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特表2024-546923P53腫瘍抗原を標的とするMANABODY及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】P53腫瘍抗原を標的とするMANABODY及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20241219BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20241219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C07K16/46
C07K16/28
C12N15/13
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/65
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535795
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 US2022053065
(87)【国際公開番号】W WO2023114430
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,353
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲルシュタイン バート
(72)【発明者】
【氏名】キンズラー ケネス ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】パパドプーロス ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シビン
(72)【発明者】
【氏名】ディナポリ サラ
(72)【発明者】
【氏名】シュエ エミリー ハン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】モグ ブライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ライト キャサリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ガベリ サンドラ ビー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書に記載されるのは、がんを有するかもしくはがんを有すると疑われる哺乳動物を評価するための、及び/またはがんを有する哺乳動物を治療するための、方法及び組成物である。例えば、修飾ペプチド(例えば、腫瘍抗原)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))を含む分子、及びそのような分子を使用するための方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号8を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR1、
(ii)配列番号9または配列番号23を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR2、
(iii)配列番号10を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR3、
(iv)配列番号17を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR1、
(v)配列番号18または配列番号27を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR2、及び
(vi)配列番号19を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR3
を含む第1の抗原結合ドメインを含む、分子。
【請求項2】
前記第1の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号23を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖CDR2、または
(b)配列番号27を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖CDR2、または
(c)配列番号23を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖CDR2、及び配列番号27を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖CDR2
を含む、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
前記第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号7または配列番号22と少なくとも90%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び
(ii)配列番号16または配列番号26と少なくとも90%同一の配列を含むscFv重鎖
を含む、請求項1または2に記載の分子。
【請求項4】
前記第1の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号7と少なくとも90%同一の配列を含む前記scFv軽鎖、及び配列番号26と少なくとも90%同一の配列を含む前記scFv重鎖、または
(b)配列番号22と少なくとも90%同一の配列を含む前記scFv軽鎖、及び配列番号16と少なくとも90%同一の配列を含む前記scFv重鎖、または
(c)配列番号22と少なくとも90%同一の配列を含む前記scFv軽鎖、及び配列番号26と少なくとも90%同一の配列を含む前記scFv重鎖
を含む、請求項3に記載の分子。
【請求項5】
前記第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号7または配列番号22と少なくとも98%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び
(ii)配列番号16または配列番号26と少なくとも98%同一の配列を含むscFv重鎖
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の分子。
【請求項6】
前記第1の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号7と少なくとも98%同一の配列を含む前記scFv軽鎖、及び配列番号26と少なくとも98%同一の配列を含む前記scFv重鎖、または
(b)配列番号22と少なくとも98%同一の配列を含む前記scFv軽鎖、及び配列番号16と少なくとも98%同一の配列を含む前記scFv重鎖、または
(c)配列番号22と少なくとも98%同一の配列を含む前記scFv軽鎖、及び配列番号26と少なくとも98%同一の配列を含む前記scFv重鎖
を含む、請求項5に記載の分子。
【請求項7】
前記第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号7または配列番号22を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖、及び
(ii)配列番号16または配列番号26を含むかまたはそれからなるscFv重鎖
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の分子。
【請求項8】
前記第1の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号7を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖、及び配列番号26を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖、または
(b)配列番号22を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖、及び配列番号16を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖、または
(c)配列番号22を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖、及び配列番号26を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖
を含む、請求項7に記載の分子。
【請求項9】
抗体、抗体断片、一本鎖可変断片(scFv)、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、TCR模倣体、タンデムscFv、二重特異性T細胞エンゲージャー、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ(scDb)、scFv-Fc、二重特異性抗体、及び二重親和性再ターゲティング抗体(DART)からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の分子。
【請求項10】
CD3、CD28、CD4、CD8、CD16a、NKG2D、PD-1、CTLA-4、4-1BB、OX40、ICOS、及びCD27からなる群から選択されるエフェクター細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合ドメインをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の分子。
【請求項11】
前記第2の抗原結合ドメインが、CD3に結合することができる、請求項10に記載の分子。
【請求項12】
CD3に結合することができる前記第2の抗原結合ドメインが、表3に示されるものから選択される可変軽鎖及び可変重鎖を含む、請求項11に記載の分子。
【請求項13】
CD3に結合することができる前記第2の抗原結合ドメインが、表2に示されるもの(配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51)のうちのいずれか1つを含むかまたはそれからなる、請求項12に記載の分子。
【請求項14】
一本鎖ダイアボディ(scDb)である、請求項1~13のいずれか1項に記載の分子。
【請求項15】
前記一本鎖ダイアボディが、N末端からC末端の順に、
(i)(a)配列番号8を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR1、
(b)配列番号9または配列番号23を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR2、
(c)配列番号10を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR3
を含む、scFv軽鎖と、
(ii)CD3、CD28、CD4、CD8、CD16a、NKG2D、PD-1、CTLA-4、4-1BB、OX40、ICOS、及びCD27からなる群から選択されるエフェクター細胞受容体に結合することができる、抗原結合ドメインと、
(iii)(a)配列番号17を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR1、
(b)配列番号18または配列番号27を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR2、及び
(c)配列番号19を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR3
を含む、scFv重鎖と
を含む、請求項14に記載の分子。
【請求項16】
前記一本鎖ダイアボディが、
(a)配列番号23を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖CDR2、または
(b)配列番号27を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖CDR2、または
(c)配列番号23を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖CDR2、及び配列番号27を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖CDR2
を含む、請求項15に記載の分子。
【請求項17】
前記一本鎖ダイアボディが、N末端からC末端の順に、
(i)配列番号7または配列番号22を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖と、
(ii)CD3、CD28、CD4、CD8、CD16a、NKG2D、PD-1、CTLA-4、4-1BB、OX40、ICOS、及びCD27からなる群から選択されるエフェクター細胞受容体に結合することができる抗原結合ドメインと、
(iii)配列番号16または配列番号26を含むかまたはそれからなるscFv重鎖と
を含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の分子。
【請求項18】
前記一本鎖ダイアボディが、
(a)配列番号7を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖、及び配列番号26を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖、または
(b)配列番号22を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖、及び配列番号16を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖、または
(c)配列番号22を含むかもしくはそれからなる前記scFv軽鎖、及び配列番号26を含むかもしくはそれからなる前記scFv重鎖
を含む、請求項17に記載の分子。
【請求項19】
前記抗原結合ドメインが、CD3抗原結合ドメインである、請求項15または請求項17に記載の分子。
【請求項20】
前記CD3抗原結合ドメインが、表3に示されるものから選択される可変軽鎖及び可変重鎖を含む、請求項19に記載の分子。
【請求項21】
前記抗原結合ドメインの前記可変軽鎖及び前記可変重鎖が、リンカー、好ましくは3×GSリンカー(配列番号13)によって分離されている、請求項20に記載の分子。
【請求項22】
CD3に結合することができる前記抗原結合ドメインが、表2に示されるもの(配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51)のうちのいずれか1つを含むかまたはそれからなる、請求項19~21のいずれか1項に記載の分子。
【請求項23】
前記scFv軽鎖と前記抗原結合ドメインとの間の第1のリンカー、および
前記抗原結合ドメインと前記scFv重鎖との間の第2のリンカー
をさらに含む、請求項15~22のいずれか1項に記載の分子。
【請求項24】
前記第1のリンカーが、G4S(配列番号11)を含むかまたはそれからなり、前記第2のリンカーが、G4S(配列番号15)を含むかまたはそれからなる、請求項23に記載の分子。
【請求項25】
を含むかまたはそれからなる変異ペプチドを発現するがんを有する哺乳動物を治療するための方法であって、
