(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241219BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241219BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241219BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20241219BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20241219BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20241219BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20241219BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20241219BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20241219BHJP
C12N 9/50 20060101ALN20241219BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241219BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241219BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K39/395 U
A61K39/395 N
A61K35/17
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/47
C12N5/10
C12N5/0783
C07K16/18
C12Q1/04
C12Q1/6869 Z
C12N9/50
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/57
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535703
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022081621
(87)【国際公開番号】W WO2023114888
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】カルーリ ラグ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR62
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4C085BB11
4C087AA01
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4C087BB37
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4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示の局面は、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法および組成物に関する。ある特定の局面は、腫瘍抑制性マイクロバイオームの促進のための腫瘍微小環境を操作するための方法およびがんの治療のための方法を対象とする。特定の局面は、免疫療法を施すこと、およびα3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊することが可能な作用物質を投与すること、を含む、がんを治療するための方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項2】
作用物質が、腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目(Campylobacterales)の菌の量を増加させるのに有効である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
作用物質が、腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目(Bacteriodales)の菌の量を減少させるのに有効である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
腫瘍微小環境に免疫治療法を施す工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
免疫治療法が、チェックポイント遮断療法を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
チェックポイント遮断療法が、抗PD-1抗体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
チェックポイント遮断療法が、抗CTLA4抗体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
作用物質が、α3β1インテグリンに結合する抗体または抗体断片である、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
作用物質が、α3β1インテグリンに結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドである、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
作用物質が、α3β1インテグリンに結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
細胞が、T細胞、NK細胞、免疫細胞、iNKT細胞、CD4+ T細胞、またはCD8+ T細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
細胞が、NK細胞である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
作用物質が、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗体または抗体断片である、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
作用物質が、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗原結合ドメインを含むCARポリペプチドである、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
作用物質が、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗原結合ドメインを含むCARポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
細胞が、T細胞、NK細胞、免疫細胞、iNKT細胞、CD4+ T細胞、またはCD8+ T細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
細胞が、NK細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
腫瘍微小環境が、膵臓腫瘍微小環境である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
腫瘍微小環境に抗生物質を投与する工程をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
腫瘍マイクロバイオームから細菌を単離する工程をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記作用物質を投与する前に、腫瘍マイクロバイオームから細菌が単離される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記作用物質を投与した後に、腫瘍マイクロバイオームから細菌が単離される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目の菌を検出する工程をさらに含む、請求項1~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
カンピロバクター目の菌を検出する工程が、腫瘍マイクロバイオームからの核酸をシーケンス解析することを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
カンピロバクター目の菌が、前記作用物質を投与する前に検出される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
カンピロバクター目の菌が、前記作用物質を投与した後に検出される、請求項23記載の方法。
【請求項27】
腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目の菌を検出する工程をさらに含む、請求項1~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
バクテロイデス目の菌を検出する工程が、腫瘍マイクロバイオームからの核酸をシーケンス解析することを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
バクテロイデス目の菌が、前記作用物質を投与する前に検出される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
バクテロイデス目の菌が、前記作用物質を投与した後に検出される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
膵臓がんについて対象を治療する方法であって、
(a)腫瘍マイクロバイオームから細菌を単離する工程と;
(b)対象に、有効量の
(i)α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する作用物質、および
(ii)免疫療法
を施す工程と、を含む、方法。
【請求項32】
(a)が(b)の前に実施される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
(a)が(b)に続いて実施される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
作用物質が、腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目の菌の量を増加させるのに有効である、請求項31~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
作用物質が、腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目の菌の量を減少させるのに有効である、請求項31~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
作用物質が、α3β1インテグリンに結合する抗体または抗体断片である、請求項31~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
作用物質が、α3β1インテグリンに結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドである、請求項31~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
作用物質が、α3β1インテグリンに結合する抗原結合ドメインを含むCARポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を含む、請求項31~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
細胞が、T細胞、NK細胞、免疫細胞、iNKT細胞、CD4+ T細胞、またはCD8+ T細胞である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
細胞が、NK細胞である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
作用物質が、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗体または抗体断片である、請求項31~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
作用物質が、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗原結合ドメインを含むCARポリペプチドである、請求項31~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
作用物質が、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗原結合ドメインを含むCARポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を含む、請求項31~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
細胞が、T細胞、NK細胞、免疫細胞、iNKT細胞、CD4+ T細胞、またはCD8+ T細胞である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
細胞が、NK細胞である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
免疫療法が、チェックポイント遮断療法を含む、請求項31~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
チェックポイント遮断療法が、抗PD-1抗体を含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
チェックポイント遮断療法が、抗CTLA4抗体を含む、請求項46記載の方法。
【請求項49】
腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目の菌を検出する工程をさらに含む、請求項31~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
カンピロバクター目の菌を検出する工程が、腫瘍マイクロバイオームからの核酸をシーケンス解析することを含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
カンピロバクター目の菌が、前記作用物質を投与する前に検出される、請求項49記載の方法。
【請求項52】
カンピロバクター目の菌が、前記作用物質を投与した後に検出される、請求項49記載の方法。
【請求項53】
腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目の菌を検出する工程をさらに含む、請求項31~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
バクテロイデス目の菌を検出する工程が、腫瘍マイクロバイオームからの核酸をシーケンス解析することを含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
バクテロイデス目の菌が、前記作用物質を投与する前に検出される、請求項53記載の方法。
【請求項56】
バクテロイデス目の菌が、前記作用物質を投与した後に検出される、請求項53記載の方法。
【請求項57】
腫瘍微小環境内の血管新生を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項58】
腫瘍微小環境内の血管新生を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項59】
腫瘍微小環境の細胞の上皮間葉転換を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項60】
腫瘍微小環境の細胞の上皮間葉転換を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項61】
腫瘍微小環境内の周皮細胞増殖を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項62】
腫瘍微小環境内の周皮細胞増殖を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項63】
腫瘍微小環境内の細胞代謝を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項64】
腫瘍微小環境内の細胞代謝を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項65】
腫瘍微小環境内の線維芽細胞増殖を活性化する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項66】
腫瘍微小環境内の線維芽細胞増殖を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項67】
腫瘍微小環境内の細胞外マトリックスを分解する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項68】
作用物質が、プロテアーゼである、請求項67記載の方法。
【請求項69】
プロテアーゼが、マトリックスメタロプロテアーゼである、請求項68記載の方法。
【請求項70】
腫瘍微小環境内の細胞間接着を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項71】
腫瘍微小環境内の細胞間接着を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項72】
腫瘍微小環境内の間質細胞シグナル伝達を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項73】
腫瘍微小環境内の間質細胞シグナル伝達を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項74】
リンパ系を破壊する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項75】
リンパ脈管新生を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項76】
リンパ脈管新生を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項77】
低酸素状態を減弱する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項78】
低酸素状態を増強する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項79】
マクロファージ分極化を改変する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項80】
マクロファージ分化を改変する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法。
【請求項81】
作用物質が、腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目の菌の量を増加させるのに有効である、請求項57~80のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
作用物質が、腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目の菌の量を減少させるのに有効である、請求項57~80のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
腫瘍微小環境が、膵臓腫瘍微小環境である、請求項57~82のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
腫瘍微小環境に免疫治療法を施す工程をさらに含む、請求項57~83のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
免疫治療法が、チェックポイント遮断療法を含む、請求項84記載の方法。
【請求項86】
チェックポイント遮断療法が、抗PD-1抗体を含む、請求項85記載の方法。
【請求項87】
チェックポイント遮断療法が、抗CTLA4抗体を含む、請求項85記載の方法。
【請求項88】
腫瘍微小環境に抗生物質を投与する工程をさらに含む、請求項57~87のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
腫瘍マイクロバイオームから細菌を単離する工程をさらに含む、請求項57~88のいずれか一項記載の方法。
【請求項90】
前記作用物質を投与する前に、腫瘍マイクロバイオームから細菌が単離される、請求項89記載の方法。
【請求項91】
前記作用物質を投与した後に、腫瘍マイクロバイオームから細菌が単離される、請求項89記載の方法。
【請求項92】
腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目の菌を検出する工程をさらに含む、請求項57~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
カンピロバクター目の菌を検出する工程が、腫瘍マイクロバイオームからの核酸をシーケンス解析することを含む、請求項92記載の方法。
【請求項94】
カンピロバクター目の菌が、前記作用物質を投与する前に検出される、請求項92記載の方法。
【請求項95】
カンピロバクター目の菌が、前記作用物質を投与した後に検出される、請求項92記載の方法。
【請求項96】
腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目の菌を検出する工程をさらに含む、請求項57~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
バクテロイデス目の菌を検出する工程が、腫瘍マイクロバイオームからの核酸をシーケンス解析することを含む、請求項96記載の方法。
【請求項98】
バクテロイデス目の菌が、前記作用物質を投与する前に検出される、請求項96記載の方法。
【請求項99】
バクテロイデス目の菌が、前記作用物質を投与した後に検出される、請求項96記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月15日に出願された米国仮特許出願第63/289,805号の優先権を主張するものであり、前記仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
I. 発明の分野
本発明の局面は、少なくとも、がん生物学、微生物学および医学の分野に関する。
【0003】
II. 背景
近年の研究から、腸内および腫瘍マイクロバイオームが、腫瘍免疫の調節に強い影響力で関わっている可能性があるという考えが提唱された(1~5)。がんの制御における腸内および腫瘍マイクロバイオームの正確な役割は、継続して探究されている。がんの治療および管理ならびに免疫療法への腫瘍の感受性化のための、腫瘍抑制性の腸内および/または腫瘍マイクロバイオームを促進するための方法および組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、腫瘍微小環境を操作することによる腫瘍抑制性マイクロバイオームを促進するための方法および組成物を提供することより、がん医学の分野における特定の必要性に応える。したがって、腫瘍微小環境を操作することが可能な作用物質、例えば、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する作用物質の有効量を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が本明細書に開示される。いくつかの場合には、そのような作用物質は、免疫療法、例えば、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【0005】
本開示はまた、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法、腸内マイクロバイオームを変化させるための方法、腫瘍抑制性マイクロバイオームを促進するための方法、腫瘍微小環境を操作するための方法、腫瘍微小環境を標的指向するための方法、免疫療法に対する応答を増強するための方法、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊するための方法、腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目(Campylobacterales)の菌の量を増加させるための方法、腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目(Bacteriodales)の菌の量を減少させるための方法、およびがんを治療するための方法も含む。本開示の方法は、以下の工程の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上を含むことができる:作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程、腸内マイクロバイオームから細菌を単離する工程、腸内マイクロバイオーム中の1つまたは複数の細菌を検出する工程、腫瘍マイクロバイオームから細菌を単離する工程、腫瘍マイクロバイオームから1つまたは複数の細菌を検出する工程、腫瘍マイクロバイオームからカンピロバクター目の菌を検出する工程、腫瘍マイクロバイオームからカンピロバクター目の菌を定量する工程、腫瘍マイクロバイオームからバクテロイデス目の菌を検出する工程、腫瘍マイクロバイオームからバクテロイデス目の菌を定量する工程、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の血管新生を刺激する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の血管新生を阻害する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境の細胞の上皮間葉転換を刺激する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境の細胞の上皮間葉転換を阻害する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の周皮細胞増殖を刺激する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の周皮細胞増殖を阻害する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の細胞代謝を刺激する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の細胞代謝を阻害する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の線維芽細胞増殖を活性化する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の線維芽細胞増殖を阻害する作用物質を対象に投与する工程、腫瘍微小環境内の細胞外マトリックスを分解する作用物質を対象に投与する工程、リンパ系を破壊する作用物質を対象に投与する工程、リンパ脈管新生を刺激する作用物質を対象に投与する工程、リンパ脈管新生を阻害する作用物質を対象に投与する工程、低酸素状態を減弱する作用物質を対象に投与する工程、低酸素状態を増強する作用物質を対象に投与する工程、マクロファージ分極化を改変する作用物質を対象に投与する工程、マクロファージ分化を改変する作用物質を対象に投与する工程、がん療法を対象に施す工程、免疫療法を対象に施す工程、および免疫チェックポイント阻害剤を対象に投与する工程。
【0006】
α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が本明細書に開示される。また、膵臓がんについて対象を治療する方法であって、(a)腫瘍マイクロバイオームから細菌を単離する工程と;(b)対象に、有効量の(i)α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する作用物質、および(ii)免疫療法を施す工程と、を含む方法も、本明細書に開示される。(a)は、(b)の前に実施され得る。(a)は、(b)に続いて実施され得る。免疫療法は、チェックポイント遮断療法を含み得る。チェックポイント遮断療法は、抗PD-1抗体を含み得る。チェックポイント遮断療法は、抗CTLA4抗体を含み得る。
【0007】
作用物質は、α3β1インテグリンに結合する抗体または抗体断片であり得る。作用物質は、α3β1インテグリンに結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドであり得る。作用物質は、CARポリペプチドをコードする核酸を含む細胞であって、CARポリペプチドが、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗原結合ドメインを含む細胞を含み得る。作用物質は、α3β1インテグリンに結合する抗体または抗体断片であり得る。作用物質は、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗原結合ドメインを含むCARポリペプチドであり得る。作用物質は、CARポリペプチドをコードする核酸を含む細胞であって、CARポリペプチドが、αlホモ三量体I型コラーゲンに結合する抗原結合ドメインを含む細胞を含み得る。細胞はさらに、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、免疫細胞、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞の1つまたは複数として定義され得る。細胞は、NK細胞であり得る。
