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特表2024-546907船舶用の排気ガスの廃熱回収システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】船舶用の排気ガスの廃熱回収システム
(51)【国際特許分類】
   B63J 3/02 20060101AFI20241219BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B63J3/02 D
B63B25/16 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535715
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2022020862
(87)【国際公開番号】W WO2023121235
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187201
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187202
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187203
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187204
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187205
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,イル グク
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドン オク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,デ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】アン,ス キョン
(57)【要約】
船舶用の排気ガスの廃熱回収システムが開示される。本発明の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムは、船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ラインと、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により前記作動流体を気化させる気化器と、前記熱媒体循環ラインに設けられ、前記作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービンとを備え、前記エンジンに低引火点の液化ガスを燃料として供給し、前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に、前記排気ガスを熱源として液体から気体に相変化することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ライン;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により前記作動流体を気化させる気化器;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられ、前記作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン;とを備え、
前記エンジンに低引火点の液化ガスを燃料として供給し、
前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に、前記排気ガスを熱源として液体から気体に相変化することを特徴とする、
船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項2】
前記熱媒体循環ラインには、
前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器;と、
前記凝縮器で凝縮した作動流体を加圧して前記気化器に送出する供給ポンプ;とが設けられることを特徴とする、
請求項1記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項3】
前記膨張タービンで生成した軸動力により空気を圧縮する圧縮機;と、
前記圧縮機に空気を供給する空気供給ライン;とをさらに備えることを特徴とする、
請求項2記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項4】
前記圧縮機で圧縮された空気を前記空気供給ラインより前記船舶内の消費先に供給し、
前記船舶内の消費先が、運航中の船舶の底面外部に空気を噴射して海水との摩擦抵抗を低減させる空気潤滑システムであることを特徴とする、
請求項3記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項5】
前記エンジンに供給される掃気を過給する過給機;と、
前記過給機で圧縮された掃気を冷却して前記エンジンに供給する掃気供給ライン;と、
前記掃気供給ラインから分岐して前記空気供給ラインの前記圧縮機よりも下流側に接続される分岐ライン;と、
前記分岐ラインに設けられる分岐バルブ;とをさらに備えることを特徴とする、
請求項4記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項6】
前記過給機で圧縮された前記掃気の圧力が前記圧縮機の吐出圧力よりも高いために前記掃気の圧力を減圧する必要がある場合に、前記分岐バルブの開度を調節して前記過給機で圧縮された前記掃気の一部を前記船舶内の消費先に供給することを特徴とする、
請求項5記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項7】
船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ライン;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により前記作動流体を加熱する気化器;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記気化器で加熱された作動流体を気液分離する気液分離器;と、
前記気液分離器で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン;と、
前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記凝縮器で凝縮した作動流体を加圧する供給ポンプ;と、
前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を、前記熱媒体循環ラインの膨張タービンよりも下流側に供給するリキッドライン;とを備え、
前記エンジに低引火点の液化ガスを燃料として供給することを特徴とする、
船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項8】
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記供給ポンプで加圧された作動流体を加熱して前記気化器に供給する復熱器をさらに備え、
前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に、前記排気ガスを熱源として液体から気体に相変化することを特徴とする、
請求項7記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項9】
前記復熱器は、前記熱媒体循環ラインの前記リキッドラインとの合流点よりも下流側に設けられ、
前記復熱器で、前記供給ポンプで加圧された作動流体を、前記凝縮器に供給される作動流体との熱交換により加熱することを特徴とする、
請求項8記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項10】
前記作動流体は、水よりも低い沸点を有する流体であることを特徴とする、
請求項9記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項11】
前記復熱器で、前記供給ポンプで加圧された作動流体を、前記気液分離器で分離されて前記リキッドラインを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱することを特徴とする、
請求項8記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項12】
前記膨張タービンで生成した軸動力により圧縮機で空気を圧縮して、
前記圧縮機で圧縮された空気を船舶内の消費先に供給し、
前記船舶内の消費先は、運航中の船舶の底面外部に空気を噴射して海水との摩擦抵抗を低減させる空気潤滑システムであることを特徴とする、
請求項11記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項13】
船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ライン;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により前記作動流体を加熱する気化器;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記気化器で加熱された作動流体を気液分離する気液分離器;と、
前記気液分離器で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン;と、
前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮熱交換器;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記凝縮熱交換器で凝縮した作動流体を加圧して前記気化器に送出する供給ポンプ;と、
前記凝縮熱交換器に前記作動流体を冷却するための冷却水を供給する第1冷却水供給ライン;とを備え、
前記エンジンに低引火点の液化ガスを燃料として供給し、
前記凝縮熱交換器で、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体と、前記供給ポンプで加圧された作動流体と、前記第1冷却水供給ラインの冷却水との3つの流れを熱交換させることを特徴とする、
船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項14】
前記凝縮熱交換器で凝縮した作動流体を前記供給ポンプに供給する前に追加冷却するサクションポット;と、
前記サクションポットに前記作動流体を冷却するための冷却水を供給する第2冷却水供給ライン;とをさらに備え、
前記サクションポットで追加冷却された前記作動流体を前記供給ポンプに供給して、前記供給ポンプの吸引部でのキャビテーションを防止することを特徴とする、
請求項13記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項15】
前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を前記熱媒体循環ラインの前記膨張タービンよりも下流側に供給するリキッドライン;をさらに備え、
前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を前記リキッドラインにより、前記膨張タービンから排出された作動流体と共に、前記凝縮熱交換器に供給することを特徴とする、
請求項14記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項16】
前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に、前記排気ガスを熱源として液体から気体に相変化し、且つ水よりも低い沸点を有する流体であることを特徴とする、
請求項15記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項17】
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を加熱して前記気化器に供給する復熱器をさらに備えることを特徴とする、
請求項15記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項18】
前記復熱器で、前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を、前記気液分離器で分離されて前記リキッドラインを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱することを特徴とする、
請求項17記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項19】
前記膨張タービンで生成した軸動力により圧縮機で空気を圧縮して、
前記圧縮機で圧縮された空気を船舶内の消費先に供給し、
前記船舶内の消費先は、運航中の船舶の底面外部に空気を噴射して海水との摩擦抵抗を低減させる空気潤滑システムであることを特徴とする、
請求項18記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項20】
船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ライン;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、低引火点の液化ガスを燃料として使用する前記船舶のエンジンから排出された排気ガスと前記作動流体とを熱交換させる気化部;と、
前記気化部に前記作動流体と熱交換させる排気ガスを供給する排気ガス供給ライン;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記気化部で加熱された作動流体を気液分離する気液分離器;と、
前記気液分離器で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン;と、
前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮熱交換器;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記凝縮熱交換器で凝縮した作動流体を加圧して前記気化部に送出する供給ポンプ;とを備え、
