(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】海洋動物副産物の価値化
(51)【国際特許分類】
C07K 14/78 20060101AFI20241219BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20241219BHJP
A23L 17/20 20160101ALI20241219BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20241219BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K14/78
C07K1/14
A23L17/20
A23L17/00 D
A23L5/00 J
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024535685
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 IB2021000876
(87)【国際公開番号】W WO2023111607
(87)【国際公開日】2023-06-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524224308
【氏名又は名称】ゴイア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】デラノイ、 チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】コケレ、 マチルド
(72)【発明者】
【氏名】ブーケ、 ペギー
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
4H045
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LG15
4B035LG42
4B035LG51
4B035LP22
4B035LP24
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4B042AC10
4B042AD39
4B042AE01
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4B042AP15
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4H045AA10
4H045AA20
4H045CA52
4H045EA01
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA70
4H045GA10
4H045GA15
(57)【要約】
本発明は、海洋動物副産物から栄養製品および美容製品を産業規模で抽出するための方法およびプロセスに関する。これらの製品には、栄養目的(例えば動物食物)用のタンパク質および油、ならびに医学、栄養および美容目的のためのコラーゲンが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋動物副産物からコラーゲンを抽出する方法であって:
a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、前記副産物片が、前記海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、
b)前記動物副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップであって、前記皮および軟骨分画が本質的に肉を含まない、ステップと、
c)場合によって、皮および軟骨を含む前記分画を、好ましくは0.5mm~1cmの間、より好ましくは1mm~4mmの間の粒子サイズが生じるようにすりつぶすステップと、
d)皮および軟骨を含む前記分画を酵素的に加水分解して、コラーゲン原加水分解物を生じるステップであって、好ましくは前記加水分解を5~9の間のpHで行うステップと、
e)前記コラーゲン原加水分解物を、脂質分画と、固体を含まない水性コラーゲン加水分解物分画と、固体を含む分画とに分離するステップであって、好ましくは前記分離を3相デカンタ遠心分離によって行うステップと、
f)2000~100,000Da、好ましくは4000~50,000Da、より好ましくは約10,000Daの孔サイズの膜を用いて、前記水性コラーゲン加水分解物分画を、少なくとも1回の濾過ステップに供して、コラーゲン加水分解物を含有する第一の透過物と保持物とを製造するステップと、
g)1000Da未満、好ましくは約150~300Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、ナノ濾過および/または透析によって、前記第一の透過物を脱ミネラル化して、精製コラーゲン溶液を製造するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップg)の精製コラーゲン溶液の脱臭を行うステップであって、好ましくは、前記脱臭が活性炭および/または透析を用いて行われるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製コラーゲン溶液または前記脱臭精製コラーゲン溶液を濃縮し、滅菌するステップであって、好ましくは、前記濃縮および滅菌が直接蒸気注入などの蒸発によって行われるステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記精製コラーゲン溶液または前記精製脱臭コラーゲン溶液、またはその前記濃縮物を乾燥させて、コラーゲン粉末を製造するステップであって、好ましくは、前記乾燥がスプレー乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥、ノズル噴霧器によって行われ、最も好ましくは、前記乾燥が連続水平スプレー乾燥によって行われるステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
海洋動物副産物からタンパク質加水分解物を製造する方法であって:
a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、前記副産物片が、前記海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、
b)前記副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップと、
c)前記タンパク質リッチ分画と水を混合し、脂質分画と、水性分画と、タンパク質リッチ固体分画とを分離するステップであって、好ましくは前記分離を3相デカンタ遠心分離によって行うステップと、
d)前記タンパク質リッチ固体分画を酵素的に加水分解して、タンパク質加水分解物溶液を生じるステップと、
e)好ましくは3相デカンタ遠心分離によって、前記タンパク質加水分解物溶液を、第二の脂質分画と、水性タンパク質加水分解物分画と、第二の固体分画とに分離するステップと、
f)前記水性タンパク質加水分解物を収集するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
g)1000Da未満、好ましくは100~500Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、濾過および/または透析によって、ステップf)の水性タンパク質加水分解物を脱ミネラル化するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水性タンパク質加水分解物または前記脱ミネラル化水性タンパク質加水分解物を濃縮し、滅菌するステップであって、好ましくは、前記濃縮および滅菌が直接蒸気注入などの蒸発によって行われるステップをさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記水性タンパク質加水分解物、前記脱ミネラル化水性タンパク質加水分解物、またはその前記それぞれの濃縮物を乾燥させて、タンパク質粉末を製造するステップであって、好ましくは、前記乾燥がスプレー乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥、ノズル噴霧器によって行われ、最も好ましくは、前記乾燥が連続水平スプレー乾燥によって行われるステップをさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
c’)ステップc)の水性分画を収集し、1000Da未満、好ましくは100~500Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、濾過および/または透析にこの分画を供するステップと、
c”)ステップd)の前に、ステップc’)の保持物を前記タンパク質リッチ固体分画に添加するステップと、
をさらに含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
海洋動物副産物をアップサイクリングする統合プロセスであって、
a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、前記副産物片が、前記海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、
b)前記副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップであって、前記皮および軟骨分画が本質的に肉を含まない、ステップと、
c1)前記タンパク質リッチ分画を、請求項5~9のいずれか一項のステップc)および続くステップに供するステップと、
c2)皮および軟骨を含む前記分画を、請求項1~4のいずれか一項のステップc)および続くステップに供するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項11】
前記海洋動物副産物が、魚の副産物、例えば頭部、内臓、魚骨、スクラップおよび/または皮であり、好ましくは、前記海洋副産物が、マグロの副産物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~4、10または11のいずれか一項に記載の方法によって製造される精製コラーゲン溶液またはコラーゲン粉末であって、前記コラーゲン溶液またはコラーゲン粉末が、少なくとも1つのマトリカインを含む、精製コラーゲン溶液またはコラーゲン粉末。
【請求項13】
前記少なくとも1つのマトリカインが、アレステン、カンスタチン、タムスタチン、テトラスタチン、ペンタスタチン1、ペンタスタチン2、ペンタスタチン3、ラムスタチン、ヘキサスタチン1、ヘキサスタチン2、コラーゲンIVまたはXIXのNC1ドメイン、エンドトロピン、コラーゲンXIII、XVII、XXIIIまたはXXVのエクトドメイン、レスチン1、レスチン2、レスチン3、レスチン4、エンドスタチン、ネオスタチン7、ネオスタチン14、パルミトイルペンタペプチド-4、コラーゲンヘキサペプチドGFOGER、およびCLACからなる群より選択される、請求項12に記載のコラーゲン溶液または粉末。
【請求項14】
前記加水分解物または粉末のペプチドの少なくとも55%が<2kDaであり、好ましくは、ペプチドの少なくとも約60%が<2kDaであり、より好ましくは、ペプチドの少なくとも約65%が<2kDaである、請求項12または13に記載のコラーゲン溶液または粉末。
【請求項15】
請求項5~11のいずれか一項に記載の方法によって製造されるタンパク質加水分解物またはタンパク質粉末であって、前記加水分解物または粉末が、少なくとも3%(重量)のオメガ3脂質および少なくとも1%(重量)のリン脂質を含み、好ましくは、前記加水分解物または粉末が、少なくとも2%(重量)のモノ飽和脂質、少なくとも3%(重量)のポリ飽和脂質および少なくとも2.5%(重量)のオメガ3脂質を含む、タンパク質加水分解物またはタンパク質粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋動物副産物から栄養製品および美容製品を抽出するための方法およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
イントロダクション
さらなる使用のために適している多量の廃棄物および副産物が食品生産チェーンで生成される。これらの動物副産物(ABP)は、ヒト消費に意図されていない動物死体、死体の一部および動物起源の他の産物として定義される。これには、ヒト消費用ではない、調理されたものおよび調理されていないもの両方の魚、貝類および他の水産物が含まれる。動物副産物は、適切に取り扱われないかまたは適切に廃棄されない場合、動物およびヒトの健康に脅威となり得る。動物副産物は、生物学的廃棄蒸気のかなりの部分であり、これらの廃棄物の廃棄に適用される厳しい規制がある。
【0003】
したがって、すべての動物副産物の収集、輸送、貯蔵、取り扱い、プロセシングおよび使用または廃棄を管理する厳しい基準がEUに存在する(EU規制1069/2009)。
【0004】
西側世界の廃棄産業の基盤および関連する廃棄コストは国家間で多様であるが、ABPを埋め立てるオプションは、多くの国でより実行不能になってきている。いくつかの場合、ABPの埋め立ては禁じられてさえおり、別の場合には、税が導入され、またはUKにおけるように割り当て限度容量の超過に対する罰金の可能性もあり、コストは増加している。ABPの処理には、レンダリングおよび焼却、ならびにABPの特定のカテゴリーには堆肥化およびバイオガス製造を含む、多くの技術が存在する。ABPリサイクリングの1つの技術は、容器中の堆肥化であり、これは土壌改良剤および肥料として使用するための安全で価値ある堆肥を製造しつつ、埋め立ての必要性を回避する利点がある。動物飼料としての魚タンパク質ミールの産業規模の製造は、海洋ABPを価値化する可能性がある(WO 2005/115176)。しかし、これらの方法はすべて、ABPの価値ある生物学的リソースを利用されないままにする。さらに、特に海洋ABPに関しては、これらの方法が作る低レベル産物の残留塩含量および他の望ましくない不純物が問題であり続けている。