【0008】
腫瘍微小環境内の血管新生を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。また、腫瘍微小環境内の血管新生を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法も開示される。また、腫瘍微小環境の細胞の上皮間葉転換を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法も開示される。また、腫瘍微小環境の細胞の上皮間葉転換を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法も開示される。また、腫瘍微小環境内の周皮細胞増殖を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法も開示される。腫瘍微小環境内の周皮細胞増殖を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。腫瘍微小環境内の細胞代謝を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。腫瘍微小環境内の細胞代謝を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。腫瘍微小環境内の線維芽細胞増殖を活性化する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。腫瘍微小環境内の線維芽細胞増殖を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。腫瘍微小環境内の細胞外マトリックスを分解する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。作用物質は、プロテアーゼであり得る。プロテアーゼは、マトリックスメタロプロテアーゼであり得る。腫瘍微小環境内の細胞間接着を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。腫瘍微小環境内の細胞間接着を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。腫瘍微小環境内の間質細胞シグナル伝達を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。腫瘍微小環境内の間質細胞シグナル伝達を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。リンパ系を破壊する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。リンパ脈管新生を刺激する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。リンパ脈管新生を阻害する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。低酸素状態を減弱する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。低酸素状態を増強する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。マクロファージ分極化を改変する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。マクロファージ分化を改変する有効量の作用物質を腫瘍微小環境に投与する工程を含む、腫瘍マイクロバイオームを変化させるための方法が開示される。
【0009】
作用物質は、腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目の菌の量を増加させるのに有効なものであり得る。作用物質は、腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目の菌の量を減少させるのに有効なものであり得る。本方法はさらに、腫瘍微小環境に免疫治療法を施す工程を含み得る。免疫治療法は、チェックポイント遮断療法を含み得る。チェックポイント遮断療法は、抗PD-1抗体を含み得る。チェックポイント遮断療法は、抗CTLA4抗体を含み得る。腫瘍微小環境は、膵臓腫瘍微小環境であり得る。本方法はさらに、腫瘍微小環境に抗生物質を投与する工程を含み得る。本方法はさらに、腫瘍マイクロバイオームから細菌を単離する工程を含み得る。作用物質を投与する前に、腫瘍マイクロバイオームから細菌が単離され得る。作用物質を投与した後に、腫瘍マイクロバイオームから細菌が単離され得る。本方法はさらに、腫瘍マイクロバイオーム中のカンピロバクター目の菌を検出する工程を含み得る。カンピロバクター目の菌を検出する工程は、腫瘍マイクロバイオームからの核酸をシーケンス解析することを含み得る。カンピロバクター目の菌は、作用物質を投与する前に検出され得る。カンピロバクター目の菌は、作用物質を投与した後に検出され得る。本方法はさらに、腫瘍マイクロバイオーム中のバクテロイデス目の菌を検出する工程を含み得る。バクテロイデス目の菌を検出する工程は、腫瘍マイクロバイオームからの核酸をシーケンス解析することを含み得る。バクテロイデス目の菌は、作用物質を投与する前に検出され得る。バクテロイデス目の菌は、作用物質を投与した後に検出され得る。
【0010】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、測定法または定量法に固有の誤差の変動を含むことを示すために使用される。
【0011】
単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、「含む(comprising)」という用語と共に使用される場合、「1つ」を意味し得るが、それはまた、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」および「1つまたは1つを超える」という意味と一致する。
【0012】
「および/または」という語句は、「および」または「または」を意味する。例示するために、A、B、および/またはCは、A単独、B単独、C単独、AとBの組み合わせ、AとCの組み合わせ、BとCの組み合わせ、またはAとBとCの組み合わせを含む。言い換えると、「および/または」は、包括的またはとして機能する。
【0013】
単語「含む(comprising)」(ならびに、含むの任意の形、例えば「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する(having)」(ならびに、有するの任意の形、例えば「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(ならびに、含むの任意の形、例えば「含む(includes)」および「含む(include)」)または「含有する(containing)」(ならびに、含有するの任意の形、例えば「含有する(contains)」および「含有する(contain)」)は、包括的またはオープンエンドであり、追加の記載されていない要素または方法工程を排除しない。
【0014】
「個体」、「対象」および「患者」は、互換的に使用され、ヒトまたは非ヒトのことを指すことができる。
【0015】
組成物およびその使用のための方法は、本明細書全体を通して開示される成分または工程のいずれか「を含む(comprise)」、「から本質的になる」または「からなる」ことができる。開示される成分または工程のいずれか「から本質的になる」組成物および方法は、特許請求される発明の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない指定された材料または工程に、特許請求の範囲を限定する。
【0016】
治療、診断または生理学的な目的または効果と関連した方法はいずれも、記載された治療、診断または生理学的な目的または効果を達成または実行するための本明細書において考察される任意の化合物、組成物または作用物質「の使用」など、「使用」という請求項の文言で表される場合もある。
【0017】
本明細書において考察される任意の態様は、本発明の任意の方法または組成物に関して実行することができ、その逆もまた同様であることが想定される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0018】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な説明から、本発明の精神および範囲の範囲内の様々な変更および修正が当業者に明らかとなることから、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的な態様を示しながら、例示として与えられるものにすぎないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の局面をさらに実証するために含まれる。本明細書に提示される具体的な態様の詳細な説明と併せてこれらの図面の1つまたは複数を参照することにより、本発明をより良く理解することができる。
【0020】
【
図1A-1】
図1A~1Hは、がん細胞におけるCol1ホモ三量体の欠失が、有益な腫瘍マイクロバイオームおよび免疫ランドスケープを付与することを実証している結果を示す。
図1Aは、KPPCマウス、KPPC;Col1
pdxKOマウスまたは野生型(腫瘍のない)同腹仔対照マウス由来の腫瘍内マイクロバイオームおよび腸内(糞便)マイクロバイオームの細菌の16S rRNA遺伝子配列解析を示す。配列は、分類法によって目レベルで分類した。
図1Bは、KPPCおよびKPPC;Col1
pdxKOマウス(n=5/群)由来の腫瘍切片の低酸素プローブ(hypoxyprobe)/ピモニダゾール免疫組織化学染色および陽性定量試験の代表画像を示す。スケールバー:100μm。
** P<0.01。
図1Cは、16S rRNA遺伝子qRT-PCR解析による膵臓組織試料および糞便試料中の総細菌DNA含量の評価を示す。膵臓組織(膵臓腫瘍または正常膵臓としての)試料および糞便試料を、KPPCマウスおよび健常(腫瘍のない)同腹仔から収集し、広域抗生物質またはビヒクルのいずれかで処理した。
図1Dは、抗生物質処理したまたはしていない場合のKPPCマウスおよびKPPC;Col1
pdxKOマウス(n=4/群)の腫瘍内のCD11b
+Gr1
+骨髄細胞、CD3
+ T細胞、CD4
+/CD3
+ T細胞およびCD8
+/CD3
+ T細胞の免疫プロファイリングアッセイを示す。
図1Eは、広域抗生物質(ABX)処理したKPPCマウス、KPPC;Col1
pdxKOマウスまたは野生型(腫瘍のない)同腹仔対照マウス由来の糞便試料(腸内マイクロバイオーム)の細菌の16S rRNA遺伝子配列解析を示す。配列は、分類法によって目レベルで分類した。
図1Fは、広域抗生物質処理したKPPCマウス(n=20)およびKPPC;Col1
pdxKOマウス(n=28)の全生存期間を未処理KPPC;Col1
pdxKOマウスと比較して示す。
図1Gおよび1Hは、バルクRNAシーケンス解析(RNA-seq)データに基づく、KPPC腫瘍(n=4)と比較してKPPC;Col1
pdxKO腫瘍(n=5)で有意にアップレギュレーションされたインターフェロン応答経路遺伝子の発現(
図1G)を示す。有意にアップレギュレーションされたインターフェロン経路を明らかにしているGSEAを(
図1H)に示した。
* P<0.05、
** P<0.01、
**** P<0.0001、NS:有意でない。
【
図2A】
図2A~2Fは、KPPCマウスおよびKPPC;Col1
pdxKOマウス由来の腫瘍内マイクロバイオーム組成の細菌の16S rRNA遺伝子配列解析を示す。配列は、分類法によって、門(
図2A)、綱(
図2B)、目(
図2C)、科(
図2D)、属(
図2E)および種(
図2F)レベルで分類した。
【
図3A】
図3A~3Gは、KPPCマウスおよびKPPC;Col1
pdxKOマウスの糞便試料からの腸内マイクロバイオーム組成の細菌の16S rRNA遺伝子配列解析を示す。配列は、分類法によって、門(
図3A)、綱(
図3B)、目(
図3C)、科(
図3D)、属(
図3E)および種(
図3F)レベルで分類した。(
図3G)は、バルクRNA-seq解析に基づく、同齢(53日)マウス由来のKPPC腫瘍(n=4)と比較してKPPC;Col1
pdxKO腫瘍(n=5)で有意にアップレギュレーションされた酸化的リン酸化(OXPHOS)および血管新生経路を明らかにしている遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を示す。
【
図4A】
図4A~4Gは、広域抗生物質(ABX)で処理したKPPCマウスおよびKPPC;Col1
pdxKOマウスの糞便試料からの腸内マイクロバイオーム組成の細菌の16S rRNA遺伝子配列解析を示す。配列は、分類法によって、門(
図4A)、綱(
図4B)、目(
図4C)、科(
図4D)、属(
図4E)および種(
図4F)レベルで分類した。(
図4G)は、広域抗生物質処理KPPCマウス(n=20)と未処理KPPCマウス(n=27)との全生存期間の比較を示す。NS:有意でない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本開示は、少なくとも部分的には、腫瘍微小環境を操作することにより、がん促進性のマイクロバイオームから腫瘍抑制性のマイクロバイオーム(例えば、カンピロバクター目の菌の増加;バクテロイデス目の菌の減少)への変換をもたらし、それにより、がんに対する免疫応答を増強させ、がんを免疫療法に感受性化することができるという驚くべき発見に基づく。本明細書に開示されるように、一例として、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊することにより、腫瘍マイクロバイオームをより腫瘍抑制性の性質に変化させ、それにより、がん(例えば、PDACなどの膵臓がん)について対象を治療することができる。また、免疫療法(例えば、チェックポイント遮断療法)と腫瘍微小環境を改変する作用物質(例えば、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する作用物質)とを投与し、それにより、腫瘍マイクロバイオームを変化させることを含む、治療法も開示される。さらに、腫瘍環境(例えば、血管新生、上皮間葉転換プログラム、周皮細胞、代謝、線維芽細胞、細胞外マトリックス、細胞接着、間質シグナル伝達など)を操作することを含む、腫瘍マイクロバイオームを改変するための様々な方法が記載される。
【0022】
I. 腫瘍微小環境を操作してマイクロバイオームを変化させること
本開示の局面は、腫瘍微小環境を操作することによる対象のマイクロバイオーム(例えば、腸内マイクロバイオームまたは腫瘍マイクロバイオーム)を変化させるための方法および組成物を対象とする。「マイクロバイオームを変化させること」は、マイクロバイオームの性質の任意の変化、例えば、1つもしくは複数の細菌型(例えば、種、属など)の増加もしくは減少、またはマイクロバイオーム中の細菌の総量の増加もしくは減少を表す。腫瘍マイクロバイオームのある特定の局面は、例えば、米国特許出願公開番号US 2020/0129569 A1に記載されており、前記特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0023】
「腫瘍微小環境を操作すること」は、腫瘍微小環境の組成、構造または機能の変化を含む、腫瘍微小環境の性質の任意の変化を引き起こすことを表す。そのような変化には、増加または減少した血管新生、増加または減少した細胞外マトリックス、細胞外マトリックスタンパク質(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、テネイシン、エラスチン、ラミニンなど)の種類の変化、腫瘍微小環境からのシグナル伝達(例えば、コラーゲン/インテグリンシグナル伝達、例えば、α1ホモ三量体I型コラーゲン/α3β1インテグリンシグナル伝達、フィブロネクチン/インテグリンシグナル伝達、ラミニン/インテグリンシグナル伝達など)の強度の増加または減少、および腫瘍微小環境中の1種または複数種の細胞(例えば、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、周皮細胞など)の数の増加または減少が含まれるが、それらに限定されない。
【0024】
腫瘍微小環境は、腫瘍の周囲にありかつそれに影響を及ぼす、細胞、可溶性因子、シグナル伝達分子、細胞外マトリックス構成要素、血管および他の構成要素を含む。腫瘍微小環境の諸局面は、例えば、Hinshaw DC, Shevde LA. Cancer Res. 2019;79(18):4557-4566およびHanash S, Schliekelman M. Genome Med. 2014;6(2):12. Published 2014 Feb 27に記載されており、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。これらの腫瘍微小環境構成要素のいずれか1つまたは複数を標的指向する作用物質は、本明細書において、腸内および/または腫瘍マイクロバイオームを変化させるための組成物および方法での使用に想定される。そのような作用物質には、インテグリンタンパク質とフィブロネクチンタンパク質との間の相互作用を破壊する作用物質、インテグリンタンパク質とラミニンタンパク質との間の相互作用を破壊する作用物質、インテグリンタンパク質とコラーゲンタンパク質との間の相互作用を破壊する作用物質、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する作用物質、血管新生を刺激する作用物質、血管新生を阻害する作用物質、腫瘍微小環境の細胞の上皮間葉転換を刺激する作用物質、腫瘍微小環境の細胞の上皮間葉転換を阻害する作用物質、周皮細胞増殖を刺激する作用物質、周皮細胞増殖を阻害する作用物質、細胞代謝を刺激する作用物質、細胞代謝を阻害する作用物質、線維芽細胞増殖を活性化する作用物質、線維芽細胞増殖を阻害する作用物質、細胞外マトリックス(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼまたは他の酵素)を分解する作用物質、細胞間接着を刺激する作用物質、細胞間接着を阻害する作用物質、間質細胞シグナル伝達を刺激する作用物質、腫瘍微小環境内の間質細胞シグナル伝達を阻害する作用物質、リンパ系を破壊する作用物質、リンパ脈管新生を刺激する作用物質、リンパ脈管新生を阻害する作用物質、低酸素状態を減弱する作用物質、低酸素状態を増強する作用物質、マクロファージ分極化を改変する作用物質、およびマクロファージ分化を改変する作用物質が含まれるが、それらに限定されない。腫瘍微小環境を標的指向する作用物質の種類の例としては、抗体(例えば、抗α3β1インテグリン抗体、抗α1ホモ三量体I型コラーゲン抗体)、抗体断片、抗体様分子、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAなど)、キメラ抗原受容体(CAR)、CAR T細胞、CAR NK細胞、および低分子(例えば、インテグリン結合分子)が挙げられる。腫瘍微小環境を標的指向する際に有用であり得る特定の例示的な作用物質は、PCT特許出願公開番号WO 2020/257296およびWO 2020/081714に記載されており、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0025】
本明細書において使用される場合、2つの分子間の「相互作用を破壊する」作用物質は、2つの分子間の結合相互作用を低減させることが可能である。例えば、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する作用物質は、これらの2つの分子間の結合を低減させることが可能であり、それにより、結果として生じるシグナル伝達を低減させる。2つの分子間の相互作用を破壊する作用物質の能力は、例えばELISAなどの様々な結合アッセイを含め、当技術分野において認められている様々な手段によって容易に検出かつ測定され得る。本明細書において想定される特定の例示的な結合アッセイには、Pollard TD. Mol Biol Cell. 2010;21(23):4061-4067およびHunter SA, Cochran JR. Methods Enzymol. 2016;580:21-44に記載されているものが含まれ、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。相互作用を破壊する作用物質の能力はまた、例えば、細胞表面受容体とリガンドなどの2つの分子の相互作用から生じる細胞シグナル伝達の減少を測定することによって測定されてもよい。
【0026】
II. がん療法
いくつかの局面では、開示される方法は、がん療法を対象または患者に施すことを含む。がん療法は、発現レベル測定値単独に基づくか、または対象に対して算出された臨床リスクスコアとの組み合わせに基づいて選択され得る。いくつかの局面では、がん療法は、局所がん療法を含む。いくつかの局面では、がん療法は、全身がん療法を除外する。いくつかの局面では、がん療法は、局所療法を除外する。いくつかの局面では、がん療法は、全身がん療法を施すことなしの局所がん療法を含む。いくつかの局面では、がん療法は、チェックポイント阻害剤療法であり得る免疫療法を含む。これらのがん療法のいずれかが除外されてもよい。これらの療法の組み合わせが施されてもよい。
【0027】
「がん」という用語は、本明細書において使用される場合、固形腫瘍、転移がんまたは非転移がんを表すために使用され得る。ある特定の局面では、がんは、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、十二指腸、小腸、大腸、結腸、直腸、肛門、歯茎、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮で発生し得る。いくつかの局面では、がんは、ステージIのがんである。いくつかの局面では、がんは、ステージIIのがんである。いくつかの局面では、がんは、ステージIIIのがんである。いくつかの局面では、がんは、ステージIVのがんである。
【0028】
がんは、具体的には、以下の組織型のものであり得るが、これらに限定されるわけではない:新生物、悪性;がん腫;がん腫、未分化;巨細胞および紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭がん;扁平上皮細胞がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛母がん(pilomatrix carcinoma);移行細胞がん;乳頭移行細胞がん;腺がん;ガストリノーマ、悪性;胆管がん;肝細胞がん;混合肝細胞がんおよび胆管がん;索状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫様ポリープの腺がん;腺がん、家族性大腸ポリポーシス;固形がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支-肺胞腺がん;乳頭腺がん;嫌色素性がん;好酸性(acidophil)がん;好酸性(oxyphilic)腺がん;塩基好性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞性腺がん;乳頭状濾胞性腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;子宮内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘膜表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液性嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;パジェット病、乳房;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;男性化腫瘍、悪性;セルトリ細胞がん;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在性拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣型横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;がん肉腫;間葉腫、悪性;ブレンネル腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎児性がん;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛がん;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯性腫瘍、悪性;エナメル芽細胞歯牙肉腫(ameloblastic odontosarcoma);エナメル芽細胞腫、悪性;エナメル芽細胞線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;ならびに毛様細胞性白血病。
【0029】
いくつかの局面では、膵臓から発生したがんを治療するための方法が開示される。いくつかの局面では、膵管腺がん(PDAC)を治療するための方法が開示される。
【0030】
方法は、適切ながん「管理レジメン」の決定、投与または選択、およびその転帰を予測することを含み得る。本明細書において使用される場合、「管理レジメン」という語句は、それを必要とする対象(例えば、がんと診断された対象)に提供される、検査、スクリーニング、診断、監視、ケアおよび処置(処置の投薬量、スケジュールおよび/または継続期間など)の種類を指定する管理計画のことを指す。
【0031】
A. 放射線治療
いくつかの局面では、電離放射線などの放射線治療が対象に施される。本明細書において使用される場合、「電離放射線」は、イオン化(電子の獲得または喪失)をもたらすための十分なエネルギーを有するかまたは核相互作用を介して十分なエネルギーを生じ得る粒子または光子を含む放射線を意味する。電離放射線の非限定例は、x線である。x線を標的組織または細胞に送達するための手段は、当技術分野において周知である。
【0032】
いくつかの局面では、放射線治療は、外部放射線治療、内部放射線治療、放射免疫療法、または術中放射線治療(IORT)を含むことができる。いくつかの局面では、外部放射線治療は、三次元原体放射線治療(3D-CRT)、強度変調放射線治療(IMRT)、陽子線治療、画像誘導放射線治療(IGRT)、または定位放射線治療を含む。いくつかの局面では、内部放射線治療は、組織内小線源治療、腔内小線源治療、または管腔内放射線治療を含む。いくつかの局面では、放射線治療は、原発腫瘍に施される。
【0033】
いくつかの局面では、電離放射線量は、20Gy超であり、1線量で施される。いくつかの局面では、電離放射線量は、18Gyであり、3線量で施される。いくつかの局面では、電離放射線量は、少なくとも0.5、1、2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60Gy、多くても0.5、1、2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60Gy、または厳密に0.5、1、2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60Gy(またはその中の任意の導出可能な範囲)である。いくつかの局面では、電離放射線は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10線量、多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10線量、または厳密に1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10線量(またはその中の任意の導出可能な範囲)で施される。1線量超が施される場合、線量は、約1、4、8、12、もしくは24時間、または1、2、3、4、5、6、7、もしくは8日、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、もしくは16週間空けるか、またはその中の任意の導出可能な範囲空けることが可能である。
【0034】