前記気化部は、前記供給ポンプから供給される作動流体が流れる方向の順に設けられる気化器と、過熱器とを備え、前記排気ガス供給ラインより供給される排気ガスは、前記過熱器と、前記気化器との順で供給され、
前記気化器で前記排気ガスと熱交換させた作動流体を前記気液分離器で気液分離して、分離された気体状態の作動流体を前記過熱器で追加加熱して前記膨張タービンに供給することを特徴とする、
船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項21】
前記凝縮熱交換器に前記作動流体を冷却するための冷却水を供給する冷却水供給ライン;をさらに備え、
前記凝縮熱交換器で、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体と、前記供給ポンプで加圧された作動流体と、前記冷却水供給ラインの冷却水の3つの流れとを熱交換させることを特徴とする、
請求項20記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項22】
前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を、前記熱媒体循環ラインの前記膨張タービンよりも下流側に供給するリキッドライン;をさらに備え、
前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を前記リキッドラインにより、前記膨張タービンから排出された作動流体と共に、前記凝縮熱交換器に供給することを特徴とする、
請求項21記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項23】
前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に前記エンジンから排出された排気ガスを熱源として液体から気体に相変化し、且つ水よりも低い沸点を有する流体であることを特徴とする、
請求項22記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項24】
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記供給ポンプで加圧されて前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を加熱して前記気化器に供給する復熱器をさらに備えることを特徴とする、
請求項22に記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項25】
前記復熱器で、前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を、前記気液分離器で分離されて前記リキッドラインを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱することを特徴とする、
請求項24記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項26】
前記気化部は、前記気化器から排出された排気ガスと、前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体とを熱交換させる排熱ヒーターをさらに備え、
前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を分岐させて前記排熱ヒーターに供給し、前記排熱ヒーターから排出された作動流体を前記熱媒体循環ラインの前記復熱器よりも下流側に供給する分岐ラインをさらに備えることを特徴とする、
請求項25記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項27】
前記膨張タービンで生成した軸動力により圧縮機で空気を圧縮して、
前記圧縮機で圧縮された空気を船舶内の消費先に供給し、
前記船舶内の消費先は、運航中の船舶の底面外部に空気を噴射して海水との摩擦抵抗を低減させる空気潤滑システムであることを特徴とする、
請求項26に記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項28】
船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ライン;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、低引火点の液化ガスを燃料として使用する前記船舶のエンジンから排出された排気ガスと前記作動流体とを熱交換させる気化部;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記気化部で加熱された作動流体を気液分離する気液分離器;と、
前記気液分離器で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン;と、
前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器;と、
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記凝縮器で凝縮した作動流体を加圧する供給ポンプ;と、
前記供給ポンプで加圧された作動流体の一部を加熱して前記気化部に供給する第1復熱器;と、
前記第1復熱器と並列に設けられて、前記供給ポンプで加圧された作動流体の他の一部を加熱して前記気化部に供給する第2復熱器;とを備え、
前記第1復熱器で、前記供給ポンプで加圧された作動流体と、前記膨張タービンで膨張により冷却された後に前記凝縮器に供給される作動流体とを熱交換させて、
前記第2復熱器で、前記供給ポンプで加圧された作動流体を、船舶内の圧縮装置または冷却装置から供給される廃熱により加熱することを特徴とする、
船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項29】
前記気化部は、供給ポンプから供給される作動流体が流れる方向の順に設けられる気化器及び過熱器、並びに前記気化器及び前記過熱器に前記作動流体と熱交換させる排気ガスを供給する排気ガス供給ラインを備え、前記排気ガス供給ラインより排気ガスは、前記過熱器、前記気化器の順で供給され、
前記気化器で前記排気ガスと熱交換させた前記作動流体を前記気液分離器で気液分離して、分離された気体状態の作動流体を前記過熱器で追加加熱して前記膨張タービンに供給することを特徴とする、
請求項28記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項30】
前記凝縮器に前記作動流体を冷却するための冷却水を供給する冷却水供給ライン;と、
前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を、前記熱媒体循環ラインの膨張タービンよりも下流側に供給するリキッドライン;とをさらに備え、
前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を前記リキッドラインより、前記膨張タービンから排出された作動流体と共に、前記第1復熱器に供給した後に前記凝縮器に供給することを特徴とする、
請求項29に記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項31】
前記膨張タービンで生成した軸動力により空気を圧縮する圧縮機;と、
前記圧縮機に空気を供給する空気供給ライン;とをさらに備え、
前記圧縮機で圧縮された空気を前記空気供給ラインより前記第2復熱器に供給して、前記供給ポンプで加圧された作動流体の他の一部と熱交換させた後に前記船舶内の消費先に供給することを特徴とする、
請求項30記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項32】
前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記供給ポンプで加圧された後に前記第1または第2復熱器で熱交換された作動流体を加熱して前記気化器に供給する第3復熱器をさらに備えることを特徴とする、
請求項30記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項33】
前記第3復熱器で、前記供給ポンプで加圧された後に前記第1または前記第2復熱器で熱交換された作動流体を、前記気液分離器で分離されてリキッドラインを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱することを特徴とする、
請求項32記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項34】
前記気化部は、前記気化器から排出された排気ガスと、前記供給ポンプで加圧されて前記第1復熱器で熱交換させた後に分岐させた作動流体とを熱交換させる排熱ヒーターをさらに備え、
前記排熱ヒーターで熱交換させた前記作動流体を前記熱媒体循環ラインの前記第3復熱器よりも下流側に供給する分岐ラインをさらに備えることを特徴とする、
請求項33記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項35】
前記膨張タービンで生成した軸動力により空気を圧縮する圧縮機;と、
前記圧縮機に空気を供給する空気供給ライン;とをさらに備え、
前記圧縮機で圧縮された空気を前記空気供給ラインより前記第2復熱器に供給して、前記供給ポンプで加圧された作動流体の他の一部と熱交換させた後に前記船舶内の消費先に供給することを特徴とする、
請求項34記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項36】
前記作動流体は、有機冷媒またはアンモニア水溶液であることを特徴とする、
請求項1~35のいずれか1項に記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。
【請求項37】
前記低引火点の液化ガスは、LPG及びアンモニアのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする、
請求項36に記載の船舶用の排気ガスの廃熱回収システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用の排気ガスの廃熱回収システムに関し、より詳細には、低引火点の液化ガスを燃料として使用するエンジンから排出された排気ガスを熱源として、閉ループ(Closed loop)の熱媒体循環ラインを循環する作動流体を相変化させて軸動力を生成する、船舶用の排気ガスの廃熱回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の推進エンジンには、バンカーC油等の比較的安価な重油を使用する燃料供給システムが設けられている。このような重油を使用した燃料供給システムは、燃料燃焼時に、国際海事機関(International Maritime Organization,IMO)により排出量が規制されている、二酸化炭素等の温室効果ガスや、硫黄酸化物、窒素酸化物等の物質を含む排気ガスが大量に排出される。
【0003】
地球温暖化が深刻化する中、温室効果ガスの排出量を削減する取り組みが、全世界的に行われている。先進国に対する温室効果ガスの排出量の削減義務が盛り込まれ、1997年に採択された京都議定書が2020年で終了することに伴い、2015年12月にフランス・パリにて開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議で採択され、2016年11月に発効したパリ気候変動協約(Paris Climate Change Accord)の締約国195か国では、温室効果ガスの排出量を削減するために、様々な取り組みが行われている。このような国際的な環境規制基準の強化と相まって、各国では、温室効果ガスや大気汚染物質の排出に対する関心が高まり、船舶でも環境性に優れた燃料技術の開発が積極的に行われている。
【0004】
液化ガスは、液化工程中に、大気汚染物質の除去や削減が可能なことから、重油や船舶用ディーゼル油(Marine Diesel Oil,MDO)等と比較して大気汚染物質の排出が少なく、環境性に優れた燃料として知られている。代表的な液化ガスである液化天然ガス(Liquefied Natural Gas,LNG)は、メタンを主成分とする天然ガスを、約-163℃に冷却して液化させることで得られる無色透明の液体である。液化天然ガスは、気体状態の天然ガスに比べて、その体積が約1/600まで減少することから、貯蔵や輸送効率の点で優れている。このような理由から、液化ガスは、船舶用燃料として積極的に開発され、また使用されている。また、他の代表的な液化ガスであるLPG(Liquefied Petroleum Gas)は、原油中のプロパン(Propane)やブタン(Butane)等の低沸点の炭化水素を主成分とする石油ガスを液化させたものであり、極低温で液化させる必要があるLNGと比較して貯蔵が容易である。また、LPGの比エネルギー(Specific energy)やエネルギー密度(Energy density)は、HFO(C重油)と遜色がなく、また、HFOに比べてSOx,NOx,CO,PM等の排出量を低減できる点で優れている。このような理由から、LPGは、船舶用燃料として積極的に開発され、また使用されている。
【0005】
近年、完全な脱炭素化を達成するために、アンモニアを船舶用燃料として使用する研究開発が活発に行われている。アンモニア(NH)は、1個の窒素原子に3個の水素原子が結合した物質であり、分子間で強い水素結合を形成することから、液化し易く、標準圧力下で、沸点が-33.34℃、融点が-77.73℃である。特に、アンモニアは貯蔵や輸送が容易であり、また、ハーバー・ボッシュ法による大量生産が容易であることから、他のカーボンニュートラル(炭素中立)燃料と比較して経済性に優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エンジンに燃料を供給するためには、燃料油やLNG等の液化ガスをエンジンの燃料供給条件に応じて加熱する必要がある。HFOを燃料として使用する船舶では、エンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収して水蒸気(Steam)を生成し、生成した水蒸気により燃料油を加熱して、加熱した燃料油をエンジンに供給する。また、LNGを燃料として使用する船舶でも同様に、エンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収して水蒸気を生成し、生成した水蒸気によりLNGを気化させて、気化させた天然ガスをエンジンに供給する。このように、排気ガスの廃熱を回収して燃料の加熱に利用することで、船舶の熱効率を向上させることができる。しかし、燃料油には、硫黄(Sulfur)成分が含まれており、排気ガスの廃熱回収時に、排気ガス中に含まれる二酸化硫黄(SO2)が、硫酸(H2SO4)として金属表面で凝縮して金属を腐食させる硫酸露点腐食(Sulfuric Acid Dew Point Corrosion)が生じる虞がある。このため、排気ガスの廃熱を利用する熱交換器が設置されたものでは、装置の金属表面温度が硫酸の露点以下となると、金属表面で腐食が生じ易く、これを回避するため、温度が150℃以上の排気ガスのみから廃熱が回収される。
