまで希釈し、20μLを、プレスリットキャップ付きのLC-MS認定トータルリカバリーバイアル(Waters部品番号:186005663CV)に投入した。還元分析の場合、10mM TCEPを添加し、分析前にサンプルを更に37℃で30分間インキュベートした。
【0173】
実験は、Xevo G2-XS Q-TOF計器(Waters,Milford,MA)に接続したACQUITY I-Class UPLCを用いて実施し、いずれも、UNIFI Scientific Information Systemを使用して操作した。LCシステムの場合、溶媒Aは0.1%ギ酸を含む水であり、溶媒Bは0.1%ギ酸を含むアセトニトリルであった(いずれもUPLC-MSグレード、BioSolve)。UV検出器を、220nm及び280nmの波長で測定するように設定し、試料チャンバに入れたバイアルを温度4℃に保った。逆相ACQUITY UPLC Protein BEH C4 Column(300Å孔径カラム)(Waters部品番号:186004495)に体積1μLを注入し、6分間かけて5%から75%になる溶媒Bの増加勾配を用いてタンパク質を溶出した。
【0174】
質量分析計は、50%2-プロパノールに2μg/μLのヨウ化ナトリウムを注入することにより500~5000m/zから較正し、locksprayは、200pg/μLのロイシンエンケファリンであった。計器は、以下のキー設定値を用いて、正イオン化モード及び感度解析モードで作動させた:キャピラリー電圧=3.0V;試料コーン電圧=40V;ソース温度=120℃;脱溶媒温度=450℃;コーンガス流量=120L/時;脱溶媒ガス流量=1000L/時;質量範囲=500~5000m/z、スキャン時間=1.0秒。
【0175】
データは、UNIFIソフトウェアで処理した。目的のタンパク質が溶出したクロマトグラムにおける保持時間からスペクトルを合わせた。生データを背景減算し、高分子のMaxEnt1アルゴリズムを使用してデコンボリューションした。実験データを、非還元分析のためのジスルフィド結合と還元分析のための遊離システインを考慮に入れた理論シーケンスの質量と比較した。PNGasE F脱グリコシル化後には、アスパラギンの脱アミド化(+1Da)も考慮した。
【0176】
相補的なFc鎖の間及び鎖Aと鎖Bの間にジスルフィド結合が形成され、天然のリラキシン2構造が再構築されていることをLC-MS分析により確認した。
図2Aは、例として、RELAX0019及びRELAX0023のLC-MSデータを示す。非還元分析では、RELAX0019及びRELAX0023についてそれぞれ58932Da及び59361Daの予想される質量を有するヘテロ二量体の形成が確認され:ホモ二量体は検出されなかった。縮小分析(
図2B)によって、両方の鎖の配列同一性を確認し、それらに修飾がないことが判明した。
【0177】
ジスルフィド結合を同定するための非還元ペプチドマッピング
ヘテロ二量体Fc-リラキシン(50μg)を清浄なサンプルチューブに入れ、17μLの100mMリン酸ナトリウムpH7.0で希釈した。0.5μLの5mg/mlヨードアセトアミドを添加した後、室温で20分間インキュベートすることによって、遊離システインのアルキル化を達成した。アルキル化の後、pH7.0の100mMリン酸ナトリウムバッファーを更に2.5μL添加してから2.5μLの塩化ナトリウムを添加した。40μLの8.0MグアニジンHClの添加によりタンパク質を変性させ、37℃で30分間インキュベートした。希釈は、125μLの100mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0の添加、続いて0.5μLの40mM EDTAの添加によって達成した。エンドプロテイナーゼLys-C(Wako Chemicals)を1mg/mlの濃度で水中に再構成し、5μLをFc-リラキシン2に添加した。消化は37℃で2時間行い、その後更に5μLのLys-Cを添加し、更に2時間インキュベーションを続けた。ペプチド分析のために、42.5μLのサンプルをUPLCバイアルに移し、2.5μLの水を加えた。ジスルフィド結合の還元のために、2.5μLの500mM DTTを別の42.5μLアリコートのサンプルに添加し、室温で15分放置した後、LC-MS分析を実施した。
【0178】
ペプチドの分析は、Xevo G2-XS Q-TOF計器(Waters,Milford,MA)に接続されたACQUITY I-Class UPLCを用いて実施し、いずれも、UNIFI Scientific Information Systemを使用して操作した。LCシステムの場合、溶媒Aは0.1%ギ酸を含む水であり、溶媒Bは0.1%ギ酸を含むアセトニトリルであった(いずれもUPLC-MSグレード、BioSolve)。UV検出器を、214nmの波長で測定するように設定し、試料チャンバに入れたバイアルを温度4℃に保った。逆相ACQUITY BEH C18 300Å孔径カラム(Waters部品番号:186003687)に体積10μLを注入し、73.5分間かけて5%から37%に、更に2.5分間で60%Bに増加する溶媒Bの増加勾配を用いて、タンパク質を溶出した。77.5分後、カラムを95%Bで5分保持した。
【0179】
質量分析計は、50%2-プロパノールに2μg/μLのヨウ化ナトリウムを注入することにより100~2600m/zから較正し、locksprayは、200pg/μLのロイシンエンケファリンであった。計器は、以下のキー設定値を用いて、正イオン化モード及び感度解析モードで作動させた:キャピラリー電圧=3.0V;試料コーン電圧=25V;ソース温度=100℃;脱溶媒温度=250℃;コーンガス流量=0L/時;脱溶媒ガス流量=500L/時;質量範囲=100~2600m/z、スキャン時間=0.5秒。
【0180】