いくつかの局面では、対象に施される放射線治療の量は、放射線治療の総線量として提示することができ、これは、その後、分割された線量で施される。例えば、いくつかの局面では、総線量は、50Gyであり、各5Gyの10分割された線量で施される。いくつかの局面では、総線量は、50~90Gyであり、各2~3Gyの20~60分割された線量で施される。いくつかの局面では、放射線の総線量は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40,41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、125、130、135、140、もしくは150Gy、多くても0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40,41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、125、130、135、140、もしくは150Gy、または約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40,41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、125、130、135、140、もしくは150Gy(またはその中の任意の導出可能な範囲)である。いくつかの局面では、総線量は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50Gy、多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50Gy、または厳密に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50Gy(またはその中の任意の導出可能な範囲)の分割された線量で施される。いくつかの局面では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40,41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100分割された線量、多くても2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40,41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100分割された線量、または厳密に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40,41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100分割された線量(またはその中の任意の導出可能な範囲)が施される。いくつかの局面では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12、多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12、または厳密に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12(またはその中の任意の導出可能な範囲)分割された線量が1日当たり施される。いくつかの局面では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30、多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30、または厳密に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30(またはその中の任意の導出可能な範囲)分割された線量が1週間当たり施される。
【0035】
B. がん免疫療法
いくつかの局面では、本方法は、がん免疫療法を施すことを含む。がん免疫療法(時に、がん免疫(immuno-oncology)と呼ばれ、IOと略される)は、がんを治療するために免疫系を利用することである。免疫療法は、場合によって、能動、受動またはハイブリッド(能動と受動)として分類することができる。これらのアプローチは、がん細胞がしばしば、その表面に腫瘍関連抗原(TAA)として知られる免疫系によって検出され得る分子を有するという事実を利用する;これらは、しばしば、タンパク質または他の巨大分子(例えば、炭水化物)である。能動免疫療法は、TAAを標的指向することによって免疫系が腫瘍細胞を攻撃するように仕向ける。受動免疫療法は、既存の抗腫瘍応答を増強し、モノクローナル抗体、リンパ球およびサイトカインの使用を含む。様々な免疫療法が当技術分野において公知であり、ある特定の例を後述する。
【0036】
1. チェックポイント阻害剤および併用処置
本開示の局面は、免疫チェックポイント阻害剤の投与を含むことができ、その例をさらに後述する。本明細書に開示される場合、「チェックポイント阻害剤療法」(また、「免疫チェックポイント遮断療法」、「免疫チェックポイント療法」、「ICT」、「チェックポイント遮断免疫療法」、「チェックポイント遮断療法」または「CBI」)は、がんを患っているまたはがんの疑いのある対象に1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤を提供することを含むがん療法のことを指す。
【0037】
a. PD-1、PDL1、およびPDL2阻害剤
PD-1は、T細胞が感染または腫瘍に遭遇する腫瘍微小環境において作用し得る。活性化されたT細胞は、PD-1をアップレギュレーションし、末梢組織においてPD-1を発現し続ける。IFN-ガンマなどのサイトカインは、上皮細胞および腫瘍細胞上でのPDL1の発現を誘導する。PDL2は、マクロファージおよび樹状細胞上で発現される。PD-1の主な役割は、末梢でのエフェクターT細胞の活性を制限し、免疫応答中の組織への過度の損傷を阻止することである。本開示の阻害剤は、PD-1および/またはPDL1活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。
【0038】
「PD-1」の代替名として、CD279およびSLEB2が挙げられる。「PDL1」の代替名として、B7-H1、B7-4、CD274およびB7-Hが挙げられる。「PDL2」の代替名として、B7-DC、BtdcおよびCD273が挙げられる。いくつかの局面では、PD-1、PDL1およびPDL2は、ヒトのPD-1、PDL1およびPDL2である。
【0039】
いくつかの局面では、PD-1阻害剤は、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1および/またはPDL2である。別の局面では、PDL1阻害剤は、PDL1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PDL1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の局面では、PDL2阻害剤は、PDL2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PDL2結合パートナーは、PD-1である。阻害剤は、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記載されており、すべてが参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に提供される方法および組成物において使用するための他のPD-1阻害剤は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願第US2014/0294898号、同第US2014/022021号、および同第US2011/0008369号に記載されており、すべてが参照により本明細書に組み入れられる。
【0040】
いくつかの局面では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの局面では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびピジリズマブからなる群より選択される。いくつかの局面では、PD-1阻害剤は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPDL1またはPDL2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの局面では、PDL1阻害剤は、AMP-224を含む。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558およびOPDIVO(登録商標)としても知られるニボルマブは、WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)およびSCH-900475としても知られるペムブロリズマブは、WO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。CT-011、hBATまたはhBAT-1としても知られるピジリズマブは、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されているPDL2-Fc融合可溶性受容体である。追加のPD-1阻害剤には、AMP-514としても知られるMEDI0680、およびREGN2810が含まれる。
【0041】
いくつかの局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、MEDI4736としても知られるデュルバルマブ、MPDL3280Aとしても知られるアテゾリズマブ、MSB00010118C、MDX-1105、BMS-936559としても知られるアベルマブ、またはそれらの組み合わせなどのPDL1阻害剤である。ある特定の局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、rHIgM12B7などのPDL2阻害剤である。
【0042】
いくつかの局面では、阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはピジリズマブの重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、一局面では、阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはピジリズマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインと、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはピジリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインとを含む。別の局面では、抗体は、前述した抗体と同じPD-1、PDL1またはPDL2上のエピトープと結合に対して競合し、かつ/または、それに結合する。別の局面では、抗体は、前述した抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはその中の任意の導出可能な範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0043】
b. CTLA-4、B7-1、およびB7-2
本明細書に提供される方法において標的化できる別の免疫チェックポイントは、CD152としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全cDNA配列は、Genbankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面に見られ、抗原提示細胞の表面のB7-1(CD80)またはB7-2(CD86)に結合すると「オフ」スイッチとして働く。CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面に発現され、阻害シグナルをT細胞に伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質であるCD28に類似し、両分子とも、抗原提示細胞上のB7-1およびB7-2に結合する。CTLA-4は、阻害シグナルをT細胞に伝達するが、CD28は、刺激シグナルを伝達する。細胞内CTLA-4はまた、制御性T細胞にも見られ、その機能に重要である可能性がある。T細胞受容体およびCD28を通じたT細胞活性化は、B7分子に対する阻害性受容体であるCTLA-4の増加した発現をもたらす。本開示の阻害剤は、CTLA-4、B7-1および/またはB7-2活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。いくつかの局面では、阻害剤は、CTLA-4とB7-1の相互作用を遮断する。いくつかの局面では、阻害剤は、CTLA-4とB7-2の相互作用を遮断する。
【0044】
いくつかの局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0045】
本方法での使用に適した抗ヒトCTLA-4抗体(または、それに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗CTLA-4抗体を使用することができる。例えば、US 8,119,129、WO 01/14424、WO 98/42752;WO 00/37504(CP675,206、またトレメリムマブとしても知られる;以前はチシリムマブ)、米国特許第6,207,156号;Hurwitz et al., 1998に開示されている抗CTLA-4抗体を、本明細書に開示される方法において使用することができる。前述の刊行物のそれぞれの教示は、参照により本明細書に組み入れられる。また、これらの当技術分野において認められている抗体のいずれかとCTLA-4への結合に対して競合する抗体を使用することもできる。例えば、ヒト化CTLA4抗体は、国際特許出願第WO2001/014424号、同第WO2000/037504号、および米国特許第8,017,114号に記載されており;すべてが参照により本明細書に組み入れられる。
【0046】
本開示の方法および組成物におけるチェックポイント阻害剤として有用なさらなる抗CTLA4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101およびYervoy(登録商標)としても知られる)またはその抗原結合断片およびバリアントである(例えば、WO 01/14424を参照のこと)。
【0047】
いくつかの局面では、阻害剤は、トレメリムマブまたはイピリムマブの重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、一局面では、阻害剤は、トレメリムマブまたはイピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインと、トレメリムマブまたはイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインとを含む。別の局面では、抗体は、前述した抗体と同じPD-1、B7-1またはB7-2上のエピトープと結合に対して競合し、かつ/または、それに結合する。別の局面では、抗体は、前述した抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはその中の任意の導出可能な範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0048】
c. LAG3
本明細書に提供される方法において標的化できる別の免疫チェックポイントは、CD223およびリンパ球活性化3としても知られるリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)である。ヒトLAG3の完全mRNA配列は、Genbankアクセッション番号NM_002286を有する。LAG3は、活性化されたT細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞および形質細胞様樹状細胞の表面に見られる免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。LAG3の主なリガンドは、MHCクラスIIであり、T細胞の細胞増殖、活性化および恒常性をCTLA-4およびPD-1と同じように負に調節し、Treg抑制機能において役割を果たすと報告されている。LAG3はまた、CD8+ T細胞を寛容原性状態に維持するのを助け、PD-1と連動して、慢性ウイルス感染の間のCD8疲弊の維持を助ける。LAG3はまた、樹状細胞の成熟および活性化に関与することが知られている。本開示の阻害剤は、LAG3活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。
【0049】
いくつかの局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗LAG3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0050】
本方法での使用に適した抗ヒトLAG3抗体(または、それに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗LAG3抗体を使用することができる。例えば、抗LAG3抗体は、GSK2837781、IMP321、FS-118、Sym022、TSR-033、MGD013、BI754111、AVA-017、またはGSK2831781を含むことができる。US 9,505,839(BMS-986016、またレラトリマブとしても知られる);US 10,711,060(IMP-701、またLAG525としても知られる);US 9,244,059(IMP731、またH5L7BWとしても知られる);US 10,344,089(25F7、またLAG3.1としても知られる);WO 2016/028672(MK-4280、また28G-10としても知られる);WO 2017/019894(BAP050);Burova E., et al., J. ImmunoTherapy Cancer, 2016;4(Supp. 1):P195(REGN3767);Yu, X., et al., mAbs, 2019;11:6(LBL-007)に開示されている抗LAG3抗体を、本明細書に開示される方法において使用することができる。特許請求される発明において有用なこれらのおよび他の抗LAG-3抗体は、例えば、WO 2016/028672、WO 2017/106129、WO 2017062888、WO 2009/044273、WO 2018/069500、WO 2016/126858、WO 2014/179664、WO 2016/200782、WO 2015/200119、WO 2017/019846、WO 2017/198741、WO 2017/220555、WO 2017/220569、WO 2018/071500、WO 2017/015560;WO 2017/025498、WO 2017/087589、WO 2017/087901、WO 2018/083087、WO 2017/149143、WO 2017/219995、US 2017/0260271、WO 2017/086367、WO 2017/086419、WO 2018/034227、およびWO 2014/140180で見つけることができる。前述の刊行物のそれぞれの教示は、参照により本明細書に組み入れられる。また、これらの当技術分野において認められている抗体のいずれかとLAG3への結合に対して競合する抗体を使用することもできる。
【0051】
いくつかの局面では、阻害剤は、抗LAG3抗体の重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、一局面では、阻害剤は、抗LAG3抗体のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインと、抗LAG3抗体のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインとを含む。別の局面では、抗体は、前述した抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはその中の任意の導出可能な範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0052】
d. TIM-3
本明細書に提供される方法において標的化できる別の免疫チェックポイントは、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)およびCD366としても知られるT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM-3)である。ヒトTIM-3の完全mRNA配列は、Genbankアクセッション番号NM_032782を有する。TIM-3は、表面IFNγ産生CD4+ Th1およびCD8+ Tc1細胞上に見られる。TIM-3の細胞外領域は、膜から遠位の単一可変免疫グロブリンドメイン(IgV)と膜近くに位置する様々な長さのグリコシル化ムチンドメインからなる。TIM-3は、免疫チェックポイントであり、PD-1およびLAG3を含む他の阻害性受容体と一緒に、T細胞疲弊を媒介する。TIM-3はまた、マクロファージ活性化を調節するCD4+ Th1特異的細胞表面タンパク質として示されている。本開示の阻害剤は、TIM-3活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。
【0053】
いくつかの局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗TIM-3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0054】
本方法での使用に適した抗ヒトTIM-3抗体(または、それに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗TIM-3抗体を使用することができる。例えば、MBG453、TSR-022(コボリマブとしても知られる)およびLY3321367を含む抗TIM-3抗体を、本明細書に開示される方法において使用することができる。特許請求される発明において有用なこれらのおよび他の抗TIM-3抗体は、例えば、US 9,605,070、US 8,841,418、US2015/0218274、およびUS 2016/0200815で見つけることができる。前述の刊行物のそれぞれの教示は、参照により本明細書に組み入れられる。また、これらの当技術分野において認められている抗体のいずれかとTIM-3への結合に対して競合する抗体を使用することもできる。
【0055】
いくつかの局面では、阻害剤は、抗TIM-3抗体の重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、一局面では、阻害剤は、抗TIM-3抗体のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインと、抗TIM-3抗体のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインとを含む。別の局面では、抗体は、前述した抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはその中の任意の導出可能な範囲もしくは値)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0056】
2. 共刺激分子の活性化剤
いくつかの局面では、免疫療法は、共刺激分子の活性化剤(また「アゴニスト」)を含む。いくつかの局面では、アゴニストは、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD28、ICOS、OX40(TNFRSF4)、4-1BB(CD137;TNFRSF9)、CD40L(CD40LG)、GITR(TNFRSF18)、およびそれらの組み合わせのアゴニストを含む。アゴニストには、活性化抗体、ポリペプチド、化合物、および核酸が含まれる。
【0057】
3. 樹状細胞療法
樹状細胞療法は、樹状細胞に腫瘍抗原をリンパ球へ提示させ、これにより、リンパ球を活性化し、抗原を提示する他の細胞を殺傷するようにリンパ球を刺激することによって、抗腫瘍応答を惹起する。樹状細胞は、哺乳動物免疫系における抗原提示細胞(APC)である。がんの治療では、これらは、がん抗原標的指向を支援する。樹状細胞ベースの細胞がん療法の一例は、シプリューセル-Tである。
【0058】
腫瘍抗原を提示するように樹状細胞を誘導する1つの方法は、自家腫瘍溶解物または短いペプチド(がん細胞上のタンパク質抗原に対応するタンパク質の小さい部分)のワクチン接種による方法である。これらのペプチドは、しばしば、免疫および抗腫瘍応答を高めるためにアジュバント(高度に免疫原性の物質)と組み合わせて与えられる。他のアジュバントには、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)など、樹状細胞を誘引および/または活性化するタンパク質または他の化学物質が含まれる。
【0059】
樹状細胞はまた、腫瘍細胞にGM-CSFを発現させることによってインビボで活性化させることができる。これは、GM-CSFを産生するように腫瘍細胞を遺伝子操作するかまたはGM-CSFを発現する腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍細胞に感染させるかのいずれかによって達成することができる。
【0060】
別の戦略は、患者の血液から樹状細胞を取り出し、それらを体外で活性化させることである。樹状細胞は、単一の腫瘍特異的ペプチド/タンパク質または腫瘍細胞溶解物(破壊された腫瘍細胞の溶液)であり得る腫瘍抗原の存在下で活性化される。これらの細胞(任意のアジュバントとの)が注入され、免疫応答を惹起する。
【0061】
樹状細胞療法は、樹状細胞の表面の受容体に結合する抗体の使用を含む。抗原を、抗体に加えることができ、樹状細胞を成熟するように誘導し、腫瘍に対する免疫を提供することができる。TLR3、TLR7、TLR8またはCD40などの樹状細胞受容体が、抗体標的として使用されてきた。
【0062】
4. CAR-T細胞療法
キメラ抗原受容体(CAR、またキメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体または人工T細胞受容体としても知られる)は、がん細胞を標的とする免疫細胞と新しい特異性を組み合わせた操作された受容体である。典型的には、これらの受容体は、モノクローナル抗体の特異性を、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞または他の免疫細胞上に移植する。この受容体は、異なる供給源由来の部分が融合しているためキメラと呼ばれる。CAR-T細胞療法は、そのような形質転換細胞をがん療法に使用する治療のことを指し、この場合、形質転換細胞は、T細胞である。類似の療法として、例えば、形質転換NK細胞を使用するCAR-NK細胞療法が挙げられる。
【0063】
CAR-T細胞デザインの基本原理は、抗原結合機能とT細胞活性化機能とを組み合わせた組換え受容体を含む。CAR-T細胞の一般的な前提は、がん細胞上に見られるマーカーを標的とするT細胞を人工的に作製することである。科学者らは、人からT細胞を取り出し、それらを遺伝子改変し、がん細胞を攻撃させるためにそれらを患者に戻すことができる。T細胞が操作されてCAR-T細胞になると、該細胞は「生きている薬物」として働く。CAR-T細胞は、細胞外リガンド認識ドメインから細胞内シグナル伝達分子への間に連結を作り出し、今度はこれが、T細胞を活性化させる。細胞外リガンド認識ドメインは、通常、単鎖可変断片(scFv)である。CAR-T細胞療法の安全性の重要な局面は、如何にして、がん性腫瘍細胞だけが標的化され、正常細胞は標的化されないように保証するかである。CAR-T細胞の特異性は、標的化される分子の選択によって決まる。
【0064】
例示的なCAR-T療法としては、チサゲンレクルユーセル(Kymriah)およびアキシカブタゲン・シロルユーセル(Yescarta)が挙げられる。
【0065】
5. サイトカイン療法
サイトカインは、腫瘍内に存在する多くの種類の細胞によって産生されるタンパク質である。これらは、免疫応答を調整することができる。腫瘍は、しばしば、腫瘍を成長させ、免疫応答を低減させるために、サイトカインを用いる。これらの免疫調整効果により、免疫応答を惹起する薬物としてサイトカインを使用することが可能になる。2つのよく用いられるサイトカインは、インターフェロンおよびインターロイキンである。
【0066】
インターフェロンは、免疫系によって産生される。これらは、通常、抗ウイルス応答に関与しているが、がんに対しても使用される。これらは、3つの群:I型(IFNαおよびIFNβ)、II型(IFNγ)およびIII型(IFNλ)に分けられる。
【0067】
インターロイキンは、数々の免疫系効果を有する。IL-2は、1つの例示的なインターロイキンサイトカイン療法である。
【0068】
6. 養子T細胞療法
養子T細胞療法は、T細胞の注入(養子細胞移入)による受動免疫の一形態である。T細胞は、血液および組織中に見られ、通常、外来病原体を見つけると活性化する。具体的には、T細胞の表面受容体が、表面抗原上に外来タンパク質の一部を提示する細胞に遭遇したときに、T細胞は活性化する。これらの細胞は、感染細胞または抗原提示細胞(APC)のいずれかであることができる。これらは、正常組織中に、また腫瘍組織中に見られ、この場合、これらは腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として知られる。これらは、腫瘍抗原を提示する樹状細胞などのAPCの存在によって活性化される。これらの細胞は、腫瘍を攻撃できるものの、腫瘍内の環境は、高度に免疫抑制性であり、免疫媒介性の腫瘍死を抑止する。
【0069】
腫瘍を標的としたT細胞を産生かつ獲得する複数の手法が開発されている。腫瘍抗原に特異的なT細胞は、腫瘍試料(TIL)から取り出すかまたは血液から濾過することができる。その後の活性化および培養は、エクスビボで実施され、その結果物が再注入される。活性化は、遺伝子治療を通じてまたはT細胞を腫瘍抗原に曝露させることによって行うことができる。
【0070】
C. 腫瘍溶解性ウイルス
いくつかの局面では、がん療法は、腫瘍溶解性ウイルスを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に優先的に感染してがん細胞を殺傷するウイルスである。感染したがん細胞が腫瘍溶解によって破壊されるにつれ、これらは、新たな感染性ウイルス粒子またはビリオンを放出して、残存している腫瘍を破壊するのを助ける。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞の直接破壊を引き起こすだけでなく、長期免疫療法のために宿主の抗腫瘍免疫応答を刺激すると考えられている。
【0071】
D. 化学療法