請求項1~24のいずれか1項に記載の分子を前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記がんが、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患、肺癌、膵臓癌、胃癌(gastric cancer)、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胆道癌、肝臓癌、乳癌、前立腺癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、腎臓癌、骨癌、軟部組織癌、頭頸部癌、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、甲状腺癌、胚細胞性腫瘍、または黒色腫である、請求項25または請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月16日に出願された米国仮特許出願第63/290,353号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、「44807-0407WO1_SL_ST26.XML」という名称のXMLファイルとして電子的に提出された配列表を含む。XMLファイルは、2022年12月8日に作成され、82,067バイトのサイズである。XMLファイル内の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
連邦政府支援の研究または開発
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金CA006973の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0004】
技術分野
本明細書に記載されるのは、がんを有するかもしくはがんを有すると疑われる哺乳動物を評価するための、及び/またはがんを有する哺乳動物を治療するための、方法及び組成物である。例えば、修飾ペプチド(例えば、腫瘍抗原)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))を含む分子、及びそのような分子を使用するための方法が提供される。
【背景技術】
【0005】
背景
近年、抗体及び細胞に基づく免疫療法が、有望ながん治療として台頭してきている。しかしながら、腫瘍細胞で発現が上昇した抗原を標的とする多くの免疫療法は、正常細胞における同じ標的の発現が低いために、著しい毒性を有する。理想的な免疫療法は、正常細胞はそのままにして、重要なドライバー変異を内部に有するがん細胞を特異的に同定できるであろう。これらの変異を含有する細胞を標的とすることは、免疫療法に直接アクセスできない細胞内タンパク質をコードするドライバー遺伝子には多くの一般的な変異が存在するため、困難であることが多い。
【0006】
がんにおける体細胞変異は、腫瘍細胞にのみ発現し、正常細胞には発現しないため、がん治療の理想的な標的である。ドライバー遺伝子タンパク質(がん遺伝子タンパク質及び腫瘍抑制タンパク質に広く細分化される)を標的とすることには付加的な利益がある。第一に、これらの変異は、典型的には腫瘍発生の初期に起こるため、本質的に全ての娘がん細胞がこの変異を含有する。第二に、腫瘍は発がん性を付与する能力に依存しているため、抵抗性が起こる可能性がより低い。最後に、ドライバー遺伝子タンパク質は、多くの患者間で共有されるホットスポット変異を有する傾向があるため、単一変異を標的とする治療法は、幅広い患者集団に適用することができる。
【0007】
ほとんどの変異ドライバー遺伝子タンパク質を含めて、ほとんどの変異タンパク質は、細胞内にある。小分子は細胞内タンパク質を標的とすることができるが、その野生型(WT)対応物ではなく、変異ドライバー遺伝子の活性を特異的に阻害することができる小分子の開発は、そのようなドライバー遺伝子タンパク質の大部分では達成されないままであった。単一アミノ酸変異を識別する能力を有することができる抗体は、典型的には、細胞外エピトープのみを標的とすることができる。
【0008】
免疫系は、抗原の処理及び提示を通して細胞の細胞内含有物をサンプリングする。タンパク質のタンパク質分解に続いて、得られたペプチドの断片は、ヒト白血球抗原(HLA)にロードされて細胞表面に送られ、そこで、T細胞がそのT細胞受容体(TCR)を介して自己と非自己ペプチドとを識別するように機能する。例えば、ウイルスに感染した細胞は、そのHLAにウイルスペプチドを提示し、その細胞を殺傷するようにT細胞を誘発する。同様に、がんにおいて、変異ペプチドは、がん細胞表面上のHLAに提示され得、これは変異関連ネオアンチゲン(Mutation-Associated Neo-Antigen)の略でMANAと称される。ある場合には、程度の差はあれ、患者は、これらの変異ペプチド-HLAネオアンチゲンに対する抗がんT細胞応答を開始することができ、チェックポイント遮断抗体が、この応答をさらに増強することができる。しかしながら、多くの患者、特に突然変異量が低い患者は、十分な抗がんT細胞応答を開始することができない。したがって、MANAを特異的に標的とする治療法または診断法は、がんを診断または治療するための真に腫瘍特異的な方法を提供することができる。
【0009】
HLAクラスIタンパク質は、全ての有核細胞に存在する。3つの古典的なHLAクラスI遺伝子、A、B、及びCがあり、それらの各々が高度に多型である。各HLA対立遺伝子は特定のペプチド結合モチーフを有し、その結果、特定のペプチドのみが特定のHLA対立遺伝子に結合する。
【0010】
当該技術分野には、がんを診断する、監視する、及び効果的に治療するための新しい改善された方法を開発する必要性が継続して存在する。
【発明の概要】
【0011】
概要
がん細胞に高度に特異的な治療標的の同定は、効果的ながん治療を開発するための最も大きな課題の1つである。
【0012】
本明細書に記載されるのは、がんを有する哺乳動物を治療するための方法及び組成物である。例えば、本文書は、がん(例えば、修飾ペプチドを発現するがん)を有する哺乳動物を治療するために、修飾ペプチド(例えば、ペプチド-HLA-β-2ミクログロブリン(b2Mまたはβ2M)複合体中に存在する修飾ペプチド)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を使用するための方法及び材料を提供する。ある場合には、修飾ペプチド(例えば、ペプチド-HLA-β2M複合体中に存在する修飾ペプチド)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を、がん(例えば、修飾ペプチドを発現するがん)を有する哺乳動物に投与して哺乳動物を治療することができる。
【0013】
本明細書に示されるように、一般的ながんドライバー変異p53 R175H(「R175H」)に由来するHLA拘束性MANAに存在する多数のMANAを標的とする(例えば、それに結合する)scFvが同定された。また、本明細書に示されるように、scFvを使用して、MANAを発現する細胞(例えば、がん細胞)を認識して殺傷することができる、MANA依存性T細胞活性化を誘導することができる二重特異性抗体を設計した。
【0014】
MANAは、正常組織(複数可)に存在しないため、高度に特異的ながん標的として使用することができる。MANAを特異的に標的とする能力は、がんを診断及び/または治療するための腫瘍特異的方法を提供する。例えば、MANAを特異的に標的とするscFvを、全長抗体もしくはその断片、抗体薬物複合体(ADC)、抗体放射性核種複合体、キメラ抗原受容体を発現するT細胞(CART)、または二重特異性抗体に使用して、がんを有する哺乳動物を診断及び/または治療することができる。さらに、MANAに結合することができる抗体(MANAbody)、またはMANAに結合することができるその断片は、広く適用可能で遺伝的に予測可能な、いつでも入手可能な標的指向型がん免疫療法となる潜在性を有する。
【0015】
近年、抗体及び細胞に基づく免疫療法が、有望ながん治療として台頭してきている。しかしながら、腫瘍細胞で発現が上昇した抗原を標的とする多くの免疫療法は、正常細胞における同じ標的の発現が低いために、著しい毒性を有する。理想的な免疫療法は、正常細胞はそのままにして、重要なドライバー変異を内部に有するがん細胞を特異的に同定できるであろう。これらの変異を含有する細胞を標的とすることは、免疫療法に直接アクセスできない細胞内タンパク質をコードするドライバー遺伝子には多くの一般的な変異が存在するため、困難であることが多い。細胞の主要組織適合性複合体(pMHC)に結合した変異ペプチドとして提示されるがん特異的変異を標的とする可能性が実証されている。二重特異性抗体またはキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を使用して、これらの変異ペプチドを提示する細胞を標的とすることは、さもなければ免疫監視機構が検知することがないであろう変異タンパク質を含有する細胞を同定する遺伝的に特異的な治療法を提供する。
【0016】
それにもかかわらず、これらの変異ペプチドに対する高い親和性を有する改善された抗体の必要性が残っている。
【0017】
したがって、本明細書に記載されるのは、(i)配列番号8を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR1、(ii)配列番号9または配列番号23を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR2、(iii)配列番号10を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR3、(iv)配列番号17を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR1、(v)配列番号18または配列番号27を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR2、及び(vi)配列番号19を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR3、を含む第1の抗原結合ドメインを含む、分子である。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、(a)配列番号23を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖CDR2、または(b)配列番号27を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖CDR2、または(c)配列番号23を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖CDR2、及び配列番号27を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖CDR2を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、(i)配列番号7または配列番号22と少なくとも90%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び(ii)配列番号16または配列番号26と少なくとも90%同一の配列を含むscFv重鎖を含む。いくつかの実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、(a)配列番号7と少なくとも90%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び配列番号26と少なくとも90%同一の配列を含むscFv重鎖、または(b)配列番号22と少なくとも90%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び配列番号16と少なくとも90%同一の配列を含むscFv重鎖、または(c)配列番号22と少なくとも90%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び配列番号26と少なくとも90%同一の配列を含むscFv重鎖を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、(i)配列番号7または配列番号22と少なくとも98%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び(ii)配列番号16または配列番号26と少なくとも98%同一の配列を含むscFv重鎖を含む。いくつかの実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、(a)配列番号7と少なくとも98%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び配列番号26と少なくとも98%同一の配列を含むscFv重鎖、または(b)配列番号22と少なくとも98%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び配列番号16と少なくとも98%同一の配列を含むscFv重鎖、または(c)配列番号22と少なくとも98%同一の配列を含むscFv軽鎖、及び配列番号26と少なくとも98%同一の配列を含むscFv重鎖を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、(i)配列番号7または配列番号22を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖、及び(ii)配列番号16または配列番号26を含むかまたはそれからなるscFv重鎖を含む。いくつかの実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、(a)配列番号7を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖、及び配列番号26を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖、または(b)配列番号22を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖、及び配列番号16を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖、または(c)配列番号22を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖、及び配列番号26を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、分子は、抗体、抗体断片、一本鎖可変断片(scFv)、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、TCR模倣体、タンデムscFv、二重特異性T細胞エンゲージャー、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ(scDb)、scFv-Fc、二重特異性抗体、及び二重親和性再ターゲティング抗体(DART)からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態において、分子は、CD3、CD28、CD4、CD8、CD16a、NKG2D、PD-1、CTLA-4、4-1BB、OX40、ICOS、及びCD27からなる群から選択されるエフェクター細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原結合ドメインは、CD3に結合することができる。いくつかの実施形態において、CD3に結合することができる第2の抗原結合ドメインは、表3に示されるものから選択される可変軽鎖及び可変重鎖を含む。いくつかの実施形態では、CD3に結合することができる第2の抗原結合ドメインは、表2に示されるもの(配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51)のうちのいずれか1つを含むかまたはそれからなる。