【0007】
ここで、低引火点燃料(Low Flashpoint fuel)のうち、沸点(Boiling point)が比較的高いLPGやアンモニア(Ammonia)は、燃料供給時にエンジンが要求する供給温度まで加熱するために必要な熱量が非常に少なくて済み、また、燃料供給用のヒーターの氷結(Icing)の虞が殆どない。このため、LPGやアンモニアは、排気ガスの廃熱を利用せずとも、エンジンの冷却水等により加熱することができる。
【0008】
また、これらの燃料には硫黄成分が含まれないことから、温度が150℃以下の排気ガスから廃熱を回収する場合でも、低温腐食が発生し難い。
【0009】
本発明は、これらの点に着目し、エンジンに液化ガスを燃料として供給する場合、特にLPGやアンモニア等の低引火点の液化ガスをエンジンに燃料として供給する場合に、エンジンから排出された排気ガスの廃熱から、船舶内で利用可能なエネルギーを回収する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の実施形態では、船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ラインと、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により前記作動流体を気化させる気化器と、前記熱媒体循環ラインに設けられ、前記作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービンとを備え、前記エンジンに低引火点の液化ガスを燃料として供給し、前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に、前記排気ガスを熱源として液体から気体に相変化することを特徴とする、船舶用の排気ガスの廃熱回収システムが提供される。
【0011】
好ましくは、前記熱媒体循環ラインには、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮した作動流体を加圧して前記気化器に送出する供給ポンプとが設けられる。
【0012】
好ましくは、前記膨張タービンで生成した軸動力により空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機に空気を供給する空気供給ラインとをさらに備える。
【0013】
好ましくは、前記圧縮機で圧縮された空気を前記空気供給ラインより前記船舶内の消費先に供給し、前記船舶内の消費先が、運航中の船舶の底面外部に空気を噴射して海水との摩擦抵抗を低減させる空気潤滑システムである。
【0014】
好ましくは、前記エンジンに供給される掃気を過給する過給機と、前記過給機で圧縮された掃気を冷却して前記エンジンに供給する掃気供給ラインと、前記掃気供給ラインから分岐して前記空気供給ラインの前記圧縮機よりも下流側に接続される分岐ラインと、前記分岐ラインに設けられる分岐バルブとをさらに備える。
【0015】
好ましくは、前記過給機で圧縮された前記掃気の圧力が前記圧縮機の吐出圧力よりも高いために前記掃気の圧力を減圧する必要がある場合に、前記分岐バルブの開度を調節して前記過給機で圧縮された前記掃気の一部を前記船舶内の消費先に供給する。
【0016】
好ましくは、前記作動流体は、有機冷媒またはアンモニア水溶液である。
【0017】
好ましくは、前記低引火点の液化ガスは、LPG及びアンモニアのうち少なくとも一方を含む。
【0018】
上記課題を解決するため本発明の実施形態では、船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ラインと、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により前記作動流体を加熱する気化器と、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記気化器で加熱された作動流体を気液分離する気液分離器と、前記気液分離器で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービンと、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器と、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記凝縮器で凝縮した作動流体を加圧する供給ポンプと、前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を、前記熱媒体循環ラインの膨張タービンよりも下流側に供給するリキッドラインとを備え、前記エンジに低引火点の液化ガスを燃料として供給することを特徴とする、船舶用の排気ガスの廃熱回収システムが提供される。
【0019】
好ましくは、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記供給ポンプで加圧された作動流体を加熱して前記気化器に供給する復熱器をさらに備え、前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に、前記排気ガスを熱源として液体から気体に相変化する。
【0020】
好ましくは、前記復熱器は、前記熱媒体循環ラインの前記リキッドラインとの合流点よりも下流側に設けられ、前記復熱器で、前記供給ポンプで加圧された作動流体を、前記凝縮器に供給される作動流体との熱交換により加熱する。
【0021】
好ましくは、前記作動流体は、水よりも低い沸点を有する流体である。
【0022】
好ましくは、前記復熱器で、前記供給ポンプで加圧された作動流体を、前記気液分離器で分離されて前記リキッドラインを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱する。
【0023】
好ましくは、前記作動流体は、アンモニア水溶液である。
【0024】
好ましくは、前記エンジンは、低引火点の液化ガスを燃料として使用するエンジンであり、前記低引火点の液化ガスは、LPG及びアンモニアのうち少なくとも一方を含む。
【0025】
好ましくは、前記膨張タービンで生成した軸動力により圧縮機で空気を圧縮して、前記圧縮機で圧縮された空気を船舶内の消費先に供給し、前記船舶内の消費先は、運航中の船舶の底面外部に空気を噴射して海水との摩擦抵抗を低減させる空気潤滑システムである。
【0026】
上記課題を解決するため本発明の実施形態では、船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ラインと、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により前記作動流体を加熱する気化器と、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記気化器で加熱された作動流体を気液分離する気液分離器と、前記気液分離器で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービンと、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮熱交換器と、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記凝縮熱交換器で凝縮した作動流体を加圧して前記気化器に送出する供給ポンプと、前記凝縮熱交換器に前記作動流体を冷却するための冷却水を供給する第1冷却水供給ラインとを備え、前記エンジンに低引火点の液化ガスを燃料として供給し、前記凝縮熱交換器で、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体と、前記供給ポンプで加圧された作動流体と、前記第1冷却水供給ラインの冷却水との3つの流れを熱交換させることを特徴とする、船舶用の排気ガスの廃熱回収システムが提供される。
【0027】
好ましくは、前記凝縮熱交換器で凝縮した作動流体を前記供給ポンプに供給する前に追加冷却するサクションポットと、前記サクションポットに前記作動流体を冷却するための冷却水を供給する第2冷却水供給ラインとをさらに備え、前記サクションポットで追加冷却された前記作動流体を前記供給ポンプに供給して、前記供給ポンプの吸引部でのキャビテーションを防止することができる。
【0028】
好ましくは、前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を前記熱媒体循環ラインの前記膨張タービンよりも下流側に供給するリキッドラインをさらに備え、前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を前記リキッドラインにより、前記膨張タービンから排出された作動流体と共に、前記凝縮熱交換器に供給する。
【0029】
好ましくは、前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に、前記排気ガスを熱源として液体から気体に相変化し、且つ水よりも低い沸点を有する流体である。
【0030】
好ましくは、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を加熱して前記気化器に供給する復熱器をさらに備える。
【0031】
好ましくは、前記復熱器で、前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を、前記気液分離器で分離されて前記リキッドラインを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱する。
【0032】
好ましくは、前記作動流体は、アンモニア水溶液である。
【0033】
好ましくは、前記低引火点の液化ガスは、LPG及びアンモニアのうち少なくとも一方を含む。
【0034】
好ましくは、前記膨張タービンで生成した軸動力により圧縮機で空気を圧縮して、前記圧縮機で圧縮された空気を船舶内の消費先に供給し、前記船舶内の消費先は、運航中の船舶の底面外部に空気を噴射して海水との摩擦抵抗を低減させる空気潤滑システムである。
【0035】
上記課題を解決するため本発明の実施形態では、船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ラインと、前記熱媒体循環ラインに設けられて、低引火点の液化ガスを燃料として使用する前記船舶のエンジンから排出された排気ガスと前記作動流体とを熱交換させる気化部と、前記気化部に前記作動流体と熱交換させる排気ガスを供給する排気ガス供給ラインと、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記気化部で加熱された作動流体を気液分離する気液分離器と、前記気液分離器で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービンと、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮熱交換器と、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記凝縮熱交換器で凝縮した作動流体を加圧して前記気化部に送出する供給ポンプとを備え、前記気化部は、前記供給ポンプから供給される作動流体が流れる方向の順に設けられる気化器と、過熱器とを備え、前記排気ガス供給ラインより供給される排気ガスは、前記過熱器と、前記気化器との順で供給され、前記気化器で前記排気ガスと熱交換させた作動流体を前記気液分離器で気液分離して、分離された気体状態の作動流体を前記過熱器で追加加熱して前記膨張タービンに供給することを特徴とする、船舶用の排気ガスの廃熱回収システムが提供される。
【0036】
好ましくは、前記凝縮熱交換器に前記作動流体を冷却するための冷却水を供給する冷却水供給ラインをさらに備え、前記凝縮熱交換器で、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体と、前記供給ポンプで加圧された作動流体と、前記冷却水供給ラインの冷却水の3つの流れとを熱交換させる。
【0037】
好ましくは、前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を、前記熱媒体循環ラインの前記膨張タービンよりも下流側に供給するリキッドラインをさらに備え、前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を前記リキッドラインにより、前記膨張タービンから排出された作動流体と共に、前記凝縮熱交換器に供給する。
【0038】
好ましくは、前記作動流体は、前記熱媒体循環ラインを循環すると共に前記エンジンから排出された排気ガスを熱源として液体から気体に相変化し、且つ水よりも低い沸点を有する流体である。
【0039】
好ましくは、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記供給ポンプで加圧されて前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を加熱して前記気化器に供給する復熱器をさらに備える。
【0040】
好ましくは、前記復熱器で、前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を、前記気液分離器で分離されて前記リキッドラインを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱する。
【0041】
好ましくは、前記気化部は、前記気化器から排出された排気ガスと、前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体とを熱交換させる排熱ヒーターをさらに備え、
前記供給ポンプで加圧された後に前記凝縮熱交換器で熱交換された作動流体を分岐させて前記排熱ヒーターに供給し、前記排熱ヒーターから排出された作動流体を前記熱媒体循環ラインの前記復熱器よりも下流側に供給する分岐ラインをさらに備える。
【0042】
好ましくは、前記作動流体は、アンモニア水溶液である。
