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2024-546924抗PILRA抗体、その使用、ならびに関連する方法及び試薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】抗PILRA抗体、その使用、ならびに関連する方法及び試薬
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241219BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12N5/078
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535797
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 US2022053245
(87)【国際公開番号】W WO2023114515
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,930
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ダ ローザ クレール
(72)【発明者】
【氏名】キム ド ジン
(72)【発明者】
【氏名】リサインゴ キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド マデリーン
(72)【発明者】
【氏名】モンロー キャサリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーク ジョシュア アイ.
(72)【発明者】
【氏名】プロプソン ニコラス イー.
(72)【発明者】
【氏名】サベルストロム ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】セオリス ジュニア リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラッコディー ターニャ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書において、カニクイザルPILRAタンパク質及びヒトPILRAタンパク質に対して同等の結合性を有するが、ヒトPILRBタンパク質に対してより弱い結合性を有し、加えて、PILRA G78バリアント及びR78バリアントの両方に対する結合性を有する、非常に望ましい選択性を有する抗PILRA抗体が提供される。本明細書に記載される抗体の結合性及び選択性プロファイルは、代用の分子に依存する必要なしにそれらを動物試験(例えば、サル)に使用することを可能にし、また、いずれのPILRAバリアントを有する対象の処置の場合にも使用することを可能にする。更に、PILRAに関する生物学的発見及び細胞におけるPILRAシグナル伝達を低減させる効果が、本明細書において初めて記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニクイザルペア型免疫グロブリン様2型受容体α(cynoPILRA)に特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、該cynoPILRAに対する結合親和性が、ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体β(hPILRB)に対する結合親和性より少なくとも2倍強い、該単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体α(hPILRA)にも結合する、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体α(hPILRA)及びカニクイザルPILRA(cynoPILRA)に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、該cynoPILRAに対する結合親和性が、該hPILRAに対する結合親和性と比較して100倍以内である、該単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記hPILRAに対する結合親和性が、前記hPILRBに対する結合親和性より少なくとも10倍強い、請求項2または3に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記cynoPILRAに対する結合親和性が、前記hPILRBに対する結合親和性より少なくとも10倍強い、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体α(hPILRA)に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、該抗体またはその抗原結合断片が、63位、64位、78位、106位、143位、116~118位、及び182~186位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合し、該位置が配列番号1の配列を参照して決定される、該単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合断片が、78位、106位、及び143位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する、請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1のG78、K106、及びE143に結合する、請求項6または7に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号136のR78、K106、及びE143に結合する、請求項6または7に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合断片が、63位及び64位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する、請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1のT63及びA64に結合する、請求項6または10に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合断片が、106位、116~118位、及び182~186位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する、請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1のK106に結合する、請求項6または12に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1のQ116、K117、及び/またはQ118に結合する、請求項6または12に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1のQ182、G183、K184、R185、及び/またはR186に結合する、請求項6または12に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
前記抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(a)配列番号4~11のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号4~11のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR1(CDR-H1)配列、
(b)配列番号12~19のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性を有するか、または配列番号12~19のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR2(CDR-H2)配列、
(c)配列番号20~29のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性を有するか、または配列番号20~29のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR3(CDR-H3)配列、
(d)配列番号30~38のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号30~38のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR1(CDR-L1)配列、
(e)配列番号39~46のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性を有するか、または配列番号39~46のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR2(CDR-L2)配列、及び
(f)配列番号47~53のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性を有するか、または配列番号47~53のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR3(CDR-L3)配列
を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
前記アミノ酸置換が保存的置換である、請求項16に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
前記抗体または抗原結合断片が、以下:
(i)配列番号4の配列を含むか、もしくは配列番号4の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号12の配列を含むか、もしくは配列番号12の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号20の配列を含むか、もしくは配列番号20の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号30の配列を含むか、もしくは配列番号30の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号39の配列を含むか、もしくは配列番号39の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号47の配列を含むか、もしくは配列番号47の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3、または
(ii)配列番号5の配列を含むか、もしくは配列番号5の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号13の配列を含むか、もしくは配列番号13の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号22の配列を含むか、もしくは配列番号22の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号31の配列を含むか、もしくは配列番号31の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号39の配列を含むか、もしくは配列番号39の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号47の配列を含むか、もしくは配列番号47の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3、または
(iii)配列番号6の配列を含むか、もしくは配列番号6の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号14の配列を含むか、もしくは配列番号14の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号23の配列を含むか、もしくは配列番号23の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号32の配列を含むか、もしくは配列番号32の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号40の配列を含むか、もしくは配列番号40の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号48の配列を含むか、もしくは配列番号48の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3、
(iv)配列番号7の配列を含むか、もしくは配列番号7の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号15の配列を含むか、もしくは配列番号15の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号24の配列を含むか、もしくは配列番号24の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号33の配列を含むか、もしくは配列番号33の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号41の配列を含むか、もしくは配列番号41の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号49の配列を含むか、もしくは配列番号49の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3、または
(v)配列番号7の配列を含むか、もしくは配列番号7の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号15の配列を含むか、もしくは配列番号15の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号25の配列を含むか、もしくは配列番号25の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号34の配列を含むか、もしくは配列番号34の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号42の配列を含むか、もしくは配列番号42の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号49の配列を含むか、もしくは配列番号49の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3、または
(vi)配列番号8の配列を含むか、もしくは配列番号8の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号16の配列を含むか、もしくは配列番号16の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号26の配列を含むか、もしくは配列番号26の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号35の配列を含むか、もしくは配列番号35の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号43の配列を含むか、もしくは配列番号43の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号50の配列を含むか、もしくは配列番号50の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3
を含む、請求項16または17に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(a)GXTFXH(配列番号74)の配列を含むCDR-H1配列であって、XがFまたはYであり、XがDまたはIであり、XがDまたはGであり、XがYまたはFであり、XがAまたはYであり、かつXがMまたはIである、該CDR-H1配列、
(b)XSGX(配列番号75)の配列を含むCDR-H2配列であって、XがGまたはWであり、XがF、M、またはIであり、XがSまたはNであり、XがWまたはPであり、XがNまたはEであり、XがSまたはDであり、XがIまたはTであり、かつXがGまたはTである、該CDR-H2配列、
(c)XFDX10(配列番号76)の配列を含むCDR-H3配列であって、XがDであるか、または存在せず、XがKまたはGであり、XがSまたはNであり、XがIまたはWであり、XがS、G、またはNであり、XがAまたはFであり、XがAまたはPであり、XがGまたはDであり、XがRまたはTであり、かつX10がY、S、またはFである、該CDR-H3配列、
(d)XSXIXYLN(配列番号77)の配列を含むCDR-L1配列であって、XがQまたはRであり、XがAまたはSであり、XがRまたはQであり、XがR、G、またはSであり、XがNまたはSであり、かつXがNまたはIである、該CDR-L1配列、
(e)XASXLX(配列番号78)の配列を含むCDR-L2配列であって、XがDまたはVであり、XがNまたはSであり、XがEまたはQであり、かつXがTまたはSである、該CDR-L2配列、及び
(f)QQXPXT(配列番号79)の配列を含むCDR-L3配列であって、XがYまたはSであり、XがDまたはYであり、XがNまたはSであり、XがLまたはAであり、かつXがLまたはFである、該CDR-L3配列
を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
前記抗体または抗原結合断片が、以下:
(i)配列番号4の配列を含むCDR-H1、配列番号12の配列を含むCDR-H2、配列番号20の配列を含むCDR-H3、配列番号30の配列を含むCDR-L1、配列番号39の配列を含むCDR-L2、及び配列番号47の配列を含むCDR-L3、または
(ii)配列番号5の配列を含むCDR-H1、配列番号13の配列を含むCDR-H2、配列番号22の配列を含むCDR-H3、配列番号31の配列を含むCDR-L1、配列番号39の配列を含むCDR-L2、及び配列番号47の配列を含むCDR-L3、または
(iii)配列番号6の配列を含むCDR-H1、配列番号14の配列を含むCDR-H2、配列番号23の配列を含むCDR-H3、配列番号32の配列を含むCDR-L1、配列番号40の配列を含むCDR-L2、及び配列番号48の配列を含むCDR-L3
を含む、請求項19に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項21】
前記抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(i)配列番号7の配列を含むCDR-H1、配列番号15の配列を含むCDR-H2、配列番号24の配列を含むCDR-H3、配列番号33の配列を含むCDR-L1、配列番号41の配列を含むCDR-L2、及び配列番号49の配列を含むCDR-L3、または
(ii)配列番号7の配列を含むCDR-H1、配列番号15の配列を含むCDR-H2、配列番号25の配列を含むCDR-H3、配列番号34の配列を含むCDR-L1、配列番号42の配列を含むCDR-L2、及び配列番号49の配列を含むCDR-L3、または
(iii)配列番号8の配列を含むCDR-H1、配列番号16の配列を含むCDR-H2、配列番号26の配列を含むCDR-H3、配列番号35の配列を含むCDR-L1、配列番号43の配列を含むCDR-L2、及び配列番号50の配列を含むCDR-L3
を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
配列番号54~63のいずれか1つに対する少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖可変領域(V)配列を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項23】
前記V配列が、配列番号54~63のいずれか1つの配列を含む、請求項22に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項24】
配列番号137~144及び158のいずれか1つに対する少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖可変領域(V)配列を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項25】
前記V配列が、配列番号137~144及び158のいずれか1つの配列を含む、請求項24に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項26】
配列番号64~73のいずれか1つに対する少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(V)配列を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項27】
前記V配列が、配列番号64~73のいずれか1つの配列を含む、請求項26に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項28】
配列番号145~149のいずれか1つに対する少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖可変領域(V)配列を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項29】
前記V配列が、配列番号145~149のいずれか1つの配列を含む、請求項28に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項30】
前記抗体または抗原結合断片が、以下:
(i)配列番号54を含むV配列及び配列番号65を含むV配列、または
(ii)配列番号56を含むV配列及び配列番号66を含むV配列、または
(iii)配列番号57を含むV配列及び配列番号67を含むV配列、または
(iv)配列番号58を含むV配列及び配列番号68を含むV配列、または
(v)配列番号59を含むV配列及び配列番号69を含むV配列、または
(vi)配列番号60を含むV配列及び配列番号70を含むV配列
を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項31】
前記抗体または抗原結合断片が、以下:
(i)配列番号54を含むV配列及び配列番号65を含むV配列、または
(ii)配列番号56を含むV配列及び配列番号66を含むV配列、または
(iii)配列番号57を含むV配列及び配列番号67を含むV配列
を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項32】
前記抗体または抗原結合断片が、以下:
(i)配列番号137を含むV配列及び配列番号145を含むV配列、または
(ii)配列番号140を含むV配列及び配列番号145を含むV配列、または
(iii)配列番号143を含むV配列及び配列番号146を含むV配列、または
(iv)配列番号143を含むV配列及び配列番号149を含むV配列
を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項33】
前記抗体が、Fcドメインを形成している2つのFcポリペプチドを含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項34】
一方または両方のFcポリペプチドが、配列番号94の配列に対する少なくとも85%の同一性を有する配列を含む、請求項33に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項35】
前記抗体がIgG1である、請求項1~34のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項36】
前記抗体が全長抗体である、請求項1~35のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項37】
ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体α(hPILRA)に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、該抗体またはその抗原結合断片が、表1の抗体クローン1~39からなる群から選択される抗体クローンにより認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じであるエピトープを認識する、該単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項38】
前記抗体またはその抗原結合断片が、抗体クローン2、4、及び5からなる群から選択される抗体クローンにより認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じであるエピトープを認識する、請求項37に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項39】
前記抗体またはその抗原結合断片が、hPILRA活性をアンタゴナイズする、請求項1~38のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項40】
前記抗体またはその抗原結合断片が、hPILRAへのシアリル化タンパク質の結合を遮断する、請求項1~39のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項41】
前記シアリル化タンパク質が、シアリル化されたNPDC1、PANP、HSV-1 gB、COLEC12、C4a、C4b、DAG1、またはClec4gである、請求項40に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項42】
前記抗体またはその抗原結合断片が、EGFRもしくはSTAT3のリン酸化を増強するか、またはSTAT1のリン酸化を減少させる、請求項1~41のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項43】
前記抗体またはその抗原結合断片が、細胞遊走を増強する、請求項1~42のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項44】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ミクログリア遊走を増強する、請求項43に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項45】
前記抗体またはその抗原結合断片が、抗炎症性遺伝子またはタンパク質の発現を増強する、請求項1~44のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項46】
前記抗体またはその抗原結合断片が、IL1RN遺伝子の発現を増強する、請求項45に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項47】
前記抗体またはその抗原結合断片が、炎症誘発性サイトカインタンパク質の発現または分泌を低減させる、請求項1~46のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項48】
前記抗体またはその抗原結合断片が、TNF、IL-6、及び/またはIP-10の発現を低減させる、請求項47に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項49】
前記抗体またはその抗原結合断片が、細胞呼吸を増加させる、請求項1~48のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項50】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ミトコンドリア呼吸を増加させる、請求項49に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項51】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ATP産生を増加させる、請求項1~50のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項52】
前記抗体またはその抗原結合断片が、脂肪酸代謝を増加させる、請求項1~51のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項53】
前記抗体またはその抗原結合断片が、末梢免疫細胞を活性化しない、請求項1~52のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項54】
前記抗体またはその抗原結合断片が、好中球及び単球を活性化しない、請求項53に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項55】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~54のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項56】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項1~55のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項57】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1~56のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項58】
前記抗体が完全ヒト抗体である、請求項1~57のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項59】
前記抗原結合断片が、Fab、F(ab’)2、scFv、または二価scFvである、請求項1~58のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項60】
hPILRAへの結合について請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体と競合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項61】
請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項62】
請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項63】
請求項62に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項64】
請求項62に記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項65】
単離された抗体またはその抗原結合断片を産生するための方法であって、請求項62に記載のポリヌクレオチドによりコードされる単離された抗体またはその抗原結合断片が発現される条件下で宿主細胞を培養する工程を含む、該方法。
【請求項66】
請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合断片または請求項61に記載の医薬組成物と、
それらの使用説明書と
を含む、キット。
【請求項67】
対象における神経変性疾患を処置する方法であって、請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合断片または請求項61に記載の医薬組成物を該対象に投与する工程を含む、該方法。
【請求項68】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、原発性加齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、グアドループにおける認知症を伴うパーキンソニズム(Guadeloupean parkinsonism with dementia)、グアドループにおけるPSP(Guadelopean PSP)、ハレルフォルデン・スパッツ病、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、那須ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球・橋・黒質変性症、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質・脳アミロイドアンギオパチー(prion protein cerebral amyloid angiopathy)、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維変化型認知症からなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
ある分子がPILRAタンパク質に対する活性を有するかどうかを決定するための方法であって、
(a)該PILRAタンパク質を発現する細胞を該分子と接触させる工程と、
(b)より低いPILRA発現を有する、工程(a)と同じ種類の細胞を、工程(a)の前、それと同時、またはその後のいずれかにおいて該分子と接触させる工程と、
(c)両方の細胞における、リン酸化STAT3(pSTAT3)レベル、リン酸化STAT1(pSTAT1)レベル、リン酸化EGFR(pEGFR)レベル、カドヘリン発現、インテグリン発現、及びミクログリア遊走のうちの1つを測定する工程であって、これらの測定のうちの1つについての細胞間でのレベルの変化が、工程(a)の該PILRAタンパク質に対する活性を該分子が有することを示す、該測定する工程と
を含む、該方法。
【請求項71】
工程(a)の前記細胞が、前記PILRAタンパク質を天然に発現する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
より低いPILRA発現を有する前記細胞が、前記PILRAタンパク質についてノックアウトされている、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記細胞がミクログリアである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記細胞がiMicrogliaである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記細胞がPILRA LoF iMicrogliaである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
工程(a)の前記細胞が、前記PILRAタンパク質を発現または過剰発現するように操作または改変されている、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
より低いPILRA発現を有する前記細胞が、前記PILRAタンパク質を天然に発現する、または前記PILRAタンパク質の発現のための操作も改変もされていない、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記分子が、分子ライブラリー由来のものである、請求項70~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記分子が、前記PILRAタンパク質に結合すると分かっている、請求項70~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記PILRAタンパク質に前記分子が結合するかどうかが分かっていない、請求項70~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記分子が、抗体、ペプチド、有機低分子、または核酸である、請求項70~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
PILRAタンパク質に結合する分子が、PILRAを発現する細胞におけるシグナル伝達応答または活性を調節するかどうかを決定するための方法であって、
(a)該細胞を該分子と接触させる工程と、
(b)リン酸化STAT3(pSTAT3)レベル、リン酸化STAT1(pSTAT1)レベル、リン酸化EGFR(pEGFR)レベル、カドヘリン発現、インテグリン発現、及びミクログリア遊走のうちの1つを測定する工程であって、該測定のうちの1つについてのレベルの変化が、PILRAを発現する該細胞における該シグナル伝達応答または活性を該分子が調節することを示す、該測定する工程と
を含む、該方法。
【請求項83】
前記変化が、前記分子なしでの前記細胞におけるレベルと比較した、前記細胞に前記分子が接触した場合の前記測定のうちの1つについてのレベルの増加または減少である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記細胞が、インビトロアッセイにおけるものである、請求項82または83に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞が、哺乳動物におけるものである、請求項82または83に記載の方法。
【請求項86】
工程(a)が、前記哺乳動物に前記分子を投与することを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記細胞が、ミクログリア、骨髄性細胞、単球、または好中球である、請求項82~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
操作されたヒト人工多能性幹細胞(IPSC)またはIPSC細胞株であって、該IPSCが、PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子を2コピー発現するように改変されている、該操作されたヒトIPSCまたはIPSC細胞株。
【請求項89】
前記IPSCが、内在性ゲノム遺伝子座で改変されている、請求項88に記載の操作されたヒトIPSCまたはIPSC細胞株。
【請求項90】
ヒト人工多能性幹細胞(IPSC)に由来する、操作されたミクログリア細胞モデルであって、該IPSCが、PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子を2コピー発現するように改変されている、該操作されたミクログリア細胞モデル。
【請求項91】
前記IPSCが、内在性ゲノム遺伝子座で改変されている、請求項90に記載の操作されたミクログリア細胞モデル。
【請求項92】
マッチする一対の細胞株であって、
(a)該対のうちの第1の細胞株が、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であり、かつ
(b)該対のうちの第2の細胞株が、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であり、
該対の第1及び第2の細胞株の両方が、同じ親細胞株に由来し、かつ一方または両方の細胞株が、内在性PILRA遺伝子において操作されている、
該マッチする一対の細胞株。
【請求項93】
前記親細胞株が、前記PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である、請求項92に記載のマッチする一対の細胞株。
【請求項94】
前記親細胞株が、前記PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である、請求項92に記載のマッチする一対の細胞株。
【請求項95】
前記親細胞株が、前記PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である、請求項92に記載のマッチする一対の細胞株。
【請求項96】
前記PILRAタンパク質のG78バリアント及びR78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である第3の細胞株を更に含む、請求項92~95のいずれか1項に記載のマッチする一対の細胞株。
【請求項97】
前記第3の細胞株が、前記PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である前記親細胞株に由来する、請求項96に記載のマッチする一対の細胞株。
【請求項98】
改変されたPILRA遺伝子を有する骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる幹細胞株を作製する方法であって、
(a)既存の骨髄性細胞株または既存の幹細胞株が、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、またはPILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であるかを決定する工程と、
(b)PILRAタンパク質のR78バリアントまたはPILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより細胞株を操作する工程と
を含み、
該操作された細胞株が、操作される前は、選択されたバリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性ではなかった、
該方法。
【請求項99】
マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、
(a)既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株が、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、またはPILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であるかを決定する工程と、
(b)(i)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより第1の細胞株を操作する、及び/または(ii)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより第2の細胞株を操作する工程と
を含む、該方法。
【請求項100】
前記操作された細胞株が、操作される前は、選択されたバリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性ではなかった、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
工程(a)の前記既存の細胞株が、前記PILRAタンパク質のR78バリアントについてホモ接合性であり、かつ、工程(b)の前記操作が、
前記PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、前記既存の細胞株を改変すること
を含む、請求項98~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
工程(a)の前記既存の細胞株が、前記PILRAタンパク質のG78バリアントについてホモ接合性であり、かつ、工程(b)の前記操作が、
前記PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、前記既存の細胞株を改変すること
を含む、請求項98~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
工程(a)の前記既存の細胞株が、前記PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であり、かつ、工程(b)の前記操作が、
前記PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株、及び前記PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、前記既存の細胞株を改変すること
を含む、請求項98~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記骨髄性細胞株がIPSC株である、請求項98~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、
(a)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第1の操作された細胞株を作製するために、該既存の細胞株を操作する工程と、
(b)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第2の操作された細胞株を作製するために、工程(a)で作製された細胞株または該既存の細胞株のいずれかを操作する工程と
を含む、該方法。
【請求項106】
PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、
(a)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第1の操作された細胞株を作製するために、該既存の細胞株を操作する工程と、
(b)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第2の操作された細胞株を作製するために、工程(a)で作製された細胞株または該既存の細胞株のいずれかを操作する工程と
を含む、該方法。
【請求項107】
PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、該既存の細胞株を操作する工程を含む、該方法。
【請求項108】
PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、該既存の細胞株を操作する工程を含む、該方法。
【請求項109】
前記骨髄性細胞株がIPSC株である、請求項105~108のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月17日に出願された米国仮特許出願第63/290,930号の優先権を主張し、その開示は全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
ペア型免疫グロブリン様2型受容体α(PILRA)は、ミクログリアなどの様々な免疫細胞で発現し、抑制性細胞シグナル伝達経路において機能すると考えられている膜貫通受容体である。PILRAのミスセンスバリアント(G78R)は、アルツハイマー病リスクの減少に関連付けられる。G78Rバリアントは、シアル酸結合に必須な残基の相互作用を変化させ、幾つかのPILRAリガンドに対する結合性の低減をもたらす。
【0003】
PILRA活性を調節する治療薬が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