【0024】
いくつかの実施形態において、分子は一本鎖ダイアボディ(scDb)である。いくつかの実施形態において、一本鎖ダイアボディは、N末端からC末端の順に、(i)(a)配列番号8を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR1、(b)配列番号9または配列番号23を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR2、(c)配列番号10を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖CDR3、を含む、scFv軽鎖と、(ii)CD3、CD28、CD4、CD8、CD16a、NKG2D、PD-1、CTLA-4、4-1BB、OX40、ICOS、及びCD27からなる群から選択されるエフェクター細胞受容体に結合することができる、抗原結合ドメインと、(iii)(a)配列番号17を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR1、(b)配列番号18または配列番号27を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR2、及び(c)配列番号19を含むかまたはそれからなるscFV重鎖CDR3、を含む、scFv重鎖と、を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、一本鎖ダイアボディは、(a)配列番号23を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖CDR2、または(b)配列番号27を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖CDR2、または(c)配列番号23を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖CDR2、及び配列番号27を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖CDR2を含む。いくつかの実施形態において、一本鎖ダイアボディは、N末端からC末端の順に、(i)配列番号7または配列番号22を含むかまたはそれからなるscFv軽鎖と、(ii)CD3、CD28、CD4、CD8、CD16a、NKG2D、PD-1、CTLA-4、4-1BB、OX40、ICOS、及びCD27からなる群から選択されるエフェクター細胞受容体に結合することができる抗原結合ドメインと、(iii)配列番号16または配列番号26を含むかまたはそれからなるscFv重鎖と、を含む。いくつかの実施形態において、一本鎖ダイアボディは、(a)配列番号7を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖、及び配列番号26を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖、または(b)配列番号22を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖、及び配列番号16を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖、または(c)配列番号22を含むかもしくはそれからなるscFv軽鎖、及び配列番号26を含むかもしくはそれからなるscFv重鎖を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、CD3抗原結合ドメインである。いくつかの実施形態において、CD3抗原結合ドメインは、表3に示されるものから選択される可変軽鎖及び可変重鎖を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインの可変軽鎖及び可変重鎖は、リンカー、好ましくは3×G4Sリンカー(配列番号13)によって分離されている。いくつかの実施形態では、CD3に結合することができる抗原結合ドメインは、表2に示されるもの(配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51)のうちのいずれか1つを含むかまたはそれからなる。
【0028】
いくつかの実施形態では、分子は、scFv軽鎖と抗原結合ドメインとの間の第1のリンカー、および抗原結合ドメインとscFv重鎖との間の第2のリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態において、第1のリンカーは、G4S(配列番号11)を含むかまたはそれからなり、第2のリンカーは、G4S(配列番号15)を含むかまたはそれからなる。
【0029】
また本明細書では、HMTEVVRHC(配列番号1)を含むかまたはそれからなる変異ペプチドを発現するがんを有する哺乳動物を治療するための方法も提供され、該方法は、請求項1~24のいずれか1項に記載の分子を哺乳動物に投与することを含む。いくつかの実施形態において、上記哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態において、上記がんは、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患、肺癌、膵臓癌、胃癌(gastric cancer)、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胆道癌、肝臓癌、乳癌、前立腺癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、腎臓癌、骨癌、軟部組織癌、頭頸部癌、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、甲状腺癌、胚細胞性腫瘍、または黒色腫である。
【0030】
本出願全体を通して、様々な実施形態が範囲形式で提示される場合がある。範囲形式での記載は、利便性及び簡潔性のために過ぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲だけでなく、その範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲だけでなく、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6も具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず当てはまる。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上そうではないと明確に指示されない限り、複数形の指示対象を含む。例えば、「試料(a sample)」という用語は、その混合物を含めて、複数の試料を含む。
【0032】
「決定する」、「測定する」、「評価する(evaluating)」、「評価する(assessing)」、「アッセイする」、及び「分析する」という用語は、測定の形態を指すために本明細書においてしばしば互換的に使用される。これらの用語は、ある要素が存在するかしないかを決定すること(例えば、検出)を含む。これらの用語は、定量的、定性的、または定量的及び定性的な決定を含むことができる。評価は、相対的または絶対的であり得る。「~の存在を検出する」は、文脈に応じて、それが存在するか存在しないかを決定することに加えて、存在する何かの量を決定することを含むことができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「約」数という用語は、その数のプラスまたはマイナス10%の数を指す。「約」範囲という用語は、その最低値のマイナス10%及びその最高値のプラス10%の範囲を指す。
【0034】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。方法及び材料は、本発明で使用するために本明細書に記載されている。当技術分野で知られている他の好適な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定的であることは意図されない。本明細書で言及される公表物、特許出願、特許、配列、データベース入力物、及び他の参考文献は全て、参照によってその全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0035】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】バリアントライブラリーの設計を示す。合計1159個のバリアントについて、19個のアミノ酸のそれぞれを有する6つのCDR全てにわたる61個の部位で、元のH2 scFvを修飾した。scFvライブラリーを直接合成し、ファージディスプレイによるパニングのためにpADL-10bベクターにクローニングした。
図2】ピックしたパニングコロニーにおけるアミノ酸修飾の部位を示す。SS320コンピテント細胞を、パニングの4ラウンド目及び5ラウンド目終了時からのファージプールで感染させ、単一コロニーをピックするためにプレーティングした。1ラウンド当たり100個のコロニーにサンガーシーケンシングを行い、個々のバリアントを同定した。パニング終了時には高い多様性が残っており、反復するバリアントはほとんどなく、全てのCDRが配列決定されたコロニーに提示された。
図3】チオシアン酸アンモニウム及び尿素でバリアントをスクリーニングした結果を示す。予測された構造的に関連するファージクローンを、R175H/A2 pMHCまたはR175WT pMHCでコーティングしたELISAプレートに塗布した。初回洗浄後、様々な濃度のNHSCNまたは尿素でプレートを処理し、低親和性結合剤を溶出した。ELISA吸光度(A450)対洗浄液濃度の線形回帰分析によってバリアントを評価した。元のH2バリアント以上のR175H:R175WTの結合を示すバリアントの勾配を表示する。
図4】プールしたファージについてチオシアン酸ベースのスクリーニングの結果を示す。パニングの4ラウンド目からのファージプールは、0.5MのNHSCN洗浄液または対照洗浄液(HBSPE)でスクリーニングを行った。R175H/A2モノマーでコーティングされたELISAプレートにファージを塗布し、TBSTで洗浄した後、試験洗浄緩衝液(SCNまたはHBSPE)で洗浄した。結合したファージを溶出し、SS320細胞を感染させてより多くのファージを生成するために使用した。同じプロトコルを、この単一濃縮ファージプールで繰り返した。バリアントの濃縮は、次世代シーケンシングを用いて追跡した。上位50パーセンタイルの読み取り値の割合を有する、4ラウンド目開始時のファージプールから少なくとも2倍濃縮されたバリアントが表示される。次いで、選択された濃縮バリアントを、構造的に予測されたバリアントと同様にscDbとしてスクリーニングした。
図5】元のH2 scDbと比較して、バリアントscDbのR175H/HLA-A2モノマーへの相対的結合性が増加したことを示す。発現したscDbがR175H/A2モノマーに特異的に結合すること及びCD3に結合することができることを確認するために、scDbをR175H/A2モノマー、R175WT/A2モノマー、またはCD3δ/εヘテロダイマーでコーティングされたプレートに塗布した。CD3結合シグナルに対して正規化したとき、ほとんどのバリアントscDbが、ELISAによって元のH2-scDbと比較すると、R175H/HLA-A2モノマーへの相対的結合性の増加を示した。全てのバリアントは、R175WT/HLA-A2結合を有していなかった。
図6】ペプチドパルス共培養におけるscDbの感受性を試験した結果を示す。TAP欠損T2A3細胞を、様々な濃度のR175H 9merまたはR175WT 9merでパルスした。scDbを、低パルス濃度でペプチドパルスした細胞に対してT細胞を活性化する能力について試験した。T細胞を、全ての条件で1nMのscDbとともに2:1のエフェクター:標的細胞比で共培養した。T細胞は、R175Hでパルスした細胞に対して高レベルのIFNgを産生したが、R175WT細胞では全てのscDbで産生されなかった。Y57I及びF53S scDbは、二重変異体及び元のH2 scDbと比較して、1nMのペプチドでIFNg応答の増加をもたらした。
図7】KMS26細胞との共培養において、H2バリアントが、元のH2 scDbよりも低いEC50を有することを示す。内因性p53R175H(TP53 R175H、塗りつぶした記号)またはp53ノックアウト(TP53KO、白抜きの記号)を有する5×10の初代ヒトT細胞及び2.5×10のKMS26標的細胞を、10nM~0.169pMのscDbの3倍希釈液の存在下で一晩共培養した。H2バリアントは、同じ濃度のscDbで元のH2 scDbと比較すると、増加した細胞毒性(A)及びインターフェロンγ応答(B)をもたらす。R175H細胞株に対するEC50値を、5パラメータのロジスティック曲線をフィッティングさせることによって決定した(R175Hは実線、p53KOは点線)。
図8A図8A~8Dは、H2バリアントが、内因性R175H変異を有する標的細胞株に対して強い細胞毒性を生じることを示す。バリアントscDbを、2:1のエフェクター対標的細胞比でのヒトT細胞と内因性R175H HLA-A2+細胞株との共培養において、0.01nM、0.1nM、及び1nMで試験した。全ての標的細胞株(TYKnu、A;KMS26、B;KLE、C;Nalm6、D)で、バリアントscDbは、元のH2 scDbよりも活性が増加した。各scDb濃度での毒性を、Tukeyの多重比較検定を用いた通常の双方向ANOVAによって比較した。Nalm6 R175Hは、CRISPR編集によってTP53 R175H変異を有するように操作されたHLA-A2陽性細胞株である。A~C:各scDbのバー、左から右に:R175H、0.01nM;R175H、0.1nM;R175H、1nM;p53KO、0.01nM;p53KO、0.1nM;p53KO、1nM;図8D:各scDbのバー、左から右に:R175H、0.01nM;R175H、0.1nM;R175H、1nM;p53KO、0.01nM;p53KO、0.1nM;p53KO、1nM。
図8B図8Aの説明を参照のこと。
図8C図8Aの説明を参照のこと。
図8D図8Aの説明を参照のこと。
図9A図9A~9Dは、SPRによって、F53S、Y57I及びF53S/Y57IがR175H/HLA-A2に対する親和性を増加させたことを示す。元のH2(A)、F53S(B)、Y57I(C)及びF53S/Y57I(D)scDbの結合親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。R175H/A2(黒い破線)またはR175WT/A2(薄いグレーの破線)モノマーでコーティングされたチップを、濃度を増加させたscDbに曝露した。元のH2(A)、F53S(B)、Y57I(C)及びF53S/Y57I(D)について測定された親和性(K)は、それぞれ、29.5nM、12.9nM、6.8nM及び3.3nMである。
図9B図9Aの説明を参照のこと。
図9C図9Aの説明を参照のこと。
図9D図9Aの説明を参照のこと。