【0043】
好ましくは、前記低引火点の液化ガスは、LPG及びアンモニアのうち少なくとも一方を含む。
【0044】
好ましくは、記膨張タービンで生成した軸動力により圧縮機で空気を圧縮して、前記圧縮機で圧縮された空気を船舶内の消費先に供給し、前記船舶内の消費先は、運航中の船舶の底面外部に空気を噴射して海水との摩擦抵抗を低減させる空気潤滑システムである。
【0045】
上記課題を解決するため本発明の実施形態では、船舶に設けられて作動流体が循環する熱媒体循環ラインと、前記熱媒体循環ラインに設けられて、低引火点の液化ガスを燃料として使用する前記船舶のエンジンから排出された排気ガスと前記作動流体とを熱交換させる気化部と、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記気化部で加熱された作動流体を気液分離する気液分離器と、前記気液分離器で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービンと、前記膨張タービンで膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器と、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記凝縮器で凝縮した作動流体を加圧する供給ポンプと、前記供給ポンプで加圧された作動流体の一部を加熱して前記気化部に供給する第1復熱器と、前記第1復熱器と並列に設けられて、前記供給ポンプで加圧された作動流体の他の一部を加熱して前記気化部に供給する第2復熱器とを備え、前記第1復熱器で、前記供給ポンプで加圧された作動流体と、前記膨張タービンで膨張により冷却された後に前記凝縮器に供給される作動流体とを熱交換させて、前記第2復熱器で、前記供給ポンプで加圧された作動流体を、船舶内の圧縮装置または冷却装置から供給される廃熱により加熱することを特徴とする、船舶用の排気ガスの廃熱回収システムが提供される。
【0046】
好ましくは、前記気化部は、供給ポンプから供給される作動流体が流れる方向の順に設けられる気化器及び過熱器、並びに前記気化器及び前記過熱器に前記作動流体と熱交換させる排気ガスを供給する排気ガス供給ラインを備え、前記排気ガス供給ラインより排気ガスは、前記過熱器、前記気化器の順で供給され、前記気化器で前記排気ガスと熱交換させた前記作動流体を前記気液分離器で気液分離して、分離された気体状態の作動流体を前記過熱器で追加加熱して前記膨張タービンに供給する。
【0047】
好ましくは、前前記凝縮器に前記作動流体を冷却するための冷却水を供給する冷却水供給ラインと、前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を、前記熱媒体循環ラインの膨張タービンよりも下流側に供給するリキッドラインとをさらに備え、前記気液分離器で分離された液体状態の作動流体を前記リキッドラインより、前記膨張タービンから排出された作動流体と共に、前記第1復熱器に供給した後に前記凝縮器に供給する。
【0048】
好ましくは、記膨張タービンで生成した軸動力により空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機に空気を供給する空気供給ラインとをさらに備え、前記圧縮機で圧縮された空気を前記空気供給ラインより前記第2復熱器に供給して、前記供給ポンプで加圧された作動流体の他の一部と熱交換させた後に前記船舶内の消費先に供給する。
【0049】
好ましくは、前記熱媒体循環ラインに設けられて、前記供給ポンプで加圧された後に前記第1または第2復熱器で熱交換された作動流体を加熱して前記気化器に供給する第3復熱器をさらに備える。
【0050】
好ましくは、前記第3復熱器で、前記供給ポンプで加圧された後に前記第1または前記第2復熱器で熱交換された作動流体を、前記気液分離器で分離されてリキッドラインを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱する。
【0051】
好ましくは、前記気化部は、前記気化器から排出された排気ガスと、前記供給ポンプで加圧されて前記第1復熱器で熱交換させた後に分岐させた作動流体とを熱交換させる排熱ヒーターをさらに備え、前記排熱ヒーターで熱交換させた前記作動流体を前記熱媒体循環ラインの前記第3復熱器よりも下流側に供給する分岐ラインをさらに備える。
【0052】
好ましくは、前記膨張タービンで生成した軸動力により空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機に空気を供給する空気供給ラインとをさらに備え、前記圧縮機で圧縮された空気を前記空気供給ラインより前記第2復熱器に供給して、前記供給ポンプで加圧された作動流体の他の一部と熱交換させた後に前記船舶内の消費先に供給する。
【0053】
好ましくは、前記作動流体は、アンモニア水溶液である。
【0054】
好ましくは、前前記低引火点の液化ガスは、LPG及びアンモニアのうち少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0055】
本発明の排気ガスの廃熱回収システムは、低引火点の液化ガスを燃料として使用するエンジンから排出された排気ガスの廃熱を効率的に回収することで、船舶のエネルギー効率を向上させることができる。
【0056】
また、本発明の排気ガスの廃熱回収システムは、排気ガスの廃熱を動力に変換して圧縮空気を生成し、圧縮空気を空気潤滑システム等の船舶内の消費先に供給する。この場合、空気潤滑システムにより船舶運航時の海水との摩擦抵抗が低減され、船舶の燃費を向上させることができる。
【0057】
また、本発明の排気ガスの廃熱回収システムは、低温の排気ガスの廃熱回収に適した有機ランキンサイクル(ORC,Organic Rankine Cycle)を適用し、3台の熱交換器が設けられた熱媒体循環ライン、3つの流体の流れの熱交換を行う凝縮熱交換器が設けられた熱媒体循環ライン、または、システム内の熱効率を高めるために複数の復熱器が設けられた熱媒体循環ラインを構成して、低引火点燃料を使用するエンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。そして、回収した廃熱を電力に変換し、船舶内で消費可能な電気や圧縮空気を生成して、排気ガスの廃熱を効果的に利用することで、船舶のエネルギー効率を向させることができる。
【0058】
また、本発明の排気ガスの廃熱回収システムは、供給ポンプよりも上流側にサクションポットを設けて、凝縮熱交換器で凝縮した作動流体を追加冷却する。これにより、蒸気が供給ポンプに流入することで発生する供給ポンプの吸引部でのキャビテーションを防止することで、システムの安定性を向上させることができる。
【0059】
また、本発明の排気ガスの廃熱回収システムは、気化部を排気ガスの温度に応じて過熱器と気化器とに分けて構成し、気化器で気化させた後に気液分離した気体状態の作動流体を、過熱器で高温の排気ガスにより追加加熱して、過熱状態の作動流体を膨張タービンに供給する。これにより、液滴の発生が防止されて、廃熱回収効率やシステムの安定性を向させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の第1実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図2】本発明の第2実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図3】本発明の第3実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図4】本発明の第4実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図5】本発明の第5実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図6】本発明の第6実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図7】本発明の第7実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図8】本発明の第8実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図9】本発明の第9実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図10】本発明の第10実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図11】本発明の第11実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
図12】本発明の第12実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の作用上の利点及び本発明の実施形態によって達成される目的について、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を例に説明する。
【0062】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の構成及び作用について説明する。なお、本明細書及び添付の図面において、同じ構成要素には、同じ参照符号を付する。
【0063】
後述する本発明の実施形態の船舶は、液化ガスを燃料として使用できる推進用エンジンや発電用エンジンが設置される、あらゆる種類の船舶である。このような船舶としては、例えば、LPG運搬船、LNG運搬船(LNG Carrier)、液体水素運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)等の自航式船舶をはじめ、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)等の自航能力を有しない浮遊式海上構造物である。
【0064】
また、本発明の実施形態は、低温で液化させて輸送することができ、エンジンの燃料として供給できる、あらゆる種類の液化ガスに適用することができる。このような液化ガスとしては、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)等の液化石油化学ガスや、アンモニア等がある。また、後述する実施形態では、液化ガスの中でも引火点(Flash point)が低い低引火点の液化ガスであり、且つ沸点が比較的高い、アンモニアやLPGを、エンジンの燃料として供給する場合を例に説明する。
【0065】
図1には、本発明の第1実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。また、図2には、本発明の第2実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
【0066】
図1及び図2に示すように、第1及び第2実施形態の排気ガスの廃熱回収システムは、船舶に設けられて、作動流体が循環する熱媒体循環ラインRCLと、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により、作動流体を気化させる気化器100と、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン200とを備える。
【0067】
第1及び第2実施形態では、エンジン(図示せず)に、低引火点の液化ガスが燃料として供給される。また、作動流体は、閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環すると共に、低引火点の液化ガスを燃料として使用するエンジンから排出された排気ガスを熱源として、液体から気体に相変化する。
【0068】
ここで、アンモニアやLPGは、低引火点の液化ガスの中でも比較的沸点が高く、プロパンを主成分とするLPGは、標準圧力下で、引火点が-105℃、また沸点が-42℃である。また、アンモニアの沸点は標準圧力下で-33℃であり、標準圧力下の沸点が-161℃のメタン(LNG)や-253℃の水素と比較して沸点が高い。このため、アンモニアやLPGをエンジンに燃料として供給する場合には、エンジンが要求する供給温度まで加熱するために必要な熱量が非常に少なくて済み、エンジンから排出された高温の排気ガスを利用して発生させた水蒸気を使用せずとも、エンジンの冷却水等で加熱した後、エンジンに燃料として供給することができる。また、燃料中に硫黄成分が含まれていないことから、低温腐食が発生し難く、温度が150℃以下の排気ガスからも廃熱を回収することができる。そこで、第1及び第2実施形態では、熱媒体循環ラインRCLに、低温廃熱の回収に適した有機ランキンサイクルを適用して、エンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。
【0069】
熱媒体循環ラインRCLには、排気ガスとの熱交換により作動流体を気化させる気化器100と、気化器100で気化させた作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン200と、膨張タービン200で膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器300と、凝縮器300で凝縮した作動流体を加圧して、気化器100に供給する供給ポンプ400とが設けられている。
【0070】
また、第1及び第2実施形態のシステムで、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体は、例えば、有機冷媒やアンモニア水溶液であり得る。作動流体は、液体状態で供給ポンプ400に供給され、供給ポンプ400で膨張タービン200の駆動に必要な圧力まで加圧された後、気化器100に供給される。気化器100では、作動流体が、排気ガス供給ラインHRLにより供給される排気ガスHMの廃熱によって加熱され、加熱されて気化した気体状態の作動流体が、膨張タービン200に供給される。気体状態の作動流体は、膨張タービン200で膨張することでタービンを駆動させて軸動力を生成する。また、膨張により部分的に冷却された作動流体が、凝縮器300に供給される。凝縮器300では、冷却水供給ラインCRLより供給される冷却水CMによって、供給ポンプ400に供給される前の作動流体が、さらに冷却されて凝縮する。そして、凝縮した液体状態の作動流体が供給ポンプ400に供給される。このように、作動流体が、相変化を伴って閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環することで、排気ガスの廃熱を回収して、これを動力に変換する。
【0071】