【0005】
コラーゲンは、結合組織の主な成分で、脊椎動物において最も豊富な線維型タンパク質であり、脊椎動物総タンパク質の約30%を構成する。コラーゲンは、革、フィルム産業、医薬、美容および生物医薬材料、ならびに食品において、広範囲の適用を有する。コラーゲンは、ヒトタンパク質を模倣する特性のために、最近20年の間に組織操作バイオマテリアルにおいて広く用いられてきており、高血圧、尿失禁および変形性関節症に関連する疼痛の治療、ヒトにおける移植物のための組織操作における使用、ならびに血管原性疾患、例えば糖尿病合併症、肥満および関節炎の阻害において、使用可能である。
【0006】
約30%の魚廃棄物は、皮および骨であり、これらにはコラーゲンが非常に豊富である。年間、世界中で1億トンを超える魚が捕獲され、総漁獲量の1/3がフィッシュミールおよび動物飼料に用いられる。したがって、魚骨からのコラーゲンの抽出は、価値が付加された産物を得て、かつ環境汚染を低下させる有望な手段である。
【0007】
EP1016347は、酸抽出によって生の新鮮な解凍魚の皮から魚ゼラチンを調製するためのプロセスに関する。しかし、このプロセスは、魚骨、肉、軟骨およびABPの他の分画を含有する、より複雑なABPのプロセシングには適しておらず、ゼラチンしか生じない。
【0008】
魚副産物からコラーゲンを抽出するための小規模研究によって、これらの出発材料は、価値あるコラーゲンの有望な供給源であることが示された(Jeong, H.-S. et al. Biotechnology and Bioprocess Engineering 18: 1185-1191 (2013);Matmaroth, K. Food Chem. 112: 1179-1186 (2011);Schmidt, M.M. et al. Int. Food. Red. J. 23(3): 913-922 (2016))。しかし、これらの実験室の小規模法は、経済的な方式でスケールアップすることが出来ず、より複雑でない供給源材料(皮)を必要とし、出発産物の他の価値ある構成成分を利用しない。したがって、これらの方法は、皮、肉、魚骨、ひれおよび軟骨を含有する通常は複雑な海洋ABPの産業規模の価値化にまでは熟成されていない。
【発明の概要】
【0009】
したがって、海洋ABPを利用して、例えばこれらの産物の埋め立てまたは廃棄の必要性を防ぐ産業的方法であって、美容産業で使用可能な海洋ABP由来の高品質原産物を生成する方法に関する必要性が依然としてある。さらに、複雑なABP出発材料を利用可能であり、多様なさらなる適用のために十分に純粋であるコラーゲンおよび他の産物を経済的に製造し得る方法に関する必要性が依然としてある。
【0010】
海洋動物副産物から出発して、ヒトおよび動物使用のための、比較的高品質な産物を生成する、大規模価値化法およびプロセスを提供することが本発明の1つの目的である。美容産業で使用するための、高品質原産物、特にコラーゲンを提供することが、本発明の特定の目的である。
【0011】
本発明は、海洋ABPから得られる結果としての産物において、望ましくない品質低下成分の存在を防止する方法を提供することによって、この必要性を満たす。これらの方法は、大規模に複雑な出発材料を取り扱うことが可能である。
【0012】
発明の概要
海洋副産物から製造される産物は、ブタ、家禽および水産養殖のための栄養豊富な食餌成分を提供する際だけでなく、ペレット、パウチおよびおやつを製造するために、優れた品質で高価値の成分が用いられる、拡大中のペットフード市場においても、ますます重要な役割を果たしている。原材料の新鮮さは最終製品におけるタンパク質の品質に影響を及ぼすため、重要である。魚およびその産物の変質は、主に、酵素および細菌作用のために起こり、魚が死ぬと直ちに始まる。先行技術の方法によって製造される加水分解コラーゲンおよびタンパク質産物は、しばしば、高レベルの一価イオンおよび生体アミンを含有し、これは濃度が増加すると毒性であり、最終産物に良くない味および匂いを生じ、したがって問題である。本発明は、コラーゲン加水分解物および/またはタンパク質加水分解物を製造するプロセスにおいて、特定の濾過ステップを使用すると、より低い品質の出発材料から開始した場合でも、非常に優れた品質の最終産物を生じるという発見に基づく。本発明は、産業量の海洋原材料を価値化する大規模法を提供することによって、これらのゴールを達成する。
【0013】
第一の態様において、本発明は、海洋動物副産物からコラーゲンを抽出する方法であって、(a)好ましくは5cm未満のサイズの、より好ましくは1~2cmの間のサイズの海洋動物副産物片を提供するステップであって、副産物片が、海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、(b)動物副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップであって、皮および軟骨分画が本質的に肉を含まない、ステップと、(c)場合によって、皮および軟骨を含む分画を、好ましくは0.5mm~1cmの間、より好ましくは1mm~4mmの間の粒子サイズが生じるようにすりつぶすステップと、(d)皮および軟骨を含む分画を酵素的に加水分解して、コラーゲン原加水分解物(raw hydrolysate)を生じるステップであって、好ましくは加水分解を5~9の間のpH、より好ましくは6~8の間のpHで行うステップと、(e)コラーゲン原加水分解物を、脂質分画と、固体を含まない水性コラーゲン加水分解物分画と、固体を含む分画とに分離するステップであって、好ましくは分離を3相デカンタ遠心分離によって行うステップと、(f)2000~100,000Da、好ましくは4000~50,000Da、より好ましくは約10,000Daの孔サイズの膜を用いて、水性コラーゲン加水分解物分画を、少なくとも1回の濾過ステップに供して、コラーゲン加水分解物を含有する第一の透過物(permeate)と保持物(retentate)とを製造するステップと、(g)1000Da未満、好ましくは約150~300Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、ナノ濾過および/または透析によって、第一の透過物を脱ミネラル化して、精製コラーゲン溶液を製造するステップと、を含む、方法に関する。本発明は、ステップ(g)の精製コラーゲン溶液を脱臭するステップであって、好ましくは活性炭および/または透析を用いて脱臭を行うステップをさらに含む、上述のような方法にさらに関する。本発明は、精製コラーゲン溶液または脱臭精製コラーゲン溶液を濃縮し、滅菌するステップであって、好ましくは、濃縮および滅菌が直接蒸気注入(direct steam injection)などの蒸発によって行われるステップをさらに含む、上述のような方法にさらに関する。本発明は、精製コラーゲン溶液または精製脱臭コラーゲン溶液、またはその濃縮物を乾燥させて、コラーゲン粉末を製造するステップであって、好ましくは、乾燥がスプレー乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥、ノズル噴霧器によって行われ、最も好ましくは乾燥が連続水平スプレー乾燥によって行われるステップをさらに含む、上述のような方法にさらに関する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、海洋動物副産物からタンパク質加水分解物を製造する方法であって:(a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、副産物片が、海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、(b)副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップと、(c)タンパク質リッチ分画と水を混合し、脂質分画と、水性分画と、タンパク質リッチ固体分画とを分離するステップであって、好ましくは分離を3相デカンタ遠心分離によって行うステップと、(d)タンパク質リッチ固体分画を酵素的に加水分解して、タンパク質加水分解物溶液を生じるステップと、(e)好ましくは3相デカンタ遠心分離によって、タンパク質加水分解物溶液を、第二の脂質分画と、水性タンパク質加水分解物分画と、第二の固体分画とに分離するステップと、(f)水性タンパク質加水分解物を収集するステップと、を含む、方法に関する。本発明は、(g)1000Da未満、好ましくは100~500Daまたは150~300Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、濾過および/または透析によって、ステップf)の水性タンパク質加水分解物を脱ミネラル化するステップをさらに含む、上述のような方法にさらに関する。本発明は、水性タンパク質加水分解物または脱ミネラル化水性タンパク質加水分解物を濃縮し、滅菌するステップであって、好ましくは、濃縮および滅菌が直接蒸気注入などの蒸発によって行われるステップをさらに含む、上述のような方法にさらに関する。本発明は、水性タンパク質加水分解物、脱ミネラル化水性タンパク質加水分解物、またはそのそれぞれの濃縮物を乾燥させて、タンパク質粉末を製造するステップであって、好ましくは、乾燥がスプレー乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥、ノズル噴霧器によって行われ、最も好ましくは、乾燥が連続水平スプレー乾燥によって行われるステップをさらに含む、上述のような方法にさらに関する。本発明は、(c’)ステップ(c)の水性分画を収集し、1000Da未満、好ましくは100~500Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、濾過および/または透析にこの分画を供するステップと、(c”)ステップ(d)の前に、ステップ(c’)の保持物をタンパク質リッチ固体分画に添加するステップとをさらに含む、上述のような方法にさらに関する。
【0015】
本発明は、上述の方法を組み合わせて、海洋動物副産物をアップサイクリングするかまたは価値化する統合プロセス(integrated process)にさらに関する。この態様の1つの実施形態において、統合プロセスは、(a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、副産物片が、海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、(b)副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップであって、皮および軟骨分画が本質的に肉を含まない、ステップと、(c1)タンパク質リッチ分画を、上述のタンパク質加水分解物を製造する方法のステップ(c)および続くステップに供するステップと、(c2)皮および軟骨を含む分画を、上述のようなコラーゲンを抽出する方法のステップ(c)および続くステップに供するステップと、を含む。タンパク質加水分解物を製造する方法およびコラーゲンを抽出する方法のさらなる変形および精錬は、本発明のこの態様の統合プロセスの背景において、完全に適用され得る。
【0016】
上述の方法のいずれにおいても、出発材料として用いられる海洋動物副産物は、魚の副産物、例えば頭部、内臓、魚骨、スクラップおよび/または皮であってもよい。好ましい実施形態において、海洋副産物は、マグロの副産物である。
【0017】
上述の方法は、コラーゲン溶液および/またはコラーゲン粉末を製造する。上記方法によって製造されるコラーゲンは非常に高品質のものであることが見出されてきている。したがって、本発明は、上に詳述する方法によって製造される精製コラーゲン溶液またはコラーゲン粉末に関する。特定の実施形態において、コラーゲン溶液および/またはコラーゲン粉末は、少なくとも1つのマトリカインを含む。コラーゲン溶液および/または粉末の少なくとも1つのマトリカインは、アレステン、カンスタチン、タムスタチン、テトラスタチン、ペンタスタチン1、ペンタスタチン2、ペンタスタチン3、ラムスタチン、ヘキサスタチン1、ヘキサスタチン2、コラーゲンIVまたはXIXのNC1ドメイン、エンドトロピン、コラーゲンXIII、XVII、XXIIIまたはXXVのエクトドメイン、レスチン1、レスチン2、レスチン3、レスチン4、エンドスタチン、ネオスタチン7、ネオスタチン14、パルミトイルペンタペプチド-4、コラーゲンヘキサペプチドGFOGER、およびCLACのいずれか1つ以上であってもよい。特に、本発明は、本発明の方法によって製造されるコラーゲン溶液または粉末であって、コラーゲン加水分解物または粉末のペプチドの少なくとも50%が<2kDaであり、好ましくはペプチドの少なくとも約60%が<2kDaであり、より好ましくは、ペプチドの少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、・・・、79%、80%、81%、82%、83%、84%または85%が<2kDaであるものである。1つの実施形態において、本発明の精製コラーゲン溶液または粉末は、残存塩含量が乾燥重量で4%未満、好ましくは乾燥重量で2%、1%または0.5%未満であることで特徴づけられる。
【0018】
本発明はまた、本発明の方法によって製造されたタンパク質加水分解物またはタンパク質粉末にも関する。1つの実施形態において、タンパク質加水分解物またはタンパク質粉末は、少なくとも3%(重量)のオメガ3脂質および少なくとも1%(重量)のリン脂質を含み、好ましくは加水分解物または粉末は、少なくとも2%(重量)のモノ飽和脂質、少なくとも3%(重量)のポリ飽和脂質および少なくとも2.5%(重量)のオメガ3脂質を含む。1つの実施形態において、精製タンパク質加水分解物または粉末は、残存塩含量が、乾燥重量で20%未満、好ましくは15%、10%、または5%未満であり、脂質含量が、乾燥重量で20%未満、好ましくは15%、12%または10%未満であり、タンパク質含量が、乾燥重量で60%より多く、好ましくは70%、75%または80%より多いことで特徴づけられる。
【0019】