図10A図10A~10Iは、H2バリアントがインビボで腫瘍増殖を制御することができることを示す。A:バリアントscDbが元のH2 scDbと比較してインビボでの有効性を改善したかどうかを試験するために、13~15週齢の雌NSGマウスに、scDbを含む連続注入ポンプ(scDb用量0.15mg/kg/日を14日間)で処理する2日前に、1×10のルシフェラーゼ陽性KMS26細胞及び1×10のヒトT細胞を接種した。処理群は、-1日目に無作為化した。腫瘍負荷は、IVISシステムを用いた生物発光イメージングによって3日ごとに追跡した。群当たりN=6のマウス。B~F:全フラックス測定値を、各マウスについて胸部にわたって測定された注入対照蛍光色素に対して正規化した。B、元のH2、C、F53S、D、Y57I、E、F53S/Y57I、F:L2アイソタイプ対照。G:各時点での生物発光画像が表示される。全ての時点で60秒の曝露時間にわたって発光を検出した。Hは、Y57I及びF53S/Y57IがインビボでKMS26腫瘍増殖を制御することを示す。各時点で各処理scDbを元のH2 scDbと比較したGeissner-Greenhouse補正を伴う双方向反復測定ANOVA及びDunnettの多重比較検定は、Y57I及びF53S/Y57Iが、処理5日目及び8日目にH2よりも良好に腫瘍増殖を制御することを示している(P<0.05)。全フラックス測定値を、各マウスについて胸部にわたって測定された注入対照蛍光色素に対して正規化した。Iは、Y57IがインビボでKMS26腫瘍増殖を制御することを示す。図9A~9Gからの生物発光データのMann-Whitneyの多重検定は、Y57Iが、元のH2 scDbと比較して8日目に腫瘍制御を改善したことを示している(P=0.019)。処理後2週間で、Y57Iで処理したマウスに腫瘍再発は見られなかった。群当たりN=6のマウス。全フラックス測定値を、各マウスについて胸部にわたって測定された注入対照蛍光色素に対して正規化した。
図10B図10Aの説明を参照のこと。
図10C図10Aの説明を参照のこと。
図10D図10Aの説明を参照のこと。
図10E図10Aの説明を参照のこと。
図10F図10Aの説明を参照のこと。
図10G図10Aの説明を参照のこと。
図10H図10Aの説明を参照のこと。
図10I図10Aの説明を参照のこと。
図11A図11A~11Gは、H2バリアントが、インビボでNalm6R175H腫瘍増殖を制御することを示す。A:H2バリアントがより低いscDb用量でより速く増殖するNalm6R175H細胞株をより良く制御することができるかどうかを試験するために、7~8週齢の雌NSGマウスに、scDbを含む連続注入ポンプ(scDb用量0.075mg/kg/日を14日間)で処理する2日前に、5×10のルシフェラーゼ陽性Nalm6R175H細胞及び1×10のヒトT細胞を接種した。処理群は、-1日目に無作為化した。腫瘍負荷は、IVISシステムを用いた生物発光イメージングによって追跡した。scDb当たりN=6の2つの独立した実験を行った。結果は総計で報告され、N=合計12である。B~F:平均輝度値:B、元のH2、C、F53S、D、Y57I、E、F53S/Y57I、F:アイソタイプ対照。G:Geissner-Greenhouse補正を伴う双方向反復測定ANOVA及びDunnettの多重比較検定は、処理7日目に、全てのH2バリアントが腫瘍制御を改善し(H2対F53S P=0.0093、Y57I P=0.0126、F53S/Y57I P=0.0030)、H2がアイソタイプ対照scDbよりも優れていたことを示している(P<0.0001)。Dunnettの多重比較検定によると、F53S/Y57Iは、14日目にH2と比較して優れた腫瘍制御を示した(双方向反復測定ANOVA、P=0.0295)。
図11B図11Aの説明を参照のこと。
図11C図11Aの説明を参照のこと。
図11D図11Aの説明を参照のこと。
図11E図11Aの説明を参照のこと。
図11F図11Aの説明を参照のこと。
図11G図11Aの説明を参照のこと。
図12A図12A~12Eは、Y57I scDbがインビボの遅延処理モデルにおいてKMS26を制御することを示す。A:確立された腫瘍モデルにおいてscDb Y57Iの抗腫瘍有効性を比較するために、7~9週齢の雌NSGマウスに3.5×10のKMS26細胞を接種し、6日後の処理-1日目に無作為化した。腫瘍接種の7日後に、マウスを1×10のヒトT細胞で静脈内処理し、マウス腹腔内に外科的に配置された14日間連続放出ポンプを使用して、0.075mg/kg/日のscDbで処理した群当たりN=5。B~D:平均輝度値:B:元のH2;C:Y57I、D:アイソタイプ。E:群平均輝度。14日目の処理終了時に、H2 scDbとY57I scDbを比較したMann-Whitneyの検定により、Y57I scDbで処理したマウスがより低い腫瘍負荷を有していたことが示された(P=0.0079)。
図12B図12Aの説明を参照のこと。
図12C図12Aの説明を参照のこと。
図12D図12Aの説明を参照のこと。
図12E図12Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
本明細書は、がんを有するかもしくはがんを有すると疑われる哺乳動物を評価するための、及び/またはがんを有する哺乳動物を治療するための方法及び材料に関する。例えば、本文書は、がんを有する哺乳動物を治療するために、修飾ペプチド(例えば、腫瘍抗原)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))を含む分子を使用するための方法及び材料を提供する。
【0038】
細胞内ドライバー遺伝子を標的とする二重特異性抗体の一例は、HLA-A2上で9merペプチドとして提示されるTP53 R175H変異(変異ペプチド
配列番号3の168~176位に対応し、175位にR→H変異を有する);WTペプチド
を標的とするH2二重特異性抗体である。Hsiue et al.,“Targeting a Neoantigen Derived from a Common TP53 Mutation,”Science 371(6533):eabc8697(2021)を参照されたい。また、WO2021/12784も参照されたい。これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。H2二重特異性抗体は、分子の一端に抗CD3結合ドメインを含み、反対側の端にpMHC結合ドメインを含む。T細胞のT細胞受容体複合体中の標的細胞pMHC及びCD3に結合すると、二重特異性抗体は、T細胞を活性化して、サイトカイン放出と標的細胞のT細胞媒介性殺傷の両方を誘導する。このH2二重特異性抗体は、インビトロでの抗がん細胞による殺傷を促進し、インビボでの腫瘍増殖を制限することができるが、さらなる改善は、インビボでの腫瘍クリアランス及び性能の改善を可能にし得る。実際、他のものは、二重特異性抗体の結合親和性を増加させることにより、それらの効力を有意に改善することができることを示した。
【0039】
とりわけ、pMHC結合ドメイン内の単一アミノ酸変化を含むバリアントを選択し、次いで相対的親和性によって特異的バリアントを区別するためのスクリーニング方法によって識別される、インビトロ及びインビボの両方で改善された性能を有するR175H変異ペプチドに対する特異性を維持する親和性成熟H2バリアントが本明細書に記載される。この方法によって同定された高い相対的親和性を有するバリアントは、インビトロ及びインビボの両方で元のH2バリアントよりも優れている。これらのバリアント二重特異性抗体は、R175H変異ペプチドに対して同じ特異性を維持しながら、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定されるより高い親和性を有する。これらの親和性成熟H2バリアントは、キメラ抗原受容体(CAR)または他のscFvに基づく治療法として使用するために適合させることもできる。
【0040】
がんを有するかもしくはがんを有すると疑われる哺乳動物を評価するための、及び/またはがんを有する哺乳動物を治療するための方法及び組成物もまた、本明細書に記載される。例えば、TP53 R175H変異ペプチドを標的とする(例えば、それに結合する)ことができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を使用して、がんを有するかもしくはがんを有すると疑われる哺乳動物を評価すること、及び/またはがん(例えば、1つ以上の修飾ペプチドを発現するがん)を有する哺乳動物を治療することができる。ある場合には、TP53 R175H変異ペプチドを標的とする(例えば、それに結合する)ことができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を使用して、がんを有するかまたはがんを有すると疑われる哺乳動物から得られた試料中の1つ以上の修飾ペプチドの存在または非存在を検出することができる。ある場合には、TP53 R175H変異ペプチドを標的とする(例えば、それに結合する)ことができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を、がん(例えば、修飾ペプチドを発現するがん)を有する哺乳動物に投与して哺乳動物を治療することができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、修飾ペプチドは、修飾ポリペプチドに由来するペプチドである。修飾ポリペプチドは、任意の適切な修飾ポリペプチド(例えば、発がん性遺伝子の変異または腫瘍抑制遺伝子の変異等の疾患を引き起こす変異を有するポリペプチド)であり得る。修飾ペプチドは、WTペプチド(例えば、修飾ポリペプチドが由来するWTポリペプチドに由来するペプチド)に対して1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、置換)を有することができる。修飾ペプチドはまた、変異ペプチドとも称され得る。ある場合には、修飾ペプチドは、腫瘍抗原であり得る。腫瘍抗原の例としては、MANA、腫瘍関連抗原、及び腫瘍特異的抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
修飾ペプチドは、任意の適切な長さであり得る。ある場合には、修飾ペプチドは、約7アミノ酸~約25アミノ酸長(例えば、約8アミノ酸~約25アミノ酸、約9アミノ酸~約25アミノ酸、約10アミノ酸~約25アミノ酸、約11アミノ酸~約25アミノ酸、約12アミノ酸~約25アミノ酸、約13アミノ酸~約25アミノ酸、約15アミノ酸~約25アミノ酸、約18アミノ酸~約25アミノ酸、約20アミノ酸~約25アミノ酸、約7アミノ酸~約22アミノ酸、約7アミノ酸~約20アミノ酸、約7アミノ酸~約18アミノ酸、約7アミノ酸~約15アミノ酸、約7アミノ酸~約12アミノ酸、約7アミノ酸~約10アミノ酸、約7アミノ酸~約9アミノ酸、約8アミノ酸~約22アミノ酸、約10アミノ酸~約18アミノ酸、約12アミノ酸~約15アミノ酸、約8アミノ酸~約12アミノ酸、約12アミノ酸~約18アミノ酸、約18アミノ酸~約22アミノ酸、または約9アミノ酸~約10アミノ酸)であり得る。例えば、修飾ペプチドは、約9アミノ酸長であり得る。例えば、修飾ペプチドは、約10アミノ酸長であり得る。修飾ペプチドは、任意の修飾ポリペプチドに由来し得る。本明細書に記載の修飾ペプチドが由来し得る修飾ポリペプチドの例としてはp53が挙げられるが、これに限定されない。
【0043】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)は、任意の適切なHLAとの複合体中にあり得る。HLAは、任意の適切なHLA対立遺伝子であり得る。ある場合には、HLAは、クラスI HLA(例えば、HLA-A、HLA-B、及びHLA-C)対立遺伝子であり得る。ある場合には、HLAは、クラスII HLA(例えば、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA-DR)対立遺伝子であり得る。本明細書に記載の修飾ペプチドが複合体化することができるHLA対立遺伝子の例としては、HLA-A1及びHLA-A2が挙げられるが、これらに限定されない。特定の修飾ペプチドの例示的なHLA対立遺伝子を表1に示す。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)は、HLA-A2及びβ2Mとの複合体中にあり得る。
【0044】
本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子である。ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む分子は、本明細書に記載の非複合体化修飾ペプチド(例えば、複合体(例えば、ペプチド-HLA-β2M複合体)中に存在しない本明細書に記載の修飾ペプチドを、例えば、含むかまたはそれからなる)を標的としない(例えば、それに結合しない)。ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む分子は、WTペプチド(例えば、修飾ポリペプチドが由来するWTポリペプチドに由来するペプチド)を標的としない(例えば、それに結合しない)。
【0045】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子は、任意の適切なタイプの分子であり得る。ある場合には、分子は、一価分子(例えば、単一抗原結合ドメインを含む)であり得る。ある場合には、分子は、多価分子(例えば、2つ以上の抗原結合ドメインを含み、2つ以上の抗原を同時に標的とする)であり得る。例えば、二重特異性分子は、2つの抗原結合ドメインを含むことができ、三重特異性分子は、3つの抗原結合ドメインを含むことができ、四重特異性分子は、4つの抗原結合ドメインを含むことができる等である。抗原結合ドメインを含有する分子の例としては、抗体、抗体断片、scFv、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、TCR模倣体、タンデムscFv、二重特異性T細胞エンゲージャー、ダイアボディ、scDb、scFv-Fc、二重特異性抗体、二重特異性一本鎖Fc、二重親和性再ターゲティング抗体(DART)、ならびに少なくとも1つの可変重鎖(VH)及び少なくとも1つの可変軽鎖(VL)を含む任意の他の分子が挙げられるが、これらに限定されない。これらの分子のうちのいずれかを、本明細書に記載の材料及び方法に従って使用することができる。ある場合には、抗原結合ドメインは、scFvであり得る。例えば、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、1つ以上のscFv)を含む分子は、CARであり得る。例えば、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができる2つのscFvを含む分子は、一本鎖ダイアボディ(scDb)であり得る。
【0046】
ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子が多価分子(例えば、二重特異性分子)である場合、第1の抗原結合ドメインは、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができ、第2の抗原結合ドメインは、エフェクター細胞(例えば、エフェクター細胞上に存在する抗原)に結合することができる。エフェクター細胞の例としては、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、B細胞、形質細胞、マクロファージ、単球、ミクログリア、樹状細胞、好中球、線維芽細胞、及び肥満細胞が挙げられるが、これらに限定されない。エフェクター細胞上に存在する抗原の例としては、CD3、CD4、CD8、CD28、NKG2D、PD-1、CTLA-4、4-1BB、OX40、ICOS、CD27、Fc受容体(例えば、CD16a)、及び任意の他のエフェクター細胞表面受容体が挙げられるが、これらに限定されない。ある場合には、本明細書に記載の分子は、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞上に存在する抗原(例えば、CD3)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含むことができる。ある場合には、CD3に結合することができる配列(例えば、scFv配列)は、表2または表3に示される通りであり得る。ある場合には、CD3に結合することができる配列(例えば、scFv配列)は、他に記載される通りであり得る(例えば、Rodrigues et al.,1992 Int J Cancer Suppl.7:45-50、Shalaby et al.,1992 J Exp Med.175:217-25、Brischwein et al.,2006 Mol Immunol.43:1129-43、Li et al.,2005 Immunology.116:487-98、WO2012162067、US20070065437、US20070065437、US20070065437、US20070065437、US20070065437、及びUS20070065437を参照されたい)。ある場合には、本明細書に記載の分子は、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、NK細胞上に存在する抗原(例えば、CD16aまたはNKG2D)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含むことができる。ある場合には、CD16aに結合することができる配列(例えば、scFv配列)は、表4に示される通りであり得る。修飾ペプチドとエフェクター細胞の両方に結合することによって、多価分子は、(例えば、HLA複合体の一部として)修飾ペプチドを発現する細胞をエフェクター細胞に近接させることができ、エフェクター細胞が修飾ペプチドを発現する細胞に作用することを可能にする。
【0047】
ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子が多価分子(例えば、二重特異性分子)である場合、分子は、少なくとも1つのVH及び少なくとも1つのVLを含む任意の適切なフォーマットであり得る。例えば、VH及びVLは、任意の適切な配向にあってもよい。ある場合には、VHは、VLに対してN末端側にあり得る。ある場合には、VHは、VLに対してC末端側にあり得る。ある場合には、リンカーアミノ酸配列は、VHとVLとの間に配置され得る。
【0048】
ある場合には、二重特異性分子がタンデムscFvを含む場合、タンデムscFvは、任意の適切な配向にあり得る。scFv-A及びscFv-Bを含むタンデムscFv配向の例としては、VLA-LL-VHA-SL-VLB-LL-VHB、VLA-LL-VHA-SL-VHB-LL-VLB、VHA-LL-VLA-SL-VLB-LL-VHB、VHA-LL-VLA-SL-VHB-LL-VLB、VLB-LL-VHB-SL-VLA-LL-VHA、VLB-LL-VHB-SL-VHA-LL-VLA、VHB-LL-VLB-SL-VLA-LL-VHA、及びVHB-LL-VLB-SL-VHA-LL-VLAが挙げられるが、これらに限定されず、SLは短いリンカーであり、LLは長いリンカーである。短いリンカーは、約3アミノ酸~約10アミノ酸長であり得る。短いリンカーは、任意の適切なアミノ酸(例えば、グリシン及びセリン)を任意の適切な組み合わせで含むことができる。長いリンカーは、約10アミノ酸~約25アミノ酸長であり得る。長いリンカーは、任意の適切なアミノ酸(例えば、グリシン及びセリン)を任意の適切な組み合わせで含むことができる。
【0049】
ある場合には、二重特異性分子がダイアボディである場合、ダイアボディは、任意の適切な配向にあり得る。scFv-A及びscFv-Bを含むダイアボディの配向の例としては、VLA-SL-VHB及びVLB-SL-VHA、VLA-SL-VLB及びVHB-SL-VHA、VHA-SL-VLB及びVHB-SL-VLA、VLB-SL-VHA及びVLA-SL-VHB、VLB-SL-VLA及びVHA-SL-VHB、ならびにVHB-SL-VLA及びVHA-SL-VLBが挙げられるが、これらに限定されず、SLは短いリンカーである。短いリンカーは、約3アミノ酸~約10アミノ酸長であり得る。短いリンカーは、任意の適切なアミノ酸(例えば、グリシン及びセリン)を任意の適切な組み合わせで含むことができる。
【0050】
ある場合には、二重特異性分子がscDbである場合、scDbは、任意の適切な配向にあり得る。scFv-A及びscFv-Bを含むscDbの配向の例としては、VLA-SL-VHB-LL-VLB-SL-VHA、VHA-SL-VLB-LL-VHB-SL-VLA、VLA-SL-VLB-LL-VHB-SL-VHA、VHA-SL-VHB-LL-VLB-SL-VLA、VLB-SL-VHA-LL-VLA-SL-VHB、VHB-SL-VLA-LL-VHA-SL-VLB、VLB-SL-VLA-LL-VHA-SL-VHB、及びVHB-SL-VHA-LL-VLA-SL-VLBが挙げられるが、これらに限定されず、SLは短いリンカーであり、LLは長いリンカーである。短いリンカーは、約3アミノ酸~約10アミノ酸長であり得る。短いリンカーは、任意の適切なアミノ酸(例えば、グリシン及びセリン)を任意の適切な組み合わせで含むことができる。長いリンカーは、約10アミノ酸~約25アミノ酸長であり得る。長いリンカーは、任意の適切なアミノ酸(例えば、グリシン及びセリン)を任意の適切な組み合わせで含むことができる。
【0051】
ある場合には、二重特異性分子がscFv-Fcである場合、scFv-Fcは、任意の適切な配向にあり得る。scFv-Fc-A、scFv-Fc-B、及びFcドメインを含むscFv-Fcの配向の例としては、VLA-LL-VHA-ヒンジ-Fc及びVLB-LL-VHB-ヒンジ-Fc、VHA-LL-VLA-ヒンジ-Fc及びVHB-LL-VLB-ヒンジ-Fc、VLA-LL-VHA-ヒンジ-Fc及びVHB-LL-VLB-ヒンジ-Fc、VHA-LL-VLA-ヒンジ-Fc及びVLB-LL-VHB-ヒンジ-Fcが挙げられるが、これらに限定されず、LLは短いリンカーである。長いリンカーは、約10アミノ酸~約25アミノ酸長であり得る。長いリンカーは、任意の適切なアミノ酸(例えば、グリシン及びセリン)を任意の適切な組み合わせで含むことができる。ある場合には、scFv-FcのFcドメインは、scFv-Fcのヘテロ二量体化を増加させる、及び/またはホモ二量体化を減少させるために、1つ以上の修飾を含むことができる。ある場合には、scFv-Fc内のFcドメインは、ヒンジドメインを除外することができる。ある場合には、scFv-FcのFcドメインは、scFvのN末端にあり得る。
【0052】
ある場合には、二重特異性分子が二重特異性一本鎖Fcである場合、二重特異性一本鎖Fcは、任意の適切な配向にあり得る。二重特異性一本鎖Fcの配向の例としては、VLA-LL-VHA-SL-VHB-LL-VLB-SL-ヒンジ-CH2-CH3-LL-ヒンジ-CH2-CH3、VLA-LL-VHA-SL-VLB-LL-VHB-SL-ヒンジ-CH2-CH3-LL-ヒンジ-CH2-CH3、VHA-LL-VLA-SL-VLB-LL-VHB-SL-ヒンジ-CH2-CH3-LL-ヒンジ-CH2-CH3、VHA-LL-VLA-SL-VHB-LL-VLB-SL-ヒンジ-CH2-CH3-LL-ヒンジ-CH2-CH3、及びVLA-SL-VHB-LL-VLB-VHA-SL-ヒンジ-CH2-CH3-LL-ヒンジ-CH2-CH3が挙げられるが、これらに限定されず、SLは短いリンカーであり、LLは長いリンカーである。短いリンカーは、約3アミノ酸~約8アミノ酸長であり得る。短いリンカーは、任意の適切なアミノ酸(例えば、グリシン及びセリン)を任意の適切な組み合わせで含むことができる。長いリンカーは、約10アミノ酸~約25アミノ酸長であり得る。長いリンカーは、任意の適切なアミノ酸(例えば、グリシン及びセリン)を任意の適切な組み合わせで含むことができる。任意の適切なFcドメインを二重特異性一本鎖Fcに使用することができる。ある場合には、Fcドメインは、IgG(例えば、天然IgG)に由来するアミノ酸配列を含むことができる。場合によっては、Fcドメインは、1つ以上の修飾(例えば、分子の安定性を高めるための、及び/または1つ以上のFc受容体への結合を増加もしくは減少させるための1つ以上の修飾)を含むアミノ酸配列を含むことができる。ある場合には、二重特異性一本鎖Fcに使用することができるFcドメインは、ヒンジドメインを除外することができる。ある場合には、二重特異性一本鎖Fcに使用することができるFcドメインは、scFvのN末端にあり得る。いくつかの場合では、二重特異性一本鎖Fcで使用することができるFcドメインは、他に記載される通りであり得る(例えば、国際特許出願公開第WO2017/134134A1号の配列番号25~32;ならびに国際特許出願公開第WO2017/134158A1号の、例えば、表38及び配列番号25~32を参照されたい)。
【0053】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子は、任意の適切な相補性決定領域(CDR)を含むことができる。例えば、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む分子は、3つのVH相補性決定領域(CDR-VH)を有する可変重鎖(VH)、及び3つのVL CDR(CDR-VL)を有する可変軽鎖(VL)を含むことができる。
【0054】
ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、Y57I、S92N、A31S、S95T、S92E、S95D、S95K、R24D、V29D、F53S、S26P、V29E、Q90D、及びY57Lからなる群から選択されるH2(配列番号4)に対する1つ以上の変異を含む。いくつかの場合において、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、Y57I、S92N、A31S、S95T、S92E、S95D、S95K、R24D、V29D、F53S、S26P、V29E、Q90D、及びY57Lからなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または14個の変異を含む。いくつかの場合において、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、H2(配列番号4)に対するF53S及び/またはY57I変異を含む。したがって、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、H2 CDR(CDR-VL1:配列番号8、CDR-VL2:配列番号9、CDR-VL3:配列番号10、CDR-VH1:配列番号17、CDR-VH2:配列番号18、及びCDR-VH3:配列番号19)をそれぞれ1つ含むことができるが、但し、Y57I、S92N、A31S、S95T、S92E、S95D、S95K、R24D、V29D、F53S、S26P、V29E、Q90D、及びY57Lからなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または14個の変異(H2、配列番号4に対する)を含むものとする。ある場合には、変異(複数可)は、F53S及び/またはY57Iである。
【0055】
例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、以下に記載のCDRをそれぞれ1つ含むことができる:
CDR-VL1:配列番号8、
CDR-VL2:配列番号9または配列番号23、
CDR-VL3:配列番号10、
CDR-VH1:配列番号17、
CDR-VH2:配列番号18または配列番号27、及び
CDR-VH3:配列番号19、
この場合、
i)CDR-VL2は、配列番号23であるか、または
ii)CDR-VH2は、配列番号27であるか、または
iii)CDR-VL2は、配列番号23であり、CDR-VH2は、配列番号27である。
【0056】
例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、以下に記載のCDRをそれぞれ1つ含むことができる:
CDR-VL1:配列番号8、
CDR-VL2:配列番号23、
CDR-VL3:配列番号10、
CDR-VH1:配列番号17、
CDR-VH2:配列番号18または配列番号27、及び
CDR-VH3:配列番号19。
【0057】
例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、以下に記載のCDRをそれぞれ1つ含むことができる:
CDR-VL1:配列番号8、
CDR-VL2:配列番号23、
CDR-VL3:配列番号10、
CDR-VH1:配列番号17、
CDR-VH2:配列番号18、及び
CDR-VH3:配列番号19。
【0058】
例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、以下に記載のCDRをそれぞれ1つ含むことができる:
CDR-VL1:配列番号8、
CDR-VL2:配列番号23、
CDR-VL3:配列番号10、
CDR-VH1:配列番号17、
CDR-VH2:配列番号27、及び
CDR-VH3:配列番号19。
【0059】
例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、以下に記載のCDRをそれぞれ1つ含むことができる:
CDR-VL1:配列番号8、
CDR-VL2:配列番号9または配列番号23、
CDR-VL3:配列番号10、
CDR-VH1:配列番号17、
CDR-VH2:配列番号27、及び
CDR-VH3:配列番号19。
【0060】
例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、以下に記載のCDRをそれぞれ1つ含むことができる:
CDR-VL1:配列番号8、
CDR-VL2:配列番号9、
CDR-VL3:配列番号10、
CDR-VH1:配列番号17、
CDR-VH2:配列番号27、及び
CDR-VH3:配列番号19。
【0061】
例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、以下に記載のCDRをそれぞれ1つ含むことができる:
CDR-VL1:配列番号8、
CDR-VL2:配列番号23、
CDR-VL3:配列番号10、
CDR-VH1:配列番号17、
CDR-VH2:配列番号27、及び
CDR-VH3:配列番号19。
【0062】
ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子は、任意の適切なCDR配列のセット(例えば、本明細書に記載のCDR配列セットのうちのいずれか)を含むことができる。
【0063】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子は、任意の適切な配列を含むことができる。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる分子は、限定されないが、配列番号20、配列番号24、または配列番号28のいずれか1つに示されるscFv配列を含むことができる。特定の修飾ペプチドに結合することができる配列(例えば、scFv配列)の例を表1に示す。ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子は、時にはバリアント配列と称されることがある、表1に示される配列から逸脱する配列を有することができる。例えば、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む分子は、バリアント配列が本明細書に記載の修飾ペプチドに結合する能力を維持する限り、表1に示される配列のうちのいずれかに対して、少なくとも75%の配列同一性(例えば、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、少なくとも99%の配列同一性、またはそれ以上)を有することができる。例えば、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む分子は、バリアント配列が本明細書に記載の修飾ペプチドに結合する能力を維持する限り、表1に示される配列と比較して、1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10つ、またはそれ以上)の修飾(例えば、1つ以上のアミノ酸置換)を有することができる。ある場合には、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む分子は、任意の適切な本明細書に記載のCDR配列のセットを含むことができ、表1に示される配列からの任意の配列逸脱は、足場の配列(複数可)にあり得る。