いくつかの局面では、本開示の療法は、化学療法を含む。化学療法剤の好適なクラスとして、(a)アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シロホスファミド(cylophosphamide)、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホナート(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、クロロゾチシン(chlorozoticin)、ストレプトゾシン)ならびにトリアジン(例えば、ジカルバジン(dicarbazine))、(b)代謝拮抗薬、例えば、葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、アザウリジン)およびプリン類似体ならびに関連物質(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン)、(c)天然産物、例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシンおよびミトキサントロン)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、および生物学的応答修飾物質(例えば、インターフェロン-α)、ならびに(d)種々雑多な薬剤(Miscellaneous Agents)、例えば、白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒジアジン誘導体(methylhydiazine derivatives)(例えば、プロカルバジン)、および副腎皮質抑制剤(例えば、タキソールおよびミトタン)が挙げられる。いくつかの局面では、シスプラチンは、特に好適な化学療法剤である。
【0072】
シスプラチンは、例えば、転移性精巣もしくは卵巣がん、進行性膀胱がん、頭部もしくは頸部がん、子宮頸がん、肺がんまたは他の腫瘍などのがんを治療するために広く使用されてきた。シスプラチンは、経口で吸収されず、それゆえ、例えば、静脈内、皮下、腫瘍内または腹腔内注射などの他の経路を介して送達されなければならない。
【0073】
他の好適な化学療法剤としては、微小管阻害剤、例えば、パクリタキセル(「タキソール」)およびドキソルビシン塩酸塩(「ドキソルビシン」)が挙げられる。ドキソルビシンは、吸収されにくく、好ましくは静脈内に投与される。ある特定の局面では、成人に対する適切な静脈内用量は、約21日間隔で約60mg/m2~約75mg/m2、または約3週間~約4週間間隔で繰り返される2日連続もしくは3日連続の各日に約25mg/m2~約30mg/m2、または週に1回の約20mg/m2を含む。
【0074】
ナイトロジェンマスタードは、本開示の方法において有用な別の好適な化学療法剤である。ナイトロジェンマスタードには、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミドおよび/またはイホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)ならびにクロラムブシルが含まれ得るが、それらに限定されない。シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標)はMead Johnsonから入手可能であり、NEOSTAR(登録商標)はAdriaから入手可能である))は、別の好適な化学療法剤である。成人に対する好適な経口用量は、例えば、約1mg/kg/日~約5mg/kg/日を含み、静脈内用量は、例えば、最初に、約2日~約5日の期間にわたって分割用量で約40mg/kg~約50mg/kg、または約7日~約10日毎に約10mg/kg~約15mg/kg、または週に2回の約3mg/kg~約5mg/kg、または約1.5mg/kg/日~約3mg/kg/日を含む。有害な胃腸への影響のため、ある特定の場合に静脈内経路が好ましい。薬物はまた、時に、筋肉内に、浸透により、または体腔内に投与される。
【0075】
追加の好適な化学療法剤としては、ピリミジン類似体、例えば、シタラビン(シトシンアラビノシド)、5-フルオロウラシル(フルオウラシル;5-FU)およびフロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)が挙げられる。5-FUは、約7.5~約1000mg/m2の任意の投与量で対象に投与され得る。さらに、5-FU投薬スケジュールは、多様な期間、例えば、最大6週間にわたる、または本開示が関係する技術分野において通常の技能を有する者によって決定されるようなものであり得る。
【0076】
患者に送達される化学療法剤の量は、変動し得る。1つの好適な局面では、化学療法剤は、化学療法が構築物と共に施される場合、宿主においてがんの停止または退行を引き起こすのに有効な量で投与され得る。他の局面では、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法上有効な用量より2~10,000倍少ない任意の量で投与され得る。例えば、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法上有効な用量より約20倍少ない、約500倍少ないまたはさらには約5000倍少ない量で投与され得る。本開示の化学療法は、構築物と組み合わされた所望の治療活性について、ならびに有効な投与量の決定のために、インビボで試験することができる。例えば、そのような化合物は、ヒトで試験する前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含むがそれらに限定されない好適な動物モデル系で試験することができる。実施例に記載しているように、インビトロ試験を用いて、好適な組み合わせおよび投与量を決定してもよい。
【0077】
E. ホルモン療法
いくつかの局面では、本開示のがん療法は、ホルモン療法である。特定の局面では、前立腺がん療法は、ホルモン療法を含む。様々なホルモン療法が当技術分野において公知であり、本明細書において想定される。ホルモン療法の例には、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体、LHRHアンタゴニスト、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、およびアンドロゲン合成阻害剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0078】
F. 外科手術
がんを有する人のおよそ60%は、予防的、診断的または病期決定、根治的および緩和的な外科手術を含む何らかの外科手術を受けるだろう。根治的外科手術は、がん性組織の全部または一部が物理的に除去、摘出および/または破壊される切除を含み、本局面の処置、化学療法、放射線治療、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法および/または代替療法などの他の療法と併せて使用され得る。腫瘍切除は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去のことを指す。腫瘍切除に加え、外科手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。
【0079】
がん性細胞、組織または腫瘍の一部または全部が摘出されると、体内に空洞が形成される場合がある。処置は、その領域への追加の抗がん療法のかん流、直接注射または局所的適用によって達成され得る。そのような処置は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日もしくは7日毎に、または1週間、2週間、3週間、4週間および5週間毎に、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月もしくは12ヶ月毎に繰り返され得る。これらの処置も、同様に様々な投与量のものであり得る。
【0080】
G. 追加のがん療法
本明細書に開示される治療法は、1つまたは複数の追加のがん療法を含み得る。本開示のがん療法は、例えば、冷凍アブレーション療法、高密度超音波(また「高密度焦点式超音波」)、光線力学的療法、レーザーアブレーション、および/または不可逆電気穿孔法を含み得る。本開示のがん療法は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の別個の治療法を含み得る。
【0081】
がん処置は、本明細書に記載されるがん処置のいずれかを除外する場合があることが想定される。さらに、本開示の局面は、本明細書に記載される療法で過去に処置された、本明細書に記載される療法で現在処置されている、またはこれまでに本明細書に記載される療法で処置されていない患者を含む。いくつかの局面では、患者は、本明細書に記載される療法に抵抗性であると判断された患者である。いくつかの局面では、患者は、本明細書に記載される療法に感受性であると判断された患者である。
【0082】
III. 薬学的組成物
本開示に係る組成物の投与は、典型的には、任意の一般的な経路を介するものであろう。これには、非経口、同所、皮内、皮下、経口に、経皮に、筋肉内、腹腔内(intraperitoneal)、腹腔内に(intraperitoneally)、眼窩内に、移植による、吸入による、脳室内に、鼻腔内にまたは静脈内注射が含まるが、それらに限定されない。
【0083】
典型的には、本開示の組成物および療法は、投薬製剤に適合した様式で、治療上有効かつ免疫調整性であるような量で施される。投与されるべき量は、処置すべき対象に左右される。投与に必要とされる有効成分の正確な量は、施術者の判断に左右される。
【0084】
多くの場合、多くても3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回もしくはそれ以上または少なくとも3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回もしくはそれ以上の複数回投与が望ましいだろう。投与は、2日~12週間間隔、より一般的には、1~2週間間隔の範囲であり得る。
【0085】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与されたときに、有害、アレルギーまたは他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物のことを指す。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質に対するそのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。従来の媒体または作用物質が有効成分と不適合である場合を除いて、免疫原性および治療用組成物におけるその使用が想定される。本開示の薬学的組成物は、薬学的に許容される組成物である。
【0086】
本開示の組成物は、非経口投与用に製剤化することができ、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、またはさらには腹腔内経路を介した注射用に製剤化することができる。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製することができ、その調製物は、乳化することもできる。
【0087】
注射使用に適した薬学的形態には、無菌の水溶液または分散液;ゴマ油、落花生油または水性プロピレングリコールを含む製剤が含まれる。それはまた、製造および保管の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0088】
無菌注射液は、必要量の有効成分(例えば、本開示のポリペプチド)を適切な溶媒中に、必要に応じて、上に挙げた様々な他の成分と共に組み入れ、続いて、濾過滅菌を行うことによって調製される。一般的に、分散剤は、基本的な分散媒と上に挙げたものから必要とされる他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に、様々な滅菌有効成分を組み入れることによって調製される。
【0089】
組成物の有効量は、意図する目標に基づいて決定される。「単位用量」または「投与量」という用語は、対象に使用するのに適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、その投与、すなわち、適切な投与経路および投与計画に付随して本明細書において考察される所望の応答を生じるように計算された所定量の組成物を含有する。処置の回数および単位用量の両方に応じて、投与されるべき量は、求められる結果および/または防御に左右される。組成物の正確な量はまた、施術者の判断に左右され、各個体に特有のものである。用量に影響を及ぼす要因には、対象の身体的および臨床的状態、投与の経路、治療の意図する目標(症状の緩和対治癒)、ならびに特定の組成物の効力、安定性および毒性が含まれる。製剤化したら、液剤は、その投薬製剤に適合した様式で、かつ、治療上または予防上有効であるような量で投与される。製剤は、上述したタイプの注射液など、種々の剤形で容易に投与される。
【0090】
本開示の組成物および関連する方法、特に、本開示の組成物の投与はまた、追加の治療、例えば本明細書に記載される追加の治療薬の投与と組み合わせて、または当技術分野において公知の他の従来の治療薬と組み合わせて使用され得る。
【0091】
本明細書に開示される治療用組成物および処置は、別の処置または作用物質に先立って、それと同時に、かつ/またはそれに続いて、数分から数週間に及ぶ間隔で進行し得る。作用物質が細胞、組織または生物に別々に適用される場合は、一般的に、治療用物質が細胞、組織または生物に対して有利な併用効果をなお発揮できるように、それぞれの送達時間の間にあまり時間が経過しないように図られるだろう。例えば、そのような場合、細胞、組織または生物と、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の作用物質または処置とを、実質的に同時(すなわち、約1分以内)に接触させてよいことが想定される。他の局面では、1つまたは複数の治療用物質または処置は、別の治療用物質または処置を投与する前および/または投与した後、1分、5分、10分、20分、30分、45分、60分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、37時間、38時間、39時間、40時間、41時間、42時間、43時間、44時間、45時間、46時間、47時間、48時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間もしくは8週間またはそれ以上の期間内、およびその中の導出可能な任意の範囲内に投与または提供され得る。
【0092】
処置は、様々な「単位用量」を含み得る。単位用量は、所定量の治療用組成物を含有すると定義される。投与されるべき量、ならびに具体的な経路および処方は、臨床分野の当業者の判断技能の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はなく、一定期間にわたる持続注入を含み得る。単位用量は、単回投与可能な用量を含み得る。
【0093】
処置の回数および単位用量の両方に応じて、投与されるべき量は、求められる治療効果に左右される。有効用量は、特定の効果を達成するのに必要な量のことを指すものと理解される。10mg/kg~200mg/kgの範囲の用量は、これらの作用物質の防御能に影響を及ぼす場合がある。したがって、用量は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/kg、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000mg/kg、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/日、または約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000mg/日の用量、またはその中の導出可能な任意の範囲の用量を含むことが想定される。さらに、そのような用量は、1日の間に複数回、および/または複数の日、週もしくは月に投与することができる。
【0094】
ヒトに投与される免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗体および/または微生物モジュレーターの治療上有効なまたは十分な量は、1回の投与によるか複数回の投与によるかにかかわらず、約0.01~約50mg/kg(患者体重)の範囲であり得る。使用される療法は、例えば、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、または約0.01~約1mg/kgが毎日投与され得るものである。本明細書に記載される療法は、21日サイクルの1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mgまたは約1400mgの用量で対象に施され得る。用量は、単回用量として、または注入などの複数回用量(例えば、2回または3回用量)として投与され得る。この療法の進行は、従来技術によって容易にモニタリングされる。
【0095】
薬学的組成物の有効用量は、約1μM~150μMの血中レベルを提供できるものであり得る。別の態様では、有効用量は、約4μM~100μM;または約1μM~100μM;または約1μM~50μM;または約1μM~40μM;または約1μM~30μM;または約1μM~20μM;または約1μM~10μM;または約10μM~150μM;または約10μM~100μM;または約10μM~50μM;または約25μM~150μM;または約25μM~100μM;または約25μM~50μM;または約50μM~150μM;または約50μM~100μM(またはその中の導出可能な任意の範囲)の血中レベルを提供する。用量は、対象に投与されている治療用物質から生じる以下の作用物質血中レベルを提供できるものであり得る:約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、または多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、またはその中の導出可能な任意の範囲。対象に投与され得る治療用物質は、体内で代謝されて代謝された治療用物質になり、その場合、血中レベルがその作用物質の量を指し得る。あるいは、治療用物質が対象により代謝されない範囲では、本明細書において考察される血中レベルは、代謝されていない治療用物質を指し得る。
【0096】
治療用組成物の正確な量はまた、施術者の判断に左右され、各個体に特有のものである。用量に影響を及ぼす要因には、患者の身体的および臨床的状態、投与の経路、処置の意図する目標(症状の緩和対治癒)、ならびに対象が受け得る特定の治療用物質または他の療法の効力、安定性および毒性が含まれる。
【0097】
μg/kgまたはmg/kg(体重)の投与量単位は、4μM~100μMなどのμg/mlまたはmM(血中レベル)の比較可能な濃度単位に変換でき、表現できることが、当業者によって理解され、認識されよう。また、取り込みが、種および臓器/組織に依存的であることも理解される。取り込みおよび濃度測定に関する適用可能な変換係数およびなされる生理学的仮定は、周知であり、それにより、当業者は、1つの濃度測定値を別のものに変換すること、そして、本明細書に記載される用量、有効性および結果に関して妥当な比較を行いかつ結論を出すことが可能となろう。
【0098】
IV. アッセイ法
A. シーケンス解析
本開示の局面は、腫瘍試料、腫瘍マイクロバイオーム試料および/または腸内マイクロバイオーム試料を含む試料からの核酸のシーケンス解析を含む。いくつかの局面では、腫瘍マイクロバイオームまたは腸内マイクロバイオームからの細菌のゲノムDNAをシーケンス解析することを含む方法が開示される。そのような方法は、例えば、腫瘍マイクロバイオームまたは腸内マイクロバイオーム中の特定の細菌を検出かつ同定する際に有用であり得る。本開示の方法は、シーケンス解析法を含み得る。例示的なシーケンス解析法として、後述するものが挙げられる。
【0099】
1. 大規模並列シグネチャーシーケンス解析(MPSS)
次世代シーケンス解析技術の最初のものである大規模並列シグネチャーシーケンス解析(またはMPSS)は、1990年代にLynx Therapeuticsで開発された。MPSSは、アダプターライゲーションとそれに続くアダプターデコーディングの複雑なアプローチ使用して4ヌクレオチド増分で配列を読み取る、ビーズベースの方法であった。この方法は、配列特異的なバイアスまたは特定の配列の喪失の影響を受けやすいものであった。この技術は、あまりに複雑であるため、MPSSは、Lynx Therapeuticsにより「社内」でのみ実施され、DNAシーケンス解析装置は、独立した研究所に販売されなかった。Lynx Therapeutics社は、2004年にSolexa(後にIlluminaによって買収された)と合併し、Manteia Predictive Medicineから取得されたより単純なアプローチである合成時解読法(sequencing-by-synthesis)の開発につながることになり、MPSSは時代遅れとなった。しかしながら、MPSSアウトプットの基本的な性質は、数十万の短いDNA配列を含む後の「次世代」データ型の典型となった。MPSSの場合、これらは、典型的には、遺伝子発現レベルの測定のためにcDNAをシーケンス解析するために使用された。実際に、強力なIllumina HiSeq2000、HiSeq2500およびMiSeqシステムは、MPSSをベースとしている。
【0100】
2. ポロニーシーケンス解析
ハーバード大学のGeorge M. Church研究室で開発されたポロニーシーケンス解析法は、最初の次世代シーケンス解析システムの1つであり、2005年に全ゲノムをシーケンス解析するために使用された。これは、インビトロペアタグライブラリーを、エマルジョンPCR、自動顕微鏡およびライゲーションベースのシーケンス解析化学と組み合わせて、大腸菌(E. coli)ゲノムを、>99.9999%の正確度で、かつサンガーシーケンス解析のおよそ1/9のコストでシーケンス解析した。この技術は、Agencourt Biosciencesにライセンス供与され、その後、Agencourt Personal Genomicsにスピンアウトされ、最終的に、Life Technologiesが現在所有しているApplied Biosystems SOLiDプラットフォームに組み込まれた。
【0101】
3. 454パイロシーケンシング
パイロシーケンシングの並列バージョンは、454 Life Sciencesによって開発され、それ以来、Roche Diagnosticsによって取得された。この方法は、DNAを油溶液中の水滴内部で増幅させ(エマルジョンPCR)、各液滴は、後にクローンコロニーを形成する単一のプライマー被覆ビーズに結合した単一のDNA鋳型を含有する。シーケンス解析装置は、多くのピコリットル容積のウェルを含有し、その各々が単一のビーズとシーケンス解析酵素を含有する。パイロシーケンシングは、新生DNAに付加された個々のヌクレオチドの検出のための光の生成にルシフェラーゼを使用し、組み合わされたデータは、配列読み出しを生成するために使用される。この技術は、一方の末端ではサンガーシーケンス解析、他方の末端ではSolexaおよびSOLiDと比較して、中間の読み取り長および塩基当たりの価格を提供する。
【0102】
4. Illumina(Solexa)シーケンス解析
Solexa(現在は、Illuminaの一部である)は、内部で開発された可逆的色素-ターミネーター技術および操作されたポリメラーゼに基づくシーケンス解析法を開発した。その末端化化学は、Solexaで内部開発され、Solexaシステムの概念は、ケンブリッジ大学の化学部門のBalasubramanianおよびKlennermanによって発明された。2004年に、Solexaは、表面でのDNAのクローン増幅を伴う「DNA Clusters」に基づく大規模並列シーケンス解析技術を得るために、Manteia Predictive Medicine社を買収した。クラスター技術は、カリフォルニア州のLynx Therapeuticsと共同取得された。Solexa Ltd.は、後にLynxと合併して、Solexa Incとなった。
【0103】
この方法では、DNA分子およびプライマーが最初にスライド上に付着させられ、ポリメラーゼにより増幅され、その結果、局部クローンDNAコロニー、後に鋳型に基づいて生成された「DNAクラスター」が形成される。配列を決定するために、4種類の可逆的ターミネーター塩基(RT-塩基)が付加され、組み込まれていないヌクレオチドが洗い流される。カメラで蛍光標識ヌクレオチドの画像を撮影し、次いで、色素が、末端3'ブロッカーと共に、DNAから化学的に除去され、次のサイクルを開始させる。パイロシーケンシングとは異なり、DNA鎖は、一度に1ヌクレオチド伸長し、画像取得は、遅れてすぐに実施することができ、それにより、単一のカメラから撮影された連続画像によって非常に大規模なDNAコロニーアレイを捕捉することが可能になる。
【0104】
酵素反応と画像捕捉の分離は、最適な処理量および理論的に無限のシーケンス解析能力を可能にする。最適な構成では、最終的に到達可能な機器の処理量は、したがって、カメラのアナログ-デジタル変換レートにカメラの数を掛け、それらを最適に視覚化するために必要なDNAコロニー当たりのピクセル数(およそ10ピクセル/コロニー)で割ることによってのみ決定される。2012年に、10MHzを超えるA/D変換レートで動作するカメラと、利用可能な光学系、流体工学および酵素を用いて、処理量は、100万ヌクレオチド/秒の倍数が可能となり、これは、大体、1つの機器につき1時間当たり1×カバレッジの1ヒトゲノム当量、および1つの機器(単一のカメラを備えた)につき1日当たりの再シーケンス解析された(およそ30×で)1ヒトゲノムに相当する。
【0105】
5. SOLiDシーケンス解析
Applied Biosystems(現在は、Thermo Fisher Scientificブランド)のSOLiD技術は、ライゲーションによるシーケンス解析を用いる。ここでは、固定長の可能なすべてのオリゴヌクレオチドのプールが、シーケンス解析された位置に従って標識される。オリゴヌクレオチドがアニーリングし、ライゲーションされる;一致配列についてのDNAリガーゼによる優先的ライゲーションは、その結果、その位置にあるヌクレオチドのシグナル情報を与える。シーケンス解析前に、DNAは、エマルジョンPCRによって増幅される。結果として生じたビーズ(各々が同じDNA分子の単一コピーを含有する)が、ガラススライド上に堆積する。その結果、Illuminaシーケンス解析と同等な量および長さの配列が得られる。ライゲーション法によるこのシーケンス解析は、回文配列をシーケンス解析するいくつかの課題を有することが報告されている。
【0106】
6. Ion Torrent半導体シーケンス解析
Ion Torrent Systems Inc.(現在は、Thermo Fisher Scientificが所有する)は、標準的なシーケンス解析化学の使用をベースとするが、新規の半導体ベースの検出系を備えたシステムを開発した。このシーケンス解析の方法は、他のシーケンス解析システムで使用される光学的方法とは対照的に、DNAの重合中に放出される水素イオンの検出をベースとする。シーケンス解析される鋳型DNA鎖を含有するマイクロウェルに、一種類のヌクレオチドを満たす。導入されたヌクレオチドがリーディング鋳型ヌクレオチドと相補的である場合、それは、成長している相補鎖に組み込まれる。これは、高感度イオンセンサーの引き金となる水素イオンの放出を引き起こし、反応が起こったことを示す。鋳型配列中にホモポリマーリピートが存在する場合、複数のヌクレオチドが単一サイクルに組み込まれる。これは、対応する数の放出水素および相対的に高い電子信号をもたらす。
【0107】
7. DNAナノボールシーケンス解析
DNAナノボールシーケンス解析は、生物のゲノム配列全体を決定するために使用されるハイスループットシーケンス解析技術の一種である。Complete Genomics社は、この技術を使用して、独立した研究者から提出された試料をシーケンス解析する。この方法は、ローリングサークル複製を使用して、ゲノムDNAの小さな断片をDNAナノボールに増幅する。次いで、ライゲーションによる非鎖シーケンス解析を使用して、ヌクレオチド配列を決定する。このDNAシーケンス解析の方法は、他の次世代シーケンス解析プラットフォームと比較して、1ラン当たりおよび低い試薬コストで、多数のDNAナノボールをシーケンス解析することを可能にする。しかしながら、各DNAナノボールから短いDNAの配列しか決定されず、これは、短いリードを参照ゲノムにマッピングすることを困難にする。この技術は、複数のゲノムシーケンス解析プロジェクトに使用されている。
【0108】
8. Heliscope単一分子シーケンス解析
Heliscopeシーケンス解析は、Helicos Biosciencesによって開発された単一分子シーケンス解析の一方法である。これは、フローセル表面に付着したポリ-Aテールアダプターが付加されたDNA断片を使用する。次の工程は、蛍光標識ヌクレオチド(サンガー法と同様、一度に1つのヌクレオチド型)を用いたフローセルのサイクル洗浄による、伸長に基づくシーケンス解析を含む。読み取りは、Heliscopeシーケンサーによって実施される。読み取りは、短く、1ラン当たり最大55塩基であるが、最近の改善により、一種類のヌクレオチドストレッチのより正確な読み取りが可能である。このシーケンス解析法および装置を使用して、M13バクテリオファージのゲノムがシーケンス解析された。
【0109】
9. 単一分子リアルタイム(SMRT)シーケンス解析
SMRTシーケンス解析は、合成アプローチによるシーケンス解析に基づく。DNAが、ゼロモード導波管(ZMW)-ウェルの底部に捕捉ツールが位置する小さなウェル様容器で合成される。シーケンス解析は、未修飾ポリメラーゼ(ZMW底部に付着した)および溶液中を自由に流れる蛍光標識ヌクレオチドを使用して実施される。ウェルは、ウェルの底部により生じる蛍光だけが検出されるように構築される。蛍光標識は、DNA鎖に組み込まれた時にヌクレオチドから切り離され、未修飾のDNA鎖が残る。SMRT技術開発者であるPacific Biosciencesによれば、この方法論は、ヌクレオチド修飾(シトシンメチル化など)の検出を可能にする。これは、ポリメラーゼ動力学の観察を通して起こる。このアプローチは、5キロ塩基の平均読み取り長で、20,000ヌクレオチドまたはそれ以上の読み取りを可能にする。