簡単な概要
本明細書では、カニクイザルPILRA(cynoPILRA)及びhPILRAの両方に選択的に結合するが、ヒトPILRB(hPILRB)に対する比較的より低い結合性を有し得る抗体が記載される。本発明者らは、望ましい選択性を可能にするエピトープを同定した。この選択性プロファイルは、非常に有利であるが、cynoPILRAとhPILRBとの間の高い相同性を考慮すると非常に困難でもある。カニクイザルタンパク質とヒトタンパク質との間で同等の結合性を有することは、代用の分子に依存する必要なく、サルでの試験を実施することを可能にする。対照的に、PILRBへの結合は、PILRBがPILRAと非常に類似する細胞外ドメインを有するが、異なる細胞内ドメインを有し、これが異なる活性または更には反対の活性を有すると予想されるため、望ましくない。
【0005】
更に、本明細書に記載されるこの選択性プロファイルを有するある特定の抗体は、PILRAの両方のバリアント型(G78及びR78)にも結合し、これらに対する活性を有し、従って、このことにより、各バリアントの頻度が世界のそれぞれの地域で大きく異なることを考慮して、それらを種々の集団で使用できるようになる。
【0006】
非常に有用な抗体を開発することに加えて、本発明者らは、PILRAシグナル伝達の特定の下流エフェクターの発見が含まれる、PILRA生物学に関連する重要な発見もし、ミクログリアにおけるPILRA受容体によるシグナル伝達を減少させる効果を初めて特徴付けた。これらの洞察は、PILRAリガンドの遮断を細胞における生物学的効果に関連付けることを初めて可能にし、医薬品の発見ならびに既知のPILRA結合剤の細胞及び動物に対する生物学的影響の測定の両方のための新たな手法を提供する。
【0007】
一態様では、本開示は、カニクイザルペア型免疫グロブリン様2型受容体α(cynoPILRA)に特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片を特徴とし、ここで、cynoPILRAに対する結合親和性は、ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体β(hPILRB)に対する結合親和性より少なくとも2倍(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍)強い。幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体α(hPILRA)にも結合する。
【0008】
別の態様では、本開示は、ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体α(hPILRA)及びカニクイザルPILRA(cynoPILRA)に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片を特徴とし、ここで、cynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRAに対する結合親和性と比較して100倍以内(例えば、90倍、80倍、70倍、60倍、50倍、40倍、30倍、20倍、10倍、5倍、または2倍以内)である。
【0009】
この態様の幾つかの実施形態では、cynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRAに対する結合親和性と比較して50倍以内(例えば、45倍、40倍、35倍、30倍、25倍、20倍、15倍、10倍、5倍、または2倍以内)である。この態様の幾つかの実施形態では、cynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRAに対する結合親和性と比較して25倍以内(例えば、20倍、15倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、または2倍以内)である。幾つかの実施形態では、cynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRAに対する結合親和性と比較して10倍以内(例えば、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、または2倍以内)である。ある特定の実施形態では、cynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRAに対する結合親和性と比較して5倍以内(例えば、4倍、3倍、または2倍以内)である。特定の実施形態では、cynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRAに対する結合親和性と比較して2倍以内である。
【0010】
この態様の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、hPILRA及びcynoPILRAと比較してより弱い親和性でヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体β(hPILRB)に結合する。幾つかの実施形態では、hPILRAに対する結合親和性は、hPILRBに対する結合親和性より少なくとも10倍(例えば、少なくとも20倍、40倍、60倍、80倍、100倍、120倍、140倍、160倍、180倍、200倍、220倍、240倍、260倍、280倍、または300倍)強い。幾つかの実施形態では、hPILRAに対する結合親和性は、hPILRBに対する結合親和性より少なくとも25倍(例えば、少なくとも30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、80倍、100倍、120倍、140倍、160倍、180倍、200倍、220倍、240倍、260倍、280倍、または300倍)強い。ある特定の実施形態では、hPILRAに対する結合親和性は、hPILRBに対する結合親和性より少なくとも100倍(例えば、少なくとも110倍、120倍、130倍、140倍、150倍、160倍、170倍、180倍、190倍、200倍、220倍、240倍、260倍、280倍、または300倍)強い。
【0011】
本明細書に記載される本開示の態様の幾つかの実施形態では、cynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRBに対する結合親和性より少なくとも10倍(例えば、少なくとも20倍、40倍、60倍、80倍、または100倍)強い。幾つかの実施形態では、cynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRBに対する結合親和性より少なくとも25倍(例えば、少なくとも30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍)強い。
【0012】
別の態様では、本開示は、ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体α(hPILRA)に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片を特徴とし、ここで、当該抗体またはその抗原結合断片は、63位、64位、78位、106位、143位、116~118位、及び182~186位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合し、位置は配列番号1の配列を参照して決定される。
【0013】
幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、78位、106位、及び143位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のG78、K106、及びE143に結合する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号136のR78、K106、及びE143に結合する。
【0014】
幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、63位及び64位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のT63及びA64に結合する。
【0015】
幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、106位、116~118位、及び182~186位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のK106に結合する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のQ116、K117、及び/またはQ118に結合する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のQ182、G183、K184、R185、及び/またはR186に結合する。
【0016】
本明細書に記載される本開示の態様の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下を含む:
(a)配列番号4~11のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号4~11のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR1(CDR-H1)配列;
(b)配列番号12~19のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号12~19のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR2(CDR-H2)配列;
(c)配列番号20~29のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号20~29のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR3(CDR-H3)配列;
(d)配列番号30~38のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号30~38のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR1(CDR-L1)配列;
(e)配列番号39~46のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号39~46のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR2(CDR-L2)配列;及び
(f)配列番号47~53のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号47~53のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR3(CDR-L3)配列。
【0017】
幾つかの実施形態では、アミノ酸置換は、保存的置換である。
【0018】
幾つかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、以下を含む:
(i)配列番号4の配列を含むか、もしくは配列番号4の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号12の配列を含むか、もしくは配列番号12の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号20の配列を含むか、もしくは配列番号20の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号30の配列を含むか、もしくは配列番号30の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号39の配列を含むか、もしくは配列番号39の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号47の配列を含むか、もしくは配列番号47の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3;または
(ii)配列番号5の配列を含むか、もしくは配列番号5の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号13の配列を含むか、もしくは配列番号13の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号22の配列を含むか、もしくは配列番号22の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号31の配列を含むか、もしくは配列番号31の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号39の配列を含むか、もしくは配列番号39の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号47の配列を含むか、もしくは配列番号47の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3;または
(iii)配列番号6の配列を含むか、もしくは配列番号6の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号14の配列を含むか、もしくは配列番号14の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号23の配列を含むか、もしくは配列番号23の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号32の配列を含むか、もしくは配列番号32の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号40の配列を含むか、もしくは配列番号40の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号48の配列を含むか、もしくは配列番号48の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3;
(iv)配列番号7の配列を含むか、もしくは配列番号7の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号15の配列を含むか、もしくは配列番号15の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号24の配列を含むか、もしくは配列番号24の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号33の配列を含むか、もしくは配列番号33の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号41の配列を含むか、もしくは配列番号41の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号49の配列を含むか、もしくは配列番号49の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3;または
(v)配列番号7の配列を含むか、もしくは配列番号7の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号15の配列を含むか、もしくは配列番号15の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号25の配列を含むか、もしくは配列番号25の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号34の配列を含むか、もしくは配列番号34の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号42の配列を含むか、もしくは配列番号42の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号49の配列を含むか、もしくは配列番号49の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3;または
(vi)配列番号8の配列を含むか、もしくは配列番号8の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H1、配列番号16の配列を含むか、もしくは配列番号16の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H2、配列番号26の配列を含むか、もしくは配列番号26の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-H3、配列番号35の配列を含むか、もしくは配列番号35の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L1、配列番号43の配列を含むか、もしくは配列番号43の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L2、及び配列番号50の配列を含むか、もしくは配列番号50の配列と比較して1つ以上の保存的置換を含む、CDR-L3。
【0019】
幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下を含む:
(a)GXTFXH(配列番号74)の配列を含むCDR-H1配列であって、XがFまたはYであり、XがDまたはIであり、XがDまたはGであり、XがYまたはFであり、XがAまたはYであり、かつXがMまたはIである、当該CDR-H1配列;
(b)XSGX(配列番号75)の配列を含むCDR-H2配列であって、XがGまたはWであり、XがF、M、またはIであり、XがSまたはNであり、XがWまたはPであり、XがNまたはEであり、XがSまたはDであり、XがIまたはTであり、かつXがGまたはTである、当該CDR-H2配列;
(c)XFDX10(配列番号76)の配列を含むCDR-H3配列であって、XがDであるか、または存在せず、XがKまたはGであり、XがSまたはNであり、XがIまたはWであり、XがS、G、またはNであり、XがAまたはFであり、XがAまたはPであり、XがGまたはDであり、XがRまたはTであり、かつX10がY、S、またはFである、当該CDR-H3配列;
(d)XSXIXYLN(配列番号77)の配列を含むCDR-L1配列であって、XがQまたはRであり、XがAまたはSであり、XがRまたはQであり、XがR、G、またはSであり、XがNまたはSであり、かつXがNまたはIである、当該CDR-L1配列;
(e)XASXLX(配列番号78)の配列を含むCDR-L2配列であって、XがDまたはVであり、XがNまたはSであり、XがEまたはQであり、かつXがTまたはSである、当該CDR-L2配列;及び
(f)QQXPXT(配列番号79)の配列を含むCDR-L3配列であって、XがYまたはSであり、XがDまたはYであり、XがNまたはSであり、XがLまたはAであり、かつXがLまたはFである、当該CDR-L3配列。
【0020】
幾つかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、以下を含む:
(i)配列番号4の配列を含むCDR-H1、配列番号12の配列を含むCDR-H2、配列番号20の配列を含むCDR-H3、配列番号30の配列を含むCDR-L1、配列番号39の配列を含むCDR-L2、及び配列番号47の配列を含むCDR-L3;または
(ii)配列番号5の配列を含むCDR-H1、配列番号13の配列を含むCDR-H2、配列番号22の配列を含むCDR-H3、配列番号31の配列を含むCDR-L1、配列番号39の配列を含むCDR-L2、及び配列番号47の配列を含むCDR-L3;または
(iii)配列番号6の配列を含むCDR-H1、配列番号14の配列を含むCDR-H2、配列番号23の配列を含むCDR-H3、配列番号32の配列を含むCDR-L1、配列番号40の配列を含むCDR-L2、及び配列番号48の配列を含むCDR-L3。
【0021】
幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下を含む:
(i)配列番号7の配列を含むCDR-H1、配列番号15の配列を含むCDR-H2、配列番号24の配列を含むCDR-H3、配列番号33の配列を含むCDR-L1、配列番号41の配列を含むCDR-L2、及び配列番号49の配列を含むCDR-L3;または
(ii)配列番号7の配列を含むCDR-H1、配列番号15の配列を含むCDR-H2、配列番号25の配列を含むCDR-H3、配列番号34の配列を含むCDR-L1、配列番号42の配列を含むCDR-L2、及び配列番号49の配列を含むCDR-L3;または
(iii)配列番号8の配列を含むCDR-H1、配列番号16の配列を含むCDR-H2、配列番号26の配列を含むCDR-H3、配列番号35の配列を含むCDR-L1、配列番号43の配列を含むCDR-L2、及び配列番号50の配列を含むCDR-L3。
【0022】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7の配列を含むCDR-H1、配列番号15の配列を含むCDR-H2、配列番号24の配列を含むCDR-H3、配列番号33の配列を含むCDR-L1、配列番号41の配列を含むCDR-L2、及び配列番号49の配列を含むCDR-L3を含む。
【0023】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7の配列を含むCDR-H1、配列番号15の配列を含むCDR-H2、配列番号25の配列を含むCDR-H3、配列番号34の配列を含むCDR-L1、配列番号42の配列を含むCDR-L2、及び配列番号49の配列を含むCDR-L3を含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号54~63のいずれか1つに対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域(V)配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号54~63のいずれか1つに対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するV配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号54~63のいずれか1つに対する少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するV配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号54~63のいずれか1つの配列を含むV配列を含む。
【0025】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号137~144のいずれか1つに対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域(V)配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号137~144のいずれか1つに対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するV配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号137~144のいずれか1つに対する少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するV配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号137~144のいずれか1つの配列を含むV配列を含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号64~73のいずれか1つに対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域(V)配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号64~73のいずれか1つに対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するV配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号64~73のいずれか1つに対する少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するV配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号64~73のいずれか1つの配列を含むV配列を含む。
【0027】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号145~149のいずれか1つに対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域(V)配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号145~149のいずれか1つに対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するV配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号145~149のいずれか1つに対する少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するV配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号145~149のいずれか1つの配列を含むV配列を含む。
【0028】
幾つかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、以下を含む:
(i)配列番号54を含むV配列及び配列番号65を含むV配列;または
(ii)配列番号56を含むV配列及び配列番号66を含むV配列;または
(iii)配列番号57を含むV配列及び配列番号67を含むV配列;または
(iv)配列番号58を含むV配列及び配列番号68を含むV配列;または
(v)配列番号59を含むV配列及び配列番号69を含むV配列;または
(vi)配列番号60を含むV配列及び配列番号70を含むV配列。
【0029】
幾つかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、以下を含む:
(i)配列番号54を含むV配列及び配列番号65を含むV配列;または
(ii)配列番号56を含むV配列及び配列番号66を含むV配列;または
(iii)配列番号57を含むV配列及び配列番号67を含むV配列。
【0030】
幾つかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、以下を含む:
(i)配列番号137を含むV配列及び配列番号145を含むV配列;または
(ii)配列番号140を含むV配列及び配列番号145を含むV配列;または
(iii)配列番号143を含むV配列及び配列番号146を含むV配列;または
(iv)配列番号143を含むV配列及び配列番号149を含むV配列。
【0031】
幾つかの実施形態では、抗体は、Fcドメインを形成している2つのFcポリペプチドを含む。幾つかの実施形態では、Fcポリペプチドのうちの一方または両方は、配列番号94の配列に対する少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)の同一性を有する配列を含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、抗体は、IgG1である。
【0033】
幾つかの実施形態では、抗体は、全長抗体である。
【0034】
別の態様では、本開示は、ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体α(hPILRA)に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片を特徴とし、ここで、当該抗体またはその抗原結合断片は、表1の抗体クローン1~39からなる群から選択される抗体クローンにより認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じであるエピトープを認識する。
【0035】
この態様の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、抗体クローン2、4、及び5からなる群から選択される抗体クローンにより認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じであるエピトープを認識する。
【0036】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、hPILRA活性をアンタゴナイズする。幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、hPILRAへのシアリル化タンパク質の結合を遮断する。幾つかの実施形態では、シアリル化タンパク質は、シアリル化されたNPDC1、PANP、HSV-1 gB、COLEC12、C4a、C4b、DAG1、またはClec4gである。
【0037】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、EGFRもしくはSTAT3のリン酸化を増強するか、もしくは増加させるか、またはSTAT1のリン酸化を阻害するか、もしくは減少させる。
【0038】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、細胞遊走(例えば、ミクログリア遊走)を増強する。
【0039】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、抗炎症性遺伝子またはタンパク質の発現を増強する。幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IL1RN遺伝子の発現を増強する。
【0040】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、炎症誘発性サイトカインタンパク質の発現または分泌を低減させる。幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、TNF、IL-6、及び/またはIP-10の発現を低減させる。
【0041】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、細胞呼吸を増進させる。幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ミトコンドリア呼吸を増加させる。幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、非ミトコンドリア呼吸を増加させる。
【0042】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、脂肪酸代謝を増加させる(例えば、脂肪酸酸化を増加させる)。
【0043】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ATP産生を増加させる。
【0044】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、末梢免疫細胞を活性化しない。幾つかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、好中球及び単球を活性化しない。
【0045】
本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片の幾つかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。幾つかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。幾つかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。幾つかの実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。幾つかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、F(ab’)2、scFv、または二価scFvである。
【0046】
別の態様では、本開示は、hPILRAへの結合について本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片と競合する抗体またはその抗原結合断片を特徴とする。
【0047】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を特徴とする。
【0048】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを特徴とする。別の態様では、本開示は、本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターを特徴とする。別の態様では、本開示は、本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞を特徴とする。
【0049】
別の態様では、本開示は、単離された抗体またはその抗原結合断片を産生するための方法であって、ポリヌクレオチドによりコードされる当該単離された抗体またはその抗原結合断片が発現される条件下で宿主細胞を培養する工程を含む、当該方法を提供する。
【0050】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される単離された抗体もしくはその抗原結合断片または本明細書に記載される医薬組成物と、それらの使用説明書とを含む、キットを特徴とする。
【0051】
別の態様では、本開示は、対象における神経変性疾患を処置する方法であって、本明細書に記載される単離された抗体もしくはその抗原結合断片または本明細書に記載される医薬組成物を当該対象に投与する工程を含む、当該方法を特徴とする。幾つかの実施形態では、神経変性疾患は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病、原発性加齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、グアドループにおける認知症を伴うパーキンソニズム(Guadeloupean parkinsonism with dementia)、グアドループにおけるPSP(Guadelopean PSP)、ハレルフォルデン・スパッツ病、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、那須ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球・橋・黒質変性症、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質・脳アミロイドアンギオパチー(prion protein cerebral amyloid angiopathy)、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維変化型認知症。特定の実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
【0052】
別の態様では、本開示は、ある分子がPILRAタンパク質に対する活性を有するかどうかを決定するための方法であって、(a)当該PILRAタンパク質を発現する細胞を当該分子と接触させる工程;(b)より低いPILRA発現を有する、工程(a)と同じ種類の細胞を、工程(a)の前、それと同時、またはその後のいずれかにおいて当該分子と接触させる工程;ならびに(c)両方の細胞における、リン酸化STAT3(pSTAT3)レベル、リン酸化STAT1(pSTAT1)レベル、リン酸化EGFR(pEGFR)レベル、カドヘリン発現、インテグリン発現、及びミクログリア遊走のうちの1つを測定する工程であって、これらの測定のうちの1つについての細胞間でのレベルの変化が、工程(a)の当該PILRAタンパク質に対する活性を当該分子が有することを示す、当該測定する工程を含む、当該方法を提供する。
【0053】
幾つかの実施形態では、工程(a)の細胞は、PILRAタンパク質を天然に発現する。幾つかの実施形態において、より低いPILRA発現を有する細胞は、PILRAタンパク質についてノックアウトされている。特定の実施形態では、細胞は、iMicrogliaなどのミクログリアである。幾つかの実施形態では、細胞は、PILRA LoF iMicrogliaである。
【0054】
幾つかの実施形態では、工程(a)の細胞は、PILRAタンパク質を発現または過剰発現するように操作または改変されている。幾つかの実施形態では、より低いPILRA発現を有する細胞は、PILRAタンパク質を天然に発現する、またはPILRAタンパク質の発現のための操作も改変もされていない。
【0055】
幾つかの実施形態では、分子は、分子ライブラリー由来のものである。ある特定の実施形態では、分子は、PILRAタンパク質に結合すると分かっている。他の実施形態では、PILRAタンパク質に分子が結合するかどうかは、分かっていない。ある特定の実施形態では、分子は、抗体、ペプチド、有機低分子、または核酸である。
【0056】
別の態様では、本開示は、PILRAタンパク質に結合する分子が、PILRAを発現する細胞におけるシグナル伝達応答または活性を調節するかどうかを決定するための方法であって、(a)当該細胞を当該分子と接触させる工程;及び(b)リン酸化STAT3(pSTAT3)レベル、リン酸化STAT1(pSTAT1)レベル、リン酸化EGFR(pEGFR)レベル、カドヘリン発現、インテグリン発現、及びミクログリア遊走のうちの1つを測定する工程であって、測定のうちの1つについてのレベルの変化が、PILRAを発現する当該細胞における当該シグナル伝達応答または活性を当該分子が調節することを示す、当該測定する工程を含む、当該方法を提供する。
【0057】
幾つかの実施形態では、変化は、分子なしでの細胞におけるレベルと比較した、細胞に分子が接触した場合の測定のうちの1つについてのレベルの増加または減少である。例えば、幾つかの実施形態では、変化は、pSTAT3レベルの増加、例えば、pSTAT3 Y705レベル及び/またはpSTAT3 S727レベルの増加である。別の例では、変化はpEGFRレベルの増加である。別の例では、変化は、運動性タンパク質(例えば、カドヘリン、インテグリン、例えば、本明細書に記載されるもののいずれか)の発現レベル及び/または細胞分泌の増加である。更に別の例では、変化は、例えば、実施例4に記載される細胞遊走アッセイを使用して、測定及び定量化され得る細胞(例えば、ミクログリア)遊走の増加である。
【0058】
幾つかの実施形態では、細胞は、インビトロアッセイにおけるものである。他の実施形態では、細胞は、哺乳動物におけるものである。幾つかの実施形態では、工程(a)は、哺乳動物に分子を投与することを含む。
【0059】
幾つかの実施形態では、細胞は、ミクログリア、骨髄性細胞、単球、または好中球である。
【0060】
別の態様では、本開示は、操作されたヒト人工多能性幹細胞(IPSC)または細胞株を提供し、ここで、当該IPSCは、PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子を2コピー発現するように改変されている(すなわち、遺伝子操作されている)。幾つかの実施形態では、IPSCは、内在性ゲノム遺伝子座で改変されている。
【0061】
別の態様では、本開示は、ヒト人工多能性幹細胞(IPSC)に由来する操作されたミクログリア細胞モデルを提供し、ここで、当該IPSCは、PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子を2コピー発現するように改変されている(すなわち、遺伝子操作されている)。幾つかの実施形態では、IPSCは、内在性ゲノム遺伝子座で改変されている。幾つかの実施形態では、操作されたミクログリア細胞モデルは、分化誘導により得られる。
【0062】
別の態様では、本開示は、マッチする一対の細胞株を提供し、ここで、(a)当該対のうちの第1の細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であり、(b)当該対のうちの第2の細胞株は、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であり、当該対の第1及び第2の細胞株の両方が、同じ親細胞株に由来し、かつ一方または両方の細胞株が、内在性PILRA遺伝子において操作されている。幾つかの実施形態では、親細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である。他の実施形態では、親細胞株は、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である。幾つかの実施形態では、親細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である。
【0063】
マッチする一対の細胞株の幾つかの実施形態では、PILRAタンパク質のG78バリアント及びR78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である第3の細胞株が含まれる。幾つかの実施形態では、第3の細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である親細胞株に由来する。
【0064】
別の態様では、本開示は、改変されたPILRA遺伝子を有する骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる幹細胞株(例えば、IPSC株)を作製する方法であって、(a)既存の骨髄性細胞株または既存の幹細胞株が、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、またはPILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であるかを決定する工程;ならびに(b)PILRAタンパク質のR78バリアントまたはPILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより細胞株を操作する工程を含み、当該操作された細胞株は、操作される前は、選択されたバリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性ではなかった、当該方法を提供する。
【0065】
別の態様では、本開示は、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、(a)既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株(例えば、IPSC株)が、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、またはPILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であるかを決定する工程;ならびに(b)(i)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより第1の細胞株を操作する、及び/または(ii)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより第2の細胞株を操作する工程を含む、当該方法を提供する。
【0066】
幾つかの実施形態では、操作された細胞株は、操作される前は、選択されたバリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性ではなかった。
【0067】
ある特定の実施形態では、工程(a)の既存の細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントについてホモ接合性であり、かつ、工程(b)の操作は、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために既存の細胞株を改変することを含む。
【0068】
他の実施形態では、工程(a)の既存の細胞株は、PILRAタンパク質のG78バリアントについてホモ接合性であり、かつ、工程(b)の操作は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために既存の細胞株を改変することを含む。
【0069】
幾つかの実施形態では、工程(a)の既存の細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であり、かつ、工程(b)の操作は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株、及びPILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を改変することを含む。
【0070】
別の態様では、本開示は、PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株(例えば、IPSC株)から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、(a)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第1の操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を操作する工程;及び(b)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第2の操作された細胞株を作製するために、工程(a)で作製された細胞株または既存の細胞株のいずれかを操作する工程を含む、当該方法を提供する。
【0071】
別の態様では、本開示は、PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株(例えば、IPSC株)から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、(a)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第1の操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を操作する工程;及び(b)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第2の操作された細胞株を作製するために、工程(a)で作製された細胞株または既存の細胞株のいずれかを操作する工程を含む、当該方法を提供する。