排気ガスの廃熱を利用して膨張タービン200で生成した軸動力は、発電機を駆動させて電力を生成するために使用することができる。また、第1及び第2実施形態では、膨張タービン200で生成した軸動力を使用して、空気を圧縮する圧縮機250と、圧縮機250に空気を供給する空気供給ラインALとが設けられている。圧縮機250で圧縮された圧縮空気は、空気供給ラインALより船舶内の消費先CSに供給される。また、圧縮機250を、シャフト(Shaft)を介して膨張タービン200に連結することもできる。なお、圧縮機250の圧縮比は、圧縮空気が供給される船舶内の消費先に応じて決定され得る。
【0072】
また、圧縮空気が供給される船舶内の消費先CSとしては、例えば、船舶の船体の底面外部に空気を噴射する空気潤滑システム(Air Lubrication System)であり得る。空気潤滑システムは、船体の底面外部に空気を噴射して、船体と海水との間に連続した空気層を形成することで、運航中の船体と海水との摩擦抵抗が低減され、船舶の燃費が向上する。
【0073】
空気潤滑システムは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機(図示せず)、圧縮空気を供給する配管、空気噴射ユニット(Air Injection Unit,図示せず)、船体の底面外部の表面に形成される空気層(Air layer,図示せず)、制御部(図示せず)等を備えて構成される。また、空気潤滑システムに、廃熱回収システムで生成した圧縮空気を供給することもできる。また、第1及び第2実施形態のシステムでは、膨張タービン200で生成した軸動力を利用して圧縮機250で空気を圧縮し、圧縮機250で圧縮された圧縮空気を空気潤滑システムに供給する。このように、空気潤滑システムの空気圧縮機に代替して廃熱回収システムの圧縮機を利用することができるため、空気潤滑システムに空気圧縮機等を別途設ける必要がない。また、空気潤滑システムに空気圧縮機が設けられている場合でも、空気圧縮機で不足する容量を、廃熱回収システムで生成した圧縮空気で補うことができるため、より小容量の空気圧縮機を使用することができる。また、空気潤滑システムに圧縮空気を供給する場合、圧縮機250を約2の圧縮比で作動させる。また、この場合、圧縮機250を単段(一段)遠心式圧縮機(Centrifugal compressor)で構成することができる。
【0074】
以上のように、第1及び第2実施形態のシステムは、低引火点燃料を使用するエンジンから排出された排気ガスから廃熱を回収する。また、回収した廃熱を電力に変換して、または圧縮空気を生成して、船舶内の消費先である空気潤滑システムに供給することで、船舶運航時の海水との摩擦抵抗が低減され、船舶の燃料効率やエネルギー効率を向上させることができる。
【0075】
また、図2に示す第2実施形態は、過給機500から余剰の圧縮空気を、廃熱回収システムに供給して船舶内の消費先に供給できるように一部の構成を追加して設けた点で、上記第1実施形態のシステムと相違する。以下、上記第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、上記第1実施形態と相違する構成を中心に説明する。
【0076】
図2に示すように、第2実施形態のシステムは、エンジンに供給される掃気(Scavenge air)を過給する過給機500と、過給機500で圧縮された掃気を冷却してエンジンに供給する掃気供給ラインSLと、掃気供給ラインSLから分岐して、空気供給ラインALの圧縮機250よりも下流側に接続される分岐ラインBLと、分岐ラインBLに設けられる分岐バルブBVとをさらに備える。
【0077】
船舶のエンジンの効率を向上させるため、エンジンには、過給機500で高圧に圧縮された吸気(これを掃気と呼ぶ)が供給される。過給機500で高圧に圧縮されて高温となった圧縮空気を、掃気クーラーSCに供給して冷却した後、エンジンに供給する。ところで、エンジンに供給される掃気圧力は、エンジンの負荷(Load)や外気温度等に応じて変わり、掃気圧力が高い場合には、掃気圧力を調整するために、掃気の一部を排出(Vent)させる必要がある。本実施形態では、このように掃気圧力が高く、圧力を調整するために掃気の一部を排出させる必要がある場合に、余剰の圧縮空気を分岐ラインBLによって、空気供給ラインALの圧縮機250よりも下流側に供給した後、空気潤滑システム等の船舶内の消費先CSに供給して利用する。
【0078】
すなわち、過給機500で圧縮された掃気の圧力が、圧縮機の出口圧力よりも高く、エンジンに供給される掃気圧力を減圧する必要がある場合、掃気供給ラインSLに設けられた圧力トランスミッタPTで検出された掃気圧力に応じて、分岐ラインBLに設けられた分岐バルブBVの開度を調整し、過給機500で圧縮された掃気の一部を空気供給ラインALに供給して、これを船舶内の消費先CSに供給する。
【0079】
以上のように、第2実施形態のシステムでは、エンジンの負荷変動に応じてエンジンに供給される掃気圧力を調整すると共に、過給機500からの余剰の圧縮空気を船舶内の消費先に供給する。
【0080】
次に、図3には、本発明の第3実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。また、図4には、本発明の第4実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
【0081】
図3及び図4に示すように、第3及び第4実施形態の排気ガスの廃熱回収システムは、船舶に設けられて、作動流体が循環する熱媒体循環ラインRCLと、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により、作動流体を加熱して気化させる気化器100と、気化器100で加熱(気化)された作動流体を気液分離する気液分離器200と、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン300とを備える。
【0082】
第3及び第4実施形態では、エンジン(図示せず)に、低引火点の液化ガスが燃料として供給される。また、作動流体は、閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環すると共に、低引火点の液化ガスを燃料として使用するエンジンから排出された排気ガスを熱源として、液体から気体に相変化する。
【0083】
ここで、アンモニアやLPGは、低引火点の液化ガスの中でも比較的沸点が高く、プロパンを主成分とするLPGは、標準圧力下で、引火点が-105℃、また沸点が-42℃である。また、アンモニアの沸点は標準圧力下で-33℃であり、標準圧力下の沸点が-161℃のメタン(LNG)や-253℃の水素と比較して沸点が高い。このため、アンモニアやLPGをエンジンに燃料として供給する場合には、エンジンが要求する供給温度まで加熱するために必要な熱量が非常に少なくて済み、エンジンから排出された高温の排気ガスを利用して発生させた水蒸気を使用せずとも、エンジンの冷却水等で加熱した後、エンジンに燃料として供給することができる。また、燃料中に硫黄成分が含まれていないことから、低温腐食が発生し難く、温度が150℃以下の排気ガスからも廃熱を回収することができる。そこで、第3及び第4実施形態では、熱媒体循環ラインRCLに、低温廃熱の回収に適した有機ランキンサイクルを適用して、エンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。
【0084】
熱媒体循環ラインRCLには、排気ガスとの熱交換により作動流体を加熱して気化させる気化器100と、気化器100で加熱(気化)された作動流体を気液分離する気液分離器200と、気液分離器200で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン300と、膨張タービン300で膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器500と、凝縮器500で凝縮した作動流体を加圧して送出する供給ポンプ600と、供給ポンプ600で加圧された作動流体を加熱する復熱器400aまたは400bとが設けられている。そして、復熱器400aまたは400bで加熱された作動流体が気化器100に供給される。また、気液分離器200で分離された液体状態の作動流体は、リキッドラインLLaまたはLLbによって熱媒体循環ラインRCLの膨張タービン300よりも下流側に供給されて、膨張タービン300から排出された作動流体と共に、凝縮器500に供給される。
【0085】
また、第3実施形態のシステムでは、低温の排気ガスの廃熱も回収できるように、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体として、水よりも低い沸点を有する流体を用いることができる。
【0086】
図3に示すように、第3実施形態のシステムでは、凝縮器500で凝縮した液体状態の作動流体が、供給ポンプ600で膨張タービン300の駆動に必要な圧力まで加圧されて、復熱器400aに供給された後、気化器100に供給される。復熱器400aでは、熱媒体循環ラインRCLのリキッドラインLLaとの合流点よりも下流側で、供給ポンプ600で加圧された作動流体が、凝縮器500に供給される前の作動流体との熱交換により加熱される。すなわち、復熱器400aでは、供給ポンプ600で加圧されて供給ポンプ600から送出された作動流体と、凝縮器500に供給される前の作動流体とを熱交換させる。復熱器400aから排出されて気化器100に供給された作動流体は、排気ガス供給ラインHLより供給される排気ガスHMの廃熱によって加熱されて気化した後、気液分離器200で分離された気体状態の作動流体が、膨張タービン300に供給される。気体状態の作動流体は、膨張タービン300で膨張することでタービンを駆動させて軸動力を生成する。また、膨張により部分的に冷却された作動流体が、復熱器400aに供給されて熱交換された後、凝縮器500に供給される。凝縮器500では、冷却水供給ラインCLより供給される冷却水CMによって、供給ポンプ600に供給される前の作動流体が、さらに冷却(追加冷却)されて凝縮する。そして、凝縮した液体状態の作動流体が供給ポンプ600に供給される。このように、作動流体が、相変化を伴って閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環することで、排気ガスの廃熱を回収して、これを動力に変換する。
【0087】
また、本実施形態では、排気ガスの廃熱を利用して膨張タービン300で生成した軸動力SPを、発電機を駆動させて電力を生成するために使用することができ、また、軸動力SPを、船舶内消費先に供給される圧縮空気を生成するために圧縮機で使用してもよい。
【0088】
また、圧縮機(図示せず)を、シャフトを介して膨張タービン300に連結して構成することもできる。なお、圧縮機の圧縮比は、圧縮空気が供給される船舶内の消費先に応じて決定され得る。
【0089】
また、圧縮空気が供給される船舶内の消費先CSとしては、例えば、船舶の船体の底面外部に空気を噴射する空気潤滑システムであり得る。空気潤滑システムは、船体の底面外部に空気を噴射して、船体と海水との間に連続した空気層を形成することで、運航中の船体と海水との摩擦抵抗が低減され、船舶の燃費を向上させることができる。
【0090】
空気潤滑システムは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機(図示せず)、圧縮空気を供給する配管、空気噴射ユニット(図示せず)、船体の底面外部の表面に形成される空気層(図示せず)、制御部(図示せず)等を備えて構成される。また、空気潤滑システムに、廃熱回収システムで生成した圧縮空気を供給することもできる。また、本実施形態のシステムでは、膨張タービン300で生成した軸動力SPを利用して圧縮機で空気を圧縮し、圧縮された圧縮空気を空気潤滑システムに供給する。このように、空気潤滑システムの空気圧縮機に代替して廃熱回収システムの圧縮機を利用することができるため、空気潤滑システムに空気圧縮機等を別途設ける必要がない。また、空気潤滑システムに空気圧縮機が設けられている場合でも、空気圧縮機で不足する容量を、廃熱回収システムで生成した圧縮空気で補うことができるため、より小容量の空気圧縮機を使用することができる。
【0091】
以上のように、第3実施形態のシステムは、気化器100、凝縮器500及び復熱器400aの3台の熱交換器が設けられた熱媒体循環ラインRCLにより、低引火点燃料を使用するエンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。また、回収した廃熱を電力に変換して、または圧縮空気を生成して、船舶内の消費先に供給することで、船舶のエネルギー効率を向上させることができる。
【0092】
また、図4に示す第4実施形態は、復熱器400bを設ける位置が、上記第3実施形態のシステムと相違する。以下、第3実施形態のシステムと同様の構成については説明を省略し、上記第3実施形態と相違する構成を中心に説明する。
【0093】
図4に示すように、第4実施形態のシステムは、復熱器400bで、供給ポンプ600で加圧された作動流体が、気液分離器200で分離されてリキッドラインLLbを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱されるように構成されている。
【0094】
このように復熱器400bを配置したことで、気化器100で排気ガスの廃熱により加熱されても気化せずに液体状態である作動流体から熱エネルギーを回収して、凝縮器500及び供給ポンプ600から排出された作動流体を、気化器100に供給する前に予熱することができる。
【0095】
また、第4実施形態のシステムで、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体は、例えば、アンモニア水溶液であり得る。アンモニア水溶液が気化器100で低温の排気ガスとの熱交換により加熱される場合、沸点の低いアンモニアは気化して気体状態となるが、水は気化せずに液体状態であり得る。そして、気液分離器200で分離された気体状態のアンモニアが、膨張タービン300に供給される。一方、気液分離器200で分離された水は、リキッドラインLLbより復熱器400bに供給されて、熱エネルギーが回収された後、熱媒体循環ラインRCLの凝縮器500よりも上流側に供給され、膨張タービン300から排出されたアンモニアと共に、凝縮器500に供給されて凝縮する。
【0096】
