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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】植物病原体組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 33/12 20060101AFI20241219BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024535683
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 AU2022051510
(87)【国際公開番号】W WO2023108218
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2021904061
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524224272
【氏名又は名称】ロブジュールズ プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン バリー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホヴェル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】サヴェージ ロバート ジョン
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011BA05
4H011BB04
4H011BC03
4H011BC16
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA13
4H011DD03
4H011DD04
4H011DF06
4H011DH02
(57)【要約】
本発明は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤、および高分子フィルム形成剤を含む化学組成物、および植物上および土壌中の真菌または真菌様病原体を防除するためのそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物病原体を防除するための組成物であって、以下を含む、組成物:
(a) ベンザルコニウム化合物;
(b) 浸透促進剤;
(c) 界面活性剤;および
(d) 高分子フィルム形成剤。
【請求項2】
組成物が(a)~(d)の各々を別個の成分として含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ベンザルコニウム化合物が以下の構造を有する、請求項1または2に記載の組成物:
【化1】
式中、RおよびRは、互いに独立して、メチルまたはエチルであり;
はアルキルであり;および
Xはハロゲン化物である。
【請求項4】
が直鎖状または分枝状のC12-C16アルキルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Xが塩化物である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ベンザルコニウム化合物が10wt%から60wt%、好ましくは20wt%から45wt%の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
浸透促進剤がトリポリリン酸化合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
トリポリリン酸化合物が、トリポリリン酸リチウム、トリポリリン酸ナトリウム、およびトリポリリン酸カリウム、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
トリポリリン酸化合物がトリポリリン酸ナトリウムである、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
浸透促進剤が1wt%から30wt%、好ましくは5wt%から20wt%の量で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
界面活性剤が、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
非イオン性界面活性剤が、アルコールアルコキシレート界面活性剤、アルキルフェノールアルコキシレート界面活性剤、およびポリエーテル変性シロキサン界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
界面活性剤が10wt%から70wt%、好ましくは30wt%から60wt%の量で存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
高分子フィルム形成剤がポリアクリルアミドである、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
ポリアクリルアミドが、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、およびポリ(アクリルアミド-co-アクリレート)からなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
高分子フィルム形成剤が0.01wt%~2wt%、好ましくは0.05wt%~0.5wt%の量で存在する、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
土壌中の植物病原体を防除するための組成物の使用であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を土壌に適用することを含む、使用。
【請求項19】
植物病原体を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物の有効量と植物病原体を接触させることを含む方法。
【請求項20】
植物の作物における植物病原体を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を植物の作物に適用することを含む方法。
【請求項21】
土壌中の植物病原体を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を土壌に適用することを含む方法。
【請求項22】
植物病原体が、真菌、卵菌、またはそれらの組み合わせである、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
卵菌がフィトフトラ属(Phytophthora)に属する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
真菌がフザリウム属に属する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、15ppm~750ppmの濃度で植物の葉に適用される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
組成物が、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、30ppm~3500ppmの濃度で土壌に適用される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
組成物が、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、200ppm~2000ppmの濃度で植物の葉に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
組成物が、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、500ppm~10000ppmの濃度で土壌に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
土壌中のフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除するための組成物の使用であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を土壌に適用することを含む、使用。
【請求項30】
植物病原体を、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む有効量の組成物と接触させることを含む、フィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法。
【請求項31】
植物の作物におけるフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を植物の作物に適用することを含む方法。
【請求項32】
土壌中のフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を土壌に適用することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2022年12月14日に出願されたPCT出願であり、2021年12月14日に出願されたオーストラリア仮出願第2021904061号の優先権を主張するものであり、その全内容はこの参照により援用される。
【0002】
本発明は、殺菌効果を有する化学組成物、およびそのような組成物を使用して真菌類、真菌様生物、および/またはそれらの芽胞を阻害または死滅させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
真菌類、および卵菌類(oomycetes)など真菌類に類似した生命体は、自然界で重要な役割を果たしている真核微生物であるが、これらの生物の無秩序な増殖は、動植物の病気を引き起こす可能性がある。容易な旅行と世界貿易のため、このような生物は広く分布している。本発明は、真菌類およびその関連生物、例えば卵菌類によって引き起こされる植物病害の治療に関する。
【0004】
真菌類や真菌様生物によって引き起こされる病気は、野生の樹木だけでなく、食用作物や管理林など経済的に重要な植物にも影響を及ぼす。そのひとつがパナマ病で、バナナ萎凋病やフザリウム萎凋病とも呼ばれる。パナマ病はフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum) forma specialis cubense(Foc)という真菌によって引き起こされる。1950年代から1960年代にかけて、パナマ病は当時主流であったグロス・ミチェルバナナ農園を世界的に壊滅させ、多くの生産者はキャベンディッシュ・バナナのような耐フザリウム性品種への転換を余儀なくされた。現在、キャベンディッシュ・バナナは世界で最も人気のある品種であり、推定収穫量は年間約500億トンで世界生産の約47%を占める。しかし、キャベンディッシュ・バナナは、トロピカル・レース4(FocTR4)と呼ばれるパナマ病の特定の株にかかりやすく、トロピカル・レース4は、ほぼすべての品種のバナナを加害することが報告されている。この病気の管理は、病気を予防・封じ込めるための厳格なバイオセキュリティ対策から、感染した土壌の除去・隔離まで多岐にわたる。
【0005】
これらの地域に植えられた新しい作物もまた、この真菌に冒されやすく、この菌は宿主となる植物がなくても、土の中で何十年も生き延びることができる。そのため、感染した土壌を隔離することで、同じ土壌に他の作物が植えられないようにするのである。現在までのところ、商業的なキャベンディッシュ・バナナ農場では、殺菌剤による FocTR4 の防除は成功し ておらず、多くの生産者はこの真菌を克服するために他のフザリウム耐性品種の開発に頼っている。
【0006】
もうひとつの重要な作物病害は、卵菌類であるフィトフトラ・パルミボラ(Phytophthora palmivora)によるものである。卵菌類は真菌類と多くの類似点を持つが、分子生物学的・系統学的研究では大きな違いが見られ、分類学者が両者を区別するようになった。フィトフトラ・パルミボラ(Phytophthora palmivora)はカカオのさや(ポッド)腐れ病、ドリアンやゴムの茎腐れ病などを引き起こし、根ではなく果実や茎に影響を及ぼす。
【0007】
フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)は桂皮菌としても知られ、土壌を媒介する卵菌の一種で、特にマツ科やユーカリ科の感受性の高い植物を枯死させることで知られている。この卵菌の蔓延は生態学的な問題であるだけでなく、林産物や園芸用苗木を含むいくつかの産業の経済を脅かす経済的な問題でもある。
【0008】
真菌類や真菌様生物の蔓延に対抗するため、これまでにも選択的化学物質の使用が試みられてきた。これらの製剤には通常、次亜塩素酸塩または塩素誘導体が含まれており、菌が繁殖している感染地域から除去する前に、工具、車両、その他の機器を洗浄するために使用される。次亜塩素酸塩や塩素誘導体は有効だが、有機物との接触ですぐに不活性化する。さらに、これらの化学物質には、ホルムアルデヒドや酸と接触した場合に発がん性や毒性の副生成物を生成したり、金属やゴム、その他の影響を受けやすい表面に対して腐食性を示したり、処置される植物に葉の褐色化などの損傷を与えたりするなど、他の職業上の危険性もある。亜リン酸カリウム、または亜リン酸カルシウムや亜リン酸マグネシウムなどの亜リン酸塩は、植物がフィトフトラ属に感染するのを防ぐための生分解性殺菌剤として使用されてきたが、植物がすでに感染してしまった後の効力は低い。
【0009】
以前使用されていた化学組成物の問題点のひとつは、その用途が、感染地域から非感染地域へ移動する機器、履物、衣類の殺菌など、洗浄製剤に限定されていたことである。これらの組成物は、上述した理由により、今日まで樹木のような植物には直接適用されていない。
【0010】
したがって、土壌を汚染したり高等植物に悪影響を及ぼすことなく、真菌および真菌様生物および/またはその胞子を防除することができる殺菌剤組成物を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一態様において、本発明は、植物病原体を防除するための組成物であって、該組成物が、(a)ベンザルコニウム化合物;(b)浸透促進剤;(c)界面活性剤;および(d)高分子フィルム形成剤を含む、組成物を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、土壌中の植物病原体を防除するための組成物の使用であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を土壌に適用することを含む使用を提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、植物病原体を、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む有効量の組成物と接触させることを含む、植物病原体を防除する方法を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を植物の作物に適用することを含む、植物の作物における植物病原体を防除する方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、土壌中の植物病原体を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を土壌に適用することを含む方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、土壌中のフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除するための組成物の使用であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を土壌に適用することを含む使用を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、植物病原体を、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む有効量の組成物と接触させることを含む、フィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、植物の作物におけるフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を植物の作物に適用することを含む方法を提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、土壌中のフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を土壌に適用することを含む方法を提供する。