【0072】
別の態様では、本開示は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株(例えば、IPSC株)から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を操作する工程を含む、当該方法を提供する。
【0073】
別の態様では、本開示は、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株(例えば、IPSC株)から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を操作する工程を含む、当該方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1A】抗PILRA抗体がHEK293細胞上に発現されたhPILRAに用量依存的様式で結合したことを示す。
図1B】抗PILRA抗体がHEK293細胞上に発現されたhPILRAに用量依存的様式で結合したことを示す。
図1C】抗PILRA抗体がHEK293細胞上に発現されたhPILRAに用量依存的様式で結合したことを示す。
図1D】抗PILRA抗体がHEK293細胞上に発現されたhPILRA G78に用量依存的様式で結合したことを示す。データをFACSアッセイ技術により得られた蛍光強度中央値として表す。
図1E】抗PILRA抗体が親HEK293細胞には結合しなかったことを示す。データをFACSアッセイ技術により得られた蛍光強度中央値として表す。
図1F】抗PILRA抗体がHEK293細胞上に発現されたhPILRA R78に用量依存的様式で結合したことを示す。データをFACSアッセイ技術により得られた蛍光強度中央値として表す。
図1G】抗PILRA抗体がCHO-K1細胞上に発現されたhPILRAに結合し、親CHO-K1細胞には結合しなかったことを示す。
図1H】抗PILRA抗体がhPILRA G78を発現するCHO-K1細胞に用量依存的様式で結合したことを示す。データをFACSアッセイ技術により得られた蛍光強度中央値として表す。
図1I】抗PILRA抗体が親CHO-K1細胞への結合を示さなかったことを示す。データをFACSアッセイ技術により得られた蛍光強度中央値として表す。
図1J】抗PILRA抗体がヒトIPSC由来のミクログリアに結合したことを示す。
図1K】抗PILRA抗体がPILRA LoF ヒトIPSC由来のミクログリアには結合しなかったことを示す。
図1L】抗PILRA抗体が、PILRA G78についてホモ接合性であるヒトIPSC由来のiMicrogliaに結合したことを示す。
図1M】抗PILRA抗体が、PILRA R78についてホモ接合性であるヒトIPSC由来のiMicrogliaに結合したことを示す。
図2A】抗PILRA抗体がcynoPILRAを発現するCHO-K1細胞に結合し、hPILRBを発現するCHO-K1細胞または親CHO-K1細胞には結合しなかったことを示す。
図2B】抗PILRA抗体がcynoPILRAを発現するCHO細胞に用量依存的様式で結合したことを示す。
図2C】抗PILRA抗体がhPILRBを発現するCHO細胞には結合しなかったことを示す。
図2D】抗PILRA抗体がhPILRB-DAP12を過剰発現するHEK293細胞に結合しなかったことを示す。
図2E】参照抗体がhPILRAを発現するCHO細胞に結合したことを示す。
図2F】参照抗体がcynoPILRAまたはhPILRBを発現するCHO細胞には結合しなかったことを示す。
図3A】リガンド結合が許容された場合の代表的なSPRセンサーグラムを示す。
図3B】リガンド結合が抗体により遮断された場合の代表的なSPRセンサーグラムを示す。
図3C】PILRA G78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合を増強したことを示す。
図3D】PILRA G78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合を増強したことを示す。
図3E】PILRA G78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合を増強したことを示す。
図3F】PILRA G78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合を増強したことを示す。
図3G】PILRA R78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合にほとんど影響を及ぼさなかったことを示す。
図3H】PILRA R78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合にほとんど影響を及ぼさなかったことを示す。
図3I】PILRA R78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合にほとんど影響を及ぼさなかったことを示す。
図3J】PILRA R78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合にほとんど影響を及ぼさなかったことを示す。
図4A】無血清培地においてPILRA LoF iMicrogliaが、野生型ヒトiMicrogliaと比較して、リン酸化されたEGFR Y1086のレベルを増加させたことを示す。グラフは、バックグラウンドを上回るスポット強度での発現を平均値+/-SEMとして示す。N=2の技術的反復。P>0.01、2元配置ANOVA。
図4B】無血清培地においてPILRA LoF iMicrogliaが、野生型ヒトiMicrogliaと比較して、リン酸化されたSTAT3 Y705のレベルを増加させたことを示す。グラフは、バックグラウンドを上回るスポット強度での発現を平均値+/-SEMとして示す。N=2の技術的反復。P>0.01、2元配置ANOVA。
図4C】抗PILRA抗体が、hPILRA G78を発現するHEK293細胞においてpSTAT3 Y705を特異的に誘導したことを示す。親HEK293細胞またはアイソタイプ対照抗体では誘導されなかった。データをバックグラウンド(PBS)に対する倍率平均値またはアイソタイプ対照に対する倍率平均値+/-SEMとして示す(n=4の技術反復試験)。
図4D】抗PILRA抗体が、hPILRA G78を発現するHEK293細胞においてpSTAT3 S727を特異的に誘導したことを示す。親HEK293細胞またはアイソタイプ対照抗体では誘導されなかった。データをバックグラウンド(PBS)に対する倍率平均値またはアイソタイプ対照に対する倍率平均値+/-SEMとして示す(n=4の技術反復試験)。
図4E】抗PILRA抗体が、hPILRA G78を発現するHEK293細胞においてpEGFR Y1086を特異的に誘導したことを示す。親HEK293細胞またはアイソタイプ対照抗体では誘導されなかった。データをバックグラウンド(PBS)に対する倍率平均値またはアイソタイプ対照に対する倍率平均値+/-SEMとして示す(n=4の技術反復試験)。
図4F】hPILRA G78を発現するHEK293細胞におけるpSTAT3 Y705の用量依存的な誘導を示す。抗PILRA抗体をhPILRA G78を発現するHEK293細胞に用量漸増して投与し、pSTAT3 Y705の誘導を30分後に測定した。データを平均値+/-SEMでのアイソタイプ対照に対する発現倍率として示す(n=2の技術的反復)。
図4G】抗PILRA抗体がヒトPILRA 78Gを発現するHEK細胞に用量漸増して投与され、30分後にpSTAT3 Y705を誘導したことを示す。
図4H】抗PILRA抗体がヒトPILRA 78Gを発現するHEK細胞に用量漸増して投与され、30分後にpSTAT3 S727を誘導したことを示す。
図4I】PILRA G7Gを発現するHEK293細胞において抗PILRA抗体により誘導されるpSTAT3 Y705が、mTORC1/2阻害剤であるAZD8055(3.125~50nM)またはmTOR阻害剤であるトリン1(31.25~500nM)との2時間のプレインキュベーションにより部分的に阻害されたことを示す。データを平均値+/-SEMでのHEK293対照細胞(DMSOビヒクルアイソタイプ対照)に対する発現倍率として示す(n=1~4の技術的反復)。
図4J】抗PILRA抗体が、PILRA R78を発現するHEK293細胞においてpSTAT3 Y705の誘導を遮断したことを示す。データを平均値+/-SEMでのPILRA G78を発現するHEK293細胞に対する発現倍率として示す(n=2~3の技術的反復)。
図4K】抗PILRA抗体がヒトPILRA 78Rを発現するHEK293細胞に用量漸増して投与され、30分後にpSTAT3 Y705を誘導したことを示す。
図4L】抗PILRA抗体がヒトPILRA 78Rを発現するHEK293細胞に用量漸増して投与され、30分後にpSTAT3 S727を誘導したことを示す。
図4M】PILRA LoF iMicrogliaが、無血清培地において野生型ヒトiMicrogliaと比較して、ホスホ-キナーゼプロファイラー及び総STAT1 AlphaLisaによるより低いリン酸化STAT1 Y701レベルを示したことを示す。図4Mのグラフは、バックグラウンドを上回るスポット強度での発現を平均値+/-SEMとして示す。N=2の技術的反復。
図4N】PILRA LoF iMicrogliaが、無血清培地において野生型ヒトiMicrogliaと比較して、ホスホ-キナーゼプロファイラー及び総STAT1 AlphaLisaによるより低い総STAT1レベルを示したことを示す。図4Nのグラフは、野生型に対する発現倍率を平均値+/-SEMとして示す。N=4の技術的反復。
図4O】PILRA G78を発現するHEK293細胞が、親HEK293細胞と比較してより高いリン酸化STAT1レベルを示したことを示す。発現を平均値+/-SEMとして示す。n=3~4の技術的反復。
図4P】100nMの抗PILRA mAbの投与が野生型ヒトiMicrogliaにおけるリン酸化STAT1 Y701レベルを低減させ、PILRA LoF iMicrogliaの表現型を模写したことを示す。PBSに対する発現を平均値+/-SEMとして示す。N=3の技術的反復。
図4Q】抗PILRA mAbの投与が、PILRA G78を発現するHEK293細胞においてリン酸化STAT1 Y701レベルを低減させたことを示す。親HEK293細胞またはアイソタイプ対照抗体では低減されなかった。グラフはPBSに対する発現倍率を平均値+/-SEMとして示す。n=2~3の技術的反復。
図4R】抗PILRA mAbの投与が、PILRA G78を発現するHEK293細胞において総STAT1レベルを低減させたことを示す。親HEK293細胞またはアイソタイプ対照抗体では低減されなかった。グラフはPBSに対する発現倍率を平均値+/-SEMとして示す。n=2~3の技術的反復。
図5A】PILRA LoFが、ストッパー除去の120時間後に、無細胞の検出区域へのiMicrogliaの遊走を促進することを示す。PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRAの再発現(PILRA LoF+OE)は、遊走レベルを野生型iMicrogliaにおいて観察されるレベルに戻す。
図5B】抗PILRA抗体が、PILRA LoF iMicroglia細胞と同様に、ストッパー除去の120時間後に、無細胞の検出区域への野生型iMicrogliaの遊走を増強したことを示す。PILRA LoF iMicroglia及び野生型iMicrogliaの両方は、ビヒクル(PBS)のみを投与された。データを平均値+/-SEMとして示す(n=1~6の技術的反復)。
図5C】抗PILRA抗体が、PILRA LoF iMicroglia細胞と同様に、ストッパー除去の120時間後に、無細胞の検出区域への野生型iMicrogliaの遊走を増強したことを示す。PILRA LoF iMicroglia及び野生型iMicrogliaの両方は、ビヒクル(PBS)のみを投与された。データを平均値+/-SEMとして示す(n=1~6の技術的反復)。
図5D】PILRA LoFが、化学誘引物質である補体5a(C5a)へのiMicroglia遊走を増強したことを示す。
図5E】抗PILRA抗体が、PILRA LoF iMicroglia細胞と同様に、iMigrogliaのC5aへの走化性を増強したことを示す。
図5F】抗PILRA抗体が、処理の4日後でのiMicrogliaによる上清へのインテグリンの分泌を増強したことを示す。
図5G】抗PILRA抗体が、処理の4日後でのiMicrogliaによる上清へのカドヘリンの分泌を増強したことを示す。
図6A】PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFが、無血清培地において野生型iMicrogliaと比較してIL1RN遺伝子発現を促進したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6B】PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFが、無血清培地において野生型iMicrogliaと比較してIL1RAサイトカイン分泌を刺激したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6C】抗PILRA抗体が無血清培地において野生型iMicrogliaのIL1RAサイトカイン分泌を刺激し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6D】PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFが、野生型iMicrogliaと比較して、LPSにより誘導されるTNFの遺伝子発現の変化を抑制したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6E】PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFが、野生型iMicrogliaと比較して、LPSにより誘導されるIL-6の遺伝子発現の変化を抑制したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6F】PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFが、野生型iMicrogliaと比較して、LPSにより誘導されるCXCL10の遺伝子発現の変化を抑制したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6G】PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFが、野生型iMicrogliaと比較して、LPSにより誘導されるTNFαサイトカイン発現の変化を抑制したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6H】PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFが、野生型iMicrogliaと比較して、LPSにより誘導されるIL-6サイトカイン発現の変化を抑制したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6I】PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFが、野生型iMicrogliaと比較して、LPSにより誘導されるIP-10サイトカイン発現の変化を抑制したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6J】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおけるLPSにより誘導されるIP-10サイトカイン分泌を減弱し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6K】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおけるLPSにより誘導されるTNFαサイトカイン分泌を減弱し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6L】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおけるLPSにより誘導されるIL-6サイトカイン分泌を減弱し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6M】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおけるLPSにより誘導されるIP-10サイトカイン分泌を減弱し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6N】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおけるLPSにより誘導されるTNFαサイトカイン分泌を減弱し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6O】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおけるLPSにより誘導されるIL-6サイトカイン分泌を減弱し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣したことを示す。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。
図6P】抗PILRA抗体(100nM)が、無血清培地中のホモ接合性G78 PILRAを発現するIPSC由来のiMicrogliaにおいて、LPSにより誘導されるIP-10サイトカイン分泌を減弱したことを示す。
図6Q】抗PILRA抗体(100nM)が、無血清培地中のホモ接合性R78 PILRAを発現するIPSC由来のiMicrogliaにおいて、LPSにより誘導されるIP-10サイトカイン分泌を減弱したことを示す。
図7A】PILRA LoF iMicrogliaが、最大呼吸の増加を示したことを示す。hPILRAを発現するPILRA LoF iMicroglia(PILRA LoF+OE)におけるPILRAの再発現は、ミトコンドリア呼吸を野生型レベルに戻した。n=5の技術的反復。
図7B】PILRA LoF iMicrogliaが、ミトコンドリア予備呼吸能の増加を示したことを示す。hPILRAを発現するPILRA LoF iMicroglia(PILRA LoF+OE)におけるPILRAの再発現は、ミトコンドリア呼吸を野生型レベルに戻した。n=5の技術的反復。
図7C】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおける最大呼吸をアイソタイプ対照と比較して増加させたことを示す。抗体のPILRA LoF iMicrogliaに対する更なる影響はなかった。このことは抗体特異性を示す。n=6の技術的反復。
図7D】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおけるミトコンドリア予備呼吸能をアイソタイプ対照と比較して増加させたことを示す。抗体のPILRA LoF iMicrogliaに対する更なる影響はなかった。このことは抗体特異性を示す。n=6の技術的反復。
図7E】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおける最大呼吸をアイソタイプ対照と比較して増加させたことを示す。抗体のPILRA LoF iMicrogliaに対する更なる影響はなかった。このことは抗体特異性を示す。n=6の技術的反復。
図7F】抗PILRA抗体が、野生型iMicrogliaにおけるミトコンドリア予備呼吸能をアイソタイプ対照と比較して増加させたことを示す。抗体のPILRA LoF iMicrogliaに対する更なる影響はなかった。このことは抗体特異性を示す。n=6の技術的反復。
図7G】野生型iMicrogliaにおけるAβ1-42フィブリルにより誘導された非ミトコンドリア酸素消費速度の減少(図7Gの灰色の棒)が、抗PILRA抗体によりレスキューされたことを示す(図7Hの縞模様の灰色の棒)。n=6の技術的反復。
図7H】野生型iMicrogliaにおけるAβ1-42フィブリルにより誘導された非ミトコンドリア酸素消費速度の減少(図7Gの灰色の棒)が、抗PILRA抗体によりレスキューされたことを示す(図7Hの縞模様の灰色の棒)。n=6の技術的反復。
図7I】PILRA LoF iMicrogliaがより高いミトコンドリアOXPHOS活性と共にATP産生の増加を示したことを示す。n=6の技術的反復。
図7J】抗PILRA抗体が野生型iMicrogliaにおいてPILRA LoFを再現し、ATP生成速度を増強したことを示す。n=6の技術的反復。
図8-1】図8A:抗PILRA抗体がエクスビボで単球に結合したことを示す。
図8-2】図8B:抗PILRA抗体がエクスビボで好中球に結合したことを示す。
図8-3】図8C:抗PILRA抗体がB細胞には結合しなかったことを示す。
図8-4】図8D:抗PILRA抗体がT細胞には結合しなかったことを示す。
図8-5】図8E~8G:抗PILRA抗体で処理された細胞がCD25(図8E)の上昇もHLA-DR(図8Fおよび図8G)の上昇も示さなかったことを示す。
図8-6】図8H:エクスビボでヒト白血球が水相の100nMの抗PILRA抗体による24時間の処理後に炎症性サイトカイン産生を増加させなかったことを示す。
図8-7】図8I:エクスビボでヒト白血球が固相の100nMの抗PILRA抗体による24時間の処理後に炎症性サイトカイン産生を増加させなかったことを示す。
図9A】抗PILRA抗体のhPILRAエピトープを示す分子構造である。
図9B】抗PILRA抗体がヒトPILRAに結合するエピトープビンである。
図10】cynoPILRA、hPILRA、及びhPILRBのECD及びストーク領域配列のアラインメント(位置は配列番号1の配列を参照して決定される)を示す。
図11】参照抗体#1~#4がhPILRA G78を発現するCHO-K1細胞に結合し、hPILRBまたはcynoPILRA G78を発現するCHO-K1細胞には結合しなかったことを示す(位置は配列番号1の配列を参照して決定される)。
図12-1】図12A:抗PILRA抗体が、ヒトPILRAを発現するBACtgマウスにおいて50mg/kgの投与の1日及び4日後に脳内での標的結合を示したことを示す。
図12-2】図12B:抗PILRA抗体が、ヒトPILRAを発現するBACtgマウスにおいて50mg/kgの投与の1日及び4日後に血漿中での標的結合を示したことを示す。
図12-3】図12C~12H:抗PILRA抗体が、ヒトPILRAを発現するBACtgマウスにおいて50mg/kgのIV投与の1日及び4日後に脳、血漿、肝臓、肺、脾臓、及び骨髄においてIgG様の薬物動態を示したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
詳細な説明
I.導入
PILRAは、ミクログリア、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び好中球などの様々な免疫細胞の細胞表面に発現する抑制性膜貫通受容体である。特定の理論に拘束されるものではないが、PILRAはリガンド結合時に、細胞質ホスファターゼ、例えば、PTPN6/SHP-1及びPTPN11/SHP-2を動員し、それらのSH2ドメインがシグナル伝達分子の脱リン酸化によりシグナル伝達を遮断することよって抑制性受容体として作用すると考えられている。PILRAのミスセンスバリアント(G78R)は、PILRAのシアル酸結合ポケットを変化させ、これにより、そのリガンドのうちの幾つかへのPILRAの結合の低減をもたらす。そのリガンドの1つは単純ヘルペスウイルス1型のシアリル化された糖タンパク質B(HSV-1 gB)である。一部のアルツハイマー病患者においてHSV-1感染が存在することが示唆されている。PILRAのG78Rバリアントは、PILRAシグナル伝達をアンタゴナイズするか、または低減させ、これにより、ミクログリア応答を修飾することにより個体をアルツハイマー病から防御することが提唱されている。
【0076】
以下の実施例セクションで詳述されるように、ヒトPILRA(hPILRA)に特異的に結合し、PILRAにより調節される1つ以上のミクログリア機能を調節する抗体が作製された。特に、本発明者らは、非常に望ましい特徴を有する抗体を初めて同定した。これらとしては、カニクイザル(「cyno」)PILRA(cynoPILRA)及びhPILRAの両方に選択的に結合するが、ヒトPILRB(hPILRB)に対する比較的より低い結合性を有し得る抗体が挙げられる。このことは、非常に有利であるが、cynoPILRAとhPILRBとの間の高い相同性を考慮すると非常に困難でもある。カニクイザルPILRAとヒトPILRAとの間で同等の結合性を有することは、代用の分子を用いる必要なく、サルでの試験を実施することを可能にする。PILRBへの結合は、それらの各々の細胞内ドメインの差異を考慮すると、PILRBがPILRAと比較して異なる活性または反対の活性を有すると考えられるため、望ましくない。本明細書に記載される特定の抗体は、hPILRAに対する結合親和性と比較して100倍以内(例えば、90倍、80倍、70倍、60倍、50倍、40倍、30倍、20倍、10倍、5倍、または2倍以内)の結合親和性でcynoPILRAに結合することができる。抗体は、hPILRBに対する結合親和性と比べて少なくとも10倍(例えば、少なくとも15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍)強いhPILRAに対する結合親和性も有し得る。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)エフェクター機能を低減させるもしくは除去する変異、及び/または(ii)例えば、新生児型Fc受容体(FcRn)への抗体のFcの結合を増加させることにより、インビボ半減期を増加させる変異を有し得るFcポリペプチドを更に含む。
【0077】
本発明者らは、PILRA配列のある特定のアミノ酸残基に結合する抗体が望ましい特性を示し得ることも発見した。これらの残基としては、63、64、78、106、143、116~118、及び182~186が挙げられる。特定の例では、本発明者らは、hPILRAの(i)G78、K106、及びE143、または(ii)T63及びA64を含むエピトープに結合する抗体が、cynoPILRAにも結合することができるが、hPILRBに対する低減された結合性を有することを示す。
【0078】
II.定義
本明細書で使用する場合、内容で明確に指示されない限り、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、複数形の指示物を包含する。従って、例えば、「抗体」への言及は、2つ以上のかかる分子の組み合わせなどを任意に包含する。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「約」及び「およそ」は、数値または範囲で指定される量を修飾するために使用される場合、当該数値及び当業者に知られている当該値からの妥当な偏差、例えば、±20%、±10%、または±5%が、記載される値の意図される意味の範囲内であることを示す。
【0080】
本明細書で使用する場合、用語「PILRA」は、PILRA遺伝子によりコードされるペア型免疫グロブリン様2型受容体αタンパク質を指す。本明細書で使用する場合、「PILRA」または「PILRAタンパク質」は、任意の脊椎動物、例えば、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、及び他の哺乳動物の天然(すなわち、野生型)のPILRAタンパク質を指す。幾つかの実施形態では、PILRAタンパク質は、以下の配列番号1の配列を有するヒトPILRA(hPILRA)タンパク質である。
MGRPLLLPLLPLLLPPAFLQPSGSTGSGPSYLYGVTQPKHLSASMGGSVEIPFSFYYPWELATAPDVRISWRRGHFHGQSFYSTRPPSIHKDYVNRLFLNWTEGQKSGFLRISNLQKQDQSVYFCRVELDTRSSGRQQWQSIEGTKLSITQAVTTTTQRPSSMTTTWRLSSTTTTTGLRVTQGKRRSDSWHISLETAVGVAVAVTVLGIMILGLICLLRWRRRKGQQRTKATTPAREPFQNTEEPYENIRNEGQNTDPKLNPKDDGIVYASLALSSSTSPRAPPSHRPLKSPQNETLYSVLKA
【0081】
幾つかの実施形態では、PILRAタンパク質は、以下の配列番号2の配列を有するカニクイザルPILRA(cynoPILRA)タンパク質である。
MGRPLLLPLLLPLLPLLLPPAFLQPGGSAGSGPSGPYGVTQRKHLSAPMGGSVEIPFSFYHPWELAAAPNMKISWRRGNFHGEFFYRTRPAFIHEDYSNRLLLNWTEGQDRGLLRIWNLRKEDQSVYFCRVELDTRRSGRQRWQSIEGTKLTITQAVTTTTQRPSSMTTTRRPSSATTTAGLRVTQGKRHSDSWHLSLKTAVGVTVAVAVLGIMILGLICLLRWRRRKGQQRTKATTPAKEPFQNTEEPYENIRNEGQNTDPKPNPKDDGIVYASLALSSSTSPRVPPSHHPLKSPQNETLYSVLKV
【0082】
本明細書で使用する場合、用語「PILRB」は、PILRB遺伝子によりコードされるペア型免疫グロブリン様2型受容体βタンパク質を指す。本明細書で使用する場合、「PILRB」または「PILRBタンパク質」は、任意の脊椎動物、例えば、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、及び他の哺乳動物の天然(すなわち、野生型)のPILRBタンパク質を指す。幾つかの実施形態では、PILRBタンパク質は、以下の配列番号3の配列を有するヒトPILRB(hPILRB)タンパク質である。
MGRPLLLPLLLLLQPPAFLQPGGSTGSGPSYLYGVTQPKHLSASMGGSVEIPFSFYYPWELAIVPNVRISWRRGHFHGQSFYSTRPPSIHKDYVNRLFLNWTEGQESGFLRISNLRKEDQSVYFCRVELDTRRSGRQQLQSIKGTKLTITQAVTTTTTWRPSSTTTIAGLRVTESKGHSESWHLSLDTAIRVALAVAVLKTVILGLLCLLLLWWRRRKGSRAPSSDF
【0083】
本明細書で使用する場合、用語「抗PILRA抗体」は、PILRAタンパク質(例えば、ヒトPILRA)に特異的に結合する抗体を指す。
【0084】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、その可変領域により抗原に特異的に結合する、免疫グロブリンフォールドを有するタンパク質を指す。この用語は、全長抗体及び一本鎖抗体、二重特異性抗体などの多重特異性抗体、単一特異性抗体、一価抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ならびにヒト抗体が含まれる、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体を包含する。用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、限定されるものではないが、Fab、F(ab’)、Fv、scFv、及び二価scFvが含まれる、可変領域により結合特異性を保持している抗体断片も包含し得る。抗体は、κまたはλに分類される軽鎖を有し得る。抗体は、γ、μ、α、δ、またはεに分類される重鎖を有し得、これらの重鎖はまた、それぞれ、免疫グロブリンクラスであるIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを規定する。
【0085】
本明細書で使用する場合、用語「全長抗体」は、一般に、ジスルフィド結合により相互に連結された2本の重鎖及び2本の軽鎖の4本のポリペプチド鎖を有する免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、N末端からC末端方向の、重鎖可変領域(V)、CH1定常ドメイン、ヒンジ領域、CH2定常ドメイン、及びCH3定常ドメインから構成される。各軽鎖は、N末端からC末端方向の、軽鎖可変領域(V)及びCL定常ドメインから構成される。Fabドメインまたは断片は、V、CH1、V、及びCLドメインから形成される。全長抗体は、2つのFabドメイン及びFcドメインを有するとも記載され得、ここで、Fcドメインは2つのFcポリペプチドを含み、各FcポリペプチドはCH2ドメイン、CH3ドメインを含み得、抗体のヒンジ領域の少なくとも一部を含み得る。
【0086】
本明細書で使用する場合、用語「抗PILRA抗原結合部分」は、PILRAタンパク質(例えば、hPILRA及び/またはcynoPILRA)に特異的に結合する抗原結合セグメントまたは抗原結合物質を指す。用語「抗原結合部分」及び「抗原結合断片」は、本明細書において互換的に使用され、その可変領域により抗原(例えば、PILRAタンパク質)に特異的に結合する能力を保持している、抗体の1つ以上の断片を指す。抗原結合断片の例としては、限定されるものではないが、Fab断片(V、V、CL、及びCH1ドメインからなる一価の断片)、F(ab´)断片(ヒンジ領域でのジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価の断片)、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、相補性決定領域(CDR)、V(軽鎖可変領域)、及びV(重鎖可変領域)が挙げられる。
【0087】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、生殖細胞系列可変領域(V)遺伝子、多様性領域(D)遺伝子、または結合領域(J)遺伝子に由来し(定常領域(Cμ及びCδ)遺伝子セグメントに由来しない)、抗原への結合の特異性を抗体に付与する、抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。抗体可変領域は、通常、3つの超可変性の「相補性決定領域」が間に置かれた4つの保存された「フレームワーク」領域を含む。
【0088】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、軽鎖及び重鎖の可変領域毎に規定される、各鎖における4つのフレームワーク領域を中断する3つの超可変領域を指す。CDRは、主に抗原のエピトープへの抗体結合を担う。各鎖のCDRは、通常、N末端から出発して順番に番号付けてCDR1、CDR2、及びCDR3と称され、また通常、特定のCDRが存在する鎖毎に識別される。従って、V CDR3またはCDR-H3は、それが見出される抗体重鎖の可変領域に存在し、一方で、V CDR1またはCDR-L1は、それが見出される抗体軽鎖の可変領域のCDR1である。
【0089】
種々の軽鎖または重鎖の「フレームワーク領域」または「FR」は、種内で比較的保存されている。構成要素である軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域の組み合わせである抗体のフレームワーク領域は、CDRを3次元空間に配置及び整列させる機能を果たす。フレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公共DNAデータベースまたは公開された参考文献から取得され得る。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、ヒト及びマウス配列の生殖細胞系列可変領域遺伝子配列データベース「VBASE2」に見出され得る。
【0090】
CDR及びフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当該技術分野において周知の種々の定義、例えば、Kabat、Chothia、国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、AbM、及び観察された抗原接触(「Contact」)を使用して決定され得る。幾つかの実施形態では、CDRは、Contact定義に従って決定される。MacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745(1996)を参照のこと。幾つかの実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、及び/またはContactのCDR定義の組み合わせにより決定される。
【0091】
用語「エピトープ」は、抗体のCDRが特異的に結合する抗原の部分または領域を指し、数個のアミノ酸、または数個のアミノ酸、例えば、5もしくは6個、もしくはそれ以上、例えば、20個以上のアミノ酸の一部、またはそれらのアミノ酸の一部を含み得る。例えば、標的がタンパク質である場合、エピトープは、連続アミノ酸(例えば、直鎖状エピトープ)、またはタンパク質のフォールディングにより近接しているタンパク質の異なる部分のアミノ酸(例えば、不連続または立体構造エピトープ)から構成され得る。幾つかの実施形態では、エピトープは、1つのアミノ酸(例えば、セリンまたはトレオニン残基)がリン酸化されている。
【0092】
本明細書で使用する場合、語句「エピトープを認識する」は、抗PILRA抗体に関して使用する場合、抗体のCDRが、そのエピトープまたはそのエピトープを含有する抗原の一部で、抗原(すなわち、PILRAタンパク質)と相互作用するか、またはそれに特異的に結合することを意味する。
【0093】
「モノクローナル抗体」は、単一の細胞クローンまたは単一の細胞株によって産生され、その一次アミノ酸配列が同一である抗体分子からなるか、または本質的にそれからなる抗体を指す。
【0094】
「ポリクローナル抗体」は、不均一な抗体集団から得られる抗体を指し、ここで、当該集団における異なる抗体は、ある抗原の異なるエピトープに結合する。
【0095】
「キメラ抗体」は、定常領域もしくはその一部が改変、置換、もしくは交換され、その結果、抗原結合部位(すなわち、可変領域、CDR、またはその一部)が、異なるもしくは改変されたクラス、エフェクター機能、及び/または種の定常領域に連結されている抗体分子、または可変領域もしくはその一部が、異なるもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域(例えば、異なる種に由来するCDR及びフレームワーク領域)に改変、置換、もしくは交換されている抗体分子を指す。幾つかの実施形態では、キメラ抗体は、ある供給源または種(例えば、マウス)に由来する可変領域、及び別の供給源または種(例えば、ヒト)に由来する定常領域を含むモノクローナル抗体である。キメラ抗体を作製するための方法は、当該技術分野において説明されている。
【0096】
「ヒト化抗体」は、CDRの外側に非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を有する、非ヒト供給源(例えば、マウス)に由来するキメラ免疫グロブリンである。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ(例えば、2つ)の抗原結合性可変ドメイン(複数可)を含み、ここで、CDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に実質的に相当し、フレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域に実質的に相当する。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常はヒト免疫グロブリン配列の免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含み得る。抗体ヒト化の方法は、当技術分野において公知である。
【0097】
「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列遺伝子に通常由来するヒト重鎖及び軽鎖配列を有する抗体である。幾つかの実施形態では、抗体は、ヒト細胞により、ヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト動物(例えば、ヒト抗体配列を発現するように遺伝子操作されているトランスジェニックマウス)により、またはファージディスプレイプラットフォームにより産生される。
【0098】
用語「特異的に結合する」は、分子(例えば、抗体またはその抗原結合部分)が、それが別のエピトープまたは非標的化合物(例えば、構造的に異なる抗原)に結合するよりも、試料においてより強い親和性で、より強い結合活性で、及び/またはより長い持続時間でエピトープまたは標的に結合することを指す。幾つかの実施形態では、エピトープまたは標的に特異的に結合する抗体(またはその抗原結合部分)は、他のエピトープまたは非標的化合物と比べて少なくとも1.5倍強い親和性、例えば、少なくとも1.5倍、2.5倍、5倍、10倍、100倍、1,000倍、10,000倍、またはより強い親和性でエピトープまたは標的に結合する抗体(またはその抗原結合部分)である。本明細書で使用する場合、特定のエピトープまたは標的「への特異的結合」、「に特異的に結合する」、または「に特異的である」という用語は、例えば、結合するエピトープまたは標的に対する平衡解離定数Kが、例えば、10-4M以下、例えば、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mである分子により表され得る。ある種に由来する標的(例えば、PILRAタンパク質(例えば、hPILRA及び/またはcynoPILRA))に特異的に結合する抗体は、その標的のオーソログにも特異的に結合し得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0099】
用語「結合親和性」は、2つの分子間、例えば、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の非共有結合性相互作用の強さを指すために本明細書において使用される。従って、例えば、この用語は、特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の1:1の相互作用を指し得る。結合親和性は、平衡解離定数(K)を測定することにより定量化され得、Kは、会合速度定数(k、時間-1-1)で除算した解離速度定数(k、時間-1)を指す。Kは、例えば、Biacore(商標)システムなどの表面プラズモン共鳴(SPR)法;KinExA(登録商標)などの結合平衡除外法;及びバイオレイヤー干渉法(例えば、ForteBio(登録商標)Octetプラットフォームを使用する)を使用して、複合体形成及び解離の動態を測定することにより決定され得る。本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の1:1の相互作用を反映するものなどの形式的な結合親和性だけでなく、見かけの親和性も包含し、そのために強い結合を反映し得るKが算出される。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「交差反応する」は、抗体が惹起された抗原以外の抗原に結合する当該抗体の能力を指す。幾つかの実施形態では、交差反応性は、抗体が惹起された抗原とは別の種に由来する抗原に結合する当該抗体の能力を指す。非限定的な例として、ヒトPILRAペプチドに対して惹起される本明細書に記載される抗PILRA抗体は、異なる種(例えば、カニクイザルまたはマウス)に由来するPILRAペプチドまたはタンパク質との交差反応性を示し得る。
【0101】
用語「調節する」は、タンパク質または細胞の1つ以上の特性を変化させるか、または改変することを指す。細胞の特性は、当該細胞のタンパク質(例えば、PILRAタンパク質)の1つ以上の特性を変化させる結果として、すなわち、当該細胞の当該タンパク質に結合させることにより、変化し得る。調節され得る細胞の特性としては、限定されるものではないが、細胞増殖、遊走、生存、シグナル伝達、貪食、及びバイオマーカー分泌が挙げられる。例えば、細胞のPILRAタンパク質に結合する分子は、PILRAへの結合の結果として、細胞の1つ以上の下流シグナル伝達応答または活性を引き起こし得、従って、当該分子は、細胞のシグナル伝達応答または活性を調節すると言われる。幾つかの実施形態では、用語「調節する」は、PILRAへの結合なしでの細胞のシグナル伝達応答または活性と比較した、PILRAへの結合の結果としての細胞のシグナル伝達応答または活性の増加または減少を指し得る。PILRAへの結合の結果としての細胞シグナル伝達応答または活性の変化の例としては、限定されるものではないが、リン酸化STAT3(pSTAT3)レベル、リン酸化STAT1(pSTAT1)レベル、リン酸化EGFR(pEGFR)レベル、カドヘリン発現、インテグリン発現、及び細胞(例えば、ミクログリア)遊走の変化が挙げられる。
【0102】
本明細書で使用する場合、用語「CH3ドメイン」及び「CH2ドメイン」は、免疫グロブリン定常領域ドメインポリペプチドを指す。IgG抗体の文脈において、CH3ドメインポリペプチドは、EU番号付けスキームに従って番号付けされる場合、341位前後から447位前後までのアミノ酸セグメントを指し、CH2ドメインポリペプチドは、EU番号付けスキームに従って番号付けされる場合、231位前後から340位前後までのアミノ酸セグメントを指す。CH2及びCH3ドメインポリペプチドは、IMGT(ImMunoGeneTics)番号付けスキームによって番号付けられてもよく、この場合、IMGT Scientific chartによる番号付け(IMGTのウェブサイト)に従って、CH2ドメインの番号付けは1~110であり、CH3ドメインの番号付けは1~107である。CH2及びCH3ドメインは、免疫グロブリンのFc領域の一部である。IgG抗体の文脈において、Fc領域は、EU番号付けスキームに従って番号付けされる場合、231位前後~447位前後までのアミノ酸セグメントを指す。本明細書で使用する場合、用語「Fc領域」は、抗体のヒンジ領域の少なくとも一部も含み得る。例示的な部分的ヒンジ領域の配列は、DKTHTCPPCP(配列番号98)である。
【0103】
用語「~に対応する」、「~を参照して決定される」、または「~を参照して番号付けされる」は、ポリペプチド配列内の所与のアミノ酸残基を同定する文脈で使用される場合、所与のアミノ酸配列が特定の参照配列と最大限にアライメントされ、比較されたときの、当該参照配列の残基の位置を指す。従って、例えば、あるポリペプチドのアミノ酸残基は、配列番号1と最適にアラインメントされたときに、当該残基が配列番号1のアミノ酸と一列に並ぶ場合、配列番号1の当該アミノ酸に「対応する」。参照配列とアラインメントされるポリペプチドは、参照配列と同じ長さである必要はない。