本発明のコラーゲン溶液およびコラーゲン粉末は、医薬、栄養および美容目的のために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1は、原材料の異なるバッチ由来の原材料(マグロ頭部)から得られるタンパク質分画および軟骨分画のバランスを示す。
【
図1B】
図1は、原材料の異なるバッチ由来の原材料(マグロ頭部)から得られるタンパク質分画および軟骨分画のバランスを示す。
【
図2】A:製造されたコラーゲン加水分解物(バッチ1)のHPLC分析、Biosep SEC 2000ゲル濾過カラム(リン酸緩衝液0.1M+0.5% SDS、分析流=1mL.min
-1)を用いた214nmスペクトログラムを示す。B:ピーク分析表。C:保持時間と分子量との間の対応表を示す。
【
図3】A:製造されたコラーゲン加水分解物(バッチ2)のHPLC分析、Biosep SEC 2000ゲル濾過カラム(リン酸緩衝液0.1M+0.5% SDS、分析流=1mL.min
-1)を用いた214nmスペクトログラムを示す。B:ピーク分析表。C:保持時間と分子量との間の対応表を示す。
【
図4】A:製造されたタンパク質加水分解物(CPSP)(バッチ2)のHPLC分析、Biosep SEC 2000ゲル濾過カラム(リン酸緩衝液0.1M+0.5% SDS、分析流=1mL.min
-1)を用いた214nmスペクトログラムを示す。B:ピーク分析表。C:保持時間と分子量との間の対応表を示す。
【
図5】タンパク質加水分解物およびコラーゲン加水分解物を製造するための異なる副産物のプロセシングの統合のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の方法において、ステップ(a)・・・(x)を記載する際、ステップは出現の順序で行われなければならない。好ましくは、方法は、明確に明記されるもの以外の他の処置ステップ(procedural step)を含まない。しかし、輸送、冷却/加熱および/または貯蔵の非処置ステップ(non-procedural step)によって、異なるステップが中断されてもよい。しかし、さらなるプロセシングステップは列挙される方法から排除されない。本明細書に記載される方法は、産業法、すなわち大規模法である。これらの方法は、少なくとも数百キログラムの出発材料で行われ、数トンの出発材料を処理するために行われ得る。当業者は、この規模の操作は、それぞれの器具類を必要とし、本発明の方法は、必ずしも小規模(実験室規模)法にスケールダウンされず、自明であるように、小規模法は産業規模に単純にスケールアップすることは出来ないことを認識するであろう(例えば、Crater & Lievense, FEMS Microbiol Lett. 2018 Jul; 365(13): fny138を参照されたい)。非常にしばしば、実験室法は、まったくスケールアップ不能であるか、または経済的に意味がある方法ではスケールアップ不能である。
【0022】
第一の態様において、本発明は、産業規模で、海洋動物副産物からコラーゲンを抽出する方法のための方法に関する。
【0023】
用語「海洋動物副産物」は、ヒト消費用の魚のプロセシングから生じる、頭部、内臓、骨格、皮および他のもの、例えば尾、ひれ、鱗、ミンチ、血液等の形の副産物に関する。この材料は、プロセシング後の魚および貝類の最大70%を構成する場合もあり、魚の切り身の収量は種依存性であり、しばしば魚の30~50%の範囲である。プロセシング後に生じる廃棄物は、実際、価値ある原材料であり、この原材料供給源からフィッシュミールおよび魚油が製造可能であり、この材料はなお十分に活用されていない。副産物の主な供給源は、ひれのある魚(finfish)および白身魚トリミング(ポロック(pollock)、タラ(cod)、ヘイク(hake)、ハドック(haddock)、その他)ならびにサケ(天然および養殖)、マグロ、ニシン、サバ由来であり、天然魚または養殖魚プロセシングから得られてもよい。原材料の品質は、しばしば、50mgN/100g原材料の領域になければならない、総揮発性塩基窒素含量によって測定される。海洋動物副産物の好ましい供給源は、魚由来、特にマグロ、例えばキハダマグロ(Thunnus albacares)由来またはカツオ(Katsuwonus pelamis)由来である。
【0024】
コラーゲンを抽出するための本発明の方法は、(a)海洋動物副産物片を提供するステップと、(b)動物副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップと、(c)場合によって、皮および軟骨を含む分画をすりつぶすステップと、(d)皮および軟骨を含む分画を酵素的に加水分解して、コラーゲン原加水分解物を生じるステップと、(e)コラーゲン原加水分解物を、脂質分画と、固体を含まない水性コラーゲン加水分解物分画と、固体を含む分画とに分離するステップと、(f)2000~100,000Daの孔サイズの膜を用いて、水性コラーゲン加水分解物分画を、少なくとも1回の濾過ステップに供して、コラーゲン加水分解物を含有する第一の透過物と保持物とを製造するステップと、(g)1000Da未満の孔サイズを有する膜を用いて、ナノ濾過および/または透析によって、第一の透過物を脱ミネラル化して、精製コラーゲン溶液を製造するステップと、を含む。
【0025】
ステップ(a)における副産物片は、5cm未満のサイズ、より好ましくは1~2cmのサイズを有し得る。供給された原材料からのこのサイズの片の製造は、既知の技術によって、例えば産業的マセレーターまたはこの材料をシュレッドするための他の手段を用いて、行われてもよい。顕著なことに、片のこのサイズは、示されるように正確である必要はなく、切り刻まれた(hashed)またはマセレートされた(macerated)材料は、多様なサイズ分布の片を示してもよい。すなわち、Xcm未満のサイズは、片の大部分がXより小さく、5cmを超える片を示さないマセレートされた原材料を指す。XcmとYcmとの間のサイズは、平均粒子サイズが、この範囲内でなければならないが、なおこれより大きい片および小さい片が存在してもよいことを示す。
【0026】
海洋副産物およびそこから製造される片は、通常、海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含むであろう。しかし、コラーゲンを製造する方法に関しては、材料が皮および/または魚骨および/またはひれを含有すれば十分である。
【0027】
分離ステップ(b)では、分離は任意の適切なセパレーターで行われてもよい。例示的なセパレーターには、分離装置、例えばRSBF(モデル04または04)、RSTCシリーズ、RSDD04、RSTD06、Beehive S02、SDおよびBelugaシリーズ(モデル208、210、310、620、820、1830、2050、3060、4100、5100、6100)、SMおよびBarracudaシリーズ(モデル208、210、310、620、820、1830、2050、3060、4100、5100、6100)、Modernpack Sepamatic(モデル410、1400、1800、2000、3000、4000)またはAM2C Barracuda Beluga 1830セパレーターが含まれる。これらのセパレーターは、ルーチンに、本質的に肉を含まない皮および軟骨分画を製造するようなパラメーター(圧、グリル/メッシュサイズ)で操作され得る。スクリーンの多孔性、スクリーンに適用される圧および原材料の流速のようなパラメーターは、用いるセパレーターのタイプに応じ、製造者によってよく記載されている。
【0028】
本発明の意味で他の成分を「本質的に含まない」または複数の他の成分を本質的に含まないプロダクトは、20%未満の他の成分(複数可)、好ましくは15%または10%未満、特に、5、4、3、2、または1%未満の他の成分(複数可)を含有するプロダクトを表現する。すなわち、肉を本質的に含まない分画は、20%未満の肉、好ましくは15%または10%未満、特に5、4、3、2、または1%未満の肉を含む。骨および軟骨を本質的に含まないタンパク質リッチ分画は、20%未満の骨および軟骨、好ましくは15%または10%未満、特に5、4、3、2、または1%未満の骨および軟骨を含む組成物を指す。
【0029】
本発明の意味での「本質的にからなる」は、80%を超える、好ましくは85または90%を超える、特に95、96、97、98または99%を超える、明記される成分を含むプロダクトを表現する。本質的に骨および軟骨を含まないタンパク質リッチ分画は、本質的に肉からなる分画であり得ることが理解されるものとする。
【0030】
したがって、ステップ(b)において、セパレーターは、製造者の明記にしたがって、2つの分画、タンパク質リッチ分画(本明細書の以下に記載されるようにさらに使用され得る)と、コラーゲンを含有する皮、軟骨、魚骨、ひれ等の成分のみを本質的に含む分画とが得られるパラメーターで操作される。皮および軟骨を含有する分画が本質的に肉を含まない場合に、製造されるコラーゲン産物の品質が改善されるため、この分離ステップは、本発明に重要である。さらに、皮および軟骨含有分画のさらなる洗浄ステップ(材料の関連する喪失を伴う)が回避され得る。
【0031】
本発明の方法の場合によるステップ(c)において、皮および軟骨の分画の粒子サイズは、0.5mm~1cmの間、好ましくは約1mm~約5mmの間、あるいは約1mm~約4または3mmの間の粒子サイズが生じるようにさらに減少され得る。ステップ(a)に関連して上に示されるように、X~Ymmの間のサイズは、平均粒子サイズがその範囲内でなければならないことを示すが、なお、より大きい片およびより小さい片が存在してもよい。軟骨および皮の粒子のサイズをさらに減少させる利点は、続く加水分解ステップ(d)が完了までにより少ない時間しか必要とせず、また、コラーゲン加水分解物の収量が改善されることである。
【0032】
皮および軟骨を含む(場合によってすりつぶされた)分画を酵素的に加水分解するステップ(d)は、コラーゲン原加水分解物を生じる。原加水分解物は、加水分解コラーゲン、脂質、ならびに他の有機材料および灰分(固体)を含有する。このステップで用いられる酵素は、単独でまたは混合物中で使用可能なプロテアーゼである。本質的に、用いられるプロテアーゼは、コラーゲン(タイプI、II、III、IVおよび/またはV)のアミノ酸配列に存在する切断モチーフを有し、例えば細菌アルカリプロテアーゼの場合のように、コラーゲンをより小さいペプチドに切断する。好ましい酵素の種類は、セリンエンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、ジおよびトリペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼ、ならびにメタロプロテアーゼである。
【0033】
プロテアーゼの供給源は重要ではなく、植物プロテアーゼならびに細菌プロテアーゼまたは動物起源のプロテアーゼを使用してもよい。適切な酵素には、限定されるわけではないが、パパイン植物プロテアーゼ、ブロメライン植物プロテアーゼ、Protease Plus(Dupont/Dyadic)、Sumizyme BNP L、Sumizyme LP、Sumizyme FLG(Shin Nihon)、Alcalase 2.4および2.5 L、Neutrase、Protamex、Esperase、Savinase (Novozymes)、Corolase 7089 (AB enzyme)、パパイン、ブロメライン、Promod 950L(Biocatalysts)が含まれる。
【0034】
通常、加水分解は5~10の間のpH、より好ましくは6~9の間のpH、または6~8の間のpHで行われる。しかし、各酵素は、その中で作用可能なそれ自体のpH範囲を有する。したがって、酵素加水分解条件は、その酵素の供給業者の推奨に従う。例示として、Protease Plus(Dyadic)は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)の制御された発酵によって産生される細菌アルカリプロテアーゼである。この酵素は、広い基質特異性でタンパク質分子の内部ペプチド結合を加水分解可能なエンドペプチダーゼであり;この酵素は、6.0~10.0の間のpH安定性を有し、pH 7.0~10.0のpH範囲で有効に作動可能であり、pH 9.0~10.0の最適pH範囲を有する。パパインは、6.0~7.0の活性に関する最適pHを有する。すなわち、ステップ(d)において、Protease Plusを用いる場合、プロセスは9~10の間のpHで操作され、パパインを用いる場合、ステップは6~7の間のpHで操作される。
【0035】
酵素的加水分解の温度は、pH条件と同様、用いられる酵素または酵素混合物に応じる。通常、温度は約50℃~約70℃、好ましくは最大約65℃であろう。例示として、Protease Plusは、最大70℃まで温度安定性を有し、有効温度範囲は最大65℃であり、最適活性は60℃で得られる。パパインは65℃の活性に関する温度最適値を有する。
【0036】
添加される酵素の正確な量は、プロセスおよびタンパク質基質濃度、所望のタンパク質加水分解の度合い、pH、温度および時間に応じる。投薬量は、加水分解しようとするタンパク質重量あたりの%として計算される。典型的な投薬量レベルは、処理しようとする材料中に含有されるタンパク質kgの0.2%~2%、または0.3%~1%である。投薬量は、天然には、用いられる酵素(混合物)のタイプに応じ、経済的な考慮を満たすように適宜調節されてもよい(例えば酵素量を増加させてプロセシング時間を減少させる、またはプロセシング時間が問題でない場合は、酵素量を減少させる)。例示として、Promod 950 L(Biocatalyst)に関しては、皮および軟骨含有分画に添加される酵素の量は、約0.3%~約0.7%、好ましくは約0.4%~0.6%または約0.5%±0.05%である。当業者は、用いられるプロテアーゼ(混合物)および/または出発材料の性質に応じて、加水分解ステップのパラメーターを容易に制御し調節し得る。加水分解の進行があまりに遅い場合は、必要に応じて酵素を補充してもよい。
【0037】