【0020】
本発明の他の態様は、本発明の特定の実施形態に関する以下の説明を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の態様および利点をさらに理解するために、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照されたい。
図1】本発明のいくつかの実施形態によるベンザルコニウム化合物を含む種々の組成物に対する7日間の培養後のフィトフトラ・パルミボラ(Phytophthora palmivora)の菌糸成長を示す。ベンザルコニウム化合物は塩化ベンザルコニウム(BAC)であり、組成物の濃度はBACの存在量に基づいて0ppmから72ppmの範囲であった。
図2】本発明のいくつかの実施形態によるベンザルコニウム化合物を含む種々の組成物に対する7日間の培養後のFocTR4の菌糸成長を示す。ベンザルコニウム化合物は塩化ベンザルコニウム(BAC)であり、組成物の濃度はBACの存在量に基づいて90ppmから450ppmの範囲であった。各写真の左側のプレートは記載された濃度の組成物を含むサンプルで、右側のプレートはBACを含まない対照サンプルである。
図3】本発明のいくつかの実施形態による、P.パルミボラ(palmivora)に感染したカカオポッド(さや)の阻害試験の結果を示す。(A)対照サンプル:5つのポッド(さや)すべてにプラグ周辺に真菌感染が見られる;(B)18ppmのBACで処置したポッド:5個中4個のポッドのプラグ周辺に真菌感染が見られる;(C)36ppmのBACで処置したポッド:5個中4個のポッドのプラグ周辺に真菌感染が見られる;(D)54ppmのBACで処置したポッド:5個中3個のポッドのプラグ周辺に真菌感染が見られる;(E)72ppmのBACで処置したポッド:5個中2個のポッドのプラグ周辺に真菌感染が見られる;(F)~(I)それぞれ90ppm、180ppm、360ppm、540ppmのBACで処置したポッド:プラグ周辺に菌の感染は見られなかった。
図4】本発明の一実施形態による、ガラス上への組成物の液滴拡散を示す。左:500ppmのBACを含む対照溶液。右:500ppmのBACと高分子フィルム形成剤としてのポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)を含む試験液。
図5】本発明の実施形態による組成物の液滴を移動させるのに必要な傾斜角度を評価するために使用されるプラットフォームを示す。上:液滴がスライドの左側にある開始位置。下:液滴がスライドを移動し始めたときのプラットフォームの最終位置。
図6】様々な表面上の、本発明のいくつかの実施形態による試験液の液滴を示す:(A)純水(左)と高分子フィルム形成剤を含む組成物(右)の液滴が付いたスライドガラス;(B)純水(1滴目と3滴目)と高分子フィルム形成剤を含む組成物(2滴目と4滴目)を交互に滴下したネギ;(C)純水(左)および高分子フィルム形成剤を含む組成物(右)が付いたオレンジの皮;および(D)純水(左下)と高分子フィルム形成剤を含む組成物(右上)が付いたヒポカエリス・ラディカタ(Hypochaeris radicata)。高分子フィルム形成剤はポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)であった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本発明の目的のために、以下の用語を定義する。
【0023】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、用語“a surfactant”(界面活性剤)は、1種類の界面活性剤または2種類以上の界面活性剤を意味する。
【0024】
本明細書において、「約」という用語は、記載された量が少量異なる可能性があることを意味する。例えば、比率「約98:2」の文脈における用語「約98」は、第一成分が97.5部から98.5部の量で存在し、第二成分が1.5部から2.5部の量で存在することを意味する。そのため、比率内のわずかな変動は本発明の範囲内である。他の文脈では、「約」という用語は、基準量、レベル、値、寸法、サイズ、または量に対して±10%変動する量、レベル、値、寸法、サイズ、または量を意味する。例えば、「約30%」という用語は、値が27%にも33%にもなることを意図している。当業者であれば、本発明の精神に沿って「約」という用語の意味を見分けることができるであろう。
【0025】
2つの成分の比率は、整数または有理数で指定することができる。例えば、A:Bの比率が90:10の場合、9:1または9.0と表現することもできる。
一態様において、本発明は、植物病原体を防除するための組成物を提供し、該組成物は、以下を含む:
(a) ベンザルコニウム化合物;
(b) 浸透促進剤;
(c) 界面活性剤;および
(d) 高分子フィルム形成剤。
【0026】
ベンザルコニウム化合物は、化学構造によって識別できる成分である。一般に、浸透促進剤、界面活性剤および高分子フィルム形成剤は化学化合物からなる成分であり、それぞれ浸透促進剤、界面活性剤および高分子フィルム形成剤としての機能によって識別できる。場合によっては、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤およびフィルム形成剤のうちの2つ以上として識別できる成分もある。例えば、ある成分が浸透促進剤と界面活性剤の両方として機能し、したがって識別可能な場合がある。この場合、この例における実施形態では、植物病原体を防除するための組成物は、3つの成分;ベンザルコニウム化合物、高分子フィルム形成剤である化合物、および浸透促進剤および界面活性剤の両方である化合物を含むことができる。
【0027】
好ましい実施形態では、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤およびフィルム形成剤のそれぞれは別個の成分である。この場合、植物病原体を防除するための組成物は、(a)ベンザルコニウム化合物;(b)浸透促進剤;(c)界面活性剤;および(d)高分子フィルム形成剤のそれぞれを別個の成分として含むといえる。この場合、組成物は、少なくともベンザルコニウム化合物として識別可能なもの、少なくとも浸透促進剤として識別可能なもの、少なくとも界面活性剤として識別可能なもの、および少なくとも高分子フィルム形成剤として識別可能なものの少なくとも4つの成分を含む。これは、2つ以上のカテゴリーで識別可能な特性を持つ成分が、そのカテゴリーでのみ識別可能な成分と比較して、少なくとも1つのカテゴリーで同程度の効果を発揮する可能性が低くなるため好ましい。例えば、浸透促進剤および界面活性剤として識別可能な成分は、浸透促進剤のみとして識別可能な成分ほど、例えば細胞壁からの侵入を促進する効果的な浸透能力を有する可能性が低く、界面活性剤のみとして識別可能な成分ほど、例えば均質で非発泡性の組成物を作るのを補助する効果的な界面活性特性を有する可能性が低い。好ましい実施形態において、成分(a)、(b)、(c)および(d)の各々は、別々に定義された成分であり、これは、本発明の組成物において、各々が、カテゴリー(a)、(b)、(c)および(d)のうちの1つの下で識別可能であるが、他のいずれでも識別可能ではないことを意味する。
【0028】
この組成物は、ベンザルコニウム化合物のみを含有する組成物、またはベンザルコニウム化合物と浸透促進剤(トリポリリン酸ナトリウムなど)のみを含有する組成物と比較して、多くの利点を有する。ひとつの利点は、組成物がすぐに洗い流されることなく、植物や土壌に付着できることである。組成物が植物または土壌に付着することにより、ベンザルコニウム化合物(またはベンザルコニウム化合物と浸透促進剤)を単独で投与する場合よりも低い割合でベンザルコニウム化合物を適用することができる。もう一つの利点は、組成物が複数の相で存在するのではなく、均質であることであり、これは、組成物を適用する時点で別個の混合装置を必要としないので、組成物の植物または土壌への適用を容易にする。もう一つの利点は、組成物が良好な展着性を有することであり、これによって組成物をある領域に均一に塗布することができる。本組成物は濃縮溶液として販売されることがあり、適用前に適切な溶媒または溶剤で適切な濃度に希釈されることがあることは理解されよう。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「防除」、「防除する」、および同様の用語は、組成物が、組成物との接触後に植物病原体の増殖速度を停止させるか、または増殖速度を低下させるか、または植物病原体の集団を減少させることができることを意味する。
【0030】
いくつかの実施形態において、植物病原体に対する組成物の効力は、直径増殖の阻害率(PIDG)によって測定され得る。これらの実施形態では、7日後のPIDGは10%から100%の範囲である。いくつかの実施形態における下限は、少なくとも10%、少なくとも14%、または少なくとも31%とすることができる。いくつかの実施形態における上限は、100%、84%以下、または72%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、10%~72%、14%~72%、31%~84%、または31%~100%の範囲とすることができる。
【0031】
本明細書において、「植物病原体」という用語は、真菌類、卵菌類、およびその他の類似の生物、特に商業的に価値のある作物に影響を及ぼす真菌類および卵菌類を意味する。このような作物には、バナナ、タバコ、アボカド、パーム(パーム油用など)、ドリアン、コショウ、ココア、ゴム、カボチャ、トマト、イチゴなどがあるが、これらに限定されるものではない。組成物を使用できる作物の種類によって本発明を限定する意図はない。植物病原体に感染している作物であれば、本発明の組成物で処置することができる。好ましい作物については、以下でさらに詳しく説明する。
【0032】
いくつかの実施形態では、植物病原体は卵菌である。これらの実施形態において、卵菌はフィトフトラ属(Phytophthora)に属する。一実施形態では、卵菌はフィトフトラ・パルミボラ(Phytophthora palmivora)である。別の実施形態では、卵菌はフィトフトラ・カプシ(Phytophthora capsici)である。さらに別の実施形態では、卵菌はフィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)である。フィトフトラ・シンナモミは土壌を媒介する水カビで、植物に「根腐れ」や「立ち枯れ」と呼ばれる状態を引き起こす感染症を引き起こす。この病原菌は世界で最も侵略的な種のひとつであり、世界70カ国以上に存在している。
【0033】
いくつかの実施形態では、植物病原体は真菌類である。いくつかの実施形態において、真菌類はフザリウム属に属する。フザリウム属は農作物に非常に大きな経済的損失をもたらす病原菌である。その重要な例がバナナのパナマ病である。いくつかの実施形態において、真菌類はフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)である。一実施形態では、真菌類はフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum) f.sp.Cubense(Foc)である。
【0034】
一実施形態では、ベンザルコニウム化合物は以下の構造を有する:
【化1】
式中、RおよびRは、互いに独立して、メチルまたはエチルであり、Rはアルキルであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択されるハロゲン化物である。この特殊なクラスの化合物の利点のひとつは、真菌類や卵菌類などの植物病原体の集団を制御できることであり、適切な濃度で使用すれば植物を枯らすことはない。いくつかの実施形態において、RおよびRは両方ともメチルである。いくつかの実施形態において、Rはメチルであり、Rはエチルである。いくつかの実施形態では、RおよびRは両方ともエチルである。好ましい一実施形態では、RおよびRはともにメチルであり、Rはアルキルであり、Xは塩化物である。一実施形態において、ベンザルコニウム化合物は、本発明の組成物において、浸透促進剤、または界面活性剤、または高分子フィルム形成剤として識別可能ではない。言い換えれば、好ましい実施形態では、ベンザルコニウム化合物は別個に規定された成分である。
【0035】
本明細書において、「アルキル」という用語は、式C2n+1の直鎖状または分枝状のアルキル鎖を意味し、nはアルキル鎖中の炭素原子数を示す。いくつかの実施形態において、Rは、直鎖状もしくは分枝状のC-C40アルキル、例えば、直鎖状もしくは分枝状のC-C30アルキルまたは直鎖状もしくは分枝状のC-C20アルキルである。好ましい一実施形態では、Rは直鎖状または分枝状のC12-C16アルキルであり、Xは塩化物である。例えばC12-C16アルキルの文脈における「直鎖状または分枝状」という用語は、直鎖状C12-アルキル、直鎖状C14-アルキル、直鎖状C16-アルキル、分枝状C12-アルキル、分枝状C14-アルキル、分枝状C16-アルキル、またはそれらの任意の組み合わせを意味する。ベンザルコニウム化合物は通常固体であり、通常、水または他の溶媒中の50%w/v溶液などの溶液として入手できる。
【0036】
本明細書において、「浸透促進剤」という用語は、病原体へのベンザルコニウム化合物の浸透を促進する化合物を意味する。理論に束縛されることを望まないが、浸透促進剤は病原体の細胞壁を通過する輸送を助けることにより、植物病原体をベンザルコニウム化合物に対してより感受性にすると考えられる。浸透促進剤は通常、ベンザルコニウム化合物のような化合物にキレートできる可能性のある多座配位構造である。
【0037】