【0104】
本明細書で使用する場合、用語「Fcポリペプチド」は、構造ドメインとしてのIgフォールドを特徴とする、天然に存在する免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのC末端領域を指す。Fcポリペプチドは、CH2ドメイン及び/またはCH3ドメインを少なくとも含む定常領域配列を含み、ヒンジ領域の少なくとも一部を含み得るが、可変領域を含まない。
【0105】
「改変Fcポリペプチド」とは、野生型の免疫グロブリン重鎖Fcポリペプチド配列と比較して少なくとも1つの変異、例えば、置換、欠失、または挿入を有するが、天然Fcポリペプチドの全体的なIgフォールドまたは構造を保持しているFcポリペプチドのことを指す。
【0106】
用語「単離された」は、核酸またはタンパク質(例えば、抗体)に関して使用される場合、当該核酸またはタンパク質が、その天然状態で会合している他の細胞成分を本質的に含まないことを表す。純度及び均一性は、通常、電気泳動(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー)などの分析化学技術を使用して決定される。幾つかの実施形態では、単離された核酸またはタンパク質(例えば、抗体)は、少なくとも85%純粋であるか、少なくとも90%純粋であるか、少なくとも95%純粋であるか、または少なくとも99%純粋である。
【0107】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるアミノ酸、及び後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸及びO-ホスホセリンである。天然に存在するαアミノ酸としては、限定されるものではないが、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。天然に存在するαアミノ酸の立体異性体としては、限定されるものではないが、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-トレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合しているα炭素)を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。「アミノ酸模倣物」は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有する化合物を指すが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する。本明細書においてアミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される、一般的に公知のアミノ酸の3文字記号または1文字記号により表記され得る。
【0108】
用語「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、アミノ酸残基の一本鎖ポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。当該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸ポリマーは、完全にL-アミノ酸のみを含み得るか、完全にD-アミノ酸のみを含み得るか、またはL及びD-アミノ酸の組み合わせを含み得る。
【0109】
本明細書で使用する場合、用語「タンパク質」は、ポリペプチドまたは一本鎖ポリペプチドの二量体(すなわち、2つ)もしくは多量体(すなわち、3つ以上)のいずれかを指す。タンパク質の一本鎖ポリペプチドは、共有結合、例えば、ジスルフィド結合または非共有結合性相互作用により連結されていてもよい。
【0110】
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、任意の長さのヌクレオチド鎖を互換的に指し、DNA及びRNAを包含する。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによって鎖に組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。本明細書において企図されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖及び二本鎖のDNA、一本鎖及び二本鎖のRNA、ならびに一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNAの組み合わせを有するハイブリッド分子が挙げられる。
【0111】
用語「保存的置換」及び「保存的変異」は、あるアミノ酸の、類似の特徴を有すると分類され得る別のアミノ酸との置換をもたらす変化を指す。このように定義される保存的アミノ酸グループのカテゴリーの例としては、Glu(グルタミン酸またはE)、Asp(アスパラギン酸またはD)、Asn(アスパラギンまたはN)、Gln(グルタミンまたはQ)、Lys(リジンまたはK)、Arg(アルギニンまたはR)、及びHis(ヒスチジンまたはH)が含まれる「荷電/極性グループ」;Phe(フェニルアラニンまたはF)、Tyr(チロシンまたはY)、Trp(トリプトファンまたはW)、及び(ヒスチジンまたはH)が含まれる「芳香族グループ」;ならびにGly(グリシンまたはG)、Ala(アラニンまたはA)、Val(バリンまたはV)、Leu(ロイシンまたはL)、Ile(イソロイシンまたはI)、Met(メチオニンまたはM)、Ser(セリンまたはS)、Thr(トレオニンまたはT)、及びCys(システインまたはC)が含まれる「脂肪族グループ」が挙げられ得る。各グループ内でサブグループも特定され得る。例えば、荷電または極性アミノ酸のグループは、Lys、Arg、及びHisを含む「正に荷電したサブグループ」;Glu及びAspを含む「負に荷電したサブグループ」;ならびにAsn及びGlnを含む「極性サブグループ」が含まれるサブグループに更に分割され得る。別の例では、芳香族または環状グループは、Pro、His、及びTrpを含む「窒素環サブグループ」;ならびにPhe及びTyrを含む「フェニルサブグループ」が含まれるサブグループに更に分割され得る。更に別の例では、脂肪族グループは、Val、Leu、Gly、及びAlaを含む「脂肪族非極性サブグループ」、ならびにMet、Ser、Thr、及びCysを含む「脂肪族弱極性サブグループ」などのサブグループに更に分割され得る。保存的変異のカテゴリーの例としては、上記サブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、限定されるものではないが、正電荷が維持され得るようなLysのArgへの置換またはその逆;負電荷が維持され得るようなGluのAspへの置換またはその逆;遊離-OHが維持され得るようなSerのThrへの置換またはその逆;ならびに遊離-NHが維持され得るようなGlnのAsnへの置換またはその逆が挙げられる。幾つかの実施形態では、疎水性を維持するために、例えば、活性部位において、疎水性アミノ酸が天然に存在する疎水性アミノ酸と置換される。
【0112】
2つ以上のポリペプチド配列の文脈において、用語「同一」またはパーセント「同一性」は、2つ以上の配列または部分配列が、配列比較アルゴリズムを使用して、または手動のアラインメント及び目視検査により測定される場合に、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたって最大の一致となるように比較及びアラインメントされたとき、特定の領域にわたって同じであるか、または一致しているアミノ酸残基の特定の百分率、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%以上の同一性を有することを指す。
【0113】
ポリペプチドの配列比較では、通常、1つのアミノ酸配列が参照配列としての役割を果たし、候補配列がこれと比較される。最大限のアラインメントを得るために、アラインメントは、当業者が利用可能な種々の方法、例えば、目視によるアラインメントにより、または既知のアルゴリズムを使用した公開されているソフトウェアを使用して実行され得る。かかるプログラムとしては、BLASTプログラム、ALIGN、ALIGN-2(Genentech,South San Francisco,Calif.)、またはMegalign(DNASTAR)が挙げられる。アラインメントに用いられるパラメーターは、最大限のアラインメントが得られるように当業者により決定され得る。本出願におけるポリペプチド配列の配列比較では、2つのタンパク質配列をアラインメントするための標準的なタンパク質BLASTであるBLASTPアルゴリズムがデフォルトのパラメーターと共に使用される。
【0114】
本明細書において互換的に使用される用語「対象」、「個体」、及び「患者」は、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、及びモルモット)、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、及び他の哺乳動物種が含まれる、哺乳動物を指す。一実施形態では、対象、個体、または患者は、ヒトである。
【0115】
用語「処置する」、「処置」、及び同様の用語は、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を達成することを通常意味するように本明細書において使用される。「処置する」または「処置」は、あらゆる客観的または主観的パラメーターが含まれる、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病または本明細書に記載される別の神経変性疾患)の処置または改善の成功のあらゆる兆候、例えば、寛解、鎮静、患者生存率の改善、生存期間もしくは生存率の増加、症状の減弱、または疾患が患者にとってより許容できるものになること、変性もしくは衰弱の速度の緩徐化、または患者の肉体的もしくは精神的健康の改善を指し得る。症状の処置または改善は、客観的または主観的パラメーターに基づいてもよい。処置の効果は、処置を受けていない個体もしくは個体の集団と比較され得るか、または処置前もしくは処置の間の異なる時点での同じ患者と比較され得る。
【0116】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、ヒトまたは動物における使用に生物学的または薬理学的に適合する非活性医薬成分、例えば、限定されるものではないが、緩衝剤、担体、または防腐剤を指す。
【0117】
本明細書で使用する場合、薬剤(例えば、本明細書に記載される抗体)の「治療量」または「治療上有効量」は、対象における疾患の症状を処置するか、軽減するか、緩和するか、またはその重症度を低減させる薬剤の量である。薬剤(例えば、本明細書に記載される抗体)の「治療量」は、患者の生存率を改善し得るか、生存期間もしくは生存率を増加させ得るか、症状を減弱させ得るか、損傷、疾患、もしくは状態(例えば、神経変性疾患)をより許容できるものにし得るか、変性もしくは衰弱の速度を遅らせ得るか、または患者の肉体的もしくは精神的健康を改善し得る。
【0118】
用語「投与する」は、薬剤、化合物、または組成物を生物学的作用が望まれる部位に送達する方法を指す。これらの方法としては、限定されるものではないが、局所送達、非経口送達、静脈内送達、皮内送達、筋肉内送達、クモ膜下腔内送達、結腸送達、直腸送達、または腹腔内送達が挙げられる。一実施形態では、本明細書に記載される抗体は、静脈内投与される。
【0119】
用語「対照」または「対照値」は、参照値またはベースライン値を指す。適切な対照は、当業者により決定され得る。幾つかの例では、対照値は、同じ対象または実験内のベースラインを基準として決定され得る。他の例では、対照値は、対照対象(例えば、健常対照または疾患対照)または対照対象(例えば、健常対照または疾患対照)の集団(例えば、10、20、50、100、200、500、1000人、またはそれ以上の対照対象の集団)の平均値を基準として決定され得る。
【0120】
III.抗PILRA抗体
一態様では、ペア型免疫グロブリン様2型受容体α(PILRA)タンパク質(例えば、hPILRA及び/またはcynoPILRAタンパク質)に特異的に結合する抗体が提供される。幾つかの実施形態では、抗体は、hPILRAタンパク質に特異的に結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、他のPILR受容体(例えば、ペア型免疫グロブリン様2型受容体β(PILRB))以上にPILRAに対して選択的である。
【0121】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、本明細書において開示されるような1つ以上の相補性決定領域(CDR)、重鎖可変領域、及び/または軽鎖可変領域配列を含む抗体である。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、本明細書において開示されるような1つ以上のCDR、重鎖可変領域、及び/または軽鎖可変領域配列を含み、更に本明細書において開示されるような1つ以上の機能的特性を備える(例えば、PILRA活性をアンタゴナイズする抗体(例えば、hPILRAへのリガンドの結合を遮断し、下流タンパク質のリン酸化を変化させ(例えば、EGFRまたはSTAT3のリン酸化を増加させ、STAT1のリン酸化を減少させる)、細胞呼吸、脂肪酸代謝(例えば、脂肪酸酸化)、及びATP産生を増進させ、細胞遊走(例えば、ミクログリア遊走)を増強し、抗炎症性遺伝子もしくはタンパク質の発現を増加させ、及び/またはサイトカインタンパク質の発現を低減させる抗体))。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、本明細書に記載されるような1つ以上の改変を含むFcポリペプチドを含む。
【0122】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、完全ヒト抗体である。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、キメラ抗体である。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、ヒト化され、及び/または親和性成熟した抗体である。
【0123】
抗PILRA抗体配列
幾つかの実施形態では、重鎖配列もしくはその一部、及び/または軽鎖配列もしくはその一部は、本明細書に記載される抗PILRA抗体(例えば、クローン2、クローン4、またはクローン5)に由来する。これらのクローンのCDR、重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下からなる群から選択される1つ以上のCDRを含む:
(a)配列番号4~11のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号4~11のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR1(CDR-H1)配列;
(b)配列番号12~19のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号12~19のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR2(CDR-H2)配列;
(c)配列番号20~29のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号20~29のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR3(CDR-H3)配列;
(d)配列番号30~38のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号30~38のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR1(CDR-L1)配列;
(e)配列番号39~46のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号39~46のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR2(CDR-L2)配列;及び
(f)配列番号47~53のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号47~53のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR3(CDR-L3)配列。
【0126】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下からなる群から選択される1つ以上のCDRを含む:
(a)配列番号4~11のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1配列;
(b)配列番号12~19のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2配列;
(c)配列番号20~29のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H3配列;
(d)配列番号30~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L1配列;
(e)配列番号39~46のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L2配列;及び
(f)配列番号47~53のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L3配列。
【0127】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、(a)~(f)のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てを含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、(a)のCDR-H1、(b)のCDR-H2、及び(c)のCDR-H3を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、(d)のCDR-L1、(e)のCDR-L2、及び(f)のCDR-L3を含む。幾つかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換を有するCDRは、参照配列と比較して1つのアミノ酸置換(例えば、1つの保存的置換)を有する。幾つかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換を有するCDRは、参照配列と比較して2つのアミノ酸置換(例えば、2つの保存的置換)を有する。幾つかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換は、保存的置換である。
【0128】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号4のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号4のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号12のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号12のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号20のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号20のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号30のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号30のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号39のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号39のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号47のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号47のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0129】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号5のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号5のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号13のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号13のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号21のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号21のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号31のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号31のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号39のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号39のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号47のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号47のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0130】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号5のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号5のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号13のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号13のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号22のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号22のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号31のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号31のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号39のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号39のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号47のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号47のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0131】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号6のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号6のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号14のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号14のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号23のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号23のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号32のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号32のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号40のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号40のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号48のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号48のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0132】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号7のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号7のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号15のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号15のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号24のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号24のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号33のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号33のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号41のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号41のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号49のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号49のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0133】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号7のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号7のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号15のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号15のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号25のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号25のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号34のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号34のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号42のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号42のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号49のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号49のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0134】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号8のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号8のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号16のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号16のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号26のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号26のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号35のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号35のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号43のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号43のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号50のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号50のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0135】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号9のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号9のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号17のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号17のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号27のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号27のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号36のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号36のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号44のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号44のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号51のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号51のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0136】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号10のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号10のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号18のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号18のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号28のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号28のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号37のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号37のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号45のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号45のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号52のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号52のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0137】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号11のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号11のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H1;
(b)配列番号19のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号19のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H2;
(c)配列番号29のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号29のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-H3;
(d)配列番号38のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号38のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L1;
(e)配列番号46のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号46のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L2;及び
(f)配列番号53のアミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または配列番号53のアミノ酸配列と比較して最大2つのアミノ酸置換(例えば、1つまたは2つの保存的置換)を有する、CDR-L3。
【0138】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(c)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(d)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(e)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(f)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(h)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(i)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR-L3;または
(j)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0139】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号54~63のいずれか1つに対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRAは、配列番号54~63のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0140】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号137~144及び158のいずれか1つに対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRAは、配列番号137~144及び158のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0141】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号64~73のいずれか1つに対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号64~73のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0142】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号54~63のいずれか1つに対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、配列番号64~73のいずれか1つに対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRAは、配列番号54~63のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号64~73のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0143】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号137~144のいずれか1つに対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、配列番号145~149のいずれか1つに対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRAは、配列番号137~144のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号145~149のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0144】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)配列番号54に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号64に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(b)配列番号54に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号65に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(c)配列番号55に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号66に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(d)配列番号56に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号66に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(e)配列番号57に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号67に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(f)配列番号58に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号68に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(g)配列番号59に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号69に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(h)配列番号60に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号70に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(i)配列番号61に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号71に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(j)配列番号62に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号72に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(k)配列番号63に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号73に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列。
【0145】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)それぞれ配列番号4、12、及び20のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号54に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号30、39、及び47のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号64に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(b)それぞれ配列番号4、12、及び20のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号54に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号30、39、及び47のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号65に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(c)それぞれ配列番号5、13、及び21のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号55に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号31、39、及び47のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号66に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(d)それぞれ配列番号5、13、及び22のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号56に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号31、39、及び47のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号66に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(e)それぞれ配列番号6、14、及び23のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号57に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号32、40、及び48のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号67に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(f)それぞれ配列番号7、15、及び24のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号58に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号33、41、及び49のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号68に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(g)それぞれ配列番号7、15、及び25のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号59に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号34、42、及び49のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号69に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(h)それぞれ配列番号8、16、及び26のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号60に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号35、43、及び50のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号70に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(i)それぞれ配列番号9、17、及び27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号61に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号36、44、及び51のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号71に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(j)それぞれ配列番号10、18、及び28のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号62に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号37、45、及び52のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号72に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列;または