【0110】
B. 追加のアッセイ法
方法は、標的ゲノム領域に特異的な少なくとも1つのプライマー対を使用して1つまたは複数の標的ゲノム領域を増幅および/またはシーケンス解析することを含み得る。プライマーは、7merであり得る。プライマーゼまたはプライマーゼ/ポリメラーゼ組み合わせ酵素などの酵素が、プライマーを合成するために増幅工程に添加され得る。
【0111】
本開示の核酸を検出するためにアレイを使用することができる。アレイは、核酸プローブが付着した固体支持体を含む。アレイは、典型的には、基板の表面に異なる既知の場所で結合した複数の異なる核酸プローブを含む。「マイクロアレイ」または口語表現で「チップ」とも表されるこれらのアレイは、一般に、当技術分野に、例えば、米国特許第5,143,854号、同第5,445,934号、同第5,744,305号、同第5,677,195号、同第6,040,193号、同第5,424,186号およびFodor et al., 1991に記載されており、その各々は、あらゆる目的のために参照によりその全体が組み入れられる。機械的合成法を使用したこれらのアレイの合成技法は、例えば、米国特許第5,384,261号に記載されており、これは、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ある特定の局面では平面状のアレイ表面が使用されるが、アレイは、実質的にあらゆる形状の表面に作製されてよく、さらには多数の表面に作製されてもよい。アレイは、ビーズ、ゲル、高分子表面、光ファイバーなどの繊維、ガラスまたは任意の他の適切な基板上の核酸であり得るが、米国特許第5,770,358号、同第5,789,162号、同第5,708,153号、同第6,040,193号および同第5,800,992号を参照されたく、これらは、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み入れられる。
【0112】
アレイおよびマイクロアレイの使用に加え、核酸を分析するために多数の異なるアッセイを用いることができることが想定される。そのようなアッセイには、核酸増幅、ポリメラーゼ連鎖反応、定量PCR、RT-PCR、インサイチューハイブリダイゼーション、デジタルPCR、ddPCR(「デジタルドロップレットPCR」または「ドロップレットデジタルPCR」)、nCounter(nanoString)、BEAMing(Beads、Emulsions、Amplifications、and Magnetics)(Inostics)、ARMS(Amplification Refractory Mutation Systems)、RNA-Seq、TAm-Seg(タグ付きアンプリコンディープシーケンス解析)、PAP(ピロリン酸分解-活性化重合)、次世代RNAシーケンス解析、ノーザンハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ(HPA)(GenProbe)、分岐DNA(bDNA)アッセイ(Chiron)、ローリングサークル増幅(RCA)、単一分子ハイブリダイゼーション検出(US Genomics)、Invaderアッセイ(ThirdWave Technologies)、および/またはBridge Litigation Assay(Genaco)が含まれるが、それらに限定されない。
【0113】
増幅プライマーまたはハイブリダイゼーションプローブを、本明細書に記載されるゲノム領域、バイオマーカー、プローブまたはオリゴと相補的になるように調製することができる。「プライマー」または「プローブ」という用語は、本明細書において使用される場合、鋳型依存的なプロセスで新生核酸の合成を開始し、かつ/または、本開示のオリゴの一本鎖またはその部分と対合することが可能な、任意の核酸を包含することを意味する。典型的には、プライマーは、10~20および/または30核酸長のオリゴヌクレオチドであるが、より長い配列を用いることができる。プライマーは、二本鎖および/または一本鎖形態で提供されてよいが、一本鎖形態が好ましい。
【0114】
13~100ヌクレオチド、特に、17~100ヌクレオチド長、またはいくつかの局面では、最大1~2キロ塩基またはそれ以上の長さのプローブまたはプライマーの使用が、安定かつ選択的な二重鎖分子の形成を可能にする。20塩基長を超える連続ストレッチにわたり相補的配列を有する分子が、得られたハイブリッド分子の安定性および/または選択性を増加させるために使用され得る。ハイブリダイゼーションのために、20~30ヌクレオチドの1つもしくは複数の相補的配列を有するかまたは所望であればさらにより長い核酸分子を設計することができる。そのような断片は、例えば、化学的手段により断片を直接合成することによって、または選択された配列を組換え産生のための組換えベクターに導入することによって容易に調製され得る。
【0115】
一態様では、各プローブ/プライマーは、少なくとも15個のヌクレオチドを含む。例として、各プローブは、少なくとも20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、400個もしくはより多くのヌクレオチド、または多くても20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、400個もしくはより多くのヌクレオチド(またはその中の導出可能な任意の範囲)を含むことができる。これらは、これらの長さを有することができ、本明細書に記載される遺伝子と同一または相補的な配列を有することができる。特に、各プローブ/プライマーは、比較的高い配列複雑性を有し、いかなる不明瞭な残基(不確定の「n」残基)も有しない。プローブ/プライマーは、ストリンジェントなまたは高度にストリンジェントな条件下で、標的遺伝子(そのRNA転写物を含む)にハイブリダイズすることができる。プローブまたはプライマーは、特定のバイオマーカーに対して2つ以上のヒト配列の認識に適合するイノシンまたは他の設計実装を有し得ることが想定される。
【0116】
高い選択性を必要とする用途では、典型的には、ハイブリッドを形成するために比較的高いストリンジェンシー条件を用いることが望ましいだろう。例えば、約50℃~約70℃の温度で約0.02M~約0.10MのNaClによって提供されるような比較的低い塩および/または高い温度条件。そのような高ストリンジェンシー条件は、プローブまたはプライマーと鋳型または標的鎖との間のミスマッチを、たとえあったとしてもほとんど許容せず、特異的遺伝子の単離または特異的なmRNA転写物の検出に特に適するであろう。一般的に、漸増量のホルムアミドを添加することによって、条件をよりストリンジェントにすることができることが認識される。
【0117】
一態様では、試料中の核酸のレベルまたは存在量を検出かつ比較するために、定量RT-PCR(例えば、TaqMan、ABI)が使用される。PCRプロセスの直線部分における標的DNAの濃度は、PCRが開始される前の標的の開始濃度に比例する。同数のサイクルを完了し、それらの直線範囲にある、PCR反応における標的DNAのPCR産物の濃度を決定することによって、元のDNA混合物中の特異的標的配列の相対濃度を決定することが可能である。PCR産物の濃度と開始材料中の相対存在量との間のこの直接的な比例関係は、PCR反応の直線範囲部分において当てはまる。曲線のプラトー部分における標的DNAの最終濃度は、反応ミックス中の試薬の利用可能性によって決まり、標的DNAの元の濃度とは無関係である。それゆえ、増幅したPCR産物のサンプリングおよび定量は、PCR反応がそれらの曲線の直線部分にある場合に行うことができる。加えて、増幅可能なDNAの相対濃度を、内部に存在するDNA種または外部から導入されたDNA種のいずれかに基づき得る何らかの独立した標準/対照に対して正規化することができる。特定のDNA種の存在量はまた、試料中のすべてのDNA種の平均存在量に対して決定されてもよい。
【0118】
一態様では、PCR増幅は、1つまたは複数の内部PCR標準を利用する。内部標準は、細胞中の豊富なハウスキーピング遺伝子であってもよく、または、具体的には、GAPDH、GUSBおよびβ-2ミクログロブリンであることができる。これらの標準は、異なる遺伝子産物の発現レベルを直接比較できるように、発現レベルを正規化するために使用され得る。当業者であれば、発現レベルを正規化するためにどのように内部標準を使用すればよいかを知っているだろう。
【0119】
いくつかの試料に固有の問題は、これらが様々な量および/または品質を持つことである。この問題は、RT-PCRを、内部標準が標的DNA断片と類似しているかまたはより大きな増幅可能なDNA断片であり、かつ内部標準を表すDNAの存在量が標的核酸領域を表すDNAより大体5~100倍高い、内部標準を用いた相対的定量RT-PCRとして実施すれば克服できる。
【0120】
別の態様では、相対的定量RT-PCRは、外部標準プロトコルを使用する。このプロトコル下で、PCR産物は、それらの増幅曲線の直線部分でサンプリングされる。サンプリングに最適なPCRサイクルの数は、標的DNA断片毎に経験的に決定することができる。加えて、様々な試料から単離された核酸を、増幅可能なDNAの等濃度に対して正規化することができる。
【0121】
核酸アレイは、異なるおよび/または同じバイオマーカーにハイブリダイズし得る少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上の異なるポリヌクレオチドプローブを含むことができる。同じ遺伝子に対して複数のプローブを単一核酸アレイ上で使用することができる。また、他の疾患遺伝子に対するプローブを核酸アレイに含めることもできる。アレイ上のプローブ密度は、任意の範囲であることができる。密度は、50、100、200、300、400、500もしくはそれ以上のプローブ/cm2(またはその中の導出可能な任意の範囲)であり得るか、または少なくとも50、100、200、300、400、500もしくはそれ以上のプローブ/cm2(またはその中の導出可能な任意の範囲)であり得る。
【0122】
具体的に想定されるものは、チップベースの核酸技術、例えば、Haciaら(1996)およびShoemakerら(1996)によって記載されているものである。簡潔に述べると、これらの技術は、多数の遺伝子を迅速かつ正確に分析するための定量的方法を含む。遺伝子をオリゴヌクレオチドでタグ化するかまたは固定プローブアレイを使用することにより、チップ技術を用いて、標的分子を高密度アレイとして分離し、これらの分子をハイブリダイゼーションに基づいてスクリーニングすることができる(Pease et al., 1994;およびFodor et al, 1991も参照のこと)。この技術は、診断、予後判定および処置の方法に関して、1つまたは複数のがんバイオマーカーの発現レベルの評価と併せて使用され得ることが想定される。
【0123】
ある特定の局面は、アレイまたはアレイから生成されたデータの使用を含み得る。データは、容易に入手可能であり得る。さらに、アレイは、相関研究にその後使用され得るデータを生成するために調製され得る。
【0124】
V. 抗体
本開示の局面は、α3β1インテグリン、COL1A1、COL1A2または任意の他の腫瘍微小環境タンパク質に特異的に結合することが可能な、抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドに関する。いくつかの局面では、本開示は、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊することが可能な、抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドを含む。
【0125】
「抗体」という用語は、無傷の抗体と標的抗原への特異的結合に対して競合できる任意のアイソタイプの無傷の免疫グロブリンまたはその断片のことを指し、キメラ、ヒト化、完全ヒトおよび二重特異性抗体が含まれる。本明細書において使用される場合、「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は、互換的に使用され、IgG、IgD、IgE、IgA、IgMおよび関連タンパク質を含めた、動物の免疫応答の一部として機能するいくつかのクラスの構造的に関連するタンパク質のいずれか、ならびに抗原結合活性を保持する抗体CDRドメインを含むポリペプチドのことを指す。
【0126】
「抗原」という用語は、抗体などの選択的結合物質が結合することが可能な分子または分子の一部分のことを指す。抗原は、異なる抗体と相互作用することが可能な1つまたは複数のエピトープを保有し得る。
【0127】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に結合することにより免疫応答を惹起することが可能な、分子の任意の領域または部分を含む。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニル基などの化学的に活性な表面基を含み得、特異的な三次元構造特性および/または特異的な電荷特性を有し得る。一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、複合混合物内の標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0128】
所与のポリペプチドのエピトープ領域は、X線結晶解析法、核磁気共鳴分光法、部位特異的変異誘発マッピング、タンパク質ディスプレイアレイを含む、当技術分野において周知の多くの異なるエピトープマッピング技術を使用して特定することができ、例えば、Epitope Mapping Protocols, (Johan Rockberg and Johan Nilvebrant, Ed., 2018) Humana Press, New York, N.Yを参照されたい。そのような技術は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第4,708,871号;Geysen et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002 (1984); Geysen et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:178-182 (1985); Geysen et al. Molec. Immunol. 23:709-715 (1986)に記載されている。さらに加えて、タンパク質の抗原性領域を、標準的な抗原性およびハイドロパシープロットを使用して予測および特定することもできる。
【0129】
「免疫原性配列」という用語は、適切な宿主において抗体の産生を刺激することが可能であるような、少なくとも1つのエピトープのアミノ酸配列を含む分子を意味する。「免疫原性組成物」という用語は、少なくとも1つの免疫原性分子(例えば、抗原または炭水化物)を含む組成物を意味する。
【0130】
無傷の抗体は、一般的に、2本の完全長重鎖と2本の完全長軽鎖から構成されるが、いくつかの場合では、重鎖のみを含み得るラクダ科動物に天然に存在する抗体のように、より少ない鎖を含む場合がある。本明細書に開示されるような抗体は、たった1つの供給源に由来し得るか、または「キメラ」であり得る、すなわち、抗体の異なる部分が、2つの異なる抗体に由来し得る。例えば、可変領域またはCDR領域は、ラットまたはマウス源に由来し得る一方で、定常領域は、ヒトなどの異なる動物源に由来する。抗体または結合断片は、ハイブリドーマにおいて、組換えDNA技法によって、または無傷の抗体の酵素的もしくは化学的切断によって産生され得る。特に指示のない限り、「抗体」という用語は、その誘導体、バリアント、断片およびムテインを含み、その例は、以下に記載されている(Sela-Culang et al., Front Immunol. 2013;4: 302;2013)。
【0131】
「軽鎖」という用語は、結合特異性を付与するために十分な可変領域配列を有する完全長軽鎖およびその断片を含む。完全長軽鎖は、25,000ダルトン前後の分子量を有し、可変領域ドメイン(本明細書においてVLと略される)、および定常領域ドメイン(本明細書においてCLと略される)を含む。軽鎖には、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と識別される2つの分類がある。「VL断片」という用語は、CDRを含む、軽鎖可変領域の全部または一部を含むモノクローナル抗体の軽鎖の断片のことを意味する。VL断片は、軽鎖定常領域配列をさらに含むことができる。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。
【0132】
「重鎖」という用語は、結合特異性を付与するために十分な可変領域配列を有する完全長重鎖およびその断片を含む。完全長重鎖は、50,000ダルトン前後の分子量を有し、可変領域ドメイン(本明細書においてVHと略される)、および3つの定常領域ドメイン(本明細書においてCH1、CH2、およびCH3と略される)を含む。「VH断片」という用語は、CDRを含む、重鎖可変領域の全部または一部を含むモノクローナル抗体の重鎖の断片のことを意味する。VH断片は、重鎖定常領域配列をさらに含むことができる。重鎖定常領域ドメインの数は、アイソタイプに依存する。VHドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインは、カルボキシ末端にあるが、CH3が-COOH端に最も近い。抗体のアイソタイプは、IgM、IgD、IgG、IgA、またはIgEであることができ、存在する重鎖によって定義されるが、重鎖には、それぞれミュー(μ)鎖、デルタ(δ)鎖、ガンマ(γ)鎖、アルファ(α)鎖、またはイプシロン(ε)鎖という5つの分類がある。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むがそれらに限定されない、いくつかのサブタイプを有する。IgMサブタイプは、IgM1およびIgM2を含む。IgAサブタイプは、IgA1およびIgA2を含む。
【0133】
A. 抗体の種類
抗体は、任意のアイソタイプもしくは分類の全免疫グロブリン、キメラ抗体、または2つ以上の抗原に対して特異性を有するハイブリッド抗体であることができる。これらは、ハイブリッド断片を含めた、断片(例えば、F(ab')2、Fab'、Fab、Fvなど)でもあり得る。免疫グロブリンはまた、特異的な抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する、天然、合成、または遺伝子操作されたタンパク質も含む。抗体という用語は、遺伝子操作されたまたはそれ以外の方法で改変された形態の免疫グロブリンを含む。
【0134】
「単量体」という用語は、Ig単位を1つだけ含有する抗体のことを意味する。単量体は、抗体の基本的な機能単位である。「二量体」という用語は、抗体重鎖の定常ドメイン(Fc領域、または断片結晶化可能領域)を介して互いに付着した2つのIg単位を含有する抗体のことを意味する。その複合体は、連結(J)鎖タンパク質によって安定化され得る。「多量体」という用語は、抗体重鎖の定常ドメイン(Fc領域)を介して互いに付着した2つ超のIg単位を含有する抗体のことを意味する。その複合体は、連結(J)鎖タンパク質によって安定化され得る。
【0135】
「二価抗体」という用語は、2つの抗原結合部位を含む抗体のことを意味する。2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有し得るか、または、これらは二重特異性であり得、このことは、2つの抗原結合部位が異なる抗原特異性を有することを意味する。
【0136】
二重特異性抗体は、2つ以上の別個のエピトープに対して異なる結合部位を持つ2つのパラトープを有する抗体のクラスである。二重特異性抗体は、バイパラトピックであることができ、ここで、二重特異性抗体は、同じ抗原からの異なるエピトープを特異的に認識し得る。二重特異性抗体は、「ナノボディ」と呼ばれる一対の異なる単一ドメイン抗体から構築することができる。単一ドメイン抗体は、軟骨魚類およびラクダ科動物から供給されて改変される。ナノボディは、当業者にとって通常の技法を使用して、リンカーにより一緒に連結することができる;ナノボディの選択および連結のためのそのような方法は、PCT公開番号WO2015044386A1、同WO2010037838A2、およびBever et al., Anal Chem. 86:7875-7882 (2014)に記載されており、それらは各々、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み入れられる。
【0137】
二重特異性抗体は、全IgG、Fab'2、Fab'PEG、ダイアボディとして、または代替的にscFvとして構築することができる。ダイアボディおよびscFvは、可変ドメインのみを使用してFc領域なしで構築することができ、それにより、抗イディオタイプ反応の影響を低減できる可能性がある。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の連結を含むがそれらに限定されない種々の方法によって産生され得る。例えば、Songsivilai and Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-1553 (1992)を参照されたく、それらは各々、参照によりその全体が具体的に組み入れられる。
【0138】
ある特定の局面では、抗原結合ドメインは、異なる抗原に結合するVH領域とVL領域の対を用いて多量体化することにより、多重特異性または異種特異性であり得る。例えば、抗体は、(a)細胞表面抗原、(b)エフェクター細胞の表面のFc受容体、または(c)少なくとも1つの他の構成要素に結合し得るか、またはそれと相互作用し得る。したがって、諸局面は、エピトープにおよびエフェクター細胞上のFc受容体などの他の標的に指向される、二重特異性、三重特異性、四重特異性および他の多重特異性抗体またはその抗原結合断片を含み得るが、それらに限定されない。
【0139】
多重特異性抗体は、当技術分野において公知のルーチン法を用いて、使用することができ、短い可動性ポリペプチド鎖を介して直接連結することができる。1つのそのような例は、二価の二重特異性抗体であるダイアボディであり、その中では、VHおよびVLドメインは、単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同鎖上でドメイン同士の対合を可能にするには短すぎるリンカーを利用することにより、それらのドメインを別鎖の相補的ドメインと対合させて、2つの抗原結合部位を作り出している。そのリンカー機能は、トリアボディ、テトラボディ、およびさらに高次の抗体多量体に適用可能である(例えば、Hollinger et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993); Polijak et al., Structure 2:1121-1123 (1994); Todorovska et al., J. Immunol. Methods 248:47-66 (2001)を参照のこと)。
【0140】
二重特異性全抗体とは対照的に、二重特異性ダイアボディも、大腸菌において容易に構築および発現できるため、有利であり得る。適切な結合特異性を持つダイアボディ(および抗体断片などの他のポリペプチド)は、ライブラリーからファージディスプレイ(WO94/13804)を使用して容易に選択することができる。ダイアボディの一方のアームが一定に保たれている場合、例えば、タンパク質に対して指向される特異性が保たれている場合、他方のアームが変化したライブラリーを製造でき、適切な特異性を持つ抗体を選択できる。二重特異性全抗体は、Ridgewayら(Protein Eng., 9:616-621, 1996)およびKrahら(N Biotechnol. 39:167-173, 2017)に記載されているような代替操作法によって製造され得、それらは各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0141】
ヘテロコンジュゲート抗体は、異なる特異性を有する2つの共有結合で連結されたモノクローナル抗体から構成される。例えば、米国特許第6,010,902号を参照されたく、前記特許は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0142】
抗原のエピトープに高い特異性で結合する抗体分子のFv断片の部分は、本明細書において「パラトープ」と称される。パラトープは、抗原のエピトープと接触して抗原認識を促進するアミノ酸残基からなる。抗体の2つのFv断片の各々は、2つの可変ドメインVHおよびVLから、二量体化された構成で構成される。可変ドメインの各々の一次構造は、フレームワーク領域(FR)によって隔てられかつそれに隣接する3つの超可変ループを含む。超可変ループは、任意の哺乳動物由来の抗体分子間で一次配列変動性が最も大きい領域である。超可変ループという用語は、時に、「相補性決定領域(CDR)」という用語と互換的に使用される。超可変ループ(またはCDR)の長さは、抗体分子間で変動する。所与の哺乳動物由来のすべての抗体分子のフレームワーク領域は、高い一次配列類似性/コンセンサスを有する。フレームワーク領域のコンセンサスは、フレームワーク領域とフレームワーク領域間に散在する超可変ループ(またはCDR)の両方を識別するために当業者によって使用され得る。超可変ループには、ポリペプチド内のそれらの位置、およびそれらが生じるドメインを区別する識別名が与えられている。VLドメイン中のCDRは、L1、L2、およびL3と識別され、L1が最遠位端に存在し、L3がCLドメインの最も近くに存在する。CDRにもまた、CDR-L1(またはLCDR1)、CDR-L2(またはLCDR2)、およびCDR-L3(またはLCDR3)という名称が与えられ得る。L3(CDR-L3)は、一般的に、所与の生物によって産生されるすべての抗体分子間で最も変動性の高い領域である。CDRは、一次構造中に線形に配置され、フレームワーク領域によって互いに隔てられた、ポリペプチド鎖の領域である。VL鎖のアミノ末(N末)端は、FR1と命名される。FR2と識別される領域は、L1超可変ループとL2超可変ループとの間に存在する。FR3は、L2超可変ループとL3超可変ループとの間に存在し、FR4領域は、CLドメインに最も近い。この構造および命名法は、CDR-H1(またはHCDR1)、CDR-H2(またはHCDR2)、およびCDR-H3(またはHCDR3)と識別される3つのCDRを含むVH鎖に対して繰り返される。可変ドメインまたはFv断片(VHおよびVL)中のアミノ酸残基の大部分は、フレームワーク領域の一部(およそ85%)である。抗体分子の三次元構造または三次構造は、フレームワーク領域が分子のより内部にありかつこの構造の大部分を提供し、CDRが分子の外面上にあるようなものである。
【0143】
これらの領域の各々を構成する正確なアミノ酸を特定するために、いくつかの方法が開発されており、当業者によって使用され得る。これは、フレームワーク領域を構成する保存されたアミノ酸残基を特定し、それゆえ、長さが異なり得るがフレームワーク領域間に位置するCDRを特定する、いくつかの複数の配列アラインメント法およびアルゴリズムのいずれかを使用して行うことができる。抗体のCDRの特定のために、3つのよく使用される方法が開発されている:Kabat(T. T. Wu and E. A. Kabat, "AN ANALYSIS OF THE SEQUENCES OF THE VARIABLE REGIONS OF BENCE JONES PROTEINS AND MYELOMA LIGHT CHAINS AND THEIR IMPLICATIONS FOR ANTIBODY COMPLEMENTARITY," J Exp Med, vol. 132, no. 2, pp. 211-250, Aug. 1970に記載の通り);Chothia(C. Chothia et al., "Conformations of immunoglobulin hypervariable regions," Nature, vol. 342, no. 6252, pp. 877-883, Dec. 1989に記載の通り);およびIMGT(M.-P. Lefranc et al., "IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains," Developmental & Comparative Immunology, vol. 27, no. 1, pp. 55-77, Jan. 2003に記載の通り)。これらの方法は各々、可変領域を構成するアミノ酸残基の特定のための固有の付番システムを含む。ほとんどの抗体分子で、抗原のエピトープと実際に接触するアミノ酸残基は、CDR中に存在するが、いくつかの場合、フレームワーク領域内の残基が、抗原結合に寄与する。
【0144】
当業者は、抗体のパラトープを決定するために、いくつかの方法のいずれかを使用することができる。これらの方法は、以下を含む。
【0145】
1)抗体可変領域のアミノ酸配列の化学的性質およびエピトープの組成に基づく、抗体/エピトープ結合相互作用の三次構造のコンピューター予測。
【0146】
2)水素-重水素交換および質量分析。
【0147】
3)ポリペプチドの全長から複数の重複するペプチド断片を作製し、これらのペプチドのエピトープに対する結合親和性を評価する、ポリペプチド断片化およびペプチドマッピングアプローチ。
【0148】
4)哺乳動物の抗体Fab断片コード遺伝子がファージのコートに組み込まれるようにバクテリオファージによって発現される、抗体ファージディスプレイライブラリー分析。次いで、このFab発現ファージの集団が、固定化されているかまたは異なる外因性発現系によって発現され得る抗原と相互作用させられる。未結合のFab断片は、洗い流され、それにより、特異的に結合しているFab断片のみが抗原に付着したまま残る。結合しているFab断片は、容易に単離することができ、それらをコードする遺伝子を決定することができる。このアプローチは、必要に応じて、Fv断片または特定のVHおよびVLドメインを含むFab断片のより小さな領域に使用することもできる。