予想されるジスルフィド結合を有する配列をインポートし、一致するLys-C生成ペプチドの検索を実行することによって、データをUNIFIソフトウェアで処理した。還元剤の非存在下及び存在下で得られたクロマトグラムを重ね合わせて、同定されたジスルフィド結合ペプチドが一度還元されるともはや観察されなくなったことを確認した。
【0181】
図3の上部に描かれているように、鎖A及びBの両方を組み込んだジスルフィド結合リラキシン2ペプチドの予測質量と一致するペプチドを同定した(SLSLSPGGGGGSGGGGSGGGGSGGGGGSQLYSALANKCCHVGCTK=LCGRELVRAQIAICGMSTWS=RSLARFC(それぞれ配列番号75~77)、3つのジスルフィド結合6836.23Daを含む予測質量)。
図3(A~D)は、RELAX0019に関するこのペプチドの同定、及び、還元剤を添加するとこのペプチドが観測されなくなったことを示す。パネルA及びBは、DTTの不在下及び存在下での抽出イオンクロマトグラムを示し、パネルC及びDは、対応するペプチドの質量スペクトルを示す。
図3(E~H)は、RELAX0023に関する同じペプチドの同定、及び、還元剤を添加するとこのペプチドが観測されなくなったことを示す。パネルE及びFは、DTTの不在下及び存在下での抽出イオンクロマトグラムを示し、パネルG及びHは、対応するペプチドの質量スペクトルを示す。これらのデータは、リラキシン鎖A及びBがヘテロ二量体RELAX0019及びRELAX0023内のジスルフィド結合を介して相互作用していることを裏付けるものである。
【0182】
実施例3:Fc-リラキシン2融合タンパク質のインビトロ活性(細胞ベースのcAMP活性アッセイ)
前述のようにして生成したリラキシン2融合ポリペプチドを、以下の方法により、生物学的活性、例えば1つ以上の細胞受容体応答の刺激について試験した。
【0183】
CHO細胞で作製されたヒト又はマウス受容体を発現する安定な細胞株をDiscoverXから購入した。
-cAMP Hunter(商標)CHO-K1 RXFP1 Gs細胞株(DiscoverXカタログ番号95-0127C2)
-cAMP Hunter(商標)CHO-K1 RXFP2 Gs細胞株(DiscoverXカタログ番号95-0140C2)
-cAMP Hunter(商標)CHO-K1 mRXFP1 Gs細胞株(DiscoverXカタログ番号95-0180C2)
【0184】
これらの受容体の活性化は、機能活性アッセイにおいて測定することができるcAMPセカンドメッセンジャーの下流の産生をもたらす。
【0185】
ウシ血清アルブミン(BSA)系アッセイバッファーを用いて通常のcAMPアッセイを実施した:0.1%のBSA(Sigma# A9418)及び0.5mMのIBMX(Sigma# I7018)を追加し、1MのNaOHでpH7.4に調節したハンクス緩衝塩類溶液(Sigma# H8264)。
【0186】
関心のある受容体を発現する細胞の冷凍クライオバイアルを、ウォーターバスにおいて速やかに解凍し、あらかじめ温めた細胞培地に移し、5分間240xgで回転させた。細胞を、最適化濃度(例えば3.33×104細胞/mlのhRXFP1)で細胞培地中に再懸濁し、及び30μL細胞懸濁液を、ポリ-D-リシンコーティング384ウェルプレート(Greiner #781946)に追加し、一晩接着させた。翌日、培地をプレートから軽く払い落とし、5μLアッセイバッファーと交換した。試験組換えペプチド又はFc融合サンプルの11段階連続希釈液を非接触液体ディスペンサー(ECHO(商標)、Labcyte)を使用して細胞に追加した。全ての試料の希釈物は、二通りに作成した。更なる5μLアッセイバッファーを、それぞれのウェルに追加し、プレートを30分間室温でインキュベートした。
【0187】
cAMPレベルは、メーカーの推奨どおり2段階のプロトコルに従って市販で入手可能なcAMP dynamic GS HTRF kit(Cisbio、Cat #62AM4PEJ)を使用して測定した。手短に言えば、抗cAMPクリプタート(ドナーフルオロフォア)及びcAMP-d2(アクセプターフルオロフォア)を、キットにおいて提供されるコンジュゲート&溶解バッファー中でそれぞれ1/20に希釈することによって別々に用意した。5μL抗cAMPクリプタートをアッセイプレートの全てのウェルに追加し、5μL cAMP-d2を、非特異的結合(NSB)ウェル以外の全てのウェルに追加し、これらにはコンジュゲート及び溶解バッファーを追加した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、励起波長320nm及び発光波長620nm及び665nmを用いて、Envision(Perkin Elmer)で読み取った。データは、メーカーのガイドラインにおいて記載されるように、%Delta Fに変換し、次いで、最大天然アゴニスト応答に対する活性化パーセントに変換し、EC50値を決定するために4パラメータロジスティックフィットによって分析した。これらの結果を、hRXFP1細胞の場合の組換えhRリラキシン2(R&D Systems Cat #6586 RN)、mRXFP1細胞の場合のmリラキシン-1(R&D Systems Cat# 6637 RN)、及びhRXFP2細胞の場合のINSL3(R&D Systems Cat# 4544 NS)の対応する結果と比較する。
【0188】
データ解析は、統計解析ソフトウェア(GraphPad Prism、V6)を用いて行った。
【0189】
試験した構築物の生物学的活性を表4及び
図4に記載する。いくつかのアッセイからの組換えヒトリラキシン2及び融合ポリペプチドの両方についての平均EC50測定値を表4に要約した。
【0190】
RELAX0013、RELAX0014、及びRELAX0010は、基準となるタンパク質であり、ここで、RELAX0013は、組換えヒトリラキシン2であり、RELAX0014は、組換えマウスリラキシン1であり、RELAX0010は、鎖A、15アミノ酸のリンカー、鎖B、15アミノ酸のコネクター、及びFcを含む一本鎖融合タンパク質であり、国際公開第2018/138170号パンフレットに記載される配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0191】