【0064】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子は、標識(例えば、検出可能な標識)に結合(例えば、共有結合または非共有結合)させることができる。検出可能な標識は、任意の適切な標識であり得る。ある場合には、標識を使用して、本明細書に記載の1つ以上の修飾ペプチドの存在または非存在の検出を補助することができる。例えば、標識された本明細書に記載の分子をインビトロで使用して、哺乳動物から得られた試料中のがん細胞(例えば、本明細書に記載の修飾ペプチドを発現するがん細胞)を検出することができる。ある場合には、標識(例えば、検出可能な標識)を使用して、本明細書に記載の1つ以上の修飾ペプチドの位置の決定を補助することができる。例えば、標識された本明細書に記載の分子を使用して、哺乳動物において抗腫瘍療法を監視するために、及び/またはがん細胞(例えば、本明細書に記載の修飾ペプチドを発現するがん細胞)を検出することができる。本明細書に記載の分子に結合させることができる標識の例としては、放射性核種、磁気共鳴画像法(MRI)で使用される造影剤、コンピュータ断層撮影法(CT)、超音波(US)、及び他の画像法、発色団、酵素、及び蛍光分子(例えば、緑色蛍光タンパク質及び近赤外線蛍光)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む分子は、治療剤に結合(例えば、共有結合または非共有結合)させることができる。治療剤は、任意の治療剤であり得る。ある場合には、治療薬は、抗がん剤であり得る。本明細書に記載の分子に結合させることができる治療薬の例としては、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、メイタンシン、メルタンシン/エムタンシン(DM1)、ラブタンシン/ソラフタンシン(DM4)、SN-38、カリケアマイシン、D6.5、二量体ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、α-アマンチン(AAMT)、PNU-159682、リシン、シュードモナス外毒素A、ジフテリア毒素、及びゲロニン等の抗がん剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書はまた、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を使用するための方法を提供する。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)を標的とする(例えば、それに結合する)ことができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を使用して、がんを有するかもしくはがんを有すると疑われる哺乳動物を評価すること、及び/またはがんを有する哺乳動物を治療することができる(例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)を発現するがん)。ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む1つ以上の分子を使用して、がんを有するかまたはがんを有すると疑われる哺乳動物から得られた試料中の本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)の存在または非存在を検出することができる。ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む1つ以上の分子を、がん(例えば、修飾ペプチドを発現するがん)を有する哺乳動物に投与して哺乳動物を治療することができる。がんを有する哺乳動物(例えば、ヒト)に、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む1つ以上の分子を投与することは、哺乳動物を治療するのに有効であり得る。
【0067】
任意の種類の哺乳動物を、本明細書に記載されるように評価及び/または治療することができる。本明細書に記載されるように評価及び/または治療され得る哺乳動物の例としては、霊長類(例えば、ヒト、及び非ヒト霊長類、例えば、チンパンジー、ヒヒ、またはサル)、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、マウス、及びラットが挙げられるが、これらに限定されない。ある場合には、哺乳動物はヒトであり得る。
【0068】
哺乳動物は、任意の適切ながんについて評価及び/または治療することができる。ある場合には、がんは、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)を発現することができる。がんは、原発性がんであり得る。がんは、転移性がんであり得る。がんは、1つ以上の固形腫瘍を含み得る。がんは、1つ以上の非固形腫瘍を含み得る。本明細書に記載されるように評価され得るがんの例(例えば、本明細書に記載の1つ以上の修飾ペプチドの存在に少なくとも部分的に基づいて、例えば、それを含むかまたはそれからなる)及び/または本明細書に記載されるように治療され得るがんの例(例えば、本明細書に記載の修飾ペプチドに結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を投与することによって、例えば、それを含むかまたはそれからなる)としては、血液癌(例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫、MDS、及び骨髄増殖性疾患)、肺癌、膵臓癌、胃癌(gastric cancer)、結腸癌(例えば、結腸直腸癌)、卵巣癌、子宮内膜癌、胆道癌、肝臓癌、骨及び軟部組織癌(例えば、肉腫)、乳癌、前立腺癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、腎臓癌、頭頸部癌、脳癌(例えば、多形神経膠芽腫及び星状細胞腫)、甲状腺癌、胚細胞性腫瘍、及び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
がんを有するかまたはがんを有すると疑われる哺乳動物を評価する場合、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を使用して、本明細書に記載の1つ以上の修飾ペプチドの存在または非存在を評価することができる。例えば、ヒトから得られた試料中の本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)の存在、非存在、またはレベルを用いて、ヒトが、がんを有するか否かを決定することができる。ある場合には、哺乳動物から得られた試料中の本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)の存在を用いて、哺乳動物を、がんを有すると同定することができる。例えば、哺乳動物から得られた試料が、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)を有する場合、哺乳動物は、がんを有すると同定することができる。
【0070】
哺乳動物から得られた任意の適切な試料を、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)の存在、非存在、またはレベルについて評価することができる。例えば、組織試料(例えば、乳房組織、及びパパニコロウ(Pap)検査等からの子宮頸部組織)、流体試料(例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、痰、及び脳脊髄液)、及び固体試料(例えば、糞便)等の生体試料を哺乳動物から得て、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)の存在、非存在、またはレベルについて評価することができる。任意の適切な方法を用いて、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)の存在、非存在、またはレベルを検出することができる。例えば、サンガーシーケンシング、化学的シーケンシング、ナノポアシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング(SOLiDシーケンシング)、質量分析を用いたシーケンシング、全エクソームシーケンシング、全ゲノムシーケンシング、及び/または次世代シーケンシングを含むがこれらに限定されないシーケンシング技術を用いて、哺乳動物から得られた試料中の本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)の存在、非存在、またはレベルを決定することができる。
【0071】
がんを有する哺乳動物を治療する場合、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を、がんを有する哺乳動物に投与して哺乳動物を治療することができる。ある場合には、哺乳動物は、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)を発現するがんを有し得る。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインを含む1つ以上の分子を、修飾ペプチドを発現するがんを有する哺乳動物に投与して哺乳動物を治療することができる。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上のscFv(例えば、1つ以上のscDb)を含む1つ以上の分子を、修飾ペプチドを発現するがんを有する哺乳動物に投与して哺乳動物を治療することができる。
【0072】
ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子は、数日から数週間の範囲の期間にわたって1回または複数回、哺乳動物(例えば、がんを有する哺乳動物)に投与することができる。
【0073】
ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子は、哺乳動物(例えば、がんを有する哺乳動物)に投与するための組成物(例えば、薬学的に許容される組成物)に製剤化することができる。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメインは、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)、賦形剤、及び/または希釈剤とともに製剤化することができる。ある場合には、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤は、天然に存在する薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤であり得る。ある場合には、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤は、天然に存在しない(例えば、人工的または合成的な)薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤であり得る。本明細書に記載の組成物に使用することができる薬学的に許容される担体、賦形剤、及び希釈剤の例としては、スクロース、ラクトース、デンプン(例えば、デンプングリコレート)、セルロース、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びセルロースエーテルヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等の微結晶セルロース及びセルロースエーテル等の変性セルロース)、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビニドン)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ならびに架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム))、酸化チタン、アゾ色素、シリカゲル、ヒュームド・シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、抗酸化物質(例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、及びセレン)、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ベンジルアルコール、塩酸リジン、トレハロース二水和物、水酸化ナトリウム、パラベン(例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベン)、ワセリン、ジメチルスルホキシド、鉱油、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、水、塩または電解質(例えば、生理食塩水、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、及び亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリアクリレート、蝋、羊毛脂、レシチン、及びトウモロコシが挙げられるが、これらに限定されない。ある場合には、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤は、抗接着剤、結合剤、着色剤、崩壊剤、香料(例えば、果物抽出物等の天然香料または人工香料)、流動促進剤、潤滑剤、防腐剤、吸着剤、及び/または甘味料であり得る。
【0074】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、任意の適切な剤形に製剤化することができる。剤形の例としては、ガム、カプセル、錠剤(例えば、チュアブル錠、及び腸溶性コーティング錠)、坐剤、液剤、浣腸剤、懸濁剤、液剤(例えば、無菌溶液)、徐放性製剤、遅延放出性製剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤を含むが、これらに限定されない固体または液体形態が挙げられる。
【0075】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物は、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内を含む)、または腫瘍内投与のために設計することができる。非経口投与に好適な組成物には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を対象となるレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性及び非水性の滅菌注射液が含まれる。製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提示され得、使用の直前に、注射用の滅菌液体担体、例えば、水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即席の注射液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製されてもよい。