(k)それぞれ配列番号11、19、及び29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、ならびに配列番号63に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列、ならびにそれぞれ配列番号38、46、及び53のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、ならびに配列番号73に対する少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するV配列。
【0146】
クローン2
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0147】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号54に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0148】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号65に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号65のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0149】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号54に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号65に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号65のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0150】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、それぞれ配列番号4、12、及び20のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号54に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号30、39、及び47のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号65に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0151】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、各々がそれぞれ配列番号4、12、及び20のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号122に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の重鎖、ならびに各々がそれぞれ配列番号30、39、及び47のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号123に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の軽鎖を含む。
【0152】
クローン4
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0153】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号56に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0154】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号66に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0155】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号56に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号66に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0156】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、それぞれ配列番号5、13、及び22のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号56に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号31、39、及び47のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号66に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0157】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、各々がそれぞれ配列番号5、13、及び22のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号124に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の重鎖、ならびに各々がそれぞれ配列番号31、39、及び47のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号125に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の軽鎖を含む。
【0158】
クローン5
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0159】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号57に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号57のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0160】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号67に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号67のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0161】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号57に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号67に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号57のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号67のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0162】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、それぞれ配列番号6、14、及び23のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号57に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号32、40、及び48のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号67に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0163】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、各々がそれぞれ配列番号6、14、及び23のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号126に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の重鎖、ならびに各々がそれぞれ配列番号32、40、及び48のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号127に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の軽鎖を含む。
【0164】
クローン12
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0165】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号137に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号137のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0166】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号145に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号145のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0167】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号137に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号145に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号137のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号145のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0168】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、それぞれ配列番号7、15、及び24のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号137に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号33、41、及び49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号145に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0169】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、各々がそれぞれ配列番号7、15、及び24のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号150に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の重鎖、ならびに各々がそれぞれ配列番号33、41、及び49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号151に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の軽鎖を含む。
【0170】
クローン15
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0171】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号140に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号140のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0172】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号145に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号145のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0173】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号140に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号145に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号140のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号145のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0174】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、それぞれ配列番号7、15、及び24のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号140に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号33、41、及び49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号145に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0175】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、各々がそれぞれ配列番号7、15、及び24のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号152に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の重鎖、ならびに各々がそれぞれ配列番号33、41、及び49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号151に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の軽鎖を含む。
【0176】
クローン23
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0177】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号143に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号143のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0178】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号146に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0179】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号143に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号146に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号143のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0180】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、それぞれ配列番号7、15、及び25のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号143に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号34、42、及び49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号146に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0181】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、各々がそれぞれ配列番号7、15、及び25のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号153に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の重鎖、ならびに各々がそれぞれ配列番号34、42、及び49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号154に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の軽鎖を含む。
【0182】
クローン35
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0183】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号143に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号143のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0184】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号149に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号149のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0185】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号143に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号149に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号143のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号149のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0186】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、それぞれ配列番号7、15、及び25のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号143に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する重鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号34、42、及び49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号149に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0187】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、各々がそれぞれ配列番号7、15、及び25のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3を含み、配列番号153に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の重鎖、ならびに各々がそれぞれ配列番号34、42、及び49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3を含み、配列番号155に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する2本の軽鎖を含む。
【0188】
コンセンサス配列
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、本明細書において開示されるコンセンサス配列に包含される1つ以上の配列を含む。非限定的な例として、コンセンサス配列は、同じ(または類似の)生殖細胞系列に由来する抗体の重鎖配列または軽鎖配列(例えば、CDR)をアラインメントすることにより同定され得る。幾つかの実施形態では、コンセンサス配列は、同じ(または同程度の)長さの配列を有し、及び/または少なくとも1つの高度に類似するCDR(例えば、高度に類似するCDR3)を有する抗体から生成され得る。幾つかの実施形態では、これらの抗体のかかる配列は、保存されたアミノ酸もしくはモチーフ(すなわち、配列における変化がタンパク質機能を変化させ得るアミノ酸またはモチーフ)及び/または配列内の多様性が生じる領域(すなわち、配列の多様性がタンパク質機能に大きな影響を及ぼす可能性が低い領域)を同定するために、アラインメント及び比較され得る。あるいは、コンセンサス配列は、保存されたアミノ酸またはモチーフ(すなわち、配列における変化がタンパク質機能を変化させ得るアミノ酸またはモチーフ)及び配列のアラインメントにおいて多様性が生じる領域(すなわち、配列の多様性がタンパク質機能に大きな影響を及ぼす可能性が低い領域)を決定するために、同じかまたは類似する(例えば、重複する)エピトープに結合する抗体の重鎖配列または軽鎖配列(例えば、CDR)をアラインメントすることにより同定され得る。幾つかの実施形態では、1つ以上のコンセンサス配列は、本明細書に開示される抗PILRA抗体と同じかまたは類似するエピトープを認識する抗体について同定され得る。コンセンサス配列内の「X」で示す位置に挿入するアミノ酸を選択する場合、幾つかの実施形態では、当該アミノ酸は、アラインメントされた配列における対応する位置に見出されるアミノ酸から選択されることが理解されよう。
【0189】
クローン2、4、及び5
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)GXTFXH(配列番号74)の配列を含むCDR-H1配列であって、XがFまたはYであり、XがDまたはIであり、XがDまたはGであり、XがYまたはFであり、XがAまたはYであり、かつXがMまたはIである、当該CDR-H1配列;
(b)XSGX(配列番号75)の配列を含むCDR-H2配列であって、XがGまたはWであり、XがF、M、またはIであり、XがSまたはNであり、XがWまたはPであり、XがNまたはEであり、XがSまたはDであり、XがIまたはTであり、かつXがGまたはTである、当該CDR-H2配列;
(c)XFDX10(配列番号76)の配列を含むCDR-H3配列であって、XがDであるか、または存在せず、XがKまたはGであり、XがSまたはNであり、XがIまたはWであり、XがS、G、またはNであり、XがAまたはFであり、XがAまたはPであり、XがGまたはDであり、XがRまたはTであり、かつX10がY、S、またはFである、当該CDR-H3配列;
(d)XSXIXYLN(配列番号77)の配列を含むCDR-L1配列であって、XがQまたはRであり、XがAまたはSであり、XがRまたはQであり、XがR、G、またはSであり、XがNまたはSであり、かつXがNまたはIである、当該CDR-L1配列;
(e)XASXLX(配列番号78)の配列を含むCDR-L2配列であって、XがDまたはVであり、XがNまたはSであり、XがEまたはQであり、かつXがTまたはSである、当該CDR-L2配列;及び
(f)QQXPXT(配列番号79)の配列を含むCDR-L3配列であって、XがYまたはSであり、XがDまたはYであり、XがNまたはSであり、XがLまたはAであり、かつXがLまたはFである、当該CDR-L3配列。
【0190】
特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)GFTFDDYAXH(配列番号80)の配列であって、XがMもしくはIである、当該配列を含むか、またはGYTFIGFYIH(配列番号6)の配列を含む、CDR-H1配列;
(b)GXSWNSGSIG(配列番号81)の配列であって、XがFもしくはMである、当該配列を含むか、またはWINPESGDTT(配列番号14)の配列を含む、CDR-H2配列;
(c)DKSIXAAGRFDX(配列番号82)の配列であって、XがSもしくはGであり、かつXがYもしくはSである、当該配列を含むか、またはGNWNFPDTFDF(配列番号23)の配列を含む、CDR-H3配列;
(d)QASXINNYLN(配列番号83)の配列であって、XがRもしくはQであり、かつXがRもしくはGである、当該配列を含むか、またはRSSQSISIYLN(配列番号32)の配列を含む、CDR-L1配列;
(e)DASNLET(配列番号39)またはVASSLQS(配列番号40)の配列を含むCDR-L2配列;及び
(f)QQYDNLPLT(配列番号47)またはQQSYSAPFT(配列番号48)の配列を含むCDR-L3配列。
【0191】
特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)GFTFDDYAXH(配列番号80)の配列を含むCDR-H1配列であって、XがMまたはIである、当該CDR-H1配列;
(b)GXSWNSGSIG(配列番号81)の配列を含むCDR-H2配列であって、XがFまたはMである、当該CDR-H2配列;
(c)DKSIXAAGRFDX(配列番号82)の配列を含むCDR-H3配列であって、XがSまたはGであり、かつXがYまたはSである、当該CDR-H3配列;
(d)QASXINNYLN(配列番号83)の配列を含むCDR-L1配列であって、XがRまたはQであり、かつXがRまたはGである、当該CDR-L1配列;
(e)DASNLET(配列番号39)の配列を含むCDR-L2配列;及び
(f)QQYDNLPLT(配列番号47)の配列を含むCDR-L3配列。
【0192】
クローン6、7、及び8
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)GYTFTXYMY(配列番号84)の配列を含むCDR-H1配列であって、XがEまたはGであり、かつXがYまたはHである、当該CDR-H1配列;
(b)XIXPXGXTD(配列番号85)の配列を含むCDR-H2配列であって、XがRまたはWであり、XがDまたはNであり、XがEまたはNであり、XがDまたはSであり、かつXがGまたはDである、当該CDR-H2配列;
(c)TIRGTVFX(配列番号86)の配列であって、XがAもしくはVであり、かつXがFもしくはYである、当該配列を含むか、またはEGLDGDPFDY(配列番号26)の配列を含む、CDR-H3配列;
(d)RXSEDIXNGLA(配列番号87)の配列であって、XがAもしくはPであり、かつXがFもしくはYである、当該配列を含むか、またはRSSQSLVHSDGNTYLS(配列番号35)の配列を含む、CDR-L1配列;
(e)NX(配列番号88)の配列を含むCDR-L2配列であって、XがAまたはIであり、XがK、N、またはSであり、XがT、S、またはNであり、XがLまたはRであり、XがHまたはFであり、かつXがTまたはSである、当該CDR-L2配列;及び
(f)QQYYDYPLT(配列番号49)またはIQTTQFST(配列番号50)の配列を含むCDR-L3配列。
【0193】
特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)GYTFTEYYMY(配列番号7)またはGYTFTGHYMH(配列番号8)の配列を含むCDR-H1配列;
(b)RIDPEDGGTD(配列番号15)またはWINPNSGDTD(配列番号16)の配列を含むCDR-H2配列;
(c)TIRGTVFX(配列番号86)の配列であって、XがAもしくはVであり、かつXがFもしくはYである、当該配列を含むか、またはEGLDGDPFDY(配列番号26)の配列を含む、CDR-H3配列;
(d)RXSEDIXNGLA(配列番号87)の配列であって、XがAもしくはPであり、かつXがFもしくはYである、当該配列を含むか、またはRSSQSLVHSDGNTYLS(配列番号35)の配列を含む、CDR-L1配列;
(e)NAXLHT(配列番号89)の配列であって、XがKもしくはNであり、かつXがTもしくはSである、当該配列を含むか、またはNISNRFS(配列番号43)の配列を含む、CDR-L2配列;及び
(f)QQYYDYPLT(配列番号49)またはIQTTQFST(配列番号50)の配列を含むCDR-L3配列。
【0194】
特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、以下を含む:
(a)GYTFTEYYMY(配列番号7)の配列を含むCDR-H1配列;
(b)RIDPEDGGTD(配列番号15)の配列を含むCDR-H2配列;
(c)TIRGTVFX(配列番号86)の配列を含むCDR-H3配列であって、XがAまたはVであり、かつXがFまたはYである、当該CDR-H3配列;
(d)RXSEDIXNGLA(配列番号87)の配列を含むCDR-L1配列であって、XがAまたはPであり、かつXがFまたはYである、当該CDR-L1配列;
(e)NAXLHT(配列番号89)の配列を含むCDR-L2配列であって、XがKまたはNであり、かつXがTまたはSである、当該CDR-L2配列;及び
(f)QQYYDYPLT(配列番号49)の配列を含むCDR-L3配列。
【0195】
抗PILRA抗体の結合特性
幾つかの実施形態では、PILRAタンパク質(例えば、hPILRAタンパク質)に特異的に結合する本明細書に記載される抗体は、細胞(例えば、PILRAを内因的に発現する細胞株、例えば、免疫細胞、または例えば、以下の実施例セクションに記載されるような、PILRAを発現するように操作された細胞株)上に発現されるPILRAに結合する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるようなPILRAタンパク質に特異的に結合する抗体は、精製もしくは組換えPILRAタンパク質もしくはその一部に結合するか、またはPILRAを含むキメラタンパク質もしくはその一部に結合する。
【0196】
幾つかの実施形態では、ヒトPILRAタンパク質に特異的に結合する抗体は、別の種の1種以上の他のPILRAタンパク質との交差反応性を示す。幾つかの実施形態では、ヒトPILRAタンパク質に特異的に結合する抗体は、カニクイザル(「cyno」)PILRAタンパク質(cynoPILRA)との交差反応性を示す。
【0197】
結合親和性、結合動態、及び交差反応性を分析するための方法は、当技術分野において公知である。これらの方法としては、限定されるものではないが、固相結合アッセイ(例えば、ELISAアッセイ)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore(商標)(GE Healthcare、Piscataway、NJ))、結合平衡除外法(例えば、KinExA(登録商標))、フローサイトメトリー、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、バイオレイヤー干渉法(例えば、Octet(商標)(ForteBio,Inc.、Menlo Park、CA))、及びウェスタンブロット分析が挙げられる。幾つかの実施形態では、結合親和性及び/または交差反応性を測定するために、ELISAが使用される。ELISAアッセイを実行するための方法は当技術分野において公知であり、以下の実施例セクションにも記載されている。幾つかの実施形態では、結合親和性、結合動態、及び/または交差反応性を測定するために、表面プラズモン共鳴(SPR)が使用される。幾つかの実施形態では、結合親和性、結合動態、及び/または交差反応性を測定するために、結合平衡除外法が使用される。幾つかの実施形態では、結合親和性、結合動態、及び/または交差反応性を測定するために、バイオレイヤー干渉法アッセイが使用される。
【0198】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体は、カニクイザルペア型免疫グロブリン様2型受容体α(cynoPILRA)に特異的に結合し、ここで、cynoPILRAに対する結合親和性は、ヒトペア型免疫グロブリン様2型受容体β(hPILRB)に対する結合親和性より少なくとも2倍(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍)強い。
【0199】
本明細書に記載されるように、幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体は、hPILRA及びcynoPILRAの両方との交差反応性を示す。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体は、hPILRA及びcynoPILRAの両方に結合する。
【0200】
ある特定の実施形態では、抗PILRA抗体のcynoPILRAに対する結合親和性は、hPILRAに対する結合親和性と比較して100倍以内(例えば、100倍、90倍、80倍、70倍、60倍、50倍、40倍、30倍、20倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、2倍、または1.5倍以内)である。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、0.1nM~500nM(例えば、0.1nM~400nM、0.1nM~300nM、0.1nM~200nM、または0.1nM~100nM)の結合親和性でhPILRAに結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、0.1nM~100nM(例えば、0.1nM~90nM、0.1nM~80nM、0.1nM~70nM、0.1nM~60nM、0.1nM~50nM、0.1nM~40nM、0.1nM~30nM、0.1nM~20nM、0.1nM~10nM、0.1nM~5nM、0.1nM~1nM、1nM~100nM、5nM~100nM、10nM~100nM、20nM~100nM、30nM~100nM、40nM~100nM、50nM~100nM、60nM~100nM、70nM~100nM、80nM~100nM、または90nM~100nM)の結合親和性でhPILRAに結合する。
【0201】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体は、hPILRB以上にhPILRA及び/またはcynoPILRAに対して選択的に結合する。特定の実施形態では、抗体のhPILRAに対する結合親和性は、hPILRBに対する結合親和性より少なくとも10倍(例えば、少なくとも10倍、20倍、40倍、60倍、80倍、100倍、120倍、140倍、160倍、180倍、200倍、220倍、240倍、260倍、280倍、または300倍)強い。
【0202】
抗PILRA抗体により認識されるエピトープ
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、本明細書に記載される抗体クローンにより認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じであるヒトPILRAのエピトープを認識する。本明細書で使用する場合、用語「実質的に同じ」は、本明細書に記載される抗体クローンにより認識されるエピトープに関して使用される場合、抗PILRA抗体が、本明細書に記載される抗体クローンにより認識されるエピトープと同じであるか、その内部に存在するか、もしくはそれとほぼ同じである(例えば、それに対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、またはそれと比較して1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)か、またはそれと大きく重複している(例えば、それと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または95%重複する)エピトープを認識することを意味する。
【0203】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、クローン2及びクローン4~8(例えば、クローン2、4、及び5)ならびにそのバリアントからなる群から選択される抗体クローンにより認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じであるヒトPILRAのエピトープを認識する。
【0204】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、PILRAの細胞外ドメイン(ECD)、例えば、配列番号1のアミノ酸20~143を含むECDの範囲内でヒトPILRAのエピトープを認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、PILRAのストーク領域内のエピトープでヒトPILRAに結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、PILRAシグナル伝達を阻害するアンタゴニストである。
【0205】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、63位、64位、78位、106位、143位、116~118位、及び182~186位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合し、ここで、位置は配列番号1を参照して決定される。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体は、配列番号1における63位、64位、78位、106位、143位、116~118位、及び182~186位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する。図10は、cynoPILRA、hPILRA、及びhPILRBのECD及びストーク領域配列のアラインメントを示す。ある特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRAの78位、106位、及び143位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のG78、K106、及び/またはE143に結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のG78に結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号136のR78に結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のK106に結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のE143に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のG78、K106、及びE143に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号136のR78、K106、及びE143に結合する。
【0206】
ある特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRAの63位及び64位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のT63及び/またはA64に結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のT63に結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のA64に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のT63及びA64に結合する。
【0207】
ある特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRAの106位及び116~118位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のQ116、K117、及び/またはQ118(例えば、Q116、K117、及びQ118)に結合する。
【0208】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRAのストーク2領域内のエピトープ、例えば、配列番号1の182~186位のQGKRR(配列番号90)を認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の残基182~186の範囲内の1、2、3、または4個のアミノ酸を含むエピトープを認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の残基182~186の範囲内の2、3、または4個の連続アミノ酸を含むエピトープを認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の残基182~186の範囲内の5個全てのアミノ酸を含むエピトープを認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のQ182、G183、K184、R185、及び/またはR186(例えば、Q182、G183、K184、R185、及びR186)に結合する。
【0209】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRAのストーク1領域内のエピトープ、例えば、配列番号1の156~163位のTTQRPSSM(配列番号91)を認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の残基156~163の範囲内の1、2、3、4、5、6、または7個のアミノ酸を含むエピトープを認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の残基156~163の範囲内の2、3、4、5、6、または7個の連続アミノ酸を含むエピトープを認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の残基156~163の範囲内の8個全てのアミノ酸を含むエピトープを認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1のT156、T157、Q158、R159、P160、S161、S162、及び/またはM163(例えば、T156、T157、Q158、R159、P160、S161、S162、及びM163)に結合する。
【0210】
交差反応性
ある特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRAとcynoPILRAとの間で保存されている1つ以上のエピトープを認識する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRA及び/またはcynoPILRAにおける64位、78位、139位、143位、156~163位、及び182~185位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合し、ここで、位置は配列番号1を参照して決定される。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRA及びcynoPILRAにおける64位、78位、139位、143位、156~163位、及び182~185位の位置のうちの1つ以上における1個以上のアミノ酸に結合し、ここで、位置は配列番号1を参照して決定される。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の配列を有するhPILRAのA64、G78、W139、E143、T156、T157、Q158、R159、P160、S161、S162、M163、Q182、G183、K184、及び/またはR185、ならびに配列番号2の配列を有するcynoPILRAのA68、G82、W143、E147、T160、T161、Q162、R163、P164、S165、S166、M167、Q186、G187、K188、及び/またはR189に結合する。
【0211】