【0149】
ある特定の局面では、親和性成熟抗体が、その1つまたは複数のCDRにおける1つまたは複数の改変により増強され、それらの変化を保有しない親抗体と比較して標的抗原に対する抗体の親和性が改善される。ある特定の親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野において公知の手順によって産生され、例えば、Marks et al., Bio/Technology 10:779 (1992)は、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載しており、ファージディスプレイにおいて用いられるCDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発は、Rajpal et al., PNAS. 24: 8466-8471 (2005)およびThie et al., Methods Mol Biol. 525:309-22 (2009)によって記載されており、Tiller et al., Front. Immunol. 8:986 (2017)において実証されているような計算法と組み合わされる。
【0150】
キメラ免疫グロブリンは、異なる種に由来する融合遺伝子の産物である;「ヒト化」キメラは、一般的に、ヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域(FR)を有し、1つまたは複数のCDRは、非ヒト源由来のものである。
【0151】
ある特定の局面では、重鎖および/または軽鎖のある部分は、別の特定の種由来のまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する対応配列と同一または相同である一方で、鎖の残部は、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、および、所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片における対応配列と同一または相同である。米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851 (1984)。キメラ抗体に関する方法については、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1985)を参照されたく、それらは各々、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み入れられる。CDRグラフト化は、例えば、米国特許第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、および同第5,530,101号に記載されており、これらはすべて、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0152】
非ヒト種由来の抗体ポリペプチド配列を最小化することは、キメラ抗体の機能を最適化し、免疫原性を低減させ得る。非ヒト抗体の非抗原認識領域からの特定のアミノ酸残基は、ヒト抗体またはアイソタイプ中の対応残基と相同となるように改変される。一例は、抗体が、特定の種由来のまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する1つまたは複数のCDRを含む一方で、抗体鎖の残部が、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一または相同である、「CDRグラフト化」抗体である。ヒトにおいて使用するために、非ヒト免疫グロブリン由来の軽鎖と重鎖の両変動領域のCDR1、CDR2および部分的CDR3から構成されるV領域に、ヒト抗体フレームワーク領域がグラフト化され、ヒト抗体の天然に存在する抗原受容体が非ヒトCDRと置き換えられる。いくつかの場合では、対応する非ヒト残基が、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域残基と置き換わる。さらに、ヒト化抗体は、性能をさらに精緻化するために、レシピエント抗体またはドナー抗体に見られない残基を含み得る。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分も含み得る。例えば、Jones et al., Nature 321:522 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323 (1988); Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593 (1992); Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma and Immunol. 1:105 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23; 1035 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428 (1994); Verhoeyen et al., Science 239:1534-36 (1988)を参照されたい。
【0153】
イントラボディは、細胞外空間中の抗原に結合する分泌抗体とは対照的に、細胞内抗原に結合する細胞内に局在する免疫グロブリンである。
【0154】
ポリクローナル抗体調製物は、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む。ポリクローナル抗体を産生するために、ウサギまたはヤギなどの宿主を、一般的にアジュバントと共に、必要ならば担体にカップリングさせて、抗原または抗原断片で免疫化する。その後、抗原に対する抗体を宿主の血清から回収する。ポリクローナル抗体は、抗原に対して親和性精製することで、それを単一特異性にすることができる。
【0155】
モノクローナル抗体または「mAb」は、単独の親細胞由来の均一な抗体集団から得られる抗体のことを指し、例えば、該集団は、少量で存在し得る天然に存在する変異を除いて同一である。各モノクローナル抗体は、単一の抗原決定基に対して指向される。
【0156】
B. 機能的抗体断片および抗原結合断片
1. 抗原結合断片
ある特定の局面は、抗体断片、例えば、α3β1インテグリン、COL1A1、COL1A2または任意の他の腫瘍微小環境タンパク質に結合する抗体断片に関する。機能的抗体断片という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の抗原結合断片を含む。これらの断片は、様々な配置の可変領域重鎖(VH)および/または軽鎖(VL)から構成され;定常領域重鎖1(CHl)および軽鎖(CL)を含み得る。いくつかの局面では、これらは、重鎖2(CH2)および3(CH3)ドメインから構成されるFc領域を欠いている。抗原結合断片およびその改変の局面は、(i)VL、VH、CLおよびCHlドメインで構成されるFab断片タイプ;(ii)VHおよびCHlドメインで構成されるFd断片タイプ;(iii)VHおよびVLドメインで構成されるFv断片タイプ;(iv)単一のVHまたはVLドメインで構成される単一ドメイン断片タイプdAb(Ward, 1989;McCafferty et al., 1990;Holt et al., 2003);(v)単離された相補性決定領域(CDR)領域を含み得る。そのような用語は、例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, NY (1989); Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference (Myers, R. A. (ed.), New York: VCH Publisher, Inc.); Huston et al., Cell Biophysics, 22:189-224 (1993); Pluckthun and Skerra, Meth. Enzymol., 178:497-515 (1989)、およびDay, E. D., Advanced Immunochemistry, 2d ed., Wiley-Liss, Inc. New York, N.Y. (1990); Antibodies, 4:259-277 (2015)に記載されており、それらは各々、参照により組み入れられる。
【0157】
抗原結合断片はまた、軽鎖可変領域からの正確に1つ、2つ、もしくは3つ、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つ、または多くても1つ、2つ、もしくは3つの相補性決定領域(CDR)を保持する抗体の断片も含む。Fc領域(またはそのCH2もしくはCH3領域)へのCDR含有配列の融合は、例えば、本明細書に含まれるFc領域に直接的または間接的に融合されたscFvを含め、この定義の範囲内に含まれる。
【0158】
Fab断片(また「Fab」)という用語は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインを含有する抗体の一価抗原結合断片のことを意味する。Fab'断片という用語は、Fab断片よりも大きなモノクローナル抗体の一価抗原結合断片のことを意味する。例えば、Fab'断片は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインならびにヒンジ領域の全部または一部を含む。F(ab')2断片という用語は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab'断片を含むモノクローナル抗体の二価抗原結合断片のことを意味する。F(ab')2断片は、例えば、2つのVHおよびVLドメインの全部または一部を含み、2つのCLおよびCH1ドメインの全部または一部をさらに含むことができる。
【0159】
Fd断片という用語は、CDRを含む、VHの全部または一部を含むモノクローナル抗体の重鎖の断片のことを意味する。Fd断片は、CH1領域配列をさらに含むことができる。
【0160】
Fv断片という用語は、VLおよびVHの全部または一部を含み、CLおよびCH1ドメインが存在しない、モノクローナル抗体の一価抗原結合断片のことを意味する。VLおよびVHは、例えば、CDRを含む。単鎖抗体(sFvまたはscFv)は、VLおよびVH領域が可動性リンカーによって接続されて抗原結合断片を形成する単一のポリペプチド鎖を形成する、Fv分子である。単鎖抗体は、国際特許出願公開番号WO 88/01649ならびに米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号に詳細に考察されており、それらの開示は、参照により本明細書に組み入れられる。(scFv)2という用語は、ヒンジ領域によってsFvから隔てられたオリゴマー化ドメインをC末端に含む、二価または二重特異性sFvポリペプチド鎖のことを意味する(Pack et al. 1992)。オリゴマー化ドメインは、自己会合性a-ヘリックス、例えば、ロイシンジッパーを含み、これは、追加のジスルフィド結合によってさらに安定化され得る。(scFv)2断片は、「ミニ抗体」または「ミニボディ」としても知られている。
【0161】
単一ドメイン抗体は、VHまたはVLドメインのみを含有する抗原結合断片である。いくつかの場合、2つ以上のVH領域が、ペプチドリンカーで共有結合によりつながれて、二価ドメイン抗体が創出される。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じまたは異なる抗原を標的とし得る。
【0162】
2. 断片抗原結合領域、Fab
本開示のFabポリペプチドは、抗体のFab抗原結合断片を含む。特に具体的に記述しない限り、「Fab」という用語は、抗体のFc部分を除くポリペプチドに関する。Fabは、さらなる抗原結合ドメイン、共刺激ドメイン、リンカー、ペプチドスペーサー、膜貫通ドメイン、エンドドメインおよびアクセサリータンパク質などの他の構成要素を含むポリペプチドにコンジュゲートされ得る。Fabポリペプチドは、当技術分野において公知の従来技術を使用して作製することができ、文献に詳しく記載されている。
【0163】
3. 断片結晶化可能領域、Fc
Fc領域は、抗体のCH2およびCH3ドメインを含む2つの重鎖断片を含有する。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合によっておよびCH3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に保持される。「Fcポリペプチド」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体のFc領域に由来するポリペプチドの天然型およびムテイン型を含む。二量体化を促進するヒンジ領域を含有するそのようなポリペプチドの短縮型が含まれる。
【0164】
C. 抗体CDRを有するポリペプチド&CDRを提示する足場ドメイン
相補性決定領域(CDR)などの抗原結合ペプチド足場が、諸態様に従って、タンパク質結合分子を作製するために使用される。一般的に、当業者は、CDRの少なくとも1つをグラフト化するタンパク質足場の種類を決定することができる。足場は、最適には、良好な系統発生的保存;既知の三次元構造;小さなサイズ;転写後修飾がほとんどもしくは全くない;ならびに/または生産、発現および精製が容易であるなど、いくつかの基準を満たさなければならないことが知られている。Skerra, J Mol Recognit, 13:167-87 (2000)。
【0165】
タンパク質足場は、フィブロネクチンIII型FN3ドメイン(「モノボディ」としても知られている)、フィブロネクチンIII型ドメイン10、リポカリン、アンチカリン、黄色ブドウ球菌のプロテインAのZ-ドメイン、チオレドキシンA、または「アンキリンリピート」、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」および「テトラトリコペプチドリピート」などの反復モチーフを有するタンパク質から供給され得るが、それらに限定されない。そのようなタンパク質は、米国特許出願公開番号2010/0285564、同2006/0058510、同2006/0088908、同2005/0106660、およびPCT公開番号WO2006/056464に記載されており、それらは各々、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み入れられる。サソリ、昆虫、植物、軟体動物などの毒素に由来する足場、およびニューロンNO合成酵素のタンパク質阻害剤(PIN)も使用され得る。
【0166】
D. 抗体結合
「選択的結合物質」という用語は、抗原に結合する分子のことを指す。非限定例として、抗体、抗原結合断片、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2、単鎖抗体、ペプチド、ペプチド断片およびタンパク質が挙げられる。
【0167】
「結合」という用語は、例えば、塩橋および水架橋などの相互作用を含めた、共有結合性、静電性、疎水性およびイオン性ならびに/または水素結合相互作用による、2つの分子間の直接的な会合のことを指す。「免疫学的に反応性の」は、関心対象の選択的結合物質または抗体が、生体試料中に存在する抗原と結合することを意味する。「免疫複合体」という用語は、抗体または選択的結合物質が抗原上のエピトープに結合したときに形成される結合体のことを指す。
【0168】
1. 親和性/アビディティー
「親和性」という用語は、抗体または選択的結合物質がエピトープに結合する強度のことを指す。抗体結合反応では、これは、所定の抗体または選択的結合物質に関する親和性定数(Kaまたはka、時に会合定数と称される)として表される。親和性は、抗体のその抗原に対する結合強度を、無関係のアミノ酸配列に対する抗体の結合強度に対して比較したものとして測定される。親和性は、例えば、抗体のその抗原に対する結合能が、無関係のアミノ酸配列に対するものより20倍大きいと表すことができる。本明細書において使用される場合、「アビディティー」という用語は、希釈後の2つ以上の作用物質の複合体の解離に対する抵抗性のことを指す。「免疫反応性の」および「優先的に結合する」という用語は、抗体および/または選択的結合物質に関して、本明細書において互換的に使用される。
【0169】
所与の抗体または選択的結合物質のその抗原に対する結合親和性を評価するために当業者によって使用され得るいくつかの実験的方法がある。これは、一般的に、方程式KD=koff/kon=[A][B]/[AB]を使用して平衡解離定数(KDまたはKd)を測定することによって行われる。koffという用語は、抗体と抗原との単位時間当たりの解離速度であり、平衡時の未結合形態で溶液中に存在する抗体および抗原の濃度に関連する。konという用語は、抗体と抗原の単位時間当たりの会合速度であり、平衡時の結合した抗原-抗体複合体の濃度に関連する。KDを測定するために使用される単位は、mol/L(モル濃度またはM)、または濃度である。抗体のKaは、KDの反対であり、方程式Ka=1/KDによって決定される。KD値を決定するために使用できるいくつかの実験的方法の例は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、等温滴定カロリメトリー(ITC)、蛍光偏光測定法、表面プラズモン共鳴法(SPR)、および親和性キャピラリー電気泳動(ACE)である。抗体の親和性定数(Ka)は、KDの反対であり、方程式Ka=1/KDによって決定される。
【0170】
ある特定の態様において有用と考えられる抗体は、約106、107、108、109もしくは1010M、少なくとも約106、107、108、109もしくは1010M、または多くても約106、107、108、109もしくは1010M、またはその中の導出可能な任意の範囲の親和性定数(Ka)を有し得る。同様に、いくつかの態様では、抗体は、約10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M、少なくとも約10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M、または多くても約10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M、またはその中の導出可能な任意の範囲の解離定数を有し得る。これらの値は、本明細書において考察される抗体に対して報告され、同じアッセイを使用してそのような抗体の結合特性を評価してよい。本発明の抗体は、解離定数(KD)が≦10-8Mであるときに、その標的抗原に「特異的に結合する」と言われる。抗体は、KDが≦5×10-9Mであるとき「高い親和性」で、KDが≦5×10-10Mであるとき「非常に高い親和性」で、抗原に特異的に結合する。
【0171】
2. エピトープ特異性
抗原のエピトープは、抗体が結合親和性を有する抗原の特異的な領域である。タンパク質またはポリペプチド抗原の場合、エピトープは、抗体が高い親和性で結合する特異的な残基(または特殊なアミノ酸もしくはタンパク質セグメント)である。抗体は、必ずしもタンパク質内のすべての残基に接触するわけではない。また、タンパク質内の1つ1つのアミノ酸置換または欠失が、必ずしも結合親和性に影響を与えるわけでもない。本明細書および添付の特許請求の範囲の目的において、「エピトープ」および「抗原決定基」という用語は、互換的に使用され、B細胞および/またはT細胞が反応または認識する抗原上の部位のことを指す。ポリペプチドエピトープは、隣接したアミノ酸と、ポリペプチドの三次フォールディングによって並列された隣接しないアミノ酸の両方から形成され得る。エピトープは、典型的には、少なくとも3個、典型的には、5~10個のアミノ酸を、独特の空間的配置で含む。
【0172】
抗体のエピトープ特異性は、多様な方法で決定することができる。1つのアプローチは、例えば、タンパク質の全配列に広がっておりかつ少数のアミノ酸(例えば、3~30個のアミノ酸)単位で異なる、15個のアミノ酸の重複ペプチドの集合物を調べることを含む。ペプチドは、マイクロタイターディッシュの別々のウェル内に固定化される。固定化は、例えば、ペプチドの1つの末端をビオチン化することによって達成することができる。このプロセスは、エピトープに対する抗体親和性に影響を与え得るので、同じペプチドの異なる試料をN末端およびC末端でビオチン化し、比較のために別々のウェル内に固定化することができる。これは、末端特異的抗体を特定するのに有用である。任意で、関心対象の特定のアミノ酸で終わる追加のペプチドを含めることができる。このアプローチは、内部断片に対する末端特異的抗体を特定するのに有用である。抗体または抗原結合断片は、様々なペプチドそれぞれへの結合に関してスクリーニングされる。エピトープは、抗体が高い親和性結合を示す全てのペプチドに共通するアミノ酸のセグメントとして定義される。
【0173】
3. 抗体抗原結合ドメインの改変
本発明の抗体は、抗体ポリペプチド配列またはその断片と実質的に同一でありながらなお本発明のエピトープに結合するように改変され得ることが理解される。ポリペプチド配列は、デフォルトギャップウェイトを使用してClustal Omega、IGBLAST、GAPまたはBESTFITのようなプログラムを使用して最適にアラインされたとき、これらが、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、もしくは少なくとも99%の配列同一性またはその中の任意の範囲を共有する場合に、「実質的に同一」である。
【0174】
本明細書において考察されるように、抗体またはその抗原結合領域のアミノ酸配列における小規模な変動が、本発明に包含されることが想定されるが、ただし、そのアミノ酸配列における変動が、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を維持するという条件とする。特に、保存的アミノ酸置換が想定される。
【0175】
保存的置換は、それらの側鎖に関連するアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。遺伝的にコードされるアミノ酸は、一般的に、側鎖の化学的性質に基づいてファミリーに分類される;例えば、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。例えば、ロイシン部分とイソロイシンもしくはバリン部分との単独の置換、またはあるアミノ酸と同じファミリーの構造的に関連するアミノ酸との同様の置換が、とりわけフレームワーク部位内のアミノ酸を伴わない場合、この置換が、結果として生じる分子の結合または特性に大きな影響を与えないと予想することは合理的である。アミノ酸変化が機能的ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性をアッセイすることにより容易に決定することができる。当業者は、標準的なELISA、表面プラズモン共鳴法(SPR)または他の抗体結合アッセイを実施して、未改変抗体と当業者が利用可能ないくつかの方法のいずれかを通じて生成された保存的置換を有する任意のポリペプチド誘導体との間で抗原結合親和性の定量的比較を行うことができる。
【0176】
抗体または免疫グロブリン分子の断片または類似体は、当業者によって容易に調製され得る。断片または類似体の好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に存在する。構造的および機能的ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを、公的または民間の配列データベースと比較することによって特定することができる。好ましくは、コンピューター化された比較方法が、既知の構造および/または機能の他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予測タンパク質コンホメーションドメインを特定するために使用される。既知の三次元構造にフォールディングされるタンパク質配列を特定するための標準的な方法が、当業者に利用可能である;Dill and McCallum., Science 338:1042-1046 (2012)。タンパク質構造およびこれらをコードする遺伝子配列を予測するためのいくつかのアルゴリズムが開発されており、これらのアルゴリズムの多くは、National Center for Biotechnology Information(ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.gov/guide/proteins/)およびBioinformatics Resource Portal(ワールドワイドウェブ上のexpasy.org/proteomics)で確認することができる。したがって、前述の例は、当業者が、本発明に従って構造的および機能的ドメインを定義するために使用され得る配列モチーフおよび構造コンホメーションを認識できることを実証している。
【0177】
抗体に対して、例えば、1つまたは複数のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列に「逆変異」することによりフレームワーク改変を行って、免疫原性を減少させることができる。
【0178】
また、抗原結合ドメインは、同じ抗原(多価)または異なる抗原(多重特異性)のいずれかに結合するVH領域とVL領域の対を用いて抗原結合ドメインを多量体化することにより、多重特異性または多価であり得ることも想定される。
【0179】
E. 抗体の化学修飾
いくつかの局面では、グリコシル化部位の数および/または種類が親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して変化している、抗体のグリコシル化バリアントも想定される。ポリペプチドのグリコシル化は、例えば、抗原に対するポリペプチドの親和性が増加するようにポリペプチド配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位を修飾することによって、変化させることができる(米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号)。ある特定の態様では、抗体タンパク質バリアントは、天然抗体よりも多数または少数のN連結グリコシル化部位を含む。N連結グリコシル化部位は、配列:Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrを特徴とし、式中、Xと指定されたアミノ酸残基は、プロリンを除く任意のアミノ酸残基であり得る。この配列を創出するためのアミノ酸残基の置換は、N連結糖鎖の付加のための新たな潜在部位を提供する。あるいは、この配列を排除または変化させる置換は、天然ポリペプチド中に存在するN連結糖鎖の付加を阻止するだろう。例えば、グリコシル化は、Asnの欠失によってまたはAsnを異なるアミノ酸で置換することによって低減させることができる。他の態様では、1つまたは複数の新たなN連結グリコシル化部位が創出される。抗体は、典型的には、Fc領域中にN連結グリコシル化部位を有する。
【0180】
追加の抗体バリアントは、親または天然アミノ酸配列中の1つまたは複数のシステイン残基が欠失しているかまたは別のアミノ酸(例えば、セリン)で置換されている、システインバリアントを含む。システインバリアントは、とりわけ、抗体が生物学的に活性なコンホメーションにリフォールディングされなければならない場合に有用である。システインバリアントは、天然抗体よりも少ないシステイン残基を有し得、典型的には、不対システインから生じる相互作用を最小限に抑えるために偶数を有し得る。
【0181】
いくつかの局面では、ポリペプチドは、ポリペプチドをポリエチレングリコール(PEG)またはPEGの反応性のエステルもしくはアルデヒド誘導体と、1つまたは複数のPEG基がポリペプチドに付着するようになる条件下で反応させることによってペグ化して、生物学的半減期を増加させることができる。ポリペプチドペグ化は、反応性のPEG分子(または類似した反応性の水溶性ポリマー)を用いたアシル化反応またはアルキル化反応によって行われ得る。タンパク質をペグ化するための方法は、当技術分野において公知であり、抗体のPEG化誘導体を得るために本発明のポリペプチドに適用することができる。例えば、EP 0 154 316およびEP 0 401 384を参照されたい。いくつかの局面では、抗体は、トランスサイレチン(TTR)またはTTRバリアントにコンジュゲートされるかまたはそれ以外の方法で連結される。TTRまたはTTRバリアントは、例えば、デキストラン、ポリ(n-ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、およびポリビニルアルコールからなる群より選択される化学物質を用いて化学的に修飾することができる。本明細書において使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されているあらゆる形態のPEGを包含することが意図される。
【0182】
1. コンジュゲーション
本明細書に記載される抗体および抗原結合断片の誘導体も提供される。誘導体化抗体またはその断片は、抗体または断片に所望の特性を付与する任意の分子または物質を含み得る。誘導体化抗体は、例えば、検出可能(または標識)部分(例えば、放射性、発色性、抗原性もしくは酵素分子、または検出可能ビーズ)、別の分子に結合する分子(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン)、治療用または診断用部分(例えば、放射性、細胞傷害性、または薬学的に活性な部分)、あるいは特定の用途(例えば、対象、例えばヒト対象への投与、または他のインビボもしくはインビトロ用途)への抗体の適合性を高める分子を含むことができる。
【0183】