一実施形態では、浸透促進剤は、ベンザルコニウム化合物、界面活性剤、または高分子フィルム形成剤として識別可能ではない。言い換えれば、好ましい実施形態では、浸透促進剤は別個に規定された成分である。いくつかの実施形態において、浸透促進剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA二ナトリウム、EDTA四ナトリウム、およびEDTAカルシウムナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、浸透促進剤はトリポリリン酸化合物である。いくつかの実施形態において、トリポリリン酸化合物は、トリポリリン酸リチウム、トリポリリン酸ナトリウム、およびトリポリリン酸カリウム、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。トリポリリン酸化合物は、三リン酸をベースとする無機化合物であり、化学構造中に有機成分を含むメタンジホスホン酸(またはその塩)などのホスホン酸化合物とは区別される。トリポリリン酸化合物は、ホスホン酸化合物よりも有利に使用される。ホスホン酸化合物は、トリポリリン酸化合物と比較して、病原体の細胞壁を通過する化合物の輸送を助けるという点で、可溶化性や浸透性が大きく異なり、劣っている。トリポリリン酸化合物は、真菌類や卵菌類の細胞壁との相互作用において、例えば細菌と比較しても、この機能において特に優れている。三リン酸とメタンジホスホン酸(メドロン酸)の構造を以下に示す:
【化2】
【0038】
組成物は界面活性剤も含む。当該技術分野でよく知られているように、界面活性剤は水の表面張力を低下させ、例えば疎水性物質の水溶液への溶解を補助することができる。界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。一実施形態では、界面活性剤はベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、高分子フィルム形成剤ではない。言い換えれば、好ましい実施形態では、界面活性剤は別個に規定された成分である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤は、溶液中で中性の電荷を持つ界面活性剤である。好ましくは、界面活性剤は、植物への組成物の適用を補助するために、低起泡性である。いくつかの実施形態において、界面活性剤はアニオン性界面活性剤ではなく;換言すれば、いくつかの実施形態において、界面活性剤はカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される。ラウリル硫酸ナトリウムやラウレス硫酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤は、混合または撹拌時に泡を形成する傾向があり、これは、葉、土壌、または植物の作物に散布するなどして適用するための組成物を調製する際に望ましくない場合がある。好ましい実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。
【0039】
非イオン性界面活性剤の非限定的な例は、アルコールアルコキシレート界面活性剤として知られる化合物のクラスである。アルコールアルコキシレート界面活性剤の具体例はBL8(商品名)で、C9-11アルコールアルコキシレートと記載されている。この後者の用語が示唆するように、この界面活性剤はC9-C11アルキル疎水性部分と、アルコール基でキャップされたアルコキシル化(エトキシル化)親水性部分を有する。当業者であれば、このクラスの界面活性剤には多くのバリエーションが可能であり、それは本発明の範囲内であることを理解するであろう。非イオン性界面活性剤のもう一つの非限定的な例は、アルキルフェノールアルコキシレート界面活性剤として知られる化合物のクラスである。アルキルフェノールアルコキシレート界面活性剤の具体例としては、ノニルフェノールエトキシレートと記載されているAgral(商品名)がある。この後者の用語が示すように、この界面活性剤は、ノニルフェノキシ疎水性部分と、アルコール基でキャップされたアルコキシル化(エトキシル化)親水性部分を有する。Agral組成物は、共溶媒として2-エチル-1-ヘキサノールを用いて調製される。当業者であれば、このクラスの界面活性剤には多くのバリエーションが可能であり、それは本発明の範囲内であることを理解するであろう。非イオン性界面活性剤のもう一つの非限定的な例は、ポリエーテル変性シロキサンとして知られる化合物のクラスである。ポリエーテル変性シロキサンの具体例としては、α-メチル-オメガ-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]-1-ジシロキサニル]プロポキシ]-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)およびα-メチル-オメガ-(2-プロペン-1-イルオキシ)-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)の混合物であるHansa ADD 1055(商品名)が挙げられる。当業者であれば、このクラスの界面活性剤には多くのバリエーションが可能であり、それは本発明の範囲内であることを理解するであろう。
【0040】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、アルコールアルコキシレート界面活性剤、アルキルフェノールアルコキシレート界面活性剤、およびポリエーテル変性シロキサン界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、アルコールアルコキシレート界面活性剤(BL8など)とポリエーテル変性シロキサン界面活性剤(Hansa ADD 1055など)との組み合わせである。これらの実施形態において、アルコールアルコキシレート界面活性剤対ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤の体積比は、100:10~10:100の範囲であってもよい。いくつかの実施形態によれば、アルコールアルコキシレート界面活性剤は、ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤よりも多い量、例えば88:12、80:20、67:33、または55:45の体積比で存在する。いくつかの実施形態において、アルコールアルコキシレート界面活性剤は、ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤よりも少ない量、例えば15:85、20:80、38:62、または46:54の体積比で存在する。好ましい一実施形態では、アルコールアルコキシレート界面活性剤とポリエーテル変性シロキサン界面活性剤の体積比は約66:34である。
【0041】
本明細書において、「高分子フィルム形成剤」という用語は、フィルムを形成し得る高分子化合物を意味する。一実施形態では、高分子フィルム形成剤は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤ではない。言い換えれば、好ましい実施形態では、高分子フィルム形成剤は別個に規定された成分である。高分子フィルム形成剤は、組成物中の他の成分が植物または土壌の表面に付着または持続するのを助ける。理論に束縛されることを望むものではないが、高分子フィルム形成剤は、組成物の成分と植物または土壌とを結合するフィルムを形成するか、または成分と植物または土壌との接触を維持すると考えられる。また、このポリマーは水を保持したり、大気中の水分を吸収したりする能力も持っていると考えられている。高分子フィルム形成剤は、本明細書に記載の量で存在する場合、組成物の溶媒の蒸発後に粘着性表面の形成をもたらす。接触または接着は、ファンデルワールス力、水素結合、静電気力、共有結合、またはそれらの任意の組み合わせを介することができる。高分子フィルム形成剤により、成分が塗布部位付近に留まる一方、降水などで洗い流されにくくなる。高分子フィルム形成剤は、成分だけでなく植物や土壌の基質にも付着でき、不揮発性で、好ましくは水溶性である任意の高分子化合物でありえる。カチオン性ポリマーは、Kuboi et al.(Soil Science and Plant Nutrition 1984,30,311-320)が概説しているように、生育に影響があるという証拠があるため、高等植物への適用には適さないと考えられている。したがって、いくつかの実施形態では、高分子フィルム形成剤はカチオン性ポリマーではない。いくつかの実施形態において、高分子フィルム形成剤は、非イオン性ポリマーまたはアニオン性ポリマーである。いくつかの実施形態において、高分子フィルム形成剤は非イオン性ポリマーである。好適な高分子フィルム形成剤としては、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、多糖類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 高分子フィルム形成剤として使用できるポリアクリルアミドの非限定的な例としては、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、およびポリ(アクリルアミド-co-アクリレート)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。これらのポリマーの好適な例は、以下の特許出願に見出すことができ、これらは参照により本明細書に援用される: WO89/12450,WO2013/149856A1,WO2016/162783A1,およびWO2017/197066A1。このような化合物の調製は、例えばKalalehらによる「Preparation of poly(sodium acrylate-co-acrylamide) superabsorbent copolymer via alkaline hydrolysis of acrylamide using microwave irradiation」(arXiv:1502.03639)で報告されており、この報告も参照により本明細書に援用される。これらのポリマーは、モノマーであるアクリルアミド、アクリル酸、および/またはアクリル酸エステルをベースとしており、植物病原体を防除するための組成物に適切な粘着特性を与える。好ましい一実施形態では、高分子フィルム形成剤はポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)であり、本明細書では「アクリルアミドポリマー」と称する。このような薬剤は、本明細書に記載の用途において所望の特性を有する組成物の形成に特に適していることが見出された。
【0042】
高分子フィルム形成剤として使用できるセルロース誘導体の非限定的な例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、およびヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)が挙げられる。これらのポリマーは、側鎖の官能基化が異なるセルロース系ポリマーである。好ましい一実施形態では、高分子フィルム形成剤はカルボキシメチルセルロースである。
【0043】
高分子フィルム形成剤として使用できるポリエチレングリコールの非限定的な例としては、PEG 6000およびPEG 8000が挙げられる。好ましい実施形態におけるポリエチレングリコールは、少なくとも3000、例えば少なくとも3500、少なくとも4000または少なくとも6000の分子量を有することができる。いくつかの実施形態における分子量の上限は、10,000または8,000であってもよい。
【0044】
高分子フィルム形成剤として使用できる多糖類の非限定的な例としては、アルギン酸塩、セルロース、ペクチン、シクロデキストリン、デキストラン、デンプン、キトサンなどが挙げられる。
【0045】
高分子フィルム形成剤は、上記の化合物の任意の組み合わせでよい。
別の態様では、植物病原体を防除するための組成物は、以下を含む:
(a) 10wt%から60wt%の量のベンザルコニウム化合物;
(b) 1wt%から30wt%の量の浸透促進剤;
(c) 10wt%~70wt%の量の界面活性剤;および
(d) 0wt%から2wt%の量の高分子フィルム形成剤。
【0046】
組成物の表示量は溶媒を除く。別の言い方をすれば、上記のパーセンテージ値に対して成分の相対量を評価する場合、溶媒含有量は無視される。しかし、組成物は通常、使用前に溶剤と組み合わされる。
【0047】
いくつかの実施形態において、ベンザルコニウム化合物の量は、10wt%から60wt%の範囲内の量で存在する。範囲の下限は、いくつかの実施形態では、少なくとも10wt%、少なくとも15wt%、少なくとも20wt%、または少なくとも38wt%とすることができる。範囲の上限は60wt%以下、50wt%以下、45wt%以下、39wt%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、10wt%~39wt%、15wt%~45wt%、20wt%~60wt%、または38wt%~50wt%の範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、ベンザルコニウム化合物は塩化ベンザルコニウムであり、約39wt%の量で存在する。
【0048】
いくつかの実施形態において、浸透促進剤の量は、1wt%から30wt%の範囲内の量で存在する。浸透促進剤がなくても組成物は機能すると考えられるが、何らかの浸透促進剤を含む組成物は、何もない場合よりもはるかに高い効果を示すと考えられる。範囲の下限は、いくつかの実施形態では、少なくとも1wt%、少なくとも2wt%、少なくとも5%、または少なくとも10wt%とすることができる。範囲の上限は30wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、11wt%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、1wt%~11wt%、2wt%~20wt%、10wt%~30wt%、または5wt%~25wt%の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、浸透促進剤はトリポリリン酸ナトリウムであり、約11wt%の量で存在する。
【0049】
いくつかの実施形態では、界面活性剤の量は、10wt%から70wt%の範囲内の量で存在する。界面活性剤がなくても組成物は機能すると考えられるが、何らかの界面活性剤を含む組成物は、何も存在しない場合よりもはるかに高い効力および/または展着性を示すと考えられる。範囲の下限は、いくつかの実施形態では、少なくとも10wt%、少なくとも20wt%、少なくとも30wt%、または少なくとも40wt%とすることができる。範囲の上限は70wt%以下、60wt%以下、55wt%以下、50wt%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、10wt%~55wt%、20wt%~70wt%、30wt%~60wt%、40wt%~50wt%の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、界面活性剤はアルコールアルコキシレート界面活性剤であり、約50wt%の量で存在する。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、約33.5wt%の量で存在するアルコールアルコキシレート界面活性剤と、約17wt%の量で存在するポリエーテル変性シロキサンとの組み合わせである。このように、本実施形態における界面活性剤は、約51wt%の量で存在する。
【0050】