【0192】
表4に示された結果から、試験したヘテロ二量体Fcリラキシン融合タンパク質は、一本鎖融合RELAX0010又は組換えヒトリラキシン2ペプチドよりも効力は低いが、依然として高レベルの生物学的活性(ヒトRXFP1細胞株では、約10pM~約80pM)を保持していたと結論付けることができる。
【0193】
これらの結果は、リラキシンA鎖とB鎖が、ヘテロ二量体Fc(X又はY)の一/両末端(コネクターはリラキシン鎖のN若しくはC末端に結合させることができる)及びいずれかの鎖に融合されて、生物学的活性を保持できることを示している。従って、本明細書に記載されるヘテロ二量体Fcリラキシン融合タンパク質のフォーマットは、長い半減期で活性のリラキシンを生成するための頑強なフォーマットを構成する。
【0194】
ヘテロ二量体Fcを安定化させるためのジスルフィド結合の存在は、融合タンパク質の効力に影響しなかった(RELAX0023とRELAX0021、及びRELAX0024とRELAX0022を比較)。
【0195】
使用した2つの上部ヒンジ領域(GGAGGA(配列番号78)及びネイティブDKTHT(配列番号79))は効力に影響しなかった(RELAX0023とRELAX0019、及びRELAX0024とRELAX0020を比較)。上部ヒンジの正確なアミノ酸配列は、融合タンパク質の活性にとって重要ではない。
【0196】
実施例4:ヘテロ二量体リラキシン2Fc融合タンパク質におけるコネクター組成及び長さの影響
コネクターは、グリシン及びセリン残基(GS)で構成することもできるし、又はプロリン及びアラニンリピート(PA)で構成することもできる。ここで使用されるコネクターは、6~21残基の長さを有した。長GSコネクターの例は、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号5)(21アミノ酸)である。長PAコネクターの例は、PAPAPAPAPAPAPAPAPAPAG(配列番号6)(21アミノ酸)である。
【0197】
異なる長さ及び組成のコネクターを、ヘテロ二量体リラキシン2Fc融合ポリペプチドの各Fc鎖上に配置することができる。
【0198】
種々のコネクターを有するヘテロ二量体リラキシン2Fc融合タンパク質の例を表5に示す。この表には、発生性/製造可能性(細胞培養上清からのプロテインA捕捉後の単量体/非凝集リラキシン2Fc融合タンパク質の発現収率及びパーセンテージ)、並びに生物学的活性に関する情報も示される。
【0199】
【0200】
【0201】
コネクターの長さ及び組成は、分子の発生性の側面に影響を与える。表5に示すように、16アミノ酸以下のPAコネクターを有するヘテロ二量体リラキシン2Fc融合ポリペプチドは、良好に発現しなかった。対照的に、21残基長のPAコネクターは、発現収率を有意に増加させた。GSコネクターを有する構築物の発現収率は、より一貫している。
【0202】
短く、且つ非対称の(異なる)コネクターを有するヘテロ二量体リラキシン2Fc融合タンパク質は、効力を保持した。生物学的活性の低下は、モノマー含有量の低い融合タンパク質(RELAX0109、RELAX0110及びRELAX0111)でのみ観察された。
【0203】
実施例5:リラキシン2配列の点突然変異
ヘテロ二量体Fcリラキシン2融合タンパク質として、リラキシン一点突然変異類似体を作製した。表6は、効力及び好ましい発生性を保持したそのような分子の例を示す。
【0204】
標的とされた天然残基は正荷電されており、タンパク質分解を被る傾向を有し得るが、リラキシンとその受容体への結合には関与しなかった。
【0205】
例えば、ヘテロ二量体Fcリラキシン2融合タンパク質のR22X類似体は、一貫して改善された発生性/製造可能性を有すると思われる。
【0206】
【0207】
表6に提示する結果は、リラキシン2鎖Aのアミノ酸配列の幾分の変動性が、好ましい発生性を保持しながら、効力を失わずに、許容されることを実証するものである。
【0208】
実施例6:Fc-リラキシン2融合タンパク質のPKプロファイル
リラキシン2融合ポリペプチドの薬物動態(PK)プロファイルは、リラキシンELISAアッセイ及び/又はcAMPアッセイを使用して決定した。リラキシン2融合ポリペプチドは、6~10週齢の雄C57BL/6J(Jax)マウス(Jackson Laboratories)に、皮下(SC)及び/又は静脈内(IV)経路のいずれかにより、6mg/kgで投与した。IV投与経路の場合、血清サンプルを、薬剤投与後5分、30分及び60分、続いて3時間及び/又は6時間及び/又は8時間並びに24時間の時点で、その後、続けて最小1日間隔で、最大21日時点まで収集した。SC投与経路の場合も同様のスケジュールに従ったが、最初の8時間以内の収集の頻度はより低く;例えば、最初のサンプルを30分後に収集し、次に3時間、8時間、24時間、30時間、48時間の時点で収集し、その後、続けて最小1日間隔で、最大21日時点まで実施した。サンプルは、心臓穿刺によって血清チューブ中に収集し、室温で15~30分間保持した後、収集から30分以内に10000rpmで10分間遠心分離した。アリコートに分けたサンプルを<-80℃で保存し、後に、ELISA又はcAMP活性アッセイにより検査した。
【0209】