任意で、抗体または抗体の免疫学的部分を、他のタンパク質に化学的にコンジュゲートさせるか、または他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることができる。いくつかの局面では、ポリペプチドをヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質にコンジュゲートまたは融合することによってポリペプチドを化学的に修飾して、結果として生じる分子の半減期を増加させてよい。例えば、EP 0322094およびEP 0 486 525を参照されたい。いくつかの局面では、ポリペプチドを、診断用物質にコンジュゲートさせ、診断に使用して、例えば、疾患の発生または進行をモニタリングし、所与の処置レジメンの有効性を判定してよい。いくつかの局面では、また、ポリペプチドを、治療用物質にコンジュゲートさせ、ポリペプチドの治療効果を組み合わせた治療を提供してもよい。追加の好適なコンジュゲート分子として、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、アンチセンス核酸、siRNA分子などの阻害性RNA分子、免疫刺激性核酸、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、および外部ガイド配列が挙げられる。それらの機能的核酸分子は、標的分子が保有する特異的活性のエフェクター、阻害剤、モジュレーターおよび刺激剤として作用し得るか、または、機能的核酸分子は、任意の他の分子に依存しないデノボ活性を保有し得る。
【0184】
いくつかの局面では、抗体コンジュゲートまたはペイロードを形成するために少なくとも1つの作用物質に連結される抗体および抗体様分子が開示される。抗体分子の診断用または治療用物質としての有効性を高めるために、少なくとも1つの所望の分子または部分を連結するまたは共有結合するまたは複合体化することが慣例である。そのような分子または部分は、少なくとも1つのエフェクター分子またはレポーター分子であり得るが、それらに限定されない。エフェクター分子は、所望の活性、例えば、細胞傷害活性を有する分子を含む。エフェクター分子の非限定例には、毒素、治療酵素、抗生物質、放射性標識ヌクレオチドなどが含まれる。これに対して、レポーター分子は、アッセイを使用して検出され得る任意の部分として定義される。抗体にコンジュゲートされているレポーター分子の非限定例には、酵素、放射性標識、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、クロモフォア、発光分子、光親和性分子、有色粒子、またはリガンドが含まれる。
【0185】
a. コンジュゲートの種類
抗体コンジュゲートのある特定の例は、抗体が検出可能な標識に連結されているコンジュゲートである。「検出可能な標識」は、それらの特定の機能的特性および/または化学的特性に起因して検出することができる化合物および/または要素であり、その使用により、抗体を検出することが可能であり、かつ/または所望であればさらに定量することも可能である。検出可能な標識の例には、放射性同位体、蛍光剤、半導体ナノ結晶、化学発光剤、クロモフォア、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン、ストレプトアビジンまたはハプテン)などが含まれるが、それらに限定されない。標識の特定の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセイン、FITC、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、ジメチルアクリジニウムエステル(DMAE)、テキサスレッド、ルミノール、NADPHおよびα-またはβ-ガラクトシダーゼであるが、それらに限定されない。抗体コンジュゲートは、主にインビトロ使用を意図したものを含み、この場合、抗体は、発色基質と接触すると着色産物が生成するように二次結合リガンドおよび/または酵素に連結される。好適な酵素の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(ホースラディッシュ)ハイドロジェンペルオキシダーゼ、またはグルコースオキシダーゼが含まれるが、それらに限定されない。好ましい二次結合リガンドは、ビオチンおよび/またはアビジンならびにストレプトアビジン化合物である。そのような標識の使用は、当業者に周知であり、例えば、米国特許3,817,837;同3,850,752;同3,939,350;同3,996,345;同4,277,437;同4,275,149および同4,366,241に記載されており;各々、参照により本明細書に組み入れられる。また、アジド基を含有する分子を使用して、低強度紫外線によって生成される反応性のナイトレン中間体を通じてタンパク質と共有結合を形成してもよい(Potter & Haley, 1983)。
【0186】
いくつかの局面では、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素活性毒素またはその断片)または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)などの細胞傷害剤にコンジュゲートされた抗体またはその抗原結合断片を含む免疫コンジュゲートが想定される。このようにして、関心対象の作用物質を、細胞表面抗原を有する細胞に直接標的指向することができる。抗体と作用物質は、非共有相互作用を通じて、例えば静電力を通じて、または共有結合によって会合され得る。当技術分野において公知の様々なリンカーを、免疫コンジュゲートを形成するために用いることができる。さらに加えて、免疫コンジュゲートは、融合タンパク質の形態で提供することができる。一局面では、抗体は、細胞表面抗原を標的指向するために様々な治療用物質にコンジュゲートされ得る。コンジュゲートされる作用物質の例には、金属キレート錯体、薬物、毒素、ならびに他のエフェクター分子、例えば、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、イムノモジュレーター、放射線増感剤、アスパラギナーゼ、カルボランおよび放射性ハロゲンが含まれるが、それらに限定されない。
【0187】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)では、抗体(Ab)は、リンカー(L)を通じて1つまたは複数の薬物部分(D)にコンジュゲートされる。ADCは、以下を含む、当業者に公知の有機化学反応、条件および試薬を用いたいくつかの経路によって調製され得る:(1)抗体の求核基と二価リンカー試薬とを反応させて、共有結合を介してAb-Lを形成し、続いて、薬物部分Dと反応させること;および(2)薬物部分の求核基と二価リンカー試薬とを反応させて、共有結合を介してD-Lを形成し、続いて、抗体の求核基と反応させること。抗体薬物コンジュゲートはまた、リンカー試薬または薬物上の求核置換基と反応できる求電子部分を導入する抗体の改変によって生産してもよい。あるいは、抗体および細胞傷害剤を含む融合タンパク質を、例えば、組換え技法またはペプチド合成によって製造してもよい。DNAの長さは、互いに隣接しているかまたはコンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域によって分離された、コンジュゲートの2つの部分をコードするそれぞれの領域を含み得る。さらに別の局面では、腫瘍またはがん細胞プレターゲティングで利用するために、抗体を「受容体」(ストレプトアビジンなど)にコンジュゲートさせてよく、ここで、抗体-受容体コンジュゲートが、患者に投与され、続いて、クリアランス剤(clearing agent)を使用して未結合コンジュゲートが血液循環から除去され、次いで、細胞傷害剤(例えば、放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートされた「リガンド」(例えば、アビジン)が投与される。
【0188】
当業者に公知の抗体-薬物コンジュゲートの例は、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤、すなわち、がんの治療において腫瘍細胞を殺傷または抑制するための薬物の、局所送達に有用なプロドラッグである(Syrigos and Epenetos, Anticancer Res. 19:605-614 (1999); Niculescu-Duvaz and Springer, Adv. Drg. Del. Rev. 26:151-172 (1997); 米国特許第4,975,278号)。これに対して、それらの未コンジュゲート薬物の全身投与は、正常細胞にも標的腫瘍細胞にも許容できないレベルの毒性をもたらし得る(Baldwin et al., Lancet 1:603-5 (1986);Thorpe, (1985) "Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy: A Review," In: Monoclonal Antibodies '84: Biological and Clinical Applications, A. Pincera et al., (eds.) pp. 475-506)。ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体は共に、これらの戦略において有用であると報告されている(Rowland et al., Cancer Immunol. Immunother. 21:183-87 (1986))。
【0189】
ある特定の局面では、ADCは、抗体ポリペプチドのN末端またはC末端に融合された異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現などによる、抗体またはその抗原結合断片と他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合または凝集コンジュゲートを含む。例えば、コンジュゲートされるペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド、例えば、酵母アルファ因子リーダー、またはエピトープタグ(例えば、V5-His)などのペプチドであり得る。抗体含有融合タンパク質は、抗体の精製または特定を容易にするために付加されたペプチド(例えば、ポリ-His)を含み得る。抗体ポリペプチドはまた、Hopp et al., Bio/Technology 6:1204 (1988)、および米国特許第5,011,912号に記載されているように、FLAG(登録商標)(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo.)ペプチドに連結させることもできる。1つまたは複数の抗体ポリペプチドを含有するオリゴマーがアンタゴニストとして用いられ得る。オリゴマーは、共有結合で連結されたまたは非共有結合で連結された二量体、三量体、またはより高次のオリゴマーの形態であり得る。2つ以上の抗体ポリペプチドを含むオリゴマーが使用に想定される。他のオリゴマーには、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体などが含まれる。ある特定の局面では、オリゴマーは、抗体ポリペプチドに融合されたペプチド部分間で共有または非共有相互作用を介してつながれた複数の抗体ポリペプチドを含む。そのようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促進する特性を有するペプチドであり得る。以下により詳しく説明するように、抗体に由来するロイシンジッパーおよびある特定のポリペプチドは、付着した抗体ポリペプチドのオリゴマー化を促進できるペプチドの1つである。
【0190】
b. コンジュゲーション方法論
抗体をそのコンジュゲート部分に付着またはコンジュゲーションするのためのいくつかの方法が当技術分野において公知である。いくつかの付着法は、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;および/または抗体に付着されたテトラクロロ-3-6-ジフェニルグリコウリル-3(米国特許第4,472,509号および同第4,938,948号、各々、参照により本明細書に組み入れられる)のような有機キレート剤を用いる、金属キレート錯体の使用を伴う。また、モノクローナル抗体を、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下で酵素と反応させてもよい。コンジュゲートはまた、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ボス(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トルエン2,6-ジイソシアナートなど)、およびビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)を使用して製造してもよい。いくつかの局面では、抗体結合部位を変化させない反応条件を使用して免疫グロブリンのFc領域にスルフヒドリル基を選択的に導入することによる、免疫グロブリンの誘導体化が想定される。この方法論に従って生産される抗体コンジュゲートは、改善された寿命、特異性および感受性を示すことが開示されている(米国特許第5,196,066号、参照により本明細書に組み入れられる)。また、レポーターまたはエフェクター分子がFc領域中の糖残基にコンジュゲートされる、エフェクターまたはレポーター分子の部位特異的付着が文献に開示されている(O'Shannessy et al., 1987)。
【0191】
VI. 阻害性オリゴヌクレオチド
いくつかの局面では、本開示は、腫瘍微小環境中のタンパク質、例えばインテグリンタンパク質またはコラーゲンタンパク質の遺伝子発現を阻害する阻害性オリゴヌクレオチドに関する。いくつかの局面では、本開示の阻害性オリゴヌクレオチドは、α3β1インテグリンの発現を阻害する。いくつかの局面では、本開示の阻害性オリゴヌクレオチドは、アルファ-1 I型コラーゲン(COL1A1)の発現を阻害する。いくつかの局面では、本開示の阻害性オリゴヌクレオチドは、アルファ-2 I型コラーゲン(COL1A2)の発現を阻害する。阻害性オリゴヌクレオチドの例には、siRNA(低分子干渉RNA)、小ヘアピンRNA(shRNA)、二本鎖RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、およびそれらのいずれかをコードするオリゴヌクレオチドが含まれるが、それらに限定されない。阻害性オリゴヌクレオチドは、遺伝子の転写を阻害するか、または細胞における遺伝子転写物の翻訳を阻止し得る。阻害性オリゴヌクレオチド酸は、16~1000ヌクレオチド長、ある特定の態様では、18~100ヌクレオチド長であり得る。オリゴヌクレオチドは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、もしくは90個、多くても2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、もしくは90個、または厳密に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、もしくは90個(またはその中の導出可能な任意の範囲)のヌクレオチドを有し得る。オリゴヌクレオチドは、阻害性RNAをコードするDNA、RNAまたはcDNAであり得る。
【0192】
本明細書において使用される場合、「単離された」は、ヒトの介入を通じて天然の状態から変えられたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在するsiRNAは「単離されて」いないが、合成siRNA、またはその天然状態の共存物質から部分的にもしくは完全に分離されたsiRNAは「単離されて」いる。単離されたsiRNAは、実質的に精製された形態で存在することができるか、または、例えば、siRNAが送達された細胞のように、非天然環境で存在することができる。
【0193】
阻害性オリゴヌクレオチドは、当技術分野において周知である。例えば、siRNAおよび二本鎖RNAは、米国特許6,506,559および同6,573,099、ならびに米国特許公報2003/0051263、同2003/0055020、同2004/0265839、同2002/0168707、同2003/0159161、および同2004/0064842に記載されており、それらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0194】
特に、阻害性オリゴヌクレオチドは、α3β1インテグリン、COL1A1、COL1A2または他の腫瘍微小環境タンパク質の発現を、少なくとも10%、20%、30%もしくは40%、より特定すると、少なくとも50%、60%もしくは70%、最も特定すると、少なくとも75%、80%、90%、95%、99%もしくは100%以上または前述の間の任意の範囲もしくは値減少させることが可能であり得る。
【0195】
さらなる態様では、α3β1インテグリン、COL1A1および/またはCOL1A2阻害剤である合成オリゴヌクレオチドがある。阻害剤は、17~25ヌクレオチド長であり得、成熟α3β1インテグリン、COL1A1および/またはCOL1A2 mRNAの5'から3'配列に対して少なくとも90%相補的である5'から3'配列を含む。ある特定の態様では、阻害剤分子は、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25ヌクレオチド長、またはその中の導出可能な任意の範囲である。さらに、阻害剤分子は、成熟[POI]mRNA、特に、成熟した天然に存在するmRNAの5'から3'配列に対して90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9もしくは100%相補的であるかまたは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9もしくは100%相補的である、またはその中の導出可能な任意の範囲で相補的である配列(5'から3')を有する。当業者は、mRNA阻害剤に対する配列として成熟mRNAの配列に相補的であるプローブ配列の一部分を使用することができる。さらに、プローブ配列のその部分を、それが成熟mRNAの配列に対してなお90%相補的であるように変化させることができる。
【0196】
いくつかの態様では、阻害性オリゴヌクレオチドは、類似体であり、そして、修飾、特に、ヌクレアーゼ耐性を高める、結合親和性を向上させる、かつ/または結合特異性を向上させる修飾を含み得る。例えば、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの糖部分が炭素環式部分によって置換されると、それはもはや糖ではない。さらに、他の置換、例えば、糖鎖間ホスホジエステル連結に対する置換がなされたとき、結果として生じた物質はもはや本来の種ではない。そのような化合物はすべて、類似体と見なされる。本明細書全体を通して、核酸種の糖部分についての言及は、本来の糖または野生型核酸の糖に構造的に取って代わる種のいずれかのことを指すと理解されるものとする。さらに、糖鎖間連結についての言及は、糖または糖類似体部分を野生型核酸の様式でつなぐ働きをする部分を含むと解されるものとする。
【0197】
本開示は、修飾オリゴヌクレオチド、すなわち、オリゴヌクレオチド類似体またはオリゴヌクレオシド、およびその修飾を達成するための方法に関する。これらの修飾オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド類似体は、天然に存在する相対物と比べて増加した化学および/または酵素安定性を示し得る。細胞外および細胞内ヌクレアーゼは、一般的に、骨格修飾された化合物を認識せず、それゆえ、該化合物に結合しない。プロトン化された酸形態として存在する場合、負に荷電した骨格の欠如は、細胞透過を容易にし得る。
【0198】
修飾されたヌクレオシド間連結は、得られた化合物にヌクレアーゼ耐性および増強された細胞内取り込みを付与するために天然に存在するホスホジエステル-5'-メチレン連結を4個の原子連結基で置き換えることを意図している。
【0199】
修飾は、手動で操作されてもまたはDNAシンセサイザー分野の当業者によく知られている方法論を使用してDNAシンセサイザーと併用されてもよい固体支持体を使用して達成され得る。一般的に、その手順は、選択された配列において互いに隣接している2つのヌクレオシドの糖部分を官能化することを含む。5'から3'の方向で、構造Hなどの「上流」シントンは、その末端3'部位で修飾され、一方、構造H1などの「下流」シントンは、その末端5'部位で修飾される。
【0200】
ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(hydroxylarnines)および他の連結基によって連結されたオリゴヌクレオシドを、ジメトキシトリチル基によって5'-ヒドロキシルで保護して、カップリングのためにシアノエチルジイソプロピル-亜リン酸部分を用いて3'-ヒドロキシルで活性化することができる。これらの化合物を、標準的な固相自動化DNA合成技法によって、任意の所望の配列に挿入することができる。最もよく知られたプロセスの1つは、ホスホロアミダイト技法である。均一の骨格連結を含有するオリゴヌクレオチドは、CPG固体支持体とApplied Biosystems Inc. 380Bおよび394ならびにMilligen/Biosearch 7500および8800sなどの標準的な核酸合成装置を使用することによって合成することができる。最初のヌクレオチド(3'末端の1番目)が制御多孔性ガラスなどの固体支持体に付着される。配列特異的な順序で、それぞれの新たなヌクレオチドが手動操作または自動化シンセサイザーシステムのいずれかによって付着される。
【0201】
遊離アミノ基を、例えば、酢酸中、アセトンおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウムでアルキル化することができる。アルキル化工程は、他の有用な機能的分子を巨大分子上へ導入するために使用することができる。そのような有用な機能的分子には、レポーター分子、RNA切断基、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を向上させるための基、およびオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を向上させるための基が含まれるが、それらに限定されない。そのような分子を、骨格連結内の窒素原子への付着を介して巨大分子に付着またはコンジュゲートさせることができる。あるいは、そのような分子を、1つまたは複数のヌクレオチドの糖部分のヒドロキシル基から伸長しているペンダント基に付着させることができる。そのような他の有用な官能基の例は、参照により本明細書に組み入れられるWO1993007883よっておよび上で参照した特許出願の他のものにおいて提供される。
【0202】
固体支持体は、制御多孔性ガラス(CPG)、オキサリル制御多孔性ガラス、TentaGel Support(アミノポリエチレングリコール誘導体化支持体)またはPoros(ポリスチレン/ジビニルベンゼンの共重合体)を含め、ポリヌクレオチド合成のための当技術分野において公知の固体支持体のいずれかを含み得る。ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの付着および切断は、標準的な手順を介して達成することができる。本明細書において使用される場合、固体支持体という用語はさらに、成長中のオリゴヌクレオシドをCPGなどの固定相に結合させるために使用される任意のリンカー(例えば、長鎖アルキルアミンおよびスクシニル残基)を含む。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはさらに、1つまたは複数のロックドヌクレオチド、エチレン架橋ヌクレオチド、ペプチド核酸、または5'(E)-ビニルホスホン酸(VP)修飾を有すると定義され得る。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のホスホロチオエート化DNAまたはRNA塩基を有する。
【0203】
VII. 治療用併用物の投与
本明細書に提供される療法は、第1のがん療法(例えば、α3β1インテグリンとα1ホモ三量体I型コラーゲンとの間の相互作用を破壊する作用物質)と第2のがん療法(例えば、免疫療法)などの、治療用物質の併用物の投与を含み得る。療法は、当技術分野において公知の任意の好適な様式で施され得る。例えば、第1および第2のがん処置は、逐次的に(異なる時間に)または並行して(同じ時間に)施され得る。いくつかの態様では、第1および第2のがん処置は、別々の組成物で投与される。いくつかの態様では、第1および第2のがん処置は、同じ組成物内にある。
【0204】
いくつかの態様では、第1のがん療法と第2のがん療法は、実質的に同時に施される。いくつかの態様では、第1のがん療法と第2のがん療法は、逐次的に施される。いくつかの態様では、第1のがん療法、第2のがん療法および第3のがん療法(例えば、化学療法)が逐次的に施される。いくつかの態様では、第1のがん療法は、第2のがん療法を施する前に施される。いくつかの態様では、第1のがん療法は、第2のがん療法を施した後に施される。
【0205】
本開示の態様は、治療用組成物を含む組成物および方法に関する。異なる療法が、1つの組成物で、または2つ以上の組成物、例えば2つの組成物、3つの組成物もしくは4つの組成物で投与され得る。作用物質の様々な併用物が用いられ得る。
【0206】
本開示の治療用物質は、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの態様では、がん療法は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植によって、吸入によって、髄腔内、脳室内、または鼻腔内に施される。いくつかの態様では、抗生物質は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植によって、吸入によって、髄腔内、脳室内、または鼻腔内に投与される。適切な投与量は、処置される疾患の種類、疾患の重症度および経過、個体の臨床状態、個体の病歴および処置に対する応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定され得る。
【0207】
処置は、様々な「単位用量」を含み得る。単位用量は、所定量の治療用組成物を含有すると定義される。投与されるべき量、ならびに具体的な経路および処方は、臨床分野の当業者の判断技能の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はなく、一定期間にわたる持続注入を含み得る。いくつかの態様では、単位用量は、単回投与可能な用量を含む。
【0208】
処置の回数および単位用量の両方に応じて、投与されるべき量は、求められる治療効果に左右される。有効用量は、特定の効果を達成するのに必要な量のことを指すものと理解される。実施に際して、ある特定の態様では、10mg/kg~200mg/kgの範囲の用量は、これらの作用物質の防御能に影響を及ぼし得ることが想定される。したがって、用量は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/kg、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000mg/kg、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/日、または約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000mg/日の用量、またはその中の導出可能な任意の範囲の用量を含むことが想定される。さらに、そのような用量は、1日の間に複数回、および/または複数の日、週もしくは月に投与することができる。
【0209】
ある特定の態様では、薬学的組成物の有効用量は、約1μM~150μMの血中レベルを提供できるものである。別の態様では、有効用量は、約4μM~100μM;または約1μM~100μM;または約1μM~50μM;または約1μM~40μM;または約1μM~30μM;または約1μM~20μM;または約1μM~10μM;または約10μM~150μM;または約10μM~100μM;または約10μM~50μM;または約25μM~150μM;または約25μM~100μM;または約25μM~50μM;または約50μM~150μM;または約50μM~100μM(またはその中の導出可能な任意の範囲)の血中レベルを提供する。他の態様では、用量は、対象に投与されている治療用物質から生じる以下の作用物質血中レベルを提供できる:約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、または多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、またはその中の導出可能な任意の範囲。ある特定の態様では、対象に投与される治療用物質は、体内で代謝されて代謝された治療用物質になり、その場合、血中レベルがその作用物質の量を指し得る。あるいは、治療用物質が対象により代謝されない範囲では、本明細書において考察される血中レベルは、代謝されていない治療用物質を指し得る。
【0210】
治療用組成物の正確な量はまた、施術者の判断に左右され、各個体に特有のものである。用量に影響を及ぼす要因には、患者の身体的および臨床的状態、投与の経路、処置の意図する目標(症状の緩和対治癒)、ならびに対象が受け得る特定の治療用物質または他の療法の効力、安定性および毒性が含まれる。
【0211】
μg/kgまたはmg/kg(体重)の投与量単位は、4μM~100μMなどのμg/mlまたはmM(血中レベル)の比較可能な濃度単位に変換でき、表現できることが、当業者によって理解され、認識されよう。また、取り込みが、種および臓器/組織に依存的であることも理解される。取り込みおよび濃度測定に関する適用可能な変換係数およびなされる生理学的仮定は、周知であり、それにより、当業者は、1つの濃度測定値を別のものに変換すること、そして、本明細書に記載される用量、有効性および結果に関して妥当な比較を行いかつ結論を出すことが可能となろう。
【0212】