いくつかの実施形態において、高分子フィルム形成剤の量は、0wt%~2wt%の範囲内の量で存在する。組成物は、フザリウム属やフィトフトラ属などの植物病原体を、高分子フィルム形成剤なしで防除することができる。例えば、組成物を土壌に直接塗布する場合、高分子フィルム形成剤を添加する必要はないかもしれない。他の実施形態では、組成物を植物の葉や果実に適用する場合など、高分子フィルム形成剤を添加するのが有利である。いくつかの実施形態において、範囲の下限は、0wt%、少なくとも0.01wt%、少なくとも0.02wt%、または少なくとも0.05wt%とすることができる。上限は2.00wt%以下、1.50wt%以下、1.00wt%以下、0.50wt%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。高分子フィルム形成剤は含まなくてもよい。存在する場合、高分子フィルム形成剤の量は、0.01wt%~0.50wt%、0.02wt%~1.00wt%、0.05wt%~2.00wt%、または0.02wt%~1.50wt%の範囲で存在することができる。いくつかの実施形態において、高分子フィルム形成剤はポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)であり、これは約0.09wt%の量で存在する。
【0051】
いくつかの実施形態において、適用準備が整った状態における組成物の濃度(ppm)は、成分(a)であるベンザルコニウム化合物の総量を参照して計算され、ここで1mg/Lは1ppmに相当する。
【0052】
「製品全体の濃度」という表現は、複数の成分が記載されている組成物の濃度を表すために使用することもできる。例えば、成分XとYを含む組成物の「製品全体の濃度」(ppm)は、溶媒1リットルあたりのXとYの合計質量(mg)である。
【0053】
成分(a)と(b)の相対量
いくつかの実施形態において、適用準備が整った状態の組成物の濃度(ppm)は、成分(a)ベンザルコニウム化合物および(b)浸透促進剤の総量を参照して計算される。この場合、ppmで表される組成物の濃度は、溶媒1リットルあたりに存在するベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計質量(mg)に基づいている。これらの実施形態において、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤との質量比は、98:2~25:75の範囲内とすることができる。理論に束縛されることを望まないが、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の特定の比率が、相乗効果を生じさせると考えられる。いくつかの実施形態によれば、ベンザルコニウム化合物は、92:8、81:19、75:25、または67:33の比率など、浸透促進剤よりも多い量で存在する。いくつかの実施形態において、ベンザルコニウム化合物は、25:75、31:69、39:61、または49:51の比率など、浸透促進剤よりも少ない量で存在する。いくつかの実施形態において、ベンザルコニウム化合物は塩化ベンザルコニウムであり、浸透促進剤はトリポリリン酸ナトリウムである。このような実施形態では、塩化ベンザルコニウムとトリポリリン酸ナトリウムの比率は約78:22である。
【0054】
成分(a)と(c)の相対量
いくつかの実施形態において、適用準備が整った状態の組成物の濃度(ppm)は、成分(a)ベンザルコニウム化合物および(c)界面活性剤の総量を参照して計算される。界面活性剤は、単一の界面活性剤であっても、2種以上の界面活性剤の組み合わせであってもよい。2種の異なる界面活性剤を使用する利点は、同じ界面活性剤をどちらか一方だけ使用する場合と比較して、展着性、付着性、効能などの特性のより優れたスペクトルが得られる可能性があることである。また、界面活性剤を組み合わせて使用することで、界面活性剤の総量を減らすことも可能であろう。ppmで表される組成物の濃度は、溶媒1リットルあたりに存在するベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計質量(mg)に基づいている。これらの実施形態において、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)との質量比は、85:15~10:90の範囲内とすることができる。いくつかの実施形態によれば、ベンザルコニウム化合物は、70:30、67:33、60:40、または55:45の比率など、界面活性剤(複数可)よりも多い量で存在する。いくつかの実施形態において、ベンザルコニウム化合物は、20:80、25:75、30:70、または35:65の比率など、界面活性剤(複数可)よりも少ない量で存在する。いくつかの実施形態において、ベンザルコニウム化合物は塩化ベンザルコニウムであり、界面活性剤はアルコールアルコキシレート界面活性剤である。これらの実施形態において、塩化ベンザルコニウムとアルコールアルコキシレート界面活性剤の比率は約44:56である。 いくつかの実施形態では、界面活性剤はアルコールアルコキシレート界面活性剤とポリエーテル変性シロキサンの組み合わせである。これらの実施形態において、塩化ベンザルコニウムと界面活性剤の比率は約43:57である。
【0055】
成分(a)と(d)の相対量
いくつかの実施形態において、適用準備が整った状態の組成物の濃度(ppm)は、成分(a)ベンザルコニウム化合物および(d)高分子フィルム形成剤の総量を参照して計算される。この場合、ppmで表される組成物の濃度は、溶媒1リットルあたりに存在するベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計質量(mg)に基づいている。これらの実施形態において、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との質量比は、100:0~83:17の範囲内とすることができる。高分子フィルム形成剤が存在する場合、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の質量比は、例えば、100:0~90:10、99.9:0.1~90:10、99.9:0.1~95:5、99.5:0.5~90:10、98:2~95:5などの範囲内とすることができる。その量は、約99.9:0.1、99.5:0.5、98:2、92:8、または90:10とすることができる。いくつかの実施形態において、ベンザルコニウム化合物は塩化ベンザルコニウムであり、高分子フィルム形成剤はポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)である。上記の比率は、このような組成物に適用される。ある特定の実施形態において、塩化ベンザルコニウムとポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)との比は、約99.8:0.2であってよい。
【0056】
3成分を含む組成物の濃度
いくつかの実施形態において、適用準備が整った状態の組成物の濃度(ppm)は、成分(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤(複数可)の総量を参照して計算される。この場合、ppmで表される組成物の濃度は、溶媒1リットルあたりに存在するベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)の合計質量(mg)に基づいている。
【0057】
いくつかの実施形態において、適用準備が整った状態の組成物の濃度(ppm)は、成分(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(d)高分子フィルム形成剤の総量を参照して計算される。この場合、ppmで表される組成物の濃度は、溶媒1リットルあたりに存在するベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、および高分子フィルム形成剤の合計質量(mg)に基づいている。
【0058】
いくつかの実施形態において、適用準備が整った状態の組成物の濃度(ppm)は、成分(a)ベンザルコニウム化合物、(c)界面活性剤(複数可)、および(d)高分子フィルム形成剤の総量を参照して計算される。この場合、ppmで表される組成物の濃度は、溶媒1リットルあたりに存在するベンザルコニウム化合物、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計質量(mg)に基づいている。
【0059】
4成分を含む組成物の濃度
いくつかの実施形態において、適用準備が整った状態の組成物の濃度(ppm)は、成分(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤(複数可)、および(d)高分子フィルム形成剤の総量を参照して計算される。この場合、ppmで表される組成物の濃度は、溶媒1リットルあたりに存在するベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤、および高分子フィルム形成剤の合計質量(mg)に基づいている。
【0060】
真菌類や卵菌類などの植物病原体やその胞子は、植物宿主を必要とせず、土壌中に何年も生存することが多い。作物が植えられると、病原菌は植物の根、茎、樹冠に感染する。したがって、別の態様において、本発明は、土壌中の植物病原体を防除するための組成物の使用であって、(a)10wt%~60wt%の量のベンザルコニウム化合物、(b)1wt%~30wt%の量の浸透促進剤、(c)10wt%~70wt%の量の界面活性剤、および(d)0wt%~2wt%の量の高分子フィルム形成剤を含む組成物を土壌に適用することを含む使用を提供する。驚くべきことに、本発明の組成物は、殺菌目的で従来使用されていたよりもはるかに低い割合で適用した場合、植物病原体の個体数を制御できることが見出された。さらに、本発明者らは、本発明の組成物を用いて、植物の作物においてフィトフトラ属およびフザリウム属の集団を減少または除去できることを初めて示した。本組成物は、作物の植え付け前、植え付け中、植え付け後のいずれにおいても、土壌中の病原体集団を防除するために、あらゆる手段で土壌に適用することができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「適用」、「適用する」および類似の用語は、植物または土壌などの表面に本発明の組成物を接触させることを意味する。組成物は、植え付け前の土壌または種子への適用、土壌、樹立した作物の幹または葉への散布または散水による適用、土壌への浸漬による適用、植物の幹への注入または移植による適用、圃場への湛水による適用、空中散布による適用が可能である。本発明者らは初めて、本組成物が、フィトフトラ属やフザリウム属などの植物病原体の蔓延を予防するため、あるいは植物病原体を防除または除去するため、あるいは植物病原体が蔓延した地域を修復するために使用できることを示した。この組成物は、機器の滅菌に使用される割合よりもはるかに低い割合で適用することができ、これは通常、約100,000ppmの割合で使用される。本発明の組成物が使用される低い割合では、罹患した植物を枯死させたり、葉の褐変を引き起こしたりすることなく、植物病原体を低レベルに制御できることは驚くべきことである。
【0062】
植物病原体は、植物の茎や幹、葉、果実、あるいは地上に出ている植物のあらゆる部分に発生する可能性がある。従って、別の態様において、本発明は、植物病原体を防除する方法であって、(a)10wt%~60wt%の量のベンザルコニウム化合物を含む有効量の組成物と植物病原体とを接触させることを含む方法を提供する、(b)1wt%から30wt%の量の浸透促進剤、(c)10wt%から70wt%の量の界面活性剤、および(d)0wt%から2wt%の量の高分子フィルム形成剤。植物の病原体は、根や土の中など地中にも存在する。
【0063】
別の態様において、本発明は、(a)10wt%~60wt%の量のベンザルコニウム化合物、(b)1wt%~30wt%の量の浸透促進剤、(c)10wt%~70wt%の量の界面活性剤、および(d)0wt%~2wt%の量の高分子フィルム形成剤を含む組成物を作物に適用することを含む、植物の作物における植物病原体を防除する方法を提供する。植物の作物とは、植物の畑や植林地を意味する。組成物の適用方法は限定されない。例えば、組成物は、散布、給水への添加、空中散布、またはその他の手段によって作物に適用することができる。
【0064】
別の態様では、本発明は、土壌中の植物病原体を防除する方法であって、(a)10wt%から60wt%の量のベンザルコニウム化合物、(b)1wt%から30wt%の量の浸透促進剤、(c)10wt%から70wt%の量の界面活性剤、および(d)0wt%から2wt%の量の高分子フィルム形成剤を含む組成物を土壌に適用することを含む方法を提供する。一実施形態では、土壌は畑の土壌である。畑には作物が植えられていてもよいし、裸の畑でもよい。圃場が裸地である場合、植え付け前に植物病原体を防除する組成物で圃場を処置することができる。これらの実施形態において、植物病原体は、卵菌類、真菌類、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、卵菌類はフィトフトラ属(Phytophthora)に属する。別の実施形態では、真菌類はフザリウム属に属する。
【0065】
適用方法
本発明の組成物は、当該技術分野で知られているいかなる方法によっても適用することができる。例えば、本組成物は、植物の表面、植物の表面下、または植物の周囲の土壌に適用することができる。処置する病原体、季節のサイクル、地域の地理的条件や降雨パターン、適用方法、使用する機器など、さまざまな要因によって、使用する濃度と適用量が決定される。例えば、フィトフトラ属の処置には、一般に、フザリウム属の処置に必要な濃度と比較して、約30分の1から3分の1の濃度の組成物が必要である。本発明は、適用方法によって限定されるものではない。いくつかの実施形態において、組成物は、土壌、樹立した作物の幹または葉への噴霧、土壌へのドレンチ、植物の幹への注入または移植、または圃場への湛水によって、植え付け前に土壌または種子に適用され得る。本発明者らは、組成物が植物、果実、または土壌に接触する限り、植物病原体が蔓延している領域への組成物の適用は、任意の数の方法によって行うことができると判断した。さらに、特に本発明の組成物において、植物、果実または土壌に適用される低量のベンザルコニウム化合物が、植物病原体の個体数を減少または制御できることは驚くべきことである。多くの植物の茎や果実には、水や水性液体を植物から土壌へと排出するのを助けるワックス状の被膜があるからだ。同様に、土壌に散布された水性液体は、水中に溶解した化合物とともに排水されることが予想されるため、植物上または植物の根やその周辺などの土壌中に存在する可能性のある植物病原体を処置することは期待できない。本発明者らの知る限り、フィトフトラ属またはフザリウム属のような植物病原体の、圃場または作物における防除は、ベンザルコニウム化合物を含むいかなる組成物でも実証されていない。
【0066】
フィトフトラ属の処置のための葉面散布の濃度