大部分の分子について、PKサンプルは、抗ヒトFcキャプチャー及び抗hリラキシン2検出(Human Relaxin-2 ELISA kit,R&D Systems Cat# DRL200のポリクローナルHRP標識抗体を使用)を用いてELISAで検査したRELAX0010(国際公開第2018/138170号パンフレットに記載)を除き、抗hリラキシン2キャプチャー(プレコーティングされたHuman Relaxin-2 Quantikine ELISA Kit,R&D Systems Cat# DRL200)及び抗ヒトFc検出抗体(HRPで標識されたAU003)を用いてELISAで検査した。両方のアッセイにおいて、捕捉抗体でコーティングしたプレートを、100μL RD1-19アッセイ希釈液で、室温にて1時間遮断した。50μLの標準物質又はサンプルを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。サンプルを吸引し、ウェルをアッセイ洗浄バッファーで3回洗浄した。HRP標識検出抗体をウェルあたり50μL添加し、抗ヒトFc特異的検出の場合はPBS/1%BSAで1:1000に希釈し、又は抗hリラキシン2検出の場合は希釈せずに使用した。室温で1時間のインキュベーション、次に3回の洗浄の後、ウェル当たり50μLのTMB(SureBlue Reserve KPL 53-00-03)を添加し、色の変化が起こったら、ウェル当たり50μLのTMB停止溶液(KPL 50-85-06)を添加して反応を停止した。
【0210】
細胞ベースのcAMP活性アッセイにおけるPKサンプルの生物学的活性。
上に概説したように動物から収集された血清サンプルを、機能的リラキシン2を測定して、Fc-リラキシン2融合ポリペプチドの完全性を評価するために、生物学的活性について検査した。CHO細胞で作製したヒトRXFP1受容体を発現する安定な細胞株をDiscoverXから購入した。この受容体の活性化により、cAMPセカンドメッセンジャーの下流産生が起こり、これは、機能的活性アッセイで測定することができる。
【0211】
ウシ血清アルブミン(BSA)系アッセイバッファーを用いてcAMPアッセイを実施した:0.1%のBSA(Sigma# A9418)及び0.5mMのIBMX(Sigma# I7018)を追加し、1MのNaOHでpH7.4に調節したハンクス緩衝塩類溶液(Sigma# H8264)。
【0212】
リラキシン2融合ポリペプチド又は組換えリラキシン2ペプチド(R&D Systems Cat#6586-RN)の投与溶液をアッセイバッファーで希釈してから、非接触液体ディスペンサー(ECHO、Labcyte)を用いて、4つのマトリックス濃度での11点標準曲線を作成した。使用したマトリックスは、模擬投与された動物からのブランク血清であり、これは、細胞の添加を可能にするために必要な濃度の2倍の濃度でウェルに手で添加した。試験サンプルを血清チューブから384ウェルソースプレートに移し、これを、非接触液体ディスペンサー(ECHO、Labcyte)により使用して、アッセイバッファーに4つの希釈液をセットアップした。全ての試料の希釈物は、二通りに作成した。
【0213】
hRXFP1を発現する細胞の凍結クライオバイアルを水浴中で急速に解凍し、予熱した細胞培地に移し、240×gで5分間回転させた。細胞を8mL細胞培養培地に再懸濁させ、10mL培養培地を含むT75フラスコに播種し、一晩付着させた。翌日、アキュターゼを用いて細胞を剥離し、240×gで5分間スピンさせた。得られた細胞ペレットを最適な濃度で再懸濁し、コンビドロップディスペンサーを用いて、2.5μLの細胞懸濁液をアッセイプレートの各ウェルに添加した。
【0214】
cAMPレベルは、市販のcAMP dynamic 2 HTRF kit(Cisbio、Cat#62AM4PEJ)を使用して、製造者の推奨に従い、2段階のプロトコルに従って測定した。手短に言えば、抗cAMPクリプタート(ドナーフルオロフォア)及びcAMP-d2(アクセプターフルオロフォア)を、キットにおいて提供されるコンジュゲート&溶解バッファー中でそれぞれ1/20に希釈することによって別々に用意した。2.5μLの抗cAMPクリプタートをアッセイプレートの全ウェルに添加し、2.5μLのcAMP-d2を、非特異的結合(NSB)ウェルを除く全てのウェルに添加し、コンジュゲート及び溶解バッファーを添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、励起波長320nm及び発光波長620nm及び665nmを用いて、Envision(Perkin Elmer)で読み取った。データを、製造者のガイドラインに記載されているように%デルタFに変換し、標準曲線の線形部分からサンプル値を算出した。
【0215】
結果及び結論
図5は、Fc-リラキシン2ポリペプチドをマウスにIV投与した一連のインビボPK実験からのデータの概要を示す。データは、5分の時点で正規化されている。
【0216】
IV投与後のヒトリラキシン2の半減期は、約0.09+/-0.04時間、すなわちヒトでは5.4+/-2.4分間である(Chen et al.1993)。組換えリラキシンFc融合ポリペプチドは全て、天然リラキシン2と比較して半減期の改善を示している。リラキシンA鎖及びB鎖が異なるヘテロ二量体Fc鎖に連結されたFc-リラキシンポリペプチド(RELAX0019、RELAX0023、RELAX0034、RELAX0046及びRELAX0117により例示される)は、リラキシン鎖がリンカーで連結されたFc-リラキシンポリペプチド(RELAX0010及びRELAX0009により例示される)と比較して改善されたPK特性を有する。しかしながら、リンカーを含む分子であるRELAX0088及びRELAX0122はいずれも良好なインビボ安定性を示すことから、リラキシン鎖Aとリラキシン鎖Bとの間の連結リンカーの存在が単独でFc-リラキシンポリペプチドの迅速なインビボ排除に直接関連するわけではない。
【0217】
この研究では予想外にも、ヘテロ二量体Fc-リラキシン融合ポリペプチド(RELAX0019、RELAX0023、RELAX0034、RELAX0046、RELAX0117、RELAX0088及びRELAX0122)は全て、Fc-リラキシン融合ポリペプチドRELAX0010及びRELAX0009と比較して有意に改善された薬物動態特性を有する。
【0218】
実施例7:RELAX0019及びRELAX0023による、確立された肥大及び線維化の回復