以上のように、第4実施形態のシステムは、3台の熱交換器が設けられた熱媒体循環ラインRCLにより、排気ガスの廃熱を効果的に回収することで、船舶の熱効率が向上する。また、熱媒体循環ラインRCLの作動流体としてアンモニア水溶液を用いたことで、作動流体の補充や管理が容易となる。特に、エンジンの燃料としてアンモニアを使用するアンモニア燃料推進船やアンモニア運搬船に、本実施形態のシステムを適用する場合、燃料や貨物としてのアンモニアを熱媒体循環ラインRCLの作動流体として直接使用することができるため、冷媒管理システムを別途設ける必要がなく、冷媒貯蔵タンク等の関連設備の設置費用を削減することができる。
【0097】
図5には、本発明の第5実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。また、図6には、本発明の第6実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
【0098】
図5及び図6に示すように、第5及び第6実施形態の排気ガスの廃熱回収システムは、船舶に設けられて、作動流体が循環する熱媒体循環ラインRCLと、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により、作動流体を加熱して気化させる気化器100と、気化器100で加熱(気化)された作動流体を気液分離する気液分離器200と、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン300とを備える。
【0099】
第5及び第6実施形態では、エンジン(図示せず)に、低引火点の液化ガスが燃料として供給される。また、作動流体は、閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環すると共に、低引火点の液化ガスを燃料として使用するエンジンから排出された排気ガスを熱源として、液体から気体に相変化する。
【0100】
ここで、アンモニアやLPGは、低引火点の液化ガスの中でも比較的沸点が高く、プロパンを主成分とするLPGは、標準圧力下で、引火点が-105℃、また沸点が-42℃である。また、アンモニアの沸点は標準圧力下で-33℃であり、標準圧力下の沸点が-161℃のメタン(LNG)や-253℃の水素と比較して沸点が高い。このため、アンモニアやLPGをエンジンに燃料として供給する場合には、エンジンが要求する供給温度まで燃料を加熱するために必要な熱量が非常に少なくて済み、エンジンから排出された高温の排気ガスを利用して発生させた水蒸気を使用せずとも、エンジンの冷却水等で加熱した後、エンジンに燃料として供給することができる。また、燃料中に硫黄成分が含まれていないことから、低温腐食が発生し難く、温度が150℃以下の排気ガスからも廃熱を回収することができる。そこで、第5及び第6実施形態では、熱媒体循環ラインRCLに、低温廃熱の回収に適した有機ランキンサイクルを適用して、エンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。
【0101】
熱媒体循環ラインRCLには、排気ガスとの熱交換により作動流体を加熱して気化させる気化器100と、気化器100で加熱(気化)された作動流体を気液分離する気液分離器200と、気液分離器200で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン300と、膨張タービン300で膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮熱交換器400と、凝縮熱交換器400で凝縮した作動流体を加圧して、気化器100に送出する供給ポンプ600とが設けられている。また、気液分離器200で分離された液体状態の作動流体は、リキッドラインLLaまたはLLbによって熱媒体循環ラインRCLの膨張タービン300よりも下流側に供給されて、膨張タービン300から排出された作動流体と共に、凝縮熱交換器400に供給される。
【0102】
凝縮熱交換器400では、膨張タービン300で膨張により部分的に冷却された作動流体と、リキッドラインLLaまたはLLbより供給される作動流体とが、冷却されて凝縮する。そして、凝縮した液体状態の作動流体が供給ポンプ600に供給される。また、第5及び第6実施形態のシステムでは、凝縮熱交換器400に、第1冷却水供給ラインCL1より作動流体を冷却するための冷却水が供給される。また、凝縮熱交換器400で凝縮した後に供給ポンプ600で加圧された作動流体を、気化器100に供給する前に凝縮熱交換器400に供給する。これにより、凝縮熱交換器400で、膨張タービン300で膨張により冷却された熱媒体循環ラインRCLの作動流体の流れ、供給ポンプ600で加圧されて気化器100に供給される熱媒体循環ラインRCLの作動流体の流れ、及び、第1冷却水供給ラインCL1の冷却水の流れの3つの流体の流れを熱交換させる。
【0103】
3つの流体の流れを熱交換させることで、凝縮熱交換器400では、膨張タービン300で膨張により冷却された作動流体に、他の2つの流れからの冷熱が供給され、膨張タービン300で膨張により冷却された作動流体が効果的に凝縮する。また、供給ポンプ600で加圧された作動流体を、気化器100に供給する前に予熱することができる。このため、凝縮熱交換器400は、気体状態の作動流体を凝縮させる凝縮器(Condenser)としての機能を有すると共に、供給ポンプ600で加圧された作動流体を気化器100に供給する前に予熱する復熱器(Recuperator)としての機能も有する。これにより、装置数が削減されると共に船舶の熱効率を最大化することができる。
【0104】
また、第5実施形態のシステムでは、低温の排気ガスの廃熱も回収できるように、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体として、水よりも低い沸点を有する流体を用いることができる。
【0105】
また、図5に示すように、第5実施形態のシステムでは、凝縮熱交換器400で凝縮した液体状態の作動流体が、供給ポンプ600で膨張タービン300の駆動に必要な圧力まで加圧されて、凝縮熱交換器400に供給された後、気化器100に供給される。凝縮熱交換器400で予熱された後に気化器100に供給された作動流体は、排気ガス供給ラインHLより供給される排気ガスHMの廃熱によって加熱されて気化し、気液分離器200で分離された気体状態の作動流体が、膨張タービン300に供給される。気体状態の作動流体は、膨張タービン300で膨張することでタービンを駆動させて軸動力を生成する。また、膨張により部分的に冷却された作動流体が、凝縮熱交換器400に供給される。凝縮熱交換器400では、第1冷却水供給ラインCLより供給される冷却水CMの流れと、供給ポンプ600から送出されて気化器100に供給される前の作動流体の流れにとよって、膨張タービン300で膨張により部分的に冷却された作動流体が、さらに冷却(追加追加)されて凝縮する。そして、凝縮した液体状態の作動流体は、供給ポンプ600に供給されて、膨張タービン300の駆動に必要な圧力まで加圧される。
【0106】
このとき、本実施形態では、熱媒体循環ラインRCLの凝縮熱交換器400よりも下流側に、凝縮熱交換器400で凝縮した作動流体を、供給ポンプ600に供給する前に、さらに冷却(追加冷却)するサクションポット(Suction pot)500が設けられている。サクションポット500には、冷却水を供給する第2冷却水供給ラインCL2が接続されている。そして、第2冷却水供給ラインCL2より供給される冷却水との熱交換によって、供給ポンプ600に供給される前の作動流体がさらに冷却(追加冷却)される。このように、凝縮熱交換器400で冷却された作動流体を、サクションポット500で追加冷却した後に供給ポンプ600に供給することで、蒸気(Vapor)が供給ポンプに流入することで発生する供給ポンプの吸引部(Suction)でのキャビテーション(Cavitation)を防止して、システムの安定性が向上する。
【0107】
凝縮熱交換器400で冷却されて凝縮した後にサクションポット500で追加冷却された液体状態の作動流体は、供給ポンプ600で加圧された後、凝縮熱交換器400に供給されて予熱され、気化器100に供給される。このように、作動流体は、相変化を伴って閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環することで、排気ガスの廃熱を回収して、これを動力に変換する。
【0108】
また、本実施形態では、排気ガスの廃熱を利用して膨張タービン300で生成した軸動力SPを、発電機を駆動させて電力を生成するために使用することができ、また、軸動力SPを、船舶内消費先に供給される圧縮空気を生成するために圧縮機で使用してもよい。
【0109】
また、圧縮機(図示せず)を、シャフトを介して膨張タービン300に連結して構成することもできる。なお、圧縮機の圧縮比は、圧縮空気が供給される船舶内の消費先に応じて決定され得る。
【0110】
また、圧縮空気が供給される船舶内の消費先CSとしては、例えば、船舶の船体の底面外部に空気を噴射する空気潤滑システムであり得る。空気潤滑システムは、船体の底面外部に空気を噴射して、船体と海水との間に連続した空気層を形成することで、運航中の船体と海水との摩擦抵抗が低減され、船舶の燃費を向上させることができる。
【0111】
空気潤滑システムは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機(図示せず)、圧縮空気を供給する配管、空気噴射ユニット(図示せず)、船体の底面外部の表面に形成される空気層(図示せず)、制御部(図示せず)等を備えて構成される。また、空気潤滑システムに、廃熱回収システムで生成した圧縮空気を供給することもできる。また、本実施形態のシステムでは、膨張タービン300で生成した軸動力SPを利用して圧縮機で空気を圧縮し、圧縮された圧縮空気を空気潤滑システムに供給する。このように、空気潤滑システムの空気圧縮機に代替して廃熱回収システムの圧縮機を利用することができるため、空気潤滑システムに空気圧縮機等を別途設ける必要がない。また、空気潤滑システムに空気圧縮機が設けられている場合でも、空気圧縮機で不足する容量を、廃熱回収システムで生成した圧縮空気で補うことができるため、より小容量の空気圧縮機を使用することができる。
【0112】
以上のように、第5実施形態のシステムは、3つの流体の流れを熱交換させる凝縮熱交換器400が設けられた熱媒体循環ラインRCLにより、低引火点燃料を使用するエンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。また、回収した廃熱を電力に変換して、または圧縮空気を生成して、船舶内消費先に供給することで、船舶のエネルギー効率を向上させることができる。
【0113】
また、図6に示す第6実施形態は、気液分離器200で分離されてリキッドラインLLbを流れる液体状態の作動流体から熱エネルギーを回収する復熱器450を追加して設けた点で、上記第5実施形態のシステムと相違する。以下、第5実施形態のシステムと同様の構成については説明を省略し、上記第5実施形態と相違する構成を中心に説明する。
【0114】
図6に示すように、第6実施形態のシステムでは、熱媒体循環ラインRCLに、供給ポンプ500で加圧された後に凝縮熱交換器400で熱交換された作動流体を、気化器100に供給する前に、さらに加熱(追加加熱)する復熱器450が設けられている。復熱器450では、供給ポンプ600及び凝縮熱交換器400で加圧及び予熱された作動流体が、気液分離器200で分離されてリキッドラインLLbを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱される。
【0115】
このように復熱器450を配置したことで、気化器100で排気ガスの廃熱により加熱されても気化せずに液体状態である作動流体から熱エネルギーを回収して、供給ポンプ500及び凝縮熱交換器400から排出された作動流体を、気化器100に供給する前に予熱することができる。
【0116】
また、第6実施形態のシステムで、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体は、例えば、アンモニア水溶液であり得る。アンモニア水溶液が、気化器100で低温の排気ガスとの熱交換により加熱される場合、沸点の低いアンモニアは気化して気体状態となるが、水は気化せずに液体状態であり得る。そして、気液分離器200で分離された気体状態のアンモニアが、膨張タービン300に供給される。一方、気液分離器200で分離された水は、リキッドラインLLbより復熱器450に供給されて、熱エネルギーが回収された後、熱媒体循環ラインRCLの凝縮熱交換器400よりも上流側に供給され、膨張タービン300から排出されたアンモニアと共に、凝縮熱交換器400に供給されて凝縮する。
【0117】
以上のように、第6実施形態のシステムは、3つの流体の流れを熱交換させる凝縮熱交換器400を設けて、排気ガスの廃熱を効果的に回収し、船舶の熱効率を向上させることで、システムの構成が簡素化されると共に船舶の熱効率を最大化することができる。また、熱媒体循環ラインRCLの作動流体としてアンモニア水溶液を用いたことで、作動流体の補充や管理が容易となる。特に、エンジンの燃料としてアンモニアを使用するアンモニア燃料推進船やアンモニア運搬船に、本実施形態のシステムを適用する場合、燃料や貨物としてのアンモニアを熱媒体循環ラインRCLの作動流体として直接使用することができるため、冷媒管理システムを別途設ける必要がなく、冷媒貯蔵タンク等の関連設備の設置費用を削減することができる。
【0118】
図7には、本発明の第7実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。図8には、本発明の第8実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを概略的に示す。
【0119】
図7及び図8に示すように、第7及び第8実施形態の排気ガスの廃熱回収システムは、船舶に設けられて、作動流体が循環する熱媒体循環ラインRCLと、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により、作動流体を加熱して気化させる気化部100Aまたは100Bと、気化部100Aまたは100Bで加熱(気化)された作動流体を気液分離する気液分離器200と、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン300とを備える。
【0120】
第7及び第8実施形態では、エンジン(図示せず)に、低引火点の液化ガスが燃料として供給される。また、作動流体は、閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環すると共に、低引火点の液化ガスを燃料として使用するエンジンから排出された排気ガスを熱源として、液体から気体に相変化する。
【0121】