【0076】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物は、任意の適切な技術を用いて、任意の適切な場所に投与することができる。本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物は、局所的に(例えば、腫瘍内に)または全身的に投与することができる。例えば、本明細書で提供される組成物は、腫瘍内投与(例えば、腫瘍への注射)によって、または腫瘍によって浸潤された生物学的空間への投与(例えば、脊髄内投与、小脳内投与、腹腔内投与及び/または胸膜投与)によって局所的に投与することができる。例えば、本明細書で提供される組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)への経口投与または静脈内投与(例えば、注射または注入)によって全身的に投与することができる。
【0077】
有効用量は、がんのリスク及び/または重症度、投与経路、対象の年齢及び一般的な健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用等の他の治療的処置との併用の可能性、ならびに治療する医師の判断に応じて変化し得る。本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物の有効量は、対象に著しい毒性を引き起こすことなく、対象内に存在するがんを治療する任意の量であり得る。特定の対象が特定の量に応答しない場合、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子の量を、(例えば、2倍、3倍、4倍、またはそれ以上)増加させることができる。このより多くの量を投与された後、哺乳動物は、治療への応答性及び毒性症状の両方について監視され、それに応じて調整が行われる。有効量は、一定のままであり得るか、または治療に対する対象の応答に応じて、スライディングスケールもしくは可変用量として調整され得る。様々な要因が、特定の用途に使用される実際の有効量に影響を及ぼし得る。例えば、投与頻度、治療期間、複数の治療薬の使用、投与経路、及び状態(例えば、がん)の重症度によって、投与される実際の有効量の増加または減少が必要となり得る。
【0078】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子の投与頻度は、哺乳動物に著しい毒性を引き起こすことなく、がんを有する哺乳動物を効果的に治療する任意の頻度であり得る。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子の投与頻度は、1週間に約2回~約3回~1年に約2~約3回であり得る。ある場合には、がんを有する対象は、本明細書に記載の1つ以上の抗体の単回投与を受けることができる。本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子の投与頻度は、治療期間中、一定のままであり得るか、または可変であり得る。本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物による治療過程は、休薬期間を含むことができる。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物を、2年の期間にわたって1ヶ月おきに投与して、その後6ヶ月の休薬期間があってもよく、そのようなレジメンを複数回繰り返すことができる。有効量と同様に、様々な要因が、特定の用途に使用される実際の投与頻度に影響を及ぼし得る。例えば、有効量、治療期間、複数の治療薬の使用、投与経路、及び状態(例えば、がん)の重症度によって、投与頻度の増加または減少を必要とし得る。
【0079】
本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物を投与するための有効期間は、哺乳動物に著しい毒性を引き起こすことなく、哺乳動物内に存在するがんを効果的に治療する任意の期間であり得る。ある場合には、有効期間は、数ヶ月から数年まで変化し得る。一般に、がんを有する哺乳動物を治療するための有効期間は、約1ヶ月または2ヶ月~5年以上の期間であり得る。複数の要因が、特定の治療に使用される実際の有効期間に影響を及ぼし得る。例えば、有効期間は、投与頻度、有効量、複数の治療薬の使用、投与経路、及び治療される状態の重症度によって変化し得る。
【0080】
特定の場合において、哺乳動物内のがんを監視して、がん治療の有効性を評価することができる。任意の適切な方法を用いて、がんを有する哺乳動物を治療するかどうかを決定することができる。例えば、撮像技術または実験室アッセイを使用して、哺乳動物内に存在するがん細胞の数及び/または腫瘍のサイズを評価することができる。例えば、撮像技術または実験室アッセイを使用して、哺乳動物内に存在するがん細胞及び/または腫瘍の位置を評価することができる。
【0081】
ある場合には、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子は、1つ以上の追加のがん治療(例えば、抗がん剤)との併用療法として、がんを有する哺乳動物に投与することができる。がん治療は、任意の適切ながん治療を含むことができる。ある場合には、がん治療は、手術を含み得る。ある場合には、がん治療は、放射線療法を含み得る。ある場合には、がん治療は、1つ以上の治療薬(例えば、1つ以上の抗がん剤)の投与を含み得る。抗がん剤の例としては、白金化合物(例えば、シスプラチンまたはカルボプラチン)、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、またはnab-パクリタキセル等のアルブミン結合パクリタキセル)、アルトレタミン、カペシタビン、シクロホスファミド、エトポシド(vp-16)、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン(cpt-11)、リポソーマルドキソルビシン、メルファラン、ペメトレキセド、トポテカン、ビノレルビン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例えば、ゴセレリン及びロイプロリド)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストロゾール、及びエキセメスタン)、血管新生阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、ポリ(ADP)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤(例えば、オラパリブ、ルカパリブ、及びニラパリブ)、放射性リン、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、IL-2抗体及び他のサイトカイン、他の二重特異性抗体、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子が、1つ以上の追加のがん治療薬と組み合わせて使用される場合、1つ以上の追加のがん治療薬は、同時にまたは独立して投与することができる。例えば、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物を最初に投与して、1つ以上の追加のがん治療薬を2番目に投与してもよいか、またはその逆であってもよい。
【0082】
また、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含むキットも、本明細書で提供される。例えば、キットは、本明細書に記載の修飾TP53 R175H変異ペプチド(例えば、配列番号1を含むかまたはそれからなる)に結合することができる1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む1つ以上の分子を含む組成物(例えば、薬学的に許容される組成物)を含むことができる。ある場合には、キットは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかを実施するための説明書を含むことができる。ある場合には、キットは、本明細書に記載の組成物(例えば、薬学的組成物)のうちのいずれかの少なくとも1つの用量を含むことができる。ある場合には、キットは、本明細書に記載の組成物(例えば、薬学的組成物)のうちのいずれかを投与するための手段(例えば、注射器)を提供することができる。
【0083】
本発明は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに記載される。
【実施例
【0084】
本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない以下の実施例にさらに説明される。
【0085】
実施例1:改善された結合特性のための単一変異バリアントのスクリーニング
元のH2 R175Hを標的とするscFv(配列番号4)からの単一アミノ酸変化をそれぞれ有する1159個の一本鎖可変断片(scFv)からなるファージディスプレイライブラリーを使用して、R175H/HLA-A2を標的とする改善されたバリアントについてスクリーニングを行った。6つの相補性決定領域(CDR)にわたる合計61個の部位を、各部位に提示される20個全てのアミノ酸(野生型を除く)を有する単一変異体ライブラリーに含めた(図1)。R175H/HLA-A2 pMHCに対して高い特異性を示すクローンを同定するために、R175WT pMHC及びTP53 R175WT HLA-A2陽性細胞株に対する陰性選択を伴う5ラウンドのパニング、続いてR175H pMHCについて陽性選択を完了した。初期試験は、5ラウンドのパニング後、ファージプールが、6つ全てのCDRにわたって存在するバリアントを含み、多様性を保持していたことを示した(図2)。
【0086】
HLA-A2に結合したH2 Fabの結晶構造からのデータを使用して、よりストリンジェントな結合条件下でスクリーニングするために、潜在的な構造的関連性を有するパニングクローンを選択した。チオシアン酸アンモニウム(NHSCN)及び尿素洗浄液を用いて、R175Hモノマーへの結合が弱いscFvを除去し、R175WTよりもR175Hに特異的なクローンを同定した(図3)。パニングの4及び5ラウンド目からプールされたファージの追加のNHSCNベースのスクリーニングにより、チオシアネート洗浄液で濃縮されたいくつかのバリアントを同定した(図4)。
【0087】
実施例2:SCN耐性バリアントは、R175H/HLA-A2モノマーに対して強い相対的結合性を有する
ストリンジェントな洗浄条件下でR175Hモノマーに対する強い結合を維持したバリアントを、次いで、機能試験のために一本鎖ダイアボディ(scDb)二重特異性抗体フォーマットに変換した。順に、各scDbは、IL-2シグナル配列(配列番号6)、pHLAを標的とするscFv軽鎖(配列番号7の変異体)、GGGGS(G4S)リンカー(配列番号11)、抗CD3 scFv重鎖(配列番号12)、3×G4Sリンカー(配列番号13)、抗CD3 scFv軽鎖(配列番号14)、G4S(配列番号15)、pHLAを標的とするscFv重鎖(配列番号16の変異体)、及び精製のための5xHis親和性タグを含む。scDbは、HEK293FT細胞で発現し、NiNTA樹脂を使用して精製した。
【0088】
発現したscDbがR175H/A2モノマーに特異的に結合すること及びCD3に結合することができることを確認するために、scDbをR175H/A2モノマー、R175WT/A2モノマー、またはCD3δ/εヘテロダイマーでコーティングされたプレートに塗布した。CD3結合シグナルに対して正規化したとき、ほとんどのバリアントscDbが、ELISAによって元のH2-scDbと比較すると、R175H/HLA-A2モノマーへの相対的結合性の増加を示した(図5)。
【0089】
実施例3:インビトロでR175H-HLA-A2に対する改善された感受性及び活性を有するバリアントの同定
最も強力な2つの単一変異体を組み合わせた二重変異体を含む3つの候補バリアント(F53S(配列番号21)、Y57I(配列番号25)、及びF53S/Y57I(配列番号29))について、インビトロ及びインビボでscDbとして機能試験を行った。バリアント発現プラスミドを部位特異的変異誘発によって生成し、HEK293FT細胞で各scDbを発現させるために使用した。インビボ試験のためのscDbをより大規模に生成し、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。バリアントscDbを、様々なレベルのR175HまたはR175WT 9merペプチドでパルスしたTAP欠損T2A3細胞との共培養においてヒトT細胞を活性化する能力について試験した。バリアントY57I及びF53Sは、元のH2 scDbと比較して、低いペプチドパルス濃度(1nM)で改善された感受性を示した(図6)。全てのH2バリアントは、様々な濃度のscDbの存在下でのKMS26細胞及びヒトT細胞との一晩共培養において、元のH2 scDbよりも増加した細胞毒性、インターフェロンγ応答、及び低いEC50値を有していた(図7A図7B)。KMS26-p53R175Hに対するF53S、Y57I、及びF53S/Y57Iの細胞毒性EC50値は、H2 scDbの3.061×10-11Mと比較して、7.864×10-12M、4.749×10-12M、及び4.154×10-12Mであった。低いscDb濃度(13.7pM及び4.57pM)では、Tukeyの多重比較検定を用いた通常の双方向ANOVAは、全てのH2バリアントがH2 scDbと比較して細胞毒性が増加し(P<0.0001)、Y57I及びF53S/Y57IがH2 scDbと比較してインターフェロンγの増加をもたらしたことを示している(P<0.0001)。H2バリアントはまた、内因性TP53 R175H変異を有する様々なHLA-A2陽性細胞株に対する共培養で改善された活性を有する(図8A~8D)。実際、Y57I及びF53S/Y57Iは、元のH2 scDbと比較して10倍低い二重特異性抗体濃度でKMS26細胞株に対して類似のまたはより高い活性を示す。
【0090】
実施例4:バリアントscDbは、より高い親和性でR175H/HLA-A2複合体に結合する。
H2バリアントが、元のH2 scDbとは異なる親和性でR175Hペプチド-MHC複合体に結合するかどうかを決定するために、R175H/A2モノマーへのF53S、Y57I及びF53S/Y57I scDbの結合を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した(図9A図9D)。全てのバリアントが、元のH2 scDbよりも高い親和性でR175H pMHC複合体に結合した。バリアントのKDは、元のH2 scDbの29.5nMと比較して、F53S、Y57I及びF53S/Y57Iで12.9nM、6.8nM及び3.3nMである。バリアントは、p53 WT/A2 pMHCへの結合の増加を示さなかった。
【0091】
実施例5:バリアントscDbは、インビボで元のH2 scDbよりも優れている