ミニポンプ(15mg/kg/日)を介して、イソプロテレノールをC57B6マウスに10日間注入し、心肥大及び線維化を誘発した。同じ期間ビヒクルを注入したマウスをベースライン対照として使用した。10日後、ミニポンプを取り外し、マウスは、rリラキシン2(500ug/kg/日)を含有する新しいミニポンプを投与されるか、又はRELAX0019(20mg/kg)若しくはRELAX0023(20mg/kg)の2回の週1回(QW)皮下注射の最初の注射を受けた。14日間の処置期間の後、マウスを犠牲にし、肥大及び線維化の分析のためにそれらの心臓を採取した。ビヒクルミニポンプの取り外し後に、ベースライン対照マウスから心臓を採取した。肥大は、脛骨の長さに対する心臓重量の尺度として決定され、線維化は、心臓重量に対するコラーゲン含有量の定量によって確認した。イソプロテレノールの注入は、このモデルにおいて肥大及び線維化の両方を有意に誘発した。RELAX0019及びRELAX0023のQW投与は、rリラキシン2の持続注入と同様に、イソプロテレノール誘発肥大をベースラインレベルにまで戻した。全てのリラキシン処置はまた、心筋線維化を50%超低減した。各グループについてN=8。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001
【0219】
組換えリラキシンFc融合タンパク質RELAX0019及びRELAX0023は、天然hリラキシン2と同様に、肥大及び線維化を回復させることができた(
図6)。
【0220】
実施例8:バキュロウイルス(Baculovirus)ELISAを用いたFc-リラキシン2タンパク質の非特異的結合の評価。
RELAXタンパク質をCHO細胞に発現させ、前述のように精製した。モノクローナル抗体の非特異的結合を評価するために開発されたバキュロウイルス(Baculovirus)ELISA(Ref:Hotzel et al 2012 mAbs 4:6,753-760)は、Fc-リラキシンポリペプチドの非特異的結合を決定するように改変され、この場合、「BVスコア」(バキュロウイルス(Baculovirus)プレートの吸光度/ブランクプレートの吸光度)を計算する代わりに、バックグラウンドに対するシグナルとして、バキュロウイルス(Baculovirus)プレートとブランクプレートについて非特異的結合を別々に計算した(この場合、バックグラウンドは、Fc-リラキシンポリペプチドである)。この測定値を導入して、モノクローナル抗体と比較した場合の、コーティングされたプレートとコーティングされていない(ブランク)プレートの両方に対する一部のFcペプチドの非特異的結合の増加を反映させた。各タンパク質の調製物は、PBS(Gibco 14190-086)+0.5%BSA(Sigma A9576)中100nM又は10nMで作製し、50mM炭酸ナトリウム中の1%バキュロウイルス(Baculovirus)抽出物(BVプレート)又は50mM炭酸ナトリウム(ブランクプレート)のいずれかを50μL/ウェルで、4℃にて一晩コーティングした96ウェルNunc Maxisorp FプレートでのELISA アッセイで2回繰り返して使用した。PBSで洗浄した後、プレートを300μL/ウェルのPBS+0.5%BSAで、室温にて1時間遮断し、PBSで3回洗浄した。PBS+0.5%BSA(バックグラウンド)又はRELAXタンパク質希釈物のいずれかを50μL/ウェル添加し、室温で1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、PBS+0.5%BSAで1:5000に希釈した検出抗体(抗ヒトFc特異的-HRP Sigma A0170)を50μL/ウェル添加した。サンプルを室温で1時間インキュベートし、プレートをPBSで3回洗浄した。次に、HRP基質であるTMB(SureBlue Reserve KPL 53-00-03)を50μL/ウェルで添加し、色の変化の後、50μL/ウェルの0.5M硫酸を添加して反応を停止した。450nmで吸光度を測定し、各サンプルについて非特異的結合を決定した。非特異的結合(バックグラウンドに対する結合倍率)は、Fcリラキシン2タンパク質の存在下及びFcリラキシン2タンパク質の非存在下(バックグラウンド)での非特異的結合の比として定義した。100nM又は10nMいずれかの2つの異なる濃度で試験したFc-リラキシン2タンパク質のデータを表7に示す。
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
表7及び
図7に示すように、ヘテロ二量体リラキシン2Fc融合ポリペプチドは、GSコネクターを用いてリラキシン鎖をC末端に結合させると、より低い非特異的結合を示す。いくつかの非対称及びPAコネクター、特定の点突然変異及びN末端でのリラキシン鎖の配置は、特に、二価分子(RELAX0117)に関して、ブランクプレートとBVコーティングプレートの両方に対する非特異的結合を増加させる。特に高い非特異的結合を有する一部のFc-リラキシンタンパク質は、高濃度(100nM)及び低濃度(10nM)の両方で、BVコーティングプレートよりもブランクプレートに対して高い非特異的結合を示す。対照分子(リンカーを含有する二価RELAX0009、RELAX0010、RELAX0126、RELAX0127及びRELAX0128)は全て、高い非特異的結合を示すが、RELAX0122の低い非特異的結合によって実証することができるように、リラキシンの鎖A及びBの間のリンカーの存在又は二価性のいずれもそれ自体では、高い非特異的結合を駆動しない。
【0226】
実施例9:溶液中での安定性