組成物をフィトフトラ属の処置のために葉に適用する場合、濃度は、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、15ppmから750ppmの範囲とすることができる。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、少なくとも15ppm、または少なくとも20ppm、少なくとも25ppm、または少なくとも50ppmとすることができる。範囲の上限は750ppm以下、500ppm以下、200ppm以下、または100ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、15ppm~100ppm、20ppm~200ppm、25ppm~750ppm、または50ppm~200ppmの範囲とすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフィトフトラ属の処置のために葉に適用される場合、組成物の濃度は15ppmから960ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、少なくとも15ppm、少なくとも20ppm、少なくとも50ppm、または少なくとも100ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、960ppm以下、500ppm以下、300ppm以下、または200ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、15ppm~200ppm、20ppm~300ppm、50ppm~500ppm、または100ppm~960ppmの範囲とすることができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフィトフトラ属の処置のために葉に適用される場合、組成物の濃度は30ppmから1720ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、少なくとも30ppm、少なくとも50ppm、少なくとも100ppm、または少なくとも200ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、1720ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、または250ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、30ppm~250ppm、50ppm~1000ppm、100ppm~500ppm、または200ppm~1720ppmの範囲とすることができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフィトフトラ属の処置のために葉に適用される場合、組成物の濃度は15ppmから750ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との合計量に基づいて、少なくとも15ppm、少なくとも20ppm、少なくとも25ppm、または少なくとも50ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、750ppm以下、500ppm以下、200ppm以下、または100ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、15ppm~100ppm、20ppm~200ppm、25ppm~500ppm、または50ppm~750ppmの範囲とすることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は、「製品全体の濃度」として表され、ここで、用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフィトフトラ属の処置のために葉に適用される場合、組成物の濃度は30ppmから1930ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、少なくとも30ppm、少なくとも100ppm、少なくとも200ppm、または少なくとも300ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、1930ppm以下、1500ppm以下、1000ppm以下、または500ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、30ppm~500ppm、100ppm~1000ppm、200ppm~1500ppm、または300ppm~1930ppmの範囲とすることができる。
【0071】
フィトフトラ属の処置のための土壌ドレンチの濃度
フィトフトラ属の処置のために、組成物を土壌に、例えば植物の根元にドレンチとして適用する場合、濃度は、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、30ppm~3500ppmの範囲とすることができる。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、少なくとも30ppm、少なくとも100ppm、少なくとも200ppm、または少なくとも500ppmとすることができる。範囲の上限は、3500ppm以下、2000ppm以下、1500ppm以下、または1000ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、30ppm~1000ppm、100ppm~3500ppm、200ppm~2000ppm、または500ppm~1500ppmの範囲とすることができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤との組み合わせを指す。本実施形態において、組成物がフィトフトラ属の処置のために土壌に適用される場合、組成物の濃度は、30ppm~4500ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、少なくとも30ppm、少なくとも100ppm、少なくとも500ppm、または少なくとも1000ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、4500ppm以下、3000ppm以下、2000ppm以下、または1500ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、30ppm~1500ppm、100ppm~2000ppm、500ppm~3000ppm、または1000ppm~4500ppmの範囲とすることができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフィトフトラ属の処置のために土壌に適用される場合、組成物の濃度は60ppmから8100ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物および界面活性剤(複数可)の量に基づいて、少なくとも60ppm、少なくとも200ppm、少なくとも500ppm、または少なくとも1000ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、8100ppm以下、5000ppm以下、3000ppm以下、または2000ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、60ppm~2000ppm、200ppm~3000ppm、500ppm~5000ppm、または1000ppm~8100ppmの範囲とすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフィトフトラ属の処置のために土壌に適用される場合、組成物の濃度は30ppmから3500ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との合計量に基づいて、少なくとも30ppm、少なくとも100ppm、少なくとも500ppm、または少なくとも1000ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、3500ppm以下、2000ppm以下、1500ppm以下、または1200ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、30ppm~1200ppm、100ppm~1500ppm、500ppm~2000ppm、または1000ppm~3500ppmの範囲とすることができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は、「製品全体の濃度」として表され、ここで、用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と、浸透促進剤、界面活性剤、および高分子フィルム形成剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフィトフトラ属の処置のために土壌に適用される場合、組成物の濃度は70ppmから9000ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、少なくとも70ppm、少なくとも200ppm、少なくとも500ppm、または少なくとも1000ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、9000ppm以下、4000ppm以下、2000ppm以下、または1500ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、70ppm~1500ppm、200ppm~2000ppm、500ppm~4000ppm、または1000ppm~9000ppmの範囲とすることができる。
【0076】
フザリウム属の葉面散布における濃度
本組成物をフザリウム属の処置のために葉面散布する場合、濃度は、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、200ppmから2000ppmの範囲とすることができる。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、少なくとも200ppm、少なくとも250ppm、少なくとも300ppm、または少なくとも350ppmとすることができる。範囲の上限は、2000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下、または350ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、200ppm~350ppm、250ppm~500ppm、300ppm~800ppm、または350ppm~2000ppmの範囲とすることができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフザリウム属の処置のために葉に適用される場合、組成物の濃度は、250ppm~2600ppmの範囲であってよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤との合計量に基づいて、少なくとも250ppm、少なくとも300ppm、少なくとも350ppm、または少なくとも400ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、2600ppm以下、1500ppm以下、800ppm以下、または400ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、250ppm~400ppm、300ppm~800ppm、350ppm~1500ppm、または400ppm~2600ppmの範囲とすることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフザリウム属の処置のために葉に適用される場合、組成物の濃度は、450ppm~4600ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物および界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、少なくとも450ppm、少なくとも500ppm、少なくとも550ppm、または少なくとも600ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、4600ppm以下、2000ppm以下、1000ppm以下、または600ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、450ppm~600ppm、500ppm~1000ppm、550ppm~2000ppm、または600ppm~4600ppmの範囲とすることができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフザリウム属の処置のために葉に適用される場合、組成物の濃度は、200ppm~2000ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との合計量に基づいて、少なくとも200ppm、少なくとも250ppm、少なくとも300ppm、または少なくとも350ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、2000ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、または350ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、200ppm~350ppm、250ppm~500ppm、300ppm~1000ppm、または350ppm~2000ppmの範囲とすることができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は、「製品全体の濃度」として表され、ここで、用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と、浸透促進剤、界面活性剤、および高分子フィルム形成剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフザリウム属の処置のために葉に適用される場合、組成物の濃度は、500ppm~5200ppmの範囲であってよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、少なくとも500ppm、少なくとも600ppm、少なくとも700ppm、または少なくとも800ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、5200ppm以下、3000ppm以下、1500ppm以下、または800ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、500ppm~800ppm、600ppm~1500ppm、700ppm~3000ppm、または800ppm~5200ppmの範囲とすることができる。
フザリウム属の治療における土壌ドレンチの濃度
【0081】