特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の配列を有するhPILRAのA64及び配列番号2の配列を有するcynoPILRAのA68に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の配列を有するhPILRAのG78及び配列番号2の配列を有するcynoPILRAのG82に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号136の配列を有するhPILRAのR78及び配列番号2の配列を有するcynoPILRAのG82に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の配列を有するhPILRAのW139及び配列番号2の配列を有するcynoPILRAのW143に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の配列を有するhPILRAのE143及び配列番号2の配列を有するcynoPILRAのE147に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRA(例えば、配列番号1の156~163位)及びcynoPILRA(例えば、配列番号2の160~167位)の両方におけるTTQRPSSM(配列番号91)の範囲内の1個以上の同じアミノ酸に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRA(例えば、配列番号1の182~185位)及びcynoPILRA(例えば、配列番号2の186~189位)の両方におけるQGKR(配列番号92)の範囲内の1個以上の同じアミノ酸に結合する。
【0212】
特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の配列を有するhPILRAのG78、K106、E143、及び配列番号2の配列を有するcynoPILRAのG82、D110、E147に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号136の配列を有するhPILRAのR78、K106、E143、及び配列番号2の配列を有するcynoPILRAのG82、D110、E147に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、配列番号1の配列を有するhPILRAのT63及びA64、ならびに配列番号2の配列を有するcynoPILRAのA67及びA68に結合する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRAのQGKRR(配列番号90)(例えば、配列番号1の182~186位)の範囲内の1つ以上の位置、及びcynoPILRAのQGKRH(配列番号93)(例えば、配列番号2の186~190位)の範囲内の対応する同じ位置に結合する。
【0213】
抗PILRA抗体の機能的特性
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体(例えば、開示される1つ以上のCDR、重鎖可変領域、及び/または軽鎖可変領域配列を有する抗体)は、本明細書に開示される1つ以上の活性に作用する。例えば、幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、PILRA活性、すなわち、リガンドにより誘導されるPILRA活性をアンタゴナイズするか、または低減させる。
【0214】
ある特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、hPILRAへのリガンドの結合を遮断する。特定の実施形態では、抗PILRA抗体は、シアリル化タンパク質、例えば、以下のタンパク質のいずれかのシアリル化型の、hPILRAへの結合を遮断する:神経増殖分化制御タンパク質1(neural proliferation differentiation and control protein 1)(NPDC1)、PILRA結合神経タンパク質(PANP;PIANP)、単純ヘルペスウイルス1型糖タンパク質B(HSV-1 gB)、コレクチン-12(COLEC12)、補体成分4A(C4a)、補体成分4B(C4b)、ジストログリカン1(ジストロフィン結合糖タンパク質1;DAG1)、及びC型レクチンドメインファミリーメンバーG(Clec4g)。
【0215】
更に、幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、1種以上の下流タンパク質のリン酸化を変化させ、例えば、EGFRもしくはSTAT3のリン酸化を増加させるか、またはSTAT1のリン酸化を減少させる。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗PILRA抗体で処理された試料において下流タンパク質リン酸化のレベルが対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上増加する場合、1種以上の下流タンパク質(例えば、EGFRまたはSTAT3)のリン酸化を誘導するか、または増加させる。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗PILRA抗体で処理された試料において下流タンパク質リン酸化のレベルが対照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上増加する場合、1種以上の下流タンパク質(例えば、EGFRまたはSTAT3)のリン酸化を誘導する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗PILRA抗体で処理された試料において下流タンパク質リン酸化のレベルが対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上減少する場合、1種以上の下流タンパク質(例えば、STAT1)のリン酸化を減少させる。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗PILRA抗体で処理された試料において下流タンパク質リン酸化のレベルが対照値と比較して少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、またはそれ以下に減少する場合、1種以上の下流タンパク質(例えば、STAT1)のリン酸化を減少させる。
【0216】
幾つかの実施形態では、対照値は、未処理の試料(例えば、抗PILRA抗体で処理されていないPILRAを発現する細胞を含む試料、または抗PILRA抗体で処理されていない対象由来の試料)、またはPILRAリガンドで処理されたが、抗PILRA抗体で処理されていない試料、またはPILRAに結合しない適切な抗体で処理された試料における下流タンパク質リン酸化のレベルである。
【0217】
試料におけるリン酸化を検出及び/または定量化するために、幾つかの実施形態では、免疫アッセイが使用される。幾つかの実施形態では、免疫アッセイは、酵素免疫測定法(EIA)、酵素多重免疫測定法(EMIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、微粒子酵素免疫測定法(MEIA)、免疫組織化学(IHC)、免疫組織染色、キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光法、化学発光免疫測定法(CL)、または電気化学発光免疫測定法(ECL)である。幾つかの実施形態では、リン酸化は、増幅発光近接ホモジニアスアッセイ(AlphaLISA(登録商標)、PerkinElmer Inc.)を利用する免疫アッセイを使用して検出及び/または定量化される。
【0218】
幾つかの実施形態では、リン酸化は、1個以上の細胞、例えば、1個以上のPILRAを発現する細胞(例えば、ヒトIPSC由来のミクログリアなどのPILRAを内因的に発現する細胞株、または例えば、以下の実施例セクションに記載されるような、PILRAを発現するように操作された細胞株)を含む試料を使用して測定される。幾つかの実施形態では、試料は、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、または脳脊髄液を含む。幾つかの実施形態では、試料は、組織(例えば、肺、脳、腎臓、脾臓、神経組織、または骨格筋)またはかかる組織由来の細胞を含む。幾つかの実施形態では、試料は、(例えば、ヒトまたは非ヒト対象由来の)内在性の液体、組織、または細胞を含む。
【0219】
更に、幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗炎症性遺伝子またはタンパク質の発現を増加させる。例えば、抗PILRA抗体は、IL1RN遺伝子の発現を増強する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗PILRA抗体で処理された試料における抗炎症性遺伝子またはタンパク質の発現レベルが対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上増加する場合、抗炎症性遺伝子またはタンパク質の発現を増強する。他の実施形態では、抗PILRA抗体は、炎症誘発性サイトカインタンパク質の発現または分泌を低減させる。例えば、抗PILRA抗体は、TNF、IL-6、及び/またはIP-10の発現を低減させる。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗PILRA抗体で処理された試料におけるサイトカインタンパク質の発現レベルが対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上低減される場合、サイトカインタンパク質の発現を低減させる。
【0220】
更に、幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、(例えば、IPSC由来のミクログリア及び疾患関連ミクログリアが含まれる、ミクログリアの)細胞遊走及び/または細胞機能を増強する。疾患関連ミクログリア及び疾患関連ミクログリアを検出する方法は、Keren-Shaul et al.,Cell,2017,169:1276-1290に記載されている。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、1つ以上の細胞種(例えば、ミクログリア、単球、または好中球)の細胞遊走を増強する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、1つ以上の細胞種(例えば、ミクログリア、単球、または好中球)の細胞機能(例えば、ATP産生、脂肪酸代謝、及び/または細胞呼吸)を増強する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、ミクログリアの細胞遊走及び/または細胞機能を増強する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、疾患関連ミクログリアの細胞遊走及び/または細胞機能を増強する。
【0221】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗PILRA抗体で処理された試料における活性のレベルが対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上増加する場合、細胞遊走及び/または細胞機能を増強する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、抗PILRA抗体で処理された試料における活性のレベルが対照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上増加する場合、細胞遊走及び/または細胞機能を増強する。幾つかの実施形態では、対照値は、未処理の試料(例えば、抗PILRA抗体で処理されていない試料)、PILRAリガンドで処理されたが、抗PILRA抗体で処理されていない試料、またはPILRAに結合しない適切な抗体で処理された試料における活性(例えば、遊走または機能)のレベルである。
【0222】
幾つかの実施形態では、細胞遊走は、走化性アッセイを使用して測定される。走化性アッセイが当技術分野において公知である。幾つかの実施形態では、細胞遊走アッセイ(例えば、走化性アッセイ)は、PILRAを内因的に発現する細胞、例えば、ヒトIPSC由来のミクログリアを含む試料に対して実行される。幾つかの実施形態では、細胞遊走アッセイ(例えば、走化性アッセイ)は、PILRAを発現するように操作された細胞を含む試料に対して実行される。幾つかの実施形態では、細胞遊走アッセイは、PILRAを欠失しているか、またはPILRAが機能的に不活性化されている細胞を含む試料に対して実行される。幾つかの実施形態では、細胞遊走は、以下の実施例セクションに記載されるような走化性アッセイを使用して測定される。
【0223】
幾つかの実施形態では、細胞機能は、その細胞に適した機能アッセイを使用して測定される。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、脂肪酸代謝(例えば、脂肪酸酸化)を増強する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、細胞のATP産生を増強する。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、細胞呼吸(例えば、ミトコンドリア呼吸または非ミトコンドリア呼吸)を増強する。細胞のATP産生及び/または呼吸の変化は、例えば、以下の実施例セクションに記載されるような、1つ以上のアッセイを使用して評価され得る。
【0224】
IV.Fcポリペプチド及びその改変
幾つかの態様では、抗PILRA抗体は、2つのFcポリペプチドを含み、それらの一方または両方は、各々が独立して選択される改変(例えば、変異)を含み得るか、または野生型Fcポリペプチド、例えば、ヒトIgG1 Fcポリペプチドであり得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体の一方または両方のFcポリペプチドは、野生型Fcポリペプチド(例えば、配列番号94)の配列に対する少なくとも90%(例えば、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%、または100%)の同一性を有する配列を含み得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体の一方のFcポリペプチドは、野生型Fcポリペプチド(例えば、配列番号94)であり得るが、他方のFcポリペプチドは、野生型Fcポリペプチド(例えば、配列番号94)と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を有し得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体の両方のFcポリペプチドが野生型Fcポリペプチド(例えば、配列番号94)であり得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗PILRA抗体の両方のFcポリペプチドが、野生型Fcポリペプチド(例えば、配列番号94)と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を有し得る。一方または両方のFcポリペプチドに導入され得る変異の非限定的な例としては、例えば、血清安定性を増加させるため、エフェクター機能を調節するため、グリコシル化に影響を及ぼすため、及び/またはヒトにおける免疫原性を低減させるための変異が挙げられる。
【0225】
エフェクター機能を調節するためのFcポリペプチド改変
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗体に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低減させる改変を含み得、すなわち、エフェクター機能を媒介するエフェクター細胞上に発現されたFc受容体への結合時にある特定の生物学的機能を誘導する能力が低減されている。抗体エフェクター機能の例としては、限定されるものではないが、C1qへの結合及び補体依存性細胞障害(CDC)、Fc受容体への結合、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、及びB細胞活性化が挙げられる。エフェクター機能は、抗体クラスによって異なり得る。例えば、天然のヒトIgG1及びIgG3抗体は、免疫系細胞に存在する適切なFc受容体への結合時にADCC及びCDC活性を誘発することができ、天然のヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4は、免疫細胞に存在する適切なFc受容体への結合時にADCP機能を誘発することができる。
【0226】
幾つかの実施形態では、Fcポリペプチド二量体における一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低減させるまたは除去する改変を含み得る。エフェクター機能を低減させる例示的なFcポリペプチド変異としては、限定されるものではないが、CH2ドメインにおける置換、例えば、EU番号付けスキームに従って234位及び235位での、及び/または329位での置換が挙げられる。例えば、幾つかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、234位及び235位にAla残基(本明細書において「LALA」とも称される)を含む。幾つかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、329位にGly残基(本明細書において「P329G」または「PG」とも称される)または329位にSer残基(本明細書において「P329S」または「PS」とも称される)を含む。幾つかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、234位及び235位にAla残基、ならびに329位にGly残基(本明細書において「LALA PG」とも称される)を含む。幾つかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、234位及び235位にAla残基、ならびに329位のSer残基(本明細書において「LALA PS」とも称される)を含む。
【0227】
エフェクター機能を調節する追加のFcポリペプチド変異としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる。329位は、プロリンがグリシンもしくはアルギニン、またはFcのプロリン329とFcγRIIIのトリプトファン残基であるTrp 87及びTrp 110との間で形成されるFc/Fcγ受容体界面を破壊するのに十分大きなアミノ酸残基で置換される変異を有し得る。追加の例示的な置換としては、EU番号付けスキームに従って、S228P、E233P、L235E、N297A、N297D、及びP331Sが挙げられる。複数の置換、例えば、EU番号付けスキームに従って、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A;ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、及びP329G;ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、及びP329S;ヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235E;ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びG237A;ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、及びG237A;ヒトIgG2 Fc領域のV234A及びG237A;ヒトIgG4 Fc領域のL235A、G237A、及びE318A;ならびにヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL236Eが存在してもよい。幾つかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、ADCCを調節する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、EU番号付けスキームに従って298位、333位、及び/または334位での置換を有し得る。
【0228】
血清半減期を延長するためのFcポリペプチド改変
幾つかの実施形態では、血清半減期を増大させる改変が本明細書に記載される任意のFcポリペプチドに導入され得る。例えば、幾つかの実施形態では、Fcポリペプチド二量体における一方または両方のFcポリペプチドは、EU番号付けスキームに従って番号付けされる、M428L及びN434S置換(LS置換とも称される)を含み得る。あるいは、Fcポリペプチド二量体における一方または両方のFcポリペプチドは、N434SまたはN434A置換を有し得る。あるいは、Fcポリペプチド二量体における一方または両方のFcポリペプチドは、M428L置換を有し得る。他の実施形態では、Fcポリペプチド二量体における一方または両方のFcポリペプチドは、M252Y、S254T、及びT256E置換を含み得る。
【0229】
幾つかの実施形態では、Fcポリペプチドの一方または両方は、そのC末端リジン(例えば、EU番号付けに従って、Fcポリペプチドの447位のLys残基)が除去されていてもよい。C末端リジン残基は、多数の種にわたって免疫グロブリンにおいて高度に保存されており、タンパク質生成の間に細胞機構により完全にまたは部分的に除去され得る。幾つかの実施形態では、FcポリペプチドにおけるC末端リジンの除去は、タンパク質の安定性を改善し得る。
【0230】
幾つかの実施形態では、ヒンジ領域(例えば、配列番号97)またはその一部(例えば、配列番号98)が本明細書に記載されるFcポリペプチドまたは改変されたFcポリペプチドに連結され得る。ヒンジ領域は、任意の免疫グロブリンサブクラスまたはアイソタイプに由来し得る。例示的な免疫グロブリンヒンジは、IgGヒンジ領域、例えば、IgG1ヒンジ領域、例えば、ヒトIgG1ヒンジアミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号97)またはその一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号98)である。幾つかの実施形態では、ヒンジ領域は、FcポリペプチドのN末端領域に存在する。
【0231】
V.細胞株及び操作する方法
本明細書において、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、またはPILRAタンパク質のG78バリアント及びR78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である細胞及び細胞株も提供される。本開示は、PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子を2コピー発現する(すなわち、当該遺伝子についてホモ接合性となる)ように改変(すなわち、遺伝子操作)された、操作ヒト人工多能性幹細胞(IPSC)または細胞株を提供する。幾つかの実施形態では、IPSCは、内在性ゲノム遺伝子座で改変されている。
【0232】
本開示は、PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子を2コピー発現する(すなわち、当該遺伝子についてホモ接合性となる)ように改変(すなわち、遺伝子操作)されたヒト人工多能性幹細胞(IPSC)に由来する操作ミクログリア細胞または細胞株も提供する。操作ミクログリア細胞または細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子を1コピー、及びG78バリアントをコードする遺伝子を1コピー発現する(すなわち、R78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性となる)ように改変(すなわち、遺伝子操作)されたヒト人工多能性幹細胞(IPSC)に由来してもよい。幾つかの実施形態では、IPSCは、内在性ゲノム遺伝子座で改変されている。幾つかの実施形態では、操作ミクログリア細胞または細胞株は、分化誘導により得られる。
【0233】
本明細書において、マッチする一対の細胞株として役立つ2つの細胞株(例えば、IPSC株またはそれに由来するミクログリア)であって、一方の細胞株がPILRAタンパク質のG78バリアントを発現し、他方の細胞株がPILRAタンパク質のR78バリアントを発現する、当該細胞株も提供される。本開示は、マッチする一対の細胞株を提供し、ここで、(a)当該対のうちの第1の細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であり、(b)当該対のうちの第2の細胞株は、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であり、かつ当該対の第1及び第2の細胞株の両方が、同じ親細胞株に由来し、かつ一方または両方の細胞株が、内在性PILRA遺伝子において操作されている。マッチする一対の細胞株の特定の実施形態では、マッチする一対の細胞株を作製するために使用される親細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であり得、このことは、当該一対におけるPILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である細胞株のみが親細胞株から作製される必要があることを意味する。マッチする一対の細胞株の他の実施形態では、マッチする一対の細胞株を作製するために使用される親細胞株は、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であり得、このことは、当該一対におけるPILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である細胞株のみが親細胞株から作製される必要があることを意味する。更なる他の実施形態では、親細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である(すなわち、一方のアレルがG78バリアントをコードし、他方のアレルがR78バリアントをコードする)。この場合、マッチする一対における両方の細胞株が親細胞株から作製される必要がある。
【0234】
マッチする一対の細胞株の幾つかの実施形態では、PILRAタンパク質のG78バリアント及びR78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である第3の細胞株が含まれる。幾つかの実施形態では、第3の細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントまたはG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である親細胞株に由来する。
【0235】
本開示は、改変されたPILRA遺伝子を有する骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる幹細胞株(例えば、IPSC株またはそれに由来するミクログリア)を作製する方法であって、(a)既存の骨髄性細胞株または既存の幹細胞株が、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、またはPILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であるかを決定する工程;ならびに(b)PILRAタンパク質のR78バリアントまたはPILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより細胞株を操作する工程を含み、当該操作された細胞株が、操作される前は、選択されたバリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性ではなかった、当該方法も提供する。換言すれば、既存の細胞株に応じて、既存の細胞株は、目的の細胞株で選択したバリアントを生成させるために、改変されることを必要としてもしなくてもよい。
【0236】
本開示は、マッチする一対の細胞株(例えば、IPSC株またはそれに由来するミクログリア)を作製する方法であって、(a)既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株が、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性であるか、またはPILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であるかを決定する工程;ならびに(b)(i)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより第1の細胞株を操作する、及び/または(ii)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、PILRAタンパク質をコードする遺伝子を改変することにより第2の細胞株を操作する工程を含む、当該方法も提供する。幾つかの実施形態では、操作された細胞株は、操作される前は、選択されたバリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性ではなかった。
【0237】
特定の実施形態では、工程(a)の既存の細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアントについてホモ接合性であり、かつ、工程(b)の操作は、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために既存の細胞株を改変することを含む。特定の実施形態では、工程(a)の既存の細胞株は、PILRAタンパク質のG78バリアントについてホモ接合性であり、かつ、工程(b)の操作は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために既存の細胞株を改変することを含む。他の実施形態では、工程(a)の既存の細胞株は、PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性であり、かつ、工程(b)の操作は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株、及びPILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を改変することを含む。
【0238】
内在性ゲノム遺伝子座(例えば、PILRA遺伝子座)での改変を有する操作された細胞または細胞株は、種々の方法及び技術、例えば、CRIPSR/Cas9系、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、Taleエフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)、及びトランスポゾンにより媒介される系を使用して作製され得る。これらの方法は、通常、1種以上のヌクレアーゼをコードする1種以上のポリヌクレオチドを細胞に投与することを含み、その結果、ヌクレアーゼは、DNAを切断し、DNA鎖に5’及び3’切断末端を生じさせることにより内在性遺伝子の改変を媒介する。5’末端からの5’に延在する配列及び3’末端からの3’に延在する配列と実質的に相同である左及び右相同性アームに挟まれたドナー配列の存在下で、ドナーは、相同組換え修復(HDR)によってヌクレアーゼにより標的とされる内在性遺伝子に組み込まれる。幾つかの実施形態では、内在性ゲノム遺伝子座での改変は、CRISPR/Cas9系を使用して実施される。例えば、所望のバリアントのPILRAをコードする異種遺伝子をコードする核酸配列が、改変される細胞の内在性PILRAゲノム遺伝子座に導入され、これにより、内在性PILRAをコードする天然に存在する配列が異種遺伝子と置き換えられる。
【0239】
CRISPR
幾つかの実施形態では、所望のバリアントのPILRAをコードする異種遺伝子の導入またはノックインは、CRIPSR/Cas9系を使用して実行される。CRISPR/Cas9系は、Cas9タンパク質、及び置き換えられるべき内在性PILRA遺伝子の標的モチーフにCas9タンパク質を誘導し、当該標的モチーフにハイブリダイズすることができる少なくとも1~2種のリボ核酸を含む。これらのリボ核酸は、一般に「シングルガイドRNA」または「sgRNA」と称される。次いで、Cas9タンパク質は、標的モチーフを切断し、これにより、二本鎖切断または一本鎖切断をもたらす。2つの相同性アームに挟まれた異種PILRA遺伝子配列を含むドナーDNAの存在下で、ドナーDNAは標的DNAに挿入され、内在性遺伝子と置き換わる。
【0240】
本開示で使用されるCas9タンパク質は、天然に存在するCas9タンパク質またはその機能的誘導体であり得る。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通する質的生物学的特徴を有する化合物である。「機能的誘導体」としては、限定されるものではないが、天然配列の断片ならびに天然配列ポリペプチドの誘導体及びその断片が挙げられ、ただし、それらは対応する天然配列ポリペプチドと共通する生物活性を有する。本明細書において意図される生物活性は、DNA基質を断片に加水分解するCas9の機能的誘導体の能力である。Cas9ポリペプチドの好適な機能的誘導体またはその断片としては、限定されるものではないが、Cas9タンパク質の変異体、融合物、共有結合による修飾形態、またはそれらの断片が挙げられる。
【0241】
幾つかの実施形態では、Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来する。Cas9は、sgRNAに非相補的な標的DNAを切断するRuvC様ドメイン、及びsgRNAに相補的な標的DNAを切断するHNHヌクレアーゼドメインを含め、2つのエンドヌクレアーゼドメインを含有する。Cas9の二本鎖エンドヌクレアーゼ活性は、プロトスペーサー関連モチーフ(protospacer-associated motif、PAM)として公知の保存された短い配列(2~5ヌクレオチド)が標的配列の標的モチーフの3’の直後に続くことも必要とする。幾つかの実施形態では、PAMモチーフは、NGGモチーフである。ドナーDNAが反応に導入される。一つの例では、ドナーDNAは、左相同性アームと右相同性アームとの間に存在する所望のバリアントの異種PILRA遺伝子を含む。
【0242】
sgRNAは、用いられる特定のCRISPR/Cas9系及び標的ポリヌクレオチドの配列に応じて選択され得る。幾つかの実施形態では、1~2種のリボ核酸は、Cas9タンパク質により認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接する標的モチーフにハイブリダイズするように設計されている。幾つかの実施形態では、1~2種のリボ核酸の各々は、Cas9タンパク質により認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接する標的モチーフにハイブリダイズするように設計されており、ここで、当該標的モチーフは、置き換えられるべきゲノム配列に隣接する。ガイドRNAは、例えば、http://crispr.mit.eduの容易に利用可能なソフトウェアを使用して設計され得る。
【0243】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示されるドナーDNAは、hPILRA G78バリアントのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書において開示されるドナーDNAは、hPILRA R78バリアントのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。本明細書において開示されるドナーDNAは、当該ヌクレオチド配列に隣接しており、Cas9タンパク質による切断部位に対して5’側及び3’側のエキソン配列と重複するように設計されている左相同性アーム及び右相同性アームを更に含む。相同性アームは、5’側及び3’側のエキソン配列を越えて延在し得、相同性アームの各々は、少なくとも20、30、40、50、100、または150ヌクレオチド長であり得る。当業者は、実験に必要とされる相同性アームの最適な長さを容易に決定することができる。
【0244】
幾つかの実施形態では、sgRNAは、標的ポリヌクレオチド配列以外の核酸配列とのハイブリダイゼーションを最小限にするように選択され得る。幾つかの実施形態では、1~2種のリボ核酸は、CRISPR/Cas9系のオフターゲット効果を最小限にするために、細胞内の他の全てのゲノムヌクレオチド配列と比較した場合に、少なくとも2つのミスマッチを有する標的モチーフにハイブリダイズするように設計される。当業者は、オフターゲット効果を最小限にするための好適な標的モチーフを選択するために、種々の技術が使用され得ることを理解するであろう(例えば、バイオインフォマティクス分析)。
【0245】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
幾つかの実施形態では、所望のバリアントのPILRAをコードする異種遺伝子の導入またはノックインは、ZFNを使用して実行される。ZFNは、FokIエンドヌクレアーゼの非特異的切断ドメイン(N)及びジンクフィンガータンパク質(ZFP)を含む融合タンパク質である。一対のZNFが標的遺伝子の特定の位置の認識に関与し、一方が改変されるべき部位の上流の配列を認識し、他方が下流の配列を認識する。ZFNのヌクレアーゼ部分は、特異的な遺伝子座で切断する。次いで、ドナーDNAが特異的な遺伝子座に挿入され得る。ZFNを使用する方法は周知であり、例えば、米国特許第9,045,763号及び更にDurai et al.,“Zinc Finger Nucleases:Custom-Designed Molecular Scissors for Genome Engineering of Plant and Mammalian cells,” Nucleic Acid Research,33(18):5978-5990(2005)に開示されており、それらの開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0246】
転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
幾つかの実施形態では、所望のバリアントのPILRAをコードする異種遺伝子の導入またはノックインは、TALENを使用して実行される。TALENは、それらが一対としてゲノム部位の周囲に結合し、同じ非特異的ヌクレアーゼであるFokIに特定の部位でゲノムを切断するように誘導するという点でZFNと同様であるが、DNAトリプレットを認識する代わりに、各ドメインが単一ヌクレオチドを認識する。ZFNを使用する方法も周知であり、例えば、米国特許第9,005,973号及び更にChristian et al.,“Targeting DNA Double-Strand Breaks with TAL Effector Nucleases,” Genetics,186(2):757-761(2010)に開示されており、それらの開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0247】
本開示は、PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である、既存の骨髄性細胞株(例えば、IPSC株またはそれに由来するミクログリア)または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、(a)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第1の操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を操作する工程;及び(b)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第2の操作された細胞株を作製するために、工程(a)で作製された細胞株または既存の細胞株のいずれかを操作する工程を含む、当該方法も提供する。本明細書に記載されるように、hPILRA R78バリアントまたはG78バリアントのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むドナーDNAを使用してマッチする一対の細胞株を作製するために、CRIPSR/Cas9系が使用され得る。
【0248】
別の態様では、本開示は、PILRAタンパク質のR78バリアント及びG78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞に分化することができる既存の幹細胞株(例えば、IPSC株またはそれに由来するミクログリア)から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、(a)PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第1の操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を操作する工程;及び(b)PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である第2の操作された細胞株を作製するために、工程(a)で作製された細胞株または既存の細胞株のいずれかを操作する工程を含む、当該方法を提供する。本明細書に記載されるように、hPILRA R78バリアントまたはG78バリアントのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むドナーDNAを使用してマッチする一対の細胞株を作製するために、CRIPSR/Cas9系が使用され得る。
【0249】
本開示は、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株(例えば、IPSC株またはそれに由来するミクログリア)から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を操作する工程を含む、当該方法も提供する。本明細書に記載されるように、hPILRA G78バリアントのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むドナーDNAを使用してマッチする一対の細胞株を作製するために、CRIPSR/Cas9系が使用され得る。
【0250】
本開示は、PILRAタンパク質のG78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である、既存の骨髄性細胞株または骨髄性細胞株に分化することができる既存の幹細胞株(例えば、IPSC株またはそれに由来するミクログリア)から、マッチする一対の細胞株を作製する方法であって、PILRAタンパク質のR78バリアントをコードする遺伝子についてホモ接合性である操作された細胞株を作製するために、既存の細胞株を操作する工程を含む、当該方法も提供する。本明細書に記載されるように、hPILRA R78バリアントのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むドナーDNAを使用してマッチする一対の細胞株を作製するために、CRIPSR/Cas9系が使用され得る。
【0251】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される操作された細胞、細胞株、または細胞モデルは、分化誘導により得られる。
【0252】
VI.スクリーニング方法
本開示は、PILRAタンパク質に結合し、及び/またはその発現もしくは活性を調節する分子、特にPILRA活性をアンタゴナイズするか、または低減させる分子(すなわち、hPILRAへのリガンドの結合を遮断する分子)をスクリーニング及び同定するための方法も提供する。幾つかの実施形態では、PILRA結合性分子を同定するために、PILRAへの結合及び/またはPILRA活性化に関連する1つ以上の下流シグナル伝達応答が測定され得る。例えば、細胞のPILRAタンパク質に結合する分子は、PILRAへの結合の結果として、細胞の1つ以上の下流シグナル伝達応答または活性を引き起こし得る。幾つかの実施形態では、PILRAタンパク質に結合する分子は、PILRAへの結合なしでの細胞のシグナル伝達応答または活性と比較した、PILRAへの結合の結果としての細胞のシグナル伝達応答または活性の増加または減少を引き起こし得る。PILRAへの結合の結果としての細胞シグナル伝達応答または活性の変化の例としては、限定されるものではないが、リン酸化STAT3(pSTAT3)レベル、リン酸化STAT1(pSTAT1)レベル、リン酸化EGFR(pEGFR)レベル、カドヘリン発現、インテグリン発現、及び細胞(例えば、ミクログリア)遊走の変化が挙げられる。特定の実施形態では、PILRAに結合し、PILRA活性をアンタゴナイズするか、または低減させる分子は、下流シグナル伝達応答、例えば、pSTAT3(例えば、pSTAT3 Y705、またはpSTAT3 S727)レベルの増加、pEGFRレベルの増加、タンパク質(例えば、カドヘリン、インテグリン)の発現レベル及び/または細胞分泌の増加、及び/または細胞(例えば、ミクログリア)遊走の増加を引き起こし得る。PILRAに結合し、PILRA活性をアンタゴナイズするか、またはそれを低減させる分子により引き起こされ得る他の下流シグナル伝達応答の例は、例えば、細胞呼吸の増進、脂肪酸代謝(例えば、脂肪酸酸化)の増進、ATP産生の増進、抗炎症性遺伝子もしくはタンパク質の発現の増加、及び/またはサイトカインタンパク質発現の低減であり得る。
【0253】
本明細書において、ある分子がPILRAタンパク質に対する活性を有するかどうかを決定するためにスクリーニングする方法であって、(a)当該PILRAタンパク質を発現する細胞を当該分子と接触させる工程;(b)より低いPILRA発現を有する、工程(a)と同じ種類の細胞を、工程(a)の前、それと同時、またはその後のいずれかにおいて当該分子と接触させる工程;ならびに(c)両方の細胞における、リン酸化STAT3(pSTAT3)レベル、リン酸化STAT1(pSTAT1)レベル、リン酸化EGFR(pEGFR)レベル、カドヘリン発現、インテグリン発現、及びミクログリア遊走のうちの1つを測定する工程を含む、当該方法が提供される。幾つかの実施形態では、これらの測定のうちの1つについての細胞間でのレベルの変化は、工程(a)のPILRAタンパク質に対する活性を当該分子が有することを示す。
【0254】
スクリーニングのための方法のある特定の実施形態では、工程(a)の細胞は、PILRAタンパク質を天然に発現する。幾つかの実施形態では、より低いPILRA発現を有する細胞は、PILRAタンパク質についてノックアウトまたはサイレンシングされている。特定の実施形態では、細胞は、ミクログリアであり得る。ある特定の実施形態では、細胞は、iMicroglia(例えば、PILRA LoF iMicroglia)である。
【0255】
スクリーニングのための方法のある特定の実施形態では、工程(a)の細胞は、PILRAタンパク質を発現または過剰発現するように操作または改変されている。幾つかの実施形態では、より低いPILRA発現を有する細胞は、PILRAタンパク質を天然に発現する、またはPILRAタンパク質の発現のための操作も改変もされていない。