高速サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)及び液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を用いて、RELAX0023の安定性を評価し、RELAX0127及びRELAX0128と比較した。280nmでの吸光度による検出を含むHP-SECを使用して、純度、凝集及びフラグメント化を測定することができる。分子を、最適化製剤組成物にバッファー交換した後、10mg/mLまで濃縮した。全てのサンプルをストレス温度条件(40℃)に最大4週間配置した。1、2、及び4週間の時点で、サンプルを収集して、サイズ排除カラムに注入し、一定流量の水性移動相を用いて、均一濃度で溶出した。より大きな分子は、より小さな分子よりも多量にサイズ排除カラムの細孔から排除されるため、より早く溶出する。モノマーピークよりも早く溶出するピークは、凝集体として記録される。モノマーピークの後に溶出するピーク(緩衝剤関連ピークを除く)は、フラグメントとして記録される。結果は、純度パーセント;凝集体パーセント;及びフラグメントパーセントとして記録され、それらを
図8に示す。RELAX0023は、RELAX0128及びRELAX0127のそれぞれ7.7%及び9.3%と比較して、純度減少率(%)が月当たりわずか0.1%と、最も安定な分子である。RELAX0127及びRELAX0128は、いずれも凝集の兆候を示したが、RELAX0023の凝集体レベルは増加せず,物理的溶液の安定性が良好であることを示している。月当たり6.6%のフラグメント化を有するRELAX0127、及び6.8%のRELAX0128について、フラグメント化が純度減少の主な要因であると思われた。RELAX0023は、月当たりわずか0.7%のフラグメント化率を有する。更に、40℃で4週間保存した後、RELAX0128の総ピーク面積は、22403から18216に減少し(19%の減少)、RELAX0127は、22225から18823に減少した(15%の減少)。この総ピーク面積の有意な喪失は、高いフラグメント化率と共に、これら2つの分子に伴う高い化学的分解の可能性を示した。この総面積の喪失が、これら2つの分子のクロマトグラムプロファイルに強い影響を与えたことを指摘しておく必要がある。これは、保存後の凝集体ピーク面積が明らかに増加したにもかかわらず、RELAX0128及びRELAX0127が以前の時点と比較して4週間でより低い凝集体パーセントを示した理由を説明している。対照的に、RELAX0023の総ピーク面積は、21828から21761へと0.03%しか低下せず、RELAX0128及びRELAX0127と比較して良好な安定性プロファイルを示している。
【0227】
分子のフラグメント化は、還元質量分析を用いたLC-MSによって更に検証され、これは、RELAX0127及びRELAX0128のフラグメントピークが40℃での保存後に強度が増加することを示した(
図9A)。対照的に、RELAX0023のフラグメントピークは、ストレス後も変化しなかった。還元条件下でのマススペクトルは、RELAX0127及びRELAX0128の経時的な変化も示し、これはより大きな質量へのピークのシフトと、より大きな不均一性を示すピークの広がりによって証明される(
図9B)。対照的に、RELAX0023のインタクトなマススペクトルは不変のままであり、変化が起こらなかったことを示している。この試験は、RELAX0023が、RELAX0127及びRELAX0128と比較して優れた物理的及び化学的安定性を有することを示している。
【0228】
実施例10:カニクイザルにおけるRELAX0023のPKプロファイル
カニクイザルにおけるRELAX0023の薬物動態(PK)プロファイルを、サンドイッチELISAによるイムノアッセイを用いて決定した。RELAX0023を、1グループ当たり3匹ずつの4つのグループに無作為に割り当てられた計12匹の雌カニクイザルに投与した。グループ1、2、及び3の動物には、それぞれ0.1、1、及び10mg/kgのRELAX0023 SCを投与した。グループ4の動物には、RELAX0023の10mg/kgのIVボーラスを投与した。血清サンプルは、薬剤投与から0.25時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、96時間、7日、14日及び21日後に採取した。
【0229】
アッセイプレートをヤギ抗ヒトIgG抗体でコーティングし、グループ1~4の動物由来のカニクイザル血清と一緒にインキュベートした。プレートに結合したRELAX0023は、HRPを結合させた抗リラキシン抗体により検出された。カニクイザル血清をプレートに添加する前に1:10に希釈した。100%血清中の定量下限は0.010μg/mLであり、定量上限は0.300μg/mLである。
【0230】
結果及び結論
図10は、単回用量後のカニクイザルにおけるRELAX0023の平均血清濃度-時間プロファイルを示す。単回用量をSC投与した後、RELAX0023は、0.01~10mg/kgの用量範囲で線形PKを示した。C
maxの用量比例増加が観察された。平均C
max値は、0.1、1、及び10mg/kgのSC用量グループでそれぞれ0.400、4.69、34.8μg/mLであった。また、AUC
0-last値の用量比例増加が、0.1mg/kg~10mg/kgのSCグループから観察された。平均AUC
0-last値は、0.1、1、及び10mg/kgのSC用量グループでそれぞれ2.01、25.5、193μg・日/mLであった。全体として、RELAX0023 PKは、0.1mg/kg~10mg/kgの範囲で線形であり、平均CL/Fは51.0mL/日/kg、平均t
1/2は3.07日である。RELAX0023のSCバイオアベイラビリティは、88.2%と推定された。
【0231】
実施例11:心不全を有し、左心室駆出率(LVEF)が低下したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))におけるRELAX0023の長期的有効性の評価