ある特定の場合、組成物の複数回投与、例えば、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の投与を有することが望ましい。投与は、1、2、3、4、5、6、7、8から5、6、7、8、9、10、11または12週間間隔(その間のすべての範囲を含む)であることができる。
【0213】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与されたときに、有害、アレルギーまたは他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物のことを指す。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質に対するそのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。従来の媒体または作用物質が有効成分と不適合である場合を除いて、免疫原性および治療用組成物におけるその使用が想定される。また、他の抗感染剤およびワクチンなどの補足有効成分を組成物に組み込むこともできる。
【0214】
活性化合物は、非経口投与用に製剤化することができ、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内経路を介した注射用に製剤化することができる。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製することができ;また、注射前に液体の添加によって溶液または懸濁液を調製する使用に適した固体形態を調製することもでき;そして、その調製物は、乳化することもできる。
【0215】
注射使用に適した薬学的形態には、無菌の水溶液または分散液、例えば、水性プロピレングリコールを含む製剤;および無菌の注射液または分散液の即時調製用の無菌粉末が含まれる。すべての場合に、その形態は、無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性でなければならない。それはまた、製造および保管の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0216】
タンパク質性組成物は、中性または塩の形態に製剤化され得る。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が含まれる。また、遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から誘導することができる。
【0217】
薬学的組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物および植物油を含有する、溶媒または分散媒を含むことができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の阻止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の吸収延長は、組成物中に、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することよって達成することができる。
【0218】
無菌注射液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて、上に挙げた様々な他の成分と共に組み入れ、続いて、濾過滅菌または同等の手順を行うことによって調製される。一般的に、分散剤は、基本的な分散媒と上に挙げたものから必要とされる他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に、様々な滅菌有効成分を組み入れることによって調製される。無菌注射液の調製用の無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過したその溶液から任意の追加の望ましい成分を加えた有効成分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0219】
組成物の投与は、典型的には、任意の一般的な経路を介する。これには、経口投与または静脈内投与が含まれるが、それらに限定されない。あるいは、投与は、同所、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、または鼻腔内投与によるものであり得る。そのような組成物は、通常、生理学的に許容される担体、緩衝液または他の賦形剤を含む薬学的に許容される組成物として投与される。
【0220】
製剤化したら、液剤は、投薬製剤に適合した様式で、かつ、治療上または予防上有効であるような量で投与される。製剤は、上述したタイプの注射液など、種々の剤形で容易に投与される。
【0221】
VIII. キット
本開示のある特定の局面はまた、本開示の組成物または本明細書に開示される方法を実践するための組成物を含有するキットに関する。いくつかの態様では、キットは、1つまたは複数のバイオマーカーを評価するために使用することができる。いくつかの態様では、キットは、マイクロバイオーム試料(例えば、腸内マイクロバイオーム、腫瘍マイクロバイオーム)からの1つまたは複数の細菌型(例えば、種、属など)を検出するために使用することができる。ある特定の態様では、キットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000個もしくはそれ以上、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000個もしくはそれ以上、または多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000個もしくはそれ以上、またはその中の任意の導出可能な値もしくは範囲および組み合わせのプローブ、プライマーまたはプライマーセット、合成分子または阻害剤を含有する。いくつかの態様では、細胞におけるバイオマーカー活性を評価するためのキットがある。
【0222】
キットは、チューブ、ボトル、バイアル、シリンジまたは他の好適な容器手段などの容器に個々にパッケージングまたは収納され得る構成要素を含み得る。
【0223】
個々の構成要素は、濃縮された量でキット中に提供されてもよく;いくつかの態様では、構成要素は、他の構成要素との溶液中にあるのと同じ濃度で個々に提供される。構成要素の濃度は、1×、2×、5×、10×、または20×またはそれ以上で提供され得る。
【0224】
本開示のプローブ、合成核酸、非合成核酸および/または阻害剤を予後判定または診断用途に使用するためのキットは、本開示の一部として含まれる。具体的に想定されるものは、本明細書において特定される任意のバイオマーカーに相当する任意のそのような分子であり、それには、バイオマーカーの全部または一部と同一であるまたは相補的な核酸プライマー/プライマーセットおよびプローブが含まれ、これらは、バイオマーカーの非コード配列、ならびにバイオマーカーのコード配列を含み得る。
【0225】
ある特定の局面では、陰性および/または陽性対照の核酸、プローブおよび阻害剤が、いくつかのキット態様に含まれる。
【0226】
名前で特定のバイオマーカーを含む本開示の任意の態様は、その特定の核酸の成熟配列と配列が少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%同一であるバイオマーカーを含む態様も包含することが想定される。
【0227】
IX. 細胞
A. 細胞培養
いくつかの態様では、細胞は、少なくとも約10日~約40日間、少なくとも約15日~約35日間、少なくとも約15日~21日間、例えば、少なくとも約15、16、17、18、19または21日間培養され得る。いくつかの態様では、本開示の細胞は、長くても60日間、または長くても50日間、または長くても45日間培養され得る。細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40日間培養され得る。細胞は、液体培養培地の存在下で培養され得る。典型的には、培地は、当技術分野において公知であるような基礎培地配合物を含み得る。イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、アルファ改変最小必須培地(アルファ-MEM)、基礎必須培地(BME)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、BGJb培地、F-12栄養混合物(Ham)、リーボビッツ(Liebovitz)L-15、DMEM/F-12、必須改変イーグル培地(EMEM)、RPMI-1640、ならびにそれらの改変物および/または併用物を含むがそれらに限定されない多くの基礎培地配合物を、本明細書において細胞を培養するために使用できる。上記基礎培地の組成は、一般的に、当技術分野において公知であり、細胞を培養するために必要な場合に、培地および/または培地添加物の濃度を改変または調整することは当業者の技能の範囲内である。いくつかの態様では、培養培地配合物は、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/ml ペニシリンG、100μg/ml ストレプトマイシンおよび2mmol/L L-グルタミンを補充したIMDMから構成される外植片培地(explants medium)(CEM)であり得る。他の態様は、上記のものから選択されるようなさらなる基礎培地配合物を採用し得る。
【0228】
細胞を培養するためにインビトロで細胞を支援可能な任意の培地を使用してよい。細胞の成長を支援できる培地配合物には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、アルファ改変最小必須培地(αMEM)、およびRoswell Park Memorial Institute Media 1640(RPMI Media 1640)などが含まれるが、それらに限定されない。典型的には、細胞の成長を支援するために、最大20%のウシ胎児血清(FBS)または1~20%のウマ血清が上記培地に加えられる。しかしながら、細胞を培養するために必要な成長因子、サイトカインおよびホルモンが培地中に適切な濃度で提供されるのであれば、既知の培地を使用してもよい。本開示の方法において有用な培地は、細胞の培養に有用な抗生物質、細胞分裂促進化合物または分化化合物を含むがそれらに限定されない関心対象の1つまたは複数の化合物を含み得る。細胞は、27℃~40℃、例えば、31℃~37℃の温度で成長させてよく、加湿インキュベーター内でもよい。二酸化炭素含有量を2%~10%に維持してよく、酸素含有量を1%~22%に維持してよい。しかしながら、本開示は、決して、細胞を単離かつ培養するいずれか1つの方法に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、細胞を単離かつ培養するあらゆる方法が、本開示に含まれるものと解釈されるべきである。
【0229】
細胞培養で使用するために、培地に、1つまたは複数のさらなる構成要素を供給することができる。例えば、最適な成長および増大に必要な微量元素および物質を細胞に供給するために、追加のサプリメントを使用することができる。そのようなサプリメントには、インスリン、トランスフェリン、セレニウム塩およびそれらの組み合わせが含まれる。これらの構成要素は、例えば、限定されないがハンクス平衡塩溶液(HBSS)、アール塩溶液などの塩溶液に含めることができる。さらに、抗酸化サプリメント、例えば、β-メルカプトエタノールを加えてもよい。多くの培地はすでにアミノ酸を含有しているが、一部のアミノ酸、例えば、溶液中ではより不安定であることが知られているL-グルタミンは、後に補充されてもよい。培地にはさらに、抗生物質および/もしくは抗真菌化合物、例えば、典型的には、ペニシリンとストレプトマイシンの混合物、ならびに/または、限定されないがアンホテリシン、アンピシリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ナリジクス酸、ネオマイシン、ナイスタチン、パロモマイシン、ポリミキシン、ピューロマイシン、リファンピシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、タイロシンおよびゼオシンに例示される他の化合物が供給されてよい。また、細胞培養培地への哺乳動物の血漿または血清の補充も想定される。血漿または血清は、しばしば、生存能力および増大に必要な細胞因子および構成要素を含有する。また、好適な血清代替物の使用も想定される。
【0230】
特定の緩衝液、培地、試薬、細胞、培養条件など、またはそれらのいくつかのサブクラスについての言及は、限定を意図しているわけではなく、その考察が提示される特定の文脈において関心または価値があると当業者が認識するそのような関連材料のすべてを含むと解されるべきである。例えば、異なる公知の方法を使用して、示唆された方法、材料または組成物の使用が目指す目的と同じ目的が達成されるように、しばしば、1つの緩衝系または培養培地を別のものに置換することが可能である。特定の態様では、細胞は、細胞培養培地を、好ましくは培養容器中に含む、特に、非特異的または特異的なリプログラミングにおいて細胞をインビトロ成熟および/または誘導から保護するのに好適かつそのために求められる物質が補充された細胞培養培地を含む、細胞培養系で培養される。
【0231】
B. 細胞の生成
本開示のある特定の方法は、ヒト組織試料から得られた細胞を培養することに関する。本開示の特定の態様では、細胞は、細胞の接着を可能にする基板上にプレーティングされる。これは、例えば、細胞を、細胞接着に適した1つまたは複数の基板面が並ぶ培養プレートにプレーティングすることによって行われ得る。1つまたは複数の基板面が、培養系に導入された細胞懸濁液(例えば、培地中に懸濁)と接触すると、細胞と基板面との間で細胞接着が起こり得る。したがって、ある特定の態様では、プレーティングされた細胞が基板面と接触できるように、細胞の接着に一般的に適する少なくとも1つの基板面を特徴とする培養系に細胞が導入され、そのような態様は、細胞の接着を可能にする基板上にプレーティングすることを包含する。
【0232】
本開示の細胞は、細胞表面マーカーなどの特定のマーカータンパク質の発現によって同定かつ特徴付けられ得る。これらの細胞の検出および単離は、例えば、フローサイトメトリー、ELISA、および/または磁気ビーズを通じて達成することができる。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を、細胞特異的遺伝子を定量するため、かつ/または分化に応答した遺伝子発現の変化をモニタリングするために使用してよい。
【0233】
X. 遺伝子シグネチャーの検出
特定の態様は、個体からのマイクロバイオーム(例えば、腸内マイクロバイオーム、腫瘍マイクロバイオーム)を含む、個体における遺伝子シグネチャーを検出する方法に関する。いくつかの態様では、遺伝子シグネチャーを検出するための方法は、例えば、選択的オリゴヌクレオチドプローブ、アレイ、アレル特異的ハイブリダイゼーション、モレキュラービーコン、制限断片長多型解析、酵素連鎖反応、フラップエンドヌクレアーゼ解析、プライマー伸長、5'-ヌクレアーゼ解析、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、一本鎖高次構造多型解析、温度勾配ゲル電気泳動法、変性高速液体クロマトグラフィー、高解像度融解曲線解析、DNAミスマッチ結合タンパク質解析、surveyorヌクレアーゼアッセイ、シーケンス解析、またはそれらの組み合わせを含み得る。遺伝子シグネチャーを検出するための方法は、例えば、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション、アレイ、ポリメラーゼ連鎖反応、シーケンス解析、またはそれらの組み合わせを含み得る。遺伝子シグネチャーの検出は、特定の方法を使用して遺伝子シグネチャーの1つの特徴を検出し、同じ方法または異なる方法を追加で使用して遺伝子シグネチャーの異なる特徴を検出することを含み得る。同じ特徴または複数の特徴を検出するために、複数の異なる方法を独立にまたは組み合わせて使用してよい。
【0234】
A. DNAシーケンス解析
いくつかの態様では、シーケンス解析によってDNAが解析され得る。DNAは、シーケンス解析のために、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、ライブラリー調製、ハイブリッドキャプチャー、試料品質制御、生成物活用(product-utilized)ライゲーションベースのライブラリー調製、またはそれらの組み合わせによって調製され得る。DNAは、任意のシーケンス解析技法のために調製され得る。いくつかの態様では、シーケンス解析、例えば、76塩基対のペアエンドシーケンス解析が、20×、25×、30×、35×、40×、45×、50×以上、または50×を超えるカバレッジで標的のおよそ70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、それ以上の割合を網羅するように実施され得る。
【0235】
B. RNAシーケンス解析
いくつかの態様では、シーケンス解析によってRNAが解析され得る。RNAは、シーケンス解析のために、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、ポリA選択、cDNA合成、ストランドもしくはノンストランドライブラリー調製、またはそれらの組み合わせによって調製され得る。RNAは、ストランド特異的RNAシーケンス解析を含む任意のタイプのRNAシーケンス解析技法のために調製され得る。いくつかの態様では、シーケンス解析は、ペアリードを含む、およそ10M、15M、20M、25M、30M、35M、40Mまたはそれ以上のリードを生成するように実施され得る。シーケンス解析は、およそ50bp、55bp、60bp、65bp、70bp、75bp、80bp、85bp、90bp、95bp、100bp、105bp、110bpまたはより長いリード長で実施され得る。いくつかの態様では、生シーケンス解析データは、推定リードカウント(RSEM)、マップされた100万リード当たりの転写産物1キロ塩基当たりの断片(FPKM)および/またはマップされた100万リード当たりの転写産物1キロ塩基当たりのリード数(RPKM)に変換され得る。いくつかの態様では、1つまたは複数のバイオインフォマティクスツールを使用し、上位四分位数正規化RSEMデータを使用するなどにより、間質含有量、免疫浸潤および/または腫瘍免疫細胞プロファイルを推測してよい。
【0236】
C. プロテオミクス
いくつかの態様では、質量分析によってタンパク質が解析され得る。タンパク質は、質量分析のために、当技術分野において公知の任意の方法を使用して調製され得る。本明細書に包含される任意の単離タンパク質を含めたタンパク質が、DTT、続いて、ヨードアセトアミドで処理され得る。タンパク質は、エンドペプチダーゼ、プロテイナーゼ、プロテアーゼまたはタンパク質を切断する任意の酵素を含めた少なくとも1つのペプチダーゼとインキュベートされ得る。いくつかの態様では、タンパク質は、エンドペプチダーゼ、LysCおよび/またはトリプシンとインキュベートされる。タンパク質は、1つまたは複数のタンパク質切断酵素と、およそ1:1000、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:1またはその間の任意の範囲の酵素μg対タンパク質μg比を含む任意の比でインキュベートされ得る。いくつかの態様では、切断されたタンパク質は、カラム精製などによって精製され得る。ある特定の態様では、精製されたペプチドは、瞬間凍結および/または乾燥、例えば、真空乾燥され得る。いくつかの態様では、精製されたペプチドは、逆相クロマトグラフィーまたは塩基性逆相クロマトグラフィーなどによって分画され得る。画分は、本開示の方法の実践のために組み合わされ得る。いくつかの態様では、組み合わせ画分を含めた1つまたは複数の画分は、親和性クロマトグラフィーおよび/もしくは結合、イオン交換クロマトグラフィー、化学誘導体化、免疫沈降、共沈またはそれらの組み合わせによる、ホスホエンリッチメントを含めたホスホペプチドエンリッチメントに供される。組み合わせ画分および/またはホスホエンリッチ画分を含めた1つまたは複数の画分の全体または一部分を質量分析に供してよい。いくつかの態様では、生質量分析データは、少なくとも1つの関連バイオインフォマティクスツールを使用して処理かつ正規化されてよい。
【実施例】
【0237】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本発明の実践において良好に機能するように発明者によって発見された技法を表すものであり、したがって、その実践のための好ましい様式を構成すると考えることができることが、当業者には理解されるべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の態様において多くの変更を加えることができ、それでもなお、同様のまたは類似の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0238】
実施例1-膵臓がん細胞におけるCol1ホモ三量体の欠失は、腫瘍内マイクロバイオームおよび免疫ランドスケープを変化させる
結果
KPPC;Col1
pdxKO腫瘍におけるCol1欠失の腫瘍免疫への影響に関して、腸内および腫瘍マイクロバイオームを調査した。16S rRNA遺伝子配列解析によって調査したところ、KPPC;Col1
pdxKOマウスは、KPPC対照マウス由来の腫瘍と比較して、減少したバクテロイデスおよび増加したカンピロバクターを有する、有意に変化した腫瘍内マイクロバイオームプロファイルを明らかにした(
図1Aおよび
図2A~2F)。Col1欠失は、KPPC;Col1
pdxKOマウスの腸内マイクロバイオーム恒常性を維持し、腫瘍のない(WT)同腹仔のものと似た分類学的パターンを示した。KPPC対照マウスは、異常な腸内マイクロバイオーム組成を示し、異なるマウス間で個体差がより大きく(
図1Aおよび
図3A)、一般的に、より進んだ腫瘍進行を伴った(3)。腫瘍における減少したバクテロイデス目(嫌気性)および増加したカンピロバクター目(微好気性)は、KPPC腫瘍と比較して、KPPC;Col1
pdxKO腫瘍で軽減された腫瘍内低酸素を伴った(
図1B)。この点に関して、KPPC;Col1
pdxKOマウスおよびKPPCマウスの腫瘍組織由来の全RNAに対するバルクRNAシーケンス解析(RNA-seq)は、KPPC腫瘍と比較して、KPPC;Col1
pdxKO腫瘍で、GSEAによる酸化的リン酸化(OXPHOS)および血管新生経路の遺伝子発現レベルの上昇を明らかにした(
図3B)。定量PCRによって、健常同腹仔由来の正常膵臓は、非常に低レベルの総細菌DNA含量を示した一方で、KPPCマウス由来の膵臓腫瘍は、検出可能な細菌DNA含量を示し(
図1C)、このことは、膵臓腫瘍が進行するにつれてバクテリアルトランスロケーションが起こるという過去の見解と一致する(3)。
【0239】
KPPC;Col1
pdxKOマウスにおける変化したマイクロバイオームはまた、減少したMDSCおよび増加したT細胞を含む腫瘍内免疫細胞プロファイルの変化も伴い、PDACの抑制に利益があると推定される(
図1D)。マイクロバイオームの腫瘍免疫への影響を直接判定するために、広域抗生物質の組み合わせ(バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾールおよびアンホテリシンを含有する)処理(3)を用いて腸内および腫瘍マイクロバイオームが変化し得るかを評価した。過去に報告されている通り、この抗生物質の組み合わせは、腫瘍中の細菌を、正常膵臓と類似した検出不能レベルまで完全に除去した(
図7C)。同様にかつ予想通り、抗生物質処理は、腸内マイクロバイオーム含有量も低減させたが、それを排除することはできず(
図1Cおよび1E)、これは、他の者によって報告されているように、糞便中の劇的に豊富な微生物含有量による可能性が高い(6,7)。それにもかかわらず、抗生物質処理後の残りの腸内マイクロバイオームの16S rRNA遺伝子配列解析は、KPPC;Col1
pdxKOマウスとKPPCマウスとの間で微生物分類上全く差がないことを明らかにした(
図1Eおよび
図4A)。
【0240】
抗生物質処理による腫瘍および腸内マイクロバイオームの排除は、結果として、KPPC;Col1
pdxKO腫瘍において増加したMDSCおよび減少したT細胞を有する変化した免疫プロファイルをもたらし(
図1D)、KPPC;Col1
pdxKOマウスの有意に短縮された全生存期間をもたらした(
図1F)。そのような広域抗生物質処理の影響は、KPPCマウスでは観察されなかった(
図4B)。これらの結果は、Col1ホモ三量体の全体的影響が、Col1ホモ三量体関連マイクロバイオームおよび関係する免疫プロファイル獲得に一部起因することを示した。これらの結果は、がん細胞からのCol1ホモ三量体産生の欠失が、有益な免疫細胞プロファイルを伴う保護的なマイクロバイオームの誘導を招くことを裏付けている。KPPC;Col1
pdxKO腫瘍のバルクRNA-seqはさらに、I型インターフェロン(IFN)経路に関係する遺伝子の発現プロファイルの増加を明らかにしたが(
図1Gおよび1H)、これは、マイクロバイオームが調節する抗腫瘍免疫応答と関連している(1,8)。
【0241】
これらの研究は、がん由来の発がん性Col1ホモ三量体が、免疫抑制の促進において重要な役割を担っていることを実証している。がん細胞におけるCol1ホモ三量体の欠失は、腫瘍へのT細胞浸潤を増加させ、抗PD-1チェックポイント遮断療法の有効性を増大させ、マウスの全生存期間の増加を伴う。それゆえ、Col1ホモ三量体が、がん特有のプログラムを誘導して増殖/生存機構を促進し、また腫瘍免疫微小環境に影響を及ぼして免疫抑制を助長すると考えられる。これらの研究は、がん細胞によって産生される腫瘍促進性の発がん性Col1が、T細胞を撃退し、MDSCを動員する可能性が高いことを示唆している。
【0242】
加えて、KPPC;Col1pdxKO腫瘍での減少したMDSCおよび増加したT細胞はまた、固有の腫瘍内および腸内マイクロバイオームプロファイルに直接関連していた。これらの結果は、がん細胞が産生するコラーゲンと腫瘍マイクロバイオームとの相関関係に新規の洞察を提供する。減少したMDSCおよびバクテロイデスは、Col1ホモ三量体欠失腫瘍における増強された微好気性カンピロバクターと連動して、腫瘍内T細胞の増加を引き起こしたが、これは、広域抗生物質処理によって無効化され、KPPC;Col1pdxKOマウスの生存を低下させた。
【0243】
方法
微生物のDNA 16S rRNA遺伝子のシーケンス解析
抗生物質処理したまたはしていない場合のKPPCマウス、KPPC;Col1pdxKOマウスまたは野生型同腹仔対照マウスから、新鮮な腫瘍試料および糞便試料を収集した。過去に記載されているような強制経口投与を介した広域抗生物質処理(3)は、バンコマイシン(50mg/mL;Sigma-Aldrich)、ネオマイシン(10mg/mL;Sigma-Aldrich)、メトロニダゾール(100mg/mL;Alfa Aesar)およびアンホテリシン(1mg/mL;X-GEN Pharmaceuticals)を含有した。実験の間、マウスの飲料水に、アンピシリン(1mg/mL;Sigma-Aldrich)、バンコマイシン(0.5mg/mL;Sigma-Aldrich)、ネオマイシン(0.5mg/mL;Sigma-Aldrich)、メトロニダゾール(1mg/mL;Alfa Aesar)およびアンホテリシン(0.5 μg/mL;X-GEN Pharmaceuticals)を供給した。QIAamp fast DNA stool kit(Qiagen)を用いて製造業者の説明書に従ってゲノムDNAを単離し、追加で徹底的なビーズ破砕溶解の工程を行った。精製したゲノムDNA試料100ngから、515のフォワードプライマーおよび806のリバーズプライマーペアを使用して、16S rRNA遺伝子のV4領域をPCRによって増幅させた(9)。QIAquick gene extraction kit(Qiagen)を使用してDNAライブラリーを精製し、2×250bpペアエンドプロトコルを使用してIllumina Miseqシーケンサーシステムでシーケンス解析した。ペアエンドリードをQIIMEによって逆多重化し、続いて、マージして、VSEARCHを使用してキメラについてデレプリケーションした。UNOISE 3コマンドアルゴリズムをリードのノイズ除去法として使用した(10)。Mothur法を用いてSilvaデータベースバージョン138により操作的分類単位(OTU)を分類した。差異分類群に基づく単変量解析(differential taxa-based univariate analysis)のために、門、綱、目、科、属、種レベルの豊富なマイクロバイオーム分類群を、ロジット変換後にマン・ホイットニーのU検定によって調べた。データ分析のための詳細な計算パイプラインは、過去の研究に基づいた(5)。腫瘍および糞便試料中の総細菌DNA含量を16S rRNAのqRT-PCRによって調べた。
【0244】
本明細書において開示かつ主張される方法はすべて、本開示に照らして、過度の実験なく作製および実行することができる。本発明の組成物および方法は、ある特定の態様に関して説明してきたが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法、ならびに方法の工程または工程の順序において変形が適用され得ることが明らかである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の作用物質が、本明細書に記載される作用物質の代わりに代用されても、同じまたは同様の結果が達成されることは明らかである。当業者に明らかなそのような同様の代用および変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると見なされる。
【0245】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に示されたものを補足する例示的な手順またはその他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【国際調査報告】