【0256】
幾つかの実施形態では、分子のライブラリーが本明細書に記載される方法を使用してスクリーニングされ得る。ある特定の例では、分子は、PILRAタンパク質に結合すると分かっている。他の場合には、PILRAタンパク質に分子が結合するかどうかは、分かっていない。PILRAタンパク質に対する何らかの活性を分子が有するかどうか決定するためにスクリーニングされ得る分子の例としては、限定されるものではないが、抗体、ペプチド、有機低分子、または核酸が挙げられる。
【0257】
本明細書において、PILRAタンパク質に結合する分子が、PILRAを発現する細胞におけるシグナル伝達応答または活性を調節するかどうかを決定するための方法であって、(a)当該細胞を当該分子と接触させる工程;ならびに(b)リン酸化STAT3(pSTAT3)レベル、リン酸化STAT1(pSTAT1)レベル、リン酸化EGFR(pEGFR)レベル、カドヘリン発現、インテグリン発現、及び細胞(例えば、ミクログリア)遊走のうちの1つを測定する工程を含む、当該方法も提供される。幾つかの実施形態では、測定のうちの1つについてのレベルの変化は、PILRAを発現する細胞におけるシグナル伝達応答または活性を当該分子が調節することを示す。ある特定の実施形態では、変化は、分子なしでの細胞におけるレベルと比較した、細胞に分子が接触した場合の測定のうちの1つについてのレベルの増加または減少、特に本明細書の他箇所に記載される変化である。これらの方法の特定の実施形態では、細胞は、インビトロアッセイにおけるものである。他の実施形態では、細胞は、哺乳動物におけるものである(すなわち、インビボでの方法)。
【0258】
幾つかの実施形態では、本方法がインビボで使用される場合、工程(a)は、哺乳動物に分子を投与することを含む。
【0259】
幾つかの実施形態では、PILRAを発現する細胞は、ミクログリア、骨髄性細胞、単球、または好中球であり得る。
【0260】
スクリーニングアッセイ
PILRAタンパク質に結合し、及び/またはその発現もしくは活性を調節する分子を同定するためのスクリーニングアッセイは、標準的方法により実行され得る。スクリーニング方法は、ハイスループットな技術を必要とし得る。加えて、これらのスクリーニング技術は、培養細胞または生物、例えば、マウス、蠕虫、ハエ、もしくは酵母で実行され得る。
【0261】
多数の方法が、かかるスクリーニングアッセイを実行するのに利用可能である。1つの手法によれば、候補分子は、PILRAを発現する細胞の培養培地に異なる濃度で添加される。分子がPILRAタンパク質に結合し、及び/またはその発現もしくは活性を調節するかどうかの測定として、ホスホ-STAT3(pSTAT3)誘導などの下流シグナル伝達が使用される場合、pSTAT3レベルは、PILRAタンパク質を発現する細胞で測定され得、より低レベルのPILRAを発現する対応する細胞(例えば、PILRAノックアウト)でのpSTAT3レベルと比較され得る。他の場合では、pSTAT3レベルは、細胞に分子を添加する前後で測定され得る。pSTAT3のこれらのレベルは、比較され得る。
【0262】
別の手法では、抗PILRA抗体がインテグリン及びカドヘリンなどのタンパク質のiMicrogliaによる分泌を増強したことが実施例において実証されるように、これらのタンパク質の細胞分泌が、分子がPILRAタンパク質に結合し、及び/またはその発現もしくは活性を調節するかどうか決定するために測定され得る。標準的な実験技術がこれらのタンパク質を細胞から単離するために使用され得、これらのタンパク質の検出は、例えば、質量分析、ウェスタンブロット、及びプロテオームプロファイラーキット(Human Soluble Receptor Array Kit - Non-Hematopoietic Panel(R&D ARY012))を使用して実行され得る。
【0263】
他の実施形態では、PILRAタンパク質に結合する候補分子は、クロマトグラフィーベースの技術を使用して同定され得る。例えば、組換えPILRAがPILRAを発現するように操作された細胞から標準的な技術により精製され得、カラムに固定化され得る。次いで、候補分子の溶液がカラムに通され、PILRAに特異的な分子が、カラムに固定化されたポリペプチドに結合する能力に基づいて同定される。分子を単離するために、非特異的に結合した分子を除去するためにカラムが洗浄され、次いで、関心対象の分子がカラムから遊離され、回収される。この方法(または任意の他の適切な方法)により単離された分子は、必要に応じて、(例えば、高速液体クロマトグラフィーにより)更に精製され得る。
【0264】
試験分子
通常、候補分子は、当該技術分野において公知の方法により天然産物もしくは合成(または半合成)抽出物の両方の大きなライブラリーまたは化学ライブラリーから同定され得る。例えば、医薬品の発見及び開発の分野の当業者は、試験抽出物または化合物の正確な供給源が本開示のスクリーニング法(複数可)に重要でないことを理解するであろう。従って、本明細書に記載される方法を使用して実質的に任意の数の化学抽出物または分子がスクリーニングされ得る。かかる抽出物または分子の例としては、限定されるものではないが、植物、真菌、原核生物、または動物ベースの抽出物、発酵ブロス、及び合成化合物、ならびに既存の化合物の修飾物が挙げられる。限定されるものではないが、糖、脂質、ペプチド、及びポリヌクレオチドベースの化合物が含まれる、任意の数の化合物のランダム合成または指向性合成(例えば、半合成または全合成)を生じさせるための多数の方法も利用可能である。合成化合物ライブラリーは市販されている。あるいは、細菌、真菌、植物、及び動物抽出物の形態での天然化合物のライブラリーが市販されている。加えて、天然のライブラリー及び人工的に作製されたライブラリーが、必要に応じて、当該技術分野において公知の方法により、例えば、標準的な抽出法及び分画法により作製される。更に、必要に応じて、任意のライブラリーまたは化合物は、標準的な化学的、物理的、または生化学的方法を使用して容易に修飾される。
【0265】
粗製抽出物が活性を有することが発見される場合、観察された効果の原因となる化学成分を単離するために、有望なリード抽出物の更なる分画が必要とされる。従って、抽出、分画、及び精製プロセスの目標は、所望の活性を有する粗製抽出物中の化学成分の特徴付け及び同定である。かかる多様な抽出物の分画及び精製の方法は、当該技術分野において公知である。必要に応じて、有用であると示された分子は、当該技術分野において公知の方法により化学修飾され得る。
【0266】
VII.細胞または動物におけるPILRA結合性分子の活性の測定
本明細書において、PILRAタンパク質(例えば、hPILRA G78またはR78)に結合する分子の結合及び/または活性を測定するための方法も提供される。幾つかの実施形態では、分子は、PILRA活性をアンタゴナイズするか、または低減させる(すなわち、hPILRAへのリガンドの結合を遮断する分子)。PILRA結合性分子の結合及び/または活性、ならびに細胞または動物に対するその効果を決定するために、様々な測定がなされ得る。例えば、本明細書において本発明者らは、リン酸化STAT3の誘導が、PILRAに依存する細胞の下流シグナル伝達応答であり、PILRAがアンタゴナイズされる場合に起こることを実証した。
【0267】
幾つかの実施形態では、PILRA結合性分子の結合及び/または活性を測定するために、細胞がPILRA結合性分子と共にインキュベートされた後に、リン酸化STAT3(例えば、pSTAT3 Y705及び/またはpSTAT3 S727)レベルが、例えば、Proteome Profiler Human Phospho-Kinase Array Kit(例えば、ARY003C、R&D Systems)を使用して、測定され得る。他の実施形態では、リン酸化タンパク質レベルを測定するために、細胞がPILRA結合性分子と共にインキュベートされた後、細胞が固定され得、標準的な免疫組織染色プロトコールを使用してリン酸化タンパク質が検出され得る。次いで、細胞が共焦点顕微鏡で撮像され得、細胞毎の平均蛍光スポット面積及び強度を算出して、リン酸化タンパク質レベルを決定するためにソフトウェアを使用して画像が解析され得る。
【0268】
PILRAへの結合(すなわち、PILRAのアンタゴナイズ)に依存する他の細胞応答としては、例えば、リン酸化EGFR(例えば、pEGFR Y1086)レベルの増加が挙げられ、これも上記のようにホスホ-キナーゼ(phosphor-kinase)アレイキットまたは免疫組織染色を使用して測定され得る。
【0269】
幾つかの実施形態では、分子毎のPILRA結合時のSTAT3及び/またはEGFRリン酸化レベルの測定は、分子のアンタゴニスト作用を順位付けるために使用され得る。例えば、結合が最も高いレベルのpSTAT3をもたらしたPILRA結合性分子は、PILRAタンパク質に対して最も強いアンタゴニスト活性を有すると決定され得る。
【0270】
PILRA結合性分子の結合及び/または活性ならびに細胞または動物に対するその効果を決定するために行われ得る他の測定としては、例えば、細胞遊走の測定が挙げられ、これは、PILRAに依存し、PILRAがアンタゴナイズされる場合に起こる細胞の別の下流シグナル伝達応答である。例えば、実施例4に記載されるように、細胞遊走の測定及び定量化は、無細胞の検出区域を作るためにゴムストッパーが使用され得る細胞遊走アッセイを使用して実行され得る。次いで、PILRA結合性分子が添加されると、ゴムストッパーが取り除かれ、NucBlueまたはDAPIなどの細胞染色剤が添加され得る。細胞が顕微鏡を使用して撮像され得、検出区域に遊走した細胞の核標識を定量化するためにソフトウェアを使用して画像が解析され得る。更に、PILRAをアンタゴナイズするPILRA結合性分子は、運動性タンパク質の細胞分泌も増強するため、細胞へのPILRA結合性分子の添加後の細胞上清中のかかる運動性タンパク質の定量化も実行され得る。例えば、上清中の可溶性分析物は、プロテオームプロファイラーキット、例えば、Human Soluble Receptor Array Kit - Non-Hematopoietic Panel(例えば、R&D ARY012)で分析され得る。このようにして定量化され得る運動性タンパク質の例としては、限定されるものではないが、カドヘリン及びインテグリンが挙げられる。
【0271】
PILRA結合性分子の結合及び/または活性の測定は、細胞または動物(例えば、マウス、サル)で実行され得る。インビボでの研究では、動物、例えば、PILRAタンパク質(例えば、PILRA G78またはR78)を発現する動物は、利用可能な任意の投与様式(例えば、IV、IP、経口、経鼻、または経皮投与)によりPILRA結合性分子を投与され得る。適切な細胞、組織、及び/または液体試料が、本明細書に記載されるPILRA依存的な下流シグナル伝達応答のうちの1つ以上、例えば、pSTAT3レベル、pEGFRレベル、運動性タンパク質(例えば、カドヘリン、インテグリン)の量を測定及び定量化するために、動物から単離され得る。幾つかの実施形態では、細胞または動物は、PILRA G78をコードする遺伝子についてホモ接合性である。幾つかの実施形態では、細胞または動物は、PILRA R78をコードする遺伝子についてホモ接合性である。幾つかの実施形態では、細胞または動物は、PILRA G78及びR78バリアントをコードする遺伝子についてヘテロ接合性である。
【0272】
VIII.抗体の調製
幾つかの実施形態では、抗体は、抗体応答の誘導のために動物または複数の動物(例えば、マウス、ウサギまたはラット)を抗原または抗原の混合物で免疫することにより調製される。幾つかの実施形態では、抗原または抗原の混合物は、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント)と共に投与される。最初の免疫化後、その後の1回以上の抗原または複数の抗原のブースター注射が、抗体産生を改善するために行われ得る。免疫化後、抗原特異的B細胞が、例えば、脾臓及び/またはリンパ系組織から採取される。モノクローナル抗体を作製するために、B細胞は骨髄腫細胞と融合され、その後に抗原特異性についてスクリーニングされる。抗体を調製する方法は、以下の実施例セクションにも記載される。
【0273】
関心対象の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子は、細胞からクローニングされ得、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子がハイブリドーマからクローニングされ得、組換えモノクローナル抗体を産生するために使用され得る。モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーがハイブリドーマまたは形質細胞から作製されてもよい。あるいは、ファージまたは酵母ディスプレイ技術が、選択された抗原に特異的に結合する抗体及びFab断片を同定するために使用され得る。抗体は二重特異性にされてもよく、すなわち、2つの異なる抗原を認識することができる。抗体は、ヘテロコンジュゲート、例えば、2つの共有結合により連結された抗体、または免疫毒素であってもよい。
【0274】
抗体は、原核生物及び真核生物の発現系が含まれる、任意の数の発現系を使用して産生され得る。幾つかの実施形態では、発現系は、哺乳動物細胞発現系、例えば、ハイブリドーマまたはCHO細胞発現系である。多数のかかる系は、商業的供給者から広く入手可能である。抗体がV及びV領域の両方を含む実施形態では、V及びV領域は、単一のベクターを使用して、例えば、ジシストロン発現ユニットで、または異なるプロモーターの制御下で発現され得る。他の実施形態では、V及びV領域は、別個のベクターを使用して発現され得る。本明細書に記載されるようなVまたはV領域は、任意にN末端のメチオニンを含み得る。
【0275】
幾つかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。キメラ抗体を作製するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、マウスなどの1つの種由来の抗原結合領域(重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)がヒトなどの別の種のエフェクター領域(定常ドメイン)に融合されているキメラ抗体が作製され得る。別の例として、抗体のエフェクター領域が異なる免疫グロブリンクラスまたはサブクラスのエフェクター領域で置換されている「クラススイッチした」キメラ抗体が作製され得る。
【0276】
幾つかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。一般に、非ヒト抗体は、その免疫原性を低減させるためにヒト化される。ヒト化抗体は、通常、非ヒトである(例えば、マウス可変領域配列に由来する)1つ以上の可変領域(例えば、CDR)またはその一部、及びおそらく、非ヒトである幾つかのフレームワーク領域またはその一部を含み、ヒト抗体配列に由来する1つ以上の定常領域を更に含む。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において公知である。トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物などの他の生物がヒト化抗体またはヒト抗体を発現させるために使用され得る。抗体をヒト化する他の方法としては、例えば、可変ドメインリサーフェシング、CDR移植、特異性決定残基(SDR)移植、誘導型選択(guided selection)、及びフレームワークシャフリングが挙げられる。
【0277】
ヒト化に代わる手段として、完全ヒト抗体が作製され得る。非限定的な例として、内因性免疫グロブリン産生がない状態で全レパートリーのヒト抗体を免疫化時に産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)が作製され得る。例えば、キメラマウス及び生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが説明されている。かかる生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列の導入は、抗原曝露時にヒト抗体の産生をもたらす。別の例として、ヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法により、例えば、ヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株を作製するために一次ヒトB細胞を使用することにより産生され得る。
【0278】
ヒト抗体は、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイ技術を使用して産生されてもよい。ファージディスプレイでは、可変重鎖及び可変軽鎖遺伝子のレパートリーが増幅され、ファージディスプレイベクターで発現される。幾つかの実施形態では、抗体ライブラリーは、ヒト供給源から増幅される天然のレパートリーである。幾つかの実施形態では、抗体ライブラリーは、重鎖及び軽鎖配列をクローニングし、組換えて、異なる抗原特異性を有する抗体の大きなプールを作製することにより作製される合成ライブラリーである。ファージは、通常、抗体断片(例えば、Fab断片またはscFv断片)を提示し、次いで、関心対象の抗原への結合についてスクリーニングされる。
【0279】
幾つかの実施形態では、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、V、またはVHH)が生成される。抗体断片の生成のための様々な技術が開発されている。元来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質消化により得られた。しかしながら、これらの断片は現在、組換え宿主細胞を使用して直接生成され得る。例えば、抗体断片は、抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’-SH断片は、大腸菌(E.coli)細胞から直接回収され得、F(ab’)断片を形成させるために化学的に連結され得る。F(ab’)断片は、別の手法により組換え宿主細胞培養物から直接単離されてもよい。抗体断片の生成のための他の技術は、当業者に明らかとなる。
【0280】
幾つかの実施形態では、抗体または抗体断片は、インビボでの半減期の延長をもたらすために、別の分子、例えば、ポリエチレングリコール(ペグ化)または血清アルブミンにコンジュゲートされる。
【0281】
IX.核酸、ベクター、及び宿主細胞
幾つかの実施形態では、本明細書において開示される抗PILRA抗体は、組換え方法を使用して調製される。従って、幾つかの態様では、本開示は、本明細書に記載されるような抗PILRA抗体(例えば、本明細書に記載されるCDR、重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域のうちの任意の1つ以上)のいずれかをコードする核酸配列を含む単離された核酸;かかる核酸を含むベクター;ならびに抗体をコードする核酸を複製するため、及び/または抗体を発現させるために使用される、核酸が導入される宿主細胞を提供する。
【0282】
幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、単離されたポリヌクレオチド)は、本明細書に記載されるような抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、表1に開示される1つ以上のアミノ酸配列(例えば、CDR、重鎖、または軽鎖配列)をコードするヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、表1に開示される配列(例えば、CDR、重鎖、または軽鎖配列)に対する少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、異種核酸(例えば、異種プロモーター)に作動可能に連結される。
【0283】
本開示の抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含有する好適なベクターとしては、クローニングベクター及び発現ベクターが挙げられる。選択されるクローニングベクターは、使用されることが意図される宿主細胞に応じて異なり得るが、有用なクローニングベクターは通常、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼのための単一の標的を有し得、及び/またはベクターを含有するクローンを選択するのに使用され得るマーカー遺伝子を保有し得る。例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその派生物、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び多数の他のクローニングベクターが、BioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業的販売業者から入手可能である。
【0284】
発現ベクターは通常、本開示の核酸を含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームまたは染色体DNAの不可欠な部分のいずれかとして、宿主細胞内で複製し得る。好適な発現ベクターとしては、限定されるものではないが、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスが含まれるウイルスベクター、及び任意の他のベクターが挙げられる。
【0285】
本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドまたはベクターをクローニングするか、または発現させるための好適な宿主細胞としては、原核生物または真核生物の細胞が挙げられる。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、原核生物である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、ヒト細胞、例えば、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞である。
【0286】
別の態様では、本明細書に記載されるような抗PILRA抗体を作製する方法が提供される。幾つかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載されるような宿主細胞(例えば、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドまたはベクターを発現する宿主細胞)を抗体発現に適した条件下で培養することを含む。幾つかの実施形態では、抗体は、その後に宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収される。
【0287】
X.抗PILRA抗体を使用する治療方法
別の態様では、本明細書において開示される抗PILRA抗体(例えば、上記のセクションIIIに記載された抗PILRA抗体)を使用した治療法が提供される。幾つかの実施形態では、神経変性疾患を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態では、(例えば、神経変性疾患を有する対象における)1つ以上のPILRA活性を調節する方法が提供される。
【0288】
幾つかの実施形態では、神経変性疾患を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態では、神経変性疾患は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病、原発性加齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、グアドループにおける認知症を伴うパーキンソニズム(Guadeloupean parkinsonism with dementia)、グアドループにおけるPSP(Guadelopean PSP)、ハレルフォルデン・スパッツ病、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、那須ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球・橋・黒質変性症、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質・脳アミロイドアンギオパチー(prion protein cerebral amyloid angiopathy)、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維変化型認知症。幾つかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病である。幾つかの実施形態では、神経変性疾患は、那須ハコラ病である。幾つかの実施形態では、神経変性疾患は、前頭側頭型認知症である。幾つかの実施形態では、神経変性疾患は、パーキンソン病である。幾つかの実施形態では、本方法は、hPILRAタンパク質に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片、例えば、本明細書に記載されるような抗PILRA抗体、または本明細書に記載されるような抗PILRA抗体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0289】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるような抗PILRA抗体(またはその抗原結合部分もしくは医薬組成物)は、PILRA活性を特徴とする神経変性疾患を処置するのに使用される。幾つかの実施形態では、PILRA活性を特徴とする神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
【0290】
幾つかの実施形態では、対象(例えば、神経変性疾患を有する対象)における1つ以上のPILRA活性を調節する方法が提供される。幾つかの実施形態では、本方法は、PILRA活性をアンタゴナイズするか、もしくは低減させること、例えば、hPILRAへのリガンドの結合を遮断すること、1種以上の下流タンパク質のリン酸化を変化させること(例えば、EGFRまたはSTAT3のリン酸化の増加;STAT1のリン酸化の減少)、細胞呼吸、脂肪酸代謝(例えば、脂肪酸酸化)、及びATP産生を増進させること、細胞遊走を増強すること、抗炎症性遺伝子もしくはタンパク質の発現を増加させること、及び/またはサイトカインタンパク質発現を低減させることを含む。従って、別の態様では、例えば、神経変性疾患を有する対象における、PILRA活性をアンタゴナイズする方法が提供される。幾つかの実施形態では、対象における1つ以上のPILRA活性を調節する方法は、hPILRAタンパク質に特異的に結合する、単離された抗体もしくはその抗原結合部分、例えば、本明細書に記載されるような抗PILRA抗体、または本明細書に記載されるような抗PILRA抗体を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む。
【0291】
幾つかの実施形態では、処置される対象は、ヒト、例えば、成人または小児である。
【0292】
幾つかの実施形態では、神経変性疾患を有する対象におけるプラーク蓄積を低減させる方法が提供される。幾つかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載されるような抗体または医薬組成物を対象に投与することを含む。幾つかの実施形態では、対象は、アルツハイマー病を有する。幾つかの実施形態では、対象は、神経変性疾患の動物モデル(例えば、5XFADまたはAPP/PS1マウスモデル)である。幾つかの実施形態では、プラーク蓄積は、例えば、陽電子放出断層撮影(PET)スキャンを使用した、アミロイドプラークイメージング及び/またはタウイメージングにより測定される。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体の投与は、プラーク蓄積をベースライン値(例えば、抗PILRA抗体投与前の対象におけるプラーク蓄積レベル)と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減させる。
【0293】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、治療上有効量または治療上有効用量で対象に投与される。しかしながら、投与量は、選択される投与経路、組成物の製剤、患者の反応、状態の重症度、対象の体重、及び処方する医師の判断が含まれる、幾つかの因子に応じて異なり得る。投与量は、個々の患者毎に必要に応じて経時的に増加または減少され得る。ある特定の例では、患者は、最初に低用量を投与され、次いで、患者にとって許容可能な有効な投与量に増加される。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0294】
本明細書に記載される抗PILRA抗体の投与経路は、経口送達、腹腔内送達、経皮送達、皮下送達、静脈内送達、筋肉内送達、クモ膜下腔内送達、吸入送達、局所送達、病巣内送達、直腸送達、気管支内送達、経鼻送達、経粘膜送達、腸内送達、点眼送達、もしくは点耳送達、または当該技術分野において公知の任意の他の方法であり得る。幾つかの実施形態では、抗体は、経口、静脈内、または腹腔内投与される。
【0295】
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体(及び任意に別の治療薬)は、長期間、例えば、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350日間、またはより長期間にわたって対象に投与される。
【0296】
XI.医薬組成物及びキット
別の態様では、hPILRAタンパク質に特異的に結合する抗体を含む医薬組成物及びキットが提供される。幾つかの実施形態では、医薬組成物及びキットは、神経変性疾患を処置するのに使用される。幾つかの実施形態では、医薬組成物及びキットは、1つ以上のPILRA活性、例えば、EGFR、STAT3、及び/またはSTAT1のリン酸化を調節(例えば、増強または阻害)するのに使用される。
【0297】
医薬組成物
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物が提供される。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、上記のセクションIIIに記載されたような抗体またはその抗原結合断片である。
【0298】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載される抗PILRA抗体を含み、1種以上の薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を更に含む。薬学的に許容される担体としては、生理的適合性があり、活性薬剤の活性に干渉しないか、または別様にそれを阻害しない任意の溶媒、分散媒、またはコーティングが挙げられる。薬学的に許容される様々な賦形剤が当該技術分野において周知である。
【0299】
幾つかの実施形態では、担体は、静脈内、筋肉内、経口、腹腔内、クモ膜下腔内、経皮、局所、または皮下投与に適したものである。薬学的に許容される担体は、例えば、組成物を安定化するように、または活性薬剤(複数可)の吸収を増加もしくは減少させるように作用する1種以上の生理学的に許容される化合物(複数可)を含有し得る。生理学的に許容される化合物としては、例えば、グルコース、スクロース、もしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、活性薬剤のクリアランスもしくは加水分解を低減させる組成物、または賦形剤もしくは他の安定剤、及び/または緩衝剤が挙げられ得る。他の薬学的に許容される担体及びその配合物は、当該技術分野において周知である。
【0300】
本明細書に記載される医薬組成物は、当業者に公知の方法で、例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖衣錠製造プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセス、または凍結乾燥プロセスにより製造され得る。以下の方法及び賦形剤は、単なる例示にすぎず、決して本発明を限定するものではない。
【0301】
経口投与の場合、抗PILRA抗体は、当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより製剤化され得る。かかる担体は、処置される患者による経口摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、エマルション、親油性及び親水性懸濁液、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして化合物が製剤化されることを可能にする。経口使用のための医薬製剤は、化合物を固形賦形剤と共に混合し、所望により、得られた混合物を粉砕し、必要に応じて、錠剤または糖衣錠コアを得るために、好適な助剤を添加した後に顆粒の混合物を処理することにより得られ得る。好適な賦形剤としては、例えば、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールが含まれる糖;セルロース調製物、例えば、トウモロコシ澱粉、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。必要に応じて、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムが添加され得る。
【0302】
抗PILRA抗体は、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化され得る。注射の場合、化合物または複数の化合物は、それらを水性溶媒または非水性溶媒、例えば、植物油もしくは他の同様の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステル、またはプロピレングリコール中に、かつ必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤、及び防腐剤などの従来の添加剤と共に、溶解、懸濁、または乳化させることにより、調製物に製剤化され得る。幾つかの実施形態では、化合物は、水性溶液、例えば、ハンクス液、リンガー液、または生理食塩緩衝液などの生理的適合性の緩衝液中に製剤化され得る。注射用の製剤は、単位剤形で、例えば、防腐剤が添加されたアンプルまたは複数回投与用容器で提供され得る。組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態を取り得、懸濁剤、安定化剤、及び/または分散剤などの製剤用薬剤(formulatory agent)を含有し得る。
【0303】
通常、インビボでの投与に使用するための医薬組成物は無菌である。滅菌は、当該技術分野において公知の方法、例えば、加熱滅菌、蒸気滅菌、濾過滅菌、または放射線照射により達成され得る。
【0304】
本開示の医薬組成物の投与量及び所望の薬物濃度は、想定される具体的な用途に応じて異なり得る。適切な投与量または投与経路の決定は、十分に当業者の技術の範囲内である。好適な投与量は上記にも記載されている。
【0305】
キット
幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体を含むキットが提供される。幾つかの実施形態では、抗PILRA抗体は、上記のセクションIIIに記載されたような抗体またはその抗原結合断片である。
【0306】
幾つかの実施形態では、キットは、1種以上の追加の治療薬を更に含む。例えば、幾つかの実施形態では、キットは、本明細書に記載されるような抗PILRA抗体を含み、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病の処置に使用するための1種以上の追加の治療薬を更に含む。幾つかの実施形態では、治療薬は、神経変性疾患の認知症状または行動症状の処置に使用するための薬剤(例えば、抗うつ薬、ドーパミンアゴニスト、または抗精神病薬)である。幾つかの実施形態では、治療薬は、神経保護薬(例えば、カルビドパ/レボドパ、抗コリン作動薬、ドーパミン作動薬、モノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害剤、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤、グルタミン酸作動薬、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、カンナビノイド、カスパーゼ阻害剤、メラトニン、抗炎症剤、ホルモン(例えば、エストロゲンまたはプロゲステロン)、またはビタミン)である。
【0307】
幾つかの実施形態では、キットは、本明細書に記載されるような抗PILRA抗体を含み、抗PILRA抗体により誘導される活性を測定するための(例えば、EGFR、STAT3、及び/またはSTAT1リン酸化を測定するための)1種以上の試薬を更に含む。
【0308】
幾つかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法を実施するための指示(すなわち、プロトコール)を含む説明資料(例えば、上記のような治療法のためのキットの使用説明書)を更に含む。説明資料は、通常、手書きの資料または印刷された資料を含むが、それらに限定されない。かかる使用説明書を記憶し、それをエンドユーザーに伝達することができる任意の媒体が本開示により企図される。かかる媒体としては、限定されるものではないが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)などが挙げられる。かかる媒体は、かかる説明資料を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。
【実施例
【0309】
本開示を具体例により詳細に説明する。以下の実施例は、単に例示目的で提供されるものであり、如何様にも本開示を限定することを意図しない。
【0310】
実施例1.IPSC由来のミクログリア、HEK293、及びCHO-K1細胞におけるPILRA及びPILRBへの結合の評価
HEK293、CHO-K1、及びヒトIPSC-由来のミクログリアへのPILRA mAbの結合
親HEK293細胞をNucBlue Live ReadyProbes Reagentで30分間標識した。親HEK293細胞及びhPILRAを発現するHEK293細胞を混合し、洗浄し、FACS希釈液(PBS、0.2%のBSA、及び1nMのEDTA)中で様々な濃度の抗PILRA抗体またはアイソタイプ対照抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をFACS希釈液で2回洗浄し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトIgGと共に氷上で30分間インキュベートし、1回洗浄した。細胞への抗体の結合をFACSにより検出し、FLOJOソフトウェアで実行したデータ解析により蛍光強度中央値(MFI)を導き出した(図1A~1C)。
【0311】
CHO-K1細胞及びhPILRAを発現するCHO-K1細胞を、100nMの単一濃度の抗PILRAまたはアイソタイプ対照抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をFACS希釈液で2回洗浄し、次いで、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトIgGと共に氷上で30分間インキュベートし、FACS希釈液で1回洗浄した。細胞への抗体の結合をFACSにより検出し、FLOJOソフトウェアで実行したデータ解析によりMFIを導き出した(図1G)。図1A~1C及び1Gは共に、HEK293及びCHO-K1細胞上に発現されたhPILRAへの抗PILRA抗体の結合を実証する。親HEK293細胞及びCHO-K1細胞への抗PILRA抗体の結合の欠如も結合の特異性を実証する。
【0312】
野生型IPSCに由来するヒトミクログリア(ヒトiMicroglia;PILRA R78/G78ヘテロ接合性)またはPILRA機能欠損(LoF)IPSC(ヒトPILRA LoF iMicroglia)に100nMのビオチン化した抗PILRAまたはアイソタイプ対照抗体を氷上で45分間投与した。細胞をPBSで洗浄し、続いて、Alexa Fluor 488コンジュゲートストレプトアビジンと共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をPBSで数回洗浄後、共焦点顕微鏡を使用して撮像した。Harmony Softwareを使用して、細胞毎の平均蛍光スポット面積を算出した。データをAlexa Fluor 488コンジュゲートストレプトアビジンのみで処理された対照ウェルにおけるバックグラウンドシグナルに対する倍率表示として示す(図1J及び1K)。図1J及び1Kは共に、内因性細胞表面レベルのhPILRAを有するCNS関連細胞種であるヒトiMicrogliaへの抗PILRA抗体の結合を実証する。更に、ヒトPILRA LoF iMicrogliaへの抗PILRA抗体結合の欠如は、hPILRAへの結合の特異性を実証した。更に、ヒトiMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaの両方へのアイソタイプ対照抗体結合の欠如は、CNS関連細胞種への非特異的抗体の結合の欠如を実証した。
【0313】
cynoPILRAまたはhPILRBを発現するCHO細胞へのPILRA mAbの結合
CHO-K1細胞、cynoPILRAを発現するCHO-K1細胞、及びhPILRBを発現するCHO-K1細胞を、100nMの単一濃度の抗PILRAまたはアイソタイプ対照抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をFACS希釈液で2回洗浄し、次いで、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトIgGと共に氷上で30分間インキュベートし、FACS希釈液で1回洗浄した。細胞への抗体の結合をFACSにより検出し、FLOJOソフトウェアで実行したデータ解析によりMFIを導き出した。図2Aに示すように、抗PILRA抗体は、cynoPILRAを発現するCHO-K1細胞に結合したが、hPILRBを発現するCHO-K1細胞または親CHO-K1細胞には結合しなかった。CHO-K1細胞上に発現されたcynoPILRAへの抗PILRA抗体の結合は、抗体による細胞表面標的への結合及びカニクイザル交差反応性を実証した。これらは、カニクイザルでの抗体安全性評価及びTE/PK/PD試験を可能にする固有の結合特性である。
【0314】
全体として、抗PILRA抗体は、hPILRAを発現するHEK293及びCHO-K1細胞、ならびにcynoPILRAを発現するCHO-K1細胞に結合した。このことは、結合特異性及びカニクイザル交差反応性を実証する。この抗体は、内因性細胞表面レベルでhPILRAを発現するヒトiMicrogliaにも結合し、PILRA LoF iMicrogliaには結合しなかった。
【0315】
実施例2.抗PILRA抗体の特徴付け
結合特性
hPILRA、hPILRB、及びcynoPILRAの細胞外ドメイン(ECD)に対する抗PILRA抗体の結合親和性を、Biacore 8K機器を使用したSPRにより測定した(表2)。マウス抗ヒトFab(GE Healthcareのhuman Fab capture kit)を固定化したBiacore(商標)Series S CM5センサーチップ上に抗体を捕捉し、続いて、組換えECD試薬の3倍系列希釈物を30μL/分の流速で注入した。3分間の会合に続く10分間の解離を使用して各試料を分析した。各注入後、50mMのグリシン(pH2.0)の再生緩衝液を使用してセンサーチップを再生させた。kon及びkoffの同時フィッティングの1:1ラングミュアモデルを動態解析に使用した。
【0316】
エピトープマッピング
抗PILRA抗体のPILRA結合エピトープを、Biacore 8K機器を使用したSPRにより同定した。マウス抗ヒトFab(GE Healthcareのhuman Fab capture kit)を固定化したBiacore(商標)Series S CM5センサーチップ上に抗PILRA抗体を捕捉し、続いて、PILRAからPILRBへの単一点変異体バリアントを1μMの濃度で注入した。エピトープビニングのために、抗PILRA抗体を固定化したBiacore(商標)Series S CM5センサーチップの各チャネルに1μMの組換えヒトPILRAを300秒間注入した。その後、各サイクル毎に単一の抗PILRA抗体の注入により、二次抗PILRA抗体の結合をモニタリングした。
【0317】
ヒトPILRAに対するリガンド遮断
抗PILRA抗体のリガンド遮断特徴を、Biacore 8K機器を使用したSPRにより評価した(図3A及び3B)。マウス抗ヒトFab(GE Healthcareのhuman Fab capture kit)を固定化したBiacore(商標)Series S CM5センサーチップ上に抗PILRA抗体を捕捉し、続いて、300nMの組換えhPILRA ECDを注入した。その後、以下の組換えPILRAリガンドの注入によりhPILRA-リガンド相互作用をモニタリングした:hNPDC1(35~181)、hPANP(76~178)、及びHSV gB(23~279)。これらはPILRAの既知のシアリル化リガンドである。hPILRAへのリガンドの結合の遮断は、抗体がhPILRAをアンタゴナイズすることができたことを実証した。
【0318】
以下の表2は、hPILRA G78、hPILRA R78、hPILRB、及びcynoPILRAに対する抗PILRA抗体の結合親和性、hPILRA G78を発現するHEK293細胞において測定された結合のEC50値、抗体のhPILRA結合エピトープ、ならびに、様々な試験されたリガンドを抗体が遮断したかどうかを示す。
【0319】
【表2】
【0320】
上記のように、本発明者らの全ての抗PILRA抗体は、hPILRA(G78バリアント及びR78バリアントの両方)及びcynoPILRAに対する強い結合を示した一方で、hPILRBに対する結合を示さなかったか、または非常に弱い結合を示した。更に、11種の抗体のうちの8種が、試験した全てのリガンドを遮断した一方で、クローン9及びクローン10は、HSV gB(23~279)を遮断した。しかしながら、4つ全ての参照抗体は、cynoPILRAへの結合を示さず、HSV gB(23~279)のみを遮断した。
【0321】
実施例3.抗PILRA抗体により誘導されるシグナル伝達経路
ヒトiMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaにおけるホスホキナーゼタンパク質活性の評価(EGFR及びSTAT3 Y705)