心臓機能に対するRELAX0023の長期的有効性を、肥満且つ高齢のカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))で評価した。カニクイザルは系統学的及び生理学的の両方でヒトと密接な関連性があるため、他のより低級の哺乳動物種ではなくカニクイザルを試験種として選択した。高脂肪食を少なくとも2年間与えた老齢のカニクイザルは、心血管疾患にかかりやすいヒト患者と同じリスク因子を有しており、また特徴的に心不全及びLVEFの減少に進行する可能性がある代謝症候群を発症している。LVEFに対するRELAX0023の効果を、様々な用量レベルの皮下(SC)注射によって20週間投与した時に評価し、ここで初回の投薬は研究の第1週目に与えられ、その後18週間の観察期間が続いた。高脂肪食を少なくとも2年間与えられた、年齢12~20歳、体重6~15kg、肥満且つ高齢のカニクイザル約100匹のプールから、断層心エコースクリーニングによって、38匹のサルが30~60%のLVEFを有すると同定した。この年齢の健康なサルは体重5~8kgでLVEFが70~75%であるため、LVEFが60%以下であればHFrEFモデルとなる。同定された動物を選択し、各8匹の3つの治療群、及び14匹のビヒクル群に無作為に割り当てた。投与期間は、3つの漸増用量レベル(全て10mg/kg未満。それぞれいわゆる「低」、「中」、及び「高」用量)での、週1回のRELAX0023の皮下投与で構成された。
【0232】
断層心エコー法による心機能測定値は、-2週目のベースライン時、並びに投与期間及び投与後観察期間の5、9、13、17、21、25、29、33週目で、9回測定した。更なる断層心エコーを39週目(研究終了)に予定する。LVEFを含むパラメータは、心尖部二腔像及び四腔像、並びにバイプレーン法に基づいていた。HDO(高解像度オシロメトリー(High Definition Oscillometry))を使用して、平均動脈圧(MAP)及び心拍(HR)を含むパラメータを測定した。
【0233】
結果及び結論
RELAX0023は、ビヒクル対照と比較して、全てのRELAX0023用量レベルで、心拍数又は血圧に影響を与えることなく5週目、9週目、13週目、17週目、及び21週目のLVEFを大幅に改善することができた(
図12)。注目すべきことに、0週目(ベースライン)と比較した、RELAX0023での治療後のLVEFの改善は、研究の治療終了後から33週目までのウォッシュアウト期間全体にわたって観察された。これらの著しい結果は、治療を受けた動物の血行動態の著しい改善を示しており、このモデルでの心不全治療におけるRELAX0023の有効性を明確に実証する。更に、治療後の持続的な応答の規模は、本発明者らの知る限りでは、この作用機序経路を標的とする他の既知の化合物でこれまで達成されなかったものである。サルのモニタリングは研究39週目まで継続する。
【0234】
実施例12:健康なボランティア及び心不全患者における第1相(Ph1)研究
研究D8330C00001は、第Ia/b相、無作為化、単盲検、プラセボ対照、ヒト初回投与(first-time-in-human、FTIH)研究であった(ClinicalTrials.gov識別子NCT04630067)。この研究の主目的は、RELAX0023(「AZD3427」とも称される)の単回及び複数回漸増用量の安全性及び忍容性を評価することであり、副次的目的は、AZD3427の単回及び複数回漸増用量の(i)薬物動態(PK)及び(ii)免疫原性を評価することであった。
【0235】
この研究はA部及びB部の2部で実施された。A部は、健康な参加者(男性及び妊娠の可能性のない女性)における単回漸増用量(SAD)研究であり、B部は、HFの参加者(男性及び妊娠の可能性のない女性)における複数回漸増用量(MAD)研究であった。
【0236】
B部は、6つのコホートにわたる48人の患者を含んだ(各コホートに8人の参加者)。このうち、3つのコホートはHFrEFの参加者で構成され(コホート1b、3b、及び5b)、3つのコホートはEFが≧41%のHF参加者で構成された(コホート2b、4b、及び6b)。HFrEF及びEF≧41%のHFコホートにおける用量レベルは、5mg(コホート1b、2b)、15mg(コホート3b、4b)、及び45mg(コホート5b、6b)であり、これを週1回(QW)で5週間投与した(すなわち合計で5回)。
【0237】
6つのコホートにわたり48人の患者を含むB部では、試験対象患者基準は以下を含んだ。(i)全てのコホート:ステージCのHF(NYHAクラスI~III)と既知の臨床診断を有しており、スクリーニングの少なくとも12週間前から安定した薬物療法を受けており、この間、大幅な用量変更又は新規の薬剤の追加がないこと、(ii)コホート1b、3b、5b:EF≦40%と定義されるHFrEFの診断を受けた患者であること、(iii)コホート2b、4b、6b:EF≧41%のHFの診断を受けた患者であること(EF≧50%と定義されるHFpEFの診断を受けた患者を含む)、(iv)全てのコホート:BMIが18~40kg/m2(18及び40kg/m2を含む)であり、体重が少なくとも55kg且つ120kg以下(55及び120kgを含む)であること、並びに(v)全てのコホート:過去にNT-proBNP>125pg/mL又はBNP>35pg/mLのいずれかを記録していること。
【0238】
実施例13:HF患者におけるPh1 AZD3427 MAD研究の成果
B部のMADコホートでは、HFpEF患者及びHFrEF患者のデータをプールした。傾向は、AZD3427が、心拍出量及び1回拍出量(SV)の改善、全身血管抵抗(SVR)の低下、並びに臓器潅流(SVR及びeGFR)の改善を含め、心機能を改善したことを示唆する(
図13A~
図6F)。
【0239】
MADコホートでは対象の高血圧状態は測定されなかったが、観測された心拍出量及び1回拍出量(SV)の改善、全身血管抵抗(SVR)の低下、推算糸球体濾過量(eGFR)の増加、並びにひいては臓器潅流(SVR及びeGFR)の改善が、HF+PH患者における有益性となることが期待される。