酵素的加水分解の期間は、用いる酵素の活性および量に応じる。加水分解のための所定の温度の維持は、かなりの量のエネルギーを要するため、加水分解時間は、10時間を超えないように選択される。優れた抽出を達成するため、加水分解時間はまた、約1時間より短くてはならない。一般的に、上に示すように、皮および軟骨分画に関するより小さい粒子の提供によって、より短い加水分解時間が可能になる。例えば、よくマセレートされた材料に関してProtease Plusを用いる場合、加水分解は約3~4時間以内に行われ、Promod 950 L(Biocatalyst)を用いる場合、加水分解時間は約5時間である。
【0038】
したがって加水分解時間は1時間~10時間の間、好ましくは2時間~8時間の間、より好ましくは3時間~6時間の間の範囲、またはこれらの時間の間の任意の値である。
【0039】
加水分解の効率および進行を制御するため、タンパク質の溶解度を屈折計(brix)で測定してもよい。さらに、加水分解速度を分析法(例えばSorensen法およびまたpHスタット法(Eric Rothenbuhler & John E. Kinsella; J. Agric. Food Chem. 1985, 33, 3, 433-438))で決定してもよい。タンパク質加水分解を制御し、決定する他の方法は、当業者に知られる(Silvestre, Food Chemistry, Volume 60, Issue 2, October 1997, 263-271ページの概説を参照されたい)。これらの方法は、アミノ酸の切断を制御することが可能であり、これはpHに影響を及ぼし、必要に応じて、pHのNaOHまたは酸の調節を可能にして、最適pHで加水分解を操作する。
【0040】
酵素的加水分解は、コラーゲン加水分解由来のペプチドが豊富な液体相、脂質相および固体相を生じる。これらの相は、本発明の方法のステップ(e)で分離される。脂質相、水性相および固体相を分離するために、任意の適切な技術または技術の組み合わせを用いてもよい。好ましい実施形態において、分離は、デカンタ、例えば3相デカンタ中で行われる。異なる供給業者から入手可能な多くの適切な(3相)デカンタがあり、例示的な装置には、限定されるわけではないが、Flottweg Zシリーズ(例えば、Z3E、Z5E、Z6E、Z4またはZ35)、GEAの3相デカンタ(例えばACE 345またはAlfa Laval)が含まれる。主要パラメーター、例えば温度、回転速度(加速> 3500g)、流動、抽出パイプの調節(値なし)、スクリュータイプ(角度、ボウルのD/L)は、用いられる装置に依存し、装置の製造者によって示唆されるような操作法にしたがって、操作される。
【0041】
分離ステップ(e)は、3つの分画、(i)収集され多様な目的に使用可能な1つの脂質分画(魚油)と、(ii)栄養補助食品市場用のミネラルの供給源として使用可能な固体分画(ミネラル分画、灰分、すりつぶし乾燥させて白色粉末としてもよい)と、(iii)加水分解されたコラーゲンを含有する水性相を生じる。
【0042】
2000~100,000Da、好ましくは4000~50,000Daの孔サイズを有する膜を用いて、水性分画を少なくとも1つの濾過ステップ(f)に供して、コラーゲン加水分解物を含有する第一の透過物および保持物を生じる。特に好ましい孔サイズ範囲は、5000Da~25,000Daの間、または6000Da~15,000Daの間である。特に、膜は、7000~12,000Da、例えば10,000Da(10kDa)の孔サイズを有してもよい。この限外濾過ステップの孔サイズによって、加水分解を経ていない巨大タンパク質、ならびに残存脂肪および脂質小胞に関して、コラーゲン加水分解物を濾過することが可能になる。加水分解コラーゲン(コラーゲンペプチド)を含有する分画は透過物である。
【0043】
クロスフロー濾過の接線流濾過によって、濾過を行ってもよい。膜の性質は本質的ではなく、セルロースベース、ポリマー性材料またはセラミック由来であってもよい。例示的な膜は、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルフロリド、ならびに酸化ジルコニウムまたは酸化チタンから作製される他のフッ素化重合膜およびセラミックフィルターであってもよい。
【0044】
使用され得る例示的な膜には、限定されるわけではないが、GE、KOCH、SYNDER、TIA、PALL、TAMI、MICRODYN NADIR(NADIR、SPIRA-CEL(渦巻き型モジュール)、SEPRODYN(細かい濾過のためのモジュール)、MICRODYN(筒状および毛細管モジュール)、ULTRADYN(限外濾過用の中空ファイバーモジュール)が含まれる。
【0045】
適切な装置には、Alfa Laval Pilot Unit Multi、および200~500l/時間の透過物の容量を有する、TIAによって供給される1x5m2 Organique UFおよびOIを備えた限外濾過パイロットが含まれる。
【0046】
Kock HKF 131 UFを用いた例示的な10kDa限外濾過を、軟骨加水分解物に用いて、コラーゲンを製造し、高分子量不純物を取り除き:巨大タンパク質および脂肪残渣を含有する保持物分画を収集し、他のタンパク質加水分解物(スクラップ、タンパク質ドウ、装填水(charged water))と共にリサイクルしてもよい。コラーゲン加水分解物は、透過物中に見出され、透明でわずかに着色した(黄色から褐色がかった)液体である。
【0047】
流速および限外濾過の圧は、選択される膜および用いられる装置に応じ、限外濾過が有効である限り、プロセスに対して重要ではなく;目詰まりは、例えば、限外濾過前または濾過中に、清澄化されたコラーゲン原加水分解物(ステップ(e)の分画(iii))に水を添加することによって防止され得る。
【0048】
ステップ(f)から生じるコラーゲン加水分解物(第一の透過物)を次いで、ナノ濾過ステップ(g)に供する。あるいは、透析を行ってもよい。コラーゲン加水分解物溶液をそのまま使用してもよいし、または必要に応じて、さらに濃縮してもよい(例えば透析のためには、濃縮された第一の透過物が好ましい)。ナノ濾過/透析ステップは、1000Da未満の孔サイズの膜を用いたナノ濾過および/または透析によって、第一の透過物を脱ミネラル化して、精製コラーゲン溶液を生じる。好ましくは、ナノ濾過または透析に用いる膜は、約500Da未満、好ましくは約100~400Da、特に好ましくは150~350Daの孔サイズを有する。例示として、150~300DaのLenntech有機ナノ濾過膜、Snyder NFX、およびNFWシリーズ、NF 90(Filmtec)、NF 270(Filmtec)、NF 2(Sepro)、およびNF PES 10(Microdyn-Nadir)、Filmtec膜(Dupont)が使用可能である。
【0049】
ナノ濾過ステップ(g)で用いられる孔サイズは、水性一価イオン(例えばナトリウム、塩素イオン)および任意選択で二価イオン(例えばマグネシウム、硝酸塩)ならびに他の小分子(例えば生体アミン、重金属等)が膜を通過するのを許容しながら、ペプチドおよび低分子タンパク質を保持しなければならない。
【0050】
ステップ(g)のコラーゲン加水分解物(透過物)の透明度、色および匂いに応じて、生じるコラーゲン溶液を脱臭および/または透析のさらなる場合によるステップに供してもよい。したがって、本発明は、(h)活性炭および/または透析を用いたステップの精製コラーゲン溶液を脱臭するステップをさらに含む、上述のような方法に、さらに関する。活性炭を使用すると、コラーゲン加水分解物溶液のわずかな匂いの原因であり得る残存小分子が有効に除去され、したがって、最終産物の品質がさらに改善される。透析を用いる場合、水を反復して添加する効果はまた、コラーゲン溶液を洗浄する効果も有し、望ましくない成分をさらに減少させる。この手段はまた、コラーゲン溶液からの塩の除去も改善する。活性炭上の保持物(コラーゲン溶液)の続く濾過を伴いまたは伴わずに、透析を行ってもよい。あるいはまた、コラーゲン溶液をまず、活性炭で濾過し、次いで透析に供してもよい。
【0051】
本発明は、例えば適切な器具類(例えば外部または内部調節直接接触蒸気ヒーター)を用いた直接蒸気注入などの蒸発によって、精製コラーゲン溶液または脱臭精製コラーゲン溶液を濃縮し、滅菌するステップをさらに含む、上述のような方法に、さらに関する。滅菌は、UHT滅菌であってもよく、すなわち、140℃に達するように、直接蒸気を産物中に注入し、次いで、産物を非常に短時間、真空系に供することによって、温度を60℃に低下させる。例示として、精製コラーゲン加水分解物を、高圧(5バールより高い、例えば7~10バール)蒸気に数秒間、直接注入し、60℃で真空(例えば250mmbar)まで圧を減少させることによって、粒子を形成させ、収集する。本発明は、精製コラーゲン溶液または精製脱臭コラーゲン溶液、あるいはその濃縮物を乾燥させて、コラーゲン粉末を製造するステップをさらに含む、上述のような方法に、さらに関する。乾燥ステップは、ノズル噴霧器を用いたスプレー乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥によって行われ、好ましくは、乾燥は、連続水平スプレー乾燥によって行われる。特に、濃縮および滅菌は、適切に統合された装置を用いて、乾燥と同時に行われ得る。
【0052】
本発明者らによって、ナノ濾過および透析は、コラーゲンの脱臭に優れた影響を有することが観察された。したがって、これらのさらなるステップを用いることによって、より優れたコラーゲン溶液/粉末が製造され得る。
【0053】
第二の態様において、本発明は、海洋動物副産物からタンパク質加水分解物を製造する方法であって:(a)上記のコラーゲン加水分解物を製造するための方法に関して記載されるように、海洋動物副産物片を提供するステップと、(b)上述のように、副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップと、(c)タンパク質リッチ分画と水を混合し、脂質分画と、水性分画と、タンパク質リッチ固体分画とを分離するステップと、(d)タンパク質リッチ固体分画を酵素的に加水分解して、タンパク質加水分解物溶液を生じるステップと、(e)タンパク質加水分解物溶液を、第二の脂質分画と、水性タンパク質加水分解物分画と、第二の固体分画とに分離するステップと、(f)水性タンパク質加水分解物を収集するステップと、を含む、方法に関する。
【0054】
本発明の意味において、「タンパク質リッチ」という表現は、本発明の背景において、肉由来のタンパク質を示す。さらに、この表現は、「タンパク質リッチ」である分画のタンパク質内容物が、微量のみの(約15%未満の)、好ましくは最小限の量の(5%未満の)骨および軟骨を含有することを示す。理想的には、タンパク質リッチ分画は、実質的に骨および軟骨を含有しない(1.5%未満)。
【0055】
ルーチンの方法および器具類を用いて、タンパク質リッチ分画を、脂質分画と、水性分画と、タンパク質リッチ固体分画とに分離するステップ(c)を行ってもよい。好ましくは、分離は、コラーゲン加水分解物を製造する方法に関して上述されるように、3相デカンタ遠心分離によって行われる。特に、3相デカンタを操作するパラメーターは、必要に応じてタンパク質リッチ分画用に適応され、これは、用いられるそれぞれの装置に関する製造者の操作説明書に記載される。次いで、タンパク質リッチ固体分画を酵素的加水分解ステップ(d)に供する。
【0056】
タンパク質リッチ固体分画の酵素的加水分解(d)は、タンパク質加水分解物溶液を生じる。時間、温度およびpHなどの加水分解条件は、コラーゲン加水分解物を製造する方法に関して上述されるように、酵素の選択に応じる。しかし、タンパク質リッチ分画のタンパク質は、加水分解に対してよりアクセス可能である。したがって、加水分解のインキュベーション時間は、有意により短い。例示として、Protease Plusを酵素として用いる場合、加水分解は8(約7.5~約9)のpH、および約60℃(約52℃~約65℃)の温度で約1~2時間で完了する。
【0057】
加水分解後、タンパク質原加水分解物を(i)(第二の)脂質分画と、(ii)水性タンパク質加水分解物分画と、(iii)(第二の)固体分画に分離する分離ステップ(e)に、タンパク質原加水分解物を供する。上に示すように、この分離を達成するための任意の適切な手段を用いてもよい。好ましくは、供給される材料のより柔らかいタイプにデカンタのパラメーターを適応させて、上述のように、さらなる3相デカンタ遠心分離によって、分離を行う。
【0058】
(f)水性タンパク質加水分解物を収集するステップは、次いで、以下に記載するように、貯蔵またはさらなるプロセシングのため、収集する(ステップ(f))。タンパク質加水分解物の品質を改善する1つの(場合による)さらなるステップは、脱ミネラル化(脱塩)ステップ(g)を行うことである。コラーゲン加水分解物に関して上述するように、1000Da未満、好ましくは100~500Daの間(または150~300Daの間)の孔サイズを持つ膜を用いて、ナノ濾過および/または透析によって、脱ミネラル化を行ってもよい。コラーゲン加水分解物のナノ濾過に適用される条件(例えば膜のタイプ)は、タンパク質加水分解物の脱ミネラル化に完全に適用される。
【0059】
本発明は、水性タンパク質加水分解物または脱ミネラル化水性タンパク質加水分解物を濃縮し滅菌するステップをさらに含む、上述のような方法であって、好ましくは、蒸発によって、例えば上述のような直接蒸気注入によって、濃縮および滅菌を行う、方法にさらに関する。さらに、タンパク質加水分解物を製造する方法は、水性タンパク質加水分解物、脱ミネラル化水性タンパク質加水分解物またはそのそれぞれの濃縮物を乾燥させて、タンパク質加水分解物粉末を製造するステップをさらに含んでもよい。1つの実施形態において、乾燥は、上述のように、スプレー乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥によって、またはノズル噴霧器を用いて、行われる。最も好ましくは、乾燥は、コラーゲン加水分解物を製造する方法で記載されるような、連続水平スプレー乾燥によって行われる。本発明は、(c’)ステップ(c)の水性分画を収集し、1000Da未満、好ましくは100~500Daの間(最も好ましくは150~300Daの間)の孔サイズを有する膜を用いて、濾過および/または透析にこの分画を供するステップと、(c”)ステップ(d)の前に、ステップ(c’)の保持物をタンパク質リッチ固体分画に添加するステップとをさらに含む、上述のようなタンパク質加水分解物を製造するための方法に、さらに関する。これらのさらなるステップは、タンパク質加水分解物の収量を改善する。