フザリウム属の処置のために、組成物を土壌に、例えば、植物の根元にドレンチとして適用する場合、組成物の濃度は、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、500ppm~10000ppmの範囲であってよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、少なくとも500ppm、少なくとも600ppm、少なくとも800ppm、または少なくとも1200ppmとすることができる。範囲の上限は、10000ppm以下、5000ppm以下、2000ppm以下、または1200ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、500ppm~1200ppm、600ppm~2000ppm、800ppm~5000ppm、または1200ppm~10000ppmの範囲とすることができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフザリウム属の処置のために土壌に適用される場合、組成物の濃度は、630ppm~13000ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤との合計量に基づいて、少なくとも630ppm、少なくとも700ppm、少なくとも1000ppm、または少なくとも1500ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、13000ppm以下、6000ppm以下、3000ppm以下、または1500ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と浸透促進剤の合計量に基づいて、630ppm~1500ppm、700ppm~3000ppm、1000ppm~6000ppm、または1500ppm~13000ppmの範囲とすることができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフザリウム属の処置のために土壌に適用される場合、組成物の濃度は、1140ppm~23000ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、少なくとも1140ppm、少なくとも1200ppm、少なくとも2000ppm、または少なくとも3000ppmとすることができる。この範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、23,000ppm以下、12,000ppm以下、6,000ppm以下、または3,000ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と界面活性剤(複数可)の合計量に基づいて、1140ppm~3000ppm、1200ppm~6000ppm、2000ppm~12000ppm、または3000ppm~23000ppmの範囲とすることができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで用語「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフザリウム属の処置のために土壌に適用される場合、組成物の濃度は、500ppm~10000ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤との合計量に基づいて、少なくとも500ppm、少なくとも600ppm、少なくとも700ppm、または少なくとも800ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、10000ppm以下、4000ppm以下、1500ppm以下、または800ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物と高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、500ppm~800ppm、600ppm~1500ppm、700ppm~4000ppm、または800ppm~10000ppmの範囲とすることができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、組成物の濃度は「製品全体の濃度」として表され、ここで「製品全体」とは、ベンザルコニウム化合物と、浸透促進剤、界面活性剤、および高分子フィルム形成剤との組み合わせを指す。この実施形態において、組成物がフザリウム属の処置のために土壌に適用される場合、組成物の濃度は、1280ppm~26000ppmの範囲であってもよい。範囲の下限は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、少なくとも1280ppm、少なくとも1500ppm、少なくとも2000ppm、または少なくとも2500ppmとすることができる。範囲の上限は、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、26,000ppm以下、12,000ppm以下、5,000ppm以下、または2,500ppm以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、ベンザルコニウム化合物、浸透促進剤、界面活性剤(複数可)、および高分子フィルム形成剤の合計量に基づいて、1280ppm~2500ppm、1500ppm~5000ppm、2000ppm~12000ppm、または2500ppm~26000ppmの範囲とすることができる。
【0086】
当業者であれば、組成物中の各成分の量と、濃度が2成分、3成分、または4成分の組み合わせに基づいているかどうかに基づいて、対応する「製品全体の濃度」を計算できるであろう。
【0087】
適用量
上記の組成物濃度を考慮すると、直線100メートルあたりの組成物の塗布量は、当業者によって容易に計算することができる。用語「直線100メートルあたり」は、果樹園または作物植物の畑で線に沿って駆動され得る散布装置を用いた組成物の散布を意味する。直線100mあたりの組成物適用量は、さまざまな要因に左右される。例えば、葉面散布か土壌への散布か、処置される病原体のタイプ、植物の成熟度、植物のサイズ(高さ、幅、葉の密度)、畝の感覚、各畝内の樹木間の距離、使用される装置(広角ノズルや狭角ノズルなど使用されるスプレーノズルのタイプ、液滴のサイズ、吐出圧力)、季節、作物のタイプなどである。組成物は、5~50L/直線100メートル、好ましくは20~25L/直線100メートルの割合で塗布することができる。以下の適用量は、直線100メートルあたり5~50Lの組成物を適用した場合のものである。
【0088】
フィトフトラ属の葉面散布における適用量
フィトフトラ属の処置のための葉面散布の場合、本組成物は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、0.075gから37.5g/直線100メートルの割合で散布することができる。範囲の下限は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、少なくとも0.075g/直線100メートル、少なくとも0.15g/直線100メートル、少なくとも0.50g/直線100メートル、または少なくとも2.00g/直線100メートルとすることができる。範囲の上限は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、37.5g/直線100メートル以下、20.0g/直線100メートル以下、10.0g/直線100メートル以下、または3.00g/直線100メートル以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、0.075g~3.00g/直線100メートル、0.15g~10.0g/直線100メートル、0.50g~20.0g/直線100メートル、または2.00g~37.5g/直線100メートルの範囲とすることができる。
【0089】
フィトフトラ属の処置のための土壌ドレンチの適用量
フィトフトラ属を処置するために土壌に適用する場合、本組成物は、直線100メートルあたりのベンザルコニウム化合物の供給量を基準として、0.15gから175g/直線100メートルの割合で適用することができる。範囲の下限は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、少なくとも0.15g/直線100メートル、少なくとも1.00g/直線100メートル、少なくとも2.00g/直線100メートル、または少なくとも5.00g/直線100メートルとすることができる。範囲の上限は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、175g/直線100メートル以下、80.0g/直線100メートル以下、25.0g/直線100メートル以下、または10.0g/直線100メートル以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、0.15g~10.0g/直線100メートル、1.00g~25.0g/直線100メートル、2.00g~80.0g/直線100メートル、または5.00g~175g/直線100メートルの範囲することができる。
【0090】
フザリウム属の処置のための葉面散布における適用量
フザリウム属の処置のための葉面散布の場合、本組成物は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、1.0gから100g/直線100メートルの割合で散布することができる。範囲の下限は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、少なくとも1.00g/直線100メートル、少なくとも2.00g/直線100メートル、少なくとも5.00g/直線100メートル、または少なくとも10.0g/直線100メートルとすることができる。範囲の上限は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、100g/直線100メートル以下、50.0g/直線100メートル以下、20.0g/直線100メートル以下、または12.0g/直線100メートル以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、1.00g~12.0g/直線100メートル、2.00g~20.00g/直線100メートル、5.00g~50.0g/直線100メートル、または10.0g~100g/直線100メートルの範囲とすることができる。
【0091】
フザリウム属の処置のための土壌ドレンチの適用量
フザリウム属の処置のために土壌に適用する場合、本組成物は、直線100メートルあたりのベンザルコニウム化合物の供給量を基準として、2.50g~500g/直線100メートルの割合で適用することができる。範囲の下限は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、少なくとも2.50g/直線100メートル、少なくとも5.00g/直線100メートル、少なくとも10.0g/直線100メートル、または少なくとも15.0g/直線100メートルとすることができる。範囲の上限は、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、500g/直線100メートル以下、200g/直線100メートル以下、100g/直線100メートル以下、または20.0g/直線100メートル以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、直線100メートルあたりに供給されるベンザルコニウム化合物の量を基準として、2.50g~20.0g/直線100メートル、5.00g~100g/直線100メートル、10.0g~200g/直線100メートル、または15.0g~500g/直線100メートルの範囲とすることができる。
【0092】
当業者であれば、組成物中の各成分の量、および濃度が2成分、3成分、または4成分の組み合わせに基づいているかどうかに基づいて、対応する「製品全体」の適用量を計算できるであろう。
【0093】
農作物
本発明の組成物で処置し得る作物は限定されない。例えば、バナナ、タバコ、アボカド、パーム(パーム油用)、ドリアン、コショウ、ココア、ゴム、カボチャ、トマト、イチゴからなる群から作物を選択することができる。
【0094】
展着性
高分子フィルム形成剤を含む本発明の組成物は、高分子フィルム形成剤を含まない組成物と比較して、好ましい展着性および表面への付着性を示す。展着性は、高分子フィルム形成剤を含む組成物と含まない組成物について、表面上の液滴面積、または液滴の接触角を比較することによって評価することができる。液滴面積が大きいほど広がりが大きいことを示し、これは農業用組成物において望ましい特徴である。接触角が小さいほど、広がりが大きいことを示す。表面への付着性は、組成物の液滴を表面に置き、液滴を下方向に移動させるために表面を傾けるのに必要な角度を測定することによって評価することができる。対照組成物(高分子フィルム形成剤を含まない)より大きい角度は、より粘着性のある組成物であり、これは本発明の組成物の望ましい特徴である。
【0095】
いくつかの実施形態において、500ppmのBAC濃度および0.2mL/Lの高分子フィルム形成剤の濃度を有する組成物について、高分子フィルム形成剤を含まない対照溶液と比較して液滴面積の増加によって測定されるガラス上での展着性の増加は、30%~80%である。範囲の下限は、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%とすることができる。範囲の上限は80%以下、70%以下、60%以下、または50%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、30%~50%、35%~60%、40%~70%、または45%~80%の範囲とすることができる。好ましい実施形態では、高分子フィルム形成剤がアクリルアミドポリマーであり、対照と比較した展着性の増加は約55%である。
【0096】
他の実施形態では、1000ppmのBAC濃度および0.2mL/Lの高分子フィルム形成剤濃度を有する組成物について、高分子フィルム形成剤を含まない対照溶液と比較して、液滴面積の増加によって測定されるガラス上での展着性の増加は、65%~105%である。範囲の下限は、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%とすることができる。範囲の上限は、100%以下、95%以下、90%以下、または85%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、65%~85%、70%~90%、75%~95%、または80%~105%の範囲とすることができる。好ましい実施形態では、高分子フィルム形成剤がアクリルアミドポリマーであり、対照と比較した展着性の増加は約84%である。
【0097】
いくつかの実施形態において、BACの濃度が500ppm(または1000ppm)であり、アクリルアミドポリマーの濃度が0.2mL/Lである組成物について、ガラス上の接触角は5°~25°である。範囲の下限は、少なくとも5°、少なくとも6°、少なくとも7°、または少なくとも8°とすることができる。範囲の上限は25°以下、20°以下、15°以下、10°以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、5°~10°、6°~15°、7°~20°、または8°~25°の範囲とすることができる。いくつかの好ましい実施形態ではアクリルアミドポリマーの濃度が0.2mL/Lであり、ガラス上の接触角は約12°である。
【0098】