【0240】
実施例14:Ph2b研究-心不全、及び左心疾患が原因の肺高血圧症を有する参加者(世界保健機関(World Health Organisation、WHO)グループ2)におけるAZD3427の無作為化、プラセボ対照、多施設、用量設定研究。
この研究(研究ID番号:D8330C00003)は、AZD3427が、心不全(HF)及び肺高血圧症(PH)グループ2の参加者を24週間治療した後で肺血管抵抗(PVR)を低下させる能力を評価することを意図している。
【0241】
約220人の参加者が4つの治療群に(1:1:1:1の比で)無作為化され、2週間毎に24週間AZD3427又はプラセボの皮下(SC)注射を受ける。この研究は、AZD3427の3つの用量レベル(用量A、用量B、及び用量C)を評価する。この研究で用量変更は適用されない。この研究は、推定で15ヶ国にわたる約60箇所の研究センターで実施される。この研究は、約16回の研究訪問、すなわちスクリーニング期間中に2回の訪問、治療期間中に13回の訪問、及びフォローアップ期間中に1回の訪問が含まれる。予想される全研究期間は、スクリーニング期間の長さに応じて32~37週間である。
【0242】
参加者は、単回皮下用量のAZD3427(用量A、B、又はC)、又はプラセボを、1日目から155日目までの24週間にわたって2週間に1回投与される。
【0243】
主要転帰の指標は、24週間の治療後の肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの変化である。PVRパラメータに対するAZD3427の効果も、HF及びPHグループ2の参加者での24週間の治療後に右心カテーテル法(RHC)で測定し、プラセボと比較して評価される。
【0244】
二次転帰の指標には以下が含まれる:
・平均肺動脈圧(mPAP)のベースラインからの変化
・肺動脈楔入圧(PAWP)のベースラインからの変化
・心拍出量のベースラインからの変化
・1回拍出量(SV)のベースラインからの変化
・駆出率(EF)のベースラインからの変化
・左室長軸ストレイン(LVGLS)のベースラインからの変化
・肺動脈収縮期圧(PASP)のベースラインからの変化
・右心室/左心室(RV/LV)比のベースラインからの変化
・右室流出路加速時間(RVOT AT)比のベースラインからの変化
・三尖弁逆流速度(TRV)のベースラインからの変化
・TAPSE/PASP(三尖弁輪収縮期移動距離/肺動脈収縮期圧)のベースラインからの変化
・右室ストレイン/肺動脈収縮期圧(RVS/PASP)のベースラインからの変化
・吸気虚脱による下大静脈(IVC)径のベースラインからの変化
・全身血管抵抗のベースラインからの変化
・6分間歩行距離(6MWD)のベースラインからの変化
・カンザス市心筋症質問票合計症状スコア(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire total symptom score、KCCQ TSS)のベースラインからの変化
・ニューヨーク心臓協会機能分類(New York Heart Association Functional Class、NYHA FC)のベースラインからの変化
・血清クレアチニンのベースラインからの変化
・N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のベースラインからの変化
・シスタチンCのベースラインからの変化
・eGFR(推算糸球体濾過量)のベースラインからの変化
【0245】
試験対象患者基準:1.参加者は≧18歳(18歳を含む)でなければならない。2.参加者は、HF、NYHA機能クラス(FC)II~IVの既存の診断、及びPH-LHDの既存の診断、又は2022 Pulmonary hypertension due to left heart disease European Society of Cardiology/European Respiratory Society(ESC/ESR)のガイドラインに従って左心疾患による肺高血圧症(PH-LHD)の可能性若しくは中程度の確率を有していなければならない。参加者は、利尿薬を含む安定的なHFの標準的治療を受けていなければならない。3.参加者は、2022 ESC/ERSガイドラインに則り、中程度の又は高い確率でPHを示す心エコーパラメータの組み合わせを有さなければならない。4.参加者は、スクリーニング訪問2で、治験依頼者が提供するRHCマニュアルに従い、実施されたRHCから研究中の肺動脈圧の上昇がなければならない:(a)PAWPが≧15mmHgである(b)mPAPが≧20mmHgである。5.最小体重が50kgである(50kgを含む)。6.署名入りのインフォームドコンセントを提供できる。
【0246】
除外基準1.世界保健機関(World Health Organization、WHO)のグループ1、WHOグループ3、WHOグループ4、又はWHOグループ5のPHの診断。2.臨床的に重要な疾患又は障害の病歴又は現在の証拠。3.非代償性HF又は任意の入院。4.RHCに対する任意の禁忌。5.SC注射又は装置に対する過敏症の病歴。6.AZD3427又はAZD3427医薬品の任意の成分と類似の化学構造又はクラスを有する薬物に対する過敏症の病歴、或いは進行中の臨床的に重要なアレルギー/過敏症。7.最初の1秒間の強制呼気量/肺活量(FEV1/VC)が<30%であることを伴う既知の肺疾患。8.先天性QT延長症候群。9.治療を必要とする心室性不整脈。心房細動又は粗動があり、且つ心拍数が抑制されている参加者は許可される。10.心臓移植又は補助人工心臓の移植の履歴又はその予定。11.既知の計画された(スケジュールされた)高侵襲的な心血管(CV)処置(例えば、冠血行再建術、心房細動/粗動のアブレーション、弁修復/交換、大動脈瘤手術など)。12.以前にAZD3427を投与されたことのある参加者。
【配列表】
【国際調査報告】