【0060】
第三の態様において、本発明は、コラーゲン加水分解物およびタンパク質加水分解物を製造する上述の方法を組み合わせた、海洋動物副産物をアップサイクリングするかまたは価値化する、統合されたプロセスにさらに関する。2つの方法に関して上述された詳細は、統合されたプロセスに完全に適用される。この態様の1つの実施形態において、統合されたプロセスは、(a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、副産物片が、海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、(b)副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップであって、皮および軟骨分画が本質的に肉を含まない、ステップと、(c1)タンパク質リッチ分画を、上述のタンパク質加水分解物を製造する方法のステップ(c)および続くステップに供するステップと、(c2)皮および軟骨を含む分画を、上述の本発明の第一の態様に記載されるようなコラーゲン加水分解物を製造する方法のステップ(c)および続くステップに供するステップと、を含む。タンパク質加水分解物を製造する方法およびコラーゲンを抽出する方法のさらなる変形および精錬は、本発明のこの態様の統合プロセスの背景において、完全に適用され得る。
【0061】
本発明の3つの態様のいずれの上述の方法のいずれにおいても、出発材料として用いられる海洋動物副産物は、魚の副産物、例えば頭部、内臓、魚骨、スクラップおよび/または皮であってもよい。好ましい実施形態において、海洋副産物は、マグロの副産物である。
【0062】
上述の方法は、コラーゲン(加水分解物)溶液および/またはコラーゲン(加水分解物)粉末を生じる。上述の方法によって製造されるコラーゲン加水分解物は、非常に高品質であることが見出されている。したがって、本発明は、本発明の方法によって製造された精製コラーゲン(加水分解物)溶液またはコラーゲン(加水分解物)粉末に関する。1つの実施形態において、コラーゲン(加水分解物)溶液および/またはコラーゲン(加水分解物)粉末は、少なくとも1つのマトリカインを含む。コラーゲン(加水分解物)溶液および/または粉末の少なくとも1つのマトリカインは、アレステン、カンスタチン、タムスタチン、テトラスタチン、ペンタスタチン1、ペンタスタチン2、ペンタスタチン3、ラムスタチン、ヘキサスタチン1、ヘキサスタチン2、コラーゲンIVまたはXIXのNC1ドメイン、エンドトロピン、コラーゲンXIII、XVII、XXIIIまたはXXVのエクトドメイン、レスチン1、レスチン2、レスチン3、レスチン4、エンドスタチン、ネオスタチン7、ネオスタチン14、パルミトイルペンタペプチド-4、コラーゲンヘキサペプチドGFOGER、およびCLACのいずれか1つ以上であってもよい。しかし、コラーゲン(加水分解物)は、さらなるマトリカイン、ならびに1つより多い、2つより多い、または3つより多いマトリカインをさらに含有してもよい。
【0063】
特に、本発明は、本発明の方法によって製造されるコラーゲン(加水分解物)溶液または粉末であって、コラーゲン加水分解物または粉末のペプチドの少なくとも50%が<2kDaであり、好ましくはペプチドの少なくとも約60%が<2kDaであり、より好ましくは、ペプチドの少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、・・・、79%、80%、81%、82%、83%、84%または85%が<2kDaであるものである。1つの実施形態において、本発明の精製コラーゲン(加水分解物)溶液または粉末は、残存塩含量が乾燥重量で4%未満、好ましくは乾燥重量で2%、1%または0.5%未満である点で特徴づけられる。
【0064】
本発明はまた、本発明の方法によって製造されたタンパク質加水分解物またはタンパク質粉末にも関する。この産物は、FPH魚タンパク質加水分解物と称されてもよい。1つの実施形態において、タンパク質加水分解物またはタンパク質粉末は、少なくとも3%(重量)のオメガ3脂質および少なくとも1%(重量)のリン脂質を含み、好ましくは加水分解物または粉末は、少なくとも2%(重量)のモノ飽和脂質、少なくとも3%(重量)のポリ飽和脂質および少なくとも2.5%(重量)のオメガ3脂質を含む。1つの実施形態において、精製タンパク質加水分解物または粉末は、残存塩含量が、乾燥重量で15%未満、好ましくは10%、7%、6%、5%または4%未満であり、脂質含量が、乾燥重量で20%未満、好ましくは15%、12%または10%未満であり、タンパク質含量が、乾燥重量で60%より多く、好ましくは70%、75%または80%より多いことで特徴づけられる。特に、タンパク質加水分解物の最終産物は、粉末中の加水分解物中、約17~18%の脂質を、約3.7%のリン脂質および約2%のオメガ3脂質とともに含有する。
【0065】
本発明の方法によって製造される典型的なタンパク質粉末最終産物は、約2~4%の残存水分含量で、70~80%の間のタンパク質、約11~19%の総脂質含量(約2~5%のリン脂質)および約6~10%(約2~4%塩素)の総ミネラル(灰分)含量を有する。産物は、魚タンパク質加水分解物粉末またはFPHPと称されてもよい。例示として、FPHP最終産物は、約73~76%の総タンパク質、13~16%の総脂質(2.5%~3.5%のリン脂質)、7~9%の総ミネラル含量(約2.5%~3.5%の塩素)を有する。この段落のすべての%値は、最終産物の重量による。
【0066】
コラーゲン加水分解物のペプチドプロファイルは、コラーゲンタンパク質配列によって支配されるアミノ酸の典型的なプロファイルを示し、すなわち、3つの特定のアミノ酸;グリシン(約18~20%)、ヒドロキシプロリン(約7~8%)およびプロリン(約10~12%)が顕著である。
【0067】
本発明の方法によって製造されるコラーゲン加水分解物およびタンパク質加水分解物は、以下に記載するような、特定で特有のペプチドサイズ分布を示す。
【0068】
特に、本発明のコラーゲン加水分解物は、約12~18%の4~10kDaのサイズのペプチド、約60~70%の1~4kDaのサイズのペプチド、約12~18%の0.5~1kDaのサイズのペプチド、および約3~7%の0.5kDa未満のサイズのペプチドを含有する。本発明のコラーゲン加水分解物は、35kDaより大きいペプチドを1%未満含有し、好ましくは本質的に含有せず、10kDaより大きいペプチドを5%未満、好ましくは2%未満含有し、より好ましくは本質的に含有しない。相対的に小さいサイズのペプチドを多く含むことは、再現性があり、強化された生物学的特性およびより高い消化性を有する利点を有する。
【0069】
重金属およびPCB/ダイオキシン含量は、欧州連合において定義される閾値未満であり、したがって、コラーゲン加水分解物は、ヒトおよび動物栄養および/または美容に適している。
【0070】
本発明のタンパク質加水分解物は、約25~35%の4~10kDaのサイズのペプチド、約45~60%の1~4kDaのサイズのペプチド、約8~14%の0.5~1kDaのサイズのペプチド、および約3~7%の0.5kDa未満のサイズのペプチドを含有する。本発明のタンパク質加水分解物は、35kDaより大きいペプチドを4%未満、好ましくは3または2%未満含有し、10kDaより大きいペプチドを5%未満、好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満含有する。相対的に小さいサイズのペプチドを多く含むことは、再現性が高く、均一性が優れており、より高い消化性を有する利点を有する。ペプチドサイズが小さいため、加水分解物は、優れた生物学的利用能、したがって改善された生物学的特性を有する。
【0071】
本発明のタンパク質加水分解物の脂肪酸プロファイルは以下の通りである:
【0072】
【0073】
タンパク質加水分解物のヒスタミン含量は、300ppm未満、好ましくは250ppm未満、特に200ppm未満である。生体アミンの総量は1800ppm未満、好ましくは1400ppm未満、特に1000ppm未満である。重金属およびPCB/ダイオキシン含量は、欧州連合において定義される閾値未満であり、したがって、タンパク質加水分解物は、ヒトおよび動物栄養に適している。
【0074】
本発明の3つの態様のいずれか1つの上述のステップのすべてにおいて、それぞれの反応を調節するか、保護するかまたは改善するために、さらなる成分、例えば安定化剤、泡制御剤、または酸化防止剤を反応に供給してもよい。適切な酸化防止剤には、限定されるわけではないが、Roseen、Paramega(Kemin)およびHybrilox(Kemin社)が含まれる。当業者は多くの他の酸化防止剤製品が入手可能であり、本発明で使用するために適していることを理解するであろう。
【0075】
有用性および産業適用可能性
【0076】
本発明のコラーゲン溶液およびコラーゲン粉末は、医薬、栄養および美容目的に使用され得る。
【0077】
コラーゲン注射は、皮膚の輪郭を改善し得る。コラーゲンを含有する充填剤を美容的に用いて、顔から線およびしわを取り除くことができる。コラーゲンはまた瘢痕も改善可能であり、創傷部位に新たな皮膚細胞を誘引することによって、創傷治癒を補助し得る。コラーゲンは、治癒を促進し、新たな組織増殖のための足場を提供する。コラーゲンドレッシングは、他の治療に反応しない慢性創傷、尿または汗などの体液を放出する組織中の創傷、顆粒化創傷、壊死または腐敗創傷、部分層および全層創傷、第二度火傷、ならびに皮膚移植および皮膚グラフトの領域に使用可能である。コラーゲンに基づく膜はまた、歯周および移植療法にも用いられてきている。口腔手術において、コラーゲンバリアは、迅速に増殖する細胞が歯の創傷に遊走することを防ぎ、それによって歯の細胞が再生するチャンスを有するスペースを保持する。ドナー由来のコラーゲン組織グラフトは、末梢神経再生、人工血管、および動脈再構築に用いられてきている。コラーゲン補助剤または配合物は、変形性関節症の治療に使用され得る。コラーゲンは、変形性関節症患者において、疼痛症状を減少させ得、関節機能を改善し得る。美容使用に関しては、コラーゲンは皮膚再活性化に使用され得る。
【0078】
コラーゲン加水分解物は、主により小さいペプチドを含有するという事実のため、食品栄養補助剤あるいは機能性食品または飲料の形で消化されて、関節および骨の健康を補助し、皮膚の健康を増進し得る。加水分解コラーゲン、例えば本発明の方法から生じるものは、天然コラーゲンまたはゼラチンに比較して、はるかにより小さい分子量を有する。90%を超える加水分解コラーゲンは、1時間以内に消化され、血流中で小分子ペプチドとして利用可能である。ペプチドは血液からターゲット組織(例えば皮膚、骨および軟骨)に輸送され、ここで、ペプチドは、局所細胞用の構築ブロックとして作用し、新規コラーゲン線維の産生のブーストを補助する。
【0079】
定義
【0080】
本発明の背景における用語「加水分解(hydrolysis)」または「加水分解する(hydrolysing)」は、プロテアーゼ酵素での副産物分画の処理に関する。他のタイプの加水分解、例えば化学的加水分解(例えば熱酸性加水分解)は、明らかに、本発明の範囲内ではない。用語「加水分解物」は、酵素的加水分解の産物を指す。
【0081】
「固体(solids)」は、それぞれの溶液中で沈降を生じ、および/または0.5mmのメッシュサイズのふるいでの濾過によって溶液から取り除くことができるか、または最大20xgのg力での遠心分離によって溶液から取り除くことができる、成分である。
【0082】
用語「限外濾過(ultrafiltration)」は、高分子量の懸濁された固体および溶質が、いわゆる保持物中に保持される一方、水および低分子量溶質が透過物(濾液)中で膜を通過する、半浸透膜を通じた濾過に関するよう用いられる。限外濾過は、2kDa~100kDaの間の分子量の分子を保持するであろう。
【0083】
用語「ナノ濾過(nanofiltration)」は、マイクロ濾過と同様に用いられるが、ナノ濾過は100Da~1000Daの間の分子量の分子を保持し、膜内部により高い圧を要することが異なる。
【0084】
限外濾過およびナノ濾過に関連する用語「孔サイズ(pore size)」は、それぞれの膜またはフィルターの分子量カットオフを記載し、例えば300Daの孔サイズは、>300DaのMWのペプチドおよび他の溶質を保持し、<300DaのMWのペプチドおよびアミノ酸および他の溶質は膜を通過させる。
【0085】
「濾過膜(filtration membrane)」は、濾過の機能を達成する膜のシートならびに材料の他の立体配置(フィルター/膜スタック、セラミックシリンダー等)を指す。
【0086】
「透過物(permeate)」は、濾過ステップで所定のフィルターまたは膜から出てくるかまたは膜を通過する溶液である。それに応じて、「保持物(retentate)」は、濾過終了時、所定の濾過膜を通過しない分画であり、保持物は溶液または固体分画であってもよく、保持物が固体分画である場合、保持物が由来する溶液と同じまたは異なる疎水性のさらなる溶液に、再び溶解されてもまたはされなくてもよい。
【0087】
用語「脱ミネラル化(demineralizing)」ならびに用語「脱塩(desalting)」は、組成物または溶液からの塩(例えば、限定されるわけではないがNaCl)の除去を示す。
【0088】
用語「透析する(dialysing)」および「透析(dialysis)」は、水を添加し、膜を通じて過剰な化合物を押し出し、それによって残りの成分を「洗浄する(washing)」ことによって、半透膜を用いた拡散により、過剰な塩、毒素および他の小分子成分を除去するプロセスを指す。用いられる駆動力(圧に対して拡散)を除き、透析の効果は、ナノ濾過に類似である。透析によってプロセシングされる溶液はまた希釈される一方、ナノ濾過に供される溶液は、より濃縮される。
【0089】