他の実施形態では、BACの濃度が2000ppm、高分子フィルム形成剤の濃度が0.2mL/Lの組成物では、高分子フィルム形成剤を含まない対照溶液と比較して、液滴面積の増加によって測定されるガラス上での展着性の増加は5%~30%である。範囲の下限は、少なくとも5%、少なくとも8%、少なくとも12%、または少なくとも15%とすることができる。範囲の上限は30%以下、25%以下、20%以下、15%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、5%~15%、8%~20%、12%~25%、または15%~30%の範囲とすることができる。好ましい実施形態では、高分子フィルム形成剤がアクリルアミドポリマーであり、対照と比較した展着性の増加は約18%である。
【0099】
他の実施形態では、BACの濃度が2000ppm、高分子フィルム形成剤の濃度が0.2mL/Lの組成物では、高分子フィルム形成剤を含まない対照溶液と比較して、ガラス表面上で液滴を下方向に移動させるのに必要な傾斜角の増加は、2%~20%である。範囲の下限は、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも8%、または少なくとも10%とすることができる。範囲の上限は120%以下、18%以下、15%以下、12%以下とすることができる。下限と上限は制限なく組み合わせることができる。例えば、2%~12%、5%~15%、8%~18%、または10%~20%の範囲とすることができる。高分子フィルム形成剤がアクリルアミドポリマーである好ましい実施形態では、対照と比較した展着性の増加は約10%である。
【実施例
【0100】
次に、以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をより完全に説明する。
【0101】
実施例1 - 組成物1
材料
使用したベンザルコニウム化合物は塩化ベンザルコニウム(CAS番号8001-54-5、本明細書では「BAC」と呼ぶ)で、50%w/v水溶液として入手できる。使用した浸透促進剤はトリポリリン酸ナトリウム(CAS番号7758-29-4、本明細書では「STPP」と呼ぶ)、Na10で、三リン酸ナトリウムとしても知られている。
【0102】
使用した界面活性剤のひとつはBL8(CAS番号102782-43-4)で、ポリオキシアルキレングリコール脂肪アルコールエーテルとしても知られる非イオン性のC9-11アルコールアルコキシレート界面活性剤で、分子量はおよそ640である。この界面活性剤の密度は約0.970g/mLである。別の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤に分類されるHansa ADD 1055を使用した。Hansa ADD 1055は、ポリエチレングリコールモノ(3-(テトラメチル-1-(トリメチルシロキシ)-ジシロキサニル)プロピル)エーテル(CAS番号27306-78-1; 70-90%w/w)とα-メチル-オメガ-(2-プロペン-1-イルオキシ)-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)(CAS番号27252-80-8; 20-30%w/w)の混合物である。この界面活性剤の密度は約0.990g/mLである。使用された別の界面活性剤はAgralで、これは非イオン性界面活性剤に分類され、ノニルフェノールエチレンオキシド縮合物(CAS番号9016-45-9;63% w/v)と2-エチル-1-ヘキサノール(CAS番号104-76-7;10-30% w/v)の混合物であり、質量バランスは他の特定されていない非危険成分で作られている。この界面活性剤の比重は0.99g/cmと記載されている。
【0103】
使用した高分子フィルム形成剤は、2-プロペンアミドと2-プロペン酸ナトリウム塩のコポリマーで、本明細書ではポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)または単に「アクリルアミドポリマー」と呼ぶ。ポリマーの密度は約1.074g/mLである。
最初の作業は、以下の成分を含む溶液をベースとし、残りは水で1Lにした:
【0104】
表1 真菌病原体処置用組成物
【表1】
【0105】
実施例2-組成物2
上記と同じ成分を用い、さらに界面活性剤Hansa ADD 1055を加えた代替製剤を調製した。この代替製剤に使用した成分は以下の通りで、残りは水で1Lにした:

表2 真菌病原体処置のための代替組成物。
【表2】
【0106】
実施例3-フィトフトラ・パルミボラ(Phytophthora palmivora)に対するin vitro試験

カカオのさや腐れ病、ドリアンとゴムの茎腐れ病、トウガラシの足腐れ病の病原菌であるフィトフトラ・パルミボラ(Phytophthora palmivora)に対して、後述する毒寒天培地を用いたin vitro試験を行った。
【0107】
(a)BAC(50% w/v水溶液、180mL)、(b)STPP(25g)、および(c)BL8(120mL)を用いてストック溶液を調製し、十分な量の水を加えて全量を1Lとした。
コーンミール寒天(CMA、17g)培地(OxoidTM、Thermo Scientific)を、製造元の指示に従って蒸留水または脱イオン水(1L)に加えた後、121℃で20分間オートクレーブ滅菌し、ウォーターバスで50~55℃まで冷却した。得られた混合物に、表3の量に従って上記のストック溶液、または滅菌蒸留水(対照試料)を加えた。各処置区に5複製を用意し、完全無作為化計画(CRD)を用いて実験を行った。
【0108】
表3 フィトフトラ属試験用に調製した毒寒天組成物
【表3】
【0109】
各処置区の菌糸成長は、室温で自然な明暗サイクルで培養後7日以内に、対照の成長を基準として記録した。直径増殖の阻害率(% PIDG)は以下のように計算した:

阻害率(%)=[(dc-dt)/dc]×100
式中: dc=対照プレートの真菌コロニーの平均直径、および
dt=処置プレートの真菌コロニーの平均直径。
【0110】
統計データの解析は、SASソフトウェア(バージョン9.2)を用いた標準的な分散分析(ANOVA)手順を用いて行った。
【0111】
第1ラウンド:6種類の標的濃度を調製し、スクリーニングを行った:13500ppm、11250ppm、9000ppm、6750ppm、4500ppm、1800ppm、900ppm、および450ppm(BAC濃度、表3に示す)。いずれもP.パルミボラ(palmivora)の生育を100%阻害した。
【0112】
第2ラウンド:6種類の標的濃度を調製し、スクリーニングを行った:450ppm、360ppm、270ppm、180ppm、90ppm、および0ppm(BAC濃度、表3に示す)。BACを含むすべての組成物は、P.パルミボラ(palmivora)の成長を100%阻害した。
第3ラウンド:8種類の標的濃度を調製し、スクリーニングを行った:72ppm、54ppm、36ppm、18ppm、9ppm、4.5ppm、0.9ppm、および0ppm(BAC濃度、表3に示す)。結果を図1に示す。全複製の平均データを表4にまとめた:
【0113】
表4 殺菌組成物の濃度を変えた場合の、培養5日後と7日後のP.パルミボラ(palmivora)の菌糸成長
【表4】
上記のデータから、フィトフトラ属のような卵菌類を防除するのに有効な濃度は、BAC 15~750ppmである。
【0114】
実施例4 - フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum) f.sp.cubense TR4に対するin vitro試験

バナナのパナマ萎凋病の原因菌であるフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum) f.sp. cubense TR4(FocTR4)に対して、後述する毒寒天培地を用いたin vitro試験を行った。
ポテトデキストロース寒天(PDA、39g)培地(DifcoTM)を、製造元の指示に従って蒸留水または脱イオン水(1L)に加えた後、121℃で20分間オートクレーブ滅菌し、ウォーターバスで50~55℃まで冷却した。得られた混合物に、表5の量に従って実施例3のストック溶液、または滅菌蒸留水(対照試料)を加えた。各処置区に5複製を用意し、完全無作為化計画(CRD)を用いて実験を行った。
各処置区の菌糸成長は、室温で自然な明暗サイクルで培養後7日以内に、対照の成長を基準として記録した。直径増殖の阻害率(% PIDG)は上記のように計算した。統計データの解析は、SASソフトウェア(バージョン9.2)を用いた標準的な分散分析(ANOVA)手順を用いて行った。
【0115】
表5 フザリウム属試験用に調製した毒寒天組成物
【表5】
【0116】
第1ラウンド:6種類の標的濃度を調製し、スクリーニングを行った:13500ppm、11250ppm、9000ppm、6750ppm、4500ppm、および0ppm(BAC濃度、表5に示す)。BACを含む組成物はすべて、FocTR4の増殖を100%阻害した。
第2ラウンド:6種類の標的濃度を調製し、スクリーニングを行った:450ppm、360ppm、270ppm、180ppm、90ppm、および0ppm(BAC濃度、表5に示す)。結果を図2に示す。全複製の平均データを表6にまとめた:
【0117】
表6 殺菌組成物の濃度を変えた場合の、培養7日後のP.パルミボラ(palmivora)の菌糸成長。
【表6】
上記のデータから、フザリウム属などの真菌類の防除に有効な濃度は、BAC500~2000ppmである。
【0118】
実施例5-カカオポッドを用いたフィトフトラ・パルミボラ(Phytophthora palmivora)に対するin vivo試験
【0119】
本発明の殺菌剤組成物のP.パルミボラ(palmivora)に対する有効性を試験した。フィトフトラ属単離株M5を人工接種する前に、健全な緑色のカカオポッドを摘み取った。対照として、強毒性P.パルミボラ(palmivora)単離株1株(Sabah産MI 5)、5複製(ポッド)を用いた。
【0120】
各ポッドは滅菌蒸留水で3回注意深く洗浄し、表面を75%エタノールで2分間消毒した後、室温(25±2℃)で風乾した。高分子フィルム形成剤を含む実施例1に記載の組成物を用いて、実施例3および4と同様に異なる濃度の本発明組成物(0~540ppm)を調製し、ポッド全体を覆うようにポッド表面に散布した。カカオポッドに滅菌蒸留水を加えたものを陰性対照とした。散布後、前処置したポッドは、CMAプレートで増殖させたP.パルミボラ(palmivora)の5日齢の培養物の12mmプラグを、各カカオポッドの中央の無傷の皮の上に置いて接種した(図3A~I参照)。得られたポッドを湿らせたプラスチック・トレイに入れ、黒いポリシートで覆って湿度を保ち、25±2℃の暗所で7日間培養した。
【0121】
図3からわかるように、本発明の殺菌剤組成物は、上述の直接接触法を用いて、P.パルミボラ(palmivora)に対して抑制効果を示した。そのデータを以下に要約する:
表7 殺菌剤組成物の濃度を変えた場合の、カカオポッド上のP.パルミボラ(palmivora)の培養7日後の菌糸成長
【表7】
上記のデータから、果実に適用する場合P.パルミボラ(palmivora)のような卵菌を防除するのに有効な濃度は、BAC 15~750ppmの間である。
【0122】
実施例6-ドリアン果実を用いたフィトフトラ・パルミボラ(Phytophthora palmivora)に対するin vivo試験

健全なドリアン果実をドリアン農園から注意深く収穫し、フィトフトラ属(Phytophthora)単離株DB4を人工接種した。対照として、未処置のドリアン果実5個を用いた。実施例5と同様に殺菌剤組成物を調製し、果実表面に塗布した。陰性対照として、滅菌蒸留水を添加したドリアン果実を用いた。前処置した果実に、CMAプレート上で増殖させた P.パルミボラ(palmivora)の5日齢の培養液を12 mmのプラグを、各果実の中心部の無傷の果皮の上に置いて接種した。得られたドリアン果実を湿らせたプラスチック・トレイに入れ、黒いポリシートで覆って湿度を保ち、25±2℃の暗所で7日間培養した。病変の測定は接種後7日目に行った。
【0123】
本発明の殺菌剤組成物は、上記の直接接触法により、P.パルミボラ(palmivora)に対して抑制効果を示した。そのデータを以下に要約する:
表8 殺菌剤組成物の濃度を変化させた場合の、ドリアン果実におけるP.パルミボラ(palmivora)の培養7日後の菌糸成長
【表8】
上記のデータから、果実に適用する場合P.パルミボラ(palmivora)のような卵菌を防除するのに有効な濃度は、BAC 15~750ppmの間である。
【0124】
実施例7-試験組成物の展着性を評価する実験
液体組成物を植物表面に適用する場合、組成物を適用する際に覆うことができる表面積を最大にするために、組成物が良好な展着性を有することが望ましい。広がりが不十分だと、葉に「斑点」ができる。後述するように、異なる濃度における効果を測定するために、BACを低濃度(500ppm)と高濃度(1000ppm)の2種類の組成物を用いて、高分子フィルム形成剤による展着性を試験した。
【0125】
組成物
濃縮ストック溶液は、BAC(50% w/v、180mL)、STPP(25g)、BL8(80mL)、および最終容量を1Lにするのに十分な水で調製した。このストック溶液の濃度は90,000ppm(BACの濃度に基づく)であった。このストック溶液を脱イオン水で希釈し、高分子フィルム形成剤を含まない500ppmと1000ppmの濃度(BACの濃度)の対照溶液を調製した。また、高分子フィルム形成剤としてアクリルアミドポリマー(0.2mL/L)を含む試験液もストック液から調製し、BAC濃度を500ppm(試験液1)と1000ppm(試験液2)とした。

方法1 - 液滴面積
液滴面積は、アクリルアミドポリマーを含む試験液で、関連する対照溶液(アクリルアミドポリマーを含まない)と比較して評価した。40μLの液滴をスライドガラスに塗布した(図4a)。5分後、液滴を撮影し、Digimizer画像解析ソフトウェアを用いて各液滴の面積を定量化した。このプロセスを、カルナウバワックスを塗布したスライドガラス上で繰り返した(図4b)。各濃度で15個の複製を評価した。面積が広ければ広いほど、組成物の展着性は高くなる。
【0126】
液滴面積を計算し、関連する対照溶液と比較した増減率で示した。各試験液間の統計的差異を確認するため、データを一元配置分散分析により分析した。有意差が確認された場合は、Tukeyの正直有意差(HSD)によりペアワイズ比較を行った。すべてのデータはIBM SPSS Statistics for Windows (2020),Version22.0 Armonk,NY: IBM Corp.を用いて分析した。
【0127】
結果
500ppmおよび1000ppmのアクリルアミドポリマーを含む試験液は、該当する対照溶液と比較して、ガラス上での展着性の増加を示した。アクリルアミドポリマーによる展着性の増加は55~84%であった(表9)。
【0128】
表9 ガラス表面上の液滴面積の増加(対照との比較)
【表9】
平均値を示し(n=15)、括弧内の値は±標準偏差を表す。
【0129】
方法2 - 接触角
Huang et al.(Journal of Open Source Software 2021,6,2604)の方法に従い、ガラス製顕微鏡スライド上で、5μLの液滴の接触角を測定した。接触角の測定は、各溶液の液滴5個について行い、各液滴の測定を3回繰り返した。接触角が低いほど、液滴の広がりは大きくなる。
【0130】