ここで、アンモニアやLPGは、低引火点の液化ガスの中でも比較的沸点が高く、プロパンを主成分とするLPGは、標準圧力下で、引火点が-105℃、また沸点が-42℃である。また、アンモニアの沸点は標準圧力下で-33℃であり、標準圧力下の沸点が-161℃のメタン(LNG)や-253℃の水素と比較して沸点が高い。このため、アンモニアやLPGをエンジンに燃料として供給する場合には、エンジンが要求する供給温度まで燃料を加熱するために必要な熱量が非常に少なくて済み、エンジンから排出された高温の排気ガスを利用して発生させた水蒸気を使用せずとも、エンジンの冷却水等で加熱した後、エンジンに燃料として供給することができる。また、燃料中に硫黄成分が含まれていないことから、低温腐食が発生し難く、温度が150℃以下の排気ガスからも廃熱を回収することができる。そこで、第7及び第8実施形態では、熱媒体循環ラインRCLに、低温廃熱の回収に適した有機ランキンサイクルを適用して、エンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。
【0122】
熱媒体循環ラインRCLには、排気ガスとの熱交換により作動流体を加熱して気化させる気化部100Aまたは100Bと、気化部100Aまたは100Bで加熱(気化)された作動流体を気液分離する気液分離器200と、気液分離器200で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン300と、膨張タービン300で膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮熱交換器400と、凝縮熱交換器400で凝縮した作動流体を加圧して気化部100Aまたは100Bに送出する供給ポンプ500とが設けられている。気液分離器200で分離された液体状態の作動流体は、リキッドラインLLaまたはLLbによって熱媒体循環ラインRCLの膨張タービン300よりも下流側に供給されて、膨張タービン300から排出された作動流体と共に、凝縮熱交換器400に供給される。
【0123】
凝縮熱交換器400では、膨張タービン300で膨張により部分的に冷却された作動流体と、リキッドラインLLaまたはLLbより供給される作動流体とが、冷却されて凝縮する。そして、凝縮した液体状態の作動流体が供給ポンプ500に供給される。また、第7及び第8実施形態のシステムでは、凝縮熱交換器400に、冷却水供給ラインCLより作動流体を冷却するための冷却水CMが供給される。また、凝縮熱交換器400で凝縮した後に供給ポンプ500で加圧された作動流体を、気化部100Aまたは100Bに供給する前に、凝縮熱交換器400に供給する。これにより、凝縮熱交換器400で、膨張タービン300で膨張により冷却された熱媒体循環ラインRCLの作動流体の流れ、供給ポンプ500で加圧されて気化部100Aまたは100Bに供給される熱媒体循環ラインRCLの作動流体の流れ、及び、冷却水供給ラインCLの冷却水CMの流れの3つの流体の流れを熱交換させる。
【0124】
3つの流体の流れを熱交換させることで、凝縮熱交換器400では、膨張タービン300で膨張により冷却された作動流体に、他の2つの流れからの冷熱が供給され、膨張タービン300で膨張により冷却された作動流体が効果的に凝縮する。また、供給ポンプ600で加圧された作動流体を、気化部100Aまたは100Bに供給する前に予熱することができる。このため、凝縮熱交換器400は、気体状態の作動流体を液体に凝縮させる凝縮器としての機能を有すると共に、供給ポンプ500で加圧された作動流体を気化部100Aまたは100Bに供給する前に予熱する復熱器としての機能も有する。これにより、装置数が削減されると共に船舶の熱効率を最大化することができる。
【0125】
また、第7及び第8実施形態のシステムは、気化部100Aまたは100Bが、供給ポンプ500から送出された作動流体が流れる方向に順じて設けられる気化器110aまたは110bと、過熱器120aまたは120bとを夫々備える。排気ガス供給ラインHLより供給される排気ガスHMは、気化部100Aまたは100Bの過熱器120aまたは120bに供給された後、気化部100Aまたは100Bの気化器110aまたは110bに供給される。また、過熱器120aまたは120bに供給される排気ガスは、気化器110aまたは110bに供給される排気ガスに比べて高温である。
【0126】
また、図7に示すように、第7実施形態のシステムでは、供給ポンプ500で加圧された作動流体を凝縮熱交換器400で予熱した後、気化部100Aの気化器110aで比較的低温の排気ガスとの熱交換により気化させた作動流体を、気液分離器200で気液分離する。気液分離器200で分離した気体状態の作動流体を、気化部100Aの過熱器120aに供給し、比較的高温の排気ガスによって、さらに加熱(追加加熱)して膨張タービン300に供給する。このように、第7実施形態のシステムは、膨張タービン300に供給される前の作動流体を、過熱器120aで高温の排気ガスにより過熱状態まで追加加熱することで、液滴の発生が防止される。また、本実施形態のシステムは、廃熱回収効率やシステムの安定性を向上させることができる。
【0127】
また、第7実施形態のシステムでは、低温の排気ガスの廃熱も回収できるように、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体として、水よりも低い沸点を有する流体を用いることができる。
【0128】
また、図7に示すように、第7実施形態のシステムでは、凝縮熱交換器400で凝縮した液体状態の作動流体が、供給ポンプ500で膨張タービン300の駆動で必要な圧力まで加圧されて、凝縮熱交換器400に供給されて予熱された後、気化部100Aの気化器110aに供給される。凝縮熱交換器400で予熱された後に気化器110aに供給された作動流体は、排気ガス供給ラインHLより供給される排気ガスHMの廃熱によって加熱されて気化し、気液分離器200で分離された気体状態の作動流体が、気化部100Aの過熱器120aに供給される。過熱器120aに供給された作動流体は、排気ガス供給ラインHLより供給される高温の排気ガスHMによって、過熱状態まで加熱されて膨張タービン300に供給される。気体状態の作動流体は、膨張タービン300で膨張することでタービンを駆動させて軸動力を生成する。また、膨張により部分的に冷却された作動流体が、凝縮熱交換器400に供給される。凝縮熱交換器400で、作動流体は、冷却水供給ラインCLより供給される冷却水CMの流れと、供給ポンプ500から送出されて気化器110aに供給される前の作動流体の流れとによって、さらに冷却(追加冷却)されて凝縮する。そして、凝縮した液体状態の作動流体は、供給ポンプ500に供給されて、膨張タービン300の駆動に必要な圧力まで加圧される。
【0129】
供給ポンプ500で加圧された作動流体は、凝縮熱交換器400に供給されて予熱されて、気化器110aに供給される。このように、作動流体は、相変化を伴って閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環することで、排気ガスの廃熱を回収して、これを動力に変換する。
【0130】
また、本実施形態では、排気ガスの廃熱を利用して膨張タービン300で生成した軸動力SPを、発電機を駆動させて電力を生成するために使用することができ、また、軸動力SPを、船舶内消費先に供給される圧縮空気を生成するために圧縮機で使用してもよい。
【0131】
また、圧縮機(図示せず)を、シャフトを介して膨張タービン300に連結して構成することもできる。なお、圧縮機の圧縮比は、圧縮空気が供給される船舶内の消費先に応じて決定され得る。
【0132】
また、圧縮空気が供給される船舶内の消費先CSとしては、例えば、船舶の船体の底面外部に空気を噴射する空気潤滑システムであり得る。空気潤滑システムは、船体の底面外部に空気を噴射して、船体と海水との間に連続した空気層を形成することで、運航中の船体と海水との摩擦抵抗が低減され、船舶の燃費を向上させることができる。
【0133】
空気潤滑システムは、船体の底面外部に噴射される圧縮空気を生成する空気圧縮機(図示せず)、圧縮空気を供給する配管、空気噴射ユニット(図示せず)、船体の底面外部の表面に形成される空気層(図示せず)、制御部(図示せず)等を備えて構成される。また、空気潤滑システムに、廃熱回収システムで生成した圧縮空気を供給することもできる。また、本実施形態のシステムでは、膨張タービン300で生成した軸動力SPを利用して圧縮機で空気を圧縮し、圧縮された圧縮空気を空気潤滑システムに供給する。このように、空気潤滑システムの空気圧縮機に代替して廃熱回収システムの圧縮機を利用することができるため、空気潤滑システムに空気圧縮機等を別途設ける必要がない。また、空気潤滑システムに空気圧縮機が設けられている場合でも、空気圧縮機で不足する容量を、廃熱回収システムで生成した圧縮空気で補うことができるため、より小容量の空気圧縮機を使用することができる。
【0134】
以上のように、第7実施形態のシステムは、3つの流体の流れを熱交換させる凝縮熱交換器400が設けられた熱媒体循環ラインRCLにより、低引火点燃料を使用するエンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。また、回収した廃熱を電力に変換して、または圧縮空気を生成して、船舶内消費先に供給することで、船舶のエネルギー効率を向上させることができる。
【0135】
また、図8に示す第8実施形態は、気液分離器200で分離されてリキッドラインLLbを流れる液体状態の作動流体から熱エネルギーを回収する復熱器450と、低温の排気ガスの排熱を回収する排熱ヒーター130bとを追加して設けた点で、上記第7実施形態のシステムと相違する。以下、第7実施形態のシステムと同様の構成については説明を省略し、上記第7実施形態と相違する構成を中心に説明する。
【0136】
図8に示すように、第8実施形態のシステムでは、熱媒体循環ラインRCLに、供給ポンプ500で加圧された後に凝縮熱交換器400で熱交換された作動流体を、気化部110Bの気化器110bに供給する前に、さらに加熱(追加加熱)する復熱器450が設けられている。復熱器450では、供給ポンプ500及び凝縮熱交換器400で加圧及び予熱された作動流体が、気液分離器200で分離されてリキッドラインLLbを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱される。
【0137】
このように復熱器450を配置したことで、気化器110bで排気ガスの廃熱により加熱されても気化せずに液体状態である作動流体から熱エネルギーを回収して、供給ポンプ500及び凝縮熱交換器400から排出された作動流体を、気化器100に供給する前に予熱することができる。
【0138】
また、第8実施形態のシステムで、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体は、例えば、アンモニア水溶液であり得る。アンモニア水溶液が、気化部110Bの気化器110bで低温の排気ガスとの熱交換により加熱される場合、沸点の低いアンモニアは気化して気体状態となるが、水は気化せずに液体状態であり得る。そして、気液分離器200で分離された気体状態のアンモニアが、過熱器120bで過熱状態まで加熱された後に膨張タービン300に供給される。一方、気液分離器200で分離された水は、リキッドラインLLbより復熱器450に供給されて、熱エネルギーが回収された後、熱媒体循環ラインRCLの凝縮熱交換器400よりも上流側に供給され、膨張タービン300から排出されたアンモニアと共に、凝縮熱交換器400に供給されて凝縮する。
【0139】
また、第8実施形態では、気化部100Bに、排気ガス供給ラインHLより過熱器120b及び気化器110bに供給されて気化器110bから排出された低温の排気ガスと、作動流体とを熱交換させる排熱ヒーター130bがさらに設けられている。供給ポンプ500で加圧された後に凝縮熱交換器400で熱交換された作動流体の一部を、分岐ラインRCLbで分岐させて、排熱ヒーター130bで低温の排気ガスにより加熱した後、熱媒体循環ラインRCLの復熱器450よりも下流側に供給する。すなわち、供給ポンプ500で加圧された後に凝縮熱交換器400で予熱された作動流体の一部が、復熱器450でリキッドラインLLbの流体の流れにより加熱されると共に、分岐させた作動流体の一部が、排熱ヒーター130bで低温の排気ガスの流れにより加熱される。そして、これらを、熱媒体循環ラインRCLの復熱器450よりも下流側で合流させて、気化部110Bの気化器110bに供給する。これにより、排気ガスの廃熱回収量をさらに向上させることができる。
【0140】
以上のように、第8実施形態のシステムは、3つの流体の流れを熱交換させる凝縮熱交換器400を設けて、排気ガスの廃熱を効果的に回収し、船舶の熱効率を向上させることで、システムの構成が簡素化されると共に船舶の熱効率を最大化することができる。また、熱媒体循環ラインRCLの作動流体としてアンモニア水溶液を用いたことで、作動流体の補充や管理が容易となる。特に、エンジンの燃料としてアンモニアを使用するアンモニア燃料推進船やアンモニア運搬船に、本実施形態のシステムを適用する場合、燃料や貨物としてのアンモニアを熱媒体循環ラインRCLの作動流体として直接使用することができるため、冷媒管理システムを別途設ける必要がなく、冷媒貯蔵タンク等の関連設備の設置費用を削減することができる。
【0141】
図9乃至図12には、本発明の第9乃至第12実施形態の船舶用の排気ガスの廃熱回収システムを夫々概略的に示す。
【0142】
図9乃至図12に示すように、第9乃至第12実施形態の排気ガスの廃熱回収システムは、船舶に設けられて、作動流体が循環する熱媒体循環ラインRCLと、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、船舶のエンジンから排出された排気ガスとの熱交換により、作動流体を加熱して気化させる気化器100と、気化器100で加熱(気化)された作動流体を気液分離する気液分離器200と、熱媒体循環ラインRCLに設けられて、作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン300とを備える。
【0143】
第9乃至第12実施形態では、エンジン(図示せず)に、低引火点の液化ガスが燃料として供給される。また、作動流体は、閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環すると共に、低引火点の液化ガスを燃料として使用するエンジンから排出された排気ガスを熱源として、液体から気体に相変化する。
【0144】