用語「精製された(purified)」および「精製(purification)」は、最も広い意味で、成分A、B、またはCの1つを、濃縮する(enrich)か、または、異なる成分A、B、C、・・・の混合物から単離さする(isolate)ことを示す。
【0090】
用語「脱臭(deodorizing)」は、本発明の背景において、組成物の匂いの原因となる成分を取り除くプロセスを示す。
【0091】
用語「濃縮(concentrate)」は、本発明の背景において、水の除去による、溶液の乾燥物質の増加を示す。
【0092】
用語「乾燥(dry)」は、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは4%または3%未満の水含量の組成物を記載する。これに対応して、「乾燥(drying)」のプロセスは、生じる組成物が、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは4%または3%未満の水含量を有する度合いまでの、溶液からの水の除去を示す。
【0093】
「水性(aqueous)」溶液は、有機溶媒を含まないか、あるいは10%未満または5%未満の有機溶媒を含む溶液、すなわち、本質的に水に基づく溶液である。
【0094】
細胞外タンパク質およびグリコサミノグリカン(GAG)は、制限される酵素切断を経て、通常、全長分子のものとは異なる生物学的活性を発揮する断片の放出を生じることがある(Richard-Blum & Salza, Experimental Dermatology, (2014), Vol. 23, p. 457-463)。これらの生物活性断片は、本明細書においてマトリカインと称される。これらの断片は、血管形成、癌、線維症、炎症、神経変性性疾患および創傷治癒を含む、多くの生理病理学的プロセスを制御する。例示的なマトリカインには、アレステン、カンスタチン、タムスタチン、テトラスタチン、ペンタスタチン1、ペンタスタチン2、ペンタスタチン3、ラムスタチン、ヘキサスタチン1、ヘキサスタチン2、コラーゲンIVまたはXIXのNC1ドメイン、エンドトロピン、コラーゲンXIII、XVII、XXIIIまたはXXVのエクトドメイン、レスチン1、レスチン2、レスチン3、レスチン4、エンドスタチン、ネオスタチン7、ネオスタチン14、パルミトイルペンタペプチド-4、コラーゲンヘキサペプチドGFOGER、およびCLACが含まれる。
【0095】
本明細書で提示される任意の値の直前の表現「約」は、値の約10%、好ましくは約5%の変動を示す。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示し、付随する請求項に定義されるような本発明の範囲を限定するように解釈されてはならない。
【0097】
本実施例は、入手可能な4つの異なる副産物:調理スクラップ(缶詰工場から)、タンパク質ドウ、装填水ならびに軟骨および皮残渣(マグロ頭部からの油回収プロセスより)の価値化を示す。
【0098】
原材料
セーシェルおよびインド洋からの全マグロ頭部を用いて試験を行った。頭部は段ボールパレット中にパッケージングされ、プロセシング前に低温貯蔵庫で凍結された。セーシェルからのマグロ頭部は、塩水中で保存されず凍結されていないマグロに由来し、組成物に、したがって塩含量に有意な相違が生じている。
【0099】
次いで、頭部をAM2C Barracuda Beluga1830セパレーター上でプロセシングして、タンパク質ドウおよび軟骨残渣を生じた。
【0100】
用いた体積:19のパレットを受け取り、総重量は7211kgであった。2種のマグロが提供された:
(i)キハダマグロ(Thunnus albacares):2T
(ii)ビンナガマグロ(Long-finned tuna)(Thunnus alalunga):5.2T(albacoreまたはthon germonとも称される)
【0101】
原材料特性:
受け取りに際して、凍結されていない頭部もあり、大部分はビンナガマグロであった。ランダム温度管理は、-15℃~2.7℃の間の値を生じた。キハダマグロ頭部は凍結され、ともに接着されており、破砕試験および品質管理サンプリングを行うために、木槌やバールを用いなければならなかった。ビンナガマグロ頭部は、パレット外縁で大部分凍結されており、内部温度は-3.5~2.7℃であった。1つのパレットからは血液が流出していた。供給業者によれば、すべての頭部は冷凍室に置かれていた。ビンナガマグロ頭部は、より小さく、沈降が起こり、冷気は、迅速で完全な凍結を確実にするほど十分には拡散していないようであった。頭部を用いる際、いくつかの頭部は、褐変を示し、変質の明らかな徴候さえ示すものもあった。血液は、容器の底まで流れていた。
【0102】
【0103】
規制(EC)No 2073/2005およびその適用可能な修正事項によるヒスタミン基準:水産物に関して:魚の9サンプルの平均含量は、100mg/kgを越えてはならず;2サンプルは、100mgより多いが200mg/kgを超えない量を含有してもよく;いずれのサンプルも200mg/kgを超えてはならない。酵素的にまたは塩水中で成熟された産物に関して:上限に2を乗じるものとする。TCB-N=総揮発性塩基窒素。
【0104】
12%の乾燥物質含量に減少させると、重金属含量は、動物給餌に関する規制閾値に適合する。
【0105】
しかし、IP、ABVTおよび生体アミンのレベルは高く、凍結が緩慢過ぎたことを示す。したがって、これらの原材料の品質は、他の供給源から入手可能な材料に比較して、比較的低い。本実施例は、したがって、最適ではない出発材料からでさえも高品質の非常に精製された産物が得られ得るような、本発明の方法の優れた効果を立証する。
【0106】
プロセス
タンパク質加水分解物(
図1A)およびコラーゲン加水分解物(
図1B)を生じる方法の主なステップに関して、単純化された材料バランスを
図1に示す。予期される産物は:
コラーゲン脱ミネラル化粉末
脱ミネラル化タンパク質加水分解物(ドウ)
ミネラル残渣
である。
【0107】
図1に記載されるバランスは、原材料1トンあたりで示される(
図1Aはタンパク質加水分解物プロセスに関するバランス、
図1Bはコラーゲン加水分解物プロセスに関するバランス)。
【0108】
使用装置
シュレッダー:凍結魚プレートをシュレッドして1または2cmチップを得るためのPallmanシュレッダーを用いて、原材料を海洋副産物片にプロセシングした。PALLMANNグラインダーのカッティングチャンバーの寸法は、350mm(厚さ)×750mm(幅)である。
セパレーター:3mmふるいを伴うBarracuda Beluga 1830セパレーターを供給されたAM2Cをセパレーターとして用いて、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含有する分画とを製造した。
【0109】
グラインダー(場合による):BIROクラッシャーAFM G52型を、セパレーターからの軟骨および皮に関して、12~14mmグリッドと共に用いて、軟骨が細かくすりつぶされて加水分解を促進するようにした。
【0110】
可変速度ドライブおよびハーフシェル加熱系を備えた5m3攪拌リアクターを用いて、酵素的加水分解を達成した。この装置は、空気圧排出バルブとカップリングされた手動の底部バルブを含む。このリアクターの出口では、ふるいスクリューを用いて、軟骨残渣を回収する。攪拌を開始するには、最低700リットルの体積が必要である。Promod 950Lを酵素として用いた。
【0111】
3相デカンタとしてGEA ACD 345を用い、脂質相、加水分解物および残渣固体相を分離するため、製造者の推奨にしたがって操作した。
【0112】
1スキッド限外濾過(UF)/ナノ濾過(NF):UF/ナノスキッドに多様な異なる多孔性の膜を装備してもよい。本実施例では、2つの異なる膜、(a)4.2m2の表面要素および10000ダルトンの多孔性を含む限外濾過膜HFK-131型のFood &Dairy UFと、(b)5.4m2の表面積および150~300ダルトンの多孔性を持つDK3840C-50D型のナノ濾過GE Waters and Process Technologies膜を用いた。
【0113】
あるいは、4.3m2表面積および5,000ダルトン多孔性の限外濾過膜HFK-328型Food & Dairy UF要素を用いてもよい。濾過装置は100リットル供給タンクを備え、プロセシングされる体積を制限するが、外部タンクを備えて、プロセシング可能な体積を増加させることができる。濾過装置は、コラーゲン加水分解物(1kDa)を製造し精製することを可能にし、ナノ膜(150~300Da)でコラーゲンを脱ミネラル化し、加水分解物のプレ濃縮および脱ミネラル化を行う(ナノ150~300Da膜で)。
【0114】
この実施例では、活性炭でのフィルタープレスを用いた。フィルタープレスを用いて、特定の着色または匂い粒子を除去した。各乾燥物質の3%の石炭およびSmellrite(脱臭剤)を加水分解物と混合した。次いで、アジュバント型Pall K200を含むフィルタープレートで濾過を行い、石炭およびSmellriteをプレスケーキ中に保持した。
【0115】
エバポレーターとして、熱圧縮を備えたシングルエフェクトエバポレーターを用いた。このプレートエバポレーターは、約1T/時間の容量を有し、乾燥重量内容物の35~40%の間に、溶液濃度を増加させた。最小体積300リットルが必要である。
【0116】
乾燥:最終乾燥ステップのため、200バールHPポンプを有し、800μプレフィルターを備えたノズル噴霧器を用い、ノズル噴霧器を乾燥可溶性タンパク質および魚タンパク質産物に適応させた。移動する粉末の抽出を容易にする、空気圧輸送のパイプ中のアンチケーキング剤の注入を可能にする、他の噴霧器を用いてもよい。ノズル選択は、産物の粘性および乾燥物質含量を考慮して、チャンバー中の十分なスプレー圧を得る。
【0117】
パッケージング:真空パッケージング装置(Bernhardt)を用いて、酸化に対して産物を保護する小型真空バッグを作成して、最終産物をパッケージングした。
【0118】
方法のタイムライン
原材料(頭部)3~4トンの2つの類似のバッチに対して試験を行った。各試験は、全部で2日を要し、第二のバッチは第一のバッチに比較して最適化を許容された。
【0119】
第1日
原材料の管理
【0120】
第2日:第一のバッチ
キハダマグロ頭部のすりつぶし/Pallman(およそ1.5T)
ビンナガマグロ頭部(1.8T)に対するタンパク質ペースト/軟骨の分離、次いで、キハダマグロ頭部のすりつぶし
ビンナガマグロ頭部タンパク質ペースト(1.9T)の加水分解後、デカント
塩の添加後、ナノ濾過/加水分解物サンプルタンパク質ペースト
タンパク質ペーストの加水分解物の微粒子化(atomisation)(バッチ1)
【0121】
第3日:第一および第二のバッチ
軟骨加水分解(バッチ1)
軟骨加水分解物の限外濾過(加水分解物1)
コラーゲン加水分解物の脱臭および脱色
キハダマグロ頭部のすりつぶし/Pallman(約0.5T)
キハダマグロ頭部およびビンナガマグロ頭部のマッシュに対するタンパク質ペースト/軟骨の分離(3.4T)
キハダマグロ頭部ドウ(1.4T)の加水分解後、デカント
【0122】
第4日:第二のバッチ
異なる酸化防止剤を用いた、2バッチでの加水分解物タンパク質ペーストの濃縮および微粒子化(バッチ2および3)
コラーゲン加水分解物サンプル(バッチ1)のナノ濾過後、塩の添加
軟骨加水分解(バッチ2)
【0123】
第5日:第二のバッチ
軟骨加水分解物の限外濾過(加水分解物2)
コラーゲン加水分解物の脱臭および脱色(バッチ2)
加水分解物サンプルの真空パッケージング
【0124】
第6日:
コラーゲン濃縮
【0125】
第7日:
コラーゲン乾燥(Tecomaドライヤー)
酸化防止剤ParamegaおよびHybrilox(どちらもKemin)を用いて、以下のように産物を安定化させた。バッチ1:タンパク質ペーストに対してParamegaを500ppm/ペーストで用いて、乾燥前の産物に対してはParamegaを5,000ppm/乾燥物質または900ppm(乾燥物質18.1%)で用いた。バッチ2:ペーストに対してHybriloxを用い、加水分解開始時、2000ppm/ペーストと同等であった;濃縮後、乾燥前に、Hybryloxをバッチ2に対して7,500ppm/乾燥物質で用い、Paramegaをバッチ3に対して2,000ppm/乾燥物質で用いた。各試験から6つのサンプルを真空下で条件付けして、数ヶ月に渡って、真空による酸化の比較を可能にした。すべてのサンプルは、12ヶ月に渡って、分解の徴候を示さず、満足できる貯蔵期間を示した。
【0126】
分離
2つのバッチで、上述のようにプロセシングされた頭部7.2トン(原材料)に基づいて、マグロ頭部を、一方では皮および軟骨含有分画に、もう一方ではタンパク質および肉が豊富な分画に分離した:
【0127】
バッチ1:
ビンナガマグロ頭部の分離:1845kgの頭部から、分離中に約250Lの水を添加して、約1900kgのタンパク質リッチ分画(ペースト)または頭部重量(添加した水を計算に入れない)に比較して約90%のペーストを得た。
あらかじめすりつぶしたキハダマグロ頭部の分離:1342kgの頭部(+250Lの水)から、1164kgのタンパク質リッチペースト(原材料の約68%)を得る。
全体として、用いた頭部重量に対して、20%皮/軟骨分画が得られた(約650kg)。
【0128】
頭部はなお部分的に凍結されていたため、機械的分離は準最適であり、生じる皮/軟骨分画はなおある量の肉を含有した。バッチ2に関して、以下に記載するようにプロセスを最適化した。
【0129】
バッチ2
あらかじめすりつぶしたキハダマグロ頭部の分離:638kgの頭部(+150Lの水)から、675kgのタンパク質ペースト(原材料の約82%)を得る。
ビンナガマグロ頭部の分離:3277kgの頭部(+250Lの水)から、約3300kgのタンパク質ペーストが得られた。
バッチ2に関しては、用いた頭部重量に比較して約7%の皮/軟骨(283kg)が得られた。
【0130】
皮/軟骨分画の収量の相違は、第2日により多くのキハダマグロをプロセシングしたという事実から生じている。相違はまた、よりよい分離を可能にするセッティング(圧および温度の増加)の相違によって得られる分離の改善によっても説明され得る。バッチ2の皮/軟骨分画は、バッチ1に比較して、より「赤く」なく、より少ない肉を含有する。