各試験液間の統計的差異を確認するため、データを一元配置分散分析により分析した。有意差が確認された場合は、Tukeyの正直有意差(HSD)によりペアワイズ比較を行った。すべてのデータは IBM SPSS Statistics for Windows(2020),Version 22.0 Armonk,NY: IBM Corp.を用いて分析した。
【0131】
結果
各試験液の接触角の結果は、液滴面積の結果とよく相関していた。500ppmと1000ppmの両方のガラス表面において、アクリルアミドポリマーの添加は、対照溶液のみと比較して接触角を有意に減少させた。500ppmの場合、対照溶液の接触角は約27.7°であったが、アクリルアミドポリマーを含む溶液の接触角は約12.0°と大幅に減少し、展着性が向上したことが示された(表10)。1000ppmでも同様の結果が得られた。結果は以下の通りである:
表10 試験液の接触角
【表10】
【0132】
平均値を示し(n=5)、括弧内の値は±標準偏差を表す。各表面タイプおよび濃度において、同じ文字の平均値はTukey´s HSDによって評価され、統計的な差はない。
【0133】
実施例8-試験組成物の展着性を評価する実験
2000ppm(BACの濃度に基づく)の濃度のアクリルアミドポリマー(0.2mL/L)を含む組成物(試験液3)を用いて、液滴面積に関する上記の実験を繰り返した。組成物は実施例7と同様に調製した。実験は、実施例7で述べたように、スライドガラス上で行った。
【0134】
組成物の液滴の付着性は、液滴を下方向に移動させるのに必要な角度の測定によっても評価した。スライドガラスを傾斜可能な台の上に置き、上端から1cmの位置から40μLの試験液をピペットで滴下した(図5)。液滴は1分間安定させた。この後、液滴がスライドの下方に移動し始めるまで、プラットフォームを5秒ごとに2mmずつ傾けた。その後、プラットフォームの傾斜角度が測定された。これを試験液について5回繰り返した。
【0135】
傾斜角度を計算し、対照溶液と比較した増減率で示した。各試験液間の統計的差異を確認するため、データを一元配置分散分析により分析した。有意差が確認された場合は、Tukeyの正直有意差(HSD)によりペアワイズ比較を行った。すべてのデータは IBM SPSS Statistics for Windows(2020),Version 22.0 Armonk,NY: IBM Corp.を用いて分析した。
【0136】
結果
表11 液滴面積と、液滴がガラス面に沿って移動するのに必要な傾斜角、対照溶液と比較した増加率で表す。
【表11】
【0137】
実施例9-試験組成物の展着性を評価する実験

高分子フィルム形成剤を含む組成物の、さまざまな表面への展着性を、実施例7のプロトコルに従って評価した。

組成物
実施例2によるBACとアクリルアミドポリマーを含む組成物を試験用に調製した。この溶液をプラットフォームミキサーで120rpmで10分間撹拌し、使用前に新しく調製した。

表面
液滴散布は、ガラス、ネギ、オレンジの皮、およびキャッツイヤー草として知られるヒポカエリス・ラディカタの葉の裏側で行われた。各表面の準備を表12に示す。表面のテクスチャーを図6に示す。
【0138】
表12 表面の準備と特徴
【表12】
【0139】
方法
試験する溶液の液滴10個を、比較のために対照溶液(脱イオン水)の液滴と並べた。各液滴の体積は70μLで、体積の均一性を確保するためにマイクロピペットで分注した。各液滴の最大拡散は5分後に達成された。その後、それぞれの液滴のペアを写真に撮った。各液滴の外縁を手作業で区切り、画像処置ソフトウェア(JImage)を使用して各液滴の面積を算出した。すべての液滴は、対照溶液に比べてサイズが大きくなった。対照溶液と比較した液滴サイズの増加率を算出した。
【0140】
結果
試験したすべての表面において、アクリルアミドポリマー溶液は脱イオン水と比較して液滴の広がりを増大させた(表13)。
【0141】
表13 液滴面積の変化。対照溶液と比較した増加率で表す。
【表13】
平均値を示し(n=10)、括弧内の値は±標準偏差を表す。
【0142】
実施例10 - バナナ植物を用いたフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum) f.sp. cubense TR4に対するin vivo試験

バナナのパナマ萎凋病の原因真菌であるフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum) f.sp. cubense TR4(FocTR4)に対して、本発明の殺菌剤組成物を予防剤として使用する場合の有効性を試験した。
【0143】
バナナの苗(cv. Berangan、2ヶ月齢)はマレーシア農業研究開発研究所(MARDI)から入手した。土壌はポリバッグに入れ、植林科学研究所(IKP)の大容量オートクレーブで滅菌した。苗は温室内で約2ヵ月間順化させ、高さ約50cmに達した後、FocTR4を接種した。水やりは点滴方式で行い、肥料はNPKを与えた。
【0144】
苗は無作為化完全ブロック計画(RCBD)に用い、健常対照、病害対照、4つの濃度(100ppm、300ppm、500ppm、700ppm)、および市販の殺菌剤の7つの処置を行った。試験した4つの濃度について、組成物は、実施例2に記載した試験液、またはポリマー対照(アクリルアミドポリマーを省略した実施例1に記載)のいずれかであった。使用した濃度は、前述のように「製品全体」を基準としている。市販の殺菌剤はナティーボ(登録商標)(テブコナゾール50%w/wおよびトリフロキシストロビン25%w/w含有)で、製造者の指示に従って1g/Lで使用した。
【0145】
各処置は4反復おこない、1反復あたり4株とした。接種の1日前と3日前に、各ポリバッグに各溶液500mLを添加した。その後、苗木に胞子懸濁液を10mL、皮下注射器で根茎の5cm上に注入した。苗木は、病気発生率(DI)と病気の重症度(DSI)を測定するために、接種後に評価された。DIは、感染の徴候を示したグループの株数を記録することで測定した。DSIは、植物の表面積に占める感染面積の割合を推定することによって測定した。統計分析はSAS(登録商標)ソフトウェアを用い、5%の確率水準で最小有意差(LSD)を用いて平均値の比較を行った。全複製の平均データを表14にまとめた:
【0146】
表14 ポリマー対照と試験液を予防処置として用いたバナナで観察されたフザリウム萎凋病の発病率と重症度の平均値。
【表14】
濃度1=BAC+STPP+界面活性剤+ポリマーの製品全体の濃度(ppm)。
濃度2=BACの濃度(ppm)。
濃度3=BAC+STPPの製品全体の濃度(ppm)。
【0147】
上記のデータから、フザリウム属などの真菌類の防除に有効な濃度は、土壌に散布した場合、BAC500~2000ppmである。
【0148】
本明細書で先行技術文献を参照する場合、その文献がオーストラリアまたはその他の国における当該技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではないことを理解されたい。
【0149】
後続する特許請求の範囲および発明の先行説明において、文脈上、明示的な表現または必要な暗示により別の表現が必要とされる場合を除き、「(含む)comprise」という語または「(含む)comprises」もしくは「(含む)comprising」などの変形は、包括的な意味で、すなわち、記載された特徴の存在を特定するために使用されるが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するために使用されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物病原体を防除するための組成物であって、
(a) ベンザルコニウム化合物;
(b) 浸透促進剤;
(c) 界面活性剤;および
(d) 高分子フィルム形成剤
を含み、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、組成物
【請求項2】
組成物が(a)~(d)の各々を別個の成分として含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ベンザルコニウム化合物が以下の構造を有する、請求項1または2に記載の組成物:
【化1】
式中、RおよびRは、互いに独立して、メチルまたはエチルであり;
はアルキルであり;および
Xはハロゲン化物である。
【請求項4】
が直鎖状または分枝状のC12-C16アルキルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Xが塩化物である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
成分(a)、(b)、(c)および(d)の総量に基づいて、ベンザルコニウム化合物が10wt%から60wt%、好ましくは20wt%から45wt%の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
トリポリリン酸化合物が、トリポリリン酸リチウム、トリポリリン酸ナトリウム、およびトリポリリン酸カリウム、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
トリポリリン酸化合物がトリポリリン酸ナトリウムである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
成分(a)、(b)、(c)および(d)の総量に基づいて、トリポリリン酸リチウムが1wt%から30wt%、好ましくは5wt%から20wt%の量で存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
非イオン性界面活性剤が、アルコールアルコキシレート界面活性剤、アルキルフェノールアルコキシレート界面活性剤、およびポリエーテル変性シロキサン界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
成分(a)、(b)、(c)および(d)の総量に基づいて、界面活性剤が10wt%から70wt%、好ましくは30wt%から60wt%の量で存在する、請求項1から1のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
高分子フィルム形成剤がポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、およびポリ(アクリルアミド-co-アクリレート)からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
成分(a)、(b)、(c)および(d)の総量に基づいて、高分子フィルム形成剤が0.01wt%~2wt%、好ましくは0.05wt%~0.5wt%の量で存在する、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
土壌中の植物病原体を防除するための組成物の使用であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を土壌に適用することを含み、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、、使用。
【請求項16】
植物病原体を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物の有効量と植物病原体を接触させることを含み、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、方法。
【請求項17】
植物の作物における植物病原体を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を植物の作物に適用することを含み、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、方法。
【請求項18】
土壌中の植物病原体を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、(c)界面活性剤、および(d)高分子フィルム形成剤を含む組成物を土壌に適用することを含み、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、方法。
【請求項19】
植物病原体が、真菌、卵菌、またはそれらの組み合わせである、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
卵菌がフィトフトラ属(Phytophthora)に属する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
真菌がフザリウム属に属する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
組成物が、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、15ppm~750ppmの濃度で植物の葉に適用される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
組成物が、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、30ppm~3500ppmの濃度で土壌に適用される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
組成物が、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、200ppm~2000ppmの濃度で植物の葉に適用される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、ベンザルコニウム化合物の濃度を基準として、500ppm~10000ppmの濃度で土壌に適用される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
土壌中のフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除するための組成物の使用であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を土壌に適用することを含み、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、使用。
【請求項27】
植物病原体を、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む有効量の組成物と接触させることを含む、フィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法であって、み、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、方法
【請求項28】
植物の作物におけるフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を植物の作物に適用することを含むみ、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、方法。
【請求項29】
土壌中のフィトフトラ属および/またはフザリウム属を防除する方法であって、(a)ベンザルコニウム化合物、(b)浸透促進剤、および(c)界面活性剤を含む組成物を土壌に適用することを含み、浸透促進剤がトリポリリン酸化合物であり、界面活性剤が陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、方法。
【国際調査報告】