3つのH2バリアントF53S、Y57I及びF53S/Y57Iのインビボでの抗腫瘍有効性を元のH2 scDbと比較するために、13~15週齢の雌NSGマウス(NOD scid IL2rg)に、ルシフェラーゼを発現する1×10のKMS26細胞(TP53 R175H、HLA-A2)及び1×10のヒトT細胞を静脈内に接種した。2日後、マウス腹腔内に外科的に配置された14日間連続放出ポンプを使用して、マウスを0.15mg/kg/日のscDbで処理した(図10A図10G)。群当たりN=6のマウス。腫瘍負荷を生物発光イメージングによって監視した。全フラックス測定値を、各マウスについて胸部にわたって測定された注入対照蛍光色素に対して正規化した。図10Hは、F53S、Y57I及びF53S/Y57Iが、処理2日目の元のH2 scDbと比較して腫瘍制御を改善し、Y57I及びF53S/Y57Iが、処理5日目及び8日目の元のH2 scDbと比較して腫瘍制御を改善したことを示す(P<0.05、Geissner-Greenhouse補正を伴う双方向反復測定ANOVA及びDunnettの多重比較検定)。図10Iは、Y57IがインビボでKMS26腫瘍増殖を制御したことを示す。図10A~10Gからの生物発光データのMann-Whitneyの多重検定は、Y57Iが、元のH2 scDbと比較して8日目に腫瘍制御を改善したことを示している(P=0.019)。処理後2週間で、Y57Iで処理したマウスに腫瘍再発は見られなかった。
【0092】
バリアントscDb及び元のH2は、0.15mg/kg/日の投与レジメンでKMS26に対する抗腫瘍有効性を有していたため、バリアントscDbを、より速い増殖速度を有する第2の腫瘍モデルNalm6に対する抗腫瘍有効性について50%低い用量で試験した。ルシフェラーゼ発現Nalm6細胞を、ホモ接合性p53R175H変異を有するようにCRISPRによって遺伝子改変した。7~8週齢のNSG(NOD scid IL2rg)マウスに、5×10のNalm6R175H細胞及び1×10のヒトT細胞を静脈内に接種した(図11A)。2日後、マウス腹腔内に外科的に配置された14日間連続放出ポンプを使用して、マウスを0.075mg/kg/日のscDbで処理した(図11B図11G)。腫瘍負荷を生物発光イメージングによって監視した。2つの独立した実験(scDb当たりN=6)からの生物発光データを組み合わせ、合計でscDb当たりN=12とした。処理7日目に、H2 scDbに対するGeissner-Greenhouse補正を伴う双方向反復測定ANOVA及びDunnettの多重比較検定は、全てのH2バリアントが腫瘍制御を改善し(H2対F53S P=0.0093、Y57I P=0.0126、F53S/Y57I P=0.0030)、H2がアイソタイプ対照scDbよりも優れていたことを示した(P<0.0001)。Dunnettの多重比較試験によると、F53S/Y57Iは、14日目のH2と比較して優れた腫瘍制御を示した(双方向反復測定ANOVA、P=0.0295)。
【0093】
Y57Iが、確立された腫瘍モデルにおいて元のH2 scDbよりも良好に機能するかどうかを決定するために、Y57I scDbを、KMS26細胞を用いた遅延処理モデルにおいて試験した。7~9週齢のNSG(NOD scid IL2rg)マウスに、3.5×10のルシフェラーゼ発現KMS26細胞を静脈内に接種した。7日後、マウスを1×10のヒトT細胞で静脈内処理し、マウス腹腔内に外科的に配置された14日間連続放出ポンプを使用して、0.075mg/kg/日のscDbで処理した(図12A図12E)。腫瘍負荷を生物発光イメージングによって監視した。群当たりN=5。14日目の処理終了時に、Mann-Whitneyの検定により、Y57I処理マウスが、元のH2 scDbで処理したマウスよりも低い腫瘍負荷を有することが示された(P=0.0079)。
【0094】
配列
配列番号1 P53 R175H変異ペプチド
HMTEVVRHC
配列番号2 P53 R175野生型ペプチド
HMTEVVRRC
配列番号3 p53
>sp|P04637|p53_ヒト細胞腫瘍抗原p53 OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=TP53 PE=1 SV=4
MEEPQSDPSVEPPLSQETFSDLWKLLPENNVLSPLPSQAMDDLMLSPDDIEQWFTEDPGPDEAPRMPEAAPPVAPAPAAPTPAAPAPAPSWPLSSSVPSQKTYQGSYGFRLGFLHSGTAKSVTCTYSPALNKMFCQLAKTCPVQLWVDSTPPPGTRVRAMAIYKQSQHMTEVVRRCPHHERCSDSDGLAPPQHLIRVEGNLRVEYLDDRNTFRHSVVVPYEPPEVGSDCTTIHYNYMCNSSCMGGMNRRPILTIITLEDSSGNLLGRNSFEVRVCACPGRDRRTEEENLRKKGEPHHELPPGSTKRALPNNTSSSPQPKKKPLDGEYFTLQIRGRERFEMFRELNEALELKDAQAGKEPGGSRAHSSHLKSKKGQSTSRHKKLMFKTEGPDSD
配列番号4 H2 scFv
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIKRTGGGSGGGGSGGGASEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDYTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVSS
配列番号5 H2 scDb
MYRMQLLSCIALSLALVTNSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIKGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKNLEWMGLINPYKGVSTYNQKFKDKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGAGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDIRNYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSKFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFAGGTKLEIKEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDYTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVSSHHHHHH
配列番号6 H2 IL-2シグナル配列
MYRMQLLSCIALSLALVTNS
配列番号7 H2 R175Hペプチドを標的とするscFv軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIK
配列番号8 H2 R175Hペプチドを標的とするscFv軽鎖CDR1
RASQDVNTAVA
配列番号9 H2 R175Hペプチドを標的とするscFv軽鎖CDR2
SAYFLYS
配列番号10 H2 R175Hペプチドを標的とするscFv軽鎖CDR3
QQYSRYSPV
配列番号11 リンカー
GGGGS
配列番号12 H2 CD3を標的とする重鎖
EVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKNLEWMGLINPYKGVSTY
NQKFKDKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGAGTTVTV
SS
配列番号13 リンカー
GGGGSGGGGSGGGGS
配列番号14 H2 CD3を標的とする軽鎖
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDIRNYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPS
KFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFAGGTKLEIK
配列番号15 リンカー
GGGGS
配列番号16 H2 R175Hペプチドを標的とするscFv重鎖
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDYTYY
ADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVS

配列番号17 H2 R175Hペプチドを標的とするscFv重鎖CDRH1
FNVYASGMH
配列番号18 H2 R175Hペプチドを標的とするscFv重鎖CDRH2
VAKIYPDSDYTYY
配列番号19 H2 R175Hペプチドを標的とするscFv重鎖CDRH3
SRDSSFYYVYAM
配列番号20 F53S scFv
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYSLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIKRTGGGSGGGGSGGGASEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDYTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVSS
配列番号21 F53S R175Hペプチドを標的とするscDb(シグナル配列またはHisタグなし)
MYRMQLLSCIALSLALVTNSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYSLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIKGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKNLEWMGLINPYKGVSTYNQKFKDKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGAGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDIRNYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSKFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFAGGTKLEIKGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDYTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVSS
配列番号22 F53S R175Hペプチドを標的とするscFv軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYSLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIK
配列番号23 F53S R175Hペプチドを標的とするscFv軽鎖CDR2
SAYSLYS
配列番号24 Y57I scFv
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIKRTGGGSGGGGSGGGASEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDITYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVSS
配列番号25 Y57I R175Hペプチドを標的とするscDb(シグナル配列またはHisタグなし)
MYRMQLLSCIALSLALVTNSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIKGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKNLEWMGLINPYKGVSTYNQKFKDKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGAGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDIRNYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSKFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFAGGTKLEIKGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDITYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVSS
配列番号26 Y57I R175Hペプチドを標的とするscFv重鎖
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDITYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVSS
配列番号27 Y57I R175Hペプチドを標的とするscFv重鎖CDR2
VAKIYPDSDITYY
配列番号28 F53S/Y57I scFv
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYSLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIKRTGGGSGGGGSGGGASEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDITYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVS
配列番号29 F53S/Y57I R175Hペプチドを標的とするscDb(シグナル配列またはHisタグなし)
MYRMQLLSCIALSLALVTNSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSAYSLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSRYSPVTFGQGTKVEIKGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKNLEWMGLINPYKGVSTYNQKFKDKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGAGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDIRNYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSKFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFAGGTKLEIKGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNVYASGMHWVRQAPGKGLEWVAKIYPDSDITYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRDSSFYYVYAMDYWGQGTLVTVSS
【0095】
(表1)R175Hペプチドを標的とするscFv
【0096】
(表2)抗ヒトCD3 scFv配列
【0097】
(表3)抗ヒトCD3 scFv配列。選択された抗CD3クローンの親和性を文献から収集した。
【0098】
(表4)抗ヒトCD16a scFv配列
【0099】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されているが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図するものであり、限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
【配列表】
2024546923000001.xml
【国際調査報告】