【0131】
2つのバッチに渡って、これは、頭部重量に対して平均13%の皮/軟骨に相当する。
【0132】
さらなるシリーズにおいて、原材料から、タンパク質ペースト(PP)対軟骨(C)比、61% PP(5.8T)対39% C(3.7T)が得られている。
【0133】
タンパク質リッチ分画の組成:
【表2】
表2:タンパク質リッチ分画の組成
【0134】
ミネラルおよびタンパク質含量は両種に関して非常に類似である一方、脂肪含量は、ビンナガマグロのタンパク質分画においてより多い。
【0135】
皮膚/軟骨分画の組成:
【0136】
【0137】
ミネラル含量は、キハダマグロに関する40%に比較して、ビンナガマグロ頭部から得られる軟骨中でより高い(50%を超える)。
【0138】
軟骨および皮のすりつぶし
軟骨中に含有されるコラーゲンの加水分解を最適化するには、軟骨の細かいすりつぶしが重要である(すりつぶしが細かい場合、性能がさらによりよくなる)。セパレーターの出口で、20mmグリッドのBIROグラインダー上で軟骨をすりつぶした。
【0139】
酵素的加水分解(タンパク質リッチ分画)
タンパク質ペースト(タンパク質リッチ分画)の酵素的加水分解に関しては、以下の条件を用いた:
【0140】
【表4】
表4:タンパク質加水分解条件および収量(RM=原材料、DM=乾燥物質)
【0141】
抽出された脂肪相(バッチ2)の組成は:乾燥物質:98.5%、ミネラル:0%、タンパク質:0.7%であった。したがって、プロセスは、比較的高い純度の油を生じる。
【0142】
酵素的加水分解(皮/軟骨分画;コラーゲン)
軟骨(コラーゲンを含有する皮および軟骨分画)の酵素的加水分解のため、以下の条件を用いた。
【0143】
【表5】
表5:コラーゲン加水分解条件および収量(RM=原材料、DM=乾燥物質)
【0144】
特に問題がなく加水分解を行い、どちらのバッチに関してもリアクターの排出は、わずかな水で「押し出」して、かなり良く制御されて達成された。
【0145】
得られたコラーゲン加水分解物は、かなり透明であった。固体軟骨および骨のかなり白い分画(テーリング)を得ることが可能であり、これを白い粉末に細かくすりつぶすことが可能であり、栄養市場用のミネラルの供給源として、興味深い分画が形成された。
【0146】
濾過
タンパク質ペースト由来の加水分解物、タンパク質加水分解物のナノ濾過(脱塩)
濾過前に、タンパク質加水分解物は、乾燥物質中、約15%のミネラル含量を有した。タンパク質加水分解物のナノ濾過のため、有機ナノ濾過膜(150~300Da)を用いた。
【0147】
加水分解物の最初の体積は73リットルであり;プロセス中、水を添加して、流速を維持し、脱塩を改善した。プロセシングされる加水分解物の総体積は110リットルであった。タンパク質加水分解物ナノ濾過から生じた分画を以下のように処理する;透過物をプラスチック容器中に保存し(高濃度の塩および非常にわずかなタンパク質を含有する、後に廃棄する分画)、保持物をパイロットフィードタンク内にリサイクリングした(貴重な(noble)タンパク質分画)。保持物濃縮ステップ後、蒸留水を添加して、さらに塩を抽出した(透析)。濃縮後の体積=61リットル;添加した水の総体積:102リットル(52+16+34)。
【0148】
乾燥抽出物、ならびに保持物および透過物分画の抵抗性の定期的な監視を出口で行った。乾燥物質に対する抵抗性(R/ES)比は、可溶性ミネラル含量の優れた指標である。リサイクリング中、プロセスを12時間続けて、膜の性能を経時的に監視した。
【0149】
ナノ濾過中、定期的にサンプルを採取した。これらのサンプルのうちいくつかを分析し(乾燥物質、タンパク質、ミネラル)、伝導度/乾燥物質比をそれによって監視した。保持物においては、5の係数で比が減少した(260以上から約51の最終体積まで)。
【0150】
流速:用いた膜表面積は5.39m2であった。透過物流速は、15~18時間後、15l/h/m2から5~6l/h/m2で多様であり、これはこのタイプの膜に関しては優れており、非常に古典的である。
【0151】
NFから生じたタンパク質加水分解物分画の以下の特性を得た:
【0152】
【0153】
タンパク質加水分解物分画、保持物。ナノ濾過後、ミネラル含量は乾燥物質のわずか2.92%に相当し、これは非常に満足のいくものであり、先行技術の加水分解物の標準未満である。窒素性物質の約90%が保持物中に見られる。アミノ酸または小分子ペプチドの損失は非常に弱い。加水分解物中に最初に存在した灰分のわずか10%が保持物中に見られる。したがって、脱ミネラル化は非常に有効であった。
【0154】
皮/軟骨分画由来の加水分解物、コラーゲン加水分解物の濾過(脱塩)
軟骨および皮の加水分解後、分離後に得られたコラーゲン原加水分解物を、2つの連続濾過ステップによって精製する:
【0155】
1)限外濾過UF 10kDa:コラーゲンを生じ、「不純物」を除去するための、軟骨加水分解物に対するKock HKF 131 UF:巨大タンパク質および脂肪残渣を含有する保持物分画を、他のタンパク質加水分解物(スクラップ、タンパク質ペースト、装填水)とともにリサイクリングしてもよい。コラーゲン加水分解物は透過物中に見られる。
【0156】
2)UF由来の透過物に対するナノ濾過NF 300Da。このステップは、コラーゲン加水分解物の脱ミネラル化を可能にする:貴重な分画=保持物。透過物(=「塩水」)。用いた膜は、非荷電有機分子のための150~300ダルトンのおよその分子量カットオフによって特徴づけられる薄層ナノ濾過膜であった(GE Dairy Processing Sanitary Nanofiltration Dシリーズ)。
【0157】
限外濾過(バッチ1)
コラーゲン加水分解物を、リサイクリングまたは透析なしに、連続UFでプロセシングした(再循環または水の添加なし)。限外濾過を80リットル体積(タンク容量)で開始した。この体積は、透過物体積に対応する体積分、減少する。次いで、限外濾過を続けるため、体積を完了する。
【0158】
軟骨加水分解物を2バッチでプロセシングした:
【0159】
ロット1:プロセシング加水分解物366リットル
ロット2:プロセシング加水分解物280リットル
【0160】
生じた透過物は、約10%ミネラルおよび90%タンパク質を含有した。流速は、濾過開始時に約50l/h/m2であり、終了時に30l/h/m2であった。
【0161】
UF由来のコラーゲン加水分解物分画の以下の特性を得た:
【0162】
【0163】
このバランスにおいて、透過物組成は、分析時に得られた体積によって重み付けされた異なる分析の平均である。保持物の組成は再現可能であった。タンパク質の半分以上は透過物中にある(コラーゲン加水分解物)。
【0164】
総量の646リットルの軟骨加水分解物を、2h41でUFでプロセシングした。流速は経時的に減少し:UF終了時(1時間後)の160L/hと比較して、UF開始時には216L~266Lの間の透過物/時間であり;すなわち開始時には49L/h/m2、終了時には、30L/h/m2の流速であった。
【0165】
得られたコラーゲン収率(>50%)を考慮して、透析(水添加なし)がコラーゲン収率を最適化するために必要であった。したがって、10kDa膜は、透析を伴わない直接限外濾過を可能にし、これは、水の節約を意味し、取り付けられた膜のより小さい表面積が、コストを減少させるために効率的に操作され得ることも示す。
【0166】
限外濾過(バッチ2)
優れた攪拌を確実にするため、加水分解のために添加される水の量により、バッチ2の加水分解物の乾燥物質含量はかなり低かった(約5%)。したがって、限外濾過前に、加水分解物を濃縮して、材料バランス値により近くした(14~15%)。11%/乾燥重量に近い値を得た。
【0167】
プロセシング体積:10.69%で濃縮された263リットル
条件および膜は、バッチ1に関するものと同じであった。透過物は、第一のバッチに関するように、約10%ミネラルおよび90%タンパク質を含有した。保持物のタンパク質含量は、プロセシング時間に渡って安定していた。ここでは、流速は、第一の軟骨加水分解物バッチの限外濾過中よりも低かった:流速は、開始時に約23L/h/m2であり、終了時に7L/h/m2であった。この相違は、第二の加水分解物があらかじめ濃縮されていたことによる、加水分解物濃度および粘性の相違のためである。
【0168】
UF由来のコラーゲン加水分解物分画の以下の特性を得た。
【0169】
【0170】
加水分解物投入の組成は、第一のバッチと同一であると概算された。一方、その乾燥物質は、加水分解物があらかじめ濃縮されていたため、より高かった。
【0171】
透過物(コラーゲン加水分解物)中のタンパク質の比率は、70%より大きい。この収量は、第一のバッチに関するよりも優れている。これは、肉/軟骨分離がバッチ2においてより有効であった可能性があるという事実によって説明され得る。
【0172】
コラーゲン加水分解物のナノ濾過(バッチ1)
上述の限外濾過後、存在するミネラルを除去するため、限外濾過から得られた透過物に対して、ナノ濾過を行う。
【0173】
ナノ濾過終了時、保持物をフィードタンクにリサイクルして、膜から液体を何度か通過させることを可能にする。それによって、保持物は濃縮される一方、透過物(塩)が連続して除去される。濃縮後、水を添加して透析を行い、可溶性ミネラルの除去をさらに改善した。このプロセスを閉鎖回路中で12時間行って、膜の性能を経時的に監視した。
【0174】
塩水中で保存された頭部から得られるコラーゲンのものと同等のミネラル含量を得るため、塩を添加した後、コラーゲン加水分解物の第一のバッチのサンプルに対してこの試験を行った。
【0175】
最初のコラーゲン加水分解物の体積は、119リットルであり、これは、濃縮/脱塩によって、40リットルの体積まで減少可能であった(透析前)。透析のため、総量100リットルの水を異なる体積で添加した(40+20+20+20L)。
【0176】
透過物中のタンパク質含量は低く、透過物は主にミネラルを含有する(80%)。タンパク質含量は、経時的にわずかに増加した。終了時に含量がより高いのは、長期間の濾過(12時間)のためであり、これは、膜の汚損速度をチェックするために意図された。
【0177】
保持物(コラーゲン加水分解物)中のミネラル含量は迅速に減少し:15分で1/2になる。3時間後、約3%の乾燥ミネラル含量に到達した。
【0178】
最初の流速は78l/h/m2であった。3倍濃縮後(FVC3)、これは42l/h/m2に増加する。水添加後、流速は、74l/h/m2に戻った。閉鎖回路中、12時間後の流速は、38l/h/m2であった。透過物および保持物の以下の特性を観察した:
【0179】
【0180】
保持物の組成は、分析する最終保持物に対応する。
【0181】
透過物組成は、関連体積によって重み付けされた、濾過中の透過物組成の平均である。透過物のミネラル含量は、おそらく、過剰評価されている。保持物中のタンパク質含量もまた、おそらく、過剰評価されている。保持物および透過物中のタンパク質および灰分の量の合計は、ナノ濾過前の溶液中の最初の量より多い。
【0182】
補正後、タンパク質のうちわずか10%しか透過物中で除去されないことが観察された。灰分の20%未満が保持物中にある。したがって、ナノ濾過は、コラーゲン加水分解物からミネラルを有効に分離することを可能にし、脱ミネラル化は、非常に効果的であった。コラーゲン加水分解物中で、3.8%のミネラル含量が達成され、これは市場の標準に一致する。また、ナノ濾過および透析が、コラーゲンの脱臭によい影響を有することも観察された。
【0183】
プレートフィルタープレス上の脱臭および脱色
ナノ濾過が完了した後、上述のようにプレートフィルタープレス(活性炭)を用いて、コラーゲン加水分解物の一部を脱色および脱臭に供した。用いた本発明の原材料に基づいて得られたコラーゲンが、より明るい魚の皮から得られたコラーゲン分画よりもより色づいたままであったことに注目しなければならない。しかし、色および匂いは、最初の試験に比較して、満足のいくものであり、改善されていた。
【0184】
濃縮および乾燥
タンパク質加水分解物
スプレー乾燥タワー上で多様な乾燥操作を行った。スプレー乾燥装置は、円錐の底と、スプレー用のノズルおよび高圧ポンプを備えたタワーで構成される。このスプレー乾燥装置は、TGEによって構築され、250l/hの蒸発能の能力を有する。
【0185】
タンパク質加水分解物の第一のバッチを直接乾燥させた(すなわち、分離ステップに対してさらなる濃縮を行わなかった)。乾燥物質含量が低いため(15%)、ノズル配置および粘性の低さから、HPポンプ(高圧)から十分な圧を得ることは不可能であった。タンパク質加水分解物の第一のバッチの脂肪含量が高いため(24%の脂質含量)、乾燥チャンバー中のスプレーは劣っており、タワー中で粘着性になった。この問題は、アンチケーキング剤を使用することによって解決可能であった。
【0186】
タンパク質加水分解物の第二のバッチは、あらかじめ蒸発するまで濃縮されており、乾燥物質の33%の含量を有した。高温でデカンタ遠心分離を駆動し、より長く加水分解することで、流体油の形で油の一部を抽出することが可能になった。最後に、キハダマグロタンパク質ペースト(この試験バッチに用いたもの)の最初の含量は、ビンナガマグロのものより低かった。したがって、乾燥プロセスは、第一のバッチより優れており、タワー上で非常にわずかな粘着しか観察されなかった。
【0187】
アンチケーキング剤の添加は、空気圧コンベアおよび多様な回転バルブ中の流動性を改善し、タンパク質加水分解物の乾燥プロセス改善を導く。
【0188】
コラーゲン加水分解物
体積がより少ないため、脱臭コラーゲン加水分解物を濃縮し、アルファLaval真空エバポレーター上で乾燥させた。バッチ1:25/30%のbrix(乾燥可溶性物質)の70L、バッチ2:30%のbrixの53L+10%のbrixの7L。
濃縮コラーゲン溶液をTecoma Gatedryer上で乾燥させた。以下の量が得られた:バッチ1:19 kg、バッチ2:14kg。得られた粉末は明るい白からアイボリー色の粉末であった。
【0189】
得られた加水分解物の組成
【0190】
タンパク質(粉末)加水分解物の特性
【0191】
栄養組成
【表10】
* Eurofins分析(Eurofins NDSC Food Testing Germany GmbH)