ここで、アンモニアやLPGは、低引火点の液化ガスの中でも比較的沸点が高く、プロパンを主成分とするLPGは、標準圧力下で、引火点が-105℃、また沸点が-42℃である。また、アンモニアの沸点は標準圧力下で-33℃であり、標準圧力下の沸点が-161℃のメタン(LNG)や-253℃の水素と比較して沸点が高い。このため、アンモニアやLPGをエンジンに燃料として供給する場合には、エンジンが要求する供給温度まで燃料を加熱するために必要な熱量が非常に少なくて済み、エンジンから排出された高温の排気ガスを利用して発生させた水蒸気を使用せずとも、エンジンの冷却水等で加熱した後、エンジンに燃料として供給することができる。また、燃料中に硫黄成分が含まれていないことから、低温腐食が発生し難く、温度が150℃以下の排気ガスからも廃熱を回収することができる。そこで、第9乃至第12実施形態では、熱媒体循環ラインRCLに、低温廃熱の回収に適した有機ランキンサイクルを適用して、エンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。
【0145】
熱媒体循環ラインRCLには、排気ガスとの熱交換により作動流体を加熱して気化させる気化部100と、気化部100で加熱(気化)された作動流体を気液分離する気液分離器200と、気液分離器200で分離された気体状態の作動流体を膨張させて軸動力を生成する膨張タービン300と、膨張タービン300で膨張により冷却された作動流体を冷却して凝縮させる凝縮器400と、凝縮器400で凝縮した作動流体を加圧して気化部100に送出する供給ポンプ500と、供給ポンプ500で加圧された作動流体を加熱して気化部100に供給する第1及び第2の復熱器600,650とが設けられている。第1及び第2の復熱器600,650は、供給ポンプ500で加圧された作動流体を、気化部100に供給する前に予熱する機能を有する。第1復熱器600では、供給ポンプ500で加圧された作動流体と、膨張タービン300で膨張により冷却された後に凝縮器400に供給される前の作動流体とを熱交換させる。また、第2復熱器650a,650b,650c,650dでは、供給ポンプ500で加圧された作動流体が、船舶内の圧縮装置や冷却装置等から供給される廃熱によって加熱される。また、気液分離器200で分離された液体状態の作動流体は、リキッドラインLL,またはLLcもしくはLLdによって熱媒体循環ラインRCLの膨張タービン300よりも下流側に供給されて、膨張タービン300から排出された作動流体と共に、第1復熱器600に供給された後に凝縮器400に供給される。
【0146】
また、第9乃至第12実施形態のシステムは、気化部100が、供給ポンプ500から送出された作動流体が流れる方向に順じて設けられる気化器110と過熱器120とを備える。排気ガス供給ラインHLより供給される排気ガスHMは、気化部100の過熱器120に供給された後、気化部100の気化器110に供給される。また、過熱器120に供給される排気ガスは、気化器110に供給される排気ガスに比べて高温である。
【0147】
また、図9及び図10に示すように、第9及び第10の実施形態のシステムでは、供給ポンプ500で加圧された作動流体を、第1または第2の復熱器600または650aもしくは650bで予熱した後、気化器110で比較的低温の排気ガスとの熱交換により気化させた作動流体を、気液分離器200で気液分離する。気液分離器200で分離した気体状態の作動流体を、気化部100の過熱器120に供給し、比較的高温の排気ガスによって、さらに加熱(追加加熱)して膨張タービン300に供給する。このように、第9及び第10の実施形態では、膨張タービン300に供給される前の作動流体を、過熱器120で高温の排気ガスにより過熱状態まで追加加熱することで、液滴の発生が防止される。また、本実施形態のシステムは、廃熱回収効率やシステムの安定性を向上させることができる。
【0148】
また、第9及び第10実施形態のシステムでは、低温の排気ガスの廃熱も回収できるように、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体として、水よりも低い沸点を有する流体を用いることができる。
【0149】
また、図9及び図10に示すように、第9及び第10実施形態のシステムでは、凝縮器400で凝縮した液体状態の作動流体が、供給ポンプ500で膨張タービン300の駆動に必要な圧力まで加圧されて、第1または第2の復熱器600または650aもしくは650bに供給されて予熱された後、気化部100の気化器110に供給される。供給ポンプ500で加圧された作動流体は、2つの流れに分岐して、第1復熱器600と第2復熱器650aまたは650bとに夫々供給される。第1復熱器600では、熱媒体循環ラインRCLのリキッドラインLLとの合流点よりも下流側で、膨張タービン300から排出されて凝縮器400に供給される前の作動流体との熱交換により、供給ポンプ500で加圧された作動流体が加熱される。また、第2復熱器650aまたは650bでは、船舶内の圧縮装置や冷却装置等の他の装置から排出される空気や冷却水等の廃熱によって、供給ポンプ500で加圧された作動流体が加熱される。すなわち、第1復熱器600では、供給ポンプ500で加圧されて送出された作動流体と、凝縮器400に供給される前の作動流体とを熱交換させる。また、第2復熱器650aまたは650bでは、船舶内の他の装置の廃熱が回収される。第1または第2の復熱器600または650aもしくは650bで予熱された後に気化器110に供給された作動流体は、排気ガス供給ラインHLより過熱器120に供給された後に気化器110に供給された排気ガスHMの廃熱によって加熱されて気化し、気液分離器200で分離された気体状態の作動流体が、気化部100の過熱器120に供給される。過熱器120に供給された作動流体は、排気ガス供給ラインHLより供給される高温の排気ガスによって、過熱状態まで加熱されて膨張タービン300に供給される。気体状態の作動流体は、膨張タービン300で膨張することでタービンを駆動させて軸動力を生成する。また、膨張により部分的に冷却された作動流体を、第1復熱器600で熱交換させて、凝縮器400に供給する。凝縮器400で、作動流体は、冷却水供給ラインCLより供給される冷却水によって、さらに冷却(追加冷却)されて凝縮する。そして、凝縮した液体状態の作動流体が供給ポンプ500に供給される。このように、作動流体は、相変化を伴って閉ループの熱媒体循環ラインRCLを循環することで、排気ガスの廃熱を回収して、これを動力に変換する。
【0150】
また、第9実施形態のシステムでは、排気ガスの廃熱を利用して膨張タービン300で生成した軸動力SPを、発電機を駆動させて電力を生成するために使用することができ、また、軸動力SPを、船舶内消費先に供給される圧縮空気を生成するために圧縮機で使用してもよい。
【0151】
また、図10に示す第10実施形態のシステムは、膨張タービン300にシャフトを介して連結される圧縮機350を追加して設けた点で、上記第9実施形態のシステムと相違する。
【0152】
図10に示すように、第10実施形態のシステムは、膨張タービン300で生成した軸動力を使用して、空気を圧縮する圧縮機350と、圧縮機350に空気を供給する空気供給ラインALとをさらに備えて構成される。
【0153】
第10実施形態のシステムでは、圧縮機350で圧縮された圧縮空気を、空気供給ラインALより第2復熱器650bに供給して作動流体と熱交換させた後、船舶内の消費先CSに供給する。すなわち、第10実施形態と後述する第12実施形態システムとでは、膨張タービン300にシャフトを介して連結された圧縮機350が設けられている。圧縮機350は、軸動力を使用し、空気を圧縮して圧縮空気を生成し、圧縮機350で圧縮された圧縮空気が船舶内の消費先CSに供給される。また、圧縮機350より吐出された圧縮空気の熱が、第2復熱器650bまたは650dで回収されて、作動流体の予熱に利用される。
【0154】
また、圧縮空気が供給される船舶内の消費先CSとしては、例えば、船舶の船体の底面外部に空気を噴射する空気潤滑システムであり得る。空気潤滑システムは、船体の底面外部に空気を噴射して、船体と海水との間に連続した空気層を形成することで、運航中の船体と海水との摩擦抵抗が低減され、船舶の燃費を向上させることができる。
【0155】
また、空気潤滑システムは、船体の底面外部に噴射される圧縮空気を生成するための空気圧縮機(図示せず)、圧縮空気を供給する配管、空気噴射ユニット(図示せず)、船体の底面外部の表面に形成される空気層(図示せず)、制御部(図示せず)等を備えて構成される。また、空気潤滑システムに、廃熱回収システムで生成した圧縮空気を供給することもできる。また、本実施形態のシステムでは、膨張タービン300で生成した軸動力を利用して圧縮機で空気を圧縮し、圧縮された圧縮空気を空気潤滑システムに供給する。このように、空気潤滑システムの空気圧縮機に代替して廃熱回収システムの圧縮機を利用することができるため、空気潤滑システムに空気圧縮機等を別途設ける必要がない。また、空気潤滑システムに空気圧縮機が設けられている場合でも、空気圧縮機で不足する容量を、廃熱回収システムで生成した圧縮空気で補うことができるため、より小容量の空気圧縮機を使用することができる。また、空気潤滑システムに圧縮空気を供給する場合、圧縮機350を約2の圧縮比で作動させる。また、この場、圧縮機350を単段(一段)遠心式圧縮機で構成することができる。
【0156】
以上のように、第9及び第10実施形態のシステムは、複数の復熱器600,650bが設けられた熱媒体循環ラインRCLと、排気ガスの温度に応じて順に廃熱を回収するように構成した気化部100とにより、低引火点燃料を使用するエンジンから排出された排気ガスの廃熱を回収する。また、回収した廃熱を電力に変換して、または圧縮空気を生成して、船舶内の消費先に供給することで、船舶のエネルギー効率を向上させることができる。
【0157】
次に、図11及び図12に示す第11及び第12実施形態のシステムは、気液分離器200で分離されてリキッドラインLLcまたはLLdを流れる液体状態の作動流体から熱エネルギーを回収する第3復熱器700と、気化部100に設けられて、低温の排気ガスの排熱を回収する排熱ヒーター130とを追加して設けた点で、上記第9及び第10実施形態のシステムと相違する。以下、上記第9及び第10実施形態のシステムと同様の構成については説明を省略し、上記第9及び第10実施形態と相違する構成を中心に説明する。
【0158】
図11及び図12に示すように、第11及び第12実施形態のシステムでは、熱媒体循環ラインRCLに、供給ポンプ500で加圧された後に第1または第2の復熱器600または650cもしくは650dで予熱された作動流体を加熱する第3復熱器700が設けられている。第3復熱器700で加熱された作動流体は、気化器110に供給される。第11及び第12実施形態のシステムで、供給ポンプ500で加圧された作動流体は、2つの流れに分岐されて、第1または第2復熱器600または650cもしくは650dに夫々供給される。そして、第1または第2復熱器600または650cもしくは650dから排出されて合流した作動流体が、気液分離器200で分離されてリキッドラインLLcまたはLLdを流れる液体状態の作動流体との熱交換により加熱される。
【0159】
このように第3復熱器700を配置したことで、気化器110で排気ガスの廃熱により加熱されても気化せずに液体状態である作動流体から熱エネルギーを回収して、供給ポンプ500及び第1または第2復熱器600または650cもしくは650dから排出された作動流体を、気化器110に供給する前に予熱することができる。
【0160】
また、第11及び第12実施形態のシステムで、熱媒体循環ラインRCLを循環する作動流体は、例えば、アンモニア水溶液であり得る。アンモニア水溶液が、気化部100の気化器110で低温の排気ガスとの熱交換により加熱される場合、沸点の低いアンモニアは気化して気体状態となるが、水は気化せずに液体状態であり得る。そして、気液分離器200で分離された気体状態のアンモニアが、過熱器120で過熱状態まで加熱されて、膨張タービン300に供給される。一方、気液分離器200で分離された水は、リキッドラインLLcまたはLLdより第3復熱器700に供給されて、熱エネルギーが回収された後、熱媒体循環ラインRCLの膨張タービン300よりも下流側に供給されて、膨張タービン300から排出されたアンモニアと共に、第1復熱器600に供給された後、凝縮器400に供給される。
【0161】
また、第11及び第12実施形態のシステムでは、気化部100に、排熱ヒーター130がさらに設けられている。排熱ヒーター130では、排気ガス供給ラインHLより過熱器120及び気化器110に供給されて気化器110から排出された低温の排気ガスと、作動流体とが熱交換される。供給ポンプ500で加圧された後に第1復熱器600で熱交換された作動流体の一部を、分岐ラインRCLcまたはRCLdで分岐させて、排熱ヒーター130で低温の排気ガスにより加熱した後、熱媒体循環ラインRCLの第3復熱器700よりも下流側に供給する。すなわち、供給ポンプ500で加圧された後に第1復熱器600で予熱された作動流体の一部が、第3復熱器700でリキッドラインLLcまたはLLdの流体の流れにより加熱されると共に、分岐させた作動流体の一部が、排熱ヒーター130で低温の排気ガスの流れにより加熱される。そして、これらを、熱媒体循環ラインRCLの第3復熱器700よりも下流側で合流させて、気化部100の気化器110に供給する。これにより、排気ガスの廃熱回収量をさらに向上させることができる。
【0162】
また、第12実施形態のシステムは、上記第10実施形態のシステムと同様に、軸動力を使用して圧縮機350で生成した圧縮空気を、空気供給ラインALより第2復熱器650dに供給した後に船舶内の消費先CSに供給して、圧縮機350より吐出された圧縮空気の熱を作動流体の予熱に利用できるように構成されている。なお、上記第11実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0163】
以上のように、本実施形態のシステムは、第3復熱器700と排熱ヒーター130とを設けたことで、船舶の熱効率がさらに向上され、排気ガスの廃熱を効果的に回収することができる。また、熱媒体循環ラインRCLの作動流体としてアンモニア水溶液を用いたことで、作動流体の補充や管理が容易となる。特に、エンジンの燃料としてアンモニアを使用するアンモニア燃料推進船やアンモニア運搬船に、本実施形態のシステムを適用する場合、燃料や貨物としてのアンモニアを熱媒体循環ラインRCLの作動流体として直接使用することができるため、冷媒管理システムを別途設ける必要がなく、冷媒貯蔵タンク等の関連設備の設置費用を削減することができる。
【0164】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で様々な変更または変形ができることは、本発明が属する技術分野の当業者にとって自明である。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【国際調査報告】