PILRA下流シグナル伝達の理解は、アンタゴニスト抗体を同定するのに重要である。DIV72の野生型ヒトiMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaを血清添加培地にプレーティングした。24時間後に培地を交換して、血清を除去し、細胞を72時間後に溶解させた。pEGFR Y1086(図4A)及びpSTAT3 Y705(図4B)のホスホキナーゼレベルを、Proteome Profiler Human Phospho-Kinase Array Kit(ARY003C、R&D Systems)を取扱説明書に従って使用して測定した。
【0322】
hPILRA G78またはhPILRA R78を発現するHEK293細胞における抗PILRA抗体による下流シグナル伝達の評価(STAT3 Y705、STAT3 S727、及びEGFR)
親HEK293細胞またはhPILRA G78(78位にGlyを有するPILRA)もしくはhPILRA R78(78位にArgを有するPILRA)を発現するHEK293細胞に、100nMの抗PILRA mAbまたはアイソタイプ対照を低血清条件(1%のウシ胎児血清)で30~60分間投与した。細胞を4%の氷冷したパラホルムアルデヒドで固定し、標準的な免疫組織染色プロトコールを使用してpSTAT3 Y705(30分間投与した;図4C)、pSTAT3 S727(60分間投与した;図4D)、及びpEGFR Y1086(60分間投与した;図4E)について染色した。細胞を共焦点顕微鏡で撮像し、Harmony Softwareで画像を解析して、平均蛍光スポット面積及び強度を細胞毎に算出した。
【0323】
抗PILRA mAb用量反応性を評価するために、hPILRA G78を発現するHEK293細胞に、低血清条件で抗PILRA抗体(200nM未満)を用量漸増して30分間投与した(図4F)。表3は、各抗体についてバックグラウンドに対する倍率(アイソタイプ対照抗体と比較した各抗体でのpSTAT3 Y705の誘導倍率)及びpSTAT3 Y705誘導のnMでの効力を示すEC50値の一覧を示す。hPILRA G78を発現するHEK293細胞におけるpSTAT3 Y705の用量反応性の誘導は、効力及び最大の効果に基づいてアンタゴニスト抗体を順位付けるために利用することができる。hPILRA G78を発現するHEK293細胞においてSTAT3 Y705、STAT3 S727、及びEGFR Y1086のリン酸化が誘導されたが、親HEK293細胞では誘導されなかったことは、特異的なPILRA依存的下流シグナル伝達を実証した。更に、アイソタイプ対照抗体でシグナル伝達が誘導されなかったことは、PILRA選択性及び特異性を実証した。
【0324】
【表3】
【0325】
ヒト化抗PILRA抗体をホスホ-STATシグナル伝達の誘導についても試験した。図4G及び4Hに示すように、抗PILRA抗体がヒトPILRA 78Gを発現するHEK細胞に用量漸増して投与され、30分後にpSTAT3 Y705(図4G)またはpSTAT3 S727(図4H)を誘導した。EC50値(表4)は、pSTAT3 Y705またはpSTAT3 S727誘導のnMでの効力を各抗体について示す。データを平均値+/-SEMでのアイソタイプ対照に対する発現倍率として示す(n=2の生物学的反復(図4G)、n=2の技術的反復(図4H))。
【0326】
【表4】
【0327】
更に、図4K及び4Lに示すように、抗PILRA抗体がヒトPILRA 78Rを発現するHEK293細胞に用量漸増して投与され、30分後にpSTAT3 Y705(図4K)またはpSTAT3 S727(図4L)を誘導した。EC50値(表5)は、pSTAT3 Y705誘導のnMでの効力を各抗体について示す。データを平均値+/-SEMでのアイソタイプ対照に対する発現倍率として示す(n=3の生物学的反復(図4K)、n=2の技術的反復(図4L))。
【0328】
【表5】
【0329】
hPILRA 78Rまたは78Gを発現するHEK293細胞におけるpSTAT3(Y705)及び/またはpSTAT3(S727)の用量反応性の誘導は、効力及び最大の効果に基づいてアンタゴニスト抗体を順位付けるために利用することができる。
【0330】
pSTAT3 Y705誘導がmTOR依存的であるかどうか評価するために、細胞にmTOR阻害剤であるトリン1(31.25~500nM)またはAZD8055(3.125~50nM)を2時間投与し、その後、100nMの抗PILRA mAbまたはアイソタイプ対照を30分間加えた。図4Iは、抗PILRA抗体により誘導されるpSTAT3 Y705がmTOR阻害剤により部分的に阻害されたことを示す。
【0331】
更に図4Jは、抗PILRA抗体が、AD防御的なPILRA R78を発現するHEK293細胞においてpSTAT3 Y705を誘導したことを示す。PILRA G78に結合する抗PILRA抗体(抗体クローン2)は、AD防御的なPILRA R78を発現するHEK293細胞においてpSTAT3 Y705の誘導を部分的に遮断した。G78エピトープに結合しない抗PILRA抗体(抗体クローン9、10、及び5)は、PILRA G78及びPILRA R78における同程度のpSTAT3 Y705誘導を示した。親HEK293細胞ではpSTAT3は誘導されなかった。AD防御的なPILRAバリアントR78は、低減されたリガンド結合能力を有し、おそらくG78に結合する抗体(例えば、抗体クローン2及び4)に対してもより低い親和性を有する。このAD防御的なPILRAバリアントR78の頻度は世界中で異なる。このバリアントは、アフリカ人集団(10%)及びヨーロッパ人集団(38%)ではマイナーアレルであるが、東アジア人集団(65%)ではメジャーアレルである。PILRA R78に結合する抗PILRA抗体は、大部分の人において親和性の消失に関連し得る。しかしながら、異なるエピトープに結合する抗体クローン5は、PILRAのR78バリアントを発現する細胞において強い下流シグナル伝達(pSTAT3 Y705)を誘導した。かかる抗PILRA抗体は、G78に結合する抗体、例えば、抗体クローン2で観察されたPILRA R78を発現する細胞に対する効力の喪失のリスクを取り除くのに役立ち得る。
【0332】
ヒトiMicroglia、PILRA LoF iMicroglia、及びHEK293細胞におけるSTAT1の評価
DIV45の野生型ヒトiMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaを血清添加培地にプレーティングした。24時間後に培地を交換して、血清を除去した。プレーティングの4日後に細胞に100nMの抗PILRA抗体を投与し、30分後に溶解させた。リン酸化STAT1 Y701レベル(図4M)を、AlphaLisaアッセイを取扱説明書に従って使用して測定した。
【0333】
DIV58の野生型ヒトiMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaを血清添加培地にプレーティングした。24時間後に培地を交換して、血清を除去し、細胞を72時間後に溶解させた。総STAT1レベル(図4N)を、AlphaLisaアッセイを取扱説明書に従って使用して測定した。溶解された親HEK293細胞またはhPILRA G78を発現するHEK293細胞におけるホスホ-STAT1 Y701レベル(図4O)もAlphaLisaアッセイを取扱説明書に従って使用して測定した。
【0334】
抗PILRA抗体を使用して、野生型ヒトiMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaに投与した。図4Pに示すように、抗PILRA抗体の100nMでの30分の投与のみがリン酸化STAT1 Y701レベルを低減させ、PILRA LoF iMicrogliaの表現型を模倣した。抗PILRA抗体を使用して、親HEK293細胞及びPILRA G78を発現するHEK293細胞にも投与した。図4Q及び4Rに示すように、抗PILRA mAbは、PILRA G78を発現するHEK293細胞においてリン酸化STAT1 Y701レベル及び総STAT1レベルを低減させた。親HEK293細胞またはアイソタイプ対照抗体では低減されなかった。
【0335】
全体として、結果が示したように、抗PILRA抗体が投与された野生型及びPILRA LoF iMicrogliaにおけるEGFR、STAT3、及びSTAT1のリン酸化状態の基礎的変化は、これらの経路がPILRAの下流であることを示唆した。このことは、これまで知られていなかったPILRA生物学に関連する重要な発見である。
【0336】
実施例4.PILRA依存的なiMicroglia遊走の評価
ヒトIPSC由来のミクログリアにおけるインビトロでのPILRA依存的な機能の理解は、インビボでの機能を予測するのに役立ち得る。ミクログリア運動性の増強は、神経変性疾患において有益であり得る。
【0337】
DIV53の野生型ヒトiMicroglia、PILRA LoF iMicroglia、及びhPILRAを発現するPILRA LoF iMicroglia(PILRA LoF OE)をウェル当たり20,000個の細胞で96ウェルプレートにプレーティングし、ゴムストッパーで中心に無細胞の検出区域を作った。2日目に新鮮な培地中の抗PILRA抗体(100nM)、アイソタイプ対照(100nM)、またはPBS(野生型ヒトiMicroglia及びPILRA LoF iMicroglia試料)を添加し、ゴムストッパーを取り除いた。6日目にNucBlueを添加し、共焦点顕微鏡を使用して細胞を撮像した。画像をHarmony Softwareで解析して、検出区域内の核標識の平均面積を算出した。
【0338】
PILRA LoF iMicrogliaにおけるhPILRAの再発現は、遊走表現型を逆転させて野生型レベルに戻した。このことは、遊走がPILRA依存的であり、特異的なエンドポイントであることを実証する(図5A)。PILRA LoF iMicroglia機能の表現型を模写する抗PILRA抗体は、機能的アンタゴニストと分類される。図5B及び図5Cに示すように、抗PILRA抗体は、PILRA LoF iMicroglia細胞と同様に、ストッパー除去の120時間後に、無細胞の検出区域への野生型iMicrogliaの遊走を増強した。アイソタイプ対照抗体での遊走表現型の欠如は、特異性を実証した。PILRA LoF iMicroglia及び野生型iMicrogliaの両方は、ビヒクル(PBS)のみを投与された。
【0339】
更に、抗PILRA抗体は、化学誘引物質である補体5a(C5a)への細胞遊走を増強することが示された。野生型iMicroglia細胞及びPILRA LoF iMicroglia細胞をDIV62(図5D)またはDIV110(図5E)で採取し、その後、トランスウェルアッセイのためにカルセインAM色素で標識した。図5Eの細胞は、採取前に抗PILRA抗体またはアイソタイプ対照(100nM)で4日間前処理した。ヒト補体5a(10ng/ml)は、化学誘引物質として下部チャンバーに0時点で添加した。データを平均値+/-SEMとして示す(n=3の技術的反復)。図5D及び5Eは、PILRA LoFが、化学誘引物質である補体5a(C5a)へのiMicroglia遊走を増強し(図5D)、抗PILRA抗体が、PILRA LoF iMicroglia細胞と同様に、iMigrogliaのC5aへの走化性を増強した(図5E)ことを示す。
【0340】
抗PILRA抗体は、ミクログリアによる運動性タンパク質の分泌も増強した。野生型(PILRA R78/G78ヘテロ接合体)IPSCに由来するヒトiMicrogliaを、DIV42で血清添加培地にプレーティングした。24時間後に培地を交換して、血清を除去し、細胞に抗PILRA抗体クローン5(100nM)またはアイソタイプ対照を4日間投与した。抗PILRA抗体クローン5またはアイソタイプ対照を投与した上清中の可溶性分析物をプロテオームプロファイラーキットであるHuman Soluble Receptor Array Kit - Non-Hematopoietic Panel(R&D ARY012)で分析した。データをアイソタイプに対する発現の平均値+/-SDとして示す(n=2の技術的反復)。図5F及び5Gは、抗PILRA抗体が、処理の4日後でのiMicrogliaによる上清へのインテグリン(図5F)及びカドヘリン(図5G)の分泌を増強したことを示す。
【0341】
この実施例は、抗PILRA抗体が、PILRAに対する機能的アンタゴニストとして作用し、細胞遊走を増強することによりPILRA LoF iMicroglia機能の表現型を模写したことを実証する。この抗体は、細胞遊走の増強に関連する運動性タンパク質であるカドヘリン及びインテグリンの細胞分泌も増加させた。
【0342】
実施例5.iMicrogliaにおける抗炎症性表現型に対するPILRAの効果
ヒトiMicrogliaインビトロにおけるPILRA依存的な機能の理解は、インビボでの機能を予測するのに役立ち得る。炎症状態の調節は、神経変性疾患において有益であり得る。PILRA依存的な転写変化を評価するために、野生型iMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaを血清添加培地にプレーティングした。24時間後に培地を交換して、血清を除去した。72時間後にLPS(10ng/ml)またはビヒクルを添加して、サイトカイン反応を刺激した。LPS処理の24時間後に細胞を採取し、野生型iMicrogliaまたはPILRA LoF iMicrogliaの同じ分化バッチから得られた5つの独立した採取物(DIV59、DIV63、DIV70、DIV73、DIV77)からRNAを単離した。各条件について採取物毎に2回の技術的反復をプールした。
【0343】
PILRA依存的なIL1RAサイトカイン分泌を評価するために、野生型iMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaをDIV70で血清添加培地にプレーティングした。24時間後に培地を交換して、血清を除去し、細胞に抗体(100nM)を投与した。培地交換の72時間後に上清を採取し、human IL1RA MSDで分析した。
【0344】
無血清培地におけるIL1RNの転写変化及びIL1RAサイトカイン分泌について、PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFは、野生型iMicrogliaと比較してIL1RN遺伝子発現(図6A)及びIL1RAサイトカイン分泌(図6B)を促進した。更に、抗PILRA抗体(100nM、72時間)は、無血清培地中の野生型iMicrogliaにおいてIL1RAサイトカイン分泌を刺激し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣した(図6C)。抗PILRA抗体は、PILRA LoF iMicrogliaにおけるIL1RA分泌を増加させなかった。
【0345】
LPSにより誘導されるPILRA依存的な炎症誘発性サイトカイン分泌を評価するために、野生型iMicroglia及びPILRA LoF iMicrogliaをDIV53で血清添加培地にプレーティングした。24時間後に培地を交換して、血清を除去し、野生型細胞に抗体(100nM)を投与した。72時間後にLPS(10ng/ml)を添加して、サイトカイン反応を刺激した。LPS処理の24時間後に上清を採取し、human pro-inflammatory(4-plex) MSD及びhuman IP-10 MSDで分析した。
【0346】
LPSにより誘導される転写変化について、PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFは、野生型iMicrogliaと比較してLPSにより誘導されるTNF、IL-6、及びCXCL10遺伝子発現を抑制した(図6D~6F)。LPSによって誘導されるサイトカイン分泌の変化について、PILRA LoF iMicrogliaにおけるPILRA LoFは、野生型iMicrogliaと比較してLPSにより誘導されるTNFα、IL-6、及びIP-10の分泌を抑制した(図6G~6I)。
【0347】
更に、抗PILRA抗体は、野生型iMicrogliaにおけるLPSにより誘導されるIP-10、TNFα、及びIL-6サイトカイン分泌を減弱し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣することができた(図6J~6O)。
【0348】
更に、ホモ接合性G78またはR78 PILRAを発現するiMicroglia細胞も使用して、抗体の抗炎症効果を試験した。CRISPRによるKI系統を作製して、ホモ接合性G78R PILRA(AD防御的;R78)及びR78G PILRA(標準的ADリスク;G78)遺伝子バリアントに対する抗体の影響を決定した。ミクログリアをDIV54で血清添加培地にプレーティングした。24時間後に培地を交換して、血清を除去し、iMicroglia細胞に抗体(100nM)を投与した。72時間後にLPS(10ng/ml)を添加して、サイトカイン反応を刺激した。LPS処理の24時間後に上清を採取し、human IP-10 MSDで分析した。データを平均値+/-SEMとして示す。図6P及び6Qは、抗PILRA抗体(100nM)が、無血清培地中のホモ接合性G78(図6P)及びR78(図6Q)PILRAを発現するIPSC由来のiMicrogliaにおいて、LPSにより誘導されるIP-10サイトカイン分泌を減弱したことを示す。抗PILRA抗体は、いずれのPILRAアレル組み合わせ(R78/R78、R78/G78、またはG78/G78)を有するIPSC由来のミクログリアでも抗炎症性表現型を促進した。このことは、内因性細胞表面レベルのhPILRA受容体を有するCNS関連細胞種におけるアンタゴニスト機能を実証した。
【0349】
この実施例は、抗PILRA抗体が野生型iMicrogliaにおいてIL1RAサイトカイン分泌を刺激し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣したことを実証する。更に、抗PILRA抗体は、野生型iMicroglia及び内在性hPILRAレベルを有するIPSC由来のiMicrogliaにおけるLPSにより誘導されるサイトカイン分泌を減弱した。全体として、抗PILRA抗体は、抗炎症性表現型を促進した。
【0350】
実施例6.ミトコンドリア呼吸に対するPILRAの効果
ミクログリアにおける代謝機能障害は、神経変性疾患の病理学的特徴である。基礎的条件でのミトコンドリア呼吸に対するPILRA依存的な効果を評価するために、野生型iMicroglia、PILRA LoF iMicroglia、及びhPILRAを発現するPILRA LoF iMicroglia(DIV51)を、Seahorse XFアッセイに適したコーティング済みの96ウェルプレートに20k個/ウェルの密度でプレーティングした。プレーティングの72時間後に血清添加培地(C+++)を基質制限培地(SLM)と交換して、一晩の間、細胞の脂質代謝を刺激した。アッセイ当日、ミトコンドリア適応性及び能力の測定のために、Seahorse長鎖脂肪酸酸化キットを製造者の使用説明書に従って実行し、オリゴマイシン(1.5μM)、FCCP(2μM)、及びロテノン/アンチマイシン(0.5μM)を逐次的に注入した。図7A及び7Bに示すように、PILRA LoF iMicrogliaは、最大呼吸及びミトコンドリア予備呼吸能の増加を示した。hPILRAを発現するPILRA LoF iMicroglia(PILRA LoF+OE)におけるPILRAの再発現は、ミトコンドリア呼吸を野生型レベルに戻した。
【0351】
ミトコンドリア呼吸に対する抗PILRA mAb依存的な効果を評価するために、野生型及びPILRA LoF iMicroglia細胞(DIV67)を、Seahorse XFアッセイに適したコーティング済みの96ウェルプレートに20k個/ウェルの密度でプレーティングした。プレーティングの24時間後に血清添加培地(C+++)を基質制限培地(SLM)と交換して、細胞の脂質代謝を刺激した。基質制限の間、72時間の処理期間で100nMの抗PILRA抗体を投与した。アッセイ当日、ミトコンドリア適応性及び能力の測定のために、Seahorse長鎖脂肪酸酸化キットを製造者の使用説明書に従って実行し、エトモキシル(4μM)、オリゴマイシン(1.5μM)、FCCP(2μM)、及びロテノン/アンチマイシン(0.5μM)を逐次的に注入した。抗PILRA抗体(100nM)は、野生型iMicrogliaにおける最大呼吸(図7C及び図7E)及びミトコンドリア予備呼吸能(図7D及び図7F)をアイソタイプ対照と比較して増加させた。抗体のPILRA LoF iMicrogliaに対する更なる影響はなかった。このことは抗体特異性を示す。抗体処理及び遺伝子型の効果は、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)の阻害により軽減された。このことは、脂肪酸酸化がミトコンドリア機能改善の大きな促進要因であることを示唆する。
【0352】
Aβ1-42フィブリルにより誘導される非ミトコンドリア酸素消費速度の減少に対するPILRA LoFの効果を評価するために、野生型iMicroglia及びPILRA LoF iMicroglia(DIV67)を、Seahorse XFアッセイに適したコーティング済みの96ウェルプレートに20k個/ウェルの密度でプレーティングした。血清添加培地(C+++)を、Aβ1-42フィブリル(100nM)を含有するグルタミン非含有DMEM XFアッセイ培地と交換した。一晩の細胞処理前に、フィブリルの音波処理を10分間実行した。アッセイ当日、ミトコンドリア適応性及び能力の測定のために、Seahorseミトストレスキットを製造者の使用説明書に従って実行し、オリゴマイシン(1.5μM)、FCCP(1μM)、及びロテノン/アンチマイシン(0.5μM)を逐次的に注入した。抗PILRA mAbの効果を評価するために、野生型iMicroglia及びPILRA LoF iMicroglia(DIV80)を20k個/ウェルの密度でプレーティングした。抗PILRA抗体をプレーティングの24時間後に100nMで投与し、グルタミン非含有DMEM XF培地への交換時に補充した。図7G及び7Hに示すように、野生型iMicrogliaにおけるAβ1-42フィブリルにより誘導される非ミトコンドリア酸素消費速度の減少(図7Gの灰色の棒)は、抗PILRA抗体によりレスキューすることができる(図7Hの縞模様の灰色の棒)。
【0353】
ミトコンドリアのATP産生速度に対するPILRA依存的な効果を評価するために、野生型iMicroglia、PILRA LoF iMicroglia、及びhPILRAを発現するPILRA LoF iMicroglia(DIV61)を、Seahorse XFアッセイに適したコーティング済みの96ウェルプレートに20k個/ウェルの密度でプレーティングした。細胞を血清添加培地で72時間インキュベートし、その後、Seahorse ATP産生速度キットを製造者の使用説明書に従ってDMEM XFアッセイ培地で実行した。ATP産生速度の測定のために、オリゴマイシン(1.5μM)及びロテノン/アンチマイシン(0.5μM)の逐次的注入を適用した(図7I)。抗PILRA mAbの効果を評価するために、野生型iMicroglia(DIV40)を20k個/ウェルの密度でプレーティングした。抗PILRA抗体をプレーティングの24時間後に100nMで投与し、DMEM XF培地への交換時に補充した。PILRA LoF iMicrogliaは、より高いミトコンドリアOXPHOS活性と共にATP産生の増加を示した(図7I)。抗PILRA抗体は、野生型iMicrogliaにおいてPILRA LoFを再現し、ATP生成速度を増加させた(図7J)。
【0354】
全体として、抗PILRA抗体は、最大呼吸能、予備の蓄え、及びATP産生速度が含まれる、野生型iMicrogliaにおけるミトコンドリア活性を増強した。抗PILRA抗体は、野生型iMicrogliaにおける脂肪酸酸化も増強し、PILRA LoF iMicrogliaにおいて観察された表現型を模倣した。このことは、疾患において蓄積する脂質基質を代謝させる潜在的により高い能力を示唆する。更に、非ミトコンドリア呼吸もPILRA LoF及び抗PILRA抗体により増強された。非ミトコンドリア呼吸は、主にNOX2によるスーパーオキシド産生によるものであり、制御されないままだと、脂質及びタンパク質酸化などの有害な影響を及ぼし得る。
【0355】
実施例7.末梢免疫細胞に対するPILRAの効果
ヒトPILRAは、好中球及び単球で発現する。これらの末梢免疫細胞への抗PILRA抗体の結合は、治療学的同等性の末梢評価を可能にする。抗PILRA mAbの結合を評価するために、ヒト白血球を赤血球の低張圧による溶解によりヘパリン化全血から濃縮し、0.5%のBSA及び2mMのEDTAを含有する冷PBS中に再懸濁した。Fc受容体をHuman TruStain FcXで遮断した。次いで、細胞をCD3、CD14、CD19、CD45、CD66b、及びPILRAに対する蛍光抗体で標識した。蛍光強度をフローサイトメトリーにより定量化した。抗PILRA抗体は、エクスビボで単球(図8A)及び好中球(図8B)に結合することができた。B細胞及びT細胞(図8C及び8D)には結合しなかった。
【0356】
抗PILRA mAbが好中球及び単球を活性化するかどうかを評価するために、ヒト白血球を赤血球の低張圧による溶解によりヘパリン化全血から濃縮し、RPMI1640細胞培養完全培地中に再懸濁した。細胞を水相及び固相の両方の100nMの抗体または10ng/mLのLPSで24時間処理した。次いで、それらを洗浄し、CD11b、CD14、CD25、CD66b、及びHLA-DRに対する蛍光抗体で標識した。蛍光強度をフローサイトメトリーにより定量化した。抗PILRA抗体は、エクスビボでヒト好中球及び単球を活性化しなかった。抗PILRA抗体で処理された細胞は、CD25(図8E)またはHLA-DR(図8F及び8G)の上昇を示さなかった。CD25及びHLA-DRの発現は、陽性対照(すなわち、LPS処理及び抗CD3抗体処理)及び陰性対照(すなわち、アイソタイプ対照処理及びPBS処理)と比較した。
【0357】
抗PILRA mAbがエクスビボでヒト白血球を活性化するかどうかを評価するために、ヒト白血球を赤血球の低張圧による溶解によりヘパリン化全血から濃縮し、RPMI1640細胞培養完全培地中に再懸濁した。細胞を水相及び固相の両方の100nMの抗体または10ng/mLのLPSで24時間処理した。1000gで20分間遠心分離した後に上清を回収し、80℃で保存した。可溶タンパク質をMSD Human Proinflammatory Panel I kitを使用して定量化した。図8H及び8Iに示すように、エクスビボでヒト白血球は、水相(図8H)または固相(図8I)の100nMの抗PILRA抗体による24時間の処理後に炎症性サイトカイン産生を増加させなかった。
【0358】
全体として、重要な細胞表面マーカー及び炎症誘発性サイトカイン分泌の欠如に基づいて、抗PILRA抗体は、エクスビボで骨髄性細胞活性化に対するなんらの大きな影響も及ぼさなかった。
【0359】
実施例8.抗PILRA抗体のエピトープビン
本明細書に記載される抗PILRA抗体及び4つの抗PILRA参照抗体のPILRA結合エピトープを、Biacore 8K機器を使用したSPRにより同定した。マウス抗ヒトFab(GE Healthcareのhuman Fab capture kit)を固定化したBiacore(商標)Series S CM5センサーチップ上に抗PILRA抗体を捕捉し、続いて、PILRAからPILRBへの様々な変異体バリアント(hPILRA M1~hPILRA M11(配列番号109~119))を1μMの濃度で注入した。図9Aは、抗PILRA抗体のhPILRAエピトープを示す分子構造である。PILRA結合エピトープは、PILRAからPILRBへの特定の変異に対する抗体結合の欠如により同定した(図9B)。図9Bに示すように、参照抗体#1~#4は、エピトープビン#3(hPILRAのアミノ酸116~118)に結合することが確認された。参照抗体#1~#4の各々の重鎖及び軽鎖配列を配列番号128~135に示す。各軽鎖及び重鎖配列において、CDR1~3の配列は太字であり、V及びVの配列は下線が引かれている。本明細書に記載される抗PILRA抗体のうち、クローン10のみがエピトープビン#3に結合する一方で、残りの抗体は全て参照抗体#1~#4と異なるエピトープに結合する。
【0360】
本発明者らは、抗PILRA抗体の異なる結合エピトープを同定することができた。この結果は、本発明者らの抗体により包含されるエピトープの多様性も実証した。
【0361】
実施例9.参照抗PILRA抗体の評価
4つの抗PILRA参照抗体のhPILRA、hPILRB、及びcynoPILRAに対する結合親和性を、Biacore 8Kの機器を使用したSPRにより測定した(実施例2に記載されている)。4つの参照抗体の結合のEC50値もhPILRA G78を発現するHEK293細胞で測定した。
【0362】
【表6】
【0363】
下記の表6及び図11の両方により示されるように、参照抗体#1~#4はcynoPILRAに結合せず、従って、hPILRAとcynoPILRAとの間の交差反応性を欠いていた。
【0364】
実施例10.ヒト化抗PILRA抗体及びその特徴付け
例示的な抗PILRA抗体をヒト化した。ヒト化抗体のhPILRA ECDに対する結合親和性の特徴を、Biacore 8K機器を使用したSPRにより評価した(表7)。表7に列挙する抗体の各々は、抗体のFcドメインを形成する2つの野生型Fcポリペプチド(例えば、配列番号94)を含む。
【0365】
【表7】
【0366】
更に、ヒト化抗体クローン36~39を作製した。これらのクローンのhPILRA G78、hPILRA R78、hPILRB、及びcynoPILRAに対する結合親和性をSPRにより測定した(表8)。
【0367】
【表8】
【0368】
更に、改変されたFcポリペプチドを有するヒト化抗体の結合のEC50値を、hPILRA G78またはhPILRA R78を発現するHEK293細胞で測定した(表9)。加えて、ホスホ-pSTAT3 Y705を誘導するEC50値も測定した。
【0369】
【表9】
【0370】
以下の表10は、選択されたヒト化抗PILRA抗体のhPILRA G78、hPILRA R78、hPILRB、及びcynoPILRAに対する結合親和性、hPILRA G78を発現するHEK293細胞で測定された結合のEC50値、ならびにhPILRAの抗体結合エピトープを更に示す。
【0371】
【表10】
【0372】
本発明者らは、hPILRA(G78バリアント及びR78バリアントの両方)及びcynoPILRAに対する強い結合親和性、ならびにhPILRBに対する非常により弱い結合性を保持するヒト化抗PILRA抗体の作製に成功した。
【0373】
実施例11.細胞へのヒト化抗PILRA抗体の結合
PILRA G78またはR78を過剰発現するHEK293細胞を、NucBlue Live細胞染色剤を用いて室温で30分間染色した。親HEK293細胞及びHEK hPILRA G78細胞を混合し、洗浄し、FACS希釈液(PBS、2%のFBS、1mMのEDTA)を使用して様々な濃度の抗PILRA抗体またはアイソタイプ対照抗体と共に290rpmで4℃にて30分間インキュベートした。細胞をFACS希釈液で2回洗浄し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトIgGと共に290rpmで4℃にて30分間インキュベートした。細胞への抗体結合をBD FACS Canto IIにより検出し、FLOJO及びPRISMソフトウェアにより結果を解析した後に蛍光強度中央値(MFI)を導き出した。内部変動性を考慮して、合計N=3の細胞株を二重反復で分析した。hPILRA G78を発現するCHO-K1細胞に対して同じプロトコールを使用した。図1D及び1Eは、抗PILRA抗体がHEK293細胞を発現するPILRA G78に結合したが、親細胞には結合しなかったことを示す。抗体は、PILRA G78を発現するHEK293細胞に対する以下のEC50値を有する:クローン6:9.3nM;クローン7:12.95nM;クローン12:12.04nM;クローン15:11.2nM;クローン23:21.4nM;及びクローン35:12.8nM。更に図1Fは、ヒト化抗体がPILRA R78を発現するHEK293細胞にも結合したことを示す。抗体は、PILRA R78を発現するHEK293細胞に対する以下のEC50値を有する:クローン2:5.1nM;クローン6:2nM;クローン7:2.5nM;クローン12:2.7nM;クローン15:2.7nM;クローン23:3.7nM;及びクローン35:3.1nM。更に図1H及び1Iは、抗PILRA抗体がPILRA G78を発現するCHO-K1細胞に結合したが、親細胞には結合しなかったことを示す。抗体は、PILRA G78を発現するCHO-K1細胞に対する以下のEC50値を有する:クローン6:7.6nM;クローン7:10nM;クローン12:10.8nM;クローン15:9nM;クローン23:18.2nM;及びクローン35。
【0374】
iMicrogliaへの結合についても抗体を試験した。CRISPRによるノックイン系統を作製して、ホモ接合性G78R PILRA(AD防御的;R78)またはR78G PILRA(標準的ADリスク;G78)遺伝子バリアントを有する細胞への抗体結合を測定した。PILRA G78またはPILRA R78についてヘテロ接合性であるヒトiMicrogliaに100nMのビオチン化したPILRA抗体またはアイソタイプ対照抗体を氷上で45分間投与した。細胞をPBSで洗浄し、続いて、Alexa Fluor 488コンジュゲートストレプトアビジンと共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をPBSで数回洗浄後、共焦点顕微鏡を使用して撮像した。Harmony Softwareを使用して、細胞毎の平均蛍光スポット面積を算出した。データをAlexa Fluor 488コンジュゲートストレプトアビジンのみで処理された対照ウェルにおけるバックグラウンドシグナルに対する倍率表示(平均値+/-SD)として示す。図1L及び1Mに示すように、抗PILRA抗体は、PILRA G78(図1L)またはPILRA R78(図1M)についてホモ接合性であるヒトIPSC由来のiMicrogliaに結合した。G78エピトープに結合するクローン2は、PILRA R78を発現するiMicrogliaへの特異的結合を示さなかった。AD防御的なPILRA R78バリアントは、低減されたリガンド結合能力を有し、クローン2に対してより低い親和性を有する。このAD防御的なバリアントの頻度は世界中で異なる。このバリアントは、アフリカ人集団(10%)及びヨーロッパ人集団(38%)ではマイナーアレルであるが、東アジア人集団(65%)ではメジャーアレルである。このエピトープに結合する抗PILRA抗体は、大部分の人において親和性の消失に関連し得る。従って、本発明者らは、両方のバリアントに結合する抗体の開発を試みた。
【0375】
防御的なPILRA R78についてホモ接合性のiMicrogliaへの、またはHEK293上に発現されたヒトPILRA R78への抗PILRA抗体の結合は、細胞表面標的への結合を実証した。抗PILRA抗体がいずれのPILRAアレル組み合わせ(R78/R78、R78/G78、またはG78/G78)を有するヒトIPSC由来のMicrogliaにも結合することは、内在性細胞表面レベルのhPILRA受容体を有するCNS関連細胞種に結合することを実証した。この結果により、抗体がヒトにおいてアレルに関係なくPILRAに高親和性結合することが予測される。
【0376】
抗体は、cynoPILRAへの結合も示したが、hPILRBへの結合は示さなかった。これは望ましいことである。CHO-K1細胞及びcynoPILRAを発現するCHO細胞を、NucBlue Live細胞染色剤を用いて室温で30分間染色した。細胞を混合し、洗浄し、FACS希釈液(PBS、2%のFBS、1mMのEDTA)を使用して様々な濃度のPILRA抗体またはアイソタイプ対照抗体と共に290rpmで4℃にて30分間インキュベートした。細胞をFACS希釈液で2回洗浄し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトIgGと共に290rpmで4℃にて30分間インキュベートした。細胞への抗体結合をBD FACS Canto IIにより検出し、FLOJO及びPRISMソフトウェアにより結果を解析した後に蛍光強度中央値(MFI)を導き出した。内部変動性を考慮して、合計N=3(B)またはN=1(C)の細胞株を二重反復で分析した。図2B及び2Cは、抗PILRA抗体がcynoPILRAを発現するCHO細胞に結合し(図2B)、hPILRBを発現するCHO細胞には結合しなかった(図2C)ことを示す。
【0377】
更に、この抗体はhPILRBに結合しないことが示された。ヒトPILRB-DAP12 OE HEK293細胞を、NucBlue Live細胞染色剤を用いて室温で30分間染色した。細胞を混合し、洗浄し、FACS希釈液(PBS、2%のFBS、1mMのEDTA)を使用して様々な濃度のPILRA抗体、アイソタイプ対照抗体、またはPILRB結合性陽性対照抗体(HC:配列番号156;及びLC:配列番号157;hPILRB-DAP12 OE HEK293細胞でのEC50は1.2nMである)と共に290rpmで4℃にて30分間インキュベートした。細胞をFACS希釈液で2回洗浄し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトIgGと共に290rpmで4℃にて30分間インキュベートした。細胞への抗体結合をBD FACS Canto IIにより検出し、FLOJO及びPRISMソフトウェアにより結果を解析した後に蛍光強度中央値(MFI)を導き出した。内部変動性を考慮して、合計N=3の細胞株を二重反復で分析した。図2Dは、抗PILRA抗体がhPILRB-DAP12を発現するHEK293細胞に結合しなかったことを示す。
【0378】
この実施例は、ヒト化抗PILRA抗体が、望ましい選択的な結合プロファイルを維持しており、様々な細胞種、例えば、PILRA G78またはR78を発現するHEK293細胞、hPILRA G78またはcynoPILRAを発現するCHO-K1細胞、及びPILRA G78またはR78を発現するヒトIPSC由来のiMicroglia上のhPILRA及びcynoPILRAに対して強く結合し、hPILRBに対して非常に弱く結合したことを更に実証した。
【0379】
実施例12.参照抗体との比較
本発明者らは、抗体をPILRA参照抗体と比較して、hPILRA、hPILRB、及びcynoPILRAに対する結合プロファイルを決定することを試みた。このために、CHO-K1、CHO-hPILRA、CHO-hPILRB、またはCHO-cyPILRA細胞を100nMの単一濃度の抗PILRA抗体またはアイソタイプ対照抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をFACS希釈液で2回洗浄し、次いで、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトIgGと共に氷上で30分間インキュベートし、FACS希釈液で1回洗浄した。細胞への抗体の結合をFACSにより検出し、FLOJOソフトウェアで実行したデータ解析により蛍光強度(MFI)中央値を導き出した。データをバックグラウンド(アイソタイプ対照)に対するシグナル倍率として示す。平均値+/-SD(n=2の技術的反復)。
【0380】
図2E及び2Fは、参照抗体がhPILRAを発現するCHO細胞に結合したが、決定的に、cynoPILRAを発現するCHO細胞には結合しなかったことを示す。対照的に本発明者らの抗体は、hPILRA及びcynoPILRAの両方に結合し、hPILRBには結合しなかった。
【0381】
実施例13.PILRA G78またはR78 HEK細胞のシアリダーゼ処理
PILRA 78GまたはPILRA 78Rを発現するHEK293細胞をSialEXO(Genovis)で処理した。SialEXOは、天然糖タンパク質上のシアル酸の除去に使用され、O結合型及びN結合型グリカンに作用する。これは、α2-3、α2-6、及びα2-8結合に作用する2種のシアリダーゼの組み合わせである。細胞を400nMのシアリダーゼと共に無血清DMEM中で37℃にて1時間インキュベートして、天然糖タンパク質(すなわち、PILRAリガンド)上のシアル酸を除去した。次いで、細胞を2回洗浄し、NucBlue Live染色剤と共に室温で30分間インキュベートし、染色した。親HEK293細胞及びHEKヒトPILRA 78G(または78R)細胞を混合し、洗浄し、様々な濃度の抗PILRA抗体またはアイソタイプ対照抗体と共に30分間インキュベートした。細胞をFACS希釈液(2%のFBS及び1mMのEDTAを含有するPBS)で2回洗浄し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトIgGと共に290rpmで4℃にて30分間インキュベートした。細胞への抗体結合をBD FACS Canto IIにより検出し、FLOJO及びPRISMソフトウェアにより結果を解析した後に蛍光強度中央値(MFI)を導き出した。抗体は、シアリダーゼ処理なしではHEK293 PILRA G78細胞に対する以下のEC50値を有する:クローン5:17nM;クローン6:13nM;クローン7;9.5nM;及びクローン1:6.8nM。抗体は、シアリダーゼ処理ありではHEK293 PILRA G78細胞に対する以下のEC50値を有する:クローン5:9.8nM;クローン6:4.8nM;クローン7:3.2nM;及びクローン1:1.8nM。図3C~3Fは、PILRA G78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合を増強したことを示す。
【0382】
同じプロトコールに従って、PILRA R78を発現するHEK細胞に対してもシアリダーゼ処理を実行した。抗体は、シアリダーゼ処理なしではHEK293 PILRA R78細胞に対する以下のEC50値を有する:クローン5:1.3M;クローン6:0.7nM;クローン7:0.7nM;及びクローン1:14nM。抗体は、シアリダーゼ処理ありではHEK293 PILRA R78細胞に対する以下のEC50値を有する:クローン5:0.9nM;クローン6:0.3nM;クローン7:0.3nM;及びクローン1:5.6nM。図3G~3Jは、PILRA R78 HEK細胞のシアリダーゼ処理が抗PILRA抗体の結合にほとんど影響を及ぼさなかったことを示す。
【0383】
細胞表面シアリル化リガンドの除去は、PILRA G78を過剰発現する細胞への抗PILRA抗体の結合を増加させた。このことは、本発明者らの抗体がPILRAへの結合について内在性シスリガンドと競合することを示す。このことは、シアリダーゼ処理が、低減されたリガンド結合を示すPILRA R78細胞への抗PILRA抗体の結合に対してほとんど影響を及ぼさなかったことにより更に支持される。
【0384】
実施例14.抗PILRA抗体はインビボで標的結合を示した
抗PILRA抗体をインビボで試験するために、本発明者らは、PILRA遺伝子を含むヒトゲノム配列を有するBACトランスジェニック(BACtg)マウスを作製した。これらのマウスは、BACクローンCTD-2110B7を胚に微量注入することによりC57BL/6J(JAXストック番号:000664)系統から作製した。このBACクローンは、ヒトPILRA(R78バージョン)及びPILRBの全長コード領域ならびにその調節エレメントを含む。本発明者らは、このモデルにおけるヒトPILRAの発現を確認した。これらのマウスに50mg/kgのクローン6を屠殺の1日前及び4日前に投与した。その後、マウスにアベルチンで麻酔をかけ、PBSで潅流し、脳を摘出し、ドライアイスで凍結させた。脳組織をホモジナイズして、脳可溶化液を作成し、総タンパク質濃度をBCAにより決定した。Mesoscale Discoveryストレプトアビジンコーティングプレートに更にビオチン化PILRA捕捉抗体(R&D Systems、AF6484)を800rpmで室温にて1時間コーティングし、次いで、TBSTで3回洗浄した。脳可溶化物の試料を各50μlの2つのアリコートに分割した。第1のアリコートには、存在する全てのPILRAを飽和させるために、クローン6(10μg/ml最終濃度)をスパイク・インし、一方で第2のアリコートには、インビボでの投与により結合されたPILRAの量を定量化するために、アッセイ緩衝液のみを与えた。次いで、これらのアリコートをプレートにアプライし、800rpmにて室温で1時間インキュベートし、続いて、TBSTで3回洗浄した。最後に、抗ヒトsuflotag抗体を検出抗体として0.25μg/mlで添加し、800rpmにて室温で1時間インキュベートし、続いて、TBSTで3回洗浄した。Meso SECTOR Sプレートリーダーを使用して蛍光を測定し、PILRA濃度を総タンパク質レベルに対して正規化した。
【0385】
図12A及び12Bは、抗PILRA抗体が、ヒトPILRAを発現するBACtgマウスにおいて50mg/kgの投与の1日及び4日後に脳内及び血漿中での標的結合を示したことを示す。抗PILRA抗体は、アイソタイプ抗体が投与された動物と比較して、全長(脳)及び可溶性(血漿)ヒトPILRA受容体の総受容体レベルを増加させた。
【0386】
抗ヒトIgG ELISA(捕捉抗体:ロバ抗hu IgG(Fab’)2(最小限の交差反応性、JIR #709-006-098);検出抗体:ヤギ抗huIgG(Fab’)2(最小限の交差反応性、JIR #109-036-098))を使用して様々な器官における抗体の濃度も調査した。図12C~12Hは、抗PILRA抗体が、ヒトPILRAを発現するBACtgマウスにおいて50mg/kgのIV投与の1日及び4日後に脳、血漿、肝臓、肺、脾臓、及び骨髄においてIgG様の薬物動態を示したことを示す。
【0387】
PILRA/PILRB BACtgマウスモデルにおける抗PILRA抗体または対照(非標的化)抗体の薬物動態プロファイルは、血漿及び試験された他の組織における薬物曝露プロファイルが同等であるという結果になった。これらのデータは、抗PILRA mAbが、この動物モデルにおいて標的に結合することなく定型抗体として作用したことを示す。
【0388】
追加の配列
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図1M
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図4M
図4N
図4O
図4P
図4Q
図4R
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図6M
図6N
図6O
図6P
図6Q
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図8-6】
図8-7】
図9A
図9B
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
【手続補正書】
【提出日】2024-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024546924000001.xml
【国際調査報告】