【0192】
バッチ2と3の間の唯一の相違は、酸化防止剤のタイプおよび乾燥レベル(乾燥物質含量)のみである。加水分解物2および3は、乾燥物質中、72.6%タンパク質および12.3%脂肪を含有する。そのミネラル含量(12.8%)は、バッチ1の加水分解物(5%)におけるより高く、ビンナガマグロ頭部由来のタンパク質ペーストを第一のバッチに用い、キハダマグロを第二のバッチに用いた以外に、特に理由はない。
バッチ1のみをナノ濾過に供したことに注目すべきである。バッチ2および3の乾燥し、分析したサンプルは、脱ミネラル化されず、原材料を塩水凍結しなかったため、塩含量はより低いが、最終ミネラル含量は比較的高いと考えられた。したがって、タンパク質加水分解物の全体のミネラル含量を減少させるため、ナノ濾過ステップの実施が推奨される。
【0193】
品質
タンパク質加水分解物の異なるバッチの品質を試験した。
【0194】
【0195】
バッチ2の加水分解物に対して、生体アミン、PCBおよび重金属に関するアッセイを開始した。
【0196】
【0197】
重金属レベルは、規制に適合し、水銀含量のみが限界に近かった。
【0198】
【0199】
PCBおよびダイオキシンのレベルは、欧州規制の閾値(2017/644)に適合する。
【0200】
生体アミン(mg/kg)
生体アミン含量を以下のように決定した(乾燥物質のmg/kg):
【0201】
【0202】
生体アミンレベルはかなり高かった。これは、原材料があまり新鮮でないためであった。
【0203】
【0204】
タンパク質加水分解物中の主なアミノ酸はグルタミン酸(13%)、続いてグリシン(9.6%)およびアスパラギン酸(9%)である。
【0205】
【0206】
脂肪酸(11.2%)の31%はオメガ3である。タンパク質加水分解物100gあたり、4.1グラムのポリ不飽和脂肪酸が存在する。詳細な脂肪酸プロファイルは、別表に提供される(バッチ2)。
【0207】
コラーゲン加水分解物(粉末)の特性
栄養組成
【0208】
【0209】
得られたコラーゲン加水分解物は、乾燥ベースで88%のタンパク質および12%のミネラルを含有する。
【0210】
ナノ濾過後、ミネラル含量は、乾燥物質の約2~3%に減少し、タンパク質含量が>97%と予期され、これは、これが濾過されたサンプル上で得られているためであった。
【0211】
【0212】
得られたヒドロキシプロリン含量は、海洋コラーゲンの平均(8~8.5%)よりわずかに低かった。グリシン含量は標準と一致し、プロリン含量はわずかに低い。したがって、原材料のタイプおよび肉/軟骨分離のパラメーターは、コラーゲン純度に関して重要なポイントである。
【0213】
【0214】
分子量プロファイル
HPLC分析によって、サンプルのタンパク質サイズの概算を行った。サンプルを適切な緩衝剤に希釈し、分子がサイズ順にソーティングされることを可能にする濾過ゲルカラムを通じて分析した:分析中、最大の分子が最初にカラムから出てきて、最小のものは最後に出る。214nmに設定した検出装置を用いて、タンパク質化合物を検出する。
標準タンパク質の使用によって、カラムを較正することが可能である。以下の表は、カラム中の保持時間と、製造されるコラーゲン加水分解物およびタンパク質加水分解物のタンパク質/ペプチドのサイズとの間の対応を示す。
【0215】
【0216】
加水分解されたコラーゲンは、<2kDaのペプチドを約67%含有する。加水分解されたタンパク質バッチ(CPSP1~CPSP3)は、<2kDaのペプチドを約66~70%含有する。プロファイルは2つのバッチに関して非常に類似であり、バッチ1は、わずかにより加水分解されているようである。
【0217】
結論
上記実施例は、よく定義されたペプチド分布、低い塩濃度およびそうでなければ優れた感覚特性を達成するために、限外濾過およびナノ濾過ステップを含めることによって、タンパク質加水分解物およびコラーゲン加水分解物が、効率的に製造され、精製され得ることを示す。最初の原材料が、不十分であるかまたは不完全である保存により、わずかに分解されたという事実から、比較的高い含量の生体アミンが生じた。この問題は、適切に保存された原材料では起こらないであろう。にもかかわらず、準最適な原材料に基づいてさえ、加水分解物の組成は、満足のいくものであった。
【0218】
この実施例は、ナノ濾過による脱塩が、許容され得る透過物流動を伴い有効であったことを示す。さらに、原材料の品質が低かったにもかかわらず、匂いが少なく、部分的に脱色されているコラーゲンを得ることが可能であった。
【0219】
マトリカイン
理論によって束縛されることなく、MMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)は、ECM(細胞外マトリックス)コラーゲン成分からマトリカインを生成するために非常に重要である。したがって、本発明のコラーゲン産物は、これらの価値ある成分を含有すると予期される。例示的なマトリカインは、アレステン、カンスタチン、タムスタチン、テトラスタチン、ペンタスタチン1、ペンタスタチン2、ペンタスタチン3、ラムスタチン、ヘキサスタチン1、ヘキサスタチン2、コラーゲンIVまたはXIXのNC1ドメイン、エンドトロピン、コラーゲンXIII、XVII、XXIIIまたはXXVのエクトドメイン、レスチン1、レスチン2、レスチン3、レスチン4、エンドスタチン、ネオスタチン7、ネオスタチン14、パルミトイルペンタペプチド-4、コラーゲンヘキサペプチドGFOGER、およびCLACである。
【0220】
別表
【0221】
【0222】
【0223】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋動物副産物からコラーゲンを抽出する方法であって:
a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、前記副産物片が、前記海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、
b)前記動物副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップであって、前記皮および軟骨分画が本質的に肉を含まない、ステップと、
c)場合によって、皮および軟骨を含む前記分画を、好ましくは0.5mm~1cmの間、より好ましくは1mm~4mmの間の粒子サイズが生じるようにすりつぶすステップと、
d)皮および軟骨を含む前記分画を酵素的に加水分解して、コラーゲン原加水分解物を生じるステップであって、好ましくは前記加水分解を5~9の間のpHで行うステップと、
e)前記コラーゲン原加水分解物を、脂質分画と、固体を含まない水性コラーゲン加水分解物分画と、固体を含む分画とに分離するステップであって、好ましくは前記分離を3相デカンタ遠心分離によって行うステップと、
f)2000~100,000Da、好ましくは4000~50,000Da、より好ましくは約10,000Daの孔サイズの膜を用いて、前記水性コラーゲン加水分解物分画を、少なくとも1回の濾過ステップに供して、コラーゲン加水分解物を含有する第一の透過物と保持物とを製造するステップと、
g)1000Da未満、好ましくは約150~300Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、ナノ濾過および/または透析によって、前記第一の透過物を脱ミネラル化して、精製コラーゲン溶液を製造するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップg)の精製コラーゲン溶液の脱臭を行うステップであって、好ましくは、前記脱臭が活性炭および/または透析を用いて行われるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製コラーゲン溶液または前記脱臭精製コラーゲン溶液を濃縮し、滅菌するステップであって、好ましくは、前記濃縮および滅菌が直接蒸気注入などの蒸発によって行われるステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記精製コラーゲン溶液または前記精製脱臭コラーゲン溶液、またはその前記濃縮物を乾燥させて、コラーゲン粉末を製造するステップであって、好ましくは、前記乾燥がスプレー乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥、ノズル噴霧器によって行われ、最も好ましくは、前記乾燥が連続水平スプレー乾燥によって行われるステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
海洋動物副産物からタンパク質加水分解物を製造する方法であって:
a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、前記副産物片が、前記海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、
b)前記副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップと、
c)前記タンパク質リッチ分画と水を混合し、脂質分画と、水性分画と、タンパク質リッチ固体分画とを分離するステップであって、好ましくは前記分離を3相デカンタ遠心分離によって行うステップと、
d)前記タンパク質リッチ固体分画を酵素的に加水分解して、タンパク質加水分解物溶液を生じるステップと、
e)好ましくは3相デカンタ遠心分離によって、前記タンパク質加水分解物溶液を、第二の脂質分画と、水性タンパク質加水分解物分画と、第二の固体分画とに分離するステップと、
f)前記水性タンパク質加水分解物を収集するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
g)1000Da未満、好ましくは100~500Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、濾過および/または透析によって、ステップf)の水性タンパク質加水分解物を脱ミネラル化するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水性タンパク質加水分解物または前記脱ミネラル化水性タンパク質加水分解物を濃縮し、滅菌するステップであって、好ましくは、前記濃縮および滅菌が直接蒸気注入などの蒸発によって行われるステップをさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記水性タンパク質加水分解物、前記脱ミネラル化水性タンパク質加水分解物、またはその前記それぞれの濃縮物を乾燥させて、タンパク質粉末を製造するステップであって、好ましくは、前記乾燥がスプレー乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥、ノズル噴霧器によって行われ、最も好ましくは、前記乾燥が連続水平スプレー乾燥によって行われるステップをさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
c’)ステップc)の水性分画を収集し、1000Da未満、好ましくは100~500Daの間の孔サイズを有する膜を用いて、濾過および/または透析にこの分画を供するステップと、
c”)ステップd)の前に、ステップc’)の保持物を前記タンパク質リッチ固体分画に添加するステップと、
をさらに含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
海洋動物副産物をアップサイクリングする統合プロセスであって、
a)海洋動物副産物片を提供するステップであって、前記副産物片が、前記海洋動物の肉、皮、魚骨、ひれおよび軟骨より選択される少なくとも2つの成分を含む、ステップと、
b)前記副産物片を、タンパク質リッチ分画と、皮および軟骨を含む分画とを含む少なくとも2つの分画に分離するステップであって、前記皮および軟骨分画が本質的に肉を含まない、ステップと、
c1)前記タンパク質リッチ分画を、請求項5~9のいずれか一項のステップc)および続くステップに供するステップと、
c2)皮および軟骨を含む前記分画を、請求項1~4のいずれか一項のステップc)および続くステップに供するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項11】
前記海洋動物副産物が、魚の副産物、例えば頭部、内臓、魚骨、スクラップおよび/または皮であり、好ましくは、前記海洋副産物が、マグロの副産物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~4、10または11のいずれか一項に記載の方法によって製造される
コラーゲン溶液またはコラーゲン粉末であって
、
前記加水分解物または粉末のペプチドの少なくとも50%が<2kDaであり、好ましくは、ペプチドの少なくとも約60%が<2kDaであり、より好ましくは、ペプチドの少なくとも約65%が<2kDaであり、
前記コラーゲン加水分解物は、35kDaより大きいペプチドを1%未満含有し、好ましくは本質的に含有せず、10kDaより大きいペプチドを5%未満、好ましくは2%未満含有し、より好ましくは本質的に含有せず、
残存塩含量が、乾燥重量で4%未満、好ましくは2%未満または1%未満である、コラーゲン溶液または粉末。
【請求項13】
請求項5~11のいずれか一項に記載の方法によって製造されるタンパク質加水分解物またはタンパク質粉末であって、
前記加水分解物または粉末が、少なくとも3%(重量)のオメガ3脂質および少なくとも1%(重量)のリン脂質を含み、好ましくは、前記加水分解物または粉末が、少なくとも2%(重量)のモノ飽和脂質、少なくとも3%(重量)のポリ飽和脂質および少なくとも2.5%(重量)のオメガ3脂質を含
み、
残存塩含量が、乾燥重量で10%未満、好ましくは5%未満であり、総脂質含量が、乾燥重量で20%未満、好ましくは、11~19%であり、タンパク質含量が、乾燥重量で60%より多く、好ましくは、70~80%であり、
前記タンパク質粉末は、約2~4%の残存水分含量での総ミネラル含量が約6~10%で塩素が2~4%である、タンパク質加水分解物またはタンパク質粉末。
【国際調査報告】